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堺参考人 私は、
悪徳商法被害者対策委員会会長の堺と申します。
私が国会の場でこのようにこれから述べようとしております
マルチ商法の
社会悪性を述べることは、これが二回目でございます。昨年の秋、参議院の
決算委員会で、私は当時
ホリデイマジックの
被害者対策委員会の
会長をしておりましたので、その
ホリデイマジックの
社会悪性を訴えて、何とかこの
マルチ商法そのものを
日本から追放していきたいというように訴えております。
あれから半年たっておりますけれ
ども、いまだもってこの
マルチ商法に対する
規制措置は何も行われてはおりません。
被害はどんどんふえております。もちろんそれ以前に、たとえば昨年の秋以前に
被害者になった方はずいぶんおります。その方が名のりを上げていることもありますけれ
ども、昨年以後、また加速度的に
被害がふえているわけです。
なぜこのように
被害がふえるかと言いますと、やはりこれは
ネズミ講であるからです。
ネズミ講というよりも、むしろいまは
人身売買に近い
状態なんです。
マルチ商法というのは、
御存じのように
商品を売るだけでなく、その
商品を売る
人間を連れてくればお金になる、これが
マルチ商法ですが、この
マルチ商法の
社会悪性はここにあります。というのは、
商品の
利益よりも、人を連れてくる
利益の方が
余りに大きいのです。並びに、その
商品というものは見せかけにすぎません。ほとんどの
商品が価値ないものです。
たとえば
ホリデイマジックでは、明らかにされましたけれ
ども、欠陥
化粧品でした。
エー・ピー・オー・ジャパンのマークIIという
商品は、これは通産省が一昨年の秋、効果はないという発表をしているにもかかわらず、いまだもって、パワーアップ、ガソリンが節約になる、それから
排気ガスが減少になって
公害防止に役立つなどと言っております。明らかに誇大広告的なんです。また、
ジェッカーチェーンの
社長が先ほど述べられましたけれ
ども、
ジェッカーチェーンの
商品についても、そのあたりにあってもなくてもいいもの、必需品ではないもの、そういうものが多いわけです。比べようがないものが多いのです。並びに、
ジェッカーチェーンの
商品の中にも欠陥
商品がございます。
この
商品が悪いために、多額のお金を投資した方々が
皆さん泣いております。その数は
全国で約百万人に上るかと思われます。潜在
被害者といいまして、現在まだ
被害に気づいていない、あるいは泣き寝入りをしている、これがずいぶん多いのです。泣き寝入りをしている人が多いために、まだまだいまあらわれている
被害者は氷山の一角です。実際の
被害者はもっとひどい例がいっぱいあります。
たとえば、いままで問題になりましたのは、
エー・ピー・オー・ジャパンに関しましては未成年の
被害者がいる、高校生まで入っている、こういうことがありました。もちろんそれはいっぱいあります。またほかにも、
エー・ピー・オー・ジャパンに関して言うならば、一家離散になった例があります。
人間不信、ノイローゼ、昨年の秋には
マルチ商法による自殺者まで出ております。離婚とか、家庭の崩壊、本業の放棄、放棄せざるを得なくなるわけです。そのような例が各地にあります。いま私の会のところに手紙があちらこちらから寄せられておりますけれ
ども、もうミカン箱がいっぱいになっております。
電話はしょっちゅう入ります。
その方々が訴えてくるのには、やはりだまされたという声がすごく多いわけです。なぜだまされたか。やはり説明内容に問題があるわけです。たとえば、先ほど言いました、通産省が効果がないという発表をしているにもかかわらず、いまだもってその
商品は効果があるというような発表をしておる
会社がある。これは一体どういうことなんでしょう。
被害者が
余りに多いために、その声を全部私が申し上げるわけにはいきませんけれ
