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1975-07-21 第75回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年七月二十一日(月曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 田代 文久君    理事 菅波  茂君 理事 田中 六助君    理事 三池  信君 理事 山崎  拓君    理事 岡田 春夫君 理事 多賀谷真稔君    理事 多田 光雄君      稻村左四郎君    三原 朝雄君       細谷 治嘉君    渡辺 惣蔵君       鬼木 勝利君    松尾 信人君       小宮 武喜君  委員外出席者         資源エネルギー         庁石炭部長   高木 俊介君         参  考  人         (石炭鉱業審議         会総合部会部会         長)      円城寺次郎君         参  考  人         (日本石炭協会         会長)     有吉 新吾君         参  考  人         (電気事業連合         会副会長)   正親 見一君         参  考  人         (日本鉄鋼連盟         専務理事)   奥村 虎雄君         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合中央執行委         員長)     里谷 和夫君         参  考  人         (全国石炭鉱業         労働組合中央執         行委員長)   早立 栄司君         参  考  人         (全国炭鉱職員         組合協議会議         長)      木崎 順二君         参  考  人         (福岡県鉱業市         町村連盟会長) 高鍋 徹男君         参  考  人         (北海道鉱業市         町村会会長)  吉田  久君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 七月二十一日  辞任         補欠選任   上田 茂行君    稻村左四郎君 同日  辞任         補欠選任  稻村左四郎君     上田 茂行君     ————————————— 七月四日  一、石炭対策に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件(石炭鉱業審議会答申に  関する問題)      ————◇—————
  2. 田代文久

    田代委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  本日は、石炭鉱業審議会答申に関する問題について、参考人から御意見を聴取することといたしております。  午前中は、参考人として石炭鉱業審議会総合部会部会長円城寺次郎君、日本石炭協会会長有吉新吾君、電気事業連合会会長正親見一君及び日本鉄鋼連盟専務理事奥村虎雄君に御出席をいただいております。  参考人方々には、御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございました。何とぞ率直な御意見をお述べいただきたく存じます。  なお、議事の都合上、最初に御意見を十五分程度お述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず円城寺参考人お願いいたします。
  3. 円城寺次郎

    円城寺参考人 私は、過去十六年間、石炭政策関係してまいりましたが、石油ショックが起きるまでは、石炭が本当に必要だということを主張しても、それが一般に受け入れられなかった。しかし、石油ショック以後におきましては、本当に総合エネルギー政策的見地から見ても石炭が必要なのだという時代になったと思うわけであります。そうは申しましても、石炭産業を安定的に維持していくについては、現実の問題として、いろいろな困難がありますので、本特別委員会委員皆様方の絶大な御協力お願いしたいと存ずる次第であります。  そこで、私は第一点に申し上げたいと思いますことは、先ほど申し上げましたように、石炭は総合的なエネルギー政策から必要だということが、石炭鉱業審議会においても一致した意見となってきておりますから、これまでの対策と同じような文字を使ってあっても、その読み方が違うのだというふうに私は解釈しております。その点は後で申し上げてみたいと思います。  それから、今度の答申は、いわゆる今後の石炭政策の基本的な方針を明らかにしたもので、この答申に沿って政府は、現実政策の上に移していくわけでありますが、そういう移していく場合におきましても、総合エネルギー政策的な見地から、石炭は必要なのだという観点を、しっかりとらえて、実施政策を進めてもらいたいということが答申の性格だということを、はっきり申し上げてみたいと思うわけであります。  ところで、総合部会においては過去四回にわたって審議を行いましたが、実際は専門委員会というものが組織されておりまして、あす、こちらにおいでになるそうでありますが、向坂正男氏が専門委員会委員長として実際の作業を行っておりますので、技術的な点その他は、向坂座長からひとつお聞きを願いたいと存ずる次第であります。そこで私は、きょうは総合部会におきまして問題になった点につきまして御報告を申し上げて、最初の十五分間の報告の責めを果たさせていただきたいと思うわけです。  そこで第一番目に、総合部会において問題になった点はどういう点かと申しますと、生産規模を二千万トン以上ということにしている点であります。総合エネルギー政策としても、昭和六十年まで二千万トン以上という数字を出しているわけで、これは非常におかしいじゃないか、もっと明るい展望を持たせるには、さらにこれに加えた数字を明らかにすべきではないかという意見があったのでありますが、私は先ほど、同じ文字でも今度は読み方が違うのだということを申し上げたのは、以前から二千万トン以上という数字になってきておりますが、これまでの二千万トン以上の以上という言葉は、ある意味において、この言葉が使われ出した過程から考えてみますと、いわば政治的な意味が非常にあったように私は思います。しかし、新しいエネルギー政策としての二千万トン以上、この以上という数字は、もっと積極的な意味を持っていると思います。ただ私も石炭管理委員会委員長として、ここ二年ほど現地の山をしばしば見ておりますが、現実の問題として、ここに新しく二千万トン以上として具体的に大きな数字を掲げるには、かなり勇気の要ることだと思います。北炭の新鉱のガス突出事件を見てもわかりますように、われわれの恐れているようなああいう事件が突発するというようなことを考えてみても、やはり保安確保あるいは労働力維持その他、条件が整うことが必要でありまして、その意味で今度の答申は、十年間の展望のもとに三年間のローリングプランで毎年、実施計画をつくっていくということになっておりますので、保安確保労働力維持その他の条件をにらみ合わせて、現実問題として、この二千万トンの数字を拡大していくということが、今度の答申趣旨だというように理解していただきたいと思うわけです。  それから第二番目に、総合部会において問題になりましたのは、いわゆる体制問題であります。この問題は、実は過去において長い歴史のある問題でありまして、いま、総合部会において問題になりましたということを申し上げましたが、正直なところ、それほど強くこの問題が議論されたわけではありません。しかし、やはり石炭産業体制を変えて、国家管理あるいは国家統制力の強い体制にすべきだという議論は当然あったわけであります。しかし総合部会としては、これまで私企業でやってまいったのでありますが、やはり山の特殊事情もありますし、山自身にいろいろの労働条件ども定着するというような現実的な面を考えて、私企業体制を基本とした政策ということになっておりますが、ただ、ここで私の感じを申し上げてみますと、この体制問題は非常にこれまで議論されておりますが、現実の問題としては国の管理のもとにあるというふうに私は考えております。十六年の経験を通じてみて、形の問題としては非常に大きな問題として議論されておりますが、実際においては国の管理のもとに石炭産業があるということは否定できない問題でありまして、今後やはり石炭産業を安定させていくについては、国としていろいろの点でめんどうを見ていくということが非常に大事だというふうに考えているわけであります。  そこで、これに関連してやはり総合部会で問題になりました点は、新鉱の開発につきまして今度の答申は、いわゆる第三セクターの形態を主張しております。第三セクターにつきましては、これまでの経験にかんがみて、だめだという議論と、やはり第三セクターよりも公社公団でやるべきだという考え方が強く主張されました。新鉱開発ということになりますと、当然、北海道天北地域というようなことが考えられるわけでありますが、北海道の知事からも労働組合からも、公社公団説が強く主張されたのでありますが、ただ、この点も実質的に国が主導的にやるかどうかという点が問題になるだろうと私は思うわけであります。現行石炭鉱業合理化臨時措置法でも、国が開発地域の指定を行い、開発計画策定をすることもできることになっておりますし、現実開発資金の半分以上は、事業団を通じて国の資金で賄われているというようなこともあるわけでありまして、第三セクターに反対される方も、結局は国の指導的な役割りを期待しているということでありますから、第三セクターの形で新鉱を開発しても、その際、国が指導的役割りを果たすということによって新鉱開発をすべきではないかというふうに答申はなっておるということを申し上げたいと思うのであります。  それから次に、非常に問題になりましたのは保安対策の点でありまして、皆さんも御承知のように、これから石炭はますます深部に向かって採掘を進めていくということになれば、いよいよ保安の問題については最大の努力を払わなければならぬ点でありまして、これに対して、国が深部保安技術開発について積極的な政策をとるべきだという主張がありましたが、実は五十年度予算でも、保安確保対策石炭対策の中で最優先だというふうに聞いておりますし、保安に対する助成とか保安技術研究開発とか保安教育充実等に関して、国が積極的な推進を行う必要があるということは、今度の答申もこれを明らかにしているわけでありまして、そういうふうに今度の答申を読んでいただきたいと思うわけであります。  それから、細かいことは申しませんが、労働条件の点に関しまして、この答申に書いてある文字に不安を感ずるとの発言もありましたが、結局、地下労働にふさわしい労働条件確保ということがこの答申の精神であります。  それから財源問題が、これは非常に重要な問題でありますが、御承知のように石炭石油特別会計というものがありまして、政府助成はこの特別会計によって行っているわけでありますが、この点について私の考え方を申し上げさせていただきたいと思うのですが、実は石油関税ができたときに、私は関税率審議会委員として関税率審議会の場で主張して、この石油関税ができたのでありますが、なぜ石油関税ができたかと申しますと、これは全く石炭対策のために、石油関税が当時の〇・二%、それがいまは従量税でありますから、パーセンテージを申し上げることは適当でないと思いますが、その上に、当時の石油価格で一〇%までの関税が加えられた。これは関税率審議会の場で石炭対策のためだということでできたわけでありまして、したがって、この特別会計をどうするか、石油関税をどうするかという問題は、非常に重要な問題でありますが、できたときのいきさつから見て、やはりこの程度のものはぜひ残しておいていただきたい、これが今度の答申に強調されるわけであります。  それから、もう一つ問題となりまして、むしろ今後の石炭のことを考える場合に一番大きな問題だろうと思いますのは、価格の点であります。  価格問題につきましては、きょうは需要業界の方も出ておられますので、そちらからいろいろ意見があると思いますが、私は価格引き上げなしに石炭産業維持することは不可能だと思います。ですから、今後の石炭政策の一番のかなめは、この価格問題だろうというふうに考えておりますが、後で需要業界の方からもお話があると思いますが、現在のところ原料炭価格については、引き上げの点について一応何らかの合意に達することで、そちらの方は、心配はないとは申し上げません、もし外国からの輸入炭に比べて割り高価格にせざるを得ないような場合については、その救済問題についても答申は触れておりますが、むしろ、ここで非常に問題になるのは一般炭価格問題であります。それで一般炭につきましては、最初石炭が絶対に必要だということを申し上げましたが、一般炭輸入をするほど必要なのだということであって、そういう点から言えば、当然この一般炭価格問題というものは今後、非常に重要だと思うのですが、現実の問題として、一般炭価格を上げてほしいというお願い電力業界の方に申しましても、電力業界としては現実経営として、それがむずかしい、あるいは、それが北海道電力にしわ寄せをするとか、電発の方からの電力の引き取り料金に応じられないとか、いろいろ非常にむずかしい問題があります。しかし、私が申し上げますように、価格問題の解決なしには石炭産業というものは成り立たない。そういう点から申しますと、具体的にどうこうということは非常にむずかしい問題でありますから申し上げませんが、やはり総合的なエネルギー政策の中で価格問題を吸収していくという具体的な方策をとらない限り、石炭産業は確立しないと思います。先ほど財源問題として石油関税の位置について申し上げましたが、これだけでは石炭産業というものを維持することは不可能で、どうしてもその価格問題が今後の石炭問題の中心になりますが、その具体的方策ということになりますと、非常にむずかしい点があっても、総合的なエネルギー政策として石炭は絶対必要なのだ、したがって、総合的なエネルギー政策の中でこれをどう吸収していくか、結局は電力料金の問題によって解決していくということなしには、石炭産業というものは、私はどうも確立しないように思うわけであります。  まあ、そのほかにもいろいろ問題になった点がありますが、それは後で皆さんの御質問に応じてお答えすることにして、十五分の予定を過ぎておりますので、私の説明はこれだけにとどめておきたいと思いますが、最後に、繰り返して申し上げますように、新しい石炭政策というものは新しいエネルギー政策の線に沿って理解される。この答申は新しい総合エネルギー政策の線に沿って、石炭は絶対必要なのだという線に沿って理解され、政府はこの答申を受けて現実的な政策を決めていくわけでありますが、その決めるに当たっても、そういった基本的な線に沿って現実的な政策を決められることを、この答申は強く求めているのだということを、最後に申し上げて、私の説明を終わらせていただきたいと存じます。どうもありがとうございました。
  4. 田代文久

  5. 有吉新吾

    有吉参考人 私、石炭協会会長をいたしております有吉でございます。  石炭政策につきましては、かねてから本委員会の諸先生には格別の御配慮をいただいておりますが、本日はまた石炭業界立場から発言する機会を与えていただきましたことを、心から御礼申し上げる次第でございます。  また、今次石炭政策策定に当たりましては、本委員会の諸先生並びに審議会専門委員会先生方及び関係当局方々に並み並みならぬ御努力と御協力を賜り、改めて心から御礼を申し上げるものでございます。  一昨年の中東戦争を契機とする石油ショックは、わが国における、これまでの豊富低廉な輸入石油に依存したエネルギー構造を変え、エネルギー源多様化へと方向を転換し、これに伴って国産エネルギー資源である石炭の見直しが必要とされるに至り、昨年十月以来、石炭鉱業審議会において鋭意検討を重ねられ、今回、新石炭政策答申の運びとなりましたことは、まことに喜ばしい次第でございます。  今次答申においては、二千万トン以上の出炭規模を十年間にわたり確保すること及び石炭企業経常収支をできるだけ早い機会黒字とすべきことが明記されており、この前向きの姿勢に対しましては、私ども業界として心から歓迎し、かつ感謝申し上げる次第でございます。  私ども石炭企業に従事する者は、その責任の重大さを痛感するとともに、労使相協力して、保安確保し、出炭確保経営の改善に最善の努力を払う決意であります。  今回の答申を受けて、今後、新政策が具体化されるに当たり、私どもの考えていること並びに要望について、以下、申し述べさせていただきます。  一の(一)、企業経常収支黒字となることを具体的に実現していただくことが、業界の切なる要望であります。  申すまでもなく石炭企業経営は、一に需要家、特に鉄鋼電力からの炭価収入と国の助成に依存しておる実情にあります。したがって、このためには需要業界におかれても、石炭の引き取り及び価格の面で御協力を願い、また国におかれても、必要な財政措置を行っていただきたいと存ずるものであります。  また、答申には「できるだけ早い機会に」と書かれており、段階的に黒字に持っていく考え方を示されておりますが、石炭業界としては、本年度から少なくとも年度収支が相償うことができますよう、政府需要業界との援助協力お願い申し上げる次第であります。  石炭企業は多額の累積赤字を抱え、四十七年の第五次政策まで三次にわたる肩がわり措置をしていただきましたが、その後も引き続き赤字経営を続け、これを政府資金あるいは市中借り入れ需要家援助によって、ようやくつないでまいっておる実情であります。上述のように、本年度から年度収支が相償うに至りましても、この過去の赤字に基づく借入金の返済能力はないのであります。したがって、二、三年後を目標とし、段階的に黒字に持っていくようなことでは、とうていやっていけないことを御認識いただきたいと思うのであります。  一の(二)、なお、国内炭採掘条件より年々コスト増は避けられないと考えられますので、競合燃料との経済性その他の事情で、需要家側炭価面で過大の負担をかける場合には、答申にも「国民経済的に許容される範囲」内において「割高分を吸収する方策を」とるべきであるとありますが、その吸収策について、国としての具体的方策をぜひとも定めていただくことを希望いたします。  一の(三)、また、財政上の問題についてでありますが、石炭企業経営は国の助成に大きく依存しており、新しい石炭政策が円滑に実施される上にも、財政措置の拡充が必要と考えられますので、石炭特別会計については石炭産業維持するための前向きの助成を重点に、引き続き強化されますとともに、その財源の確保についてよろしくお願い申し上げます。  二の(一)、出炭確保につきましては、出炭規模は二千万トン以上を目標としておりますが、今後ますます採掘個所深部に移りますので、関係方面協力を得て、これに伴う保安技術開発を行い、保安の万全を図ることはもとより、地下産業にふさわしい労働条件生活環境の整備に努め、労働力確保と定着を図り、二千万トンを確保し、国民の期待にこたえたいと存じます。  なお、二千万トン規模を長期に維持していくためには、新鉱開発を行わねばなりませんが、残された対象区域自然条件も悪く、そのため巨額の資金を必要といたしますので、現行の新鉱開発資金制度を大幅に強化されるよう、お願いを申し上げます。  二の(二)、海外炭輸入につきましては、石油依存度の低下、エネルギー源多様化分散化を進めるために、今後ともますますその重要性を増すものと思われます。このことはまた、国内炭との混合利用による活用並びに需給の安定に資するものと考えます。  石炭業界といたしましては、海外炭開発に当たっては、技術協力を初めとし、いろいろな形でこれに参加する所存でありますが、海外炭の探鉱または開発に要する資金について、融資または保証の制度の確立を要望いたします。  二の(三)、技術開発につきましては、さきに触れましたとおり坑内は年々深部に移行いたしますので、これに伴う保安確保技術及びコスト低廉化のための省力化技術研究開発が当面の緊急課題であります。私どもとしては、関係当局を初め各大学、研究機関協力を仰ぎ、強力に推進いたしますが、引き続き一層の助成お願いをいたします。  石炭ガス化液化等利用技術開発は、長期的に見て石炭有効性を高めるため、ぜひとも必要であり、答申にありますよう国が中心となり、私どもはもとより、鉄鋼電力業界等ユーザー側の参加も得まして、計画的に推進されるよう要望いたします。  なお今後、新たな新鉱開発海外開発石炭利用技術開発には、莫大な資金を必要といたしますので、これが現存国内炭維持するための石炭特別会計を圧迫しないよう、お願いをしたいと思います。  三、最後に、この答申は私ども大変、結構と存じますが、要は、その内容が実行されるかどうかにかかっておりまして、私どもは、ぜひともこれを実行していただくよう重ねて要望申し上げます。そのためには今後、生産を担当する石炭業界と引き取り側の需要業界並びに政策の当事者である国とが密接な連携を保ち、従来ありがちであったすれ違いをなくし、問題の所在と対策につき共通の認識を持つための懇談の場が必要ではないかと思います。今次答申立案過程におきまして、役所の肝いりで、この種会合をしばしば持っていただき、大変、有意義であったと思いますが、今後も引き続き共同の懇談の場をつくっていただき、従来よりさらに突っ込んだ懇談と討議の行われることが必要かと存じます。  以上、答申に対する私ども決意考え方について概略申し述べましたが、画期的な今回の答申趣旨が生かされますよう、今後とも諸先生方格別の御配慮と御協力お願い申し上げまして、私の陳述を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  6. 田代文久

  7. 正親見一

    正親参考人 ただいま御紹介いただきました電気事業連合会の副会長正親でございます。加藤会長が出張しておりますので、私からかわりまして陳述をさせていただきます。  電力用炭の問題につきましては、かねてより当委員会の諸先生方格別の御理解を賜っておることに対しまして、改めて厚く御礼を申し上げます。  本日は、電気事業におきます石炭問題につきましての考え方を少々、述べさせていただきたいと存じます。  御高承のとおり、わが国経済の驚異的な成長によりまして、電力需要も飛躍的に伸びてまいりました。この間、エネルギー流体化、すなわち固体燃料から液体燃料への転換が、世界的な傾向といたしまして急速に進行するという大きな環境の変化に遭遇いたしましたが、電力業界といたしましては、このような情勢の中におきまして、公益事業という立場から、国の石炭政策に全面的に協力してまいった次第でございます。このことは、昭和四十年以降、十地点、百七十万キロワットにも及ぶ石炭火力発電所を建設いたしまして、一般炭出炭量の四〇ないし六〇%を引き取らせていただき、さらには数次にわたる石炭価格値上げ要請に対しましても、できる限りの御協力をさせていただいた次第でございますが、昨年度は御高承のとおり過去に例をみない三千円というかってない大きな価格引き上げをお受けいたした次第でございまして、この点からも御理解をちょうだいできると存じております。  しかしながら、ここ数年来、環境公害が大きな社会問題となってまいりまして、いわゆる硫黄酸化物あるいはばいじん、窒素酸化物等に関する規制が相次いで制定、強化されますとともに、地元住民の方々の公害に対する意識も年々高まり、国で定められました以上の厳しい規制を要請される場合が非常に多くなり、石炭を引き取る上での環境も、大きく変化してまいったのでございます。特に過密地帯に立地いたします石炭火力発電所におきましては、石炭を全く忌避するという地元の要請も出てまいりまして、これまでのような政策協力による石炭の引き取りには限界が生じてまいりまして、最近では年々その引き取り量を減少せざるを得ないという実情に相なった次第でございます。  一方、一昨年の石油危機を契機といたしまして、電力の安定供給に努めなければならない電力事業といたしましては、燃料のクリーン化を前提といたしました上で、これまで以上に燃料源の多様化を強力に推進しなければならないという状況に相なりました。このため、石炭につきましても、この観点から積極的に活用を図っていきたい、かように存じております。  政府におかれましても、この事態を重視されまして、昨年来、総合エネルギー調査会あるいは石炭鉱業審議会さらには電気事業審議会等におきまして、それぞれ有機的な御連携をおとりになりながら、わが国における各エネルギーの位置づけについて真剣な検討が行われ、過日、総合エネルギー調査会需給部会におきまして、わが国エネルギーの長期需給計画がまとめられた次第でございます。これを石炭について見ますと、昭和六十年度で海外から輸入する一般炭は千四百六十万トンとされており、その大部分が電力用炭であります。また、その前の日に電気事業審議会需給部会が開催されまして、昭和六十年度における電源別構成比が明示されました。これによりますと、昭和四十九年末で五百十万キロワットであった石炭火力設備が、昭和六十年では九百六十万キロワットと、ほぼ倍増しております。この間の老朽設備の廃止等も考慮いたしますと、今後の十ヵ年間に約六百万キロワットの石炭火力を新設いたすことに相なります一私ども電力業界といたしましては、環境立地問題を初め資金、収支、需給等の各面において未曾有の困難に直面いたしておりますが、これらの諸問題を一つ一つ克服し、このたび示されました計画の達成に全力を挙げてまいりたいと存じております。  ところで、御承知と思いますが先月、電力十社の社長、電発総裁の会議におきまして、各電力会社の主体性と相互の協調体制のもとに、地域を越えた広域運営の新しい展開を推進いたしまして、社会の要請に応ずるべく広域運営の拡大を申し合わせた次第でございます。これは、幾多の試練に直面する電気事業が、この経営基盤を確立いたしまして電力の安定供給の使命を完遂するため、いわゆる電源立地の広域的活用、電力需給の広域的調整、さらには原子力発電に対する協調体制の強化という三つの柱を基本といたしまして、資金、資源の効率的利用を図ることを目的としたものであります。資源につきましては、ウラン、天然ガスはもとより石炭等の資源の確保、利用等、各面にわたっての相互援助、共同購入、融通など、長、短期視野での協力を行うものでございまして、現在これが具体化の検討を行っておるところでございます。このような協調関係の一層の推進は、石炭火力発電所の建設促進にも必ずや効果を上げるであろうと確信をいたしております。  以上、これまでの電力業界石炭引き取りに関しまする経緯と現状について御説明申し上げましたが、この機会に、今回、成案を得ました新石炭政策につきまして考えておりますことを少々、述べさせていただきたいと存じます。  電力業界といたしましては、この新石炭政策に基本的に協力してまいりますが、公益事業としての特殊事情もありまして、二点ばかり意見を申し上げ、諸先生方の御理解を賜りますとともに、実際の政策運用面におきまして特段の御配慮お願い申し上げる次第でございます。  まず、その一つは、石炭価格の設定についてでございまするが、先ほどより申し上げますとおり現在、電気事業資金、収支の面におきまして未曾有の困難に直面いたしております。このことから、特に至近年次におきまする石炭価格引き上げにつきましては、非常に困難な情勢にありますことを御理解いただきたいと存じます。  今回の答申におきまして、先ほど有吉会長からもお話がありましたが、「石炭火力が石油火力より割高となる場合において、国民経済的に許容される範囲のものについては、電力料金との関係を考慮しつつ割高分を吸収する方策を検討すべきである。」となっておりますが、石炭火力が割り高となることを理由とする電気料金の改定は、エネルギー多様化という意義はありまするものの、需要家からのコンセンサスをいただきますことが、まことに困難な面も予想されまするため、この点、国の財政措置と電気料金という問題を含めまして十分に御配慮をいただき、極力、財政措置によりまして対処いただきますことができますなれば、これによって電気事業の負担をできるだけ軽減していただきたい、かように存じております。  次に、第二点といたしまして、環境政策との調整ということでございます。  答申におきましては、わが国における資源・エネルギーの安定供給の重要なる要素としまして、石炭を可能な限り活用していくことが基本理念とされておりまするが、環境政策との整合性について調整が図られなければ、政策としての実効は期しがたいのではないかと憂えております。たとえば、北海道苫東火力等、産炭地に立地する石炭火力の新増設についてすら、排ガス規制のみならず購入石炭の品位にまで厳しい規制が設けられる傾向にあります。産炭地に立地して、石炭の山を前にして石炭がたけないという事態すら懸念されるのでございます。答申において、「現在の環境規制は排出規制となっているが、実際の運用上は実質的に燃料規制も併用されている。この点については再検討されることを期待する。」と書かれてございまするが、この点、再検討に着手していただきまして、政策の自己矛盾の解消に努めていただきたいと存じております。  最後に、かねてより考えておりまする電力業界要望を若干申し上げさせていただきます。  まず第一に、今後とも電力各社に対しまする石炭の安定供給につきまして、よろしくお願いしたいということでございます。特に石炭のウエートの高い北海道電力につきましては、特段の御配慮を賜りたいと存じます。  第二番目には、短期的に石炭の供給力を補う意味で、補完的、調整的効果が期待できますところの露頭炭の確保につきまして、国有鉱区の規制の緩和さらには道有林、国有林の払い下げが容易となりまするよう、早急に関係方面の調整をお願いしたいと存じております。  以上、いろいろ申し上げましたが、電力業界が直面しておりまする現状を十分、御賢察賜りまして、よろしくお願い申し上げる次第でございます。ありがとうございました。
  8. 田代文久

