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1975-05-29 第75回国会 衆議院 農林水産委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年五月二十九日(木曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 澁谷 直藏君    理事 今井  勇君 理事 坂村 吉正君    理事 中川 一郎君 理事 藤本 孝雄君    理事 井上  泉君 理事 芳賀  貢君    理事 津川 武一君       足立 篤郎君    愛野興一郎君       片岡 清一君    吉川 久衛君       熊谷 義雄君    佐々木秀世君       島田 安夫君    角屋堅次郎君       柴田 健治君    島田 琢郎君       竹内  猛君    野坂 浩賢君       馬場  昇君    美濃 政市君       諫山  博君    中川利三郎君       瀬野栄次郎君    小宮 武喜君  出席政府委員         水産庁長官   内村 良英君         水産庁次長事務         代理      兵藤 節郎君  委員外出席者         外務省アジア局         北東アジア課長 妹尾 正毅君         外務省経済協力         局外務参事官  菊地 清明君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 五月二十九日  辞任         補欠選任   神田 大作君     小宮 武喜君 同日  辞任         補欠選任   小宮 武喜君     神田 大作君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(まぐろ漁業問  題)      ————◇—————
  2. 澁谷直藏

    澁谷委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。角屋堅次郎君。
  3. 角屋堅次郎

    角屋委員 きょうは農林大臣参議院法案審議のために御出席にならないのは非常に残念でございますが、御承知外国人漁業規制に関する法律の一部改正の問題を中心にいたしまして、かねてから本委員会理事会でも寄り寄り協議が続けられておる段階でございますが、その問題にも直接関連することでございますけれども、その法案の一部改正を必要とするバックグラウンドといいますか、そういった意味水産全体の問題、特にカツオマグロ等現状、あるいはそれに対する対応策というふうな問題を中心にしながら、水産庁等に御質問を申し上げたいと思うわけでございます。  最初にお伺いをしたいのでございますが、これはことし第七十五回国会に提出されております政府の「漁業動向に関する年次報告」、いわゆる漁業白書の中にも、第三次国連海洋法会議のことに冒頭触れておるわけでありますが、「我が国漁業の概観 重大局面に立つ我が国漁業」というふうな見出しで始まります漁業白書の中で——これはもちろんジュネーブ会議がまだ終わらぬ段階記述でございますけれども、その中で、「統一的な海洋法制度を確立するための第三次国連海洋法会議が、四十九年六月から八月までの十週間ベネズエラカラカスで開催された。このカラカス会議では、具体的な結論を得るに至らず、五十年三月からのジュネーブ会議に持ち越されたが、これまでの討議を通じて各国主張がかなり明確になってきた。」というふうに述べながら、「このうち、漁業関連するものをとりあげてみると、領海十二海里とすることが大勢を占めるとともに、二百海里の経済水域設定については、開発途上国中心として大多数の国が原則として支持を表明し、その具体的内容に関してはいまだ流動的とはいえ、動かし難い大勢として定着しつつある。」という記述になっており、したがって、何といっても、こういうことから来る当面最も深刻な問題は、わが国漁業に対する国連海洋法会議動向から見て、これにどう対応するかということであって、遠洋漁業が非常に困難な条件に置かれることが予想されるというふうに書いておるわけであります。  この際外務省出席を求めておりましたが、水産庁長官でも十分理解ができるところでありますので伺いますが、昨年のベネズエラカラカス会議から、それを引き継いだ本年度ジュネーブ会議となり、結局ジュネーブ会議では統一草案というものができ上がりましたけれども、全体的な会議としての合意は来年の三月以降に開かれるニューヨーク会議に持ち越されるという形勢に来ておるわけでございます。  政府としては、第三次国連海洋法会議カラカス会議ジュネーブ会議の結果を受けて、来年度ニューヨーク会議に臨むに当たって、どういうように今日までの情勢を判断し、これからどう対応しようとするかという点について、まずお答えを願いたいと思います。
  4. 内村良英

    内村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘がございましたように、カラカス会議では何ら具体的な結論を得ることなく、今年の三月からのジュネーブ会議海洋法条約の問題は持ち越されたわけでございます。  そこで、ジュネーブ会議におきましては、まず領海でございますが、領海の幅員につきましては十二海里以内とするということがカラカスの場合と同様大勢であったわけでございますが、その最終的合意経済水域及び国際海峡における通航権の問題と密接に結びついているという状況から具体的な結論は出さなかったということで、依然として十二海里が大勢だというカラカス会議状況は変わっていないわけでございます。  一方、経済水域につきましては、カラカス会議の場合には、経済水域二百海里の設定がある程度大勢のようなかっこうでありながら、経済水域内容と申しますか、沿岸国管轄権をどうするかということについては非常に意見が分かれまして、何ら結論を得なかったわけでございます。  そこで、そういった状況を踏まえまして、ジュネーブ会議では、ノルウェーの海洋法担当大臣でございますエベンソンという人が中心になりまして、会議の外でエベンソン・グループ協議というのが行われたわけでございます。日本小木曽大使が個人の資格でこれに参加するというようなことで、エベンソン・グループでいろいろ議論が行われたわけでございますが、このグループ自体参加国全部をカバーしているものではございません。その結果、二百海里にわたる経済水域内の生物、非生物資源に対する沿岸国管轄権を認める一方、遠洋漁業国他国経済水域内の入漁の可能性も、権利という明確な形ではないにしても、案文上排除されていないということで、非沿岸国漁獲沿岸国が利用し切れないようなものについては実績国漁獲が尊重されるというような規定が一応できたわけでございます。  そこで、ジュネーブ会議では、海洋法条約草案になるものをつくろうということでずいぶん議論したわけでございますけれども、結局論議結論としての単一的起草はできなくて、各委員会議長議長の責任においてまとめたというものを中心にして、それをまとめた単一草案というものができたわけでございます。この単一草案というものは、論議の結果ではなしに、論議のたたき台になるものでございまして、ニューヨーク会議におきまして、これは来年の三月からでございますけれども、その論議基礎になるというテキストができたわけでございます。  そこで、経済水域につきましては、実体的にはエベンソン協議内容がほぼ取り入れられているわけでございますが、これにつきましては、開発途上国七十七ヵ国は沿岸国管轄権をもっと強くしろというような形の反対をしておりますし、さらに、内陸国とかあるいは沿岸が非常に狭い不利益国というようなものがそれでは満足しないというようなこともございまして、ニューヨークでこの経済水域論議がどうなるかということについて、的確な見通しはまだつけにくい段階にあるわけでございます。  そこで、政府といたしましては、これからジュネーブニューヨークの間が約一年あるわけでございますから、関係各国と密接な話し合いをいたしまして、わが国のいろいろな利益というものを極力擁護できるような形に最終的な条約を持っていくような努力をしたいということで、外務省ともいろいろ話し合っているというところでございます。
  5. 角屋堅次郎

    角屋委員 いずれにいたしましても、昨年のカラカス会議からことしのジュネーブ会議を経て来年のニューヨーク会議に引き継がれる第三次国連海洋法会議大勢というものはわが国国際漁業の面できわめて厳しい問題を投げかけておるし、また、それに対する対応策を逐次進めなければならぬ厳しい情勢であることは間違いがないわけでございます。  そこで、本委員会その他でも議論されておりまして、安倍農林大臣がしばしば見解を表明しておる問題の一つ——これはこれから問題にします外国人漁業規制に関する法律とも関連をして領海問題があるわけでございますが、この日本領海三海里という問題については、これは明治三年の七月二十八日、当時普仏戦争が起こったのに対して日本中立の態度を宣明するという立場から太政官布告を出しておるわけでありますが、当時、三海里説というのは大多数の国に妥当しておった国際法上の一般原則で、別に、それを受けて三海里そのもの宣言するということではなかったと思いますけれども、いわゆる中立宣言という中で太政官布告で出されたものがそのまま今日まで日本の三海里というものの基礎的根拠になっておるわけでございます。それはともかくとして、第三次国連海洋法会議大勢から見ましても、また、最近のわが国近海におきます外国人漁業操業問題から見ましても——これは韓国パナマ等漁船の問題もあると同時に、ソ連船日本近海への操業という問題が非常に大きな国民世論の批判あるいは関係漁業者の反撃を受けておるわけでありまして、農林省としてはなるべく早い機会領海十二海里を宣言をいたしたいということをかねてから言っておるわけであります。  ところが、これに対しては政府部内、特に外務省関係で、先ほど述べました国際海峡における自由航行問題等関連をして他の問題等もあり、またどういう形で十二海里の宣言をするかという手法の問題等もありまして、これがいま検討中と聞いておりますけれども、これらの問題に対して速急に十二海里の宣言をするという方向でどういうふうに進めていくのかお答えを願いたいと思います。
  6. 内村良英

    内村政府委員 今年春ソ連漁船わが国近海操業し、これによって非常にいろいろなトラブルが起こってきているという状況にかんがみまして、さらにカラカス会議では十二海里が大勢になっているという状況を踏まえて、ジュネーブ会議が済みました後で水産庁農林省といたしましては十二海里宣言をしたいという願望を持ちまして、大臣も、これは水産庁あるいは農林省だけのことではないけれどもジュネーブ会議の終わったところで十二海里宣言をやりたいということを言っておられたわけでございます。当時はジュネーブ会議である程度の結論が出るんじゃないかということを前提にいたしまして私どもそういうふうに考えていたわけでございますが、ただいま申し上げましたように、ジュネーブ会議におきまして領海十二海里が具体的な結論とはならなかったという状況になったわけでございます。  そこで、その他国際海峡の問題あるいは経済水域の問題につきましても具体的な結論は出ていないという状況でございますので、こういった状況下領海十二海里の問題をどう扱うかということについて、現在、政府部内におきましても鋭意検討中でございます。  水産庁といたしましては、あくまで十二海里をやりたいというジュネーブ会議以前の水産庁の考え方というものは変わっておりませんけれども、その他の問題もいろいろございますので、政府部内において現在関係省庁が集まりまして鋭意検討中でございます。
  7. 角屋堅次郎

    角屋委員 この点については速急に推進をしてもらいたいということを申し上げておきたいと思います。  きょうの中心議題であります外国人漁業規制に関する法律の一部改正バックグラウンドの問題でありますが、日本近海における操業問題としては、韓国パナマ船の問題あるいはソ連船の問題、これが現状外国人漁船の問題ということに相なろうかと思いますが、そのうちの日韓関係、特にマグロ問題をめぐっての政府ベースにおける折衝あるいは民間ベースにおける折衝の問題について若干触れたいと思うのであります。  この点は、昨年の四月三日、第七十二回国会水産三法の議論がなされたときにも、カツオマグロ問題、韓国問題というふうなことを私自身も最後の締めくくり質問で取り上げましたし、また、同時に、私が本委員会提案者として提案をいたしました水産業振興に関する件でも満場一致の決議の条項の一つに取り上げておる問題であり、これは同様に参議院水産業振興に関する件の決議の中でも、マグロの問題については決議の中で取り上げられておる経過がございます。ある意味ではそういったものを受け、また、これは非常に重要な問題であるということで、日韓両国政府間ベースにおける折衝も今日までなされてきておる。  第一回の交渉が本年の三月二十五日から三月二十八日までソウルで行われ、日本側から漁政部長が行き、韓国水産庁黄漁業審議官との間で話をして、これが結論を得るに至らない。第二回の交渉が本年の四月二十五日から四月二十八日まで東京で行われ、これも日本側漁政部長で、韓国側權漁政局長で、これも交渉結論を得ない。第三回の交渉がつい最近五月二十三日に東京で行われまして、これには先ほど答弁されました内村水産庁長官兵藤漁政部長日本側から出席し、韓国側からは水産庁長官相手側として出席されて交渉を持ちましたけれども、対日水揚げ量調整問題については結論持ち越しという形になっておるものと承知をしております。  これを受けて六月にソウルでさらに日韓交渉をやる予定だというふうに聞いておるわけでありますけれども、これら数次にわたります交渉経過について長官から御報告を願いたいと思います。
  8. 内村良英

    内村政府委員 マグロ類輸入に関します韓国との話し合いの経緯につきましては、ただいま先生から御指摘がございましたように大体三回やったわけでございます。  そこで、第一回は、本年の三月二十五日から二十八日まで、韓国ソウル兵藤漁政部長が行きましていろいろ話し合いをしたわけでございますが、そのときの話し合いといたしましては、第一に、韓国側は、漁船によるマグロ類日本への陸揚げは、五月一日以降本年中は漁港及び漁港区においては行わないように行政指導をするということをこちらに約束したわけでございます。第二は、韓国側は、日本への陸揚げはできる限り運搬船による旨韓国業界に勧告するということで、第三点といたしましては、対日水揚げ数量調整につき両国政府は今後とも協議し、五月中に結論に達し得るよう努力するということ、こういうことが大体決まったわけでございます。  そこで、その実施状況でございますけれども、私どもの方でいろいろ調べておりますが、第一の、韓国は五月一日以降日本漁港及び漁港区で漁船による水揚げを行わないという点は履行されておるようでございまして、今日までのところそういった報告はございません。それから、結局、わが国マグロ業界状況さらにマグロ価格の現実から見ますと、何といっても韓国の対日輸出量が非常にふえておりますので、これがいろいろな影響を与えるということで、私どもといたしましては何とか水揚げ数量調整をやりたいということで、話し合いをその後もしたわけでございます。すなわち、具体的には四月二十五日から二十八日まで、と、それから五月二十三日に東京におきまして私が韓国姜水産庁長と会っていろいろと話し合いしたわけでございます。  そこで、この水揚げ数量につきましては、残念ながらまだ結論を得ることができなかったわけでございます。と申しますのは、韓国側の言う数字わが国の考えている数字につきましてかなり開きがございまして折り合いがつかないということでございます。しかしながら、この問題は何とか政府ベースで話し合って片づけたいという気持ち両国政府とも変わらないわけでございますから、五月末までにまたやろうじゃないかということをこちらが申しましたところ、姜水産庁長がこれから中近東、アフリカへ行くんで、六月七日にソウルに帰るので、それからにしてくれないかということでございましたので、私ども向こうの事情をある程度考えて、六月中旬までにもう一度話し合いをして、そこで何とか結論を出したい、と、こういうふうに考えておる状況でございます。
  9. 角屋堅次郎

    角屋委員 伝えられるところによりますと、第三回の五月二十三日の東京における会合の中で、姜韓国水産庁長韓国側水揚げ量として五万五千トンというふうなことを主張したというふうに伝えられておるわけでありますが、それに対して、内村水産庁長官は、去年の韓国日本への水揚げが大体三万七千トンである、それ以下に、前年度より少なくすべきであるというふうな主張をしたというふうにも伝えられておるわけでありますが、日本カツオマグロ業界といたしましては、マグロ韓国からの輸入数量の問題については二万トンということを強く主張をしておるわけでありまして、これは今年の一月二十日から一月二十一日まで東京で開かれた日鰹連韓国遠洋漁業協会との話し合いの中で、日本側からは二万トンを主張し、これに対して韓国側からは四万トンを主張したけれども、三万トンまでは折れてよろしいと言ったというふうなことが伝えられておるわけであります。民間ベースにおいては三万トンまでは折れてよろしいということが言われたというふうに言われておるけれども、さて、政府ベースになると、三万トンはおろか、五万五千トンというようなことを強く主張される。  これは韓国朴政権という政権の性格というふうなものももちろん無関係ではなかろうと思いますけれども、そういった状況のように承っておるわけでありますが、民間ベースにおけるところの交渉あるいは政府ベースにおける交渉の中において、いわゆる韓国側見解というのはそごをしておるわけだが、日本側主張として、政府側では、韓国側に対してどれだけの漁獲量に下げるべきであるということを言っておるのかという点についてお答えを願いたいと思います。
  10. 内村良英

    内村政府委員 ただいま先生からお話しがございましたように、四月二十五日の第二回交渉の際に韓国側は五万五千トンという数字を言ったわけでございます。  そこで、これの算出基礎がどうなっておるかと申しますと、韓国側説明によりますと、対日向けの独航船は二百二十五隻ある。それの一年間の漁獲量が三百トンといたしますと、全体の漁獲高が六万七千五百トンになる。韓国にはマグロの内需はほとんどなく、マグロ加工工場もない。したがって全量対日供給が可能であるけれども自粛措置をとることとして、その二割を削減して五万五千トンとしたいということを言ったわけでございます。これに対しまして、私どもの方といたしましては、昨年の実績韓国が三万七千トン、それからパナマ籍のものを入れて二千五百八十トン、合計三万九千六百七十六トンで、そんなひどい倍増は認められないということを言ったわけでございます。具体的には、たとえば一隻当たりの漁獲量三百トンはわが国漁船実績に比べると高過ぎる、二百二十五隻は全部まだ稼働している状況ではないようだし、そういった状況を勘案したらこの数字は高過ぎるのではないかということを指摘したわけでございますけれども向こうはいろいろ苦しい立場もあるというようなことで、この数字からほとんど変わってないというのが現状でございます。  わが方は公式には数字をまだ出しておりません。向こう数字を聞いて、問題にならぬというところでやっておりまして、日本政府としての公式数字というのはまだオファーするチャンスがなく、向こう数字だけを聞いておるという状況でございます。
  11. 角屋堅次郎