ども、ここに三点ほど特殊な例を持ってきております。特殊な例と言いますよりも、これはこのような例がいっぱいあるわけです。その中のほんの一例にすぎません。もっとひどい例があるわけですが、ちょっと御紹介いたします。
これは
エー・ピー・オー・ジャパンに入っている二十八歳の大阪の方ですが、出資金は四百万に上っております。この方は繁栄
会議と呼ばれる説明会に連れていかれまして、その誘った
人間が
自分の長年の友人なものですから、その友人をまず信じていたということがあります。おまけに、この
商品の説明を聞いて、大変その
商品がいい、
公害防止に役立つということであるならば、これは今後の社会にとってなくてはならぬ。そしてまた、一日三時間、週三日、三カ月間も働けばすぐ百万円かもうかる――このような話をいま私がしたのでは、だまされる
人間が悪いのではないか、もうけようと思って入ったのではないかと言われるかもしれませんけれ
ども、その説明会が集団催眠術的なんです。口コミあるいはチラシで一カ所に集め、密室
状態にしておいて、薄暗い部屋から一気に電気を明るくしたり、演出効果をこらして、もうけたという
人たちが、小切手を持ったり札束を持ったりして、壇上でこのようにやりながら、こんなにもうかりますよ、もうからなかったら私が
責任をとります、保証してあげますというようなことをして誘っているのです。
この方には、その友達が借用証を書いております。もしうまくいかなかったら私がお金を払ってあげる、ここにその証明となる借用証を書いてあげましょうということで、借用証を書いた。だから、この方はこれを信じた。
自分の友だちです。長年つき合っております。話も信じるでしょう。
会社側はそんないいことを言うわけです。そしてそんなにもうかると言います。
会社側が、保証します、こうはっきり言明するわけです。そこで、この人はお金をつくるのに、手元にお金がなかったので、家とかたんぼ、畑、土地を担保に入れてつくったお金を投資したのです。ところが、
商品は売れません。効果がないから売れないんです。
商品の効果という点について、たとえば
会社側は、
会社側のデータがあると言って発表するかもしれませんが、たとえ一%の効果、百歩譲って一%の効果があったとしても、この一%の効果というものは効果と言えるかどうか。その効果というものを判断するのは、これは
消費者です。物を買った人です。その物を買った人が、パワーアップになりはしないじゃないか、かえってガソリンを食う、こんなもの返すと言って返してきたら、その家とかたんぼを売った人は一体どうなるのでしょう。この人はいまは担保を取られて、田舎の両親、それからこの本人の家族、もうあすの
生活にも追われているほどなんです。この人は、
日本国憲法を恨みますとまで言っております。このような悪徳商法がなぜまかり通るのかということをこの人は言いたいわけなんです。
明らかにたとえば現行法に触れないとしても――これも譲っての話です、触れないとしても、こんなに社会悪を引き起こしている、これを何とかならないものかということを、私は昨年秋、
決算委員会で発言しました。その後、産業構造審議会の答申案が出た。それから、
ホリデイマジックに対しては
公正取引委員会が立入
調査をした。でも、まだその審決は出ておりません。そしてまた、審決が出たとしても、それからやっと
被害者は損害賠償請求ができるわけであります。またそれから裁判所です。時間がかかります。裁判所に行こうと思ったら、やはり弁護士を頼まなければいけません。お金もかかります。借金をして、そんなにあすの
生活に困っているような人が弁護士費用まで出せるものでしょうか。もっと手っ取り早くこの
被害回復ができる手がどうして打てないのでしょう。それを私はここで訴えたいと思います。
警察に持っていってもらちがあかない。監督官庁に持っていってもらちがあかない。
被害者は一体この声をどこに持っていけばいいのでしょう。だまされた
人間が悪いで済んでしまうのでしょうか。
その説明
会場というのも、名前の通っている
会場を使っている。たとえば、
