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1975-06-06 第75回国会 衆議院 商工委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月六日(金曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 山村新治郎君    理事 塩川正十郎君 理事 田中 六助君    理事 萩原 幸雄君 理事 前田治一郎君    理事 武藤 嘉文君 理事 佐野  進君    理事 神崎 敏雄君       天野 公義君   稻村左近四郎君       浦野 幸男君    越智 通雄君       近藤 鉄雄君    塩崎  潤君       谷川 和穗君    橋口  隆君       深谷 隆司君    藤井 勝志君       板川 正吾君    岡田 哲児君       加藤 清政君    加藤 清二君       上坂  昇君    竹村 幸雄君       野間 友一君    米原  昶君       近江巳記夫君    松尾 信人君       玉置 一徳君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長内閣総         理大臣官房審議         室長      原   徹君         内閣法制局第二         部長      味村  治君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       渡辺 豊樹君         公正取引委員会         事務局取引部長 後藤 英輔君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         科学技術庁原子         力局次長    福永  博君         通商産業政務次         官       渡部 恒三君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省立地         公害局長    佐藤淳一郎君         通商産業省基礎         産業局長    矢野俊比古君         通商産業省機械         情報産業局長  森口 八郎君         通商産業省生活         産業局長    野口 一郎君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       井上  力君         資源エネルギー         庁石油部長   左近友三郎君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         中小企業庁小規         模企業部長   藤原 一郎君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局官房企画         課長      藤野 公毅君         警察庁刑事局保         安部公害課長  星野鉄次郎君         大蔵大臣官房審         議官      結城  茂君         厚生省薬務局安         全課長     代田久米雄君         農林省農蚕園芸         局植物防疫課長 福田 秀夫君         郵政大臣官房資         材部購買課長  黒澤 俊夫君         郵政大臣官房建         築部管理課長  小宮 義雄君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 六月六日  辞任         補欠選任   山崎  拓君     谷川 和穗君 同日  辞任         補欠選任   谷川 和穗君     山崎  拓君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  中小企業に関する件  資源エネルギーに関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 前田治一郎

    ○前田(治)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長は、ちょっと所用がございますので、その指名により、私が委員長の職務を行います。  通商産業基本施策に関する件、中小企業に関する件、資源エネルギーに関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐野進君。
  3. 佐野進

    佐野(進)委員 私は、この前独禁法審議を続けてきたのでありまするが、きょうはそれに関連もいたしますが、特に中小企業の今日置かれておる情勢、いわゆる独禁法改正関連する情勢の中で、どのようにこの改正案の中でこれら問題に対して取り組んでおられるか。さらにまた、その中で当面する重大な課題は何なのか、どうそれに対して対処されようとしておるのか等々、具体的な問題をそれぞれ中に盛り込みながら質問をしてみたいと思うのであります。  まず第一に、通産大臣にお伺いをいたしたいと思うのでありまするが、独禁法審議を通じて明らかにされたことは、いわゆる高度寡占状態独占状態を排除することが今日的課題としていかに必要であるかということは、各質問者を通じて明らかにされてきたわけでありまするが、この状況の中において特に高度な寡占状態にある企業が、その状態にある力を利用して、社会的にその責任を追及される、そういうような行為がここ数年の間続出をいたしておるわけであります。それが特にいわゆるオイルショック後における経済情勢の中で、社会の指摘を受け、大企業の持つ社会的責任についていろいろな面でその責任が追及されておるわけでありまするが、通産当局といたしましてそれら責任を追及する声にこたえて、どのような考えとどのような措置をとってこられたか、原則的なことで結構でございまするから、この際お尋ねをしておきたいと思います。
  4. 河本敏夫

    河本国務大臣 大企業がその力に任せまして中小企業分野にみだりに出ていって、経済秩序を破壊する、そういうことは好ましくないことでございますので、そういう動向に対しましては十分留意をいたしております。  そうしてまた、そういう事態発生をいたしましてトラブルが起こった、こういう場合には行政指導によりまして解決をしていく、こういうことで、何回かそういうトラブル解決いたしておりますが、今後も十分留意をいたしまして、そういうことのないように気をつけていきたいと思います。
  5. 佐野進

    佐野(進)委員 通産大臣は時間の関係があって途中退席されるということでございますので、この際、この問題について総務長官ないし公取委員長にお聞きしたかったのでありまするが、後でまとめて御質問をするということにいたしまして、通産大臣に対する質問を続けてみたいと思います。  結果的に、そういうような行政的指導によって、社会的不公正を助長するがごとき大企業行為、そしてまたその行為に基づいて起きつつある社会的情勢、いわゆる悪い情勢発生に対して、いろいろな面でそれに対するところの対策をしておるということであるにもかかわらず、その成果がなかなか上がっていないのが今日的な問題となってあらわれてきておると思うのであります。そうして、そのことが今日の独禁法改正の大きな要因となっておるわけでありまするが、こういう面から来るところの社会的な不公正是正という面におけるところの今日の独禁法改正行政指導だけでなく法律改正という形の中における措置通産大臣はこの前の質問においては容認せられておるわけでありまするけれども、そういう面について今後通産当局としては積極的に通産省内におけるところの意思をまとめ、それら問題に対応するいわゆる独禁政策の遂行に協力しながら、それら弊害発生する条件については、これを是正していかなければならないと思うわけでありまするが、その点についての決意をこの際お聞きしておきたいと思います。
  6. 河本敏夫

    河本国務大臣 日本産業構造一つ特徴は、御案内のように中小企業分野が非常に大きいということでございまして、中小企業経営というものがうまくいきませんと、日本産業運営そのものがうまくいかない、こういう非常に大きな問題があると思います。  そういうことの関係で、政府といたしましても中小企業対策には非常に留意をいたしておりまして、これまでも幾つかの法律がございまして、まず考えられるありとあらゆる中小企業対策はやっておる、また予算の面からもいろいろな対策を講じておる、こういうことはすでに御案内のとおりでございます。  したがいまして、独禁法が今後運営されます場合におきましても、この中小企業特殊性ということを考慮いたしまして、中小企業経営そのものが今後とも大企業の行き過ぎた行為から悪い影響を受けないように十分配慮しなければならぬ、こういうふうに考えております。
  7. 佐野進

    佐野(進)委員 十分配慮するという形の中でいま大臣お答えになったわけでありまするが、私はこの中小企業動向に関する年次報告ないし通産当局がこれら問題に対して取り組まれてきた経過ないしその経過の中から発生されてきたいろいろな条件、それに対応する対策等についてもつぶさに検討を続けてきておるわけでありまするが、その中で特に問題になるのは、これは後で公取委員長にもお伺いをしたいと思うのでありまするが、いわゆる高度寡占状態になった企業については、この寡占状態になったという条件に適合した場合においては、営業権の一部の譲渡を含むそれぞれの措置を行う中で是正を図っていくということになっておるわけでありまするが、この法律の持つ内容の中で通産大臣にお伺いしたいことは、高度寡占を形成しつつある状態の中で当然排除すべき条件があり、かつ予見される場合、そういうような場合に対してどのような対策をとるかということは明らかにされていないわけであります。いわゆるいま中小企業庁通産省あるいは政府、各省庁等が行政的な指導に基づいて、事件が発生した場合これに対して適切なというか、適当な対策を立てることができるといたしましても、高度寡占状態へ進行しつつある過程、いまやまさに完成しつつある過程の中の企業に対しては、何らそれを除去しあるいは指導する、こういうような実態がないわけであります。これらのことについて不公平というか、高度寡占状態になったぞ、だから排除するんだぞということを言われても、もう明らかにそういうことをやりつつあるという経過、その段階に行く途中の中においては、これを排除するような具体的な措置がないということは、きわめて今日的課題の中においては不適当だと私は考えるわけでありまするが、通産大臣見解をこの際お伺いしておきたいと思います。
  8. 河本敏夫

    河本国務大臣 日本産業一つ特徴といたしまして、わが国は資源がないわけでありますから、貿易立国によりましてその経済運営をしていかなければならぬわけであります。貿易立国ということになりますと、外国との激しい競争、激しい競争に打ちかつためには相当なやはり力というものが私は必要だと思います。新しい商品の開発、新しい技術開発、こういうことをやる場合でもやはり相当な力が要るわけであります。したがいまして、企業が強くなる、それがすべて悪であるという考え方は、私は賛成できません。しかしながら、そのことによって経済界秩序が乱される、大きな弊害が起こるという場合には当然独禁法の対象にもなるわけでありますが、しかし何ら弊害を起こしていない、ただ力が強くなっているんだということだけでそれを抑えていくということは、私は日本経済実情から考えましてよくないことだ、行き過ぎだ、こういうふうに考えます。そういうことからこの経済運営にはなかなかむずかしい点があると思います。  御質問の要旨は、そういう過程においてそれが中小企業に対して悪い影響を及ぼす、こういう場合には一体どうするんだ、こういう御趣旨だと思いますが、そういう場合には、中小企業対策というものは日本では非常に大事な対策でございますから、そういうことのないように、その点だけはやはり十分気をつけていく必要があろうかと思います。
  9. 佐野進

    佐野(進)委員 そういう状況の中で十分気をつけて対処していかれるんだということでありまするが、この十分気をつけて対処するというその後段の説明が重要な意味を持つわけであります。しかし、行政的な指導の限界は、その十分気をつけて対処していくということがなかなか気がつかない、法律の枠内における仕事すらなかなか十分にいかないという状態の中において、それらの点については、私どもとしては、ああそうですかと言って聞き流すことのでき得ない要素がそこの中に含まれておるわけであります。しかし、大臣がそういう点については十分、そういう形成の過程における企業中小企業社会一般に悪い影響を与える場合においては一定措置をとる考えもあるということを明らかにされたので、その点についてはこの段階においてはその説明で満足せざるを得ないと思うのであります。  であるとするならば、今日独禁法審議との関連の中において、非常に重要な中小企業問題の側面としていま社会的な関心を呼びつつある、大新聞の社説を初め経済関心を持つ者等しく注目をしておるいわゆる事業分野、大企業中小企業分野への参入の問題、これに対する対策というものは大変大切な問題になりつつあると思うのでありまするが、通産当局がこれに取り組みつつある姿勢、具体的な問題については長官お尋ねをいたしまするが、姿勢について大臣見解をお伺いしておきたいと思います。
  10. 河本敏夫

    河本国務大臣 この中小企業問題のうちで分野調整最大課題だと思います。そこで、新たに法律をつくって、一定事業分野には大企業進出を許さない、こういうことを法律によって決めたらどうか、こういう議論が非常に強くなっておるわけでございますが、通産省としての考え方を申し上げますと、果たしてそういうことをすること自身産業全体のためになるのかどうか、また消費者のためになるかどうか、国民全体のためになるかどうか、新しい技術の進歩のためになるかどうか、こういうことをいろいろ総合的に考えますと、この問題はよほど慎重に考えなければならぬ。法律で、一定仕事は大企業がやっちゃいかぬ、こういうことを頭から決めてかかること自身が果たして妥当かどうかということ等についてよほど慎重に考える必要があろうかと思います。しかしながら、この事業分野調整ということは一つの大きな課題でございますから、これはどうしてもやらなければならぬ場合もあると思います。また、現にそういう事態が何回か発生をしておるわけでございます。そういう場合には、先ほどもちょっと触れましたけれども行政指導によりまして話し合いをさせる、そして問題をその都度解決していくということをずっと続けてきたわけでございますが、ほとんど全部のそういうトラブル行政指導によって私は解決してきたと思います。今後も可能である、こう思いますので、法律ということではなくて、そういう話し合い指導することによって問題を処理していきたい、これが基本的な考え方でございます。
  11. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣のいまのお答えは、私を初め各委員がたびたびこの場所で質問し、答弁された内容から原則的には一歩も出ていないわけであります。ただしかし、発言の内容そのものについては相当の前進的なニュアンスが含まれていると評価することができるわけであります。私はそういう意味において、大臣がこの際、独禁法改正という社会的な命題の中で通産当局が取り組まれつつある諸種の改革、あるいは新しい経済秩序に対応するいろいろな方針の中で、ぜひこの事業分野確保に関する法律制定、そして制定の中からいろいろな問題についてこれを解決するように処理されるよう強く要望しておきたいと思うのであります。  そこで大臣、もう時間が参りましたから締めくくりの質問をしていきたいと思うのであります。いま答弁をされました参入問題等については解決しましたという内容の中で、解決をしていない、あるいはそのとき解決をしたやに見えながら、なおかつ問題として残っておる事業分野の問題がたくさんあるわけでありますので、今後通産省としては、それらの問題に積極的に取り組むとともに、さらにまた白書の中にも説明されているように、事業分野の将来のあるべき姿についてどうなすべきかということに積極的に取り組まれておるという、そういう姿勢の中において、本問題に対していままで以上に積極的に前向きに対処する、そういう決意であると私が判断してよろしいかどうか、その点だけを最後に大臣に聞いておきたいと思うのであります。
  12. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほどもちょっと申し上げましたが、この事業分野調整という課題中小企業問題の最大の問題でございますので、私どもも非常に深い関心を払っておるわけでございます。  そこで、そういうトラブル発生をいたしました場合には、全力を挙げて取り組む予定でございますし、また私ども事業分野調整という法律がなくてもこれは十分解決できる、こういう確信を持っておりますので、これまでの方針をさらに徹底をさせまして、そういうトラブルの起こらないようにいたしますと同時に、起こった場合には直ちに行政指導をいたしまして解決するように努力をする所存でございます。
  13. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、公取委員長お尋ねをいたしますが、いま私が通産大臣質問をしてまいりましたことについては、よく御理解がいただけたものと思うのでございますが、いままでの質問ないし答弁を通じて、今日、独禁法改正という大問題に取り組んでおられるわけでありまするが、この独禁法改正という経過の中で、中小企業の問題、なかんずくこれに対応する諸法律あるいは政令等があるわけでありますが、これらの運用が、独禁法改正の大きな目標の一つである独占寡占状態を排除するという形における関連の中で、公取委員長としてはいままでどのように対処せられ、これからも対処していかれようとするお考えであるか、この際お伺いをしておきたいと思います。
  14. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 私の方の独占禁止法の立場から申しますれば、中小企業の問題というものは、業務分野をどう定めるということではなくて、大企業中小企業に対して持っている優越した力、これは一口に言えば、資本力と言っても資金力と言ってもいいのでしょうけれども、とにかくその事業守備範囲その他から考えても圧倒的に強い力を持っておる、それらが自分系列におさめていくということの問題が一つあります。ですから、どんどん自分系列に入れていく、こうなると、その力関係ではっきり上下の状態になってしまいます。これはある程度は避けられないにしましても、これは非常に不利な条件下請企業に押しつける、系列企業に押しつけるというような問題、あるいは業務分野と若干関係があるかもしれませんが、一般中小企業が、今日の事態においては急激に転換できない分野において辛うじて生きている、そのことは、私は日本産業構造から問題はあると思いますけれども、しかし長期的な観点で解きほぐさなければならない問題を、力ずくでそういうものを排除するような行動をとるということですね、こういうことはやはり独占禁止法上不公正な取引方法として規制すべきものである。従来も目に余るものは規制しておりますけれども、はっきり申し上げまして、ほかのカルテル調査等に多くの勢力が割かれておりまして、従来は不公正取引についての排除措置というものはなまぬるかったとはっきり申し上げます。今後この独禁法改正で、たとえば株式保有制限を、私の方の初めの考え方ではかなりきついものでありまして、これによると、中小企業株式を通じての支配という点、その面もかなり抑制されるはずでありましたけれども、今回でき上がった案では、現状程度のものはほとんど影響を受けないというふうになっておるようであります。どうも計算してみると、十年という余裕期間ならば、ごく例外を除いて、大部分の場合には無理な株式処分を必要としないというふうな状態になっております。しかし、ブレーキをかけたという点はあるわけでございまして、そういう観点から、今後も強力な資本力による中小企業支配や、中小企業分野を不公正な方法で狭めていくという問題については十分実情調査を把握し、それに対処するだけの措置をできるだけとっていきたい、こういうことでありまして、少なくともそのモデルケース的なものを幾つか調べて、これを是正させたいというふうに思っております。
  15. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、いまのようなお答えでありまするが、先ほど通産大臣にも質問をしたわけでありまするが、いわゆる独禁法改正によりますれば、独占状態があらわれて、あらわれたものに対して、いろいろな条件がありまするけれども、その条件を経た後において公正取引委員会営業権の一部の譲渡を含む措置をすることができる、こういうように法律改正されようとしておるわけであります。したがって、この一部の譲渡を含む措置をするという形の中において、高度寡占状況にある企業が持つ社会的な悪い影響を排除する、こういうようにいままでの質問の中で明らかにされてきたわけでありまするが、それではいま申し上げましたとおり、独禁法の本来のねらいは、消費者の利益を守ることにもありましょうし、自由なる競争を促進することにもありましょうし、いわゆる経済運営を円滑に行うとかいろいろなことはありましょうが、その重大な一つの中に、やはり中小企業と申しましょうか、強い者が弱い者に対して強力にその力を利用して公正なる取引を阻害する、公正なる経済秩序を破壊する、こういう場合においては当然その措置公正取引委員会は行っていかなければならぬ、こういう役割りがあるわけですね。そういたしますると、一つの大企業一定寡占状況になる、そうしてそのことの持つ状態社会的な批判を受けるようになる、そうしてその批判を受けるために営業権の一部の譲渡を含むいろいろな措置を命ぜられるようになる、そうすると、その直前の状況の中で、みずからの持つ企業の力を分散させる、いわゆる営業権の一部譲渡を含む命令をされる前に子会社をつくる、いわゆるダミーをつくって、その子会社をもっていま寡占状況になっていない企業に対して、その資本も、人的なものも含めて、その市場に対して、その分野に対して独占的な、寡占的な状態をつくり上げようとする動き、こういうものがあらわれてきた場合、あるいはあらわれようとする場合はどういうような措置をとるようになるのか、この点をひとつ説明していただきたいと思うのであります。
  16. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 御質問趣旨を私がいささか取り違えているかもしれませんが、一部の営業譲渡に至らないけれども、言ってみると別業だと思うのですが、自分下部機構などを使って別業進出する、他の中小企業分野等進出するというふうな御趣旨でございますとするならば、これはその時と場合によってケース・バイ・ケースで判断しなければ、どうするこうするということは、私はこの場では申し上げられないと思います。というのは、営業をどういうものを選択していくかということは通常は自由なんでございますね。だから、いま法律の上で禁止されていることは、要するにそのやり方が不公正な取引方法とはっきりと認められるという場合には規制されるということはありますが、他業界に対する進出、ことにその業界中小零細業者で成り立っている、そこに過大な力を持った企業が伸びていくことに対してどういうチェックの方法があるのかというお話でございますと、法律的には、やはり不公正な方法を用いた場合以外は取り締まりようがないというのが実情だろうと思うのです。だから、そういうことについて立法措置が必要かどうかということも、それはずいぶん議論の余地のある問題ではなかろうかと思います。その被害を受ける方から言いますと確かにそういう心配があるわけでございますが、これは一部で、日本の大企業がやっている仕事は、これは中小企業もそうですけれども、大部分は借金経営なんですね。ですから、借入金とかあるいは株式保有とかいうものを制限されることによって、そう何でもかんでもデパート式に、あるいは大コンツェルンを形成するような形で進出を図るということは、そういう制約を厳しくしていけば実際上できないのです。そういう事実上の制限措置は政策として十分とり得ると私は思います。ただし、一部で融資を抑えながら、社債ならいいのだというのでどんどん認めるということでありますと、これはしりが抜けてしまうと私は思いますけれども、やはり金がなければできないというのが実態である。ただし、自分の利益でやられる分にはこれはしようがないですけれども、借金による分が非常に多いという実情から考えますと、いま私が申し上げたような、実態的にこれを規制するという方法はないわけじゃないと思います。
  17. 佐野進

