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1975-02-27 第75回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月二十七日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 藤尾 正行君    理事 越智 伊平君 理事 奥田 敬和君    理事 加藤 陽三君 理事 木野 晴夫君    理事 上原 康助君 理事 大出  俊君    理事 中路 雅弘君       有田 喜一君    大石 千八君       近藤 鉄雄君    中馬 辰猪君       旗野 進一君    林  大幹君       三塚  博君    吉永 治市君       八木  昇君    和田 貞夫君       木下 元二君    鬼木 勝利君       受田 新吉君    玉置 一徳君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      植木 光教君  出席政府委員         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    茨木  広君         内閣総理大臣官         房総務審議官  佐々 成美君         総理府人事局長 秋富 公正君         外務大臣官房長 大河原良雄君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  委員外出席者         水産庁漁政部長 兵藤 節郎君         自治省行政局公         務員部給与課長 金子 憲五君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 二月二十六日  辞任         補欠選任   大石 千八君     木村 俊夫君   近藤 鉄雄君     藤井 勝志君   三塚  博君     松野 幸泰君   木下 元二君     中川利三郎君 同日  辞任         補欠選任   木村 俊夫君     大石 千八君   藤井 勝志君     近藤 鉄雄君   松野 幸泰君     三塚  博君   中川利三郎君     木下 元二君 同月二十七日  辞任         補欠選任   受田 新吉君     玉置 一徳君 同日  辞任         補欠選任   玉置 一徳君     受田 新吉君     ————————————— 二月二十六日  岐阜県徳山村等の寒冷地手当引上げに関する請  願(野田卯一紹介)(第八四三号)  青野ケ原ホーク部隊設置反対に関する請願(新  井彬之君紹介)(第九七〇号)  旧治安維持法による犠牲者の補償に関する請願  (青柳盛雄紹介)(第九七一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国家公務員寒冷地手当に関する法律の一部を  改正する法律案内閣提出第一九号)  在外公館の名称及び位置並びに在外公館勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一六号)      ————◇—————
  2. 藤尾正行

    藤尾委員長 これより会議を開きます。  国家公務員寒冷地手当に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。和田貞夫君。
  3. 和田貞夫

    和田(貞)委員 寒冷地手当の問題につきましては、燃料費の価格の上昇に伴って毎年人事院勧告が行われて改定されていっているわけですが、寒冷地手当加算額というものは、特に燃料費に相当する部分であろうと思うのですが、この加算額のついておらない地域については、燃料費というのは全然頭に入れられておらないのかどうか、その点ひとつお答え願いたい。
  4. 茨木広

    茨木政府委員 加算額部分燃料費を全部カバーするということではございませんで、まず基本的には、寒冷地手当の非支給地の場合が一番明らかなわけでございますが、本来の給与本俸等の中にやはり生活費として入っていることになります。それから一級地、二級地、三級地地帯でございますと、非寒冷地帯よりもさらに割高になる暖房費がございますから、基準額の中にやはりその割増しの部分は入っておる。それからさらに、加算額のついております地帯、四級地、五級地でございますね、北海道ももちろん五級地になっておりますが、この地域全体につきましては、その基準額でもカバーし切れない部分を、さらに外にはみ出させまして加算額で見るというふうに、三段階的にこの寒冷地級地がそれぞれ入っておるというふうに考えております。  でございますから、今回もそういう意味検討いたしまして、従来の石炭手当から変わりました北海道加算額、それから本土の方の四級地、五級地の薪炭手当から変わりました加算額、この部分について改正をする必要があるということでお願いを申し上げたわけでございます。その他の地帯につきましては、給与の方のベースアップが相当高率についておりますので、基準額の中に入っております四五%の増額部分と大体見合っているというふうに考えておる次第でございます。
  5. 和田貞夫

    和田(貞)委員 一応寒冷地性格から事情はわかりますが、三級地、二級地に該当する地域職員については、やはりいま申し上げましたように、北海道方々もあるいは四級地、五級地の方々も一応給付率の引き上げということで金額の引き上げていくのと同じようになされているのに加算額がついてない、たとえわずかでもつけるというのがたてまえじゃないか、こういう意見をやはり言うわけですが、それもそれなりに決して間違った言い分じゃない、私はこういうように思うのですが、今回は今回として、将来にわたっても、北海道以外の地域加算額というのは五級地、四級地のみに限られる、そういう考え方を踏襲されるのかどうか、改めてお答え願いたい。
  6. 茨木広

    茨木政府委員 むしろ当初は、石炭それから薪炭というふうに暖房の用具からして形式が全く異なるというようなところからそういう加算額ができてまいったわけでございますが、御案内のように、今回も相当灯油に置きかえられておるわけでございます。暖房形式灯油の方に大幅に変わってまいりますと、むしろ加算額部分基準額の中に入れていって全体的に構成し直す方が、本当は方向としては妥当なものではなかろうかというふうに、これは私的見解でございますが、現段階では私としては考えておるところでございます。
  7. 和田貞夫

    和田(貞)委員 もともとこの寒冷地手当というのは、その出発点石炭手当という形であったと思うわけです。上原さん、ここにおられますが、私も沖繩へ寄せていただいたときに、いつも沖繩公務員皆さんが、やはり本土寒冷地手当に見合う、たとえば氷手当とか扇風機手当とかいうような、いわゆる酷暑手当ともいうような手当を、何とか地域実情に沿った配慮というものをやってもらえないかという陳情を沖繩公務員からも受けるわけなんですが、そのような考え方というのは持ち合わしておらないかどうか、この機会にお聞かせ願いたいと思います。
  8. 茨木広

    茨木政府委員 上原さんの御質問にも御答弁申し上げましたが、そういう要望が出されておりますので、私どもといたしましても、いろいろその検討を加えておるところでございます。  ただ、その際申し上げましたのは、まず一つは、こちらから行かれました方については、特に復帰前の外交官類似手当がついておった等の関係でそういうような要望が熾烈にございます。しかしこれは、やはり沖繩本島にずっとお住まいの方々の心情との関係でそういうものが許されるものかどうかということも考えていかなければいかぬ。理由はいろいろ、大変距離が遠いので親戚の冠婚葬祭にしろ、あるいはいろいろな場合に旅費もかかるしというようなところからきておるようでございますが、それも一つこの問題に絡まって出てきておるようでございます。  もう一つ、暑さの点は、これは全くそれぞれ同じでございますが、その問題については、どういうようなものが上がってくるかということで、いろいろ計数的にも言われますものについて計算してみますと、ごくわずかのものが出てくるということでございます。この前も、寒冷地手当の方の関係の諸経費というようなものが逆に要らないという問題もございましたが、その辺との関係も調整をしていかなければならない。  それからもう一つは、この前申し上げなかったのでございますが、一昨年のやはり民間の状況も見にゃいかぬものですから調査をしてみますと、まだどうもそういう意味のはっきりした、あそこについての特殊な手当というような感じのものが余りまだ成長してきてないような感じもございまして、その辺のところも見ておるわけでございます。  それから、いま資料持っておりませんけれども研究課等で、諸外国にもそういうような暑い地域におきます手当でどんなものがあるかということも検討さしておりますけれども、あの程度の地域でございますと、よほどアフリカかなんとか相当遠いところの本当の熱帯地帯でございますと何かある場合もあるようですが、余りはっきりしたものが見当たらないというようなことです。  そういうところをいろいろ研究をしながら、そういう要望に何かうまくこたえていく方法はないかというふうに考えつつあるというところでございます。
  9. 和田貞夫

    和田(貞)委員 もちろん、国家公務員の場合に、向こうへ赴任されると、先ほど御説明あったように、復帰前には在勤手当がついておった、それがなくなっている、だから、それに見合うということになると、現地の地方公務員にはこれが適用されない、こういうことになるわけですから、そういう考え方に立った特殊勤務手当というのは、これは避けるべきだと思うのでございます。  恐らく、この寒冷地手当の前身でありました石炭手当ができた当時に沖繩がすでに復帰をしておったならば、必ずその時点で論議があったと思う。しかし残念ながら、この沖繩復帰が非常におくれたために、寒冷地手当が毎年毎年改正されていって、十分だとは言いませんが、その面から言っても、沖繩勤務する公務員処遇というものが、やはり本土公務員処遇と比べて、そういう面から立ちおくれておる、こういうように思うわけです。  特に気温の場合を言いましても、暑い暑いと本土の方が言いましても、大体最高気温が二十五度以上の温度——たとえば那覇では五月から十月にかけて二十五度以上の温度がずっと継続しておりますし、八重山の方へ行きましたら四月からもう二十五・八度、十一月まで二十五・四度というように二十五度以上の気温というのがずっと続いていっているわけです。そういうようなところは、九州を含めまして本土では、それだけ長い間暑いという地域はないわけであります。やはり暑ければ汗もかくし、洗たくもよくしなくちゃならぬし、はだ着の消耗率も高くなるし、洗剤もよけいに使わなくちゃならぬしということで、本土公務員皆さん方よりも、酷暑によって、あるいは湿度もそれに伴っていて非常に生活しにくい、勤務しにくい。こういう特殊な沖繩地域の条件というものがあると思うのですが、そういう面を本土の各県と比較をした上で、沖繩における酷暑手当という性格のものを、検討されておるという御答弁がございましたが、やはり時期を、目標を立てて人事院の方で、あるいは政府の方で踏み切ってもらうという考え方に立ってほしいと思うわけですが、一体いつまでに検討されて、いつの時期を目標にして結論づけようとしておられるのか、あわせてお答え願いたいと思います。
  10. 茨木広

    茨木政府委員 いまおっしゃられましたような点は、いろいろ気象的なデータとしては承知いたしております。しかしまた一方、総理府統計局の家計調査にあらわれました光熱費のようなものを見てみますと、どうも那覇の場合、鹿児島、東京、札幌、こう比較して見ますと、高い数字が必ずしも挙がってきていないというような点もございまして、その辺のところもいろいろあるものでございますから、大変検討に時間がかかっておるわけでございます。何らか理屈づけをし、ほかの地域との関係納得性の得られる結論が出ますれば、もちろん早い機会に御相談をお願いしなきゃならぬと思っておりますが、ちょっといますぐ、いつまでに出るというふうにここで申し上げかねるところでございます。
  11. 和田貞夫

    和田(貞)委員 いつまでものんべんだらりと検討するということじゃなくて、きわめて早い機会結論づけるということぐらいは何とか答弁できないですか。
  12. 茨木広

    茨木政府委員 できるだけ早く結論を出すように努力いたします。
  13. 和田貞夫

    和田(貞)委員 ひとつ善処方を強く要望しておきたいと思うのです。  そこで、次に進みますが、いわゆる人事院勧告制度の問題でありますが、これは公務員ストライキ権あるいは団体交渉権、いわゆる労働基本権代償としての機能を果たすために人事院をつくって、あるいは地方におきましては人事委員会を設置して、第三者機関として公務員賃金勧告するということになっておるわけですが、その人事院勧告制度ができてから、おそまきながらも政府の方で、その勧告に基づいて公務員給与改定が時期の点についても、内容についても完全に実施をする、こういうことになりましてからきわめて近い歴史しかないわけです。時期的に値切ったり内容を値切っていったり、長い間そのことを繰り返してまいりました。ようやく内容につきましても、時期につきましても人事院勧告をそのまま政府が受け入れて公務員給与改定をするということになったわけでありますが、しかしながら、その実施時期が四月から実施というものの、現実的な実施の時期は勧告後はるかにおそくなっておるわけです。  特に国家公務員の中でも公労協関係職員公共企業体現業関係職員については、同じ公務員であっても人事院勧告に基づく給与改定でないために、団体交渉権に基づいて労使双方が対等の立場に立って賃金を決めていく、それをこの国会で承認する、こういうことで五月、おそくても六月にならない時期に毎年給与改定がなされておるわけですが、国家公務員地方公務員については、それから以降に人事院勧告がなされている。それから法の改正なり予算措置をしなければ給与改定が行われないということをいまだに繰り返しておるわけです。  これらの点につきまして、せっかくあなた方人事院が、公務員労働基本権を取ってしまったその代償機関として設置されたわけでありますから、ただ勧告をして、政府がそのとおりに実施する努力をしないことを腕を組んで見守っておるというような態度では、人事院機能というものを完全に果たし得た、果たしてきたというようには思わないわけなんですが、これらの点について、やはり権威のある機能を果たすという意味で、その後何らか政府に対しまして前後措置について話し合うなり、あるいは要請なりをしたことがあるかということを、この機会にお聞かせを願いたい。
  14. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 人事院勧告制度意義等につきましては、いま和田さんが御指摘になりましたようなことでございまして、四月からさかのぼっての完全実施ということはごく最近になって実現をした、数歩の前進ということに評価されると思うのであります。このためには国会関係あるいは政府の御理解、大方の国民理解ということも背景といたしまして実現をしてきたと思うのでありますが、この勧告につきましては、御承知のように四月時点における官民給与較差を是正しようとするものでありますから、なるべく早い機会にこれが実現をいたすことが望ましいことは申すまでもありません。そういうことから物価が非常に上昇をしておるというようなことの背景のもとに、昨年の勧告におきましては、官民給与比較という作業を、人事院の総力を挙げまして大いに努力をいたしました結果、例年より少し早まりまして七月の末に勧告ができたということでございます。これも人事院といたしましては、できるだけ早期にその完全実施が行われるということを期待いたしたものにほかなりません。  そういうところから、いろんな事情があったにいたしましても、それが事実上大変おくれてしまったということは、われわれといたしましては大変残念、また遺憾千万で、公務員方々に対しても申しわけなく思っております。勧告をいたせば、それでいいというものでもございません。勧告実現ということには常に関心を抱いておるところでございまして、その後、機会あるごとに国会方面においても発言し、また政府に対しましても強く要請をするということでやってまいったのでございますが、いろいろな情勢もございまして、これが大変おくれたということは、返す返すも残念に考えておる次第でございます。
  15. 和田貞夫

    和田(貞)委員 残念では済まされないですね。せっかく人事院努力されて、昨年はおととしよりも約一カ月早めて人事院勧告がなされた。その努力は多とするところでありますが、肝心かなめ政府が、人事院のその誠意、熱意というものをくみ取って、それでは例年よりたとえ一カ月でも早く給与改定を行おう、こういう考え方に立たなかった。結果的には、十二月にならないと給与改定が行われなかったということになるわけです。地方公務員の場合は、全部とは言えませんが、やはり財政措置等関係で年が明けなければ、国家公務員給与改定に準じて給与改定実施することができない、そういう自治体もあるわけでありますから、その責任上、やはり人事院勧告が行われれば、単に内容面を完全に実施さしていく、そういう努力じゃなくて、現実人事院勧告を受ける政府に対しまして、その拘束力を持たしていくというような法的な措置を義務づけるというようなことは考えておられないですか。
  16. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 人事院といたしまして、そういう拘束力を、法的その他の措置によってやってはどうかというような御意見、あるいは昨年の附帯決議というものの趣旨に対しましては、人事院立場というものを御理解の上でのことだと思うので、その点は大変ありがたい御配慮だというふうに受け取っておる次第でございます。  ただこの点は、人事院立場といたしましては、現在の法的のたてまえから国会及び内閣に対して勧告を申し上げておる、国会内閣というものは、一国の権威を代表いたしておるものでございますので、必ずやその勧告というものは早期にそのままに受け入れられるという確信をもってやっておる次第でございまして、われわれの立場からいま直ちに何か法的拘束力、われわれの方でそういう提案権があるわけでもございませんし、そういうことはいまのところ、結論としてはこうすべきだということには思い至っておらないわけでございますが、しかし、御趣旨の点もございますので、その後、総理府関係等とも意見は時々刻々とりまして、そのことの趣旨がもっと達成できますように、なお検討を加えておるというのが現状でございます。  ただこの問題は、何といいましても、完全実施ということが行われてきたのは、一般の理解が進んだということでもございますので、この点、人事院の代表機能的な性格というものをはっきりと確立いたしまするためにも、さらにその方面理解を得るためにも、われわれとして時々刻々努力し続けてまいるということはやっていかなければならぬことだと思っております。
  17. 和田貞夫

    和田(貞)委員 総務長官かわられたわけでありますが、去年の実情というものは十分把握しておられると思います。せっかく人事院努力された、国会もその勧告を受けて、政府に対して早期実施要請してきた、にもかかわらず、結果的に十二月まで放置された、そういうようなやり方というものは、給与担当大臣としてきわめて無責任だとお思いにならぬですか。
  18. 植木光教

    植木国務大臣 政府は、人事院勧告を尊重いたしまして、誠意をもって対処すべきことを基本的なたてまえとすべきであり、また、しなければならないという観点から努力をしているところでございますけれども、お説のように、昨年は例年よりも若干早い七月の二十六日に人事院勧告がありましたにもかかわりませず、その改定が十二月になったということは、まことに遺憾でございまして、その点につきましては、十二月のこの委員会におきまして、私からも深く遺憾の意を表した次第でございます。特に昨年は、異常な物価上昇の中でございましたので、公務員皆さん方にいろいろな御迷惑をおかけしたという点についても、深く責任感じているのでございます。  そこで、委員会でも支給手続改善につきまして御決議がございました。勧告早期処理支給手続改善につきましていろいろな問題がありますことは、御承知のとおりでございますが、私どもといたしましては、人事院勧告が出される、それを尊重して早期給与改定実施する方策について、いま関係省庁とも連絡をとりながら協議を続けているところでございまして、いま御指摘のような姿勢で臨むべきことは当然であるという自覚のもとに、いろいろ協議を続けているのが現実の姿でございます。
  19. 和田貞夫

