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大平国務大臣 私はいまの事態の認識は非常にむずかしいと思うのです。海外を見ますと、世界
経済の
状況は、御
案内のようにまず通貨がフロートしておりまするし、基軸通貨というものの信認が揺らいでおるわけでございますので、世界の
経済の秩序が確立していないわけでございます。さればこそ石油のべらぼうな値上げが一晩のうちに行われたりするわけでございます。したがって、食糧や資源の供給につきましても安定供給が確立しているとは言えないわけでございまして、それにつき大きな政治的な不安、
経済的な不安がいつもつきまとっておるわけでございます。
したがって、世界でも国際収支が大幅に狂いまして、外貨が一方に偏在してしまって、多くの国が外貨不足に悩んでおるというようなことでございますので、世界
経済が伸び伸びと着実な拡大を見るなんという事態ではないと思うのです。大変むずかしい局面で、最近の
日本の輸出の急激な不振というものはそういうことと無
関係ではないわけでございますので、今日
景気の問題を考えるにつきましても大変むずかしい事態であるということは御
案内のとおりでございます。
また、ここ二、三年来そういった石油の危機を初めといたしまして、いろいろな
状態を経験してまいりました
国民といたしまして、ようやく何か安定の兆しをつかみたいということで今日
政府も
国民もやってまいったわけでございまして、従来よりは
物価も安定の兆しを見てきたわけでございまするし、この春以来の生産や出荷にいたしましても、
在庫にいたしましても、やや持ち直しの兆しが見えないわけじゃございません。ございませんけれども、一番基本になる消費が本当に着実に伸びておるかというと、そう言えないわけでございます。したがって、この事態は金を出して
景気政策をやったからというて簡単に直るような事態でもない。しかし、そういうことをやらなければますます冷え込む事態でもある。
それから、
国民が内外の事態に対してどのように対応するかということをいま非常に考え込んでおると見えて、消費にも明るい、図太い展望がまだ出てきていない、そういう
状況だと思うのです。したがって、
景気政策といい、
物価政策といい、とてもやりにくい事態であることをまず前提として考えなければいかぬと思うのでございます。したがって、これは相当時間がかかるのではないかと思うし、打つ手も、こういう手を打てばこのように響いてくるなんという従来のパターンで判断できる事態ではないと思うのでございます。したがって、非常にむずかしい事態であるということと、非常に時間がかかるということと、打つ
手段の選択もなかなかむずかしい事態であるということを前提にいたしまして、まず
国民も
政府も相当忍耐強くこの事態に対処していかなければいかぬのじゃないかと思っておるわけでございます。
したがって、
政府はとりあえず決まっておりまする
予算あるいはもろもろの財投計画その他決まりました計画の範囲内でやるべきことをまずやらしていただくということが、いまわれわれが
景気対策としてやっておることでございまして、またそれがそれ以上まだ出ていないわけでございまして、それ以上出るべきか出るべきでないかということは、今後の事態の進展を待たなければいかぬと考えておるわけでございます。