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1975-02-13 第75回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月十三日(木曜日)     午前十一時四十一分開議  出席委員    委員長 澁谷 直藏君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 中川 一郎君 理事 藤本 孝雄君    理事 渡辺美智雄君 理事 井上  泉君    理事 芳賀  貢君 理事 津川 武一君       足立 篤郎君    愛野興一郎君       伊東 正義君    今井  勇君       片岡 清一君    熊谷 義雄君       染谷  誠君    丹羽 兵助君       角屋堅次郎君    柴田 健治君       島田 琢郎君    竹内  猛君       野坂 浩賢君   米内山義一郎君       諫山  博君    瀬野栄次郎君       林  孝矩君    稲富 稜人君  出席国務大臣         農 林 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省畜産局長 澤邊  守君         農林省食品流通         局長      森  整治君         農林水産技術会         議事務局長   小山 義夫君         食糧庁長官   三善 信二君         林野庁長官   松形 祐堯君         水産庁長官   内村 良英君  委員外出席者         外務省欧亜局外         務参事官    木内 昭胤君         農林大臣官房審         議官      齋藤 吉郎君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君 委員の異動 二月十三日  辞任         補欠選任   中川利三郎君     諫山  博君     ――――――――――――― 二月十二日  食糧自給体制確立に関する陳情書  (第九七号)  米の全量買上げに関する陳情書外四件  (第九八号)  標準価格米確保に関する陳情書  (第九九号)  水田裏作振興に関する陳情書  (第一〇〇号)  農業基盤整備事業に対する国庫補助率引上げ等  に関する陳情書  (第一〇一号)  農業委員会等関係費増額等に関する陳情書外一  件  (第一〇二号)  農業のにない手対策強化等に関する陳情書外  一件  (第一〇三号)  畜産経営安定対策等に関する陳情書外五件  (第一〇四号)  肉用牛価格安定対策等に関する陳情書外二件  (第一〇五号)  飼料価格対策に関する陳情書外一件  (第一〇六号)  てん菜価格等に関する陳情書外一件  (第一〇七号)  果樹農業振興に関する陳情書  (第一〇八号)  みかんの安定生産対策に関する陳情書外二件  (第一〇九  号)  茶業振興に関する陳情書  (第一  一〇号)  水銀等汚染被害漁業者に対する資金融通特別措  置等に関する陳情書  (第一一  一号)  松くい虫防除対策強化に関する陳情書  (第一一二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  参考人出頭要求に関する件  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ――――◇―――――
  2. 澁谷直藏

    澁谷委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。  畜産問題に関する調査のため、小委員十三名より成る畜産問題に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 澁谷直藏

    澁谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、小委員及び小委員長選任につきましては、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 澁谷直藏

    澁谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員及び小委員長は、追って公報をもってお知らせすることといたします。  次に、小委員及び小委員長辞任の許可及びそれに伴う補欠選任委員辞任に伴う小委員及び小委員長補欠選任、並びに小委員会におきまして参考人出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合は、参考人出席を求めることとし、その人選及び出席日時その他所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 澁谷直藏

    澁谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  6. 澁谷直藏

    澁谷委員長 この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  水島重油流出事故に伴う漁業被害問題について、参考人出席を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 澁谷直藏

    澁谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人人選出席日時及びその手続筆につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 澁谷直藏

    澁谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  9. 澁谷直藏

    澁谷委員長 農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津川武一君。
  10. 津川武一

    津川委員 先般農林大臣基本施策について演説をいたしましたので、それに対して若干質問してみたいと思います。  まず、第一は、三木総理安倍農林大臣もそうですが、いままでのいろいろな問題は高度経済成長によってもたらされた、したがって、今後これを安定成長、低成長へ転換していくと繰り返し申しております。ところで、池田内閣以来の高度経済成長は、農業に関して言うならば、農耕地、水、労働力を大企業に集中することだったと言ってもよいと思います。現に、昭和三十五年から四十九年までの間に九十九万四千ヘクタールの農地がつぶされております。一年平均七・一ヘクタール。これが高度経済成長だったと思うのですが、低成長安定成長に返るとすれば、その規模が問題なんじゃなくして、その内容です。つまり、こういう土地だとか、水だとか、労働力だとか、またはエネルギーだとか、資源だとか、国民が働いてためた貯金などをどこへ使うか、だれが使うかによって問題が変わってくると思います。  安定成長、低成長に移るとなれば、こういう農地の取り壊しはやめなければならぬと思いますが、農林大臣、いかが考えますか。
  11. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 高度成長によりまして、確かに農業は相当弱体化しておることは事実であろうと私は思うわけでございまして、農地壊廃、あるいはまた労働力流出その他過疎といったような問題がいろいろと起こっておるわけでございます。こういう中にあって、今後は高度成長から安定成長へと路線が変わっていくわけでございます。そういう中で、これからの農業というものに対して新しい認識の上に立って農業の発展を図っていかなければならない。  まず、一番大事なのは水並びに土地資源確保であり、これの高度利用であろうと思うわけでございます。いまお話しがございました農地確保につきましては、これは特に意を注いでまいらなければならぬと思うわけでございまして、農地法の厳正な適用はもちろんのことでございますが、農振法によるところの農用地域を設定することによって農地壊廃することを防いでいく。あるいは、今度お願いをしておる農振法の改正によるところの高度利用増進事業等を推進する。それから開発の規制等も行いまして土地確保を図っていく。また、高度の利用を図っていくということがこれからの農政上の取り組んでいかなければならない大きな課題であろうと思うわけでございます。
  12. 津川武一

    津川委員 高度経済成長時代昭和三十五年から四十九年までの十四、五年の間に取りつぶした九十九万ヘクタール、こんな農耕地の取りつぶしは、これからは安倍大臣はやらないつもりでございますか。
  13. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今後、経済は、安定成長とはいえ五、六%程度成長していくわけでございまして、そういう中にあって農地等の多少の壊廃等はあると私は思うわけでございますが、その反面、農地造成には力を注いでいかなければならないわけでございますし、特に、優良農地確保するためには、先ほど申し上げましたような諸施策を通じて何としても確保していかなければならない、こういうふうに私は思っております。
  14. 津川武一

    津川委員 大臣は、多少はつぶすと言われたが、その多少が問題です。  そこで、あなたがわれわれに提示した「農産物需要生産長期見通し 昭和五十年一月 農林省」、これは「案」ですが、これを見ると、「かい廃面積は、今後の転用需要の動向、山間地での植林や耕作放棄地等を考慮して四十八−六十年間におおむね七十万ヘクタール程度と見込む」となっております。もっとも、八十六万ヘクタール造成すると言っているが、三十五年から四十九年までの間に九十九万ヘクタールつぶして、また、四十八年から六十年までの間に七十万ヘクタールつぶす。これで高度経済成長から安定成長、低成長へ、農業を守る政策へ転換できると言えるかどうかです。言うことと実際にやろうとしていることがこんなにも違うので私は驚いているわけですが、多少というのはこの七十万ヘクタールのことですか。この土地改良長期計画、十カ年計画は、あの高度経済成長がまだ華やかな四十八年の五月一日の閣議です。これをあなたはこの五十年の一月のところに入れて、「案」ではあるが、「見通し」として言っている。これだけつぶすの。安倍農林大臣、やはりつぶすのやめましょうよ。
  15. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農林省としては、農用地確保して、国民食糧確保していくということに最大の責任があるわけでございますから、いたずらに農地壊廃をされるということに対しては厳しい規制、厳正な態度でもってこれに臨んでいかなければならないと思うわけでございます。しかし、経済状態の進展に伴いまして、山間地であるとか、あるいはまた市街地等規制の対象になっておりません。市街地において三十万ヘクタールの農地もあるわけでございますから、そういう農地等も含めてある程度壊廃というものはやはり予定をせざるを得ない、こういうふうに思うわけであります。
  16. 津川武一

    津川委員 くどいようですが、ある程度壊廃、多少壊廃、これが七十万ヘクタールかどうか。安倍さん、これをもう少し少なくする、土地改良十カ年計画の七十万ヘクタール壊廃を手直しするということでなければ、高度経済成長からあなたの言う——あなたは低成長とも言ったし、今度の所信表明では安定成長と言ったが、どっちでもいいが、実態が伴わない。あなたの言葉は実のない言葉だ、うそつきだ、ということになるわけですが、この点をもう一回答えていただきます。
  17. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどからお答えをいたしましたように、農地確保していくということについては、今後としても最大努力を払っていかなければなりませんし、そのために法律、制度の改正等ももちろん行うと同時に、現在の法制のもとにおいて転用規制は厳正にやっていくわけでございますが、しかし、先ほどから申し上げまするように、市街地等における農地等が三十万ヘクタールもあるわけでございますから、そういうものを含めて、農林省としては、一応、今後の経済社会情勢の中においては、先ほどから申し上げますように、ある程度といいますか、農林省で出しておるデータ程度壊廃が進むのではないかということで、これを受けて私たちとしても農地造成等も図っていかなければなりませんし、いたずらに農地壊廃をするということについては特に厳格、厳正な態度で臨んでいく決意でございます。
  18. 津川武一

    津川委員 多少、ある程度というのは、安倍農林大臣言葉をかりると七十万ヘクタールなり。したがって、示した数字は変える腹がない、このように安倍農林大臣が言っている、こう了解してよろしゅうございますか。
  19. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもちろん、いままでの経済の実勢が安定成長に移るという中での判断としては七十万ヘクタールというのがデータとしては出てくるわけでございますが、しかし、これはデータとして出ておるだけでありまして、われわれとしては何としても農地確保するということに対しては全力を投入をして、そういう事態に至らないで、食糧確保できる、自給できる農地最大限に確保されるようにあらゆる努力をしていきたいと思うわけであります。
  20. 津川武一

    津川委員 なかなか答えを明確にしないのですが、せっかくの大事な国政審議なので、それを明らかにしてほしい。時間的な制約もありますので、この論議は予算委員会においてのわが党の中川議員に引き継ぎますが、実は、二十五日の農振法の一部改正審議のときに私は引き続き質問いたしますが、きょう、最後に、安倍農林大臣に、この七十万ヘクタールをそのままつぶしていくのかどうかという答えをもう一回求めますから、それまでに考えておいてください。  その次に、労働力、人間の問題ですが、高度経済成長のもとで、農業就業人口は、あなたたち資料によれば、昭和三十五年の千四百五十万人から四十八年の八百四十九万人まで、実に、これは五八%まで落ちてきました。これが実態です。そうして男の基幹的農業従事者は、三十五年の五百五十二万から四十八年の二百七十二万と、これは四九%、半分以下になってしまいました。そこで農村婦人、お年寄りのいまの苦労が始まった。兼業農家のあの出かせぎの苦労が始まった。  出かせぎ者がどんな目に遭っているか、安倍農林大臣、聞いて下さい。「一九七四年の五月三日、私たちの五所川原市で三十一歳になる主婦が」これは農婦ですが、「七つになる自分の娘を庖丁でメッタ切りにして殺し、自分でも列車に飛びこんで死んだ。無理心中である。夫は一年半前に出かせぎに出て行き、いつとはなしに音信も送金もなくなっていた。」というのです。この主婦が、あらゆる工面をしたけれども生きていく道がなく、出かせぎの夫からは依然として便りがない。とうとう娘に「抱合い鉄道心中をもちかけたが、娘にことわられ、ついには自分の手で娘を殺し、自分鉄道にとびこんだのである。」ということで、これが高度経済成長一つ側面農村における労働力側面です。こういう農村における人減らし、出かせぎ者の家族に無理心中をさせるような農業人口対策を続けていくのかどうか。私は、少なくとも農林大臣はこの点で特別な配慮をすべきだと思うのでございますが、いかがでございますか。
  21. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農村におきまして農村環境を整備するとともに、農民の方々に生産意欲を持っていただきまして、農村が今後とも振興をし、明るくなっていくということのためには、われわれとしても全力を尽くしていかなければならぬわけでございまして、そういう意味におきまして、今後とも農村が安定をしていくということがやはり一番大事なことじゃないかと思います。
  22. 津川武一

    津川委員 ことしは国際婦人年でもあります。日本農村婦人にこんな苦労をさせていいのか。私は、安倍農林大臣にはそういうことに対して愛情があるかと思うのですが、こういう農村婦人をどうなされるのか、農林大臣所信を重ねてお伺いします。  それで、この本は「ドキュメント昭和五十年史」という本の六巻です。いま読み上げたのは、私が調査して私が書いているものです。二百八十二ページ。これを農林大臣がどなたかを使って具体的に調べて、こういう農村婦人にこんな無理心中なんかさせないようにするために、農林大臣、何らかの配慮がございますか。
  23. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、先ほども申し上げましたように、農村体質をしっかりさせて、農業基盤整備を初めといたしまして、人づくりその他いろいろの対策を着実に進めて、農村を安定化させていくということがやはり大事なことであろうと私は思うわけであります。
  24. 津川武一

    津川委員 私は農林大臣一般論もやるけれども、私のこの具体的な話が、ことしの国際婦人年に当たって、日本政府婦人を粗末にしている、農村婦人を粗末にしていると言われたらどうなりますか。したがって、こういう事態が起きないように、農村婦人に対する安倍農林大臣の姿勢を聞いているのです。
  25. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、ことしは国際婦人年でもありますし、それだけでなくて男女平等の時代でもございますし、どういう地域社会、どういう産業においても婦人を大切にしていかなければならない。個人の家庭においてもそうですが、婦人を大切にしていくということは、今後の民主主義自由主義社会においては当然のことであろうと思いますし、これに対するいろいろの施策も、農政だけじゃなくて、これは各般にわたって施策を進めていくべきであろうと思います。
  26. 津川武一

    津川委員 私は、安倍農林大臣に、農村婦人が子供と鉄道無理心中をしておるが、この農村婦人農林大臣として何らか施策があるのかと聞いているわけです。農林大臣、いま施策がなかったならば、方針を立てて後刻委員会に報告してもよろしい、どちらでもよろしいが、この二つのうち一つ答えていただきたい。
  27. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういうふうな悲惨な事態が起こらないように、農村を安定化し、これを発展させて、いくということが基本的でなければならぬと思うわけです。
  28. 津川武一

    津川委員 くどいようだけれども、安倍さん、農村婦人特別施策を立てなさいとぼくは言っているのですよ。立てないで、一般論でやるのか。この状態だから何か特別な考え方を立てなければならないのじゃないかと安倍さんは考えると思うのだが、その意思があるのかどうか、一般論でなくて聞いているのです。さあ、どうです。
  29. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 婦人に対する施策等も、農村におきましては協同組合等の組織もありますし、そういう中で農協婦人部というふうな活動の場もあるわけでございます。そういう中でいろいろと活動が活発に行われるような配慮はいたしておるわけでございますが、いま御指摘がございましたところの、農村婦人に対して特別に施策を講ぜよというお話しでございますが、こういうことが農村においてのこれからの特別な事業施策として必要であるのかないのか、検討、研究いたしますけれども、しかし、私は、農村体質強化をしていくということ、そうしていまおっしゃるような悲惨な事態が起こるようなことのないような環境づくりもしていくということのほうが先決じゃないだろうか、こういうふうに思います。
  30. 津川武一

    津川委員 農協婦人部の話が出た。そして、特別に何かやるか考えるということだが、これをぜひ私はあなたに求めます。ぜひこれを立てていただいて、あとまた二、三カ月たった後のこの委員会で、あなたが立てたかどうかをもう一度確認いたす質問を続けます。  そこで、その次は食糧自給についてです。三木総理は、いまの自給率は低過すぎる、いままでの惰性でない農政というものが展開されなければならない、また、国民食糧会議国防会議と同列に置くべき性質のもので、これも考えなければならぬ、検討したいということを言っている。あなたは昨日の委員会でこのこともやっております。  そこで、これもあなた方が私たちにくれた資料ですが、十九ページの「食用農産物総合自給率」は、四十七年度が七三%、六十年度が七五%で、「穀物自給率」は四十七年度が四二%、六十年度が三七%と落ちてまいりました。「主食用穀物自給率」は、四十七年度が七一%で、六十年度は七三%です。「食用」と「主食用」は、どちらも四十七年から六十年までかかってたったの二%の伸びで、穀物自給率に至っては五%落ちるのです。三木総理はいまの自給率七三%では低過ぎると言っているが、七五%では低過ぎないのかどうか。主食用殻物は七三%にすれば低過ぎないのかどうか。これは昭和四十七年だから、六十年まで十三年です。二%を十三で割ってみると、毎年〇・一五%です。私が国民にこの数字を示したら、安倍農政は〇・一五農政ですねと言うのです。こういう点で安倍さんの農政国民が命名しているのを、私も、これからこのまま続けるならそう呼んでみたいと思っているわけです。  もう少し自給率というものを考えてふやしてもらわなければならないと思いますが、この試算の案をもう一回持ち帰られて検討して、再提案してくださいよ。これはお願いします。いかがですか。
  31. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 現在の食糧の世界的な情勢から考えましても、国内における自給率を高めていくということは、これは農政最大課題であろうと思うわけでございますが、ここに示されておる数字農林省試算をいたしたわけでございますけれども、この前提は、御存じのように、わが国人口が十年間にどういうふうにふえていくか、あるいはまた消費水準がどういうふうに高まっていくかということを前提といたしまして、そしてまた、可能な限りの生産力増強対策前提としてはじき出された数字でございます。ですから、消費水準の向上あるいは人口の増加ということから見ますと、自給率自体がふえていくということは、現在の社会経済情勢の中においてはなかなかむずかしいのではないか、七三%という農林省試算は今日の資源的な制約の中においてはやむを得ない、と思うわけでございます。  もちろん、消費生活を現在のままにストップして十年間の先のことを予定をすればもっともっと高い自給率になるわけでございますが、消費水準が上がるわけでありますし、人口もふえるわけですから、こういうふうな形にならざるを得ない。特に、穀物自給率につきましては、御存じのように、畜産における飼料穀物が現在もほとんど大半が外国に依存をしておる、そういう中で畜産物消費も今後ふえてくる、生産もふやさなければならぬ、しかし、残念ながら、飼料穀物については国内における生産条件がなかなか整わなくて、これを増産する体制は困難である、こういうことから、やっぱり飼料穀物の占める分野がこの穀物自給率に大きく響いてまいって、四二%が三七%ということに落ち込んでいる。こういうことになるわけでありまして、いろいろの施策を今後とも強化しながら、この率は少しでも上げていくように努力はいたしますけれども、現在の社会情勢、そして限られた資源的な制約、可能な限りの生産というものを背景にいたしますと、この農林省の出しておるデータというものは厳粛に受けとめて、そして農政というものを進めていくべきじゃないだろうか、私はそういうふうに受け取っておるわけであります。
  32. 津川武一

    津川委員 あなたの所信表明の五ページを見ると、「最近の国際的な食糧事情から見まして、一億を超える国民の、水準の高い食生活を支えていくために、将来にわたって食糧安定的供給確保する体制を整備することが今後の農政中心課題であると考えますが、その基本をなすものは、申すまでもなくわが国農業自給力を高めることであります。」となっております。これはあなたが高らかにここで読み上げて、国民に宣言した文書であります。それが七三%から七五%というのは、私は——数をここでもてあそんであなたとけんかするつもりはありませんが、このことは国民に教えなければいけません。国民の中に、そろばんを持って複利計算をして私に教えてくれた人がありましたが、一年〇・一五%の増強は、十年後対前年比に割っていくと〇・一一%、それだけを十年重ねていっても〇・二%超すそうです。  そこで、農林大臣、もしこういう見通しを言うならば、あなたのこれは撤回しなければならない。農林大臣所信表明のとおり言うならば、こいつは考え直さなければならぬ。この二つは両立しない。したがって、私は、あなたに二者択一をここで迫っておるわけであります。このとおりの、あなたが私たちによこした案でいかれるならば所信表明を撤回していただきたい。所信表明どおりやるならばこれを直していただきたい。どちらでございますか。
  33. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私が所信表明で述べましたことは、「わが国農業自給力を高めることである」というふうに申したわけでございまして、この「自給力」の中においては自給率という問題ももちろん含まれるわけでございますが、しかし、先ほどから申し上げるように、自給率につきましては、このデータにも示しておりますように、消費水準が十年間に大体九%程度伸びるだろうし、あるいは人口の伸び率は一四%程度伸びるであろう、需要の全体の伸びが二三%程度になっていく、生産の伸び率は二七%になっておる、こういうような試算の中において自給力を高めるということで、もちろん、その中においては、土地基盤整備等その他中核的な農家の育成強化等も図っていきながら潜在的な自給力を高めていくということも含めての「自給力」ということを言ったわけでございます。その辺はひとつ御理解をいただきたいと思います。
  34. 津川武一

    津川委員 確かに、この所信表明には「自給力」と書いてありますよ。だけども、四十九年十二月十二日の農業新聞であなたが記者と対談したときには、自給度向上の政策の中で問題があります、ということを言っておられる。だから、私はこの言葉についてあえて争いはしませんけれども、そうすると、先ほどの議論、この見通しとこの所信表明、どちらでございますか。もう一回答えていただきます。
  35. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは私はそう矛盾はしていないと思うわけです。今後の需要が全体的に二三%十年間に伸びていく、その中において自給力を高めるためのいろいろな施策を講じて、生産は二七%程度伸ばしていく、こういうことでございますから、全体的な食用農産物の総合自給率については七三%から七五%という二%の伸びにならなければなりませんが、これは人口の伸びだとか消費水準の伸びというものも勘案をしてやるわけでございますが、しかし、生産の方は二七%、これは農林省として考えておる可能な限りの生産力増強を図るわけでございますから、このことについては、全体的にとらえれば自給力を高めていくという政策は矛盾をしていない、私はそういうふうに思うわけでございます。
  36. 津川武一

    津川委員 それは、あなたとしては矛盾しないかもしれない。それじゃ、私はこういうふうに受け取りました。安倍さんの基本農政自給力を高めるということは、七三%から七五%に上げることで、年平均で〇・二%——いまそこで数えておるようですが、複利計算にすると、ある国民が私には〇・一一だと言っていますが、あそこで数えているようですから、出たら私にもまたそれを紹介してください。  そこで、問題を進めてまいります。この七三%から七五%に自給力をふやしていくというあなたたちの具体的な政策に入ってみます。  昭和三十六年の農業基本法のときに、ここでは畜産と果樹の選択的拡大を団るということを言った。その施策を進めた。この途中にあなたは農林次官もやった。これにも参加した。ところで、三十五年に豚がどのくらいあったかというと、百九十二万頭で、四十九年が八百二万頭で、四・二倍。鶏卵が三十五年に五千四百六十二万羽で、四十九年が一億六千五十万羽で、二・九倍。乳用牛が三十五年が八十二万頭で、四十九年が百七十五万頭で、二・一倍ふえました。これを育てる飼料用穀物がどうだったか。トウモロコシ、コウリャン、えさの大麦、これはなぜつくらなかったのですか。豚や鶏や乳用牛をたくさんこのようにふやした。これを養い、育てていくのに必要な飼料穀物の選択的拡大なり、その増産をやるならば、農業基本法もあるいは大きな問題を生まなかったかもわかりませんが、トウモロコシ、えさの大麦、コウリャンというものに増産の選択的拡大の施策を講じなかったのはなぜでございますか。
  37. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 トウモロコシ、コウリャンといった飼料用穀物わが国農業における生産条件に合わないといいますか、気象条件等もございますし、あるいはまた、こうした作物はやはり機械化した大規模の農地利用した作物であるわけでございますし、そういうことから、また、競合的な作物等もあるわけでありますから、そういう中にあって農村にコウリャンあるいはトウモロコシといった農作物を選択させるということは非常に困難である。また、価格の点から見ましても、海外のトウモロコシ、コウリャンの価格と国内において生産をするトウモロコシ、コウリャンの価格というものが余りにも大きい格差があるわけでございますから、そういういろいろな条件を考えると、やはり、飼料穀物については外国から安定して輸入をしていくということが適当であるということでございます。  これはこの自給率の問題にすぐ響いてくるわけでございますが、私たちとしては、今後ともこうした農産物については外国に依存せざるを得ない。しかし、外国からの輸入については、これはもちろん安定的な輸入が図られるように国際的ないろいろの協力その他取り決め等をやって、安定して輸入が確保できるという形に持っていかなければいけないと思うわけでございますが、ともかく、こうした主要穀物生産日本生産条件に合わないということが決定的な要因であると言ってもいいのじゃないかと思うわけであります。
  38. 津川武一

