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1975-04-17 第75回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年四月十七日(木曜日)     午後二時三十二分開議  出席委員    委員長 横山 利秋君    理事 山下 元利君 理事 松浦 利尚君    理事 山中 吾郎君 理事 小林 政子君       愛野興一郎君    加藤 紘一君       片岡 清一君    亀岡 高夫君       羽田  孜君    廣瀬 正雄君       増岡 博之君   三ツ林弥太郎君       有島 重武君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁国民         生活局長    岩田 幸基君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         経済企画庁総合         計画局長    小島 英敏君         経済企画庁調査         局長      宮崎  勇君         国税庁間税部長 星野 孝俊君         文部省初等中等 安嶋  彌君         教育局長         農林大臣官房審         議官      高須 儼明君  委員外出席者         物価問題等に関         する特別委員会         調査室長    芦田 茂男君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十七日  辞任         補欠選任   羽生田 進君     亀岡 高夫君   三塚  博君    三ツ林弥太郎君   粟山 ひで君     増岡 博之君   山崎  拓君     羽田  孜君   山本 幸雄君     廣瀬 正雄君 同日  辞任         補欠選任   亀岡 高夫君     羽生田 進君   羽田  孜君     山崎  拓君   廣瀬 正雄君     山本 幸雄君   増岡 博之君     粟山 ひで君  三ツ林弥太郎君     三塚  博君     ――――――――――――― 三月二十九日  農業用資材価格引下げ等に関する請願津川  武一紹介)(第一七五四号)  同(津川武一紹介)(第一八〇四号)  公共料金引下げ等に関する請願瀬野栄次郎  君紹介)(第一八六五号) 四月十四日  公共料金値上げ反対に関する請願小沢辰男  君紹介)(第二五〇五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月二十七日  物価安定対策に関する陳情書外一件  (第三〇六号)  公共料金値上げ抑制等に関する陳情書外十三件  (第三〇  七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  物価問題等に関する件      ――――◇―――――
  2. 横山利秋

    横山委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山中吾郎君。
  3. 山中吾郎

    山中(吾)委員 福田長官あるいは副総理という両方の立場で、総需要抑制堅持はいままでずっと主張してきたわけでありますが、その態度は変わっておりませんか。
  4. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 変わっておりませんでございます。
  5. 山中吾郎

    山中(吾)委員 総需要抑制対策考えるときに、財政的には公共事業繰り延べ、それから金融関係では公定歩合堅持窓口規制あるいは預金準備率据え置き、そういうふうな柱があると思うのですね。あと公共料金の努めての抑制。しかし、現在、だんだんともう公共事業緩和も行われたし、公定歩合引き下げも〇・五%十六日に実施した。あと残っておるのは、公共料金据え置きということだけが総需要抑制の具体的な柱ではないかと思うのですが、いかがですか。
  6. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いまインフレ退治という問題、これを最優先課題として取り組んでおります。しかし、その副産物として不況問題というのがあります。これに対しても対処しなければならぬ、そういう立場でございます。そこで、不況対策物価の問題を考えなければこれはそうむずかしい問題じゃない。しかし、物価の問題を最優先として考えます以上、不況対策にも依然として限界というものがある。  そこで、物価の方につきましては、今日この時点では大変いい推移をしてきておる、こういうふうに見ておりますが、これから先を考えますと、まあいろいろ問題があります。賃金問題もあれば、国際価格がどういうふうになっていくかという問題もあり、また、御指摘の公共料金問題等々ありまして、予断は許さない、こういう状況ですが、いずれにしても、物価の安定、これを最優先課題としてやっていきたい。  そういう中で、公共料金につきましてはもうすでに予算編成の際にいろいろ議論をし、また、国会予算案提案いたしましてからもいろいろ御意見も承っております。おりますが、結局、郵便料金と、それからたばこ、これだけは本年中に始末をしておきたい、こういうふうに……(山中(吾)委員「酒も」と呼ぶ)酒の問題もありますが、始末をしておきたい、こういうふうに考えておりますが、それを前提といたしまして、昭和五十年度中の物価上昇率を一けた台にとどめる、こういう戦略をもちましていま取り組んでおる。いま予定しております酒、たばこ、それから郵便料金、これにつきましては、予定したとおりこれを進めてまいりたい、かような考えでございます。
  7. 山中吾郎

    山中(吾)委員 物価を第一にしながら、不況対策もしなければならぬ、そういう現実の矛盾した要請があって、そこで、いま長官が言われたように、公定歩合引き下げも、あるいは公共事業の一部の繰り延べ緩和とか、これはやはりやらざるを得ないということはわかるわけです。したがって、あとに残っておるのは、不況対策考え、きめの細かい対策を立てながら物価抑制を堅持していく 総需要抑制を堅持していくとなると、なすべきものは公共料金を極力抑制するしかないのじゃないか。  そこで、いまお話しのように、酒、たばこ、これはもう政府は、いま審議をしておりますが、そのままいけば五月一日、また、郵便料金引き上げも決定した。一方に長官が、五十年度末ですか、一けたに上昇率を抑えるという方針も、政府の公約でしょうか、発表している。  そうしますと、ずばりお聞きしたいのですが、あと消費者米価の問題が出ると思う。これは据え置きをあらゆる努力をしてやるというようなことがないと、私はなかなか実現できないと思うのですが、ずばりお聞きしたい。
  8. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 五十年度中の一けた台の消費者物価上昇、これはある程度公共料金の改定を前提といたしましてそういうふうに考えておる、こういうことでございます。消費者米価につきましてもある程度のことを考えて、これは一けた台、こういうふうに申し上げておるわけですが、これはまだ法律事項ではございません。したがって、法律案として御審議は願っておりませんけれども、その時点における生産者米価が一体どういうふうになるか、また、財政事情がどうなるか、それから、特に物価情勢がどの程度消費者米価値上げにたえ得るか、そういう財政並びに物価情勢諸般をにらみまして結論を得たい、こういうふうに考えておるわけです。  いま今日、生産者米価が一体どうなるか、こういうようなこともはかり知れないこの時点で、消費者米価をどうするかということにつきましては、これははっきりこうするんだというお答えはいたしかねる、こういうことであります。
  9. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私の申し上げるのは、一けたに前年同月比の上昇率を五十年の年度末に抑えるという方針責任を持って遂行するには、現在政府が決定した公共料金引き上げ以外は抑制するということでないとできないんじゃないかと思うので、お聞きしておるわけです。それで、消費者米価引き上げも含んで一けた大丈夫だというのでしたら、またそれは認識の問題ですから、その辺をお聞きしておきたいということで、方針として抑えるとか抑えないとかということをお聞きしているのではないので、現在決定した公共料金引き上げ以外は消費者米価も含んで据え置きにするという方針でないと、一けたの目的は果たされないのではないかと思うのであります。そうではありませんか。
  10. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 一けた台と申し上げておりますが、それはいま国会で御審議願っておる公共料金関係法律案前提といたしましてそういうふうに申し上げておるわけです。  なお、法律案事項でない麦価、米価、こういうものの処置をどうするかということにつきましては、財政事情がどうなるだろうか、また、一けた台と申し上げておる物価の先行きがどうなるだろうかというようなことを総合的に検討いたしまして結論を得たい、こういう考えでございます。
  11. 山中吾郎

