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1975-05-07 第75回国会 衆議院 地方行政委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年五月七日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 大西 正男君    理事 愛野興一郎君 理事 片岡 清一君    理事 島田 安夫君 理事 高鳥  修君    理事 中山 利生君 理事 佐藤 敬治君    理事 山本弥之助君 理事 三谷 秀治君       足立 篤郎君    伊能繁次郎君       木村武千代君    小山 省二君       住  栄作君    渡海元三郎君       古屋  亨君    村岡 兼造君       綿貫 民輔君    渡辺 紘三君       井岡 大治君    岩垂寿喜男君       小川 省吾君    細谷 治嘉君       山田 芳治君    多田 光雄君       林  百郎君    小川新一郎君       小濱 新次君    折小野良一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         自 治 大 臣 福田  一君  出席政府委員         大蔵省主計局次         長       高橋  元君         大蔵省主税局長 中橋敬次郎君         自治政務次官  左藤  恵君         自治大臣官房長 山本  悟君         自治省行政局長 林  忠雄君         自治省財政局長 松浦  功君         自治省税務局長 首藤  堯君         消防庁長官  佐々木喜久治君  委員外出席者         経済企画庁調整         局調整課長   田中誠一郎君         環境庁自然保護         局鳥獣保護課長 相馬 昭男君         国土庁大都市圏         整備局計画官  宮沢美智雄君         法務省民事局第         二課長     稲葉 威雄君         法務省入国管理         局登録課長   中市 二一君         大蔵大臣官房調         査企画課長   米里  恕君         大蔵省主計局主         計官      名本 公洲君         大蔵省主税局総         務課長     伊豫田敏雄君         大蔵省理財局特         別財産課長   森  卓也君         厚生省薬務局企         画課長     吉村  仁君         厚生省保険局保         険課長     吉江 恵昭君         厚生省保険局国         民健康保険課長 下村  健君         通商産業省立地         公害局保安課長 鎌田 吉郎君         自治省財政局交         付税課長    森  審一君         自治省税務局府         県税課長    福島  深君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ――――――――――――― 委員の異動 五月七日  辞任         補欠選任   亀山 孝一君     綿貫 民輔君   永山 忠則君     足立 篤郎君   保岡 興治君     村岡 兼造君 同日  辞任         補欠選任   足立 篤郎君     永山 忠則君   村岡 兼造君     保岡 興治君   綿貫 民輔君     亀山 孝一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提  出第四二号)      ――――◇―――――
  2. 大西正男

    大西委員長 これより会議を開きます。  内閣提出に係る地方交付税法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。足立篤郎君。
  3. 足立篤郎

    足立委員 本日は、特に委員長のお許しをいただきまして、交付税関連をして主として入猟税の運用といいますか、の問題等につきまして自治省及び環境庁に対して御質問いたしたいと思います。  入猟税は、御承知のとおり狩猟免許を受ける際にその都道府県に納入する地方税でありまして、その額は現在甲種または乙種の場合狩猟免許について三千円、丙種狩猟免許については千円と定められております。狩猟は申すまでもなくわが国においても古い伝統を有し、健全なスポーツとして、また農林水産業の振興にも一面寄与するところ大きなものがありますので、私はこれを簡単に否定する立場をとっておりません。しかしながら、自然保護鳥獣保護上、また安全の確保上問題があれば、狩猟は相当の規制を加えることは当然であると考えておるものでございます。  このような観点から、御承知のとおり昭和三十八年、私は当時の狩猟法についてもっと鳥獣保護の面を重視したものに改める必要があると痛感をしまして、志を同じくする議員諸君並びに農林省、林野庁とも協議を重ね、法律の名称を鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に改め、鳥獣保護事業計画の樹立、鳥獣保護制度の充実と休猟制度の新設、鳥獣保護員設置等を盛り込んだ法律改正を行ったわけであります。この改正は当時としては時代を先取りした画期的なものであると自負しておりますが、その後の経過からさらに改正を要する点もありますが、ここ数年来環境庁におきましては審議会で検討を重ねてこられたようでありまして、その環境庁の案がまとまりましたならばわれわれの方にもお示しを願いたい。この席に環境庁担当課長もお見えのようでありますから、この点は特にお願いをしておきます。  さて、その三十八年の法律改正の際、多彩な内容を盛り込んだわけでありますが、これらを的確に推進し、鳥獣保護及び狩猟適正化の実を上げるためにはどうしても独自の財源が必要である。財政基盤がしっかりしていなければ鳥獣保護の強化、狩猟適正化といってもお題目に終わってしまうことは明らかであります。私はこのような危惧の念を持ちまして、農林省自治省とも相談いたしたわけであります。その当時一般税として狩猟者税があり、狩猟免許者の所在地の都道府県に納付しておりましたが、この制度では都会地を多く持ち、鳥獣行政費を必要としない都道府県には多額の収入が入り、一方鳥獣保護の適地を多く持つ県に逆に収入が少ないという不合理がありましたため、狩猟免許が各都道府県ごとに行われることになったのを契機といたしまして、鳥獣保護及び狩猟に関する行政実施に要する費用に充てるため、目的税として入猟税を新設し、実際に狩猟を行おうとする都道府県に納入することとしたわけでございます。この結果、欧米諸国のように目的税の創設によって鳥獣行政財源が確保されたことは大きな進歩であると思っているわけでございます。  このように、私自身この入猟税については制度発足当初から関与していたため、その後も多大の関心を持って見守っているわけでございますが、最近この入猟税の使い方について、各方面からいろいろのことを聞くわけでありまして、本日お時間をいただいて質問をいたすことにいたしたのもそういうわけでございます。  まず自治省にお伺いしたいのは、最近の入猟税収入状況及びその支出状況はどのようになっておりますか。全国的に見た場合はどうか、また各都道府県で何か特徴的な変化があったかどうか、こういう点についてまずお答えを願いたいと存じます。
  4. 福島深

    福島説明員 入猟税の最近の状況でございますが、実績で申しますと、四十八年度の実績が現在わかっておりますが、それによりますと、四十八年度の地方財政計画におきましては約十五億六千万円ほど見込んでおったのでございますが、決算状況で見ますとそれが十四億一千万円程度収入になっておるわけでございます。四十九年度はまだ決算がつまびらかになっておりませんが、五十年度の計画額を見てみますと十三億四千万円程度でございまして、大体同じような規模で毎年推移をするのではないかというふうに考えております。  それから各県の状況でございますが、これも四十六年に税率改正がございまして大幅にふえておりますが、特に県によって特異な経過というものはないように思います。ただいま先生の御質問にございました支出との関連で何か特異な現象は出ていないかというお話でございますが、きょうの御質問があるということで実は私の方で数県に問い合わせをしてみたわけでございます。目的税でありますので、入猟税そのもの鳥獣保護等経費に充てなければならないことになっておるわけでございます。そこで、そういう観点から特に入猟税の多額な県に対しまして照会をいたしてみたわけでございますが、最近の状況を見ますと、目的税趣旨に沿って歳出に充てておるということでございます。  ちなみに、五県ほど聞いておりますので、その県を申し上げてみますと、これは四十八年の決算状況でございますが、茨城県は歳入に対しまして行政費が一一一・八%、長野県がちょうど一〇〇%という数字になっております。それから福島県が一三九%、岩手県が一〇一・四%、静岡県が、これは人件費が入っていないのでございますが、一二二%、人件費を含めれば約一五〇%程度ではなかろうかというような報告を受けておるわけでございます。もっともこれは抽出でございますので、個々の県に当たってみますとまたそれぞれ特殊な事情があるいは出てくるのではないかというふうに考えているわけでございます。
  5. 足立篤郎

    足立委員 ただいま四十八年度の実績等について御答弁をいただきましたが、どうも私の耳に入っている点を率直に申し上げると、この制度が特に目的税として設けられた趣旨に十分沿っていない面が多いように聞いておるわけでございます。最近の都道府県財政はきわめて苦しいことはよくわかりますが、その原因等については今後この委員会で御審議があると思いますが、きょうはその議論をする気はございませんが、そうであるからといって、目的税である入猟税一般財源に使用するということは、私は法律上許されないというふうに考えております。  ただいま四十八年度の実績について抽出的な御答弁がございましたが、私どもの調べはちょっと古いのですが、御承知のとおり四十六年から入猟税は三倍に上がっております。したがって、その上がる前と上がってからと比較をしてみますと、四十四年-四十五年の一年平均、これが入猟税総額で七億七千五百万円、歳出が七億七千三百八十万円、まあ約一〇〇%支出をされているわけです。そして最高支出県が、四十四年-四十五年の平均では新潟県で、新潟県の歳入が千五百九十一万円であったのに、三千三百五十九万円も支出をしておる。二一一%も支出をしておる。しかるに最低支出県は福井県で、四百二十六万円の歳入があるのに、二百三十二万円しか支出していない。そして五四%しか支出をしていない。それで入猟税以上にこの鳥獣保護費を出したというのは十六県でございました。これは上がる前でございますね。上がってから、四十六年-四十七年の一年平均を見ますと、全国で入猟税収入が十五億六千二百三十七万円、歳出が十二億九千五百七十二万円で、八三%支出されているわけですね。一七%は、目的税でありながら鳥獣保護のために支出をしていない、鳥獣行政のために支出をしていないという結果が出ております。一県平均で申し上げてもやはり八三%になるわけで、最高支出県滋賀県で、千八百五十万円の歳入に対して五千三百六十万円、二九〇%も当時の滋賀県は支出をしておったわけであります。後からこの滋賀県の問題はちょっと触れますが、最高支出率であった。それで実は山形県が最低支出でございまして、千九百十三万円の歳入に対して七百四万円しか支出していない。二七%しか支出していない。そうなると、あとの七三%というものは支出していないのか、一般財源に回ってしまったのか、私どもでははっきりいたしませんが、まあいずれにいたしましてもこれは地方税法の第七百条の五十一に目的税としてはっきり規定をされているわけでございまして、地方税で、恐らく目的税というのは入湯税とこれだけじゃないかと思いますが、いま本四橋の公団の副総裁に出ました柴田君が税務局長当時、私はけんけんがくがく折衝したのですが、最後にのんでくれまして、それこそ清水の舞台から飛びおりるつもりでこの目的税を創設するということを言明してくれまして、私は、柴田君のその決断を非常に徳としているわけでありますが、せっかく自治省がそうした決断をもって今後の鳥獣保護のためにこうした目的税を創設してくれながら、少なくともこの入猟税歳入については各県とも一〇〇%でなければならぬと私は思うんですがね。財政局長、いかがにお考えですか。
  6. 松浦功

    松浦政府委員 立法趣旨法律規定から考えまして、当然そのようにあるべきものだと私ども考えます。  ただ、ただいま御指摘をいただきました山形県の例が出てまいりましたが、それぞれの、ただいま先生のおっしゃった数字の中には、私どもの手元にある数字では、人件費が全然計算に入っておらないようでございます。したがって、全体的な、私どもいただいておる数字自体も各県ごとに非常にまちまちで、私どもの方で人件費平均並みに推定をいたしますると、先生のおっしゃるようにあるいは一〇〇%にはならないかもしれませんけれども、四十七年の決算でもほとんど一〇〇%に近い数字になるだろうという推測は私どもで下せるような数字のように拝見をいたしております。
  7. 足立篤郎

    足立委員 いま財政局長からいみじくも人件費の問題が取り上げられましたが、この目的税の中で払ってもいい人件費というものはきわめて厳格に規定さるべきだと私は思うんですよ。それが人件費というと、四六時中、狩猟行政鳥獣保護行政には全く関係のないものまで鳥獣という名前を上にくっつけると払えるということになりますと、何のためにその目的税をつくったかというのはまことにあいまいになってくるわけですね。  私は財政局長に伺うのですが、これは税務局じゃなくて財政局だと思うのですけれども、かつてこういう通達をお出しになったことありますか。「入猟税は、鳥獣保護及び狩猟に関する行政実施に要する費用に充てるため、道府県知事狩猟免許を受ける者に対し、当該道府県において課する目的税であるが、鳥獣保護及び狩猟に関する行政は必ずしも鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(大正七年法律第三二号)に基づいて道府県が行なう行政に限られるものではなく、道府県が行なう鳥獣保護及び狩猟に関する行政の一切をいうものであること。」という、これは自治省からの単なる指導方針じゃない、私は通達じゃないかと思うのですが、私どもから言うと、立法趣旨考えますと、きわめて広義にこれを解釈して、支出範囲を拡大して運用できるようなものを何か自治省道府県に対してお示しになっている。こうなりますと、いま申し上げたような、ただ鳥獣というふうな名前を上につければ、一般人件費でも何でも払えるようなことに解釈されるわけでありまして、地方税法第七百条の五十一の目的税というものの意味がぼやかされてしまうということを私は恐れるわけであります。  私どもとしては、これは当時、実は狩猟というものは禁止すべきだというふうな議論も相当マスコミあたりで喧伝されまして、これはもし狩猟を禁止されますと、たとえば林業家あたりが苗木を植えましても、ウサギやシカにかじられてしまって苗木が育たないで、いまでもそういう被害が続発しているわけでございまして、狩猟は必ずしも不道徳なものではない。これはもしなかったら、国費で全部予防措置をとったら何千億という金がかかるだろうというような話もございまして、狩猟というものは健全なスポーツとして維持すべきものだという前提に立って、しかし狩猟鳥獣が激減していることも事実であります。これは国土の開発その他が進んでまいりまして、生息条件が悪くなったという理由もございます。したがって、こうした目的税を設けることによって、狩猟鳥獣保護しながら、長く狩猟というものを残したいという気持ちもあってこういう主張をしたわけでございます。  同時に、これが有害鳥獣駆除にも大きな役割りを果たしているということであるわけでございまして、目的税を設けるまでは御承知のとおり狩猟税、いまで言う狩猟免許税でこうした人件費などは一切賄っておったわけであります。有害鳥獣駆除どもやっておったわけです。ところが今度の狩猟法改正で、さっき申し上げたように非常に幅広く、保護区の設定や鳥獣保護計画を立てるとか休猟制度だとか、いろいろな監視員制度などを設けました。したがって金が要るので、そうした直接の鳥獣保護増殖に必要な経費に充てるために目的税をつくったと私どもは思っているわけです。私ども立法府の立場から言うと、そういう考え立法したわけであります。ところが、いま申し上げたように、自治省がこの解釈をきわめて拡大解釈ができるような通達をもし出しておったとするならば、私は問題だと思います。このものが直ちに法律違反と言えるかどうか知りませんが、少なくともこういう解釈をされるならば、第七百条の五十一はもっと厳格な規定にしないと目的を逸脱してしまうというふうに思うのですが、財政局長はどうお考えですか。
  8. 福島深

    福島説明員 ただいまの先生指摘指導でございますが、これは実は私の方で処理をいたしておりますので、先にお答えをさせていただきます。  実は、地方税法施行実施に関しまして、一般的に自治省としてその施行について指導方針依命通達という形で次官名でもって出しておるわけでございますが、三十八年の入猟税改正に際しまして一部改正をいたしまして、ただいま先生がお読みになりましたものと全く同文のものをこの依命通達の中に入れたわけでございます。その趣旨とするところは、いまお話がございましたが、この鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に基づく行政というふうに解しますと、これまたある意味では大変狭く解されるきらいもございます。もとより人件費等についても、この法律で見てみますと、たとえば講習会の開催にしろあるいは立入検査にしろ、人件費が入らないということにはもちろんならないと思いますけれども、もう少しそこは、猟友会等の御意見ももちろん承らなければいけませんが、いやしくも鳥獣保護並びに狩猟関連のあるような、そういう行政であれば、含めてもいいのではないかという考え方でもって、私どもとしてはこのような依命通達を出したわけでございます。  ただ、先生の御指摘のように、だからといって何でもかんでも入れていいというものではないと思います。私どもも県におりますときには、何だかんだ理屈を言っては、猟友会の方とお話をするときには、これも入るじゃないかというような議論をしたことも多々あるわけでございますけれども、もちろん先生初め関係者の方々のご努力によってできた目的税でございますので、目的税というのはやはりその行政に使われなければならないものでございますから、そういうことを逸脱することがないように、目的税については私どもいろいろ指導しておりますが、なお今後とも、御指摘でございますので、十分留意をして地方団体にそのような逸脱するようなことがないように注意を喚起してまいりたいと存じております。
  9. 足立篤郎

    足立委員 いまの通達の一番最後部分が一番問題なんですね。「道府県が行なう鳥獣保護及び狩猟に関する行政の一切をいうものである」ということでございますが、これは私どもがハンターの立場からいうと我田引水だと言われるかもしらぬが、私どもはさっき申し上げたように、従来法律改正前は狩猟者税で全部賄ってきたわけですね、これは。それ以上に県が一般経費をつぎ込んでやってきたところもあるわけです。この法律改正になってから特に狩猟鳥獣保護増殖という点に力点が置かれまして、人工繁殖等が行われてそれを放鳥するというような処置がとられてきたわけですね。これを私ども税金を払う納税者立場からすると大いに期待をしているわけです。ところが実際は、大体私どもは恩恵を受けるメリットといいますか、というものからすると、三倍くらいな税金をいま払っているというような感じを持っているわけですね。したがってこのいまの通達最後部分は、従来の狩猟者税で賄ってきたようなものまで一切含むということになってしまうと、いまの狩猟免許税というものは、もうそのまま一般財源になってしまって、入猟税だけがこの狩猟関係の一切の経費を賄うんだということでは、どうも立法趣旨からすると割り切れないということなんですよ、率直に言うと。府県税課長さん、私の言う意味がおわかりですか。  私はきょうは時間が非常に制限されていますから一方通行になるかもしれませんが、第三の質問は、いま申し上げたような入猟税によって賄われておりますので、この入猟税歳入というものが芽生鳥獣生息数の多寡とか交通の便否とかいうものによって収入額に非常に差異を生じているわけですね。歳入が非常に過少な県においてむしろ今度の法律上の義務によっていろいろやらなきゃならぬ行政事務がたくさんあるという県があるわけですね。そうなりますと、いまの入猟税から狩猟免許税まで全部使いましても、その法律上の義務を果たすことができないという県が出てくるわけです。それできょう議題になっております交付税関係が出てくると思うのですが、こういうものについては交付税で手当てをしてやるべきじゃないか、これは国全体の環境整備環境保護といいますか、そういう観点から、たとえば狩猟鳥獣ではない小禽類ですね、メジロとかヒワとかシジュウカラとかゴジュウカラとかいうようなかわいらしい鳥を保護するというような問題は、この入猟税の対象とすべきではないので、むしろ一般財源めんどうを見るべきだが、いま申し上げた狩猟免許税と入猟税でなおかつこれが補えないという場合には交付税めんどうを見てやって、国全体のそうした鳥獣保護環境保護をやるべきじゃないかというふうに私は考えます。これは財政局長ですか、ちょっとお答えください。
  10. 松浦功

    松浦政府委員 交付税制度というのが標準団体を例にとって、それから各団体へ演繹してまいりますので、先生指摘のような特殊な県についての交付税措置というのは技術的にほとんど困難、この点は言いわけではございませんが、技術上非常に問題が出てくるということでございます。したがってそういう措置はとっておりませんが、五十年度の交付税におきましては、むしろそれよりは逆に、一般的にということで標準団体百七十万の人口を想定しておりますが、そこで、全国数字でございますが、総額二十二億五千万円の鳥獣行政費が要るということを前提にいたしまして、入猟税使用料を差し引きまして全国で六億六千万円、一般財源でございますが、これだけを交付税に計上しておる。したがってそれに入猟税使用料、手数料をオンしたものが鳥獣行政に使える、こういうたてまえにいたしておりますので、特定の県だけどうこうという措置はとっておりませんが、全般的に一般財源が必要であろうということで、全国的に六億六千万円の一般財源を見ておるということで御納得をいただきたいと思っております。
  11. 足立篤郎

    足立委員 いまのその問題で局長議論する時間がないのですが、三十八年に改められた鳥獣保護法によりますと、義務的な処置として各都道府県がやらなければならない仕事がたくさんあるわけですね。一々これは挙げている時間がございませんが、たとえば鳥獣保護員設置、それから鳥獣保護区の設置給餌施設、それから銃猟禁止区域設置休猟区の設置放鳥獣、それから狩猟の取り締まり、鳥獣生息調査、それから、特に鳥獣保護五カ年計画というのを立てなければならぬわけですね、各県は。それから従来もやってきたことでありますが、普及宣伝とか有害鳥獣駆除とか講習会とかいろいろあるわけです。したがって、これは基準財政需要額というものは、私ははじけると思うのですよ、県によって。何も貧乏な県だけめんどうを見よと私は言うのではない。それはどうにもなりませんといういま局長答弁だったが、それはおかしいと思うので、環境庁と十分御協議いただければ、一定の規模というものは割り出せるわけですね、どれだけの経費が要るか。そこで、いまの狩猟免許税と入猟税で補いがつくところはいいが、つかないところに対しては、それだけ基準財政需要額の方が大きいということになりますから、それに対して交付金の対象に考えるということは、やってできないことはないと思います。これは時間がないから御答弁は要りません。  それから、最近諸物価が高騰してきているので、こうした狩猟関係税金も増税が予定されているということをよく言われるわけでありますが、そういう含みは自治省にはあるのですか、ないのですか、その点をお答えいただきたいと思います。
  12. 福島深

    福島説明員 入猟税につきましては、四十六年に御指摘のように三倍の引き上げをいたしておりまして、いま関係者の方あるいは関係省庁の方の御意見の中にも、入猟税の税率を引き上げるという御意見は出ていないように思いますし、また私ども税務局として、そういうものを現在前向きに検討しているというような段階でもございませんので、御承知おき願いたいと思います。
  13. 足立篤郎

    足立委員 私は増税が必ずしもいかぬというのじゃない。これは本当に、完全にいま申し上げたような狩猟鳥獣保護増殖等に十分使われるならば、むしろ現在の状況は将来憂うべき状態になっておりますから、増税をしてでもどんどん行政をりっぱにやってくれれば、期待するようなメリットがあるならば、狩猟者は喜んで払うと思うのです。ただ現状のような、幾ら府県の財政が困るからといって、拡大解釈をされて、一般財源に流用されるようなことでございますと、さっき申し上げたように私どもの感じでは、どうもメリットとわれわれの納税額から言うと三倍くらい余分に払っているという感じを持っておりますので、実はむしろ減税してもらいたいくらいなんです。そうでないとそろばんが合いません。これはあれですが、ともかくいまのところ増税をするあれはないと言いますから、これ以上は追及いたしませんが、目的税はその制定の法意からいたしましても、積極的な保護増殖に充てるべきであることは先ほど来るる申し上げたとおりであります。鳥獣保護事業計画でも、保護増殖を根幹として基準を定め、都道府県知事実施すべき事業を義務づけております。  最近の情報によりますと、実は滋賀県では県知事さんがかわったために、さっき申し上げたように滋賀県では、歳入に対して最高二九〇%というような鳥獣保護行政に非常に濃度の濃い行政をやっておられたのが、突然、放鳥獣事業を全く中止というようなことになったようであります。私どもが最も期待している放鳥獣事業が。これは、知事がかわるとこういうふうにぐらっと変わってしまってそういうものがカットされるということでは、目的税は何のために設けたかわからぬということになるわけですね。したがいましてそういうことのないように、ひとつ自治省で厳重に監督を願いたい。私どもは余り出しゃばりたくないのですけれども、どうしてもいけないというなら、国政調査で私ども各県を回らしてもらって実情をつぶさに調べさしてもらって、逸脱している面はないかどうかという点を明らかにしたいと思っています。  最後に、これは府県税課長の方になるのですか、さっき申し上げた通達でどうも誤解を受ける面もありますし、目的税をはっきりしていただくために、さらにこの通達を出し直してもらいたいと私は思っている。あるいは一部修正をしてもらうか、指導をはっきりしてほしいと思います。その御決意を伺って私の質問を終わります。
  14. 福島深

    福島説明員 三十八年に改正いたしました依命通達改正をするということは、ひとつ御容赦をいただきたいと思うわけでございますが、ただそのとり方が非常に常識を逸脱しておるというようなことがあればこれは明らかに問題でございまして、私どもいけないことだと思います。したがって、よく目的税趣旨に沿って支出がなされるように、いろいろな機会がございますのでその機会を通じまして十分先生の御趣旨を体して指導をいたしてまいりたいと存じております。
  15. 足立篤郎

    足立委員 それでは、さっき申し上げた入猟税で使い切ってない県がありますね。一〇〇%使ってない県。それはさっき財政局長がおっしゃったように人件費だというのでわけのわからぬ人件費に使ったというだけでは私は説明にならぬと思うのです。したがって、使い切れてないところは一体どう使ったのだ、一体金が、繰り越しが残っているのかどうか、それを明らかにしていただきたいのですが、後から私に御報告をいただきたいと思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  16. 大西正男

  17. 小川新一郎

    小川(新)委員 地方行財政の中でも地方財政の問題では、地方交付税法改正に伴って種々議論が出ておりますので、いろいろと重なるところはございますが、地方財政全般について松浦さんよろしくお願いします。  最初に、本来だったら大臣にお尋ねしたいのでございますが、大臣がおりませんので、政務次官並びに松浦さんの御意見をお尋ねしたいと思います。  御存じのとおり、今回の三木内閣総理大臣の地方行財政に対する施政方針演説の中ではこう言っております。「高度成長から安定成長へ、量から質へと経済体質を変革するためには、高度成長時代の制度、慣行の見直しが必要である。」また、このことはなかなか困難だが、ほうっておくわけにはいかぬ。財政硬直化を含め、行財政のあり方全般にわたり見直しをする考えである。こう総理大臣はおっしゃっております。三木さんの言われていることは全く至極私もそのとおりだと思いますが、自治省としては、この総理大臣の意を体してどのような行財政の見直し、慣行の見直しが必要であるかという具体例がございましたら、まずお尋ねしたいのであります。
  18. 左藤恵

    左藤政府委員 総理の言われましたその地方財政を見直すという立場で、自治省といたしましては、ただいま地方制度調査会に諮問申し上げて、この点についての御意見を伺っておるわけであります。非常に広範な、かつまたいろいろ関連した問題もたくさん出てまいりますので、慎重に御審議をいただいておるわけでありますけれども、われわれといたしましては、その答申をできるだけ早く出していただきまして、それに基づいて対処していかなければならない、このように考えております。
  19. 小川新一郎

    小川(新)委員 地方制度調査会には私どもも地方制度の問題について参画いたしておりますので、いろいろと御意見など申し上げておりますが、これはあくまでもそういった民主的ルールに従い、手続に従って、制度の改革という大事な問題に取り組む姿勢については、もう前から、何も三あって、毎年毎年この問題は、その制度について、またあり方について、組織、運営、機構について論じているところであることは承知しております。  ただ、インフレと総需要抑制という相反する問題が地方財政に対する圧迫という問題になっておることは、もうここで幾たびも議論されているところでございます。たとえばインフレ、物価高騰という一つの国の政策から誤り、いろいろな問題からこういう問題になってきたという点から、総需要抑制というものを物価高騰の歯どめにかける、インフレを抑えるという一つの手段とし、地方財政の自主財源が当然この総需要抑制という問題から、法人事業税、法人住民税、また個人の所得に影響してくるところの地方交付税全体に及ぶ総額の枠、こういった問題で地方の財源が圧縮されてくることは当然であります。片や人件費やその他にインフレで金がかかる。しかしそれに見合うところを、それを抑えるための政府の政策が、総需要抑制という歯どめ政策によって、逆のデメリットが生じてくるという地方公共団体の行財政のあり方から見たときに、速やかにこれは抜本的改革をしなければならぬという総理のお考えが、このいつもの総理の所信表明演説にない画期的な話になってあらわれたと思うのでございますが、それがいまの政務次官の、ただ地方制度調査会にいま任しているのだからその答申を待って云々というようなありふれた御答弁では、こういった国の政策転換、ターニングポイントに差しかかったいま、私は余りにもちょっと無策の答弁と思えます。だからといって、それを逸脱した行為をいますぐここに求めるというのでなくして、何らかそこに自治省として、大臣として、また執行機関としてのお考えがあるのではないか。これはもちろん制度調査会等にも諮るのだ、その意見もあわせるのだ、そして合意に達した問題については議会にも諮るということの、その具体的な何らかの例というものがない限り、私としては非常に不満足なんでございます。その点、次官いかがでしょう。
  20. 左藤恵

    左藤政府委員 確かに歳入歳出両面においていろいろ地方財政の運営が最近困難になってきておるという問題は御指摘のとおりあるわけでありますが、それでは具体的にいまどういう案があるかということについて、その地方制度調査会に諮問申し上げて、あとはもう何も勉強していないとか、検討していないということではございませんで、もちろん単年度予算的にも、たとえば超過負担の解消に努力するとか、地方財源の充実強化のための措置をどういうふうに持っていったら一番いいかといういろいろな検討はいたしておるところでございます。  もちろん地方公共団体におかれましても、また安定成長経済に移行しつつある現在の日本経済の実態というものを十分認識していただいて、その中においてどういった努力をしなければならないかということについて検討していただく。自治省としても、適切な問題があれば当然そういうことで行政指導と申しますか、そういうものをやっていかなければならない、このように考えておるところでございます。
  21. 小川新一郎

    小川(新)委員 地方財政が硬直した、また危機になった、こういった問題は、いろいろと自治労や革新団体またわれわれの方の考え方と自治省考え方が平行線になる場合もあり得ますし、また合意になっている点もございます。それはよく了解いたしておりますが、さらに続けて申し上げますと、総理大臣は「国民は華やかな消費生活よりも、美しい自然環境の保全、文化の発展、快適な生活環境、医療と教育の充実、公共施設の増強を求めています。そうした住民の要求に直接こたえなければならぬのが地方行政であります。」さらに「生活中心、福祉重視の質的充実の時代へ転換するためには、地方行政の果たす役割りは一層大きなものになってまいります。」「自主的で責任のある地方行政が実現されるよう、国と地方との関係を初め、地方行財政のあり方について全面的に見直す必要があると考えております。」また自治大臣は一月二十九日の第十六次地方制度調査会第五回総会のあいさつで、総理の所信と同様に、国民福祉の向上、充実を図るためには、国、地方を通ずる財政硬直化の現状を速やかに是正することがぜひとも必要であるという趣旨から、当面の緊急課題として、ことし七月末を目途に、地方財政の硬直化を是正するために、その方策、地方行財政のあり方について、同調査会の審議、答申を求めておられる。まあこういうことを言っておられますが、この地方行財政の硬直という問題がすれ違いの部分だけ私はちょっと指摘しておきたいのですが、自治省では人件費の問題と福祉の先取りということを言われておりますが、総理も「生活中心、福祉重視の質的充実の時代へ転換するためには、地方行政の果たす役割りは一層大きなもの」となる、こう指摘しておりますが、この問題をただ単に財政の面だけが硬直したという、赤字になったという理由だけで、昭和四十八年度の地方財政計画決算にも見られるように、二〇%も三〇%も決算が上回って支出を余儀なくされている。こういう問題をただ端的に地方の行政サービスの先取りであると言うかのごとき問題は、私はちょっとすれ違いにしてもひど過ぎるすれ違いではなかろうか。しかし、行財政をそのまま放任した赤字の中で運営していけというようなむちゃな指導は、また自治省としてもできないということも理解しております。  そこで、当然この問題をただ単なる議論に終わらせないための施策という問題が、有能な当局の中で提案されてこなければならないわけであります。これを私は先ほどからお聞きしているわけでございます。その前提に立って、このような総理のお考えというものを、これは松浦さん、専門の立場でどう御理解いたし、いまの硬直し、危機を伝えられ、地方公共団体の独自の県単事業、またそういった中の行政サービスが行き過ぎであるというようなことと、この総理のおっしゃっている、地方行政の果たす役割りは一層大きなものとなるという福祉実現への質的充実の時代へ転換するための役割り、これを受けて立つ地方公共団体の問題についてはどのようにお考えであり、御配慮していただけるのか。
  22. 松浦功

    松浦政府委員 私ども事務当局としては、いろいろの問題について検討はいたしておりますが、少なくとも地方制度調査会に御諮問を申し上げている段階でとやこうの発言をすることは、まことに失礼に当たると思っております。その点については御容赦をいただきたいと思いますが、結論的に申し上げますならば、私どもといたしましては国においてなさなければならないことは国がやる、地方において自主的に解決をしなければならない問題については地方の努力を期待するという形の中において、一定の収入というものは見込めるはずでございます。その収入を赤字にならない範囲にどう使うかということは、自治体にお任せをいたしておるわけでございます。したがって自治体でどのようにお使いになるかについて、私どもはとやこう申し上げるつもりはございません。  ただ、歳入の範囲を越えて勝手にという表現は適当ではないかと思いまするけれども、ややルーズに運用なされたために、金が足りなくなった、それは国の責任だから、国に金を何とかせい、こういうやり方は今後の国と地方との関係から非常に好ましいことではない。やはり地方の自治権というものは、主たるものは人事権と、私は財政の自決権であろうと思っておりますので、そういう意味ではつかみ得た財源というものを、総理がおっしゃられるように、生活、福祉優先、なおかつ質も上げるという方向へ重点的に、効率的に使い方を変えていく。それが現在の低成長下における地方財政の期待すべき運営の方途ではないか。したがって、私どもといたしましても地方財政計画を組みますに際しましても、当然のことながら一定の枠の中にはめなければならないものを、どちらかというと、やや表現が不穏当かもしれませんが、できるだけ手厚く福祉方面に計画額を組み込む、いままでの産業基盤整備というようなものはできるだけ抑えるという形の計画を組んでいる。そこいらも私どもの総理の御意見を体した行動であるというふうに考えております。  いずれにいたしましても、国のとるべき問題は国の責任において、地方の手で行うべき問題については地方の手でということで、その辺をはっきり区分けをいたしまして、これからの地方財政の運営に臨んでいっていただきたい、こういう気持ちでおります。
  23. 小川新一郎

    小川(新)委員 松浦さんのお話も一説そのとおりの面もあるわけです。それは法治国家において地方公共団体の自決権、そういった自治体の本旨、こういう問題を与えられている中で現行の法律の範囲内、また慣行の範囲内、規約の範囲内において問題を処理していくという立場から論ずるならば、当然それはそういった説が出てくるわけです。それではなぜここに高度成長時代の制度、慣行の見直しが必要であるかということをあえて総理が言ったかということが、現行のままで節約をし、改めていくという範囲を超えるには余りにもいまの行政サービスの要求度、一体そういった面から言っても、もうこのままのいままでの流れの中での節度、規制、それではもう限度があるということを私たちが言いたいわけですね。  そこで根本的には、財源の配分の仕方を変えるとか、または相当大きな面において見直し、チェックを行わねばならないとか、これは個々において皆それぞれの議論を展開してきたわけです。たとえば超過負担の問題、機関委任事務の問題地方事務官制度の問題、また地方交付税の基準の見直し、いろいろな問題がこの七〇年代後半の地方行財政の中で、いままでの制度ではだめなんだ、もう少し変えなくちゃいかぬのだという、この問題点の考え方が、われわれが過当に要求しているのか、それとも現行の制度の中で政府がこれ以上のことはでき得ないのか、でき得ないとするならば、お互いに政府の責任範囲、守備範囲、または地方公共団体の守備範囲の中での要求というものをやられてくるわけでございますが、自治省という特異な、ほかの建設省とか、大蔵省とか、農林省と違ったまた立場にある、所管の責任ある庁としてのジレンマもございますでしょう。私はそういう面を踏まえた上でいま総理の言葉をあえて引用して、もうもう松浦さんよくわかっていらっしゃるのだけれども、責任上、立場上いまここでなかなかそれが言えないという苦しみは私もよく理解できますが、私もまたそういう範囲の中で議論しなければならない苦しみをお察しいただかなければならぬと思うのですね。そういう中でいつまでいっても平行線になったのではこれはしようがないので、先ほどから次官にどういう手だてがあるのか。根本的、抜本的とは何なのかということをいかにひっかけて、恋じゃないけれども、ひっかけようと思っても、堅牢堅固なる自治官僚の厚い壁の前に私もはね返されているわけですね。それは入れかわり立ちかわり特攻隊が突っ込んでいくようにいまいくのだけれども、厳重な対空砲火に撃ち落されるわが神風特攻隊の姿にも似て、まことに悲惨きわまりない姿を現出しているのですけれども、私はそういうようなことを、ひとつ攻める側が、攻めると言っちゃおかしいけれども、お互いにあなたの立場も私ども立場も地方公共団体の苦境をいま救おうとして合意点に達する議論をするこの場においてやっているのですから、敵であるとか攻めるとか、守るとかなんて、そんなまるで軍艦マーチのようなことを言いたくないのですけれども、どうかひとつ十二分にその点の御配慮をしながら、具体的な問題にお答えをいただきたいと思います。
  24. 松浦功

    松浦政府委員 具体的には、制度を見直して財源配分をし直すという前提には、事務がいまのままでいいかということを検討いたしませんと、財源の問題は結論は出てまいらないと思います。  それから、事務の配分の仕方、現在の事務の配分で金が足りているか足りていないかという議論も、地方団体の金の使い方、これにはやはり地方団体の意見と当省の意見と食い違う場合もあると思います。そういうことを考えますと、なかなか簡単に結論が出る問題ではないと思うのでございます。したがって私どもは、交付税率を引き上げろという御意見も十分承っておりますけれども、国の財政も赤字公債を発行しなければならないというような状況になっている現状で、ただ地方団体側が金をくれという形で大蔵省に持っていくには、よほど強固な理由がないと、まあ大蔵省の方もおいでですが、私どもも全く厚い壁にぶつかって頭にこぶをつくっておしまいということになるわけでございます。  そういう意味では、私どもの手っ取り早くやり得ることというのは、私どもがいつも言っている問題でまたおしかりを受けるかもしれませんけれども地方団体自身が、やはり人件費を中心とする問題、これらに十分メスを当てていただく。と同時に、私どもが大蔵省に絶対強く言えることは、超過負担の解消の問題、さらには、ある程度強く主張できると思いますのは、補助対象とか数量とかこういった問題については、私どもも事務的に十分大蔵省と折衝するだけの力があると思っておりますので、そういう面で努力をすることが結局は地方団体歳入を豊かにする。あるいは、必要でございますれば、零細なつまらない補助金を整理をすることにさせていただいて、その財源一般財源に振りかえていただく、いろいろ方途があると思うのでございます。それらの問題は、現在、どういう形をとるべきかということを、地方制度調査会で御検討いただいておりますので、御答申をいただいた後に、来年度予算の折衝に当たりまして、強力に大蔵省と折衝する。超過負担はもう年内に何とかお願いするという方向も出してみたいと思っておりますけれども、それらの問題を加えて、国の努力と地方の努力とによって、財源の単なる著しい膨張という形だけを期待するのではなくて、やはり歳出面の切り詰め、同時に歳入面の増加、この両者をもって今後の地方財政を運営していく。しかも、現在のような経済情勢でございますならば、国も地方も、あるいは民間の会社も個人も、すべてこれまでの高度成長に支えられた陰で、やや背伸びをした形になっております。背伸び分だけは詰めませんと、高いハイヒールの底だけ少し切るという形、かっこうは悪くなるかもしれませんけれども、そのような姿勢で一定期間を経過しないと日本の経済が危うくなるということも言われておりますので、地方公共団体においてもやはりそういう姿勢をとっていただくように、われわれとしてはお願いをする。同時に、先ほどから繰り返して申し上げますように、国の手でできることについてはどんどんこれを進めていくという態度でいくべきだ、こう考えております。
  25. 小川新一郎

