○林(義)
委員 海上の特殊性である、だから
海上保安庁でやるんだ、こういうお話である。しかしそれは、
海上の方だって地方の
自治体でやっておれば、一緒にやったって
一つも差し支えないと思います。
そこで、今国会には独占禁止法の改正
法案が
商工委員会にかかっておりまして、きょうは別のところでも連合審査をやっておる。私は、この
石油コンビナート等災害防止法というのは、大企業の責任をどうするかという問題において独占禁止法と同じような範疇に入るものではないかと思うのです。
災害防止法でありますが、
消防が主体になってやる、こういう話です。
消防というのは、国家行政組織法のたてまえからすれば、国または地方公共団体がやらなければならない固有事務である。サービス業務でも何でもない。絶対にどこかでやらなければならないパブリックサービスとしては、まず第一に警察と
消防が挙げられると思う。ところが
石油の場合に、同じようなルールを適用してもどうかという気が私はするのです。
消防の場合には一般の住宅がありまして、その住宅から火災が出る、
消防隊が駆けつける、こういうことなんですね。そのルールを適用していったのでは、私は、この問題というのはなかなか解決できないような気がするのです。きわめて大きなビッグビジネスの取り扱うところのものが
石油コンビナートだ。昭和三十年か何かに三井
石油化学が始めましてから、
日本ではあちらこちらに
石油コンビナートが大変はやりになってきた。これはまさに
日本の高度成長のシンボルだったと思うのです。そういった時代で、いまの豊かな社会というものをつくってきた功績があると同時に、もしも
災害があったならば、この
災害に対してどうするかというのは、小さな織物機屋とかなんとかいうのとおのずから別の法理で
規制を
考えていかなければならない、こう思うのです。
災害が起こったときにいろいろな防止法を
考えるが、
災害が起こったときの被害の問題から入った方がいいと思うのです。被害の問題でしたら、
先ほど消防庁長官がおっしゃいましたのは、民法の
規定に戻って
考える、こういうふうな話である。民法七百九条に不法行為という
規定があります。「故意又ハ過失二因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之二因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責二任ス」という
規定です。そうしたときにおいて、故意または過失を認定しなければ損害賠償をしないということは、こういった大企業が行うときにおいてはおかしいのではないか。
一つには、これはやはり無過失責任というものを大企業はとらなければならないと思う。公害法におきましては、事業活動によって排出するものについては無過失責任を負わせている。事業活動によって他人の健康に対して被害を与えた場合におきましては無過失責任をやろう、その議論をやったときに、そのほかの物的損害、財産的損害についても無過失責任の問題を早急に検討しろというのは、国会の附帯決議でもついているのであります。こういった大企業が
地域社会にあって、そこでいろいろ社会的責任を果たしていくときにおきましては、いろいろな活動についての無過失責任の問題というものをまず第一に
考えていかなければならない、そう思うのです。
そうしますと、私はそこからが問題だと思いますが、この無過失責任ということを
考えますと、それではそのいろいろな
防災体制の中で取り組むいろいろな取り組みでありますが、それはやはり企業の中で
防災体制というものをしっかりつくってもらわなければならないというのが私は基本だと思うのです。いかに外からやったところで、企業の中でいろいろな
防災体制というものをつくる、これがまず第一に企業の責任だろうと思うのです。この企業の責任について、これは企業の自己責任という形でやってもらわなければならないし、それをだんだん広げて
市町村に
協力を求める云々、こういうふうなかっこうでやるのが私は基本原則ではなかろうかと思うのです。そうしたときに、企業
自体ではなかなかできない。複数の企業でありますから、複数の企業の間でお互いに相談してやる。さらには、それでも足りないから
市町村にお願いをいたします、あるいは府県に対してお願いをいたします、こういうふうなことが私は出てくるだろうと思うのです。
そういうような
