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1975-03-28 第75回国会 衆議院 内閣委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月二十八日(金曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 藤尾 正行君    理事 越智 伊平君 理事 奥田 敬和君    理事 加藤 陽三君 理事 上原 康助君    理事 中路 雅弘君       赤城 宗徳君    近藤 鉄雄君       中馬 辰猪君    旗野 進一君       吉永 治市君    綿貫 民輔君       木下 元二君    鬼木 勝利君       鈴切 康雄君    受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁人事教育         局長      今泉 正隆君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁総務         部長      安斉 正邦君         外務大臣官房長 大河原良雄君         外務省アジア局         次長      中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省中近東ア         フリカ局長   中村 輝彦君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  委員外出席者         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十八日  辞任         補欠選任   大石 千八君     綿貫 民輔君 同日  辞任         補欠選任   綿貫 民輔君     大石 千八君     ――――――――――――― 三月二十七日  旧軍人恩給の改善に関する陳情書  (第一九八号)  金鵄勲章叙賜者の処遇に関する陳情書外一件  (第一九九号)  小松基地ファントム配備計画中止等に関する  陳情書(第二〇〇  号)  同和対策審議会答申完全実施等に関する陳情  書外十四件  (第二〇一号)  憲法改正に関する陳情書外十六件  (第二〇  二号)  水産省設置に関する陳情書  (第二〇三号)  国民の祝日に関する陳情書  (第二〇四  号)  元号の法制化に関する陳情書  (  第二〇五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一六号)      ――――◇―――――
  2. 藤尾正行

    藤尾委員長 これより会議を開きます。  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中路雅弘君。
  3. 中路雅弘

    中路委員 最初に一、二問法案について御質問したいと思います。  在勤基本手当基準額改定の問題ですが、アメリカの九号俸を基準にして各国物価生活水準為替相場を考慮して基準額を今回の場合も改定されているわけです。各国在外公館職員基準額は、これを基礎にして決められるわけですが、在外公館設置場所も、大使館領事館も多いわけですし、種類もたくさんに上るわけです。この検討の中で、調整が行われることもありますけれども、たとえば非常に物価上昇が著しいところで、在勤手当の実質的な水準が下がるというところがあるわけですが、こういうところではどういう処置をとられるのか。たとえば物価上昇が非常に著しいベトナム等、これは大変上がっていると思うのです。これは調整でも実質的な水準を維持することは私はむずかしいと思うのですが、こういう個所における処置をどう検討していくかという問題について最初に御質問したいと思います。
  4. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 在勤手当改正につきましては、四十九年の四月に前回の改定が行われておりまして、これは一年目に改定が行われるという意味で、従来のパターンに比べますと、かなり期間の幅が狭まった改正であるということが言えるわけでございまして、これは結局この一年間に物価上昇また為替相場変動、こういうものを通じまして、在勤手当の実質的ないわば目減りというふうな状況があらわれているのに対処するための措置として在勤手当改正をお願いしているわけでございますが、年度途中におきまして、大幅な物価水準あるいは為替相場変動というふうなものが生じました場合、在勤手当の実質的な軽減という事態が生じました場合には、政令にゆだねられました範囲内におきまして、すなわち二五%の範囲内におきまして、調整を行うことができるという道が開かれております。
  5. 中路雅弘

    中路委員 二五%の範囲調整が行われるわけですけれども、たとえばいま挙げましたベトナムなどでは、年間六六%上がっているわけですね。こういうところでは、実質的にはなおマイナスになる。その他については、調整ワシントン並みに回復するということは、私は数字の上でも可能だと思いますけれども、こういう実質的にまだ水準を維持するところまでいっていない個所について、やはり何らかの処置が必要ではないか。この二五%のいまお話しになった範囲内でも解決できないところも出てきているわけですね。この点についてはどのように今後検討されていくのか、その点をお伺いしているわけです。
  6. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 ベトナムにつきましては、昨年の一月に比べますと、現在物価指数から見ますと一六六という数字が出ておりまして、非常な物価の高騰が見られるわけでございます。ただ、その間におきましてベトナムの通貨の変動がございまして、この面を加味いたしたりしますと、私ども数字では、一年間に大体一二、三%という変動率を加味すればよろしいのではないか、こういうふうに考えまして、今回の改正では一二・七%の上昇ベトナム大使館につきましてはお願いしている次第でございます。
  7. 中路雅弘

    中路委員 もう一点ですが、これは法案中身じゃないのです。今回の場合も、在外公館位置名称設置法給与法とが一本にされて出されているわけですが、こういう形式法律は、私は他に余り例がないのじゃないかと思うのです。本来は、設置法部分外務省設置法在外公館設置法として出され、給与関係については給与法として運用する必要があるのではないかというふうに思うのですが、在外公館設置法給与関係法案とが一本の法案として出される。本来性格の違うものですね。設置されれば、そこに勤務する人たち給与の問題は、当然考えなければいけないということだろうと思いますけれども給与法設置法という全く性格の違うものを一つ法案として出される、これは法律提出のあれからいっても、少し疑問があるんじゃないかと私は思うのですが、この点についてどのようにお考えですか。
  8. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 戦後、外交活動が開始いたされまして、在外公館設置することになりまして、その体制が逐年整備されていったわけでございますが、新しい公館設置いたします場合に、当然その館に勤務する職員給与に関する額、在勤手当に関する額という問題がありましたために、経緯的に名称位置並びに在外給与、これを一本としてずっと法律でお願いしてきている、こういうことがあるというふうに承知しておりますので、やはりそういう経緯を踏まえましての法律の形をなしておるというふうに御理解いただきたいと存じます。
  9. 中路雅弘

    中路委員 あとの質問がありますので、法案について細かく御質問しませんけれども、私は、本来は設置法給与法という性質が違うものですから、この点は今後十分検討をする必要があるんじゃないかというふうに思っているのです。経過から言えば、公館設置されて、そこの勤務給与の問題というのが当然付随して出てくるわけですけれども、しかし今度の場合も、この設置法で出されている個所給与だけじゃなくて全体として、これは種類でいうと大変なものになるでしょう。領事館大使館とも給与種類が何段階かありますし、合計しますと相当のものになりますね。大使館の場合、十四段階に分かれていますし、領事館の場合は十二段階にランクづけされているわけですね。今度の設置計画を含めると二百七カ所になるわけですから、種類でいいますと全体で大変な種類に上ると思いますが、この給与の問題はやはり独立の給与法として、二つの法案として出されてくるのが筋としては当然じゃないかと思いますので、この点は意見としてひとつ述べておきたいと思います。  きょうは防衛庁も来ていただいているのですが、いわゆる防衛庁皆さんの言っておられる防衛駐在官の問題について、少し細かくお聞きをしたいと思います。  最初に、外務省にお聞きしたいのですが、外務省本省在外公館の中に制服自衛官出向その他の形で何名配置されていますか。
  10. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 防衛庁から外務本省出向いたしております自衛官は十三名、在外防衛駐在官として派遣されておりますのは二十三名でございます。
  11. 中路雅弘

    中路委員 四十九年度では二十三名ですね。今度五十年度になりますと二十五名にふえると思うのですが、本省にいま十三名、それから在外公館に、四十九年度ですとお話しのように二十三名ですが、この中に制服自衛官から出向の形で出ているのは何名おられますか。
  12. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 本省勤務しておりますこれらの自衛官は、外務省職員として通常の業務に従事しておるわけでございますが、制服着用いたしますかっこうでの勤務は、在外防衛駐在官が必要な場合に制服着用して勤務しておる、こういうことでございます。
  13. 中路雅弘

    中路委員 最初にお聞きしているのは、いわゆる自衛官防衛庁職員じゃなくて制服自衛官が、防衛庁職員なり外務省派遣されている、出向しているというのは、この十三名のうち何名おられるわけですか。それから在外公館勤務している二十三名、その中でいわゆる制服自衛官から、防衛庁を通してですけれども出向しているのは何名ですか。
  14. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 本省勤務しております十三名は、いずれも制服自衛官であり、在外勤務する防衛駐在官は、いずれも制服自衛官でございます。
  15. 中路雅弘

    中路委員 私の聞いているのは、十三名のうち一名を除いて全員制服だという話も聞いていますから、この点はちょっと数字は違いますが、在外公館の二十三名は、いまお話しのように全員制服ですね。本省の方は間違いありませんか。
  16. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 御指摘のとおり、十二名が制服で一名は防衛庁事務官でございます。
  17. 中路雅弘

    中路委員 そうしますと、本省の十三名のうち十二名は制服自衛官、それから在外公館の二十三名は全員自衛官から出向しているということになりますが、防衛庁にお伺いしたいのですが、制服自衛官が、防衛庁以外の他の国家機関勤務できる法的な根拠というのは何によっているわけですか。
  18. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 御案内のように自衛隊員につきましては、自衛隊法六十条の二項によりまして、隊員は、法令に別段の定めがある場合を除きまして、他の国家機関兼職をすることを禁ずるという一般条項があるわけでございます。これにつきまして、特別の許可のある、別段の定めがある場合においては兼職をすることができるということになっておりまして、同施行規則の六十条の一項五号「防衛庁における職務遂行に著しい支障がないと長官が認める場合」これについては、隊員長官の承認を得て防衛庁以外の国家機関の職を兼ねることができるということでございます。
  19. 中路雅弘

    中路委員 六十条の何項ですか。
  20. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 六十条の一項の五号でございます。
  21. 中路雅弘

    中路委員 「前各号の外、隊員が他の国家機関の職を兼ね、又は」云々ですね。
  22. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 はい。
  23. 中路雅弘

    中路委員 「当該隊員防衛庁における職務遂行に著しい支障がないと長官が認める場合」これの適用ですか。
  24. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 はい。
  25. 中路雅弘

    中路委員 この中には「隊員防衛庁における職務遂行に著しい支障がない」という、これはちょっと適用が、たとえば一佐だとか、将官、将補がいますが、それが防衛庁職員として、日常隊員として「職務遂行に著しい支障——海外へ行くのですから支障どころじゃないじゃないですか。
  26. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 いま申し上げてございますのは、本省派遣をしておる自衛官につきまして申し上げておるわけでごいまして、海外に参ります者は外務省出向いたしまして、身分外務公務員になります。それで在外公館に参りました場合には大使指揮を受ける、こういう立場になるわけで、私どもの方から身分が離れるわけでございます。
  27. 中路雅弘

    中路委員 いまお話しになるように、在外公館に配置されている制服自衛官、これは一たん外務省出向する、そうですね。防衛庁事務官として外務省に今度出向する、外務公務員になるわけですね。
  28. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 外務公務員になるわけです。
  29. 中路雅弘

    中路委員 そうしますと、在外公館に配置されているこれらの人たちは、身分的にはいまおっしゃったように外務事務官、これは間違いありませんか。
  30. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 そのとおりでございます。在外に参りました者は外務公務員になりまして、外務大臣指揮下に入るわけでございます。
  31. 中路雅弘

    中路委員 外務事務官であるわけですから外務省にお伺いしますが、身分はいまおっしゃったように外務事務官であるわけですから、当然、在外公館勤務する場合、私服で勤務をし、自衛隊制服着用する——たとえば一等書記官とか二等書記官勤務するわけですから、そういうことはないと思うのですが、先ほどちょっと大河原さんおっしゃいましたけれども、これはどうですか。
  32. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 防衛局長から御答弁がございましたように、防衛庁から外務省出向いたしまして、外務公務員としての身分を与えられて在外公館に配属されるわけでございます。その在外公館に配属されましたこれらの外務公務員は、防衛庁よりの出向者の場合には、防衛駐在官という名称をあわせ与えられまして、その肩書きのもとにまた活動をいたしている、こういうかっこうになるわけでございます。
  33. 中路雅弘

    中路委員 防衛駐在官という制度はどこにあるのですか。何によっているのですか。
  34. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 外務省令によりまして防衛駐在官という名称を与えてございます。
  35. 中路雅弘

    中路委員 いまの外務省令というのをもう少し詳しく説明してください。
  36. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 外務職員の公の名称に関する省令昭和二十七年外務省令第七号というのがございまして、これの第三条の六号「在外公館勤務し、主として防衛に関する事務に従事する職員が用いる公の名称」として「防衛駐在官」というのが記載されてございます。
  37. 中路雅弘

    中路委員 先ほどお話しのように、しかし明らかに身分外務公務員ですね。駐在武官じゃないわけですね。外務公務員ですから、私がお尋ねしましたように制服活動する、制服着用する、そういうことはありませんね。そういう場合はあるのですか。
  38. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 防衛駐在官という公の名称の使用を認められましたこれらの防衛駐在官は、公の活動をいたします際に制服着用を許されている、こういうことであるわけでございます。
  39. 中路雅弘

    中路委員 これらの自衛官は、出向前は制服自衛官であったことは明らかですが、外務省出向後は、いまお話しのように外務省事務官ですね。外務公務員である、在外公館一等書記官とかあるいは二等書記官であることは明らかですから。  それではお伺いしますけれども自衛官海外制服活動する、それはほかに例がありますか。
  40. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 調達関係連絡官その他で、これは防衛庁職員、いわゆる自衛隊員としての身分をもちまして長期に滞在をするということはございます。
  41. 中路雅弘

    中路委員 普通は、訓練派遣をするとか視察に行くとか、そういう場合ですね。私は、身分でははっきりと外務公務員身分であり、そして一等書記官とか二等書記官の者が、今度は活動する場合に、そこで自衛官制服公館活動する場合がある、これが自衛隊制服着用するというのは非常におかしいと思うのですが、外務大臣はどういうふうにお考えですか。
  42. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 防衛駐在官として在外公館勤務しておりますこれら防衛庁から出向して外務公務員になりました者は、その防衛庁自衛官としての身分に応じて一等陸佐、二等海佐云々という肩書きをあわせて用いることが許されているわけでございまして、その意味におきましての制服着用を行っているわけでございます。
  43. 中路雅弘

    中路委員 身分外務省外務公務員である、それで活動する場合に自衛隊制服着用する、あるいは防衛駐在官という呼び名も使っているということですが、それではこの防衛駐在官ですね、在外公館勤務する、出向している制服自衛官、これは当該大使館、総領事館で主としてどのような任務に当たっているわけですか。
  44. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 現在、二十三名の防衛駐在官大使館に配属されてございますが、所属大使館大使指揮を受けまして、主として防衛に関する事務に従事しているわけでございます。
  45. 中路雅弘

    中路委員 いま、所属大使指揮を受けていると言われましたが、だれの指揮、命令を受けるかということについては、これは所属大使ですね。もっと言えば、外務大臣管轄下にあるわけですね。その指揮を受けているということですが、この大使指示を受けている防衛駐在官が、どういう仕事をやっているのかということを、もう少し詳しくお尋ねしたいと思うのです。
  46. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 主として防衛に関する事務というふうに先ほど御説明申し上げましたけれども防衛関連いたしまする情報収集あるいは相手国政府機関との連絡、このような事務に従事しているわけでございまして、職務上当然のことながら、相手国のたとえば国防省というところとの仕事関連が深いということは申せると思います。
  47. 中路雅弘

    中路委員 主として軍事関係情報収集とか、あるいは相手国当該の軍の機関とのつながり、そういったいまのお話ですが、この点は後でもう少しお聞きしますけれども、しかし、どのような軍事情報が必要か、どういう情報収集するかということは、そのときどきの情勢との関連収集の重点もいろいろあると私は思うのですが、その判断は、たとえば当該大使指揮といまおっしゃいましたけれども、その大使指揮のもとでそういう活動をしているわけですか。実際は陸海空の三幕からいろいろ指示が出されて、防衛庁を経由し、外務省を経由して、その指示として行われているということではないのですか。
  48. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 外務省は、防衛庁と常時種々の形の連絡を保っております。したがいまして、防衛庁側のいろいろな要請というものを外務省は受けまして、それをもとに現地大使指示をするということが常にあるわけでございますが、現地防衛駐在官は、大使指揮を受けまして自分の担当の業務に従事しておる。また現地でいろいろの活動をいたしました報告は、大使館から外務本省へ報告され、必要なものは防衛庁の方へも外務省から伝達をしている、こういうかっこうでございます。
  49. 中路雅弘

    中路委員 これは私のところへ説明に来られた首席事務官の人も、あるいは外務省人事課皆さんも、実際は陸海空の幕から指示が出されて、防衛庁から外務省を経由して行われているという説明も受けているわけですけれども、もちろん大使軍事に関してはそう専門的なことに詳しいわけではありませんから、大使指示をしてどういう情報収集に当たらせるとか、そういうことは私もあり得ないと思うのです。事実、やはり防衛庁指示でやられているということは間違いないと思うわけですが、いま連携のもとにとおっしゃいましたけれども、実際にはしかし防衛庁の意向なり指示外務省大使を通してその防衛駐在官にいろいろ指示を与えられている。これは実際はそういう活動になっているのじゃないですか。それは間違いないと思いますが……。
  50. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 防衛庁サイドからちょっと御参考のために申し上げたいと思います。  いま官房長からお話ございましたように、現地との直接の連絡は私どもやっておりません。これは実は、この防衛駐在官設置いたしますときの外務省と私どもの間の相互の取り決めがございまして、防衛庁が直接現地防衛駐在官連絡をとらないというお約束をしてございますし、現にそれをやっておりません。私どもの方は、外務省から、それぞれ在外公館から上がってまいります情報のうち当庁に関係があると思われるものを常時御連絡をいただいておるわけでございまして、同時に、私どもの方から外務省に、ある地域についての軍事情報について提供をお願いをする、こういうこともあるわけでございます。その場合に、その地域防衛駐在官がおる場合もございますし、おらない場合もございます。おらない場合におきましても、在外公館においていろいろ御工夫をいただいてそういう情報を私どもの方に御提供いただくということでございますので、全体の仕組みとしては、私どもの方から人を出向させましてすべて外務省にお任せをしておる、外務省の方からは、防衛駐在官ということに関係なく海外軍事情報について御提供を受ける、こういうことをやっておるわけでございます。
  51. 中路雅弘

    中路委員 いまのお話でも、確かに外務省を通してやっておられるわけですけれども仕組みはそうなっているわけですね。外務大臣あるいは大使を通してやっておられるわけですけれども、しかし軍事情報を、いまお話しのように皆さんの方からこういう情報が欲しいと指示される場合もあるし、上げていただいた情報外務省を通して防衛庁がとる、こういうことですから、外務大臣のあるいは大使指揮統制下にある、これは形式はそういうふうになっているわけですけれども、実際は各幕僚監部が指示をしてこういう情報収集するとか、あるいは上がってきた情報外務省を通してもらうということで、いわばそういう点では外務省というのが一つトンネル機関ですね、そういう形になっているのじゃないですか。
  52. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 これは、ちょっと見解の相違になるかと思いますけれども、私どもは、駐在官の人間を外務省出向するということをやっておりますけれども外務省出向いたしましてから後は私どもは直接コントロールする立場にございません。いまお話しになりましたように、各幕が出先の駐在官をコントロールするという御表現でございますけれども、そのためには私ども中の防衛庁の内局を通りまして、正確には防衛庁長官を通るわけでございますけれども、それでさらに外務本省から在外公館大使という経路を経るわけでございまして、これをトンネルにしてコントロールしておるかどうかということになりますと、私は、少なくとも実態的にはコントロールするという実態ではないというふうに申し上げてよろしいのではないかと思います。
  53. 中路雅弘

    中路委員 先ほど皆さん説明でもあるように、身分外務公務員になっている、しかし出先では制服を着るときもある。一等書記官、二等書記官でありながら、将補だとか一佐だとか制服を着て活動することもある。事実上名称防衛駐在官と呼んでおる。しかし外務省を通してですけれども、いまのお話にも、慎重な言い方ですけれども皆さんの方からいろいろ軍事情報について、こういう情報を集めるという、そういうことも要請し、上がってきた情報外務省を通じてですけれどもとっておられる。事実上その点では、防衛庁制服自衛官に対して外務省を通じて皆さんの方がいろいろ要請指示もされる。形は大使館大使指揮のもとにあるということですが、活動中身はいま説明されたような現状にあると私は思うのです。制服自衛官海外である場合には制服を着て活動するということは、訓練とか留学、視察等はあると思うのですが、長期にわたって、そして現地である場合には制服も着て活動する、これは憲法上許されないことじゃないですか。
  54. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 在外公館の重要な機能の一つとして情報収集ということがあるわけでございまして、これは在外公館勤務する職員いずれも日常そのために働くことを期待されているというかっこうにあるわけでございまして、これは防衛庁から外務省出向してきております防衛駐在官にとどまらず、国内の各経済官庁その他の各省から外務省在外職員として勤務している職員が二百名を超えておりますが、これらは、いずれもそのような活動を行うことが期待されているわけであります。したがいまして、たとえば経済情報収集ということになりますと、国内の経済各官庁から外務省に対して種々具体的な要求が毎日のように参ります。これを外務省は状況に照らしまして在外公館に訓令として調査を命ずる、あるいは情報収集を命ずる、こういうことが毎日行われているわけでございまして、これを受けて在外公館職員情報収集し、あるいは必要な調査を行ってそれを本省に報告してくる、それをまた外務本省関係の各省庁になるべく迅速にお伝えする、こういう仕事をいたしているわけでございまして、情報収集そのものは必ずしも防衛駐在官に限らないわけでございます。  防衛駐在官活動につきましては、先ほども説明申し上げましたように、外務省省令に基づいて防衛駐在官として公の名称の使用を認められ、そのまた活動を便ならしめるために、公の目的で行動する場合に制服着用を認められている、こういうことであるわけでございます。
  55. 中路雅弘

    中路委員 私の言っているのは、外務公務員としていろいろ情報収集に当たるということについて言っているのじゃなくて、それが現地では制服自衛官として——外務公務員身分一等書記官、二等書記官とあるでしょうけれども現地において制服自衛官として活動する場合も、いまおっしゃったようにあるわけですね。だから、そういう制服自衛官海外において長期にわたってそういう情報収集その他の活動をするということは、憲法上許されないことではないか。一般的に外務公務員として活動しているという他の通産省やその他の出向者の話を私はしているのじゃなくて、現に海外制服を着て制服自衛官として活動している、これは許されないことじゃないかということを言っているわけです。
  56. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 防衛庁から外務省出向いたしまして、外務公務員としての身分のもとに在外公館勤務し、その在外公館勤務する外務公務員としての元の防衛庁職員があわせて自衛隊肩書きを保有している、こういうことでございまして、これはあくまでもあわせての身分、こういうふうに私ども考えております。憲法違反というふうなことは考えておりません。
  57. 中路雅弘

    中路委員 あわせての身分という場合、兼任とか、皆さんの方でそれは併任官と言うのですか、兼務をするというので、これは予算委員会に出された皆さんの資料で「防衛庁職員で他の国家機関の職を兼務する者」という、いわゆる兼務というのは、この場合は外務省には十二名の兼任者がいるという資料は出ていますよ。しかし在外公館で、そういういま言われた兼任者がいるというようなことは、資料には出ていないのです。在外公館の場合は、皆さんの方で兼任者じゃないんですよ、はっきりと外務省外務公務員として活動されているんでしょう。防衛庁職員の兼任と言うが、兼任ならこの予算委員会の資料はでたらめじゃないですか。本省に兼任者は十二名いるという資料を出されているが、在外公館に兼任者がいるなんという資料はどこにも出てないですよ。この資料は違うのですか。
  58. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 外務本省で現に働いております防衛庁からの出向者は、身分防衛庁職員であり、そういう意味で兼務であるわけでございますが、在外公館勤務いたしております防衛駐在官は、あくまでも外務省職員として、外務公務員として在外公館に配属をされているわけでございますから、そういう意味での性格は違うわけでございます。
  59. 中路雅弘

    中路委員 だから、外務公務員として派遣されているわけでしょう。防衛庁職員としての兼任じゃないですね。制服自衛隊としての兼任じゃないですね。いまおっしゃったように外務公務員でしょう。だから私が言っておるのは、外務公務員である身分の人間が海外制服を着て活動する、これは問題があるじゃないかということを言っておるのです。外務公務員がどうして自衛隊の将校だとか一佐という制服を着て活動するのですか。そういうことがどこで許されているのですか。
  60. 今泉正隆

    ○今泉政府委員 お話のとおり、防衛駐在官在外公館で主として防衛に関する事務に従事するわけでありますが、駐在国で各国駐在武官との折衝上または国際儀礼上、自衛官の官名、これは階級ですが、階級を呼称しまして、かつ制服着用させることで職務遂行を容易ならしめておる。そこで階級を任命するという意味では兼務かもしれませんが、しかし、それでは自衛隊のどこかの部隊への兼務を命じておるかというとそうではありませんで、もっぱら一等陸佐あるいは一等海佐にあわせ任命しているということでございます。
  61. 中路雅弘

    中路委員 相手の方は、ちゃんと駐在武官とかあるいは階位があるでしょう。日本の場合に、そういう防衛駐在官というような名称は使っておられますけれども、いわゆる駐在武官とかそういうことじゃないですね。そういう制度はないですね。間違いありませんか。
  62. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 あくまでもこれは防衛駐在官でございまして、駐在武官ではありません。
  63. 中路雅弘

    中路委員 相手の方は駐在武官です。それに対応しなければいけないからといって、駐在武官でもない人間が、外務公務員制服を着て応待する。だからそれは、日本のいまの憲法立場から言っても反するではないか。向こうの方は、駐在武官だったら、それは制服を着て来ますよ。しかしこちらは、皆さんが言っておるように、身分外務公務員じゃないですか。それがどうして制服を着て活動するのだということを繰り返し聞いておるわけです。相手が制服を着ているからこっちも制服を着ていていい、そういうルーズなものじゃないでしょう。もう一度その点をお尋ねしたい。
  64. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 防衛関係する事務に従事ということになるわけでございますが、その際に相手国の国防省関係者との接触、あるいはそれに伴う防衛情報の入手、こういうふうなことにつきましては、一種の国際的な慣例というものがあるわけでございますから、そういうものに従って活動をする、またそのため、一等陸佐、一等海佐というふうな階級をあわせ保有させることが便宜である、こういう形になっているわけでございまして、防衛駐在官として外務省外務公務員としての活動であるという、外務公務員としての身分を持って在外公館に配属されているということは、何らその点で変わることはないわけでございます。
  65. 中路雅弘

