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竹本委員 それでは、いいですか、執行上の困難ということで絶対そんな富裕税なんというものを
考えちゃならぬということでもないということが
一つ。第二段で私が言ったのは、
相続税との
関係においては、私は
関係があなたよりはもっとあると思うんだけれども、しかしあなたの説によれば、所得税との
関係の方が大きいんだ、したがって、
相続税との
関係において、これを特にやるべしとも言わぬが、やってはならぬとも言わないということですね。
そこで、第三番目に所得税との
関係について少しお
考えを承りたいと思う。
これは日本の、二十五年の富裕税をつくったときにも、おっしゃるように、所得税の補完税として生まれたというのが沿革的には正しい
理解であろうと思うし、それから所得税が高い累進になっているものだから脱税も多い。それで、脱税でためたやつに財産税でいこうか、こういうような
考え方も税務当局としてはあったかもしれない。いずれにしても、税の性質、性格というものは所得税の補完税であったということがわかります。それから、いまお話がありましたドイツの場合等についても、やはりそういう
考え方があったのではないかと私も思います。
そこでまた、問題は、やはり先ほどの
相続税と同じにインフレとの
関係になりますが、所得税は所得税の任務と使命がある。それから富裕税には富裕税の、特に私ども
考えている富裕税の重大な社会的使命というものは、このインフレ過程におけるストック面の不公正の是正ということが根本だ、これは直さなければいかぬ。そこで、日本の
政治がフローの問題とストックの問題について、大体われわれもそうだけれども、フローのことばかりやかましく言うけれども、ストックのあり方については従来日本の
政治というものが全体として関心がちょっと少なかったと思うんですよ。税制面もやはりそうだ。社会全体の空気のあらわれですから税制面だけが特によくなれと言ってもそれは無理だということもわかりますが、しかし最近においてはインフレも激しくなりました
関係もあって、ストック面における不公正ということが学者、評論家を初めとして非常に大きく打ち出されてきておる、こう思うんですね。それを税の面でどういうふうに取り組んでいくかというのが、いまの一番大きな問題だと思うのです。
すなわち、これも先ほど、静的財産税と動的財産税ということで
相続税と富裕税とは性格が違うと言ったけれども、今度は所得税というもののあり方なり性格なりというものを
考えてみた場合に、過去の富裕税あるいは所得税の補完というような問題だけからこの問題を見ないで、現在一番必要なものはいまのストック面における不公正なんだ。そこで所得税は所得税の側から、富裕税は富裕税の側から、すなわち、所得の面から、ストックの面から、両方から税というものに
一つの大きな
政治的というか社会的な富の再分配というかあるいは分配のできるだけの公正化をはかる。そういう
一つの使命があるとすれば、その使命を何も所得税だけで全部果たすということに
考えぬでもいいんじゃないか。所得税には所得税の使命があるが、同時に、その使命を果たせる限界がある。そこで全く別の発想で、同じような使命を別の角度からとらえ得る富裕税というものを
考えるべきではないか。
今度のイギリスの場合には、御承知のように所得税も上げる、同時に富裕税もかけるということになるようですね。そういう点で、これはイギリスの発想というものはまる切り違う。すなわち、ドイツの場合には確かに所得税の補完ということで富裕税が
考えられたけれども、イギリスの場合には今度の
考え方は、私も正確なことはまだわからぬが、伝えられるところによれば、税も三%か上げる。しかし同時に、富裕税も七千万円ぐらい持っておれば、十万ポンドかそれ以上にはかける。これは矛盾が拡大再
生産されるということではなくて、所得税によって所得の再分配をやる面と、またその限界を正しく
理解した上で、今度はストック面におけるインフレ過程の不公正を正すという
意味で富裕税というものを
考えておる、こういうふうに
理解すべきだと思うんですね。
だから、イギリスのまねをしろということを特に言うわけでもありませんけれども、税の使命がそれぞれあるし、その使命を果たせる限界があるし、そして現在においてはインフレ過程、社会的不公正が特にストックの面で非常に大きくなっておるんだから、その不公正を是正する、そういう角度からの再分配を
考えることのできる富裕税を創設するということが必要ではないか、こういうことを言っているのです。いかがですか。