    佐野(進)委員 じゃ、公取委員長は結構です。  総務長官にお伺いをいたします。  総務長官、この三日、四日の審議を通じて独占禁止法改正の問題につきまして、われわれの追及に対して、公取委員長との見解の微妙なる差はあったにしろ、一応積極的に答弁をされてきたことに対しては評価をするにやぶさかではございません。しかし、私この前も質問の一部として申し上げたわけでありまするが、独禁法改正が、寡占状態高度寡占状態にある特定の企業ですね、数がきわめて限定されてくるわけでありまするから、そういうものの社会的に及ぼす悪影響を排除する上において一定の手続の上に一定措置を行う、こういうような形の中で法律改正を図られておるようでありますが、そのように法律改正しなければならないという情勢発生する経過の中で、大企業の持つ社会的な機能と申しましょうか力と申しましょうか、それが中小企業なかんずく小規模企業に与える影響はきわめて大きかったと思うのであります。ところが、その大きかった部面に対する配慮というものは、独禁法改正の中には条文はもちろん内容においてもほとんど触れられていない。漠然とした一般社会という形の中において集約されておる。しかし、あなたがいわゆる懇談会を開いて各界の意見を聞かれた場合においては、中小企業界の代表の意見も当然お聞きになっておられると思うのであります。にもかかわらず、その意見というものは、最も重要な柱である事業分野調整という形の中でこれに対処してもらい、その中において中小企業が生き抜くべき方途についてのこの法案改正の中において、一定産業政策と独禁政策との絡み合いの形の中において一定役割りを果たす、こういう条項について何ら配慮をされなかった。この意味は一体何なのか、気がつかなかったのか、気がついてもやらなかったのか、あるいはそういうことが必要なかったのか、この点をひとつ聞いておきたいと思います。
  18. 植木光教

    ○植木国務大臣 御指摘の中小企業問題でございますが、今回の改正案に当たりまして中小企業者の代表の方々の御意見も十分にお聞きをいたしました。結論から申し上げますと、最終回におきまして今回の政府案について中小企業界としてはいろいろまだ問題点があると思うけれども、一応評価をするというようなお話を承りまして、私といたしましては大変喜ばしい御発言であったというふうに感謝をしたのでございますが、この競争原理というものを生かしていきます際に、中小企業日本経済の中で非常に大きな役割りを果たしておられるわけでございます。したがいまして、独占的な状態に対しての排除措置を決めましたのも、言うまでもなく独占的な状態にあります企業に対しましての歯どめであり、これは言うまでもなく中小企業にも関係をするところでございます。  さらにまた、同調的値上げにつきましても、中小企業はもちろん配慮していることは御承知のとおりでありますし、さらにまた課徴金の取り方につきましても中小企業特に小売業や卸業というような零細なものについては、十分な配慮を加えているわけでございます。株式の保有制限にいたしましてもそのとおりでございまして、したがって中小企業についてこれこれというようなものはもちろんございませんけれども独占禁止法という法律の中におきましては、中小企業に配慮すべきものとして当面考え得るものは、いまのような直接的な表現ではなしに、間接的な条文になりますけれども、配慮を加えてきたつもりでございます。中小企業育成策というものは、また同時に別の産業政策でも行われるべきでありまして、両々相まちまして中小企業が健全に発達していくことをこいねがっているものであります。
  19. 佐野進

    佐野(進)委員 長官はそう言われますが、私は今日の中小企業問題における最大課題は、低成長下において中小企業が生き抜いていく道、特に小規模零細企業が生き抜いていく道は何にあるのかということになれば、結局いままで培ってきた事業分野においてその仕事を守り抜く形の中で、新しい技術の革新を初めいろいろな付加価値をそこの中で発生せしめる努力をする、そして社会公共のためにその役割りを果たしていく、こういうところにあると思うのであります。しかし、その目的を達成する上において、競争力の隔絶した大きな力を持つ企業が、その分野に対してその置かれている状態に対して何ら考慮することなく、理不尽にただ営業的な価値があるからといってそういう部面に参入してくる、これはまた今度の独禁法の独占的状態を排除する上において、参入することができ得ない状況の中においてはそれを排除するという項はあるわけでありますけれども、その逆の中で、参入することのでき得ない状態にある大企業が幾らでも参入することのでき得る状態にあるあらゆる分野参入すること、特に小規模企業に対してそのような措置をとった場合、これに対して独禁法上の歯どめがかけ得られないということは、この独禁法の持つ役割りと比較して、きわめて不公平ではないかという批判があるわけであります。いま中小企業界全体がこれに対して感謝したというふうに言われておるわけでございまするが、その要望の中でこういうように言っておるわけでございます。  一番大きな独禁法改正に対する要望、これはあなたは読んでおられると思いますから、あえて言う必要はないかと思うのでありますが、忘れておられるといけないので申し上げてみたいと思うのでありますが、その一番大きな要望として、「第一には、中小企業と大企業等との事業分野調整をはかることである。低成長経済下において、大企業等の中小企業分野への進出は目に余るものがある、公正かつ自由な競争は、独占禁止法の基本理念であるが、大企業等の進出は、優勝劣敗を通り越して弱肉強食の観を呈する場合さえ少なくない。このような資本の横暴に規制を加える措置がとられないならば、独占禁止法は、その存在意義さえも疑われることになる。」こういうように指摘しながら、あなたの方へ意見を出しておると思うのです。このようなことに対するところの配慮が、それではどのような意味において生かされておるのか、この際聞いておきたいと思います。
  20. 植木光教

    ○植木国務大臣 先ほど私御答弁申し上げましたのは、ある種の評価をしてくださったのに対して私の方から感謝をしたということでございまして、中小企業界から感謝を受けたわけではございません。その辺は御了承いただきたいと存じます。  いまのお話の中小企業と大企業との分野調整問題でございますが、これは私どもに対する申し入れの中にもございましたし、独占禁止法改正問題懇談会におきましても出ました議論でございます。これは、分野調整というものは独占禁止法の立場でやるというのではなしに、むしろ産業政策であるとか中小企業政策の観点から検討し、行うべきものであるというふうに私ども考えたのでございまして、この点については通産省といたしましては、あるいはまた他の関係省庁もございますが、中小企業と大企業との分野調整のために御努力をいただきたいと思うのでございます。  なお、大企業が不公正な取引方法を用いましたりあるいはまた私的独占に該当するような場合には、これはもう御承知のように独占禁止法で規制されるわけでございます。  それから、私ども今回の改正案に当たりましては、寡占状態というものにつきましての排除あるいは企業集中、グループ化、これに対しましての防止策というものを考えたのでございまして、その面において私ども独禁法上は十分に中小企業の立場を考慮したということを申し上げたいのでございます。
  21. 佐野進

    佐野(進)委員 長官独禁法をいま審議する責任者でありますので、これからなおいまの問題については若干詰めてみなければならぬ点がございますから、しばらく中小企業庁長官初めその他の人たちとの質疑を聞いておいていただいて、その時々質問をいたしたいと思います。  そこで、いまの長官答弁では私は大変不満足でございまして、中小企業界、いわゆる各団体ではなくして全体としても今回の独禁法改正に対して非常に大きな関心、それは関心だけではなく、この改正の問題を通じて大企業の横暴なる措置に対して歯どめをかけてもらえるのではないか、歯どめをかけるために具体的な成果がこの中から出てくるのではないかという大きな期待が込められておる、こういうことだけはここで強調しながら、次の質問に進んでみたいと思うわけであります。  中小企業庁長官質問をいたしますが、いままで私が各大臣委員長質問をしてまいりましたその趣旨については、十分御理解がいただけたものと思うわけでありますが、そういう理解をしてもらったということを前提にいたしまして、分野調整の問題に対して具体的な質問を続けていきたいと思います。  いわゆる今日の経済界情勢、なかんずく中小企業を取り巻く情勢は、高度成長から低成長へ変わり、その低成長が安定的に持続される、あるいは不測の事態をもし予想するとするならば、この低成長は相当長期にわたって持続されていかざるを得ないということになるわけであります。したがって、長期にわたる低成長というものは、既存の分野におけるところの仕事事業だけではその企業の存立を維持することすら不可能であるという条件が当然予想されるわけであります。したがって、各企業はその企業としての生き抜く方途を見出すために、渾身の努力をいま傾けてその対策に追われていると思うのであります。その渾身の努力を傾けるという経過の中で厚い壁、先ほど質問でもありました参入が不可能であるという状態の中へその努力を集中するのではなくして、参入可能であるというところに対してその努力を傾注する傾向がますます強まることは、現在のあらゆる方面において顕著にあらわれつつある状態だと思うのであります。  中小企業庁長官にお伺いいたしますが、今日の低成長経済が持続するという条件の中で、この種状態に対応して弱い立場に立つ小規模企業に対してどのような対策をとる必要があると判断されておるか、経済状態の現状を踏まえた形の中において答弁をしていただきたいと思います。
  22. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 中小企業が主として営んでおります事業分野に大企業が急激かつ大規模に参入をする、そういうことによりましてその分野におきます中小企業事業の相当部分が継続が困難になる、こういった事態は私どもとしては避けなければならないと考えております。そういったことが予想されるような大企業参入があります場合には、まず当事者間で十分話し合ってもらいまして、もしその話し合いが不調でありますれば、地方の場合には各種公共的な機関あるいは自治体、全国的な規模の問題でございますならば各主務省がこの問題に割って入りまして、両者の話を十分聞きまして、中小企業がこの問題に対応してみずからの体力をつくり、新しい技術を習得し、その大企業進出と平等に対抗して競争できるような事態になるまで、その大企業進出につきまして規模、進出の時期その他につきましてある程度自粛をしてもらう、こういうことを大企業側に要請をしてまいりたい、こういうように考えております。ただ、これを立法をもって行うかどうかという点につきましては、その影響するところがきわめて大きい面もございますし、物価問題、技術革新の問題あるいは消費者利益の確保の問題等々、多角的な影響のある問題でございますので、なお慎重に検討いたしたいというふうに考えております。
  23. 佐野進

    佐野(進)委員 長官は慎重に検討したい、こういうような答弁なんですが、これは大臣答弁と変わりがないわけですね。もちろん変わりがあってはいかぬけれども、しかし専門家の意見としてはきわめて皮相的見解に過ぎると思うのです。私も長官とは、この問題についてはこの場所で何回も議論を続けてきておるわけでありますから、その点について時間の変化とともに事態が大きく変わりつつあるということについては、長官は認識をしておられると思うのです。ことしの初めごろあるいはあなたが長官になられた当時と比べて、分野調整の問題が社会的に大きな問題になりつつあるということをあなたは認識しておると思うのです。したがって、中小企業政策、中小企業問題を処理する場合においては、この問題が避けて通ることのでき得ない重大な問題になりつつあるということは、あなたも認識しておられると思う。その認識に比較しては、いまの答弁がきわめて軽い答弁にしかすぎないと私はいま指摘を申し上げたいと思うのです。  たとえばあなたはいま、中小企業団体の組織に関する法律、この法律の第二十八条におけるところの組合協約の中においてそれぞれ定められた条項、この条項における精神を受けて答弁をなされたと思うのであります。それは単なる行政的な指導である、しかもその根拠はここに求められておるのである、このように解釈するのでありますが、それでよろしゅうございますか。
  24. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 大企業進出に対しまして中小企業が対応する現行法の規定といたしましては、中小企業団体法の第三十条に特殊契約制度というものがございます。これは大企業進出によって非常に影響を受けるおそれがございます場合には、商工組合がその大企業側と交渉をいたしまして、大企業進出の時期なりあるいはその進出の規模等につきまして話し合いをして、話し合いがまとまりますれば、それを両者間の協約とする。その場合には、その協約につきましては主務大臣の認可が必要でございます。もし、この話し合いがまとまらない場合には、主務大臣があっせん、調停を行うというふうな仕組みになっておるわけでございます。  ただ、この法律自体が発動されまして、特殊契約が結ばれました事例は、まだ一件もございません。しかしながら、これまで役所がいろいろそういった場合の調停を行いまして、事実上話し合いが妥結しておる例は非常に多いわけでございますけれども、これは背後にこの中小企業団体法の第三十条の規定がございまして、それをバックとして実際上の話し合いあるいは主務省によります調停が功を奏しておるのじゃないか、かように考えておる次第でございます。
  25. 佐野進

    佐野(進)委員 私ども分野調整の問題で議論をいたしますと、決まってこの二十八条から三十条に至る、あるいは三十条の二の項に至る条項の中で処理でき得るから、法的な規定は必要でないという答弁あるいは見解が示されるわけであります。しかし、いま長官のお話のように、この条項は制定されてから相当長い期間がたっておるにもかかわらず、実際上これが発動されたということはないわけであります。結果的に言うならば、この条項の発動というものが、大企業の持つ社会的な影響力と申しましょうか、あるいはまた通産省に対しあるいは主要な省庁に対して影響力が強いという形の中で、あるいはまた逆に言うならば、中小企業者の力が弱かったからという形の中で、これが発動されなかったとも言い得るわけでございますが、いずれにせよこの条項の発動は今後ともなかなかむずかしい、不可能に近いのではないかと私は判断いたしておりますが、長官はどうお考えでございますか。
  26. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 大企業進出してまいりました場合の過去の対処した実情を見てみましても、これを迎えます中小企業側といたしましても、なるべく法律の発動によらないで、実際上の話し合い解決できるものなら解決したい、こういうふうな意向が強いわけでございまして、その話し合いを促進し、またそれをバックアップするというふうなことで、実際上大半のケース解決を見ておるわけでございます。したがいまして、最後に法律を発動して契約を締結するというような形までなりましたケースは少ないわけでございますけれども法律が発動されたと同じような形での両者間の合意が成り立ったケースは非常に多いわけでございます。こういった過去の実情からいたしますと、今後もこの条文自体を発動するというケースはあるいは少ないかと存じますが、この条文の趣旨を事実上生かした形での、行政指導を含めた形での解決は今後も十分可能だろうというふうに考えております。
  27. 佐野進

    佐野(進)委員 私はいま長官答弁された最後の方は重大だと思うのです。この条項が発動することは少ないであろうがということは、ないと言えばこれは不適当な発言になりますから、少ないであろうがと、結果的に発動する意思がないのではなくして、発動することが不可能である、こういうようなことに受けとめられるわけであります。しかし、この種問題については、すでに大規模小売店舗法の制定に伴い商調協の発足等々、具体的にこの事業分野の確保と同じような法律的な効果をもたらす法律が現に実施されておるわけであります。そして、それに基づくところのこの三十条の二に書かれている特殊契約に該当するような事項が、通産局長指導のもとに現に行われつつあるわけであります。とするならば、なぜ事業分野法がこの法律の条項を生かすという形で、さらにそれを発展させた形の中で生かされないのか。憲法上疑義があるとか、あるいは技術革新が行われないとか、あるいは当該中小企業が停滞するとか、この種一般的な議論の中にだけこれを埋没させてしまうことはでき得ない情勢になりつつあるのではないか。だから、長官が、それらの問題についてそれにかわり得べき方策は何なのかと、こう私にいま質問されたら、どのような方策があるとお答えすることができるか、この際聞いておきたいと思うのであります。
  28. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 中小企業団体法によりまして、中央に中小企業調停審議会というものが設けられておりますが、従来はこの審議会の活用がやや不活発なきらいがございましたけれども、今後はこの審議会を、問題が起こりますれば頻繁に開催いたしまして、審議会の委員の御意見も承って、それを参考にしながら調停を進めてまいりたいというふうに考えております。  それから、地方的な問題の解決のために、各都道府県に都道府県の中小企業調停審議会を設置していただきたい、かように考えておりまして、昨年暮れに全国の都道府県知事あてにその要請をいたしたところでございます。  なお、各通産局に調停関係の専門官を設置することを現在検討中でございます。また、関係各省との間にも連絡会議を設けることにいたしまして、極力機動的に事態に応じましてあっせん、調停を進めるようにいたしたい、かように考えております。
  29. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、長官は、現在この種事業分野への進出によって弊害を受け、苦労しておる事業の存在しておることを御存じですか。
  30. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 この数年、特に最近問題の多いケースといたしましては、クリーニング業へのたとえば商社等の進出、それから地方都市におきますホテルの進出と旅館の間の紛争、それから印刷業におきます大手印刷業界進出の問題、そういうところがわりに頻繁に問題が起こっておる業種でございますが、最近におきましては豆腐業界に大手の食品会社が二社進出をする問題が起こりまして、現在なお調停を継続中でございます。
  31. 佐野進

