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1975-03-18 第75回国会 衆議院 内閣委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月十八日(火曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 藤尾 正行君    理事 越智 伊平君 理事 奥田 敬和君    理事 加藤 陽三君 理事 木野 晴夫君    理事 上原 康助君 理事 大出  俊君    理事 中路 雅弘君       赤城 宗徳君    有田 喜一君       大石 千八君    近藤 鉄雄君       竹中 修一君    中馬 辰猪君       旗野 進一君    林  大幹君       三塚  博君    吉永 治市君       山本 政弘君    和田 貞夫君       正森 成二君    鬼木 勝利君       鈴切 康雄君    受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長 植木 光教君         官)         国 務 大 臣         (科学技術庁長 佐々木義武君         官)  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         内閣総理大臣官         房総務審議官  佐々 成美君         警察庁警備局長 三井  脩君         宮内庁次長   富田 朝彦君         皇室経済主管  石川 一郎君         防衛施設庁長官 久保 卓也君         防衛施設庁総務         部長      安斉 正邦君         防衛施設庁施設         部長      銅崎 富司君         外務大臣官房長 大河原良雄君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省条約局長 松永 信雄君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    遠藤  丞君         法務省刑事局総         務課長     筧  榮一君         建設省道路局路         政課長     加瀬 正蔵君         建設省道路局道         路交通管理室長 渡辺  尚君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 三月十八日  辞任         補欠選任   瀬長亀次郎君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   正森 成二君     瀬長亀次郎君     ————————————— 三月十四日  科学技術庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一六号)  科学技術庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一一号)  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第九号)      ————◇—————
  2. 藤尾正行

    藤尾委員長 これより会議を開きます。  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上原康助君。
  3. 上原康助

    上原委員 最初に、提案されました法案について一、二点だけお尋ねをしておきたいと思います。  在外公館勤務する外務公務員給与改定する際の基準は、一体どういうふうになっているのか、御説明をいただきたいと思います。
  4. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 在外公館勤務する職員在勤手当の問題につきましては、在外勤務いたします際に、生活費その他の必要経費を見てやるということが基本的な考え方でございますが、最近の情勢におきまして、諸外国とも物価の高騰あるいは為替相場変動、こういうふうな状況に照らしまして、従来の在勤手当が実質的にかなり大きな影響を受けておる状況でございます。こういうふうな状況のもとに、適正な在勤手当の支給を図っていきたい、こういう考え方法律改正の基本にあるわけでございます。
  5. 上原康助

    上原委員 そこで、物価その他の生活費が高くなったが、特に高くなった在外公館、いわゆる国はどこですか。
  6. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 物価の値上がりの問題につきましては、全世界的な傾向でございますけれども、たとえば生計費上昇という点から見ますと、スイスなどは昨年の一月を基準考えますと、四〇%以上の上昇を見せております。同じヨーロッパの中におきましても、たとえばベルギーは三三%、デンマークは三一%、こういうふうに軒並みかなり上がっておりますけれども、そのほかにおきましては、いわゆる発展途上国におきましても、いずれも物価上昇はきわめて著しいものがございまして、全世界的に、在外公館勤務いたす職員生活費は、かなりの上昇を見せておるということがあるわけでございます。
  7. 上原康助

    上原委員 いま物価上昇が非常に激しいので改定をせざるを得ない。もちろん、そのほかにもいろいろ要素があると思います。そこで今回の改定率平均でどのくらいの上昇なのか。また在外公館勤務をする職員が、十分その職責なりを果たす面において、今回の改定内容で今後も十分対応していけるのかどうか、そこいらの点についてもお聞かせをいただきたいと思います。
  8. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 今回改定をお願いしております手当改定率は、全在外職員平均が一二・七%でございます。この一二・七%は、前回法律改正以後の物価上昇為替変動、こういうふうなものを勘案いたしまして、この程度ならばまあまあという感じのものをお願いしたところでございます。ただ、前回改正におきまして、二五%の範囲内ならば政令に委任されまして、その範囲内での改定は認められているという状況がございますので、仮に年度途中におきましても著しい変動がありましたならば、政令範囲内におきまして調整を図っていきたい、こういうふうに考えております。
  9. 上原康助

    上原委員 そうしますと、年度内においても政令範囲内でできる措置は講ずるということですが、その予算措置というのはどうなるのですか。
  10. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 予算範囲内で、しかも政令範囲内でと、こういう限定がついているわけでございますが、従来の経緯から申しますと、やはりかなり大幅な変動というものがない限り、政令範囲内においてもすみやかな改定ということはそう簡単にはできない、こういうのが実情でございます。
  11. 上原康助

    上原委員 新しく設置される、あるいは兼務をするところもあるのですが、その職員数はどうなっているか、御説明いただきたいと思います。
  12. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 今回の法律改正におきまして、大使館が一つ、総領事館が三つ、この新設をお願いいたしておりますけれども職員数はいずれも四名ずつをお願いいたしているわけであります。
  13. 上原康助

    上原委員 特に外務省要望、要求しておきたいことは、もちろん在外勤務をする職員待遇改善の面あるいはいろんな面で十分配慮しなければいけないことはわかるわけですが、しかしそれと同時に、その勤務をする職員の職責なり、いわゆる相手国との外交行政ということも重要ですが、同時に、日本国在外公館である、あるいは日本国外交政策ということを十分、国民的な立場に立って遂行していくということも大事だと思うんですね。しかしややもすると、外務省の姿勢というものはすべての面にきわめて消極的な面があるわけですが、これらの点については大臣は、いわゆる責任者というお立場でどのように行政指導なりをやっておられるのか、その点を伺っておきたいと思うのです。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう御批判を受ける余地も従来ございましたかと思います。間違いを起こさないようにという気持ちが強いということもありまして、活動がやや消極的であるという御指摘かと思いますが、この点は、私の前任者あるいは前々任者の時代にも、そういうことがないように積極的に国益及び相手国との理解を深めるようにということで、在外公館には種々申しておるわけでございますが、今後ともそうあらねばならないと考えております。
  15. 上原康助

    上原委員 一応、提案されました法律案については、そんなに問題がないように思いますので、関連させてほかの質問に移らせていただきたいと思います。  これからお尋ねしようとする点は、これまでもしばしば本委員会なりほかの委員会でも取り上げてきたことですが、きょうはせっかく外務大臣もお見えのことですから、改めて、沖繩における県道一〇四号線と関連する問題についてお尋ねをしておきたいと思うのです。  そこで昨日も、沖繩北方特別委員会理事会がありまして、防衛施設庁外務省の御見解政府委員の方からお聞かせいただいたのですが、まず最初お尋ねしたいことは、明日予定をしておったという実弾射撃訓練を、今回米軍側中止をするということですが、日米間でどういう話し合いがあって中止になったのか、また政府は、中止をせざるを得ない背景といいますか理由をどのように見ておられるのか、御説明をいただきたいと思います。
  16. 久保卓也

    久保政府委員 昨日、沖特理事会で御報告の後に、在日米軍司令部参謀長と面会をしまして、現地情勢、すなわち相当部分方々の反対の情勢があること、それから県会で一致をして中止要請をなされておるというようなこと、それから国会の一部でもそういう御要望が大変強いというようなこと、さらに総評その他組合関係からの御要望も私どものところには来ておるという情勢、それから、いかにも十九日というのは十一日からきわめて間近い、何か十一日にできなかったから十九日に追い打ちをかけるというような印象というものは、かえって沖繩県民をあおるようなかっこうになってまずいのではないかというようなもろもろの情勢を非常に詳しく申し述べたわけであります。実は米軍には、先週にも、十九日にやるのはやむを得ないとしても、私どもが適当でないと考え理由を申し述べておったわけでありますが、さらにそれを敷衍して申し上げたのであります。  それに対しまして、防衛施設庁なり外務省なりというものが、片っ方で日米安保条約の実施についての責任を持っておる、一方、地元民、県民要請というものもまた無視はできないという、いわば非常につらい立場にあることを十分に理解をしてもらえたというふうに思えるわけです。その点スノーデン少将は、私どもの意向を十分了解され、かつ現地米軍と協議された結果、昨日の夕刻に、正式に延期を了承した旨通知があったということであります。
  17. 上原康助

    上原委員 そうしますと、きのうの段階で米側は、次の軍事訓練について、何かその計画なりあるいはやりたいという意思表示なりはありましたか。
  18. 久保卓也

    久保政府委員 米側としては、この基地安定使用ということについて大変な関心を持っておることは申すまでもないことでありまして、この点は在日米軍のみならず、ハワイ及びワシントンでも、その点がその都度指摘されておることを私ども承知をしておるわけであります。したがいまして、現地米軍としましては、昨年来、現実に実弾による射撃、長距離の射撃ができていないということに大変ないら立たしさを感じているようであることは、私どもも看取できます。したがって、そういうことを背景にして、在日米軍としましては、なるべく早い時期にやらせてほしいということは、従来から再々申しておりましたが、昨日の話し合いの中で、いつ、どういうふうにするというようなことは出ておりません。
  19. 上原康助

    上原委員 政府立場で、今後の見通しはどう見ておられますか。
  20. 久保卓也

    久保政府委員 私どもは、日本政府として、安保条約がある以上、在日米軍実弾射撃をやらないということを将来にわたって同意させることはできないということは、米側にも申しております。しかしながら、その都度の状況において、その特定の日にやることが適当であるかどうかということは、われわれとしても十分に判断をしたいし、米側にも要請をしたいということを申しております。そういうことを背景にして考えますると、先ほど答弁申し上げたようなことからいたしますると、いずれはまた彼らが要請をしてくるであろうという感じは持っております。
  21. 上原康助

    上原委員 そこである程度、日米間のやりとりについて推測できるのですが、この県道、特に県道一〇四号線の取り扱いの問題ですが、これも、これまで何回か指摘をしてまいりましたが、改めて議論をしてみたいと思うのですが、復帰時点において、この県道認定なりあるいは行政措置において、政府法的瑕疵がなかったのかどうか、あくまで十分な処理がなされたというお考え政府はお持ちなのか、この点明確にしていただきたいと思うのです。
  22. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 昭和四十七年五月十五日の合同委員会合意によりまして、わが国はキャンプ・ハンセン地域全体を施設区域として提供いたしたわけでございまして、その結果、一〇四号線のキャンプ・ハンセンの中を通っている部分は、施設区域の一部として米軍に提供されたわけでございます。したがいまして、その際の一つ条件として、地元住民一般通行は、米軍による使用支障とならない範囲内で認められるということになっておるわけでございます。  他方、この道路は、沖繩復帰の際に、当時の実情を踏まえまして県道として認定された道路とみなすという旨の措置がとられたわけでございますが、この道路内の施設区域内におきます部分一般通行というものは、合同委員会合意範囲内で制限されるものであるというふうにわれわれは考えておりますので、上原委員のおっしゃるような行政上の瑕疵があったとは考えておりません。
  23. 上原康助

    上原委員 どうもアメリカ局長の御答弁を聞くと、本当にどこの局長立場で御発言をしているのか、ぼくはますます疑問を持たざるを得ないのですが、それでは納得できないですね。  建設省来ていらっしゃいますが、建設省は、いま外務省の方から御答弁があったのですが、この県道一〇四号線についてどういう措置をとったのか。さらに、いまアメリカ局長が御答弁になったようなことについては十分、その報告なり、外務省あるいは防衛施設庁建設省の相互間で話し合いが持たれたのかどうか、そこいらもぜひ建設省立場で明確にしていただきたいと思うのです。
  24. 加瀬正蔵

    加瀬説明員 御質問の後半の部分につきましては私、御答弁申し上げる立場にないものですから失礼させていただきたいと思いますが、前半の、この道路復帰の際にどういう性格を持っておったか、こういうことでございますので、その部分についてお答え申し上げますと、私どもが県から報告を受けておりますところによりますと、この路線は、一九五三年に琉球政府沖繩道路法、これはその前年にできておりますが、それに基づきまして政府道として認定しております。そしてその後、沖繩復帰の際には、沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律に基づく政令規定によりまして、復帰のときの政府道市町村道は、国道政令指定したもの以外は、それぞれ県道市町村道であるとみなすという規定がございますので、その規定によりまして、県道として旧琉球政府認定が生きているというぐあいに理解しております。
  25. 上原康助

    上原委員 後半のことについてお答えする立場にないというところがちょっとくせ者で、問題なんですが、いまあなたの御答弁にありますように——その前に、それは全線についてそういう取り扱い建設省はなさったわけですね。
  26. 加瀬正蔵

    加瀬説明員 そのとおりでございます。
  27. 上原康助

    上原委員 いま御答弁ありましたように、確かに一九五三年の九月二十八日告示第百五号において、これは琉球政府認定されているわけですね。そして一九五三年の十月十九日から県道としての使用が開始をされて、復帰時点までずっとそういうふうになっている。さらに沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律昭和四十六年十二月三十一日法律第百二十九号、そして沖繩復帰に伴う建設省関係法令の適用の特別措置等に関する政令昭和四十七年四月二十八日政令第百十五号、その第八十七条で路線認定に関する経過措置により県道とみなすと、建設省ははっきりこういうふうな行政措置をとったわけです。  そこで私が、法的瑕疵がないかということをお尋ねするのは、もし外務省が言うような考え方であるならば、当然、この県道としてみなすという認定をする場合に、どの部分提供施設区域であって、県道使用についてはこういう条件があるのだということを、皆さん琉球政府側なり何なりと話し合うべきだったと思う、建設省立場でも。それが全くなされずに、秘密裏日米合同委員会で、県民生活道路として認定されているものを、アメリカ演習支障を来たさない範囲県道としてみなすというのが条件だったというのは、これは全く言語道断なんだ。こういうことに対して一体外務省あるいは施設庁、ぼくは特に、この点については外務大臣の御見解を賜りたいと思うのですが、明らかにこれは政府には行政上のミスもあるのです。百歩譲って、外務省がそういう話し合い日米間でやっておったとしても、なぜそのことを、復帰時点において明確にしなかったのかということなんです。ここはきわめて重要な問題なんですよ。その点もう一回、外務省施設庁、そしていま私が指摘したことに対する建設省見解も賜っておきたいと思うのです。
  28. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 御承知のとおり、沖繩返還のときには、仲繩にあります施設区域全体について、いろいろな法的措置が講じられたわけでございますが、このキャンプ・ハンセンに関しましても、この道路部分を含んで提供するという合意は、当時日米間でいたしたわけでございます。  県道一〇四号線は、施設区域外にもあるわけでございますが、その限りにおいて、この県道とみなすという処置がとられたことは当然の処置でありましたが、このキャンプ・ハンセン内にある部分についても県道とみなすとはいうものの、そのキャンプ・ハンセンが全体として施設区域である以上、その部分については、米軍活動支障のない限り一般住民使用が認められるということになりましたのは、これはまあやむを得ない点でございまして、この点については、われわれとしても認識いたしておったわけでございます。  それから、国内に対する周知問題については、施設庁の方からも御答弁いただきたいと存じます。
  29. 久保卓也

    久保政府委員 これは行政官縦割りであるということの一つの結果かもしれないと思います。つまり提供施設としましてキャンプ・ハンセン告示いたした場合に、その中に県道が入っている。片一方で、沖繩県の方で県道告示かなんかをやりまする場合に、これが県道であるという認定をされる。そこで二つ合わさっていまの条件が満たされることになるわけでありましょうが、ただ、親切な行政という場合には、提供施設の場合にも、そしてまた県道としての認定の場合にも、それぞれ説明としてなさるべきであった。なされたかどうか存じませんが、もしなされていなかったならば、なさるべきであったろうという、そういう点は考えます。
  30. 上原康助

    上原委員 それこそまさに不親切な御答弁だ。なされていないんですよ。なされていなかったものを、あたかもなしたかのように言うことに問題があると言うのです。  まあ、それだけにこだわりませんが、アメリカ局長、あなたは何か、道路はぼんぼん切ったって支障がないんだというような御答弁ですが、御承知のようにこれは、現在の国道五八号線と国道三二九号線をはさんだ横断道路なんですよ。提供施設区域になっている部分は、道路全体のどのくらいですか。
  31. 銅崎富司

    銅崎政府委員 総延長が八千三百メートルありまして、そのうち施設区域内は三千五百メートルでございます。
  32. 上原康助

    上原委員 そうすると、半分にも満たないんですよね。大部分県道なんで提供施設区域ではない。したがって、道路を通過するのに、ここまでは県道である、ここからは提供施設区域だからこれ以上行ってはいかぬと言ったら、じゃ、この道は、盲腸でもあるまいしどうするのですか。そんなばかげたことがあっていいのですか。そこにもっと問題があるんですよ、私が法的瑕疵がなかったのかということは。もし本当に県道一〇四号の一部分施設区域に入っているのであるならば、当然、その時点においてこのことを明らかにしておけば、一歩手前の問題解決にはなっていたかもしれない。これもうやむやにした形で、県民は一九五三年から今日まで、県道生活道路という観念で使ってきた。これはアメリカ側の一方的な軍事演習をやりますよ、しかもそれは一方的な通告によって決めるわけでしょう、そういうむちゃなことが一体、許されていいのかということなんです。  さらに、この海兵隊の一〇五ミリないし一五五ミリの砲弾を発射する地点から部落までの距離は、皆さんどのくらい離れていると思うのか。あるいは着弾地点からその近くの部落なり民家とはどのくらい離れていると見ておられるのか。おわかりいただきたいことは、これは山の中でやっているのではないのです。砲弾を撃つちょうど中間には学校もあるのです。喜瀬武原小中学校がある。学校の屋根の上をびゅんびゅん砲弾が飛んでいく。そういう状態というのが一体、本土のほかの都道府県にあるのかどうか、そこらの点についても御説明いただきたいと思うのです。
  33. 銅崎富司

    銅崎政府委員 恩納村の方の喜瀬武原部落ですが、これは着弾地点から約千三百メートルと聞いております。それから金武村の喜瀬武原部落の方は着弾地区から約千六百メートル。それから恩納村の喜瀬武原小中学校砲弾はこの学校の上を飛んでおらぬわけですが、これが着弾地から千百メートル。それから金武村の中川小学校と幼稚園がございますが、これは着弾地からではなくて発射地点から約五百メートルある、こういう状況にあります。
  34. 上原康助

    上原委員 ここまで数学的に言うと、聞いておられる方々も、大体どういう状況下実弾射撃訓練がなされているかおわかりと思うのです。学校の上は飛んでいないとあなたは言うが、学校のそばを行っているではないか。わずか千百メートルじゃないですか。まかり間違えばどうなるの。こういう状況下で行われているわけですよ。だから、皆さんがこれまで答弁してきたように、約三・五キロは施設区域に入っているから、そこを迂回道路にして結んでいけば何とかなるというような考えで事が済むものじゃないですよ。迂回道路をつくってみたって、発射地点着弾地点というのは、いま言ったような状況下でしか行われない。  大臣、こういう状況下アメリカ訓練というものがなされている。皆さん安保条約があるからやむを得ないというお立場を、これまで繰り返しているのですが、問題は、実弾射撃訓練をやる場所としては、危険性が伴っておってきわめて不適格であるということなんです。したがって、こういう状況下実弾射撃訓練場として提供したところに問題があるということを、政府側がその気になっていただかない限り、この問題解決はなされない。  だから私たちは、仮にもう日米間の取り決めがある、あるいは地位協定があって政府立場でどうしても中止をしなさいとか演習をやるなということを申し入れるわけにはいかないという、それはある面では理解できないこともありません、行政という立場で、政府という立場でそれをお認めになっている立場からすると。しかし、ああいう状況の中で実弾射撃訓練をやる施設として提供したことが、地域住民生活面あるいは安全性ということを考えて、適当な基地提供の仕方であるかどうかについては、改めて検討するに値すると思うんですね。この点いかがですか。
  35. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 沖繩県は、たださえ狭隘でありますところへ、たくさんの施設区域がありますので、県民に、その他の県民以上に御苦労をおかけし、御不便をいただいておることはよく知っておりまして、お気の毒なことだと思っております。したがって政府としては、従来逐次施設区域の縮小あるいはリロケーションなどを行ってきたわけでありますし、今後もそのような努力は続けてまいりたいと考えております。  このキャンプ・ハンセンにつきましては、従来のそのような経緯にもかかわらず、なお米軍が必要と考え、また、そういう意味ではわが国の広い国益のために提供しておるわけでございますから、その基本は動かせないというふうに考えますけれども、たとえば迂回道路の点であるとか、あるいは住民等のその他の要望等々は、できるだけ、わが国の防衛という国益の目的と両立させつつ、改善を考えてまいりたいと思っております。
  36. 上原康助

    上原委員 いわゆる国益と住民の福祉ですか、それと安全を両立させつつということなんですが、言葉をかえて言うと、あなたの言うのは、大の虫を生かすには小の虫は殺したってしょうがないということなんだね。それじゃいけないわけですよ。本当におっしゃるように、沖繩県民の労苦に報いたい、あるいは気の毒だ——気の毒だなんという言葉は、余りよくないで、抵抗があるんですが、ああいう状況下実弾射撃訓練をやる施設区域としては不適格であるということを、なぜアメリカ側と話し合えないのですか。近くには小中学校さえもあるわけでしょう。民家もある。このことについては、やはりこの際、再検討をしていただかないと納得いきません。  それとさらに、政府は反対しているのはどうも一部の人々だとか、あるいは地域の住民は迂回道路にも賛成をしているとか、いろいろなことをいまやっておられるようで、宣撫工作をやっているわけですが、これもそう簡単に功を奏するものでないということは、ここで私は警告しておきたいと思うのです。  よく地域住民の意見の尊重とか、あるいは現地実情を尊重するというようなことを、しばしばいろいろな面で答弁なさるわけですが、在沖米海兵隊による実弾射撃演習の即時中止を再び要請する決議というのが、県議会においても三月の十二日に全会一致でなされているんですね。きのう、たしか県会議長と各党代表が上京なさっていると思うのです。また、せんだっては屋良知事もお見えになって、この実弾射撃訓練をやめさせるということと同時に、この地域では実弾射撃訓練はやるなというのが県民全体の要求なんですよ。しかも安保条約地位協定を認める立場にある自民党の県会議員さんを含めて、この決議は全会一致でなされている。これを尊重せずして何を皆さんは尊重するというんだ。  それは民主主義の社会ですから、確かに反対する人も、一部には賛成する人もいるかもしれません。あるいは迂回道路をつくってあげますよ、いろいろな基地関連整備もやってあげますよということになると、先ほどの話じゃありませんが、特に財政硬直している貧乏な村や町になりますと、やむを得ないという立場をとる人もいるかもしれない。しかし県民全体から見て、施設区域として提供するのは百歩譲ってやむを得ないにしても、一〇五ミリも一五五ミリもある砲弾をぽかぽか撃つということ、そういう基地に使うことに対しては、断固反対だというのが県民全体の意思なんですよ。これを私は改めて問題にしたいわけです。  もうすでに御案内と思うのですが、この県議会が決議をしたものに対して政府はどのようにお考えになっておるか。これは外務大臣からでも御答弁いただきたいと思います。
  37. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私ども、国の防衛という大きな国益の見地から施設区域を提供しておるわけでありますけれども、先ほども申し上げましたように、沖繩県の場合には、それが住民の生活に非常に大きな影響を及ぼしておるということはよく承知いたしております。したがって、地元の県において、住民の福祉という観点から全会一致でそのような御決議があったということは理解ができることでありますし、その決議のよって来たるゆえんは、私どもも十分考えなければならないと思っております。そういう意味では、そのような大きな国益と住民の不便、あるいは不便以上のものであろうと思いますが、それをどのように調整するかという問題で、先ほども申しましたことですが、いろいろの改善については、そのような住民の気持ちも考えながら最大限の努力をいたさなければならない、そういう立場で御決議を拝見したわけであります。
  38. 上原康助

    上原委員 それを尊重なさる、十分理解できるということですが、では具体的には、それにどういうふうにおこたえになっていこうとしておられるのですか、そこが聞きたいのです。
  39. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども迂回道路のことを申し上げましたが、そのようなことでありますとか、あるいは演習の方法等について、さらに改善の余地があるかどうかといったようなことは、検討いたすべきことであろうと存じます。
  40. 上原康助

    上原委員 ここで私は、迂回道路の点については、改めていずれかの機会にやりますが、断固反対しておきます。それでは問題解決にならない。そうしますと、いまの御答弁ですが、皆さん立場では迂回道路の問題がある、さらに、どういうふうな演習方法があるのか、これも日米間で話し合う、そういう話し合いがつくまでは演習はさせないという立場なのか、あるいは話し合いを進めながら米側から申し入れがあれば、さらにやむを得ないという立場政府はやるのか、そこらも明らかにしてください。
  41. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もとから申しますと、安保条約地位協定によって私どもが提供した地域施設でございますから、米軍としてはこれを使用する権利を持っておる、この基本は動かせないところであろうと思います。私どもは、そういう上に立っていろいろな改善を考えていかなければならないと思っておるわけでありますが、その話し合いがつかないうちは演習はしてもらっては困るということでありましては、これは話し合いをしていこうという精神に私は沿わないであろうと思います。そこまで相手方を追いやってしまったのでは話し合いということになってまいりませんから、ただいま御示唆のありましたような立場は、私どもとしてとることは賢明でないであろうと思います。
  42. 上原康助

    上原委員 そこで警察庁来ていますね。——せんだって直接お目にかかったのですが、特に、今回問題になったのは、すでに安井御先輩が地方行政委員会でも取り上げられているのですが、十一日の軍事訓練演習の場合に、米軍のヘリコプターを県警機動隊が使用したということですね。これは皆さんは、緊急だったのでやむを得ないというようなことでしたが、これはそう簡単な問題じゃないと思うのです。私は、正直に申し上げて、防衛施設庁なり警察庁のその感覚が疑われるんですよ。恐らく、だれが聞いたって、日本の政府の下部機関である都道府県の警察が、県警が、米軍のヘリコプターを利用したということは前代未聞だと思うのです。こういうことがあっていいのかどうか。わが国が、外国の軍隊の装備をする機材を使ったということなんです。そうでしょう。そこまで警察権力の官僚感覚というものか——野蛮な行為をやっているのはアメリカ側なんですよ、無謀な軍事演習をやっているのに。それに反対をして体を張ってでも阻止する、もうまかりならぬという、ある意味においては正当防衛なんだ。この件については一体、警察はどういう立場でこれを見ておられるのか。そういう緊急事態については、米側の装備する機材を使用してもいいという日米間で秘密取り決めなどがあるのかどうか。あればそれをぜひ明らかにしていただきたい。また今後もし、そういう事態が起きた場合に、再び県警の機動隊を、米軍ヘリを利用して出動させるのかどうか、ここいらも改めて、この場においても明らかにしていただきたいと思うのです。
  43. 三井脩