    山中(吾)委員 公定歩合引き下げも、財界の方から第二次引き下げをさらに期待するとか、いろいろまた財界の方の景気政策の圧力があること等が新聞紙上に盛んに出ておる。それから、いろいろな企業がコストプッシュの関係価格転嫁動きもありするので、恐らくいまのような行き方の中に、私ら素人考えても、一けたで抑えられるかどうかということは、公共料金に重点を置いて政府が相当かたい決心でいかなければ目的は達成しないのではないかと思うので、その辺を一応話題にすべきだと思って話題にしたわけであります。  そこで、政府の方で五十年度経済成長率は四・三%を一応目標にしておる、これはもうほとんど実現見込みがないと思うのですが、これはいかがですか。
  12. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 景気回復テンポが多少ずれてきておるように思うのです。そういうことを考えますと、さあ四・三%という見通しがそのままいくか、あるいは多少引っ込むか、その辺はいま定かに見通すことができませんけれども、とにかく四・三%成長ということで経済政策運営をいたしておりますので、いまその目標についてこれを変えるというようなことは考えておりません。
  13. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大平大蔵大臣大蔵委員会で、政府見通しは当たっためしがないと公言をしているわけです。何回も公言しているのですが、四・三%についても、それについての質問に対して、政府はかつて見通しが当たったためしがないんだと言って、すでに見込みない話をしているのですが、この間、十五日の大蔵大臣閣議決定発表がありましたように、ことしも税収入財源欠陥が八千億円ある、これに対する対処が所信表明の姿で発表になっているわけです。  現在、すでに四十九年度における税収入欠陥が八千億もある。五十年度については四・三%を前提として予算編成をした。これが見込みがない。当然また税収入欠陥が出るのではないかと思うので、この点についてはあくまでも四・三%に持っていくように、これからあらゆる努力を払って財源欠陥をなくしていくという方針をとるか、明確に修正すべきを修正して処理するなら、早くしなければならぬのではないかと思うのですが、これは経済企画庁長官というばかりでなくて、財政通立場から率直にひとつ聞かしていただきたい。
  14. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 見通しを立てて、そして四・三%成長と決めました。しかし、他の面において、成長率は達成したけれども物価の方を損なったとか、そういうような悪影響というものが出てきては困るわけなんです。私は、五十年度経済運営におきましては、不況のことも考えます。考えまするけれども、何としても物価の安定が最大優先課題だ、そういう姿勢で取り組んでいきたい、こういうふうに考えております。ですから、成長率が四・三%となっておるが、物価優先だ、こういうような見地から見まして、それがあるいは達成できないんだということがあり得ても、私は物価政策優先さして考える、こういう姿勢でやっていこうと思うのです。  しかし、いまこの段階で、四・三%成長というもの、政府として経済運営の指針としての成長率、これを変更するということは考えておらぬ。当面は四・三%というところをにらんでやっていく。やっていくが、多少時期がおくれて景気回復テンポがずれてきた、それにもかかわらず四・三%成長をどうしてもしなければならぬ、一方において一けたの消費者物価水準を達成しなければならぬ、こういうような問題がある。そういうむずかしい諸種の問題に当面したという際には、四・三%を犠牲にいたしましても、これは一けた台の物価水準というものを達成しなければならぬ、そういうふうに考えております。
  15. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私も、物価抑制を大事にするならば、四・三%の目標も放棄すべきではないかという感じがするのです。現在横ばいですから、これはある人の論説を聞いても、下半期で一〇%ぐらいの成長考えないと年度全体の四・三%にならない。前半は横ばいですから、年度四・三%の成長率考えるならば、下半期に一〇%程度成長政策をとらないと四・三%にならぬ、これは論理的だと思うのですね。もしそういうことになると、一方に財源欠陥がもうすでに見通しが明らかで、大蔵大臣自身も、五十年度においては税収の減の危険が非常にあるとさえ言っておるわけですから、赤字国債でも発行しろということが財界その他からむしろ要請が出るのじゃないか、そういうふうに私は感ずるのです。  また、いつも見通しは当たったことがないということが常識になっているのですから、四・三%というのは、いわゆる一けた上昇率を堅持することを公約的に言っておる副総理としては、もっと率直に、もう早目に見切りをつけて、国民をだまさないようにされた方がいいのではないか、国民感覚でそう思いますが、いかがでしょう。
  16. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まあどなたがおやりになっても、四・三%と見た、それが四・三%の成長という結果になる、そんなうまい経済運営はできないと思うのです。四・三%と言いますが、その実態は、これはなだらかな回復をしていくということを言っておるのです。その大体の目安が、全年度間の平均を出すと四・三になる、そんな見当だということであります。  そういうことでございますが、いま多少景気回復テンポがずれてきております。多少のずれはあるけれども、四・三%成長が象徴するなだらかな回復ということは、私はこれはもうぜひ実現をしたい。国民も、四・三%になるかならないか、目盛りを持って見ているというような気持ちではない心と思うのです。やはりなだらかな成長、これが実現できるのかできないのかというところに関心があるのじゃあるまいか、そういうふうに見ております。
  17. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その辺は、三%ぐらいという論もあるし、その程度で、これ以上きっちり追及する気はないのですが、それはそれとして、今度は安定成長としての恒常的な経済成長は何%を妥当とお考えになって努力をされるのか、お伺いしたい。この五十年度はいいですよ。四・三%を達成しようが、あるいはしないと思いますけれども、しかし、結論として到達点は、いままでのような高度成長政策から来たインフレを再び起こさないという立場で、安定成長前提とした成長率は、大体七%と言う人もいるし、五%、六%と言う人もいますが、長官は何%ぐらいが一番妥当とお考えになりますか。
  18. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 安定成長というか、これから長期にわたりましてわが国経済成長テンポをどのくらいにするか、これは、率直に申し上げますが、いまずっとどの辺が適当であるかということをながめておる、こういう段階です。私の基本的な考え方は、先進諸国の中でやや成績のいい方のグループ水準、そういう線にわが日本を落ちつけたい、こういうふうに考えているのです。  とにかく先進諸国といいましても、いま世界じゅうどこの国を見ましても大混乱のさなかでございます。さあこれから先あるべき成長率というようなことについて、どこの国もまだ見当がつきかねるような状態であろう、こういうふうに思います。そういうようなことを考えますと、わが日本だけが、いまこの段階で何%がいいのだと言うわけにはいかない。ただし、申し上げ得ることは、これは国際社会の中で成績のいいグループ水準ということを目指していかなければならないだろうということです。
  19. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それは何%ぐらいですか。
  20. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 それがいま、どの程度にいくか、諸外国の方がまだ先々の経済政策についての展望もつかない、こういう状態下においてつかみ切れない、こういうことであります。いままでの一一%成長、一二%成長、そういうようなものに比べますと、かなり低いものになる、そういうふうに見ております。
  21. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それで、恐らく一番高くても、いままでの意見を聞いていると、七%か、あるいは五%、六%という常識がずっとあるようですね。  私が疑問に思うのは、一〇%以上の成長政策前提として、企業借金設備投資をしてきた。借金運営をしている。結局、日本企業平均体質が、資本の構成で他人資本が八五%ぐらいになっている。自己資本が一五%か二〇%である。こういう企業は、鶴間の売上高伸びが一〇%成長よりもプラスエックス、一〇%以上の売り上げの伸びがないと、金利も払えないし、賃金も払えない。したがって、かりに五%、六%の成長率日本安定経済考えて、再びインフレを起こさないようにするならば、成長率五%、六%にたえ得る企業というものを育成しない限りは、私は依然として企業過保護、それから税金の不公平、特別措置と、あらゆることを起こしながら繰り返していくにすぎないのだというふうに思うのです。したがって、一〇%成長前提としてそれで成り立つ企業を、五、六%の成長にたえる企業企業の性格を変えるというには、構造改革をしなければ、結局、物価の再騰、あるいはインフレ政策をやらないと成り立たなくなると私は考えるのですが、いかがでしょう。
  22. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まさにお話のとおりだと思います。つまり、高度成長になれたわが国企業、それから家庭地方団体を含めての財政、そういうものも本当に根本的な出直しをしないと対応はできないと思うのです。そこが非常にむずかしい点ですが、そういうことにならざるを得ないのだということを、家庭も、企業も、あるいは国も、地方団体も深く認識しないと、大変なことになる。  しかし、逆に、大変なことになるからといって経済成長の転換を行わないということになったら、一体どうなるのか。これはまたインフレですよ。国際収支だってたまったものじゃない。それから、大体世界各国からつまはじきにされちゃうんじゃないでしょうか。かりに七%成長ということになれば、十年で日本経済の規模は倍になるのですから、さあ倍になった時点わが国資源有限時代における立場は一体どうなんだというと、貴重な石油なんかにつきましても、わが国世界の二割以上は恐らく使わなければならぬでしょう。非鉄金属なんというものになりますと、世界の総輸出、それを全部日本が買い取らなければならぬというものも相当あるのです。  そういうことを考えると、資源が二十一世紀になったら消えようかなんというようなことが心配されるこの時期に、日本のそういう経済運営が許される、そういうことはあり得ないですね。それから、かりにあり得たといたしましても、その資源わが国が輸入いたしましてどうするのだといえば、また加工して、これをその資源を買うための財源を調えるために売りさばかなければならぬ。いまの日本の商品、その倍が十年後には世界市場に出されるのだということになったら、またこれも世界は黙っておりません。そういうことを考えましても、そんなに高い成長というものはわが国立場として世界的にも許されないですよ。  それならそれで、許されない、そういうことを前提といたしまして、わが国成長の速度は落とさなければならぬ、落としたことに対する対応考えなければならぬ、こういうことなんで、しかし、この対応はむずかしい。むずかしいが、わが日本はそういう立場をとらざるを得ないのだということを国民すみずみが認識して、国民生活におきましても、財政やり方につきましても、企業運営につきましても、それぞれの対応の具体的な措置をとらなければならぬだろう、こういうふうに見ております。
  23. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そこが、私のような余り専門家でない者も考えると、一番この問題の解決のめどになり、私の問題意識がそこに集まってくるわけです。それで、たとえばかりに五%成長にたえる企業、こういうものを育成しない限りは、いわゆる解決はないのだ。そうしたら、政府としてはどうしたらいいのか。  一〇%以上の成長前提として、他人資本が八〇%で、自転車操業みたいにして、外に対してはどんどんとエコノミックアニマルというようなやり方をしているし、国内的にも消費者に、消費は美徳というような虚構をつくって浪費をやらすとか、あるいは使い捨ての習慣、何か企業がつくった消費がある、それを繰り返してきたと思うのです。そういう不健全なものを戻さない限りは、二度とインフレ体質を抑えるという経済政策にはならない。こういうものを真剣に提案する政府でなければ、責任のある政府ではないと私は思うのです。野党は批判だけしておるかもしれませんけれども。これをどうするという政策国民福田総理に一番期待しているし、福田総理施政演説その他の中には抽象的な提起はしておるように見えるのです。しかし、具体的にどう調べてみても出てこない。  最も極端に言えば、六%成長にたえ得る企業だけがあれして、そういう一〇%成長前提とした企業などは、いわゆる自然淘汰というか、機能淘汰という形でなくしていくことを前提として、そのかわりに 経営に失敗した者については スウェーデンのような絶対的な社会保障制度で最低の生活を保障し、心配ないというような政策考えて、割り切ってやるのか、あるいは自己資本の率をもっと多くするために、何かいろいろの金融政策、何政策で、現在のいわゆる不健全企業というものを安定成長にたえ得る企業体質改善をする政策を立てるのか、そういう具体的な提案がないと、選挙対策でただ適当に各党が言い合いをしておるだけで、未来に責任を持ったインフレ対策というものはないんじゃないか、調べてみるとそう思うのですが、その辺は福田総理としてもう少し具体的に提案をされるべきではないかと思う。いかがでしょう。
  24. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まずスタートは、世の中の変わったことに対しての認識が非常に大事ですね。この認識を持つべきだということについては、私は就任以来声を大にしてこれを訴えておる。  世の中動きを見ますと、私どものそういう訴えに対しまして相当反響があると思うのです。たとえば、いま国民消費が沈滞しておる。この消費の沈滞につきましてはいろいろの原因がありますが、大きな一つ原因は、やはり世の中が変わってきたから、これに対する消費態度というものが必要だな、こういう要素がある、こういうふうに私は信じております。  企業はどうだと言いますと、企業の中には、もう一度あのバラ色の夢を見たいというような期待を持つ者もある。また、期待ばかりじゃない、そういうふうになるんだ、こういうふうに思っている人もある。ありますけれども、大方の企業家は、ああ、この夢は再び来ないのだ、世の中が非常に変わってきたのだ、それに対する対応をしなければならぬという認識をし、また、それに対する対応を始めておるわけなんです。ですから、それがだんだん徹底してくる、これが大事なんですね。  さて、そういう際に、政府が、どういう世の中になるかという絵を示す必要があると思うのです。政府一つ一つ企業に立ち入って、この企業はどうする、それは必要ない。世の中は一体どういうふうになるんだという絵を示し、その絵に対して対応期待するということだろうと思うのですが、その絵は、大体大筋を今年中にかいてみたい、つまり、長期計画長期展望、これを今年中に作成して国民にごらん願いたい、こういうふうに考えております。  そういう長期展望をにらんで、家庭も、あるいは企業も、どうしなければならぬかなと、こういうことを考えてくださり、それを実行してくださるということになればそれでいいのですが、これは非常に大きな変化でございますので、企業国民も大変御苦労の多いことだろうというふうには考えております。
  25. 山中吾郎

    山中(吾)委員 本年中に、マクロ的に、日本に再びインフレが生まれないような経済構造というか、そういうもののビジョンをお出しになる、これは間違いないですね。
  26. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 間違いございません。
  27. 山中吾郎

    山中(吾)委員 だから、今度は経済の構造的改革抜きの解決はない、また、そういう経済構造改革をする限りにおいては、国民のそれを支える価値観の形成がないと解決がない、これが私の結論なんです。それで文部省も呼んでおるわけです。  現在、政治と教育、経済と教育が全然別なことをしておる。私の政治課題は、民族のエネルギーを一つに持っていくのには、国民の価値観形成の教育政策経済政策、これがどこか統一したものがないと、民族のエネルギーが分裂をして、浪費だけだと思っておるものですから、絶えずそういう考えをもっていまの経済現象を素人なりに見ておるわけです。  そこで、経済構造改革という方向、これは本年中に発表なさるということでありますが、いままでの言葉では、安定成長という言葉を使っておられるわけです。それは三木総理、皆さんも、社会的不公正の是正とか、あるいは自由経済前提とするが、ルールを確立すべきであるとか、いろいろな言葉が、何かそういう方向を志向している。しかし、抽象的な感じがします。われわれは、一つの規制された市場経済というような言葉を使ったりしておるわけですが、そこで、少なくともぼろもうけ経済体制をなくする。福祉優先という言葉があるが、国民生活の下限を上げていく、上限のぼろもうけも抑えるということで、所得、富の格差もある程度圧縮をして、ぼろもうけインフレ体制をなくしていく一つのルールを確立するということが、恐らくその柱になっていくのではないか、経済政策としては。  そうしますと、現在の少なくともぼろもうけを規制する政策としては、独禁法の整備をすべきではないか。そして、一昨年この物持委で採決した生活関連物資の売り惜しみ買い占め規制法、あるいは国民生活安定法というようなものをもっと実行できる、執行の行政体制も確立していくというふうなことが前提でないと、そういう構造改革というものは出てこないと思うのです。  おととい、椎名副総裁はどこかで、この国会では独禁法は通りそうにもないというふうな発言をしたりしたが、財界からの圧力がだんだんと自民党政府の中に入ってきて、そういう方向においての基本的な柱である独禁法などもうやむやにされるというようなことであるならば、無責任だ。そういうものが前提でなければ、いま長官が言われたような、いまのようなぼろもうけ経済体制を克服して、安定成長というか、所得の格差の拡大するのをとめるというような新しい経済体制はできない。本年度中にそういうビジョンを出すくらいなら、最小限、独禁法の成立くらいはどの閣僚だって意見一致してやるべきではないか、それが経済構造改革の出発点ではないかと私は思うのですが、いかがでしょう。
  28. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 独禁法につきましては、この間、閣僚会議を開きまして政府案要綱を了承いたしまして、そして、党との間に最終的な詰めを行った上でこれを条文化するということを決めたわけでありまして、この問題をめぐって新聞等をいろいろにぎわしておりますが、政府姿勢はいささかも変わるところはない、かように御了承願います。
  29. 山中吾郎