  9. 奥村虎雄

    奥村参考人 私、御指名をいただきました日本鉄鋼連盟専務理事奥村でございます。本日は、石炭対策につきまして鉄鋼業界としての意見を述べよということでございますので、原料炭需要家としての立場から、意見を述べさせていただきたいと存じます。  御高承のとおり、戦後わが国の経済の驚異的な成長は、鉄鋼需要の増大をもたらしまして、これに伴い鉄鋼生産も飛躍的に増加してまいったのであります。この間、鉄鋼業界といたしましては、高炉、転炉を主体とする大型の一貫製鉄所の建設に、あらゆる努力を傾注し、生産設備の拡充を進めてまいりました。この結果、これらの高炉で使用するコークスの原料となる石炭需要も年々、急増いたしまして、昭和三十九年度の二千三十三万トンから十年後の四十九年度には六千五百八十万トンと、実に三・二倍となった次第でございます。この間、鉄鋼業界といたしましては、国の石炭政策に全面的に協力をいたしまして、国内炭の引き取り及び価格引き上げ要請にこたえてまいったのであります。  御承知のように、鉄鋼業と石炭鉱業とは相互依存の関係にありまして、長年にわたって緊密な協調体制を保ってまいったのであります。特に第一次石炭対策昭和三十八年に実施されまして以来、原料炭を重点とするいわゆる傾斜生産方式に即応いたしまして、鉄鋼業界は年々、国内炭の引き取り量を増加してまいりました。すなわち、昭和三十七年度の六百四十八万トンから昭和四十六年度には一千四十七万トンに漸増してまいったのであります。しかしながら、昭和四十六年度をピークといたしまして、原料炭生産の減少を見てまいりましたので、心ならずも引き取り量は減少いたしまして、昨年、四十九年度には九百万トンをわずかに上回る程度に下がったのであります。現在の見通しからいたしますと、本年度は九百万トンを下回るのではないかと懸念される状況にございます。  一方、国内炭価格改定について見ますと、鉄鋼業界といたしましては、石炭生産コスト及び流通コストの上昇からくる再三の値上げ要請を受け入れまして、輸入炭の方がはるかに割り安な現状にもかかわらず、四十五年以降、各年トン当たり五百円、合計いたしますと四ヵ年間におよそ二千円の値上げを了承したのであります。また、昨年四月には一挙に三千五百円、さらに七月には、労賃の大幅改定に伴う不足分として四百円の再値上げ要請をも受け入れた次第でございます。  そもそも国内原料炭価格改定ルールにつきましては、現行の第五次石炭政策及び今回答申のありました新石炭政策におきまして、ほぼ同趣旨のルールが打ち出されております。すなわち、国内原料炭価格は、これと品質的に見てほぼ同等な豪州弱粘結炭の価格を基準として決定するということでございまして、毎年の輸入炭価格変動幅にスライドして国内原料炭の値上げを認めるということでございます。  しかしながら、従来の現実価格決定の経過を見てまいりますと、最近における国内石炭会社の経営の困難な実情を勘案いたしまして、特別に輸入弱粘結炭の変動幅を上回る値上げを認めるなど、鉄鋼業界としてでき得る限りの御協力をいたしてまいったつもりでございます。  しかしながら、石油危機以降の鋼材コストの上昇はまことに著しいものがあります。この主な原因は、御承知のように原料炭、鉄鉱石を初めといたしまする原燃料価格の急騰と世界的な不況に起因する内外両面にわたる鉄鋼需要の停滞であります。  御高承のとおり日本鉄鋼業は、その使用する原材料のほとんどを海外諸国からの輸入に依存しております。昭和四十九年度の実績で申し上げますと、鉄鉱石の九九・四%、原料炭の八六・四%、鉄くずの九・九%、重油の一〇〇%を輸入に依存しておるのでございます。これらの輸入価格は、これまでは比較的安定した動きを示しておりましたが、昭和四十八年以降、急速に上昇傾向に転じまして、四十九年に入りますと、対前年比、原料炭で二倍強、鉄鉱石で二割増し強、鉄くずで二倍強と、著しい高騰ぶりを示しております。  このように石油危機をきっかけとして資源産出国側の資源ナショナリズムの高まりとともに、資源・エネルギー問題を中心とした内外経済環境は全く新しい局面に入ったと言っても過言ではありません。  元来、鉄鋼業のように巨額な設備投資を要する装置産業におきましては、生産量の伸びが大きければ大きいほど、もろもろのコスト上昇要因をそれによって吸収いたしまして、コストを低位に抑えることが可能であるということは、先生方、十分御承知のとおりであります。しかし、過去十年間、年率一一%を超える高度成長を遂げてまいりました日本鉄鋼業も、昭和四十八年度の粗鋼生産一億二千万トンをピークといたしまして、四十九年度一億一千四百万トン、さらに本年度は恐らく一億五百万トン前後となりまして、二年連続のマイナス成長になることは必至の見通しでございます。また、内需の減退を補う意味で、量的にも収益の面でも大きな支えとなってまいりました鋼材の輸出も、本年に入ってからは、世界的な不況によって量、価格の両面において大きく落ち込んでおります。  さて、鋼材価格につきましては、御承知のように昨年六月、それまで物価抑制の見地から行政指導の形で凍結されておりました鋼材につきましても、その価格の値上げが認められ、平均七千九百円、約一七%の値上げが了承されたのであります。しかし、通産省当局の査定はまことに厳しいものでありまして、原材料価格の値上がりによるコストの上昇分は認めるが、労務費等の上昇による分は、企業努力によって吸収することを期待するというものでございました。その結果、値上げ時点におきまして、すでに国内向け鋼材はかなりの赤字を積み残すことになりましたが、その後も原材料を中心とするコストの上昇は著しいものがあり、国内向け鋼材の赤字幅は、期を追って拡大を続けている状況でございます。もちろん鉄鋼業といたしましては、コストの切り下げにあらゆる努力を重ねておりますが、鋼材コストの中に占める原燃料費の比重が圧倒的に高いだけに、これにもおのずから限界があるといたしまして、先般、鉄鋼各社は相次いで、今年八、九月積みからの鋼材価格引き上げを発表したことは、新聞紙上等において御承知のとおりでございます。しかしながら、ひとしく不況下にございます大口の鉄鋼需要家の抵抗は予想以上に強いものがございまして、その解決には、なお若干の日時が必要となりましょう。  さて、今回、答申が行われました新石炭政策につきまして、鉄鋼業界としての意見を述べさせていただきたいと思います。  新石炭政策は、新しいエネルギー情勢を踏まえた総合エネルギー政策の一環といたしまして、石炭重要性を再認識し、国内において、およそ二千万トン以上の石炭生産維持するとともに、海外炭開発輸入を促進し、石炭利用技術の研究を推進しようとするものでございまして、鉄鋼業界として、その基本的な考え方には全面的に賛成でございます。われわれは、その実現のために、でき得る限りの協力を惜しむものではございません。しかしながら、このことに関連いたしまして、二つの問題点につきまして、率直に意見を申し述べさせていただきたいと存じます。  その第一は、国内炭の引き取りの可能性に関する問題でございます。  御承知のように、鉄鋼業で使用いたしまする石炭は、主として高炉に装入するコークスの原料となるものであり、したがって一定の粘結性を持った石炭が必要であります。いわゆる製鉄用原料炭あるいはコークス用炭と言われているものでございまして、発電用等に使用される一般炭とは、品質的に異なるものであることは申し上げるまでもございません。原料炭は粘結度の程度によりまして、強粘結炭あるいは弱粘結炭というように格づけされておりますが、わが国で産出されるのは弱粘結炭のみでございます。  さて、原料炭の所要量を決定する要因は二つございます。第一の要因はコークス比、つまり銑鉄一トンをつくるために必要とするコークスの量であります。日本の鉄鋼業界では、このコークス比を少なくいたしますために、あらゆる角度からの技術改良を行ってまいりました。現在、全国平均で四百四十キログラムでございまして、中には四百キログラムを割るような高能率の高炉もございまして、世界第一位の効率を誇っているのが現状でございます。将来このコークス比がどの程度まで引き下げられる可能性があるかという点が、原料炭の需給にも大きく影響するものでございます。コークス比の低減は、言うまでもなく生産コストの低減やエネルギーの節約の面でも、鉄鋼業界にとりましてもきわめて重要な課題でございますが、現時点で考えられまする技術進歩の見通し、あるいは原料炭の品質等を前提といたしますと、昭和五十五年度に四百十五キロ程度昭和六十年度には四百キロ程度、すなわち現在よりも約一〇%近い低下が可能ではないかと考えております。  原料炭の所要量を決定いたしまする第二の要因は、申すまでもなく鉄鋼生産量あるいは長期的な需要の予測でございます。鉄鋼生産の長期的見通しにつきましては、今月十四日の産業構造審議会総合部会のビジョンといたしまして発表されました数字がございます。すなわち昭和五十五年度の粗鋼生産の見通しが一億五千百万トン、六十年度は一億七千五百万トン前後と考えられております。一応この見通しをもとにいたしまして、昭和五十五年度原料炭所要量を算出いたしますと、八千五百万トンということになりまして、四十九年度に比べて千九百四十万トン、おおむね二千万トンの増加となります。したがいまして、原料炭の需給面から考えますと、経済性維持を前提とする限り、一千万トン程度国内炭の引き取りは長期的にも十分考えられる数値でございます。  第二の問題点は、国内炭価格水準についてでございます。  今回、答申されました新石炭政策におきましては、国内原料炭価格は「品質を考慮して輸入原料炭価格を基準」として設定されるということになっております。私どもは、この設定方法については原則的には賛成であります。しかしながら国内炭価格は、四十九年度平均で見ますと、輸入弱粘結炭の価格に比べて、なおかなり割り高となっております。これはなぜかと申しますと、前にも述べましたように、昭和四十九年の国内炭価格決定に際しまして、石炭業界の窮状を考慮して、輸入弱粘結炭の価格変動幅以上に特別に値上げ幅の上乗せを認めた結果でございます。いわば臨時的かつ特別な配慮によるものであります。私ども鉄鋼業界といたしましては、新石炭政策趣旨にのっとりまして、今後とも国内炭価格の改定に応じてまいる所存でありますが、石炭鉱業赤字もようやく解消しつつある今日、輸入弱粘結炭価格国内炭価格との間に存在する価格差は漸次縮小する方向で、価格改定のルールが運用されまするよう御指導いただきたいと思う次第でございます。私ども需要家側といたしましても、でき得る限りの御協力をいたしたいと存じますが、鉄鋼業界も現在、容易ならざる事態に立ち至っている実情をも御認識くださいまして、先生方におかれましては、国内炭価格の上昇を少しでも食いとめるように、石炭対策費の確保につきまして格段の御努力お願いいたしたいのでございます。  以上、るる申し上げましたところにより、鉄鋼業界石炭問題に関する考え方を御理解いただけたと存ずる次第でございますが、特に最近におきます輸入原燃料の大幅な値上げがございますので、鉄鋼経営は著しく困難となっております現状におきましては、国内炭の引き取りにつきましても、経済的合理性が強く要求されるのは当然の成り行きではなかろうかと存じます。鉄鋼業界といたしましては、今後とも政府石炭政策の方向に沿いまして、石炭業界との協力を続けてまいることにやぶさかではございませんが、その協力が円滑に促進されまするよう、財政、金融を含めて石炭政策全般について、諸先生方の格段の御協力を切にお願い申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  10. 田代文久

    田代委員長 以上で参考人意見の開陳は終わりました。
  11. 田代文久

    田代委員長 質疑の申し出があります。順次これを許します。田中六助君。
  12. 田中六助

    ○田中(六)委員 ただいま四人の参考人方々から、第六次答申につきまして種々、非常に参考になることをお聞きいたしまして、特にそれぞれ忙しい中をお繰り合わせ願いまして、ありがとうございます。  この六次の答申でございますが、非常に新しい答申だと円城寺社長もそうおっしゃる。皆さんもそういう意味のことを言っておるのですが、私どもがいろいろ聞いておる意見は、必ずしも新しいとは言わないわけです。というのは、体制問題が依然として、そのまま私企業の温存ということになっておるから、そういう印象を強く与えておるのじゃないかというふうに私、考えます。円城寺社長は、十六年間の経験に非常に自負を持っておられるのですが、この石炭問題を私企業でやっておるところに、いろいろな点で無理があるのじゃないか、これを国有化あるいは公営、そういうものにすれば、問題が一挙に解決するのじゃないかということを、それぞれ批判する人は言うわけでございまして、私も果たして国有化あるいは公営にすることによって、本当にいろいろな問題が解決するのかということについて疑問を持つわけでございますが、しかし、試行錯誤ということが許されるならば、一度、国有化にして、これがだめだったら、またもとに戻すというようなことが現実にでき得る問題だったならば、そうした方がいいのじゃないかという気がしないわけでもないのです。  と申しますのは、いま電力業界あるいは鉄鋼連盟の代表の方からも意見を聞きましたが、自分たちは協力するのだが、限界があるのだということを言うわけですね。それから、そこに内在するものが、石炭そのものが本当に私企業の精神を貫くならば、需要と供給によって、市場の、マーケットの操作によって価格は決まるのですが、そういうわけにはいかない状態になっておりますし、四十二年以来、特別会計という大きな国の財政の面からの援助というものは、大まかなトータルをしても莫大なものですし、特に国民の意識が非常に多様化して高まっておるさなかで、あの補給金、あの助成金は、おれの税金の一部じゃないかというようなことを言う連中がもうすでにいますし、いろいろなそういう点の見解から、環境問題あるいは他の私企業との連係を考えたときに、国民の声として出るのも、これは否定できないわけです。  さらに筑豊地帯の私の選挙区の方面の例を引きましても、筑豊地帯でございますが、埋蔵量は二十億トンぐらいあるのに、三七%くらい掘って、すでに筑豊炭田は老朽化しておるという判定を下されておるわけですね。そうなりますと、これはどういうことだろうというふうに考えますと、そこに鉱区調整ができない。つまり私有化されておるから鉱区調整がうまくいかない。本当にこれが公有あるいは国営とかいうようなものであったならば、科学的な鉱脈によって、それをうまくやることもできるのじゃないか。特に総合エネルギーの問題の観点から考えるならば、そういうこともどうだろうかというふうな疑問を持つのですね。  それから、ついきのう、おととい、北海道のある炭鉱に見学に行ったのですが、町はゴーストタウンみたいになっておる。しかも残っておる会社で、家族を含めまして千人ぐらいおるのですが、医者が一人しかいない。その医者も外科医、外科医の上、整形外科。これは人間、労働力を云々しておるのに大事な医者がいないのはどういうことだと言っても、ああ言い、こう言いして言いわけをするわけですね。二千万トン維持というようなことで炭鉱の労務者が問題なのに、それの医療機関さえそういうふうな調子になると、ますます。いまのままで炭鉱はいいのだろうかというようなことを考えざるを得ないのです。したがって、そういう観点からしても、やはり六次の答申、新しいと言っても新しくないという見解が、そういう面から大きくライトを浴びせられ得る理屈が、小さくあるいは大きくあるのですね。したがって私は、こういう観点から私企業体制というものに大きな疑問を持つのですが、この点、それも検討してみた、しかしこういうような答申になったのだと、この答申私企業への強化をさらに強めたという批判もあるのです。したがって、こういう観点から、円城寺さんが答申案の総責任者でございますし、もう一度そのことをお答え願いたい。それから有吉さんも、私企業立場からこの答申をどういうふうに持っていくか、もう少し具体的に責任者としてお答え願いたいと思います。
  13. 円城寺次郎

    円城寺参考人 十六年間で、石炭産業体制問題というのは常に議論されてきた問題で、ただ、議論をされておりますけれども石炭鉱業審議会の中の意見として、国有論あるいは国家管理論というものは大勢を占めなかったということは事実です。したがって、今度の答申も、そういった体制問題について国家管理論あるいは国有論というものが出てこなかった、こういう経過になっておるわけですが、ただ現実の問題として、私は十六年間、関係して感ずるのですが、石油の値段が非常に上がった現在においては、また別の見方もできるだろうと思うのですが、これを国家管理の形に置いてしまったら、石炭は必要じゃないのだという形が出たのではないか。きょうは、ここで需要業界の方から、国内の石炭も必要なのだと、新石炭政策については賛成だというお話を伺っているのですが、石油が暴騰しない以前においては、やはり国内の石炭は必要じゃないのだ、こういう考え方も強く主張ざれた中で、石炭産業を守ってきたというのが現実の姿だと思うので、仮に国家管理という形になったら、場合によっては、かえって石炭産業の生命を縮めたのじゃないかということも、実際その政策立案の過程を通じて見ると考えられるわけです。ところが現実の問題は、私企業体制だからといって、ではどうかというと、国家管理じゃないと言いながら、実際は、あらゆる面について国家管理しているわけですね。石炭が、価格その他が市場経済に任されたということじゃないと思うのです。あらゆる点について私は国家管理が及んでいるというふうに考えている。ですから、この際やはり体制問題ということで議論をするよりも、現実の問題として情勢が変わって、長期的に見てエネルギー政策としては国内の石炭が絶対必要だという観点から、国も本腰を入れてこの維持に当たれば、何も石炭鉱業審議会の中では、体制問題として国家管理とかあるいは国有論というのは大勢を占めていないのですから、現実の問題として、国が石炭産業維持されるように努力すればいいのじゃないか、こういうふうに考えております。
  14. 有吉新吾

    有吉参考人 いまの御質問でございますが、私は組合の人たちにもいつも話をしているのであります。石炭産業は、こういうふうな見直しのムードになりましても、やはり世の中に生きているのであって、みんなの中の一員である。要するに、当面は一番関係の深い需要家さん、それから国、そういうところの理解のもとに初めて生存が許されるものであって、いい気になって、たとえばむちゃくちゃな賃金を要求するとか、やはりそういう社会の中でひんしゅくを買うようなことでは、みずからの命を縮めるのだ、そういうことを私はいつも言っているわけでございますが、金が要るという面におきまして、これは国有であろうと何であろうと、石炭維持するとすれば同じように金が要るわけであります。のみならず、私は、国家管理とかそういうかっこうになりましたら、これはいまの私企業体制で行っているよりも、はるかに大きな金が要るのじゃないかという気がいたします。結局は、経営者にいたしましても、経営の合理化とか、企業意欲、労働意欲といいますか、要するに成績を上げればそれだけの反対給付がある、こういうことのない世界というものは、やはり親方日の丸になるのでありまして、絶対額からいいますと、やはりこれは国として、はるかに大きな金が要るのじゃないか。そのことは、そんなにまでして石炭というものを温存しなければならぬのか、こういうふうなことになっていくわけでありまして、私はそういうふうな体制的な考え方をしていくということは、即石炭の命を縮めるのじゃないかという感じを持っております。  それから、鉱区の調整ができないとか膨大な埋蔵炭量がむだに放棄されるとか、こういうふうな御意見もありましたけれども、そういうことは、やろうと思えばやれるのでありまして、いままで石炭を後ろ向きの形に考えておったがゆえに金を投下しようとしないのだ、本気で石炭を新鉱開発するつもりであれば、鉱区の調整その他というものは、今度、答申にも盛られておりますように、私は十分やっていける、むしろその方が設備費も国有的な形でやるよりも少なくて済むのじゃないか、こういうふうな考え方をいたしております。  以上でございます。
  15. 田中六助

    ○田中(六)委員 同じように金がかかるのだし、それから、すでに金の面では国有、国営みたいな形になっておるのだから、問題は実質的な内容、実質的なやり方だというお二人の御見解だと思います。しかしそれでも、だからこそ、実質的に国がいろいろめんどうを見ているのだから、形も内容もそういうふうに私企業体制を離れたらどうかという意見もありますし、結局、経営者の経営態度にかかってくると思いますので、その点十分、御考慮の上、対処してもらいたいと思います。  それから次は、二千万トンでございますが、これは円城寺さんも指摘しておりましたが、十年間で二千万トン以上というようなことは、いつまでたっても二千万トン、来る年も来る年も十年間二千万トン、それ以上のことは言っていないということになりますと、やはり生産意欲それから労務者の安定した確保、そういうようなものに対する意欲を非常にそがれることは事実でございましょうし、こういう点、特に三年間のローリングプランでやるということ、しかもそれは一年ごとに見直していくということでございます。そういう一つのやり方はあるのですが、総合エネルギーの観点から考えましても、本当に石炭を見直して石炭を位置づけするのだったら、二千万トン程度でいいのかという素朴な疑問がわくわけでございますが、これについてもう一工夫、一ひねり要ったのじゃないかという気がしますが、この点、どうでしょうか。  それから、生産者としては、二千万トンを十年間あるいはそれ以上ということで、何かあるのじゃないかと思いますが、円城寺さんと有吉さん。
  16. 円城寺次郎

    円城寺参考人 先ほどの御質問でも、今度の答申というものはかわりばえしないじゃないか、それから二千万トン以上の数字もちっとも変わっていないじゃないか、こういう御質問であって、私もそういった御質問、まことにごもっともと思いますけれども最初に私が申し上げたように、これまでの答申と今度の答申意味が違うので、同じ文字であっても解釈が違うのだ、やはり石炭を積極的に維持するという見地に立っての答申だから、読み方を変えていただきたいということを申し上げたわけです。  そこで実際、数字的な問題として二千万トン以上という数字を出しておりますが、これまでの経過を申し上げますと、第五次答申の中で、はっきり申し上げますが、審議の途中で出てきた数字が千五百万トンなのです。千五百万トンなどという数字で一体、石炭政策などと生意気なこと言えないじゃないかということで、「二千万トンを下らざる」になって、さらに、これが数字的に二千万トン以上ということになったわけなのですが、繰り返して申し上げますが、そのときの二千万トン以上という数字に対する解釈と今度の新政策の中での二千万トン以上の解釈は違うので、やはり石炭は本当に必要なのだということです。  それから、新エネルギー政策の中で二千万トン以上という数字だけでいくのはおかしいのじゃないかというお話なのですが、新しいエネルギー政策の観点から言っても、二千万トンが三千万トンになっても、石油に換算すればその半分ですから、これによって日本のエネルギーの問題が解決されるという問題ではないと思います。しかし、長期的に見て、やはり石炭の埋蔵量は世界的に非常に豊富だし、石炭利用技術も進むといった中で、国内の石炭を二千万トンぐらいは少なくとも維持したい、石炭の海外での開発のためには、採掘技術を身につけておきたい、あるいは石炭ガス化その他のクリーンエネルギー化については、国内でその程度石炭維持して研究もしてみたい、そういった長期的観点に立っての数字なわけでありますが、先ほども申し上げましたように、私も十六年間にいろいろ山を見てきましたし、最近は石炭管理委員会委員長として現地にしばしば行きますが、労務事情その他から考えて、二千五百万トンという数字を出すこと、あるいは三千万トンという数字を出すことは、現実の問題としては非常にむずかしい。しかし、出せれば出したいと私も思います。ですから、今度の答申の中では、先ほど申し上げましたように、三年の間の実施計画ローリングプランで決めて、労務事情とか保安確保対策とか、いろいろそういう面で二千万トン以上をその実施計画の中で実現していくということであって、何も二千万トンに級づけをしていくということが今度の新政策じゃないのだと理解してほしいのです。ですから、同じような読み方をしていただかないようにお願いしたいと思います。
  17. 有吉新吾

    有吉参考人 私ども安定供給という責任を負っているわけでございまして、その点から申しますと、結論的には、やはり二千万トンあるいはそれ以上というところが妥当ではないかと考えております。と申しますのは、現在の炭鉱は、過去のスクラップ・アンド・ビルドの政策によりまして、いわばぎりぎりの生産規模で操業しておるということでございます。どちらかというと、つま先立った操業をしていると表現してもいいかと思うのでございます。これがだんだん深部に移行していくわけでございますし、どうしてもそういう出炭規模に関する安全度というものは考えておかなければならぬものがあります。したがいまして、片や新鉱開発によりますプラスの面もございましょうけれども、そういった安定した経済速度でもって現存炭鉱が走っていく、その辺をプラスマイナスと申しますか、それが二千万トンというような私どもの考えになっておるわけでございます。ただ今後、新鉱を多区域にわたりまして大々的に五つも六つも開発するのだということになってまいりますと、五年先でございますか七年先でございますか、これは相当なプラスがあるのじゃないかと思いますが、これも新鉱区域というのは、まだ調査そのものが十分でないところがたくさんございますので、相当の年月を必要とするのじゃなかろうかと思います。そういう状況でございます。
  18. 田中六助

    ○田中(六)委員 本当はもう少し聞きたいのですが、あと一、二分という注意で、時間がございません。  第三セクターの方式がこれに盛られているのですが、これも一部には、何か責任逃れ、地方あるいはその他に責任をかぶされるという批判もございますが、一つの考え方として、コンセンサスを得るというようなことで、新鉱開発でこういう点は進歩した考えじゃないかと私は思います。円城      ————◇—————  第三セクターの方式がこれに盛られているのですが、これも一部には、何か責任逃れ、地方あるいはその他に責任をかぶされるという批判もございますが、一つの考え方として、コンセンサスを得るというようなことで、新鉱開発でこういう点は進歩した考えじゃないかと私は思います。円城いままでどおりのとは違うのだとおっしゃっておりますので、二千万トンについては特によく配慮していきたいのです。労務確保の上から二千万トンぐらいというのですが、今度は労務者の立場に立つと案外、不安定な考え方を持つのじゃないか。十年たっても二千万トン、これじゃいけない。かえって労務確保に反対の考えを抱かせるのじゃないかという考えもあるわけです。  それで、第三セクターのことを同僚の議員がいろいろ聞くでしょうが、有吉会長が申された中で、石炭業界需要業界と国がすれ違いをなくすような共同の立場を持ってほしい、今回の答申については、いろいろそういう話もしたと言うのですが、懇談の場というものを今後、具体的にどういうことで持っていきたいか、そういう御意見をもう少し具体的に言っていただけませんか。
  19. 有吉新吾

    有吉参考人 今度の答申に盛られております内容を実現していく一つの方法といたしまして、さっきも陳述で申しましたように、答申として書いていただいていることは、たとえば二千万トンにするとか、企業がペイしなければならぬというのは今度、初めてでございまして、私ども非常に評価しているわけでございますが、さて、ではこれをどうやって実現するのだろうかということになりますと、非常に問題があるわけでございます。現にいま炭価値上げのお願い鉄鋼さん、電力さんにしているわけでございますけれども、たとえば電力さんは、先ほどの御陳述にもありましたように、電力料金というのは今年度は改定できないのだから、いまの電力経営の状態から言って、とても値上げの余裕がない、こういうふうなところにとどまるわけでございます。私がお願いしておりますのは、そういう枠から一歩はみ出していただいて、政治的でもないのでしょうが、要するにそういうことで、従来は上げる余地がないのだ、こういうところで話がとまってしまうわけであります。それでは二千万トンというものは維持できないわけでございます。しからばどうしたらいいのか。財政援助というものをもうちょっと、たとえば増加引取交付金をふやすならふやす、あるいは電力料金を来年は改定するとか、何かそういう方向に進みませんと、書いてあることが実現しないという問題があるわけでございます。  そこで、懇談の場ということを書いておりますが、それで目的を達するのかということになりますと、これもはなはだ自信がないのでございます。従来は私ども需要家さんにお願いをし、国にもお願いをしますけれども、国は予算がない、需要家さんはそういう経営の余力がない、そういうふうなところで結局、不満足な、要するに二千万トンを維持するに足る収入というものが補償されないままで結論が出て、そして十何年にわたって赤字であり、それがついには肩がわりになっていった、こういう経過でございます。  そこで、何らか具体化するにはどこが問題なのか。たとえば需要家さんの方で、この辺までは炭価で見るが、あとはひとつ電力料金とか財政とかこういうものでというようなことで、それで国の予算が組めるのか。いままで、その辺の煮詰めがなかったわけでございます。通産の御当局は結局は、あっち向いてもこっち向いても、どうにも壁があって行けないので、この辺で仕方がないじゃないかというのが従来の結論であったわけでございますので、今度の政策立案の途中におきましても、たびたび通産当局に仲に立っていただきまして、需要家さんと私ども一緒の会合というのをいろいろやったのでありますが、陳述で申しましたように、その場合でも、おのおの意見は言われるのですけれども、国がこの辺はここまでやったらいいじゃないかとか、石炭会社がもうちょっと努力すべきだとか、相手がどうすべきだというようなところまでは、話が出ないわけでございまして、結局はやはりお互いの意見を言いっ放しでというようなことに終わっております。  したがって今度、審議会の組織なりメンバーも改編をして、そこで行動的、具体的に問題というものを審議しようという御当局の原案でございますけれども、私が心配いたしますのは、果たして、そういうふうな場で具体的な結論が出るか、それを非常に心配をしておるわけでございます。実際問題としましては、やはり国の方がそういう電力料金問題とか予算とか、その辺をある程度腹を決めないと、審議会での結論が出ないのじゃないかという気が私いたしますが、それを決めるには、やはり忌憚のない需要業界、私ども意見も国の方で聞き取っていただきまして、国は国の立場もありましょうが、やはり結局はこういうことをしなければならぬ、それでひとつ大蔵省にかけ合ってもらって、ある程度のめどをつけて初めて具体化していくのじゃないかというふうに思いますが、そういう煮詰めというものが、どうも足りないのじゃないか。その結果として、書いてあることはりっぱだけれども、なかなか実現をしない、こういうことになるのじゃないかということを一番心配いたしておるわけでありまして、いまのところ私、思い浮かべますのは、まあ一つの方法として、審議会審議会で、その公式の決定の場でございましょうけれども、その前にそういうそしゃくの場というものが必要ではなかろうか、それも一つの方法ではなかろうか、実現するための一つの方法として、こういう意見を申し上げておるわけでございます。
  20. 田中六助

    ○田中(六)委員 以上で、時間が参ったようでございますので、終わります。
  21. 田代文久

  22. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 円城寺先生は、第五次にわたる答申にも参加されましたし、また新しい答申も、責任者の最も重要な位置を占められて答申をなさったわけです。さっき田中さんから私企業体制の話がありましたが、日本の石炭政策ほど落ち込みのひどい政策はなかったのじゃないか。まあ私は国有という問題はいま言いません。言いませんが、西ドイツの、ルール炭田株式会社、一社に統合をして、約八割の炭鉱を傘下におさめたというこの事実は、どういうように評価されておるのですか、ひとつお聞かせ願いたい。
  23. 円城寺次郎

    円城寺参考人 西ドイツにおいて一社におさめた、そういうことも石炭鉱業審議会の長い審議の中で問題になったことがありました。したがって石炭会社一社論という、これは先生も御存じだと思うのですが、そういう主張もなされたのですが、結局、長い審議の中では、そうしてもそうしなくても、現実の問題として国が国家管理しているじゃないか。ですから今度の答申でも、有吉さんはその点いま疑問を持たれたのですが、値段を審議会の中で議論する、そういうふうに全体の国の管理体制石炭政策として現実に進行しているわけですから、そこであえて一社にする必要もあるまい、一社にするということはなかなか技術的な問題もあるし、もう一つは、やはり石炭が必要じゃないのだという時代においては、そこまで一緒にして苦労してやろうという意識が、どうも各石炭会社にはなかったようだと思うのです。そういった関係から一社論というものは、現実石炭鉱業審議会の中で主張もあったのですが、最後は実らなかった、こういうことです。
  24. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 日本の石炭政策は少しイデオロギー過剰ではなかったかという感じがするのですね。イギリスの国有化は、鉱区統合の原理から、保守党のときでも論議をされた。それからフランスのは、適正規模の炭鉱をつくろうという、そこで鉱区統合という面から出てきた。それで、これをもとへ返そうという議論は全然起こっておりません。そこで日本の場合、私は、このたび見直し論でずっと各炭鉱を歩いてみますと、傷跡が余りにも深いという感じをしたわけです。たとえば奔別の再開発などということが言われておる。これは一社か、何らかの私企業体制でなかったら閉山してない山ですね。ですから、あれだけの鉱量を持っており、そして大規模な施設をつくって、それが閉山をしたというのは、結局は私企業体制であったからと言わざるを得ないわけです。幸いにして有明炭鉱は、三池の方から技術をかり、また三池炭鉱が宮浦の方に将来、揚炭をするという計画で買収されましたから、これは救われたようなものの、日鉄鉱業としては私企業の限界であるという、いわばほうり出した形である。でありますから、植村構想が出まして当時いろいろ論議がありまして、結局は第四次答申は、今次の答申によっていろいろ助成された枠内が最大限度である。ですから、この与えられた助成によってできなかった場合は、経営者は勇断をもって進退を決すべきである、こういうように書いてあるわけです。でありますから、その後の石炭会社の状態を見ると、退却政策を皆やってきた。もし万一の場合は親会社に影響のないように分離をした。分離のできなかった会社は、もうやむなく石炭だけでやっておる。あるいはまた他に採算のとれる会社は石炭をやめていく、こういう形態になってこざるを得なかったわけですね。そこで国有という前に、一社とか統合という政策をしなかったところに、今日のような状態が出て、見直し論といってもなかなか傷の深い状態が出ておるのじゃないか。そのことはすなわち、少し委員皆さん方がいまの政府の枠内でという頭で答申をなさったのじゃないか、こういう感じを非常に受けるわけです。ですから、その点をどういうようにお考えになっておるのか、今後の問題も関係をするから、私はもう一回お聞かせ願いたいと思うのです。  と申しますのは、今度の答申は私から言うなら、これが答申であろうかというぐらい中間答申的な点が非常に多い。問題のあるところは、皆、検討をすべきであるという言葉で逃げられておる。ですから今後、出炭規模維持するためには、まず各炭鉱の企業の格差というのが出てくるわけです。そのことには問題提起はされてある。しかしそれは将来、検討すべきであるということで、器、政策手段が全然書いてない。あるいはまた、将来、石油の値段が、日本経済としては、あるいはいいことであるかもしれませんけれども、もし安くなった場合、石炭に対しては非常に厳しい立場になった場合は、一体どうするかということも書いてない。それから外国の輸入炭を入れる場合ですけれども国内炭は最優先に使えということは書いてある。ところが輸入炭価格が非常に安く入った場合は、一体どういう調整をするかという点も書いてない。ですから政策手段が残念ながら欠如をして、皆、検討事項になっておる、そういうところが問題ではないか。その点は私どもは、やはりそういう外国炭が安く入った場合は、公団が引き受けて、いわば国内炭とプールをするとか、あるいは国内において限界炭鉱が出てくる、その限界炭鉱を、出炭規模の面からどうしても維持しようとするなら、価格差補給という面が出る、それは公団のプール的なもので、ある程度採算のとれるようにしてやる。あるいは新鉱開発の場合も、今度は私企業体制、しかも第三セクターという形が皆、個別的に考えられておる。そういたしますと、個別的に考えられておるという点は、出炭規模からいえば限界を示すことになるわけです。これが第三セクターとかあるいは新鉱開発というものが、今後、新鉱開発するものを全体的に、あるいは調整区域についても、公団がやるというならば、ある程度の限界炭鉱が維持できることになる。ところが、もう初めからとてもむずかしいという場合は、手がつけられない仕組みになっておる、こういうように政策手段というものが欠如しておる。私ども公団というような方式で、全体的ないろいろな政策あるいは機能を、一つの公団というものによって集中をして、政策の推進にしたい、こういうふうに思っているのですけれども、それらが皆ばらばらに、ただ検討する事項になっている。こういう点、どういうようにお考えですか、ひとつお聞かせ願いたい。
  25. 円城寺次郎