    中路委員 便宜で活動するとか、国際慣行だとか、そういうことで海外制服自衛官長期にわたって活動するということはあり得ないわけですね。だから皆さんの方も、外務公務員ということの身分をはっきり保証して活動しているわけです。それが相手との関係の便宜だからということで制服自衛官活動する、それは私、憲法上も許されないことじゃないかということを言っているのです。単に便宜だということで、身分外務公務員だと皆さんがはっきり言っておられる、その外務公務員が軍の制服を着て活動する。それは、その方が便宜だからと、そういうルーズなことは許されぬじゃないかということを私は言っているわけなんです。その点はやはり明確にしてもらいたい。単に便宜だからとか、相手国の方は軍服を着ているから、そういうことじゃ、日本のいまの憲法上の立場から言っても——便宜だからということで、外務公務員身分の者が制服を着て活動する、これはとんでもないことじゃないですか。
  66. 藤尾正行

    藤尾委員長 中路君に申し上げますが、ただいまの御発言中に軍というお言葉がございましたけれども、日本国には現在、軍というものはございません。
  67. 中路雅弘

    中路委員 もう一度じゃ正確に言います。  いま委員長が言うとおり、軍はないんだからね。相手は軍の武官でしょう。それに対して外務公務員自衛隊制服を着て活動する……。
  68. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 たとえば、こういう発令があるようであります。何のたれ某外務省出向させる、そして外務事務官何のたれ某兼ねて一等海佐に任命する。でありますから、そういう身分を持っておりますから、その制服を着てもちっとも差し支えないと思います。
  69. 中路雅弘

    中路委員 私が言っていますのは、制服も着て活動する、それからいま言ったように内容は、実際は防衛庁出向であっても、外務省を通じて軍事情報もとり、そういう指示も与えておるという、実際にはこれは外務省のいわゆる外務公務員身分ですけれども自衛隊のいわば海外派遣班というような機能を事実上は果たしているんじゃないか。実際は防衛庁海外出先機関になっているんじゃないか。外務省トンネル、そういう性格を持っているから、この点は重要な問題だということを指摘しているわけなんです。  もう少し具体的に私、これから聞いていきたいと思うのですが、軍事情報を主な任務とするこういう人たちは、皆さんの言う防衛駐在官、これはどういう方法で軍事情報収集するのですか。先ほどもちょっとお話しをされましたが、軍事情報収集する方法をまとめて簡潔にお話し願いたい。
  70. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 一般的に申しますれば、先ほど申し上げましたように、たとえば国防省との接触ということを通じての情報の入手ということが当然行われておりますし、また、それが一番普通の方法でございますが、国防省に限らず、その他の関係政府機関等にも接触を持つでありましょうし、また新聞関係者等々の接触を通じての情報の入手というふうなこともあると思いますし、いろいろな形がその任地の状況によって考えられると思います。
  71. 中路雅弘

    中路委員 常識で言って、重要な軍事情報を入手するということになれば、一般的には公にされているもの、あるいは接触を通じての情報程度では、なかなかつかめないんじゃないかと思うのです。いまのおっしゃった活動ですと、大体一般的な公にされている、あるいは公の機関として接触する、そういう中で得られる情報、それを集めているんだ、活動しているんだというお話ですが、それに間違いありませんか。たとえば、いわゆるスパイ活動だとか非合法的な手段、非常に際どい手段で情報収集する、そういうことはやっていないわけですか。
  72. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 いま最後に御指摘がございましたスパイ活動的なことあるいは際どいこと、そういうことは全然やれる体制にございません。
  73. 中路雅弘

    中路委員 そういうことはやっていない。たとえば通信の傍受だとか暗号の解読とか、そういう例で挙げましたけれども、そのようなことはやれる体制でもないし、やっていないということですね。
  74. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 先ほど御答弁申しましたように、そのようなことをやれる体制が現にございませんし、また、したがってやってもおりません。
  75. 中路雅弘

    中路委員 そういうことはやっていないという御答弁ですが、そうだとすれば、いわゆる制服自衛官でなくても、防衛庁事務官でも一般的には勤まる仕事ではないかと思うのですが、先ほど私が質問しましたように全員制服自衛官ですね。これが、先ほどお話しのような活動ならば、防衛庁事務官で十分勤まるんじゃないかと思うのですが、全部が制服自衛官、これは後でもう少し詳しく聞きますけれども、この関係はどうなんですか。
  76. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 実際問題といたしまして、国防省に連絡をとり、情報の入手に努めるという場合にも、専門的な知識を持った自衛官が、外務省身分を持って在外公館勤務し、そこで活動している方が、はるかに的確な情報の入手が可能であるというのが実情であろうと思います。また相手方の方も、専門的な知識あるいはバックグラウンドを持った館員との接触を通じて、自分たちの考えを正確に伝える、理解してもらう、こういうことに対する一つの信頼感というものもまた出てくる、こういうのが実情であろうかと思います。
  77. 中路雅弘

    中路委員 一般的には、専門的な知識を持っていた方がよりベターだというお話だと思うのですが、在外公館勤務制服自衛官ですね、これは、いずれもベテランの情報幹部だと思いますが、たとえば防衛庁から出向している二十三名のうち、陸上自衛隊は十三名ぐらいいますね。(大河原(良政府委員「十二名です」と呼ぶ)十二名ですか。それで、あと海、空。陸上自衛隊だけで例を挙げますと、陸上自衛隊出向、これはいま出向しているのもそうですが、歴代の陸幕の二部の出身者、これは全部出向者であると思いますが、間違いありませんか。
  78. 今泉正隆

    ○今泉政府委員 赴任直前の補職から言いますと、ほとんど陸上幕僚監部の第二部、情報関係の部で勤務いたしております。それじゃ、先生のおっしゃるとおり、いわゆる情報専門の者かといいますと、それは必ずしもそうではありませんで、その前職でありますと、学校教官もおれば、いわゆる防衛訓練、そういったものの専門家もございます。
  79. 中路雅弘

    中路委員 たとえば中国の駐在官の吉原一佐ですね、これはもとは三部です。しかし出向前は、二部に行って出向していますから、全員が陸幕の二部付になって、二部から出向という形になっているわけですね。これは間違いありませんね。
  80. 今泉正隆

    ○今泉政府委員 ただいま申しましたとおり、出向直前の補職は、ほとんど全部二部勤務でございます。
  81. 中路雅弘

    中路委員 陸幕二部について、少し具体的に聞きたいのですが、二部の機構は、簡潔に言ってどうなっていますか。
  82. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 二部の機構は、ただいまあれが出ましたように、いまの海外在官に関することということで、したがいまして、その出身いかんにかかわらず、出向前に二部に一時籍を置くというのは、そういうことでございますし、それから二部は、陸幕の必要といたします情報活動、これをやっておるわけでございまして、情報収集、分析、それから評価、こういったものの一貫的な事務を所掌しておるというふうに申し上げてよろしいかと思います。
  83. 中路雅弘

    中路委員 私の聞いているのは、二部の機構はどうなっているのですかということをお聞きしているのです。簡単なことですから……。
  84. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 二部の組織は、総括班、これが業務計画、渉外、こういうことをやります。それから見積班は情報見積もり。それから情報第一班は国外情報でございまして、情報第二班は技術情報、調査研究、それから情報の電計、こういったものをやっております。それから保全班でありますが、これは秘密保全と国内情報。それから地誌班は地誌、気象、こういったものをやっております。
  85. 中路雅弘

    中路委員 地誌班まで言われたので、じゃ、もう一つ、二つですから、機構はやはりきちっと言ってください。どうして地誌班でとめちゃうのですか。それだけですか。
  86. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 陸上の組織はそれでございますが、それからもう一つは、二部の別組織として二部別室というものがございます。
  87. 中路雅弘

    中路委員 これは皆さんの方のいろいろな出版物にも、いま私がお尋ねしていることは出ていることですね。たとえば「自衛隊の現況」という雑誌を見ましても、二部の組織として、いま一つ落としてあるが、総括班、見積班、情報一、情報二、保全班、地誌班、それに渉外室というのがありますね。それと、いまおっしゃった二部別室。渉外室というのは、この雑誌でも七つ出ていますが、間違いありませんか。先ほど地誌班までしかおっしゃっていないので……。
  88. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 ただいまは渉外は総括班の所掌事務になっております。
  89. 中路雅弘

    中路委員 そうしますと、渉外というのは、いま総括班に入っていて、六つですね。それに二部別室がある。間違いありませんか。
  90. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 そのとおりでございます。
  91. 中路雅弘

    中路委員 この二部に所属する自衛官は、これらのいまおっしゃった六つ、別室を入れて七つですが、このいずれかに所属しているわけですか、それとも二部長直轄といった人もいるのですか。このいまおっしゃった組織の中に全部入っていますか。
  92. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 いまの二部別室を別にいたしまして、全部ここへ入ることになっております。
  93. 中路雅弘

    中路委員 そうしますと、先ほどの在外公館出向しておられる陸幕二部出向の外交官は、これらのいずれかの班にみな所属しているということになりますね、出向前は。
  94. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 参ります前は、身分的に二部に集めるということでございまして、所属は、実は私、いまはっきり存じておりませんが、この総括班に一時籍を置くということになるのではないかと思います。
  95. 今泉正隆

    ○今泉政府委員 赴任直前の補職として、先ほど私が言いました陸幕二部付を命じます場合には、この班に属せしめませんで、言ってみれば二部長直轄として事前の勉強をするという意味の補職でございます。
  96. 中路雅弘

    中路委員 そうしますと、その出向の前は直轄になるわけですね、いまおっしゃったように。
  97. 今泉正隆

    ○今泉政府委員 出向直前の陸幕二部付というのは、二部長直轄で事前に任国の勉強をするということになります。
  98. 中路雅弘

    中路委員 いま六つと別室とおっしゃいましたが、別室の問題はきょうはよしましょう。詳しくはまた別の機会にして、簡単にこの六つの班のそれぞれの人数、それからこの班にいわゆる幹部、佐官、尉官ですか、幹部クラスというのはそれぞれ何名いるのですか。いまわかりますか。
  99. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 ちょっと急の御質問でございますので、手元に資料がございませんので、ちょっと調べさせていただきませんと、ただいまの御質問にお答えできないと思います。
  100. 中路雅弘

    中路委員 それじゃ、いまのこの六つの班の人数、それからいわゆる幹部クラスの佐官、尉官、これがそれぞれ何名かというのはぜひ出していただきたい。いいですね。
  101. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 調査いたしまして提出をいたします。
  102. 中路雅弘

    中路委員 先ほど、この六つの班について簡単にちょっとおっしゃいましたが、聞き取れないところもあったので、もう一度簡潔に、一班から六班までどういう任務を持っているのか、ちょっと聞き取れない部分もありましたし、簡潔なところもあったので、六つの班をそれぞれお話し願いたい。
  103. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 総括班は陸幕二部としての業務計画、それから渉外をやっております。それから見積班は情報見積もりをいたします。それから情報の第一班は海外情報でございます。それから情報の第二班は技術情報、調査研究、それから電計を扱っております。それから保全班、これは秘密保全、それから一般的な保全、それと国内情報、それから地誌班は地誌、気象、こういうのが主要な任務でございます。
  104. 中路雅弘

    中路委員 後でこれらの人数は出していただきますが、幹部クラスは、いわゆる情報幹部といいますか、情報幕僚として当然だと思いますが、教育訓練を受けた人たちだと思いますが、いわゆる調査学校の出身者に間違いありませんね。
  105. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 調査学校の出身者が多いと思いますけれども、全部が全部そうであるというふうには考えておりませんが、これもよく調べませんとちょっとわかりません。
  106. 中路雅弘

    中路委員 いわゆる皆さんの言う情報幕僚ですか、このクラスの幹部は情報幕僚と言っているわけですね。そういう名称で呼んでいるわけですね。
  107. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 制服の間でございますか。——いやちょっとそれは存じませんが、それは通称でそういう情報幕僚という言い方をしているかどうかということですね。(中路委員「通称じゃないですよ。」と呼ぶ)正式にですか、正式にはそういう名称はございません。
  108. 中路雅弘

    中路委員 これは皆さんの出されている、陸上自衛隊の出されておる「達」ですが、陸上自衛隊のこの「達」の中に「陸上自衛官特技区分細則」というのがありますね、その中に〇〇二〇で情報幕僚というのがありまして、情報幕僚というのはどういう幹部を言うのかという細かい細則が出ていますが、これは御存じですか。
  109. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 ただいま挙げられました資料を、ちょっと私、見ておりませんので存じておりませんが、まあいずれにいたしましても、情報幕僚という正式の呼称は法令上はございません。
  110. 中路雅弘

    中路委員 これは皆さんが出しておられる「達」ですから、これも後で出していただきたいと思うのですが、この「達」の中では情報幕僚の資質として「次の各項の一に該当すること。」ということで「幹部学校基本課程及び調査学校情報特別課程を修了し、次の各号に該当すること。」というので五つ挙げています。「(1)担当任務について専門的知識を有すること。(2)陸上自衛隊の任務を阻害するような団体又は部隊の戦略、戦術、策謀、心理及び特性について知識を有すること。(3)策略性、機敏性及び理智に富み指導力あり積極的性格を有すること。(4)なるべく外国語の知識を有すること。(5)特別調査に合格したもの」それから「特技番号が〇〇二〇である」それから二、三と資格が書いてありますけれども皆さんの方で情報幹部、情報幕僚というのはこういう資質が必要だ、また課程も必要だということを出されている。この中にもたとえば「陸上自衛隊の任務を阻害するような団体又は部隊の戦略、戦術、策謀、心理及び特性について知識を有する」というようなことまで書かれているわけですが、いずれにしましても、いま在外公館出向の形で派遣をされている制服自衛官は、この陸幕二部の出身、情報の二部ですね、その幹部である。みんな将補か一佐でしょう、防衛駐在官は。幹部であることは間違いないわけです。情報幹部、情報幕僚であることに間違いない。情報幕僚はここでも皆さんが「達」で書いているように、このような課程、それから調査学校の特別な課程を終了しなければならないということがありますから、いわば一級の情報幹部といいますかベテランですね、これが防衛駐在官として外務公務員身分海外派遣をされている、事実はこういうことになりますね。二部の一佐ですから、情報幹部であることは間違いありませんね。
  111. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 先ほど人教局長からも御説明申し上げましたように、外務省出向という関係で陸幕の二部長直轄の身分にその出向の直前に移しまして、それで任国の勉強をしてもらってそれから出かけるということでございます。したがいまして、それぞれ専門の分野に分けますと、野戦の関係あるいは海でございますと潜水艦の専門家とか、部門が最近は狭くなっておりますので、それぞれの専門家のバラエティーに富んだキャリアを持っておる者が選ばれてくるわけでございまして、いわゆるただいまおっしゃっている情報幕僚と申しますか情報幹部といいますか、そういうものであるかどうかということになると、必ずしもそうではないと申し上げた方がよろしいのではないかと思います。  私ども外務省にこういう人々を出向させますのは、できるだけ現地におきまして大使のお役に立つような者ということで、できるだけ幅広い知識を持った者を選ぶようにしておりますが、なかなかキャリアの関係で必ずしも幅広い知識ということが得られないので残念に思うわけでございますが、いずれにいたしましても、片寄った知識でない者を選定するということを考えておるわけでございます。
  112. 中路雅弘

    中路委員 それじゃ、もう少し具体的にひとつ聞いてみましょう。  いま外交官の身分になっている自衛官の中に、あるいはこれまで在外公館勤務する外交官として活動してきた自衛官の中に、アメリカの陸軍特殊戦学校に留学した人がおると思うのですが、これはおわかりになりますか。
  113. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 ちょっと各個人の細かい経歴をずっと調べませんとわかりませんので、何分にも多くの人数にわたるものでございますから、具体的にだれであるかを御指摘いただきましてお答えを申し上げたいと思います。
  114. 中路雅弘

    中路委員 じゃ、一例でお聞きしましょう。  前のタイの防衛駐在官片岡博文という人、これは特殊戦学校の留学者だと思うのですが、間違いありませんか。
  115. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 恐らく一年にならない短い期間の留学であったと思いますので、個人の経歴全部を持ってまいりませんと、そこに行っておったか、私、ちょっといまの段階ではわかりません。
  116. 中路雅弘

    中路委員 これは陸上自衛隊の公報にも出ていますから間違いないと思いますが、陸幕の第五百一号公報ですね。「特殊戦幕僚及び同技術課程等研修のため昭和四十年一月から、アメリカ合衆国に出張を命ずる」当時は三等陸佐片岡博文、陸上幕僚監部というので公報に出ていますから、確かめていただきたいのですが、間違いないと思うのです。  一例で挙げますけれども、前のタイの大使館に外交官として出向していた片岡、出向のときは一等陸佐ですね。公報によりましても、アメリカの陸軍特殊戦学校に、特殊戦幕僚及びその技術課程に研修留学をしているわけです。  それでは、一人一人名前は聞きませんけれども、このアメリカの特殊戦学校留学者というのは、いままで何名ぐらいいるのですか。
  117. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 これも急の御質問でございますので、ちょっと調べませんとわかりませんが、よく調べまして御回答申し上げたいと思います。
  118. 中路雅弘

    中路委員 それでは、この特殊戦学校の留学者は何名か、名前と当時の階級、所属、現在の所属、これはぜひ調べて出していただきたいと思いますが、いいですか。
  119. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 調べて御提出いたします。
  120. 中路雅弘

    中路委員 提出していただくということなので先に進みますが、ところで、このアメリカの陸軍特殊戦学校というのはどういう学校ですか。
  121. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 特殊戦学校というのも、実は私、初めて聞きますのではっきりしたお答えを申し上げられませんが、要するに通常の野戦その他の形態をとらないもの、たとえばゲリラ戦とか特殊な形を持つものを指しておるのではないかと思いますが、これも推測でございますので、はっきりしたものは後でお答え申し上げたいと思います。
  122. 中路雅弘

    中路委員 防衛局長がその程度では困るですね。たとえばこれは「新防衛論集」に元陸将松谷さん、防衛研修所の副所長をやっておられた方が特殊戦学校のことを詳しく書いたのがありますが、その中でアメリカの特殊戦学校についてこう言っています。「米陸軍特殊戦争学校は、特殊戦争を「非通常戦争、内部防衛、発展、心理作戦等に関連する軍事的並びに準軍事活動と対策」と規定している。非通常戦争とは、ゲリラ戦のほか、」いまゲリラ戦だけしかおっしゃいませんでしたけれども、「ゲリラ戦のほか、敵対政府の転覆等の政治活動を含み、内部防衛、発展とは内乱を防ぐための軍事行動、政治、経済、社会全般にわたる対策、心理作戦とは住民の意志に影響を及ぼす広報活動等をさしている。こうしたことからみても、特殊戦争は軍事行動だけではなく、政治や経済全般にわたる広範な行動に発展する可能性がある。」ということから詳しく論文を書いておられますけれども、ここでも言っているように、いわゆる敵対政府の転覆活動、政治活動、こういったものの研究をやっている。課程の中にもあるわけです。こういう学校なんですね、特殊戦学校というのは。ここにアメリカの課程も出ていますけれども、特殊戦の幕僚及び技術課程とは、まさに敵対政府の転覆等の政治活動を含んだ謀略スパイ活動を行う幹部の養成学校である。  こういう物騒なところへ留学して学んだ人を、外務公務員として、いまの場合タイですが、いわゆる東南アジアの激動しているタイに配置するということから見ますと、先ほど大河原さん言われたように、一般的な軍事情報を集めるのだ、そういう特殊なスパイ活動だとか非合法的な活動は一切やらないのだ、それは防衛事務官よりも専門家の方がよりベターだから、そういう人たち派遣しているのだというお話ですけれども、そうだとすれば、このような特殊戦学校、あるいは先ほど挙げましたが、陸上自衛隊が「達」で情報幕僚と言っているのは、こういう出身者が主として多いと思うのです、陸幕二部の幹部には。そういう人たちを集めて防衛駐在官として海外派遣する。先ほど大河原さん言われた任務の範囲ならば、このような敵対政府の転覆活動を研究するこういう特殊学校出身者を防衛駐在官として派遣する、こういうことは任務から言っても当然必要ではないし、やるべきではないと思うのです。  いま私は一例を挙げましたが、時間もないので一人一人の名前を挙げて御質問しませんけれども、あとから資料も出していただくということですから、この防衛駐在官との関係で調査学校の出身者であるかどうか。この片岡博文という前のタイ防衛駐在官が、いま私が言いました特殊戦学校の修了者だということは外務省の方は御存じですか。
  123. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 私、その事実関係について承知いたしておりません。
  124. 中路雅弘

    中路委員 外務省は承知してない、そして現地防衛駐在官が集める軍事情報は、一般的な軍事情報であって、そういう特殊な非合法な活動は、スパイ活動は一切やっていないのだというさっきのお話ですね。そうだとすれば、こういう特殊な敵対政府の転覆活動やスパイ活動を特別研究する学校、ここの留学生をよって防衛駐在官として派遣する、しかも、その責任を持つ外務省はどういう出身者であるかも知らない、この点について私は、外務省の責任も大きいと思うのですが、防衛庁の方で、いま大河原さんは知らないとおっしゃったのですが、こういう派遣する人の経歴、そういう点については防衛庁外務省の間に何も話はないのですか。
  125. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 私どもは、駐在官の適格者を選定いたします場合には、もちろん本人の能力それからキャリア、そういったものを全部含めまして総合的に、外務省でお役に立つような人間を選んでおりますので、もちろんその中で、いまの細かいあれでございますけれども、そういうキャリアがあったかないかについても、防衛庁としては当然知っておることだと思いますし、外務省に対しては総合的な御判断を申し上げて、出向の御採用を願うということをやっておるわけでございます。
  126. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 防衛庁から外務省出向願う方々については、防衛庁の御推薦に基づくわけでございますが、当然、略歴などもちょうだいいたしておりますから、外務省の記録の中に、当時の片岡防衛駐在官の履歴は当然ありますから、調べれば過去の履歴は明らかになると思いますが、私はたまたま、ただいま承知しておりませんということを申し上げたわけでございます。  なお、一般的に申しまして、タイならタイにおきまして、そのようなスパイ活動あるいはゲリラ活動というふうなことはやり得ない、またやっておらないということは申し上げてよろしいと思います。
  127. 中路雅弘

    中路委員 いま防衛庁は、外務省に一番お役に立つ人を防衛駐在官として派遣したのだというお話なんですが、特殊戦学校まで出て、こういういわゆるスパイ活動、敵対政府の転覆活動、こういったものを専門に教育を受けた者が一番お役に立つのだということで防衛駐在官として出向させる、外務省の方では一般的なそういう活動はやらないのだ、当然だと思いますけれども、一般的な軍事情報を集めるだけだということだとすれば、こういう経歴の人たち派遣される、お役に立つということについて、私は、こういういわゆるスパイ活動ですね、先ほど特殊戦学校がどういう学校かということで、防衛研修所の副所長が書いている中身も一部読みましたけれども、こういう人たち防衛駐在官として主として派遣されていく、いわゆる情報幕僚といわれている人たちですが、これは好ましいことかどうかという点について、いまの論議をお聞きになっていた外務大臣に、私は一言お聞きしたいと思うのです。
  128. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま伺った限りのことが事実であると考えまして、その限りでお答えいたします。  公務員というのは、できるだけいろいろなことを勉強する必要があります。防衛に従事する公務員は、あらゆることをその範囲で勉強すべきであります。核兵器の勉強をしたから、核兵器を使うということになりますでしょうか。ゲリラ活動の勉強をしたから、ゲリラ活動をするということになりますでしょうか。そういうりっぱな勉強をして、たくさん知識を持っておられる方に来ていただければ、私どもとしては大変にいいことだと思っております。
  129. 中路雅弘

    中路委員 私は、防衛駐在官の任務について一番最初からお聞きしているわけです。どういう活動をしているのだということをお聞きをして、活動はこういう活動なんだ、その活動に適した人間を配置するのは当然じゃないですか。しかも、こういうことはやらないのだということを言っているのに、逆にまたそういうことを勉強した人間を配置する。ですから、いま外務大臣がおっしゃったのは、私はえらく矛盾すると思うのです。活動はこういう任務だ、そう私が質問しましたら、それはやらないのだということを大河原さんは答弁されている。そういう非合法な活動とかスパイ活動はやらないのだ、これは当然のことなんです。しかし、そういうことを勉強している人間を、またそこへ集中して配置する、外務大臣、こういういまの答弁では、余りにもひどいのじゃないですか。  私の質問しているのは、外務省はこういう任務を持っているのだとおっしゃっている、こういうことはやらないのだとおっしゃった、そのやらないのだということを勉強している人間を、今度はそこに配置する、これについて好ましいことであるのかどうかということを私はお聞きしている。一般的なお話を聞いているわけじゃないのです。核兵器を勉強した人間が必ずしも核兵器を使うとは限らない、そういう一般的なことじゃなくてそういう話だ。  いま、たとえば片岡という具体的な実例で御質問したのですが、外務省はそういう活動はしないのだと言う。しないのだと言う活動を、特別に留学までして勉強している人間を派遣するということは好ましいかどうかということをお聞きしているのです。もう一度御答弁を願います。
  130. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その特定の人のことを存じませんけれども、承った限りでは、私が先ほど申し上げました一般論が、その場合にも当てはまると思います。先ほど申し上げたとおりでありまして、残念ながら中路委員とは所見を異にすると申し上げるしかありません。
  131. 中路雅弘