    佐野(進)委員 このほか、私の手元にある資料によれば、多くの業界があるわけであります。その業界一つを取り上げてこれから質問を続けてみたいと思うのでありますが、長官と生活産業局長とお二人にお伺いしますが、その前に、長官はこの種問題に対して、それを行政的な指導の中で解決して、それら業界の人たちに対して心配をかけないで処理することができるという確信をお持ちですかどうか、この点ひとつお答えをいただきたいと思います。
  32. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 過去の事例におきましても大半のケース解決を見ておりますし、今後のケースにつきましてもぜひ解決するように最善を尽くしたいと考えます。
  33. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは、私はこれから一つの具体的な例を挙げながら質問をしてみたいと思うわけであります。これには総務長官もひとつお答えをいただきたい問題がございますので、御用意をお願いしたいと思います。  いま具体的な名前を挙げましたが、岩城硝子株式会社というのがあるわけであります。この会社は資本金が二十億八千万円、株主は旭硝子、その持ち株は十億三千五百八十四万円、その持ち株比率は四九・八%、さらにこれと同じような形においてアメリカの企業であるコーニング社、これが同じ数字の持ち株を持っております。その他きわめて数の少ない八百三十二万円、〇・四%、まさにこれは持ち株比率五〇%を超えさせないための操作による持ち株であると言っても差し支えないような形、いわゆる二社によって日米合弁による会社。しかも、その主要なる資本金並びに体制は旭硝子によって設立されている会社であると言って間違いはございません。そして、会長は旭硝子から派遣され、旭硝子の会長であり、社長は旭硝子を四十一年に退職された方であります。役員はほとんど旭硝子であります。アメリカのコーニング社側は非常勤の取締が六人にしかすぎないという典型的なダミー会社、いわゆる子会社であります。この旭硝子が今日ガラス業界において占めておる寡占的状態、いやむしろ板ガラス等においては独占的な状態、そのほかの分野においても独占的な状況を占める。日本において独占状態にある企業であるというものの名を挙げる場合、ビール業界とともに、その双壁をなす企業であることはよく長官局長等も御承知のとおりであります。  この岩城硝子が今日中小企業分野に対して進出を図り、その進出を図る経過の中でこれら業界の存立を脅かしつつある。そういう状態について、長官並びに生活産業局長は、その実態を御承知であるかどうか、この際ひとつ明らかにしていただきたいと思うのであります。
  34. 野口一郎

    ○野口政府委員 ただいま先生から岩城硝子の実態、概要につきましてお話があったわけでございますが、私どもの方の調べたところ、先生のおっしゃるとおりの資本構成あるいは役員構成でございます。  そこで、この会社自身は実は古いわけでございますけれども、昭和四十年ごろ一時会社が傾いて、その再建過程におきまして、以上言ったような旭硝子あるいは米国のコーニング社の資本参加を見て現状になっているわけでございます。  この会社の大部分の製品は、実はいま問題になっております理化医関係のガラスではございません。照明用ガラスあるいは食器等がこの会社自身の生産品としては大部分を占めておるわけでございますけれども、先生御指摘のようにいま問題になっておりますところの理化医ガラス等につきましても若干の生産をしておるわけでございますが、何分この業界中小企業を主体とする業界でございますので、この会社の動向いかんというものは、現在なかなか並み並みならぬ状況にありますところのこの理化医ガラス業界にとって大きな問題であるということは御指摘のとおりで、私どもそういうふうに認識しておるわけでございますが、最近この会社がガラス製造のための設備を増設する動きがございます。それに関連いたしましてこの業界で問題が起きておるということを承知しております。
  35. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 ただいま生活産業局長から御説明申し上げたとおりでございまして、この理化医ガラスの分野はほとんどが中小企業が製造しておる分野でございます。全体の八七%が中小企業で生産をされておりまして、残りの一三%が現在お話のございます岩城硝子が生産をいたしております。岩城硝子がこのものを生産を始めるにつきましては、昭和四十四年からでございましたけれども中小企業業界といろいろ話し合いをいたしまして、当時これは輸入が行われておりました高品質のものを主として岩城硝子が生産をする、そういうことで中小企業業界と話がつきまして、これまで両者併存という形で生産が続けられてまいったわけでございますが、ただいまお話しのように増設の問題が出てまいりまして、中小企業業界といま話し合いが行われておる状況でございます。
  36. 佐野進

    佐野(進)委員 この話し合いが行われているということでございますが、私がいままで質問を続けてきたその趣旨は、今日の経済情勢の中で分野調整のために法律をつくりこれを調整する必要がある、こういうことを前提にして、いま質問を続けてきているわけであります。  そこで、いま質問いたしましたとおり、アメリカのコーニング社と旭硝子株式会社との合弁によって岩城硝子がつくられている。そして、その岩城硝子が、いま生活産業局長答弁にありますように自動車用のヘッドライトのガラス、こういうものの生産を始めてから六年ぐらいたっておるわけでございますが、この仕事を始めるについても、当時通産省が中に入りその分野についての調整をいたし、特に理化学、医療用ガラス業界には絶対に進出しないとの約束においてこの認可がなされた、こういうように聞いておるわけでありますが、それに間違いございませんか。
  37. 野口一郎

    ○野口政府委員 先ほど申しましたように、昭和四十年にコーニング社の資本が入ったわけでございます。そのときにこの理化学業界との話し合いが行われたわけでございますけれども、今後、コーニング社の資本が入るに当たりまして、岩城硝子といたしましては中小企業業界にこれによって混乱を起こすことはない、こういう了承のもとに参入をいたしたわけでございますし、その精神は今日まで生きているというふうに考えてきております。
  38. 佐野進

    佐野(進)委員 私の質問していることは、その当時通産当局も中に入りそういう約束をしているということは間違いないか、このことを聞いておるわけであります。
  39. 野口一郎

    ○野口政府委員 先ほど言いましたように、昭和四十年のことでございますけれども、確かに役所も入りまして、この会社とそれからガラス業界と三者いろいろ話し合いをいたしました。そこで円満に話し合いがついたわけでございますが、その結果といたしまして会社の方から通産省の当時の軽工業局長に念書が入っているわけでございますが、その中身は、「中小企業を含む既存業界と協調を保ち、混乱を起こさないように十分留意をいたします。万一、そのような事態発生いたしました場合には、貴省の行政指導に従います。」こういう念書が入っているわけでございますが、そういうようなことにつきましては、同時に業界側も了承いたしました、こういう文書が役所に出てきております。
  40. 佐野進

    佐野(進)委員 中小企業庁長官、あなたはいま生活産業局長お答えになったことを聞いておられたと思うのです。あなたは行政指導によってこの種問題は解決してきたし、これからも解決する自信があります、こういうことをおっしゃっているわけであります。にもかかわらず、昭和四十年当時この会社がアメリカの会社と提携するに至る経過の中でそのような念書を入れながら、今日のような状態がまさに引き起こされようとしておるわけであります。この状況は、いわゆるブローイングマシンという機械を導入いたしまして、わが国の業界の生産分野であるビーカー、フラスコ、コーヒーポット、ガラス食器等、そういうような製造を本年五月より着手をしようとしておる。しかも、着手しようとするということだけでなく——公正取引委員会いますね。着手をしようとするだけでなく、この値段、でき上がった製品を現在の市価より相当低額で売り込みを図りつつある、いわゆる不当な価格をもって廉価販売をしようとしている。そして、この不当な価格をもって廉価販売をしているということは、すでに四十五年ベローマシンによるガラス細工管の市場進出を図り、当時におけるわが国ガラス管分野を完全に席巻してしまうという前歴を持っているわけであります。すなわち約束をしていながらその約束をほごにして、すでに新しい機械を購入してガラス細工管の市場に進出を図って、その進出を図る経過の中で、当初は安く売り、他の企業が倒産し、あるいは廃業した後において高い価格をもって売る、こういうような状態がもうすでに起こっておるし、いままさにそれと同じような形の中で、この業界に壊滅的な打撃を与えようとしている。こういう事例の中においては、あなたが言われた約束を守らせる、約束は実行されるということと全く相反した結果になると思うのでありますが、長官のこの点についての見解を聞かしていただきたいと思います。     〔前田(治)委員長代理退席、委員長着席〕
  41. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 岩城硝子社は先ほど生活産業局長が申し上げましたように、役所に提出いたしました念書の趣旨に添いまして、昭和四十四年に理化医ガラスの分野進出をいたしますときにも中小企業業界と十分話し合いをいたしまして、当時輸入品であった高級品の分野を国産化に置きかえる、こういう分野で新規に参入をしたい、こういうことで中小企業業界の了解もとりましてこの分野に入ってまいったわけでございます。  今回、増設の問題が出ておりますが、今度も両者共存共栄ということで当事者の間で話し合いがつくことを実は期待をいたしておりますけれども話し合いがつかなければ、役所としましては十分両者の意見を伺いまして適切な行政指導をすべきものかと考えております。  なお、価格が非常に不当廉売であったかどうかという点につきましては、これはコストとの関係になりますので、実情をしさいに調べなければいかんとも判断がつきかねるわけでございますけれども、もし不当廉売ということでございますれば、独占禁止法禁止をいたしております不公正取引に該当することになりますので、そちらの取り締まりが適用されることになろうかと存じます。
  42. 藤野公毅

    ○藤野説明員 お答え申し上げます。  一般論といたしまして不当廉売に当たるということであれば、不公正取引として規制できるというふうに考えますが、具体的事案についての判断については、発言を差し控えさせていただきます。
  43. 佐野進

    佐野(進)委員 私はいま長官の御意見を聞きながら、だからということを強調したいと思うのです。あなたは、今日の情勢の中で事業分野法律制定することは、これとこれとこれがあるからしない方がいいのだ、それに対応できるためにこれとこれとこれがあるから十分なんだ、こういうお話でありました。大臣もそう言っております。しかし、それでは中小企業者が満足しない、中小企業者というのは単に一部の人でなくて、あらゆる中小企業の団体の人たちが満足しない。しかも、消費者の相当部分の人たちすらこの問題について一定の理解を示しているということは、中小企業庁がアンケートによって調査され、この年次報告の中で明らかにされているわけであります。こういう状況の中で、この種問題に対する適切な処置が図り得ない。約束をしてあった、約束をしてあってそれはいたしませんと念書まで入れている。念書まで入れているにもかかわらず、新しい機械を導入してその分野に入ろうとする。入ろうとしたとき、あなたは役所、通産省が入ってすでにそれを決めているにもかかわらず、業者を呼んで話を聞いてできるように行政指導をしましょう。行政指導でありますから、できなかった場合はその問題について役所としてはそれ以上の措置をとることができ得ない。それ以上の措置をとるということは、それは事業分野法律以外において措置をとり得ないと思うのでありますが、長官いかがですか。
  44. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 ある時点で役所がとりました念書等につきましては、その後のまた経済情勢の変化等によりまして内容が変更されることは間々あるわけでございまして、今回のケースも外資が入ってまいりましてあの岩城硝子が形が変わりましたときには、理化医ガラスには進出しないという念書があるいは入っておったのかもしれませんが、その後の情勢変化で輸入品を国産化するというような事態が出てまいりまして、その場合に、もし念書がなければ自由にやったかもしれませんけれども、十分中小企業業界話し合いをして、その了承の上でその分野進出をした、こういう経緯になっておるわけであります。  今回につきましても、現にその増設の問題につきましては話し合い中小企業業界と行われておりますので、その話し合いが実ることを期待をいたしておる次第でございますが、もし話し合いが不調になるようでございますれば、十分両者の意見を聞きまして適切な指導をいたしたい、かように考えております。
  45. 佐野進

    佐野(進)委員 長官答弁では、あなたの持つ権限が少ないからそういうことしか答弁できない。これは中小企業省の長官であればもっと思い切ったことが言えると思うのだけれども、それだから困るのだよ。だから、われわれは中小企業省をつくりなさい、こう言っているわけだ。しかし、あなたの持つその仕事責任の限界としては、その程度の答弁しかできないということは、やむを得ないと思う。だから、あなたもひとつ勇気を持ってこれは中小企業分野法律をつくるか、それに類するような行為をするという、そういうことについてはっきりした約束をとるように、あなた方に対してわれわれは省をつくってやりなさいと激励をしている立場において、通産当局なり政府に対して——政府というか、そちらに総理府長官いるけれども、総理府の方に対してひとつもう少し強い要求を出してもらわなければならぬと思うのです。  そこで、生活産業局長、あなたはいまこのガラス業界の問題については念書を取り交わしており、そのような状況を把握しながら積極的に対処する、こう言われておるわけでございますが、もしこの機械の導入、そして操業の開始ということになれば、この業界は前のときすでに完全に多くの会社がつぶれているわけですね。すでにつぶれているという事例を背景にしてこれを認めるということは、いま置かれているこれら業者を再びつぶしてしまう。前回のときはまだ社会的な情勢がよかったから転廃業をすることも可能であったけれども、今回はそれすら不可能であるという血の叫びがあなたの耳にも通じていると思うのであります。そうした場合、あなたの権限でこのことを強制的にやめさせる、そういうことを図る決意を持って対処する、こうしなければならぬと思うのでありますが、いまあなたの置かれている立場においてどういう決意であるか。そして、長官政府を代表するような、また大臣でございますから、いま私が質問した条項、先ほど質問を続けてきた経過の中で、この状態に対してどう処理することが適切であるか、お考えをひとつお示しいただきたいと思います。
  46. 野口一郎

    ○野口政府委員 岩城硝子が今回導入いたしますブローイングマシンでございますけれども、これは先ほどちょっと触れたかと思いますけれども、非常に自動化された能率のいい機械でございます。ただ、これはいろいろなガラス製品をつくることができるわけでございまして、いわば多目的に使える機械でございます。もちろん当然のことながら、その使い方によっては理化医ガラス製品もつくることができるわけでございますけれども、そういう理化医ガラス製品のために導入したというふうに聞いておるわけではございません。会社の近代化、合理化のために入れたわけでございます。したがって、問題はその入れた機械の使い方なりあるいは何をどのようにつくってどのように売るかという今後の問題にかかるわけでございます。  この問題が起きているということは、私どもの方も行政的にキャッチをいたしまして、両当事者と話し合いをし、かつ当事者間での話し合いを勧めて、実は強力な行政指導をやっておるわけでございます。もちろんその根拠は単なる設置法や何かでなくて、先ほど申し上げましたように念書もあるわけでございます。今後通産省行政指導に従います、こういう誓約が入っているわけでございます。私どもは何もそれをひらひらひらめかしたわけではございませんけれども、先日来行政指導をやってまいりました。会社の方も誠意を持って解決に当たります、こういうことをはっきり申しているわけでございます。実は近々のうちに両当事者間の話し合いが持たれるということを聞いております。円満な解決のめどがついたことを、私どもも喜びに思っておる次第でございます。そういうことで、私どもも今後全力を尽くしまして、本件が円満に解決するように努力を続けるつもりでございます。
  47. 植木光教

    ○植木国務大臣 いま岩城硝子の具体的な問題を拝聴いたしておりまして、中小企業者の事業分野を擁護するために、政府といたしましては具体的には通産省が強力な行政指導をせられるべき問題であり、これが第一義的な問題であるというふうに認識をしておるのでございます。  さらにまた、不当廉売と不公正な取引がございましたならば、これは公正取引委員会が運用せられるわけでございますが、その面において規制をせられるべきものだと考えているのでございます。  いずれにいたしましても、事業分野調整というものは競争を促進させるというたてまえを崩すことがあってはならないと思うのでございますけれども中小企業者が十分な事業活動が展開できますようにあらゆる努力を政府としてもしなければならないと考えるものであります。
  48. 佐野進

    佐野(進)委員 私は岩城硝子という名のもとにいま問題の提起をいたしておりますから、社会的に見るならばそう大きな会社ではないと思われるような印象もあろうかと思います。そこで、私は冒頭申し上げましたとおり、この会社の株式構成は、株主ももちろん株式会社の内容等々、すべて旭硝子によって運営されている、こう言っても言い過ぎでない状況にあるということを強調したわけであります。今日のガラス業界は、特に旭硝子の持つ寡占的状態、独占的状態というものは、三社以外にはすでに板ガラスであるとかその他の業種の中に入り込むことすらむずかしい状況である。新規参入はもちろん、いろいろな問題についてむずかしい状況である。そういうことだけでなく、あらゆる事業、本当に中小企業だけしかなし得ないと思われるような事業に対してこのような子会社をつくる。つくった子会社に基づいて、それを事業分野として自分たちの分野の中へ吸収する。その吸収することを幾つかの段階を経て行わせる。それで、結果的に岩城硝子と旭硝子が合併する。吸収合併するということになるならば、これはますます全業種にわたって独占的状態高度寡占状態をつくり出してくる大きな条件になっていくと思うのであります。そして、高度成長から低成長を続け、新しい事業分野に向かって何とか生きる道がないかと模索しつつある大企業は、よだれのたれるほどおいしい、好ましい条件にある幾つかの業種に対しては、手段を選ばないでこのような方向をもって、あるいはおいしくなくとも、多少まずくとも、これが栄養になるならば、それをやろうとして参入を図ることは火を見るより明らかな状態になりつつあることは、この一例をもってしてもわかると思うのであります。  総務長官にもう一度お尋ねいたします。こういう点について政府のとるべき積極的な姿勢を、産業政策と独禁政策を絡める形の中で独禁法改正するという状況の中でいまその法案を提案されておる総理府総務長官にお尋ねをしたいと思うのです。  さらに、もう質問は終わりますが、中小企業庁長官先ほど来長い時間をかけてあなたに質問をしました。結果的に私の言うことの持つ意味をあなたはよく理解でき、あなたが政府の役人の一人としての形における限界としてそれ以上お答えができないとしても、分野調整という問題の持つ今日的課題というものがいかに重要であるかということを御理解になられたことだと思うので、その点についての見解をお聞きしたい。  さらに、生活産業局長は、この問題が提起されて以降のあなたの取り組みは、私は率直に言って時間的に遅かったのではないかという気がいたします。しかし、問題が発生し、業者間における調整が行われたのではなくて、業者間におけるところのトラブル発生したという状態の中においてあなた方の方で条件を察知されたと思うのであります。今後はこの種問題については、先ほど言われたような積極的な取り組みをすると同時に、早く情報をキャッチして対処させることを要望いたしておきたいと思います。  産業局長には要望、あとの二人にお答えをいただいて、私の質問を終わります。
  49. 植木光教

