○青柳
委員 ただいま議題になっております
犯罪者予防更生法の一部を
改正する
法律案の、
改正の要点について一、二お尋ねをいたしたいと思います。
今回
改正をされようとする問題点は、
中央更生保護審査会委員の四人のうち二人を
常勤の職員として活動をしていただく。つまり、
審査会の
機能の充実を図る。それによって、この
法律が目的としているところの、主として犯罪者が再び罪を犯さないようにするとかいうような、犯罪予防を
効果あらしめるものにするという、そこにねらいがある思います。
犯罪をした者の改善及び更生を助けるためには施設内での
矯正という問題がありまして、これは
法務省では
矯正局が担当しておられる。もちろん民間の協力も非常に重要になっております。同時に、施設から釈放されて保護関係になって社会に復帰するという段階においても、更生の事業というものは非常に重要でございますが、それはいま問題になっております
中央更生保護審査会の直接の
仕事ではないようでございます。
中央更生保護審査会の任務につきましては同法の第三条に
規定がございますので、これで尽きるわけでございますが、その三条の
規定を読みますと、
権限は三つありまして、
恩赦の問題が一つ、それから
地方更生保護委員会の
決定に対する不服の
審査、三番目はその他ということでございますが、何よりも私どもが非常に関心を持ちますのは、その第一番目の
恩赦の問題でございます。
恩赦は政令
恩赦と
個別恩赦と分かれていることはもう常識でございますが、いつも世論で大きな問題になりますのは政令
恩赦でございます。どうも時の政府が政策的に
恩赦制度を乱用する。特に公職選挙法違反などで政治関係者が逮捕せられる、処罰を受ける、こういう人たちが再び政界にカムバックをするためには何としても
恩赦がないといろいろ支障を来す。そこで何とか政治的な出来事を契機にいたしまして、あまねくその思恵に浴させるという
意味での政令
恩赦が、もう戦後でも、私正確には計算しておりませんけれども、十前後あるんじゃないか。三十
年間に十前後あるとなれば、三年に一遍はあるというようなことにもなりかねないわけなんで、それほど
恩赦、
恩赦で大量の人が刑の
効果を消してもらう、権利も復活するといったような、そういう当事者にとってみれば、あるいは関係者にとってみれば非常にありがたいことでありますけれども、また公職選挙法違反などというような問題につきましては、政治の浄化ということが叫ばれている際にこれに逆行するものではないかという厳しい世論の批判も出てくるわけでありまして、これはそれなりに世論の批判にさらされ、また一部から、野党もそのためのイニシアチブをとりながら、
恩赦制度の
改正についての
法案の
提出などというようなことも行われたことがあります。
このことを私はいまここで論じようとも思いませんし、また
質問しようとも思っておりませんが、この
恩赦の乱用という問題が
個別恩赦においてもあるのかないのか。私どもの実感から言いますと、どうも
個別恩赦の方ではそれとは逆ではないだろうか。大変に厳格で、ちょっとやそっとでは
恩赦の恩恵に浴されないんではなかろうかというような、素朴な感じを受けるわけですね。事実かどうかは統計によって調べた方がよろしいのかもしれませんけれども、私どもが関心を持つ
恩赦事件というのは、先ほどでも御答弁の中にありましたが、冤罪を主張している人たち、特に死刑囚、死刑を宣告されて確定され、すでに十数年、二十年近くたってしまっているというような人が現実に存在するわけなんです。こういう人たちは、確定後一日一日が、いつ死刑の
執行を受けるかということで身の縮む思いをしているということでございます。もし死刑の
執行を受けてしまえば冤罪を晴らすことも不可能になる、そういう心配もありますしするので、再審の請求などもあわせて行っておりますが、再審の壁というのも非常に日本の場合厳しい。とうていこの狭い門をくぐり抜けて再審が開始されるというようなことは望むべくもないというのが現状でございます。これは制度の問題もあります。そのことについてもここでいま論じようとは思いません。
したがって、この死刑囚の人たちはあわせて
恩赦という問題で、とりあえず無期懲役にでも変えておいてもらえば、命のある間に真犯人もあらわれてくる、明確な新しいアリバイの証拠も出てくる、真実というものは必ずあらわれるものであるという確信と展望を持って養生しながら、七十、八十、命のある限り、刑の
執行は無期という形に変わっておりますから、その間に真相を明らかにしてもらおう。ところが戦後の例で、死刑が無期懲役に
恩赦で変わったという例は私は二つしか聞いておりません。一つは関西の方の婦人の
事件だそうでございますし、一つは千葉かの男性の
事件、いずれも精神異常のような
状況で死刑の
執行は困難であるというようなこともあり、また情状酌量すべき面もあるというようなことのようでありますが、いずれにしてもこれは政治的な色彩は全然ありませんし、
一般的な大衆運動としての、まあ救援運動ですか、要するに冤罪
事件としての署名をたくさん集めて再審
裁判所に請願をしていくとか、あるいは
中央更生保護審査会に陳情するとかいうようなことはなかった
事件のようであります。
説をなす者によりますと、これは衆議院で議員立法として、占領
期間中の死刑確定
事件に関しては特別な例外として、現行刑事訴訟法の再審制度を少し緩和して再
審理由を広げるということにして、占領中に死刑にさせられた何名かの
事件、その典型的な例はいわゆる帝国銀行
事件という平沢貞通氏の殺人
事件であります。そういうのはなかなか
国会では通しにくいから、
死刑確定者でも場合によっては
恩赦で無期懲役になるんだという例としてこの二つのケースが出たんだと思います。これは真相かどうか、私はわかりません。そういうことはともかくといたしまして、なかなか
恩赦も再審と同じように厳しいものであって、乱用どころの騒ぎではないというのがわれわれの実感でございます。
そこで、私はまず具体的にお尋ねをいたしますが、今度の
法律の
改正について参考
資料一として、三十一ページに「
恩赦上申事件の受理及び
処理人員」というきわめてドライな数字が並べてあります。中身は全然私どもには何を
意味するのかわかりません。受理件数があり、
処理件数があり、未済件数があるだけでございます。もちろんこれで、どの
程度の
事件が受理されて、どの
程度が
処理されて、どの
程度が未済になっているかということは、数字を見ればおぼろげながらわかると思いますけれども、一体、
処理はどういうふうにされたのか。
処理の仕方にもいろいろあると思います。
恩赦を取り上げないという
処理もあるだろうし、
恩赦を取り上げて適当に認めてやったという
処理もあると思いますが、そういうことに関して、特徴的なものを教えてもらいたいと思うんです。
処理の内容の一件一件についてどうこうと言うんじゃありませんが、いま私が知りたいと思っているのはどういう
処理結果であったのかということ、まずそれをお尋ねしたい。