    円城寺参考人 この奔別炭鉱の問題は、当時、私も奔別炭鉱をなるべく維持しようとして、関係者を説得したことをはっきり記憶しておりますから、あの住友の歌志内の鉱山爆発事故とともに、あれが閉山になったということは、私としても非常に遺憾なのですが、ただ、考えてみなければなりませんことは、あの当時においては、まだ石炭が本当にエネルギー政策として必要だという認識がなかったわけなのですね。やはりどっちかといえば、われわれは石炭は必要なのだといっても、石炭エネルギー政策として必要じゃないのだ、むしろ石炭産業が崩壊する過程で生ずる社会的摩擦が問題であるから、石炭維持するのだという考え方が非常に強くなっておりましたから、仮に一社であったら、奔別が閉山されなかったかどうかという点は、私もよくわかりません。  それからもう一つ、後の方の御指摘が非常に問題になりますから、私は再三繰り返して、新しいものだということで読んでほしいということを申し上げて、また政府も、石炭が本当に必要だということが新しい総合エネルギー政策なのだから、その線に沿って具体的な政策を決めてほしいということなので、私も検討が多いということは非常に気になっていたわけです。ですから検討、検討ということを書いておりますけれども、これは政府において、やはり私が繰り返して言ったように石炭が本当に総合エネルギー政策から必要なのだという観点から検討して政策を決めてほしいという意味と、もう一つは、今度の答申の中で触れておりますように、やはり、石炭鉱業審議会の改組を行って、政策部会というものも設けて、そして現実的に石炭産業の安定を図るための議論を展開していこう、こういうことを言っておりますから、すべて検討を政府だけに任しておくというつもりは、もちろんありません。しかし早急に政府としてやるべきものは、やはり新しい線に沿って政策を立てる、石炭鉱業審議会の中でも、そういった問題は大いに審議します。こういう精神で書かれているということを御了解願いたいと思います。
  26. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私どもが英国の石炭省顧問のシューマッハに会いましたときに、一社とか国有という一番の利点は、一番悪い炭鉱から整理することができる、こういうことを言っておりました。その点、過去の六千二百万トンもつぶした日本の状態を見ますると、必ずしもそういうようになってない。やはり企業の都合で考えられておる、ということは、逆に言いますと、出炭規模維持しようとするならば、やはり国が全体的立場に立って見なければ、できないのじゃないかという点の、一番肝心なところが、私はこの答申には抜けておるのではないかという感じを持つわけです。  そこで、せっかく需要業界参考人方々が見えておられますから、具体的な問題について若干お聞かせ願いたいと思うのですが、鉄鋼でございますが、豪州炭との弱粘の価格の交渉が大体終わったと聞いておるのです。これによりまして、国内炭の買い上げは大体どの程度に上がるものであるか。それから、これは稲山会長が当委員会に見えましたときに、日本の国内原料炭は流動性があって非常に利点があるのだとおっしゃった。私ども素人で、初めて石炭見直し論が出てから聞いたので、ああそういうことがあったのかということに気がついたわけですけれども、これはどのぐらい、価格のときのファクターに考えられておるのか、これらをお聞かせ願いたいと思います。  それから、電力業界にお聞かせ願いたいのですが、先ほどから、協力をしてきたという話がありましたけれども、私は、電力業界公益事業であるけれども、必ずしも協力を受けてないのじゃないかという感じを、率直に言いますと持つのです。と申しますのは、たとえば、ある会社は昭和二十九年に電気料金の認可を受けておる。その昭和二十九年に受けたときは、たとえばC重油九千円の値段で料金の基礎数字がはじかれておる、あるいはまた一般炭五千四百円、こういうような状態ではじかれておるにもかかわらず、その後、重油は五千五百円ぐらいになっておる。石炭もさらに千二百円ぐらい引かれておる。それなのに電気料金は全然下げてないのですよ。そして膨大な利潤をその間、得ている。ただ下げたのは中国電力だけですよ、三%ね。ですから私は、実際あれだけ炭鉱は赤字が累積して国が補助をしなければならぬ、そして閉山に次ぐ閉山をしておるのに、公益事業である電力業界は、もとの値段の電気料金一般から徴収しながら平然としてきたのではないか。最近、石油ショックになりまして若干、経営が悪いから上げてくれという話がありますけれども、私は必ずしも協力をしてくれてないと思うのですよ。ですから、そういう点をどういうように業界ではお考えになっておるか。  時間がありませんから私は一括して質問をしたいと思います。  そこで、いま私どもが見ると、九州と北海道が産炭地発電ができる地域で、あとは揚げ地発電は電発に依存をしているわけです。そこで、九州と北電の電気料金、これは現時点においては、私は北電は一般電力会社と比べて安い料金になっておると思いますが、北電について言いますと、石油の火力の場合と石炭火力の場合は、いま値差はどのくらいになっておるのか、これをお聞かせ願いたい。そうして、いま石炭協会の方で要求をしている炭価にいたしますと、どのくらい電気料金にはね返るものであるかどうかということ、それからそのことは全国の電力料金には何%はね返るものであるかどうかという点をお聞かせ願いたいと思います。  と申しますのは、将来、石油よりも、国内炭ですけれども石炭価格が高くなったといたしますと、北電と九電にそれだけの荷をかぶせるというのは、非常にむずかしいのではないかと思うのです。ですから、東京電力や関西や中部は石油をお使いください、しかし九電や北電は、ひとつぜひ石炭を使ってくれというならば、そこにかつて水火力の調整金があったように、何らかプール的に物を考えざるを得ないのじゃないか、個別電力会社ではなかなか困難じゃないかという問題、こういう問題が解決をしないと、私は出炭規模維持ができないと思うのですよ。そこで、それはどういうふうにお考えになっておるのか、この点をお聞かせ願いたいと思います。  円城寺先生お願いしたいのは、政策というのは悪いときにつくろうとしても、なかなか困難ですから、情勢のいいときに制度をつくっていただかないと、情勢が悪くなって制度をつくろうとしても、抵抗が非常に多くてできない。ですから、せっかくの機会ですから、あらゆるときを想定をして、その制度をつくっていただきたかった、こういうように申し上げたいと思います。  以上、ひとつ鉄鋼電力の方から御答弁をお願いしたいと思います。
  27. 奥村虎雄

    奥村参考人 お答えいたします。  ただいま御質問の豪州炭の価格交渉の妥結の問題でございますが、豪州からもいろいろな炭種が入っておりますが、特にウエートの高いニューデルあるいはリゲルの価格について申し上げますと、今回の値上がりが大体、十一、二ドル上げということに相なっております。ただ、豪州の場合は米ドルと豪州ドルとのレート換算もございますので、これを円で表示してみますと、この値上げ以前は大体、日本着CIFで九千百五十円くらいで入っております。これが今度値上がりになりますと一万三千五百円ぐらいになるのではないかというふうに考えておりますので、大体、四千三百五十円足らずの値上がりかと思います。これは運賃、諸掛かりを入れました値段でございます。  ところで、国内炭の平均価格を申しますと、最近、四十九年度下期が一万一千五百円見当でございます。したがいまして、今度の豪州炭の値上がりで一万二千四百三十円ということになりますと、そこに輸入炭の方が千円ぐらい高くなるという逆転現象が起こってまいります。したがいまして、今回の新しい石炭対策におきまして、どの程度価格引き上げを認めたらいいのかということは、これからの折衝ということに相なっておりますが、大体の現状はそういうことでございます。  それから、流動性のメリットが国内炭についてはあるではないか、こういうお話でございまして、確かに鉄鋼業界の中にも、日本の炭の流動性を評価している会社もございます。また、いや、それは大したことないのだ、いろいろな輸入炭を上手に混炭すれば、日本の炭は全然使わなくてもコークスの品位に影響ないという会社も現実にございまして、その社では国内炭をほとんど使っていないということもございますので、流動性の評価につきましては、業界の中でも実は評価がまちまちな現状でございます。ただ、国内の炭の利用という点につきましては、国内にとにかく資源があるのでございますから、安定供給、安定確保という点でのメリットはあるかと存じますので、そこに若干のメリットは考えてもいいのではないかという稲山会長の御趣旨であろうかと思います。
  28. 正親見一

    正親参考人 第一点の、過去に協力してないじゃないかという御質問ですが、石炭の炭価と料金関係につきましては、いろいろの変化がございます。したがいまして、安くなったからといっても、やはりそれに対する、たとえば公害対策設備費その他、予想外のものがあったからでなかろうかと存じております。  第二番目の御質問の、北海道における石炭と油との比較のお話がございましたが、大変、数字的なことで恐縮でございますが、たとえば北海道の石狩川地区の石炭火力で補助燃料として使用している重油、これは内陸部への輸送費を加えまして、現在キロリットル当たり一万八千円強でございます。これを石炭に換算いたしますと、トン当たり八千四百円程度となるかと思います。これに対しまして石炭は、御承知のように設備費あるいは運炭費、灰捨て費とかいう、いわゆる油と違いますところの余分な費用がかかります。これを仮にデメリットといたしますと、油に対するデメリットをここの石狩地区で計算いたしますと千七百九十一円になります。これは低カロリー、四千八百カロリーの場合ですが、これは炭価トン当たり五千九百四十円、これにこのデメリットを加えて計算しますと、七千七百三十一円と相なります。したがいまして、現在の油との差がせいぜい七百円弱、仮に計算したのですが、そういうふうな勘定に相なりますが、これには流通費用が入っておりません。したがいまして、現段階でそれほどの差はないのじゃないかというふうに考えております。  それから、その次の御質問の趣旨が、何か料金をプールしたらどうかという御質問かと思いますが……。
  29. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 料金をプールというよりも、石炭価格が石油よりも上がった場合に、その調整金的なものを制度としてつくるべきではないか。それは東京電力を含めて九電力でつくるか、電発を含めるか、何にしても石炭の地域というのは偏在をしているわけですから、国のエネルギー確保するという意味から言えば、これは何らか制度を設けなければできないのじゃないか、こういうことを言っておるわけです。
  30. 正親見一

    正親参考人 わかりました。  各社の電気料金は、御承知のように地域の原価主義のたてまえで算定されて、各地域ごとの原価計算で算定されております。と申しますのは、九電力が発足いたしましたときに、各地域経済圏を中心に現在のように九分割をされ、北海道北海道地域経済圏に奉仕するために、四国は四国経済圏、東北は東北経済圏、関東は関東経済圏を中心にして、これに奉仕するというたてまえから、各地域ごとの原価計算というのがたてまえでありまして、現状におきましても、御承知のように多少の誤差はございます。したがいまして、仮にある会社の負担増を、料金が高くなるからといって調整を図るということになりますと、これは石炭だけにとどまりませんので、いわゆる収支プールということに通ずる問題であろうかと存じまして、企業の主体性に触れてくるのでなかろうか。また、このような制度によりまして他の地域のコストを負担するということが、果たして関係地域の住民のコンセンサスが得られるかどうかということも考慮すべき問題じゃなかろうかと存じておりまして、私ども電力業界といたしましては、このような新石炭政策審議を通じまして、種々のことを要望さしていただいてまいりましたが、それは、わが国における石炭産業の安定と今後、長期にわたって二千万トン以上の出炭維持することが、国家見地から必要であるとするなれば、国の方も需要業界も一体となって、これに協力すべきである。このために必要とする費用につきましては、国のセキュリティーの観点から必要とされるものでありますから、財政措置によってできるだけ負担していただくことが合理的であり、かつ妥当でなかろうか。そういうことによりまして電力業界が負担をしないというのではないのでありまして、負担の中身をできるだけ軽減していただきたいというふうに考えておるのでございます。
  31. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、現行制度がそうなっていることは承知して聞いているわけです。しかし、それでは国内のエネルギーの自給体制がとれないから政策を求めている。ですから、そういうものの発想はどうですか、こう聞いておるのであります。現行制度はわかって聞いておるわけであります。  時間もありませんから終わりたいと思いますが、最後に、私は需要業界の方に、もう一度来ていただいて、もう少し議論をしてみたいと思いますが、鉄鋼の場合の豪州炭の賃金のエスカレーション条項ですね、あれは適用されての話でしょうか。
  32. 奥村虎雄

    奥村参考人 いま申し上げました価格の中にはエスカレーションクローズの適用は入っておりません。
  33. 田代文久

    田代委員長 岡田春夫君。
  34. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 二十分足らずの質問というのでは、なかなか質問できないのですが、私たち委員会は三日間、北海道調査に行ってまいりました。円城寺さん、非常な御努力であるにもかかわらず、今度の新政策の評判は、まことに申しわけないが、きわめてよろしくない。これに賛成だとおっしゃったのは石炭協会だけでありました。そういう状態を見ると、どういう点に問題があるかというと、生産規模の点あるいはまた第三セクターの問題保安の問題、財政措置の問題あるいはまた産炭地振興の問題、こういう点について、肝心なところは結局いままでと変わりがないじゃないか。見直しとおっしゃるけれども見殺しではないか、こういう声がはっきり出ました。ひとつそこら辺を私はいろいろ伺いたいのでございますが、時間がきわめてわずかなので、まず第一点は第三セクターの問題です。  国の責任においてやるのだから云々というお話が、先ほどあったようであります。しかし、この答申の中には、第三セクターに該当する部分では、国の責任という言葉は全然出ておりません。むしろ地方自治体がこれに協力をしろ、言葉をかえて言うならば、国は責任を負わないで、その責任はすべて自治体に負わせる、そういう考え方であると答申は受け取らざるを得ない。  それからもう一点は、第三セクターの点で一体どういう規模をお考えになっているのか。いわゆる新鉱開発規模ごとに第三セクターをおつくりになるのかどうなのか。ということは、時間がないので本当に残念ですけれども、これから新鉱開発をされたり、閉鎖炭鉱になっていくところを第三セクターでおやりになるとするならば、これは限界炭鉱またはそれに近いものが多いのですね。そうでしょう、いままで採算の合うようなところだったら、もうどんどんやっているわけですから。そういうところで新鉱開発ごとに第三セクターをおつくりになるということになると、やはり国のそれを守っていくという政策的な基礎というものが出てこないことになる。いわゆる経営採算第一主義という形がそこに貫徹されることになる。補償の問題が出てこない。こういう点から考えて、規模の点は一体どういうことをお考えになっているのか、そこら辺からまず伺っていきたいと思うのです。
  35. 円城寺次郎

    円城寺参考人 いまのお話のように、新鉱開発に対する第三セクターの点は、総合部会でも非常に問題になった点で、これは文章にはもちろん書いてありませんけれども石炭産業全般を通じて言えることだと思うのですが、国はなかなか石炭は責任をとってやるということは言いたがらないのですが、現実の問題として、やはり第三セクターの形態をとっても、国の主導的な役割りというものを期待しないで、新鉱開発はできないと思うのです。ですから、その点は文章に書く書かぬよりも、そういったものと私は読んでいただきたい。最初に申し上げた私の説明は十五分間ということですから、非常に何を言っているかわからぬようにおとりになったと思うのですけれども、現在の合理化法でも、かなりその点、国が主導的役割りを演ずることができるようになっていますから、やはり国の主導的役割りというのは、単に新鉱開発ばかりではなしに、他の面でもあるわけですから、いわんや新鉱開発については、国の主導的役割りを期待しているのだということは、私として、はっきり申し上げることができると思うのです。  どういう規模かということになりますと、これは石炭鉱業審議会の中でも、またどこの地点を、どういうふうに開発するとか、そういうことを議論しているわけではないですから、その点は、まだ石炭鉱業審議会としては全然問題になってないということを申し上げたいと思います。
  36. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これはもっと伺いたいのですが、規模の問題一つにしましても、北海道全体の第三セクターという場合と、天北だけの第三セクターという場合と違うし、国が責任を負うとあなたはおっしゃるのならば、全体としてやった場合の方が、いわゆる補償能力はあるということは、だれでもおわかりになる。やはりそういう点を考えていかないといかぬ問題が、私は出てくると思うのです。  非常に上っ面だけで終わってしまいますが、私はともかくも第三セクターという形ではだめだと思う。あなたがおっしゃったように、現実にもう国家管理と同じような実態になっているのなら、なぜそこまでおやりにならない。思い切っておやりになるなら、公団の方式だっていいじゃないですか。そこまでひとつ踏み切っていただきたかったというのが、私たちの考え方です。  しかも、いろいろ機構を見ますと、事業団管理委員会の改組それから電力用炭販売株式会社の改組、鉱業審議会政策委員会の樹立、それから第三セクターと、もし第三セクターも国の機能だとするならば、国の各機能を分散していくわけでしょう。なぜ統合なさらないのですか。あなたも日本経済新聞の社長として、官僚的なそういうやり方は困るということを新聞なんかにもお書きになるが、もっと大きく統合して簡素化していく方向でおまとめになった方がよかったのじゃないか。公団方式はそれがやれるのじゃなかったか。こういう点もひとつ希望として申し上げておきます。  時間がないので、もっとお伺いしたいのですが、具体的な点を二、三点だけ伺って、私は終わります。  生産規模の点について、一点は、これはこの間この石特でも質問したのですが、六十年度生産規模を大体二千万トン以上とおっしゃっているが、それならば現有炭鉱ではどれぐらい、新鉱開発ではどれぐらい、あるいはまたその場合における事業団の閉鎖鉱区その他ありますね。こういうものはどれくらい、あるいは露天掘りはどれくらい、そういうめどが、この数字をお出しになる限りは基礎がおありになるはずなのです。その数字を出していただくことが、展望を見る場合に重要ではないか。この点が第一点です。  それから第二点は、こういう答申をおつくりになるならば、先ほどあなたは関税率審議会でのお話がございました。それならば石炭特別会計、石油との特別会計、これの予算の規模はどれぐらいのものが必要であるという一定の構想の上で、この答申がつくられておらなければならないと思う。現在、一千百億円ですね。これが二千億円であるとか、あるいは二千五百億円であるとか、確定的な数字は役所じゃありませんから言えないと思いますけれども、大まかな財政規模はどういうものをお考えになっておったのか。これが第二点。  第三点は、保安の問題についても、この答申に対して著しく不満が出ております。それは結局、保安の点については教育とかそういうことが書いてあるけれども、今日の保安法規の問題を一体どうしたらいいのか、そして監督機構の問題を一体どうしたらいいのか、この点は全然触れていないじゃないか。この点がここで一番問題なのじゃないのか。深部開発の場合の保安法規の問題をどうすればいいのか、こういう点について触れていないじゃないかという点が、もう一点です。  第四点、これで終わりますが、産炭地の振興があれほどみじめな状態になっています。私も出身は美唄です。かって九つあった炭鉱は一つもない。その場合の炭鉱のみじめさ。産炭地振興問題については、一番最後にほかのものと含めてたった三行しか書いてない。なぜこの点をお触れにならなかったか。この四つの点をお伺いして、私は質問を終わりたいと思います。
  37. 円城寺次郎

    円城寺参考人 二千万トン以上の基礎の問題、六十年度にわたってどういう基礎で二千万トン以上という数字を出したか、こういうお話なのですが、正直のところ申し上げまして、現在、二千万トン体制維持することにも非常に困難を感じているような状況ですから、これはどうしても政策的な課題として二千万トン以上、こういう数字が出てきたわけであります。ですから、それが現有炭鉱幾らとか、新鉱開発幾らとか、新鉱開発についても先ほど御指摘のように、現実にどこを新鉱開発するかということも、正直のところ決まってないわけです。また決め得る事情にもないわけですから、そこで公正な算定の基礎がどうかということを言われても、それが現有炭鉱で幾ら、新鉱開発で幾らという綿密な計算というものはなかなかむずかしい。しかし達観して、いわゆる二千万トン以上の石炭を国内において生産することは、総合的なエネルギー政策見地から必要なのだ、そのための努力は大いにしていこう、こういうことだと御理解願いたいと思います。  それから財政の点ですが、先ほど私が申し上げましたように、この出発点は石炭対策費からできたということ、これは間違いありません。ですから、そういった意味で、われわれとしては石油関税についてはいろいろな点から議論があるところだろうと思うのです。単に石炭政策見地だけから、石油関税というものを議論するわけにはまいらぬと思うのですが、われわれとしては、そのできたいきさつから言って、現行石油関税というものはぜひ維持してほしい。ただ、ここでそれがどういうふうになっていくかということが的確に申し上げられないのは、最初できたときは石炭特別会計、後で石油が入ってきているのです。ですから、これは単に石炭鉱業審議会だけで、石油の輸入を見越してこれこれだということは、なかなかはっきり言えないだろうと思うのです。それから石油関税自身についても、これはどうするかという問題もあるわけですね。これは関税率審議会の問題だし、そこで、やはり石油石炭特別会計というものはぜひ維持してほしいということしか言えない、こういうことだと御理解願いたいと思うのです。  それから保安の点は、確かにこの点は非常に問題で、われわれとしても現地へ行って見るたびに、どんどん深部にいくわけですから、やはり保安体制というものについて、しっかりした考え方でいろいろ手段を尽くしていくという必要は大いに認めております。ただこの点について、深部開発体制に応ずる保安の法規について触れていないじゃないかということはごもっともな意見だと思うのですが、決して今度の答申保安問題を軽視しているというわけでは、もちろんありません。非常に重点を置いておりますので、今後こういった問題についても、石炭鉱業審議会これで終わるわけじゃないですから、大いに議論されていくべき問題だろうと考えております。  それから、最後の産炭地振興については、言い逃れするわけじゃないですけれども、これは別に審議会があるのです。ですから、これまでの石炭対策の中でも離職者対策などで、もちろん触れておりますけれども、これは産炭地域振興審議会という別な審議会がありますので、産炭地振興を決してわれわれが軽視したということではない、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  38. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 もう時間が四十五分までというので、残念ですけれども終わりますが、あなた、お話しされてもお感じになるように、何か弁解じみたことになることが少なくないような感じがいたしまして、私は御同情するというよりも、むしろこれじゃうまくないな、答申はうまくないなという感じがいたします。せっかくの御尽力にもかかわらず、そう思いますので、申し上げて終わりますが、最後特別会計の一点だけ。  石油関税の問題、変化するかもしれない。その場合、これだけの石炭をどうしてもやるためには金が要る。その場合どうしますか。一般会計繰り入れでもやるということを審議会で積極的にお進めになるお考えか、この点だけ伺っておきたいと思うのです。
  39. 円城寺次郎

    円城寺参考人 私は石炭石油特別会計維持されることを強く希望しましたが、同時に、やはり今後石炭産業を生かすも殺すも価格問題だと思うということを申し上げたつもりなのです。ですから、石炭価格引き上げないで石炭産業維持されるとは思いません。これはなかなか、ここに需要業界の方もおいでになりますが、ここの点が非常に重要な問題で、それを私はやはり新しい総合エネルギー政策の中で価格問題というものを吸収してもらわなければ困る、価格引き上げるけれども。そういうことを言っているわけです。ですから、そういう考えだというふうに御理解いただきたい。
  40. 田代文久

    田代委員長 多田光雄君。
  41. 多田光雄

    ○多田委員 どうも御苦労さんです。  円城寺さんに主としてお伺いしたいのですが、今度のこの新しい答申、これは審議会の中で全員賛成で決められたのですか、それとも反対なり棄権というのがあったのでしょうか。審議会の内容については、米審でも何でも賛成、反対の数が出ておりますから、これは秘密でも何でもないと思いますが、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  42. 円城寺次郎

    円城寺参考人 反対の意向を表明された方が一人ありました。ただし、ほかの方で反対かどうか、それはわかりません。はっきり反対だということを表明された方は一人ありました。いや二人ですかな、二人。
  43. 多田光雄

    ○多田委員 実は与党議員からも、審議会のあり方、それから過去十数年の石炭鉱業審議会の問題について異論が出ているくらいなのですね。このメンバーではだめだという極端な意見さえ出ているのです。  そこで、今度の新しい答申をつくるに当たって、審議会の中で、いままでの石炭鉱業審議会のあり方、答申の内容について、反省のようなものは出ておったでしょうか。出ておったとすればどういうものなのか、それをちょっと伺いたいと思います。
  44. 円城寺次郎

    円城寺参考人 反省しているという声を、私いま現実には聞いておりません。それはどういうことを意味するのか、いままで間違っていたから、今度は新しい見地に立って石炭政策をつくり直そう、こういう意見が出たかと、こういう意味じゃないかと思いますが、現実にそういう意見は、私は聞いてないのですが、そういう気持ちの人はいないとは言えないと思います。
  45. 多田光雄

    ○多田委員 円城寺さんは日経の社長さんもしておられるわけですが、せんだって当委員会でも、あれは六月ですか五月の日経の社説を、私どもここで読ましてもらった。社説の内容はなかなかりっぱな内容で、かなりいままでの石炭政策を厳しく批判しておるのですよ。社長さんと社説は必ずしも一緒だというふうには私は言えないと思うので、きょう円城寺さんから、いままでの石炭政策について個人としてどういうふうな評価をしておられるのか、それをちょっとお伺いしたいと思うのです。
  46. 円城寺次郎

    円城寺参考人 社説は社の主張ですから、もちろん私は同じ意見です。  これまでの石炭政策についてどういうふうに考えているかということのお話ですが、それは最初に私申し上げましたように、同じような文章とか同じような字であっても、考え方は変わった、新しい見地から読んで、いただきたいということを申し上げたことは、やはりいままでの石炭政策というものは、当時の世界的なエネルギー事情のもとにおいてはやむを得ないことであったとしても、現在の時点から見ればそれは間違っていたということは言えると思います。当時はやはり世界的にエネルギーは豊富であるし、ことに原油価格というものは一ドルを割るであろうという状況においてつくられた石炭政策ですから、そこに間違いがあったということははっきりしていると思います。
  47. 多田光雄

    ○多田委員 まあ当時はやむを得なかったけれども、いまから見れば間違っていたと言えるかもわからないと、これはどうも私にはその関係はよくわからないのですがね。当時もこういう石炭政策に強く反対した政党もあったし、それから、その意見もあったのですね。今度の総合エネ調の中間報告を見ましても、原子力を除きますと国内の資源の比率というものはむしろ減ってきている。原子力は準国産といっても、これは国産じゃないわけです。機械から原料まで海外から輸入しているという状況なのですからね。そうしますと、たとえば石炭なんかは国内石炭が四十八年三・八%の比率が、今度は一・九、半分に減ってしまう。総体として伸びるということもありますけれどもね。こういう状況なんですよ。  そこで、先ほども話が出たのですけれども、この新石炭答申について、きょうも伺いますと、石炭協会電力業界それから鉄綱業界としては、基本的に賛成ということなのですけれども、少なくとも私どもの回った限りでは、地方自治体、それから産炭地関係者、これはこぞって反対ですね。しかもその反対は、基本的な点に反対なのです。ここが今度の答申について非常に重要な点だ。そういう関係者の協力を得られないで、本当に二千万トン体制維持できるのかという疑点も私はわく一のです。  そこで、これは円城寺さんにお伺いしたいのですが、二千万トンについて、解釈は違うとか、いままでと違うというお話なのです。ところが伺ってみると、どこの山をどうするかということは、まだ決めてないのだということなのですね。つまり現有の大手の掘っている二千万トン、これを現状を追認して、そしてその上に、電力が不足だから若干露頭炭を掘っていく、あと足りないものは外国から輸入していく、まあ言えばこういうことなのですね。原料炭の一千万トンは現状維持。そこでこの二千万トンというのは、いままでと比べてどこが違うのですか。さっきから違う違うとおっしゃっているけれども、私は幾ら聞いていてもわからない。何が違うのか。以上といって二千五百万トンにするわけでもない、三千万トンにするわけでもない、数量的には二千万トンだ、千八百万トンぐらいしか掘れないかもわからないから、足りない分は露頭炭でカバーします。あと足りないのは外炭を入れます。少なくとも国内の二千万トン体制について、いままでとどこが違うのですか。ここをちょっと。腹の中を読んでくれとか、新しい解釈をしてくれとおっしゃるのですが、これはどうにも解釈のしょうがないのです。
  48. 円城寺次郎

    円城寺参考人 いままでは、やはり正直のところ石炭が邪魔だ、要らない、そういう意見の中で二千万トン以上という数字が生まれてきたわけです。私は、この二千万トンという数字が生まれた経緯というものは非常によく知っているのですが、石炭鉱業審議会の第五次ですか第四次ですか、その答申の中で千五百万トンという数字が出てきたわけです。それは、当時のいろいろの条件から見れば千五百万トンが妥当だ、それを政策的に二千万トンに上げて、しかも二千万トン未満、二千万トンを下らざるという数字まできたのですが、さらにこれが二千万トン以上と、こういう表現に変わってきたのですが、この中には、非常に経済的な、エネルギー政策的な観点からよりも、むしろ政治的な観点から、こういった数字が生まれてきたと思うのです。ただ現在、二千万トン以上という数字が昔の意味と違うという意味は、いわゆる総合エネルギー政策的な見地から見て、やはり二千万トン以上の石炭は必要なのだということですから、おのずからそこに意味が違うと私は思うのです。経済政策として必要なのだ。それまでは石炭産業が崩壊すると社会的摩擦ができるから、この程度維持していかなければならぬ、今度は総合エネルギー政策から見て、長期的に見て二千万トン以上の石炭が必要だ、こういうわけですから、私はこれははっきり意味が違うと思うのです。  ですからそういうことで、そこにこれを拡大していくというエネルギー政策的な要請もあるから、これはできるだけこの数字を拡大していくように努力すべきだ。しかし現実の問題として、それじゃ新鉱をどこを開発するかということになっても、いまここの地域を開発してどうこうということを、たとえば北海道の天北地区というようなことはよく言われておるし、また、その必要性を認めておりますが、計画としてこれを決める、こういう段階にはなっていないわけですから、そこを二千五百万トンとか二千七百万トンとか、そういう数字には、今日の段階においてはなし得ない。ですからそういう問題は、労働力確保とか保安確保、そういう問題を見合わせて、今後の三ヵ年間のローリングプランの中で、実現を図れるだけ図っていこう、こういう意味ですから、私は大いに違うと思います。
  49. 多田光雄

    ○多田委員 結局いままで二千万トンを下らずと言われていたけれども、つまり対外交渉能力を持たなくてはならないということで、原料炭の一千万トン、これは九百万トンになったこともありますけれども、これを維持する、これはいままでと何にも変わらないのですよ。変わらないから、四十五年からあの夕張の新鉱開発をやったのです。これは石油パニックの以前です。それから石油が入っていたから、まあ減るのは一般炭電力用でしょう。これが減るかもわからない。ところが石油が高くなってきた、あわてて今度は電力用だ、ところが坑内掘りは金がかかるから露頭炭だ、これだけの話なんですよ。それが二千万トンだ。今度の新答申の内容は、問い詰めて言えば原料炭の一千万トン、これの確保。これは何だかんだ、きれいなことを言っておっても、対外交渉の安全弁をつくっていく。それから石油が高くなったから、電力から今度は逆に要求が強くなったから、いままでの七、八百万トンをできればもう少しふやしたい、それには坑内掘りが高いから、いままで投げてきた露頭炭掘りだ、なお足りないから一般炭の外炭輸入だ。これだけの話なんです。ところが、一般の国民や産炭地の人の期待しているのは、あの石油パニックから学んだものは、どうしても国内炭を全力使用していかなくてはいけない、少々の経済性の問題があったとしても。ここなんですよ。ところがいま石炭よりも石油の方が安くなった。電力のさっきのお話を聞くと、やっぱり若干安くなっていますね。そうなっても依然として二千万トン体制維持だ、こういうことでしょう。だから産炭地にしてみたら、これは石炭見直しじゃないのですよ。だから根本的に変わっていない。こういう姿勢でいけば、やがて第二のエネルギー危機というものを迎えると私は思うのですよ。なぜなら、これはもう全く日本の資源を半ば放棄しているようなものですよ。きょうは、ここで論戦するところじゃございませんが、そういう意味では、私は新石炭答申には全く反対です。  それから、もう一つお伺いしたいことは、エネルギーは国が責任を持つべきものです。もっとも、いま国は一番、産業政策エネルギーに確信を持っていませんからね、動揺していて。このエネルギーに国が責任を持つ。実際にいままで金を入れてきた。それが第三セクターにどうして国が入らないのですか。国が入ると思っていた。それから、いっときはユーザーも入ると思っていた、そういうふうな政府意見すらあったのだから。ところがユーザーは抜けた。国は抜けた。地方自治体と石炭関係だ。その石炭関係も、住友が投げた、その住友がまた第三セクターに入っていく。これは、自分が投げて政府に買わした鉱区を使うなどということは、常識では考えられないから、新しく法改正をやっていく、これは全くペテン的ですよ。  そこで私はお伺いしたいめですが、審議会の中で、なぜ国を入れないのか、これはどうして論議にならなかったのでしょうか。国を入れたら能率が下がるからでしょうか。あるいは円城寺さんがお話しのように、実質的に金を出しているのだというなら、金を出しているなら、国がもっと積極的に石炭を掘らすべきなのです。地方自治体に鉱害の言いわけをさして、それをつい立てにして、結局は私企業にやらせるだけなんでしょう。どうして国が入らなかったのでしょうか。これをひとつ、審議会で論議になったことを正確に述べていただきたいと思う。
  50. 円城寺次郎