    津川委員 私は、飼料穀物について大臣に大胆な提案を申し上げようと思っていま質問を展開したわけですが、私はトウモロコシ、コウリャン、大麦と言ったでしょう。それに対して何で大麦のことを話されないの。これから六十年度で三十万トンやるから、そういうつもりなんでしょう。大麦はなぜ過程においてつくらないの。これから今度、四十七年度から六十年にかけて三十万トンふやす。トウモロコシとコウリャンの話をして、大麦については話してくれなかった。なぜ大麦をいままでつけなかったのか、これからなぜ大麦を三十万トンつけることができるのか、とすれば、トウモロコシはなぜできないのか、ここあたりを論議を進めるために答えていただきます。
  39. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 麦、特に、いま御指摘がありました大麦などにいたしましても、これは高度成長経済の中において非常に低収益であって、収益が合わなかったということが麦作から農村がこれを放棄したという大きな原因であろうと思うわけでございまして、結局、麦をつくるよりは出かせぎに行った方がいいというふうなことで麦作を放棄した、そこで裏作が非常に減ってきたということであります。裏作につきましては、現在の予算措置等におきましても奨励措置その他いろいろの諸政策を講じておるわけでございますが、今後十年間において裏作を大いに拡大して、いまおっしゃるように大麦については三十万トンは確保したい、こういうふうなことでございます。
  40. 津川武一

    津川委員 農林大臣、これもあなたたちの方の資料からですが、六条大麦、裸麦で、昭和三十五年で三十二万ヘクタールつくっておった。やればやれるのです。それを価格保証しなかったから飼料用大麦がつぶれたのだ。お米はそのときから価格保証したから育ったのだ。価格の問題じゃないのですよ。政府が価格政策に乗り出すか乗り出さないかが問題を決めたのだ。今度三十万トンにふやすについて、飼料用大麦にどんな価格保証をするのですか。これをやれるかやれないか、一つの問題は価格を補償するかしないかで決まるわけです。北海道のてん菜は四十九年は減ったんです。小麦に価格保証をした。麦に価格援助をしたらふえていった。この大麦、飼料用穀物を農民が採算のとれるような形で価格を援助していくならばできる。これが一つ。  第二番目には、米と麦の一貫耕作、育成。一貫した米と麦とのこれをやるならばできる。これをやらないならばできない。したがって、私はあなたに提言がある。七三%から七五%にしないで、これを徹底的に農政基本に据えて、麦と米との、稲作との一貫作業ができるような試験研究体制をつくるならば可能だと私は思うのです。この点をあなたに答えていただきたい。  時間もかなり切迫してきたから、トウモロコシのことをやりますが、あなたはトウモロコシは日本国に育たないと言ったが、これはうそです。昭和三十四年が四万七千九百ヘクタールで、十万トン上がっております。三十五年が四万三千五百ヘクタールで、十一万二千九百トン上がっています。農林大臣、これが日本の国土、これが日本の農民の技術です。この技術をつぶしたのが昭和三十五年以来の高度経済成長です。このトウモロコシを見てごらんなさいよ。あなたたち昭和四十六年から、作統の記録からトウモロコシを抜いちゃったじゃないの。ここで価格も考えなければならぬ。増産体制も考えなければならぬ。つぶすに任したのがあなたたちの言った高度経済成長だ。本当に高度経済成長を考えるならば、日本の国土にかつてこれだけの作物が出たのに、このトウモロコシを依然として投げるのは、これは一体何かということなんです。あなたはこういうことを考えないで、こういうことを言っていますよ。トウモロコシ、コウリャンは外国に依存する、と。この考え方があなたにとって非常に危険な考え方である。大麦を飼料用として、トウモロコシを飼料用穀物として育てていってこそ育つのだから、そして育ったのだからね。この点はいかがでございますか。
  41. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農政基本農地高度利用ですから、いままで活用されなかった裏作を今後は全面的に活用していくための最大努力をしなければならぬことは当然でありますし、そのためのいろいろな施策を講じておるわけでございますが、トウモロコシにつきましては、他の外国の大穀倉地帯におけるトウモロコシの生産と比較をしてみましても、収量も低いわけでありますし、労働時間も長くかかる、また、生産価格の点において依然として大きな開きがあるというふうなことを考えますと、現在の農業においては、農民の皆さんに対応していただくといいますか、選択をしていただいて農作物をつくっていただくわけでございますから、やはり、農村の選択ということになりますと、トウモロコシにつきましては、客観的に考えて、これを大いに増産をしていくということは非常にむずかしいことだと、そういうふうに私は思うわけでございます。
  42. 津川武一

    津川委員 麦がうんと減ってきたときに、四十九年度に麦に補助金を出した。減り方はとまったでしょう。ふえたでしょう。トウモロコシをほったらかしておいたでしょう。おやりなさいよ。五万ヘクタールついたこともあるのだよ。土地に合うのだよ。農民がつくることです。あなたがいまトウモロコシについて言ったことは、かつて農林省がお米に対して言ったことです。外国の方が安い。このままじゃいけない。そして、米に援助したでしょう。千四百万トンのお米に援助したでしょう。十万や二十万のトウモロコシへの援助、これだけのお金、ここいらにあなたに攻めていただきたい農政があったわけ。あなたは攻める農政をやると言ったでしょう。ところが、この所信表明を聞いたら、攻める農政はどこかへ行っちゃった。もっと具体的に言うと、アメリカの農務省の次官補が来て、四十億ドルのものを五十億ドル買えと言って帰っちゃった。これが具体的な事実上の経過ですよ。あなたはそうではないと言うかもわからぬけれども、ここのところにトウモロコシが出てこない。私は、あなたに端的にやってみないかと言う。このトウモロコシ、それから大麦の飼料穀物としての育成を三十万トンじゃ足りないよ。先ほど話したとおり、やれるのだもの。  そこで、この試験研究を徹底的にやってもらわなければならぬ。ところが、あなたたちの試験研究の費用も、これもまた困ったものだ。飼料穀物導入実験事業は四十六年が千二百十七万円、これを千百五十五万円より使っていませんよ。四十七年が千五百二十四万円だが、驚くなかれ、これを五百二万円しか使っていないんだ。四十八年が千七百二十六万円で、これも七百四十一万円より使っていない。四十九年に至っては、かつて千七百万円あった試験研究費や実験研究費を四百九十五万円に減らしているんだ。五十年の予算が二百六十万円だ。安倍さん、ここのところにあなたの命をかけて攻めの農政に転換すべき具体的な要素がある。これを私はあなたに提言もし、提案もしているわけだ。あなたとここで押し問答はしないけれども、本当にあなたが攻めの農政をやるのであるならば、七三%、七五%でなく、〇・一一農政なんて言わせないで、もう少し具体的なやる方法を——私もここであなたに提言しているわけだから、大豆を、トウモロコシを、飼料用穀物として考えてみませんか。
  43. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、やはり、日本の国土は非常に限られていて資源制約があるわけですから、裏作をやるにしても、非常に有効な効率的な裏作の生産体制をつくっていかなければならぬと思うわけですが、そういうふうな前提に立ちますと、トウモロコシをつくるということよりは、むしろ、麦飼料作物というものを裏作で大いに生産をしていくという方がより限られた土地資源の効率的な活用につながっていくのじゃなかろうかと思うわけでありまして、こういう立場に立って、裏作については、麦、飼料作物というものをつくるための万般の施策を進めておるわけでございます。  いまお話しの一貫栽培の技術を確立していくということは、現在、表作、裏作の間には作期等の非常にむずかしい問題等もあるわけでございますから、これを調整していく。そういう技術体系を確立して一貫栽培を行っていくということは裏作体制をつくる上においては一番大事なことでありますから、われわれは今後とも総力を挙げてやっていきたいと思っておるわけであります。  また、大豆につきましても、われわれの重点的な増産の農作物の一つとしていろいろな施策を今後とも着実に講じていきたいと思っておるわけであります。
  44. 津川武一

    津川委員 麦と稲作の一貫栽培ね。それにしても、飼料用穀物の導入実験事業が千七百万もあったのを、ことしの五十年予算で二百六十万に減らして、これでできるか。こういう事業を思い切ってやりなさいよ。あなたにいま出した予算を補正せいと言っても無理だろうから、予備費なんかがあるだろうから、この点で本当に突っ込んで拡大していくように要求します。そして、もう一つ、トウモロコシの研究は放棄しないでぜひやっていただかなければならぬ。そして、穀物飼料の中から、統計の表からもはずすなんという抹殺行為はやめていただいて進めていただきたいと思う次第でございます。  そこで、時間も大分迫ったので次に進めていきます。皆さんの出したことをやってくれるならば、これはいいところもあるのですよ。てん菜だとか、具体的な内容を少しやろうと思ったけれども、時間がなくなったからリンゴのことだけ話しておきますけれども、今度六十年に皆さんのところで、リンゴは、耕作面積六万ヘクタール、百二十一万五千トンに上げるという。いいことですが、四十九年には八十七万トンしか上がっていませんよ。そして耕作面積は、四十一年に六万五千六百ヘクタールあったが、四十九年には五万五千ヘクタールに減ってきました。収量に対して言うならば、四十三年に百十三万トンあった。これが四十九年に八十七万トンに落ちた。これを百二十一万トンに上げる。大変御苦労さまでございます。ところで、心配なのは、上がるか上がらないかの心配なんです。これをどういうふうにしてこの計画のとおりにやるか。見通しの中にはそう書いてあるが、いま私が話したことは計画以下しかやれないんじゃないか。具体的にどうしておやりになるのか。これをお示し願いたいのです。
  45. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 リンゴにつきましては、消費に必要なものは将来とも国内生産をしていくということにいたしておるわけでございますが、最近は品種更新の進展等もあって生産が停滞状態にあることは事実であります。そこで、今後生産増強をはかるために、矮化栽培の普及あるいは生産出荷の合理化等の対策を拡充実施いたしまして、需要の拡大に見合った生産が行われるように努力をしていきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。  それから、先ほど飼料穀物につきましての予算が非常に少なくなったというお話しでございますが、予算は少なくなっていないわけでございますので、ちょっと事務当局から御説明させます。
  46. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいまお尋ねの、技術会議所管の試験研究費というよりは、私どもでやっております実験事業のことかと思いますが、これは四十六年度から実施しておるわけでございますが、初年度は、当初は機械設備の助成というものも入っておりますので金額が大きいわけでございますが、一応実験事業はめどもつきまして、五十年度はアフターケアということでございますので、金額は当初よりは減少しておるというような事情になっております。
  47. 津川武一

    津川委員 せっかく大臣畜産に戻してくれたから、もう一回畜産のことを聞きますが、昭和五十年版の「国民食料の諸問題」に小倉武一さんの論文が載っていますが、大臣はこれをお読みになりましたか。
  48. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まだ、残念ながら読んでおりません。
  49. 津川武一

    津川委員 そこで、私は、大臣に、この本からもさっきの提案を申し上げる。九十二ページですが、「飼料穀物生産基盤がなく、草地の開発管理の伝統も十分でなかったわが国で、農業基本法制定の頃から畜産が園芸と並んで選択的拡大の対象とされた。その際、畜産の基盤として草地や飼料作物も選択的拡大の対象となるべき筈であったが、草地はともかく飼料穀物はもはや考慮の対象外となった。」と言っている。考慮の対象外になってしまったというのだが、もう一回考慮の対象の中に持ち込む決意を聞かせていただきます。
  50. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、先ほどからしばしばお答えをいたしましたように、裏作の利用増進を図って、飼料穀物等につきましても、麦類については生産増強していく、こういうことでございます。
  51. 津川武一

    津川委員 そこで、リンゴですが、現状がどうなっておるか、皆さんは私よりもよく御存じだと思うのですが、腐乱病です。四十九年に、北海道が三千七百十ヘクタールで、腐乱病にかかっている率が三千ヘクタール、八一%。青森県が、二万四千四百ヘクタールのうち腐乱病が四千八百七十五ヘクタール、二〇%。岩手県が、三千六百四十ヘクタールの中で腐乱病が一千四百六十七ヘクタール、四〇%。秋田県が、三千四百七十ヘクタールの中で腐乱病が五百七十七ヘクタール、一七%。長野県が、一万四百ヘクタールの中で腐乱病が四千百六十一ヘクタール、四〇%。この主要五県だけで、四万五千ヘクタールの中に一万四千ヘクタール、三一%ある。  腐乱病にかかるとどうなるかということは、委員長に一枚、農林大臣に一枚写真を上げたでしょう。その写真を見てくださいよ。長野県の伊那地方は木を切っている。岩手県の北部の方の二戸付近も木を切っている。青森県の八戸辺も腐乱病で木を切っている。かなりのスピードで耕作面積と木が減っている。新値は及んでいかない。だから、いまリンゴは減産の一途をたどっている。  それを五万五千ヘクタールから六万ヘクタールにふやす、これはいいですよ。八十七万トンから百二十一万トンにふやす、これもいいですよ。これをやってほしいのです。これをやるのに、たった一つの、いま当面のリンゴに対する具体的な施策は、この腐乱病に対しての討伐大作戦をやることです。三木総理言葉、福田副総理の言葉で言うと、物価を引き下げるために大作戦を展開すると言っているが、いい言葉を聞いたから、皆さんも、この腐乱病退治の大作戦を展開しないと、この皆さんの計画は本当に空論になってしまう。  この腐乱病に対する撲滅作戦というのですか、対策、決意、方針を聞かせていただきます。
  52. 松元威雄

    ○松元政府委員 ただいまリンゴのことにつきましておっしゃるとおり、最近面積は多少減少傾向にございます。その原因は、新値もございますが、御指摘のとおり、一つは、優良種への転換ということで減っている部分もございます。それからまた、管理労力の不足とか、ただいま御指摘の病害等の発生とか あるいはまた転用とか、こういったことによりまして、散在園とか低位生産園を中心にしまして、廃園面積の方が新値面積を上回っている。現実はそうでございまして、したがいまして、現在減少傾向をたどっております。  しかし、今後長期に見ますれば、最近はリンゴの収益性も高まっておりますし、また、矮化栽培といったような省力化技術も進んでおりますものですから、生産者の植栽意欲も進んでいる。また、需要も、生食も加工用も旺盛でございます。したがいまして、これに対しまして、先ほど大臣もおっしゃられましたが、生産、出荷の省力化対策をもっと拡充する、あるいはまた、御指摘の腐乱病等の各種病害に対します防除の指導を徹底するというようなことをいたしまして、今後所期の目標達成に施策強化を図ってまいりたいと思うわけでございます。  さらに、具体的に腐乱病の対策について申し上げますと、確かに、腐乱病は相当蔓延をいたしております。ただ、これは先生も十分御承知でございますが、この腐乱病の対策はいろいろあるわけでございます。普通でございますと、防除対策といたしまして、薬剤散布をするところもございます。それからまた、枯れ枝を処理する、ひどい場合には木を切るという場合もございます。そういった防除対策を農家の方々に適期にやっていただければいいわけでございますが、問題は、こういった経常的な営農としての防除というもの、これが最近は労力の不足等もございまして、とかく手を抜きがちという実態もございます。したがって、私どもは、本来ならば営農の中で防除するのが本筋でございますから、病害虫の防除基準にいま言った薬剤を組み込むということをいたしておりますし、また、発生予察の適正化も行っております。それからまた、防除組織を整備するという中で、いわば本来的な経常的な防除法をもっと進めてまいりたいと思うわけでございまして、非常に局部的に蔓延しまして特別の緊急対策を要するという場合には、その段階でまた必要な対策を講じなければならぬというふうに考えております。
  53. 津川武一

    津川委員 いろいろなことをたくさん言ってもらいましたが、私がいま言っているのは、腐乱病に対して農林省としてかなり決意を持っていかないとこの計画は遂行できない、いまの重点は腐乱病退治だと言っているのですけれども、農林大臣もその気になってくれますか。農林大臣、いかがですか。
  54. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまお話しも聞いたわけでございますが、農林省としてもこれに対して力を尽くして、この腐乱病を退治することに対策を講じたいと思います。
  55. 津川武一

    津川委員 安倍農林大臣と私の質問が初めてかみ合いましたけれども、指導するだけじゃだめなのです。農林省の指導を具体的にしようとすると、財政的な援助をしなければならぬ。この間、倉石農林大臣は長野県から出ているから長野県の防除に援助したのかと聞いたら、そうじゃないと言うのです。北岩手あたりひどいですね。青森県の県南地域、南部もひどいのです。この間泉山という部落に行ってみたら、五百戸の中で五百ヘクタールあるうちで、みんなやられているのです。こういう具体的な状況をつかまえて財政的な援助をしなければならぬ。これが一つ。  それから、局長、腐乱病は植防の対象になりましたか。この二つ答えていただきます。
  56. 松元威雄

    ○松元政府委員 まことに申しわけないのでございますが、後段の植防の対象になったかということは……。
  57. 津川武一

    津川委員 腐乱病は植物防疫法の対象疾患であるかどうか。
  58. 松元威雄

    ○松元政府委員 ちょっと私の理解が間違っていたら申しわけないのでございますが、現在も、植物防疫といたしまして、発生予察事業とか、あるいは防除体制の整備の中に組み込んで防除の指導はやっておるわけでございます。
  59. 津川武一

    津川委員 農林大臣、財政的な措置をするのかどうか。これだけになっておるのに、植物防疫法で腐乱病が指定されていないのですよ。これは早急に指定すべきだと思うんだけれども、この二つ
  60. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今後財政的な措置も含めて十分検討したいと思います。
  61. 津川武一

    津川委員 植防は……。
  62. 松元威雄

    ○松元政府委員 現在は、植防のいわゆる指定病気と申しますか、それにはなっておりません。
  63. 津川武一

    津川委員 問題はここなんです。これほど、いま三〇%という全国の耕作面積をやられている病気を植防の指定にしていないところに百二十一万トンできるかどうかということだが、これは局長として指定するつもりですか。
  64. 松元威雄

    ○松元政府委員 先ほど私も答弁の中で申し上げたわけでございますが、本来でございますれば、これは防除法はあるわけでございます。たとえば患部を削りまして薬を塗るとか、あるいは冬とか秋の時期に一定の薬をまくとか、また、場合によりますと木を切るといった防除法もございます。それらを組み合わせれば、本来でございますれば、通常の世の中では処理できるわけでございますが、ただ、現実は労力不足等もあってなかなか行えないという実態でございますので、これは植物防疫の対象にするかどうかという問題はちょっと別の問題かと私は存じますが、それらの防除法を全部含めまして、私どもも防除対策に遺憾なきを期したいと存じます。
  65. 津川武一

    津川委員 局長の答弁がそうだから、大臣、これはすぐ検討してください。私はこれこそ植物防疫法の対象疾患でなければならぬと思っているので、検討して返事をしていただきたい。局長の腹がそうであるならば、大臣からあとで検討して返事をもらいます。いいですね。
  66. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 十分検討いたします。
  67. 津川武一

    津川委員 時間がなくなってしまったので、本当はてん菜とお米をもう少しやるつもりであったのですが、次へ進みます。  総需要抑制から、農業土地基盤整備、漁港整備などははずしてやるべきだと思うのです。農林大臣は、総需要抑制はあるけれども、ここのところは考えなきゃならぬ、やるというふうに、いま私は原文を読みませんけれども、所信表明で言っております。ところが、具体的な問題で言うと、青森港はいろいろな事情があって、三次と四次に入れなかったのです。これは事情はいいとするが、あの大きな漁港が今度第五次整備計画にやっと入ったのです。ところが、四十九年度一億の予算がついて、八十メートルの岸壁をつくるべきなのに、二十五メートルよりいってないのです。五十年度二億円の割り当てが危なくなっているわけです。計画全体が十九億円、そして五十二年に仕上がる。いまのままではとうてい仕上がりそうもない。ところが、この漁港は北海道の船がたくさん入ってくるが、入りようがなくなってきている。こういう点でここいらあたりで公共事業は総需要抑制で抑えるべきじゃないと思うのです。  もう一つ、青森県の小泊、下前漁港、これは四十九年に三億二千万のものが二億五千万よりやっていないのです。五十年度の計画で三億六千万円の計画が二億六千万円に減らされている。そこで、どうなっているかというと、入るべき船の定数は百五十隻だが、しけてくると三百隻入ってくるのですが、避難港であるために、八戸、青森、三厩、大畑などの船が入ってくるが、しけると七十五隻より入れないのです。そこでどの船が入るかで大げんかをやる。けんかのあげくに、去年の九月に、入れないで大畑の漁船が遭難しているのです。ここのところが問題なんだ。そして、あそこにイカがいるのですが、少ししけてくると入るところがないから、とれるイカをそのままにして漁港に入ってしまうのです。なぜかというと、七十五隻しか入れないところに二百隻も三百隻も入るから自分が入れない。そして、しけると、今度は、夜、船と船とぶつかるから、一晩エンジンをかけて船を見ていなければならない。さあ、晴れたということで、出ていく、そこに魚がいる、先に入った船は先がつかえているから出ていけない、こういう状況なんです。  この青森の漁港の整備、この小泊、下前の整備を総需要抑制で抑えているということ、これは何といいますか、反国民的という言葉があるかと思うのですが、こういう形で総需要抑制で抑えていることについて——これは漁港全体の整備計画もあるでしょうが、この二つの漁港のことに対して、農林大臣でもよろしいし、水産庁長官でもよろしいから答えをもらって、二、三問答を繰り返して私の質問を終わります。
  68. 内村良英

    ○内村政府委員 漁港につきましては、先生御案内のように……(津川委員「わかっているから、この二つのことを言ってください」と呼ぶ)青森県全体の漁港整備につきましては、第四次整備計画と第五次整備計画の全体事業費の伸びが全国平均よりも大きくなっております。その原因といたしましては、新規漁港の採択割合が全国平均よりも高く、港数が第四次整備計画と第五次整備計画とでは著しく増加していることでございます。  そこで、新規採択になったものについて、どうも予算の伸びがないのではないかということでございますが、この点につきましては、初年度は工事の施工上の段取り等から多額の経費は計上しないわけでございます。それがたまたま総需要抑制の時期にぶつかりまして、青森港の場合にはおくれているということでございます。
  69. 津川武一

    津川委員 そこで、青森県のおくれているのをどうするか、小泊の、下前の、この現状をどうするかということを伺わせてくれれば、ぼくは質問を終わります。
  70. 内村良英

    ○内村政府委員 漁港の整備につきましては、やはり、公共事業抑制の一環として抑えられていることは事実でございます。ただ、全国ベースで申し上げますと、他の公共事業に比べまして、漁港は漁民の生活、生産と結びついておりますから、住宅に並んで予算的にも重点的に見られているということになっております。  なお、青森の漁港の問題につきましては、今後極力計画に沿って進めるように、五十一年度以降努力しなければならぬと思っております。
  71. 津川武一

    津川委員 終わります。
  72. 澁谷直藏

    澁谷委員長 この際、午後三時再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十五分休憩      ————◇—————     午後三時四分開議
  73. 澁谷直藏