    ○植木国務大臣 先ほど来の具体的な事例によりまして、大変勉強させていただきましてありがとうでございました。今回の独禁法改正に当たりましては、産業の活力を弱めることがないように、また競争を刺激しなければならないという観点、また中小企業も近代化への意欲を持っていただきたい、そういう観点から独禁法改正を行ったわけなのでございます。事業分野の固定化というものがもし競争を阻害するというようなことになり、あるいは活力を失うというようなことになると大変でございますので、この点につきましては行政指導の面で、あるいはまた業者間の十分な話し合いによって行っていただきたいと思うのでございます。ただ、今回の独禁法改正案の中にも、また現行法の中にも、不公正な場合あるいは私的独占の場合あるいは寡占的な場合、企業集中的な場合はこれを規制するという内容を盛り込んでいるのでございますから、どうぞ法案が成立をしますように御協力のほどをお願いいたします。
  50. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 分野調整の問題につきましては、一面におきましては公正な競争の確保ということに気を配りますと同時に、非常に大規模かつ急激な大企業進出等によりまして中小企業に一時的に大変な悪影響がある、こういう場合には迅速機敏に適切な調整行政指導を行いまして、中小企業事業機会の確保を図ってまいりたいと考えます。と同時に、一番基本的な対策中小企業自体の体質の強化でございますので、そういった意味での中小企業の近代化につきまして、各種の助成、指導をさらに強化いたしまして、中小企業が、特に組織化等を通じまして大企業と対抗して競争がやっていけるように、その振興、助成に努めてまいりたいと思います。
  51. 山村新治郎

    ○山村委員長 塩崎潤君。
  52. 塩崎潤

    ○塩崎委員 私は独占禁止法につきまして、若干の御質問を申し上げたいと思います。  今回の改正案につきましては、これまでワンラウンドの質疑が終わったと言われておりますけれども、何といたしましてもこの独占禁止法はいわゆる経済憲法と言われる重要な法律でございます。そして、今回の改正案は、御承知のように独禁法のこれまでの流れを変えたという一つの大きな評価があるわけです。このような流れの方向、あるいはアメリカから移植されました植物がまた別な形で移植された、このようなことを非常に重要に考えるものでございますので、若干の質問を申し上げたいと思います。  まず、総理府総務長官に、この独禁法に取り組む基本的な姿勢はどんなものであるかということをひとつ御質問申し上げたいのでございます。なぜこんなことを申し上げるかと申しますと、これは前置きなんですけれども、具体的な制度の内容については後で御質問申し上げますけれども、まず前置きでひとつ長官考え方伺いたいわけでございます。  そこでまず第一に、なぜこんなことを言うかと申しますと、独禁法は御承知のように日本で生まれた植物ではないわけでございます。昭和二十二年に、私ども若いころ大蔵省におりましたときに、アメリカの占領政策の一つとして始まったのがこれでございます。したがって、国民はどうも占領政策として受け入れた傾向がある。したがって、これまでの流れは、御承知のように昭和二十四年、二十八年、これはむしろ緩和の方向をたどってきたわけでございます。法律の面におきまして緩和され、あるいはいろいろと趣旨が変えられましたほかに、運用の面におきましても非常に憶病な運用が行われてきた。そして、結局、八幡、富士の合併というような事態になったわけでございます。しかし、昨今大変変わってきた。しかし、これは物価問題で変わってきたのかどうか、このあたりが私は問題だと思うのです。  そこで、これは三木内閣の三枚看板の一つですが、三木内閣とか何とかというような一つの内閣よりも、ともかくも自由主義政党としての自由民主党、これはやはり独占というものあるいは不当な経済力の集中というものは排除する、そして競争を確保することによって消費者の利益を図るということは、当然自民党の政策に合致した基本的なものだと思うわけでございます。  ところが、これまでの経過はそうなっていない。そうなりますと、今度はひとつ、公正取引委員会委員長が、ごらんのとおり強力なる委員長でございますが、その委員長の提案に基づいていやいや改正した。また、公取委員長が最近予言しておりますように、自分の後は穏やかな人が来るであろうとイエス・キリストみたいなことをいま言っておられるわけでありますが、委員長がかわられたら、また前のようにこれは独禁法を骨抜き改正あるいはもとの姿に戻すのかどうか。このようなことになるのかどうか、ひとつ私は伺いたいわけであります。  とにかく公取委員会にだけ任して、そうしてその公取委員会を激励するのは、自由民主党じゃなくて、本当に自由主義的な処方せんを経済に対して持っておるところのわが自民党じゃなくて、むしろ企業の公有化とかあるいは社会化を考えておられますところの社会主義政党あるいは社会民主主義政党の激励が公取にあって、そんなかっこうで改正が行われるような姿があったら私は残念だと思うのです。このような問題につきまして、総務長官はどう考えられるか。これは閣僚の一人、国務大臣の一人であるほかに、総務長官は有力なる自民党のリーダーでございますので、ひとつ自民党のリーダーとしてでもお答え願いたい。
  53. 植木光教

    ○植木国務大臣 ただいま塩崎委員が御指摘になりましたように、私どもがこの改正案に取り組みました基本的なねらいは、自由経済に新しい活力を与えるということでございます。申し上げるまでもなく、経済は大変変貌を遂げてまいりました。私どもといたしましては、この変化に適応いたしまして、公正かつ自由な競争のルールを確立いたしまして、自由主義経済が活力をもって運営せられるということをねらいといたしているのでございます。その結果として、国民経済が一層発展してまいるということに寄与いたしたいという一念でございます。  独占禁止法の規定が適正に運用されることは必要であり、かつ当然のことでございます。公正取引委員会委員長あるいは委員の方がかわれたからといって、その独占禁止法の運用が変わるということであってはならないのでありまして、あくまでも企業が創意工夫をもって企業自身の努力をいたしますとともに、競争政策というものが十分に企業に活力を与えていくようにということを私どもは念願をいたしております。  とりわけ今回の改正に当たりまして、事業者にこの公正かつ自由な競争を行うことを尊重するという意識を持っていただきますとともに、国民にもまたそれを持っていただきたいのであります。いわゆる独禁法マインドというものが定着することによりまして、自由主義経済が大いに発展をしてまいりますることを私どもは強く念願をしているところでございます。
  54. 塩崎潤

    ○塩崎委員 総務長官はそのように答弁として言われたと思うのです。いま最後の方に、国民に独禁法マインドが定着するようにというお話がございましたが、しかし長官、私が指摘したこれまでの経過から見ても、まだまだ独禁法マインドというのは定着しておらぬのじゃないでしょうか。そして、これから定着することもそんなに楽なことではない。よほど政府あるいは政党、国会全体が力を挙げていかなければ簡単にいくものじゃないと私どもは思っておる。恐らく高橋委員長が交代されたら、またもとのもくあみになるおそれは多分にあると思って私は心配するわけです。それは御承知のように、独禁法というのはアメリカから来たマインド、哲学なんです。御承知のようにアングロサクソン流の、とにかく数人が共同して共謀する行為というものは、一人が策動する行為よりも悪いというアングロサクソン流の法律観、コモンローの考え方から来ているわけです。そんなような思想は日本にはないわけです。イギリスにすらそれはそんなに目覚めなかった。ヨーロッパでも、御承知のようにむしろ日本と同じように、資本主義社会の無政府状態を克服するためには協調とか話し合いとかあるいはカルテルなどがいいんだというようなことで長らくやってきたわけです。いまでもそうでしょう。私だけじゃない。恐らく野党の方々でも、中小企業者の団体の会合などに行けば、中小企業は団結せよ、協調しろと言う。協調は、これは独禁法の大きな障害になっているわけでございますから、いまの総務長官の御答弁答弁だけであって、これを本当に生かすにはよほどのことをしなければいかぬ。どうしたらそういうことができますか。経団連のおえら方の話を聞いてごらんなさい。独禁法のマインドなんてある人は一人もいない。中小企業もないと思う。それをどうしたら独禁法マインドが定着できるんでしょうか。私は一片の法律を直しただけで独禁法マインドが定着するとは思わないのです。むしろ独禁法マインドがない、道徳的な根拠づけがない、国民感情のサポートがない、習慣のサポートがないためにこれまで高橋委員長が苦労してきたと思うのです。そうでしょう。私は高橋委員長には質問しなくても、高橋委員長はいまうなずかれておった。どうなんですか。これはモラル、感情の問題なんです。これを直すにはどうしたらいいか、何か成案がございますか。
  55. 植木光教

    ○植木国務大臣 今回の改正案策定の過程におきましても、独占禁止法というものに対する国民の関心は非常に強うございました。しかし、この間大きく言いまして二つの誤解があった、またその誤解は解けつあるわけでありますけれども、あったということを言わざるを得ないのでございます。  一つの誤解は、この独占禁止法というものは経済の活力を失わせる、また改正をすることによって自由主義経済の活力が失われるものであるというのが一つの誤解であります。これはそうではなしに、先ほど来申し上げておりますように、自由主義経済に活力を与えるものであるということの認識をぜひ事業者にも持っていただきたい、国民にも持っていただきたいと存じます。  もう一つの誤解は、独占禁止法によって物価が直ちに下がるんだという誤解がございました。まだその誤解を持っておられる方もございます。もちろん、言うまでもなく、この独占禁止法というものがその運用によりまして結果的には物価の安定につながるということは、競争原理が働くわけでございますから当然でございますけれども、しかし短絡的に物価が下がるというような、そういう誤解は解いていかなければならないと思うのであります。  そこで、一体独禁法マインドが定着するための具体的な方策があるかということでございますけれども、これは私どもといたしましては、今回の改正を行うに当たりましていろいろなルールを確立いたしました。ルールといいますのは要件的な基準でございます。この基準というものを徹底させることによりまして、要件を徹底させることによりまして、企業者は企業者としてその基準あるいは要件というものを十分に認識していかなければ、自由かつ公正な競争にはならないのだということを深く自覚をしていただきたいと思うのであります。  また同時に、国民全般としても、今回は、たとえば違法行為に対します具体的な事実を指摘いたしますのに対しまして、公正取引委員会がその対処の仕方について通知をする義務を負うに至りました。こういう制度も活用をしていただくことによって独禁法マインドが国民の中にも定着をしていく。要するに、今回のこの法律改正案によりましてさらにわれわれも啓蒙をしてまいりますが、同時に、改正案そのものが独禁法マインドというものを国民の中に植えつけていく道であるというふうに考えておりますので、その点について御理解をいただきたいのでございます。
  56. 塩崎潤

    ○塩崎委員 大変むずかしい問題で、いまのようなお答えは本当に表面的なお答えだと思うのです。独禁法の理想などはもう昭和二十二年から伝えられて、法文を読んだ人は、日本字が読める人はだれでもわかっているのです。それが生きてないことを私は言っていますし、狂乱物価だけの短絡的な措置対策というような感じでいま出てきておるだけに、私はこれから大変心配するわけでございます。しかし、ともかくもドイツでもイギリスでも日本よりもおそく独禁法を始めた。御承知のとおりです。それだけに苦労していると思うのですが、ドイツではこれがだんだん定着してきたという。おとといでしたか、倉成委員の提案の中に、各省の中に独禁法マインドを、独禁法政策といいますか、志向するような仕組みはどうかというような御質問があったようでございます。一つ考え方だと思うのですけれども、本当に各省は、いままでのいき方——これは後で行政指導の問題を一つ取り上げなければならぬと思うのでございますけれども、反独占的な公取よりも、むしろ独占助長的な、競争制限的な行動が行政指導と理解されてきておる傾向がある、それを変えなければならぬというようなことですと、そんなに簡単に倉成委員の提案は受け付けないだろうと思うのです。私は、各省よりもむしろ内閣全体として、公取だけに任せないで、この独禁法の問題をキャンペーンする、あるいは教科書などは、私はアメリカの教科書を見ましたが、日本の教科書と違って、本当に子供のころから独禁法というものは大したものだというような教科書が見られるわけです。何か一つ考えなければ、本当にまたもとのもくあみのように、狂乱物価の問題がしぼめばまたもとのようになるのじゃないでしょうか。そして、経団連の方々とお話しになっていただいたら、それが如実にわかると思う。経団連のあのような一流の最も教養のある人々、所得の高い人々、この方々の頭を直す方法というものはないものでしょうか。私は大企業からこの問題についての考え方を直さなければいかぬと思うのですが、総務長官、何かいい方法はありませんか。
  57. 植木光教

    ○植木国務大臣 今回の改正案を策定するに当たりまして、関係省庁との意見の交換を再々いたしました。また同時に、関係閣僚会議も数回開いたわけでございます。その関係閣僚会議におきまして私自身も痛感いたしましたし、閣僚の中からも御発言がございましたが、公正取引委員会とそして独禁法関係いたします関係省庁、さらにまた具体的に経済運営している経済団体なり経済人というものが常時意見の交流を行う、これはもちろん公正取引委員会の職権行使の独立性を侵すものではなくして、むしろその運用が適切かつ円滑に行われるように、また同時に、各関係省庁におきましても、あるいは経済界におきましても、中小企業を含めてでありますが、独占禁止法というものの持っている重要な意味を十分に認識する上においてもそういう意見の交換が必要ではないかというようなことを私ども考えたのでございまして、具体的にはやはりそういうところから始めることによって、関係省庁にいたしましても、あるいは経済界にいたしましても十分な認識を持つに至るのではないかと思います。仰せのとおりアメリカにおきましてもあるいは西ドイツやイギリスにおきましても、独禁法マインドというのは国民に深く浸透をいたしております。わが国もまたそのような姿にならねばならないというふうに考えておるものでございます。
  58. 塩崎潤

    ○塩崎委員 時間がありませんので次に進みたいと思いますが、いま長官はキャンペーンの方法一つとして、今度の改正に当たっては要件を徹底させて、それを通じて企業にその要件を守っていただいて、独禁法のキャンペーンをするというようなお話がございました。その意味を私が完全に理解してないせいかもしれませんけれども、これまでの運用について公正取引委員会の運用も十分ではなかったと私は思うわけです。しかし、十分でなかったという理由は多々あると思う。その中に、いままでの独禁法というものが日本の風土に合っていない法律構成をとっておったんじゃないかという疑問を私は持つわけであります。それは日本人というのは法律の規定を厳重に書いていただいて、要件を明確にしていただいて、それに基づいてその法律を事実に適用する、いわば大陸法的な頭で明治以来教育を受けた国民でございます。ところが、独禁法はアメリカからもらった法律です。したがって、その規定の仕方はコモンロー的な、事実から法律をつくり上げるやり方、ケース・バイ・ケース考え方ができ上がっておったわけでございます。それでも私は、昭和二十二年にこの独禁法の作成のときにいろいろと質問をして、本当にこの独禁法は私どもにはこわくて、これをどのように解釈するかというようなことを盛んに聞いたことがあるわけであります。そのときにアメリカ人に言われましたのは、おまえらの頭は大陸法の頭だからコモンローの思想がわからぬのだ、これはケース・バイ・ケースで事実を積み重ねたその中で法律、判例法ができ上がっていって、初めて独禁法というものは経済が生き物であるというそれに対処する法律として値打ちが出てくるんだ、こんなことを習ったわけでございますが、昭和二十二年からこれまでの——高橋委員長になられてからは別ですよ。この委員長はまた別なんですから、これは別に考えなければならぬ。それまでの法の運用の仕方は、余り規定がコモンロー式な——アメリカ人はこれでもまた書き過ぎておると当時は言っておりました。しかし、それでも日本人には規定が明確性を欠く、したがってこれをどう遵守していいかわからない。さらにまた、公正取引委員会も余りに規定が包括的であり、名刀過ぎて、抜くとどんな切れ方になるかわからないというわけで抜かなかった傾向があると思うのですね。アメリカでは二十六件も適用されております。シャーマン法の第二条なんか読んでいただいたら、法三章までいかない、法二章ぐらいの規定で会社分割までをやっておるわけであります。ところが一方、七条の営業の一部譲渡という規定がありながら、これを抜いた事例はない、こう言われるわけです。あるいは株式の処分くらいについてはあるというふうに解釈する方もおりますが、私はないと見るのです。それから、株式の保有制限についても本当に私ども中小企業者の支配権を支配される、それは独禁法をうまく運用したら相当防げると思っておるのですけれども、それをこれまではそんなに適用していない傾向がある。ちゃんと伝家の宝刀は持っておる。それをケース・バイ・ケースでやって、世の中の人はこういったことはやはり独禁法に違反するんだなということがわかってきて、初めて独禁法の精神も生きてくると思ったのですが、私はそれは日本には向かないと思うてきた。結局日本人というのはケース・バイ・ケースの思想よりも、やはり法律を明確に書き、厳密に書いていただいてそれを適用して安心する民族、アメリカ人のように個性が発達しておって、公正取引委員会の適用がけしからぬと思えばどんどん裁判するというような国民性ではないわけですね。裁判ざたというか、むしろ訴訟、ケース・バイ・ケースのやり方をきらう。佐野委員が言われましたように、いや団体法に特殊契約があって、これを一々調停へ持ち出すというようなことがあるけれども、これもアメリカ流の考え方なんですから、こんなことはいけない、やはりそんな調停、紛争になる前に片づける仕組みが私は日本人に向いた法律構成だと思うのです。その意味から私は、いろいろと野党の委員の方々から御批判がありましたけれども、今度は比較的進歩の方向に行ったと思っておるのですよ。独占状態について、委員長は、余りいろいろと書き過ぎておる、確かに時計の振り子のように行き過ぎた面もありますけれども、私はこれによって初めて規定が明確になって、国民は、企業一つのルールがわかってくる、やみくもにやられることがないという安心感がある。日本はまだこんなところなんだとすれば、これが国民性に合ったら、日本人のメンタリティに合っているとすれば、これをやっていく方向も一つの方向だと思うのですが、そんなような書き方でひとつ考えられてきたかどうか、私はそういうふうに考えておるのですが、どうですか。
  59. 植木光教

    ○植木国務大臣 塩崎委員御指摘のとおりでございます。アメリカは判例の積み重ねによる判例主義をとっておりますが、わが国の場合にはこれが大変なじみにくいのでございます。事業者が事業経営してまいりますためには、指針を与えておきませんといたずらに不安を与える、あるいはまたそれによって活力を失わせるということになるわけでございます。したがいまして、いま御指摘のように今回は要件的な基準を明確化することによりまして競争原理が生かされていくようにという配慮をしてきたところであります。
  60. 塩崎潤