    ○三井政府委員 三月十一日の演習の場合の米軍ヘリに対する警察官の便乗の問題につきましては、当日、三十数名の人たちが射撃反対のために着弾地付近にいる、こういう状況でありましたので、これを着弾地の外、演習場の外に連れ出すということが演習実施のために必要でもありました。これが第一点。  第二点は、また着弾地というのは、わりあいに不発弾もあって危険な地域であって、演習の有無にかかわらず、そこに立ち入ることは好ましくない地域でございます。また当日は、予定されておりました射撃を開始する切迫した状況にありましたので、この人たちを速やかに危険区域から連れ出す、こういうために警察官を急遽この地点に派遣をする必要を感じたわけであります。  御存じのような、大変高い山であるとか谷であるとか、入り組んだところでありましたので、これに速やかに警察官を輸送するというためには、米軍のヘリを使用し、これに便乗することが最も適当な方法であると当時現場において判断をして、二回にわたって警察官を派遣した。その結果、中に入っておりました三十数名全員というわけにはまいりませんでしたけれども、そのうちの三名を外に連れ出すことができたわけであります。したがいまして、当日の米軍ヘリ便乗の問題につきましては、当時の状況において最も適当な措置を現場においてとったものというように考えるわけでありますが、一面また、しばしば強調されておりますように、現地における住民感情というような観点を考えますと、できるだけ、そういうことは他に手段を求めて、それにかわるような手段、方法というものを考えるのが適当であるという考え方もあるわけでございます。米軍のヘリにわれわれが便乗する、その他の方法によってこれを利用するということについての一般的な規定、取り決め等はございません。当日、そういう状況下において急遽、米側にそのヘリに便乗させてもらいたいという申し入れをして便乗したわけで、一般的に云々ということはないわけでございます。  したがいまして、今後の措置につきましては、この問題に限らず、警察は自前の装備、資機材を使ってやるというのが常に原則でありますから、この原則をもとにして、これを基準として措置をしてまいりたい、こういうように考えておる次第でございます。
  44. 上原康助

    上原委員 なかなかたんたんとお答えになるのですが、それの使用要請したのは腹切りものですよ。こともあろうに、一つの独立国家であるのに、しかも米国の軍隊の所有するヘリコプター、兵器ですよ、それに便乗するなんという感覚が問題なんです。そこまで日米共同、自衛隊もアメリカと一緒、警察権力も一緒では、一体何が生命、財産を守る警察だと言いたい。  そうしますと、今後は米軍ヘリはもう使用しないわけですね。次は自衛隊で出したらどうですか、むしろ自衛隊ヘリでも使ってみたら。独自の機材、独自の装備でやるのがたてまえということは、近い将来、警察独自の人民弾圧武器ヘリコプターを配備するのですか。
  45. 三井脩

    ○三井政府委員 ヘリコプターを装備するということは、だんだんと全国的に進めております。  ただいま米軍のヘリに便乗したと申しましたが、あの種のヘリは、いま警視庁は持っておりますけれども、ほかの府県にはまだ行き渡っておりません。したがって、そういう状況考えながら、できるだけ自前の装備によって措置することを考えていきたい、そういう方向でございます。
  46. 上原康助

    上原委員 いま、少し横道にそれましたが、私が警察あるいは防衛施設庁に強く指摘しておきたいことは、県民あるいは民主団体が、なぜここまで強く抗議するかという歴史的な背景を無視してはいかぬということですね。そこを皆さんが、本土的感覚で、あらゆる権力を利用して何とか排除できるだろうというようなことであるならば、まさに不測の事態は目に見えていると思うのです。それだけ深刻なものがあることだけは、よくわきまえておいていただきたいと思うのです。  きょう後で、大出先生が刑特法の問題についてお触れになると思うので、私は省きますが、刑特法の適用の問題にしたって、六千万平方メートルもある軍事施設区域でしょう、境界も実際はっきりしない、そういう状態を野放しにしてきておって、しかも向こうの恣意でやってくるというところに問題がある。  それと、もう一つ忘れてならないことは、皆さんは、キャンプ・ハンセン基地周辺で今日まで、一体どれだけの流弾事故あるいは人身傷害事故が起きてきたか御存じですか。
  47. 久保卓也

    久保政府委員 いま手元に資料がございませんので、私は存じておりません。
  48. 上原康助

    上原委員 それを後ほど資料としてぜひ出していただきたいのですが、私が一応調べてみたものでも、一九五六年に流弾が飛来して事故が起きているんですね。六歳になる女の子が庭先で遊んでいたときに流れ弾によって負傷している。それから六三年、同じく流弾の飛来によって負傷事故が出ている。六四年、これは低飛行中の米軍演習による小銃弾によっての負傷がある。六三年、六四年は、この種の事故が三回も四回も起きている。六五年、六六年、六七年と、復帰前からそういう状態が続いてきたのです。さらにキャンプ・ハンセン演習場内での事故としても、米兵による射殺事件なり、いろいろなのがあったことは、皆さん御案内のとおりでしょう、ベンジャミン事件とか。そういうことが日常茶飯事のように県民の前で今日まで繰り返されてきたんです。米軍演習をする弾や破片や流弾によって、庭先で遊んでいる子供が負傷する事故も起きる、あるいは米兵によって戦車やその他でひき殺された事故もあった。復帰前からそういう状態が続いてきて、今日まで軍事演習に対しては抵抗してきたんですよ。  だから、今日の状態は、少なくとも復帰したならば、日本政府県民立場に立って本当に人命の尊重、安全を考えるであろうという期待をもう全く裏切ってしまった。それが皆さんの言う、核抜き木上並みという、いわゆる欺瞞的な内容でしかなかったということで、そのベールが一つ一つはがれてくるものだから、今日の時点においては、県民はもうこれ以上、軍事演習に対してはがまんがならぬ。皆さんの中には、本土ではそんなにまで抵抗がないとか、あんなへんぴな着弾地点まで行って、弾をぶっ放されたらこっぱみじんに吹っ飛ぶのにというような感覚で話す方もおりますが、そこまで必死に軍事演習に対して抵抗するということは、やはり沖繩の歴史がそうせしめているのです。それを安易に、六千万平方メートルもあるところを、何とか金網をつくって、人が入りそうなところは、みんな落とし穴をつくるというようなかっこうじゃ、とてもだめなんです。  だから根本は、私が申し上げたように、実弾射撃訓練をやる基地としては不適格であるということについて、日米間で改めて話し合って、少なくとも県民の側の譲歩が得られる形での問題解決というものを、外務省なり防衛施設庁に真剣に考えていただかないと、国益とかあるいは日米安保条約があるから、アメリカに使わせる義務があるからという立場で、これをこのまま何とか権力で抑圧しようとしたって、とても問題解決にはならない。少なくとも実弾射撃訓練をする基地としては不適格である。小銃弾なら話は別かもしれませんよ。それはやりようによっては、いろいろな防止方法があると思う。しかし一〇五ミリ、一五五ミリ、そういった曲射砲とかりゅう弾砲を撃ち込むということは危険千万である。これは不適格な基地であるということについての話し合い日米間でなされない限り、県民理解と協力が得られるような解決というものはあり得ないと私は思うのです。  この点について、きょうは改めて外務大臣なり防衛施設庁長官の御所見を伺いたい。先ほどのような御答弁じゃなくして、いま私が言ったようなことも含めて考えた場合には、同じ日本の国民を大事にするという立場に立つならば、そのくらいのことはアメリカに言えないことはないと思うのです。それはどうですか。
  49. 久保卓也

    久保政府委員 先ほど来、外務大臣が、国益と地元住民の福祉——地益とも申せようかと思いますが、国益と地益の調和、調整を政府としては考えざるを得ないということを再々お話しになっておるわけでございますが、私どもも当然そういう方向で考えるわけであります。  ところで、キャンプ・ハンセンにかわるべき場所はどこかと申しますと、北部演習場というのも、御承知のように復帰時に問題になったことがあります。東富士、北冨士演習場という問題もあります。あるいは韓国に行って演習をやってくれという問題もあります。それらの問題も米側としては十分に検討した上で、現状のところではキャンプ・ハンセンしかないという結論であるわけで、私どもとしましては、北部演習場は、あそこで実弾射撃をやるのはとんでもないことで、漸次あれを返還させていくということの方がまだ望ましいのではないか。それから富士演習場などを利用するということも、米側には利用してもらいたいわけでありますが、これまた相当距離があるわけであります。  したがって私ども、いまの国益と地益の調和という見地から申せば、できるだけ回数を減らしてもらう、あるいは射撃のやり方というものを、たとえば長距離が本来必要でありましょうとも、できるだけ短距離に重点を置いてやってもらう、回数を減らすというようなことで、米側の本来の訓練の必要度合いから言えば、非常に制限された形でやらしているということであり、しかもなお、昨年来実弾射撃はやらしておらないわけであります。  先ほど県会の決議の尊重の問題が出ましたけれども、私ども県会の決議に従うわけにはまいりません。これは、県会としましては県の利益をお考えになるわけでありますから、私は当然だと思いますけれども、国益と地益の調和を目指す政府としては、従うわけにはまいりません、しかし尊重をする。したがってたとえば、十一日の演習の場合にも、中止まではまいりませんでしたが、人が演習場の中に入っているときは絶対に撃つなということで米側に言い、米側もそれに従って、結局は実際には射撃をやらなかった。十九日も、県会の決議を尊重しまして米側に延期を申し入れたということであります。  そういうようなことで、私どもとしてはキャンプ・ハンセンというものがベストの場所であるとは思いません。なぜベストでないかと言えば、結局国土が狭隘であるということに帰ってまいります。飛行場一つをとりましても、ベストの場所というのはそんなにあるわけではありません。したがって、きわめて適確な場所というものは、いろんな観点から言ってもそうあるわけじゃない。結局、国土狭小のいわば悲哀なんでありますが、しかしそれが、地元住民方々にとってみれば、納得いくわけにはまいりません。まいりませんから、キャンプ・ハンセンにかわるべきところというのはなかなか見つかりませんが、先ほど来外務大臣もおっしゃっておりますように、運用の面でできるだけわれわれとしては配慮をしてまいりたい、かように考えるわけであります。
  50. 上原康助

    上原委員 外務大臣はこの点どうなんですか。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 上原委員におかれましては、現在行われておりますような演習が基本的に悪である、あるいは野蛮、無謀というようなことも言われたかと思いますけれども、私どもは先ほど申し上げましたような理由からそうは考えておりません。したがって、そのような立場からの反対運動、阻止運動というものには、私どもにわかに同調できないものでありますけれども、他方で、そのような今日の世界あるいはわが国におけるやむを得ない情勢というものを前提にいたしますと、そういったような犠牲は、本来国民が均等に負担をすべきが理想であるというふうに考えます。しかし現実的には、それがなかなかそうは参らずに、偏った地域の住民に重い負担を負ってもらうというような結果になっておることは私どもよく知っておりまして、そういう意味で、その立場に十分御同情をしなければならないというふうに考えておるわけであります。  そういう立場から、先ほど施設庁長官も言われましたように、政府としてもずいぶんいろいろな、別途の方法を考えまして米軍と接触をしてまいりましたし、今後もいたしますが、その接触の過程を通じてどのような改善策が考えられるか、少しでも地元の住民の重い負担を軽減したいという努力は、いままでもいたしてきたつもりでありますけれども、今後もいたしてまいらなければならないというふうに思っております。
  52. 上原康助

    上原委員 立場考え方あるいは沖繩県出身者であるのと政府官僚との差、これはいたし方ない面もあって、御答弁には納得をしませんが、先ほど申し上げたようなことを、皆さんがいささかなりとも見誤った場合、あるいは何とかなるであろうというような安易な立場でこの問題について日米間で今後話し合おうとした場合、必ずもっとシリアスな点が出てくると思うのです。その点は強く私は警告をしておきたいと思うのです。その場合、実弾射撃訓練としては不適格な基地ですよ、今後も住民の反対運動は消えませんよということを、公式の場でこれほど私が言っても、なおかつ日米安保条約があるからやむを得ない、大の虫を生かすには小の虫はもっと犠牲になれというような感覚ならやむを得ない——やむを得ないというよりも、そういう行政があってはいけないと思うのです。それを克服するのが外交じゃないですか。いまのような姿勢では決してこの問題の解決にはならないと私は思います。  時間もあれですし、大出先生の関連もありますので、私は、きょうはこの点の以下の質問は一応留保しておきます。
  53. 藤尾正行

    藤尾委員長 大出俊君。
  54. 大出俊

    ○大出委員 私は、実はきょうは、あしたの知事選がなければ沖繩に行く予定でおったのです。なぜかと言いますと、きょう理事会でも申し上げましたように、これは電話でございますが、現地の諸君とも何遍か話してみましたが、これはかつての北富士以上の大変なことになる、めったなことで現地は引く気配はないという判断をするからであります。北富士にしても、早くやればあれだけのことにしないでもいろいろ手が打てたはずだという反省が残るわけでありまして、これからでもますますけが人が出てくるのではないかという気さえ実はするのであります。  そこで、いませっかく話が出ましたから、最初に聞いておきたいのであります。いま一〇五ミリが出ましたが、大体この演習場でどういう種類の砲弾を撃ち、発射地点から着弾地まで大体どのくらいの距離があり、さて、いまおっしゃるようになるべく短距離なものをということなんだが、それならば、この一〇五ミリあるいは一五五ミリなどを撃つのを、何か近距離のものにかえるというんですが、技術的に、それならば砲弾の種類を変更するというのか、近距離に撃つような射撃の仕方をするというのか、その距離は一体どのくらいが考えられるのか、そこらは具体的に一体どうなんですか。
  55. 久保卓也

    久保政府委員 具体的には、これから検討させるという段階でありまして、いま成案を持っておるわけではございません。ただし、あそこで撃っておりますのは、もちろん小銃その他迫撃砲から各種火砲があって、御承知のように一〇四号を越えないで撃つ砲座というものが、どういう方向ですか、あるわけであります。で、私どもとすれば、そこを多用してもらえば、比較的刺激が少ないということで、これはある国会議員の御示唆もあって、私もそういうことを米側にも言っております。  そこで、たとえば一〇五ミリであれ一五五ミリであれ、これも大出先生は御承知のように、炸薬を少し減らして短距離にしてやるというような問題もあります。それから一〇四号を越えないという場合に、私は地勢はちょっと知りませんけれども、少し低い。で、低いところから仰角を上げて撃つと若干危険性が出てくるという問題があるようであります。そういう話も聞きますので、現実にそうであるのかどうか、もしそうであるならば、その低いところを少し高くしてそこから撃つということが可能でないのかどうかというような問題、そういうようなことをひとつ研究さしたいということを言っておるわけであります。
  56. 大出俊

    ○大出委員 これは北富士とは条件が違いましてね。あそこは私、何遍も行って、例の入会権問題などと絡んで、薬草を取ることを業にしている諸君がいるもんですから、谷間まで入っていって登ってみたこともあるんですがね。だが全く条件が違うですね。  それで、私からも一つ例を挙げておきますが、先ほど銅崎さんですか、ちょっとお話が出ておりましたが、これは現地沖繩タイムスですけれども、「演習はこりごり」「地元 生活に大きな支障」という見出して喜瀬武原の小中学校——これは小学校、中学校一緒の学校でございますけれども、喜瀬武原の小中学校の石川繁正さんという校長先生が「「米軍はまったく無神経だ。演習でただでさえイライラしているところへヘリがひっきりなしに学校の上を飛びかっている。小学生、中学生とも授業は午後三時まで普通どおり行った。特に、中学一、二年生は試験の最終日でありかわいそうだ。早く演習をなくしてほしい」と訴えていた。」というのです。これは学校ですからね、生徒を教えているんですから。先ほどお話がございましたように、発射地点から五百メートルぐらいしか離れていないところ、あるいは千百、千六百というところに学校がある。これは常識のらち外なんです。  これは大臣現地に行かれて、そこにおいでになれば一遍でわかる。私は、砂川闘争のときに農家にずっとおったことがありますけれども、鶏が卵を産まなくなるというようなこともあった。飛行機が飛ぶだけだって大変なことです。とにかく目の先に、これはさっきの話によると、学校で一番遠いので千六百ですから、千六百といったら、すぐ目の先に砲弾が落ちるわけですからね。しかも、そういうことになっているのを、今日までほうっておいたことにすでに問題がある。この一〇四号というのは、二つの国道の横断線であることは、彼がさっきから申し上げておる。これは通らざるを得ないのです、汽車がないんですから。だから、そうだとすれば、この一〇四号を外す、これがまず重点でなければならぬ。  交通は確保する、国内法優先の原則が地位協定にある、だから、県道に指定されているものを、いかに復帰時点とはいいながら、さっきも彼が言うように、私どももずいぶん調べた時代がありましたが、わからなかった、後になったら提供地だと言う、そういうばかげたことをやったことに問題がある。本土並みと言う限りはそれを外す、これだけまずおやりになりませんか。
  57. 久保卓也

    久保政府委員 これは、先ほど外務省アメリカ局長から答弁がありましたが、復帰時の情勢で、県道の中で地勢、従来からの米軍使用形態、そういうことからやむを得ざるものが中に入ったということで、御案内のように沖繩では四件、本土で四件、提供施設の中に県道が含まれているものがございます。  そこで、外務大臣も申されましたように、私どもとしましてはバイパスを考えておりまして、これが一〇四号線の問題、少なくとも交通の問題については解決する手段になる。しかし、それには若干時間がかかるわけでありまして、その間、一〇四号線を提供施設から排除するというわけにはなかなかまいらないのではないか。ただし先ほど、アメリカ局長が申されたように、米側との合同委員会の関係では、米軍支障のない限り道路の交通を認めるという趣旨でありますが、現実の運用としては逆にしたいというのが本心であります。そして、それをやろうとしたのが先月の十八日から二十日であって、民間交通を優先にして暇なときに射撃させる、これは米側としては不便でありましょうが、私どもとしてはそういうふうに持っていきたい、もしそれが可能ならば今後ともそうしたいというのが本心であります。
  58. 大出俊

    ○大出委員 そこまでおっしゃるならば、はっきりそうしていただきたいんです、とりあえずこれは。  横浜は御存じのとおり基地の多いところでございましたが、八区の埋め立てをつくる。そこに米軍の陸揚げ場がある。つまり埋め立ての首が道路でございますから、そこへ揚げてきて運ぶ。ここでさんざん問題になりましたが、最後に公安委員会まで上がっていって、国内法優先の原則を盾にとって交通、まずこれを考える。したがって、交通量のないときに、赤信号をつけておいて物を運ぶ。つまりあくまでも交通優先の原則を貫いて物を決めているわけであります。これは、そうでなければ、人のことですから、横断道路なんですから、使わざるを得ない。それは日本だって、人の所有地だって、歴史的に道路になっていれば所有権が主張できないのはあたりまえです、通行権ですから。だから、あくまでもそれが優先であるというこの原則を貫くという姿勢がなければ物事が進まない。  そこで、いま騒ぎがもっと大きくなりそうなんですから、いま一体何をやるべきかという当面の問題、つまり交通をとめるということについては、これは一切やめていただいて、その範囲でいまお話しになっている、当面それじゃ一〇四号を使わないで何がやれるかという点を話し合って、そして将来の問題、いまからいきなり決まりませんでしょうが、アメリカがあるんですから。だがしかし、これは外す、ここまでいかなければ、これは問題の解決にならない。  さらにその先に、着弾地点の周辺に学校がある、住居がある、こういう地域なんですから、先ほど国頭の話、北部演習場の話が出ましたが、北部なんかに持っていけばなお悪い、だから、やはりアメリカ側に、不合理なんだからこれはやめてもらうというところに持っていく以外に道がない。時間がありませんから言いませんが、米軍の諸君は、そんなら沖繩基地を持っておる意味がないというようなことを言っておるようでありますが、それはわがままです、住民に被害が及ぶのですから。そういう基本線をはっきりしてもらいたい。いかがですか。
  59. 久保卓也

    久保政府委員 政府としては、やめさせるという方向には踏み切れないわけでありまして、やめさせない範囲内において何ができるかということを考えるのがわれわれの任務であります。  そこで、その範囲内でいまいろいろ申し上げたわけでありますが、できるだけ一〇四号を越えない射撃を重点に置いてやらせるということはわれわれも当然考えます。そこで一〇四号線を交通優先にして考えることは、十分にわれわれとしてもそうしたいわけでありまして、もし民主団体の人たち、反対の方々が弾着地点に入らないで、若干でも射撃訓練ができるということをお約束いただけるならば、当然交通優先にやっていくのがしかるべきであろうというふうに思います。
  60. 大出俊

    ○大出委員 物事というのは、そういう条件をつけちゃいけないんですよ。皆さんの方が、当然なことなんだから努力をする、それが先なんです。それでなければ物事は進みやしない。だから、何をやるべきかというお答えをいまいただいたわけだから、それをやっていただく、外務大臣、そういう政府の姿勢が出てこなければ、沖繩の防衛施設局なんて何のためにあるのだ。米軍演習をさせるように、住民の権利は片っ端から抑えようとする、だから、もう出ていってくれ、こんなもの要らない、米軍施設局じゃないんだという声がわあっと上がっている。これは自民党の方々の中にも上がっている。そういうことじゃいけない。だから、あなた方が解決をしたいと考えるなら、現地の空気はわかっているんですから、まずその方針を打ち出す、これが必要だ、こう思っている。外務大臣、いかがですか。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いま施設庁長官が一つ考えをすでに示されたわけであって、政府としては、こういう考えを持っているが、あなた方の方でこうしてくれるのならひとつそうしようじゃありませんか、こういうことを言われたのであると思いますから、これは私、一つの妥当な考え方ではないかと思います。
  62. 大出俊

    ○大出委員 条件つきで物をやっていますと、これは、ますますこじれるだけですよ。あなた方の方が、こうこういう方法があると言うならば、その方法を決めていただかなければならぬ。だから、あなた方には案がないんだ、いまの話は。その方向で検討しようと思っているということだけで。だから、それはすみやかに検討して、結果をお出しになりますな。
  63. 久保卓也

    久保政府委員 検討の結果というよりも、二月十八日から二十日までの間の射撃演習については、実はそういう方針を打ち出したわけであります。打ち出したけれども、やはり二、三十名の方が着弾地点に入って、現実に撃てなかったということでありまして、そうやってみたところが効果がなかったというのが現実であったわけであります。そういうことを踏まえて、今後何をなし得るかということを考えてみたいということであります。
  64. 大出俊

    ○大出委員 つまり一〇四号を外して演習をするとすれば何がどうできるか。先ほどそこを私が承ろうと思ったら、そういう考え方があるんだけれども、これから検討しようということだというあなたのお答えでしょう。そういうあいまいなことじゃ信用ならぬじゃないですか。だから、そこのところは、あなた方の方がどういうものを決めるか、どういう方針をおとりになるか、私どもも、いずれ近く沖繩に参りますけれども、そこらをまずはっきりしていただきたい。そこから先の議論は、その上に立ってもう一遍改めて次のこの委員会でやりたい、こう思っています。
  65. 久保卓也

    久保政府委員 一〇四号線を越えないでの訓練ということ、これは先ほど申しましたように、いままでもやっておりまするけれども、一〇四号を越えた射撃の代替としてどういうことが考えられるかということを、いま私の部下の方に検討することを命じたということであります。それから一 ○四号線を越えて、一〇四号線の交通遮断をしないでやるということは、これは十八日から二十日までに現実にやろうとして射撃ができなかった、そういう実態がありました。ですから、そういう実態を踏まえて、今後どういうことができ、どういうことをしなければならないかということを考えてみたい。これは、そういう二つの問題があるわけであります。
  66. 大出俊

    ○大出委員 その二つの検討を命じたわけですから、命じた結果をできれば聞かしていただきたいと思います。その上でひとつ議論をさせていただきたいと思います。その間に沖繩現地の諸君の話も聞きたいと思っておりますから。  次に、非常に大きな問題は、米軍のヘリをお使いになった。これは新聞によりますと、沖繩の県警本部長が独断でこの依頼をした、こういうわけですね。ここに書いてあります。御本人が述べている。  そこで承りたいのですが、安保条約があり、地位協定があり、その他いろいろ関連法規がございますけれども、法的根拠は一体——警察と自衛隊ならば横路節雄先生等が何遍も取り上げましたような協定が明確にあります。一体警察と米軍、この間にどういう法的関係がございますか。
  67. 三井脩

    ○三井政府委員 米軍に提供された施設区域と警察との関係ということになりますと、警察は、施設区域であると否とを問わず、日本国全般について警察としての責務を有し、かつ権限を持っておるということになりますが、一方、提供された施設区域の中において、提供されたことに伴って米軍がその中の秩序を維持する警察権というものを持っておるわけであります。  したがいまして、両者の調整という問題が出てくるわけでありますが、この点は地位協定で二十三条にあると思いますが、随時両方で協力するということがまず一つあります。これは一般原則を明らかにしたものだと思います。それから具体的に施設を侵す、施設に侵入をするという問題、これは刑事特別法によって禁じられ、罰則がある。また中に入って、施設の中で違法行為をやる、こういう人たちを逮捕とか拘束とか措置をするということがあるわけですが、これは米軍が行い、また日本の警察もこれと協力をしてやる、こういうことになっておるわけであります。
  68. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、この地位協定二十三条といまおっしゃったのですが、二十三条に基づいてそこで協力とあるから、そういう意味であなた方は米軍のヘリコプターを使った、結論的には使ったわけだから。そういうことになりますか。
  69. 三井脩

