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1975-03-05 第75回国会 衆議院 法務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月五日(水曜日)     午前十時十四分開議  出席委員     委員長 小宮山重四郎君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 田中  覚君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 青柳 盛雄君       小澤 太郎君    小平 久雄君       福永 健司君  早稻田柳右エ門君       綿貫 民輔君    諫山  博君       沖本 泰幸君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    熊田淳一郎君         防衛庁人事教育         局長      今泉 正隆君         法務大臣官房長 香川 保一君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省人権擁護         局長      萩原 直三君         外務省アジア局         次長      中江 要介君  委員外出席者         警察庁警務局人         事課長     福田 勝一君         警察庁刑事局捜         査第一課長   鎌倉  節君         警察庁刑事局保         安部公害課長  星野鉄次郎君         警察庁警備局警         備課長     佐々 淳行君         最高裁判所事務         総局総務局長  田宮 重男君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢口 洪一君         法務委員会調査         室長      家弓 吉己君     ————————————— 委員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   小坂徳三郎君     綿貫 民輔君 同日  辞任         補欠選任   綿貫 民輔君     小坂徳三郎君     ————————————— 三月四日  刑事補償法の一部を改正する法律案内閣提出  第四八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件  裁判所司法行政に関する件      ————◇—————
  2. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 これより会議を開きます。  法務行政検察行政及び人件擁護に関する件並びに裁判所司法行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  3. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 独禁法改正消費者保護の問題を中心に最初にお聞きをしていきたい、こういうふうに思うわけです。  独禁法改正公正取引委員会中心となり過ぎて、むしろ公正取引委員会が独占しているのではないかという考え方が、まあ比喩ですけれども、人によってあるわけだね。消費者保護というか、そういう考え方改正の中に出てこないではないかというわけでしょう。これは三木総理もそういう声に押されて、消費者保護規定を入れようということになった、こういうわけですが、ところが、きのう決まったのですか、あれを見るというと、消費者保護規定の整備という総理が打ち出したものが、どういう形に一応原案として決まったということなんでしょうか、公取の方からお伺いしたいと思います。
  4. 熊田淳一郎

    熊田政府委員 まだ、政府案けさ閣僚懇談会で論議されたということしか私承知しておりませんので、その中身消費者保護条項がどういうふうに盛り込まれておるかということを、詳細はまだ承知しておりません。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 公取としては、消費者保護規定がどういうふうに入るのがいいというふうに希望されているのか、あるいは独禁法というものに消費者保護というような考え方が入ること自身がもうこれは筋道が違うのだ、これは別個に考えてもらうのが筋だと、こういうふうに考えておるのでしょうか、どうでしょうか。
  6. 熊田淳一郎

    熊田政府委員 これは先生承知のとおり、独禁法の一条の「目的」にも、究極的には「一般消費者利益を確保する」ということをうたっておるのでございまして、独禁法目的そのものが究極的に消費者利益保護あるいは国民経済の民主的で健全な発達を促進するということにあるわけであります。したがいまして、今度の私どもが考えております改正試案骨子におきましても、こういう目的に沿うように、昭和二十八年以来余り大きな改正が行われておりません独禁法を、その後の経済情勢に即応できない部分が出てきておるのではないかというところからいろいろな改正点を持ち出しておるわけでございまして、あの試案骨子にありますような考え方、これがどういうふうに今度の政府案に生かされるかということでございますけれども、あの考え方が生かされるといたしますと、これは長い目で見まして、やはり結局国民経済の健全な発展にも寄与することになりますし、また物価の安定ということにも役立つというところから、結局は一般消費者利益にもなる、私どもはこういうふうに考えておるわけでございます。
  7. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 結局はというのは一つの逃げ道なんでね。あらゆるものはみんな結局は国民利益になるという議論と、あなた、全く同じよ、それは。そうじゃなくて、消費者保護考え方というものがあなたの方の試案にもさっぱり盛られてなかったのじゃないですか。だから三木総理も、これじゃとても国民の支持が得られないという、まあ俗に言えば選挙のときに不利だということだと思うのですけれども、そういうようなことから何とかつけ加えようという形になったのじゃないか、こういうふうに思うのです。  たとえば二十五条、二十六条の規定がありますね。そこで二十五条の場合に、無過失損害賠償責任というものを課しているわけですね。これは法務省に聞いた方がいいですね。この二十五条による不法行為責任、これは一般民法の七百九条の不法行為との関連でどういうふうに理解するのが一番正しいのかということ。わかりますか、問題の意味は。これは意見三つあるのですよ。いろいろあると思うのですけれども、余りこっちで言っちゃ悪いから……。どうでしょうか。
  8. 川島一郎

    川島(一)政府委員 独禁法の二十五条には無過失損害賠償規定があるわけでございます。本来でありますと、違法行為を行って、それによって損害をこうむったという場合には、民法七百九条の規定によってその損害賠償請求ができることになるわけでありますが、二十五条は、特にその場合、故意過失関係を問題にせずに損害賠償請求を認めるという特例を設けておるわけです。このことは結局、二十六条で公取委員会独禁法違反行為があるということを審決認定して、そしてそれが確定した場合に、その同じ問題についての損害賠償請求を容易にするという立場から設けられたものであって、二十五条と二十六条は、少なくとも独禁法が設けられた当時におきましては一体のものと考えられておったのではないかというふうに思うわけでございます。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ぼくの聞き方が悪いんですが、二十五条による請求権というものが二十五条によって初めて創設されたんだという考え方と、それから七百九条との関係においてもこの二十五条に基づく方法しかやれないんだという説と、そうじゃないんだ、一般不法行為でやれるんだという説と、三つあるわけですよ。その一番最後の説が通説だし、これがあたりまえですね。  そこで、いま問題になってきておるのに、審決確定しなければいけないわけでしょう。審決確定しなければ挙証責任というのは展開されないわけでしょう。そこに問題が出てくるのではないですか。問題、わかるでしょう。なぜ審決確定しなければならないのかということですよ。審決なんかほとんどありはせぬじゃないですか。審決確定というのはどの程度公取にいままであるのかお聞きしますが、さっぱりないわけでしょう。ほとんど不問処分でしょう。審決にも三つあるからいろいろ内容が違うとも思いますが、審判を経た審決というのはほとんどないと言えるのではないでしょうか。だから、こういう規定をやっていくと、実際には、消費者損害賠償で無過失責任を追及するといっても、問題としての解決にはちっともならないのじゃないですか。だからこの二十六条というものは削除しろ、このことが大きな問題になっているのじゃないですか。その点について公取としてはどういうふうに考えているのですか、あるいは法務省としてはどういうふうに考えているのですか。
  10. 熊田淳一郎

    熊田政府委員 独禁法二十五条の無過失損害賠償責任、これは二十六条によりまして、審決を援用することによりまして請求権を行使できる、こういうたてまえになっておるわけでございまして、この審決と全く関係なしに独禁法違反につきまして無過失損害賠償責任について請求ができるということにすることによりまして、先生もおっしゃっておりますけれども、いろいろな説がございますが、現在の不法行為に対します損害賠償制度あり方、これを変えていくということにもなるわけでございまして、これはやはりこういう損害賠償制度あり方という観点から、慎重に考えなければならない問題ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 慎重に考えなければならないといっても、たとえば国民生活審議会消費者救済特別研究委員会というのがあるんですが、これはどういうふうなものですか。官側——官側というと言葉が悪いかもしれぬけれども諮問機関か何かでしょう。ここでも去年の七月に、この条項削除をしろということをはっきり言っているんじゃないですか。それじゃないと消費者救済はできないとはっきりしているんじゃないですか。どうなんですか。なぜ削除できないのですか。
  12. 川島一郎

    川島(一)政府委員 私からお答えするのが適当かどうかよくわかりませんが、二十六条の規定削除せよという意見があることは私も承知しておりますし、それも一つ考え方であろうというふうに思うわけでございます。ただ、これを削除するについて全く問題がないかといいますと、必ずしもそうではない。と申しますのは、たとえば、現在は二十六条の規定がありますために審決で示された事実認定というものは裁判所を拘束するのだ、こういう解釈通説として行われております。法律には規定ございませんけれども、二十六条の規定根拠としてそういう解釈がされておるわけでございます。そこで、もし二十六条を撤廃いたしました場合に、審決の前後にかかわる裁判所が自由に判断できるということになりますと、公取判断裁判所判断とが必ずしも一致しない場合が出てくることになりますし、その場合に審決判断裁判所を拘束するという現在のような考え方がとれるかどうかというような問題もあろうかと思います。  そのほか、現在では二十五条、二十六条による損害賠償請求東京高裁の管轄になっておるわけでございます。この点がどうなるかというような問題もあろうかと思います。東京高裁を第一審とするという場合には、三審制が二審制になりますので、一審省略されて、審理がやや慎重を欠くという面がありますと同時に、他面では事件の早期解決に役立つという面もあるわけでございまして、そういった利害得失といったような面から、いずれがいいかというような点を検討する必要があるというふうに思うわけでございます。
  13. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 確定審決における認定事実が裁判所を拘束するというのは、どこに書いてあるのですか。
  14. 川島一郎

    川島(一)政府委員 ただいま申し上げましたように、これは解釈でございます。現行の二十六条を根拠として一般にそういう解釈がとられておるということでございます。
  15. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは別に確定しなかったところで、審決による認定事実は一つ証拠として出てくるわけでしょう。それをどう判断するか、裁判所自由心証でやればいいことであって、明文があるわけでもないし、そのことから問題のノーの答えにはなってこないというふうに私は思うのです。  そうすると、国民生活審議会でこの条項削除しろという意見が出ていますね。これはどういう根拠から出ているのですか。国民生活にとって何かプラスがあるというのでしょう。プラスがあるからこそ削除しろというのでしょう。何にもないのに削除しろということはないわけだから、どういうところから削除しろということが出てくるのですか。
  16. 川島一郎

    川島(一)政府委員 国民生活審議会議論は、私、詳しく承知しておりませんが、一応その結論から想像するところによりますと、現在では無過失賠償責任というのは審決確定の後にしか認められない。それを削除すれば審決確定前であっても無過失賠償責任が認められることになる、そういう利点があるということが理由になっていると思います。
  17. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはあなた、問いに対して問い答えているようなもので、そんなのは答えにならないよ。勾留の必要があるから勾留するというのと同じだよ。勾留更新決定と同じだ。まあそれはいいですがね。  そこで問題になってくるのは、本来、債務不履行不法行為との関係で、不法行為の場合は、普通の場合原告側故意過失立証責任がありますね。たとえばお医者さんが患者さんを診る、そういう場合に、過って患者が死亡したという場合に不法行為でいくのか、あるいは委任行為というか、それによって患者の方でお医者さんに過失があったということを立証しなければいけないの。そうじゃなくて、お医者さんと患者との信頼関係、あるいは、それを法律的にどういうふうに言うのか、委任行為と言うのか何と言うのか、そこからいっても、お医者さんの方で自分の方に過失がなかったのだということの立証責任があって、それが全うできなければお医者さんの方が負けるという形に変わってきたのじゃないですか。そこはいまどうなっていますか。
  18. 川島一郎

    川島(一)政府委員 むずかしい質問でございますが、債務不履行の場合には、債務者の責めに帰すべき事由によって債務不履行が生じたということが要件になるわけでございますし、不法行為の場合には故意過失が必要である、似たような関係に立つわけでございます。  医療行為のような場合にはどうかということでございますが、その場合には、医者には専門的な知識を有する者としてそれ相当に高度な注意義務というものが課される。したがって、故意過失が全く要らないというわけではございませんけれども医者通常それだけの知識を有する者としての注意を払わなかったという場合には、その責任が問われるということではなかろうかと思います。  それから、債務不履行による損害賠償責任不法行為による損害賠償責任との関係につきましては、いろいろ説があるようでございますが、請求権の競合でいずれか一方が減殺されれば他方も消滅する、こういう関係にあると見ていいのではないかと思うわけでございます。
  19. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 二十六条の削除があるとないとによって、実際の消費者救済ですね、これは訴訟に持ち込む場合が多いわけですね、例として考えれば。その場合に差異現実に出てくるわけでしょうか。ちょっとそこのところをもう少し具体的に説明を願えませんか。
  20. 川島一郎

    川島(一)政府委員 二十六条の有無によって具体的に差異が生ずるかということでございますね。現在は、審決確定後であれば不法行為による請求もできますし、二十五条による請求もできます。しかしこの場合は二十五条によった方が得策でありますから問題はございません。それから審決確定前、審決が何もない場合も含めまして、審決確定していないという場合には、現在では七百九条の規定によって請求をいたしますし、現にそういう事例も考えられるわけで、最高裁判所がそういうことを認めているわけでございますが、削除すれば、これは当然二十五条による無過失賠償責任請求できるということになるわけですから、故意過失関係立証の点が軽減されることになります。ただ、実際問題として故意過失立証というものが現実訴訟でどの程度の重みを持つかということになりますと、私は、少なくとも独禁法違反というような違法行為が行われたという事実が認定された場合に、これが故意または過失でなかったという主張が入れられる場合というのはあり得るかもしれませんけれども、そはれ非常に希有な場合ではなかろうかというふうに思うわけでございまして、それほど大きな影響があるというふうには考えておりません。
  21. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私も、運用によってはそんなに違わないと思うのですね。いまの場合の審決確定といったところで、具体的には、それは訴訟で争っている場合には普通どのくらいかかるのですか。きょうの新聞を見ると、二十何年かかった裁判があって、またやり直しもあるけれども、これは例外としても、相当長期にかかるわけでしょう。だからその点があると、二十六条というものがあっても大して意味がなくなってくるのじゃないか、こういうことが一つ考えられるのと、それからいまの認定ですね。やみカルテルならやみカルテル認定ということを公取がどういうふうにやるのですか。ぼくはよくわからないのですが、いわゆる不問処分にしてしまう場合も公取としては多いわけですか。どういうような処分公取の中にあるのか、ぼくもよくわからない、審決が三つあるぐらいはわかるけど、いま、やみカルテル認定といったって、どうやって認定が行われるわけ。有権的なやみカルテルだという認定がどういうふうに行われるんだろうか。いま民事局長が言ったから、やみカルテル認定が行われれば、それによって故意過失が大体推定できるわけでしょう。やみカルテル認定というのはどうやって行われるのか。どこでどういうふうにやって行われたときに、それがやみカルテル認定となるのか。
  22. 熊田淳一郎

    熊田政府委員 違反事実の認定は、公正取引委員会におきまして委員会を開催しまして、そこで決定をするわけでございます。
  23. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうなんだけれども公正取引委員会を開いて、違反事実を認定するでしょう。そうすると、認定したときの認定書というものは——一般不法行為裁判でしょう。地裁なら地裁に起こした場合に、審決確定しない場合には、そのときにそれは消費者側はもらえるの。あるいは裁判所を通じて照会すればそれが回答できるわけ。それならば、それが証拠になってくれば特に二十六条を削除しなくたって大して影響ないわけですよ。そこのところ、どういうふうになっているの、実際には。
  24. 熊田淳一郎

    熊田政府委員 現在の公取のやり方といたしましては、不問処分に付したというような場合には、申告者からその結果について問い合わせがございますと、不問に付したということは通知をいたしております。ただし、その理由でございますね、そこまでは通知の中には含めておりません。
  25. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは告訴したときに、不起訴になったという通知をするのと同じことだよ。結論だけ通知するのでしょう、はがきか何かで。そうじゃなくて、どの程度不問処分というのがあるの。認定するでしょう。すると、不問処分が非常に多いということを言うんだよね。それだから公取立場として企業寄りだという批判も受けるわけだけれども、これは公取としてのいまの構成というか人員から言って、なかなか大変だと思うのですよ。よくわかりますよ。それほど国から公取重要性を与えていないのに、いまになって公取、これもやれ、これもやれと言ったって、そんなのは無理だとぼくは思うのですが、認定したのを裁判所から照会があった場合はどうするのか、そこのところが問題だ。これまた秘密だから出さないと言うのかい。いま民事局長が、やみカルテルならやみカルテル認定があれば、それは裁判で利用できて、故意過失立証その他においても消費者側に有利なようなことを言われたから、そこでぼくは聞いているわけです。一番大事なところですよ、これ。あなたの一存ではいかないわけかな。どうなの、それ。
  26. 熊田淳一郎

    熊田政府委員 認定をいたしまして、通常審決になるわけでございます。審決の中でそれがはっきりと確認されるわけでございますが、ただ、審決がはっきりと確定いたしますまでは、審決内容は不安定な状態でございまして、したがいまして、いまの制度は、確定をした場合にそれを援用して無過失損害賠償責任請求することができるということになっておるわけでございます。
  27. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはそうなんですがね。同じことを質問していてもあれですが、学者などは——学者というのは余りよく事実関係を知らないから言うのかわからぬけれども、この二十六条を削除しろという意見が非常に強いですね。アメリカでもごたごたしたのですね。ニクソンか何かがその問題を提起したことも何回かあると言ったが、これはいろいろあるのでしょうけれども、いずれにしてもそこら辺のところは、きょうの新聞で見た範囲だと、やみカルテルなど独占禁止法違反の事実があって、消費者公取委に対し規制を求めた場合、公取委は処理の結果を知らせる規定を新設していると、新聞によるとこういうらしいのだが、よくわからないのですが、公取委に対して規制を求めるというのは何なんだろう。あなたも、けさの八時半からの会議で、まだ決まっていないからと言って逃げられるかもしらぬけれども消費者公取委に対し規制を求めるというのは具体的にどういうことなんですか。
  28. 熊田淳一郎

    熊田政府委員 私もまだ、どういうふうにけさ会議で決まったかということを承知しておりませんが、現在の独禁法四十五条によりまして、違反事実があると思料するときには、公取に対して事実を報告して、適当な措置をとるべきことを求めることができるということになっておりまして、それに基づきまして、公正取引委員会といたしましては不問処分をしたような場合には、先ほど申しましたように、その結果を通知することができるということを規則で決めております。しかしその点を、通知義務というのをもっと明確化すべきではないかという考えがあるということは私聞いておりまして、ただそれがどういうような形になって政府案の中に盛り込まれることになるのか、そこのところはまだ最終的には承知しておりません。
  29. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 公取でいま言った不問処分というのは、全体の中でどの程度あるのですか、どういうふうになっているの。
  30. 熊田淳一郎

    熊田政府委員 ちょっといま手元に資料がございませんが、相当件数あることは間違いございません。ただ、その不問処分と申します中身でございますけれども、これは全く証拠が十分得られないというようなものも相当含まれておるわけでございます。
  31. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いずれにしてもこれはよくわからないのですが、だから今後注意してもらいたいのは、いずれ独禁法改正が国会に提案されると、おそらく商工、法務、大蔵も入るのかな、よくわかりませんが、連合審査になると思うのですよね。そのときに、消費者保護規定というか、それがどういうふうになっているかということが大きな問題になって出てくると思うのですよね。十分研究しておいてもらいたい、こう思うのです。  そこでもう一つの問題は、たとえばカルテルによる不当な利益、これを課徴金として取る、これは一つ考え方ですが、同時に、これを消費者に還元するという方法、このことについて日本法制度というものはほとんど不備なわけですね。新しい現象だからいたし方がないと言えばいたし方がないかもわかりませんが、そういうことについて、法務省としては将来どういうふうにこれを解決をしたいというふうに考えておられるのですか。これはまあ大臣に聞くのが本筋かもわかりませんが、きょうは大臣がいませんから。
  32. 川島一郎

