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足立委員 いや、それは非常に温情的な措置で、そのことについて私は難癖をつけようと思っておりませんが、法制上のたてまえからすると、これはむしろ違法なことをやっているように私は思うのです。というのは、外地のこういう特殊機関等を
退職して、それから
日本に帰って
日本の
公務員に終戦後就職する間の期間制限があるはずなんですね。前には満鉄なんかの場合は一年ということでございましたが、これは内地の役所でいろいろな都合があって、内地の役所から外地に出てまた帰った人間とは扱いが違うので、ポストがあくのを一列励行で待っていたという気の毒な
事情もありますから、去年でしたか法律
改正のときに政令に移してもらって、たしか三年ぐらいに延ばしてもらった経過があるわけであります。これも私
ども、もと外地におった人間としてありがたく感謝をしているわけでありますが、いまの農産物検査所の場合は、少なくも五、六年の間そこにブランクがあるわけで、これをどのように解釈をされてもちょっと無理がある。結局、私の言いたいのは、農産物検査所はこの通算措置をとっていないということでこういう無理が生じてきているということを申し上げたいわけであります。
蛇足になるかもしれませんが、この際ちょうどいい
機会でありますから、満州農産物検査所の沿革、実態、性格等について私見を申し述べて、御判断の材料にしたいと思います。
この検査所の母体ともいうべきものは、いま
局長から
お話がありましたが、満鉄の混合保管の対象としていた大豆とか大豆かす等の受け入れ検査機関であったわけであります。満鉄では大正八年に大豆混合保管
制度を創設いたしました。この
制度は、満州の特産物である大豆等の輸送及び流通の便を図るために、荷主より特産物の輸送及び保管の寄託を受ける際に、その物資について厳正な検査を
実施し、
等級に区分し、混合保管をして、同時に、倉荷証券を発行し、証券の所持者が指定の出庫駅で証券と引きかえに倉出しできるという
制度であります。たとえばきょうハルビンの駅で大豆を混合保管に寄託する、厳正な検査を受けまして三等なら三等という品質の検定を受ける、そして大体一車扱い三十トン単位でございましたが、倉荷証券が発行されますとその日のうちに特急「あじあ」に乗って荷主は大連に着いてその倉荷証券を出して船積みができる、荷物はまだ一週間か十日たたなければハルビンから到着しませんが、そういう便益を図っておったわけであります。したがって、これは非常に好評を受けたわけでございますが、その好評を受けた裏には、やはり検査が厳正であったということではないかというふうに思うわけであります。
結局、この満鉄が
実施してきました混合保管貨物の受け入れ検査というものが、満州における唯一の権威のある検査機関でございまして、戦時中ずっと続けられたわけでありますが、満州国が誕生してからだんだん戦時体制がとられてまいりまして、食糧の統制が行われてまいりました。そこで満州国の側におきましても、こうした国営の検査機関というものの必要を感じてまいったわけでございまして、さらに検査品目をふやさなければならぬという事態にも直面したわけであります。
そこで、
昭和十五年十一月、これは満州国の康徳七年になるわけでありますが、勅令第二百八十一号によりまして満州農産物検査所法が発布せられたのであります。そしてこの農産物検査所が設置されましたが、こうした検査能力を持っている満鉄の混合保管の職員が全部移らなければ、満州国側ではそうした機能を持っておりませんので、この検査所に移管をされたわけでございます。そして農産物またはその加工品の国営検査及び委託検査を行うのが目的でございまして、法令によって検査を行う品目は大豆ほか六品目、さらに委託検査品目はコウリャンほか二十一品目にわたっております。なお、この検査所では、農産物の検査規格に関する研究、また興農部
大臣の特に命ずる事業等を行うことになっており、全く行政ベースで事業を行っておったわけでございます。
ただ、問題になるのは、法人格でございますが、法人格は財団法人ということになっておりますので、これがいままで
恩給局でひっかかった最大の理由ではないかと私は推察をしているわけでございます。純粋な行政機関でやるべきものが、なぜ財団法人になったかということを申し上げますと、これは満州国側としては、業務の重要性とその権威にかんがみまして、当然行政機関として設置する方針を決めたのでありますが、満鉄側との協議の結果、満鉄側としては、みずから大正八年以来やってきた混合保管というもの、そしてその検査機関でございますから、どうもそれを
政府の方に移してしまうというわけにいかないということから、実際にはこれは関東軍司令部が中に入って協議をした結果、財団法人ということで話が妥協したわけでございます。したがって、これは本来は、当然に行政機関として設置さるべきものが勅令に基づく財団法人ということであり、また出資も満州国
政府と満鉄だけに限られております。ほかは全然出資しておりませんから、常識で
考える財団法人とは全く性質が違うということもお認めいただけると思いますし、業務の内容等もきわめて公共性の高いものであるということもお認めいただけると思うのであります。
また、これは命によって満鉄社員からこの検査所に移ったもとの社員の人
たちは、全部満鉄と同じ待遇を受けておったわけでありまして、たとえば住宅とか住宅手当とか満鉄のバスであるとか、それから満鉄の福祉機関の利用であるとか、これは嘱託でございますが、非役という扱いになっておりましたから、全く満鉄社員と同じ待遇を受けておった。また満鉄側としても、いま申し上げた重要な混合保管の検査機関であるその職員を手放すわけにはいきませんから、そうした嘱託という立場をとってきたということでございまして、これは行政ベースでごらんになっても、満鉄という特殊機関の側からごらんになっても、一人二役のような形になっておりまして、
局長がいまおっしゃったような、いままでの十二の機関と全く同じ性格のものであるということが断言できると思うわけでございます。
どうかそういう点をさらに御
検討いただきまして、なお詳しい資料も全部用意してまいりましたが、きょうは時間の制限がございますので、詳しく申し述べることができないのは残念でありますが、
恩給局の方もお調べいただいてもう十分おわかりと思います。そういう点をひとつ十分御
検討いただきまして、これがその他大ぜいと一緒にされまして、いま
局長がちょっとおっしゃったが、広く
検討されるということになりますと、これも相当時間がかかるじゃないかと思って、私も心配しているわけでありまして、これは、このものずばりでひとつぜひ御
検討いただきたいと思うのです。
最後に、ひとつ簡単で結構ですから、
局長の御決意のほどを伺って、質問を終わりたいと思います。