    ○三井政府委員 米軍のヘリの使用そのものにつきましては、直接に具体的に規定したものというのは何らございません。今回の場合は、この射撃に伴う諸問題について警備の要請、警察の支援要請米軍から出されておりますので、それに基づきまして区域の中におきましても、警察官として、職務執行をやることについての同意といいますか、要請を文書によってしておる、こういう状況の中で先ほど申しました具体的状況の中で警察官を急遽その地点に急派をする、そのためにヘリに便乗することが最も適当だという判断をしてやったわけであります。
  70. 大出俊

    ○大出委員 わけのわからぬことを聞いているんじゃないのだ。あなた二十三条とおっしゃるから、私も地位協定なんというのは、十何年間防衛をやっているのだから、知り過ぎているけれども、二十三条にはヘリ使っていいということになっていない、あなた二十三条といま言ったけれども。いま改めて聞いてみたら、協力し合うことになっているけれども、ヘリを使うことは何らない。何らなければ二十三条じゃないじゃないですか。支援要請があった、要するに支援要請があったら米軍の兵器使っていいことになっているんですか。それはどこに書いてありますか。
  71. 三井脩

    ○三井政府委員 いまの地位協定並びに支援要請の具体的内容におきまして、ヘリの点については何ら触れておりません。
  72. 大出俊

    ○大出委員 ヘリといえども、これは米軍の兵器ですよ。いかなるヘリを今後この作戦で——米軍側はこれを作戦と言っているんだから、いかなるヘリを何台どういうふうにお使いになっていらっしゃるか、全部種類を挙げてください。
  73. 三井脩

    ○三井政府委員 聞いておりますところでは、いわゆるバートルだと思います。実数二機で、これで三回にわたって警察官を輸送したということであります。
  74. 大出俊

    ○大出委員 あなた、いまお話がございましたが、これを見ると合計七機なんですよ。「ヘリは海兵隊の攻撃中隊所有のゲリラ掃討戦用のAHIGシーコブラ三機、空輸中隊のCH46兵員中型輸送機三機、観測機中隊のOV10ブロンコ一機の計七機」これは観測中隊だから兵員を運んでいない。バートルはどこにもない。それは確かに、日本の自衛隊の皆さんはバートル107使ったりなんかしていますけれども、ここには何もない。計七機、この七機でどういうふうにやったか御存じですか。
  75. 三井脩

    ○三井政府委員 米軍のヘリ全体の使用状況については私たちは存じませんが、警察官が輸送に便乗したヘリはCH46型三十六人乗り、これ二機でございます。
  76. 大出俊

    ○大出委員 「午後一時から始まった掃討作戦は、まず中型輸送ヘリがブート岳山頂に設置された米軍、機動隊キャンプに一回約十人の兵隊を輸送。その間シーコブラ二機が輸送ヘリを囲むように上空をせん回、ゲリラ発見に当たる。見つけると、キャンプに連絡、機動隊が逮捕に向かう手はずで進められた。」ちゃんと手はずはできているじゃないですか。これは共同作戦だ。いかがですか。あなたは、いま妙なことをおっしゃるが、共同作戦だ。そして「シーコブラは地上すれすれに降下、風圧で草木を分け」これはベトナムと一緒だ。「中にひそんでいるゲリラを発見するベトナム仕込みの方法。約三時間の作戦で約七、八十人もひそんでいると見られる阻止団のうちわずか六人を発見」連絡が行って六人を発見したというわけでしょう。そうしてこれを排除した。「このうち頂上付近にいた阻止団の三人はヘリで輸送された。この作戦で米軍がゲリラ戦に弱いことを示し」と、これは冗談を新聞書いていますが、「ベトナムの解放戦線に負けたのもうなずける」と書いている。  これはあなた、とっさにこうやったと言うのだけれども、これは私、きのうこのタイムスに電話をかけまして、タイムスの記者の方に聞いてみた。いや、先生とんでもない話だ、ちゃんと実弾演習をやめた後行ったら、いきなり砲が向いているのだけれども、そこへみんな兵隊の方が裸になって遊び始めたのだ。なぜ遊び始めたかと言ったら、作戦変更だ、ゲリラ掃討訓練に切りかえたというのだ。これは、こっち一生懸命人が死んじゃ大変だと思って、けが人が出ちゃ大変だと思って一生懸命山へ登ってやっている諸君、何のことはない、これはゲリラにしたのだ、警察と一緒になって。しかもこれは三者で決めているのだ。県警機動隊、防衛施設局、米軍日米三者合同作戦を決めた。「作戦本部はキャンプハンセン内のヘリポートに置かれた、この基地を中心に阻止団のゲリラ隊が潜伏しているブート岳頂上、発射地点の中川、その北方の四カ所にヘリポートを置き、兵員、訓練でとらえた阻止団ゲリラの輸送訓練」そこまでやっている。記者ですから、ちゃんと行って全部聞いている。  こういうことを、あれだけ苦労してきた沖繩県民皆さんにやるというのは、あり得べからざることですから、私は念のためにちゃんと電話を入れて聞いてみた。皆さん取材してちゃんと知っている。だから、ここでどうもおかしいと思ったら、一生懸命沖繩の県警本部長の加藤さん、この方は、米軍のヘリコプターを要請したのは全く私の一存であると、しきりに強調されている。一存じゃない、ちゃんと相談してやっている。いかがでございますか。調べたですか。
  77. 三井脩

    ○三井政府委員 県警本部長が自分の判断でヘリに便乗するということを決め、かつ米側要請したというように聞いております。
  78. 大出俊

    ○大出委員 もう一遍承りますが、さっきあなた地位協定二十三条と言ったが、そうじゃないですな。何もへり使用は書いてないですな。そこを念を押しておきますよ。  それから支援要請があった、支援要請というのは、米軍の兵器を使っていいことになっていますか。このいま申し上げたこれは皆作戦用ヘリですよ。ベトナムで使って戦争をやっているヘリ、これは明確に兵器です。七機、この中には観測用から始まって護衛用まで入っている。弾が飛んでくるヘリまでこの七つの中にはちゃんとある。だから、二機がちゃんと護衛している。下かち撃たれたときに撃つのですから。そうして三機の輸送用ヘリが真ん中を飛んでいる、こういうかっこうだ。だてや酔狂でこれはできやしない。そうすると、兵器である限りは、機動隊が兵器を使うことが簡単にできるのだとするならば、鉄砲のくっついている装甲車を使おうと、極端なことを言えば戦車を使おうと、軍艦を使おうと要請さえあれば勝手にできる、そんなことになっていますか。一体、これはどこで決まっているのですか。外務大臣防衛施設庁長官含めて、一体こういうことはどこで決まっているのですか。法的根拠を明確にしてください。
  79. 三井脩

    ○三井政府委員 ヘリ使用について積極的に使用規定した法規その他はございません。また、これの使用を禁じたものもございません。
  80. 大出俊

    ○大出委員 兵器ですから、兵器使用することを禁じたものもないからと言うのならば、ほかに取り決めは何にもないからと言うのならば、何だって使えるじゃないですか。米軍の飛行機を使おうとヘリを使おうと、極端に言えば、戦車を使おうと軍艦を使おうと、まして装甲車を使おうと水陸両用戦車を使おうと一向差し支えないことになるじゃないですか。そんないいかげんなことですかね、この国は。それはどこかで何か決まっていますか。
  81. 三井脩

    ○三井政府委員 武器の使用については、警察法並びに警職法に規定されております。
  82. 大出俊

    ○大出委員 あなた方は携帯し得る武器というのが中心じゃないですか、警職法によれば。大砲を持っていくだの、軍艦を持っていくだの、戦車を持っていくだの書いてない。あなた方は携帯し得る武器が中心じゃないですか。あなた方は武器を勝手に使えやしないじゃないですか。あなたは二十三条というが、うそばっかり言っている。何にも書いてない。これには何にもないんです。  ところで、米軍の兵器を使ったことがありますか、警察が過去から今日まで。沖繩の県議会では、沖繩始まって以来初めてだという。自民党の皆さんもぶったまげてしまっている。だから、われわれは基本的な考え方はあるけれども、こればかりは大変だと言う。こんな大きな記事になっている。こればかりは大変だと自民党の方の責任者の方は言う。だから、満場一致で反対決議をしているじゃないですか。与党各派どころじゃない、これは自民党の皆さんも機動隊の米軍ヘリ利用を重視と書いている。何にも決まっていないのに勝手にこんなことをされてはたまったものじゃないですか。  だから私は、きょうは官房長官を呼んだのだ。たまたま先生の給与の問題の勧告が出て、打ち合わせをするからがまんしてくれとおっしゃった。警察の分野ではない、内閣として責任ある答弁をいただきたい。いかがでございますか。  大臣は一人しかおいでにならぬから、あなたからお答えください。これは重大な問題だ。
  83. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ヘリコプターをその場合使用することが適当であるかないかということは、所管大臣からお答えをなさるべきものと思いますが、いま承っておりますと、これは大出委員の御意見としてではありませんでしたが、長いこと新聞を御引用になって、ベトナムであるとかゲリラであるとかいう、そういうことを書きましたその新聞というものは、おもしろ半分で言うのならともかく、私はきわめて不謹慎な叙述であると申さざるを得ない。  現実に起こりましたことは、正当な権限に基づいて、わが国の国益のために米軍のやろうとしておった演習を不法に妨げたのでありますから、それに対して米軍がわが警察に排除方を要請したことはきわめてしかるべきことであったし、警察としては法と秩序を守るために行動をするということは、これは当然のことであって、それをしなければ曠職のそしりを免れないと思います。その場合どのような手段によって行うのがいいのか悪いのかということは、私の申し上げることではありませんが、状況判断としては、ベトナムとかゲリラとかいう、そういう背景のもとに問題が提起され理解されるとすれば、それはきわめて遺憾なことで、私どもが同調し得るところではありません。
  84. 大出俊

    ○大出委員 あなたはこれを読んでもいないで何を言っているんですか。この記事をあなたはお読みになったんですか、そんな興奮して物を言うけれども。あなたはそう興奮する人ではないと思ったら、興奮するんですね。あなたはいつもきわめて冷静な方なんですがね。  ここにちゃんと書いているのは、うそを書いているんじゃないですよ。あなたは新聞に対して読みもしないでそんなことを言うけれども、私は黙って読んだのだ。「午後一時から始まった掃討作戦」ちゃんとこの前に調べて書いているじゃないですか。「県警機動隊、防衛施設局員、それから米軍三者合同で相談をして、作戦本部はキャンプハンセン内のヘリポートに置かれた」そうして「ブート岳の頂上、発射地点の中川、その北方の四カ所にヘリポートを置いて、兵員、つかまえた阻止団ゲリラの輸送に当たった。」さらに「午後一時から始まったこの掃討作戦は、まず中型輸送ヘリがブート岳山頂に設置された米軍、機動隊キャンプに一回約十人を輸送。」これを見ているんだから。そして「その間シーコブラ二機が輸送ヘリを囲むように」これは全くの攻撃用兵器です。「二機が輸送ヘリを囲むように上空を旋回しそれを見つける、キャンプへ連絡をする、機動隊が逮捕に向かう、こういう手はずで進められた。」と書いてある。「シーコブラはおりてきて、すれすれに草を風で分けて発見する。約三時間。六人見つけた。そのうち三人逮捕した。」逮捕して、ちゃんとこの作戦で輸送しておる。そうでしょう。何もおかしなところはない。事実を書いておる。  あなた方はこれを読んだり、聞いたりしてみたんですか。私が取り上げて、あなたにきょうこういう質問があるのがわかっていてお見えになったんでしょう。それを読みもしないで、新聞はけしからぬと怒ってみたってしょうがないじゃないですか。だから、私が言っているように、こういうような、つまりキャンプ・ハンセンに置いたかどうか知らぬけれども、警察と米軍との間でこういうことを勝手にやられては困るというのです。勝手にやられたら、この国は将来えらいことになる。自衛隊と警察の間だって協定があるじゃないですか。地位協定二十三条とおっしゃるが、二十三条にはないじゃないですか。ならば、これらのことはきちっと決めるところは決めなければならぬ責任政府にあるじゃないですか。勝手に兵器を持ち出したら困るじゃないですか。だから、沖繩の県議会で問題になっているんじゃないですか。だから、満場一致で反対決議をしているんじゃないですか。  この現実をあなたはほおかぶりして、お読みになりもせぬで、調べもせぬで、適当なことをおっしゃっては困りますよ。もう一遍言い直してください。読まぬでそんなことを言うのはでたらめだ。
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大出委員の御意見ではないということは、最初に申し上げたのでありますし、その新聞記事は、ただいま御紹介をなさいましたので承知をいたしたわけでございまして、それについての私の考えておりますことを申し上げました。  警察が緊急の場合に法と秩序をどのようにして、どういう方法で守るのが適正であるかということにつきまして、これは私が所管大臣でございませんから、申し上げることは適当ではないと存じます。
  86. 大出俊

    ○大出委員 適当でないとおっしゃるんなら、前のお話は消えたことになるわけですな。私の質問があるいは悪かったかもしらぬ。大臣はあなたしかおいでにならぬので聞いたんですから、これはお許しいただきたいのですが、これはここで結論が出ない。だから、官房長官においでいただくように申し入れもしてあるのです。  ところが、そういうことですから、これは委員長、次の機会においていただいて——この点は簡単なことじゃない。私も長い経験がこの方面であるけれども、機動隊がそう簡単に米軍の兵器を使って、その周辺を護衛用ヘリで旋回させたりして、こういう作戦をやるなんというようなことを軽々しく見逃すというわけにはいかない。事、県民感情を逆なでするという側面もある。一方、県議会の皆さんだって、与野党を含めてこの点についてだけは全く一致の見解。だから、そういうことを放任はできない。法的根拠もないことを勝手に現地の本部長の独断でやらせることを許しておくわけにはいかない。これは次の機会までにしかるべく御相談をいただいて御回答を願いたい。いかがでございますか。
  87. 藤尾正行

    藤尾委員長 この問題につきましては、委員長において適切に処置をさせていただきます。
  88. 大出俊

    ○大出委員 もう一点だけ承りますが、この沖繩県議会の質問の中で中根君という県会議員の方の質問に答えて加藤県警本部長でございますか、「警察は憲法のもとに中正公平に法を執行するだけである。市民運動も正当なものであれば関知しないが、そこに違法があればただす。」そして刑事特別法を適用するかどうかの質問について「現場の状況が明らかにそうであれば適用すべきだとの判断に立っている。」と答えている。「憲法のもとに」というところから始まっているんですけれども、この刑特法というのは、憲法のもとに大変長い争いが今日まで続いている。砂川判決しかりであります。まだ憲法違反の疑いが全く晴れたわけではない。この最高裁判決というのは避けて通っているからであります。  そこで、この点について、刑特法というものについて今回これを適用するというふうに発言をされましたが、これは、いま現地の判断とおっしゃったが、現地の判断で加藤県警本部長が答えたのですか、それとも警察庁あるいは公安委員長その他を含めまして相談の上の判断でございますか。
  89. 三井脩

    ○三井政府委員 警察庁もそのように考えております。
  90. 大出俊

    ○大出委員 警察庁も刑特法を適用するという考え方に立っておる、こういうわけですか。
  91. 三井脩

    ○三井政府委員 そのような事態の場合には適用をするという考えであります。
  92. 大出俊

    ○大出委員 そのような事態とは、どういう事態でございますか。
  93. 三井脩

    ○三井政府委員 刑事特別法の構成要件を満たした場合でございます。
  94. 大出俊

    ○大出委員 現在の段階を、構成要件に関してどういうふうに現場をお考えでございますか。
  95. 三井脩

    ○三井政府委員 刑特法二条の立ち入りを禁じた施設区域内に不法に立ち入った場合、このように考えます。
  96. 大出俊

    ○大出委員 そうすると現在は、刑特法の適用をする条件にある、こういうことですか。
  97. 三井脩

    ○三井政府委員 現在というか、具体的なその事実を踏まえて判断をいたします。
  98. 大出俊

    ○大出委員 そうすると現在は、まだそこまで決めてはいないということですか。
  99. 三井脩

    ○三井政府委員 方針は決まっておりますが、それを具体的に適用するかどうかは、具体的事実の発生を待ってその事態を見て判断する、これが現場の判断でございます。
  100. 大出俊

    ○大出委員 はっきりしないのですが、つまり今回の状況をながめてみて刑特法の適用をする、そういう方針を決めたと言うのですが、事実行為によって問題は方針を決めるわけですから、そうすると適用すると言っておく、あるいは適用する方針であると言うのは、どこまでどう決めたのですか。もうちょっと具体的に言ってください。
  101. 三井脩

    ○三井政府委員 適用する方針であるということでございます。
  102. 大出俊

    ○大出委員 するかしないかという判断はどうするのですか。
  103. 三井脩

    ○三井政府委員 それは具体的な現場の事態を見て現場で判断をする、法の適用はすべてそうでありますけれども、普通の一般原則と何ら変わらないということであります。
  104. 大出俊

    ○大出委員 そうすると現在の段階は、まだ現場の状況を——いま直ちに適用するという趣旨じゃないので、方針を決めたというわけですな。  そこで、時間がないようでありますから、一つだけ念のために物を言っておきます。あとは次回に譲ります。  この刑特法の適用事例を、ここに私、全部持っているわけでありますが、一番大きな問題は、昭和三十二年七月八日の例の砂川をめぐる問題であります。伊達判決で御存じのとおりに、憲法違反という前提が成り立った判決であります。それが最高裁に参りまして、ここで問題は、一番前提になっておりますのは、日本国憲法と米軍の駐留を認めたという地位協定、ここの関係。これについては、つまり裁判所の司法審査権の範囲外のものである。簡単に言えば、そういうことですね。「裁判所の司法審査権の範囲外のものであって、それは第一次的には、右条約の締結権を有する内閣およびこれに対し承認権を有する国会の判断に従うべく、終局的には、主権を有する国民の政治的批判に委ねらるべきものであると解するを相当とする。」こういう、つまり憲法違反であるかないかということを避けて通ったわけです。刑特法というのは、安保条約三条関連でできているわけでありますから、したがって、これは時の内閣の判断、最終的には主権者である国民の判断、だから司法権の範囲外のものである、こういう結論が出たわけですね。だから、それ以後の刑特法に基づく裁判結果というのも非常に変わってきている。それ以前には懲役何カ月というような実刑判決もあります。だけれども、この砂川判決の最後は罰金二千円。あと執行猶予がついているのがあり、同じ罰金二千円がありという形にこれはなってきている。  それで、これはいみじくも新聞の社説、沖繩タイムスの社説ですが、こう書いております。「憲法ということを言っているけれども、憲法それ自体が砂川裁判では問題になって、米軍が駐留をすること自体が憲法違反とされた一審がある。これは高度の政治問題であり、法的判断は裁判所の審査権の範囲外ということになっている。こうなって、憲法違反の疑いが全く消えたわけではない。だから、こういう争いの時点で、県議会等で軽々しく刑特法を適用するというようなことを表に持ち出すべき筋合いのものではなかろう。」と、こういう社説を書いている新聞がここにあります。  ですから、この点はよほど慎重にお考えをいただかぬと、自後の争い、つまり国民の判断が最終的に物を決めるという判決なんですから、そういう意味では、北富士流のこじれたことにしないという前提でいまの点はよほど慎重に扱わなければいかぬ筋合いだというふうに考えるのですが、そこらの点一つだけ皆さんの御意見を聞いて終わりましょう。
  105. 三井脩

    ○三井政府委員 刑事特別法に限らず、あらゆる刑罰法令の適用については慎重にやっておるつもりでございます。
  106. 大出俊

    ○大出委員 じゃ、時間の関係もありますから次回に譲ります。
  107. 藤尾正行

    藤尾委員長 正森成二君。
  108. 正森成二

    ○正森委員 私は、先ほどの質問になるべく重複しないようにして、沖繩県道一〇四号線越えの米軍実弾演習について伺いたい、こういうように思います。  まず最初に、外務大臣に伺いたいと思いますが、先ほどの質疑の中でもありましたように、本件演習生活道路である県道一〇四号線を封鎖して行われる、発射地点はいたいけな子供のいる中川小学校からわずか五百メートルであり、着弾地点から千百メートルぐらいしか離れていないところに小中学校がある、こういう状況において演習が行われることをあなたはよいことだと思っておられるか、それともよくないことだと思っておられるか、それについてお答え願いたい。
  109. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 本来、わが国の憲法が望んでおります理想から申せば、世界全体がこのような状況にあることは不幸なことでありますが、そのようなことが現実であるとすれば、わが国としてもそれに対処する方法は考えなければならない、そういうように一般には考えております。
  110. 正森成二

    ○正森委員 いまの答えは、全然答えになっていないじゃないですか。私が具体的に聞いているのは、それが国益上どうかこうかということじゃなしに、県道一〇四号線という生活道路を封鎖して演習が行われておる、発射地点から五百メートルのところに小学校がある、着弾地点から千百メートルのところに小中学校がある、こういう状況一体いいことだと思っているのかどうかという端的な質問であります。それだけに答えてください。
  111. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでございましたら、先ほどもすでにお答えを申し上げましたように、われわれとしてはできるだけの改善の方法を考えたいと思っております。
  112. 正森成二

    ○正森委員 先ほどもお答えを申し上げましたようにというようなことを言われますけれども、私は私として独立の議員として聞いておる。ですから、答弁はやはりそれなりに答えていただかなければなりませんけれども、私は改善をしようと思っているのか思っていないのかというような質問はしていないんですよ。一体よいことかどうかということを聞いているのです。
  113. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国の国益から最小限米軍の駐留を認める、そのための施設区域を提供するということは、残念ながら現在の世界の情勢から見て必要なことであると判断せざるを得ません。したがって、なるべくならその負担は国民一人一人が均等に負担すべきものである、それが理想であろうと存ぜられます。しかし現実には、そうばかりまいりませんで、沖繩県民に重い負担をおかけしておることについて、政府としては十分に同情をしなければならない事態であるというふうに考えております。  ただいま御指摘のような出来事も、そのような環境の中において起こっておるわけでありますから、できる限りの改善をいたしたい。たとえばバイパスの問題にいたしましても、あるいはまた演習の方法にいたしましても、改善の余地を探して当事者と話し合っていくべき事態であるというふうに考えております。
  114. 正森成二

    ○正森委員 あなたは、なかなか頭脳明敏な方ですけれども、いいことか悪いことかということに答えられない。  そこで改善するという意見が出ましたから、その改善というのはよくないことがあるから改善するというのが日本語の普通の使い方ですけれども、そういう間接的なことをおっしゃらなくても、普通の生活条件としては適当でない、そういうことがあるということを認めた上で、あなたのおっしゃる国益があるなら、こういうように改善をするという次の質問に当然移るのですが、その第一番目の質問になぜそんなにこだわるのですか。日本国外務大臣として、こういう状況沖繩県民の生活状況から見て決して良好なことではない、よくないという言葉が使いにくいなら、そのくらいの言葉を使えるのは日本の外務大臣としてあたりまえでしょう。
  115. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 関係者にとっては、さぞかし忍耐の要る生活環境であろうというふうに考えますから、何とか改善の方法はないものかというふうに申し上げておるわけでございます。
  116. 正森成二

    ○正森委員 こういう問答を繰り返しておりますと時間が非常にかかりますので、なるべく率直に、人間的にお答え願いたいというように思います。  そこで、自由民主党の政府は、沖繩の返還に当たって核抜き本土並みを行うということを盛んにおっしゃいました。あなた方は、核抜き本土並み、特に本土並みということで沖繩状況考えておるのかどうか、それを伺いたい。
  117. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 核抜き本土並みということを指針として沖繩の返還が行われたわけであります。したがって、安保条約及び地位協定法律的には本土と同じ条件において沖繩に適用されるに至ったわけでございますけれども、先刻他の委員にお答えしたことを繰り返すことになりますが、沖繩県地域的に非常に狭隘である上に提供された施設区域が多いということから、沖繩県においては特に他の県に比べましても重い負担を背負ってもらっているということは事実でございますから、法律的にはまさに本土並みが実現されておりますけれども、事実の問題に徴しますのに、沖繩県民に課された負担が他の県に比べて、この観点からは重いということは私どもよく認識をしております。
  118. 正森成二

    ○正森委員 そうおっしゃいますけれども、たとえば昭和四十六年十二月二十五日の参議院の沖繩及び北方問題に関する特別委員会では、わが党の春日議員の質問に対して国務大臣山中貞則君が、復帰後は「日本の道路については、一切、米軍のみの意思によるそういう制限とかあるいは禁止とかということは、われわれとしては受け入れないことでありますからなくなります。」こういうぐあいにはっきり速記録で答えておるんですね。同様に、昭和四十七年三月二十二日の参議院の同委員会においては、わが党の星野力君の質問に対しまして、国務大臣福田赳夫君の指示を受けて政府委員が「返還復帰の後におきましては、わが本土における普通の公共道路というものの使用状況と同じ状態になるという考えでございます。あるいは本土における公共の道路使用状況と同様の条件になる、そういう考えでございます。」というように答えておるんですね。これは要旨です。  そうすると、法律条件として本土における道路と同様の使用条件になる、こういうことを沖繩国会で明白に答えておるのですが、先ほど建設省の方から、これは県道とみなされる、認定が行われておる、こういう答弁でしたが、わが国土において、建設省立場から、道路法だと思いますけれども、こういうような場合に使用の制限を行うということは、一体法律上できるのかどうか、道路法四十六条に規定があると思いますが、答えでください。
  119. 渡辺尚

    ○渡辺説明員 道路管理者は、道路法に基づいて道路を管理しておるわけでございますが、道路管理者が管理する道路について、一般的に交通規制というものを行うことができるのは、道路法の四十六条に規定がございますが、「道路の破損、欠壊その他の事由に因り交通が危険であると認められる場合」または「道路に関する工事のためやむを得ないと認められる場合」そういうものに限定されておるわけでございます。
  120. 正森成二

    ○正森委員 したがって、道路法のたてまえから言えば、本件のような演習をするからというようなことで道路を閉鎖するということは、建設省立場からはできないのでしょう。
  121. 渡辺尚