    小川(新)委員 この問題をいつまでもするというわけにもいきませんから……。  いま松浦財政局長の言われたように、私としても十分その辺の理解はしております。でありますから、経済企画庁にちょっとお尋ねいたしますが、四十九年度の経済見通しと実績見込み、この差はどれくらいあったのか、実質国民総生産の見込み額と実際面の結果は四十九年度はどうだったのか、また四十九年度の消費者物価の上昇率と見込み額はどれくらいの違いがあったのか。いま言っているのは、四十九年度のことを言っているのですからね。  それから五十年度の経済見通しは、実質国民総生産四・三%増、消費者物価上昇率九・九%以内ということになっておりますが、景気浮揚対策はどの程度進めていくのか。これは非常に大きな問題で、大蔵大臣が後ほど来たら私の聞いてみたい一番大きな問題は、景気浮揚策というものと物価、インフレ、総需要抑制という問題は、見通しについては、大蔵省としてはどう見ているのか。また公定歩合の金利などはどういうふうになるかということは、いまこの場において御答弁ができない問題であると同時に、これは大蔵大臣に聞かなければならぬ問題ですね。公定歩合がこれから下げられるということでございますが、その枠内、範囲内という問題がどのようにまた景気浮揚に影響してくるか。であるけれども、いま言ったような総需要抑制という大枠、これは福田副総理と大平大蔵大臣との意見の食い違いも指摘されているよ  いま私が申し上げましたような問題点について、経済企画庁また大蔵省、お答えできる範囲でお答えをしていただきたいと思います。
  26. 田中誠一郎

    ○田中説明員 先生から御質問のございました第一点でございますが、GNPにつきましては、当初の見通しは実質GNP二・五%と見ておりましたが、御存じのように、昨年の暮れ改定試算を出しましてマイナス一・七%程度というふうに見込んでおります。しかしその後実勢の変化がございまして、それからもう一つには国民経済計算の基準年次の変更等がございまして、四十九年度の実質GNPの数字は、昨年つくりましたマイナス一・七%よりマイナスは小さい数字になるのではないかというふうに見込んでおります。現在のところ第四・四半期の数字が出ておりませんで、六月の初めに数字が出ることになっております。  それから第二点の消費者物価でございますが、当初の見通しでは、消者物価は九・六%と見ておりましたが、昨年暮れの見通しで二二%に前年同期比で改定してございます。実績はすでに出てございますが、二一・八%でございます。  それから五十年度の経済成長率でございますけれども先生指摘のように、政府といたしましては四・三%の経済成長を見込んでおるわけでございます。現在の景気の情勢は、物価が比較的鎮静化しておりますし、需要面では消費、設備投資等に問題がございますけれども財政支出、個人住宅等の増加がございますので、一応その第一次、第二次の景気対策をとりました結果、おおむね景気は下げどまりの状況に入っておるというふうに見ておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、今後景気の情勢を十分に留意いたしまして、政策を機動的にとるということによりまして、景気は夏以降緩やかに回復していくのではないか、そして政府見通しの範囲におさまるのではないかというふうに期待しておるわけでございます。
  27. 名本公洲

    ○名本説明員 私どもの方のちょうだいいたしました御質問でございますが、どうも大変大きなお話でございまして、私ではちょっとお答えいたしかねますので、いずれ後刻大臣がお見えになりましたときに重ねて御質問いただきたいと思います。
  28. 小川新一郎

    小川(新)委員 これは大蔵大臣でなければ答えられない。困ったな。本当はぼくは大蔵大臣より先取りしようかと思ったんだけれども、これはだめですね。それはまあいいでしょう。  そういたしますと、経済企画庁、四十九年度の例から言っても、見込みと実質では、いま私がいろいろと言った範囲においては、差額というのはどれくらい出るのですか。
  29. 田中誠一郎

    ○田中説明員 経済見通しは、政府の一つの政策の目標でございまして、それにおさめるように努力しておるわけでございますが、いままでの例から申しますと、上に行ってしまう場合と、それよりも下になってしまう場合とございまして、一概に何%というふうに申し上げる数字になっておらないわけでございます。
  30. 小川新一郎

    小川(新)委員 聞いておっても大分お開きがあるようでございますね。でありますから、この五十年度の経済見通しの問題も、すでに歳入欠陥を生じている四十九年度の税収見込みを基礎に、五十年度の税収見通込みを二六%増の十七兆三千四百億円と計算しておる。五十年度の国税の税収見込みに狂いが出て、再び歳入欠陥を生ずるのではないかという五十年度に憂いを持って四十九年度のいろいろの問題をいまお聞きしたわけでございます。これは松浦さん、どうですか。もう神様と言われているあなただから、ひとつどういう御所見がありますか。
  31. 松浦功

    松浦政府委員 国税の方は私どもでは何ともわかりかねますけれども、御承知のように、国税があんな形になりまして、交付税で約九百億円から千億円くらい四十九年度に配り過ぎになっております。きのうもお答え申し上げましたが、これは法律制度上、五十年または五十一年に精算という形になるわけでございまして、大蔵省から返還をいま命ぜられるという筋合いのものではございません。五十年度に精算をするか五十一年度に精算をするか、これは両省の間で詰めるべき問題でございます。ただ一般的に申し上げまして、現在地方財政計画に見込んでおります交付税は、どのような形があろうとも地方団体に御迷惑なく配りたいというのが私の気持ちでございます。穴があけばあいたで大蔵省に補てんをしていただく、あるいは借り入れをさしていただくという方法は私は何としてもとりたいというのが現在の気持ちでございます。  地方税の問題につきましては、四十九年度は財政計画を下回る地方税収入という見通しはまずございません。財政計画上の税収入は確保できた、こう思います。五十年度につきましては、これは私、先行きの情勢が何にもわかりません。しかし、これの問題につきましても、財政計画に計上いたしました地方税歳入として見込まれております以上、これに穴があきますとそれだけ赤字になることになるわけでございます。したがって、その部分についても、税収入にもし仮に穴があくというような状態になりますれば、交付税をふやすとかあるいは地方債を増発するという形において何らかの財源で補てんができるようにいたしたいというのが現在の私の気持ちでございます。  総括して申し上げますと、現在見込まれておる財政計画上の歳入、これに穴があくような場合には、財政計画上の歳出が全部執行できるように何らかの手段をもって歳入の補てんをしたい、これを申し上げてお許しをいただきたい。
  32. 小川新一郎

    小川(新)委員 私のこの後の質問も全部そこへ要約しておったのでございますが、財政局長、やはり地方公共団体財源問題、ただ人件費だけで責めているだけでない、そういった配慮も大蔵省にしようという御決意をいま聞いたわけです。穴埋めについては何らかの方法によって地方財政計画に生じた差額分についてやってくださるといういまの自治省のこの考え方、決意に対して大蔵省としてはどのように受けとめてくださいますか。
  33. 名本公洲

    ○名本説明員 御指摘ございましたように、四十九年度に発生いたしております歳入欠陥、それの交付税へのはね返りの問題これは確実に発生してくるわけでございますが、五十年度どのようになるか、これは財政局長もおっしゃいましたようになかなか、まだ五十年度走り出したばかりでございまして、これから経済情勢を見込んでまいらなければわかりませんけれども、この四十九年度の部分につきましてどのように措置していくか、これは五十年度の補正予算あるいは五十一年度の当初予算と、その処理の仕方は二通りあるわけでございますけれども、これは今後私どもとして検討してまいらなければならないことだと思っております。どちらにいたしましても、仮に五十年度における交付税に当初予算で見込みましたものに穴があくというような事態になった場合に、どのようにいたすかということでございますけれども、これは自治省御当局とも十分御相談申し上げながら進んでまいらなければなりませんが、国の財政それ自体といたしましても大変苦しい事態になっておるわけでございます。先ほど財政局長がハイヒールの足を少し切るということも場合によっては考えなければならないとおっしゃいましたけれども、国の財政そのものもハイヒールの足ではなくて、あるいは竹馬になっているかもしれません。竹馬の足が長過ぎた場合には切らなければなりません。国自体も仮にそういうような財政考えざるを得ないというふうになってまいりますと、地方の財政におきましても同じようなことをひとつ考えていただかなければならないという事態も、これは真剣に考えざるを得ないだろうというふうに私どもとしては考えておるわけでございます。いろいろこれからの五十年度の経済情勢を見きわめながら、どういうふうに対処していくか、これは自治省御当局と十分御相談をしながら対処してまいりたい、かように考えております。
  34. 小川新一郎

    小川(新)委員 四十九年度の国税の税収見込みが狂ってきたということで五十年度の交付税四兆四千三百億というのは減額修正しないということで、財政局長もいまいろいろな手段を講じていこうということで大蔵省と折衝する、こう理解しているわけなんですね。でありますから、大蔵省といたしましては、五十年度の交付予定額がどんなことがあっても穴はあけられないといういまの地方財政立場からいっても、ひとつその点だけもう一遍御確約をお願いしたいと思います。
  35. 名本公洲

    ○名本説明員 大変重大なことでございますが、この点につきましては、四十九年度の精算は別にいたしまして、五十年度どのようになるかということをまだ何とも申し上げられる段階でないわけでございますけれども、仮に四兆四千三百億がそのまま、国税三税の三二%といたしましてはそれだけのものが確保できないというような事態になった場合にどのようにするかという点につきましては、国の財政、地方の財政全部ひっくるめまして、たとえば国の予算自体が現在対前年何%か伸びておりますけれども、それをさらに縮めなければならないというような事態だって考えられないわけではないわけでございます。そういうふうな事態になった場合になおかつ地方には四兆四千三百億そのものを交付税として配る、そして当初予定いたしました地方の財政規模をそのまま維持してまいらなければならないかどうか、これは今後の経済のあり方、動きというものを十分見ながらこれから私どもとしても検討し、自治省御当局とも御相談申し上げていかなければならない問題であるというふうに考えておりまして、ただいま今日現在で、四兆四千三百億はびた一文穴をあけませんというふうにはちょっと申し上げかねます。その点、御了承いただきたいと思います。
  36. 小川新一郎

    小川(新)委員 あなたの話を聞いていると、だんだん不景気な話に、最初の話からこう――それはあなたの方から言えば、四兆何がしの金をいまここで穴をあけるかあけないかということを議会で確約しろと言っても無理な話だと私も思いますけれども、いま言ったような減額補正ということになりますと、いろいろその面に食い込んでくるわけですから、いまの松浦局長の話をあなたもこの席で明確に頭の中に入れておいてもらわなければ困るのです。本当は大蔵大臣と自治大臣と政務次官と三人がそろった上でこういう話ができれば、これはまことにもってきょうは大変なあれになるのですけれども、何かと言えば大臣来なければわからない、わからないで逃げられてしまうのでございますが、昭和四十九年度の当初予算では国に比べて地方財政が豊かであるとの立場から、地方交付税法改正によって昭和四十九年度分の地方交付税総額は法定額から一千六百八十億円を国へ繰り上げて償還するという形で減額されています。またそうかと思うと四十九年度の補正予算のときには、通常であれは五十年度予算に繰り入れるべき四十八年度決算に基づく精算分剰余金二千六百九十一億円を組み込んで、地方財政の危機を乗り切ろうとしました。そして四十九年度末になると、今度は国税の歳入欠陥によって地方交付税の渡し過ぎであるから、その分だけ国に返せというようなことがいろいろと議論されてくる。こういう問題、大蔵省、私がいま言わんとすることはもう何も私ごときしろうとが言わなくても、十二分に地方財政立場から、いま地方公共団体の全財政の面で責任を一身に負っている松浦さんがいみじくも強烈に言っているわけですね。その面においては松浦さんの態度というものは私はりっぱだと思うのです。一つは、確かに人件費が高騰しているという問題についてはわれわれとは意見が違う面もあるけれども、この面については頭にくる面もあるが、また一面については大蔵省に対して堂々とその財源補てんについて、おれはこういう案をもってしても地方の公共団体に対してはカバーしていくのだ、こういう声は地方公共団体の人たちにも公正な立場から言って私は聞かしてあげたいのですよ。もう松浦さんといえば、地方公共団体が非常に行政上注目されている第一人者としている。私もそういうことはわからないわけじゃない。だけれども大蔵省、その元凶は松浦さんにあるのではなく大蔵省にあるのだということが、いみじくもこの機会において明快にならないように、あなたも大蔵省の本省にお帰りになったときには、この折衝がだんだん煮詰まってきて自治省のいろいろな問題、いまここで私は言いませんよ、これだけ言えばわかるのですから。この問題について個々の、いろいろな問題の折衝のときに、ああでもないこうでもないという理論をくっつけて自治省の言い分に対しては反対をしないように、まずここで確約を一言とっておきたいのです。どうですか。
  37. 名本公洲

    ○名本説明員 その問題は大変重要な問題でございますが、五十年度これからの国、地方を問わず財政がいかにあるべきかという点を十分反省してみなければならない。極端に申しますと、八千億四十九年度において歳入欠陥が出たということは、一面から申しますと、国自体がそれだけ竹馬に乗って背伸びをしておったということに相なると思います。そうしますと、四十九年度においてその竹馬の足を仮に低くしたならば、歳出面において財政規模がいかがあるべきであるかということに相なると思うのです。同じことは、これは地方財政についても言えることだと思います。そういうようなことも片一方で十分考えながら、今後の経済情勢も考慮し、そして財政局長のおっしゃるところも頭に入れて、自治省と今後十分御協議を申し上げたい、こういうふうに考えております。
  38. 松浦功

    松浦政府委員 いろいろなお話を承りましたが、はっきり申し上げまして地方財政の現実は、財政計画の外に私ども考えておる問題はあるわけでございます。たとえば人件費の問題、先取り行政の問題、いずれも財政計画の外でございます。いま論議しておりますのは、財政計画に見合う歳入議論しているわけでございます。現在の財政計画は、標準的かつ最低限の必要歳入だと私は思っております。それに見合う歳出でございますから、歳出のどこを削るということがはっきり理論的に納得ができない限りは、歳入不足は補てんすべきが当然である。ただ補てんの仕方に、特別交付金で穴を埋めるのか、借り入れで穴を埋めるのか、あるいは地方債で埋めるのか、いろいろ埋め方があると思います。これは先行きの問題として大蔵省と議論をすることになろうかと思いますが、補てんという方向については、不要な歳出が現在の財政計画の中にあるということになりませんと、補てんをしないでいいという議論にはならないわけです。大蔵省という役所は非常に理論的にその辺のところは筋の通った議論をなさりますので、詰めるところがあるなら詰めるものを持っていらっしゃいといった場合に、大蔵省さんはどこを切れということを必ずおっしゃれないのじゃないかという気持ちがするわけでございます。したがって、主計官を前に置いてこういうことを申し上げては失礼かもしれませんけれども、補てんということの原則について大蔵省が反対する理由は何らない、必ず好意ある理解を示してくれるだろうと思っております。ただ、補てんの仕方についてはこれは国の財政との関連もございますから、くれっぱなしの交付税をたくさんくれと言っても、なかなかうまくいかないかもしれません。その場合には、あるいは借金をさしてくれという方法もございましょうし、それもいろいろむずかしいということであれば地方債の発行という形で穴を埋めるという方法もあると思います。埋め方の手段についてはこれから協議をいたしますが、基本といたしましては先ほど申し上げましたように補てんはしたい、こういう方向で臨んでおります。
  39. 小川新一郎

    小川(新)委員 私もきょうの段階において、それから先の議論というものは想定議論になってしまいますので申し上げませんが、どうかそういった十二分の御配慮の中でひとつ最小限度にこの竹馬理論、要するに八千億の問題にしても、これはやはり国の政策という問題がいろんな面で起きてきている問題であって、高度経済成長政策の転換の時期の誤りとかまたは対外的なわが国に及ぼす影響とかという、要するに高度な、もっと次元の高い政治問題から発展して今日の問題が出てきたのであって、それはいまここで、一地方財政の分野だけで議論したっておさまらない問題であることは、予算委員会や総理大臣に対する本会議質問等でも見られるとおりでございます。そういう中においての犠牲は国も地方も負っていくのだという立場の中では理解できますし、そういったぜい肉を切り取る中において、あなた方が検討していくために地方公共団体も協力してくれというならば、これは話がわからないでもありませんが、いま言ったように、松浦さんの言わんとするところを大蔵省が何もかも抑えられないようにということのために私は言ったのであって、その辺から先は自治省と大蔵省との高度な折衝問題に入ると思いますから、あえてこの場では申し上げません。よろしくお願いいたします。  次に、租税特別措置による地方交付税の減少についてでございますが、私はこの前租税特別措置による地方税の問題はこの席において御質問いたしました。昭和四十年度から四十九年度までの過去十年間において、国税の租税特別措置によるもの一兆八百億円、地方税の非課税措置によるもの一兆一千七百七十七億円、合計二兆二千五百七十七億円もの地方税の減収を強いられておりますが、このことについては四月の九日、財政難に悩む福岡県大牟田市は、特定企業に対する電気ガス税の非課税措置は地方公共団体の課税権を侵害し、憲法九十二条の保障する地方自治の本旨に反するとして、非課税措置を定めた地方税法そのものが違憲という立場から国を相手取って行政訴訟を起こしております。このように歳入面で国の政策によって地方税が減収を余儀なくされるというようなことは、われわれとしては許されるべきではない。このことは地方交付税についてもまた同様であると思います。国の政策によって法人税や所得税の減免を伴う地方交付税へのはね返りの現象は、昭和四十八年、四十九年度では一体どのくらいになっておるのでございましょうか、また五十年度の減収見込み額はどのくらいになるのでございましょうか。  その前に、これは政務次官にお尋ねいたしますが、この違憲という問題は非常にショッキングであり強烈でございますが、こういった憲法に違うということはどのように理解したらよろしいのでしょうか。これはまず政務次官に、ひとつ大きな立場から御判断いただきたいと思います。
  40. 左藤恵

    左藤政府委員 法律そのものが憲法に違反するかどうかということについての最終的な判断は、もちろん裁判所がなさることであるわけでございます。確かにそういった意味における政治的な効果といいますか、政治的な配慮というものもそこに出てくるわけでございますけれども、やはりそうした問題について法律の段階におきましてわれわれとしてはそれが違憲でないという判断で国会に提出し、国会で成立した法律であるわけでありますから、その判断は最終的には裁判所でなさるといたしましても、その段階におきましては少なくとも現行法として憲法違反でないという立場から行政を進めていくのが至当だろうと私は思います。もちろん最終的に違憲の判決があれば、当然、法律そのものが問題になってくる、考え合わせなければならない、こういうふうに考えます。
  41. 名本公洲

    ○名本説明員 租税特別措置法によりまして所得税、法人税が減免されました場合に、当然、交付税にはその三二%分が影響してくるわけでございます。その数字でございますけれども、ただいまちょっと手元に持っておりませんので、後ほどお手元にお届けしたいと思います。
  42. 小川新一郎

    小川(新)委員 この出ているものでちょっと申し上げますと、昭和四十八年度の試算によりますと法人税については政府の発表による二千二百七十九億円、ここまではいいんですけれども、それに加えて私たちが議論したいのは、貸し倒れ引当金、退職給与引当金、交際費、寄付金、事業税の損金算入等合計一兆七千九百六十九億円、所得税につきましては、政府発表によるものは、四千五十四億に加えて利子所得の特例、配当所得の特例、土地譲渡の特例等合計一兆九千百六十四億減免されております。法人税、所得税の減免は総計三兆七千百三十三億。この三二%相当額、つまり一兆一千八百八十三億円、地方交付税が強制的に減額されている、こう私たちは物を考えております。特に会社は収益課税方式でございますので、こういったいろいろな減免措置によって会社が赤字になった場合には、法人住民税は基本料金しか納めなくていいというような問題さえも出てまいります。いま私が言っているのは、交付税に算定さるべき金がこのような減免措置によって、いただけるお金がいただけない。先ほど申しました違憲の疑いがあるという福岡県大牟田市の例を引き合いに出したわけでございます。これについていかがでございましょうか。
  43. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 お答えいたします。  いま先生のおっしゃいました租税特別措置によりまして法人税あるいは所得税が減額されております金額につきましては、われわれの方と内容のとり方、考え方について、これはまた別の機会に御説明あるいはいろいろお話し申し上げたいと思いますが、私の方は若干違った数字を持っておりますので、その点は保留させていただきたいと考えております。  それから租税特別措置は、国の政策といたしまして必要に応じ毎年度見直しをしつつ必要最小限度のものに限り行っている措置でございますので、地方といたしましても、その点につきましてこれに沿って政策をとっていただくということにつきましては、場合によってはやむを得ないものがあるかと考えております。
  44. 小川新一郎

    小川(新)委員 私がこの問題を出したのも、先ほどの行財政の根本的改革、洗い直し、チェック、点検という中で――これは、全部いますぐということはできないでしょうね。でありますが、われわれの物の考え方と政府の産業優先という考え方、高度経済成長をしていかなけ日本の国の政策がもたないんだ、経済を成長させることが日本の国益になるんだ、だからこの経済を成長させるために企業を守っていくんだという租税特別措置という物の考え方から、要するに国民総生産を抑えることは、世界の資源、ナショナルグローバルの物の考え方の中で当然必要である、また公害の問題や人間環境破壊という問題につながってくる、七〇年代後半から八〇年代の問題は、エネルギー問題と食糧問題と人口問題だ、こういった世界の大きな観点に立って、わが国が好むと好まざるとによらず七〇年代の現在、後半にかけて政治が大きく転換をしていくときに、いつまでも、これは必要なんだ必要なんだというような物の発想の仕方が、先ほどから何回も私が指摘しているように、私たちの法人に対するいまの租税特別措置の物の考え方、これさえ改めていくならば、こういう経済低成長部門におけるところの地方公共団体財源保留にこれだけの金が浮いてくるではないか。これは要するに企業も犠牲を強いられると同時に、地方公共団体の住民の行政サービスにこたえる問題としてここまでやることは過酷なのであるかどうか。私としてはいまの財政問題を論ずるに当たって、特に地方交付税法改正に当たってその所要の財源を獲得するための一つの手段としてこういうことを聞いたわけなんです。これは政務次官、どうでしょうか。私がいま言ったような問題は、自治省としても大蔵省としても、これもまたいつまでも制度調査会の答申を待たなければならないというような問題であるかどうかですね。これも大きな問題なんですけれども、いま言ったようにぼくが言わんとする問題はよくおわかりだと思うのです。
  45. 左藤恵

    左藤政府委員 そうしたそれぞれの時代におきますいろいろな必要性というものをやはり一つずつ客観的に検討いたしまして、その段階で改めていくべきものは国全体の経済あるいはまた、政治の中で考えて改めていく必要があるわけでありまして、いま言われたような形でたとえば根本的な検討をいたしましても、それを一挙に改めるということは政治的には非常にむずかしいんじゃないか。現実問題として、地に足がついた形で改めるべきものは改めていくべきものではないか、このように考えております。
  46. 小川新一郎

    小川(新)委員 その全部ということを言ってませんでしょうけれども、特定企業に対する電気ガス税の非課税措置は、地方公共団体の課税権を侵害し、憲法九十二条の保障する地方自治の本旨に反する、これは相当議論をするところがあると思いますが、福岡県の大牟田市が行政裁判を起こしておるわけでございますね。こういうように時代の流れというものは、いままで想像もし得なかったような考え方を地方公共団体が正当化でき得るような客観的情勢に変革しつつある。また国の政策もそれに向かって進んでいくときでありますので、私はこういった議論をいま出したわけでございます。これに対しても非常にあいまいもこなお答えになってしまいますが、こういう問題は、先ほど申し上げました総理大臣のお話にあります高度経済成長政策の制度、慣行の見直しが必要であるという点に合致すると私は思っております。こういう点も御検討の段階に入っておりますので、どうかひとつよろしくお願いしたい。  次に、不交付団体に対する財源調整についてでございますが、東京都などの地方交付税の不交付団体に対する財源調整措置による締めつけはやめるべきではないかと思うのですが、たとえは東京都の場合、富裕団体であるとして国から財源調整措置という名目で削減されている財源は、一体いまどのくらいの額になっておるのでございますか。これは今回も選挙の争点になって、街頭ではお互いに言いたいことを言い合った。正確な数字が出ておりませんので、都民から正確な数字の要求が出ております。お願いしたいと思います。
  47. 松浦功

    松浦政府委員 ちょっと手持ちの資料がラフでございますので、若干の食い違いがあるかもしれません。その点お許し願いたいと思いますが、道路譲与税と義務教育国庫負担金、これとで合わせて四十八年度の決算で約百五億という数字になっております。
  48. 小川新一郎

    小川(新)委員 ちなみにちょっと御参考のために申し上げておきます。私の方の数字が違っていたら後ほど御指摘いただいて結構でございますが、昭和二十九年度以来東京都の受けた財源調整額は、法人事業税とたばこ消費税、地方道路譲与税、石油ガス譲与税、入場譲与税、国有提供施設等所在市町村助成交付金について合計で二千六百八十九億二千百万、四十八年度決算見込み額で三百十二億、四十九年度補正後の予算で三百五十九億で、ここで上がっております。五十年度当初見込みで四百四十二億、年々増加しているわけでございますので、私はこの都の人件費の問題、これは確かに松浦さんが御指摘になったような問題も多々あり、洗い直しをしなければならぬ問題もございますでしょうが、こういった問題もまた一面にあるということで、ひとつ何らかの処置というものを講ぜられないのだろうかどうか。これは私は物事を非常にやさしく言っているのでございますが、自治労あたりの意見というものは非常に強硬でございますから、こういう点はいかがでございましょうか。
  49. 松浦功

    松浦政府委員 数字が私どものと大分単位が違うようでございますが、全く見解の相違から起こっている問題がその中に一つ入っております。これは法人事業税でございます。分割の仕方を制限をしておるというふうに東京都はお受け取りになり、うちの方は全くそんな考え方は持っておらない、見解の相違がございます。私どもはっきり財政措置の制限という形は現在の制度のもとでは道路譲与税そして義務教育の国庫負担金である、それでございますと百数十億、こういうことになろうかと思うのでございます。  いずれにいたしましても、現在まだ東京都は相当の超過額がございます。需要の見方にいたしましても、ほかのところとは違って非常に高目に見ておる、こういうことから考えますと、現在の制度を直ちに廃止するということは非常にむずかしい問題であろうかというふうに私ども考えます。特にこの制度自治省所管の――義務教育の問題については自治省所管ではございませんから。道路譲与税は私の方で配分をいたしております。そういう各省とのまたがる問題でもございます。結論的には大蔵省さんとのやりとりも非常にございますし、現在の段階では私ども直ちにこういう制度を廃止しようという気持ちは持ち合わせておりません。
  50. 小川新一郎

    小川(新)委員 よくわかりました。その点について、私どもも一遍この東京都の物の考え方と国の考え方の相違点について明確にひとつ対比表をつくっていただいて、われわれも大いに勉強したいと思いますし、私は何も一方的に物を言う性格でございませんので、皆さんの御意見も聞いて改善すべき点は改善しなきゃならぬ資料にしたいと思いますので、でき得るならば御足労でございますが、ひとつおつくりをいただきたいと思います。  二番目には、二十三区の特別区の交付税交付基準額は四十五年度五百二十一億、四十六年度五百七十一億、四十七年度四百三十六億、四十八年度で四百四十五億円であります。本来なら交付税がこれだけ交付されるはずでありますが、二十三区と東京都の財政が合算されているため交付税はゼロ査定となっておりますが、先日の統一地方選挙では地方自治法の改正によって区長の公選制が復活し、二十三区は普通地方公共団体並みになってまいりました。このようなときに肝心の財政問題は依然としてそのままの状態でございますが、このような交付税算定上の特例は、区長公選というような制度の上で大きく変わってきた現在、改正すべきであるのか、またでき得ないのであるのか、その辺のところ御見解をお願いしたいと思います。
  51. 松浦功

    松浦政府委員 公選になりまして、地方公共団体としての性格が区についてはっきりしてきた、なるほどそれは一つの制度改正のきっかけになる問題であろうかと私も思います。むしろいま御質問の問題につきましては、東京都と特別区の間における事務、この関係をながめました場合に、分離して計算するということは技術上困難なのだ、御承知のように普通の市でございましたら市町村民税は全部取るわけでございます。東京都の場合には消防とか清掃とかいうようなものが全部都に行っておりますために、特定の税収入についてだけ御承知のように区が徴収する、こういう形になっておりますので、いわゆる交付制度には、これをばらばらにするというには非常になじみにくい問題がございます。それのみならず、ばらばらにいたしました場合には、東京都の方が大きな超過財源になって、区の方がどういう計算をしておられるか存じませんが、区の方には交付税が行くという形になって、総額が一定でございますれは区の方に五百億の交付税をやれば、これは先生御在住の市のそれぞれの交付税が減ってくるという結果が出てくるわけであります。両方差し引きをいたしましてもまだ相当の超過額があるのに、ほかの団体にまで影響が及ぶような形をとることが全国地方団体にとって公平であるのかないのかという問題、さらにはいま申し上げましたような非常に技術的な困難さ、こういったものを考えました場合に、現在の段階でこの制度を廃止することは私どもは適当でないと考えております。
  52. 小川新一郎

    小川(新)委員 私どもその点はよく考えております。東京都のわが公明党の議員が要求しておる東京都の問題と、国政の立場からまた一つの地方交付税というあり方、いま申し上げたような問題については、われわれもある一定の線は画しておりますが、しかしいま言ったような問題はでき得ないということであるならば、でき得るような、そしてまた、さらにいま松浦さんおっしゃったような東京都のいろいろな問題点についての問題が、国の責任における問題とやはり地方公共団体の責任において直さなければならぬ、先ほどから議論しておる問題、こういう問題が明確に言うべきことを言いながら、国が責任をとるべきものはとるということで指導というものは当然なされると思います。私はそういう面で、いまここで具体的に細かい点を指摘はいたしませんが、そういう点においてはわが党の方としてもよくよくもう少し詰めてまいりたいと思います。後ほどまたそういう問題についての御要求があったときには、ひとつ前向きに御検討していただきたいということをここでお願いしておきます。いまここでさしあたってこれということを申し上げるだけの材料はいておりまして、私もそういう点は不勉強でございますのでまだよく指摘はできませんけれども、私ども後でいろいろと調べ上げたところにおいて、直していただくべき点についてはお願いしたいということをこの席をおかりしてお願いしておきます。  地方債の問題でございますけれども、現行の地方債制度についてちょっと申し上げたいのですが、地方債発行の許可権を国が握っていることに対し、地方公共団体が強い不満を持っていることなんです。基本的には地方自治法で「当分の間」とされている許可制度はこの際やめるべきではないか。この見解もまたいろいろとございますでしょうけれども、抜本的改革を要求し、総点検、総チェックをするという総理のお話の中に、この地方債制度についての問題点をこの際明確にしておきたいと思いますが、こういった「当分の間」とする許可制度、こういう問題は一体いつまでお続けになり、今後どうなされるのか、この点についてお願いいたします。
  53. 松浦功

    松浦政府委員 現在の許可制度は、全体の国の資金の流れをきちんとつかむという、さらには弱小の地方公共団体に資金を確保して差し上げたいという、さらには許可制度がないど、地方団体が過大な地方債の発行を行うことによって財政的な破滅に陥るということを防止するためという、三つの理由で設けられておるところでございますが、現在ますますいまの三つの問題は重要性を帯びている問題でございまして、「当分の間」という法律の表現の適否についてはいろいろ御議論があろうかと思いますが、私どもが地方債の許可権というものを地方団体に全面的にゆだねるということについては賛成できかねるというのが現在の状況でございます。
  54. 小川新一郎

    小川(新)委員 それが無理であれは、一定の公債比率までは自由に地方債を出すということはできませんでしょうか。歳出総額に占める償還金、利子などの公債費の一定の比率、一〇%ぐらいまで上げて、そしてその枠内におけるところのフリーな発行というものもできませんですか。
  55. 松浦功

    松浦政府委員 そうなりますと、結論的に一々地方公共団体から公債比率をとらないと、それに違反しているかどうかわからないというような問題も起きまして、非常に問題があろうかと思います。したがって、私どもといたしましては、いまの許可制度を存続するということを前提に、なお起債の許可制度の運用の簡素化、それから私ども決して不公平になっておらないと思いますけれども、地方公共団体の実情、要求に沿った形での起債の許可ということを徹底すれば、先生のおっしゃられたのと同じことになると私は思っております。
  56. 小川新一郎

    小川(新)委員 そういうことはやはり一つ一つ一市町村ごとに起債について自治省が事業ごとに審査し許可するといういまの姿勢を堅持していく。私はこういった問題はある程度県に任せてもいいのではないかと思うのであります。国が余りにも一件、一事業ごとに起債についてチェックをするということは、やはり地方自治体の財政の萎縮性という問題についても、精神的な圧力という問題から言っても、またいま申し上げたような、いろいろ私が要求したような問題が解決できないとするならば、少なくとも県に任せてあげたらいいのではないか。多少の配慮は、そういう点でおまけをしてあげてもいいのではないかと思います。
  57. 松浦功

    松浦政府委員 全くお説のとおりでございまして、私ども、できる限り県にお任せをするということをモットーにしてまいりたいと思います。ただ、庁舎でございますとか、あるいは大きな体育館というようなものは一定の枠がございます。細かな枠を県に振りましてもどうにもならない。ある県では庁舎計画はことしはない。ところが埼玉県では三つも要望がある。こういう場合の調整は、これは県知事にはお任せできません。そういう種類のものだけに自治省が市町村の分に関与するのはとどめて、できるだけ地方団体の長、知事さんにお任せをするというたてまえを守っていくように努力いたしたいと思います。
  58. 小川新一郎

    小川(新)委員 よろしくお願いします。  地方債の中で資金運用部資金などの政府資金で消化されるものと民間資金によるものとがありますが、いま一番困っておりますのは、地元金融機関が引き受ける縁故債をどのようにして県や自治体が消化するかということで頭を痛めております。私の住んでおります埼玉県の例を申し上げますと、四十九年度当初の縁故債引き受け要請額四百九十六億円に対して、地元銀行グループのほか県内に進出した都市銀行、信託銀行グループを加えた協調融資団をつくって、やっと二百五十億円までこなしたわけでございます。四百九十六億の約半分程度しかこなし得なかった。そこで、現在公営企業債の引き受けだけに限られている公営企業金融公庫を発展的に解消し、地方公共団体の地方債を一手に引き受けることのできる地方公共団体金融公庫というようなものを強く望んでいるということが全国知事会などで議題にいつものっておりますが、こういう問題もひとつ大幅に、いま申し上げました地方債全体の理念の中からもつくってもよろしいんではないかと思いますが、これはいかがでございますか。
  59. 松浦功

    松浦政府委員 中央金庫構想は、自治省といたしましてはもう二十数年来の悲願でございます。きのうも委員のお尋ねにお答え申し上げたところでございますが、この問題については、大きな金融機関ができるということについての金融業界の中の摩擦の問題あるいは政府資金の投入の問題等、基本的な問題に属する問題がございまして、なかなか関係各省との折衝が実らなかったというのがこれまでの実情でございます。考え方といたしましては、今後も、先生がおっしゃられましたように、地方団体ができるだけ容易に低利の良質な資金を借り得るように、こういう金庫ができて運用されることが望ましいということについては全く同感でございます。したがって、当省としてはこれの実現に向かって努力はいたしますけれども、ただ簡単に努力をするという一言で片づけられる問題ではないほど、関係方面に非常に難点があるということだけは御理解をいただいておきたいと思います。
  60. 小川新一郎

    小川(新)委員 もう一つお尋ねいたします。  宅地開発公団法の問題で、この前連合審査がございまして、人口急増、スプロールという問題に拍車をかけるという点においては非常に大きな問題であると同時に、住宅公団以上の規模、五百ヘクタールでございますかの規模以上の大団地をつくるということは、その大団地を受け入れるところの地方公共団体財源の問題やら、また給水その他の生活関連公共施設におけるところの超過負担の問題、こういった問題を考えなければ、おいそれとこの公団法が成立してそれを実施するわけにはまいらないということで議論いたしましたが、大規模団地による急激な人口増加に伴う財政需要の激増に対処するためには、起債の十年間据え置きの利子補給だけでなく、同和対策特別措置法で定められているように、起債の元利償還のうち八〇%を交付税で補てんするとか、あるいは過疎法で定められておりますように、元利償還のうちの辺地債の八〇%、過疎債の七〇%を交付税で補てんするような強力な財政援助を、この大規模団地の急激人口増加に伴う財政需要の起債に対する応援という問題をぜひお考えいただかなければ、この法律ができましても地方公共団体の貧困な財源の中で受け入れ体制はまた拒否されるんではないか。この問題は連合審査のときにも申し上げましたが、現在も五省協定等によって住宅公団の受け入れについてはそれぞれの立場から検討されておりますが、いまだに首都圏内における県は受け入れ体制については難色を示しておる。こういった住宅公団以上の規模の大きな宅地開発公団の問題について、何らかのかっこうで財源補てん措置というものをこの際公団法の実施に伴って並列して行わなければならないんではないかという考え方からお尋ねするわけでございます。いかがでございましょうか。
  61. 松浦功

    松浦政府委員 ともかく宅開法が施行されまして、大規模な団地がつくられました場合に、地方公共団体の負担分について十年据え置き、無利子、こういう形でございますので、その間に、当初に起債をどのくらい認めるかということについてはまだ詰めをしておりませんが、非常に大きな部分が裏負担として立てかえられるということになりますと、地方公共団体のそれらの負担は十年後の問題になってまいるわけでございます。十年後となりますと日本の状況がどうなっているかわかりませんし、できました団地がどういう形で生成発展をしていくか、やはりそれらの事情をよくにらみ合わせて、その時点の財政状況を勘案して、地方団体の運営が困らないようにしていくということを配慮することが必要だと思います。現在直ちに、具体的な事例なしにどういう形でやるかということを決めますと、あるいは財源措置が多過ぎるというようなことになっても困りますし、また、一度決めてしまいますと、なかなか少な過ぎた場合に直すのが大変だという事態もございます。少なくとも十年据え置き、無利子というような制度はこれまでになかった制度で、私はきわめて前進的な制度だと思っております。この制度の活用によって法律目的が達せられるように、側面的に地方財政の問題は私どもが責任を持つということではなかろうかというふうに考えております。
  62. 小川新一郎

    小川(新)委員 そういうことで、十年据え置きということは非常に画期的なことであるということでございますが、急激な人口増加にあえいでおります首都圏などの自治体は、現実はどうやってそういう問題を解決しているかと申しますと、宅地やマンションなどの造成業者から独自の開発負担金や土地の提供を求め、財源不足を補っているのが事実でございますね。しかし、これは地方財政法第二十七条の四の「市町村は、法令の規定に基づき当該市町村の負担に属するものとされている経費で政令で定めるものについて、住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、その負担を転嫁してはならない。」とあることと、その政令とは、施行令第十六条の三の二号で「市町村立の小学校及び中学校の建物の維持及び修繕に要する経費」とあることから、法の趣旨から言って好ましいことではないと認められておりますが、政府は自治体の窮余の一策としての開発負担金等についてほっかむりをしないで、実態をよく検討して、全国知事会も指摘しておるように、負担金を制度化すべきである、逆に言えば。もしくは、先ほど申し上げたような問題において、十年間の償還の据え置き、利子の補給だけでなくて、いま言ったような制度化の問題もあわせて、地方公共団体が現実にいまやられており、また財政対策についての問題について、この際、何らかの御見解をいただければありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
  63. 松浦功

    松浦政府委員 この前も先生の御質問お答えをしたような記憶がございますが、法令の根拠なしにそういった種類の分担金を取ることが適当であるとは私ども考えておりません。ただ、実際の問題としては何らかの収入を得ないと困るであろうということは理解できますので、きちんとした制度をつくることは望ましいと思っておりますというお答えをしたように記憶をいたしております。ただ、現実の問題としては、団体ごとに取っておる金に非常にでこぼこがございますので、どこに基準を置くべきかということに非常に決定を見る困難があることと、関係各省にいろいろな問題がございまして、なかなか詰めができないというのが実情でございます。まことにのろのろとしたお答えで申しわけございませんが、なおその問題については先生の御発言の御趣旨を体しまして努力を重ねてまいりたい、こう思っております。
  64. 小川新一郎

    小川(新)委員 好ましくないことはいまもお認めになっているわけでございまして、結局人口急増市町村が、好ましいとか好ましくないとかいう問題よりも、現実の問題としてはそうしていかなければ人口急増、過密対策をやっていけないのだということで、いろいろと今回社会党さんからも修正案が出るわけでございますね。でありますから、政府としては、やはりそういう問題が議会の方から出る前に、そういう点を御配慮いただかなければ、人口急増という問題が高度経済成長政策という一つの政策の転換、私は誤りとはいまここで申し上げたくないのですけれども、誤りであるという前提に立ては責任をとらざるを得なくなるし、もしもそれを転換するという言葉に置きかえるならば、そういった問題を避けて通るというわけにはいかないということで、二度この問題を提起したわけでございます。  政務次官、いまのお話をお聞きになっておりましてのお考えをお聞きして、この問題は打ちとめておきたいと思います。
  65. 左藤恵