    中路委員 いま私は、一例でお話ししましたが、いま防衛庁は資料も持っておられないということですし、これは私、この機会に一言言っておきたいのですが、皆さんの方で必要な資料、きょう質問してお出しをしますと言われた資料でも、私たちが事前にお話ししても一切拒否された。お尋ねしても出されない。だから質問も長引くわけですけれども、したがって委員会で、その基礎的なところから御質問しなければいけないという状態なんです。  いま片岡という方のことをお尋ねしましたけれども、あわせてもう一、二、一緒に調べて報告のときに出していただきたいのですが、たとえばベトナム駐在の黒田一等陸佐、それからカンボジア駐在の田辺一等陸佐、タイの篠崎一等陸佐、余り挙げてもあれですから、東南アジアを何人か挙げましょう。こういう人たちが調査学校を出てアメリカの特殊戦学校に行きました。日本の調査学校のどういう課程を修了しているのかということも、後で先ほどの報告にあわせて、具体的な名前でもお尋ねをしておきますから、調べて報告していただきたい。いいですか。
  132. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 調べまして提出をいたします。
  133. 中路雅弘

    中路委員 後で提出していただくということなので、またその機会に続けてよくお話ししたいと思います。  いずれにいたしましても、在外公館出向をして外務公務員となっている制服自衛官が、いずれも自衛隊情報幕僚、情報幹部であることは間違いないわけです。しかも、いま陸上自衛隊の例で見てきたように、いずれもベテランの情報幹部です アメリカの特殊戦学校まで勉学に行っている。中にはいま一例で挙げましたけれども、片岡という人は、特殊戦学校で破壊、謀略スパイ活動の研修を受けた者ですね。先ほども外務省の方がおっしゃっているように、一般的な情報を通常の手段で入手するということ、こういうスパイ活動や非合法的な活動は、軍事情報を集める場合にはやらないのだというお話から言って、逆にそういうことを専門に勉強する課程の学校の出身者、これが防衛庁制服自衛官として駐在している、この点は当然疑問を感ぜざるを得ないわけです。  しかも外務省事務官でありながら、最初お話ししましたように、その国では制服着用している、活動は事実上駐在武官として活動している、これは私、憲法上でも許されないことだと思います。中身で言いますと、実質的には外務省トンネルにして幕僚監部の指揮命令を受けて活動している、こういう点でも憲法上許されないだけではなくて、いまお話ししましたように、外務省自身、そういう活動はやらないのだという否定ですね、当然ですけれども、逆にそれを専門に勉強している者を派遣する、この防衛駐在官の問題では、私はその点で大きな疑問を抱かざるを得ないわけです。  しかも、いま激動の東南アジアあるいは韓国——韓国はきょうは例を挙げませんでしたけれども、こういうところへ集中して派遣されている。この点は私、重要な問題だと思いますが、外務大臣は、この点について好ましくないというお話もされない、あたりまえのような答弁をされていますけれども大河原さんが言われたことをもう一回外務大臣にお聞きしましょう。海外における軍事情報収集、そういったものは、一般的には大河原さんがさっきおっしゃったような方法での入手、いろいろ公の刊行物や、あるいは公的な機関と接触して入る情報、そういうものを中心に収集しているのであって、当然ですが、スパイ活動や非合法的な活動、そういう際どい活動を通じて得るような、外交官の身分としてそういうことはやらないのだということをおっしゃっておりますけれども、それは間違いありませんか。外務大臣からもお聞きしたい。
  134. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 海外におります防衛駐在官情報収集する際に、スパイ活動とか不法な方法によって収集するというようなことはありませんし、官房長が申し上げましたようにまた事実できません。しかしそういう防衛駐在官は、できるだけ防衛問題についての各般の知識を持っていてくれることが望ましい。知識があるということは、それを実行するということとは関係のないことであります。  次に、自衛官の称号、資格を持っておる者が、自衛官の服を海外で着るということは一向に差し支えないことであります。
  135. 中路雅弘

    中路委員 私は、この点では外務大臣と大きく見解も異にするわけです。私たちが先ほどから質問している問題を、もう一度まとめて趣旨をお話ししますと、はっきり外務公務員だとおっしゃっている身分防衛駐在官皆さん防衛駐在官と呼んでおりますが、これが現地制服自衛官として活動する、そして実際は各幕からの指示軍事情報を取り、また、そこで外務省を通して報告をする、外務省はその点ではトンネル機関であって、私が言っていますように、それは防衛庁制服自衛官海外における事実上の活動班と言っても間違いではない、そうだとすれば、これは憲法上でも重要な問題だということが第一点であります。  もう一つは、皆さん防衛駐在官活動は、いま言ったような非合法的な活動やスパイ活動はやらない、いろいろの技術を身につけているけれども、それを身につけたからといって、すぐやるということではないというお話です。それを今度は専門に勉強している、しかしそれは、いろいろの知識を身につけるというのじゃないのです。情報幕僚、情報幹部というのは、先ほど陸上自衛隊の「達」で読みましたように、どういう資格かということが明確にされています。皆さんがそういう活動をやらないのだと言うことを逆に専門に身につけた人間を、しかも、そう人数は多くないですが、アメリカの特殊戦争学校出身者、それを派遣をするということは、好ましくないどころか、やはり大きな疑惑をその活動に抱くのは当然のことであります。政府の転覆活動からスパイ活動まで専門に研究をする、私は、外務大臣の答弁がありましたけれども、この点については、今後も厳しく追及をしていかなければならない大きな問題だということ、押し問答になりますから、これ以上、外務大臣に御答弁願わないでいいわけですが、強く指摘をしていきたいというふうに思います。  それから防衛庁に、先ほど質問の過程で幾つか資料の提出でお伺いしまして、すべて調べて提出をするという御返事をいただいておりますが、これは、できるだけ早く出していただくということをもう一度念を押したいのですが、よろしいですか。
  136. 藤尾正行

    藤尾委員長 その点は委員長において取り計らいます。
  137. 中路雅弘

    中路委員 答弁をしてください。先ほど提出するという委員会での答弁ですから……。
  138. 藤尾正行

    藤尾委員長 その趣旨で委員長から取り計らいます。
  139. 中路雅弘

    中路委員 時間が来ておりますので終わりに一、二点だけ。これは当委員会として視察に行った問題ですので、お聞きしておきたいと思いますが、OTHレーダーの問題です。  時間がありませんから一、二問にしますけれども、OTHレーダーについて、新聞報道では、アメリカ政府が日本の所沢、沖繩の泡瀬、北海道の千歳の三カ所に設置しているOTHレーダーを廃止すると日本政府に通告したような報道もなされているわけです。  外務省にお聞きしたいのですが、OTHの問題についてアメリカ政府からどのような通告が来ているわけですか。
  140. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 このOTH施設の運用をやめます問題については、去る二月十二日に発表されましたシュレジンジャー国防長官の年次国防報告の中で述べられているわけでございます。それで、日本政府といたしましては、アメリカ側政府に対して、この事実関係について確認を求めておったわけでございますが、三月七日、在京米国大使館から、日本にありますOTH施設、千歳、所沢及び泡瀬の施設を含めまして、全世界にあるOTHの送信施設の運用をすべて米国の七五会計年度中、つまり本年の六月末までに終止させるということについては、シュレジンジャー長官の国防報告に述べられているとおりであるということを確認してまいりました。そして、このOTH施設が設置されておる在日米軍施設、区域の今後のあり方については、合同委員会の下部機構であります施設分科委員会において今後検討されることになるというふうに申してまいった次第でございます。
  141. 中路雅弘

    中路委員 六月末が会計年度なわけですが、この機能停止の時期について、六月末という明確な連絡が向こうからあったわけですか。その点と、もう一つは、機能停止ということになっていますね。OTHの施設、基地の撤去ということでなくて、機能停止ということになりますと、機能を停止してアメリカ側としてなおこの施設を他に転用していくという考えもあって機能停止ということで来ているのですか。
  142. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 お説のとおり、これはOTHの機能を停止じゃなくて、終止するわけでございますけれども、これがいつまでに終止するかということは承知しておりません。いずれにしましても、本年の六月末までにはやめるということになっておるわけでございます。  それから、その機能が終止しました後の施設の問題に関しましては、先ほども申し上げましたように、施設分科委員会で日本側と話し合っていきたいということでございます。また現実の問題としましても、OTHの送信施設は、普通の通信施設としても利用されておりますので、この点は、機能を停止することが直ちに施設の撤去というふうにはつながらない次第でございます。われわれとしては、米軍の必要と日本側の要望その他を勘案して、アメリカ側と十分話し合ってまいりたいと思っております。
  143. 中路雅弘

    中路委員 最後に、いまおっしゃったように、機能停止なわけですが、しかし、この委員会としても所沢を視察に行きました。他の北海道、沖繩の場合もそうですが、いずれもOTHレーダーの基地の施設そのものの撤去を、これはもう与野党、保守、革新を問わず、地方自治体、住民、挙げて強く要求しているわけです。当委員会として視察をしたときも、所沢OTH施設、基地について現地で強い要望が出されていたわけですが、アメリカと話し合いに入る場合に、自治体や住民の皆さんから、いままで要望、返還を強く要求しているわけですから、外務省としてこういう立場で交渉されるのが当然だと私は思いますが、その点について外務省皆さんの意思、これをお聞きして質問を終わりたいと思います。
  144. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 地域住民の方々の御要望については、われわれも十分承っておりまして、ことに所沢の方面からいろいろな具体的な要望も承っております。われわれとしましては、それを十分踏まえましてアメリカ側と交渉してまいりたいと思います。
  145. 中路雅弘

    中路委員 終わります。
  146. 藤尾正行

    藤尾委員長 引き続いて木下君の昨日の質疑を続行するのでありますけれども外務大臣がいま総理大臣との会談のために十分程度席を退出をさせてほしい、こう言われ、委員長において許可をいたしました。外務大臣が帰ってまいりますまで暫時お待ちをいただきます。——昨日の木下君の質疑に関し、政府より発言を求められておりまするので、これを許します。宮澤外務大臣
  147. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨日の木下委員の御質疑の中で、答弁を留保させていただいた部分がございますので、この点につきまして政府委員から御説明を申し上げます。
  148. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 昨日、木下委員から御質問がございました件につきまして、順序を立てまして御説明申し上げたいと思います。  地位協定によります日米両国間の合意といたしましては、米軍構成員、米軍軍人等の公務執行中の事件及びその他の米国軍隊が法律上責任を有する事件にかかわる損害賠償に関しましては、御承知のとおり地位協定の十八条五項に定められております手続によって処理されることになっております。他方、アメリカの軍隊が法律上責任を有しない事件、すなわち米国軍人等の不法行為で公務執行外に生じた事件にかかわる損害賠償につきましては、米国政府は本来その賠償を行う法的義務はないわけでございますが、軍人等が頻繁に移動するということにかんがみまして、その請求権の処理を通常の日本における司法手続のみにゆだねるということは、現実の被害者救済が確保されないおそれがあるという考慮から、米国当局が「慰謝料」エクスグラシア・ペイメントを支払って被害者の救済を図るということが、この十八条の六項に定められている次第でございます。この十八条六項の場合の米国の支払いは、米国政府自体が法律責任に基づいて支払い義務のある支払いではないのでエクスグラシア・ペイメントという形で行われているのでありまして、地位協定の日本文の「慰謝料」は、このエクスグラシア・ペイメントを意味するものでございます。  したがいまして、十八条六項の「慰謝料」は、被害者の請求を満足するために直接の加害者ではない米国当局が自発的に支払うものでございますが、請求人が、この米国当局の支払いを申し出る慰謝料の額を、請求を完全に満たすものとして受諾し得ない場合には、請求人は十八条の六項の(d)の規定に基づきまして、直接の加害者である米国軍人等に対して、通常の司法手続による救済手段に訴えることができることは言うまでもない次第でございます。
  149. 藤尾正行

    藤尾委員長 質疑を続行いたします。  木下元二君。
  150. 木下元二

    ○木下委員 そういたしますと、昨日も言われておりました見舞い金というものと変わりない。十八条六項の(b)に言う「慰謝料」というのは、これはエクスグラシア・ペイメントということで、これは見舞い金である、こういうことだと思います。いろいろ詳しく言われましたけれども、そういうところに落ちつくと思うのです。その点については、きのうも少し議論をいたしましたように、見舞い金ということでは慰謝料と違うではないか。慰謝料というのは、きのうも指摘をしましたように、これは日本では法的概念が確立をいたしておりまして、精神的、肉体的苦痛に対する損害の賠償、これが慰謝料なんだ。そういう慰謝料としてこの(b)には書かれておりながら、しかしそうではない、見舞い金だ。しかし、これはそういうふうには理解できないわけなんですよ。客観的な六項(b)の条項の解釈からして、そういう解釈には立ち得ないわけであります。これは私の見解というようなことではなくて、一般的な法解釈といたしましてそういう考えには立ち得ない。  そこで、とうとうあなた方の方では統一見解をお出しになるということで、考えられたと思うのですが、少しも変わっていないじゃありませんか。なぜ、これを見舞い金だというふうに言われるわけですか。いま言われましたのは、いろいろ趣旨を言われました。公務外の場合には、日本に駐留している米軍が移動をする、そういうことにかんがみて、司法救済ができない場合がある、そこで米軍の方がこれを見るのだという、何か恩恵的な制度であるかのように言われたのでありますが、しかし、この六項(b)をなぜそういうふうに解釈するのですか。六項(b)には「慰謝料」と書いてあるじゃありませんか。これは米軍が慰謝料を支払うという制度にしてどこが不都合でしょうか。あなた方が言われるように、恩恵的な制度としてそういうものをつくる、そういう仕組みにすることも、これは可能でありましょう。しかし第六項(b)には、そういうふうには書いていないわけなんですよ。「慰謝料」というふうに書いてある。どうですか。
  151. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 私は、先ほどの説明のように、この点は見舞い金であるというふうに申しておらないわけでございまして、もう一回、別な角度から申し上げさせていただきたいと思いますが、この地位協定の十八条六項で言います「慰謝料」という名の米国の支払いは、米国当局が日本当局の査定しました補償金額等の報告を受けた後に支払いを申し出た額を、請求人がその請求を完全に満たすものとしてこれを受託した場合に行われるわけでございまして、その限りでこれは被害者の請求権を満たす、いわば示談金的な性格を持っているものと考えます。他方、見舞い金という用語は、これは必ずしも法律用語として明確な定義があるとは思いませんけれども、通常は法律上の請求権を前提とした支払い金とは考えられておらないわけでございまして、したがいまして、この十八条の六項に規定されております米国による支払いを、そういう意味での見舞い金というふうに表現するのは必ずしも適切でないと思っております。したがって、そういう「慰謝料」という表現が用いられておるわけでございます。そういうわけでございまして、この地位協定の十八条六項の「慰謝料」というものは、わが国の民法上に言う慰謝料とは必ずしも一致するものではないというふうに考えております。
  152. 木下元二

    ○木下委員 民法上に言う慰謝料でなかったら、どこに言う慰謝料なんですか。慰謝料というのは、これは、その不法行為について規定した民法の慰謝料あるいは民法が適用されないということでも、慰謝料というものは、これは一般的概念としてもう定着しているんですよ。これを何か別に違った慰謝料があるかのように言われますが、そんなものはどこにありますか。ございませんよ、そういうものは。あなたは結局、見舞い金でもないかのようにきょうは言われたのですが、これまでは見舞い金だ、見舞い金だと言ってこられた。そうしますと、これは見舞い金ではない、こういうことですね。これは、これまでの見解を改められますね。
  153. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほど申し上げましたように、見舞い金の定義というものは、はっきりしたものはないわけでございますけれども……。
  154. 木下元二

    ○木下委員 改めるかどうか聞いているのです。
  155. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 その点は、われわれとしても、はっきりこの慰謝料とは見舞い金であるということは申し上げたことはないはずでございまして、見舞い金という言葉を使われたかとは思いますけれども、この慰謝料即見舞い金であるということは、われわれとしては申し上げておらないつもりでございます。ただ若干、こちらの御説明が不十分でございましたので、改めて先ほどから御説明申し上げておるわけでございます。  それから、民法上の概念の慰謝料とちょっと別のことを考えておるのかというふうなお尋ねでございますけれども、民法上の慰謝料というのは、私の承知する限りでは、主として精神的な損害というものに対するものでございますけれども、この地位協定に言います「慰謝料」というのは、単なる精神的な損害ではなくて、実際の物的な損害も見るわけでございまして、この地位協定に言う「慰謝料」という概念は、民法上の慰謝料の概念と必ずしも一致していないのではないかと思います。われわれはこの地位協定上の「慰謝料」ということで、この地位協定の他の規定もあわせ読んで、先ほどのように御答弁申し上げた次第でございます。
  156. 木下元二

    ○木下委員 あなた方は、見舞い金的性格を持っているということをはっきり言われておったのです。そうすると、これを否定をされるようであります。示談金的性格というようなことを言われましたけれども、この示談金的性格なんというものも、法律用語としてはございません。示談金的性格なんと言うと、ますますわかりにくくなるんですよ。民法的なものでないということで物的なものも含むと言われますが、これは確かに、オーソドックスな意味での慰謝料というのは、精神的あるいは肉体的苦痛に対する賠償ですが、近ごろは物的なものも含めた形で慰謝料ということを民事上呼ぶ場合も多いわけであります。だから、その物的なものを含むから民事とは違うんだというような弁解は私は通らぬと思うのです。  結局、言われておることを聞きますと、エクスグラシアというのは、これまでは見舞い金だというふうに言っておられたわけですが、任意に出す金だ、払っても払わぬでもいい金だ、だから、その点が義務による賠償金とは違うんだ、こういう趣旨のように伺うのです。そうですか。そういうものですか。詳しくは結構です、時間がありませんから。そういう意味でいまの説明を言われたわけですか。
  157. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 米軍当局に関する限りは、確かに任意に出す金ではある、米軍が支払い義務を負っている金ではないという意味においては任意の金であるということは言えると思います。
  158. 木下元二

    ○木下委員 余り私は、この問題で論議をしたくないのですが、私は、協定の条項を解釈する場合に、いろいろな要素があると思いますが、一つは、やはり一番大事なことは、この条項自体の客観的な意味、内容を明確にするということだと思うんですよ。そうしますと、これは「慰謝料」と書かれておる以上は、慰謝料であって、それ以外のものではないのです。見舞い金でもないし、それ以外のものでもございません。これは、しばしば指摘をするように、すでに確立をした法的概念があるということです。  それから、エクスグラシアと英文で書かれておるのに、見舞い金と書かれず、特に「慰謝料」と書かれた点は、これは協約がつくられた際の少なくとも日本側の意思が、見舞い金とかあるいは慰謝料以外のものではなくて、慰謝料支払いの制度としてこれを発足させようということでこれがつくられたと推認されるのです。それ以外にないと私は思うんですよ。これは私、格別善意に解釈しておるんですよ。もしそうではなくて、日本側も英文どおりにエクスグラシアとして発足をさせる意思でやったとすれば、これは見舞い金とか、あるいはあなた方が言われるほかのものとして書かれたはずであります。  ですから、このエクスグラシアとして発足をさせる意思であるのに、見舞い金とかそういったほかのものとせずに、あえて慰謝料としたとすれば、一体それはなぜなんでしょうか。これは国民の目をごまかす、そういう意図以外に考えられませんよ。そうでしょう。あなた方は、英文にエクスグラシアとある、そういうものとして発足をさせる、そういうつもりであったとすれば、なぜわざわざ、あえて意味の違う「慰謝料」というものをここに書いたのか。これは国民をペテンにかけたのですか。そうとしか考えられないのです。だから、そうではないと言うならば、私が初めに言った、善意に解釈して、これは慰謝料として発足をさせる、そういうものとしてこれがつくられたんじゃないのですか。  それからもう一つ、(b)の条文でありますが、これには、たしか「慰謝料の支払を申し出るかどうかを決定し、」これは合衆国当局が決定するんですね。「決定し、かつ、申し出る場合には、その額を決定する。」こういうふうにあります。だから、これを少し読みますと、その支払いを申し出なくともよいし、支払いをしてもしなくても自由だというふうに一見解釈ができるようであります。しかし、そうではないと思うのです。これ(a)と(b)との有機的な、統一的な解釈をせぬと意味が出てこないのです。この(b)というのは、(a)とばらばらに切り離して解すべきではないと思うのです。この(b)の前段的と申しますか、前置的な手続が(a)として書かれておるんです。わかりますか、よく聞いてくださいよ。(b)の前置的な手続が(a)なんですよ。したがって(b)と(a)は、対応するものとして有機的に解釈をしなければならないと思うんですよ、法的には。(a)ではどう書いてあるかというと「公平かつ公正に請求を審査し、」これは日本当局がやるんですね。「及び請求人に対する補償金を査定し、並びにその事件に関する報告書を作成する。」と書いてあるんですよ。そしてそれに基づいて、その報告書が米側に出て、米側がこの慰謝料の額を決定する、慰謝料を払うかどうかを決める、こういう(b)の手続になるわけですね。  そこで、この(a)でこういうふうに補償金の査定が行われる、公平かつ公正に請求を審査し、補償金の査定を行う、これは一体何のためにやることなんですか。これは(b)に言う「慰謝料」の支払いのためにやることなんですよ。(b)の「慰謝料」というものが、支払ってもいいし、支払わぬでもよいというものだったら、何でそういうことを日本がせねばならぬのですか。慰謝料の支払いをさせるために、(a)によってそういう手続を踏むわけでしょうが。もし米側がそれを払っても払わぬでもよい、そういう任意なものだというのなら、そんなことをわざわざあらかじめやる必要はないじゃありませんか。もしそうだとすれば、米側が払うということを決めてからそれをやったらいいんですよ。何のために日本側がこの(a)項によって査定をするか、その意味が出てこないわけであります。  だから(b)項で「慰謝料の支払を申し出るかどうかを決定し、かつ、申し出る場合には、その額を決定する。」こういうふうに書いてありますのは、これは申し出なくてもよいという意味では決してないのだ。これは不法行為を構成するときには申し出をしなければならない。不法行為を構成しないときは申し出をしなくていいでしょう。たとえば過失がないとか違法性がないとか、そういうことは、この規定から言えば米側が判断をするということになると思います。そういう判断は米側がするのだ、そういう判断に立って、申し出をしないことがあり得る、しかし不法行為を構成するときには申し出をしなければならない、慰謝料ですから。こういうふうに解釈をするのが正しい解釈なんですよ。  それを、あなた方の方が何かわけのわからぬことを言われて、やれ見舞い金だと言われるかと思うと、示談金的性格を持つとか、いろいろと変えて言われる、そういうことでは統一見解になりませんよ、大臣、いかがですか。
  159. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先生の御質問の第一点でございますが、確かに、この米側の支払いというものは、単なる見舞い金的な性格のものではないということはわれわれも考えるわけでございます。ただ、その当時の立法者の意思をそんたくいたしますに、だからといって、それが民法上の慰謝料の概念をここに完全に導入したのだというふうに受け取るのも間違っているのではないかと思います。先ほどから申し上げましたように、民法上の概念としての慰謝料というものは、非常にまた厳密な概念があるのでございまして、ここに言われます「慰謝料」は、あくまでこの地位協定の枠内における慰謝料という概念である、しかし、それは必ずしも見舞い金の性格を有するだけにとどまるものではないということから、この言葉が用いられたものだと考えます。  それから、第二点の(b)項の問題でございますが、この(b)項の解釈といたしましては、合衆国当局は、この慰謝料の支払いを申し出る義務がないことはそのとおりでございますが、もちろん通常の場合において、当然それは申し出ることが期待されるわけでございますし、また先生のおっしゃられますように、明らかな不法行為があった場合には、当然申し出るべきだろうと考える次第でございます。  ただ実際上の慣行として、それがどういうふうに行われておるかということにつきましては、御必要でございましたら、防衛施設庁の方から答弁していただきたいと思います。
  160. 木下元二

    ○木下委員 大分意味が変わってきましたけれども、そうしますと、不法行為である場合には、米側はこの申し出をしなければならない、こういう解釈なんですね。
  161. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、慰謝料は、そういうふうな合衆国当局のいわば自発的に申し出る、あるいは任意的に申し出る支払いでございますから、不法行為がある場合には、アメリカ側が慰謝料を支払う義務があるとまで解釈するのは、ちょっと行き過ぎだと思うのでございまして、私が申しました趣旨は、そういうふうな不法行為が明白である場合には、米当局は当然申し出るであろうという期待を申し述べたわけでございます。
  162. 木下元二

    ○木下委員 あなたは、もう少し厳密に言葉を使っていただきたいと思うんですよ。先ほどは明らかに、明白に不法行為である場合には、米側は申し出なければならないと思うというふうに言われましたよ。そうではないと言うのですか。また否定されますか。そういうことでは困りますよ。何かその辺が、あなた方としてもとらえ方が非常にあいまいですね。それは確かに、不法行為でない場合は、第一こんなものは払う義務はないんだし、だから、そういう場合にまで払えということは言えません。また不法行為であるかないかということをだれが判断するかという問題は、一つ残っていると思うのですが、それは別として、不法行為であるという場合に、この場合でも払わぬでもいいのか。不法行為であるのに払ってもよいし、払わぬでもよいと、そういうものですか、これは。そうではないでしょう。じゃ一体、これまで米側がどういうふうに運用してきましたか。これが不法行為である場合に、米側が支払いをしなかったことがございますか。あるかないか言ってください。
  163. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 不法行為である場合には、必ずこれが働くことになります。実際の事案の処理といたしまして、不法行為である場合には必ずこれが働いております。しかし不法行為であるのかないのかがあいまいな問題がございます。そういうときには、確実に不法行為でない、あるというところまでいきませんと、これが働かないということになります。
  164. 木下元二