    ○渡辺説明員 そのような場合に道路管理者として、いま御説明申し上げました道路法規定に基づいて直ちに交通規制をすることができるかということにつきましては、われわれとしては消極的に解せざるを得ないと理解しております。
  122. 正森成二

    ○正森委員 県道の場合の道路管理者というのは県ですね。
  123. 渡辺尚

    ○渡辺説明員 そのとおりでございます。
  124. 正森成二

    ○正森委員 そこで、わが国内法においてもう一つ規制ができる場合は、道路交通法による場合だけだと思います。  そこで、警察庁が来ておられますが、あなた方は、今度の道路規制について、道路交通法に基づく手続をとった、こういう考えですか。
  125. 三井脩

    ○三井政府委員 道路交通法に基づくものでございます。
  126. 正森成二

    ○正森委員 それでは道路交通法の規定に基づいて、あなたは何条に基づいて、どの条項の手続に基づいて規制をしましたか。
  127. 三井脩

    ○三井政府委員 道路交通法五条に基づきまして、五条が援用しております道交法八条の規定による通行禁止、時間を限っての通行禁止という手続でございます。
  128. 正森成二

    ○正森委員 道交法五条というのは、普通は四条が適用されるのですが、期間が短い場合には、公安委員会が警察署長に言って制限できる、こういうことになっていますね。八条一項というのは、方の根拠条文というのはそれだけですか。
  129. 三井脩

    ○三井政府委員 この場合はこれでございます。
  130. 正森成二

    ○正森委員 そうするとあなた方は、国内法を守っていないじゃないですか。道路交通法の百十条の二によれば、そういうぐあいに規制をする場合には、事前に警察署長は道路管理者の意見を聞くということになっております。あなた方は一体道路管理者である県の意見を聞きましたか。私が沖繩県に連絡をして調べたところでは、いままでに十回行われておるけれども、一遍も意見を聞いたことがないじゃないですか。どうです。
  131. 三井脩

    ○三井政府委員 意見を聞くことは、法的要件とされていないと理解しております。
  132. 正森成二

    ○正森委員 法的要件にされていないというように言いますけれども、百十条の二によれば、意見を聞くかあるいは八条一項でやむを得ない場合には事後に通知をしなければいけないことになっているでしょう。その通知さえもやっていないじゃないですか。私は、ちゃんと沖繩県道路関係の該当課であるところの土木部道路課、ここへ照会をして調べてあります。あなた方は、本土と同じような法律関係が適用されると言いながら、自分が規制する五条だとか八条一項だとか、都合のいいことだけは挙げながら、その場合に住民の最小限の福祉を守るために、建設省所管の道路管理者、この場合は県になりますけれども、その意見を聞く——いやしくも生活道路ですよ。それをまる一日あるいは場合によってはまる三日間遮断するというような場合に、意見を聞くということは道路交通法で定められているじゃないですか。緊急でどうしてもやむを得ない場合でも、通知をするということが定めてあるじゃないですか。それさえやってないじゃないですか。緊急だと言っても何かがひっくり返ったのじゃないのです。米軍がちゃんと防衛施設庁には一週間以上前に通知して十分にわかっておることについて、意見も聞かず、事後に通知もしない、それで十回もやってきたじゃないですか。何が木土並みです。
  133. 三井脩

    ○三井政府委員 四条と五条と違うわけで、四条の場合は無期限といいますか、恒久的な規制の場合でございます。五条の場合、一カ月以下、恒久的なものに対して短期間の場合の規定でありますし、二項についてはただいまおっしゃったような通知、意見を聞くということは必要ないと考えております。
  134. 正森成二

    ○正森委員 私は、そういう法律解釈には納得できません。確かに、防衛施設庁はその都度通知をしているようであります。しかしそれは、渉外部に対する通知であって、道路管理者に対する通知ではありません。したがって、沖繩県の公安委員会あるいは警察署というものは、本土並みなどと言いながら、道路管理者に対する意向尊重、ひいてはその背後にある住民の便益というものを非常に軽視しているというように言わざるを得ないと思います。建設省がおりますけれども、ああいう警察庁の解釈に対してどう思いますか。
  135. 加瀬正蔵

    加瀬説明員 私、個々の具体的な事案について詳細には報告を受けておりませんので、一般的にお答え申し上げたいと思いますが、一般的には、本土におきましては、いま五条一項の場合のお話がございましたが、事前の意見の聴取、それから緊急の場合には事後に通知をいただくという運用は包括的に処理されております。これは件数が膨大なものですから、非常に包括的な事務処理がされております。ただ、こういう交通規制がらみの問題というのは、地域住民に対する影響が非常に大きいものですから、できる限り、道路管理者と公案委員会が常時緊密な連絡をとって、支障がないように運用しているというふうに承知しております。
  136. 正森成二

    ○正森委員 いま建設省は、そういう解釈であります。そうすると、実弾射撃が行われるので一日なり三日なり閉鎖するという場合においては、普通の交通渋滞とか、あるいは祭日であるとかいうことの制限と違って、沖繩県民こぞっての関心であります。そういう場合に、あなた方は規制することができる五条だとか八条だけは持ち出すけれども、住民の便益との間の調和を考えている百十条の二という規定については、いままでの一般の国内法のやり方に反することをやっているということはきわめて遺憾であります。  外務大臣、そういうような状況であるとすれば、政府復帰をしたときには本土と同じにやるのだということは、十分に守られていないし、少なくともその精神は生かされていないということになると思うのです。どう思われますか。
  137. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまの政府委員答弁を聞いておりますと、別段、本土と違った扱いがなされているようには私は聞かなかったわけでございます。
  138. 正森成二

    ○正森委員 私の耳とあなたの耳が多少違うのかもしれませんけれども、少なくとも私はそういうようには伺いませんでした。  そこでいま警察庁は、道交法の規定を適用して制限したと、こう言われましたけれども、私がかつて沖繩北方特別委員会で伺いましたときは、大河原さんがアメリカ局長でありましたけれども、何かあなたの答えでは、これは道路を含めて施設区域に適用しているのだから、米軍支障のない限り道路として使えるという制約を受けており、また一方、道路の方は米軍施設として制約されるという状況での道路であるのだというような答弁であって、もしあなたの答弁が正しいとすれば、そもそも道交法の適用などはしなくても制限ができるということになるのですが、外務省一体どういうように考えているのですか。
  139. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、この道路施設区域として提供されましたキャンプ・ハンセンの中を通っておりまして、提供施設区域の一部になっておるわけでございます。しかし現実において、それは生活道路であることも事実でございますから、米軍の行動に差し支えない範囲において一般の住民の使用に供されておるということでございます。
  140. 正森成二

    ○正森委員 非常に回りくどい御答弁でしたが、そうすると外務省は、そもそも道交法によるそういう一切の手続が要らないで、米軍が一方的に交通を制限できるのだ、そういうお考えですか。
  141. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 いま申し上げましたように、地元住民のこの道路使用は、米軍使用支障とならない範囲で使うことが認められているわけでございます。ただ、その間の調和については、もちろんわが方の問題としてそれは処理さるべき問題だと思います。
  142. 正森成二

    ○正森委員 やはり非常にわからない答弁ですけれども、あなたの答弁によると、米軍演習に使う場合にはこれは使えるのだ、国内法との調和においてと、こう言いますけれども、国内法の道交法の手続は要らないのだということですか。
  143. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 具体的な問題としてのケース・バイ・ケースで考えるわけでありますけれども、住民の通行ないし立ち入りを制限する場合には、先ほどから申し上げておりますように、国内法との調和を考えて行うわけでございますから、その関係法令としましては、やはりまず道路交通法による規制が行われるのであろうと承知しております。
  144. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、もう一度警察庁に伺いますが、百十条の二の規定というのは、あなた方は効力要件ではないような見方もしておられるようですけれども、住民の便益との関係から考えて事前に意見を聞く通知をする、あるいは少なくとも事後に通知をするということをこれからおとりになる意向はありませんか。防衛施設庁はちゃんととっておりますよ。
  145. 三井脩

    ○三井政府委員 今日までどのようにやっておったかという点については、私たち事実関係は承知いたしておりませんけれども、この規定に基づいてこれを充足するような手続、これは当然のことだと思います。
  146. 正森成二

    ○正森委員 それでは次の問題に移りますが、十一日には機動隊が出動したようであります。  そこで、いろいろ大出議員からも質問がありましたけれども、私も若干伺いたいと思います。言うまでもなく、地位協定によれば、基地内の、あるいは施設区域内のと言ってもよろしいが、警察権あるいは警備の権限は米軍にあるはずであります。その場合に、機動隊が出勤したということは、報道によりますと、米側から防衛施設庁要請があって、防衛施設庁からの連絡を受けて機動隊が出動したというように報道されておりますが、そう伺ってよろしいか。
  147. 三井脩

    ○三井政府委員 私たちが承知いたしておりますのは、米軍から要請が直接にあっております。それ以外に、いまのようなこともあったかもしれませんけれども、直接あったという点については、しっかりと知っております。
  148. 正森成二

    ○正森委員 直接にあったということになると、非常に伺いやすいわけですが、どういう要請がありましたか。何も内容がなしに、やみくもに機動隊何名出してくれということはないと思うのです。いかなる目的で何をするために機動隊をどれぐらい出してくれという具体的な内容があったはずであります。それはどういうものですか。
  149. 三井脩

    ○三井政府委員 機動隊の人数その他活動を制限したような要請ではありません。演習をやるので、その間にあり得る不法事態の除去といいますか、排除といいますか、それの処理また逮捕等もそれに伴うという意味だと思いますが、このために警察の支援出動をお願いする、こういうことでございました。
  150. 正森成二

    ○正森委員 そういたしますと、地位協定合意議事録によれば、一般的に機動隊が基地内に権限を行使するということはできないことになっておりますね。逮捕の場合でも、米側が同意する場合だけですね。それが逮捕でもないのに、不測事態があるかもしらぬから出動してくれということになりますと、これは地位協定にも何ら規定のない警職法の規定に基づいて出動したということになりますか。
  151. 三井脩

    ○三井政府委員 逮捕その他についても、必要によって警察が行うことについて米側が同意するという趣旨が含まれております。
  152. 正森成二

    ○正森委員 逮捕というのは、現行犯などが発生した場合には逮捕ということですけれども、あなたの言うその要請によりますと、まだそういう事態が発生しない場合に予想されるのでと、こういうことでしょう。そうすると、刑事訴訟法上の逮捕じゃなしに、犯罪の予防とか避難とかそういうことを規定してある警察官職務執行法に基づく権限を行使するということのために要請があったというふうに聞くより仕方がないのじゃないですか。そして、次いで犯罪がもし発生すれば逮捕もしてもらう、こういうことになるわけでしょう、順序としては。
  153. 三井脩

    ○三井政府委員 基地内の秩序維持について、米軍が自分で警察権を持ち、これを発動する、同時にまた、わが警察が基地内で警察権限を発動することについて米側が同意する、こういうことでございます。したがって、逮捕も含むということでございます。
  154. 正森成二

    ○正森委員 それでは、こう伺ってよろしいか。本来、地位協定に基づいて第一次の警察権は米側にあるけれども基地といえども治外法権ではないのだから、米軍が反対しない場合にはわが国の一般警察権も及ぶ、そこで米側要請ということは、米側が反対しないということだから、一般警察権を行使するために機動隊としては出動したのである、こう伺ってよろしいか。
  155. 三井脩

    ○三井政府委員 そのとおりです。
  156. 正森成二

    ○正森委員 そうだとすると、いよいよ重大であります。一般警察権を行使するために、外国軍隊の装備を使用して日本国民に対して追跡し降下し逮捕する、あるいは犯罪の事前の鎮圧をする、これは日本国の警察権について、外国の軍隊が関与したということではありませんか。独立国として一体こういうことをしていいのですか。日本の警察権を行使する場合に外国軍隊の兵器を使う、そういうことにあなたの答弁から言えば論理必然的になるでしょう。  一体、どこの国の警察が外国軍隊の装備を使用して自国国民を逮捕したり弾圧したり、弾圧という言葉をあなた方がきらいなら、そういうことを行うような警察がありますか。私は国民の代表としてそう聞かないわけにはいかない。こういう目的のために外国の装備、ましてや軍隊の兵器たり得るものを使用するなんということは言語道断です。アメリカだからいいと思っていらっしゃるかもしれないけれども、韓国のヘリコプターを使ってどうこういうようなことを仮にやったとしてごらんなさい。大変なことでしょう。それでは安保条約があるから警察は米軍の装備は何ぼ使ってもいいんですか。そんなことはないはずです。どう思います。
  157. 三井脩

    ○三井政府委員 この場合に、警察官の輸送のために米軍施設区域の中でこれを利用したということでありますから、そのこと自体違法とかそういう問題ではないと考えております。
  158. 正森成二

    ○正森委員 あなた、輸送のために使ったからいいと言うけれども、それじゃ犯人取っつかまえる手錠さえ米軍のものを使わなければいいと思っているのですか。米軍の装備をまさに使って排除ないしは逮捕のための有効な行為を行ったということは事実じゃないですか。これは明らかに日本の警察力が外国軍隊の装備の手をかりて、装備の力をかりて一般警察権を行使した、私が順番に聞いていったら、あなたはそう答えたんだから、そうなるじゃないですか。重大なことですよ。  しかも、あなたの答弁によると、何かあたかも直接に犯人に手をかけること以外は構わないという、そういう考えになれば、いま大出さんが言われたように、何もヘリコプターに限らない。ほかのどんなものを使ってもいいことになる。こういうことを、外交レベルの話し合いなしに、そうでしょう、直接に要請があったと言うんだから、行うということは大変なことですよ。  一つの独立国が、外国との間でお互いに警察力について援助を受ける場合には司法共助の規定というものもあるのです。そういうようなことも全然やらないで、一国内に駐留する外国軍隊の装備を借りて警察権を行使する、こんなことは独立国として許されないと思いますけれども、いかがですか。
  159. 三井脩

    ○三井政府委員 米軍に日本が提供しておる施設区域の中において、この施設区域の中での違法な事態の解消、そのためにこれを利用したというものでありますから、格別問題はないと考えております。
  160. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、あなたの初めの前提が変わってきて、米軍基地といえども治外法権ではないから、米軍の反対がなければ一般警察権が及ぶというのじゃなしに、まさに米軍基地だから、米軍が警察権を持っておるところであるから、だから構わないのだというような考え方だ、こうなってくる。そうだとすれば、明らかに今度は、日本の独自の警察としてではなしに、米軍の警察権、警護の手足として、その従属的なものとしてわが国の警察権が使われたという結論になる。それでいいのですか。そのために米軍の兵器を使用した。輸送手段も兵器ですよ、兵員輸送車だってあるのだから。そういうことになるでしょう。それだったとしたら、日本の警察というものは結局米軍の手足だ。米軍が来てくれと言えば、基地内であれば米軍の装備を使って日本国民を弾圧し逮捕する。これも問題があると思いませんか。
  161. 三井脩

    ○三井政府委員 私、最初から申し上げておりますのは、米軍に提供された施設区域の諸問題の警備、こういうことにおいて要請があった場合に警察官が出動し、その目的のためにこの場合ヘリに便乗したということについて問題はないと考えておるわけであります。米側から要請があり、わが方が協力するということが、特に従属関係があるとかどうとかいうようには考えておりません。
  162. 正森成二

    ○正森委員 そういうようにおっしゃるのならもう一度伺いましょう。  外務省に伺いたいと思いますが、外務省は、一般的にこういうようなことをしてもらってもよろしい、今後とも米軍のヘリコプターを使っても別段構わないというようにお考えなのか、あるいは外務省としては一定のルールが必要であるというように考えておられるのか、どちらですか。
  163. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 地位協定の十七条十項の(a)で、合衆国軍隊はこの施設区域内において警察権を行う権利を有しておるわけでございます。しかしながら、これは先ほどから警察庁の方からも御答弁がございますように、治外法権的な警察権を持っているわけではございません。したがいまして、向こう側の方から要請があり、異議がなければ、わが日本の警察権が施設区域内に及ぶこともあるわけでございます。しかしこれは、対等な立場でやっていくわけでございまして、要はその施設区域内における治安の確保にあるのだと存じます。一般的にその目的を達成するために、双方がその意味で協力し合うわけでございまして、具体的な事例に従ってそういうものは判断されるべきだと思います。それ以上のことについてはちょっと差し控えます。
  164. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、具体的な事例ということですが、これは具体的な事例になれば、今後ヘリコプターを借りるかもしれないし、あるいはもう少し高度の装備を借りるかもしれないし、そのときそのときである、こういうように考えておられるのですか。こういう重大な問題について、地位協定合意議事録、あれだけびっしり決めた合意議事録もなしにできる、ケース・バイ・ケースだ。それじゃ今後は、武器のないヘリコプターだったけれども、武装力のあるものだってケース・バイ・ケースで、合意議事録にも何にもなくたって日本の警察はできるのだ、こういうぐあいに考えておられるのですか。重大なことですよ。
  165. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 こういう事例は、施設区域内のことでございますから、もちろん米軍との協力のもとに日本の警察権が行使されるわけであります。しかしながら、もちろん日本の警察権の行使である以上は、日本自体の装備をもって行われるべきことが望ましいことは申すまでもございません。
  166. 正森成二

    ○正森委員 予鈴が鳴りまして時間がありませんから、あと一、二問だけ伺って質問を終わらしていただきます。  警察に伺いますけれども、当時、中川の発射地点にやはり抗議行動を行った沖繩県民がおりました。ここに地図を特ってきておりますけれども、あなた方は、有刺鉄線を張ったはるか前のところで午前中はその抗議団を阻止するということをやり、午後はやっと有刺鉄線の前まで警備線を後退しましたけれども、そういうようなことをやっておる。また当日、この前の道を米軍のトラックが通ったときに、そのトラックが門の中に入らずに通過だけして全然別の方向に行ったのに、ゲートを通るものも思って、道路そのものには支障なく存在しておる抗議隊を排除するというようなことをやっておりますね。あなた方は、こういうことを過剰警備だとは思いませんか。報告は受けていませんか。
  167. 三井脩

    ○三井政府委員 報告を受けておりません。
  168. 正森成二

    ○正森委員 報告を受けていないと言いますけれども、県議会でも、このことはわが党の県会議員が質問をして、加藤県警本部長が、若干の行き過ぎがあったという意味の答弁をしているじゃないですか。そんなことも、あなたは本庁として、しかも、このことがまさに問題になって、内閣委員会質問が行われるというのに知らないのですか。これは新聞の報道じゃないですよ。県議会で問題になって、あなたのところの県警本部長が答えておるのです。まだ報告受けてないのですか。
  169. 三井脩

    ○三井政府委員 現在まで受けておりません。
  170. 正森成二

    ○正森委員 それでは至急報告を受けた上、それについての態度の当、不当について私まで、あるいはこの委員会まで御報告くださるように委員長にお計らいを願います。
  171. 藤尾正行

    藤尾委員長 委員長において、正森委員の御要請のように取り計らいます。
  172. 正森成二

    ○正森委員 時間がございませんので、もう一点だけ伺います。  去年の七月に伊江島におきまして、伊江島というのは、御承知のように核模擬爆弾の投下訓練が行われているところでございますが、山城安二という青年が、米軍演習が終了した後、それを確かめて、中で牛に食べさせる草を刈ろうとした、そのときに米兵が近寄ってまいりまして、照明用の大型ピストルで至近距離から射撃をして、相当重い傷を受けたというのは御承知のとおりであります。これについては、米側は当初、第一次裁判権を行使しないという旨を言っておりましたが、その後態度を翻しました。わが国の政府は、これは当然、公務外であり、したがって、第一次裁判権はわが方にあるという態度をとっていたと承知いたします。それについて、双方の専門家同士の委員会で折衝が重ねられているというように聞いておりますが、最近まで何らの結論も出ていないかに聞いております。  そこで、現在の到達した結論はどうであるかということと、それから最近、半年間に一体いつといつ、何回交渉が行われておるのか、それについてお答えください。
  173. 筧榮一

    ○筧説明員 昨年七月三十日に日米合同委員会から、本件についての解決を刑事裁判管轄権分科委員会に付託を受けまして、それ以降交渉を続けておるわけでございます。そして七月三十日に付託を受けましてからその後八月五日、十二日、二十八日、八月三十日、九月十日、九月十八日、九月二十六日と、七回これは公式の分科委員会を開いております。その後は正式の委員会は開いておりません。しかし、その後におきましては、先方の委員長と日本側の分科委員長であります私あるいはそのほか一、二名を加えました非公式な折衝を続けております。最近では、正確な日時はちょっと覚えておりませんが、三月の上旬に、相手の委員長と私と会いまして、細かい論点についての検討をしたところでございます。
  174. 正森成二

    ○正森委員 九月までは七回にわたって正式の会議が開かれたが、それから半年になる間は正式の委員会が開かれないで非公式折衝だけが続いている、これは非常に難航していることを物語っております。一方では、わが国の政府は、要請があれば基地の中に、合意議事録などで明文の規定もないのに入っていってわが国民を逮捕する、もう一方では、わが方が公務外であると明らかに主張している事件について、米軍演習が終了してそういうサインも上がっているところで草を刈ろうとした青年を至近距離でピストルで撃つ、一体日本国民を何と考えておるのかというような行動をとったことに対して、米側は依然として当初裁判権がないと言っていたにもかかわらず、裁判権を主張していまなお解決がしていない、もってのほかじゃないですか。  これに対して、現在は小委員会に付託されておりますけれども外務省はどういう態度をとるつもりですか。あくまでわが国に裁判権があるということで、わが国民の正当な権利を擁護すべきだというように考えますが、それについての決意を伺いたい。
  175. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 本件に関しましては、ただいま法務省の方からも御報告がありましたように、刑事管轄権分科委員会において非公式な折衝が続けられておるわけでございます。外務省も随時、連絡を受けまして、この点についていろいろとアメリカ側とも話し合っております。まだ結論に到達しておりませんので、内容については残念ながら申し上げられませんが、この問題に関しては、お互いの立場はかなり違っておることは事実でございます。したがいまして、解決は実は容易ではないのでございますけれども、できるだけ早く解決するように現在も努力している次第でございます。
  176. 正森成二

    ○正森委員 時間がもう迫ってきましたので、最後に一点施設庁に伺います。補償の問題はどうなっていますか。  私が現地に行きましたら、去年の八月でございますか、防衛施設庁の方か紙に——紙といっても鼻紙ですね。鼻紙のようなものに包んで三千円お見舞いに持ってきたというだけのようであります。それに対して政府として、医療費やあるいは補償措置について、現在までどういう措置をとってきたか、またとろうとしているつもりか、それについて伺いたい。
  177. 安斉正邦

    ○安斉政府委員 ただいま先生御指摘のように、事故の起こりましたのが七月の十日でございますけれども、七月の十八日に那覇の防衛施設局からお見舞い金を差し上げました。その後八月、九月、十月、十一月と直接に、被害を受けた方にあるいは関係の方に、施設局から出向きまして、補償の関係について御説明いたしまして、申請されるならばどうぞということでコンタクトを続けておりまして、一番最近で二月の下旬にまた出向きまして、ちょうどお留守でありましたので、御両親にお話しを申し上げております。しかし御本人は、やはり裁判権の問題が片づかないと、自分としても気持ちが落ちつかないということで、まだ申請されないというふうに伺っております。
  178. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  179. 藤尾正行

    藤尾委員長 午後一時三十分より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十九分休憩      ————◇————— 午後一時三十分開議
  180. 藤尾正行

    藤尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  科学技術庁設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨の説明を求めます。佐々木科学技術庁長官。     ————————————— 〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  181. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 科学技術庁設置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  原子力の開発利用は、現下のエネルギー問題に対処してわが国エネルギーの安定供給を確保するため、大きな役割りを果たすものであり、政府としては、その推進に努めてきたところであります。  しかしながら、その安全性については、必ずしも国民から万全の信頼を得ているとは言いがたい状況にあります。政府は、原子力平和利用の推進に当たっては、まず第一に、その安全性確保のために万全を期し、国民の理解と協力を得なければならないと考えております。このため研究、開発と安全規制とを同一の局で行っている現行の原子力行政体制の中から、原子力の安全規制等原子力の安全確保に関する機能を分離、独立させ、これを強化することにより、安全確保の明確な責任体制を確立することがぜひとも必要と考えるものであります。  なお、これとあわせて安全を確保するために必要な試験研究等についても、抜本的な強化を図り、安全の確保に万全を期したいと考えております。  この法律案は、このような観点から、現在の原子力局の事務のうち、核燃料物質及び原子炉に関する規制に関する事務、原子力利用に伴う障害防止に関する事務等原子力の安全規制に関するものを分離し、これを一体的かつ効率的に処理する体制として、新たに原子力安全局を設置するとともに、その所掌事務を定めようとするものであります。  なお、これらの改正とあわせて、科学審議官の定数を三人以内から一人に減じ、原子力局の次長二人を廃止して原子力安全局に次長一人を置くため所要の改正を行っております。  以上がこの法律案の提案理由及び要旨であります。原子力の安全の確保の重要性について、皆様の深い御理解をいただき、何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いいたします。
  182. 藤尾正行

    藤尾委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。      ————◇—————
  183. 藤尾正行

    藤尾委員長 次に、皇室経済法施行法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。受田新吉君。
  184. 受田新吉

    ○受田委員 先般の委員会お尋ねを申し上げた件で、重ねて政府の真意をただしたい点がございます。  いま行われている現行の皇室典範と旧皇室典範と比較すると、現行は法律であり、旧典範は国の大典であった、憲法と同列にあった国の基本法でありまして、この皇室典範が法律をもって制定されている現行法というものは、庶民の中に象徴天皇として御存在になっている陛下に対する親愛の情がまことに細やかにこの皇室典範そのものにも規定されているわけです。ところが、皇室典範の中に「天皇が崩じたときは、大喪の礼を行う。」こう書いてあるのですけれども、即位の礼の場合も同様ですが、その具体的な規定がまだできていない。このことについて総務長官、当然具体的な規定を書くべきである。その中に、先般御答弁のあった、天皇崩じたるときの、その崩じたる天皇のおくりなは何と申し上げるのか。当面大行天皇と申し上げて、その後天皇のおくりなを決めるのだということでございましたか、そういうものを含めて原則的な問題をまずお尋ねをしたいと思うのです。
  185. 植木光教

