○多田委員 いま部長の答弁になった産業別の労使問題、それはそれとして
計画はあるのでしょうけれ
ども、果たして、炭鉱
労働者になりたいという人あるいはいまなっている人が、いまの政府の
政策に対してビジョンを一体持てるのだろうか。いっそういうビジョンを出すのか。これはまた石鉱審の答申待ちだというふうに皆さんおっしゃるかもわからないけれ
ども、やはりいまの瞬間から
労働者を大事にする、あるいはまた
石炭産業に魅力を持つ、そういう
政策がなければ、一朝一夕に地下
労働者、しかも熟練した
労働者を何千人、場合によっては万に達する人を入れるということは不可能なんですよ。これは私が言わなくたって、
専門家の部長はもうよく
御存じのとおりだと思う。
そこで、年金の問題はさっき出ましたから、これは後でちょっと私も実はお伺いしたいと思っていたのですが、なぜ私はそれに不信感を持つかというと、たとえばいま手元に、北炭の夕張新第二炭鉱がことしの四月に出した「従業員、家族各位」「出勤協力方のおねがい!」というチラシがあるのです。これを見せてもらって、私は何人かの
労働者に伺った。ともかく中身はひどい。あなた読みましたか。ともかくひどいものですよ。
いま北炭は経営のピンチだ、新鉱を抱えている、それで萩原さんが再び返り咲いた。これは鉄鋼や、あるいはその他ユーザーからも相当圧力がかかったのだろうと思うのだけれ
ども、これはかなりの狂的なものですよ。たとえば「北炭は未曽有の経営危機に直面して」いる、これは確かにそうでしょう。その後に「緊急措置として、締結された協定書の四項目」として、たとえば3には「労働力体質改善、並びに職種別適正
人員の配置。4 出勤協力。」「特に“出勤協力”については、
坑内員の平均出勤率目標を八七%とする。」これは高いですよ。「特に出勤不良者に対しては、人事委員会を毎月開催し、労働協約に基づく措置を行い個人別指導を強化する。」私は戦前の
労働者に対する態度じゃないかと思うくらいなんです。
そして、この「職種別適正
人員の配置。」というところを少し聞いてみたら、たとえば掘進とか
採炭などの直接
生産現場、比較的賃金は高いわけだ。そこの比較的年配になっている
労働者を有無を言わさず、
生産能率を上げるということを言っておいて、一方的に配置転換をする。その人はもちろん賃金ダウンなんですよ。そして数少ない若手の
労働者をそこへまた持ってくる。前から北炭の労働
政策というのは問題になっているのだけれ
ども、これがちょっと狂気じみてきている。だから私が会った
労働者はこう言っている。四十歳でこんな体にだれがしたのだ。これは大なり小なり似ているのですよ。
そういうことがいま目の前にまかり通っていて、そして労使の
会議を開くと言ってみても、その結果何が出るかということはわかっているのです。まして、ちょうど
石炭が
幾らか上向いてくるというと、いよいよ調子に乗ってくるわけだ。だから私は、そういう点から言って一層——これはいままでと同じですよ。労働条件を社会常識に沿って
幾らかよくするでしょう。賃金も
幾らか上げるでしょう。あるいはまた
保安についても、事故を起こしたら
石炭出ませんからね、ユーザーが困るのだから、それは一定の
保安の改善もやっていくでしょう。やはり根本的に
労働者を犠牲にしてやっていくというこの姿勢と
体制、変わっていないのですよ。これであれば、若干の
労働者がふえても、本当に二千万トン
体制を
維持できるような労働力を確保できるのだろうかという疑問さえ私は持つのです。
いま不況が来ているわけだから、仕事がなくなっているから、
幾らかの若手
労働者は来る人もいるでしょう、背に腹かえられませんから。それは決して炭鉱に魅力を持ったのじゃないのです。行くところがないから来ているという人がかなりいるということも、私は労働監督署に行って聞いたのです。このままでいきますと、労働力の点からも、
石炭産業というのは、
幾ら部長が善意でおっしゃっていても、これから余り期待を持てないのじゃないか、私はこういうように思うのです。
そういう意味で私のきょう実はお伺いしたいと思っていた
一つは年金の問題なんです。賃金の問題は、これは労使の問題で解決しなくてはならない問題ですけれ
ども、年金について言えば法律があるわけでしょう。
石炭についても先ほどお話のあった法に基づいてやっておるわけだ。ただ、年金について言いますと、
石炭産業をもし
維持なり復興さしていくとすれば、それを支えるものは何といっても労働力ですよ。そういう意味では、いまの厚生年金の上にプラス
石炭鉱業の年金をつけると言っているけれ
ども、これも調べてみたら十五年以上二十年未満の人が月額五千五百円なんです。厚生年金自身が低いのに、いいかげん体をすり減らしてきた
労働者が、いま賃金もさることながら、これからやめた後どうなるかということを心配している、だんだん高齢化してきているから。その人たちに五千五百円やったって、これは孫のだちんにもならないですよ。炭鉱
労働者を本当に大事にしていく、そして二千万トンなり、あるいはそれ以上掘ると皆さん言っているのだから、そうすれば、年金の問題で思い切って国自身がめんどうを見る必要があるのじゃないか、単に年金をどうするかという問題じゃなくて。これは
石炭企業の経営難と言っておりながら、先ほど言ったように一部の企業で二
年間で三億八千万円も政治献金をやっている。こんな金のあるぐらいの余裕があるのだったら、やる気があれば、経営者だってやれぬわけじゃないと私は思う、そろそろ退職金の内部留保さえ始めてきているのだから。だから本来は資本家が出すべきですよ。しかし同時に、それだけでは不十分だから、本当に国が国策として
石炭を重視していくのであれば、国自身が労使と一体となって、この年金をめんどう見ていく、こういうことが年金問題の具体的なアプローチの問題だ、私はこう思っているのです。
そういう意味で、ひとつ部長にお伺いしたいのですが、先ほど部長は、これは答申に含ませたい、こういう前向きと思われる発言をしておりましたが、私は、政府自身がもっと本腰を入れていくという意味で、やはり政府自身がこの問題を
考えてみたらどうか。
石炭を取りつぶすときには一兆円近い金を経営者に出しているわけだから、せめて、いまこれから
石炭を見直していくという場合に——そう大きな額じゃないですよ。私はこれは直接はじいたわけじゃありませんけれ
ども、それくらい国でめんどうを見ていく、これは経営者を援助しろと言っているのじゃないのです。
労働者に対して、そういう援助を国としてすべきじゃないのかというふうに思うのですが、どうでしょう、これはひとつ長官なり大臣と相談して、答申の場合でも、そういう積極的な内容を盛るようにしてもらえるかどうか、ひとつ御検討願えますか。