    川島(一)政府委員 その点について、将来どう考えるかというお問い答えるほど十分に検討はしておりません。御承知のように、アメリカでは二倍賠償、三倍賠償というような例がいろいろあるわけでございます。独禁関係でもクレートン法の四条に三倍という損害賠償規定がございますが、日本には全然そういう制度がございませんので、果たして、そういう制度をいま直ちに持ってきた場合に国民感情として受け入れられるかという問題はございますけれども一つ考え方として検討してみる必要はあろうかと思います。ただ、今回の独禁法改正に関しましては、やみカルテルのやり得というものに対しては課徴金制度を採用するという方針が一応決まっておるようでございますので、課徴金を課した上でさらに二倍なり三倍の損害賠償を取るというのは、ちょっといかにも屋上屋を重ねる感じがいたしまして、とれないのではないか、このように思うわけでございます。
  33. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから実情は、これはアメリカでできた法律だし、アメリカは制裁その他が非常に厳しいですね。西ドイツも厳しいですね。厳しいだけが能ではないのですが、ことにアメリカの場合は消費者救済規定が非常に完備しているというか、実際はどうなっているのかよくわかりませんが、ここら辺のところはこれからの問題として出てきますよ。法務省、大分熱がないけれども、こういうふうなことをやらないとまずいんじゃないの。アメリカなんかは検事がずいぶん、新しいことか何か、行っているでしょう。それからずいぶん留学しているでしょう。そういう人もそれは必要かもわからぬけれども、同時に、こういうふうな問題を中心にして、民事局の方からアメリカなりどこかに留学させて、十分勉強する必要が私はあると思うのです。これは大臣が来たらよく言います。大臣、よくわからぬかもしれぬけれども、言います。  それから、こういう考え方もあるのですね。消費者損害賠償請求訴訟があるでしょう。これに対して公取が援助するように工夫すべきだ、こういう議論があるのですよね。たとえば、消費者の主張に事由があると認めるときは、公取委が積極的にその旨の意見書を裁判所に提出するとか。積極的に公取委が提出するとなると、これはなかなかいまの時代ではむずかしいかもわからぬが、少なくとも、裁判所から照会があったときあるいは当事者から照会があったときには、それについて意見書を提出するというぐらいのことは当然考えられていいんじゃないかと思うんですがね。そこら辺については全然考えていないの。
  34. 熊田淳一郎

    熊田政府委員 公正取引委員会独禁法違反事件の処理ということが目的でございまして、そういう点から行政処分を行うわけでございますが、確かに、その場合に消費者保護との関連からいろいろな手だてをする必要が起こってきはしないかという御意見はございます。ただ、現在の段階におきまして直ちにそういうようないろいろな制度を取り入れることが、現在の日本の法体系になじむものであるかどうかという点、問題がございますし、今後の研究課題としては私どもも検討をしてまいらなければならないと思います。
  35. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから、消費者保護ということが独禁法一つ目的だと、こう言うのでしょう。初め聞いたら、目的だと言うから、目的だと言うなら、それにふさわしい規定というか、そういうふうなものが当然独禁法の中に入ってこなければならないし、それにふさわしい訴訟体系なり、法体系というものが法務省の中で考えられなければならないんじゃないかと言ったって、全く熱がないですね。法務省はそういうところだと言えばそういうところかもわからぬけれども公取も、そこまでは無理だと、そんなことをやったら、公取はいままでさえもむずかしいのに、袋だたきになってしまって、とてもやっていけないという議論もあるかもわかりませんが、どうもそこら辺のところがこれは不満足ですね。  これはよくわからないのですけれどもアメリカのニューヨークの条例などでは、公取委消費者のために訴えを起こして賠償を取り立ててやるということもあるのだそうですね。よく知りませんが、そういうことを言っている人がおるから聞いているのだけれども、そういうのはどういうことなのか。そういうことを研究したことがあるの。
  36. 熊田淳一郎

    熊田政府委員 アメリカにおきましては、行政当局ばかりではなくて、私人を直接、そういう違反事件の損害賠償その他を通じまして、参加させていくという考え方が相当あるようでございますが、しかしわが国のいままでの法体系にはそういう点がございませんので、これはやはり今後の検討課題であろうと思います。
  37. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いま事務局長、いままでの法体系、法体系というでしょう。あなたに聞いたら悪いから今度は民事局長に聞くけれども、いままでの法体系というのは一体何だね。法体系、法体系というけれども、どういうことを基本理念としているのです。
  38. 川島一郎

    川島(一)政府委員 必ずしもいままでの法体系にとらわれるというつもりはございません。  それから先ほどのニューヨークの問題でございますが、私どもも少し実情を知りたいと思いまして、先般ニューヨーク市に照会をしておりますけれども、まだその回答は届いておりません。
  39. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 後で大臣が来たら聞きますけれども、こういう問題の研究に、アメリカへ一年か二年ぐらい若手の優秀な勉強家をやることはぼくは必要だと思いますよ。刑事関係だけは行くんだよ、みんな。それで大使館にもいるでしょう。大使館で何やっているか知らぬけれども、いるでしょう。それからフルブライトか何か、大学へ行っているでしょう。そういうのではなくて、こういうことをやった方がいいですよ。法務省もたまには喜ばれることをやる必要があるよ。余り口悪くなるといけないからこの辺でやめておきますけれども……。  それから問題になってくるのは、今度は刑事の専属告発でしょう。これはいままでどのくらいの事件があって、それで告発したのはどのくらいあるの。
  40. 熊田淳一郎

    熊田政府委員 実際に告発をいたしました件数というのは非常にわずかでございまして、五、六件でございます。しかもそのうちでカルテルで告発をいたしましたのは、昨年の石油の事件一件だけでございます。
  41. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、カルテルでの告発というのはどうしてそんなに少ないの。問題はそこだよ。カルテルというのは悪ではないんだ、それはしようがないんだ、いわゆる経済界としてはまあやむを得ないと言うと言葉が悪いかもしれませんが、カルテルで告発するのは酷だという考え方が非常に強いんじゃないですか。これはおかしいとぼくは思いますよ。なぜそんなに告発が少ないの。二、三日前にも出た火薬の問題、あれなんかも告発していないのですか。今度は板ガラスの問題もやっていますね。板ガラスはまだいまやっている段階だから、いま直ちに告発しろとかなんとか言うのは無理だと思いますが、どうしてあれだけの大きなものについても告発しないの。本来、こういうものは刑事事件ではないんだ、民事事件だという考え方ですか、基本的には。
  42. 熊田淳一郎

    熊田政府委員 そういうことではございません。ただ、これは訴訟を維持するための証拠の収集というような点もございまして、従来なかなか告発に持っていけるようなケースが多くございませんでしたけれども、しかし私どもは、悪質なものに対しましては昨年の石油の事件と同じように、今後も告発をしてまいりたいというふうに考えております。
  43. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから、その悪質というのをどうやって判断するのかということが公取だけにかかわっているわけですよ。公取の専権だものね。公取にそれだけの責任を負わせるのは、それはあなた、無理ですよ。いまの日本の資本主義経済の中でそれは無理だとぼくは思うのですがね。だからこの九十六条を改正しろ、これも削除をしろというような意見は、その政府部内の討議の中で出たのですか。
  44. 熊田淳一郎

    熊田政府委員 確かに専属告発権を検討し直すようにという御意見もございますが、しかし、これにつきましては、現在の制度がなぜ公取の専属告発を認めておるかということを考えてみなければならないと思います。それで、独禁法違反事件につきましては、公取で十分に審査を行いまして、そして相当な証拠を収集いたしまして、事実をはっきりと認定をした上で必要と認めるものにつきまして告発を行うように、こういう趣旨でございまして、そういう点から申しまして、いま専属告発の制度を廃止するということになりますと、公正取引委員会による独禁法の一体的な運用とか、あるいは事件処理というものに影響を及ぼすおそれもございますし、また乱告発の弊害というようなものが生ずるおそれもございますので、そこで私どもはやはりこれは慎重に検討しなければならないというふうに考えております。
  45. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは慎重に検討しなければならないし、乱告発の弊害があるということも、それは場合によっては考えられますよね。いまだっていろんな告訴のあれでずいぶんありますからね。それはそうなんですけれども、そのことのために慎重になり過ぎちゃって、さっぱり告発しないというのはこれはおかしいわけですよ。それは率直に言って、検察庁の陣容からいっても、どんどん告発されたら検察庁お手上げになってしまいますよ。これは検察庁、手が足りませんというか、ほとんどできっこないと思いますよ。それはそうですけれども、余り慎重になり過ぎてさっぱり告発しないという形、しかもいま言ったように、公取で物を考える、公取で体系というものを考えるというだけであって、消費者が不在になった形で独禁法改正が行われようとしておるということに問題があるのです。これはまあいずれ法案が出たら委員会で審議をし、参考人なんかも呼んで十分聞きたいと思っておるところなんですが、きょうまだ正式の法案が出ておるわけじゃありませんから、きょうの質問はこの程度にしておきましょう。  私の主眼は、公取だけでやるのではなくて——公取が独占しておるのだという説もあるのだよね。そうじゃなくて、消費者をもっと考えて独禁法改正をしなければいけないのじゃないか。同時に、法務省自身もそういう角度から新しい立法とかなんとかということを十分考慮する必要があるんではないかと言うことを言っておるわけなんで、これは大臣が来たらちょっとあとで聞きたいと思っておりますが、あるいは別の機会か、一応これで……。  そこで、刑事局長が来ておられるのでお聞きするわけですが、この二、三日前に出たのですが、まあ三菱重工なりあるいは間組などのことがあってから出たらしいのですが、計画的集団凶悪犯罪防止法、仮称ですけれども、何かよくわかりませんが、そういうふうな法律をどこかの方でつくろうという動きがあるらしいというのですけれども、どうも法務省は、そういう法律は現行法で、特に爆取で十分賄えるということで、こんなものつくる必要ないというようなことらしいですね。よくわかりませんがね。そこら辺のところはどういう考え方なんですか。
  46. 安原美穂

    ○安原政府委員 いま御指摘のように、例の間組の爆破事件を契機といたしまして、新聞あるいは、私直接聞いているところによりますと、与党自民党と社会党の国対委員長さんらとの間で、これは何とかしなければならないというようなお話があった。それで与党の方で何かこれについて適切な対策を講じなければならぬことは言うまでもないが、立法上不備があってこういうことが防げないとすれば、何か考えなければならぬじゃないかという御議論があったようでございまして、そのことがわれわれの方にも伝わってまいっておりまするが、現在のところ法務省といたしましては、何か法案をつくるというような段階にはまだ至っておりません。
  47. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまのは国対委員長でなくて、きっと政審会長でしょう。まあどっちでもいいですが、法案をつくるに至ってないというのはどういうことなの。そういう気持ちはないというのか、立法だけで問題が解決するというのはおかしいのだけれども、現行法で十分だということですか。
  48. 安原美穂

    ○安原政府委員 この重大な爆弾事件の検挙、処罰を的確にやるということは、ひとり法務当局だけの問題ではなくて、一線の警察当局の重責でございますし、警察当局の御意見も聞かなければいけない問題でございますので、法務事務当局として必要はないということを断定する立場にもないと思いますけれども、一応私どもの考えといたしましては、事柄、罰則自体に関しましては一応整っているのではなかろうか。問題は、いかにしてこのような犯人を検挙するかという点においてて、法令手続上、あるいは法律上の不備があるかどうかということは一度検討してみる必要があろうけれども、これもなかなか、今日の民主主義憲法体制下において、人をつかまえやすく、あるいは住居に立ち入りやすくするということには、なかなかむずかしい問題があるのではないかというふうに思われるというような気持ちで現在はおります。
  49. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこでいま問題になっているのは爆発物取締罰則、いわゆる爆取というやつ、これがまたわからないのですよね。わからないというのは太政官布告でしょう。この太政官布告が、いいですか、新しい憲法になってなお有効だという根拠、これは判例があるからして有効なんでしょうけれども、形式的な論理の積み重ねではあるのだけれども、だから、それが有効であるとか無効であるとかということの形式的な論理は、現在のところ判例があるからぼくは聞きませんが、いわゆる爆取というのは率直に言って、明治十何年か、十七年だったかの太政官布告で非常に古い法律だし、全く時代が違ってきているのだから、あなたの方としてもこれは現状においてはいろいろ問題点があるということは感じておられるわけですか。
  50. 安原美穂

    ○安原政府委員 いま御指摘のように、太政官布告、明治十七年、当時のテロ事件の頻発を背景として生まれた法律のように承知いたしておりまするけれども、御指摘のようにこの法律が合憲であるということは判例の確立したところでございます。したがって、私どもとしてはこの法律に特段の不備があるとか、行き過ぎがあるというふうには考えておりませんけれども、法制審議会の改正刑法草案によりますと、その一部がやや態様を変えながら、その趣旨を生かしたものとして数条取り入れられておるようでございます。そういうことからいきますと、将来刑法の改正ということになれば、いわゆる爆取につきましてもその内容を改めて見直す必要はあろうかというふうには考えております。
  51. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この法律はあれでしょう、「治安ヲ妨ケ」とか、いろいろな目的罪で主観的要素が入っているわけですが、未遂でも死刑でしょうう。——未遂は死刑にならないのか、どうなっているの。——その次のあれだね。非常にこれは刑が重い。未遂は死刑ではないけれども、致死の結果が生じない場合でも死刑を規定しているのでしょう。どういう場合にこれは死刑になっているの。
  52. 安原美穂

    ○安原政府委員 爆取は、いま稲葉先生御指摘のとおり、未遂の場合は五年以上の懲役または禁錮でございますから、使用したという状態においては死刑があり得るということになっておりますが、私は、この適用を受けて死刑になった判決があるということはちょっと承知しておりません。
  53. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 こんなので死刑になっちゃかなわないからね、これは。致死の結果が生じなくても死刑になるのでしょう、条文上は。それが現在も生きているという。そんな、めちゃくちゃですよ。明治十七年というのはどういうときか、ぼくは知らないけれども、そんなのがいままで生きていて——これはあなたの方としても、将来は改正をしたいという考え方でいることは間違いないのでしょう。
  54. 安原美穂

    ○安原政府委員 この爆発物取締罰則の規定の趣旨を生かしました改正刑法草案の百七十四条にはは、「爆発物を爆発させて、人の生命、身体又は財産に対する危険を生ぜしめた者は、無期又は三年以上の懲役に処する。」そうして「その結果、人を死亡させた者は、死刑又は無期もしくは五年以上の懲役に処する。」といたしまして、草案自体も、致死の結果を生じた場合には死刑があり得るというお考えのようでございますが、こういう規定をにらみながら、将来爆発物取締罰則については検討してみたい、かように考えております。
  55. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 このところ、新聞なんかに出る例から見るのかもわかりませんけれども、どうも検事の起訴が非常に無理がある。そうして無罪になったり、あるいは懲役刑の求刑が罰金になったり、罰金の執行猶予のつくのまでありますけれども、そういうのがどうもこのごろ多いように感じられるわけですよ。そこで刑事局長、これは大臣のいるところで聞いた方がいいのですが、無罪になるということ、これは一体どうなんだろう。いいことなのか、悪いことなのか、どうなのか。
  56. 安原美穂

    ○安原政府委員 答えやすくして非常に答えにくい問題でございますが、事柄を、公訴権を提起する検察官の立場から申し上げますならば、検察官は有罪を得る見込みをもって起訴したわけでございますが、結果において無罪になったということは、検察官としては結果的には見込み違いであった、という意味においては一種の遺憾なことでありまするが、他面、被告人が、無罪であるべきものが無罪になったという意味においては、あるいは喜ぶべきことであろうということで、いろいろな見方ができる問題でございます。
  57. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 昔大阪に小林芳郎という有名な、検事正から検事長になった方がおられましたよね。この人にある検事が、事件が裁判になって無罪になったのですね、それで怒られるかと思ってあわてて報告に行ったわけだ。そうしたら小林さんがその検事に対して、「ああ、よかったね」と言ったというんだね。それでその検事は初めて目が開いたという話があるのですけれども、その話をぼくは検事総長の竹内さんの前にあそこでしたことがあるのだよ。そうしたら竹内さんは「私はそんな神様みたいな心境になれません」と言っていたけれども、なかなかむずかしいところですね。一人の無辜を罰することがなかったという点においてよかったということも言えると思うのですけれども、どうも少し起訴が乱暴と言うのかな、どう言うのかな、一つの前提的な考え方に立ってやろうとする。その考え方というのはいわゆる大衆運動、住民運動、こういうふうなものに対しては、これはもう悪いのだという考え方、そういう考え方、悪いと言わぬかもわからぬけれども、とにかくそういう前提のもとにどうもやっているような感じを受けてならないのですよ。チッソの事件もそうだし、それから福岡の事件もそうだ。こう思うのですが、たとえば今度判決になった神戸簡裁の事件がありますね。種谷という教会の牧師の事件、これも無罪になったわけですけれども、これなんかも、内容いろいろあると思うのですが、まずこれの逮捕の関係がよくわからないのですよ。これは法務省関係じゃないと言うかもわからぬけれども、どういうわけでこれを逮捕したのかもわからぬので、その経過はどういう経過ですか。
  58. 安原美穂

    ○安原政府委員 まずもって無罪の問題で、起訴が乱起訴じゃないかというような御指摘があったと理解いたしますとすると、それは乱起訴ではないということをひとつ御理解いただきたいと思いますのは、たとえば昭和四十七年の起訴件数が全部で二百十二万五千五百五十二件ございますが、そのうち確定裁判のありましたものが二百二万四千三百六十一人でございまして、そのうち無罪を言い渡されたものが四百二十二人で、三百二十三人が無罪で確定しておるということから見ますと、これを統計で見ますと、無罪率はまさに〇・ ○一%ということでございまして、わが国の検察官の起訴が九九・九%まで有罪であるということは、巨視的に見まして決して乱起訴ではないということを御理解いただきたいということを、まずもってお願いをしたいということでございます。  次に、なぜこの尼崎のいわゆる牧師さんを警察が逮捕したのかということでございますが、これは聞くところによりますと、出頭を求めたが出頭に応じなかったので、逃走のおそれありという判断であったのではないかというふうに思われます。
  59. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの全体の起訴件数というのは恐らく略式も入っているんでしょう。道交法なんかも入っているんでしょう。入っているの、入っていないの。入っていれば数がうんとふえるのに決まっているじゃないの。そのうち道交法とか略式関係はどのくらいあるの。半分ぐらいあるでしょう。
  60. 安原美穂