    ○塩崎委員 そのいまの法律を厳密化する今度の新しい流れですね、この問題に入りましたので、その問題で、今度の改正案でちょっと横道に入りたいと思うわけでございます。  私はこの次には行政指導というものを少し高橋委員長と同調して——同調値上げてありませんが、攻撃したいと思っておる。やはり法治国家なんですから、法律の命ずるところに従って行政も行わるべきだ、こういうふうに私は思うわけでございます。したがって、法律はわずかの人が解釈するだけでなくて国民全般が解釈する権限がある。国税庁の何とか通達というようなことは私はおかしいといつも主張している方でございますが、そこで今度の改正案に関して、これは法律論ですよ、私はこれはどんなに法律を読んでも出てこないのですが、「公取委員長答弁」ということで、一昨日の読売新聞に、「独禁法積極的に運用」、積極的という意味はむずかしくてわかりませんけれども、こんなことくらいは私は何も言うわけじゃありません。まず第一に御質問をしたいのは、例の価格の同調的値上げに関する報告の徴収、これは同調値上げは三月以後も摘発するというふうになっておりますですね。これに対してこういうことが書いてあります。「改正案によるとトップ企業を含む二社以上が三ヵ月以内に同率、同額の値上げをした場合、企業は値上げ理由を公取委に報告することになっている。このためトップ企業だけが値上げ時期を三ヵ月以上ずらせた場合、規制の対象にならないと一般に受け取られていた。」と。これに対して、高橋委員長はさすが法律家ですから、「現行独禁法第四十条にある調査権を活用し、三ヵ月と一日とか、三ヵ月と一週間後に値上げしたトップ企業にも、原材料費など具体的な数字に裏づけられた値上げ理由の報告を求めるようにしたいと厳しい方針を述べた。」ここなんです。私は三月というふうに切ること自体——これはおおむね三月とか、適当なる経済上の常識の範囲というふうな表現で、それこそそういう書き方にして、このような問題ぐらいは公正取引委員会ケース・バイ・ケースの適用でやるべきだと思っておったのですが、しかし一たんこういうふうに書いてくると、高橋委員長のこの解釈はおかしい。これまで、同調的値上げにいろいろと報告を徴収する権限というものが中心の規定と考えられていない四十条を活用して、新しく入れた四十条の二と同じように運用していくのだという行き方は私はどうかと思うのですが、総務長官、どうですか。これは法律論ですよ。内容は私、何も反対しているわけじゃないのですよ。むしろ立法上の問題として考えるべきである。こんなような勝手な解釈をされるということは、法治主義の限界を脱するような気がするのですが、総務長官、どうですか。これは立案した立法者として御答弁願いたい。私は、総理府総務長官は公正取引委員会の案だけにこだわって書かれた法律じゃないと思う。広い角度から、そしてまた今後いろいろな問題を解決していくということをこれまで言ってこられたのですから、このようなことになりますと、法律論として私は大変危険だと思うのであります。昔のような官僚の非常に勝手な解釈が横行するような時代に逆戻りするということは、私は国会として警戒すべきだと思うのです。
  61. 植木光教

    ○植木国務大臣 私から申し上げるまでもなく、第四十条は調査のための強制権限でありまして、これは違反事件及び疑いのあるものに対しまして発動せられるものであると考えております。  四十条の二項は、新たに同調的な引き上げが同一または近似して三ヵ月内に行われた場合に報告をとるということになったものでございまして、これは別個の新しい規定でございます。したがって、公正取引委員会委員長の御答弁は、四十条を適用すべきものについては、その職務を行うために調査をする、こういう考え方で述べられたと思うのでございまして、そうでありませんと、四十条の二項を新設いたしましたことは意味がなくなってしまうわけでございます。私はそのように考えております。
  62. 塩崎潤

    ○塩崎委員 私も、総務長官のお話の方が法律論として、法律の解釈として正しいと思うのです。ただ、私は委員長の気持ちは十分理解できる。しかし、それならいま申しました四十条の二をそのように改正して、適切なる対策をとるべきだ、こういうふうに思うのですが、それも含めてひとつ御検討を願いたいと思います。  それからもう一つ、新しく入りました八条の二の第一項、不等な取引制限等に対する排除措置、これも一昨日の読売ではこんなふうに書いております。これも法律論としてどうかと思うわけでございます。「さらに価格の引き下げ命令にかわる措置として改正案に盛り込まれた不等な取引制限の排除措置は、カルテル破棄後にとるべき具体的な措置内容を届け出て、その実施状況の報告を公取委員会が命ずることになっている。しかし、その具体的な内容について、これまで明らかにされていなかったが、高橋委員長は「実施後の具体的な内容は各企業が価格を引き下げて届け出ることだと理解している」と答えた」こうあるわけですね。しかし、私も小学校のみならず大学までは出たのですけれども、そういうふうに文字の上から読めない。総務長官、どうなんですか。委員長のお気持ちはわかるのですけれども、こういうふうなことでひとつ運用を行われるならば大変な危険性がある。せっかく総務長官が厳格なる規定、厳密なる要件と言いながら、厳密なる要件が一片の解釈で崩れるじゃありませんか。ここまでの解釈は私もよろしい。それが必要ならば、そういうふうに法律を直したらどうですか。総務長官、どうです。
  63. 植木光教

    ○植木国務大臣 その点につきましては、その具体的な措置内容といたしましては、それぞれの違反者が、破棄後にとるべき措置考えるわけでございます。価格の場合、市場の実勢を反映していないものであるといたしますならば、価格の点についても具体的な措置をとるべきである、こういうふうに考えるのでございまして、一律にどうであるというふうには考えておりません。
  64. 塩崎潤

    ○塩崎委員 これは大事な問題でございますので、法制局の部長が来ておられると思うので、法制局からもちょっと付言していただきたいのですが、往々にいたしまして法律ができて一人歩きするおそれがある。それがいまの総務長官の意思に反して変な形のケース・バイ・ケースが出てきたり、事実ができたら大変だと思いますから、ちょっと法制局からもお答え願いたいと思います。
  65. 味村治

    ○味村政府委員 括孤書きでつけ加えましたものは、当該措置の実施後、当該違反行為影響を排除するためにとることとなる具体的措置内容の届出及びその実施状況でございまして、その具体的措置は、これはそういう何らかの具体的措置をとる必要があると申しますか、当該違反行為影響を排除するために何らかの具体的措置をとる必要がある、このように公取が判断した場合に、このような命令をすることができるようにしてあるわけでございます。したがって、この具体的措置内容は、やはり違反をいたしました事業者が決めるということでございますが、しかしこれは具体的措置であり、しかも公取がそのような違反行為影響を排除することが必要だという判断に立ってなされるわけでございますから、少なくともその違反行為影響を排除するために効果のあると考えられる具体的措置であることを要するというように考えております。その場合に、価格の再交渉をするとかあるいは違反行為、カルテルを破棄したことを公表するというようなことも具体的措置になり得るとは思いますが、これは一律に決まるものではないというように考えております。
  66. 塩崎潤

    ○塩崎委員 ちょっと明確じゃありませんでしたが、これは私なぜ聞くかと言うと、価格引き下げ命令というものは政府の、政府といいますか、公取の経済に対する干渉という理由でこれが形を変えてこういつた排除措置、それから報告徴収というようなことになったと思うので、またそれがせっかく死んだと思ったお富さんが価格引き下げ命令の形で出てきたのではないかという心配から申し上げておるわけでございます。  そこで、委員長、これは新聞だから、簡潔に書いてあるために必ずしも委員長の意図がそのままはっきりと出たというふうにも見えない点がある。大変これも世間に誤解を与えるおそれがあるものでございますから、委員長のお気持ち、恐らく正確なるレポートよりも簡潔なるレポートのせいでこんなふうな表現になったのではないかという気がするのですが、いかがですか、簡単にひとつ。
  67. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 もしもいまおっしゃられたことが、価格の問題に一切公取は口を出してはいけないのだ、こういうことであれば、とることとなる具体的内容というのは従来と少しも変わらない、少しも変わらないということは、それ以上のことをしてはならないという括孤書きで制約を付した、普通法律学者が指摘しております後退ではないかという点はまさにその点にあるわけです。ですから、私としては、そのように影響が残っておる場合に、それを排除するという必要があると、こう考えた場合ですよ、だから常に必ずという意味じゃありません。そういうことを含むのですから、その必要がある、つまりカルテル価格というものが実施されているのが経済の実勢と遊離しておる、つまり遊離して高いんだということが明らかな場合には、それはその価格を排除するためにとるべき具体的措置と、こう読むべきじゃないか。また、その価格が少しも動かなくてもいいという前提ならば、それは何をかいわんやであって、いまの法律を歯どめをかけて改悪しただけであって、何らの意味を持たない。いままでその価格の点を除きましては、すべて私どもはやってきています。あとやることはないわけです。ですから、価格に介入するというのは、私は幾らにしろということは言わない。この間も申しましたが、一五%上げて、そのとってきた具体的措置がたった一%しか下げないというケースがあっても、これは仕方がないんだ、こういうことを申し上げておるのです。だから、幾らにしろと言えば、これは統制的な価格介入になりますが、その影響をなくするためにとることとなる具体的措置というのは、必要があればそういうふうに読んでもいいのではないか。とすれば、私はこれは半歩でも前進であるというふうに理解したいと、こう申し上げたのです。(塩崎委員「三月の問題」と呼ぶ)
  68. 山村新治郎

    ○山村委員長 待ってください。正式に質問していただきます。
  69. 塩崎潤

    ○塩崎委員 もう一つ、三月の問題もあわせてお答え願いたいと思います。
  70. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 これは、四十条の二が何のために設けられたかということ、これはいきさつから申してもいいのですけれども、要するに原価公表というようなものにかわって、こういう一口に言えば同調的な値上げがあった場合には、その理由を報告させて、それはそういう場合には、必ず次の国会への年次報告に概要を載せますよと、こういう宣言的効果をねらったものと私は考えます。  それで、全般として、これも、もしもその点について四十条の現在の権限を制約するものである、つまり三ヵ月という点は、三ヵ月以内に第一位の事業者が行わなかった場合には、もうその四十条によってとることもできないんだと、そういう趣旨でもって決めたものである、だから、この項が働く限りにおいては、四十条は適用されない、こういうことであるとすれば、私は四十条をむしろ制約するためにつくられたようなものだと解釈せざるを得ない。この点も法律学者が指摘するところで、まさにそれは先ほど塩崎委員がおっしゃったように、三ヵ月というふうにぴしゃっと言うからおかしなことになる。私は、個人的な意見を言わしていただけば、三ヵ月程度ということでよかったのではないかと思うのですが、余りにもリジッドに決めてしまいますと、じゃ、それ以上に故意に一日でもおくらした場合には、むしろできないことになるじゃないか。それは従来ならば四十条でできたのです。企業の秘密を除いては、四十条、四十三条で公表することも可能だったわけですから、そういう点で、法律改正がいままでの権限を制約するのではなくて、前進するものである、少なくとも抑えつける、逆戻りをさせることはないのだという一般的な御説明があったわけです。私はそのように承っておるのですが、そうだとすれば、これはそう受け取るほかない。そうでなければ制限的で後退的であるというふうに申し上げざるを得ないのです。
  71. 塩崎潤

    ○塩崎委員 私も今回の新しい規定の追加によって、これまでの法律の規定が直っていないわけでございますから、権限が規定の追加によって縮小されたものとは思わない。それが明文でない限りは、依然としてこれまでの権限は規定どおりあるものだと思いますので、それはそれでいいと思うのです。  ただ、新しい制度ができましたことを、いま委員長は宣言的と言われましたが、私はあれだけ議論されました制度だけに、宣言的と言うよりもむしろ創設的な規定だ、こんなふうに思うのですが、これも法律論として長くなりますので、これはひとつ後に留保していただいて、法制局あるいは総務長官でよく詰めていただきたい。したがって、創設的なものですから、この同調的な値上げのシェアまで決めましたあの企業に対する報告徴収は、この規定だけによってひとつ運用していただくことを考えていただく方が、法律論として混淆しなくていい。新しく規定ができて、それが不十分だから別な、これまでに想像もできないような解釈で規定を運用することだけは、ひとつ新憲法のもとでは、これは委員長にお願いしなければいかぬのですが、新憲法以後はひとつもう絶対にやめていただきたい、これだけ希望だけを申し上げさしていただいて、その次に移らせていただきたいのです。  そこで、総務長官、本当に独禁法マインドを定着させるには、各省の行政指導、これをどういうふうに考えるか。これは非常にうまみのある制度だというふうに言われる。しかし、世界じゅうで驚くような日本の仕組みだと言われる。これはどうも私はいい面もあるけれども、むしろいまや弊害が、ことに独禁問題では出てきておるのではないでしょうか。各省の行政指導は多分に競争制限的なものである。それが一つ各省の大きな権力の背景になっているような気がする。法律に決まらない、内容もわからないことを役所が、公務員が、昔なら官吏ですが、民間に対して勧告をする。これは普通勧告なら、どうでも聞かなくてもいいと言いながら、日本では御承知のように長いものには巻かれろ、泣く子と地頭には勝てないという国民性があるのです。そうしてまた、別なところでかたき討ちをされはしないかということで聞かざるを得ない。こんなようなことは私は新憲法下ではもうなくなっているべきだと思うのです。旧憲法は、法律なくしても天皇の大権命令という根拠規定がある。法律なくしてどんなことでもできるぐらいの憲法だった。新憲法はそれはできないんですよ。命令が出せるのは法律を施行するために、こういうふうに書いてある。したがって、設置法一条とかいうような根拠をもっともらしく法制局まで言っておるのですが、法制局としては全く新憲法の精神を知らぬ法制局だと私は見ておる。このような行政指導をやめさせない限りは、独禁法マインドというのは定着しないのじゃないでしょうか。いまの佐野委員のお話しでも、分野調整行政指導で確信があると言う。私は確信なんかあるはずはないと思うのですね、法律で強制力がない。そうしてどんなふうにするかということは実に明白ではない。恣意的なものである。設備調整なんというのは本当に行政指導でやってきた。そうして、行政指導をやるからこれは違法ではない、お上の言うことだから違法ではないということでこれまで来たんですよ。あの石油の問題もそれだった。ひとつやはり私は必要に応じて法律をどんどんつくっていく。その法律が悪ければやめたらいいじゃありませんか。あるいはどんどんと改正していく。それによってこの独禁法マインドを定着さすべきだと思うのですが、これはひとつ、自民党の委員らしくないような議論に聞こえて申しわけないかもしれません。しかし、私はそうじゃないと思うのです。これこそ新憲法に忠実なる、しかも自由民権の本当の精神に合ったものだと思うのですね。本当に行政指導によって官庁の力が培養をされてきて、参議院選挙でも、やはりどんどんと高級公務員だけが全国区に出られるじゃありませんか。それは行政指導にある。こんなことを考えると、どうでしょうか、私は行政指導の問題は、本当に独禁法マインドを定着させようと思ったら、真剣に検討しなくちゃいかぬのじゃないか。これは私は高橋委員長の同調的値上げの考え方に本当に賛成なんです。どうなんですか。
  72. 植木光教

    ○植木国務大臣 一般的な各省庁によります行政指導につきましては、それぞれ必要に応じてやっておられるわけでありましょうから、私の立場としては論評をすることは差し控えさしていただきたいのでございます。しかしながら、競争政策、独占禁止法問題につきましては、少なくとも各省庁がこの規定を遵守するようにしていただきたいのでありまして、そのための行政指導であるならば私どもは歓迎すべきであると思うのであります。各事業者が独占禁止法を遵守いたしますために各省庁が行政指導をせられるというのであるならば、私どもは賛成でございます。たとえば具体的に大企業の中に独占禁止法違反行為がないようにということで、すでに法務部と申しますか、法規部と申しますか、そういうものも設けているところがあると伺っております。私は、それくらいのことが大きな企業の場合にはあってしかるべきであると思いますし、中小企業団体等におきましても、この独禁法違反行為がないようにということで、そのための機関が設置せられるというような必要性さえ考えているのでございまして、独占禁止法に関しての行政指導を行われるのであるならば、これを遵守するための指導を行っていただきたいというふうに考えております。
  73. 塩崎潤

    ○塩崎委員 長官、まだ正確に御理解されていないので、そういうふうなことの行政指導じゃないのです。そんなことはもう当然企業考えて、独禁法研究部をつくるのはあたりまえのことなんです。問題は、あの石油価格のときにありましたように、行政指導があったから値上げをしたのだ、あるいは行政指導によって設備の順番を自分のところはこう決めたんだ、こればかりですよ。そうして、本当は役所の真意じゃないかもしれない、しかし独禁法を免れるために役所の権威、トラの威をかるキツネみたいなものじゃないでしょうか。かつては私らもそういう解釈をしたことがある、独禁法違反ではないというようなことを言ってきたことがある、そのことを言っておるのですか。それはひとつ一遍またゆっくりと御検討していただきたいと思う。  そこで、その次は、独禁法を生かす上において、独禁マインドを定着させる上において、非常にむずかしい問題でございますが、考えていただかなければいかぬのは、企業をこの独禁法上一律に扱っていいかどうかという問題、大企業中小企業の問題、いま佐野委員が、事業分野調整法の問題だと。私も、本当に事業分野調整法をつくらなければならぬような、法律によってバリアをつくるような仕組みがいいとは思わない。しかし、それは根本的には企業がモラルによって、中小企業が粒々辛苦して開拓した分野になんか出ない方がいい。高橋委員長は利益ならいいというようにおっしゃった、借金で出るから借金だけコントロールしておけばいいというようなお話があったが、私は利益でも、そんな中小企業が粒々辛苦して開拓して消費者がやっとついてきたところへぽんと資本の力で出ていくようなことは、本当に自粛自戒すべきだと思う。法律なんかない方がいいと思うのです。しかし、現状はそうじゃない。私は利益で出るのもいかぬ、むしろほかの方に投資すべきだ、そう考えると、この中小企業の問題は独禁法でよほど考えなければならぬ。いまの問題でも、単に不公正取引方法に該当すれば取り締まると言っておられるが、公正取引法の現行の既成概念にとらわれたあの規定の仕方は、詐欺的なものを言っておるぐらいのものです。そうではなくて、大資本の力というものは、詐欺的な取引方法よりも魔力をふるって中小企業を苦しめるわけです。したがって、それには自然と自粛が必要であるし、自粛がだめなら法律という問題になってくるのじゃないでしょうか。総務長官、既成概念にとらわれていたらいけない、既成の経済学なんてだめなんですから。既成概念の公正取引法で取り締まろうといったら、こんな問題は出てこない。日本だけなんですよ、大規模小売店舗法なんてあるのは。外国にはそんなような法律はありませんよ。独禁法の精神からいったら中小企業は、何らかの形でそこで考えるべきだということをもう一遍——まだもう一つ続きありますけれども、それ答えてください。
  74. 植木光教

