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1975-06-23 第75回国会 衆議院 内閣委員会科学技術振興対策特別委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月二十三日(月曜日)    午前十時六分開議  出席委員   内閣委員会    委員長 藤尾 正行君    理事 加藤 陽三君 理事 木野 晴夫君    理事 箕輪  登君 理事 大出  俊君    理事 中路 雅弘君       有田 喜一君    伊藤宗一郎君       竹中 修一君    中馬 辰猪君       林  大幹君    綿貫 民輔君       八木  昇君    鈴切 康雄君       受田 新吉君   科学技術振興対策特別委員会    委員長 八木  昇君    理事 伊藤宗一郎君 理事 竹中 修一君    理事 石野 久男君 理事 瀬崎 博義君       加藤 陽三君    木野 晴夫君       近江巳記夫君    内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房審議室長   原   徹君         経済企画庁総合         計画局長    小島 英敏君         科学技術庁長官         官房長     片山 石郎君         科学技術庁原子         力局長     生田 豊朗君         科学技術庁原子         力局次長    福永  博君         科学技術庁原子         力局次長    半澤 治雄君         環境庁水質保全         局長      大場 敏彦君         資源エネルギー         庁公益事業部長 大永 勇作君  委員外出席者         内閣官房内閣審         議官内閣総理         大臣官房参事官 安仁屋政彦君         原子力委員会委         員       山田太三郎君         原子力委員会委         員       井上 五郎君         科学技術庁原子         力局原子炉規制         課長      中村 守孝君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電課長  高橋  宏君         運輸大臣官房政         策計画官    間野  忠君         会計検査院事務         総局第一局長  高橋 保司君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一一号)      ————◇—————     〔藤尾内閣委員長委員長席に着く〕
  2. 藤尾正行

    藤尾委員長 これより内閣委員会科学技術振興対策特別委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行います。  科学技術庁設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
  3. 藤尾正行

    藤尾委員長 本案の提案理由説明聴取につきましては、お手元に配付してあります資料により御了承願うこととし、直ちに質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石野久男君。
  4. 石野久男

    石野委員 科学技術庁長官にお尋ねしますが、本法改正する動機は何であったか。
  5. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 前々から、日本の原子力行政におきます安全性に対する姿勢と申しますか、あるいは体制そのもの権限あるいは責任所在等、いろいろ批判を受けておりましたが、特に去年の「むつ」問題の発生以来、深刻な反省あるいは再検討の要に迫られまして、その結果、抜本的な改正と、当面処置する、また処置しなければならぬ問題等、いろいろ検討いたしまして、その結果生じた一つの現象がこの安全局設置の問題だと承知しております。
  6. 石野久男

    石野委員 では、この改正によりまして、いまのその趣旨に十分こたえるだけの措置ができるという確信がございますか。
  7. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 御承知のように「むつ」の問題が起きまして、内閣では「むつ」事件の技術的なと申しますか、直接の原因を調査、究明するためにいわゆる大山機関ができまして、その結論が出ました。また原子力委員会まで含めまして、言いかえれば原子力基本法に規定されております原子力委員会ファンクション等まで含めまして、文字どおり抜本的に検討に入ろうということで、そうなりますと、原子力委員会みずからその衝に当たるのもいかがかと思われますので、むしろ第三者的な、もっと極端に言えば次元の違う、高い視野から問題を処理する機関をつくってこの検討に当たったらよかろうというので、内閣の中に恒久的な、抜本的な機構改革のために、有沢先生を座長にする懇談会ができておることは御承知のとおりでありますが、しかしながら、恐らくはその懇談会結論が出ますのはまだ先のことでございますし、また結論が出ましてから、これを予算化しあるいは法律化し、その間において各省との権限調整の問題がございまして、なかなか手間取る問題かと存じます。しかも、それが全部一応整理がついて、国会の承認等も得ますということになりますと、その上また、できた機関が定着してということになりますと、相当長い期間、少なくとも二、三年は考えざるを得ないのではなかろうか、それでなければ抜本改正にはならぬというふうに考えます。  ところが一方、現実的にどうかと申しますと、それではそれまで現体制のままでよろしいかと申しますと、どうにも現体制のままでは不十分ではなかろうかというので、それまでの一つの経過的なと申しますか、あるいはそれに至る準備的な、あるいは改正の第一歩としての措置をとるべきではなかろうかというので、いま出しております安全局はそういう意味の組織だと私は考えております。
  8. 石野久男

    石野委員 「むつ」に学んで抜本対策をするということは、政府考えておるけれども、それは時間がかかる、だから経過措置としてこれをやるのだ、こういうお話ですが、その趣旨はわかりますけれども、たとえばその経過措置として、特に科学技術庁なりあるいは通産省運輸省等考えなければならぬ問題は、たとえば「むつ」の問題を骨うと、詳細設計基本設計との間の短絡がある、その連携が十分にいってない、そういうようなことは少なくとも早急に調整して、一本化するというような体制をせなければいかぬという教訓を学んでおると思います。  われわれは、そういうふうに感じておるのですが、もし政府もそうであるとするならば、この改正によって、経過指貫として、せめてそれだけのことでも満たし得られるのかどうかということについて、大臣所見をひとつ聞いておきたい。
  9. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 この安全局ができました一つの大きい考えと申しますか、これはこの前にも何遍となく御説明申し上げたと存じますが、一つは、昨年の暮れ、原子力発電を担当しておる各県の知事、八県ばかりございますが、知事さんが集まりまして、「むつ」のときまでは、これは安全なりと言って政府委員会等で決めたものは、そのまま自分たちは拳々服膺して、そうして政府で安全だと言うからいいではないかということで来たけれども、しかし不幸「むつ」のような故障が生じておりますので、自分らといたしまして、現地の執行者として今後さらに問題を進める上においては、政府で何らかの措置をとらないで、いまのままで、ただ研究を進めておりますということでは困ります、この際はっきり、政府として原子力の安全問題に具体的に姿勢を示してもらいたいという意向が実は非常に強うございまして、御承知のように原子力行政、特に安全問題は、一刻も間断を許さない、間隙を許さない問題でございますので、その声にも一つはこたえる意味で、行政機関の、特に局などの設置は一切ことしはまかりならぬという閣議決定のかたい決議を破りまして、政府姿勢をまず具体的に一つ示そうというので出てきたのがこの安全局でございます。  したがって安全局で、冒頭申しましたように、全部これでもって片づくかと言いますと、もちろんそういうものではございません。ただ、いままでの、たとえば推進、開発とそれを規制する分野とが一つではおかしいではないかというふうな議論とか、あるいは最終責任と申しますか、原子力安全性問題についての責任所在をどういうふうに考えたらいいのか、委員会なのかあるいは行政機関なのか、そういういろいろな問題もございますし、あるいは一貫性の問題、その問題は、先ほど申しましたように、いま有沢機関検討中でございますけれども、しかし、とりあえずこういうはっきりした責任体制一つでもつくって、そうして従来の各岩間にまたがる法律は、いま急に変えるといっても、また次に有沢機関なりで変えるということになりますと、これまた大変でございますから、とりあえずはそういう法律をそのままにしておいて、そうして一つのシステムとしてこれを総合的に、もう少し行政機関間の調整として問題を処理したらいいのではないかというふうなことを考えまして、この原子力局をつくったのでございます。したがって、これが国民の要望にこたえる一歩前進であることには間違いないというふうに考えておるわけでございます。
  10. 石野久男

    石野委員 一歩前進かどうか知りませんが、とにかく「むつ」に学んで一貫性を確立する、そして責任所在を明確にするという、その経過的措置としてこの法案がそれにこたえるかどうかということを私は聞いているのですから、そういう点で簡単にひとつお答えいただきたいのです。  いま一点聞きますけれども、この法律案の中で、その責任所在を明確にし、責任にこたえるというところは、この条章の中のどこの改正で出てくるのですか。
  11. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私は、やはり原子力局に混在しておりました規制機能を分離して、そして原子力委員会は本質的には諮問機関という性格であることは間違いございませんので、この機関が安全問題に対して、ただいまの段階としては責任を負っていくのだという行政権限所在を明確にするというところに非常に意味があるのではないかと思います。  それから、一貫性の問題に関しましては、先ほども申しましたように、各省間の調整をどうするかという問題が種々ございますので、その点は現在の法規は急にいま変えるわけにまいりませんので、現在の法規をそのままにして、言いかえれば電気事業法とかあるいは船舶法とかいったようなものは大法案でございますので、今後抜本的な対案ができた際の改正に譲りまして、とりあえずは現法規のままでも、行政間の連絡等で、いわばシステマタイズされた形で安全性確保ができていくのではないかということ。  それからもう一つは、規制行政強化という点を考えますと、やはり一つの局に明確にして責任をはっきりさすと同時に、これが強化、言いかえれば安全、研究とかあるいは国民に対する理解、協力を求めるとかあるいは査察体制強化するとか、検査その他に対して人員を整備するとかいったような、そういう充実になってくるだろうと思います。
  12. 石野久男

    石野委員 この安全局をつくることによって、そういう責任体制が明確になるというお話ですけれども、たとえば原子力委員会設置法第十五条のところで、従来は科学技術庁原子力局委員会庶務を処理する、こうなっておったが、今度は原子力局がそれを総括し、処理する。「ただし、科学技術庁原子力安全局所掌に属する事項に係るものについては、科学技術庁原子力局及び科学技術庁原子力安全局において共同して処理する。」という、このときの安全局原子力局との関係。そしてこの条項を見ますと、むしろこれは原子力局の方が安全局を総括する、あるいはいろいろな問題について上位に立っていろいろな処理をしておって、安全局独自性というのはやはり原子力局の中に包括されているように読まれますけれども、そういう点についてはどういうふうに理解したらいいのですか。
  13. 生田豊朗

    生田政府委員 新原子力局の方が原子力安全局よりも上位に立つという考え方はございませんで、あくまでも並列でございます。ただ、たとえば原子力委員会のように包括的な業務をいたしますものの庶務といたしましては、どちらかと言いますと、やはり新原子力局の方がその庶務をやるべきである。しかし、そう言いましても、原子力安全局所掌にかかわるものは非常に多い、しかも重要なものがございますので、その場合は両局、つまり窓口としての新原子力局担当局としての原子力安全局両方が一緒に担当いたしまして、原子力委員会に対応するという考え方でございます。
  14. 石野久男

    石野委員 その庶務の中には人事案件も全部これは入るのですか。
  15. 生田豊朗

    生田政府委員 入ってまいります。
  16. 石野久男

    石野委員 私は、細かいことはもう時間の関係で避けますけれども、安全局をつくることによって、安全局が独自的に特に責任を持ち得るという条章は、この改正法案の中で明確にどこか示されておるかということを探してみたのだけれども、やはりないんだな。ただ仕事はするということだけは出ておるのですけれども、そういう責任、われわれが要求している一貫性の問題についても、何かの連絡をとるようなことも出ていないし、あるいは責任を明確にするというようなことも出ていませんが、長官、そこのところはどういう形で先ほどの御答弁の内容を満たすわけですか。
  17. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 設置法の中に何々に対して責めを食うということは、これは何設置法でもないわけでありまして、行政分野としてやる任務そのものに対して責務を持つのは行政府として当然でございますから、何々業務をやるのだということを規定すれば、それに対して責任を負うというふうに読んでいただきたいと存じます。
  18. 石野久男

    石野委員 原子力船むつ」がこういう法改正一つの大きな動機になったということですが、現実原子力船だけでなく、発電所事故が引き続いて出ておるわけでございまして、その実情はむしろ原子力船むつ」をはるかに越えて、やはり数多く、また内容的にもわれわれが憂えなければならぬ問題があると思うのです。現在その発電所事故状態について、簡単でいいですから、ここで一遍おさらいしたいと思っておりますので、情勢を明確にしてください。
  19. 生田豊朗

    生田政府委員 現在、常業運転に入っております八基の原子力発電所のうち六基が、これは先生承知の種々の故障によりまして一時停止しておりまして、二基が正常逆転をしている状態でございます。
  20. 石野久男

    石野委員 原子力発電所の稼働の状態は、いま局長が言われたとおりです。私どもは、この原子力船むつ」におけるところの事故発生よりも原子力発電所の中でははるかに深刻に問題を提起している、こう思います。去る二十日でございますか、電力業界は十社の社長会を開いて、いろいろと立地問題や経営難に対応する策を練ったと新聞は報道しております。広域運営発電所共同建設などがその中に云々されておるのですが、長官は、この十社社長会事情についてどのように情勢をキャッチしておるのか、あるいはまたこれに対してどういうお考えを持っておられるか、この点についてひとつ所見を承りたいと思う。  なお、経済企画庁からおいでになっているけれども、経済企画庁の方からもこの件についての所見を承りたい。
  21. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 電気専業そのものに対する監督行政は、通産省の所管するところでございますので、私からその問題、どうと言うわけにまいりませんし、また私もよく承知しておりません。ただ、新聞で拝見いたしましての限りでは、また私見ではございますけれども——と申しますのは、原子力委員会等で特別にこの問題に関して検討した結果ではございません。したがいまして、私自体の個人的な感想でございますけれども、そういう方向は一歩前進した好ましい方向じゃなかろうかというふうに実は考えられます。
  22. 小島英敏

    小島政府委員 企画庁といたしましては、一般的にはやはり各業界の中でいろいろ話し合いが行われることは、独禁法の関係がございますけれども、電力行政につきましては、料金について、これは全く公共料金としてチェックされておりますから、そういう問題ございませんので、やはり前向きにいろいろな合理化策について考えていくということは望ましい方向であると思いますけれども、詳細につきましては、これは通産省の問題でございますので、お答えを省略さしていただきます。
  23. 石野久男

    石野委員 通産省からおいでになっていると思いますが、所見を承りたい。
  24. 大永勇作

    ○大永政府委員 お答え申し上げます。  先般二十日の業界発表は、これは電力九社とそれから電発とで相談して決めた方針でございますが、事情といたしましては、御承知のように最近、これからの電源開発考えてまいりますと、資金難の問題もございますし、それから立地難の問題も非常に深刻な問題になっておりますので、今後の基本的な方向といたしましては、やはり共同開発あるいは輪番開発というふうなことを積極的に進めていこうということでございます。  原子力につきましても、あとう限りそういった共同開発を進めていこうということでございますが、ただ、今後どのように具体化するかという点につきましては、政府の方と相談をして具体策を練っていくということになっておりまして、先般の発表段階はまだ抽象的な段階でございます。ただ、基本的な考え方といたしましては、今後原子力につきましても共同開発を進めていきますことは、資金問題、立地問題という見地だけではなくて、やはり機器標準化とかそういった点にもつながってくる問題であると思いますので、基本的方向としてはそういう方向が望ましいのではないかというふうに考えております。
  25. 石野久男

    石野委員 それじゃ通産省にお聞きしますが、望ましい方向だということに対応する政府策案というものを用意しておりますか。
  26. 大永勇作

    ○大永政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、これから具体的にそういった精神をどういうふうに実現していくかという点につきましては、政府、特に通産省はもちろんでございますが、科学技術庁経済企画庁等とも相談してまいりたいということでございます。
  27. 石野久男

    石野委員 科学技術庁経済企画庁相談をして対処しなくてはならぬということだと言っても、現実業界はこういう方向へどんどん進もうとしておるわけです。これはやはり業界でこういう話が出たからといって、政府はのんびりしておるわけにはいかないだろうと思う。早急にそういうことに対する対策を立てるための何か準備をしているのだろうと思いますが、それは全然ないのですか。それはしてないのですか。
  28. 大永勇作

    ○大永政府委員 お答え申し上げます。  内部ではもう前から議論しております。それで、やはり基本的な考え方としましては、たとえば原子力発電所をつくる場合でも、従来は片肺で、一基だけつくって、数年置いてまた一基つくるというふうなケースが多いわけでございますが、これは投資の効率化という点からいきますと、かなり問題があるというふうに考えております。  それから、今後の問題でございますけれども、現在大体百万キロワット級になっておりますが、これが今後どんどん大型化していっていいかという問題になりますと、やはりユニットとして考えますと、むしろ百万なら百万あるいは一十万といったようなものを標準的な機種として定君さしていくという方がいいのではないかというふうな議論内部ではやっております。
  29. 石野久男

    石野委員 いま通産省の話されたことには非常に重要な問題が、科学技術の側面からはあるわけですね。第一点の効率化の面から言えば、片肺建設というのはどうもやはり能率が悪いということだから、とにかく両肺で行こうということ、こういうことになりますと、安全性の問題でいまぶつかっていることについての配慮が全然欠けていると見ざるを得ない。それからまた、ユニットの問題にしましても、三十万キロだ、七十万キロだではちょっと小さ過ぎるから一基百万を標準にしようと、こういう形になってくると、これもまた安全性の観点でいろいろ問題があり、しかも本法改正動機が全然解明されないうちにこういう状態が出てくるということになると、法の改正とこの業界の指向している点とでは全然考え方が一致しないのです。そういう問題を通産省はどういうふうに調整しようとしているのか、特に科学技術庁はどういうふうに考えているのか、あるいは原子力委員会はこういう問題の産業界のこういうような考え方に即応するためにどういう対応をしようとしているのか、この点をひとつお聞かせいただきたい。
  30. 生田豊朗

    生田政府委員 先生御質問の電気事業連合会社長会結論でございますけれども、それにつきまして大体こういう結論に達したという簡単なメモが私のところに届いておりまして、改めて原子力についてゆっくりと御説明したいということでございます。ただ私、ちょっとそれ以来暇がございませんので、改めましてゆっくり事情を聞くことにいたそうとしております。したがいまして、その新聞報道あるいはそのメモに関する限りでございますけれども、いわゆる広域運営あるいは共同開発というような問題は、私どもかねがねそういうようなことも考えておりましたので、大きな方向としては非常に妥当な方向ではなかろうかというように思っておりますが、そういうこととその安全性確保とは全く別な問題でございまして、開発単独で行われようと共同で行われようと、あるいはただいま公益事業部長説明にありましたように、ユニットがある程度のユニットを前提にしようが、あるいは単独一つ原子炉だけの設置であろうが、これはあくまでその安全が確保されるということが大前提でございますので、そういうことのために安全性を無視するということは一切考えておりませんし、むしろそういう新しい方向に対応するためには、ますますこの安全件の確保のための行政体制ができなければいけないというように考えております。
  31. 井上五郎

    井上説明員 ただいま生田局長から御説明がありましたことを一言補足をいたしておきますが、昨年、森山さんが科学技術庁大臣だった時分に、当面、原子力行政上何が必要であるかということを審議をいたしまして、森山私案として発表いたしました。その中に原子力発電用機器というものは標準化をする方が経済面並び安全面から考えてよろしい、ぜひそういう方向に進めたいということを発表したわけでございますが、今回の電力業界広域運営ということは、そうしたことを推進する上においても非常に便宜であるかと存じます。  あるいは御承知かと存じますので蛇足でございましょうが、たとえばドイツにおきましては、クラフトベルク・ユニオンというのが発電用機器をつくっております。これはたとえば百二十万キロワットでございましたか百三十万キロワットでありましたか、ちょっとはっきり記憶いたしませんが、そういう機器標準をいたしまして、それで、もしも電力会社が小さい場合に、そういう大きなものは一遍にできないということであれば、合同をしてでもそうしたものに標準機を限る、こういった方針を決めておりますので、今回の電力会社の申し合わせは、私は間接にしか存じませんけれども、そういう意味から申しまして、今回のような措置によりまして機械を標準化をする、こういうことは安全の面からも、また経済の面からも両方とも望ましい形であると、かように考えております。
  32. 石野久男

    石野委員 電力業界が打ち出したこの共同開発なり広域運営という問題が、安全性の問題、経済性の問題から望ましいものであるという、そういう御説明意味するところについては、私もある程度理解ができる。ただ問題は、こういうことをやるについて、従来の法体系との関係から言いましても問題がいろいろあるだろうと思うのです。基本的に言いますと、原子力平和利用という問題については、当初ほとんど国がこれに対して規制なりあるいは管理の問題を一手に引き受けて、民有ということは極力避けるようにしてきた筋合いのものなんです。それが核燃料物質あるいは核物質について民有化方向が出て、運営の問題においても、またそういう方向が多岐的になってきまして、今度また経営難があるあるいは立地選定難があるということで、これがやはり広域運営とかあるいは共同開発ということになりますと、業界の意向はわかるけれども、当初原子力の安全利用ということでたてまえをとっておった法の趣旨から、民有化方向に行って、それでまた広域経済ということの意味と、それから国が管理、監督をするということの意味との兼ね合いを相当やはり練り直さなければいけないのではないだろうか、こういうように私は思いますけれども、その点についてはいまどのようにお考えになっておりますか。
  33. 大永勇作

    ○大永政府委員 原子力発電に関することでございますが、やはり開発を進めていく上におきまして、国と民間との役割りをどういうふうに考えるか、それからあるいは発電そのもののほかに、いわゆる濃縮問題とか再処理問題とか廃棄物処理問題とか、いろいろございますけれども、そういったものを今後進めていく上におきまして、民間と国との役割りをどういうふうに考えていくかということは非常に重要な問題でございまして、そういう問題を含めまして今後検討してまいりたいというふうに考えております。
  34. 石野久男

    石野委員 そういう問題を含めて検討するという意味は、法律にかかわる問題がありますから、だからそういう問題を一応手がけないと、やはりいま局長の言われたようなことを素直に通していくということはむずかしかろうと、こういうように思いますが、そういうような準備をすでに手がけておりますかどうか。法改正の問題について……。
  35. 生田豊朗

    生田政府委員 ただいまの先生の御質問に関連いたしまして、たとえば電気事業法改正というような問題につきましては、これは通産省の所管でございますので私からお答えいたしかねますが、原子力の安全に関します、たとえば原子炉規制法その他関係法令の改正ということになってまいりますと、今回の社長会結論のように共同開発あるいは広域運営ということになりましても、現在の法体系を基本的に改正する必要はないのではないかというように考えております。  標準化の問題も先ほど井上先生からの御説明がありましたように、原子力委員会といたしましても検討いたしているわけでございますが、これもむしろ設置者といたしましての電力会社の方が申請の段階標準化した方がいいんじゃないかということでございますので、その問題につきましても、特に現在の法令を改正する必要はないと、かように考えております。
  36. 井上五郎

    井上説明員 これも一言補足をさしていただきますが、電気事業は終戦後、進駐軍から過度経済力集中排除法の適用を受けまして、再編成についていろいろ議論がございまして、御案内のとおり公益事業委員会の監督下に九電力分割ができた次第でございますが、その当時から民有としての競争原理は導入するけれども、独占禁止法からは自動的に除外をされておりまして、このことは諸外国とも全部さようであると存じます。ただ、競争だけをしていくというのは趣旨ではございませんので、先ほど来申しましたような、今回のような共同連絡強化していくというような方向に参りましたことは、私どもとしては好ましい方向であると存ずる次第でございますが、その中で、最初はいろいろ原子力に関する問題が国有あるいは国営であったというような御指摘がございましたかと存じますが、核物質に関しましては、当初国有でございまして、民間では扱わさせなかったということでございますが、これはアメリカにおきましても、当初さようでございましたのが、年代は忘れましたけれども、相当以前にこれは民有になりまして、日本においてもさような方向をとっておるわけでございますが、やはり国民に対しまして非常に長期にわたりまして安全保障をしなければならない、こういったような問題につきましては、そうした点から国民の保健を守るという意味におきまして国家の管理あるいは国営的な運営ということは一部やむを得ないことかと考えております。
  37. 大永勇作

    ○大永政府委員 電気事業法関係におきましては、先ほど申し上げました原子力機器標準化という問題がございまして、現在、省内で研究会を設けて検討しておりますが、それに伴いまして今後いわゆる技術基準の改定ということが必要になってくる可能性があるというふうに考えております。
  38. 石野久男

    石野委員 電気事業法の問題に関連して広域運営とか共同開発という問題が、民間九社、それから電発がございますしあるいは原発がある、こういうことになりますと十一社になるわけですが、これらの各社が共同開発ということになると、やはり資本の統合の問題とか、あるいは共同開発ですから統合は出てこないという意味もあると思いますけれども、効果は統合された資本効率というものを期待するわけでございますから、当然のこととして電力事業の独占の方向がぐっと進んでいくわけでございますね。事業分担の上では民有の方でいきますけれども、いま井上委員から言われたように後処理としての、いわゆる核物質廃棄物の処理だとか、その他やはりいろいろと当然長期にわたって安全を確保しなくちゃならないというたてまえから、国有あるいは国営というようなことはあり得ることだし、またそれを期待するというふうに井上委員もいま言われておりましたし、また新聞などで、社長会でもそのことが強く要望されているようです。  私、ここで一つ問題になりますのは、いいところだけは民間で取る、それであとのめんどうくさい問題は国でやってもらおうというという、このあり方は簡単には許せないことだと思うのです。電気事業についてそのことが非常に露骨に出てきておるように思います。ことに立地の問題などで、国が立地問題に対してかかわるということになれば、強権発動をやってでも立地を確保しようということを連想させます。そういうようなことが許されてはならないので、そういうことをやはり一応歯どめをするということがない限りは、いまの競争原理を一方ではやりながら、片方ではむずかしいものは国がやるんだというような、こういう勝手気ままなやり方は許せない、このように私は思っている。政府はどういうふうに考えているか。その点について、またどういう対策をとられるか。
  39. 生田豊朗

    生田政府委員 先生の御指摘のとおりだと思います。やりやすいところだけ民間でやって、やりにくいところは全部国にやらせるという考え方は私は間違っていると思いますし、私どもも、そういう考え方を採用するつもりは毛頭ございません。  ただ私も、先ほど申し上げましたように、詳細な説明をまだ聞いていないわけでございますけれども、新聞とかもらいました簡単なメモ承知いたします限りは、たとえば一番むずかしい再処理以降のダウンストリームの部分、それを国営でやってもらいたいというようなことでは必ずしもないように思います。非常に巨額の設備投資を要しますので、資金的な援助を国に依存したいというようなことのように理解しております。  それから、立地問題につきましても同様でございまして、現在まで私どものところに原子力発電所の立地問題が非常に難航しているので、国が直接正面に出てほしいとかいうような申し入れはございません。むしろ安全性についての説明で、なかなか会社の説明では納得してもらえないので、むしろ国の方からも説明してもらえないかという依頼がございまして、それには適宜対応しておりますが、立地問題あるいは土地の取得につきまして、それを国の強権力に依存するという考え方は特に聞いておりません。
  40. 大永勇作

    ○大永政府委員 いま原子力局長から御答弁がありましたとおりでございます。
  41. 石野久男

    石野委員 生田局長は、国の権威あるいは権力で物事をやるような気持ちは全然ないのだ、けれども、たとえば立地問題などでどうも安全性の問題は会社が説得したのではうまくいかないから政府がやってほしい。会社の説明では説得できないけれども、政府が説得できるという理由はどこにあるんですか。
  42. 生田豊朗

    生田政府委員 その点でございますけれども、一口で申しますと、要は信頼性の問題であろうかと思います。ときにはその会社の現地の事業所なり何なりの方が、かなり時代おくれと申しますか、地元の住民の方の神経を逆なでするような発言をされることがかつて数回かございました。そういうことは大変よろしくないわけで、そのつど私どもの方から注意しているわけでございますけれども、何と申しますか、最近の趨勢あるいは動向といたしまして、どうも会社の説明は納得できない、一体国はどう考えているんだというような御要望が、むしろ住民サイドから出てくることが多うございまして、そういうことがありますと、国と申しますか、国と申しましても、私なり私どもの担当課長が行くということよりも、われわれの方からしかるべき専門家を推薦して説明していただくというようなこともやっております。要は、その説明の内容というよりも根本は信頼度ということではなかろうか、かように考えております。
  43. 石野久男

    石野委員 会社の方々の説明は時代おくれなところがあって、政府の方の説明は非常に信頼性があるというようなお話ですが、しかし官尊民卑という気持ちがまだ日本にはずいぶんと生活の中に残っておるわけです。その官尊民卑というものの考え方を、やはり巧みに利用するということは権威をかさに着ることになります。そういうことがあってはならないわけです。しかし実際には、各地におけるところの説得というのはみなこの形でやられているわけです。私は、これは政府として心しなければならないことだと思っております。特に皆さんが直接出かけていかないで、地方におけるところの、いま隣組というのはないけれども、何か区とかあるいは班とかいうような組織を利用して、全然原子力に無知な方々を、一定の紙切れのようなものに書いたような説明書で説得させていく、こういうやり方が行われているのが実情なんですよ。局長はそういうことを知っておりますか。
  44. 生田豊朗

    生田政府委員 余り細かいことは承知いたしておりませんけれども、個々の原子力発電所の用地取得の段階におきまして、時折先生の御指摘のようなことがあったということは聞いております。
  45. 石野久男