    左藤政府委員 確かに人口急増市町村の財政措置につきましていろいろと問題点がございます。現行の制度だけでは不十分な点もずいぶんあろうと思いますので、この点につきましては、それを制度化するかどうかということについてはいろいろな財政的な裏打ちの問題もございますので、一挙にはなかなかむずかしいかもわかりませんけれども、これは十分検討していかなければならない問題だ、このように考えております。
  66. 小川新一郎

    小川(新)委員 余りぱっとしない答弁で、いつも私は情けないのですけれども、私の言っていることはよくおわかりいただけますね。――じゃ、大きな声を出しませんから、その点だけひとつおくみ取りください。  次に、国民健康保険制度について一点お尋ねしておきたい。  その前に、先ほどの地方財政計画、四十八年の地方財政計画と実際の地方自治体決算額との差を分析していろいろな問題が、この前のずっと続いた御質問がございますから、その問題についてとやかく申し上げませんが、歳出面では、計画より歳出がふえているものは給与関係経費兆円、それから一般行政経費九千四百億円、補助事業費五千五百億円、公営企業繰出金二千五百億円、この差が地方財政硬直化の原因と考えられているわけでございまして、いまそれがどうのこうの、私はここでは言いませんが、この中で一般行政経費と補助事業費が多いのは、超過負担が大きな原因になっております。そこで、五十年度の地方財政計画だけを見ても、超過負担で問題になっておりますが、五十年度予算案の中に文部省から言ってきているのは、小中学校校舎を――きょう文部省来ていますか。――来てなければ結構ですが、五十年度予算で査定面積百九十七万七千平米、これに対する六団体による超過負担が平米当たり九千円、合計百七十七億九千三百万円、幼稚園につきましては、これが百七十万平米、超過負担が一平方メートル当たり二万五千円、こういうふうに、いま計算しても、五十年度で何も決算をやらなくともいまのままでいっても超過負担が出てしまいます。特に四十九年度現在の人口急増地域では建てないわけにはいかない、超過負担を恐れておって建てないわけにはまいりません。四十九年度現在仮設校舎が人口急増地帯にどれくらいあるかと申しますと、小学校三千二百七十教室、中学校八百五十教室、合計四千百二十教室もあります。このほかいろいろございますが、こういった問題はもうわかり切った問題なんでございますね。これはもう解決しなければなりません。どうしても赤字になるということがわかっておる、五十年度でも赤字になるということが超過負担でわかっております。こういう問題をひとつ頭の中にお入れになりながらお聞きしていただきたいのでございますが、一般行政費九千四百億円の内訳でちょっと質問しますと、国庫補助負担金にかかわる地方超過負担の解消についてでございますが、超過負担の解消措置は一部の事業に限定されているほか、常に後追い的となっております。このため国、地方を通ずる財政秩序を乱し、相互の不信感さえ生じている超過負担になっておりますが、国庫補助負担事業全般について見直しを行うべきであると思います。昭和五十年度においてはこれをどのような処置をとったのか、まずお尋ねいたしますが、国は超過負担として単価差しか対象としておりませんし、数量差、対象差をも含めて超過負担とする地方自治体との間には約二倍以上の開きが生じております。従来のような超過負担の実態調査を国が一方的に行うのではなく、地方六団体全国知事会等、こういった問題を含めて、これと同数から成る、政府代表及び学識経験者から成る補助金等適正化調査会を設置して、超過負担の完全解消を図る考えはないかというのが私の聞きたい意図でございます。もうこうやって五十年度を見ても、超過負担が出ることはわかっております。それをいまどうだどうだと責め立ててみても、対策はもうわかっておりますので、単価差しか対象としておらないようではどうしようもない。でありますから、いま私が申し上げました完全解消を図るための補助金等適正化調査会を設置して、地方公共団体と国とのジレンマ並びに誤解、また対立的抗争、こういう問題を防ぐためのあれをやったらどうかという私の考えであります。
  67. 松浦功

    松浦政府委員 超過負担につきましては、政府の責任において解決するというのが基本的な考え方でございますので、ただいま六団体にその種の協議会ができております。御要望がございますれば、当省としてもその会議に出席をし、地方団体の意見も聞き、また当省の考えているところについての御理解も求めるという態度でこの問題の解決に当たりたいと思っております。
  68. 小川新一郎

    小川(新)委員 それはひとつ、重大な問題として提起されつつある問題ですから、いま言ったような私の案はすぐ通らないにしても、こういった問題を本気になって考えていかなければならない段階に、次官、来ております。これはよろしくお願いいたしますね。  そこで、国民健康保険制度についてちょっとお尋ねいたしておきますが、これは公営企業繰出金の昭和四十八年度地方財政計画の赤字の分析をした中で、公営企業繰出金の二千五百億円、国が認めていないもの、実際には、赤字で苦しいため一般会計から公営企業にてこ入れされているもの、医療費のアップや老人医療無料化による国民健康保険会計の赤字補てんに使われているものが含まれているわけでございますが、この中で具体的にお尋ねいたしますと、健康保険制度の金額を一〇〇といたしますと、その四〇%、これは四十九年度について申し上げますと、当初六千三百二十六億、補正後は六千八百七十三億、これは四〇%国が見ているわけです。次に、三〇%が市町村負担、そして被保険者、国民が三〇%、これで一〇〇%です。そして、その出た赤字補てんについて国が全体の五%相当額の七百六十四億、補正後八百二十五億でございますが、財政調整交付金としてこれを出しているわけです。そしてさらに三百五十億臨時財政調整交付金として出しているわけです。補正後にさらに百六十億特別医療給付費補助金、これは老人医療として百六十億、これだけが補てんされているわけでございますが、ここで申し上げたいのは、その五十年度の医療給付の補助金の国の四〇%分、先ほど申し上げました一〇〇%のところの四〇%分をアップできませんでしょうか。これが一点。  二点目は、その出た赤字の差額分についての国の臨時財政調整交付金についてでございますが、これは五%相当額の財政調整交付金率を改めて一〇%ぐらいに引き上げていただければ、臨時財政調整交付金制度は要らないと私は思います。財政調整交付金の方の五%相当額分を一〇%ぐらいに上げられないでしょうか。  この二点お尋ねしたいと思うのでございますが、こういう問題は、昭和五十年度の健康保険制度改正の中に、また五十一年度以降に盛り込むお考えがございますでしょうか、この点についてお尋ねしたいと思うのです。  そういたしますと、市町村の負担分がたとえ三割であっても、また被保険者の三〇%の住民の負担についても相当分助かると私は思っておりますので、この点についてお尋ねしておきたいと思います。
  69. 松浦功

    松浦政府委員 当省といたしましては、国保財政の実態を勘案いたしまして、四〇%部分の率を引き上げてほしいということをも含めて厚生省にいろいろお願いをいたす、これ以上のことは当省としてはできませんので、具体的な内容をここでお答えをするというわけにはまいりません。
  70. 小川新一郎

    小川(新)委員 これは大蔵省の方ではどうでしょうかね。
  71. 名本公洲

    ○名本説明員 この点につきましては、実は私どもの所管ではございませんので、確たることを申し上げる立場にございませんですけれども、担当の方からいろいろ漏れ聞いておりますところによりますと、国民健康保険につきましては、御承知のようにすでに国といたしましては一兆円余のお金をつぎ込んでおるわけでございますが、先生おっしゃいましたように臨時財政調整交付金、そのほかに五十年度といたしましてはさらに百億円の特別のお金も設けておるわけでございます。そういうふうにしてまいりました結果、いわゆる被保険者が負担する負担金の部分、その割合というものも、他の健康保険の分野と比べまして必ずしも高いものではない、むしろ低くなっておるという事態もあるようでございます。この国民健康保険が非常に大きな赤字を抱えてまいっておりますことは事実でございますけれども、その根幹といたしましては、たとえば先生先ほどおっしゃいましたように、老人医療の問題あるいは高度医療に対する被保険者負担が三万円ということで抑えられておりますが、その問題、あるいは高齢者、特に在職しておりました者が退職した後国民健康保険に入ってくるというような問題、そういうような医療保険全般からする非常に大きな問題が根底にあるようでございます。大蔵省の方といたしましては、厚生省の方にもいろいろ検討をお願いしておると聞いておりますけれども、そういう幅広い問題の一環としてこの問題を取り上げ検討してまいるという現在ステータスでいるというふうに聞いております。
  72. 小川新一郎

    小川(新)委員 私の約束の時間が来ましたので、これでやめさしていただきますが、いまいろいろと思いついたことを細切れ的に質問いたしまして、質問の内容が、私の質問が下手なのでよくおわかりにならないようなところもございましたようでございますけれども、いずれにいたしましても、先ほど私冒頭に申し上げました総理大臣の施政方針演説の中で言われております地方公共団体の行財政の問題については、総理が非常に明快に野党と同じようなことを言っているわけでございますから、これはノーアクション、トーキングオンリーにならないように、ひとつNATO大臣にならないようにお願いしておきたいのでございます。これは本来だったら三木内閣の福田自治大臣にお願いするところでございますが、福田さんがきょうは公選法の方に行っていらっしゃるということで左藤次官がお見えになっておられますので、ここで議論になっております問題、やはり先ほど申しましたわが国の政治経済の転換期に立つ一つ一つの問題点の浮き彫りの中で、たとえ質問は拙劣であっても、意図するところをひとつ十二分におくみ取りいただきたいと思います。わが党が一番重んじております住民福祉というものは地方公共団体が先鞭をつけているというような考え、これが行政の先取りであるとか人件費の高騰がすべての財政硬直の悪であるがごとき問題だけでないということを、もう明快に先ほどもお答えをいただきましたからあえてここでがあがあ言いません。松浦財政局長も十二分にお考えになっておられることでありますので、大蔵省にもまた御配慮いただいて、次官から、私の質問で実のある問題、取り入れるべき問題を取り入れていただきたい、こう最後にお願いを申し上げます。  まことに長時間質問をさせていただきまして、本当にありがとうございました。
  73. 大西正男

    大西委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十二分休憩      ――――◇―――――     午後一時八分開議
  74. 大西正男

    大西委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出に懸係る他方交付税去の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。佐藤敬治君。
  75. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 大蔵省の方、お忙しいでしょうから先に質問して帰っていただきます。  筑波学園都市がいま進行しておりますが、それに移っていくいろいろな学校だとか試験場みたいなものがたくさんありますね。これについて東京都初め各区、それから神奈川県、千葉県、こういうところでそういう移転した跡地の問題についていろいろな要望を大蔵省等に申し上げてあるわけです。これがかなり大きな問題だと思います。特に過密の東京都やその近辺の県等では非常に大きな問題になると思います。大体これは国土庁か何か全体の計画をやっておるようですけれども、国土庁の方、計画はどういうふうになっているのか、ちょっと教えていただきたい。
  76. 森卓也

    ○森(卓)説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘の筑波研究学園都市へ移転します機関の跡地でございますが、これはいま御指摘のとおり、東京教育大学あるいは千葉市にございます畜産試験場とかあるいは神奈川県平塚市の果樹試験場等、大体二十七機関を予定いたしておりまして、その跡地は面積にいたしまして三百四十ヘクタールでございます。その跡地の処理につきましては、御指摘のとおり非常に問題が重要でございますので、大蔵省といたしましては国有財産中央審議会にその審議をお願いいたしておりまして、審議会では筑波移転跡地小委員会というのを設けまして、ここで専門家の先生方の御審議を願っておりまして、地方公共団体の御意見等も十分その席において伺っておるところでございます。
  77. 宮沢美智雄

    ○宮沢説明員 ただいま大蔵省の方から御説明ございましたように、大蔵省におきまして国有財産中央審議会に諮問してその利用方針を検討中ということでございますが、国土庁といたしましてもこの移転跡地が東京の過密問題ですとかあるいは環境の整備に役立つように利用されることを期待しておりまして、関係地方公共団体等の意向を踏まえまして、公園緑地あるいは防災上の見地から必要な市街地の再開発の関連用地等ができるだけ確保されるように、関係省庁と協議を進めたいというふうに考えております。
  78. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 これはまだ計画が進行してないので、大分おくれているようですね。しかし私は、これはおくれているのはもっけの幸いだと思うのです。どんどん進行していますと、これは非常にでたらめに処分される危険性がある。特にこれは特別会計で、売った金で向こうを建てるようになっているでしょう。だから金がないとなると、たちまちこれを切り売りでもして簡単に売って、そして建てるということになったら私は大変だと思うのですね。こういう過密の市街地にこういうような空地というものは二度と出てこない。だからこそ非常に慎重に計画を立てて使用する必要がある。面積が非常に大きいのですね。もうほとんどが何千坪、何万坪というような大面積の土地が何十カ所もあるわけですね。ですから私は、単に住宅がないから住宅を建てるというのじゃなくて、できるだけ空地あるいは緑地、こういうようなものに利用するように、空地の少ない東京都やその近辺、主都圏の過密を逃れるためにできるだけそういうものに使っていくべきである、こういうふうに考えます。  ところがいまこれで非常に問題になっておるのは、さっき言ったように、特別会計をつくって、売ってその金で向こうを建てるということになっている。ところがいまこの土地を買えるだけの金が自治体にない。これはまあどこでも同じですけれども、四月の十九日の記事ですけれども、これにも出ておりますが、自治体はもう全然金がない、何ともならない。指をくわえて見ていなければならない。かつおぶしを目にしながら何ともならない心境だと書いてありますが、全くそのとおりだと思うのです。それで単に東京都対大蔵省の問題じゃなくて国土計画的な大きな見地からこれを考えていく必要がある、こういうふうに思うのです。  そこで、単に財源がないからこれを切り売りしなければいかぬというような状態にならないように、政府全体でもってこれをよく協議して慎重に処置していくという、こういう態度で臨んでいただきたいと思うのです。特に都市の指導監督機関である自治省なんかも、自分の問題じゃないという態度じゃなくて、ひとつじっくり腰を据えて考えていただきたいと思いますが、各省庁の御意見を。
  79. 森卓也

    ○森(卓)説明員 ただいま先生からお話しございましたように、この跡地の処分問題というのは先ほど申し上げましたように大変重要な問題でありますので、審議会に付議いたしまして、専門家の意見も聞いておりますと同時に、地方公共団体の意見も聞き、またいま御指摘のように関係各省庁とも十分協議いたしまして、慎重に、そしてかつ有効に利用いたしたいというふうに考えております。
  80. 宮沢美智雄

    ○宮沢説明員 国土庁といたしましても、ただいま御指摘の線に沿いまして、大蔵省初め関係庁と十分協議してまいりたいと存じております。
  81. 松浦功

    松浦政府委員 先生のお考えに全く同感でございます。ただ当省といたしましては、地方団体がどうしてもその土地を入手したいということで国との話がついた場合、これは無償であれば結構でございます。地方団体でございますから、できるだけ安い値段で譲っていただきたいとは思っておりますけれども、金がないという問題がただいま御指摘がございました。本当に空地を確保する、あるいは避難緑地というような形にする、それぞれ合理的な理由があって地方団体が国からこれを買い取らなければならないという事態になりました場合の財源は、当省としては地方債をもって責任をもって確保いたしたい、こういう方針でおります。
  82. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 いま松浦局長から非常にいいお話がありました。大蔵省にもお願いしておきたいのですけれども、ぜひひとつ自治省とも相談いたしまして、これに対して金がないからどうにもならぬというようなことにならないように、ひとつ慎重にしていただきたい。  それからもう一つ、大蔵省の方にこれはちょっとお伺いしますが、千葉県の場合に、農林省の畜産試験場がありますね。これは大正五年にここに無償で寄付しているのですね。千葉県では、これを移転するときは、使用目的にあれするときは無償で返してもらいたい、こういう希望を持っているようですが、どうですか。
  83. 森卓也

    ○森(卓)説明員 私ども、畜産試験場の具体的な例についてはまだつまびらかにいたしませんけれども、やはり国有財産法の規定に従いまして処理をするということになろうかと存じます。
  84. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 国有財産法がどうなっているか、私もつまびらかにしませんけれども、取るときは無償で取って、行くときは売っていくというのでは少しおかしいと思うのですよ。時価の差が余りにあれば値段を何とかするとか、これはやはり考慮してやるべきだと思いますが、それをひとつ十分考慮して考えていただきたい。国土庁と大蔵省の方、もういいです。  次は林さんにお伺いしたいのですが、この前の私どもの党の小川省吾委員が御質問しました、例の地方公務員の給与が高い、それを住民運動によって下げる、こういうような直接請求はどうだというので質問しましたけれども、新聞によりますと、局長の答えはこうなっているのですね。「「”加計町方式”がすべて正しく、これを他の自治体にも及ぼすというわけではないが」と前置きしながらも「同町のケースが間違った自治の運営とは思わない。もともと地方公務員の給与は首長が職員団体の意向も聞いて原案を作成、議会の議決を経て決まるものだ。これが適正なものであるなら、住民の直接請求などは起こりえないはずで、常識の範囲を超えたものであった場合、住民が直接請求を起こすことはあってもいいのではないか」言葉は違うでしょうけれども、こういうふうに答えている。私加計町に実地調査に、現地調査に行きました。そうしていろいろ見てきましたけれども、すさまじい荒廃した状態になっているのですね。住民が押しかけてきて、役場では何ともならないで、そうして職員組合とあれの間に入って、役場の真ん中で住民が監視をしている。こういうふうな何とも言えない、住民と役場の職員と町長がまんじどもえになって争っているというようなことで、私は地方自治体の経験者として、ああいうことはちょっと想像がつかなかったのです。私は、あれを見まして――これは法律的に直接請求なり住民運動というのは許されていると思います。しかし給料を決めたりするということは、やはり本当の責任というものはあくまでも市長だと思います。市長が自分の部下の間にあって熱心に話をすれば、これは決まらないはずはないと思いますよ。しかしあそこへ行って見た源田町長の考え方なり態度なりというものは、余り職員には接触しないで逆に町の中へ出て行って盛んに扇動しておる、こういうきらいがうんとある。特にあの中での発言を記録したものを見ますと、これ以上私が言うと憲法違反になるからあんた方やってくれというようなことを言っているのですね。まさに住民を扇動して、役場に乗り込んでやってくれというニュアンスの発言をしておるのです。私はああいうのを見まして非常に遺憾だと思いました。直接請求というものは法律で許されているかもしれないけれども、それはあくまでも慎重に行使しなければいけないもので、何もかにも住民が出てきてそれに介入すればいいというものでもないと思う。そこのところでこの問題は少し逸脱しているのではないか、こういうふうに思います。局長もこれを調べたと思うけれども局長はどういう感じを持っていますか。単に、法律的に許されたものだからこれでいい、こういうふうな感じを持っていますか。
  85. 林忠雄

    ○林政府委員 現地で起きました事態が、確かに一般的に見て町の平和を乱すというか、異様な対立が激化しているということは、自治体として遺憾なことだというふうに考えます。これに対する評価はいろいろな角度からあると思います。町長が一方的に悪いという主張をする人もあるかと思いますと、町長がそういう行動に出たのはそれより前の職員団体の態度がおかしかったんだ。まあいろいろな評価があると思いますが、私はそれについては今日、直接触れたくございません。そして地方公務員の給与を国家公務員の水準に近づけるというか、地方財政の苦しい折から、そのことについては各地方団体で真剣に取り組んでもらいたいと思っておりますし、そういう指導をし続けてきておりますが、こういう形のことが最もいい方法であるというのは、前にもお断りしたように、そういうことは考えておりませんので、じっくり話し合いをして、それぞれの町村の財政の事情もわかると思いますし、その点、十分に意を尽くして説明をし、話し合いをするということ、これはぜひ必要だと思います。たまたまこういう姿になったことについては、先生と同じように遺憾には思っております。その中身の責任の所在その他については、いまここで申し上げる立場にはないと存じます。
  86. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 私もここで町長がいいとか悪いとか、職員団体がいいとか悪いとか、それを言おうとは思ってないのです。実はこの後に私が言いたいのは、大臣はきょうおりませんけれども、三月二十八日の参議院の予算委員会で大臣がこういうことを言っているのですね。集中審議のときに参議院の安孫子氏が、この新聞そのままを読みますと、「安孫子氏が地方自治の現在のあり方に関連して住民が過剰な要求を持ち出しているのではないかと尋ねたのに対し、自治相は「現在の地方自治が当面の要請にこたえているとは言い切れない」としながらも「個人の権利を重んじるということから、一部の住民パワーが地方行政の障害になっている。全体と個人の関係の道徳的な面が定着していないのが問題だ。この点についての解決が大事だ」と述べ、一部とはしながらも、住民運動が地方行政の障害を生む大きな原因となっている」こういうふうに答弁しているのですね。私はこの二枚の記事を見ましたが、一方では住民運動を、あなたの議論から言うとこれは別に悪いことじゃないのだ、一方では住民運動は悪いことだ、盛んにこういうふうに言っているのです。自分の都合のいいように、たとえばいままでの地方公務員の給与の問題については、地方自治体の財政の窮迫の最大の原因は、むしろあの当時は唯一無比の原因が地方公務員の給与が高いからだというふうにさえ言われてきた。そしてそれを抑えるために職員組合が闘争を起こした。ところが、それを今度逆に抑えるために住民の力を利用して抑えておる。そういう問題が加計町だけではなくてあちこちにたくさんあった。そういう意味では、私どもはそのときそう思っておった。ほとんど皆がそう思っておったのですが、住民運動を逆に宣伝してこれを抑えようとしておる態度に、これは自治省指導しておるのではないか、こういうふうな考えさえ持ちました。あなた方はもちろんそんなことはしないと言うに決まっているけれども、事実上そういう感じを受けました。しかし逆に今度はこっちでは、いろいろな住民パワーの福祉の要求だとかいろいろなものについては、そんなことをするから財政が赤字になるのだとそれを悪者にしている。こういう一貫しない態度というものは非常に便宜主義だと私は思うのですよ。都合のいいときは住民パワーはいいものだ、都合の悪いときは住民パワーは悪いものだ、こういうふうな使い方をどこまでもしていけば、地方自治体のコミュニティーというか連帯の観念というものはなくなってしまって、荒廃した自治体になる、こう思いますよ。この矛盾というものをあなた方はどういうふうに考えておるか。余りに便宜主義に考え過ぎやしないか、こう思いますよ。どうですか。
  87. 林忠雄

    ○林政府委員 ただいまの大臣の答弁は、先生もおっしゃいましたように一部のと確かに断っておると思います。私の方は住民運動そのものを、住民運動であるがゆえにこれは常に正しいとか、あるいは住民運動は常に自治体の行政を妨げている、そういう住民運動一般というものについての価値の評価をした覚えはございません。また現在も考えておりません。住民運動というのは、結局住民がいろいろ自分の要求を行政当局に表明する一つの動きと思いますが、その中身に、非常に正しいというか筋の通った要求である場合と、それから全体の利益を無視したきわめて地域エゴ的な要求である場合といろいろありまして、その住民運動そのものの中で、言ってみればそういう筋の通った正しい要求を掲げた住民運動、これは住民運動としても当然でありましょうし、また価値の高いものである。一方今度は逆に、地域エゴ的な全体の利益を無視した自分勝手な要求を掲げた住民運動、これは住民運動としてはやはりいい運動ではなくて、市町村の行政の妨げになるということもあり得るだろう。恐らくその大臣の答弁は、後者のような場合を指して、こういうものは妨げになると言っただけであって、住民運動そのものを全般的に行政を妨げて悪いものだと言っているのでもなければ、住民運動であるから常にこれを善と考えておるものでもないと思います。そして私ども考え方としては、住民が自分の要求を地方団体にいろいろ表明する、これは地方自治でございます、住民自治でございますから結構なことだと思うのです。そのために運動を起こす、その運動の内容、要求の内容そのものによって、筋の通ったりっぱな住民運動と、ややエゴのまさった間違った住民運動とが実態に即してある、こういうふうに考えております。
  88. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 私は非常にそれはおかしいと思いますよ。これに一部というあれを使っていますけれども、たとえばこの新聞を見ますと一部なんて書いてないのですよ。「住民圧力、行政に支障参院予算委で自治相答弁」と書いてある。これが私は本当だと思う。一部というのは単なるつけ足しで、一部と言わないと、あなたがいま答弁したように後から逃げ道がなくなるから一部と言っておるだけなんですよ。住民運動というものはきのう大臣も答弁しておりましたが、多様性が余りにあり過ぎて財政が追いつけない、だから余りそういうものの言うことを聞いておると赤字になりますよと、きのう答弁しておるのですよ。同じことで、これは住民運動がそういうふうな赤字の大きな原因だ、地方自治を妨害しておるのだ、こういうふうに言っているのです。私はこれが本当だと思うのですよ。いまはあなたは大臣が悪いと言えないからそう言ったのでしょうけれども、ところがあなたの方も、これもまた私おかしいと思うのですよ。あなたがいま説明しておりましたからわかりましたけれども、この二つを比べてみますと明らかに矛盾しておる。一部でもどうでもいいけれども、片っ方は悪いと言う、片っ方はいいと言う、こういう一つのあれが出てきておる。片っ方は自分に都合がいいからいい、片っ方は自分に都合が悪いから悪い、こういうような使い分けをしてあれすると、住民運動というものはあなたの言うように正しい住民運動でなくなる危険性もあると私は思いますよ。こういう問題をどこまでもつくつもりはありません。ただ、偶然この二つの記事を見ましたならは、局長の言われていることと大臣の言われていることが全く逆で、しかもすごく便宜主義的な、こういう感じを受けましたので、あえていまここで一言触れたわけです。これ以上追及しませんから、結構です。  それから、厚生省の方来ておられますか。今度の予算委員会で何か論争が一つあったようですが、例の退職者医療保険制度についてちょっとお伺いします。  大蔵省はことしの二月六日、定年退職後の五年間、従来どおりの保険料でもとの健保組合に残留できる、こういう退職者医療保険制度を実現するという方針を決めたというふうに新聞で報道されていますが、これは本当ですね。それで、厚生省との最終的な協議に入ったというようなことを言われていますが、その交渉はどういうふうになりましたか、ちょっとお聞きしたい。
  89. 吉江恵昭

    ○吉江説明員 お答えいたします。  いわゆる退職者医療につきましては、先生いまおっしゃいましたように、ことしの予算の編成の過程で退職者医療制度というものをつくったらいかがかという提案が大蔵省からなされたわけでございます。そして予算編成の過程では、なかなかいろいろ問題もあるのでもうちょっと検討しようということで、一応予算の編成を終えたわけでございまして、その新聞報道はその後になります。その新聞報道につきましては、私どもはこれは直接関知しないと申しますか、大蔵省の方から出た記事だと思います。  この退職者医療制度については、先生御存じのように、これは数年前からいろいろな方面でいろいろな議論が起きておりまして、私どもはそういう問題意識は持っておった、いまでも持っておるわけでございます。それで予算編成の段階で一部そういういきさつがございましたが、私どもといたしましては、現在社会保険審議会、これは厚生大臣の諮問機関でございますが、そこに構想をお諮りしておるという段階でございます。しかし、先生御存じかもしれませんが、資格要件をどうするとか、あるいは給付期間をどうするとか、財源問題をどうするとか、この退職者医療の問題につきましては検討すべき多くの項目がございますし、それから社会保険審議会というのは使用者、公益、被用者という各側から成っておる審議会でございますが、この審議会でも各側からそれぞれ多岐にわたる意見が出ており、現在その構想がまだ取りまとまっておらないという状態でございます。
  90. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 私はよく大蔵省からこんな考え方が出てきておもしろいなと思ったのですけれども、大蔵省の考え方は、結局定年退職後の医療費の軽減といういわは福祉政策、それから、それに伴っていま私どもがこれから問題にしようとしておる国民健康保険の財政負担をなるべくなくしていく、こういう二つのねらいがあるようですね。こういう二つのねらい、一石二鳥の効果を期待しているようで、私どもはこれは非常にいい案だと思いました。というのは、組合健保と国保というのは、財政上の問題からいくと全く対照的な仕組みなんですね。国保の方は病気になっても七割しか玉寮費を七さないのに万年赤字だ。これが国保です。ところが組合健保の方は医療費が十割給付だ。それでもまだ金が余って、保養所みたいなやつをどんどん建てて大黒字だ。同じ健保でもこれだけの大きな差がある。なぜこういうふうになるかというと、これは私からここで言う必要はありませんけれども、組合健保というのは若い連中だけを厳重に健康診断して、病気にかかるような人間は全部つまみ出してしまって、本当に健康な連中だけを集めている大企業の集団、こういう意味では国保というものは大企業に奉仕しているのだ、こういうことも言えると思いますね。それから年をとってくるとだんだんだんだん体が弱って病気になり、病気になりかけてくるころは定年で全部追い出して、そして国保に皆入れてしまう。だから、一番健康で高収入の者だけを選んで組合をつくれば、保険料の収入はよくて医療費の支出は少ない、黒字になるのはあたりまえだ、これは当然だと思いますね。ところが、国保というのは全くその逆で、病気になるような連中だけ集めて、しかも低収入だ。収入が少ないのにうんと給付を払わなければいかぬから、赤字になるのは当然なんです。全く対照的なんです、政管をまず別にしましてね。だから、組合健保に五年間の退職者医療保険制度をつくれば、この矛盾というものをちょっぴり解決することができる、私はそう思いますよ。だから、なぜ厚生省が反対しているのか、私はわからぬ。いまあなたは反対してないと言いましたけれども、新聞を見ますと反対しているのですよ。  これは二月二十日の読売新聞の予算委員会の記事ですがね。ここに「蔵相と厚相が対立」と、はっきり書いてある。そして片っ方では、いま言ったように大蔵大臣は、一石二鳥をねらってやるのだ、片っ方の田中厚生大臣は、組合健保だけそういうふうにするのは不合理だ、政管健保もしなければいかぬじゃないか、政管健保ができないのに組合健保だけやるのは反対だ、こういうふうに言っている。大体骨子はね。だけれども、私がいま言ったように、いいことを足を引っ張るというのは悪いことだと思うのですよ。国保から考えても組合健保から考えても決して悪いことじゃない。国保の方は、とにかく病気になりそうな人だけどんどんどんどん入ってこられちゃ赤字になるに決まっているのです。何とかこれを排除しなければいけない。だから、これを排除するということは国保にとっては非常にいいことだ。これはもう日本じゅうの保険団体が大賛成すると思いますよ。助かるのだからね。  ところが一方、退職者にしてみても、いままで一〇〇%やっていたのが突然七〇%になって、しかも掛金が倍にもなる、こういうことになるとやはり非常に困る。だから、しばらく猶予期間として五年ぐらいやるのは当然いいと私は思いますよ。一年を五年に延ばすのは善政だと思いますね。そういうものを大蔵省が、政管健保はだめだと言って足を引っ張るというのは、私はおかしいと思う。むしろ逆に、政管健保もなぜ五年なら五年延ばしてそういうふうにしないのか。そうすると国保はもっと助かるのですよ。  それは局長、意見を聞きますけれども、国はもっと大きな力でやれるのです。ところが、いま国民健康保険というのは、地方自治体、弱小な市町村の財政上の最大のガンになっている。それが何でガンになっているか。どんどんどんどん、いい人は取り上げていって、病気になった低収入の者をみんなぶち込む。こんなことを言っちゃまことに気の毒だし、語弊がありますけれども、本当に掃きだめに対して使いものにならない、収入のない人をみんなそこにぶち込んでいるから、何ぼ政府が金をつぎ込んだって、黒字になるはずがないのですよ。だからこれをやるべきだ。なぜ厚生省が反対するか。これに反対する記事を見て、非常に私は残念に思った。むしろこれは一歩も二歩も前進だから、政管健保もそういうふうにすればいいじゃないですか。どうですか。
  91. 吉江恵昭

    ○吉江説明員 お答えします。  いま先生から国民健康保険と被用者保険、特に健康保険組合の財政状態の違いあるいはいろいろな被保険者の違い、給付の違いについて御指摘ございまして、一般的にそういうことを言われることも多いわけでございますが、あえてその点については触れないことといたします。  先生いま御指摘の、健康保険組合だけからこの問題に入っていく、スタートしていくという大蔵省の構想に対して、大蔵省は推進の側に回り、厚生省は反対の側に回っているという御指摘がございました。これについては、いまおっしゃいましたように、健康保険組合の中には財政状態の悪いのもございますが、確かに財政状態のいい組合はそういうことが行い得る財政状態にあると思うのです。しかしながら、一部の財政状態のいい健保組合だけにそういうことを先行させるということは、これまたいかがなものか。スタートさせるのだったら、先生もおっしゃいますように、すべての健保組合あるいは政管も含めてこの問題を考えるべきではないか。いいところだけからスタートさせるということも問題ではなかろうかというような点も含めまして、先ほどもお答え申し上げましたように、私どもはただいま社会保険審議会にお諮りしておるところでございます。  そういうようなわけでございまして、さらにこの退職者医療の問題につきましては、健保組合の財政状態がいいから直線的に退職者も健保組合に持たせるというような設計、組み立てで誤りなき制度のスタートないしは制度の運営ができるかどうか、ここら辺も問題であろうと思います。要は、高齢者集団、これから老人がますますふえてくるという趨勢にございますので、高齢者集団の医療保障のあり方をどうするかという問題とも関連してくるわけでございます。いわゆる老人医療保険のあり方などと言われます高齢者集団の医療保障制度のあり方をどうするかという問題とも関連してくるわけでございますので、そのような観点からいろいろな詰めをする必要がある、かように考えているわけでございます。
  92. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 非常におかしいですよ。さっきもちょっと触れましたが、組合健保というのは、いわば本当に健康な連中だけをとって、しかも働き盛りだから収入が多い。そういう人の組合をつくってやれば、黒字になるのは当然ですよ。支払いが少ない。しかしそれが今度は定年になって、いよいよこれから病気をやりますよというときに国民健康保険にほんとほうり込んで、そしてあなたがいま言われるように、こっちが経営がいいから延ばすのはだめだとなったら、一体健保はどうなりますか。大体組合健保をやっている集団というのは、いまみたいな大企業ですよ。少なくとも小さいのは持てないから、中小企業は政管に入っているから、ほとんどが大企業だ。その大企業がいいところだけ全部吸い取って、エキスを吸い取って、あとのかすだけをぽこんと国保にぶち込んで、あとは全部国保で負担しなさいというなら、あんた、国保をつくれということは大企業の奉仕機関でしょう。冗談じゃないですよ。五年や何ぼやるのは当然ですよ。もしそれをやらなかったならば、五年間、十年間病気をやっても大丈夫なくらいの金を組合健保から国保に移しなさいよ。とんでもない話ですよ。そうでなければ理屈に合わないでしょう、同じ国民として。大企業だけがいいところはかり吸って、国保にみんなやって、その負担をだれがするのですか。小さな市町村の零細な連中が、みんななけなしの金を出してそういう人を養っているんだ。大企業を養っているようなものじゃないの。厚生省がそんな考えを持って、どうして国保なんかの財政を立て直すことができるのですか。そんな考えじゃいけないと思う。特に高齢者集団の医療保障をどうするか、こんな問題なんかもう何年も前からの問題でしょう。それならばあなた見当がついているでしょうから、これに対する方針をはっきり示してください。
  93. 吉江恵昭

    ○吉江説明員 確かに一般的には、先生のおっしゃいますように、健康保険組合というのは質のいい被保険者を対象にして、財政状態も一般的にはよろしいということは確かでございます。わが国は国民皆保険を達成いたしまして、給付の方も四十八年度の法改正で大幅な改善を見て、いま国保の世帯主七割以外は大体被用者保険は出そろった。これからは負担の公平をどうやって図っていくかというのが大きな問題であると考えております。  それで、そのような観点も一つの論拠として、退職者医療制度というものをつくったらどうかという議論があるわけでございまして、その点は先生の御指摘のとおりでございますが、究極的にはそういうような給付と負担の公平、それに向かって、一部の健保組合だけが独走してこの退職者医療制度に入っていくというようなことではなくて、全体をながめて、どうやって退職者医療制度というものに入っていくか、各保険者が足並みをそろえてどうやって入っていくかというような検討も十分必要であろう、そういうようなことで、先ほど来申し上げておりますように社会保険審議会にお諮りをして、目下社会保険審議会でいろいろな検討項目について検討が進められておるという状況であるわけでございます。
  94. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 どうもよくわからないですね。答弁になっていないと思うけれども……。いま一番困ってないのは組合健保なんですよ。政管も困っているでしょう。もう厚生大臣きゅうきゅう言っているのです。こっちは保険料を上げなければいかぬといってきゅうきゅうしている。一番困っていないのは組合健保ですよ。まず組合健保の困ってないところから一番困っている国保を助ける、こういうことは私はいいことだと思いますよ。決してあなたの言うような問題なんか、どこからも私は出てこないと思いますよ。しかも本家本元の金を出す大蔵省がこれをやりましょうと積極的になっているときに、これをやらないで、いやだと言っている厚生省の意図が私はよくわからない。いまあなたの説明を聞いてもよくわからぬ。恐らく聞いた人だれもよくわからぬと思いますよ。それは一つ一つには国保だっていいところはありますよ。それから悪いところもあります、大体が悪いけれども。けれども、組合健保は全般的に言っていいですよ。それは不景気になれば、少しぐらい悪くなったりよくなったりすることはあるでしょうけれども、いいに決まっていますよ、さっきから言っているとおり。健康な人間、病気にならない、しかも収入はうんと高い。黒字になるに決まっているのです。いいに決まっているのです。そのいいところから一番悪いところに移してくれば、負担の公平これほどいいことはないじゃないですか。なぜ厚生省がこれを反対するのか、あなたの言う説明を聞いてもどうしても私には納得がいかない。わかりませんよ。これを突破口にして、政管も何かこういうような方法をやって、そうして国保も政管も組合健保も負担が公平になるように、ぜひひとつ努力していただきたい。時間がたくさんないので、これを余り議論していられませんのでこれでやめますけれども、ぜひひとつこういう方法はどんどんとっていただきたい。こういう根本的なあれをやらぬと、国保は幾ら金をつぎ込んでも助かりませんよ。  もう一つ国保のことでついでに聞きますが、これは具体的な問題です。たとえば医療費が年度途中で改正されるでしょう。そうしますと、保険税で取るべき分を全部徴収することができない。たとえば去年十月に一六%診療報酬が上がりましたね。あのとき保険税で取るべき金は大体どのくらいになりますか。去年の十月一六%上げたとき、国保の保険税の必要額というのは……。
  95. 下村健

    ○下村説明員 医療費の増加額は大体千二百億ぐらいだったと思うわけでございますが、このうちの保険料徴収部分が三割相当程度でございますから三百五、六十億程度ではなかったか。いま正確な資料を実は持ち合わせておりませんけれども、多少違いがあるかもしれませんが、大体そんな見当になろうかと思います。
  96. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 私の見当では大体四百億から五百億ぐらいだと思うのですよ。大体そう違いませんね。これで一体、大蔵省に対して今度は厚生省からこれに対する予算要求をしているでしょう。どのくらい要求しましたか。
  97. 下村健

    ○下村説明員 補正の問題でございますので要求という形式をとりませんで、相互にいろいろ数字について検討いたしました結果、補正予算で国保組合の分も含めまして百六十億円の予算措置をいたしております。
  98. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 そうすると、四百億から百五十億取ると大体二百五十億ぐらいの不足分が出ますね。これは当然一般会計の繰り入れになってくる、地方財政を圧迫しますから。私は国でこれは補てんすべきものだと思うのですよ。ところが、実際にあなた方はいま――あなたの数字でも三百五十億。ところが実際に来た金が百五十億。そうなってきますと約二百億ぐらいの差が出てきますね。この差というものは私は当然国で補てんするべき性質のものだと思います。それが補てんされてないから結局一般会計から繰り出さなければいけないか、あるいは繰り出さなければ赤字の要因になっていく、こういうことなんですね。これについて、あなた方三百五十億というのはわかっているのに百五十億しか金を要求していないというのはおかしいじゃないですか。後はどうする。赤字にするか、地方で勝手に出しなさいと、こういう考え方ですか。
  99. 下村健

