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1975-05-14 第75回国会 衆議院 法務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年五月十四日(水曜日)     午前十時十三分開議  出席委員    委員長 小宮山重四郎君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 田中  覚君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 青柳 盛雄君       小澤 太郎君    木村 俊夫君       小坂徳三郎君    小平 久雄君       千葉 三郎君    濱野 清吾君       早川  崇君    福永 健司君     早稻田柳右エ門君    綿貫 民輔君       赤松  勇君    小林  進君       田中 武夫君    中澤 茂一君       日野 吉夫君    八百板 正君       山本 幸一君    諫山  博君       沖本 泰幸君    山田 太郎君       玉置 一徳君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         国 務 大 臣         (内閣官房長官井出一太郎君  出席政府委員         内閣官房長官 海部 俊樹君         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         防衛庁長官官房         長       斎藤 一郎君         法務政務次官  松永  光君         法務大臣官房長 香川 保一君         運輸省鉄道監督         局長      後藤 茂也君  委員外出席者         日本国有鉄道副         総裁      井上 邦之君         法務委員会調査         室長      家弓 吉己君     ————————————— 委員の異動 四月二十四日  辞任         補欠選任   諫山  博君     荒木  宏君 同日  辞任         補欠選任   荒木  宏君     諫山  博君 五月九日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     玉置 一徳君 同日  辞任         補欠選任   玉置 一徳君     佐々木良作君 同月十三日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     玉置 一徳君 同日  辞任         補欠選任   玉置 一徳君     佐々木良作君 同月十四日  辞任         補欠選任   木村 武雄君     綿貫 民輔君   中澤 茂一君     小林  進君   山本 幸一君     田中 武夫君   佐々木良作君     玉置 一徳君 同日  辞任         補欠選任   綿貫 民輔君     木村 武雄君   小林  進君     中澤 茂一君   田中 武夫君     山本 幸一君   玉置 一徳君     佐々木良作君     ————————————— 四月十六日  船舶の所有者等責任の制限に関する法律案  (内閣提出第六三号) 五月二日  集団代表訴訟に関する法律案白木義一郎君外  一名提出参法第一七号)(予) 四月二十三日  法務局、更生保護官署及び地方入国管理官署職  員の増員等に関する請願外二件(日野吉夫君紹  介)(第二五四三号)  大阪府能勢町の登記所存続に関する請願(阪上  安太郎君紹介)(第二五四四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件      ————◇—————
  2. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  3. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 三木総理、あなたは、三木内閣が続く限り憲法改正しないということを再三言われておるわけですね。そこで、その憲法改正しないという中身の問題、これをいろいろ分析をしないと私は意味がないというふうに思うわけです。  そこで、憲法九十六条との関係、改正手続に関連する発議権の問題、これをまず最初にお聞きするわけです。  それからその次に、日本憲法はいわゆる硬性憲法というので、世界の中でも珍しいくらい改正のむずかしい憲法ですね。これはおわかりだ、こう思うのですが、そうすると、現在の日本の中で一体憲法改正ができるというふうにあなた自身考えておられるのかどうかということですね。憲法改正ができないんだから憲法は守る、改正しないという御意見なのかどうか、あるいは、日本憲法が万国にすぐれた憲法だから改正をしないという意味なのか。  後の方の質問はこれは総理から答えていただきたい、こう思うわけですね。前の方はちょっと法律的な問題ですからまあいいですけれどもね。
  4. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 憲法改正発議権国会にある。国会が、参議院においても衆議院においても三分の二以上の議員が賛成をしなければ憲法改正発議はできないということでございます。  それから、現在の情勢を、憲法改正できるかどうか、どういうふうに判断するかということですが、これは衆参両院において三分の二以上の賛成がなければ発議はできないというわけですから、現在野党の各派は憲法改正せぬという立場でありますから、現在の段階において、現在の国会情勢のもとで憲法改正ができる状態ではない、こう判断をしております。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だからあなたの、憲法改正しないということは、私が聞いているとおり、いまの情勢では憲法改正ができないから改正をしないというのか、日本憲法が非常にすぐれた憲法であるから改正をしないという趣旨なのか、どちらだ、こう聞いているわけですよ。
  6. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は参議院でも申したのですが、日本憲法というものはやはり非常に高い理想を掲げておる。民主主義人権尊重主義平和主義、これは日本政治の向かう方向を示したものであって、りっぱな憲法であると私は考えておる次第でございます。したがって、成立の過程にはいろいろ問題があるが、憲法精神、これはわれわれとして、どこに出しても恥ずかしからぬ、やはり人類の向かう大原則を示したりっぱな憲法であると考えております。
  7. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、憲法改正をしないという趣旨は、結局のところ、詰まっていくと、憲法改正を助長するような運動三木内閣としてはしないというふうに承ってよろしいでしょうか。
  8. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 憲法というものは、主権在民下においてはこれは最終的には国民が決めるものである。したがって、国民憲法改正したいという強い要請があったならば、やはりその国民要請にこたえるということが主権在民下における民主政治の形だと思う。したがって、主権在民下においては、永久に憲法改正をしないということは独断に過ぎると思う。そういう意味で、常によりベターな憲法を持とうと考えていろいろ調査研究をするということは、これは政党として当然のことであります。自民党の中にも憲法調査会というのがあって、自主憲法というものを制定したい、こういう立場から調査研究を進めておる人々があることは御承知のとおりであります。  私は今日の状態で、そういう主権在民下において、憲法改正してもらいたい、そういう世論が成熟しておるとは考えていないわけであります。また憲法精神はりっぱである。しかしそれでもいろいろな、憲法の内容について改正をしたいというような面がもしあれば、主権在民下国民の圧倒的な声がそういう方向を望めば、それは改正しないとは言えぬわけですが、いまそういう世論の成熟したものもない。こういうことで、いまは憲法改正する時期だとは考えていないということでございます。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 総理、私の質問に対して二つの点で答えてないわけですよ、あなたは。私は、改正を助長するようなと、こう言っているわけです。いまは国民の圧倒的な声が憲法改正要請しているとだれも見ていませんよ。だから、そういう声を助長するような運動というものを——今度は運動ですよ、いいですか、それは三木内閣としてはやらないのか、こう聞いているわけです。あなたはこっちの言うことに答えなければだめですよ。
  10. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 内閣としてはそういうことはいたさないけれども、民間にいろいろな運動があるということは、これはやはり国民の自由であります。三木内閣としてはそういうことはいたさないということでございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 三木内閣としてはいたさない、と。そこで、あなたはきのうの参議院法務委員会で、これは速記録がまだできてないからはっきりしないんですが、新聞の報ずるところでは、三木内閣ある限り、政府として、党としても改正しませんと言ったように伝えられているわけですね。これは確かめていただきたいのですが、そうすると、あなたは自民党総裁でありますね。総裁としてもいま言う憲法改正を助長するような運動はしないということになるんでしょうか、あるいはならないんでしょうか、どっちでしょうか。
  12. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 先ほどもお答えいたしましたように、憲法改正発議権国会にある。自民党だけで憲法改正がやれるものではない。私の三木内閣憲法改正をする考えはないと言ったわけです。また党も、私の総裁である限りは、憲法改正を推進するような私はイニシアチブはとらないということであります。
  13. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 党の総裁である限りはそういうイニシアチブをとらないと言っていますけれども、イニシアチブかどうかは別として、あなたの意思を受けてか、憲法改正運動をみんなやっているんじゃないですか、あなたの方では。それに対しては、あなたとしてはおれは知らないということですか。自分の威令が行われないからこれはしようがないんだ、こういうことでございますか。
  14. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 個人としてのいろいろな運動は自由であるけれども、自民党として、私の総裁である限り、憲法改正を推進するようなイニシアチブ総裁としてとらぬということです。
  15. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、政府として憲法改正を助長するような運動はしない、こういうわけですね。そういう答弁のようですね。  そうすると、自主憲法制定国民大会ですか何ですか、そこへ閣僚出席をすることは憲法改正を助長するような運動に、意図したかどうかは別として、結果としてはそういうふうになったと認めざるを得ないのではないか、こう思うのですが、そこはいかがでしょうか。
  16. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろいろ改憲論を持つことは当然に自由であります。しかし、三木内閣憲法改正考えないということを言っておるわけですから、稻葉法相の場合は個人資格出席をした。非常に配慮しているんですね。きのうの参議院答弁にもあったように、役所の車を使わないで別に車を雇って、秘書もつけないで、自分は主観的には個人資格出席したということで、出席についてのいろいろなそういう自動車まで配慮したわけでございますが、しかし客観的に見れば、そのいわゆる個人閣僚との使い分けというところに今度問題が起こったわけでございます。それはやはり閣僚重みから来るものである。本人は使い分けたつもりでも、客観的に見れば、閣僚重みから見てそう受け取られない場合があって、今度問題が起こったわけであります。そういう点では、稻葉法相のその行動は慎重を欠いたと言われても仕方がない。その点について稻葉法相はみずから深く反省をして、以後このようなことが起こらないように厳に私は行動を慎むということを、昨日の参議院法務委員会においても誓約をいたしておるわけでございます。したがって、今後、稻葉法相がそのような誤解を生ずるようなことは再びないことと私は信じております。
  17. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは委員長から御注意願いたいのですが、私の質問に対しては全然答えないですよ。別のことをみんな答えていますよ。それはいかぬですよ。(「答えているじゃないか」と呼ぶ者あり)いやいや。それはいかぬよ。それは一国の総理としてとるべき態度ではないですよ。(「そうだ」と呼ぶ者あり)いかぬのだ、それは。だから、いいですか、私の聞いているのは、結果として憲法改正を助長するような運動に参加をしたと考えられませんかと聞いているのじゃないですか。あなたはそれに対して答えたらいいじゃないですか。
  18. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 内閣の一員としてそういうふうな意図を持ってないわけですから、そういうふうな意図のもとに出席したものではないと思います。
  19. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私はそんなことを聞いてないじゃないですか。意図を聞いているのじゃないと言っているでしょう。結果としてと何回も私は断っているでしょう。いかぬですよ、あなた、その態度は。もう少しちゃんとまじめに答えなければだめです。
  20. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 個人としてはそういう意図ではなかったけれども、客観的にそういう疑いを持たしたことは軽率であったと言っておるのです。
  21. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 客観的に疑いを持たれたということですか、あなたの方は。結果として憲法改正運動助長——法務大臣が、個人かどうかは知らぬけれども、出かけてそこに行ったこと自身、そこに列席したこと自身憲法改正運動を助長したとは総理考えないということでございましょうか。それならそういうふうに答えてください。  それから、法務大臣はその点についてはどういうふうにお考えですか。両方から答えてください。
  22. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 稻葉法務大臣は助長しようという意図出席したのではないのです。しかし、客観的にそういう誤解を生じたということは軽率であったという意味で……。本人は助長するために出席したものではない。三木内閣閣僚として、憲法改正しないという内閣方針に従っていままでも職務を執行してまいりましたし、今後もその職務を執行するということで法務大臣の職責にあるわけでございますから、そういうふうな意図出席をしたことではない。しかし客観的にそういうふうな誤解を生じたことは軽率であったと申しておるのでございます。
  23. 稲葉誠一

    稲葉国務大臣 私は前に自由民主党憲法調査会長として、自由民主党憲法調査会の審議の進み方の過程段階等を説明のため招かれて、しばしばこの自主憲法制定国民会議大会に出てまいりました。昨年、三木内閣に入りましてから、私が憲法調査会長時代憲法調査会の御決定を願った憲法改正大綱草案というものがありますが、その後、自由民主党憲法調査会会長がことしの大会に、どういう進み方になったか説明されるであろうと思いました。そういうことも聞いたり——とにかく国民には、憲法改正したい、あるいはすべきであると言う人と、改正してはいけないと言う人とがあるわけです。そうして、憲法記念日でございますから、やはり憲法に関心を持つ集会、反対、賛成と言って、両方集会が行われるのは当然でございまして、その集会の方に出てはいけないという理由はないと私は思うのです。けれども、三木内閣はいまの憲法改正しないのだ、こうはっきり国会でも公約しておる内閣でございますから、その閣僚の一人として、法務大臣として出席することは、これは慎まなければならぬな。私は学究の徒という立場もありますので、いろいろ憲法のことに興味を持ち、それがどういうふうになっているかということを聞きたいと思って、そういう会合に出たいと思うけれども、三木内閣閣僚だからどうかなと思いまして、これは厳に個人閣僚という地位を峻別しなければいかぬというので、その日は役所の秘書官も車も皆使わないで、個人の車で行って、そうして法務大臣として紹介されましたけれども、これはあくまでも儀礼的なものだ。いままでずっと出ておりましたのですから、そして前に自由民主党憲法調査会長をしておりましたものですから、壇上へ上げられたりしてもこれはやむを得ぬではないかということで、そこに出ておったわけでございます。それでございますから、私、いますぐ改正すべきだとか、そういう気持ちでこれを鼓舞激励するというような考えは毛頭持っておりませんが、結果として、総理もおっしゃるように、個人閣僚という問題は紛らわしい、分けにくい、そういうことがございますので、国務大臣として三木内閣にありながら憲法改正を進める大会に出たという、結果としてそういう誤解を与え、これは三木内閣閣僚としてはまことに不謹慎の至りであった、手落ちがあった、こういうことをいま反省しておる次第であります。
  24. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そういうことを聞いているのじゃないんですけれどもね。結果としてはわかったけれども、結果としてそれを助長したことにはならないか、こう聞いているのです。とにかくそういうふうになるという意味にとっていいでしょう、私の方は。いいですか、結果として憲法改正運動を助長するように力を与えたということは間違いない、こうとってよろしいですか。
  25. 稻葉修

    稻葉国務大臣 私の申し上げるのは、私が出たために非常に助長されて、鼓舞激励されたという誤解を与えたという点について遺憾の意を表している、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  26. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それでは、同じことを聞いてもあれですから、法務大臣、この前、五月七日の決算委員会佐々木さんに対してこういうふうにあなたは答えているのですよ。「私も改憲論者でありますことは隠れもない事実でございまして、私は改憲論者でないと言うわけにはまいりませんでね。」こう言っているのですけれども、これはいまでも変わりはありませんか。
  27. 稻葉修

    稻葉国務大臣 三木内閣閣僚として、この三木内閣の、改正をしないという政治姿勢に従うことは当然でございますけれども、理論的には、この憲法を検討するといろいろな問題がある、検討すべき問題点がある、そういう意味においては、憲法改正すべきだという国民の一人であります。国民のうちには、改正すべきでない、いや改正した方がいい、あるいは改正すべきだという両論があって、その後者の方の部類の中に私も入るというふうに御理解願いたいと思います。
  28. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 三木内閣憲法改正しない、こう言っているわけですね。そうすると、隠れもない憲法改正論者である、そういう信念を持っておられるあなたが三木内閣法務大臣として入閣するということは——いいですか、よく聞いてください、あなたとしては自己信念を捨てたことなんですか、あるいは一時期凍結したことなんですか、そこら辺どうなんでしょうか。そこ、おかしいのじゃないですか。
  29. 稻葉修

    稻葉国務大臣 稲葉さん、私、参議院佐々木さんにもちゃんとその点は答えておるとおりなんですが、それを申し上げますと、私は三木内閣に入った途端に憲法改正論者から非改正論者にひっくり返ったわけではないのです。それはそうでないのです。私は、現実の問題と、将来憲法改正しようという理想というか夢というか、そういう点はやはり区別されてしかるべきものであって、改正するといっても、九十六条の厳密なる手続、条件を踏んでやるのでありますから、もっと国民世論の動向も見きわめた上、さらには案が相当程度に進んで、これならば江湖に訴えてもいいじゃないか、そういうものができていない現在、われわれの勉強はまだ不十分でございますから、もっとうんと慎重に勉強して積み重ねていって、自由民主党憲法調査会でりっぱな案をつくってもらって、そういう時期になり、それに対し国民の共鳴があれば改正できるのじゃないか、そういう意味においては改正論者でございますけれども、いまそんなことを早急に、軽々に、慎重を欠いて内閣が着手すべきものではない、内閣内閣仕事として着手すべきものでない、こういう点において三木内閣の、憲法改正しないという政治方針賛成だ、そういうふうに御理解願いたいと思うのです。
  30. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 あなたは、思うことと言うことと行うことが、これが一致をするのが政治家だという信念を持っていらっしゃるわけでしょう。私もその信念を尊重するわけですね。そうなれば、あなたと考えの違う三木内閣三木総理ではないのですか。それはあなた、根本的に違いますよ。一時的にあなたが改憲論を引っ込めたということかどうかはわかりませんけれども、私がもし本当政治家だったら、自分考えの違う、ことに基本的な憲法の問題で考えの違う三木内閣には入らないですよ。これはそうなるかどうかは別として、入りませんよ。それが政治家本当の道ではないでしょうかね。私はそう思いますよ。節を屈したんだ、あるいは曲げたんだ、あるいは一時とめたんだ、停止をしたんだ、こういうふうにだれが見ても考えるのではないでしょうかね。私はそう思いますよ、総理
  31. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が答えたら適当だと思うのですが、改憲論を持つことは自由であります。しかし、三木内閣閣僚である限りは、三木内閣憲法改正せずと言っているのですから、この内閣方針に従っていく当然の責任閣僚は持っておるわけです。また、憲法改正せずというのは、自民党の歴史を振り返ってみても、憲法改正ということを正面から打ち出したのは鳩山、岸内閣だけで、池田内閣以来私の内閣では憲法改正せずということを常に言い続けてきて、その間、稻葉氏も、私の内閣ではございませんが、入閣したこともあって、改憲論を持つということと、その内閣方針に従うということは、これはやはり別個の問題として取り扱わなければならない。しかし、その内閣に入閣した以上は、憲法改正をしないという私の方針を承知して入閣したのですから、その方針を厳格に守る責任国務大臣として持っておるということでございます。また、稻葉法務大臣は今日までそれを守ってきたし、将来もその方針に従って行動するということを約束をしておるわけでございますから、その点に私は矛盾はないと思うのでございます。
  32. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると法務大臣、あなたが自己の信条としておる憲法改正を、三木内閣閣僚である間はとめられるわけですね。それに対してあなたとしては、政治家として別に苦痛も感じないし、これはあたりまえのことなんだ、こういうふうにいまお考えでございましょうか。それならばそういうふうに承りますけれども、どうでしょうか、これは。
  33. 稻葉修

