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美濃小
委員 午前中に、
昭和五十年度の保証
乳価に対する、本日畜産
審議会の
酪農部会に
諮問されました原案につきまして
説明を受けたわけですが、まず、私の持ち時間は十五分間ですから簡潔に
質問をいたしたいと思います。
質問と意見とあわせて大臣の所信をお伺いしたいと思うのですが、第一点は
家族労働費についてであります。
この計算を見ますと、これは昨年もそうですが、四十九年の十一月から五十年の一月までの加工乳
生産県の五人
規模労賃をとっております。
加工原料乳生産県というのは主として非常に農業の比率の高いところでありますから、五人
規模という企業の
労働者は、定年退職した人が年金をもらいながら働いておるというような人とか、あるいは女子
労働が多くて、それが
家族労働的な構成になっておるところでありまして、そういう
労賃を
基礎にしておるというのは間違いであると考えます。いま同じ五人
規模でも
全国平均をとれば、これは私は
乳製品課で調べて
資料をもらっておるのですが、九月の五人
規模の
全国平均はたしか六百二十五円だったと思います。同時に、五十年の
乳価を決めるのでありますから、ことしの
賃金の
アップ率を
平均二〇%に抑えるか、二二%に抑えるか、あるいはそれがいま実績がないから
労賃に均衡という
算出の
基礎であるということであれば、それが春闘ではっきりしたときに直ちに修正するということを制度上明確にしなければならぬと思います。こういうインフレ下において、前年度
労賃でことし働けという決め方というものはもう許されぬと私は思います。去年もそのとおりだったわけですね。改定されない前は四百六十円でありますから、一時間
当たり男女込み四百六十円
労賃というのは五人
規模の
昭和四十八年度
労賃でありますから、それで四十九年の
牛乳を
生産させた。また五十年度
乳価を決めるときにも四十九年度
労賃で働けという、こういう制度をいつまで存続するのか。三木総理の言う不公正の是正ということを看板にかけておることだし、内閣もかわったことだし、こういう間違った
基礎を速やかに政治的に直すということは、これは事務的な問題というよりも政治的な問題だと思うのです。これが第一点です。
それから、第二点は、
飼料作物費の計算でありますが、これも雇用
労賃を許すことはできません。もう時間がありませんから
理由は申し上げませんが、これは管理
労働と同額に計算をして、そしてその他経費の中に占める油の
値上がりその他を計算すれば、これは単純に申し上げますが、百キロ
当たり二千九十九円の経費に修正する必要がある。今回提案されておる百キロ
当たり千六百六十五円という経費は、
加工原料乳地帯の酪農家が粗飼料を
生産する経費としてはまことに不足である、この経費では
生産することができない、このように申し上げておきます。それ以下の経費につきましては大同小異でありますから、大きい点だけを申し上げます。
その次の問題は
乳牛償却費であります。これは私はまことにけしからぬと思います。確かに、昨年は
乳牛が下がったことは事実です。しかし、私は昨年も申し上げております。この相関
関係は、
乳牛が下がった場合にはいわゆる廃牛です。しぼり上げて売る牛が非常に安くなります。ですから、五年、十年の歴史をとってみると若干の差はありますけれども、償却対象の金額というのはそう大きな差がないわけです。
たとえば
昭和四十八年においては、所で違いますけれども、私は北海道ですから北海道
地域に例をとりますと、確かに三十七、八万から四十万しました。そのときにはしぼり上げて肉に売る牛が大体二十五万に売れたのです。去年は
乳牛が下がったことは確かに事実です。しかし、十万に売れなかったのですね。四十九年のしぼり上げた廃牛の
平均が十万を切れております。八万、七万というのが多かったわけです。それも余り喜んで買わない。しかし、
乳牛というものは、生まれてから飼料を食わせて、種つけをして、順調にいって二十一カ月で分娩するわけですね。その固定的な
価格というものには、えさ代と飼育
労賃を含めればそう変化はないわけです。そのときの経済的事情によって変化はありますけれども、
乳牛の
基礎的な
価格というものは政策的にはきちっと掌握していかなければならないと思います。それが肉
価格によって
変動する場合がある。
ですから、そう考えますと、昨年の肉
価格から見ますと、肉
価格の値下がりによって
乳牛が下がっておるのでありますから、その安くなった
価格と残存
価格が七万か八万にしか売れぬわけですから、そして四十八年には二十五万にも売れたわけですから、五年なら五年の償却期間で割る償却対象金額というものには変わりがなかったと私は考えます。それにもかかわらず、前年度を大幅に下回って今回提出された
乳牛の
償却費が百キロ
当たり三百八十七円の
償却費を計算したということはまことに不当である、酪農という現実、