    和田(貞)委員 大出委員質問に対して、大蔵政務次官もこの席上で目減りというものを確かに認めておられた。しかし結果的には政府立場としてその目減りの額というものを出すことをしなかったわけなんです。これは政府も認めておるわけでありますから、善処するということが気持ちとしてあっても、現実に善処する方策を早い機会に出してこないと、この国会にも、その辺についての給与を初めとした法的な措置で何とか改善しようというような政府の意思というものがあらわれておらないわけですが、口先だけで何とかと言っても、現実にどういうような処理をされるのかということが私たちは暗中模索でわからない。そのことが国民行政不信につながっておるということを、これまた考えてもらわなければいかぬ。  公務員にしてみたら、目減りした四月に遡及した額を去年の場合には十二月に受け取る、こういうことでありますが、マスコミはそれも含めて年末には公務員には幾ら入るか、これは、われわれもその被害者の一人でございますが、ある地域におきましては、たとえば去年の暮れに奈良県庁で起こった問題ですが、奈良県の指定銀行職員対象にいたしましてチラシをまきまして、第二のボーナスもどうぞ預けてください、こういう感覚でしか金融機関も見ておらない。あるいは新聞で、差額が幾ら入る、あるいは年末手当を含めたら総額これだけだというようなことが報道されますから、国民皆さんも、公務員が実質的に目減り給与差をもらっておるんだということよりも、年末にそれだけたくさんのまとまったお金がふところに入ってくる、いいなあ、何ということをするんだということで、そういう面から行政不信という国民感情につながっていくわけですが、そういうようなことを考えても、私は、いままでのようなことを繰り返すということは厳に慎むべきである、こういうように思うのですが、総務長官、いま何とか努力するということは言われましたが、この国会では、そのような具体的な法の改正によって人事院勧告を受けて対処していくという前向きな姿というのはあらわれておらないのですが、どういう方途をもってそのようなことを繰り返さないようにやっていこうとしておられるのか、具体的にひとつ、総務長官としての見解を明らかにしてほしいと思います。
  20. 植木光教

    植木国務大臣 人事院勧告は、内閣及び国会に対して行われるわけでございます。国会開会中でありましたならば、直ちに閣議決定を行い、また法案作成をいたしまして御審議をいただく、こういう運びになるわけでございますが、閉会中の場合に、この給与改定のために臨時国会を召集するかどうかという問題が一つあろうかと存じます。  それから、法改正を待たずに給与改定を行うことができるかどうかということについては、これはもう御承知のように、国会の議を経ないで実施するということは非常に大きな問題でございますし、また勧告対象になりません防衛庁の職員だとか裁判官、検察官その他特別職の職員につきまして、政府の判断だけで給与改定を行ってよいかどうかというような問題、それから仮払いを行った後で最終的に国会の承認を得られなかったときどうするのかというような問題、また財源の問題等々あるわけでございますので、いろいろな角度から、いま、どうすれば早期勧告を尊重して給与改定を行うことができるかということを研究をしているのでございまして、お話しのように、この国会には法案の提出を予定していないではないかという御指摘は、まさにそのとおりでございますけれども、私どもといたしましては、いま申し上げましたように、法改正というものによるか、それとも法改正を待たないで、先ほど申し上げたように、たとえば給与改定のみの臨時国会を開会していただくことによりまして早期処理をしていくか、どういう方法がよろしいかというようなことについて鋭意検討しているのでございまして、努力はいたしておりますので、ひとつ御了承をいただきたいと思うのでございます。
  21. 和田貞夫

    和田(貞)委員 法改正を待たないで運用面で、政府責任でやれるということであれば、これは私は結構なことだと思いますが、しかし法改正をやっておかないと、いま大臣が言われたようなことも、不可能な面があるんじゃないかと思うのです。  たとえば人事院勧告すれば、政府はそれを受けて、やはり一カ月以内に国会を召集しなければならない、そういう政府に対する義務づけというものを、法の改正によって措置をしていくということであれば、いま大臣の言われたような一つの案も可能になっていくと思いますし、あるいは人事院勧告があれば、国会の召集を待たずとも政府責任閣議決定によって実施をしていく、すみやかにその後に国会を開会して政府措置について追認をしていくというような措置にするか、それもやはり何らか法によって義務づけておくということでなければ、いま大臣の言われたようなことは、現実実施に移そうと思いましても実施できないという面があるんじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
  22. 植木光教

    植木国務大臣 いま、和田委員がおっしゃいましたようなことも含めましていま研究をしているのでございますが、一つの問題としては、先ほど申し上げましたように、勧告時点で果たして給与改定財源が確保できるかどうかというような問題もあるのでございまして、そういうような問題も含めましてあらゆる角度から、先ほど来申し上げておりますようなことで何とかして早期給与改定ができないものかということを研究しているのでございまして、いましばらく時間をおかしいただきたいというふうに思うのでございます。
  23. 和田貞夫

    和田(貞)委員 これはILOも言っておりますように、政府というのは二面的な性格というのがあるわけです、公務員職員団体に対する使用者としての政府、行政府としての政府。それで、いま行政府としての政府の御発言がありましたように、財源の確保ということは、これは当然、頭もひねってもらわなくちゃならないと思いますが、使用者としての政府性格の上では、やはり公務員労働基本権をとってしまった代償機関としての機能を果たすための人事院勧告した、その勧告を受けて給与改定をするという責任があるわけですから、使用者としての政府機関としては、行政府としての政府の財源確保もさることながら、勧告を受けて政府の義務として、使用者の義務としてやはり拘束を受けて実施をしていくという考え方に立ってもらわなくてはならないのですが、いまの御発言では、検討はしてもらっておるけれども、やはり財源確保がなければ、またことしもだめだということに通ずる御発言のようにあるいはなりはしないかというように私は危惧するわけですが、そういうことはないですか。
  24. 植木光教

    植木国務大臣 いま財源のことを申し上げましたのは、一つの重要な問題点であるということで申し上げたのでございまして、特に昨年の場合は二九・六四%でございますか、非常に高率、高額の給与改定というようなことがございましたので、財源の問題等につきましての検討等もございましておくれたというような事情もございます。そういう意味におきまして、いま一つの問題点として申し上げたわけでございます。  ただ政府部内で、各省庁間でいまの問題の解決について協議しているだけではございませんで、学識経験者等の御意見も伺いながら、この問題の解決を何とか早期に図りたいということで努力をしているのでございまして、何度も申し上げますけれども検討の時間をもうしばらくおかしをいただきたいということをお願いしたいのでございます。
  25. 和田貞夫

    和田(貞)委員 人事院は、ことしは勧告をできるだけおくらそうというように考えておられるのか、できるだけ早めようと考えておられるのか。一体いつの時期に勧告しようと思っておられるのか。いまの段階でひとつ人事院のお考えをお聞かせ願いたい。
  26. 茨木広

    茨木政府委員 昨年は調査時期を、締め切りを一週間ばかり早くいたしまして調査実施いたしたわけでございますが、その結果をいろいろ分析しておりますと、積み残しの形でもって報告及び勧告申し上げる部分が相当多かったような感じが出ております。そこで、ことし前半の民間の動き等も見ておりまして、むしろ調査の終点を六月十五、六日ごろ、従来やっておった時期にやはり戻した方がよくないかなというふうに考えておるところでございます。そしてその後の作業を、去年と同じような時期までに出るような結果になるようにできないかということで、私どもの内部、それから総理府統計局さんの方と作業の日程等も内々相談をしておるというのが現時点の段階でございます。それより先は、まだこれからだんだん詰めていかなければならぬのでございまして、ちょっとはきとは申し上げられないというようなところでございます。
  27. 和田貞夫

    和田(貞)委員 去年の時期よりもおくれるということはないでしょうね。
  28. 茨木広

    茨木政府委員 それは、ことしの民間の動きがいろいろあるようでございまして、例年ならば三月末から四月で大体固まる、遅くても五月初めにはつくというようなことでございますけれども、新聞等で報道されておりますように、四月の時期と五月の時期と山が二つあるというようなお話もございますし、そうなりますと、中身のないものを調査いたしましてもむだな話でございます。その辺のところもよく考えていかなければいかぬのじゃないかと思っておるものですから、人事院として、院議の段階で最終的にどうという御判断をまだ仰いでいないというのが現段階でございます。
  29. 和田貞夫

    和田(貞)委員 そうであっても、せっかく去年努力していただいたわけでありますから、去年の人事院の姿勢がことしは後退するというようなことはないと私は確信するわけですけれども、抽象的な答えになってもけっこうですが、やはりそのぐらいの御回答はいただきたいものと思いますね。
  30. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 いま給与局長が申し上げましたように実態の把握、民間の状況をできるだけ正確に把握するということが一つの大きな要点であることは、これは申すまでもございません。それとのにらみ合わせもあるということを申し上げたわけでございますが、そういうこともこれからだんだんにらみ合わせつつ、私といたしましては、いままでの積み重ねでだんだんと改善をし、前進をしてきたその姿を変えたくない、少なくとも、現在の時点におきましては、努力目標としては去年より後退することのないように努力したい、かように考えております。
  31. 和田貞夫

    和田(貞)委員 そういう努力をされましても、総務長官国会の会期の延長がなければ、ことしもまた国会の開会されておらない時期に勧告がなされるということになろうかと思うのですが、いまの時点でもう少し検討さしてくれということであれば、また去年の二の舞を繰り返すという結果になるのじゃないですか。この国会の会期末までに結論を出すから待ってくれということなのかどうか、お答え願いたい。
  32. 植木光教

    植木国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、いろいろな問題がございますので、その問題点を整理しながらいま鋭意検討いたしているのでございまして、この国会の終わりますまでに結論を出すことができるかどうかということは、ちょっといま、ここではっきりと申し上げることは差し控えさせていただきたいのでございますが、私どもといたしましては、早期人事院勧告処理していくという考え方検討いたしておりますので、ひとつそういうところで御了承をいただきたいと思うのでございます。
  33. 和田貞夫

    和田(貞)委員 いずれにいたしましても、政府考え方を出してもらって国会の承認手続というものをしておかないと問に合わぬでしょう。国会が終わってから人事院勧告がなされたら拘束力がないわけですから、臨時国会がまた開かれなかったとすると、現実的に実施時期が十二月になるかならぬかは別として、やはり同じようなことを繰り返していくということになるわけであります。少なくとも、この国会の会期末までに結論を出すということがまず第一目標であり、それが無理だということであれば、少なくとも、人事院勧告されればその勧告に、ことし以降は去年までのような無責任政府の態度をとらないという考え方で、ことしは人事院勧告に基づく給与改定実施時期を新しい考え方政府は臨んでいく、そのための手続的な国会における承認に基づく政府の態度というものを人事院勧告実施に間に合うようにしたい、それについてはしばらく待ってくれということなのかどうか、くどいようでありますが、ひとつお答え願いたい。
  34. 植木光教

    植木国務大臣 できるだけ早く人事院勧告処理できますように、早い機会結論が出ますように努力をいたしてまいりたいと思います。
  35. 和田貞夫

    和田(貞)委員 ことし以降は、去年までのようなことを繰り返さないという考え方で、それで対処していくんだから絶対安心しておれということですね。
  36. 植木光教

    植木国務大臣 私どもとしては、昨年のようなことを繰り返さないように、いまできるだけ協議をしているのでございます。そのための努力をさしていただきます。
  37. 和田貞夫

    和田(貞)委員 それじゃひとつ、また再び大臣が、この国会でことしもできなかったということで遺憾の意を表さないように、万全の措置給与担当大臣として講じていただくように強く要望しておきたいと思います。  そこで、もう時間で委員長がこちらをにらんでおられますので、協力をする意味でひとつ……。  実は、他の委員も繰り返しておるわけですが、人事院は、自治省の言っているように地方公務員国家公務員よりも給与が高い、こういうように思っておられるのですか。
  38. 茨木広

    茨木政府委員 国家機関として国と地方との関係調査する権限と申しますか、それは自治省の方のことでございますので、私の方で直接正式に調査をしたということではございませんが、ただ教員の場合で例を挙げますと、国立の付属小中校等に公立の方から絶えず交流がございます。そういうところで初任給の決定についてやはり所管をいたしておるわけでございますが、そういうものから見ましても、それからその他の例で見てまいります個々のケースから見ましても、やはりどうもそういう、いまおっしゃられたような姿の見えることは事実でございまして、この委員会でも前に、そういう意味で差があるから、何か措置をというような請願の御採択もあったと思っておりますが、そういうようないろんなところから触れました関係ではそういう印象を持っております。
  39. 和田貞夫

    和田(貞)委員 人事院の方は印象を持っておられるのですが、自治省は印象じゃなくて、確固たる信念に基づいて地方公務員の方が高いというふうに思っているのですか。
  40. 金子憲五

    ○金子説明員 地方公務員全部の平均について見たところでは、そのように言えようかと思うのです。
  41. 和田貞夫

    和田(貞)委員 かねての地方行政委員会でも、あなたの方でいまお答えになったような考え方、ラスパイレス指数に基づいて試算をするとそうであるということらしいのですが、地方行政委員会の方では理事会でまとめられて、自治省が持っておられるその資料を出すということになったらしいのですが、われわれの方にも具体に、何県何市とそれぞれ国家公務員の平均と比較すれば高い安いという資料をいただけますね。
  42. 金子憲五

    ○金子説明員 ただいま、どういう形で出さしていただくかについて検討しておるところでございます。
  43. 和田貞夫

    和田(貞)委員 具体に何市と国、何県と国というような資料はいただけないのですか。
  44. 金子憲五

    ○金子説明員 そのような形で出さしていただくかどうかについても、検討させていただきたいというふうに思っております。
  45. 和田貞夫

    和田(貞)委員 それを具体に出してもらわないと、やはりわれわれが審議をするということにはならないわけですから、これは出していただきたいと思います。  しかし地方公務員国家公務員給与が高い安いということ、それにはそれぞれ自治体は自治体なりの苦労をやはりしているわけです。たとえば自治省は、特に府県の方に人事交流ということで行ったり来たりされているわけですが、たとえば自治省の係長が府県の方へ行くときには府県では課長になっておるでしょう。府県の課長からこちらへ帰られたらまた係長あるいは課長補佐、あるいは自治省の方から課長の方が府県の方へ行けば部長級ということになっておるでしょう。そのようなことを見ておっても、決して地方公務員の方が高いということにはならないじゃないですか。
  46. 金子憲五

    ○金子説明員 国から地方に対しての異動の際の地位によりまして、直ちに給与の高い低いを論ずるわけにはいかぬと思っております。
  47. 和田貞夫

    和田(貞)委員 いつも国の方が一段と上位におるのだ、そのことがむしろ、地方公務員の方が給与が高いということよりも、地方公務員の方が国家公務員よりも行政機関が下部にあるのだから低くてもいいのだ、低いのがあたりまえだという考え方に通ずるんじゃないのですか。
  48. 金子憲五

    ○金子説明員 決してそのような考え方は持っておりません。給与につきましては、地方公務員法に定められておりますように、その職務に応じた形でもってその給与の等級なり額なりが決定される、そのような考え方で臨んでおります。
  49. 和田貞夫

    和田(貞)委員 国家公務員には保育所の保母というのがおりますか。国家公務員には清掃事業のための作業員というのがおりますか。国家公務員には墓守だとか、あるいはいわゆる人間が亡くなられて火葬される際の作業員とか、あるいは犬やネコが道路端で死んでしまって、それを焼却するというような作業員がおりますか。そういうような例等を挙げますと、国家公務員にない職種が市町村や府県の方にはあるわけです。そういう作業員の地方公務員を採用していく、確保していくというのには、並み大抵でない苦労が自治体にはあるわけです。単に金銭的な面だけじゃありませんが、やはりそれだけの優遇措置を講じないとなかなか人手が集まらぬ、こういう実情はおわかりでしょう。
  50. 金子憲五

    ○金子説明員 私ども国家公務員地方公務員給与比較をやります場合には、ただいま例に挙げられましたように、国と地方との場合に対応する職種のないものについて比較をしていくわけではございませんで、ただいま公表しております数字は、国家公務員の行政職の(一)表の適用になる職員、言いかえますと、一般的な行政事務に従事をしている職員について給与比較をし、その結果、地方公務員の方が平均的に約一〇%ほど高い、このように申しておるわけであります。
  51. 和田貞夫

    和田(貞)委員 比較はよくわかりますが、そういう職種が国家公務員にはない、地方にはそれが行政上必要である、そうすると、そういう職種を含めたそれぞれの地方地方に応じた給与体系に持っていかないと全体のバランスも崩れる、そういうことはおわかりでしょう。
  52. 金子憲五

    ○金子説明員 各地方公共団体内におきましては、同一地方公共団体であれば行政職(一)表の適用になるもの、それからただいま御指摘になりましたような技能労務職と言われるものあるいは消防職、それらの各職種間において給与制度上の均衡が保たれているというのが実情でございます。したがいまして、行政職(一)表の適用になる職員が高いという場合に、その他の職種につきまして各団体間を比較してみましてもやはり高い、こういったような関係がございます。
  53. 和田貞夫

