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福田(赳)
国務大臣 自然の流れでほっておきますと——現状は、
景気が底に来た、こういうふうに見ておるわけです。ただ、その底がV字型で
回復していく過去のサイクルのような
状態で動くであろうかということを
考えると、そういう
状態じゃない。どうもなべ底というか、底がずっとしばらく続いていくであろうというふうに見られるのであります。しかし、
経済界の実態を見ますと、この数カ月、これからの
企業の経営というものは非常に苦しい
状態になる。これはあまり長い間放置することはできない。そこで、なべ底
景気から
景気が立ち上がるきっかけを与えなければならぬ、そうしたいということで、第一次、第二次の
景気対策をとったわけです。
そこで、その
景気対策をとった後の
動きというものをいまじっと見ておるわけでありますが、追っかけて第三次の
対策をとる必要があるのかないのか、その辺は、五月、六月、その
時点で判断しなければならぬというふうに
考えておりますが、第一次、第二次の
不況対策というのは、これは大体におきまして金融、
財政、特に第二次の
対策では
財政を主体にしたわけです。
なぜ
財政を主体にしたか、こう言いますと、いま小林さんがおっしゃるように、個人
消費はなかなか
景気牽引力としての
期待はむずかしいのです。
むずかしいのは、企画庁でもずいぶん調べておるのですが、なぜ個人
消費が沈滞しておるかということを
考えますと、これは
一つは、いま
物価はわりあいに落ちついてきたのです。そういう実感を
国民は持っておる、こういうふうに私は思いますが、しかし、高値安定だ。その高値に対する拒絶反応というものが非常に強いのであろうかと思うのです。さあネクタイを買いに行った、五千円でと思ったら一万円もしておる、こういうことで、買って帰らない。こういうことがずっと商品に、サービスに、いろいろ出てきておるというふうに思うわけでありますが、それともう
一つは、この
世の中がずいぶん変わってきたんだなということで、やはり変わったその
世の中への
対応の
家庭生活の構え、そういうものも出てきておるというふうに思うのです。
この高値に対する拒絶反応、それは時間が立てばそれになれまして、いずれは解消していくだろうが、時間がかかる。それから
生活様式が引き締まってきたという問題は、これは緩めるどころか、さらに進めてもらう必要がある、こういうふうにさえ
考えておる重要な点です。そういうことを
考えると、
景気の牽引力を個人
消費に求めるとしうのはなかなかむずかししだろう。
さてそれでは、
設備投資、第二の需要要因である
設備投資はどうだというと、今日、
企業がうんと膨大な、過大な設備を持っておるわけですから、金融を緩めましても、
設備投資を始めるという傾向は、これは部分的にはありましょう、ありましょうが、総体的にはそれは過去のような
状態では起こってこない。それから、輸出環境はどうだ。輸出需要、これは
世界じゅうがいま混乱をしておる。ことに
わが国が輸出の相手国である開発途上国、これなんか非常に困っております。そういう
状態で、総体として見ての輸出への
期待というのはそう多く
期待できない。そうすると、どうしても刺激剤は
財政になってくるんですよ。
そこで、第二次
不況対策に見るごとく、
財政を
一つのはずみをつけるテコに使おうという
考え方になってくるわけなんですが、とにかく一方においては、一けた台の
物価目標、これはどうしても到達しなければならない。しかし、それをにらみながら、その許容する限度において
景気状況も
考えなければならぬ、非常にむずかしい局面でございますが、最善を尽くしてそのようにしたいというふうに
考えております。