    ○下村説明員 医療保険の運営と申しますのは、医療費につきましては年度当初に一応の見通しを立てるわけですけれども、推計でやるわけでございますから当然各種の要素によって変動が起こります。したがいまして、各種の医療保険全体を通じまして一応の予備費を計上する、あるいは多少の準備金の積み立てのようなことをやって、ある程度のゆとりを持った運営をするというのが通常の姿になっておるわけでございます。国民健康保険につきましても私どもとしては当然そういうことでお願いをしておるわけでございまして、国保の場合でも、昨年の状況で見ますと、前年度からの繰越金でございますとかあるいは積立金、それから予備費というふうな各種の余力というものは、引き上げ当時でもあったわけでございます。それらの状況をも勘案いたしまして百六十億円の補正予算を組んだというのが昨年の状況でございまして、全額を必ずしも国庫負担をする必要はない。むしろ保険という理論で徹底いたしますならば、年度途中におきましても、他の保険と同様に保険料の引き上げをお願いするのが筋であろうというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、国民健康保険の場合は、おっしゃいますようにいろいろ困難な事情もある。また従来から国保についてはそういう特殊な体質を考慮いたしまして、医療費の改定が年度途中でなされた場合にはそういう特別の財政措置をとっていくというふうな経緯もございますので、昨年の際は、従来に比べますと格段に手厚い措置をとったという形になっておりまして、そのことのために赤字要因がふえているというふうな状況一般的にはないというふうに思っております。
  100. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 一般的には赤字の原因にならぬと言っているけれども、それは逆ですよ。こういうのは一般的に赤字の原因になっている。これはしょっちゅう、診療報酬が上がるたびにこういう問題が出てきていると思いますよ。現実に何百億というのが不足になっている。この不足を、あなたは、一般会計で補てんしなさい、そこに十分余裕がある、そういうような話だけれども、とんでもない話で、いまの地方財政、親元の地方財政が大変な赤字なことはあなたも御承知でしょう。しかも国保というのはその赤字に輪をかけてまた困っている財政なんです。それを途中で値上げをして、そうして税金を取りなさいと言ったって、いまは貧乏な低所得の人が全部これに入っている。そして、何百億という赤字があったからこれを全部保険料で取りなさい、そんなこと言える義理でもないし、言われないのですよ。それを年度途中で上げるのが当然だというような、そんな考え方では困りますよ。これは年度途中で上げるならば、当然やはりやらなければならぬ。これはなぜ上げるかというと、結局医療費の改定があるからでしょう。医療費の改定というのは、これは医師会と厚生省の間のいろんな取引、と言っては語弊がありますけれども、あれで上げられる。これは後で言いますけれども、その飛ばっちりが全部ここへ来て、年度途中で上げて――国だって最初に予算を組んでおる、地方団体だって同じですよ、ちゃんと予算を組んでいる。途中で上げられれば、力の強い国は大丈夫かもしれないけれども、あの弱小の市町村、しかもそれよりもまだこまい国民健康保険特別会計、上げられるものじゃないのですよ。これは当然国でやるべきなんです。あなた方、三百五十億なり四百億なりあるものを何でたった百五十億しか要求しないの。
  101. 下村健

    ○下村説明員 ただいまも申し上げましたように、予備費というようなものはある程度計上して、ある程度のゆとりを持ちながら運営をしていくというのが普通の状態でございまして、医療費引き上げをやったからそれをすべて国庫負担でカバーをするというのは他の保険には考えられない形の措置を国民健康保険についてはとっているわけでございます。また実際問題としても百五十億で少ないというお話でございましたけれども財政力の非常に弱い市町村につきましては、そういう状況考えまして、医療費引き上げによる影響分を一〇〇%カバーしているというような市町村も現実にございます。それから、保険料引き上げとの関連で申し上げますと、たとえば市町村によりましていろいろな運営方法を国保はとっているわけでございまして、年度当初に保険料の引き上げを全然行わないような市町村も中にはあるわけでございます。そういうふうな市町村につきまして、医療費改定があって赤字になったからといって国庫負担で埋める理由はないのじゃないかというふうに考えております。
  102. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 わかりました。私も市長を長らくやって、ずいぶん苦しんできたのですよ。あなた、財政に余裕があるなんて、とんでもない話ですよ。余裕なんかありませんよ、どこの市町村に行ったって。どんどんあれを上げていけば余裕ありますよ。あるところでは先取りして上げているところがある。うんと黒字になっているところがある。しかしそういうのは異常ですよ。いま黒字なのにまた赤字になるからといって先取りして保険税を上げているところがあるのですよ。そういうところは黒字ですよ。それから母体団体からうんと繰り入れているところもある。そういうところは黒字ですよ。しかしそういうものを全部取ってごらんなさい。みんな赤字ですよ。あなた方は、余裕がある、保険に黒字がある黒字があると言うけれども一般会計から繰り入れたりいろんな操作をしているからあれですよ、保険そのものが黒字なんということは絶対ないですよ。話はよくわかりました。話はよくわかりましたけれども、私の話もわかったでしょう。負担になっていますからね。この負担をなるべくあれしてやらないと、なるべく赤字の要因を取り除いてやらないと、幾ら金をつぎ込んでも、国保というのは黒字になりません。そのうちに返上運動だとかいろんなのが起きてきますから、私は国保を助けたいから、何とかしてこういう赤字になるような要因をできるだけ一つでも除きたいと思っているのです。  まだもっと国保のことはありますけれども、時間がありませんから、これだけにかかわっておるわけにいきませんので、もう一つ、もっと具体的なことを聞きます。  老人医療の無料化の問題についてちょっとお願いします。時間がありませんから簡単に答えてください。国保の加入者のうちで、老人の割合は何%ですか。簡単に数字だけでいいですから、答えてください。
  103. 下村健

    ○下村説明員 国民健康保険の加入者の中で七十歳以上の老人割合は、四十九年度で六・九%でございます。
  104. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 それは四十八年度ですか。五十年度はどのくらいか、わかりませんか。
  105. 下村健

    ○下村説明員 大体七%に近いところではないかと思いますが。
  106. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 そうすると、国保以外の健保の老人の割合はどのくらいですか。
  107. 下村健

    ○下村説明員 国保以外の被用者保険全体をとります。
  108. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 そうすると、これはやっぱり非常に国保とほかの健保では差がありますね。片っ方は七%、片っ方はまだ三%、四%の差がある。倍以上の差がある。非常に国保の場合は老人の率が高いですね。  もう一つお伺いしますが、国保の被保険者、加入者ですね、これは人数は大体どのくらいですか。
  109. 下村健

    ○下村説明員 組合の国保を含めまして、約四千四百万になります。
  110. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 この四千四百万人の中で、七十歳以上の老人の被保険者は何人ですか。
  111. 下村健

    ○下村説明員 約二百八十万人だったといま記憶しております。
  112. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 私の調べでは二百九十二万人なんですよ。それで、日本の総人口のうち老人の数は大体五百万人ですね。だから、二百九十二万人というのは、大体六〇%くらいに当たる。日本の老人の六〇%が国保に加入しているのですよ。老人の大部分が国保に入っているのです。  で、お伺いしますけれども、国保加入者の老人の一人当たりの医療費、これはどのくらいですか。
  113. 下村健

    ○下村説明員 被保険者一人当たりで年間、四十九年度の、これはまだ決算出ておりませんので、予算編成時の額でございますが、三万六千六百五十三円でございます。被保険者全体でございます。老人一人当たりになりますと、十二万七百二十二円。
  114. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 そうすると、老人以外の国保の医療費というのはどのくらいになるかわかりますか。
  115. 下村健

    ○下村説明員 四十八年の数字しかちょっと手元にございませんので、いまの数字をもう一遍置き直しますと、被保険者一人当たりにしまして、全体の平均が二万九千五百九十円でございます。老人だけをとりますと、それが九万六千三百九十六円になります。それで七十歳未満の者の平均が二万四千七百九十九円でございます。
  116. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 わかりました。いま言われたのでもわかりますように、非常に老人医療の一人当たりの単価が高い。うんと高い。けた外れて高いですよ。  それでもう一つお伺いしますがね、国保税の、これの全体の所要額というのは、どのくらい取れはいいか、所要額というのはわかりますか。大体国保医療費の二五%が税金になりますね、どのくらいになりますか。
  117. 下村健

    ○下村説明員 昭和五十年度予算を編成いたしましたときで国保の総医療費は約二兆でございます。その二五%ということになりますと、五千億でございます。
  118. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 そうすると、このうち老人が負担できるところの保険税というのはどのくらいですか。
  119. 下村健

    ○下村説明員 老人が負担している保険料のことだと思いますが、実は年齢別にどの程度の保険料を負担しているかという詳細な数字はございませんけれども、一部の町村で調べましたところでは、大体平均並みの保険料を負担しているようでございます。したがいまして、人数割りで大体七%と見ますと、五千億の七%を七十歳以上の老人が保険料として負担をしているということになろうかと思います。そういたしますと、三百五十億ということになります。
  120. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 そうすると、これは大分数字が違うな、私の計算したのとかなり違うね。こんな税額が出てきたら大変だよ。こんなに五千億なんという負担をしているの。
  121. 下村健

    ○下村説明員 四十九年度の当初予算で保険料として計上されておりましたのが大体全国総計で約四千億であったと思います。したがいまして、五十年度で五千億というのはそれほどのあれではないと思いますが、それからそのうちの老人分につきましては、それを頭割りで割り出して三百五十億というふうに申し上げたわけでございます。
  122. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 大体国保の医療費が五千億ぐらいじゃないの。
  123. 下村健

    ○下村説明員 恐らくそれでは五千億というのは老人分の医療費のことではないかと思いますが、そうしますと、国保の医療費の総額が二兆でございます。そのうち七%の老人で、その老人が使っている医療費になりますと、約二五%になりますので、二兆の四分の一の五千億が七十歳以上の老人の医療費ということになります。
  124. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 そうでしょう。私の質問の仕方も悪かったかもしれない。大体そんなものでしょう。私の計算したところでは、これで大体千二、三百億ぐらいになるのじゃないかと思いますよ、いまの五千億の二五%になるとね。ちょっと待ってください。そうすると、五千億のうち、その老人医療で老人が負担できる保険税額というのは、いま話しました、何ぼでしたか。
  125. 下村健

    ○下村説明員 三百五十億でございます。
  126. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 三百五十億ですね。そうすると、この老人の医療費の三百五十億というのは、四十九年度に実際に負担している額ですか。
  127. 下村健

    ○下村説明員 老人の被保険者が保険料として負担しているであろう額が三百五十億と申し上げたわけでございます。先生おっしゃる千二百五十億と申しますのは、その老人分の医療費のうちの保険料として徴収すべき額が約千二百五十億程度になるということではないかと思いますが、一したがいましてその三百五十億との差、九百億は、要するに、国保の六十九歳以下の者が老人のために払っている保険料ということになるわけでございます。
  128. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 そうですね。私の質問の仕方が悪かったかもしれぬが、そうしますと大体こういうことになりますな。大体がこの差額というものが、千二百五十億ぐらいから老人医療の三百五十億を引きますと何ぼですか。
  129. 下村健

    ○下村説明員 九百億でございます。
  130. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 九百億、約一千億ですね。そうすると、この一千億が結局、この問題で不足額になってきますね。
  131. 下村健

    ○下村説明員 一千億というのは若い世代が年寄でございますが、国民全体に割り返しますと、当然、老人のための保険料というのは、各種の保険で相応の額は負担しているわけでございますから、それ全額が国保として余分な負担になっているというのは当たらないのではないかと思います。
  132. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 いや、私の言っているのはそうじゃなくて、老人が負担しなければいかぬのは千二百五十億ですか、大体そのぐらいになりますね。ところが、老人から入ってくる金は三百五十億しかない。そうすると、その負担が、九百何ぼですから約一千億ですね。これが結局、老人に対する老人医療の問題としてこの差額が出てきているわけですよ、老人のために。だから私の言っているのは、差額というものは、これは老人医療として別個に見てやらなければいかぬのじゃないかというのです。
  133. 下村健

    ○下村説明員 老人分の医療費は全額国庫負担すべきであるというふうな前提条件が仮に成り立ては、そういうことになろうかと思いますが、その場合には、先ほどお話に出ました健康保険組合が老人のために負担しているものも、あるいは共済組合が老人のために負担しているものにつきましても、全部国庫負担をするというのが、全体として公平ということになろうかと思います。
  134. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 いや、私の言っているのは、国保はこの老人の率が非常に多いのですよ。大体、日本の総老人の中の六割も国保の中にぶち込まれておるわけですね、それが非常に大きな負担になっておる、これは認めますね。その中で、実際にその千二百五十億ぐらいは税金として取らなければいけない、そういうものが三百五十億しか取ってない。約一千億というのが実際の老人の問題としては不足しているじゃないか。だからこの問題は国保だけに限られた特殊な問題として、この一千億というのは国が補てんしてやらなければいかぬのじゃないのか、こう言っているのです。  これをちょうどあれしてみますと、いまの五十して、いまの調整交付金が五%で一千億円ですね。だからこれをちょうどに、さっき小川さんが質問していましたけれども、あなたはいなかったけれども、一〇%に上げてもらえば、ちょうどこの一千億というのが補てんできる。いま地方団体から、この調整交付金を一〇%にしてくれという要望が非常に強い。おたくのところにも行っているでしょう。これは理論的な根拠として一応、国保における老人が非常に多いというこの特殊性というもの、ほかの健保と段違いに多い。これを認めて、そうしてこの点を一〇%に上げてもらえば、これが完全にカバーできるじゃないか、こう言っておるのです。この点はどうです。
  135. 下村健

    ○下村説明員 頭数の割合で申しますと、先生おっしゃるとおりのことになるわけでございますが、従来から、国保には老人が多いあるいは所得が低いというふうな弱い体質があるものですから、他の医療保険に比べて特別に四五%というふうな国庫負担がなされているわけでございます。したがって、そういう三%と七%の差がそのまま全部重い負担になってかかっていくという形ではないわけでございます。健康保険組合には全然国庫負担がないわけでございますから、それらの差を考え、さらに頭数の平均より多い割合の部分に着目いたしましての国庫負担措置考えると、五十年度予算あるいは昨年度予算で国がとった予算措置がそれに近い形になるわけでございます。
  136. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 時間がないのでこれ以上申しませんけれども、さっきから言っているとおり、国保というのは、非常に収入がなくて病気になりやすい人がたくさん集まっている。特に老人の六〇%も集めているというのは特異な性格だと思うのですよ。だから何かしら、これは悪く言えば理屈をつけて、国保はこんなに老人が多いし、しかも一千億ぐらい超過負担しているんだ、だからこれを何とかカバーしてくれ。こういうことは当然、厚生省として努力してしかるべきだと私は思いますよ。こういうところから助けていかぬと、幾らいっても国保は助からぬ、こう思うからお願いするわけで、今度はひとつ一般会計から繰り入れなくて済むように、厚生省として最大限の努力をしまして、この次のあれに予算要求しまして、実現するようにしていただきたい。
  137. 下村健

    ○下村説明員 先ほど来、多少先生のおっしゃる点と細部につきましては意見が違う点もございますのでいろいろ申し上げましたけれども、国保について、弱小保険者につきまして十分な配慮をすべきであるという点につきましては、私どもとしても全く同様でございまして、診療報酬改定の場合の措置、それから今後の問題につきましては、十分努力してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。ただ。国の財政事情からいきますと、国保全体に対する財政措置が五十年度予算で助成費の総額が一兆六百億になっております。そういうふうな状況で、これもさらに今後の状況考えますと、相当な勢いでふくらんでいくというようなことが考えられるわけでございまして、先ほどお話に出ておりました老人医療のあり方というような制度的な面も含めまして、私どもとしては国保財政の安定につきまして十分努力をしていきたいというふうに思っております。
  138. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 まだ終わりませんよ、もう一つ国保のことを聞きますからね。  いま一兆六百億になっているその問題ですが、なぜ一兆六百億にも膨大にどんどんふくれていくか。大体年間二五%ぐらいの勢いでどんどん医療費がふえていっているわけです。それで、昨年の九月二十六日に厚生省統計情報部というのが発表した「社会医療調査の結果」の概要というのがあるのですね。これを見ますと、日本の医療の欠陥であるところの一点単価請負制、いわゆる薬づけ診療、これが非常にこれを膨張させている最大の原因であるというのがよくわかるんですね、あれを見ますと。あなたは専門家だからここで言う必要はないかもしれませんけれども、あれの概要を見ますと、加入している本人、家族のほほ四〇%強が平均四日医師の治療を受けている、一人の患者の医療費は五千九百三十八円だ。それから二番目は投薬と注射の薬代が三千二百八十九円で全体の五五・四%ある、これもあそこに書いてあるとおりですね。それから前回の四十七年の調査とその間に医療料金も薬価も改定されてないので年間医療費の自然増が六・三%ある、これが全部薬代だ、こういうふうにデータがある。これを今度はもう一つ前の時代からながめて見ますと、四十四年からこれをながめて見ますと、今回の調査まで四十四年から二回薬価改正がある、四十五年の八月に三%、四十七年の二月に三・九%、これは多くなったんじゃないんですよ、下げた、引き下げ。それにもかかわらず、投薬が四十四年度の平均一千五百二円から四十八年度には二千三百六十五円と大幅にはね上がっている。下げたのに上がっているんですよ。厚生省の松浦さんですか、統計情報部長。あの人は医学の進歩に伴って医者がだんだん高い薬を使うからだ、こういうふうに言っているけれども、それでもこれは大変な上がり方だと思いますよ。こういうあれを見ますと、私は非常にこういうところに大きな問題があると、こういうふうに思います。たとえばこれで簡単に言いますけれども、五五・四%なんというのは、これは大変な薬の量ですよね。これは外国のあれを見ますと、大体一八%から二〇%ぐらいが国民総医療費の薬代だ、こういうふうに言われておる。ところが日本のこれで五五・四%、これは大変な違いなんですよ。三十何%の違いがあるでしょう。そうしますと、これは大変な額になると思う。大体四十九年度の国民総医療費は何ぼくらいになりますか。
  139. 下村健

    ○下村説明員 四十九年度の結果につきましては、私どもの統計情報部の方で集計中でございまして、まだ詳細な結果は私ども聞いておりません。
  140. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 大体でいいですよ。大体六兆円くらいになるんじゃないかという推測をしていますよ。これはおたくの方で出しているあれにたしか出ていますよ。そうしますと、大体六兆円ぐらいになるようですよ。これは私調べたからちゃんとわかっているんです。六兆になりますと、これは大変な差額ですよ。六兆円に五五・四%掛けますと、驚くなかれ三兆三千二百四十億円が薬代だ。外国のものを二〇%と見ると、六兆円に二〇%だと一兆二千億です。その差額が二兆一千二百四十億ある。大体六兆円ですよ。間違いありません。その中の薬代が五五・四%ですから三兆三千二百四十億円が薬代だ。外国のやっと比べると約二兆一千二百四十億、約二兆円ぐらいの差があるんですよ。二兆円といったら大変なものだ。日本の軍隊の二年分の予算くらいの大変な額ですよね。これだけ大きな差があるんです。二兆円あったらこれは大変なものですよ。こんな赤字なんかすぐなくなっちゃう、二兆円もあれは。年間二兆円ですよ。これだけの大きな差額が出てきますと、これはやはりどんどん医療費が膨張するから、保険税を上げますよと言ったって国民納得しませんよ。これだけの大きな差があって、むだな薬、だからかぜひいたというと、袋持っていかないともらってこられないぐらいの薬をみんなもらってくる。むだばかりやっているんですよ。なぜそうやるかというと、薬をやらなければ医者がもうからないからだ。もう私から言わなくても何十遍も言われたことだからおわかりでしょう。さらにこの間の調査でもわかりますように、効かない薬がたくさんある。第四回目やりましたね。百十一品目が効能書きを水増しして、四品目が何も効かない、こういうようなことが出ている。あの中には全然効かない薬も入っている、患者は、要らない薬と効かない薬を持たせられて毎日病院に通っているんですよ。しかもその金額というのが年間の国民総医療費の五五・四%で、正当と思われる外国のあれと比べると二兆円以上の差がある。こんな大きな差額を薬としてわれわれは飲ませられて、それで医療費が高くなった、保険税が高くなりましたと言ってもこれは納得できない。どう思いますか。
  141. 下村健

    ○下村説明員 薬価の医療費に占める割合については、先生おっしゃるようないろいろな議論もあるわけでございますけれども、医療費の国民所得に占める割合ですとかあるいは医療費の絶対的な水準の国際比較というふうなことをしますと、まだ医療費の全体が低いために薬価が高いのだというふうな説も一部にはあるわけでございます。そういうことで御指摘のような面もございますので、厚生省といたしましては薬価調査等を通じまして診療報酬体系の合理化というふうなことにつきましては、中医協の審議を経ながら逐次進めているわけでございますが、今後ともそういう方向に沿って十分努力をいたしてまいることになろうと思います。
  142. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 あなたから答弁を求めるのは、これは無理な問題かもしれません。厚生省と医師会、武見さんと盛んにやり合いまして、この間私の方の秦参議院議員が予算委員会質問しました。厚生省弱腰で武見さんにひっかき回されているじゃないか、もっと強くなれと言ってやっていましたけれども、私も全くそのとおりだと思いますよ。いまのままでどんどんやっていたら大変なことになる。医薬分業やりましたね。あの医薬分業の結果はどうなっていますか、簡単に説明してください。
  143. 吉村仁

    ○吉村説明員 お答えいたします。  昨年の十月に診療報酬の改定がございまして、その際処方せん料が百円から五百円になったわけでございますが、その改定を契機といたしまして、医薬分業実施の機運が非常に高まっております。現在各地域において前向きの実施体制が進められておるわけでございますが、これを数字的に見ました場合、四十九年の九月、これは診療報酬改定の前でございますが、そのときの社会保険――被用者保険の方でございますが、社会保険、それから各種の公費負担医療等で処方せんを交付した枚数が三十九万八千九百九十七枚であったわけでございますが、十月以降これがどんどん伸びてまいりまして、現在一月の統計が一番新しい数字でございますが、六十万三千三百六十五枚、こういうことになっております。
  144. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 その数字、いつか新聞に出ていましたから私も承知しております。ところが私この前滝沢さんでしたか、薬務局長でしたかに質問しましたけれども、医薬分業いいけれども、気をつけないと、片っ方では技術料をうんと高くして、片っ方では薬局の方の薬がまた高くなって、住復びんた食らったようなかっこうになりますよと注意しておきましたがね。  奇妙な陳情者が私のところへ来た。それをちょっと御紹介します。長いこと病院に通っている人ですが、これは名前を言ったり病院を言ったり薬局を言ったりすると非常に迷惑かかるので黙っていますけれども、こういうことなんです。いままで十日おきに病院へ行って処方せんを書いてもらって、処方せんは病院から直接薬局に行きますね。そして薬局から薬をもらってきておった。ところが百円が五百円になったわけですよ。そうしたらそれが五日おきになったのです。これはどういうことかというと、医者の方は処方せんを一枚書くと五百円になる。百枚書くと一日に五万円になる。二十日稼働すると月に百万円になる。だったら、要らない薬を買っておいて薬剤師を雇っておく必要がないからというので全部やめてしまった。そしてどんどん処方せんを書いている。小刻みに書けは書くほどもうかるものだから、いままで十日のものを五日でどんどんやっているわけですね。そしてそれを患者が取られている。もっとおかしいのは、その途中、五日目の中日一日休んだ。そして次の日行ったら、二枚処方せんを書いて二倍の薬をよこした。そうするとこれはどういうことになりますか。医者は一週間おきでしたかに診療しなければ処方せんを出せないことになっていますね。これは患者の方も悪いのです。電話をかけて、何とかやってくれ、医者はいいだろうと言ってよこすわけだ。ところが、それを行きもしないのに五日なら五日で小刻みに全部処方せんを書いて飲まない薬をみんなよこしているのですよ。そうするとどういうことになるかというと、医者の方はどんどん処方せんを書いて処方せんでもうかる、こっちの方はどんどん薬をやって薬でもうかるということになってしまう。こういう結果が、私のところへ陳情に来た患者がおりまして、これはどういうものですかと言われてそれで偶然わかったけれども、こういうふうな状態を知っていますか。  これは、五百円になった途端にすぐもうけようと思えはこういうことを思いつく。だから、みんなやっておると私は思いますよ。そういうあれはなかったですか。
  145. 吉村仁

    ○吉村説明員 一部にはそういうようなケースもあろうかと思います。私ども全国の情報が全部入っておるわけじゃございませんが、一部にそういうことがあるということは聞いております。
  146. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 これはただ例として、医薬分業はうんと気をつけて監督しなければいけない。武見さんなんかはちゃんと「日医ニュース」でもって、もう薬でもうけるのはやめた、今度は点数でもうけると言って盛んにやっています。これははっきり書いています。だから、よっぽど厚生省でしっかり指導しておいていただかぬと、薬は薬で高くなるし、こちらの技術料は技術料で高くなるし、払う患者は大変だということになりますよ。このことをよく念頭に置いて、そして両方を指導していただきたい、こう思います。  これで国保を終わります。どうもありがとうございました。  あと五分ぐらい時間をいただきたい。  消防庁長官と通産省の方、来ていますね。――いまプロパンガスの事故が非常に多い。ついこの間もありました。これについてちょっとお伺いしたいのですけれども、いまプロパンガスの消費世帯というのは都市ガスより多いのですね。千二百万に対して千七百万ぐらいある。こういう消費の伸びに比例して事故もどんどん伸びていっています。特に最近の傾向のあるものは、爆発の規模が大きくなって、しかも負傷者と死者が非常に多くなってきていますね。これは密閉したビルディングみたいなものがどんどんできるものだからそういう例が出てくるわけですが、これは十分あれだと思います細かく申し上げませんが、だだこれに対するいろいろな対策が当然講じられておると思うけれども、私どもの見るところではどうも十分な対策が講じられていないじゃないか、こういうふうに思います。  たとえば通産省はこういうことを言っている。四十八年一年間の大事故、というのは死者二人以上の場合、十九件あった。これに対して原因を調査して、大半の十三件が、器具の栓の締め忘れ六件、ホースの締めつけ不十分五件、栓の操作を誤ったものが二件と、全部こういう状態だから消費者の不注意によってそういうのができてくるのだ、こういうふうに言っている。この問題、確かにこれは消費者の取り扱いのミスとか保安上の無知というものが事故に直接結びついているということは否定しませんけれども、ただこれで、消費者が悪いと言ってこれをきめつけておくだけでは問題が解決しない、こういうふうに私は考えるのですね。事故防止対策の指導というものも、いままで見ているとガス器具の栓だとか元栓をよく締めろ、就寝のときはよくそういうのに気をつけろとか、あるいはガスがたまったらほうきで掃き出せとか、とにかくそういうようなことを盛んに言っているわけですけれども、しかし私はガス器具そのもの、それからアフターサービスだとか、そういうものにもっともっと大きな重点を置かなければこういう問題が解決されていかない、こういうふうに思います。その点について……。
  147. 鎌田吉郎

    ○鎌田説明員 最近のLPガスの事故の状況先生指摘のとおりまことに憂慮すべき状況でございまして、私どもといたしましてもそういった状況を踏まえまして、昨年審議会の答申を得まして、その線に沿いまして各般にわたる対策を講じているところでございます。  まず器具の改善でございますけれども、これは非常に大切なことでございますが、そういったことで、ことしに入りましてふろがまとかストーブとか瞬間湯沸かし器、こういったものにつきましては、ガスが立ち消えしました場合に自動的に元弁が閉まるという安全装置が開発されております。この装着を今後販売されるものにつきまして全部義務づけることにいたしたわけであります。さらに元栓、コックにつきましても国家検定の対象に最近いたしております。さらにまたゴムホースの規格の改善あるいは金属性ホースの採用等につきましても現在検討中でございます。また、一番直蔵な方法といたしましては、ガス漏れ警報器の普及ということがあるわけでございます。こういったことから、本年度につきましては約四十億円の政府関係資金を用意いたしまして、リース制度を使いましてガス漏れ警報器の普及をしていく、こういうことにいたしております。  さらに抜本的には、高圧ガス保安協会という特殊法人がございますが、ここに保安センターをつくりまして、約三億五千万円の予算を本年度投入いたしまして、テレビ、ラジオ等を使いました消費者に対する保安啓蒙あるいは各種実験研究、こういったことをやるということにいたしております。
  148. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 その話、私もいろいろ調べて聞きました。だけれども、たとえばガス漏れ警報器だとか、湯沸かし器とかふろがまにセーフティパイロットを取り付けるとか、そういうことをやっても、おたくの方のあれでは、ガス漏れ警報器だけでも半分の家庭に普及するに三年もかかると言っていますね。とてもいまの話にはならない。それから、保安装置で安全認定できるというのはほとんどない。まだおたくの方でこれはいいぞと言って認定できるようなものはほとんどないという、非常に悲観的なあれなんですよ。ところが事故は待ってくれない。毎日のごとく事故が起こっているわけですよ。これは応急の措置を講じなければいけないと思うのですよ。  それで、業者というのは何か規則があって、ボンベは一月に一回以上、ガスレンジなどの燃焼器具は毎年一回、それから配管などについては二年に一回、こういうふうに調査点検するということが義務づけられているけれども、東京都の消費者モニターのあれでは、九百三十二人の昭和四十八年十月の調査では、ボンベの検査を受けていないというのが三一%、それから燃焼器具は三七・八%が受けていない、配管検査は三八・二%が受けていない、こういうような状態です。埼玉県も例を書いていましたが、同じような状態ですね。こういうことをできることからどんどんやらないと、三年も先のことじゃないのですよ。このことをひとつぜひ強くやってもらいたい。  それで、私はあれをずっと調べてみたらいろいろなことを書いていますが、できることでやらないことがたくさんあるのですね。たとえはガスににおいをつける。これは十年も前から言われていることだけれども、いまだに同じだ。やろうとしないからですよね。それから冷蔵庫のサーモスタット、これは非常に危険だ。事故が起きるのは、台所にガスと二つ、両方あるものだから、ガスが漏れたのが冷蔵庫のサーモスタットにはちっと火がついて爆発する。それから、この間事件がありましたね。屋外にゴムホースがついている。そのゴムホースがいたずらで三軒続けざまにみんな切られておった。あんなの、付近に火があったら大変な爆発をしてしまう。こういう問題がある。それで、関連して、外に元栓があるというのも非常に危険だと思う。こういうことはやろうと思えばどんどんできると思うのですね。これをやらないで三年先のそういうことをやっていても私は困るじゃないかと思うけれども、どうですか。
  149. 鎌田吉郎

    ○鎌田説明員 LPガスの消費先における事故防止につきましては、何分にも千七百万あるいは千八百万という膨大な御家庭における事故防止でございますので、これだけやれば十分だという対策はないと思います。そういった意味で、先生指摘のようにあらゆる措置を講じていくということを考えていかなければならないと思っております。  販売店の調査義務につきましては、私どもとしては先般も関係業界の代表の方においでいただきまして厳重に注意いたしたわけでございますが、今度はその調査義務を的確に往復しない販売業者に対しましては厳重な行政処分をとっていく、あるいは各地に保安センターという調査代行組織ができておりますので、こういったものをはっきり認定いたしましてその活用を図る、こういうことで考えておる次第であります。  なお、においでございますけれども、現在省令の基準によりまして着臭を義務づけておるわけでございますが、着臭剤につきまして、あるいは着臭の方法につきまして、なお相当改良の余地がございます。そういった意味で、そういった点も大いに勉強してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  150. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 すぐ終わりますが、私は千葉県の出光の訓練センターの爆発事件、あれを見まして、これは大変だと思いましたよ。大体よそのあれを連れてきて訓練するところのセンターまで爆発するようになっては、ほかのところが爆発してもおかしくない、そう思いませんか。取り扱いを正確にする訓練センターが爆発してしまったのでは、これは問題にならぬのですよ。あなた方盛んにいいことを言うけれども、全く根底にどこか欠けているところがあるのですよ。これをやりませんとやはり私はこういうものがよくなっていかない。やってるやってると言うのだけれども、においの問題にしても十何年も着臭の問題で解決できないなんというばかな話はないと思う。責任の所在が大体はっきりしていないのですよ。消防庁であるのか、通産省であるのか、どこであるのかさっぱり責任の所在がはっきりしていない。だから消防のあれみたいに、デパートだとか雑居ビルだとか、しょっちゅう同じような火事が出てくる、だれも責任を負わない。これだって同じことだと思うのですよ。ただ消費者にだけ責任を負わして、やれやれと言ったってできるものじゃないのです。ここのところをよくひとつ自覚してきちっとやって、これ以上このような大きな事故を起こさないように気をつけていただきたい。消防庁長官の御意見をひとつお伺いいたしたい。
  151. 佐々木喜久治

    ○佐々木政府委員 LPガスにつきましては、これは通産省の所管でございますが、ただ災害が発生いたします場合にはやはり末端消費者にその被害が生ずるということでございますので、私どもといたしましては、一般家庭におけるLPガスにつきましては、特にガスの特性ということについてのPRというものを中心にいたしまして、消防機関あるいはその他の報道機関を通じて、その正しい取り扱い方というものについて重点的にいま広報活動を行っているという状況でございます。
  152. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 最後に、せっかく次官おられますから、いまの国保なりプロパンの問題について次官の御意見を。
  153. 左藤恵

    左藤政府委員 消防庁長官から答えましたように、こうした問題につきまして、当然消費者の立場、それから生命の危険というふうな問題を何においてもまず優先して、役所の立場とかそういうことだけじゃなくて、優先して安全性を確保しなけならない、このように思いますので、その点についての十分な配意を努力いたしたいと思います。
  154. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 終わります。
  155. 大西正男

    大西委員長 細谷治嘉君。
  156. 細谷治嘉

    ○細谷委員 質問に入る前に、いただいた資料について、昨年のこの法律案審議の際に指摘しておいたのでありますけれども委員会での質問というのを無視したのかあるいは善意なのかわかりませんけれども数字が直っておりません。その点について改めて御質問申し上げたいと思います。  まず税務局長にお尋ねいたしますが、地方税審議する際に、あなたの方から「地方税に関する参考計数資料」というものをいただきました。この「参考計数資料」によりますと、六十四ページ、私が質問申し上げたいところは六十八ページでありますけれども昭和四十八年度における都道府県歳入中に占める道府県収入都道府県別割合」、この(注)を見ますと「人口は、昭和四十九年三月三十一日現在住民基本台帳人口によった。」昨年が、昨年指摘したことに基づいて住民基本台帳の人口を今回はとっております。二番目に「この調は決算額による。したがって東京都」云々と書いてございます。  ところで、この六十八ページにございます都道府県の七十四ページですけれども道府県税」という七十四ページを見まして、ことし出されました財政白書の二百二十六ページの「昭和四十八年度一般財源の人口一人当たり額の状況」というのと比べますと、地方税の人口一人当たりの額は大きな差がございます。たとえばAグループの神奈川県、愛知県、大阪、そして静岡を例にとりますと、白書では三万五千三百八十一円でありますけれども税務局の資料は三万六千三百三十一円、以下全部違うのです。どうして違うのですか。
  157. 首藤堯

    ○首藤政府委員 細谷先生には去年もこういった数字につきましていろいろ御指摘をいただいたのでございますが、先生大変ベテランでいらっしゃいますので、毎々よく御検討いただき、またアドバイスもいただいておりますことに対して非常にありがたく存じております。  昨年も御指摘をいただきましたし、またお答え申し上げましたように、私ども税におきます人口一人当たり額の算定の場合に、先生御案内のように五年に一回国勢調査があるわけでございます。この国勢調査の人口によるか住民基本台帳の人口によるか、いろいろ問題があるわけでございますが、五年間という国勢調査間の期間がありますために、国勢調査の人口の判明をいたしました最初の年と次の年、大体原則として二年間は国勢調査人口により、後の三年間は人口の流動がございますので、人口の一人当たりを本当につかまえるためにはやはり住民基本台帳によった方がいいのではないか、このように考えておるわけでございまして、従前そういうような扱いに心してきておったようでございます。したがいまして、昨年の御指摘もございましたし、ことしのこの資料は住民基本台帳による人口、これに変えまして人口一人当たりの額の算定をいたしておるわけでございます。その意味では財政白書におきます人口の扱い方と今回は同一になっておる、こういうことでございます。  それから、その人口一人当たりの額の差でございますが、これは財政白書の方の、ただいま御指摘をいただきました二百二十六ページの注書きのところにもございますように、先生御案内のように府県税として徴収をいたしました税金の中にも市町村に交付金として税を渡すものがございます。娯楽施設利用税、それから自動車取得税、それから軽油引取税、こういったたぐいのものはその一部を市町村に渡すことになるわけでございますが、私どもの方の税の資料では、税目ごとの住民一人当たり額、こういうことを、税でございますので算定をするのが適正かと考えまして、この交付金の場合も、交付金も含みました府県税の額としての人口一人当たり額を算定しておる。財政白書の方は、そのようなものは市町村に交付をされますので府県の財源から差し引いて計算しておる、こういう差が実はあるわけでございます。したがいまして、御指摘をいただきました神奈川県等におきましても、その市町村に渡しました交付金の額分が人口一人当たり額として税の資料の方が大きく、財政白書の方が小さく、このようにあらわれておると思っておる次第でございます。
  158. 細谷治嘉

    ○細谷委員 注に書いてないじゃないですか。なせ書いてないのですか。
  159. 首藤堯

    ○首藤政府委員 税の参考資料の方は、税目としてその税の額としてあらわしましたので注書きをいたしていないのでございますが、財政白書の方は、ただいま申し上げました二百二十六ページ、二百二十七ページに、これこれは除いたと、こういうふうに書いてあるわけでございますが、両方の突合上、税の方でもこれは含んだものであるということを書く必要があるとすれば、ひとつその点はなるたけ親切に書くように今後は取り扱いたい、こう考えております。
  160. 細谷治嘉

    ○細谷委員 やはり地方財政計画の中でも、都道府県税、市町村税とやって、いま御指摘のような交付税については県税というかっこうで市町村に交付いたしますから、そのかっこうをとりませんとおかしいんじゃないか。しかし、税プロパーの問題としては、都道府県税と市町村税と分かれておりますから、そういうかっこうで人口で割ったんだというなら、これは親切のために、やはり白書のように注の二なり三なりに一つ起こして書いておきませんと、私はここであなたに、作成者に確認しますからはっきりしますけれども、これはどの数字を使っていいかわかりませんよ。今後二年間は国勢調査の人口による、その後三年間は住民基本台帳による、こういう方針を確定したようでありますから、それはそれでいいでしょう。いいでしょうけれども、これは注はひとつ書いてくださいよ。どうですか。
  161. 首藤堯

    ○首藤政府委員 毎々いろいろ御指摘をいただき、アドバイスをいただいておるわけでございますが、できるだけ親切にあらわした方がいいと思いますので、注書きにつきましてもできるだけ親切に書くように今後努めたいと考えます。
  162. 細谷治嘉

    ○細谷委員 財政局長にお尋ねいたします。  この白書を拝見いたしますと、住民基本台帳による人口の県別の表というのは一つもないんですよ。重要な分母として、この都道府県別の住民基本台帳の人口が分母になっているのに、なぜ白書には書かぬですか。調べてみますと、国調人口の状況というのは百七十八ページにあるわけです。この表に、国調人口の表があるならば、これを分母としてやったということは、これはだれでもこの一冊の本の連関性から言って、なるほど人口一人当たり、国調人口を使った。国調人口、百七十八ページにあるとおりだと注にも書いたらどうかと、昨年私は指摘したのですけれども、注には基本台帳の人口によると書いてないんですよ。この本なら間違いなくこれは国調人口だと思うでしょう、分母は。昨年あれだけ指摘して、なぜ直さないのですか。だれもこれは基本台帳によった数字だと思いませんよ、同じ一冊の本に国調人口があるわけですから。どうですか。
  163. 松浦功

    松浦政府委員 御指摘のとおりでございます。明年度以降必ず注意いたします。
  164. 細谷治嘉

    ○細谷委員 ひとつきちんと、注に入れるだけでいいのですから、住民基本台帳人口によったと。  もう一つは、やはり私はお願いしたいことは、せっかく、国調人口も必要でしょう、これは交付税の単位費用の人口等に関係がありますからいいでしょうけれども、この重要な一般財源の人口当たり額の額というのを出すのならば、同時に、住民基本台帳による人口というものをその3ぐらいに一ページ、一表をつけ加えていただきたい、それでないとわかりませんから。これはいかがですか。
  165. 松浦功