    和田(貞)委員 それは、それぞれの地域によって違いましょうが、人が集まりやすい地域と人が集まりにくい地域とあるわけですから、人が集まりにくい地域においては、やはり優遇措置を講じなければ集まってこない。そうすると、行政職(二)表の適用を受ける職種の方々とのバランスというものがあるわけですから、そういうような見地に立って地方地方実情というものを把握しないで、単に行政職(一)表に該当する職員だけの差をもって低い、高いということを論じるのは、私は少し軽率に過ぎるのじゃないか、こういうふうに思うのです。
  54. 金子憲五

    ○金子説明員 私どもの方といたしましては、各団体内においての各職種ごとの給与比較もやっております。ただ、各職種ごとの比較をする場合には、職務の内容その他についてもいろいろ違いがございますので、それらを十分考慮に入れて比較をしなければならないというふうに考えますが、その結果から見ましても、やはり全体として地方公共団体の職員の方が高い、こういうことが言えようかと思っております。
  55. 和田貞夫

    和田(貞)委員 地方公務員の方が高いということを自治省の方が出してきたその最大の原因というのは、地方財政に人件費の占める比率が高くなったから高いのだ、こういうように言っておるのでしょう。
  56. 金子憲五

    ○金子説明員 そういうことではございません。私ども統計上の比較をする場合にも、国家公務員との比較におきましては、同一学歴、同一経験年数の同一職種の者をとりまして、それで比較をいたしております。その結果、高いという数字を出しております。
  57. 和田貞夫

    和田(貞)委員 国家公務員の行政職(一)表の適用を受ける職員地方公務員の場合の行政職(一)表の適用を受ける職員と、その職種が同じだと言えばそれまでですが、業務の内容、実態というのが違いますよ。特に地方の場合は、国家公務員のように、特に中央の官庁のように、ただ行政べたりじゃないわけです。地域に赴いていくという業務、あるいは地域の住民に接するという機会、これが非常に多いわけです。そこらを観念的に同じ職種だからということで比較することは、私は誤りだというように思いますが、どうですか。
  58. 金子憲五

    ○金子説明員 行政職(一)表適用の職員につきましては、国の場合にも地方支分部局がございまして、その勤務の態様につきましては、全体として見ればほぼ同様であるというふうに考えております。
  59. 和田貞夫

    和田(貞)委員 私は、ただ給与額が国家公務員比較して同じ職種において金額が高いから、これは高いのだというような言い方は改めてもらわなければいけないと思う。いま申し上げましたように、その業務の内容、業務の実態、そういうところから言いますと、仮に高くても、高くしなければならないという、そういう事情の中からやむなくしておるのだという地方地方の自主性というものを生かさなければならない。何も国家公務員給与と同額でなければならない、そんなことはどこに義務づけられ、どこに書かれておるのですか。準ずるということですよ。準ずるということは、一〇〇%そのとおりでなければならないということじゃないでしょう。
  60. 金子憲五

    ○金子説明員 私ども地方公務員給与水準が完全に国と同じレベルになければならぬ、すなわちラスパイレス指数で言えば一〇〇でなければならぬということは申しておりません。国家公務員給与制度、これを基準といたしまして団体の種類、たとえば都道府県であるとか市であるとかあるいは町村であるとか、そういった団体の種類あるいは規模あるいはその置かれている社会、経済的な条件、こういったようなものを勘案して合理的な給与制度をつくり、運用してもらいたい、このように考えております。  したがいまして、その結果、統計的な数字といたしましてラスパイレス指数が九七になる、あるいは一〇〇になるというようなことがあっても、それは各団体が適正な給与制度をしき、適正に運用している結果であるなら、それでよろしいかというふうに考えております。
  61. 和田貞夫

    和田(貞)委員 賃金を決めていくのは、先ほど申し上げましたけれども第三者機関公務員賃金を決めていくことは原則的に誤りだ。賃金というのは、労使が対等の立場に立って、実質的な交渉の中で決めていく、これがたてまえなんです。これが原則なんです。そうなってまいりますと、それぞれの実情に応じて、地方地方公務員賃金を決めていくわけですから、第三者の方からとやかく言われる筋合いのものでも何でもない。私は決して高いというように思っておらない。むしろまだ低いがために集まらない職種もたくさんあるわけでありますから、そういう誤った考え方を今後持ってもらわないように、ひとつ自治省に厳に慎んでもらいたいということを、私はこの機会に言っておきたいと思います。  時間的な関係もありますので、この程度で終わりたいと思いますが、総務長官、先ほど言われましたように、ことしについても、公務員給与改定の時期が仮に誤って去年と同じようなことになったということで、再びこの国会の場で済まなかったというようなことにならないように、人事院勧告も早めて何とかしようという熱意ある御答弁をいただいたわけでありますから、給与担当大臣としてそのようなことを繰り返さないように、ひとつ十分に御配慮の上で対処していただきたいということを申し添えまして、私の質問を終わりたいと思います。
  62. 藤尾正行

  63. 木下元二

    木下委員 午後からの本会議に、寒冷地手当法の改正案を緊急上程するそうでありますので、短時間で質問を終えたいと思います。したがって、答弁は簡潔にお願いいたします。  寒冷地手当と同様の地域給の一つであります調整手当について、特に随所で不合理が問題になっている支給地区分の問題について、兵庫県の加古川市と高砂市の問題を取り上げて質問いたしたいと思います。  人事院に伺います。両市では国公労働者を中心にしまして、調整手当をかち取る労組連絡会というものを昭和四十七年につくって、継続的な運動をしていることは、人事院も御承知のとおりでありますが、その要求の趣旨と根拠は全く正当であり、人事院が両市を非支給地としておるのは理解に苦しむところであります。  加古川は、古くから播州平野の交通の要所としまして、近年特にこの海岸線における大企業の進出、平野部における農地の宅地化が著しく、播州重化学工業地帯の形成が急テンポに進んでおります。こうした経済活動の動向を背景としまして、民間給与物価、生計費ともに、隣接の明石市、姫路市よりも高く、神戸市と肩を並べるところまできております。昭和四十九年三月一日実施の第三次官署指定では、八%の支給官署になった川西市南部の水準を上回ってさえおります。兵庫県加古川市、高砂市、こうした地方自治体では、もうすでに両市を調整手当支給地として手当を支給しております。さらに市街化に伴う両市の民間給与物価、生計費の増高傾向は、変動的なものではなくて、安定した一貫した傾向であります。給与法のたてまえ及びすでに地域指定または官署指定されている地域との比較から見まして、両市を非支給地として放置しておくことはおかしいと思うのであります。  人事院は、どのような基準に基づいて地域指定をしておられるのか、その基準を資料として提出をしてもらいたいと思います。現在運用しておるものをお出しいただきたいと思います。いかがでしょうか。
  64. 茨木広

    茨木政府委員 調整手当の問題は、基本的な問題で一つ理解をいただかなければいかぬのは、地方団体の場合には、俸給表は俸給表で比較され、調整手当は別途お決めになりますから、別の財源をお出しになるということになりますけれども国家公務員の場合には、夏の官民比較から来ますところの官民較差、これの分配になります。したがって、調整手当地域を広げていきますことは、一方、ほかの職員の本俸に回すべき原資がそれだけ減っていくということになります。相互関係にありますことを、基本的にまず御了解をいただいておかなければいかぬと思っております。  それで加古川、高砂のことについていろいろ問題がありますことは、前から承知いたしておりますが、昨年の夏の勧告の時期の態度といたしまして、御案内のように物価それから給与が激変いたしました年でございますので、昨年の調査した資料等に基づいてその調整手当地域決定を行うことは適当でないという判断が院議の際にございまして、全般的に今年度は見送らしていただいたということをすでに申し上げてございますが、そういう観点からこれはずれておるわけでございます。なお引き続き、やはり安定した時期の数値に基づいて検討をさしていただかなければいかぬというふうに考えております。
  65. 木下元二

    木下委員 私が最後に伺いましたのは、人事院はどういう基準に基づいて地域指定をしておるのかという問題なんですが、これはいかがでしょうか。
  66. 茨木広

    茨木政府委員 法律に書いてありますように、やはり調整手当の御決定は、各地の生計費でございますとか、そういうようなものの差に基づいて決定をするということが十一条の三の条文の中に書いてございます。「民間における賃金物価及び生計費が特に高い地域で」と書いてございますから、やはり基本は、その調整に基づいたものによってやらざるを得ないわけでございます。  ただ、大都市近傍のところは、要するにこの後段にございます「その地域に近接し、かつ、民間における賃金物価及び生計費に関する事情がその地域に準ずる地域に所在する官署で人事院規則で定めるものに在勤する職員についても、同様とする。」という条文がございますので、そういうようなところから若干の官署指定をやっておるところがございますけれども、これは二キロでございますとか、それから特に大都市の人口が稠密な地帯でございますと、六キロ程度までの範囲内の近いところでございますと、そういう対象になりますけれども、いまおっしゃいました高砂、加古川というようなものは、そういう距離以上の遠いところでございますので、後段でそれを扱うというわけにはまいらぬ、どうしても前段の本則で扱ってまいらなければいかぬことでございますので、やはりそういう安定した時期の調査に基づく計数に基づいて処理せざるを得ない、こういうことでございます。
  67. 木下元二

    木下委員 どうもあなたは先走って官署指定のことまで言われますが、地域指定の基準はどういうことなのか、資料をお出しいただきたいということを言っておるのです。  そしていま、給与法十一条の三を言われましたが、「調整手当は、民間における賃金物価及び生計費が特に高い地域人事院規則で定めるものに在勤する職員に支給する。」というふうに明記をされております。したがって、この規定に基づいてこの地域指定がされることは当然でありますが、民間賃金物価、生計費、この三つの要素を基本とした合理的な基準というものがなくてはならないと思うのです。この基準というものがあるのかないのか、そしてあるとすればお出しいただきたい、こういうことを言っておるわけなんでありますが、いかがでしょうか。
  68. 茨木広

    茨木政府委員 これはこの前、三%、六%を八%に直しました際に、あのときの報告の中に出してございますが、あの当時、その地域官民の、要するに民間の給与差の状況はどうであるということで、したがって、六%を八%に上げる変更をお願いしたいというふうにあのとき出しましたが、ああいう姿でそのときの調査を報告申し上げて、従来やっておるわけでございます。そこで、現在の調整手当全体のあれは、先生御案内のとおりと思いますけれども、終戦当時からございました地域給、それがずっと変形されまして、暫定手当というような形に一度変わり、逐次本俸に繰り入れてまいったわけでございます。それの残りましたものを、そのまま今度はこの新しい調整手当というふうに衣がえをして存置してきたということで、そういうふうなところで漸次前のものに積み重なりながら変わってきた、こういうことでいまの地域は決まっておりまして、あと変更しますときには、先ほど申し上げましたように、そのときの地域ごとの給与の差等を御報告申し上げてやっておる。大体いままでは、物価その他が三%なり六%の差がございますから、三なり六なりあるいは八なりにお願いいたします、こういう姿で出しておるわけでございます。ですから、それ以外に別に基準というようなものはございません。
  69. 木下元二

    木下委員 地域指定につきましては、いま少し説明がありましたように、沿革的な理由というものがいろいろあろうかと思うのです。それはそれでわかります。けれども、やはりこの地域指定をする以上は、それをする基準というものがなくてはいけない。明確な基準が必要であります。これは、どうもいまのところ、いまの答弁を伺っておりますと、きちんとした基準というものがないような感じがするのです。  ひとつこれは、給与法十一条の三に基づいたこの三つの要素を基本とした合理的な基準を、職員団体との交渉を基礎にしまして早急に確立をする必要があろうと思うのですが、いかがでしょうか。
  70. 茨木広

    茨木政府委員 法律に書いてありますように、生計費の差あるいは物価差あるいは地域給の差、こういうものが即、物差しになってくるわけでございまして、調整の結果その地域が、三%なり六%なり八%なり、三ついま段階をつくっておりますけれども、そのいずれに該当する給与に直すべきかということは、それらのものの調整の結果、データとして出てまいりますれば料理ができるわけでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、本年度のようなこういう物価変動の激しいときのデータでは、安定的な制度をつくるのにふさわしくないということで、ことしは手をつけませんでしたということを申し上げておるわけであります。
  71. 木下元二

    木下委員 そうしますと、三%、六%、八%を設定したときの基準というものはある。それは急激な物価の変動の時期には別として、それはなお現在においても通用する基準として役に立つものがあるのだ、これで行くのだということでございますか。
  72. 茨木広

    茨木政府委員 基準ということではなくて、その他の地域との生計費の差あるいは給与差というようなものを持っておるか持ってないかということでございまして、その指定されました時点では、他の調整手当をもらってない地域よりも三%高いとか六%前後は高いという実態数値をそれぞれの地域が持っておったということでございます。ですからそういうものが、新たに非該当のところでもほかの地域との関連で出てまいりますれば、それは、やはり俎上にのせて検討しなければいかぬということになるだろうと思います。そういうものに基づかないと、要するに、その他の地域の方の本俸を分捕ってこっちの方に調整手当としてやるわけでございますから、その他の地域の方を納得させるものがなければ、やはり調整手当というようなものは出していくわけにまいらないわけでございます。
  73. 木下元二

    木下委員 もう一つ伺っておきますが、先ほども少し触れられました官署指定の規定であります。人事院が現在運用している官署指定の基準は、資料としてお出しいただけますか。
  74. 茨木広

    茨木政府委員 これはあくまで、近接というものをどういうふうに扱ったらいいかということで、内規的に持っておるものでございまして、別にいま公表いたしておる性格のものでございませんので、御了承いただきたいと思っております。
  75. 木下元二

    木下委員 これを公表できないというのはおかしいと思うのです。これは、あまり合理的な基準ではないので、適当にケース・バイ・ケースで運用しておる、これを公表した場合には、不合理な部分や不公正な部分を露呈するから困るということでございますか。そういうことでないとすれば、これはやはりお出しいただきたいと思うのです。基準ですからね、これは、やはり秘密にしておくものではなくて、具体的にこの問題をどう処理するかということではなくて、その処理に当たっての一般的な基準なんですから、これは公正な行政を保障するという意味でも当然公表されるべきだと思うのです。これはぜひお出しいただくことをひとつ検討いただきたいと思います。総裁いかがですか。
  76. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 給与局長が申し上げましたように、官署指定をいたします場合の近接の意味を目安として合理的にするように、判定の材料といたしまして公正なものになりますようにということの配慮で内部的につくっておるものでございます。先生御承知のように、これは要望もいろいろ各地から多いわけでございまして、その公表等がかえって物議をかもすというようなことになってもいかがかと存じますので、その点はひとつ、内部資料として取り扱わせていただきたいと思いますが、われわれといたしましては、これが不公正な、また不正確なものだとはむろん思っておりません。
  77. 木下元二

    木下委員 合理的な基準を公明正大に運用しておるというのであれば、堂々と公表できると思うのでありますが、この問題は、きょうはもう時間がありませんので、別の機会に論議をしたいと思います。  最後に伺いますが、昨年七月の人事院勧告では「調整手当支給地域区分等の問題については、なお引き続き検討することとしている。」と説明しておりますが、五十年度の方針を明らかにしてもらいたいと思います。  あわせてその方針に、支給地区分と官署指定の基準と運用についての抜本的な改善を、検討課題として加えていただきたいと思うのです。  さらに、この五十年度の当面の措置として民間給与物価、生計費の三つの基本的な要素とともに、その他の条件も含めて地域指定をするに足る十分な条件の整っている加古川市、高砂市などの地域を、直ちに指定をするように検討をいただきたいと思いますが、いかがですか。
  78. 茨木広

    茨木政府委員 これは昨年の勧告時の説明文の中に、明年度も継続していくということを触れております。  そこで、五十年度の問題を聞かれたわけですが、引き続き検討を加えていくつもりでございます。ただ問題は、今度の夏の官民較差がどのような形で出てまいりますか、それから物価等がどういうふうに安定してまいりますか、そういうものを見まして、五十年度で安定的なものを得られたものと考えていいか、あるいはもう一年先まで持っていくべきか、その辺のことも考えあわせてみなければいかぬだろうと思っておりますし、もう一つは、大都市周辺の問題と加古川とは若干違う要素がございまして、地方都市で従来の経緯から調整手当のつく地域、残っている地帯がございますが、むしろそれに近い、たとえば姫路がすぐわきにあるというようなことで近い問題がございますが、その辺のところに手をつけてまいりますと、地方のほとんどの中都市、中小都市と申し上げた方がいいと思いますが、そういうところからいろいろな要望が出ておりますが、この辺のところに一連の波及をいたしていく問題でございまして、あるいはむしろ、もう一回繰り入れてしまったほうがいいのかなというような考え方も一方ございまして、その辺の問題ともあわせていまいろいろ検討を続けておるというのが実情でございます。
  79. 木下元二

