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伊藤参考人 川崎市長の
伊藤でございます。先日は諸先生方非常に御多用の中を
川崎市の
地震対策の現状と現地の実情につきましてつぶさに御視察をいただき、また本日は本
委員会において陳述の機会をいただきましたことを厚くお礼を申し上げたいと存じます。
さて、本日は
川崎市におきます
地震、
コンビナート対策を
中心にとのことでありますが、お手元にお配りを申し上げました「
川崎市
地震防災対策」の資料を御参照いただきながら、これをもとに御説明をさせていただきたいと存じます。
川崎市は、従来から、
地震時におきます
防災対策につきまして、
川崎市
防災会議に
地震専門部会を設けまして
調査研究をしてまいりました。昨年の八月にその答申を受けまして、
地震対策につきまして今日まであらゆる角度から検討をいたし、しかも
市民の皆さん方と一緒になって具体的な訓練を重ねる、そういう実践的な体制をとってきたところであります。
そこで、まず
川崎市の現状でございますが、今回の
地震予知連絡会の警告をもとに、震央を
川崎駅
周辺と想定をいたしまして、五つの行政区のうち
川崎、幸、中原の全区域と高津区の一部、合わせまして七十八・九平方キロ、全市の大体五七%に当たります
地域が特に被災危険性の高い
地域になる、こういう想定をいたしました。しかもこの
地域は
沖積層の厚い、軟弱な地層上にございますし、また
埋立地の十三・五平方キロ、これを
中心といたします
地域の流砂現象も懸念されるところでございます。そして、本市は、御案内の
ように
東京及び
横浜とともに
大都市圏域を構成をいたしまして、
人口及び商業業務機能などの集中、集積をいたしておるところでございます。御案内の
ように、本市の
人口は百万人を少し超えている、こういう状況でございますが、いま申し上げました
地域には七十二万三千人の
人口がございますし、また、
コンビナート方面を
中心とする昼間
人口を合わせますと、七十六万四千人に達しておるのでございます。この
ような過密
地域に大
地震が
発生いたしました際には、その人的、物的被害の大きさははかり知れないものがあろうかと思うのであります。特に
川崎区では、耐用年数を超える
木造老朽
住宅が全
住宅棟数の約三〇%を超える町が実は十もございますし、
木造賃貸アパートな
ども少なくございませんので、被災時の家屋倒壊や二次
災害の
発生と拡大が大変心配をされるのであります。
次に、
コンビナートを
中心といたします
危険物施設は、製造所、貯蔵所及び取扱所を合計いたしまして七千四百五十七カ所ございます。さらに加えて自動車交通量も全市で一日七十七万二千台、内訳といたしまして、市内の事業所からのタンクローリー車は、石油類が二千台、LPGが五百台に達しておりまして、これらが発災時に
災害を助長しないか、まことに寒心にたえないのでございます。
これらのほかに、
避難場所として適当なオープンスペースにいたしましても、
川崎区では公園が区域の一・七%でございまして、さらに住工混在などの問題もございまして、
災害に対しての多くの発災要因と拡大要因を抱えている、こういう状況でございます。
この
ような現状から、私
どもは庁内に
地震防災対策本部を設置するなどして、
市民を守るための総合
対策を強力に推進をし、
市民に対しましても
対策の周知徹底を実は図っておるところでございます。
次に、
地震災害の
緊急対策の前提となります被害想定等につきましては、まず
地震規模を
マグニチュードの六前後、先ほどの先生方のお話よりは少し強く想定をいたしましたけれ
ども、
マグニチュードの六前後、震央を国鉄の
川崎駅
周辺、そして市内におきます
震度を、半径六キロメートル以内で
震度六、十二キロメートル以内で五、十二キロを超える
地域で四と想定をいたし、また、先ほど申し上げました
地震専門部会の答申から、
関東大震災級の
地震による被害想定を基礎といたしまして、お手元の資料四ページにお示しをしてございます
ように、一応罹災
人口約十二万二千人、倒壊家屋一万七千九百二十棟、出火口数百一という被害想定をしているのでございます。
次は、地元といたしまして最も私
ども関心を寄せておりますのが
コンビナートの
対策でございます。本市では、
コンビナート地区とその
背後の
市街地がきわめて接近しておりますために、一たび
災害が起こりますとその
影響は大変大きいのじゃないか。したがって、その立場において地区の概況をまず申し上げたいと思います。
第一番に、全国シェアで石油精製が一三・八%、エチレンの製造能力が二一%、まさに全国的に有数の
コンビナートでございまして、関連事業所数も百三に上っておるのでございます。先ほど先生方も申されました
ように、
川崎市は
日本の産業、経済界に対しましてかなりの
影響力を持つ規模を持っているのであります。
第二には、地区内には、二千五百七十の石油タンクを初めといたしまして、主として十二種の高圧ガス、さらに九種の有毒ガス、十六種に及びます有毒物質、さらには放射性同位元素など、多種多量な
危険物が集中をしておりまして、
震災時に、同時多発的に
災害が
発生した場合には、それを局所的に食いとめることはきわめて困難ではないだろうか。と同時に、誘発爆発等による
複合災害に発展をして、近接
市街地への
影響、その被害等を
考えますと、まさに想像を絶するものがあるのではないか、この
ように
考えているのであります。たとえば、昨年の十一月に
東京湾内でLPGタンカーの衝突事故がございました。あの第十雄洋丸には、二万三千トンのLPGが積載をされていたのでありますが、必死の消火活動にもかかわらず、二十日間も燃え続けておったのであります。爆沈という最終的な形にはなった
ようでありますが、本市の