    石野委員 業界共同開発広域運営ということを指向しながら、一方ではいわゆる廃棄物の処理等にかかわる、長期にわたって安全を確保せにゃならぬ問題について国の出場を要望している、こういうことが現実でありますから、この問題を受けとめてもし政府がかかるとするならば、基本的にその安全にかかわる問題の解明をはっきりしてからでないといけないだろうと思うのです。ユニットが百万キロワットになるとか百三十万キロワットに標準化するということは、問題の処理の仕方としてはそれは非常に簡素化しますし、そして対処の仕方も非常にいいと思いますけれども、やはりそれを裏づけるものとして、安全性の確立というものはしっかりしなければいけない。そういうものに対する対策のないままに、やはり業界が経営がむずかしいからとか、立地の確保が困難だからというふうなことだけに対応するような対策政府はとってはまずい。  私は、この点は明確にしておかないといけませんので、やはり安全性に対する解明ということを政府がはっきりしない限りは、こういう問題に対する討議をするなとは言いませんけれども、それを前進させるとするならば、ちょうど開発優先と同じことになってしまう、そういうことがあってはならぬ、こういうように考えるので、そういうことに対して政府としてはどういうふうにその点の、やはりわれわれに対する担保というか、裏づけになるような方策を考えておられるか、この際これは通産省にも、あるいは科学技術庁長官にも、ひとつその点を聞いておきたいと思う。
  46. 生田豊朗

    生田政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、共同開発あるいは炉の標準化あるいは広域運営という問題につきまして、すべてにつきまして安全性確保が大前提であることは申すまでもないことでございますので、いやしくも安全性を無視しまして、ただ事業の効率化だけのためにそういう方策がとられるということは、われわれとしては認めがたいところでございます。
  47. 大永勇作

    ○大永政府委員 同趣旨でございますが、安全性確保はもう最大前提でございますので、われわれの所掌しております電気事業法の運用に当たりましても、安全性確保ということを第一義の点といたしまして厳しく規制をしてまいりたいというふうに考えております。
  48. 石野久男

    石野委員 安全性確保の問題と現在の、軽水炉が事故続きで現実には八基のうち二基しか稼働していない、こういう実情から見て、しかもまた電力会社は、こういうことを背景とする中で経営困難、立地選定難、こういうような具体的な事案が出ているということから見ましても、とにかく一応原発の建設と申しますか、そういうものに対して一定程度ブレーキをかける、そしてそこでやはり安全性の確立ということを確認していくという手段、方法をとるということが非常に大事なのではないか。そういう意味からしますならば、エネルギーの安定供給を確保するためにこの原発が大きな役割りを果たすということを政府考えて、基本的に長期計画ということを見直さなければいけないだろう、これはどうしてもそれをやらないでは、ただ、こういう社長会の要求だけを受けて立つということではつじつまが合わない、国民は納得しない、私はそういうように思うのです。  だから、そういう意味で私は前々から原子力発電に対する計画を見直すべきであるということを言っておりますが、本法改正の問題が「むつ」の経験に学んで、安全性に対する一貫性と、あるいはまた責任体制を明確にするということと兼ね合わせて、こういういま私が申し上げたような長期開発計画についての見直しの問題等をどういうふうに考えておるか、この際長官にひとつ聞いておきたい。これはまた、経済企画庁はその問題についてどういうふうに、きょうは大臣に来てもらうつもりだったんですが大臣は来れないというのですから、責任のある経済企画庁の御答弁もひとついただきたい。
  49. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 ただいま、総合エネルギー対策閣僚会議でございますか、というものを内閣設置いたしまして、エネルギー関係関係の深い関連省が集まりましてただいま鋭意検討中であることは御承知のとおりであります。その一つの問題といたしまして、安定経済成長下において日本のエネルギー政策あるいはエネルギー供給計画あるいはそれに伴う諸施策がいかにあるべきかという点を検討中でございまして、これが結論を得るときには、おっしゃるように原子力発電というものは従来の計画のままでよろしいか、あるいは現実立地難等の状況から考えてもっとスローダウンするか、あるいは計画を繰り延べるかといったようないろいろな問題が当然出てくると思います。ただいませっかく努力中でございますが、計画自体を努力目標的な計画にするかあるいは実現可能性を主とした、現状を主とした積み重ねというふうな計画にするか、そういう考え方によってもいろいろ変わってくると思います。そういう総合的な観点から結論がおのずから出てくるとも思いますので、その結論をお待ちいただければ大変幸甚だと存じます。
  50. 小島英敏

    小島政府委員 さきに予算委員会で福田大臣原子力発電につきまして、日本のエネルギー計画というものの重要性から、原子力発電の今後の問題につきまして、いろいろプラスといいますか、さらに拡充しなければいけない面と、それから環境、安全その他の事情から縮小せざるを得ないファクターもある、両面あるけれども、どうも自分の感じとしてはある程度縮小せざるを得ないんじゃないかという趣旨の発言をされております。これは企画庁長官といわれるよりも副総理としての御発言でございまして、原子力につきましての基本的な考え方科学技術庁を中心に検討されるわけでございますから、担当大臣としてのただいまの科学技術庁長官のお答えのとおりと思います。エネルギー対策閣僚会議といたしましては、そういう原案をもとにして、一応ことしの秋と言われておりますけれども、需要その他の見通しも含めて数量的なものと、それからエネルギー全体についての対策を固めてまいるということを予定しているというふうに聞いております。
  51. 石野久男

    石野委員 長官にいま一度聞きますが、努力目標にするかあるいは実現可能なものにするかは、これは有沢委員会結論に待ちたいと言っておりますけれども、有沢委員会結論を出すのには、先ほどのお話では少し長い時間かかるだろうというようなこともお話がありました。そうすると、たとえば一年後になるのか半年後になるのか、あるいは二年後になるのか知りませんが、その委員会結論を待つ間、電力会社では個々にみんな開発、建設というものはどんどん進んでいるわけです。そこから問題が多く出てくる可能性があるわけなんですね。そういうような実務的な問題と、この計画の問題との兼ね合いというものについて、やはりわれわれとしては真剣に対処していかなければいかぬと思うわけです。その点について長官はどういうふうに考えているか、簡単にひとつ。
  52. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 あるいは私の説明が足らぬので誤解を招いたのかと存じますけれども、有沢機関と申しますのは、原子力行政をいかに抜本的に改善すべきかというのが任務でございまして、いま議題になっておりますエネルギーの長期計画、その中で原子力発電はいかなる地位を占めるかといったような問題は、有沢研究機関の任務にあらずして、別途つくりました総合エネルギー対策閣僚会議というものがその主任務になってただいま進めております。先ほど、あるいは有沢機関と申したかもしれぬけれども、私そう言ったつもりはないのですけれども、もし言ったとすれば、それは間違いでありまして、いまのエネルギー対策閣僚会議でそういう問題を扱う、また現実に扱っております。したがいまして、その作業と申しますか、主体は通産省経済企画庁原子力でありますと私の方も参加いたしまして、そして各方面からの視野から検討いたして結論を出すということになっております。  私といたしまして、要らぬことを申して紛糾を招くといけませんので、その際の目標はどうなるかということは、計画目標とかあるいは実施可能目標とか、資本主義の計画でございますから、立て方はいろいろありますけれども、しかし、そういうものにとらわれずに、いろいろの状況を判断して、こういう計画が一番妥当であろうというふうに私は結論づけられるものだと思いますので、せっかくできました総合エネルギー対策閣僚会議でございますし、またその結論をもちまして、それを一つの基礎にいたしまして、経済企画庁では中期経済計画でございますか、長期経済計画というものを進めていくという副総理のお話でございましたので、それが今後のいろいろな経済計画の基礎になっていくものと実は考えております。  そういう非常に大局的に立った問題の進め方でございまして、各分野にわたって、細部にわたって検討するという機関ではございませんけれども、しかし、お話がございましたような六千万キロがどうだといったような問題に関しましては、一応の結論がついてくるだろうというふうに考えております。
  53. 石野久男

    石野委員 安全性の問題がきわめて重要だという段階で経験から学ぶ大きな問題は、わが国における原子力に対する自主技術の開発という問題が一つありますが、自主的に技術開発をするということになりますと、軽水炉関係で商業上のいろいろなアメリカとの関係などがあって、むずかしい問題を乗り越えていかなきゃならない案件がずいぶんと多いわけですね。この自主開発について、諸般の事情を全部含めて政府がどうやるかということをここでははっきりしなくちゃならないだろう、同時にまた、来年度予算の中にそのことがもっと具体的に出てくる必要があるのじゃないかというふうに私は思います。  原子力委員会に今回、安全性の問題で予算をつけたと言うけれども、予算はついても人がなかなかふえないとかいうようなことで、実際にはそれが活用できないようなことでは、もういけないのではないか、こういうふうに思いますが、そういう点について、この際、特に科学技術庁あるいはまた原子力委員会としては、この自主技術の開発についての方針がいかにあるべきかということについて所見をひとつ承っておきたい。
  54. 生田豊朗

    生田政府委員 自主開発につきましては、改めて申し上げるまでもございませんで、原子力基本法の三原則の第一に自主ということがうたわれていることもございますので、自主開発をすべての基本にいたしたいという方針でございます。大臣の御答弁にもたびたび出てまいりますように、現在の軽水炉のいろいろの故障あるいはその対応の仕方につきまして、軽水炉についての自主開発が、たとえば西独と比較いたしましてわが国の場合不足していたということが、現在、先生の御質問をいただきましたようなことで出ているわけでございます。したがいまして、特に安全性に中心を置きまして、安全性研究を、特に自主的な技術を中心にいたしまして確立したいということで、安全研究の予算を毎年ほとんど倍増に近い形で増加させてきておりますし、原研におきます安全性研究につきましても、かなり自主的な、国際的な学会にも発表できるようなものが次第に出てきたわけでございますので、その点をまず今後とも拡充してまいりたいというのが第一でございます。  次に、新型動力炉につきましては、これは完全な自主技術開発ということで先生承知のように進めてきております。まず来年、高速増殖炉の実験炉が臨界に達するわけでございますので、それを第一段階といたしまして、今後も高速増殖炉あるいは新型転換炉など、自主技術によります開発を進めていくわけでございますが、この場合も自主技術だということであるために、万一安全性に問題が起こってはこれは絶対いけない、むしろそうなってしまいますと、自主技術の開発自体にもいろいろ疑問が持たれるということでございますので、特にその安全性確保するように念を入れております。  第三に、同じ自主技術開発で「むつ」でございますが、これも非常にむずかしい舶用炉を完全な国産技術でやろうと試みたわけでございます。これはたとえばドイツのオットー・ハーンがアメリカの原子炉を導入してやったということと比べまして非常に画期的と申しますか、自主技術開発のための一つの決断であったと思いますが、その辺のところがオットー・ハーンと「むつ」と、「むつ」の方が若干むずかしい問題を起こしてしまったというようなことでございますので、先ほどの二番目の問題と関連いたしまして、自主技術開発の場合は特に安全性に念を入れてやらなければならない、かように考えております。
  55. 井上五郎

    井上説明員 ただいま生田局長から答弁がございましたが、同趣旨考えております。原子力委員会といたしましては、安全会議というものをかねて持っておりまして、ここで安全政策に関する最高方針を決める。すなわち、ただいま御指摘がございましたが、安全を自主的に確保するためには、国家で予算をつけてもらわなければなりませんけれども、ただいま御指摘のように金があればできるというものではございません。したがいまして、原子力研究所あるいは国の機関においてはいかにあるべきか、また民間の機関においてはいかにあるべきか、あるいは関連をしておる機関においてはいかなる役割りをしてもらえるかという、いわば安全に対するシステム的な研究体制を立てるということが必要なのでありまして、何でもかんでも自主であればそれでいいんだといったような考え方を私どもはとっておりません。  ただいま申しましたように、たとえばドイツで先般軽水炉型の標準機をつくりましたが、しかしその大部分はアメリカの技術によったものである、ただ、それにドイツとして必要と考える改良を加えた、こういうものでありまして、軽水炉である限りはやはり最も長い経験を持っておるアメリカの技術に大部分依存しておるという点は、これはむしろ当然であるかと存じますが、逆に申しまして、先般御承知のように、キッシンジャーの提唱によりましてIEAという機関ができまして、ここでいろいろ安全問題等含めました諸般の問題が討議をされることになっておりますが、その中でたとえば原子力研究所で開発しつつある日本の安全に対する研究等、相当評価をされておるということでございまして、やはり安全に対しましては、ただいま局長からも答弁がございましたが、私ども最優先には考えております。  具体的に申しまして、それは自主技術のみによるものでもないし、外国に依存だけするものでもない、そこにおのずから一つのシステム的開発の具体案というものがなければならない、かように考えております。
  56. 藤尾正行

    藤尾委員長 八木昇君。
  57. 八木昇

    八木委員 私は、問題を一つにしぼりまして若干の質問をいたしたいと思うのでございますが、原子力発電所安全性の問題が改めて大きな問題になっております昨今のこの時期に、九州で初めての原子力発電所であります玄海原発で、しかもまだ試験運転中に、しかもフルロードにまでは至っていないそういう段階ですでに今回事故発生したということは、私は大変問題だと考えておるのでございますが、この事故によりまして現地では非常な衝撃を受けております。  そこで、今回の事故に関連いたしまして、玄海町の隣の町が唐津市でございますが、非常に玄海発電所に近接いたしております。そこで唐津市の議会で、十七日の日に、玄海原発の所長の出席を求めまして、この問題についての市議会での質疑がなされておるわけでございます。この質疑の中で発電所の所長が答弁したことに非常に重大な答弁がございまして、実は現地の玄海町の人から、ぜひひとつ、この委員会でも私からその問題について質問をしてくれないかと、改めて要請を緊急に受けまして、いま質問をするわけでございます。  私がいまとりあえず緊急に手に入れましたのは、地元の佐賀新聞の唐津伊万里版の部分のみを手に入れておりますが、恐らく各社とも全部相当大きく報道しておると思います。  この中でどう書いてあるかと言いますと、なぜ今回、緊急の停止をしなかったかという市会議員の質問に対し、所長の答弁は「緊急停止をすると、余熱によって放射能を含んだ蒸気が噴出するなど、放射能を余計に外部に放出する心配もあったので、私の判断で通常停止の処置をとった。」と答弁をしております。それで、この答弁に対しまして、さらに市会議員の質問者が「緊急停止した場合にもっと多量の放射能が放出されるというが、その場合の汚染はどの程度のものか」と質問をしましたところ、これに発電所長が次のように答弁をしております。「「重大事故のときは自動的に緊急停止する仕組みになっているが、このときは数万−十数万キュリーの放射能が出る。しかし、これは原電の敷地境界線で十二レム程度で、人体にはほとんど影響ない」と答えた。」この後さらに記者の記事が載っておりまして、原電は危険だと口々に議員たちが言っていた。「原電の公害防止協定は、事故発生時には隣接する唐津市にもすぐ連絡するよう改定する必要がある」「原電は危険だ」として、今後も反対運動に力を入れる構えを見せていた。」云々、こうなっておるのでございますが、かようなことがあるのでございましょうか。
  58. 生田豊朗

    生田政府委員 ただいま先生の御質問の点は、まことにとんでもないことでございまして、全くそういうことはございません。これは今回の故障を発見いたしましてから、外部への放射能の放出を十分監視しながら、全く問題がないという状態で徐々に出力を下げて、五時間ほどかけましてストップしたということでございまして、従来の美浜その他の例にいたしましても同じ方式をとっております。スクラム、いわゆる原子炉の緊急停止でございますが、スクラムをいたしますと外部に放射能が飛び散るということでは、何のためにスクラムするかわからないわけでございまして、そういうことのないようにスクラムするわけでございますので、ただいま先生がお読みになりました新聞のようなことが本当であれば、これは大変な間違いであり、しかも地元の住民の方に大変な誤解を与えるものであろうかと思います。  実は土曜日に、私の方から九州電力に対しまして、こういう事実があるのかどうか、本当にどういう説明をしたのかということを、その新聞の報道ともあわせまして緊急に調査するように指示をいたしました。土曜日の昼前でございますので、ただいままでまだ報告をもらっておりませんけれども、なるべく早く報告を聴取いたしまして、また先生に御報告申し上げたい、かように考えております。
  59. 八木昇

    八木委員 いま原子力局長の答弁でございますけれども、長官並びに原子力局長のところにこの新聞記事は置いていきますが、この赤線を引っ張っておる部分がいま私が読み上げた部分でございます。事実このとおりに報道をされております。しかも現役の玄海原子力発電所の所長の唐津市議会における答弁でございます。これを書きましたのは新聞記者の方でありまするけれども、この具体的な数字等々がぴしゃっとここに書いてあることからしますと、全く間違った報道をされておるとは常識的に考えられません。しかも、これは現役の現に試運転をしておる原電の所長の答弁でございます。  そこで、一応ただいまの原子力局長の答弁を承っておきますけれども、原子力委員会がことしの五月十三日に「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針について」という文書をお出しになったのでございますけれども、ここの中では、年間五百ミリレムというのが周辺公衆の許容被曝線量である、しかし、これはアズ・ロー・アズ・プラクチカブルと、こう書いてありますが、の考えに立ってさらにこの百分の一、五ミリレムというところに努力目標を置いてやっていけ、こういう決定をなさっておるわけでございます。このことからいたしますと、この所長が言っております原電の敷地境界線で十二ミリレムというのは恐るべき数字なんです。要するに、いまの五百ミリレム・パー年というのは、これは原電の敷地境界線での値を言っておるのでしょうか。私も余り詳しくわかりませんので……。
  60. 生田豊朗

    生田政府委員 その所長が本当にどういうことを言いましたのか、調べてみないと私ども正確にはわかりませんが、いま先生がお読みになりましたことから判断いたしますと、恐らく、その所長の言いましたことは、いろいろなことをごちゃごちゃにかなり混乱して言ったのではなかろうかと思っております。十二ミリレムという数字でございますけれども、これは実は安全審査をいたします場合に、重大事故とか仮想事故とか、つまり常識的には起こり得ないような事故がもしも起こったらどうなるかということで、その事故評価をいたしまして安全審査をしているわけでございますが、この重大事故あるいは仮想事故の場合に、その起こり得ないような事故が万一起こった場合でも、その境界線上で十二ミリレムになる。これは今回の平常運転時の五ミリレムは上回りますけれども、一般人に対する被曝の基準の五百ミリレムをはるかに下回る。したがって、安全であるという安全審査をしておりますので、平常運転時と重大事故あるいは仮想事故という一種の仮説の上に立った極端な場合と、その辺を恐らく混同してその所長が説明したのではなかろうかというふうに感じております。
  61. 八木昇

    八木委員 ただいまの御説明によってでも、原電の敷地境界線で十二レムという程度の放射能が出るというような事態は、これは重大な事故のときにちゃんと自動的な緊急停止があった場合でも、その程度のことは起こり得る場合があるという技術者としての解釈だ、こういうふうに、われわれ普通に読んだ者はそうしか読めないのですが、その十二レムというのは……(佐々木国務大臣「十二ミリレムですか、十二レムですか」と呼ぶ)十二レムと書いてあるのです。十二レムというのは五ミリレムの何倍になりますか。一万倍ですか、二万倍ですかになりますでしょう。これは大変な数字なんです。しかも敷地境界線で十二レム程度で人体にはほとんど影響ない、こう言っておるのですが、この感覚はどういう感覚でしょうか。
  62. 生田豊朗

    生田政府委員 恐らく想像いたしますのに、十二ミリレムというのを言ったのに、新聞がミリを落として十二レムと書いたのか、あるいはその所長さんがあわてて、十二ミリレムと言うべきところをミリを落として十二レムと言ったのか、私はどちらかであると思います。十二レムということは全くあり得ないことでございます。十二ミリレムということであれば、先ほど申し上げましたように、それでもかなりいろいろの概念が混同しておりますけれども、まだまだその数字自体は一応考えられる数字でございますが、十二レムというのは、どんな仮想事故が起きましても全くあり得ないことでございます。
  63. 八木昇

    八木委員 そこで、私は要望いたしておきますが、私も取ってみたいと思いますけれども、これは役所の方がスピーディーでもありましょうししますから、このときの議会の議事録全文をひとつお取り寄せいただいて、そして当然おたくの方でも十分内容を検討していただきたいと思いますし、そのコピーを私にも至急お渡しいただきたいと思います。  それから、この所長は実際にどういうつもりで言ったのか。そして、このようなことがどういう影響を一般に与えるかというようなこと等につきましても、これを非常に善意に解釈すれば、技術屋さんだものだから、もうそのことのみにとらわれて一生懸命に言ったというふうに受け取れるかもしれませんけれども、これは大変衝撃的ですね。しかもこれは、新聞記者の方が記事を取るについてよほどの注意をして、誤り伝えられないようにきちっと——重要な点はわかりやすく説明しなというと、これは大問題になります。ですから、ただいままでの御答弁をそのまま受けて私は引き下がれないということを感じておるのです。  といいますのは、たとえば通産省資源エネルギー庁の公益事業部が出しております「原子力発電 その必要性と安全性」という小冊子がございますが、これの中でも、緊急停止の場合一体どの程度の放射能が出るのであるか、また、ほとんど心配ないという言葉は書いてあっても、その辺について一つも明快な説明は書いてございません。これの「原子炉の安全装置」という項目、二十ページでございますが、非常の場合には「第一に、原子炉の緊急停止装置があります。」「自動的に多数の制御棒が一度に入れられます。」だから心配ない、こういう意味でしょう。それから「第二に、原子炉の安全運転に必要なシステムとしてフェイル・セイフ・システムが採用されていることです。」「制御棒駆動装置用の電源がなんらかの理由で切れた場合でも」このいわゆる制御棒が「自重により制御棒が炉内に落下し、安全に停止できるようになっています。」というような事柄を書いてあるだけでございます。そうして次に、いまの緊急停止をした場合の放射能の問題につきましても、きちっとしたことが書いてございません。」一次冷却糸主配管の瞬間的ギロチン破断による一次冷却材そう失事故及び蒸気発生器細管が瞬時に大破断して冷却材が原子炉容器から流出してしまうような事故などを想定しています。これらの場合は、いずれも原子炉緊急停止装置がはたらいて原子炉の運転が停止されることはいうまでもありませんが、どの程度の量の放射性物質が外部に放出されることになるかが安全評価の上で問題となります。そして、前に述べたような各種の安全装置に加えて、これらの想定された事故の場合においても非常用炉心冷却設備(ECCS)によって、原子炉を水漬けにし冷却するとともに、格納容器内に漏洩した蒸気を格納容器内のスプレーによって、冷却液化してしまい格納容器内の圧力を下げるとともに気体となっている放射能を大幅に減少させます。しかし、それでも残留している気体は非常用フィルターをとおして、さらに放射能を低減させるようにしています。そのうえ、これらの装置もこれまで説明したような、多重性などを備えているため信頼性が高く、放出される放射能の量はきわめて少なく、さらに、敷地が十分に広くとってあるので、敷地境界で評価すると、実際には周辺住民に放射能障害をあたえるおそれはありません。」と、まことに抽象的な文章であるだけなんですよ。  でございますから、そういう非常緊急停止という場合に、たとえば炉心で、さらに一次系統のパイプの内部あたりでどのくらいの放射能が出、そうしてそれが気体もしくは液体となってどのくらい出るということになっておるのでしょうか。
  64. 中村守孝

    ○中村説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。  先生がおっしゃいました件は、重大事故としての想定されます、安全審査の際に評価しております基準の問題かと思いますが、安全審査の際にはいろいろな事故の評価を行いますが、その事故評価の中には、いろいろ環境への放出を防止できるような装置を、現実考えられるような事故については行うわけでございますが、さらに現実には考えられないような事故についても想定をいたしまして、それで立地上の要件が満たされるかどうかということを審査しておるわけでございます。  で、その際の基準といたしまして、たとえばただいま問題になっております蒸気細管の事故については、どういう事故考えておるかということでございますが、その場合には、蒸気発生器の細管が瞬間的に完全に真っ二つに割れてしまうということを想定いたします。さらにその場合には、外部の電源が同時になくなるということで、タービンは当然運転を停止しますし、同時に、タービンを流れていた蒸気をわき道へそらすバイパスの通路がございますが、そのバイパスの通路も使えないというような、実際にはあり得ないような状態が幾つか積み重なったような状態を想定いたしまして、そのときに環境にどのくらい出るだろうかということを評価しておるわけでございます。  で、そのような評価をしました結果、玄海の一号炉につきましては、ガンマ線による全身の被曝線量が、原子炉から約六百メートルのいわゆる敷地境界線上におきまして群ミリレムでございます。それから甲状腺、これは小さな小供の甲状腺でございますが、甲状腺に与えます被曝が約二十九レムという評価をされております。で、この百ミリレムあるいは二十九レムという数字を判断する目安といたしましては、原子力委員会が設定いたしました「立地審査指針」というものに決めておるわけでございますが、それでは全身被曝線量につきましては二十五レム、それから小児の甲状腺につきましては百五十レムという数字を基準にいたしております。で、これらの数字から見ますと、きわめて低い数字になっておるわけでございます。しからば、その二十五レムあるいは百五十レムという数字がいかがなものかということかと思いますが、この数字は、過去の放射線によります障害例を各国の文献等によりまして調べまして、その結果、現在までに、それ以下の線量では実際に明らかに放射線による障害ということがわかるようなものとして認知されていないという数字でございます。しかもたとえば、全身二十五レムについて見ますと、ICRPという国際放射線防護委員会等で労働者に対する被曝線量等も勧告いたしておりますが、その場合の事故時の緊急被曝線量的なものとして二十五レムというものが一つの基準になっておりまして、二十五レムを超えた場合には、その後の放射線被曝線量について調整をするようにというような意味合いを持った数字でございます。  いずれにいたしましても、この二十五レムあるいは甲状腺に対しては百五十レムでございますが、この線量以下であれば住民の皆さんに放射線障害を直ちに生ずるものではないということで、その一つの基準の目安にしておるわけでございます。  繰り返し申し上げますが、これはあくまでも現実には起こるとは考えられないような事故を想定したものでございます。そういう想定を行って、その場合に立地要件が満たされるかどうかということの、いわゆる立地上の判断の基準にいたしておるものでございます。
  65. 八木昇

    八木委員 時間がございませんので最後に一点だけ質問して終わります。  ところで、いまのお話は全部、理論上そういうことになるということではないかと思うのでございますが、そうであるかどうかということと、実際に現在、営業運転をやっております原子力発電所につきましても、それは事故のある、なしにかかわらず、試験運転の期間に緊急停止という操作をテストでやっておるでしょうか。やってみた結果というものが出ておるでしょうか。  と申しますのは、先ほど申しましたこの冊子にも書いてあるのでございますけれども、実際には、現実に動いておる原子力発電所で緊急停止というような試験はやっていないのではないかと思われるのでありますが、「昭和四十六年五月アメリカのアイダホ州にある国立原子炉実験所で、模型による非常用炉心冷却設備についての小規模な予備的実験がおこなわれたとき、その結果があまり思わしくなかったとして、当時新聞などで報道されたことがありましたが、調査の結果では、これがそのまま実用の発電炉にあてはまるものではないと考えられています。」とこう書いてある。で、それ以外に詳細な説明はないんですよ。その一点だけをこの際確かめておきたいと思います。  なお今後、いろいろと具体的な内容が明らかになってきました過程で、特別委員会の方でも質問の機会があろうかと思いますから、きょうはこれで終わりますけれども、いかがでしょうか。
  66. 生田豊朗

    生田政府委員 その試運転時の詳細につきましては、通産省の担当課長からお答えいたしますけれども、全般的に、先ほど原子炉規制課長も御説明いたしましたように、理論的に仮想事故という、全く起こり得ないとしか考えられないようなものを前提といたしましてやっているわけでございます。  先生の御質問のアイダホでの実験の問題でございますが、これが実はいま軽水炉の安全性につきまして論争点の一つのポイントでございます。ただ、先生の御質問のような趣旨のことを完全にやりますと、いわゆる原子炉の暴走といいます、非常に危険な状態を実現してみなければわからないのではないかということになりますが、これは実現すること自身が不可能でございますので、原子炉の暴走の実験というものはやっていないわけでございますが、そのもう一つ手前のところで、理論的なそれの証明あるいはある程度の実験というのは十分にやっているわけでございます。
  67. 高橋宏

    高橋説明員 試運転中の試験といたしましては、出力をだんだん上げてまいりまして、たとえば五〇%、それから七五%、それから最終的には一〇〇%になるわけでございますけれども、そういう運転の段階で運転をさせておきまして、発電機のロードを一挙にゼロにいたします。そういたしますと、タービンがトリップいたしまして炉がスクラムいたします。そういうテストを実際にやっております。玄海につきましては、まだ試運転中でございますが、社内ではいろいろ五重、六重とチェックをいたしておると思いますが、電気事業法に基づきます検査は、最終段階で、各ロード段階に応じて、タービントリップによりますスクラムを検査して確認する、そういうことをやる予定でございます。
  68. 八木昇