    木下委員 もう終えたいと思いますが、五十年度もさらに検討を引き続きやっていく、検討検討ということで毎年毎年検討されるということのようでありますが、一応のめどを明らかにしてもらいたいと思うのです。いつまでも検討ということでは、どうも私は困ると思いますので、およそのめどを明らかにしてもらいたいと思います。  それから、物価の変動等とにらみ合わせてこの調整手当の問題も考えていくということのようでありますが、先ほどから私、指摘しておりますように、特に具体的に地域を申しましたけれども、この地域ばかりではなくてほかにもあろうかと思います。非常に不公正な、不合理な状況で放置をされておるという地域があるわけでありますから、そうしたところを地域指定するという問題を早急に検討いただきたいということを、私は重ねて総裁に要請したいと思うのですが、最後にお答えをいただきたいと思います。
  80. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 非常に安定的でない様子が続いておるものでありますので、昨年の場合はその結果を取り入れなかったわけでございますが、引き続きいろいろな資料を集めながら検討は続けておりますので、お話しのように、できるだけ早い機会結論を出して、各地方からの要望にもおこたえすべきものがあればおこたえしていくということで、改善措置を講じてまいる所存でございます。
  81. 木下元二

    木下委員 大体ことしの春ごろからは物価も安定するということを、政府の方は言われておるわけでありますが、ひとつおよそいつごろということをお示しいただけませんか。おおよそのことで結構でございます。毎年毎年、検討検討ということでやってきたわけでございますから、物価の問題がありますけれども、おおよそ安定するという見通しのようでありますので、したがって、大体いつごろにはこういうふうに処理をしていくという見通しをお述べをいただきたいと思うのです。
  82. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 その点は、安定的な状況というものが前提となります。また民間給与の実態の動きも見てまいらなければならぬということが非常に重要な要素としてございますものですから、それらの点を慎重に検討しながら結論を出せれば、できるだけ早い機会に出したいということでございまして、その点、微妙な問題もございますので、せっかく重ねてのお尋ねでございますが、時期をここで明示をいたしますこと、あるいは見当として申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  83. 木下元二

    木下委員 それでは、いまの地域指定の問題とともに、これが早急に指定ができないということだとするならば、それに至るまでの間、条件の整っている官署については順次官署指定をしていくということも一つの方法であろうと思うのですけれども、そういうことも含めて御検討をいただきたいと思います。よろしいですか。
  84. 藤尾正行

    藤尾委員長 よろしゅうございますか。
  85. 茨木広

    茨木政府委員 官署指定の方は、近接地の問題で、また別個の問題でございますので、そういう点から放置しがたい問題が出ますれば、これは、また別の問題として考えていかなければいかぬと思っております。
  86. 木下元二

    木下委員 では、時間ですので終わります。
  87. 藤尾正行

    藤尾委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  88. 藤尾正行

    藤尾委員長 ただいま委員長の手元に、日本共産党・革新共同中路雅弘君から、本案に対し修正案が提出されております。提出者から趣旨の説明を求めます。中路雅弘君。     —————————————     —————————————
  89. 中路雅弘

    ○中路委員 修正案提出の趣旨を簡潔に申し上げたいと思います。  修正案の中身は、基準日以降翌年二月末までの期間内に寒冷地に採用された職員、いわゆる中途採用者にも寒冷地手当が支給できるように修正したいという趣旨でございます。  幾つか理由がありますが、一つは、前回の改正案が提出されました四十八年三月の七十一国会における当委員会において、中途採用者にも同手当が支給されるよう法改正検討を行うこと、あるいは期間中に世帯区分に変動があった職員に対しては、支給額の調整を行うよう法改正検討をするなどを中心にしました附帯決議が全会一致で採択されています。国会委員会附帯決議というのは、いままでしばしば附帯決議というのが法案についてやられていますけれども、全会一致の附帯決議でありますから、これは単なる決議に終わらせないで、次の行政に、あるいは法改正に十分反映させていくということを、もっと厳格にやっていかないといけないのではないかという趣旨が第一番目であります。  それから、提案しました中途採用職員への支給の問題は、対象者そのものは、それほど多くないと思いますけれども、これは職員の切実な要求になっている問題であります。公社、現業では中途採用者は異動職員と同様の扱いをして、一定の割合で支給しているわけですが、一般職の国家公務員には支給をしていないという不合理を是正したいということであります。また防衛庁職員については、これは月払い、毎月払いの支給方法でありますけれども、しかし、そういう方法によっても支払われているという、こういう点も関係あるわけですから、ぜひとも中途採用者については一定の支給ができるようにしたいと考えています。  なお、現行制度のもとでも、支給地から非支給地に異動した場合、返納規定がありますけれども、期間中に停職、休職処分を受けた場合とか、あるいは期間中に退職した場合には返納規定がありません。いろいろそういう不合理が現存しているわけです。したがって、基準日後寒冷地に在勤することになった場合に追給処置をとったとしても、現行規定の相互間のバランスを著しく崩すということにならないのではないか。現存しているいまのケースごとの追給や返給処置の不合理というのは、今後ひとつ、職員団体との交渉を基礎にいたしまして、抜本的に見直さなければいけない時期に来ていると私は思いますが、この修正案は、それに到達するまでのいわば途中の処置として、ぜひともこれだけは実現したいと願っています。  それで、お手元に修正案はお配りしてありますが、第二条の改正規定の前に第一条にさらに次の一項を加える。「寒冷地手当は、基準日後に職員となり、内閣総理大臣が定める期間内に寒冷地に在勤することとなったものにも支給する。」ということであります。  なお、必要とする経費は、過去の三・四半期の新規採用者の実績から見て約八千万円の見込みであります。  皆さん方の御賛同を是非ともお願いしたいと思います。
  90. 藤尾正行

    藤尾委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。  この際、本修正案について国会法第五十七条の三により内閣意見があればお述べ願いたいと存じます。植木総務長官
  91. 植木光教

    植木国務大臣 国家公務員寒冷地手当に関する法律の一部を改正する法律案に対するただいまの修正案につきましては、政府としては遺憾ながら賛成いたしかねます。     —————————————
  92. 藤尾正行

    藤尾委員長 これより討論に入ります。  原案及び修正案を一括して討論に付します。討論の申し出がありますので、これを許します。中路雅弘君。
  93. 中路雅弘

    ○中路委員 ただいまの修正案の趣旨説明でおわかりのとおりでありますので、原案には賛成することを申し上げて討論といたします。
  94. 藤尾正行

    藤尾委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  95. 藤尾正行

    藤尾委員長 採決いたします。  国家公務員寒冷地手当に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、中路雅弘君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
  96. 藤尾正行

    藤尾委員長 起立少数。よって、中路雅弘君提出の修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  97. 藤尾正行

    藤尾委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  98. 藤尾正行

    藤尾委員長 ただいま議決いたしました国家公務員寒冷地手当に関する法律の一部を改正する法律案に対し、奥田敬和君外三名より、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党各派共同をもって附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨の説明を求めます。奥田敬和君。
  99. 奥田敬和

    ○奥田委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表してその趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。   国家公務員寒冷地手当に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  寒冷積雪地帯公務員が定着しがたい実情にかんがみ、人事院基準額検討し定額分の増額を考慮するとともに、基準日後の世帯区分の変動等に応ずる支給額の調整について検討すべきである。   なお、寒冷地手当支給地域区分について、継続して検討を行ない、その不均衡の改善措置を講ずべきである。   右決議する。  本附帯決議案の趣旨につきましては、先般来の当委員会における質疑を通じましてすでに明らかになっておることと存じます。  よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  100. 藤尾正行

    藤尾委員長 本動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
  101. 藤尾正行

    藤尾委員長 起立総員。よって、本案に対しては附帯決議を付することに決しました。  この際、植木総務長官より発言を求められておりますので、これを許します。植木総務長官
  102. 植木光教

    植木国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、政府としては人事院勧告を尊重するというたてまえのもとに、御趣旨に沿って善処いたしたいと存じます。     —————————————
  103. 藤尾正行

    藤尾委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  104. 藤尾正行

    藤尾委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     —————————————
  105. 藤尾正行

    藤尾委員長 本会議散会後委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時九分休憩      ————◇—————     午後三時十六分開議
  106. 藤尾正行

    藤尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  在外公館の名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三塚博君。
  107. 三塚博

    三塚委員 ただいま議題になりました法律に関連をいたしまして、まずその前に、ただいま当面しておる外交上の問題の一、二をしぼって外務大臣に見解を承っておきたいと思います。  その前に、水産庁の漁政部長がおいででありますが、ただいま問題になっておりますソ連船のわが国近海における操業、これに伴うきわめて深刻な問題が沿岸漁民から投げかけられておるわけであります。  外務省の見解を承る前に、まず現在の日本近海における操業の現況、また、これによってわが国水産業に多大なる影響を及ぼしておると思うのでありますが、まず水産庁の見解を承っておきたいと思います。
  108. 兵藤節郎

    ○兵藤説明員 ソ連船が日本の近海に来始めたのは、実は昭和三十年代からでございまして、それがいわば被害としてはっきりし始めたのは、昭和四十六年からでございます。私どもがいま持っておりますところの四十六年から四十九年の十二月末に至るまでの被害総額は、道なり県からの報告によるものでございますが、隻数にしまして四百四十二隻、被害金額が二億一千九百万円、こういうことになっておるわけでございますが、最近に至りまして、この一月、二月、北海道だけで被害額が一月で五千二百万円、それから二月半ばまでで七千七百万円と、こういったように本年に入ってからの被害が目立っているわけでございます。  去年の十一月に、日ソ間におきまして、この問題をめぐっての専門家会議があったわけでございますが、その席上、私ども日本側から、一体どの程度の船が、どういう船が来ているかということについて、相手方に対して質問したわけでございますが、その場では回答を得ず、その代表がモスクワに帰られてから私どもに電報で回答があったわけでございます。  それによりますと母船、加工船、冷蔵運搬船、トロール船等含めまして約百十隻、こういったような報告があったわけでございまして、この船の数は、四十八年に比べますと、私たちの推定では約三倍ないしは四倍になっているのではなかろうかと思われるわけでございます。  これらの船は、北は根室沖から襟裳岬沖、さらには噴火湾近くまで入っている。それから三陸沖、さらに常陸沖、さらに下って房総沖、最近では伊豆七島の新島の周辺にもおる。さらには西に行きまして遠州灘、あるいは調査船のごときものが三重県の大王崎近くにいる、こういったような情報ももらっているわけでございます。  なお、こうした船によるところの直接の漁具被害だけではなく、漁場自身が荒らされている。つまり向こうはトロールでございますから、一切合財かっさらっていくというような漁法によって捕獲をやっているわけでございまして、日本の沿岸漁民が、この沿岸におきまして、たとえばスケトウの刺し網をやっている、あるいは伊豆七島におきましても、私ども銭州海域とこう申しますが、こういうところで——この地域はサバの産卵場でございます。したがいまして、日本としましては、そういう場合は漁期を変えるとか、あるいはとり方もサバ釣りといいますもので制限しておる、トロールあるいは底びき網、こういうものは禁止している、こういうような地域でございますが、ソ連側の船は、こういうことに一向お構いなくトロールでひっかき回している、こういうような状態であるわけでございます。
  109. 三塚博

    三塚委員 ただいまの御説明で、大体現況がわかったわけでございますが、問題は、直接的な被害が二億一千四百万円、さらに日本の水産は近海漁業、ただいま部長の指摘のように資源を大事にしながら操業をしていく、銭州のサバの一本釣り、それをソ連船がごっそりトロールで巻き上げていく、こういうようなこと。それから、わが宮城県の三陸海岸、金華山沖も非常な近海漁業の宝庫と言われる地域であります。でありますから、この操業については、お互いの漁業団体が約束をいたしまして、いわゆる資源の枯渇を来たさぬように十二分の配慮の中でやられております。言うなれば、そこでいろいろな利害が衝突するのでありますが、大局的に魚族を保存しながら漁業を操業することに沿岸漁民の生命があるという観点で、そういう、あえて今日の低成長時代と同じように、計画された操業ということでやられておる。ところが、ソ連船の操業の状態は、ただいまのお話のような状況だとしますと、間接的な影響はきわめて甚大だろうと思うのであります。このままの状態をそのまま放置すると仮定いたしますと、大体近海の魚族資源というものは、そう遠くない時期に枯渇をするのではないかというふうに私は思うのでありますが、これに対して部長はどのような見解をお持ちですか。
  110. 兵藤節郎

    ○兵藤説明員 ソ連がどの程度の漁獲量を上げているかということは、実は定かでないわけでございますが、先ほど申し上げました去年の十一月に日ソの専門家会議を開いた当時、私の方からどれだけの漁獲を上げているかということを問うたことがあるわけでございますが、そのとき向こうの代表は約二十万トンと、こういうことを言っております。しかし向こうは、それに加えて日本の漁船はソ連の沿岸におきましてその二十倍もの漁獲を上げている、こういったような反論をしているわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたように、この二十万トンという数字は、恐らく四十八年当時の実績であって、四十九年、それから五十年に入ってからの漁獲実績というものは、恐らく三倍増、四倍増しておるのではなかろうか、こういうふうに推定されるわけでございます。そうしますと、この日本近海、日本沿岸におけるところの魚族資源というものがかなりの程度に荒らされておる、具体的に幾らということは申し上げかねますが、かなりの程度に荒らされているということで、私どもはその点、非常に憂慮しておるわけでございます。  具体的な例を一つ挙げてみますと、ソ連船が北海道の襟裳岬から苫小牧、室蘭にかけて、噴火湾近くまで入ったケースがこの一月、二月にあったわけでございます。このとき、この地域というものは、日本の制度としまして底びき網を禁止しておる地域でございます。で、沿岸漁民はスケトウをとるために、刺し網を設けているわけでございますが、この刺し網の前をねらってむしろ向こうがやってきたという事実があって、そのソ連船が引き揚げた後、日本のその近くの沿岸漁民が刺し網をかけたところ、平年の状態ならば大体一網二百本ないし三百本かかる、ところが二本ないし三本しかかかっていない、こういったような事実がありまして、その沿岸漁民の方は、こういうような状態では向こう五年ないしあるいは十年近くも、この地域におけるスケトウというのはとれなくなるのではなかろうかというふうな心配を、われわれに突きつけているわけでございます。  われわれの方といたしましても、実際にどの程度の資源の枯渇が来ているのかということで、北海道庁の水産試験場あるいは水産庁の水産試験場を通じまして、その魚族の資源状況というものを調査すべく手配している、こういった状況でございます。
  111. 三塚博

    三塚委員 外務大臣、大体ただいまお聞きのとおりの経過であります。それで、本問題につきましては、宮澤外務大臣一月の訪ソの際に、向こうの外務大臣と交渉をされた経過があります。さらに本月二十一日、トロヤノフスキー大使に対して、安倍農林大臣が強く本問題に対する秩序ある操業、こういうものに対して要求をいたしております。また本委員会におきまして、同僚委員からの提案、質疑に答えまして、外務当局は、この生じました損害に対しまして賠償の請求をいたしてまいります、こういうような確約もいたしておるわけでございます。こういう時点できわめて深刻な、日本近海漁業はピンチにいま立っております。近海漁業のピンチはまさに、これに関連をいたしましてやられておる零細加工業者への影響が、これまた深刻な問題になりつつあるわけであります。  そういう観点から、政務次官また大臣が上空よりこの現況を視察する、さらには現地に飛んで、現地の漁民たちのいろいろな実情調査意見を聞くという、まさに日本の水産国家としての重大な岐路に立たされてきているというふうに思うのであります。こういう点につきまして、外務大臣といたしまして、この現況の打開をどのようにお考えになられておるか、まず、その点からお聞かせをいただきたいと思います。
  112. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘のように、一月にモスクワへ参りましたときに、グロムイコ外務大臣に対しまして、この問題は、所管としては漁業大臣の所管であるかもしれないが、わが国の国民の対ソ感情というものは、こういうことによって非常に傷つけられるおそれがある、したがって外務大臣としても、この点について慎重にお考えを願いたいということを申しまして、所管大臣に自分からもそのように申しますということであったわけでございます。  で、その前もその後も幾たびかソ連側の注意を喚起いたしておりましたが、ソ連側では一たびは、ソ連の申すところによりますと、出先に対して注意するようにという示達もいたしたと言っておるのでございます。しかしどうも、それが徹底をしている形跡はないのでございまして、事態は日を追って悪くなってきておりましたので、二月の二十一日にソ連大使を招致いたしまして、次のようなことを申したわけでございます。  第一は、わが国の漁民の漁船、漁具等に対して損害を与えるようなことをしないように指導をしてほしいということ、第二は、日本の出漁している漁船と競合するような形での操業を控えてもらいたいということ、第三は、かねて両国の間で専門家が話し合いをいたしておりますこの問題についての取り決めを急いでやりたいということ、つまり、操業に伴う事故の未然防止と紛争が起こりましたときの解決の方法、処理の方法でございますが、そういう三つのことを申しまして、ソ連大使は、いろいろやりとりはあったわけでございますけれども、早速本国に伝えますと、こういう返事をされたわけでございます。  私どもとしては、そのうち、いわゆる取り決めにつきましては、日本側の案を政府部内でまとめまして、来月、できるだけ早い前半の機会に、外交ルートを通じて交渉に入りたいと考えております。  他方で、これから恐らく、普通でありますとだんだん漁場を南へ下げてくるような、そういう季節でございますけれども、もし今月の二十一日にソ連大使を招致して伝えましたことが、一定の日がたちましても一向に結果をあらわさないということになりますと、私どもとしても放置するわけにはまいらない、しかるべき次の処置を考えなければならないことになりますが、まあ今日まで一週間足らずでございますから、処置が具体的に先方によってとられます時間をもう少し見る必要はあると考えておりますけれども、もし日がたちましても、何ら誠意のある対応が見られないということであれば、次のことをまた考えなければならないというふうに思っております。
  113. 三塚博

