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竹本委員 先ほど来いろいろ御論議が重ねられておるのでございますけれ
ども、まず第一に、この
特別預金といいますか、新しい
考えを打ち出して実践に移すことが遅過ぎたというわれわれの印象を非常に残念に思いますので、一口申し上げます。
銀行局長は財政
金融が専門で国際政治史の方は余りお得意でないかもしれぬが、国際政治史の中にはツー・レイト・ジョンソンという言葉がある。これはジョンソンがアフリカに駆けつけたときに余り遅かったのでツー・レイト・ジョンソンというあだ名をもらったのですが、今度のこの
措置はいろいろと検討にむずかしい要素があることも私よくわかりますし、また先ほど来
指摘されたように
大蔵省が怠慢な問題もあっただろうと思うが、いずれにしましても、われわれがこれを最初に取り上げてから約二年たっておる。
先ほど私の話が出ましたが、仲間のゼンセン同盟が裁判に訴えたのは四十九年三月ですから、それからでももう一年以上たっておるが、裁判に訴える前の
準備期間が半年以上あって、われわれが問題を取り上げたのは四十八年の夏であります。そういう
意味でいまごろの実現ということでございますが、その実現の問題は、実現かどうか後でまた
議論するとして、とにかくツーレイトである。おまけにツーリトルである、少な過ぎるということも
一つわれわれは非常に残念に思いますから、一口だけ申し上げておきたい。
そこで本論に入りますが、私
どもがこの問題を取り上げた基本のモーティブから言いますと、大分ずれておるので、その点を少し申し上げてみたいと思うのですが、私が特にこの
目減りの問題に重点を置いて取り上げた第一の理由は、
インフレを抑制するということであります。総需要抑制とか先ほど来いろいろ言われましたが、
一つ覚えの総需要抑制だけで
インフレはなかなか押さえられないし、のみならず、その総需要抑制に踏み切ったのがこれまたツーレイトなんです。半年以上おくれておる。その点については、ドイツの物価が七%あるいは六%に押さえられていて、大体日本の四分の一でありますけれ
ども、それは前大戦におけるドイツの苦い経験もあるし、あるいは恩給生活者が千万人からおるという特殊事情もありますけれ
ども、そのドイツが打った手、その時期というものから比較すると、余りにもおくれておるし、余りにも生ぬるいし、逆の調整
インフレ論なんというものがあったわけですから、そういう
意味で
インフレに対する認識が全然ない。
そこで、
政府の目を覚まさせるにはどういうことが一番いいだろう、いろいろ
考えまして、とにかく裁判にでも持っていくような大きな問題に火をつけて、私は予算
委員会においても財政のデフレーターの問題を取り上げて、
政府の予算の中にも、いまのように物価が上がれば実際の仕事の量から言えば何兆円というむだがあるではないかと言ってもぴんとこないらしい。そういう
意味で裁判をしようということまで
考えたわけでございますが、根本の動機は、
インフレに対して無知であり無感覚であるということの目を覚まさせる
意味で、
目減り補償をやれということを言い出したわけであります。
しかし、これは、今日になって総需要抑制がとにかく行われて、不徹底ではありますけれ
ども一応その取り組みができたので、まあまあということでございますが、ただ私が言いたいことは、日本人はドイツ人と違って、これはイギリスの外務大臣をしましたスチュアートの言葉ですが、
インフレに対して犯罪的に無知である、あるいは無感覚である。このことをわれわれは忘れないように、特に
銀行局は通貨の問題もあるわけですから、
インフレに対して犯罪的に無知でないように、最も敏感であってほしい。これはしかし、日本の政治においては、はなはだ遺憾でございますけれ
ども、まことにでたらめであったと思います。
第二の私が取り上げた大きな動機は、いわゆる
目減り補償でありますが、この
目減り補償は、今度お
考えいただいた
制度というものとわれわれのねらいとは大分離れておるということを残念に思いますので、
一つ指摘しておきたい。
まず、これからということになるでしょうが、事務的なことも少しお伺いしますが、これから特定の
福祉年金を受けた五百三十万人かの人を
対象にしてこれをやるというのですけれ
ども、これからやるのであって、いままでの高い、たとえば去年は大体二四・五%消費者物価が上がったが、そういうときの犠牲を受けた人に対する
目減り補償ということには全然これは
関係ないではないか。日本で
インフレの救済をしなければならぬ、
社会的公正の
立場から
インフレの救済をやるということになれば、四十八年、四十九年の激しい
インフレの過程の中で受けた犠牲をどういうふうにカバーしてやるか、これが政治だと思うのですね。
これから先の問題は、いまおっしゃったように、僕は来年消費者物価は一けたになるとは思いませんけれ
ども、
福田さんを初め、
政府が一生懸命やっておられるから、これに大いに期待をするとして、これから先はまあまあとしても、いままで
インフレのために受けた非常な犠牲を一体どういうふうに
考えようとするのであるか。これで
目減り対策はもう一巻の終わりにするのか。これはこれからの
インフレ弱者あるいは
社会の
弱者に対する思いやりの政治の第一点として取り上げたけれ
ども、より本格的には、四十八年、四十九年の
インフレの犠牲に対しては第二弾、第三弾として本格的な取り組みをする意思があるのかないのか。これは
目減り補償の重大なポイントだと思いますので、まずその点をひとつお伺いいたしたい。