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福田(赳)国務
大臣 ただいまの物価上昇の現象、これはいわゆる需給インフレという
段階はすでに昨年の二月ごろ終わりまして、もっぱらコストで物価が上昇を続けておる、こういう
段階と見ておるのです。コストの要因から見ますと、私はいまの物価の推移というのは大局的に見ますと非常にスムーズに行っておる。その理由の
最大なものは、何と言っても春闘のなだらかな
解決です。昨年は三二・九%の上昇、それがことしは一三・四%のところにおさまりそうである。これは大変な変化です。物の価格のコスト要因としてまず非常に大きな変化が出ておる。
それからもう
一つは、これは全部が全部というわけではございませんけれ
ども、海外から輸入する物資、これが大方輸入価格の頭打ちという
状態に来ておるわけです。エネルギー
関係、そういうようなものにつきましては、まだ強含みのものもありますけれ
ども、逆に農作物のごときはこの半年で半値に落ちる、こういうようなものも多々あるわけであります。大方頭打ち、こう申し上げて差し支えないか、こういうふうに思うわけです。
それからもう
一つは、公共料金です。去年はコスト要因の中でこの公共料金というのは非常に大きなウエートを占めた、六月の電気料金の引き上げが、
営業用につきましては七〇%を超える、生活用につきましても三〇%というようなところへ決められておるのです。ガスもそんなような調子で上げられる。私鉄、国鉄あるいはバス、トラック、タクシー、そういうものが軒並み引き上げになる。
消費者米価は三二%引き上げになる、こういうような
状態でございまして、公共料金の
消費者物価に及ぼす
影響度というのが三%に及ぶというような
状態だったのですが、ことしは公共料金抑制
方針をとりまして、国鉄は上げません。あるいは電信電話あるいは塩、そういうものはこれの引き上げを凍結する。その他の公共料金につきましても抑制
方針をとっておる。そういうことで、あと米の問題、麦の問題があるのですが、これはまだ
方針を決めておりませんけれ
ども、それらを考慮に入れましても、昨年の三%の
影響度、それに比べますればはるかに低い、一%をちょっと上回るというような程度のものが
考えられるわけでありまして、これも非常な変化であります。
それから、きょうは
日本銀行の公定歩合が引き下げになる、貸し出し金利水準もこれに追随して下がる、こういうことになりますが、これもコスト要因、ささやかでありますけれ
ども、去年はこれが上昇
過程にあったわけですが、今度は逆に下降
過程に移るというのですから、これもいい要素です。そういう物価に対しましていい要素がある半面におきまして、
企業におきましては非常にいま不況度が強いものですから、その収益
状態を改善しようというので商品、製品の値上げに脱出口を求めようという動きがあるのです。これが気がかりな一番大きな問題ですが、そういう点を除きますと、とにかくいい要素の方が多いのです。ですから、私は、
企業のそういう値上げの動き、これに対しまして非常に重大な
関心を持っておるわけでありまして、
経済団体に対しまして強く要請をいたしておるわけですが、
企業側におきましても、ことし春闘がなだらかに済んだ、しかし物価問題がこれで
解決したわけではない、来年が問題なんだ、来年の物価一けた台ということが実現しなければ、ことしせっかくおさまりかかった賃金と物価との均衡、こういう動き、
動向、これがひっくり返ってしまうんだ、そういう理解は非常に届いておるのでありまして、これにつきましても大方の協力が得られると思うのです。品物によりましては海外の要因なんかでやむを得ないというものももちろんありましょうが、大方の御協力は得られそうだ。
四月、五月、
消費者物価が上がりましたけれ
ども、四月は授業料でありますとかあるいは教育、娯楽のための支出でありますとか、そういう年度変わりの要因というものがこれは非常に強いわけです。五月につきましては、レモンが上がったとか東京のふろ代が上がったとかいうので、東京の区部の物価上昇率は一%というところになりましたけれ
ども、私は、ことしは物価安定の基調は揺るぎないものである、こういうふうに見ておりまして、これを定着させるために、この上とも総需要管理政策、これは堅持してまいる。同時に、
一つ一つの物資につきましては、その価格の
動向、需給の
動向、これを注意深く見守りまして、
行政指導誤りなきを得ますれば、これは私は一けた台の
消費者物価目標というものは必ず実現できる、かように確信をしております。