    三塚委員 まさにこの問題は、もう水産庁なり農林当局が、全力を挙げて本問題にいろいろな観点からかかられてきたわけでありますが、これは外務省、外務当局の手にある両国間の問題である、緊急に解決をしなければならぬ問題に私は発展をしてきておると思います。日本の外務省は当然、これは日本の国民の権益、財産、生命を守るための平和的な交渉を、全力を尽くしてやらなければならぬ、そういう立場にあるわけでございまして、この問題が放置をされるということになりますと、言うなれば外務省、外交の犠牲の中で、零細農民がこの負担に耐えていかなければならぬという結果にもなるわけであります。  いままさに、いわゆる日ソ漁業交渉が三月三日より始められようとしております。この問題なども、公海上の漁業交渉、これがソ連の申し入れによりまして、すでに十七回を数え、漁業委員会などは十九回目になるわけでありまして、これもソ連側の、言うなれば魚族の保護というこういう観点から、わが日本が不本意ながら、やはり両国の平和的解決の中でやらなければならぬということの中で、日本の漁業というものが後退に後退を重ねながら、耐えがたきを忍びながら今日まで来ておるわけであります。  そこで、このソ連船の日本近海におけるまさに乱暴と言うべきこの操業というものにつきましては、いろいろな憶測が飛んでおるわけでございます。いわゆる日中平和友好条約に対する牽制ではないだろうか、いろいろなことがあるわけでありますが、この問題は別といたしまして、私は、やはり本問題の交渉というものは、的確に行われなければならない問題であろうと思うのであります。三月三日から漁業交渉が行われるわけでございますから、その以前において、時間がないわけでありますけれども、決着をつけるという意気込みで、外務当局が本問題に取り組むべき時期ではないだろうかと思うし、あるいはなかなか時間的な——外交上いろいろな時間を見なければならぬということが仮にあるとすれば、日ソ漁業交渉のまず冒頭における正式議題として、本問題から入るべき性格のものではないだろうかというふうにすら思うわけであります。  日ソ漁業交渉の委員に外務省の欧亜局参事官の木内さんも加わっておるわけでございますから、そういう点などについて、私は第一義的には本問題を切り離して当然やられるべきものであると思いますけれども、その点についての外相の見解はどうでしょうか。
  114. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この事件は御承知のような内容のもので、私どもが前からソ連に対してその注意を喚起しているところのものでございますから、本来、いわゆる漁業交渉とは性格の違うもので、したがって、これはこれとしてできるだけ早く処理をいたしたいと考えておるわけでございます。しかしながら、これは要するに交渉の戦術の問題にもなりますので、もし漁業交渉の冒頭においてこれを取り上げることが有効であるということであるならば、無論それにやぶさかではございませんで、そこは柔軟に考えていきたいと思っております。
  115. 三塚博

    三塚委員 そこで、現況を解決していくためにまず当然やらなければならぬことは、二億一千万に達する損害賠償の請求ということ、これは当然のことであろうというふうに思うのであります。これは公海上の操業であるから、この損害については、わが国は責めを負わぬとあるいはソ連側が言われるかもしれません。わが国は三海里であり、ソ連側は十二海里、国際法上この領海の問題については、それぞれの国が宣言をすることで足りるのだ、また、これは国際的にいまだ領海条約というものの現況にないので何ともいたし方がない、こういうことが言われておるようでありますけれども、いわゆる相互互恵といいますか、お互いの立場を尊重する相互主権の尊重、こういう点から考えますと、ソ連側は十二海里、わが国は三海里、こういうことであります。しかし日本船のソ連沿岸における操業については、漁業交渉の結果にまつわけでありますが、言うなれば十二海里までには立ち入ることができない、こういうこと、立ち入ってきては困る、もちろんそうなれば、当然拿捕されるわけでありますけれども、そういう点などがあるとすれば、ソ連側は十二海里を主張しておるのでありますから、わが国の近海におけるその操業が仮に正しいということであるならば、十二海里の限界から離れたところにおいて操業すべきものであろうというふうに思うのであります。  ところが、私も、宮城県海岸閖上沖に、これは松島湾でありますが、ソ連船の母船が停泊をいたしまして、ここ数年操業いたしておるのでありますが、これを望遠鏡で見て専門家にその距離を聞いてみますと、三海里の領海ぎりぎりのところで操業がやられておる。母船は大体五海里から七海里ぐらいのところに停泊をいたし、いわゆるトロール船が縦横に東西に走りながら、領海すれすれのところでやられておるわけであります。  そういう点から考えますと、まさに大国の横暴が小国日本の近海において縦横無尽にやられておる、わが国はこれを指をくわえてただ見ておらなければならないのかというようなことにもなるわけであります。そういう意味で、国際信義上、ソ連が十二海里を主張するのであれば、当然、わが国の近海におけるその操業についても十二海里を限度としてやられるべきでありましょうし、当然その漁網その他漁業の資源に対する損害——外務大臣も御承知と思うのでありますが、言うなればわが国の近海漁業は、沿岸から七海里ぐらいのところまでが魚族の繁殖の基盤になっておるわけであります。ですから、これ以内における大量の底びきトロールその他における操業というものは、わが国近海の魚族が根こそぎ断たれるという心配もあるわけであります。  そういう意味で、この領海、いわゆる公海上における操業であるからその損害の責めに応じないというソ連の言い分は正しいものであるかどうか。また外務省に確認をさせていただきますが、この損害に対して請求を行ったと思うのでありますが、行ったとすれば、その後のソ連側の反応は、返事はどういうものであるか、その点についての経過を御説明いただきたいと思います。
  116. 橘正忠

    ○橘政府委員 最初に、領海の関係につきましてお答え申し上げます。  御存じのとおり、わが方は現在三海里領海という立場をとっておりますので、ソ連側の操業しております船舶もその領海の外でやっておるわけでございまして、ソ連側が十二海里の立場をとり、わが方が三海里の立場をとっておるという差はございますが、一応公海における操業という立場をソ連側としてはとっております。なお、その差をどうするかといったようなことも含めまして、ソ連側との折衝というものも考えていきたいとは思っておりますけれども、基本的にはその差がございます。  なお、わが方の領海を十二海里にするかどうかということにつきましては、御案内のとおり、政府としても基本的にはそういう方向で考えておりますけれども、海洋法会議といったようなものの関連でその時期についてはなお慎重に考えて検討し、そのときを考えたいと思っておる次第でございます。  次に、損害賠償という件につきましては、外務省は、先ほど水産庁から御説明がありましたような漁具等の損害に関する事実関係の連絡を受けまして、それをソ連側に申し入れてございます。ただ、その損害そのものは、わが方の漁船がソ連側の漁船によってこうむった損害でございますので、第一義的には、そういう当事者間の問題というのが法律的な性格ではございます。ただ政府といたしましては、その件をソ連側に申し入れているということでございますが、これに対しましては、ソ連側はいままで何らの立場も表明しておらないのが実情でございます。
  117. 三塚博

    三塚委員 その損害に対して何らの意思表明もしない、こういうことではいけないだろうと私は思うのであります。当事者間の交渉に任せる、本来そういう原則でありますということもわからぬわけではございません。しかしながら、日本国民である漁民、これがモスクワまで出かけて交渉するわけにはいかぬのです。ですから、漁民の諸君からすれば、たびたびソ連大使館に押しかけまして本問題についての要求、また秩序ある操業、日本の近海資源としての問題、こういう点について何回となくやられておるわけであります。もう精も根も尽き果てたとすら漁民が言うほどの状態になって、尽くすべき手を尽くしてもうどうしようもない、こういうことの現況に立ち至ってきておるわけです。  そういう意味で、水産庁なり担当の長官、また政務次官、農林大臣に何とかこの際救済をしてほしい、国がかわってその損害を弁償してほしい、こういう議論にも発展をいたしておるわけであります。しかしこれは、内政問題でありますから、いずれそういうようなかっこうにもなろうかと思うのでありますけれども、まず第一義的には、もたらされたその損害の交渉が、ソ連側の言うわが国によってなされたものではないかもしれぬ、あるいはその実態が定かではないということでわが外務省が後退をするということでありますと、これは今後の外交交渉の前例にもなるのではないかと私は思うのです。権益、いわゆる主張すべき利益というものがわずか二億一千万円、こういうふうにあるいは思われるかもしれません。しかし漁民の諸君にとりましては、このことの生じた背景というものが、先ほど漁政部長が言われるような膨大な背景を持つものであります。私は、その背景、日本近海漁業というものの前途に照らして問題を考えてみますと、これは金額にしますと相当な額に相なろうかと思うのであります。  そういう意味で、表にあらわれた損害額が小さいからといって等閑視するような、ただいま局長の答弁を聞いておりますと、向こうの回答が来るまでこれを待つような形になっておるのでありますが、これでは私は政治ではないと思うし、これでは外交ではないだろうというふうに思うのであります。やはり外交というものは、根強く反復して主張を繰り返すことによって初めてその効果というものが出ると思うのであります。外務省にはたくさんの懸案の事項がございます。だから、それにあるいは軽重をつけられておるのではないか、こうすら思うわけであります。こういう小さい問題は、大問題を解決した後に、大陸だな問題あるいは日中問題、日ソの問題、そういう問題が解決した後にやるのだから、君たちしんぼうせいということであれば、これは政治の本質を外れた議論だと言わなければなりません。やはり本問題について、これはさらに進められるべき性格のものだというふうに思うのでありますが、いかがでしょうか。
  118. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題は、私ども実は、非常に重い問題であるというふうに考えております。事の性質上、軽々しい問題ではないと思っております。  そこで、わが国の漁民の漁具、漁船等に、財産に損害を生じたということは、仮に公海上でありましても、これは不法行為であれば追及すべきものでありまして、公海であるから不法行為が成立しないということはないと思っております。  それから次に、非常に厳密に申せば、こちらはむろん私人でございますが、先方も国際法上は私人、私の行為ということになるのでございましょうけれども、ソ連の場合、恐らくこの漁獲物が私有されるというのではないはずでありまして、やはり公社というような性格のものではなかろうかと思いますので、その点、全くの私人ということとも違います。おっしゃいますように、わが国の漁民のそういう損害賠償の請求が、漁民の力だけでできにくいということも、相手方の国情から見まして当然でありますから、よけい日本政府が、いわゆる外交チャンネルを通じてこの問題を取り上げなければならない性格のものであるというふうに考えておるわけでございます。私ども、この問題を決して軽々しいとは考えておりません。  なお、現実の問題として損害が生じた、しかし、どこでだれがということが挙証しにくいとか、あるいは零細な漁民が自分の力ですぐに問題を解決できないとかいうようなことは、これは三塚委員の御指摘のとおりでございますから、これは、私が自分の所管として申し上げるべき問題ではないのでございますけれども、やはり政府としてもとりあえず、何か漁民に対して考えることが適当ではないだろうかというような感じを、私の所管ではございませんが、私としては思っております。しかしそうではあっても、明らかに不法行為があったわけでございますから、それの追求を断念するということは、これは筋の違うことでございまして、やはりすることはすることで、していかなければならぬと思います。
  119. 三塚博

    三塚委員 どうぞそのようにひとつ進めていただきたいと思うのでありますが、ソ連船団による横暴きわまりない操業が、まだ今日ただいまも行われておるわけであります。その中を日本の五トンないし十トンの小舟のような漁船が、まさに生命の危機にさらされながら操業をしておる。これを視察した江藤隆美政務次官の視察談によれば、上空から見ておりますと、五十ぱいも群がる大船団の合間を木の葉のような小さな日本の漁船が操業をしておる、とてもかわいそうで、できることなら機上から救い上げて、抱き上げて助けてあげたいという衝動に駆られた、こういうような談話が出ておるのであります。そういう深刻な状態が今日ただいまも繰り返されておるわけであります。それもまさに日本の近海において、ソ連の言う十二海里領海だとするならば、ソ連流に言えばわが国の領海の中において不法操業が繰り返されておるわけであります。  こういう状態から考えますと、先ほど十二海里説、政府として大体そういうような考えに立って、今後の海洋法会議などの結果を見て決定をしていきたいというふうに言われておるのでありますが、いまの時点政府が決断をして、わが国の領海は十二海里であると宣言をすることが、本問題を直接にただいま解決する最大の決め手であるように私は思うのであります。  言うなれば、先ほども触れましたように、日本の近海漁業というものは、陸から大体七海里ぐらいのところまで魚族が繁殖をし、そこでそれを中心として行われておるわけでございます。まあ遠海漁業もわが国水産業の主力であり、経済水域等の問題があり、その及ぼす影響もきわめてはかり知れないものがあるので、その辺をにらみ合わせながら本問題に対処をしていきたい、こういうふうに考えられる点もわからぬわけではないのでありますが、今日の事態を収拾をしていく、さらに十二海里説というものが世界の趨勢になりつつある、こういうような観点から言いますれば、海洋法会議の結果を待ってという長い視点に立ってものを考えるのではなくして、現時点においてわが国の領海は十二海里でありますと、こう言うことによって、ソ連船団のわが国近海における操業にピリオドを打つことができるのではないだろうかというふうに私は思うのでありますが、外務大臣はどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  120. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その問題につきまして、従来私どもは、御指摘の海洋法会議との関連がある、海洋法会議におきまして、御承知のように、この領海をどうとるかということは、経済水域の問題あるいは国際海峡の船舶による通航の問題、海底あるいは深海の鉱物資源等々の問題、いろいろなことと非常に密接に関係をいたしておりますので、国益全体から申せば、全体との関連において解決する方が有利であろうと考えてまいりました。  事漁業に限って考えましても、恐らくはこういう沿岸漁業の問題が、当面お互いの関心事でございますけれども、しかし遠海の問題がございます。このことは、経済水域の設定に非常に関係がありますことは、御承知のとおりでございますから、その辺は農林大臣におかれても、恐らくいろいろお考えになっていらっしゃるのではなかろうか。もちろん、ここで領海を十二海里というふうにいたしますと、今度は国際海峡の通過とかいうような問題をどうするかということがすぐに出てまいりますけれども、それはそれといたしまして、漁業の範囲においてもどういうふうにされるかということは、農林大臣においていろいろお考えではなかろうかと存じております。
  121. 三塚博

    三塚委員 大体農林省、水産庁の方も、十二海里がきわめて至当であるという見解を持たれておるわけでありますが、海洋法会議の経過とにらみ合わせながら、これは、やはり早急に宣言をさるべきものだというふうに思いますので、今後そういう方向でお取り組みをいただきたいと思うのであります。  最後にお聞き申し上げたいのは、昨日の分科会における外務大臣の答弁の中で、仮称でありましょうが、日本近海漁業協定を結びたいということ、先ほどの大使を招致して言われました三項目の提案に基づいて、こういうことだろうと思うのでありますが、この辺の真意はどういうことなんでしょうか。
  122. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、実は私が申し上げたつもりでございましたことは、片方で先ほど、いわゆる漁業交渉というものが始まろうとしている、それに対して本件がどのような関連に立つかというお尋ねでありましたので、漁業交渉は漁業交渉といたしまして、このようなわが国の漁船に対する脅威、それから起こる紛争、これ自身は日ソ間の取り決めによって紛争の防止、紛争の処理についての原則を決めたい、これ自身は漁業交渉が長引くとかいうようなことになりましても関係なく、三月になりましたら交渉を始めたい、こう申し上げたことであったのでございます。  近海における漁業、たとえば漁獲量の協定というようなことになりますと、これは、なかなかいろいろの問題があるのではないか。たとえばそれが、今後いわゆるソ連側の実績として主張されるというようなことになりますれば、これは、わが国にとっては決していいことではないようにも思いますので、その点を実は昨日申し上げたつもりではなかったわけでございます。
  123. 三塚博

    三塚委員 いろいろもっとお聞きしたいのですが、時間がありませんので結論に入りますけれども、ただいまこの瞬間においても、ソ連船団の横暴な操業が、繰り返して申し上げますが、行われておる。そのことによって、人命の危機もはらみながらあしたの生活のために零細漁民が操業せざるを得ない、そういう現況にあるわけであります。  そこで、どうでしょうか、宮澤先生、ひとつ時間をつくってあしたにも行動を起こしていただきたいのでありますが、すでに農林大臣も現地に飛んで上空からその状況を見ております。江藤政務次官もそれを見ておられるわけであります。まさにこういう現況というものは座視するに忍びない、早急に本問題を煮詰めてまいるという先ほど来の御決意でありますので、一度外務大臣として、この現況を上空なりから御視察をしていただくことが事を運ぶ上で、もっと生々しい現実の上できわめて大事なポイントではなかろうかと思います。ここで質疑を通して賢明な宮澤先生でありますから、十二分にその状況は御推察いただけるものと思うのでありますけれども、やはり一見にしかずということでありますので、どうぞそういう意味で、ここ近日中にぜひ、あしたと言ってもこれは大変でしょうから、見ていただきたい。そして、その処置を部下の方にお命じをいただき、また外相みずからさらに第二段目の交渉に入られる、現況がこうでありますということでやられることが、この際大事なポイントのように感じますが、いかがなものでしょう。
  124. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実は、従来の現地視察には私どもの役所の方からも御一緒に参っておりますために、その報告は聞いておるわけでございますが、ただいまのお話は、ごもっともなお話だと思いますので、私としては、もしソ連側が一定の時間がたちましても、なお本件について誠意のある対応策に出てこないということになってまいりますと、次の外務省としての処置を考えなければなりませんので、その場合との連関でいまのことも考えさせていただきたいと思います。
  125. 三塚博