    角屋委員 要するに、政府間ベースにおける韓国わが国に対するマグロ水揚げ量の問題については遅々として話し合いが進まない、日本マグロ業界が望んでおるような数字にまでなかなかいきがたいというのが率直に言って現状であると受けとめられると思うのであります。  そこで、韓国マグロ漁船現状問題について若干お伺いをしたいわけでありますが、最近五ヵ年だけを見てみましても、韓国マグロ漁船隻数というのは、四十四年が二百五十八隻、四十五年が二百四十六隻、四十六年が二百九十一隻、四十七年が三百六十隻、四十八年が四百四十七隻となっており、これは韓国漁業統計年報でありますから、この数字そのものはほぼ間違いないと思いますけれども、本年度の場合は大体五百五十八隻で、四十四年からわずか数年の間に倍増をしておるわけであります。  それから、また、韓国の場合も操業は太平洋あるいはインド洋、大西洋というところに及んでおるわけでありますが、日本向け輸出を主とした漁船数が直接問題になるわけでありますけれども、これは四十七年度が四十隻、四十八年度が六十六隻、四十九年度には一挙に倍以上になりまして百五十七隻、五十年度には二百二十五隻になっている。これは韓国側の発言による資料ということに相なっておりますが、いずれにしても四十七年度の四十隻から五十年度には二百二十五隻というふうに、韓国側で言っておる数字までの間には五倍以上激増をしておるわけであります。したがって、これが今日日本マグロ業界に対する非常に大きな影響問題として出てきておるわけであります。  こういった状況の中で、本年の三月十四日には清水港で、「外国船水揚げ阻止カツオマグロ漁業者大会」というものが開かれて、実力でこれを阻止するというふうな非常に厳しい大会の雰囲気であったわけでありますし、また、引き続きます三月二十八日には日鰹連主催全国大会も開かれるといったような状況にあることは御承知のとおりであります。  ここで問題になるのは、これの水揚げ問題等関連をいたしまして、たとえば四十八年度韓国、パマナを含んだマグロ、カジキの税関別輸入数量というものを見てみますと、いわゆる清水税関関係で、これは焼津も含んでおりますが、ここに一万九千七トン、全体として二万九千八百三十六トンのうちの約二万トン近くが税関別に見て焼津を含む清水のところに来ている。そのほかに東京、川崎、横浜、四日市等税関輸入別数量が出ておりますけれども、そこで、やはり、私どもが取り上げようとする漁港漁港区の水揚げ問題を抑えると いったような状況がこの税関別輸入数量の中からも出てまいっておるわけであります。  この機会にお伺いをしたいのでありますが、韓国マグロ漁船隻数の異常な増加、また日本向け輸出を主とする漁船数の異常な増加というものは、これはどういう状況のもとにおいて出てきておるのかという点についてお答えを願いたいと思います。
  12. 内村良英

    内村政府委員 私が日韓マグロの会談を通じまして韓国側から聞いておりますところでは、韓国政府は、遠洋漁業、特にマグロ漁業輸出産業として育てたいという気持ちを持っておる。そこで、現在、日本との貿易は、向こう説明では十億ドルくらい日本が出超になっておるので、そういったものを埋めていくためには、製造工業製品といっても韓国のような経済の場合はなかなかないので、韓国側輸出品は一次産品がどうしても中心にならなければならない。その場合に、韓国にはまだ良質な労働力がたくさんあって、その労働力を活用して輸出品をつくり、輸出産業をつくっていかなければならないのだ、そこで、マグロの場合には、日本からマグロ船中古船を買ったり、あるいは新しい船を日本造船所でつくりそれに韓国の船員を乗せてやっていけばかなり効率的な漁業ができるので、マグロ漁業というものを輸出産業として育てたい、と、こういうことを向こうは言っておりました。  そこで、さらに、この問題については、わが国の商社が韓国に船を輸出したり、あるいは仕込みを手伝ったり、とってきたものを日本の市場に一手に揚げて日本市場で売るというようなことをいろいろとやっておりますので、商社がさらにそういった活動を助長しているという面があるのではないかというふうに思っておるわけでございます。すなわち、向こう側で輸出産業としてマグロ産業を育てたいという意向が政府、民間にあり、それを日本の商社がいろいろな形でバックアップしているというのが現状ではないかと思います。
  13. 角屋堅次郎

    角屋委員 いま水産庁長官の答弁の中にあったところの、日本の商社がこれをバックアップしておるという、そのバックアップしている日本の商社の主な社名を御答弁願いたいと思います。
  14. 内村良英

    内村政府委員 私ども承知しているところでは、主な社名は次のとおりでございます。三菱商事株式会社、丸紅株式会社、株式会社東食、伊藤忠商事株式会社、大洋漁業株式会社、三井物産株式会社、日商岩井株式会社、兼松江商株式会社、安宅産業株式会社、この九社でほとんどすべてのものがカバーされているような数字になっておるわけでございます。
  15. 角屋堅次郎

    角屋委員 現実にはこういった商社が、韓国漁船あるいはパナマの漁船、特に便宜置籍船と言われるような性格における漁船というものの背景にある。したがって、日本業界韓国業界と話し合っても、実はわれわれの方はいわば日本の商社の下請人、小作人的なものであって、というふうな話も出ているやに承っておるわけでありますが、そうなりますと、結局、日本漁業法のもとにおいて許可を得て操業しておる正規の日本漁業関係者が、いわゆる日本の商社が後で手を引きながら、そして韓国やパナマ漁船の背景にあって、それが実際の操業を操りながら日本水揚げをして非常に大きな打撃を与えているという、いわばユダヤ商人的、無国籍的営業といいますか、そういった性格があるのじゃないかというふうに私は判断をせざるを得ないわけであります。  こういった韓国漁船等に対する融資は、いろいろな点から判断をいたしましても七、八百億に上るだろうというふうにも言われておるわけでありますが、融資等の問題についてはどういうふうに水産庁としては見ておられるのか、御答弁を願いたいと思います。
  16. 内村良英

    内村政府委員 わが国の商社が韓国水産会社に貸し付けた融資の総額につきましては正確なところがわからないわけでございますけれども韓国側は大体七百億ないし八百億と言っております。それからわが国の商社も、これも商社の協議会でも完全な数字はわからないようでございますが、まあ三百億か四百億ではないかと言っておりまして、この点につきましては残念ながら正確な数字がわかりません。
  17. 角屋堅次郎

    角屋委員 結局、韓国あるいはパナマもそうでありますが、日本中心にした近海操業なりあるいは日本への直接の水揚げ等、こういう問題の背景にあっては、先ほど言いましたように、韓国漁船についてもマグロ漁船では逐年異常な増加傾向を示しておる。この異常な増加傾向を示しておる韓国漁船、パナマ漁船等については、いわゆるカツオマグロ漁船わが国からの輸出状況というものが関連をしておるわけであります。  そこで、最近における韓国向け、パナマ向けに対する新船、中古船を含めた実態はどうかということについて御答弁願いたいと思います。
  18. 内村良英

    内村政府委員 過去五年のカツオマグロ船韓国に対します輸出状況は、四十六年度が四十五隻、四十七年度が四十二隻、四十八年度が六十隻、四十九年度が四十四隻になっております。  これ以外に、パナマ置籍船として出した数字がございます。パナマ置籍船として出しましたのは、四十五年が十隻、四十六年が二十五隻、四十七年が四十五隻、四十八年が百五隻、四十九年は十三隻と、こういうことになっております。
  19. 角屋堅次郎

    角屋委員 これは別の委員会における通産省の貿易局長の岸田君の、カツオマグロ船輸出状況というところの答弁と少し数字的に食い違いがございます。たとえば、韓国向けの四十八年度は六十隻と言われましたが、これは四十九隻という委員会における答弁記録があるわけでありますが、そういう個々の数字は別として、とにかくわが国から、新船あるいは中古船を含めて、カツオマグロ船輸出というものが韓国向け、パナマ向けに非常に大量になされており、実はその背景においては、韓国側、パナマ側に資力が十分なくて、結局先ほど言ったような十社を中心にした日本の商社が資金的な面の実権を持っておるというふうに見て間違いないと思うのですが、いかがですか。
  20. 内村良英

    内村政府委員 本件につきましては、商業的秘密と申しますか、政府としてもわからない点がございますので、完全に正確なことはわかりませんけれども、大体ただいま先生が御指摘になったようなことになっているのではないかというふうに私どもは考えております。
  21. 角屋堅次郎

    角屋委員 そういうことからいきますと、結局、問題は韓国との問題あるいはパナマとの問題ということと同時に、日本の国内問題として、いわゆる商社のモラルといいますか、そういう基本的姿勢といいますか、それが問われておるというふうに思うわけでありまして、そういった背景の中で韓国あるいはパナマの漁船によるところの日本への水揚げが年々増加をする、調整の相談をすれば政府間ベースでもなかなかまとまらないという、こういう現状の中でわが国カツオマグロ業界は非常に深刻な事態になってきておる。  私の三重県もこういったことでは本場でありますので、地元へ帰りますと連日そういった陳情を受けたりする機会が多いわけでありますが、そういった状況の中でカツオマグロの経営の実態というものがどれほど深刻になっておるかという点について、水産庁としてどう見ておられるか、御答弁を願いたいと思います。
  22. 内村良英

    内村政府委員 現在、わが国水産業界は非常に深刻なる経営問題に直面しておるわけでございます。と申しますのは、一昨年暮れのオイルショックでA重油を中心とする燃油が一気に三倍に上がったわけでございまして、これに関連いたしまして、この委員会でも問題になりましたけれども、同じ石油製品である漁網綱等も価格が二倍ないし二倍半に上がる、労賃も当然物価が上がった関係で上がるということで、経費が非常に上がったわけでございます。特に、漁業の種類によって影響が違いますが、私ども調査したところでは、やはり、マグロ漁業あるいはトロール漁業等燃料をたくさん使う漁業が非常に強い影響を受けているということがございます。  その反面、製造工業のように、こういう経費の上昇を価格でカバーできるといいわけでございますけれども水産物の場合には価格が需給で決まるという面が強いことと、それから総需要抑制の結果、マグロのような比較的高級魚につきましては需要がさえないということもございまして価格が上がらないというところから、今日わが国マグロ業界は非常に深刻なる経営の問題に直面しております。特に、マグロの場合にはさらに釣獲率が年々下がっている、漁獲高も下がっているというようなこともございまして、経営上非常に重大な危機に直面していることは私どももよく承知しておるわけでございます。したがいまして、昨年、石油と申しますか、燃油の上昇の際、水産業の経営危機の対策といたしまして低利の経営安定資金の融資制度をやったわけでございますけれども、その償還がやがて迫ってくる。ところが、現状が続く限りはなかなかそれが償還できないというような深刻な問題がすでに起こりつつございますので、私どもといたしましては、当面こういった経営上の困難な問題について何らかの施策を講じ、さらにやや長期的な視点に立って根本的な経営安定対策を考えなければならぬというふうに考えて、いま、水産庁の内部において四月一日から経営対策室をつくりまして、これはマグロだけではございませんけれども、主要魚種について今後のあり方をどうしたらいいかということと、それに関連いたしまして、現在のもろもろの制度につきましてもある程度手を加えなければならぬ問題が起こってくればそれにも手を加えていくというようなことでいろいろ対策を検討しているわけでございますが、私どもといたしましても、現在マグロ漁業が直面している深刻なる問題は十分承知しております。
  23. 角屋堅次郎

    角屋委員 日本カツオマグロも含めて考えてみまして、たとえば日本近海における許認可の隻数あるいは遠洋における許認可の隻数の昭和四十年以降五十年までの変遷を見てまいりますと、御承知近海カツオマグロについては、昭和三十八年十二月二十五日の農林省告示で近海カツオマグロの総枠を千八百五十隻ということで決めて告示が出されたわけでありますが、それに基づいて四十年の一月一日で千七百八隻でスタートをした近海カツオマグロが今日では千二百七十八隻、これは五十年の一月一日現在で沖繩も含めれば千三百七十九隻、大体千二、三百のオーダーで、千七百八隻から見るとずっと減少をしてきておるわけであります。これは他業種への転換その他を含んでおると思います。そういった関係もあって大きく隻数としては減ってきておりますが、四十八年以降は変化はそう大きくはございません。それでも減少傾向はございます。  遠洋の許認可の隻数については、四十年一月一日のときが千三百十五隻、これが今日本土で千二百十九隻、沖繩も含めて千二百九十一隻というふうに数字上ではなっておるわけでありまして、千二、三百のオーダーがここ十年大きな変化はないといった状況でございますが、これは鰹鮪業会等で聞いてみましても、水産庁から資料を取り寄せてみましても、今年の四月三十日現在でカツオマグロ関係の倒産が三十六件、五十六隻、係船中のものが二十三件、二十四隻、一部廃業したものが四十件、五十三隻、計九十九件、百三十三隻でありまして、隻数全体から見ると一割に及んでおる。倒産、係船、一部廃業というもので千三百七十九隻から見れば大体一割に及んでおる。しかもも、鰹鮪協会で聞いてみますと、倒産寸前というのが百一件、百五十九隻といったような状況にあるということになりますると、これはいま長官からも御答弁がございましたけれども大変な事態であるということがうかがわれるわけであります。いわば、わが国における遠洋漁業面では中堅企業と言うべきカツオマグロ業界がこういった深刻な状態にある。しかも、この操業は太平洋、インド洋、大西洋にも及ぶという非常に広範な形で操業しておるわけでありまして、それが今日非常に深刻なピンチに立たされておるわけであります。  これに対する対応策はどうかということになりますと、一つは、輸入規制等も含むような前提に立った外国人漁業規制に関する法律の一部改正というものが将来展望に立っても当然必要であるということが一つございますし、同時に、また、先ほど長官から融資等の問題の話がございましたけれども、この融資の問題についても、緊急の第二次の速急な機会の融資問題というふうなこともやらなければならぬという深刻な事態にあると考えております。  これは昭和四十八年のときに、例の水銀、PCBの問題が出たときに私の方から試案を提示し、委員会で満場一致で取りまとめられて今日運営がなされておる水銀、PCB資金については、総額として二百三十九億出た中でカツオマグロ関係に五十九億、このうちで遠洋関係に五十六億、これが返還がなされようとしておるという段階でありますけれども、これを返していかなければならぬという問題に加えて、さらに先ほどの長官からのお話しのように、漁業経営安定特別資金ということで、去年総枠として五百三十億、これは漁業全体でありますが、そのうちでカツオマグロ関係に百五十九億、全体の中では三割を占める大きな比重を占めておるわけでありますが、日鰹連直接のところでは百四十四億、それに全漁連等も加わりまして百五十九億のカツオマグロ関係に対する融資、これがこの八月以降返済の時期に来ておる。関係業界からは、単にカツオマグロだけでなしに、五百三十億の融資そのもの全体について、これは六ヵ月以上一年以内の据え置き期間で二年以内に返還をするということでありますけれども、もう償還期に来ておる。大変な事態である。したがって、これについてはさらに一年の据え置きで、あと三年で返還するというように条件を変更してもらいたいという深刻な要請が出てまいっておるわけであります。さらにそれに加えて二次の緊急融資等の問題についても強い要請が出ておるわけでありますが、これらの問題についてどう対応するかということを再度お答え願いたいと思います。
  24. 内村良英

    内村政府委員 ただいま先生から御指摘があったとおりでございまして、昨年出しましたいわゆる経営安定資金につきましては、カツオマグロで大体百五十九億の融資がなされております。ことしの六月ごろから償還が始まってまいるわけでございますけれども、大体七月の償還が四億九千八百万円、それが八月になりますと十四億一千七百万円、九月は二十六億四千六百万円というふうにどんどん返さなければならぬ問題が起こってくるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、この制度をつくるにつきましては、いろいろな資金手当て等を中金等を通じてやったわけでございますけれども、その際、中金の債権を政府が引き受けたというようなこともございますので、そういった問題等もからんでおりますから、全体的な問題を再検討して何らかの対策をとらなければとても償還ができないんじゃないかと思っております。  ただ、金融でございますから、その場合一つ問題になりますのは、償還能力のある人たちをどうするかという問題もございまして、その辺のところは十分関係の方面と相談して十分な対策をとりたいというふうに考えておるわけでございます。
  25. 角屋堅次郎

    角屋委員 この問題については、第二次の緊急融資の問題等も含めて速急に対応策を講じてもらいたいということを強く要請しておきたいと思います。  カツオマグロ、特にマグロの問題については、アメリカの輸入制限、買い付けストップの問題が一つ関連した問題としてあるわけでございますので、この問題について御答弁を願いたいと思います。
  26. 内村良英

    内村政府委員 カツオマグロの対米輸出の問題でございますが、ただいま先生から御指摘がございましたように、輸出が非常にとまっているという状況になっております。すなわち、昨年に入りましてアメリカでも世界的な不況、需要の停滞ということからマグロかん詰めの消費が減退いたしまして、四十九年末には消費量の約半年分の数量に相当する千五百万ケースが在庫になっているということが起こりました。これにつきましては、さらにアメリカで牛肉が安くなって、マグロかん詰めの消費が牛肉にかわったというような面もございますけれども、そういうことで非常に大きな滞貨ができたわけでございます。このため、アメリカのマグロかん詰めの原料となる冷凍のビンナガ、カツオ及びマグロかん詰めのわが国からの対米輸出は非常に落ちまして、特に本年に入って、前年同期に比べまして、冷凍マグロの場合には一割ないし三割、かん詰めの場合には六割ないし八割と停滞的になっているわけでございます。  そこで、今後の見通しはどうかということでございますけれども、大きく在庫が動き出したというような情報はいまだございませんけれども、われわれとしてはやや好転するのではないかと思いますけれども、四十七年、四十八年のベースまで輸出が伸びるということは期待できないのではないかというふうに考えております。
  27. 角屋堅次郎