    ○植木国務大臣 いま御指摘の大喪あるいは即位の式につきましては、厳粛な問題でございますので、政府として検討をしているところでございまして、ただいまここでまだ、このようにということを御報告申し上げる段階に至っておりません。引き続き鋭意努力をいたしたいと存じます。
  186. 受田新吉

    ○受田委員 このことについては、国の各方面における功績の顕著な者に対して国葬の礼をもってする、かつて吉田茂氏に対して行われた、そういうような形のものを含めて、かつての皇室喪儀令もしくは国葬令、こういうものがいま消えておるのです。消えておるんだが、しかし新典範に明らかに、即位の礼もまた大喪の礼も行うと明記してある。明記してあるが、どういう形で行うのか、そういうものの具体的な規定が要るはずなんです。内閣で勝手にその時点になってちょこちょことやるべき性質のものではない。ちゃんとした根拠に基づいてこうした皇室典範、つまり象徴天皇の御一家に関する問題などは、少なくとも国民の総意を代表して政府が何らかの形で規定を設くべきである。  これは公式の調査をするための機関ができて十二年も十三年もたっているけれども、何ら具体化していない。検討するだなんだいうような段階じゃないですよ。もうとっくにできていなければならぬ。ここで検討、検討を十数年繰り返してきたわけですから、検討の域はもうとうに脱しておると思いますが、いかがでしょうか。
  187. 植木光教

    ○植木国務大臣 仰せのとおり、こういう非常に公式な問題でございますから、政府といたしまして、しかるべき結論を出さなければならないということは十分認識をしているところでございます。厳粛な問題でございますので、いまの段階ではまだ御報告するに至っていないということでひとつ御了承をいただきたいと存じます。受田委員の御趣旨は十分理解し、また尊重してまいる覚悟でございます。
  188. 受田新吉

    ○受田委員 それは答弁にならないです。それが十数年繰り返されておるのです。これは大変申しわけないことですけれども行政責任にあられる、総理府の総務長官でいらっしゃる植木先生就任以来、この問題などはどういう引き継ぎをされておったか、これに対してどういう検討をされたんですか。恐らく全然手をつけておらぬでしょう。手をつけられたかどうか。そして公式問題を取り扱う機関がいまどういうふうになって、あなたが御就任されて以来、会議を持って、それがどういう議題で会議をしたか、御報告できますでしょうか。
  189. 植木光教

    ○植木国務大臣 お話の調査会は、公式制度調査会のことだと存じますが、これは公式に私が就任いたしましてからはまだ開いておりません。御承知のように、関係各省庁の次官が、その公式メンバーであると承知しているのでございますが、いま仰せになりました問題等は、そういう公式の機関では協議をされておりませんけれども、重要な問題でございますから、非公式にはいろいろ意見の交換を行っているところでございます。
  190. 受田新吉

    ○受田委員 当委員会でこの問題が討議される都度、これが指摘されてあるわけです。ところが一向に進んでいない。  一例を元号にとってみても、自民党内部でもかれこれ議論をされておるようです。これは公式制度の機関で御相談されておると思うのですけれども、これも私、昭和三十一年に当委員会で、二十年も昔に提案してあるのです。これは党内でどういう動きがあるか、長官はよく御存じだろうと思のですが、どういうふうに動いておりますか。
  191. 植木光教

    ○植木国務大臣 自由民主党内でこの問題を、数年前から元号小委員会という委員会をつくりまして御協議になっているわけでございますが、法制化すべしという御意見あるいは法制化に至らず、何らかの形でこの問題に対して対処すべきであるという御意見等があるようでございまして、自民党といたしましても、まだこれについての結論は出しておられないと承っております。政府といたしましても、この問題についてはいまのような、党内で交わされておりますような御意見等々がいろいろございまして、まだ結論を持つに至っていないという状況でございます。
  192. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、陛下に万一のことがあった場合に、これがどういう形で取り計らわれるのか。いまそういう具体的な規定ができていないのだから、そうすると、直ちにどういうかっこうになるのか。あなたが予想される元号問題は、たとえば陛下が亡くなられて、ある期間しばらく無元号の時代が続く。そのうちにいろいろと閣議で相談されて元号が決まる。ですから、その間空白がある。ところが、いままでは元号は旧皇室典範で一世一元制、自後明治の例にならうということになっておったから、すぐぴしっと元号が即日決まったわけです。だから、元号のない年はなかったわけです。しかし陛下に万一のことがおありのときは、元号が決まらぬままでいく。つまり元号問題がいろいろ委員会等で討議されて、そして一年なり二年なりかかって討議の結論として元号をつくることに決まった、そうすると、その一年なり二年なりは元号なしの時期があるのかどうかです。
  193. 植木光教

    ○植木国務大臣 御承知のように、自由民主党内で元号問題が協議せられ、また政府部内でもいろいろ検討しているわけでございますが、一方、元号はやめて、いわゆる西暦を採用してはどうかというような意見も世間にはあるということは御承知のとおりでございます。いまの段階で元号を、従来どおり一世一元としての扱いをいたしますかどうか、これまた検討事項ではございますけれども、いずれにしても、元号を付するということになりますと、これは内閣において決定をするのはいかがというようなことで、ただいま検討をしているのでございます。ただし、これも一つ考え方なのでございまして、まだ、どうするかということについては結論は持つに至っておりません。
  194. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、陛下に万一のことがあった、これはわれわれがたびたび申し上げるとおり、限りない御長寿をお祈りしておる立場ですけれども、突然お亡くなりになるという事態が起こるのです。そういう場合も予想されるわけなんですから、そうすると、陛下が崩御された、さあ元号をどうするか、また調査会でもつくってやる、そして、そこで答えが出て元号制度が生まれた、あるいは生まれないかもしれないが、生まれたという場合は、それができるまでにある期間がある、その期間は西暦紀元を用いるのですか、どういうことになるのでしょう。いまの元号だって、これは民間で慣例として用いられているにすぎないので、別に法律で元号ができておるわけじゃないのですが、しばらく元号のない時期が続くのか。これは次長さんではおわかりにならないのじゃないかと思うのですが、どなたかおわかりになる方が……。この問題はだれか心得ておられなければいかぬ。
  195. 角田礼次郎

    ○角田(礼)政府委員 受田委員の御指摘の問題でございますが、御承知のように、現在の昭和という元号は、法律上の基礎はなくて、事実としての慣習として現在用いられておるという認識に立っているわけであります。その慣習の中身としては、現在の陛下が御在世中に限るという認識を同時に含んでいるというふうに私ども考えております。したがいまして、陛下に万一のことがございましたら、昭和という元号がその瞬間をもって消える、言いかえれば、空白の時代が始まるということになるわけでございます。     〔委員長退席、木野委員長代理着席〕  そこで、改めて元号制度というものをどうするかという政策決定がなされるべきだと思いますが、それがどういう形で、法律でなされるか、あるいは内閣限りでやるか、そういう問題を含めまして、そういう政策決定、さらにそれについての法的な措置というものが完了いたしますまでは、いわゆる元号というものはないわけであります。  それから最後に、西暦を使うことになるかどうかということで御質問になりましたけれども、これは実際上使うかどうかということは実際の問題だと思います。少なくとも申し上げられることは、元号というものは空白になる、こういうことでございます。
  196. 受田新吉

    ○受田委員 その空白を埋める方法はどういうことがあるのですか。法制局の御意見を……。
  197. 角田礼次郎

    ○角田(礼)政府委員 それは先ほど来申し上げておるように何にもございません。もし一般の国民が西暦を使うならば、それが実際上ある年の表示として使われるというだけでありまして、それだけのことでございます。
  198. 植木光教

    ○植木国務大臣 従来の例を申し上げますと、即時に内閣におきまして決定をしております。したがいまして、先ほど来申し上げておりますように、元号をどうするか、制度化するのか法制化するのか、それともそうでないのかというようないろいろな問題は、これからの問題でございますけれども、いまのようなことを仮定しての先生の御質問でございますから、従来は即時に内閣で決定しているという状況でございますことを御参考までに申し上げておきます。
  199. 受田新吉

    ○受田委員 それは参考にならぬですよ。私、ここで指摘したいのは、陛下がお亡くなりになったというときに、これを国民に告示されるのは宮内庁だと思いますが、違いますか。今上天皇、本日何時崩御あそばされるという告示をされるのは、宮内庁ですか、政府ですか。
  200. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 天皇に万一のことがおありの場合のお尋ねでございますが、その際は、私どもは内閣が告示をされるものと考えております。
  201. 受田新吉

    ○受田委員 その内閣が告示されるときは、昭和はもう消えてしまったときですね。消えてしまったから、一月二十日とか三月十日とか、そういう日付だけが出るわけですか。
  202. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 ただいま総務長官からお答えがありましたように、従前の例を参考にして考えますと、従来は即時に新しい元号というものが内閣において決定をされておるわけでございます。そこで空白になる、あるいは即時という例もあるというようないろいろな問題がございますので、その辺を総体的に踏まえませんと、ちょっと私も明確なお答えはできかねる次第であります。
  203. 受田新吉

    ○受田委員 政府自身が明確なお答えのできぬようなかっこうにいまなっておるわけですね。日付だけにするのか。一九七何年とかいうのもないし、昭和という年号もない。陛下の崩御を国民に告示されるのは日付だけで出すのですか。これは従来のことを聞いておるわけじゃないのです。今後のことを聞いておるのです。
  204. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 従前の例につきまして、先ほど申し上げましたことを訂正させていただきたいと思います。  明治天皇が崩御されました場合には、その明治の年号で官報に告示に相なっております。大正天皇の崩御の場合におきましても、大正十五年十二月二十五日、こういうような告示になっております。
  205. 受田新吉

    ○受田委員 陛下が亡くなられた瞬間で昭和は消えるわけだ。一世一元の世というのはなくなったわけですから、そういうことになると、その元号はなくなっておるのです。それを後から告示された時点で、閣議で報告されるのに昭和を用いるというのはどういうことですか。昭和を用いるというふうに決まったわけですね。——もう一遍聞きますが、今上陛下の場合は、昭和何年で告示するということが政府として決まっているわけですね。はっきりしてください。
  206. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 いま申し上げました前例に従いまして、もし万一のことがおありの場合におきましては、昭和という年号で表示されるものと考えます。
  207. 受田新吉

    ○受田委員 これは明確ですね。  そうしますと、今度大葬の式その他を出すときは、元号が決まらない場合は、いま無元号ということでありますが、法制局第一部長のおっしゃった線でいけば、日付だけでやるわけですか、何月何日だけですか、はっきりしていただきたい。
  208. 植木光教

    ○植木国務大臣 先ほど申し上げましたように、従前の例によりますと、即時次の元号を内閣で決定いたしておりますので、従前の例のとおりやるといたしましたならば、ただいま申し上げたように即時内閣において決定ということになろうかと存じます。
  209. 受田新吉

    ○受田委員 もうそのときは内閣が勝手に元号を決めるわけですか。それなら元号を皇室で調査したり、自民党でもいろいろやっておるのが何も用をなさぬじゃないですか。もうすぐ勝手に閣議で年号を決めるのだ、いまのはそういう御答弁ですね。驚き入った話です。どうですか。
  210. 植木光教

    ○植木国務大臣 先ほど来、仮定の問題でずっと来ているわけでございますし、またもちろん受田委員も、仮定の問題としてやっておられるわけでございますから、そこで従前の例によりますと、いま申し上げましたように、内閣において決定をしているわけでございますが、その際には、内閣だけでいまお話しのようなやり方をするのではございませんで、宮内庁と相談をいたしまして、その元号名を決めていくというのが従来の例でございます。
  211. 受田新吉

    ○受田委員 従来の例でなくして、これから元号が決まるのにどういう形で決まるかを聞いているわけです。陛下がお亡くなりになられた、そして閣議で直ちに宮内庁と相談して決める、そこで元号が勝手に決まるなら、何のために十何年間元号問題がもたもたしておるのか、意味が全然ない。閣議で即時勝手に決めるとおっしゃるなら、これは大変なことだと思うのです。
  212. 植木光教

    ○植木国務大臣 この元号問題は、いろいろな御意見がございますので、いま自由民主党内でもいろいろ協議されておりますし、私どもとしても、いろいろ検討しているわけでございます。いま直ちにとおっしゃいますが、いま直ちにということになりますれば、元号問題についての結論はまだ政府におきましても出ておりませんので、その際、元号を採用するとするならば、いま申し上げたような方法で行うというのが、従来の前例を十分尊重いたしましたやり方であるというふうに申し上げているのでございます。
  213. 受田新吉

    ○受田委員 私、非常に不安があるのは、従来の前例を尊重しておやりになると言うのだけれども、閣議で勝手に元号を決める、その日のうちに閣議でどういう名案を、中国の四書五経の中から持ち出すとか、いろいろなことがある、しかし、もう新しい時代だから新しい名称を用いるとか、これは一遍の閣議ですぐ決まるような段階ではない。総意を集めてやるということになればそう簡単に決まりやしません。そのときに一体どうしたらいいか。そういう事態がぱっと目の前にあらわれる、予測せざる不幸が起こる、しかし陛下が崩じたときという典範の規定に従っておられるだけです。人間は生身でありますから、亡くなるときは皆来る。あなた方もわれわれも、いつどういうことが起こるかわからぬですよ。そういうわからぬときのことをぴしっと規定で決めておかぬと、そのときになってあわてるとか、いままで十何年もかかって元号問題が片づかぬでいて、内閣が勝手にちょこちょこっと思いつきで元号を決めるというのでは、一遍決まると民間にずっと慣習として使われるわけですから、これは大変なことですよ。  これは私、どうもわからぬのですよ。これは私、もうよしますが、この大変大事な問題が、あやふやなうちに事態が起こったときにはどうなるかわからぬのですよ。いま長官がはっきり言われたように、先例を尊重してやるということになれば、閣議で決めるということになってしまう。閣議でそう簡単に決まるほどなら、元号問題でここで騒ぐこと要らぬですよ。だれかが思いつきで言ったのを、それでいいということに決まったら大変なことですよ。これは急いで何とかしなければいけません。これは御答弁がもたもたしているから私、時間がかかってしょうがないのですが、上原先生が待機しておられるわけです。私、これは大事なことですが、余り時間をかけても——法制局は無元号時代が続くとおっしゃるし、総務長官は、閣議は先例を尊重してすぐ決めるとおっしゃるし、政府部内の意見はばらばらです。  私はもう一つ、この問題を外れて——陛下はいま昭和五十年を迎えられた。今上陛下のお代が今日五十年続いておる。人間五十年というのは区切りです。そこで、ことしの天皇誕生日には政府が、象徴天皇のお代、年号が五十年続いたこの機会に、何か記念行事をやられても私はしかるべきじゃないかと思うのです。昭和五十年の天皇誕生日に、憲法一条の象徴天皇の長寿をお祝いする行事を、私、いまちょっと頭にひらめいてきたが、これは長官もぱっとひらめいた答えを出してもらいたい。
  214. 植木光教

    ○植木国務大臣 御在位満五十年は明年であります。元号が五十年でございます。しかし、いずれにいたしましても、五十年を記念して何か国民的な行事を行うべきであるという御意見はすでに出ております。この点につきましては、関係省庁との間でもうすでに協議をしているところでございますが、現在、何をどのときにやるということにつきましてはまだ決定いたしておりません。
  215. 受田新吉

    ○受田委員 満で言えばそうですが、しかし数えで言えばことしが五十年。これはいつやってもいいのですが、天皇誕生日というのはその行事に一番ふさわしい日である。何かの行事を計画するということは、政府で一応企図しておると了解してよろしゅうございますか。
  216. 植木光教

    ○植木国務大臣 ことしの天皇御誕生日には計画はいたしておりません。一つ考え方といたしまして、明年で御在位五十年になるわけでございますから、明年の天皇誕生日に国民的な行事を行ってはいかがかというような案が一つ検討されているという状況でございます。
  217. 受田新吉

    ○受田委員 それはぜひ実行してもらいたいのです。私の気持ちとして、案がぜひ実行に移されることを期待します。  時間が進んでおりますが、外務省おられますか。陛下か海外に行かれるときについて、昭和四十三年のハワイ移住百年祭のときに私から提案しました。陛下に強い要望をしました。また当時は田中総務長官、この前は山中長官ですが、このたびこれが実行に移されるわけでありますから、私は大いに祝福すべきだと思いますが、政治的なということになれば、親善する国との間の親善をはかることは結局、政治的には友好関係が強まる意味ですから、陛下が旅行されることは見方によればみんな政治的になる。しかしわれわれは、それを政治的と考えないで、陛下の親善への御貢献という意味で——田中総理とニクソンとの共同声明の中に天皇の訪米などを書くことは政治的だという声もあった。しかしわれわれは、素直にこれを受けとめて、親善に御貢献していただくという意味で、政治的に陛下を利用するというかっこうでないように常に考えていきたいと思っておるわけです。  そこでアメリカにいらっしゃるならば、もちろん日系人の多いハワイ、ロサンゼルス、サンフランシスコを御計画に入れられる、これは決定しておるんですね。
  218. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 陛下御訪米の日程の詳細につきましては、アメリカ側と協議中でございまして、訪問地に関しましてもまだ決まっておりません。ただ、受田委員のおっしゃいました日系人のたくさんおられるところも考慮の対象の一つになっております。
  219. 受田新吉

    ○受田委員 そういうことは、親善という意味に非常に貢献するわけです。日系人社会の、祖国を離れて海外へ雄飛したその人々は、かつての母国の陛下がいらっしゃるということは大変な喜びなんです。これは私がよく知っておる。これは必ず外さぬようにひとつ日程に入れていただきたい。  それから同時に、陛下御自身の海外の御旅行の計画は、今後アメリカだけでなく、カナダにも日系人が相当数おる、メキシコにもおる、ですから、ついでに北アメリカの主要国へ両陛下で御一緒に御旅行していただくのもしかるべきだと私は思ったわけですが、アメリカ一国に限った理由はどこですか。カナダ、メキシコ等、またさらに南米の六十万の日系人のおるブラジルなども将来期待される国である、ですから、陛下に御苦労願う一応の予定を組んであるのかどうか。
  220. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 カナダ、メキシコ等の近隣国のうちには、確かに陛下の御訪問について関心を寄せている向きもあるわけでございます。ただ、われわれが今回の御訪米の問題を検討させていただくに当たりまして、両陛下のお年がかなり進んでおられるということもございまして、日程をできるだけゆとりのあるものにしたいということを考えて、その結果、約二週間ということになったわけでございます。他方、宮中における諸行事もいろいろあるということを承りましたので、今回の御訪米の際は、アメリカ以外の国に御訪問ないしお立ち寄り願うことはいたさないことにしたのでございます。  なお、この点につきましては、外務省といたしましても、在京のカナダ、メキシコ、ブラジル大使を呼びまして、そういう事情を十分説明して、先方にも了解していただいた次第でございます。
  221. 受田新吉

    ○受田委員 それでは質問を終わります。
  222. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 次に、上原康助君。
  223. 上原康助

    上原委員 最初に、ちょっと皇室経済法施行法の関係でお尋ねしたいと思います。  従来、この皇室経済法施行法の一部改正というものは、大体二、三年ごとに改正されておったのですが、昨年に引き続いて今回も改正するという案が出されているのですが、もちろん諸般の経済状況なり、いろいろな面で予算のアップというのが必要だとは思うのですが、このように毎年毎年皇室費なり宮内庁費含めて大幅に上げるということは、ある面では、国民の側からすると疑問を持つ方々もいると思うのです。  そこで、その上げる根拠なり、そんなに皇室関係費というのが逼迫しているのか、どうしても改正せざるを得ないという状況にあるのか、その内容について少し明らかにしておいていただきたいと思います。
  224. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 お答えいたします。  内廷費それから皇族費の改定についてのお尋ねでございますが、これは、かつて申し述べたこともございますけれども昭和四十三年の十二月の末に皇室経済懇談会が開催をされまして、この内廷費、皇族費の改定基準について、原則として物価の趨勢、職員給与の改善等によって算出される増加見込み額が定額の一割を超える場合に実施するということが了承され、自来その方針にのっとって作業をいたし、必要がある場合にはお願いを申し上げているような次第でございますが、過去十三回この改定がございましたけれども、定額という趣旨で皇室経済法が定めておりますゆえんを、立法趣旨に沿うて考えてみますると、格別の経済的な事情の変化がない限り、安定した姿というものがやはり一つのねらいであるというふうにも立法当時は考えられたのではないかと思います。  そういう意味で、定額ということに相なっておるのだろうと思うのでありますが、その意味におきまして、毎年あるとかあるいは二年置きにやるとか、実はそういうことではございませんで、そのときの経済情勢のいかんによりまして、ある時期には三年間そのままの定額で推移したという時期もございますし、あるいは過去にも年を次いで改定をお願いし、お認めをいただいたというようなこともございまして、もっぱらこれは、一つのその時点におきまする物価の騰貴、上昇率あるいは国家公務員の給与の改善率、そういうものを十分に検討し、勘案した結果、本年度におきましては、東京都区部の消費者物価指数、これが二二・七%、それから国家公務員の給与改善率が二九・六四%、こういう率でございまして、それを採用してみますと、内廷費におきましては二四・六%の増を要するという結論が出ますので、先ほども申し上げました皇室経済懇談会の御方針の趣旨に沿いまして改定をお願いしたような次第でございます。
  225. 上原康助

    上原委員 どうもそこいらの基礎的な数値のとり方が若干疑問があるわけですね。確かに物価上昇というものがおっしゃるように二二・七%、あるいは公務員の賃金改定にしましても三〇%前後だったということになりますと、それはそれなりの根拠があったわけですが、だからといって、一定額で定められた皇室経済費そのものも、そういった公務員なり、あるいは物価等のスライドという単純平均で、しかも中間的なものをとって上げるということには、いささか疑問を持たざるを得ないという点を指摘をしておきたいと思うのです。  そこで、内廷費と宮廷費の違いですが、もちろん皇室経済法ではそれは区分されているわけですが、その運用の面は一体どうなっているのか、少し御説明いただきたいと思うのです。
  226. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 皇室経済法におきまして、皇室に関係して計上すべき予算ということで内廷費、宮廷費、皇族費、こう三つ法律が定めております。  いまお尋ねの内廷費でございますが、これは天皇及び内廷にある皇族の日常の費用並びに内廷諸費に充てるものとする、こういうことであり、かつまたこの内廷費は、支出された時点においてお手元金となり、宮内庁の公の経理に属さないものであるという性格規定もあわせていたしております。  宮廷費は、内廷でいま申し上げた御所用以外の、いわゆる天皇並びに皇族がその持たれておる公的な御地位というものに関連のある事柄あるいはその公的な御活動に関連する事柄、こういうようなものの所用をまかなう、と同時に、国有財産法にあります皇室用財産の維持、管理に関する経費というものを、あわせてこれを宮廷費ということに規定をいたし、そういう内容をそこで盛りまして予算としてお願いをしておる。この宮廷費は、公の公金として宮内庁が経理するもの、かような性格規定がなされている次第でございます。
  227. 上原康助

    上原委員 御説明はわかるわけです。そこで、特に内廷費の場合ですが、もちろんお手元金としてやって、それは宮内庁の経理、管理にはない。その場合に、宮廷費と内廷費がダブって支出される面はないのかどうか、いまの説明を見てもあるような感じを受けるわけです。それと、たとえば天皇の国事行為に伴う費用の支出というのは、恐らく宮廷費から当然出るんじゃないかと思うのですが、天皇の私的行為に伴う——これは後ほど若干議論しますが、私的行為に伴う費用というのは、じゃ一体宮廷費から出す場合もあるのか、あるいはもっぱら内廷費という面でお手元金の方から支出をしているのか、その点もこの際、明らかにしていただきたいと思うのです。
  228. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 私の説明が、あるいは若干不足といいますか舌足らずであったかもしれませんが、内廷費と宮廷費、これは完全に区分をして厳格に経理をいたしております。  いまお尋ねの公的な行為あるいは国事行為としての儀式というようなこともございますが、そういうものを含みましていわゆる公的な行為につきましては、これは宮廷費から支出するというたてまえといいますか、厳密に経理をいたしております。  なお、お尋ねの賜与ということがあったかと思いますが、災害がありましてお見舞いをされる、あるいは社会事業団体等に御奨励の意味で御下賜される、その他学士院のいわば恩賜賞というような式のものもございますけれども、そういういわゆる賜与はすべて内廷の経費で賄っておるわけでございます。
  229. 上原康助

    上原委員 じゃ一つだけ例を挙げますが、たとえば皇后が全国赤十字大会などにお出かけになっている、一々御出席になっている、その場合に何らかの御寄付なりをあるいはやるかもしれませんが、そういうのは宮廷費から出るのですか、それとも内廷費ですか。
  230. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 いまの挙げられました例に即して申しますと、これは内廷費でございます。すべて賜与等につきましては、先ほど御説明しましたように内廷費から支出をされております。
  231. 上原康助

    上原委員 じゃそうしますと、内廷費の実際の年間予算額は大体決まるわけですが、もちろんお手元金ですから、全然これは宮内庁なり第三者が関与するものではないと思うのですが、実際にこの内廷費として支出をする額はどのくらいなのかはだれも御存じないわけですか。宮内庁も全然知らない、そういうことですか。
  232. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 内廷費は、お手元金でございますので私経済に属するという点から、詳細な説明は避けさせていただいて、概要を述べるにとどめたいと思うのでございますけれども、内廷費の支出については、大体最近の物価状況あるいは人件費等のアップ等の状況におきまして、ほぼ御需要をぎりぎり賄っておるというふうに聞いております。  なお、内廷費の内訳と申しますかそういうものについても、これは前回の当委員会におきまして、大体物件費と人件費に分けますと、人件費が約三割余、それから物件費、いま御指摘のございました賜与等も、これは物件費としてあれしておりますけれども、その他お食事でありますとか、お身の回り品でありますとか、あるいは御研究、御教養に要する経費でありますとか、あるいは神事に要する経費でありますとか、そういうようなものを含めまして約七割弱、こういうふうになっておるわけでございます。
  233. 上原康助