    山中(吾)委員 椎名副総裁が内外情勢調査会の総会の講演で、今国会はむずかしいと言ったのは、そうすると、副総理としては、それは私語であって、政府方針には変わりないということを確認してよろしいですか。
  30. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府の方は、この間、閣僚会議で決定した線に従いまして、独占禁止法の最終的処理を進めたい、こういうふうに考えておるわけでございます。政府考え方にはいささかの変わりもございません。
  31. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その次にお聞きしたいのは、やはり私の独断があるかもしれませんが、現在の利己主義的価値観、エゴイズム的な風潮を前提としたときに、いまのいわゆるぼろもうけというようなものをなくしていくのには、法的拘束力で押えていくしかない。だから、取り締まり法を強化していく。しかし、企業の方では、最大利潤の追求の自由は当然であるからそういう法律は悪法だ、売り惜しみ買い占め法でも、現在の財界は、妥当な法律という価値観はないので、自由を拘束するものであって、資本主義の本質から言ったら悪法であるというような価値観がある。したがって、それに対抗手段を考えて、また脱法的な行為をする。そうすると、こちらはまた法律の取り締まりを強化しなければならぬ。片方は対抗手段。最後には統制経済に行く道しかないと思うのですね。これを避ける道は一体どういう方法があるのか、お考えになったことがありますか。
  32. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、この世の中を法で規制しようと言っても、なかなかそれは法だけで規制できるものじゃない、こういうふうにしみじみ考えておりますが、やはり社会風潮というか、人間の心、そこに基本的な問題があるのだろう、政治もそこヘメスを入れなければならぬ、こういうふうに考えておるのです。  私、いま高度成長から安定成長への転換を考えておる、これには経済、物という側面ばかりじゃないのです。やはり人間の心というか、社会の心といいますか、そういうものの変革ということも並行して考えておるわけです。つまり、高度成長というと、物、金、そして、これは自分だけよければというエゴの風潮を生みやすい土壌だ、こういうふうに思います。エゴが支配するような社会、これはもう本当にいい社会とは私は言えないと思うのです。やはり社会連帯といいますか、お互いに能力を発揮して助け合って、そしてみんなが幸せに生きる社会、その社会の中で自分を完成していくという社会連帯の考え方、この考え方が社会風潮としてしみ通った社会、そういうことにならぬと、社会全体として安定しないと思うのですよ。  そういう土壌は経済的側面から考えるとどこから生まれてくるかというと、私は、安定成長という経済体制の中にこれを求め得る、こういうふうに考えておるわけでございまして、いま経済問題の話でありますから経済の側面から言うと、やはり安定成長、これをどうしてもわが日本においては定着させなければいかぬ。そして、経済活動、自分の利益にもなること、これは求めましょう、求めましょうが、その自分の利益というものは、自分の利益のためのみじゃないのだ、その利益、かち得たその成果を踏まえて社会公共をよくするのだ、こういう考え方にみんな個人も企業もなっていく、そこで私はいい社会ができていくのだろうと思います。  買い占めだとかあるいは売り惜しみだというような、ああいう好ましからざる現象というものは、これは社会風潮に多くを根ざしておると思うのです。あるいは公害の問題、これなんかもそうだと思うのです。自分の企業がよければということで、人の迷惑は顧みない、そういう風潮、その中からあの公害問題というようなものも出てくるというふうに思いますが、やはり経済成長、このかじを大きく変えるとともに、国民の心の問題というか、社会風潮、これも建て直すというところに、政治の大きな課題があるのじゃないかというふうに考えています。
  33. 山中吾郎

    山中(吾)委員 福田長官の政治哲学は、それは結論として大体推察しておるのですが、それを文部省の関係で、結論的にここで質疑の形で意見を申し上げたいのです。  経済政策として、取り締まり法の強化以外に、消費者行政を強化するという着眼が非常に政府は薄いのだが、法律の取り締まりによらないで、公正な価格、公正な競争、それを決定するために、消費者行政の強化というのが日本の行政の中で一番おくれているのじゃないか。消費者と生産者の関係が基本的な経済機構であるということをやはり認識すべきであって、生産者、供給者の方は政府があらゆる助成をして、卸から小売りから全部組織化を図って、消費者はばらばらにしてある。情報センターといっても、区々に情報を与えたところでいわゆる価格を安く安定する力にはならないので、スウェーデンのように組織化を図って、そうして暴利をむさぼるようなメーカーの品物は消費者団体が買わないという決定をする、そういう民衆の力によって暴利をむさぼる企業をセーブして、そうして正当な価格で安定させる。法律の取り締まりでなくて、自発的な民衆の力で低価格政策に協力するような組織、それは消費者組織しかないと思うのですね。  ところが、経済企画庁の国民生活局の一番片すみに消費者行政課があって、ほとんど何もしていない。そして情報の提供——情報の提供と教育だけでは何にもならないので、生産者の方が組合をつくり組織化をして、一つの力をつくっておるが、消費者の組織化をしない限りは統制経済に持っていかざるを得なくなる。そういう意味において、生活協同組合というものをもう少し助成をすべきではないか。北欧初めヨーロッパの方においては、生活協同組合のいわゆる売り上げですか、そのシェアは大体二〇%ぐらいになっておりますね。日本の場合は一・三%にすぎない。ほとんど力がない。  もう少し生活協同組合を助成して、そうして一方的に価格を支配するような供給者に対してセーブできる一つの力を持つような消費者行政の組織化を思い切ってすべきである。これが、いわゆる権力的に、法律でますます自由経済を押えていくような、戦時中の統制経済の道を避けながら、しかも公正に民衆の中において適正な価格を決定する一番聡明なる機構であり、それが政治の妙味ではないかと私は思うのですが、その点は、日本の政権を握っておる自民党政治思想が、何かそこにイデオロギーが入るのではないか、選挙対策に不利ではないかというふうな、これは心理的にそういうものがあるのか、日本の場合は生活協同組合の強化育成に非常に消極的であると私は実感をしているのです。生協法の改正をもう少しやって、少なくとも市場の売り上げ高の二〇%ぐらいは消費者団体で支配できるようにすれば、余り法律をつくらなくてもできるのではないか。  ところが、いま局長に聞いてみましたら、消費者行政の担当者であり、物価責任がある経済企画庁は、生協法の主管省にはなってない、厚生省にあるそうですね。厚生省の中にあって、一体できるはずがないんじゃないですか。副総理として、この辺の機構改革はお考えになってしかるべきじゃないか、何の偏見もなしにそう思うのですが、いかがでしょう。
  34. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私も、今日の社会で、消費者が結集をする、そして消費者の利益を守るということは非常に大事なことであり、それは助成しなければならぬ、助成すべきである、こういうふうに考えておりますが、いま具体的な問題として、生活協同組合を強化せい、こういうお話ですね。これは私も考え方においては賛成です。しかし、わが日本経済体質というものが非常な特異体質で、中小企業を非常にたくさん抱えておる。その方のこともにらんでそのことを決めていかなければならぬ。  生活協同組合の問題、これは物価対策上言われておる流通組織の単純化とか、あるいは合理化、近代化、そういう問題と一面相通ずるものがあるわけなんでございますが、その流通問題なんかも、中小企業立場というものを考えなければ、かなり思い切ったことができるのです。ですから、やはり現実的、段階的に事を進めていく必要がある。中小企業体質改善、こういう問題と並行して考えないと、これは国としても社会としても相当大きな問題を起こしていくんじゃないか、そういうふうに考えます。  考え方は私は賛成ですが、進め方は、そういう総合的な日本経済社会のあり方というものの中でのバランスを考えながら進めていかなければならないだろう、これが基本的な考え方であります。
  35. 山中吾郎

    山中(吾)委員 考え方を一歩進めない限りは政策論にならないので、小売業者の関係、もちろん小売を守っていかなければいけません。それは組織化をして、きっちり各地域ごとに小売組合その他はちゃんとつくってやってあるわけです。消費者だけがばらばらであるから、消費者の組織化をもう少し制度的に考えて、少なくとも市場の売上高の一〇%ぐらい——一・三%しかないのです。日本生活協同組合の場合は。ヨーロッパは一番低いところで一〇%ぐらいのシェアを持っているわけです。それでいいのですよ。普通の適正利潤を抑えて中小企業を圧迫せいとは言ってないのです。少なくとも一〇%程度のシェアを占める程度生活協同組合の育成をしないと、需要供給の関係で価格が決定されるという自由経済の原則が成り立たないんじゃないか。東北あたりの灯油問題がそうなんで、ある者が暴利をむさぼっても、消費者一つの組織化をされておれば、そういうものをボイコットして、ほかから買える。それで小売業者も、民衆と接触している健全なる小売業者というものはむしろ保護されていく形に私はなると思うのです。  そういう点は、少なくとも、せめて厚生省から物価責任を持って担当する経済企画庁に移すぐらいのことはして、いまのように前進的に検討されてしかるべきでありますが、いまのままでは、私は少しも消費者保譲というものは前進しないと思う。具体的に検討さるべきだと思うのですが、こういう問題は、実力者たる福田長官経済企画庁長官をしているぐらいでないと一歩も進まないので、特に福田さんが長官をしておるときに具体的に検討されることを切に要望したいので、私は申し上げておるのです。私は、その辺を真剣に検討されるべく要望して、もう一度お聞きしたい。
  36. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 よく検討してみます。
  37. 山中吾郎

    山中(吾)委員 最も短い、簡潔な、しかし検討するという言葉をお聞きして、政治家としての答弁としてお聞きしておきたいと思います。  そこで、私の結論ですが、こういうふうにインフレ対策として、過去に向かってインフレで損害を受けた者に対する対策として、いわゆる貯蓄の目減りをなくするための特別貯金制度をとるとか、あるいはぼろもうけをした者に対しては不当利得を得るための特別税法を考えるとか、それは別として、再びインフレを起こさないような経済構造改革考えるべきであるということが、まあ長官とも一致したわけでありますので、構造的に改革する場合には、それを支える国民考え方、価値観の形成がなければ私はできないと思う。  ギリシャの時代のように、神の法律であるから神の教えに従うのだというバックを持って、そして遵法精神を説くなんという時代は過ぎているし、恐怖でやるということももうできない。現在の法律の拘束力というのは、私は、国民がそれを是認して支持する価値観がなければ、法律は無力だと思う。実情と全くかけ離れた法律などは守られないのと同じで、公職選挙法のように、守る者は非常識で、違反するのが常識的になったりしている。だから、私は、法律の拘束力はだんだん相対的になって、人間の教養、知識が進むに従って合理的になっていると思う。したがって、価値観の形成については、こういう経済問題の場合にも教育政策が全然無関係にあるという時代はもうないはずだと私は思っている。  そこで、文部省の現在の教育目標、あるいは教育人間像、教育方針からは、金さえあれば何でも買えるとか、金をもうけた者は何をしてもいいというようなエゴイズムを基礎にした価値観、これを目的とした教育をしているように見える。社会連帯意識を形成する人間形成を考えるならば、文部省の基本的な方針はやはり再検討すべきじゃないかと思うが、局長はいかがですか。
  38. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいまの御質問の前に、先ほど消費者の問題についてのお話があったわけでございますが、経済の取り扱いにつきましては、学校教育におきましては主として社会科で取り扱っておるわけでございますが、中でも、いわゆる消費者教育につきましては、社会科、家庭科、道徳、この辺でいろいろな形で取り上げているわけでございます。  小学校でございますと、消費生活への関心を高めるとか、あるいは消費生活の工夫を大切な問題として自覚させるといったようなこと、あるいは家庭科の内容といたしましては、買い物の仕方を考えたり、金銭収支の記録を着実にやらせる、あるいは道徳の内容といたしましては、物やお金を大事にし、上手に使う、こういうようなことが教育の内容として取り扱われておるわけでございます。  次に、自分さえよければいいという、そういう一般的な風潮がみなぎっておるわけでございますが、そうした事柄につきましては、ただいま山中先生から社会連帯というお言葉があったわけでございますが、そうした趣旨の教育も現在いろいろな形で進めておるわけでございます。一般的に申しますれば、もちろん教育基本法や学校教育法に教育の理念が示されているわけでございますが、たとえば小学校の道徳におきましては、だれにも親切にし、弱い人や不幸な人をいたわっていくというようなこと、あるいは自分たちや世の中のために尽くしてくれる人々に対して尊敬をし、感謝する気持ちを養う、あるいはお互いが助け合いながら、正しい愛情を持って国家なり人類の発展に役立つというようなことを強調いたしておるわけでございます。これは道徳でございますが、こうした考え方はただ単に道徳だけではなくて、国語におきましても、あるいは社会科におきましても、それからいわゆる特別活動におきましても、そうした趣旨がいろいろなところで貫かれるよう。教育全体を通じて配慮しておるわけでございます。  中学校におきましては、これも道徳の内容でございますが、公共の福祉を重んじ、社会連帯の自覚を持って理想の社会の実現を目指すというような事柄も、道徳の重要な指導目標一つになっておるわけでございます。  こういう次第でございまして、道徳だけではございませんが、社会科あるいは特別活動、そうした事柄全体を通じて、社会公共のために奉仕するとか、あるいはお互いに助け合うとか、あるいは自分だけの利益を主張しないとか、そういった事柄の教育の徹底を図っておるわけでございますか、不十分な点につきましては、今後ともさらに努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  39. 山中吾郎