    三塚委員 それじゃ水産庁はどうぞ……。ありがとうございました。  次に、日中平和友好条約がただいまいろいろ煮詰められておるわけでございますが、これとの関連におきまして、これもわが国の国益に重大な関連をする問題でありますが、日台航空再開の問題について、ちょっとお伺いをしておきたいと思います。  これは民間の取り決めによって行われるべきである、こういう基本方針もあるわけでございますが、この問題は、ここで申し上げるまでもなく、いろいろな要素が絡み合っておるわけであります。言うなれば、政治的なグラウンドそのものの解決なくして本問題の前進はあり得ないというふうに思います。  日本航空の決算を見ますと、約五百億になんなんとする赤字である。その内容を聞いてみますと、日台航空が切られたことに伴う得べかりし利益といたしまして百三十億円、さらに航空識別圏を遠く離れて、台湾上空を離れて飛ばなければならぬことに伴う時間のロスが四十分ないし五十分あると言われております。  御承知のように、航空というのは敏速に、安全に目的地に達するということがポイントでありますから、気象状況によれば一時間もおくれるということになりますと、ナショナルキャリアである日本航空に乗るという人がだんだん少なくなってくるのも当然であります。そういう影響を受けておるのが、わが国政府が出資をしてつくりました日本航空の現況であろうというふうに思うわけであります。そこに甚大な損害が出ておるわけでございます。  そして台湾は中国一体であるという中国側の声明、またそれを理解するというわが国の意見の開陳、こういうことであるのでありますが、台湾政府を認めている国も存在する、また国交がありませんけれども、民間協定によって航空が再開されている国もあるわけでございますから、特に現実に処していくのが外交であろうと思うのであります。高島局長は、運輸大臣の権限によってそれはやれる余地があるというような答弁などもなさっておられるようでありますが、この日台航空再開、これは民間ベースではありますが、やはり先ほど申し上げました政治的グラウンドが整備されていくことがきわめて重要である。そういう意味で、日中間の問題については、今日の共同声明の線に抵触しない限りにおいて外務省としても相当な幅においてやれることがあるのではないかというふうに私は思うのであります。  この点について、外務大臣は日台航空再開は急ぐべきであるというふうにお考えだと思うのでありますが、その方法論など、どういう方法が一番いいのか、その辺をお聞かせをいただきたいと思います。
  126. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 日中国交正常化と抵触しない範囲においてと仰せられましたが、まさしくその枠組みの中で考えなければならない問題でございますが、私どもとしましては、この航空路線が安定的基礎の上で再開されることが望ましいことであると考えております。望ましいことであります以上、早いことが望ましいということに当然になってまいると思います。そしてそれが、周辺のいろいろな条件、空域の整備の中から生まれなければならないものであると言われます点も、御指摘のとおりであると考えております。  それにつきまして、いろいろな方が各方面努力をしておられますことはよく存じておりますが、事柄の性質上、相手方の立場もございましょうし、政府としては再開されることが望ましいと考えているということを申し上げさせていただきまして、あとのことは申し上げるのを差し控えさせていただきたいと思います。
  127. 三塚博

    三塚委員 本日は、在外公館の名称、位置等に関する法律案審議でありますので、あと、時間がありませんが、本来の審議に入ってひとつお聞かせをいただきたいと思いますが、公館の設置の基準をちょっとお聞きいたしたいと思います。
  128. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 在外公館は、大使館と総領事館に大きく分かれていると申してよろしいと思いますけれども、大使館の設置につきましては、本来、長期的には、わが国と外交関係にあるあらゆる国にわが国の大使館を設けることが望ましいというふうには考えますが、現実の問題といたしましては、予算なり定員の確保という制約もございますので、わが国との政治、経済、貿易関係及び当該国の国際間における政治的、経済的重要度、またわが国の邦人の進出の状況、第三国の公館の設置の状況あるいは外交上のバランスを図る必要、こういう点に重点を置きまして総合的に考えた上でその必要度を決めていく、こういうふうに考えてきているわけでございます。  一方、総領事官につきましては、邦人の進出の状況、わが国との貿易、経済関係、また、その公館を拠点として情勢をオブザーブするための重要性いかん、あるいは資源の賦存状況いかん、それから主要国の公館が設置されている状況、相手国から見ての要望、こういう点を総合的に考えた上で決めてまいる、こういう考え方で対処しておるわけでございます。
  129. 三塚博

    三塚委員 わが国の外交は、平和外交であり、国際協調主義の上に進まなければならないことは、わが国の置かれておる立場上当然のことであります。そういう点から考えますと、西ドイツも大体同じ方向であろうと思うのでありますが、調べたところによりますと、西独は公館数が百九十九あるわけですね。それに引きかえわが国は百四十七。特に国際協調主義、平和外交に徹する日本外交の立場からいたしますと、いま官房長がお話しのように予算上いろいろな制約がある、こういう観点もあると思うのでありますけれども、何も西独をまねろと言うわけではございませんが、設置というものは、やはりそういうバランスの上に立ってなされなければならないと思うし、現在の公館数で日本外交の展開が十二分になされるものかどうか、また、これにて十二分でありますということなのかどうか、その辺をひとつお答えいただきたいと思います。
  130. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、長期的に見ますならば、現在百四十七、五十年度の予算要求を入れまして百五十二になりますが、これで十分だというわけにはまいらないと存じますけれども現実の問題といたしまして、定員の確保の問題、いかに充員を図っていくかという問題などもございますので、長期的にこの問題に取り組んでいく、こういうふうに考えたいと思っておるわけであります。
  131. 三塚博

    三塚委員 次に、給与でありますけれども、これは日本の通貨によって表示されておることは当然だと思うのでありますが、いわゆる為替の変動相場、これが政府の企図した給与額にイコールしていかない、こういう現実が今日の国際的なインフレ傾向の中でありますので、問題が生じてこようかと思うのであります。給料をもらって仕事をやるのではない、いわゆる日本外交の最前線に立って使命感に燃えられて外務省の皆さんはやられておると思うのでありますが、やはり規定された給与というものは、そのとおり実質において支給されるということが当然望ましい姿であるわけであります。  そういう場合、特にアメリカの場合は、今日の為替の状況から言うとまあまあでありますけれども、ヨーロッパ圏の為替相場というものが非常に悪化の傾向にあるように思うのであります。特にスイス・フランにつきましては、三三%ぐらい変動の幅があるわけであります。そうしますと、実質的に三三%給料がカットになるということにもなりかねないと思うのでありますが、こういう問題についてはどのように考え、またその辺を織り込んでこの改定がなされておるのでしょうか。その点を……。
  132. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 在外給与の問題につきましては、昨年の四月に給与法の改正をお願いいたしまして、当時の状況におきましては、ある程度の手当てができたと考えておったわけでございますが、その後、ただいま御指摘がございましたような為替の変動の問題、あるいは在外各国における生計費の上昇の問題、こういうふうなものが絡み合いまして、たとえば例としてお挙げになりましたように、スイスの場合には為替でいきますと三十数%、それから生計費につきましては四〇%もの上昇あるいは変動を見ている、こういうことでございまして、急速に実質的な在外手当目減りという状況が発生しているわけでございます。  こういうふうなことがヨーロッパのみならず、全世界的に起こってまいりました状況に対処いたしまして、昭和五十年度の在外手当改正をお願いいたすために、昭和五十年度につきまして、ただいま御審議をいただいております在外公館の名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律改正をお願いしているわけでございますが、その間におきましても、現実に為替の変動による目減りというものが、特に欧州各国の公館において著しい、こういう状況でございますので、大蔵省当局といろいろ話し合っておりまして、政令に基づく緊急措置ということが法律上許されておりますので、この政令による緊急改正ということができないかどうかというふうなことも現在財務当局と話し合っている、こういう状況でございます。
  133. 三塚博

    三塚委員 緊急措置を話し合っておるということですけれども、たしか、そういう措置の場合でありますと二五%を限度とするのではないだろうかというふうに思います。これは私の記憶が間違っておれば、御訂正いただきたいのでありますが、そういうことになりますと、結局三三であればその八%がカットをされて、そこに差額が生ずる。さらに、いわゆるその国の物価状況に応じて非常なデメリットを生ずる、こういうことにもなりかねません。  なぜ、この問題を出すかというと、当然同じ条件でなければならない問題が、そういう生活するのにきわめて厳しい環境のところは、これは人間でありますからなかなか赴任しにくい、また、赴任しても早くそういうところを逃げ出したい、こういう感じを持つのではないだろうか、こう思うのであります。そうでありますと、外交展開上、わずかのお金によりまして障害が出るというようなことがあってはならぬと思うものですから申し上げるのでありますが、やはりそういうことは大蔵省といえども、生きた金の使い方ということからすれば、当然官房長の要請を聞き入れるべき性格のものである、そういうふうに思うのでありますが、これはこの法律が通るころまでにきちっとその交渉が成り立つわけですね。
  134. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 政令に基づいて措置できます範囲は、御指摘のとおり二五%の範囲内でございます。したがいまして、現在大蔵省にお願いしておりますのは、政令の範囲内でできる限りの措置をとっていただきたい、こういうことでございまして、大蔵当局も原則的にはその事情について十分の理解を示してくれているところでございます。  それで、法律そのものにつきましては、国会の御審議を経まして御承認の上は四月一日から施行、こういうことでお願いしているわけでございますが、新しい法律改正の中身につきましても、ただいま御指摘ございましたような瘴癘地あるいは非常な不健康地、こういうふうなところに勤務しております公館の館長並びに館員の手当が、ある意味で実態に即したものになり得るような改正内容を盛り込んだ、こういうふうに考えておりますので、いわゆる小規模公館に勤務する職員が、在外手当の面で十分な配慮が加えられておらない、こういうふうな気持ちを持つことがないような内容にできる限りいたしたというつもりでおります。
  135. 三塚博

    三塚委員 どうぞひとつ、そのように完全なものでスタートをするように要望をしておきます。  終わります。
  136. 木野晴夫

    ○木野委員長代理 次に、近藤鉄雄君。
  137. 近藤鉄雄

    近藤委員 大臣にお時間の制約があるようでございますので、単刀直入にポイントだけの御質問をしたいと思いますが、現在、世界の政治はまさに激動のときを迎えておるわけであります。激動のときというのは、たびたびいろいろな人が言いますけれども、まさに現時点ほど揺れ動いているときはないと私は思うわけでありますが、こういう激動の中で日本の安全を確保し、そして世界の安定成長を維持していくためには、相互間の理解努力、そして協力が非常に必要じゃないか、かように私は考えているわけであります。  三木内閣が成立いたしまして、三木総理のもとに宮澤外務大臣を得たわけでありますが、大臣の前でございますが、まさにその人を得た、かように私は考えているわけであります。この大臣のもとに、日本の外交が今後さらに発展をして進められることを私たちは希望するわけでございますが、当面、私たちがいま関心を持っております日中平和友好条約について、まず大臣から直接承りたいわけでございますけれども、そもそもこの日中平和友好条約とは何か、そして何を目的として、その必要性は何だということについて大臣のお考えを承りたいと思います。
  138. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は、御承知のように一九七二年の九月に、日中国交正常化いたしました際出されました共同声明に述べられておりますとおり、第八項でございますか、「両国間の平和友好関係を強固にし、発展させるため、平和友好条約の締結」云々、これに従いまして交渉を始めたわけでございますが、このような目的でございますから、基本的には、両国間が今後末永く友好関係を保っていきますための諸原則、そのようなものが条約の中心部になるであろうというふうに考えまして交渉をいたしております。
  139. 近藤鉄雄

    近藤委員 日中平和友好条約の締結というものが、今後の日中友好関係にとって不可欠であるというふうにお考えでございますか。
  140. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この共同声明においても、このような約束をいたしておりますとおり、りっぱなものができますれば、長いこと戦争に悩まされた両国の過去の関係から、将来に向かって文字どおり末長い和平を築けると考えますので、そのように思っております。
  141. 近藤鉄雄

    近藤委員 仮に、日中共同声明の中に日中平和友好条約を締結するという言葉がなかったとすれば、これはあえて結ぶ必要はない、すなわち、日中平和友好条約というものがなくても日中間の平和的な、友好的な関係は今後も維持されるし、発展させることができる、こう理解してよろしいわけですか。
  142. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 日中共同声明は、両国の国交正常化の際の合意でございますので、これなりに両国の関係を規定し、規制をいたすものだと思いますけれども、この際、条約という形で今後の両国間の友好の基礎となるべき原則を改めて締結しておきますことも、また有意義なことであろうというふうに考えております。
  143. 近藤鉄雄

    近藤委員 逆に、共同声明八項目の中でこのことを言ったがために——本来ですと、日中共同声明だけで日中のまさに平和的な、友好的な関係の基礎ができたと理解してもよかったわけでありますが、たまたまこれを言ったがために、共同声明の重さというのですか、その価値が薄められたということはなかったのでしょうか、どうでしょうか。
  144. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この日中国交正常化が共同声明の形で結実いたしますまでには、御承知のようないろいろな経緯がございました。両国が、そういうおのおの持っております事情にもかかわらず、お互いに譲りまして、このような共同声明ができたというふうに了解をいたしておりますが、そういうこととの関連もございまして、この際、平和友好条約を条約という形で締結をし、また国会にも御審議を願うということは、意義のあることであると思っておるわけでございます。
  145. 近藤鉄雄

    近藤委員 平和という言葉が入っておるものですから、これは平和条約ととられるのじゃないかというようなことで、これに対していろいろ意見のあることは、大臣御存じだと思うわけでありますが、確かに八項目の中で平和友好条約を締結するという言葉がございますが、仮に、平和という言葉は誤解を招くからこの言葉は外して、たとえば日中友好条約ということで中国側と交渉して、中国側の承認を得られるというふうにお考えになるのか、それは大変無理だというふうにお考えになるのか、その点はどうでございましょう。
  146. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点はむしろ、条約ができました際に、その内容をごらんいただきますことによって、それがいわゆる友好条約であるのか、いわゆる平和条約であるのかということは、おのずから明らかになってまいるであろうと思っております。  それから、近藤委員も御記憶のように、この年の十一月に、本院で全会一致の日中平和友好条約を速かに締結すべしという御決議もございますので、そういうことにもかんがみまして、この名前をそのまま使いますことがよろしいのではないかと思っております。
  147. 近藤鉄雄