    八木委員 終わります。
  69. 藤尾正行

    藤尾委員長 この際申し上げておきますが、質疑中に出てまいりました資料の要求、これにつきましては科学技術庁並びに通産省におかれまして、十二分の資料を御提出願いたいと思います。  瀬崎博義君。
  70. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いま提案されている安全局設置が、求められている原子力行政全体の抜本的な改革の一環という役割りを担い得るものなのかどうか。「むつ」問題などの審議が進むにつれて、名は安全局ではあるけれども、中身においてはむしろ看板に偽りがあるのではないかという疑問すら出ております。こういう点で、正しい判断をしていくためには、現に起こっている問題で、かつ解決を迫られている問題、これに政府がどういう態度をとっているか、このことをはっきりさせる必要があると思うのです。そういう点で、私は二、三の緊急に解決を要する問題について質問をしたいわけであります。  その前提といたしまして、科学の委員会ではしばしば問題になってまいりました「むつ」放射線漏れ問題調査委員会の報告、略称大山委員会の報告と言われますが、これが一体どういう効力を持つものなのか、この点がいまなお不明確であります。まず、これをはっきりさしたいと思うのです。もちろん、この大山委員会の報告が「むつ」問題をすべて解明した、まただれが見ても妥当である結論に達したとわれわれは見ているわけでもない。不十分な点もあるし、触れていない問題もあると思うけれども、しかし少なくとも総理大臣の任命によってこの委員会がつくられ、そして出された報告そのものは、何らかの形で具体化されなければならないとわれわれは考えるわけであります。  そこで、これを所管いたしました総理府は、せんだって安仁屋参事官は、この問題について、実質的には相当な拘束力がある、こういうように言われているわけであります。この実質的にとかあるいは相当なとかいうのは、聞きようによっては重みはあるけれども、しかしとりようによってはきわめてあいまいな表現だということになると思うのです。ですから、具体的な例をもって、的にひとつどういう点が実質的に相当でなければならないのか答えていただきたいと思います。
  71. 原徹

    ○原政府委員 ただいまの御質問でございますが、「むつ」放射線漏れ事故調査委員会は、御指摘のように総理大臣の閣議了解を得ましてつくったものでございます。それはどうしてつくったかと言いますと、やはり原子力問題につきましていろいろ問題があるということが「むつ」の問題にあらわれているわけでございます。     〔委員長退席、木野委員長代理着席〕 したがって「むつ」の問題につきまして、その原因を調査することによりまして、そこに出てきた問題につきましては政府としては謙虚に反省をし、これを実現することは当然でございまして、もちろん、そういう調査委員会の報告ということでございますから、いわゆる法的拘束力というようなものがあるということになれば、それは政府責任でやることになりますが、しかし事柄の性質上、そのためにつくった委員会でございまして、政府としてそれを大いに尊重しなければならないということは当然でございます。したがいまして、担当の運輸省及び科学技術庁におきまして、その報告につきまして適当な対策をとるということは当然のことだろうと考えます。
  72. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私の方から具体的に聞きますが、この委員会がつくられるとき、これは森山長官時代でありますが、国会ではこの「むつ」の事故について一概に三菱原子力のミスと言えるか、あるいはこれをつくる委員会等に問題があったのか、さらには行政的にもまだまだやるべきことを尽くしていなかったという問題等いろいろあろうと思いますが、今回の委員会、つまり大山委員会ですね、それが発足して本格的に取り組もうということです、こういうふうに答えていらっしゃるわけですから、多分こういう趣旨でつくられたと思うのです。  さらに近くは、ここにいらっしゃる現佐々木長官が、この「むつ」の原因について、いま内閣で特別な懇談会をつくりました。これは懇談会と言っていらっしゃるけれども、大山委員会のことです。去年の十一月の暮れから何回か重ねて段々勉強中でございまして、それができますと非常にはっきりすると思います、たとえば業者側にあるのか事業団にあるのか、あるいは原子力委員会の審査にあるのか、そういったような問題がはっきりします、こういう答弁なんですね。  さらにこれを補足して生田局長は、事故の原因がはっきりいたしますときは、その原因に応じましてしかるべき責任がとれるように指導いたしたい、これは主として業者の方を指して言っている答弁であります。  いまの総理府の答弁からいけば、当然、この委員会結論が出れば、少なくともこういうことだけははっきりできると約束してきたことは実行されなければなりませんね。
  73. 原徹

    ○原政府委員 調査委員会の報告にあることで直すべき点がございましたら、これはそれぞれの所管の省において直すことは当然であろうかと存じます。
  74. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いいかげんなことを言っては困るんですよ。いろいろあるけれども、その中で少なくとも一体だれに責任があったのか、その責任のとらせ方、とり方はどうあるべきかということについて、この委員会結論が出れば、これはちゃんとできるのだ、こう国会で言ってきた。このことの実行性について、この報告書は一定の拘束力を持っているのか、こう言っているわけです。
  75. 原徹

    ○原政府委員 その中身につきまして、私が承知しておりますところでは、各省とも非常に前向きに取り組んでいるというふうに私は承知しておりますが、そういうことでやるであろうと思います。
  76. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そういうことがやられるであろうということだけれども、それじゃ総理府としては、今後、一体実行されているのかどうか、つまり実行状況等についてはチェックをしていくつもりなんですか、もうこのままやりっ放しですか、それともそんな責任はないのですか。
  77. 原徹

    ○原政府委員 総理府の本府の所掌事務のお話になりますが、私どもは、各省に属さない仕事と、それから各省との連絡というのが審議室の仕事でございます。したがいまして、これはそういう意味で両省にまたがっておる仕事でございまして、そういう意味懇談会が総理府にできたということでございます。私どもは、答申を受けまして政府の中でそれをやってもらうように連絡はいたしますが、それをやるかどうかの責任はそれぞれの所管の官庁でございます。
  78. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃ正しくその責任がとられたかどうか、そういうことのチェックはどこがやるのですか。
  79. 原徹

    ○原政府委員 それは、それぞれ各省で事務を分担いたしているわけでございますから、それぞれの担当の所管省がまずやる、そうしてそれの最終的な責任内閣ということでございます。
  80. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃ、そういうことでまず所管官庁の一つである科技庁が責任をもってやっておるかどうかという点になってくると思うのです。まず「むつ」の事故の技術上の欠陥責任がどこにあるかという問題であります。話をややこしくしないために、まず契約上どうであるとかこうであるとかは除きましょう。こういう点で明らかになったことを一応まとめてみますと、まず第一に、分割発注になりましたその分割発注先の石川島播磨と三菱原子力、このどちらに技術的責任があるのかという点については、この技術的欠陥は三菱原子力側にあったことは、もう過日の集中審議を含めていままでの審議で十分明らかになったのではないかと考えるのですが、科技庁はどう見ておりますか。
  81. 生田豊朗

    生田政府委員 石川島播磨と三菱原子力のどちらかということになりますと、これは一次遮蔽の問題でございますから三菱原子力考えます。
  82. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いま一つは、下敷きになった基本設計に問題があったのか、その上に組み立てられた詳細設計に問題があったのか、当然この問題が出てきますね。この点については、この大山報告も指摘が非常に不十分であります。また原子力委員会の見解、それから生田局長御自身の見解等々も分かれております。われわれの見解もまた違っている。こういう点では、果たして安全審査そのものが妥当であったかどうかという問題も含みますので、私は、軽々に結論が出ているとは言いがたいと思います。が、しかし三菱原子力工業自身は、この間の集中審議で社長みずからが明確に基本設計には問題なかった、こう言い切っておられたと思うのです。こうなってまいりますと、結局欠陥原因は、みずから請け負っていた遮蔽詳細設計にあった、こういうことを三菱側が自認したということになってくる。この点では一応三菱自身が自認したことだけは認められるのではないかと思うのですが、いかがですか。
  83. 生田豊朗

    生田政府委員 私どももそのように考えております。
  84. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そういたしますと、これは現在、会計検査院もこの事業団に対する「むつ」問題の検査をしていらっしゃいますのでお聞きをしたいのであります。お伺いしたいのは、いままでの点についてでいいわけであります。  三菱原子力はその未熟を反省している、これはみずから言ったことであります。が、しかし保証期間を過ぎているということで契約上の責任はない、あるいは法的責任はないと言ったかとも思います。今度の事故がもし保証期間内に起こっていたとしたら、三菱原子力工業としては何らかの補償責任を負わなければならなかったのではないかとわれわれは考えるのですが、会計検査院はどう見ていますか。
  85. 高橋保司

    高橋会計検査院説明員 契約書の詳しい検討はまだやっていませんが、一応契約書を読んだところでは、保証期間内に試験が行われて事故発生したという場合には、当然三菱原子力工業の責任が問題になり得ると考えます。
  86. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そこで今度は、契約そのものがどらであったかという問題になるのです。つまり技術上の欠陥責任については、先ほど生田局長も認められたように、これは石川島播磨重工ではなく三菱側であったこと、それから基本設計詳細設計かという点については、三菱自身は詳細設計責任があることを認めている、こういうことがはっきりしている。  そこで、この契約問題を論ずるに当たって、まず科学技術庁にお聞きしたいのでありますが、日本原子力研究所にありますJMTR、材料実験炉ですね、このときの契約についてお伺いをしたいわけであります。  まず第一に契約年月日、第二にメーカー、第三に業務内容、第四に契約金額、そうして性能及び工事の保証条件、これを答えてください。
  87. 生田豊朗

    生田政府委員 材料試験炉、いわゆるJMTRでございますけれども、これの契約は昭和四十年三月三十一日行われまして、納期は昭和四十三年九月三十日でございます。メーカーは日本原子力事業外四社、計五社でございまして、金額が二十六億八千百万でございます。工事認可の内容は、仕様書に定める計算書及び図面等の着工前の承認でございます。機能試験の方法は、総合的な機能試験の実施、検収は工場立ち会い機能試験、出力上昇試験、最終試験を行いまして、かつ官庁検査の合格を前提といたしております。引き渡し条件は、検収終了後所有権の移転、かようなことでございます。
  88. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いま言われましたJMTRの場合のこのメーカー、日本原子力事業外四社の中には三菱原子力工業も入っておりますね、確認しておきます。
  89. 生田豊朗

    生田政府委員 入っております。
  90. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ですから、三菱もこの当時の事情はよく承知しておるということは私は言えると思うのです。これと「むつ」の場合の事業団との契約内容とを比較してみますと、契約年月日は「むつ」の場合は四十二年十一月ですから、二年ほどJMTRの方が古い。それからこの業務の内容等を見ますと、片方は船ですから艤装ということになっている。片っ方は陸上ですから据えつけということになっている点が違うだけで、あとはほとんど一緒。金額の面でもJMTRはいま説明いただきましたように、総金額二十六億八千万、「むつ」の場合は二十六億六千九百万、これまた比較的似通っているんですね。  ですから、こういう点では、一方は陸上炉であること、一方は舶用炉であるというふうな違いはあったにしても、さて契約内容が果たして「むつ」の場合、妥当であったかどうかということをわれわれが検討する場合には、十分これは比較対象たり得ると思うのでありますが、こういう点について会計検査院の見解を伺いたいと思うのです。
  91. 高橋保司

    高橋会計検査院説明員 お答えいたします。  大変むずかしい技術的な内容を持つ契約でございますので、一概に申し上げかねると思いますけれども、JMTR、材料試験炉でございますが、これは開発的要素が「むつ」と比べまして非常に低いということもございまして、検収の仕方であるとか、あるいは保証期間であるとかいう点に相違を設けてあるのではないか、こういうふうに考えております。
  92. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それは後の話といたしまして、私が聞いておりますのは、とにかく「むつ」の契約問題を論ずるときの一つの比較の目安になり得るかということをお聞きしているのです。この点はどうでしょうか。
  93. 高橋保司

    高橋会計検査院説明員 お答え申し上げます。  先ほど一応の違いを申し上げましたように、若干違う点がありますので、「むつ」の契約の上では必ずも参考にならぬ、こういうふうに考えます。
  94. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その開発的要素がどちらが高くどちらが低いか、こういうことは別の問題として、これも重要な要素なんです。そういうものを除いて考えた場合、発注した側から見たら、一体「むつ」の場合とJMTRの場合とどちらが発注者側にとって不利な内容になっている契約ですか、会計検査院。
  95. 高橋保司

    高橋会計検査院説明員 JMTRの場合は、開発的要素が非常に少ない場合で、一般の製造製作請負契約の場合などの完全な目的物を引き渡せば、それで検収が終わり、所有権が移転するという契約方式に比較的近いのではないかと思いますが、「むつ」の場合は、開発的要素が高いものですから、そういう契約方式をとれないということになっておるのではないか、こういうふうに考えます。(瀬崎委員「そういうことを除いて考えたら」と呼ぶ)そういう要素を除いて契約の内容がどちらがむずかしくてどちらがやさしいかということは一概に言えないのではないか、こういうふうに考えます。
  96. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃ項目別に聞きましょう。  先ほど検収については、生田局長説明ではJMTRの場合は工場立ち会い機能試験、それから燃料を装荷して行う出力上昇試験、最終試験等の合格によって検収だ、こういうふうに言われた。「むつ」の場合は提出されております契約書から見ると、燃料を装着せず、機器の機能試験をもって検収するようなかっこうになっている。これを比較した場合には、一体どちらが発注者側にとって不利ですか。
  97. 高橋保司

    高橋会計検査院説明員 完成品というような観点からいきますと、やはりJMTRの方が完全なものを納めなければならぬということからして、その方がむずかしいかと思います。
  98. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 この点、科技庁どうですか。検収方法は、いま問題になっている条件を除いて考えた場合、JMTRの方が厳しく、「むつ」の場合は非常に甘い、これだけははっきり言えますか。
  99. 生田豊朗

    生田政府委員 会計検査院の御説明にもありましたように、JMTRの場合は比較的プルーブされた技術をもってつくられたものである、「むつ」の場合は開発的な要素が非常に多い、この点が非常に基本的な違いでございまして、この点を外しましてほかの条件について比較することは適当ではないと思います。
  100. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は、それが適当かどうかということを聞いているのではなくて、もしもそういう条件を一応除いて考えた場合、一体この検収方法はどちらが厳しいのかということだけをはっきりさせておこう、こういうわけなんです。
  101. 生田豊朗

    生田政府委員 その非常に重要な大前提を除きまして、ただ検収方法だけを形式的に比較いたしました場合は、JMTRの方は出力試験の終了後、「むつ」の場合は出力試験の終了前ということでございますので、当然、JMTRの方が発注者側に有利ということに相なるかと思います。
  102. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いま一つの保証の条件についても、一応そういうふうな前提を除いて考えた場合に、一体「むつ」の場合とJMTRの場合とどちらが有利でどちらが不利になっているか、これは生田局長にお尋ねしましょう。
  103. 生田豊朗

    生田政府委員 細かい点を除きまして、大体同じ程度ではないかと思っております。
  104. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それは特に所有権の移転時期との関係で大分違ってくると思うんですね。その点も含めてひとつ答えてください、引き渡しとの関係
  105. 生田豊朗

    生田政府委員 所有権の移転は、JMTRの場合は出力試験終了後所有権移転ということになっております。(瀬崎委員「むつ」は機能試験だけでしょう」と呼ぶ)「むつ」は機能試験終了後引き渡しで所有権が事業団に移るということでございますので一その点だけ考えますと、先ほど申し上げたのと同じことでございまして、出力試験の終了というのが入っているだけ形式的にはJMTRの方が有利だということになろうかと思います。
  106. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 特にこの原子炉の場合、重要になる出力試験というものが除かれていることが検収の面でも、また保証の面でもいま最大のネックになってきていることは事実だと思うのです。こういう点は、会計検査院も毎年検査は実施をしていらっしゃるわけでありますから、そしてまた、これも当然の反対だったとわれわれは思うのですが、漁民の反対等のために非常に出港がおくれたというふうなこともあって、時期が非常に延びていることは事実ですね。その間、毎年検査をやってこられた。こういう点で、確かに前提条件の違いはあるにしても、このままの契約では非常に不利になることはわかり切っていると思うのです。それをそのまま見過ごしてこられたのか、一定のチェックはしてこられたのか、これは会計検査院にお尋ねしたい。
  107. 高橋保司

    高橋会計検査院説明員 保証期間につきまして一定の、当初は一年間ということになっていましたが、その一年間という保証期間が、ああいう社会情勢のもとでは非常に短いのではないかということで、四十八年の実地検査の席でこれを延ばす必要があるのではないかという意見を述べたことはございます。
  108. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 何月ですか。
  109. 高橋保司

    高橋会計検査院説明員 四十八年六月でございます。
  110. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 もう一つ聞きますので、ちょっとお待ちいただきたいのですが、会計検査院としてそういう指摘をされる以前に、担当の監督官庁としても当然こういう点の留意は必要なことではないかと私は思うのですが、こういう点の会計検査院の見解はどうでしたか。
  111. 高橋保司

    高橋会計検査院説明員 そういう点に留意をして検査をすることは必要であると考えます。
  112. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 担当官庁として……。
  113. 高橋保司

    高橋会計検査院説明員 はい。
  114. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そこで、いま会計検査院にお尋ねしておったような、つまり、こういう契約内容をそもそも持っているということ、つまり前提条件を別にして考えると、確かに不利な検収方法とかあるいは保証条件になっているという、こういう内容はすでにわかっている。しかも片一方で出港もおくれてきている。こういう事情の中で、科技庁として果たしてとるべき責任を果たしたのかどうか、この点はどうなんですか。
  115. 生田豊朗

    生田政府委員 問題は、昨年の三月であったと思いますが、そこで保証期間の延長を、それまでたしか一度か二度行ってきましたのが切れてしまったわけでございます。これは結果論になりますが、これが切れてしまうという連絡が当時事業団からあり、あるいは連絡がなくても、こちらから積極的に事業団と三菱原子力との間の話し合いに介入するという形で、出力試験の実施の前に保証期間が切れてしまうということがなければ、この事態はもう少し単純化されたというように考えております。
  116. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 問題は、この契約の場合は必ずしも出力試験を終わることが引き渡しの条件になっていない、ここに弱点があるわけでしょう。そういうことから考えれば、いま言われたように、出力試験が終わる前に保証期間が切れてしまうということになれば、これは明らかにきわめて不利なことになるのはわかり切っているという意味で、この保証期間切れというのは重大な問題になるわけでしょう。だから言うならば、延期はしたけれども、四十九年三月十二日で保証期限が切れるというこの時点というものはきわめて重大であったと思うのです。だから、このときに一体どれだけの努力をこの科技庁としては事業団にやらせたのか、あるいはまた科技庁自身が中に入ってやったのか、この点が問題なので私は聞いているのです。具体的にはそのときどういう処置がとられておったのですか。
  117. 生田豊朗

    生田政府委員 事業団とメーカー、すなわち三菱原子力でございますが、それが話し合いをいたしまして、事業団の方からもう一回の延長を申し入れたそうでございますけれども、メーカーの方は、もうすでに一回延長してあるので二回目の延長は困るということであったように思います。  先ほど申しましたように、出力試験が終わっていないのであるから、もう一回延長するようにということを強く行政指導する方法もあったかと思いますし、それをいたしました方が現在の事態はもう少し単純化されたというように思っております。  ただ、この原子力船むつ」の契約につきましては、JMTRと本質的に違うのでございまして、特に契約の二条のところに、これはこの種の契約としては非常に異例のものですが、つまり信頼の原則に立って官民協力してやるのだということをうたってございます。これは、つまり全体の契約の条項に優先する考え方でございますので、私どもは、そういうたとえば保証期間の長短の問題あるいは保証期間が切れたとか切れなかったとかいう問題がございましても、この二条の考え方というのはすべてに優先すると思いますので、たびたび御答弁申し上げておりますように、その契約の規定のいかんにかかわらず、とるべき責任は当然メーカーとしてとらせるということを行政指導いたしたいということを申し上げている次第でございます。
  118. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それは今後の問題になっていくので、後ほど聞きたいことなんですが……。  私がいま問題にしている、つまり期限切れの三月十二日の時点を考えれば、もし生田局長の答弁をそのままわれわれが信用すれば、結局事業団はさらに延期を主張したけれども、メーカー側でこれを断ったということから見れば、ここでもまたメーカーの意思が通された、つまり期間の延長ができなかったことについても、これは三菱側の責任である、こういうことだけは確認できるわけですね。
  119. 生田豊朗

    生田政府委員 保証期間の延長ができなかったということは、三菱原子力側の主張によるものというように聞いております。
  120. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 さらに先ほど、保証期間の前に出力試験が終わっておれば問題は単純化されたという話でありますが、逆に言えば、漁民の抵抗で出港が非常におくれた、また試験が非常におくれた、こういう事態を裏に含むわけですね。ところが、実際に起こった放射線漏れ事故というのは、そのおそれがあるとかあるいは非常に危険だという点を指摘してきた漁民であるとか、あるいはまた関係を持っておりました専門家の意見がきわめて正しかったことを不幸な形でこれは実証しているわけでしょう。ですから、出力試験が漁民の反対でおくれた、こういうふうにもし言うとすると、その原因自身もまた三菱原子力工業の欠陥原子炉の製作から生まれておった、ですから、出力試験がおくれざるを得ないような事態の責任も三菱原子力工業に結果としてはある、このことも確認できるんじゃないのですか。
  121. 生田豊朗

    生田政府委員 欠陥原子炉だとは私どもは必ずしも考えないのでございますけれども、放射線漏れを起こしたその原因を究明してみたところが、遮蔽に問題があったということは事後的に明らかになったことでございます。つまり最初から欠陥原子炉だったということが明らかになっていて、漁民もそれを知っていてこんなものは危ないということを言ったので、出力試験がおくれたということではないと考えております。
  122. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 この点でも、すでにこの間の集中審議の中で事態はほぼ明らかになっていると思うのです。つまり問題の技術的な欠陥が三菱側にあった、このことが全く三菱として避け得ない条件下にあったのかどうか、こういうことですね。  まず第一に、計算コードのチェックとか中性子、ストリーミングの減少であるというふうなことは、JRR法による実験の成果を十分に設計に反映させ得なかったということから生まれている点については、三菱原子力工業が未熟な点を反省する、こう言っていることなんでしょう。さらに、もっと突っ込んだ実験をやるべきである、たとえば水のない系での実験をやるべきであるとか、実規模大のモックアップ実験をやるべきであるとかいう意見は、三菱から出向しておった技術者も含めてちゃんとレポートに出しているわけですね。こういうことも明らかになっているわけです。ですから、こういう点では全く予期し得ない結果が生まれたのかということになると、まさに今日の結果を予期し得ておった。だからこそ、いろいろな人が「むつ」は危険だぞという指摘もしておったんじゃないかと思うのです。  ですから、先ほど私が言ったように、今日このように出力試験がおくれて複雑な形になったけれども、その原因もまたこの三菱のやり方の中から生まれておった、こういう考え方が、やはり国民の立場から見れば生まれてきて当然ではないでしょうか。
  123. 生田豊朗

    生田政府委員 私は、率直に申しまして三菱原子力にも相当責任はあると思います。あると思いますけれども、先生のおっしゃるように、すべて三菱の責任であるとはまた思わないわけでございまして、原子力船事業団の責任も多分にある、むしろそちらの方がどちらかというと大きいのではないかというふうに思っております。  なぜかと申しますと、大山委員会の報告はいろいろなことが書いてありますけれども、その一番中心になります、いわゆるシステムエンジニアリングの体制が十分でなかったということであろうかと思います。このシステムエンジニアリングの体制というのは、どこでとらるべきかと言いますと、これは三菱原子力というよりもむしろ事業団ではなかろうかというように思います。三菱原子力責任をここで否定する気は毛頭ございませんけれども、それだけではないというように考えております。
  124. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いま初めて政府関係者から三菱原子力工業にも責任はあると思うという発言が出たと思いますね。いま衣ではここ自身は全体としてあいまいにされておったわけです。しかし、じゃ事業団の責任と三菱の責任と一体どっちが重いのかという問題になった場合、これもまた判断材料が幾つか出ておると思うのです。たとえば大山報告で、後日進歩した計算コード、わかりやすく言えば計算方法とでもいいましょうか、これが開発された際、実験の見直しをしておくべきだったという指摘について、じゃ三菱原子力工業の石原社長がどう答えたか。つい最近までそういう進んだ計算コードが開発されていることは知らなかったと繰り返し私に答弁されたでしょう。恐らく一般紙がこの点についてはほぼ一斉に書いておったことは御存じだと思うのです。これは列席されておった柴田教授初め一同をあきれさせた問題なんですが、あの点については生田局長どうです。三菱原子力工業としてなすべき注意をしておったと言えるのですか。
  125. 生田豊朗

    生田政府委員 私も先生の御質問に対する石原社長の答弁を聞いておりまして、非常に不思議に思ったわけでございますが、当時、三菱原子力がその新しいコードを知らなかったということは考えられないと思っております。
  126. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 関係者のすべてが考えられないというふうなことを、この国会に出てきて繰り返して表明するというふうな態度に本当に企業責任を感じていると思えますか。
  127. 生田豊朗

    生田政府委員 三菱原子力という会社は、比較的小さな会社でございますが、何といっても三菱重工の関連会社で、企業の社会的責任というのは当然あるべき会社でございます。社長の発言の一、二はありましても、三菱原子力として当然企業の社会的責任というのは感じているというように私は考えております。
  128. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 企業の社会的責任を感じておると生田氏は本当に思っておるのですか、重ねて聞いておきたいと思います。
  129. 生田豊朗

    生田政府委員 私は、当然感じていると思っております。
  130. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は、だれが考えても不思議な、つまりより進歩した計算コードが生まれたときに、そのことを取り入れなければいかぬのを知らないと言っておる、こういう三菱の態度というものについては、自動車運転にたとえたら、最も初歩的な前方注意義務を怠ったことになると思うんですね。ですから、そういう点ではっきり言えば、日本で初めてというような舶用炉を開発する資格、能力あるいは少なくともそういう精神を持ち合わせているような会社であったのかどうか、こういうことについてすら疑問を抱かざるを得ないわけです。  ですから、こうなってくると、結局三菱原子力としては、このような重大な原子炉の技術開発及び製作を受注するに当たって、契約のルーズさをよいことにして、きわめて無責任に取り組んだ、こうとしか言いようがないような事実関係がいま明らかになりつつあるのではないか、こういう見方こそ私は妥当な見方ではないかと思うのですが、これでもあえてなお生田局長は三菱としては責任を感じているであろう、こう言うのですか。
  131. 生田豊朗

    生田政府委員 私は、三菱が最初から契約がルーズであるということを利用いたしまして、悪意をもってそういうことをしたとは考えておりません。しかし結果的に非常に不十分な点が多かったわけでございますので、企業といたしましての責任は当然感じていると思いますし、私が三菱原子力の社長初め幹部と接触いたしました範囲内でもそういう心証は得ております。
  132. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 大変、生田局長は三菱の責任を言って認めながら、またこの三菱に対して寛大である点で私は不思議に思うのですが、先ほどから強調されている契約の理念ですね、「原子力第一船を開発するという特殊な性格および重要かつ複雑な内容をもつことを認識し」ということなんですが、もしそうだとしたら、たとえ開発実験船、おたくの言い方をとればそうなるんですが、そうであったにしても、大体放射線漏れというふうなことは絶対許されない、最も初歩的な問題だと思うのです。  こういうふうなことが起こらないように厳しい態度で貫かれていなければいけないし、またこういうことが起こったとすれば、まさに三菱が期限切れを理由に法的責任はありませんとか、進歩した計算コードについて大山報告も指摘しているのにいや知りませんとか、こんなことが国会答弁に出てくるでしょうか。
  133. 生田豊朗

    生田政府委員 私も、そう思いますので、あのとき社長が、なぜそういう重要なコードを知らなかったというような答弁をしたのか全く不可解でございます。
  134. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 政府自身が不可解と言わざるを得ないようなことを平気で言っているわけですね。この点はひとつよく注意をしておくべき点だと思うのです。だから結局、この大山報告の指摘は当たっていると思うのです。この中で行政府は予算獲得技術に、企業は利潤追求にそれぞれ重点を置きがち、こう言っているわけです。  総理府の方は、こういうものをまとめられたら、当然読んでいらっしゃると思うのですが、こういう点ではまさに当たっているとお思いになりませんか。
  135. 安仁屋政彦