    山中(吾)委員 方向のない、いわゆる徳目主義の教育という感じがやはりするのですね。われわれ小さいときに、母親から、御飯を粗末にしたときには、これはお百姓さんが額に汗をしてつくったお米だから、一粒も粗末にしてはいかぬ、ああいう素朴な教育があるのですね。それを近代的な思想の中に入れかえると、一われわれがお金で買った自分の所有物でも社会的生産物である、大ぜいの労働の生産物である、したがって何をしてもいいというようなことはいけないのだという、社会的存在という認識のもとに社会連帯の意識というものがつくられていけば本物になる。  だから、金で買った服だから捨てても何でも構わぬのだというのでなくて、これは何百人の農民が綿花を栽培し、そして織物にした労働生産物だという、近代的な思想というものを拒否しないでちゃんと受け取って、外国の翻訳でない、日本生活の知恵の中から生まれた社会連帯の思想の源泉をくみ取って、そしてもっと近代的な解釈の中に社会連帯の意識を形成する教育でないと、人には親切にしろ、何しろ、ここからは私は価値観の転換はないと思うのです。  そういう同じ教育を昔は支配者が便宜として便ったが、そういう道具に使わないで、現在のわれわれは社会的存在だというのは常識ですから、十八世紀のいわゆる社会から抽象した、個人主義を前提とした自由主義ではなくて、社会連帯、これは施政演説の中にも、人間は一人では生きていかれないというやさしい言葉で言っているのですが、そういう社会的存在ということを前提として、せっかくそういう日本の古い教育方法にあるのだから、個人主義を前提とした親切だ何だとかいうのではなくて、人間的存在そのものをもっと社会的存在として考えた後に、われわれは一人で生きていかれない、あらゆる物が社会的生産物だという中で、物を大切にし、そこに連帯意識を持つ。したがって、そういう教育を受けた卒業生が実業家になっていくと、公害を発生してもぼろもうけを考えるような経営哲学を持たない人間が生まれてくる。  そういう学校教育がないと、私はいまのような行き方からいけば、ますます統制経済化するしか方法はないと思うのですね。そういう検討をすべきではないか。教育審議会というようなところで、古いおじいさんばかり集めて、そして昔の感覚の人間像を出してきては、とてもだめだ。いまこういう時期ですから、もう少し感覚を新しくしながら、しかも日本の伝統的な教育方法を再現して、掘り出して教育すべきだ。そうでなければ、今度は経済政策として安定成長政策を出してきても、恐らくそれを国民が支えるということではなくて、またそれに対する脱法的な行為、そうして法律を強化するというようなことで、社会が退廃するだけだと思うのです。いまの説明からは、私はそういう人間は生まれてこないと思うのです。どうですか。
  40. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま私が申し上げましたのは、指導の目標でございます。山中先生の御指摘になりましたのは、指導の具体的な事例の問題、あるいは指導の仕方の問題にもなろうかと思います。もちろん、その内容の問題と不即不離だとは思いますけれども、指導の具体的な進め方としましては、やはり適切な事例を示しながら、物を大切にとか、お金を大切にとかいったことを教えているはずでございます。ただいまちょっと具体的な事例を持っておりませんので、適切にお答えすることができませんけれども、確かに人に親切にせよということ、ただそれだけ教えましても、恐らく説得力は十分ではないだろうと思います。具体的な事例を示しながら指導するということが、教育の実際であろうかと思います。  そうした指導を具体的には展開しておるわけでございますが、感覚が古い云々のお話に関連をいたしまして、ちょっとつけ加えさせていただきますと、三月から、永井文部大臣の私的な諮問機関という形ではございますが、文明問題懇談会というものを発足させております。これは現代文明の歴史的な変化の過程における大きな問題についていろいろ御論議をいただこうということでございます。これがすぐさま教育政策なり、あるいは教育課程なり、学校制度に結びつくということではないかと思いますが、基本的な考え方につきまして、文部行政の施策に反映をさせていきたいと考えておるわけでございます。  その中の、これは決めてかかっているわけではございませんが、テーマの一つとして「生活の質とモラル」というような事項も予定されておるわけでございます。山中先生が先ほど来御指摘のような問題も、恐らくはそういう場面で取り上げられることになろうかと思いますが、そうした方々の御意見等も参考にしながら、さらに具体的にいろいろ進めてまいりたいというふうに考えております。
  41. 山中吾郎

    山中(吾)委員 せっかく党人でない学者文部大臣ができたのだから、余り偏見を持たないで——私は、個人主義を前提とした自由民主主義だけが正当な政治哲学とは思っていないのです。個人主義に対する社会主義を前提として、もっと社会連帯民主主義というような思想も研究をすべきだ。いまのようなインフレ経済の中で、自由というのはぼろもうけの自由、強い者の自由になってしまっているのだから、弱い者の自由というのが生きるように、それは社会連帯意識を形成しない限りは、日本経済政策だって成り立たぬと思うのですね。だから、もっと世界じゅうの人類が創定したあらゆる思想を、偏見を持たないで検討して、そうして日本の未来に、政治というものに支えられることができるようなそういう教育政策を、偏見を持たないで検討されるべきである。別々にしておりますと、日本の政治家が逆立ちしていろいろなことをやったところで、民衆がそれを認めなければ成り立たないのですから、価値観の形成と経済政策というのはやはり表裏一体の形で、支配の道具にするのじゃなくて、やるべきだと思うので、特に話題に提供したわけです。  これで質問を終わりますが、松浦委員の方から関連でひとつ質問したいということですから、お許しを願って、私の質問を終わります。
  42. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 関連して長官にお尋ねをしておきたいのですが、御承知のように四月二日に参議院を予算が通過しました直後、四十九年度の歳入欠陥八千億が出まして、これはどうにか処理できる。そして、五十年度の歳入欠陥の問題が非常事態的な意味で大蔵大臣から発表され、閣僚会議にも報告されたという事実があるのですが、実質成長四・三%確保されれば、歳入欠陥は起こらないということでございましょう、それはどうですか。
  43. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 その辺は、四・三%成長ならば歳入欠陥は起こらないと言えるかどうかですね。とにかく四・三%成長という、そのもとになっておる四十九年度において異変が生じているのですから、その異変のずれというか、影響というものも、これはまた出てくるという可能性があるのです。しかし、また別の影響というものも出てくるかもしらぬ。そういうことを考えますと、五十年度税収が一体どうなるかということは、これから少し推移を見ないと、これは予断できない、今日においてはそういう見方をするほかないと思うのです。
  44. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 これは事務当局で結構ですが、一−三月の経済成長は実質何%ぐらいと想定されますか。
  45. 青木慎三

    ○青木(慎)政府委員 一—三月の成長でございますが、いろいろな指標がまだ全部発表になっておりませんので、はっきり申し上げることはできませんが、私どもがいろいろな指標から推定いたします限りは、横ばいか、ないしはごくわずかの微増程度ではないかというふうに判断いたしております。
  46. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 一—三月が横ばいないし微増だ。そうすると、この前、本委員会長官は、底から薄日が差すのは大体夏ごろだろうというお話でしたね。そうしますと、平均四・三%の経済成長を維持するためには、五十年度の後半、二けた台近くの経済成長を見込まなければ、平均四・三%にならないということだけは事実でございましょう、それはどうですか。
  47. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 景気回復がずれてきております。したがって、私は、いま多少、松浦さんがおっしゃるように無理をして、そうして下半期成長率を相当上げなければ、四・三というところには来ない、こういうふうに思います。しかし、先ほども申し上げているとおり、成長率もさることながら、物価の問題があるのです。成長率物価かと言いますれば、成長率を犠牲にいたしましても、これは物価の方を重視しなければならぬ、こういう見解でございます。
  48. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 そうしますと、四・三%の見通し、これはあくまでも見通しだから、現状としては、物価を中心に考えるとすれば、ある程度その経済成長見通しは犠牲にせざるを得ないということは、この前、外人記者協会ですかで演説なさいましたときに、五十年度経済見通しは大体四%だろう、四%でも無理だろうというような発言をしておられますが、そういう発言を長官としてはいま認められたというふうに理解してよろしいですか。
  49. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 あの演説では、四・三と言えば、これは正確な政府見通しです。私も政治家ですから、四・三というような細かい事務官的な数字を言わないで、大ざっぱに、四%内外になろうか、こういうことを申し上げたわけでございます。しかし、実感としましては、どうも四・三%、これは物価政策のことを考えると、多少無理をしないとそういうことにならないんじゃないか、そういう感触でございます。
  50. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 そうしますと、この前通りました昭和五十年度の予算というものの根拠になっておる経済見通し、あるいは雇用者所得の伸び、あれは一七%見ておりますね。そういったものがいま長官の御説明を聞きますと低下をする、ということは、五十年度の歳入欠陥を生ずる、こういうことでございましょう、それはもう裏返しですから。
  51. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これはそういう感触をいま持っておるという程度の話でありまして、四・三というのが現実の問題としてどういう数字になってくるであろうかということにつきましては、この段階ではまだ見当はつきにくい、こういうことでございます。
  52. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 だから、自然増収は望めない、もちろん歳入欠陥は生ずるかもしれぬという危険があるからこそ、大蔵大臣が言ったお米ですね、五十年度産米についての米価審議会の生産者米価の答申がありますね。仮にこれが上がったとすれば、財政負担ができないから、これは消費者米価に転嫁をするということになりますと、結果的には、財政硬直化から、公共料金抑制ということじゃなくて、やはり逆に消費者に転嫁をするという以外に、今日の財政状況ではもうむずかしい。生産者米価を抑えるということであれば別ですけれども、生産者米価を上げたと仮定したとすれば、今日の財政状況から言えば、それは消費者に負担をしていただく以外に道はないということになるんじゃございませんか、その点はどうですか。
  53. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 財政も非常に大事です。しかし、より以上に経済社会を安定させるということも大事なんです。そういうことを考えまして、生産者米価という問題は、これは非常に大きな問題になると思う。その際には、財政状態はどうだ、それから他方、物価の状況はどういうふうに推移するであろうか、そういうことを総合的ににらみまして、生産者米価に伴いまして消費者米価引き上げをするのがいいのか悪いのか、その時点で決めなければならぬ、こういうふうに考えております。
  54. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 その時点にならなくても、非常に危険なものですからね。私は関連質問ですから、余り時間をとりたくないのですが……。  それからもう一つ、ある新聞社との一問一答の中で副総理がお答えになっておられるのです。それからまた、外国の記者団に——どうも外国の記二者の方とお話しになるときは、非常にフランクに副総理は何でも言うのですけれども、われわれと議論をするときにはなかなか本心を言われないのですがね。公定歩合が〇・五きのうから下がりましたね。マル公が下がったことが昔はえらい景気に影響するのだけれども、これは余り関係ないのだ、遅かった、早過ぎたという議論があるのですが、あの外人記者クラブの発言では、公定歩合引き下げはさらに行うべきだ——これは日銀の政策委員会の聖域ですけれども、経済担当大臣としては、やはり今日のこういう状況から見て、公定歩合をさらに引き下げなければならぬというふうに判断をしておられるのでしょうか、このままの状態が推移すると仮定してですよ。  経済企画庁の政策長官対応策から言って、このまま推移するとすれば、公定歩合を金利コストを下げるという意味でもさらに下げなければならぬ、それは大体どの辺が、物価と見合って公定歩合としては妥当な線だというふうに判断されるのですか。
  55. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 現実の問題としてどうするか、これはお答えしにくいのです。しかし、長い目の問題として一般的に申し上げますと、今日の公定歩合水準は高きに過ぎる、こういうふうに考えています。これはいろいろな状態を判断しなければなりません。これは国内の問題ばかりじゃありませんで、国際社会との調和ということも考える必要がありますが、これはいずれの日にか、もっと下げるということを考えるべきだ、こういうふうにいま考えておりますが、どういう幅で、どういうタイミングでやるかというようなことは日本銀行が考えることで、私がとやかく言うべき問題じゃございません。
  56. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 何%ぐらいが妥当かということも言えませんか。それくらいのことはやはり経済担当大阪だから言えるのじゃないですか、物価と関連しているわけですから。
  57. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは、国際金利水準がどうなるか、これがありますね。それから、わが国景気情勢というものもある。ですから、いま何%が妥当であると、これはとても私どもだれも言えないことじゃないかと思います。  ただ、こういうことは言えると思うのです。傾向的にわが日本の金利水準は、諸外国より、平常時においては二分とか、多いときには三分とか高目です。それで調整がとれているという沿革がありますが、とにかくわが国の妥当な金利水準はどうかということになりますと、これは国際社会、国内経済の情勢というものがありますから一概には言えません。言えませんけれども、今日の金利水準は高い。ですから、長い目で見ますとこれは下げていきたい、そういうふうに考えております。
  58. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 これで終わりにしますが、デノミネーションのことまで触れておられるのですよ。将来一けた台に安定した場合には、デノミネーションまでやる。デノミのことまで話しておられるのです。  実はこの前、ちょっと勉強会をやりまして、いろいろ経済企画庁の皆さん方ともお話し合いをして勉強させていただいたのです。そのときに、アメリカの予算教書をいろいろ調べさせていただいたのですが、後半の七八年、七九年、八〇年、アメリカは実質成長六・五に見ているわけですよ。そうすると、日米間の経済協力というのは非常にきずなの厳しいものですから、現状から見て、大体対米輸出、日本側平時二十億ドルの黒字程度だというふうに言われているのですけれども、そういう計算でいくと、アメリカの経済成長が六・五になる場合には、日本経済成長というのは二けた台にいかなければ均衡しないという計算予測が出るというのですがね。このアメリカの予算教書の中の実質六・五という経済成長については、日本立場からどういうふうに見ておられるのか。
  59. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 わが国がアメリカの経済成長率まで責任を持つわけにはまいりませんが、わが国としては、アメリカの成長が一体どうなんだろうか、それから西ドイツがどうなんだろう、他の先進諸国成長率がどうなんだろう、そういうような先進諸国の中で先に行くグループ成長率、その辺を目安としてわが国の今後における成長率を決めたらどうだろうか、こういうふうに考えています。  なお、いまデノミネーションのお話がありましたが、これはこういう趣旨の話をしております。デノミネーションはいまする必要はない。また、今日のように物価が浮動している状態においてこれを行うことは妥当でない。しかし、これは物価の安定が定着する、そういう時点におきましては、とにかくドルに対して三けたというような円の位置、それからまた、計算単位が非常に複雑になってきておるというようなことをこの際清算する必要があろう、こういうふうなことをお答えしておるわけでありますが、いまする必要はなく、物価が動いておるいまこれを行うことは妥当でないということを、ひとつよく御理解を願います。
  60. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私、関連質問ですから、またこの次に疑問点は質問させていただきます。
  61. 横山利秋