    上原委員 そうしますと、天皇家といいますか、皇居にいろいろお勤めになっている方々がいるわけですね、公務員が。一般的な観念で私的な、私たちの立場で表現すると雇用人、そういう方々に対しての支出というのは、内廷費から支出されるのか、あるいは宮廷費から賄うのか、どうなんですか、そこは。
  234. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 いま御指摘の内廷で直接に雇用関係を持たれている職員に対する給与、人件費は、これはすべて内廷費で賄っております。
  235. 上原康助

    上原委員 その対象人員は何名ですか。
  236. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 二十五名でございます。
  237. 上原康助

    上原委員 先ほどの御説明では、大体三割が人件費で七割が物件費。そうしますと、いまおっしゃる二十五名に対する人件費というのが、この三割程度だということで理解していいですか。
  238. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 大宗をなすものは、いまの二十五名の人件費といいますか、給与に関連する費用でありますが、旅行等をいたすこともございますので、そういう若干の旅費とか、あるいは絵画とかのいわば講師として上がっておられる人の謝金、これはごく一部でございます、そういうものも含んではおりますが、その大宗は、いま申し上げた内廷におります職員給与でございます。
  239. 上原康助

    上原委員 それと最近の皇族の、皇室の財産、まあ不動産を含めてですが、一体どのくらいになっているのか。こういった面の評価といいますか、資産の評価はどうなっておりますか。
  240. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 皇族費につきましても、先ほど申し上げましたような内廷費と同じ性格でございまして、私経済に属しているわけでございますが、財産につきましては、憲法八十八条に財産の帰属に関しまして、一時的な経過的な意味を含めての規定がございますが、その当時の解釈が自来定着いたしておりますけれども、いわゆる皇室財産という中から、当時宮家が持っておられた財産、これは内廷にある皇族ではございませんで、宮家が持っておられた私有財産ですが、これは、その八十八条のこれの例外をなすものである、こういうふうに解釈をされ、今日まで定着をしておりますが、その具体的な内容、評価等につきましては、私経済でございますので、私どもそういう評価その他はいたしておりませんし、詳細には承知をいたしておりません。
  241. 上原康助

    上原委員 それが評価できないというのは、私経済であるということなのか、あるいは象徴天皇としての地位があるから、そういう面を公にすることは好ましくないという立場なのか。たしか終戦直後は、皇族財産については、一時的にすべて国民の前に明らかにされたはずなんですね。その点は、昨年の委員会の議論の場合も、どなたかなさっておったと思うのですが、なかなか明らかでないわけですね。質問をしても、できるだけそういったことは公にしたくない、あるいはタブーにしておきたい、不問にしておきたいという感じを受けますので、いまの点について、もう少し御説明をしていただきたいと思います。
  242. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 お答えいたします。  ただいま私が説明をいたしましたのは、いわゆる四宮家といわれる皇族の財産についてのお尋ねであったかと思いまして、さようお答えを申し上げたわけでございますが、いま御質問を承っておりますると、いわゆる天皇の財産はどうか、こういうふうにお尋ねのようでございます。  そこで、天皇を中心にされましたいわゆる狭義の意味の皇室、内廷皇族と言っておりますけれども、この方々は土地建物等はお持ちでございません。憲法制定当時の「すべて皇室財産は、國に属する。」といった場合は、それ以前に御料林でありますとかいろいろなところをお持ちであったわけでございますけれども、それが公のものという性格を有するものはすべて国の所有に属しまして、そのうちごく一部のものを皇室用財産といたしまして、内廷皇族あるいは天皇の御所用に一応供するということで、たとえば宮殿でありますとか須崎の御用邸でありますとか、そういうものは国の所有物件でございまして、それを皇室用財産として皇室の用に供するということで、まあ供用をしていただいておるという形でございます。  それ以外に、いわゆる天皇御個人として、憲法制定の時点において金森国務大臣も言っておられますように、きわめて私的なもの、身の回り品とかそういうようなものについては、これは天皇の個人の御財産ということで若干のものが現在に至っておることは間違いございません。
  243. 上原康助

    上原委員 それでは時間がたちますので、そういうのはその程度にして先に進めていきたいと思います。  法制局お見えですね。——私も法律は全然素人でわかりませんが、特にこの天皇制といいますか天皇問題というのは、いろいろいきさつがあるようで、質問の立て方もなかなかむずかしい面もあるのです。これまでもしばしば問題になってきたのですが、天皇問題について私たちが非常に関心を持ち、かつ憲法に定められた象徴天皇としての地位の維持といいますか、これは一応個人的な立場は別として、理解できないわけでもありません。  そこで、旧憲法下における天皇制のあり方と日本国憲法になってからの天皇の地位の根本的な違いというのは一体どこにあるのか、憲法との関係において御説明をいただきたいと思うのです。
  244. 角田礼次郎

    ○角田(礼)政府委員 旧憲法下の天皇と現在の憲法のもとにおける天皇というものの権能なり、地位というものにおいて非常な違いがあるということは御指摘のとおりでございます。そこで、一番大きな違いと申しますと、やはり第一に、旧憲法下における天皇は、いわゆる国の元首であって統治権を総攬する地位にあられたということであります。これに対して現憲法のもとにおける天皇は、第一条に明記するがごとく、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、一口で言えば非政治的な地位におられるということであろうと思います。  それから第二に、旧憲法下における天皇は、さかのぼりますと、いわゆる神勅にさかのぼるわけでございますが、万世一系の天皇として初めからそういう地位を持っておられたということでございますけれども、現在の天皇は、やはり第一条に明記されているごとく、この地位は主権の存する日本国民の総意に基づく。この二点が旧憲法下における天皇と現憲法下における天皇との非常に大きな違いであろうと思います。
  245. 上原康助

    上原委員 確かに、いま御説明のあったように、憲法の第一条なりの条文からしますと、天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。簡単に申しますと、いわゆる天皇が主権者でないということですね。しかも象徴であって明治憲法下におけるように統帥権も総攬権もない。問題は、その後の憲法制定以後それが正しく行政的にも政治的にも運用されてきたかというところに私たちは注目したいわけです。  と申しますのは、いろいろ学説はあるにしましても、本来的には天皇の行為というのは、いわゆる憲法第四条で定められておりますように、「この憲法の定める國事に關する行爲のみを行ひ、國政に關する権能を有しない。」わざわざ「この憲法の定める國事に關する行爲のみを行ひ、」というふうになっているわけですね。そうしまして、それを受けて第七条がある。本来ならば、国事行為というものは、国事行為とあとは私的行為だけしかないというのが厳密な意味の、あるいは常識的に判断しての受けとめ方で、一般国民はそう考えると思うのですが、この点についてはどうお考えですか。
  246. 角田礼次郎

    ○角田(礼)政府委員 第四条には、御指摘のような条文があるわけでございますが、この点につきましては、次のような理由で私ども理解できると思います。  第一に、憲法というものは、そもそも国の統治組織と申しますか、国家機関のあり方というものを定めている法制でございますから、そういう意味において当然、憲法に書いてある事柄は、そういう統治行動の仕組みというものに限定されるということであります。  第二に、四条の一項の規定でございますが、確かに「天皇は、この憲法の定める國事に關する行爲のみを行ひ、」ということが書いてございますが、ただいま申し上げましたような憲法の性格から言って、この規定は、天皇が国家機関として行為をされる場合には、「この憲法の定める國事に關する行爲のみを行ひ、國政に關する権能を有しない。」こういうふうに解すべきであろうというのが私ども考えでございます。  そこで、結論といたしましては、確かに国事行為以外には、いわゆる私的行為しか認められないという二分説があるわけでございますが、私どもとしては、天皇は、いま申し上げた国家機関として行為をされる場合には、この憲法の定める国事行為しかなさらないわけでございますけれども、それ以外に自然人としての天皇というものの行為があるはずである、これは現に、私的行為を認めておられる方も、その私的行為は、まさに自然人としての行為であるという前提に立ってこういうものを認めておられるわけでありますから、その点について、自然人としての天皇の行為が憲法に書いてないからと言って、そのこと自体が否定されるという考え方はないと思います。  ただ、そういたしますと、自然人としての天皇の行為の中にいろいろなものがあるわけでございます。そこから説が分かれてくるわけでございますが、私どもとしては、自然人としてのいろいろな御行動の中に、やはり天皇が日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であるという御地位からにじみ出てくると申しますか、それに基づくところの公的な御行動というものが認められるという考え方に立つわけであります。これは純然たる一私人としての御行動と明らかに認識において区別されるのではないかということを私どもは前提としているわけであります。  そこで、憲法上の国事行為以外に自然人として天皇が行動される場合、やはり公的な色彩を帯びたものと、片方において純然たる個人としての私的行為、この二つに区別されるということになるわけでございますので、その前の方のものをいわゆる公的行為として、憲法はそういうことを規定してはございませんけれども禁止してはいない、こういうのが私ども考え方でございます。
  247. 上原康助

    上原委員 もちろん、お説のように天皇も生身の人間ですから、それは自然人としての行動も当然あるでしょう。御行為もあるでしょう。しかし、いまおっしゃるように、公的行為ということが憲法上認められる、あるいはまた当然、自然人としてのお立場からいろいろの行動というのが生まれる、仮にそういうことを前提としても、しからば公的行為というのは一体どういうものなのか、その限界というのはどこに求めるのかということが問題になるわけですね、しばしば指摘されているように。しかし、たとえそういうことが一応容認された前提として議論をするにしましても、やはり憲法第一条なり第四条なり第七条というのが大原則だと思うのです。その範囲を著しく逸脱するようなものについては、多くの疑問が提出されているとおりだと思うのです。  そこで、その限界といいますか、あるいは憲法上一条なり四条なり七条というものを大前提として、いまおっしゃったような公的行為の範囲というもの、あるいはその類別といいますか、具体的な行為というのはどういうものなのか、列挙していただきたいと思うのです。
  248. 角田礼次郎

    ○角田(礼)政府委員 公的行為の範囲あるいは公的行為の限界という問題を御提起になり、さらにそれを具体的に列挙せよという御質問の趣旨だろうと思いますが、その前に、ちょっと一言申し上げておきたいと思いますけれども、公的行為というものは、天皇の自然人としての行為のうち公的色彩を帯びている行為というのが、私ども一つの定義であります。つけ加えて申し上げれば、先ほど来申し上げたように、天皇が象徴としての地位をお持ちである以上、そこに公的な色彩の行為があるだろう、こういうことを申し上げているわけであります。これは類型としてこういう種類の行為が公的行為だということは、列示することは可能であります。ただし、その範囲をこれこれのものであるというふうにはっきり決めるということは、きわめて困難であろうと思います。しかし先ほど御質問にありましたように、その理論的な限界というものは一応言えると思います。  そこで、その限界として私ども考えておりますことは、三つあると思います。一つは、国政に関する権能というものがその御行為の中に含まれてはいけない、こういうことがあると思います。もっとわかりやすく言えば、政治的な意味を持つものとか政治的な影響を持つもの、こういうものがそこに含まれてはならないということが第一に言えると思います。それから第二には、あくまでその天皇の御行為について内閣が責任をとるという行為でなければならないと思います。それから三番目は、象徴天皇としての性格から言って、それに反するようなものであってはならないということ、この三つが私どもとして公的行為というものを考える場合の限界であろうと思います。  さらに、つけ加えて申し上げますが、類型的にある種の行為であると仮にいたしましても、それが公的行為なるがゆえに、ただそのことだけで憲法上許されるというようなことを、私どもは申し上げているわけではございません。たとえば国会の開会式へ行かれてお言葉を述べられるというのは、通常公的行為の典型的なものとして挙げられておりますけれども、しかしそれは、一般的に言えば公的行為でございますけれども、仮にいまのような三条件に反するような事態、そういうことは万一ないと思いますけれども、万一反するというような事態があれば、それはおやめになっていただかなければいけないわけでございます。ですから、類型的にある種の行為に入るということだけでもって憲法上許されるというわけではないし、同時にまた、そういう行為の類型をいろいろ列挙することは可能ではありますけれども、いま申し上げたように、それだけで事が終わるわけではないということ。  さらに、もう一つつけ加えさしていただきますと、公的行為と私的行為ということを私どもは区別しておりますけれども、実は私的行為であれば、天皇は全く何をされてもいいというわけでは決してないと思います。いま申し上げたような、公的行為についての三つの限界といいますか基準というものは、私的行為についても、程度の差こそあれ、同じように該当するものだと思います。天皇が個人として政治的ないろいろな御行動に出られる、そういうことは万一ないと思いますけれども、もしそういうことがあれば、やはりそれはおやめになっていただくわけですから、そういう意味においては、実は公的行為という概念を設けることによって、直ちに政治的なものというふうに結びつくわけではなく、私的行為についても同じような配慮が必要であるということも申し上げておきたいと思います。
  249. 上原康助

    上原委員 いまの点は、ある程度理解できます。  そこで、この三つの限界といいますか、あるいは三つの条件といいますか、こういうのをいまお述べになったのですが、これはあくまで、先ほど私が申し上げたように、第一条に言う天皇の象徴としての地位ということ、あるいは第四条に言う国政に関与する権能をお持ちにならない、第七条に国事行為というのが列挙されている、これを一応の大原則に踏まえて、そして天皇がとられる行為については内閣があくまで責任をとる、象徴天皇としての地位を逸脱するようなものであってはならない、これはあくまで一条、四条、七条、そういった憲法概念からしてそういう解釈が成り立つというふうに理解をしてよろしいですか。
  250. 角田礼次郎

    ○角田(礼)政府委員 全くそのとおりでございます。
  251. 上原康助

    上原委員 そこで、今度訪米をなさるということで、先ほど受田先生の御質問にもありましたが、御訪米というのは、一体どういう行為に入るのですか。
  252. 角田礼次郎

    ○角田(礼)政府委員 天皇が外国へ公的な資格でおいでになるということは、これは一般に公的行為というふうに私ども考えております。
  253. 上原康助

    上原委員 この訪米問題と関連をしてちょっとお尋ねしておきたいのですが、よく皇室外交とかあるいは天皇外交というようなことが言われるわけですが、本来、外交というのは政治的な色彩が強いわけですね。政治の分野においても一番重要な部門を占める。もちろん政府は、こういった公式の立場でそういう文言なり用語というものは使っていない、お使いにならない面があるわけですが、一体、皇室外交とか天皇外交というのは、どういうのを意味するのか。  今回の御訪米も、そういう立場で行くとは私たちは見ていないわけです。もし皇室外交、天皇外交ということがあるとするならば、これは明らかに、先ほど三つの要点をお挙げになりましたが、そのことと、また私が指摘をしたことと逸脱する危険性が十分ある、誤解を招く面があると思うのですが、特に宮内庁は、こういうことについてどういうふうにお考えになっているのか。私は、そういうことは、やはり表現としても、あるいは皇室の立場としても好ましい言葉ではないと思うのです。仮に善意に解釈したとしても、そういう面からやはり天皇のいわゆる政治に関与する権能の問題なり、政治的色彩というものが問題になってくる。これは一例ですが、これについてはどういうふうなお考えなのか。
  254. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 お答えいたします。  いまお尋ねの皇室外交あるいは天皇外交というような言葉に関連してでございますけれども、私どもとしましては、皇室外交ということを考えたことは全くございませんし、また、そういう言葉を使ってはおりません。  天皇の外国の御訪問というのは、あくまで訪問される国との友好親善の増進のためであり、また儀礼的なものに尽きる。したがいまして、当然、憲法第四条の一項後段にありますような事柄の、政治的に利用されるというようなことのあってはならないことでありますし、また、そういうことは常々配意をしてまいっておりますし、また今後もそうでありたい、かように考えております。
  255. 上原康助

    上原委員 宮内庁御自身で、宮内庁の立場でそういう言葉はお使いになっていない、それは私も先ほど申し上げましたようにあれですが、しかし一般的に第三者でかなりそういう面を強調しておる方々が現におるわけですね。そういうことも、やはり宮内庁としては野放しにすべき問題じゃないという点を私は指摘しておきたいと思います。  そこで、この御訪米問題と関連をしてお尋ねしたいのですが、いわゆる国連を御訪問なさるということが日米間で検討されているということが言われているわけですが、実際そうなのかどうか。また仮に御訪問するとなると、どういう目的、どういうふうな日程を国連ではおやりになろうとしているのか。若干これは問題があって、ただニューヨークに行かれるから、そのついでというわけにはいかないと思うのです。そういう性質のものでないと私たちは考えるが、この件については、どういうふうに外務省米側話し合いを持っておられるのか。
  256. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 両陛下御訪米の日程の詳細につきましては、現在アメリカ側とまだ協議中でございまして、決まっておりません。したがいまして、御訪米の日程中に国連に行かれるかどうかというふうな点も一切決まっておりません。  ただ申し上げたいのは、先ほどから御論議にも出ておりますように、陛下が政治に関与されないというお立場を十分考慮いたしまして、また先方もその点は十分理解した上で話し合っております。
  257. 上原康助

    上原委員 しかし、いつもそういうことで十分配慮しているということですが、えてして問題になってくるわけですね。これは、こんなにでかでかと新聞にも報道されたので、国民はこれを見ていますよ。「国連ご訪問も検討 政府非公式に外交折衝 政治活動で問題化も」国連の事務総長にお会いするとか、あるいは表敬的にお会いするというようなことまでは、あるいは国民の側からもさほど問題にならないかもしれません。しかし国連の総会に傍聴になるとか、何らかの——たまたま国連はもう総会が始まっているわけでしょう、国連の会議は。そういう場にお出かけになっていって、あなたがおっしゃるように、相手側も天皇を政治的に利用しない、あるいはわが方も、天皇御自身も政治的には利用されたくないというお気持ち、それが御本人にはあるかもしれませんよ。問題は、周囲の人が天皇の意思とは関係なくそう仕向けられる場合があるわけですね。一昨年の増原発言にしたってそうなんだ。この点は、いまの御答弁では納得いかないですね。  しかも各社の新聞発表を見ますと、十月一日から約二週間の御訪米の御日程なんですね。その間二日間は公式日程だ、あとは公式日程はないのだというような書き方なんですね。五大都市を回るとか、あるいは六大都市というようなこともある。中には十大都市というものもある。国連本部を訪問して、総会にも御傍聴になるかもしらぬ、こういうようなことがいろいろな立場で報道されるということは、ある面ではむしろ問題を複雑にしていく危険性があるわけでしょう。  そこで国連訪問、総会に本当に行かれるのか、傍聴なさるのかどうか、この点はきょう明確にしていただきたいと思うのです。私は、やはり政治的な色彩があって誤解を招くようなことについては、政府も天皇御自身も御遠慮すべきだと思うのです。この点はアメリカ局長から、もう少しアメリカ側との話し合いの内容についてお答えいただいて、総務長官の御所見を賜っておきたいと思うのです。
  258. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 今回の陛下の御訪米は、あくまで米国御訪問でございまして、国連に行かれるということは、これは一つの別の角度から検討さるべきものだろうと思います。いま上原委員のおっしゃいました新聞記事は、私も拝見いたしましたが、どういうソースでそういうことが報ぜられたのか、私としては全然見当がつかない次第でございまして、そういうふうな具体的な検討ないしアメリカ側との協議というふうなことが、いま行なわれておるというようなことはないのでございます。  ただ、陛下が御訪問になる土地の一つとしてニューヨークがあり得ることは事実でございます。そのニューヨークに国連本部がございます。そしてその国連は、御訪問の時点においては総会を開いておると予想されます。そういうこともいろいろ考慮いたしまして、われわれとしては、日程は検討いたしておりますが、先ほどから申し上げますように、陛下が政治に関与されないという立場はあくまで貫いて日程をつくるつもりでございますので、御懸念のようなことは決してないと存じます。
  259. 植木光教

    ○植木国務大臣 両陛下の御訪米の御日程につきましては、私は公式にも非公式にもまだ聞いておりません。  そこで、先ほど来の御質疑の中に、ワシントンにおいて十月二日及び三日の両日公式行事が行なわれる、こういう発表があってかえって誤解を招いているではないかという御説でございましたが、私も同様に、他の各地への御訪問が必ずしも私的なものであるというふうには考えておりません。やはり公式の御訪問であると考えているのでございます。  なお、先ほど来お話がございます天皇の公的行為というものにつきましては、国政に関する権能を天皇がお持ちでないことは、憲法第四条で明らかでございますので、いやしくも国政に影響を及ぼすことのないように内閣は責任を持ってこれに当たっているところでございまして、今回の御訪米につきましても、天皇が政治に関与せられることがないように最大限の配慮を払い、そのようなことがないということのお約束をここでするものでございます。
  260. 上原康助

    上原委員 現段階では、国連に御訪問なさることについてもまだ白紙、さらに特に国連の総会が開かれている段階で御傍聴なさるということについても全然その計画は政府にはない、こういうふうに理解してよろしいですか。
  261. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 国連に行かれるかどうかということについては、まだ具体的な検討は行われていないということを申し上げた次第でございます。ただ、先ほどから申し上げますように、陛下が御訪問になる土地の候補の一つとしてニューヨークがあり得るということも考慮して、この問題は今後の検討課題でございますけれども、あくまで政治に関与されない、全く純粋な親善訪問であるというその御訪問の性格は貫くように、われわれとしては十分配慮してまいるつもりであるということを申し上げたいと思います。
  262. 上原康助

    上原委員 そこいらの点は、政府はよく御配慮をしていただいて、国民の誤解と、また先ほどからのいわゆる象徴天皇としての行為の範囲といいますか、限界というようなこともお含みの上でこの問題については対処していただきたいと思うのです。  そこで、ちょっと先ほどの議論にまた戻るのですが、宮内庁から出されている要覧などを見まして、あるいはまたそのほかの雑誌等にも若干出ているわけですが、特にここで私が問題にしておきたいことは、いわゆる拝謁、謁見、私謁、そういうことは一体どういうのに入るのか。これは、まさか公的行為ではないと思うのです。まずそういうのと、四十八年はこの儀式あるいは行事ということで二百四十二件が挙げられているわけですが、四十七年はどのくらいあったのか、四十六年はどうだったのか、四十九年はどのくらいの方が天皇にお目にかかっているのか、明らかにしていただきたいと思うのです。
  263. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 お答えいたします。  ただいまお尋ねになりました拝謁あるいは謁見、このことは天皇陛下、皇后陛下にお目にかかる、あるいは天皇陛下、皇后陛下から申しますとお会いになる、こういうことの状態といいますか、そういう事実をそういう言葉で表現しているわけでございます。前者の方は、国内のいわゆる日本人の方々の場合に慣用的に使われており、後者の言葉は、外国の大、公使あるいはその他外国から見えた賓客といいますか、国連機関その他国際機関の代表的な立場にある方等、そういう方の場合を言うております。  この行為がいかなる行為の分類に入るかというお尋ねでございますが、これは、やはり象徴としての天皇の御行動、そういう地位に基づく御行動ということで公的な行為である、かように解しております。  なお、その儀式につきまして二百四十二件という数字を挙げられたのでありますが、その前年の四十六年、七年、この数字は、ただいま手元にございませんので、もし何でしたら後ほど上原委員のところへお届けしたいと思います。
  264. 上原康助

    上原委員 私がいま挙げた二百四十二件というのは、儀式、行事の全部じゃないんですよ。拝謁、謁見、私謁、そういうものが二百四十二件もあるんだ。  じゃ法制局にお尋ねしますが、象徴天皇としての立場で外国の方、あるいは拝謁なさるという方は国民の何らかの代表でしょうが、それは法的にはどういうふつう解釈なさるのですか。そういうようなことも、先ほどの御説明ではほぼ、この限界といいますか、どういう行為が一応考えられるということは明らかにされたと私は思うのですす。ですから、かなりの程度理解できるのですけれども、どうもこういった拝謁とか謁見というものが果たしてどういう行為になるのか、私的行為なのか公的行為なのか、きわめて不明確なんですね。法制局はこれはどういうふうに解釈なさるのですか。
  265. 角田礼次郎

    ○角田(礼)政府委員 天皇が人にお会いになるということには、当然公的な立場でお会いになる場合と私的な立場でお会いになる場合とがあり得るのじゃないかと思います。公的な立場でお会いになるものにつきましては、先ほど申し上げたようないわゆる公的行為の概念に当たるものと考えます。その具体的な例につきましては、たしか四十八年の国会でもいろいろ論議されましたけれども、検事正の会同があったときに、その機会を利用して検事正にお会いになるとか、あるいは地裁の所長とか家裁の所長の会同がありましたときに、その機会を利用してお会いになる、そういうようなものが例として挙げられていたと思いますが、そういうものは、やはり天皇が個人として私的な立場でだれかある人にお会いになるのとは性格が違い、先ほど宮内庁次長から御説明申し上げたように、象徴としての天皇に対して国民のあるグループの者がお目にかかるということでございますから、それは公的行為に当たるものと私ども理解しております。
  266. 上原康助

    上原委員 そうしますと公的行為に当たる、私は、いまの御答弁には若干疑問を持ちますが、素人ですから、御専門の方がおっしゃるので聞くに値するとは思うのです。しかし先ほどおっしゃったような要点からするとかなり納得しかねるわけです。問題はどういう代表が会うかということなんです。この拝謁、謁見をなさる場合は、宮内庁かだれかお立ち会いになるのですか。
  267. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 ただいまお尋ねの拝謁、謁見というような関係で天皇あるいは皇后に会われるということは、性格的にはただいま申し上げたことでございますし、内国人、外国人の別はございますけれども、それぞれしかるべき宮内庁の職員が立ち会っております。
  268. 上原康助