    ○安原政府委員 私の記憶によれば百万件ぐらいはあろうかと思います。
  61. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 百万件というとどのくらい、半分ぐらい。全部で二百何万件。
  62. 安原美穂

    ○安原政府委員 大体二百八十九万です。
  63. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 大体三分の一か。多いですね。そして略式が多いですからね。傷害とか業過なんかでもほとんど略式ですからね。いずれにしても、無罪の率というのはどうやって勘定するのか、勘定の仕方も違うからあれですけれども。  出頭に応じなかったからといって逮捕したんですね。すぐその日に釈放したらしいですね。これはどういう逮捕の仕方をしたのかな。教会まで行って、中に入っていって逮捕したのか。
  64. 安原美穂

    ○安原政府委員 実はそこまではわかりません。
  65. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこまであなたに聞くのはちょっと無理ですからあれですけれども……。  そこでこの事件についても、これは学生が一人いますね。名前は言わないけれども、たとえばSという学生がいるでしょう。この人はその学生の保証人ですね。この人はお父さんがいないので、この牧師さんが保証人になって、前にも自分の家に一緒に住んでいたりなんかしているわけでしょう。そういうようなことが何かあって、いろいろ説得したりしているわけですね。それからもう一人の人はあれですが、いろいろな状況があるわけだね。こんなのはあなた、起訴するあれもないと思うのですがね。恐らくぼくは、裁判の結果どういうふうになろうともそれは別だ、とにかくこういう事件を起こしている、学生が。学生といったって高校生でしょう。それが事件を起こしているというんでしょう。そしてそれをかくまったという形が形式的にあるから、それを起訴しないと示しがつかないというか、一般予防ができないというか、そういうふうなことから、公判でどうなってもいいから起訴しようという形でやったんじゃないかと思うのですが、ちょっとこれなんかも国民の常識から反する起訴のように考えられてならないのですよ。学生は二人とも大学に入ったんでしょう、一旦復学して。大学に入ったのと起訴したのと、日時関係はどうなっているの。
  66. 安原美穂

    ○安原政府委員 ちょっとそこまで正確には承知しておりませんが、恐らく大学入学前に起訴が行われたものと思います。
  67. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これはいろいろな問題がありますから、信教の自由とか宗教の自由ということについてどうとかいういろいろな議論があるから、それはここでしても、これは筋が違いますからここではいたしませんけれども、これ一つとってみてもどうもあれですね。それで、この少年たちは母親と一緒に警察の方に自分で出頭しているんですから、そういうような関係から言ったって、かくまったかどうか、法律議論は別として、どうも逮捕して起訴するまでのことはないので、しばらく処分留保で模様を見ていて、後から落とせばいい事件だと私は思うのですが、こういう点は、おきゅうを据えなければならぬという考え方が、どうも治安主義というか、そういうものが強いのじゃないかというふうに思うわけです。  そこで、いろいろな問題を聞いて恐縮ですけれども一つ聞きたいのは、ちょうど外務省の方も来ておられる、人権擁護局長もおられるので聞きたいのですが、刑事局長にも関係があると思いますが、たとえばいま言われておるのは、早川あるいは太刀川両氏、そういうようなものについて、ぼくは向こうの裁判所でこういう裁判が行われた、その裁判がいいとか悪いとか、そんなことは聞きません。それはここで聞くべき筋合いのものじゃありませんね。ただ、人権擁護局長に聞きたいのは、日本人が——その罪があったかないかわかりません、それは別ですよ、裁判の結果とかなんとかということは抜きにして、少なくとも、たとえば向こうで三日間も寝かせないというようなこととか、きわめて長時間に及ぶ取り調べの中で、いつでも死刑にできるとか、家族も逮捕したとか、いろいろなことを言っていますね。弁護士の接見回数や接見内容も制限したとか、いろいろなことがあるわけですね。そういうふうなことについて、これは日本人が人権を、そのことだけですよ、そのことで言うのですよ、人権を侵害されたというふうに考えるのか考えないのか。あるいは、そんなことについては法務省としては、人権擁護法の立場からいっても全く関係ない。日本人であろうとも外国でできたことなんだから全く関係ないのだという考え方でしょうか。その後の方を先に答えてください。
  68. 萩原直三

    ○萩原政府委員 お答えいたします。  私たち人権擁護立場から見ますと、日本人の場合ももちろんのこと、外国人の場合につきましても、その人権が守られなければならないということは常々考えております。この早川さんの問題につきましても深い関心を持っております。ただ、これは私から申すまでもございませんが、早川さんは、御承知のとおり韓国の国内法に違反したとして刑事訴追を受けて、一、二審判決を受けておるわけでございまして、一般韓国人と同様に、韓国の刑法に基づいて制定されました韓国の刑事法に従って裁判を受けておるという状態でございまして、これまた御承知のとおりでございます。そこで、帰国後いろいろお話があるようでございますけれども、その言われることが果たしてそのとおりであるかどうかということが問題のポイントになろうかと思いますが、いまの状態ではその事実を確定しようがないわけでございます。したがいまして、いま御質問の趣旨において早川さんが人権の侵犯を受けているかどうかということについては、何とも言い得ない状態ではなかろうか、かように考えております。
  69. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 外国人が日本にいての問題なら、これは日本の問題になるでしょう。それから日本人が外国に行っての場合でも法務省関係人権擁護の問題になりますね。それはわかるわけでしょう。だから私は、裁判がどうとか、どういう法律違反だとかなんとかということを言っているのじゃなくて、そこでどういう取り調べを受け、どういうふうな拷問を受けたとか、そういうことが言われておるならば、本人が言っているなら、そのことは外国において行われたことであっても、日本人ならば、日本に帰ってきている以上は、帰ってこなくても属人主義でそうですけれども、当然これは人権侵害、人権侵犯というか、そういうふうなことのオブジェクトになるのだろう、こう言っているわけですよ。そのことは間違いないのじゃないのですか。審理がどうとか言っているのじゃないのですよ。
  70. 萩原直三

    ○萩原政府委員 私どもは、人権侵犯の疑いがありという場合には、事案にもよりますけれども、人権侵犯事件として調査を開始するというのを職責といたしております。しかし、基本的人権を侵犯したかどうかということは、やはりそのもとになる事実が果たして認められるかどうかということが何と申しましても前提にあり、核心になるわけでございます。早川さんの場合には、その事実を明らかにしようとするすべがないのではなかろうか、かように考えております。
  71. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 あなたの答弁は先の方へ行っちゃっているのですよ。そうじゃないのですよ。私の聞いているのは、日本人が外国で、私は裁判のことを言っているのじゃないのですよ、収容されたときに拷問を受けたとかなんとかということだとすれば、事実があったかないかは別ですよ、それはあっても話しにくいかわかりませんけれども、そのことが言われていることだけで、もし本人からあそこでこういう人権侵害があったということが法務省人権擁護局へ申し出があったときには、あなたの方はどうするのですか。これは事実が明らかでないからもうだめだと言うのですか。事実が明らかでないかあるかは調べてみなければわからないので、本人からこういうふうな人権侵犯があったという申し出があれば、あなたの方は調べざるを得ないでしょうが。どうやって調べるかは別の話ですよ。それを一応受け入れざるを得ないでしょうが。
  72. 萩原直三

    ○萩原政府委員 早川さんの問題は除きまして、  一般論としての御質問の趣旨であろうかと思います。その点について私どもの考えなり、日ごろ行っていることをお答え申し上げて、御理解を得たいと思います。  おっしゃるとおり、本人からこういう侵害を受けたという申告がございます場合には、もちろんその申告の事実を十分に聞きまして、そして調査すべきかどうかを考えまして、今後のわれわれのとり方を決めるわけでございます。調査することによってどうなるかわかりませんけれども、そのような疑いがある場合にはもちろんできるだけ調査して、その事実関係を明らかにする。その結果に基づいて、事案に応ずる適切な処置を講ずるように努力をしたいと思っております。
  73. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまあなたの言われた中で、問題は、調査すべきかどうかということなんでしょう。ではどういう観点から調査すべきかどうかということを決めるのかということですよ。こういう人権侵害でしょう。だから私はたびたび言うように、裁判のことを言っているのじゃないのですよ、外国の裁判のことをかれこれ言う筋合いはありませんから。そうじゃなくて、調査すべきかどうかということについて、外交的な配慮というものもあなたの方としては加えざるを得ないのですか。そこですよ、問題は。答えにくいですか。
  74. 萩原直三

    ○萩原政府委員 早川さんの問題に戻ってきたようでありますけれども、早川さんの問題につきましては、やはり先ほど冒頭に申し上げましたとおり、韓国の法令に基づいて裁判を受けたということでございます。それを人権侵犯の面からどう考えるかということになりますと、もし決める場合には、そういう早川さん自身がおっしゃるような事実があるかないかを調査せざるを得ないわけですね。しかし、ただいまの状況ではその事実を確定する方法が考えられない。早川さんの言い分を聞く以外にその事実をはっきりさせる方法がわれわれとしてはあり得ないわけです。しかも韓国の国内法令によって裁判を受けたという事情がございますので、その裁判自体についてとやかく言うことはやはり差し控えるべきではなかろうか、かように考えております。
  75. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから、裁判のことをかれこれ言うということを言っておるのじゃないのですよ、私は。どうもよくわからないのですが、あなた方は、人権侵害があったというふうに太刀川さんなり早川さんから訴えが出たときに、あなたの方としては結局本人の言い分以外にないのだ、だからこれはだめだということですか。端的に言うとそういうことですか。それでいいのですか。
  76. 萩原直三

    ○萩原政府委員 早川さんのことは新聞で承っておるだけでございまして、早川さんからわれわれの方に何の申し出もございません。もし申し出がおありになれば、もちろんその言い分を十分聞きまして、その上でわれわれがそれにどう対処するかということを考えたいと思います。
  77. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 申し出がないと言うけれども、申し出があってもなくても職権でやれるのでしょう、これの規定は。どうなっておるのですか。
  78. 萩原直三

    ○萩原政府委員 おっしゃるとおり職権でやるべきものでございます。ただ、事案によりまして、当事者の申告があるかないかということも調査を開始する一つの重要な参考資料にいたしております。
  79. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 答えにくいかもしれないね。それは立場、わかるからね。それは外交上の問題に発展するかち、あなたに聞くのは悪いので、大臣に聞きたいのだけれども大臣はまだ参議院の予算委員会やっておるから。恐らく大臣だったらいい答弁があると思うのだけれどもね。  そこで外務省の中江さん、いま法務省の言うのを聞くと——私は、外国で裁判を受けたが、裁判内容がどうだとかいうことを聞くのじゃないと再三断っているのです。そんなこと、外国の主権の問題だ。日本人が向こうからいわゆる不法な取り調べというか、虐待というか勾留というか、何と言うかわかりませんが、そういうのを受けたという申告があったときに、その方法、調べようがないと法務省は言うのだ。そうなのか。それでいいのですか。そんなことでいいのですか、日本人の保護が。そんなことないよね。日本人の国家主権の問題だ。何もしないのですか。それはどうするのですか。
  80. 中江要介

    ○中江政府委員 ただいま御質問のような問題につきまして、日本国政府が国際法上の問題として人権問題を相手国に、いずれの国でありましても、持ち出すというのには、現在の国際法の発展の段階では、いきなり直接人権について相手に公権力を背景として何らかの措置を要求するなり調査するなりということは、まだできかねるというのが私どもの認識でございまして、これがヨーロッパにございます人権裁判所のようなものがあるとか、あるいは国際的な人権委員会とか、そういったものの活動が国際社会で大幅に受け入れてこられるようになりますと、先生おっしゃいましたような問題について、政府としても根拠を持って相手国に迫ることができる。  それじゃ一体何もできないかという点につきましては、現段階では、御承知のように海外にあります自国民保護に関連する外交保護権というものがございます。その外交保護権の面から本件を取り扱うという場合は、いまの段階では公正な裁判が行われたかどうかというところから出発するわけで、たとえば人権が侵されたと思う個人が、相手国で相手国の法制のもとで人権問題を訴えて、にもかかわらずそれが公正に取り扱われなかったということになれば、これはその問題として外交保護権を行使するかどうかという問題に成り上がってくるというのが現段階での国際社会の慣行であり、また慣習法である、こういうふうに認識しております。
  81. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから私が言っているのだよ。裁判のことじゃないということは何回も言っているのだよ。人権侵害というと、裁判によって人権侵害が行われたというふうにあなた方持っていっちゃうから話が違う。そうじゃないのだよ。そこで何だかはっきりわからないのですがね。  そうすると、こういう早川さんなら早川さんが人権擁護局へ訴えますわね。こういう事実があったんだから何とか救済してくれと言ったときに、こういう事実があったかどうかということを、外務省としては相手方へ照会することも全然できないの。これはどうなんだ。
  82. 中江要介

    ○中江政府委員 これは、御本人からそういう訴えがあるなしにかかわらず、本件逮捕が韓国で行われました時点から、私どもとしては人権を尊重した、つまり人道的な扱いをしてもらいたいという関心は重ねて何度も申し入れておりますし、家族の面会とか、弁護人のあっせん、面会とか、そういった面では当然日本政府の義務として韓国政府に申し入れておりますけれども、そのことと、国際法上の相手国に違反があった、つまり人権を無視した違反があったということを前提として申し入れるということはおのずから違ってくる、こういうことを申し上げたわけでございます。
  83. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 人権の侵犯があったということをまだ断定というか、認定するだけの資料が日本の政府としてはない。むしろ本人からこういう具体的な事実について申し出があって、これこれの人を調べてほしいということになれば、これは法務省としても外務省としても調べざるを得ないんじゃないですか。(「太刀川召喚」と呼ぶ者あり)召喚するかどうかは別として、そこのところが考えられるんじゃないの。ただ、そういうことについては、現在の日本が置かれておる国際情勢、そういうふうな、事ほど日韓の関係でしょう。そのことからして十分慎重な配慮がされなければならないというのが、あなた方の、外務省にしろ法務省にしろ、立場なら、それはそれで、その立場がいいか悪いかは別として、それは私は理解しますよ。そういうことなんですよ。だから、法務省としてもそういうふうな申し出があったときには、率直に言ってどうやって調べていいか困ってしまうんだということなんですか。法務省もそうなの。外務省も困ってしまうんだということなのか、ざっくばらんに言うと。どうなんだ、端的に言うと。
  84. 中江要介

    ○中江政府委員 私、先ほど申し上げましたように、関心を示す、あるいは憂慮の念を伝えるということは幾らでも、幾らでもというか、このことは妨げないのでございますけれども、そのことについて調査をしたいとか、調査をするとか、そういった権限を伴って相手に迫るということは、いまの国際法の秩序のもとではまだそこまで熟していない、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  85. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはあなた、日本人がこういうふうな形で人権を侵害されたということが日本の政府に申し出があったときに、そういう事実があったかどうかということを、それは権利としてかどうかは別ですよ、ただあなたの方でこういう点憂慮するとかなんとかいうことじゃなくて、具体的に、こういう申し出があったけれどもそれはどうなんだろうかということの照会程度ね、それは法律上の権限に基づくかどうかは別として、これすらできないの。それはやっていると言うの、今後やると言うの。どうなの、それは。
  86. 中江要介

    ○中江政府委員 その点は、先ほどの繰り返しみたいになって恐縮でございますけれども、逮捕から裁判進行中にも、すでに日本政府としては人権擁護の観点から本人の扱いについて何度も申し入れている。それと同程度といいますか、そういったたぐいの外交的な接触というものは、これは不可能なことではございません。
  87. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 どうもよくわかりませんがね。そうすると、早川さんなり太刀川さんが日本裁判所に、韓国の政府を相手どって、人権侵害されたからといって損害賠償の訴えを起こすことはできるのか、これはどうなんだ。
  88. 中江要介

    ○中江政府委員 これは日本の法制の問題で、ちょっと私の専門外でございますけれども一般論といたしましては裁判免除、国家免除ということで、外国は他国の裁判管轄に服するか服さないかということについて国際法上議論が分かれておりまして、日本政府の一般的なとっておる考え方は、外国の裁判所の管轄には服さないという立場をとっておる、それだけのことは申し上げられます。
  89. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうするとあれですか、韓国政府を相手にとってというか、国家というか、あるいは韓国のだれか個人——個人ならいいわけだな、それは。それを相手にして損害賠償は。国家とか政府の場合は日本裁判所に起こすことができないというの、これの考え方は。相手が個人の場合ならいいということか。わかったようなことですけれども
  90. 中江要介

    ○中江政府委員 私が、日本政府は、国家は他国の裁判管轄に服さないという立場をとっておるということの意味は、日本政府が外国の裁判所で訴えられたときには日本政府は出ていかない、そういう主義をとっているということを申し上げたわけでございまして、韓国政府が日本裁判管轄に服するかどうかは、これは韓国政府がどういう立場をとっておるかによるわけですけれども、今回の具体的な事件のような場合ですと、ローカルレミディーと普通言われておりますが、本人がまずその現地の裁判所に訴えて、自分の侵されたと思う人権の回復について争って、その結果いかんによって、外交保護権によって日本政府が何らかの行動を起こすかどうかという順序をたどるのが通常だ、こういうことを申し上げておるわけであります。
  91. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 よくわかりませんけれどもね。率直に言うと、あなた方の中にも、いまの日韓の関係というものをこのことによって悪化させては困るとかなんとか、いろいろな配慮がいっぱいあるだろうからね。だから答えが何かはっきりしない、こう思うのですがね。日本人ですからね。日本人が仮に外国の機関——政府とは言いませんよ、何らかの機関と言いましょうか、そういうようなものによって人権侵犯されたということに対して、そういう事実があったかどうかは別ですよ、事実があったということじゃなくて、あったかないかを調べるのが法務省なり何なりの仕事なんだもの。あったというのは結果の話なんだからね。そこまでに至る経過を調べるのが仕事なんだから、それに対しても余りにどうも要領を得ないというか、むずかしいというか、はっきりしないですね。どうも納得がいかないことなんですがね。  それから、人権擁護の問題でもう一つあるのですが、実はぼくもよくわからないのですがね、原理運動というのがありますね。原理運動というのはどういう運動だかぼくは知りませんよ。宗教は自由ですしね。それから何とかという政治結社をつくっておるわけですが、これは日本の憲法でも自由ですから、それをどうこうしろとかなんとかということはぼくは言いませんよ。そんなことを言ったら笑われますからね。ただ、そういう人の家族の人といろいろ会ってお話を聞いてみると、非常に困っておるわけですね。いろいろな面で困っておるわけなんだ。そこでそのことについて人権擁護局なり何なりで、たしか秋田の方とか山形なんか、あっちの方なんかでも申し出があったというふうに聞いておるのですよ。そういう申し出が何らかの機会で何件ぐらいあったか、それに対してどういうふうな処置をしたのか、これらのところをお答え願いたい、こう思うのですがね。
  92. 萩原直三