    近藤委員 私は、余り言葉の問題にはとらわれたくないわけでありますが、問題は実態なのでありまして、まさに、先ほどちょっと申しましたのでありますけれども、共同声明が全部を尽くしておるのに、改めて日中平和友好条約を結ぶということで不必要な誤解を国内にも、また一部対外的にも生ぜしめるということであれば、そういうことは余り望ましくなかったのではないかという感じを実は持っているわけであります。しかし現実に、共同声明の中でこういうことがはっきりうたわれており、そして日本の国会でも決議をしておるというようなことでありますから、これに対しては、やはり前向きに対処していかなければならないと思うわけでありますけれども、しかし繰り返して申しますように、私は、日中関係はまさに今後平和的に、そして友好的に相互の関係を発展させていかなければならない、かように思っているわけであります。  そこで端的に言って、日本と中国にまつわる平和ということの中で、私は、やはりいま非常に大事な問題が三つあると思うわけであります。それは、一つは朝鮮半島の問題でございますし、二つには台湾の問題であり、そして三つ目には核の問題であると思います。  そこで、第一の朝鮮半島の問題でありますが、朝鮮半島の平和と安定のためには、御案内のように朝鮮半島が二つの政府に分かれているわけでありますけれども、この二つに分かれている政府、そして、そのもとにあります国民が、民族の統一という希望を持っていることは私たち十分理解をしておりますし、またその気持ちを尊重しなければなりませんが、しかし同時に、私は、やはり朝鮮半島がいまのような形で非常に相対立する、場合によっては非常に敵意を持った二つの国家、政府に分かれていることを、何とかしてこれをまさに平和化し、安定化していかなければならないのではないか、かように考えるわけであります。  そういうことを考えてまいりますと、将来における民族の統一というのは望ましいが、しかし当面、現実に二つの政府があり、それぞれ国民がいるわけでありますから、この二つの現実を認めることが大事じゃないか。具体的には、日本及び自由諸国家は、韓国政府を承認し、政府間の関係を持っておりますが、いわゆる北鮮とはそういう関係がないわけでありますから、したがって、日本とかアメリカという自由諸国は北鮮を認めていこう、しかし同時に、ソ連や中国やまた東欧圏各国は大韓民国を承認し、国交を回復していく、相互に承認し合うと同時に、この二つの政府をそれぞれ国連に同時に加盟をさせる、こういう形で朝鮮半島の現状を、いわば国際政治の日陰の存在から国際政治の日の当たる場所に出して、そしてそういう中で、国際社会の一員としてお互いに話し合いもしてもらうし、また周りのわれわれも、その二つの国が友好的に、まさに平和的に話し合いをし、そして最終的には、その人たちが希望するならば統一をしていくということ、そういう環境を私たちとしてはつくる必要があるのじゃないか、かように思うわけであります。  実は私は、こういうことを考えまして、昨年の九月にソ連からルーマニア、ブルガリア、ユーゴ、ハンガリー、チェコスロバキアを回って、それぞれの外交当局の指導者と話し合ってきたわけでありますけれども、率直に言って、ソ連、東欧圏の指導者は、この考え方に対しては必ずしも賛成はしなかったわけであります。大体、韓国の政府は独裁ファシストであり、こんなものを承認することはできない、また韓国には外国軍が駐留しておるから、こういう外国軍隊が駐留しているようなかいらい政権は承認できない、またさらに、こういう形で現状のままをお互いが認め合うことは、分断状態というものを恒久化することになるから反対である、こういうことを彼らは言っておったわけであります。しかし韓国政府が、軍事独裁ファシストと言うなら、北の方がもっと独裁政権であり、むしろ民衆の自由がないというふうに考える人たちがたくさんいるわけです。また外国軍隊の駐留だということを言うが、しかし私たちがいろいろ調べてみると、東欧においては、民衆が自分たちの力で自分たちの望む政府をつくりたい、こういうふうに要望しておったところが、まさに外国の戦車が乱入してきて、そして戦車の力でこの民衆の意思を踏みにじっている外国政権、まさにかいらい政権をつくった、こういうふうに考えている人もたくさんいる。だから、二つの朝鮮、韓国が国連に入るということは、必ずしもそのことで分断状態が永久化する、恒久化するということじゃないので、それはこういう世界だから、仮に独立国家としてあっても、それが統一することもあるし、場合によっては一つの国家として入っておっても、それが分裂して二つの国家となることも可能じゃないか、これは、あくまでも便宜的なものでいいじゃないかと言ってまいったわけであります。  そこでまず、外務大臣に承りたいわけでありますけれども、この朝鮮半島のまさに平和と安定のために、私のいま言った考え方は、一つ考え方だと思いますが、しかし外務大臣は、どういうふうにしたらいいとお考えになっていらっしゃるか、承りたいと思います。
  148. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま言われましたことも、確かに一つ考え方であると私は思いますが、ただいま御提起になりました問題は、結局いわゆるクロス承認と言われる問題と国連への同時加盟ということでございます。  端的に私ども立場を申しますならば、韓国と北側とが両方ともそういうことが望ましいということでありますと、問題の解決は非常に容易になると思うのでありますが、この問題につきましては、どうも北朝鮮においては、そのようなことは結局分割を恒久化することになると、御指摘のようにそういう考え方が強いやに聞き及びます。両方とも最終的な統一を理想としておることには変わりがないのでございますが、そうなりますと、結局ただいまのような方式が、最終的な平和的な統一に一歩接近するものと考えるか、あるいはそれをむしろ遠ざけることになると考えるかの、その考え方の分かれ道であろうというふうに存ずるのであります。  したがって、基本的な私ども立場は、最終的な平和的統一というものが願わしいということと、それからそれに至る過程として、もし両者でそういう方向が大体よろしいのだという意見の一致を見ることができるならば、わが国としてはその方法が最も望ましい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  149. 近藤鉄雄

    近藤委員 その平和化、安定化のための方策については、いろいろ意見があると思いますけれども、しかしその意見、やり方についていろいろな考え方があっても、現状の朝鮮半島は、まさに極東の平和にとっての一つの大きな問題の状態である、かように私は考えます。とすれば、私は、日中間のまさに平和的な関係、状況というものをつくるための一つの必要条件として、この問題について日中間で率直に話し合いをする、そして日本と韓国政府は正常なルートがあるわけでありますし、北京と平壌の間にはまたそれぞれのルートがあるわけでありますから、そういう形で日中が両側に立って、そして少なくともこの朝鮮半島の現状が安定化し、平和化する方向にその話し合いを進めるべきだと私は思うのであります。  そこで、この日中復交二年半になるわけでありますが、この問題について外務当局は、北京政府と話し合いをされたかどうか、されたとしたら、どのような話し合いをされ、その結果がどうであるかを承っておきたいと思います。
  150. 高島益郎

    ○高島政府委員 中国との国交正常化以来かなり日数もたっておりまして、私どもも、単に日中間のいろいろな実務関係のみならず、日中両国をめぐるアジアの諸情勢につきましても随時意見の交換をいたしております。  特に昨年、中国の外務次官韓念竜氏が訪日された際に、この時期をとらえましていろいろ議論したことはございます。その内容につきまして、余り詳しいお話をここで申し上げるわけにはまいりませんけれども、一般的に申しますと、中国の朝鮮についての考え方といいますのは、北朝鮮が考えておる態度とほとんど同じでございます。
  151. 近藤鉄雄

    近藤委員 私は、くどいようでありますけれども、北朝鮮の考え方は正しくないと思うのであります。これはまさに、いまの敵対的な状況を継続化するような状況でありますので、外相もおっしゃったのでありますけれども、クロス承認、そして同時国連加盟という方向が、この問題のさしあたっての解決策だと思うわけでありますけれども、とにかくこの問題について、日本の外務当局と北京の外務当局が常時話し合いをしていく必要がある、かように考えるわけであります。  第二の問題として、台湾問題を私は挙げたわけでございますけれども、中国政府はしばしば、台湾は解放する、こう言っております。まさに中国と台湾との間で、台湾周辺で戦争状態が発生するということになりますと、現在の米華相互防衛協定、そして日本の場合は、日米安保条約との関係で日本は非常にむずかしい立場に立つわけであります。これも、いろいろな機会指摘されておりますので、外務大臣よく御存じだと思うわけであります。  そこで、北京政府が台湾を解放する、これは彼らの国内、内政の問題だということであれば、それはそうでありますけれども、しかし日本のすぐそばで戦争が開かれるということは、これも私たちにとって大変困ったことでありますので、少なくとも北京政府は、台湾を武力に訴えて解放することはしない、こういうことで日中間のはっきりした話し合いがなされ、了解があることが、まさに私は、日中関係の平和のために、友好のために絶対必要だ、かように考えているわけでございますが、この点について、日中復交二年半の間にわが外務当局は、北京政府に対してどれだけの話し合いを詰めてこられたか、承っておきたいと思います。
  152. 高島益郎

    ○高島政府委員 その問題は、私ども日中国交正常化に当たりまして一番重大な関心事でございまして、当時の田中総理みずから、日本としての非常な大きい関心を披瀝いたしました。中国と台湾との対立の問題は、ぜひぜひ平和的に解決してもらいたいということを、再三再四繰り返して先方に伝えてあります。これに対しまして、もちろんそのとおり先方が応諾したということはございませんけれども、よく聞いていたという事情はございます。  なお、一般的に申しまして、日本と中国との国交正常化の前に、米国と中国との間の和解がございまして、そういう中国をめぐっての国際環境の大きい変化もございます。そういうことを一般的に背景として考えますと、理論上の問題はとにかくといたしまして、台湾が武力によって解放されるということは、私どもとしては、もちろん希望してないのみならず、現実の問題としてもまずあり得ないというふうに考えております。
  153. 近藤鉄雄

    近藤委員 時間がありませんので先に進みますが、第三の問題として、核の問題があるわけであります。世界ただ一つの被爆国として、さらに非核三原則を持っておりますわが国として、何といっても隣国中国における核実験、そして核武装の進行に対しては、重大な関心と危惧を持たざるを得ないわけであります。  たまさか、いま核兵器不拡散条約、NPTの批准の問題が日本においても議論されているわけでありますけれども、私は、核兵器不拡散条約のこの精神、方向はまさに正しいと思うわけでありますけれども、やはり私たちにとっては、一番近い隣国の中国が勝手に核実験をし、核武装をしていくということでどうも安心ができない、これはまあ、率直な日本の国民感情だと思うわけであります。さらに、世界的に見ましても、せっかくこの核兵器不拡散条約に大ぜいの国が加入することになっても、北京政府とかフランス政府、これがNPTの枠外で勝手な行動をしている、こういうことでは、やはり私たちは、どうもNPTに対して全面的な信頼を置けない、私は、これも非常に素朴な国民の感情だと思うわけであります。  そこで、中国の核実験、そして核武装、さらには核兵器不拡散条約の加入の問題について、日本の外務当局は、北京政府と具体的にどのような話をしてこられたか、その成果や何かについて承っておきたいと思います。
  154. 高島益郎

    ○高島政府委員 ほかの国の核実験の場合と同じように、中国の核実験に対しまして日本は反対であるという立場は明確にいたしております。  ただ、先生の御承知のとおり、フランスと中国は国連の枠内におきます軍縮の討議にも参加しておりませんし、また、いま御指摘のNPTにも参加する意思を全く示しておりません。この点は、われわれとしては非常に残念なことであるというふうに思っております。
  155. 近藤鉄雄

    近藤委員 フランスはともかく、さしあたってわれわれは、いま日中関係を議論するわけでありますけれども、少なくとも中国が核実験をし、そして核武装し、そしてNPTに入らない、この理由については、外務当局としては十分に説明を聞き、そして向こうの言い分に理があるというふうにお考えですか。
  156. 高島益郎

    ○高島政府委員 中国の言い分は承知いたしておりますけれども、その言い分の理が……。
  157. 近藤鉄雄

    近藤委員 中国の言い分とは、具体的にどういうことを言っていますか。
  158. 高島益郎

    ○高島政府委員 中国の言い分は、要するに核兵器を持つことについての中国の立場でございますけれども、これは核兵器を、米国あるいはソ連等の超大国による独占に任せることなく、中国のような国が持つことは、むしろ将来の核兵器絶滅の契機になるというような論理でございまして、私ども、そういう論理は余り理解できない論理でございます。
  159. 近藤鉄雄

    近藤委員 ついでに承っておきますが、日本の外務当局は、米ソに対してもっと積極的に北京政府なり、フランス政府にNPTに入るように説得すべきだということで、米ソの政府に対してそういう話し合いを進めているのでございますか。
  160. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 現在までのところ、米ソに対して、NPTに加盟していない核兵器保有国が加入するように働きかけをしたことはないと思います。これは一つには、日本自身がまだNPTに入っておりませんので、そういう働きかけ等をすることに困難な事情があるわけでございます。
  161. 近藤鉄雄

    近藤委員 日本が入っていないからできない、困難だというのはわからないでもないですけれども、しかし日本が入るためには、中国もフランスもこれに入ってもらわなければならないという条件をつけることはできないのでしょうか。
  162. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はその問題は、わが国が今回、核不拡散条約の批准を国会の御承認を得ていたしたいと考えておりますのが政府立場でございますが、そういうこととの関連で、署名いたしましたときの政府声明にございました非核保有国の安全性、安全保障というこの条件が、現在どのぐらい満たされておるかということとの関連においてだんだんに御議論が出てきておる点でございます。  そこで、かつて一九六八年に、国連安保理事会である種の決定がなされておるわけでございますけれども、どうもそれでは不十分ではないかという御指摘もございます。実は私、まだ具体的に何をどういうふうにすべきかという考えを決めかねておるのでございますけれども、この際、わが国が国会にこの条約を御提案するということとの関連において何か、ただいま近藤委員の言われましたような努力政府としてはいたすべきではないか。それは、国によりましては具体的な結果を見ないままに終わることもあるかもしれない、また国によりましては、あるいは多少具体的な結果を得ることができるかもしれない、それをどのような場でどういうふうにやったらいいのであろうかということを、私、実はせんだって以来とつおいつ考えておりまして、まだはっきりした結論を自分なりに出しておりません。  したがって事務当局にも、私としては実はまだ何も申してないわけでございますけれども、やはりあの際のああいう政府声明の趣旨にもかんがみまして、この際、なし得る努力はしておくべきではないかということを、実はだんだん私としては考えつつございますが、いままだ具体的に申し上げる用意がございません。
  163. 近藤鉄雄

    近藤委員 三木総理の一月の施政方針演説の中で総理は、「善隣友好がわが国外交の重要な柱であることは申すまでもありません。特にわが国が米、中、ソという世界政治に重大なる影響力を持つそれら三カ国と近接しているということが、わが国の立場を特徴づけています。  しかも、この日、米、中、ソの四カ国関係の中で、日本としては、他の三カ国のすべてと正式な外交関係に加えて、親善、友好の関係を持っているということは、きわめて重要なことであります。  この四カ国関係の動向が、アジア、太平洋地域の安定と密接に関連しているだけに、こうした重要な立場にあるわが国が、善隣友好を一層推進することが、アジア、太平洋地域の安定に貢献するゆえんであると信じます。」こうおっしゃっているわけでありますが、まさにその四カ国が大事な国であって、しかも四カ国ともみんな外交関係を持っているのは日本しかない、これは私、大変ユニークな立場であると思いますので、まさにこの日本のユニークな立場を一〇〇%活用して、そうして中国を説得し、アメリカを説得し、ソ連を説得していく、これがまさに、これからの日本の外交の基本的なあり方、姿勢でなければならない、かように思うわけであります。  特に、まさに日本と一衣帯水の関係にありますところの中国とは、私は、こういう問題について、いまもお話を承ったわけでありますが、率直な私の感じでは、まだまだ本当に腹を割って話し合いをしていらっしゃらぬのじゃないか、こういう感じがするわけであります。日中平和友好条約のねらいは、まさにこの日中関係に沿うような真の平和と友好の関係をつくる、こういうことだと思うわけであります。  私は、あえて申し上げますけれども、どうも日中関係復交二年半の中で、条約だとか協定だとか、そういう形式的なことが先行して、実質的な関係がややもすればおくれているのじゃないか。いまさら余り申し上げたくありませんが、日中航空協定にしてみても、先ほども三塚委員の話があったわけでありますが、日航は非常な赤字である——まあ、赤字の原因がすべてここにあるとは思いませんけれども、やはりあの段階で日本の国益を考えたら果たして日中航空協定を、いずれ締結するのはいいわけでありますけれども、あそこで無理して結ぶ必要があったのかどうかということを依然として非常に疑問に思っておりますし、また日中平和友好条約も、八項にあることは私もよくわかっておりますが、しかし、あの協定ができたらまたその次だ、そういうことができなければ日中関係の本当の話し合いができない、こういうようなものでもないような感じがする。  私は、最初申しましたが、本来ですと、あの日中共同声明で、理解の仕方はありますけれども、あれでもういいのだ、それでいいのだということであれば、いろいろなことを言わなくても、日中関係の具体的な話が進んだと思うのでありますが、たまたま書いてあるものだから、今度は日中友好平和条約が結ばれなければ日中関係は次の段階に進行できない、しかも、その日中友好平和条約を結ばないならば、これは中国は希望しておるのだけれども、どうも日本の内部でいろいろ国内的な思惑がある、また外国からその他のいろいろな牽制がある、こういうことで日本が結べないのだ、いわば日中間の平和的な友好的な関係がうまくいかないのは、挙げてかかって日本政府にある、日本の側にある、こういうような取り上げ方に日本の外交がみずからを追い込んでいくことは、私は賢明なことではないのじゃないかという感じがするわけであります。  みずからにタイムリミットを課せないで、お互いに日中間の条約は条約として十分議論する、しかも条約がなくてもできることがあるので、条約がなければ朝鮮問題について打ち割った話ができないわけでもなければ、条約がなければ台湾問題について打ち割った話ができないわけでもなければ、条約がなければ核問題について打ち割った話ができないものでもない、だから、どうもくどいようでありますけれども、いまのとらえ方で、これがなければ日中関係は進歩しない、発展しない、こういうようなプレゼンテーションの仕方が私は非常に問題だと思うわけでありますが、この点について外務大臣の率直な御意見を承っておきたいと思います。
  164. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの御質問の中から、近藤委員がお感じになっていらっしゃることの意味は私にもよく理解できます。ともしますと、一つの条約をつくろうということになりますと、その条約をつくることに非常に一生懸命になりまして、それ自身で何か大変なことができたというような感じになりやすいものでございます。そういう弊に陥っていないかとおっしゃれば、そういう点は反省をいたさなければならないかと思っております。わが国が自主的に考えて、なるべくたくさんの国と平和関係を増進していくということが、わが国の国益に合う、また世界の平和にもつながる、そういう立場を常に念頭に置けというお考えであろうと思いますが、私もそのとおりにやはり考えます。
  165. 近藤鉄雄