    松浦政府委員 御指摘のとおりにいたします。
  166. 細谷治嘉

    ○細谷委員 じゃ、そうしてください。  それからもう一つ、私は税務局長財政局長に申し上げたいのですが、昨年も申し上げたのですけれども自治省は少し数字の扱いが粗雑じゃないかという点を指摘いたしました。この税務局の資料、財政局の白書、地方交付税の人口一人当たりの数字が違っているのです。四捨五入だということであれば、これはわかりますよ。大した金額じゃないかもしれませんけれども、やはり地方交付税人口一人当たりの額が違うのです、円の単位で違っているんですよ。たとえば交付税の京都府、白書では四千二百四十三円でありますけれども、税の方は四千二百四十四円になっているのです。それから福岡県の場合には一万二千七百九十九円でありますけれども、一万二千八百円、富山県の場合は二万五千三百四十円でありますけれども、二万五千三百三十九円。数字が一円くらいですから大したことないということでありますけれども、これは権威ある数字なんですから、一つの省で、局が違うからといって、出てくる資料の数字がこういうふうに違うのはおかしいですよ。自治省と大蔵省から出る数字ならともかくとして、一つの省から出る数字がこういうふうに違うのは納得できない。どうしてこういうことになるのですか。
  167. 首藤堯

    ○首藤政府委員 ただいま御指摘をいただきました交付税の額でございますが、端数の扱いが四捨五入をしておるか、あるいは流しっぱなしにしておるか、その差であろうかと思います。今後は同じところから出る数字でございますから、できるだけよく突合いたしまして、端数といえども食い違いはないようにひとつ調整をいたしたい、こう考えます。
  168. 細谷治嘉

    ○細谷委員 できるだけじゃなくて、これはきちんとやっておかなくてはいかぬことですよ。財政局から出る数字税務局から出る数字は、できるだけ調整して数字を合わせるんじゃなくて、一つの省から出る数字はぴしゃっと合わせなければいけませんよ。これは財政局長どうですか。
  169. 松浦功

    松浦政府委員 御指摘のとおりでございます。
  170. 細谷治嘉

    ○細谷委員 政務次官、こういう問題は、私は毎年かかずらって質問の貴重な時間を使うのはもったいないと思っているのですよ。けれども数字がすべての基礎ですから、どなたも読んで誤りのないようにしていかなければならぬと思うし、局間で、一つの省からの数字が違うことも問題がありますし、そして問題のあるところなら、注にぴしゃっとその数字の扱い方を注意していただく、そういう注を親切にひとつ設けていただきたい、こういうふうに思いますが、よろしいですね。
  171. 左藤恵

    左藤政府委員 御趣旨のとおり明年度から十分気をつけて直すようにいたします。
  172. 細谷治嘉

    ○細谷委員 時間が細切れですので……。石原課長おりませんな。石原課長の書いた論文について質問したい。  今度の交付税でございますけれども昭和五十年度におきましては、都道府県と市町村の配分割合はめどとしてどういうことになりますか。
  173. 森審一

    ○森(審)説明員 ただいま立てております交付税の全体計画、つまり五十年度の需要額、収入額の府県、市町村ごとの増加見込み額、これに基づきまして計算をいたしますと、府県が五千八百七十九億の増加で、市町村が三千六百六十四億の増加で、合計普通交付税の増加学九千五百四十三億円、こういうようにただいまのところでは計算を立てております。
  174. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そんなことはあなたの方からいただいた全体計画の中でわかっているのですよ、わざわざ繰り返さぬでも。いただいているあなたの資料にそう書いてあるんだから。私がお伺いしたいことは、これは増加分でしょう。増加分の配分を全体計画の中で示しているのでしょう。根っこの方からどういう割合になるか、こう言っているのです。
  175. 森審一

    ○森(審)説明員 率で申し上げますと、道府県分が五四・八%、市町村分が残りの四五・二%になる計算でございます。
  176. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そうなりますか。そうならぬはずですがね。
  177. 大西正男

    大西委員長 この際申し上げます。  ただいま大蔵大臣が出席されました。出席時間に限りがありますので、理事会での申し合わせのとおり、直ちに大蔵大臣に対する質疑を行いたいと存じます。細谷治嘉君。
  178. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は社会党を代表いたしまして、短時間でございますけれども大蔵大臣に地方財政問題の根本的な問題の二、三について御質問したいわけです。  いま地方財政の危機ということが叫ばれておるわけです。そしてそのためには、たとえば交付税の増率なりあるいは自主財源を強化すべきである、こういうことが言われておるわけでありますが、大蔵大臣は現在の地方財政の危機というのはどこからきていると認識されておるのですか。
  179. 大平正芳

    ○大平国務大臣 昭和三十年ごろ、地方財政は文字どおり、あなたの言われるように危機に逢着したことがございました。けれども、今日の地方財政はその当時の地方財政に比較をいたしますと、そういうような危機にあるとは私は思いません。  それから第二に、地方財政の危機ということか言われますが、もし地方財政が今日危機でございますならば、同じように中央の財政も危機であると思うのでございます。私といたしましては、いま去年からことしにかけての事態というものをもう少し究明さしていただきまして、これに対処することをじみちに考えるべきときであろうと思うのでございまして、これをいたずらに――いたずらにという言葉は適切でないかもしれませんけれども、これを端的に危機という断定をいたしまして、それに対しましてこうする、ああするというようなことは、少しまだ時期尚早でないか。いま、まず今日の事態を十分究明していくということに努めて、そしてそれをベースにいたしまして、今年度何ができるか、何ができないか、そのあたりを模索してみたいといま考えております。
  180. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大臣は危機という言葉の表現について渋っていらっしゃるのですけれども昭和三十年代、いわゆる地方財政の危機が起こったから、それから三十五年に高度経済成長政策が進められてまいりまして、その間、国の財政も硬直化している、こういうお言葉でございますが、昭和三十年代にはその危機に対応し、あるいは高度経済成長政策というものに対応しつつ、いろいろな地方税財源強化というのが行われてまいりました。一つは、当時交付税が二二%であったものが今日の三二%ということで一〇%上げられておる、こういうことがあります。それからもう一つは、減税のたびごとに、たとえば地方たばこ消費税を引き上げるとかあるいは地方交付税率を引き上げるとか、こういう措置が行われました。第三番目は、たとえば勤務地制度改正とかあるいは地方公務員の退職金制度が創設されたとか、こういうような場合には何らかの財源措置というものがやはり行われてまいったわけであります。そういう形において、地方たばこ消費税も当時と比べますと伸びておりますし、新しい税、たとえば所得税の一部が三十七年に地方に移譲されたとかあるいは地方道路税あるいは軽油引取税の引き上げとかあるいは自動車取得税の創設とか、こういう新しい税財源というものが地方に付与されました。  ところが、四十年代に入りましてから交付税率は三二%で全くそのまま。新しい税財源といいますと、ことし創設されました事業所税、こういうものがございますけれども、当時と比べますと比較にならないような、国が地方に対する財源措置を怠っている、こういうふうに申すことができると思うのでありますけれども、いかがですか。
  181. 大平正芳

    ○大平国務大臣 昭和三十年ごろ、先ほど申しましたように地方財政は大変困難な状況に陥りまして、多くの地方団体が赤字に転落いたしました。その中で再建団体を指定をいたしまして、特別な措置を講じなければならぬというような事態に立ち至りましたことは、細谷さんも御承知のとおりでございます。当時のそういった状態は、その後、あなたがいま言われましたように、地方の財源がみずからの努力と中央の配慮によりまして充実してまいりまして、ほとんど赤字団体は解消に近い状態になりましたわけでございます。また、地方の単独事業に振り向ける財源も年々歳々若干ずつ充実してまいりまして、地方財政に対してその比重が高まってまいりましたことは非常に堅実な前進であったと思うのでございます。したがって、私どもといたしましては、地方財政がついこの間までは一応順調な足取りで実質的な充実を見ておるというように見ておったわけでございます。しかし、去年からことしにかけまして若干の問題が出てきておりますことは御案内のとおりでございまして、この実態が、つまり人件費に由来するのかあるいは超過負担に由来するのか、あるいはいわゆる福祉行政の先取りに由来するのかあるいは人口の急増というそういう基盤の変動に由来するのか、それとも財政の仕組み、あなたの言われるように中央における財政措置対地方に対する財政措置に問題があるのか、そういった点私は、先ほど申しましたように十分見きわめていかなければならぬのではないかと思うのでございまして、いま、それでは何がその原因を形成しておったかということにつきまして断定的に申し上げる自信がないわけでございますが、いろんな要因があるに違いない。せっかくいま究明いたしておるところでございまして、大蔵省におきましても、予算は成立さしていただきましたけれども、引き続きこの勉強をいたすように督励をいたしておるところでございます。
  182. 細谷治嘉

    ○細谷委員 お答えが明確じゃございませんけれども、やはり今日の国の財政の硬直化あるいは地方財政の硬直化あるいは危機と呼ばれる根本的な原因は、何と言っても、いま五十年に入りまして、四十九年来起こりましたスタグフレーション、インフレと不景気、税収は期待できない、こういうこと、しかもインフレ下であっていろんな人件費なり物価が上がっていく、こういうところにあると思うのでありますけれども、それにいたしましても、四十年代に入りましてから具体的な財源措置自治省あるいは大蔵省において、三十年代と比べますと、かなり怠ってきておる、こういう点が一つ指摘できると思うのであります。  第二の点は、三二%の交付税に、ごみ捨てのように何もかにもここにしわ寄せをしてきているという問題点がやはり指摘できるのじゃないか。ごみというと大変失礼でございますけれども。たとえは大学の助成について改めて別途国からの一千億を超す補助金が出されるわけでありまして、これは五〇%めどにしていくわけでありますから、増加するでありましょう。これに伴って、たとえは私立の高等学校等についての補助金というものを県に支出さしておいて、その裏づけを交付税財源措置をするというような問題、あるいは人材確保、こういうような問題について当然地方の負担が起こっておるわけでありますけれども、それについての財源措置をしない、あるいは過疎過密問題というものが急激に進みまして、過密地帯においては高等学校を幾つ建てても直ちにマンモス高等学校になってしまうとか、あるいは土地がものすごく高騰した、こういうような問題で大変な予想外の需要というものが起こってきている。そういうものをすべて三二%という枠内の交付税措置に全部押し込めてしまっていっておる、こういうことが大きな問題だろう。  もう一つは、特に最近所得税の課税最低限との関連において、五十年度においては国税の減税、所得税の減税なんてほんのちょっぴりでありますけれども、住民税の減税というものがかなり大幅に行われた。四千数百億円の減税が行われた。ここ数年行われているのにかかわらずこういうことについて何らの財源措置が行われていない、こういうことでありますから、新しい政策というのが織り込まれた場合には交付税の引き上げをするなりあるいは別途、たとえば私立の高等学校については今年新たに補助金制度というものができて、八十億円が計上されていっておるわけでありますから、こういう方法によらないですべて交付税に押し込んだところに今日の交付税の重大な変形、ひずみ、それから総額の不足、こういう問題が起こっていると思うのでありますが、これはいかがですか。
  183. 大平正芳

    ○大平国務大臣 細谷さんと私は見解を異にいたします。  先ほど申しましたように、地方財政は、幸い一時の窮境を脱してだんだんと内的な充実を見てきたと思うのでございまして、それは単独事業の伸長にもみられるわけでございますし、行財政の充実にも見られると思うのでございます。でございますから、地方財政がもしあの当時の窮境から依然としてはい上がることができないでおるということでございますならば、おしかりは甘受いたしますけれども、地方財政は、幸いにみずからの努力と中央の配慮によりまして漸次充実してまいったということでございますので、中央の仕打ちがつれなかったとは私は思いません。  また、三二%の交付税交付支出の中に何でもかんでも押し込んでしまってということでございますが、これが定着するまでにはいろいろな歴史を経て、経過を経てまいりましたことは、あなた自身が一番御存じのことと思うのでありまして、ようやくこの三二%のところで御納得を得まして、それ以来、地方財政も充実の方向をたどることができたわけでございまして、この三二%の率そのものには別に今問題があるとは私は思っておりません。  ただ、あなたが御指摘のように、私学に八十億の補助金を出しましたが、それは地方の私学助成の呼び水に使っておるわけでございまして、それは御指摘のとおりでございます。本格的な私学補助、私学に対して中央が助成するという挙に出ていないこともあなたの御指摘のとおりでございまして、私はむしろそうすべきではないと考えたわけでございます。いまの財政制度のもとにおきましては、私ども考えているラインで物事を処理していかないと、いまの地方、中央を規律しておる財政制度全体が崩れますので、ああいう仕組みをとらざるを得ないと考えてとったわけでございまして、人口急増問題、私学に必要な財源にいたしましても、これは基準財政需要としてそれぞれ計算されて、それから人材確保法の財源にいたしましても、それぞれ消化する道が開かれておるわけでございまして、その仕組みがいい悪いの問題はあろうかと思いますけれども、その仕組みをとっている以上は、私どもがいま考えていることに間違いはないと考えておるわけでございます。  それから、住民税の減税、所得税減税が今度ノミナルな減税に終わったが、住民税は相当減税をしたということでございます。しかし、これも去年からことしにかけての経過は、あなたがよく御承知のとおり、二兆円減税というものの平年度化がことしに延びてきておるわけでございますので、ことしの減税だけで実質の負担の減を計算されないようにお願いしたいと思うのでございます。  いずれにいたしましても、私どもとしては、いまとっておる制度に乗っかって考える以上は、こういうやり方しかないのではないかと考えております。しかし、あなたが御指摘のように、いろいろな問題がいま地方財政に出てまいっておりますし、中央との間にも問題が出ておることを否定いたしかねるわけでございますので、私といたしましては、冒頭にお答え申し上げましたように、この原因を静かに究明させていただいて、有効な対処、方針を打ち出していかなければならないとせっかく勉強いたしておるというのが今日の状況でございます。
  184. 細谷治嘉

    ○細谷委員 冒頭、見解を異にするという大だんびらをふるわれますと、それじゃ大臣、戦後たとえは三十年代からの二十年間の地方財政計画にあらわれておる地方財政の構造的な推移、変化、こういうものを見てみますと、私も大臣の見解には真っ向から意見を異にする、こういうふうに申し上げざるを得ません。そういう点でひとつ大臣、その後で具体的な問題を言われたわけですけれども交付税の税率の引き上げなりあるいはいわゆる問題の超過負担の具体的な解消措置なり、あるいは何でもかんでも福祉優先という中において地方の果たすべき役割りは大きいわけでありますから、そういう政策転換の土台つくり、こういう形において篤と地方財政について勉強をしていただきたい、そうして具体的な措置をお願いをしたい、  こう思います。  時間がありませんから、最後に一つ。この委員会でもすでに何人からも質問が出ておるわけでありますけれども、四十九年度の大蔵省発表の三月の国税収入というものを見ますと、大体新聞報道によりますと、八千億円程度の減収が国税において間違いない、その大部分というのが所得税なり法人税なり酒税であることも間違いない、こう思います。そうなってまいりますと、四十九年度の補正予算は済んじゃっておるわけですから、この精算という問題が次の次の年、五十一年度に起こってまいります。これについては、すでに予算措置したことについては保証するということであります。  それからもう一つは、必然的にいまの景気の動きからいきますと、五十年度に計上されております国税の伸び、こういうものも非常に私は心配をいたしております。そういうことになってまいりますと、必然的に、たとえば所得税は納入人口で一%、所得の伸びで一七%、合わして一八%所得税が伸びる、こういうことで見積もられておりますし、法人税もかなり落ち込んでおるようでありますから、私は五十年度の段階においてかなりの税の歳入欠陥というのが国税において生まれてくる。そのうちの三税の三二%分という交付税に穴があいてくる。この問題については、特別会計で借り入れ等なり何かをしてこの予算に計上した金額は保証いたします、こういうことであります。  私が質問をいたしたい点は、かつて四十年度に大変な税収の落ち込みがあったときに、地方交付税が、精算すると減額をされるわけでありますけれども、地方交付税の減額を取りやめて、そして特別会計に借り入れる措置じゃなくて、国の方で穴埋めをしていただいた例がございます。いわゆる赤字国債を出したあの年ですね。そういうことで処理すべきではないか、こう思うのです。ただ、四十九年度予算に計上した数字、五十年度予算に計上した数字四兆四千億という交付税は保証しますということだけではなくて、何らかの形で、全額借り入れじゃなくて国費でこれを補てんするということを前例にならってすべきではないかと思うのですが、この点いかがですか。
  185. 大平正芳

    ○大平国務大臣 大変残念なことでございますけれども、四十九年度の国税の収入が予定に達しないで、御指摘のように、八千億程度の自然減収と申しますか、そういう状態を招来いたしましたことは大変残念に思いまするし、私もその責任をいたく痛感いたしておるところでございます。しかし、この中で三税分は恐らく六千三百億程度になろうかと思っております。まあしかし、これはすでに地方には補正予算を通じてお渡ししてしまったことでございまして、どのようにこれを精算いたしますか、問題はありますけれども、これは将来自治省初め政府部内でよく相談して処理していきたいと思って、いま私は確たる方針をまだ固めておりません。しかし、あなたが御指摘のとおり、五十年度の予算にわれわれが歳入の見積もりを立ててございまするものが予定どおり歳入として期待できるかどうかということは、確かに重大な問題だと考えております。そして、あなたが御心配のように、それが従来のように自然増収というような形で結果するのではなくて、自然減収になりかねない、そういうおそれが多分に考えられるということも御指摘のとおりに考えております。ただ、しかしながら、ちょうどいま二つのことを私は考えなきゃいかぬと思っております。  一つは、いま年度が始まったばかりでございますから、私どもは五十年度の予算を成立さしていただいたわけでございます。で、国会に対して、負うわれわれの責任といたしましても、このせっかく成立さしていただきました予算は、忠実に実行してまいるということが行政府の責任じゃないかと思うのでありまして、いまからこれはどうも歳入が大変むずかしくて、本来ならばここらあたりで実行予算を組ましていただこうというように考えることも一つの方法かもしれませんけれども、そういう退嬰的な方法はとるべきではないと私は考えております。したがって、あなたがおっしゃったように、この五十年度予算は私は忠実に実行したい、それが国会並びに国民に対する政府の責任だと考えております。  それから第二は、ちょうど経済がこのように冷え込んだ暗い状況でございます。したがって、予算の執行が歳入関係から危ぶまれるということになりますと、これまた経済を支える大きな一つの柱が揺らぐわけでございますので、それも私は決して政府のとるべきことではないと思うわけでございます。したがって、この予算は何としても忠実に鋭意実行さしていただいて、それを通じて経済にも活力を与えて、そして何とかこの難局を切り抜けたいと考えております。したがって、いま私はこの予算案について後ろ向きなことを全然考えていないのでございます。また、そうすることによっていまの危局を打開していかなきゃならないと考えております。これがいま政府の立っておる立場でございます。
  186. 細谷治嘉

    ○細谷委員 五十年度の予算が成立したばかりでございますから、大蔵大臣が後ろ向きということは考えられない、それは当然のことだろうと思う。問題は地方に直接関係する税の落ち込み等も、現在の経済情勢の中ではどうも確実視される心配がありますから、そういう点もひとつ責任を持って予算を執行する、こういうことで前向きでその辺の関連の問題にも取り組んでいただきたい、これを私は強く要望しておきたいと思います。  関連質問がありますから……。
  187. 大西正男

    大西委員長 山田芳治君。
  188. 山田芳治

    ○山田(芳)委員 時間の関係がありますので、大蔵大臣に直接ということでなしに、大蔵大臣に聞いておいていただいて、主計局次長さんがおられるようですから、ひとつ御答弁をいただきたいと思うのです。  五十年度から住宅公団の関係施設の財政制度の立てかえ措置についての内容が改善されましたから、人口急増市町村は非常にこれによってメリットを受けているということで、多く期待されているわけですけれども、聞くところによりますと、現在建設省と大蔵省との関係の折衝の中で、財政力指数によってその改善措置の内容を異にするというような意見が出されているということを聞いております。ところが御承知のように、住宅公団の団地というのは市町村を越えて建てられるという例が非常に多いわけであります。その場合に、たとえば学校とか幼稚園、保育所、公民館、道路等が住宅公団で立てかえをされる場合に、その間の十年間あるいは五年間、三年間というふうに規模に応じて無利子の措置がされるようになったわけでありますが、財政力指数のようなものを用いてこれを行いますと、同じような状況でありながら、ある町村はそういう恩恵を受けるけれども、隣の町村で財政力指数が若干高いということになるとその恩恵は受けられないというような、アンバランスであることになります。  そこで、われわれといたしましては、現在公団の団地というものに対する拒否反応が少なくとも三大都市圏においてあるわけでありますから、こういう改善措置財政力指数に関係なくひとつ判断をしていってもらいたいと考えるわけであります。関係市町村が非常にこの点を心配しておるということがありますので、この点についてどういうふうな協議になるのか。大蔵省の方針が現段階でおわかりであればお知らせをいただきたいし、協議中であるならば、私どもの言うように財政力指数というようなものを用いないでやっていただきたい。財政力指数自身も、御承知のようにこのような地方財政の危機あるいは税の落ち込みというものがありますから、過去三年の平均などを用いても必ずしも実態に即さない状態であろうと思うのでありますが、この点について言お答えをいただければ幸いです。
  189. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 いま先生からお話がございましたように、大規模団地の建設に伴ういわゆる立てかえ施行の問題、これにつきましては、現在具体的な条件は建設省と協議中でございます。ただその場合に、この制度が、ある期間無利子ということを伴います、また償還に非常に長期を要するということで、やはり住宅公団にとりましては相当の財政的な負担になる。と申しますことは、一般会計から住宅公団への補給金という形でいわゆる大規模団地が建設されます地方公共団体に対する間接的な助成が行われる、こういう制度でもございます。そこで、いろいろ御質問趣旨はありましたのですが、私どもとしては、すべての市町村について大規模団地ができました場合に一律にこれを適用すべきものというふうには必ずしも考えておらないわけでございまして、その場合に財政力指数を用いるということも有力な一つの基準であろうというふうに考えております。
  190. 山田芳治

    ○山田(芳)委員 それなら大蔵大臣にひとつ要望しておきますが、そういう答えでは、われわれとしては財政力指数によって区分されると、小さな町村等において、ちょっと基準財政需要の方が超過をするというような段階において、そういう立てかえ施行の機関がメリットを受けられないということは、同じように市町村を越えて建てられる団地の中で非常なアンバランスができてくるということになると、ますます住宅公団の団地に対する拒否反応が示されるという可能性があるので、この点はひとつ大蔵大臣においても十分配慮しておいていただきたいということを強く要求をしておきます。  時間がありませんので、以上で終わります。
  191. 大西正男

    大西委員長 島田安夫君。
  192. 島田安夫

    ○島田(安)委員 大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、私はこの間本会議で社会福祉特別税を創設されたらいかがかということをお尋ねしたわけでございますけれども、いまはその段階ではないというような大臣の所見を伺いました。しかし、私ども考えますのに、国の政策自体にいたしましても、財政経済の基調というものは高福祉、こういうふうに転換をなされておる。しかも、しばしば話がありますように、今日の地方団体財政事情というのはきわめて窮乏しておりますことは御承知のとおりであります。歳入の面におきましては、税源の伸びの鈍化、あるいはまた一方におきましては、歳出の面ではいろいろな財政需要が増高しておる、こういう条件の中で、幾ら高福祉というようなことを、また住民意識が最近強くこれを求めておっても、いまの地方財政の状態の中でこれを推進しようとしましても、なかなか容易ではありません。したがって、現在それぞれの各公共団体間の福祉に対する施策が非常にアンバランスになっております。たとえば、東京都等におきましては、特別福祉手当といいますか、こうしたものを身寄りのない老人であるとか重度障害者であるとかに月額二万円の支給をしておる。また老人の方に対しましても、六十五歳以上からこうした特別の福祉年金というものを支給している。また県のそれぞれの福祉政策として年金等の支給をしておる府県は非常に多いわけですけれども、新しい目的税としてそうしたものが創設されますと、この財源に基づいて、行政区域が変わっても、節度ある福祉といいますか、均衡ある福祉というものが進展できると思うわけですが、これについて、なぜそうした目的税としての福祉特別税というものは創設できないのか。  時間がありませんのでもう一つ。地方公共団体等で重油消費税というようなものを公害対策等の目的税として創設したらいかがか、こういう要請が三、四年前からきわめて強く出されておりますことは御承知のとおりであります。これにつきましては、やはり地方団体財政需要、そうして公害対策、こうしたものから、軽油引取税において道路の整備がなされる。今日公害問題がこのようにやかましくなってき、また地方団体といたしましても当然これにいろいろな対処を迫られておる、こうした時期でありますから、やはりそうした一つの新しい目的税というものを創設して住民の要求にこたえる、こういうことは必要ではないかと思います。私は、たとえば一連の福祉施策等にいたしましても、高福祉、ある意味の高負担、これは現在の、あるいはまた将来日本が迎える財政状況等から考えましてもやむを得ぬじゃないか、このように思うわけですが、この二つの新しい税制の創設について具体的に、なぜいけないのか、こうしたものがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  193. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 最初に私から税制の立場お答え申し上げます。  いま島田委員がおっしゃいましたような社会福祉税といいますものは、実は税としまして一体納税者、課税標準をどういうふうにお考えなのかということはよくわかりません。恐らく、いまお話のような、社会福祉を目的とした特別の財源を得るための目的税という御構想であるかと思いますけれども、社会福祉税にしましても、あるいはその次におっしゃいました重油消費税にしましても、目的税ということでお考えになりますれば、税制一般としてお答え申し上げれば、だんだんこういうふうに財政が非常に窮屈になってまいりますれば、ますます特別税の存在というものが一般財源として桎梏になってくるということは、これは国税としてもいろいろな問題を持っておるわけでございます。いまの御構想では地方税としてお考えのようでございますけれども地方税としますれば、なおさら目的税としての限界というものがあるのではないかというふうに私は思っております。しかし、それは別にいたしまして、社会福祉というものが非常に重要なこれからの財政需要を占めるでありましょうから、それのための財源を何らか考えなければならないという御趣旨があろうと思いますけれども、それならばなおさら、社会福祉というものが一般財源として重要性を占めてくるのではないかというふうに考えるわけでございます。  さらに一歩を進めまして、しかし地方税も含めましてわが国民の税負担がまだ世界各国に比べて低いのですけれども、それは一にかかりまして、私は一つの大きな原因としましては、社会福祉の程度によると思っております。したがって、社会福祉のレベルを高めるために国民の税負担を上げるという意味におきまして、国民全体がそういう税負担を新たにしようという気持ちでそういうものを考えてはどうかという御趣旨であれは、われわれとしましてもなお今後そういう面から検討をしなければならないと思っております。  ただ、さらにそういう場合に、地方税として果たして社会福祉税というものが適当かどうかということがございます。おっしゃいますような社会福祉としての財政需要でございますれば、かなり各地方公共団体間におきますところの普遍的な財源所要額というものがあると思います。それを一体、各地方公共団体におきますところの所得なり財産という財源をめどにしまして課税をいたしましたときに、うまく財政需要にマッチできるかどうかという問題がございます。特に重油消費税のような御構想であれは、いま重油の基地と申しますのは、わが国内におきましても限られたところでございます。そういうもので、そのところの公害だけを防止するために財源を賄うということになりますれば、いよいよその地方団体特有の財源が非常に大きくなる。それはもちろん、それに対応しますところの公害防止施設の費用というものはかなり要りましょうけれども、その場合にも、やはり重油消費税という形でございますれば、私は地方団体間におきますところの普遍性という要請から見まして、かなり問題があるのではないかというふうに思っております。したがいまして、いま御構想の社会福祉税にしろあるいは重油消費税にしろ、御構想としてはなお非常に私どもも研究の対象にいたさなければならないと思っておりますけれども、いま申し上げましたようないろいろな難点があるというふうに考えております。
  194. 島田安夫

    ○島田(安)委員 重油消費税等につきまして、重油の基地に課税するか、あるいは消費全体をとらまえながら課税していくか、私は後者の手段をとるべきだと思うわけですけれども、たとえば今回新しく設けられました事業所税にいたしましても、これは大都市財源の固有財源としてこうした制度が設けられる。いまおっしゃるように外的なといいますか、こうしたものを考えていきますと、いまの財政需要の中で特有な条件による施設の整備、あるいは公害問題等にいたしましても、そうしたものはなかなかできぬじゃないか、こう思います。したがって、いまの回答は若干食い違っておると思うわけなんですが、あえて申し上げますと、事業所税のごときは踏み切られる、じゃ重油消費税においてはなぜできないかということになりますと、これを裏づけるような、いまの答弁では理論にならないんじゃないかと私は思うのですが、どうですか、その点。
  195. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 今回創設になりました事業所税でございますけれども、大都市の財政需要を考えて設けられたものでございますけれども、その税の性格から申し上げれば私は一種の大都市事業税というふうに考えております。課税標準は建物であり、あるいは給与額でございますから、大都市にとりましてはかなり普遍的でございますけれども、重油消費税ということであれば、仮に、おっしゃいますように重油を消費するところで取るとしましても、かなり部分的なものに、地域的に限られる条件があると思っております。
  196. 島田安夫

    ○島田(安)委員 そうしますと、経由取引税はどうなんですか。
  197. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 軽油はかなり消費の末端に近いところで消費をされるのでありますけれども、重油は御承知のようにもっと前段階で重油という形で終わるわけでございますから、軽油と重油におきまして、たとえば消費という行為直前のところで課税しますとしましても、そのスポット、課税地域としますとかなり大差があると思います。
  198. 島田安夫

    ○島田(安)委員 地域的な消費の差はあると思いますけれども、重油の消費というものに対する実態を御存じないじゃないのですか。たとえば基地のみならず全国的に重油が消費されておりますことを知っておられますか。
  199. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 重油はもちろんかなり使われておりますけれども、そのときにそういうものを重油基地に対応しますところの公害防止の財源としまして考える、そのときの結びつきのことを私は申し上げておるつもりでございます。
  200. 島田安夫

    ○島田(安)委員 最後に、時間もありませんので大臣にお尋ねしたいのですけれども、大臣だって恐らくお感じになっておると思いますけれども、いろんな住民の要請が高まっておる。地方公共団体においてはやりたいこと、やらなければならないこと、これはどんどん増高しておる、こういう条件の中で税制そのものを、少々めんどうだからまあ現体制の中でというようなことを考えていきましても、地方住民の要求にこたえる地方財源というものは余りにも切迫しておるんじゃないか、生活環境の整備というような点から考えましても、絶対やらなければいかぬと思われることがそのまま放置されておる。何とか解決しなければならないと思うわけですが、将来やはり地方財源の強化、こうした意味からこれらの問題を積極的に取り上げて、何とか住民の要求にこたえ得るための自治体の財源強化というようなことについてお考えがあるのかどうか、これだけ簡単にお尋ねして、私の質問は終わります。
  201. 大平正芳

    ○大平国務大臣 第一、高福祉はいやおうなく高負担に行かざるを得ないことは島田さんと同じように私も考えております。中央地方を問わず、したがって高福祉を享受するためにそれだけの財源の確保ということは、これからますます大きな課題になってくると思います。それをあなたの言われるように目的税でやってまいるのがいいか、一般的な税源の充実で確保すべきかということでございますが、当面私どもいま主税局長お答えいたしましたように、一般的な財源で確保すべきではないかという考え方に傾斜いたしておりますことは、いまお聞き取りいただいたように考えております。  しかし、あなたが言われたことは検討に値する課題だと思いますけれども目的税というのは、このように財源がだんだんと緊張した課題になってまいりますと、一般財源の税源をできるだけ確保をすることに精一ぱい努力しなければならぬわけでございますので、特別税によりまして税源を侵食されるということに対しましては、これからまた新たな政治的緊張を生むのではないかと思います。しかしそれは高負担時代に処して検討すべき課題であると思います。  たとえばことしでも、酒、たばこの値上げをお願いいたしておるのでございますが、これはちょうど中央と地方と半々に益金を分けてまいるわけでございますが、これに対してさえ強い抵抗があるようでございますので、これは非常に一般的な財源で、相当マッシブな財源が確保できることでございまして、私としてはこれはもっと御理解いただけるのじゃないか。持ち出してみたら意外に強い抵抗にあうのです。増税というのはそういうものでございますので、これはあなたの言われる目的税につきましても、私は税源確保という観点からいくとごもっともでございますけれども、これを実際物にしていくにつきましては、よほどいろいろな点についての問題性を持ってくることと思うのでございまして、政府としてもよく勉強をいたしたいと思いますけれども、島田さんにおかれましてもお気づきの点、われわれに御注意を賜りたいものと言います。
  202. 島田安夫

    ○島田(安)委員 以上で終わりますが、目的税というものがなかなか困難ということであれば、いわゆる地方団体の自主財源の強化ということ以外にないわけなんですが、そうした意味から言いますと、私は大臣に交付税率の引き上げ等、改めて御検討いただきたいと思います。  以上で終わります。
  203. 大西正男

    大西委員長 三谷秀治君。
  204. 三谷秀治

    ○三谷委員 時間がありませんから各論にすぐに入りますが、地方交付税率の引き上げは四十年以来十年間にわたりまして行われておりません。その間、不交付団体などは年々減少しております。四十年の百八十五団体から四十九年末には五十四団体に減少しております。ですから交付団体が逐次増加しております。不交付団体といいますと、いま地方自治体の一・六%にすぎない、そういう状況になってきたのであります。  そうしますと、財政補てん機能としましては絶対量が不足してくる、これは当然物理的な問題であります。しかるに税率の改定が行われていない、なぜかということですね。これをお尋ねしたい。
  205. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 御質問でございますが、数字の問題でございますから、最初に私からちょっと御答弁させていただきます。  四十一年に交付税率が現行の三二に引き上げられましてから、交付税はその後税率の引き上げがないではないか、したがって地方の一般財源が枯渇しているではないかという御質問でございますが、地方財政歳入に占めますところの一般財源、すなわち地方税と譲与税と交付税と三つを加えましたものの割合で見ますと、四十一年に引き上げが行われましたときに五一・二%、これは純計決算で申し上げております。それが現在、四十八年に判明しております最も新しい決算で五三・八となっておりまして、三十年代に比べればかなり高い水準で推移しておる。したがって一般財源として特に増強を図らなくても地方財政としてはかなりの水準で推移し得た、そういうふうに考えておるわけでございます。
  206. 三谷秀治

    ○三谷委員 先ほどの大臣の答弁を聞いておりましても、いま地方自治体が置かれている条件について全く無知識といいますか認識が非常に浅いようであります。いま地方自治体の状態がどうなっているかということは、地方六団体などの要望にも非常に明確に出ておるわけでありますが、財政的に行き詰まってしまっている。しかも短期融資の転がしによりましてやっとこさ急場をしのぐという自治体がきわめて多くなっているわけであります。そういう状況の中におきまして、いま何年かの事例をお出しになりましたが、要するに住民の需要というものが大きな変化を来しておるという問題などを抜きにしまして、単純な計数上の問題だけでおっしゃっても、それは合点のいくものじゃありません。御承知のように、いま地方六団体、知事会にしましても市町村会にしましても、全部交付税率を上げてほしいという要望を繰り返しやっておるのであります。これに対してなぜできないのかという点についてお尋ねしたのです。
  207. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま事務当局の方からもお話がございましたように、自主財源は以前に比べて充実を見ておるということでございます。それからまた、地方財政が非常に苦しいと先ほど細谷さんからのお話もございましたけれども、中央と地方といろいろな面から比較いたしまして、私は決して地方が中央よりより苦しいとは言えないと思うのでございます。これは相対的な問題でございまして、中央が非常に楽をしておりまして、地方にはかり難きを強いておるというのでありましたらおしかりを甘んじて受けるわけでございますけれども、中央はなかなか困難な状況でございまして、地方の方に御理解をいただいて御協力をいただかなければいかぬと考えておるやさきでございます。  それからまた交付税率の問題だけを取り上げるわけにもいきませんで、先ほど申しました地方の自主財源、それから交付税の問題、それから地方債の問題等々、いろいろ地方財政全体を考えてみまして、私どもいま交付税率を引き上げなければならぬというふうには考えておりません。
  208. 三谷秀治

    ○三谷委員 交付税率の引き上げにつきましては交付税法の六条の三の二項に規定があるわけであって、引き続き一定限度の財政上の困難がある場合には引き上げを行うという規定になっております。これは死文化したわけじゃない。しかもいま自治体というものが非常な財政の困難に逢着しておるということは、これはいまここで私どもが説明しなくても、マスコミなどの論調を見ましてもこの点は異口同音に認めている問題であって、ことさら数字を挙げてここで具体な説明をする必要はないと思うのです。ですから、この交付税率の引き上げという問題は当然条件ができてきておるというふうに私ども考えておるわけでありますが、あなた方の方では、地方の自主財源は非常に豊富である、だからそういう懸念は全くないのだ、そういう御見解のわけですか。
  209. 大平正芳

    ○大平国務大臣 豊富であるなどと言っておるわけじゃございませんで、中央も始末しなければいかぬし、地方にも始末をお願いしなければならぬということでございます。不自由をしのいでもらわなければならぬと考えておるわけでございます。
  210. 三谷秀治

    ○三谷委員 さっき地方と中央との関係でおっしゃいましたけれども、実際の住民福祉の事業というものは全部地方自治体がやっておるのでしょう。ですから高度経済政策を改善をして福祉優先でもやっていこうということになれば、ことに地方財政の問題というのが重視されなくちゃいけませんけれども、そういう観点に立ちました配慮や改善というものは全くお考えになっていないということは私ども全く合点がいきませんが、地方財政の今日の窮乏打開のために何らの対策もあるいは方針もお持ちではないということなんでしょうか。
  211. 大平正芳

    ○大平国務大臣 三谷さん、大変おしかりを受けるわけですけれども、戦後、地方自治、地方行財政の歩みというものを見てみた場合に、私は、行政面におきましても財政面におきましても相当顕著な充実と発展が記録できたと考えておるわけでございます。これは地方の御努力もございましたが、中央におきましても地方自治の重要性を十分考えましてきめ細かく配慮してまいりましたことが結実したと私は考えておるわけでございます。決して地方を無視しておるなんということはないのであります。地方を無視して中央があるわけでは決してないのでございまして、やはり相ともに日本を背負った二つの両輪でございますので、お互いに助け合いながらやってまいるという以外に分別はないと思います。
  212. 三谷秀治

    ○三谷委員 さっき、次長さんですか、おっしゃいましたね。何年度の自主財源の率とそして最近の率とおっしゃいましたが、その間における社会情勢の変化について全くお考えになっていないのですよ。たとえはいまから十年前といいますと、公害対策費なんというものはなかったのですよ。いま大都市におきましてはどれだけそういう費用が入っているか、あるいは福祉の行政の充実に伴いますいろんな施設とか人員とか、こういうもりも昔とは違ってきまして、無視できなくなってきておる。そういういろんな変化というものがあるわけでありますから、変化に基づいて計数も考えていかなければ、十年前、二十年前の比率を持ってきて、今日において比率が高くなっているのだ、そんな議論はだめですよ。  そこで交付税の問題でありますけれども、中央と地方とおっしゃいますけれども、仕事をしているのは地方なんでしょう。中央の直接の仕事なんというものはほとんどありはしませんがな。揺りかごから墓場まで、子供が生まれました赤ちゃんの助成から焼き場の始末まで地方自治体はやっておるわけなんですよ。そこにおきまして当然財源難というものが起きてくれば、これに対しては十年間というのは交付税につきましては全然さわってないわけですから、もはやこれは解決する時期が来ておるというのは当然の話であって、これをおやりにならないという  この委員会におきましても、この交付税率の改定についてはしばしば附帯決議がなされておるわけなんです。私どもだけ言っているのじゃない、これは皆さんおっしゃっている。つまりこれは一つの世論になっているわけです。これがなぜやれないのか、そこのところがちょっとも合点がいきません。
  213. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 先ほど先生からもお話がございましたように、地方交付税法の六条の三では、毎年度分として交付すべき普通交付税総額が引き続き各地方公共団体について算定した額の合算額と著しく異なることとなった場合においては、地方財政もしくは地方行政に係る制度改正または六条一項に定める交付税率の変更を行うものとする、こうございます。結局地方交付税率というものは基準財政需要と基準財政収入との推移を見て、歳入歳出両面を総合的にとらえて初めて論議さるべきものでありましょうし、その場合にも、先ほど申し上げましたように、地方制度改正かまたはその税率の変更、いずれかの方途でこれに対応すべきだというふうに法律規定しておると思います。  私が先ほど一、二数字を挙げて申し上げたことがあるいはお気に入らなかったのかもしれませんですが、四十一年、交付税率が改正されました年と、四十八年度、一番最近まで決算数字がわかっております年と、その七年間に地方財政の規模は三倍半になっております。その伸びの中で、交付税、それから譲与税、それと地方税とを加えた一般財源の割合はほとんど低下していない、むしろ若干上がりぎみであるということを申し上げたわけでございまして、それだけ一般財源が三倍以上伸びておる、それが地方の需要を賄うことができたということでございます。
  214. 三谷秀治