    ○萩原政府委員 私ども法務局に申し出がございましたのは秋田地方法務局でございます。その管内の、秋田県能代市内に住んでおります本間てる子さんから申し出がございまして、その長女のハツ子さん、二十一歳、という方が、四十五年九月ごろからキリスト教統一原理協会に入会して、親兄弟の意見を無視してもっぱら宗教の活動に専念して、その後、病気で、過労でしょうか、そういうふうなために、あるいは一時休みをとりたいというために実家に数回帰ってきたけれども、その後また出て行ってしまう。親がいかに説得しても全くはねつけてしまうということで非常に困ってしまう。何とかしてもらえないだろうかという申し出が四十七年の一月にございました。  これは私どもも、親御さんの立場はもちろんのこと、お子さんも、もしも誤った生活をしておるならば非常にお気の毒ですし、できるだけのことはしたいということで、親御さんの言い分も十分聞きまして、それからその方がお出しになったパンフレット類を読みましたし、それから参考人をいろいろ聞いてまいりますと、いま申し上げました本間ハツ子さんのほかに、渡辺さん、近藤さん、大高さん等数名の方がやはり同じような境遇に陥っているということがわかりました。そこでこの人たちに直接聞こうとしたのですけれども、ほとんどそれに応じてくれないわけです。そして応じてくれた方も、その教会に入ってどういうことをしているか、教会の教理はどういうものかということについては全く口を閉ざして答えてくれないのでございます。法務局の担当者もほとほと困ったらしいんで、さらに近くのキリスト教会の牧師さんにこの原理運動はどういうものだろうかというふうなことも尋ねたわけでございます。もちろん、お母さんがお出しになったパンフレットによりますと、一応原理運動の中身が書かれておるのでございますが、それはやはり原理運動を攻撃する立場の人が書いたものらしくて、客観的にどういうものか、どうしてもはっきりしなかったのでございます。  そうこうしておりますうちに問題のお子さん方が皆親御さんのところへ戻ってまいりまして、そして生活が旧に復して勤め始めているということになってきたわけです。そういうふうな状態になりました後も、やはりその教会の活動については一言も言わないのでございまして、われわれもいろいろ考えましたが、先生御指摘のような宗教の自由という問題もございますので、まあそのような一応家庭に復帰した状態になったので、この程度で終結せざるを得ないのではないかということで一応打ち切っております。  大体このような状況でございます。
  93. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そのほかにもたくさんあるのですよね。そして家族の人たちが非常に困っておられる。ただ、それは困っておられても、未成年者の場合は別として、成人者が自分の意思で入って出てこないのを、どうもこれは、ぼくもそう言ったんですけれども、何とも手が出ないというか、あれなんで……。それから、いろいろな物を何か売って歩くらしいんですね。売って歩くのについても、どうもよくわからぬけれども、いろいろのことがあるようですね。それから、言われているところの集団的な結婚というのか、あれはどういうものかよくわかりませんけれども、どうもいろいろ内容的にも、本人たちは問題ないと言っているのかもわかりませんけれども、常識的に見て問題があるのかもわからぬということもあるので、私ももっと家族の人たちの話をよく聞いてみようと思っているのです。大分話を聞いているのですけれども、いずれまたそういうような問題が出てくれば十分調べてもらいたい、こういうふうに思うわけです。  そこで、時間がないので、警察の人、ちょっと聞きたいのですが、チッソの事件に関連して、被害者側からチッソの会社の人を相手取って告訴が熊本県警にありましたよね。これは概略、どういう告訴なのかということと、これについて今後どういうふうに警察としては取り組んでいくのかということだけ、ちょっと聞かしてもらって終わりにしたいと思います。
  94. 星野鉄次郎

    ○星野説明員 現在のところ、まだ告訴を受けておりません。新聞報道によりますと、被害者、水俣病の患者同盟の方でございますが、十四日ごろ告訴するというふうに報道されてございます。いずれにいたしましても、熊本県警察といたしましては、この告訴がもしございますれば、告訴の内容を十分検討いたしまして、犯罪の要件や因果関係、あるいは未必の故意による殺人罪というようなことが報道されてございますが、そういった未必の故意の成否等につきまして、法律に照らして厳格に捜査を進めることになろう、かように考えております。
  95. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 厳格にというのはいいのですが、厳格にやるということはなかなかむずかしいから法律に触れないような結論を出そうというようなことにとられるよね。まあ、厳格にということは抽象的だけれどもね。警察としては被害者の立場に立つというわけにいかないんで、第三者の立場かもわからぬけれども、早急によく実情を調査して、そうして世間から会社側に味方をしたんだと疑われないようにやるという考え方なのかどうかという点をお聞かせ願いたいと思います。
  96. 星野鉄次郎

    ○星野説明員 ただいま御指摘のような方向で当然検討すると思います。
  97. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 横山君。
  98. 横山利秋

    ○横山委員 最初に警察にちょっと伺いますが、この間うちの集団凶悪犯罪につきまして、国民も非常な関心があり、予算委員会の締めくくり質問にも出たようでありますが、ただ、当委員会関係がございますのは、自由民主党の松野政調会長がわが党の幹部に対しまして、計画的集団凶悪犯罪防止法案をこの国会に提出をしたいという話があった模様でございまして、おとついの新聞によりますと、法務省側が不要論を出しておるようでありますが、まず、この種の問題がどういう状況になっておるのか。きのうの締めくくり質問である程度わかっておりますが、国民側から見まして、何とかもう少し、警察の努力もわかることはわかるけれども、何らかの端緒がもう少しできないものか、国民的な協力を求める方法がないものか、その捜査の状況がどういうふうになっておるのか、まず報告を受けたいと思います。
  99. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 捜査状況について御報告を申し上げます。  まず、間組の本社の爆破事件の概要から御説明申し上げたいと思います。  二月二十八日の午後八時ごろから同八時三分ころまでの間でございますが、都内の港区北青山二−五−八の株式会社間組本社九階の電算室、それから六階にあります営業部の海外工事局室におきまして、時限式と推定されます爆発物が二カ所にわたりまして爆発いたしまして、九階電算室で勤務しておりました同社の社員一名が重傷を負いましたほか、九階及び六階がそれぞれ半壊するという爆破事件が発生したのでございます。  一方、同日の午後八時四分ころ、埼玉県の与野市与野千二百三十三番地所在の株式会社間組機械部大宮工場構内第一工場変電室付近におきまして、同じく時限式と推定されます爆発物が爆発いたしまして、同工場のコンクリートべい及び工場の窓ガラスが損壊するという爆破事件が発生いたしました。  その捜査状況でございますが、まず、警視庁におきましては、同日の午後九時に間組本社爆破事件特別捜査本部を設置いたしまして、捜査員八十名を専従させて、現場検証、被害者からの事情聴取、現場周辺の聞き込み捜査等所要の捜査を推進しております。  現在までの捜査によりますと、爆発物の設置場所は六階と九階の二カ所でございまして、六階につきましては西側のロッカー内であることが判明しておりますが、九階につきましてはまだ特定するまでには至っておりません。  それから、爆発物でございますが、六階、九階の室内及び北側の空地から時計の部品、電池の一部等を発見していることや、現場付近の諸資料の中間鑑定結果等からいたしまして、確定的ではありませんが、六階につきましては塩素酸ナトリウムを主成分としました時限式の爆発物と見られます。九階につきましては時限式のみで、爆薬等の特定にはまだ至っておりません。  また、犯人像につきましても、いまのところ有力な容疑者等は浮かんでおりませんので、幅広い捜査方針のもとに捜査を推進しておる状況でございます。  次に、埼玉県警でございますが、三月一日に間組大宮工場爆破事件特別捜査本部を設置いたしまして、捜査員百九十六名を専従させまして、警視庁同様、基礎捜査を推進しておるところでございます。  現在までの捜査によりますと、現場付近から同じく時計の部品、乾電池の一部を発見していること、それから採取しました諸資料の中間鑑定によりまして、塩素酸塩系を主成分としました時限式の爆発物というふうに推定されております。  犯人像につきましても、いまのところ有力な容疑者は浮かんでないのでございますが、警視庁同様、幅広い捜査方針のもとに捜査を推進しておるという実情でございます。  両事件は、被害対象が同じ間組であること、それから発生時間がほぼ同時刻であること、それから時限式の爆弾であるというような類似点がございますので、同一グループによる犯行であることも予想されますので、警視庁及び埼玉県警の両都県警察が緊密な連絡のもとに捜査を推進しておるところでございます。  それから、これ以外のこれまでに起こりました一連の爆破事件の捜査状況について御報告申し上げたいと思います。  まず、丸の内ビル街の爆破事件でございますが、これら一連の事件につきましては、爆発物組成物の捜査、それから犯人と思われる者の目撃情報に基づく捜査等を主力にして全力を上げております。  現在のところ、丸の内ビル街爆破事件につきましては、容器でございますペールかんの製造元並びに販売先の確認に努めておりまして、七十個のうち六十個の販売先を確認いたしております。また、犯人の足取りにつきましては、地下鉄の丸の内線の茗荷谷駅及び新御茶ノ水駅付近におきまして一部確認されておりますので、両地区に対しまして大量の捜査員を投入しまして聞き込み捜査を行っております。  それから、大成建設ビルの爆破事件につきましては、これも容器でございますフジカ石油ストーブのオイルかんの製造元の確認、それからこれの流通経路からの犯人割り出しが主力でございます。  それから、三井物産館内の爆破事件につきましては、犯人と思われる不審者のモンタージュ写真の作成ができましたので、これの手配等によりまして犯人の追及をいたしているところでございます。  これら一連の捜査は、ある程度進展を見ておるというふうに考えております。
  100. 横山利秋

    ○横山委員 御苦労さまです。莫大な人員を投入しての御努力に敬意を表しますが、お聞きしたい一つの問題の焦点は、いまの捜査状況は現行法体系では不十分なことがあり得ますか。つまり、与党の内部にございます、この種の問題につきまして計画的集団凶悪犯罪防止法案、その法案を意図せられる意味の中にあると思われる、いまの法体系における許された権限では不十分であるということがいまの捜査の中から考えられるのですか、どうでしょう。
  101. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 これらの爆弾事件の捜査につきましては、警察庁では昨年末に警察庁次長を長とします爆発物の対策委員会を設置いたしまして、爆破事件に対処するための体制の強化であるとか、あるいは装備、資器材の整備であるとか、あるいは火薬類等爆弾の材料に対します規制の強化その他の諸対策につきまして検討を進めております。そして、すでに予備費によります処置など、相当の部分につきましてはその実現が図られておるという実情でございます。各種規制の問題等につきましては、関係省庁との連絡協議にまつべきものが非常に多うございますので、そういう問題につきましては、関係各省庁との協議等によりまして速やかな実現を図るというふうなこと、その他各種対策について順次検討を進めて、基本としましては、国民の皆さんの御協力を得まして、この種事犯の抑止とそれから早期の検挙に努めたいというふうに考えております。
  102. 横山利秋

    ○横山委員 お答えは十分ではございません。要するに、いまのお答えは、各予算も少し増額したし、各関係省庁との協議を続行しておる、その方式においてやり得るというふうに印象を受けたわけでありますが、そう考えて差し支えございませんか。つまり、私がお伺いしたがった点は、現行法制下における捜査権限ではこの種の犯罪を未然に予防するに不十分であるということがあり得るか、こういう意味で御質問をしているのですが。
  103. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 現在私どもは、現行の与えられました法制のもとで全力を上げてやっておりますので、そういう現在の条件の中でできるだけ早く犯人を検挙したい、このように考えております。
  104. 横山利秋

    ○横山委員 法務省にお伺いいたしますが、新聞で見た限りにおける法務省の御意見でございますが、「法務省は新立法は不要である、現行法で対処できる」という趣旨がこの新聞では承知されるわけでありますので、改めて法務省の見解を伺いたいと思います。
  105. 安原美穂

    ○安原政府委員 先ほども稲葉先生の御質問にお答えいたしたわけでありまするが、爆発物取締罰則とか、あるいは原材料の規制に関します火薬類取締法とかいう罰則自体につきましては、一応法務省事務当局といたしましては整っておるのではないか。問題は、いかにしてそういう罰則を適用する対象となる人間を発見するか、検挙するかということにある。それは言うまでもないことであるが、その検挙、処罰が非常に困難であることは事実でありますので、その検挙、処罰を容易にする法制的な手だてというものが現行憲法下にあるかということは、一応検討に値する問題ではないかということでございますが、いまだ結論を得てはおりません。現行憲法下において捜査の困難というのは、いわば一種の、民主主義憲法体制下における必要悪のようなものでもあるとも思われる点もありますので、なかなかいま以上に逮捕しやすくし、あるいは領置、差し押さえがしやすくなり、あるいは立ち入りがしやすくなる法制というのは、かつて警察官職務執行法の改正というようなことが問題になりましたけれども、なかなか現情勢下においては困難ではないかという一応の見解を持っておりますけれども、なお、大変重要な問題でもございますし、何よりもこの捜査、検挙に当たります警察当局の御意見を十分に聞いて政府としての見解を決めるべきだと思っておりますので、一応の困難さというものの見通しは持っておりまするけれども、やらないとかやるとかいうことの結論を出しておるということではございません。
  106. 横山利秋

    ○横山委員 この種の問題が発生をいたしておりますときに私ども意見を言うのはいささかなんでございますけれども、長期的に見た問題と、短期的に、いま感情的におぼれたとは言いませんけれども、そういう問題とは少しやはり区別をしてかかるべきだ。したがいまして、その種の意味における立案、立法化についてはくれぐれも慎重に私どもは考えるべきであると考えております。  次に、先般新潟地裁で無罪判決を言い渡されました小西反戦自衛官裁判について質問をいたします。これによりますと、「新潟地検は三日午後、判決を不服として東京高裁に控訴」いたしました。「控訴の理由として、検察側は検察官に十分な立証を尽くさせることなく、審理を途中で打ち切り、無罪判決を下した裁判所の態度は承服できない」第二番目に、「小西誠・元三曹が怠業拒否を扇動したのは治安出動の訓練か、特別警備訓練かを明らかにする必要があるという無罪理由には誤解がある——などをあげている。」と報道されていますが、この控訴理由に間違いはございませんか。
  107. 安原美穂

    ○安原政府委員 控訴理由骨子は、いま横山委員御指摘のとおりでございます。
  108. 横山利秋

    ○横山委員 まずその点で伺いたいと思うんですが、この判決書によりますと、第七で「検察官が右証人の取調を請求したのは、当裁判所が、本件通達が提出されないため、有罪判決に至る可能性がないとして、証拠調の打切りを宣言した後である。その取調請求の時期が遅過ぎるのではないかという点は、さて置くことにしよう。それにしても、検察官の釈明によると、右証人の証言においても、通達の内容の一部は公表できない、しかし通達の内容の大部分は明らかになるのではないかと思われる、というのである。」と判決文で述べています。  要するにこの判決文は二つのことを言っています。一つは、証拠調べの打ち切りを宣した後に証人の取り調べを請求されてもいかがなものかという点が一つ。それから、仮に証人に証言をさせることになったとしても、証人が言っているように通達の一部は公表できない、大部分は説明できても一部は公表できない。その一部が実は最も重要なことであるかもしれない、とすれば、証人申請をしても意味がないではないかということが焦点になっています。その点については、判決文で言っております事実関係に誤りはございませんか。
  109. 安原美穂

    ○安原政府委員 判決のような経過であったことは事実でございます。
  110. 横山利秋

    ○横山委員 そういたしますと、この控訴理由というのはきわめて不穏当だと私は思うわけでありますね。つまり、証人調べをしてくれと言っているのにかかわらず認めなかったというような言い分は不穏当ではありませんか。
  111. 安原美穂

    ○安原政府委員 その証拠調べの打ち切りに異議を申し立てて、そして証人の調べを要求しておるわけでございまするから、またその決定というものは取り消すこともできるはずでございますから、決して不穏当だとは思いません。
  112. 横山利秋

    ○横山委員 それはまあ理屈というものであって、証拠調べの打ち切りの前になぜ証人の取り調べを請求しなかったのか。また仮にそうだとしたところで、第一の理由を認めたところで、判決文で言っておりますように、通達の内容の一部は公表できないという立場はいまもなお堅持をしておるのですか。そのときも、なおまたいまも通達の内容の一部は公表できないという立場なんですか。
  113. 安原美穂

    ○安原政府委員 証拠の打ち切り宣言というのは、当事者である検察官にとってはいわゆるきわめて不意討ちであったという意味において、証拠調べの請求をするいとまがなかったということもございますとともに、検察側といたしましては既存の提出の、または提出し得る証拠に基づいて立証ができるという一つ考え方のもとに訴訟に臨んできたということもございますので、決して、後から言ったということが、時期におくれ、故意におくれた不当な主張であるということには相ならぬと思います。  なお、いまも一部については証人としても言えない、通達が明らかにできない部分があるかどうかということにつきましては、むしろ防衛庁当局の方がおられますならば、これは行政当局の問題でもございますので、そちらからお聞きをいただきたいと思います。
  114. 横山利秋

    ○横山委員 防衛庁。
  115. 今泉正隆

    ○今泉政府委員 お答えいたします。  「特別警備実施基準」という通達そのものは秘文書でありまして、当時は提出をお断りしたわけでありますが、第一審で争われましたのは、特別警備の中に治安出動や防衛出動の場合が含まれるかどうかという点が争点でありましたから、その点につきましては航空幕僚長から裁判長あてに、特別警備というのは治安出動や防衛出動を含むものではないということを文書で明らかに回答したわけでございます。
  116. 横山利秋

    ○横山委員 幕僚長から裁判長にあてて、特別警備実施基準というものは防衛出動等ではないという文書を出した。裁判長は、それならば、おまえさんの言っておるだけでは当てにならないからその通達を一遍見せろ、こう言ったんですね。それに対して、見せるわけにはまいりませんと言ったわけでしょう。そしてこういうことになりましたので、改めて控訴するに際して、新聞の報道するところによりますと、その実施基準の一部は見せてもよろしいというふうに態度を変更したのですか。
  117. 今泉正隆

    ○今泉政府委員 お答えします。  次の裁判でどういうふうな審理がなされるのか、第一審と同じようにそういった点が争点になるかどうか存じませんけれども、次の裁判において、われわれとしては、その「特別警備実施基準」そのものは秘密文書でありますから提出をお断りするつもりでありますが、争点ができるだけ明確になるように、人的な証拠、文書的な証拠裁判に協力をしてまいりたいと考えております。
  118. 横山利秋

    ○横山委員 あなたの話とこの報道の話と違います。防衛庁の斎藤一郎官房長は三日夕の記者会見で、「これまで証人としてはレーダーサイトの司令クラスを出してきたが、今後、必要があれば空幕の幹部も証人として出廷させることも検討する。また、証拠書類として提出を拒否していた特別警備訓練計画をまるまる提出することはあり得ないが、場合によっては、一部を伏せるような形で提出することも考える必要があると思う」と言っているのは公式の話ですか。あなたの意見と違うのですか。
  119. 今泉正隆