    横山委員長 小林政子君。
  62. 小林政子

    ○小林(政)委員 長官にお伺いをいたします。  日銀は四月十五日に公定歩合を〇・五%引き下げましたが、それに先立って、すでに昨年末からマネーサプライの傾向というものが非常にふえ続けてきているという状態が出ております。特に伸び率は、昨年十二月の場合は対前年比でもって一一・七%、ことしに入ってからも一月、二月を見てみますと一一・九%というぐあいに、増勢をずっと徐々に続けているというのが現状なわけです。しかし、他方、今度は鉱工業生産の伸びというものはどうなっているかということで見てみますと、昨年の中ごろから対前年比でマイナスになっているのですね。そして、ことしに入ってからでも、一月は一八・二%のマイナス、二月の場合には一八・三%のマイナスと、非常に大幅な減退を来しているわけです。  生産がこのように減退をしている状況の中で、貨幣の供給が徐々にずっとふえていく、マネーサプライそのものの動きも増勢を続けていく、こういう現状というものは、私は一つはやはりインフレーションの進行を促進させていくという方向につながるのではないかというふうに考えますけれども、この点についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  63. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 御承知のように、暮れから第四・四半期にかけまして政府財政支出も非常に多かったわけであります。それから金融も、中小企業金融、在庫投資金融というもので多少の緩和をいたしておるわけであります。そういうようなことを受けまして、ここ最近、マネーサプライが昨年一年間の動きよりも多少上がってきたというような勢いはありますけれども、これがインフレを刺激するかというと、まあその程度のことにつきましてはそう心配はいたしておりません。おりませんが、このマネーサプライが余りふえていく傾向が続くということについては、これは厳重に警戒しなければならぬというふうに考えておるのでありまして、金融当局におきましても、このマネーサプライの増加の傾向につきましてはかなり神経質に対処しておる、決してこれがインフレを刺激するというようなことにはならないように配意しておるということは御了承願います。
  64. 小林政子

    ○小林(政)委員 昨年、四十九年度の場合には、政府経済成長というのは実際にはマイナス成長という状況、あるいはまた、今年度、五十年度は実質経済成長四・三%というふうに言われているわけですけれども、こういう状況の中で、一定の通貨残高の目標を決めていくという、一つの増加率をはかるマネーサプライのどの程度を一体適正と見ていくのか、どの程度が適正なのかという点については、どうお考えでしょうか。
  65. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これはなかなかむずかしい御質問ですが、結局、経済の活動が鈍化しておる、にもかかわらずマネーサプライがふえたということでございますが、物価の上昇という問題があるわけなんです。実質的な貨幣の価値が増加しているというのじゃないので、ノミナルな通貨量が増加しているという現象になっておるわけなんで、まあ適正なマネーサプライの率をどういうふうに見るか、これは現状そう大きな変化をしない、そういうことを旨としてやっていくべきであって、あとはそのときどきの経済情勢、財政情勢、そういうものに対応して、金融が引き締まりぎみでありながらもなだらかにいく、そのための量はどうあるべきかということをその時点時点でよく考えてやるほかないんじゃないか、そういうふうに思います。
  66. 小林政子

    ○小林(政)委員 今回、公定歩合引き下げに伴いまして、金融緩和が行われるのではないかということが、いろいろと新聞などにも報道されておりますし、また第二次の不況対策を三月二十四日ですか、決定されましたけれども、その内容を見てみましても、これは財政と金融、十二項目にわたっての不況対策が含まれているわけですけれども、この中で、特に金融面で、設備投資、あるいはまたビルの建設、こういったようなものについて金融の抑制の枠というものは一応崩さないけれども、しかし抑制そのものについては緩和するというようなことも言われております。私は、こういうことであると、今回の公定歩合引き下げに伴い、またこのような不況対策ということで第二次の対策も立てられている、しかも設備投資、ビル建設というものに対する緩和措置がとられるということになると、当然これは金融緩和が行われるのではないか。一応、一面では金融の窓口規制あるいは量の規制、こういう点については崩すわけではないのだからというようなことも書かれておりますけれども、しかし、実質的には抑制緩和していくという方向が強まっていくのではないか、このように思いますけれども、この点について。
  67. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 総需要抑制政策、これはずっと取り続けます。けれども、その総需要抑制政策の中身は固定しておるわけではないのです。そのときその時点要請に応じまして、弾力的に決めていく、こういう考えでございます。  いま物価の方は一応は落ちつきのような傾向を示しておるわけです。しかし、これとても、この先いろいろ問題がありまして、そう安心、楽観はできない。できませんけれども、一応安定の兆しが出てきた。しかしながら、その物価政策のゆえに、その副産物としての不況現象というもの、これも非常に深刻である。こっちに対しても手を打たなければならぬという判断から、第一次、第二次の景気対策という線を打ち出しておるのですが、これとても野方図にやっていくわけではないのです。とにかく先ほどからるる力説いたしておりますように、これは物価が最優先課題である。その物価動きに支障のない、そういう限界内において景気対策をとり、またこれを実行していく、こういうことでございます。
  68. 小林政子

    ○小林(政)委員 物価の安定、それと同時に不況の問題についての景気対策も必要であるということですけれども、私、これは率直にお伺いしますけれども、従来、特に景気対策といいますと、対策とまでは言えないまでも、不況の状況の中でも、とかく景気の底支えをずっと押し上げてきていたといわれております個人消費伸びですね、これが、春闘での賃金抑制策というものが非常に強調される一方、また先ほどからも問題になっている公共料金がメジロ押し的に次々と引き上げが予想されているという、非常な先行きの不安といいますか、こういうところにも原因があると思いますけれども、ほんとうに生活必需物資の買い物をする以外は、なかなかがまぐちがかたくなって、実際にはこの個人消費伸びというものはきわめて低いというような状況が出てきております。  また、片や企業の場合は、過剰生産といいますか、品物はともかく生産しても、実際にはこれがなかなかはけない。あるいはまた、海外への問題等をいろいろ見てみましても、これも国際的なインフレ傾向といいますが、こういう中で、これの伸びもなかなか思わしくない。  こういう現況のもとで、設備投資云々という先ほどの金融政策緩和の問題とも絡むわけですけれども、今後の需給状況の見通しというものをどのように見ていられるのか、また、景気について一体どのように見ていられるのか、この点についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  69. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 自然の流れでほっておきますと——現状は、景気が底に来た、こういうふうに見ておるわけです。ただ、その底がV字型で回復していく過去のサイクルのような状態で動くであろうかということを考えると、そういう状態じゃない。どうもなべ底というか、底がずっとしばらく続いていくであろうというふうに見られるのであります。しかし、経済界の実態を見ますと、この数カ月、これからの企業の経営というものは非常に苦しい状態になる。これはあまり長い間放置することはできない。そこで、なべ底景気から景気が立ち上がるきっかけを与えなければならぬ、そうしたいということで、第一次、第二次の景気対策をとったわけです。  そこで、その景気対策をとった後の動きというものをいまじっと見ておるわけでありますが、追っかけて第三次の対策をとる必要があるのかないのか、その辺は、五月、六月、その時点で判断しなければならぬというふうに考えておりますが、第一次、第二次の不況対策というのは、これは大体におきまして金融、財政、特に第二次の対策では財政を主体にしたわけです。  なぜ財政を主体にしたか、こう言いますと、いま小林さんがおっしゃるように、個人消費はなかなか景気牽引力としての期待はむずかしいのです。  むずかしいのは、企画庁でもずいぶん調べておるのですが、なぜ個人消費が沈滞しておるかということを考えますと、これは一つは、いま物価はわりあいに落ちついてきたのです。そういう実感を国民は持っておる、こういうふうに私は思いますが、しかし、高値安定だ。その高値に対する拒絶反応というものが非常に強いのであろうかと思うのです。さあネクタイを買いに行った、五千円でと思ったら一万円もしておる、こういうことで、買って帰らない。こういうことがずっと商品に、サービスに、いろいろ出てきておるというふうに思うわけでありますが、それともう一つは、この世の中がずいぶん変わってきたんだなということで、やはり変わったその世の中への対応家庭生活の構え、そういうものも出てきておるというふうに思うのです。  この高値に対する拒絶反応、それは時間が立てばそれになれまして、いずれは解消していくだろうが、時間がかかる。それから生活様式が引き締まってきたという問題は、これは緩めるどころか、さらに進めてもらう必要がある、こういうふうにさえ考えておる重要な点です。そういうことを考えると、景気の牽引力を個人消費に求めるとしうのはなかなかむずかししだろう。  さてそれでは、設備投資、第二の需要要因である設備投資はどうだというと、今日、企業がうんと膨大な、過大な設備を持っておるわけですから、金融を緩めましても、設備投資を始めるという傾向は、これは部分的にはありましょう、ありましょうが、総体的にはそれは過去のような状態では起こってこない。それから、輸出環境はどうだ。輸出需要、これは世界じゅうがいま混乱をしておる。ことにわが国が輸出の相手国である開発途上国、これなんか非常に困っております。そういう状態で、総体として見ての輸出への期待というのはそう多く期待できない。そうすると、どうしても刺激剤は財政になってくるんですよ。  そこで、第二次不況対策に見るごとく、財政一つのはずみをつけるテコに使おうという考え方になってくるわけなんですが、とにかく一方においては、一けた台の物価目標、これはどうしても到達しなければならない。しかし、それをにらみながら、その許容する限度において景気状況も考えなければならぬ、非常にむずかしい局面でございますが、最善を尽くしてそのようにしたいというふうに考えております。
  70. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、いまの景気対策、それに対するもう一面の物価対策、特に物価に最重点を置いていま進めているということですけれども、先ほど来からずっとお聞きをしてまいりましたようなこういう状況のもとで、私は非常に物価が安定してきたときは思わない。現在、一時の狂乱物価というような状況は一応まあとどまったということが言えるかと思いますけれども、非常に物価が不安定といいますか、何らかの刺激で今後相当また上昇を続けていくというような要因を非常に持っていると思いますけれども、物価を、インフレそのものを防いでいく歯どめ対策といいますか、こういう問題についてもっと具体的に立てていく必要があるのではないか。  確かに、政府の本年三月の消費者物価指数は対前年比一五%に抑えるという目標は、これは一応達成したということですけれども、しかし、今後の物価の動向、こういう点は、経団連なんかの最近の調査でも、六四%の企業が、稼働率が正常の状態に戻ってもコストプッシュ要因を吸収するということはできないので、製品価格の上昇を期待するというような調査結果が出ておりますし、私は、公定歩合引き下げて、いろいろな点で、心理的にも、あるいはまた先ほど来の設備投資の問題もありましたけれども、引き締め緩和の方向に向かうという傾向の中で、物価値上げ、特に高値安定とまで言われている最近のこの物価を一層押し上げていくというようなものについてはチェックしていく、こういうことが必要だろうと思うのです。     〔委員長退席、松浦(利)委員長代理着席〕  これは個別的な対策も必要でしょうし、物価値上げを歯どめしていくという具体的な対策をお持ちになっているのかどうか、それをまずお伺いいたしたいと思います。
  71. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 インフレを再び起こさないというためには、財政と金融、この二つの手綱をしっかりと抑えていく、そして、抑え方に誤りがなければ、インフレは起こりっこございません。と同時に、個別物資の需給というものも、鉱工業物資につきましても、あるいは生鮮食料品というような農林物資につきましても、十分配意してまいる、こういうことであります。  これは不況問題というのを考えなければ、いま申し上げた行き方というのは非常に徹底するのですが、一方、不況問題もにらまなければならぬという立場があるものですから、手さばきは非常にむずかしゅうございますが、要するに、物価は、再びこれをインフレにしてはならぬということを最優先政策目標といたしまして、手綱さばきを弾力的、機動的にやっていくという構えでございます。
  72. 小林政子