    ○三谷委員 財源が伸びたのと仕事が増加したのと、どうなっていますのか。その方を無視してしまって財源の比率だけ言ってもだめですよ。さっきから言っていますように、新しい需要というのは随分ふえてきているんですから。それに基づいて、いま地方自治体がどういう状態になっているかというところが問題なわけです。  そこで、この問題につきましては、先ほど社会党の方からもおっしゃっておりましたけれども、この交付税率の改定については検討してもらいたい。いつまでもこのままで、そういう古ぼけた資料を持ってきてとやかく言ったって、それは首肯できるものじゃありません。改善してもらうという点で検討してほしいと思います。  非常に急ぎますけれども、次に行きますが、交付税額にも地方税収にも非常に大きな影響を持つものとしまして租税特別措置がありますね。この税の特別措置につきまして、一体どうされるのか。御承知のように、租税特別措置というのは、日本の措置は各国の租税特別措置を全部取り入れた特別措置のデパートみたいになってしまっておる。これは、今日まで高度経済成長政策をとられまして大資本の成長を図るという観点でありましたから、こういうものがあったと思いますけれども、低成長に切りかえるとしますと、この高度経済成長の仕組み、これに手をつけなければいけません。これはどう考えていらっしゃるのか。これは法人税法によります特別減税もありますし、租税特別措置によります特別減税もあるわけでありますが、これは非常に大きなものになっている。たとえば、私どもの方で調べました昨年九月期の決算によりますと、大企業五十社の貸し倒れ引当金が一兆円を超えているのです。しかし、外国の方では、この貸し倒れ引当金なんというものは実際に出た段階で処置するというふうなことになっているようですけれども、政府においては、非常に大きな貸し倒れ引当金を見込んでいらっしゃる。一兆円を超えている。実際に貸し倒れはこの期におきまして二十七億となっておりますね。ですから、全く使い道のない貸し倒れ金というものが毎会計年度において膨大に隠し込まれておる、こういう事実がありますけれども、これについてはどうお考えになっておるのか。  それから、東京都が行いました法人税の実態調査によりますと、資本金が百万円から五百万円の中小企業の税は、利益の四四%から四五%という数字が出ている。ところが百億以上の大企業の場合は、もうけの三二%となっているのですね。大企業ほど低率になってきている。これは税法上の所得計算に問題があるために、法人所得の多くは捕捉されていない、そういう実情があります。ですから、たとえば四十八年度の大阪府の決算によりましても、欠損法人と称するものが三二・四〇%もある。全国的にも三〇%を超しているのです。免税会社ですね。これは好況であろうと不況であろうと毎年ほほ同率のものが出ている。大体三〇%というものが免税会社になっている。これは、欠損法人と言っておりますけれども、税法上の欠損であって、赤字倒産会社でないわけなんですね。結構通常の営業活動をやっている、種々の公共サービスを受けておる、それから、資源を大量に消費しておる、そういう企業であります。これが全法人の三分の一であって、免税になっておる。こういうわけですね。これは明らかに課税標準に問題があるのです。この問題に手をつけるのが非常に重要になってきておる。これは国税三税、要するに交付税の分母を大きくすると同時に地方税収を非常にふやす効果を持つわけでありますが、これについてどう考えるのか、お尋ねしたいと思います。
  215. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 国税におきますところの租税特別措置法によります租税特別措置はいろいろございます。いまおっしゃいましたように、決して各国のものを網羅的に集めたものではございません。そのときどきのいろいろな政策に対応いたしまして、適当と思われるものを取り入れておりますし、また、期限の到来等についていろいろ見直しをしておるものでございます。また最近におきましては、おっしゃいましたように、従来、もちろんかなり生産……。(三谷委員「簡単に言ってください。こちらも時間がないので非常に早口で言っているんだから、そっちも早く言って。余分なことは要らぬから」と呼ぶ)生産第一主義のところを環境整備等に随分ウエートをシフトしできておるつもりでございます。ただ、その中で貸し倒れ引当金あるいは退職給与引当金等について、私どもは狭義の租税特別措置とは考えておりませんけれども、それにつきましては、貸し倒れ引当金の評価性引当金の性格から言いまして、率についての検討は十分やらなければならないと考えております。退職給与引当金につきましては、これは債務性の引当金でございますから、あるということ自体が私はそんなに不合理なものとは思っておりません。東京都が出しましたいろいろな法人税負担につきましても、予算委員会等でお答えしましたように、その物の考え方としていろいろ私どもとして差異があると言っております。たとえは、特別償却制度につきましては、これは新しい機械を取得しましたときにはその期に償却額は大きくなりますけれども、それ以後の年度におきましては、毎年償却額が小さくなるわけでございますから、税金としては取り返されるわけでございます。それから欠損法人につきまして、いまお示しの点がございましたけれども、税法上の欠損は、あくまでも所得はゼロでございますから、法人税の負担はゼロになるのでございます。
  216. 三谷秀治

    ○三谷委員 税法上の欠損といいますのは、もろもろの租税特別措置だとかあるいは法人税法に伴う社内留保だとか、そういうものを含めて、そしていわゆる欠損法人と言っておるのです。会社そのものが赤字になっておるのと違うのだ。社内に留保して隠し込んだものを認めて欠損法人、こう言っておる。そういう意味のことを言っておる。そこですから、いま言いました欠損法人というものが、要するに会社会計上の欠損ではなしに、法人税法上の欠損会社になっておる。ここは修正をする必要がある。これは課税標準に問題があるわけですよ。ここのところを改善する必要がある。たとえは去年も申し上げましたが、去年などは石川島播磨重工が欠損法人になっておる。それから日立造船が欠損法人になっておる。こんなものは資本金二百八十億から三百八十八億の会社なんだ。ことしになりますと川崎重工業、これは四百三十二億円の会社でありますが、これがまた欠損法人になっておる。要するに、その欠損というものが、そういういろいろな処置によってつくり出されておるというところに問題があるのであって、そこですから、租税特別措置についてあるいは法人税法について見直しをする必要がある。これを改善しなければならないのだということを言っておる。
  217. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 いまおっしゃいましたいろいろなものは、租税特別措置法の規定によりまして、あの円の切り上げ当時の為替差損を、特別に会社は利益に計上いたしましても税法上は損金に計上することを認めるという特別措置の結果でございます。したがいまして、その以外のところでは、大体、会社の方で損金として計上しないものを、確定決算上そういうものを取り扱わないものは税法では認めないというのがたてまえでございます。
  218. 三谷秀治

    ○三谷委員 いまおっしゃいました制度上の処置を改善をしてもらうということなんですよ。要するに、租税特別措置なんというのは、高度経済成長を保証する手段としてとられてきておる。ですから、いま高度経済成長政策を改めまして、低成長に切りかえるとかあるいは福祉優先とかいう限りは、ここのところに手をつけてもらうということがどうしても必要になってきておるのです。そのことをいま申し上げた。特に、地方自治体の公共サービスに依存して収益活動を行っておるその企業の三分の一が、事業税も住民税の所得割も払っていない、この事態についてどうお考えですか。  その上、この事業税がコストとして損金扱いされておりますな。この事実をどうお考えになっておるのか。これは所得課税を行っておりまして、コストになる根拠はない。事業活動そのものに課税するのでありますならばコストという理論的な発想が生まれてくる。ところが、収益税でありますならばコストというものは理論的に成立しない。当然損金算入をやめるべきだ。それから比例税率でなしに累進税制をとるべきだ。こういうことが当然理論的に生まれてくる。それからもしも、これが応益原則に基づく物税でありますならば欠損法人扱いなんというものは存在しない。ところが両方うまく運用して、地方自治体の重大な公共サービスを受けながら税金を全く払っていない大企業が、いま言いました三分の一に達している。こういう事態については、当然これは改善してもらう必要がある。
  219. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 事業税は、今日大部分のものは所得課税でございます。したがいまして所得が非常に大きいときには税金が大きうございますし、欠損になりましたときには事業税は納めないということは事実でございます。そういうたてまえでやっておるものでございますが、そういう所得課税であるものを、法人税において損金にするのはおかしいではないかということでございますけれども、これは過去におきましても、たとえば営業収益税当時におきましても法人税の損金にしておったわけでございます。損金にするかしないかということは実は技術的な問題でございまして、損金にしたときに一体総合的な法人税の負担が何%になるのか、損金にしないときに一体何%になるのかということを判断して法人税率を決めるものでございますから、法人税で事業税を損金にするかしないかということは、実は負担としては大きな問題ではございませんと私は思います。  それから、法人税は累進課税をなぜしないのかという御質問でございますけれども、私どもは、法人税といいますのはやはり、これは各国とも同じような考え方でございますけれども、フラットな税金で取るのが大体原則でございまして、低所得のものについて低率の課税を行う、大体二段税率で課税をしておるのが通説でございます。
  220. 三谷秀治

    ○三谷委員 その技術的な説明でなしに、税制の根本問題についてお尋ねしているんであって、いまおっしゃいましたように損金算入するのでありますならば、所得課税にする場合に損金算入する根拠が生まれてこないのですよ。物税であるという観点に立って事業税をつくって、収益活動に対する課税である、こういうたてまえだから、損金算入という根拠が生まれてくる。これが収益課税でありますなら、収益に対する課税でありますから損金算入なんというのは生まれてこない。もしそれを損金に算入されるというのであれば、いまの説明であればこれが一つの租税特別措置になってしまう。そういうことをやってはいかぬということを言っているのですよ。  それで、この問題について地方自治体の特に重大な問題としましては、いろんな公共的なサービスをやっているでしょう。水を供給している、道路をつけてやっている、港湾の整備もやっている。そこにたくさん金をつぎ込んでいる。ところが税金が全く入ってこない。そういう状態が実際あるわけなんでしょう。これは地方団体としましては全く踏んだりけったりの状態なんです。改善してもらう必要がある。いままであなた方がどのような理論的な、事務的な処理をされたかは別としまして、いまの観点で見ますならば当然不合理な問題であって、地方自治体に対して応分な負担をするのがあたりまえであって、そういうたてまえで事業税はつくったものなんですよ。それがいまだに改善されていない。これはまことに奇妙なことなんです。時間がありませんから、これはひとつ大臣の所見を聞かしてください。
  221. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 事業税は、昭和二十二年に創設しまして以来、法人税では損金算入でございます。それから、それより前の営業収益税なんかにつきましても法人税の取り扱いとしては損金算入でございます。損金算入しないで法人税の税率をどういうふうに考えるかということは、それは総合的な負担から判断しなければならないということは、私は前にもお答えしたとおりでございます。
  222. 三谷秀治

    ○三谷委員 損金なんというものは年度年度によって変化があるわけでありますから、個別の会社の負担税率、負担税額ですか、それと関係のあるものじゃないですか。ですから、それは恐らく全体として何ぼくらい損金が出るかというような計算をなさっているかと思いますけれども、そういう考え方は改めた方がよろしい。ここで損金算入をするのは、昭和二十二年から損金算入をされているそうですけれども、根拠がないわけだ、そんなものは。事業税というのはもともとと言いますと、あれは物税という理論でかかったのでしょう。ですが、これは収益活動に対する課税になっている。だから損金ということは一応成り立ってくる。ところが実際の処置は、いま御承知のように、生命保険会社やあるいはガス会社などを別にしまして、全部これは所得課税になっておる。そうしますと、所得に対する課税に損金などがあるわけはない。それに損金扱いしますならば、それはやはり一つの特典的な扱いになってしまう。ですからそれはもうやめてもらいたい、こういうことを言っている。そうしなければ、地方自治体というものは、公共サービスをどんどんしておりながら税金は全然入ってこない。大阪の堺の臨海工業地帯なんていい典型ですよ。あれだけの企業が入ってきて、あれだけの金をつぎ込んでおりますのに、全然これは収入がない。これは同時に、所得税にも影響するわけですし、法人税にも影響しますから交付税にも関係してくるという性質のものです。いずれにしても、税の問題につきましてはもう少し公正に洗い直しをする必要がある。社会的な不公正の最も典型的なものが税の問題なんですよ。これをもう少し改善する必要がある。このことを、大蔵大臣に所見をお尋ねしておきたい。
  223. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのとおり、租税特別措置法ばかりでなく、税制全体を毎年洗い直ししておるわけでございまして、時代の推移に対応いたしまして、対応力をふやすように税制の改正を毎年お願いをいたしておるわけでございます。  それから、企業会計の原則というものをわれわれは無視するわけにいかぬと思うのでございまして、これを踏みにじってまで税金を取る、あるいはまける、そういうことは私はいけないことと考えております。何となれば、税源はことしだけ確保されたらいいものでなくて、末永く税源は安定して確保せられねば中央のためにも地方のためにもならぬわけでございまするので、私といたしましては、企業会計の原則を税制が踏まえて、税源の涵養をしながら公正な財源を確保するように努めるべきであると思います。  租税特別措置法につきましては、これは先ほども申しましたように、ある公害の防止でございますとか、技術の開発でございますとか、貯蓄の奨励であるとかいうような政策目的を促進するために、税の持つ抑止的な機能あるいは促進的な機能を活用させていただいておるわけでございまして、これはいい制度だと思いますけれども、しかしこれがマンネリズムに流れてしまう、既得権化する、あぐらをかいてしまうというようなことにならぬように、先ほど申しましたように毎年毎年見直していっておるのでございまして、すでにもう相当整理されておるわけでございます。所得税を中心にいたしまして五千億ばかりいま残っておるわけでございまして、あなたが言われるようにそんなに大きな不公正をいま結果しておるものと私は考えておりません。
  224. 三谷秀治

    ○三谷委員 時間ですから、これで終わります。
  225. 大西正男

  226. 小川新一郎

    小川(新)委員 四十九年度の国税収入は約八千億円の歳入欠陥を生じ、そのしわ寄せとして交付税が約九百億円当初見込みから減額を強いられる結果となって、地方財政が非常に大きな問題となっております。不況の深刻化によって財政運営というものはいよいよ厳しさを増してきたわけでございますので、この昭和四十九年度の見込み違いというものは当然五十年度以降が問題となってくると思います。  政府の当初見込みでは、五十年度の名目経済成長率は一五・九%、実質成長率は四・三%、雇用者所得伸び率を一七・一%と見込み、これを基礎として税収額を十七兆三千四百億円と算定しております。そういったものが果たしてできるかどうかということを前提にいたしまして私がお尋ねしたいのは、今後景気の変動が地方財政に大きな影響を及ぼすわけでありますが、ここで政府の経済見通しを確認しておきたいわけでございます。  政府は実質経済成長率を四・三%、物価上昇率を九・九%と、まあ一けた台に抑えるというわけですが、大蔵大臣として不況対策とインフレ対策とどちらを重点にこれからやっていかれるお考えがあるのか、上半期、下半期に分けてお考えをお聞きしたいと思います。
  227. 大平正芳

    ○大平国務大臣 物価対策も大事でございますけれども、不況対策もまた大事である。政府として一方に偏るというわけにはまいりませんが、どちらかと申しますと、まだ何と申しましても物価の安定というところに力点を置いた用心深い経済政策がいまの段階では望ましいと考えております。  ことしの経済の見通しにつきましては、例によりまして予算ができる前に見通しを天下に発表いたしたわけでございます。その後の経済の推移はいま小川先生おっしゃるとおり、確かにこれは見直しを必要とするような事態を招いておりますことを私はあえて否定いたしません。けれども、政府としていま新しく経済の見通しを出すということは考えていないわけでございますので、いまこの経済の見通しについてさきに予算編成のときに示しましたものと変えた数字をここで申し上げるという事由を私はいま持っていないことを御了承いただきたいと思います。
  228. 小川新一郎

    小川(新)委員 私としてはそれをお聞きしたがったのでございますけれども、非常なインフレ、物価問題という一つの大きな波がその前に立ちはだかった高度経済成長政策から政府がとった総需要抑制という問題の中で、いま深刻な不況問題ということで税収の伸びのそういった見込み違いというものが出てきたわけでございます。当然一つの政策といたしまして公定歩合の再引き下げという問題がいまちまたにうわさされておりますが、こういう問題については大臣としてはいかがお考えでございましょうか。
  229. 大平正芳

    ○大平国務大臣 四月十六日に第一次の公定歩合の引き下げがあったわけでございます。第二次についてどう考えているかということにつきましては、日銀の政策委員会から何の御相談もまだ受けていないのであります。この問題は日本銀行の政策委員会の管轄でございますので、私から、国会という場でとやかく申し上げる立場でないことを御了承いただきたいと思います。
  230. 小川新一郎

    小川(新)委員 そういたしますと、何らかの不況対策という問題についての手段というものを当面お持ちなくて、ただ物価安定の方にエネルギーを費やすためには、もう少しこの期間を耐え忍べという――中小零細企業に一番しわ寄せか強い。そのために法人事業税や、そういった問題が非常に出てきているわけでございますが、その点何らかの対策というものをお考えでございましょうか。
  231. 大平正芳

    ○大平国務大臣 政府が財政、金融両面にわたりまして総需要抑制策を展開し、国民に御不自由を願ったわけでございますが、その結果、たとえばことしの三月、生産はようやく上向いてまいりまして〇・六プラスに転じました。出荷が一・二%増加。在庫は〇・九%ダウンいたしました。百貨店の売り上げは二月に比べて四・六%増加いたしました。四月は二月に比べまして百貨店の売り上げが六・三%の増加を記録いたしております。したがって、こういう指数の展開を見ておりますと、やや明るい展望が開かれつつあるかのように見えるわけでございます。しかし、三月という月は御案内のように決算期でございますので、特殊なここに示されておる数字がそのまま経済の実態を反映したもの、すなわちこういう傾向が定着したものと見るべきかどうかという点は、私はまだ自信を持ち切れないのでございまして、しばらくこういう状態を政府としては十分見守ってまいりたいと思うのであります。少なくともただいままでのところ、政府のとりました措置は一応の成果を上げる徴候が見えかけたという感じがいたしております。
  232. 小川新一郎

    小川(新)委員 早急な対策、手段というものはともすると破滅という問題を起こしますので、非常に慎重な態度をおとりになることは私も賛成でございますが、想像以上にある特殊な職業について厳しい局面に立たされている分野もございますので、何分ともそういった面の配慮が望まれているわけでございます。  そこで、いまもお話がありました地方交付税率を引き上げないということになりますと、不況によって地方自治体の地方税が伸び悩んでいる中にあって、自治体にとって五十年度の四兆四千三百億円という地方交付税を、四十九年度のように約一千億円減額されては困るわけでございます。  そこでお伺いしたいのですが、今後どのような経済変動があっても四兆四千三百億円は最低保障できるのか。そうしなければ自治体は安心できないわけでございますが、先ほどもこの問題につきましてはいろいろとお聞きいたしました。昭和五十年度地方交付税四兆四千三百億、これを何としても確保するということはどういうことになりますでしょう。ひとつ大蔵大臣として御見解を……。
  233. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま四十九年度の自然減収が相当な額に上ったということ、その延長といたしまして五十年度の歳入見込みに不安がないかというと、確かにあるわけでございます。さればといって、先ほど細谷先生にもお答え申し上げましたように、せっかく御成立さしていただきました予算について、こういう内輪の実行予算をいま政府が組ましていただきたいということはしない。すなわち、成立さしていただきました予算の忠実な執行に鋭意いま努力したいという決意でもって事に当たっておりまするところから、政府の決意はおくみ取りいただきたいと思うのでございます。この結果、この上半期から下半期にかけまして日本の経済がどういう道行きになりますか、これは政府の努力も、それから国民の努力もこれからなんでございますので、精いっぱい努力いたしまして御期待にこたえなければならぬという決意をせっかくいまいたしておるところでございます。
  234. 小川新一郎

    小川(新)委員 せっかく鋭意努力、これは相当好意に解釈して、皇国の興廃でございますのでこの際お聞きしておきたいのでございますが、どうも大臣の御答弁は非常に名答弁で私もときどきわからなくなっちゃうのです。そういう技術的なことをいま私ここでお互いに論じているのでなくして、本当にいま地方公共団体が必配している問題を大蔵大臣に真剣になって聞いているわけでございます。私がいま考えている気持ちはよくおわかりでございましょうから、いま私の考えていることか大臣の気持ちと合致しているんだ――大臣も聡明な方でございますから、私が何を聞かんとしているかということはお聞きしなくてもおわかりでしょう。その点いかがでございますか。
  235. 大平正芳

    ○大平国務大臣 だから、五十年度予算は忠実に執行に当たりたい、そして、中央も地方もひとつこの予算を軸といたしましてことしの事業は滞りなく執行していただきたい、それによって経済に活力をもたらすように努力したいというのが、いま私が考えておるところでございます。あくまでも私にとりまして中央も地方もないわけでございまして、両方とも大事に心得ております。
  236. 小川新一郎

    小川(新)委員 よくわかりました。大変前進した御答弁でありがとうございます。  金融政策でちょっと一点だけお尋ねしておきますが、いまのインフレ、不況が深刻化している中にあって、金融引き締め政策というものは、先ほどのお話でいきますと、まだまだお続けになるというように印象を受けておりますが、いま中小零細企業が一番関心を持っていることであり当然これが地方公共団体財源に影響してまいりますので、その景気浮揚策という問題の中から金融引き締めという政策はまだ今後どのくらいまで続けられていくんでございましょうか。
  237. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは、総需要抑制策で日本銀行が窓口指導をいたしておりますことは御案内のとおりでございます。しかしこれは実態に即してやられておるわけでございまして、やみくもに抑え込んでおるわけではないわけでございます。去年一年見てみますと、財政は大変散布超過になっておりましたし、政府機関を初めといたしまして金融機関が供給いたしました資金も相当潤沢に出てまいりまして、また日本銀行の窓口指導も寛厳よろしきを得まして、いま小川さん御心配になるような金融政策上の問題は、私はないと考えておるわけでございまして、幸いにいま国民の側からも金融政策自体について非常に乾いた希望が寄せられているというように私は承知しております。
  238. 小川新一郎

    小川(新)委員 大臣のお考えと私と多少の違いがあってもこれは当然でありますが、私どもは金融引き締めが続く中にあって、中小企業対策金融、住宅ローン等資金需要が強く、地元金融機関などの資金量が底をついているために、地方自治体の地方債の縁故債などの引き受け先がなくなって起債の消化に頭を痛めているような厳しい中にありまして、地方自治体の地方債を発行しやすくするために、自治体の地方債の一括引き受け機関として、現在の公営企業金融公庫を発展的に解消して、地方公共団体金融公庫を創設する考えにつきましては、先ほども松浦財政局長にもお尋ねいたしましたが、こういう考え方について大蔵大臣のお考えはいかがでございましょう。
  239. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 地方団体金融公庫を設けるという御提唱でございますが、私どもは幾つかの点で非常に問題があるんではないかというふうに考えております。  第一に、現在の公営企業金融公庫は、本来民間資金調達力が弱い地方団体が円滑に公営企業の資金の調達を図るために共同で債券を発行する、こういうことであろうかと思いますが、そうなりますと、現在大蔵省なり簡保が簡保資金によりまして地方公共団体に対する管理運用を行っておる政府資金につきまして、わざわざ中間機関を介在させることはいかがなものであろうかということでございます。  第二に、公営企業金融公庫は、主として政保債と公務員、地方公務員共済、そういうところから資金を導入しておるわけでございますが、御提案の地方団体金融公庫というようなものをつくりまして、現在の地方銀行、その他金庫、金融機関に頼っております縁故債をすべて政保債化していくということでありますといたしますと、公社債市場ではとてもその消化はできないのではないかというのが第二の問題点であります。  第三の問題点は、銀行の縁故資金を単に公庫を窓口として集めるということでありますれば、公庫が間に入りますために地縁的な関係がかえって薄くなる。したがって金庫、銀行であれば県なり市町村にお立てかえをするというところが、間にプール機関であります公庫が入ることによってかえって縁故性が薄くなってくる。それがまたおのずと資金コストの上昇につながるということで、その点は地方公共団体にかえって不利な影響をもたらすんではないかということでございます。地方公共団体が中央金庫をつくりたいという構想は、私もよくは存じませんが、戦前から繰り返され提案があった構想であるようでありますが、いろいろの問題点を逐次検討した結果、結局現在の公営企業公庫という形に落ちついておるように思いますので、私が先ほど申し上げましたような三つの問題点、そのほかにもいろいろ問題もあろうかと思いますが、そういうことが地方公共団体金融公庫について考えられるということでございます。
  240. 小川新一郎

    小川(新)委員 最後にもう一つお尋ねしておきます。  現在の自治体病院は赤字が著しいことはもう大臣もよく御存じのとおりでございますが、昨年も特例債の発行を行いましたが、また四十九年度も相当な不良債務が予想されます。医療について診療報酬が適正でなければはならないということはもちろんですが、当面抱えた問題に対して特に救急も含めたがん等の特殊診療、不採算地区の運営費を強化しなければなりません。それに対して日赤とか済生会などの公的病院の救急医療の補助金はAランクで五百五十万円、Bランクで二百四十万円、Cランクで百七十万円でございます。ところが自治体病院の救急医療の補助金はAランクでは四百五十万円、B、Cはゼロでございます。公営企業の病院の問題に対していま非常に頭を悩ましておりますが、この問題については何らかの対策を講じられないのだろうか、この際お願いと同時に、こういう問題を解決するためにひとつ御答弁いただきたいと思います。
  241. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 自治体病院でございますが、これにつきましては設置者が地方公共団体である。したがいまして日赤その他を初めといたします公的病院と異なりまして、これに対しては別途所要の財源措置、たとえば特交、また過去の赤字分に対する、四十九年に措置いたしました特例債の発行なり利子補給というような財政措置がございます。そこで公的病院と地方公共団体立の病院との間には補助につきましても基本的な考え方の相違があってしかるべきではないかというふうに考えます。国として自治体病院よりも日赤等の公的病院を優先させるということになるではないかということでございますが、そのことにつきましては高度不採算医療の抱えております問題に対処するために四十九年から不採算地区の自治体病院に対する補助を行うということをいたしました。また五十年には自治体病院の医療施設のうちで優先的に助成を要するという救急医療施設に補助を行うことにいたしております。これは結局は全体として公的病院、自治体病院を通じて地域の住民医療をどのように水準を上げていくかという問題であろうかと思います。現在のところ、自治体病院に対しては基本的に財政上の措置がなされておるという意味で、公的病院とはその補助の体系を異にしておるということでございます。
  242. 小川新一郎

    小川(新)委員 そのお話、よくわかるのでございますが、結局そういう問題は非常に薄いわけでございます。特にがんなどの特殊診療の運営費の補助は、公的病院にはありますけれども、自治体病院には全然ないわけです。いま申されたような措置によってこういう問題が解決できるのかどうかという問題がいま非常な問題になって危機感をあおっておりますが、何としてもこの問題にいま私が申し上げましたような点を含まれて対策を講ぜられることをまずお願いする次第でございます。  次に、自治体病院の建設改良の時期にいま来ておりますが、この建てかえのための財投資金を大幅に地方債に充てる必要があります。また建設や器材の補助の強化も必要でありますが、厚生省から要望があった場合は大蔵省も積極的に認めていただきたい、こう思うわけでございます。財投の資金については、四十九年度は一病院当たりの限度額が十五億、単年度では八億となっております。五十年度はこれが十二億にふえているわけですが、これを超えるものは縁故債と自前の財源でということになっておりますが、これらの問題についても厚生省からも要望があると思いますので、この際ここで大臣並びに関係局長さんの御答弁をいただいておきたいと思いましたので、質問をさしていただきましたのですが、お願いいたします。
  243. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 ただいまも小川先生からお話がございましたように、五十年度において単年度で十二億、それから総額で二十五億というふうに、従前の制度に比べれば非常に大きな枠の拡大をいたしたわけでございます。自治体病院の建てかえ資金のうち、地方債を充てる部分の頭打ちの制度というのは、結局は、政府資金というのは限りあるものでございますから、それを全国的に有効に配分をするという観点から設けられておるわけです。これからいろいろと自治体病院の充実ということも考えていかなければならないというふうに私ども思うわけでありますけれども、現在のところ、限度額を廃止するという考えはございません。
  244. 小川新一郎

    小川(新)委員 時間が参りましたので残念でございますが、ひとつそういう実態を、非常に厳粛な実態でございますので、余りつれない御返事でなくてひとつ御検討をしていただきたい、こういうことをお願いいたしまして終わらしていただきます。
  245. 大西正男

  246. 折小野良一

    ○折小野委員 大蔵大臣は先ほどの御答弁におきまして、予算の忠実な執行について決意の表明をなされました。地方団体といたしましては、現在一番関心を持っておるのはその点でございます。  ところで五十年度につきましては、政府におきましても相当程度歳入欠陥が予想をされておる。これに対しましては赤字公債で何とか補てんをしようか、このような検討も内々なされておるやに聞くわけでございます。そのうちの少なくも国税三税が欠陥になりますと、それは必然的に交付税歳入欠陥になってまいるわけでございます。予算どおり執行するとおっしゃるわけでございますが、もしそこに歳入欠陥が生じた場合にこれを補てんする具体的な方法、国税の場合は赤字公債という方法が現在言われておりますが、交付税の場合にそれを穴埋めする方法は具体的にどういうことをお考えになっておられますか。
  247. 大平正芳

    ○大平国務大臣 四月二日に予算が成立したはかりでございます。私どもといたしまして、ことしの経済がこの予算を軸といたしましてどういう状況になってまいり、どれだけのわれわれが期待しておる歳入財源を保障してくれるか、このあたり、まだ全く年度が始まったばかりでございますので、見当がつきかねるわけでございます。ただ、いま経済が不況の深刻な状況にございまするので、政府としてはせっかく成立いたしました予算はこれを忠実に施行いたしたい。歳入歳出とも忠実に施行する決意でまいりたいということがいまの精いっぱいのことでございまして、赤字公債を云々とかというようなことをいま考えておるわけじゃ決してございません。今後鋭意この執行に当たってまた経済状況の推移を見ながら、下半期になりまして適当な機会にもう一遍これを見直してみるというときが来ようかと思いますけれども、いまの段階におきましては、これをどうして埋めてまいるか、それから地方に対してどのように措置するかというような具体的な手法を考えているわけではございません。
  248. 折小野良一

    ○折小野委員 いまの情勢ではっきり決定していないということなおっしゃるとおり、だと思います。もし相当程度歳入欠陥が出た場合にどのような方法が望ましいか、これは過去においていろいろな御経験もあろうと思いますし、あるいは理論的な見分もあろうと思いますが、どういうような方法が望ましいというふうにお考えになっていましょうか。
  249. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私としてはそういうことを考える前に、今年度せっかく成立を見ました予算の忠実な施行考えておる。ところがこの予算に計上していない追加財政需要が今年度内に出てまいるということになりますと、事態はまたより一層の困難を増すわけでございますので、まずそれを各方面の御理解を得てできるだけ御遠慮いただかなければならぬと考えております。  それから第二は、こういう時節でございまするから、中央地方とも財政の運営につきましては細心な注意を払っていただきまして、できるだけ不要不急なものは遠慮していただかなければいかぬということをまず考えるわけでございます。  第三の道は、先ほど申しました経済が今後どう推移してまいるか、それから歳入がどういう記録を毎月示してまいりますか、そのあたりを注視しながら対策を考えていかなければいかぬと思いますが、いまのところ格別の分別を持っておるわけじゃございません。
  250. 折小野良一

    ○折小野委員 今後十分事態の推移を見ながら御検討、御努力を願わなければならないということだと思います。しかし地方団体にとってみますと、予算上四兆何千億というふうに計上されました交付税につきましては、これはもしそれが補てんし、なければならない事態が出てまいったにいたしましても、それは地方団体の責任ではないのだということなのでございます。この点をひとつ十分お考えをいただきまして、今後の地方の財源対策について御配慮を願いたい、こういうふうに考えております。  それから、これも先ほど大臣の御答弁の中にございました、三十年ごろに地方財政の危機があった。あの当時からいたしますと、今回それほどの危機じゃないんじゃないか、こういうようなお考えがございました。あの当時の危機に対する対策といたしましても、いろいろな方法を講じて地方財政の危機を克服するための努力が、政府におきましてもいろいろなされたわけでございます。しかしその後の推移を考えてみますと、この財政危機を克服した一番大きな要素は何でありたか、これは恐らくその後の経済の高度成長であった、こういうふうに私は考えます。今回の財政危機を乗り切るにつきまして、これまたいろいろな方法を講じていただかなければならないのでございますが、この前の危機を乗り越すについて一番大きな力になった経済の高度成長、そういうことは今後は恐らく望めないんじゃないか、こういうような事態が予想されるわけでございます。したがいまして、そういうような事態の中において財政危機を克服していく方法、これはまたあの当時の方法とは違った方法というものが考えられなければならない、こういうふうに思うわけでございますが、そういう事態に対しまして大臣はどういうふうにお考えになっておるのか御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  251. 大平正芳

    ○大平国務大臣 折小野先生おっしゃるとおりだと思います。つまり、昭和三十年以後の足取りは、何といっても成長経済に支えられた成長財政というものがやはり本源的な回復力であったと思います。しかし、これからわれわれは全く違った環境の中で財政の再建を考えてまいらなければならぬわけでございまして、おのずから手法は違ったものにならざるを得ないのではないかと思うのでございます。そこで、中央も地方もやはり、従来の惰性と申しますか、従来の考え方、従来のマンネリズムと申しますか、そういったものは一遍たなに上げまして、冷厳に事態を見て、何をなすべきか何をなすべきでないか、そこは相当厳しく問い直さなければならぬ事態に来ておるのではないかと思うのでございます。これは中央も地方も同じく厳しく問われておる時代的な課題でなかろうかと私は考えております。もっとも、それがやさしく克服できるような事態でないことも私はよく承知いたしておるわけでございます。さればこそ、冒頭に細谷先生にも申し上げましたとおり、いまの財政状況というもの、財政の困難をもたらしたものというのは一体何なのかという点につきまして、まず虚心に一遍解明をして、問題の所在を突きとめてみる必要があるのではないかと思うのでございまして、その上でまた、各方面の御協力を得ながら一つ一つ手段を構えていかなければいかぬものと私は考えておりますが、それでは具体的にいまどういう手順で何だということにつきましては、まだそこまで申し上げるまでの用意がないわけでございますが、予算成立さしていただきましたけれども、これで重荷をおろしたとは一つも考えていないわけでございまして、問題はいよいよこれからしんどいことだといま考えておるところでございます。
  252. 折小野良一

    ○折小野委員 私も財政危機の規模といいますか、そういう面からしますと、三十年ごろのその当時と今日とを比較いたしまして、その当時が厳しかったとあるいは言えるかもしれないと思います。しかし、克服するいろいろな対策を検討するということになってまいりますと、私は、いまのような将来の見通しを踏まえて、よほど今回の方が厳しい姿勢で対応しなければならぬのじゃないかというふうに思うわけでございます。  たとえば、財政危機の理由としていろいろ言われております超過負担の問題につきましても、これはやはり補助負担金制度の根本から問い直していかなければなりませんでしょう。それから人件費の問題にいたしましても、これは公務員の給与制度そのものから考え直していくということでなければ根本的な対策にはならないかと思っております。そういう面からいたしまして、いわゆる財政危機というのを、ただ単に財政収支の問題ということだけでなしに、行財政の全般にわたりましてひとつ十分な御検討をお願いをし、その上で適切な施策を講じていただくということが今日非常に大切なことじゃなかろうかというふうに考えております。  その中の一つといたしましてよく言われることでもございますのですが、会計年度が国も地方も同じく四月一日から始まる、そうしますと国の政策とかあるいは財政、こういうものが非常に大きく地方には影響するわけでございますが、どちらも決定するのが同じ時期だということになりますと、現実にとかくちぐはぐが起こるということでございます。しかも、今日のように非常に大きな幅で経済その他が動くという時期になりますと、その動きに対応できないということが間々起こるわけでございます。そういう面からいたしまして、国と地方との会計年度を変えたらどうだろうか。一つの例といたしまして、国の会計年度は暦年により、それから地方の場合は三カ月おくれて四月一日からというような形にすれば、国の財政と地方の財政がもっとうまく調整がとれて執行ができるのではなかろうか、こういうような意見があるわけでございますが、こういう面についての大蔵大臣の御意見をお聞かせをいただきたいと思います。
  253. 大平正芳

    ○大平国務大臣 もう仰せの問題は大変古くして新しい問題であると思います。日本の場合、仰せのように昔から暦年にすべきでないかという議論も戦時中からあったことでございまして、その方がいろいろな余裕ができて、四月、五月というのは本当の意味で事業を進めやすい気候条件になるわけでございまして、そういうことが言われたわけでございますが、どういうことでございますか、まだそういったことが実現されないで今日を迎えておるわけでございます。そこへ持ってきて地方が絡んでまいりまして、地方と国が同じベースで物を見ていないので、たとえば今度の財政危機にいたしましても、地方の場合去年の状況ではまだ本当の苦しさが出ていないと私は思うのであります。地方税の課税標準が古いから、もっと新しいものだったらもっと深刻な場面が出ているのではないかと思いますが、そういったいろいろな問題は確かに検討しなければならぬ課題であると思いますが、いまその問題を政府が、それではこれを財政制度審議会にかけて取り上げるというお約束をいま直ちに申し上げることはできませんけれども、ここで御提議がございましたということはひとつ記録にとどめさせていただきまして、近く本格的に財政制度審議会の方の審議が始まりますので、そこらあたりで幹部と、どういうようにこういった問題を取り上げるか、御相談させていただきたいと思います。
  254. 折小野良一

    ○折小野委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。
  255. 大西正男

    大西委員長 以上で、大蔵大臣に対する質疑は終わりました。  引き続き、本問題に対する質疑を続行いたします。細谷治嘉君。    〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
  256. 細谷治嘉

    ○細谷委員 さっきの答弁をまだいただいてないので、それをまずお願いします。
  257. 森審一

    ○森(審)説明員 先ほど昭和五十年度の普通交付税都道府県と市町村との配分見込みの割合につきまして、道府県分が五四・八%というふうにお答え申し上げましたけれども、五四・八八幾らというのが正確でございますので、小数点以下一けたまでお答え申し上げるといたしますと、五四・九%と申し上げた方が正確かと思いますので、訂正をさせていただきたいと思います。その場合には当然市町村の方が四五・一%ということに相なると存じます。
  258. 細谷治嘉

    ○細谷委員 五十年度は、いまお聞きいたしましたように、ちょっと数字は私の計算と違うのだけれども、四十九年度は幾らでしたか。
  259. 森審一

    ○森(審)説明員 四十九年度の場合におきましては、道府県分が五二・九%でございまして、市町村分が四七・一%でございます。
  260. 細谷治嘉

    ○細谷委員 なぜこういうように割合が変わってきたんですか、原因は何ですか。
  261. 森審一

    ○森(審)説明員 原因は、府県分の交付団体と市町村分の交付団体との、それぞれの需要額、収入額の伸び方の見込みの差に基づくものでございまして、主として府県分の方が、給与費を中心といたします増加需要額が非常に多うございまして、基準財政需要額の増加見込み額が交付団体におきまして二七・七%、こう見込んでおります。    〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕 これに対しまして、市町村分の方は、基準財政需要額の伸び率が二五・二%という見込みでございます。また、この反面、基準財政収入額の伸び方といたしましては、道府県分の交付団体分が二一五%で、市町村分の交付団体分が二六%というように、収入においては市町村の伸びの方が府県分よりも大分高い。こういう両者の帰結といたしまして、交付税道府県分の方に偏って配分されることになるであろうという計算でございます。
  262. 細谷治嘉