    ○今泉政府委員 その点について、私もその新聞記事を見ましたので官房長に問い合わしてみましたら、私が先ほどお答えしましたとおり、人的な証拠、文書的な証拠でできるだけ裁判に協力をしたいということを記者会見で申したと申しております。
  120. 横山利秋

    ○横山委員 だからどうなんですか。この「特別警備実施基準」を出すことはあり得るのかあり得ないのか。
  121. 今泉正隆

    ○今泉政府委員 「特別警備実施基準」はやはりわれわれとしては秘文書でありまして、また今後基地等に対する不法侵入などが全くないという情勢下でもありませんので、それはお断りしたいと思っております。しかし、次の裁判でいろいろの争点があると思いますが、その中では、できるだけ人的にも文書的にも、その争点に対して、争点が明らかになるように裁判を協力してまいりたいと思っております。
  122. 横山利秋

    ○横山委員 あなたの言うことはよくわからないですね。この「特別警備実施基準」は出さないとあなたは明白にいま言ったね。けれどもそのほかのものは出してもよろしい、人的、物的証拠は出してもよろしい。そのほかのものでこの争点になります——「特別警備実施基準」というものが争点なんですから、そのほかのもので、この出さない実施基準の内容をうかがい知ることのできる物的証拠物件があり得るのですか。
  123. 今泉正隆

    ○今泉政府委員 その点は、次の裁判でどういった点が争点になるのかわかりませんが、仮に第一審を例にとりますと、第一審では、「特別警備実施基準」に言う「特別警備」なるものは治安出動、防衛出動の場合を含むのか含まないのかという点が争点でありましたから、それは含まないものであるということを、航空幕僚長から裁判長に改めて責任ある文書回答をいたしましたし、また人的には基地司令が証人として出廷いたしまして、同様の、そういったことは含まないのであるということを明らかに証言したわけでありまして、次の裁判であるいはそれ以外の点がまた争点になるかもしれませんが、やはり同様に、できるだけ協力をしてまいりたいというのがわれわれの立場であります。
  124. 横山利秋

    ○横山委員 わかって言っておるのかとぼけておるのか、あなたの返事はよくわかりません。あなたの言うように、幕僚長から、「特別警備実施基準」については防衛出動、治安出動に関係ございませんということを言うたにかかわらず、裁判官は、話は聞いた、けれども、それを裏づるけ実施基準を見せてもらわなければ信用できないということなんですよ。そうでしょうが。しかも、判決によりますと、「特別警備の手段としては、木銃の使用のほか、放水、催涙ガスの使用等が考えられていたが、武器防護等の場合には、重火器の使用も許される、と定められていた。」云々、云々がございまして、普通の特別警備とそれから治安出動とは実際にはそう変わりはしないということを、裁別長は疑いの目をもって見ているわけです。そうでしょう。その疑いを、いや、そうじゃありませんと言ったって、その証拠を出さなければわからぬではないかというのが問題の焦点で、だから、「特別警備実施基準」を出せと言って、出さないとあなたの方は言っておる。それを新聞では、「場合によっては、一部を伏せるような形で提出することも考える必要があると思う」と官房長が言っている。それをあなたはここで打ち消したわけだ。そういうことになりますよ、事実関係は。そう考えていいのですね。
  125. 今泉正隆

    ○今泉政府委員 その点は、先ほど申しましたとおり、官房長に問い合わせましたら、官房長はそのようにはっきりは言ってない。私が先ほどお答えしましたように、人的、物的な証拠で可能な限り裁判に協力したいということを申したと言っております。それで、私が先ほどから申しておりますとおり、次の裁判でどういった点が争点になるのかがちょっとわかりませんので、そういった仮定で申しておるわけでありますが、仮に第一審と同じような点が争点になるといたしました場合に、私たちとしては、第一審であれだけ文書的、人的な証拠を提出すれば十分争点については理解が得られたものと思っておりましたけれども、判決ではそうではありませんので、その点についてもさらに裁判に協力するように努力したいとは思いますけれども、それじゃ、先生お尋ねのように「特別警備実施基準」を出すかと言われますと、これはやはり秘文書でありまして、それを出すということは現在考えておりません。
  126. 横山利秋

    ○横山委員 だから、あなたはそういうものを出すことを考えておらないということは、私の手元にあります、三月四日の朝日新聞でありますが、防衛庁の斎藤一郎官房長が記者会見で言った——記者会見は公式ですよ、たくさんの記者がおるところです。そこで言ったことをあなたは斎藤官房長に確かめたところが、そういったことは言っておらぬ、だから出さないとここで公式におっしゃったことになりますが、それでいいかと言ってだめを押したら、あなたは事実関係はそれでいいということを言われたことになります。いいですね。  次にそれじゃ伺いますが、それならば、その「特別警備訓練」というのは一体何なのか。あなたの方が「四六警戒群で行なわれていた「特別警備訓練」とは、多数の者の集団による佐渡分とん基地への不法侵入を阻止排除するための訓練である、そして、そこでいう「特別警備」とは、平常、警備隊によって行なわれている通常警備に対比されるもので、多数の者の集団による基地不法侵入などの事犯が発生し、警備隊のみでは防ぐことが困難な場合、一般隊員もまた基地警備に当らなければならないときの警備を指す、と主張する。」この限りにおいては基地内部の問題であって、外へ出ていくようなものではないとあなたの方は主張しているわけですね。そういうことが書いてある。あるいはまた、その後の航空幕僚長の「特別警備実施基準について」も同じような内容、条件下のものですね。そういう基地内部の警備について秘扱いとする。これはどうしても出せないほどの問題ですか、逆に私が聞きたいのですが。この「特別警備実施基準」をどうしても裁判所へも提出できないというのはいかなる積極的理由に基づくものですか。いま私が判決文を引用して、こういう特別警備かと言ったら、あなたはそうだそうだとうなずいておられるのだが、そのくらいの問題が、その実施基準が裁判所へも提出できないほどの重大な問題なのか、それを拒否する積極的な理由を一遍説明してください。
  127. 今泉正隆

    ○今泉政府委員 やはり基地に不法侵入、一人の場合もありましょうし複数の場合もあるかと思いますが、そういった基地に不法侵入があった場合、自衛隊としてはそういう不法侵入を受けた場合の対処要領をそこで述べておりますので、いわば手の内というような部分もございます。そういったものについては、全国的にそういったおそれが全くないとは言えない現状では、やはり提出を差し控えるほどの秘密文書であると思っております。
  128. 横山利秋

    ○横山委員 私は少しあほらしいという気がするのです。防衛上の秘密、外交上の秘密、それが皆無であるとは私は申し上げません。外交文書や防衛の一番基本論に関する秘密がないとは必ずしも言いませんよ。だけれども、いま事はきわめて明白な問題で、基地の中へ多数の者が不法に潜入するかもしれないという問題について、それに対する警備の実施基準という問題、きわめて簡単な問題、そうしてその警備は、基地の中の一般の警備隊以外にたくさんの人も参加して特別警備をする問題、そういう実施基準が出せないということは、防衛庁が勝手に決める秘扱いの範囲、それを決める人の権限等が全く乱用されているのではないか。何でもかでも防衛庁の言うのは秘扱いか、役所の言うのは全部秘かということの、相対的な価値判断に欠けているのではないかと思うのです。  同じくこの判決文で引用いたしておりますが、刑事局長に聞きたいところでありますが、「本件通達は公訴事実の存否に関する重要な証拠であって、国がかかる証拠の提出を拒みながら、他方で被告人の処罰を求めることは、法の適正な手続を保障した日本国憲法三一条に違反する、」憲法違反だと明白に言っているわけですね。「ことに本件では公判に立会っている検察官が、訴訟準備の際本通達を閲読しているにもかかわらず、国側の当事者が利用した資料を弁護人に利用させないのは著しく公正に反する、」きわめてずばり、そういうことは憲法違反だ、そうして検察官や国がちゃんとそれを見ておりながら、弁護人にはそれを利用させないというのも公正に反すると言うておるわけですね。これが、いま私が言うように外交上、防衛上の最高機密に属するものならともかくとして、きわめて簡単な問題ではないか。きわめて簡単な問題をそこまで秘扱いにするとは何事であるか、そう思いますが、いかがですか。
  129. 安原美穂

    ○安原政府委員 いま御指摘のように公正な裁判の遂行、あるいは被告人の人権を適正に保障するというような見地からは、できるだけ秘密の文書といえども出して、適正な裁判の実現ということに協力すべきであるという基本的な原則については何ら異論はないのでございますが、それはあくまでもできるだけでございまして、そういうものが国の重大な利益を害するというときには、強制して提出させないということは刑事訴訟法自体も認めておるところでございます。  そこでその判断の問題でございますけれども、これはやはり国の行政機関がそれぞれの分担をして行政運営をやっておるといたしますれば、その当該所管当局の判断というものがやはり尊重されなければならないことも御理解がいただけるかと思います。しかしながら行政当局も、そのような公正な裁判の保障という意味から、その判断については慎重であるべきことが望まれることも申すまでもないわけでありますが、検察当局といたしましては、本件につきまして防衛庁当局がやはり重大な秘密であるという御判断をなさいましたことを、これは一見明白にそうではないということではない限りは、その判断を尊重すべきではないかという立場で本件の処理に当たってまいりました。もとより検察官は見たと思いまするが、しかしながら、検察官は被告人側が利用できないものを利用して本件を立証しようと試みたものではないのでございまして、そういうものは見ておりまするが、そういうものは出せないということを前提といたしまして、直接証拠にかわるべき他の間接証拠、人証その他によりまして本件を立証しようと試みたわけでありますので、検察官の公訴維持活動に不公正があったということにはならないのではないか、かように思います。
  130. 横山利秋

    ○横山委員 ここにこの問題についての各紙の論説及び専門家の所見が全部手元にあるわけですが、ことごとくが、今回の問題について、いま私がただしておる点について、この検察陣に対しまして不公正だと言っています。問題の焦点がずばりそこにあるということを言っています。「まず改めなければならないのは、行政当局と検察側の証拠秘匿主義であるはずだ。」これは読売ですね。それから「防衛庁側の柔軟な立場での反省を望むものである。」これは毎日ですね。それから朝日が「「国家秘密」も大切であるが、「公正な審理」「被告人の防御権」もまた、司法にとってきわめて重要な問題である。その調整をどうするか。真剣に検討されなければならない問題であると考える。」まあ、前のくだりは省略をいたしますが、ことこどくその問題に言及をしているわけです。要するに、国家秘密と公正な審理、被告の防御権という問題との、相対的な関係のどちらに重きを置くかという問題でもあろうと思う。その問題で、いま判決はこの事案を指して、きわめて端的に憲法三十一条違反だと言っている。珍しいと思う。疑いがあると言っていないのですよ。憲法違反だと言っている。そして「著しく公正に反する、」と言っている。「著しく」と書いてある。きわめてずばりなんですね。  私はもう常識的に言って、法務省にもひとつ勧めたいのであります。法務省として、この種の判決を得て、そして常識的に法務省が専門家として判断してみて、防衛庁に、こういうことは改めなさい、あなたの方の秘扱いの態度をいけないと言うわけではないけれども、相対的に見て今回はこれはまずいというふうに専門家として勧めるべきではないか。  防衛庁も防衛庁だ。少なくとも、私は聞いてあっけにとられたわけでありますが、あなたが出てきて、官房長の言っていることは間違いです、と。間違いではないが、新聞記者の記事の取り方の間違いですと言った方が正しいのかな。新聞談話もあなたは打ち消している。まだ私がきょう質問しようと思ったのは、斎藤一郎官房長の「一部を伏せるような形で提出することも考える必要がある」と言ったことについてさえ、私はそんなことでは解決にはなりませんよと言おうと思ったのですが、この官房長の「一部を伏せるような形で提出する」と言ったこともあなたは否定をして、官房長はそんなことを言っておりませんという話をされるわけであります。そういう防衛庁の態度は改められるべきだと思うわけですが、この点についてお二人の御意見を伺いたい。
  131. 安原美穂

    ○安原政府委員 まず横山先生御指摘の、判決が憲法違反というのは、これはごらん願えばおわかりと思いますが、「これに対し、被告人、弁護人は、」と言って、これは被告人、弁護人の主張でございまして、裁判所当局の判断ではないということにひとつ御留意をいただきたいと思いますが、それはそれといたしまして、公正な手続なくして公正な裁判のないことは申すまでもないわけでありますので、本件、検察は検事控訴いたしておりますので、これからの公判の経過を通じまして、検察の公正についての一般の御認識を得たい、かように考えておりますから、そのような観点から防衛庁当局にも十分に御協力を願いたいつもりでおります。
  132. 今泉正隆

    ○今泉政府委員 先ほど来答弁いたしましたが、私も先生のおっしゃるとおり、裁判に協力するという点では先生と全く同じ意見でございます。ただ、その方法につきまして、私らの方にも片や秘密というものがございます。しかし、そういった点はありますけれども、公正な裁判に第一審以上に協力をするようにいたしたいと考えております。
  133. 横山利秋

    ○横山委員 刑事局長、いまどういうつもりでおっしゃったのですか。その判決は、「これに対し被告人、弁護人は、わが国は憲法によって戦力を放棄したのであるから、自衛隊は違憲の存在であり、自衛隊につき秘匿を要する秘密は存在しないし、そもそもわが国には防衛上の秘密は存在しない、従って航空幕僚長が右通達の提出命令に応じないこと、および防衛庁長官が右通達の提出につき承諾を与えないことは、いずれもその権限の乱用であって許されない、本件通達は公訴事実の存否に関する重要な証拠であって、国がかかる証拠の提出を拒みながら、他方で被告人の処罰を求めることは、法の適正な手続を保障した日本国憲法第三一条に違反する、ことに本件では公判に立会っている検察官が、訴訟準備の際本通達を閲読しているにもかかわらず、国側の当事者が利用した資料を弁護人に利用させないのは著しく公正に反する、などと主張する。」か。そうでしたね、私のちょっと判断の誤りでしたね。これはあなたのおっしゃるとおりである。しかしながら、被告人、弁護人の主張であるにいたしましても、これは先ほど私が引用いたしました各紙の論説が一様にこれを支持しておるということに御留意を願わなければなりません。確かに被告、弁護人の主張であるけれども、この主張を一斉に各世論が支持しておるということに御留意を願わなければなりません。  さて、きょうお二人に質問をいたしました点につきましては、きわめて私は不十分で不満足であります。最後にあなた方に御注意なり要望を申し上げましたように、この種の問題が裁判で公正に争われる、証拠が公正に提出される、国が裁判に協力をして、一応役所としての秘扱いをしているものであっても、事根本に触れるような問題で、事もっと重要な公正な裁判、被告人の防御権に関する問題であるならば、そうしゃくし定規なことを言わないで、ひとつこの際提出をされるように、くれぐれも要望をいたしておきたいと思います。  もう一つ問題がございましたけれども、きょうは実は後の時間がございますので、これで私の質問を終わることにいたします。     —————————————
  134. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 お諮りいたします。  本日、最高裁判所田宮総務局長及び矢口人事局長から出席説明の要求がありますので、これを了承するに御異議ありませんか。
  135. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  136. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 諫山博君。
  137. 諫山博