考え方をいたしてやるときには、企業の自己責任の中でありますから、それは
一つは能率の原則というものがあっていいと私は思うのです。一万年に一遍ぐらいしか起こらないような
事故を目がけて多額の投資をするということは、私はナンセンスだと思う。おのずからそこには、企業の経営の能率という原則と、もう
一つは
消防という法的安定性という原則との調和かもしれませんけれ
ども、企業の自己責任という
意味におきましては、能率というか、効率という原則というものを
一つ貫いていいんじゃないかと私は思う。
そこで能率、効率の原則を貫けば問題が起きる。そこはやはり保険制度というものを
一つは
考えるべきではないか。これが第二点であります。たくさんの企業ですから、起こるであろうということを全部想定して非常に過大なことをやるのは国家的な損失にもなるだろう、そういうふうに私は
考える。しかし、もしも万一
事故が起きたならば、ちゅうちょなく企業は全責任をとらなければならない。
先ほど私は民法の原則と申しましたが、民法だけじゃないのです。失火ノ責任二関スル
法律というのが明治三十二年にありまして、「第七百九条ノ
規定ハ失火ノ場合ニハ適用セス但シ失火者二重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限二在ラス」、こう書いてある。そうですね。したがって、過失の問題が常に論ぜられるわけですけれ
ども、そこは無過失に全部持っていっちゃって、そこで新たな
考え方でひとつやっていかなければならない問題である。そうしますと、実際問題としては企業に相当金がかかるだろう。しかしこれは公害におきましてPPP原則というのがある。企業は汚染によって出たところの損害は払う。こういう原則であります。やはりこの原則が適用されるべきでありまして、そこをやるということになれば、企業
努力によってやらなければならないし、また同時にそれは
製品価格に、
製品コストの上昇というような形で転嫁される場合もあるかもしれない。私はそれはやむを得ないことだろうと思うのです。
石油コンビナートでできているものは非常に豊かなものをつくっているわけです。
石油コンビナートがない時代にはお互いに使ってもいなかったようなものであります。いまは豊かな社会になりまして、
石油コンビナートのおかげで出てきたいろいろないい
製品をわれわれは受けているわけでありますから、その
地域社会のために
住民がもしも被害を受けるということになったならば、それを防止する費用というものは、それによって利益を受ける受益者が負担するというのが当然のことだろうと私は思うのであります。そういう基本原則で私はやってもらいたい。
幸いに
左藤政務次官が出ておられますから、ひとつ
左藤政務次官から、そういうような私の
考え方についてどういうふうに
考えられるか。きょう突然のお話を申し上げましたから、よく
考えてというお話かもしれませんけれ
ども、私の基本的な
考え方は、そういうことにしてみたらどうだろう、そうしないと、
災害防止についていろいろなことをがたがたやりましても、またもしも
災害か起きたならば、どこの責任になったとか、だれがどうだったとか、おまえはどうしたとかこうしたとかいう責任のなすり合いになるから、いまのような
考え方にしては、はっきりとやはり企業の責任だ、企業を助けていくのがこのものだとする。
なぜ私そういうことを申しますかというと、本来
消防庁というのがありまして、過去ずっとやっておりますよ。しかし、これは一般の住宅について適用してもいいと私は思う。ところが、これだけ大きなことになりますと、この金を全部の国の財政だとか町村何とかかんとかということになりますと、大変なことになってくると思うのですね。やればやるほどむずかしい。何かそういうふうなことをひとつ発想を変えてやっていただくことが必要じゃないか。
もう
一つ言いますと、ただ単に
陸上の
コンビナート施設だけではないと思うのであります。海の上を運んでくる船がある。
先ほど保安庁おっしゃいました、船はどこから来るかわからないから一緒にするとと言う。しかし、船が運んでくるのもだれのために運んでくるかというと、
コンビナートに入れるためじゃないですか。
コンビナートと一緒に
考えて、そこは全部の責任をとるというようなことを
考えて新しい
法律をひとつやってみられたらどうだろうか、こういうことを御提案申し上げるのでございますが、政務次官、いかがでしょう。