    稻葉国務大臣 総理の御答弁で尽きているとは思いますけれども、総理も言っておられるように、改憲論を持つこと、研究すること、それは閣僚であっても差し支えないけれども、現に私自身ももっと勉強して、あんなずさんな——ずさんと言っちゃ悪いけれども、まだ熟していない案、まだ熟していない大綱段階で、その自民党の支持している三木内閣内閣仕事として憲法改正に乗り出していくということは時期尚早であって、そんなことをやってもらってはかえって困る、こういう心持ちを持っておりますから、心持ちと、言っていることと、行っていることとが一致していないわけではないのです。
  34. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ここに自由民主党から出ておる「政策月報」というのがあるのですがね。四十七年七月号に「憲法改正大綱草案」というのがありますね。四十七年六月十六日、試案、これは「かねて憲法改正の必要とその方向について検討してきたが、去る六月十六日、自民党憲法調査会長稻葉修氏の名において、大綱草案を発表し、各会員ならびに新聞に対し発表が行なわれた。」こうありますね。それで参議院での質問の中に、あなたは自分考え方を明らかにすると言ってこの憲法改正大綱草案、これは十月六日になっているので、日にちはちょっと違いますけれども、これを出されましたよね。  そこでお聞きをするのですけれども、この中にいろいろ書いてあるのですが、「日本国憲法改正基本方針」その中に、日本憲法には「不備不合理な個所があり、わが国情に合致しないところが少なくない。」こうありますね。これはどういうところでしょうか。
  35. 稻葉修

    稻葉国務大臣 本来ならば、憲法国民の大切なものですから、国民の中にも、将来は改正した方がいいとか、いや改正しない方がいいとかいう議論があるのですから、その国民意思代表たる国会がそういう論議をして悪いということはないのですけれども、そうしてそれが本当に対話と協調で、静かに語り合えればそれは大いにやった方がいいと私は思うのですけれども、私、いまあなたの御質問に答える意味で、不備な点はどこか、ここだ、あそこだ、こういうことに入りますと、対話にならないで、対立の激化ということになるという経験を参議院で痛いほど味わいましたので、それはいまの国会情勢では国のためにならないような気がしましてね、これはいまの段階では答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。
  36. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 あなたの責任において党で発表したものですわね、これは。政府の一つの問題としても重要な問題だと私は思うのですよ。「不備不合理な個所があり、わが国情に合致しないところが少なくない。」これに対してはあなた、お答えにならない。(発言する者あり)
  37. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 御静粛にお願いいたします。
  38. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ちょっと待ってくださいね、後で聞きますからね、ずっと。それでは、「わが国および世界の進展にも即応し難いうらみがある。」重大なことですね。  対話と協調、できますよ。三木さん、私は決して事を荒立てたり言葉じりをとらえたりするつもりはございませんから、それでそれはお答え願いたいのですよ。私はそんなことはしません。  「わが国および世界の進展にも即応し難いうらみがある。」というのは、これは一体、法務大臣、どういうことでしょうか。
  39. 稻葉修

    稻葉国務大臣 私が自由民主党憲法調査会長時代に、自分の理論的ないろいろな考えを申し上げまして、憲法調査会の決定はいただきましたけれども、まだ自由民主党の政調会や総務会の議も経てない、党議になっていない、そういうものを持ち出されて、それに閣僚としてここでお答えを申し上げますことは、この際差し控えさせていただきたいと存じます。
  40. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは大臣、私は納得できないのです。なぜかと言いますと、いいですか、憲法改正しないという三木内閣ですよ、本当かうそかは別として。本当でしょうけれども、その三木内閣の下において総理と全く考え方の違う人が、それがしかも法務大臣として入ってきて、憲法に対していろいろな批判なり誹謗——あるいは見方によっては誹謗かもわかりませんよ。いいですか、そういうようなことを堂々とやって、書物までちゃんと書いているんでしょう。そこで、あなたと総理考え方が違い過ぎるんじゃないでしょうか。この違い過ぎるところを、私は国民の一人としてあなたに聞くのはこれは当然なことですよ。それでなくちゃ、あなた、私ども国民に対する責任が果たせないですよ。ここに書いてあるんだもの。あなたの名前で出ているんだもの。だから聞くのはあたりまえのことじゃないですか。当然ですよ、そんなことは。納得しませんよ。
  41. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私、しばしば言っておりますように、いろいろな改憲論を持つことは、これはもう議員として自由であります。議員ばかりでない、ほかの個人においても。しかし、この三木内閣閣僚として稻葉法務大臣が入閣をしておるのですから、その間はこれは当然にその内閣方針に従っていかなければならぬわけで、閣僚でない時代のいろいろ過去に研究したようなことを、この議場において法務大臣としていろいろそれに対して説明をいたしますことはこの場合遠慮させてもらいたいという法務大臣立場というものは、私はこれはよくわかるのです。いまやはり三木内閣法務大臣ですから、内閣方針を厳重に守る責任を持っておるわけであります。それが、過去の自由な立場で発言したことをいろいろ取り出されて、そしてこれに対して国務大臣としてお答えをすることは、これはやはりこの場合においては遠慮さしてもらいたいということは私はよく理解できるわけでございます。
  42. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 三木さん、大臣が過去において自由な立場で発言したことを私はとらえるのじゃないのです。これは法務大臣参議院質問の中で、私の考え方がこれこれ三つの中にあらわれているんだということであなたが言われて、それを資料として出しているんでしょう。その中で、何とか倶楽部での発言がありますよ。しかしそれは私はとりません。これは個人としての発言ですから私はとらないのです。それはきょうは持ってきません。私が持ってきているのは、あなたの責任において、自民党の機関誌にあなたの名前で発表されたというこの憲法改正大綱草案について私は聞いているんですよ。私もそれだけ配慮しているつもりなんですよ。これはあなた、重大な問題じゃないですか。三木総理と全く考えが違う。単に考えが違うだけじゃなくて、重要な、日本の国の根本的な問題について考えの違う人が、それが大臣として入っているということは私は理解できないんですよ。これはおかしいですよ。凍結なんかできるものじゃないですよ、内閣の大臣の間はということで。そんなことはありません。この現憲法は「わが国の進展にも即応し難いうらみがある。」と、あなたはそういうふうに発表しているのだから、文章で。これは、それじゃいま変えるつもりはありますか、変えるつもりはありませんか。
  43. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 稲葉法務大臣三木内閣に入閣して以来、私の方針に背いたことは一度もないし、また将来においてもこの方針に従って国務大臣として行動をするということを約束をしておりますので、三木内閣閣僚としての法務大臣という者がいろいろ過去においていろいろな考え方を述べた場合があっても、私はその点については今日信じておるということでございます。
  44. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私は納得しませんから、後でこれは理事会で十分協議していただきたい、こう思うのですが……。  もう一つあります。もう一つ重要な点、これは非常に重要な点なんですが、あなたの書かれたものの中に「天皇の地位の明確化」というのがあるんですね。「わが国の歴史と伝統にもとづき、天皇が国を代表することを明確にする。」と、こうある。  いいですか。そして、この「第二 憲法改正方向」の中の「天皇」のところに、「天皇の法的地位を明確にするため、天皇は国民統合の中心として、国を代表する旨を規定する。」と、こうありますね。あることは間違いありませんか。あることは間違いないんですか。
  45. 稻葉修

    稻葉国務大臣 それは、事実はそのとおりでございます。
  46. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 事実はそのとおりなら、その意味はどういう意味ですか。なぜ私聞くかと言いますと、これは前に聞いたことと違いますよ、ウエートが。憲法改正の限界の問題に関連してくる問題ですよ、これは。いいですか、考え方によっては憲法の否定であり、憲法の廃棄につながる可能性もありますよ。可能性と申し上げていますよ。だから私は特に聞くわけです。この点については明確にしてもらいたいと思います。
  47. 稻葉修

    稻葉国務大臣 三木内閣閣僚以前の、憲法調査会長という任務としていろいろなことを書いてあることの内容について、いまここでその趣旨を説明したり、あなたと質疑応答をここで繰り返しますことは、この際遠慮させていただきます。
  48. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私は納得しません。それじゃ大臣、もう一つ念を押しますよ、納得しないけれども。この憲法改正大綱草案、いわゆるあなたの試案と称されるものの考え方は、いまでもあなたの信念としては変わりございませんか。
  49. 稻葉修

    稻葉国務大臣 そういう内容に入りますとまた対話にならないんで、そういう点を私避けたいんです。いろいろ、いい機会ですから、私、実はもういろいろあなたのような専門家と話し合いたいんです。けれども、三木内閣閣僚として、そうしてこの内閣憲法改正しないということを約束しているんです。私もこれに渋々従っているんじゃないんです。いまの段階でそんなことをやってもらっちゃ困るという点では、三木総理大臣と私と食い違っていることは全然ありませんのですから、そういう意味答弁を差し控えさせていただきますと、心から申し上げている次第です。
  50. 横山利秋

    ○横山委員 関連質問。  法務大臣、あの参議院の決算や法務委員会で言及をした改憲の内容、これを衆議院で、都合が悪くなったから私は言いません、言えません、勘弁してください、それは通りません。いわんや本委員会は、あなたが法務大臣になって、当委員会であなたの憲法改正論議を私は承ったことがある。あのとき、あなたは胸を反らせて——後の私の質問に出てまいりますけれども、胸を反らせて、稻葉試案なり自由民主党の改憲案について得々としゃべっておいて、いまは都合が悪いからやめますとは、これは納得できません。あなたが自信を持って言うたことなら、いま情勢が悪いからというて、自由民主党の改憲案について、稻葉試案について言わないとはひきょうじゃないですか。人間としてひきょうじゃないですか。言いなさい。
  51. 稻葉修

    稻葉国務大臣 あの参議院決算委員会における私の発言の趣旨は、理論的に見解を質問に応じて答弁いたしましたのでありますが、それがあたかも改憲の政治姿勢——三木内閣閣僚として発言いたしますと、三木内閣全体が改憲しないと言っているのがうそだと、改憲の政治姿勢があるというように受け取られる、その誤解を招くおそれが非常にあります。そういう苦い経験に徴して、はなはだ遺憾でありますが、私としてははなはだ遺憾の意を表しますが、お答え申し上げられないことはこの際答弁を差し控えさせていただきたいというのが私の念願でございます。
  52. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまあなたが言われたその「苦い経験」というのは何……。
  53. 稻葉修

    稻葉国務大臣 私の念願は、国民代表機関でありますから、そうして言論の自由ということが最も尊重されるべき議会でありますから、最も国民の大事な憲法なんかの論議も、リラックスした形で自由に答弁できればいい、こう思ってやったことが、事志と違ってこういうことにもなりますので、そういうことを「苦い経験」と申しているのであります。
  54. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いま私がいろいろ質問したことは非常に重要なことなんですよ。重要なことで、考え方によってはこれは憲法の否定にもつながることになる可能性があるんですよ。(発言する者あり)応援団、黙っててよ。でありますから、私はいまの答弁には納得いたしません。その点について私は再度考え直していただきたいし、そういうふうに考える次第です。委員長の方でしかるべく諮っていただきたい、こう思います。
  55. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  56. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 速記を始めて。  稻葉法務大臣
  57. 稻葉修

    稻葉国務大臣 憲法の……(発言する者あり)
  58. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 静粛にお願いいたします。
  59. 稻葉修

    稻葉国務大臣 憲法の内容についていろいろ質疑応答をいたしますことは、三木内閣閣僚として憲法改正はしないという政治姿勢が崩れるのではないかという疑いを生ずるおそれがありますので、ですから、この際はひとつ答弁を差し控えさしていただきたい、こういうのが私の念願であります。
  60. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 非常に重要な問題ですから、これは憲法改正の限界の問題にも触れるんですよ。天皇の地位の明確化ということから問題が起きてきますよ。わかるでしょう。国民主権の否定にもつながる可能性がありますよ、場合によっては。いいですか。そうなってきたら大変な問題になりますよ。だからぼくは内容を聞いているわけですよ。内容を聞かなくちゃわからないから。元首という意味はどういう意味なのかとか、代表とはどういう意味なのかとか、これを聞かなければ、現憲法をあなたが否定しておるのかどうかということは全然わからないから聞いているのですよ。ぼくは対話と協調を守りますよ。決してわからないことを言わないつもりですよ。だから答えていただきたいと、こう思うのですよ。どうしても答えないと言うんなら私は納得しません。これに対する質問は保留いたします。いいですね。  そこで問題は、あなたが資料として、この中に自分考え方が出ていると言って配ったものがありますね。「第四回自主憲法制定国民大会挨拶」これはあなたですね。四十七年五月三日、武道館において。最初のところに「自主憲法の制定」云々と書いてあって、「「国会憲法調査の機関を設けて改正に進む。」ということを天下に公約したのでありますが、今日未だその実現をみないことは甚だ遺憾であります。」こう言っていますね。まずここのところはどういう意味ですか。
  61. 稻葉修

    稻葉国務大臣 私が自由民主党憲法調査会長という職務上、自由民主党の政綱に基づいて一生懸命に勉強してそういう資料を整えて、この綱領にこたえなきゃいかぬと思って一生懸命仕事をして、その段階ではそういうことだったのです。しかし、それは最終的な党議の決定を経ていないで、まだ熟していないのですから、そのことの内容に立ち至ってここで質疑応答に入りますことは、この際、自由民主党の支えている内閣である三木内閣としてはいま憲法改正はしないと言っているのですから、そのしない姿勢には私も慎重な態度賛成であると、こう従っているのですから、どうかひとつここでその内容に立ち至って論議を繰り返しますことは、この際差し控えさしていただきたいというのが私の念願であります。
  62. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 内容にわたっていまやっているのは一応おいて、今度はあなたが自主憲法制定国民大会であいさつした「「国会憲法調査の機関を設けて改正に進む。」ということを天下に公約したのだけれども、今日未だその実現をみないことは甚だ遺憾であります。」と、こうあなたがあいさつしているから、いまでもその気持ちにお変わりありませんかと、こう聞くのですよ。
  63. 稻葉修

    稻葉国務大臣 きわめて重要な問題であって、非常に時間をかけまして、そしてやりとりをできればいいのですけれども、こういう雰囲気の中でそれをやりますとまた対話と協調ということにならないで、対立の激化になるものですから、事志と違うものですから、そういう点でいまの段階ではひとつ答弁は差し控えさしていただきたいと、こう申し上げているのであって、いずれそういう機会が来ることを私は望んでおります。
  64. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ではもう一点お聞きしますが、このあいさつの中で、最後のところですが、第四の終わりの方ですね、「公害や交通禍の激増、暴力の横行など、日本社会に見られる物質文明と精神文化の不調和アンバランスは憲法にもその原因を宿していると思うのであります。」と、こう言っているのですね。(「そのとおり」と呼ぶ者あり)自民党の中からそのとおりという声が聞こえるのだけれども、公害や交通禍の激増、暴力の横行まで一体憲法に原因があるのですか。そういうふうにあなたお考えですか。どうでしょうか。これは非常に重要なことですね。これはお答え願いたいと思います。
  65. 稻葉修

    稻葉国務大臣 個人の基本的人権と公共の福祉との調和、そういう点に触れたのであろうと思いますけれども、いまそういう内容についていろいろ議論しますと時間がかかるのです。(稲葉(誠)委員「時間がかかってもいいですよ」と呼ぶ)そしてそれはもっと静かになった雰囲気でひとつやらしていただきまして、この際は遠慮さしていただきたい、こういうふうに思います。
  66. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私は、いま聞いていることは非常に重要なことを聞いているつもりです。これに対してあなたが答えないということについては、私は納得ができません。ですからここで委員長、暫時休憩して理事会を開いて、これに対してどう扱うかということを私はやっていただきたい、こういうふうに思います。
  67. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  68. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 速記を始めて。  稲葉誠一君。
  69. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 法務大臣、もう一つ別のことを聞きますよ。これは参議院決算委員会でやはり佐々木さんに答えているところですね。天皇制の問題について、「第一章の天皇制につきましては、現在の第一条でいいじゃないか。ただ、解釈として、国民統合の象徴、日本国の象徴ということは元首制が含まれているから、特に元首と書き改めなくてもいいじゃないかというのが私の主張でございます」こう言っていますね。いいですか。
  70. 稻葉修

    稻葉国務大臣 そういう事実はそのとおりです。
  71. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 日本国の象徴ということは元首制が含まれているのですか。そうあなたは理解されているわけですか。ここのところを御説明願いたい。これは本当に大きな問題ですよ。
  72. 稻葉修

    稻葉国務大臣 そういうことの意味、内容の説明をすべきなんですけれども、しなければ失礼なんですけれども、そういう内容に立ち入っていろいろ議論していきますと、まるで、三木内閣閣僚でありながらいろいろなことを言うて、内閣全体の改正しないという政治姿勢に疑惑を生ずるおそれがあるというふうに思いますので……。そういうふうに言われたので参議院で誠実にお答えしましたところが、何だ、三木内閣改正しないと言っているのに堂々と改憲論をぶちまくったとか、そういうふうに言われまして、事志と非常に違うものですから、もうこりごりしましたからね。そこで、まことに失礼なんですけれども、この際答弁を差し控えさせていただきたい、遠慮させていただきたい、こういうのが私の偽らざる気持ちなんです。
  73. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私は納得いたしません。  そこで、法務大臣、いまあなたが言われましたね、三木内閣の姿勢に疑惑を持たせるようなことになる、と。それはあなた自身、あなたが法務大臣としているからこそ、憲法改正しないという三木内閣の姿勢に疑惑を持たれるのじゃないですか。そういうことじゃないですか。いまあなたが言ったことを見ると、憲法についてのあなたの考え方をちっとも答弁しませんけれども、あなたが、そういう考え方を持っているあなたがいること自身三木内閣に疑惑を持たれるのですから、あなた自身の出処進退について、もう自分でお考えだと私は思いますけれども、それを明らかにしていただきたい、こう思うのですが。これは、あなたが答弁をされるならされても結構ですけれども、特に答弁を求めるわけではありませんが、されるならされても結構です。  いずれにしても、いまの質問に対してあなた方の答弁では私は納得いたしません。
  74. 稻葉修