    ○植木国務大臣 公正かつ自由な競争を促進するという独占禁止法の基本的な考え方については、規模の大小を問わずこれを公平に取り扱うという考え方は、基本的になければならないと思うのでございます。しかしながら、中小企業につきましては、その組織化によりまして公正な経済活動の機会を確保することが必要でありますし、またそのような考え方から独占禁止法の規定の適用除外という場合も定められているということは御承知のとおりでございます。中小企業団体法等にこれがございます。私どもといたしましては、今回の改正案におきましても、中小企業者の声も十分に聞きまして、先ほど来申し上げておりますように、それぞれ配慮してきたところでございます。先ほど事業分野調整法の問題についてお話がございましたけれども、これはひとつ競争を失わせない、活力を失わせないという立場が必要でございますので、この点については検討さしていただきたいのでございます。
  75. 塩崎潤

    ○塩崎委員 法律によって事業分野のバリアをつくろうということは適当じゃないことは私もわかっておるのです。しかし、日本独得の環境がある。  そこで、独禁法の適用上も考えていただかなければならないのは、中小企業の問題としてもう一つ、最近ガルブレイスが言っておりますね。アメリカですらも、アンチトラスト・シャーマン法の効果というのはもう自信を失ってきたとガルブレイスは言っている。したがって、大企業支配力に対してリベラルな方法としてはアンチトラスト・ローなんだ、しかしそれだけではいけない、むしろ小企業に対しては協調行為、共同行為、極端に言えばカルテルまでひとつ認める方向で、大企業と対等の立場をとらすべきだということを盛んに書いておりますね。「新しい産業国家」それから今度出ました「経済学と公共目的」で非常にそれを強調しておる。一種の平衡力、拮抗力理論なんです。私は本当に考えなければいかぬと思いますのは、これまでの公取の審決の内容を届けていただいたのですが、何とまあ中小企業が料金の協定でおしかりを受けてきたか。この四十年度の一審トップ、ここにありますのは理容師の組合、石油商業協同組合、それから美容師の組合、こういった連中が一番審決を受けて、おまえのはカルテルである、やめなさいといって排除命令が出ておるわけで、それを受けてやめておるのですが、また何年後かにはやっておる、一府県よりも全府県やっておるわけです。私は非常に心配するのですが、大企業は、これから独禁法は強化される、しかしこの数の少ない大企業はいわゆる同調的な値上げで、状況証拠もうまくつかまれないような方向で値上げができる。しかし、何千何万という中小企業者はいまだに過当競争で悩んでおるのですから、ひょっとすると値下げの方向にいっても値段を何とかしょうというようなことでもしていかないと、なかなか値段が維持できない。これは本当にその体質があるわけです。したがって、これからは独禁法の課徴金の適用を受けるのは中小企業だけになるのじゃないでしょうか。その心配がある。  それともう一つ私の心配なのは、同調的値上げの報告徴収があるのです。たとえば同調的値下げですね、これもやはり問題があると思うのです。たとえば鉄鋼会社が不況カルテルを結んだ、スクラップカルテルを結んだ、あのパタヤさんというスクラップ屋さんですね、再生業者、廃品回収業者、これは数が多いものですから、結局六社、スクラップを買うところの鉄鋼会社がカルテルを結びますと本当につらくて、自分のところがたたかれていく、早く不況カルテルをやめさしてくれと言うのですが、なかなかやめさしてくれなかった実績がありましょう。委員長、そうでしょう。やかましく私らも陳情を受けた。確かに消費者から見たら値上げはいけませんが、鉄鋼会社がそういった形で値段をスクラップ屋にたたくということは、将来商品の価格が下がるかもしれませんが、それよりも利益がふえることにつながる、大企業の地位を利用する、そういったことを考えると、中小企業者のカルテル、共同行為に対しては、少なくとも大企業に対抗する場合には労働組合と同じようなかっこうで適用除外を認めることはどうか。労働組合はそういった意味で、これは企業じゃありませんけれども団結権があり、ストライキまでやれるでしょう。農業は、本当にそれが協同組合でもありませんけれども政府の支持価格で適用できておる。問題は小企業だけなんです。その小企業についてこれは何らか考える、そのようなことは大変むずかしい、へいの上をどこまでも走っているような感じがするところがあります。しかし、日本の弱い小企業のことを考えると、このような問題を真剣に考えなければいけないのではないでしょうか。  中小企業者から賛辞を受けたというお話がありましたが、それはどういう意味か私はわかりません。御賛成を得たという意味なんでしょう。しかし、本当に独禁法の運用に当たっても苦しむのは中小企業者だけになる。うまく逃げられる大企業と比べて、どうしても交番の前で立小便をせざるを得ないようなかっこうになる中小企業があるとすれば、これは何か法律の上において考えなければいかぬということになりはしませんか。総務長官どうでしょうか。
  76. 植木光教

    ○植木国務大臣 課徴金の問題につきましては、大分中小零細な企業者に対しましては配慮したところであります。これは御承知のとおりでございます。  それから、中小企業者の意見といたしまして、公正取引委員会の運用にかかわることでございます。けれども、たとえば不況カルテルを結ぶときなどに非常に時間がかかっている、やはりその認可を早くしていただきたいとか、中小企業の立場に立って独禁法の運用を図られるように配慮していただきたい、こういうような御意見がございました。これは公取の運用にかかわることでございます。  この機会に、そういう声がありましたことを申し添えておきます。
  77. 塩崎潤

    ○塩崎委員 これから課徴金の問題のほか、営業譲渡ですね、それから株式保有の総量規制のあり方、こういった問題についてたくさん質問を予定しておりましたが、申し合わせの時間が来ましたので、また時間がありましたら御質問を認めさせていただくことにして、これで終了させていただきたいと思います。
  78. 山村新治郎

    ○山村委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時二分休憩      ————◇—————     午後一時三十四分開議
  79. 山村新治郎

    ○山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。越智通雄君。
  80. 越智通雄

    ○越智(通)委員 私は、本委員会で問題になっております独占禁止法につきましていま少し詳細にと申しますか、細かくいろいろ伺って私どもの理解を深めたい、またそうした委員会の審議を通じて国民の前に今回の独禁法改正の正しい姿を明らかにしていきたい、こう思いまして質問をさせていただきます。  独占禁止法の目的ということを一番先に伺ってみたいのでございますが、従来どうも独占禁止法の目的につきましてはあまり正確に理解されてないのではないか、こういう感じがいたします。第一条にそれが書いてあるわけでありますが、最初に手段が三つ書いてございまして、「私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法禁止し、」第一が禁止で、それから「事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不等な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、」禁止、防止、排除ということによりまして、これが手段だと思いますが、「により、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、」これが第一段階の目的と言うべきものじゃないかと思うのですが、「以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」  何でこんなことを申し上げるかと申しますと、何か独禁法というのは途中だけ読みまして、「公正且つ自由な競争を促進し」「以て、一般消費者の利益を確保する」ことが目的であるというような文章を出しているところすら実はある、これが独禁法だという。中には、聞いているとそういう議論がこの国会の場においても行われていることがある。ところが、ここにはっきり書いてありますように、事業者の創意を発揮させなきゃいけないと書いてあるわけです。事業活動を盛んにするようにしなきゃいかぬ、事業者がしゅんとなるような法律ではいけないと書いてある。事業活動が低調になるようなことではいけないと書いてある。これがこれからの法律審議の基本原則ではないか。かつてこの委員会で中曽根大臣が、独禁法の一条を読んでみたら大変いい目的が書いてあるとう御答弁をされたことを覚えております。やはりそういう点について基本的な認識を得ておきたい。たまたま当委員会で調査室のつくってくれた目的のところを見ましても、日本共産党さんと公明党さんが改正案を出されているのですが、その改正案は実は「雇傭及び国民実所得の水準を高め」るというその先のところへ撹乱行為禁止とか価格の規制とか手段が出てきている。こういうのを見ていると、実はこの第一条というのは正確に理解されてないのではないかと思いますので、独禁法を主管されます官庁から、この目的の解釈について、私のように解釈することは正しいかどうか、答弁は、あまり時間がないものですから簡単で結構ですが、ひとつお教えいただきたい、このように思うわけです。
  81. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 ここに並べてある主要な項目というのは、私的独占——わかりにくいのですが、不当な取引制限というのは後に定義が出てまいります。要するにカルテル等と、こう御理解願えればいいと思うのですが、やさしく言えばそうです。そのほかに公正取引に反する不公正な取引方法だとかそういうものは禁止する。それから、事業支配力の過度の集中を防止するということです。後にこの手段を書いているわけですから、目的としては私は書かなくてもいいくらいなことだと思います。その結果、公正、自由な競争を促進する。これは、一言にしてこれらのことを詰めて言えば、公正かつ自由な競争の維持を図るということに尽きるんだ、こう言ってもいいと思うのです。分けて言えばこのようになる。ただ、創意を発揮させるとか事業活動を盛んにするとか、それで雇用や国民実所得の水準を高め、もって一般消費者の利益とか国民経済の民主的な発展というふうに結びつけておるのですが、要は公正かつ自由な競争を促進することによって、それがとりもなおさず実は競争の間から、創意工夫を発揮しなければ競争におくれをとる、公正な手段で競争するならばそういうことをすべきであるということでありまして、そういうこと自体を目的としてつくったことは確かだけれども、この法律に与えられている目的とか手段というものは一定の範囲のものであるということであって、結局究極的には国民経済につながるし、創意工夫というものはいま私が申したとおりでありますけれども、これ自体を目的にしてやると、そうすると、それに非常な重点をかけて解釈しますと、いやしくも自由競争の間にいろいろな束縛を加えるような規定はマイナスではないか、こういうことになりますけれども、そうではないのであって、そういうマイナスということじゃなくて、それはむしろ究極的にはプラスになって働くのである、そういうふうに解釈して第一条の目的を解釈しているわけでございます。
  82. 越智通雄

    ○越智(通)委員 特に私の解釈で間違えてないようにいまの御答弁では私も理解するのですが、そういう意味で、なぜそういう細かなことを申し上げたかというと、独禁法改正というのは何か企業を悪である、事業活動をなるべく抑えなければいかぬ、こういうようなマインドといいますか、ムードで行われてはならない、本当の意味でみんなが生き生きと伸び伸びと経済活動をできるような場をつくるのだということを本当に心から念じつつ各条文を考えていかなければならない、私はそう思いまして第一に目的の話を伺ったわけなんでございます。  きょうは時間もないことでございますので、今度新しく入りましたいわゆる構造規制——営業譲渡命令と申しますか、それから株式の保有制限の問題、この新しい分野の問題について、集中してというか、それを手始めにお伺いしてみたい。  これらは外国においても余り例がないように私ども聞いております。正直言いまして、私も昨年の秋以来自由民主党の中におきまして、この問題の調査会の中においていろいろ勉強させていただきましたが、なかなかむずかしい問題だと思うのです。この改正案が今国会を通りまして成立された後に本当にこれらがうまく作用してくれるか、効果を出してくれるかが非常に心配なものですから、これからこの二点の問題についての細かい点をそれぞれお伺いさせていただきたい、このように思うわけであります。  第一に八条の四でございますか、これに基づく措置を命じた場合にどのような具体的な手順を踏むことになるかというのは、まだ頭の中にそれほどはっきり私どもわからない。それらについて伺っていきたいのですが、疑問の点だけ幾つか逐次申し上げさせていただきます。  この委員会の論議を聞いておりますと、主務大臣との協議が二度あるのは多いというか、けしからぬというか、よくそういう議論がございます。この協議の規定してございます条文を見ていると、不思議に思うのでございますが、協議をしなければならないということは書いてありますが、何を協議しろということは書いてないように見受けるのでございます。協議という言葉は、通常は協議の対象になるべきことを条文上示しておくのが例ではないかと思いますが、四十九条並びに五十三条の三だと思いますが、私ども考えでは、一度目の協議と二度目の協議は全然違うものだ、一度目の協議は株式会社何とかをその対象にしてもいいかどうかということを御協議になるのでございましょうし、二度目の協議はその会社についてこれこれの内容の審決を出してもいいかどうかということを協議になるのでありまして、全く二つはダブっているわけではない、別個の、それぞれに必要な協議だと思いますが、それならばなぜにそれらの条文におきまして協議の内容というものが書かれていないのか、そこらの点についてどなたか、委員長おみ足悪いですから、担当の方で結構ですから、教えていただきたいと思います。
  83. 原徹

    ○原政府委員 今度の場合、協議を二回する。一回目は審判の前、二回目は審決の前にいたしますが、結局措置をすることについての協議でございますから、その中身は独占的状態の要件に該当しているかとか、あるいは新規参入が困難であるとか、あるいは他の措置競争が回復できないとか、それぞれいろいろそこに要件が書いてございますが、措置をするための前段階になることはすべて含まれるわけでございます。それは一回目であっても二回目であっても同じでございます。ただし、事柄の順序といたしまして一回目は審判を開始する前にやるわけでございますから、そういたしますと、まだ措置内容まで審判を開始する前にはもちろん決まっておりませんのが普通でございましょう。したがって、第一回目の協議の場合には、主として独占的状態があるかどうかということと、他の措置によって競争が回復できないかとか新規参入が困難だとか、そういうことが主たる内容になろうかと思います。審判をずっとやりました結果、これは審判に相当時間もかかりますから、そうすると、たとえば二年もかかりましたときにもう一回——そのときには具体的措置まで決まっておるわけでございますね。具体的措置まで決まっておりますけれども、その段階でも、措置につき前段階はすべて協議の対象になりますから、いまの独占的状態であるかどうかということももう一回協議の対象になり得る、こういうことになろうかと思います。
  84. 越智通雄

    ○越智(通)委員 いまの御答弁の中にも出ておりましたが、いろいろ聞きたいのですが、御答弁の出た都合で聞きますと、二年かかるというお話があったのですが、実はこの公取の手続の中には余り日数を書いた規定がございません。     〔委員長退席、萩原委員長代理着席〕 訴訟の手続でございますと二週間以内とか三十日以内とか、いろいろな規定がございますが、この審決が普通の裁判のように大変に長くなりますと、延びている間じゅうその企業というのは大変肩身の狭い思いをしなければならない。それが本当に悪いならばまた別でございますが、ぬれぎぬの場合などは本当に救済のできない状態になる。一体、審決というものはそんなに長くかかるものなんでしょうか。あるいはその審決をある程度のめどでぴしっと出すだけの具体的な措置はとれないものでしょうか。それらについてお伺いしたいと思います。
  85. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 これは御承知と思いますけれども、独占的状態排除措置として一部の営業譲渡を命ずる場合には、初めから審判による。ですから、通常のわれわれの排除措置は、排除措置といいますか、ああいう措置は審判によっておりません。最初から審判によるということはきわめてまれでございます。普通はこちらでやりまして、勧告という形で出して、それを十日ぐらいの間に受けるか受けないかということですから、通常の手続によりますと、これは長い短いいろいろございますが、せいぜい半年、大体私どもの目標としては三ヵ月か四ヵ月で片づけてしまうということにしておるわけです。ところが、審判は、実は相手方が初めから争う意思がない。こちらが十分研究いたしまして、これはどうしてもやらなければならぬのだ。そして、相手方とあらかじめ事前折衝がございますね。いきなりぱっとかけるのではなくて、事前に予備調査を十分にいたしますから、その段階において相手は争う意思がないということになれば、形は審判にいたしましても、初めから審判にかけますが、私は短くすると思います。しかし、概して普通の審判は、勧告を出したところが受諾しない。不服の訴えとして、不服のために審判開始になる。これだと非常に長い場合があるのです。あくまで応じないという気持ちで来るものですから、とうとう最後に、時間がかかったが、三年もかかってやっと同意したというふうな例もあります。そういうことを考えますと、会社を、一応わかりやすく言えば分割というようなことですから、そうすると、会社にとってはこれは重大事件であるということで、応じないケースが多いのではないか。それで、審判の過程においていろいろなデータをおのおのが突き合わせましてやりますから、裁判と同じように長引いてしまうという場合もそれはございます。ございますが、しかしこちらとしてはやはり議論が出尽くした場合においては、いずれにしても審決という形を出しますから、それに対して会社が受けるか受けないか、これはまた別の問題でございます。何日以内にということを決めることは大変むずかしいし、実行不可能なことだと思います。
  86. 越智通雄

    ○越智(通)委員 そこが実は問題なのでございますが、会社の営業譲渡が行われるということは勤めている人間にとっては首がどうなるかという問題にもなるわけです。実際には三年かかって自分の会社が分かれるかもしれぬということになると大変心配だろう。不安、動揺と申しましょうか、またあるいは経営者にとりましても非常に重荷な問題でございますので、そういうものは相当程度のスピードをもってやれるようにぜひ何らかの措置を講じなければいけないのじゃないかということを感じたのでお伺いしたわけでございます。  その審決が出ました場合には、営業譲渡の場合の審決というのは一体どの程度まで具体的なものか。ここの工場を、A会社の大阪の工場をB会社に売りなさいというほどに具体的なものか、大阪工場はもう外しなさいという程度か、もっと引っ込んでしまって、シェアがこのくらいに落ちるところまでやりなさいという程度か、一体どの程度までこの審決というのは具体的なのか。五十四条正式審決のあたりの文章を読んでも何もこちらはこの法律上は手がかりがないのです。この辺についてお伺いしたい。
  87. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 それはいまから予測できませんが、早く言えばケース・バイ・ケースである。しかし、概括的なことを申し上げれば、たとえば同意審決になる、会社が同意するというふうなめどがついたときは、こちらはできるだけ基本的なラインが守られればいい、あとは会社の希望をできるだけ取り入れていくということにするのが一番事柄をうまく運ぶ方法だと思います。ですから、全国的に工場が分かれているというような場合に、それをどういうふうに分けるかということは、会社の希望とかそれから同業者の間の工場配置の問題、結局販売先に非常に関係が深いわけです。そういう点でどこに注意を払ってやるかということは公取としても十分慎重に構えなければならぬ。相手方の希望も承る。どうしても応じない場合でも、これはある程度具体的に示さなければ済まない場合も生じてくると思います。どこの工場、どこの営業所というものをもとに残し、それから譲渡をする方はどれを譲渡するか、つまり少なくともどの程度の規模のものを譲渡するかということは示さなければこれは審決になりませんから、それは実はこれから研究すべき問題で、具体的にはケース・バイ・ケースで違いますけれども、大体の線を申しますと、ある程度具体的になる場合がある。しかし、必ずこういうふうにしますとくれば、それは具体的ではありますけれども、こちらから指示したというよりは向こうの希望を相当程度入れてやる、こういうふうにお考えいただいたらいいのじゃないかと思います。
  88. 越智通雄