    上原委員 いろいろ記者などで長い間お勤めになった方々が、天皇家のこととか皇居のことを述べているあれを見ますと、行事の中身も明治憲法下とほとんど変わらないということなんですね。確かに、先ほどの御説明のように法制上は変わった、しかし内容面の行事とかいうのはなかなか変わっていない。宮内庁の頭の切りかえというのは、万世一系の天皇に奉仕をしたような感覚でしかいまやってないと思うんですね、国会ではそういうことをおっしゃっても。  ですから、そういう面はどういうふうに実際皆さんは日常の職務でやっておられるのか。たとえば国民の祝日の問題にしたって、本当に先ほどおっしゃったように平和憲法下、いわゆる日本国憲法の象徴天皇の地位ということになるならば、なぜ憲法記念日というのを天皇はお祝いなさらないのか。本当に平和の象徴であるとするならば、こどもの日なんかは当然祝っていいと思うのです。一つの行事として入れていいと思うのだが、全くたな上げにされてきている。こういう問題についてはどうお考えですか。少なくとも皆さんが、  それは国会で法律で決まったからそうなったのだ、あるいは内閣の助言によっていろいろやるかもしれない、宮内庁独自でやるかもしれない国事行為は内閣の助言ですね。しかし本当に平和憲法下における象徴天皇、国民統合の象徴ということであるならば、国民の一部の象徴ではないはずなんです。そうであるならば、国民の一部に賛成しかねる方がおっても、行事の面においても、内容的に天皇のそういった催しというものは変わってしかるべきだと私たちは理解をするのですが、ここいらはどうお考えですか。
  269. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 儀式その他につきましては、新年の儀式が閣議決定で国事行為の儀式と相なっておるわけでございますが、これは天皇がみずから御主宰される儀式ということでございます。その他臨時の、たとえば皇太子の御成婚というようなことがございますけれども、天皇の御行動という点に着目して見まするならば、それぞれこういうことに臨んでいただきたい、たとえば植樹祭にしてもそうでございますし、あるいは国体の開会式についてもそうでございますが、そういう声をお受けになって御行動されるわけでございます。そういうような観点で御行動になっておるわけでございまして、それを補佐する私どもとしては、憲法の諸条章に規定された天皇の御地位あるいはそれを取り巻く皇族の地位というようなものに十分心をいたして補佐してまいらなければならない、かように考えております。
  270. 上原康助

    上原委員 だから問題は、要するに取り巻き陣なんだ。天皇御自身は、憲法記念日なんかお祝いしたいというお気持ちがあるかもしれない。(発言する者あり)そうさせないように政府もやってきているし、周りもやってきている。それこそ大きな政治問題だ、そういう見方もあるんですよ、皆さん。まあ、ここで不規則発言で笑っている方もいるわけなんですが……。  では、天皇に対して定期的な政務報告というのをいつごろからやっているのですか。
  271. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 そういう定期的な政務報告という形は、少なくとも新憲法が施行になりまして以降ないはずでございます。ただこれは、上原委員御案内のように、天皇が憲法第四条二項あるいは六条、七条、こういうものに規定されておりまする国事行為をされる場合、内閣の助言と承認に基づくという厳粛な規定があるわけでございます。つまり認証、総理の親任というような事柄とか、その他いろいろ書いてございますけれども、そういう際に助言と承認の責任を有しておられる内閣の国務大臣が、その事項につきまして御署名をされる、あるいは御決裁される、あるいはそれに伴う儀式をされるとか、そういう前にしていただく事柄を、内容につきまして御説明を口頭で申し上げる、こういうことがございます。これを私どもの言葉では内奏と呼んでおりますが、こういうこと以外に定期的に政務を御報告になるということはございません。  ただ、そういうことで内奏されます際に、あるいはそのついでに所管事項の御説明をなされる方もあるのではないかと思いますが、この助言と承認の責任を持たれておる内閣の国務大臣がそういうことを説明される際は、一切これは宮内庁の役人も幹部もこれには同室をいたしておりませんので、内容はちょっと承知いたしかねます。
  272. 上原康助

    上原委員 総務長官は、御就任以後内奏なさったことがありますか。
  273. 植木光教

    ○植木国務大臣 ございます。
  274. 上原康助

    上原委員 なさる場合は、やはり所管の大臣がなさるというのが常ですか。それとも一般局長とか——もちろん裁判官の場合は違います。それは一応国事行為としての認証式がありますからそれは別として、一般の役所のどういう方々が主に内奏をするのか。それは定期的なものでないにしても、やはり何回おやりになるとか、どの役所が、どういう方々がやったというぐらいのことは、当然宮内庁としてはわかっておらなければいかぬことですね。
  275. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 ただいま所管事項の説明と申しましたのは、いま申し上げました助言と承認の責務を有しておられる内閣の国務大臣がみずからおやりになる場合がありますが、これは年に数えるほどしかないのでございます。ただ内奏という国事行為に伴いましての助言と承認で御説明申し上げるということは、四十九年度で二十三回でございます。これは最高裁判所長官の任命とかそういうことも全部含みますので、あるいは叙勲ということも含みますので、そういう回数になっております。したがいまして、各省の局長クラスがそういう形の所管事項の説明に上がるということはございません。ただ御進講という形で、外務省局長が国際情勢についていろいろと御教養といいますか、そういうものを深める意味で参考に定例的に行われているのがあります。
  276. 上原康助

    上原委員 そういたしますと、一般的たてまえとしては、内閣の助言と承認を得るものについてしか内奏できない、一般的にはそういう歯どめがあるわけですね。そういうふうに理解していいですか。
  277. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 大筋は、そういう御理解をいただいて結構だと思うのでありますが、ただいまも御説明申し上げましたように、内奏の際に、国務大臣によりましては所管事項について、内奏と一体ではございませんけれども、その際を利用して申し上げられる、こういうことはあると思います。
  278. 上原康助

    上原委員 何も私はすべてやるなと主張する立場はとっていないわけです。これは国務大臣が所管事項について、場合によっては天皇にいろいろ御説明なり、また外務省ですと外交関係なり、国際情勢なり、政治情勢についてやらなければいかぬと思うので、そこまですべてやるなとは申しません。問題は、私ちょっときょう時間の関係で結論を急ぎますが、自衛隊の幹部が一体いつごろから内奏という形で天皇にお会いするようになっているのか。これは一体内閣の助言と承認を得てやっているのか、そうではないと思うのです。自衛隊をコントロールしているのは防衛庁長官だと思うのですが、この点については、いつごろから始って、現在はどういうふうになっているのか、何名の幹部が会っているのか明確にしていただきたいと思います。
  279. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 自衛隊の幹部が内奏という形で陛下にお目にかかっていることはございません。ただ内閣の、いわば国務大臣の一員としての防衛庁長官がお会いになっていたということはあると思いますが、しかし自衛隊のいわゆる幹部がそういうことは一切いたしておりません。ただ自衛隊の職員が拝謁という形で十数名ぐらい、あるいは二十名近くなったかもしれませんが、そういう形で列立でお会いになった例はございます。これは始期については明確ではございませんが、そういう例はございます。これは、あくまでもお目にかかるということでございまして、消防官とか警察官とか、あるいは検事正会同とかいう際には検事正が、あるいは裁判所長会議の際には裁判所長が、こういうふうにして、いわゆる国、地方の別を問わず、そうした公務員が、それぞれの所属省庁の願い出によりまして拝謁という形をとりたい、お会いしたいということであれば、そういうふうに取り計らっておる次第でございます。
  280. 上原康助

    上原委員 先ほど私、自衛隊の幹部が内奏と言ったのはちょっと私の間違いです。いわゆる拝謁ですね、これは明らかに問題がありますよ。あなた、消防官とかあるいは役所のどなたかがお目にかかりたいからといって行くのと同じ、そういう感覚じゃ困るんですよ。なぜ天皇問題というのがこう議論をされるかというその歴史的背景一体何だったかということについて、もう少ししっかりと受けとめていただかなければ困ると思うのです。  しかも自衛隊のメンバーが拝謁をする場合に、何か代表が誓詞を読み上げているというのですが、それは宮内庁は御存じですか。
  281. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 誓詞というものを読み上げるかどうか私存じませんけれども、通例一般にいわゆる拝謁という形でお目にかかります場合は、たとえば紺綬褒章を受けられた方々が宮中に見えて拝謁という場合にも、それの代表の方が、こういうわけできょう拝謁を受ける機会を得ましたというような式の言葉は、拝謁される方の方から申し上げる一種の儀礼的な言葉はそこにございます。
  282. 上原康助

    上原委員 そういうこととは違うと言うんですよ。天皇にお目にかかった方が、いつまでも御丈夫であられるようにと申し上げるのはあたりまえでしょうそれを私はとやかく言おうとは思わない。あるいは勲章か何か受章をされた方がお礼の言葉を言うのは、これも人間としてごくあたりまえのことであって、そんなことと自衛隊の幹部が天皇にお目にかかっていろいろ言うのとは違うと私は言うのだ。少なくとも国論が二分されている中で、しかも天皇の政治的な関与というもの、あるいは政治的な色彩のない行為というようなことについてこれだけ議論をされている中で、これは法的に言ったって何の根拠もないはずですよ。  これは法制局についでに確めておきたいのですが、自衛隊幹部が拝謁だ拝謁だといって天皇に会うというのは、これは何行為ですか。そういうのは、先ほどおたくが御説明なさったような範囲に明らかに入らないでしょう。こういうことはやめるべきですよ。  しかも、もう時間がありませんから私の方から言いますが、慎んで聖旨に沿い奉らんことを期す、こういうことを言う。こういうことをやろうとするところに、天皇を神格化していく、あるいは明治憲法下における天皇制に持っていこうとする、これは国民の側から見ると、私たちの立場から見ると、明らかに越権行為であり、逸脱行為であり、憲法上も問題だと言うのです。この点については法制局どうお考えですか。
  283. 角田礼次郎

    ○角田(礼)政府委員 どうも自衛隊についての御認識が基本的に違っておる立場でございますので、非常にお答えしにくいわけですけれども、私どもとしては、国会において制定されました防衛庁設置法及び自衛隊法に基づいて、国を防衛する任務を持っておる国家公務員、その自衛官の代表にお会いになるということは、先ほど申し上げた検事正であるとかあるいは裁判所の所長に会うのと法律的な性質においては全く同じである、したがいまして、公的行為であるというふうに理解いたします。
  284. 上原康助

    上原委員 そのくだりは納得できませんね。あなたは、政治に対して何も見解を述べる立場にないはずなんですよ。もちろん防衛庁設置法とか自衛隊法を、私は議論しているわけじゃないのです。これは政治にかかわることなんです。  ぼくは三時二十分ごろ東京を脱出せねばいけませんので、まだ質問残っていて残念なんですが、そこで最後に、いまいろいろ指摘いたしましたが、要するに、なぜ天皇問題について私たちがいま指摘したようなことを申し上げるかと言いますと、かつての天皇制のようなものを再び復活さしてはいけないということでしょう。憲法九条がなし崩しに形骸化されたように——本来は国事行為と私的行為しかない、憲法を厳密に解釈すれば。これは素人が見たってわかる。学者がいろいろあれこれもてあそぶから世の中はますますむずかしくなる。そういうことを考えた場合に、憲法というものを大前提にした行為あるいは象徴天皇としての地位、しかも政治に関与しないというこの原則だけは絶対に守らなければいけないと思うのですね。国論を二分化されている防衛問題なりあるいは自衛隊の問題に対して、国会でそういう法案が通ったのだから、自衛隊が天皇に拝謁をしていろいろな誓詞を述べてもいいというようにはならないと思うのです。  こういうことに対して総務長官は、もちろん私の見解とは違うと述べるかもしれませんが、もっと公正に政治というもの、あるいは象徴天皇制というものを考えた場合には、私の言っていることをあたりまえだ、妥当だと言う方もまたたくさんいるわけですから、ここいらのこの国民の立場なり世論というものを十分にわきまえて天皇問題については対処していくべきだと思うのです。この点についての長官の御見解を承っておきたいと思うのです。
  285. 植木光教

    ○植木国務大臣 憲法におきまして、天皇は国家の象徴であり国民統合の象徴であると明記されておりますし、国政に関する権能を有しないということも明記されているところでございます。したがいまして、この憲法に基づきまして天皇の象徴としての地位の尊厳性が確保せられますとともに、同時に、国民と天皇との間に一体的な、心の通い合うことが、私どもの望ましい天皇のあり方であると考えているのでございます。  なお、自衛官の問題につきましては、見解を異にいたしておりますことを申し上げさしていただきます。
  286. 上原康助

    上原委員 これで終わりますが、見解を異にしているからといって、これはそう簡単に片づけられる問題ではないのです。これはまた防衛二法のときにやりましょう。終わります。
  287. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 和田貞夫君。
  288. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 先ほどからもいろいろと論議されているわけですが、天皇の問題につきまして、旧憲法下における場合は元首として、すっきりと君主制を持った日本の元首として規定されておったわけでありますが、戦後の場合、新憲法によって象徴天皇ということになっておるわけでありますから、政治的に言うならば、政治に利用するということでありますが、一般的に言うならば、大人が、戦前から戦中にかけて生をうけた者が、余りにも天皇制をもてあそんでおる、こういうように言わなくちゃならないと思う。新しい憲法下で生まれて今日まで育った子供たちにしてみたら、大人のこの論議というのは何をやっておるのかというくらいの程度しか見ておらないのじゃないか、私はこういうように思うわけです。ややもいたしますと、天皇制イデオロギーを何とか復活さそう、そういう一部の動きというものがあるがために、必要以上に政治に利用しよう、あるいはできる限り天皇を昔のように神格化していこうというような、象徴天皇としての域を脱するようなもてはやし方をやっている向きがあるわけです。  したがいまして私は、宮内庁という役所について、戦前の宮内省といまの宮内庁とおのずから役所としての事務分掌が根本的に異っておると思うのですが、まず、いまの宮内庁は一体どういう行政所掌というものがあるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  289. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 お答えいたします。  御質問の宮内庁の権能といいますか職分、これは宮内庁法の第一条に所掌事務として規定されておりまして、「宮内庁は、内閣総理大臣の管理に属し、皇室関係の国家事務及び政令で定める天皇の国事に関する行為に係る事務を掌り、御璽国璽を保管する。」かようになっております。
  290. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そうすると、いわゆる論じられておる公的行為に対して、宮内庁が所掌するというそういう字句は何もないじゃないですか。
  291. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 いまお読み申し上げましたように、「皇室関係の国家事務及び政令で定める天皇の国事に関する行為に係る事務」で「天皇の国事に関する行為に係る事務」というのを明定して、これは政令で第九号と第十号に係る事務を扱う。そして、この前段で「皇室関係の国家事務」とこうありまして、この国家事務の中には、国家機関としての国事行為をされる天皇の地位並びにその行動に関する事柄といわゆる公的な行為に係る事柄、この事務を扱う、こういうふうに解釈をいたし、また定着をしておると考えております。
  292. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 あなた方が勝手に解釈をしておるだけのことであって、明文化されてないじゃないですか。宮内庁の所掌事務として天皇の公的行為に対してどうするというようなことが一言一句もないじゃないですか。あなたの方が勝手に解釈しているだけにすぎないじゃないですか。国事行為というのは、憲法で明らかに羅列されておるわけでありますが、それじゃ一体、あなた方が公的行為として解釈をしておる行事というもの、天皇の行為というものは、何と何と何とあるのだということをこの機会に羅列してください。
  293. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 先ほど法制局の第一部長から、基本的な範囲につきまして、あるいは限界につきましてはお述べになっておられます。具体的な公的行為というのは、先ほども例示は可能であるけれども範囲を明確に決めることは困難である、こういうように法制局も言っておられるわけでありますが、若干の例示を申し上げますと、認証官の認命の式あるいは文化勲章を伝達することに御臨席といいますか立ち会われる式あるいは園遊会あるいは講書始の儀とかあるいは国公賓の接遇、これは皇室としての接遇でありますが、あるいは外国元首との御親電の交換、先ほども法制局で引用をいたしておりましたが、国会の開会式へのお成り、あるいは全国の戦没者追悼式への御出席、あるいは国体、植樹祭、あるいは学士院、芸術院のそれぞれの授賞式への御臨席、このほかいろいろまだございますけれども、主なものを例示いたしますと、以上のとおりでございます。
  294. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 だから、これも公的行為だ、公的行為だということで拡大解釈しようと思ったら、何ぼでもできるじゃないですか。私的行為というのは、もちろん人間としての生活を営むための行為、これははっきりしております。国事行為というのは、憲法で規定されておるとおり、はっきりしております。公的行為も、これはたとえばというのじゃなくて、かくかくかくが公的行為だ、それ以外は私的行為なんだというような、宮内庁としての明確な見解というのはないんですか。
  295. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 公的行為につきましては、日本国並びに日本国民統合の象徴としての御行動、つまり自然人としての御行動のうち公的な色彩が濃いもの、こういうふうに考えておるわけでありますし、法制局もそういうような考えをいたしておるのでございます。  それでは、その範囲の限度と申しますか、それにつきましては、先ほど理論的な限界として法制局が述べておりますけれども、いやしくも国政に影響するようなことがあってはならない、そういうこと、これがしかも内閣が責任を持って補佐をする、こういう意味において一つの限界といいますか、あれがあるように考えております。
  296. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 それでは、宮廷費と内廷費というのがあるわけですが、内廷費と宮廷費、これが非常に抽象的で、宮廷費とは、内廷諸費以外の費用を宮廷費という、こういうことだけですね。内廷費、宮廷費合わせて、天皇の私的行為、それから国事行為、それから、あなた方が範囲をだんだん拡大しようとしておるいわゆる公的行為、一体この三つがこれらの予算の中でどのぐらいの比率になっておるかお聞かせ願いたい。
  297. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 ただいまお尋ねの、いわゆる国事行為、公的行為、私的行為に要する経費についてのことでございますけれども、これは御案内のように、法律で定めておりますように、天皇並びに内廷にあられる皇族の日常の費用及びいわゆる内廷諸経費、これは全く私的な御行動に伴うもの、関連するものと考えるわけでございますが、これは内廷費から支出さるべきものである。それからそれ以外、天皇及び皇族の公的な地位及び公的な活動に関する経費は宮廷費からということでございまして、五十年度でお願いをいたしております予算について見ますと、経費の概算の要求に即して申しますと、内廷費は一億六千七百万円でございます。宮廷費は十八億七千二百六十七万円でございます。この宮廷費は、先ほども別の委員にお答えいたしましたように、皇室用財産の維持、管理等に必要な経費、これが大半を占めておるわけでございますが、皇室の公的な御活動に関する必要な経費、一応分類をしますれば、この二本立てになるわけでありまして、国事行為に関連をする、たとえば新年の儀式その他そういうものも、この公的御活動に必要な経費の中に含まれておりますし、いわゆる公的な行為に関連する経費、これもこの中に含まれておるわけでありまして、これを分類いたしますと、二億五千四百万ばかりになるわけでございます。
  298. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 その中で、国事行為に使われていると見込まれている額が何%で、あなた方の言わんとするところの公的な行為として使われようとする見込み額が大体何%でという、その率をお聞かせ願いたい。あるいは過去の決算から、大体どのぐらいの率だということを、わかったら知らせてもらいたい。
  299. 石川一郎

    ○石川(一)政府委員 ただいま次長から御説明申し上げましたように、天皇及び皇族の公的活動等に関連する経費は、宮廷費から支出されることになっておりますし、内廷費は、天皇及び内廷皇族の御日常の費用その他内廷諸費に充てるものとして支出されるわけでございます。  ただ宮廷費の中には、公的地位等に関連いたしまして、財産の維持管理費あるいは財産の取得費、そうしたような経費も組み込まれておりますし、それから儀典関係等の経費も組まれております。あるいは外国御訪問等の経費も組まれておるわけでございますが、それらにつきまして、この部分が国事行為である、この部分が公的行為であると的確に計算することは、具体的にはちょっとむずかしいと思うのでございます。  それから、内廷費には私的行為の部分があるわけでございます。しかしその場合に、私的行為と言われる場合にもいろいろございます。お食事をなさるのも私的行為でございますし、相撲をごらんになるのも私的行為であると思いますが、それを、どういうものを、どういう概念でどうとらえるかということになりますと、それを、的確にいまどの程度になっているかということを申し上げることはむずかしいと思うのでございます。
  300. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そのあたりが私は非常にあいまいだと思うのです。やはり国事行為というのは、憲法できちっと明確にされておるのですから、おのずから、羅列されておる行為については国事行為だ、だから、それぞれに使われる費用が、国事行為として大体宮廷費の何%を使っておる、それ以外はいわゆる公的行為に属する費用だ、だから、ことしのこの見込みがわからなければ、去年の実績なりあるいはおととしの実績なり、過去の実績として、あなた方が言わんとするところの公的行為には大体どのぐらい使っておる、国事行為には大体どれだけ使っておるということは出るでしょう。
  301. 石川一郎

    ○石川(一)政府委員 ただいま申し上げましたように、具体的にその行為に関する支出の範囲をどう決めるかという問題が、私どもから言いますとむずかしいのでございます。的確にいま申し上げることはできないと思いますが、ただ宮廷費の中で国事行為に関する部分と申しますのは、先ほどの宮内庁の所管に関する事務は、大公使の接受、それから儀式を行うこと、この二つでございます。したがいまして、比較的国事行為に要する費用は、宮内庁の所管に属する部分としてはそう大きい金額ではない、こういうふうに考えております。
  302. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そうすると、予算に占めるウエートも——これは少なくとも憲法ができた当時、公的行為ということをだれしも口にしなかったと思うのです。天皇には私的行為と国事行為しかない、それの予算の裏づけが内廷費と宮廷費である。ところが最近になって公的行為、公的行為ということで、その公的行為の範囲さえも明確でない。  そうすると、宮内庁の所管する国事行為として宮廷費において支出されているウエートというのは非常に低い、言うならば本末転倒じゃないですか。国事行為よりも公的行為の方がウエートが高い。どんどんと公的行為というのは範疇が広がっていく、また広げていこうとする、そういうことが言われるのじゃないですか。どうですか。
  303. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 公的行為と国事行為にかかる費用というものが、公的行為の方が相当に大きな比率を占めるのではないかというまず第一のお尋ねでございますが、これは先ほど経済主管が説明いたしましたように、宮内庁が直接所管をいたしております国事行為が限られております関係上、そういうように占める率としては低いわけでございます。  しかし公的行為と申しましても、先ほど来説明を申し上げた中にもあったと思いますけれども、たとえば国賓の来日に伴いまして、これは政府が接遇をいたすものでございますけれども、その中の皇室の関係が受け持つべき接遇というようなものもこれはかなりございます。宮中の午さんとかあるいは晩さんとかいうようなこと等もございますし、それから、たとえば新年の祝賀行事でありますとか、こういうものには、行為そのものに関連をいたしまして、それに付属するいろいろな消耗品あるいは備品的な物から含めますと、やはり相当な額にならざるを得ないわけでございます。
  304. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 宮廷費というのは、東宮御所を新営された時期であるとか、あるいは皇居を新営された時期であるとか、あるいは造営をされた時期であるとか、そういう時期は予算がふくらんでおるということは理屈がよくわかる。ところが昭和二十二年、昭和二十三年あたりから見てまいりますと、そういうような特殊な需要のために、宮廷費の予算が大幅に増額されたということはわかっても、年々宮廷費の予算というのは拡大する一方じゃないですか。しかも内廷費、皇族費については、これは明確に法によって規定されておるから、国会の議決がなければ使えないということでありますが、宮廷費については、去年を見ましても、おととしを見ましても、さきおととしを見ましても、全然補正予算にも組まれておらない。しかし決算額を見ますと、当初予算よりも決算における予算現額というのは非常に大幅に増額されているじゃないですか。予備費から支出しているじゃないですか。去年の場合も、少なくともかなりの予算が予備費支出という形になっているじゃないですか。  だからあなた方は、いわゆる公的行為というのをきちっと整理しておらないために、これも公的行為だ、あれも公的行為だということで、何ぼでも幅を広げて、宮廷費がどんどんと伸びていく一方にあるんじゃありませんか。なぜ毎年毎年、予備費支出をしてまでも、宮廷費が上回っていくということになっていくのですか。
  305. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 宮廷費が毎年ふくらんでまいります一番の大きな原因と考えられますのは、やはり国際親善費、先ほど申し上げました国際親善に関する経費でございますが、これがいろいろ、外国との御交際というものがふえるにつれまして、そういうことが多くなってきておるということでございます。なお、その宮廷費の中には、たとえば桂離宮の維持管理費でありますとか、あるいは正倉院の御物の維持管理費、あるいはそれを学界の御参考にするというような式の経費までもこれには含まれておるわけでございます。  で、予備費等の御指摘がございましたが、四十九年度はただいま進行中でございますけれども、四十八年度の決算報告書に確かに御指摘のような予備費の使用がございますが、これは当年、非常に外国からの御来訪があったようでありまして、英国のケント公あるいは同妃殿下とか、スウェーデンの殿下とか、こういうように外国からおいでになったのもございますし、皇太子、同妃殿下がスペイン、ベルギー等を公式に御訪問になったというようなこと等がございまして、既定の組まれた予算においては予測し得ない不時の使用が出ましたので、こういう予備費を計上したものと考えております。
  306. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 国際親善に関する費用が非常にウエートを占めておるというように言われるわけですが、それではソ連との間に国交が回復した、日中の国交が回復した、新たにいままで外交関係がなかった国がふえてきた、それらの国との親善のために、いままで外交がなかったのだから、外交がふえたために国際親善の費用がかさんでくるのだ、こういうようなことであれば話がわかるのですが、そうじゃないでしょう。訪米計画というものはあっても、訪中計画というものはないでしょう。訪ソ計画というものはあるのですか。
  307. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 御訪米の計画については、先ほど来外務省局長からお答え申し上げておりましたが、それ以外の計画については、現在のところ御訪米一本やりということで、ほかにはございません。  ただ、どういう国の方でございましょうとも、国交が開け、そして日本を御来訪される、それを国賓として内閣においてこれを接遇する、こういう御決定がありますれば、これは皇室として、その皇室が担当すべき分の御接遇というものは、当然いたすことになると思います。
  308. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 庁費だとか各所修繕費だとかあるいは施設整備費だとか、こういう費用は毎年続けられることが必要なんですか。
  309. 石川一郎