    ○小林(政)委員 特に私は、最近の経団連なんかの調査をした、相当の企業がここでひとつ値上げ期待するというような動きが非常に強まってきている。そこへもってきて、政府公共料金値上げを、ここでもって酒、たばこ、それに郵便料金、そのほか今後いろいろと値上げが予想されている問題等を考えますと、これは消費者米価を初め、国鉄、私鉄、あるいは電話、電報、電力、健康保険などがいろいろと今後引き上げられていくのではないか、こういうことで新聞などでも報道されておりますけれども、こういうような動きの中に、政府公共料金値上げを次々とメジロ押しにここで行っていくというような、こういうことが物価を相当押し上げていく、あるいは心理的にも、あるいはまた具体的にも、相当そういう要因というものが強まっていくのではないか。  こういうことを考えますと、物価はともかく、財界のそういう動きがある、あるいは経団連の中からもそういう動きが出てきている、こういう動きの中で、率先して政府がこれを抑えていく、歯どめをきちっとしていくというような姿勢こそが必要なんじゃないだろうか。     〔松浦(利)委員長代理退席、委員長着席〕  このような時期に一斉に公共料金値上げを行うというようなことは、物価が最重点政策だ、インフレはこれを抑えなければならないと、口ではいろいろそういう政策を進めるんだということをおっしゃっているわけですけれども、しかし、それじゃ具体的にそのおっしゃっていることが本当に実行に移されているかと言えば、このようにもろもろの物価が上がるという要因が非常に強まってきている中で、政府みずからが公共料金引き上げをやるということは、むしろ率先してそういう物価上昇の動きにそれこそ火に油を注ぐような役割りを果たすのじゃないだろうか。  本当にここできっかりと歯どめをかける、物価抑制し、あるいはまたインフレ抑制していく、こういう態度を貫いていくなら、公共料金値上げということはこの時点考えられないのではないか、こう思いますけれども、いかがでしょう。
  73. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公共料金問題は、これは扱い方が非常にむずかしく、いろいろ議論のあるところであろうと思いますが、この公共料金、またその公共料金関係する公共企業というものは、赤字のままでほっておきますと、それがまた財政の赤字要因ということで物価に悪い影響を持つわけです。そういうようなことで、とにかく公共企業体というものの経営は健全にしなければならぬ。  そこで、これを一挙にみんなそういうことを考えましても、なかなかむずかしいというので、ことしはたばこ、それから郵政、それから、これは間接的な関係にはなりますけれども、酒というものだけを取り上げたわけでありまして、その他まだ公共料金というと、当面処置しなければならない問題はいろいろあるのです。国鉄、それから電信、電話、あるいは米価、麦価、いろんな問題がありますけれども、その中で主要なものはこれをとにかく据え置きをする。  それからまた、物によりましては、今後の物価動きを見て、また財政の事情等も考え結論を出す、こういうものもありますが、公共料金政策というものは、公共料金引き上げをとめればそれで日本の社会が安定するかというと、これはそんなものじゃありません。これは少し長期にわたって考えてみますと、公共料金の赤字というものはいずれの日にか処置しなければならない。ですから、一部ずつ毎年毎年処置していく、こういうような考え方をとりまして、ことしはただいま申し上げました郵政、それからたばこ、そういうようなものの処置をいたしますけれども、来年になったらまた何か一つか二つ処置しなければならぬでしょう。再来年もまたしなければならぬでしょう。そういうふうに、物価に影響を及ぼさない、そういうことを旨として決めていく。  そこで、現実に五十年度の問題は一体どういうふうな状態になるかということを考えますと、ただいま申し上げましたような三つの公共料金というか、そういう性格のものが上がりますけれども、それを織り込んでなお五十年度消費者物価上昇率一けた台というものを考えておるわけでございますから、これは情勢が非常に変化したというようなことになれば格別、ただいま私どもは、あの程度公共料金引き上げをするということにつきましては、これはいささかも不安は持っておらぬ、かように御了承願います。
  74. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、いまこういう情勢の中で公共料金を上げるということが、値上げ要因を一層押し上げるものになるのではないかということで、公共料金問題を出したわけです。公共料金の赤字をいつまでも続けておくのはよくない、こういうことですけれども、特にたばこの場合なんか、赤字どころか、これはもう黒字を出しているわけですし、それはともかくとしても、いま経団連の企業調査など見ましても、いわゆるコストプッシュ要因を吸収できない、こういう理由があるから値上げをしてほしいんだと、やはり理由はいろいろと述べているわけです。  こういう点を考えますと、公共料金は赤字を長く続けるのはまずいんだというような理由があるから上げるんだ、これは、いま企業がここでもってコストプッシュ要因を吸収できないで、それを理由として値上げしたいんだ、それも一つや二つの企業じゃない、ほとんど六十数%の企業がこういう形でもって一斉に値上げ期待している、こういうような動きに対して、本当に物価抑制するという立場から、抑制策といいますか、あるいはインフレ抑制していくという歯どめ政策ですね、政府がこれをきちっと持っているのかどうなのか、この点をはっきり、それこそ国民にわかるように明らかにしていただきたいと私は思います。
  75. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 歯どめ策は万全を期しております。総需要抑制政策を堅持する、これで大筋の歯どめというものは必ずできます。ただ、不況現象というものがある、そういうものに対しての手当てはいたしますけれども、物価優先ということを考えておりますので、この物価政策に狂いは生じさせないということを旨としてやっていきますから、この辺は御安心を願います。
  76. 小林政子

    ○小林(政)委員 現在の総需要の抑制ということですけれども、これもやはり財政金融全般にわたって総需要抑制策というものが一体どこに一番大きいしわ寄せが行っているか、これは中小企業なんですよ。そういう点から、この不況問題、あるいは景気対策という問題についても、やはり緩和策その他を中小零細業者のところに重点を置いていろいろととっていかなければならないということは、いままでも何回も論議をされているところでございますし、私は、ただ総需要抑制ということで、ともかく十把一からげで総需要抑制策を堅持して続けていけばそういう歯どめになるのだ、こういうことでは、回答にならないと思うのです。  副総理は、これから高度経済成長から低成長に移っていく、こういう中では、生産性の向上というのは期待できない、したがって、賃金の大幅上昇が物価にはね上がっていくのだ、こういうことで、賃金の抑制を非常に強く主張されているわけですし、また、それこそ国民に対しては、こういうかつてない異常な状態なんだから、一言で言えば国民一億総がまんをすべきである、そういうことを非常に強調されているわけですけれども、一方、それじゃ一九六〇年以来急速に設備の拡張をやり、あるいはまた新設を行ってきた、重化学工業を中心とする企業の過剰生産あるいはまた過剰な固定資本の問題が、実際にはどう整理をされているのか。大企業の在庫商品も、吐き出されたとか、あるいは投げ売りされたとかいうようなことは一度も聞いたことがないのです。  実際にそういう状況の中で、私はむしろ、いま申し上げたような資本金十億円以上の大きな、こういう膨大な設備も持って、そして実際にあの便乗値上げの中で高利潤も上げてもうけてきた、こういうところのもうけを、総需要抑制だ、国民一億総がまんだということだけでなくて、これを吐き出させていくということを当然やってしかるべきではないか、このように思いますけれども、いかがでしょうか。
  77. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 だんだん在庫も減ってくる傾向が出ておるわけでありまして、これは各企業に対して強制的に吐き出せなんというようなわけにはまいりません。これは経済動きの原則に従って経済界は動いていくわけでありますが、これはとにかく需要が減ってきた、そこでこれが生産と相並ぶようになってくる、そういうような状態から、大体一月ごろから在庫も減り始めるような傾向を示しておるのです。これが一巡をするというところになると、生産が上昇カーブを描くようになる。しかし、そういう時期までかなり時間がかかるだろう、こういうふうに思いますので、景気上昇へのきっかけをつかむというために一つの刺激をしようとする、そこで財政昭和五十年度予算について繰り上げ支出をする、こういうようなことを考えておるわけですが、これは強権的に吐き出せなんというようなわけにいきません。そうなれば国家補償、こういうような問題も伴ってくるわけでありまして、自然に、なだらかに在庫が減るということを誘導するというほかはないのであります。
  78. 小林政子

    ○小林(政)委員 ともかく私は、この委員会でも倉庫などを現地何カ所か調査いたしましたけれども、たとえば繊維なら繊維、これは特に外国から入ってくる輸入品でしたけれども、倉庫にいっぱい積まれている。しかも、これが相当長期間にわたって倉庫の中に眠っている。どなたか一緒に行かれた議員さんと、もう少しぼっておくとそのうちに投げ売りみたいに出てくるのじゃないかというような話もしたわけですけれども、実際問題としては、繊維製品というのは私は投げ売りされたというようなことも実際に見てもいませんし、聞いてもいません。事実、ニットなど、これは非常に小さいメーカーがたくさん織っているわけですけれども、そこでニットを織って商社に出して、そこから第一次問屋、第二次問屋を通って東京のデパートなり小売店なり、そういうところにずっと流れていくわけです。そのメーカー段階ではもう非常に安い値段で、実際にはいままでとは問題にならないような安い値段で買いたたかれるといいますか、しかし私どもが実際にデパートなどへ行ってみますと、その製品はやはり非常に高い、こういうような問題などもずいぶん私は直面をしておりますし、実際に大きな在庫を抱えているような、資本金何十億というような会社の在庫商品が投げ売りされたとか、あるいは処分されたとかいうようなことは、私どもは見てもいませんし、聞いてもいないわけです。  片一方では、一五%というガイドラインですか、一応そこで賃金が上がれば物価が上がるんだ、こういうことを非常に主張されると同時に、片一方、このような非常に高い利潤をかつてずっと高度経済成長の中で上げてきた、こういう高利潤のところの企業に対して、賃金が上がれば物価が上がるんだということはおっしゃるのですけれども、この問題については具体的にどうされようとしているのか、政府は何もおっしゃらない。吐き出させるという言葉はちょっと語弊があるかもしれませんけれども、物価にすぐ転嫁するというようなことはさせない——原材料が上がっているだとか、あるいは今度の春闘のコスト分がやれどうだからすぐに物価に転嫁する、こういうことじゃなくて、私が言っている問題は、便乗値上げなどでずっと高利潤を得てきたこれらの企業の商品その他については、これを価格に転嫁させない、こういうことが必要なんではないか。これがやはり吐き出すことになっているのじゃないか、こう思いますけれども、いかがでしょう。
  79. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは、企業は広範な分野で投げ売りですよ。昨年の初頭なんか、商品市況、繊維なんか半値ぐらいになっているんじゃないですか。鉄なんかは一時、一昨年の暮れあたりはトン十一万円しておる、それが五、六万円に下がる、そういうような状況ですから、企業はまさに投げ売りというか、本当に大変な事態だったんだろう、こういうふうに思います。  繊維製品なんか、全然下がってないという話ですが、三越に行ってズボンを買おうとすると、千円ズボンというのがあるという話です。それをはしてしる人に私はお目にかかりましたが これは直さないでそのまま買いますと千円、それからサイズなんか手直しいたしますと二千円、これでズボン一着だ、こういうような話も聞きました。かなりこれは投げ売りというか、狂乱のとき仕込んだ品物が安く売り出されておる、こういう現象はあるわけです。  これは総体的にあるのだろうと思う、市況がうんと下がってきたのですから。しかし、それにもかかわらず今日の物価水準が高値安定ということになっておりますのは、これは結局、わが国の工業製品のもとである原材料が昨年非常に高くなってきた。それからエネルギー、石油のごときは一昨年に比べまして四倍になったのですから、したがって、コストが全体としてずっと高くなってきておる。問題は、だから、高値という問題でなくて、これから先を安定さしていくことができるかどうか、こういう問題になってくるのだろうと思います。  いま利益を吐き出したらどうだという小林さんのお話ですが、企業は本当にいま苦しい状態のようです。まあ苦しい峠がこの四月期から始まるわけです。三月期まではどうやら決算も、減益決算ながら決算はできる。しかしながら、軒並みというくらい、四月以降、まあ九月期決算あるいは来年の三月期決算というものが非常に憂慮すべき状態になってきておる。こういうことでございまして、なかなか容易ならざる経済状態なんです。それをどういうふうに安定させていくかということが、物価政策と相並んで重大な課題である。これで骨を折っているわけなんです。  物価だけ考えれば、ほかのことは考えないということであれば、物価政策もこれはとても楽です。企業の方の立場だけ考えればいいというのなら、これも景気政策は大変楽でございますが、物価もおさめなければならぬ、企業の方の採算もまあまあ立ち行くという状態に早くしなければならぬ、こういう問題もありまして苦心をしておるということも、御了察願います。
  80. 小林政子

