○高橋(繁)小
委員 私は、公明党を代表いたしまして、今回の
文化財保護法改正について
意見を述べて
賛成をいたします。
文化財は、
わが国の長い歴史の過程においてつくられ、現在に伝えられた民族的な
遺跡であり、歴史や
文化などの推移を正しく
理解する上に欠くことのできない貴重な資料であります。
ところが、現代は都市化や
開発の波に洗われ、
遺跡などの大量
破壊が進む一方であります。
たとえば、昨年末に行管庁が発表した
文化財保護に関する行政管理庁の監察結果によれば、三十五年から三十七年までの国の
調査で発見された
遺跡は約十四万カ所あって、このうち、行官庁が十一県八十六市町村でこれらの
遺跡の
現状を調べた結果、四十年以降五十五カ所で
届け出なしで
土木工事が行われ、
文化財が壊されていると発表いたしております。
また、
文化財包蔵地を
発掘する際には、
現行法で三十日前に
文化庁長官に
届け出るように決められておりますが、四十二件の
届け出が掘り起こされており、実際には数万と言われておることが常識になっているようであります。これら
遺跡の
全国調査が行われるとしたら、恐らく想像を絶するほどの
破壊状況がさらけ出されるに違いない。この
破壊を
前提にした
土木工事に伴う緊急
発掘の
届け出件数を見ても、四十二年に五百一件、四十五年に九百五十一件、今日では二千件に達しようとしております。しかも、一届け件数に対する
発掘面積は数倍にふえております。
ところで、こうした
文化財の
破壊に歯どめをかけ、
保護、保全を確かなものとしていくためには、どうしても
現行の
文化財保護法の
改正をしなければなりません。
わが公明党は、
文化財保護及び
文化財保護法の
改正については、
改正はもちろんのこと、早急に従来の姿勢を大転換し、後世に悔いのない積極行政を展開すべきであると主張してまいりました。
まず、
文化財とは何かという
基本的な
考え方の統一を図り、
保護の意義をもう一度よく吟味されなければなりません。
改正に当たり、当初から、
届け出義務制の強化、
包蔵地における
許可制の問題、報告及び公示義務の強化、一切の
文化財の
現状変更は
許可制にすること、罰則の強化、
遺跡の分布
調査を行い分布図の作成、
保存対策のための大幅な予算の増額、研究者の養成と基礎的な研究教育の拡充、特に
埋蔵文化財保護についていま申し上げたことを早急に樹立をしなければならないと叫んでまいりました。
また、そのほかに、民族芸能の
保存、無形
文化財の
保存技術の問題、町並み、集落の
保存問題等をあわせて主張してまいりました。
そのほかに、都道府県及び市町村における
文化財保護行政について、まず第一に、住民に対し
文化財保護の啓蒙を徹底することである。市町村には
保護条例の制定されてない町村が
全国にはかなり多い数に達しておるのであります。行政の上に
文化財保護行政を正しく位置づけることであります。
文化財パトロールの要員を大幅に増員し、教育と訓練を行うこと、そしてある程度の
権限を保持させること。財源の確保のため
政府からの補助額の大幅な増額を要求をいたすことは当然であるが、
地方自治体においても確保に
努力を払わなければなりません。市町村においては詳細な
遺跡分布図を早急に作成をし、
関係諸団体、
土木工事事業者等に配付し、連絡を図ること。
また、
文化財保護と補償の問題もはっきり確立されなければなりません。
そのほか、海外への輸出
禁止、沼及び海岸における
文化財の技術
開発、及び高松塚古墳のように中国、朝鮮等の影響を受けている国際的なもの等、国内における装飾古墳の
保存等についてのあり方等、たとえばフランスのラスコーのような
保存が必要であります。
問題は山積をいたしております。
今回の
改正で満足するものではありませんが、しかし、ここに
文化財保護という一致した
意見のもとに、従来手がつけられなかった本
改正に着手し、
改正案ができましたことを私たちは高く評価をいたしたい。これからこれをきっかけにいたしまして、今後さらに
改正されることを強く
要望をいたしたいのであります。
成立の暁には、
文化庁当局も、積極的に意を新たにして、
文化財保護法第一条の目的達成のため、最大の
努力を払われんことを
要望いたしたいのであります。
特に、
地方自治体における
文化財保護行政に対する
考え方、姿勢を転換させることでありますが、何としても最大の
課題は、財政問題、
保護指導員の
充実と養成の問題であります。今後も国の財政負担、一部補助につきましても、特段の配慮と、パトロール強化のための指導員養成と
充実を図ることが、
開発工事中における
文化財保護の実質面で
保護できることは間違いないと確信をいたします。
さらに、
保護行政の転換を図れと叫びたいのであります。
文化財の
保護は、一片の法令でなされるものでもなく、また従来、その傾向が強かった学問の権威で守られたりするものでもありませんし、行政指導だけに任しておくべきものでもありません。一切の
文化財は、
文化財保護法の冒頭にも「貴重な
国民的財産」と明記されておりますように、
国民的共有の財産として、幅広い
国民の手によって守られ、後世に継承されていくことがすべての
基本である。結局、
国民のための
文化財となってこそ、真に
文化財は生かされ、
保存されていくのだと思うのであります。したがって、
文化財と自分たちの生活とどう結びつくのかといった本質的な問題が、住民レベルの面でよく
理解されることが大切であります。
現状は、すでに
指摘したように、住民の目に触れ、住民の
理解される以前に、行政サイドの怠慢により、貴重な
文化財が次から次へと壊滅してしまっているのであります。一たび
破壊された
文化財は、もう再び再現することができません。日光の太郎杉の伐採の訴訟判決は、このことを明確にしたものであります。これを機に、
文化庁の積極的な取り組みを
要望いたしまして、
意見の発表を終わります。
以上であります。