    稻葉国務大臣 あなたが、いろいろなことに答えないでけしからぬとおっしゃることはよくわかるのです。それからあなたは、三木総理稻葉法務大臣はずいぶん考えが違うじゃないかと言うが、考えは違わないのです。三木内閣憲法改正しない。私はすべきでないと言った方がいいのか、いまは党議も熟していない、国民のそういう機運も熟してない、こういう段階にやれるものでもなし、やるべきものでもないという点において、こんなに一致している総理大臣と法務大臣はないと思うのですね。したがって、非常に命令に従わなかったり、従う意思がなかったりすれば、それはやめるという行動の方がいいかと思いますけれども、こうやって一致しているのですから、いまやめる意思は表明できません。
  75. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  76. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 速記を始めて。  稲葉君。
  77. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 総理大臣、いまお聞きのとおり、いろいろなことを聞いていますね、それに対して法務大臣は答えないでしょう。それはあなたが答えないように指示したわけですか。そこはどうなんですか。
  78. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は大臣の発言に対して、何らこれを私自身が指揮するようなことはいたしません。ただ、私は、稲葉君、横山君の御質問法務大臣答弁というものを聞いておりまして、とにかく三木内閣憲法改正をしない、こう言っているわけです。三木内閣国務大臣は現在の憲法を厳格に遵守する責任を負うわけですね。そういうことを承諾したればこそ入閣したわけですから、したがって、いま法務大臣は現行の憲法というものを守るということですから、それを、稻葉法務大臣三木内閣閣僚にならない前に憲法調査会会長としていろいろまとめられたその改正案、これもまだ自民党として政調会も総務会も通過してはいないのですから——自民党が党議として決めたということならば、これは私としてもいろいろ質問を受ける責任があるかもしれません、総裁として。まだそこまでいっていないその試案について、いろいろと内容について質問をされてそのお答えをいたしますことは、それは何も閣僚と違うのだ、憲法調査会会長だと、こういういわゆる個人閣僚の使い分けみたいな形でこれを使い分けるといっても、いまは国務大臣ですから、したがって、いかにも現在においても三木内閣方針と違って改正を推進しようという意見の持ち主であるというようにとられるおそれがありますので、だからこの場合、三木内閣国務大臣である限りは、憲法調査会会長としていろいろ発言したことを取り上げてお答えをすることは遠慮さしてもらいたいということは、私にはよくわかるわけです。また、いろいろ質問したいと、質問者から考えれば考えられることもわかりますけれども、しかしいまの立場として、稻葉法務大臣は正直な人ですけれども、しかし国務大臣という重さを考えなければいけない。これは重いものである。個人と使い分けるということは許されない。そういう点から、その重さの点から考えて、いたずらにそのことによっていろんな誤解を生ずることは好ましくないという判断で遠慮したいと言うのですから、両君におかれましても長い国会の御経験もあり、その点は御理解を願いたいと思うのでございます。
  79. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私は納得いたしません。時間があとあるのかないのか知りませんけれども、いずれにいたしましても私としてはいまの答弁では納得をしないということをつけ加えます。はっきりきしておきます。この点については、委員長なりあるいは理事会なりで、いずれにいたしましてもはっきりとした形で結末をつけていただきたい、こういうように思います。
  80. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  81. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 速記を始めて。  横山利秋君。
  82. 横山利秋

    ○横山委員 いま稲葉委員からの質問につきまして、総理自分がとめたわけではない、こうおっしゃいました。そうでありますと、稻葉法務大臣がみずからの判断で答弁を拒否しておる、こういうことに理解をいたしました。  法務大臣と申せば、国家を相手に争われる訴訟の当事者でございます。法務大臣が国を代表してそして訴訟を争う、こういう仕掛けになっております。その法務大臣憲法の解釈について答弁を拒否しておる。いわんや、私が先ほども申したのでありますが、あなたが法務大臣になられてから、憲法について私と論争をいたしましたことは二回に及んでおる。そしてまた参議院決算委員会参議院法務委員会においても憲法改正内容について触れられておる。しかし、いまに至って、もう憲法論争については勘弁してくれと、全くこの重要な審議に際して、最も根幹に触れる答弁を拒否なさる。  しかも、問題が二つあるわけであります。一つは憲法改正論についてであります。もう一つは憲法解釈論についてであります。憲法改正論は三木内閣の政策ではないから、その閣僚としては勘弁をしてくれという点を、百歩も万歩も譲って仮に理由ありといたしましても、憲法の解釈論について答弁を拒否するということは断じて許されません。あなたは法務大臣でございますよ。しかも、三木内閣総理大臣答弁を拒否せよと言っているわけではない。あなたがみずからの判断でやっておるわけであります。あなたも一個の政治家でありましょう。まさにあなたのここ数日の状況は朝令暮改ではありませんか。あしたには胸を張り、夕べにはこうべをたれ、そして、まあ推しはかって言うならば、まことに自分信念にもあるまじきことを言わざるを得ない。そういう朝令暮改を政治家として恥と思いませんか。あなたが憲法調査会長として真に是なりと信じ、この案がみずから会長として正しいと信ずるならば、それはそれ、これはこれでなぜ憶せず堂々とここで答弁をしませんか。自分はこういう考えであるけれども、いまの内閣としてはそれは満たされない、それを承知で入閣をしておる。これはこれなりに理屈はつくというものであります。なぜ堂々とあなたの信ずる憲法解釈論、それは単に実行論ではなくて改正論ではあろうにしても、なぜ答弁をなさらないか。いわんや第二の憲法解釈論、あなたは法務大臣として、自分の所管について常に憲法に従って仕事を執行しておるはずであります。その執行しておるあなたが、しかも参議院で言ったばかりのことについて答弁を拒否するでは法務大臣資格がありませんぞ。あなた、これを恥と思いませんか。この二点について改めて法務大臣としての御意見を伺いたい。
  83. 稻葉修

    稻葉国務大臣 憲法を遵守して法務行政をやる以上は、憲法の解釈がなければ遵守する法務行政をやれないわけですね。したがって、百歩譲ったら解釈論は差し支えないじゃないか、こう言われますが、改正論は、先ほども言いましたように、国務大臣として国会の場で改正論議に入りますことは、それが直ちに改憲の政治姿勢のごとく誤解されるおそれがありますから御勘弁願いたい、こう申した。解釈論は別だろう、こういうわけですが、解釈論については、私もどの程度の知識があるのかについては、決して自分の解釈が万全だなどと思う人はいないのですけれども、そういう点で内閣として解釈論に応対するのは、やはり最高権威は法制局長官でございますから、もし解釈論が聞きたいとおっしゃるなら、この際、私ではなく、法制局長官にお答えをいただいた方がいいと思います。
  84. 横山利秋

    ○横山委員 あなたが物議を起こして、その起こしたことについて他人をして答弁させる、全くひきょうじゃありませんか。  試みに聞きますが、十二月二十四日、私の質問に答えて、「そこで、憲法第三章全体について見まして、基本的人権の保障が、自由民主党憲法調査会の見解としては、根底に、公共の福祉という一般概念で国民の権利を制限する法律をつくっていきますことは、何が公共の福祉であるかの判断は結局国民が決定する。国民代表たる国会が決定する。国会が決定するということになると、多数決になっておりますから、多数党が公共の福祉の概念を決定していく。」これはあなたの答弁ですよ。いまもこの答弁に変わりはありませんか。
  85. 稻葉修

    稻葉国務大臣 公共の福祉という制限を各基本的人権は憲法上受けるわけですから、何が公共の福祉かということは、結局は法律で決めるということにいままでもなってきました。それでそのとおりでございます。したがって、それは多数決で法律で決まる、そして制限が行われるということになろうかと思います。
  86. 横山利秋

    ○横山委員 法制局長官に、公共の福祉の概念は多数党が決めるという概念でよろしいかどうか、伺います。
  87. 吉國一郎

    吉國政府委員 ただいま稻葉法務大臣答弁をされましたのは、基本的人権について憲法上公共の福祉によって制限される場合があり得る、これは最高裁でも一般論としては認められておるところでございますが、その制限を行うについては法律の定めを要することは申すまでもございません。そうすると、その法律を制定するについては、国会が衆議院及び参議院において多数をもって可決したときに法律になるということは憲法の規定でございまするので、その意味国会において法律をもって規定する手続について言及されたものでございまして、何らその間において間然するところはない。多数党が決めるという表現は、多数党——国会の議決が比較多数によって決せられるという意味において使われたものであると存じますので、何ら問題はないと存じます。
  88. 横山利秋

    ○横山委員 問題をそらしてはいけませんよ。あなたもいま言葉が少したじろいだように、手続論を言っているのじゃないのですよ。公共の福祉の概念というものが、一党独裁で、多数党の勝手になる、こういう論理なんですよ。多数党の勝手に行い得ることになるから憲法改正の必要があるというところに問題が発展をしておるのです。つまり、稻葉法務大臣は、公共の福祉の概念について多数党が勝手な解釈がし得るからという問題意識を持っておるわけです。公共の福祉の概念というものが本来どういうものであるか、改めてあなたに聞きたいと思います。
  89. 吉國一郎

    吉國政府委員 憲法において基本的人権が厳粛に尊重さるべきものであるということを規定されておることは申すまでもございません。ただ、基本的人権といえども、日本国民を構成する各人相互間においてこれが衝突する場合があり得ることはまたおわかりのことでございましょう。その調整の原理としていわば公共の福祉というものが存在するわけでございまして、一般的に基本的人権について公共の福祉というものがどういうものであるかと言えば、日本国民の総体の利益というようなものを勘案して抽象的に申すよりほかございませんで、基本的人権の個々の権利によって、これを制限し得る公共の福祉の概念はおのずから変わってまいらなければならないということでございます。
  90. 横山利秋

    ○横山委員 少なくとも、公共の福祉の概念が多数党の勝手な解釈によって、多数党によって決まる、多数党が公共の福祉の概念を決定していくという憲法解釈を稻葉法務大臣が持っておる。その概念が憲法改正につながっていく。私どもがいま問題にしておりますのは、改正論そのものと、それから憲法解釈とが常につながり合っておるということなんであります。その点は総理大臣もよくこの一、二の例を考えて物を言ってもらわなければなりません。憲法改正論は現実の問題と何ら無縁なものではないのであります。現実の憲法、いまの憲法の解釈がこうであるから、こう考えるから憲法改正論が生まれてくる、こういうことなんでありますから、これはしゃべるな、これはしゃべるな、ないしはしゃべってもいいという区分した論理というものはあり得ませんから、そのつもりでもう一つの質問を続けます。  憲法調査会報告書付属文書第一号「憲法調査会における各委員の意見」の中の「稻葉修委員の意見」  「非常事態 憲法上明記すべきである。外国では、緊急事態・非常事態に関して憲法で規定するのが普通であるから、それらの立法例を参考にして、近代民主国家で普通行われている程度のことを採用すべきである。現行憲法の下でも緊急事態・非常事態の措置がとれないことはないが、しかし、憲法に明記しないと緊急事態の発生の場合に、これらの措置が憲法違反とか独裁的とかいう非難の口実を与え、内乱をさらに助長する原因になりかねない。また緊急事態の名の下に行き過ぎが行なわれる点も生ずるから、憲法にこれを防ぐための明文が必要であろう。」  これが稻葉修委員の、非常事態に関する憲法調査会の付属文書に載っておる言葉であります。この問題について法務大臣の稻葉さんの説明を願いたい。説明を要することは、「現行憲法の下でも緊急事態・非常事態の措置がとれないことはないが、」とは、どういう方法でとるつもりであるか。「しかし、憲法に明記しないと」困るということは、なぜ困るか。憲法に明記するとなると、どういうことを明記するつもりであるか、それをお答え願いたい。
  91. 稻葉修

    稻葉国務大臣 いまお読みになった私の発言は、昭和三十二年に憲法調査会法という法律に基づいて内閣に設置された憲法調査会委員として述べましたことでございます。それで、その内容につきまして、いま国務大臣としてここで、当時の一委員として述べましたことを繰り返し論議いたしますことは、どうも改憲の政治姿勢内閣閣僚として持っているという誤解を生じますので、先ほどから、そういうことについての御論議はひとつこの際御勘弁を願いたい、こう申しているのであります。
  92. 横山利秋

    ○横山委員 「現行憲法の下でも緊急事態・非常事態の措置がとれないことはないが、」というのは憲法解釈論の問題であります。改正論の問題ではありません。  越えて昭和四十七年七月、自由民主党憲法改正大綱草案「第五章 内閣」に、「内閣に緊急状態における特別の立法及び財政措置の権限を付与する規定を設ける。」とあります。あなたが憲法調査会長のころでありますが、この内容についての説明を求めます。——法務大臣答弁を要求しています。
  93. 稲葉誠一

    稲葉国務大臣 それは私の自由民主党憲法調査会長時代の書き物をお読みになったわけでありますが、それは先ほども申しましたとおり、まだ熟しておらない、党議にもなっていない、そういう性質のものでございますから、そういう文書の文言で私が改正の点についての論議をいたしますことは改憲の政治姿勢と疑われるから御遠慮させていただきたい、こう申し上げているのでありますが、解釈論につきましては法制局長官からお答えさせていただきます。
  94. 横山利秋

    ○横山委員 納得できません。先ほど言いました大前提として、法務大臣が、個人稻葉修であろうとも、政治家稻葉修として、また公的に憲法調査会長として立案し、自由民主党憲法調査会として四十七年十月六日、内外に発表されておる文書であります。その文書の中で、「内閣に緊急状態における特別の立法及び財政措置の権限を付与する規定を設ける。」その規定を設ける原因として、あなたが憲法調査会において、「現行憲法の下でも緊急事態・非常事態の措置がとれないことはないが、」という憲法解釈を持っていられることに私は疑問を持つのであります。だから、法制局長官の意見ではない。あなたがどうしてこういう考えを持っておられるかということなんであります。あなたの答弁を要求しておるのです。
  95. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 法制局長官
  96. 横山利秋

    ○横山委員 私は法制局長官答弁を要求しておりません。  それでは総理大臣に伺います。総理大臣、きのう参議院におきまして自主憲法制定国民会議が緊急治安立法を運動方針に掲げておったという質問がございました。そのときにあなたは傍らの稻葉法務大臣にどうだという雰囲気で聞かれて、稻葉さんが何か言われたらしい。あなたは答弁として、「そのようなことは稻葉君も、いまここで聞いたわけでありますが、反対でございますから、どうぞひとつそのように御了承を願います」こう言ってきのう答弁なさいましたね、あなたは。なさいましたね。私もちゃんと聞いておりましたよ。ところが、そういうあなたの答弁にかかわらず、稻葉法務大臣は現行憲法においても治安立法はとれるという論者ですよ。それはちゃんとここにあるじゃありませんか。憲法調査会という堂々たるところであなたが述べておる。現行憲法のもとでも緊急事態、非常事態の措置がとれると言っている。そうして自主憲法制定国民会議は緊急治安立法を運動方針として掲げた。それに対してあなたは参議院において、「稻葉君に聞いたところ、稻葉君もそれに反対だと言っておるからどうぞ御安心を願います」とあなたは答えました。きのうのあなたの答弁は間違っているじゃありませんか。インチキじゃありませんか。何をあなた稻葉さんに聞いて答えたのですか。稻葉さんは、法務大臣は、現憲法下においても治安立法ができる、緊急事態、非常事態の措置がとれる、こういう論者でありますから、自主憲法制定国民会議運動方針に背馳する人ではないじゃありませんか。参議院答弁は何ですか、あれは。
  97. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そういう御質問がありまして、自主憲法の制定推進国民会議ですか、その内容については私はよく存じておりませんので、そういうことがあるのかということを聞いたら、そういうことでは自分賛成していないのだと言ったことは事実でございますが、そういう問題について、憲法の解釈論について、横山議員は法制局長官が答えることを非常に拒否なさるけれども、重要な問題ですから、法制局長官が答えることが適当だと思うときには、やはり答弁をする機会を与えてもらいたいと思います。
  98. 横山利秋

    ○横山委員 問題をそらしては困ります。いま私があなたと稻葉さんに質問していることは重要なことが二つある。あなたは、きのう答弁したことが間違っていますよ、お認めになりますかということが一つですよ。あなたがきのう稻葉さんを顧みて、自主憲法制定国民会議が緊急治安立法を計画しておるということについて「反対を稻葉もしておりますから」ということをおっしゃった。ところがその稻葉さんは、現憲法下においても緊急事態、非常事態の措置がとれるという憲法解釈論者ではないかと言うのです。その点についてあなたの答弁は間違っているではないか。  それから稻葉さんは、この非常事態について憲法調査会自分の言った意見、憲法調査会長として自分責任を持ったこの意見について、改めて私の質問に答えるのか答えないのか、はっきりしてもらいたい。
  99. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは間違っているというわけではないでしょう。私が稻葉法務大臣に聞いて、その答えを答えたまででございますから、間違っておる答弁はしてないわけでございます。
  100. 稻葉修

    稻葉国務大臣 参議院三木総理大臣に対し、あの自主憲法制定国民会議の内容をお聞きになるものですからね。「内容全体についてどういう国民会議なんだかおまえ知っているのか」と総理大臣に聞かれたら、「知らない」とおっしゃる。そうしたら説明されて、ああいうこともやっている、こういうこともやっている、こうやって言われるから、「そんなことをやっているのか」と私にお聞きになるものだから、「そういうことについては非常にわれわれの考えていることと違っていることでございまして、それは私なんかも反対なんです」と、こうお答えしたので、その部分だけをあなたおとりになるから、治安対策とか治安立法とか、そういう点だけをおとりになるから、私の憲法調査会長時代に申したことと矛盾することになるというふうに仰せになるのでしょうけれども、それは三木総理大臣に、「あの自主憲法制定国民会議大会で言っているいろいろなことは、全体としてああいう方向にわれわれの考え自民党憲法調査会憲法改正意見もいっているのではありませんから、私も反対なんですから」こういうことで「稻葉君も反対だと言っております」という御答弁になったと思います。
  101. 横山利秋