    ○木下委員 ですから、不法行為であるかないかあいまいな場合というのは、その場合は米側の方が、たとえば過失がないとか、あるいは違法性がないとかいうふうな見地に立って、したがって、そういう場合には不法行為の要件を欠くわけですから、そういう場合は支払い義務がないのだと言っているんでしょう。しかし不法行為である、過失もあるし、それから違法性もあるという場合、そういう不法行為として米側が判断をした場合にも、米側は、いや、そういう場合でも払いませんよと言って断わったケースはないでしょう、どうですか。
  165. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 アメリカ側が、この行為は不法行為であるということを認めた場合には、これは必ず発動されます。
  166. 木下元二

    ○木下委員 ですから、不法行為の場合には米側は申し出をしておる、不法行為の場合は慰謝料として支払いをするのだということでずっと払っているわけですね。そういう形で運用されてきたわけでしょう。それを、あなた方は、まるで米側どころかそれ以上に悪いじゃないですか、考え方が。不法行為であっても払わぬでもよい、払っても払わぬでもそれは自由だ、そんな解釈は米側もとってないでしょうが。とってないからずっと払ってきたのでしょう。  ですから、そういう見解を改めていただきたいと思うのです。不法行為の場合は支払いをする。そして、ただ不法行為であるかないかわからぬあいまいな場合は、これは確かにあるでしょう。たとえば過失の点とかそのほかいろいろあるでしょう。そういう場合には、その判断、過失があるのかないのか、あるいはいろいろ事実関係の認定に立って、不法行為を構成するかどうか、これについては米側が判断をする、これは法解釈としては非常に問題ではあるけれども、そうなっている。それは認めますよ、私は。しかしこれは、不法行為の場合は支払いをするという制度なんですよ。それを、あなた方は、もう米側以上の立場に立って、払っても払わぬでもいいようなことを言われる、とんでもないことですよ。大臣、この点については、ここできちんとした見解をもう一度出していただきたいと思うのです。どうも困ります、そういうことでは。
  167. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 公務外の不法行為によって損害が発生いたしました場合に、どうやってその損害を救済するかというために、この十八条六項の規定が設けられたわけでございます。したがいまして、そういう不法行為が発生しましたときに、これが働かないということになりますと、何のためにこういう条項を設けたかということになりますので、その点は、いま先生がおっしゃられたとおりの趣旨に従って、この条項というものは適用、運用されていくべきであると私ども考えているわけでございます。  ただ、先ほども政府委員から申しましたように、条約上の義務として申し出る義務があるかないかということになりますと、この条項に書いてありますように、申し出るかどうかを決定するというふうに書いてあるわけでございまして、したがって、その決定するかしないかということ自体は、アメリカ側の問題であるわけでございます。  ですから、そういう意味で、日本側が不法行為であると思っても、アメリカ側がそうでないという考えのもとに申し出を決定しないという場合があり得る、そういう意味で、権利義務という形で義務が必ずある、日本が不法行為であると認定した場合に、アメリカ側にそういう決定を申し出る義務があるというところまでは言えないということだと考えます。
  168. 木下元二

    ○木下委員 具体的な事件が起こる、その場合に、それが一体不法行為を構成するのかしないのか、これはやはり事実関係の問題があり、法適用の問題があり、これは確かにむずかしい問題なんですね。その場合に、確かに、言われるように米側とあるいは日本側と見解を異にする、あるいは認識を異にするという場合があり得ると思うのです。ですから、米側が不法行為でないという考えに立つ場合、その場合にもこれを払えということは、この制度のもとでは言えないと私は思う、この点はあなたと同じなんですよ。だから私は、その不合理は改めてもらうようにしなければならないと思いますが、それはさておいて、この制度の解釈としては、そこまでこれを求めるのはできない、これはわかります。けれども、不法行為であるという判断に立ちながら、いやそれでも払いませんよということはできないじゃないかと言っているんですよ。そうでしょう。それを認めてもらえばいいのです。
  169. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 アメリカ側が、これは明らかに不法行為であるということを認めた場合において、なおかつこの支払いを申し出ないということは、私は、この条項の仕組みから申しましても条理に反するというふうに考えます。
  170. 木下元二

    ○木下委員 もう本会議が近づいてきましたので、いまの問題、結局そうしますと、不法行為であると米側が判断をした場合には、支払いをしなければならない制度であるということでよろしいですね。
  171. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 その場合には必ず申し出があるべきものであるということでございます。
  172. 木下元二

    ○木下委員 質問が大分残ってあれですけれども、一応本会議直前でありますので、これは本会議後ということになるわけですか。
  173. 藤尾正行

    藤尾委員長 これは本会議後、一時三十分から委員会は再開いたしますが、あなたのきょうの持ち時間は、一応二十分というお約束でございまして、ただいままでの所要時間は三十五分になっております。  そこで、本会議後再開をいたしました際は、公明党の鈴切さんの質問から入らせていただきたい。いまの問題は、今後防衛庁関連におきましてなお究明すべき時間は十二分にある、かように思いまするので、その取り扱いは委員長にお任せをいただきたい、かようにお願いを申し上げます。
  174. 木下元二

    ○木下委員 そうしたら、これで質問が大分残りましたけれども終わりますが、ちょっときのうの答弁の中で一言触れた点についてだけ申しておきたいのですが、大臣に伺いたいのですが、昨日の質疑で、施設庁から米軍の不法行為の件数が報告をされまして、私も幾つかの事例を説明いたしました。にもかかわらず大臣は、よその国に行って独身でもあり、軍務というものは楽ではない、いろいろ苦悩した環境の中で起きたことではないか、この不法行為ですね、というふうなことを言われまして、十分な判断を避けておられますが、私は、米国人一般を批判し、追及しておるのではなくて、少なくともどのような環境にあったにいたしましても、他国において人間を殺害したりすることが許されてよいはずはありません。絶えず米政府に気がねをしておられる外相でありますけれども、このような多発する不法行為については、遺憾なことだという一言を私はほしかったわけであります。これは、もう当然のことでありますが、ひとつ大臣のその点についての再度の決意を伺いたいと思います。
  175. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨日のお尋ねは、なぜこのように不法行為が多いか、それをどう解釈するかというお尋ねでございましたので、このような理由ではないかと申し上げたのであります。  もとより、米軍あるいは米軍の構成員においてそのような不法行為をしてもらうことは、これは申すまでもなく、言葉どおり不法であります。十分に注意をしてもらわなければならないことでございます。
  176. 木下元二

    ○木下委員 それでは、時間が来ましたので、残りました問題は、また別の機会にすることにいたしまして、終わります。
  177. 藤尾正行

    藤尾委員長 午後一時三十分より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十九分休憩      ————◇—————     午後一時三十五分開議
  178. 藤尾正行