    ○諫山委員 最高裁判所に質問します。  判事、検事の人事交流が最近非常にふえた。このことが法曹界で新しい重大な問題になっています。そして当委員会でもこのことがいろいろ論議されたわけですが、最高裁当局は、裁判官や検察官がいろいろ経験を積むのは悪いことではない、あるいは法曹一元化の具体化だというような立場を説明してこられました。しかし、これが現実にどのくらい奇妙な事態になっているのかということを、私は一つの事例を引いて指摘してみたいと思います。  東京高等裁判所民事第九部で、控訴人、宮公、被控訴人、国、老齢福祉年金請求控訴事件というのがあります。争点は、老齢福祉年金の受給者が公的年金給付を受けることができるときは老齢福祉年金の支給を停止する旨を定めた国民年金法の規定が、憲法第十四条、第二十五条に違反して無効であるのかどうか、これが中心的な争点になっています。  憲法第二十五条をどう理解すべきかについては、いろいろ立場の相違があることは御承知のとおりです。憲法三十五条というのは、個々の国民に対して具体的、現実的な請求権を与えたものか、それともプログラム的な規定にすぎないのか、あるいは「健康で文化的な最低限度の生活」というのはどのような水準のものでなければならないのか、さらに国の福祉政策は憲法二十五条との関連でどうあらなければならないのか、こういういろいろな見解の対立があることはわれわれの常識です。そしてこのような食い違いというのは、解釈する人のイデオロギーあるいは思想、信条によって当然結論が異なってくる、これも当然のことであります。その意味で、憲法二十五条の解釈、適用というのは、たとえば階級間の対立と余り関係のないような市民法の条文の解釈とは幾らか性質が違います。  ところで、この宮訴訟に非常に類似しているのが有名な朝日訴訟です。東京地方裁判所は、厚生大臣が定めた保護基準の内容を逐一検討して、保護基準が憲法にいう最低生活を下回るものだと断定いたしました。ところがこの事件が東京高等裁判所に回って結論がひっくり返った。そのときの東京高裁における国側の代理人に小林定人検事がおられました。小林定人検事は朝日訴訟の第二審で次のような主張をしています。「保護基準は、国の財政能力とのつり合いを考慮することの必要なことはもちろん、国政全般にわたる配慮をも無視することのできない政治的、行政的判断の問題である」さらに「末高証人の言うボーダーライン層の生活が人間に値する生活でないと見ることはできない。保護基準を引き上げると、自力で生活を維持してきた者にも保護を与えなければならなくなり、保護人口の増加を来すおそれがある」こうして控訴人の主張、原告の主張に真っ向から反対をしたわけです。  さらに、この事件が上告審に回ると、小林定人検事は上告審の答弁書の中で次のような主張をしました。「保護基準を引き上げることは、関連社会保障費や賃金等の引き上げを招来するので、膨大な財政上の裏づけを要するから引き上げられない」こういう、生活保護者にとってはがまんのできないような主張を東京高裁、最高裁の答弁書で繰り返しておられるのであります。  さらに、朝日訴訟あるいは宮訴訟に共通しているのは、いわゆる社会保障裁判で司法権はどのようにあるべきか、これが争点になりました。そして朝日訴訟では、小林定人検事は国側の代理人として、「社会保障の基準は専門的、技術的判断と財政その他国政全般への配慮のもとに行われる政治的判断に基づくもので、司法審査は慎重でなければならない、自己抑制されなければならない、一定の限度があってしかるべきである」こういう主張をしました。朝日訴訟の上告審の答弁書でも同じような主張がされています。  これは確かに一つの見解です。しかし、朝日訴訟の原告、宮訴訟の原告から見たらがまんのできない見解であります。そして自民党政府の立場を最も忠実に代弁した見解であります。私は、小林定人検事が国の代理人としてこういう主張をしたことには別に文句を言うつもりはありません。しかし、この小林定人検事が、現在検事ではなくて裁判官になった。いま私が読み上げたような点が根本的な争点になっている宮訴訟で、その裁判を担当する裁判官として地位を占めている。これはどう考えてもおかしいし、あってはならない事態だと思っております。  私は、小林裁判官には次のような態度があり得ると思います。一つは、朝日訴訟で国側の代理人として主張してきたことは、小林さんが法律家である限り自分の信念に基づく立場でやったはずです。ですからこの立場で宮訴訟に臨む。そうすると、宮裁判で小林裁判官がどういう立場をとるかというのはもう判決を聞かなくても明白です。これが一つ立場です。もう一つ立場は、あれは国側の代理人として述べただけだ、自分の本意ではない、きのうはきのう、きょうはきょう、こういう立場で、朝日訴訟の国側代理人という立場と全く無関係裁判に臨むということもあり得ると思います。しかし、これは人間としては下劣な態度です。法律家としても許されない態度だと思います。私は、小林裁判官にはこの二つの立場しかあり得ないと思います。  こういう経歴を経てきた人が宮訴訟裁判官としてとどまることが適当だろうかどうだろうかという問題が提起されたのは当然だと思います。これは控訴代理人の方から小林裁判官に対して現に回避の勧告がなされております。現に裁判中の問題です。ですから、この委員会でずばりその裁判を左右するような論争は私は避けた方がいいのではないかと思います。しかし、法曹界で問題になっている判検事の人事交流というのが、最高裁は経験を積んだ方がいいとか法曹一元化というようなことを言っているけれども現実的にはこういう問題を生み出してきているんだ。これでもやはり問題はないと考えているのか。私は一般的な議論としてではなくて、小林定人裁判官が現に果たしている問題に即して、最高裁当局の見解を聞きたいと思います。
  138. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 諫山委員御指摘のように、ただいま御提起になりました問題は現に係属しております具体的な事件に関連する問題でございますので、これに即してということになりますと、裁判との関係が非常に微妙なものがございます。私どもといたしましては、やはりそういうことと——もちろん念頭に置かないとは申し上げませんが、一般的な問題としてお答えをさせていただきたい。これは最初にそういうふうにお断りをさせていただきたいと思います。  法曹の分野で判検事の交流ということがございますが、交流の問題は裁判官、検察官だけではございませんで、弁護士の間との交流ということももちろんあるわけでございます。そういった交流は、法曹におきまして三者が一つ目的に向かって、その一つ目的と申しますのは、やはり社会正義の実現と基本的人権の擁護という共通の目的でございますが、そういった目的に向かって、立場を異にして協力し合う、これが法曹の現在のありのままの姿でございます。立場は違いますが、共通のとうとい目的に向かって、それぞれの立場から奉仕し合うということであると確信をいたしております。  現在、裁判官の任用の問題といたしましては、御指摘がございましたように、いわゆる修習生か判事補になりまして判事になっていくという制度もございますし、また検事の経験のある方、弁護士の経験のある方からも来ていただくというような制度もあるわけでございまして、そういったものができるだけ広く行われて、その結果、裁判官の層の中に、いろいろ法曹のお立場の経験をなさった方を多くしていきたいというのが私ども現実の念願でもございますし、広く申し上げて、法曹一元の理念につながる問題であるというふうに考えておるわけでございます。  それで、個々の問題ということになりますと、場合によりましては、当事者的な立場でお取り扱いになった事件が、御任官になって裁判官の席にお座りになった場合にたまたまその部にまだ係属するということもあり得るかと思います。そういった問題は、これは訴訟法上の問題として、それぞれの訴訟の中において解決がされていくはずでございますし、また、されていっておるものと確信をいたしております。  問題は、裁判官の制度として、現在の憲法下におきましてどういう形であることが望ましいか、また、どうすればそういった望ましい形にできるだけ近づいていくことができるかという観点から私どもは考えておるわけでございます。いま申し上げましたようなことになりますと、私、御指摘の裁判官と検察官の交流と申しますか、裁判官がある時期法務省に出向いて、いわゆる訟務の検事をやる、あるいは一線の検事をやる、そういったことも大きな線から申しまして決して間違ってはいない、むしろそういう機会もまたあって十分いいのではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。そうしてその結果起こってきますいろいろの問題につきましては、これは訴訟法上の立場から十分慎重に検討されて、当該裁判所がそれぞれに定められた方法によって処理されるべきことである、それはもう当然の前提にされておる、このように考えておるわけでございます。
  139. 諫山博

    ○諫山委員 私は、判検事交流の一般論を繰り返すつもりではありませんでした。いまのような答弁は当委員会でもなされておりますし、私はそのことを承知の上で、それにしても現実は余りにも問題が多過ぎるではないかという観点から、宮訴訟を提起したわけです。確かに判検事交流の中に大変問題にすべき点があります。弁護士会などからいろいろ問題提起されていることも御承知のとおりです。  しかし、私がいまここで論じているのはそういう一般的なことではなくて、小林定人裁判官のような問題が当然起こってくる。その場合に、当事者が小林定人裁判官には公正な裁判を期待できないと思うのは当然ではなかろうか、そういう仕組みをつくっているのが裁判所ではないか、私はこの点を議論しているのです。確かに、小林さんは回避すべきであるとかないとかいうことをここで議論するのは適当でないかもしれないと思います。しかし、現にこういう問題が起こってきて、当事者は不信の意思を表明しているわけです。こういう状態は、最高裁としてはやむを得ない、偶然だと思われるのか。それともこういうケースが起こった場合には、当事者が不信の念を抱くのは当然だからしかるべき措置がなさるべきだということなのでしょうか。とにかく、主たる争点で、裁判官の理論的な立場、思想的な傾向が著書で発表されたとか論文で公表されているというのじゃなくて、裁判の当事者でやり合った事柄なのです。きのうまでは土俵で取り組んでおった相手方がきょうは行司に取ってかわるというようなことになれば、本当の横綱相撲はできないじゃないか、そういう場合には行司にかわってくれという要求が出てくるのはあたりまえではなかろうか、こういう具体的な問題提起ですが、いかがでしょう。
  140. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 先ほどもお断り申し上げましたように、決して、諫山委員が御指摘になっております事件を頭に置いていないわけではございません。しかし、小林裁判官がというふうに御指摘になり、例として御指摘になってまいりまして、それについて直接私がここでいいとか悪いとかいうことをお答えすべく、余りにも生のの事件で、現在、承るところによりますと、宮訴訟におきましては小林裁判官に対して回避勧告と申しますか、そういったものが当事者から書面が出されておるという段階、しかも、一応それはそれとして、訴訟の過程において決着のついた問題であるというのではない、現にまだその点が問題として残されておるというふうに承知いたしておりますので、そういう段階で、それに具体的に触れて御意見を申し上げるということは非常にむずかしいことでございまして、何とか抽象的にお答えしたいということで先ほどのような申し上げ方になったわけでございますが、あるいはそれだけに意を尽くしていない点があろうかとは思いますが、事がいま申し上げたような段階にある問題でございますので、その点についてさらに具体的な考え方を申し上げるということは、できることならばお許しをいただきたい、そういうふうに思うわけでございます。
  141. 諫山博

    ○諫山委員 私は当事者の一方から聞いたのですが、小林定人裁判官は、朝日訴訟のときはあれは朝日訴訟のときで、今度は今度だというようなことを言われたということです。これは当事者の一方から聞いたのでありますから、小林さんに確かめたわけではありません。しかし、そういう言い方をされるとすれば、これは当事者はなるほどそうかと思う人もいるかもしれませんが、法律家としては落第だと思います。人間としてはもっと落第です。検事の場合にはこういう主張をするけれども裁判官になったら違ったことを言うかもわからない、弁護士になったら反対のことを言うかもわからないというのは、人間としても法律家としても落第です。しかしそう言わない限り当事者を納得させることができないのも事実なのです。私は朝日訴訟立場を貫きますよということになれば、私はあなたの請求を認めませんよということになるわけですから、当事者を納得させるためには、人間として法律家として落第なようなことを言わなければならないわけです。そのくらい事態は深刻です。  判検事の人事交流というのはいろいろ問題になっています。たとえば札幌高等裁判所の長沼訴訟、なぜあの裁判で訟務検事を送り込んだのか、これがいろいろ議論になっていることは御承知だと思います。幾らかケースは違いますが、家永教科書裁判で長い間東京高等裁判所裁判官をしていた人が国側の代理人になっている、これもいろいろ批判されております。これはむしろ弁護士の倫理の問題であるかもしれないし、あるいは国側が何を好んでそういう人を代理人に選ばなければならなかったのかという問題であるかもしれません。しかし、こういうことがまじめな法律家の間でいろいろ問題にされ、司法の危機の一環として論議されているということを、最高裁当局としては考えていただきたいわけです。現に東京弁護士会の会長から日弁連に対して、この問題の調査要請がなされるというようなこともありました。弁護士会としても、いまの事態は正しくないという認識に到達しているようです。  私は小林定人裁判官をよく知っているし、小林さんに別に特殊な感情があるわけでも何でもありません。判検事の人事交流が、いかにとんでもない結果を現実に生み出しているかという典型的な事例としてこの例を引用させてもらったのです。恐らく、これだけ問題が提起された以上、東京高等裁判所としてもあるいは小林裁判官としても考えるに違いないと思います。最高裁は、いま世間で批判になっている判検事交流というのが、現実にはこういう事態を生み出しているのだということをぜひ認識していただいて、世論の批判、とりわけ在野法曹の非常に憤りに満ちた批判を念頭に置いていただきたいということを要望して裁判官に対する質問を終わります。  私は次に、警察官が違法な職務執行をやっている、きわめてしばしばとんでもないことをやっているということを、幾つかの実例に基づいて検討してみたいと思います。  ことしの二月二十一日、宮崎市橘ビジネスホテルで、福岡市の染川龍也という二十八歳の会社員が窃盗容疑で宮崎警察署に連行され、そこで逮捕されました。ところが染川さんには完全なアリバイがあるということで、翌二十二日午後五時過ぎ釈放されました。染川さんはこの不当な取り扱いにがまんができず、宮崎地方法務局人権擁護課に人権侵害の訴えを起こしました。こういう事実があったかどうか、警察当局にお聞きします。
  142. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 御質問の事案は、本年の二月二十二日、宮崎県の宮崎署におきまして起こった事件かと思います。  内容について御説明申し上げます。二月の二十一日の夕方でございますが、宮崎市内の宮崎第一ホテルから、長期滞在の予定でありました自称甲という男が十七日の夜から帰ってこないので、本人の泊まっていた部屋を調べてみたところが、二月の十七日に同ホテルの宿泊客が盗難に遭ったという背広、運転免許証が見つかった、こういう届け出が宮崎署にあったのでございます。  この事件を捜査しておりましたところが、同日の午後八時四十五分ごろに同市内の橘ビジネスホテルから、宿泊客が現金や手形等を盗まれたという旨の同じく届け出が同署にあったのでございます。そこで臨場の上、関係者から事情を聴取したのでありますが、当時同ホテルには二十五人が宿泊中でございまして、うち二十三人がフロントにかぎを預けまして外出中であったのであります。そうしますと在室者は二名ということになるわけでございます。そこでこの二名から事情を聞こうといたしましたところ、一人は在室しておったのでございますが、Sさん、これは誤認逮捕された方でありますが、Sさんはフロントにかぎを預けずにそのまま外出しておったということがわかったわけでございます。そこでさらに捜査を進めましたところ、関係者の申し立てから、Sさんの人相あるいは着衣等が宮崎第一ホテルに宿泊をしておりました自称甲と非常によく似ておるということがわかりましたし、また、Sさんが近くの駐車場に預けておりました自動車のナンバー照会をしましたところ、盗難車両として手配をされておるということが判明したのでございます。  このような捜査の結果から、Sさんに対します宮崎第一ホテルにおける窃盗の容疑が濃厚であるというので、同日の午後十時四十分ごろ、ホテルに帰ってきましたSさんを、承諾の上、宮崎署に任意同行を求めまして、署におきまして捜査をしました結果、宮崎第一ホテルの従業員二人にSさんの面通しをさせましたところ、Sさんが自称甲というのに間違いないということの申し立てを受けたのでございます。また、Sさんの申し立てる勤務先へ電話をしたのでございますが、連絡がとれなかった。それから、盗難車両につきまして納得のいく答えが得られなかったというようなことがございましたなど、Sさんの窃盗容疑は深まりましたので、県外の居住者でもあり、このまま帰しますと逃走をしたりあるいは罪証を隠滅するおそれがあるというふうに判断いたしまして、二月二十二日の午前一時にSさんを宮崎第一ホテルの窃盗の事実で緊急逮捕をいたしまして、同日の午前十時に宮崎地方裁判所裁判官から逮捕状の発付を受けた、こういう事実でございます。  その後の捜査によりまして、Sさんの誤認逮捕ということが明白となりましたので、二月二十二日の午後四時五十分に釈放いたしまして、この捜査の経過を説明いたしまして謝罪するとともに、Sさんの勤務先に対しましても謝罪をした、こういう事実があったわけでございます。
  143. 諫山博

    ○諫山委員 Sさんと言われましたが、新聞でもう名前が報道されていますから、染川さんで聞きます。  ホテルのフロントにかぎを預けてなかったとか、あるいは人相、着衣が似ていたというようなことで逮捕されたんじゃたまらないと思います。参考人のいわゆる面割りがどのくらい当てにならないものかということは、たとえば、私と同じ法律事務所で弁護士の仕事をしている谷川君が犯人と間違えられて逮捕され、警察まで引っ張られるという問題が起こって、これは国家賠償請求をして、県が敗訴するというような問題が起こったわけですが、この事件で警察はどういう反省をしていますか。
  144. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 ただいま御説明申し上げましたとおり、Sさんにつきましてはいろいろの点があったわけでございますが、特に二人の従業員からはっきりした証言があったというようなことが中心になったわけでございます。被疑者と疑うべき条件は十分あったというふうには思いますが、また参考人の供述を過信し過ぎたという点、それから裏づけ捜査が不徹底であったというような点につきまして、十分反省をしておるところでございます。とにかく誤認逮補でございましたので、この種の事件が起こったということはまことに残念でございまして、本人及び関係者の方々に多大な御迷惑をかけたことをまことに申しわけなく思っておるところでございます。今後再びこのようなことのないように、適正捜査の推進ということにつきまして、より一層指導、教養の徹底を図りたいというふうに考えております。
  145. 諫山博

    ○諫山委員 新聞を見てみますと、染川さんの談話が次のように発表されています。「証拠を見せてくれと頼んだが、おまえが犯人ときめつけられた。くやしくてならない」。私は、今度の誤認逮捕の一つの出発点はここにあるのではないかと思います。警察が科学的な根拠もなしに、しっかりした証拠もないのにあの男が犯人に違いないといってきめつける。そのきめつけに基づいて参考人から面割り供述を求める。当然これは誘導的な尋問になるわけです。あの男がそうじゃないかというような質問を参考人にする。つまり、これは予断と偏見に基づく捜査がこの間違いの出発点ではないかと、私は染川さんの談話を見て思いました。そういう点は反省していませんか。
  146. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 面割りの場合の細かい具体的なことについては承知をしておりませんが、御指摘のとおり、面割り捜査というものがしばしば間違いを犯すということについては日ごろから十分指導しておるところでございます。しかし本件につきましては、結果として間違いであったということで、その面割り捜査、あるいは先ほど申し上げましたチェックをいたします裏づけ捜査というものが十分でなかったという点については、十分反省をいたしておるところでございます。
  147. 諫山博

    ○諫山委員 善良な一市民が全くぬれぎぬを着せられて、十数時間警察にとめ置かれる、これはがまんできないことです。そうして、こういうことは私自身にも起こり得るし、あなたについても、いまのような警察の態度が続けられる限り起こり得ることなんです。こういう被害者に対して警察はどうおわびし、どう補償していますか。たとえば染川さんに対しては金銭的な補償はどうするのですか。
  148. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 Sさんの具体的な補償の問題等につきましては、県警の方からまだ報告も来ておりませんので承知しておりませんが、具体的にSさんの方と県警とが連絡をとっておるというふうに聞いております。
  149. 諫山博

    ○諫山委員 刑事補償の法律はあるわけですが、こういう場合は一般的に警察はどうしていますか。これはもう仕方がないで済ましているのか、それとも何らかの補償措置をその都度講じているのか。講じているとすれば、どのような基準でどのような補償をしているのか、お聞かせくださいい。
  150. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 ケースによりましては訴訟が起きておるのもございますし、訴訟でなくて、それぞれ当事者の話し合いによって示談というケースもございます。
  151. 諫山博

    ○諫山委員 警察側には、たとえば、要求がなくてもこれだけの補償をするという基準はないのですか。
  152. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 ございません。
  153. 諫山博

    ○諫山委員 まことに驚くべきだと思いますが、これは別個に議論するとして、次の問題を質問します。  いま東京地方裁判所へ横山隆一という人が、東京都を相手に損害賠償請求裁判を提起しています。請求金額は約四百五十万円、及び謝罪広告です。  事件の経過を簡単に要約しますと、昭和四十九年三月二十一日、横山さんは友人の訪問を受けて、家の近くのお茶づけ屋「トミ」というところでビール四本、サンマの塩焼き、アジのたたきなどを食べました。友人と仲よく過ごしたわけです。午後十時ごろその店を出て、友人をタクシーで送り、さらにすし屋さんに行きました。そこで握りずしを食べたりビールを飲んだりして、友人と別れて自宅に帰ろうとしました。家の近くまで来ると、だれか不審な男が家の中をのぞいているのに気づいて、その近くにいた私服の警察官に、「あれはだれですか」というような質問をしたそうです。不審な男はそれで立ち去ったわけですが、警察官が今度は、「おまえ、何しているんだ、何という名前だ、住所、氏名を言え」と、いたけだかに質問をし始めた。余りうるさいものですから横山さんは自分の家の反対方向に避けた。看板屋さんがあったそうですが、この看板屋さんの鉄の扉に警察官がぐんぐん押しつけて、右手で肩や胸を押す、何回か鉄の扉に体をぶつける、そういう暴行をしました。そこで横山さんは「助けてくれ」と二回ばかり叫んで助けを求めました。その後、近くのすし屋に入って横山さんは一一〇番に電話して、そこにパトカーがやってきました。ところが、このパトカーが助けてくれるどころか、最初の警察官と一緒になって横山さんに対していろいろ不当な要求をする。最後には下谷警察署に連れていって、そこで「名前を言え、住所はどこか」と要求する。余りのひどさに、横山さんは「黙秘する」と答えたそうです。ところが警察官の一人は右大腿部を足げりにする、ほかの警察官が左腕をつかんでねじ上げる、さんざんの暴力を加えて、結局、左上腕骨骨折、右大腿挫傷、右手背部及び手関節背側皮下溢血、全治六カ月の重傷という傷を負いました。これが裁判になっているわけで、裁判では警察当局は全面的に事実を否認しているようです。  そこで、事件の経過を聞いても、当然、私がいま要約した事実を認めてもらえないと思いますから、争えないと思われる幾つかの点を質問したいと思います。事件の経過の説明は結構です。  横山さんがすし屋さんから一一〇番に電話したことはあったのでしょうか。警察、どうですか。念のために申し上げますが、これは訴状に書いてある文章です。事件の全体の説明は要りませんから、私の聞いたことだけ、あったかどうか答えてください。
  154. 福田勝一