    ○安仁屋説明員 それは、委員会先生方がそう判断されたわけでございまして、私どもとしてどうこう申し上げるのは差し控えたいと思います。     〔木野委員長代理退席、藤尾委員長着席〕
  136. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 長官、この大山報告の指摘は私はまさに図星だと思うのです。長官はこの点をいかがお読みになりますか。
  137. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私は、大山報告は、人間に責任があるとか、あるいはそのストリーミングなる現象を起こしたそのポイントだけにとらわれないで、それを取り巻く、よって来る原因を深く広く報告するものだと思っております。したがいまして、契約そのものの法的な解釈あるいは技術的な責任——契約そのものにおけるそういう点は、私は、原子力局長の答弁どおりでよろしいのじゃないかと思っております。
  138. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 冗談じゃないですよ。先ほど私は、この質問の前提条件として、佐々木長官自身が、こういう報告が出れば事故責任が業者側にあるのか、事業団にあるのかあるいは原子力委員会の審査にあるのか、そういうことははっきりできるのだと言っているんじゃないですか。その点に照らして、大山報告がこういうことを言っている、こういう点での企業責任は、あなた、どう考えますかということです。
  139. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 大山報告ではっきりそう言ってあれば問題ないです。それがはっきり出るものと思っておったのですけれども、先ほど答弁したように、そういう報告じゃなくて、全般的な責任がこれこれにある、いわば機関的な責任を、しかも非常に錯綜したものとしてとらえ、したがって、改革はあにひとりその契約当事者のみならず、これこれの機関が全般の問題として改善すべきだ、こういう深い報告でございますので、その当時はまだ大山報告は出ておりませんから、仮にそういう報告が出れば、はっきりした個人の指摘なりあるいは機関の指摘があれば、私は、そういう処置に出たかもしれませんけれども、そういう報告になっておりません。
  140. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そういう報告になっていないから、三菱の責任は追及しなくてもいいのだととれるような発言と聞くのですが、確かにわれわれも、全体の問題の検討は言ってておるんですよ。だからといって、全体の責任なんだということで個々の責任がそれこそごまかされてはいけない。それはそれとして一つずつ明らかにする必要があるのだという意味で、いま三菱原子力責任の問題をわれわれは論議しておるわけでしょう。  長官としては、先ほど生田局長が、率直に言って三菱にも責任があると思う、こう言われたことについて、いや、そういう責任はないのだとか、あるいはそういうものを追及する意思はないのだ、こういうことなんですか。
  141. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私は、そんなことは言ってないですよ。どこに責任があるとかないとか言っておるわけじゃなくて、私自体、去年の暮れに原因の究明がはっきりできればそれによって対処を考えます、こう言っておるのに、報告書はそうなってないものですから、全般的にひとつ検討して、ただいま改善策を着々やっておる。ところがあなたは、いや、この報告書には、よく読むとそれらしく解釈できるものが書いてあるじゃないかということ、しかも試験材料等の契約の比較、その関係を全然抜かして優劣を論ずる、そういう法の解釈自体がとてもおかしいとは思うのですけれども、しかし仮に一歩譲って、問題を、そちらの比較というよりはこのものずばりの契約の問題となりますと、私は、法解釈としては時効の問題等もございますから、追及の点は大変むずかしいと思いますけれども、しかし私どもの局長がさっきから言っておるように、企業としての社会的な責任は十分感じておるだろうというふうに信じていますと言うのですから、それでいいんじゃないでしょうか。
  142. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 感じておることが、はっきりとこの間の集中審議でも三菱側から表明されておればこれは問題ないですよ。しかし、この間表明されたことは、ああいう無責任な話だったわけでしょう。ですから、この第二条の理念なるものがどこまで守られるものやらどうなのやら全く現在では不明だ。ですからまず、この点では政府が腹をくくって、それなりの態度方針を示さなかったら問題の決着には到達しないであろう、こういうことをわれわれは言っておるわけです。  ですから、大山報告が間接的な表現で、企業はどうしても利潤獲得に走りやすいという指摘もある。これなんかは少なくともちゃんと政府責任者たるものはその裏を読んで対処をする必要があるのではないか、こう私はいま言っておるわけなんです。  加えて、組織の面からも、この企業の責任というものは相当浮き彫りになっておるでしょう。原子力研究所におけるJRR4の実験と、それからJNSレポート、その結果をまとめている報告には三菱原子力の技師である豊田行雄氏も参加している。それから事業団の原子炉部長の佐藤加賀生氏は、昭和三十八年、つまり事業団の設立当初から四十五年までずっと勤めておりまして、これがまた三菱原子力からの出向者でしょう。こういう点について三菱として、事業団にかかわり合いがなかったなんて言えない。事実上まる抱えではないかという私の質問に対して、三菱原子力工業の社長の答えは、出向さしたのだから、私の社には責任がないのだ。テレビじゃないけれども、かかわり合いはござんせんというふうな、こういう態度であったことも御承知だと思うのです。  ですから、こういう点で社会的責任どころか道義的責任すら感じていないと私は思ったのだけれども、生田局長はどうなんですか。全然われわれと違った感覚でそれでもなお責任は感じているのだ、こうおっしゃるのですか。
  143. 生田豊朗

    生田政府委員 前回の参考人の意見をお聞きになりましたときの三菱原子力の社長の発言ぶりは、ただいま先生の御指摘の点も、先ほどの点も含めまして、私どもも簡単に申しますと非常にあきれたような発言がございました。その後、おかしいではないかということはすぐに注意したわけでございます。  ただ、そのときの発言はそういうことでございますけれども、全般的にこれまで三菱原子力と私どもが接触いたしました限りでは、三菱がそれほど厚かましく責任を一切回避するというようなことは考えていない、責任は十分感じているというような心証は得ております。
  144. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 この人事の問題でもう一点お聞きしておきたいのは、この間も私は指摘いたしましたが、この事業団の顧問には、三菱の現在会長で前社長の村田さんが入っているんですね。これは法律によって総理大臣の認可を経ているわけでありますが、大体こういう顧問はどういう基準で大臣が認可していらっしゃるのか、これを聞いておきたいのです。——これは大臣の認可ですから大臣にお聞きしたいのですが、局長ですか。
  145. 生田豊朗

    生田政府委員 事務的な手続でございますので、私からお答えをさしていただきますが、先ほど御説明申し上げました契約雷の二条にも書いてありますように、このプロジェクトは官民一体となって、いわば国を挙げて取り組むプロジェクトということでございますので、事業団に対して関係業界からも全面的な支援をするということが大前提でございます。したがいまして、顧問の人選につきましては、そういう国を挙げて支援するにふさわしいような基準で、各関連業界からもそのトップクラスの人を人選したという次第でございます。
  146. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ですから私は、船体の部分はさておくといたしまして、原子炉の部分について今日、三菱が負っている社会的責任も道義的責任も、また物質的な補償責任も、私は非常に重いと思うのです。こういうものをかかわり合いないということで済ます態度そのものは、いかに弁解しても、しかも国会で言ってしまった後の弁解ということになったら、これはきわめて白々しいと思うのです。  同時に、この契約内容が、先ほどJMTRと比較したことについて、片方はすでにプルーブされたものであり、片方は開発的要素が強いんだから比較できないとおっしゃった。私はむしろ逆だと思うのです。事は放射能に関する問題なんですから、むしろ未開発の技術であればあるほど、放射能あるいは放射線漏れということに対しては、厳密な契約条件になっておって、この厳密な契約条件そのものが、三菱をして実験に対してもきわめて慎重な態度をとらせるとか、あるいは計算構造に対するチェック等についても厳しい姿勢で臨むとかいうことになってきて、本当の意味国民の安全という立場から見て開発の促進にもなる。こういう点では、われわれは全く逆な見方をしておかなければならないのではないか、こういうふうに思っているわけです。  結局、いまの論議からはっきりしてきたように、何としても三菱の技術的な面での責任はもちろんのこと、社会的な責任も、場合によっては物質的な補償を含む責任も、これは免れ得ないであろうということがはっきりするし、当然、生田局長の話によれば、三菱はそれを感じているだろうと思うんですね。  だから問題は、生田局長が、この契約のドライな解釈で責任がないと言うのはおかしい。おたくはたしか、第二条の理念のところをウエットな条項がついている、こうおっしゃったと思うのですが、このウエットという言葉が私は問題であると思うのです。本当に真実、誠実の原則にのっとって三菱が分担すべき責任を分担するのだろうかどうか、これは当然疑問として出てくると思うのです。その証拠に、原船事業団の島居理事長は、初めは、三菱の協力が得られるはずとこう答えながら、翌日には、契約を一晩研究したら、そうとも言えない面もあるというふうに後退されたでしょう。こういうふうな点で、言うならば本来、三菱にいろいろ責任を要求していく立場の政府あるいは原船事業団関係者の答弁が、現在まちまちであるということが、国民にとってはきわめてまたこれは不安要素になってくると思うのです。  ですから、こういう点で、第二条が決めているウエットとかいう内容については、一体どの程度の範囲のものを生田局長としては考えているのか、これをはっきりさしてほしいと思うのです。
  147. 生田豊朗

    生田政府委員 具体的には「むつ」の原子炉の総点検をするわけでございます。総点検をいたしまして、もうすでに問題がはっきりしております一次遮蔽及びその他新しい問題点が発見されましたら、その他の部分につきましても必要な改修をしまして、安全性確保するという段取りを考えております。したがいまして、まずその総点検及び改修というこの全体の計画に要します費用につきまして、この因果関係を十分検討いたしました上で、私は、三菱原子力がその応分の負担をすべきだというように考えています。
  148. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 この「むつ」の総点検とか改修とかいう問題は、これはやはりもっともっと全体的な検討が進まないと、私は軽々に論じられないと思うのです。ただし、私がいま三菱の責任を追及すべきであると言うのは、それ以前の問題として申し上げている。  ですから結局、いま政府はこの問題で国民サイドに立っているのか、それとも財界サイドに立っているのか、あるいは三木内閣がしばしば公正を看板にするけれども、果たして科学技術庁が相当な行政措置を講ずるだけの行政能力を持っているのかどうか、こういうことが厳しく問われているということを銘記して、具体的に答えてほしいのです。  まず、これは会計検査院にお尋ねしておきたいのです。  あの事故が起こったために、地元対策費とかあるいはいろいろ漂流船の処理に必要な経費等について、科技庁に資料を要求したら、科技庁は、会計検査院に対する説明に資料を使っているから出せない、こういう返事をしてきたと言うのですが、会計検査院の検査というのは、国会審議に必要な資料の提出も妨げるようなこういう内容のものであったのかどうか、この点はどうですか。
  149. 高橋保司

    高橋会計検査院説明員 そういう種類のものではございません。
  150. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 会計検査院をダシに使ってと言うと悪い表現ですけれども、必要な資料の提出を拒んでくるという科技庁の態度も、私は大変問題だと思うのです。  時間がありませんから、この問題はこの程度にしますけれども、問題は、事故が起こったために余分に支出された国費であります。地元対策費とか「むつ」漂流にかかる経費、原因調査等に要した経費、こういうものは、大体目安としてどのぐらいになっているのですか。
  151. 生田豊朗

    生田政府委員 最初に一言おわびを申し上げさしていただきますが、資料の点につきましては、全部資料を締めてどのぐらいになるかという御要求だと思ったそうでございます。その点、行き違いがございまして大変申しわけありませんでした。(瀬崎委員「それにしても会計検査院を使う必要はないじゃないですか」と呼ぶ)何か言葉の行き違いだったようでございますので、今後厳重に注意いたします。  費用の点でございますけれども、地元対策費の関連といたしまして十一億一千八百万円、漂流中の「むつ」の維持管理費といたしまして約四千五百万円、定係港施設設備の撤収費といたしまして約二百万円、その他雑費四百万円、合計いたしまして十一億六千九百万円でございます。
  152. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は、総点検以前の問題だと言ったのは、まずこういう問題があると思うんですね。これも結局、事故が起こらなければ、あるいはまた事故の起こらないような原子炉がつくられておれば問題がなかったことでしょう。こういう点に対しては一体、三菱の責任をどう求めるのですか。
  153. 生田豊朗

    生田政府委員 ただいま申し上げました約十二億円弱の経費につきましては、「むつ」の放射線漏れ、それに続く漂流、さらに大湊港への入港のための地元との話し合いという、いわば行政ベースの問題でございますので、そういう点の費用に関しまして、三菱原子力が分担する必要はないと考えております。
  154. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 怪しいですな、局長の三菱が感じている責任の範囲というのは。  さらに、この総点検とかあるいは安全審査のやり直しとかいう問題は、私は軽々に結論をつける問題じゃないと思うんですよ。つまり当面、基本設計と仕様書に基づいて遮蔽設計計算なり製作を行いました、こう三菱が言っているわけでありますが、そのとおりになっていない部分は、これもまたはっきりしたと思うのです。だからこれは、総点検するとか改修するとかいうこといかんにかかわらず、一応どの程度の責任が三菱にあるかは現時点でもわかると思うのです。こういう点について、政府としては三菱の責任を求めるわけですか。
  155. 生田豊朗

    生田政府委員 ちょっと先生の御質問の趣旨がよくわからないので、恐縮でございますけれども、あるいは見当違いの答弁になるかもしれないのですが、とりあえず遮蔽について、横及び下の一次遮蔽が不十分であったという結論が得られているわけでございます。したがいまして、との一次遮蔽だけ修理するということになってまいりますと、その部分につきまして、私が先ほど来申し上げておりますように、事業団と三菱との間の費用の分担の問題が出てまいります。これで私は、三菱も相応の分担をすべきだというように申し上げているわけでございます。ただ現在のところは、問題は一次遮蔽だから、それだけ早く直してしまおうという考え方をとっておりません。全体を総点検いたしまして、改修いたしますその一部として一次遮蔽も当然含まれるということでございますので、全体の中で事業団と三菱との経費の分担を考えるということになろうかと思います。
  156. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先ほどの事後処理に要した費用等も含めて、いま政府に必要なことは——何も三菱原子力とあらかじめ合意ができておって、その合意のできる範囲内で要求できるのはこれこれだというふうなことが問題だとは思いません。三菱がどう答えてくるかはまさに次の段階の問題であって、いま必要なのは、まず政府として、こういう事故が起こったことにかんがみ、公正な政治姿勢の具体的なあらわれとして、三菱原子力に要求すべき責任と補償の範囲、内容はどういうことか、これが問われていると思うのです。ですから、この態度、方針政府がはっきりさせれば、いやでも三菱は答えざるを得なくなってくる。このときに初めて、三菱が果たして、言われている企業の社会的責任を感じているのかどうか、これもはっきりしてくると思うのです。  一応三菱が、法的な責任はないのだと言えば、球を政府に投げ返したかっこうでしょう。投げ返された政府としては、これだけのことを実際にどうするのだと、その球をもう一遍投げ返す必要がある。ここに初めて三菱も受けて立つことになるだろうと思う。  そういうことも含めて、簡単にあの地元対策費を含めた事後処理の費用が行政ペースだなんというそんな企業寄りの態度ではなくて——三菱が受けるか受けないか、これは別問題です。政府としては、国民の立場に立つならば、少なくともこれぐらいのことは三菱側に要求しなければならない、この範囲を改めて答えていただきたいのです。
  157. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 お話をお聞きしていますと、まことに部分的な問題の損害賠償等の処理をどうするかという御議論のようでございますけれども、国家プロジェクトとしてこういう世紀的な一つの新しい開発を官民総合して進めていく際における問題の処理を、既契約の文面どおりとして問題を処理する方がいいのか。あるいは新しいケースでございますので、瀬崎さんのような議論の立て方もあろうかと存じますが、しかし何もそういう三菱をかばうとかいう意図は毛頭ございませんけれども、今後もナショナルプロジェクトといったような大きい、企業だけではやれない、いわば国が開発していかぬといけないときに、一緒にひとつ民間の技術も参加してもらわなければいかぬというので、これは御承知のようにシステマタイズして進んでいったわけでございます。ただ、そのシステムの運営そのものに欠陥があった。そのシステムとは一体何ぞや、だれがそれを立てたのか、だれが監督しておったのかといったような、やはり一つの大きな問題としてこの問題を処理すべきだというのが、大山機関一つ結論だと私は思っております。したがって、あの報告は大変価値の高いものだと思っております。  ですから、一弁護士のような一つの部分をとらえてその解決はどうだと迫るやり方でなしに、新しい時代のナショナルプロジェクトというものを進めるには、こういう考えでいかなければならぬぞよという、その意味で大変貴重なものだと思っております。  したがって、瀬崎さんのような立論の仕方ももちろんありますが、私どもは、やはり大山報告のあの結論を受け取って、それぞれの分野責任というものを感じて、改善するものは改善していくということでいま進めておりますので、先ほど来局長も言っておりますように、三菱といえども社会的な責任は感ずるに違いない、私もそう思いますので、したがって、これこれは一体どうするのだという問題は、そういう大きい見地から判断して、これから結論を出していくようにしたいと思いますので、これこれだけはどうするのだと、まだ私ども結論をつけておらぬ問題でございますので、会計検査院等でもいろいろ調査もし、あるいは行政管理庁等でも行政管理全般に絡んで、いま総絡みでこういう原子力行政の進め方というものを検討している最中でございますので、その点も御考慮くださいまして、きょうのところは、これをどう思うのだと詰められても、これはまだ検討未済の問題でございまして、はっきりした結論が出ないわけでございます。そういうふうに御答弁申し上げたいと存じます。
  158. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうするとこういうことですね。ナショナルプロジェクトの場合には、一体どういう開発研究体制をとるのがよいのかというふうなことを全体として検討しながら、そういう全体の検討の中で、しかし当然受け持つべき三菱の責任等についても、決して政府側は不問に付するのではない、求めるべき責任は求める、こういう理解でいいわけですね。
  159. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 そういうことになると思います。
  160. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は、もうここまで報告書も出、論議も進んでおるのですから、そう時間は要らないと思うのです。やはり少なくとも国会の開会中にその結論は出していただきたいということを強く要望しておきたいと思うのです。  次に、問題が変わりまして、原子力の利用の面で生まれてくるいろいろな規制の技術基準の問題について伺いたいと思います。特に使用済み核燃料の輸送等については、何回か現実に行われておるわけでありますが、この安全審査は一体どのように行われているのか、原子力委員会にお尋ねをしたいのです。山田さんに……。
  161. 山田太三郎

    ○山田説明員 事務的な過程につきましては、事務局から答えていただきたいと思います。
  162. 生田豊朗

    生田政府委員 原子力委員会原子炉安全専門審査会におきましては、使用済み燃料の輸送の安全基準あるいは安全審査についてはやっておりません。したがいまして、原子力委員会とは別に、行政ベースにおきまして輸送用のキャスクについての安全審査と申しますか、安全のチェックをやっております。
  163. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ことしの一月、原子力委員会は「放射性物質の輸送に関する技術的基準について」というものを決定されておりますね。これを決定されたそもそもの趣旨といいますか、動機というものは何なんですか。
  164. 山田太三郎

    ○山田説明員 大分以前でございますが、IAEAの輸送基準に従いまして、放射性物質の輸送容器についての基準を原子力委員会で決めたことはございますが、その後、IAEA、国際原子力機関におきまして新たな基準ができてまいりました。そこで、いままでは輸送容器だけでございましたが、今度はそれだけでは不十分でございますので、IAEAの基準に日本的な解釈をもちろん加えたものでございますが、それで輸送容器及び輸送方法について基準を決定した次第でございます。しかし、その実行につきましては、各現業官庁にその線に従って具体化するように申し伝えた次第でございます。
  165. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうすると、輸送の所管官庁である運輸省としては、結局この輸送の安全性についてよりどころとなっている技術基準としては何があるのですか。
  166. 間野忠

    ○間野説明員 現在におきましては、すでにIAEA、国際原子力機関等におきまして、たとえば輸送容器でございますと、先ほど原子力委員会の方からお答えありましたように、そういった技術基準ができておりますので、そういったものにつきましてはそれをベースにしております。また私どもの方で所管しております輸送に関する規則が制定されましたのは相当以前でございますが、その当時におきましては、たとえばWHOでございますとかあるいは米国の規則でございますとか、そういったものを参考にいたしまして、ベースにいたしましてわが国の輸送に関する基準を設定いたしたということでございます。
  167. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そういうことをベースにするという法令的な根拠は一体どこにあるのですか。
  168. 間野忠

    ○間野説明員 これにつきましては、原子炉核燃料物質あるいは原料物質の規制ということは、輸送を含まない取り扱い一般につきまして核原料物質、核燃料物質及び原子炉規制に関する法律というのがございまして、その中で五十九条であったと思いますが、海上輸送あるいは航空輸送による場合を除きまして、陸上輸送による場合におきましては、総理府令及び運輸省令でやるということになっております。それで、規制法の方で航空及び海上輸送につきましては除かれておりますので、それにつきましては、たとえば海の場合でございますと、船舶安全法のもとに危険物船舶運送及び貯蔵規則というのがございますので、これによりまして他の危険物と同様規制しておるということでございます。
  169. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうすると結局、明確な日本における技術基準というものを持って、しかもそれに従わなければならないという法令的な根拠もあって、言うなら原子力委員会の安全審査に当たるようなものを運輸省がやって輸送を一々許可している、こういう実態ではないわけですね。
  170. 間野忠

    ○間野説明員 原子力委員会原子力施設について行われておりますような安全審査は運輸省ではやっておりません。
  171. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そういう点について、運輸省として一応技術基準のあるものを国内的にもつくっておかなければならないというふうな必要性については考えておったのかどうか。つまり今回、原子力委員会が決定されたような内容のものをつくる必要を感じておったのかどうなのか。その点はいかがですか。
  172. 間野忠

    ○間野説明員 こういうものがございますと、われわれとしても非常に基準をつくりやすいことでございますし、また、あった方がよいので、今回原子力委員会の方から勧告と申しますか、そういったものをいただきましたので、まあベースは国際的な基準になると存じますが、こういったものを取り入れる方向検討してまいりたいと思っております。
  173. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私が聞いているのはそうじゃなくて、今日までそういうものなしにやってこられたんだけれども、運輸省としてはみずからそういうものを検討するというふうな考えは持っていなかったのか、持っておってやらなかったのか、どうですかということです。
  174. 間野忠

    ○間野説明員 私どもの所管いたしております輸送といった問題も、海と陸とそれぞれ異なった経緯があるわけでございますが、海上につきましては、政府間海事協議機構というのがございまして、これは海に関する国際原子力機関のようなものと御了解いただければよいかと思いますが、そこで、放射性物質も含めまして危険物に関する輸送についての積載方法であるとか容器であるとか包装、ラベルといったようなことをやっておりますので、それを基準にして、これは古いもので昔からありましたので、これをベースにしてやってまいった、そのほか米国等の規則等もあればそれも参考にしてやってまいったということですが、先生御指摘のように、国内でそういった基準ができれば、それにこしたことはないと考えております。
  175. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 こしたことはないと言うだけで、みずからやろうとしたのか、やろうとしていなかったのか、この点はちっとも答えていないんですね。時間も余りないので、もうこっちから申し上げましょう。  この第二十三回の原子力委員会定例会議事メモというのは、科学技術庁説明によればマル秘なんで、そんなものは出てないはずだということなんですが、この間私が一節紹介いたしましたように、四十五部出ておって、当時委員であった田島さんは、もうこれだけの印刷部数が出ておれば公開と同じだな、こういうお話がここに載っています、現に私の手元にも一部あるわけです。ここに当時の輸送基準といいますか、輸送における安全審査基準のようなものについて論議がされているんですね。ちょっと紹介してみましょうか。  輸送についても基準をはっきり決めておかなければならないんじゃないかというふうな意見が出てまいりまして、これに対して当時の大坂原子力局次長が「運輸省は、検討すると言っているがまだやっていない。以前に科技庁が検討会を作って検討すると申し入れたところ、運輸省の権限なので運輸省がやるという返事が返ってきており、すでに二年以上経つがその後進展していない。」  山田原子力委員にお伺いしたいのですが、これは山田さんも御出席のようですね、こういう事実があったのですか。
  176. 山田太三郎

    ○山田説明員 ただいまの記録につきましては、記憶がございませんが、今回の輸送基準の決定におきましては、運輸省各局、みな非常に熱心に参加しております。われわれの主宰のもとでございましたけれども、非常に協力的であったことを申し上げておきます。
  177. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 大変運輸省をかばってお話しでありますけれども、これは事実記録に残っております。ですから、もっと早くこういうものができていなければいけないのが、なわ張り争いでおくれてきたということがはっきりこれで実証されているわけですね。だから、安全局をつくるのも案としては考えられないことではないだろうけれども、もっと早くやっておかなければいけないことも、現在の政府機構の中ではやられていないということがここに証明されている。こういう点、私ははっきりこの議事録から指摘しておきたいと思うのです。  じゃ、先ほどの原子力委員会の話に従ってこれを直ちに法令に反映さして整備するのですか、運輸省、どうですか。
  178. 間野忠

    ○間野説明員 今回、その原子力委員会からいただきましたものは、従来の規則に比べますとかなり広範にわたっておりますし、この線に沿って改正する方向検討をいたしておりますが、かなりの労力を要するものと考えております。
  179. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それだけ労力の要するものがこれから始まるというふうな点でも大変な手抜かりであることは指摘しておかなければいけないと思うのです。  同じくこの議事録の中で山田委員は、こういう技術基準を全体としてつくっていくために「米国は数拾人が基準化のための作業に携っており、日本はそうしていないがそれでよいのかどうか。」こういう御指摘をなさっていますね。この点は、山田委員のお考えを聞いておきたいのです。
  180. 山田太三郎

    ○山田説明員 いまの記録にありますように、アメリカは非常に熱心に安全基準をつくろうとしておることが、彼らと接触いたしましてよくわかりました。  そこで、ややおくればせでございますが、多分今年だと思いますが、原子炉安全技術専門部会というものをつくりまして、これは主体はいわゆる安全基準をつくることでございますが、そのほか基準にならない前段階における技術的討議も含めて行うという意味で、現在約三十人くらいのメンバーで主要な分野につきまして検討を加えております。  さらに日本だけでなく、もっと国際的に容認される基準との関係考えまして、IAEA、国際原子力機関におきましてもそのような動きがございますので、それにも積極的に参加していくという道をとりつつございます。若干おくればせでございまして申しわけないのですが、鋭意その方面に進みたいというふうに考えております。  ただし、原子力委員会の場合におきましては、仮に一元化問題が決まるまでの間におきましては、安全審査段階のものにとどまりますので、アメリカがやっておりますような人数は必要とはいたしませんけれども、しかし現在、原子炉規制課におきまして若干その方面に携われる人間が出てまいりましたので、その人間が主体になって委員会と協力してつくり上げるということを考えています。
  181. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私が引用しているこの議事メモというのは、おととしの六月のものなんですが、いまのそういう山田委員の努力をわれわれは評価したいと思うのです。ただ、そのためには人員も要るということで、この議事録にもちゃんとその人員要求は出ているわけなんです。  これは武藤という当時の委員から「人員要求に関しては、今までどおりの要求では、要求どおりの人員増は望めないので、要求方法を考えておかれたい。」こういう提案がありました。これに対して成田元局長が「新しい機構改革がないと人員増はなかなか認められない。」こう言っている。  長官、こういうことが二年前にあったのですが、これで政府全体がかねがね安全問題に力を尽くしているのだと言えるのかどうか、いかがです。
  182. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 その当時の予算折衝等、私よく知りませんので何とも言えません。しかし私が長官になって以来は、少なくとも必要な経費は賃金と言わず旅費と言わずちょうだいしているつもりでございます。
  183. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 時間が来ておりますので、私の方から申し上げますけれども、この後のメモ内容から見ますと「局を規制開発に分けるという考え方の具体的な内容は如何か。」と武藤という委員が質問し、これに対して成田元局長が「機構改革検討した案では、局長級の安全監を賢く案を考えている。」とか「規制部、開発部を置き、次長を一名残す体制はどうかと思っている。その他局を二つの局に分ける案もある。」こういうふうにちゃんと言っているわけですね。  つまり政府は、「むつ問題等が起こってきたために、新しい原子力行政改革の一環として、あたかもこの安全局設置を切り札のように出したのだと言っているように見えるけれども、実はそうじゃなくて、本当は原子力委員会強化をしてほしいのだけれども、機構改革を出さないと人がつかない、その案としてはこういうことがあるのだ、こういうことを当時から出しているわけですね。この点でも重大なペテンがあると私は思うのです。決してこの安全局という政府の案は、いま目新しく出てきたものではない。過去にあったものである。こういう点で、いかにも「むつ」の教訓から学んだような、こういうそぶりは一つは欺瞞であること。同時に、安全局は本当に安全強化のためという発想ではなしに、人員をふやしたいというこの発想から生まれている。こういう点でも二重に欺瞞がある、こういう点を私は指摘せざるを得ないと思うのです。  そういうふうな点では、先ほどから申し上げましたように、まず最初に解決しなければいかぬ問題が幾つかありました。国民が大きく期待している、あの大きな「むつ」の事故を引き起こした責任所在を明確にし、それに応じた的確な、公正な処置を行うこととか、あるいはまた先ほど輸送の技術基準が全くなかった、外国のあれこれの例をベースにしてやっておった、こういうことも明らかになりました。いま基準が出た、これも早く法制化しなければならない、こういう問題もあります。そうしてこの原子力委員会の議事内容の公開自身が強い国民的要請になっているわけであります。  田島委員は、この間の集中審議の御意見では、だれが何を言ったかというのを書くと、自由な論議を妨げるおそれもあるし抵抗が強いので、Aは何をおっしゃった、Bは何をおっしゃったというふうな形で、しかし議事録はとってこれを公表した方がよいと思う。これは前の原子力委員であっただけに非常に傾聴に値する、重みのある発言ではないかと思うのです。こういうことが急がれておる。これだったら、印刷費くらいの予算は要るでしょうけれども、あとの予算は何にもなしにできることです。  私は、原子力委員会がそれこそ自主、民主、公開の三原則の先頭にそういう形でも立っていただく、これも前提条件だと思うのです。こういう点で、最後に山田委員、そうして長官の答弁を求めて終わりたいと思います。
  184. 山田太三郎