    藤尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。鈴切康雄君。
  179. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 在勤俸については、昨日、私どもの同僚議員であります鬼木委員から細かく質問をいたしましたので、そちらは時間がございましたら触れるということにいたしまして、当面する問題等について、ちょっとお伺いをしたいと思います。  政府は、二十八日の閣議で、暗殺に倒れたファイサル・サウジアラビア国王を弔うために、宮澤外務大臣を特使として派遣をすることになったというようなことが報じられておりますけれども、急遽派遣が決まったいきさつについては、どういうふうないきさつなんでしょうか。その点についてちょっとお聞きしたい。
  180. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 簡単に経緯を申し上げます。  ファイサル国王が逝去されたという報は、あの晩になりまして、晩方私どもそういう情報を確認いたしました。さしずめ特使を、葬儀に列席するために派遣すべきではないかということで、実は深夜でありましたが、総理大臣にも御相談を申し上げ、内々考えておったわけでございます。  しかるところ、第一に葬儀は、回教徒の儀式に従って外部の者を入れずに内輪に行われるということが一点。第二に、しかも翌日の夕刻には行われるという、この二つの点がはっきりいたしましたので、それではこの際、特使を派遣することは一応控えよう、時間的にも実際は間に合わなかったわけでございますけれども、一応控えようということにいたしまして、現地の者が参りまして、いわゆる現地で処理をいたしたわけでございます。  続きまして、私どもは、しかしながら弔問ということ、葬儀とは別に弔問ということについてしかるべき特使を送りたいが、それを受け入れる用意がサウジアラビア政府にあるかどうかということを、引き続き問い合わせをいたしておりまして、先方もこういう出来事でございましたから、かなり事務的には混乱をしておったようでございますけれども、今日、特使が弔問に来られるのであれば、国王または皇太子がしかるべく接遇をする用意があるという意向を伝えてこられましたので、先ほど総理大臣から、私がその使いをするようにという指示がございました。  そこで、今晩立ちまして、弔意を表してまいりたいと考えております。
  181. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 このファイサル・サウジアラビア国王の死去という問題については、わが国においても、中近東の問題あるいは石油等の問題でかなり関係も深いわけでありまして、そういう意味において、いち早くやはり政府として特使を派遣するのだということを決めるべきではなかったのだろうか。各国においても、実はもう特使をどんどん派遣するということをいち早く決められたにもかかわらず、日本の場合においては、ちょっとその点においておくれたというような感じを実は受けるわけでありますけれども、その点はどういうふうにお考えになっておるのか。また、どのようなスケジュールで外務大臣はこれから行かれて、また、いつごろお帰りになってこられるか。その点についてはどういうようにお考えでしょうか。
  182. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前段のお尋ねでございますが、たとえばアメリカ合衆国は、非常に早く特使を送るという決定をいたしました。そのことは、私ども逝去の晩にすでに承知をしておったわけでございます。しかしながら、少し事情を調べてみますと、それは葬儀に参列するということとは実は別のことであって、葬儀後の弔問ということでなければならない。そういたしますと、やはり私どもが、自分たちの流儀でともかく飛んでいけばよかろうというようなわけのものではあるまい、それはかえって礼儀ではないのではないかと考えまして、葬儀が済んだ段階で弔問使を受け入れるかどうかということを正式に問い合わせまして、サウジアラビア国の儀典長から、正式においで願って結構だということ、そういうやりとりをいたしました後に決定をいたしたわけでございます。     〔委員長退席、加藤(陽)委員長代理着席〕  そういう意味では、とにかく飛んでいこうというようなやり方をとらなかったことについて、これはいろいろな考え方があろうと思いますが、私どもは、一番儀礼にかなったやり方をしたというふうに考えております。  それから日程でございますが、土曜日までが公式の服喪の日のようでございまして、したがって、それまでに訪ねることが儀礼のようでございますので、私が今晩遅く立ちますと、先方には、サウジアラビアの土曜日の朝八時ごろには到着ができまして、朝来てくれれば、その日のうちに接遇、謁見の用意があるということでございますので、正式に弔意を申し上げまして、そして国会開会中でございますので、できるだけ早く辞去いたしまして、戻ってまいるつもりでございます。月曜日には、すでに両院におきまして議事がございますので、それに御不便を来さないように、日曜中には、不測のことがない限り日本に帰ってきておりたい、かように考えております。
  183. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務大臣が特使として行かれるわけでありますけれども、特使として行かれることによって——短期間であるので、そんなことはないと思うのですけれども、訪米について、実はまだ外務大臣は明らかにいつごろ行かれるということについては、お話しになっていないように思うのです。ですから、その方の絡み合いで予定が変更されるなんということがあるかどうか、また訪米については、大体いつごろぐらいのめどをお考えになっておられるのか、それについてお答えいただきたい。
  184. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実は、今回の弔問につきましても、国会のお許しを得て参るべきものと考えておりまして、訪米の場合でございますと、恐らく緊急性等々の点で、普通でございますと、国会の事実上のお許しがなかなかないというのが通例でございます。したがいまして、この点は、もし国会が事実上の自然休会になりますならば、その期間を使わしていただきたいと思っておるわけでございますが、そういたしますと、その幅は実は狭うございまして、キッシンジャー国務長官自身の日程とそれがうまく合いますかどうかという点を、いろいろ先方へもこちらから申し入れをしてございますので、日程の調整に努力をしておられるようでございますけれども、ただいままでのところそれがわかりません。したがいまして、一応予想されます自然休会の期間に実現いたしますかどうか、実は危ぶんでおるような感じでございます。
  185. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 天皇が訪米されるという日程は、大体決まっておるのでありまして、それの前に総理大臣も行かれるのじゃないかということになりますと、やはり宮澤外務大臣の訪米というものは、それなりにかなり早くされるのじゃないかというように私は考えておるわけであります。自然休会というお話でありますけれども、私どもが一応考えているあれは、政府はやはり会期の延長をするのじゃないかというふうにもいまの時点では思えるわけなんです。そういうふうなときで、一応日程は決まっておるものの、そういうふうな時点になった場合においては、どういうようなことをされるつもりでございましょうか。
  186. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 仮に、自然休会中に訪米ができたときに、どのような話をするかと言われたのでございましょうか。それともできなかったときに……。
  187. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 自然休会といいましても、会期は決まっておるわけですね。その中にあって、たとえば会期が延長されるということも、いまの時点においては政府・自民党は考えておられるようにも思いますが、そういうふうな兼ね合いから、大体いつごろどういうふうにお考えなんでございましょうか。
  188. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは国会の御都合で御決定になりますので、はっきりいたしませんけれども、私は、四月の初旬ごろからあるいは中旬近くまで国会が自然休会に入るのではないか、一応そういう前提を仮にとりまして、先方の都合がどうかと聞いておるわけであります。
  189. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、案外早いというわけですね。四月の上旬から四月中旬以降の間、国会はいろいろ選挙の方の関係等もこれあり、幾らか自然休会的なかっこうになりますので、その期間とキッシンジャーとの日程、それと合わしてそのころに外務大臣としても行きたいという意向を向こうの方に打診をしておる、こう判断してよろしゅうございましょうか。
  190. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 さようでございまして、一応十五日を過ぎれば恐らく国会は議事をお始めになるであろう、こう想像いたして考えております。
  191. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 さて今度は、質問がまたちょっと変わってまいります。日米安保条約の事前協議の問題でございますけれども、去る二月の十五日の衆議院予算委員会で、藤山・マッカーサーの口頭了解について私、質問を申し上げたわけです。それにつきまして、昭和四十三年の四月二十五日の、外務省が公表された資料によりますと、「日本政府は、次のような場合に日米安保条約上の事前協議が行なわれるものと了解している。」こういうふうになっております。その点について私が質問をしたのは、それが日米両国政府が明確に了解に達したものであるならば、「日米両国政府は、次のような場合に日米安保条約上の事前協議が行われるものと了解した。」そのように言わなければおかしいじゃないか。また、そうあるはずであるということに基づいて、この了解は日本政府とアメリカ政府の都合のよい解釈によって了解をされて、内容が違うのではないか、こういうことで私たしか問題を提起したと思っております。  それに対して宮澤外務大臣は、藤山外務大臣及びマッカーサー大使は、両国政府を代表して、この点について、一つのことについて了解をし合ったものだと答弁をされて、アメリカにもう一度照会をいたしましょうということをお約束されたわけであります。その後、御返事をいただかないままに実は今日まで来ているわけでありますけれども、途中いろいろな憶測が流れておりました。それは、ワシントンから共同が伝えるところによりますと、藤山・マッカーサー口頭了解は知らないのだ——事前協議規定ですね。米国国務省当局者が語るというような内容の報道がなされたり、実はいろいろ今日まで経緯があったわけでありますが、伝えるところによりますと、二十七日に正式に、何か外務省の方にアメリカの政府筋の方から回答が来たかのようにちょっと聞いておりますけれども、その点について、もし来たとするならどういう内容であるか、御返事をいただきたいと思います。
  192. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 去る二月に本院予算委員会におきまして、鉛切委員からそのようなお尋ねがございまして、いわゆる藤山・マッカーサー口頭了解なるものは、四十三年の四月に国会御審議の席上、文書という形で見ておるけれども、これは日本側の一方的な主張であって、双方の了解事項ではないのではないかというお尋ねがあり、それに対して私から、正式に米側に再度、時間もたったことでございますから照会をいたしますと申し上げました。このたび米側から正式に、この四十三年四月の文書に盛られました内容について、米国政府としても異存がないという旨の通報をいたしてまいりました。これにつきましては、具体的にただいま政府委員から御報告を申し上げます。
  193. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この点に関しましては、大臣が申されましたように、正式に米側に照会したわけでございますが、向こうの内部手続もありまして若干おくれておりましたが、三月二十六日の夜、アメリカから正式に、日本側の了解の内容に異存がないということを申してきたわけでございます。そういうわけでございまして、わが方の了解と同様の内容を米側も了解しておる、こういうふうに確認いたした次第でございます。
  194. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これから少し細かいところまでお聞きいたしますけれどもアメリカはこれに対して異存がないという回答をされたということでありますけれども、その異存がないという部分についてちょっとお聞きしなくちゃならないんじゃないか。「日本政府は、次のような場合に日米安保条約上の事前協議が行なわれるものと了解している。」そういう日本政府の考えていることについての考え方には異存がないというふうにとるべきか、あるいは一、二、三の「配置における重要な変更」あるいは「装備における重要な変更」それから「わが国から行なわれる戦闘作戦行動」の具体的な三項目について、藤山さんとマッカーサー大使との問に合意された内容について異存がないのだというふうにアメリカ政府の方では言っているのか。  まあ、日本政府が、私の方はこういうふうに思っておるのだということの一方的な考え方に対して、アメリカとしては、それに対して異存がないのだ、こういうのじゃなくて、中身がそうなんだ、この三点決めたことが全く同じである、こういうふうに理解をするべきか、その点についてはどうなんでしょう。
  195. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 最初に、私から申し上げますが、実は鈴切委員のお尋ねがございました後に、東京におりますアメリカのホッドソン大使並びにその補佐官の人々においでを願いまして、私と山崎アメリカ局長とから、四十三年四月の文書を提示いたしまして、これは英訳文を添えてございますけれども、それで、藤山・マッカーサーの了解は、このようなものであるとわれわれは考えておる、それについて米側として御異存がないことであるとは思うが、お返事を求めたい、こう申しまして、それからかなり時間がたったわけでございますが、この二十六日でございますか、米側から異存がないという返事が寄せられたことでございますから、したがいまして、漠然と昭和三十五年に藤山、マッカーサーが話したこと、あのことに御異存はないだろうと申したのではなくて、四十三年に、国会の御審議の席上お示ししましたあの文書そのものについて、先方の異存ありや否やを問いただしたわけでありまして、返答は、したがってあの文書に盛られました内容について寄せられたものと考えております。
  196. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで一、二、三と、そういう内容について私どもも同じ考え方であるということでお話があったというのであれば、それは私も大変に前進だと思うわけであります。しかし日米安保条約上の事前協議については、昭和三十五年に条約第六条の実施に関する交換公文がなされて、そしてそれに基づいて藤山とマッカーサーの間でさらに詳細な煮詰めがなされた、具体的な事例を挙げてなされたということでありますけれども、その当時から比べまして、もう時代も大変に進んできておりますから、この内容自体の中にも、さらに聞いておかなければならない問題があろうかと私は思うわけでありますけれども、その点についてちょっとお伺いをいたします。  それは「「装備における重要な変更」の場合」に「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」ということがここでは書いてあります。そこで私、ちょっとお聞きしたいことは、いままさしく核戦略構想というものは、戦略核兵器よりも戦術核兵器へと移行されてきて、大変に小型化されてきているわけであります。そういう観点から考えますと、当時は「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み」ということで、かなり戦略的な核兵器のようなニュアンスも見受けられるわけでありますけれども、核弾頭ということになりますと、いまや戦術核兵器というのはさらに小型化されて、核小銃ぐらいもできているんじゃないかとまで言われているわけであります。  そうなった場合に、核小銃のようないわゆる小さい核兵器、核弾頭、これらも全部これに該当する、このように判断をしてよろしゅうございましょうか。
  197. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 最近、戦術核兵器の発達が著しいということは、鈴切委員の仰せられるとおりでございますが、われわれといたしましては、この当時の了解で、安保条約締結当時、昭和三十五年当時の了解で依然十分であると考えております。結局、そういう戦術核兵器におきましても、問題は核弾頭でございまして、その核弾頭の持ち込みということは、われわれとしては事前協議の対象ということで押さえておるわけでございますから、この点については、改めて了解をし直す必要はないのではないか、このように考えております。
  198. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 核弾頭についても非常に小型化されているわけですね。私が申し上げましたように、核小銃あるいは核の徹甲弾、そういうような小さい弾頭等もあるわけですから、そういうものも一切含まれて、言うならば核弾頭であれば、核物質が入っておれば、それはまさしく核の持ち込みをさせないという考え方でいいかどうか、その点について具体的にひとつ。
  199. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 核小銃というものまであるかどうか、私はつまびらかにいたしませんけれども、そういう核分裂物質が入っておって、瞬間的な爆発力によって殺傷を及ぼすようなものは、すべて核弾頭という言葉の中にわれわれは含まれると考えておるわけでございまして、その意味におきまして、この点を押さえておけば、われわれとしては十分であるというふうに考えておる次第でございます。
  200. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 核兵器と言っても、いまや核兵器それ自体が持ち込まれるというようなことは常識的にちょっと考えられない。それは核弾頭あるいは核機材等を別々に持ってくる場合もあるでしょうし、それから信管等も同時に梱包される場合もありますし、また別々に持ってくるという場合もあるわけでして、その取り扱いについては、アメリカの方は、いろいろそれなりの規定とルールによって運ばれてきているわけですけれども、そういう場合、これは明らかに核兵器だというふうに——非核両用の場合もありますけれども、核兵器専用の場合のものが、たとえば核弾頭、これは、あたりまえのことでありますけれども、いわゆる核兵器等の機材が運ばれる場合においては、これはどうなんでしょうか。
  201. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 ちょっと御質問の趣旨が十分わからないわけでございますが、核兵器機材と仰せられますのは、要するに核弾頭を装着するような部分、核兵器の核弾頭を除いた部分という意味でございましょうか。
  202. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私が言っているのは、核弾頭というのがありまして、核弾頭は当然それに装てんをするわけですが、魚雷で申し上げますと、核弾頭と弾体とあるわけですが、弾体自体が完全に核兵器である、非核両用でなくても核兵器である、こういうふうにはっきりわかった場合におけるその核機材、それに伴うところのいろいろのものが、まだ実はあるわけですけれども、そういうものも一切、こういうことについて持ち込みは許されないということなんでしょうか。それだけはまた、核兵器の専用の機材等は持ち込んでもいいのだ、ただ核弾頭さえ持ってこなければいいのだというふうに御判断なさっておられるのでしょうか。
  203. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 たとえば魚雷の場合におきまして核、非核両用である場合、それの弾頭部分を除いた部分、それはわれわれとしては、必ずしも即核機材とは思わないわけでございまして、それは通常弾頭も装着し得るわけでございますから、そういうものは核機材とは言えないのではないか。ただ核専用である場合に、弾頭と本体というか、推進部分とが分離し得るものであるかどうか、その点について私は、十分知識を持ち合わしておりませんけれども、そういうふうな核専用の武器、たとえば核専用の魚雷のような場合には、いろいろ問題があるかと思いますが、われわれといたしましては、その点については、まだ十分な知識を持ち合わせておらない次第でございます。
  204. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 たしか非核両用であれば、それは日本の国は核を持ち込ませないという前提から言って、それが非核であるという考え方から、これは核機材でないということは言えるわけですが、核専用に使われている場合の機材というものは、これはやはり核弾頭と同じ一つの役目をなして、核兵器体系の中の一環として組み込まれるわけですからね、その点についての煮詰めはどうなっているかという問題なんですよ。非核両用であるならば、確かにあなたがおっしゃるように、日本の国には核を持ってこないんだから、それはいいんだということですが、核兵器だと、明らかにこのようになっているそういう弾頭を除く部分がもし持ち込まれた場合には、これはどういうふうに取り扱うかということについて、アメリカお話し合いになっておりますか。
  205. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 核専用のそういう核魚雷とでもいいますか、そういうものについて、核弾頭だけを除いて推進部分なんかを持ち込むということは、ちょっと常識的には考えられないわけでございまして、当然それは核弾頭とともになければならぬわけでしょうし、そうなれば当然、これは事前協議の対象になるのではないかとわれわれは考えております。そういう点につきまして、はっきりと話し合いをしたということはございませんけれども、先ほどから申し上げておりますように、核弾頭の持ち込みということについて、しっかりと押さえておけば十分ではないかというふうにわれわれは考えておる次第でございます。
  206. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 核弾頭と弾体と必ずしも一緒に運ばれてくるとは限らない場合が実はあるのです。たとえば同じ船あるいは同じ航空機で運ばれない場合もありまして、別々に運ばれた場合等もあるんですね。そういう場合、確かに核弾頭ならば、これはだめだということになりますけれども、核弾頭に取りつける核機材というものも当然、日本の国はそんなものを入れてはならないわけです。核機材等が入れば、必ず核弾頭が入ってきているのではないかと、こう疑いを持たれるわけですから、そういう点について、もう少しアメリカとの間において細部にわたって煮詰めておく必要があるんじゃないか、こう思うのですが、その点について御返事をいただきたいということと同時に、それから「それらの基地の建設」ということがありますが、この「基地」というのを、どういうふうにとらえたらいいのでしょうか。
  207. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 結局、先生のおっしゃいましたそういう点になってまいりますと、いわば相手を非常に疑ってかかるような話になるわけでございますが、政府の立場といたしましては、この問題の取り扱いは、結局は日米の信頼関係ということで処理していくほかはないと思っております。結局、向こう側の核の持ち込みの場合には、事前協議があるという前提でわれわれは物を考えておるわけでございまして、いま仰せられましたような事例は、われわれとしては常識的には起こり得ないと思いますし、また、そういうことについてまで詰めなければならないというふうには考えておらないわけでございます。  それから、その基地の建設という点につきましては、結局そういう核兵器あるいは中長距離ミサイルの発射のための基地ということでございまして、それを誘導するとかいう装置その他が、当然、そういうものを含む一連の施設というものが、ここに言う基地であると考えます。
  208. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、アメリカを別に信頼しないということではないのですけれども、しかし、こうやって国民の中においては核の持ち込みの疑惑というものが一向に消えるわけではないし、そういうことから国民としても、やはりもう少し明快にそういうところは詰めておく必要があるのではないかという、そういう疑惑に対する問題を提起しているわけです。  ですから当然、ただ信頼する、信頼するということだけで事が済まされる問題ではないし、具体的な問題としてこうあるべきだということについては、より以上明確にしておけば、その点については非常にはっきりするのではないかと思うので、そういう点について、もう少し煮詰めておく必要がある問題ではないかというふうに私は申し上げたわけであります。  それで、核基地の問題についても、核弾頭を発射する装置、これは、いわゆる基地なんだということでありますけれども、たとえば核を貯蔵する貯蔵庫等も私は当然基地だと思うんですよね。その点はどうなのかという問題もあるわけです。核貯蔵庫、もしあったとするなら基地の一つじゃないかと私は思うのですが、そういう点で運搬手段とかあるいは核兵器、当然、核兵器そのもの等も全部核兵器体系として論じられなければならない問題だと私は思うのですが、その点についてはどういうようにお考えでしょうか。
  209. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 核兵器を貯蔵する施設も、核機材の一部あるいは核システムの一部として事前協議の対象になるのじゃないかというお話のようでございますけれども、われわれとしてはそこまでこの問題を広く解すべきではなかろう。核兵器を貯蔵し得る弾薬庫というもの、それはあり得るかもしれませんが、そういうところにはもちろん通常弾薬も貯蔵し得るわけでございます。また日本に仮にそういう施設があったといたしましても、われわれとしてはアメリカが事前協議をしてきておらない以上、当然、そういうところに核弾頭あるいはその他の核兵器が置かれておるとは考えていないわけでございまして、そういう核貯蔵庫のようなものまで含めて事前協議の対象だという立場はとっておらない次第でございます。そういう意味で、広い核システムという意味は必ずしも明快ではございませんけれども、そういうものを全部含めて事前協議の対象だということは、われわれは考えておらないわけでございます。
  210. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 かつて沖繩の施政権が返還になる前においては、沖繩に核貯蔵庫というのがあったということは、公明党の核・安保プロジェクトチームの調査で基地の司令官がそのことを言ったわけでありますけれども、そういうことで核を貯蔵する貯蔵庫等も、私は、やはりそういう目的でもしつくられたとするならば、これはもう基地の一環であるととらえなければならないと思うんですね。それを、いや通常も入れるから核貯蔵庫ではないのだということではなくして、核兵器を貯蔵する目的であったとするなら、それは一つの核基地の建設につながるんじゃないかというふうに私は思うのですが、その点はどうなんでしょうか。
  211. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 沖繩の事例を挙げられましたけれども、復帰前の沖繩に核があったかなかったかということは、政府としては正式にアメリカから聞いてはおらないわけでございますが、返還協定の文言その他からして、あるいはその当時核があったかもしれないという推定は成り立ち得るわけでございます。そういう事態において、アメリカ側が返還という大きな政治的判断が下される以前から計画しておったものとして、そういう核兵器を貯蔵し得るような貯蔵庫をつくっておったということも十分考えられるわけでございますが、しかし沖繩返還が核抜き本土並みということで明確に合意されまして、そしてそのことに関しては、アメリカの当時の責任者から返還時においては沖繩には核は存在しないということの保証も得た上で返還を見たわけでございますから、そういう事態においては、そういうふうな能力なり施設なりの倉庫があったとしても、それはそこに核兵器が置かれておるということはあり得ないわけでございます。したがいまして、そういうふうなものまでも含めてわれわれが事前協議の対象とするかどうかということを云々することは、必ずしも適当ではないのではないかというふうに考える次第でございます。
  212. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ずいぶんおかしな話ですね。核兵器を貯蔵するためにつくられた貯蔵庫であるならば、これは私、当然核の基地の一環としてとらうべきじゃないか、これを申し上げているわけですよ。いま沖繩に核があるとかないとかいうことを私は申し上げたのではないのであって、核を貯蔵するための貯蔵庫というものがもしあったとするならば、それは核基地の一環ではないか、それから核兵器を発射するあるいは運搬する、そういう発射装置等がもしあったとするなら、それも核基地の建設じゃないかと、こういう単純な質問をしておるのですけれども、大臣、その点どうでしょうか。
  213. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は私は、先ほどから政府委員の申し上げているとおりであろうと思うのでございます。つまりシステムとしての核兵器というようなことがときどき議論にもなるわけでございますけれども、私ども、システムとしてとらえるということが必ずしも十分に理解ができない。通常兵器の場合、核兵器の場合、両用の場合もございましょうしいたしますから、考え方としては、やはり一番中心になります核弾頭あるいはミサイルそして基地というようなものを押さえておけば心配はないのではないかと、私どもはずっとそういうふうに考えてまいっておるわけでございます。
  214. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 核弾頭の場合においても、核兵器にもいろいろ実は種類があるわけであって、防御用とかあるいは攻撃用とかその使い道によってはそれなりに違うわけであります。核兵器あるいは核弾頭であるということであれば、それは防御用であろうがたとえ攻撃用であろうが、どちらも事前協議の対象になる、こう判断していいですね。
  215. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 核兵器について防御用と攻撃用が、そういうふうに明確な区別としてあるのかどうか私は存じませんが、その点は別に防御用であれ攻撃用であれ、核兵器であれば、これは事前協議の対象になると考えております。
  216. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、ちょっとまた戻りますけれども、宮澤外務大臣が、例の予算委員会で問題になったときにアメリカ大使等に来ていただいて、そしてこの事前協議について日本の考え方とアメリカ考え方とが同一であるかどうかということについて、アメリカの方に照会をしてもらいたいというお話をされたわけでありますけれども、それは文書でなされたのかどうか。その点はどうでしょうか。
  217. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは私がアメリカ大使の前に、先ほどお話しの四十三年四月二十五日、国会の席上で差し上げましたものと同じもの、その英訳でございますけれども、それを目の前に出しまして、これが、われわれが藤山・マッカーサー口頭了解と考えておるものの内容である、これをお読み願って、そしてこれについて米側の異存ありや否やについてお返事を願いたいということを申しまして、それを先方は持って帰られました。したがいまして、最近になりまして、これについて異存がないというお答えがあったわけでございます。私がホッドソン大使に申しましたのは、口頭で申しましたわけでございますが、内容そのものは、こういうように書いてあることが口頭了解の内容であるとわれわれは了解しておるがと言って、それをお渡しいたしたわけでございます。
  218. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 たしか三月の一日に、私がこの口頭了解の問題について質問をしてから、矢野書記長がさらに宮澤外務大臣に御質問を申し上げている部分があります。それに対して宮澤外務大臣は、「その点につきましては、鈴切委員からそのようなお話がございましたので、再度、昭和三十五年における藤山・マッカーサー——わが国を代表しての藤山外務大臣、米国を代表しての当時のマッカーサー大使でございます。この口頭の了解について米側に確認を求めました。それに対しまして、米側といたしまして、実質的に米側が当時から了解しているところと異ならないという返事がございました。ただ、国会からそのような正式のお尋ねでありますので、再度それを米内部で確認をいたしますために内部手続をとっておこうということでございまして、その内部手続に時間を要しております。完了次第御報告を申し上げますが、ただいまのところそういう状況で、この了解そのものは実質的に米側の了解しているところと異ならないという返事をもらっております。」こういうふうな御答弁をなされたわけでありますけれども、内部手続に手間をとっているというふうに言われたわけでありますけれども、これはどういうふうな意味でしょうか。
  219. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは私にもつまびらかにはわからないのでございますけれども、想像いたしますのに、アメリカ大使アメリカの代表ではございますけれども、一応この内容を、国務省を通じまして関係各省に確認の上、今回返事をしてこられたもの、そういうことであったろうと存じております。
  220. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今度、米側の方から正式な回答がなされたということでありますけれども、その米側の正式な回答については、これは文書でなされたのでしょうか、それとも口頭でなされたのでしょうか。
  221. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 その回答は口頭でなされました。
  222. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 口頭でなされたということは、こちらの方から文書を提示して、こういうことについてどうなのだろうかという意味の内容について、アメリカに問い合わせをしたわけですけれども、それについて口頭で異存はないという一言だけですべてを信用せいというのも、これはちょっと無理なことでありまして、実際にこれについて正式な文書か何かをいただいた上において、確かにこの点とこの点についてはアメリカとしては了解をしておるというふうに、より以上明確にする必要があるのじゃないでしょうか。口頭でもしされているというならば、アメリカのどういうところから、どういうふうな、だれに、いつ返事が来て、そして外務省のどなたがそれを受けられたかということについても、明確にしていただかなければならないと思います。その点についてはどうでしょう。
  223. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 これは、もともと口頭了解の問題でございまして、交渉当時の藤山・マッカーサーの間でいろいろ了解されたところは明快であったのでありますが、それを念のために取りまとめたものが、昭和四十三年の四月二十五日に国会議員に出した文書でございます。その文書そのものを大臣がおっしゃいましたように英訳をして、大臣がホッドソン大使にお示しになって、その前はもちろん口頭でございますが、これで異議はないか、異存はないかということをお聞きになったわけでございます。  それを受けて、向こうで内部手続を経まして、三月二十六日の夜、私、アメリカ局長のところにシュースミス臨時代理大使が訪ねてまいりまして、あのお示しになった文書の内容について、米国政府としては異存がないということを申してきたわけでございます。したがいまして、その点はきわめて明確になったこととわれわれは考えております。また、もともと口頭了解の問題でございますから、そのことをもってわれわれとしては十分であると考えておる次第でございます。
  224. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、やはりこちらからも文書の提示をされて、これをひとつよくお調べになって、それに基づいて御返事をいただきたいということである以上は、これは口頭了解だから口頭でいいのだということでなくして、やはりこれだけ問題になっているわけでありますから、当然それに対する問題については、文書で出していただくなり、あるいはいまあなたがおっしゃる点につきましても、やはり国会に、口頭了解でこういうふうな内容がいつにだれから参りましたと、その内容についてももう少し——ただ異存はございませんということだけでは、私はなかなか納得がいかないと思うのですが、その点について、いままでのいきさつと、それに伴うアメリカのシュースミスさんの言われた内容、それを少なくとも資料として提出を願いたいと思うのですが、宮澤外務大臣いかがでしょうか。
  225. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほど大臣からお話がありましたように、昭和四十三年四月二十五日付で政府が当時の国会議員の方に提出いたしました文書がございます。これは、われわれも各種の委員会で読み上げてもおりますし、速記録にも載っております。その全文を英訳して向こうに提示したわけでございますから、この了解の内容は、向こう側も十分間違いなく承知しておるわけでございます。ただ後のやりとりは、要するにこれで異存はありませんかと聞いて、向こうは異存はないと言ってきただけでございまして、この点について、特にそれを説明するようなやりとりの文書は現にないわけでございます。ただ口頭で、異存はないか、異存はありませんと言っただけでございます。しかしこういう問題でございますから、向こうも非常に慎重を期して、持ち帰って本国にも照会し、関係省とも協議して異存はないと言ってきたわけでございまして、われわれとしては、このことをさらに説明する説明資料というものは、特に必要はないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  226. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いずれにしても、それを米側に問い合わせて、米側の方でいわゆる三項目に対して全く日本の考え方に異存がない、日本の考え方と同じであるということの返事をいただいたということは、それなりに疑問であった点が一応前進したのではないかと私は思うわけでありますけれども、まだまだ、その内容等については、細かい点までの煮詰まりがありませんので、実際に疑惑が残る点が実はあるわけですけれども、さらに先の問題について少し申し上げたいと思います。  現在ジュネーブで開かれております海洋法会議において、領海の幅についてコンセンサスを得るということは、なかなか早急に望めないような状態でありますけれども、領海の幅についてもし合意が成立しなかった場合、日本政府は独自に領海十二海里を宣言するかどうか。このことについて、外務省と農林省とは幾らか見解を異にしているようでありますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  227. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点につきましては、先般、海洋法会議のジュネーブのセッションに臨みます政府の基本的態度について、私が閣議の決定を求めるために閣議で説明いたしました。その後に閣議におきまして、もしジュネーブの会議において、十二海里の問題について正式の決定が行われないという場合にわが国がいかに対処すべきかということは、その時点で推移を見て改めて議論の上決定しよう、こういうふうに閣議として了解をいたしておりますので、それが政府としての立場でございます。
  228. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、十二海里という基本的な考え方は変わらないというふうにとっていいわけですか。
  229. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 海洋法会議に臨みます政府の方針といたしまして、領海幅員を十二海里に拡張するということ自体については、政府としては賛成である、そういう国際的な合意が成立することについて、でき得る限り積極的に協力するということでございます。
  230. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 領海の幅の決定は、原則的には沿岸国の決定に任されておると私は思うのです。現在政府が主張している三海里も、条約によりて決定したものではありませんし、また慣習法上、三海里と決定してはいないはずであります。少なくとも現在の国際的コンセンサスは、十二海里までを領海とすることができるということであろうかと思うのですが、この意味からしても、ジュネーブ会議が何らかの決定をしない場合には、日本政府は領海十二海里を宣言することが私は適法であると思うのですが、その点はどうお考えでしょうか。
  231. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 政府といたしましては、現在の国際法上確立されております領海の幅員は三海里であるという立場をとっております。ただ、これは申し上げるまでもなく、三海里以上の領海の幅員を主張し、あるいはその制度を実施している国がかなりあるということも事実でございます。そういう事情がございますので、私どもといたしましては、国際的な合意によって領海の幅員が十二海里まで拡張されるということになれば、そのことによって、国際法の実定法として十二海里という幅員が決まってまいるわけでございますから、それに従って領海を十二海里とすることを実施するというのが、最も適当なやり方であろうというふうに考えているわけでございます。現在の時点におきまして、国際法上、適法に領海を十二海里に拡張するということは必ずしも言えないのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  232. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 領海十二海里となった場合の国際海峡の通過については、自由航行であるのか、あるいは無害航行なのかの論議がかなり行われておると思うのですが、日本政府は、そのいずれを選択されるつもりでおられるか。また自由航行の場合の利害得失、それから無害航行の場合の利害得失をどのようにお考えになっておられるか、その点について伺いたい。
  233. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 基本的な立場といたしまして、日本は資源の大半を海外からの供給に依存しております。また海運国といたしまして、大きな商船隊を抱えているわけでございます。そういう観点からいたしまして、私どもといたしましては、海洋法に関する諸制度が合意されますときに、できる限り海運の自由が確保されることが望ましいという立場で海洋法会議に臨んでいるわけでございます。  無害航行との関係につきまして御質問がございましたけれども、無害航行というのは、在来の国際法のもとでは、いわゆる一般領海を通過する国際航行の船舶が、その国際航行をできる限り支障なく維持することができるようにということから、沿岸国の管轄権をある程度制限するという制度でございます。しかしながら、その無害航行の制度のもとにおきましては、現行の国際法のもとにおきましては、何が無害航行に該当するかということは、沿岸国の第一義的な判断にゆだねられております。そういたしますると、沿岸国の判断のいかんによっては、実際にはその航行の自由というものが必ずしも十分に確保されないということが出てまいります。それに対抗する考え方といたしまして、自由航行という考え方が海洋法会議において主張され、提案がなされているわけでございます。  私どもといたしましては、先ほど申し上げましたような基本的な立場から、できる限り自由な通航が認められることが望ましいという立場でございます。
  234. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 海洋法会議で合意されるということが望ましい、それはそのとおりなんですが、合意をされない場合において、いわゆる日本の政府としては、十二海里をとることが望ましいのだ、いろいろの関係から、もうすでに十二海里は、各国の大勢であるという観点から、日本独自として十二海里ということを宣言されるかどうかということはどうなんですか。
  235. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 その点につきましては、先ほど外務大臣から申し上げましたように、私どもといたしましては、まず海洋法会議において国際的な合意が成立することが望ましい、そのためにできる限り努力するという立場でございます。万一、その努力が実らずに、合意が成立しなかった場合にどうするかということは、会議におけるいろいろな論議の推移等も十分考慮した上で、すなわち結論が出なかった場合には、その時点におきまして、それまでのいろいろな情勢の推移等をも考慮した上で、政府としての立場、方針を決定すべきであるというふうに考えているわけでございます。
  236. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 三海里から十二海里に政府としても大体考え方をまとめられておるというわけですが、そういうことで合意をするということで、いろいろ今後の問題を判断をしていかなくちゃならぬのじゃないかと思うのですけれども、十二海里になりますと、津軽海峡とかあるいは朝鮮海峡とかの国際海峡の領海上空における外国の航空機の飛行はどういうふうになるのか。領海内の外国航空機の飛行については、民間機、軍用機を問わず、領海の通航のような自由通航も無害通航も認められていないわけです。すべて沿岸国の明示の許可が必要であるというのが、現在の国際慣習法でありますけれども、政府はどのようにそのときはお考えでありましょうか。
  237. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 領海の幅員が十二海里に拡張されることによって出てまいりますところの国際海峡における航空機の上空通過の問題、これにつきましては、実は海洋法会議でまだ煮詰まった論議がそれほどなされておりません。一方におきましては、上空通過については、公海におけると同じ自由な通過を航空機について認めるべきであるという議論がございます。他方においては、これは禁止すべきである、すなわち沿岸国の同意なくしては上空通過はできないということにすべきであるという議論もあるわけでございます。また海洋法会議でございますから、これは海洋法に関する制度を決めるべき会議であって、航空機の通過については、別の国際的な合意ないしは会議で決めるべきであるという議論もなされております。したがって、航空機につきましては、どういうふうな方向で審議が進んでいくか、実はまだ状況を見きわめがたい状況でございます。私どもといたしましては、この問題につきましては、なお論議の推移を見た上で検討してまいりたいと思っております。  ただ、現実の問題として日本についての問題として考えますると、いま御指摘がありました津軽海峡でありますとかあるいは対馬海峡、その他日本周辺のそういういわば今度国際海峡になるような海峡において、外国の航空機がいわゆる国際航行に該当するようなやり方で上空通過をしているという事実は現在ございませんから、わが国自身にとっては、それほど大きな現実的な問題ではないというふうに考えております。
  238. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 現実的な問題じゃないと言っても、当面する問題は、そういうことはやはりはっきりしておかなくちゃならぬわけです。必ずそこを通らないなどということはあり得ませんし、いま現在はそうであっても、そういう点については、やはりきちっと決めておかなくちゃならぬと思うわけでありますが、自由通航ということになりますと、核兵器積載の艦船及び航空機の通過は、これは、もう非核三原則の持ち込ませないという原則に抵触してくるわけですけれども、その点についてはどのように御判断になっていましょうか。
  239. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 これも前から御説明申し上げておりますけれども、いわゆる国際海峡がどういうふうな国際法上の制度となるかは、この海洋法会議で論議され、提案が採択されませんと、実はどういう形になるかということは、具体的にはわからないわけでございます。  そこで、新しく採択されます国際海峡制度と、わが国の基本的な政策でありますところの非核三原則との関係についてどうなるかということは、やはりそこででき上がってきまする国際法上の新しい制度というものを見た上で考えるべき問題であるというふうに考えているわけでございます。
  240. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 大臣、国際海峡を自由通航するということをお考えになっているわけですから、当然、国際海峡を自由通航であるということになれば、核を積んでいる艦船あるいは飛行機等があった場合、これは完全に、いまのわが国の非核三原則に抵触するというかっこうになるわけですが、その点どういうふうに大臣はお考えになっていましょうか。
  241. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点につきましては、いずれにしても海洋法会議が決着すればその時点で、また、しなければそういう国際的な合意を離れまして、わが国の立場から十二海里の問題を考えよう、こういうことであるわけでございます。つまり先ほどから政府委員が申し上げておりますように、先進国の多くはほとんどそうでございますが、軍艦というようなものを持っております。わが国はそういうものを持っておりません立場でありますから、今度のような多数国会議の中においては、わが国はかなり特殊な立場にあるわけでございますが、他方では、わが国は大型タンカー等を持って、これがわが国の国民の生活にとって不可欠なものになっておるわけであります。したがって、軍艦とタンカーを分ける議論をするということは、軍艦を持っていないというわが国の立場が非常に特殊なものでありますだけに、国際的にはなかなか通りのよくない話になるわけでありまして、むしろ今後、多くの国際海峡とでも言われるものを抱いております国にとりましては、大型タンカーの方がはるかに迷惑な存在であるというような感じが強かろうと思うわけです。また実際そうであろうと思います。  そういうことでございますから、わが国が海洋法会議を全体として、いわゆるパッケージディールで法典に持ち込むことが望ましいと考えておる限り、また考えておるわけでございますが、わが国の立場だけをいつまでも主張してまいりますと、この会議はまとまらぬということになります。そういうような意味で、全体の国益を考えて、どうすればいいのかということを考えつつ会議に対処をいたしたい。いずれにいたしましても、どのような決着にせよ、現状よりこの問題についてわが国の立場が弱くなるというようなことは、現状より後ずさりをするというようなことはしたくないと思っているわけでございます。
  242. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 現状より後ずさりをするようなことはないということなんですけれども、実際に政府としても、十二海里ということについて合意がなされれば、それに従うのだという現実的な考え方に進んでこられている以上、国際海峡を、まさしく日本の領海内を自由航行する核搭載艦船、これが通った場合に、非核三原則との関係はどうなるのか。また、これは少なくとも前の木村外務大臣が国是とまで言われたし、あるいは国会において決議をされた問題であるがゆえに、もしそういうふうな場合にどういう手続をとられ、そして政府としては、非核三原則の手直しということも実際に考えられているのかどうか。ただ単にここで答弁して、もうやむを得ないのだということで済まされる問題であるかどうかということは、どうお考えになっていましょうか。
  243. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはすでにお答え申し上げたと思うのでございますが、国際海峡というのは全く新しい概念でございますから、もしそれについて国際的な合意かできた、新しい国際法が生まれたというときには、わが国はそれに反しない形で国内の政策を考えていかなければならないということは、多分そういうことからおっしゃっていらっしゃるのだろうと思いますが、そのとおりであろうと思いますけれども、そのこと自身が非核三原則と矛盾をするというふうには私は考えていないわけであります。
  244. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国際海峡といっても、しょせんは領海の中に入ってくるわけですから、領海、領空に対しては、いままで政府は全く核を持ち込ませないという考え方であったわけですから、そうなりますと、領海にいわゆる核搭載の艦船あるいは航空機が入ってきた場合には、非核三原則に抵触するのではないか、こういうふうに私は申し上げているわけです。領海、領空というものに対して、入ってきた場合には抵触するのではないか、その場合にはどうされるかと聞いているわけです。
  245. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府が従来領海に持ち込ませないと申しております領海は、御承知のように三海里という領海でございます。今後、国際海峡というものができますときには、その三海里が十二海里になるわけでありますけれども、そこに国際海峡というものができれば、いままで考えておった領海というものと、この十二海里に延びました領海というものは、国際海峡という新しい概念によって置きかえられるということになるわけでございますから、私どもとして、いままでの線からの後退があるというふうには思わないわけでございます。
  246. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これも一つは、大変に今後また問題になってくると思いますが、時間も余りありませんので先に進ませていただきます。  ソ連漁船が近ごろ日本近海でかなり操業をしておる状態が、目に余るような問題が実は提起をされております。伊豆七島沖あたりにおいても、底びき漁法によって、ほとんど漁民が漁場を追われるような乱獲が起こっているわけでありますけれども、わが国は三海里説をとっている限り、三海里外の漁業はソ連がやっても適法である、そのように政府としては理解されているかどうか。ソ連の方としては十二海里をとっているわけでありますから、片一方では十二海里まで締め出しをして、日本の国においては三海里近くまで来るというような問題、これは私、非常に不合理だと思うのですけれども、それによって日本の国の漁場が非常に荒らされているという問題については、政府はどういうふうにそれに対処をされているか。いままでソ連に対して抗議を再三されておるか、それに対する反応はどうであるのか、その点についてはどうなんでしょうか。
  247. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 いろいろな事実関係、実は私、所管でございませんので、必ずしも全部正確には申し上げられませんけれども考え方といたしましては、最近頻繁に発生しております近海における日ソ間の漁業問題は、三海里の外のいわゆる公海上で発生している問題でございます。その大半は、しかしながらもし仮に日本の領海が十二海里であったとすれば、そのうち恐らく六ないし七割くらいが十二海里以内で起こっている問題だというふうに私どもは了解しております。このことについて、私どもはすでに数回にわたりましてソ連に対しまして、日本が合法的に営んでおります日本の漁業に対して、国際法上許されない違法行為をもって損害を加えているという事実を指摘し、そういう操業は差し控えるようにという申し入れと、それから発生いたしました損害については、その損害を補償することを請求するということを先方に申し入れているわけでございます。そして、これに対しましては、ソ連側もそういう損害が発生していることについては、そういうことのないように出先機関に指令を出すということを申しておりますけれども、しかし遺憾ながら、そういうソ連政府の回答にかかわらず、そういう事故は以然として発生しておるのが現状だろうと思います。  他方、こういう漁場の事故の発生を防止するために、近海における漁業について操業の協定をソ連との間で結びたいということを提案いたしまして、現在わが方から協定案を提示いたしまして、それを基礎といたしましてモスクワにおいて交渉を行っておるわけでございます。まだその交渉が妥結するには至っておりませんけれども、大きなラインといたしましては、ソ連政府もその協定の基本的な考え方なり仕組みについては異存がないということで、いわば話し合いは順調に進んでおります。私どもとしては、なるべく早くその協定を締結いたしまして、現に発生しておりますような漁業の事故が発生しなくなるようにということを希望しているわけでございますが、まだその協定がいつ妥結できるかということについての具体的な見通しを申し上げる段階には至っておりません。
  248. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ソ連の日本近海の漁業をやめさせるには、当然わが国も領海を十二海里にとる以外に実は方法はないわけです。ないわけでありますけれども、当面のところ、政府としてソ連との話し合いにおける協定を結んでいって、そういうことの不祥事件が起こらないようにということでありますけれども、原則的に大体協定の内容というのはどんな内容でしょうか。
  249. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 交渉中でございますので、細部にわたっての御説明は差し控えさせていただきたいと思いますけれども、基本的な考え方といたしましては、操業をしている相手国の漁船に対して、その操業を妨げるような行為をしないということ、それから操業秩序を維持するために、双方で情報交換をするということ、また万一事故が発生した場合には、その事故について事後の処理をする、いわゆる紛争処理機構を設けるということ、そういったことが主たる内容になっております。
  250. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いずれにしても、三海里の外で操業しているのが六割くらいあるというわけですから、十二海里にすれば、かなりその被害等はなくなるわけですから、当然外務省としても、ソ連の日本近海操業の問題については、まず領海を十二海里ということにしない限りは、この問題というものは、暫定的な一つの協定あるいは話し合いということにすぎないと思いますけれども、それはひとつ、不祥事件を起こさない意味においても話し合いを続け、一日も早くそういうふうな協定が結ばれるということを希望してやみません。  最後にこれは、またちょっと話が違いますけれども、去る三月八日付朝日新聞二面の「記者席」に「核論議の裏につのる疑惑」ということで、防衛庁のある幹部の発言に基づいて書かれたものであるという、大変に内容的から言っても問題がある発言がなされまして、それに基づいて「記者席」で朝日新聞が取り上げたわけでありますけれども、この問題について、私ども直ちに防衛庁の方に行って防衛局長に抗議を申しまして、私どもが論議を進めてまいりましたX—A、X—Bという記号に対してはどのような違いがあるのか、そしてまたアメリカが言っているところの、X—Bの中における在来型兵器と、それからまた核兵器と同じように適用されているというならば、どこにその違いがあるのかということについて明確な答弁を要求する旨の申し入れをしてまいりました。ところが、いまだに防衛庁の方としてはその明確な御答弁が実はないわけなんですが、その点についてはどうなっていましょうか、防衛局長さん。
  251. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 ただいまの新聞記事に関連しての問題でございますけれども、私ども政府の公式の見解といたしましては、すでに予算委員会におきまして、アメリカ側の回答につきまして、外務省の方から御報告申し上げておるということでございまして、防衛庁がこのような問題につきまして、防衛庁独自の見解を持つというような立場にもございませんし、もちろんあそこに書かれておりますのは、実は大変恐縮でございますが、私どものある職員があれに似たような発言をしておるということのようでございまして、これは、もちろん防衛庁としての公式の見解でもございませんし、私ども職員の不用意な発言によりまして矢野、鈴切両先生に大変御迷惑をかけたということにつきまして深くおわびを申し上げたいと存じます。
  252. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 朝日新聞の三月八日の二面の「記者席」の「核論議の裏につのる疑惑」について防衛庁のある幹部、しかもあそこには「課長」ということが書いてありますけれども、その発言に基づいて「記者席」としては書いたというふうにありますけれども、その事実関係については、それに間違いなかったということについて、おたくの方でも調べておられるわけでしょうから、その点について……。
  253. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 あそこの記事の一部でございますが、これは確かに、本人がそのような発言をしているようでございまして、その点は間違いがないようでございます。
  254. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 X−AあるいはX−Bの一方が核である、だから矢野書記長が取り上げた問題と私の取り上げた問題には矛盾があるというような単純な論法でこの問題を取り上げているようでありますけれども防衛庁としては発言をされた幹部の見解についてはどのように考えておられましょうか。
  255. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 御案内のようにX−Aというのは、魚雷その他の兵器につきまして信管を外しまして、外した状態で信管と別に梱包をするというのが、X−Aの取り扱いの区別になっているようでございます。それからX−Bの方は、信管を取り外しまして、それを一緒に梱包したときにX−Bの取り扱いになる。で、これはいずれも通常兵器でございますが、それとそれから核兵器については、核兵器の種類いかんにかかわらずX−Bとして取り扱う、こういうふうになっているというふうに聞いております。
  256. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 核兵器であれば、X−Bが信管を取り外ずそうが取り外すまいが、それは核兵器であるというふうにおっしゃったわけでありますけれども、核兵器の信管を取りはずした場合にX−Bなんてどこに書いてありましょうか。
  257. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 核兵器については特段の定めがございませんので、一応、そのX−B以外のところに核兵器の記述がございませんので、X−Bがすべての核兵器を取り扱うのではないかというふうに考えておるようでございます。
  258. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それはあなた、正式な防衛庁の見解であるかどうかという問題ですよ。要するにあなた、それは推測であって、全くX−Bが信管を一緒に梱包している、あるいは梱包しない場合もすべてX−Bで処理をされるということ、それがアメリカの正式な見解であるかという問題については私は大変疑義があると思うのです。いいですか。私のところへアメリカの方でよこした返事の中に、信管を同時に梱包したと書いてあるのだが、その同時に梱包したというのは、それじゃ要らないじゃないですか。結局、同時に梱包をしてあるということが入っている以上は、パケット・ウイズ・ヒューズと書いてある以上は、それはそのように読まなくちゃならぬじゃないですか。それにもかかわらず、いわゆる信管を取り外していようがいまいが、すべて核兵器はX−Bである、こういうふうなあなたの単純的な論法ですが、それがアメリカの正式な見解であるかどうかということについては、それじゃあなたは責任を持てますか。
  259. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 それでございますから、いま私がお答え申し上げましたのは、先生の御質問でX−A、X−Bについて防衛庁職員はどういう意見を持っておるのかということでございましたからお答えを申し上げたのでございまして、これは別に、アメリカからそういうことを言ってきたからという前提でお話を申し上げているわけではございません。
  260. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それじゃ全く、それは防衛庁の見解というのではなくして、その幹部が考えておった単純な物の考え方であった、こういうふうに判断していいですか。
  261. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 防衛庁といたしまして、明確な結論を出しますためには資料が大変不足でございまして、これだけの資料で当庁としての公式の見解をはっきりと申し上げるということは不可能でございますので、当庁の見解につきましては差し控えさしていただきたいと思います。
  262. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 確かに、憲法第二十一条で集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由が保障されているということは、言論の自由の民主的な考え方から当然であると私は思うのです。しかし公的な立場にある防衛庁の幹部が自分の考え方だけで歪曲をし、しかも国会で論議している問題について、その場所で明快に答弁をしないで後になってから、言うならばこういうふうに中傷をするということは、私は国会軽視もはなはだしいと思うのです。しかも公党が責任を持って取り上げて詰めてきた問題に対して、防衛庁は正式な立場でこの見解を述べる立場でないと言っているにもかかわらず単純論法で発言する。そういう防衛庁の幹部があっていいかどうかという問題、また、そういうふうなことを安易に口外をし、あるいは話をするという問題について、私はこれは大変に大きな問題だと思うんですがね。  防衛局長は、こういうふうなことが今後あっていいかどうかという問題については、どのようにお考えになっていましょうか。
  263. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 先ほども申し上げましたように、関係方面に大変御迷惑をかけて申しわけないと思っております。おっしゃるとおり発言につきましては十分慎重に、今後二度とこういうことのないようによく内部の体制を固めてまいりたいと思っております。
  264. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この問題については、本来なら防衛庁長官を呼んでたださなくちゃならないわけですけれども防衛局長があえて、そういうことで自分のところの職員がそういうことを言って、貴党に対して大変に迷惑をかけたということについて陳謝をされましたから、私は、ここでそれ以上取り上げる気持ちはありませんけれども、今後、防衛庁としても、こういうふうな、軽々にものを取り上げて、そして中傷をするということのないように、やはり国会の場所において堂々とそれについて言い開きをしていくようにしなくてはならないというふうに私は思うのですが、最後に、その点についてもう一回お伺いしてやめます。
  265. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 おっしゃるとおり、国会の場において堂々とオープンの議論をやっていくべきだと思います。御趣旨をよく体しまして、今後も努めてまいりたいと思います。
  266. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 時間でございますので、これで質問を終わらしていただきます。
  267. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員長代理 受田新吉君。
  268. 受田新吉

