○中橋
政府委員 いまお話しのように、累進税率をとっております所得税なり
相続税といいますものが、所得なり財産の再分配機能に一番適しておることはそのとおりでございます。
もちろん、わが所得
税制の中におきまして、租税特別
措置によりましてその総合
課税の分野が若干フラットな税率で終わっておるというところはございますけれ
ども、やはり基本的には、たとえば所得税を見ますれば、その累進性、所得の再分配機能というのはかなり達成せられておると思います。
四十八年の数字で申しましても、たとえば納税者の中の一割の人間が所得税額総体の中の約二七%を
負担しておるわけでございます。もう少しその納税者の数を上からとってまいりますれば、ますますその
負担部分というものはふえてまいりますから、何といいましても所得
税制といいますのは、おっしゃいますような所得の再分配機能ということを所期しておりますし、また現にわが国におきましてもそういう機能を果たしておると思います。
もちろん、間接税につきましては、それを所得階層別に見ましたときには所得
税制とはそれは比べものにならないようなフラットな
負担でございますから、
収入に対しましてあるいは所得に対しましての逆進性というのは、それは避けがたいことだと思います。
ただ問題は、そういう所得
税制などを中心といたします直接税体系とそれから間接税体系といいますものはやはり相当バランスのあるものを持っておりませんと——本来は所得再分配機能を果たすものあるいは財産の再分配機能を果たすものとしては所得
税制なり
相続税制だけによればよろしいわけでございますけれ
ども、何と申しましてもそういった
一つ、二つの税目によりますと所期しないような
執行上の不均衡というものがまたあるわけでございますから、やはり各国とも所得
税制を補完する
意味において、あるいは所得
税制を上回る割合をもって間接税をとっておるわけでございますから、わが国におきましてもおっしゃいましたような所得なり財産の再分配機能ということを
考えながらも、やはり
執行面の難易あるいは納税者の
税制に対しますところの摩擦的な感覚というものを
考えながら、バランスのいい体系をとらなければならないと思います。
ただ、
自然増収のことになりますれば、御
指摘のように、所得税でございますとか
法人税でございますとかなり弾性値というものが間接税の場合よりも高うございますから、特に
景気の動向、所得の変動に一番左右されやすい所得税あるいは
法人税におきましては、より一層その
税収におきます反映が大きくなってくるわけでございます。
私
どもといたしますれば、
税収を
見積もります場合にはできるだけ新しいデータをとり、できるだけ数多くのデータを求めて正確を期するわけでございますが、残念ながら今日のような大きな
見込み違いがあったことにつきましては非常に遺憾に思っておりますけれ
ども、それは間接税につきましても、どうしても決算になりますれば、毎
年度ごらんいただきますように、若干の差異というのは免れがたいわけでございます。
その点が何といいましても
景気に敏感な直接税、特に所得税、
法人税はそれが一番大きい、しかもそれが累進構造をとっておればおるほど大きいということでございますから、それの
自然増収あるいは
自然減収ということがかなり大きな問題としてあるわけでございます。これに対しまして、われわれはもちろん今後とも
税収を
見積もります場合には、直接税であれ間接税であれ、できるだけ正確を期さなければならないことは申すまでもないところでございます。
そこで、いままでは毎年毎年
経済成長が非常に急速に、しかも大幅に伸びてまいりましたから、特にこの所得税、
法人税におきます
自然増収というものが大きゅうございましたので、それを毎年の減税財源に充てる。しかもかなりの
歳出規模の増加にも充て得るということでわが国の
財政は経過してきたものと思いますけれ
ども、今後
経済が安定的な成長をたどるということになりますれば、恐らくそういった大きな
自然増収というものは、今後そう期待はできないのではないかというふうに
考えられます。
そういう場合に、それでは減税ということができないのではないか、そのために間接税の財源によるべきではないかというお話でございますけれ
ども、それは一にかかりまして正確な
見積もりをし、それに対応しますところの
財政需要というものを測定いたしまして、その上でなお
年度当初におきましてあるいは
年度経過中におきましてそういう財源があればまた減税ということも起こり得ましょうけれ
ども、
自然増収という観点から申しますれば、やはり所得税であれ間接税であれ、特に今後におきまして間接税により多くの減税財源を求め得るという
事態もなかなか予測できないのではないかというふうに私は思っております。