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三木内閣総理大臣 よりよい
憲法をつくりたい、こう
考えることは、やはり
政治に携わる者として当然のことだと思うのですね。
憲法というものが私は永久不変のものだとは思わない。これはやはり、
憲法を絶対に永久に
改正いたしませんと言うのは、主権在民のもとにおいて独断に過ぎると思いますね、
国民の
意思に従うわけですから。主権者が
憲法を
改正したいという意向があるならば、それに従うことが一つの
主権在民下における
民主政治のあり方でありますから、したがって、政党がよりよい
憲法ということを目指して研究し
調査するということは、これは政党としてこれをやって当然いいことでございます。
また、
自民党は建党のときにこういう規定があるわけです。「
平和主義、
民主主義及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、現行
憲法の自主的
改正を図り、また、占領諸法制を再検討し、国情に則してこれが改廃を行なう。」これは鳩山
内閣、昭和三十年の十一月であります。吉田
内閣が占領に引き継いだ。初めて独立の時代における、初めて占領下に継続しない
内閣が鳩山
内閣だ。この鳩山
内閣は、占領下にできた
憲法を、完全な自由が回復したときに自主的にこれを一遍再検討して、そして新しく
自主憲法を制定したらどうかという意向を持ったわけですね。それで占領中の諸法制を再検討すということを大きなスローガンに掲げたわけです。鳩山首相は
国会においても
改正の意向を表明し、次の岸
総理もやはりそういう意向を述べたわけでございます。そして
自民党にはやはり政綱は生きておるわけです。綱領とか政綱というのは、もう一遍再検討してみよう、国連加入を促進し、とかいうような条項もあるのですけれども、そういうことで検討はしておりますけれども、現在まだ結論は得てない。この
自民党の政綱は生きておるわけです。したがって、こういう政綱に従って
自民党の中に
憲法調査会があるわけで、そして
憲法に対して、
自主憲法制定という目標のもとに
調査研究をしておるわけですね。そのことは、やはり
改憲論者もたくさんおるわけですから、あっていいと思うのですね。また改憲してはいけぬという論者があっていいわけです。
国民の中にもそうだと思う。
しかし、
憲法を
改正するということは、
国会においてもその
発議権に、両院における三分の二という非常な厳しい条件があるわけですし、また
国民の中でも
——憲法改正というのは私はこう思っておるのですよ。
国民のほうはいたる声が起こらないで、危ないすれすれのような形で
憲法改正問題を取り上げるということは、非常にその国を不安定にすると私は思っておるのです。
憲法改正をするというときは、ほうはいとして
国民の声が起こって、そして
憲法改正しないと、もうきわどいところで
憲法改正が常に争われる
政治の
状態というものは私はいい
状態でないと思う。国の基本が常に動揺するわけですから。したがってそれはやはり
憲法を
改正するというものは、機が熟したかどうかということを判断するものは、提案権を持っておる
政府の大いなる
責任だと思います。そういう諸般の
情勢を
考えて、
憲法を
改正する時期にあらずと、私、判断をしておるわけです。したがって、私の
内閣のもとにおいては
憲法改正の
考えはない。また、私は一方において
自民党の
総裁でありますから、党がそういう党の政綱に基づいて
憲法を研究し、できれば
自主憲法を制定したいという党議があることは、これはあることに対して私は何も異存がないわけです。しかし、
自民党の
総裁として私が
総裁である限り、
憲法改正のリーダーシップを私はとらない、こう言っておるわけであります。