    ○越智(通)委員 そこで、実はケース・バイ・ケースでこれから考えるなどと言われると、こちらはちょっと心もとなく思ってしまうのですが、実はA会社の大阪工場をBに売りなさいという審決をするのだったら、Bが買いますという約束をだれかがちゃんと交渉を取りつけておいてやらないと、審決を出したって実際は名前を出されたB会社にしたら大変迷惑な話であります。それじゃ今度はA会社に、大阪工場をだれにでもいいから売ってこいということになりますと、これは大きくて問題だから営業譲渡を言われているわけですから、ぶっ倒れそうな企業とは違うわけでございまして、大阪工場は大変な値打ちがあるのでございます。手放す方にしてもそれを二束三文で売ったのでは、株主に対する経営者としての一つの違反になります。果たしてだれが買ってくれるか、審決には従うのですよ。売りなさいと言うから売ろうと思う、しかし売れない、見つからない、ないしは値段が合わない。そうすると、審決が出てもなかなか営業譲渡は実現できない、こういう状態に追い込まれる。片っ方であのA会社の大阪工場は売りに出ているのだということは天下公知の事実になる。そこらについて、実現困難な営業譲渡を審決で言い渡されたときに、実現困難なときにはどうやってその企業を救済していくのか、そこらについてさらにお伺いしたいと思います。
  89. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 少なくとも一部の重要な営業譲渡というものに三分の二の特別決議を必要とする場合です。こういう場合は、概して申しますと実質的には分割にも等しいようなものになります。そうなりますと、新たに買い手を探すといっても、確かにおっしゃるように買い手そのものが見つからないという場合があるわけです。これは原則としては、そういう場合には相手が応ずる限りにおいて新会社を設立するのです。新会社を設立してそこへ譲渡するという形をとります。その譲渡方法にも売却という形をとる場合もありますが、営業譲渡ですから、その辺は普通の施設の売却とは違いますけれども、あるいは現物出資という形をとることもあるでしょう。いずれにしても買い手を適当に探すよりはみずから新会社をつくって、そこへ自分の会社の資産の半分なら半分を持っていくということを希望するという場合が多くなるのではないでしょうか、私はそう思っております。
  90. 越智通雄

    ○越智(通)委員 委員長、そこがなかなか大変だと思うのです。正直な話、工場だけはがしたら済むところもありますけれども、そこでつくっている製品を流すための販売網までくっついているところもありますから、そこにまた商品のブランドという問題が出てきますと、ブランドを変えて販売網がくっついてくるか、工場だけ直してブランドが、販売網がついてこなかったときに売れるかという問題もありまして、要するにそれらのことは法律上書いてない。したがって、委員長のいま御説明のようなことを今後公取が考えていくにしても、実行段階で大変いろいろ問題があるなということを私どもはここで指摘せざるを得ない、こういう感じがするのです。いまのお言葉の中に実質上の分割になるというお話がありましたけれども、そういう企業が審決を受けて、たとえば大阪工場を売ってしまった後、こっちへ残った分は、例の占拠率で言うと一社二分の一、二社四分の三を下回るところまでいかないといけない。そういうことを頭に置いて審決されますか。それとも競争が回復される状況ならば、これが一社二分の一、二社四分の三以上であってもそれは構わないのだ、こういうお考えでおられるか、その点について御意見を承りたい。
  91. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 この法律にもありますけれども、いま一社で二分の一、二社で四分の三、これはいわば最低の線をうたっているわけです。最低これだけのシェアでなければ対象にしませんよ。ですから、原則として見ればそれよりもっと高いということです。それよりシェアは高いわけで、二社の場合だったら二社でほとんど独占しているというふうなことでなければならぬし、そういう例はわが国の場合をとって考えても、二社完全独占というような形はむしろ少なくて、一社が余りにも大き過ぎるというような場合が対象になりがちである。これは必ずこうなると私は申しておりませんよ、誤解を生むといけませんから。法律の上でもあくまで二社独占というふうな独占的状態ですね。二社独占という言葉は、私は独占的状態のかわりに使ったわけですが、そういうものを一部営業譲渡でやらせた結果、その結果としてはそれを必ず下回ることになるかと言えば、いまの線五〇%を、やるときには私は必ず下回ることになると思います。下回るようなことでなければ、困難な問題に手をつける意味はないのですね。つまり一社で言いますと、五〇と書いてありますが、実際にやるのは六〇よりももっと上であるとか、他社はもう問題にならないほど小型化してしまっているというふうな場合ですね。そうすると、それを今度五〇よりも超えた状態にしておいたのでは、依然としてその独占的状態は失われていないということになりますから、手をつける以上はそれを完全に下回るということを前提に考えたいと思います。
  92. 越智通雄

    ○越智(通)委員 そうしますと、二条の七項、独占的状態の規定のところで、例の占拠率と、それから新規参入がむずかしいということと、利潤が過大であるということの三つの条件が書いてあって、発動するときには、三つの条件が三つともそろわなければ発動しないという規定だと私ども読んだわけなんですが、それでは審決に従って後に残った望ましい姿というのは、この三つともに適合するようなところまで事細かぐ刻んでしまうかということですね。早い話が、さっきガラスの話なんかも出てましたけれども、ガラスの会社を一社を二つに分けてみても、新しくガラスの会社を興せるような状態じゃないと思います、実際問題は。そうすると、新規に入れるようにするまで刻んでしまおうといったら、実際には大変なことだろうと思います。いま委員長お話しのように、第一の占拠率のところは、ともかく一社二分の一、二社四分の三を下回るところまでは新しいというか、審決を遵守した企業は持っていってしまうというのだけれども、もう片一方の新規参入とか、あるいは利潤が標準以下だというところまで、これも新しい企業に対しての基準とお考えになっていますか、発動基準じゃない、でき上がった基準とお考えになっていますか。
  93. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 それは結局は、重要な営業の一部の譲渡を命ずる場合には、新規参入ということがほとんどできないということが条件になりますね。いまお挙げになった独占利潤のほかに、独占利潤はともかく、利潤はそうでもないが、コストの面で非常に高い支出を行っているというふうな場合も加わりますが、いずれにしても独占的状態がそういう弊害を伴っているという場合、価格についても非常に独占的な決定ができるという場合でございます。それは前提要件がありますけれども、いわゆる譲渡を行った後におきまして、それらの前提要件はない、消えるということでございます。ですから、新規参入の問題だけとらえますと、新規参入という問題はそれができないから分割といいますか、譲渡に踏み切るわけですから、それをやってもなおかつ新規参入が困難であるというのなら、だめかとおっしゃれば、いやそんなことは考えない、こう申し上げます。
  94. 越智通雄

    ○越智(通)委員 いまのお話を私なりに解釈すれば、発動するときの外形標準というものは一応こういう三つのものを持っているけれども、審決を下すときに営業譲渡して残ったものをどういうかっこうまで持っていこうか、どういうのが望ましいかというときには、この外形標準には余り拘泥しないで弾力的にといいますか、要するに独占的状態が事実上消えるようなかっこうに持っていけばいいということで御解釈願う、このように理解していきたいと思います。  その場合に、この独占利潤の標準的という言葉が出てくるのでございます。これは三項のイかロに、どっちかに該当すればいいというので、標準的というのは別に政令で定めることにもなっていないと読めるのですが、だれが標準的という判断をどういう基準で下すつもりでこう書いてあるのか、そこをお伺いしたいと思います。
  95. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 その標準的というのは、原則としては同じような業界と言いたいのですけれども、ところが独占的な状態になっておれば、その独占的状態になっておる会社の独占利潤は出てますね。その利潤は出ているけれども、同じようなといっても比べるものがない。ですから、そういう場合には、いろいろな指標を使うと私は思うのです。たとえば、その程度の規模の会社で、もちろん法人、これは大法人ですが、それらの法人が他の製造業の場合にどの程度の利潤を得ておるかというようなことは法人企業統計等で見れば大体規模別に出ていますから、その利潤が出ている。さらに若干高いという程度であった場合、一体独占利潤と言えるか言えないかという問題がございますね。こういう問題については、経費と両方あわせてみて判断しなければなりませんから、そういう利潤だけの統計では見れないことになりますし、広告宣伝費とかその他どうなっているのかというふうなことも調べます。  要するに標準的といいますと、これは外国でもそれに近いようなのがありますが、投資額、すでに投資した額に対する利潤率がどうなっているか、それから売上高に対する利潤率がどうなっているかということをいろいろな他の業界と比べてみる。その業界というものは赤字続きの業界ではなくて大体ノーマルな、それこそ通常の状態経営を行っているグループ、それらの間においてどうであるかというふうなことを中心に考えていきたいと思います。たとえばいま製造業だけで四十八年度までの統計しかありませんが、その前十年間の税引き前売上高利益率は四・四%です。これは今度の四十九年度を入れれば下がると思いますが、大体そんなものである。そうすると、こういうところにも利潤率といいますか利益率の一つの標準がある。しかし、その中でも非常に高いものと低いものでずいぶん違うのです。ですから、そういうことはあらゆる観点から判断するほかないのだ、こういうことです。
  96. 越智通雄

    ○越智(通)委員 いや、公取委員長のお話はわかるのですけれども総理府総務長官にひとつよく理解しておいてほしいのは、独禁法の法体系というのは、いま公取委員長がいろいろおっしゃったように解釈自由なんです。裁量が非常に広い。ですから、この運用というのは非常に幅があります。ですから、この独禁法をどういうふうに運用していくかというのは非常にむずかしい問題だということ、総理府総務長官がこの法律の提案者というか提出の責任者だと思いますが、そういうことをよく御理解しておいていただきたい、このように思うわけです。普通の委員会か何かでしたら、それじゃそれに基づく政令、省令の案を持ってこいというような話が出る場合だってあり得ると思います。実際には、ここにはそういうものはない。ですから、私はこれからの運用について非常に慎重にやっていただきたい。まだ国際競争力の認定などについてもお伺いしたいことがあるのですが、時間が迫っておりますので、次に行かせていただきます。  株式保有制限の制度についてお伺いしたいのでございますが、一般企業の場合には総量規制をやりまして、金融機関の場合には例の一〇%、五%という持ち株比率規制というのをやっているわけで、これは本質的には側が違うわけでございますね。持っている方の資産で制限するのと、持たれてしまう方の、相手側のパーセントでやるやっと違うわけでございますが、どうして一般会社と金融機関とではそういう別個の原則というものを同じ法律の中でお取り入れになっているのか、その点についてのお考えがあれば聞かせていただきたいと思います。
  97. 植木光教

    ○植木国務大臣 一般企業の場合には、原材料の供給あるいは下請などの子会社株式保有が必要になるということも考えられます。また、株式保有を持ち株比率で規制することは実情に合わないと考えられるのであります。そこで、事業支配力の過度の集中に歯どめをかけるために保有総額を制限することとしたのであります。  金融機関につきましては、その金融力と相まちまして、株式保有による他の会社の支配が容易になるという、その業務の特質に着目をいたしまして持ち株比率を規制しておるのでございます。一方、金融機関は資金を受け入れ、また貸し付け、有価証券に運用することがその業務でありまして、株式保有額の枠を定めてしまうことは、その業務の性格からいって適当ではないというふうに考えて、このようにしているのであります。
  98. 越智通雄

    ○越智(通)委員 それでは、その続きというか、伺いたいのですが、考え方が違う、しかし実質的に取り扱いのときにやはり差が出てくるところがあるのですね。担保にとった株券はどういうことになるか。金融機関の場合には一年ですかたちましてから、それでもまだオーバーしているときは、その分については公取に承認というのですか、求めれば持っていていいということになっているのですが、一般会社のときには担保や何かでとった株でも一年たったらいまの総量規制の中で見なければいけない。したがって、株なんかたくさんとっている例としての商社で言えば、これからは下手に株なんか担保にとっても困るぞ、こういう議論にもなりかねないのですが、担保にとった株券の取り扱いが、一年たった後に承認されれば持っていてもいいというのと、承認もくそもない、絶対そこでだめだというのと、取り扱いが違っているのはどういう理由ですか。
  99. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 金融機関の場合は、今度は五%という制限になります。ただし、従来からありましたように、いまの担保の分は別扱いにはできる。しかし、なるべく速やかにそれを手放せというのが趣旨なんですけれども、どうにもそれがうまく処分できないという場合には、特別に認可を受ければできる。これが金融機関の場合でありますと、一般会社と違いますのは、ある会社をいわれなく——自分の業務と密接なる関係あるいは業務の延長ととられる分については一〇〇%の株式保有の会社もございますけれども、これは非常に例外でございます。それは事業の範囲も限られておる。そういう点が五%というふうに限定しているのは違うのですね。総量規制の場合はそれがないのです。一〇〇%でも持ち得る。根本から違っています。ですから、中小企業の分については現に一〇〇%保有しているものも入っておるわけです。担保でとったものは、銀行が担保でとるということは、これは金を貸すわけで、きわめてあり得る自然の行為である。しかし、商社等のように、ほとんど大部分が借金なんですね。それで金を貸すという行為、それは金融機関の行為とはちょっと違うわけですね。それを貸してならぬと言うのじゃありませんが、総量規制なんですから、たとえばそれをどうしても持っていたい、売れないとかいう事情があったら、ほかのものを処分すればいいので、入れかえればいい。入れかえが自由なんです、総量でございますからね。そういう点からいって、金融機関は当然担保でとる、しかし一方は金融機関じゃないんだから、よくよくの場合しか発生しないだろうということで、その発生ケースが全然違うという感じで、それから総量規制なんだから入れかえたっていいじゃないか、こういう考えでございます。
  100. 越智通雄

    ○越智(通)委員 そこら辺が実は現実にこれからどういうことに発展していくか、私ども心配しながら見守っておるというのが実情なんです。なかなか入れかえないのじゃないかということですね。  要するに、今度基準で該当される企業は、この間の当委員会における説明では十五社だと伺っておりますが、恐らくほとんどが商社だと思うのです。商社の方は俗に三千億とかなんか知りませんが、株を持っているという話を聞いております。そういう株は商社が頼まれて引き取っているようなものもあるのじゃないか。私ども、現に地元の選挙区の会社なんかでも、この不景気でございますから、仕事が来なくてどうしようもない、銀行から金を借りているのじゃ金利が高くてどうしようもない、結局商社の系列化に入ってしまったなんというのも幾つか見聞きいたしておりますけれども、そういうときには株券をみんな持ってもらっているというような意味で、商社の持ち株制限というのがこれからの具体的な問題になると思うのですよ。  この際、ちょっと事務の方の方に伺っておきたいのですが、十五社とおっしゃいましたその中身、ことにどのくらいの株券を持っていて、その中にどのくらいいま言う中小企業株というんでしょうか、非上場株というんでしょうか、投資物件としてではないものを持っているのか、おわかりだったら教えていただきたいと思います。
  101. 渡辺豊樹

    ○渡辺(豊)政府委員 十五社につきましては、当委員会から資料要求が出ておりますので、至急計数を整理して提出させていただきますが、商社につきましては、先般公取が第二回の商社調査をいたしましたとき、十大商社につきまして合計いたしますと、国内会社の株式が八千八百三十八億円でございまして、そのうち上場会社が六千三百七十六億円、非上場会社が二千四百六十二億円でございます。比率にいたしますと、上場会社が七二・一%、非上場会社が二七・八%ということでございまして、御指摘の中小企業ということで計数を把握しておりませんが、非上場会社が約三割近いということでございます。
  102. 越智通雄

    ○越智(通)委員 ありがとうございました。  いまのお話のように、やはり商社が相当中小企業の株を持っている。それは二千数百億と言われるようなものがある。これらのものは実は売りに出されちゃ困るわけだ。だからこそ、十年の経過ということもあるのでございましょう。売りに出されちゃ困るけれども、今後そういうような困ってきた中小企業はもう商社を頼ることはできなくなる、商社の方も余りいい顔をしなくなるというように思うのですが、私が聞いた話では、商社の中にはそういう意味で債権の執行あるいは企業の救済ということで持っているものは三百社からあるという話を聞いております。これらのものがやはり何かのかっこうで、本当に中小企業を救うような形でどっかで持ってもらえないと、しょせん最後は、この株を返すからおやじ引き取れ、おまえのところの取引はこれでおしまいだというようなことになってくると、しわは結局中小企業に寄る場合があり得る。このように心配なものですから、ぜひ通産省で、こうした規定を実施した場合に起こってくる中小企業の株を持つという問題についてもっと前向きな考え方を持っていただきたい。中小企業投資育成会社をつくったときに、あれは新株だけ引き受けておるわけでございまして、これから出発するものを手助けしようということなんでしょうけれども、困っちゃって商社を頼ったその人たちが商社からそでにされるかもしれない、そのときに、中小企業のために何らかの救済を考えるべきだと思いますが、通産省の方おいででしょうか、お願いいたします。
  103. 和田敏信

    ○和田政府委員 御指摘のように中小企業で大企業、商社等に株式を所有してもらうことによりまして取引面、信用面でメリットを感じている事例がございます。このような株式が放出されることになりました場合に、その中小企業経営の安定に支障を生じますことかないように、規制には御承知のとおり十年間の経過措置が設けてございます。したがいまして、御指摘のような事態発生しないように、通産省としてもこの間十分な行政の指導をしてまいりたいと考える次第でございます。
  104. 越智通雄