    角屋委員 いまの御答弁にもありますように、とにかく、アメリカの国内事情ということももちろんありまして、在庫がふえる、あるいはアメリカの失業率が高い、消費がそれに関連をして影響を持つといったようなことあるいは金利その他の問題等関連をしての、いわゆるアメリカの輸入制限、買い付けストップというものが日本の関係業界に非常に大きな影響を与えておる、これが直ちに改善されていく方向にはないといったような問題がございます。  これは、同時に、いまも韓国の問題を取り上げましたけれども韓国の問題それ自身で考えてまいりますと、いわゆるサモアとかあるいはサント基地といったようなところに出ております韓国漁船の関係等では、こういったアメリカに対する輸出のストップ等から見て釜山に相当リターンをするという報道等もあったりいたしまして、だから韓国業界としては三万トンまで折れてよろしいということを言っているけれども水産庁長官折衝したときにはあちらが五万五千トンというふうなことを強く言っておる背景の中には、日本近海における韓国漁船操業プラス、リターンにおけるところのそういった問題というのがあるのじゃないかとも見られるわけであります。けれども、いずれにしても、日本業界から見ても、米国の輸入制限あるいは買い付けストップというものがより一層事態を深刻にしておるというふうに言わなければならぬと思うわけでございます。  申し上げるまでもなく、わが国マグロ、カジキを含めた漁獲量を見てみますと、たとえば世界全体で昭和四十八年に八十六万九千トンで、これはFAOの資料でありますが、その中で三十二万八千トンで、日本が大体三分の一以上のマグロ、カジキの漁獲高を占める。これは昭和四十四年以降の数字を見ましても、日本マグロ類が大体三分の一以上の漁獲を占めておる。これがいま国内的にも国際的にも非常に大きな深刻な事態に立ち至っておるという状況にあるわけであります。  しかも、先ほど申しましたように、本年の四月三十日現在ですでに倒産の事態に現実になったものが百三十三隻、倒産寸前のものが百五十九隻といったような深刻な問題があり、融資等の問題についても返済がなかなかできない。これはやはり条件緩和あるいはさらに第二次の緊急融資もしてもらわなければならぬという事態にあるわけであります。そこで、本日の中心議題であります外国人漁業規制に関する法律といったようなものを通じて必要な措置をとるということは、わが国漁業の国益的な立場から見て当然速急にやらなければならぬということについてはいまさら私が申し上げるまでもない事態であるというふうに思うわけでございます。そこで、本委員会理事会におきましてもこれらの問題については寄り寄り協議が進んでおりまして、外国人漁業規制に関する法律の一部を改正する法律案として、要するに特定漁獲物等、マグロ、カジキというものはいま言ったような事態から当然その中に含まれ、さらに必要なものについては政令に決めるというふうな形式に相なろうと思いますけれども、外国漁船の船長は、これを「本邦に陸揚げし、又は他の船舶に転載することを目的として、当該外国漁船を本邦の港に寄港させてはならない。」というのは、四条の二にかかわらずそういう措置をとる必要がある。さらに、外国漁船以外の船舶の船長についても、特定漁獲物等を漁港において陸揚げをしたりあるいは漁港区に陸揚げしてはならないというふうな形を加えた法改正をする必要があるということで、寄り寄り協議が進んでおるわけであります。  これは経過としては私は詳しくは申し上げませんけれども、自民党の水産部会あるいはその後政調、総務会等を経て議論がなされて、やはり法改正をする必要があるということで取りまとまってきておるわけでありますが、われわれも政府与党の中でこれがまとまらないという場合には、水銀、PCBの融資問題で私どもの方から試案を提示しましたように、内容的には同じ内容になりますけれども、積極的に外国人漁業規制に関する法律の一部を改正する法律案を提示して、与野党の協力を得て、議員立法としてこれを処理するという気持ちをかねてから持っておったわけであります。  この問題については、先ほど述べましたように、水産業振興に関する去年の四月の水産三法の議論をやりました最後の締めくくり質問の中でも、私自身この問題を取り上げて、水産庁長官は、当時も内村さんでありましたが、法的措置については今後の推移を見て検討いたしたいというふうな答弁を私に対してもしておるわけであります。したがって、政府与党における相談の中では当然水産庁もタッチして、この法改正は当面の状況からはやる必要がある、またやらざるを得ないというふうに理解をしておるものと思いますが、その辺について御答弁願いたいと思います。
  28. 内村良英

    内村政府委員 昨年この委員会決議がございました後において、水産庁におきましてもこのマグロの問題についてはいろいろ検討したわけでございますが、一番むずかしい問題は、マグロの場合には、昭和三十六年以降これが自由化物資になっておりまして、これを割り当て制に戻すというのはいまの国際環境から言ってなかなかできないということ、さらに、わが国マグロの価格が非常に低迷するというような場合には関税をかけることも検討してみたわけでございますけれども、関税がまたガットでバインドしておりまして、関税を上げますためには相当な代償を払わなければならないというようなことがあり、いろいろな点を貿易上の問題として検討したわけでございますけれども、具体的にいい対策が出てこないわけであります。  そこで、私どもといたしましては、先ほども申しましたけれども、本件には日本の商社がバックにいると申しますか、力を持っているという関係もございますので、昨年あの決議がなされまして以来、商社にはいろいろ自粛方を要望し、いろいろな協力を求めてきたわけでございますが、ところが、昨年じゅうやりましたけれども、残念ながら商社から十分な協力が得られない。そのうちに韓国の対日輸出数量がどんどんふえてきたということで、今年、このままほっておきますと、大体一−四月で二万トン近く入っておりますから、六万トンぐらい入ってしまうおそれがあるわけでございます。そこで、昨年の輸入量がパナマ置籍船を入れましてたしか三万九千七百トンだったと思いますが、そんな数字でございますから、倍近くなってしまうということもございますので、一月以降いろいろ商社に働きかけると同時に、中でもいろいろ検討したわけでございます。問題はやはり数量をいかに抑えるかということが大事ではないかと思いまして、自由化物資であるというようなこともございますので、韓国側の自主規制を求めるということで、先ほど御説明申しましたように、三月以降いろいろ努力してきているわけでございますけれども、残念ながらいまだに結論を得るに至っていない。六月中旬くらいまでには何とかしなければならないと思って私どもも鋭意努力しておるわけでございますけれども、そういう状況にあるわけでございます。  その場合に、数量を抑えるということを考えた場合に、現在、漁船による水揚げを禁ずれば確かに相当な影響があるし、あるいはほとんど輸入がストップするというような影響がございますけれども、私どもといたしましては、数量を抑えるということを念頭に置いてやろうということで自主規制向こうに要請し、話をしているわけでございます。その場合に、現在のところ、向こう漁船水揚げだけを目的として寄港する場合にはこれを抑える措置が国内法でございませんから、そこを改正していざというときにはそれを抑えるということを法的に用意していただくのは、私どものいろいろな自主規制を成功させるといいますか、韓国側と円満に本問題を解決することに非常に大きく役立つのではないかと思っております。
  29. 角屋堅次郎

    角屋委員 従来は、本委員会で井上さんがことしに入ってからこれを取り上げた際にも、また、他の委員会で取り上げておる際にも、外国人漁業規制に関する法律の一部改正マグロ等についてはやる必要があるということについては、事態の推移を見てとか、あるいは現行法の漁業活動の問題であるとか、あるいは正常な漁業の秩序の問題であるとか、そういうことを乗り越えておるかどうかというふうなことで、いろいろ言を左右にしながら積極的に乗り出す構えが必ずしも十分でなくて、まことに遺憾だったと思うのです。しかし、いまの水産庁長官のお話しでは、今日の状況の中では法改正をやる必要があるという意味にとれる御答弁のあったことは一歩前進だと思うわけでありまして、本委員会で寄り寄り協議しておる問題について速急に進めるということについても、政府はこれに対応できる態度を示したものだと受け取るわけであります。  外務省出席が遅かったものだから国連海洋法会議等の問題を水産庁長官の方にお伺いいたしましたが、この機会に、外国人漁業規制に関する法律の一部改正関連して、国際海港条約と一般に言われる条約問題についてちょっとお尋ねしておきたいと思うのでありますが、これは法律的には「海港ノ国際制度ニ関スル条約」というふうに現行法規総覧では出ておりますけれども、この条文の中で、要するに漁船とか漁獲物とかいうものについては国際海港条約は適用しないという形の条約内容になっておるものと思っておりますが、その点に関する外務省からの答弁を願いたいと思います。
  30. 妹尾正毅

    ○妹尾説明員 仰せのとおりでございまして、この条約は「条約及規程並署名議定書」ということで一体になっておりまして、その規定の十四条におきまして、漁船漁獲物につきましては何ら適用されないというふうに規定されております。
  31. 角屋堅次郎

    角屋委員 いまの外務省からの答弁のように、この条約の中では、第十四条の「漁船及び漁獲物に対する不適用」というところで、「本規程ハ漁船又ハ其ノ漁獲物ニ何等適用ナキモノトス」、とある。これは専門調査室からも議論の素材として資料が出ておりますけれども、これに基づいて、多くの先進諸国においては、漁船及び漁獲物については、国内法をもってそういうものを直接水揚げをするというところはむしろ異例でありまして、通常はそういう形をとらないという形を一般的にとっておるわけでありまして、したがって、国際的に見ても、われわれが考えておる法改正わが国が進めるということについて特に問題はないというふうに私どもとしては理解しておるわけであります。  予定の時間も参りましたし、私が全般にわたって詳細にまで入りますとあとの質問の時間にも支障がありますし、さらにあとまた各党からもそれぞれ質問いたしますし、その質問においてもいろいろな点が出てくるであろうと思いますから、若干質問の点を残してこれで終わりたいと思います。  いずれにしても外国人漁業規制に関する法律については、委員長提案で当面の緊急対策については対応してもらいたいというのがわが党の基本的な考え方でありますし、また、カツオマグロ等の今日の深刻な事態については、融資その他の問題も含めて緊急に打つべき手については緊急に打って当面の危機を打開をし、倒産傾向にあって現にそれが進行しておる問題について歯どめをかけてもらいたいということを強く要請をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  32. 澁谷直藏

    澁谷委員長 井上泉君。
  33. 井上泉

    ○井上(泉)委員 この外国人漁業規制に関する法律を今日改正せねばならない必要というものを水産庁長官もお認めになっておられるようですが、そういう場合に、政府側でみずからこの法を改正するだけの熱意は持たないものですか。
  34. 内村良英

    内村政府委員 私どもといたしましても、先ほど御答弁申しましたように、マグロをめぐる問題につきましては、貿易問題等るる検討したわけでございますけれども、何といいましても数量を抑えることが先決じゃないかということで韓国側と話し合って、向こうの自主規制数量を抑えたいということで今日まで対処してきたわけでございます。したがいまして、残念ながら問題がまだ解決しておりませんけれども、今後六月の中旬ぐらいまでには何とかこの問題を解決したいと考えておりますために、政府外国人漁業規制法の改正は考えていなかったわけでございます。
  35. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それで、数量規制韓国側話し合いがつけばこの法律改正をする必要はないという考え方に立っておったわけですか。
  36. 内村良英

    内村政府委員 数量調整について、わが国業界の利益なりわが国の利益が確保できればその必要はないというふうに考えているわけでございます。
  37. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そういうふうに必要がないと考えておられるということは、数量規制については自信がある、と、こういうお気持ちを持っておるのですか。
  38. 内村良英

    内村政府委員 今日まで三回やりまして話がつかなかったということは、いかにむずかしいかということでございます。したがいまして、絶対自信があるかということの御質問でございますが、絶対自信があるということは私としては申し上げられません。しかしながら、これは日韓漁業問題とかいろいろな問題にも関係がある問題でございますので、政府としてはなるべく政府間で円滑におさめるように努力したいということでいま一生懸命努力しているところでございます。
  39. 井上泉

    ○井上(泉)委員 絶対自信があるとは言えない、政府間としての話し合いを煮詰めたいということですが、いまここにこの委員会の中で委員長提案というような形でこの法の改正論議をされておるわけですが、そういう形で、委員会で、政府提案ではなしにいわゆる委員長提案の中でこの法改正が実現をするということは、これは韓国との数量規制交渉の上においても大きな力になると思うわけですが、水産庁長官はこれを力となると考えるのか、あるいは障害となると考えるのか、そのいずれの考え方をしておるのか承りたいと思います。
  40. 内村良英

    内村政府委員 有力なる力というふうに思います。
  41. 井上泉

    ○井上(泉)委員 有力なる力になるということでありますならば、急ぎこの法の改正を実現をいたすように私どもも各党協議をして取り計らいたいということをまず確認をしておきたいと思います。  そこで、いま、海外に対する漁業協力の問題で、経済協力で、「外務省経済開発等援助費に水産枠十億円を計上し、漁業取極交渉との関連において必要となる水産関係諸施設の供与を行った。」ということが四十九年度漁業白書の中に載っておるのでありますが、これは四十九年度だけに行ったものか、それとも毎年こういうようなものがなされておったのか、これの説明を願いたいと思います。  そして、それと関連いたしまして海外協力の問題で、海外漁業協力事業を積極的に推進するために、財団法人海外漁業協力財団が行う事業に対する助成を拡充するということで、四十九年度は二十六億で、五十年度は四十一億ということになっておるわけでございますが、この海外漁業協力財団の行ってきた今日の事業とわが国マグロ遠洋漁業との関係はどういうふうにこれを利用しておるのか、あわせて担当の方から御説明願いたいと思います。
  42. 菊地清明

    ○菊地説明員 お答えいたします。  水産関係の経済協力といたしましては、先生の御指摘のとおり、経済開発等援助費の枠の中で実施いたしておりまして、現在までに行いました事例といたしましては、四十八年の十月にスリランカに対して訓練用漁船一隻、それから、四十九年四月にインドネシアに対しましてやはり漁業訓練船一隻、この中には漁業訓練センター用の機材も入っております。第三は、モルジブに対しまして、本年、五十年一月三十一日、漁船動力化用の機材、つまりアウトボードモーターでございますが、これを百十台供与いたしております。  それから、海外漁業協力財団の方に関しましては水産庁の方からお答えいたすと思います。
  43. 内村良英

    内村政府委員 海外協力財団の予算につきましては、昭和四十八年から計上したわけでございまして、これは海外におけるわが国の、主として民間のいろいろな漁業活動に貸し付けを行うという仕事をしておるわけでございますが、昭和四十八年には十二億円予算を計上いたしまして、そのうち貸付資金の原資になるものは十億でございます。四十九年度は二十六億予算を計上し、貸付資金の原資が二十五億、五十年度は四十一億計上いたしまして四十億円を原資にしてそういった事業をやっておるわけでございます。  この実績がどうなっているかと申しますと、四十八年はこの財団自身が発足した年ということもございまして五億円の貸し付けを決定し、四十九年度は十六億円の貸し付けを決定し、五十年度は四月末ですでに五億円の貸し付けを決定しているということで、この中にはマグロに関係のある貸し付けも入っておりまして、オーストラリアあるいはソロモンにおける漁業協力に対する貸し付け等はマグロの事業と非常に関係があるわけでございます。
  44. 井上泉

    ○井上(泉)委員 海外の漁業に対するいろいろな援助資金というものが日本遠洋漁業者にはね返ってくる利益であれば私は何も文句を言うわけではないわけでありますけれども、往々にして経済協力というものは逆に日本漁業者や日本の国民に対して不利な結果をもたらすことがあるわけであります。その最たる例がいま問題になっております韓国漁船によるマグロと、そしてこれに介在をした商社の不当な商売のやり方である。これなどは韓国側ではどういうことを言っておるかというと、使い古した船で日本の資本家は韓国人をえさにしておると言っている。そして、自立段階に入った高麗遠洋とかアメリカのスターキスト社と用船契約を結んでいる済東産業を除けば、その他の群小業者はすべて島国——島国というのは日本のことを指しているのだが、島国の商売人どもの手中に丸め込まれておると言っている。古船をどんどん韓国へ売り渡し、あるいは用船契約をさせるということによって日本がいいことをした、海外協力、対韓援助をしたと思っておるかもしれないけれども、受け取る韓国の方はこういう考え方をしておるわけで、これによって日本水産業界、特に遠洋マグロ業界というものがいかに今日窮迫した状態に追い込められてきたかということを考えてみますと、私は、経済協力のあり方について、水産白書の中にあることについてももっとこれを検討いたしたいと思うわけでありますが、対韓援助の関係の中において、漁業関係は成功したと思うのか、失敗したと考えておるのか、水産庁長官の考え方と、あるいは対韓援助に船の関係を提供したことについての外務省としての考え方をあわせて承っておきたいと思います。
  45. 内村良英

    内村政府委員 韓国に対する援助といたしましては、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定、これは昭和四十年の協定でございますが、これで約十年間にわたって援助したわけでございまして、その援助は、水産振興事業、漁船建設、改良事業への無償援助等でございまして、たとえば通信施設をつくったりいろいろなことをやったわけでございますが、私は、やはり、これは韓国漁業振興に役立ったのではないかというふうに思っております。  その他民間の貸し付けも、昭和四十年の商業上の民間協力に関する……(井上(泉)委員韓国漁業に役立ったが、日本漁業界にはどういう影響を与えたか、です」と呼ぶ)日本漁業界には、日韓漁業協定ができまして、そこで日韓の間で漁業調整がついたということで、今日まで日韓漁業の間には十年間何も紛争がなかったわけでございます。そういったことで間接的にやはり役に立ったのではないかと思っております。
  46. 井上泉

    ○井上(泉)委員 間接的にはプラスであったと言いますけれども、この問題が起こったのは韓国漁船による日本マグロ業界に対する圧迫でしょう。それは日本の対韓援助がこれをもたらしたのであって、韓国漁業者にとってはよかったかもしれぬけれども日本漁業者にとってプラスであったとは、どういうわけでプラスになったのでしょうね。もう一回説明してもらいたい。
  47. 内村良英

    内村政府委員 政府の援助が韓国漁業振興に役立ち、それが日韓間の漁業関係の安定に間接的に役立ったわけでございます。  現在起こっておりますマグロの問題は、民間ベースわが国の商社が行いまして、それについて政府がコントロールしなかったのはいけないじゃないかという御批判があれば、それは別でございますけれども政府の援助が直接に韓国の今日のマグロ遠洋漁業の建設に役立ったという面はないと思います。
  48. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それは直接ではないでしょうが、直接ということではなしに、結果的に、そして商社を取り締まりができなかったことを批判をすれば、と、こういうわけですけれども、これは批判じゃない。当然なことじゃないですか。商社がそういう行為をすることを批判するのは当然であって、それを取り締まるのは当然であって、それを何か商社がそういう操業をすることが理の当然のような考え方で、批判をする側が間違っておるという考え方は、水産庁長官の言葉としてはいただけないわけですが、どうですか。
  49. 内村良英

    内村政府委員 ちょっと数字を申しますと、政府が覚書をつくりました民間信用供与でカツオマグロ船が出ているのは七隻でございます。したがいまして、直接的に韓国マグロ漁業の建設に政府の援助が寄与しているということは、まずほとんどないわけでございます。  それから、商社の点でございますが、これは非常にむずかしい問題がございます。非常に極端な場合に、たとえば外国にある商社の現地法人である支店が外国で金を借りて韓国にいろいろな信用供与をする、それに関連して日本漁船が出ていく、これにつきましては、漁船輸出承認はやっております。しかしながら、国内的にも設備更新その他で船を出したいという要望もございますので、そういったことも考えて輸出承認はしてきたわけでございますが、いずれにいたしましても、直接これを特に水産庁の力でコントロールできがたい面がいろいろあるわけでございまして、その点につきまして問題があることは十分わかっておりますけれども、やはり、われわれのなし得る限界があるということをちょっと申し上げたわけでございます。
  50. 井上泉