    澁谷委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。瀬野栄次郎君。
  74. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣に、所信表明に対する質問をいたします。  安倍農林大臣は、昨年末の大臣就任に際して、攻めの農政を展開するとおっしゃっておられたわけでありますが、大臣が幾ら守りの農政から攻めの農政へと転換を叫んでみても、その裏づけがない限り、しょせん看板倒れに終わってしまう、と、私はこのことを指摘するわけでございます。  日本農業の現今の病状というものは、これはもう軽症ではなくて、大手術をせねばならぬような重症に陥っていると言っても過言ではございません。いま必要であることは、農業を国の基幹産業として抜本的な農政転換を図るということが一番大事であると、私はかように思うわけです。そのためには、当然発想の転換をなさねばならぬということも言うまでもありません。しかしながら、五十年度の農林予算、また、去る二月六日の大臣所信表明をお聞きいたしましても、とても農政転換など期待できるものは見当たりません。食糧危機の高まるムードの手前上、大臣は、糊塗政策といいますか、まさに政策を糊塗するような、にわかづくりの予算と言っても過言でない内容を盛られている、と、かように私は指摘をするわけでございます。  昭和五十年度の一般会計における農林関係予算の総額が、総理府など他省所管の関係予算を含めて二兆一千七百六十八億円で、対前年比の農林予算の伸び率一九・〇%は、国全体の伸び率二四・五%を大幅に下回っておりますし、国家予算全体に占める農林予算を見ても、一〇・二%と、前年の一〇・七%よりはるかに落ち込んでいる。これを見ても、守りの農政農政転換などということは言えないことは明瞭であります。しかも、農業基盤整備などは前年よりわずか三・四%の伸びでありまして、物価高の今日では実質減と見ざるを得ない予算ではありませんか。  また、安倍農相は、緊急粗飼料増産対策農業近代化資金などの面で攻めの芽が見える、というふうにおっしゃってもおられます。しかし、緊急粗飼料増産対策が要求どおりの三十一億七千六百万円を認められたと言われたり、また、これが目玉だということが盛んに言われておったところでありますが、この中には、よく見てみますと、昭和四十九年度の七億二千万円が既行のものとして含まれておりますから、実質的には二十四億五千万円であるということは明らかであります。こういったことを見ましても、未曽有の危機に落ち込み、瀕死の状態にありますところの畜産農家にとっては、これはまさに焼け石に水と言わざるを得ません。そこで、農業近代化資金四千五百億円等を見ましても、農業生産の中核的担い手への運転資金を融資する制度をつくったとは言っても、他産業に比べて極度に分の悪い農業生産に見切りをつけているところの農業者に生産意欲を沸き立たせるにはほど遠いと言わざるを得ません。  以上、概略申し上げましたが、こういった実情を踏まえた上で、農林大臣は本会議または予算委員会等で数回にわたっていろいろとこういったことに対して答弁をしておられますけれども、昭和五十年度のこの農林予算に対し大臣がおっしゃっている農政転換、攻めの農政ということについてて、私はあえて再度お尋ねしたいが、どう考えてもこれはそういったことは言えないと私は思うわけでありますので、大臣はこれに対して具体的に見解を改めて述べていただきたい。これを冒頭にお願いするわけであります。     〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕
  75. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 昭和五十年度の予算編成に当たりましては、食糧自給力を高めるという基本の姿勢のもとに、いろいろと必要な施策を充実強化することに努めまして、いろいろな措置を講じたわけでございますが、全体の予算の規模につきましてはいまお話しもございましたが、しかし 生産基盤につきましては、公共事業費が伸び率がゼロ%という中で、農林関係の予算は三・四%と、わずかではありますが一応増額をした。これは抑制基調で組まれた予算の中では大きな伸びではもちろんありませんけれども、われわれの農政に対する心構えが一応評価はされたというふうにも思っておるわけであります。  また、公共事業費関係以外の一般事業費では伸び率が二四%となっておりまして、その一般事業費関係の中でいろいろな重点的施策も推進するような措置をとっておるわけでございます。  畜産お話しもございましたが、麦、大豆、飼料作物等につきましては、引き続いて生産振興のための奨励措置を講ずることとしておることは御存じのとおりでありまして、特に、水田裏を利用した麦作及び飼料作集団の育成を図ることに努めたわけでございます。  また、農業生産の担い手育成のための金融措置を含めて、諸対策強化をいたしました。  飼料対策としては、いま御批判がございましたが、新たに、粗飼料増産とその効率的な利用を緊急に促進するための緊急粗飼料増産総合対策事業として、これは約三十二億円を計上いたしてまいったわけでございます。  また、いわゆる食糧増産費という形で、農業構造改善事業につきましては、これを推進するための三十億を特別に計上することもできたわけであります。  また、価格対策としては、牛肉あるいはその他の作物の生産振興の各般の施策を推進することとして、所要の経費を計上したことも御存じのとおりでございます。  さらに、水産関係につきましては、沿岸漁場の整備開発、沿岸漁業構造改善、漁港等の生産基盤の整備等につきまして、それぞれの施策を充実してまいったことも御案内のとおりであります。  さらに、農林漁業の金融につきましては、農業近代化資金の貸付枠を前年度に比べまして五割増して、約四千五百億としたのを初めといたしまして、農林漁業金融公庫資金及び農業近代化資金の貸付枠の拡大を図っておるわけでありまして、全体的な予算としては抑制基調の中で組まれたわけでございまして、もちろん十分満足すべきものではないとも思うわけでございますが、その中で食糧自給力を高めていく、現在の国際的な食糧事情の逼迫した中で積極的に農政を推進していくという立場に立っての重点的な施策は、これを推進できるような予算措置はできた、こういうふうに私は考えておるわけであります。
  76. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣はいろいろ答弁されますけれども、都合のいいところだけを並べておっしゃいますが、いずれにしても、先ほどから指摘しましたように、全体予算として、結局、国家予算の一〇・七%に対して一〇・二%と、全体的にも落ち込んでおりますし、また、私がいろいろ指摘しましたように、実際中身を見ましても、当然やるべきことが、若干芽を吹いているとは言いながらも、この予算をもって攻めの農政とは言えないし、また政策転換をするような農政だとは言えないのです。  先ほど申し上げた中の、これは大臣もおっしゃいましたが、緊急粗飼料増産対策費三十一億七千六百万円、これは御存じのように四十九年度の分七億二千万円が入っていますから、実際は二十四億五千万円というふうに私は理解しておるのですが、これにしても実際は焼け石に水みたいなものでございまして、これは、これをもっていかにも農業建て直しだ、長期的視点に立ったものだというような印象を与えるような、しかも、農林予算で本格的な農政転換をするような印象を与えるといいますか、また、これを目玉としていかにも食糧危機ということに政府は真剣に取り組んでいるという印象を与えるような、国民に錯覚を持たせるものだというふうに私たちは申し上げたいわけです。  そういう点から見ますと、実際に今回の農林予算での致命的な欠陥といえば、何といっても、農業を建て直すという面で自給率の向上という点がはっきりと根本的に盛られていないということが指摘されると私は思うわけです。長期的展望に基づいた予算というようになっていないということを指摘せざるを得ない、かように私は申し上げておるわけです。  従来から、高度成長路線のもとに重工業を主として、農業は従としてむしろ切り捨ててきたあり方がいよいよ挫折した今日においては、安定成長下における農業の位置づけができなくなった。そういうために何らかの攻めの農政をしなければならぬというようなことからいろいろと大臣所信表明等で申されておるようにも受けとめるわけですけれども、実際にこういった内容を見ましたときに、従来の場当たり農政、ネコの目農政を一歩も出ていない、従来の延長であると、かように私は指摘せざるを得ないのでございます。  そこで、さらにお伺いしたいのですけれども、再開国会で衆参の本会議でも各党の代表から質問がありまして、世界的な食糧危機に対応する日本農業基本的方向が厳しく問われておったわけです。三木総理にしても、また、農林大臣にしても、食糧確保自給率の向上ということを必ず答弁の中でおっしゃるが、具体的にということになれば、なかなか具体的なものは出てこない。しかも、一月二十九日の参議院本会議における三木総理の答弁なんかを見てみますと、「食糧生産を拡大できるよう潜在的生産力を培養するために土地基盤整備などに力を入れる」とおっしゃっておりますけれども、これも先ほど指摘したように、基盤整備は前年対比三・四%というように、裏づけとなる予算が貧弱なものでしかない現状でございます。だから、私は、こういったことを見ましたときに、食糧危機という国民の心配に対して一つのポーズをとるというような形をとっておられて、実際に具体的な自給率の向上というようなことに対しても、国民の期待にこたえるような方向づけがされていないということを強く指摘せざるを得ないのであります。  大臣もこれは満足ではないというようなことをしばしば言っておられるわけですけれども、日本農業の発想の転換と今後の農政の転換ということを真剣に考えなければならぬときが来ていると思うが、大臣はこれに対しては今後どう取り組んでいかれるのか。いろいろとこちらから質問いたしますと何だかんだと予算に対する答弁をなさいますけれども、これはだれが見ても農政転換の予算とは言えない。大臣はこれに対してどういうように考えておられるのか。  大臣就任後日も浅く、いろいろ検討する余地もなかったと言えばそれまでかもしれませんが、いよいよ五十一年度を目指して、今後また農家が大きく期待を持つような展望に立った決意をしてもらわなければならぬ。大臣就任後の見解あるいはテレビ、新聞、ラジオ等のあなたの発言を聞いていますと、国民が明るい希望を持てるようなことを言っておられましたけれども、実際にわれわれはこの予算を見て、期待はずれをするところが多々あるわけですが、その点についてさらに大臣の決意を承っておきたい。
  77. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の五十年度の予算につきましては、いろいろと御批判はあると思いますけれども、私が農林大臣になりましてから、その予算の編成の段階におきまして、今日の国際的な食糧事情の厳しい情勢の中において、また、わが国高度成長経済から安定成長経済に移行していくという、農業を取り巻く客観情勢が変化したという中において、何としても脆弱化した農業体質強化していかなければならぬという立場に立って、新しい農政を進める芽とも言うべき予算はある程度は盛り込むことはできたとは思っておるわけでございますが、しかし、いまお話しもございましたように、今日の農業を取り巻く情勢は非常に厳しいわけでございますし、そういう認識の上に立って総合的な食糧政策を樹立して、国民の理解のもとにこの政策を推進していかなければと私は思うわけでございます。  そういう意味におきまして、現在農政審議会の中間報告も出されておるわけでありますし、この中間報告に基づきまして、この春ごろまでには、農政審議会の総会におきまして、今後の農政見通しとその対策農政基本等につきまして御答申がいただけるものであると思うわけでありますが、この農政審議会の御答申をいただき、私がいま申し上げましたような認識の上に立って総合的な食糧政策を打ち出して、長期的な視点に立った、この厳しい時代の中における新しい農政を打ち出していきたい、農政基本方向を打ち出していきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  78. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 従来からも、大臣は、農政審議会の答申を待ってとか、必ずこういったことを隠れみの的におっしゃって、その答申を待ってということを逃げ口上みたいになさる。そして、こういう答申が出てもなかなか実行しないのです。あなたも同じことをやると思うからあえて私は申し上げておきますけれども、この農政審議会の需給部会というのが昨年の六月以来検討してきたわけですね。昭和六十年度を目標年次として、わが国農産物需要生産長期見通しと今後の農政に対する提言を盛ったところの「食糧問題の展望と食糧政策の方向について」ということで、先月二十九日に同審議会が報告しております。これは、御存知のように、農業生産力の衰退という現実を踏まえての、今後わが国が目指すべき長期生産目標とか食糧農業政策のあり方ということを初めて打ち出したもので、大変傾聴に値するものだというふうにわれわれはこれを拝見させていただいておりますが、農林大臣はこの報告に対して——もちろんこれは答申が出てからとおっしゃるけれども、すでに出ておりますから、この農政審の部会報告に対してどういうふうに評価しておられるか。その点をあなたからお伺いしたい。
  79. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この報告は、農林省試算に基づきまして農政審議会の需給部会におきましていろいろと御検討いただいて、その御検討の結果、今日のわが国の直面しておるところの内外の情勢の中にあっての農産物需要と今後の生産目標につきましてああいう報告をまとめられたわけでございまして、中間報告の段階でございます。     〔藤本委員長代理退席、委員長着席〕  いずれ総会において答申という形で正式な御答申をいただくわけでございまして、これは先ほど言われましたけれども、審議会に名をかりるというわけではないわけでありまして、三月か四月ごろには審議会の答申が出るわけでございますから、この審議会の答申を受けて、われわれは何としてもこの答申を尊重しながら新しい総合的な食糧政策を打ち出していきたいということであります。現在は中間報告ということでありますし、私たちはせっかくこの報告を受けたわけでございますから、これに対するいろいろな評価をすることは避けさせていただきたい、こういうふうに思うわけであります。
  80. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 答申が出てからまたいろいろ検討するということでしょう。それは当然そうでしょうけれども、私はこの報告で評価できる点が数点あるわけですけれども、従来から経済高度成長が進む過程で農業が荒廃してしまったことをはっきりとこの報告では認めております。そして、自己批判というものをしております。この点は評価すべき問題であると私は思います。また、農林当局としてもこの点は十分反省すべきことであります。  と同時に、問題の一つは、昭和六十年度の総合自給率の目標を七五%として、穀物自給率を三七%としておることでございます。いかに農業が荒廃しておるとは言っても、総合自給率を、四十七年度の七三%から十三年間でたったの二%しかアップできなかったというのでは、目標として余りにも低過ぎるということを私は指摘をせざるを得ません。  そこで、日本農業の衰退に歯どめをかけるというのであれば、もっと高い目標を掲げて積極的にやるべきではなかったかというふうに私は思うわけですけれども、この点について大臣はどういうふうに検討されたのか、お答えをいただきたい。
  81. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 高い目標を掲げるということは、それなりに意味はあろうと思います。しかし、今日の社会、経済情勢の中において、現実的な可能な立場に立って目標を打ち出して、それに基づいて着実に施策を打ち出していくということの方が、今日の食糧農業を取り巻くいろいろの情勢を見るときに正しいのではないかと私は思うわけでございますが、そうした立場に立って七三%の自給率を七五%に十年間で上げていくということについては、人口が相当伸びていく、さらに消費水準も上がっていくという中にあって、食糧生産等も二七%伸ばしていくわけでありまして、現実的に可能な生産、そういう中にあって今後の経済成長というものを十分比較検討しながら出してきた数字でございますので、その辺はひとつ御理解をいただきたいと思います。
  82. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いろいろありますけれども、いま私が問題を提起した中で、穀物自給率一つとっても、四十八年度現在の四二%から三七%と、逆に低下するという点ですね。これもいろいろ理由はあると思うのです。あるけれども、これにしても私はほんとうに残念でならぬのですが、大臣、その点はどうですか。
  83. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 穀物自給率が低下した。これはこの十年間もうずいぶん低下しているわけでございますが、これの一つの原因は、畜産消費畜産生産が大いに伸びた。この畜産の原料が飼料穀物であり、その飼料穀物は大半外国に依存せざるを得ない。この畜産が伸びたということが穀物自給率が落ちてきたことの大きな原因であろうと思いますし、また、もう一つの理由は、裏作における飼料作物だとか、あるいは麦等が低収益のため、高度成長経済の中において農民がこれをつくらなくなってしまった。こういう原因が今日の穀物自給率を落とした大きな二つの原因であろうと思うわけでございますが、畜産の将来というものを予測してみますると、畜産消費につきましても私たちは相当控え目に試算をいたしておるわけでございます。今日のわが国国民の食生活が相当水準が高くなって、欧米並みになった、十年間たったとしてもこの食生活が大きく伸びていくことはないだろう、と、畜産についてもそういう立場に立って、安定成長というふうな考え方で試算をいたしました。  しかし、畜産につきましては、先ほどお話しがありましたように、その飼料穀物については、今後といえども、飼料作物を除いてはこの自給率を高めていくということは非常に困難でございます。やはり、これも外国からの安定輸入に頼っていかざるを得ない。そういうことを勘案いたしましたときに、穀物自給率も今後はふえるということは予測できない、四、五%は減らざるを得ない、こういう試算をいたしておるわけであります。
  84. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 細部にわたっては別途いろいろ詰めることにしまして、時間の制約があるので、若干はしょって質問して大臣の見解をお伺いしておきたいと思いますので、簡潔にお答えいただきたいと思います。  食糧備蓄の問題について若干触れておきたいと思いますが、この食糧備蓄については、御承知のように、早急に日本態度を決めなくてはならぬ問題があるわけでございます。農政審議会需給部会の報告では、国内備蓄の必要を言っているだけで、至って具体性を欠いておるわけでございます。御承知のように、いま、主要国の会議が十日からロンドンで開幕しておりまして、キッシンジャー案に代表されるような米国の備蓄構想がいろいろ述べられております。これに対して、日本、EC等が制度創設に疑問を投げかけながら、かなり強い調子で米国にブレーキをかけておる。このため、今回の会議というものが、性格を交渉の場でなく意見交換の場とするようなことで妥協が成立しつつあるようでございます。そういったことで、大臣もいろいろ情報をキャッチしておられると思うのですが、昨年の食糧会議をもとにいまいろいろこういったことが協議をされておるわけで、今回は結論を出ないと思いますけれども、こういったことについてはあなたの備蓄構想とも関係があるわけです。これに対しては、あなたはどういうふうな見解をお持ちであるか、明らかにしていただきたい。
  85. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 備蓄問題でございますが、今日の世界的な食糧の事情から見まして、世界的にも食糧の備蓄を図れという声も強くなっておることも事実でございますし、こうした背景の中で、御承知のように、昨年ローマで食糧会議が持たれました。また、ことし、この二月にロンドンで備蓄会議が引き続いて持たれたわけでございます。私たちとしても、今日の世界の食糧事情、また、国内におけるこれからの食糧政策というものを考えていくときに、やはり備蓄問題は真剣に取り上げていかなければならないということで、この備蓄会議食糧会議に対しては積極的に参加をいたしまして、そして討議をいたしておるわけでございます。  また、この世界の食糧会議における備蓄問題につきましては、いまお話しのように、今回も結論が出ておりません。これはまあいろいろの各国の思惑等がありまして結論が出るに至っておらないわけでございますけれども、わが国としては、そうした国際的な備蓄問題に対する協力を進めるとともに、国内においても備蓄体制を徐々に確立をしていく必要があろうかと思うわけであります。そうした立場に立って、米につきましては、御存じのように、稲作転換事業はことしは百万トンにいたしまして、そして、ことしの秋には大体百万トンの在庫量が持てる、来年の秋には百五十万トンの在庫が持てるというように、主食であるところの米につきましては在庫の積み増しを図っておるわけでございますし、同時に、また、トウモロコシとか大豆につきましても、民間の備蓄に対しまして国が助成をいたしまして備蓄を徐々に拡大していくという方針にのっとって今度の予算措置も進めておりますし、今後ともそういう方針にのっとって政策を進めてまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  86. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 はしょってお伺いする以外にないが、日本は高温多湿のところであります。気象条件がこういうところでございますから、この穀物国内備蓄という問題はなかなかいろいろと問題があろうかと思います。先年も私はいろいろと委員会でも質問したことがありますけれども、米にしても、いろいろなカビが生えたりして大変問題になったことがございますが、日本における、この高温多湿の気象条件下での備蓄ということをどういうふうに将来考えておられるか。また、大臣は、この備蓄について、米国内に備蓄する意向を固めておられるとも言われておりまして、核のかさではなくて、いわゆる食糧のかさに組み込むというようなことが言われておりますけれども、そういった点はどういうふうにお考えでありますか。
  87. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これから備蓄を進めていく場合におきましても、お話しのように、わが国の気象条件等も十分踏まえて、備蓄の具体的なあり方を決めていかなければならぬのは当然であろうと思うわけでございます。  なお、いまお話しがございましたところの、アメリカにわが国飼料穀物等について備蓄をするという議論は、確かにこれは議論としてはあるわけでございますが、しかし、私どもとしては、今日の段階においてアメリカにわが国の備蓄をするといっても、これはもう保障がないわけでございます。たとえばアメリカが食糧が在庫をついて、わが国に対して輸出の制限をするというふうなことが万一あったとしても、わが国がアメリカに備蓄したものだけは確保できるかどうかということにつきましては、やはり、相手の、アメリカの国内に備蓄するということでありますから、その保証等も、考えてもいろいろと問題があるわけでありますし、それは議論としてはあるわけでございますが、今日の段階においては、私たちとしてはそういうことを進めていこうという考えはないわけであります。
  88. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 安倍農林大臣は、先月、佐賀の記者会見で、世界的な食糧危機に対応するため、三、四年後には米の備蓄を二百万トンまでふやしたいということを言っておられます。先ほどもいろいろ述べられましたが、それと関連して、昭和五十年度で、昭和四十六年度から五カ年計画で進めてきましたところの生産調整がいよいよ終了するわけでございますが、五十一年度以降の米の生産政策についてはどういうふうに考えておられるのか。今後備蓄をふやしていくということはいまもおっしゃっておるわけですが、それと米の生産調整との関係は五十一年度以降はどういうふうに考えておられるか。もうすでに構想を練っておられると思いますけれども、その点を明らかにしていただきたい。
  89. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 稲作転換事業は、この五十年度で終わるわけでございます。  五十一年度以後どうするかということでございますが、米の需給の動向も十分把握しなければなりませんし、それから、米以外の他作物への転換の可否といったようなことも改めて検討もする必要があると思いますし、世界的な食糧の状況というものを十分把握しなければならぬわけでございますから、そうしたもろもろの情勢というものを十分検討して、その上に立って判断を下したい、こういうふうに思っております。
  90. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 今回の農政審議会の需給部会の問題でいろいろ関連してお尋ねしてまいりましたが、この報告に対して、いま、識者やあるいは農民の中から非常に厳しい批判が出ておることを、私は、この質問の一応の締めくくりとして申し上げておきたいのであります。  政府がどんな見通しを立てていっても、実際に農業をやるのは農民である。いま農民はみんながやる気をなくしている。畜産農家がその典型である。高度成長期におだてられて借金し、莫大な設備投資をした。それがいま生産資材の高騰や価格の不安定できりきり舞いをするような状態になっている。さらに、裏作の活用といっても、小麦をつくるよりも日雇い労働の方がもうかるという現実をどう政府は見ておるのだろうかとも言っておりますし、さらに肝心なのは、数字を並べるだけでなく、どうやってそれを実現するか具体的な努力をしていただきたい、食糧危機だとか、増産をしろだとか、かけ声だけかけられても、自分が犠牲になるだけだったら農民は動かぬぞ、と、こういったことを強くわれわれに訴えているのであります。いずれにしても、具体的な自給向上策の提起がないし、また、農民の側に立った今後の食糧政策とは言いがたいということはいま指摘したとおりであります。私は、今回二%アップという低い目標であるとは言いながらも、政府の取り組み方いかんではこの目標にさえ到達しないのではないかというふうな気がしてなりません。  そこで、大臣にこの点で最後にお尋ねしておきますが、農政審議会の答申が出たら、というふうにおっしゃいますけれども、これが出ましたならば五十一年度予算に生かしたいというようなことを言っておられるが、本当にその気で今後検討をし、この答申を尊重して五十一年度予算に反映させるという決意でおられるのか、その点、さらにあなたの決意のほどを承っておきたい、こういうように思います。
  91. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農政審議会の答申を得て、その上に立って総合的な食糧政策を打ち出す、もちろんこれは五十一年度以降の予算に盛り込んでいかなければならないものである、五十一年度予算については、少なくともこの基本政策を中心として予算が編成さるべきものである、こういうふうに考えております。
  92. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農政審の答申、五十一年度予算にはそれを中心として盛り込まれるべく考えていくということでございますので、ぜひそういうようにいまから腹づもりを持って臨んでいただきたいということを強く申し上げます。  そこで、大臣にお伺いしたいのですが、農業基本法の問題で、これについては私も数年来本会議あるいは当委員会でしばしば指摘してきたところでありますけれども、歴代の大臣も、現在の農業基本法が基本となる考え方は現在でも妥当であるというようなことをよくおっしゃる。安倍農林大臣もそのようにおっしゃっておるわけですけれども、去る一月三十一日の午後に、小倉農政審議会長が、記者会見において、いまの農業基本法は高度経済成長前提としたもので、実情にそぐわなくなっている、改めるべきだと言っている。当然です。ああいった時代と現在とは背景が違うわけです。それを大臣はどうしても、現在でも妥当であるというようにおっしゃるけれども、その点はどこが妥当なのか、どうしてもこれを改正する必要はないのか、その点を簡潔にお答えいただきたい。
  93. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、農業基本法は三十六年にできまして、今日とは農業を取り巻く客観情勢は大きく違っておることは事実であろうと思います。しかし、前にも申し上げましたように、農業基本法のいわゆる基本的な理念といいますか、その根幹につきましては、三十六年の農業基本法をつくった当時の基本的な理念は今日においても変わっていない、間違ってはいない、こういうふうに私は思うわけでございます。小倉農政審議会会長から農業基本法を変えるべきであるという御発言があったということも聞いておるわけでございます。小倉会長は農政審議会の会長でございますし、今後はこうした問題も含めて農政審議会で検討はされるのではないだろうかとも考えておりますが、私は、農業基本法の基本的な考え方あるいはその根幹というものは間違っていない、これからやることは、農政審議会の答申をいただいて総合的な食糧政策を打ち出し、そのもとに着実に具体的な政策を一つ一つ裏づけをしていくということがむしろ大切なことじゃないだろうか、と、こういうふうに思うわけであります。
  94. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 意味ある答弁ですけれども、あえて再度お伺いしておきます。  農政審議会の答申が出たならば十分反映するということでありますが、小倉会長が現にこういったことを中間的におっしゃっておるわけですから、おそらく答申の中には農業基本法の改正等意見が強く盛り込まれてくるのではないか。大臣もそのことは予測しておられると思うし、先日来の答弁を聞いていても、まだ、そのことで具体的に会長に会って聞いたわけではないので自分は十分承知していないというようなことでおられる。実際は知っていてもそういうようにおっしゃっているのだろうと思うけれども、そういう答申が出た場合は十分それらを含めて前向きに検討するというふうに理解していいのか、お答えをいただきたい。
  95. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農政審議会の答申はこれを尊重して、その上に立った政策を打ち出していきたいと思っております。
  96. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 十分そのように対策を講じていただきたいと思います。  次に、農林大臣に食管制度についても一点お伺いしておきたいが、あなたが大臣に就任なさって、食管制度について私も明確にお答えをいただいておきたいと思ってお尋ねするわけですが、三木総理が、先月二十一日の閣議で、財政硬直化打開の方策を、五十一年度予算編成に間に合うように財政制度審議会、地方制度調査会で審議してもらいたいと大平蔵相に指示しております。これを受けて大平蔵相は、真剣に硬直化打開に取り組みたいと述べ、まず、食管制度を初め国鉄、健保の三Kの見直しがあげられると、食管制度をトップにあげておるわけでありますが、これまでもこの食管制度についてはさまざまな見解、議論がなされておることは御承知のとおりであります。農林大臣は、先月の農民団体との会談の席上でも、財政硬直化に対処して食管財政問題も農林省として研究しておく必要があるというふうな意味のお答えをしておられますけれども、今後、食管制度について大臣基本的にどのような考えでいくのか、この席で明確にお答えをいただきたいと思う。
  97. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 食管制度につきましては、従来から、米麦の需給及び価格を安定させることにより、国民食糧確保国民経済安定のために重要な役割りを果たしてまいったことは御承知のとおりであります。また、今日国際的に食糧事情が逼迫基調にあるという状況のもとで、私は、食糧管理制度の果たす役割りはさらに重要なものになってきておると思うわけでございます。したがって、制度の根幹は維持しながら、今後はその適切な運用を図ってまいりたいと考えておるわけでございまして、いま硬直化の問題で食管制度のことが云々されておるわけでございますが、今日の食管の赤字というものはいわゆる逆ざやが最大な要因でございますので、今後はこの逆ざやをいかにして解消していくかということについて努力をしていかなければならないものである、食管の根幹はあくまでも維持していく、今日においてはさらに食管の役割りは大事になってきておる、こういうふうに考えております。
  98. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もう一点お伺いしますが、休耕田の問題で、大臣も、昨日の予算委員会で、この休耕田に対して今後調査をして強力に進めていくということを答弁されたわけですが、不作付田の対策として、緊急実態調査活動費として、ことしの不作付田の復元可能性等に関する調査の費用が——昨年度はゼロですけれども、今年度は八百二十一万七千円が計上されております。この調査の内容は、どのくらい復元できるか、また、もとの水田に戻るためにはどのような投資をやったらいいかというようなことの調査のようでございますが、食糧危機対策として農地確保と裏作の重要性が叫ばれておるときに、これはもう焦眉の急務であります。八百二十一万七千円ぐらいのお金で何ができるのかと思うのですが、これは調査費用だということであればそれまででありますけれども、この調査の内容と、それから、来年度からこの事業実施に踏み切れるのかという、その点の見通しを伺いたいのと、また、この休耕田については、国の施策によって休耕を強いられたわけでありますので、国の費用によってこれを復元すべきであると訴えておるのですが、その点お答えをいただきたい。
  99. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 休耕田は四十九年度に打ち切られたわけでございますが、それまでに大体二十七万ヘクタールぐらいあるわけでございます。その大多数は復元をいたしておるわけでございますが、まだ、都市近辺での転用待ちの農地あるいは山間僻地のいわゆる谷地田といったような農地が復元をしていない、そういうような状態だというふうに聞いておるわけでございます。しかし、いまお話しがございましたように、こうした不作付地は何としても早く復元をして農地としての戦力を持たなければならぬということで、昭和五十年度予算に、まだ実態を十分把握しておりませんので、この実態を把握するための調査のための予算措置をつけたわけでございまして、調査の結果を待って、こういう遊んでおる農地が復元ができるようにいろいろの対策を講じていかなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  100. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 実態把握のために調査をする、そしてその結果いろいろ対策を講じていくということでございますが、これはもう遅きに失するわけでございます。国の施策によってこのような休耕田ができたわけでありますから、ぜひひとつ国の高額補助によって、まあ全額とまではいかなくても高額補助によって復元をし、そして今後の裏作あるいは食糧危機に対処するための施策に十分反映できるように、当局も来年度からは事業ができるように進めていただきたいということを重ねてお願いしておきます。  次に、通告いたしておりました林業問題について若干お尋ねをいたしたいと思います。  農林大臣は、所信表明で本年度の林業予算についても述べておられますけれども、まず最初にお伺いしたいことは、昭和五十年度国有林野事業勘定を見ますと、御承知のように、昭和四十九年度が収入二千四百五十四億円、支出が二千五百八十三億円、差し引き赤字百二十九億、損益で、補正予算を含めて、恐らく見込みでしょうが百十三億ぐらい黒字になるというような状態であります。ちなみに四十八年度は収入が二千三百十二億円、支出が千九百十四億、差し引き黒字三百九十八億、損益で九百五十九億の黒字、こういうことになっております。これには、国有林はもちろん標準価格によって、民間が高くなっても余りもうけないようにというようないろいろな意見もありますけれども、それは別として、ことしのこの予算を見ますと、五十年度は収入三千二百十五億、支出が三千三百四十五億、差し引き百三十億の赤字で、ベースアップ等をいろいろ加えますと、恐らくこれは相当の赤字に損益上ではなるのじゃないかということで、実は憂慮いたしておるわけでございます。人件費の倍率が約七〇%というふうに四十九年度では見られます。そういったことからずっと計算してみましても、ことしは国有林野事業勘定はかなりの赤字になるのじゃないかと思うのですが、これに対して大臣はどう見ておられるか。対策と真剣に取り組んでおられると思いますけれども、この点、まず一点お尋ねをいたします。
  101. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国有林の健全な経営ということは一番大事なことでございますので、今後とも経営改善のためのあらゆる努力をいたし、国有林野事業が健全に運営、発展をするように努力をいたしたいと思っております。
  102. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大臣はきのうも予算委員会の一般質問で大分厳しいことを言われて、三木大臣はどうして安倍さんを農林大臣にしたかなんといって、国有林野問題で厳しい指摘を受けておられたけれども、林業関係についてはちょっと弱いようだけれども長官、どうだ、林野庁長官が来ているけれども、あなたはどういう見通しを立てておるか、簡潔にちょっと答えてくれ。
  103. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  ただいま大臣からお答え申し上げましたように、私ども、従来から林政審議会における答申に基づきまして経営改善に努力いたしているところでございます。ただ、先ほど来先生から御指摘のような数字の予算になっておりますけれども、五十年度につきましての△の百三十億につきましては、持ち越し現金がございますので、それで充当してまいるつもりでございます。しかし、長期的に見ます場合は、いままでのように価格がいつまでも上がるというようなことが期待できるわけでもございませんし、かてて加えまして伐採量が減少するという実態もございます。そういたしますと、収入の減というのはこれは当然でございますので、先ほど大臣がお答えされましたように、支出を充分節約しながら、また、経営改善等を図りながら、そして対応する人件費等もそれは当然でございますので、それらを見ながら私ども経営に努力してまいるつもりでございます。
  104. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大臣は、農林大臣所信表明の二十二ページに、「このため、改正森林法に基づき、林地開発許可制度の適正な運営に努めるとともに、造林の推進、林道網の整備等による」云々というふうにおっしゃっているのだが、これは所信表明を変えてもらいたいと思ってお尋ねするのだが、どこを見ても造林の推進なんということは考えられない。よくおくめんもなく書いたものだと思うのですがね。  御承知のように、造林事業の推進計画を見ますと、昭和四十八年から六十二年の十五カ年計画量は四百八十七万七千ヘクタール、うち、国有林が八十五万四千ヘクタール、民有林が四百二万三千ヘクタールとなっております。一年間の平均量を見ましても三十二万五千ヘクタール、国有林が五万七千ヘクタール、民有林が二十六万八千ヘクタールとなっておりまして、ことしの造林事業の予算を見れば、四十九年度が百七十五億九千八百万円で、五十年度が百八十四億五千万円ですから、確かに八億五千二百万円はふえておりますけれども、実際には、物価高その他から見れば、こんなものは当然もう自然増で、あたりまえのことであります。ところが、この面積を見ますと、人工造林は昨年度十五万二千八百五十ヘクタールに対して、ことしは十二万九千四百五十五ヘクタールということで、二万三千三百九十五ヘクタールも減っております。まさにこれは後退です。もちろん、伐採や、土地が少ないとか、いろいろ理由はあるにせよ、完全な後退です。  しかも、ちなみに申しますと、造林の補助単価の改善等を見ましても、少なくともわれわれは人夫費は一日日当三千円というように要求したのにもかかわらず、昨年が二千四百円だったのが、ことしは二千八百円で四百円伸びただけで、三千円にはほど遠い。春闘を見ても、また、公務員のベースアップを見ても、三割五分も上がっているこの時代に、どうしてこんな安い人夫賃で造林の推進が図れるか。こういったことを思いましたときに、まことに残念でたまらない。林野庁長官もどういうふうな折衝を農林大臣とともに大蔵省にやったのか知りませんが、この点を見るにつけても、面積が減っている。金額は物価の値上がりで八億ぐらい上がるのは当然あたりまえです。こうして見たときに、この大臣所信表明である造林の推進などということはおくめんもなく書けるわけがないと私は思うわけです。造林の推進とこれで言えるかどうか。  国土緑化ということは息の長い仕事で、特に力を入れていかなければならない問題です。こういったことを考えましたときに、これに対して大臣はどういうふうに検討され、どういう考えであるか。また、造林の推進と言われたからには根拠があって言われたと思うが、その点、明快にお答えをいただきたいと思う。
  105. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 森林資源確保するということはきわめて大事な国政上の課題であります。そのためには造林事業を推進していかなければならぬわけでございますが、今回の予算におきましても、森林組合等が行う拡大造林に対する助成あるいは除間伐に対する助成、さらに農林漁業金融公庫の造林資金の貸付条件等改善強化を財政、金融両面にいたしましてしておるわけでございまして、全体的に見れば一歩前進をしておる、こういうふうに私は考えておるわけであります。
  106. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 これは一歩でなくて、三歩後退しております。これはここでいろいろ言ったって時間もたつので、いずれまた当該委員会でいろいろと林野庁長官にもお尋ねをし、また、林野庁ばかり責めてもしようがないことなので、大蔵省等にも厳しく言って、今後、国土の緑化という意味からも国土の資源培養という意味からもこれは進めていかなければならぬ問題でありますので、十分に検討していただくよう指摘をしておきます。  次に、森林組合問題調査検討費が百十二万四千円計上されております。これは森林法及び森林組合合併助成法の一部改正の法律が昨年七十二国会で成立し、昨年の十二月三十日に施行になりましたけれども、この中でわれわれが指摘しましたいわゆる森林組合の単独法の問題で、附則第二条に、「政府は、森林組合の組織及び機能について検討を加え、その結果に基づいて法制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。」という法律に明文化できましたところの画期的なことがあったわけですが、これに対する調査費、おそらくこういうことであろうと思うわけです。それにしても、つけないよりはましですけれども、百十二万四千円とはまたずいぶんみみっちい予算であるけれども、一応芽を出したということでは私は評価しておりますが、大体、この百十二万四千円で何をしようとされるのか。その点、簡潔にお答えいただきたい。
  107. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおりでございまして、改正森林法の附則第二条の規定に基づきまして、私ども五十年度以降これらの調査をいたしまして、問題になっておること全体を含めまして検討しようということでございます。特に、五十年度百十二万ということでございますが、これは森林組合の事業の推進を図るということを目的といたしまして、委員会を構成いたしまして、その委員会の運営に必要な経費を盛ったわけでございますが、この附則第二条の趣旨等を含めまして、広い範囲で検討を開始しようという趣旨のものでございます。
  108. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ことし予算がわずかでもついたということは結構なことであります。どうかこの芽を絶やさぬように今後十分検討して、早く所期の目的が達せられるように努力していただきたいと思います。  時間がないのではしょってお尋ねしますが、海外技術協力費というか、南方造林技術指導費というものが林野庁で組んであります。一千七十七万一千円ありますけれども、昨年はゼロに対して、ことし新規に新しくこれを組んであります。これに一々けちをつけようと思わないけれども、今後のこともあるので、あえて大臣所信表明に当たって指摘をし、十分反省して注意をしていただきたいと思うので申し上げるわけですが、この海外技術協力費は、日本の林業を推進し、造林等もずいぶん進めなければならぬものがまだたくさんあるにもかかわらず外国の世話どころかと、こういう意見もあるわけです。しかし、いろいろと外材に依存しておる日本としては、将来のことも考えてそうばかり言っておられないこともよくわかるわけですけれども、せっかくのこの予算が海外発展途上国のためになるようにならなければならぬ、外材輸入業者のためになってもらったのでは問題である、通産関係で外材をどんどん輸入し、また伐採してきたものを農林省、林野庁が後始末に行くというふうなことでは決してあってはならぬ、かように思うわけです。一部では、これは農林省のOBの食い物になるという声も出ておるわけですが、そういうことにならぬように、批判を受けないように十分対処してもらいたい。  そこで、予算をつけたからには 生きる予算として今後真剣にこれを使っていただくということが大事であるということで私は指摘せざるを得ないのでありますが、その点について林野庁の、あるいは大臣の見解を承っておきたいと思います。
  109. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  御承知のとおり、国内木材の生産は停滞いたしておりまして、外材が六五%近くなっております。したがって、秩序ある外材の輸入のためにも、あるいは世界的な不足物資でございます森林造成という意味におきましても、国際協力事業団等を通じました国際協力というものを非常に強く展開する必要がございます。それにつきましても、造林の技術ということは、私どもそういう資金的な援助はございますけれども、造林等を進めるに当たりましては、適地調査あるいは技術というものを十分そこに定着させるということがやはり造林の一番の根底になるわけでございます。それには、私どもの持っております技術をそれに投入するという意味で、現在南方造林協会というものがございまして、すでに二、三年実験的な試験的な造林をいたしております。それにさらにてこを入れましてりっぱな造林技術が定着するように努力する、と、そういう意味の予算でございます。
  110. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 長官がおっしゃったように、せっかくそのように努力していただきたいと思う。  そこで、もう一つ林野庁関係でお伺いしておきますが、いろいろありますけれどもあとは当該委員会でお尋ねすることにしまして、林産物生産流通改善対策費についてであります。この中で素材生産流通近代化対策事業費というのがあります。一千五百三十一万一千円計上されておりまして、昨年の約四倍になっております。その中で新規に共同取引推進事業費が、三分の一国庫補助で、二十組合に対して、昨年はゼロであったのが、昭和五十年度は一千五十万七千円というものが組んである。これは一説には選挙運動費だということでいろいろ指摘されておるのでぼくはあえてお伺いするのですけれども、この二十組合に対しての一千五十万七千円というのは、国有林のあるところの素材生産者、すなわち任意組合に対して補助金を出す考えのようであります。今年度は共同取引推進事業費という名目で出されておりますが、二十組合に対して一千五十万七千円、三分の一補助ということでございます。私は、肩書きでこれが実行できるかと言いたいわけでありますが、国有林のある当該県及び森林組合は、こういったものがだんだん強化されてきますと実際は困ると言っておるわけです。もちろん、組合の取り扱い量も二〇%くらいで少ないというようなことで、こういった業者の方たちがやらなければならぬという点もあることはよく承知しておりますけれども、実際には、昨年の森林法の大改正によりまして、いよいよ森林組合を育成強化して、今後単独の立法にまで持っていこうというときに、また、林野庁も相当力を入れていこう、各党一致してその推進を図ろうというときにこういうことがあるということは、これは逆なことになりはせぬかということで実は私は懸念をいたしております。林野庁に言わせればいろいろと見解はあろうかと思うのですけれども、国有林のあるところの森林組合、県は、これは本当に困ると言っておるわけで、実際問題として、これは選挙運動の基金になっておるのじゃないかというふうなことまで批判が出るくらいです。  十分対処してもらいたいと思うが、大臣、この点については、あなたは提案に当たって十分承知しておられるか。こういったことも十分考えて今後監督指導をやってもらわなければいかぬわけですが、あなたの見解を承りたい。
  111. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のございました素材生産流通近代化対策事業でございますが、すでに御承知と思いますけれども、全国に二万五千の企業体がございます。それが非常に零細で、兼業が多いという実態でございます。そのままでは将来の労務の確保とかあるいは国産材の円滑な生産というものがなかなかできないというようなことでございまして、四十九年度からこの事業を開始いたしておりまして、すでに、四十九年度に、七県につきまして、これは国有林とか民有林とかいうことは抜きにいたしておりまして、協同組合等が組織化されたのでございます。したがって、五十年度は新たにまた実験程度につきましてこの組織化を図りますと同時に、さらに取引の共同化というようなことを指導してまいりたい、そして生産販売まで流通の担い手としての資格を持っていくように、と、こういう指導をする予算でございます。  なお、ただいまの先生の御指摘は、森林組合もそういう仕事をやっているのじゃないかというお話しでございますが、森林組合が全国で素材生産をいたしておりますのは、民有林につきましては八%でございます。九二%がこの方々で生産されております。しかしながら、ある面におきまして、森林組合等が構造改善事業等を通じましていろいろてこを入れた結果、そういう能力を持ってきているというところもございます。そういう面のところにつきましては、私ども、十分調整しながら両建てでこれを育成強化していくということを考えておるのでございます。
  112. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 一応時間もせまってまいりましたので。一応お聞きしておくということにしますが、大臣、いまお聞きになったようなことがあるわけでございますが、誤解がないように十分注意していただきたいと思うわけであります。森林組合の力が弱いがゆえに昨年はあれほど大改正をして、今後強化していこうということで、将来森林組合の育成強化を図ろうということなんですから、むしろ、森林組合を強化するということを主たる目標として十分やっていただきたいということを申し上げるわけです。当該県あるいは国有林を持った森林組合等では、素材生産業者が暴利をむさぼっておるのに国が何のために補助金を出すのかというふうな端的な批判があるわけでございまして、矛盾があるという点を私は指摘しておきますので、林野庁長官は公開の席ではいろいろと答弁をしておられますけれども、そういったことについても大臣も十分かみしめて勉強していただく、そしてまた今後指導していただくということで、本日はこの程度にとどめておきます。  最後に、時間があとわずかしかございませんから、通告しておりました漁業問題について、若干はしょって、まとめて数点お尋ねしますので、時間の範囲内でお答えをいただきたいと思います。  漁業問題については、何といっても一番大きな重要な問題は漁港の整備であります。第五次漁港整備計画の期間内完全実施と昭和五十年度予算の大幅増額をわれわれは千百四十億要求したわけですけれども、実際には今年は半分ちょっとぐらいしか予算計上ができませんでした。また、第三種漁港の国庫負担率の引き上げについても見送られました。これについて、重要な漁港整備の問題は今後強力にやっていかなければならない問題でありますので、この点は今後ぜひ進めてもらいたい。これに対する見解。  それから、沿岸漁業の総合的振興対策事業の推進の中で、沿岸漁場整備開発事業の推進が二番目に重要な問題でございます。この点についてはついに見送られたわけですが、五十一年度からは、われわれが要求しておりました二千億以上の予算をぜひ計上して、計画を立て、実際に推進を図るように、大臣もいまからその腹づもりで進めてもらいたい、何といっても、沿岸漁民が一番夢として考えている問題でありますし、また、この沿岸漁場の見直しということについては最大関心があるわけです。  いろいろ指摘したかったのですが、時間がありませんのでこの二点について簡潔にお答えいただきたいことと、私は、去る十二月二十七日に、農林省及び外務省に対して、ソ連漁船団による漁業被害の救済措置並びに早期解決についていろいろ申し入れをいたしましたが、御承知のように、北海道でも、昨年十一月からことしの二月六日までに、現在すでに一億四千万円の被害が出ておりますし、漁民は大変苦しんでおります。四項目の申し入れをしましたが、特に、四十六年三月から四十九年三月以前の被害補償として、九千六百万円を外交チャンネルを通じて外務省からソ連に提出しておるわけですけれども、いまだにソ連の補償ということでの誠意ある回答がないが、これがどうなっているかということを簡潔にお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  113. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 漁港につきましては、漁業者の生産基盤を拡充するという意味におきまして最も大事な予算でございまして、農林省といたしましても漁港予算獲得のためには努力をいたしたわけでございますが、漁港予算は御存じのように公共事業費の一環でございまして、全体的には抑制基調という中にこの編成も行われたわけでございますが、しかし、その中においても漁港の重要性が大いに認識をされまして、一般の公共事業費がゼロ%の伸びという中において、漁港予算は九%五十年度で伸ばすことができたわけでございます。しかし、五カ年計画を推進するに当たってはもちろん十分でもありませんし、五カ年計画の進捗もおくれておるわけでございますが、われわれとしてはさらに今後とも漁港の整備充実のためには全力を尽くしてまいりたいと思っておるわけであります。  さらに、沿岸漁場の整備開発と漁場の環境の保全は、これまた漁業の政策を進める場合における重点でなければならないわけでありまして、その意味におきまして、本年度は四十億の予算を獲得をいたしまして、それに基づきまして漁場の整備等を進めていくわけでございますが、五十一年度から新たに長期計画を立てまして、その長期計画のもとに漁場の整備促進を図っていきたいと思っておるわけであります。  それから、北海道から千葉県沿岸に至る日本の漁場をソ連漁船が荒らしておるという問題につきましてはわれわれも非常に憂慮をいたしておるわけでございまして、この被害も多額に上っておるわけでございます。昨年は日ソ間で交渉をいたしまして、ことしから日ソ間でソ連漁船の日本海岸における操業についての日ソ間の専門委員会をつくって、これについての協定を結ぶという約束ができておるわけでありますから、この約束に基づいて交渉を進めていきたいと思うわけでございますが、ただいまお話しの補償要求につきましては、御指摘のように、外務省、外交ルートを通じましてソ連にしばしば申し入れておるわけでありますが、ソ連としては現在までのところ何ら返答をしておらないというのが今日までの情勢でございます。
  114. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以上で、一応終わります。
  115. 澁谷直藏