    ○石川(一)政府委員 宮内庁にも、それぞれ相当の建物がございますし、庭園等もあるわけでございまして、それぞれの修繕、整備については、これはまた必要であると考えるわけでございます。  庁費等は、そこにあるいは内容があるかと思いますが、儀典関係とかあるいは宮殿の管理でございますとか、あるいは宮内庁の所管いたしております文化財の保護、管理でございますとか、いわば先ほどの皇室関係の国家事務を運営するのに必要な日常の経費に近いものでございますので、そういう意味では必要な経費であると考えております。
  310. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 宮廷費の庁費でも皇居等施設整備を含んでおる、あるいは施設整備費の中にも皇居等施設整備を含んでいる、皇居の施設整備はこっちにもあっちにも含んでおる。これは何か使い方は別なんですか。
  311. 石川一郎

    ○石川(一)政府委員 庁費の方で組まれておりますのは、施設整備のために必要な部品、消耗品その他、そういうものを購入する、そういう意味の経費でございまして、各所修繕費の方に上がっておりますのは、具体的な修繕に要する経費、こういうことでございまして、庁費の方はごくわずかでございまして、実態は各所修繕費の中に組み込まれておる、こういうことでございます。
  312. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 いろいろな使い方というのは、それはあるとしても、やはり皇居の施設整備費というのは施設整備なんですからね。大体何カ年計画でやっていくのだというような計画性が明らかでないと、毎年毎年、皇居の施設整備が庁費の方にも入っておる、施設整備費の方にも入っておる、これでは予算を見まして納得できませんよ。一体いつまでやっていくかということです。物事というのは、やはり限度、限界があるんですよ。それほど長く続かないと、皇居の施設整備というのはできないんですか。
  313. 石川一郎

    ○石川(一)政府委員 皇居等と書いてございますので、皇居だけではございませんので、宮内庁で管理いたしております陵墓等もございますし、各種の施設があるわけでございます。これらは一定の計画を立てて整備をはかっていかなければならないのでございまして、一定の計画をもってやっております。施設でございますので、これで終わりということはなかなかむずかしいと思いますけれども、陵墓等でも一定の計画を立てまして、それが大体済めば計画としては終わるという時期は来ると思いますけれども、いまおっしゃるように、皇居等施設整備費が減っていくとかなくなっていくとかいうことは、なかなかむずかしいと思います。
  314. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そのような整備費にいたしましても、あるいは修繕費にいたしましても、私は、他の官公庁の庁費であるとかあるいは施設費であるとかならば、もっと明確な、予算の使途の内容も含めてやはり納得いくように国会における説明もあろうかと思いますが、皇室経済に属する費用なんだから、余り論議もされないだろう、予算さえ組んでおったら何とか通るだろう、こういう安易な考え方で宮廷費を予算化されているように私は思うわけです。  そこで、ことしは間に合わなくても、次の機会にはもう一度、三木さんの言うように、この点についても洗い直して、かくかくしかじかの経常的な経費というのは必要なんだ、あるいはこの点については、特殊な経費として何年から何年までは必要なんだというようなことを明らかにした内容で予算の提出というものを、予算も済んだことでありますが、その点ひとつ明確にしてもらうように希望しておきたいと思いますし、それから私はさらに、公的行為というのが非常にあいまいでありますので、予算の面からも、言うならばこの公的行為というのは、国事行為と比べてこれだけのウエートを占めておるのだということを、適当な機会に宮内庁としての見解を明らにしてもらいたい、こういうことを一つつけ加えておきたいと思うわけであります。  さらに、内廷費の問題につきまして、皇室経済法に基づく皇室会議がその変更を認めた場合に、その内容を内閣に提出することになっているが、総務長官、皇室経済会議から今回の内廷費を増額する必要があるということを、いつの時期に内閣に提出されましたか。
  315. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 お答えいたします。  昭和四十九年の十二月二十七日に皇室経済会議が開催されたわけでございますが、その意見の結果は、同日内閣に提出されております。
  316. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 四十九年の十二月二十七日に内閣に提出されて、それでは内閣はそれを受けて国会にいつ報告されたのですか。
  317. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 内閣は衆参両院議長に対しまして、翌十二月二十八日に報告をいたしております。
  318. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 その報告を議長が受けておりますが、私たちは、国会の再開以降初めてこの法の改正予算というのは知ったわけです。だから、少なくとも私たちは、国会に席を置く者として、皇室経済会議で決められた内容というものは、法律予算が出てからでないと承知できない。皇室経済会議物価上昇あるいは人件費の上昇が一〇%を上回るときには、その必要性があるということで内閣に意見を提出するということになっておるらしいのですが、内廷費が最初決められたときには、物価上昇や人件費の上昇ということでなくて、少なくとも内廷費の内訳、内廷費を幾らにしなくてはならないという、その内容の具体的なものまで国会で説明されておるわけですね。  だから、ただ人件費がこれだけ上がって、物価がこれだけ上がったので内廷費については二〇何%引き上げるのだということではなくて、今日引き上げようとした額並びに一億六千七百万円から使われるであろう内容を、この機会にひとつお聞かせを願いたい。     〔木野委員長代理退席、委員長着席〕
  319. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 お答えいたします。  本年度御審議をお願いいたしております内廷費一億六千七百万円、これにつきましては、もうすでに先ほど御指摘がありましたように、御案内のようないわば作業をいたしまして、その総額としてただいまのように定めておるわけでありますが、この内訳につきましては、物件費と人件費に一応積算上区分をいたしまして、その物件費につきましては東京都区部の消費者物価上昇率、それから人件費につきましては国家公務員の給与改善率、こういうものをそれぞれ乗じまして、さらに不時の支出等の用に充てるという観点から、予備的経費としましてそれぞれの一〇%を計上いたしてその総額、つまり、その積算の基磯の合計に基づきまして総額を定めておる、こういうわけでございます。
  320. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 昭和二十二年度分の内廷費の最初八百万円ということを決められたときには、いわゆる内廷費のうちの手元金、内帑金というように言われておりましたが、それが大体四〇%を占めておられました。あとは皇子の養育費であるとか、あるいは旅行費であるとか、あるいは用度品であるとか、私的使用人の給与費であるとかいうその明細が国会で説明されておりますが、そういうような説明というのはできないのですか。
  321. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 使途の割合につきましては、いろいろ御需要の相違もあるわけでございますが、最近の三カ年について見ますると、先ほど申し上げました物件費と人件費の割合というのは六七対三三、こういう比率になっております。  この物件費の内訳の割合等につきましては、昨年の当委員会答弁をいたしておりますけれども、これを重ねて申し上げますと、いわゆるこの六七%の内訳になるわけでございますが、第一は、御服装とかお身の回りの日用品、この御服装の中には、神事をやられますので神事に必要な天皇、皇后等の御服装も入っておるわけでございますが、これが一八%程度でございます。それから縁故者とかその他の方の御内宴、いわば内々のお食事でありますが、その御内宴を含む両陛下その他内廷の皇族の食事関係の費用が一三%程度、それから災害がありました際にお見舞いをされる、あるいは学士院、芸術院、日本赤十字社、その他社会事業団体等への奨励金と申しますか、そういうような御交際と申しますか、賜与と申しますか、そういうような関係の費用が一〇%程度、それから、いろいろ御研究もされておられるわけでありますが、そういう御研究、あるいは皇孫がまだお小さい、あるいは女の御皇孫というような方々の御教養のいろいろな費用というようなものも含めましてこれが約七%程度、それから宮中に三殿がございまして、天皇は私的なお立場でこれをお祭りされておられますけれども、そういうものに関連をする費用、この中には、これにお仕えをする職員の式服と申しますか、そういうようなものもございますし、あるいは御陵が全国にございますが、そういう御陵の数あるお祭りの際にお供えをされるというようなことの費用、これを合わせまして七%程度、その他医療関係でありますとか御物の管理でありますとか、そういうような面でのもろもろの費用としまして一二%程度、こういうふうに相なっております。
  322. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 いま具体的な内訳を拝見したわけですが、この内廷費以外に天皇の私的行為に、たとえば宮廷費で使われておるというような面はないですか。
  323. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 いまお尋ねのようなことはございません。厳密に内廷費と宮廷費は区分をいたしまして経理をいたしております。
  324. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そうすると、たとえば伊勢神宮に天皇が私的行為として行かれる、その場合に、国鉄の汽車を利用される、あるいは私的使用人だけではなくて、宮内庁の人が一緒に随行する、そういうような場合に、細かく言うならば、自動車の燃料費から、あるいはその間の食事代とか、あるいは宿泊代とか、そういうようなものも厳格にされておるのですか。
  325. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 私的なお立場で神宮に御参拝になる、その場合に、たとえば神宮斎館にお泊まりになるとか、あるいはお供え物をされる、こういうことは私的な御行為としての内廷経費から出されますが、宮内官が、たとえば侍従がお供をいたしますが、これは、やはり天皇の私的な御行為ではございますけれども、天皇というお立場が、いわば憲法上いろいろなお立場にあられますので、そういうお立場の天皇をお守りするというようなことは、これは宮内庁の人間の行為としましては、国家的な事務であるということを否定できない、したがいまして、こういうお世話を間違いのないようにするという意味において、これは、やはり宮内庁の職員の旅費等でございますので、宮廷費ではございませんで宮内庁費の方から支出をいたしまして、いわゆる正規の旅費を支給しておるような次第でございます。
  326. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 その宮廷内の天皇の私的使用人と宮内庁から派遣されておる職員との職務の内容、あるいは皇族の各宮家における私的使用人と宮内庁から派遣されておる職員との職務の内容というのは、おのずから分かれているわけですか。
  327. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 一応内廷に雇用関係で入っております職員の職務内容としましては、皇室が、先ほど申し上げましたような私的のお立場で三殿等の祭祀をお祭りするわけでございますが、こういうことに従事する職務、それから生物学の御研究所で御研究をされますが、それの助手とか、あるいはアドバイザーとか、そういうような形の職務、それからあとは、内廷の本当の奥向きの雑務に従事する職務、こういうのがいわゆる内廷の職員の職務内容でございます。  それじゃ、宮内庁職員が宮廷でどういう職務に当たるかということでございますが、これは特別職としまして規定されておる職員がございます。その職員は、宮内庁法にもございますように、両陛下の側近の仕事あるいは皇太子、同妃両殿下並びに皇孫殿下のおそばで奉仕する職務、これは侍従とか女官とかいうものが多いわけでございます。  それじゃ、一般職の職員がどういうことに関与するかということでございますが、これは宮中におきましての諸儀式、天皇が、あるいは両陛下でという場合もございますが、そういう諸儀式とか、あるいは国賓等が宮中にお見えになったときの皇室の接伴としての朝宴その他、あるいは内廷の医事というようなことにも、これは、いわゆる医者でございますが、そういうようなことに従事する等の職務でございます。  宮家の方はこういう神事というものはございません。したがいまして、こういう職員はございませんで、主として宮家で雇用される職員の職務内容は、宮家の御家庭内の日常生活に必要な一般家政的な事務、職務がいわば宮家雇いの職務だと思います。ここに宮内庁から若干名の者が、それぞれの宮家に派遣をされておりまするが、それじゃ、これの職務は何かとなりますと、これは、やはり皇族というお立場で内外の公的な御交際というものも逐次ふえておりますし、相当量もございますが、こういうようなもの、あるいは外国から友誼的な電報をいただくと、それに御返事を出すとかいうようなやや公的な仕事をするためのいわゆる事務を取り扱うもの、それから皇族殿邸は皇室用財産として建造されまして、一応皇族に供用になっておりますが、この公的な部分のいわば管理その他を行う職務とか、そういうようなものでございます。
  328. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 天皇なり各宮家の私的使用人の身分保障の問題あるいは処遇の問題、これは国家公務員と何か変わったところがあるのですか。
  329. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 一応公務員という性格の職員ではございませんで、その性格からして違ってはおります。しかし公務員に準じた給与あるいは公務員に準じた退職金の支払いというようなことも考慮はいたしております。しかしながら、御案内のように年金でありますとか、それから健康保険というようなものについては、これは公務員でございませんので、直ちに国家公務員の共済組合という式のものから給付を受けるわけにはまいりませんが、しかし、それでは気の毒でございますので、その点はいわゆる民間の企業保険に、こうした私的な使用人の立場にある人たちの一つのグループとしてそういうところに入り、その使用者の負担分は内廷費あるいは皇室費からそれぞれ支出する。それから健康保険につきましても、いわゆる政府管掌保険にグループとしての加盟を認めていただいております。年金等については、公務員の年金のように非常に高い年金が保障されるかということになりますと、そこは企業一般の年金のレベルでございますので……。しかし、そういう努力はいたしております。
  330. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 年金も公務員の共済年金とは異なっておる、医療の給付についても公務員と異なっておる、当然であろうと思いますが、国民健康保険に加入しておるのか政府管掌ですか。——さっき政府管掌と言われましたね。
  331. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 政府管掌です。
  332. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 政府管掌の健康保険に加入するについて、それを厚生省は認めておるわけですか。
  333. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 政府管掌保険を扱います関係の部局とも十分御相談をいたしまして、お認めをいただいております。
  334. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 国保の場合は個人加入ですが、政府管掌の健康保険の場合は、たしか健康保険法で認められた事業所に限られておるはずですね。強制加入のものと任意加入のものと、それだけしか分かれておらないわけであって、あくまでも事業所ですが、そうすると、天皇家なり宮家というのは事業所なんですか。
  335. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 いまお尋ねのように、働いておりますその場所、これを事業所と御認定をいただいて、そういう保険の適用を受けておるような次第でございます。
  336. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 事業所と認定を受けているわけですね。
  337. 富田朝彦

    ○富田(朝)政府委員 そうです。
  338. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そこらあたりが少しちょっと——天皇家というのは事業所であり、宮家というのは事業所である、こういう解釈をしておるということについては、これはまた改めて厚生省の方に質問したいと思いますので、お聞かせ願うだけで結構であります。  そこで、天皇がかなり年がいかれておる。旧皇室典範が廃止されて新しい皇室典範ができて、先ほども論議されておったと思いますが、いわゆる元号の問題ですね。元号の問題は、仮にいまの天皇が退位された場合、元号はそれで喪失するわけですね。
  339. 植木光教

    ○植木国務大臣 先ほど申し上げましたように、元号の取り扱いにつきましては、いま政府において結論が出たわけではございません。これを法制化すべしという御意見もございますし、あるいはまた前例によるべきであるという御意見もございますし、あるいはこの際、廃止すべきであるという御意見もございますし、元号につきましての結論が政府で出ているというわけではございません。ただ元号をそのまま残すといたしますならば、先ほど申し上げましたように、いまの段階では、前例によりますれば内閣が即時に決定をする、こういうことになろうかと思うのでございます。
  340. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 これも、やはり天皇制イデオロギーの復活の中で、皇室典範で、旧皇室典範と異なって元号というのは明記されておらないわけですから、それを必要以上に法律をつくってとかいうような考え方じゃなくて、今日の皇室典範から見て、元号というものはすでに消滅してしまっておるのだ、こういう考え方に立って処理をしてもらうべきが私は至当だと思います。新聞を見ましても、雑誌を見ましても、何を見ましても、あるいは政府発行の刊行物を見ましても、必ず西暦と元号を使っているわけですね。一々邪魔くさい、国民の生活面から見ても必要以上な文字を書かなければいかぬ、こういうことでありますから、私は、天皇がお亡くなりになるのを待つわけじゃありませんけれども、やはりいまの時期にこの問題の早急に結論を出すべきだ、また出す方向に当たっては、元号を続けていくということじゃなくて、やはりこの際整理をして、国際的な西暦で、一本で日常生活上国民にも親しますというためにも、早いこと結論を出すべきだ、こういうように思います。  そこで、総務長官にお尋ねしたいのですが、三木総理が参議院の予算委員会で突拍子もない発言をされたわけですが、いまだかつてなかったことです。日の丸は国旗である、君が代が国歌である、何か法的な根拠があるのですか。
  341. 植木光教

    ○植木国務大臣 国旗に関する一般的な法令はございませんし、国歌についても法制上の根拠はございません。しかし明治以来の長年の慣行によりまして日の丸が国旗、君が代が国歌であるという認識が、広く国民の間にも定着をいたしておりますし、政府といたしましては、日の丸、君が代を国旗、国歌と考えまして、そのように扱ってきているのでございまして、そのことを総理が答弁をされたものと承知いたしております。
  342. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 閣議決定はなされているのですか。
  343. 植木光教

    ○植木国務大臣 ございません。
  344. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 それでは、思い思いのことを言っているだけのことであって、三木総理が言われたのは、政府の統一見解じゃなくて三木総理のたわ言である、こういうように聞き取っておいていいんですか。
  345. 植木光教

    ○植木国務大臣 先ほど申し上げましたように、明治以来国民の中に定着をしてきているのでございまして、たとえば文部大臣の談話でありますとか学習指導要領の中におきまして、国民の祝祭日あるいは学校行事等において日の丸を掲げ、また君が代を歌うことが望ましいというような見解政府から出されているのでございます。政府といたしましては、明治以来の国旗、国歌に対する国民の認識というものを基礎といたしまして、いずれも国旗、国歌としての扱いをいたしているというのが現状でございます。
  346. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 これも大人が何か天皇制と同じようにもてあそんでいるような気がしてならない。日の丸を国旗、縦が何ぼで横が何ぼ、丸の大きさがどうこうでというようなことを規定して国旗だというように考えておられるのですか。
  347. 植木光教

    ○植木国務大臣 御承知のように、明治三年に太政官布告が出されまして、商船規則によりまして船舶に掲揚すべき国旗の制式が定められたわけでございます。一般的な法令には制定されておりませんけれども、この太政官布告の商船規則の中に、日の丸の大きさや縦横の比率等が書かれているのでございまして、これに従うことが例となっているということは御承知のとおりでございます。
  348. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 それは国旗としてじゃないでしょう。
  349. 植木光教

    ○植木国務大臣 船舶に掲揚すべき国旗の制式、すなわち国の旗を内外に示しますための規則がここで定められたわけでございまして、一般的な法令にはございませんけれども、これが国民の中に定着をし、それを基礎といたしまして政府としては日の丸を国旗として扱っている、これが現実でございます。
  350. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 これも、やはり政府が勝手に考えているんじゃなくて、政府がそういうふうに考えるのであれば、それぞれの手続というものが必要じゃないですか。それを必要としなくて政府が勝手に考えておられる。そういうようにあなた方が国民に定着をしておるというように思っておられるだけのことです。世論調査をやったりアンケートをとって、国民の総意として日の丸は国旗である、あるいは君が代は国歌である、こういうような集約をした結果、明治以来定着をしておるのだというように政府は思っておられるのですか。そういう裏づけはないでしょう。
  351. 植木光教

    ○植木国務大臣 日の丸につきましては、先ほど太政官布告を申し上げましたが、君が代につきましては、明治二十六年の文部省告示、三十三年の文部省令によりまして、小学校の祝祭日の儀式の際に歌うこととせられているわけでございまして、法令上の定めはございませんけれども、これまた今日に至っているところでございます。  そこで最近、世論調査をいたしました結果を御報告申し上げますが、日の丸は国旗としてふさわしいと思うかというのに対しまして、思うという答えが八四%でございます。それから君が代は国歌としてふさわしいと思うか、思うという回答が七七%でございます。したがいまして、国民の中に定着をしてきているというふうに私どもは認識をしているのでございます。
  352. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 それは、どういう調査をされたのですか。
  353. 遠藤丞

    ○遠藤説明員 総理府の広報室におきまして、昨年の十二月に一万人の抽出をいたしまして行いました世論調査でございます。
  354. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 各界の意見を聞いたことがありますか。
  355. 植木光教

    ○植木国務大臣 特別にそういう機会を持ったことはございません。
  356. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 抽出調査というのは、私は率直に言っていいかげんなことであって、それが即国論であるとか、あるいは国民の総意であるとかいうように考えるのは、少し軽率じゃないかと思うのです。国民の総意ということであるというように勝手に思うのじゃなくて、少なくとも結果としてはこうこうだというように私たちに資料を提示されて、そして政府考え方というものに立たれるのならばいいと思います。ところが、そうじゃなくて、ただ一万人の抽出調査だ。私にはどの層にやられたということもわからぬ。政府の資料というのは、ややもいたしますと、問題を起こす調査結果というのが多々あるわけです。  話は飛びますけれども、たとえば、いま一番問題になっておる歯科医の差額問題について、住民の方々はけしからぬと言っておるわけですけれども、しかしこれとても、厚生省が調査したら世論と反対の調査結果を出しているわけです。そういうようなことでありますから、やはり各界の意見を徴する。各界というのはいろいろあるわけですが、あなた方に御都合のいい各界じゃなくて、そういう調査をされるというような考え方はありますか。
  357. 植木光教

    ○植木国務大臣 昨年の三月、田中前総理が参議院の予算委員会におきまして、この問題についての答弁をしておられるわけでございますが、法制に取り組むべきときが来ているというような御答弁があったわけでございます。それを受けましていろいろ検討をしているわけでございますが、そのうちの一つの資料といたしまして、昨年の暮れに世論調査をやったというのが、先ほど御報告申し上げました結果でございます。  ただいま仰せになりました各界の意見を聞くかどうかということは、貴重な御提言でございますので、検討させていただきます。
  358. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 時間も来ましたので終わりたいと思いますけれども、やはり天皇制の問題にいたしましても、あるいは宮内庁が解釈する公的行為の範囲を広げるという問題にいたしましても、あるいは内廷費の予算の年々の増大ということを見ましても、あるいは元号の問題について見ましても、国歌や国旗の問題につきましても、何というか天皇制イデオロギーを復活しようという一部の勢力に乗っかかったような政府の態度であろうと私は思います。国旗の問題につきましても、国歌の問題につきましても、私らは調査対象になっていない。労働組合であるとか私ら野党とかいうようなものは全然調査対象にされないで、あなた方の御都合主義的な調査をされて、そしてこうであるというようなことでは、私たちは勘弁ならぬ。やはり私たちは、この天皇制イデオロギーの復活ということについては厳しい批判を持っております。また私たちの知っている範囲では、いま述べられたような見解とは異にする意見が私は多いと思います。  そういうようなことでございますから、天皇制イデオロギーの復活ということについて、一部の勢力にあおり立てられるのじゃなくて、毅然とした態度でひとつ善処方を望みたいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  359. 藤尾正行

    藤尾委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  360. 藤尾正行

    藤尾委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  361. 大出俊

    ○大出委員 きわめて簡単に反対の理由を申し上げておきたいと存じます。  何回かの審議を通じまして、天皇の行為、憲法六条、七条に十二項目あるわけでありますが、四条後段を入れまして、委任行為を含めてそれで全部のはずでありますが、後、人間宣言をなさった天皇でございますから私的行為がある、そして、この間に論点でございます公的行為というものが存在をする、これが政府側の主張であります。だがしかし、この公的行為については、大いに論争のあるところでありまして、何らこれは確たる規制措置がない。したがって、公的行為の中には、私的行為かいずれかということで、大きく疑問を持たざるを得ない面もございますし、あるいは国事行為との関連が逆に出てくる問題もございます。ここらを明らかにいたしませんと、天皇が政治の分野に巻き込まれる可能性、これは数々の事例が過去にすでにあるわけでございまして、またこれと宮廷費、内廷費の問題は、いずれも直接的に結びつく問題でもございます。  したがって、さきの国会で、私ども天皇訪米、安川発言等をめぐりまして、大変に政治に利用されるという危険を感じましたので、公的行為の問題等について、明確な規制が行われない限りは賛成ができないという立場をとったわけでありますが、今回も、いま和田委員からすでに幾つも述べておりますように、私どもが危惧する問題がございますので、先般と同じ方針に立ちまして、賛成をいたしかねるという立場でございますので、ひとつその点だけ明らかにさせていただきます。  以上でございます。
  362. 藤尾正行

    藤尾委員長 中路雅弘君。
  363. 中路雅弘

    ○中路委員 皇室経済法施行法の一部を改正する法律案に反対の意見を簡潔に述べたいと思います。  今回の改定は、四十三年十二月の皇室経済に関する懇談会での方針、いわゆる物価、人件費の値上がりで内廷費、皇族費を一割以上引き上げる必要があるという際には改定するという方針に基づくものでありますが、前回の四十九年の改定から一年目にしての改定であります。今回の改定で、昭和二十二年に皇室経済法ができてから十六回目の増額になりますが、内廷費、皇族費とも昭和四十三年の改定時から見るとほぼ二倍になっているわけであります。  現憲法のもとで、天皇が国家の一定の役割りを果たすいわば最高の公務員といいますか、特別公務員的な性格と、もう一つ国事行為を行う象徴天皇としての必要経費、この二つの面から見て、妥当な内廷費について一定の基準を明らかにする必要があると私は思うわけです。内廷費は非課税が前提でありますから、総所得に換算しますと、一応税率を総理の年俸率としましても、年四億六千万円余の所得になるわけでありますし、総理の年俸に比べても二十数倍になるわけであります。当然内廷費は宮廷費とも絡んでくるわけでありまして、内廷費、宮廷費含めますと、四十九年度でも皇室の費用総額は二十億円を上回っているわけであります。  この点で、現行の内廷費でさえも決して少ないとは言えず、これだけは必要であるという何らの根拠も示さないで、最近の経済情勢にかんがみというだけで今回の増額を行うということには賛成することはできないわけであります。  また、天皇訪米計画に見られるように、憲法四条、七条にも逸脱する、天皇を政治問題に利用しようとする動き、天皇の事実上の元首化を推し進めることは、憲法の立場からも許されないことでありますし、この際、天皇訪米を決めた政府に改めて反対の意見を明らかにしておきたいと思います。  以上で討論を終わります。
  364. 藤尾正行

    藤尾委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  365. 藤尾正行

    藤尾委員長 これより採決に入ります。  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  366. 藤尾正行

    藤尾委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  367. 藤尾正行

    藤尾委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  368. 藤尾正行

    藤尾委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————報告書は附録に掲載〕     —————————————
  369. 藤尾正行

    藤尾委員長 次回は、来る二十五日火曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十七分散会