乳牛生産の現実というものを無視した計算である、全然実情に合致していない、と申し上げざるを得ません。
その次は、
副産物価格であります。
副産物は、これから先においては雌も雄も生まれ落ち一週間で計算すべきである。雌牛を四カ月計算して何ぼだなどという計算はおかしいと思います。確かに、これは、
牛乳生産をする過程で種つけをして、子っこが生まれなければ
牛乳が出ないのでありますから、生まれ雄にしても、雌にしても、生まれ落ちの
価格は
副産物収入として計算することは正しい計算
方式だと私は思います。だけれども、雌牛が四カ月経過後は何ぼだとか、六カ月経過したら何ぼだとかという計算の仕方は絶対に許されるぬと思います。そういうものではない。雌も雄も生まれ落ちで計算をすべきである。それから先は、たとえば乳用雄を育成するのであれば、その経費を見て肉で保証すればいいのでありますし、雌牛の飼育経費は、雌牛として飼育するのであればそれなりに飼育をして、代がえに使う場合には自家保有の更新牛であれば、それは現在しぼっている牛の
償却費であり、あるいは肉で売る残存
価格で維持できていくわけでありますから、そういうふうに考えてやるべきである。したがって、第二点の堆肥を去年からずいぶんやかましく私は言っておるのですが、
費用価計算
方式をもって堆肥を
副産物収入に大幅に見ておりますけれども、片や肥料費の方でそれを見ていないというところに問題がありますから、今回の現時点における酪農の経営実態からいくと、
副産物価格は四百六十円に修正すべきである。九百二十一円というものは高過ぎる。しかも、
子牛が雌、雄込みの三万七千円などという計算はまことに現実に合わない過大計算であると指摘せざるを得ません。
次に、
資本利子の問題でありますが、これは公定歩合の引き上げその他で上がる実勢にあるということを加味しなければなりません。
もう
一つは、
もとへ戻りますが、
建物費の中の
償却費であります。これは御存じのようにものすごい建物の
増加でありまして、たとえば今回
政府原案として提出されました七十七円三十八銭、片や北海道の根室にはいわゆる新酪農計画を立てて大型酪農の推進をしております。この建て売り牧場に対して個人が入って支払うのが六千数百万と聞いておりますが、私どもの計算では、そういう根室の新酪の建て売り牧場に入居した者は、この
乳価ではその負債は払えません。なぜ払えないかというと、建物の償却に対する基準が低いということであります。これは私の計算では、建物の償却と
修繕費を合わせて二百五十円が必要である。
政府原案は余りにも低過ぎる。こういう低い
償却費でどうして新しい設備投資ができるか。いわゆる多頭飼育をして、大型酪農の設備をした農家は、この保証されておる建物の償却
修繕費では償還することができない。これははっきり出てまいります。したがって、この
価格でもし
政府が一方的に押し切るとするならば、
加工原料乳地帯にきわめて不幸な現実が起きてまいると私は思います。
念のために申し上げておきますが、私はその先頭に立たなければならない。私も農協の組合長であります。たとえ総合資金にしても、借りた借金は払わさなければならぬという信念を私は持っております。しかし、この
乳価では、大
規模なあの多頭飼育をして、三千万、四千万の設備投資をした元利償還を請求することはできません。
農林大臣、そうするとまことに残念でございますけれども、こういう
乳価が決まった明日から酪農家の借入金は元金も利子も一銭も払えない。払わぬとは言いません。払わないのではない。払えないのです。払えない
乳価を
政府が決めたんだ。農林大臣、払えないのだから農林省でこれは何とかしてくれ。払ったら首をつらなければならぬ。この行動に入らざるを得ないと思います。私自身もその先頭に立たなければならぬ。この
価格で決めるというのであれば、まことに憂うべき現象が出てきます。どうしてこの
乳価で生活できるのですか。
たとえば百トンの
牛乳を
生産する。統計の
資料がございます。百トンの
牛乳を
生産する頭数といえば、代替育成牛を含めて三十頭
規模ということになります。一頭
当たりの
飼育労働時間百九十五時間とすると、約二百時間。これはデンマークを調べてみても二百時間ですね。寒地酪農は一頭
当たり二百時間。三十頭飼えば六千時間。六千時間も働いてこの保証
乳価のとおりいくのであれば、六千時間の
労働をして二百二十六万九千円しか
労賃が保証されていない。まことに不公正きわまりないものである。これでは酪農は崩壊します。
時間の
関係で、以上私の方から端的にぶっつけに申し上げましたが、これに対する大臣の見解を承りたいと思います。どうしてもこの
乳価では酪農は崩壊します。この
乳価で押し切るのであれば、申し上げたような不幸な状況が出てきたときには、大臣、責任をしょってください。私はその一方の旗頭となって、国民の食糧
生産のために
加工原料乳地帯の酪農を守り抜かなければならない。守り抜くためには、この
乳価では守れません。はっきり申し上げておきます。見解を承って、私の
質問を終わりたいと思います。