  116. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は、先般当委員会において安倍農林大臣が表明されました所信に関連して若干の質問を行いたいと思いますが、時間の関係もありますので、基本的な問題にしぼってお尋ねいたします。     〔委員長退席、中川(一)委員長代理着     席〕  なお、その中には、昨日行われました同僚委員の質問と重複する点もいささかあると思うのでございますけれども、質問の順序の上で若干重複する点があったら、それは御了承願いたいと思います。  まず、最初にお尋ねいたしたいと思いますことは、所信表明の中で、大臣は、「従来の高度成長から安定成長経済運営の基調を移行させていかなければならない」と言われております。この言葉は先日も三木総理もそういうことを本会議で言っておりますが、私が農林大臣に承りますことは、そういうことが日本農政にどういう変化を来すか、農政の位置づけをどういうふうにすることになるかということで、この点を具体的にまず承りたいと思うわけでございます。
  117. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 わが国経済は、御案内のように、この十年間高度成長をひたすら続けてまいったわけでございまして、この高度成長によりまして、一面においては確かに、農家の生活水準が高くなるとか、あるいはまた農家の所得が向上するとかいう面も出たわけでございますが、反面におきましては、農地の著しい高騰あるいは農地の改廃等も行われるし、さらに、農業労働力流出していくというふうな現象も出てまいりましたし、また、農業者の農業に対するところの意欲も高度成長の中で低下をしたということも否めないことであろうと思いますし、また、農村が過疎化していっておるというふうなこともあったわけでございます。高度成長には、そういう農業に対する大きな圧力といいますか、いろいろとひずみが出てきておるが、こういう高度成長が今後は安定成長に移行をしていくということになってくれば、それだけに経済の路線が違ってくるわけでありますから、農業における、あるいは農村におけるこれに対する態様が高度成長時代とはいろいろと変わってくるのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  118. 稲富稜人