    ○横山委員 これはまことに遁辞であります。問題に当たって誠実な答えではありません。私もそばで質問を聞いておりましたが、あの質問の主要な焦点は言うまでもなく緊急治安立法でありました。それを、総理大臣があなたを顧みて、あなたが、「総理大臣、こうです」と言う。総理大臣が、「稻葉君も反対のようでございますから御心配要りません」と、こう答えた。しかし、いまあなたがそれをはぐらかしてあいまいにするならば、もう一遍聞きます。  この稻葉試案及び憲法調査会、さらに自由民主党憲法調査会、一貫して流れております、現憲法のもとでも緊急事態、非常事態の措置がとれるというのは、どういう条項であなたは考えておるか、これが第一。第二番目は、憲法に明記しないとなぜ困るか。第三番目に、憲法で書くとしたらどんなことを考えておるのか。あなたに聞きたい、あなたに。
  102. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 吉國法制局長官
  103. 横山利秋

    ○横山委員 委員長、なぜそういうことを発言なさるのですか。
  104. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 答弁を求めております。
  105. 横山利秋

    ○横山委員 私は稻葉法務大臣に聞きたいと言っているのです。答弁稻葉法務大臣にお聞きしているのです。
  106. 稻葉修

    稻葉国務大臣 それは、内閣憲法調査会委員としてそういう発言をいたしましたのをあなたいまお読みになっておられますが、そういう現在の憲法のもとでも、非常事態においては国民の権利、自由、基本権の制限ができるというのは、まあ立法がなくてもできるわいというように聞こえるかもしれませんけれども、非常事態になってえらいときに、権利、自由の保障があるというて何にも処置できないということでもあるまい。しかし、やはりその根拠規定があった方がいいという考えを当時述べております。しかし、いまここでそういうことについて、それは現憲法のどこの条文に基づいてどういう解釈をしているんだということについての返答は、やはり、いま私は内閣の一員でございますから、そして内閣全体の憲法解釈の意見はやはり法制局長官答弁させた方が正確ではないか、こういうように思いますので、法制局長官から答弁させていただきます。
  107. 吉國一郎

    吉國政府委員 現行憲法のもとにおいて非常時立法ができるかというお尋ねでございますが、非常時立法というものにつきまして、もともとこれは法令上の用語ではございませんから明確な定義があるわけではございませんけれども、まあわが国に大規模な災害が起こった、あるいは外国から侵略を受けた、あるいは大規模な擾乱が起こった、経済上の重要な混乱が起こったというような、非常な事態に対応いたしますための法制として考えますと、それはあくまでも憲法に規定しております公共の福祉を確保する必要上の合理的な範囲内におきまして、国民の権利を制限したり、特定の義務を課したり、また場合によりましては個々の臨機の措置を、具体的な条件のもとに法律から授権をいたしまして、あるいは政令によりあるいは省令によって行政府の処断にゆだねるというようなことは現行憲法のもとにおいても考えられることでございまして、現に一昨年の十一月に国会で非常に多大の御労苦を願いまして御審議いただきました国民生活安定緊急措置法というものがございます。これはその当時の緊急経済事態に対応いたしまして諸般の措置を定めたものでございますが、その中には、割り当てまたは配給につきまして全面的に政令以下に権限をゆだねていただいておるような法令もございます。これも、一定の限られた範囲ではございますけれども非常時立法の一例でございましょうし、また古くは、災害対策基本法の中で、非常災害が起こりました場合に、財政上、金融上の相当思い切った措置を講じ得るようになっておりますが、これもそのたびごとに政令をもって具体的な内容を規定いたすことになっております。  このように、現憲法のもとにおきましても特定の条件のもとにおいてはこのような立法ができることは、すでに現在先例を見ていることから言っても明らかでございまして、いわゆる非常時立法と申すものにつきまして、一定の範囲内においてこれを制定することができることは申すまでもないと思います。もちろん、旧憲法において認められておりましたような戒厳の制度でございますとか、あるいは非常大権の制度というようなものがとれないことは当然のことでございますし、また、現段階において全面的な広範な非常時立法を考えているというような事態はございませんことを申し上げておきます。
  108. 横山利秋

    ○横山委員 ここの項目は「非常事態」という項目なんですよ。この「稻葉修委員の意見」の第十三項、「非常事態」として、「憲法上明記すべきである。」ということなんですよ。いま法制局長官の話のようなことが果たして非常事態と言えるかどうか疑問を生ずるわけでありますが、「非常事態」の中で、「現行憲法の下でも緊急事態・非常事態の措置がとれないことはないが、」ということなんであります。このことは一体どういうことを考えておるのか。稻葉法務大臣は何か自分答弁をはぐらかしておるようでありますが、あなたが憲法調査会会長として、この「現行憲法の下でも緊急事態・非常事態の措置がとれないことはないが、」ということが、はっきり自分答弁できないようなことでもありますまい。もう一回、この現行憲法のもとでも緊急事態、非常事態の措置がとれるというあなたの論拠を法務大臣として聞かしてもらいたい。
  109. 稻葉修

    稻葉国務大臣 非常事態に政府が、現憲法において厳密に基本的人権を保障する規定があるから何にもやれないのだ、手をこまねいて、もう国民の幸福を守る措置を、憲法に基本的人権を保障してあるからできないのだというものでもあるまい。やはり国民の幸福のために措置はしなければいかぬのだろう。しかし、そういうことは憲法違反であるとかいろいろな議論を生ずるから、あらかじめそういう事態には憲法違反にならないように、国民の幸福を守る措置が憲法違反にならないように用意をしておく方がいいのではないかという意味であったのであります。
  110. 横山利秋

    ○横山委員 法務大臣にこの際改めて聞きますけれども、あなたは、私どもが最初質問をしたときには、この問題について中身に入ることについては避けたいというお話でございましたが、いま中身に入ってまいりました。差し支えないのですね。このまま続けてもよろしいのですね。
  111. 稻葉修

    稻葉国務大臣 憲法調査会長時代に出ている、まだ党議になっていない、そういう未熟なものにつきまして、私が憲法調査会長であったからという理由で、いま国務大臣として、それを引き合いに出されていろいろ論議しますと、三木内閣憲法改正しないという政治姿勢疑いを生ずるようなおそれがありますので、国務大臣としてこの場で改正論議の応答をいたしますことは遠慮させていただきたい、こう思うのでございます。
  112. 横山利秋

    ○横山委員 遠慮させていただきたいと言ったって、もう中身に入っておるわけですから、いまさらどうにもならぬですよ。いまさらどうにもなりませんから、その点をひとつはっきりしてもらいたいと思います。  そこで、今度は国連の普遍的集団安全保障機構に依存をするという問題でありますが、この集団保障は……。ちょっと待ってください。——  大変恐縮でございますが、ちょっと気分が悪いものですからしばらく休憩させていただきます。
  113. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  114. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 速記を始めて。  諫山博君。
  115. 諫山博

    諫山委員 三木総理はしばしば憲法改正をしないということを言明されています。これは三木内閣のいろいろな政策、方針の中で最も基本的な政策、基本的な方針と聞いていいでしょうか。三木総理、いかがですか。
  116. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 憲法は国の基本法でありますから憲法改正考えるか考えないかということは非常に内閣の基本に関することであることは申すまでもございません。
  117. 諫山博

    諫山委員 三木内閣憲法改正しないというのは、憲法改正の準備もしないことだということをきのう言明されました。これは同時に、憲法改正運動を励ますようなこともしないという意味に聞いていいでしょうか。
  118. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 内閣国民運動に対してこれを制限を加えることはできません。三木内閣閣僚としてそういうことはしないということでございます。
  119. 諫山博

    諫山委員 三木内閣閣僚としては改憲運動を励ますようなこともしてはいけない、こういうことですね。答えてください。
  120. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そのとおりです。
  121. 諫山博

    諫山委員 きのうわが党の橋本委員参議院で明らかにしたように、自主憲法制定国民会議は、五月三日の総会で強烈な運動を展開することを決めています。運動の方法は、宣伝カーを買い入れて全国で宣伝活動を繰り広げる、緊急状態下における治安立法の請願署名運動を開始する、こういう具体的な行動であります。つまり、自主憲法制定国民会議が、単に調査研究を目的とした団体ではなくて、改憲を目指す運動の団体であるということは三木総理も現在ではわかっておられましょうか。
  122. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 憲法改正を推進する団体であると承知しております。
  123. 諫山博

    諫山委員 国民会議運動を推進する団体だということは認められました。  それでは五月三日の集会がどういう性格のものであったかということが次の問題です。これは単に調査研究を目的とした集会ではなくて、改憲運動を進めるための集会であったことはもう御理解できたでしょうか。
  124. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 参議院のいろいろの昨日の質問を通じて、その内容というものも承知いたしました。
  125. 諫山博

    諫山委員 そうすると、私が指摘したような運動を進めるための集会であったこともわかりましたか。
  126. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 その内容について私が調査したことはございませんが、参議院における法務委員会質問を通じて、大体どういうことを考えておる団体であるかということは理解をすることができました。
  127. 諫山博

    諫山委員 団体のことはすでに確認を得ております。問題は、五月三日の集会運動を進めるための集会であったことが現在ではわかっているかということです。
  128. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 わかっております。
  129. 諫山博

    諫山委員 こういう運動の団体であり、運動を推進するための集会であったということを、三木総理はいつ知りましたか。
  130. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私はきのう参議院法務委員会を通じて、いろいろその内容——共産党から写真まで私に見せていただいて、そして内容について大体どういうものかということをよく承知することができました。
  131. 諫山博

    諫山委員 五月三日以来、この問題がこれだけ世間で問題になっているのに、きのうわが党の橋本委員から具体的な事実を指摘されるまでは、どういう団体であったのか、法務大臣がどういう性質の集会に参加していたのか、全く調べもしなかった、わかってもいなかった。これでは余りにも無責任過ぎはしませんか。法務大臣責任が問題になっているのに、どういう集会に参加したかも知らないまま統一見解を出す、これは軽率過ぎるんじゃないでしょうか。
  132. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 最初に申しましたように、大体どういう団体であるかということは私承知しておるのですよ。しかし、その当日のいろいろ細かいことについては、法務委員会のいろいろ質疑を通じてさらに私のその会に対する理解を深めることができたわけであります。
  133. 諫山博

    諫山委員 五月三日の集会が決定した国民会議運動方針の中に、緊急状態下における治安立法実現の請願活動、これがあることはいま指摘されたとおりです。そしてこれが憲法改正大綱草案の中にも出てきます。いま法制局長官は、インフレの場合にどうだとか、災害基本法の場合にどうというような説明をしておりますが、ここで問題になっているのはそういうことではないわけです。緊急状態のときには立法権と財政措置の権限を国会から取り上げる、そして内閣に移す。まさにこれは戦前の非常大権の制度を目指しているわけです。具体的には、緊急状態下においては国会に諮らずに法律をつくることができる、予算も決めることができる、税金も徴収することができる、こういう方向を目指して運動を進めているのが五月三日の集会なんです。  そこで三木総理にお聞きしますが、三木内閣閣僚がこういう反動的な憲法改悪運動に参加することを是認されますか。
  134. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 しばしば私が繰り返して答弁して恐縮でございますが、私の考え方はそういう考えであるから繰り返さざるを得ないわけでありますが、稻葉法務大臣は従来ともこの会合には出席をしておったわけであります。今回も個人資格出席をされたということで、そういう点でいろいろ自動車まで配慮して、主観的にはそういう意図のもとに出席をされたことは事実でございます。しかし、本人とすれば個人閣僚というものと使い分けたつもりであっても、やはり閣僚という重みから見れば、世間にはそうは受け取られない、こういう点があるわけでございましたので、稻葉法務大臣自身が昨日の参議院法務委員会においても、自分のしたことはやはり軽率であった、三木内閣国務大臣としては軽率であった、配慮が足りなかったという言葉を使ったと思いますが、今後、いやしくもそういう三木内閣閣僚として、憲法改正せずという方針のもとにある三木内閣閣僚として、そういう疑いを世間に持たすような行動は厳に慎んでまいりたい、深く反省をしているという衷情を披瀝しての御発言があったわけでございます。私もその稻葉法務大臣の誓約を信じて、今後の行動はそのようなことが実際の言動にあらわれることを期待をいたしておる次第でございます。
  135. 諫山博

    諫山委員 稻葉法務大臣出席問題についてはもっとあとで触れます。その前に、三木内閣閣僚が改憲運動を進める団体に加入することも三木内閣基本方針から見て正しくないと思いますが、いかがですか。
  136. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろいろ改憲という考え方を持ったり、国民運動をしたりすることは自由であります。しかし、三木内閣閣僚という間は、どうも使い分けたつもりでも、世間に映るものは閣僚という地位の重さからそうは受け取らない。したがって、今後は言動に対していやしくも誤解を受けるようなことのないように、私からも注意をいたしていく次第でございます。
  137. 諫山博

    諫山委員 私の質問はもっと具体的です。  総理、私語をやめて私の質問を聞きなさい。総理、不謹慎じゃないですか。  私が質問したのは、改憲運動を進める団体に閣僚が加入していいかという質問です。具体的に答えてください。総理法務大臣と相談しないと結論が出ませんか。
  138. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろんな団体があるわけでありますから、その団体に加入するということについては本人の自由でありましょう。しかし、国務大臣という立場から、憲法改正しないというこういう方針に背くような、そういうふうなことを現実に推進するようなことに対しては、これはもう遠慮してもらうことは当然でございますが、会員になるということについては、これはやはりいろんな会に入会することは自由だ。その中にあって憲法改正を推進しているということになれば、これは内閣方針と違うわけでありますから、そういうことはむろんしないようにしてもらう。
  139. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 法務大臣
  140. 諫山博

    諫山委員 私は総理大臣に聞いています。まだ一般的な話です。いずれたっぷり聞かしていただきます。  私が聞こうとしているのは、一般的な調査研究団体ではなくて——ちょっと時間をとめてください。総理、私の質問を聞いて答えていただきたいと思います。これはほかの人の意見を聞かないと結論が出ない問題ではないはずです。——時間を進めてください。  私が聞いているのは、調査研究団体ではなくて、改憲運動を進める団体に閣僚が加入していいかという問題です。
  141. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 閣僚が、改憲を推進するという、そういう団体に加入することはよくないと思います。
  142. 諫山博

    諫山委員 総理は、自主憲法制定国民会議が改憲運動を推進する団体であることを認めました。そうすると、三木内閣閣僚がこの団体に加入していることは三木内閣基本方針に反する、こう聞いていいですか。
  143. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 法務大臣
  144. 諫山博

    諫山委員 総理に聞いています。総理質問しております。
  145. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 あとで総理に答えてもらいます。
  146. 諫山博

    諫山委員 総理質問しております。これは内閣基本方針の問題です。総理に答えさしてください。
  147. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 じゃあ、お座りください。(発言する者あり)御静粛にお願いいたします。  三木内閣総理大臣
  148. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 自民党の中に自主憲法期成議員同盟というものがあるわけですね。その議員同盟が自動的に自主憲法制定国民会議の中の会員になっておるわけでございますが、閣僚である間は自主憲法制定国民会議の会合などには出席をいたさせないようにいたします。
  149. 諫山博

    諫山委員 答弁をすりかえているでしょう。私は集会に参加するかどうかを聞いているのではなくて、自主憲法制定国民会議に加入できるのかと聞いているのです。たくさんの閣僚が加入しているはずだけれども、これは三木内閣基本方針に反しないかと聞いているのです。
  150. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは団体の自動的加入のことになっておりますので、この点は誤解を生じないような措置をとることにいたします。
  151. 諫山博

    諫山委員 誤解を生じないような措置をとるというのは、加入しているのは三木内閣基本方針に反する、だからそれを是正する措置をとるという意味ですか。
  152. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 三木内閣憲法改正せずという方針ですから、その方針疑いを差しはさむような誤解を与えるような、そういうことに対して疑いを差しはさむような誤解を生じせしめないような処置をとることを検討いたします。
  153. 諫山博

    諫山委員 私の質問はもっと具体的なんです。私が聞いたところでは、閣僚の中で、三木さんは入ってない、井出さんも入ってないらしい、文部大臣も入ってないらしい。しかし恐らく大部分の閣僚はこれに入っているんじゃないかという状態だと聞いております。これは三木内閣基本方針に反する、だからやめさせる、こういう措置をとりますか。
  154. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま申したように、加入というのは、自動的に自民党の団体が加入になっているわけですから、したがって、私が言っておるのは、そういう憲法改正せずという三木内閣方針誤解を生じさせないような処置をとりたいと申しておるのでありまして、団体のことでございますから、私がそういう処置をとるということで御承知を願いたい。
  155. 諫山博

    諫山委員 将来そういう措置をとるというのは、入っているのは基本方針に反するからと聞いていいですか。これは子供にもわかるようなだめ押しです。
  156. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これはやはりどういう処置をとるかということは私にお任せを願いたい。しかし私が言っておることは、三木内閣憲法改正をせずと言っているのですから、それを積極的に推進するような、三木内閣閣僚である限り、そういう印象を与えるような行動がないような処置をとりたいと申しておるわけでございます。団体でありますから、そういうことでいろいろどういう処置をとるかということは研究をいたさなければなりませんが、私がここで言っておることは、三木内閣方針に何かこう疑いを差しはさむような、そういう誤解を生じせしめないような処置をとりたいということを申しておるわけでございます。
  157. 諫山博

    諫山委員 だれがこの団体に入っているのか。これは閣僚のことです。そしてどういう措置をとるのか、とったのか、改めて委員会の方に報告していただきたいと思いますが、そういう計らいをしていただけますか。
  158. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 理事会に諮ってこれは御報告申し上げます。
  159. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは何らかの方法で、どういう処置をとるかということは、これは私からそういう方針が決まれば申し上げて結構でございます。
  160. 諫山博

    諫山委員 同時に、閣僚のうちのだれが入っているかということも報告を求めてください。委員長、いいですか。
  161. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 諫山君の要求は、後で理事会に諮って御報告申し上げます。
  162. 諫山博

    諫山委員 そうだとすれば、政府の建物とか公の営造物が改憲を目的とした運動団体に使用されてはいけないと思いますが、いかがでしょう。
  163. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 吉國法制局長官
  164. 諫山博

    諫山委員 総理大臣に質問しております。これは総理政治姿勢の問題として聞いています。法律論を聞くのではありません。委員長、私は法律論をやろうとは思いません。
  165. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 先にちゃんと答弁者の名前を言っていただかないと困ります。
  166. 諫山博