    ○井上(泉)委員 なし得る限界があるということはわかるわけですけれども、なし得る限界があっても、こういう不都合なことがあるから、日本漁業者にはこういう影響を与えるからということで、自分ではできないけれども、それを指摘することはできるでしょう。日本政府として、水産庁長官として、関係の省庁にそういう問題点を指摘することはできるでしょう。
  51. 内村良英

    内村政府委員 私どもも、昨年この委員会マグロの貿易問題に関する決議がありまして以降、商社を水産庁に呼びつけましていろいろとるる自粛を求めて要求をしてきたわけでございます。なお、その事実について必要がございますれば細かいことを申し上げますけれども、そういう努力は一生懸命してきたわけでございます。  ただ、相手が商社で、こちらが直接いろいろな行為を取り締まる権限というものがございませんのでなかなか言うことを聞いてくれないで今日に至ってしまったということはまことに残念だと思っております。
  52. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そういうふうに言われたけれども、それでは、商社がなかなか言うことを聞いてくれなかったので効果がなかったということになるのでしょう。  効果がなかったなら効果を上げるためにはどうすればよいのかというふうに問題を突き詰めていくということが行政の責任じゃないかと私は思うわけですが、効果がなかったからといって、しょうがないな、もう能力の限界だな、自分たちの業務の限界だなとあきらめるということではなしに、効果がなかったことについては、それならどうすればいいのかという水産庁長官としてのすぐれた行政知識というものが当然生み出されてこなければいかぬわけですが、それはもう出ないのですか。
  53. 内村良英

    内村政府委員 その点につきましては、いわゆる社会情勢と申しますか、客観情勢の推移によりまして彼らの考え方も逐次変わってきたということを私どもは感じております。たとえば、最初韓国側は七百億と言っていたわけでございますけれども、大変な金を向こうに貸し付けている。そこで韓国側が申しますのは、いま返せと言われても、もう返せない、自分たちは全部倒産してしまりのだということをるる言うわけでございます。したがいまして、自主規制を求め、その自主規制の実効性を求めるために、商社に対して韓国側が係船した場合は償還を待ってやったらどうかといりことも申したわけでございます。  ところが、初めはそれはもう商売上の問題だというようなことだったわけでございますけれども、問題がだんだん非常に厳しくなってきたと申しますか、非常に大きな問題になってきたということもございまして、実は、第三回の韓国側との水揚げ数量話し合いをする前に商社の代表を呼びましたところ、そういうことをやりますということを言ったわけでございます。したがいまして、そういった措置を商社もとれば韓国側としてもやりやすくなる面もあるということで、大分効果が上がってきたと私どもは思っておりますけれども、いずれにいたしましても、彼らの態度も若干変わってきた、協力的になってきたということは言えるのではないかと思います。
  54. 井上泉

    ○井上(泉)委員 この問題を論議をしていますと大変時間が経過するわけでありますので、また次の機会にこれを追求していきたいと思うわけですが、考え方が変わってきたということもあなたが一生懸命やった結果でしょう。やはり、物事をやれば変わってくると私は思うし、それで変わりが悪ければ、それを行政指導でできなければ、法改正をしてでもそれを規制して、商社がカツオマグロまで手を出して日本漁業者を困らすようなやり方に対しては、水産庁長官としては、それこそあなたの考え方が余りにも漁業者一辺倒だという行き過ぎを他の省庁から抗議を受ければともかくといたしましても、抗議を受けるまでぐらいの先んじた意気を持って取り組みをしてもらいたいということを私は要望しておきたいと思います。  そこで、日本カツオマグロの関係者の中で地中海における操業の停止が申し入れをされて、準備をしておったけれどもそこに出漁ができなくなったということについて、関係者がいろいろと水産庁の方に要望しておるわけですが、その要望しておることが具体的にどう実現をしそうになっておるのか、その経過を承りたいと思います。
  55. 内村良英

    内村政府委員 地中海のマグロにつきましては、大西洋マグロ漁獲規制の問題とも関連いたしまして、今年の五月二十一日から六月三十日まで地中海の操業禁止措置をとったわけでございます。  その背景といたしましては、昨年十九隻の日本漁船が地中海に入りましてマグロを三千トンとったわけでございますが、四十八年の漁獲が二百四十六トンなわけでございます。したがいまして、十倍近く一年でふえた。今年さらに七十隻近くのものが操業を計画しておるということもございまして、海洋法会議その他を前にし、さらに大西洋マグロにつきましては漁獲規制が国際的にも言われておりますので、そういった措置をいろいろ考えましてただいま申し上げましたような措置をとったわけでございます。それに対して、出漁準備しているところに急にそういうような措置をとられると困るというようなこともあったわけでございますけれども、その点につきましては、公庫資金を使いまして出漁に要した融資につきましては融資措置をとるというわけであります。  それから、さらに、日本がこういうふうに操業禁止をしても、たとえば韓国の船が入ってそのマグロ日本に持ってくるというようなことになると何にもならないのではないかというような御批判もいろいろあったわけでございますが、この点につきましても関係商社に厳重な注意を発すると同時に、万一商社が韓国船等を使ってこういうものを、運搬船であっても持ち込んできた場合には、やはり、水産行政の担当者としては非常に重大な決心をしなければならないのではないかというふうに私は考えておりますけれども、現在までのところそういった報告——これにつきましては厳重なる監視制度をとっておりますけれども、まだ入ってきたという例はございません。万一そのようなことが行われれば、当然かなり厳しい措置をとらなければならないのではないかというふうに考えております。
  56. 井上泉

    ○井上(泉)委員 水産庁長官の、万一そういうふうなことがあった場合には厳重な対応の処置を考えるという、その決意のほどは評価するわけでありますが、カツオマグロ漁業者は何隻も船を持っておるのではないわけで、さきに角屋先輩の質問の中にもあったようにずいぶんの倒産業者が出ておるわけで、こういう零細な業者は、せっかく地中海へ行って、いい漁場だからそれ出ていこうというふうに準備をしておったのが、国際的な関係で出漁停止をされたということになれば大きな損失を受けるわけで、これは一つの融資というような問題だけで解決することではないのだと思います。  そこで、私が聞くところによると、今後一年間は実質的に大西洋のクロマグロ輸入しないような措置をすること、あるいはまた、水産庁の原案中地中海の操業については実質的な漁獲禁止に等しいので、これに伴う損害について政府として補償と適切な救済措置を講ずること、こういうことを一つの前提条件として水産庁の指示に従って出漁を取りやめたということを聞くわけですが、漁業者が出しておりますこの前提条件というものは無理なことでしょうか。それについての見解と対策を承りたいと思います。
  57. 内村良英

    内村政府委員 業者の方々の御希望というものはわからないわけではございません。しかし、私どもといたしましては、かなり事前にその点についても関係者と話し合い、指導もいたしましたし、行政庁といたしましては事前に十分の措置をとってこの措置を発動したわけでございます。
  58. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それではちっとも私の質問したことがわからぬわけですが、結局、業者がこういう前提条件を出したという気持ちはわからぬことはないけれども、業者には十分話をしたからこんな前提条件というものは出す余地はないのだと、こういうふうに理解をしていいのですか。
  59. 内村良英

    内村政府委員 先生のお話しでは、融資措置では不十分であるというお話しがございましたけれども、融資措置をとりましたし、輸入の問題につきましても十分な措置をとっておりますので、私どもといたしましては事前に十分話をしてそういった措置をとっておりますから、これで十分だというふうに思っております。
  60. 井上泉

    ○井上(泉)委員 私は御承知のように高知県の者ですが、カツオマグロの船の関係の経営実態というものを余り承知していなかったわけでありますけれども、たとえば高知県で業者がたくさん存在する室戸市で市会議員の選挙が行われたわけですが、室戸というところは遠洋マグロの基地として、そういう漁業者で立っておる町ですので、勢い市政の中に遠洋マグロ業者の意見を反映さす必要があるということで相当数の市会議員が出ておったわけですけれども、とても不況で、そういうふうな市政の場に出ていって漁業者の立場を守るために発言したり、あるいはまた水産行政について市政の中で言うというような余裕がなくなったということで、ずいぶん辞退をしたというような詰も承知をしております。そして、同時に、経営的にも非常に不況だということを聞いていたのですが、ところが、この間の新聞で見ますと三億何十万もの大きな水揚げをしたというようなことが報道されておったのです。マグロの業者が大変景気が悪いと言っていたのが、三億何千万もの水揚げをした船が何隻もおったということでずいぶん羨望の念を起こさせたわけだが、これは一体事実かどうかということを関係者に聞きますと、金融機関の締めつけが非常に厳しいので、これはひとつ宣伝をせぬと困るというような意味でことさらに宣伝をしたものだ、と、こういう報告を私は聞いたわけでありますが、水産庁としては、このマグロ業者の実態というものをどの程度把握をしておるのか、この機会に聞かせていただきたいと思う。     〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕
  61. 内村良英

    内村政府委員 マグロがもうかるかもうからないかという話でございますけれども、昨年来の動向を見ておりますと、入港の時期によって経営の収支は非常に違うようでございます。船がたくさん入ってこない時期に船を入れた人は、魚価が上がりましてかなりの収益を上げた方もおられます。また、昨年の暮れのように非常にたくさん船か帰ってまいりますと、魚価が低落してみんな赤字だというようなことになっているわけでございます。  そこで、ただいま先生から高知の室戸の話がございましたが、現在マグロ業界の中で最も深刻な事態になっておるものの中で、室戸のマグロ業界もその一つでございます。したがいまして、私どもも十分事情を聴取いたしましたけれども、やはり、いろいろな問題があるようでございます。たとえば経営が非常にまずくて倒産してしまったという方もおられますが、特に、問題は、労務管理が非常に問題のようでございます。今日、マグロは収益も少ないし、さらに、長い間日本を離れて船に乗っていかなければならぬというようなこともございまして、なかなか労働力が集まりにくい状況になっております。したがいまして、無理をして船員を集めて出漁したら現場に行って働かない、そのために飛行機賃を使って船員の交代を何遍かやらなければならぬというような経営状況になって倒産したとか、いろいろなそれぞれのケースがございます。  しかし、いずれにいたしましても、全般的にマグロ業界の経営が非常に苦況に立っているということは先ほども申しましたけれども、私どももそういう認識は十分持っておりまして、これにつきましては適切な対策をとらなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  62. 井上泉

    ○井上(泉)委員 カツオマグロというものは、大衆魚として、一般家庭でマグロが口に入るものではないわけですけれども、このマグロ漁業が果たしておる日本経済の中における役割りを考えた場合には、このマグロ漁業というものを守っていかなければ日本経済の上においても大変なことではないかというふうにも考えられる。これが大衆魚ではないから、マグロなんかわれわれの口に入らぬから、われわれの口に入らないような魚をとるよりも入るような魚をとっておる漁業者の方に水産庁としても政策を志向したらいいじゃないかというふうな声もなきにしもあらずでありますけれども、遠洋マグロ漁業を取り除いた日本漁業日本水産業というものは成り立っていかぬじゃないかということを私自身考えるわけですが、これについての水産庁長官見解を承っておきたいと思います。
  63. 内村良英

    内村政府委員 私も、先生の御意見と全く同感でございます。  確かに、マグロは商品としては中高級魚と申しますか、なかなか庶民がふだんは食べられないもので、いいことがあったときに食べるというようなことになっているような面もございますけれどもわが国遠洋漁業におけるマグロ漁業の位置というものは非常に大きな位置を占めておりますし、これに関連する人々のことを考えますと、私どもといたしましては、マグロ漁業を維持していかなければならぬというふうな強い決心を持って考えておるわけでございます。
  64. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そこで、マグロ漁業に関することだけではなしに、日本水産業界が領海十二海里を早くから宣言するように言われておって、なかなかそうはならない。それから経済水域二百海里の問題は持ち越しされておるといっても、これも二百海里の情勢というものは必至の状態にあると思うわけです。そこで、日本水産業を国際社会の中で安定した位置づけをするためには、それぞれの国々との漁業協定というものが政府交渉によって速やかに結ばれなければならぬと私は思う。  その点からも、日中の漁業協定がなぜ今日まで締結されずに延び延びになっておるのかという点について、この機会に私は承っておきたいと思います。
  65. 内村良英

    内村政府委員 日中の漁業協定につきましては、昨年の五月、六月に北京で、それからことしの三、四月に東京におきまして交渉をやったわけでございますけれども、両者の考え方の基礎に非常に違いがございましてまとまらなくて、結局、また、今月に入りまして北京で交渉が再開され、六月二十二日に民間協定が失効いたしますので、それまでに何とか政府間協定をつくりたいということで、いま鋭意努力しているわけでございます。  そこで、どこに難点があるかと申しますと、御案内のように、民間協定で、中国側は黄海の軍事警戒ラインとか軍事作戦区域というようなことで、軍事上の目的で漁業を禁止しているような協定になっておるわけでございます。ところが、私どもといたしましては、たとえばソ連あるいはアメリカ等との漁業協定におきまして、漁業資源の理由におきましてはいろいろな措置をとってまいりましたし、漁業調整上いろいろな措置をとる。これは日韓なんかも漁業調整上の措置をとっておるわけでございますけれども、そういうことならわかりますけれども、軍事目的で漁業を排除するというのは国際法にもない理論でございまして、そこはちょっと認めがたいというところで、今日までその協定水域の問題をめぐってかなり時間をとっておるわけでございます。  そこで、今月に入りましての交渉では、立場の違いでやっておりましてもなかなからちが明きませんので共同規制措置を——これは民間協定にもいろいろな共同規制措置がございますので、その共同規制措置を話し合おうじゃないか、それがある程度進んだところでまた協定水域に話を戻して論議をしようじゃないかということで現在交渉を進めている段階でございます。
  66. 井上泉

    ○井上(泉)委員 私は、一日も早い政府間の協定の実現を要望するものであります。そして、ことしの三月来ずいぶん騒がれましたソ連漁船日本近海における無謀操業についてのソ連との交渉の過程の中で、新聞で承知をするところによると被害に対してはソ連は補償をするというようなことが載っておったけれども、そのソ連が補償をするというのは証拠がなければいけないというようなことで、なかなか条件がむずかしいということであります。  具体的にその補償を実施するには困難なようなことが聞かされるわけでありますが、このソ連の無謀操業によって受けた日本の漁民の被害と、それに対するソ連の補償の態度、そしてまたソ連の補償から漏れた者に対する日本政府としての考え方、さらにまたそういう近海における無謀操業を防除するためのソ連との交渉経過、これを承りまして私の質問を終わりたいと思います。
  67. 内村良英

    内村政府委員 まず、最初に、ソ連との間にそういった漁業紛争を避けるために操業協定をつくろうじゃないかということで、三月十七日から交渉に入りまして、最近妥結し、多分来週イシコフ漁業大臣日本に来ると思いますけれども、そこで調印をすることになっております。調印いたしましたら直ちに国会の批准をいただくということになると思います。  そこで、この協定ができますと、紛争処理につきましても、従来よりも問題の解決が容易になるという面が出てまいります。この問題につきましてはあくまで民事上の問題だということになっておりまして、政府は損害を向こう政府に通報はしてきたわけでございますけれども、実際の要求は民事上の問題になるわけでございます。したがいまして、具体的に申しますと、最後は裁判所で、ということになるわけでございますが、そんなことを言いましてもなかなか漁業者の場合にはできないということもございますので、その協定に基づきまして、紛争調停委員会東京とモスクワとに二つつくりまして、そこで具体的ケースについて事前に審査し、和解を調停するというようなことになりますので、従来よりも紛争の調停、損害の請求がかなりやりやすくなるという面が出てくるわけでございます。  しかも、その委員会ができますと過去二年のものにさかのぼってやることになりますので、ことしの北海道の問題あるいは昨年の前述の問題等もそこで議論されることになるわけでございます。  わが方は五年ということをずいぶん主張いたしまして、これが論議の対象でかなり時間がかかったわけでございますが、ソ連は、こういう損害賠償請求は民法上二年だということがございまして、どうしても二年ということでございますから、わが方もやむを得ず二年にしたわけでございますが、実質的にはこれによって相当カバーできるのではないかと思っております。  それから、その調停機関でも取り上げられない問題はどうするのかということでございますが、これにつきましては、今年の被害については、政府は、すでに、経営資金、生活資金について低利の融資をする、それから一億五千万円ぐらいの補助金を出して、たとえば被害を受けた人たちの漁場がそれによって非常に汚れている場合には清掃する、漁場復興をするというようなことをやり、また、将来の問題としては警報機をつくるというようなことについて援助をするということをやる。これはソ連から損害賠償の金が参りましても、それとは全然関係なしに政府としてそういう措置をとるということで、近く発表することになっております。
  68. 井上泉

    ○井上(泉)委員 終わります。
  69. 藤本孝雄

    ○藤本委員長代理 中川利三郎君。
  70. 中川利三郎

    中川(利)委員 ことしの三月二十八日の日韓カツオマグロ輸入についての当事国の合意議事録というか、合意書によりますと、「韓国産まぐろ類の対日水揚量の調整については、両国水産庁において、今後とも緊密に協議し、一九七五年五月に結論に達し得るよう最善の努力をするものとする。」ということが書かれていますね。これは両者でサインもしてあると思いますが、最善の努力をした五月の両国長官の会談が物別れになって話し合いがつかなかったということであります。しかも、六月にこれが延びて、その六月も、先ほどの長官の答弁によりますと自信があるとは言えないというお話しであるわけです。  二、三日前の日本水産経済新聞を見ますと、コラム欄に、漁政部長のお話しかどうか知りませんが、どうもこれは長官クラスでは話にならないんじゃないかというニュアンスの記事が出ておりましたが、最善の努力を尽くした五月会談ができなかったわけでありますけれども、もしも今度の六月会談でまた合意できなかった場合は一体どうするのか、この点についてお聞きしたいと思います。
  71. 内村良英