    ○稲富委員 大臣、そうかたくならぬで、平たく御答弁なさって結構でございます。  いまの日本農政が今日後退してきたということは、高度成長というものが、あるものにはよかったかもしれないけれども、農政の場合はいい影響を与えていないと私は考えます。これが十年間にわたるわが国農業の後退の事実であったと思うのでございます。それで、私は、この際こそまず農業基本法のできた当時の原点に返って、日本農業の将来をどうするかということをここで再検討する機会が来ているのではないかと思うのでございます。こういう点から私が安倍さんに非常に期待するところは、御承知のとおり、農業基本法をつくるということを最初に発想したのはあなたのお父さんである岸内閣でございました。あなたはその時分に岸内閣総理大臣の秘書官をしておられたと思いますので、その点の事情はよくおわかりになっていると私は思うのでございますが、御承知のとおり、ちょうど昭和二十八年をピークといたしまして、それまでの日本の農林予算というものは、二十八年までは非常に上がってきたけれども、二十九年から年々歳々減少するというような事態を生じた。それで、農民の間には、これで一体日本農業はいいのであるかという心配が生じて、これが日本農業が曲がり角に来たんだと言われた原因だと私は思うのです。それに立ち向かったのが、すなわち岸内閣総理大臣であって、これに対処する意味で岸内閣総理大臣農業基本法をつくるという調査会をおつくりになった。そして、途中で岸内閣は退陣をされたので、それにかわって池田内閣が、その意思を継いで農業基本法の制定をやられたということはあなたも御承知のとおりであると思うのでございます。  ところが、せっかくそういうような趣旨から農業基本法が三十六年に成立したけれども、その直後に池田内閣は所得倍増計画を提唱し、高度経済成長政策を提唱した。これに便乗したのが日本の財界であったことは御承知であると思うのでございます。すなわち、これによって経済同友会は、「日本農業の将来への提言」という論文の中において日本農業の国際分業論というものを提唱された。私は、そのときに、経済同友会の国際分業論が日本農業にとんだ影響を及ぼすんじゃないかと思いまして、予算委員会で、赤城農林大臣に、この財界の提唱に対して日本政府は屈するんじゃないかという質問をしたことがあります。ところが、そのときには、赤城さんは、そういうことはありませんということを答弁いたしておりました。ところが、年々歳々日本農政が後退してしまって現在のような状態になったということは、これはもうすでにあなたも御承知のとおりであると思うのでございます。  それで、政府がやってきたんだから、高度経済成長政策が悪かったということはあなたはなかなか言えぬかもしらぬし、高度経済成長政策が日本経済によかった点もあるか知らぬけれども、日本農政においては決していい結果はもたらしていないということを私たちはここで十分考えなければならないと思います。そして、その結果は、せっかくできた農業基本法が空文化してしまったという事実の上に立って、私たちは、その反省を——私は、そういうことになったことについてあえてあなたを責めませんけれども、そういう反省を率直に認めながら、その反省の上に立って、将来日本農業をどう確立するかということに向かっていくことが今日の日本農業を確立するための一番重大な問題じゃないかと思うし、ここにおける安倍農林大臣の使命もまた非常に大きいと思うし、われわれがあなたに期待するところもそこにあると思うのでございますが、これを私はあなたに特に希望したいと思うのであります。  それで、あなたは先日大臣になられましてから、その点から、守る農政から攻める農政へということを言われております。私もその言葉には賛成でございます。いままでの日本農業というものは、いま言うように、後退する農政の中においてどうして日本農業を守るかということに非常に苦労されている。ところが、幸か不幸か世界的な食糧危機というものが表面化してまいりまして、政治家のみならず、すべての国民が、日本農業はこれでいいかという反省の中に立っていると私は思う。このときにおいて守る農業から攻める農業へ転ずるということは、日本農業をこの際どう確立するかということなんです。それで、私は、その点は攻め方があるでしょうと思うが、この点において農林大臣がどういう決意を持っておられるか、その反省の中からあなたの考え方を率直に承りたいと思うのでございます。
  119. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、いま稲富先生がお話しになりましたように、わが国は戦後ずっと食糧の危機が続きまして、食糧確保するということが国民的な大きな課題であった時代が長く続いたわけであります。そういう中にあっては農業のウエートというものは非常に大きかったわけでありますが、その後日本経済が国際社会の仲間入りをして高度経済成長がスタートしてくるという段階になってくると、いまお話しがございましたように、食糧問題というのはどっちかというとそっちのけになる、金さえあれば食糧は外国から安く買えるというふうな時代を迎えて、むしろ、農政農業というものが戦後の中において占めた地位というものをだんだんと失ってきた。そして、高度成長の中においていろいろのひずみが農村においても生まれてきた。  もちろん、高度成長の中には農村にもたらした生活水準等の高まり等もいろいろとあると思いますが、しかし、農村におけるいろいろの問題が生じたことも事実じゃないかと思うわけでございますが、ようやく最近また国際的に食糧事情が逼迫をしてくるというふうなことで、国内においてもまた、いままでの高度成長から安定成長へ移っていくというふうな段階になって、農政とか農業というものに対する国民の関心も最近は非常に高くなってきたと思うわけで、経済界も、いまお話しのように、昔は、高度成長時代は、どちらかというと国際分業論だとかいうふうなことを盛んに言っておったのが、経済界に至るまでが食糧問題はやはり大事だということを言い出すような情勢にまでなってきたということで、農業農政に対する国民的な関心は最近非常に高くなってきた、この機をとらえて率直に反省するものは反省した上で新しい農政の確立を図っていかなければならない、そういう意味では農政一つの転換をする情勢がちょうど客観的に迫ってきておる、そういうふうに私は率直に思っておるわけであります。
  120. 稲富稜人

    ○稲富委員 私も、安倍農林大臣のそういうような決意があるだろうという期待をし、あなたの攻める農政へという期待をしながら、五十年度の予算もその点が十分組まれるだろうという期待を実はしておりました。  ところが、はなはだ残念なことには、今回の予算を見ますと実に期待外れの観が多いのでございまして、この点を今後の問題として十分考えてもらわなければいけないと私は思うのでございます。もちろん、内容的に見ますと、麦、大豆、飼料、なたね等の増産方針が強く打ち出されて、価格政策の拡充等、農業保護の色彩が少々明らかになったことは私も多とするわけでありますが、しかし、大臣のいわゆる攻めの農政とは一体どのようなことを志向されておるのかということとへあなたが本当に攻めの農政と言われるなら、農林予算の中にもっと具体的なものが組まれてよかったのではないかということ、こういう点が私は非常に残念でたまらないのです。なぜそういうような農政になったのか、あなたは攻める農政だと言いながら、しかも、いままでの日本の十数年来の農政の後退であるという事実の反省の上に立ちながらなぜこういう農政にしかならなかったのか、これはもちろん自民党の基本的な一つの政治姿勢にあるだろうと思うのだけれども、その政治姿勢を打ち破って農政を樹立すること、ここに農林大臣としての大きな使命があると私は思うのでございます。  これに対して私は非常に遺憾であるけれども、これをもって全部を私は責めるわけではございませんが、ことしはそれであっても、将来、この点に対してどういう償いをして、日本農業に対して本当に責任をもってどういう健全な農政を確立しようとなさるのであるか、その決意をいま一度承って、私は次の質問に移りたいと思うのでございます。
  121. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 五十年度の予算につきましては、いろいろと御批判もあるわけでございますが、私としても精いっぱいの努力をいたしました。各方面の御協力もいただきながら編成をいたしたわけでありますが、抑制基調の中の農林予算ではございましたけれども、その中には、多少評価もしていただけるような、今後の農政を展望する上におきましての芽を出すようなものもできたとも思っておるわけでございます。しかし、今後の農政の発展ということを考えるときに、こういうもので満足すべきものでないことは当然でございまして、新しい決意を持って、総合的な立場に立った食糧政策というものを、総合的、長期的な視点に立った食糧政策というものを何としてでも私の時代に打ち出して、五十一年度からの予算の裏づけを獲得しなければならない、そういう決意に燃えておるわけでございます。
  122. 稲富稜人

    ○稲富委員 どうしてもこれは三木内閣が来年まで続かなくちゃ困るということになりますが、あなたがそれだけの決意であるならばその点に大いに期待をしなくちゃいけないことになるわけでございます。  次にお尋ねしたいことは、昨年ローマにおいて、世界の百三十三カの参集を得て世界食糧会議が開催され、食糧増産、備蓄、食糧援助等について幅広い決議が行なわれ、世界の食糧問題解決のための、世界的規模における組織的な対応の第一歩が踏み出されておることは御承知のとおりであります。本年からはその決議内容の具現化の協議交渉等が始まるだろうと考えますけれども、そうしますと、先進国の一員としての、また、世界の有数の農産物輸入国としてのわが国のこれに対する対応の仕方というものはいろいろな面で影響があるだろうと考えます。特に、食糧の備蓄、発展途上国への食糧援助の問題について、わが国に対してはいろいろと要望が多いだろうということも考えられると思うのであります。  そこで、これは外交問題でありますので、具体的な内容についてはきょうこの席で公表はできないかもわからぬとは思いますけれども、少なくとも、この当事者であります農林大臣としてのこれに対する基本的な姿勢、あるいは基本的な考え方というものは一応明らかにしていただきたいと思いますので、その点から大臣の御意思を承りたいと思うのでございます。
  123. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 備蓄問題につきましては、昨年ローマで国際会議が開かれまして、わが国からも倉石前農林大臣が参加をされました。その際、備蓄問題、開発途上国に対する援助の問題、あるいは国際的な食糧の増産問題ということが真剣に討議をされたわけでございまして、その後引き続いてことしの二月にはロンドンで国際会議が持たれたわけでございます。  私たち政府としては、この国際的な食糧不足の中にあって備蓄を推進していくという、国際的な協力を求められる会議については、積極的な姿勢でこれに対処していくというか、これに参加をしていくという基本的な態度でございますが、しかし、今度のロンドンの会議でも見られまするように、アメリカが要請をして、それに基づいて各国が参加をしたわけでございますし、アメリカからも備蓄についての提案が、具体的な提案とまではいきませんけれども、なされたわけでございます。しかし、この備蓄については基本的には積極的に参加していかなければならぬと思いますが、生産国、消費国、それぞれやはりいろいろと思惑があるようでもございますし、アメリカが備蓄を推進する、しかし、アメリカがどういう考え方で備蓄問題を推進していくのかという点につきましては、私たちもまだまだ十分この点については検討もしなければならない問題があり、今後備蓄問題を具体化していくときには、われわれはむしろ消費国の立場に立つわけですから、いろいろと慎重に検討していかなければならぬと思うわけでございます。基本的な姿勢としては協力をし、参加をしていく、しかし、その中にあって、各国のそれぞれの思惑というものも十分われわれとしてはつかみながら、その上に立って進んでまいりたい、こういう考えでございます。
  124. 稲富稜人

    ○稲富委員 次にお尋ねしたいことは、稲作転換対策についてお尋ねしたいと思うのでございますが、稲作転換については、御承知のとおりに、五十年度で当初の五カ年計画は終了するわけでありますが、明年度以降においての帰趨がどのようになるか、これは農民の非常な関心事になっております。私は、世界的な食糧需給の逼迫等を考慮しますと、米の生産調整はもうやるべきであるとは思いません。大臣の考えはどうであるか知りませんけれども、私はそういうふうに考えます。そうして、米の生産調整をやめて生ずる過剰米があったとしたならば、これこそ、世界食糧会議の決議である発展途上国に対する援助に振り分けるというようなこともまた一つの方法として当然考えられるんじゃないかということも考えますが、これに対する大臣の意のあるところを伺いたい。
  125. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 来年度から稲作転換事業を進めるのかどうかという御質問でございますが、やはり、これは米の需給の動向というものもわれわれは見ていかなければならぬと思いますし、さらに、米以外の生産を増加しなければならない作目があるわけでございまして、この作目を増産する場合において、転換をする必要が、転作を求める必要があるのかどうかということも考えなければならぬ問題であろうと思いますし、さらに、国際的な食糧の需給関係ということも大きくわれわれは配慮していかなければならぬわけですが、そうしたいろいろの客観情勢配慮しながら、来年度やるかやらないかという対策をもちろんことしじゅうにはっきり打ち出していかなければならぬと思うわけでございますが、米につきましては、米の生産過剰の情勢状態というものはやはり続いていくのじゃないだろうかというふうに私は思うわけでございまして、そういう中で、いまお話しがありましたように、余れば外国の食糧援助に回せばいいじゃないかという御指摘もあるわけでございますし、各方面からそういうふうな御意見も聞いておるわけでございます。  現在のところは、米の国際的な価格とわが国における価格との間には大きな差があるわけでございまして、外国に対する援助をする場合においても、むしろこれを金でもって資金援助をしていく、あるいは金でもって外国の農産物を買って援助していく方が、資金援助を受ける外国にとっては非常に効率的であるというふうな問題もあるわけでございまして、その点については今後は全体的な食糧情勢等ともにらみながら考えていきたい、こういうふうに思うわけであります。
  126. 稲富稜人

    ○稲富委員 この点は、大臣言葉があなたははっきりせぬですよ。やるかやらぬか、どっちかわからぬような……。こういう問題は、本当にいまの農政というものを考え、世界の食糧事情等を考え、農民の農業に対する期待、希望というようなことを考えながら、原点に返って日本農業をここに樹立するんだという決意があるならば、やろうかやるまいか、いろいろな諸般の情勢をながめてとか、そういうことじゃなくして、これに対しては確固たる信念を持って大臣は臨むべきだと私は思うのです。少なくとも、農林大臣である以上は、閣内でどういう考えがあろうと、この食糧事情の中において稲作転換なんかやらないのだというような強い意思で当たってもらいたいということを私は強く要望しておきますから、そういうことで、今後自信を持って農政に取り組んでもらいたいということを私は特にここで申し上げておきたいと思うのでございます。  さらに、大臣所信表明の中で、農業をめぐる内外の諸情勢の変化を考慮して、新たに昭和六十年を目標年次とする農産物需要生産長期見通しの設定を本年春ごろの閣議決定をめどに進めておられるということを言われております。この問題は、もうすでに前から早く設定すべきことを私たちは要望してまいっておりますし、これに対しては早く作業を進めていただきたい。  なお、この件については、先日農政審議会の需給部会から報告されたものを見ましても、全国的な長期見通しがありますが、これを受けた生産地域分担の指標も同時に公表される考えでありますかどうかということをまず承りたい。  私はかねてから、農業というものは風土、土壌ということを考えまして、農業の適地適産を原則として、地域状況に適合した生産を進めて、そうしてこれに対しては計画生産をやるべきであるということをこの委員会でも常に主張してまいったのでございますが、この際、北海道ではどのような作物を農業生産の具体的な指針にするとか、あるいは九州ではどういうものをするんだというような指標を早急に示すことが、生産農民が希望を持ち、安心して農業に従事する結果になると考えるわけでございますが、これに対する大臣の考え方を承りたいと思うわけであります。
  127. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 長期的な展望に立った需要生産の目標につきましては、これに基づいて私たちは政策を樹立していくわけでございますが、その中には、作目ごとに十カ年間を見通した中で計画生産目標等も立てていくわけでありますが、いまのところは、各地域ごとに生産計画を立てていくとか、そういうところまでは考えておらぬわけでございますが、しかし、地域に適応した農産物生産していくということは当然なことでございますし、こういう点については今後も検討課題としてわれわれは勉強していかなければならぬと思います。
  128. 稲富稜人

    ○稲富委員 さらにお尋ねしたいと思いますことは、大臣は、農業基本法に基づく農産物需要生産長期見通しを設定して、国内自給力強化を基調に農業保護の色彩を強めた農政展開をする決意を持っておられるというような点もいささか私たちは見受けるわけでございますが、長期見通しを改定される、これとの関連で、政府は、将来、酪農振興法に基づく酪農近代化基本方針、あるいは果樹農業振興特別措置法に基づく果樹農業振興方針等についても、早急にこれを改定する必要があるんじゃないかということを思うわけでございます。  この理由といたしましては、たとえば酪農の場合を見ましても、昭和四十六年三月に示された酪農近代化基本方針によりますと、目標年度でありました昭和五十二年度の生乳生産目標は八百十五万トンとしております。最近の生乳生産量については、四十六年の四百八十二万トンから、四十八年には四百九十二万トンと、わずか二%程度の伸びを示しておるだけであります。四十九年度は逆に前年度を一%程度下回るというような予想がされております。こうした現象は政府見通しが全く誤っておったと言っても決して言い過ぎじゃないと思うのでございまして、こういうような具体的施策が十分講じられないことでありますから、私は、無責任だったということをあえて責めるわけではありませんけれども、農政審議会の需給部会が去る一月末に示したところの、昭和六十年度を目標とする農産物需要生産長期見通しによれば、昭和六十年度における生乳見通しを七百六十八万トンとしております。これは酪農近代化基本方針に示された昭和五十二年の八百十五万トンより約五十万トン下回るものであります。このため、農林省は、酪農近代化基本方針を実情に合うように早急に改定して、その具体政策を打ち出すべきじゃないかと考えます。また、果樹農業振興方針の改定についてもこれと同じように——これは逆に上がっております。そういう点から、私は、ただいま申しましたこの改定をやるべきじゃないかということを申し上げるわけでございますので、これに対する政府の方針を承りたいと思います。
  129. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 われわれといたしましては、総合的な食糧政策を打ち出す段階におきましては、もちろん長期的な需要生産見通しに基づいて打ち出すわけでありますから、したがって、長期的な生産目標あるいは需要等にいろいろと変化があるわけでありますから、そうした酪農を初めとしている諸計画につきましても、改定をすべき点は当然改定をしなければならぬというふうに思うわけであります。
  130. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは、次に、農業生産基盤の整備と土地問題についてお尋ねいたしますが、食糧自給力を向上するためには、まずもって生産基盤の整備を進めるということが何よりも先決であるということは申すまでもございません。     〔中川(一)委員長代理退席、委員長着席〕 ところが、昨年度予算における農業基盤整備を初めとする農林関係の公共事業の前年度伸び率はわずかに四・三%で、これは物価値上がり分を勘案すると実質はマイナスであります。最終段階で三十億円を食糧増産費という名目で決定し、このうち二十二億円が構造改善事業の圃場整備などの農業生産基盤整備に振り向けられることになったということでございますが、これでも前年並みにはようやく確保できたというような状態だと思うのでございます。私は、農政が非常に重大なときに直面しているだけに、こういうことでは決して十分であるとは言えないと思う。  それて、ここで土地改良の長期計画との関係についてお尋ねしたいと思いますが、御承知のとおり、現在の土地改良長期計画は四十八年五月一日に閣議決定されたもので、四十八年から五十二年までの五カ年間の事業費は五兆二千億円となっておりますが、これに対する農業基盤整備事業費の総計は、四十八年から五十年までの三カ年間が一兆四百五十億円で、二割程度となっております。この予算が五割補助を仮定すると、事業全額で四割にしか相当しないことになります。事業単価の大幅な値上がりを見込むと事業量ではもっと低くなり、残りの五十一年、五十二年の二カ年間で残りの六割相当の計画を達成するということはきわめて困難なことになるんじゃないかと思われます。御承知のとおりの、世界的な食糧需給の変化、国内自給力強化のこういうような緊要性を考えますときに、この際、土地改良長期計画というものを改定して、優良農地確保、拡大に向かって積極的な姿勢を示すべきではないかということを考えるわけでございます。  この際、その計画については、内容とかあるいは事業費ばかりでなく、農用地拡大面積は何ヘクタールにするとか、もっと具体的な計画を立てて、そして基盤対策をやって、食糧の増産対策に処すべきであると考えますが、これに対しては、今後食糧対策に立ち向かう立場から、よほどの決意をもって政府は当たってもらわなければできないと思いますので、この点を特に私は要望しまして、これに対する決意のほどを承りたいと思います。
  131. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、長期の土地改良計画につきましては、いま御指摘のように、その進捗はおくれておることは事実でございます。したがって、この長期計画を完遂していくためには、今後は一八%以上の伸び率でもって予算を獲得していかないととうてい長期計画を達成できないわけでございますが、今日の食糧情勢農政に対する認識も大きく変わってきておりますから、今後ともわれわれとしては全力を尽くして長期計画の完遂を図っていかなければならぬと思うわけでございますが、同時に、また、いわゆるこの経済全体が高度成長から安定成長へ行くということで、いろいろの長期計画が現在見直されておる状態でございます。五十一年度から新全総等も新しく発足をしていく段階になってきているわけですから、そういう新全総計画等とも重大な関係があるわけでございますから、その新全総計画等が樹立するに当たっては、もし改定をする必要があるということになれば、われわれとしてもこの方針に従って改定もせざるを得ないのではないか、こういうふうに思っておるわけであります。
  132. 稲富稜人

    ○稲富委員 この問題は、局長も何か発言したいようなかっこうをしているんだが、食糧自給対策上この基盤をいかにするかということは本当に重大な問題で、これをなおざりにすると、これこそ百年の大計を誤ることになるので、にわかにできることではないのですから、これに対してはひとつ真剣に取り組んでもらいたい。私は、この問題に対しては、今年度のごときはもっと予算を与えて、計画というものをもっと本当に充実するようにやるべきだったと考えますけれども、この点については私は特に遺憾の意を表すると同時に、これに報いるように処してもらいたいということを特に希望を申し上げておきたいと思うのでございます。  次に、大臣にお尋ねしたいのでありますが、大臣国内食糧自給力強化の必要性を強調されておりますが、その目的達成のためには、農畜産物価格政策や農家の所得補償政策の強化というものが必要であるということは言をまたないところであります。今日のわが国の稲作が、一億一千万人に上る国民の主食を賄ってなお余りあるまでの生産力を持ち得るようになったということは、これは各般の施策が総合かつ集中的に投入されたためであるということはもちろんでありましょうが、何といっても食管制度を通する価格支持制度がその根底に存在しているからであるということは見逃すことはできないと私は思うのであります。この生産意欲を向上させる適切な価格支持ないしは農家の所得の補償なしには、食糧の増産とか、あるいは自給力の向上は望み得ないということはもちろんでございます。  この点から、明年度の予算において、牛肉を畜安法の対象に加えてその価格支持を行ったり、あるいは卵価の安定に国も積極的に参加したり、さらに、麦、大豆、飼料、なたね等に対する生産奨励金の交付を拡大したというようなことは大いにほめていいことだと私も思いますが、これに関連して、第一に、畜産物で価格支持問題で残されているものとして、あるいは飲用乳とか、あるいはブロイラーというようなものがあります。これは改めて農政の立場に立って、業者に対する対策はやはり確立する必要がありはしないかというように思いますが、これに対してはどうお考えになっておるか、承りたいと思います。
  133. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 価格政策を充実強化していくということは、農政を進める上におきまして、生産対象とともに今後とも非常に重要なことであろうと思うわけでございまして、そういうふうな見地に立ちまして、御指摘のありましたような牛肉を初めとして価格政策を改善いたしたわけでございますし、今後とも価格政策の充実には一層の努力をしていきたいと思っておるわけでございますが、いまお話しがございました飲用乳、ブロイラーにつきましては、これはいろいろと相手側があるといいますか、飲用乳につきましては業界、ブロイラーにつきましても、これは鶏卵等と違いまして、大手の商社を初めとして相当企業経営的なものになっておるというふうな状況にあるわけでございまして、いますぐここで価格政策を打ち立てていくということにつきましては まだ時期が熟していないのじゃないかというふうに私は考えておるわけでございます。
  134. 稲富稜人