    円城寺参考人 審議会で論議になったことは、最後総合部会において、この点が論議になったわけです。それで、国が入るべきだとか、あるいは国が責任を持って資金を出すべきだというようないろいろの意見があったのですが、審議会の大勢としては答申案のようなところでまとまったのですが、そのまとまったことに関連して申し上げますと、やはり実質的に国が主導的役割り石炭政策全般について果たしているのであって、第三セクターの点で、国が出資するとか出資しないとか、そういうことにかかわらず、国が主導的役割りを果たすべきものであるので、大体こういった点でいいじゃないかというようなことで、正直のところ、そう多く議論がなしに、こういうふうにまとまった、こういうふうに申し上げれば正確だと思います。それですから、一部の委員から強い意見が、まあ公団公社論があって、それに対して、第三セクターでも国が主導的役割りを果たすのだからという考え方を私が述べて、そうして総会に出すことを了承してもらった、こういういきさつです。
  51. 多田光雄

    ○多田委員 せめて新鉱開発ぐらい国がやるべきではないか。いま私企業がやっておるものまで手を出せと言っているのじゃないですよ。新鉱開発ぐらい国が先頭に立ってやる。イギリスでもフランスでも国や公的機関がやっているのだから、何も憲法違反でも何でもないはずなのです。しかも、私企業はさっきおっしゃったように、国から金をくれ、金をくれ、これだけなんです。必要なものならそれは出してもいいでしょう。しかし、一たん政府の買い上げなり、鉱区が消滅してしまった、国の財産だ、しかもエネルギーがいまきわめて重大な問題になっているというときに、国が積極的に新鉱開発ぐらいやったっておかしいことじゃないと思うのです。それが論議にもならなかったというのだったら、私は審議会は何を論議したのだろうかというふうな疑問を持つのですよ。第三セクターで一番意見が出ているのは、国が逃げたという意見です。これは地方自治体でも、それから石炭関係企業家の中にも言っておる人がおりますね。国が入ったら国有管理の一歩手前だなどということを恐れたのでしょうかね。どうして新鉱開発ぐらいは、本当にエネルギーを安定させるというなら、国がやらなかったのか。私はいまの円城寺さんの御説明はどうにも納得できない。これは政府であればもっと、とことんまでお話をお伺いする予定なのですけれども、時間の関係でできませんので、あれします。  それから、円城寺さんにお伺いしますが、将来一般炭の外炭を千五百万トンとか二千万トンと言っております。これは政府に聞いたのですが、まことにずさんなんですよ。豪炭、アメリカ、カナダ、中国、ソビエト、大体これだけ入ります。しかし安全弁をとって二分の一です。一体、将来の外炭輸入に確信をお持ちなのでしょうか。円城      ————◇—————  それから、円城寺さんにお伺いしますが、将来一般炭の外炭を千五百万トンとか二千万トンと言っております。これは政府に聞いたのですが、まことにずさんなんですよ。豪炭、アメリカ、カナダ、中国、ソビエト、大体これだけ入ります。しかし安全弁をとって二分の一です。一体、将来の外炭輸入に確信をお持ちなのでしょうか。円城て。
  52. 円城寺次郎

    円城寺参考人 正直のところ申し上げまして、これはなかなかこういうふうに世の中が変わる時代ですから、確信を持っているかというお尋ねに対して、それは確信を持っているというふうには答えられませんが、外炭輸入がどのくらいできるかということについては、これは単に石炭鉱業審議会ばかりではなしに、総合エネルギー調査会の場でもいろいろ議論があって、最初は大きな数字からこの程度数字まで落ちてきて、この程度ならば大体、間違いないだろうという数字になったわけです。もちろん、これは実際問題として、契約したわけでもないのですから、その数字考え方が間違っていると言われれば、これに対してこうこうだということは申し上げられないのですが、非常に大きな数字から、この程度まで数字が下がってきた、こういう数字だというふうに御理解願いたいと思います。
  53. 多田光雄

    ○多田委員 私は審議会の論議というのはもっとやられたのじゃないかと思うのですけれども、肝心の二千万トンの問題、国が入らない、外炭の輸入の見通しの問題、大変あいまいだと思うのですよ。あいまいだということは、エネルギーの大宗はあちら任せにしてしまっているからなのですよ。政治経済情勢の変化、社会情勢の変化、こういうものを見通して本当に立てられたのか。だからこそ、日本の国内の石炭については若干、経済性を無視しても掘りなさいというのは、前の通産大臣さえ言っていたのです。反省点は経済性を重点にしたことだ、河本通産大臣がそう言ったのですよ。結局、出ているのは企業サイドの経済性なんですよ。だから、そこでは賛成なさるのです。  そこで、私は時間がもう一問しかできません。電気関係の方にお伺いしたいのですが、二月二十日の電事連の社長会議で、原子力は現状からすれば昭和六十年にはせいぜい二千五百万キロワットぐらいだというふうに新聞に出ていましたけれども、電気関係の方では六十年代にどれぐらいの原子力を予定しておられるのですか。いまの住民のいろいろな運動だとか、あるいはウランの問題だとか、それからまた安全性の問題だとか、その他を含めてですね。ちょっとこれをお伺いしたいと思うのです。
  54. 正親見一

    正親参考人 原子力の問題につきましては、当初、六十年六千万キロを今回の修正で四千九百万キロにされた。これは開発目標でございます。したがいまして、先ほどの二千五百万というのは私は覚えておりませんが、電力業界といたしましては、一応、総合エネルギーの中での原子力の位置づけをされて、それで四千九百万キロを目途に努力しろというふうに解釈さしていただいております。
  55. 多田光雄

    ○多田委員 終わります。
  56. 田代文久

    田代委員長 鬼木勝利君。
  57. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 参考人の皆様には大変御苦労さまで、お疲れと思いますが、二、三お尋ねをいたしたいと思います。何しろ時間がございませんので、簡単でようございますから。  まず円城寺さんに、先ほど岡田議員からも御質問があっておったようですが、財源の問題についてお尋ねをしたいのです。  先ほど円城寺さんもおっしゃっておりましたように、まず炭価の問題が一番大事な問題だ、全く同感でございます。ところが、炭価を引き上げることによって需要業界が耐え得るかどうか。われわれもぜひ炭価を引き上げなければならぬ、かように存じておりますが、仮に一般炭を昨年同様三千円、それは仮にですけれども引き上げるといたしましても、私の積算では、一般炭の場合ですが、一カロリー二円三十銭ぐらいになると思うのです。そうしますと十銭ぐらいの差になると思います。そうなりますと、これは石油との競争力がなくなってくる。むろん石炭が石油よりも高くなる、また長期的に見ました場合に石油も同じように石炭よりも高くなる、こういうことは考えられると思いますが、こうしたことが電力料金あるいは鋼材価格等の値上がりにつながって、結局は国民の負担になる、そういうことはもう申し上げるまでもないことでございます。それに対して、一般炭の大口需要者である電力業界協力推進というものがかぎになると私は思うのです。その点について、また正親先生にもひとつお尋ねしたい。  それから円城寺さんには、結論としまして、炭価の引き上げによってコストの増加分が電力料金に影響する、つながっていく、つまり言葉が悪いかもしれませんが、電力料金に転嫁するという、そのルールといいますか、スムーズにその点がつながっていく、はっきりしたルールというようなものの確立というような点については、答申には何もうたっていない。まあ、言葉が悪いかもしれませんけれども、その点に対する突っ込みようが非常に抽象的であり、具体性がない。そういう点について、まずお尋ねをいたしたいのであります。それが一点。  それから時間がございませんので、まとめてお尋ねしますが、新規炭鉱の開発資金、あるいはまた閉山に伴うところの費用、それから石炭液化等に対する技術開発などに要する費用、こうした新石炭政策に対する必要な財源は、これを石炭特別会計の中からできるだけ確保する、こういうふうに答申にはある。ところが、御承知と思いますけれども石炭特別会計には、もはや私は余裕はないと思う。昨年は千三百億、本年は千百億に減じております。減らされておる。ことに原油の輸入関税率を、いままで一二%であったのを一一%に下げろという、そういう議論まで今日ある。そこで石炭特別会計確保するということは、これは私ども絶対の責任であって、いかなることがあっても確保いたしたい、かように存じております。その点においては同感でございます。しかしながら、限られておる石炭特別会計、しかも昨年度よりも本年度は二百億も減じられておる。その中でこうもせよ、ああもせよという答申の中の御指示でございますが、一体、財源に対して、先ほど岡田先生からも御質問があっておりましたが、見直された石炭政策に対する財源は、またそれだけを確保するためには、一体、財政規模がどれだけなければならぬか。そのもとがわからなくて、ああもしろ、こうもしろ、これもやれ、とこうおっしゃっても、その財源規模は一体どれだけだ、しかも財源はどこからこれはやるべきだ、いろいろ私ども考えもございますが、これはこうやるべきだ、これは石炭特別会計からだ、これはどこからだというような、そういう財源の基礎に対する、財源規模に対するところの答申は余りないようでございますが、そういう点を私どもは教示していただきたいと思う。皆様方が非常に御苦心なさった答申に対しましては、私ども大いに尊敬いたします。だがしかし、そういう点に対しては、どうも隔靴掻痒の感があって、私どもは納得がいかない。まず、その点をお尋ねいたします。
  58. 円城寺次郎

    円城寺参考人 ただいまの御質問は非常に重要な御質問であります。そこで財源の点から申し上げますと、石炭石油特別会計確保という以上に多くを期待するということは、現実の問題としてなかなかむずかしい問題だと思うのです。そこで結局、私は、価格が今後の石炭政策の上できわめて重要だということを申し上げたのも、そういった意味であって、どうしても石炭割り高であっても価格引き上げるという必要はあるだろうと思うのです。その場合、結局その負担をだれがするかということになりますと、これは長期的にわたっての基本的な私の考え方であって、目先どうこうという問題ではないから、その点、誤解のないようにお聞き願いたいと思うのですが、やはりその安全保障の費用というものは消費者の負担すべきものだと思うのです。ですから、電力料金にはね返るということは当然なければ、石炭産業というものは私は維持できないのじゃないか。ですから、そこでその方法は一体どうかということになりますと、いろいろの考え方があるわけです。しかし、時間の関係もあるようですから、それについては申し上げませんが、結局、総合エネルギー政策見地の中でそれを吸収すべきだということは、割り高であっても価格に反映させる。そして、それを石炭石油特別会計の中で救済できるものは救済してもらう。しかし救済できないものは、結局、消費者である電力の使用者が負担するということがなければ、石炭産業は成り立たないのではないか、私はこういうふうに考えて、さっき総合エネルギー政策としては石炭が必要だ、そういう考え方の中で、終局的においては消費者が負担するということで吸収していかなければ、長続きする石炭政策はできない、こういうことを申し上げたわけです。
  59. 正親見一

    正親参考人 石炭エネルギーの位置づけというのは確立されたわけでありまして、これに対して、電力業界としては積極的に協力するということを申し上げたわけですが、ただいま御質問の、石炭が値上がりすればどれくらいになるかというお話ですが、現在、石炭有吉会長さんから各電力に対して値上げを要請されておりますのが二千七百円アップでございます。これで大ざっぱに計算いたしますと、全国で電力の負担分増が百五十億に相なります。北海道の場合には、特に石炭が全体の五〇%以上を占めておりますので、キロワット当たり五十銭ぐらい高くなっておりますが、全国平均ですと大体、五銭アップくらいだ、こんなふうに存じております。
  60. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 まだ、いろいろそれに対してさらに御質問申し上げたいことがございますが、その次に、こういうことをお尋ねしたいのです。  答申の内容を拝見しましたのですが、まだ、たくさんお聞きしたい点がございますが、その中で石炭企業の収支について、四十九年度がトン当たり千七百円の赤字ですか、このままいけば五十年度は三千円の赤字だ、こう答申に出ております。これをできるだけ早く黒字に転換することが最も必要である。ところが、これは円城寺さんにお尋ねしたいのですが、石炭企業経常収支黒字に転換をさせるために必要な具体的な石炭価格とか、あるいはそれに伴う電力料金はどうだというような点について、いささか抽象的で具体性がない。これにはどのようにせよという御指示がないようです。通産省の資源エネルギー庁では、答申に基づいて石炭鉱業合理化臨時措置法を改正して、そして少なくとも五十二年度までくらいには、この石炭企業の収支を解決したい、赤字を解消したい。その間、炭価を引き上げても、決して石油や他の資源の価格に比べて割り高になるとは思わない、このようにエネルギー庁では言っておるわけなのであります。この点について、いささか私は答申が、大変、言葉が悪いかもしれませんが、舌足らずではないか。どのようにして収支を解決すべきだという点のはっきりした御指示がない。それに関連しまして一つ一つお尋ねしなければならぬですけれども、これは時間の都合で……。  これに関連して、またちょっとお尋ねしたいのですが、閉山対策に対しまして答申の内容を拝見しますと、これは御承知のとおり、申し上げるまでもなく、年間生産量のトン当たり六千円の交付金が出ておる。ところが答申では、これはできる限り企業に負担をさせるのだとある。これは私は何も企業にべったりというわけでも何でもございません。それは自力更生という点で自力で企業努力せよ、これは当然なことです。ただ国におんぶするというようなことばかりでなくして、自力更生せよということは、常に私どもは持論でございますが、一方においては、企業の収支の解決には、全力を挙げて国の財政もこれを援助せよということを答申にはおっしゃっておる。ところが、一方においては、また閉山の場合は、いままでの交付金をできたら融資にかえろ、なるべく自分でやれということは、少し私は過酷ではないか。言いかえますならば、終着点としては、おっしゃるとおり自力でやれ、このように激励していただくことは、まことに私は結構、同感でございます。しかし時期尚早ではないか。まずそれよりも、今日の赤字にあえいでいる各企業黒字になすということが先決であって、その答申に対しては私も同感でございますが、片一方では与えよう、片一方では突き放す、これではちょっとどうか。これは決して円城寺さんに私は突っ込むわけではございませんが、その点はどういうふうなお考えであるのか、その点をちょっと承りたいと思うのでございます。なお、協会の有吉さんにも、その点をどのようにお考えになっておるか、ちょっとお尋ねをいたしたい。
  61. 円城寺次郎

    円城寺参考人 私企業体制でやっていくという場合に、企業が赤、字で本当の石炭政策が実行できるわけがないので、やはり企業収支の黒字ということをうたったわけですが、これは財政援助もあるし、また先ほど来、申し上げますように、価格の問題が非常に重要だと思うのです。ですから、そういうことで企業の収支の黒字ということを言っておるのですが、現実の問題とすると、なかなかいろいろの問題が出てくるだろうと思うのですが、やはり考え方としては答申に書いてあるとおりの考え方です。  それから閉山交付金の点ですが、われわれは、正直のところ二千万トン体制維持ということが、現在の時点において絶対必要だ、将来、拡大するにしても、この二千万トンの線が崩れるということになると一その心理的影響が非常に大きいだろうと思うのです。ですから、現在の二千数十万トンの生産を何とか維持したいということでがんばっておるわけです。そういうことになりますと、さしあたり閉山ということについて、私は余り私の念頭にないので、閉山交付金の問題もやはり終着点の問題として私は解釈しておる。皆さんから、これまでいろいろ御質問いただきましたけれども、何といっても審議会は多数の人から成っておりまして、考え方も皆まちまちですから、私の解釈と違う解釈もあるし、私が、私自身の考え方を言えない点もありますので、大体そういうふうに御了解いただきたいと思います。
  62. 有吉新吾

    有吉参考人 第一点の石炭の値段、価格を上げるという問題と電力料金等のルールがはっきりしていない、こういうことでございますが、まさにそういうことに関しまして、私ども業界としましては、電力料金ということになりますと物価問題でございますし、電力料金を上げないのならば、何らかの増加引き取り交付金、こういった財政援助、この辺、やはり国としてひとつ態度をはっきりしてもらわぬと問題は進まない、こういうことになっておるわけでございまして、私が前に申し上げましたのも、そういう点を何か煮詰める一つの仕組みが必要じゃないか、こういうふうなことでございます。  それから閉山交付金六千円を極力、企業負担に持っていくようにするという考え方でございますが、まあ閉山というものは極力やらないという考え方でございますが、物理的炭量の枯渇はもちろんでございますけれども、物理的には多少のものが残っておりましても、限界を越えて採掘条件が著しく悪くなる、こういう場合があるわけでございまして、そういう場合にもやはり閉山というものが考えられないではないわけでございます。そういう場合には、簡単に申しますと、もう途方もないべらぼうなコストになっておる部門の山を閉めるわけでございますから、もし石炭価格というものが、われわれの希望いたすようなそういうレベルに置いてもらえますならば、著しく負担になる部分を整理するわけでございますから、この六千円というものが多少下げられても、その残った負担というものは長期にわたって償却をしていかざるを得ないのだろう。私どもは、もちろん従来と同じような据え置きを希望するものでございますけれども、片や炭価において考えてやるということが実現いたしますならば、ある程度こういうこともやむを得ないのじゃないか、こういう考え方でございます。一に望ましい姿に、炭価並びに国の助成措置でございますが、これを置いていただきたい、こういうことでございます。
  63. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 先ほど円城寺さんからも御説明があったように、私もさように存じております。これはいかなることがあっても二千万トンは下らないように確保しなければならぬ、これはもう絶対のことでございます。したがって閉山ということは、私ども委員会におきましても決議をいたしておりまして、これは私企業でございますから、閉山はわれわれは認めないということは、簡単に言うことはできないと思いますけれども、できるだけ閉山は避けるようにということでございますから、将来はこういうことになるぞという一つの激励という意味で、私は理解をいたしております。そういうことで、先ほどおっしゃったように、終着点はこうなるぞという一つのめどで企業にも努力していただくようにと、このように私ども理解いたします。  いろいろまだお尋ねしたいのでございますが、時間がございませんので、これで御無礼をいたします。大変ありがとうございました。  では、これで終わります。
  64. 田代文久

    田代委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  各参考人には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  この際、午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時三十六分休憩      ————◇—————     午後二時二分開会
  65. 田代文久

    田代委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  午前中に引き続き、石炭鉱業審議会答申に関する問題について、参考人から御意見を聴取いたします。  午後は、参考人として日本炭鉱労働組合中央執行委員長里谷和夫君、全国石炭鉱業労働組合中央執行委員長早立栄司君、全国炭鉱職員組合協議会議長木崎順二君、福岡県鉱業町村連盟会長高鍋徹男君及び北海道鉱業町村会会長吉田久君の御出席をいただいております。  参考人方々には、御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございました。何とぞ率直な御意見をお述べいただきたく存じます。  なお、議事の都合上、最初に御意見を十五分程度お述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず里谷参考人お願いいたします。
  66. 里谷和夫

    ○里谷参考人 御紹介いただきました日本炭鉱労働組合の委員長の里谷であります。  意見の開陳を申し述べます前に、衆議院の石炭対策特別委員会の諸先生に、心から厚く御礼を申し上げます。御承知のように、一次から五次までの石炭答申を受けてまいりましたが、その内容の是非は別にいたしまして、この答申の内容をいろいろ判断をされ、当委員会が法律の一部を改正する附帯決議その他を出していただきまして、一日も早く、しかも将来展望を明らかにする石炭産業安定という前提で、いろいろ適切な御指導をいただいておりますことを、本当にうれしく思っている次第であります。  今回の新政策という答申をいただいたのでございますが、この答申の骨子の段階で当委員会を傍聴さしていただきましたが、大変、参考になる御意見を諸先生方から承り、新しい石炭政策の中で新しい政策をどのように盛り込むかということで、いろいろ私どもなりに努力をしてまいりましたが、結果はきわめて思わしくない答申に相なったのでございます。  以下、簡単に私どもの考えます今回の答申の内容と問題点について申し上げてまいりたいと思います。  答申の内容の「新しいエネルギー情勢を踏まえ」て、「当面10年間の我が国における資源・エネルギーの安定供給の一環として石炭を可能な限り活用してゆく」この「基本理念」については全く賛成でございます。しかしながら、国内炭産業のスクラップ化という方向を転換したと言えるのでございますけれども、個別私企業体制をそのまま温存するということを基底にしておりますので、私どもといたしましては、限界生産コストを合理的な範囲に抑える、あるいは私企業を前提とする石炭産業維持ということになりますと、閉山の不安を除去した、このようにはならないと思うのでございます。  そういう意味で、前段では石炭産業を見直すという点で賛意を表明いたしますが、具体的な受けざらの問題について、この十三年間スクラップの方向をとってきた石炭政策から判断をいたしますと、少しも前向きでない、こういうように一言で私どもは結論づけをいたしているのでございます。  以下内容について申し上げます。  なお、当委員会では、北炭新炭鉱の災害に関連をいたしまして、北海道調査をされたやに聞いておりますし、その際に、私の下部機関である北海道地方本部が諸先生に、この答申に対する北海道地方本部としての見解を申し述べておりますが、私のこれから申し上げることと、この点についての大差はございませんが、重複する点がございますけれども、御寛容願いたいと思うのでございます。  第一点目は、国内炭生産規模の問題でございます。この二千万トン以上を維持する旨の指示でございますが、いろいろ議論をされました。結果的には三年間のローリングプランを行うということでありますが、石炭鉱業審議会委員という立場からも議論をいたしまして、このローリングプランの中で、各年度、二千万トンが現実に上回る場合は、そういう数字を明確にする、こういうところまで総合部会では議論をしたのでありますが、翌日の石炭鉱業審議会総会では、私ども意見を尊重するという意味で何ら具体化をしなかったのでございます。ですから私どもは、この二千万トン以上の問題について大きく不満を持っているところであります。たとえば、この答申の中にございますが海外炭輸入の場合は、五十五年度五百万トンあるいは六十年度一千五百万トンと具体的な数字を提示しているにもかかわらず、国内炭については、保安の拡充整備、労働力確保あるいは財源のてこ入れ、これらの問題をよく精査しなければ国内炭の位置づけをできないというのは、本末転倒であろうと思いますし、きわめて非科学的な判断と言わざるを得ません。そういう意味で、この二千万トン以上の昭和六十年度の数値については異論のあるところでございます。  二番目は体制問題でございます。この十三年間、スクラップの方向をとってはまいりましたが、一言で言いますと、第四次政策は自分で閉山を決意する、こういう態度を強要され、第五次答申では安楽死をすることがその本意であったのは、私どもが指摘をしてきたとおりであります。第五次答申が出される際に、企業側から、この安楽死の方向を示唆する答申に反対をいたしまして、大政奉還という意味企業権放棄の提案をしたこともあるのであります。しかしながら答申は、私企業のバイタリティーを補強するという意味で、私企業体制の温存を進めてまいりましたが、この体制改善は、いまになっても私どもは大幅な改善がされているとは思っていません。冒頭、申し上げましたように今回の答申では、私企業を前提として石炭産業を安定させるという意味については、現実を直視していない、こういう解釈の上に立ちます。ですから、この体制は、資金の枯渇、能率の悪化あるいは労働力の不足等が顕著にあらわれてまいりますと、私企業体制ですから、逆に自由に閉山を提案をする、こういう点を許容しているもの、こういうように断言せざるを得ないのでございます。  三番目は労働力確保の問題であります。当委員会から常に適切な指導をいただきまして、一昨年、メタル労働者と同様の条件にすべきである、こういう御指摘をいただきまして、昨年、一方千四百円という賃金獲得をすることができまして、労働力確保問題について、目覚ましいという表現は使えませんが、昨年度の実績を見ますと、約千九百人の新陳代謝がある、こういう状態になっておりますので、今後とも坑内保安労働条件を向上させるという意味で適切な指導を行えば、労働力確保はきわめて可能であろう、こういう見方をしているのでございます。  四番目は保安確保の問題でありますが、当委員会が夕張の調査をされたときと同じでございます。確かに労使の間に保安確保の問題で差があるわけではございません。労使それこそ保安を確立しなければならぬのでありますが、推測をいたしましても、これからの自然条件の悪化等から判断をいたしますと、保安監督官の常駐体制、あるいは私企業をもっと強く拘束をする監督体制を置く、そういう必要があろうと思います。あるいは決められた規制は必ず実現をさせる、そういう意味で、財政的にも、精神的な、指導的な問題につきましても充実を図るために、保安法の改正を期するべきである。今回の答申の内容には保安確保の問題がうたわれてありますけれども、その方針についての具体的な、もっと魂を入れる方策をとっていただきたい、こういうように思うのでございます。  五番目は労働条件の改善問題でありますが、先ほど来、申し上げておりますし、なお、これらの問題は、原則として労使の交渉にゆだねるということでありますので、その都度、問題が起きれば諸先生の御指示も仰ぎたいと思っていますが、とにもかくにも労働力確保するという前提で、職場に不安な保安状況をつくらないという意味でも、労働力確保のために私ども、がんばってまいりたいと思っています。  六番目は生活環境の改善問題でありますが、これは住宅、浴場、集会所、病院等の問題について、文章的には指摘をしているのでありますけれども、この改善をどうするかということについては、残念ながら、この答申は作文に終わっているとしか思われないのでございます。たとえば、六月の十八日の当委員会での岡田春夫先生の質疑を聞いておりますが、労働省は、この環境衛生の、たとえば住宅の問題についての融資対策を考える、このような明確な答弁があるにもかかわらず、この答申では善処しなければならぬ、あるいは健康の維持管理をするというにとどまる文章であります。これはきわめて残念でありますし、遺憾の意を表明しているものでございます。  次、七番目でありますが、新鉱開発問題であります。私どもは、石炭産業を国有化するという方針は立ててはいますけれども現実的に問題解決をしていこうという意味で、第一には現有炭鉱の強化発展、二点目はいままでの封鎖炭鉱あるいは買い上げ炭鉱をいかにして再開発をするのか、このことが二つ目。三つ目は新しい区域の開発をする。すなわち新鉱開発の問題であります。がこの三つに分けて進めてまいっているのでありますが、三つとも、いまの企業体制では、開発資金その他投資をする力があるとは思っていません。したがって、開発技術に関する財政援助は、そのほとんどを政府が行うべきである。端的に言いますと、新鉱開発については公社公団でこれを運営する必要がある、こういうふうに何年間も主張してまいりましたが、今年は、新鉱開発は共同体として第三セクターにする、こういう主張であります。結果的にこれの結論を申し上げるということになりますと、地域住民にボタをかぶせるという方式になるのではないでしょうか。したがって今年度、全面的な国の責任で必要エネルギー確保するという前提があるならば、政府が全面的に投資をして新鉱開発をすべきである、こういうふうに思うのであります。  八番目、石炭値段、いわゆる炭価問題のことでございますが、現状が、物価安定をするという国民の意見が非常に強いことを了といたしておりますけれども昭和三十二年代から炭価の値上げがない現状で、私ども労働条件その他が低劣で抑えられてまいりました。そういう面から判断をいたしますと、石炭産業の安定をするということであれば、この炭価問題については現実にかかるコストを認める、そういう前提で炭価問題を律したらいいのではないか、こういうように判断をしていますので、この炭価問題については、たとえば最近の例ですと、昨年は四月の段階に解決をしているのでありますけれども、今年度はまだ炭価交渉は始まったという状態であります。私ども、いま上期の期末手当の交渉をいたしておりますけれども、炭価問題が決まらないで、たとえば期末手当の額が決まっても支給されない、そういう状態にあることを非常に残念に思っている次第であります。明確なルールをつくられることを、私ども意見として持っているのであります。  最後になりましたが、産炭地域対策、離職者対策の問題であります。このことについて、審議会でいろいろ議論をいたしましたが、非常に残念なことは、産炭地域対策と離職者対策については、今回の専門委員会あるいは審議会で一度も正式な議題にならなかったことであります。そこで答申の中では、いままでの実績を生かす、その他のことをうたわれているのでありますけれども、結果的に産炭地対策というのは何で起きてきたのか、離職者対策はどういう経過を踏まえて今日、具体策が必要なのかということについて、申し上げはいたしませんけれども、新政策の場合にこれらの諸対策が、従来の実績云々というようなことで、議論されなかったことを非常に残念に思いますし、たくさんの問題点を持っている私どもから言いますと、政府が総合調査団を、仮称でありますけれども、つくっていただきまして、本当に産炭地がどんなになっているのだ、離職者がどんなになっているのだ、そういう調査を明確にしていただいて、この産炭地、離職者対策の具体策を立てていただければ非常に幸いだと思う次第でございます。  最後になりましたが、石炭対策の財源の問題でありますが、私ども体制問題で政府が責任をとるということを主張してまいっていますから、この答申で、ありますように石油石炭特別会計云々のことでは、しかも、ここ二、三年の推移では、石炭の予算が非常に減額をされていますので、こういういままでの石炭政策を超越する財政処置をしていただくことが非常に幸いではないか、こういうように思っています。そういう面で、この十三年間、五次の答申が続いてまいりましたが、今年の、今回いただきました石炭答申で、私どもずいぶん意見を申し述べましたが、そのことの実現を図れなかったことも残念ではありますが、いま申し上げたような現実から踏まえまして、炭労が持っている答申についての意見を申し述べた次第であります。  これからも問題があれば、諸先生のところに参りまして、お知恵を拝借をいたしたいと思いますが、この答申は、検討答申という悪口も一つあります。具体的には国会が骨をつけ、肉をつけていくという立場にあろうと思われますので、よろしく今後の御協議の上で、この答申が生き返りますようお願いをいたしまして、炭労の意見開陳を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  67. 田代文久