東京では久保講堂とか、貿易センタービルとか、
日本武道館とか、大阪では万博跡の
会場ホールとか、国民会館とか、
市民会館とか、県民会館、商工
会議所のホール、こういうところを使っている。明らかにこれは、詐欺ではないとしても、詐欺的なんです。私
どもの主張としましては、これは詐欺的じゃなく詐欺だと思っております。
もっとひどい例がいっぱいあります。この方は女性です。二十九歳の奥さんですが、出資金百五十八万円です。
経費がずいぶんかかっております。この方も
エー・ピー・オー・ジャパンの加入者ですが、いまこの人は、離婚をして身を売ってでも、夫、兄弟に迷惑のかからないようにして、少しでもお金の返済をしなければいけない、そのようなどろ沼の中にいるわけです。
下のクラスからだんだんと上げていく。
最初、下のクラスから誘っていく。ところが、そこではもうかりませんよと言う。その上に行きなさい、上だったらもうかりますと言う。そこでまた、その上に無理をして行く。そこでまた、それじゃもうかりません、もっと上へ行きなさいと言う。きりがないのです。
商品は売れないのです。ですから、
自分が元を取ろうと思ったら、人を連れてくる以外にないのです。
自分がそんなに
被害に遭っていて、どうして人を同じような
被害に遭わせることができましょうか。
マルチ商法の
社会悪性というのは、この
被害者が加害者になることであるわけです。
説明
会場に行きますと、すぐあすにでもお金がもうかるような気がします。いまここでサインをしなければ、もう二度とこのチャンスはめぐり回ってこないんじゃないかというふうな雰囲気になってしまいます。実に巧妙に心理学を応用した説明会なんです。まずここに行った人は、六割から七割方がひっかかってしまいます。その説明会そのものを押さえないとどうしようもありません。
人間です。欲はあります。欲がありますから、やはりいまよりも
生活をよくしたいと思います。家が欲しいでしょう、車が欲しいでしょうと、神経をなでられて、欲望を誘われて、その場でサインをしてしまうような雰囲気につられてしまう。手付を置いてしまう。そうすると、大体三カ月間はこの熱から覚めない。催眠術にかかってしまうわけです。その三カ月間の間に
被害者が加害者になってしまう。下からは突き上げられる。
自分はやっと目が覚めた。そうすると、下にも払わなければいけない。でも、払おうにも、
自分も借金をしている。
このように、大衆の汗の結晶、本当のささやかな浄財を奪っているわけです。家庭を崩壊しているんです。どうしてこんな
会社が
日本でまかり通るのでしょう。もう諸外国では、
マルチ商法は実質禁止になっております。
日本ではなぜそんな商法が許されるのでしょう。商法というよりも、これはもう本当に
人身売買なんです。
被害者が横の連絡をとれないような仕組みになっております。
会社からの伝達事項は下までおりていく。しかし、
被害者同士は連絡はとれない。だから、
自分一人のことかと思ってあきらめてしまう。そのように泣き寝入りしている人がずいぶんあります。いま泣き寝入りしている人が立ち上がったら、
エー・ピー・オー・ジャパンのビルの前は恐らく二十万人の
人間でいっぱいになるでしょう。
独禁法で取り締まってもらうのも結構でございますけれ
ども、独禁法には限界性があります。
被害者回復が行われません。あくまでも
被害者が団体となって自力で救済していく以外にないのでしょうか。
ホリデイマジックではうまくいった。ところが、
エー・ピー・オー・では一切拒否している。
会社側は、
商品が価値があると言う。そんなに価値があるのだったら引き取ってもいいじゃないかとわれわれが言うと、そういうことはできないと言う。効果はあると言う。しかし、その効果を判断するのは
消費者です。このような
会社の
企業姿勢、
社会的責任、こういうものをこの場で徹底的に究明してもらいたいと思います。並びに現在の
被害者、この
被害者の
被害回復が手っ取り早く行われるように、
皆さん方のお力をおかりしたいと思います。
終わります。