    ○受田委員 宮澤外務大臣は、御就任以来多忙な日々でいらっしゃるし、加うるに今夜はサウジアラビアへ、ファイサル国王の逝去を哀悼し、両国の親善に貢献されようとしてお立ちになるのであります。非常にお疲れですが大任を果たしてこられることをお願いしておきます。  と同時に外務省に、この法案に直接関係する問題をまずお尋ねしたい。  この在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律改正案が最近は毎年のごとく出ておる。この長ったらしい法律改正で、最近、外務省はずいぶんたくさんの国に大使館を置き、専任大使を置き、また総領事館設置しておられる。今回もグレナダ、バハマ、ギニア・ビサオの大使館、上海、アガナ、マルセイユの日本総領事館設置、特に欧州共同体日本政府代表部を新設する、こういう前進した改正案をお出しになっておる。私、このうちのマルセイユでしばらく滞在をしておったことがあります。明治時代は、マルセイユは日本のヨーロッパの上陸拠点でもあったわけで、最近のようにまたそういう時代が復活してきた時点で総領事館を置かれる、いささか遅きに失すると思っておりますけれども、それぞれ大使館、総領事館設置の理由がはっきりしておると思います。  そこでいま、海外に日本総領事館及び大使館を置いているところはどれだけあるか、一応資料ではわかるわけですが、その中で大使を専任で置いている国と兼任で置いている国の数だけをお示し願いたい。
  269. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 大使館昭和五十年度末で九十七になり、兼館をいたしております大使館が三十八でございます。合計いたしますと、実館と兼館合わせまして百三十五、こういう数字になります。
  270. 受田新吉

    ○受田委員 昨年であったと思うのですが、私から、あちらの国が日本へ専任大使を置いているのに、日本は兼任大使でごまかしておる国が幾つあるのかということを指摘しました。お答えを願いたいのです。去年それをある程度直したわけですが、まだ残っているのがある。
  271. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 先方がわが国に大使館を置き、これに対してわが国が大使館を置いておりません国は、現在、南イエメン、ウガンダ、ギニア、この三カ国でございます。
  272. 受田新吉

    ○受田委員 なぜこちらがこれに対して対等の外交を進める上で大使館設置しないのですか。
  273. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 ただいま御答弁申し上げました中のギニアにつきましては、今回の名称位置法の改正をいただきますならば、来年の一月に開館できるように進めたい、こういうふうに考えておりますが、ほかの二館につきましては、たとえばウガンダにつきましては、今回も予算要求でお願いいたしましたけれども、種々の事情によりまして、今回は見送りといたしたという事情がございます。漸進的にこれらの館の開設も進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  274. 受田新吉

    ○受田委員 南イエメンはどうですか。
  275. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 いろいろな関係で一挙に全部というわけにはまいりませんので、逐次という考え方で対処をしてまいっておりますので、将来これらの館につきましても考えてまいりたいというふうに考えております。
  276. 受田新吉

    ○受田委員 外務大臣、いろいろな事情で一挙にできない事情をあなたは——大国意識を日本は持っておる。これらの国は小国であるから、向こうは大使館を置いておるが、こちらは置かないのだ、この不心得な外交路線を改善するための責任があなたにあるわけです。なめるなということですよ、これは。向こうから見たら、なめるなということになるのです。向こうが大使館設置し専任大使がおる。こちらは、いろいろな事情で予算がとれないなどというくだらぬ事情は許されません。外交関係は、それを実行するためにはそのぐらいの予算がとれないことはないですよ。大使館大使その他参事官等に対する在勤俸をこれだけ引き上げる、それだけのサービスをするゆとりがある外務省をわれわれは大いに応援してきたのだ、これまで。在勤俸の引き上げに応援してきたにかかわらず、小国と言って——なめるなという言葉があるのです。対等の外交によって国際親善は図られる。大国たりとも恐れず、小国たりとも侮らず、開発途上国といえども一人格を持った国家として同様の尊重外交を進めるべきだと思う。外務大臣自身が、その間の事情を官房長に聞かなければわからぬような状態に外務省が萎靡沈滞——腐敗堕落とは言いませんけれども、意気消沈、萎靡沈滞している外交路線を、私ここで大変残念に思います。
  277. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 従来なかなか外務省の機構人員の強化ができませんで、おしかりを受けており、ことに受田委員からは御激励を受けておったわけであります。今回、定員も、予算が成立いたしますと大幅に増強することができるようになり、また、ただいまのように兼館になっておりますところを一つずつ改善はいたしつつあるわけでございます。ただ、決してこれは軽視という考えのみではないのでございまして、たとえばわが国が大使館を置いておりますが、先方がわが国に大使館を置いていないというような国もございますわけでございますので、その間おのずから彼我の判断が分かれている場合もあろうと思います。  しかし正直を申しまして、わが国としましては、このような例は改善をしていくべきものであると考えております。これは予算の問題ではございますけれども、同時に定員の問題でもございますので、なかなか予算折衝では実は苦しいわけでございますが、できるだけ今後努力をいたしてまいります。
  278. 受田新吉

    ○受田委員 いまのウガンダ、これはナイル川の上流地区です。エジプトからスーダンを越えて白ナイル川の山間にある独立国家である。これは交通路線においてもなかなか厳しい事情にあり、ここへ赴任される外交官があるとすれば大変御苦労をかけるわけです。よくわかります。また南イエメンにしても、これは、いわゆる中近東外交政策から言うならば、このとかく問題の多い地区にそれぞれ大使を置くべきである。大使館を置くべきである。これはいま爼上にも上っておらぬ。向こうはせっかくこちらへ大使館を置いているのに、このアラビア半島の南端にある南イエメンには、まだこちらは大使館を置く用意さえできていない。  そこで、今回のサウジアラビアの隣にあるこの国にさえ大使館を置かぬということになっておるから、あなたがいまあわててお出かけにならなければならぬ。ファイサル国王という、日本にもわざわざ来られて親善外交に努められ、また日本を友好国と見ないという情勢の中で、三木副総理、いまの総理がみずから乗り出して、友好国の列にまで引き上げてもらった。ファイサル国王の恩恵は相当なものです。その葬儀に、それぞれの国の元首、総理等が出かけて弔意を表しているときに、日本では野口という現地の代理大使——代理大使といえども身分一等書記官にすぎない。この一等書記官を代理大使としておる。大使職務を行うには、それがいかなる立場の者であろうとよかろうということでありまするが、にわかに一等書記官を代理大使にして、このサウジアラビアという大事な国をなめておるということになって、現地でも相当問題が起こっておる。これは海外情報でわれわれもキャッチしておるところです。  あなたが今晩あわててお出かけになる苦衷はわかります。けれども、サウジアラビアの鈴木大使は日本へいま帰っておいでになる。この大事な国、いつ何が起こるかもわからぬという情勢は、中近東のあの緊迫した情勢の中で当然予想されるわけです。外交情報などは十分つかむ機関外務省にはある。いついかなる事態が起きても直ちに、この国にこういう事態が起こって、もしその国に大使がいないときには、どの国の大使がどこへ行くかという手だてはちゃんとしていなければいけない。サウジアラビアにいかなる事態が起こり、ヨルダンでフセイン国王にこういう事態が起こったら——いつ暗殺されるかもわからぬという情勢にフセイン国王はなっている。そのときにヨルダンの大使がもし病気で寝ていたときには、隣のエジプトの大使が行くとかアラブの大使が行くとか、あるいはここに松永さんもおられるわけでございますが、かつて松永さんのような立場でフランスにおられた人が行って、フランスの大使が行って代表を務めるとか、何かの手だてがなければいかぬ。  サウジアラビアの国民が挙げてあの王の逝去を悼む涙ぐましい国民感情の中に、友好国にまで引き上げ、ファイサル国王御自身が日本を訪問して、そして日本との親善に貢献しようとしたそういう国王が亡くなったというときに、このぶざまなかっこうというのは、外務省の萎靡沈滞した雰囲気が明らかにここに証拠立てられると私は思うのです。何やら外交官には頼りないものを感じますね。いざ、どこに、どういうことが起こったらすぐぱっと行くということでなくてはならぬ。  かつて昭和四十八年七月であった。日航ジャンボ機がハイジャック事件にぶつかった。そして在アラブ首長国連邦大使、クウェート大使を兼ねておった石川さんはそのときにいなかった。このときに強い反省を国民は求めていたのです。いついかなることが起こるかもしれないのが国際情勢です。臨機応変、即時即応の体制が外務省にしかれておられなければならない。それだけ優秀な外交官もできているはずです。このサウジアラビア国王急逝に伴う外務省の措置はまことに頼りない話ですが、鈴木大使は一体何のために日本へ帰っておられたのか。
  279. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実は、今度のことについては多少いきさつがございまして、ファイサル国王が急逝されたということは、あの日の晩方、私どもその情報を確認いたしまして、すぐに私初め幹部全部集まりまして、特使を派遣すべきではないかということを考え、夜中に総理大臣にも実はお話をしたりしておったわけでございます。しかるところ、葬儀が回教徒の儀式によってごく内輪で行われるということがわかってまいり、またかたがた、すぐ翌日の夕方ということでございましたから、時間的にもこれは間に合う方法がない。それらのことを勘案いたしまして、御指摘のように現地大使が東京に参っておりましたので、代理大使よりは最も近隣の大使をかわりに出そうと考えまして、ベイルートにおりました杉浦大使にそのように訓令をいたしたわけでございます。その晩のうちに訓令をいたしましたけれども、ベイルートとリヤドは遠い距離ではございませんが、実は葬儀に間に合う飛行機の便がなかったのであります。それで、その道が、そういう方法が不可能であるということがわかりまして、臨時大使現地参加をさせたということでございます。  なお、これは葬儀自身であったわけでございますが、その後に、弔問を正式に受けられるかどうかということを、こちらから聞きまして、先方の儀典長から、国王あるいは皇太子が受けられるということの回答が今日参りましたので、私が参ることになったわけでございますが、こういう際にも、ともかく飛んで行ってすればいいのだと考えるか、あるいは非常に習俗習慣も違った国でございますから、ことに不幸のあった直後でございますから、やはり改めて弔問を受けるかどうかということを正式に聞いて、その後に行くことが礼儀正しいか、わが国は後者を選んだわけで、それにはそれなりのわが国としての考え方、私はこれはやはり間違っていないと思っておるわけでございますが、実は御承知のように先般、サウジアラビアからナゼールという中央企画院長官が見えましたそのときに、多年懸案でありました日本とサウジアラビアの経済技術協定というものを、ナゼール長官と私の間でようやく締結することができまして、今後これをどのように運営すべきかという問題がございまして、そんなこともございまして、鈴木大使は東京に帰朝しておったわけでございます。  確かに前回、石川大使の場合にも御指摘のようなことがございました。どちらかと言えば、勤務条件は厳しい国でありますので、できるだけ仕事の都合がつけば、ある程度の休息を与えてやりたいという気持ちがありまして、そういうことをいたしておりますわけですが、たまたまこういうまことに二重に不幸なことになってしまったわけで、残念なことであると思っております。  御指摘のように、何かの国に万一のことがありましたときに、もし現地大使がいない場合に、自動的にかわってどうするというようなことを、あらかじめ決めておくべきだということは、あるいは考えなければならぬことであろうかと思います。この点、よく研究さしていただきますけれども、とにかくさような次第であったわけでございます。
  280. 受田新吉

    ○受田委員 宮澤先生、やはり日本国という国は、友好親善には世界でどの国にも劣らない熱意を持っている国であるということを示さなければならぬです。  鈴木さんは、日本に帰られて何日たっておるわけですか。いまの経済関係の問題等が解決して、いつあちらへお帰りになる予定でありましたか。
  281. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 鈴木大使は、いま大臣から御答弁ございましたような趣旨で三月十日に帰ってまいりまして、事故が起きました翌日、急遽現地に帰任されました。
  282. 受田新吉

    ○受田委員 帰国期間、日本に何日おられたのですか。
  283. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 鈴木大使は、休暇帰国の資格発生という事情を踏まえまして、休暇帰国を兼ねて帰ってきたわけでございますが、規定上は、大使の場合には四十日間本邦で休暇をとれるということになっております。先ほど御答弁申し上げましたように、三月の十日に帰ってまいりましたけれども、事故が起きました翌日、つまり二十六日に現地に帰任いたしたわけであります。
  284. 受田新吉

    ○受田委員 日本に帰られて何日おられたかという点です。
  285. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 約二週間でございます。
  286. 受田新吉

    ○受田委員 鈴木さんがあちらへ赴任されて、そして休暇帰国の条件が熟したとおっしゃるこの外務公務員法の第二十三条、休暇帰国のこの解釈をどういうふうにされておりますか。
  287. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 外務公務員法二十三条に休暇帰国の規定があるわけでございますが、不健康地に在勤いたします場合には一年半で権利が発生いたします。通例は在勤期間三年となると権利が発生するわけでございますが、鈴木大使の場合には、昭和四十七年の二月から四十九年の六月までシカゴに総領事として在勤しておりました。引き続いて昨年の六月二十六日からサウジアラビア大使として現地に着任しているわけでございます。サウジアラビアのような不健康地として指定されている国におきましては、一年一カ月の経過をもって二カ月というふうに加算が行われる規定になっておりますので、鈴木大使の場合には、シカゴと通算いたしまして、昨年の十月に休暇帰国の権利が発生いたしております。しかしながら、任国の事情その他を十分考えながら休暇の資格の行使ということをいたしておりますので、三月初めまで休暇帰国を見合わせておった、こういうことでございます。
  288. 受田新吉

    ○受田委員 大変外務省は危険な思想がある。シカゴとサウジアラビアを通算して帰国条件を出させるような、そういう人事配置をやっている。いいですか、サウジアラビアへ出かけてからほんにわずかな期間である。サウジアラビアだけにいたら、まだ資格条件は発生することができない、帰国はできないのです。シカゴとの二年間を通算して初めて発生するような人をサウジアラビアへなぜ回したのですか。外交人事の責任者として、これは私、外務大臣にお答え願いたい、シカゴと通算して帰国条件が発生するというような、こういう人事配置というのを。明確な答弁を願いたいです。
  289. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 シカゴにおりまして、サウジアラビアに赴任の前、赴任のため打ち合わせに本省に十日おりましたそうでございます。したがって、その間休暇はとっておりませんで、規定がいろいろあるようでございますけれども、ただいまのようなことになったのかと存じます。詳しいことは官房長から申し上げます。
  290. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 外務公務員法二十三条の規定は、在外公館勤務する外務公務員につきまして、一または二以上の在外公館に引き続き勤務する期間が三年を超える者に対してという規定がございまして、在外勤務から引き続いて次の在外勤務する場合には、これは二十三条の規定上通算ということになっておるわけでございます。しかも、この規定の中で、また別に休暇帰国に関しましては、外務省令が別途ございまして、その中で、不健康地として指定されるのはしかじかという規定がございまして、サウジアラビアは不健康地としての指定が行われている。不健康地につきましては、先ほど申し上げましたように、一カ月に対して一カ月の加算が行われるという二十三条の規定があるわけでございます。これに基づいての措置であるわけであります。
  291. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと昨年六月でしたね。
  292. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 そうでございます。
  293. 受田新吉

    ○受田委員 それからもう半年ばかりで資格要件が発生するのですか。
  294. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 三カ年という外務公務員法二十三条の規定から申しますと、昨年の十月で休暇帰国に関する満三年という期間が生じたということになるわけでございます。
  295. 受田新吉

    ○受田委員 シカゴをあなたは計算しておられるんですよ。そうですね。
  296. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 そうです。
  297. 受田新吉

    ○受田委員 そういうシカゴとかサウジアラビアとか、条件の悪いところを継続してこうして外交官を派遣するという、このやり方を私はお尋ねしておるのです。そういうところへだけ一人の人に重荷をかけて、今回も一年半たたなければ戻れない、一年半以上なければいけないといって、事実半年ばかりで戻しておる。それはシカゴの行きがかりで戻しておるという。宮澤先生、これは大変なことですよ。一人の外交官には一または二以上の在外公館勤務させて、そして去年の十月に三年の休暇の条件が発生した、そういう人をすぐまたサウジアラビアというような大事な、いかなる事態が起こるかわからぬようなところへすぐ派遣して、そして半年ばかりですぐこっちへ帰ってもらって、四十日も休暇をとろうとしたわけです。  中近東の情勢が異常な事態であって、ほかの国であったら、隣国の大使の行ける条件のところはたくさんあるのに、あそこはいま飛行機も思うように行かぬ。いま外務省に待命大使がおるはずです。遊んでおる大使がいま何人おりますか。任地がきまらないで、外務省で待命大使のたむろする部屋がありますね。私も何回かお訪ねしてみた。あそこで遊んでいる大使がいま何人おりますか。
  298. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 待命大使の中では、任国から帰朝を命ぜられまして、いずれ退官ということを予定されている大使と、待命の命令をもらいまして、帰朝して次の任地の発令を待っている大使と二種類ございます。それからもう一つは、在外勤務しておりまして、次の任地が指定され、赴任途次打ち合わせのために東京に立ち寄っている大使と、大きく言って三つあると存じますが、次の任地を待って現在待機中の大使というのは一名でございます。
  299. 受田新吉

    ○受田委員 その大使を、鈴木さんが帰られた期間中は臨時に大使としてその休暇中を服務せしめればいいじゃないですか。それは外務公務員の規定の中に、そういう場当たり的な大使勤務は許されないという重い規定があるのでございますか。
  300. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 いま申し上げました一名の待機中の大使は、現在アグレマンを求めておりまして、いつアグレマンが接到し、発令になるかわからないという状況でございますし、また任国を持ちませんで派遣いたしましても、必ずしも十分な活動ができない、活動範囲というものがある程度限定されるというふうな状況もあると思いますので、そのときどきのケースによっていろいろまた考えさせていただきたいと考えます。
  301. 受田新吉