    ○山田説明員 議事録を非常に公正に書き上げるためには、言ったとおり全部書かなければだめであると思うのであります。非常に簡略化されたものでは、主体がぼけたり間違ってとられるということが出てくるかと思いますので、しかもそれを公正にやるために議事録の審議をしておりますと、審議時間を全部食うかもしれないということもあり得るわけでございまして、先生の御趣旨にはもちろん沿いたいと思っておりますが、必ずしも非常に詳細なものを外に出すというつもりはございませんで、結果の明らかなものについて発表したい、こういうふうに考えております。
  185. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私は、大変善良な人間で、欺瞞とか悪人とかいうふうに物を見ないのでありますけれども、そういう御解釈をちょうだいするのは実は大変心外でございます。  その報告にありますように、安全問題は前から非常に重要問題になっておりまして、去年も安全部を創設しようというので案を出したそうでございますが、それは国会を通らずに、日の目を見ずに終わりました。ことしは、一切部も局もつくらないというのが内閣方針でございまして、決定をとったのでございます。私も、閣僚の一人として参画したのでございますけれども、しかし繰り返し申すように、客観情勢はそういうわけにいかぬぞ、これだけは例外にしなければいかぬというのでこの局をつくり、局のファンクションあるいは権限はどうかということは再三説明したとおりでございまして、決して瞞着、欺瞞だとか悪人だとかいうようなことではないので、どうぞそういう点はひとつ素直に御解釈いただきたいと存じます。
  186. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 素直にわれわれは受け取りたいが、私も善人なんだけれども、やっていることを見ていると、どうしてもねじ曲がってくるんですね。どっちがどうなんでしょうか。  特に機構改革の面で言うならば、現在、世論としてほぼ一致して求めてきているのは原子力委員会の改組、拡充だと思うのです。私どもは、やはりこれを一貫した規制権限を持たした安全委員会にするべきだと考えております。また、いまの議事メモの中にも出ているのですが、スウェーデンですら再処理の問題が解決つかないために安全審査を一年間ストップしている、こういう説明が出ております。これは政府側から出ております。こういう点を考えるなら、日本だってもっと深刻なんです。  ですから、そういうふうな原子力発電の全システムの整備が整うまで、あるいはまた原子力委員会の本当の改革が済むまで、やはり安全審査をストップされるべきであり、同時に、事故だらけの現在の原子力発電所などは一応この際それこそ総点検をする、こういう必要性がまず急がれているんではないか。  ですから、こういう点で、せっかく政府が認めないと言っているものをつくらしたんだと言われるなら、同じ努力をするのなら、なぜ原子力委員会の方でそういう改革を実行されなかったのか、こういう点でも、また長官に言わせればねじ曲がって解釈していると言うかもしれないけれども、われわれは国民の側に立てば、それが妥当な機構改革のまず筋一に挙げるべき問題ではないかと思うのです。  この点を指摘して質問を終わりたいと思います。
  187. 藤尾正行

    藤尾委員長 午後二時より連合審査会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時十二分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  188. 藤尾正行

    藤尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  科学技術庁設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。近江巳記夫君。
  189. 近江巳記夫

    ○近江委員 今回の科学技術庁設置法の一部を改正する法律でありますが、安全局設置するという法律であります。しかし、いろいろと批判もありまして、安全局だけを設置して根本的なそうした原子力行政の見直しもやっておらない、そういう批判が非常に方々で聞かれるわけであります。  そこで、初めにお伺いしたいのは、いわゆる安全局設置までの経緯、また安全局設置する意味ですね、時間のかげんもありますのでポイントを簡潔に御答弁いただきたいと思います。
  190. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 安全局設置しようという法案をつくるまでの経過でございますが、これは、かねて原子力行政を進める上において、原子力発電あるいは船舶用炉等を開発するためには安全性確保というものが一番問題じゃないか、立地問題が大変問題になっておりますけれども、その立地問題のさらに真因を突き詰めてまいりますと安全性確保というところに尽きるわけでございまして、安全性確保するにはどうしたらよろしいかという点が前々から大変問題になっておるところでございます。  そこで、去年も実は安全部というものを原子力局内に設けて、少しでも安全のための行政体制強化しようということで国会に提出したのでございますけれども、去年は審議未了で成立に至らず。ことしは財政の見通し等から言いましても、あるいは政府全般の機構の問題から言っても、この際新規の局部は一切取りやめようという閣議決定をしておりましたので、私どもも、去年せっかく部を出してそれがことしもそのままになるのは、今後の安全性確保する上に大変憂慮にたえないという気持ちもしておりまして、そこで科学技術庁としては、いろいろ原子力委員会等の意向も受けまして局案を練っておったようでございますけれども、私自体は、一番決心いたしましたのは、「むつ」問題もしかりでございますけれども、日本で発電炉を扱っている県が八県ばかりございまして、その八県の知事さんが暮れに集まっていろいろ話をしておりましたところ、この際どうしても安全問題に対して政府がはっきりした具体的な姿勢を示さないと自分らとしてはどうにもやりようがない、ついては、政府で近く内閣に大機関をつくって、原子力委員会まで含めた主として安全を中心にした抜本的な機構改革をやるそうですか、それは一体いつできるのですかというお話。実はそのときは、まだ懇談会ができておりません。いつつくるかも、早くつくろうというだけの話でございまして、その間一月の予算の編成で挙げて予算の問題に狂奔するという状況で、懇談会ができるのがどうしてもその後。人選の問題でこれまた御承知のように大変難渋いたしまして、幾変転を経て原子力行政懇談会のメンバーというものができたものなんです。それこれ思い合わせて、これが実際に動いて結論を出して、その結論を受け取って法律をつくる過程において、各省との権限調整をして予算を盛ってそしていざスタート。スタートして行政として定着するということになりますと少なくとも二年は見なければいかぬぞ。それから二年後になって査察あるいは監査、審査するスタッフが足らないじゃないかといっても、その要員がなかったというふうなことではどうにもならぬのじゃないだろうか。この際、切れ日なしに重要な問題を進めていくためには、あるいは現地の実際を担当している知事、市長村長等の苦心を考慮すれば、この際政府としては、それで十分とは言えないにしても、一歩前進意味安全局というものをつくって、政府はほかのものを一切新設はしないけれども、これだけは特別に扱いましたという気構え、姿勢をまず形の上ではっきり示そうではないかということが根本的な経過だと私思っております。  それから、この局の内容でございますが、一つは、責任の明確化でございまして、いま原子力局にありますが、従来の関連からいたしまして、安全問題に対して行政府として最終的に責任を持つところはどこかというところを詰めて考えてみますと、原子力委員会というものは、決定機関のようで本質的には諮問機関でございますので、その下部機関である安全審査会、部会が決めたそれにおんぶして行政府自体の責任がないような体制はおかしいじゃないか。これは総理大臣みずからが設置許可するわけでございますから、その設置許可に際しての責任は、安全局を新しくつくって、そこではっきりと明示して、そこで責任を持ったらいいじゃないかという責任体制の中心を定めたということ。  それから、一貫性の問題がございまして、各省との関連等いろいろございますが、そういう意味におきましても、この際、いままでの法律をすぐ変えるわけにはいかぬけれども、しかし連絡その他を密にして、いわば安全性の確認のための環境的なシステマタイズと申しますか、システムをつくりまして、そしてそれぞれの分担をおのがじじ持っていくわけですけれども、しかしその最終責任はやはりこの安全局が持って、そしてシステマタイズに、安全というものを行政府一体として現法律のままでも行政措置として運営していくことが、当面われわれとしてやるべき仕事でないだろうかということ。  それから、先ほどもちょっと触れましたが、人員の養成をどうするのだということがございます。これはまた金があればできるという問題でございませんので、こういう機関が中心になって人員の賛成をしたらどうだろうというのが、この局の一つ権限と申しますか、職能だと私は思います。  しかし、もう少し大きく考えますと、いま安全問題に対して一番緊急を要するのは、やはり軽水炉の安全研究をどうするか、それからいままで申しました審査、検査を、いままでのようなやり方だけでよろしいか、その内部検討の項目等、やり方等も、まだまだ吟味の要があるんじゃないかといったようなこと、あるいは国民理解、支持を得るためにはどうしたらよろしいかといったような問題がたくさん機能としてございまして、先ほど申しましたように、安全局そのものの権能なり責任所在は申したとおりでありますが、具体的にまた大きい仕事としてどういうことがあるかと申しますと、いま言ったような分類になるのじゃなかろうかと思います。  以上、設立までの経過とその内容でございます。
  191. 近江巳記夫

    ○近江委員 この原子力行政懇談会でその根本的な問題、それが出てきてからでは相当時間もかかる、とりあえず、そうした長官の気持ちもわからないではないわけです。     〔委員長退席、木野委員長代理着席〕 しかし、この安全局ができたからということで、それが単なるレッテルだけであってはならぬと思うのです。やはり中身のあるものにしなければいかぬと思うのです。  ところが、この機構を見ましても、現行のいわゆる原子力局を、それぞれの分野で分割してわずかな、十九名ですか、人員をつける、こういうかっこうで安全局が誕生しておる。いわゆる新部局の設置については、政府としては認めないということをやってきた。ですから、非常にいろいろな苦労もあったことと思うわけです。しかし根本的なそうした体制の整備という点からいきますと、これは非常に小手先のものではないかということは言えるのじゃないかと思うのです。  そこで、今後のいわゆる安全局運営問題等、いろいろ問題が出てくるわけでありますが、いま長官もおっしゃったように、一つは、安全審査の徹底をいかにするかというような問題、さらにまた、この安全研究の徹底あるいは事後の保安監視体制等の整備あるいは強化法体系の再検討、住民とのそうした対話、またルールの確立等の種々の問題がやはりあろうかと思います。いままでこの安全審査等を見ておりますと、非常に縦割り行政の欠陥というものが指摘されてきたわけでございます。この設置許可の段階におきましては、いわゆる原子力委員会、当然科学技術庁がバックアップしておるわけでありますが、詳細設計及び工事方法につきましての認可段階の審査や定期検査というものは通産省がやっておる。こういう非常にばらばらなことがあったのですが、この安全局ができて、安全審査の徹底という点についてはどのように変わってくるか、また安全研究の徹底という点についてどのように変わってくるか、この点につきまして局長からお伺いしたいと思います。
  192. 生田豊朗

    生田政府委員 ただいま先生御質問の、二つの省庁にまたがります安全審査が、今回の安全局の新設によって一元化されるのかどうかという点でございますが、その点は、今回の安全局の新設によっては一元化されないわけでございまして、その辺の科学技術庁とたとえば通産省あるいは運輸省との間の守備範囲の関係は従来と同じでございます。ただ、そういう問題につきましては、先ほどの大臣の御答弁にもありましたように、内閣原子力行政懇談会でさらに引き続き検討するということでございます。  ただ、そういうことではございますけれども、安全局の新設によりまして、科学技術庁といたしましての原子力安全行政が、少なくとも原子力の安全に専念する一つの局ができるということで非常に質的な充実が図られるというように考えておりますので、各省間の連携につきましても、従来以上にさらにスムーズにできるというように確信しております。  安全研究につきましては、安全研究そのものを担当いたします局は原子力局、局が二つに分かれました後の新原子力局でございます。ただ、研究そのものは新原子力局で担当いたしますけれども、安全研究に対します一種の需要と申しますかニーズと申しますか、そういうものは当然、安全規制あるいは安全審査のサイドから出てくるわけでございますので、その面の行政強化されることによりまして当然、総合的な安全研究体制も整備されてくる、かように考えております。
  193. 近江巳記夫

    ○近江委員 安全という点からいきますと、この審査の徹底あるいは安全研究、これはもう不可分のものになるわけですね。ところが、研究の方は新原子力局に任せるんだ。任せるためには当然、いろいろなそうしたニーズに応じてこういうものはやってもらいたいということを新原子力局に言うことになるわけですが、それにしても管轄がそのように新原子力局にある、これだって非常にばらばらの感じが私はするわけであります。  それからさらに、この安全局は、安全規制という大きな仕事をやっていくことになるわけですが、いつの本委員会におきましても問題になってきますのは、いわゆる開発規制といいますか、そういう大きな網に対して、もうまるで政府はばらばらなんですね。電調審で決まっているから仕方がない、原子力委員会はただ原子炉だけの安全審査だというような非常に隘路があったわけですね。今度安全局ができることによって開発規制というような網はどうするのですか。いままでと全然変わらぬわけですか。
  194. 生田豊朗

    生田政府委員 開発規制という先生のおっしゃった意味が、ちょっと正確にわかりかねるのでございますけれども、恐らく御質問の趣旨は、安全性を無視していたずらにその企業の利益とかあるいはその電力確保とかいうことだけに進む開発体制ということをどうするのかというような御趣旨だと考えております。そういう面におきまして私どもは、この原子力というものの開発を促進いたしますためには、もう何よりも安全の確保が第一である、安全の確保なくしてあらゆる開発はないのだということを確信しておりますので、安全局設置によりまして安全規制体制強化されることが結局、最終的には合理的な開発を進めることにもなるのだというように考えておりますので、先生の御質問の開発規制ということに関しましても、その開発規制のための安全面からの基礎が強化される、安全局というのはそういう機能を持っているというように考えております。
  195. 近江巳記夫

    ○近江委員 回り回れば当然そういうことになろうかと思うのですが、やはりいままでやってきたことを見ますと、そういう環境に対する配慮であるとか、そういうような総合的な見方という点においては、これは電調審で決まったのだということで科学技術庁原子力委員会というものは、いわゆるその原子炉自体の安全性、当然環境汚染等もそれは入っておるでありましょうけれども、そういう非常に狭められた枠の中でやっていこう、もっと大きな立場からのそういう見方という点が私たち非常に足らないと思うのです。  その点については、この安全局というものは、そこまでの大きな権限は与えられるわけですか、どうなんですか、各省折衝等におきまして。その点についてお伺いしたいと思うのです。
  196. 生田豊朗

    生田政府委員 ただいま先生のおっしゃいました原子力全般についての各省間の総合調整ということになってまいりますと、これは安全局と申しますよりも、むしろ原子力委員会の主要な任務のように思います。原子力委員会権限といたしまして、その基本的な政策の立案あるいは総合調整、必要に応じまして各省に対しまして資料の提出を求め、あるいは勧告をするという権限も持っております。原子力委員会は、そういう任務を持ちまして、まさに総合的な原子力行政を中立的な立場から推進するというために設置されているものでございますので、ただいま先生御質問の趣旨は、むしろ原子力委員会がそういう任務を行うというように申し上げた方がよろしいのではないかと考えております。
  197. 近江巳記夫

    ○近江委員 その辺が原子力問題懇談会においてまだ結論が出ておらないというところの、そういう一つの隘路の問題じゃないかと私は思うのですが、しかし、この安全局のそうした権限といいますか、そういうものについては、私は、この際もっと広げる必要があろうと思いますし、それにふさわしい地位というものをやはり与えていかなければいけないと思うのです。その点がどうもあいまいなんですね、こういう問題はどうか、それは原子力委員会であるとか。  ですから、単なるそういう原子炉を中心とした、いわゆる安全という点だけにしぼってのそういうものであるのかどうか、その辺の領域といいますか、権限といいますか、この際明らかにしておく必要があろうかと思うのです。その点についてひとつ局長からもう一度。
  198. 生田豊朗

    生田政府委員 原子力安全局と申しますか、現在の原子力局でも同様でございますけれども、原子力に関します総合調整機能を持っております。そういう意味で、非常に数多くの各省庁にまたがります原子力行政を総合調整し、あるいはその基本方針を立案するという機能を持っておりますので、その点では、先ほど原子力委員会の機能と申し上げたものとかなり似ているわけでございます。そういう意味におきまして、原子力安全局というものが、各省庁間の原子力安全行政のかなめになるということは当然でございます。  したがいまして、原子力安全局設置によりまして、科学技術庁原子力安全行政強化されるというだけではございませんで、政府全体、各省庁に幅広くまたがっております原子力安全行政一つの中心ができるというように申し上げてよろしいかと思います。
  199. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど私、安全審査のところで申し上げたのですが、たとえば通産省科学技術庁関係を見ましても、詳細設計及び工事方法についての認可段階の審査、定期検査は通産省である。そうしますと、あくまでも科学技術庁安全局の下に通産省はあるわけですね。そうして安全局の指摘に対して通産省は必ず言うことを聞くわけですね。いままで役所の権限争いというものは非常にいろんな点で見られたわけです。その点、私たちは役所のそういうセクト主義を排しなければいかぬ、やはり目的を完遂するためにはあらゆる協力体制をしがなければいけない。しかしそういう協力体制と言っても、やはりそこにはセクト主義が介在するわけです。  ですからそういうポジション位置というものについては、どちらがウエートが高く、尊重するか、これをやっておかないと、安全局は指摘しても科学技術庁は文句ばかり言う、通産省は何と言っても大きな機構を持っている、また通産省から出向している人が科学技術庁に多い、これじゃ何にもならぬわけでしょう。その点たとえ小さい役所であっても明確にしておく必要があると思うのです。その点どうですか。
  200. 生田豊朗

    生田政府委員 その点、御説明が非常にむずかしいわけでございますけれども、原子力行政に関しまして科学技術庁がほかの他の関係省庁の上に位置、位しておりまして、関係省庁を、何といいますか、指揮監督する立場にあるということではございません。これはそれぞれ、たとえば通産省は電気事業あるいは原子力産業という立場から原子力行政に関与しているわけでございますし、運輸省、労働省その他の関係各省も同様でございます。そういうもの全体を総合調整する機能が科学技術庁にあり、さらに関係省庁のまさに上に立って、それを政府とはある程度距離を置いた立場から全体を調整し、あるいは企画立案する機能が原子力委員会にあるという形になっておりますので、ただいま先生がおっしゃいましたように、科学技術庁がこうだと決めれば、通産省が全部そのとおり言うことを聞かなければならないということは必ずしもございません。  ただ、両省庁間の連絡体制につきましては、もうたびたびの御指摘もございますし、その点十分念を入れてやっておりまして、もうほとんどその間ダブルチェックと言っても差し支えのないほどお互いに協力し、連絡をとりあって行政をやっておりますので、そこのところが十分意思が疎通しない、あるいは行政がそれぞればらばらになるという、そういうようなことは一切ございません。
  201. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしたことは安全局ができるわけでありますから、ともすればあの「むつ」事件に見られるように、運輸省とそういうようなばらばら行政ということでああした問題も起きたわけでありますが、十分そういうような配慮をしなければいかぬと思うのです。  それから事後の保安監視体制、これはやはり整備し強化していく必要があろうかと思うのですが、この点についてはどのようにお考えですか、いわゆる原子力発電所設置をされ、その後ですね。
  202. 生田豊朗

    生田政府委員 設置をいたします場合に、もう先生十分御承知と思いますので簡単に申し上げますが、原子炉設置許可の申請がございまして、それが安全審査の後、許可をされますと通産省に渡りまして、詳細設計の審査、工事方法の認可、さらに各種の検査がございまして営業運転に入るわけでございます。その後におきましては、これも科学技術庁通産省と分担いたしまして、科学技術庁といたしましては、たとえば保安規程を認可することによりまして、その保安規程を通じまして運転状況を監視することになっておりますし、通産省もそれぞれ法令に基づく各種の検査をやっているわけでございます。  そういうことで、運転そのものにつきましても、事後的なチェックを両省庁協力してやっておりますし、さらに環境放射能の問題につきましても、これも関係の地元の地方自治体の御協力を得まして環境放射線の測定も十分やっておりまして、付近の住民の方の安全は十分に確保できるように取り計らっている次第でございます。
  203. 近江巳記夫

    ○近江委員 当然両省がそのように協力して監視体制ということは強化していくわけですが、地元、また住民とのそうした信頼関係という点からいきますと、それぞれ協定を結んだりいろいろなことをやっているところもたくさんあるわけですが、これはやり方等を見ておりましても非常に一貫していないわけですね。この点につきましては、地元とのそうした協定等のあり方につきまして、政府としてはどのように考えているわけですか。
  204. 生田豊朗

    生田政府委員 原子力発電所におきましては、その電力会社とそれから地元の、大体県でございますけれども、それとの間に安全協定を締結しているのがほとんどでございます。そういう協定の締結は、もちろん地元の住民との間の安全に関します情報連絡あるいは意思の疎通を図ります上に非常に重要なことでございますので、われわれとしても、そういう形で地元の、特に地方自治体と十分な連絡体制、協議体制が整うようにかねがね指導しているわけでございます。  大体順調にいっているように思いますが、時折、その協定の履行あるいは協定の内容につきまして問題の発生することがございます。そういう場合には、私どもといたしましても、十分地元の方の御納得のいくよう円満に話がつきますように会社側を指導いたしております。
  205. 近江巳記夫

    ○近江委員 この問題につきましては、過日起きましたあの玄海の事故のときも、そういうことを報告するのは知らなかったとか、会社の首脳がそんなことを言っておるわけですね。そして報告も非常におくれておる。これは結局、そういう地元におけるそうした協定ということにつきまして、政府としては、ただ自主的にやっておるのを見守っていくのだ、まあカバーすべき点はカバーしようというぐらいの感覚なんですね。これはやはり義務づけるとか、その中身についてはこうこうこういうものは原則としてどうしても盛り込みなさいとか、また周知徹底をさせていく、こうしたことをやはり政府としては当然考えるべきじゃないかと思うのです。その辺についてはどのように考えておりますか。
  206. 生田豊朗

    生田政府委員 現在の段階では、先ほど御説明申し上げましたように、電力会社側と地方自治体との協定を忠実に履行するというように指導監督することで十分だと思っております。  ただ、ただいま先生御指摘の玄海の問題でございますが、これにつきましては、当然すぐに、少なくとも協定の相手方でございます佐賀県当局には連絡すべきであったと思いますし、さらに地元の住民の方にもその事態をなるべく早く明らかにすべきだったと思っております。     〔木野委員長代理退席、藤尾委員長着席〕 それがおくれましたために、何か発表していること以外に隠された問題があるのではないかというような疑惑を招きましたことは大変遺憾でありますので、その点、九州電力側に十分注意した次第でございます。
  207. 近江巳記夫

    ○近江委員 この安全性という点からいきますと、その点は非常に大事なことなんですね。ですから、十分尊重してするようにという指導だけでは、いま申し上げたような玄海の例なんかも出てきているわけですが、非常に弱いわけです。その協定の持つそうした重み、遵守、こうした点からいきますと、やはり政府自体がそれを法制化して義務づけていく。それは電力会社に言わせれば、そんなもの、住民との協定を義務づけられては困るというような意向があろうかと思いますが、本当に安全を考え、地元住民に対する信頼、協力を得ようとするならば、政府自体がやはりそういう積極的な姿勢に立つことが必要じゃないかと私は思うのです。  一言のもとに局長は、いまのいわゆる指導していくぐらいでいいのじゃないかというような言い方をなさっているわけですが、私はそういうのは非常に安易な考え方だと思うんですね。この点について大臣はどう思いますか。
  208. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 もちろん安全局業務ばかりじゃないわけでありまして、住民に対する御理解を得るためには、関係各省のみならず、直接開発を担当する電力会社あるいは産業会議等たくさんの機関があるわけですけれども、やはりこういう機関が一致しまして、そうして住民に理解を得るためにはどうしたらよろしいか、単に文書的な宣伝だけでこれは理解するわけではございませんので、やはり対話と申しますか、その対話等の仕方も、いろいろ地域的に、あるいは順序等もあろうし、あるいは初めはやさしく、だんだんむずかしくというやり方もありましょうし、私はいろいろやり方があろうと思います。そういう点に対して十全なりやと申しますと、私は、いまの体制は決して十分だと思いません。しかしだれか、そういう問題に対して、おっしゃるようにこれを法規化して、法律で義務的に縛るという行き方、もちろん考えられますけれども、しかし、やはりそれ以前の問題として、そういう問題を統轄的に進めていく中心個所が必要じゃなかろうか。私は、安全局はその任務くらいはやっていけるのじゃないかという感じがします。  たとえば、この一月に総理について伊勢神宮のお参りに行きましたときに、三重県の首脳部が全部一緒に汽車へ乗りまして——御承知のように、向こうには中部電力の予定地があるわけですけれども、大変長い間難航している問題で、先生、どうもこの事態になりますと、やはり業界ばかりからの説明じゃ困りますよ、やはり行政府責任を持って地元へ来てその説明なり折衝の衝に当たるようにしてもらうと大変ありがたいということを盛んに言っておりました。私は、これは国の体制からいって、果たしてそのままのんでいいかどうか、大変議論の余地のあるところですけれども、しかし何かしら、そういういままでの行政からはちょっと逸脱したようなそういうことすらこの際は当然考えていいのじゃないかという気が実はしておりまして、そういう点もあわせて、この安全局等ができますれば、いろいろの意見を聞いてだんだん固めていきたいというふうに考えております。
  209. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣は、そうしたことも含めて今後考えていけばどうかという非常に前向きな御答弁があったわけですが、住民と対話のできるルールの確立ということを盛んにおっしゃっているわけですが、そういう協定というものについて義務づけていくということも一つでしょうし、この対話のできるルールというものにつきまして、どういうような具体的なものをお考えになっているのか、まず局長からお伺いして、後、大臣からお伺いしたいと思うのです。
  210. 生田豊朗

    生田政府委員 地元の住民の方との対話は、私どももぜひ進めたいというように考えております。いろいろのルートがございますが、たとえば、いろいろの御質問その他がありまして、地元の住民の方がかなり数多く私どものところへお越しになるわけでございますが、そういう方には、もちろんできる限り時間も割き、資料等も差し上げまして御説明をし、御理解をいただくようにしております。  そのほか、各地での御要望によりまして地元での説明会、講演会、その他映画その他のPRというようなものにつきましても、御要望によりましていろいろやっておりますし、原子力発電所所在地には、先生承知のPR館がございますが、これの充実も、私ども適宜指導いたしまして図っております。  制度的なものといたしましては、安全審査に伴います公聴会でございますが、この公聴会を通じまして地元の住民の方の御意見を十分伺いたいということで、一昨年、東京電力の福島第二原子力発電所一号機の設置の際に公聴会を開催したわけでございます。次に、同じく東京電力の柏崎原子力発電所につきましても公聴会を開く方向で、ただいま地元の地方自治体の方と意見の調整中でございます。
  211. 近江巳記夫

    ○近江委員 このPR映画とかPR館というのは、大体原発というのは安全だという一方的な、そういうようなことであって、これは宣伝ですよね。そうすると、やはり実りのあるものとするには、公聴会であるとか協定であるとか、こうしたものでやはり中身を高めていかなければならぬと私は思うのです。  そこで、柏崎等については地元市長が公聴会をやってくれということを表明しておりますね。局長もそういうものを開く方向でいきたいということをおっしゃっているわけですが、本委員会におきましても、公聴会を第一回開いたときにあれだけの実際問題も起き、これで実際に公聴会としていいのかという大きな批判も生まれてきたわけです。そこで、この前にも質問したときに、大臣としては二つに分けて中央地方というような方向も示唆されたわけです。その後もいろいろと政府としては中身を練っておられると思うのですが、局長さんに、その後公聴会についてどういうお考えに煮詰まってきておるか、その点についてお伺いしたいと思うのです。また柏崎のそういう市長からの意向についてはお聞きになっておられると思いますし、またその開催時期等、やり方等についてほぼ方向が固まっておれば、この機会に明らかにしていただきたいと思うのです。
  212. 生田豊朗

    生田政府委員 まず柏崎につきまして、新潟の地元で行います公聴会でございますが、これは先ほども申し上げましたように、やる方向で具体的な話を詰めております。具体的な話と申しますのは、開催の期日、それから開催の場所、これは新潟市にするつもりでございますが、実際の具体的な会場の手当てその他がございますので、その点がまだ残っております。それから公聴会の内容でございまして、前回の福島公聴会のときの前例を考えまして、できるだけ改善したいということでございますので、原子力委員会で具体案をつくりながら、新潟県の御意見も聞きましてただいま調整している段階でございます。  それから、いわゆる中央公聴会と称します、原子力の安全問題全般につきまして、これは専門家ベースでむしろ討論会をやるべきではないかという先生のたびたびの御主張もございます。それから大臣の御答弁でもそういう方向で進めるということでございますが、これはそれを開く方向で進めております。  ただ、現在考えておりますのは、原子力委員会が主催いたします公聴会というのは、新潟の現地で開く公聴会ということにいたしまして、中央ではむしろ原子力委員会の主催と申しますよりも、原子力安全研究協会あるいは原子力産業会議あるいは日本学術会議、そういう専門家の団体の主催によりまして、私どもももちろん応援いたしますけれども、専門家ベースの、これは公開の討論会のようなものを開いたらいいのではないかというように考えまして、いろいろ専門家の御意見を伺っている段階でございますが、私どもとしては、そういう形で、何とか中央での原子力安全性の専門家ベースの討論会を開きたいということで準備いたしております。
  213. 近江巳記夫