    ○細谷委員 こういう問題で余り時間を使いたくないんだけれども……。  先ほど私は石原財政課長の論文のことを言ったわけですけれども、府県が六割以上になるだろうこういうことを論文の中で言っているわけです。その理由は、府県を重視しているのではなく、五十年度の財政の傾向からそのようになる。財政の傾向というのは、いまの言葉ではわからない。もっと具体的にお答えいただきたいのです。
  263. 松浦功

    松浦政府委員 交付税課長はきわめて具体的に御説明を申し上げているように私は伺っておったのでございますが、道府県分の需要につきましては、先生承知のように、人件費の増高がまるで市町村と違うわけでございます。義務教育、警察、そういったものが、人数においても、それから単価が高いという意味においても、ウエートが違います。したがって、需要額がどうしても府県の方が伸びる。それから、御承知のように、税収入につきましては市町村の方が財政計画上も伸びておるわけでございます。それを投影すれば、当然府県の方に交付税が偏ってくるという結果になるわけでございまして、この六割という数字は、石原君がどういう根拠でお書きになったか、それは私はわかりませんけれども、いま交付税課長お答えしたとおりで、その辺は専門家である先生、それだけ申し上げればよく御理解をいただけるのではないかというふうに思うわけでございます。
  264. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そういうふうに答えてくれればわかるわけだ。しかし、もっと具体的にいろいろなものが府県に押しつけられていっている。たとえば人材確保法あるいは私立の高等学校についての補助金、これは事実上ひもつきの形で交付税の中へ算入されていっているわけです。それが全部府県を通じてトンネルみたいなかっこうで、事実上トンネルです、トンネルという形で府県に行っているわけですね。そういうために、一定枠の国税三税の三二%というものがそこへどんどん押し込まれて、具体的には交付税法の精神から外れてひもつきでそういうものが交付税の中へ押し込められていって、それが全部府県に集中している、こういうことからこういう問題が出てきているんじゃないか、こう私は思うのですよ。それはどうですか。
  265. 松浦功

    松浦政府委員 そういう一面があることは否定をいたしません。しかし基本的にはやはり収入の伸びが違うこと、需要の伸びが違うこと、一言で言いますれば、そういうふうに結論づけることが一番正確な表現かと思います。
  266. 細谷治嘉

    ○細谷委員 財政局長、人確法についての財源措置あるいは私立の高等学校に対する補助金についての交付税の裏づけ、こういうものが制度改正ということになりませんか。どう御理解になっておるのですか。
  267. 松浦功

    松浦政府委員 制度改正であろうかと思います。しかし、それらの経費については地方財政計画歳出にきちんと立てておりますので、その範囲で交付税あるいは地方税、そういったもので見合いがとれております。したがって財政措置はできたというふうに私どもとしては考えております。  逆に、もしそういう議論だけになりますと、補助率が引き上げられた場合は逆な形が出てくるわけでございます。たとえば下水道の補助率、これは一般会計と直接関係ございませんが、繰り入れという問題と結びついてまいります。この間の補助率の引き上げで約五百億以上に近い地方負担が減少する、こういう形になっております。そういったものをそれぞれ相補うという形で財政計画をきちんと計算いたしておりますので、財政計画歳入が足らないということになりますと問題であろうかと思いますが、財政計画は一応きちんと歳入歳出のバランスがとれております。しかもそれらの経費を見込んでおりますので、その辺を御理解いただきたいと思っております。
  268. 細谷治嘉

    ○細谷委員 質問の入り口の問題で、もう一つ参考までにお聞きしておきたいのですけれども、この交付税の全体計画にある基準財政需要額収入額というのは、八月算定で固まった基準財政需要額収入額数字をお使いになるのですか、あるいは毎年毎年全体計画の中で示されておる基準財政需要額数字を基礎として、それに幾ら増加する、こういう形で全体計画をおつくりになっているのか、どうですか。
  269. 森審一

    ○森(審)説明員 八月算定で現実に決定いたしました基準財政需要額あるいは収入額数字に、増加見込み額として加算をいたしております。
  270. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そうですが。そうなっていますか。それならちょっと質問しますが、四十九年度、少し揚げ足をとるようになりますけれども、市町村の交付団体分の基準財政需要額三兆四千百六十七億というのが全体計画でしょう。八月算定は三兆四千三百五十七億円ですよ。どっちですか、本当に。
  271. 森審一

    ○森(審)説明員 御説明が若干不足したかと思いますが、増加見込み額、全体計画に使いますものの基礎となりますものは、先ほど申しましたように、八月算定の数字に加算しておることは間違いございませんが、提出いたしました資料の三ページの下の欄の方に挙げてあります四十九年度需要額あるいは四十九年度収入額、これは八月算定の時点の数字ではございますが、合併算定がえ等の計算を行う前の一本算定の数字でございます。したがって若干端数あるいはそれに近いものが狂ってくるかと思います。  じゃなぜそういうことをしておるかと申しますと、合併算定がえの適用を受けます団体は、財源超過団体でありましても交付税の交付団体ということになりますが、この全体計画の表では交付、不交付という分類をいたしておりますので、そういたしますと、財源超過団体で合併算定がえで交付税の交付を受ける団体も、不交付団体の方に入れなければならぬ、こういうようなことが起きますので、表作成の便宜上、従来から一本算定の額でこの表をつくるというふうにしております。したがいまして、先ほどの問題じゃございませんが、注の方にいま一つ、これは一本算定の額であると書いておけばよかったかと思います。
  272. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私が心配しているのは、いま一本算定とかなんとかおっしゃったけれども、この数字は八月算定と四十九年の全体計画数字を比べますと、八十億か九十億くらいの違いがある部分で出てきているわけです。そういうものを毎年全体計画数字で、八月算定のあれで直さないでやっていきますと、長い間には狂いが出てくるのではないか、こういう全体計画策定の根本の出発点について私は尋ねているわけです。ですから、もっと親切に、素人、われわれでもわかるように説明しておいてくださいよ。どうですか。
  273. 森審一

    ○森(審)説明員 おっしゃるとおり、来年度から注を入れるようにいたしたいと思います。
  274. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そこで、次にお尋ねいたしたい点は、私は昨年基準財政需要額の中の主として補正問題について議論したわけですけれども、今回は基準財政需要額そのものについて、少し単位費用を中心にして質問してみたいと思うのです。  地方財政計画歳出基準財政需要額はどういう関係になりますか。
  275. 松浦功

    松浦政府委員 非常に大まかな言い方になると思いますのでお許しを願いたいと思いますが地方財政計画を基礎に置きましてそれを投影するという形で基準財政需要額というものを算定する、これは数字がつながっております以上、当然のことでございます。交付税額については、生に基準財政需要額を立てられますが、税収入についてはそれぞれ都道府県については八割、市町村については七割五分ということが法律で決められております。地方税のうち、府県分については二割、市町村につきましては二割五分を割り落とした額を交付税に加算する。それが基準財政需要額だということに、計数的に理論的なつながりを置けはなるというふうにわれわれは考えております。
  276. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そこで、私の質問がどういう関係にあるかということで、はっきり財政局長つかまえていなかった、質問意味がわからなかったと思うのですが、私がお尋ねしたいことは、地方財政計画歳出総額基準財政需要額総額というものにはかなり大きな乖離がございますね。直接には関係があるわけです、地方財政計画出てきているわけですから。それは、恐らく地方財政計画歳出に対して基準財政需要額というのは五〇%前後にしか当たらないのじゃないか、こう思います。どうですか。
  277. 松浦功

    松浦政府委員 それはもう先生の御指摘になられるとおりで、五〇%であるか四五%であるか、私、数字はつまびらかにいたしませんが、私がいま御説明申し上げましたのは、一般財源の問題を申し上げたわけで、それぞれの事業費を見るに当たりまして、起債の充当率のあるものについては起債を差し引き、使用料等の収入のあるものについてはそれを差し引きますから、地方財政計画のうち一般財源を除きましたものは当然歳出でそれに見合った分はカットされてしまう。一般財源充当という形になっておるもののうちでも、税の二割と二割五分というものはカットされた形になっております。こういうことを申し上げているわけです。
  278. 細谷治嘉

    ○細谷委員 おっしゃるとおりです。おっしゃるとおりですけれども、たとえば昭和五十年度の策定されました計画基準財政需要額の割合というのは、五一%くらいしか基準財政需要額は見ておりません。四十九年度は五〇%、四十八年度は四八%、四十七年度が四九%、要するに半分程度しか把握しておりませんね。ところが先ほどのお答えにありました基準財政収入額というのは、まあきわめてラウンドな議論ですけれども地方税収入に対してどのくらい見ているかといいますと、私は目的税のは外していますから数字は大きく出るわけですけれども、大体八一から八三%ぐらいになっていますよ。八一から八三、そうなっています。府県においては八〇ということでありますが、具体的に法律に基づいて調べると大体八一ぐらい、基準財政収入額を少し多目に見る。市町村の場合にも一%か二%ぐらい基準財政収入を多目に見る。基準財政需要額を抑える。その間に交付税を入れているのでしょう。そういうことになりはせぬですか。
  279. 松浦功

    松浦政府委員 私ども法律的な権限でそういう権限は任されておりませんので、あくまで地方財政計画に計上した税の八〇%、七五%ということでございます。先生のおっしゃられる実績の問題は、前年度における法人税の増収、これは法律上翌年度で精算するようになっておりますので、精算したものを加えますとあるいは八一になるという場合もあるかもしれません。しかし、そのかわり、逆に法人税が取れ足りないという形になりますと、翌年で返さなければならない。そうなりました場合には基準財政収入の見込みはがたっと落ちるということになるわけでございまして、その辺のものを差し引きました場合には、まさに法律そのもの、府県の税金については八〇%、市町村については七五%、それ以上に私どもの権限としていじれるはずがございません。
  280. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そういう議論をしますと、技術屋の逃げ口上であって、個々についてまた議論しなければなりませんけれども、私はいま単年度をつかまえて言っているわけではないのですよ。私は四十四年から五十年までの推移をながめてみて、いまのように法人税等の出入り等ありますけれども、年々の推移というものをながめて、時間を急がれていますから、ずっとマクロで議論をしておるわけですよ。そこまであなた議論するなら、私は小さなことを言いますよ。しかしまあそこまで議論する必要はありませんから、全体のながめ、私は四十四年から五十年までの動きを調べてみるとそういう傾向がある、これをお認めになるかということです。
  281. 松浦功

    松浦政府委員 先生がお調べになったのですから間違いはないと思いますし、私どももそういう傾向が出ていると思います。
  282. 細谷治嘉

    ○細谷委員 それではお尋ねいたしますが、基準財政需要額については、地方交付税法第二条四号で「財政需要を合理的に測定するために、当該地方団体について第十一条の規定により算定した額をいう。」とある。この「合理的に」というのは何ですか、具体的に。合理的とはどういうことですか。まさしく合理的……。
  283. 松浦功

    松浦政府委員 基準財政需要という観点になりますと、先生承知のように、特定財源を差し引いた残りのものになるわけでございます。単位費用を積算していく際には本当に現実の姿を標準的な形でつかまえて、それから起債を落とし、たとえは義務教育のようなものは、人件費はこれだけの単価ですよということを書きましても、二分の一は国庫補助があるわけでございますからそれから差し引く、こういう形で現実には単位費用ができ上がってくるわけでございます。単位費用の積算の過程で落としました地方債その他の特定財源を逆に積み上げるという形をとりますれば、それがある程度実態の形に近いものとなっているというふうに私ども考えているわけでございます。あくまで経費の算定をいたします際に、十一条の精神にのっとって標準的なものをつかまえて社会常識、経済常識に合うような形に算定をした上で特定財源を落としていく、こういうことになるわけでございます。ただそこに技術的な限界がございますことは、これは先生よく御承知のように基準収入を一〇〇%見ませんので、その部分だけは自由財源という形で結局地方団体のお手元に残るようにしてございます。その部分だけが現実の部分としては何かカットされたような形になって出てくるということは私どもも当然のこととして承知をいたしておりますが、その辺のところを御理解をいただければ、私どもとしては最善の努力をしているというふうに考えておるところでございます。
  284. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そこに話が来たものですから、単位費用の決定というのは法律に書いてありますように「合理的、且つ、妥当な水準において地方行政を行う場合又は標準的な施設を維持する場合に要する経費を基準とし」決める、こうなっていますね。だとするならば、ちょっと単位費用議論したいのでありますけれども、その前に、いただきました資料についてちょっとお尋ねしておきたいのです。  単位費用測定の際に標準団体経費というのは一体何ですか、どういうふうにして算出するのですか。単位費用の算定基礎として標準団体経費総額、これはどういうものですか。
  285. 森審一

    ○森(審)説明員 御承知のとおり、基準財政需要額の各費目ごとに、府県で申しますと人口百七十万、市町村で申しますと人口十万の標準団体につきまして、それぞれの時点におきまして合理的妥当な行政が執行できるような一般財源の額というようなものを、その時点時点の改正その他を織り込みまして算定をして、それから特定財源を引いて測定単位の数値で割ったものが単位費用でございます。
  286. 細谷治嘉

    ○細谷委員 具体的にお尋ねいたしますが、いただきました五十年度の場合標準団体経費総額、警察費九十六億九千四百二十三万、これが法律に書いてあるような合理的かつ妥当な水準において警察行政を行う場合、または標準的な施設を維持する場合に要する経費ですか。これは合理的かつ妥当ですか。
  287. 森審一

    ○森(審)説明員 そのつもりで計算をいたしております。
  288. 細谷治嘉

    ○細谷委員 法律に「合理的、且つ、妥当」と書くいてありますから、それではお尋ねいたしますけれども昭和五十年度の予算、これは標準的な経費というのはトータルいたしますと千三百十九億円、これが百七十万県の合理的かつ妥当な行政水準ですか、はっきりしてください。
  289. 森審一

    ○森(審)説明員 これは先生よく御承知だと思いますけれども、いろいろな特殊条件のない団体標準団体として計算をいたしておりますので、現実の、たとえば人口百七十万の府県におきましても特定の公共事業が集中しますれば、事業費補正によりまして額がふくらむ、あるいは寒冷の地帯になりますれば寒冷補正によりまして金額がふえるとか、いろいろの事情がございますので、単位費用に補正係数を掛けて補正後の数値を出しまして、それから総額として現在の社会でおおむね合理的妥当な各それぞれの費目であらわされる行政が執行できるように、こういうように計算をしているものでございます。
  290. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そんなユートピアみたいなもので補正係数を掛けたら現実のものになる、そんなことじゃだめですよ、これは。話が進みませんよ。あなたが言ったように標準団体経費総額というものは合理的かつ妥当な行政水準、これは県の場合ですから百七十万県の妥当なもの――妥当な水準、合理的だ、こうおっしゃったでしょう。それに補正係数を掛けなければ現実のものにならぬ、そんなばかげたことはありませんよ。
  291. 森審一

    ○森(審)説明員 御質問が、人口百七十万の県がすべてこの額でいくかとおっしゃったように私受け取りましたので、現実の人口百七十万の県、日本じゅうに幾つもございますけれども、特殊要因が全然ないところはかりではなくて、みんなそれぞれ何らかの特殊要因を持っておりまして、補正によりまして増加いたしますので、現実のそれぞれの百七十万前後の県の経費総額と申しますものは、先生が合計されました標準団体経費総額よりは上回るのが通例であろう、それで全国合計といたしましては合理的妥当な行政水準が確保できますように計算をしておる、こういうふうに申し上げたわけで、説明が不足しておりましたらおわび申し上げます。
  292. 細谷治嘉

    ○細谷委員 それでは百七十万の県の例を私は申し上げてみたい。  岡山県の五十年度の当初予算、新聞によりますと骨格予算というふうに説明してありますが、これは千九百八十五億円ですよ。おおよそ人口百七十万。態本県、これも人口約百七十万、その五十年度の骨格予算は千八百九十九億円ですよ。だとするならば、標準団体のあなたの方の合理的かつ妥当な水準というものと五割も乖離がありますよ。こんな経費のとり方で補正係数で直していいのですか。直せるのですか。千三百十八億円を一・五倍もふくらますことが、それが補正ですか。そんなばかげたことはないでしょう。試みに四十九年度を言いますと、四十九年度はあなたの方の標準経費というのが千五十七億円。岡山県は千八百十六億円の当初予算。当初予算ですから追加がありますが、熊本県は千七百八十八億円。岡山県において七割、熊本県においておおよそ七割の乖離があるのですよ。こんなものを補正でできますか。
  293. 森審一

    ○森(審)説明員 先生言われました数字標準団体としての数字の合計になっておりますけれども、この中には標準団体、人口百七十万の府県というだけではなくて、たとえば学校のように標準施設、あるいは港湾費もそうでございますが、標準的な施設を想定いたしまして経費を出しておるものもございます。そういうようなものを全部合計した場合が先ほどおっしゃったような数字になるわけでございますし、それからそれぞれの県におきます特定財源のあり方というようなものもございますし、それからなお標準団体経費総額の中には、このお配りいたしました表には、公債費、つまり実際の元利償還金は全然入っておりません。そういうふうなものもございますので、これの合計と直接それぞれの県の予算と比較するのは、若干いろいろ問題があろうかと思います。
  294. 細谷治嘉

    ○細谷委員 マクロの議論をしているのだから、若干問題があるということは私はもう前提として質問しているわけです。ただ問題は、たとえば五十年度の予算の場合は、合理的、妥当な行政水準という形であなたの方で計算した標準団体経費総額というのは、岡山県については五八%にしか当たらぬのですよ、熊本県では五九%にしか当たらないのですよ、当初予算に対して。それで合理的なかつ妥当な標準団体経費だ、こういうふうに言われるのか、こういうことなんですよ。これは交付税の単位費用を決める大前提ですから、大前提がいいかげんなものなら、議論は先に進みませんから。九〇%ぐらいになっているのならわかりますけれども、後でいろいろ施設の問題なんか言いましたけれども、施設の問題はちゃんと法律に書いてあるでしょう。たった半分か六割弱の標準団体経費だといって、当初予算と比べてもその程度のもので、あと補正をやりますからなんて、補正なんというのは政令ですよ。われわれはここの委員会審議する必要がないのですよ。単位費用は、何のための単位費用ですか。  先に言いましょう。市町村の場合はどういうことになっているかというと、自治省の言う類型のⅢ-四、これは大阪の和泉市です。人口十一万四千百五十九人、四十八年度の決算収入が九十七億であり、支出が九十六億です。ところが、あなた方の標準団体の、今度は十万都市の市町村のものを見ますと、どういうことになっているかというと、四十八年度は九十六億なのに二十六億しか市町村の標準団体の標準経費は見ていないのですよ。九十六億の決算額なのに二十六億しか見ていないのですよ。山口県の山口市、どのくらいになっているかというと、四十八年度決算額は七十五億ですよ。まさしく、標準団体の合理的かつ妥当だという水準の、和泉市の場合は三・六八倍、山口市の場合は二・八七倍、こういう決算状況ですよ。こんなことで、十万都市の標準の合理的かつ妥当な行政水準が維持できますか。あわせて御答弁いただきたい。
  295. 森審一

    ○森(審)説明員 若干補足さしていただきますと、荷県分の場合につきましても、市町村分の場合につきましても、経費総額の中には、たとえば地方債というのは全然入っておりませんし、それから先ほど局長が申し上げましたように、収入の方が標準的な税収入の七割五分あるいは八割でございますから、需要の方もそれに対応した額しか入らないというような事情もございますから、個々のたとえは和泉市あるいは山口市等の例をお挙げになりましたが、それぞれの市についてどうこうという御答弁はいま直ちにはいたしかねますので、よくそれらの市の実情等を今後も調べさしていただきたいと思います。
  296. 細谷治嘉

    ○細谷委員 地方債で逃げたってしようがないですよ、あなた。地方債というのは、一般的に言うと大体において五%か一〇%ぐらいの割合でしょう。十万都市の標準団体経費総額は四十八年度では二十六億円で、そして山口市の場合には決算が七十五億だ。この差額は地方債で埋めるのですか。地方債で埋めたってわずかに五%か一〇%でしょう。こういう形で単位費用を計算しておいて、何が精緻、巧緻な日本の交付税制度なんて言えますか。
  297. 松浦功

    松浦政府委員 私も伺っておってちょっと理解できかねますのは、いま二十六億というような数字をお使いいただきましたのは、基準財政需要額でございますか。
  298. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いやいや、おたくの方の四十八年度の標準団体経費総額でございます。
  299. 松浦功

    松浦政府委員 単位費用それぞれの積算に、特定財源も含みました、もとへ割り戻しをいたしましたものを各費目ごとに合計された、こういう数字でございますか。
  300. 細谷治嘉

    ○細谷委員 市町村の標準団体経費総額というのは、五十年度は十万都市は四十億円だというのですよ。四十九年度は三十三億円だというのが標準団体の標準経費、合理的かつ妥当な行政水準を維持する経費ですよ。これは総計費ですよ。その後で特定財源を差し引くわけでしょう。一般財源が幾ら要るのか、その一般財源について測定単位ごとに単位費用が決まっているわけでしょう。あとは作業は割り算だけです。私が言うのは、標準団体経費総額というので、特定財源を差し引けは単位費用が自動的に決まってくるわけです。もちろん起債というのはありますけれども、これは寡少に過ぎるのではないか。逆に余りにも交付税総額にこだわって、中にはめ込もうとしている。交付税がまず三税の三二%で決まるから、その間にはめ込んでいる。単なる操作じゃないか、こういうことを言っているわけですよ。逆算です、まさしく。ですから、もうすでに五十年度の標準団体経費が四十億なのに二年前の四十八年に和泉は九十六億の決算額、山口は七十五億の決算額、こういう事態ですよ。ですから、何年前ぐらいのものにしか見合う金額じゃないじゃないかというふうになりますよ。
  301. 森審一

    ○森(審)説明員 同じようなことを何回も申し上げて大変恐縮だと思いますけれども、ただいま四十億とおっしゃいました中には、たとえば新しく小中学校を建設するとか、ごみ処理施設、屎尿処理施設を建設するとかいうような場合の費用は全然入っておりませんし、それから、先ほど申し上げましたように公債費、起債の元利償還金、これはいろいろ特に市町村は各種ございますけれども、こういう計算は標準団体のこの表の中に全然入っておりませんので、そういうものをすべて入れてから計算いたしませんと、直ちにこれがけしからぬではないかと申されましても、ちょっと私ども答弁に困るような実情でございます。
  302. 細谷治嘉

    ○細谷委員 繰り返した答弁はやめてほしいんだ。小中学校を建てるというものは、和泉市の場合加わってないでしょう。しかも、私が言うのは、標準団体経費として二十六億と見ているのが九十六億かかったというならば、言ってみますと七十億円学校とかなんとか建てたんですか。その差額七十億円ですよ。地方債で七十億円学校をつくった、あるいは地方債で充当したんですか。そんなばかなことないでしょう、三倍以上なんですから。
  303. 松浦功

    松浦政府委員 私もよく理解が出来ませんでしたが、だんだん先生お話よくわかってまいりました。それだけの差がどういうふうにして出てくるかということになりますと、大きい原因としては四つあろうかと思います。  まず、市町村の場合でございますと、税収入の二割五分は枠へはめ込むためとおっしゃられましたが、まさにそういう感じがあるわけでございます。余りに大きな調整率を掛けるわけにはまいりませんので、それを頭に置いてやりますためにそうなりますが、税金を外している部分がある。それから、元利償還金が相当の金額になっておりますが、全然これは算入いたしておりません。それから、起債充当で行います事業というものはこの中に入っておりません。ここで特定財源の欄をごらんいただきましても、起債というような金額に認められているものがないわけでございます。たとえは一番いい例は、消防をごらんいただきましても、二億九千二百万という総額が出ておりますが、特定財源は七百二十三億。起債は、ポンプ一台買いましてももうすぐ数百万円というものの起債を認めておるわけでございます。そういう意味では現実の消防費というものはもっと高くなっているはずであります。それからもう一つは、先生からおしかりを毎年いただいている問題でございますが、数値に単位費用を掛けますと、それだけでは財政需要額に到達しない。逆に申しますと、補正係数で伸ばしている部分がございます。  それらの四つの点がかみ合って、さらにそのほかにもう一つ大きな原因があろうかと思いますが、交付税とは全く無関係に、貸し付けをいたしまして回収をするというような一般財源関係のない予算がその中に相当入っておる。それら五つの要因が重なり合っているというふうに私としては理解をいたします。
  304. 細谷治嘉

    ○細谷委員 別のサイドからちょっと見てみたいと思うのです。  自治省財政局指導課がつくりました「類似団体別市町村財政指数表」(四十八年十二月)で四十七年度の決算について見てみますと、都市類型Ⅲ-五、これは十万九千百二十七名というのが人口ですよ。今度は一般財源議論をしますよ。この都市類型Ⅲ-五の一般財源は三万七百十九円ですよ。それから都市類型Ⅲ-四、十万五千二百七十一名という都市になりますが、人口一人当たり二万九千四百六十一円です。Ⅲ-三というのは十一万五千三百五十九人でありますが、三万三千六十二円ですよ。交付税の積算基礎になっておる標準団体経費総額というのは、一万五千四百三十円にしかすぎないのですよ。そうでしょう、十万都市で、総額を十万で割れはいいわけだから。ということになりますと、一般財源を比べても半分以下しか見ていないで、それで合理的かつ妥当な行政水準が保たれますか。
  305. 森審一

    ○森(審)説明員 四十八年度の決算額と同じく四十八年度の需要額の比較をいたしてみますと、ただいまおっしゃいました類型のⅢの、人口が八万人から十三万人程度の六十六団体のうちの三十一団体を抽出いたしまして、それの平均をとってみますと、標準団体としての決算額が人口一人当たり三万七千九百三十七円ということになりますけれども、これに対しまして、基準財政需要額が同じく人口一人当たり二万七千五百円ということになりまして、一般財源決算に対しまして約七三%程度を占める、こういう数字が出ております。
  306. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私の調べた自治省の指数表から拾った数字とずいぶん違うのだよ。どこからその数字が出たのか明らかにしてください。きょうはもう時間がありませんから申し上げませんけれども、明らかにしてもらわなければ、これはもう交付税制度の出発点ですから。ですから、私は厳しく言っているわけだ。  もう一つ言いましょう。今度は別の面から、これは大阪市の例でありますけれども、四十八年度の基準財政需要額決算とを対比しております。消防費は、基準財政需要額決算額というのはほぼ見合っております。大阪市の場合にはやや基準財政需要額が上回っております。ところが、教育場合には基準財政需要額決算との差額は五百五十六億円あるのですよ。こんなにめちゃくちゃな基準財政需要額決算額との乖離があって、これで地方の財源というものが合理的かつ妥当な行政水準を約束するに足るのですか。私の数字は確認できますか。
  307. 森審一

    ○森(審)説明員 ただいまおっしゃいましたのは、需要額と一般財源決算額との比較でおっしゃったろうと思いますが、消防費の場合に若干需要額の方が多い、教育費、厚生労働費が足らぬというお話のようでございますが、一般財源決算額には、これもいまさら申し上げるまでもありませんけれども、税の二五%相当分が含まれておりますし、たとえは大阪市のような非常に財政規模の大きな団体になりますと、絶対額としても非常に大きくなりますし、さらにそのほか、特別交付税でありますとか、基準財政需要額の計算に対応しない一般財源というものが相当な額あることは恐らく想像されますので、それをいまおっしゃいましたように、教育なり厚生労働関係に特に重点的に一つの施策として仕事をされておるのじゃなかろうかというふうに思います。  その具体的な数字につきましては、大阪市の数字は現在持っておりませんので、後ほど調べてみたいと思います。
  308. 細谷治嘉

    ○細谷委員 あなた方はすぐ二五%に逃げ込むわけよ。やれ二五%あるじゃないか、やれ地方債があるじゃないかということで逃げ込みます。二五%で何でもかんでもできるのですか。冗談じゃありませんよ。  さらに申し上げます。これは私札幌の例も持っておりますが、一般都市の場合、これは五十五市について調べたわけですけれども、とにかくあなたの方の計算した基準財政需要額というものと決算額との間というのが大変な乖離があるんです。五十五市の平均を言いますと、消防費というのは一・一九、ということは余り乖離がないということです。道路橋梁費は一・〇八、したがって基準財政需要領と決算額との乖雅な余りない。都市計画費は六・二一ですよ。めちゃくちゃです。下水道はどうかといいますと、二・五五倍、保健衛生費は二・七四倍、清掃の投資的経費は二・一〇倍、こんなような実態で、たとえは都市計画費のごときは、五十五都市のうち四十九都市はみんな基準財政需要額の一・五倍以上の決算額になっているんですよ。これでも合理的かつ妥当な行政水準が、あなたの方の計算の需要額で満たせますか。
  309. 森審一

    ○森(審)説明員 同じような御返事しかできませんので、大変恐縮に思いますが、現実の一般財源決算基準財政需要額を超えているということは、それだけ財源があるわけでございまして、その差が何かということになりますと、また税の二五%でありますとか、その他あれやこれやの一般財源相当額と、いわゆる税等として決算に載せられるものの中にどういうものが含まれているかという計算になりますので、同じような答弁を申し上げて恐縮でございますが、私どもとしましてはそういうふうに考えるしかございません。特定の費目が、消防費あるいはそのほかの費目がどうこうというふうなお話がございましたけれども、特にそれぞれの都市によりまして、これは当然のことでございますが、特定の行政に重点的に力を入れるというふうなこともございますので、標準的な基準財政需要額からいたしますと、あるいはそれより少ない経費もございましょうし、それよりはるかにオーバーする経費も出てくるということも、これも制度のたてまえ上当然あるいはやむを得ないことというふうに考えざるを得ないと思います。
  310. 細谷治嘉

    ○細谷委員 もう質問する意欲がなくなった。あなたの方は補正とか二五%にすぐ逃げ込みますけれども、四十九年度の補正前と補正後の数字がどういうふうに違っているかということを一例として私申し上げましょう。  消防の場合は、補正前は人口が一億四百六十五万、これが補正前です。補正後は人口で一億五千二百五十三万、こういうふうに一・五倍近く補正されておりますね、消防費は。まあまあこのくらいはがまんするとして、下水道はどのくらいかといいますと、補正後は六倍になっているんですよ。保健衛生費は二・二六倍です。一方徴税費は税額に対して補正後どうなっているかというと、〇・五ですね、こういうことでありますから、単位費用にも一貫性がない。しかも福祉優先、こういうことが言われ、環境保全ということが重点だ、こう言われておりますけれども、環境保全なり都市計画、社会福祉についてはものすごく大きな乖離があなたの方の交付税の策定の土台にある、こういうことを私は申し上げているわけです。わかりませんか。
  311. 森審一

    ○森(審)説明員 補正の場合に、通常一番補正によって数値が変わりますのは、県分、市町村分を通じまして事業費補正じゃないかと思います。具体的には港湾費あたりが五倍、府県分も市町村分も五倍強というふうにふえておりますが、これらは補正の本来の趣旨から言いまして、特定の年度に、特定の港湾あるいは漁港を抱える地方団体に大量の事業費が集中いたしますと、その該当の県なり市町村なりにとりましてはそれを円滑に消化することが財政的に非常に困難であるというようなことから、事業費補正という制度を設けておるわけでございます。その事業費補正の制度に基づきまして、その算入率がどの程度がいいかというふうな問題はもちろんございますけれども、事業費補正以外のその他の各種の補正におきましても標準団体とは何らかの意味で違った条件を備えておりまして、その条件に対して必要な財源措置をするには単位費用だけでは計算のしようがないというので法律規定に基づいて各種の補正をやっておるわけでございますので、先生よく御承知かと思いますが、その補正の内容の合理化、適正化等につきましては、今後とも十分気をつけてまいりたいと存じます。
  312. 細谷治嘉

    ○細谷委員 二五%とか、よく御承知だとか、そんなことじゃわからないから聞いておるわけだから、冗談じゃないですよ、あなた。疑問があってしようがないから聞いているわけですよ。あなため精緻、巧緻だと言われる標準団体経費あるいは一般財源の付与の仕方というのが、地方団体として合理的かつ妥当な行政水準あるいはそういう施設を運営するに足る経費であるかないか、それは交付税の出発点でありますから、私は聞いているわけですよ。  財政局長、もう禅問答みたいでどうにもならないのだけれども、私が申し上げたいことは基準財政需要額というのは、全く補正の問題が法律を無視してしまっている、法律より先歩きしているということは昨年指摘しましたけれども、今度はその前の単位費用の算出そのものが問題がある。したがってそれは、合理的かつ妥当な行政水準を維持するに足る形において交付税制度が存在しておらない、こういうことを私は指摘したいわけです。私の説とは全く対立しますか。
  313. 松浦功

    松浦政府委員 急にいろいろの数字を、私ども知らないものをお示しをいただいても、まことに頭の回転が鈍いもので私よくわからないので申しわけないのでございますが、先生のおっしゃられる補正係数、政令で決めますものは、地方交付税の単位費用という国会で御審議をいただくものを大きく変形してしまう、だからもっと単位費用の方に重点を注ぐべきであるというお説は、私わかるような気がするのでございます。ただ、補正係数を使いませんと、先生もこれこそ御承知のように、地方交付税の配分というものが非常に実態に合わない、ゆがんできたものになってしまうということではないかというふうに私は理解をしておるわけでございます。仮に補正係数も法律で決めろということになりますと、これは先生承知のように、財政計画を早く出さないと予算の審議をしないぞといって毎回おしかりを受けておるように、交付税法で単位費用を決めるのが精いっぱいで、もし補正係数を決めるということになりますと、またさらに二十日も一月もおくれるというようなことになりますので、まあひとつそこのところは御勘弁をいただいて、政府当局にお任せ願いいます。したがって、できるだけ今後検討いたしまして、単位費用のとり方等を改善をする研究をいたしまして、単位費用のとり方を改めることによって補正係数による結果ができるだけ増減がないような方法が見つかりますれば、そういう方法に改める努力はした方が国会の御審議を煩わす以上正しいやり方だというふうに私も思いますけれども、現実の問題は、一番よく先生承知のように、補正係数を巧みに使いませんと地方団体の実情に合わないような配分になってしまうということなんでございます。その辺のところはひとつ内々で了解をいただかないと非常に妙な結果になりますので、われわれの立場の置かれている苦しさもひとつ御理解を賜りたいと思うのでございます。
  314. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は、補正係数を使ってはいかぬ、こういうことを言っているわけじゃないのです。これは法律で政令にゆだねているわけですから、もう千差万別。三千三百の自治体があるわけですから、補正係数を使わなければならぬでありましょうけれども、その補正係数を使ったがために単位費用基礎と六倍も十倍も狂ってくるということがもう補正の限界を越えているのではないか、こういうことを昨年指摘したわけだ。ことしそれを繰り返す意思はないんですよ。今度は、その単位費用が過少じゃないか。特に福祉優先という今日の時代の流れの中において、社会福祉なり保健衛生なりあるいは環境保全なり、そういう面に対する単位費用の数値はまさしく現実離れしたものではないか。その原因はどこから起こっているかといいますと、交付税総額の中にそれをはめ込もうとするところに問題があるのである。裏から言うと、過少でありますから、交付税総額を変えていく以外ないじゃないか、交付税率を引き上げる以外ないじゃないか、これが私の議論ですよ。わかりましたか。
  315. 松浦功

    松浦政府委員 私どもはすでに決定をいたしました国の予算に基づく交付税総額に合わせて、やはり単位費用をつくらなければならないという事務屋の宿命を持っておるわけでございます。したがって、私どもにはそれ以上の答弁はできませんが、これまでも繰り返して申し上げておりましたように、先生からは交付税率を引き上げろというお話をたびたび伺っております。私もそのたびごとに現在の状況では交付税率を引き上げる必要はないと思っておるということを申し上げてまいったこともまた先生承知のとおりでございます。  なお、生活関連施設あるいは社会福祉、こういったものの単位費用の見方が不十分だという御説に対して、頭からこれで十分だと申し上げるつもりはございません。今後の交付税あるいは地方税、そういったものの伸びぐあいを勘案しながら、将来に向かってこれらを強化をする努力を続けていくということで御了解をいただきたいと思います。
  316. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大臣に最後にこの点は聞きたい。  いままでいろいろな数字から言って、もはや交付税はいまの三二%という枠では法律に背くような、根拠のないような、合理的かつ妥当な水準を維持することができないような段階になっているんですよ。したがって交付税率の総額を引き上げると同時に、その配分についても、福祉優先あるいは環境保全、こういう方面に重点を置いた配分をしていかなければなりませんよ、こういうことを私は主張しているわけです。ただ、税率を上げると同時に、配分についても十分な配慮をしなければならぬぞということを具体的な数字で四方八方から詰めていったわけです。そうして大臣、いま財政局長は、もう私の守備範囲を越えたというのですよ。大臣どうですか。これは大臣の仕事です。交付税を全体としてふやすと同時に、その配分について合理的かつ妥当な地方の行政水準が保たれるようにしなければならぬということでありますが、大臣のひとつ決意をお伺いしたい。
  317. 松浦功

    松浦政府委員 守備範囲を越えたというふうにお聞き取りをいただきますとまことに申しわけないので、大臣を補佐する者としての守備範囲では当然あるわけでございます。私は財政局長としては、現在交付税率の引き上げは必要ない、ただし算定の方法については今後先生の御意見を十分伺って、先生の御趣旨に沿うように重点的に社会福祉あるいは生活環境整備、そちらの方に振り向けるように努力をいたしたい、こう申し上げておるわけでございます。
  318. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大臣の答弁を伺う前に、財政局長、いま私が申し上げた数字から、交付税率が変わってから十年何にもいじらなかったわけですから、もはや耐えられるような状態になくなっているわけですから、それはもう先ほど大蔵大臣に対しても、与野党一致して交付税率を変えるべきである、こういう主張がなされたわけです。それをあなた認めないのはおかしいです。私は数字的に詰めていったわけですから。ですから、それはしかし自分だけでできることでありませんという言葉を大臣が言うのならいいけれども、しかし努力するということならいいけれども、いまのままでいいのだという結論を出しちゃうということになりますと、私がいままで時間をかけて申し上げた、皆さんに御迷惑をかげながら申し上げた数字を、あなたは否定するということになりますよ。
  319. 松浦功

    松浦政府委員 私もいろいろとうそをつくようなことになっては困りますのではっきり申し上げますが、ただいま五十年度の交付税の問題を御議論いただいていると思っております。五十年度は交付税率の引き上げは当省としては大蔵省に要求いたしておりません。それはいまになってもとに戻るということにはなりませんので、五十一年度以降の問題は、財政状況がどうなるか見て、また大臣が御判断を下されると思いますが、そういう事実を前提お答え申し上げているのでございますので、その辺はひとつ御寛容をいただきたい。
  320. 細谷治嘉

    ○細谷委員 あなたの要求、三二%で、交付税率の引き上げを要求してないということは、それは事実です。しかし、今日の地方財政の実態から言って――私は人件費が国家公務員を上回っているとかなんとかということを議論しているのじゃないのですよ。あなたの方の、ベースで数字的な根拠を挙げていままで議論してきたわけですよ。ですから、あなたの方の判断でありますが、判断として、五十年度には交付税率の引き上げは要求しなかったけれども、いまや、客観的に妥当な合理的な行政水準を保つには、交付税率を引き上げなければならないあるいは交付税率引き上げができないのならば、税財源の何らかの措置をしなければならない事態に至っておる、こういう判断はできますか、できませんか。そういう客観情勢を認めるか認めないか、その中においてあなたの方は五十年度には要求しなかった、そういう判断をしたというならわかるのです。混乱させては困る。
  321. 松浦功

