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河本国務大臣 大体ことしの国民
経済の
規模が百六十兆円であると言われております。今回の第三次
対策によりまして、直接間接約一兆八千億前後の有効需要が喚起される、そういう計算になっておりますが、百六十兆の
規模のところへ一兆八千億ということでありますから、その
効果に対して私
どもも確信が持てないわけであります。しかも、これまでの
不況は、
不況と申しましても十数%の
高度成長を続けておりました
経済が五、六%に落ち込んだ、そういう場合を
不況と言っておったわけでございまして、現在のように一挙にマイナス
成長に落ち込んでしまった、こういう
事例はかってなかったわけであります。
経済がなお活力を温存しております場合には、仮に一兆八千億というふうな刺激でございましても、これが非常に有効に働くということも
考えられますけれ
ども、他のいろいろな要因というものが冷え切っておるという場合にはなかなか有効に働かないということは、皆さんも御承知のとおりだと思います。
そこで、この
経済を刺激する
方法はどうかという問題でございますが、現在設備の実質の稼働が約七割という
状態でございますから、
金融が緩和いたしましても、新しい設備投資は特殊な分野を除きましてなかなか起きてまいりません。それから、貿易の
状態も、いろいろ工夫はしておりますけれ
ども、
世界経済全体の
状態が御案内のような
状態でございますから、
輸出、輸入とも予定どおり伸ばすことがなかなか困難である。それから、個人消費は御案内のとおりでございます。これが冷え切ったままなかなか需要が起こってこない、こういうことでございます。ただ、幸いなことには貯蓄が非常にふえておるわけでございます。特に郵便貯金など国が財投の原資として活用し得る貯蓄が非常にふえておるわけでございます。国民消費が減って貯蓄がふえておるということであれば、その貯蓄を私
どもはもっと有効に活用していく、財政投融資にこれを活用することによりまして有効需要を喚起していく、国民消費がふえなくてもそういう形で国民消費にかわる有効需要を喚起することも可能である。その財源は貯金という形で出てきておるわけでありますから、これがこれからの唯一の大きな活路ではないか、こういうふうに私は
考えておるわけでございます。
なお、
世界各国とも積極的にいろいろな景気
対策を立てておりますから、いまの
状態ではアメリカの
経済も
日本の
経済もヨーロッパの
経済も、秋ごろからはやや好転するのではないか、こういう気配になっておりますが、問題は九月のOPECの総会で油の問題がどういうふうに取り扱われるか、これは非常に大きな
影響を及ぼすであろう、こう思っております。したがいまして、油を値上げさせないために、私
どもは早く産油国との間に消費国が対話の場を持たなければならぬ。これが
世界全体の景気
政策に大きく響く、こういうふうに
考えておるわけでございます。
いずれにいたしましても、
先ほど申し上げましたように、一応第三次
対策というものがスタートしたばかりでございますので、もうしばらくいたしましたならば詳細に
産業界の
実情を
調査いたしまして、やはり次の手を
考えていかなければいけないのではないか、こういうことを痛感しておる次第でございます。