○青柳
委員 いまのお答えにもありましたように、会社の都合ということが実質的な原因であって、決して労働者側の都合でみずから退職願を出したというような性格のものではなく、まさにだれになるかわからない、皆から出されているわけですから、まことに不安定な状態です。ですから残った人もいつまた「進退伺」つまりこれを退職願というふうに理解をして、有効に会社の手元にある限りは、「何日付の進退伺を受理する、これを承認いたします」こういう形になってくるかわからぬわけですね。現にこの「進退伺」というのは二月の五日にみんなから一斉に受け取って、そしてその翌日の二月六日に「通知書」という形で「貴殿の
昭和五十年二月五日付進退伺を受理し、これを承認いたします。よって二月二十日付をもって退職といたします。右ご通知申しあげます。」こういうふうになっておるわけでありますから、いずれにしてもいつまた首になるかわからないという非常な不安な状態にある。
ただ、こういう「進退伺」をみんなが一斉に出したのではなくて、やはり疑問を持って出さなかった人もあるのですけれ
ども、そういう人に対してはその場でも職制の人
たちが「どうしておまえは出さないんだ」というので詰問をする。あくまでもその場にいて書かせるようにしむけた。それでもなおかつその場で書かなかった人に対しては、今度は
会議室に呼びつけたり、あるいは当日欠席していた者は自宅まで押しかけて取り上げるというようにして、ほとんど全員から「進退伺」を取り上げた。ただ数名の者は出さなかった。これは非常に不思議のように思いますけれ
ども、実はここには労働組合があるのです。ところがたった三名しかいない労働組合なんです。珍しい組合と言わなければならない。その三名の組合員は出さなかった。もう一人かが組合員ではないけれ
ども出さなかったという状況。
なぜ、たった三名しかいないような労働組合などというものがあるのかという、そこにわれわれは重大な関心を持つわけであります。このヒロセ電機という会社は労働組合がないということで長い間続いてきた企業ですが、全然組合がつくられもしなかったかというと、実は過去においてもそういう動きは従業員の間であったようであります。しかしその都度会社側から、当社には労働組合というのは要らぬのだ、だからそういうものをつくるのはやめろという干渉が入りまして、双葉のうちに摘み取られてしまって、二度、三度とそういう企画はあったのだけれ
ども成功しなかった。
昭和四十八年に初めて、いま残っている三名の人
たちが中心になりましてひそかに
——公然とつくるとすぐやられてしまうから、ひそかに労働組合の結成のために協力をしまして、約百数十名の人
たちがこれに参加をした。で、いつまでも非公然のままでいるのはよくない、これだけの人
たちが労働組合に結集してきたんだから公然化しようということで、いよいよ公然化することになったのが
昭和四十八年の十一月の初旬のことであります。結成大会と言いますか、もう結成はされておりますから公然化大会と言いますか、そういうものをやろうという計画を立てておりましたやさき、十一月三日付あるいは四日付をもちまして、大多数の人が脱退届というものを組合の分会長あてに書留配達証明で出してきた。しかも、これは受け付け番号などを見ますとみんな続き番号になっておりまして、郵便局も同じというようにして、決して偶然に脱退届を出したのではなくて、みんな申し合わせたように一斉に出した。しかもその文章も、
本人が書いたのが主でありますけれ
ども、中身がほとんど一致しているわけですよ。「脱退届私は組合の方針に反対なので脱退いたします。なお、私の脱退の意思は固いので慰留の説得はお断りいたします。本日以降組合の
指示には一切従いません。
昭和四十八年十一月三日 ヒロセ電機株式会社 何某」とあって、判こを押したり拇印を押したりして、「全国金属労働組合品川地域支部ヒロセ分会殿」そしてあて名には奥山志郎という分会長の名前で書留配達証明が来ている。こうしてほとんどの人が脱退をしたわけです。これは偶然ではないのであって、この人
たちがいかに会社の方から脱退を迫られたかということをはっきり事実が証明しているわけです。
いままで、会社に組合は要らぬということを言って、そして組合をつくることに対してはいつも
妨害をし、これをつぶしてきたということが今回も行われたわけですね。このことは四月三日付の週刊サンケイにも、さっき言いました宇都勝美常務取締役が述べたこととして載っておりますが、「ウチの会社の特殊性を理解できない人には、判らんでしょうなあ。私は
共産党が嫌いです。だから常々そういっている。組合も必要ないと思っている。でもね、私は組合を潰せなんていったこともないし、従業員の差別をしようとも思っていない。私の日ごろの意見を聞いて、会社の下の者が共鳴して、組合から脱退しろ、と働きかけたりしたことはあったでしょうが、私は誰が組合員かなんて知らんですよ。」こういうようなことを言っているんですね。まさに、問うに落ちず語るに落ちたと言いますか、組合は要らないんだということをこういう雑誌の記者にもちゃんと公言しているような会社なんですね。それで「下の者が共鳴して」などと言いますけれ
ども、そんななまやさしいものではなくて、下の人
たちがいかに強烈に組合つぶしに奔走したかということは、具体的な事実、つまり、暴力行為までが行われるということによって証明されていると思います。
それで、暴力行為以前には、まずいやがらせというものが頻繁に行われたようであります。結局は三、四名しか残っていない組合員を何とかして、やめさせる、そうすれば組合は完全につぶれてもう存在しなくなるということで、まずこの組合員に対しては他の従業員と隔離して、個室、あるいはロッカーなどで間仕切りをした場所に入れて、事実上一日じゅう軟禁状態、
仕事もろくに与えない。これは俗に言う職場の村八分みたいなものだ。そして使用のできない机とかいすを与えておく。もちろん暖房施設はない。ほかのところはちゃんと暖房があるんだけれ
ども、そこはない。そして螢光灯を全部はずして暗くしてしまっている。こういうふうにして刑務所か何かに入れられたような状態にしている。いやならもうやめてくれと言わんばかりにするわけですね。それをがまんしておりますと、今度はそれと並行して、運動会とか旅行とか忘年会といった行事にも一切参加させない。他の従業員には、ああいうのと会ってあいさつなどをすると大変だというのであいさつもさせないようにするし、灰ざらも使わせないし、お茶も飲ませない。そして就業規則に決められている出産の祝いな
どももちろん支給しないし、最も露骨なのは、労働基準法で決められている有給休暇や慶弔のための休暇も与えぬ。まさに労働基準法違反を幾つも幾つも繰り返していやがらせをやっている。
そこで、このことについて、労働基準監督署の方では
本人たちからの苦情などは聞いて調べをするというようなことがあったのかどうかですね。これもお尋ねしたいと思います。