コンビナートには、その約十二・五倍、最大約二十八万八千トンのLPGがあるのであります。
第三に、地区内には、夜間
人口約二万人、昼間は八万人がいると言われておりますが、
震災時における安全
避難等につきましては、大変大きな問題が残されておるのであります。
こうした現状を踏まえまして、
コンビナート防災対策といたしましては、
企業第一責任の原則に立っての
企業の自主保安管理体制の強化、そして指導、
地域ごとの共同
防災体制の整備、
川崎市石油
コンビナート安全
対策委員会の設置によります安全
対策の強化、特別立入検査の強化などに取り組んでおりますし、また、
災害時に備えた
対策といたしましては、高性能装甲化学車二台、化学
消防艇三隻を初めとする
消防資機材の整備、
石油コンビナート地域警防計画に基づきます特別
消防部隊の運用、他
都市機関との応援協定などを実は進めておるところであります。しかし、まだまだ十分という段階には至っておらないのであります。こうした中で、今後の措置といたしまして、まず第一番に、先ほど先生方からお話もございました
ように、
幾つかの問題点はあろうかと思いますが、私たちといたしましては、
防災遮断帯の整備についてまず申し上げなければならないと思うのであります。
すでに、建設省の御援助もありまして、実は青写真はでき上がっておるのでありますが、なかなかこれを実施をすることは大変なことでございまして、先般も申し上げました
ように、概算九千億円という額は、私
ども一
地方自治体の
財政の中では、どうにもならないのでありまして、ぜひひとつ国の力をおかりをして、具体的に実現をしなければいけないのじゃないかと、特に申し上げたいのであります。
もちろん、私
ども地元といたしましても、積極的に努力をいたしてまいりますが、今後、緊急整備を可能にする特別法の制定とともに、大幅な
財政措置等につきましても、特段の御配慮を
お願いしたいと存ずるのであります。
第二に、
危険物施設等に関する法改正の必要について申し上げたいと存じます。
とりわけ、防油堤の容量について、タンク容量の一〇〇%以上への拡大、保安距離五百メーター以上、保有
空地の強化、流出油防止堤設置の義務化、石油
コンビナートの保安行政の市
消防への一元化などにつきましては、早急に対処を
お願いしたいと存ずるのであります。また、現在規制のないタンクの容量と高さの制限、タンク容量に応じた構造の具体的な設計基準の設定等の措置につきましても、早急に善処を
お願いをしたいと思うのであります。
第三には、地元
消防体制の整備につきましても、現有の体制に加えた
消防資機材備蓄センターを併設いたしました水上
消防署の設置や
災害想定訓練の徹底などを積極的に進めてまいる所存でございます。
第四は、
企業内あるいは
企業間におきます
防災体制の拡充強化、つまり自主点検、自主防衛、この原則を貫きながらの強力な働きかけを行っているところであります。
第五は、市が実施をいたします
震災対策事業につきましては、わが国の経済成長を支えてきた京浜工業地帯のアフターケアという
意味からいっても、国の大幅な
財政措置を
お願いをしたいと思うのであります。同時に、
企業における
防災対策諸事業の円滑な推進を図るための税法上の特別措置等につきましても御配慮を
お願いをしたいのであります。
次は、
地震防災対策の措置状況についてでありますが、
災害の
発生から復旧に至る過程につきまして、これを五つの段階に分け、それぞれ円滑に
対策が推進できる
よう、実は私
どもなりのタイムプログラムを設定をいたしました。そして、その設定に基づきます徹底方を図っているのであります。
しかしながら、現実には多くの問題がございます。たとえば、第一段階におきましては、まず
災害の
発生を防止するために必要な
危険物等製造装置の構造強化による発災防止措置等についてその徹底を期することは、自治体の力だけでは困難でありますし、
市街地内での出火の防止に必要なガス器具の緊急消火装置の取りつけも、今後の技術
開発にまたなければならないと思うのであります。
また、第二、第三の段階におきましても、
避難所の緊急整備を初め、応急食糧、必需物資の確保と調達などには大変な努力が必要とされるでありましょうし、また、救急医療班の派遣要請の問題等、多方面にわたっての
対策の確立が急がれているわけでございます。
さらにまた、第三から第四の段階におきましても、道路、橋梁、
住宅など、
都市施設全般にかかわる復旧資材の調達、供給等につきましても、特段の御配慮を
お願いをしたいと思うのであります。
こうした現実は現実といたしまして、私
どもは、タイムプログラムに沿ってその
対策が円滑に推進される
よう、資料の十ページ以下に述べてございます
ような措置を講じているわけでございますが、御視察をいただきました際にも申し上げました
ように、当面の
緊急対策として必要な事業費総額は約一兆円という大変な額でございますが、私
ども川崎市が五十年度に措置をいたしました額は約三十億円でございまして、大部分が未措置の状況にあるわけでございます。しかし私たちは、緊急の
対策として、とにかく自治体としてできる限りの努力をしてまいりたいと思うのであります。しかし、国なり
関係諸機関のお力をかりませんとこれはどうにもなりませんので、どうぞひとつお力添えを
お願いいたしたいと思うのであります。
最後になりましたが、
地震対策は、何と申しましても
市民、自治体、国、
関係機関が一体となって未然に防止をする、このことが一番大切ではなかろうかと思うのであります。したがいまして、国の援助あるいはもちろん国会もそうでありますけれ
ども、諸先生方におかれましてもどうぞひとつこの直下型
地震の
対策につきまして御指導、御協力を賜ります
ようお願いいたしまして、大変長くなりましたが、終わらせていただきます。ありがとうございました。