    ○福田説明員 お答えいたします。  午前零時四十五分ごろ、横山さんなる方が警察官に対して、「いま一一〇番をしてきた」と申し立てたという事実はございますが、一一〇番をかけたか否か、警察の方としてはこれは確かめようがないということでございます。
  155. 諫山博

    ○諫山委員 横山さんが下谷警察署に連行されたことは間違いありませんか。
  156. 福田勝一

    ○福田説明員 そのとおりでございます。
  157. 諫山博

    ○諫山委員 警察官が警察署に連れていく前に、横山さんに対して「住所はどこか、氏名は何か」と何回も聞いて、横山さんが答えなかったことは事実ですか。
  158. 福田勝一

    ○福田説明員 「話す必要がない、法的根拠は何か、令状はあるか」というふうに横山さんなる人が言っておったということ、さらに、大変酒臭い声で、「住所、氏名を言うとおまえらも困るし、おれも困る」こういうふうに言っていたというふうに報告が入っております。
  159. 諫山博

    ○諫山委員 いまの説明によると、警察が住所、氏名を何回も聞いた、横山さんは言わなかったということのようですが、横山さんのこの応答に何かけしからぬ点がありますか、あるいは法律上問題がありますか。
  160. 福田勝一

    ○福田説明員 そもそも横山さんなる人物を発見したいきさつが、若干諫山委員がおっしゃる事実関係とは違っておりまして、当時、下谷警察署管内では四十八年の四月……
  161. 諫山博

    ○諫山委員 ちょっと待ってください。裁判で事実を全面的に否認していることを私知っていますから、ここで事実を逐一聞く必要はありません。私が聞いているのは、「住所はどこか、名前は何か」と聞かれて、「そんなことは言われません」と答えたことは問題があるかと聞いているのです。
  162. 福田勝一

    ○福田説明員 法律的には問題がないと思っています。
  163. 諫山博

    ○諫山委員 横山さんが負傷したことは間違いありませんか。そして、私がいま読み上げたような診断書が出ていることも事実ですか。
  164. 福田勝一

    ○福田説明員 負傷については、左上腕骨骨折、二カ月の加療の見込みというふうに報告を聞いております。
  165. 諫山博

    ○諫山委員 私が読み上げたような診断書は知らないですか。
  166. 福田勝一

    ○福田説明員 そのように報告は受けておりません。
  167. 諫山博

    ○諫山委員 訴状での原告の主張は全治六カ月、警察の調査では二カ月だそうですが、いずれにしてもこれは重傷です。  そこで、二、三法律的な観点からお聞きします。警職法では、質問のために任意同行を求めることができるのは、「その場で質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合」に限定されております。横山さんについて、どの条項で警察まで連れていったんですか。
  168. 福田勝一

    ○福田説明員 法律的な根拠といたしましては、職務執行法の二条の二項ということになるかと思います。
  169. 諫山博

    ○諫山委員 どの条項か、ちょっと読み上げてください。
  170. 福田勝一

    ○福田説明員 「その場で前項の質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合においては、質問するため、その者に附近の警察署、派出所又は駐在所に同行することを求めることができる。」
  171. 諫山博

    ○諫山委員 その条項がどのくらいナンセンスであるかということはあなたにもおわかりだと思います。時間は夜の十二時過ぎです。そこで質問することが交通の妨害になるはずはありません。また、本人は行きたがっていないのですから、警察に行かなければ本人が不利を受けるということがあるはずはありません。これは任意同行を求めることさえできない場合なんです。それを無理やり警察に連れていった。パトカーに乗せていったでしょう。ここに一つの根本的な問題があります。警察に連れていくことができないのに連れていった、この問題です。さらに、条文の後の方では、「法律規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。」となっております。これが法律です。横山さんの場合に、本人が言いたくないと言うのに、「住所はどこか、名前は何か」と問い詰めることはできないでしょう。駐在所に連行することもできないでしょう。  さらにもっとさかのぼれば、横山さんに質問したこと自身に問題があるのです。警察官は、個人的な話ならだれとすることもできます。しかし警察官職務執行法に基づいて質問しようとするなら、一定の条件が要るのです。「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由」がない限り、職務質問することさえ許されないわけです。  私は、この事件に即しての議論はこれでやめていいと思うのですが、そういう教育を警察は警察官にしていますか。
  172. 福田勝一

    ○福田説明員 先ほどちょっと御説明を申し上げようと思ったのでございますけれども、発言の機会がございませんでしたので、申し上げますけれども、当時、下谷警察署の管内におきまして連続八件の不審火の事件がございまして、特別警戒しておりました警察官が、当の横山さんが柴崎自動車工業所の前のシャッターに身を寄せるようにしておる、きわめて不審な行動をとっておられるというふうに判断した、そのことが実は職務質問のきっかけになっておるわけでございます。そしてそれに対しまして、すし屋の中に入っていって先ほどの「一一〇番をかけてきた」という御本人の言い分なんでございますが、これはそのときには確かめられなかったのでございますけれども、後になりまして、一一〇番をかけた事実がないということが通信指令室の調べでわかっております。これは虚偽のお話だったということになろうかと思いますけれども、これは後の問題でございますが、さらに質問を続けさせていただこうとしたところが、やじ馬が大変集まってきた。そこで、これは本人の名誉のために、まだその他の点からよろしくないのではないか、かように判断をして警察署の方に任意同行を求めた、このように報告を受けております。
  173. 諫山博

    ○諫山委員 いまの人事課長の説明自身が間違っているのですよ。あなたは、異常な挙動があったことが職務質問のきっかけだと言われました。これは間違いです。警職法では、異常な挙動があったら職務質問をしていいとは書いておりません。「異常な挙動から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由」が必要なんですよ。あの男の挙動はおかしいからといって職務質問したのでございますと、あたりまえのことのように言っているわけですが、これがすでに法律に違っているのですよ。  私がいま質問したのは、こういう問題で教育をしていますかという質問だったのです。ところが、教育を担当すべき人事課長がいまの程度の答弁しかしないわけですから、教育をしておるとしても、どんな教育をしているのかということは想像がつきます。これ以上は、いずれ裁判で争われるでしょうから私は深入りいたしません。しかし、とにかく警察に行きたくなかった人が連れていかれた、そして重傷を負わされた、この事実だけは幾らごまかそうと思ってもごまかすことができないと思います。  同じような例というのは数え上げれば切りがないのです。たとえば昭和四十九年十一月十九日に、高杉さんと小島さんという人が警察官から暴行を受けました。そしてけがをしているわけです。高杉さんは前額部挫創、頸部挫傷、全治二週間、小島さんは頸部挫傷、全治二週間。そしてこれも、警察官がえり首をつかんで腰にのせ、投げ飛ばすというようなことをしました。これをとめようとする同僚に対して、山田という巡査が小島さんののどをわしづかみにして後方に押しつけ、派出所の壁に押しつける。そのために山田巡査の指跡が首筋に三本も残る、こういう事件があって、いま「高杉、小島さんを守る会」というのがつくられ、この警察官の責任を糾弾する運動が起こっております。  これも、どうせ警察官の認識は私が読み上げたのとは違うと思うのですが、高杉さんと小島さんがけがをしていることは警察は認めておりますか。
  174. 福田勝一

    ○福田説明員 どのような行動に基づくけがか、その辺のところがちょっと御質問では明らかでないのでございますが……
  175. 諫山博

    ○諫山委員 私は前後のいきさつを省略して暴行の態様だけを説明しました。高杉さんに対しては、繰り返しますと、えり首をつかんで腰に乗せ、投げ飛ばす。小島さんに対しては、のどをわしづかみにして派出所の壁に押しつける。そして首筋に警察官の指跡が三本残るような傷が加えられた。私はこの事件の調査をずいぶん前から警察に要求していたんですが……。
  176. 福田勝一

    ○福田説明員 この事案につきまして最初から御説明申し上げるのもどうかと思いますが、要点だけをちょっと申し上げなければ……
  177. 諫山博

    ○諫山委員 私も経過を説明しなかったのですが、けがをしたことがあるかどうかだけ御説明ください。
  178. 福田勝一

    ○福田説明員 警察官に対して暴行を加えてきたという事実がございまして、それを防ぐために一連の行動をとった、そのことから若干の軽傷等があったということは考えられるというふうに思っております。
  179. 諫山博

    ○諫山委員 そのほか、東京でいろいろこの種の問題を取り上げて警察の責任を糾弾する運動が起こっているでしょう。たとえば「龝本さんを守る会」というのがつくられて、警察官の責任追及が起こっております。これは都教組の春闘に対する弾圧に関して起こった問題です。品川区役所の前で労働者を初めとするたくさんの人が集会を行った。ところが五十名の警察官が襲いかかって、龝本さんに全身打撲、全治十日という傷を負わせた。さらに埼玉県では新井さんという人、これは全日自労の組合員ですが、その人に五週間の負傷を負わせた。こういう事件があったことは御承知ですか。
  180. 福田勝一

    ○福田説明員 人事課の方へはまだその報告が入っておりません。
  181. 諫山博

    ○諫山委員 私がこの問題を質問するから調べてもらいたいとお願いしておったのですが、調べてないのですか。
  182. 福田勝一

    ○福田説明員 そのうちの一件は名前だけではっきりいたさないのでございますけれども、ダンプの積載違反の取り締まりの際に関連いたしまして起きた事案ということでございましょうか。
  183. 諫山博

    ○諫山委員 時間の関係で、私はもうそれ以上事件の内容には入りません。一番最後の事件はそのとおりです。私が問題にしているのは、この過程で労働者が五週間の傷を負わされたということです。しかし恐らく、警察官は傷害の結果が起こったことは認めざるを得ないでしょうが、経過は否認すると思います。  しかし実は、あなたがここで事ごとに警察官をかばう発言しかしないことにもう一つの問題があるわけです。たとえば横山さんの国家賠償請求の訴状の中で「警察官の行為につき国家賠償が認められた判例」というのがあります。これは、弁護士が一般的に手に入れることのできる判例集に記載された警察官の暴行を理由にした国家賠償裁判事件、そして警察官の違法行為認定された事件です。これが四十五件あるのです。この中には、調べてみると私が訴訟代理人として担当した事件も入っております。四十五件も警察官の違法行為が認められているということも大変な問題ですが、もう一つ問題なのは、この裁判の中でただの一件でも、警察官が自分の非を認めて陳謝した例があるだろうかということです。これはないのです。警察官は全部、「そんなひどいことはしておりません、みんな相手が悪かったのです」こういう言い方をしました。ところが裁判所は警察官の言い分を認めずに、国家賠償を認めているのです。ここにもう一つの問題があるわけです。警察官の行き過ぎがたくさんあります。そうして泣き寝入りもあるし、中には国家賠償裁判というところに発展する例もあります。しかし、警察の上層部が絶えず警察官の違法行為をかばっている。裁判では、「そういうことはありませんでした」という態度をとる。これが警察官の職権乱用を助長していることになるわけです。これだけ判決が出て、ただの一件でも「悪うございました」と言って被害者におわびした例が警察にありますか。どうですか、人事課長
  184. 福田勝一

    ○福田説明員 事案によって、警察官がその職務執行中において行った行為でありましても、やはり警察官に過失があるとかあるいは行き過ぎがあるというようなことで、あるいは事故を起こして相手に負傷させるというような事案につきましては、むしろそういった問題については個々には積極的に示談を求めて、いろいろお話し合いで賠償を払うというような例が幾つかございます。ただ、仰せのように裁判になりましたそういう事案につきましては、警察官の方にも大変言い分があるというようなケースが多いのではないかと思います。もちろん民事事件におきまして裁判で敗訴するというような事例があるわけでございますから、それについては私どもも刑事的な観点から、また内部的に人事的観点から、これに対して行政上の処罰をすべきや否やということを十分考慮して、そういう観点からわれわれが処分をやっておるという事例がございます。  ただ、先ほどの埼玉の事案につきましてちょっと補足させていただきたいのでございますけれども、これは積載違反の取り締まりをやっておりましたところが、明らかに制限を超えること約一〇〇%、すなわち制限積載量の倍を積んだトラックが、手前の方でそれを見つけて、横道へ逃げていくというような例があるわけでございます。このときも実は何台かが逃げまして、それに対して警察官が追尾をしたところが、積載違反のトラックをそこに置いたまま運転手の人たちが逃げた、そのうちの一人の方が逃げおくれて足をくじいた。そういうことで先ほどの御質問のような負傷事案が起きたということを私どもとしては承知しているわけでございますし、これにつきましては、たまたまそういったことで、私どもも、本人が積載違反については潔く認めているというような事情もございまして、指導措置ということで、検挙はしておらないというようなことでございます。
  185. 諫山博

    ○諫山委員 私は埼玉の事件に深入りするつもりはなかったのですが、はっきりしておかなければならないのは、積載違反があったということと、けがをさせていいということとは別問題だということです。相手が強盗であろうと殺人であろうと、けがをさせてはいけません。この点ははっきりしておかなければいけないと思います。  それから、民事裁判で警察官の責任が認められた判例はたくさんありますが、刑事事件で警察官の職権乱用、あるいは特別公務員暴行陵虐罪が認定された事例というのはきわめてわずかです。これは大変な問題なんです。つまり、刑事事件としては警察が内々に済ませている。だから判例集にはあらわれてこない。ところが民事裁判では内々に済ますわけにいきませんから、判例集にあらわれてくる。いわゆる警察一家精神というのが警察の不正をかばっているという結果になるわけです。私たち共産党は、警察官を全体として敵視しているわけではありません。何回も警察官に対する政策を発表しました。警察官には、労働者ですから団結権も保障さるべきだし、労働条件も改善されなければならないと思っております。しかし、警察官が国民の基本的な人権を侵す、こういう問題に対しては、私たちは厳しく対処しなければならないという立場からいまの質問をしたのだということをつけ加えて、私の質問を終わります。
  186. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 青柳君。
  187. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私は、去る七十四回臨時国会で法務委員会が開かれました際に、昨年の十二月のことでございますが、東京にございます北辰電機という会社の職制の人たちが非常な人権じゅうりんを行った行為につきまして質問をいたしました。それは、当時被害者側から東京地方検察庁に告訴が出されまして、取り調べも進んでまいっているようでありますけれども、まだ結論は出ておりません。その過程で一つ二つ問題と思われることが起こってまいりましたので、お尋ねをしたいと思います。  まず一つは、労働委員会に提訴されている事案が、不当労働行為でありますけれど、ありまして、そこで犯人、つまり被告訴人などが証人として出頭をいたしまして、この問題で告訴を受けているという事実を述べ、しかし何ら結論は出ておらぬということを強調して、つまり「東京地検の方ではまだ何の処分もないんだ、こういうものは起訴になるかどうかわからない」といったようなことを——、もちろん、まだ処分が出ないわけでありますから、起訴になるかならないかはこれからの問題でありますけれども、被疑者あるいは被告訴人、犯人、そういう立場の人間が何ら反省するところなく、むしろ自分らのやった行為が正当であるかのごとくに証言をする、こういう事態があります。これは彼らの勝手でもあり自由でもありましょうけれども、問題は、公式の場所でこういう挑戦的な態度をとっているということ自体が、何ら彼ら自身に、真実に対して協力するというか、自分たちのやった行為に反省するということがないということを意味するので、これはやはり取り調べの過程では十分考慮さるべき事項であろうというふうに思います。このことは、東京地検の検事正に対しても当事者からその旨を申し入れてあります。  またもう一つの事件といいますのは、この人権じゅうりん、暴行、傷害、強盗といったような被疑事実に関連いたしまして、重要な参考人、つまり、被害を受けたのは北辰電機の労働組合、正確に言えば全国金属労働組合北辰支部という名前の、最初からある第一組合の人々であり、またそれに協力をした弁護士でもあるわけですが、そういう労働組合に所属している人であり、現場の状況についても目撃し、証人でもある関係立場の人であり、同時にその組合の執行委員をやっておりました竹内久という人が、一月二十三日ごろに、多分京都から投函したんではないかと思われる、母親竹内千代子さんあての遺書と思われるような文書が届き、自来所在不明でございます。自殺をしたんではないかと言って関係者は非常に心配をしているわけでありますが、その手紙の中にいろいろのことが書いてありますけれども一部分を読んでみますと、  「お母さんには何回も話しているように、北辰の職場では組合の分裂以後、全金潰しの為、職場親睦会、スポーツ大会等からの排除、全金は「アカ」だ、口をきくなと、常識をはずれた差別を行なってきました。しかし、それでも全金を潰せないとわかると、会社は同盟の一部幹部を使って」——これは私の注ですが、同盟というのはいわゆる第二組合のことを指しているようであります。「一部幹部を使って暴力事件を起こしてきました。昨年暮れの職場での吊し上げ、昼食をとらさず、二十〜三十人で取り囲み、バ声を上げ、ののしる。それがどんなにクヤシイものか。今年はまだ吊し上げはされていませんが、一月二十一日の昼休みに何人かが吊し上げの為、僕を追っかけて来ましたが、どうにか別の出口から逃げ出し、無事でした。  休み時間になると、今日は吊し上げに来るのではないかと気にしている毎日、とても疲れました。  今の北辰の中で、真実を伝え、民主主義を守り、自分に忠実に生きていくのが、どんなに困難なものか、わかりました。でも、僕は全金に残り、今まで闘ってきたことをコウカイしていません。ただこれから先、耐えていく自信がなかったのです。  友や仲間を裏切り、自分の信念をまげて生きていくより、死の方が……でも、自殺を美化するつもりはありません。一番最低で、一番安易な行為です。でも、どうしようもないのです。住友・会社に対して、暴力集団に対して、吊し上げに来た人に対して、僕の抗議の意味も含めて、この道を選びました。」  これが動機のようであります。その後いろいろ調べたところによりますと、竹内さんに対する会社側職制の、また同盟の組合員を使ってのリンチ的な行為というものは非常にはなはだしいものであって、普通の神経を持っている人であるならば、こういうような悲しい処置を選ぶということもまんざらあり得ないことではない。しかるに会社の方では、この人が退職届を出したということをいい幸いに、即座に首にしてしまって、家族の人たちが、「まだ生きているかもしれないから退職にしないでください」と頼んでも、そんなことは相手にしない。もちろん見舞いにも来ない。退職金をこちらが受け取らずにいれば、法務局に供託をするというような態度。それから第二組合の方で出しているビラのようなものを見ますと、これは自作自演のでっち上げであるというようなことを言って、あたかもどっかにいるんじゃないか、隠しているのだろうというように、組合に対して挑発的な態度をとる、こういう状況であります。  直接、検察庁の調べが竹内氏をして死の道に追いやったというふうな短絡的な考えは私ども持ちませんけれども、しかしいずれにしても、こういう事件を受理された以上、速やかにしかるべき結論を出すというのは、人権を尊重し、法秩序を守るゆえんではないかと私は考えますので、その点、当局側としてはどう考えておられるか、お尋ねをいたしたいと思います。
  188. 安原美穂

