○米内山
委員 これはあなたのように高いところにいる人にはわからぬ。われわれのように谷底にいる者は一部始終覚えています。しかし、きょうはそれを指摘する時間がありませんから、機会があれば申し上げます。
そういうことで、
農政の民主化というものは何か、それから
農業の
振興というもの、国の
政策の効率を発揮させるためのものは何かというと、
農民がその気にならなければできないということなんです。あなた方だけがいかに力んだって、肝心の主人公たる
農民が、まただまされる、農林省のやることと反対のことをやった方が得だと言っているという実例がたくさんあり過ぎるのですね。だから、
農政の上でも信を取り戻すということは、三木さんが言うだけのことじゃなくて、これが
農民をふるい立たせる方法です。さっきも申し上げたが、戦争前の一番苦しいときに石黒先生が自力更生運動というものを起こしました。これは農林省だけではできないので、農林省の人をたくさんそこへ持っていって、財団法人か何かの農村更生協会というものをつくってやったことがある。私が去年中国の大秦というところへ行ったら、向こうの旗印は自力更生なんだ。自力更生ならばわが国の方はもう三十何年前にやっているからおれの方が先輩だが、おれの方の
農業はさっぱりだめだと言ったら、おたくの方はずるく更生した、自力じゃない、ずるい更生じゃないかという冗談話が出たが、それくらいいまの
農民は
補助金が本当に効率にできないような仕組みになっているから、この点を行政のベースでよく点検してみる必要があります。
それから重大な問題が一つあるから聞いておくが、
食糧の
需給目標というものはインチキだと私は思うのです。これはあなた方の単なる数字合わせだと思うのです。しかも、これを国会に
説明して、一億
国民にその結果を及ぼすということは重大な問題です。六十年
目標のこの
需給数字を見ますと、どこから
考えても、私から見るとこれは単純な数字合わせで、
国民をごまかすための書類だ。紙や数字は
食糧にならぬのです。食い物でなければ食い物になりませんよ。その中でうそをつくことの名人ばかりが、上手に細工することの名人ばかりが農林省にいるのだが、この一点をひとつ解明してみましょう。
先ほども公明党の
委員さんがおっしゃっていましたが、水産問題なんです。これはどういうことなんですか。四十七年度の
国内生産が一千三十七万六千トン、六十年になって一千百九十五万三千トン、そうして年率で何ぼだか伸びるという計算なんだが、そうあればいいという、そうありたいというような
考えでなしに、冷静にやればこういう数字は出てきません。海洋法の問題もあるけれども、地球上の水産資源というものはもう限界に達していて、クジラなどのようなものはむしろ自然保護動物にしなければならぬという国際世論もあるし、こういう中で、遠洋漁業、特にその中の重要な北洋の問題というものはきわめて不確定な要素が多く、しかもわれわれにとって安心できないような要素ばかり多いはずです。決して楽観はできないはずと思う。
そこで、
大臣、この問題の論議は後に回しますが、いまの日本を取り巻いている
食糧情勢というものをどうごらんになるかということです。日本がいま
食糧に対してこの
程度のことでお茶を濁そうとするのは、私は大きな誤りだとは言わないが、それには前提があると思うのです。非常に厳しい前提があります。第一は
世界じゅうに異常気象が起こらないということ。単にこれはカナダとかアメリカなど産出国だけじゃないのです。ソ連とかヨーロッパのような
経済先進国にその現象が起きれば同じですよ。七二年と同じです。こういう自然的な安全が十年間保障されるという前提。それから、穀物
価格が安定するということは、ストックがどれだけふえていくかということなんです。そういう前提。それから、いわゆる第三
世界を中心とした
世界の今後の動向というものに対してどうかということ。特に、
世界の人類の三十七分の一の日本人が
世界の十分の一の
食糧輸入をしているという状態で、日本では豚が太るが、インドやバングラデシュでは人間が飢餓状態であるということだが、今後十年間このままで見通せるかどうかという前提もある。いろいろな数字以外の
情勢を見るならば、きわめて厳しい前提が想定どおりにいっての話なんです。そのどこかが狂うと大変なんです。その上に、農林省みずからのいわゆる楽観ムードというか、数字合わせというか、ここで魚が百万トン狂うと、これを陸上で求めようとすると
牛肉が何トン要るか、肉牛にして何頭になるか、牧草地は何ぼになるか、購入飼料は何トンになるかということを
考えると、魚だけの百万トンの見当違いは日本の現状の能力では解決困難です。そうすると、
国民の栄養が低下するだけじゃないのです。日本人というものはいまどういう時代になっているか。欲しがりません勝つまでは、と言う
国民は一人もいませんよ。不足だといえば買いあさる。値は暴騰します。トイレペーパーでさえあの状態だ。ですから、
食糧に対してはきわめて余裕を持った対策を立てて、
消費者の面からも信頼を得るのでなければ、これは綱渡りよりも危ない
食糧政策だと私は思う。
〔藤本
委員長代理退席、
委員長着席〕
そこで、
大臣、この見通しについ、きょうは晴れで、あすは曇りかもしれない、あさっては晴れ後曇りで、その次は雨になるか暴風雨になるかわからないというのが予測なんです。困難な予測だが、
大臣、きょうの
食糧事情というものは晴れなのか曇天なのか、あすも晴れと
考えておるのか、その
程度の感覚で御
答弁を願いたい。