    諫山委員 では総理質問いたします。
  167. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 どういう具体的な例をとって御質問になっておるか知りませんが、集会というものは自由でありますから、だから集会に対していろんな制限を加えるということは、これはやはり重大なことでありますから、そのことが政府考えてそれは適当でないというような場合はあるでしょうけれども、普通の場合は、そういう集会などがあった場合に、それを貸してはいけぬということについては、これはどうも余りそこまで、貸してはいけぬということもいかがかと考えるわけでございます。具体的にいろいろこういう例があったというようなことで御質問があればでありますが、一般論としては、全部いかないのだ、そういうふうなことを断定をすることは、どうも余りにも独断に過ぎるのではないかという気がいたします。
  168. 諫山博

    諫山委員 五月三日の集会で配られた資料の中に、自主憲法制定国民会議の参加団体の名前が列挙されております。七十八団体だそうです。この中には国際勝共連合とか全貌社などというような、だれが見ても右翼団体と見られるものがたくさんあります。右翼事典の中に名前を連ねている団体が約三分の一です。この中に自衛隊友の会というのがあります。事務所は防衛庁内です。国鉄新職員組合というのがあります。場所は国鉄徳島駅長室です。こういうことが許されますか。
  169. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いまここで私も初めて知ったわけですが、いろいろ具体的例をとらえてあなたが一方的にそうやって御報告されるわけですから、そういうことについては、私どもでよく事実を調べてみてお答えをするよりほかにはないわけでございます。
  170. 諫山博

    諫山委員 これは調べてないとすれば無責任です。私の質問は、五月三日の集会で配られた資料に書かれている内容で聞いているのです。あなたが本気でこの問題を考えているなら、当然見ておかなければならないはずです。あなたたちは私たちの質問に対して、想定問答集までつくったというのでしょう。こういうことさえ調べてなかったというのは、当日の集会の性格にいかに無関心であったかということを白状していると思います。いま見ていただいても、明らかにこれが書かれているわけです。資料がそこにあるでしょう。なければお見せします。書かれている事実に対して、これは三木内閣基本方針から見て是認されるかどうか、お答えください。
  171. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 その具体的例をとって、これをどう思うか、ここで即答せよということは、これは無理だと思う。私がそれに対して事実関係をよく調べてみて、そして調べた後においてお答えをするということは当然のことだと思う。いろいろ具体的な事実をいまこの場で出して、どうだということは、これはやはり政府としてよく事実を調査してみてお答えをするという周到さが要ることは当然でございます。
  172. 諫山博

    諫山委員 この問題は私のこれからの議論の展開の前提ですが、いますぐ調査できることですから、調査して、総理だけでは結論が出せないなら、みんなで相談して、改めて答えていただきたいと思います。そう計らってください。私が最初に一般的に聞いたら、具体的に出してくれと言う。具体的に二つの団体を出したら、もっと一般的に言ってくれ、全く無責任ですよ。一般的に言うなら、改憲運動を目的としている団体が政府の建物などを使っていいのか、これは三木内閣基本方針に反しないのか、こういうことです。
  173. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 法制局長官
  174. 諫山博

    諫山委員 委員長三木総理に聞いております。三木総理に答えさしてください。
  175. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは法律問題でもあるわけですから、法制局長官からお答えをいたさせます。
  176. 吉國一郎

    吉國政府委員 現在、憲法におきまして、集会、結社の自由は厳然と認められているところでございまして、そのような団体の活動に対して政府が公平に取り扱わなければならないことは当然でございます。その団体の目的いかんにかかわらず、その団体が公の施設を使うことについて、一般に利用を許されているものについて一般と同じ条件によってこの利用を許すことは何ら問題はないところでございます。  なお、国有財産法によりまして、行政財産につきましても普通財産につきましても、これを私人に貸し付けることが一定の範囲においては認められておりまするので、一般の団体と同じような条件のもとにおいて、そのような団体に対して国有財産なりあるいは地方公共団体の財産を仮に使用を許すことがあったとしても、一般の団体と同じような条件でございまするならば問題はございません。
  177. 諫山博

    諫山委員 三木総理に聞きます。私は法律解釈を聞いているんじゃないんです。何回も繰り返しているように、そういうやり方は三木内閣基本方針に反しないかと聞いているんです。私が一番最初に取り上げたのは、憲法改正しないというのはあれこれの政策の中の中心だ、あなたはこれを認めているわけです。これに反しないかという政治論で答えてください。
  178. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 三木内閣といえども、これはやはり法律に従って政治を行っていくことは事実でございます。したがって、法律の範囲内において三木内閣は施政をいたしていくわけでございますから、法律の解釈というものは内閣として重要な問題でございます。われわれもその法律の解釈というものに従うことは当然でございます。
  179. 諫山博

    諫山委員 三木総理に聞きます。法律的に貸すことができるかどうかという問題と、法律的に改憲団体に使わせることが三木内閣政治姿勢に沿うか沿わないかというのは別問題です。政治姿勢立場からもう一回答えてください。私は納得できません。
  180. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 法律論は先ほど申したとおりでございますから……。それはただ抽象的に申すことは適当でないので、その場その場で判断をするよりほかにはない。
  181. 諫山博

    諫山委員 結局二つの団体がこういうところに事務所を置いていることは三木内閣政治方針に反しないのですか、反するのですか。
  182. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 具体的な問題として検討すると申しています。
  183. 諫山博

    諫山委員 そうしたら、検討の結論を聞いて質問を続行します。
  184. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 法制局長官
  185. 諫山博

    諫山委員 ちょっと待ってください。委員長、横暴じゃないですか。長官質問しておりません。
  186. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 長官が答えてから総理に答えさせます。法制局長官
  187. 吉國一郎

    吉國政府委員 もちろん総理政治姿勢の問題についての御質問であるとは存じまするけれども、憲法においては御承知のように厳然と基本的人権を保障しているわけでございます。憲法の中で、第十四条で平等の原則をうたっているわけでございまして、一定の公共の施設を使用することについて……(発言する者あり)
  188. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 御静粛に願います。
  189. 吉國一郎

    吉國政府委員 国民に対してその使用を許す場合において、その思想、信条によってこれを差別して、この者に対しては使用を許す、この者に対しては使用を認めないということは憲法上の平等の原則に反することになりまして、このようなことは三木内閣としては全くとり得ないところでございます。
  190. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 三木内閣憲法改正をしないという方針に対しては、これは何ら疑いを差しはさむ余地はないわけでございます。ただしかし、いろいろな建物の使用というものに対して、基本的人権という立場から、これに特別な差別をするということは私は適当ではないのではないか、こういうふうに考えるわけであります。そういう意味から考えてみて、私の憲法改正せずという政治基本方針とこれは別の問題であると思うわけでございます。
  191. 諫山博

    諫山委員 三木内閣稻葉法務大臣出席問題について統一見解を発表して、きょうの午前十一時、きのうの橋本委員の指摘に基づいて変更されました。あなたは検討して見解を出すと言われましたが、いまのが三木内閣の不動の見解と聞いていいですか。  もう一遍具体的に聞きますと、改憲を目的としている団体、具体的には、あなたが運動団体だと認めた自主憲法制定国民会議の参加団体、この一つが防衛庁の中に事務所を持っている、これは憲法改正しないという三木内閣政治姿勢に反しない、これが不動の三木内閣の結論だと聞いていいですか。防衛庁の建物をだれにどのように使わせるかということは、三木内閣が権限を持っているわけです。使わせることもできるし、使わせないこともできるわけです。
  192. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは具体的な問題の御提示でありますから、これがどういうふうにそういうことに使われておるのかどうだかということは、これは具体的に私の方で調べてからお答えをいたします。
  193. 諫山博

    諫山委員 じゃ、調査結果を待って質問を続行します。
  194. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 ちょっと速記をとめておいて。     〔速記中止〕
  195. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 速記を始めて。  この際、二時再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時十一分休憩      ————◇—————     午後二時三十一分開議
  196. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。諫山博君。
  197. 諫山博

    諫山委員 三木総理大臣に質問します。  自主憲法制定国民会議の参加団体である自衛隊友の会外一つの団体が防衛庁及び国鉄徳島駅長の部屋に事務所を持っている。これは憲法改正しないという三木内閣基本方針に反することではないか、この点について、三木内閣政治姿勢を確かめる意味質問いたします。
  198. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 防衛庁の問題は防衛庁の官房長が来ております。運輸省の問題は鉄監局長が来ておりますので、事実問題についてお答えをいたします。
  199. 諫山博

    諫山委員 私が聞いているのは、この二つの団体が私の指摘した場所を使用しているかどうか。使用しているとすれば、三木総理としてそれを是認されるのか、これだけでいいんです、
  200. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 どういうのですかね、事実関係を説明するということがなぜいけないんですか。こういうところを使っているか使っていないか、事実関係を当局者から説明するということは当然のことであります。
  201. 諫山博

    諫山委員 限られた時間ですから、使っているかどうかだけ答えてください。
  202. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 諫山君に申し上げます。  先ほどから事実関係について、防衛庁、国鉄、運輸省等で諫山君の指摘の二団体について調査いたしましたので、防衛庁、運輸省から答弁を求めます。斎藤官房長。
  203. 諫山博

    諫山委員 答弁は結構ですが、使っているのか、使っていないかだけを答えてください。
  204. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 事実関係だけ、防衛庁より答えていただきます。斎藤官房長。
  205. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 自衛隊友の会の関係についてお尋ねでございますので、お答えいたします。  友の会は、自衛隊員と全国民の相互理解と親睦を図る団体として結成された任意団体でございまして、連絡上防衛庁の中に置いて、主にやっておる行事は、広報活動だとかあるいは自衛隊員の慰問などをやっております。なお、団体員は大体芸能界人が多いのでございますが、お尋ねの自主憲法制定国民会議に会が関与したことはございません。
  206. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 後藤鉄道監督局長。
  207. 後藤茂也

    ○後藤(茂)政府委員 国鉄新職員組合が国鉄の徳島駅の駅長室を使っているという事実はございません。
  208. 諫山博

    諫山委員 私は五月三日に配られた資料に基づいて質問しました。この基礎的な資料が間違っているということであれば、もっとこの問題を調査して、改めて質問させてください。
  209. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 諫山君に申し上げます。  先ほどの二団体の調査について諫山君から要求がございました。突然でございましたけれども、二時まで休憩を宣して調査をいたした。しかし、それが、名簿が正しいか正しくないかということは、これは政府が関与することではございませんので、質問を続行していただきたいのであります。
  210. 諫山博

    諫山委員 参加七十八団体というのは、さんざんいろんな資料で宣伝されていることであって、私たちは自主憲法制定国民会議が公表した資料に基づいて質問しているわけですが、この団体がどういう団体であるかということは稻葉法務大臣責任と直接関係がありますから、この点、もう少し納得いくような調査をして質問さしてください。
  211. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 どうぞ質問を続行してください。
  212. 諫山博

    諫山委員 私はとうてい納得できないということを申し上げて、次の質問に入ります。  きょう新しく政府の統一見解というのが発表されました。これは七日の統一見解の訂正です。この中で、「三木内閣閣僚憲法改正を推進する会合に出席することは、憲法改正をしないという三木内閣方針について誤解を生ずるおそれがある」と書かれております。誤解を生ずるおそれがあるような行為でないことはきのうからの論議でもうきわめて明確です。稻葉法務大臣が参加している自主憲法制定国民会議、これに稻葉さんが席を占めていること自体が問題だということがきょう明らかにされました。さらに、この団体が調査研究の団体でなく、運動推進の団体だということも三木総理が認めました。五月三日の集会が研究調査集会ではなくて、改憲運動を推進するための集会であったということも認められました。そして稻葉法務大臣法務大臣の肩書きを利用さした、そして集会を権威づけ、激励した、これはきわめて明白なことです。このことはどう考えても改憲運動に参加している、閣僚として改憲運動を激励している、こういうことにならざるを得ないわけです。誤解とかいうようなことではなくて、だれが見てもこうならざるを得ません。この点について三木総理のもっと納得のいく説明をしてください。
  213. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 しばしば申し上げておるように、何も激励するために会合に出席したものではないわけです。事実、本人もまたそういう考え方で出席したのではないと言っているのですから、私はいま御質問のようには稻葉法相出席考えてはおりません。
  214. 諫山博

    諫山委員 三木総理大臣はきょう、国務大臣個人の使い分けは許されない、こう言われました。許されない使い分けをしようとしたのが稻葉さんじゃありませんか。そして、これから閣僚はこういう集会には出席させない、こう言っております。これは三木内閣方針に反するからでしょう。そうすると、今月の三日、現実に三木内閣基本方針に反する行為をしたのが稻葉さんではありませんか。いかがですか。
  215. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 だから私はしばしば言っているでしょう。個人閣僚とを本人は使い分けたつもりでも、これはやはり閣僚という重みからそうは受け取られない場合があるので、今後はそういう行動は慎む、こう言っているのです。
  216. 諫山博

    諫山委員 こういうときに閣僚個人資格を使い分けることができないというのは常識なんです。この常識をあえて踏みにじって——本当に使い分けようとしたのかどうか知りませんが、万雷の拍手を受けて、それをとめようともしなかった。結果的に改憲運動を励ましたじゃありませんか。結果的に励ましておりませんか。どうでしょうか。
  217. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 思慮が足りなかったから、それは反省して、今後はそういうようなことは厳に慎む、こう言っているのですから、本人がその改憲運動を励ますために出席したものでないことは明らかです。なぜならば、三木内閣憲法改正せずという方針を承諾して入閣しているのですから、これを守る責任稻葉法務大臣は持っている。だから、改憲運動を促進するためにその会合に出るはずはないわけです。本人個人資格で、閣僚という立場と使い分けたつもりでも、世間に映るのはやはり閣僚という重みからそういうふうには映らなかった。そういう点で誤解を生ずるようなことがあったことは思慮が足りなかった、これから注意すると言うのですから、私はそのとおりに受け取っておる次第であります。
  218. 諫山博

    諫山委員 もともと激励するつもりがなかったから責任がない、こういう言い方はありませんよ。全く思慮を欠いた行為だ。三木さんの立場から言ってもそういうことになるわけです。そして結果的にその集会を激励したことは否定できないじゃないですか。そういう意図が初めからなかったのだから勘弁してくれ、こういう言い方のようですが、許される場合と許されない場合とあるでしょう。あなたも認められているように、周囲の人に誤解を与えると言われますが、まさにあの集会に参加した人にそういう確信を与え、激励をしているわけです。この責任は、過去のことだからもう問われないということですか。
  219. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 稻葉法務大臣は、私の閣僚の一員として憲法改正しないという方針を守り、今後も守っていくということでございまして、そのことが、憲法改正を推進する、激励するというような立場、そういう意図でもって出席したものでないということは、日ごろの国務大臣としてやっておることから考えてみて私はさように信じておるものでございます。
  220. 諫山博

    諫山委員 しかも、ここで問題になった憲法改正というのはまさにファッショ的な改悪なんですね。三木内閣方針から見ても許されない。稻葉さん自身でも激烈過ぎる、こういうことなんですね。そういうところに現職の閣僚がのこのことして参加する。そうすると、稻葉さんは自分ではいま本気で反省しているのですか、自分の行為を。稻葉法務大臣に聞きます。
  221. 稻葉修

    稻葉国務大臣 私は、いかに個人立場だとはいえ、ああいう自主憲法制定国民会議のこの五月三日に行われた総会の空気と、いままでのずっと続けてきた、私が憲法調査会長時代出席していろいろあいさつなどした空気とはちょっと違うな。そういう点では、いかに個人資格を峻別して出席したとは言いながら、総理大臣がお答えしておりますように、個人国務大臣の使い分けがむずかしい。したがって誤解を生ずるおそれのある行為であったから、憲法は政正しないという三木内閣政治姿勢を疑われるというおそれがあるから強く反省をしております、こういうのであります。
  222. 諫山博

    諫山委員 ここで問題になっているのは、五月三日の出席だけではありません。稻葉法務大臣のいわば全人格的な角度から法務大臣資格が問われているわけです。たとえば、「仮に総理大臣になろうとも出席する」あるいは閣議で注意されて、「これは私のことではない、他の閣僚のことだろう」さらに「憲法に欠陥がないとはどうしても思われない」こういうことを次々に放言しながら、いまになって、どういう意図か知りませんが、反省しています、これでは本気の反省とは考えられません。私たちは、思言行一致という稻葉さんの言葉から見ても、全くこれは無節操な態度だというふうに言わざるを得ません。政治家としてもそうだし、人間としてもそうではないか。これで法務大臣資格があるかということを疑うわけです。  私はきょうの答弁でいろいろ納得できない点がたくさんあります。たとえば自衛隊友の会の問題についても、公表されている資料と全く違った答弁がされている。私たちはどれが真相なのかよくわかりません。こういう点も改めてもっと検討して、さらに明らかになった段階で私は質問を続行したいと思いますから、本日はこれで質問を留保します。
  223. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 諫山君に申し上げます。  質問留保ということは、本日はもうおやりにならないということでございますか。それとも、もう続けないということですか。
  224. 諫山博

    諫山委員 本日はやらない。もっとも、いま私が問題にしている点が本日明らかにされれば本日質問します。
  225. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 諫山君に申し上げます。  自主憲法擁護何とかという団体についてのその支援団体については、政府に資料要求を突然されたが、その名簿が違うということで質問を保留されることは、私、委員長として理解に苦しむのでございます。ですから質問を続行していただきたいのでございます。
  226. 諫山博

    諫山委員 これは質問じゃありませんから……。  私が全くどこからか資料を発見して持ってきたというなら別かもしれません。しかしこれは五月三日の集会で配られた資料に基づく質問ですよ。きのうも、これはわが党の橋本委員から現物を示されている資料なんです。
  227. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  228. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 速記を始めてください。  諫山君。
  229. 諫山博

    諫山委員 進行について発言します。  いま、政府側の答弁と、稻葉法務大臣も持っているいわば自主憲法制定国民会議の公式文献が、内容が違うという説明があったわけですね。私は、公式の場で自主憲法制定国民会議の性格を示すものとして配られた資料ですから、これに基づいて質問したわけです。ところが、政府側の調査でこの内容が違うのだということになれば、これはわれわれとしては、できるなら政府調査させたいし、政府調査しないというなら、これは何とかして委員会の方でも調査していただきたいし、この点を明らかにしていただく、その上で質問を続けるということを申し上げます。
  230. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  231. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 速記を始めて。  諫山君。
  232. 諫山博

