○近江
委員 きょうは限られた時間であります。私は、その中で三点
質問をしたいと思います。限られた時間でございますので、
関係者は簡潔にひとつ御
答弁をいただきたいと思います。
この前の
委員会でも、私は鋼材引き上げ等のそうした
企業の価格引き上げの問題を聞いたわけであります。御承知のように、今年の春闘におきます賃金引き上げは二二、四%と非常に低い額で抑えられておるわけでございます。そういう中で四月は二・二、五月は一%、こうした消費者物価が高騰してきておる。この席におきまして福田経企
庁長官は、一番いま心配なのは、いわゆる
企業製品の価格引き上げである、こういうことをおっしゃっておるわけでございます。ところが、
企業の方にはいわゆる引き上げようという動きが依然としてあるわけであります。いまその
企業がいろいろと
考えておることとして、一つは
企業のコスト負担を軽減する、あるいは操業度を向上させるために実需をつけていく、そしてできれば製品の価格引き上げをしたい、こういうようなことが取りざたされておるわけであります。公定歩合も八%になりましたし、この
金利負担もかなり軽減できるわけであります。さらにまた、
政府は第三次
不況対策を十六日には出そうといたしておるわけであります。こういうことをにらみ合わして
企業としても
考えておろうかと思うのでありますが、しかし実際の動きとしてはいま国会に独禁法もかかっておりますし、あるいは
政府の消費者物価指数今年度一けた、こういうようなことで自粛の気持ちもないことはないと私は思うのですが、国会が終わりますと値上げの動きをしようということがいろいろ言われておるわけであります。特に鉄鋼等におきましては、七月の第二週ぐらいからもうそういう動きをしようというような動きも感じられておるわけであります。こうした特に鋼材引き上げ等の問題につきましては、御承知のように産業の米と言われておりますように、非常にすそ野が広くその
影響というものは大きいわけであります。現在またすべてのユーザーが鋼材の値上げ分を吸収できるような
状態ではなく、必ずこれは他の製品価格に再転嫁され消費者物価がはね上がることは、これは必至であります。また、従来のこの経緯から見まして、鋼材の値上げは必ず船舶、自動車、機械等の大口需要に対する
折衝というものが手間取って、住宅建設その他の小口需要向けが先に値上げされる、こういうことで消費者物価に対する
影響が非常に早くあらわれてくるわけであります。内需につきましては、現在いろいろ言われておりますのは、底入れの機運というものが見受けられておる、特に建設、自動車、家電等を中心に徐々に回復に向かいつつあるんじゃないかと言われておりますが、この
政府の
不況対策の推進に伴ってそういう傾向が加速されると
考えておるわけでありますが、この内需の不振をカバーしてきた輸出というものは現在やや停滞ぎみであるわけですが、長期的に見ますと、
世界のこういう景気動向というものは今後は回復に向かうということは
考えられるわけであります。
世界のこうした鋼材需給は中長期的には鋼材不足になることは間違いないと思うのです。したがいまして、現在の内需あるいは輸出の落ち込みというものは、私は値上げの理由にはならぬ、このように思うわけであります。
それから、さらに業績面から見ましても、鉄鋼業界の業績というものは他産業に比較して決して悪くなく、相当の利益を上げておるわけであります。三月期におきましては、大手高炉メーカー五社がいずれも黒字決算となっておるわけです。パイプ類の輸出が好調な住金が前期より大幅増の三百三十八億円の経常利益を上げておりますし、経常利益は、新日鉄が同じく三百三十八億円、川鉄が百八十一億円、鋼管が二百八億円、神戸製鋼が八十二億円、五社全体では前期に比べて七・七%の増収、〇・九%の純利益増になっておるわけです。このために会社が一割配当を維持しておるわけですが、こういうような経理状況のもとで、直ちに値上げの必要があるかという問題であります。
また、このコスト面から見ましても、原料炭の値上がりにつきましては、日本の鉄鋼業界が昨年買いあさったのが原因じゃないかということも言われておるわけですが、そういうことでみずからがまいた種、これに起因しておるというものがかなりあるわけであります。そういう点におきましてはみずからがやはり刈り取る。そういうことからいきますと、製品価格に転嫁するのは不当じゃないか、このように私は思います。減産による固定費増あるいは人件費増、販売経費増、
金利上昇分のコストアップ要因につきましては、
金利につきましては公定歩合八%になっておりますし、これはやはり実質
金利というものは下がってくるはずであります。そういうことで、
企業努力でこれは吸収すべきでありますし、またそれが可能じゃないか、このように思うわけであります。
さらに、減産につきましては、これは鉄鋼だけではなく、他の産業はもっと深刻であるわけです。現に希望退職や新規採用の中止、新入社員の自宅待機、管理職の賃金カット等にまで追い込まれておるところも多いわけであります。鉄鋼につきましては役員のいわゆる報酬カット
程度で済んでおりますし、こういう
姿勢から見ましても、安易に引き上げをすべきじゃない。今後七月の第二週ぐらいからそういう動きが始まるだろうということが一般に予想されておるわけですが、以上私は、きょう時間の
関係で長々と申し上げたわけでございますが、こういうような動きに対して、
大臣なり
局長はどのようにいま監視をしておるわけですか。福田
長官もこの
企業の引き上げは何とかして自粛をしてもらいたいということを言っていますが、
通産大臣として産業界にそういう
要請をしていますか。