    田代委員長 次に、早立参考人
  68. 早立栄司

    ○早立参考人 私、ただいま御紹介いただきました全国石炭鉱業労働組合委員長の早立でございます。  諸先生方には、日ごろ石炭対策について格段の御尽力を賜り、本日はまた、私ども意見を述べる機会を与えていただきましたことを大変ありがたく存じます。  さて、私たちは、石炭鉱業審議会の今次の答申に対しまして、みずからの立場、すなわち、組合員と家族の生活を守り、向上せしめるということに徹した立場から検討を行いました結果、次のような態度で、これを受けとめておるわけであります。  すなわち、今次の石炭政策答申は、一つには、新しいエネルギー情勢に対応した石炭重要性を強調しているということ。二つには、どのような条件のもとにおいても、国内炭二千万トン以上を確保していこうとしていること。したがって、そのためには必然的に現有炭鉱の生産維持中心となって、言いかえれば、炭量と保安に問題がない限り、原則として閉山は生ぜしめないという考え方に立っていると思います。三つ目には、二千万トン確保の担い手である石炭企業をしっかりさせる。すなわち、財政需要家負担によって、石炭企業コスト増をカバーをし、できるだけ早い時期に黒字になるようにすることを目指しているということ。四つ目には、炭鉱労働条件と福祉の向上について、地下労働の特殊性を十分配慮した立場をとっていることなど、私たちが最も関心を持つ諸面について、従来の路線とは著しく異なり、大変、大きく前進した方向性を打ち出したものであって、そういう意味で、答申で示されております政策のねらいと体系については、高く評価できるのでありますが、しかし、肝心な裏づけの面と政策実施手段において具体的鮮明さを欠き、多分に今後の政府の対処に詰めがゆだねられておるということが不安であり、また、私たちの不満とするところであります。  したがいまして、そういう面については、今後、諸先生方の御尽力によって固めていって、いただいて、具体的施策としてりっぱに実を結ぶようにしてくださいますよう、心からお願い申し上げるわけでありますが、つきましては、そのような立場から、二、三点にしぼって、私ども考え方を申し述べたいと思います。  まず第一は、石炭産業の今日、現在の状態に対する対策についてであります。答申の中でも明らかにされていますように、石炭産業は現在、全体平均でトン当たり約三千円の赤字となっております。そのため資金繰りが著しく窮迫をして、現在、大部分の炭鉱において、四月以降のベースアップ分の賃金差額がまだ支払われていないという状態にあるわけであります。そこで、各社ごとに現在、炭価折衝をしておるようでありますが、特に電力の態度がなかなか厳しく、果たしてどうなるか、めどが立たないというようにも聞いております。したがいまして、そういう面の推進とあわせて、国の経営改善資金融資枠の拡大と、その返済の猶予など、差し迫った面での対策を通じて、新石炭政策実施まで、全部の炭鉱が正常に賃金を支払って転がしていけるようにしていただきたいと考えるわけであります。  第二は、新政策の裏づけについてであります。今後、国内炭二千万トン以上を持続的に確保していこうということは、相当に金のかかる問題であります。すなわち、現有炭鉱について見ても、地下労働にふさわしいすぐれた労働条件、福祉を確保し、保安確保しながら生産維持し、そうして企業経営を健全に維持していくためには、年々、生産性向上によって吸収できる域をはるかに超越したところのコスト増高を来してくるわけでありますから、これを年々カバーして支えていく裏づけ措置というものが、十分に確保されなければならないと思います。私たちは、これをでき得るなら国の財政資金に求めたいのでありますが、しかしながら実際問題として、それには限界があると思いますので、まるまる見てもらうわけにはいかないと思います。そこで財政資金の方は、新鉱開発石炭利用技術開発、さらには現有炭鉱の坑内若返り対策企業格差是正対策石炭産業の福祉施策面の対策などに十分に投入していただいて、現有炭鉱の平均コストの上昇に対するカバーは炭価で見てもらうようにするしかないと思います。  このことは、先ほども里谷さんがちょっと触れられましたが、今日、物価抑制という国民的課題に逆行するというような批判を生むかもしれませんが、しかし、石炭産業は、国鉄を初めとする官営企業との比較においてはもちろんのこと、さらには民間産業のいずれの企業に比較してみましても、類例のないほどの、まさに極限近いまでの厳しい合理化努力をしてきておるわけでありますから、私たちは、そのような事実の上に立って、堂々と炭価アップを要求していきたいと思います。  もちろん、だからといって、こういう点について簡単に需要業界協力が得られるとは考えません。特に電力事情が厳しいことは、先ほども触れたところでありますが、実はこれに関して、今次答申作成の作業グループであった専門委員からも、次のような見解が示されております。それは「どんな条件があろうとも、二千万トン以上を維持することを強く打ち出したのが今次答申の特徴であって、従来の政策と根本的に異なる点だ。しかし、これが成功するか否かは、電力業界の炭価いかんにかかる。そこで、炭価アップの結果、電力料金アップとなり、結局は国民の負担となることもやむを得ないこととなるが、この点について政府が方針をどう出すかということが、新政策のかぎとなる」こういうことが言われておるわけであります。私たちは、こういう点をも含めて十分、勘案の上、現有炭鉱の平均コストの上昇を炭価で支えていくような、はっきりした制度、ルールの確立を切望する次第であります。  第三に、関係法規の改定に関してでありますが、今次答申の示すところによれば、当然、現行石炭鉱業合理化臨時措置法を初めとする幾つかの関係法規が改定をされるという形になってまいると思います。ただ、その面に関して、かつて十何年か前に、当時、石炭政策問題に中心となって携わっておられました有沢広已先生が、たまたま次のように述懐されたことを覚えております。それは、先生方審議会の中で、こういうことをねらいとしようということで、法律改正等も含めて一つの政策的なねらいというものを検討し、明らかにする、ところが、それが行政府の手にかかり、具体的に法律案となってくるときには、どうもいろいろ、ほかの方の法律との関連で、なかなかややこしい問題になってきて、でき上がったのを見るというと、どうも最初にねらったのと違ったようなものになってくること、これは非常に残念だけれども審議会等で検討しておるわれわれとしては手の下しようがないということを、有沢先生がかって述懐されたのです。私も、どうもそのように感じられますので、ひとつ、その辺のところは、国会の石炭対策ベテランの先生方の御尽力によって、いろいろ答申で示されておる点、あるいはそれらを発展させる意味においても、法律の具体化という中で骨抜きになるような、ねらいが何かわからなくなってしまうようなことにならないように、具体的に鮮明にぴしっとしたものに、ひとつ固めていっていただきたいということを、お願いしたいと思うのであります。  なお、同様に法律に関連しますが、里谷さんもいま言われましたように、原則的に現有炭鉱で掘るところがあって、保安維持が可能であれば、閉山はないということが、円城寺部会長あるいは専門委員等から、しばしば解説されておりますが、しかし、やはり閉山の不安がないと言えばうそになると思います。問題は、答申審議過程でも、今後、何らかの形で閉山チェック制度、閉山に歯どめをかける、チェックをする何かの委員会をつくろうというようなことも、当局側から考え方として出ました。そういう面を今後の法律改正の中で生かしていただいて、ともかく閉山問題が仮に出れば、そういうところにかけて十分チェックをして、これは掘るところがあり、保安維持が可能であるならば、あくまでも存続させるという原則のもとに対処できるような、そういう一つの法律的な扱いというものを決めていただきたいと考えるわけです。  最後に私たちは、ただいたずらに他力依存をすることなく、実質的な経営参加を通じた労使共同決定体制のもとに、労働組合としても、その果たし得る役割りを通じて責任を分担をして、労使協力して、エネルギー安定供給の社会的責任を果たしていく決意でありますので、いろいろだだいま申し上げました点を中心に、諸先生方の御努力によって、しっかりと政策を固め、石炭産業の新しい歴史にふさわしい、りっぱな新政策を確立していただきますことを、重ねてお願いを申し上げまして、私の陳述を終わりたいと思います。
  69. 田代文久

    田代委員長 次に、木崎参考人
  70. 木崎順二

    ○木崎参考人 本日、私に意見を述べる機会を与えてくださいましたことを御礼申し上げます。  答申では、新政策の基本理念を「資源・エネルギーの安定供給の一環として石炭を可能な限り活用してゆくこと」に置き、新政府の目的というものは、一番目に「国内炭生産維持し、」二番目として「海外炭開発及び輸入を円滑に行い、」三番目として「石炭利用技術の研究を維持すること」にあるというふうに規定しております。本日の私の陳述は、今後の日本におけるエネルギー政策の方向と石炭政策関係及び国内炭生産に限定して陳述いたします。  なお、海外炭開発輸入、それから石炭利用技術の研究というようなことにつきましては、答申趣旨に賛成でありまして、今後の具体化の推進を強く要望いたします。  一番目として、今後のエネルギー政策のあり方と石炭政策についてでありますけれども、今後のエネルギー政策というものは、いままでのような経済性の最優先ではなくて、供給面における安定供給を第一義とする方向に転換すべきでありまして、そのためには、エネルギー源多様化と供給先の分散化を図らねばならないと思います。また、その経済性につきましては、個々のエネルギー経済性にこだわらないで、各種エネルギー価格をプールし、国民経済全体として負担すべきもの、そのように考えております。  以上の基本的な方向の中で、石炭は、これは世界規模での話でありますけれども、その埋蔵量は十兆トンと言われておりまして、液化、ガス化の技術的開発と相まちまして、将来、一次エネルギーの相当部分を担うことは明らかである、そのように私は考えております。  次に、国内炭についてでありますけれども、上記の情勢の中にありまして、これから申し上げますところの理由から積極的に評価すべきである。すなわち、一、経済性を考慮した可採炭量十億五千三百万トンを有し、最も安定した供給源であること。二番目、国内原料炭の高流動性は、各種外国原料炭のつなぎとして不可欠であること。三番目、海外炭開発輸入のため、採炭技術を温存することとともに、石炭化学研究の基盤であること。四、外貨節約に何がしかの役割りを果たすこと。五、国産エネルギー資源の放棄は、他国の批判を受け、輸入エネルギー確保のための国際協調に悪影響を及ぼすであろうということ。六、エネルギーの高価格時代に突入した現在では、国内炭は経済的にも引き合うものとなりつつあること。以上は、私たちの見解でありますけれども、本問題に関する答申考え方というものは、石炭鉱業審議会という性格から、総合エネルギー調査会の領域に立ち入ることを慎重に避けながらも、全文を通読してみますと、大筋において私たちの見解と同一であるというふうに私は解釈しております。  二番目に、国内炭の位置づけ、いわゆる二千万トンの問題でございます。  答申は、今後十年間の出炭規模を年産二千万トン以上としております。この数量は、一、保安確保、二、公鉱害の防止、三、コストの推移、四、労働力確保等の諸条件を勘案し、現実的な視点から二千万トンとしたというふうに説明されております。この数量の是非について、筋道を立てて判断するだけの資料を有しませんし、資料があったとしても、それを組み立てる能力を私は有しません。しかし、長年にわたりまして炭鉱の業務に専念しております私といたしましては、経験的な実感からすれば、これはまあまあ妥当なところではないかというふうに思われます。とともに、三年間のローリングプランの作業の結果として、生産量が拡大の方向に発展することは歓迎するというふうに補足説明されていることでもあり、この位置づけの二千万トン以上については、やむを得ないというふうに考えております。  三番目に、新政策のポイントでありますけれども、まず、私たちが今度の新政策の運動を進めるに当たって、いろいろ問題がございますけれども、何がポイントと考えたかということでありますけれども、その一つは企業の収支、すなわち、その裏側にある財源問題であります。  国内炭を見直して、従来の静かな撤退路線から積極的な国内炭維持に方向を転換し、生産量を二千万トン以上と位置づけてみましても、企業いわゆる炭鉱の収支がペイしなければ、私企業体制である以上、空中の楼閣であります。しかも、このことは財源の裏づけを持って完結いたします。財源は国の財政援助と炭価でありますが、財政については、その使い方の再検討が必要であると思いますけれども、総枠の拡大につきましては、多くを求めることは困難であるというふうに私は考えております。したがって、炭価すなわち大口需要家協力こそが、今後の石炭政策の帰趨を左右する。特に電力につきましては、炭価の引き上げ電力料金に連結するだけに、業界協力とこれに対する政治の理解が特に重要であるというふうに考えております。  それからポイントの第二の問題といたしまして、労働力確保対策であります。オイルショック以来の不況と四十九年度の大幅ベースアップによりまして、労働者の確保については、近ごろ好転していることは事実であります。しかし長期の視点では、労働者や技術者の確保というものについては、まだまだ楽観できないのじゃないかというふうに私は思います。したがって、これが確保対策が十分かつ実効を上げ得るものでなければ、労働力の面から二千万トン以上の維持は崩壊するものと言わざるを得ません。  以上が今度の新政策の運動を組合として進める場合の、二つの大きなポイントでありましたけれども、そのポイントから、この答申というものを見直してみますと、次のようなことが言えるのではないかというふうに思います。  すなわち、一番目のポイントであるところの企業収支と財源問題であります。  その一といたしましての企業収支と資金繰りでありますけれども答申が、「国内炭生産を可能なかぎり維持するため、石炭企業経常収支黒字となることを目標とすべきである。」として、国内炭維持の前提として企業収支を重要視していることは明らかであります。これまでの答申と異なった現実的な側面として、この面は評価できると思います。  しかしながら、収支問題につきまして、もう一歩突っ込んだ検討が欲しかったというふうに思います。すなわち、国内炭維持のための企業収支を黒字とする必要性を認めながらも、「できるだけ早い機会に」というのは、これはどうも三年程度を考えているようでありますけれども、「できるだけ早い機会に」というただし書きがあります。このことは、一挙に収支を黒字にするためには、それに相当する国の援助それから大幅な炭価のアップ、こういうものが必要であるために、実際問題として不可能であると考えたものとして一応、理解したいと私は思います。しかし、それまでの間の経常収支赤字資金不足となってあらわれるということに対する配慮がなされてしかるべきであったというふうに思います。現在、日々の資金繰りにあえいでいる石炭企業、一部の炭鉱では、新賃金に関しまして実質的な遅配があるわけですけれども、そういう石炭企業にとりまして、資金問題に関して石炭鉱業合理化事業団の調整機能についてのみ触れるにとどまっているということは遺憾であると言わざるを得ません。  次に第五次政策、いわゆる第三次の肩がわりがあった第五次政策でありますけれども、第五次政策以降の累積赤字と累積債務について、何ら触れていないことが指摘されると思います。当期の経常収支黒字となっても、これらの累積赤字と累積債務が、企業経営に今後いかなる影響を与えるかということについて、懸念されるところであります。  その二として炭価問題でありますけれども答申では石炭企業の収支を黒字とするため、「需要者は、石炭政策趣旨に沿って石炭の取引条件等の面で協力し、」と、炭価問題の重要性を指摘しております。特に、一般炭につきましては「石炭価格電力料金関係については、石炭政策見直しの要となる」とするとともに、「一般炭原料炭は、品質、用途、競合財の面で異るが、一方、生産側の条件は、選炭コスト等を除さおおむね同じであるので、国内炭の有効利用、合理的開発及び生産のためには、両者の価格面におけるバランスについて配慮する必要がある。」としております。このことは、炭価問題はせんじ詰めれば一般炭の炭価問題であることを明らかにしたものであると私は解釈しておりますけれども政府の決断と電力業界協力を期待したいと思います。  また、「政府は、石炭価格引上げが直接需要者にのみ負担をかけることのないよう適切な措置を講ずる」べきであるとしておりまして、炭価決定の基準として、一応、競合エネルギー価格との比較を挙げながらも、割り高となった場合には、「国民経済的に許容される範囲」という当然な条件つきでありますけれども、「吸収する方策を検討すべきである。」としております。このことは、個々のエネルギー経済性優先の考え方を転換したものでありまして、きわめて困難な問題であることは私、認識いたしますけれども、その具体的な方策の検討に期待をいたします。  さらに、「国内炭価格は、競合財価格の一時的変動の如何にかかわらず、安定的に推移させるものとする。」とし、かつ、年々の国内炭価格について審議会が通産大臣に答申する際、「石炭生産のコストを審査した上で」とあることは、長期に安定的な生産維持するためには、コストを補償して企業収支を安定させることが必要であり、そうした側面から炭価問題の重要性を表現しているものと受け取られます。  以上のとおり、炭価問題の基本的な考え方については高く評価するものであります。しかしながら、毎年の炭価決定については、「審議会は、毎年、石炭生産のコストを審査した上で、上記方針に基づき、当該年度における国内炭価格について通商産業大臣に答申する。通商産業大臣は、答申に基づき、国内炭に関する基準価格を決定する。」と述べるにとどまっておりまして、これは石炭鉱業審議会の性格上、当然とも考えられますけれども、毎年の炭価答申案作成の機構だとか、その手順並びにその拘束力について、もう一歩突っ込んだ検討がなされてほしかったというふうに思います。  その三として格差の是正問題であります。  政策が平均的なものでありますと、平均以下の炭鉱が没落することは、もうこれは明らかであります。一定量の国内炭維持のためには、格差対策というものが不可欠のものであると主張したのは、実は炭職協が最初であり、また炭職協の積年の主張でもあります。  答申では、本問題の必要性を認めまして、「差別価格の導入や現行石炭鉱業安定補給金の傾斜的配分等により是正することを検討する必要がある。」としながらも、差別価格につきましては、現在、石炭企業はすべて赤字でありますので、実際問題としては、当面はこの差別価格の導入というものは困難というふうに考えているようでありまして、格差助成の基準設定の困難性は私、十分に理解しておりますけれども、本問題に関する限り、私は及び腰であると言わざるを得ないと思います。  五番目のポイントである労働力確保でありますけれども、「労働力確保は、基本的には、労働条件生活環境の改善」にあるが、賃金等につき、その基本姿勢として「労働時間、職場環境生活環境等の要素を総合し、かつ他産業とのバランスを考慮して地下労働の特殊性が十分配慮された適正な水準とすべきである。」としています。すなわち、石炭鉱山にふさわしい賃金等とすべきであるということであると思いますけれども、このことは従来、私たちが主張し、また要求してきたことでありまして、そのことが公的に認知されたという意味において、高く評価したいと思います。  また、その決定は本来、労使で解決すべきものでありますけれども、労使の合意があれば、審議会としても仲介の労をとってもよい。ただし中労委の立場を考えなさいよというただし書きはありますけれどもと、口頭で説明されておりますことは、石炭事情に詳しい第三者の介入により妥当な結論を期待できるとともに、紛争を避ける意味で期待したいと思います。  このほか、労働力確保に関して、次の諸点を挙げておきたいと思います。  労働時間につきましては、世間一般の傾向にかんがみ、「労働時間の短縮等の改善を図るべき」との基本姿勢を示した上で、「出炭量の維持、賃金収入の確保等」との関連から、逐次改善の方向を示しながら、「場合によっては、審議会で慎重に検討を要する。」というふうに明記したことは、積極的な姿勢として私は評価したい、そのように考えます。  二番目に、「経営者は少なくとも深夜労働者が昼間安眠できるような方策を講ずるとともに、出勤率82%という現状をふまえた、合理的な対応策を検討する必要がある。」と述べていることは、当然なこととはいえ、これまでにない細かな指摘だというふうに言えると思います。  三番目に、生活環境の整備につきまして、特に医療関係に問題点のあることを指摘するとともに、「総合的な都市計画事業の一環として各種施設の整備を図ることも検討すべきである。」としたことは、適切な考えと私は思います。  六番目に、保安確保並びに生産技術の開発でありますけれども、これらにつきましては答申の見解に賛成でございまして、今後とも積極的な推進を期待するところであります。特に保安について申し上げますけれども答申保安確保問題についていかように書かれておろうとも、保安技術職員といたしましては最善の努力を傾注する所存であることを、一言つけ加えておきたいと思います。  要するに、では、新政策を全般として、どのようにおまえは評価するのかという問題になりますけれども、以上、答申は、私たち石炭産業に従事する者の立場からすれば、性急に、具体的な精緻な政策を願望するがゆえに、隔靴掻痒の感なきにしもあらずということが言えると思います。しかし、このたびの答申は「新総合エネルギー政策のもとにおける石炭政策」として、すなわち、従来の石炭政策から脱皮、転換という見地に立って組み立てられておるものでありまして、国内炭の積極的な維持と安定供給を前提として、輸入炭を含めた石炭の拡大利用を基本理念としている点を高く評価いたします。  また、企業収支、財源、労働力確保等の諸対策につきまして、新しい基本理念に沿いまして、かなり明確に方向性が示されておりまして、これらの方向性について大綱的には賛成を表すものであります。  さらにその実施に当たっては、法の改正、合理化事業団、電炭会社の運用の再検討、それから審議会が具体的、実務的、機動的に審議を行い得るよう、部会構成を全面的に改組する等、意欲的な面も評価し得ると思います。  私たちは、こうした観点から、この答申趣旨が具体展開の過程におきまして一〇〇%生かされて、新政策の目的が達成されることを期待しつつ、答申の原案に賛成いたします。  終わりにでございますけれども、この答申は、「新総合エネルギー政策のもとにおける石炭政策について」、その考え方、あるべき姿を明らかにしたものでありまして、具体的な展開はこれからであります。建築工事にたとえますると、基礎工事が終了しただけでありまして、この基礎にふさわしい建物ができるか、一夜のあらしで吹っ飛んでしまうようなバラックで終わるかは、これからの問題であります。このことが、何ら具体性のない答申と批判されたり、具体性がないゆえに過去の暗いイメージと重なり合いまして、不当に低く評価されるゆえんであります。なかんずく国内炭を長期的に安定して維持するための最重要項目である企業収支と財源問題の今後の推移が、新政策の成否を決めると言っても過言ではないと思います。この問題は根深く錯綜しているだけに、簡単に解決されるものではありませんけれども、要は、政府企業家も、そうして国民も、負担がふえても国内炭は必要だという、はっきりした認識を持つか否かが、この問題を解決し、新政策現実のものとするただ一つのかぎであると私は考えます。要するに、これからの推移によっては、新政策というものは絵にかいたもちになりかねないのでありまして、政治の決断こそが、答申という基礎にふさわしい建物を構築できるかどうかを左右していると私は思います。また、こうした観点から、私たちにとりましては、新政策に関する限り、運動はこれからが本番と私は考えております。  最後に、私たちは、供給の安定と生産性の向上のみが国民の期待にこたえる道であるということを、心を新たにしてかみしめながら、委員長を初めとする諸先生の御理解と御支援をお願いいたしまして、私の陳述を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  71. 田代文久

    田代委員長 次に、高鍋参考人
  72. 高鍋徹男

    ○高鍋参考人 ただいま御紹介をいただきました福岡県鉱業町村連盟会長、飯塚市長の高鍋でございます。  本日は、「新エネルギー政策のもとにおける石炭政策はいかにあるべきか」という通商産業大臣の諮問に対する石炭鉱業審議会答申について、福岡県産炭地域市町村を代表いたしまして意見を申し述べる機会を与えられましたことは、まことに光栄と存じております。  総合エネルギー政策は、わが国の経済を左右するきわめて重要な政策であり、唯一の国内エネルギー資源たる石炭を、資源・エネルギー需給上、重要な要素として見直すことを基本理念とし、策定された今般の答申は、国内炭需要供給に関する幾多の問題点を解明され、これに対しての経済的、社会的動向に対応しつつ、きめ細かく立案されたことにつきましては、深甚なる敬意を表するとともに、この答申が行政面に適切に、しかも強力に反映されますことを希望いたすものでございます。  ただ、私どもがこの答申を拝見いたしましてまことに奇異に感じましたことは、石炭鉱業に対しましては抜本的とも言える対策を樹立されながら、産炭地域振興、鉱害復旧、炭鉱離職者対策等、石炭鉱業対策と不離一体と考えられる、これら三対策については、全く無関心とも言える答申内容であったことでございます。  私ども産炭地域市町村長及び住民は、石炭政策とはこの四本の柱で成り立っているものと理解し確信いたしております。これら四対策は、いずれも石炭関連法律のもとに現存し、このため、石炭及び石油対策特別会計法には、この四法及びその関連事業施行のための会計であることが明記されていることは、諸先生御高承のとおりでございます。近時石炭政策に関しまして、石炭鉱業対策は前向きの対策であり、他の三対策は後ろ向きの対策なのだという意見を持たれる方があると承っております。私は、このような考え方はまことに認識不足であり、きわめて表面的な考え方だと存ずるのであります。  以下前述の四対策が不離一体であるという理由、実例を申し述べてみたいと存じます。  第一に炭鉱離職者対策に関しましては、石炭合理化に伴う数次にわたる応急的な離職者対策から、炭鉱離職者臨時措置法の制定により、長期的な重点施策の一つとして取り上げられ、離職者の広域紹介、職業訓練、援護制度の実施とあわせ、緊急就労対策事業を実施することによって、一応の離職者対策が確立せられたのでありますが、その後、なだれ現象化した大型閉山が相次ぎ、産炭地域市町村においては多くの離職者を抱え、昭和四十五年開始された開発就労事業を含め、炭鉱離職者を中心とする失業対策事業を実施してまいりましたが、ここ数年来、市町村の本事業に対する財政負担は増高の一途をたどっておりまして、全鉱連加盟産炭地域市町村の昭和四十九年度一般会計持ち出し額は、超過負担を中心に七十億六千五百万と推定され、この額は実に市町村税収入額の一五%に及んでいるのでございます。  特に福岡県は、炭鉱離職者を中心とする失業者の滞留が著しく、そのことが、失業対策事業費における指数が、全国10に対しまして、福岡県六条市町村におきましては、昭和四十七年度では一三七で、生活保護率におきましても、昭和四十八年度全国千人比一二・七に対し、同じく福岡県六条市町村が五一・四でありまして、特に福岡県田川郡にあっては、一九二・七という高い保護率を示しているのであります。このような困難な財政事情のもとにおいて、なお、この事業の継続に力をいたすゆえんは、住民生活を守り、民心の安定をはかるという考え方のほかにございません。かつては日本の基幹産業でございましたエネルギー資源開発の担い手として働いた人たちに対しまして、産炭地域市町村の責務であるとの信念とともに、現役炭鉱労務者に対する見えざる心の支援になると確信するからでございます。炭鉱離職者対策事業が決して後ろ向きの政策だとは考えられませんし、中高年層労働者を多数擁しております現石炭企業の労使の方々には、十分の共感を得られるものと信ずる次第でございます。  第二に鉱害復旧対策に関してでありますが、福岡県の残存鉱害は昭和四十九年度末において、農地四千ヘクタール、家屋一万九千三百戸、道路河川等公共施設も多量に未復旧となっております。昭和五十年度、福岡県分の事業費は合計で三百十二億円にも達しまして、地域住民の日常生活及び人心安定に大きな影響をもたらしている現況であります。鉱害の被害量は、全国の八〇%以上が福岡県に集中して残存しております。他県の方々には関心が薄く、鉱害は単なる石炭産業の残したつめ跡であろうとのみお考えの方も多かろうと推察されますが、私は、この鉱害復旧の成否は、今後における石炭鉱業伸展に大きな影響を与えるものと信ずるものであります。  工鉱業排水による汚染、工業排煙による汚染、各種鉱山の残存汚染等に例をとるまでもなく、公鉱害防止対策すなわち環境保全対策なしに、近代企業の完全な育成が成り立たないことは、御高承のとおりでございます。鉱害の復旧がなければ、産炭地域の振興はなく環境の改善整備もございません。今次答申により新規開発される石炭鉱山につきましても当然、鉱害の発生が考えられ、新石炭政策推進の中での一つの柱であるべきと考えます。  最後に産炭地域振興対策の問題でございますが、産炭地域振興臨時措置法並びに関連法律による諸施策には、産業基盤、生活環境の整備等、産炭地市町村にとり、まことに重要な懸案の解決に効果を上げていますことは、十分御承知のことと存じます。蛇足とは存じますが現行法第十一条によります市町村が行う特定事業に対する補助のかさ上げ分だけを見てみましても、昭和四十七年度四十億三千八百万円、同四十八年度五十億二千七百万円に達しておりまして、財政のきわめて脆弱な産炭地市町村、六条地域の財政力指数におきましては三〇前後でございまして、全国平均の約二分の一にしか達しておらないというような産炭地の市町村が、辛うじて社会資本整備の一端を行える支えとなっているのでございます。その他、地域振興整備公団等の産炭地域振興に寄与した実績は省略いたしますが、産炭地振興臨時交付金については、ぜひ概要を申し上げ、諸先生の御支援をお願い申し上げたいと存じます。  昭和四十四年に発足じましたこの制度は、基本額に調整額、加算額等拡充されて、炭住改良、閉山上水道、中小企業対策、公共事業の起債償還補助等、産炭地特有の需要に対する市町村への助成措置を行っております。閉山に伴う市町村財政助成であって、金額についても、昭和四十八年度分で、福岡県で十三億一千九百万円と、一市町村当たりの額こそ僅少でございますけれども、きわめて有効に活用しておりまして、産炭地全市町村が感謝しつつ予算増額を切望している制度であります。しかるに、今次答申の中で「政策実施手段」の「財政措置」の項におきまして、「なお、財源としては他のエネルギー政策財政事情等を考慮して検討すべきものであるが、当審議会としては、新石炭政策に必要な財源は、「石炭及び石油対策特別会計」によって確保すべきものと考える。」と言われていますが、このことは、石特会計の原資には枠があり、その中で新石炭政策に必要な財源が増加することによりまして、産炭地振興、鉱害復旧、離職者対策等の予算が圧縮されるのではないかと、私どもは大きな危惧を持っているところでございます。  以上、るる申し上げましたが、前述の三対策石炭鉱業発展のバックボーンでございまして、対策の四本柱が一体になってこそ、真の石炭鉱業の発展が期待せられるものと信ずるものであります。  私どもといたしましては、この新石炭政策がますます強化されるとともに、産炭地振興対策、鉱害復旧対策、炭鉱離職者対策が、今後の財政措置を強化することによってますます充実されますことを、福岡県のみならず、産炭地域市町村住民一同の声として強く諸先生方お願い申し上げる次第でございます。  これをもちまして私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  73. 田代文久