    諫山委員 私は、この問題をどう取り扱うかということは改めて理事会で検討していただきたいと思います。そしてその上で質問をどうするかということを決めます。とにかくいままでの経過から見て、法務大臣が罷免されなければならないということはだれが見ても明白ですから、三木総理にこのことを重ねて強く求めながら、今後の質問をどうするかということを理事会に一任したいと思います。
  233. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 いまの諫山君の提案については後日理事会で諮ることといたし、質疑は続行していただきたいと思います。
  234. 諫山博

    諫山委員 まだ質問時間が残っておりますから、きょうは留保したまま終わります。
  235. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 沖本君。
  236. 沖本泰幸

    ○沖本委員 きょう政府の統一見解というのが発表されました。いま手元に持っているわけですけれども、内容を見ますと、一番のところは官房長官の発表したのと同じで、二番目のところが、前のは、「稻葉法相が五月三日、自主憲法制定国民会議出席したのは、法務大臣としての立場ではなく、同氏個人資格においてであるが、これについて誤解を招くおそれがあるという意見もあるので、ここに憲法改正を行うことは考えていないという現内閣基本方針を再確認するものである。」というのに対して、新しいのは、「稻葉法務大臣に限らず、三木内閣閣僚憲法改正を推進する会合に出席することは、憲法改正をしないという三木内閣方針について誤解を生ずるおそれがあるので、三木内閣閣僚である限りは、今後は出席しないこととする。」という見解が出ておりますけれども、前のは印刷ですが、「内閣官房長官 井出一太郎」となっており、後のは抜けておったのですが、添え書きして「政府統一見解」、こういうふうになっておりますけれども、この食い違いはどういうことになるのでしょうか。
  237. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 お答えいたします。  前回、私の名前を付して出しましたものは、当時衆議院の議運理事会へ呼ばれまして、私が口頭をもって申し上げましたところ、ひとつそれを文書にして出してほしい、こういうことで取りまとめたものであります。また本日の分は、昨日の参議院の長時間にわたる審議の結果、これまた統一見解を出すようにと、こういう御要請でありましたから、昨日の総理あるいは法務大臣答弁を集約いたしたもので、いま御指摘のように第二項がそれぞれ違うとおっしゃいますが、それはきのうの答弁を踏まえまして、中身をより具体的にしてきょうは申し上げたと、こういう次第でございます。
  238. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、議運の理事会で御発表になったのは官房長官井出一太郎の見解でございますか。これは政府の統一見解ではなかったということになるわけですか。そして、きょう新しく発表されたのが政府統一見解ということになるのか。官房長官はお立場上統一見解を御発表になるわけですから、その辺の違いはわれわれはどう解釈したらよろしいんでしょうか。
  239. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 いま私は前回の場合の経過を申し上げたわけであります。このお扱いは、統一見解というふうに皆様受けとめていらっしゃいますので、そういうふうに御了承いただいて結構と考えます。
  240. 沖本泰幸

    ○沖本委員 三木総理、この点についてはいかがなんですか。
  241. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が昨日の参議院法務委員会で述べたことを集約したものでございますけれども、統一見解とお受け取りくださって結構でございます。
  242. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、今後は余りこういうことはないと理解していいか、あるいは今後は後から出た統一見解を政府のものとして考えてよろしいんですか。
  243. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 ございません。それは政府の見解でございます。
  244. 沖本泰幸

    ○沖本委員 まず最初に、日本憲法の前文の中に、省略しますけれども、「ここに主權が國民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも國政は、國民の嚴肅な信託によるものであって、その權威は國民に由來し、その權力は國民の代表者がこれを行使し、その福利は國民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」こうあるわけですけれども、この権利を行使する最高権能者はどういう方になるわけなんですか。——これは総理大臣に御質問します。
  245. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは主権在民でありますから、国民にあると申すよりほかないと思います。
  246. 沖本泰幸

    ○沖本委員 で、その最高の権力を行使する方ですから、それは国民の厳粛な信託のもとにあるというわけです。ですから、内閣閣僚は、この厳粛な信託の上にお立ちになって、そして日ごろの権力の行使に当たっていらっしゃる、こう理解してよろしいですか。
  247. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そのとおりです。
  248. 沖本泰幸

    ○沖本委員 これは総理にお伺いするわけですけれども、これまでしばしば出たわけですけれども、稻葉法務大臣自民党憲法調査会長を務め、自民党内でも有数の憲法改正論者であり、そういう面の学者でもあるというわけで、一方、厳として法務大臣としては法の番人でなければならない。ですから、稻葉法務大臣を任命なさるときにすでにこういう事態が生じるということのおそれはないかという点、あるいは予想がつくということではなかったのでしょうか。法務大臣に起用なさるという時点において、三木総理は改憲を目指さないんだという方針をきちっとお伝えになって、そして法務大臣として憲法問題では慎重な言動をするようにということをあらかじめただされて、そして起用なさったのですか、どうなんですか。
  249. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これはもう申すまでもなく、閣僚憲法を遵守する義務を持っておることは当然でございまして、三木内閣憲法改正しないという、この方針を承認をして稻葉法務大臣は入閣したわけでございますから、当然に、三木内閣閣僚である限り、その方針に背くようなことはしないという決意のもとに入閣したものでございます。
  250. 沖本泰幸

    ○沖本委員 では法務大臣にお伺いいたしますが、御就任なさるときにそういうふうなお話し合いを総理とおやりになったわけですか。ただ、三木総理がおっしゃっておるのは、原則としてそういうものなんだ、こういう点に立っておっしゃっておるのか、具体的に法務大臣が就任なさる前、お受けなさる前にその点の話し合いがあったかどうかという点なんですが、三木総理がおっしゃったのは、そういうものなんだというお答えにしか受け取れないわけなんですけれども、その点はいかがなんですか。
  251. 稻葉修

    稻葉国務大臣 特に、私は法務大臣をお引き受けするについて、憲法問題はどうなんでしょうなんという話をして入閣したわけではございません。
  252. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ですから先ほどから申し上げていますとおりに、そういういわゆる憲法改正しないという三木内閣方針について、その中に起用される稻葉法務大臣憲法改正論者であり、自民党憲法調査会長でもあったんだということ、だから、これから三木内閣を守って、法務大臣として就任なさって仕事をする以上は、この点については慎重に考えてやってもらいたいという特別の御配慮が総理にあって、そのことを重々お話し合いなさってから御起用になり、あるいは御就任なさったのかという点なんですが、それは総理、いかがなんですか。
  253. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは、私が憲法改正しないという方針であることは承知をして入閣をしたわけでございまして、一々入閣のときに憲法の論議をしたわけではございませんけれども、これは稻葉法務大臣もよく承知をして入閣をしたわけでございまして、私の内閣の一員に加わって以来、この方針に背くようなことはございません。したがって、これは特に入閣のときの条件などにすべき問題でもございませんが、そういうことで法務大臣としての職務に精励をしておるということでございます。
  254. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ところがはからずも三木内閣方針に沿わないことが起こったわけです。そこで慎重を欠いておるとか反省しておるとか、何であるとかかんであるとかということで現在に問題が至っておるわけです。ですから、こういうことがおおよそ予想されなかったのですかということなんです。一般の閣僚が起用されるときには、それはそういう点について考えもしないという点があるかもわかりませんけれども、しかし、特にそういう立場に立っておられた人であるから、今後三木内閣憲法を変えないという方針について問題が起こったらいけないので、その点を十分注意してもらいたい、そういうふうな配慮がなかったのですか。そういうことは全然なかった、安心して法務大臣として就任してもらった、そういうことは恐らくあり得るわけはない、こういうふうに確信なさっていらっしゃったのかどうか、その点はいかがなんですか。
  255. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これはいろいろ改憲論ということ、改憲論者であっていいわけですから、いろいろな考え方を持っていいわけですけれども、その内閣に入ったならばその内閣方針に従うということが閣僚の重大な責務であります。だからそれを私は疑っておるわけではない、当然にそれを承知の上で入ったわけですから。そしてまた、入閣して以来の法務大臣は、憲法改正しないという方針に沿って、法務大臣としての職務を今日まで執行してまいっておるわけでございますから、この点については私はいささかも疑いを持っていないわけでございます。
  256. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それは総理、ちょっと違うのじゃありませんですか。いささかもとおっしゃっておられますけれども、いささかがだんだん出てきたわけです。いささかが出てきたから、いまここで進退の問題に至るまで大きな問題を起こしておるわけです。そこのところについては総理に御責任がある。あなたに責任があるんだ。ただ慎重を欠いておったとか、あるいは、そういうことで入ってきたのだから、三木内閣憲法改正しないということと違う行動はしていない、こうおっしゃるけれども、現実にそれが起きておるじゃありませんか。きょうのこの委員会の議論の中でも、すでに法務大臣に御就任になってその問題がいろいろ出てきておるじゃありませんか。そうすれば、そういうふうなことで国民の疑惑を生むとかというようなことでなくて、事ここに至った以上は、総理、あなたが責任をとらなければいけない。あなたにそこのところの責任があるのだ。法務大臣がいろいろな問題で失敗をした、国民に大きな迷惑をかけた、こういうことになれば、起用なさったあなたにその責任が生じてくるじゃありませんか。ですから、あなたがその問題についていかなる責任をお感じになっていらっしゃるか、あるいはあなたが責任をおとりになるか、そこのところは、総理、いかがなんですか。
  257. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 しばしば言っておるように、国務大臣として稻葉法務大臣内閣方針に背いたようなことはない。ただ、この間の五月三日のことについては、自分個人閣僚とを使い分けたつもりであったけれども、しかし閣僚という地位の重さから世間にはそうは映らなかった、こういう点で行動は慎重を欠いたと言われても仕方がない、これは十分反省をして、今後再びさようなことのないようにしたいと、本人参議院においてもこの本院においても申しておるわけでございますから、私は、今後稻葉法務大臣が厳に言動を慎んで、そういう、国民誤解を生ずるようなことがないものと期待をいたしておるわけでございます。
  258. 沖本泰幸

    ○沖本委員 総理大臣、これからはそうでしょう。これからは二度とこういうことはあり得るわけはないと思います。しかし、いままでのことには十分総理責任をお感じになり、あるいは責任をとるべきような内容のものが出ておるわけでしょう。きのうの参議院法務委員会の議論を見ても、あるいはきょうの当委員会の内容についても、これからはないかもしれませんけれども、いままでに重大な問題を提起してきておるわけです。ですから、あなたが起用なさった法務大臣国民の疑惑等を生む、生じるというふうな段階でなくて、法務大臣だけの問題としてお考えにならないで、御自身閣僚の問題だとしてどうお考えになるのですか。そこが問題なんです。どうなんですか、それは。
  259. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 しばしば申し上げておりますように、国務大臣として、私の内閣の閣員の一員として、内閣方針に背くようなことは今日までない、今後もそういうことはいたさないと本人は言っておるわけでございますから、私は責任問題というふうには考えておらないわけでございます。
  260. 沖本泰幸

    ○沖本委員 繰り返すようですけれども、いままでもなかったというふうに総理はおっしゃるわけです。いままでなかったんじゃないでしょう。あったんでしょう。あったがゆえに、総理は、遺憾であるとかいろいろな言葉をお使いになっているでしょう。ただ、稻葉法務大臣がおやりになったことが、行動が、あるいは言葉が問題であったんで、今後はないであろうというんではなくて、稻葉法務大臣に問題が起こったことは内閣総理大臣として問題になるわけですから、あなた自身がこの問題をどうおとらえになっているか、御自分責任をどうお考えになっているか、そこのところを伺いたいわけです。そらしてもらっては困るわけです。
  261. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 恐縮ですけれども、私の答弁は繰り返すよりほかない。それはこの間の会議出席をしたことは、本人はもう全く個人的な資格で、いつも出ておるから、出席をしたことはこれはもう間違いがないでしょう。いろいろな配慮をしたわけですからね、出席するについても。しかし、そのことが使い分けられない、世間に映る目は。そういうことでその点は軽率であった、そういう点で今後は言動を慎んでいきたい、こう言っておるわけでございますから、私としてそれ以上責任を追及する考えはないということでございます。
  262. 沖本泰幸

    ○沖本委員 繰り返すようですけれどもと総理おっしゃいますけれども、私も繰り返すようですけれども、あなたはどうこの問題に責任をお感じになっているか、総理としてそこのところを伺いたいわけです。
  263. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 今後閣僚をして再びこういうふうな、何か国民誤解を生ずるようなことがないように、閣員全体に対してよく今後私が注意をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  264. 沖本泰幸

    ○沖本委員 今後というのはわかるのです。今後というのは何度も何度もお述べになっているわけですから。でなくて、いままでのことに対して十分自分としては責任を感ずるんだ、法務大臣が配慮が足りなかった、慎重を欠いておったという点は重々反省しておるんだ、そういうことを起こさしめた総理大臣としてそこのところに責任を感じるのか。今後はこういうことになるんだと言うんだけれども、そこのところの責任をお感じになっているのか、いらっしゃらないのかということなんです。
  265. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 内閣は全体として憲法を守る責任を持っておるわけですから、閣僚の中で国民に何か誤解を生ずるような行動があったことは遺憾でございますので、閣議においても、これはよく注意をしてもらいたいということを申したわけでございます。そういうふうにこの問題を私自身考えておるわけでございます。
  266. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そのために私わざわざ憲法のところを続んだわけです。厳粛な信託を受けて、そうして権利を行使するわけです。最高の権力者であるわけです。その最高の権力者が国民の信託にこたえられないことが起きたということになるわけですから、そういう感覚においてどうお考えになっているかということになるわけです。ここでいろいろ議論をやっていることは国民立場に立ってやっておるわけでしょう。先ほどから総理も、主権者は国民なんだということをおっしゃっておるわけですから、その主権者に対して権力を行使する立場において非常に遺憾であった、そう総理がお考えになっておるかどうか、その辺の総理としての責任をどう受けていらっしゃるかどうかという点を聞きたいわけなんです。
  267. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 しばしば言っておるように、遺憾なことであったが、今後こういう誤解を生ずるようなことがないようにいたしたいということが私の今日申し上げておる心境でございます。
  268. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ですからね、遺憾であったという表現を総理としてお使いになるべきだと思うのです。稻葉法務大臣のことは遺憾だったわけです。遺憾であったことは、総理としてまことに遺憾であったと、国民にそういうふうに、私は遺憾であったと、私も遺憾だと感じると、そういうふうにおっしゃったら率直じゃありませんか。あなたはこの場で遺憾であったと言うと、私から、責任をとってあなたやめなさい、こういうところに発展しないかと思って恐れていらっしゃるのじゃないのですか。それでなかったら遺憾と思っていないということになるのです。小さなところにこだわっているようですけれども、これは重大な問題です。一番基本にかかわる問題なんです。あなたはその点はどうおとりになっていらっしゃるわけですか。
  269. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 終盤国会参議院で長時間、今日また衆議院法務委員会では異例の時間、私は出席していろいろ申し上げなければならないような事態が起こりましたことは、総理大臣としたって当然遺憾に思っておるわけでございます。したがって、こういうことは厳に今後再び起こらないように慎んでまいらなければならぬということを深く自分に期しておるわけでございます。
  270. 沖本泰幸

    ○沖本委員 総理大臣はさっきからもう同じ言葉のやりとりに終わりましたから、いまのようなことを述べてもらおうと思って言ったわけです。これ以上進みませんから、せめてその辺まで持っていっておこうと思って質問したわけなんです。  そこで、同じ話の繰り返しになりますけれども、事重大なのでそこのところからやっていきたいと思うわけです。  先ほどから当委員会でも午前中からずっと同じ議論が繰り返されておりますけれども、また総理も先ほどから、五月三日に出席したことが個人であるとか公人であるとかという使い分けは非常にむずかしいのだ、こういうふうな答弁をしていらっしゃるわけですけれども、だんだんと明らかになってきているというよりも、もともとそうであったと言えることは、この自主憲法制定国民会議の総会は、法務大臣は中身は何だかんだと、そういうものじゃなかったのだというような表現をしていらっしゃいますけれども、この団体自体がいわゆる研究とかなんとかという団体ではなくて、直接的に行動を起こす、運動を起こす団体である、運動を展開しておるという団体なんですね。これははっきりしました。総理、どうなんです、そこのところ。
  271. 稻葉修

    稻葉国務大臣 自主憲法制定国民会議という団体は、いろいろな団体が七十八ぐらいで結成しているのでありますが、研究もやっておりました。私が自民党憲法調査会長時代は熱心な研究で、いろいろなことが研究されておりまして、それで大体もう自主憲法期成議員同盟の方、つまりその一番の研究の中核体は自由民主党政務調査憲法調査会ですから、その憲法調査会の方へ改正方向等についてはお任せしましょうというようなことで研究してきた団体ですから、そして年に一回そういう研究の成果を発表していこうというようなことで、大会とか総会とか、そういうものを開いている、そういう団体でございます。
  272. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ことしは少し違っておったのでしょう。ことしは内容が違っておったわけでしょう。ことしはそうではなかったのでしょう。その点いかがなんですか。
  273. 稻葉修

    稻葉国務大臣 簡単に言えば、そうじゃなかったのですね。ただ、いままでの経過で、大体そこでは行事として、自由民主党憲法調査会長が行って、自由民主党憲法調査会のその後の研究の成果とかそういうものについて発表する慣例になっておりましたから、私は憲法調査会長をしておったし、後の憲法調査会長時代憲法調査会はどう動いてどうなったであろうと、そんなようなことも、私は一の学究の徒でもあるものですから、聞いたいと思って出かけましたところ、そういう静かなあれではことしはなかったということは事実として認めます。
  274. 沖本泰幸