    内村政府委員 私どもといたしましては、本件の解決をいつまでも延ばすわけにはまいりませんので、六月中旬にはどうしても結論を出したいと思っております。  その場合に、現在のところ最善の努力をするということで、そこでまとまらない後にどうするかということは、その後において考えたいと思っております。
  72. 中川利三郎

    中川(利)委員 最善の努力をするといっても、五月会談でそれをやりましょうというように合意議事録にあるわけですね。最善の努力を尽くしてだめだったんだ。今度は六月だ。だから、そのときにもしだめならばどうするかということを聞いたのに対して、どこまでも最善の努力を尽くすんだじゃ答弁にならないじゃないですか。もう一回お聞きしたいと思います。
  73. 内村良英

    内村政府委員 本件は日韓漁業上の関係その他にもいろいろ関係のある重大な問題でございますので、その後においてどうするかということは、政府部内において大臣の御判断も仰がなければなりませんし、関係省庁とも相談しなければなりませんので、私自身ここでこうするということを申し上げるだけの用意がございません。
  74. 中川利三郎

    中川(利)委員 やはり、水産庁長官段階じゃだめなのかな。  ところで、お伺いしますが、この問題はいまに始まったことではないのです。昭和四十二年当時からずっと両国間で、特に日本漁業者の中で問題化して、韓国、沖繩、日本あるいは台湾、つまり、はえなわ漁業を含めた同じような漁法を使う漁業者の皆さん方がアジア懇談会をつくったりアジアマグロ会議などをやって、何とかこの問題を打開していこうということで寄り寄りがんばってきた経過があるわけですね。しかし、それもうまくいかなかった。  しかし、その反面、そうしていながらも水産庁に対して、こういう状態だから何とかやっていただきたい、政府の方でもひとつがんばっていただきたいということで要請を行ってきたわけですが、水産庁が見るべき手をほとんど打ってこなかったということですね。私はこれが最大の問題じゃないかと思うのですが、そう言いながら、その間ずっと、先ほどあなたからお答えがありましたように韓国からのマグロがどんどん入ってきて、いま大変な事態を迎えておるというのが現状じゃないかと思うのです。  この資料を見ましても、国内生産量も韓国からの輸入量も昭和四十五年を一〇〇といたしまして、韓国の方は四十六年が一一〇、四十七年が一八〇、四十八年が二四三、四十九年が三二三の指数になっているわけです。日本の国内生産量はどうかというと、まだ一〇五、六にしかいっていないんですね。しかも、あなたの先ほどのお答えでは、今度五十年度になれば六万トンベースになるんじゃないかというお話しであるわけですね。いま、この三二三%といいますか、三というこの指数が三万九千トンぐらいの量なんですね。そうするとこれは大変な状態なんです。このようにどんどんふえるのを見ながら見るべきほとんど手を打たなかった。ですから、日本漁業者は、いろいろな過去のそうした闘いなり要求のいきさつからいたしましても、全く輸入してはいけないということを言っているんじゃない。二万トンぐらいならば、影響があるけれどもわれわれも何とかこれを切り抜けてがんばっていくんだと言っているわけであります。  ところが、今回の五月会談において水産庁長官が先方に申し入れた量の規制の問題を見ますと、「我が国漁業経営に悪影響を及ぼさない程度に自主規制されたい。」という言い分なんですね。あなたは、日本側主張の(1)、(2)の、(2)の後段において、「我が国漁業経営に悪影響を及ぼさない程度に自主規制されたい。」ということを言っているのです。  したがって、私がお聞きしたいことは、「我が国の漁業経営に悪影響を及ぼさない程度に自主規制されたい。」という、その「程度」というのは一体何万トンなんですか。これをはっきりお知らせいただきたいと思うのです。
  75. 内村良英

    内村政府委員 先ほども御答弁申し上げましたけれども日本政府としてはこれだけの数量だという正式オファーは、向こう数字と余りにも隔たっておるものでございますから、向こう数字を大体聞き、向こう数字に対してコメントを述べるというところで今日まで終始してまいりまして、わが方から正式にこれだけの数字ということはまだ言っておりません。
  76. 中川利三郎

    中川(利)委員 だから私はそれを聞いているのですよ。漁民の方々は二万トンぐらいならば目をつぶると言っているのです。あなたは韓国にはわが国漁業経営に悪影響を及ぼさない程度ならばいいと言うけれども政府は、水産庁としてはどんな原案をお持ちになっておりますか。何万トンぐらいならば容認できるというふうにお考えになっているのか。話し合いでのその限度をどうお考えになっていますか。
  77. 内村良英

    内村政府委員 当然のことでございますが、私どもも、いろいろな角度から日本として要求すべき数字については鋭意検討はしております。しかし、これから六月にまたやるわけでございますので、ここで日本側数字を申し上げることだけは御容赦願いたいと思います。
  78. 中川利三郎

    中川(利)委員 日本側数字を言うことは御容赦願いたいということで、肝心なことは皆さんはいままでぼかしながらやってきた。要すれば、いままでの経過は、韓国側に時間かせぎをさせて、そしてどんどん実際の輸入量をふやしてきた。今回もまたそういうことで時間かせぎをするというか、その実績をどんどんつくらせて、今度はその実績によって相談していくというかっこうのものをあなた方は事実上やってきたわけでしょう。だから、参考までに言いますと、四十七年度あたりは韓国輸入数量は二万トンペースなんですね。四十八年度は二万九千トンペース、四十九年度は三万九千トンペースですね。どんどん実績をつくらせてきた。だから、余りかけ離れたものを向こうが言い出すというと——いま五万五千トンなんていうことを言い出しているでしょう。あなたのお話しでは、おそらく五十年度は六万トンなんて言い出すでしょう。そういうことになってきたのでは、向こう実績があるからこうだと主張されれば本当に日本の漁民の立場に立って言い返すことができないような状態をあなた方はみずからがつくってきたということになるのではありませんか。いかがですか。
  79. 内村良英

    内村政府委員 先ほど御指摘がございましたように、確かに、私どもは五月中に結論を出したいという覚書を韓国と交わしたわけでございます。しかしながら、これは国際交渉でございますので、私どもとしては何とか粘りに粘りまして話をつけることが日本水産業のためにもいいのじゃないかということで、二週間ぐらい、ややおくれますけれども、六月の中旬までには何とか話をつけたいというふうに考えておるところでございまして、韓国側も、何とか政府ベースでこの話を片づけましょうということを向こう政府が言っておりますので、私どもは、そういった韓国政府の誠意を信用いたしまして、何とか六月中旬にはまとめたいと思っておるわけでございます。
  80. 中川利三郎

    中川(利)委員 私の聞いた問題の核心にはお答えになっていないわけですね。日本側は業者の要求は二万トンと言っておるのですね。そうすると、そういうものにはとうていこたえることができないのだ、もっと韓国側に歩み寄らなければ話し合いにならないのだ、ということですね。実績から見てこういうことですね。
  81. 内村良英

    内村政府委員 確かに、一−四月ですでに一万九千何百トンか入っておりますので、二万トンということになりますと、もうほとんどこれから余地がないということは御指摘のとおりでございます。しかしながら、数字につきましては今後交渉の事項でございますので御容赦願いたいと思います。
  82. 中川利三郎

    中川(利)委員 外国との交渉だから、それなりにむずかしい点があるということはわかります。  ところで、各国の外国漁船に対する取り扱い等の状況というのは、資料がありますが、ソ連、韓国、アメリカ、メキシコ、ペルー、ノルウェーというような国々はすべて漁船による水揚げを禁止する、あるいは入港を認めないという、こういう状況なんですね。その他、自国漁船以外陸揚げを認めていない国が、ベルギー、アイスランド、イタリア、オランダ、トルコ、ユーゴスラビア等で、これらいろいろな国がほとんど、日本のように韓国漁船などの外国漁船をどんどん水揚げさせたりあるいは漁港に入れたりするような、そういうでたらめなことはやっておちないわけですね。日本ではそういうことを全く野放しにしてきた。そのことが今日のような状況を許したわけでありますが、世界各国がそういうふうに規制しているのに、日本だけはなぜ野放しにしてきたのか、この点についてお答えいただきたいということと、あわせて、たとえば去年の五月に水産業振興に関する衆議院、参議院の両院の決議を行っておるのですが、特に参議院農林水産委員会決議なんか見ますと、「現行の漁業許可制度の盲点をついて行われる、いわゆる便宜置籍船の急増とそれによる輸入の増大が、わが国漁業秩序及び魚価形成に重大な影響を及ぼすにいたっている現状にかんがみ、調整措置を講ずる等適切な対策を樹立すること。」ということを言っておるのですね。つまり、去年の五月時点にこの問題は重大な問題であったということですね。あなた方が動いたのはいつですか。ことしになってからでしょう。  こういう日本の漁民の立場を全く考えないということが今回のそういう事態につながったのだと考えますけれども、この点についてはいかがですか。
  83. 内村良英

    内村政府委員 まず、第一に、諸外国が漁船による水揚げを禁止しているのに、日本はそういう措置をとるのがなぜおくれたのかということでございますけれども、これは、日本漁業の置かれていた位置といいますか、問題が外国とは違っていたということが一つあるのではないかと思います。すなわち、イギリスはやっていないようでございますけれども、ヨーロッパの多くの国は漁船による水揚げ禁止の措置をとっております。これは、ああいうような狭いところで長年漁船によるところの相互の出たり入ったりがあったというようなところから出たのではないかと思います。アメリカの場合にはニコルソン法というのがたしか前世紀の法律でございますが、これはやはりメキシコとか、そういう関係でできたのではないかと思います。わが国の場合は、戦前も戦後もずっと外国漁船日本水揚げするというようなことは余り想定されなかったわけでございます。そこで、四十年代から韓国マグロ船日本水揚げをするようになり、さらにソ連が日本近海における漁業をどんどん拡大いたしまして、日本の港の使用を求めてきたというようなことがございまして、昭和四十二年にいまの法律ができたわけでございます。その場合に、四十二年でございますから、要するに戦後ですが、ガット等の原則がすでに国際貿易の中で定着しておりますので、そういった場合に余り貿易に抵触するということになりますとガットの非貿易の障害として取り上げられるということもございまして、特に、水揚げだけを目的として漁船日本水揚げする場合には積み出し港の証明書があればいいというような制度になったわけでございますが、そういったことになる背景には、日本の場合には、外国漁船による脅威と申しますか、そういうおそれが余りなかったというような過去の歴史的事実がそこにあるのではないかと思います。したがいまして、法律ができたのが四十二年ということになっておるわけでございます。  それから、国会決議について何をやってきたのかということでございますが、確かに衆議院、参議院委員会において決議がございましたし、私どもはそれを十分検討したわけでございます。そこで、一番望ましいことは数量調整をしてしまうということで、すなわち、現在、昭和三十六年以来マグロは自由化物資になっておりますけれども、これを割り当て品目に戻すことができれば一番いいわけでございます。そこで、そういう点も検討したわけでございますが、自由化しているものを非自由化に戻すということは非常にむずかしいという貿易上の問題がございます。  それから、先ほども申しましたけれども、ひとつ関税を上げてみようかということで関税の問題もいろいろ検討いたしましたが、マグロというものは本来輸出産業であったわけでございますから、これも当時余り心配せずにガットの譲許品目にしているわけでございます。したがいまして、これを上げるということになりますと相当の代償を払わなければならぬ。私どもの計算では一千三百億ぐらいの代償を払わなければならぬということになりますけれども農林省の物資からそれだけのものをとても出すことができない。  それから、貿易上の輸入貿易管理令で何とかできないかとか、いろいろ考えたわけでございますけれども、なかなか現実的にはいい手だてがないわけであります。  そこで、先ほどからも申し上げておりますけれども、本件のバックには日本の商社がいるのだから商社に自粛を求めようということで、あの決議があった以後、昨年の夏あたりから商社の代表を呼びましてるる自粛を求めたわけでございますが、昨年じゅうはなかなか事態が進展しなかったというところへ、さらに今年に入りまして韓国からの輸入が急増してきたということが起こってきたわけでございますので、私どもといたしましては、何とかこの際その数量を押さえ込むという意味で、先ほどからも問題になっておりますように、外国人漁業規制法の改正というものはそういった場合に非常に有力なる手だてになる、バックになるということは事実でございますけれども日本業界立場、さらに日韓漁業関係全体を考えた場合には、何とかして政府ベースで自主規制で話をつけたいというふうに強く考えておるわけでございます。
  84. 中川利三郎

    中川(利)委員 あなたは、日本のみが漁船による勝手な水揚げあるいは寄港を許したことについて、日本の歴史的な漁業の位置づけなんかの問題を御説明されましたが、あなた方は昭和四十二年代から韓国マグロ輸入日本の商社が介在しておるということはわかっておる。これも歴史的にわかっておることなんだ。それなのにそういう状況には目をつぶって、どんどんふやして、勝手にさせておる。そして、それが入ってくれば日本の業者がどんなに苦しむかということもわかっていらっしゃるのです。皆さんが騒いでいるのですからね。それに対して何も手を打ってこなかったでしょう。そして、一方の単なる別の次元の歴史的事実をあげつらっていらっしゃるということです。同じ歴史的次元の問題として挙げるならば、あの当時から問題にされておって、その裏には商社がいて、そしてそれが入ってくれば日本の業者にどれだけ被害を与えるかということはわかっておるはずですよ。しかし、その点については一言もおっしゃらない。そこのところが非常に遺憾だと私は思うのです。  もう一つは、日本国会決議があって、それに従ってあれこれ動いたというお話しでありますけれども、実際にあなた方が具体的に動いたのは、たとえばことしの初頭に清水市でカツオマグロ業者が大会を開いたり、東京では日鰹連が主催して実力行使も辞さずなんというようなことですごい大会を開いたりして、そういうことで重い腰をやっと上げざるを得なかったというのが実態じゃないですか。それまでは何だかんだ言いながら、あなた方は、相手があることだから、韓国を刺激するからなんというようなことで、待っていてくれというようなことでずらしてきた。業者はもうどうにもならないから法規制をしてくれということで立ち上がったわけです。そういうことが歴史的な正しい経過説明であるというふうに私は思いますが、いかがですか。
  85. 内村良英

    内村政府委員 韓国マグロ輸入が四十年代に入って始まってきたことは御指摘のとおりでございます。しかしながら、四十八年ぐらいまでは日本漁獲の十分の一以下ということで、四十九年になりましても、実は、私ども、産地価格の動きを詳細にとりまして、万一韓国輸入が国内市場に非常に大きな影響を与えているというようなことがあれば、場合によったら緊急関税をかけるというようなことも通産省に話してみようと思って数字等をずっと分析していったわけでございますけれども韓国のものが、これは日本の商社のやり方もそうなのかもしれませんけれども、値段が高いと入ってくるということになっておるわけでございます。したがいまして、韓国マグロが国内価格の低迷時において値段を下げているという数字がどうしても出てこないわけでございます。確かに、マグロが国内価格上昇時において上がることの足を引っ張るということは出てきます。そのことは後で、場合によりましては私どもがやりましたグラフその他を資料として全部提出してもよろしゅうございますけれども、上がるのを抑えるというようなファクターで出てまいりまして、緊急関税等がなかなかできないというような状況になっていたわけでございます。  したがいまして、先ほどから申しましたけれども、商社に話をする、それから現に私自身昨年の秋に韓国の前の水産庁長と東京会議をやりましてこの問題も出し、向こうはもうこれ以上漁獲努力をしないとか言い、それから民間ベースで話をしてくれということを私の方で申しまして、向こうもそうしましようということで話は尽きませんでしたけれども、ことしの一月民間ベースでの話も行われたというようなことで、私なりにそれなりに努力はしてきたわけでございますけれども、いずれにいたしましても、輸入の急増ということはことしになって始まったということでございます。
  86. 中川利三郎

    中川(利)委員 あなたは、値段が高いときに韓国からマグロが入ってくるのだ、だから韓国マグロ輸入自体が日本の魚価をたたいているという証拠はないのだと言うが、そういうことをマグロ漁業者が聞いたならばどれだけ怒り心頭に発するだろうかと私は思います。  御承知のとおり、ほとんどの船主は一杯船主あるいはせいぜい二杯船主ですね。零細中小企業です。しかも、一航海約十ヵ月、一航海してきますと大体四千万円の油代ぐらいは赤字になると言っているのです。だから、そこへ着いたときの魚価がどうなるかというと、そばに韓国の船がおるだけで魚価ががたがたと下がっていくというのです。業者の皆さんから見れば、何ぽか魚価が回復してきた、やれやれと思っているときにどっと入ってくるわけです。だから、そういうことで韓国を免罪するということは商社を免罪するということにつながると思うのです。いまの言葉は非常に重大なことだと私は思います。  同時に、それなら商社の問題について聞くわけですけれども韓国問題だと言うけれども、一方ではこれは商社の問題でもあるのですね。必殺仕掛人はまさに商社だということは明らかなわけでありますが、そういうものを野放しにするならば日本漁業秩序は全く守っていかれないことは当然です。こういうことを予測していながらふえたのはことしだけだというような言い方で、前々から問題になっているのにどんどんふえる実績だけを皆さん方がつくらせてきたということなんですね。結果として見るならばそういうことです。  そこで、私はお聞きしたいのだが、先ほど地中海マグロの話がありまして、これに対しては重大な決意をせざるを得ない、問題はウェーバー条項の発動ということだと思うのですけれども、あなたは先ほど来ガットの精神云々と言うておりますが、ガットの精神から見たって、免責条項といいますか緊急関税の特約があるわけですね。日本業界をこれほど苦しめ、また、そのおそれがある場合——おそれが事実として出ておるわけですから、苦しめてもいるわけですが、関税及び貿易に関する一般協定を見ますと、第十九条には、「締約国は、事情の予見されなかった発展の結果及び自国がこの協定に基いて負う義務の効果により、産品が、自国の領域内における同種の産品又は直接的競争産品の国内生産者に重大な損害を与え又は与えるおそれがあるような増加した数量で、及びそのような条件で、自国の領域内に輸入されているときは、その産品について、前記の損害を防止し又は救済するために必要な限度及び期間において、その義務の全部若しくは一部を停止し、又はその譲許を撤回し、若しくは修正することができる。」とある。これは釈迦に説法みたいなことで、皆さんは十分御承知なわけでありますが、こういうことをなぜ十分考えないのかということです。あなたはガットがあると言うが、ガットも全然動かないもの、固定したものとして理解していらっしゃる。しかし、関税協定の十九条を見ても、そのおそれがある場合さえ加えておるんでしょう。ですから、黒海のマグロの問題だって、あなたは重大な決意をすると言っても、黒海のマグロだかどこのマグロだか、印でもついておるのですか。そういうものはない。船を積みかえしてきたらわからないわけですね。だから、そういう点の根本的なことにおいてあなた方は何か逃げておるのじゃないかということ、この点一つ。  それから、魚だけではありませんで、繊維だって、ノリだって、日本の中小零細業者は韓国からの逆輸入で、商社が向こうへ投資して安い労賃でつくらしたものがどんどん入ってくるということの中で、いま深刻な打撃を受けておるということは当然なんですね。したがって、こういう中小零細業者にかかわるもので当然逆輸入が予測されるものに対しては、これらの商社の海外投資を規制するというかっこうのものを通産省なり大蔵省にあなた方は問題提起をしたことが一度でもあるかということです。  同時に、先ほど来漁業協定あるいは政府間における有償、無償の援助の話がありましたけれども、場合によればこういう漁業の援助を断ち切ってもやるぞというような強い気構えを一回でも見せたことがありますか。この重大な問題の認識について、あなたは先ほど来いろいろとわかっておるとおっしゃるけれども、わかっていないのではないですか。恐らくここにも漁業者が来ておると思いますが、これは非常に残念なわけであります。  以上の三点についてとりあえずお聞きしたいと思います。
  87. 内村良英