    ○小林(政)委員 経企庁が最近、物価警告システムというような制度を取り上げて、食料品など五十品目を調査するという新聞記事を持っているわけですけれども、事実この逆に、製造メーカーから小売店、消費者、これを本当に調査してみたら、私はそのことが非常に重要じゃないかということを実は自分の経験で痛感しているのです。  これは、先ほどもちょっと申し上げましたように、ニット製品なんか織っているメーカーというのは本当に小さいのですね。こういうところはもう買いたたかれて、実際には安く商社に納めているわけです。ところが、その安い値段で仕込んだ、それが実際に流れて、千円のズボンがあるというお話でしたけれども、実際に消費者の、これはずいぶん私もいろいろな方々からもお話を聞きましたけれども、繊維がこれだけ、こういう状況で、不況で大変なんだということを言うけれども——実際につくっている製造メーカーは、本当にこれは大変な状況です。しかし、それを仕込んだ大きな商社、そこから流れてくる品物はちっとも下がらない。だから、これを逆に調査をしてみる必要があるのではないか。こういうことを何人かの人たちからも、ぜひこれをやってほしいものだということを言われた経験がございます。  こういう物価警告システムという制度を新たにつくられたわけですから、私自身、これは食料品など五十品目ということで内容はよくわかりませんけれども、今後こういうシステムを具体的に活用して、経企庁で調査をされる意思があるかどうか、そしてまた、この物価警告システムというのは一体どういうものなのか、どんな物資を対象にされているのか、これは事務当局からもお伺いをしたいと思います。
  81. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 主要な製品につきまして、その流通段階、いろんな段階を経まして最終消費者の手に届くというまでにどういう価格の変化があるか、こういうことにつきましては、これは所管官庁で十分調査しておるのです。  それで、工場を出るときには大変安いんだが、最終の小売の店へ行くとえらい高いというものがかなりあります。それは大方共通しているのは人件費です。たとえばガラスの板ですね。窓ガラスが破れた、それを差しかえよう、こういうと、メーカーから出るものの何倍になりましたか、相当の倍率になるのです。それはガラスを買ってきただけじゃ窓にすぐ備えつけるというわけにいかない。やはりガラスの小売店の職人を頼んできて、そしてはめてもらう、そして接着剤をつけてもらう、こういうようなことまでするわけですから、そこで一枚入れるのに、それが工場から出るときのガラスの価格の何倍にもなってしまう、そういうようなことになるわけであります。流通機構の合理化という問題も、それは確かにあります。ありまするけれども、とにかく人件費、これがかなりそういういま小林さんの御心配になっている問題のおもしになっておるということも、ひとつ御理解おき願いたい、かように考えます。  あとは事務当局からお答え申し上げます。
  82. 喜多村治雄

    ○喜多村政府委員 物価警告システムというのはどういうものであるかということでございますが、お耳新しい言葉でございますので、少し説明さしていただきますと、いま大臣からお答えがございましたように、個々の物資につきましては、もちろん各所管省庁で監視をなさっておるわけでございますが、経済企画庁におきましても、重要な、あるいは注意すべき物資というものをあらかじめ事前に把握しておいて、もし不適当な動きがあるというような場合には、われわれもこれを見つけ出して所管官庁の方に御連絡をして、不当な値上げ等々がないようにしたいという趣旨から出たものでございます。  これは個別物資の価格を、他の経済諸指標、たとえば原材料価格がどうなっているものであるか、あるいは市況がどうであるかというような関係においてあらかじめ把握しておきまして、これをモデルの中に設定しておくわけでございます。そうした動き、ずっと追跡しておきました動きの中で、物価対策上これは注意すべき物資であるということになりますれば、それを改めてもう一回、先ほど先生おっしゃるような具体的な調査もしなければならないかもしれませんが、そういう注意物資を引っ張り出しまして、そしてチェックポイントとしてのものが見つかりましたならば、それもあわせて各所管省庁にこれを警告という形で申し上げるということでございます。  ただ、これは非常に総合的な指標になります関係上、たとえばこれは需給要因でありますとか、コスト要因でありますとか、市場構造要因との関連においてつかまえなければいけませんので、個別物資ごとにいろいろそのモデルが違ってまいるかと思います。計数が変わってくるかと思いますので、この開発は非常にやっかいなところもございます。したがいまして、いま、専門の先生方でありますとか、各省庁の方々のお知恵も拝借して、このシステムの開発に努めておるということでございまして、できるだけ早い時期にこれを完成させてみたいと思っております。  以上のようなことでございます。
  83. 小林政子

    ○小林(政)委員 これは本当に実効のあるものにしてもらいたいというふうに思いますし、その品目なども、できれば基礎物資なども含めてもっと対象を広げていくというような、またデータなどもできるだけ一般の消費者などにも公開していくというようなことを、ぜひやってもらいたいと思いますけれども、長官、いかがでしょうか。
  84. 喜多村治雄

    ○喜多村政府委員 一部の新聞に非常に簡単に出ましたので、十分でなかったかと思いますけれども、私どもは、いま仰せになりましたようなことで、食料品ばかりじゃなくて、広い範囲での物資をこれから選定したいと思っております。そしてまた、いま仰せのようなことで、できるだけ広範囲に公表できればと思っております。
  85. 小林政子

    ○小林(政)委員 最後に一点だけ、これは長官にお伺いをいたします。  いままでずっと質問をいたしてまいりましたが、待に、それこそ相当大きな資本金を寿っているような そして高利潤を上げている、こういう企業に対する対策という問題をはっきりとさせる必要がやはりあるんじゃないかというふうに私は思っております。いままでのいわゆる高度経済成長政策のもとでずっととり続けてまいりました財政金融、特権的なこのような減免税制度、こういうような仕組みを、いままで全然手をつけないでそのまま残して、そして、やれ不況に対する対策をどうするというようなことを片一方でおっしゃっても、これはなかなか効果が上がらない。この問題についても、高度成長の仕組みを支えてきたこういう制度についても、この際やはり洗い直しをしていく必要があるのではないか、このように思いますけれども、この点についてお伺いをいたします。
  86. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 それはそのとおり考えております。ただ、にわかにこれをするか、できるかというと、そうじゃありません。私どもも、経済が本当に安定するまでには一、三年はかかる、こういうふうに見ておりますので、まあ少し、二年とか三年とかかけてする、そういう問題かと思いますが、方向としては小林さんのおっしゃるとおりに考えております。
  87. 小林政子

    ○小林(政)委員 終わります。
  88. 横山利秋

    横山委員長 有島重武君。
  89. 有島重武

    ○有島委員 最初に、国税庁に、ビールの値上げにつきまして伺います。  先月、朝日麦酒が値上げをいたしまして、また今月になりますと、サッポロビールが値上げをした。それで、先月の朝日の値上げの際に、国税庁は、ビール各社に追随値上げを自制するよう言っている。にもかかわらず、一カ月足らずでもってこのようなことになったわけですけれども、このことについて国税庁はどう思っているか。
  90. 星野孝俊

    ○星野政府委員 お答えいたします。  先生御承知のように、ビール会社は一昨年の秋から昨年の一月にかけまして価格改定をいたしたわけでございまして、その後、例の石油ショックがございまして、昨年の秋ごろからやはり経営が非常に苦しくなってきたということで、価格の改定をしたいという動きが出てきたわけでございます。しかし、私どもとしましては、物価情勢も非常に厳しい折でございましたので、企業努力等によりましてできるだけ値上げを回避してほしいということを実は強く要請して、今日まで参ったわけでございます。  それで、御指摘のように、実は去る三月七日に朝日麦酒の方から値上げの通知がございまして、そこで私どもとしましては、早速同日、他の三社に対しまして、安易な追随値上げをしないようにということを要請すると同時に、また卸、小売業界に対しましても、関連組合を通じまして、安易な便乗値上げや買い占め、売り惜しみをしないように要請したわけでございますが、去る四月四日に、サッポロビールから値上げを実施した旨の通知を受けたわけでございまして、私ども大変残念に思っています。  なお、今回の値上げの理由でございますが、その主な原因は、一昨年の石油ショック以後の原材料費の値上がり、それから人件費のアップ等、そうしたコストアップ要因があったために、各社とも同様に現在経営が苦しくなっておる、こういう状況にございまして、サッポロビールの収益状況もかなり悪化しておると聞いておるわけでございます。  そういう事情でございましたので、私どもとしましても、強力に要請はしたわけでございますが、やはり酒の価格というものは自由価格というたてまえになっておりますので、私どもの行政指導にも限界があった、こういうふうに感じておるわけでございまして、残念に思っておる次第でございます。
  91. 有島重武

    ○有島委員 余り要領を得ないお話で、石油ショックだとさえ言えば何でもまかり通るような風習は大変よくないと私は思います。  それから、国税庁が卸だとか小売だとかに対して、買い占めや売り惜しみをしてはならぬということを通達したということになっているわけなんですね。それでまた、旧価格で仕入れた製品は旧小売価格で売るよう、こういった申し入れもしたのですか。
  92. 星野孝俊

    ○星野政府委員 流通業界に対して、そのように申し入れをしてございます。
  93. 有島重武

    ○有島委員 企画庁長官、いまの旧価格で仕入れた製品は旧小売価格で売るように、これは現実問題として行われるでしょうか、どうでしょうか。
  94. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国税庁でやっておりますビール価格の行政、これは法的根拠は実はないのです。全くの行政指導でございます。でございますから、そういうふうにやっていただきたい、お願いいたします。こういうような意味になると思うのですが、国税庁のにらみはかなりききますものですから、私は、国税庁がそういうお願いをすると、これはかなり聞いていただけるんではないか、そのような感じがいたします。これはとっさのお答えで、調べたわけではございませんけれども、私の所感でございます。
  95. 有島重武

    ○有島委員 これもまた大変のんきなお答えであると思いますね。古いビールと新しいビールとは別に見分けはつかないと思うのだけれども、国税庁どうですか、旧ビールと値上げビールとは素人に見分けがつきますか。
  96. 星野孝俊