    ○安原政府委員 告訴、告発がございました場合は、特に迅速な事件の処理を図りまして、適正な処理をするということが望ましいことは申すまでもないわけでございまして、その点、何ら異論はございませんが、具体的な本件につきましては、事件が五件にわたり、相当時期的にも広範囲にわたっておりますし、告訴された者が三十三名という多数に上っておりますので、しかも同じ職場における組合員同士の一つの暴力事件ということでございまして、すでに検察庁では鋭意捜査をしてきておることは事実でございまして、今日までに関係人、告訴人、被告訴人合わせまして六十三人を取り調べたわけでございますが、何分にも告訴人と被告訴人の供述が食い違いがあるので、なおその信憑性を判断するために多数の参考人を調べなければならないということで、心ならずもいまだに処理の最終段階に至っていないという実情にあるわけでございます。
  189. 青柳盛雄

    ○青柳委員 いま揚げ足取りをするわけじゃありませんけれども、確かにトラブルというか——トラブルと言えばけんかで、どちらもどちらというふうにもとれますけれども、私は、そういう意味でトラブルという言葉を使ったわけではなくて、まさに正当な行為、自由な行為、権利のある行為を行った者に対する一方的な襲撃でありますから、これは犯罪的な行為でありますが、決して組合員同士のけんかというような問題ではないんです。そういう考え方で物を見ると真相を把握することができない。職制が主力なんです。会社側が全金の北辰支部をつぶそうという巧妙な意図のもとに、職制が先頭に立って、そして分裂した第二組合の人たちも、大体御用組合といいますか、職制と癒着した立場の人たちでありますから、もちろん協力する、そういう犯罪行為に加担をするという形になりますが、決して労働組合同士、労働者同士のトラブルというようなものではないのであります。ただ、一応形式の上では、たとえば第二組合であるところの同盟系の組合の機関紙、「参加改革」——改革に参加するという意味でしょうか、そういう題名の機関紙のようなものがあります。それを読みますと、昨年の告訴事件というのはでっち上げである、謀略であるというようなことを言って、「しかし、地検聴取も一段落し(一月二十日)その時点まで(当初彼らが企らむ程には有利に展開せず)不当にも告訴された人々の無実が次々と証明され、当然のことながら不起訴」ここには傍点が打ってあります。「の見通しが強くなって来た。」というふうに書き、また別な項では「予想以下(彼らにとって)の展開(地検聴取も一月二十日頃、一段落、不起訴の可能性大)」そこで「一月二十三日竹内君失跡」こういうふうに彼らなりに勝手なデマ宣伝を飛ばしているわけであります。  ですから、私は繰り返して申しますが、組合員同士の何かのトラブルであって慎重に扱わなければならないんだというようなものではないと思うんですね。確かに、起訴するとかしないとかいうことは国民の基本的人権にかかわりのある重要な問題でありますから、いいかげんにやっていいなどということは私は一言も考えておりませんし、言っているわけでもありません。しかし、事態は非常に深刻である。人の命が失われていつつあるかもしれないというようなところまでこじれてしまっているといいますか、エスカレートしている。大体会社側の方では依然としてこの問題について職制をかばい、また労働組合を使ってデマ宣伝を飛ばすというようなよからぬ態度をとっているわけでありますから、今後も引き続き、この捜査については迅速に、しかも正確に、公平に行われることを要望いたしまして、この問題はきょうのところは一応やめておきます。そのほかいろいろ、告訴後もけしからぬ人権じゅうりんが組合員に対して行われている。それは一々追告訴の形では出ていないけれども、明らかに犯罪行為、少なくとも人権じゅうりんとして、しかるべき措置をとらなければなぬような問題が起こってい、それが組合の方から会社側に対して抗議文として幾つも出されているということもつけ加えて参考にしたいと思います。  次に私が質問いたしたいことは、前回には質問しませんでしたが、同じような種類の問題でございます。これは東京の港区に存在いたしますところの、芝信用金庫という金融機関がございます。この芝信用金庫というのはわりに大きな金融機関でございまして、大体出資金が十三億円、従業員数が一千名の、中小の方でも中の方の金融機関であります。都内に十八の支店を持っておる。  この金融機関では、昭和二十八年に従業員をもって結成され、二十九年に全国信用金庫信用組合労働組合連合会、俗に全信労と略称していますが、これに加盟しているところの労働組合があります。この労働組合は非常に熱心に労働者の権利を守るために活動してまいったわけでありますが、四十三年の九月に、会社側の策動によりまして第二組合というものができ上がりました。これは芝信用金庫労働組合、先ほど私が申しましたのは芝信用金庫従業員組合、つまり、第一組合は従業員組合といい、第二組合は労働組合という名前を使っておるわけであります。  ところで、会社側はこの第二組合ができたのを非常に活用いたしまして、いろいろの発刊物により組合に対する非難中傷、組合の情宣活動、施設利用妨害など、組合攻撃、組合活動妨害を徹底的に行っており、組合員に対しては昇給、昇格における不当差別、人事異動における遠隔地配転、たらい回し配転、一方的な懲戒処分等のたらい回し配転ですね、それから一方的な懲戒処分等のあらゆるいやがらせをしたばかりでなく、さらには業務会議、表彰式から組合員を排除、ボーリング大会、卓球大会、スキー・スケート教室、慰安旅行、忘年会等々、金庫の行う行事に参加を拒否し、果ては、職場においてはお互いに言葉をかけない、話さない、話をさせないなどして、組合員に対して職場におけるいわゆる村八分を強行しておる。こういうような背景の中で、実に無数の不当労働行為と人権じゅうりんが行われたわけであります。  私はこれを読むのに相当時間もかかり、また整理をするのにも骨を折ったんでありますけれども、ざっと数えてみると百三件に及ぶ人権じゅうりん行為、その中に明らかに犯罪行為になると思われる暴行、傷害、脅迫、不法監禁、そういうものがあるわけでありますが、これについて当事者、つまり人権侵害を受けた被害者六人、関口文子という人外五名が、人権侵害者として二十一名の者に対し人権侵害の申し立てを東京法務局に昨年、四十九年の四月中に提出をしてございます。  これは時間の関係で私は一々申し上げませんけれども、実に近代的な社会では考えられないやくざのやり方というべきものであります。大体、金融機関の労働者などというものは、職制はもちろん、現場で働いている人たちもいわゆるホワイトカラー、言葉つきも上品だし物腰も非常にやわらかで、いわゆる紳士淑女の者であろうと普通は想像するわけでありますが、この人権じゅうりんをした職制並びにこれに踊らされた労働者の人たちのやっていることは、ギャング映画などで見るようなおどかし方と暴行の仕方、体当たりをしたり、頭の毛を引っ張ったり、殴ったり、け飛ばしたり、死なない程度にというようなやり方。何日間も入院をしなければならないほどのやり方はしない、しかし、必ず一週間か十日ぐらいのけがはさせるというようなやり方とか、まことに聞いたこともないようなことでありますが、被害者の机の上に香典袋を置いたりあるいは喪章を置いて、もう命がないという脅迫をするとか、あるいは食堂で食事中に十数名が取り囲んでつるし上げをするために、食事がのどを通らない。休憩時間にも取り囲んでつるし上げをするために休憩がとれない。帰宅しようとして更衣室に行こうとする婦人労働者に対しては、数十名、数百名の者が廊下で隊列をつくって、その中を通過させる。それから言葉は実に下劣でありまして、「ゴキブリ」だとか「ウジ虫」というように相手を罵倒する。中年の婦人でもう二十年近く勤務しておられる独身の方に対して「白豚」だとか、「いい年をしてまだ嫁に行かないのか」とか、「おまえのような者は相手がないのだろう」とか、「ブス、何とか言えよ」というような、これはとてもここで読み上げるのにもはばかるような言葉を乱発しながら侮辱を加える。それは男性である場合もあるし、また女子従業員である場合もあるというに至っては、実に驚くべきことであります。第二組合の人たちも、そういう不道徳な行為に踊らされているというようなことも考えられるわけであります。背広のえりをつかんでバッジを取り上げるとか、あごを何回もこづくとか、頭の毛を引っ張ってどうするとかこうするとかいうような、そういう暴行、傷害はあたりまえのようなものであります。耳の先で大きな声で叫んで、鼓膜が破れるのじゃないかと思われるほどのことをやるのですが、さすが鼓膜は破れませんが、その辺で耳を引っ張ったりするからすごいけがをするということもあったようであります。  さすがに、このようなことに対して、四十九年の二月四日、東京都の労働委員会は芝信用金庫の理事長渡辺八右衛門に対して勧告書というものを出しております。四十八年の五月九日にも出しました。そしてまた四十九年二月四日にも出したわけでありますが、「被申立人芝信用金庫は、その言動について、労使間の紛議をまねくおそれのないように留意し、業務用机の配置については、速やかに再検討して労使紛争を除去するよう善処されたい。」こういう異例なことなんですね。前近代的な労務関係だと思うのです。  私、お尋ねするのは、このような驚くべき、百数件に及ぶ、いま私が一々述べられませんでしたが、例を挙げたような前近代的な人権じゅうりんの訴えをどう扱っておられるかということであります。
  190. 萩原直三

    ○萩原政府委員 お答えいたします。  先ほど御指摘の書面をいただきまして、東京法務局の人権擁護部が申告者の言い分を聞きまして、人権侵犯の疑いありということで、六月十九日に人権侵犯事件として受理、立件しております。その後、関係者に事情の聴取を続けておりますけれども、相手方との言い分がかなり食い違うところがありまして、かなり時間がたちましたけれども、まだ結論を出すまでには至っておりません。
  191. 青柳盛雄

    ○青柳委員 これは弁護士会の方にも同趣旨の人権擁護の申し立てをしているようでありますから、その方でも進行していると思いますが、同時に、犯罪行為に該当すると思われる部分につきましては被害者から告訴状を、そしてまた組合関係者からは告発状をあわせて提出をいたしております。被告訴、被告発人はいずれも職制の人たち、木村晴男とかいう人外九人ほどであります。これは警視庁の方に提出をされたようでありますので、警視庁ではこれの取り調べが行われたというふうに考えます。たしか、私の調査によっても、四十九年八月二十三日付で告訴、告発が提起され、審理の結果、ことしの一月二十二日に東京地検の方に告訴告発事件として送られているということでございますが、実はこの告訴、告発の審理が必ずしも公正に行われたと言えるかどうか。というのは、そんな告訴、告発があって関係者が調べられたからといってびくともするような手合いではないとは思いますけれども、告訴、告発あるいは先ほど申しました人権擁護の申し立てなどがあったって少しも反省するような者ではなくて、ますますエスカレートしてくる。だから決して後を絶たないばかりではなく、警察に対していろいろの情報を提供するわけでありますね、そうするとその後ひどい目に遭ったという。だけれども、別にそれに対して適切な処置もとられないというようなことで、警察の措置そのものに対して非常な不信感が組合関係者の中にあるわけでありますが、この点について何かうまくいかないような事情が警察側にあったのかどうか、それをお尋ねしたいと思います。
  192. 佐々淳行

    ○佐々説明員 お尋ねの芝信用金庫をめぐりまする組合間の組織対立に伴う不法事犯につきましては、ただいま御指摘のとおり、いわゆる第一組合と申しますか、芝信用金庫従業員組合側から四十九年の八月二十三日に警視庁に対しまして、昭和四十八年十一月二十七日から四十九年六月二十二日の間発生をいたしました不法行為につきまして合計六十二件、傷害、監禁、暴行、脅迫、侮辱、強要未遂というような形で、一括して告訴がなされております。これに対しまして、警視庁におきましては、告訴、告発に基づきまして直ちに現場の実況見分、関係者の取り調べを実施をいたしまして、これもまた御指摘のとおり、本年の一月二十二日、この六十二件を送致いたしております。被告訴人以外にも被疑者を立てまして事件を送致いたしておるわけでございますが、その後、この第一組合の側からも、四十九年八月三十一日及び同年の十月十七日、それぞれ荏原警察署に対しましてさらに第二組合から傷害を受けたという被害申告がございました。この事件も、本年の一月二十二日にあわせて事件送致をいたしております。  この間、いわゆる第二組合と申しますか、芝信用金庫労働組合側及び金庫管理者側からも、たとえば金庫管理者側からは四十九年の七月三日、所轄の愛宕警察署に対しまして、四十八年十二月八日と四十九年四月十九日の二回にわたりまして、今度は第一組合側から傷害を受けたという告訴がございました。  また、いわゆる第二組合側から、四十九年の七月五日、荏原警察署に対しまして、四十九年の三月十五日、第一組合側から傷害を受けたという告訴がございました。この事件もあわせて捜査をいたしまして、本年の一月二十二日、事件送致をいたしております。  警察といたしましては、地域、職域の区別を問わず、違法行為がございました場合にはこれを看過しないという基本的な姿勢を堅持し、厳正公平な立場でこれらの告訴、告発事件を処理いたしておりますが、御指摘の、若干不十分な点があったという点がもしあったといたしますれば、それは、事件発生後数カ月あるいは十カ月以上たってからまとめて六十二件、告訴、告発がございました。そういう関係で、これらの事件がいずれもまた複数の被疑者によるところの事件であり、告訴内容を見ますと、帰宅の途中等に多数人に取り囲まれたり、通路をふさがれたり、悪口雑言、脅迫的言辞を浴びせられる、こういう合法、非合法すれすれのような、つまり人権侵犯事犯かそれとも刑事事件になるかというような、すれすれの事犯等も多うございまして、なかなか参考人の供述も十分得られないまま、捜査といたしましてはかなり時間を要し、約五カ月要して、本年の一月二十二日送致に至っておるわけでございます。警察は決してこのような状態を放置しておったということではございませんで、昨年の七月以降、関係者に対しまして、このような暴力事犯が繰り返されないよう再三にわたって注意、警告をいたしてまいったところであり、本年の一月二十二日、そういうことで双方の告訴、告発事件、厳正公平な立場で捜査をいたしまして、これを送致をいたしておる、こういう状況でございます。
  193. 青柳盛雄

    ○青柳委員 まあ、その事件はもう検察庁に送ったから、後はしかるべく検察庁でやってくれるだろうというほど軽い気持ちで扱っておられるとは毛頭思いませんが、しかし、告訴が出された後、送検されるまでの間にも、大体調べたところでもはっきりわかりますことは、尾崎という方に対しては、これも被害者の一人なんですけれども、十二回にわたって同様の、いやがらせ以上のことが行われている。けがは幾つか、やはり診断書をもって被害届も出してありますからございますけれども、いずれにしても、非常なねらい撃ちといいますか、これが行われている。そのほか三石という方とかあるいは池亀という人とか、関口さんとか福田さんというような方々、いずれもこれは、告訴人である方もあるし、ない人もありますけれども、そういう人に対しての暴行や傷害、人権じゅうりんが後を絶っていない、こういう状況であります。したがって、これはやはり所轄としても、あるいは警視庁としても十分に注意していく必要があるのじゃないか。最近いろいろ巧妙なやり方で、先ほど合否すれすれと言いましたけれども、明らかに立場をきちっとすれば決して合ではないと私は思いますが、非合法なやり方をごまかしの手を使いながらやっていくという知能犯的なやり方もありますので、警戒は必要だと思いますが、いずれにしても、今後とも警察としても十分警戒をしてもらいたい、かように考えます。  それから地検について、やはり先ほどの北辰電機の告訴と同じ時期に、検事正に会いまして関係者の方から意見を述べております。それは二月の二十日前後であったと思いますが、公然侮辱罪の時効という問題が起こりまして、一番早く時効が完了するおそれのあるのは昨年の二月の二十六日に行われた侮辱行為でございました。だから、これを時効にかけるようなことのないようにということ、それから、これを時効にかけるようなことのないのを一つ理由にして、他の事件も一挙に片づけるというようなやり方で全部を不起訴にするなどということも正しくないということも申し上げたわけでありますけれども、その後、時効完成の二月二十五日に、証拠不十分ということで不起訴の通知が告訴人のところへ届いたそうであります。これと同じようなやはり公然侮辱罪の告訴は、昨年の三月二十二日に行われたものもありますので、これもまたそろそろ時効の時期が近づいてくる。次々と時効になりそうなのを不起訴にしていくというようなことでは、これは非常に不見識な話でもあるし、本人が否認しているからといっても関係者をよく調べれば、特に被害者は一番骨身にこたえておるわけでありますから、被害者の証言あるいは関係者の証言を取るならば、言った、言わないの水かけ論で問題は片づかないと思います。公然侮辱罪だから軽犯罪のようなものだというふうにして軽く扱われるようなことがないことをわれわれは強く求めたいし、また、この事件は警察の調べが一応済んできているわけでありますから、急速に処分のできる案件ではないかと思いますけれども、その後はどんな状況でありましょうか、法務省にお尋ねをしたいと思います。
  194. 安原美穂

    ○安原政府委員 先ほど来御指摘のとおり、本年の一月二十二日に警察から合計七件、三十二名の被疑者につきまして事件の送致を受けております。その後検察庁におきましては、二月三日から三月四日までの間におきまして二十六人の関係人の取り調べを終わっております。まだ終局の段階には至っておりませんが、先ほど御指摘のように時効に追われていいかげんな処理をするということはかりそめにもあってはならないわけでありますし、いま御指摘のように警察で捜査を終えた事件ということも考えますと、直授受けた事件よりは捜査の進行が早いのは当然のことにも思われますので、今後とも鋭意迅速な処理を図るものと期待いたしておりますし、御期待いただきたいと思います。
  195. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私の質問はこれで終わりますが、前回のときにも述べましたし、またきょうも大分述べましたけれども、労働者同士あるいは組合同士の単純なトラブルというようなものではなくて、系統的に会社が、自分たちに不利と思われるような組合をつぶそう、あるいはそういう組合に参加している人間は職場から排除しようということから問題が起こっているわけであります。決して、労働者が何かよからぬ、道徳的にも法律的にも非難されるような行為があって、そして正当な批判を受けているというんではなくて、まさに不公正なことがまかり通るような状況、これは民主主義の社会では絶対に許せないことでありますので、この点、当法務委員会としても十分に関心を持つべきことではないか。どうも最近は、軽犯罪的な暴力といいますか、殺人、強盗でさえも、あるいは爆弾事件でさえもなかなかつかまらない、だから小さな問題などはもうみんな野放しだというようなことになって、相当のがまんのできないことががまんをせざるを得ないというようなことであっては、これはもう法の権威とかいうようなものは全く地に落ちると言わざるを得ないし、私ども法務委員会の任務というものも大変に軽んじられてしまうような結果になりかねないと思いますので、今後ともこういう問題については系統的に問題を提起していきたい、かように私は考えます。  きょうはこれで終わります。
  196. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 次回は、来る十二日水曜日、午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時二十八分散会