    ○受田委員 宮澤さん、あなたのお役所にこういう不合理があるのです。サウジアラビアのような大事な国、ほかの国はクウェート以上に遠い所におる人がすぐ派遣されておる。それは葬儀が非常に早かったといえば、これは言い逃れです。いつでも行けるようにしておかなければいかぬのです。交通の便が悪い。しかし、この報に接して、そして総理と話をされて外務大臣が訓令を出される、その時間的なゆとりが余りあり過ぎたんじゃないか。サウジアラビア国王急死、私もここでこの委員会のときにそれを承りました。その場で直ちに適切な隣接国の大使、しかも相当貫禄のある大使派遣する道は幾らでもあった。時間がかかり過ぎておる。外務省のいまの待命大使の中にアグレマンを求めてもいいじゃないですか。こういう重大な事態には、いついかなることが起こってもということでアグレマンを求めておる大使、あるいはほかにもあそこにたむろしている大使に、せめて十日や二十日ぐらいは行ってもらう。クウェートへいま臨時に派遣してあるということで、そこから任地へ向かってもいいですよ。悠々とゆとりを持って大使が赴任するという形でなくして、即時即応体制に外交人事を行わなければならない。  このぶざまなかっこうというものは、日本としては大変残念です。また外務大臣が行かれてよりを戻すのも大変ですよ。これは、もう外交の大矢敗だ。いま待命大使などでアグレマンはいつごろ来る予定でございますか。
  302. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いまの場合、どうも済んだことでございまして、申し上げる方もやや弁解がましくなるかもしれませんが、ファイサル国王が亡くなられましたという情報は、私どもあの晩の九時ごろであったと思うのでございます。受けまして、すぐどうしようかということで、特使派遣のこともすぐ相談いたしましたことは申し上げたとおりですが、非常に急ぐということで、ベイルートの大使現地に行くようにと訓令しましたのは、たしか夜の十二時ごろであったかと思います。そして、いまからでは便がないということを言ってまいりましたのが、それから数時間後でございましたから、その間は、私どもとしては比較的早く処置をいたしたつもりでございまして、ベイルートからリヤドにそれほど便がないということは実は私も初めて知ったわけでございますが、事実そうでありました。  したがいまして、これはちょっと別のことになりますけれども、結局いわゆる民間の飛行機、コマーシャルの飛行機しか、われわれにはいろいろな場合に使えないという、これはやむを得ないことでございますけれども、そういう問題が正直のところでございますのと、非常に時間的に近かったということでありますが、先ほど受田委員の言われますように、一人の大使が四十日ほども休暇をとるというときには、それはあらかじめわかっておることでございますから、アグレマンというのは、私は実際上むずかしいと思いますけれども、何かのときにはだれがどうするというような、多少そういうことをやはり考えておくべきであったのかもしれぬということは私、感じております。自動的にこうせよということにしておきますれば、貴重な何時間かはあるいは救えたかもしれないという感じはいたしております。
  303. 受田新吉

    ○受田委員 そこです。だからクウェートもあるしイランもあるしイラクもある。ベイルートよりもっと近いところがある。この国にもし何か起こったときには、たとえば日本の大使が射殺されたというときに、一等書記官が代理大使をやるのでなくて、その間は兼任大使を、臨時に隣の国の大使が兼任して、アグレマンを求めるという余裕がなくても、政府の特派大使としてそれを用いるとか、ちゃんと平素からどの国にどうという、時間的にもベイルートからの飛行機がなかったのがいまになってわかるというようなことのないように、あの辺におって、どの便がいつあって、ちょうど間を縫うのには、どの国がこのところに行ったらいいというような飛行便なども考慮して、もうさっとこれらの国々に行って、日本はさすがだと、直ちに即時即応の体制で認証官たる大使が兼任で来た、特派大使として政府から命ぜられた、そうすれば堂々と、天皇陛下のもとに認証された外交官が行けるじゃないですか。代理大使一等書記官です。一等書記官というようなものは参事官でもないのです。公使でもない。あの周辺には公使を置いている国もある。公使を置いている国があれば、公使にかわってさせるとか、こういう手もあるわけだ。そういう配置の妙と、そして連絡の妙。  そして、あのベイルートからサウジアラビアの首府に行くのに、飛行機がないからまあ代理大使やるかというような、こんなへまな外交というのはまずないね、宮澤先生。これは今後、全部その配置の妙を得て、それからシカゴからサウジアラビアへ引き続き御苦労願う。そして一年半以上経過しなければならぬというのが、もう半年ちょっとしたら休暇がとれる、不健康地ばかりを駆け回るような大使の継続的な海外勤務などということも、これは余りにも不幸です。私もシカゴへはもう前後六回旅行しておるが、今度はベイルートへ行きなさい、あるいはサウジアラビアへ行きなさいというようなことでなくして、不健康地は二回継続しないというような配置をすればいいわけです。  外務省の首脳部でちょこちょこと人事、配置を考えて、この大使は困難なところばかり回してやろうじゃないかという冷酷無残な外交人事があるとするならば、これは日本の国は人間を尊重するのでなくして、冷酷無残な外交人事をやる国であると世界から保証されることになる。いま大臣御自身が、即時即応体制について考えるべきであると答弁されたことでありますから、これ以上私は追及を避けます。外務省の古い歴史と伝統の中に陰惨な雰囲気がある。不健康地歴任の人事を続けておる。  私、今度でも、この南イエメンに、向こうは大使館をせっかく設置しておるのに、こっちは予算その他でこれが設置できませんという官房長の御答弁を聞いたときに、まことに陰惨な気持ちになりました。向こうさまは大使派遣した、こちらは予算の都合で大使を出すことができませんと。大国として意識しているとするならば、大国の陰にこのような小国を侮る気配、風潮、こういうものを見逃すことができないのです。あそこへ大使派遣するのに人がないとなれば、民間人を登用すればいいのです。  外務大臣外務省はキャリアの人だけが優遇されて、民間人が優遇されていない。民間外交、外交に経験を持ち、また外交の土性骨もあって、信頼するに足るような民間人をどんどん簡抜すればいいじゃないですか。百三十数カ国にまで大使を交換する国ができておりながら、その中にはいま純然たる民間人というのはおらないじゃないですかね、外務大臣。どなたかおりますか。
  304. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 最後の民間人の登用の問題でございますが、先般、外務大臣が国会の委員会で、適任者があれば登用するにやぶさかでない、こういう御答弁をいたしまして、私どもといたしましても、五十年度予算につきましては、外務省の定員、従来に比べまして飛躍的に伸びてまいっておる状況でございますので、新しい血を外務省に入れるということによって、一層外交体制の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。  したがいまして、新たにふえることになりますこの二百十人の定員を、最も効率のいい使い方をいたしたいということで、現在、外部からの人材の導入ということに種々具体策を練っておる、こういう状況でございます。
  305. 受田新吉

    ○受田委員 当委員会で、私は何回叫んだかわからない。歴代の外務大臣に、昭和三十四年ごろから叫んでいるのです。三十六年にはオランダで犬養道子さんにも会って、いやこれは女性ながら、女性大使としてもすばらしい人材がおるなという感じ。あれだけ外交上信頼されている。語学の達人である。婦人大使で適切なところもたくさんある。諸外国には幾つもそういう事例がある。外務省のキャリアの人だけを優遇して、全大使、認証官は全部外務省のキャリア、ノンキャリアが少数その中に入っておるというところで、外交人事をキャリア独占のかっこうにしておるところに日本外交の萎靡沈滞がある。四十代くらいの若い人でも大使で任命すればいいのです。  私は、この民間人大使の採用、起用をすでにこの委員会で合わせて十回以上言っておる。ところがいま官房長は、この間の委員会で発言されたというような話でございまするが、もう十数年前からこれを提唱しておるが一向にこれを——提唱した当時は、まだ民間人外交官が多少残っておった。ところが、とうとうみんな首を切ってしまって一人もおらぬようになった。ノンキャリアが少し頭をもたげているという程度で、しかも、それは本当に小さな国に残しておる。外務大臣、これは官房長が答弁される筋じゃないんですよ。これは、あなたが任命権を持っておられるのです。   〔加藤(陽)委員長代理退席、委員長着席〕 あなたの腹ができれば……。  いまの増員、まあ新憲法ができた昭和二十二年から見て、一般公務員の数はばんばんふえておるのに、外務省の数はふえ方が少ない、これは私はわかる。わかるが、認証官たるものはキャリア独占のポストであるというようなこの古い伝統はもうやめていく。そういうところに今回のようなへまが起こっておるんですよ。この中に新鮮な民間人でもおったならば、外務省の空気を変えて、ベイルートからサウジアラビアに行くのに飛行機がなかったというようなこんな言いわけが平然とやれるような外交陣というのを刷新できたはずですよ。  私も大体二十数回海外旅行をやり、在外公館皆さん方ともお話ししております。日本から行く人を、政治家、国会議員が行くと大事にしてくれるが、私は余り大事にしてくれなくてもいい。われわれが行くことにかかわりなく、ただちゃんとした筋だけを通していただけばいいんですが、そういう外交官を大いに利用して、外交官に重荷をかけるというような国会議員がおるならば、これはけしからぬ国会議員である。外交事務が円滑に行くような合い間で、適切な外交の事情を視察するための便宜を供与してもらう、それで結構です。過分なサービスは一切要らない。その間に諸外国がやっている経済通の外交官、通産省みたいなところから出た、出向した外交官、これを公使、大使にすればいい。もう本省に帰らぬで、外務省でおれは最後まで骨を埋めるんだという出向外交官をそのまま大使に起用すればいいじゃないですか。そういう手もある。  外務省だけで独占せぬで、各省からいま一応人材とおぼしき者が外務省へ外交官として出向している、その中から公使まではできておるが、大使はできておらぬ、そういう外務省の雰囲気を、大臣が言ってもなかなか変えることができぬかたい外務省かどうかを宮澤先生、率直に御答弁願いたい。がんこなのかどうかです。
  306. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは確かに、われわれの働き方、物の考え方が機動性におきまして、たとえば商社の在外派遣員というようなものに比べましたら、これは考えなければならぬところがいろいろあると思います。  先ほどの民間人登用の件でありますが、先だっても私、御答弁したことであったのですが、今度のこの二百人余りの増員というのは、これは現実の問題として、その人材は外に求めなければすぐに働いてもらえる人はなかなか得がたいわけでございますから、できるだけそういう人材を導入し、起用をいたしたいと実は考えておるわけでございます。もちろん適任の方があれば大使になっていただいてもいいし、公使になっていただいてもよろしいわけで、それはそういう心構えでおります。  従来から何度も大先輩である受田委員から御指摘ございますように、確かに私どもの執務体制にも、世の中からいろいろ批判を受けている点のあることは重々存じております。これは私ばかりでなく、職員がみんなおのおのの立場考え、反省をいたしておるところでございます。
  307. 受田新吉

    ○受田委員 いま官房長がおっしゃった定員増は、大使を民間人から採用する定員増ではないと私は思うのです。どうでしょうか。
  308. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 すぐにはそういう大使採用のための定員ということにはならないと考えます。
  309. 受田新吉

    ○受田委員 大臣、そういうことです。だから定員増と、人材を外部から招いて、もっと国家的規模で人材を配置する、こういう構想を持って五名なり六名なりの民間人を適切に、漸次そういう比率が高まっていくようにする。つまり、かつては五十人か六十人であった認証官が一挙に百人にもなっておる。外務省だけは倍にも認証官がふえたが、ほかの省はさっぱりふえぬ。あなたが前におられたところも同様です。あなたは経済通でもいらっしゃるし、経済外交においては天下一品——一品ということではないが、何といいますか、まさにその道のエキスパートでいらっしゃる。そういうところから、あなたが外務省におられて、かつておれがおった経済企画庁や通産省、また大蔵省などにおった人間の中からおらぬか、あるいはそういうときに経済関係などで民間人といろいろと知り合ったが、こういう人物がおった、三木さんが永井文部大臣を起用したようなすかっとした線を、新鮮さをあなた自身でやってしかるべきだと私は思うのです。  前の前の大平先生は、細い声でのそりのそりと答弁をされておりましたので、私が大いに注文しても、御趣旨に沿うて何とかしたいですてなことを言うておられた。ところが前の木村さんは、はきはきした御答弁があった。木村さんは、ものをわりあいとすかっすかっと答えておられた。宮澤先生の方は、少しまたあちらともこちらともわからぬ答弁が最近ふえてきたわけですが、これは外交路線をしく総本山として、もっと高度の判断で国際情勢をつかんで、人材を適地適所に配置する。三木さんと一緒になってそれをやるというぐらいの大きな太っ腹のある外交人事を実現に移してほしいですよ。  また来年こういうことを繰り返しておるということになればまことに遺憾である。ノンキャリアの中などで試験にパスしただけで行く。ノンキャリアだけ別の試験を通っている。その中にはキャリアに負けない勉強と誠意と努力をする人がある。キャリアだけから局長を選び、大国の大使を選ぶというルートの中に、そういうノンキャリアの中からも人材を選ぶ。そして局長の中にもそれを採用する。試験だけで、外交試験だけで点数が多かった分で勝負をつけるという行き方ではいかぬ。そういうところに日本外交の大欠陥が起こるんですよ。つい時間を待って、事なかれ主義で、おれが任地におるときは失敗がないようにという保身術にきゅうきゅうとして、そして最後に自分の人生には間違いがなかったと、大国の大使になることを大きな誇りとして外務省から去っていかれる。いけませんね。  これは宮澤さん、この点に重点を置いて、外交の成果は人によって決まるのだ。情報網なども的確に把握して、あの石油危機など、もっと情報網をしっかり握っておれば、ああいうぶざまにならなかったという反省が当時ありました。私はそこを特にきょうは指摘をしたい。  大使在勤俸をぐっと引き上げる。久しくとまっていたところを引き上げる。そういう待遇をよくすると同時に、しっかり働いてもらわなければいかぬのですよ。こういう外交上の失敗でサウジアラビアに非礼の行為をして、サウジアラビアには、いま国民感情の上から日本は冷酷な国だという声があると私も聞いておる。あなたが行かれてこれが払拭できるかできぬか、私、保証できない。後の祭りだ。  私は、いまの外務省の行き方に望むことは、待遇をよくして、在勤俸、この法律をよくすると同時に、やるぞという雰囲気、手落ちをすまいぞと頭のひらめきはいいにしても、運用の面でとろっとしているような外交官でなくて、外務省の高級スタッフでなくて、生きた心臓部が末端にまですぐ血を送る、末端からすぐ血が返るという意欲的な効果的な外交布陣をやってもらいたい。そのことが外交の成果を上げる根源である。そして小さな国といえども、予算がないから、せっかく向こうが大使をつくったが、こっちは大使を置きませんというぶざまは来年解消してください。いま間に合わないとすれば、来年いまの問題を解決できるかどうか。  宮澤さん、大使交換、こっちが置いておるのに向こうが置いてくれぬというのは、そんなものはどうでもいい。向こうが置いておるのに、こっちが置かぬというところは全部処理する。いま官房長が言われた、こっちが置いておるが、向こうが置いてくれぬというのはどこですか。どの国ですか。
  310. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは調べますと幾つかあろうと思いますが、私は、さっきふと気がついて申しましたのは、たとえばザンビアなどがそうでございます。間もなく置くということだそうでございます。もう一つは、チュニジアがあるそうでございます。
  311. 受田新吉

    ○受田委員 ザンビアというのは、まだできて間がないじゃないですか、日本が置いてから。
  312. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはしかし、どうということで申し上げたのではないので、先方も間もなく置くつもりのようでございますけれども……。
  313. 受田新吉

    ○受田委員 そういうことで、この未設置大使館は来年全部処理するという方針の御答弁を願いたい。そのぐらいの勇気がなければ大臣……。
  314. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは一生懸命努力をいたします。
  315. 受田新吉

    ○受田委員 あなたが在任中、外交上の欠陥をすかっと払うぐらいの腹を決めぬと、それは予算上の都合というのは、官房長アメリカ局長以来あなたに敬愛の情をささげてきた私ですが、これは予算で片づけぬというのはさびしいですよ。それはわれわれ協力しますよ。与党はどうかね、協力しますか。全員一致協力、残余の大使館は全部設置する、もう話は決まったことにしておきます。  それで非常に時間が——これに時間がかかる予定はなかったんですけれども、十分くらいで片づけようとしたのが……。
  316. 藤尾正行

    藤尾委員長 時間は十二分にあります。
  317. 受田新吉

    ○受田委員 ありがとうございます。  それでは私、今度はこの法案関連する外交諸問題にいまから触れていきます。きょうは条約局長もおられることだし、さっきから議論をしておられる問題があるのですが、まず近い国から始めます。  ベトナムの国に最近、南ベトナム革命政府の勢力が非常に強大になっている。南ベトナム政府がどんどん後退をして、省を幾つも放棄していくという事態が起こっている。南ベトナム臨時革命政府というものの力が現実に表面に出てまいりました。これを無視できないと私は思うのですが、外務大臣、いかがでしょうか。
  318. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は、すでにパリ協定におきまして、両者並びに中立的な勢力の三者で話し合いをするということになっておったわけで、その後に、さらに北ともということになっておったわけですから、いわゆるPRGというものは、その三者の中の一つの当事者として考えられておったことであろうと思います。しかし、それが昨今になりまして、かなりはっきり、どう申しますか、支配をしております領土につきましても、拡大をしつつあるようなことであろうと思うのでございます。私どもとしては、いまの情勢はそのように考えておりますけれども、やはり解決方策としては流血の惨を招くことなく、パリ協定で定められましたような方式によって話し合いで解決をしてほしいものだ、さように考えております。
  319. 受田新吉

    ○受田委員 ここまで南ベトナム臨時革命政府の勢力が伸びてきて——これがもう点として残っておって、主権とか領土とかというものがなかったなどといままで答弁があったのです、領土というものが明確にない、外務省そういう答弁をしておった。私もいつか質問したときにそういう答弁でした。領土のない国だ。主権、住民領土という国家構成の三要素が不明確だという意味を言われておったのです。いま南ベトナム臨時革命政府の領土というものは、日本のどの新聞も地図で明確にその勢力圏内を図示しておるわけでございますが、いかがでしょうか、南ベトナム臨時革命政府は、依然として領土のない国でございますか。どうでございましょうか。
  320. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 領土と申しますよりは、地域と申し上げました方が適当かと存じますが、確かに支配下にある地域が流動的ではありますけれども、少しずつ明確に浮かび上がってきつつあるように見受けております。
  321. 受田新吉

    ○受田委員 条約局長、パリ平和協定というこの協定の内容の中の三者会談の構成要員をお示し願いたい。
  322. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 パリ協定は南ベトナム政府、それから臨時革命政府、それからいわゆる第三勢力としての中立的な勢力、この三者の間で平和的な話をして、どうやって南ベトナムの統一政府を形成するかということの話し合いを行うということが主軸になっていると考えております。
  323. 受田新吉

    ○受田委員 その中立的なというのは団体ですか、国家ですか。
  324. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 国というものには該当しないと思います。通常、勢力とこう言っております。一つのグループをなす勢力であろうという認識をしております。
  325. 受田新吉

    ○受田委員 チュー政権とそれから中立的勢力、その勢力というのは団体ですか、国家ですか、それとも南ベトナム臨時革命政府、この三つですね。これは三者会談。そうすると、この三者会談の処理をするのに、チュー政権と南ベトナム臨時革命政府というものは、もうこの三者会談では中立的勢力と対等の立場に立たされておりますね。この問題の処理を図るに当たって、ここまで、いま大臣御自身が、ちゃんとした地域が漸次固定しつつあるという意味の御答弁が外務大臣としてありまして、この前とは違っています。領土が、地域がないのだ、点として存在しているが、領土でないというのとは違って、漸進した地域というものが一応固定化しつつある。固定化しつつあると理解してよろしゅうございますね。非常に大事なことでございますからちょっと……。
  326. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたのは、事態は流動的ではありますが、広がりつつあるように見受けられます、こう申し上げたと思います。
  327. 受田新吉

    ○受田委員 何……。
  328. 藤尾正行

    藤尾委員長 地域がまだ流動的な段階ではあるけれども、漸次臨時革命政府の支配しておる地域が広がりつつあるように思うという御答弁だったと思います。
  329. 受田新吉

    ○受田委員 広がりつつあるということだ。流動的であるが、つまり臨時革命政府の領土的なものがだんだん拡大されつつある、地域が広がっておる。広がりつつあるということは、南ベトナムの臨時革命政府の勢力が高まりつつあると理解していいかどうかです。
  330. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、いま政府というふうに仰せられましたのにこだわるわけではございませんけれども、私どもは、政府というふうには考えませんで、それで、確かにパリ協定では一方の当事者と認められておるわけでございますので、いまの事態は流動的でございますけれども、PRGというものの支配下にあると見られます地域が、今回のことによって広がりつつあるように存ぜられます、そこで第三勢力というものと、中立的な勢力とパリ協定に定められたような何かの話し合いというものが可能なふうに持っていけないだろうか、こういうふうに考えておりますと申し上げました。
  331. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、パリ和平会談というものは、日本政府としてはこれを尊重するのですか、どうですか。
  332. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国は当事者ではございませんけれども、あそこに定められた方式というのが、やはり流血の惨を避けながらインドシナ半島に平和をもたらす方式であるというふうに評価をいたしておるわけでございます
  333. 受田新吉

    ○受田委員 評価をしている。そうすると南ベトナム臨時革命政府は、まだ国家という形のものでは日本はないと思うが、パリ会談では一つの国家として見たのかどうかです。これは条約局長の御答弁でいいです。チュー政権と南ベトナム政府は、一つの国家的な性格を持ったものとして見られる、チュー政権は一応日本はりっぱな国家、りっぱかどうかは別として、国家。それから一方の方は和平会談では国家と認められたのかどうか。もし認められたとしておっても、日本はそれを認めないと言うのかどうか、どっちですか。
  334. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 いわゆる臨時革命政府は、パリ協定の一方の当事者としてこれに署名をしているわけでございます でございますから、その限りにおいては、いわゆる国際法上の協定締結の当事者であるという地位は認められていると思いますが、これがすなわち国家であるということでは必ずしもないと考えております。私ども政府の法律的な認識といたしましては、南ベトナム一つの国があって、それを国際法的に代表しているものは、いまの南ベトナム政府であるという認識に立っているわけでございます。ただ、臨時革命政府がパリ協定の当事者であるということから、そこに一つの、在来の国際法の概念からいえば、必ずしもすっきりと説明できないわけでございますけれども一つの勢力であるという認識は持っているわけでございます、
  335. 受田新吉

    ○受田委員 この南ベトナム臨時革命政府を国家として承認した国がありますかどうですか。
  336. 中江要介

    ○中江政府委員 ちょっとここに数字は持っておりませんけれども、臨時革命政府が南ベトナムにおける正統政府であると承認している国は幾つかございます。
  337. 受田新吉

    ○受田委員 どのくらいございますか。
  338. 中江要介

    ○中江政府委員 ちょっといま調べて、すぐ御返事をいたします。
  339. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、これは国家として承認している国が数カ国ある、数カ国というのがいまお答えが間もなく出るわけでございますが、パリ和平会談は、一方でチュー政権を代表する国家と見る日本などがおり、少数であるが、南ベトナム臨時革命政府を正統政府と見る国家もある。自由主義国家群には、この南ベトナム臨時革命政府を国家として認めるという国はないですか。答弁を……。
  340. 中江要介

    ○中江政府委員 まだないと私は思いますが、はっきりしたことは、いずれ後ほど照会の上御報告いたしますけれども、いままでのところはないというふうに確信しております。
  341. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、自由主義国家群はチュー政権、共産圏は臨時政府というようなことで、それぞれの国の立場でこの国の見方が違ってきておるわけです。しかし、まだオーソリティーとはなっておらぬが、一応その勢力が広がりつつあり、支配勢力、支配地域が広がりつつあるということは、こちらが認めておられる、これは、いま大臣自身も認められたわけです。そうすると、パリ和平会談を尊重するという立場から言えば、この南ベトナム臨時革命政府なるものも、日本は三者会談を認めたのだから無視できない。そうすると、南ベトナム臨時革命政府に対して国家としては交渉ができなくても、かつて北朝鮮に対して考えてきたとか、あるいはかつて中国が統一解釈になる前の、われわれが中共時代を見たような形のものとして南ベトナム政府を見ることはできるのかどうか。
  342. 中江要介

    ○中江政府委員 確かに、臨時革命政府の支配しております地域がいま広がりつつあるという現実は、大臣が御答弁になったとおりでございますけれども軍事的に支配地域が広がっているというのがいまの状況でございまして、それが果たして一つの国なり地域を領域として支配する、つまり管轄権を完全に行使する地域になるかどうかということは、これはまた別の問題だと思います。そういう意味におきましては、かつての中国大陸にありました政権についての認識とか、朝鮮半島の北の部分について日本が持っている認識とは、まだ隔たりがあるという点は指摘されるかと思います。  ただ、臨時革命政府の違いますところは、先生も再三御指摘のように、パリ協定の当事者であるという地位が国際的に尊重されなければならない。この点だけは、確かに日本政府といたしましても、パリ協定の当事者としての地位は尊重していく。しかし、それが南ベトナムにおいて、はっきりした行政管轄権を持った政治勢力であるかどうかという点は、現段階軍事的な占領地域の拡大だけではまだ判定できないというふうに考えていいかと思います。
  343. 受田新吉

    ○受田委員 このパリ和平三者会談の促進をやって、平和を実現するという立場に日本政府はあるのかどうかです。
  344. 中江要介

    ○中江政府委員 これは先ほど大臣も御答弁になりましたように、いま求められるインドシナ半島における和平定着の手だてとしては、パリ協定が最も世界じゅうの国が評価して、その線での和平の定着を願わなければならないものだ、こういうふうに考えておる次第であります。
  345. 受田新吉