    内村政府委員 私が申し上げました価格の動向と、それに関連してガットの十九条のお話しが出ましたけれども、実は、その十九条のことを考えて私たちは価格の分析を一生懸命やったわけなんであります。今日の十九条の運営は、どこかの第三国の産品がその国の産業に非常に重大な損害を与えたという場合には、大量に入ってきたために価格が暴落するとか、そういう場合に緊急措置がとれることになっておるわけでございます。したがいまして、そういう条件を満たしておるのではないかと思って実は一生懸命やったわけでございます。何とか緊急関税か何かを発動したいという趣旨で、十九条のことを考えればこそ実はそういうことをやったわけでございます。したがって、その十九条に基づくいろいろな措置が残念ながらとれなかったというところで、商社の方へ主としていろいろなことを要請してきたというのが現実でございます。  それから、商社がこのことのバックにいるのは確かに事実でございます。そこで、商社のこういった漁業活動の規制ということについて法律ができれば一番いいと私は思いますけれども、これはなかなかいろいろとむずかしい問題があるのではないかと思います。たとえば一例を申しますと、今日、大商社のアメリカの支店等は現地法人になっておるようでございますが、その現地法人が現地でいろいろなことをやってしまう場合には日本法律はもう及ばないというような問題もございまして、そういった問題等いろいろな問題があると思います。したがいまして、今後そういうことは大いに研究しなければならないと思いますけれども、私どもが多少研究したところではいろいろな困難な問題があるという感じがしておるわけでございます。
  88. 中川利三郎

    中川(利)委員 経済援助の打ち切りも、相手の出方次第で場合によればどうだということも聞いたわけですが、これには御返事がなかったわけです。  いずれにいたしましても、あなた方は何だかんだと言って、企業を呼びつけて注意したと言っているが、しかし、企業にも秘密のあることでありまして、ということが後から必ずつくのですね。そういうかっこうで今日業界の秩序を破壊し、漁民を苦しめている企業者、多国籍的な、海賊キッドみたいな無法者のならず者のようなやり方をしている企業に対して、明らかにそれが元凶であることが指摘できても、ただ注意したとか、ただどうしたというだけの話で、企業の秘密があるからとかなんということで引っ込んでしまっている。ですから、先ほど言いましたように、たとえば海外投資を研究したけれどもどうしたという後の話は出てこなかったわけですが、それを規制していくということについて水産庁が率先して各省に働きかけていくということについての決意というものは何もなくて、ただ企業秘密があるからということで、そこで全部ストップしてしまうということでは、今後日本カツオマグロ漁業をどう発展させていったらいいのかわからなくなる。それでもなおかつめどがあるのかどうか、私はお聞きしたいと思うのです。
  89. 内村良英

    内村政府委員 一年以上の繰り延べ融資と申しますか、そういう問題につきましては外国為替管理上許可を得なければならぬとか、いろいろなことがございます。そこで、大蔵省とも相談いたしまして、そういった面につきましては今後も厳重に商社のいろいろな動きをフォローしまして、適切な措置をそのときそのときにとっていくべきだと思いますけれども、やはり、問題は、私どもの権限というものが非常に制限されておりまして、なかなか及ばないというのが残念ながら現状でございます。
  90. 中川利三郎

    中川(利)委員 あなた方に全部やれというのではない。日本漁業者のことを思うならそういうことを大蔵省にでも関係省庁にでもどんどん働きかける指導的な役割りを果たすべきではないかということを私は申し上げているのであって、あなた方の権限が余りないということは、合意するために最大の努力をすると約束したことが合意できないことを見てもわかります。  そこで、時間の関係もありますので次をお伺いしますが、あなたは先ほど、問題は量の規制をすることだと言うた。そうすると、議員立法でありますが、外国人漁業規制法律が今回出ることになったわけでありますが、話を聞きますと、この第一案にはカツオマグロ、カジキという言葉があったそうでありますが、これが外されているわけですね。これは政令事項にゆだねられることになったわけです。量の規制が最大の眼目であるということであれば、議員立法で外されたけれども、それはとんでもない話だ。カツオマグロを指定して法律事項として中に挿入したらどうか。そうなれば、先ほどあなたがおっしゃったように、これは事実上輸入制限にも等しい打撃を向こうに与えるというような話もありましたが、相当の効果があると思うのです。そのことは一言もなくて、ただ政令事項にゆだねるということである。私は議員立法に対してけちをつけるつもりは一つもありませんけれども、量の輸入制限が最大の眼目であるならばそういう進言があってしかるべきではないかと思いますけれども、それもおやりにならないわけですね。  同時に、これに関連して聞くことは、政令事項にゆだねたということですね。魚種についてはいつでも出せるようにしておくということでありますけれども、政令を出す基準は一体何なのかということですね。韓国の側の出方を見てこれを出すか出さないか決めるという話ですね。そうしますと、どういう場合にカツオマグロということを政令で出すのか、その基準は一体どうなっておるのか、具体的にひとつ例示していただきたいということと、法律はつくった、しかし相手方次第で政令は出るのだということでありますが、これは時間的なタイムリミットは一体どうなるのか。百年も二百年もという、そんなことはないでしょうが、相手次第、相手次第ということで何年もこのままずるずる延ばしていくということは、法律をつくったたてまえ上もいかがなものであろうかと私は思うわけでありますので、この二点について改めてお聞きしたいと思うのです。
  91. 内村良英

    内村政府委員 まず、「特定漁獲物等」というお言葉が議員立法の中にあるようでございますが、それを政令で定める場合の基準は何かということについての法律的な考え方を御説明申し上げます。(「政府提案じゃないのに役人に聞くのはおかしいじゃないか」「いや、質問だから答えなさい」と呼ぶ者あり)  そうなった場合の法律解釈がどうなるかという考え方について私がひそかに勉強した結果を申し上げますと、「特定漁獲物等」を政令で定める場合の基準は、法律改正になりますと第四条の二になるのだろうと思うのでございますが、その場合、外国漁船による本邦への陸揚げ等によってわが国漁業の正常な秩序の維持に支障を生ずるということが恐らく条文で出てくることになると思いますので、それがどうかということでございますけれども、そこで、その解釈といたしましては、法第四条第二項に現在すでに同様の規定がございまして、従来次のように解釈してきたわけでございますので、御参考までにそれを申し上げてみたいと思います。  すなわち、第一に、わが国漁業者間で資源保護、漁獲努力の適正な配分のために行われている各種の制限を維持することが、それに服しない外国漁船の出現によって困難となる事態ということでございます。  第二は、外国漁船日本漁船との競合を通じて、全体として漁獲努力の配分、組み合わせに変動を生じ、ある限度を越えれば、わが国漁業者の間での配分の秩序の根本的な修正を余儀なくされる等の事態が起こった場合ということでございます。  しかしながら、従来の法第四条の規定は「寄港によって」と規定されているわけでございますが、改正されます場合には、恐らくこれが「陸揚げによって」というようなことになるのではないかと思います。これもまだわかりませんけれども、そうなるのではないかと思います。そうなりました場合、直接漁業活動に関係しない行為、いわば一種の経済行為によって漁業秩序に支障を生ずる場合と規定されているので、外国漁船日本漁船とが競合関係にある漁業漁獲物の陸揚げ等により当該漁業経営に影響を生じ、ある限度を越えればわが国の当該漁業経営全体が危殆に瀕する事態、こういった場合も適用できる、そのような改正があればそういうふうに解釈されるのではないかというふうに思うわけであります。
  92. 中川利三郎

    中川(利)委員 ひそかにあなたが勉強した成果をいま伺ったわけでありますが、それはそれとして、時間も参りましたので最後に伺いますが、先ほどもお話しがありましたが、深刻な漁業者の危機に対して、たとえばオイルショックの場合の融資は具体的に言いますと半年据え置きの二年償還なんですね。三分五厘で二千万円が最高限度だということでありますが、先ほど言いましたように一航海十ヵ月かかる。半年据え置きだとまだ航海して帰ってこないわけで、それじゃ少し現実に見合わないじゃないか。しかも、帰ってくるときは物すごい借金を抱えて帰ってこなければならないという状況なんです。水産は米や畜産と違って、同じたん白資源をつくると言いながらも見るべきものは金融ぐらいのものですよ。あとは余りないのです。そういう点で、この八月に償還期限が迫っているというわけでありますが、ほかの漁業の魚種の方々も非常に困っているのでしょうけれども、一番いま深刻に困っているのはこのカツオマグロ漁業の方々だと思うのですね。  したがって、この償還期限の延期という問題についていろいろ御要望があるようでありますけれども、最低そのくらいのことは検討するに値するのじゃなかろうかと思うのです。ほかの業種もあるからだめだというようなかたいことは恐らく言わないと思いますけれども、そこら辺のことを御検討いただけるかどうか、このことを聞いて私の質問を終わらせていただきます。
  93. 内村良英

    内村政府委員 先ほども御答弁申し上げましたけれども漁業経営は非常に困難な状況になっております。したがいまして、昨年オイルショックの対策としてやりました経営安定資金あるいはPCBの際の資金等の償還につきましては、漁業経営の現実に照らして必要な措置をとる必要があればとらなければならぬということで、水産庁におきましても四月から経営対策室をつくりましていろいろ経営状況を調べております。  そこで、マグロが非常に苦しいということは、よくわかっておりますし、したがいまして、現実に照らして必要な措置はとらなければならぬということで対策を鋭意検討中でございます。
  94. 中川利三郎

    中川(利)委員 終わります。
  95. 藤本孝雄

    ○藤本委員長代理 瀬野君。
  96. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 外国人漁業規制問題について水産庁長官質問いたします。  まず、最初に、去る四十九年の四月と五月に、水産業振興に関する決議を衆参両院農林水産委員会で行っておりますが、この決議に基づいて水産庁はどういう対策をとってこられたか、概略御説明をいただきたいと思います。  と申しますのも、御承知のように、本日当委員会が開かれたのも、かねがね外国人の漁業規制問題が大変問題になっておりまして、各党一致の上で今回委員長提案による法律を出すということでいま検討して、本日の午後もまたさらに検討を進めることになっておりますが、そういったことは今後各党検討の上で進めてまいるわけでありますけれども、今後のソウルにおける漁業交渉もかなり厳しいものがあることは予想されますし、さらに、また、今後の水産庁の姿勢にもかかわる問題であるし、大いに猛省を促したいという意味で、今回の立法を前にいろいろと水産庁の姿勢を正すという意味からお尋ねをしてまいりたい、と、かように思っておりますので、各委員からもいろいろと質問がございましたが、若干重複をあえて行いつつ、順序を立てて概略質問を申し上げたいと思っております。  そういう意味で、まず最初に、衆参両院農林水産委員会決議に基づくその後の対策をどうとってきたか、そのことからまずお答えをいただきたい。
  97. 内村良英

    内村政府委員 先ほどから申し上げておりますように、決議がございました後に私どもといたしましてはいろいろな手段についての検討をしたわけでございます。ところが、マグロは昭和三十六年から自由化されておりますので、なかなかこれを割り当てに戻すことがむずかしい。それから、さらに、関税等につきましてもガットでバインドしているというような関係もございますのでむずかしい。緊急関税もなかなかそれを適用できるような情勢になっていないというようなことがあったわけでございます。  ところが、一方、国内マグロ漁業者の経営ということがだんだん問題になってまいりましたので、昨年の決議採決後直ちに関係商社に対しまして、これはバックに商社がいるということはわかっておりますので、輸入の自粛を要望いたしました。また、昨年九月の日韓貿易会議及び十二月の日韓水産庁長官の非公式会談でも、韓国側に対して対日輸出の自粛要請を行ったわけでございます。しかしながら、その後輸入が増大する傾向は続いておりましたので、昨年の十二月だったと思いますが、関係商社の協議団である日本水産輸入協会に対しまして、マグロ類についての適正な輸入と国内需給の調整等を検討させるためにマグロ部会を設けろというようなことも要請したわけでございます。さらに、向こう長官と話しましたときに、これは最初民間で話し合ってみたらどうかということがございましたので、その結果、本年一月にマグロの協会の間で民間の会談をやったわけでございますが、これもうまくいかなかったというようなところから、三月に兵藤漁政部長韓国に派遣いたしまして、自主規制を求めるということをとってまいりまして、私どもといたしましては、昨年五月の農水委員会決議につきましては、極力その目的を達成するような努力はしたわけでございますが、残念ながらまだ完全に努力が実ってないということは非力でございまして申しわけないと思っておりますけれども、一生懸命努力をしておりまして、何とか六月中旬までにはこの問題を円満に政府間で片づけたいということを希望しているわけでございます。
  98. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 努力が実っていないということでありますけれども、その最大のネックは何でございますか。
  99. 内村良英

    内村政府委員 最大のネックと申しますか、非常にむずかしいところは、現実に比べて韓国漁獲努力が非常に大きくなり過ぎているというところにございます。したがいまして、韓国側が私どもに申しましたのは、何らかの自主規制措置をとるためには係船しているものについて金融措置をとったり、場合によったら船を外国に売るとかいうようなこともしなければならないということで、現にわが方の領事からの報告によりますと、すでに百隻以上のものが釜山に係船になっているようでございますが、そういったものについての向こうの国内措置がなかなかできないというところに非常に問題があるようでございます。
  100. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、諸外国における外国漁船に対する取り扱い等の状況を答えていただきたいのですが、特に、ソ連、韓国を含めて主要国に限ってで結構でございますから、簡潔にお答えいただきたい。
  101. 内村良英

    内村政府委員 諸外国における外国漁船漁獲物の陸揚げ禁止等の事例につきましては、カナダとアメリカは一七九三年の法律でやっているわけでございますけれども、これは漁獲物の漁船による直接水揚げを禁止しております。メキシコも同じようなことをやっておりますし、ペルーは入港を原則として認めない。それから、ノルウェーはやはり港湾内における漁獲物の転載、陸揚げを禁止しております。その他、自国の漁船のほかは陸揚げを認めないものにベルギー、アイスランド、イタリア、オランダ、トルコ、ユーゴスラビア等がございますし、特定の協定のある外国船を除いて陸揚げを認めないというものがデンマーク、フランス、それから条件を付して陸揚げを認めるものがポルトガル、スペイン、スウェーデン、アイルランドというようなことで、ほとんど大部分の国が何らかの規制措置をとっております。  私ども承知しておるところでは、外国漁船の直接陸揚げを制限していない国はギリシア、イギリス等若干の国ということでございます。ただし、開発途上国のことはよくわかりません。
  102. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ソ連、韓国、アメリカ、メキシコなど世界の主要国でも、いま答弁がございましたように、各国とも漁船の入港禁止ないし許可制等何らかの措置をとっておるわけであります。わが国においてはいまだ法的規制措置は何らとられていないということで、今回いろいろ問題になっているわけでございます。しかも、現在、カツオマグロ、カジキというものが韓国を初めとする外国漁船による陸揚げ等の無秩序な輸入によって国内生産業者を危機に陥れているという実情を考えたときに、水産庁として、漁業秩序維持の見地からも、外国人の漁業規制に関する立法措置ということを当然早くから考えておかなければならぬ問題ではなかったか、と、かように私は思うわけです。  この措置が政府としてとられなかったことはまことに怠慢であると私は思いますが、その辺の反省はどう考えておられますか。
  103. 内村良英

    内村政府委員 昨年までの韓国マグロ輸出、わが方から言えばこれは輸入でございますが、これがわが国漁業秩序の維持にどういう影響を与えたかということは議論のあるところだと思います。数量的にはまだ十分の一ぐらいでございましたし、そういった事態になっていなかったと私どもは思いますが、今年になりまして、世界的な不況の原因のアメリカの需要の停滞等が非常にいろいろとございまして、日本に対する輸出がものすごく伸びてきておりまして、先ほど申しましたけれども、ほっておけば六万トンあるいはそれを超えてしまうような状況になりつつあるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、この際何とかその数量を押えたいということでいま努力しているわけでございます。  さらに、なぜ外国人漁業規制法を改正して政府がやらなかったのかということでございますが、私どもといたしましては、やはり、数量調整ということの方がいろいろな漁業者の経営を考えた場合に大事じゃないかというふうな——たとえば韓国が北洋でサケ・マスの漁業をやるとか、あるいはソ連が日本の漁場を基地にしてやるというようなことはいまの外国人規制法で十分それを取り締まることができるわけでございますから、この韓国マグロの問題はやはり貿易の問題が大きい問題でございますので、数量規制が大事じゃないかというふうな判断に立っているわけでございます。
  104. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、今回議員立法で外国漁船に関する規制をするということになった場合には、韓国自身も緊急避難の場合のほかはわが国漁船の入港は認めておらぬわけでありますので、わが国に対していろいろ言うということについては、自分の国でさえも認めていないんだから中傷するようなことは当然言えないのじゃないかと思います。早く言えば、大きなことは言えないのじゃないかと思いますけれども、その辺についてはどういうふうに水産庁長官としては考えておられますか。
  105. 内村良英