    近藤委員 もう大臣もお時間がないようでありますからお引きとめいたしませんが、私は、まだ言いませんでしたけれども、たとえば日中間の新聞記者、学者、研究者、文化人、技術者の交流の自由化、政治家や役人や経営者その他はもちろんでありますけれども、そういう具体的ないろいろな国民の各層の交流、これもまさに日中間の平和的友好的関係の増進に非常に必要だと思う。しかしたとえば、近藤鉄雄が来週北京に行きたいと言っても、どうもあいつはタカ派だから来てもらっちゃ困るということでビザを出さぬのじゃないか、そういう危惧もありますので、私も近い機会にぜひ北京を訪れたいと思いますから外務大臣にお願いして、北京にあまり文句を言わないで早急にビザを出すようにお取り計らいを願いたいわけであります。しかし、せっかく行ったってでき合いのところしか見せられない、あそこだけ見てここだけ見てというようなことをよく聞きますけれども、しかし、これも不見識な話であります、いやしくも日本に来た中国人はどこでも見られるわけでありますから。しかしそれは体制が違う、ソ連だってルーマニアだって見せないぞ、こういう話もありますが、しかし体制が違うから向こうは制限するのだ、これも理屈がないと思うのです。  やはり本当に日本と中国、ソ連、また自由主義諸国とソ連、共産主義諸国がまさに平和的な友好的な関係を樹立するなら、うちは体制が違うからいいところだけ見せます、そういうことをそのまま黙っていてやるべきじゃないのであって、それはそれとして遠慮なく言ってどこでも見せてもらい、私も見せてもらいたいと思うわけでありますけれども、そういうことを具体的にやることが、繰り返して申しますが、私は、日中間の本当の平和的、友好的関係の促進であり、相互理解をはかるゆえんである、かようにいま考えているわけでありますので、その点はどうもあの日中友好平和条約ができなければ前に進めないのだという考え方でなしに、まさにそういう話し合いの中でお互いに日中平和友好条約の必要性を認識し、そしてお互いに納得してこれを批准する、日本の国会も一人の反対もなくこれを批准する、こういうことになると私は思いますので、ひとつその点に沿っての外務大臣の御努力を心から切望をしておきたいのであります。  大臣、お時間だそうでございますからどうぞ……。
  166. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまおっしゃいましたことは、お気持ちは私もよくわかっております。わが国は幸せにして、戦後三十年にして世界で最も自由な国の一つになってまいりましたし、これを大切にいたさなければならないと思いますが、残念ながら世界にはまだそうでない国がずいぶんある。願わくは、多少時間がかかりましても、やはり自由という人類の普遍的な願いが各国において実現され、強化されていくことを、私どもとしては心から願っております。わが国としても、そのような世界平和のためにやはり努力を続けていかなければならないと存じます。
  167. 近藤鉄雄

    近藤委員 大臣がお帰りになりましたが、あと二、三点、技術的な点で外務省当局に承っておきたいわけであります。  いわゆる西ドイツでございますが、西ドイツは第二次大戦の交戦国と平和条約を結んでいないというふうに私は理解しているわけでありますが、そうでございますか。
  168. 橘正忠

    ○橘政府委員 西ドイツ、ドイツ連邦共和国でございますが、これはその国自体の立場を、私ども権威を持って語ることは非常にむずかしいのでございますが、私どもの聞いておりますところでは、一つは、いわゆる平和条約というものは、戦争いたしました旧連合国、これと戦争に入ったドイツ国家それ自体というものとの間で締結すべきものであって、したがいまして、現在のように西と東に分かれておるという状態では結べない、むしろその両方が統一された暁にしか正式の平和条約は結べないという立場をとっているというふうに聞いております。たとえば、他方旧連合国側、特にアメリカ、イギリス、フランスという三国は、一九五三年にパリ協定というものを結んでおりますが、それでドイツの再統一、それからドイツ問題の平和的な解決、これに関する権利と責任を、これらの旧連合国が特っておるのだという立場をとっておるようでございます。したがいまして、双方の立場から、いわゆる完全な意味での平和条約というものが現状ではできないという立場をとっておるように私どもは聞いております。
  169. 近藤鉄雄

    近藤委員 そこで、西ドイツが平和条約を結んでいないという御説明があったわけでありますが、西ドイツが平和条約を結ばないことによって、具体的にどれだけのデメリットがあるのか教えていただきたいと思うのです。結んだ場合のメリットとデメリットを並べて御説明いただけるならなおありがたいのですが……。
  170. 橘正忠

    ○橘政府委員 これもまた、私どもが第三者の立場から正確にこれを判定することは非常にむずかしいわけでございますが、御質問の点の御参考までに、たとえば西ドイツの中で行われましたいろいろな論議の一部を御紹介いたしますれば御参考になるかと思いますが、ドイツの国内においても、平和条約を結ばないかっこうであっても、その後、西ドイツがやりましたように、ソ連あるいは東独、特に東西ドイツの間の基本条約を結ぶというような形で事態の安定といいますか、現状を確定していくということについては、それが結局現実的な国際関係の安定に資するのであるし、自国の国際社会における立場も確立するのであるし、したがって、東西双方のドイツの国連加盟といったような事態の発展へも導く道であるという現実的な考え方が一方にございますし、これが結局多数を制して、そういう事態の進展になったわけでございますが、一部には、それがかえってドイツの統一問題を恒久化するのではないかといったような批判もあるようでございます。
  171. 近藤鉄雄

    近藤委員 西ドイツが、東ドイツもそうでありますが、西ドイツが平和条約を結ばなかったということが、まさに西ドイツのブラントに始まるところの東方政策の実行を何ら妨げなかった、こういうふうに解釈していいと思うわけでありますけれども、そうだとすると、私は大臣にもお話をしたわけでありますけれども、余り日本はそういう形式的なことにとらわれなくとも、実利面で、実際面でいろいろ相互の国益の増進のためにできることがたくさんあったのじゃないか、また、あるのじゃないか、かように考えるわけであります。  そこで、その関係で日ソ平和条約、これもいろいろ取りざたされているわけでありますけれども、外務当局に承りたいのでありますが、この時点において日ソ平和条約を結ぶことのメリットと、そしてデメリットは何だというふうにお考えでいらっしゃいますか。
  172. 橘正忠

    ○橘政府委員 御承知のとおり、日ソ間の平和条約の問題は、この前の戦争で未解決である問題、領土問題を含めまして、それを解決して平和条約を結ぶということが、ただいまの問題の焦点であるわけでございます。したがいまして、平和条約の締結ということは、そういう懸案を解決するという意味におきまして、メリット——これをメリットと言うならば、メリットあるいは意義というものがあるわけでございます。それが日ソ両国の親善関係のまさに基礎を固める第一歩である、前提であるというのが、私どもにとっての意義でございまして、デメリットというものは考えられないと思います。
  173. 近藤鉄雄

    近藤委員 その領土問題を解決するということでありますが、それは日本に都合のいい解決の仕方と、それからソ連が望むような解決の仕方とあるわけですね。ですから、ソ連が望むような解決の仕方だったら、まさに平和条約は結ばない方がいい、こういうことだと思うのでありますけれども、仮にそういうことで平和条約を結ばないとすると、領土問題以外に日ソ関係を——あえて日中平和友好条約の言葉を借りますけれども、日ソ関係の平和的な友好的な関係の増進のために、日ソ平和条約がないことがマイナスになるというふうにお考えですか。
  174. 橘正忠

    ○橘政府委員 日本とソ連との関係につきましては、先般、宮澤外務大臣が訪ソされましたときにも、ソ連側に明確に申されましたように、戦争から未解決で残っている懸案を解決して平和条約を結ぶことが、まさに両方の関係を、友好親善の関係の基礎を築くものであるということでございまして、その問題につきましてのわが方の立場は、先生十分御存じのとおりでございますので、私どもの主張しているような形で懸案が解決し、平和条約が結ばれるということが私ども立場でございます。
  175. 近藤鉄雄

    近藤委員 西ドイツが平和条約を結ばないことの一つの理由は、私は賠償問題もあると思うのです。そこで、日ソ平和条約の場合にも、これは問題になる性質のものでしょうか。
  176. 橘正忠

    ○橘政府委員 日ソ間には御存じのとおり、一九五六年に共同宣言がございまして、戦争状態の終結ということがはっきりうたわれ、両国間の外交関係も再開されておるわけでございまして、そのときにも、領土の問題については継続して交渉をして、ということが明記されておるわけでございます。したがいまして、その問題を除きましては、ただいま先生がおっしゃいましたような賠償といったような問題は、すでに解決済みであると私どもは考えております。
  177. 近藤鉄雄

    近藤委員 そこで、これは新聞紙上で承ったのでありますけれども、先日、駐日ソ連大使のトロヤノフスキー氏が三木総理やその他与党の幹部にも会われて、何か日ソ善隣親善友好条約についての話をされたと、こういうことでありますけれども、具体的にそれはどういう提案だったのか、それに対する外務当局の考え方はどうなのか承りたいと思います。
  178. 橘正忠

    ○橘政府委員 先般、トロヤノフスキー大使が三木総理を来訪し、ブレジネフさんからの書簡を渡しまして、その中にただいま御質問の点が含まれておったわけでございますが、それは平和条約の交渉をしつつ善隣協力条約の問題を検討したい、こういう考え方を示してきたものでございます。これに対しましては、三木総理より、戦後の懸案を解決して平和条約を結ぶということが日本としての立場であって、これは、もうきわめて明確な立場である、それがまず第一の任務であり、これが前提であり、それによって両国間の友好関係の基礎が固まるのだということを申し述べられた経緯がありまして、私どもも、全くそのように考えております。
  179. 近藤鉄雄

    近藤委員 これも新聞その他の解説でありますけれども、これは日中平和友好条約を日中間で話し合いをされていることに対する牽制である、こういう解説もございますけれども、これについては、どういうふうにお考えですか。
  180. 橘正忠

    ○橘政府委員 その会談の際にも、別に第三国についての言及は何らなされておりませんし、私どもも、基本的に日ソ間の問題は日ソ間の問題について話し合い、交渉することであるという立場をとっております。  なお、先ほどの善隣友好条約の内容というものにつきましては、私ども立場は、まず平和条約の交渉を進めることが第一ということを基本的な立場としておりますので、善隣友好条約が何であるかというようなことについては、何ら関心もなかったわけでございますし、向こうも説明をしておりません。
  181. 近藤鉄雄

    近藤委員 日中平和友好条約は締結するが、しかし日ソ善隣親善条約の提案には、日本政府としては乗らない、しかし、そういうことによって日中関係はよくなるが、日ソ関係はよくならないといいますか、若干悪くなる、こういう心配はないでしょうか。
  182. 橘正忠

    ○橘政府委員 日中関係の方につきましては、アジア局長のあれでございますが、私どもの方から考えます限り、二つの点があると思います。一つは、日中関係と日ソ関係が違うということでございまして、日中関係は、すでに日中の共同宣言において戦後の問題は処理済みでございます。  他方、ソ連と日本との間の関係は、先ほど申し上げましたように、懸案を解決して平和条約を結ぶという問題が残っております。継続審議中という状態でございます。わが方の立場は、日ソ関係につきましても、善隣関係は推進していきたい、そういう精神においては何ら変わりはないわけでございます。この点は、先ほど申し上げました会談の際にも、日本側としてはそういう精神でいることは何ら変わりはないのだということは確認しております。したがって、日ソの善隣友好関係を推進するというたてまえ、精神は、基本的には条約という問題とは何ら無関係に推進するという立場をとっております。  日中の友好関係の推進ということもやりたいことであると私ども考えております。
  183. 藤尾正行

    藤尾委員長 橘欧亜局長に申し上げますが、ただいまのあなたの御答弁中に、日中関係処理が日中共同声明において済んだという旨の御発言がございましたが、それでよろしゅうございますか。
  184. 高島益郎

    ○高島政府委員 橘政府委員の答弁につきまして、御疑念があったようでございますが、私から補足いたしますと、日本と中華人民共和国との関係において、日中共同声明によって最終的に解決をしたという趣旨であろうかと思います。
  185. 近藤鉄雄

    近藤委員 そこで、その後先の問題だと思うのです。日中関係は日中平和条約なり共同声明でまさに確定している。これも、いろいろ意見があるが、一応確定して、日中平和友好条約をつくりますね。今度日ソ関係においては、まさに平和友好条約的なものを先につくって、平和条約を後にしよう、こういうことですから、その後先だけのことで、実質的には同じようなものが二つ、日中関係と日ソ関係でできる、こういうことだと思うのですが、どうですか。したがって、あえて言えば、一つを認め、一つを断る理由は余りないではないか、こういうことであります。
  186. 橘正忠

    ○橘政府委員 ただいまの御質問、日ソ関係における二つの条約の問題というふうに了解いたしますが、日ソの関係におきましては、先ほど申し上げましたように、懸案を解決して平和条約を締結するということが、すでに一九五六年来の懸案になっておるわけでございまして、継続交渉が行われておる。したがいまして、両国間の完全な平和関係といいますか、そういうものは平和条約によって、懸案を解決して初めて始まるわけでございます。そういう意味において、まず平和条約を結ばねばならない、それ以降の、二番目の別途の条約の問題を考える前に、まず平和条約の問題を解決しなければならないということでございます。
  187. 近藤鉄雄

    近藤委員 ですから、まさに日ソ平和条約が大事なのであって、日ソ平和条約をソ連側が希望する、そのためには、領土問題を解決しなければソ連の希望する日ソ平和条約は結べない。言いかえますと、日ソ善隣友好条約を先に結んでしまうと、ソ連は、日ソ関係がうまくいくから、領土問題に対してあえて真剣に取り組んでこなくなるだろう、こういう危惧で日ソ善隣友好条約については日本政府としては乗っていけない、こういうふうに理解していいわけですか。言いかえますと、日ソ関係を余りちゃんとさせておかない方が、すなわち、日ソの善隣友好関係が、ソ連が望むような一〇〇%完全な状態でない、そういう状態を残しておく方が、むしろソ連側をして領土問題の解決に積極的にさせる、こういう考え方であるということですか。
  188. 橘正忠

    ○橘政府委員 ソ連側の考えは私どももよくわかりません。私どもといたしましては、日本側の立場を主張するのが当然であろうかと思います。年来それを主張してまいったわけでございますし、現在も主張しておるわけでございまして、それこそまさに、領土問題という懸案を解決して平和条約を締結するということに尽きるわけでございます。
  189. 近藤鉄雄

    近藤委員 私は、きょうは繰り返し申し上げておるわけでありますけれども、国と国との関係は条約という形ではっきりさせておくことも非常に大事だと思うわけであります。しかし条約を結ぶことが外交のすべてではないのであります。西ドイツの例を申し上げたわけでありますけれども、西ドイツは、戦後の関係において必ずしも法律的にも条約的にもすっきりしていない。しかしオストポリティークを初めとするところの西ドイツのいろいろな積極的な外交というものを、そのことは決して妨げなかった、こういうことだと思うわけであります。  同時に、日ソ関係において平和条約がないということが、最近われわれが見ておりますような日ソの友好親善関係、経済交流を何ら妨げなかったというふうに私は解釈する。したがって、駐日ソ連大使が言ってきたけれども、日ソ善隣友好条約というものは、まさに屋上屋を重ねるようなものである、そんなものはなくたって日ソ関係は十分に満足する状態において行われている、こういうふうにわれわれは理解していいと思うわけであります。  そこで、日中平和友好条約についても、同じことを私はこの際あえて申し上げたいわけでありますけれども、まさに日中共同声明によって日中関係は正常化したわけであります。そして、やる気になれば、いろいろな問題においてもっともっと日中間の友好関係が促進されておったというふうに私は考えるわけでありますけれども、それがたまたま、共同声明の八項の中で、日中平和友好条約を締結するのだという形で何か一つ約束が先に延びてしまっておる、いわば期限が延びてしまっておる。これが確定しなければ真の意味の日中間の平和的、友好的関係が確定しないのだ、こういうふうに持ってきてしまったような感じがいたします。しかも、いま日中平和友好条約という問題が現実に日中政府間で行われておるようでありますけれども、結局、日中間の具体的、実務的な友好的、平和的関係というものは、これが終わるまでは、先ほど申しましたようにペンディングである、条約が結ばれてから初めてスタートするのだ、しかもその責任が、全部いかにも日本政府の側にあるような形に展開されていることに対して、私は率直に言って不満を持っているのであります。  共同声明の中でこれがうたわれている、したがって、これをこの段階で実行しないということは、私は穏当なことじゃないと思いますので、これについては前向きで議論を進めるべきだと思いますけれども、しかし同時に、まさに日中間の平和的関係は何かと言ったら——私は日中間は戦争するようなことはもうないと思うのです。まして過去におけるあの忌まわしい戦争の経験があるから、それを踏まえて、将来に向かっての平和的関係という意味であの言葉があるのだというような解釈もございますけれども、私は、いまの日本の状況の中で中国と戦争をするなんということは絶対あり得ない、そういう意味で前に向かっての物を言うとすれば、平和という言葉は要らない言葉だと思うのです。  しかし、あえて日中関係の中で平和という言葉を私たちが強調しなければならぬとしたら、それはやはり朝鮮半島の問題だと思う、それは台湾の問題だと思う、それは核の問題だと思うのです。まず日中関係における平和に関する問題は、まさに朝鮮半島の問題であり、台湾の問題であり、核の問題である。だから、協定の中に平和という言葉を取り込む以上に私たちはもっと真剣に、この日中間にまつわる平和の問題である韓国の平和化、安定化、朝鮮半島の平和化、安定化の問題、そして台湾の平和的解決の問題そして核については核の抑止、核拡散制限、そして廃棄、この問題について日中間で、一片の条約をつくる以上にもっともっと大きな外交努力を払って取り上げるべきだ、かように考えておりますので、どうかひとつ、宮澤外務大臣を中心にして外務省の皆様が、このような方向で積極的な外交努力を、まさに日中間の平和と友好のために進められますことを心から希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  190. 藤尾正行

    藤尾委員長 次回は、来る三月四日火曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十二分散会      ————◇—————