    ○受田委員 そうした中で、軍事力であるが、勢力がずんずん伸びて地域が拡大されることについて、日本政府は歓迎すべきことか、あるいは悲しむべきことか、どういう御判断ですか。
  346. 中江要介

    ○中江政府委員 これは軍事的な支配地域が伸びることが、パリ和平協定の三者会談の助けになるかどうかという点から見ますと、非常にむずかしい問題だと思います。といいますのは、先ほど条約局長も指摘しましたように、三者というのは、サイゴンにありますベトナム共和国政府と、それから臨時革命政府と、それからいわゆる中立的なと言われます第三勢力というものでございますが、この第三勢力というのは、先ほど団体かどうかという御質問がございましたが、団体であるのか、政治勢力であるのか、政党であるのか、どういうものであるのか、まだ抽象的なものでしかなくて、それが固まってきていないというのが南ベトナムの現状かと思います。  したがいまして、サイゴンの政権と第三勢力が何らかの形で中立的な、どちらにも偏しない一つの交渉地位を持ち得るようなものになるということと、それから臨時革命政府が、ただ軍事支配地域を広げるだけでなくて、この三者会談に応ずるような姿勢をとる、こういう三者の態度がパリ協定の線に沿った話し合い、つまり南ベトナムの統一への一つ段階を経ていくという姿勢がとられない限り、いまここで臨時革命政府の軍事支配地域が広がったということだけでは何とも認定しがたい、こういうふうに思います。
  347. 受田新吉

    ○受田委員 こうして戦闘行為によって勢力が伸びるということは、歓迎すべきことか、あるいは悲しむべきことかということです。
  348. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、もとから言えばパリ平和協定が予想しておった事態ではないと思うのです。つまり話し合いをして選挙をしてというようなことが想定されておったわけですから、それから申しますと、パリ平和協定の予想しておったことではなくて、むしろ再び流血の惨が起こり、難民問題が起こるというようなことでございますから、別途の方法がとられておれば、その方が望ましいことであったろうということは申し上げてもよろしいと思います。
  349. 受田新吉

    ○受田委員 日本の国は一番近い国ですから、この三者和平会談の促進を図って平和の実現に協力する形はいかなる道をとるのがよいのか。たとえば臨時革命政府の勢力がどんどん伸びる、しかも、それが戦闘行為によって伸びておるというような事態を防止するのに、パリの和平会談、三者会談を尊重してその平和の促進を図ろうとする日本は一体どういう態度でこれに臨めばいいのか、それをお答え願いたいのです。  日本外交の基本方針をちょっと伺いたい。パリ和平会談を尊重する、そしていまの事態がこうなっている、日本は一体、アジアの平和愛好国家としてどうこれに対処したらいいのですか。傍観をして、ますます戦闘行為が続くような事態になっていいのかどうか。日本外交のベトナム問題に対する基本方針というのをちょっと伺いたいのです。
  350. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国がパリ会議の構成員でなかったということに一つ、あるいは問題があったのかもしれないと存じますけれども、しかし、そのでき上がりました協定については、先ほど申しましたように評価をしておるわけでございますから、なるべくあの線に沿って事態が処理されることが望ましい、これが基本になろうと思うのでございます。  そうしますと、現実の事態に対してしからば対処する考え方はどうかということになりますれば、戦闘激化を支援するような、いかなる意味でもそれにプラスになりますようなことは差し控えるべきであって、戦闘がおさまるということに、どうやればわれわれが幾らかでも役に立つかということになろうと思うのです。ですから消極的には、われわれが戦闘激化の要因をつくらない、与えないということ、さらには現実に生じておりますどの勢力圏であるとにかかわらず、難民について人道的にわれわれができるだけのことをしていく、こういうことになろうかと思います。
  351. 受田新吉

    ○受田委員 これ以上これをお尋ねするのは無理かと思います。余りかかわりたくない、しかし平和は早くもたらしてあげたいという中で、大臣の答弁は非常に苦労の御答弁だと思います。  南ベトナム、カンボジアを通じて、この急迫した情勢の中で非常に難民が続出している。犠牲者がたくさん出ておる。アジア人の一員として、しかもあの民族は、日本人と非常によく似ている民族でもある。不幸なこの民族の難民、報道陣の報道するあの場面を見ても、本当にかわいそうだ。この悲惨な難民を日本は傍観しておるのか。痛手を受けた難民の人だけでも、国際赤十字社を通じてでも日本は救援を申し出るとか何とか手がないのか。カンボジア、南ベトナムのこの不幸な無事の民を、日本政府は温かい愛情、太陽の光を持ってこれを抱いてやる。戦争は戦争、しかし痛手を受けたあなた方は、私たちが平和愛好国家として守ってあげますよという愛情が日本政府にあるのかどうかです。国際赤十字社をもって救援を申し出たのかどうか。御答弁願いたい。
  352. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は、今度の事態はきわめて最近の事態ではございますけれども、もともと国際赤十字社を通じまして、これはいわゆるサイゴン政府の地域であろうとPRGの地域であろうと、それにかかわりなく救援にわが国としては応じておるわけでございます。今回のような大きな事態になりまして、さて具体的に何をなすべきかということは、これはごく最近の事態でございますからなんでございますけれども、しかし、やはり前にやっておりましたことをさらに大きな規模において、わが国として当然なさなければならないことだと考えます。
  353. 受田新吉

    ○受田委員 この大きな事態に対処して、国際赤十字社を通ずる道しかいまないですかね。それを通じて資金、救援物資両面において直ちに出動していただけるかどうかです。
  354. 中江要介

    ○中江政府委員 難民の問題につきましては、先生御指摘のように、これは日本としても黙って見ておけない問題だという意識で私どもも対処しております。一つは、サイゴンにありますベトナム共和国政府の方から、すでに難民の問題についていろいろ相談を受けております。それから赤十字の方は、御承知のようにハノイにもサイゴンにも代表がおりまして、赤十字は赤十字の面から、どういう難民の救済が最も効果的であるかということを鋭意いま検討しておるというふうに聞いておりまして、日本政府といたしましても、従前同様、あるいは従前以上に協力できるところはできる限りの努力をしなければならぬ、こういうふうに考えておる段階でございます。
  355. 受田新吉

    ○受田委員 努力しなきゃならぬというその具体策に、外務省などはさっそく着手せなきゃいけないのです。傍観している間にあの人々はどんどん倒れていきますよ。両親を失った孤児、負傷の身となったおばあちゃんをかついで歩く娘、泣きながらおばあちゃんを戦闘地域から救い出している娘さんたちのあの顔というのは、これは悲惨ですよ。同じアジア人に生まれて平和な日本におるわれわれが対岸の火災のように見てはいかぬ。  外務大臣、この事態に対して、もうきょうにでも資金あるいは救援物資を現地に送って、あの不幸に嘆く避難民に、日本の温かい愛の込もった贈り物だよと言って、皆さんに笑顔を見せてあげる手が打てませんか。じっくり鋭意検討する段階じゃないですよ。事態は発生しておるのです。日本外交のどこかにテンポの鈍さがあるというのはここなんです。  外務大臣が腹一つで直ちにやろう、三木さんと一緒に話して、直ちに資金と物資とをきょうにでも国際赤十字社に申し入れる、その熱意が私は欲しい。大臣、閣議のある日でなくても、外務省独自でこれはやれるのじゃないですか。閣議で承認を得なくてもいいのじゃないですか。
  356. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国には、十分その用意はあるわけでございますけれども、実はそのような物資等々を輸送する力は御承知のようにございません。したがって、赤十字においてそういうプログラムが立てられることについて、われわれはもう最大限の協力を惜しみません。それによって、それが有効に赤十字の手によって渡るべきところへ渡る、そういう道を一つつくって、その上でわが国が最大限の支援をいたさなければならぬと思っています。
  357. 受田新吉

    ○受田委員 それはどうしてできるのですか。それは、いまからそういう仕組みをつくるのですか。
  358. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはハノイにおいてもそうでございますし、カンボジアにおきましても、サイゴン政府もそうでありますが、赤十字がそういう活動のプログラムを具体的に立てつつある。非常に流動的でありますから具体的にまだ出てきておりませんけれども、これは当然そういうことであろうと存じます。
  359. 受田新吉

    ○受田委員 それは国際赤十字社を通じて直ちに申し込めば、その資金とか救援物資というのは国際赤十字が適切な措置をとりますよ。輸送の方法がないというなら、赤十字の指示によって、どこへその物資を運ぶ、船できょうにでも出せばいいんですよ。現地のあの辺の在外公館に、いざというときに待機している物資があるのじゃないですか。在外公館はそれは持っておりませんか。国際赤十字がすぐ現地で配給できるような仕組みにはなっておらぬのですかね。そのうちに死んでいきますよ。食不足、病気、傷、そして現地独特の風土病、その中でとうとい生命を失っていく。私はこれは悲惨だと思う。日本は、こういうときにこそ間髪を入れず救援体制をしいて、どの国よりも戦争が憎い、されど犠牲者に対しては温い愛を、私はこれが欲しい。  大臣、きょうにでもすぐ打てる手はありませんか。事務当局に指示して、あなたの権限でやれるのじゃないですか。閣議の承認が要りますかどうですか。
  360. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは閣議の承認が要ると思いますが、実はそれは大した問題ではなかろうと思うのでございます。政府としては、そういう意思は、恐らく各閣僚は共通して持っておるものと存じます。実はわが方がこういう事態の中で、片方と言っては語弊がありますけれども、どちらかに加担をしたというような印象でなく、もっぱら人道的な立場で大きな救援をした、こういうことになりませんといかぬと思いますので、それで赤十字云々と申し上げるわけでございます。
  361. 受田新吉

    ○受田委員 私も赤十字を通じてやれと初めから提案しているわけです。私のきょうの発言を最大限に採用してもらいたい。外交路線の中で、外務省のこうした応急対策はとかくテンポが鈍い。きょうあなたはお疲れにかかわらずお立ちになる。私は、あなたの任重くして道遠きことをお察しするのですけれども、お立ちになる直前まで、国会で受田新吉という議員がこういうように問題を提起した、おれが戻るまでにでも直ちに事務当局よ対策を立てておけと御指示いただけますかどうですか。
  362. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 事務当局、従来から考えておることと思いますが、十分督励をいたします。
  363. 受田新吉

    ○受田委員 私は、人道的な問題が一つあると思うのですが、そこで結論に入ります。  幾つかのうちで、日中関係の覇権という言葉など、非常に大事な用語的な問題が一つあるわけです。また領海の問題がさっき出たのだけれども、角度を変えた質問があるわけで、ひとつここでもう一点だけお尋ねしておきたいのです。  それは、インドシナの情勢は非常に急迫している。カンボジアにいたしましても、ロン・ノル政権というものは風前のともしびである。すでにカンボジアに対しては、大使館の総引き揚げ命令を出されたのですか、どうですか。
  364. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 栗野大使が邦人保護のほかに、実はカンボジア政府からこの事態にいかに対処すべきかということにつきまして、しばしばアドバイスを求められまして、求めに応じましてごくごく最近まで、ASEANの大使等と一緒に求めに応じられまして進言をしておったこともありまして、私どもとしては、できるだけ早く必要最小限の人員にするようにと申し、それはそういたしたわけです。  さて、その上で在留民保護及びロン・ボレ首相に対する、求められていたしました進言も、ほぼ申し上げることは申し上げ、緒につきつつあるように思いますので、外交的な活動はほぼ有効になし得る限度に達したと考えまして、先般、できるだけ早い便で隣国まで退避をするようにということを申しました。が、今日現在、恐らくまだその残務の処理をいたしておるのではないかと存じます。
  365. 受田新吉

    ○受田委員 ここで、ちょっと話が別になるのですけれども、そういう危険地域におる皆さんに、危険な事務をなおかつ敢然と行っている人に対して、手当が何かのかっこうで出ておりますか、危険手当が。
  366. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 戦乱でありますとかそういう緊急の事態が発生した場合の援護措置につきましては、従来からいろいろな措置を考えております。今回も、現地で非常に苦労いたしております栗野大使以下大使館員に対しましては、食料品を緊急に送り、あるいは医薬品を用意するというふうな措置を講じてございますけれども、本人の一種の危険手当的なものは現在出ておらないところでございます。かねがね、このような戦乱地手当あるいは危険手当的なものについて何とか考えなければいけないのじゃないかという問題意識は持っておりますけれども、まだどういうふうな形で何ができるかということについては検討中の問題でございます。
  367. 受田新吉

    ○受田委員 さっき私が指摘しましたような不健康地、終始生命の危険にもさらされておるような、いかなる風土病が発生するかわからぬところへ勤務する人とか、それはただ単にきょう出されたこの法案在勤俸ではこれは片づかぬ問題です。マラリアにいつやられるかもしれない。腸チフスにいつかかるかもしれない。そういうところに勤務する人とか、いまのような弾丸雨あられとくる危険、弾丸雨飛の中に、かつ、じいっとがんばって、在留日本人の保護に当たり、また外交努力もしておるこういう人々に、何らかの形でいわゆる危険手当制度を創設してでもこの問題の処理に当たっていく。これは在勤俸の増額というような問題では片づかない問題です。これは大臣、私の提案を採択していただけますかどうですか。
  368. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 本来であれば、そこまで危険が迫りましたときには、本当は退避することを私どもが命じませんと、なかなか本人としては退避をいたしませんので、実はせんだって、それに近いことを私から直接に電報で申したわけでございます。  なお、今回のことについてどうすべきか、御指摘のこともよくわかりますので、検討させていただきます。
  369. 受田新吉

    ○受田委員 戦時中は海外勤務をし、特に戦闘の発生した地域に対しては、恩給法においても通常の恩給の三倍、甲地域においては三倍の加算が行われたほどです。平穏無事に過ごしておられる、ここにおられる大臣以下の幹部の方々と、命をかけて戦闘地域でがんばっておられる皆さんとが待遇が同じというのはおかしいですよ。戦前でさえも恩給の三倍加算があった。甲地域においては三倍、乙地域においては二倍の加算があった。それがいま平穏無事なお互いから見ると、戦闘地域で苦労していることがようわからぬでしょうが、いつ襲われるかもわからぬ地域で、退避命令まで出ておる地域勤務する人は、家族を含めて大変な精神的負担ですよ。不安に襲われながら勤務している人の精神的重荷というものは、金銭ではかえがたい。けれども、そういうときに勤務した期間は、これは共済組合年金においては特にこれだけの加算をするとか、あるいは危険手当を創設する。外交官にはこれは起こるのです。いまのところは外交官だけだ、こういう危険は、戦闘発生地域になお勤務せねばいけぬというのは。ですから当然、戦闘地域における危険発生を常に予知しながら勤務する人に対する手当制度を創設すべきです。  いま官房長は、何とかしたいという気持ちではあったということですが、結論が出ておらぬ。大臣、やはりこういうときに、野党ながら真剣に提案していることで納得できることは、検討してみたいというような問題じゃないですよ、結論出るじゃないですか。戦時中、あなたも御存じのように、戦争地域におった者には戦時加算がある。そして恩給も三倍加算。(「賛成、自民党賛成」と呼ぶ者あり)賛成です、党派を越えて。与党、野党全会一致賛成です。大臣、こういうことは検討する問題じゃないですよ。これは事務当局としても官房長、私が提案したことは、戦前でさえもそういう制度があったのですから、今度のこういう当面した問題については、何らかの形で手当を出す、どういう方式で出すか、その中身をどうするかは別として、何らかの制度を設けたいというぐらいは、これはもう、そう頭をひねる外務省のテンポの鈍さがあってはいけぬ。これはやっていいですよ。御答弁願いたい。
  370. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、御指摘のことはよくわかっておるわけでございますけれども一つの制度として設けるといたしますと、やはりこれは立法をいたしまして、御審議をいただかなければならぬということになります。立法いたすといたしますと、そういう危険といったようなことの定義、かなりまたむずかしい議論を誘発するおそれもございますから、とりあえずの当面の問題として何ができますかを私ども検討をいたしたい、こう申し上げたわけでございます。
  371. 受田新吉

    ○受田委員 それは名称はどうでもいいと私は言うたんですよ。名称はどうでもいいが、こういう危険な地域勤務するためには、特別の何らかの手当をここへ支給する制度を創設してはどうか。そうざらにあることじゃないのだが、そういうところへ勤務した外務公務員には、こういう手当を出しますという一応の根拠をつくっておくということになれば、そこにおいて勤務する人たちだって——公務死亡というときには別の制度があるが、実際にその危険を冒して勤務する人には、別にいま制度がないといえば、何らかの制度を創設する、これはもちろん法律で。こういうのは大体、政府がそういうことをやろうということで、われわれが国会でそれを審査するのですから、これは原案を政府が出してほしいのです。議員提案でなくて、政府提案でこれはやれることですから、そういう法案を用意されてはどうか。法案になる前の名称その他は、さっき申し上げましたように、政府で検討されてしかるべきだが、こういうことに対する手当制度というようなものを、何らかの形で提案するというかっこうをつけてほしい。  私は、こういうことは、余りちゅうちょせぬでも、官房長もさっきから御自身で何かをしたいという気持ちがあったわけですから、何らかの形で特別な処遇をしたいということを答弁すれば——大臣、これはそうむずかしい問題じゃないですよ。何らかの形で処遇の改善を図ることにしたい、こういうことであなた責任を負う必要はないですよ。与党の皆さんも賛成、野党全員、与野党一致してこれは賛成しておるのです。こういう筋の通ったときは検討ではなくて、これについてもっと積極的な御意思があってしかるべきだと思うのです。現地の外交官だって、本当に日本でもここまで考えてくれておるとなれば、最後まで住民の保護のために尽くしますよ。これは何か答弁すると、後からひもをつけられるというような問題じゃないですよ。私の質問の趣旨が、これらの人に対する温かい愛情を何かで示せということですから、ちっとも無理な注文じゃないですよ。紛争地域ですからね。
  372. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 おっしゃっていらっしゃることは、よくわかるのでございますけれども、そして受田委員が言われましたように、本人はそういう給与をもらうということではなくて、そういうようなことを国会としても、国としても考えてくれているということに感謝をするのであろうと思うのでございます。でございますから、何かそういう方法はないかと私思いますが、さあ法律を出して、危険地域といったようなものを正確に法律上定義をして、どういう場合に発動するというようなことになりますと、これはなかなか簡単なことではないであろう、政府提案として考えましてもさように存ぜられます。  しかし、おっしゃっていらっしゃることはよくわかっておりますから、何か本人が国会からも、政府からも報われたというふうに感じられるようなことを検討してみたいと存じます。
  373. 受田新吉

    ○受田委員 そうしていただくこととして……。  カンボジアのいまの政情は、もうロン・ノル政権が壊滅直前であるというかっこうから、米国としても現地ではもう手がつかぬ、むしろ米国自身が直接これに介入するというような危険はないと断言できますか。軍事行動によってでも直接介入ということになりはしないかという危険を、外務省は感じていませんか。
  374. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 栗野大使以下ASEANの何人かの大使が、連日意見を求められて進言をしておりましたことは先ほど申し上げましたが、その間、米国がどのように考えておったかは必ずしも明確でない点がございました。ございましたけれども、しかし、いま言われましたような事態になる可能性はないと私は存じます。
  375. 受田新吉

    ○受田委員 米国が直接介入する危険は全然ないということですが、外交の見通しは、情報収集にはたけておられる外務省ですが、とかく従来判断を誤ることが多い。ないと断言してよろしゅうございますか。
  376. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私ども情報も限られておりますけれども、しかし限られておる範囲では、比較的よく栗野大使から実情を言ってきております。それから判断いたしますと、まずアメリカ国会の動向もあり、さようなことは確率は非常に少ない、きわめて少ないと申し上げてよろしいのではないかと思います。
  377. 受田新吉

    ○受田委員 そのきわめて少ない確率が当たった場合はどうなるかということでございまして、その場合に、たとえば今度は、例の安保条約に伴う交換公文、また事前協議問題、こういう問題でちょっとだけお尋ねをしておきます。これは質疑の通告をしているわけでございます。アメリカ局長で御答弁ができれば結構です。  確率が少ないことであるが、その少ない確率が当たった場合の予想も含めて、事前協議という、たとえば戦闘作戦行動に在日米軍が参加をしたという場合の一つの決め手を私一言だけ伺っておきたいのです。  福田元外務大臣が、事前協議の対象となるものについて、これを何とか具体的に決め手を設けたいという発言が国会でもあり、またその後、結局、事前協議については別に何ら取り決めをする必要がないことになったとかいうことでしたが、事前協議というこの問題は、日本では余り心配のないこと、アメリカが相談する、それに応ずるというだけで、現実には大した心配のないことであるというふうに軽く考えてよいか、もう一つ一緒に答弁していただきましょう。  事前協議の対象となる陸海空の戦闘作戦行動の範囲ですが、陸、海、空と分けて聞きますが、日本は陸がいまアメリカ軍がいないのですから、外国から日本へ陸軍を揚げるということは予測されない。とすれば、陸は事前協議の対象になることはないと判断してよいか。
  378. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 事前協議の対象となる戦闘作戦行動の基地として日本の区域、施設を使用いたします典型的なものは、戦闘任務を与えられましたアメリカの航空部隊、空挺部隊、上陸作戦部隊等の発進基地として日本の施設、区域等を使用する場合であろうと存じます。このような典型的なもの以外の行動につきましては、結局、具体的な事態に即しました任務の内容とか、すなわち戦闘任務を有しておるかどうかとか、あるいはその行動の戦闘部隊との関連性だとか、そういうものを考慮して判断するほかはないかと存じます。  なお、海軍のような場合でございますが、軍艦につきましては、戦闘作戦行動が日本国内の施設、区域を基地として発進されまして、その軍艦がその施設、区域を出ていくときの航行自体がすでに戦闘作戦行動の一部として認められます場合には、これは戦闘作戦行動の基地としての日本国内の施設、区域の使用には該当すると存じます。
  379. 受田新吉

    ○受田委員 それだけですか。陸軍はどうですか。陸軍にはそういうことがありますか。
  380. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほど先生もおっしゃいましたように、陸軍としては日本には戦闘部隊はいないわけでございます。
  381. 受田新吉

    ○受田委員 いないから、戦闘作戦行動に日本にある区域及び施設の使用ということはあり得ぬのだという、陸軍は事前協議の対象にならない、こういうことですかどうですか。
  382. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 もちろんアメリカの陸軍が、日本の基地に移動してまいりまして、それが一個師団程度の大規模なものであれば、御承知のとおり、まずその日本の基地に入ってくることについて事前協議の問題が起こります。それからまた、仮にそういう大きな規模の陸軍でなくても、日本の基地に入ってそれから出ていく場合には、これは別に一個師団の規模でなくても、戦闘作戦行動として出ていく場合には事前協議の対象になるわけでございます。
  383. 受田新吉

    ○受田委員 だから現在、在日米軍には陸軍はないから、現時点では、外国から日本へわざわざ部隊を作戦に移すという以外には陸軍は外されますね。  それで今度は海軍ですが、海軍ということになると、船で領海の外に出て、そこから作戦命令が来たという場合に——出る前から作戦命令があるのだよと言って出さないで、作戦計画というのは、戦術の面からいっても巧みにやるから、沖合いへ出て領海の外へ出、そして通信機関を通じて命令が下されればいいわけですね。事実問題としては、港を出るときにわざわざ作戦命令を出して、いまから行けとやりませんよ。この領海を出てから作戦命令が出た分は対象にならぬわけですね。
  384. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 もちろん最初から客観的に見て、そういう戦闘に従事する命令が出ておるということが明白な場合には、事前協議の対象になるわけでございますが、出ていった後に命令を受けていれば何でもいいじゃないかというお話でございますけれども、これは、やはりその行動の認定の問題であろうと思います。あらゆる手段を使って、その戦闘作戦行動を擬装するというふうなことを想定しておれば、いろいろな抜け穴があるじゃないかというお話もございましょうが、これは根本的に、事前協議の制度というものは、日米の信頼関係に立っておるわけでございまして、もちろんアメリカが本当の必要に応じて、そして日米安保条約の目的に沿って、つまり日本の安全と極東の平和と安全の目的に従って行動する場合であり、そしてそれが本当に戦闘作戦行動に該当するような場合には、当然、日本側に事前協議があってしかるべきだと存じます。
  385. 受田新吉

    ○受田委員 どういう任務で出るか、そしてそのやり方、態様、そういうようなものを含めて、日本を出るときから戦闘作戦行動に着手したのだということでなくて、事実問題は領海の外でぴしっと命令を下せばいいわけだ。だから事前協議というものは、相互の信頼と言うけれども、向こう様にしても、日本を信頼して日本では命令を出さなかったよ、領海の外へ出て命令したんですよ、南方へ向かって発進せよと言うておいて途中から命令、経路変更、こうなってくるんですね。結局、事前協議というのは、事実問題として空洞化しておるし、実際に運用の面では、事前協議というものが適用されるような事態は、結局あちらさんのやり方次第でこれは起こらないようになる制度と私は思うのです。  沖繩の基地から出る、さあカンボジアで直接介入をすることになった、行けというときでも、それへ向いて行くのだとは言いません。飛行機だって偵察に行けと言うておいて、弾を積んだのでぱんぱんぱんとやればおしまいですからね。だから、事前協議というのは、本当に空文化したような問題だと思うのですが、大臣、相互の信頼とおっしゃりながら、事前協議というのは、本当に大きな抜け穴がある、危険がある、しかもそれは、最後は信頼以外にはないということですね。これで質問を終わりますが、これは大臣にひとつ……。
  386. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 質問を終わりだと仰せられましたので、私からもう何も申し上げない方がよろしいのかと思いますが、私どもは、抜け穴というふうには考えておりません。
  387. 受田新吉

    ○受田委員 終わります。
  388. 藤尾正行

    藤尾委員長 次回は、来る四月三日木曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十三分散会