    ○近江委員 中央の意向というのは大体わかるわけですが、新潟で開く予定のいわゆる内容については改善したい、局長も第一回のそうした会合等について反省からスタートして、そうした中身を練っておられると思うのですが、少なくとも改善すべき点は、前回の公聴会から相当時日も経過しておりますし、こういう点は改善したいという方向というものはほぼお考えになっているんじゃないかと思うのですが、それについて、特にこういう点を改善したいという点についてお答えいただきたいと思うわけです。
  214. 生田豊朗

    生田政府委員 一昨年の福島公聴会を開催いたします前後に、国会の科学技術特別委員会でいろいろ御討議いただきました。その際にいろいろの御意見もちょうだいしたわけでございますし、さらに福島の公聴会が終わりました後、新聞の論説その他でいろいろ御意見が寄せられております。そういうものを改めて検討いたしまして、その中から最大公約数のようなものを取り出してなるべくその御趣旨に沿いたいということでいろいろ検討しているわけでございますが、細かい点いろいろございますけれども、一番その最大公約数的な御意見といたしましては、つまり一方的な聞きっ放しの公聴会であって、その公述人の方は言いっ放し、それから原子力委員会の方は聞きっ放しということではないかというような御意見が一番多かったように思います。  これに対しまして原子力委員会の側からの一応言い分といたしましては、聞きっ放しではなくて、その御意見を伺いましたその結果は、公聴会の結果の報告書という形で、全部その御返事を文書の形で相当大部のものにまとめまして公開いたしておりますので、聞きっ放しということはないというように考えております。  ただ、いろいろちょうだいいたしました御意見は、そういうように数カ月たってから後、文書で、これについての御意見はこうだということを出すのではなくて、公聴会の席上でもう少し対話のような形が取り入れられないものであろうかというような御意見が多かったように思います。私どもも、そういう御意見は重々承知しておりますので、何とかそういう方向を取り入れたいというように検討している次第でございますけれども、この議事の運営のやり方その他と非常に関連してまいりまして、その辺も新潟県当局その他との意見の調整が必要でございますので、具体的にはまだ案を固める段階までいっておりませんけれども、問題点といたしましてその点を中心に検討いたしております。
  215. 近江巳記夫

    ○近江委員 その点、そういう対話形式にしていくということは私は非常に前進だと思うのです。  それから、いわゆる公聴会の時間等も非常に短いというような声もあるわけですね。しかも意見陳述時間は十五分以内であるとか、いろいろ中身におきまして改善すべき点が多々あるわけであります。いま対話方式というお話もあったわけですが、ほかにたとえばそういうような、意見の陳述時間を延ばすとか、この際、局長さんの考えておられる点をさらにお聞きしたいと思うのです。
  216. 生田豊朗

    生田政府委員 全体の公聴会の期間の長さ、それからその公述時間の長さ、そういう点につきましても検討いたしております。  前回、福島公聴会のときは二日間を予定いたしまして、一人の公述人の方の発言時間はたしか十五分だったと思います。これをさらに、たとえば倍にして四日間ぐらいにしたらどうだということ、それから対話といいましても、一問一答というわけにはなかなかまいらないと思いますので、ある程度問題を総括して何らかのお答えをするというようなことになるのではないかと思いますが、そういたしますと、それとの関連で一人の方に何回発言していただくのかというようなこと、あるいはその発言時間がもうちょっと長い方がいいのか、つまり公述人の人数は減らしましても発言時間が長い方がいいのか、それとも公述人の人数をふやして一人当たり発言時間は余り長くない方がいいのか、その点もいろいろの案をつくりまして検討している段階でございますが、全体の進め方、それから方式との関連でその辺の日数も決まってこようかと思います。  ただ、公聴会を現地で開くようなことでございますので、一週間とか二週間とか、そういう非常に長い期間公聴会をやるというのは私ども考えておりません。一昨年の二日から出発いたしまして、それをどの程度延ばせば合理的かつ効率的にできるかという検討は行っております。
  217. 近江巳記夫

    ○近江委員 福島の場合は二日だったですね。それを大体倍ぐらいという考え方をおっしゃったわけでありますが、そうなればかなりの時間もできるのじゃないかと思いますが、こういう点は私、率直に評価したいと思うのです。その際、福島の場合も結局、電力会社が出してきた資料だけで——それしかないわけですよね、住民としましては。そこで資料の公開といいますか、そういうことが非常に大切になってくると思うのです。これは公聴会だけではなく、また中央におきます専門家のそうした公開討論といいますか公聴会、そういうものから考えますと、やはり資料の公開ということは非常に大切な問題になろうかと私は思うのです。これは、何といいましてもやはり国民理解と協力を求めるという点におきまして私は非常に重大な問題であろうかと考えておりますし、従来からどういうような前進をされるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  218. 生田豊朗

    生田政府委員 資料の公開問題につきましては、私どもといたしましては、できるだけ公開いたしたいということを原則にいたしまして考えております。できるだけと申しますのは、これはたびたび国会で御議論いただいている点でございますけれども、財産権との関連その他で公開できないものが多少ございます。これはやむを得ないと思いますが、それ以外のものはなるべく公開するというたてまえでございます。特に大臣の御指示もございまして、何と申しますか、公開できるものもなるべく引き延ばすとかあるいは出さないで済ますということは一切考えません。公開できるものはもうどんどん公開する。できるものとできないものとをはっきり分けまして、できないものはできないということが御納得いただけるような説明をするというような方針で整理いたしております。  とりあえず安全審査の関連の資料の公開が一番問題でございますが、会社側からの設置許可の申請書あるいはその添付書類、これは従来とも公開しているわけでございますが、それ以外に、安全審査の途中で必要になってまいりまして、追加するような資料、そういうものにつきましての公開問題が従来いろいろ紛糾の種になったようでございますので、なるべくその安全審査の設置許可申請の添付資料を充実させまして、もう公開できる資料はなるべくその中に入れるというような方向で、ある資料を要求され、それをどうするかということではございませんで、公開の要求のあるなしにかかわらず、最初から公開できる資料を拡大し、充実するという方向で進むのが一番よろしいのではないかということでいま進めている段階でございます。     〔委員長退席、木野委員長代理着席〕
  219. 近江巳記夫

    ○近江委員 これも非常に前向きの姿勢に変わってきたと私は思うのです。その際、いつも問題になるのですが、いわゆる企業秘密というベールで隠してしまう。これは非常に都合のいい言葉だと私は思うんですね。ですから、この企業秘密という点における厳密なチェックということが私はやはり大事だと思うのです。政府段階で、これは何が企業秘密だ、君たちの得手勝手じゃないかということをぴちっと私は言っていく必要があろうかと思うのです。ともすれば通産省あたりは、やはり産業界にどうしても味方する。そういう点、科学技術庁はやはり私はかなり強いことも言える立場に従来から立っておると思うのですが、企業秘密というベールに対してどこまでそれを突き破り、またそれを提出させるか、公開さしていくか、この点の考え方についてお伺いをしたいと思うのです。
  220. 生田豊朗

    生田政府委員 私どもも、先生のお考えと同様の考え方を持っておりまして、企業機密という名前に隠れまして公開すべき資料、公開でき得る資料も公開しないということは非常によろしくないと考えております。したがいまして、その公開につきまして企業側と相談いたしますときも、ただ、これは企業機密だから出さないでくれと言われ、それじゃわかったというようなことは一切いたしておりません。企業機密とは一体どういうものなのか、たとえば技術提携の相手方の了承を得なければ出せない資料であるのかどうか、それであれば相手方にそれを公開することについて相談して、相手方がそれは出せないとはっきり言ったと、そういうことを何らかの形で明らかにしてもらいたいとか、あるいは特許あるいはノーハウのような無体財産権との関連の問題でございますれば、それとの関連をはっきりさせるとかいうことに努めております。そういうことで、内容は公開できないというものにつきましても、たとえばその件名につきましては公開するとか、これはこういうものであるけれども、かくかくしかじかの理由で公開できないということを明らかにして御理解を得たいという方向で進めております。
  221. 近江巳記夫

    ○近江委員 やはりそうした点をはっきりしないところに秘密主義といいますか、国民のそうした疑心暗鬼、また専門家の同じそういう声も高まってくると思うのです。ですから、もうこの段階において、企業秘密ということもほとんどないんじゃないか——ないとは言いませんけれども、そういう点で積極的に提出するようにひとつ指導をしていただきたいと思うのです。  それから、いままで公聴会を開く場合の条件として、大型化、集中化、新型の場合、こういうくくられ方があるわけですが、長官も、住民との対話のルールを確立していくんだということをおっしゃっております。いま一基、二基というようないわゆる単発の場合であっても、事地域に限定しますと、問題は大型であろうが新型であろうが集中化であろうが、私は同じだと思うんですね。地域住民の気持ちを考えた場合においては、大小にかかわらず、たとえそれが一基であったとしても公聴会をすべきだ、いまやそういう時代だと私は思うのです。その点さらに私は、長官、また局長の一歩前進姿勢が欲しいと思うのです。その点についてひとつお伺いしたいと思います。
  222. 生田豊朗

    生田政府委員 前回の福島公聴会を開きましたときの公聴会開催の基準の内規がございまして、これがただいま先生のおっしゃいました新型の場合、大型の場合、集中化の場合、さらに地元の県知事が要請した場合という四つでございます。実は、その公聴会の開催実施要領でございますが、それには原子力委員会が必要と認めた場合となっておりますのを、その細則におきましてそういう四つの基準を設けたわけでございます。ただ、この基準につきましては、その後検討を重ねておりますが、いろいろ疑問がございます。新型の場合というようなものは明らかに問題ないかと思いますが、大型といいましても、これをどういう基準で大型か大型でないかを判断するのか。集中化といった場合に何基集まったら集中化ということにするのか。あるいは特に柏崎のように、将来の計画としては六基とか八基とかいう集中化の計画があるようでございますが、とりあえず申請されているのは一基だけだということになってまいりますと、これは集中化ではないじゃないかというような議論とかいろいろ出てまいります。  そういう形式的な議論を余りやっても意味のないことだと考えておりますので、私どもといたしましては、形式的に、たとえば何百万キロワットのものは大型に該当するからやるとか、何基以上は集中化に該当するからやるということではなくて、むしろ地元の御要望があり、しかも総合的な判断をいたしまして、公聴会を開いた方が地元の円満な御協力を得られると原子力委員会が判断いたしました場合にはやるということで、かなりそこに弾力性を持たしていった方が、余り形式的に縛りますよりも現実に即しているのではないかという考え方を持っておりますので、そういう方向ではいかがかということで、ただいま原子力委員会でいろいろ御審議願っているところでございます。
  223. 近江巳記夫

    ○近江委員 たとえ原子力施設が一基であったとしても、たとえば燃料の海上輸送あるいは陸上輸送等で非常に心配があるとか、あるいは環境において非常に心配があるとか、そこにはいろいろな問題が山積すると私は思うのです。そういう点からいきますと、問題のない、もう一カ所ぐらいだからいいじゃないかというようなケースは全国どこにもないと私は思うのです。そういう点からいきますと、原則として原子力施設は、こうした四つのパターン以外に——いわゆる原子力施設の設置については原則として公聴会を開く、やはりここまで政府として住民に開いた姿勢、こういうものが本当の協調、理解というものを求めていく大きな基本になると私は思うのです。  ですから、そういうように大きくベースをしぼらないで、局長さんの答弁も大体そういう方向でございますが、さらにこの際、原子力施設についてはすべて公聴会を開くことを原則とする、こういうようになさったらいかがでしょうか。どうですか。
  224. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 アメリカの何州でございましたか、州の名前は忘れましたけれども、原子力発電を許可するまでの道行きを条文化したものがございまして、それには公聴会を必ず許可する前に経るようになっております。  ただ、どうも公聴会のあり方が向こうの方は非常に円熟していると申しますか、完熟しているといいますか、練れておりまして、たとえばコンサルタントといったようなものがあって、そうしてそういう人らが出てくるとか、その人らが技術的にオーソライズされているものですからそれで住民が安心するというような、そういう非常に恵まれた環境をみずからつくりもし、また従来からもあるようでございます。日本はそういう面がないのでございますから、高度の安全性説明しても、必ずそれが住民の皆様全体に御理解いただけるかということになりますと、そこがまた大変問題だし、住民の皆様方がみずから選ぶそういう機関があるかというとそれもないということで、いまの段階でぴしりとこういう構成でこういうふうにやった方がよろしいと決めることは、やはり日本の現実としてはなかなかむずかしいのじゃないか。さっき局長お話ししたように、いろいろなトライ・アンド・エラーをしてだんだんいいものに仕上げていくというのが、私、いまの実情として一番いいのじゃないかと思います。  ですから、近江さんのおっしゃる議論は、確かに一つのポイントでもございますし、事ごとに一つ一つ公聴会を開くという行き方もあるいはよろしいかと思いますが、その際、たとえば軽水炉の同じものをまた同じところで何遍繰り返しても、これはまた一事不再議——これは議会でないですから同じことを何回やってもいいようなものですけれども、というのもどうかという感じもしますし、その辺なかなか議論のあるところで、何が一番日本の実情に合うか、これはお話もございますので、もうちょっと検討してみたいと思います。
  225. 近江巳記夫

    ○近江委員 長官も別に悪意があっておっしゃっているわけじゃないと思うのですが、高度の安全性論議を地元でしたってわからない場もあるじゃないかという意味の御発言もあったのですが、そうじゃないんですよ。やはりそういう場を通してそうした疑問に答え、解明をしていく、でき得る限り住民の皆さん方にわかるようなそうした説明、こういうことも非常に大事なんです。そういう努力を避けて、高度の安全性論議をやったってわからないからちょっと無理じゃないかというような、そういうお考えが片りんでもあるとそれは非常にまずいことだ、私はそういうように思うのです。また、たとえば同じ軽水炉のことであるから、議会とは違うけれども、一事不再議ということもあるから同じことをする必要がないじゃないかとおっしゃるかもしらぬけれども、環境はその地域地域におきまして全部違うわけですよ。  そういう点からいきますと、やはりこれは原則としてやるべきである。その中で長官の、基本姿勢として住民との対話のルールを確立していくというそれが、私は本当に実現されていくことになるのじゃないか、このように思うのです。先ほど原子力局長は、この四つのあれにはとらわれない、そしてできる限り公聴会を開いていくということも、いわゆる実務担当の最高責任者としておっしゃっているわけでありますし、ひとつその点、原子力施設については基本として公聴会も開いていく、こういう姿勢でやっていただきたいと思うのです。その点、生田さんどうですか。
  226. 生田豊朗

    生田政府委員 ただいま大臣の御答弁になりました点でございますけれども、こういうことだと思います。一昨年の福島の公聴会のときに、これは先生承知のように、むしろ地元の方の御意見を伺うということを主眼として開いた公聴会でございますので、地元の方の率直な、あるいは生の御意見を伺いたいので、公述人の方は地元の住民の方に限りたいということが私どもの最初の主張であったわけでございます。それに対しまして、特に反対の側に立った住民の代表の方から、われわれ地元の住民だけでは十分意を尽くせない、かなり専門的な事項にわたるので、その専門家、地元の住民ではない専門家をそれに参加させるようにしてもらいたいというような御要望がありました。これも国会でいろいろ御議論いただいたところでございますが、その結果といたしまして、地元の住民の団体の代表者であれば必ずしもその代表者が地元の住民じゃなくてもよろしい、たとえば東京の大学の先生が地元のある住民団体の代表者ということで、そこで公述をされるということも結構だというようなことで開いたわけでございます。  そういう問題がございますし、今後新しく公聴会をやるということになってまいりますと、ますますそういう専門家ベースでの話ということが出てくると思いますので、この点がいま大臣が御答弁になった点でございますが、そういう問題は、むしろ先ほど先生が中央公聴会とおっしゃいました、私どもは中央での専門家の討論会と考えておりますが、その趣旨は全く同じでございますが、そういうもので専門家ベースで十分御議論をお願いしようということになってまいります。  そうなってまいりますと、それでは地元で開く公聴会のねらいはどこにあるかということになりますと、またもとに戻りまして、地元の住民の方の率直な生の声をお聞きしたいということになって、それに対して原子力委員会あるいは電力会社としてもお答えすることがあればお答えしたいということになってまいります。といたしますと、ただいま大臣の御答弁にもありましたように、同じ地元で同じ型の炉ができるということになってまいりますと、そこで御意見をお聞きしても全く同じじゃないか、もちろんその間に、ただいま先生が御指摘になりましたように、輸送の問題でございますとかほかのいろいろな問題で新しい情勢が生まれればまた別でございますが、ほかのそういう環境条件も全部同じだということなりますと、全く同じことを二回やるということになってまいりますので、いろいろそういう問題がありますので、必ずしもあらゆる原子力施設に対して公聴会を必ずやるということまでは私どもとして踏み切りかねるわけでございます。ただ、先生の御質問の御趣旨もよくわかりますので、なるべく前向きに検討してまいりたいと思っております。
  227. 近江巳記夫

    ○近江委員 局長さんも前向きにということをおっしゃっているわけですが、しかし私は、まだそれに伴ういろいろな問題、たとえば温排水の問題であるとか、その辺のウエートの置き方というものが政府の首脳の皆さん方に非常に弱いと思うのです。全国どこを探したって全くそれは一緒だ、環境に対する影響だって全く一緒だ、そんなところは絶対にないと私は思いますよ。これは素人考えかもしれませんが、もう海流のかげんから海の深さから違うし、潮流の速さであるとか、そこにすむ魚介類の種類とかいろいろな点からいきますと、そういう環境という点からとらえていきましても絶対に同じ条件下というところはないわけですよ。似通ったところはあるにしても、全然違うと思うのです。そういう点を踏まえて原則として開く、こういう方向で十分ひとつ努力していただきたいと思うのです。  それから、温排水のことを私、申し上げたのでちょっとお聞きしますが、中公審の水質部会が具体的規制値を温排水の問題につきましていわゆる見送ったわけですが、少なくともこうした審議会というものは、それはもちろん外部の人がやっているのだと言いますけれども、事務局はこれはもうあくまで政府でありますし、そういう政府の意向というものは審議会にも非常に反映してくるわけです。実際上はそういう事務ベース、素材の提供であるとかそういうことはもう事務局がやるわけですから、ほぼそういうことになってくる。口を悪くして言えば、審議会の隠れみのじゃないかということが、いろいろな問題が起きたときによく言われるわけでありまして、そのぐらい影響力が政府にはあるわけです。ですから、本気になって科学技術庁なり環境庁がこの温排水の問題については何とかしなければならぬという姿勢があれば、こういう見送るというような状態にはならなかったと思うんですね。そういう点、私は非常に遺憾だと思うのです。よくないと思うのです。  この点について、きょうは環境庁も来られておりますが、温排水の問題をそんなに低く環境庁としてはとらえておるのですか。住民との対話のルールということを盛んにおっしゃっておりますが、結局こういうところに意思の疎通が欠如してくるわけです。一体どのようにこの問題を重大視されているのですか。環境庁にお伺いしたいと思います。
  228. 大場敏彦

    ○大場政府委員 原子力発電の問題は、いわゆる原子力固有の問題のほかに、いま先生が御指摘になりましたように、多量の温排水を発電によって排出するということから環境への影響、ことに魚類を初めとする生物への影響ということが懸念されるわけであります。環境庁は、そういう意味でこれについての環境への影響がどうであるかということの判断の基準といいますか、そういったものをできるだけ早く設定していただきたいということで、いま御指摘になりました中央公害対策審議会の温排水部会というところに諮問を申し上げまして、検討していただいている過程でございます。中断、ギブアップしたかというような御指摘がちょっとございましたけれども、まだ結論を出しているわけではございません。せっかくいま検討を願っている段階でございます。
  229. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうであれば、私は、最後に残された非常なチャンスじゃないかと思うのです。ですから環境庁としても、もちろん政府のごり押しの姿勢ということはやはり考えなければならない問題にしても、しかし住民という国民の立場からいけば、この種の問題については、政府としても何としても考えてもらいたいというごり押しの姿勢は私は構わないと思うのです。ですから、環境庁としてこの温排水、これは原発あるいは火力、いろいろあるわけですが、非常に大きな問題として取り上げて、さらに努力していただく必要があろうかと思うのですが、いかがでございますか。
  230. 大場敏彦

    ○大場政府委員 環境庁としては、非常に重大な問題だと認識しております。したがって、今後も積極的な御審議を願うことにしている予定でございます。ただ、いろいろその判断の基準となりますと、たとえばかなり高い、六度から七度ぐらいの差がある排水を環境水域中に排出するわけであますが、その場合の環境水域の温度差ということも一つのメルクマールでありましょうし、あるいは復水器中の温度差がどうであったらどうかといったこともございましょう。それから単に、そういった単純な温度差だけではなくて、その温度の広がる範囲、つまり拡散域とその温度の上がる範囲、こういった関係あるいは相乗といったもので考えなければならない、こういう議論もございますし、先ほど先生が御指摘になりましたように、海域によっても地形、潮流等の関係で非常に差異が出るし、自然の海におきましても一日に一度ないし三度Cというような差があるというふうに聞いております。また現実に、現在の知見ではきちんとしたような形で統一的に基準を設定するにはもう少し知見の集積が必要である。不十分なままになまじ環境基準を一義的に早急に設定すると、かえって免罪符的なことになりかねないおそれもありますので、そこは私ども慎重を期しておりますけれども、いずれにいたしましても、温排水の環境に与える影響、それをはかる尺度につきましては、これは非常に重要な問題だと思っておりますので、その努力は今後従来以上に続けてまいりたいと考えておる次第でございます。
  231. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま局長さんは、いろいろな問題点をお話しになったわけでございますが、結局この種の問題点というものは、いわゆる温排水の影響というものはどうなるかという基礎的な研究が積んでいないわけですよ。これは何年来私自身もここで申し上げてきたわけです。温排水のそういう基礎的な研究をやりなさい、これは他の委員も非常に声を大にしていままで叫んできたことです。こういう積み上げがないから、中公審の議題にこれが上がってきても判断すべきデータもない、わからないじゃないか、そういうことでまた流されていく、こういうことは本当に国民に対して説明できることかということを私は申し上げたいのです。科学技術庁や環境庁は、また通産省は、一体となってこういうところに金を使ったらいいのです。なぜもっと研究を促進しないのですか。そういうあなた方がやるべきことをやらないで、そういうデータが不足してくるから、いまそういうような措置もなく規制値も出せないのだ、これは皆さん方の責任じゃないですか。各省ひとつ反省を込めて御答弁いただきたい。今後どうなさるのですか。
  232. 大場敏彦

    ○大場政府委員 御指摘のとおりであります。温排水に関する各省調査研究を従来以上に積極的に進めていくということは、私どもそのとおりだろうと思います。従来とも環境庁それから水産庁あるいは通産省科学技術庁、それぞれ温排水に関する基礎的研究を、手分けして連携をとりながらしておりますけれども、まだまだこれというような決定的な決め手を出すまでの知見の集積には至っていないということはまことに残念でございますので、その知見の集積を今後とも急ぎたいと思います。また同時に、具体的な値といいますか、測定値といいますか、そういった経験が必要でございますので、すでに設置されておりまする火力発電所あるいは原子力発電所、いずれにいたしましても、そういったところにつきまして事前の環境評価はもちろんでございますけれども、設置し終わった後何にもしないでいいということであってはならないわけで、設置し終わった後の温排水の影響というものを、やはり具体的に会社の責任でフォローしていただきたい、こういう指導も同時にあわせてしていきたいと思っております。それが今後の知見の集積に大きな役割りを果たすものと私どもは考えておる次第でございます。
  233. 生田豊朗

    生田政府委員 私どもも、この原子力開発利用を進めます場合、特に原子力発電につきまして温排水の問題が非常に大きな問題になっておりますので、明確な基準によりまして、これが合理的に処理されるということを期待しているわけでございます。温排水の研究につきましては、環境庁が一元的にやっておりますので、ただいまの環境庁の御説明方針に沿いまして私どもできるだけ協力してまいりたいと思っております。
  234. 大永勇作

    ○大永政府委員 温排水につきましては、通産省としましては現在一般会計で拡散調査、それから特別会計で温排水の利用調査等をやっておりますが、先生御指摘の海産生物に与える影響等につきましては、現在原産会議等におきましても、今後の研究開発体制のあり方について検討中であるというふうに聞いておりますけれども、そういう構想がまとまりましたならば、通産省といたしましても積極的に協力を申し上げたいというふうに考えております。
  235. 近江巳記夫

    ○近江委員 各省の皆さんの御答弁を聞いてますと、御協力申し上げたいとか自分が主体者でないわけですよ。各省は主体者なんです。だれかがやるだろう、環境庁かもしれませんが……。御協力申し上げるという姿勢自体が間違っている。皆さん方のことなんです。これは各省のことなんです。その辺の姿勢が間違っているんですよ。原産会議等におきましても、いまからどういうようにやっていったらいいかそれを検討する、これ何年先ですか。しかも政府は、原子力委員会が決定した昭和六十年六千万キロワットのそれについても、この間長官は、縮小の方向を示唆されたわけでありますけれども、まだその数値だって三年前に決定したものそのままですよ。そういう基本的な温排水の問題であるとか、あるいは廃棄物処理の問題であるとか、そうしたいわゆるサイクル全体の対策というものを放置して、そしていたずらに開発を進めていく、今度は安全局ができるからそっちの方に力を入れます、それでは国民は納得できませんよ。こういうことでは原子力委員会のいまおっしゃっている六千万キロワットなんてとても無理ですよ。無理と言おうか、これでは国民がさせませんよ。そういうことがわかっておるから、この間も東電の社長は十年後の原子力発電規模は二千五百万キロワット程度ということを言っておるわけですね。  大臣もその縮小を示唆されているわけですが、いまのこれからいって具体的な数値も出てきているわけですが、大臣は、いまの皆さん方のとっておられる姿勢から考えて、その六千万キロワットの何分の一くらいになると考えているか。少なくとも初代の原子力局長として生み出し、今日まで見守ってこられ、いまや最高の責任あるお立場に長官は立たれている。最大のベテランの長官だと私は思うのです。そうであるなら、今後の進捗状況というものについては、現場の東電の社長が二千五百万と言っておるわけですが、長官としてはどのくらいとごらんになっていますか。
  236. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 先ほども御説明申し上げましたように、今後の安定経済下においてエネルギー需要はどのくらいになるか、その中で核エネルギーがどういうふうな地位を占めるか、これは大変問題になるところでございます。特にエネルギーの節約あるいは省エネルギー産業の奨励なんという問題も出ておりますし、いままでの姿のままでエネルギーの需要が進んでいくとは思いません。したがって、いわゆる弾性値と申しますか、これもいままでとはずいぶん変わっていくはずで、安定経済、七%になりますか、その成長率を仮に遂げたといたしましても、それに伴うエネルギー需要が従来どおりの弾性値でいくとは思いませんし、その中でまた所要電力を満たすための燃料と申しますか分野等は、ずいぶん変わった姿になってくると思います。  しかし一つ言えることは、油には従来のように余りウエートをかけないで、順次ほかのものにかえていきたい、またかえるものの可能性を考えていきますと、おのずから核分裂性のもの、発電炉による発電というものに期待をかけざるを得ない状況になることは当然でございますけれども、ただ、いまの立地問題等の状況から見まして、その可能性いかんという問題になりますと、これはなかなか吟味の要るところでございまして、六千万キロワットが今日ぴたりどのくらいだったらよろしいかということは、今日、いまの段階で私からと言っても、これは大分無理な注文でございまして、私ここで何か言いますと、必ず大きい問題になるに違いありませんので、もうちょっと期間を置いていただきまして、総合エネルギー閣僚会議という最高権威の会議ができておりますから、そう長い時間でないと思いますし、やがて結論が出ると思いますので、そのときに譲りたいと存じます。
  237. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま答えが出ないと思いますが、いずれにしても、総合エネルギー閣僚会議におきましても、もっと熱心な論議があっていいんじゃないかとかいろいろなことを聞くわけです。その中心は科学技術庁長官であり通産大臣でもあろうかと思いますし、そういう中心になる人の熱意というものが他の閣僚を動かしていくということになるわけです。またエネルギー問題というのは非常に大切な問題でありますから、十分姿勢を正して国民のために全力を挙げていただきたい、このように思うのです。  いま電力九社が、電源開発会社も入れて、今後の原発建設については共同でやろうじゃないかということを社長会等でも打ち出しもやっておるわけですが、その打ち出しをやっております背景は何かと言えば、結局立地難であり資金難である、これが私は問題だと思うんです。立地難であり資金難である、だからこういう発想が出てきた。いまや問題となっておるのは安全性という問題ですよ。こういう安全性という問題について国民は心配している、だから、この安全性を解決するためには、お互いが力を合わせ、力を入れていこう、こういう発想から来てないんですよ。自分たちのそういう経済的な、またそういう困難な条件を政府におぶさっていこう、国民の税金じゃないですか。こういう電力会社姿勢に対してどう思いますか。これは通産省科学技術庁、それぞれ局長、また大臣からお伺いしたいと思うのです。
  238. 大永勇作