    ○稲富委員 その次にお尋ねしたいと思いますことは、いま申しました生産奨励金についてでございますが、この対象作物を積極的に今後拡大して、また、交付金の額もさらに将来は増額していくという方法をとることが農民に農業に対する希望を持たせる一つの手段であるということも考えますので、これに対する考え方も一応承りたい。
  135. 松元威雄

    ○松元政府委員 事務答弁になりますと恐縮でございますが、御案内のとおり、麦、大豆、飼料作物につきまして、それぞれ四十九年度から生産奨励補助金という施策を始めたわけでございます。これは、ある意味では従来の施策と違う手法でございまして、当時、これらの作物の国際的需給関係とか生産動向等に即応いたしまして、従来にない手法を使ったわけでございまして、さらに五十年度から新しくなたねも加えたわけでございますが、それぞれの作物のいわば国際的な需給事情とか、それからまたこれまでの生産動向ということを踏まえまして、必要な事態に応じましてそういう特別の施策を講ずべきなら講ずるということで、一律に、麦でやるからほかも直ちにということはなかなか問題があろうかと私は思いますが、それぞれの事情に即応いたしまして、生産誘導の一つの手法といたしまして、必要なものについては今後も検討しなければならぬと思っておるわけでございますが、それぞれそういった事情があるわけでございます。
  136. 稲富稜人

    ○稲富委員 時間がありませんから余り長く答弁されると困りますので、簡単にお願いします。  次に、今日の段階では生産者に不安を抱かせるような食管制度の改正については絶対に手を触れないということ、これは先刻も瀬野君の質問で大臣は答弁されておりましたので、あえて私は重ねて質問いたしませんけれども、これは、やはり、根幹は外さないとか、そうではなくて食管法は守っていくのだとか、こういうことをはっきりしなければ、奥歯に物のはさまったような答弁ではもう今日は納得しないと私は思うのです。その点をひとつはっきり考えていただきたいということ。  さらにお尋ねしたいことは、農基法の第十一条第一項において、国は農産物の価格の安定について必要な施策を講ずるものとしており、同条の第二項においては、政府は定期的に農産物の価格政策についての総合的な検討結果を公表すべきことを義務づけております。農業基本法の成立後一回だけ、たしか昭和四十五年ごろであったと思いますが、公表したのみで、以後はこの条文について公表は行われてはおりませんが、その点は政府はどう思っているのか、一体やる気でおるのか、やらぬでいいと思っておるのか。これは農業をめぐる諸般の情勢に大いにかかわってくる問題でありますだけに、政府の検討の結果を公表すべきであると私は思いますが、これに対してはどうお考えになっておるか、承りたい。
  137. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 前段の食管制度につきましては、今日の状態に至ればますます大事でございますので、食管制度は維持していくという決意でもってもちろん進んでまいる所存でございます。  後段の問題につきましては、確かに公表していないということでございますが、価格政策は今後とも大事でございますので、今回の長期的な見通しで、農政審議会の答申を得て、その長期見通しに基づいて総合政策を打ち出していくとき、これをあわせて検討しなければならぬと思っております。
  138. 稲富稜人

    ○稲富委員 ちょっと怠慢でなかったらいいですけれども、その点は農業基本法で義務づけておることでございますから、こういう問題に対しては忠実にやってもらわぬと、空文化した農業基本法をますます政府みずからが空文化することになりますので、こういうことに対しては慎重に対処していただきたいと思います。  次にお尋ねしたいことは、大臣は、所信表明の印刷物の中においても、中核的農業の育成についてということを言われておりますので、これについてお尋ねいたしますが、「農業に対する意欲と能力を有し、今後の農業生産の中核的担い手となろうとする者を育成確保することが重要である」と言われております。これは当然のことでありますが、大臣の言われる中核的担い手とはどのような農家を指されるのであるか、まず承りたい。  現在、六十歳未満の基幹的男子農業従事者を有する農家は、総農家戸数の三割に相当する百五十万戸程度存在しております。これが農産物全体の六割強の生産を担当していると言われておりますが、このような農家が大臣の言われる中核的な担い手と解してよいのであるかどうか。もしそれであるとするならば、将来この程度の中核的な担い手とも言うべき農家を育成して、それによってどの程度生産のシェアを担当させようとするのであるか。これは将来大きな問題でありますので、確たる展望を示していただきたいと思います。  なお、このことに関連して、大臣所信表明、農林予算の説明書を私はすみずみまで目を通しましたが、従来から農業基本法の農政の一本柱でありました「自立経営農家の育成」という字句が全く見当たらないのは本当に不思議でなりません。もちろん、基本法で自立経営農家の育成を図ると言われながら、政府は意識的に兼業農家を育成して、自立経営農家をだんだん少なくなさったのであります。それは従来の統計を見ますとよくわかりますが、政府は自立経営農家を育成すると言いながら、意識的に兼業農家をつくることに非常に積極的に御協力なさった。倉石前農林大臣のごときは確かにそうであった。これはなぜかと言うと、大きな企業は農家から弁当を提げてやって来る労働者があった方が低賃金に甘んずるのでいいという、そういうような大企業に対する奉仕もあったのじゃないか。これは邪推かもわかりませんけれども、一応そういうことも考えられる。こういうことをやられておるから、いまさら自立経営農家という言葉を使うと何か良心が責められるからそういう言葉をわざわざお使いにならなかったのかわからぬですが、その農業基本法で示しておる自立経営農家の育成という基本方針は断念したのであるか、また、中核農家と言われる、この中核農家と自立経営農家との相違というものはどういう点であるか、この点をひとつ明確に承りたいと思うのでございます。
  139. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中核農家というのは、農林省では、六十歳未満で年間自家農業従事日数百五十日以上の男子を持つ農家というふうになっておるわけでございますが、そういう意味で中核農家は四十八年に総農家戸数の約三割に相当いたしておる、したがって百五十万戸程度だ、というふうにはじいておるわけでございます。そして、農業生産では農産物全体の六割強の生産をこの中核農家が担当しておる。でありますから、中核農家は、頂点に立つところの自立経営農家、専業農家、第一種兼業農家、そういうものを含めて中核農家というふうに言っておるわけでございます。
  140. 稲富稜人

    ○稲富委員 それなら、自立経営農家という文句を少しぐらい書いておいてもいいんじゃないですか。農業基本法には自立経営農家と書いてあるのですよ。その自立経営農家という文句をわざわざ避けて中核農家という名前に変えるというのは、中核農家には自立経営農家も含んでいると言うのですか。そのほかのものも、もっと幅広いと言うのですか。この点はどうなんですか。わざわざ自立経営農家という字を使わぬようになったのはどういう趣旨かということが私はわからないのですよ。
  141. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中核農家は農業生産の大体六割ぐらいを占めておるということでございますので、今後とも自給力を高めていくという基本方針のもとに農政を進めていくという意味におきましては、農業生産の六割を占める農業の担い手を中心にして施策を講じた方がいいんじゃないかということで中核農家ということにいたしておるわけてあります。
  142. 稲富稜人

    ○稲富委員 この問題で議論しておりますと時間が来ますのでこれはまたの機会にとっておきますが、どうも釈然としません。  さらに、後継者対策についてお尋ねいたしますが、私は、何としましても、農業後継者をつくるということは、農業に希望を与える農政を確立するということが最も必要であると考えます。私が農林大臣に特に言いたいことは、先刻からもいろいろ申し上げましたように、現在日本農業というものはこのままではいかないのだということはもうお互いに反省したと思うのであります。そこで、この際、日本農業というものを将来どうするかということを素っ裸になって、原点に返って考えてみる必要があるんじゃないかと私は思うのでございます。  そう考えるときに、いろいろな問題があるのでございますが、たとえば農村の家族制度の問題から考えなくちゃいけないと私は思う。今日農業経営をやっているものは、親子、兄弟みんな一緒にやっている。ところが、息子は、自分のつくった財産をおやじが死んで相続するときは、今度は相続税を出さなければいけない。これは農村の家族というものを全然認めていないということなんですね。女房もおやじと一賭に仕事をやって財産をつくって、そのおやじが今度は女房に金をやるときには贈与税を払わなくちゃいけない。こういうように家族制度そのものから壊されている。私は、日本農業のあり方というものを原点に返って考えて、こういう点は考え直して、そしてもっと農民の希望の持てるような日本農業を確立することが必要じゃないかと、かように考えます。  希望の持てるような農業はどうするかと言うと、時間がありませんから私は結論を申し上げますと、さっきも言ったように、まず適地適作の主産地形成をやること、主産地形成をやって、そしてこれに対しては計画生産をやること、そして計画生産を争ったものに対しては価格の補償をしてやらなければいけないと私は思う。そうしなければ、先刻も言ったように希望は持てません。しからば、こういうものをだれが当たるかということになると、やはり、政府と密接な関係を保って農業団体がその実行に当たらなければいけないと私は思う。いまであれば農協でございましょう。すなわち、農協政府と密接な関係のもとに生産計画を立てる、生産計画を立てたものに対しては価格を補償する、その価格補償をして、農協が損害をこうむった場合は国がこれを補てんしてやる、こういうことになってくる。そうしますと、私は、農協というものに対しても、もっと内容を充実し、農協が本当に農民の機関として生きるような指導をしなければいけないと思う。農協法ができました二十二年の当時に返って、農協というものは農協経営者であってはいけない。どこまでも農民のものでなければいけない。農協農協経営者になりましたならば農民と離反いたします。農民の機関としての十分の職責が果たされないことになる。それで、私は、この点に対しては、農協を堅実なものにして、これに対する政府の指導、督励をして、農民の機関としての農協を育てるということが最も必要じゃないかと考える。  そういうことを考えると同時に、私たちがここで考えなくちゃいけない問題は、現在、日本の、世界じゅうの食糧がこういうような重大な時期にありますので、私たちが多年主張しておりますところの、日本国民に対して、食糧だけはいかなる機会があっても安心だ、安心して供給を受けられるんだということを保証し得る食糧基本法、農畜産とさらに水産業まで入れた食糧基本法を樹立して、そして国民に対する食糧の安定供給というものに責任を持つという体制を持つこと、こういうことが今日政府として企画をしなくてはいけない一番大きな問題である、と、かように私は考えておりますが、こういうことに対して農林大臣はどういうようなお考えを持っておられるか、承りたいと思うのであります。
  143. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 広範にわたる御意見をお聞かせいただいたわけでございますが、農業を魅力のある産業に持っていくためには農村環境整備等も必要でありますし、さらに、後継者を育成するためのあらゆる施策を講じていかなければならぬのはもちろんでございますし、また、農家の将来というものを考えるときに、たとえば税制の問題等につきましても、いまお話しがありましたような相続税、贈与税といったものにつきましてもこれが軽減措置をとって、五十年度税制でこれの軽減措置を行うことにいたしたわけでございますが、そうした基本的な立場に立って今後万般の施策を講じていかなければなりませんし、さらに、その施策の講ずる上においては、農家の組織体であるところの農協が、お話しがございましたように、どちらかというと流通、金融といった方面に農協活動の主力が奪われておるというふうな状態にございますので、農協生産活動に対しても積極的に携わっていくためには、農林省としてもいろいろのこれに対する協力もしていかなければならぬと思うわけでございます。やはり、農家を孤立させてはいけない。中核的農家あるいは後継者にいたしましても、何か孤立感というものが、これは高度成長と言えば高度成長と言えるかも知れませんが、そういう中で生まれておるということから考えますと、今後、いま農林省がとっておる集団的生産組織だとか、あるいは生産団地だとか、そういうふうな政策も推進をして、農業者の連帯組織の中で生産活動を夢を持って行えるような農村づくりをこれからやっていくことがわれわれが取り組んでいかなければならぬ大きな仕事である、こういうふうに思うわけであります。
  144. 稲富稜人

    ○稲富委員 それから、食糧基本法の問題……。
  145. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 食糧基本法につきましては、各方面からいろいろと御意見も聞かせていただいておるわけでございますが、先ほどから申し上げますように、また、先生も御指摘になりましたように、農業基本法の原点に返れというふうなことで、私としても、現在の農業基本法の根幹理念というものは間違っていないし、ですから、まず第一にそういう原点に返るほうが大事であると思うし、今後総合政策を打ち出していく場合においても、今日の情勢の変化等も十分踏まえて、情勢の変化に応じた具体的な政策を一つ一つ着実に積み重ね、打ち出していくということが大事じゃないかと思うわけでありますが、農政審議会等でごうした問題も含めていろいろと御検討していただくならば、農政審議会の結論を待って私たちとしても全体的に考える時期が来るかもしれない、こういうふうに思うわけであります。
  146. 稲富稜人

    ○稲富委員 だんだん時間がなくなってきましたが、食糧政策の一端として、いま申しましたように水産業に対する問題が重大でございますので、水産業の問題にもひとつ触れておきたいと思うのでございます。  昨日も話があり、先刻からも質問がありましたが、最近ソ連の漁船団が日本漁業に及ぼす影響の被害の問題は、これはいずれ島田君も質問しようとして待っているようでございますので私は省きますが、これに対しては政府も十分考えて、国際的な交渉を進めていただきたいと思います。  ただ、私は、第三次国連海洋法会議の問題につきまして一つお尋ねしたいと思いますけれども、第三次国連海洋法会議の第三会期が来たる三月十七日から五月上旬までジュネーブで開催されることになっておりますが、この会期は昨年八月三十日に閉会されました会議を踏まえて開かれるもので、第三会期の最大の焦点は、従来の公海の資源は自由としてきた四世紀にわたる海の秩序が一大転機を迎え、二百海里の経済水域の設定が大勢を占め、新しい海の国際法が制定されようとしておるわけでございます。こうなりますと、これが日本農業には非常に大きな影響を及ぼしてくるわけでございます。それで、これに対していかなる考えをもって政府は臨まんとするのであるか。もしもこれが思わしくないような結果になりますと、国民の動物たん白資源の過半数を水産業に求めているわが国としては非常に大きな問題であるし、特に、二百海里の経済水域が設定されますと、わが国の漁業が締め出された場合は、あるいはべーリング海、あるいは北部太平洋、オホーツク海というところを中心に、四百五十万トン、四千億円の影響が起きるとさえ言われておるのでありまして、事は非常に重大であります。  これに対して政府はどういう考えで臨まんとするのであるか、承りたい。
  147. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今後の海洋法会議の動向につきましてはわれわれも非常な関心を持っておるわけでございまして、経済水域二百海里というのは、現在のところでは世界の大勢になりつつあるというふうに判断をいたしておるわけでありますが、今度開かれる海洋法会議の中では、この経済水域の設定とか、さらに、この経済水域の中における漁業の管轄権であるとか外国漁業の操業をどの程度までどういう形で認めるかとか、そういう具体的な問題が協議されるわけでございますから、私たちとしては、大勢はやはり経済水域二百海里であろうというふうに考えておりますが、その大勢の中にあって、これまでわが国が占めておりました経済水域二百海里以内における漁業の操業権というものをいかに確保していくかということに、これからの会議を通じて私たちは積極的に努力をして、われわれの長い歴史の中で蓄積された漁業の既得権というものを何とか維持していくために万全を期していきたいと思うわけでございます。  同時に、また、二百海里が設定されるということになりますれば、北洋等の問題もたちまち起こってくる問題でございますが、こういう問題等も今後とも各国間の協力関係の中で交渉を通じて解決して、わが国の漁業権を確保していかなければならぬ、これには全力を尽くしていきたい、と思っておるわけでございます。  しかし、同時に、二百海里が設定されるとすればいろいろと影響も出てくるわけでございますから、国内の漁業資源確保するということも、やはり今後の漁業政策の大きな課題でなければなりませんし、同時に、また、海外において新しい漁業資源を獲得していくとか、いままで未知でありました深海の資源等も獲得していくとか、そういうふうないろいろな漁業に対するあらゆる努力を重ねて、現在わが国が漁獲をしております千百万トンに及ぶ漁獲高というものは何としても維持していかなければならない、こういうふうに思うわけであります。
  148. 稲富稜人

    ○稲富委員 時間がありませんからはしょって質問しますので、不十分かもわかりませんけれども、最後に、森林の問題についてお尋ねいたしておきます。  大臣所信表明の中で、林業の振興対策としての森林業というものを説明されておりますが、私は、森林というものは、林業対策というよりも、森林の公益的機能の充実というものが今日ほど強く要望されているときはないと考えます。すなわち水資源の涵養、国土保全、国民の保健休養等、森林の機能というものは本当にはかり知れないほど重大であります。よって、森林の機能を発揮するためには、林野庁がもっと積極的に乗り出して、林野庁の特別会計の中から保安林の買い入れとか、あるいは保全事業とか治山事業というようなことまでも行い得るようにして、そうしてそれは一般会計からでも出していいんだというように、森林というものは、林業対策としてではなくして、公益的な機能を持つ森林だというような立場からこれを将来立てていくということが非常に重要じゃないかと、かように私は考えますので、この点について大臣のお考えを承りたい。  それから、これは別な問題でございますけれども、時間がありませんからつけ加えて申し上げますが、最後に、沖繩の農業、水産業に対してでございます。  御承知のとおり、沖繩は長い間他国の統治下にありましたので、沖繩の農業、水産業というものは本土に比べまして格別におくれております。土壌の問題、水利の問題等に対しましても、これは特段なる方法をとらなければ、沖繩の産業、農業、水産業というものが本土並みに追いつくことは不可能であると思うのでございます。ところが、これに対して政府は、どこを見ましても、沖繩に対して余りにも積極的な取り組み方をしておられないように考えますので、この沖繩の農漁業対策に対して農林大臣はどういうような考え方を持って臨もうとしておられるのか、このことも私はお尋ねをいたしまして、私の質問を終わります。
  149. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 御指摘のように、森林の持つところの公益的な機能というものはきわめて大事でございまして、この公益的機能を増進させていくということが林政の大きな課題であろうと思うわけですが、このためにも、改正森林法に基づくところの森林計画制度の適正な運用による合理的な森林施業の推進であるとか、あるいはまた改正保安林整備臨時措置法に基づく保安林整備計画樹立と、これに基づく保安林の計画的な整備等もやっておるわけでございますし、また、森林の保安巡視あるいは山火事予防施設の整備を行う森林保全管理対策等々、われわれとしても各般にわたっての施策を講じておるわけでございます。  さらに、沖繩につきましては、これはいわばわが国にとりましても特別に配慮していかなければならぬ地区でございまして、農林漁業関係につきましても、予算措置等を見ていただければおわかりになると思いますが、いろいろの措置を講じておるわけでありますし、最近では、たとえば冷凍パインの問題等にいたしましても、沖繩農業保護のために関税率を上げまして、特別な法措置をとっておるということでございます。今後とも、沖繩における農林漁業がさらに安定化をしていくように万全を期していきたいと思っておるわけであります。
  150. 稲富稜人

    ○稲富委員 私の質問を終わります。
  151. 澁谷直藏

    澁谷委員長 島田琢郎君。
  152. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 大臣所信表明の質問に入ります前に、昨日から当委員会においても大変問題になっておりますソ連のスケトウ船団の漁場踏み荒らしの問題についていろいろ御答弁がございましたけれども、被害を受けている漁民の立場から言いますと、いま一つ釈然としない政府側の答弁で、そこをひとつきょうは明らかにしていただきたいと思って緊急に質問に立ったわけであります。  さて、昨日からのいろいろな答弁を聞いておりますが、大臣初め水産庁長官、さらにまた外務省当局も、ソ連に対するこの問題に当たっての処理の仕方がどうもまずいという気がするのでありますが、きのうの復習みたいな点もあるかもしれませんけれども、第一に、現場に起こっております被害の状況を政府側としては的確に把握されているかどうか、被害額は幾らか、件数にして何件か、さらにまたソビエトに対して具体的にどういう点を申し入れてきたのか、それはいつなのか、この点を冒頭に明らかにしていただきたいと思います。
  153. 内村良英

    ○内村政府委員 最初に年次別のソ連船による漁具等の被害状治でございますが、これは関係の道県からの報告によるものでございますが、それによりますと、昭和四十六年は二十七件、六百五十五万円、四十七年は二十七件、二千八百三万円、四十八年は三十三件、千三百四十五万円、四十九年は三百五十五件、一億七千百十六万円となっております。そのうち、今漁期に入りまして十月から十二月までの被害は一億一千八百七十九万円となっております。     〔委員長退席、笠岡委員長代理着席〕  なお、現在苫小牧沖等で起こっております被害につきましては、現在まだ正確な被害金額の報告を受けておりません。
  154. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 質問に対する答弁がまだありますよ。
  155. 内村良英

    ○内村政府委員 それから、ソ連に対する要求でございますけれども、これらの被害につきまして、外交チャンネルを通じてソ連政府に補償を要求しておりますが、今日までソ連から補償が払われたケースはございません。  この場合一番問題になりますのは、被害の証明と申しますか、それがなかなかむずかしい問題がございまして、そこのところで必ずしもソ連と——こちらが、こういう被害があった、こういう船でこういう状況だというふうに出しました場合に、証拠が十分じゃないとか、いろいろな議論がございまして、遺憾ながら、今日まで支払いを受けたケースは一件もございません。
  156. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 ということは、いま長官から示されましたのはトータルが幾らになるかちょっとわかりませんが、それに対して向こう側は、ソ連側としては一切認めないという姿勢ですか。
  157. 内村良英

    ○内村政府委員 ソ連の外務省に出しますと、外務省から漁業省の方に回る。そして、漁業公社みたいなものがあるわけでございまして、そこの船がいろいろ日本漁民に被害を与えているわけでございますから、漁業省からその公社の方へ回る。そうすると、証拠が不十分だとかいうようなことが起こりまして、今日まで支払いを受けていないという状況になっております。
  158. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 しかし、ソビエトとしては、被害を与えたという事実は認めているのですね。
  159. 内村良英

    ○内村政府委員 最近におきましても、被害を与えているような事実があれば関係者を厳重に処罰するというようなことを向こうは言っております。したがいまして、現在までのケースについて向こう側が認めたか認めないかという問題につきましてはいろいろ議論のあるところでございますが、ソ連の漁業省といたしましても、日本の沿岸漁民との間に非常にトラブルを起こすような事故については、関係者を処罰するというところまでは言っておりますし、この問題につきましてはかなりまじめに取り組んでおるというふうに私どもは受け取っておるわけでございます。
  160. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 その被害があったかどうかを向こうが認知しない限りは、いま長官がおっしゃっているのはあたりまえのことなんですね。被害があれば補償する、損害について賠償する、これは外交の上から言ったってあたりまえのことなんです。問題は、ソビエトがわれわれの言うている被害を認めようとしていないというのは、一体それはどういう根拠に基づくものですか。どういう状況のもとに置かれているのですか。
  161. 内村良英

    ○内村政府委員 本件につきましては、わが方は何月何日に被害があったということを出すわけでございます。そのときに、一例を申し上げますと、船の名前を出すわけでございますけれども、ローマ字と違ってロシア文字というのは普通のわれわれにはなかなかわからないわけでございます。それをとっさの間に沿岸漁民の人は見るわけでございますから、出しましても、これはロシア文字じゃないじゃないかというようなことを言われたり、はっきりした証拠がなかなか相手に突きつけにくいという面があるわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、沿岸漁民の人が相手の船の名前を確認するとか、そういうことをやれと言ってもなかなか無理という面もございますので、五十年度は予算をとりましたけれども、海上保安庁とか水産庁の船がそういう面につきまして証拠をつかまえるということをしなければだめなんじゃないかということと、さらに困ったことは、網が海の中にあるわけなんでございまして、状況写真をとろうとしましても、日本の網がひっかけられたかひっかけられなかったか、向こうが揚げてみてわかるようなことになりますので、向こうがトロールの網を掲げているところを証拠をつかまえるとか、これは陸の上の交通事故なんかと違いまして非常に状況の把握にむずかしい面がある。しかし、それは放置できない問題でございますから、私どもといたしましては、今後、過去の経験にかんがみまして、そういう点を重点的に補強していかなければいかぬということをしみじみ痛感しているわけでございます。  今日までも、名前その他をつけまして出すわけでございますけれども、はっきりした証拠がないということを向こうは言うわけでございます。     〔笠岡委員長代理退席、藤本委員長代理     着席〕
  162. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 長官は、ソビエトに対して被害の状況についても申し入れをしながら、ソビエトの出方を見てきたところだという話ですが、一体どれくらい公式の場でこの問題を持ち出して話し合いをしているのですか。
  163. 内村良英