    ○沖本委員 だから、そういうことでなかったんだ。その辺に慎重を欠いたとかどうであるとかいう議論が出てきたんだと思うのです。行ってみたら、はからずも自分が思っておったようなところでなかったというふうに法務大臣はおっしゃるわけですけれども、それは個人とかなんとかを問わず、そこへお出かけになったということは、その運動に加わった、その運動の中にあなたが加わったという事実は、これは変えられませんね。何と言ってもこれは変えられないわけです。これは慎重を欠いたとかなんとかかんとかという問題ではないわけなんです。そこに問題があるわけです。行動を起こしている、運動をやっている中へあなたは入ったのですから、あれは違う、そうではなかったんだと、これは言えないわけです。絶対にそれは言えないわけです。そこに大きな問題があるわけなんです。それで、はからずもあなたは法務大臣だったということなんです。そこなんです。総理、そこに問題があるわけです。運動をやったわけなんです。だからこれは誤解を生じるとか誤解を生ぜしめるとかいうことじゃないのです。国民はそうだとはっきりと受け取っているわけ、です。国民はそう受け取っているのです。何と言おうとかんと言おうと、これは晴らしようがないのです。あなたが法務大臣だったということなんです。それでそのあなたが国民憲法を守りなさいと言えますか。言えないでしょう。言えません、それは。絶対に言えないです、それは。運動の中に加わったのですから。そして、それで国民憲法を守りなさいとかどうとかこうとか言う資格はもうなくなってしまう。だからあなたはそこで自分立場考えるべきです。お考えになるべきです、自分立場を。国民立場に立ったら、厳粛な信託をあなたは裏切ったのです。裏切ったわけです、国民立場から考えれば。だからそこのところの立場であなたは自分の進退を考えなければいけないのです。何と言おうとかんと言おうと、国民にもう言えない立場になったんです。資格がなくなったんです、あなたは。行動をやったんですから、あなたは。運動の中にあなたは入ったんですから。ですからあなたは自分立場をはっきりさせるべきです。辞任なさい、あなたは。おやめになるべきです。断じてあなたはおやめになるべきです。国民の感情としてそういうことは許されません、何と言ったって。おやめになってください。これはどうなんですか。
  275. 稻葉修

    稻葉国務大臣 まず結論から先に申し上げまして、やめません。  そして、しかしあなたは、私が国民会議に出たことは、個人であっても閣僚であってもいいが、稻葉修という人間はその憲法改正を推進する大会に出たという事実は否定できないだろうと言う。これはそのとおりです。そのとおりです。いいですか。そこで、それは個人であろうと何であろうと事実だが、私はいままでの資格ですと、あの憲法調査会長として出る場合はあいさつができますから、そのあいさつができれば、そこでこれは私は賛成できないとか、こういうことはだめだとか言えるのですけれども、そういう立場にない、プログラムに載らない立場出席なものですから、そこでおれに発言させろとか言うこともできないので、これは困ったものだなと思って途中から帰ったということも、私の初めから個人国務大臣とを峻別しようとして出ていったことや、そういうこともお考えいただきまして、この事実は事実でございますけれども、私の心持ち憲法を破るとかそんなことを考えているわけじゃありません。
  276. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いま憲法を破るとか破らないとか、そういうことではないわけです。そういうつもりで行ったんじゃない。そんなつもりで行かれたら大変ですよ。そんな考えでお出になったら大変ですよ。九十六条で発議ができる、しかしいままでは、これはとうていそういうふうな憲法改正についての具体的に実際にそういうことはでき得ないのだ、だからそこで発議ができるような世論を盛り上げる、そういう会合です。盛り上げようとしているわけです。だんだんそれを広げようとしている。そういう運動をやっているわけでしょう。その運動の中にあなたは参加したのです、法務大臣として。あなたはそこのところでいろいろ配慮した、配慮を加えて行ったと言うけれども、相手方がそう受け取っているわけです。受け取ったように国民も受け取っているわけです。「法務大臣」として受け取っているわけです。ですから国民としては正確に、法務大臣がそういう会合に出た、こういうことになるわけです。重大な問題です。ですから国民の信託を裏切ったことにもなるし、そういう立場から、国民憲法を守りなさいとか、そういうふうなことはおこがましくて言えなくなったわけです。それでは大臣としての資格はないということになります。大臣として資格はもうありません。ですからおやめになるべきです。あなたは辞任なさるべきです。単純に、「やめません」、これは国民、納得しません。納得しない。絶対できない。私自体納得できない。おやめなさい。「やめません」と言うけれども、おやめなさい。あえて言います。やめるべきです。どうなんですか。
  277. 稻葉修

    稻葉国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、やめる意思はございません。
  278. 沖本泰幸

    ○沖本委員 やめる意思がなくても、責任をとってあなたやめるべきなんです。もう資格はないんですから。法務大臣としての資格はないわけです。もう言えないんです。たとえ話で少し食い違うかもわかりませんけれども、普通の人間がどろぼうしたというのと、警察官がどろぼうしたというのは意味が大いに違うでしょう。法務大臣出席したというのとは違うわけですよ。単純な国民立場からすればそういうことになるわけです。ですから、警察官が、私は心違いをしておりましたと言って、そして取った物を返す、あるいは手をかけてみた、しかしそこには自分としての責任を感じるので手を引っ込めましたと言っても問題は済まないわけです。あなたは法務大臣なのです。だから、法務大臣としてあなたは責任とっておやめになるべきであるということになるわけです。それではあなたは、責任はありませんか、全然、責任はないですか。国民に言えますか、憲法を守りなさいと。言えますか。はっきり言ってください。
  279. 稻葉修

    稻葉国務大臣 私が、今後も私は憲法を守る、国民憲法を守ってくださいと言えるか言えないかということなら、私は言えるということを断言いたします。
  280. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうなってくると、もうあなたはいまの立場にしがみついて、ここのところはどうにも逃げ切らないとおさまりがつかないというところで固執していると思うのです。これは論外だということになってきます。人間的にも私はいままで稻葉法務大臣、好きだったわけです。非常に好きだったんですけれども、もう考え直さざるを得ません。それじゃ、あなたは責任を感じますか。
  281. 稻葉修

    稻葉国務大臣 三木内閣憲法改正しないということを言っているのです。私もいま憲法改正やれと言ってないのです。三木内閣方針には従うと言っているのです、心から。従うと言っているのです。渋々ながらとか、そういうものではないのです。積極的にその方がいいと思っているのです。  ただ、調査会長という立場におったときには、それが職務ですからいろいろなことを研究したのはあたりまえだと私は思っているのです。ですから、そういうことの結果、どうなっているかということを聞きに行くのも勉強の一つではないですか。しかしそれは三木内閣閣僚としてはいかぬと思ったから、個人として行ったんでしょう。そうしてそのことが疑惑を生じて、こういう状態に、皆さんに御迷惑をかけているから、その点はまことに恐縮でございます、反省をいたします、こういう立場でございます。(「名法務大臣だ」と呼ぶ者あり)
  282. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いや、余り名じゃありませんね。三木内閣方針に私も従う、それを破る気持ちはない、こういうことですね。だからそういう立場から、私は慎重を欠いた、遺憾と、こういう言葉だけですね。だけれども国民に大変な迷惑をかけておる。かけていませんか。かけてないですか、国民に迷惑は。国民の信託を受けて閣僚の席を汚している以上、責任を感じていませんか。疑惑を起こさしたのでしょう。講堂の中にお入りになっていたのでしょう。そこで新聞に出たのでしょう。(発言する者あり)いや、まだ、よく知っておりませんよ、陰で総理はそういうことをおっしゃっておるけれども。あなたは法務大臣ですよ。責任を感じませんか。どうなんですか、そこは。
  283. 稻葉修

    稻葉国務大臣 政府の統一見解にもありますとおりに、国民——国民というか、自由民主党の政綱に基づき、自由民主党憲法調査会があって、そうしてそこで憲法改正論議をすることは、私はこれは職務であると思うのです。ただ、三木内閣憲法改正しない、その閣僚になっているんだからその方針に従うことはこれは当然であって、私がかって改正論を論議した調査会長であったということと、憲法を守らないということとは違うじゃありませんか、それは。私は法務大臣になりましてから、法秩序の維持、それから国民の権利擁護という法務大臣の職責を憲法に従わないでやったことはないのです。憲法を遵守してやってきているのであります。したがって、その点については責任はないのです。けれども、慎重を欠いた行動によってこういうように国会の論議が停滞し、国民には心配をかけておるということはあるでしょうが、この衆参両院の質疑応答によって、私の心持ち、真意というものはよく国民はわかっているものと私は信じております。
  284. 沖本泰幸

    ○沖本委員 もう時間が来ましたのでやれませんから、これでやめますけれども、いまのところでは知ってくれたと、そうあなたはおっしゃっておるけれども、こんな議論が起きるわけがないのです。だから、やった行動についてあなたが責任を感じないのかと言っておるわけです。だから、私は絶対これは納得できません。
  285. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 玉置一徳君。
  286. 玉置一徳

    玉置委員 三木総理にお伺いしたいのでありますが、憲法九十九条の問題で物議を醸しておるわけでありますが、そこで三木総理は、三木内閣憲法改正発議しないのだ、こうしばしば言明されております。そこでお伺いしておきたいのは、九十六条によれば、当然国会にこの発議権があるのは御承知のとおりでありますが、三木総理のおっしゃっておる言葉は、発案権は国会にも内閣にも普通の法律案と同様にあるのだ、こういう解釈の上に立って、その発案をいたしませんということでありますか、どうですか。
  287. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 憲法改正発議権国会にあることは明らかです。「内閣総理大臣は、内閣代表して議案を國會に提出し、」という規定がありますね。その中に、憲法改正の提案も議案のうちの重要なものであるから、内閣に提案権はあるという考え方のもとに、三木内閣はそういう考えを持っていないと申しておるのでございます。
  288. 玉置一徳

    玉置委員 確認をいたしますが、三木内閣憲法改正の発案を国会に提案することはございません、こういうことだと思います。  そこで、自民党の中で、あるいはその他の政党で、もっと広く言えば国民の中で、憲法をよりよくするために改正をしたい、こういう問題について動きがあってもこれは当然でありましょう。それで、問題のむずかしいのは、いまもお話しのように、三木内閣はそういう発案をする意図はございません、したがって、そういう中で、閣僚においでになる方々が誤解を生じるようなおそれのある場所には行かないようにいたします、こういうお話でありますが、そうなれば、九十六条と九十九条の関係で、自民党総裁としては、党の中でそういう調査会等々があることはこれはやむを得ぬとされるのですか。
  289. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 よりよい憲法をつくりたい、こう考えることは、やはり政治に携わる者として当然のことだと思うのですね。憲法というものが私は永久不変のものだとは思わない。これはやはり、憲法を絶対に永久に改正いたしませんと言うのは、主権在民のもとにおいて独断に過ぎると思いますね、国民意思に従うわけですから。主権者が憲法改正したいという意向があるならば、それに従うことが一つの主権在民下における民主政治のあり方でありますから、したがって、政党がよりよい憲法ということを目指して研究し調査するということは、これは政党としてこれをやって当然いいことでございます。  また、自民党は建党のときにこういう規定があるわけです。「平和主義民主主義及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、現行憲法の自主的改正を図り、また、占領諸法制を再検討し、国情に則してこれが改廃を行なう。」これは鳩山内閣、昭和三十年の十一月であります。吉田内閣が占領に引き継いだ。初めて独立の時代における、初めて占領下に継続しない内閣が鳩山内閣だ。この鳩山内閣は、占領下にできた憲法を、完全な自由が回復したときに自主的にこれを一遍再検討して、そして新しく自主憲法を制定したらどうかという意向を持ったわけですね。それで占領中の諸法制を再検討すということを大きなスローガンに掲げたわけです。鳩山首相は国会においても改正の意向を表明し、次の岸総理もやはりそういう意向を述べたわけでございます。そして自民党にはやはり政綱は生きておるわけです。綱領とか政綱というのは、もう一遍再検討してみよう、国連加入を促進し、とかいうような条項もあるのですけれども、そういうことで検討はしておりますけれども、現在まだ結論は得てない。この自民党の政綱は生きておるわけです。したがって、こういう政綱に従って自民党の中に憲法調査会があるわけで、そして憲法に対して、自主憲法制定という目標のもとに調査研究をしておるわけですね。そのことは、やはり改憲論者もたくさんおるわけですから、あっていいと思うのですね。また改憲してはいけぬという論者があっていいわけです。国民の中にもそうだと思う。  しかし、憲法改正するということは、国会においてもその発議権に、両院における三分の二という非常な厳しい条件があるわけですし、また国民の中でも——憲法改正というのは私はこう思っておるのですよ。国民のほうはいたる声が起こらないで、危ないすれすれのような形で憲法改正問題を取り上げるということは、非常にその国を不安定にすると私は思っておるのです。憲法改正をするというときは、ほうはいとして国民の声が起こって、そして憲法改正しないと、もうきわどいところで憲法改正が常に争われる政治状態というものは私はいい状態でないと思う。国の基本が常に動揺するわけですから。したがってそれはやはり憲法改正するというものは、機が熟したかどうかということを判断するものは、提案権を持っておる政府の大いなる責任だと思います。そういう諸般の情勢考えて、憲法改正する時期にあらずと、私、判断をしておるわけです。したがって、私の内閣のもとにおいては憲法改正考えはない。また、私は一方において自民党総裁でありますから、党がそういう党の政綱に基づいて憲法を研究し、できれば自主憲法を制定したいという党議があることは、これはあることに対して私は何も異存がないわけです。しかし、自民党総裁として私が総裁である限り、憲法改正のリーダーシップを私はとらない、こう言っておるわけであります。
  290. 玉置一徳

    玉置委員 いまも御発言がございましたが、非常に厳しい、両院の三分の二以上という賛成を必要とするわけでありますので、当分の間、あるいは遠い将来まで、ちょっとこういうことは現実として起こりにくい問題であります。こういうことを国民の前で明らかにしておかないと、今度の憲法問題がいろいろな誤解を生んでくるのじゃないだろうかと思います。  そこで、いまもお話しのとおり、あなたが総裁である限り、あるいは遠い将来も、なかなかそういう時代はこないと思いますが、自民党議員として、あるいは国会議員も提案権があるわけでありますから、そういうイニシアチブは絶対にとらないということを再確認をしておきたいと思います。
  291. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 きょうの発言は自民党総理総裁として発言をしておるのでありまして、私自身憲法改正というものを軽々しく取り上げるべきでないという意見であります。ほうはいとして国民の声が起こらない限り、憲法改正を取り上げるようなことはよくないという考えでありますから、私が一議員になっても、そういう情勢が熟さないのに私が憲法改正のリーダーシップをとることはないということでございます。
  292. 玉置一徳

    玉置委員 そこで九十九条でありますが、「この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と、特別にわざわざこれを、当然の事項を書き上げた真意は一体どのようにお考えになりますか。
  293. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは、現行憲法改正されてないのですから。しかし、憲法の条項の中にも改正手続を決めてあることは、憲法の中においても改正の場合を予測しておることは事実ですね。だから憲法改正を論じてはいけないということはないわけですよ。大いに国会においても論じてよろしいわけでございますが、ただしかし、現行憲法は厳としてあるわけで、やはり憲法のもとにおいて国が動いておるわけですから、したがって自民党は、私はいろいろ調べてみましたが、選挙のときにおいてもこういうことを常に言っておるのですね。昭和四十三年の五月、参議院の選挙、昭和四十四年の十二月の衆議院の総選挙、これは自民党の選挙のときに掲げた一つの政策であります。「われわれは当然の義務として現行憲法を遵守する。その改正は国家最高の課題であるから、世論の動向を見きわめつつ対処する。」また、衆議院の総選挙の場合、「われわれは当然の義務として、現行憲法を遵守する。憲法改正は、国家最高の課題であるから、これを十分再検討し、世論の動向を見きわめつつ対処する。」と、きわめて——そういう憲法調査会というような機関はありますけれども、これは選挙のときに国民に対して公約した自民党の選挙公約である。これだけの慎重さを自民党は持っておるわけですから、自民党がそう簡単に憲法改正できるとは考えておらないことは御承知のとおりでございます。したがって、現在の国会議員、閣僚は無論のこと、憲法を遵守する義務があることは、これは自民党の選挙公約の中にも一番先にそれをうたっておるのですから、これは当然のことでございます。
  294. 玉置一徳

    玉置委員 次に総選挙があった場合に、自民党は諸般の事情を考えまして、国民の動向に照らして、当分の間この憲法を守ります、改正をするような意図はございませんと、思い切って言い切るだけの意見がありますかどうか。
  295. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私の内閣のもとにおける解散は、憲法改正ということを国民に訴えない。改正しないと言うのですから、そういう考えはございません。
  296. 玉置一徳

    玉置委員 その憲法の遵守ということが非常に実際はむずかしい問題になりまして、憲法改正発議その他の行動もこれは行われてもいいんだ。しかしながら、国務大臣国会議員その他はこの憲法を遵守するのだ。しかも国務大臣というものは個人といえども、なかなか個人としても非常にむずかしい問題があってと、こういうお話であります。それを演繹いたしますと、たとえば法務大臣あるいは国務大臣、それは、そういう諸般の、先般のような憲法改正集会には今後は一切出ません、あるいはそういうところからいろいろな記事を求められてもみずから文章をもって出すことは、たとえそれが個人的な信念であろうとも、そういうものは御遠慮申し上げますというところまで考えてよろしいか。
  297. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私はこういうふうに考えているんですね。やはり閣僚といえども基本的人権を持っておるから、改憲の団体に加入することを禁止するということは私はできぬと思う。しかし、三木内閣閣僚である限り、改憲の団体に加入して積極的に発言し、行動をするということは、閣僚をしていたさしめない方針でございます。
  298. 玉置一徳

    玉置委員 それは、たとえ党の内外を問わず、自民党の中のそういう調査会等々においても同じだと解釈してよろしいか。
  299. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 自民党の中には自民党憲法調査会というのがあって、そうして、いますぐ自民党憲法改正を推進するという団体でないのです。憲法調査会の、いろいろきょうの質問の中にも取り上げられる事項も、まだ自民党の政務調査会も総務会も通ってないわけですから、したがって、自民党というものが、今日の政権担当の責任を持っておるものが、いまこの状態の中で憲法改正を推進するようなことに乗り出すわけではないわけでございます。常によりよい憲法をと政党が考えることは、これは当然のことだと思うのです。だから、調査研究というものをするということは、これは政党として当然のことでありますが、自民党憲法改正国民運動というものに乗り出すということは、私の総裁である限り、そういうイニシアチブ自民党はとらない、こう言っておるのです。
  300. 玉置一徳

