○角田(礼)
政府委員 公的行為の
範囲あるいは公的行為の限界という問題を御提起になり、さらにそれを具体的に列挙せよという御
質問の趣旨だろうと思いますが、その前に、ちょっと一言申し上げておきたいと思いますけれ
ども、公的行為というものは、天皇の自然人としての行為のうち公的色彩を帯びている行為というのが、私
どもの
一つの定義であります。つけ加えて申し上げれば、先ほど来申し上げたように、天皇が象徴としての地位をお持ちである以上、そこに公的な色彩の行為があるだろう、こういうことを申し上げているわけであります。これは類型としてこういう種類の行為が公的行為だということは、列示することは可能であります。ただし、その
範囲をこれこれのものであるというふうにはっきり決めるということは、きわめて困難であろうと思います。しかし先ほど御
質問にありましたように、その理論的な限界というものは一応言えると思います。
そこで、その限界として私
どもが
考えておりますことは、三つあると思います。
一つは、国政に関する権能というものがその御行為の中に含まれてはいけない、こういうことがあると思います。もっとわかりやすく言えば、政治的な意味を持つものとか政治的な影響を持つもの、こういうものがそこに含まれてはならないということが第一に言えると思います。それから第二には、あくまでその天皇の御行為について内閣が
責任をとるという行為でなければならないと思います。それから三番目は、象徴天皇としての性格から言って、それに反するようなものであってはならないということ、この三つが私
どもとして公的行為というものを
考える場合の限界であろうと思います。
さらに、つけ加えて申し上げますが、類型的にある種の行為であると仮にいたしましても、それが公的行為なるがゆえに、ただそのことだけで憲法上許されるというようなことを、私
どもは申し上げているわけではございません。たとえば国会の開会式へ行かれてお言葉を述べられるというのは、通常公的行為の典型的なものとして挙げられておりますけれ
ども、しかしそれは、
一般的に言えば公的行為でございますけれ
ども、仮にいまのような三
条件に反するような事態、そういうことは万一ないと思いますけれ
ども、万一反するというような事態があれば、それはおやめになっていただかなければいけないわけでございます。ですから、類型的にある種の行為に入るということだけでもって憲法上許されるというわけではないし、同時にまた、そういう行為の類型をいろいろ列挙することは可能ではありますけれ
ども、いま申し上げたように、それだけで事が終わるわけではないということ。
さらに、もう
一つつけ加えさしていただきますと、公的行為と私的行為ということを私
どもは区別しておりますけれ
ども、実は私的行為であれば、天皇は全く何をされてもいいというわけでは決してないと思います。いま申し上げたような、公的行為についての三つの限界といいますか
基準というものは、私的行為についても、程度の差こそあれ、同じように該当するものだと思います。天皇が個人として政治的ないろいろな御行動に出られる、そういうことは万一ないと思いますけれ
ども、もしそういうことがあれば、やはりそれはおやめになっていただくわけですから、そういう意味においては、実は公的行為という概念を設けることによって、直ちに政治的なものというふうに結びつくわけではなく、私的行為についても同じような配慮が必要であるということも申し上げておきたいと思います。