    ○大永政府委員 原子力開発におきましては、先生御指摘のように安全性が第一でございます。したがいまして、共同開発をやるからとか共同投資をやるからということで安全性が軽視されていいという問題ではございません。ただ、共同開発とか共同立地とかいう考え方は、もちろん先生のおっしゃいましたような資金問題あるいは立地問題というのが大きいわけでございますけれども、同時に、安全性に関連いたしましても、今後は原子力発電所標準化を図っていく必要があるという点が含まれておるわけでございまして、最近の故障等におきましては生産技術的な、たとえば溶接とか金属加工とかいうふうな面におきますトラブルというのがかなり起こっておりますけれども、今後、機器標準化を図ることによって、そういうものをなるべく軽減していきたいというふうな思想も同時に含まれておりますので、その点は御理解をいただきたいと思うわけであります。  それから、原子力共同化の問題につきましては、単に発電所の立地等の問題だけではなくて、先生前にも御指摘になりましたように、安全性に関する共同研究といったような点につきましても共同化を積極的に進めていくことは申すまでもないことだというふうに考えております。
  239. 生田豊朗

    生田政府委員 ただいまの通産省説明と大体同じでございますが、共同立地あるいは共同投資というようなことがございましても、これが安全性を無視していいものでないということは当然のことでございます。すべての場合について安全性が大前提になるというように思っております。特に、ただいま通産省からの説明原子炉標準化につきましては、原子力委員会といたしましても、技術専門部会におきまして検討中でございまして、これはやはり安全性確保のための一つの方法として原子炉標準化というのは非常にいい手段ではないかということで、その実現を目指しまして検討いたしております。  それから、安全研究でございますけれども、これは安全研究といいましても非常に範囲が広いわけでございます。すべてを政府がカバーするということでは必ずしもありませんので、安全研究のうち比較的理論的なものといいますよりも現実的なものにつきまして、民間の電力業界が行うべき部分、そういうものにつきましては共同研究といいますか、でき得れば電力業界としての安全研究所をつくるような方向検討するような、そういう業界を挙げて安全研究に取り組むという姿勢が必要であろうと考えております。
  240. 近江巳記夫

    ○近江委員 まさに私はそのとおりだと思うのです。ですから、そういうことを全面に出してこなければいかぬわけですよ。公益事業部長は、何となしに電力会社に——あなたはそうじゃないと思いますけれども、やはり業界ばかり見ていると、その辺が私たち国民のサイドに立つ者とギャップが出てくるわけです。ですから、そういう社長会で決めるにおいても、安全性は非常に大切な問題である、われわれで共同研究所なり十分な研究をやっていこうじゃないか、こういうことが前提に立つのが本当じゃないですか。国民は皆、何だ、経営がだんだん苦しくなってきたら政府から金を取ってきて、立地がむずかしくなってきたらそこへ持ってきたらいいじゃないか——時間があったらそういう企業の論理といいますか、そういうものを徹底して追及したかったのです。きょうはもう与えられた時間もありませんから、この問題は後日に譲りますが、こういう姿勢に対して皆さん方から厳しく指導していただきたいと思うのです。これは大臣からお伺いしたいと思います。  もう時間がありませんがあと一問だけ聞きますが、「むつ」の問題も聞きたかったのです。いま佐世保の問題も出ております。佐世保の方では、いわゆる核燃料を抜いたものでなければ、よしんば住民が受け入れたとしても無理だということを言っているわけですね。そうしますと、むつ市で抜くのか佐世保で抜くのか、それとも別のところを考えておるのか、この辺につきまして、この燃料棒抜きについてはどのようにお考えか、原子力局長にお伺いして、そしていまの電力会社の基本姿勢について大臣からお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  241. 生田豊朗

    生田政府委員 「むつ」の原子炉の燃料棒を抜くことが必要であるかどうかというのは、実は結論が出ていない問題でございます。専門家にただいま検討をお願いしておりますけれども、燃料棒を抜かなくても点検あるいは修理が可能であるという説もございます。抜いてやった方がよりベターではないかという説もございますので、その点まず、燃料棒を抜く必要があるかないかというのを詰めなければいけないと思いまして現在検討をお願いしております。  次に、燃料棒を抜くことがどうかということで、実は昨年「むつ」の入港に際しまして、いろいろ先生も御承知の問題が起きました。そのときの一環として、燃料棒を抜くということが非常に重大視されているわけでございますが、実は技術的に見ますと、燃料棒を抜くということは、現在の段階ではほとんど問題にならないものでございます。燃料棒といいましても、これは完全に核分裂が終わってしまった、完全に燃やし切ってしまった燃料棒を抜く場合は、安全を十分考えることが必要でございますが、「むつ」の燃料はほとんど反応をしておりません。その段階原子炉をとめましたし、さらに、その後半年以上の間に放射能が非常に減衰しておりまして、何と申しますか、たとえて申しますと現在もうほとんど手でつかめるような状態でございます。  これは先生承知のように、一般の使用済み燃料はとてもそういうものではございません。非常に危ないものでございます。「むつ」の燃料棒は手でもつかめるということでございまして、原子力局の職員も、燃料を抜くのが非常に危険だというふうに一般で、特に地元でおっしゃるのは非常に心外なんで、これが安全だということを示すために、原子力局の職員が手で抜こうかということを言っておるのでございます。これは重さからいいまして手で抜くことは不可能でございますけれども、これはもしそうした方がよろしければ機械で抜くときにわれわれが参りまして手でさわって、一緒に手で引き揚げるということも可能でございます。そういうことをやろうかと思っているくらいのものでございますので、その燃料を抜くか抜かないかということが、あたかも危険な作業であるというような御認識、特に地元の御認識をぜひ改めていただきたいと思います。  したがいまして、私どもは燃料をどこで抜くかということは、実は余り重大視しておりませんで、全体の点検なり改修をどこでやるかということの一環として考えておりまして、まず非常に危険な作業を冒してどこであえてやるかというような感じは全く持っておりません。現在ではほとんど問題のないものでございますので、その点ぜひ御認識いただきたいと考えております。
  242. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 電力会社立地難といっても、結局はお話のように安全問題に帰するわけでございまして、その安全問題もただいまの段階では軽水炉に対する安全問題でございます。その軽水炉の安全問題も、だんだん問題の所在が明確になってきまして、いま普及している日本の炉の故障の個所あるいは原因等ももうほとんど逐次わかってきつつあるような状況ですから、やはりこの際、審査、検査がどうとか、原子力研究所の研究がどうというのも必要ですけれども、そのもの自体が安全であればいいわけですから、電力会社もメーカーも、詰まってきた問題にエネルギーを集中して、各社おれのところはどうだ、おれのところはどうだと言うのでなくて、みんな情報を持ち寄って標準化したものをつくるとか、より安全なものを皆で創意工夫してつくっていくということがぜひとも必要だと思います。そのためには、いま新聞に出ておるようなことがもし本当だとすれば、私は、そういう意味で大変好ましい傾向だというふうに考えております。
  243. 近江巳記夫

    ○近江委員 もうこれで終わりますが、私が申し上げたのは、基本的な考えが、用地が困っておる、金がない、だからおんぶにだっこということじゃなくて、本当に国民がいま心配しておるのは、安全性という問題なんですから、環境汚染の問題であるとか、こういうことについて力を合わせて研究していこうじゃないか、こういう姿勢が見られないということを言っているんですよ。ですからその点は、けしからぬと私は言っているのですが、大臣はどう思いますか、それだけ聞いて私は質問を終わります。
  244. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 まさしくそのとおりでありまして、安全のために皆が力を入れてぜひやるべきだというふうに考えております。
  245. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  246. 木野晴夫

    木野委員長代理 内海清君。
  247. 内海清

    ○内海(清)委員 けさほど来この科学技術庁設置法の一部改正については、いろいろ関連しての質問もございましたし、また原子力の安全問題についても広範にわたっての御質問があったわけで、私はなるべく重複しないように簡潔に御質問申し上げたいと思いますので、御答弁もできるだけ簡潔にお願い申し上げたいと思うのであります。  最初にお尋ねしたいと思いますのは、実は長官も、電労連を初めといたしまして原産会議なり社会経済国民会議、そのほか井上私案というふうな提言があったことは御承知のとおりであります。     〔木野委員長代理退席、藤尾委員長着席〕 これにつきましては、去る十一日でございましたが、これらの人々を参考人として呼んで、いろいろその提言の内容についての質疑もいたしたわけであります。ちょうどそのときには、長官は他の委員会に御出席だったと思うのでありますが、この提言というものは非常に貴重なものであるというふうにわれわれは実は考えておるわけであります。したがって、政府としてもこの提言についてはいろいろお考えになっておると思いますが、この提言をどういうふうに政府としては受けとめておられるか、まず、その点をひとつ長官にお伺いいたしたいと思います。
  248. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 このお示しのありました三つの提言は、それぞれ大変よく勉強もし、また吟味して、それぞれの立場から出された提言でございまして、いずれも大変尊重に値するものだと受けとめております。  その中で、特に原子力行政の改革問題に対しましていろいろ御指示がございました。その御指示に従いましてと申しますか、必ずしも三者一致しているわけじゃございませんので、その御主張の裏にはそれぞれ主張なさる根拠がおありでしょうから、その根拠等を、例の有沢機関が中心になりましてヒヤリングをいたし、そのヒヤリングをただいま済ましておるというふうに承知してございます。それぞれの提案に対する私の批判はこの際差し控えまして、有沢機関結論を待ちたいと思いますが、私個人といたしましては、大変尊重に値するものだということをいまなおもって考えております。
  249. 内海清

    ○内海(清)委員 私は、この四つの提言を、あのときも申し上げたのですが、実は一覧表にしてみたわけです。いろいろな共通点があるわけです。表現方法は違っても、内容的には同じように受け取れるものが大変多いわけであります。  私は、この提言を見まして、まずおおよそ共通しておると思いましたことは、安全に対する問題、つまり安全に対して一貫したと申しますか、あるいは一元的な行政と申しますか、こういうふうなものがそれぞれの提言の中に大体うかがえるのであります。一元的行政が必要であるということ、さらにそれに伴いましての責任を明確にするということであります。この点は私は、大体におきまして各提言の中にそれぞれあるというふうに考えておるわけであります。このことは、提言によらなくても、こうした要望というものは、いまや原子力に対する国民的要望である。これは「むつ」問題を契機といたしましていろいろ論議されたところであります。こういうふうに私は考えておるのでありますが、長官はその点についてはどうお考えになっておられますか。
  250. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 まさしく原子力行政の一番中心問題だと考えております。
  251. 内海清

    ○内海(清)委員 そうすると、次にお尋ねいたしたいと思いますのは、けさほどからもたびたび長官お話になっておりますような原子力体制問題の懇談会がいまできております。これは大体三月だったと思いますが、発足したはずであります。この懇談会は、特に「むつ」問題を契機として原子力行政がなお確立していないではないか、こういうことを暴露した、したがって、この原子力行政のあり方を検討するということで、田中内閣時代の公約的なものになっておると私は思うのであります。それで懇談会は発足したと思いますが、この点はそう認識して間違いございませんか。
  252. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 そのとおりでございます。
  253. 内海清

    ○内海(清)委員 そういたしますと、この懇談会の今日までにおきます審議状態であります。これは座長が有沢先生でありますが、有沢先生原子力の問題にも詳しいし、来ていただけばいいのでありますけれども、いろいろ手続がありますので。これは内閣審議室で大体この事務を扱っておられるようであります。これは審議室の方でもあるいは長官でもいいのでありますが、今日までの審議状態をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  254. 安仁屋政彦

    ○安仁屋説明員 原子力行政懇談会は、ことしの二月二十五日の閣議了解に基づき発足いたしました。第一回の会合を三月十八日に開催して以来、今日まで七回の会合を開いておりますが、その中心となりました検討事項と申しますのは、原子力行政関係の深い、原子力委員会を初めとする諸団体の代表者の意見聴取ということが中心になっております。こういった意見聴取の際に、各団体から出されました意見を整理しまして、これから委員先生方相互の意見交換に入るという予定でございます。
  255. 内海清

    ○内海(清)委員 原子力行政の出直しということ、それでこの懇談会ができたわけであります。したがって、政府みずからも自覚してこの懇談会結論には期待を寄せておられるだろう、こう思うのであります。まして科技庁としては、一層この結論というものを期待し、待望しておられると思うのでありますが、そういうことでございましょうか。
  256. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 内閣を挙げてその結論を期待しているところでございます。
  257. 内海清

    ○内海(清)委員 そういたしますと、いままだこの懇談会は意見を聞く段階だということであります。しかし、これが原子力行政の基本になることは論をまたないと思います。したがって、その結論はできるだけ早く出すことが、今後の原子力行政を進めていく上におきまして最も必要なことである、こう思うのであります。もちろんその結論は慎重でなければならぬと思いますけれども、一体この懇談会の最終の答申というものはいつごろ出すつもりに考えておられるか、お伺いしたいと思います。また科技庁としては、でき得ればいつごろまでに出してくれればいいか、これは来年度の予算の問題もあるだろうし、いろいろな問題が付随すると思いますが、科技庁の希望の時期もひとつお示しいただきたい。
  258. 安仁屋政彦

    ○安仁屋説明員 懇談会でどういうものを対象にして、どの程度の頻度で開催していくかということが現段階では必ずしも決まっておりませんので、明確な最終答申の期日は申し上げられませんが、懇談会設置するときに大方の合意といたしましては、発足からおおむね一年以内に結論を得たい、こういうことでございます。
  259. 生田豊朗

    生田政府委員 科学技術庁といたしましては、大臣から私に御指示がありましたのは、でき得ればなるべく早く結論を出して、昭和五十一年度の予算要求に間に合うようにしろという御指示でございました。それを受けまして、有沢先生初め内閣審議室ともいろいろ相談したわけでございます。なるべく早くということは要望いたしておりますが、現在の進捗状況で七月までに最終結論を得るのは非常に困難であるように思います。したがいまして、これからどういたしますか、五十一年度予算の要求の追加要求ができるような形にして、秋ごろにでも答申を出すような形にお願いするか、あるいは予算要求、法令改正のようなことを要する問題と運用上できる問題と二つに分けて、できるものは早くやっていくようにするのか、いろいろ案があるかと思いますので、その辺さらに検討してまいりたいと思っております。
  260. 内海清

    ○内海(清)委員 いまの両者の意見の間には非常な開きがあると思うのです。審議室の方では、大体事務当局では一年ということ、そうすると来年の二月か三月ということです。科技庁としてはでき得れば七月末、予算の概算要求までにということで、もしそれができなければ予算を要するものとその他のものに分けてでも、なるべく早くやってもらいたいということがあるようであります。このことは私は大変遺憾に思うのであります。少なくとも政府の中に設けられている懇談会、それの中にこの答申の時期等において非常に違いがあるということ、これは大変に遺憾に思うのでありますが、しかし、そういうことに現実がなっておれば、この点は科技庁としてもそういう意見があるならば懇談会に申し入れてできるだけ善処してもらう、こういうことが必要だろうと思います。  私の聞いておりますのでは、懇談会が何カ月に二回ぐらい会合があるということでありますが、こういう重要な、しかもできるだけ早く結論が出る必要のあるものについては、もう少し懇談会の会議というものを頻繁に開いて結論を急ぐようなことができないものだろうかということを痛感するわけであります。この点はいかがでしょうか。
  261. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 あの懇談会が出発するときには一年以内ということで、私どもは、なるべく早くという気持ちでございましたが、考えてみますと、これは大変慎重を要する問題でもございますし、また深く議論していきますと広範囲にわたる問題でもございまして、あわてて結論を出してまたしばらくたってやりかえるというようななまやさしい問題ではないものですから、私は、いまの進捗状況等から考えまして、やはりこの際抜本的にというのがねらいでございますので、あらゆる方面の意見を慎重に検討して、日本としては現状としてこれは最高の答申だというふうな精密な答申を実は期待したいと思います。しかも、そのために来年の予算に間に合わないということが仮にあっても、これはやむを得ぬじゃないか。拙速をとうとぶよりは、むしろ慎重を期して国の大本を決めていただいた方がいいのじゃないかと実は思っておりますが、しかしできますれば早いことにこしたことはございません。そういう心境でございます。
  262. 内海清

    ○内海(清)委員 もちろん慎重を要することは、私もさっき申し上げたとおりであります。慎重をとうとぶということと、月に二回くらいのゆっくりしたペースでもってこれを審議していくというのは、私は違うと思うのであります。したがって、慎重はあくまでも要しますけれども、懇談会の会議をもっとたびたび開くことによってできるだけ結論を急ぐということ、これが当然のことだと私は思うのであります。まあ外部の方が多いということで、そういう会合がなかなか持ちにくいのかもしれませんけれども、国家の今後におきますきわめて重要な問題、ことに原子力にとりましては基本的な問題なんです。それを急がすこともできぬから来年の予算には間に合わぬ。再来年度予算といったら二年ですよ。そういうことでいいのかどうか。この原子力行政に携わっておられる長官としてそれでいいかどうかということでありますが、この点に対する御所見を伺いたい。
  263. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私は、長い間の公務員生活等から考えまして、この種の重大な案件は、結論が出るのにも相当時間を要しましょうし、またその出た結論を具現化するためには、恐らくは法律改正等もありましょうし、法改正ともなりますと、必ずや各省間の権限問題等々も起きてくるでしょうし、あるいは予算化といっても思うようにいかぬだろうし、あるいはその機構が整備しても、その中に占める審査員等が質的にも十分なものを満たし得るかといったようないろんな問題がございまして、法案化し、あるいは予算を獲得し、あるいは新行政体制として充実して、しかも定着して権威を持ってというところまでには、やはり相当時間がかかるのじゃないかと思います。  実は、そのつなぎとして——つなぎと言っては語弊がありますが、それまではとうてい待てないということで、とりあえず安全局というものを考えまして、その安全問題に対する一つの中心にしたわけでございますけれども、いま申しましたように、行政機構全般の問題でございまして、必ずしも安全サイドの機構改革ばかりじゃございませんが、しかしどうも安全問題が中心でございますから、安全中心の答申になるだろうということで、ほかのことはまず二の次としまして、安全問題に対する懇談会結論の具現、それまでの間をどうするかというところから今度の問題が発したというように考えておるわけでございます。
  264. 内海清

    ○内海(清)委員 その点が私は十分理解がむずかしいのでありますが、もちろん答申が出ましたら法制化とかその他の手続が当然なされるであろうと思うのであります。一体いま原子力問題で一番の問題は、最初に申しましたように行政一貫性がない、行政が一元化されていない、それによって国民から不信感を買っておる、この問題なんですね。したがって、それを解消するためには、こういう結論はできるだけ急いで、そうして国民のコンセンサスを得てこれを進めていくということが一番必要なことだと思うのであります。この国民の合意がない以上なかなか——これは原子力だけでございません。火力発電についても同様、立地の問題では大きな障害が出ておることは御承知のとおりなんです。でありますから、この結論はあくまでも慎重でなければならぬけれども、懇談会としてもそういう国家のエネルギー問題の基本にかかわる問題として、できるだけ早期に結論を出すということに御努力願わなければならぬ。これは国民等しくそう考えるだろうと私は思う。ましてエネルギー問題を考える人からいえば当然のことであると思うのです。  私は、これがこの次の通常国会には、そういうものによる法制化などが提案されるということを、願わくばそうあってほしいということを思っておりましたが、いまの大臣の御答弁から言えば、これはとうてい望みのないことだと思うのであります。で、いまのお話によりますと、それが時間がかかるであろう、だから、そのつなぎに原子力安全局というものを設けたんだ、こういうことの御答弁でありますが……。
  265. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 委員長ちょっと誤解があるといけませんので。  たとえば安全問題に限って機構的に私の考えを述べますと、有沢機関といたしましては、一元化の問題に限っての想像でございますが、米国のように原子力の安全の審査、検査等は一切国を挙げて行政的に一元化するというふうな行き方をとるのか、あるいは緊急段階の炉の審査は科学技術庁、あるいは実用化した発電炉あるいは舶用炉の審査、検査は挙げて通産なり運輸、あるいはそれを原子力委員会が統轄するとか、あるいはいまの体制のままで、原子力委員会がダブってと申しますか、詳細設計あるいは現物検査等済んだその最後までもう一遍ひるがえって審査をするとか、いろいろなやり方があるだろうと私は思います。そのいずれの結論になるかまだ予断は許しません、また想像すべきものでもございません。独自の見解で問題を進めつつありますのでどういう結論になるかわかりませんけれども、といっていずれの結論になるにしても、そのままでほっておけるかというと、ほっておけない問題でございますから、もし仮にシビアな線が出てまいりますと、これは実施するまでに大変時間がかかると思います。いまの状況を技術的に改善していくというような着想に立っていけばわりあいにやりいいような状況になるでしょうし、そこら辺がなかなかむずかしいだろうと思います。  今後一体、来年法案を出せるか、その次の国会に法案を出せるかというにらみはむずかしいと思いますが、しかしいずれにしても、早く出てくることは大変好ましいことに違いないのですけれども、さらばといって、どんなに早く出てもやはり定着するまでには相当時間がかかることは明瞭だと思いますので、その間、いまの与えられた権限下において、各省はそれぞれ与えられた典拠法がありますから、それに基づいて、わが方は規制法なら規制法に基づいて検査をしていくというふうになるわけですけれども、そういう点のやり方をもう少しシステマタイズして、そしてその間に間断があったり脈絡が一貫したところがなかったりというやり方では困りますので、「むつ」の場合等は若干そういう点は指摘されたことは御承知のとおりでございますので、そういう点のないように行政的な一つ連絡として、あるいは原子力委員会もみずからのいままでの仕方をもう少し範囲を広めると申しますか、審査、検査に携わるような行き方をとることによって、その間出てきますいろいろな安全問題の審査等に対しましては、従来よりも一歩進んだ方向でやるべきじゃないかという感じでございまして、責任問題とかあるいは人材養成とかいろいろありますけれども、いまの一元化の問題は、いまの法制のままではできないのじゃないかという御議論に立ちますと御承知のとおりでございますけれども、私は必ずしもそうは考えない。ですから、それをもう少しはっきりした安全局のようなものができて、そこがケルンであるということで各省との間にも連絡を緊密にしていけば、いまよりはもっと一歩進歩した、審査、検査ができていくのじゃないかというふうに実は考えますので、くどいようでございますけれども、有沢機関結論を待ってその上でこれをやるというまでずっと待てるかと申しますと、私はどうもそういうことはできない時代になっているのじゃないかと思いましたので、ただいまの案を提出いたした次第でございます。
  266. 内海清

    ○内海(清)委員 いまの長官の御答弁によりますと、有沢機関の答申というものはずいぶん時間がかかるであろう、先になるであろうということをまず科技庁としては認めて、そうして当面の問題としてこれをやられたというふうに受け取るのでありますが、私は、安全局を設けるということについては、そういう点から考えて、いま急いで設けられるのは時期的にいかがであろうか、こういう気がいたすのであります。もし懇談会で、安全局設置というこの提案されておる形での安全局とは違ったものが決められた場合にはどうなるかという問題であります。その点のお考えはいかがですか。
  267. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 安全局を仮につくっておいて、安全局よりもっと強化したものをつくれとかいうことになりますれば、それに応じて強化したものに改善しなければなりませんけれども、いずれにいたしましても、そういう中心になって責任所在を明確にする機関行政機構としてただいま必要だというこのことは明瞭でございまして、有沢先生の答申を待つまでもなしに一刻も早く責任ある体制をつくり、そうしていまの与えられた環境下で、法律の範囲内でさらに一歩前進してより安全性を確立していくということは、これはもう当然重要なことでございますから、答申が出ますれば安全局強化等必要であれば当然なさなければならぬと思います。しかし全然安全問題というのは必要ないのだという結論にはなるわけないと考えております。
  268. 内海清

    ○内海(清)委員 安全問題が重要なればこそ「むつ」の問題に絡んで懇談会も設けられたと思うのです。これはやはり安全行政にかかわる一番重要な問題だと私は思うのであります。もし、いまの安全局を設けた、これを強化するという方向なら、これはきわめて先見の明があったといいますか、それを強化していけばいいのであります。いま提案されておるような安全局よりも違う形で答申がなされたというときにどうするかということを私は申し上げたわけであります。その点が、私ども、懇談会が設けられた以上は当然その結論を待ってということでありますが、政府の方ではそれは時間がかかるからそれまで待てない、当面の問題としてこの安全の問題を解決するために安全局というものをつくった、こういうことであると思います。その点は一応それで承っておきたいと思います。  時間がありませんから先に進みますが、一つここでお伺いして確認したいと思うのですが、いま原子力局に安全審査官というものがあります。これは二十名くらいおられるのですか。そういう制度があるはずでありますが、この安全審査官というのは、科技庁として科技庁自身が審査するための専門官ではなくて、安全審査の手伝いをする、こういう立場の審査官であると聞いておるのでありますが、それは間違いございませんか。
  269. 生田豊朗

    生田政府委員 両方であると思います。これは先生承知のように、安全審査と申しますのは、原子力委員会から安全専門審査会に付議いたしまして、安全審査の結果、原子力委員会に意見が出されてまいります。その原子力委員会の答申を政府としては尊重する義務がございますので、在来の答申に比べまして非常に強力でございます。したがいまして、この科学技術庁原子力局の二重性格と申しますか、その一方におきまして安全専門審査会が審査いたします、それの補助的な機能をするというのがこの安全審査官でございます。ただ、全体の体系といたしましては、そういう原子力委員会の体系が一つありますのと並行いたしまして、これはいわゆるダブルチェックの形として、行政庁としての科学技術庁原子力局の審査もあるわけでございます。したがいまして、この辺のところが実態的にはほとんど並行といいますか、同じような形で進められているわけでございますが、これを形式的に分けてまいりますと、行政庁としての安全審査と両方をやるということになろうかと思います。
  270. 内海清

    ○内海(清)委員 そうすると、これは科技庁としての安全審査をする一つの専門官と理解していいですか。
  271. 生田豊朗

    生田政府委員 そのとおりでございます。
  272. 内海清

    ○内海(清)委員 そうすると、一つ進めたいと思いますが、今回のこの改正で、科技庁が直接管掌しておる部分、つまりRIの取り扱い量がふえるとか、あるいはまた再処理工場の進捗に見合うためとか、そういったいろいろな直接管掌しておる部分の充実強化を図るという意味合いで、あわせていまの科技庁としての安全審査の問題、こういうことで提案されておるのか、その辺のところをひとつお伺いしたい。
  273. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 そのとおりでございまして、たとえば今度は継続審議になるようでございますが、核防条約に基づく査察、これなどは当然ここで担当しなければいけませんので、いまでも毎日国連機関から来て査察官が査察しておるわけでございますから、日本はだれも立ち会わぬわけにいきませんのでそれに立ち会いますし、核防条約が通れば、それに基づいて今度はこちらが主体的に自分で査察しまして、向こうがそれにくっついて観察するという程度になりますから、当然査察官の整備充実を図らなければいけません。これも今度の核防条約の審査の際非常に重要な対象になった点は御承知のとおりでございます。その他、局長説明から落ちていると思われますのは、特に廃棄物の処理なんというものは海水を汚染するのじゃないか、あるいは地下水を汚染するのじゃないか、こういう安全問題というのは大変重要なものでありまして、決して発電あるいは舶用炉等の安全審査のみに限りません。そういうものを全部含めましてということでございます。特に、ハイジャック等による濃縮ウランその他の盗難問題が仮にあったとしますと、これは大変なことになりますので、そういう問題を全部兼ねてでございます。
  274. 内海清