    玉置委員 そこで、五月三日の憲法集会がいままで、鳩山内閣のときの改憲運動、こういうものを機縁として、野党各党は護憲の運動を五月三日にずっと展開をしてきたわけなんです。そういう意味で、今日のこの憲法問題を機縁といたしまして、五月三日を真に憲法を守るような政府の主催する何らかの会合——会合のあり方については検討を要すべきだと思いますけれども、それをいまに至るまで開催されたことがないことにつきまして、きのうの参議院法務委員会におきまして和田議員が発案をいたしまして、総理かち前向きの答弁がございましたが、どのようにお考えになっておりますか。
  301. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 現行の憲法があって、改正もされてないのでありますから、現行憲法を遵守するということでないと国の政治は動いていかないですから、それを、いままで行事をしておったのを途中でやめたというようなことが国民憲法を軽視するというような印象を与えることは、これは政府の本旨ではない。したがって、この行事について何か考えてみようというふうに私は考えておるわけでございます。
  302. 玉置一徳

    玉置委員 そこで総理、九十九条と九十六条の問題で、憲法改正の研究、発議等々はこれは自由である。しかしながら、現在の憲法を守るという国民の……(「守るじゃいけない、尊重でなければいかぬ」と呼ぶ者あり)そういった尊重する機運がないと平和な国家というものは成り立たないんだ。こういう意味におきまして、先般の稻葉法相が御出席されました問題は、私は法律論と政治的な責任の問題とのこんがらがりがちょっとあるんじゃないだろうかという感じがいたします。それで、稻葉法務大臣が御出席になって、一学徒としてこれを研究するんだ、こうおっしゃっておるのには、その限りにおきましては問題はないんだと思います。あるいは内閣法制局の見解も同じような形になっております。しかしながら、いまお話しになりました総理の、現行憲法を尊重するような機運をつくるというところにやはり非常に配慮に欠けた、軽率じゃなかったかという問題があるわけであります。  そこで問題は、法相がこの改憲運動の会合などに出られるのには、一般の国会議員や、まして法務大臣という地位から言うても特別な慎重な配慮を要したわけであります。このことは軽率であったということをお認めになっておるわけでありますが、私はそのお認め方が、かなり重大な軽率に当たるんじゃないかということを、国民全般の憲法を尊重するという機運を醸成する意味からも、本当は心配いたしております。ましていわんや、この憲法に欠陥が多いんだというような発言は、これは本当はどうしても見逃すことができない程度のものだと思うのです。どの程度に法務大臣はこのことを反省しておいでになるか。総理はこのことに関してどのようにお考えになっておるか。たびたび言われていることでありますけれども、今日の法務委員会の動向を考えて私たちは態度決定を追られておりますので、改めてお伺いをしておきたいと思います。
  303. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、昨日の参議院法務委員会に終始おったわけであります。きわめて長時間の会議でございましたが、その中で稻葉法務大臣は、参議院決算委員会の発言のようですが、欠陥憲法と言ったことはやはり非常に適当でなかった、これは決算委員会において取り消したいという意向を表明されまして、自分もその発言というものが適当でなかったということを反省されて、そういう意思表示があったわけでございます。私は、稻葉法務大臣もそういうふうに反省をして、この問題に対して深い反省をされておるんだというふうに受け取った次第でございます。
  304. 稻葉修

    稻葉国務大臣 ただいま総理大臣がお答えしたとおりでございますが、私自身の口からも申し上げますと、この憲法には欠陥が多いという発言は、いかにも憲法を軽視しているとか、さらに強く言えばべっ視しているとか侮辱しているとか、こういうふうに聞こえるおそれがあって、もしそういうふうに聞こえますと、侮辱するということは尊重することになりませんから、それで憲法九十九条の尊重義務に違反するおそれが出てくるから非常に不適当な言葉である、できれば取り消しをさせていただきたい、こういうふうに強い反省のもとに申し上げた次第でございます。
  305. 玉置一徳

    玉置委員 総理にお伺いしたいのですが、この憲法の問題につきまして、今後三木内閣閣僚にふさわしくないような態度、発言等々がございましたらどのように対処されようとお思いになっていますか。
  306. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 三木内閣憲法改正せずという方針でございますから、その方針に反する閣僚三木内閣閣僚にとどまることはできません。また私としてもやめてもらわなければならぬわけでありますが、そういうふうな閣僚が出てくるとは私は考えておりません。皆やはり憲法を遵守しようということで、憲法の範囲内において自分職務に精励をいたしておるわけでございますからそういうことはないと思いますが、仮定のことで御質問でございますからお答えをいたします。
  307. 玉置一徳

    玉置委員 稻葉法務大臣の重大なる軽率、これはそのあなたのいまの方針本当は触れておると思うのですが、あえて今回は辞任をさす意思がないというたびたびの御発言はどういうことによっておるのか、重ねてお伺いしておきたいと思います。
  308. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 稻葉法務大臣は私の三木内閣に入閣して以来、憲法の条章を遵守して、それに従って法務大臣としての、また国務大臣としての職務を執行しているということに対して一点の疑いを持つ余地はございません。したがって、憲法遵守の義務に稻葉法務大臣が反しているとは私は考えない。ただ、個人閣僚とを使い分けができると考えたところはいわゆる配慮の足りなかった点であって、この点は将来において深く戒めてもらいたいと考えておる次第でございます。
  309. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 横山君。
  310. 横山利秋

    ○横山委員 先ほどはちょっと御迷惑をかけまして、皆さんにおわびをします。  短い時間ではございますけれども、やや総括的な私の意見を述べ、皆さんの意見を伺いたいと思います。  稻葉法務大臣憲法にどういう考えを持っているかということは現実の法務大臣としての仕事に差し支えがない、こういうのが政府側の意見のようでありますが、私は差し支えがあるという立場なのであります。たとえば、憲法調査会における「稻葉修委員の意見」として、「日本憲法はいかなる憲法であるべきか 現行憲法は、制定の経過も内容も、あまり日本国にふさわしい憲法ということはできない。」こういう見解を持っておる法務大臣であるからであります。「日本憲法の制定経過をいかに評価すべきか 押しつけ論に賛成、合作論に反対。——同じく占領下の憲法でも西ドイツの場合は合作といつても妥当だが、日本憲法を日米の合作というには、あまりにもアメリカの影響が強いので、これを合作ということはできない。」という考えを持っている法務大臣であります。「日本憲法の解釈・運用をいかにみるべきか 法の弾力的解釈には限度がある。たとえば、憲法第九条のごときも、将来世界国家警察軍への協力ということになると、改正の要が出て来ると思う。その場合、現行憲法の弾力的解釈ではまかないきれないことになると思う。」こういう考えを持っておる法務大臣であります。この考えというものが、いま三木総理が言われたように、一体個人としての考え法務大臣としての仕事と全く区別ができるのかという問題があるわけであります。  個人として自主憲法制定国民会議へ出た。ところがそれはどうも大変な間違いだった。誤解を生じた。はしなくもここに、信念として持っておる物の考え方と日常行動というものとは、そう簡単に分離できないということを明示さしたものだと思うのであります。ですから、これからは注意すると言っても、注意される本人がこのような、憲法改正をしたいと考え、このような立場において憲法を解釈をする、その解釈の仕方によって問題が生ずる、こういうふうに私は理解をするわけであります。ですから、個人法務大臣との分離というものが簡単なものではないと言っているのが、私どもが執拗に追及するゆえんなのであります。  その気持ちがわからないと、三木さんは、いやこれから注意させる、稻葉さんもこれから注意いたしますと言ったところで、同じ一個の人間が、法務大臣室におるときにはきちんと憲法を守る、うちへ帰ったら自由な人間として憲法改正についていろいろ考える、その接着点が憲法解釈となって日常の仕事に反映してくるということを私どもは言っているわけであります。現にその憲法解釈、稻葉解釈があるではないかと私は言っておるわけであります。その点について重ねて稻葉法務大臣の意見を伺いたい。
  311. 稻葉修

    稻葉国務大臣 過去の、内閣憲法調査会発足当時の委員の一人としてそういう意見を確かに述べております。しかし、そのことが現行憲法改正されて、実現されておるものという行動をとるわけのものではありませんで、現行憲法が存する限り、そして九十六条の手続を経て改正されない限り、現行憲法をそのまま守っていくということくらいの使い分けというか、それくらいの知識は私もあると自分では思っているのでございます。
  312. 横山利秋

    ○横山委員 あなたは十二月十八日、私の質問に答えて——私の質問というのは、大臣就任のごあいさつの中で「法秩序の維持と国民の権利の保全」というものが、あなたの就任のごあいさつのところの大黒柱でありました。その「法秩序の維持」というものが憲法に土台を発しているから、私がわざと二回にわたって法務委員会において、あなたの憲法態度憲法を守る態度について念を押したわけであります。そのときにあなたはまことに明白にも、かかる自主憲法制定国民会議へ行って、国民の皆さんの誤解とあなたはおっしゃるけれども、そんなことがみじんも起こるはずがないほど明白な答弁を私にしておるわけであります。「法秩序を維持し、国民の権利を保全するという大臣の職責といたしましては、現行憲法の規定に従って厳然とこれを守っていくことは申すまでもございません。」と言っておるわけであります。  これほど明白な態度をしておる人間がどうして一体、個人ならいいだろう、「法務大臣」と言われても取り消しもしない。そうして決算委員会で一回言われたときには開き直るような態度で物を言う、そういうことがどこから出てきますか。あなたのこの国会における、憲法を守る、法の番人としてきちんとやる、あれほど明白に二回も三回も言っておる人間が、今日このように衆参両院委員会がストップされて、きのうもきょうも一日じゅう、あなたの言動によって国会が麻痺状態になっておるというがごとき、そういうことがこの言動の中のどこから出てまいりますか。十二月十八日はもちろんでありますが、その後の十二月二十四日、同じことであります。あれだけやかましく言って、あれだけあなたは厳然と胸を張って答えたにかかわらず、半年も出ないのにかかる醜態は何事ですか。責任を感じなさいよ。あなたの言っていることは朝令暮改です。決算委員会から参議院法務委員会、そして今日に至りますまで全く朝令暮改です。言われたと思えば頭を下げる、ちょっと調子がよくなるとまた何が悪いかというような態度をなさる。全くあなたの態度というのはなっておらぬですよ。どういうつもりですか、あなた。
  313. 稻葉修

    稻葉国務大臣 私は普通にしているので、何が悪いか、という態度で物事をした覚えはないのですけれども、不徳のいたすところ、横山さんがそういうふうな態度にごらんになった点につきましては、私の不徳ですから弁解はいたしません。  ただ、法務委員会で私、厳然として日本国の憲法を守ると言いましたことは、それは当然の話でございまして、国民も、それから国会議員も、公務員も、裁判官も、皆それは当然なことでございます。現行憲法が有効に存在する限りにおいて、その憲法を守るということは当然ですが、さればといって、将来の憲法をこうしたいということを、改正の論議をすることが直ちに九十九条の違反になるのではないということは、内閣の統一見解にも申し上げているとおりでございますから、私は、憲法調査会委員としてかつてそういうことを申し上げましたことがすなわち現行憲法の違反言動だという解釈には現行憲法上ならないのではないかと思っておるのでございまして、その点は御了解いただきたいと思うのでございます。
  314. 横山利秋

    ○横山委員 稻葉さん、理屈でなくて、人間的に一遍話をしてみましょう。少なくとも、私がいま声をからして言っていますのは、あなたは法務委員会で厳然として憲法を守ると言った。誤解を与えるようなことは絶対しないと私に約束した。憲法調査会会長として稻葉試案をつくった人として、いいのか、法の番人として法務大臣をおやりになるのがいいのかと言ったら、絶対誤解を与えるようなことはしないと言った。それにもかかわらず——母の日なら母を大事にしようじゃありませんか。憲法記念日なら憲法を大事にしようじゃありませんか。それが国家行事で当然の日じゃありませんか。しかもあなたは法務大臣です。私に約束した法務大臣。約束しなくても、法の番人である、最も重要な地位にある人が、舌の根も乾かないうちに、半年のうちに、国会を大騒がせもするような憲法についての疑念を抱かして、それでただ済みませんでは済みませんよ。あなたも政治家じゃないですか。責任をとったらどうですか。単に憲法解釈としてここが違う、あそこが違うじゃなくして、それだけの責任があなたはある立場じゃありませんか。政治家としての責任をとりなさいよ。どうなんですか。
  315. 稻葉修

    稻葉国務大臣 人間として御親切な、私の政治生命はそうあるべきもんで、地位に恋々としてはいかぬという御忠告は、まことに人間味にあふれた御忠告としてありがたくちょうだいしますけれども、今日この段階において、私が責任をとって職を辞するという考えのないことも明確に申し上げておきたいと存じます。
  316. 横山利秋

    ○横山委員 それでは時間もございませんから、もう一回ひとつ。  こちらの稲葉委員が先ほど聞かれて、あなたがお答えにならなかった——その後私の質問に答えて憲法の中身にも若干触れられるようになったわけでありますが、稲葉委員質問に対してお答えにならなかったところを念のために質問をします。  それは、いまの憲法が、「不備不合理な個所がある」こと、「国情に合致しないところが少なくない」こと、「わが国および世界の進展にも即応し難いうらみがある」こと、これは何だという質問です。それから第二番目に、「天皇の地位の明確化」について、「天皇が国を代表することを明確にする」と、あなたの試案にも自民党憲法調査会の案にも出ている。天皇が国を代表することを明確化するということはどういうことなのか。この二点にお答えを願いたい。
  317. 稻葉修

    稻葉国務大臣 それは私の試案で、しかもそれが、憲法調査会の御決定はいただきましたけれども、まだ党議にもなっておらないきわめて熟していない見解でございますので、そういう個人的な私の見解を閣僚としてここで論議をいたしますことは、先ほども申し上げましたとおり、国務大臣個人との関係が非常にむずかしいものですから、いいですか、この三木内閣憲法改正しないという政治姿勢に疑惑を生ずるおそれがありますので、論議の内容に入りますこととはこの際控えさしていただきたいと思うのでございます。
  318. 横山利秋

    ○横山委員 いま私がこの十二月の速記録を読み上げる時間がありません。けれども、あなたはここで憲法解釈をやっている。同時に自分憲法論を私に展開しているのですよ。いまになって、言うことがぐあいが悪いから、頼むに言わせないでくれと。ひきょうじゃありませんか。あなたはそれでも政治家ですか。あなたは法務大臣です。自分の都合の悪いときには自分憲法論はひとつ差し控えさしてくれ、都合のいいときには得々と胸を張って、十二月には憲法改正論を就任早々ぶたれる。そういうことでは困るのであります。  あなたはすでに、いまの憲法が「不備不合理な個所があり、」「国情に合致しないところが少なくなく、」「わが国および世界の進展にも即応し難い」という、いまの憲法についての考え方を持っている法務大臣。心底からそれを考えている法務大臣。その法務大臣国民の皆さんに憲法を守れと言うことがいかに空疎な響きを持つか。あなたが仮に「法の日」に国民に向かって、この法律は悪いんだよ、この法律は改正したいとおれは思っているのだ、これは悪法だよ、これは国情に合わない法律だよ、そういうことを一遍でも言ったことがありますか。それを言ったら大変なことじゃありませんか、あなたが。それと同じですよ。憲法は不備不合理な個所があり、国情に合致しない、わが国及び世界の進展にも即応しない、そういうことを考えておる、心底思っておる法務大臣が何が一体「法の日」に法が説けるか、憲法記念日憲法が説けるか。それは真理がこもっておるか、誠実な説き方であるか、国民に合理性を与えるであろうか、信頼感を与えるであろうか。与えっこないじゃありませんか。いわんやあなたは憲法解釈として一つ、先ほど私が申しましたように、公共の福祉の概念は多数党が決めるという考えの持ち主だ。それから現憲法のもとでも緊急事態、非常事態の措置ができると解釈をしている法務大臣だ。これについて私の後で同僚諸君が質問したそうでありますが、あなたのこの国内治安の問題は、「内閣に緊急状態における特別の立法及び財政措置の権限を付与する規定を設ける。」驚くべき案でありますが、現憲法でもこの種のものはやろうと思えばできると考えておる法務大臣であります。  そのような法務大臣がいま答弁を拒否して、自分の都合の悪い答弁は拒否して、憲法調査会の案について説明を拒否するようなことでは私は質問が続行できない。委員長、いま言った私の質問に対して明白な答弁があるまで私は質問を保留いたします。
  319. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 横山委員の言われることは、そういう立場からそういう御質問もあると思いますけれども、それは昭和三十二年でしたね、その憲法調査会の議論は。(横山委員「四十七年」と呼ぶ)四十七年——とにかく憲法調査会の試案としていろいろな案が出たわけですね。それを、いま三木内閣法務大臣という立場において、その過去においていろいろ研究をされたものを一々取り上げてここに論じますことは、憲法改正しないという私の方針でありますから、その法務大臣として、そういう過去の憲法調査会の一つの試案をここで一々その問題を取り上げて論じますことは、本人としてはこの場所としては適当ではない、法務大臣としてですね、そういうことですから。また、この場合は遠慮さしてもらいたいというのは、私から考えれば、三木内閣法務大臣としては当然のことだと思うのですね。そういう点で御理解を願いたいと私は思います。またこれは、ここの場で三木内閣法務大臣として、過去に自分たちがいろいろ研究したものを取り上げていろいろ議論するということは、何か法務大臣がそういう考え方をいまもやはり持ってこれを推進したいという立場にあるという誤解を生じて、法務大臣としてはこの場所で一々答弁することは適当でないと本人考えることは、私が考えて無理からぬことだと思うのでありまして、横山委員においても御理解を願いたいのでございます。
  320. 横山利秋

    ○横山委員 納得できません。質問を保留して私の質問を終わります。
  321. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  322. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 速記を始めて。  稻葉法務大臣
  323. 稻葉修

    稻葉国務大臣 内容の論議に立ち入りますことは、かつての個人立場で言ったことと、いま憲法改正しないという三木内閣閣僚としての立場で言うこととごっちゃになって、改正しないという姿勢に疑いを生ずるおそれがありますので御勘弁をいただきたいと存じます。(発言する者あり)
  324. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 暫時休憩いたします。  午後四時三十一分休憩      ————◇—————