    ○内村政府委員 昭和四十七年の、ちょっと日付は正確ではございませんけれども、十一月から十二月にかけまして約一週間、この問題につきましてソ連と協定をやろうという話し合いをいたしました。そのときソ連側から、標識をつけろ、要するに夜なんかわからないから、沿岸の定置その他にはっきりした標識をつけろというかなり厳しい要求が出まして、当時のわが国の沿岸漁民の資力その他から言いまして、それはとてもつけられないということがあって、話がまとまらないで別れたわけでございますが、その後、四十九年に標識をつける補助金をいろいろ出しまして、そういう面につきまして、わが方の沿岸もかなり整備できたわけでございます。  そこで、昨年の十一月にソ連と話し合いをしまして、東京に向こうの代表が参りまして、そこで、一応、紛争の未然防止のためと、紛争の起こった場合に、現在訴訟を起こす前に調停する機関がこざいませんから、それを政府間で委員会をつくって、そこで事態を審査する、そうなりますと、いままで向こうが証拠が不十分だというようなことを言っていた問題につきましても、二人ずつ委員が出てやるわけでございますから、かなり突っ込んだ話もできて、従来よりも問題が解決しやすくなるというような委員会をつくろうということで、基本的に同意したわけでございます。  そういったような協定をつくることになりますと、条約になりますので、現在外務省と水産庁で条約案をつくっております。それを極力早く向こうに出しまして、そこで、できれば三月ないし四月に協定交渉をやりまして、協定を仕上げて国会の批准をいただくというような段取りで協定をつくろうと思っております。そういうことで、協定自体につきましては、四十七年からソ連と話をしておるわけでございます。  それから、その都度の被害につきましては、外交チャンネルを通じましてやっておりますし、最近の北海道沖につきましても、外務省はこの十日間のうちに三回ぐらいモスクワの日本大使館からソ連政府に抗議をすると同時に、東京の大使館の人を外務省に呼びましていろいろ抗議をしているというようなことで、その都度抗議はしておるわけでございます。
  164. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 大変努力をしたということのPRのようでありますけれども、しかし、現実には問題が解決しない、一寸も前に進まない、こういう状況の中に置かれているわけであります。  大臣大臣は向こうのイシコフ漁業相と直接話し合うという気はありませんか。
  165. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題は非常に重大でございまして、いま水産庁が申し述べましたように、わが国としても紛争の解決のために努力をいたしておるわけでございます。  いま、最終的にはイシコフと話せというお話しでございますが、倉石前農林大臣が、実は、イシコフ漁業相をことしの二月ごろを目標に招待をいたしておられたわけでございます。われわれとしても、二月にはイシコフ漁業相がわが国に来られて、その際この問題も含めて全般的な日ソ間の漁業問題を討議したいというふうに予定をしておりましたけれども、イシコフ漁業相の都合で、こちらに来られるという見通しが現在なかなか立たないわけでございます。実は、その前にも水産庁長官をソ連に派遣しようということで、ソ連側の意向も打診をしたわけでありますが、ちょうどイシコフ漁業相が外国に旅行しておるというふうなことで、これまた日程もなかなかかみ合わないというふうな状況にいまなっておるわけでございます。いまソ連側とも折衝しておりますが、水産庁長官にもソ連側の日程がつき次第ソ連に行ってもらって、日ソ間のいろいろの問題も含めて協議をしてもらわなければならぬというふうに考えておるわけでございます。  いま外交ルートを通じて、被害等につきましてはいろいろ抗議を申し込んでおるわけで、現在私が受け取った大使館からの電報によりますと、ソ連としても、違反といいますか、日本の漁業に非常な被害を与えた場合は厳重に処分するというふうなことを言ってきておりますから、私たちとしては、今後は相当自粛してくれるのじゃないかというふうな期待は持っておりますけれども、果たして現実の姿がそういうふうにいくかどうか、今後とも注目をしていかなければならぬ、こういうふうに思うわけであります。
  166. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 どうですか。外交チャンネルを通じてもうまくいかない、相手の漁業大臣との話し合いもそういうことでなかなか前に進まない、だとすれば、国連機構あたりに訴えるような方法で、第三国の介在の中でこの問題を話し合うというような、別な外交ルートというものはつくられないのですか。
  167. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、いま水産庁長官が御説明いたしましたように、昨年、協定をつくろう、そのための専門委員会を設けようということで合意ができておるわけでありますし、この三月ごろにはこの協定についての交渉を始めることができるというふうな見通しはつけておりますので、両国間の話し合いをして、その話し合いによって紛争の処理のための協定ができれば、それで日本の沿岸漁業の秩序は保つことはできるのじゃないかと私は思います。ですから、まず第一にやらなければならぬことはやはり日ソ間の交渉と、それによるところの協定の締結じゃないだろうか、こういうふうに思うわけです。
  168. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 対ソ外交の中における、特に漁業問題に対しては、間近に迫ってまいりましたサケ・マスの漁業交渉あるいはカニの問題というものがあるという中で、実は、どうも弱腰になっているのではないかという批判が漁民の間に強くあります。したがって、それはそれ、これはこれという外交上の明らかな姿勢というものは明確に日本としては貫いていくということでなければ、この問題はなかなか解決しないだろうと思うのです。  しかも、先般北海道の漁民の代表が約二十人ほど東京にやってまいりまして、ソ連大使館にも直接抗議に行っている。この応待をしたのは二等書記官のようでありますけれども、その実態については実際に知らなかったので、事実だとすれば善処するという回答を出しているようであります。この点日本としてはいろいろ努力をしているというお話し先ほど来ありましたけれども、しかし、実際問題としては一歩も前に進まぬという現状を考えますときに、相当の気構えと新たな方法を講じないことには、この問題の解決はつけられないばかりか、被害が日本沿岸にますます広がっていくという傾向になるわけでありますから、その点については、私が提案をしておりますように、大臣みずからソ連に出かけていくぐらいの気構えを示しながら、この問題を大臣が先頭に立って解決するという姿勢を示していただきたいと思うのですが、重ねてこのことについて大臣所信を伺いたいと思うのです。
  169. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは長い間にわたって行われておる事実でございますし、わが国としても抗議もしばしば申し入れているし、あるいはまた賠償金等の申し入れ等もしているわけでありますが、ソ連としては賠償金に対しても何らの返答がない。ただ、協定を結ぶということについては合意を見ておるわけでございますけれども、事態は日々深刻な事態が続いておるという状況でございますので、私もひとつ強い決意を持って、この事態の解決のために先頭になって努力をしてみたいと思います。
  170. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そこで、きのうわが党の井上泉委員が当面政府が損害について補償するという考えはないかとただしたのに対して、見舞い金というような言葉が出てまいりまして、その考え方があるという一端を示されたようでありますが、この具体的な考え方について、この際明らかにしていただきたいと思います。
  171. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは私の独自の考えで申し述べたわけでございますが、補償というようなことは、これはもうソ連が補償するのが当然でありますし、補償の肩がわりというわけにもまいらないわけでございます。しかし、現実には被害を受けておられる。この被害に対しては何らかの救済をしなければならぬというふうに私は考えるわけであります。そういう立場に立って、被害の救済のために何らかの方法を積極的に考えてみたい、努力したい、こういうふうに思うわけであります。
  172. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 私は外務省にちょっと文句があるのですが、いま申し上げたように、北海道の漁民がソ連大使館に抗議にやってまいりましたときに、実は、外務省にもこの問題について善処方を要請に行っております。これは四日の日のことであります。しかし、外務省では、大臣はおろか、次官も会おうとしないばかりか、橘欧亜局長がこれまた会わない。悲壮な問題を抱えて東京までやってまいりました被害漁民の皆さん方に会わないというのは、一体どういう心なのですか。私はその辺が理解できない。しかも、最終的に人数を制限するというような話で、六人とか七人とかなら会うけれども、それ以上は会わないと言ったそうでありますが、一体どこの国の外務省なのですか。こういう場合に、外務大臣みずからこの問題について皆さんの話を聞くために出てきてしかるべきだと思う。一局長が絶対会わないだの、会うのなら七人に限定するだのと言うのは、一体どういう根拠に基づいてそういう拒否をしたのか。外務省の姿勢について、この際明確にしていただきたいと私は思うのです。
  173. 木内昭胤

    ○木内説明員 ただいま先生の御指摘の点は、若干誤解もあると思います。外務省の幹部が陳情団にお目にかからないというようなことは毛頭ございません。ただ、その陳情団の外務省幹部との会見をあっせんされた国会議員の秘書の方との話し合いに若干手違いがございまして、十分五十名の方にお目にかかれる場所がなかった。これはその先生の秘書の方も認めておられますように手落ちであったわけでございまして、決してお目にかからないというような性質のものではなく、この点については陳情に来られた方にも御納得いただいておると思います。
  174. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 それはどこの先生の秘書か、私はわかりませんけれども、しかし、せっかく訴えたい、何としてもこの問題について善処してもらいたいという要望をひっ提げて、しかも漁民の代表としてお見えになったのですから、手違いでとかなんとか、そんな役所的な官僚的なことを言わないで、皆さんと会ってよく話をするということがいわゆる新しい政治のあり方じゃありませんか。これは外務省ばかりじゃなく、よそでもしばしばそういう事態が起こっているわけですけれども、場所の問題というのは理屈にならぬわけです。外で会ったっていいじゃありませんか。今後そういうことのないように、厳重に私は注意をしておきたいと思いますが、いかがですか。
  175. 木内昭胤

    ○木内説明員 いまのような手違いによって先生の御指摘のようなことは起こしたくないというのが私どもの考えでございます。
  176. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 以上で緊急当面の漁業問題について終わりにさせていただいて、次に、大臣所信表明に対する質問を進めてまいりたいと思います。     〔藤本委員長代理退席、委員長着席〕  さて、昨日からそれぞれ各委員から、大臣が就任するに当たって攻めの農政という言葉を出されたことを中心にして大変議論が起こっております。実は、私も、この攻めの農政という言葉は、評価をすればまことにユニークな発言でありますし、今度は安倍農林大臣は何かやるのだろうという期待を実は持っていた一人でありますが、その後の大臣の発言を聞いておりますと、これは攻めどころではない、守るのも守れるのかという疑念が実はわいてくるのであります。しかも、こもごも各委員から指摘がありましたように、攻めの農政を具体的に示す新年度の予算については、どこを探しても攻めの農政などという部分が出ていない。これは質問が重複いたしますから、なるべくここにこだわらないで進めたいと思うのですけれども、あなたは、きのうの竹内委員の質問に対して、攻めの農政ということは私の気持ちを示したのだと言われたが、この一言で、私は実はがっかりしたのであります。あなたの気持ちとしてはそれでいいけれども、しかし、いま置かれている農民や漁民や国民は、三木総理安倍農林大臣の訓辞、訓話を聞けと、そんなことで安心して農業をやれるという情勢にないことは大臣もよくおわかりのとおりであります。  しかも、攻めの農政とおっしゃるからには、私の気持ちだと言っておられるけれども、その気持ちのある限りにおいては、いままでの農政について深い反省があって、初めて攻めの農政という言葉を引用されたんだと思うのです。まさに、大臣のおっしゃるとおり、今日の農政を取り巻く諸条件というものは非常に厳しい。そこを踏まえてこれから攻めに転じていくのだという、そういう気持ちだけではなくて、将来安心して農業に取り組めるような展望をこの機会に具体的に示してもらわなければ、幾ら訓辞をたくさん聞いたって、それだけでは日本農業の立て直しはできないのであります。  そこで、攻めの農政とおっしゃる限りは、いままでの守りの農政というものについての反省があると思うのですが、その反省は端的に言って何と何と何なのか、その点を具体的にひとつお示し願いたいのであります。
  177. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私が攻めの農政と言いましたのは、私が農林大臣に就任をし、農政を進めるに当たっての私の政治姿勢といいますか、私の考え方を率直に申し上げたわけでございますが、それはそれなりに、現在の農業を取り巻くところの情勢についての認識というものがその基調になっておるわけでございます。これは私がくどくど申し上げるまでもなく、現在の世界的な食糧事情の逼迫した現状、さらに、国内においては高度成長経済から安定成長経済へと路線が変更をされていくという、そういう客観情勢の変化というものに対する認識を基礎にいたしまして私の姿勢を打ち出したわけでございます。その情勢判断としては、国内においては、高度成長経済に伴うところのいろいろなひずみというものが農村に出ておることは、これはもう事実でございます。私が一々それを列挙するまでもないわけでございまして、このひずみを是正して、そして、農村あるいは農業従事者に将来に対しての明るい希望を持っていただく、魅力ある産業として農業を確立していく、こういう私の考え方でございます。これから農政審議会の御答申を得て、総合農政、総合食糧政策を打ち出していくわけでありますが、その時点において、長期的な、揺るぎのないといいますか、農政基本的な政策、それに基づく具体的な施策をここに打ち立てていきたいというふうに私は考えておるわけであります。
  178. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 これまたまことに総論農政でありまして、私にとっては、まあこれからお手並みを拝見させていただくということになるのですけれども、それにしては反省点が明確でないと私は思うのです。こことこことここはやはり従来の守りの農政と言われたものの大きな反省点であるという、この点を実は示してほしかったわけであります。  そこで、一点だけお聞きをいたしますけれども、昨年から始まりました麦の増産対策がありますが、実際には昨年一年間にどれだけの実績になったのか、この点、局長からで結構ですが、数字をお示しいただきたいのです。
  179. 松元威雄

    ○松元政府委員 従来、麦は毎年年率三割以上減少いたしておりましたが、四十九年産麦は、全国といたしまして約三%増加に転じまして、いわば従来の著しい減少に歯どめがかかって、将来への増産展望が見えたということでございまして、したがって、これをさらに伸ばし、定着させるこが今後の課題というふうに考えております。
  180. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 局長一つの展望に立つことができたという評価をあなたはしていらっしゃるのですが、それでは麦類を——特に大事なのは小麦でありますが、この小麦を五年後には一体どれくらい生産できると見通しておられますか。
  181. 松元威雄

    ○松元政府委員 ただいま五年後という御質問でございましたが、一つは、農政審議会で六十年の見通しを立てておるわけでございますが、それと、当面五十年産麦につきましては二割増産ということを目途にいたしまして施策を講じたわけでございまして、五年後の計数的見通しはまだ確立いたしておりませんが、そういうテンポで進めてまいりたいと思っております。
  182. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 麦の生産に対するいわゆる六十年見通しを私も手元にいただいておりますが、三%の伸び率でいったのでは、小麦だけをとってみても、昭和六十年にこの目標どおり果たしていくかどうかに私は大きな疑念を持っています。この計算でそうなりますか。
  183. 松元威雄

    ○松元政府委員 御指摘のとおり、三%のままでは参らないわけでございます。したがいまして、私が先ほど申しましたとおり 五十年産麦はまず二割を目標にしようということにしておりまして、もちろん機械的に年率二割というわけではございませんが、従来の三%だけではございませんで、もっと伸ばそう、とりあえず二割、これを積み重ねて六十年目標を達成いたしたいというふうに考えております。
  184. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 具体的にはどういうふうにやろうとお考えですか。
  185. 松元威雄

    ○松元政府委員 そこで、麦の生産対策は従来からいろいろ、特に機械化ということを中心として施策はあったわけでございますが、さらに四十九年度産麦から、例の生産振興奨励補助金を出したわけでございます。さらにもう一つ、その場合に、いわば麦作というものの実態を見ますと、これはやはり集団的にまとまってやるということが一番伸ばす方途であろうということで、四十九年も、生産奨励補助金に加えましてモデル麦作集団の育成の施策を講じたわけでございます。  そういたしまして、四十九年の麦の生産の跡を振り返ってみますと、非常な特徴がございます。と申しますことは、一つは、畑におきましては、これは北海道では規模が大きいものでございますから非常に伸びたわけでございますが、都府県におきましては畑は依然減少をたどっている。それに対しまして、水田裏は約一二%ふえているという実態がございます。これは何と申しましても、北海道がふえましたのは、規模が大きいということでございます。同時に、都府県の場合に水田が伸びたということは、やはり、水田裏はまとめて伸びれば規模拡大につながるということでございまして、規模を拡大して伸ばしていくということを拠点にしてまいろうということで、したがって、四十九年からございましたモデル麦作集団の育成につきまして、これを水田裏にさらに重点を置きまして、これを従来より大幅に助成単価を上げましてふやしていく。それによりまして規模を拡大し、あるいは期間借地でございますとか、作業受委託でございますとか、そういうかっこうで規模拡大を図りまして、そういう麦作集団を拠点にいたしまして、いま申しました五十年度はとりあえず全体といたしまして二割増産。その中で水田裏はもっと伸び率は大きく考えておりますが、そうやってまいりたいと考えておりますし、かたがた、これは全体の運動でございますが、いま申しました水田裏を中心といたす関係上、麦及び飼料作物を中心にいたしまして水田裏の不作付を解消するように運動を展開していこう、それらと相まちまして、いま申しました五十年度まず二割という目標を達成してまいりたい、こういうように思っております。
  186. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 わかりました。わかりましたが、問題はたくさんある。しかし、きょうは時間がないので、一つ麦の例だけを言ったのです。いま麦にスポットライトを当てて、国内における自給率をそこから高めていく。これは一つのテストケースにもなるんですね。これは国内食糧自給というたてまえから言うと、日本農政大臣が言う攻めの農政に転じていく一つの重大な足がかりになる。だから私は麦を引き合いに出したのです。しかし、これは非常に問題があると思いますが、これはまた別な機会に議論することにさせていただいて、次に移ってまいりたいと思います。  次に、大臣先ほど稲富さんも中核農家の問題について触れておられまして、私が言いたいことを実は稲富さんが全部言ってしまいましたが、しかし、答弁を聞いておりましたら、やはり、私はこの問題についてもう一度大臣にお尋ねしなくちゃ済まないという気になったのであります。つまり、中核農家の問題の質問になってまいりましたら、大臣は、政府委員の説明、大河原さんの説明を聞かなかったら答弁に立てない。中核農家というのは耳新しい言葉ではないのですけれども、実は、この中核農家育成なんということをいまさらのごとく出してきたことに対して、私は若干これを分析してみなければならぬなと思って、実は、農業基本法というものができたとき、あのときにもう一度さかのぼってみなくちゃならなくなりました。つまり、先ほども指摘があったように、自立経営農家を育成するといって出発したのが農業基本法ですが、自立経営農家百万戸育成なんかということはとんでもない夢物語で、実際には、内地府県を中心にして兼業農家が倍増、三倍増したという結果になりました。これはまさに基本農政が破綻したという最も端的な例であります。今度出されてまいりました中身について、先ほど六十歳未満で百五十日云々とかいろいろなことを言っておりましたが、聞いておりましたら、基本農政で言っているところの自立経営農家の名前を単に置きかえたという印象をぬぐうことができません。  そもそも、中核という言葉はそんなものじゃないはずです。広辞苑か何か引っ張って見てください。「中核」という言葉は、六十歳の年とった人まで含めて中核農家だなんていう定義づけをするために使うような「中核」という言葉にはなっておらぬのです。大体、政府部内は、中核農家育成対策などというようなものを持ち出すに当たって、本気になってこれは議論されたのでしょうか。私はこの点をきわめて疑問に思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  187. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中核農家は、自立経営農家を頂点として、そのもとに専業農家と、さらに第一種兼業農家も含めておるわけでございますから、百五十万戸ぐらいというふうに考えておるわけであります。  この中核農家というのは、農業生産の六割のシェアを中核農家で占めておるということで、この中核農家を中心にして今後の農業施策を展開していかなければならぬという立場から、中核農家という一つの考えを施策の中へ織り込んだわけでございます。
  188. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 国の制度資金の中で、実は、五十五歳以上になったら金を貸さぬというものがあるのですよ。大臣、これは御存じですね。そういう制度資金があるのですよ。六十歳は中核ですか。
  189. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も農村の出身でございますが、六十ぐらいまでは農業に従事できる、また、実質的に生産の担い手となっておるというふうなことから、六十歳未満というふうなことにしたのであります。
  190. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 それは仕事はできますよ。七十になったってやります。やらなければ食えないのですから、やりますよ。ただ、中核農家育成対策といったら、そんな、まるで網羅したような形でもってやろうという考え方なら、何もあえて中核農家育成なんて言わなくたって、農業に専念して一生懸命に真っ黒くなって働いている人たちは全部すくい上げていくのだという考え方に発想を転換してもらわないと、農基法農政で自立農家育成といったのは、何のことはない、弱者切り捨てだったのですよ。弱い者はやめていけ、やれる者にだけ金を貸すからおまえらだけ残ってやれという考え方ですね。ところが、今日残っている農家は、本当に夢も希望もない、展望もないという中で、しかしおれは農業で生きて、農業で死んでいくんだという、この信念だけが支えになっている人たちがいっぱいいるのです。ですから、いまのような説明で、中核農家育成だ、一生懸命やる農家は全部中核農家と見ていくんだということで本気になっておやりになるつもりかどうか。たとえば近代化資金の貸し付けの問題についても、そういう考え方で貸し付けをしていくのですか。これはできますか。
  191. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、中核農家に傾斜したこれからの農業施策を打ち出していくわけでございますから、制度資金その他についても、中核農業はこれが対象になることは当然だと私は思います。
  192. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そうですか。大臣がそういうふうに明快におっしゃったのであれば、私は安心いたします。今後そういうことがあったら私は承知しません。六十歳になったら、おまえらもう百姓の中核ではないぞ、だから金を貸さぬぞ、後継者も云々——後継者のない人が多いのですよ。だけれども、それには金を貸さぬ、おまえさんたちやめていけなんていうようなことで、弱者切り捨て、選別農政がもしも行われるとしたら私は容赦しませんが、よろしいですか。
  193. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまお答えしたとおりでございまして、六十歳までの基幹の農業従事者、農業に意欲を持っておる人たちに対しては、これはもちろん制度金融その他についてもその対象となるべきである、私はそういうふうに思うわけであります。
  194. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そもそも、中核農家を育成するという中で、もう一つ、私は、これはまた耳新しい言葉なんでありますけれども、初度的経営資金融資という、この制度をつくると言っているのですね。初度的とは何ですか。初度的経営資金融通制度というのはどういうことをお考えになっているのですか。
  195. 齋藤吉郎

    ○齋藤説明員 お答えいたします。  初度的経営資金という表現をとっておりますが、考えておりますのは、その範囲といたしましては、規模拡大の初年度に必要となりますところの投資の費用、いわば例といたしましては肥料、農薬、飼料の購入代金でございますとか、あるいはその他の施設の修繕費、中小家畜の購入費、さらに技術習得費といったようなものもこれに含めて考える。さらに、地代等につきましても、政策的に行っておりますところの規模拡大に伴いますものについてはこれも含めていきたいということで、一応そういったようなもので償還に相当期間を要するということで、これを初度的経営資金という概念でとらえているわけでございます。さらに、その細部につきましては今後検討をするということで、大体そのようなことを考えておるというのが現在でございます。
  196. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そうすると、大臣がさっきおっしゃったように、六十歳の人でも、経営を拡大して農業経営を真剣にやるという場合には、このお金は文句なしに貸すのですね。
  197. 齋藤吉郎

