○嶋崎
委員 総合と単科という場合も、これからもいろいろ、次に共同利用研究所の
質問をいたしますが、非常に大事なことは、憲法二十三条、学問の自由と
大学の自治という憲法の要請があって、そして
学校教育法には
大学の体系というものがあって、そこには
大学というものはどういうものかというのがあって、そしてそれに基づいて
国立学校設置法に伴うところの法の体系が出てくるわけであります。ですから、新しい単科の
大学をつくるときに、憲法の要請や
学校教育法で言っている
大学の体系というものをいつも前提にして
大学というものを
考えていかなければならぬと思います。ですから、
学校教育法で、戦後の
大学改革の中で言われた学術の
中心という意味と総合
大学という意味を今日の
段階で変えていくならば、
学校教育法の
大学の体系を再
検討していくことを一方でやらなければならないはずであります。
ところが、実際には、いままでの法改正を見ますと、
学校教育法の一部を改正して新しいものをつくり出す、今度は
国立学校設置法の一部を改正して新しいものをつくり出す、なし崩し的にいままでの
学校教育法で言うところの
大学の
考え方と少しずつずれながら新しいものができていくのです。ですから、そろそろ一定の時期に、戦後の日本の長い間の
大学の歴史というものを、数十年間の歴史を今日まで再
検討してみて、そしてこれからの
大学ということについて、学術体制はどうなのか、学部
中心の
大学はどうなのか、それから私学と国立との
関係はどうなのか、そういう問題について、もう一度総合的に
考えながら、この延長線上で
考えるのではなくて、一遍そこを切断しながら問題を立て直していくということをやらなければならぬ時期にそろそろ来ているのではないかと思います。学問の発展の上からも、日本の
大学というものをめぐる状況の変化から見ても。
そういうときに、いままで次々とつくられている医科系の単科
大学というのは、筑波方式で言われる開かれた
大学という言葉が必ず出てきて、前
国会でも私は問題にしましたが、法律で決めるべき参与というような機関を省令で具体化していくような
文部省の指導が一方に出てくる。そういうことがなし崩されながらどこにその焦点がしぼられているかというと、確かに新しい学問の研究、研究
教育のあり方という大義名文を一方にかざしながら、他方では
大学の管理運営に力点を置いた
大学の
方向が志向されている、そういう可能性がここ数回の
国会での私の論争の中でも感じられてならないのです。そういう意味で、おっしゃった総合
大学か単科
大学かという
大学政策の理念の問題については、今後はいろいろの議論がありましょう。富山
大学の場合であれ、一昨年の筑波
大学の場合であれ、
大学自身が薬学部のほかに医学部を増設してくれという形で要請が出てきている。それは
大学の評議会の中で決定しているから、そういう要請が出てきているのです。富山
大学は、戦後の新制
大学じゃなくて、か
なり伝統のある
大学ですから、ここはもうそれぞれの学部をか
なり持った総合
大学です。そういう総合
大学の持っている理念を富山
大学の
先生方が前提にしないで学部増設の要求をするはずがない。これを新しい単科か総合かという理念で、
大学内部の討議と
大学内部の研究の自主性、
大学自治のあり方を無視して、そういう要求だったら
予算をつけませんよ、はずして新しいものをつくるなら
協力いたしますというような形での誘導ですね、いわば財政を片手に持ちながら
大学改革を誘導していくという最近の
大学行政のあり方が非常に問題だと私は思っているのです。そういう意味で、この富山医科薬科
大学の場合もその
一つのタイプである。なぜならば、そういう新構想の
大学が、医科、薬科という二つの学部を持って日本で新しいタイプのいい医学、薬学研究の
大学になるとするならば、これを決定する過程で、なぜ富山
大学の中で、学問の要請とかいう諸条件の中で徹底的に討議をして結論を出すような手はずをとらないのか、これが非常に疑問なわけでございます。この問題はこれ以上議論しませんが、こういう経過をいままでとっているということが、私の推測ではか
なりあると思います。
文部省が、文部
行政として誘導しつつ
大学改革を促進していく、それには、もちろん日本の学術体制や
教育体制かよくなる
方向に——悪くなる方に誘導するはずはないのですから、そのこと自体が全部悪いと言っているのではなくて、そういう誘導をしていく際には、
大学の自治や学問の自由をあくまで前提にしつつ、それが侵害されたというような禍根を残さない経過を慎重にとっていただきたい。富山の場合にも、結果としては新しい
大学を承認せざるを得ないと思いますが、議論の中でも必ず筑波方式が問題になっています。こういう
大学のつくり方は、新しい医科薬科
大学の構成とか、そういうことじゃないのです。つまり、こういう創設の仕方の中に筑波方式的な誘導がある、だから、そういう意味では危険だぞ、これは
大学の
先生方の持っている必要以上の自己防衛意識かもしれません。実はそんなに恐れなくてもいいですよということでもあるかもしれませんが、そういう議論が、私の手元にある諸文書を見てみますとどの学部でも行われています。それだけに、今回の富山医科薬科
大学の
設置について、そういう経過があるということを
大臣はしかと
考えておいていただいて、今後新しい
大学創設に当たっては、そういう問題についての
検討をしつつ事態を進めていただきたい、この問題ではそういう
要望をしておきたいと思います。
そこで、今度は二番目の
質問ですが、分子科学研究所の新設に
関連して。これは
国立学校設置法第九条の二、「
国立大学共同利用機関」に新たに分子科学研究所が入るわけであります。
さて、
大臣は、この間の趣旨説明の中で、「これは分子の構造、機能等に関する実験的研究及びこれに
関連する理論的研究を行う
国立大学共同利用機関であり、」と、こう規定されておられます。「
国立大学共同利用機関」というのは、
国立学校設置法第九条の二で言う「
国立大学共同利用機関」という言葉を、
大臣がお書きになったかどうかは別として利用されていると思います。
そこで、時間がありませんから一々聞きませんが、第九条の二の前文、「
国立大学における学術研究の発展に資するため」、したがって、共同利用研究機関は「
国立大学における学術研究の発展に資するため」にあるわけですね。目的は明確であります。第九条の二は、「
国立大学における学術研究の発展」という目的があって、その目的のための「
国立大学の共同利用の機関」であると規定して、「かつ、
国立大学の
教員その他の者で当該機関の目的たる研究と同一の研究に従事するものに利用させるため、次の表に掲げるとおり、研究所等を置く。」こうなっています。したがって、この条文は、目的は
国立大学の学術研究の発展、その名称は
国立大学の共同利用機関、そしてそれを「
国立大学の
教員その他の者で当該機関の目的たる研究と同一の研究に従事するものに利用させる」、こういう条項でございます。
この間、
文部大臣は、朝日ジャーナルの「苦難の私立
大学」という特集でインタビューに
答えておられますが、その一番最後に、
大臣は大変得々と、と言うと表現が悪いけれども、「
文部省としても、豊橋に分子科学研究所、名古屋にプラズマ研究所をつくって、私大にも共同で利用してもらうといった
方向で、そういうことをぼつぼつやっている。」と述べておられます。これがインタビューの最後の締めくくりでございます。ここで、
文部省としても、豊橋の分子科学研究所や名古屋のプラズマ研究所は私大にも共同で利用してもらう
方向だとおっしゃっている。
内容は私大にも利用してもらう日本の学術研究の共同利用機関ですね。ところが、この条文は「
国立大学における学術研究の発展」と書いてあります。この間に矛盾はありませんか。これを
大臣、どう理解しますか。