    ○内海(清)委員 いまの長官の御答弁も私、大体わかるような気がいたすのであります。  そこで、いま一つ進めまして、長官提案理由説明を見ますと、いまいろいろお話がございましたものだけでの理由ではない、その他にもあるというふうなのでありますが、私が冒頭確かめました国民の切なる要望である、つまり行政一貫性と申しますか一元化、これに伴います責任の明確化という問題に今回の改正が具体的にどうこたえておるのだろうか、寄与するのか、こういう点をあわせてお伺いしておきたいと思います。
  275. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 このたびの大山報告で大変一つの示唆を与えられ、また反省しておりますのは、必ずしもメーカーあるいは事業団あるいは各省の監督あるいは基本設計詳細設計との関連等といった問題だけでなしに、原子力委員会の審査と行政官庁としての許可との、本来の行政府としての考え方はどうかという点が、従来は原子力局という名前で両方混在いたしまして、そしてもちろん安全の面もあったのですけれども、開発の面に非常に主力を注いできたわけでございまして、さてああいう問題が起きて、それでは原子力委員会は本質的には諮問機関ではないか、それから出てきた答申をもとにして許可をするのは官庁でございますから、最終的な官庁としての責任を負うべきじゃないか、これは当然の議論でございます。さらばといって、それじゃ原子力委員会の下部機構である安全審査部会等の、それはどうなんだといったような点がどうも非常に分明を欠いておったのじゃないか。やっぱりこの際は、官庁は官庁として、そういう安全問題に対してはこの機関が最終的に責任を持っているのだという体制をつくるという、これがまず私は一つの大きい問題かと思います。  それから一貫性と言っても、その一貫性の中でさらに最終的な責任という問題も起きてくるわけでありまして、基本設計詳細設計との関連いかん、基本設計詳細設計が全然関連のない審査の仕方ではこれは意味ないわけでありまして、関連があるはずでございます。したがって、そこら辺をいろいろ疑惑が生じた場合には、最終的にはこの責任は負うのだという毅然たる、機構上に体制がないといかぬのじゃないか。いま分明じゃなかったかと言えば、非常に分明じゃない、理論をただしていけばあるわけですけれども、それがいろいろ議論してみないとその所在がわからないというやり方自体がおかしいので、この際そういう点も明確にしたらいいのじゃないかというのが一つの大きいねらいだと思っております。
  276. 内海清

    ○内海(清)委員 言われることは大体わかるような気がいたしますが、なお私ははっきりしたい部分もあるのであります。  今度の安全局ができることによって——いわゆる「むつ」の放射線漏れ問題調査報告書、これはこの間御承知のようにこの問題についての参考人の意見を聞きました。そのときに私は、田島参考人に質問した問題でありますが、いま懇談会の委員をやっておられるようですが、ここではっきりした、明確な御答弁はなかったわけで、大体の御意向を伺いましたが、田島参考人もそこを一番問題だとされた。私の質問いたしました、いわゆる安全審査というものと現実的な設計との間に工学的あるいは技術的な空隙が存在する可能性がある、これはいままでのは私は十分あると思うのであります。ここが一番問題である。一貫性の問題といいますか一元行政のなかった欠陥と申しますか、こういうことだと私は思うのであります。  だから、それを一つ具体的に言ってみますと、たとえば発電の場合、通産省の検査などで、これができましたために何かメリットといいますか前進があるかどうか、これは具体的な問題でありますが、その点はいかがですか。
  277. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 田島先生のおっしゃるとおりでございまして、たとえば基本設計詳細設計との関連問題にもかかわる問題だと考えますが、余り基本的で抽象的な面だけに限りますと、詳細設計との間にややもすれば関連性が薄くなります。余りまた基本設計なのに詳細な点までやりますと、詳細設計意味がなくなりますということで、大変分岐点はむずかしいのでございますけれども、しかし、その間に何かやはりつなぐ一つの工夫をいたしまして、そしてこういう指示があったために自分たちとしては詳細設計はこういうふうにつくったのだ、したがって、最終的な責任はやはり基本設計をつくったこの機関にあるんだというふうな、やはり終局的な責任を明確にするのがこの際一番重要じゃないか。「むつ」問題でその点が大変実は問題になっているところでございますから、これはまずいなと思ったものですから、そういう点をまず改善した方がいいのじゃないか。これは有沢機関の何も整備した膨大なといいますか新しい機構を待たぬでも、即刻やらなければならぬ問題ですから、そういう点等も明確にしていきたいといろいろ考えております。
  278. 内海清

    ○内海(清)委員 発電の場合などの具体的なあれについてはどうお考えになりますか。
  279. 生田豊朗

    生田政府委員 発電の場合は、先生承知のように、基本設計につきまして安全審査をいたしまして、それに基づいて設置許可をいたしました場合は通産省に送られまして、詳細設計、工事方法の認可それから各種の検査を通産省がいたしまして、最終的に使用前検査に合格いたしました後、営業運転に入るという段階でございますので、今回原子力安全局ができましても、そこの形式的な事務の分担は同じでございます。ただ実質的には、科学技術庁原子力安全局が独立いたしまして、安全行政一つ責任ある組織が生まれるということになってまいりますと、全体として安全行政を現在よりもさらにきめ細かく十分見ていくことができるということでございまして、形式的には現在と同じでございますけれども、実質的には相当の進歩が期待できると考えております。
  280. 内海清

    ○内海(清)委員 実質的にはかなりの進歩があるだろうということで、これはもちろん進歩がなければ、せっかく設けた意義はないわけで、この点は十分検討されなければならぬと思うのであります。  長官に重ねてお伺いいたしますが、原子力行政懇談会の答申を待たずに、いまどうしてもこういう安全局というふうなものを設けなければいかぬというこの理由を、もう一度はっきりとお答えいただきたいと思います。
  281. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 先ほども私自体が決心をいたしました直接の動機お話し申し上げたのですけれども、これは原子力委員会でもまた原子力局でも前々から考えまして、去年は安全部というものをたしかつくりたいというので出したのでございますけれども、不幸にしてこれは日の目を見ずに終わりました。ことしは一切部局を許さぬ、ことしの予算では一切認めぬという閣議決定をいたしまして、本来ことしは遠慮するはずでございました。しかし「むつ」の問題以来、大変安全問題が国民の中心問題にもなり、またこれに対する確固たる政府姿勢を要望する声が強くなりまして、特に暮れに原子力発電を担当しておると申しますか設置している八つの県の知事さんが集まりまして、こもごも私に陳情がございました。尽きるところは一つでございまして、「むつ」の問題が発生するまではそれほどでもなかったけれども、しかし政府がよろしいと言ったものでもああいう故障が起きるということになりますと、今後何を頼りに自分らは原子力発電というものを進めていったらよろしいか、この際、今後ともさらに原子力発電等進めるのであるならば、政府としては従来のままの姿で、そのままの延長線で、それでいきますというだけではとても国民の納得を得られませんぞ、この際、思いを新たにして、単なる言葉じゃなくて、形でこういうふうにひとつ安全問題に真剣に取り組んでいくのだ、そのためには専門の機関、しかもまた責任を持てる機関、また統一的に統括できる機関、こういうものを一つつくって、そしてこれでやっていこうじゃないか、こういう姿勢をひとつ示そうじゃないかということで、私も総理、幹事長、大蔵大臣等とお話しいたしまして、総理も中曽根幹事長も御承知のように長くこの原子力委員長をやった方でございますから、よくその間の事情はわかっておりまして、それじゃこれだけはたった一つの例外として認めようじゃないかというので、予算の最終日、大蔵大臣との大臣同士の折衝でも決まらなかったのですが、最後に総理の決断ということで——私と行政管理庁長官、それに党の三役が加わりまして最終的に話し合いまして、それでも決まらない、それで総理の決断を待とうじゃないかというので、総理の決裁を得て初めて生まれた機関でございます。  いま当時を考えますと、その間実は非常な決意でこの問題と取り組んだものでございまして、いま申しましたようなやむにやまれぬ趣旨から生まれたものと承知してございます。また内海先生は御承知のように、原子力は必ずしも平和利用ばかりじゃございませんで、軍事利用の面が大変世界的には一番大きい問題でございますが、日本は原子力基本法策定以来、あるいは中途でつくった法律がございますが、それ以来、日本の原子力研究開発、利用は平和の目的に限るということになっておりまして、これを軍事転用しないように、みずからあらゆる面で査察をし、あるいは燃料その他の所在、移転等明確にしておく、こういうことが大変必要でございますし、また二国間協定のうちで各国から査察団が来ますから、それと同時に、査察もするということ、あるいはいま申しましたように、だんだんプルトニウム等がたまってまいりますから、こういうものの盗難とかいろいろ新しいケースも起きてまいります。あるいは再処理問題あるいは廃棄物の処理の問題等原子力にちなんで安全を、国民のヘルス等を守るための、あるいは世界の環境を守るための安全サイドの問題というのはたくさんございまして、必ずしも電力あるいは船等に限るものではございません。これはあなた、長い間一緒に勉強してくださっておりますから、よく御承知のとおりでございます。そういうものが一切合財いままでの機構だけではどうにもなりませんぞという事態になっていることは明瞭でありまして、そういうものを踏んまえまして、この際、さっき申しましたように、小さい機構でありますけれども、とりあえずこれに専心でき、しかも責任を最終的には負う、しかも一貫性を持ち得るような、そういう機構をひとつつくろうじゃないかというのでつくったのがこの機関でございます。  ただ間々、こういう機関をつくってそれでよしとして、それで一切安全が成り立つんだというふうな一つの欺瞞的な作意があってこういうものをやったんじゃないかという考えの人もあるようでございますが、私ども、これはそうではありませんで、有沢機関が必ずりっぱな結論を出すに違いないから、その結論が出れば、それに乗っかってまいります。ただその結論は、人によっても考えがありますが、この案をつくったのは一月、有沢機関のできたのが三月、そこから入っていったわけです。ですから、一月当時から考えてみますと、これは大体二年、下手すると、とにかく行政機関として定着をして充実した活動をするということになりますと、三年くらいかかるんじゃないか。その聞こういう重大な問題をほうっておけるかと申しますと、できないということで、あえて開発の機構と規制の機構と一緒だということがまずいという世論にもかんがみ、この際分離して、そして国としての責任を果たそうじゃないか、こういう挙に出たわけでございまして、ありていに申し上げますと、そういうことだと存じています。
  282. 内海清

    ○内海(清)委員 時間が参りましたから、もう終わりたいと思いますが、いまの当面これを設置しなければならぬという長官の御意図というものは大体わかったような気がいたしますが、しかし、全体として見ますと、なかなか理解しにくいような面もあります。  私は、最後に申しておきたいと思うのですが、いままで申しましたような、議論しましたようなことから考えて、いま政府が一番関心を払わなければならぬことは、この懇談会審議をなるべく促進して、そうして早く結論を求めることである、そうして所要の法律改正その他の手続をとって、国民の各階層の信頼を取り戻すということである。いままでの関係から言って、ただ単に科技庁にこれができて、それで果たして国民の信頼が回復できるかどうかということ、これは私、疑問がまだございます。いままでも科技庁が担当してやって、ああいう「むつ」の問題なりその他の問題が出ておるのであります。だから、国民の各階層の合意を得て信頼性を回復するということは、容易な問題ではない。そこで一番急いでもらいたいのは、この有沢機関審議をできるだけ促進して答申を早く出してもらうということ、このことだと私は考えるのであります。  したがってこれについて、有沢機関で独自にいろいろお考えもございましょうけれども、政府としては、できる限りこれの答申が早く出るように御善処願いたいし、また有沢機関自身にもそういうことのできるような、特に事務当局あたりもそのことを心得て対処してもらいたい、そのことをひとつ強く要望して、時間が来たようでありますから、これで一応終わりたいと思います。
  283. 藤尾正行

    藤尾委員長 受田新吉君。
  284. 受田新吉

    ○受田委員 連合審査でありますので、内閣委員の方の発言をできるだけ差し控えたいと思っていましたが、どうしても、いま内海議員の質問に対して私から関連質問せざるを得ない点がありますのでお伺いいたします。  いま責任問題が盛んに論議されました。「むつ」を今日の状態に追い込んだ責任の最高の地位にある人はだれでしょうか。
  285. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 大山委員会、御承知のように最近答申が出まして、この答申、報告によりますと、責任所在は、一つのストリーミシグという現象が出たそれだけの問題として扱わないで、事ここに至ったもろもろの各機関権限あるいは仕組み、運営方法等に対して、これこれの問題が複合してこういう結果になったのだ、こういう答申に実はなってございます。したがいまして、最終的な責任いかんということになりますと、これはもう複合した各機関が、いまの機構そのものがいかぬのだ、あるいはそれを運営する仕組みがいかぬのだ、こういうことになっておるわけでございまして、それに対する改善をただいま有沢機関その他でやっているわけですけれども、最終責任いかんということになりますと、これはやはり私、原子力局長か、あるいは総理から委任を受けた科学技術庁長官ではなかろうかと思います。
  286. 受田新吉

    ○受田委員 私もそう思います。現時点においては佐々木先生責任がおわりである。鈴木善幸氏は、昨年の秋この問題に乗り出して、むつ市及びむつ漁協等とも協定を結ばれました。半年以内に新母港を決定する、二年半以内に船体をそこへ移す。鈴木善幸氏の責任はどうあるのか、そして今後、鈴木善幸氏はいかなる役割りを果たすのか、御答弁を願います。
  287. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 当時、御承知のように青森の漁民はとびらをかたく閉ざして何人も入れないという状況で、一方「むつ」は、洋上はるか向こうで漂っておるわけですから、政府の最高責任者が仮に参りましても交渉の相手になるような状況でなかったのじゃないか。したがって、この問題を解きほぐすのには、漁民と話をつけ得る人はだれかということで、政府でもいろいろ考えて、そして当時は役人じゃなかったわけです、自民党の総務会長でございますから、面接の行政には関係ございません。ですが、ちょうど特命全権大使を任命するような、いわばこの解決のための全権を付与して、そして交渉に鈴木さんが参ったと私は承知してございます。  そこで、もし間違ったところがあれば、局長が当時一緒に行っていますから修正したいとも存じますが、そうして話がつきました。その青森側との話し合った、契約したものはどういう意味を持つのかと言いますと、内閣では「むつ」問題何とかという閣僚懇談会をつくっておりまして、そこへ結論を持ってきまして、そして関係大臣ですからもちろん大蔵大臣等も出て、そしてこの契約書を、いわばさっき申しましたように、全権を持って行った鈴木さんが取り決めてきたものだけれども、政府としてこのままこれを了承するかどうかという討議をして、事情やむなし、これはこのまま行政府の機構としてのみましょうということで、それが行政のはっきりした分野に移ったわけです。そして各省に対する拘束力もできたわけです、あの契約書は。そして私が長官になって、行政の継続性でございますから、当時の契約した事項を私もそのまま継承して実施に当たっておる、こういうことだと思っております。
  288. 受田新吉

    ○受田委員 鈴木善幸氏の責任を明確に。今後の責任
  289. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 行政責任としては、決めまして閣僚懇談会の中にそれを持ち込んで了承されたわけでございますから、それ以後の責任は鈴木善幸氏にはございません。
  290. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、この協定を結んだ責任者である鈴木善幸氏は、今後の問題解決には何ら責任がない、解放されたのかどうかです。
  291. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 行政法的にと申しますか、法律的にはそのとおりでございまして何の権限もございません。ただし私は、長官になりました際——当時の漁民との間に話を決めるときのいろいろないきさつ等は先生が一番よく心得ておるわけですから、真意は。文面にあらわれぬいろいろなニュアンスも、私には、行っていないのですからわかりません。したがって、あの問題をせっかくお決めくださった鈴木さんですから、今後もひとつお見捨てなくいろいろと相談に乗っていただくようにというお願いをいたしまして、私には行政責任もないわけですけれども、しかし佐々木君がそう言うのであればお手伝いしましょうということで、別に権限ずくの問題ではなくて、いわば私の兄貴分としてのいろいろな御指示、御指導を仰いでおるというのが現状でございます。
  292. 受田新吉

    ○受田委員 佐々木さん、私この前、内閣委員会でもお尋ねしたとおり、「むつ」の今日の状態を招いた原因の大きなものに行政責任があるのです。それを鈴木善幸氏に一役買うてもろうたわけだ。鈴木善幸氏は大臣の地位でもない、いわばきわめて私的な立場で大衆の中に飛び込んでやろうという意味を含んだ代表者として行かれたわけです。しかし結果論から言ったら、鈴木氏が代表で責任者として結んだ協定が実行されないとなれば、その責任はやっぱり鈴木氏にあると思いますね。この問題の処理を図る責任がある。四月十五日でもう六カ月たっておるのです、去年の十月十五日から。にもかかわらず新母港が決まらない。協定を結んだ鈴木氏に責任がないとすれば、それを委嘱した側の責任が今度起こってくるのです。そんな無責任な代表者を送って、責任がないというようなことになれば、その責任を新しく承継した者がこれをどうするかであるのですが、いかがでしょう。
  293. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 先ほどから申しますとおり、その契約を実施する責任は私にございますので、鈴木さんにはございません。そこで、四月十六日までにそれ以外のものは大概できましたけれども、半年後までに第二母港を決めます、それから二年半を目途として「むつ」を動かしますという二つが第三の一番重要な事項になっているわけです。  そこで、母港を決めるとは何ぞや。これは大変議論のあるところだと私は思います。しかも国会のその後の議論を通じましておっしゃることは、決して権限であるいは権力でこれを決めてくださるな、行政のルートからいけば地方の自治体の長あるいは議会等に諮って、決まればそれで行政系統が決まったからこれでよしということで決めてしまうというふうなやり方でなしに、もう少し地元の利害関係者等との話し合いを十分つけて、そして納得の上でこれを運びなさい、こういう実はたっての希望が各党からあるわけでございまして、これはまた「むつ」の経験にかんがみて当然の一つ議論だと思います。でございますから、私どもは一月以来しぼりにしぼって、御承知のように、対馬を一応候補地にして、そして四月十四日までに地方との了解も得てと思っておったのです、それが一番親切な行き方だと思いましたから。ところが、ちょうどあたかもその当時は統一地方選挙の真っ最中でありまして、もし当時、仮に長崎県にこの問題を持ち込んだとしたら、これは選挙がめちゃくちゃになるという可能性が十分に考えられます。したがって、これは下手をすると選挙妨害になるぞ、中央政府が選挙妨害をしたぞということになりますと大変なことでありますし、また、このために選挙の結果に不測な成果が出たということになりますと、これは党といたしましても大変なことでございますから、私どもといたしましては、その点を考慮して、これは選挙が済むまで待とうじゃないか、ただし、契約した相手方の青森側とは十分了承を取りつけぬでこれをやってはいけないぞというので、わざわざこれの担当をしておりました主務の政務次官を青森に派遣いたしまして、御苦労さんですが鈴木さんも、当時やはり調印をした人でございますから、いま権限はないにしても、やっぱり顔を出してくださいということで青森に御同行いただきまして、そして青森の知事、市長、漁連会長との間にその話をよくいたしまして、向こうもそれはやむを得ないだろう、いまやるということはとても言うべくして不可能だ、こういうことで、それからいよいよ……(受田委員「簡単にひとつ」と呼ぶ)よろしゅうございますか。それじゃここら辺にしましょうか。  そこで、統一地方選挙が済んで、さていよいよ交渉に入ろうということになったわけですけれども、地方議会の構成等の整備するのを待っておったわけですが、それで私どもとしては、すぐ直截に知事に交渉しようかと思ったのです。こちらの方ではもちろん閣議を通っておりません。私と運輸大臣の二人で、責任大臣でございますから決めまして、そして知事に直接正式交渉に入ろうかと思ったのですけれども、仮に正式交渉に入って、事前に当県出身の国会議員に何らの話もせずに、それではというので地元へ行って実地調査をする、あるいは住民の皆さんに交渉を始めるというようなことがあったら、一体その地元選出の国会議員はどう思うだろうか、実にけしからぬやり方だ、無礼なやり方をしているじゃないかと思うのは当然だと、私は選挙をやっておって思います。私の県でもしこういうことが起きたらどうするかということを考えますと、これはやっぱり知事に直接に正式交渉に入る前に、非公式にその県の選出の国会議員に、まず自民党側から順を追うて各党の議員の皆様に打診あるいはお願い、反対は反対でこれはしようがないわけでございますから、いわば俗な言葉で言えば仁義だけは切るべきじゃないかということで、仁義を切っている最中にそれがすっかり漏れてしまいまして、そして漁民の皆さんが大騒ぎになって中央に押しかけてきたものですから、長崎県知事もびっくりして、この問題は白紙に還元しようじゃないか、しばらく静観しよう、こういうことになってただいま静観中でございます。
  294. 受田新吉

    ○受田委員 佐々木先生原子力船というものは、地上へ置く原子力発電機のようなものと違って、船へ置く物はすべてできるだけ軽量でなければならない。船は揺れる、揺れるのがひどくなると沈没するというような特殊の事情がある。長崎県とか、ここに科学技術委員長八木先生もおられるが、佐賀県、福岡県、山口県というようなところは、台風の渦巻きですよ、いつも。台風コースのところへ原子力船むつ」を置いておいた場合に、沈没したとしたらどういう弊害が起こるか、ちょっと専門的に答えを願いたい。「むつ」が沈んだ場合には、それに伴う弊害はどういうことになるか、大したことはないのか。
  295. 生田豊朗

    生田政府委員 万々沈没することはないという前提でやっております。ただし、万一沈没したらどうかということでございますけれども、原子炉の中に核燃料が入りまして、そのままの形で沈みますし、原子炉の防護壁その他はそのままの形で沈むと思いますので、特段問題はないと思います。
  296. 受田新吉

    ○受田委員 そのままの形で沈む、それは将来何ら影響のあるものではないということになれば、ややこしくなれば、その船が静かに沈めばいいわけですね。「むつ」でも今日までのは沈んで、また新しく船をつくっていけばいい、問題が起こっていくならば、ややこしい故障船なら。そういうことも言えるじゃありませんか、沈んで何ら弊害がないとなると。  私は、この原子力船が沈むことに伴って相当の影響力があるものだと思ったのが、簡単にこれを固定化してしまう、そんな簡単なものなら、故障船というものはまた新しくつくり直せばいいわけですから、海の底に静かに沈んでいただけばどうですか。
  297. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 それは、いまの「むつ」に入っている燃料棒はそのまま凍結して動かぬようにしてあるわけですから、このままでもし沈んだらという話かと思っていま局長がそのとおりお答えしたのだと思います。現状の燃料棒は、臨界実験が済んで間もなくでございまして、それからまた長い間、そのまま凍結しているわけですから、わずかの、その中で生成したであろういわゆる放射能も、半減期の短いのはほとんどなくなっているはずでございます。ですから、ほとんど普通の燃料棒そのままだと考えてもいいのじゃないか。ということになりますと、そのまま沈んでもこれは別に大きい災害ということはございませんということを答弁したのだと思います。
  298. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、「むつ」を毛ぎらいする要素はほとんどなくなっているじゃないですか。「むつ」よどうぞお越しください、私の方で修理をして差し上げます、造船施設の十分できているようなところへお引き受けいただける、核アレルギーによる不安というものを全く抹殺できるような状態であることを科学的に説明できるなら。「むつ」は現在、科学的な説明としては、これがどこへ入っても被害は起こらないと断定してもよろしいのかどうか。
  299. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 断定してよろしゅうございます。ただ、第二母港をいろいろ非公式に、そうたくさんではございませんが、当たってみた。大山機関で言うように、修理をしなさい、そうすれば放射線は漏れないようになります、それからついでですから、この際御念入りに総点検をしてください、そして要すれば原子力委員会でその裏打ちをして、総点検した結果も安全でございます。こういうことになれば初めて自分らとしては安心できます。これが非常に素朴な感情かと思いますけれども、しかし無理からぬ感情でございます。  ですから私どもとしては、青森につないでおる「むつ」そのものは安全でございますけれども、それを修理したり総点検したりして、さらにこれでもう全然大丈夫だというときになって初めて持ってきてくださいという御議論をするのに対して、船自体の定期検査の問題もございますけれども、やはり事前に修理点検をある程度できますればしまして、そして受ける方にも安心をしていただくという方が順序ではないだろうかというので、いろいろただいま検討してみているところでございます。
  300. 受田新吉

    ○受田委員 この安全性についてまだ不安が残っているのですか。四十二年当時の基準で審査した、最新の基準での審査がまだ終わっていないというような、何かそこに懸念があるのじゃないですか。
  301. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 いまの燃料棒をもってそのままの姿で始動しますと、これはまた放射線が出てくるわけでございます。ですから、そうじゃなくて、いまのままで安全だけれども、修理を済ませてくださいということになっているわけでございます。
  302. 受田新吉

    ○受田委員 私は、これを科学的な説明で十分安全性を宣言すれば、なおかつ不安を感じて「むつ」を拒否するというような声はなくなると思うんですよ。いつまでこの問題をこうして引っ張っていくのか。もう四月十五日をずっと二月以上も越えてきておる。どうするのか、早く結論を出さなければならない。佐世保の市長が何とかしたいという発言をされた。勇気ある発言だというのもあれば、おれらにも諮らぬでという声もあるけれども、迎えるところがあるならばどこでもいいということになっているのか、あるいは政府はいまどこかを用意しておるのか。どこかぜひおいでくださいということになればそこへ行く。そこへ行かない場合は第一、第二、第三で、政府はこういう用意があるというようなところがあるかどうか。これはいつまでもほっておくのではいけません。それをひとつ……。
  303. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 おっしゃられるまでもなしに、いつまでもほっておく気持ちは毛頭ございません。しかし、先ほど来申し上げましたように、従来の憲法で許されている行政の系統で決めればそれでよろしいかというと、いまはそうはいかぬことはよく御承知のとおりでございまして、それだけではいけませんよ、もっと地元の要望あるいは理解、協力をよく得るようにした上で、余り問題の起こらぬようにして円満に片づけてもらいたい、これが本旨でございますので、大変苦心が要るのです、こういうことを申し上げているのです。ですから、お説のように一生懸命努力いたしまして、できるだけ早く片づけたいということで、ただいませっかく努力中でございます。
  304. 受田新吉

    ○受田委員 具体的には何もないのですか。
  305. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 ありますけれども、これは申し上げません。
  306. 受田新吉

    ○受田委員 関連質問でありますので、この程度でおきますが、いま大臣は、原子力安全局ができるとすべての責任をそこでやるのだというような非常にスケールの大きい雄大な構想で、いま安全局に期待をかける発言があったのです。そうすると、職務の内容と責任というものは、お役所の仕事としては一番大事なことなんです。そのポストにおる人とその仕事と、これも一番大事な問題なんです。そういうところの責任を明確にしておかないといけない。これはだれが責任を負うのかということをきわめて明確にしておかなければならない問題です。  だから、いまの原子力発電機にいたしましても原発にしましても、ウエスチングハウス社がつくった軽水炉の機械が大変おかしいことになって、いま八基取りつけたが六基がだめになっておる、二基しか動いておらぬというようなこの責任は一体だれが負うのか。こういう故障の多い機械を持ってきたときには、それは通産省責任を負うのか。あるいは原子力行政をやる科学技術庁責任を負うのか。十年先に六千万キロの発電をすると言うても、いまのようなことじゃなかなかこの目標には達せぬとするならば、いまの段階ではむしろ原子力行政責任の方が大きいのじゃないか。もうどんどん発電力ができておる段階でなくして、試験的な段階のように見えるとするならば、原発の行政においても最終責任科学技術庁が負う、あるいは原子力委員会というものの責任は一体どうなるかというような問題があるのですが、これはやはり行政機構上の基本問題として責任所在だけは明確にしておかなければいかぬ。  原発についても原子力船についても運輸省との関係はどうなるか、これをつくった会社に対する監督責任はだれが負うかというようなことを考えていくと、安全局責任を負うということになると、もう原子力行政に関しては各省と共管事項の場合でも、最終的には科学技術庁が負うのだ、こういうことになるのかどうかです。  これは大臣、あなたが重い責任を負うのだという立場で意欲的な発言をしていただけるならば、私は質問を終わります。
  307. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 もちろんつくったからには、最終責任安全局、すなわちまた、その上司である科学技術庁長官にあるものと考えます。  ただ、言外発言みたいで恐縮でございますけれども、列国ではおよそ責任など問われるようなことでない故障、ささいな故障が、日本ではいかにも大事件のようになって、そしてその責任いかんというふうな問題まで発展する、このこと自体が、これはまた大変一つの問題だと私は思います。たとえば、いま起きているくらいの故障であれば、各国で幾らでも起きているわけでございまして、問題にしないんですね。これは新聞に出ておりません。ですから、それが日本だけは非常に大きい問題になって取り上げられるというところに、これは一つの大きい問題もございます。しかし責任という問題、それに派生して大きい問題になれば、責任問題ということになりますれば、安全に関する限りは、私は、今度安全局をつくれば、最終的な責任というものは、やはり安全局にあるのじゃないかというふうに思います。
  308. 受田新吉

    ○受田委員 私、これで質問を終わります。  大臣科学技術庁長官がこういう原子力行政最終責任を負うのだ。「むつ」にしても、あれは、森山さんはその責任を負うてやめたのですか、そうじゃないでしょう。改めてちょっと聞きたい。
  309. 藤尾正行

    藤尾委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  310. 藤尾正行

    藤尾委員長 速記を始めて。
  311. 受田新吉

    ○受田委員 そういうことで、ひとつ原子力行政責任所在を明確にする。今度のこの安全局をつくることにおいても、行政機構上の重大な問題がここに明確にされておかないと、われわれは安心できないわけですから、そこを提案者として佐々木先生に明確に責任所在を、あなたが負うんだということで、いまの御答弁を納得して質問を終わります。関連質問終わり。
  312. 藤尾正行

    藤尾委員長 以上をもちまして本連合審査会は終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時五分散会