    ○星野政府委員 それは見分けはつきません。業界の良識を期待するわけでございます。
  97. 有島重武

    ○有島委員 それでもかつ、にらみがきくというのは、これは大蔵省というところはすごいところになるわけですね、国税庁というところは、泣く子も黙るということだけれども。だけれども、経済企画庁長官が、国民生活を守るという立場から言って、これはこれでもきっとうまくいくでしょうなんと言うことは、そんなのんきなことをしたら、国民は怒りますよ。これは行われっこないんじゃないかとぼくたちは思う。もう一遍言ってください。
  98. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国税庁が酒を扱う業者に対して行うことは、かなりこれは御協力をいただいておるんです。そういうことを踏まえますと、やはり国税庁が黙っておるよりは、そういうことを申し上げたということになりますると、かなりの影響力があるんじゃあるまいかという感じがしますが、具体的にどういうふうに動いておるかは、私はまだ調べておりませんです。
  99. 有島重武

    ○有島委員 もしそういった指導を行き渡らせようというのだったらば、一目瞭然に、旧価格のものと新しいものとは何か表示をつけなければならぬということにならないですか。いかがですか。
  100. 星野孝俊

    ○星野政府委員 お答えいたします。  現在はまだ必ずしも完全に行われておりませんけれども、酒の業界で、製造価月日といいますか、私ども詰め口と言っておりますが、詰め口の年月日を表示する方向に進んでおります。清酒につきましては、すでに本年の一月一日から清酒製造業者が自主的にラベルに詰め口年月日を表示する、こういうことになっております。それから、みりん、ビール等につきましては、ただいま公正取引委員会の方の指導を受けまして、協議中でございます。
  101. 有島重武

    ○有島委員 ビールにつきましては、昨年度が大びん換算でもって五十七億本ですか、これは二十歳以上の国民だとしても、一人当たり年間で七十八本ということになっているのですね。こういう本当に大衆化されておるものについての値上げということについては、もう少し——こちらからお願いすれば何とかかんとかと言うけれども、全然それが守られていない。守られなくても、初めから守られっこなさそうなことを言って、何かお茶を濁しているように国民の目から見えるわけです。こうしたものについてもう少し行政指導が行き届くような、そういう工夫を一段としてみるという御意思はありませんか。
  102. 星野孝俊

    ○星野政府委員 今後とも業界の協力を要請してまいりたい、このように考えております。
  103. 有島重武

    ○有島委員 国税庁としてはいままでのとおりということでございますけれども、経済企画庁長官としては、このままでもっていい——このままというか、いままでの行き方、これ以上のことは仕方がないというようにお考えか、何かこれは工夫しなければいかぬなと思っていらっしゃるか、その辺はいかがでございますか。
  104. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま問題のビールのケースですね、これは具体的にどういう措置がいいのか、とにかく国税庁がお願いすればこれはかなり御協力を得るような仕組みになっておりますから、かなりお願いしたことについての影響はあると思うのです。思いますが、なおそれを、古いビールと新しいビールをしっかり仕分けをせい、こういうようなことにつきましては、それがうまくいくものかどうか、またそのビール会社がそれを聞くものかどうか、これはいま法的な規制をする立場にないのですから、これも業界と相談をしなければならぬという性格のものだろうと思いますが、なお国税庁によく検討してもらいます。
  105. 有島重武

    ○有島委員 それから、農林省の方、来ていらっしゃいますか。——加工原料乳保証価格というのがあります。この加工原料乳の保証価格の決定がございまして、飲用向けの乳価に影響が出ているということが考えられるわけですね。     〔委員長退席、松浦(利)委員長代理着席〕
  106. 高須儼明

    ○高須政府委員 お答え申し上げます。  三月末に加工原料乳の保証価格が約一五%弱上がったことは、先生御承知のとおりでございます。これは生乳にいたしまして大体五百万トンぐらいございますが、その約四割の二百万トンが加工原料乳でございまして、そのあとの六割の約三百万トンが通常の飲用乳に回っておるわけでございます。  飲用乳の価格と申しますのは、生産者、メーカー、消費者が自主的にお決めになっておるものでございまして、先ごろ政府の方で決定いたしましたのは加工原料乳の方でございまして、まあ恐らくその間に連動関係があるのではないかという先生の御趣旨かと思われますが、飲用乳につきましては、最近生産者の方から値上げの要求が出されておるわけでございますが、これにつきましては、ことしの夏ぐらいまでに、メーカー側、小売屋さんなど、それぞれいろいろ御交渉があって決まるというふうになるわけでございまして、直接加工原料乳の価格がこの飲用牛乳にどう響くかということはわからないわけでございます。現在の状況ではそういうことになっております。
  107. 有島重武

    ○有島委員 そうすると、加工原料乳の方の値段の変動が、飲用の方の価格には直ちには響かないということでございますね、いまのお話では。
  108. 高須儼明

    ○高須政府委員 この加工原料乳の価格は、これを用いまして脱脂粉乳とか練乳とかをつくりますが、そちらの方との関係でございまして、直接飲用牛乳と関係があるものではございません。
  109. 有島重武

    ○有島委員 小売の業者に伺いますと、むしろ消費者が減っておるからとても値上げはできないということを言っておられるようです。それから、スーパーなんかでも安売りをしている。それで小売店扱いがちょっと落ち込んでいるから、むしろ転業しなければならないのじゃないかというお話を、私は牛乳屋さんでは聞くわけです。こういつたことについては、そちらではどのようにキャッチしていらっしゃるか、また、何か処置をなさるおつもりがあるかどうか、いかがですか。
  110. 高須儼明

    ○高須政府委員 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたように、飲用乳の価格というのは、生産者、メーカー、小売屋さん等でそれぞれ自主的に御決定になるものでございます。昭和四十二年以前におきましては、役所の方といたしましてもいろいろ御相談に応じたようなこともあったようでございますが、四十二年に国民生活審議会の消費瀞保護関係の御決定がございまして、余り役所がそういうところに介入するのはよろしくないというようなことでございまして、それ以来、農林省の方といたしましては、そのような価格を指導いたすというふうなことはやっておらないわけでございます。今日でも、積極的にその中に入ってそれを指導してまいるというようなことは、公取関係もございましてなかなかむずかしいわけでございまして、私どもとしては、積極的な価格そのものについての行政指導を行うというようなことは考えておらないわけでございます。
  111. 有島重武

    ○有島委員 そうすると、加工原料乳の方は、とにかくこれだけのものは保証するということがございますね、だけれども、飲用乳の方には、その生産者に対しても何か保証するというようなことは、今後どんな状態になってもちょっと考えられないということでございますか。
  112. 高須儼明

    ○高須政府委員 現在、飲用乳の方につきましては、生産者の収入は、いろいろ違いますが、キログラム当たり大体百円程度でございます。この価格自体は、再生産というような観点からいたしますと、私ども特に現在のところ考えるということは考えてないわけでございます。  それで、通常の場合でございますと、ほうっておきますと加工原料乳の方はたたかれて非常に安くなるという傾向がございますので、そこで不足払い法がございまして、三月三十一日に新しい価格に切りかえるまでは七十円というような価格で保証しておったわけでございますが、今回若干上がりまして八十円台になったということでございまして、それらから比べますと、飲用乳の生産者手取り価格というのははるかによい値段になっておるわけでございます。そこで、私どもは、いまの段階において飲用乳の生産者の保証あるいは保護といったようなことは考えていないわけでございます。
  113. 有島重武

    ○有島委員 というわけで、企画庁長官としては、これは新聞なんかには飲用乳と不公平だというようなことも出ているわけですけれども、どんなふうにお考えになっていますか。
  114. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この制度はもうかなり定着しておる制度でありまして、いま農林省の方からお話がありましたように、飲用乳の方は自由な需給に任しておいて大体引き合いがとれる、こういう状態であるので、そこへ何も政府が介入して入る、あるいは価格補給をするという必要はないということから、別の処遇になっているというまでのことなんです。私は、いまの状態で支障はない、こういうふうに考えております。
  115. 有島重武

    ○有島委員 先ほどの小林委員のお話とちょっと重なりますけれども、私も、企画庁長官というか、副総理というか、せっかくおいでいただいたわけですから、一つだけただしておきたい。  と申しますのは、総需要抑制政策を徐々に緩和する、あるいはさっきは弾力的、機動的に運用するというようなことをおっしゃいました。十五日に経済関係閣僚協議会でもって、本年度末に消費者物価を一けたにとどめる、ちょっとさっきもおっしゃったようだけれども、これは本当に一けたでもっておとどめになるか。もしそれがはみ出したときは、それじゃどうなるかというようなこと、どういう御決意を本当に持っていらっしゃるか。
  116. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この間も閣僚協議会で申し合わせをしたというようなことになっておりますが、これは万難を排して一けた台の実現を期す、こういうことでございます。それがならぬ、できないというような場合は考えておりませんです。
  117. 有島重武

    ○有島委員 ならぬというときは、それじゃ総辞職というようなことになりますな。  これも先ほどお話が出ていたわけですけれども、四十九年度税収不足が八千億円ということになる、五十年度もまたかなり減になるであろう、それだから、と言って、公共料金値上げが必要であるというようなお考えの筋道になっているようでございますね。そうすると、私ども公共料金を上げるなと、こう言いたいわけなんだけれども、いま幾ら言い続けても、それじゃ現実的に成り立たなくなる。だから、全部一斉には上げないで、なるべく迷惑のかからないように順序立てて、それでさみだれ式に上げていくのだというようなお話がさっきあった。しかし、企業側は、政府財政規模とは全くそれはけたが違いますけれども、各企業の方も非常に経営困難に陥っておって、それで値上げの意思というものは非常に強いのではないか、それは御承知でございましょう。そうすると、政府にならって、政府値上げをしてしくのだからうちの方も値上げをしていく、そういうように、これは政府にどうしても右へならえになるのじゃないですか。この辺のことを一体どう考えていらっしゃるのか。  私たちは国民立場ですから、そう込み入ったようなことはよくわからないけれども、いまの企業は確かにいろいろな困難を抱えて、それで値上げをしたがっておる。このことはどういうように考えていらっしゃるのだろうか。企業側は潜在的にいま、もう値上げ寸前のところにあるのじゃないかというようにわれわれは見ますけれども、福田さんはどういうふうに見ていらっしゃいますか。
  118. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 先ほど申し上げましたように、企業経営は非常に苦しいのです。それで減益だとか赤字経営だとか、そういうような状態のものが非常に多くなってきている。そこで、企業においては、一方においてコストを下げなければならないという問題また、企業の合理化をしなければならぬ、こういう問題、そういうものを抱えておる。それでもやり切れない、こういう際には、これは値上げということになるわけですけれども、値上げだけが企業の窮境の逃げ口ではないわけなんですが、私ども物価安定ということを考え立場の者としては、企業が安易に価格に企業経営の苦しさからの逃げ口を求める、こういうことは好ましくないのです。  そういうことで、昨日も経団連の首脳と会談をしておる。私どもが会談を要請したその趣旨は、最近、企業で商品の値上げをするという希望が多いようだが、この際、自粛をしてもらいたいという趣旨なんです。経団連の方も、もっともだということで、できる限りの御協力を申し上げます。こういうことでありまして、ですから、希望は持っているのですけれども、それが実際どういうふうに出てくるかということになりますと、これは御心配されるような状態ではなかろう、こういうふうに私は思っております。
  119. 有島重武

    ○有島委員 もう時間があれですから、これでもってやめますが、まさにいまおっしゃったとおり、企業側には、値上げだけが逃げ道じゃない、もう少し工夫してくれという要望をお出しになったわけですね。それで、国民の側から見ますと、政府の方が公共料金値上げでもって逃げるのでは困る、もう少しそれを工夫してもらいたい、こう、いまの福田さんのおっしゃったそのとおりのことをそのままやはり国民側もそう思っておるということを、強く御認識いただきたいわけです。  これは追って大蔵委員会や逓信委員会なんかとの連合審査もあることでありますので、もうここではやめますけれども、まだまだ工夫の余地があるのではないか、そういうことを申し上げて、きょうの質問は終わります。      ————◇—————
  120. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員長代理 この際、連合審査会の開会申し入れに関する件についてお諮りいたします。  ただいま大蔵委員会で審査中の内閣提出、酒税法の一部を改正する法律案及び製造たばこ定価法の一部を改正する法律案の両案につきまして、大蔵委員会に連合審査会の開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次に、ただいま逓信委員会で審査中の内閣提出、郵便法の一部を改正する法律案につきまして、逓信委員会に連合・審査会の開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、各連合審査会の開会日時等につきましては、両委員長とそれぞれ協議の上、追って公報をもってお知らせすることといたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。      午後五時十七分散会