    内村政府委員 その点につきましては先生の御指摘のとおりだと思いますけれども、やはり、何と言いましても、韓国マグロがどの程度入ってくるかということによりましてわが国の魚価なり何なりに対する影響が違ってくるわけでございますから、わが国マグロ経営に大きな損失を与えない範囲に数量を抑えるということが大事じゃないかと思うわけでございます。
  106. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 水産庁長官にあえてお聞きしておきますけれども、先ほど、今回の外国漁船の立法措置に当たって、水産庁がいままで立法措置がとれなかった最大のネックは韓国漁獲高がふえてきたことだというようなことをおっしゃいましたが、われわれが承知しているところでは、言わずと知れた自民党の親韓派のいろいろな圧力によってこれが今日までなかなかできなかったのだということが言われているわけです。その点はあなたも公開の席ではなかなか言えぬかもしれぬけれども、一言私は物を申しておきたいんだが、どういうふうにあなたは弁解されるか、お答えをいただきたい。
  107. 内村良英

    内村政府委員 その点につきましては私はちょっと存じませんので、意見を申し上げるわけにはいきません。しかし、いずれにいたしましても、日韓漁業関係というものは、四十年に日韓漁業条約ができましてから非常にスムーズにいっておりまして、何らトラブルもなく推移しておりますので、この円満な漁業関係を維持することはやはり大事じゃないかというふうに思っております。
  108. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、五月二十三日に東京で行われた内村水産庁長官韓国水産庁長との韓国の対日マグロ輸出数量規制をまとめるという会談が、双方の自主規制数量に余りにも隔たりがあって物別れに終わっておる。これは長官から先ほど答弁があったとおりであります。われわれもそのように認識しておりますけれども、そこで、来月、すなわち六月中旬に再びソウルで再協議の予定となっておりますが、日本からだれを派遣されるか、その点お考えのほどをお聞かせいただきたい。
  109. 内村良英

    内村政府委員 大臣の御判断にまつべきことだと思います。
  110. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大臣の御判断であろうと思うけれども、私はあえて申し上げるが、水産庁長官みずから出向いてもらいたい、と、私はかように実は強く要望しておくわけです。政務次官のいろいろなお話しもあるようでありますけれども、特に、事前の根回しとともに、この六月の会談を成功させるために長官みずから進んで行ってもらいたい、と、かように私は要望しておきますが、事前の根回し等については十分対策をとっておられるかどうか、お答えをいただきたい。
  111. 内村良英

    内村政府委員 今度の交渉は事実上最後の交渉にしなければなりませんし、最後の交渉の決意で臨むべきだと思います。したがいまして、先ほどそれがうまくいかなかった場合にはどうするかというお話しがございましたけれども、それも十分考えながら今度の交渉には臨まなければならぬと思っております。したがいまして、トップレベルの方が行かれる前に、水産庁といたしましては必要な事前交渉はもちろんいたします。  それから、大臣の御命令でおまえ行けということがあれば、私はもう喜んで参ります。
  112. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 先ほどからの水産庁長官の答弁を聞いていると、長官みずからが責任を持って行くというふうに当然受けとめられるニュアンスの発言もあったから私はあえてお聞きしたわけですが、長官は、六月の会談こそはいわば最後の交渉であるというふうに、重要な会談であるということはるるおっしゃっておるので、ぜひ、あなたが責任者としてみずから進んで農林大臣にお願いして行くというくらいの決意で行ってもらいたい、と、私はかように強くお願いをする次第であります。  そこで、今回の六月会談に臨むに当たって、自主規制に応ずる可能性ということは十分考えられるか。その辺はやってみなければわからぬと言われればそれまでですけれども、その決意で臨んでもらうということは当然であります。  ただ、今度の交渉に当たって将来のために私がいろいろと心配することがあるわけですけれども日本韓国に対するところのマグロ規制や法改正の動きということがそれまでにははっきりしてくるわけでございますので、韓国側日韓漁業協定の廃棄などの報復措置をちらつかせるというようなことも聞き及んでおります。これは解決を誤れば日韓関係をこじらす種にもなりかねないということで憂慮するわけですけれども政府当局はこういう韓国の動きについても十分根回しをすると同時に、どう対処するかということについても十分検討しておられると思うが、その点再度お尋ねしたい。
  113. 内村良英

    内村政府委員 今日まで三回韓国と話し合ったわけでございますが、韓国政府側は報復措置等は全然申しません。  ただ、私の方に韓国の新聞その他いろいろな情報が入ってくるわけでございますが、韓国業界の方は決議をいたしまして、もしも何らかの輸入制限措置がとられた場合には報復措置をとるべきであるということを政府に要請しているということは新聞記事等でわかっておりますけれども韓国政府は、この問題を政府間で何とか片づけたいという熱意におきましては余り違っていないわけでございまして、いままでのところ報復措置等は言ったことはございません。  私ども日本水産行政を担当する者といたしましては、いろいろな場合も考えなければなりませんので、いろいろ検討はいたしましたが、その場合にまず一番問題になりますのは、恐らく日本の違反船の拿捕ということを強力にやってくるだろうというようなところから始まりまして、以西あるいは底びきその他小さな漁業についてかなりの影響が出てくる可能性はございますけれども韓国側は、政府としてそんなことを言ったことは一遍もございませんし、私どももまたそういうことを向こうに聞いたことはございません。
  114. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 六月のソウルにおける会談はもう目前に迫っておるので、水産庁長官を初め当局は十分認識を新たにして臨んでもらいたいという意味で、あえて私は次のことを読み上げて叱咤激励しておきたいし、と同時に、大手商社の問題について触れたいと思うが、日鰹連では去る三月二十八日には組織を挙げて全国から約一千三百名が参集し、「外国漁船によるカツオマグロ陸揚げ阻止全国かつお・まぐろ漁業者総決起大会」が東京のオリンピック記念青少年総合センターにおいて開かれたわけでありますが、この総決起大会において、「外国人漁業規制に関する法律の一部改正について——われわれのカツオマグロ漁業を守り抜くため、この法律を一部改正し、左記を早急に法制化するよう要求するとともに、いよいよ団結を強化し、目的達成のため邁進することを期す」という決議が行われたことは御承知のとおりです。そして、「一、外国漁船によるわが国へのカツオマグロ、カジキ類の陸上げを禁止すること。  一、運搬船による輸入陸揚げ港は、漁港漁港区以外とすること。」ということをうたっておりまして、また、大会スローガンとしては、「一、外国漁船によるカツオマグロ陸揚げ絶対反対!  二、外国人漁業規制に関する法律改正貫徹! 三、漁港に外国漁船を入れるな! 四、日本漁民のための水産庁に戻れ! 五、漁業秩序を乱す商社をたたけ! 六、諸悪の根源・商社をたたけ! 七、政府よ、商社の横暴を許すな! 八、日本人の食べるカツオマグロは我々にまかせよ! 九、カツオマグロ漁業を危機から救え!」といった九項目のことが掲げられておりますが、私は、このスローガンにほとんどのことが要約されているというように思うのです。  続いて、代々木から日比谷公園までデモ行進が行われて、当局にも要請が行われたわけでございますが、こういったことを踏まえて考えたときに、水産庁長官からも先ほど若干答弁がありましたが、カツオマグロ漁業にとって、特に昨年から本年にかけてかつてない危機を招来している背景には、外国カツオマグロ漁船わが国の大手商社から業務提携の形式のもとに膨大な資金の供給を受けて——これは七百億とか八百億とか、あるいはまた水産庁長官は先ほど四百五十億とかとちょっと言われたけれども、これはもう公然の事実として、累計七百五十億というふうにも言われております。これを受けてその漁船勢力を増強し、漁業活動を急激に増大させて、日本の港湾を基地化し、わが国カツオマグロ漁船と競合したということが背景にあるわけですが、これはわが国漁業制度を無視し、その法網をくぐって行ったところのいわゆる大手商社の商策と、これに呼応追随した外国漁船、すなわち主として韓国漁業者でありますが、この姿勢にあることは言うまでもありません。  そこで、私はお尋ねしたいのでありますが、韓国の最大のお得意である米国のかん詰め業界が売れ行き不振のため輸入を抑えたことから、本来なら米国に行くはずだった分まで日本にかん詰めが回ってきたということが言われておるわけであります。こういったことが主な原因になっておりますが、まず米国業界の今後の見通しについてどういうふうに当局は見ておられるか。外国のことであるからわからぬと言われればそれまでかもしれませんが、どういうふうに水産庁は把握しておられるか、その点を簡潔にお答え願いたい。
  115. 内村良英

    内村政府委員 今日、世界の漁業におきまして、アメリカ市場の動向というものは大きな問題になっておるわけでございます。たとえばアジアではマグロの問題、それからヨーロッパでは底魚の問題で、アメリカが買わなくなったためにいろいろな問題を起こしておるということで、漁業関係者はアメリカの市場というものを非常に注目しております。私どももいろいろな角度から情報をとっておりますけれども、どうも最近こういう現象がアメリカで起こっているようであります。  マグロかん詰めのかわりに牛肉が安くなって、マグロかん詰めが牛肉に食われているというようなことが起こっているようでございますので、その辺の相対的な価格関係がアメリカ市場でどうなるかということでございますが、いずれにいたしましても、下期になれば若干回復するのではないか、ただ、それが四十八年なり四十九年の水準まで戻るかどうかということには若干問題があるのではないか、というふうに見ております。
  116. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それと、先ほど申しましたように、政府において関係大手商社に対して、再三その自粛を促しておられますけれども、見るべき成果が上がっていないというのは事実でございます。そこで、仮に幾ら法的規制をしたところで、この商社対策ができなければ、いろいろな圧力がかかって結局実効が望めない、と、かようにも私は思うわけでございますが、大手商社に対する対策についてはどういうふうに受けとめておられますか、お答えいただきたい。
  117. 内村良英

    内村政府委員 先ほど申しましたけれども、昨年は、商社は、自分たちの商業上の問題だということで、私どもの自粛要請に対して非常に非協力と申しますか、余り協力してこなかったわけでございます。ところが、最近、国会等におきまして、外国人漁業規制法の改正が行われるだろうとか、いろいろと大きな問題になってまいりましたので、そういうことが新聞に出たということもかなりいろいろな影響があったと私は思いますが、その結果、最近では、特に五月の交渉の前に商社の代表を、大体副社長、専務クラスを呼んで話しましたときに、向こうから、とにかく自主規制ができて韓国側の方針で係船するものについては貸付金の償還を延期する措置をとりますということを言ったわけでございます。したがいまして、五月の長官同士の交渉のときにそれを韓国側に言いましたら、その点は非常に韓国側は驚いたような顔をしていまして、そこまで協力してくれるのかというような顔をいたしましたので、今度の六月の交渉のときにはその辺のところがいろいろ影響が出てくるのではないかと私は期待しております。  そのことの背景には、最近の国会のこの動きと申しますか、外国人漁業規制法の改正の問題というものが大きな問題になってきたことが一つの大きな力だったというふうに感じておりますので、こういったものをいろいろ使わせていただいて話を円満に解決するようにしたいと思っております。
  118. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 商社介入の実態なんかについては、先ほどから答弁を聞いておりまして、政府がどの程度つかんでいるかということについてもお尋ねしたかったのですが、水産庁長官は実際には余り具体的な内容に触れておられないようであります。  そういうことはさておいて、さらに若干時間がございますのでお尋ねしてまいりますが、今回議員立法で外国人漁業規制に関する法律の立法化を図るということになってまいりますと、今後私が心配していることが一つあるわけです。この措置を行えば、韓国において現在冷凍運搬船を二、三隻しか持っていないということでありますので、現況からは一時の規制策にはなるだろうけれども、根本的な恒久対策になるかどうかということがいろいろ将来問題として懸念をされております。と申しますのも、冷凍運搬船を二、三隻しか持たないということになりますと、結局運搬船に切りかえるということになれば、漁船を運搬船に切りかえるというふうなことになってまいりますと、実際、韓国漁船もこれは相当数運搬船に切りかえざるを得ない。こうなれば事実上輸入禁止にならざるを得ないんじゃないかというような受けとめ方をしているようであります。そういったことから、韓国側の反発は相当強いものが起きてくると思うわけです。そこでまたさらに日本商社が再び資金の援助をやるということになれば、もとのもくあみになってしまうということになりかねない。そういったことから、この点の歯どめというか、効果をどういうふうに水産庁としては考えておられるか。この点が大きな問題になるわけですが、その点の見解を承っておきたいのであります。
  119. 内村良英

    内村政府委員 実は、その問題は非常に重大な問題だと思います。すなわち、漁船による水揚げが全面的に禁止された場合において、運搬船は認められるわけでございますので、韓国側が運搬船に切りかえてくる。極端な場合におきまして、漁船からいろいろな漁具等をはずしまして運搬船に仕立てて、釜山と清水の間をピストン輸送するというようなことになりますと非常に数量がふえるのではないかというような心配がある。こういう説も国内に一部あるわけでございます。そこで、私は実は韓国水産庁長にはっきり聞いてみたわけですが、そういうことが起こるのかねと聞きましたら、それはとてもできないだろうと言う。そこで、韓国には現在冷凍船の運搬船が二隻しかないので、これはもう事実上輸入禁止だということを非常に強く言っておりました。しかし、そう言うとあるいはちょっと語弊があるかもしれませんけれども日本の商社のことでございますから何をするかわからぬという面もないわけではないと思います。そういうことを私が言ったということになるとちょっと問題かと思いますけれども、そういう心配も漁業者の立場からいくとあるわけでございます。  そこで、そういったことも考えながら事態の推移を見て問題に対処していかなければならないが、その場合に、韓国の、向こうの庁長の話をいろいろ聞きますと、ああいった国柄だけに、やはり行政庁が相当な権力を持っているようでございますので、なるべく韓国政府とよく話し合って問題を片づけていくという以外に、いまのところ、いろいろな貿易その他に関する条約等から見ますとやり方がないんじゃないかということで、その線をこの際にぜひはっきりつくりたいというふうに考えているわけでございます。これもまだ私の個人的な考えでございますけれども、必要があれば日韓マグロ行政協定というようなものも場合によったらやりまして、そこで輸入数量も決めたり、あるいは漁獲努力の調整、漁場の調整というようなことも将来できれば一番いいんじゃないかというふうに思っておりますけれども、まだそこまで向こう側にもちろん話しておりませんし、中でも十分な検討はしておりませんけれども、いずれにいたしましても、そういった関係をつくっていかないとこれはなかなかむずかしい問題があるという感じを強く持っております。
  120. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 水産庁長官から日韓マグロ行政協定ということをいま申されましたが、六月のソウルの会談は重要な会談になってまいりますし、現在日本の日鰹連所属の各漁業者は大変注目をして見ているわけでございますので、十分腹を決めて、水産庁長官みずからが乗り込んで対策に取り組んでいただきたいと思うわけです。これは今後の努力をさらに注目していきたいと思います。  そこで、時間があとわずかになってまいりましたので、通告しておりました問題四点を簡単にはしょってお尋ねしますので、お答えをいただきたい。  国内のマグロカツオ漁業の構造改善をどうするかという問題でありますが、外国漁船による甚大な影響を受けるまでもなく、わが国カツオマグロ漁業者は、第三次国連海洋法会議動向に見られるように、経済水域設定等に楽観を許さないものがあるわけです。  国内においても、水銀問題に引き続き一昨年発生した石油危機を契機に激動している経済情勢の波を受け、その再生産と漁業経済維持のために、関係者は、漁業コストの軽減に合わせ、生産物の調整保管、産地直販、消費拡大、宣伝等の魚価対策等にあらゆる努力をこれまで続けてきたところでありますけれども、すでに倒産や休廃業者を見る等、きわめて深刻な事態に陥っておるわけでございます。     〔藤本委員長代理退席、委員長着席〕  政府としては、魚価対策と生産漁業コストの軽減がこれから問題でありますが、これに対してぜひ対策を講じていただきたいということが一点です。  御承知のように、すでに倒産をし、操業停止をしておるものが五十六隻、廃業が五十三隻、倒産寸前が百五十九隻、係船二十四隻、合計二百九十二隻が数えられております。一年に一回転の操業でありますけれども、すなわち十ヵ月から十一ヵ月ですけれども、航海一隻について三千万円からの赤字を出している。ちょうど油が三千万ないし四千万かかりますので、その分だけ赤字という経営状況になっております。そういったことで、カツオマグロ漁業漁業の中核企業でありますので、この点の対策を十分とってもらわなければいかぬし、減船、すなわち船を減らすということがいまいろいろと考えられておるが、これはまだ水産庁の耳には入っておらぬかもしれませんけれども、そういったことで深刻な事態に陥っているということを踏まえてお答えいただきたい。  なお、漁業コストの中で燃料油の問題が深刻になっております。オイルショック前キロ当たり一万から一万二千円ぐらいであったものが、約三倍の三万から三万二千円に高騰しております。ゆえに、三百トンの漁船が一航海で一千ないし千二、三百キロ使うので、先ほど申しましたように、ちょうど三千万から四千万の油代となり、この分が赤字ということになっております。ところが、イギリス、フランス、スペイン等においては油に対する助成措置をとっておりまして、特にイギリスでは四十億の助成が出されておると言いますが、わが国ではこの油に対する助成をどのように考えておるか、これまた簡潔にお答えいただきたい。  最後に、日鰹連ではこうした事態に対するコスト軽減の措置としまして、学者を中心に、速度をいまの三割減ないし半減して船型を変えるという省資源型の研究を始めて、本当に血みどろの検討が進められておるのは事実であります。それに対して、こういう船の設計、建造等に対する政府の助成がほしい、または政府がこういう船を試験的につくってリースして、貸し与えてもらいたいという要望があるわけでありますが、これに対して政府はどう考えておられるか。  時間が参りましたので、簡潔に以上をお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  121. 内村良英