    田代委員長 次に、吉田参考人
  74. 吉田久

    ○吉田参考人 ただいま御紹介をいただきました北海道の夕張市長の吉田でございます。  七月の十七日の日には、北炭の新鉱の事故の調査に、石特委員皆さんがおいでをいただきまして、御苦労さんでございました。  それでは、これから北海道の二十三の鉱業市町村を代表いたしまして、新石炭政策答申に対しまして、それぞれ私の考え方を申し上げたいと思うわけでございます。もちろん、答申を作成するまでに大変、御苦労されたことを、冒頭、感謝をいたします。私どもが昨年の春以来しばしば御陳情を申し上げました諸事項と比較をいたしまして、率直に意見を申し上げたいと思います。  まず、この答申は、のど元過ぐれば熱さを忘るるという言葉がありますけれども、一昨年秋の石油ショックと四十九年春以来の石炭見直しの真剣な機運がいつの間にか薄れまして、相変わらず外国依存のエネルギー対策を基礎とした答申と考えられます。  古い話でございますけれども昭和三十二年の秋に、政府の招きで来日いたしましたフランスの鉱山試験協会のソフレミンの調査報告で、こういうことを言っております。「石炭は国民的資産であり、国が保護する責任と、コントロールの権限を持つべきだ。炭鉱の一時的閉鎖は、永久的閉鎖につながるから、国の義務としても石炭鉱業の継続的安定を図らなければならない」と指摘をしておるわけでございます。ところが、この指摘とは逆に、わが国のスクラップ政策を基本とした第一次から第五次までの石炭政策は、根本的に誤りを継続していたものと考えられます。昨年の二月八日、国会におきまして前田中総理が、これまでの石炭政策の誤りを認めまして、これからは積極的な石炭政策を立てて、あらゆる角度から石炭を見直すと約束しておりますが、この答申は、残念ながら全く現状維持でありまして、見直しの政策とは考えられません。もしも再び中東戦争などで石油パニックが起きたら、昨年もありましたように、国民生活が再び物価高と生活不安に陥れられる大問題になりかねないわけでございます。  次に、答申の内容につきまして申し上げますが、「新石炭政策の基本的理念」の項の「石炭重要性の認識」というところで、世界の石炭埋蔵量を推定した表現がありますが、世界のことよりも、この答申の中に、最も肝心なわが国の埋蔵量、国会において大臣の答弁があるわけでございますが、なぜわが国の埋蔵量を表現しなかったのか。これはもうすでに調査を完了しておりますから、この埋蔵量を認識した上で、政策をやはりつくるべきだと考えております。  生産量につきましては、今回も二千万トン以上となっておりますが、これも昨年の六月五日のことでございますけれども、福岡で、前通産大臣の中曽根さんが、五年計画で三千万トンの生産が可能だと発表いたしましたけれども、これがいつの間にか消えてしまっております。私は、現職大臣が全然根拠のない数字を発表するはずがないと考えておりまして、このことは現在でも不思議に思っております。  国内炭生産量が五十五年も六十年も二千万トン以上となっておりますけれども輸入炭の問題につきましては、一般炭が五十五年は五百万トン、六十年は千五百万トンとしておりまして、エネルギーの外国依存度をさらに外国一般炭で増加しようとしているのはおかしいと思います。国内炭生産規模が十年後も二千万トンでは、エネルギー対策としての石炭の見直しではないと思います。これは年度を追うごとに生産量を増加すべきだし、せめて努力目標ぐらいは出炭量を示してもいいのではないかと考えております。  「鉱区の活用」の項目でも、素案では強力な措置で鉱区の活用をするといったのが、「強力」が「促進」と変わっておりまして、これは鉱区権者に対する遠慮が、かなりあったのではないかと思っております。  新規炭鉱の開発についてでございますが、いわゆる第三セクター方式は、これは私どもは反対でございます。なぜならば、私どもは国の責任を明確にした公社または公団経営とすべきだと主張しているからであります。この第三セクター方式すなわち共同開発につきましては、素案では「原則として」とあったのが、本答申では「例えば」と例示したにすぎず、ユーザーも共同開発者の中から抜けておりまして、資金負担の表現もなくなっておりますので、国のバックアップがきわめて不明確でございまして、これは実現は乏しくなったと考えておる次第でございます。  私どもが一番関係の深いのは生活環境の整備の問題でございますが、住宅が改善された、こういうふうに言っておりますが、これは、私どもからしますと、まだ非常に不十分でございまして、住宅の二DKは、現在の生活の程度から考えますと、決して改善された住宅とは言えないわけでございます。夕張市においても、三十年以上経過した二DK程度の木造住宅が四〇%もあります。最近つくりましたものも含めまして十年未満、これにつきましては四〇%程度でございます。  次に、医師の不足の問題は、道や市町村では簡単に解決できない事項で、これは厚生省の特別な配慮を要することでもありますし、生活環境の整備は、関係省の温かい配慮と、国においてこれが財源の裏づけをしなければ、炭鉱会社も市町村も整備はできません。夕張市も、北炭の新鉱地帯に中学校がありまして、非常に古くなっております。教室も少なくなってまいりましたので、これを全面改築をしなければなりませんが、学校建設の一例を申し上げますと、最近私ども統合で旭小学校という学校を新築したわけでございますが、これには、総額四億二千万という金がかかりましたけれども、驚くなかれこの超過負担というのが、面積の超過負担あるいは単価負担の超過負担が八千万ほどかかっておるわけでございます。私どもの市税の年度の収入は約十億でございますから、これを見ましても、いかに膨大な超過負担であるかということがおわかりだと思います。  次に、労働力の問題につきましては、毎年一千名以上の補充についてうたっておりますけれども、これが成功するかしないかは、私は今後の石炭産業の死命を制する問題だと思います。もちろん、賃金、職場環境の改善、生活環境の整備、これをやらなければ労働力確保ができません。でありますから、私どもは、この生活環境の整備というのは、計画的に三年ないし五年で、一年でも早く整備しなければ労働力は集まらないのじゃないか。それから、住宅、病院などの集約化という問題がございますけれども、このことは、北海道の炭鉱市町村の地形上あるいは交通上のことを考えますと、実情に合わない集約化を求められましても、これはなかなかできない問題だと思います。  第五次の答申の中でこういうことを言っております。「若年労働者の意識構造の変化等を考慮して、炭鉱における住宅環境施設、福利厚生施設等の一層の整備拡充を図る必要がある。」こういう表現がございますけれども、この表現と比較いたしますと、本答申はどうも後退しておりますし、いずれも訓示的な表現のみでなく、御承知のように閉山によって財源をかなり喪失しておりますところの炭鉱市町村ですから、産炭地自治体に対しては、この点は財政的に特別な配慮を要することと思います。また一般行政のテンポでは、この生活環境の整備はできません。でありますから、これは財源対策を含めて計画的に措置をしていただきたいものだと考えております。  なお、昭和四十九年度、通産省が委託調査された「北海道産炭地域の生活環境施設の現状と整備計画策定調査」、ここに私は持ってきておりますけれども、これが調査が終わっております。この調査をいつ活用して実現をするか。ぜひ、これは速やかに財源対策を含めて実施に移してもらいたいと考えております。  私は、産炭地の振興対策は、答申の中では一番最後に、きわめて簡単に片づけておりますけれども、現に石炭を産出している市町村、石炭が全然生産されていない市町村に、この対策はおのずから分かれるべきだと思っております。石炭を産出している市町村の振興策は、おおむね生活環境整備につながる問題でございますから、これは単に産炭地振興策ではなく、石炭政策の中で措置すべきものと考えておるわけでございます。  答申中に関係地方公共団体との協力という表現が二ヵ所ほどございますけれども、御承知のとおり、地方公共団体は道県、市町村に分かれております。この道県、市町村の責任分担が不明確になっておりまして、これでは実際、困るわけでございます。でありますから、道県はこういうことをやりなさい、市町村はこういうことをしなさいという、その責任の分担をやはり明確にすべきでありますし、考えてみますと、どうも国の果たすべき責任を避けて、地方自治体にその責任を転嫁しているように思えてならないわけでございます。  労働者の教育・研修の項でございますが、その中で「石炭産業を魅力あるものとする」という表現がありますけれども、魅力あるものにすることが、石炭産業の長期安定、職場の安全、賃金、生活環境の整備を指すものとするならば、この答申では、直ちに魅力ある産業にはなかなかならないのじゃないかと思います。労働力確保の問題につきましても、今後はやはり、年齢が高くなっておりますから、炭鉱の技術者あるいは労働者を確保するためには、大学、高校においても採鉱科の復活をさせなければ、だんだんと技術者も労働力もなくなってくるのじゃないかと考えております。  海外炭開発輸入についてでございますが、このねらいはときどき聞いておりますので一応、理解をするにしましても、輸入炭につきましては、資金確保を初め至れり尽くせりの国内状態でございますけれども国内炭生産に対する対策の内容は具体性に乏しく、この答申輸入炭に重点があるようにも考えられ、石油と同じように外国依存を深めることとなり、これは再考を要することだと思います。  「財政措置」につきましては、従来どおり石炭及び石油対策特別会計により確保するということになっておりますけれども、私は産炭地域振興対策はこれは必要だと思います。あるいは鉱害、労働対策の中にも問題があろうかと思いますけれども、これは一般会計で負担すべきものだと思いますし、二千万トンでも国内炭が産出しているからこそ、この特別会計があるのでありまして、石炭産業振興のために前向きに、この会計を確保すべきだと考えております。  最後に、結びとして申し上げますけれども、産炭地市町村は生活環境の整備には重大な関係があります。ところが、専門委員会からは一度もこの意見を聞かれたことはございません。石炭政策については、いまでは大産炭地域となった北海道の知事の意見関係市町村長の意見というのは、ぜひ大幅に取り上げていただきまして、実施に移してもらいたいと思います。国内炭政策や産炭地の生活環境の整備については、どうも金のかかるような問題になりますと、一切これを避けているように考えられます。これは私は大蔵省に非常に遠慮した答申のようにも思われます。各省に関係する事項については、その連携について何らの表現がございませんし、全体的に大蔵省初め各省と石炭需要者に対し、大変、遠慮をしているようだし、鉱業審議会はむちゃな答申は避けるべきではございますけれども石炭の見直しにぴったりとした答申を期待しておっただけに、この答申は非常に期待外れと言わざるを得ないわけでございます。私は、過去に産出した国内の一般炭の力によって今日、繁栄している電力会社全部に、国内一般炭生産量を今後、増加しながら、その消費を義務づけるような強い姿勢が欲しかったし、そのことは裏を返せば石油の消費の節約になるので、今後において検討を希望する次第でございます。  以上、申し上げましたけれども、今後の国会審議におきまして、どうも答申の中で不備の点がありますので、これを補強してもらいたいし、項目ごとに資金、財源対策を具体的に決定せられ、この答申の不備を事実上補っていただきたいものだと、心から石特の皆さんお願いをして、私の意見といたします。どうもありがとうございました。
  75. 田代文久

    田代委員長 以上で参考人意見の開陳は終わりました。
  76. 田代文久

    田代委員長 質疑の申し出があります。順次これを許します。田中六助君。
  77. 田中六助

    ○田中(六)委員 里谷さん初め五人の参考人方々、御多忙中、私どものために御出席願いまして、ありがとうございます。時間が非常に制約されておりますので、私も質問を簡単にしますので、お答えは御簡単にお願いしたいと思います。  里谷さんと早立さんにお聞きしたいのですが、いまこの答申でも、二千万トンを維持するために十年間、毎年千名の労務者を雇っていくのだということなのですが、この答申の内容をずっと読んでおりまして、この答申が実現した場合、大体、労務者が毎年千名ずつ集まるような、そういうペースでいくでしょうか。その点をちょっとお尋ねしたいと思います。
  78. 里谷和夫

    ○里谷参考人 実情を申し上げますと、暗い石炭産業の現状でございますので、新規採用を非常に実効を上げなければならぬということで、北海道におきましては道庁あるいは市町村、いわゆる産炭地市町村でも、どうやって労働力を集めるかということで、たとえば採用になった場合に支度金を三万円提示をする、あるいは市町村が住宅を新しく建設をして、それを会社に貸して労働者に新しい住宅を与える、こういう政策を、ここ四、五年やっていただいてはいるのですけれども、結果的に将来展望がないものですから、なかなか人が集まりません。現実は、たとえば抗内労働は五十五歳の定年制をしいているわけです一私どもは、五十五歳以上の定年延長については、逆行するかもしれませんし、いまの抗内労働では五十五歳が限度だろう、こういうように思ってはいるのですが、どうしても労働人口が足りません。そういう意味で、再採用制度というものを設けまして、五十五歳の定年を終わった場合に、あと三年間これを再採用する、そういうような実情を、いままでたどってまいりました。ですから、率直に言いまして労使で、労働人口を補充するということで懸命なのですが、あるいは市町村の御協力もいただくのですけれども現実には補充されなかったというのが現状でございます。ですから、昨年度の賃金その他の実績からまいりますと、先ほど申し上げましたように千九百名の新陳代謝がございまして、何十年ぶりだと思うのですが、昨年の結果を見ますと、四十八年の人員よりも四十九年の人員計画が二百七十名オーバーする、こういう現実が実は出てまいっています。ですから、今度の一千名の問題でも、これはもう当然一私ども努力をいたしますが、資本が本当に千名の人間を入れるという姿勢を示さない限り、だめだと思います。  それからもう一つは、千名以上ということになっていますが、私ども考え方では、現有炭鉱の整備あるいは再開発鉱区を行う、あるいは新鉱開発を行う、こういうことになりますから、現有炭鉱で千名程度の定年退職その他のことがあるわけでありますから、再開発をする、あるいは新鉱開発をするということになれば、これ以上の人員を必要といたしますから、千名以上ということでは、今後の計画もさることながら、もう少し大きく踏み込んでいって人員を採用しなければならぬ、こういうように思います。  ちょっと長くなったと思いますが、そういうことです。  もう一つ、端的に言いますが、どこの労働組合でも新陳代謝をしていますが、三池の労働組合、三池炭鉱労働組合でありますが、これは御承知のように組合が二つに分かれていまして、新労組と三池労組がございますが、三池労組はこの三十四年以降、一名も新陳代謝がないのであります。これはもう当然、労使の問題だということで、会社は採用しない。ああいう労使の紛争の後でもありますけれども、一人も採用にならぬというような組合もある。そこを何とか打開をしてほしいという意味の話し合いを進めていますが、一顧だにされないという現状もございます。どうしてもこういう弊害を打破していかなければならぬ、こういうように考えているところでございます。
  79. 早立栄司

    ○早立参考人 正直に現状を申し上げますと、私ども関係は常磐炭礦と九州の三池、松島炭鉱、あと山口に中小が一つという関係でございますので、この私どもの実際、関係しておる炭鉱の現在の状態について申し上げたいと思うのですが、御承知のように、二年前ぐらいまでは労働力確保が大変むずかしい問題であって、一人当たり二十万円ぐらいの募集費をかけて盛んに確保に努めたが、それでも容易じゃなかったということであります。ところが、一昨年暮れのオイルショックを契機として、国内世論的に石炭の見直しという機運が、やや盛り上がってまいりまして、全体的にそういうふうに見られるようになってきたことと、具体的には、里谷さんもちょっと触れましたが、昨年の賃金において、従来から見れば大変、大幅な引き上げがなされたというようなことからと思いますが、同時に、加えて昨今の石炭以外の他産業における雇用情勢の大変な悪化ですね。こういうようなこととの関係から、最近では、それぞれ関係炭鉱の必要とする労働力が十分、集まってくるようになってきておるようであります。かつては年に関係なく、一人でも多くということでありましたが、最近は求人数よりも応募者数が上回っておるために、三十五歳以下でなければいかぬとか、いろいろ企業によっては、やかましい注文をつけて選び出すというようなことも、現象として出つつありますので、現状は大変、変わってきたということは言えると思います。  しかし私は、これがこのままの状態で、ずっと今後も長期に、先生御指摘のように年々千人ぐらいずつ補充していけるようになるとは考られません。いろいろな石炭見直しの明るい空気というものもありますが、現在の現象は根本的には、よその産業における雇用情勢の悪化という面から出てきていると思いますので、全体的な雇用情勢というものが変わってくれば、また炭鉱も容易じゃなくなってくると思います。したがって、抽象的ではありますが、答申の中でもいろいろ並べられておりますように、石炭産業特有の炭鉱年金の給付額等を大幅に増加するとか、それから特に労働時間の短縮によって、他産業同様、何らかの形での週休二日制をとるとか、あるいは、いま恐らくちゃんとした産業の中で、日給制をとっておるのは炭鉱ぐらいじゃないかと思います。これは石炭産業の非常に古い一つのしきたりだと思いますが、この辺について一部、違うところはあるようですが、大部分のところが日給制です。これらを月給制にしていくとか、実施のためには、いろいろ具体的にむずかしい問題がありますけれども、そういうものを逐次いろいろ合理的に改善をしていくという措置を講じなければ、いまはちょっといいけれども、長期にわたって、ずっと継続して新たな労働力確保していくということは、そう簡単ではない、こう考えております。
  80. 田中六助

    ○田中(六)委員 労働条件の改善を図っていって、できるだけ一千名確保というものをやらなければいかぬと思います。  それからこれは組夫は全然、問題を別にしていま御答弁願ったわけですね、わかりました。そうすると三井三池の場合は新陳代謝が全くないというが、組夫の方はどうなのでしょうかね。それはおわかりですか。
  81. 里谷和夫

    ○里谷参考人 主体が新労組になっているものですから、そういう関連の人員は新労組と会社が協議をして充足をするという形になっています。
  82. 田中六助

    ○田中(六)委員 それから、きのう、おとといの二日間にわたる北海道方面の調査で、いろいろ感じたのですが、事故があった。その事故は、組合側は会社側の責任だ、責任だというふうに、いつものように非常に強く言っているわけですが、私の頭をちょっとかすめるのは、組合側はどうなのだろう、つまり訓練ですね。自分の生命ですから、働いている自分の命だから、一番守るのは自分じゃないかと言われればおしまいですけれども、ただ本能的な逃げ方とか、いろいろなものも、ずいぶん訓練によって修正されていくわけだし、団体訓練とか小さな規模の訓練、それから、こういう事故にはこういう対処をするというやり方ですね。そういう訓練によって、ずいぶん命が助かるのじゃあるまいか。  というのは、あそこのビニールハウスがあって、これは会社側の説明が主体ですが、救命道具もあって、こうなって、ああなってということで、やはり死体が、どんどん逃げてから倒れておる、つまり歩行してから倒れたというような印象を受けておるわけですが、もう少し組合が責任を持って、訓練に訓練を重ねて、そしてある訓練の資格を、車の運転の資格じゃないですけれども、訓練に対処する座学、つまり机の上のテストも、それから実際のテストも、ちょうど自動車の免許と同じですが、そういう訓練を身につけてしまって抗内に入れるというような体制を自主的にやったら、どんなに命が助かるかもわからぬなというような気もしたのですが、組合自身のそういう抗内に入ることの訓練ですね。そういうことについてはどういうふうになっていますか。それは今後どうしようと思うか、そういう点についてお二方に。職員組合の方、木崎さんも。
  83. 里谷和夫

    ○里谷参考人 お答えをいたします。  先生の御指摘のとおりでありまして、先生の御指摘のとおり組合が保安教育を遂行するということになりますと、ある意味では作業停止権を与えてもらわなければならぬ、こういうふうに実は思うわけです。ですから保安教育の徹底の問題につきましては、いろいろ労使と相談をいたしまして、保安日を設定するとか、いろいろやるのですけれども、私どもの主張では、たとえば保安日を設定すれば半日くらいは徹底してやったらどうだ、こういうふうに言うのですが、会社と協議をいたしますと三十分、こういうことになるわけです。ですから半日と三十分の差があるものですから、三十分で何をするのよということになると、保安日の設定ということにはなるのだが、それが実際の効果を上げるというところまでいっていないのではないか、こういうように第一、思います。  それから組合の教育機関でありますが、これは保安員あるいは監督補佐員というものを提供していまして、労使の区別なく保安について監視、監督、教育をするということを行っています。ここでも問題になってきますのは、与えられた権限の問題であります。作業が行われる、たとえば発破の問題でありますが、いろいろの手順がございます。あるいは今回の場合、推測でありますが、たとえばガス抜きを六本行う、それが二本しか行われていなかった場合に、組合がどう、それに対処するのかということになりますと、一口で言いますと、六本やれないのだから、二本なら危険があるから、その作業場に入らないということを徹底することだと思うのです。ところが、これが作業停止だとかなんとかということになりますと、いわゆる純然たる労使の紛争という取り扱いになるものですから、ここで非常に問題の処理について、山ネコストライキに該当するとか、あるいは賃金をカットするとか、いろいろの問題提起をされるものですから、徹底した保安教育指導ということについて組合の責任が銘記されないような印象を与えるのではないか、こういうように私ども考えています。ですからそういう面で監督補佐員あるいは組合から選出して出します保安員に、政府も協議をして作業停止権を与えるということを大きな課題にしていますが、今日まで決定をされていない。それから協定遵守を当然やらなければならぬ、こういうように思います。そういう思想の問題については、私ども政府からは、自分の命は自分で守れという大変な暴言を浴びせられることもありますけれども、何とかやはり自分の命を守るために自分の職場環境を整備する、そのことにもっと組合が勇気を持つ必要があるのではないか、こういうように考えているところでございます。
  84. 早立栄司

    ○早立参考人 私どもは基本的に、保安に関する限り労使の対立があってはならないと考えておりますし、これは労働組合だ、会社だという立場の問題ではなくて、全く労使共通で追求しなければならない課題だと考えております。したがって労働組合自身の問題として、不幸な災害が起こったような場合に、会社の責任だ、経営者の責任だと言って逃げるわけにはいかぬと思います。同時にまた今日の石炭産業労働組合は、炭労はもちろんですが、私ども全炭鉱を含めて、柄は小さくなりましたが、質的にはかなり強力な力を持っておると考えておりますので、いま炭鉱の経営者が、労働組合の警告、注意、こういうものを無視して、一方的に何か保安軽視でもって進むなどということはとうていできない関係になっております。したがって災害事故が起きれば、これはもう経営者だけではなくて、労働組合に一半の責任があるというように自覚をしなければいかぬというふうに考えております。それでは、そういう気持ちでおりながら、何で事故があるかということになりますが、いろいろ努めておるわけでありますけれども、不幸にして残念な状況に今日まであるわけで、いまのような基本的な考えで、今後ともますます組合自体の責任というものを自覚しながら進みたいと思います。  訓練の問題については、労働組合が単独に行うのではなくて、そのような労使の対立でなく、労使共同での追求課題という立場から、協議の上で会社に行わせていくという取り組みをしてきておりますが、これがやはり現状まででは十分ではないということになると思いますので、今後さらに、そういう面については労働組合自身も十分、会社と協議の上、徹底して追求をしていかなければいかぬと考えております。
  85. 木崎順二

    ○木崎参考人 先生の御質問の趣旨は、災害が起きる、当然、経営は会社がしているのだから会社の責任だというふうなことで、組合はすぐ会社の責任ということを言うけれども、それはそれとしていいのだけれども、そういう筋論は別として、組合としても教育をどんどんやったらどうかという御趣旨だろうと思います。その趣旨につきましては私も大賛成でございますけれども、私どもの組合員の大半は炭鉱における技術職員なわけです。事、保安教育に関する限りは、私たちの組合員というのは、生徒であると同時に先生なわけです。その先生をまた教育するというだけの能力は組合にございませんで、そういうことは実際問題として私たちの組合としてはいたしかねると思います。ただ言えますことは、果たして適切な頻度で適切な回数、それから内容、そういうようなものを本当に会社がわれわれの組合員に命じてやらしているかどうか、また、いろいろな取り決めがあるわけでありますけれども、その取り決めを、われわれの組合員自体がきちっと守るように指導しているだろうか、また、自分からそれを破っていないだろうか、そういうようなことについてのチェック、これはもう組合として、いままでもやってきたつもりでありますし、これからもなお強力にやらなければいかぬ、そのように考えております。
  86. 田中六助

    ○田中(六)委員 保安とか事故というものは、なれもあるから、なれてはいけない。それで経営者も組合も、事故が起こると、やはり再開するのに大変でありますし、今後とも労使協調して保安問題には取り組んでもらいたいと思います。  それから、高鍋参考人と吉田参考人にお聞きしたいのですが、吉田参考人は、第三セクターは反対だと頭から否定しております。政府の責任転嫁だというふうに言っておりますが、高鍋参考人は、この第三セクターについてどういうお考えをお持ちでしょうか。
  87. 高鍋徹男

    ○高鍋参考人 私どもが居住いたしております福岡県におきましては、すでに石炭というものと縁が大体、切れております。残存しておりますのは大牟田あるいは宮田、これは露天掘りでございますけれども、そういうように数が非常に少なくなっておる。大牟田の立場で申し上げますと、答申の中にありましたように、現在すでに炭鉱が経営されておりますので、そのまま企業が続行していくというふうに理解するわけでございますし、今後、新鉱が開発される場合に、第三セクターでやることがいいか悪いかという問題については、事実上そういった具体的な例がないものですから、私ども真剣に意見の集約はいたしておりませんが、考え方としては、いままでの私企業から一歩進んだ政策であろう、このように考えております。
  88. 田中六助

    ○田中(六)委員 それから吉田参考人にお聞きしたいのですが、この第三セクターは、あなたたちは金は出さぬでもいい、口と手を出しなさい、手は別としても口は出しなさいということなのですが、メリットの方を何か考えられておりますか。これはメリットもないか、どうでしょう。
  89. 吉田久

    ○吉田参考人 これは開発する、その地点、地点で問題があろうかと思います。ですから、石炭産業全体の生産量を伸ばすというねらいがありますから、そのことについては、私は反対しておるわけではございませんけれども、いずれにしても、この第三セクターというのが、今回ユーザーが抜けております。それから国が資金を出すのだか出さないのだか、わけのわからないような状態になっております。私ども北海道も、基本的に公社公団でやるべきだと知事を先頭にしてやっておりますし、そういう立場から、そちらの方に重点を置いておるものですから、第三セクターそのものは表面上はもちろん反対をしております。しかし、それぞれの地域のいろいろな特性がございますから、これは知事なり、たとえば天北の関係の市町村がいろいろ協力をするということになった場合に、それまで反対だというところまでは、いまのところ考えてはおりませんけれども、基本的に公社公団お願いしておる立場からいたしますと、これは反対だ。ですから、生産量をふやすということについては、私はメリットはそれなりにあると思いますが、また一方、いろいろ鉱害や環境破壊の問題が出てまいることでもありますから、そこら辺は別に関係の市町村と打ち合わせてやっておるわけではございませんので、そういうふうにお答えを申し上げておきます。
  90. 田中六助

    ○田中(六)委員 最後に、高鍋参考人にお聞きしたいのですが、確かに参考人のおっしゃるように、産炭地振興と離職者対策、鉱害対策という、四つの柱のうち三つが、本当に抜けておったのは事実のようですが、最後に何か一応、羅列はしておるようです。これがなければ、石炭特別会計あるいは石炭対策というものは本当は成り立たぬのだ、こういうものを放置しておいて、新鉱開発などおこがましいという見解には、私も賛成です。それで筑豊地帯ですが、鉱害問題について残存鉱害がどの程度あるのか、それから鉱害についての特殊な例が何かあるならば、一点お教えいただいて、質問を終わりたいと思います。
  91. 高鍋徹男

    ○高鍋参考人 これは福岡県全体でございますけれども、四十九年度末におきまして農地が約四千ヘクタール、それから家屋が一万九千三百戸、そのほか公共施設であります道路、河川等がまだたくさん残っておる、こういうことでございまして、五十年度分の県の事業として合計が三百十二億円でございますけれども、これは時限立法になっておりますので、まだ残存鉱害が残っております。  ただ問題になってまいりますのは、鉱害復旧の場合に、一応、鉱害が安定をした後に復旧をするというのが原則でございます。これが一応、安定したと認定をして復旧をいたします。それがまた再鉱害が起こるという実例があるわけでございまして、そういったことから、まだ残されたとわれわれが推定をいたしております鉱害量以外に、かなりなものが潜在しておるのじゃなかろうか、こういうふうに考えております。実際問題といたしまして、農地あたりの鉱害復旧をやりましても、それに関連して家屋の鉱害復旧あるいは道路の鉱害復旧、いろいろと関連してまいりますので、地域としましても、一日も早くやってもらいたいけれども、一年間にこれくらいだということで制約を受けておりますので、遅々として進まないという現状でございますし、なお、これ以外にも潜在した鉱害量がかなりあるというようにわれわれは考えております。
  92. 田中六助

    ○田中(六)委員 以上で終わります。参考人の方、どうもありがとうございました。
  93. 田代文久

    田代委員長 岡田春夫君。
  94. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 きょうは参考人皆さん本当に御苦労さんです。時間が制限されておりますので、問題点だけ伺ってまいります。  第一点は、今後の石炭政策を進めるためには、何といっても労働力確保といいますか労働条件の改善、向上、こういう点で、保安の点を含めまして、本当に安心して働いていける体制ができるということが、やはり根本問題の一つだと思います。  そこで伺っておきたいのですが、実は三日間、私たち北海道に現地調査に参りました。そのときに明らかになってまいりました問題で、大手八社を初めとして北海道の全石炭企業の中で、資金繰りが非常に困難なために、労働金庫から労働賃金の分を借りている。その分が昨年と比べて非常にふえている。ことしはすでに五十億になっている。しかも今度は夏期手当の一時金の支給、それからベースアップの分、これを含めると、労働金庫から借り入れる見込み額は合計四十億円。そうすると、現在の貸し出し状況から含めて九十億円の融資を労金からしなければならない、こういう状態になっているのだということを実は聞いたわけです。北海道労働金庫に調べましたところ、この九十億という金はとてもいまのところ目安がつかない、それで何とか政府の方でめんどうを見てもらわないことには、当面の夏期一時金の手当のめどがつかないのだ、こういう話がございました。  そこで、その際に札幌通産局長並びに通産局の石炭部長に、こういう実態だそうじゃないか、これは緊急の対策を講じなければだめじゃないかということを、実は私が質問をいたしまして、通産局長は余り詳しい話は知らなかったようでございますが、石炭部長が、それはそのとおりです。そこで善後策については、平和炭鉱の閉山交付金、これが大体いまのところ二十八億円ある、これを八月初旬には支給をするような手続を進めたい、それからもう一つは、十五億円は預託制度をひとつ利用したいということを考えております。これを何とか実現することによって、労働金庫の要請にこたえて、そして労働者の生活を守る、働いておっても賃金をもらえないというのじゃ話になりませんから、こういうことをやりますということを、実ははっきり私にも約束されました。私にもというよりも、調査団全体に約束をされました。その点を、その後に道炭労の代表がお見えになったときに、同じような質問があったものですから、こういう経過になりましたということを実は報告いたしました。そしてその後で新聞記者にもこれを発表いたしました。  きょう北海道新聞を取り寄せて見ますと、この問題がずいぶん大きく報道をされております。日曜日、「政府資金の労金預託で炭鉱にボーナスを」という非常に大きな記事が出ています。ところが、本日の情報によりますと、どういう事情か知りませんが、札幌通産局はそういう預託制度を取りやめるということを言っているという説を聞いているのでありますが、炭労の里谷委員長の方で、その間の事情等がおわかりになりましたら、この機会にひとつ明らかにしていただきたいと思います。われわれ調査団に約束をされたことと、そういう言明があったということになりますと、これは委員長初めわれわれは、全部その場だけでごまかされたということになりますわけで、こういう点は厳重に調査をしなければなりませんので、里谷委員長からひとつ御意見を伺いたいと思います。
  95. 里谷和夫

    ○里谷参考人 お答えをいたします。  春闘が終わりまして、九日間のストライキを実はことしは行いました。ところが、賃金交渉をやる際に、いろいろ向こうと話をしたのですが、会社の方は五百十円より積むわけにはいかない、するとストライキは長くなっていきますよ、それで、いずれの場合でも、金額の多寡は別にして妥協をしなければならぬでしょう、終わった時点であなたたちが私たちに何を強要してきても、受け入れるつもりはございませんから、こういうお答えをしました。ところがあにはからんや、九日間のストライキをやりましたら、どうしても石炭をそろえなければならぬ、そういう前提で特殊休日その他を返上してもらって、働いてもらえないだろうかという提案が出されてまいりました。休日返上の提案があるのですから、これは賃金の払いはどうなっているのだろう、こういうことで具体的な調査を始めました。結果的に、私ども、いま大手五社で交渉していますが、三井鉱山を除いては、五月分の賃金は全部、労働組合が労働金庫から借りてきて組合員に払う、こういう実情になっています。  それから、答申の中にも今年のベースアップは一四・四%で一万六千四百円ですか、そういう数字が出ていますが、これは実は四月にさかのぼって支給されなければならぬのです。しかし五月分の給料さえ組合が借りてきて払うわけですから、この一万六千円のベースアップ分についても支払いのめどが全く立たないというのが現状であります。最近、少し前進案が出てまいりまして、北炭が七月それから八月のお盆前に精算をします。こういう回答が出てきています。  そこで、先生が御指摘になりますように、私どももびっくりしているのですが、この賃金の前借り分が五十億になっていることは事実であります。それで労働金庫といろいろ協議しているのでありますが、大体、前期並みの妥結を前提にいたしますと七十三億必要である。その中で、従来の実績でございますと四割分について労働組合が金を見つけるわけです。その金額が四十億なのですけれども先生が御指摘になりますように賃金の遅欠配が起こるものですから、組合が借りてきて払う。労働金庫には枠がございますから、そういうことから考えますと四十億のめどは全くない、こういうことになります。有吉石炭協会長とも、この間いろいろ話をしたのですが、まるっきり今回の期末手当は支給する能力はないということを明らかにしていますから、賃金の面では三井鉱山は払うと言っていましたが、期末手当では払えないというのが現状だと思います。  そこで、私どもが労働金庫から金を借りるといっても、無担保で金貸せと言っても貸すところはどこもないのは御承知のとおりだと思います。ですから月々二千円なり三千円なり積み立てをしているのですが、その金が担保にとられて金を借りてくるわけです。ですからいまの事情からいきますと、約九十億の金について私どもも借りてくるだけの金はございません。いま言ったように賃金のために前借りするので、それが担保で押さえられていますから、転がしようがないわけです。そういう意味で、本年の上期の期末手当は全額会社が支払いをしなさいということで、いま交渉を始めているところです。ちょうど土曜日でありますけれども、労働金庫から金を借りてもらえないと支払いできません、こういうことでしたが、労働金庫は何回も言っているように今回の場合、活用できません。もし活用できる手があるのだとすれば、政府の金か、あるいは道庁から、その分を労働金庫に預託してもらう、預託してもらえば、労働金庫がそれを担保にして金を貸してくれるだろう、こういうように私どもも見解をまとめていますけれども、いま先生が御指摘のように、政府資金あるいは道庁資金が預託できないということになりますと、期末手当は会社の責任でとにかくつくらせるということになると思いますが、実現性はどうなのかということになりますと、ないそでは振れないということで、また強行してくるのではないか、こういう考え方を持っています。  私どももできる限り政府あるいは北海道道庁に依頼をして、預託をしてもらいたいものだ、こう思っているのですが、今度の答申からいきますと私企業体制で、しかも黒字にする、こういうような位置づけもございますから、私ども、そういう答申を受けているだけに、果たしてその預託要請をして、われわれが金を手に入れるということがいいのか悪いのか、実はいま判断に迷っているところでございます。できる限り企業の責任において支払いをさせるという姿勢で、きょう、あす、がんばってまいりたい、こういうように思っております。
  96. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 この問題は、いま委員長言われたように実は幾つかの問題を含んでいるわけですね。一つの点は、実際に私企業として、それだけの資金繰りができないということなら、もう私企業の限界を超えているということを意味するのであって、それなのに、この答申私企業でやりましょうなどと言ってもナンセンスじゃないか。だから、早く公団をつくらない限りは、もう問題にならぬじゃないかという問題が一つ、起こってくるだろうと思います。  もう一つは、これは一時金の問題はともかくとして、すでに協定を結んだベースアップの分さえの金もない。これは本来、労働組合のやるべき問題ではないわけだ。会社側が自分で働かせておいて賃金はありませんよなんて、そんな無責任な話が一体あるのかという点においても、これはやはり黙って置いておくべき問題ではない、われわれとしてもほうっておくべき問題ではない。そういう点がありますだけに、私たちもほうっておけない問題だと思いまして、その点を札幌通産局で実は、はっきり確約をしたわけなのであります。その席には、そこにおられます高木石炭部長も炭政課長もみんなおったわけであります。しかも私は心配であったから三度も念を押しているのです。道炭労のときにも、間違いないですね、通産局長、心配ないですねと、それから新聞記者会見のときにも、いいのですね、しかもすぐですよと。そうしたら、そのときはあらゆる努力をいたします。こういうことを実は、はっきり約束をしているのに、今日の段階になったら通産局は、どうもうまくない、こう言い出している。私は全くこれは何かペテンにかかった感じで、この際、参考人にお伺いすることではありますけれども、そういう関連がございますので、ここに石炭部長もおられますから、この点、一体、真相はどうであるのか。そこら辺われわれが納得できなければ、明日はとことんまで明らかにしていただかなければならぬわけですが、石炭部長、いままでの経過はどうなっていて、それはもう取りやめたのですか、われわれに言ったのはうそだったのですか、一体どうだったのですか。あなたも、あそこまではっきりお聞きだったはずなので、この点、簡単明瞭にひとつ石炭部長としての御意見を伺っておきたいと思います。
  97. 高木俊介