    ○齋藤説明員 これはやはり金融でございますので、償還の能力というようなこと等とも関連がございますし、さらに、こうした経営を積極的に進めていくという、そういう経営の継続の意思というようなこと等をも勘案いたしましてこれを判定してまいる、こういう制度になろうかと思います。
  198. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 大臣、そらごらんなさい。もはや化けの皮がはがれたじゃありませんか。六十歳になっても一生懸命やるという人がいる。意欲を持ってやろうとしている。ところが、いま齋藤さんがおっしゃっているように、これは選別するというのでしょう。判定するというのでしょう。判定、すなわちそれは選別じゃございませんか。そうしたら、大臣が言っているように、中核農家育成と言ったって、六十になったらもう償還能力を考えて金を貸さぬよということ、これがいままでの制度資金なんですよ。つまり、選別されてきたんです。それじゃ、基本農政で言っている自立経営農家育成と全く同じことをやろうとしているのではございませんか。私はそれを言いたかったのであります。大臣、違いますか。
  199. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私が言っておるのは、中核農家はその制度資金の対象に入るということであります。
  200. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 それじゃ、審議官が言ったのは違うのですね。私はそれを確認しておきたいんですよ。後で、金を貸す、初度的何とかかんとかいう制度資金を設けて、それはだめだ、枠をはめるのだ、と、こういうことになっては困るから、大臣大丈夫ですかと冒頭に念を押したら、いや、絶対やりますと言う。そうしたら、あなたの言ったのは違うけれども、大臣はそれにも金を貸すということで、政府部内で見解が一致していないじゃないですか。
  201. 齋藤吉郎

    ○齋藤説明員 大臣と私の方が違うというような御指摘でございますが、そういうことはないというぐあいに考えるわけでございます。やはり、制度のこれを適用いたしまして、具体的に貸す場合の——やはり金融でございますので、貸し方の問題として、条件その他等については今後いろいろと検討してまいるということで、制度の態様といたしましては、いま大臣がお答えになりましたように、中核農家というものに対して、これの規模拡大に対しまして初度的な経営資金を貸す道を開こう、こういうことでございます。
  202. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 どうもこれは怪しくなってきたのですが、私もこれをもっと詰めたかったのですけれども、あまり時間がないが、これは大臣の攻めの農政を裏の方からひっくり返す意見でしょう。大臣の考えていることを役人の皆さん方は本気になって支えてやろうとしていますか。どうも僕は疑わしくなってきたのです。大臣、しっかり掌握して、あなたのお考えになっている方向でこれをおやりいただけますね。もう一度お答えください。
  203. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中核農家は初度的経営資金の対象になることは、これはもうそのとおりでございますけれども、やはり、資金の融通でございますから、融資の態様についてはいろいろと基準等はあるわけでございますが、中核農家全体に対して融資の道を開いていくということは、今回確立したものである、私はそういうふうに受け取っております。
  204. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 さっぱりわからないふうになってきました。詰めていけば詰めていくほどだんだんぼけちゃったので、余り詰めないでさらっと流しておいた方がよかったのかもしれませんけれども、しかし、私は、その点が心配なんですよ。自立経営農家育成といって大変なことをやろうとしたのですが、これが失敗した。今度は言葉を変えて、中核農家育成だと出てきた。これはまたぞろ農民を喜ばせて、ぬか喜びに終わらせるのではないかと思うから、きょう私はこの点にしぼって大臣に考え方をお尋ねしていたのです。事務局の段階で皆さんの考えていることは、大臣の考えていることと全く違う。大臣もだんだんそっちの方に近づいて考え方を修正し始めたわけですね。しかし、これはまた別な機会にやりたいと思います。  きょうはもう一つ大事な林業問題がございますので、そっちへ移りたいと思いますが、林野庁長官数字的なことは大臣と言うてもなかなか無理があるでしょうから、長官からお答えいただいて結構ですが、最近の林業の動向について、私は端的にお尋ねをします。  いっとき大変な不況だと言われ、ことしの正月を迎えて木材業者の倒産が相次ぐという、こういう不況状態を迎えている中で、うらはらに、日本の木材界といいますか、林業の状態というものは必ずしもそれに対応するような状態になっていないばかりか、一面では材価がまたぞろ大暴騰というふうな事態に直面するのではないだろうかという予測を出している人もございます。それはいろいろな見方があるのでしょうけれども、一面、私は、言っていることについていまから心配しておく必要がありそうに思います。したがって、この際、われわれが長い間主張してまいりましたように、政府みずからが積極的に価格の安定対策を進めるということが必要になってきたと私は思いますが、この点、取り組みをされるお考えがありましょうか。まず、第一点にそれをお尋ねいたします。
  205. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  木材価格が暴騰する兆しがないか、それに対応する対策はどうだ、こういうことでございますがが、需要が、住宅用を中心といたしまして、さらに金融事情等も加わりまして、短期的には大変な変動をいたしておることは御承知のとおりでございます。ただ、それに対応しましての供給面におきましては、いろいろな事情がございまして、国内産の木材にいたしましても、外材にいたしましても、それぞれの国での事情がございまして、弾力的な対応ができないというようなことがやや見えております。したがって、現在、現段階での需要の減退ということで、木材価格は低迷いたしておるのでございますけれども、この一、二カ月やや上昇というような面もございます。しかし、私ども、現在のところは暴騰するというようなことは考えておりません。  しかし、私ども、その価格安定のためには、長期的にも、あるいは短期的にも、これに対応する姿勢を持っておるのでございまして、供給面等につきましては、先般来私どもの諸計画を立て直しまして、国内資源の充実ということを考えますと同時に、御承知のような国際協力事業団を通じた海外へのそういう事業の投資、あるいは技術の投入、こういうことを考えておりますと同時に、短期的には、御承知いただいておりますように、木材の備蓄機構をさらに五十年度は拡充してこれに対応していこう、こういう姿勢でございます。
  206. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 いま長官から当面の状況について説明があったわけでありますが、最近の外材と内材の占めるシェアが大変心配される状況に相なってまいりました。すなわち、外材の輸入が極端にふえつつある。しかも、一昨年から起こりました木材の大不況というのは、この輸入に対する無節操なやり方にあったという反省が一つなければならぬと思うのです。  そこで、これは私の一つの提案でありますけれども、商社に任せた外材輸入という方式を改めて、政府間において計画的な外材輸入ということにもはや踏み切るべきだと私は思うのですが、この点はいかがですか。  重ねて、また、石油戦争のときに動き出しておりました木材輸出機構設置という問題が一つあるわけですが、この点については、その後の動きがどういうふうになっているのか。この二点をお聞かせいただきたいと思います。
  207. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘がございましたように、六六%近いものが外材ということになっております。したがって、日本のこのような木材輸入の動向というものは関係諸国に大変影響を与えるという実態でございます。また、それに対応いたしまして、アメリカ等については、丸太の輸出規制をしようとか、御指摘のございましたように、インドネシア、フィリッピン、マレーシア等にそういう機構をつくろうじゃないか、と、こういう動きも出ているのでございます。しかし、木材は世界的な資源の不足物資でございますし、しかも成育には長期間かかる木材でございますので、こういう不足物資等に対しましては、現在は全く自由化されておりますけれども、各国に対しまして私どもの係官あるいは私ども自体も参っておりますし、また、向こうもたびたび参っていろいろな情報の交換をやり、そして、また、私どもの国内業界を集めましての外材の需給検討会とか、こういう自主的な努力に対して、私ども指導を強化いたしておるのでございます。  ただ、先ほど御指摘がございましたように、どうしても政府でお互いに話をしようじゃないかという動きがございますけれども、直接的に介入するというようなことがなかなか困難な点もございますし、御承知のとおり、ソ連材等につきましては、長期的な契約をやって安定した輸入を図ろうという動きをいたしておるし、また、今後もそれを指導してまいるつもりでございます。  なお、御指摘のございました東南アジアの木材生産者連合というものが発足いたしておりますが、現在のところは結成のための準備委員会でございます。すでに三回ほど開かれておりまして、この間私どもの国の方にも調査団が見えまして、われわれといたしましても業界を通じて十分話し合いをしておるのでございますが、価格とか数量の安定というようなことにつきましての具体的な取りまとめということにはまだ、なっていない、こういうことでございます。
  208. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 輸入外材の問題の中で、私どもがもう一つ側面として非常に心配しておりますのが製材、いわゆる製品の輸入、これが国内の木材業者、とりわけ製材業者の面に非常に圧迫を加えているということは否めない事実だと思うのですが、この点についてはどういうふうに今後節度をもっておやりになろうとするのか、具体的な考え方をお示し願いたいと思います。
  209. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  御指摘がございましたように、製材品が比率としてふえているということは事実でございます。四十九年をちょっと申し上げますと、輸入そのものは、四十九年は不況でございました関係から、一%ほど四十八年に比べまして低くなっておりますけれども、木材の輸入が全体的に低くなっております関係から、製材品で輸入しているものは、一%ほど実質は四十八年度に比べてふえております。そういう傾向でございますけれども、この程度ではまだそう大きな影響はないとは思っております。しかし、産地国の実情から言いますと、先ほど申し上げましたように、丸太で輸出することを規制するというような動きがございます。したがって、将来はやはり製材品がふえていく。  そうなりますと、国内の製材所というものは次第に困ってくるんじゃないかという御心配かと思いますが、私ども、そういうことを承知いたしておりまして、現在中小企業の近代化促進事業の特定業種に指定いたしておりまして、構造改善事業に着手いたしております。これをさらに推進いたしますと同時に、五十年度の予算におきまして、木材産業の構造改善の基本問題を検討するため数百万円の予算を計上いたしておりまして、それを通じまして、各関係者を集めまして、あるいは各ブロックごとに、あるいは県段階におきましても、中央段階はもちろん当然でございますけれども、真剣にこれと取り組んで推進策を考慮し、そしてまた具体的な推進を図ろう、こういうつもりでございます。
  210. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 さて、この国内木材資源の減少や世界的な木材資源の減少の中で、さらにまた資源を若干浪費したいという傾向の中で、資源節約への転換という重要課題がいま出てきております。先ほど長官からもこの面には触れていたようでありますが、こういう点について私どもが最も端的に指摘をいたしましたのが、高度成長期における資源浪費という問題についてでありますけれども、実は、四十八年二月には、閣議で、重要な林産物の需要及び供給に関する長期見通しというものが立てられました。私は、いままで議論をしてまいりました中から言えば、これは抜本的な改定が要るのではないかという気がいたします。具体的なものを挙げる時間がございませんけれども、そういう考え方を私は強く持っておりますが、このいわゆる長期見通しについて改定をするという考え方に立っていると理解してよろしいですか。前段のあなたの御答弁から考えると、この面について見直しをしなければならぬというふうに私には聞こえるのでありますが、これはいかがですか。
  211. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  御指摘がございましたように、四十八年の二月に閣議決定していただきました長期見通しを持っているのでございますが、これは昭和五十六年度と六十六年度でございますけれども、この需給の見通しをいたしたのでございます。この見通しをいたしました後に、この二、三年のうちにいろいろと変動がございまして、確かに、価格の変動あるいは数量も多少の変動がございました。しかし、長期的見通しをいたしましたときに、需要量の場合は私どもの見通しと大体似たようなかっこうで数量としては入っておるように思います。また、供給量の点につきましては、国内産材が多少見通しよりへこんでおる。そして外材の方が多少ふえておる。比率といたしましては外材の比率が高くなっておりますけれども、全体的な数字というものはそう狂っていないんじゃないかという感じは持っております。ただ、現在、先ほど大臣からお話しがございましたように、高度成長から安定成長というようなことでございます。また、同時に、森林の持っております超長期というようなこともございまして、この二、三年の動きだけで直ちにいまこれを改定する必要があるかどうかというようなことにつきましては、もう少し検討させていただきたいと思っております。
  212. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 二、三年の動きだけで長期見通しを立てるということはなかなかむずかしい。おっしゃる点は私も理解ができるのです。しかし、私がいままで指摘をしてまいりました点について、長官も相当部分お認めになっている。しかも、外材の輸入は、当時この閣議決定がなされた長期見通しの中においても、六四%というふうなシェアになるということはなかったはずであります。そうすれば、この先かなり長期的な展望に立って見ても、このシェアというものはさらに広まっていく傾向にありこそすれ、減っていくということにはならないのではないか。国内の木材生産の当面の、この日本の山をずっと見渡して見ましたときに、そういう考え方を私は強く持っておるわけです。したがって、この時期に的確な長期見通しに手直しをしていくことの方がより無難だと私は考えるものですから、この見通しについて再検討をする意思はないかとお尋ねをしたわけであります。しかし、もう少し待ってくれというお話しでありますから、待ってくれというのに早速やれと言っても、それは長官もなかなかおやりにならぬでしょうが、私のこういう意見があったということを十分踏まえて今後の運用に当たっていただきたい。このことは強く私の意見として申し上げておきます。  さらに、次には、最近林野庁は五十年の木材の需要と供給見通しについて発表になりました。私は新聞紙上でこのことを承知したのであります。しかし、この細部にわたる考え方と、その積算の根拠というものがどうも明らかにされておりません。私の考えているようなことは違うように思うのです。ですから、私が理解できるような積算の根拠というものを示していただきたいと思うのです。そうでありませんと、この見通しに立って誘導していくということになりますと、調整機能を含めて政府が今後おやりになろうということについて大変大きなそごが出てくるのではないかという懸念がございますが、この点はいかがでしょうか。
  213. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  先般、五十年の木材需給の見通しを発表いたしたのでございますが、数字的に申し上げますと二・何%の増加ということになっております。しかし、このような見通しでございまして、これは的確な需給計画あるいは価格対策の参考にする、思惑的なものも排除したいというようなこともございましてこのような発表をさせていただいたのでございますが、この積算基礎といたしましては、私ども、昨年の三月以来木材の需給問題調査会というものを持っておりまして、そこにこの短期予測の手法について委託申し上げておったのでございます。それが一応中間報告がございましたので、この式を使いまして、主たる需要部門でございます製材、パルプ、合板等の需要量を予測いたしたのでございます。この予測の具体的な手法といたしましては、製材と合板用材につきましては、需要に非常に強い関連を持っております国民生産などの関連から需要量を求めたものでございますし、また、パルプにつきましては、特に東北、北海道等に多いのでございますけれども、原材料のストックがたくさんございます。したがって、それを参考にいたしまして修正いたしました。  そういうことをいたしますと同時に、供給面につきましては都道府県に委託いたしまして、素材需給動向観測調査というものをずっと続けております。その数字と国有林の計画に従った伐採量、これを使ったのでございます。その結果が四十九年より二・四%上回る、従来のような高い伸びではない、こういうことで国産材はほとんど横ばい、その二・四%の部分は主として外材に依存せざるを得ない、こういう数字を発表いたしまして、思惑的なものとか、あるいは取引とか、そういうものの参考にしたいと思っております。  なお、こういうことでございますから、いろいろな条件が変われば当然変わることでございまして、私ども、必ずしもこれをコンクリートなものとして考えておるわけではございません。
  214. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 もちろんそうです。私はコンクリート詰めにせよと言っているのではないですけれども、木材界がいまとりわけ不況だ。わらをもつかむような気持ちの人たちがたくさんこの業界にいらっしゃる。この人たちは、やはり、政府が発表する需要と供給の見通しなんというものは大変眼を開いて見ていらっしゃるわけです。それによっておのれの工場がのるかそるかというところまで追い詰められておる人にしてみれば、これは大変重要な意味を持つわけです。ですから、この点、これは重要なものなんだという御認識の上に立ってこれを進めていただかぬと困るのだが、出されたものはどうも少し安易ではないかという感じがしているので私は指摘をしたのであります。
  215. 松形祐堯

    松形政府委員 ただいま御指摘がございましたように、非常に重大な関係があるということを承知いたしておりまして、関係団体等にもお集まりいただきまして、十分この趣旨を説明申し上げ、御理解をいただきたいところであります。特に、木材の価格なりというものは、建築の増大とかあるいは減少というものに非常に鋭敏に、また大きく影響されるものでございます。これは単に林野庁だけではございませんで、計画を立てる建設省とか、あるいはローンの大蔵省とか、輸入の通産とか、各省が十分に連絡いたしまして、そういう木材の業界の安定ということ、あるいは価格の安定ということにも努力いたすつもりでございます。
  216. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 さて、先ほど瀬野さんからも指摘のありました造林の問題ですが、私も瀬野委員の御指摘については全く同感であります。これはもろもろの問題があって、造林を急がなければならない、何といっても山づくりは造林だということで、当委員会としても、こもごも与野党からこういう意見がいままでずいぶん強く出されていることは大臣も御承知のとおりです。  長官にばかり質問していたら大臣は手持ちぶさたでしょうから、今度は大臣にお尋ねをするのですけれども、こういうことについて、私ども社会党の国有林対策特別委員会が、過般大臣が就任間もないころお伺いをいたしました。この造林の実態について大臣はおわかりですかと聞いたら、いや、私自身は造林の実態についてよく承知しているということにはまだなっておらぬと言うので、それであれば、ぜひひとつこの造林の実態を御調果されてはいかがですかと提案いたしましたら、いや、私もそういうふうにしたいと思う、点検、調査をやってみたい、と、こういうふうな考え方をわれわれに示された。もう具体的に大分考え方が煮詰まっていらっしゃると思うのですが、大臣、あのときのお考えを具体的にどのように進めようとされているのか、そこをお尋ねいたします。
  217. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 近年の造林面積の減少傾向は、やはり、森林資源の現況、自然保護の要請等による伐採面積の減少であるとか、あるいは労働力調達の困難化等によるものであるわけでございますが、こうした情勢に対処いたしまして、森林資源を充実して森林の多角的機能の向上を図るために、造林面積の確保及び累増した人工造林地の保育等、造林事業を一層推進することはもちろんのことでございますし、民有林については、森林組合等が行う拡大造林に対する助成の強化あるいは除間伐に対する助成の強化、さらに農林漁業金融公庫の造林資金の貸し付け条件の改善等、財政金融面にわたって助成内容の拡充強化を図ることといたしておるわけでございまして、また、造林の推進に当たっては、森林現況に応じた適正な保育等、現地の実態を十分把握しつつ計画的実施をしてまいらなければならぬわけでありますが、造林の実態につきましては、私も林野庁ともいろいろと相談もいたしておるわけでございますが、林野庁自体が造林の実態については把握に努めている現況であるということでございますし、林野庁としては造林の実態把握というものは今後とも正確にしていき、その上に立った造林施策を講じていかなければならぬことは、またこれ当然なことだと思うわけであります。
  218. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 さて、昨年森林法と森林組合合併助成法の一部を改正いたしました。この中で非常に問題になりましたのが例の森林組合の労務班の組織編成という問題でありますが、その後これはどういうふうに動いておりますか。
  219. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の森林組合の労務班でございますが、これは全国の林業労務の三分の一の数と、大体七千ぐらいの班がございまして、約六万人ということになっております。現在、その六万人の方々の就業日数というのは次第に伸びつつございまして、一応いい方向に行っているのではないか、こういうふうにも思っております。ただ、先般の改正森林法におきまして、森林組合の非常なてこ入れをするということで法的な根拠ができてまいりますと同時に、新しい仕事が非常にたくさん各方面にできるようになりまして、この労務班の活用いかんによっては、その事業の成果というものもいろいろと違ってまいる重要な担い手でございましてて、私ども、ちょうど模範定款等をつくりながら、そして新しい年度にはこれを具体的に動かしていこう、と、こういう諸準備をしながら、それぞれ予算措置等も講じてきているところでございます。
  220. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 時間がもう来てしまったので、御同席をいただいている委員の皆さんには大変お気の毒なんでありますが、もうちょっとで終わりますから、ひとつ御勘弁いただきたいと思いますが、大臣、実は、白ろう病の認定患者が二千二百名を超えました。これは大変な数になったわけです。私はきょうは白ろう病の問題しか取り上げませんけれども、腰痛症の問題、そのほかの職業病として当然認定しなければならない病気が、民有林労働者、国有林労働者ともにふえております。私どもは毎回毎回大臣のところへ行くたびにこの問題の対策を迫ってまいったところでありますが、実効ある状態にまで突き進むことがなかなかできない。幸い、白ろう病だけは認定ということに相なったのですが、しかし、認定しただけでは問題の解決になりません。したがって、アフターケア等を含めまして、大臣は実効ある施策をどのように進めようとお考えになっているのか、林業にかかわる所信として、この際ぜひ明確にしていただきたいと思うのであります。
  221. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま御指摘がございましたように、振動障害を初め、林業労働者の職業病対策につきましては、労働省においてチェーンソーの使用時間の規制等施策を講じておるところでございますが、その重要性にもかんがみまして、農林省としても、民有林労働者に対しては、従来から講習等を実施して労働安全衛生に関する指導を行うとともに、安全衛生関係機具の整備等につきましても助成してきたところでございますが、今後とも、作業現場における安全点検パトロールの実施等、指導援助をさらに強化してまいる方針でございます。  また、国有林労働者に対しましては、振動障害を起こさないような機械の開発改良あるいは健康診断の充実等、予防に必要な措置を講じておるところであります。  また、公務災害認定者に対しては、薬物の投与、温泉療養等、機能回復訓練等の所要の治療を実施するほか、国家公務員災害補償法及び労使間の協約によりまして休業特別給を支給いたしておるわけでございます。  これらの疾病の予防、治療については、医学的に究明すべき点が多いわけでありますが、さらに専門医の意見も聞きまして、また、関係各省庁との連絡調整も図りながら、予防及び治療に必要な措置を今後とも積極的に講じていかなければならないと存じております。
  222. 澁谷直藏

    澁谷委員長 島田君、時間が来ておりますから簡潔にお願いいたします。
  223. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 最後に伺いますが、時あたかも林業基本法が制定されて満十年たったのであります。そもそも宣言法ですから、そのことについて議論をしても、限られた時間の中ではこれはなかなか解決はできないと思うのですけれども、しかし、考えてみますと、この十年間、林業基本法が制定されて以来の日本の森林の危機というものはさらに一層深まったということに、実は大変大きな問題を指摘せざるを得ないのであります。そもそも、国家百年の大計に立っての森林あるいは林業経営を、高度経済成長政策の枠の中において、木材生産第一主義やあるいはもうけ第一主義に走ってきたというふうなことについて、いまはきわめて厳しい反省をしなければならないときだと思うのです。  そこで、大臣は、もう一度攻めの農政というような言葉を持ち出して恐縮ですけれども、林業の問題につきましても、まさに同じことが言えると思うのです。私どもはこうしたことを憂いながら、過般来、社会党としては法案を一本出して、引き続き検討の事項として当委員会に付託をしているわけであります。ああいう林興決議を尊重しながら今後の日本の森林を考えていくということは、まさに緊急に迫られた問題だと私は思うのです。あなたは新しく大臣におなりになったのだから、この経過についてはまだ十分承知をされていらっしゃらぬかもしれませんけれども、私どもはそういう立場を踏まえて国営分収造林法という法律を提案をいたしているのであります。  私がこの問題について当委員会で議論をいたしましたときにも、与野党を含めてこの問題について対処するということを言われ、しかも、また、当時の倉石農林大臣が、決議を尊重して実施を検討すると、そこでお約束をされたんでありますが、それを全くほごにしている。こんなことでは林業基本法十年が泣いてしまうと私は思うのです。大臣は、公益的機能云々とか、あるいは山の緑を取り戻すとか、国民の保健の上から重大な森林だということを盛んにおっしゃっているけれども、本気になってこういう問題も今後進めていこうという気構えがなければ、日本の森林を守れないと私は思うのです。  最後に、大臣所信のほどを伺って私の質問を終わりにいたします。
  224. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 わが国の林業は、高度経済成長の中におきまして増大する木材需要に対して、短期的に、資源制約等によりまして国内生産がそれに対応することが非常に困難なこと、あるいはまた国土の保全等の公益的機能の確保の要請が強まっておること、さらに、二次、三次産業へ人口流出をいたすことに伴って、林業従業者が大変減少いたしまして非常に厳しい影響を受けたことは事実でございます。こうした林業をめぐる諸情勢は厳しいわけでございまして、政府としても長期的な視点に立ちまして各種の施策を講じておるわけでありますが、今後林業行政を具体的に進めるにつきましてはいろいろと検討すべき問題点はあろうと思うわけでありますが、林業基本法に定めるところの基本的な方向につきましては現時点においても変わることはないと考えておるわけでありまして、林業の超長期的な性格にもかんがみまして、この林業基本法の基本的方向に即して今後とも林業施策を講じてまいりたいと思います。  同時に、また、国会で御決議をいただいておりまする決議につきましては、これを尊重して、現実の施策の中にこれを取り入れていくために努力をしていくことは当然であると考えております。
  225. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 以上で終わります。
  226. 澁谷直藏

    澁谷委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十三分散会