    内村政府委員 ただいま先生から御質問のございました事項は、すべて今後のわが国漁業にとって重大問題ばかりでございます。  マグロについての構造改善の問題でございますが、現在、五カ年計画で、日鰹連と全漁連が中心になりましていろいろとマグロの構造改善事業が行われております。そこで、これを進めていくと同時に、何といいましても日本経済が高度成長から安定成長に変わったというようないろいろな問題がございますので、そういう経済基調の変化の中で今後日本漁業の構造改善をどう進めていくかということについて、私どもといたしましては、現在の構造改善事業計画自体を見直していかなければならぬ問題があるのじゃないかと思っていろいろ検討しております。  それから、最近コストが非常に上がった反面、魚価が低迷し、経営が苦しい、大体燃油の値上がり分くらいが赤字であるということのお話しがございましたが、この点につきましては、私ども漁業別の経営分析におきましても大体同じような結論を得ているわけでございます。そこで、ただいまのお話しがございましたように、オイルショック後ヨーロッパの国々は燃油につきまして補助金を出しておりまして、イギリスの場合も船の大きさによって違いますけれども、たしか値上がり分の三分の二ぐらい出しまして、財政負担四十億というお話しがございましたけれども、私どもの方の調査でも大体そんなものが出ておるわけでございます。  そこで、漁業の場合には農産物、畜産物と違いまして、価格が低迷しておりましてもなかなか価格支持ができないわけでございます。そこで、調整保管等を中心にいたしましていろいろな施策を講じておりますけれども、畜産物、農産物に比べればまだそれが非常にウェートが小さいということもございまして、私もヨーロッパのそういった措置は大いに参考になるのではないかとは思っておりますけれども、問題は、日本の場合には非常に大きな財政負担がかかるわけでございます。と申しますのは、イギリスが四十億で済みますのはそれだけ漁業が小さいわけでございますが、日本の場合には大体五百万キロリットル以上の油を使っておりますから、仮に二万円値上がりしたとして、その二分の一を補助するとしても五百億かかるわけでございます。現在の水産庁の予算は御案内のように一千百億ちょっとでございますけれども、そのうちの七百億近くは漁港建設でございます。そうなりますと、水産庁の予算を全部出してもそれがなかなかできないというようなことで、非常にむずかしい問題が事務的にはございます。ただ、ヨーロッパの国でもいろいろと現在の漁業経営が直面している困難な問題についてはそういったこともやっておりますので、私どももそういった何らかの施策は必要じゃないかと思いますけれども、直ちにそれが燃油の補給金に結びつくかと申しますと、現実的にはいろいろ困難な問題があるということになっておるわけでございます。  それから、省エネルギー型の船をつくらなければならぬ、これを助成すべきじゃないかというお話しがございましたが、これは全く同感でございます。現在、私ども漁船研究室等を中心にいたしましてそういった研究もやっております。それが詰まりまして、必要があればある程度の助成をするということになると思いますけれども、話を聞いてみますと、船型もやはり大事でございますが、要はそれを動かす人の心構えに大分関係があるようでございます。漁場に行くのに非常に急いで行かなければならぬ、どうしても油がたくさん要る、その場合にある程度ゆっくり行けば油が二割ぐらい少なくて済むとか、いろいろな話があるようでございますが、いずれにいたしましても、これからの経費節減ということを考えました場合には、なるべく油等も少なくて同じ効率の上がるような船型というものを考えていかなければなりませんので、そういったことにつきましても必要があれば助成措置を将来講じなければならぬということで、私どもも、経済基調が変わってきたこの時代において、今後の漁業、しかも海洋法の問題等もございまして非常にむずかしい時期になっておりますので、そういった問題全部を含めまして、制度の問題も含めてまじめに考えなければならないというふうに考えておりまして、いろいろ内部で検討を続けているところでございます。
  122. 澁谷直藏

  123. 小宮武喜

    小宮委員 わが国カツオマグロ漁業は、一昨年の石油ショック以来、燃料費の大幅値上がりと漁具並びに諸資材の高騰、加えて生産者魚価の低迷によって非常に経営が悪化してまいりました。そのために、石油ショック以降ことしの二月一日までにすでに三十隻が倒産をして、そして六百六十名の漁船員がすでに失業しております。また、破算寸前のものが現在でも百四十隻くらいありまして、もしこれが倒産するということになりますと、この乗組員の三千八十名近くの方々がさらに失業を余儀なくされてまいります。  このような経営の不振による雇用不安に対して水産庁はどのように対処するのか、まず、所見を伺いたいと思います。
  124. 内村良英

    内村政府委員 マグロ業界あるいは日本水産業は、業種によって多少違いますけれども、ただいま先生から御指摘のあったような事態になっておるわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、昨年油が上がりましたときに経営安定資金を五百二十億出したわけでございますけれども、その償還が始まってくるということで、業種によりましては償還に非常に困難な面もございますので、とりあえずそういった金融措置について何らかの措置をとらなければならないんじゃないかと思いますし、それから、今日の漁業経営の危機という問題には、燃油が非常に上がって、コストが上がった反面価格が低迷しているということもございますので、そういった面について何らかの対策が必要になると同時に、将来の日本漁業ということを考えますと、従来やってまいりました構造改善政策という計画をこの際見直しまして、抜本的な対策も必要になってくるのではないかというふうに私どもとしては考えているわけでございます。  これらにつきましては非常に重大な問題でございますので、先ほども申しましたけれども水産庁に経営対策室と申しますか、制度検討対策室と申しますか、そういうものを設けまして、実は四月から鋭意検討しておりまして、各業種の経営状態につきましては事態を大体把握したわけでございますが、ただいま先生が御指摘のような状況になっていることにつきましては、私どもといたしましても十分事態を承知しているわけでございます。
  125. 小宮武喜

    小宮委員 経営悪化の原因は、いま長官も言われたように、また私からも申し上げましたけれども、それ以外に、先ほどからいろいろ論議されておるように、生産者魚価が非常に低迷をしておるという問題もやはり大きな原因になっております。この生産者魚価が低迷しておるということの影響は、外国船によるカツオマグロ、カジキ類の輸入が年々非常に増加をしておるということにも大きな原因があるわけでありまして、ちなみに現在の輸入量を見ましても、カツオマグロ、カジキの輸入量が昭和四十五年が二万九千五百十二トンで、それが昭和四十九年で五万五千二百四十二トンにふえておるというような大きな問題があります。そのことが今回この法律案が提案されている一つの背景になったと思いますけれども、この改正案が成立した場合に、外国からのカツオマグロ等輸入量にどのような変化をもたらすのか、輸入量がどれだけ減るのか、その点、この法律改正の問題と現在の輸入量の問題との関連をお聞きしたいと思うのです。
  126. 内村良英

    内村政府委員 この法律——これはこれからの話でございまして、私がそういうことを申していいかどうかわかりませんけれども、仮に議員立法が行われまして、私どもが仄聞しているような改正が通った場合、そこでマグロを政令の指定品目にしたという事態を考えますと、その場合には、私が聞いているところでは、韓国側は運搬船が二隻しかないので、ほとんど輸入禁止に近い影響を受けるということを向こう側は言っております。  ただ、その場合に、なお運搬船による輸入が引き続き認められるわけでございますから、どの程度入ってくるかということにつきましては、わが国の関係商社のビヘービアと申しますか、行動と申しますか、その人たちがどういうような動きをするかによっても影響が違ってくると思いますが、その辺のところは正確にはちょっとわかりません。しかし、韓国側輸入禁止と同じくらいの効果があるというふうに言っております。  そこで私どもといたしましては、先ほどからもるる申し上げておりますけれども韓国とは漁業マグロ以外にもいろいろな関係を持っておりますし、しかも、長い間、十何年かかって日韓漁業協定ができて以来非常に円満な関係を持っておりますので、韓国側漁業上のトラブルは余り起こさない形で問題を処理したいと思っております。その場合におきましても、もちろん私ども日本水産行政を担当しているわけでございますから、わが国マグロ業界立場に立って問題の交渉に当たるのは当然でございますけれども水産業全体の問題等も考えながら、何とかして政府ベースでこの問題を片づけたい。さっきから同じことをるる申し上げておりますけれども、そういう精神で事の処理に当たりたいと思っております。
  127. 小宮武喜

    小宮委員 いまの答弁の中にもありましたが、冷凍運搬船の問題ですが、われわれが考えても、外国漁船という名称を使った場合に冷凍運搬船は漁船の範疇に入るのかどうかという問題もあるわけです。先ほどの質問の中で長官の答弁を聞いていると、これは今回の法律改正に伴うところの外国漁船の範疇に入らないのではないかというような印象を私は受けたものですから改めて確認するわけですが、この点はいかがですか。  現行法律の第二条の四項に、「この法律において「外国漁船」とは、日本船舶以外の船舶であって、次の各号の一に該当するものをいう。」というふうにあって、その一号がいわゆる「漁ろう設備を有する船舶」であって、二号に、「前号に掲げる船舶のほか、漁業の用に供され、又は漁場から漁獲物等を運搬している船舶」というようにはっきり定義が書いてあるわけですけれども、そうなった場合に、運搬船というものも、たとえば漁場から真っすぐに魚を持ってくるかどうかは別として、ここの法律にうたわれておる文章からいけば外国漁船の範疇に入ってこの法律の適用を受けるのだというふうに考えるのですが、その点はどうですか。これは大事なことですから……。
  128. 内村良英

    内村政府委員 この点は法律解釈上非常にむずかしい問題があることは御指摘のとおりでございます。  現行法でも、漁場から漁獲物等を運搬している船舶は漁船ということになっております。したがいまして、普通の運搬船が漁場で漁獲物を積み取りまして持ってくる場合には、それは漁船になるわけでございます。ところが、一般の港からこっちの港に持ってくる場合には、これは漁船にならない。そうすると、同じ船であって、ある場合には漁船であり、ある場合には漁船ではないじゃないかという問題が起こってくるわけでございます。  したがいまして、たとえば貿易の問題につきましていろいろな手続がほかにございまして、輸出業者がつくるインボイスの問題だとかいろいろなことがございますが、そこで、そういったものを見ながら、これは漁船であるかどうかということを判定しなければならぬという問題はございますけれども、やはり、この法律では、港から港へ持ってくる船は運搬船であって漁船ではないという解釈になるのではないかと思います。
  129. 小宮武喜

    小宮委員 私が懸念するところはそこなんですよ。現行の法律でも、実際ここでうたわれておる条文どおりに施行されていないという事実があるのです。したがって、この法律改正しても、先ほどからいろいろな商社の問題が出てまいりましたけれども、そういった商社の連中はその法律の裏をまたくぐって従来どおりにまだぼろもうけをしようという商魂はたくましいわけですから、この点ははっきりとしておかないと、たとえ法律をつくっても、また法律の裏をくぐって、今度はそういうような漁場からじゃなくて、一応韓国なら韓国漁港に持っていって、向こうから今度は運搬船で持ってくるというような抜け道を考えるのではないかと思う。  したがって、この法律がもし成立した場合には全面禁止に等しいような効果があるのだというようなことを韓国側は言われたと先ほど言っておりますけれども、実際に日本の商社あたりが介入しておるとこういうような問題は法律の裏をくぐってやられるという懸念があるから、そうなれば、法律ができても日本カツオマグロ業界は依然として経営不振に陥っていくということが心配されるのでこの点を私はちょっと確認したわけですが、この運搬船の問題だけではなくて、そういうようにもうけよう、もうけようとする連中は、こういうような運搬船以外の船でまた日本にどんどん持ってくるということも考えられるわけですから、その点は今後の問題としてわれわれが十分監視をしていかなければいかぬと思います。  それはそれとして、先ほど申し上げましたように、現行の法律でも条文化されておりながらも実際はなかなか守られておらないという実態をわれわれも承知しておりますので、そういうような立場から、私は、次に、今度は具体的な法律案の内容について質問します。  現行法の外国人漁業規制に関する法律の第四条には、「外国漁船を本邦の港に寄港させようとする場合には、」原則として「農林大臣の許可を受けなければならない。」ということになっております。ただ、例外的に許可を必要としない場合として三つの場合が挙げられているわけですが、その一つは海難を避ける等の緊急避難の場合で、二つ目は、積み出し国の政府機関により発行された書類を添付してある漁獲物等の本邦への陸揚げまたは他の船舶への転載のみを目的とする場合ですが、この「のみ」をよう覚えとってください。そして、三つ目は、最後のところが「政令で定めるもの」となっておるのです。ところが、外国漁船日本に寄港した場合に、水揚げをしてから次の出漁に備えて、食糧だとか、あるいはえさだとか——いわゆる餌料ですが、そのほかに漁具だとか、そういうものの仕込みだとかあるいはちょっとした修繕を日本でやるというような現実が出ているわけです。そうしますと、ただここで法律上何々「のみ」ということになっておっても、現実はそういうような行為が行われておる。食糧とか水とかいうようなものは別としても、漁具を日本で仕込んでみたり、あるいは船の修理までやるということがこの法律の第四条に言うところの何々「のみを目的として」ということに該当するかどうかということなんです。こういったことが現実にやられておるわけです。だから、この規定を法律どおりに条文解釈をして運用を厳格にすれば、こういった寄港に対しては農林大臣の許可を必要とするということになってまいると私は思うのですが、結局、外国漁船による陸揚げが、いま言う目的を持って陸揚げだけするのだということで農林大臣の許可から除外されておりますね。そうしますと、現実に農林大臣の許可を得ずして日本に外国漁船が来て漁獲物を陸揚げしておるのではないかということが常識になっておるのです。  したがって、そういうふうに農林大臣の許可を受ける必要があるにもかかわらず、農林大臣の許可を得ずしてそういった水揚げがされておるというような現状を御承知かどうかということと、もし承知しておるとすれば、年間どのくらいの水揚げがされておるのかということを、わかっておれば過去三ヵ年間の数量と件数について御答弁を願いたい。
  130. 内村良英

    内村政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、韓国漁船日本陸揚げし、同時に仕込みをするという場合には許可を要するわけでございます。その許可申請は相当出てきております。それについて水産庁は許可をしておるわけでございますけれども、それ以外に水揚げだけを目的にして、許可を得ずして——四条の第一項の第二号のケースでございますが、許可を得ずして水揚げできる、それが仕込みなんかもやっておるのではないか、食糧の補給とか、ちょっと船員が休養するぐらいならいいけれども、それ以上のことをやっておるのではないかということでございますが、海上保安庁がこの取り締まりに当たるわけでございますけれども、それを非常に大々的にやっておると申しますか、範囲を越えたようなことを相当やっておるというような情報は私どもとしては別に得ておりません。  それから、四条の第一項第二号のケースがどのくらいあるかということにつきましては、まことに残念でございますが、数字的なものはございません。
  131. 小宮武喜

    小宮委員 時間もございませんから急ぎますけれども、現実にやられているが、ただ水産庁はそれを承知していないということです。だから、そういうような資料もないはずですが、しかし、現実にやられておるのです。  それから、もう一つ伺いますが、たとえば第四条第二項には、「農林大臣は、」「外国漁船による漁業活動が助長され、わが国漁業の正常な秩序の維持に支障を生ずるおそれがあると認められるとき」には許可をしなくてもよいという規定になっておりますが、この規定の運用は具体的にどういうふうな場合に行うのか、その点、例を挙げて言ってください。
  132. 内村良英

    内村政府委員 不許可にし得る場合はどういうことかということでございますが、これは個々の具体的なケースに応じて判断する必要があるわけでございますが、典型的なものを申し上げますと、わが国漁業者が服している規制、たとえば禁漁区において操業しあるいは操業するおそれがあるなど、この規定と抵触した操業を行うことが考えられる漁船などは完全に不許可の対象になるわけであります。  たとえば現在、地中海で、先ほどからもお話しが出ましたけれどもわが国マグロ漁業はこれを禁漁にしております。そこで、韓国漁船が五月二十一日から六月末までの間に地中海に入って、それを日本水揚げのために持ってくるというようなことになれば、これは当然不許可にする。たとえば仕込みをしようなんという場合も不許可にするということになるわけでございまして、そういうようなことが典型的な場合でございます。
  133. 小宮武喜

    小宮委員 それでは、外国漁船日本寄港への不許可の事例は現在までどれくらいあるのか、あったとすればその理由について説明願いたい。  続けてお尋ねいたしますが、施行規則第二条によれば、寄港許可に当たっての申請書の記載事項が定められておりますが、そこで、四十七年から四十九年までの三ヵ年における許可申請についての、国籍別、漁船数漁獲物等の品名、数量を本邦の港別に説明してください。
  134. 内村良英

    内村政府委員 不許可にした件数はあるかということでございますけれども、一件ございます。ソ連の漁船を不許可にした事例があります。  それから、許可件数の国別漁船数でございますが、四十七年について申しますと、韓国が二百十四件、パナマが三十七件、インドネシアがゼロ、台湾が一、四十八年が韓国が二百三十一件、パナマが百五十二件、インドネシアが六件、台湾が十件、四十九年が韓国が三百五十件、パナマが三百五件、インドネシアが二十七件、台湾が十八件、こういうことになっております。  それから、港別のその隻数がどうなっているかということでございますけれども、主要港でございます三崎、焼津清水について申しますと、四十七年に三崎が三十三件、焼津が三十二件、清水が百十五件、それから四十八年に三崎が三十四件、焼津が四十四件、清水が百七十三件、四十九年は三崎が十九件、焼津が五十二件、清水が二百八十二件、こういうことになっております。
  135. 小宮武喜

    小宮委員 水産庁は許可に当たって盲判ばかり押しておるから、具体的には承知していないのですよ。しかし、事例はあちらこちらにあるんですよ。きょうはもう時間がありませんからこれでやめますけれども、改めてまたこの問題で長官とやり合いたいと思います。  これで質問を終わります。
  136. 澁谷直藏

    澁谷委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時四十八分散会