    松浦政府委員 御承知のように、財政計画が基本にあるわけでございます。必要な歳出を計上し、それに見合い歳入が確保できると確信をいたしておりますので、交付税率の引き上げを要求いたしませんでした。現在もこれは、成立をいたしました国の予算、それによって執行していくということが当然の私どものとるべき態度である、時代の、経済の激変その他何らかの事情がございました場合において、地方団体財政に運営の苦しさが加わるというような事態が起これば、そのときにおいて適時適切な措置をとるということが自治省のとるべき態度であろうか、こう考えます。
  322. 細谷治嘉

    ○細谷委員 これは大臣の補佐役じゃいけませんから、大臣、いま私が申し上げたようなことで、しかも先ほど大蔵大臣に対して、これは地方行政委員の、与野党を通じてのコンセンサスです。したがって、交付税の引き上げ、それを含む地方財政の強化ということを具体的に図らなければならない客観情勢にいまや来ておる、そういうことを認識した上で、今後最大限の努力をいたします、こういうことになると思うのでありますが、大臣、いかがですか。
  323. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 いろいろお話を承っておったわけでございますが、いまの状況下において地方財政が、いまの地方交付税率でいいか悪いかという問題を検討する前に、一体、中央と地方との財政をどう運営していくかということの方が先決ではなかろうか。まずそれも考えなければいけない。その意味で、今後のいわゆる財政計画を中央、地方を通じてどう見ていくかという観点に立って、そうして中央においてよけい取っておる、地方に回す方が少ないではないか、その合理的な基礎が出てきたときに、これは私はいまおっしゃったような意味で、当然主張をしなければならない立場にあると考えるわけであります。すなわち、地方行財政の問題だけをとらえて、足りないからこれはもうすぐに中央から取ってこなければいけないんだという結論にいくのはいささか早計ではないか。もし、いま言いましたように、中央では十分に金はあるんだ、しかるに地方の方をいじめておるというのはけしからぬじゃないかという理屈が出れば、これは私も敢然として大蔵省に要求をいたす決意でございますが、そのバランスをどうとっていくかということを一遍見た上でなければ、いまあなたが仰せになったことににわかに賛成いたしかねます。  しかし、いろいろ聞いておって、これはなるほどいろいろ私の知らぬ、大体私何も知りはしませんからね、実際のことを言うと。それはなるほどあなた方の御意見もよく聞いて、これは勉強せにゃいかぬなあと思いました。思いましたけれども、しかし実際に問題を処理する場合においては、中央でどれくらいのものが必要であり、地方でどれくらいの収入があるか、その収入をどう分けるかという問題が一番大きいことなんであって、地方は福祉とかいろんな面でいま非常に財政的に困っておるが、しかし中央も非常に困っておるということになったら、それをどうバランスをとっていくかという問題が出てくると思うのです。中央に余った金があって、地方が少ないというなら、これは当然むしり取ってでも取ってこなければならぬと私は思っておるのです。理屈なしに取ってきますがね。  そういう気持ちでこの問題をもう一遍あなたの御意見も十分頭に入れて、そうして今後の運営といいますか、来年度以降の予算の編成に当たっては、ひとつ大いにあなたの意見も参考にさせていただきたい、かように考えておるわけであります。
  324. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大臣、私が申し上げたいのは、大臣の説明どおり、行政事務の配分の問題もあるでしょう。それから、税財源のそれに見合った配分、これが原則でしょう。原則でありますが、今日どんどんと機関委任事務、超過負担、こういうものが補助行政を通じあるいは法律を通じて制度として地方にどんどん押しつけられていっておる。しかも三十年代に行ったような税源の付与をすることなしに、一方的に地方に押しつけているところに今日の問題があるわけでありますから、私は早急にこの問題について結論を出していただかなければならぬ、こう思っておる。私は一つのことだけ言っているわけではありません。そういう意味において、行政事務の再配分、それに見合った税財源の配分ということは、もう二十年代、三十年代から言われても一向実現しないわけですよ。こういう段階においては、いまや大変な状態にある地方財政の実態から、少なくとも交付税の税率の引き上げぐらいはやっておいた上で研究をしなければ、検討をしなければだめじゃないか、こういうように私は思っておるのです。そこまで火がついているのです。そういう意見には同調できませんか。
  325. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 これはもう考え方の問題になりますから、御意見として承っておきます。
  326. 細谷治嘉

    ○細谷委員 一つお尋ねしたいのですが、もうこの程度で打ち切りますが、国と地方の財政秩序を乱しておる、こういう問題と同時に、地方団体間における財政秩序を乱すものとして、公営ギャンブルという問題があると私は思うのです。この間自治省は地方制度調査会の小委員会にこれを出しましたが、これも新聞では書いてありますけれども、一つも進まない。たとえば、新聞に書いてありますように、標準財政規模の五倍以上のギャンブルからの繰り入れがあるという市、とにかくこういうことになりますと、もうどうにもならぬところに来ているわけですね。これはやはりよろしくないと思うのですよ。これをどう財政秩序確立の方向で処理していくかということは重要な問題だと思うのですが、どうですか。
  327. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 その点については私はよく認識をいたしております。今後これはひとつぜひ是正をいたさなければならない。どういう方法でやるかは別にして、あなたの御趣旨を体して処理をいたしてまいりたいというのが私の考えでございます。
  328. 細谷治嘉

    ○細谷委員 昨年のこの委員会で、大臣はその当時大臣でありませんでしたが、国会対策委員長であったでしょう。町村自治大臣でしたよ。普通交付税と特別交付税の配分割合、これについてはルールに乗るものは普通交付税に乗せてしまう、こういう間違いのない答弁があったわけですよ。ことしも見送っているじゃないですか。どうしてですか。
  329. 松浦功

    松浦政府委員 明年度やりますということを町村大臣がお答えになられたんじゃないので、これは先生もよく御承知のように、前向きで検討するというお答えを申し上げておられるはずでございます。いろいろ私ども考え、計算をし、いろいろやってみましたけれども、障害がございまして、本年度はできませんでした。来年度へ向かって、先般山本議員の御質問にもお答えを申し上げましたように、各種の方法を検討しながら、先生の御趣旨を体して、実現の方向に向かって努力いたしたいと考えます。
  330. 大西正男

    大西委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  331. 大西正男

    大西委員長 速記を始めてください。
  332. 細谷治嘉

    ○細谷委員 もう少し念を押しますが、これもまた来年になったら、検討したけれどもだめで、障害がありました、こういうことになるのです。来年はどうですか。来年やりますか。
  333. 松浦功

    松浦政府委員 来年ということはそう簡単に言えませんけれども、私の気持ちは、少なくとも来年度に何か結論を出すようにしたいというお答えを申し上げておるのでございます。確約をいたしますと、これは何か事情がございまして、またできない場合が起こってきたときに困りますので、その辺でひとつお許しをいただきたいと思います。
  334. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大臣、どうですか。
  335. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 いまの財政局長答弁のとおりでございます。
  336. 細谷治嘉

    ○細谷委員 これでも逃げ道はあるんだけれどもね。  最後に――最後という字句を言いました。大臣、先ほど私は大蔵大臣に質問をいたしたのですけれども、大蔵大臣は大蔵大臣でありますから、あの程度答弁しか出ないと思うのです。心配な点は、四十九年度の交付税総額の問題です。国税三税に六千三百億円という穴があくことは間違いない。これははっきり数字が出ております。そうすると、その三二%が穴があきます。法律によりましてこれは五十一年度の精算、こういうことになります。精算ということは、プラスじゃなくて減額ということになります、間違いなく。それから五十年度も、大蔵大臣は、前向きで、議決いただいた予算を実行いたします、いまのこの段階で実行予算なんというものをつくることはいたしません、こう言っております。けれども大蔵大臣自体も、五十年度の今日の経済情勢の中において所得税なり法人税なり酒税が落ち込むことは否めない客観情勢にある、そういうことも努力します、こう言っておりますが、そうしますと、四兆四千三百億円のいまの交付税総額に穴があいてまいります。そうして、こういう状況でありますから、例年どおり人事院勧告もあるでしょう。しかし、人事院勧告についての財源措置をどうやるかは別といたしまして、年度当初国が責任をもって予算を編成いたしまして、そしてその交付税が税収の減で満たされない場合には、昭和四十年度の補正段階において、これは特別会計における借り入れではなくて、国の一般会計から補てんをいたしたわけですよ。そういうことはできませんか。
  337. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 今のお話にはかにお約束いたすわけにはまいらないと思います。しかし、いずれにしても五十年度のこの地方財政を運営するについて、少なくとも財政計画でわれわれが大蔵省と約束したことについては、欠陥が出た場合におきましても、こ十分大蔵省からその必要な財源を取るように努力をする決意でおります。
  338. 細谷治嘉

    ○細谷委員 こ非常に重要な問題で、大蔵大臣は、五十年度の予算執行については前向きでやります、いま申し上げたような点についても前向きで取り組みます、こう言っている。そ穴が出ないように努力するということと同時に、穴が出た場合にどうするかということも前向きでやるというふうに私は理解いたしました。それよりも自治大臣は、三千三百の自治体に対して責任を持っている自治大臣は、もっと決意をかたくして前向きで取り組まなけならぬと思うのですが、首を振っちゃだめですよ。どうですか。もう一度。
  339. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 私は自治大臣でありますけれども、やはり国務大臣であります。国の政治を預かっているという立場から言えば、やはりできることとできないことがあるわけであります。でありますから、大蔵大臣が前向きに取り組みますということくらいは当然言われるでしょう。私も前向きで取り組むということは言いますけれども、その大蔵大臣以上のことをここで私があなたにお約束するということは、私は国務大臣としては当てはまらないと思うのです。だから私はそれ以上は申し上げることはできません。
  340. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大蔵大臣より以上でもない、イコールでもない、以下でしかない、こういうことではおかしいですよ。
  341. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 以下ではありません。(「以上でなけいかぬ」と呼ぶ者あり)以上でもない。
  342. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大分おしかりいただきましたので、いろいろまだ問題点残っておりますけれども、他日――ほかの問題もあるんです。機関委任の問題とか、それから法務省にも来ていただいているんですけれども、そういう時間がありませんので、そういう質問は留保して、きょうの質問理事会の決定に御協力いたします。  終わります。
  343. 大西正男

    大西委員長 以上で内閣提出に係る地方交付税法の一部を改正する法律案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  344. 大西正男

    大西委員長 本案に対して、日本社会党及び公明党共同による佐藤敬治君外一名提出の修正案並びに三谷秀治君外二名提出の修正案がそれぞれ提出されております。  この際、両修正案の提出者からそれぞれ趣旨の説明を聴取いたします。まず佐藤敬治君。     ―――――――――――――  地方交付税法の一部を改正する法律案に対する修正案(佐藤敬治君外一名提出)  地方交付税法の一部を改正する法律案に対する修正案(三容秀治君外二名提出)    〔本号末尾に掲載〕
  345. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 ただいま議題となりました地方交付税法の一部を改正する法律案に対する修正案に関し、日本社会党、公明党を代表いたしまして、提案理由と概要を御説明申し上げます。  第八回統一自治体選挙の結果にも示されているように、国民は、自民党・三木内閣の地方自治否定、革新自治体敵視の人件費攻撃を退け、福祉の質的強化の主要な手段としての地方財政の強化を強く求めております。この選挙結果に示された国民の要求に正しくこたえ、いたずらな人件費攻撃を直ちにやめ、地方財政強化の具体的改革を即刻講ずることこそ、今国会後半の重要な課題と言わねばなりません。特に地方交付税は、不況とインフレの二重苦に悩む地方財政にとっては、ますます貴重な財源となっており、地方財団の実態に沿った改革と民主的運用が今日ほど強く求められているときはありません。  しかしながら歴代自民党政府は、高度成長政策を進め、地方財政を中央集権化させるため地方交付税を第二補助金化してまいりました。基準財政需要と収入の一方的算定、大企業のための産業基盤優先の事業費補正など、地方交付税法趣旨を全く踏みにじった改悪こそ、今日の地方財政危機の大きな原因の一つであります。自民党・三木内閣の非民主的地方交付税の運用をやめさせ、自民党政府の高度成長政策による過密過疎の下で膨大な財政需要に追いまくられる一方、不況によって危機的財政に直面している市町村の窮状を打開するため、緊急に配分を民主化し、地方財政の危機的状況を打開する必要があります。これが本修正案を提案いたしました理由であります。  なお、日本社会党は、自民党・三木内閣による地方交付税の非民主的運用の下では、地方交付税率の引き上げのみでは全く不十分であり、民生費、単独事業費等自治体の福祉行政優先の財政を保障する地方交付税制度の確立こそ急務であるとの立場から、第二交付税制度の創設を含む地方財政緊急措置法案を、また公明党は、人口の急激な増加に伴う公共施設及び公益的施設の整備に関する特別措置法案及び国と地方公共団体との財政上の負担関係の健全化に関する法律案を、それぞれ参議院に提案いたしておりますことを申し添えておきたいと存じます。、  それでは本修正案の概要を御説明申し上げます。  第一は、人口急増市町村の財政対策についてであります。昭和五十年三月三十一日現在の住民基本台帳登載人口が昭和四十五年より、五千人以上かつ一〇%以上増加している市町村を人口急増市町村とし、これと市町村の昭和五十年度以降発行する普通建設事業債償還費及び公共用地先行取得事業債償還費のそれぞれ五〇%を基準財政需要額に算入することといたしております。  第二は、人口急減市町村の財政対策の強化ります。前述と同様の期間において人口減少率が七・五%以上であり、かつ昭和四十七年度から昭和四十九年度までの三カ年度の平均財政力指数が〇・四未満の市町村を人口急減市町村とし、これら市町村の公共用施設及び公用施設建設事業のため昭和五十年度以降発行した地方債のうち過疎債、辺地債、同和対策事業債、公害防止事業債を除いた地方債の元利償還額の七〇%を普通建設事業債償還費として基準財政需要額に算入することといたしております。  第三は、都の特例の廃止であります。都の基準財政収入額及び基準財政需要額の算定に当たっては、特別区を市とみなした場合に得られる基準財政収入額及び基準財政需要額を加算する特例を廃止し、特別区を市とみなして都とは別に算定することといたしております。なおこの都の特例を廃止した結果、都に交付される普通交付税について、都は、交付額相当額を都区財政調整交付金の財源に充てるものといたしております。  第四は、普通交付税、特別交付税の割合を変更し、現行九四対六を九六対四といたしております。  以上が本修正案の提案理由及びその概要であります。慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
  346. 大西正男

    大西委員長 次に、三谷秀治君。
  347. 三谷秀治

    ○三谷委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、地方交付税法の一部を改正する法律案に対する修正案について、提案理由並びに修正案の趣旨を説明申し上げます。  今日地方自治体は、かつてない深刻な財政危機に直面し、このまま放置す地方自治体本来の事務の執行にさえ重大な障害をもたらす状況に立ち至っており、緊急に解決することが強く求められております。  この事態の原因は、政府の大企業奉仕、国民生活破壊の政策により、地方自治体の財政需要が増大しているにもかかわらず事務と財源の配分が不合理であり、さらに今日のインフレ、物価高騰、総需要抑制政策が、これに拍車をかけておるものであります。  こうした事態に対処するためには、地方財源を大幅に増加させることが必要であり、とりわけ財政需要が増加し、地方交付税の不交付団体が年々減少し、財源補てん機能としての絶対量が不足しておる中では、地方交付税を大幅に増額することが絶対に必要であります。  このことは、地方六団体など全国の地方自治体の一致した要求となっておるのであります。しかるに政府は、今回の地方交付税一部改正案では、いわは当然増ともいうべき経費措置するにとどめ、地方交付税を増額する措置をとっていないのであります。  日本共産党・革新共同は、こうした当面する地方財政危機を打開するために緊急に必要な対策として交付税率の引き上げは不可欠であると認め、本修正案を提出したものであります。  次に、本修正案の趣旨を御説明申し上げます。本案は、地方交付税法第六条に規定する地方交付税率を八%引き上げ四〇%とし、昭和五十年度分の予算から適用するものであります。法律上の処置につきましては、政府に処置を求める決議案になっております。  以上が修正案の提案理由並びに趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決いただきますことをお願い申し上げます。
  348. 大西正男

    大西委員長 以上で両修正案についての趣旨の説明は終わりました。  両修正案については、別に発言の申し出はありません。  この際、三谷秀治君外二名提出の修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見があれはこれを聴取いたします。福田自治大臣。
  349. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 ただいまの日本共産党・革新共同提案の修正案につきましては、政府としては反対でございます。
  350. 大西正男

    大西委員長 これより原案及び両修正案を一括して討論を行います。  討論の申し出がありますので、これを許します。愛野興一郎君。
  351. 愛野興一郎

    ○愛野委員 私は、自由民主党を代表し、政府提案の地方交付税法の一部を改正する法律案に賛成、日本社会党及び公明党提案の同法律案に対する修正案並びに日本共産党・革新共同提案の同法律案に対する修正案に反対の意見を表明するものであります。  昭和五十年度の地方財政対策においては、最近の社会経済情勢の推移にかんがみ、国と同一の基調により、引き続き抑制的な基調を堅持する方針のもとに、社会的不公正の是正等、地域住民の福祉向上に資することを基本としつつ、地方団体が当面する多くの課題に対処するために必要な各般の措置を講ずることとしております。  すなわち、個人の住民税及び事業税、ガス税等について住民負担を軽減合理化するとともに、大都市地域における都市環境の整備のための財源として事業所税を創設することとし、また、福祉優先の基調に立脚して児童福祉、老人福祉等社会福祉水準の向上に要する経費財源を充実するとともに、上下水道、廃棄物処理施設、教育施設、社会福祉施設、住宅等地域住民の福祉向上のために緊急度の高い事業の円滑な実施を図るため、地方交付税、地方債、国庫補助負担金等について所要の措置を講じ、さらに、人口急増対策としての教育施設等の整備に対する財政措置の拡充、過疎地域対策を推進するための過疎及び辺地対策事業債の増額、地方公営企業の経営の健全化の促進を図る等の措置を講ずることとしており、これらの措置は、いずれもきわめて時宜に即した措置であると存じます。  次に、今回の法律案について検討いたしましたところ、昭和五十年度の地方交付税の算定方法については、児童福祉、老人福祉対策等社会福祉水準の向上に要する経費財源を充実するとともに、教職員定数の増加、教員給与の改善、教育施設の整備等教育水準の向上に要する経費を増額し、また、市町村道、清掃施設等住民の生活に直結する公共施設の計画的な整備を進めることとするほか、過密対策、過疎対策、交通安全対策、消防救急対策、消費者行政及び土地対策等現下の急務である施策に係る財政需要に対する財源措置を積極的に講じようとしております。さらに、公共用地の円滑な取得を図るため、臨時土地対策費を基準財政需要額に算入しようとするものであり、地方財政立場から見て、適切な措置であると考えています。  しかしながら、今後、社会福祉施策の充実、生活環境施設の整備の促進を初め、高福祉社会を達成するために必要な地方団体財政需要はますます増加することが予想されますので、政府においては地方団体に対する財源措置の一層の充実に努めるよう強く希望するものであります。  さらに、国庫補助負担事業に係る超過負担については、引き続きその完全な解消に努めるよう強く希望します。  以上をもって政府提案の法律案に賛成、日本社会党及び公明党提案の同法律案に対する修正案並びに日本共産党・革新共同提案の同法律案に対する修正案に反対の意見の表明を終わります。(拍手)
  352. 大西正男

    大西委員長 山田芳治君。
  353. 山田芳治

    ○山田(芳)委員 私は、日本社会党を代表して、地方交付税法の一部を改正する法律案に対し、次の観点から反対の討論をいたします。また共産党・革新共同から提出されました修正案にも反対の討論をいたします。  現在、地方財政は異常な危機に陥りつつあります。その状況は、昭和三十年代前半の危機よりもさらに深刻であると言って過言ではありません。  その原因の第一は、何といいましても中央集権型財政構造に根本的な欠陥があることは明白であり、これがインフレによる事業費支出の増大、実態とかけ離れた国庫補助負担制度による超過負担、公共用地の取得難、人件費の積算と他方財政計画規模是正の不十分さ、これに加えて、地方公営企業に対する措置の不十分さに起因する経営悪化、さらに不況による税収の鈍化等がこれに拍車をかけたものでありまして、地方財政状況は、まさに有史以来の危機に見舞われていると言って過言ではありません。  わが党は、この状況にかんがみて、次の提案を行い、昨年末より政府当局に申し入れ、参議院においても、地方財政緊急措置法として提案をしてまいっているところであります。  すなわち、住民税の課税最低限の引き上げを含めて、住民負担の軽減を図り、もって個人消費の上昇による景気の回復、これに伴い、地方財源の減収、及び地方単独事業費の増加――特に民生費等社会福祉を重点的に、を図るための第二交付税の創設。法人の税負担の強化。地方交付税の民主化措置。すなわち、交付税総額に無理につじつまを合わせるための基準財政需要額の算定の改善を行うとともに、特別交付税率をさらに減額すること。地方債の許可制度の改善と政府資金割合を八〇%とすること。公共用地の確保のための起債を十分に保証すること。超過負担の解消、国庫補助制度の改革を、法律による調査委員会設置して調査検討するとともに、過去の分も補てんをすること。人口急増、急減市町村に対する対策。地方公営企業に対する措置。国民健康保険対策の強化。都の特例措置の廃止。等の提案を含めつつ、慎重な審議を行ってまいったのでありますが、一部超過負担解消等について前向きの姿勢は見られるものの、抜本的対策としてはきわめて不十分であることはまことに遺憾であります。  このことはまた、去る四月二十三日の参考人の供述によってもきわめて明白になったところであります。  政府は、このような中で、地方財政の危機の原因の最大なるものは人件費であるとして、問題あるラスパイレス指数による比較を大きく宣伝していることはまことに残念であります。政府の今回の提案はこの点から言ってきわめて不充分であり、政府は一日も早くわれわれの提案する地方財政に対する抜本的改革を検討するよう心から要望するものであります。  以上、私は、地方財政に対する政府の措置がきわめて不十分である点を強調して反対の討論といたします。  次に、共産党・革新共同の修正案に対しての反対理由を申し上げます。  第一に、地方交付税の増額は、先ほど申し上げた地方財政の危機に対し可能な限り増額すべきであり、否定するものではありません。ただ、現下の不況のもと、わが党の主張するように、まず住民税の軽減を行い、国民の購買力を高め、不況を克服する政策を考えるべきであると存じます。これらの減税に対し交付税で補てん措置を行い、国税三税の減少分については、資産再評価による法人税の強化、所得税の総合課税や富裕税の創設等を図るなど、政策の一貫性を持たすべきものであると存じます。  また、これらについては各党間で十分話し合う機会を持ち、共同できるものは共同して提案する努力をすべきものであると存じますが、この点が不十分ではないかと思うのであります。  第二に、その配分方法であります。配分方法は、さきの七十四臨時国会においては、共産党・革新共同の提案は、人口で単純に配分する方法をとってまいったのでありますが、今回は現行交付税の配分方法に相当の検討すべき問題点があるにもかかわらず、それを明確にする措置を明示しないで、政府に一任する措置をとっている点は納得できません。わが党の主張するように、当面社会福祉の単独事業分や生活環境施設の単独分を強化することがあるならは、それはそれなりに評価ができると存じますが、これまた不十分と考えられます。要するに、以上各党間の話し合いに時間をかけ、十分各党共同の意思をまとめた段階で提案すべきであると思います。これが私の反対の理由であります。  以上、二つの提案に反対の立場を申し述べ、私の反対討論といたします。(拍手)
  354. 大西正男

    大西委員長 林百郎君。
  355. 林百郎

    ○林(百)委員 私は日本共産党・革新共同を代表して、ただいま議題となっております政府提案の地方交付税法の一部を改正する法律案に反対、日本社会党、公明党二党共同提案の修正案には棄権、日本共産党・革新共同提案の修正案に賛成の理由を次に述べたいと思います。  まず、政府提案に反対の理由について申し述べます。  第一に、政府提案の改正は、地方自治団体が挙げて要求しております地方交付税率の引き上げを行わないことは言うまでもなく、全体として今日の地方自治体の直面しておる財政危機を根本的に解決するものになっていないのであります。  今日、深刻な地方財政危機の事態は、言うまでもなく歴代自民党政府の対米従属のもとでの大企業奉仕の経済の高度成長政策による国民生活破壊、それに基づく地方自治体の行政需要の増加によることは明らかであります。それにもかかわらず、国と地方の事務と財源の配分が実情に見合わない不合理なところに根本的な原因があるのであります。これに加うるに、インフレ、物価高騰、総需要抑制政策により一層その危機が促進されたものであります。  今日、国税、地方税を通じ税収が当初見込みを下回る事態のもとで、昭和四十九年度分の地方交付税の返還すら言われるほど深刻な財政状態の中で、地方交付税額を確保するための特別な措置が必要であることは明らかであります。したがって、さきにも触れましたごとく、地方交付税率を引き上げることは、これは保守、革新を問わず地方自治体の一致した要求でありまして、今日の地方財政危機打開のための事務と財源の再配分の一環として絶対に必要な措置であります。それにもかかわらず、本改正案によれば依然として交付税率の改定を行おうとしておりません。これが反対の第一の理由であります。  第二に、単位費用の改定でありますが、本改正案によれば依然としていわば義務的に措置すべきものを措置したというにすぎないのであります。現に福祉関係を見ましても、児童手当対策、生活保護など制度改正によって必要となる地方負担分を措置しただけの改正であり、全般的に今日地域住民が熱望しておる行政内容の向上をさせるものではないのであります。これが反対の第二の理由であります。  第三に、単位費用の算定基礎は実情に合わない基準単価であり、あるべき行政水準はおろか、現実の行政水準の維持さえ困難とする基準単価となっているのであります。これは直ちに改められることが必要であります。  また、今日地方財政を圧迫し、地方自治団体が国の善処を挙げて希望しておる超過負担の解消はきわめて不十分であります。国は速やかに、単価差、数量差、対象差、認可差を含む累積の超過負担の解決と同時に、将来一切超過負担を発生させない措置をこの際とるべきであります。ところが、その措置が全くとられていないと言ってもよろしいのであります。これが反対の第三の理由であります。  第四に、政府は今日の地方財政危機の原因を、人件費の増大だとか福祉行政の先取り等に求め、この点に不当な攻撃を加えてきて、国民の利益を犠牲にする方向で地方財政危機の打開を推進しようとしているのであります。今日の地方財政危機を打開し、真に地方行財政の民主的発展を図るためには、国と地方の財源と事務の公正な再配分を行うべきであります。まず、その方策としては、わが党の修正案のごとく、地方自治体が挙げて求めておる、交付税率を八%引き上げて四〇%とすることを直ちに実施すべきであります。本改正案にはこれが盛り込まれておらないのであります。  以上が反対の理由であります。  次に、日本社会党、公明党二党共同提案の修正案についての意見を申し上げます。  この修正案によりますと、第一に人口急増市町村及び人口急減市町村のための財源措置についてはわが党の人口急増地域財政特別措置法案要綱、過疎対策緊急措置改正要綱においてすでに大部分が提起されているものであって、もちろんこれに反対する理由はありません。  第二に、都の特例廃止についても賛成できるものであります。  しかし第三に問題となる点は、交付税法の修正によって交付税交付金を増加するのが根本的な解決の措置であるにもかかわらず、交付税率の引き上げを行っておらない。言うまでもなくいま切実に求められているのは、国と地方の財源再配分の根本的な合理的な解決の一環として、地方交付税総額を、全体を引き上げることであります。したがって、普通交付税と特別交付税の配分を変更しても真の地方財政危機打開にはならないのであります。したがって特別交付金の配分率を引き下げて財源に充てるような本修正案の措置にはわが党は賛成できません。  以上の点から、社会党、公明党共同提案の修正案には、賛成できる部分と、とうてい賛成できない部分がありますので、棄権をするわけであります。  最後に、日本共産党・革新共同提案の交付税率引き上げの修正案に賛成し、私の討論を終わるものであります。(拍手)
  356. 大西正男

    大西委員長 小濱新次君。
  357. 小濱新次

    ○小濱委員 私は公明党を代表して、ただいま議題となっております内閣提出に係る地方交付税法の一部を改正する法律案及び日本共産党・革新共同提出の修正案に反対し、社会党及び公明党共同提案による地方交付税法の一部を改正する法律案に対する修正案に賛成する討論を行います。  以下、その要点を申し述べます。まず交付税の税率についてであります。最近国土利用計画法の施行などによる国の機関委任事務の激増、またこれまでの高度経済成長時代のひずみを是正するため、義務教育施設、上下水道、市町村道など、立ちおくれている生活関連施設の整備充実、住民の要求である福祉の拡充など、自治体の財政需要は増大の一途をたどっております。しかしながら、低経済成長下においてはこれまでのような地方税の大幅な伸びは期待できないのであります。  このような現状で、立ちおくれている生活関連施設の充実、福祉の増進などを図るには、国税の大幅な地方移譲を行うとともに、交付税率の大幅引き上げを実施すべきでありますが、交付税率は昭和四十一年以来据え置かれたままであります。また国債発行の現状においては、その一定割合を交付税に上乗せして交付すべきでありますが、政府案はこのような措置が全くとられておりません。これが第一点であります。  次に地方財政計画についてであります。四十八年度の地方財政計画決算との対比でも明らかなように、これまでの決算計画よりも二ないし三割増加しております。このように計画決算が乖離していることに対し、政府は人件費と福祉の先取りが原因であると言っておりますが、これは全く本質をゆがめたすりかえ論であります。計画を実際よりも過少に策定している政府の意図は、人件費を低く押えることと、自治体本来の使命である福祉行政にブレーキをかける以外の何ものでもありません。また、このように実際よりも低く計画を作成していることが超過負担など、地方財政を一層締めつける結果となっていることは明らかであります。  本来の地方財政計画は地方の財政運営の指針となるべきものであり、特に高度経済成長から低経済成長に移行する経済の変動期においてこそ、その役割りは一層重要であることは言うまでもありません。今回の財政計画も従来の姿勢を踏襲し、実態とかけ離れたものであり、本来の使命を果たすどころか、地方財政を締めつける以外の何ものでもありません。これは第二点であります。  次に超過負担についてであります。国庫補助負担事業に係る地方超過負担は現在の地方財政危機の最大の原因となっているとともに、国と地方との財政秩序を乱す原因となっております。政府は普通建設事業や一般行政費について単価や対象、数量の是正を行っているとは言うものの、単価については実勢単価を大幅に下回るとともに、対象、数量についても実態に即したものとはなっていません。また超過負担に対して国と地方との見解の相違があり、このことが超過負担の解消を一層困難にしております。超過負担に対する国と地方側との見解の違いを調整し、その解消を図るために、国、地方の代表からなる地方超過負担調査会を設けるべきであります。  公明党は、現行の超過負担の実態を是正するため、これらの趣旨を織り込んだ超過負担解消法案を提出しておりますが、政府もこの趣旨を十分取り入れ、超過負担の完全解消を図るべきであります。  なお、国の直轄事業に伴う地方負担金は事業の趣旨から即座に廃止すべきでありますが、これらの改善措置が何ら講じられておりません。これが第三点であります。  次に、人口急増市町村対策についてであります。従来から人口急増市町村の義務教育施設、公共下水道、道路、清掃などの生活関連施設整備は著しく立ちおくれており、高度経済成長政策のひずみの犠牲を強いられております。これに対し政府は、若干の予算措置で対処しているのみで根本的な対策を講じようとしておりません。公明党は、人口急増市町村特別財政措置法案を今国会に提出しておりますが、財政窮迫を告げる急増市町村を救済するにはこの立法化以外にはないと考えるものであります。政府もこの趣旨を十分勘案し、その立法化に努力することを望むものであります。  なお、戦後の第二次ベビーブームと最近の高校進学率の上昇に伴って今後高等学校の不足が顕著になることは明白であります。準義務教育とも言うべき現在の高等学校に対し、現行のように都道府県のみに責任を負わせるのではなく国も大幅な補助制度を確立すべきでありますが、これらの措置が講じられておりません。これが第四点であります。  次に、過疎対策についてであります。過疎市町村に対して昭和四十五年に過疎法が成立して以来、さまざまな対策が実施されましたが、いまだ深刻な問題が続いております。過疎問題は人口急増問題と同様に高度経済成長政策のひずみでもあり、国家的立場から十分な対策が講じられなければなりません。従来から過疎債の元利償還に対する交付税基準財政需要額の算入率の大幅引き上げ、過疎債に対する適用事業の拡大が要求されておりますが、その実現がいまだなされておりません。さらには国勢調査に基づく人口減少率が現在は一〇%以下の市町村が対象にされていますが、その減少率の引き下げを行うなど準過疎対策の充実を期さなければなりませんが、これらの措置が講じられておりません。これが第五点であります。  次に、公営企業と国民健康保険事業についてであります。住民の生活水準の維持向上のために重要な役割りを担っている交通、病院、水道などの公営企業の経営はますます逼迫しております。これらの公営企業の経営悪化の原因は最近のインフレによる物価高、交通事情の悪化などいわゆる企業の外的条件の悪化によるもので、企業努力の限界を超えるものであります。これまで政府は、交通事業と病院事業の不良債務に対する特例債の発行を認め、その利子の一部を補助する対策を講じたとはいうものの部分的な対策にすぎません。自治体では公営企業に対して乏しい普通会計の中から大量の繰り入れ措置を講じておりますが、それにもかかわらず四十九年度においても膨大な赤字が予想されております。このように経営の悪化に苦しんでいる公営企業に対し、従来の利子の一部を補助するという部分的な対策ではなく、元金の三分の二、利子の全額を補助するなどの抜本的な対策を立てなければ公営企業経営は成り立っていきません。  なお、国民健康保険事業の赤字についても、経営努力のみではもはや対処することは不可能な事態になっており、国庫負担を大幅に増額すべきでありますが、そのような十分な措置がとられておりません。これが第六であります。  次に、地方債についてであります。現在の地方債は国の許可制によって厳しく制約されておりますが、これは戦後の経済の混乱期に当分の間の措置として定められたものであって現状に即したものではなく、これまでもその改善が強く叫ばれてきたものの政府は一向に改める姿勢がうかがわれません。また財投に占める地方債の政府資金の割合もここ数年二〇%以下であり、立ちおくれている生活関連施設整備などの事業を推進するためには政府資金の割合を大幅に拡大することが急務でありますが、このような措置がとられておりません。  さらに、国の金融引き締めにより縁故債など民間資金の引受先がないためにどの自治体も縁故債などの獲得に頭を悩ましているのが実情であります。これについても政府は十分な対策を講ずるべきであります。これが第七点であります。  なお、日本共産党・革新共同提出の修正案については、交付税率引き上げの趣旨には賛成いたしますが、増額された交付税の配分方法については満足できません。たとえは社会福祉の単独事業分の増額を図るなどの考えを打ち出すべきものと思量されます。したがって、わが党といたしましては反対せざるを得ません。  以上をもって討論を終わります。(拍手)
  358. 大西正男

  359. 折小野良一

    ○折小野委員 私は、民社党を代表して、内閣提出地方交付税法の一部を改正する法律案に対して反対、並びに日本社会党、公明党共同提案及び日本共産党・革新共同提案の同修正案に対しても、直ちに賛成しがたいという立場において討論をいたします。  今日地方財政の危機が叫ばれ、事態の成り行きが憂慮されておりますが、その原因は、現行制度の欠陥がインフレと不況によって顕在化したものであります。その実情は、地方財政計画と現実の地方財政との乖離に明らかに露呈されてきております。すなわち、一つは超過負担であり、一つは人件費であります。  超過負担については、これまでその一部について解消策がとられてまいりましたが、それは常に後追い的であり、かつ、一部の事業に限られてきました。したがって、国庫補助負担事業全般の超過負担の解消には、なおほど遠いものがあります。今日の地方財政の危機の一つの要素が超過負担にあるという実態は、依然解消されていないのであります。このことは、国、地方を通ずる財政秩序を乱し、ひいて国と地方との信頼関係を阻害し、地方自治の健全な発展にとって大きな障害となるであろうことを恐れるものであります。この際、政府は地方団体との十分な意思の疎通と実態の把握の上に制度の抜本的な改善を行い、超過負担の完全解消を図るべきであります。  次に、いわゆる人件費問題が財政硬直化の一つの大きな原因になっていることは申すまでもありません。しかも、人件費の効率化は行政運営の基本であることにかんがみ、単なる財政収支の問題としてだけでなく、公務員給与のあり方について抜本的な見直しと改善のための適切な対策を講ずる必要があります。まず第一は、公務員給与制度の基本について、いわゆる年功序列型給与体系の再検討であります。第二は、給与制度の厳正な運用に留意することであります。そして第三に、定員管理を適正にし、能率増進の施策を講ずることであります。これらの施策は、国民に対する行政の責任として、国も地方もともに真剣に取り組むべき問題であります。  これらの諸問題は、単に財政だけの問題、地方交付税制度だけの問題ではありません。しかし、本来財源調整の機能を果たすべき交付税制度は、その前提として、地方行財政の実態とそのあるべき姿についての認識の上に効率的な運営がなされ、かつ、高度の指導性が要求されなければならないのであります。  今後、地方行財政の健全化、効率化のため、地方交付税制度の根本的見直しと実効ある改善を期待して、私の討論を終わります。(拍手)
  360. 大西正男

    大西委員長 以上で討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  361. 大西正男

    大西委員長 これより採決に入ります。  まず、三谷秀治君外二名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  362. 大西正男

    大西委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、佐藤敬治君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  363. 大西正男

    大西委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  364. 大西正男

    大西委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  365. 大西正男

    大西委員長 ただいま議決いたしました法律案に対して、片岡清一君、山本弥之助君、小濱新次君及び折小野良一君から、四党共同をもって附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、本動議の提出者から趣旨の説明を求めます。片岡清一君。
  366. 片岡清一

    ○片岡委員 私は、この際、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党を代表いたしまして、地方交付税法の一部を改正する法律案に対し、附帯決議を付したいと思います。  案文はお手元に配付してありますとおりでございますので、何とぞ皆様方の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)     ――――――――――――― 地方交付税法の一部を改正する法律案に対する付帯決議(案)  政府は、今日の厳しい経済情勢のもとにおいて、住民福祉の向上が実現できるよう地方財政の充実強化に努めるとともに、今後における社会経済情勢の変化に即応した適切な財政運営ができるよう、とくに次の諸点について善処すべきである。 一、地方団体の増嵩する財政需要に対処するため、地方交付税率の引上げ等を含め、地方交付税の所要額の確保等一般財源の強化充実に努めること。   なお、国税三税の収入額が当初予算計上額を下回った場合においても、当初の地方交付税総額が確保できるよう必要な措置を講ずること。 二、特別交付税の率のあり方について検討すること。 三、地方財政計画の策定に当たり、その積算内容の改善合理化、とくに規模の是正を積極的に行うこと。 四、超過負担については、引き続きその完全解消措置を講じ、新たな超過負担を生じさせることのないようにするとともに、国庫補助負担制度の改善合理化を図ること。 五、上・下水道、清掃施設、教育施設、社会福祉施設等住民の生活関連公共施設の計画的な整備を図るため、国庫補助負担制度の拡充強化を図ること。 六、人口急増対策、過疎対策、公害対策、消費者行政等住民生活の安定と住民福祉の充実のための施策に対する財政措置の充実を図るほか、地方道路目的財源の拡充に努めること。 七、地方債については、引き続き政府資金の拡充を図るほか、償還期限の延長、起債手続きの簡素化等の改善措置を講ずること。 八、住民生活に不可欠な地方公営企業の経営の現状にかんがみ、引き続き国庫補助制度の拡充強化を図るとともに、総合的な経営健全化対策を講ずること。 九、公営ギャンブル収入の均てん化措置を強化すること。  右決議する。     ―――――――――――――
  367. 大西正男

    大西委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  これより採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  368. 大西正男

    大西委員長 起立総員。よって、片岡清一君外三名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、自治大臣から発言を求められておりますので、これを許します。福田自治大臣。
  369. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 ただいま満場一致で御決議のありました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重し、善処してまいりたいと思います。     ―――――――――――――
  370. 大西正男

    大西委員長 この際、お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  371. 大西正男

    大西委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ――――――――――――― 〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  372. 大西正男

    大西委員長 次回は、来る九日金曜日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十七分散会      ――――◇―――――