    ○高木説明員 先生方の今回の北海道の御調査の際、例の五十億の問題あるいはボーナス妥結後の想定される四十億の問題というのを、初めてお聞きしたわけでございまして、そのとき預託制度というような話が出まして、私、預託制度そのものをどういう形で、いままでやった実績があるのか、あるいは果たして、できるのかどうかということは、まだ帰ってきたばかりでございまして、事業団の方等とも打ち合わせをしておりませんので、いま、ここではっきりした御答弁は申し上げられませんけれども、五十億のうちの二十八億につきましては、これは平和の閉山交付金でございますので、できるだけ早く交付するように持っていきたいということで、これはお約束いたします。  それから、なおボーナス分の四十億該当ということでございますけれども、これにつきましては、まだ恐らく今回のボーナスが幾らということは妥結してないのじゃなかろうかと思いますけれども先生御存じの経営改善資金という制度がございまして、この前の賃金のアップ分のときも、場合によっては経営改善資金をお借りにお見えになるのではなかろうかということで、用意していたわけでございますけれども石炭業界の方からは、何らの要望がなかったという一つの点もございます。なお、現在石炭企業需要業界との間で炭価交渉も始められておりますので、いろいろな点があったのだろうとは思いますけれども、恐らくボーナスの妥結後につきましては、当然、炭価のアップまでのいろいろなつなぎとしての御要請が企業からくるのじゃなかろうかと思っております。そういう分につきましては、いま先生からの御指摘の大体の金は用意しておりますので、企業さえ申し込みがあれば、いっでもお貸しできるような状態にはなっております。  ただ、預託制度そのものにつきましては、北海道の通産局長あるいは石炭部長が、いろいろ検討する、あるいはその方向で進むというようなことも私、聞いておりましたけれども、実態としまして、いままで果たして、こういう制度があったのだろうかどうであろうか、私もその点まだ勉強いたしておりませんし、今後の課題として研究はさしていただきますけれども、とにかく政府としましては、合理化事業団経営改善資金を通じて至急出すような態勢は整えておるつもりでございます。
  98. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 この点は、あした、もっと具体的に伺いますから、それまでにお調べいただきたいのですが、これは方法は幾らでもあるのです。事業団の方から預託可能の金融機関に対して預託して、それをまた預託がえをすることもできるのです。それから、あなたのお話の中で夏期一時金の問題のお話があったけれども、ベースアップの差額分でも今後、出さなきゃならない分が五億円あるのです。この金も出せないと言っているのです。それからもう一つは、あなたのお話でちょっと私、腑に落ちない点があるのだけれども、会社の方が承諾すればやります。こういうお話なのだけれども、会社が資金繰りができない、この状態なのだから、当然、頼むのはあたりまえでしょう。それを、むしろ通産局、通産省の方で、会社に一体どうしているのだ、こんな状態でいいのですかということを、あなたの方が具体的にお調べになって催促をしなければならぬと思うのですよ。そうでなければ、いま労働力の問題これほど差し迫っているのですから、あなたは、そういう点を早速、石炭協会その他の会社側に対して相談をされて、実情を聞かれて、指示を与えられる、こういうことだけは、ひとつここでお約束を願っておきたいと思うのですが、いかがですか。
  99. 高木俊介

    ○高木説明員 会社の実情がどうであるかは、これは当然、調べなければならぬ問題でございますけれども、会社の方から申し込みさえしてくれれば、うちの方は払う姿勢はとっておるわけでございます。それに対しまして、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、現在、炭価交渉その他もあるのだろうと思いますけれども、申し込みしてきておりませんので、うちの方から、これに対する金を支払いするわけにはいかぬ。なお、この金は当然、企業を通じて出す金でございますので、企業から申し込みさえあれば、問題なくお出しするという金でございます。
  100. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 この問題はこれ以上触れませんが、しかし、いかがですか、参考人の方もお聞きになっておって、企業がこういう状態で、果たして新政策がやれるのかどうか、こういう点に懸念さえ感ずるわけであります。働かしておいて、賃金についてはない、資金繰りができない、それに対して役所の方はいつでも出す用意はあると言っているのに、企業の方はそれに対して何らしておらない。こんな話では、これは新政策を担うべき——私企業中心にするとおっしゃっているが、これでは話にならないのじゃないかという感じを、ますます感じるわけでありますが、しかし、これは速やかに善処されることをお願いいたします。明日も委員会ございますので、この点はもう少し折り入ってお伺いをしたいと思います。  そこでもう一点、保安問題ですが、これはこの間、夕張新炭鉱の実情を見てまいりまして、いろいろ感じることが多かったのですが、先ほどの権限問題の点も、確かにそうだと思います。しかし同時に、もう一つ、これは組合側の皆さんにお伺いしたいと思うのは、いわゆる保安監督官なり、そういう管理官が現場に常駐するという体制をつくることが、やはり必要なのじゃないだろうか、そして常時適切な指示を与える。労働組合に権限を与えると同時に、そういう体制を確立することが、私は必要なのではないかということを感じてまいりました。  それから、もう一つの点は、やはり通産省に保安監督機関というものがあるということ自体が問題ではないのか。人命を尊重するということでは、生産第一主義の立場にとかくは立ちそうな通産省にあるよりも、この機関というものが、別個な、それこそたとえば労働省なりその他に置かれるということの方が、より保安を守るために必要なのじゃなかろうか、こういう点を私は感じてまいりましたので、こういう点、労働組合、職員組合の皆さん、お三人、参考人がいらっしゃいますので、保安問題のこの二つの点について御意見を伺いたいと思います。時間がありませんので、要点だけで結構でございます。
  101. 里谷和夫

    ○里谷参考人 御指摘のとおりでございまして、生産保安は両輪だというように主張されています。ですから、これを管理、統括する場所はやはり分離をした方がいいという面で、私どもは、保安を労働省に移管をするということは、ここ二十年来、主張してまいっていますが、具体的に保安の問題の監督、調査をするということになれば、通産省で適切な指導ができるのではないかという平行線をたどって、現状に至っているということだと思います。先生御指摘のように「指導監督の充実」という答申がございますから、当然、北海道でも要望は出たと思いますけれども、常駐監督をしていただければ、これにこしたことはない、こういうふうに思います。ただ、私ども側面的に調査をいたしますが、炭鉱の数が減るものですから、その数に応じて監督員も減員されるわけです。こういう問題について非常に矛盾を感じています。ですから、どれだけの監督員を置いて、どれだけの常駐体制をとるのかという問題については、協議をすれば解決のする道ではないか、こういうことで私ども常に要求もしていますし、要求に基づいて協議をしているというのが現状でございます。
  102. 早立栄司

    ○早立参考人 先生御指摘の二つの点について、私たちは反対でありません。そうされるなら、それもいいのではないかと思いますが、ただ、保安確保のためには、その二つが絶対的、決定的な条件だというようには考えておりません。
  103. 木崎順二

    ○木崎参考人 一番目の、監督官を山に常駐するという問題、これは私、賛成でございます。むしろ、そうしていただきたいというように思います。  それから、公害保安局を通産省に置くことの是非なのですが、理屈からいけば、生産するのと、それから一時的には生産にセーブのかかる保安、もっとも保安確保すれば、ロングランでは結局は生産維持されるのですけれども、一時的にはそういう場面もあり得るわけで、したがって、生産に重点のある通産省に置くというのはおかしいじゃないかというお考えのようでございますけれども、理屈としてはなるほど私そのように思います。行政のあり方というのは、どういうふうにやればいいのかというのは、実は私わかりませんので、その是非については申し上げられませんが、ただ、実際問題として現在、公害保安局が通産省の中にあって、ではどれだけの弊害があるのか、あったのかという問題になりますと、私は寡聞でございまして、余り多くの事例は知りませんけれども、私がいままで目の当たりに見た範囲内では、公害保安局長が通産大臣や次官に圧力をかけられたということはなかったと思います。
  104. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 保安問題も、まだちょっと伺いたいのです。たとえば、この際、深部移行した場合の保安法規の改廃の問題が必要ではないか、こういう点もやはりこの際、新政策で新しい法律が出る、このときに保安法規の改廃をやる必要がある、こういう点もあるのでございますが、その点が一つ、これはお三人の方にひとつ御意見を伺うのと、それからもう一つは、時間がありませんから産炭地の振興問題で吉田さんにひとつできればお伺いしたいのですが、やはり炭鉱モデル都市の問題ですね、この点を少し具体的に進めませんと、やはり労働力確保並びに生活環境を改める、こういう点では、やはりそういうモデル都市を指定して、そこへ財政的にどう裏づけていくか、こういうような構想を持っておりませんと、いままでのいろいろな産炭地振興はばらばらになってしまって、体系的な発展の計画はできてこないのじゃないか、こういう点をひとつ御意見のほどを伺いたい。保安問題とこの二つだけを伺いまして私、時間ですから終わりたいと思いますので、最初保安法規の問題からお願いします。
  105. 里谷和夫

    ○里谷参考人 この答申がいろいろ示していますが、私ども答申以前に当局とも話し合いをいたしています。明快な回答がありますのは、保安法規の改正について取り組む、こういう回答はいただいているのですけれども、そこの中身について議論してみて、いまのままでいければいいのではないかという付録がつくものですから、果たして本当にやる気があるのだろうかどうかということについては疑点を持っております。しかしながら、協議をするという姿勢は明らかにしていますから、中央保安協議会その他を通じて保安法規の改正にがっちり取り組んでもらいたい、こういうように思っています。
  106. 木崎順二

    ○木崎参考人 この保安法の問題につきましては、当局の方から、改むべきところは改むべきであるということで、労働組合意見を言ってくれというふうに言われておりますし、私自身といたしましても、世の中変われば一般の法律が変わるように、坑内の条件が変われば保安法も変わる、規則も変わるというのもたてまえでなければいかぬだろうし、また、そうあらねばならぬというふうに私は考えております。
  107. 吉田久

    ○吉田参考人 炭鉱モデル都市の問題でございますが、これは、先ほど私が生活環境整備の問題の内容を触れて、炭鉱モデル都市とは申し上げませんでしたが、それが基本になっておりまして、北海道の方は、先ほど私からお話し申し上げましたとおり、通産省からの委託調査で「炭鉱の生活環境施設の現状と整備計画」というのができておりまして、これをもとにして、ぜひ、この三年ないし五年で炭鉱の生活環境を整備してもらう、そうしてほしいということを、かねがね実はお願いしておるわけでございますけれども、残念ながら今回の答申の中には、そういう点は浮かんでこなかったわけでございます。しかし、何といっても都市を整備するのは、モデル都市といっても先立つものはやはり財源でございます。それぞれの炭鉱市町村が一銭も自分の方の持ち出しを持たないということは言っているわけではございません。先ほど一例を挙げましたとおり、少し大きな事業をしますと、物すごい超過負担がかかってまいりますから、まず最初は、その超過負担の分ぐらいでも、石特会計の中でいろいろな形で負担をしてもらうという、出発点からそのぐらいの程度から出発してもらって、とにかく三年ないし五年で、学校あるいは体育館、道路、保育所、こういうたくさんの問題がありますから、これをぜひ計画的にやってほしいということで、これは別途、陳情申し上げているわけでございますけれども、これだけはぜひ、ひとつ皆さんのお力によって実現をしてもらうようにお願いをする次第でございます。
  108. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、私は終わります。
  109. 田代文久

  110. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先ほど岡田先生からお話がありました、実は保安に対する監督業務として、常駐制ということを提案をされて、労働組合の三者とも賛成であったわけです。実はこの問題はたびたび組合から提起をされておりましたけれども、率直に言いますと常駐制というのは弊害があるのじゃないか、ことに癒着というような問題があって、どうも弊害があるのじゃないかという、私ども非常に危惧をしておったわけですけれども、しかし、きょうは三者ともぜひ、そうしてもらいたい、それは望ましいということですから、私はひとつ考え方を変えて、この常駐制を主張してみたいと思います。  次に、二千万トンについては、炭職協の方は文書ではっきり意思表示がなされておりますし、炭労も二千万トン以上では困るということですが、一体どの程度、自信があるのか、これは全炭鉱からもお聞かせ願いたい。たとえば昭和六十年くらいは、このくらいにしてもらいたいという点。というのは、北海道でも、これは元気の出ない答申だ、こういうことが言われたのですよ。いまでも二千万トン、見直しといっても二千万トン、どうも元気の出ない答申じゃないか。ですから政治的にわれわれが考えると、やはりぜひ、この二千万トン以上というのは数字を変えたい。しからば、一体どのくらいにしていいのかというのが、なかなかつかめないでおるわけですから、これはひとつ両組合からお話しを願いたいと思います。  時間がありませんから、私は一応、全般的に質問を展開しておきたいと思います。炭職協の方からは、これは一〇〇%賛成である、しかし、それにはなかなか条件があるわけで、この答申趣旨が具体的な展開の過程において一〇〇%生かされるならば賛成だ、こういうことであります。ところがわれわれがいままでいろいろ答申を扱った例から考えてみますと、肝心なところが全部抜けておるのですよ、残念ながら。問題提起はあっているわけですね。しかしこれには政策手段が全然触れられていないのです。ですから荷物を全部政府並びに議会側に押しつけたという答申になっているのですよ、答申としては。そこで果たして私企業であるという状態、しかも財源がわりあいに制約されている条件下において、たとえば一般炭においても、石油火力との経済性において「割高分を吸収する方策を検討すべきである。」この文書だけでは政策手段をどうしたらいいか、なかなか困難である。原料炭についても同じ。それから国内炭価格についても「競合財価格の一時的変動の如何にかかわらず、安定的に推移させるものとする。」あるいはまた輸入炭との関係においては、国内炭を最優先に使うのだ。なかなか問題点を提起しておるけれども政策手段のない答申である。  そこで私どもは、そこにやはり企業形態であるとか公団であるとか、何かそういういろいろな問題を解決する手段がなければできないのですよ。そこで、職組の木崎さんにお聞かせ願いたいのですが、こういう政策手段をどういうように考えておるか。それから最もあなたの方で強調されております「格差の是正」というところです。ここで「差別価格の導入」ということを書いてあるけれども、個々の炭鉱に値段を違えることができるかどうか。その財源は一体どこから出るのか。ある平均炭価というのを決めておって、差別価格を導入することができるかどうかというような諸点について、ひとつ職員組合からお聞かせ願いたい、こういうように思います。  次に例の第三セクターの問題です。これは吉田参考人にお聞かせ願いたいと思います。いままで第三セクターの例はいろいろございますけれども、道路とか港湾とか、社会資本が非常に多いわけです。これは自由競争の中における、市場競争をしておる中の一つの商品の生産をやるわけです。しかも非常にリスクは高いわけです。投資としては非常に危険性がある。しかも今度は自治体と私企業生産会社でやるわけです。こういった場合には、いわばだれが考えても、かなり安く掘れる、採算上もいいというものしかできないのじゃないか。ですから、出炭規模維持するという面から言えば、第三セクター、しかも個別的第三セクターですから、一つ一つの個所に別々の第三セクターができるわけですから、これでさっき出炭量の維持には貢献すると言われましたけれども、これにも限界があるのじゃないかという感じを持つわけです。むしろ自治体の方から、そんな、危ないものはやってくれるなという声の方が大きくなるのじゃないか。それから道路その他、輸送問題とか環境整備という、これはまた別個の扱いとして自治体に協力を願えばいいのじゃないか。これこそ産炭地振興だとか、そういうものがむしろ入っていって、自治体と一緒に協力をしていくべき性格のものじゃないか。こういうように思うのですがてそういう点、御意見を承りたい、こういうように思います。  それから高鍋参考人、先ほどいわば産炭地の実情についてお話がありました。あるいは鉱害の点、離職者対策の点もありましたが、これは御存じのようにたった四行になってしまったわけです。従来、答申の場合は不離一体のものとして、かなり政策とともに書かれておったわけです。見直し論が出て、石炭プロパーの問題とはいえ、あまりにも見捨てられた感があるというので、先般から非常に陳情がありましたが、さらにまだ閣議決定があるし、次に予算段階もあります。ですから未解決の問題も相当多いわけですが、特にこの点は、ぜひ今後の政策に盛ってもらいたい、しかも従来の対策だけでは困るのだという点がありましたら、ひとつお示し願いたいと思います。
  111. 里谷和夫

    ○里谷参考人 多賀谷先生には、いつも私ども政策問題で御相談に乗っていただきまして、多賀谷先生意見で、ずいぶん私どもの要求そのものがつくられるという場合もございます。そういう面で、御指摘の点について簡単にお答えをいたしたいと思います。  二千万トン以上の問題について答申が発表になりまして、北海道あたりのニュースを総合的に整理をしてみますと、御指摘のように非常に元気がない、現状維持ではないか、こういう問題があろうと思います。私どもも、一昨年の十二月に石炭見直しをすべきであるという大会を開きましたときに、五千万トン体制をしいたらどうだ、こういうような私の発言につきまして、当時は非常に元気はよかったのですけれども現実的にそれでは、どういうように五千万トンにしていくのか。たとえば新鉱開発、いま北炭新炭鉱がございますけれども、当初の目標どおりにいきましても百五十万トンであります。ですから、百五十万トンの炭鉱を十つくるといって、ようやく千五百万トンではないか、非常に五千万トンという目標はりっぱだけれども現実的にそれを消化できるのだろうか、こういう議論も出てまいりまして、私ども、あれやこれや数字を挙げて議論しているのでありますが、やはり二千五百万トンから三千万トンの体制にする必要がある、こういうように思っています。  その数字的な根拠でありますが、現有炭鉱を強化するという意味で二千万トンの体制はとり得る、こういうように思っています。この場合、露頭炭鉱その他の問題を含んでいるという意味のことも言われていますが、私ども、露天炭鉱の問題については、これは常時開発をするという体制でなくて、調査をしておって、どうしても坑内炭が出ない場合の、いわゆるストックにする必要があるのではないかという考え方を含んで、現有炭鉱で二千万トンを維持するということが必要ではないか、こういうように思っています。  二点目は、政府の買い上げ鉱区あるいは封鎖鉱区とも言われていますが、これはもう政府が持っているわけですから、これをどう開発するのかということについては、民間に払い下げるのか、あるいは公社公団であればそのまま運用するのか、こういう問題があろうと思いますが、一例を御報告申し上げますと、いま赤平炭鉱を中心にいたしまして、旧北炭赤間あるいは旧茂尻炭鉱の跡地、これらの問題が第一点。それから幌内炭鉱を中心にいたしまして、幌内炭鉱みずからが持っている常盤フィールドあるいは住友奔別の買い上げ鉱区、この鉱区を開発したらどうだということで、いま二点、問題点を挙げて議論をしているのですが、もし政府開発資金その他を準備して開発をするということになれば、企業の方にもやる気が出てまいりまして、保有鉱区を開発するということになってくるのではないか、そういう期待等も含めて、私ども二百万トンという計算を、その場合にしているわけであります。  残りの新鉱開発でありますが、北炭の百五十万炭鉱が来年度には完成をするというような含みになりますが、私どもの試算では、まだ釧路炭田あるいは留萌炭田その他のことを考えていますから、これを大プロジェクトで進めるということになれば、三百万トンは見込めるのではないか。この場合には、当然、露頭炭鉱の開発ということを考えています。  そういう意味で、北海道事情ばかり申し上げましたが、九州の、たとえば長崎県あるいは福岡県、それらにある露頭炭鉱の開発ができないものだろうか。これはもう釈迦に説法でありますが、多賀谷先生の福岡県でも、もう一度石炭開発ができないだろうか、こういう話を先生にも相談をしているのでありますが、そういうケースでいっても、最低限二千五百万トンは維持できるのではないか。そういう展望を持ちながら石炭開発をしていく、新鉱開発をしていくということがなければ、見直しにはならないだろう、こういうように実は考えているわけです。  もちろん一説には、政党の名前を挙げて恐縮でございますが、共産党の先生方ともいろいろ協議をしていまして、共産党の先生方は、日本に埋蔵している石炭は一トンも残らず開発をする、もう少し炭労も元気を出して三千万トン以上という計画を出したらどうだ、こういう御意見等もございますが、私どものいま申し上げました実情からいきまして、すぐ三千万トンということでつかみ切るかどうなのかということについては自信がない、こういう現状でございます。拡大生産をするという意味については変わりございませんから、最近、発表になりました「北海道炭田の開発に対する潜在能力の推定」という書類等から判断をいたしますと、三千八百六十二万トンぐらい掘っていってもいいのではないか、こういうような意見もございますが、私どもとしてはそういう問題をもう少し、じみちに整理をしていく、こういうように思っているのです。  ですから、ローリングプランでございますが、冒頭申し上げましたように、ローリングプランで見直しをしていくのだということを具体化してもらえれば、二千万トン以上という問題の解明になり、答申が前向きということになるのではないかという点をずいぶん議論してまいりましたが、残念ながら文章化にならなかった、こういうのが問題だと思います。  したがって、国内炭はそういう位置づけをしていますが、答申の中から判断をしていきますと、外炭の輸入ルールあるいは経済政策、そういう問題が全然触れられていませんので、非常に私どもとしては明確を欠く答申だ、こういうように明確に位置づけをしていますし、外炭を千五百万トンというように出すのだとすれば、これはやはり外向けの、いわゆる外炭獲得のための答申ではないのか。百万トンや二百万トンの増産は政策にならないのだ、いわゆる海外炭を五百万トンとか一千五百万トン輸入するというのが政策なのだ、そういう位置づけをしているのではないのか。ひがんでいるわけではありませんけれども、この十三年間たたきつけられるだけたたきつけられたものですから、どうしても答申を見て、私どもの計画が入れられないから反対だという立場ではありませんが、元気が出ない。そういう面では同一視をしているところであります。  セクターその他の問題は、私の方ではないと思いますので、以上にしておきます。
  112. 早立栄司

    ○早立参考人 二千万トン以上云々という規模の問題についての私どもの態度ですが、本日、陳述の冒頭で申し上げましたように、私たちは、私たちの立場から最も関心を寄せる点を中心に検討してきております。そして、先ほども答弁の過程で申し上げましたが、私どもの方は常盤炭硬と九州、こうなってまいりますので、いささか北海道の方とは、開発をめぐっては少し違った受け方があるわけです。私たちも、もちろん国内の資源ですから、どんどん開発をしてどんどん拡大してもらいたいと思いますが、それにはおのずと財政的な裏づけというものが必要であり、相当金がかかってくる。開発方式の第三セクターをめぐっても、こんなものではどうとかこうとかいう御議論がございますが、第三セクターでやるにしても、当然これは国がイニシアをとって、しかるべく国が相当なる出資をしてやるということになりますから、結局、国の金ということに大部分がなってくると思います。そういう面を考えますと、先生承知のように、かつて私たちは五千万トン位置づけということに大変ハッスルして、あるまじきことですが、ストライキまでしてやったことがありました。あの当時、五千万トンの位置づけというものが、非常に炭鉱政策全体の前向きにつながる、全体の士気の鼓舞になるということでもって、最も中心的に、一番、重要視してそれを掲げたのですが、結果的には単なるお題目、空文に終わってしまって、一、二年でもって破綻を来して、五千万トンどころか三千万トン、こうなってきましたから、その後のショックの方が大きかったわけです。  そういうようなたび重なる経験を経て、私たちがいま一番、関心を持ったのは、開発も必要であるが、それ以上に現在ある炭鉱、私どもの組合員が働いておるところの職場を長期に安定的に、しかもりっぱな労働条件確保して維持するということに一切の中心を置こう、そして国の財政資金にも、青空天井でどんどん出てくるわけではないでしょうから、おのずと限度があるとすれば、限度のある中でもって、あっちこっちまんべんなくばらまいたのでは、肝心な現有炭鉱を、りっぱな労働条件確保して維持していくという面について薄らいでくるおそれがあり、掲げた出炭規模目標というものが、いつの間にか、かつてのようにお題目、空念仏に終わってしまうおそれがあるから、そうではなくて、きちっきちっと裏づけの上に立って可能なものというふうに見ていくべきではないかというのが一番、関心を寄せた中心です。  そういう立場で二千万トン以上というものを評価しているわけですし、同時にまた石炭鉱業審議会の十五日の総合部会において、この面をめぐってのいろいろな論議があった際に、ある委員からまとめの意見として、結局、一年ごとにつないでいくローリングプランという中で、今後、炭価の引き上げとかあるいは財政の強化というものを通じた意味での投資力の強化とか、第三セクターの詰めとか、新鉱開発の新区域の開発の面、鉱区調整の面、坑内若返りの面、労働力確保の面、保安確保の面、そういうものをぴちっと詰めていって、そういう詰めの上にしかるべく条件が整ってくれば、それに対応して、一年ごとのローリングプランの中で、二千万トン以上という中で、百万トンでも三百万トンでも五百万トンでも、そのような条件整備の上に立って積み上げていくのだ、そういう解釈に立とうじゃないかというまとめの意見が出て、円城寺部会長もその意見に賛成されました。そして翌日、十六日の審議会総会において答申を提案される際に、円城寺部会長からそれと同様の趣旨説明がなされたわけです。私たちはそういう円城寺部会長の口頭説明を含めて、そして同時にまた私たちの立場としては、いまいる炭鉱をもう長期に安定的にということに中心がありますから、そういう双方の関係から、円城寺先生の口頭説明を含めて二千万トン以上という立場を了承しておるわけです。  さて、それじゃ何ぼ出るか、そういう点については、したがいまして私どもとしても、かいもく見当がつきません。  以上です。
  113. 木崎順二

    ○木崎参考人 多賀谷先生の御質問は、いわゆる答申を実現するための政策手段といいますか、その手段についてのことと、それから格差助成といいますか、格差対策といいますか、それについての差別単価の問題、この二点だったと思いますけれども、質問以外のことで恐縮でございますが、私が答申に賛意を表するという意味は、先ほど申し上げましたように、土台に賛成したのであって、本建築はこれからでございますので、したがいまして、私の申し上げましたように、私たちにとっては、石炭政策の運動というものはこれからが本番でございますし、したがいまして、この趣旨が一〇〇%生かされることを期待しつつ、この答申に賛成したということでございます。しかし木崎、そういうことを言うけれども、そういう言い方というのは、本建築があやふやなものになっても結局、賛成だったということになりかねないぞという危険性はございます。危険性はございますので、非常にぼやっとした言葉を使いましたけれども、隔靴掻痒という言葉もそういう意味で使いました。  ところで、政策手段の問題でありますけれども、手段の問題につきましては幅広い問題でございまして、先生がたとえばということで言われた、いわゆる体制問題についてお答えして、答弁にかえたい、そのように考えます。  私企業体制でない場合、すなわち国有化とか公団とかいうようになれば、親方日の丸で大変なむだな金がかかるぞ、同じそういう金を使うぐらいなら、私企業で同じ金を使った方が生かされるぞという論が相当にございます。実は正直に申し上げまして、私もその論者でございました。いまでも、そのことが頭のすみにないとは言い切れません。しかし、考えてみますと、いままでスクラップに次ぐスクラップになった最大の原因は、何といってもいままでの第五次までの政策がスクラップに相当に重点を置いた政策であったというところに、一番大きな原因があるわけでありますけれども、もし仮にこの体制問題が、このことにもやはり大いに原因があるとするなら、やはりわれわれとしても、ただ反対、反対だけではなしに、考えてみる心要があるのではないのかというふうに最近、思い始めております。  しかし遺憾ながら、正直言って、ではどういう体制なら一番いいのかということは、私、わかりません。これは逃げているのではありません。わからないのです。したがって、これまた先生方に重荷をおっかぶせるような言葉になりますけれども先生方が、木崎よ、この体制が一番いいぞという結論を出されるなら、私はそれに喜んで従いたいと思います。しかしそれでは、おまえ、わからぬと正直に言うが、全然ないのかということになりますと、自信ないながらも炭職協といたしましては、生産手段は私企業で、そのほかの販売、管理、そういうようなものは全部、現在の合理化事業団を改組して、そうして大きなものにして、それで管理とそれから販売、そういうものを全部やらせるということを考えたこともございます。あえて炭職協として体制問題で結論を言え、いまの私企業形態と違う面で結論を言えといえば、そのようなものになるかと思います。  それから差別価格につきましては、答申で言うところの差別価格がどういうことを意味しているのか、私わかりませんけれども、たとえば同じ炭質の炭であるのに、砂川の炭は北電に七千円で買いなさい、空知炭礦の炭は九千円で買いなさいという差別価格をせんがためにということは、実際問題として私は不可能だと思うのです。だから、たとえば電炭会社を全部通すなら、いわゆる需要家からもらう金は、同じ品質の炭については同じ値段、ただ、電炭会社から各山に支払う金に差別をつけるという方法もあろうかと思いますし、また、炭の値段に差別をつけなくても、トン当たり幾千円を各炭鉱から徴収する、それをプールして使うというような方法もあろうかと思います。私はあえて及び腰という言葉を使いました。これは非常に失礼なのですが、私自身が、では格差対策をやる場合に、その基準はどうなのかということになると、完全に満足するような額での格差対策をするためには、その基準を決める、たとえば太平洋と砂川では、陸上運賃がこれこれだから、海上運賃の差はこれこれだからというのは、客観的にはっきりしているわけでありますけれども、ガスの量がどうだ、盤圧がどうだ、傾斜がどうだと言っても、それは言うだけであって、ではそれが本当の基準になり得るかというと、これはむずかしい問題ということもありますし、それから長年のその山の慣行、労使関係というようなことから賃金の形態も少しずつ違います。そういう問題をどうするのか。それから能率の設定の仕方も違います。そういうような問題をどうするのかといういろいろな問題がありますけれども、そういう問題はあるけれども、あえてそういうことを私が及び腰だと言ったのは、そういう危険性を冒しても、いわゆる試行錯誤をしてでも大胆にやらなければ、解決のつく問題でないという意味で、逃げ腰という言葉を使ったわけであります。
  114. 吉田久

    ○吉田参考人 第三セクターの問題の御質問に、私の考え方を申し上げたいと思いますが、私ども北海道は、知事も道議会も炭鉱の市町村も同じでございますけれども石炭企業の問題は、私企業の方はもうそろそろ限界だから、公社公団、こういうものでやってくれという強い陳情を重ねて現在まできまして、ところで今回、第三セクターの問題が出ましたから、なるほど考えたなあということだけはよくわかりました。  ただ問題は、石炭部長がおいでになりますから、私は立案者じゃありませんから、よくわかりませんけれども、これは恐らく露頭炭、さらに余り深くないところの炭鉱をやる場合のことを、あるいは指しているかもしれませんし、私どもは今後、新鉱あるいは再開発をする場合には、せめて公社公団でやってくれということを言っておりましたから、あるいはそういう余り大きな資金のかからないようなものを手始めにねらっているのじゃないかなと考えております。非常にリスクが高いということはそのとおりだと思いますけれども、道路その他のいろいろな問題は、もちろん地方公共団体としては、仮にこの共同体に入らなくても、これはやらなければならぬときはやっていくということだけははっきりしております。いままでの炭鉱市町村は、いずれもそれを一生懸命にやって、でき上がったころに閉山などということがありましたから、その点、多少、人は悪くなっていますけれども、そういうことであります。ですから私は、この第三セクターの中身が、私ども要望している公社公団、これに近くなるように、国の資金を七〇%も投入するとか、あとの三〇%はユーザーだとか、あるいは炭鉱企業者だとか、そういう者に出させるとかというので、だんだんと公団公社に近づいてくるような内容であれば、一概に反対ということは申し上げないわけなのですが、何せ中身がはっきりしませんものですから、実際のところ反対をせざるを得ない、こういうことを言っておるのでございまして、先生の御質問のとおり、確かに炭量をふやすということについては、それだけメリットがあることははっきりしておりますから、そういうふうに考えておる次第でございます。
  115. 高鍋徹男

    ○高鍋参考人 先生からの御質問のとおりでございまして、当初、私ども、第六次石炭答申が出ます中で、いわゆるわれわれが考えております三本柱という鉱害対策あるいは産炭地振興、離職者対策というものが、今次の答申の中からどうも除外されそうだという情報を得ましたので、先月の六日に福岡県の産炭地域振興協議会が東京で臨時総会を開きまして、関係方面に対して、そういうことでははなはだ困るので、ぜひ従前どおり石炭政策の中には、そういった三つの柱は当然あるべきはずであるから、これを考えてほしいということで陳情いたしました結果、先生のおっしゃいますように、最後のところに、表題を加えまして四行ほどに取り上げていただくことができた、こういうふうな状況でございまして、最初陳述に申し上げましたように、この点について福岡県産炭地といたしましては非常に遺憾に感じておるわけでございます。  同時に、この答申の中に新石炭政策の財源は石炭石油特別会計の中で確保しなさいというような答申がなされております。陳述の中でも申し上げましたように、そういうことになると、いわゆる石炭特別会計の原資の枠というものが一応決まっておる、その中から新石炭政策に割かれるものがふえればふえるほど、あとの三つの対策に対する資金量が減っていくというふうに私ども理解をいたしております。そういうことから、そういった新石炭政策に使われる財源、結構でございますし、それも含めまして、いわゆる石炭政策に対します財源を抜本的にひとつ拡充をしていただきたい、このように考えるわけでございます。石油関税が一二%かかっておりますが、この原油に対しまして一二%かかっておるものを、たとえばナフサまで範囲を広げていただいて、いわゆる石油石炭特会の財源の幅をふやしていただきたいというようなこともお願いを申し上げたいと考えております。  また中では、いわゆる石油勘定と石炭勘定の比率が、石炭の方が十二分の十、石油が十二分の二というように一応の枠が定められておりましたのが、現実におきましては、すでに石油の方が〇・三〇六、当初の十二分の二でございますと〇・一六六が、すでにもう〇・三〇六にふえてきておる、それだけ石炭勘定の方の原資が減ってきておる、こういう形でございますし、そういったことも、もとのとおりの十二分の十に戻していただいて石炭政策を進めていっていただきたい、このように考えるわけでございます。  なお、陳述の中でも申し上げましたように、離職者対策というものが産炭地の中で非常に重要な事業でございますし、それに伴います。般会計から持ち出します超過負担というものも非常な大きな額になっておりますし、そういったものもこの際あわせて、やはり産炭地の振興あるいは鉱害復旧あるいは産炭地がいままで疲弊してきておりましたものを、もとに戻していただくという振興対策の中から考えましても、非常に乏しい自治体の財源でございますので、超過負担のできるだけの解消をお願いをいたしまして、産炭地の振興に寄与していただきたい、このように考えるわけでございます。
  116. 田代文久

    田代委員長 多田光雄君。
  117. 多田光雄

    ○多田委員 先ほど炭労の委員長の里谷さんから、共産党の問題についてちょっと触れておりましたから、ちょっとそれを冒頭に述べておきたいと思います。  私どもは今度の新しい答申については賛成できません。その根本的な理由は、これは私ども前から主張していることですが、日本の産業経済の動脈に当たるエネルギー、これは皆さんも主張しておりますけれども、その大宗が外国依存になっておる。その危険さは、すでにもう石油パニックで経験済みなわけですね。その結果から私ども言っているのではなくて、皆さんもそうだったと思いますが、すでに石炭を縮小していくという過程から、外国依存は危険だということを主張し、石炭産業の発展ということを政策的にも訴えてきた、こういう単に経済問題だけじゃなくて、日本の進路上の問題として、実はこの答申がいろいろ飾り立ててはおりますけれども、その危険な道を歩んで、本質的に同じであるという意味で、第一に反対しているわけなのです。  それから先ほど里谷さん、共産党はあるだけ全部堀れというお話でございましたが、もちろん二百億トンとか幾らと言われておりますが、これは堀れるものと堀れないものとがございます。そのとき、そのときの技術の、価格条件によって違ってくるわけですね。ただ、私どもは昨年の暮れの党首会談で、当面、というのは一年や二年じゃございません、やはりそこに七年なり八年なりの一定の期間必要ですが、四千万トンを下らない石炭を目指す、こう言ったのは、恣意的に言ったのではなくして、かなりの専門家の意見を聞いて四千万トンは可能であるということを述べたのです。ただし、それには条件があります。徹底的な鉱量調査をやらなければなりません。先ほど吉田さんがソフレミン報告ということを述べましたが、ソフレミン報告の中でも日本の石炭調査のずさんさが指摘されているのです。そういう意味では徹底的な鉱量調査が必要である。それから炭鉱労働者の労働条件、産炭地の問題も出ております。そういう基本条件を備えてやっていくならば、いまの政府のもとでも、やる気になれば四千万トンは確保できる。これには相当の政府の力を入れなくちゃならないし、入れるだけの値打ちのある問題であるということを考えております。ですから、資源は私どもは、最大限利用じゃありません、全面的な日本の国内の資源の活用、これが実質的にエネルギーの自給型にもっていく根本だというふうに考えております。ただ自給型ということは、エネルギーの総量がふえますから、石炭の比重が二〇%、三〇%ふえるというものじゃありません。そこのところをひとつ私は申し上げておきたいと思うのです。  そこで、これは里谷さんにお伺いしたいのですが、政府は大体、三年後ぐらいに緊急に経営黒字にしていきたい、こういうことをいまの情勢のもとで言っているわけですが、一体これは、組合や労働者のサイドからごらんになっていて、それが可能なのかどうなのか。もし可能でない、可能であるというならば、それに対する皆さん立場からの理由をお伺いしておきたいと思います。  次に、これも里谷さんですが、体制問題について公社とかあるいは公団ということがあるのですが、これは現在の私企業公社公団にしていくということなのか。それともさしあたり新鉱なり、あるいはまた閉じている山の再開発公社公団でやれということなのか、その辺、これは吉田市長さんにもお伺いしたいと思います。  それから、保安の問題についてですが、今度の答申で自主保安ということが言われているわけです。この自主保安というのは、一見もっともらしく見えますが、実はこれは最も危険な、政府保安に対する、いわば責任逃れのようにも思えるのです。もちろん保安の責任は会社にあることは事実だと思いますが、これについてどのようにお考えになるのか。これは里谷さんのほかに早立さん、お二人にお伺いしたいと思います。  それから、これはまた労働組合、里谷さんにお伺いいたします。最近、若年労働、新規採用が多くなってきたというふうに言っておりますが、実はこの間、大夕張に行きまして、確かに五百名ほどふえておりますが、ふえている大半と言っていいか、ほとんどが組夫、臨時夫なんですね。むしろ直轄は減ってきているということです。しかも、この大夕張で新鉱再開発以来、六名死んでおります。その半分が組夫であるということで、組夫に相当な負担がかかって、労働条件がよくない。この貴重な労働力、つまり労働者を本当に保全して、基幹的な炭鉱労働者をこれから保持していくという意味で、組合として、この組夫対策あるいは臨時夫あるいは下請制度、こういうものに対して、どういうふうなお考えを持っておられるのか、これもひとつお伺いしたいと思います。  それから、産炭地問題について、これは吉田さんにお願いしますが、現在地方自治体で炭鉱関係の出費、たとえば道路だとか住宅だとかあるいは炭鉱関係の学校というのがございますね、こういう面で市の財政で大体どれくらい比重を占めるものか。もちろんそこではなかなか一線を画し得ないものも多々あると思います。そういう意味の中で、どれぐらいの比重を占めるのか。それから全道的に炭鉱関係でどれぐらい超過負担が出ているのか。福岡では、幾らでございましたか、先ほど数字が出ておりましたが、北海道ではどれぐらいの超過負担が出ているのか、これをお伺いしたいと思います。  それから高鍋さんにお伺いしたいのですが、鉱害十ヵ年計画がございますね。この十ヵ年計画が計画どおりに仮に進んだとしても、鉱害は一掃されるのか、あるいは鉱害を根本的になくすためには、県下において、なお、どれぐらいの資金と年月を要するものか、この辺お答え願いたいと思います。  以上です。
  118. 里谷和夫

    ○里谷参考人 お答えをいたします。  前段で先生からいろいろ御指摘がございましたが、たとえば、一例を申し上げたいのですが、二千万トン以上の生産をするという際に、経済性の問題を検討の中に入れないわけにいかぬ。こういう問題について、私どもも当時は経済性を無視しても資源を開発しろというような見解を持っていましたが、現状の企業の力その他から判断をいたしますと、そういう問題が果たして実現をするのだろうかという分析をいたしますと、一遍にそこまでいくわけにいかないだろうというふうに思っています。しかしながら、経済性という言葉の中には、開発資金一万五千円以内というようなことが論議されて、プランがつくられているという意味のことも聞きますと、やはり一万五千円というのは、現状の経済性議論をするときに果たして正当な金額なのだろうか、こういう点を非常に残念に思うわけです。ですから、もう少し労働組合意見を入れるということで、経済性を追求していくということが答申の中にあらわれてくるという過程を踏むとすれば、やはり労働組合も入れながら一万五千円以内の経済金額を算出していく、そういう協議の必要はあるのではないかと全般的には思うわけでございます。  御指摘の計画作成の問題でありますが、答申の五ページ目に実施計画については云々ということを書いておりまして、「毎年一年ずつ延ばしていくローリングプランとする。」これは答申を得て当局と非公式に議論をしています。先生が指摘されますように、たとえば鉱業審議会議論をしてまいりました二千万トン以上の体制問題についても、労働組合と協議をして提示したという数字ではないのです。政府企業側がヒヤリングして、そのヒヤリングによって出てくる数字であるというように思うものですから、この答申で示していますように、実施計画をつくるに当たっては、労働組合を明確にその中に参加させるべきである、こういう意見を持っていますし、そういう意思表示もしています。  先生の御指摘の炭量調査の問題でありますが、これはもう答申に対する炭労の態度ということで明らかに集約をいたしましたが、これは当然、行うべきである。そういうことも入れていますけれども、五十一年度実施計画をつくるに当たっては、労働組合も参加した計画をつくるべきである。そうでなければ、文章のあちこちに労使協力あるいは労使協調と書いていますけれども、責任が持てないという立場をとらざるを得ないと思います。そういう意味で、実施計画作成に当たっては当局に申し入れもしていますし、私ども意見が十分入れられるような実施計画をつくってもらいたいという意見を持っています。  それから、公社公団関係でありますが、私ども、いわゆる自決方式あるいは安楽死方式と言っていますが、やはり第一は現有炭鉱を、どうしても安定補給金その他を入れて傾斜配分をしても元気を出せ、こういう答申でありますが、その点については否定をいたしません。したがって、第一段階としては、現有炭鉱の体制強化をするという意味では、一遍に体制問題をどうするという範疇に、いまのところは入れておりません。したがって二点目、三点目の問題です。いわゆる封鎖鉱区あるいは買い上げ鉱区の再開発をする場合あるいは新鉱開発をする場合、財源が問題になってまいりますから、この場合の体制は、やはり私企業から脱却をする、そういうことでモデル炭鉱をつくってもいいのではないか。それに学んで、どんどん拡大をしていく、こういう方向をとるとすれば、いまの企業体制では無理である。今回の場合はこういう位置づけを政策提言として出した、これが現状でございますので、体制問題についてはそういう幅があるということを明らかにしておきたいと思います。  それから自主保安の問題についてでありますが、確かに保安を守るという前提からいきますと、自主保安もやはり正しい表現であろうと思うのです。ところが、保安の問題だけは実効を上げなければなりませんから、会社の責任と一方的に言うではないか、こういう御指摘もございますけれども、私どもと協議をして保安の各条項あるいは実施要綱を決めたら、そのとおりに実施をしてほしい、実施をしないのは会社の責任ではないか、こういう追及を私どもしているわけであります。ですから、保安を守るという意味で、組合は無責任だという立場はとっていません。したがって、労使協調でいくとすれば、会社の方が災害が起きたときに受ける責任は大である、こういう立場で追及をしています。そういう面では、保安優先と言いながら、生産第一主義になったり、あるいは保安軽視の方向がないのかということでは、常に事故が起きてからという意味ではなくて、先ほど申しましたように日常から保安教育を徹底する、そういう意味で妥協のない闘いをしている、こういうように御判断を願いたいと思います。  労働力確保でありますが、昨年まで顕著な例として先生方に申し上げてまいりましたが、やはり労働力確保するというのには顕著な例がなければだめだと思うのです。ただ、集まってきてくれ、きたら支度金をやるという程度のものでは集まらぬと思うのです。ですから、昨年賃金の妥結をした際に、実際に各炭鉱の実質手取り賃金を炭労内部で発表いたしました。一例でありますが、賃金で非常にいいのは南大夕張炭鉱である。こういう意味で、賃金の魅力で大夕張炭鉱に人がずいぶん集まったという実績はあると思います。それから住宅環境の問題で申し上げてみますが、これは夕張新炭鉱でございます。住宅は、先生もごらんになったと思いますけれども、吉田市長の御協力あるいは当局協力もありまして、いままでの炭住と言われていたものとはほど遠い住宅建設ができましたので、ここにも労働力が非常に集中したことは事実であります。ですから具体的に、こういう事例があれば労働力が集まるわけでありますが、どこの炭鉱、ここの炭鉱ではなくて、現有炭鉱全部が賃金が高く、しかも住宅条件が整備をされるということは、労働力全般の解決になるだろう、こういう考え方を私ども持っているのでございます。  それから組夫の問題でありますが、五百名の中で組夫が一番多い、こういう先生の御指摘でありますが、これは初耳でございます。私ども千九百名の新陳代謝の問題について申し上げましたが、この内容について、もう少し整備をしてまいりたいと思いますが、組夫あるいは臨時夫の問題につきましては、臨時夫の関係については、組合によっては組合員として処遇している場合がございます。組夫ということになりますと扱いが逆でございますので、私ども、組夫撤廃、これを直ちに直轄鉱員にしなさいという要求をいまでも続けているところでございますが、第一は、組夫の組合組織化を考えて、個々の労働条件その他のことについて私ども炭労が支援をする、そういう形をいまとっているわけであります。特殊な事情という表現でございますけれども、その特殊という表現を取って、組夫の皆さん条件を整備し、その方々を直轄鉱員にするという方法を、今後とも努力をしてまいりたい、こういうように考えているところでございます。
  119. 吉田久

    ○吉田参考人 最初経営形態の問題でございますが、これは私たちが、北海道の炭鉱市町村の全体の意見としましては、資金はとにかく限界にきているから、早く公社公団にしてくれという基本的なものを陳情したことがずっと続きました。しかし、なかなかいまの政府の政権の状態からいたしますと、一挙にそういうことはなかなかやりませんし、むしろ、だんだんとその責任を回避していくような状態もございますから、実際問題として、せめてこれからの新鉱あるいは再開発だけでも、とにかく相当政府が力を入れた形にしてもらいたいということで、基本は全体を入れておりますけれども、当面やはり新しい炭鉱とか再開発の問題については、ひとつ公団公社でやっていただきたい、こういう考え方でございます。  それから、いろいろこの産炭地の問題につきまして、炭鉱関係に対しますところの投資の問題でございますが、これは先生も御承知のように、北海道の炭鉱都市といっても、夕張のような純然たる炭鉱都市があったり、釧路のような比較的大きな都市だけれども炭鉱は一部というところもありますから、数字的には簡単に申し上げることもなかなかできませんが、私の記憶でございますから記憶が間違ったら困りますけれども、夕張の場合は年度によっても違いますけれども、炭鉱に投資をしていくというのは、大体四億くらいの事業費予算を組んでおりますから、非常に小さいですけれども、これは大体、半分は炭鉱地帯の方に入っております。これは学校やなんかを入れますとまだ大きくなりますけれども、学校というのは市民の全体を入れるわけでございますから、必ずしもこれが直ちに炭鉱の経費だというように申し上げられませんが、炭鉱地帯の道路などが大分、市道になっておりますから、そういうものも入れまして四億の事業費のうち約半分くらいが、昭和五十年度で炭鉱地帯に関係のある投資だ、こういうふうに御理解願いたいと思います。  それから超過負担の問題につきましては、これも市の議会と違いまして、私がここに全部資料を持ってきて答弁をしているわけではございませんので、概略申し上げますと、これも釧路のような状態のところとも違いますから、いろいろな問題があろうかと思いますけれども、炭鉱だけではやはり大体、年間十億程度の超過負担はしているのじゃないだろうか。この数字は資料を持ってきて答弁しているわけではありませんから概略、概算的にお考え願いたいと思いますが、その程度でございます。  以上でございます。
  120. 早立栄司

    ○早立参考人 私への質問は自主保安についての見解だと思いますが、従来からの答申でもそうですし、保安問題の場合には必ず自主保安という言葉がついております。保安対策については、言うまでもなく監督体制の強化とかあるいは保安諸設備、そういうものを改善するというようなこと、規程の改廃等が必要になってまいりますが、しかし一番必要なことは、やはり人から押しつけられて保安を守る、災害を防ぐのではなくて、働く者自身が、もう災害をゼロにするという決意に立っていかなければいかぬと思いますし、当然また会社経営者もそういう決意に立つ、そういう意味で労使が自主的に保安を守るという自主保安ということが一番の基本になると思います。それだけあればいいので、政府のごまかしだということではなくて、もちろんあらゆる監督体制強化、先ほど述べたいろいろなことをしなければいかぬが、それを貫くためには、まず労使そのものが本当に保安が大事なのだ、真剣に守らねばいかぬという気持ちに徹しなければいかぬということだろうと考えますので、そういう意味で、私は素直に評価をしておるわけです。  それから参考までに、私ども関係では十年前ぐらいには自主的な立場として、保安提案運動を推進し、かなりの成果を上げました。一人一人に保安カードに記入させる、そしてそれは一枚幾らと若干の金を出したのです。しかし二、三年前から、一人一人による保安カードの保安提案運動をさらに発展させた形で、五人ないし七、八人ぐらいの職場単位にグループ協議会という、保安についてのグループ会議を持たせるようにしております。これは一部ではまだ昇坑時、坑外で一時間ないし幾等集まって少数のグループで協議をするのですが、それに若干の手当を出しておるところがあります。そうでない別の企業においては、これは組合側の提案として一銭も金を出さない、仕事が終わって昇坑してからやるのですから、一時間でも二時間でも残業に相当するのですが、金をもらわないで自主的にやる。元来、金がなくても自分の身を守ることだから、みんな集まって話し合おうじゃないかという、そこまでの気持ちに徹しなければいかぬじゃないかと、私どもはそういう方向で指導しております。参考までに申し上げておきたいと思います。
  121. 高鍋徹男

    ○高鍋参考人 鉱害復旧が十ヵ年計画で終了する見込みがあるかという御質問だったと思います。  現在、四十九年度末で、福岡県で推定をいたしております鉱害の残存量が、金額に直しまして千五百七十五億円でございます。これは四十七年度末の残存鉱害量が当時の金額で千三百十七億、これを四十七年、四十八年、四十九年と復旧いたしまして、四十七年度の計算でいきますと九百七十五億残っておる計算になります。それが現実には、いまの単価に引き直しますと千五百七十五億でございますので、実際の金額が五割以上ふえてまいっておる。各年度ごとの予算総額は大体、平均したものが出てまいっておりますけれども、そういった工事費の増高に伴いまして考えてまいりますと、とてもあと十ヵ年計画の中で終了するということは困難ではなかろうか。仮に四十七年から四十九年までの金額によりまして鉱害復旧が終わりました率を出しますと、大体二六%ぐらいの進捗率になっておりますが、これがそのまま延びていきましても、あと九年なりあるいは十年なりかかるのではなかろうか。それと同時に、質問の中でもお答え申し上げましたけれども、一応、鉱害復旧をいたしまして、やはりまた再復旧をやらなければならないという問題も、今後かなり起こってくる可能性があるというふうに考えておりますので、そういったものを含めます場合は、まだ鉱害の復旧には時間が延びていくという可能性を考えておるということでございます。
  122. 多田光雄

    ○多田委員 どうもありがとうございました。
  123. 田代文久

    田代委員長 鬼木勝利君。
  124. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 皆さんお疲れのところ大変、恐縮ですが、木崎さんにちょっとお尋ねしたいのですが、木崎さんは条件つきの賛成、一〇〇%これが実行されるならば、わが輩は賛成だ、こういうふうなお話に承ったのでございますが、これは御賛成なさろうが反対なさろうが、それは御自由ですから、その点について私はどうこう申し上げておるわけではございませんが、これは一〇〇%実行できる答申だ、あなた自身がかように御理解なさっておるのか、その点ちょっと。
  125. 木崎順二

    ○木崎参考人 一〇〇%達成することを期待しつつ賛成しておるわけでありますけれども、では木崎おまえ自身が、これが一〇〇%できると思っているのかという御質問でございますけれども、先ほど申し上げましたように、一にかかって政治の決断、そのように考えております。
  126. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 なかなか微妙な御発言でございますが、この答申の内容を見てみますと、たくさんございますが、私がチェックしているのは、ほとんど赤でいっぱいになっておりますが、まず二、三お尋ねしたいのは、この答申の中に、鉱員の方が一生懸命働かれて、そして昼間、十分疲労を回復することができる安眠のできるような措置をとることだ、これに対しては大いに評価をする、こう木崎さんはおっしゃっているのですが、これは至るところに全部こういう検討を要する、検討を要するという答申でございまして、具体的に何も示してない。たとえば労働時間の問題でも、総実労働時間が百九十一・一時間、出勤日数が二十一・三、これは平均八・九時間になるようでございますが、ただ、これを書き流しで、では、労働時間はどこまでなければならぬとか、であれば妥当だというようなことについては何も明記してない。明記してないが、おおむねこれはおれは賛成だ、こう木崎さんがおっしゃっている、その根拠ですね、どういうわけで御賛成なさっておるのか。これでは全然まだ出ていないのですよ。ただこれは数字の羅列だけであって、何も炭鉱鉱員の、労働者の働く時間は何時間で、そして妥当だ。だったらわれわれは賛成ができるという木崎さんのその御高見を、あなたの卓越した高遇なる御高見を承りたいのですが、それもない。また、一方当たり賃金が五百六十五円だ、一ヵ月は二十二・五方だ、これ全部羅列で、基準賃金が一万六千五百円だ、家族手当が千二百円だ、これに対して、どこまでなければいけないということは何にも書いてないのですよね、これは。これでは答申なんかわれわれだってできますよ。われわれ素人だって、これは表を見ればすぐわかりますからね。だからどこをどう押して、あなたが御賛成なさったのか。決してあなたを追及して、あなたを責めているのじゃありません。あなた方のようなベテランだから、どういう根拠で御賛成なさっておるのか。私はあなた方と御一緒ですから、あなた方の御要望どおりに、われわれはそれに沿って一生懸命がんばらなければならぬのですから、あなた方の御意思はどこにあるのか、それを承って、よし、あなた方がそうなら、われわれも一緒になって、あなた方の御要望どおりに実現しますよ、がんばりますよ。ところがあなた方の腹の内が本当にわからないと、どういうところでベテランの木崎さんが御賛成なさっておるのか。まあお言葉では、先ほど隔靴掻痒の感があるとかおっしゃったが、かゆいところに手が届かなければ、これは不満じゃないですか。かゆいところに手が届いてこそ初めてわれわれは、ああ気持ちがよかった、ありがとう、こう言うのであって、手が届かないのに賛成というのはどういう意味か。私の言い方があなたを責めているように見えるけれども、そういう点について承りたいと思うのであります。  それから、毎年千名以上の労働者の補充を必要とする、こう答申にはございますが、一体、実態としましては毎年何名を補充されているのか。  また、高等学校の教科課程といいますかカリキュラムの中に、鉱山労働というような科目が入っている校が、全国で十校あるとか言っておりますが、果たしてそういう学校を卒業されて、どれだけ就職を今日されておるのか。  また、この中に二万四千人の炭鉱鉱員の方がいらっしゃるというのが、組夫のことは何もここに書いてないようですね。答申には何も組夫のことは出てない。皆さん方からの御要望にも、組夫のことは先ほどちらちら出ておったのですけれども、きょうは何もお話が出なかった。組夫がよくなるように努力しておるということは、先ほどちょっとお話がありましたが、そういう点について、労働者確保という問題は大きな問題でございますが、そういう労働条件について、保安問題も先ほどお話があったし、また、あすも委員会がありますので、きょうは私、割愛いたしますが、大体、私がいま申し上げた二、三点について、産炭地域の問題には、飯塚の市長も見えておるし、お尋ねしたいことは山積しておりますけれども、木崎さんに主として私お尋ねをいたしまして、終わりたいと思います。
  127. 木崎順二

    ○木崎参考人 答申には具体性がないじゃないか、具体性がないから、おまえは賛成と言うけれども、ではその賛成の論拠は、具体的に言うと、逆に言えばどうなのか、一言で言えばこういう御質問だろうと思います。そのことは、主として労働力確保問題、すなわち労働時間はどのぐらいが適正なのか、賃金はどの程度がいいのかというようなことを、木崎どう考えているのかというのが一番目の御質問だろうと私は思います。これは私、先ほどから申し上げておりますように、いわゆる新政策という本建築の土台、たとえ話で土台という言葉を使ったのですが、新政策の物の考え方趣旨、そういうものに私は賛成したという意味でありまして、これから本建築がどうなるのか、すなわち、いま先生の御質問の中に出てきました、賃金はどのぐらいが適当なのか、それから労働時間はどうしなければいかぬのか、それから、深夜労働者に対して昼間、安眠できるようにするには、どうすればよいのかというような問題は、これはすべて上屋の問題でございまして、したがいまして、これについては私、先ほど来、申し上げておりますように、新政策に関する限り私たちの運動はこれからが本番ということを申し上げておるわけであります。  隔靴掻痒という言葉を使った限りは、賛成ということは成り立たないじゃないかということでございますけれども、私うまく表現できませんが、世の中には、一〇〇%賛成ではない、やはり五%か一〇%方、不満なところはあるけれども、まあまあこれは賛成してもいいだろうという問題もあるのじゃないのか、そういうことだってあっていいのじゃないか。いわゆるゼロか一〇〇かでなくて、まあ九五ならいいだろうとか、九〇ならいいだろうという場合もあるのではないのか。だから、そういう意味で隔靴掻痒という言葉を使ったわけでございます。  それから組夫の問題につきましては、いろいろな雇用条件の問題とか、そういうような問題が、どうしても会社に本採用になっている者よりも現在、悪いことは確かでございますし、そういうことについて、われわれも直接に間接に、これから援助していきたいというふうに考えます。理想的な姿を言うなら、やはり将来はああいうかっこうというものはない方がいいだろうというふうに思いますけれども労働力の流れの中で確かに、これは何も悪い意味で言っているのじゃないのですが、安全弁になっているというような面もございますし、なかなかむずかしい問題だと思いますけれども、基本的には、ああいう姿の労働者がいないということが望ましい、そういうふうに考えております。
  128. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 まあ大体あなたのお考えはそうであろうとは思いましたけれども、念のためお尋ねしたのでございますが、最後の組夫の問題もこれは非常に大事な問題だと思うのですよ。  かつて私は、飯塚の市長もお見えになっておりますが、九州稲築町で、三井系の御承知の山野炭鉱が爆発をしまして、あのときに、組夫の方が非常に多かったのですね。非常にお気の毒で、当時、私は参議院議員で、参議院の方から参りまして、組夫の方に対して、十分とは言えませんけれども、特例をもって三井から金を出させました。だから、これは非常に気の毒な方で、仕事は一緒にやっていらっしゃるのですから、これはひとつあなた方の方も十分お考えいただいて、大々的に組夫を救うところの運動をやはり起こしてもらいたいと思う。私どもも十分やっておりますけれども、遺憾ながら、きょうは、皆様方からの御要望をいろいろお聞きしましたけれども、組夫を何とか助けてくれというようなお言葉が少しもなかった。まことに私は遺憾に思いました。どうぞ労働力確保ということにつきましては、先ほどから、三千万トンも可能だ、こういうようなお話もありましたが、何と申しましてもやはり大事な人の問題、労働者ということ、これが確保ができなければ、その面につきましては労働条件が満たされなければだめなのですから、これはまた問題は別でございますが、地域振興の上からも、ぜひそういう、人に差別をつけないように、皆様方御自身がこれは徹底的に実現方にお骨折りを願いたいと私は思う。  きょうは、お一人お一人にお尋ねしたかったのでございますけれども、時間の都合で木崎さんお一人に、あなたが一番お詳しいからお尋ねしたわけでございますが、大変どうも、お疲れのところを、ありがとうございました。これで終わります。
  129. 田代文久

    田代委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  各参考人には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。本委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  次回は、明二十二日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十四分散会