    ○越智(通)委員 それはもうよほど通産省は神経を使って、そういうことを見てやってください。私どもの方がある意味では東京の中小企業の人たちからいろいろ頼まれ事をしまして、本当にはだ身に感じて気の毒な面を見ております。ぜひ通産省はそういう意味でしっかりした対策をとってほしいと思います。  商社の方に、中小企業の株をなるべく出さぬでくれ、なるべく抱いていてくれ、再建中かもしれない、取引関係があるのかもしれない、あるいは新しい会社を実際にやるためにやるかもしれない、そういう株で私どもが聞いているのでは、六大商社で千三百社の株式を持っていると聞いておるのです。出さぬでくれとわれわれも大いにお願いしなければいかぬと思っています。  そうしますと、さっきの委員長のお話じゃないですけれども、総量規制がありますから、ほかの株を売らなければならぬ。優良株というか一流株を売らなければならない。これが商社が持っているものをさっき八千億とか九千億とかおっしゃいましたけれども、その相当程度でも売りに出しますと、やはりいろいろな意味で証券市場が乱れてくると私は思う。金融機関が持っているのは大体売れる株ばかりだと思います。売れない株を担保に金を貸すわけにいかないのですから、市場性のある株を持っている。これまた一〇%が五%に下がった。十年待ってやるというんだけれども、そういうことは相手様がどんどん大きくなってくれればいいですが、銀行が大きくなったってだめなんです。相手様がどんどん大きくなってくれて、二倍になってくれないと、ほっておいたんじゃ十のものは五にならぬわけでございますね。そういう意味では、何らか手放す手段をとらなければならぬことがあるかもしれない。そういうことになってきますと、私はこれから先の証券市場に対して胃がもたれるような感じの問題をここに提起しているように思うのですが、証券行政を担当している側におきましてはこれらの問題についてどのようにお考えになっているか、伺っておきたいと思います。
  105. 結城茂

    ○結城説明員 お答えいたします。  ただいまの証券市場に対する影響でございますけれども、先生御指摘のような御懸念というのは確かにございますが、今回の改正案におきましては十年間の経過措置ということがとられております。それからまた、新株の割り当て増資というようなものにつきましても、二年間に限りまして保有制限の枠外の扱いをしているというような措置も講じてございます。また、その他所要の適用除外の規定も盛り込まれておりますので、現在該当する企業、基準額を超えて株式を保有している会社、十五社が該当するわけでありますが、それらが現在保有している株式を積極的に処分するということによって株式市場に対する影響というのはほとんどないのではなかろうか、かように考えております。ただいま先生の御指摘の点についてはさらに十分配意してまいりたい、かように考えております。
  106. 越智通雄

    ○越智(通)委員 十年あるのだから何とかなるだろうというような調子でものを考えられていたら困る。そのことを十分御警告申し上げておきたい。新株の二年というものは、あれは一種のショックを吸収するための措置でございます。基本的にはやはり株式保有についてのかなり大きな制約が出てきているということをぜひ念頭に置いておいていただきたいと思います。  実はこれらの点を通じて私が感じてきていることは、公取のあり方というものはわれわれにとっても率直に言って一体どんな性格かということが一番心配なのでございますが、そのことをお聞きする前にちょっと時間がなくなってまいりましたので一言お伺いしたいのですが、いまのこちらの方の大企業に対するいろいろな対策と並行して、いわゆる不当廉売の措置について公取がどの程度動いてくれているのか私ども非常に心もとないと言ったら失礼かもしれませんが、思っていることがある。現実にわれわれの身近でいろいろ起こっている牛乳とか洗剤とかいろいろなおとり廉売ですね。これらについてどういう措置をとっているか。一緒に聞いてしまいますけれども、それについて仕入れ原価に対して六%の利潤を乗っけたものを切った場合には、不公正な取引に該当するといって公取として調べるということを一たん決意されて通達か何か用意されながら、そのままになってしまったと聞いておるわけですけれども、公取としていま不当廉売問題についてどういう措置をとっていらっしゃるのか、お伺いいたしたいと思います。
  107. 後藤英輔

    ○後藤(英)政府委員 不当廉売それからおとり廉売等のケースにつきましては、その具体的な内容を私どもの方に情報としていただきました場合については、これは事柄が急いで措置をしなければならない問題でございますので、現在では早速調査いたしまして、多くの場合はもうその日のうちに、先ほども御指摘のありましたようないろいろの牛乳その他のケースでございますけれども、そのような不当な価格で売ることをやめるようにということで警告をして違反の排除に努めております。具体的な件数といたしましては、本年度、五十年度に入りまして、この四、五の二月でもって七十五件の件数が実は情報としてまいってございます。そのうち七十件は先ほど先生御指摘のような牛乳の不当廉売のケースでございまして、そのほかもほとんどが豆腐とかしょうゆとかみそとかいう特売時の目玉商品に使われるという事例でございます。現在のところ、この七十五件のうち六十三件につきまして、先ほども申しましたように、緊急に措置をする必要がある事案ということで、警告によりましてこれを是正させているという措置をとってございます。なお、現在不当廉売の問題といたしましては、中部読売新聞の不当廉売という問題を審査しているということを申し添えておきます。  それから、通常の仕入れ原価に六%の金額を乗せたものを基準として不当廉売の規制基準とするという考え方は、確かに先生御指摘のように、実はこれは四十八年の八月に不公正取引方法の特殊指定ということで一時案を立てたことがございます。これは通常の仕入れ原価を割ったというだけではやはり低過ぎるじゃないかということで、ある程度の販売経費も見なくちゃいかぬということでそのような案をつくりまして、これは公聴会に五回かけました。しかし、これに対しましては賛否と申しますか、むしろ反対論の方が非常に多うございまして、消費者等からの反対が非常に多く寄せられまして、その案の公聴会後の検討の過程におきまして、実は異常なインフレという問題が起きてまいりまして、その後も物価上昇というものはなお軽視できないような状況になっているということで、これは公聴会でも消費者から指摘されたように、こういう一律な案でもって不当廉売を規制することは、むしろ一律な安売り禁止措置を公取が講ずるようなことになるのではないか。そういたしますと、正常な企業努力をして少しでも安く売るように努力しようとする業者の意欲が失われるのではないかというような批判が出ておりまして、現在のところではこの案の取りまとめにつきましてはしばし見送ってまいりたいということでございます。  ただ、先ほども申しましたように、不当廉売とかおとり廉売とかいうことにつきましては、たくさんの事例が報告されておりますので、現在のところでは一般指定の不当な廉売禁止という規定を適切にまた迅速に運用いたしまして、そういうことが起こらないようにすると同時に、またスーパーの業界等に対しましても、私どもの方から不当廉売あるいはいたずらに刺激的なチラシ広告などでもって業界秩序を混乱するようなことのないようにという行政指導もあわせてしばしば行っております。そういうことによりまして、公正な小売業界競争秩序というものを守っていきたいという方針でございます。
  108. 越智通雄

    ○越智(通)委員 そこら辺が取引部長さん、問題なんですよ。何か消費者の方から突き上げられると通達を出すのをやめてしまいますけれども、本当を言いますと、やはりそういうことによって一般の商人もいろいろ考えちゃうわけです。安く売って全部損して商人が物を売るわけはないので、おとり廉売していれば隣の商品でもうかるからやるのでございますよ。そういうことを考えて、もう少しそちらの面にも情熱を燃やしていただきたい。公取にぜひお願いしたいのです。ことに消費者との関係でこれから先に入りますが、公取と消費者という関係で言うと、私は心配している条文が一つある。  それは四十五条という条文があるけれども、この条文は「何人も、」という書き出しで始まっているのですが、早い話公取にものを申せば、あそこは悪いやつだよ、こういうことをしているよということを言えるようなことになっているのですが、この条文は一体見直してくださったのかどうか。と申しますのは、「公正取引委員会に対し、その事実を報告し、」と書いてあるのですが、どうも私どもの感じでは報告なんていう字は当てはまらない。通報とでも言うべきところを報告という字になったまま昔から変わっていない。その報告という字を変えるかどうかは別としまして、どのくらいこれは件数が来ているか。恐らく匿名でたくさん来ていると思うのです。その報告を受けた場合に、これから新しく株式保有制限とかいろいろ構造規制が出てきました、それらの問題についてもあるいは課徴金の問題等が出てきましたが、この四十五条をもしいろいろな方が意識的に使い出すと、これを受ける方の公取も大変だろうと思うのです。それから、おまけにそれに対して返事を出すことになった。返事を出すのもこれは大変だと思うのです。この四十五条がいままでどのように運用されてきたか、また今度の改正によってこの四十五条はどういうふうにさらに発展していくと考えているのか、公取のお考え伺いたいと思います。
  109. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 これは過去の非常に古い時代は私わかりませんが、最近では千件どころじゃないのです。千数百件ぐらいあるんですね。この中から同じ案件についてダブってきているもの、それを差し引いても相当な数に上るということでございます。今度は書面でかくかくだと言って——確かにあなたのおっしゃるとおり報告というのはおかしいですね。こういう言葉を使うと非常にほかのところと紛らわしくて、従来公取では申告と言っているのですよ。ところが、これは税金の申告みたいでして、まことにおかしいのですね。だから、情報提供と言った方がいいのでしょうが、今度は返事を出さなければならぬという問題がございます。今度これで、いろいろな点でそういう独禁法に対する関心は強まりこそすれ弱まることはないと思うのですが、その情報提供がいままでよりもふえてくるだろうと思います。それに対して一々どういう措置をしたかしないかだけは返事をしなければならぬケースが非常にふえると思いますので、私どもとしては非常に頭を痛めておりますが、しかしこの程度のサービスはしなければならぬものだというふうに思っておりますので、そういう情報提供をまた歓迎しなければ私どもの方の仕事もうまく行かないので、それは大いに尊重して御期待にこたえるようにしていかなければならぬ、万難を排してやらなければならぬというふうに考えております。
  110. 越智通雄

    ○越智(通)委員 残念ながら時間がなくなってまいりましたので、最後に公取のあり方についてさらにお願いをしておきたい。  私の理解するところでは、公取委員に六十五歳という定年があるというのは、裁判官と同じように考えてこの法律ができたんだと思うのです。行政官庁の役人には御存じのとおり定年はございません。そして、おまけに公取には、法の規定によって検察官まで置いております。現在二人いると聞いておりますけれども、そういうような仕組みの委員会、大変な強大な権力を持っている、そしてまた先ほど来ずっとお聞きしてきたことの中から出てくる結論は、公取の裁量権というか法の執行についてかなり幅がある。ほかのたとえば税金を取るというような作業から見れば、ずいぶんと執行する人によって幅のある官庁である。それだけに公取の委員あるいはその職員というものは、法の遵守につきまして非常に厳正に中立に行ってもらわなければいけない。少なくとも企業に対して、経済に対する温かい気持ちでやらなければいかぬ。おどしの論理というか、ともかく企業悪だ、これはうんとこらしめるという感じ、片りんでもそういう空気が見えますと、経済運営にとって好ましいことではない、このように思うわけです。ことに今回の一連のこうした改正を通じて、企業というものは実は公取に根こそぎ全部自分企業の秘密みたいなものを出すようなかっこうになってまいりました。公取委員の方はすぐれた方ばかりでしょうけれども、職員の方はたくさんの方がいるわけです。どんな人がいるかわからない。そういう人たちが、これらの企業の大事な秘密というものをしっかり守ってもらわなければいかぬ。そうしないと、きのうの読売新聞か何か知りませんが、一番最後に「公取委ファッショ」という言葉がかぎ括弧で入っていた新聞がありますよ。私がつくった言葉ではございません。そういう言葉がマスコミで言われるようになること自身は、公取の方にとっては本当に心外だろうと思う。それだけに身を持するに厳であっていただきたいと思うのです。  そこで、伺いたいのですが、公取委員及び職員の守秘義務というのは、三十九条に書いてある。これは国家公務員法百条のいわゆる守秘義務、いまいろいろ例の金脈問題で言われている守秘義務とどのように関係しているのか。ことに公取の職員の場合には懲戒免官の規定というのがはっきりしておりません。懲戒免官された場合には罷免しなければいかぬという大変妙ちくりんな法制になっているのです。どういうことをしたら懲戒免官になるかという規定がない。また、国家公務員法とこの独占禁止法の間では、やめたあとに秘密を守らなければならないかどうかについて、私は規定が非常にあいまいだと思う。少なくとも明文は独禁法の方にはありません。そして、おまけにこれらの規定に違反した場合の罰則を、今回の改正案では他の罰金を十倍に上げていながら、たった二倍にしか上げていないのです。五万円を十万円にしかしていない。二十万円のものを二百万円にして企業にはかけていながら、自分たちの職員のところだけは二倍にしかしていない。そして、出頭を命ぜられたりなんかした人に対する分については何と四十倍に上げている罰則があるのであります。八十八条かそこら辺になると思いますが、それらの点について、時間がないのでまとめて伺ってしまいましたが、どういうおつもりでそういう規定にされているのか、規定の解釈についてはっきりした御返事を、委員長じゃなくて事務の方からでも結構ですが、お聞かせいただきたいと思います。
  111. 植木光教

    ○植木国務大臣 確かに公取委員及び職員の守秘義務は守らるべきでありまして、これは独禁法三十九条及び国家公務員法第百条によって課せられております。これは強く私どもも要請するところでございます。また、公正取引委員会運営が公正かつ明朗でなければならないということについては私どもも同じ考え方でございまして、そのことを強く期待するものでございます。  今回罰則の改定に当たりまして、九十三条の罰金額は二倍でございます。他のものは十倍にも上げながらという御見解でございますが、これは実は守秘義務につきましては、国家公務員法を初め税法その他いろいろあるわけでございまして、それぞれの法定刑は、秘密の性質や軽重によりまして異なっておることは御承知のとおりでございます。五千円というのもございますし三万円もございます。現在証券取引法及び輸出入取引関係につきましては十万円でございます。したがいまして、独禁法の運用の場合にも、他の公務員との関係及びその責任の軽重度合いを考えまして、この点につきましては現行五万円を二倍の十万円にいたしたのでございまして、他の公務員に比しまして最高額をとったというのが改正案でございます。
  112. 越智通雄

    ○越智(通)委員 時間が参りました。公取委員会が今後こうした法案の実施につきまして、いまお願い申し上げましたような精神を十分胸に置いて厳正に執行されることを心から希望いたしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  113. 萩原幸雄

    ○萩原委員長代理 以上で越智通雄君の質疑は終了いたしました。  上坂昇君。
  114. 上坂昇

    ○上坂委員 私は、原子力発電所の問題を中心にして質問をいたしたいと思います。  実は、この質問は科学技術特別委員会の方でやるべきかもしれませんが、特別委員会の方はなかなか開かれませんし、現在の産業政策の中で占めるエネルギー政策の問題、特に低経済成長に入ってからのエネルギー政策というものは相当な見直しをしていかなければならない、こういうことから考えまして、原子力の現在の稼働の状況やらいわゆる事故発生の問題、いろいろ取り巻く問題がありますが、これらの問題を追求していくこと、このことは通産省産業政策の上でも非常に大きなウェートを占めているのではないか、こういう観点から今回この会議質問をいたしたいというふうに思います。  初めにお聞きいたしますが、原子力産業という言葉がありますが、この原子力産業というのは一体どういう範囲を指すのか、ひとつこれは簡潔にお答えをいただきたいと思うのです。
  115. 増田実

    ○増田政府委員 お答えいたします。  原子力産業の定義の問題でございますが、これにつきましては、普通一般に言われておりますのは、原子力を使いまして、これをいわゆるエネルギー源といたしまして行います産業、こういうことでございますが、そういたしますと、たとえば原子炉というものが中心になるわけでございますけれども、しかしながらそれのみならず、いわゆる原子力サイクルという問題がございまして、その前の段階、たとえば原料ウランを濃縮する産業、それから次には原子炉でエネルギーを発生いたしました後の後処理の問題、たとえば使用済み燃料棒の処理設備、これらが入るわけです。それからさらに含めまして、これらの各段階に対しましてその機器を製造するもの、たとえば原子炉それから原子炉に付随いたします各種の機器、これを生産いたしますいわゆる機械工業になるわけでございますが、これらを含めまして、相当広い意味で原子力に関係する産業を包括する概念をもちましてこれを普通一般に原子力産業、こういうように言っておるわけでございます。
  116. 上坂昇

    ○上坂委員 ところで、日本原子力産業会議というのがありますが、これが原子力開発をどう進めるべきかということの資料を政府に提出をしている。それから、ことしの三月十八日に原子力行政懇談会が開かれて、その席上討議された資料のうちで、原子力開発利用の問題点が指摘されたというふうに報道されておるわけでありますが、この指摘された事項、それから産業会議開発を進めている基本になる事項、基本的には原子力委員会のあり方が中心だと思いますが、このことについて簡潔に説明をいただきたいのです。
  117. 増田実

    ○増田政府委員 いまのお尋ね、二点にわたりますので、まず原子力行政懇談会から先に御説明申し上げたいと思いますが、原子力行政のあり方につきまして総理の諮問機関といたしまして原子力行政懇談会が、ただいま先生のおっしゃられましたように三月十八日に第一回の会議を行ったわけでございます。これは、第一回は三月十八日に行いましてから現在まで五回の会合を行っておりまして、原子力行政の基本的なあり方につきまして審議をいたしておるわけでございます。  この会合につきまして、まず最初の第一回におきましては懇談会の進め方、それから第二回には原子力開発の現状把握その他を行いまして、三回目以降、各界の方々からの御意見を聴取する、こういうことでやっておるわけでございます。基本的には原子力開発体制について、原子力委員会のあり方あるいは安全規制の方法、これの行政のあり方その他でございますが、現段階、つまり五回までのところは各界の意見を聞くということでございます。それから第五回は「むつ」の問題について討議いたしました。そのあり方について今後の会議審議される、こういう予定になっております。  それから、第二点の原子力産業会議でございますが、原子力開発について意見を取りまとめております。これは昨年の十二月に、原子力開発上の重要課題という提言を行っておりますが、その骨子だけを申し上げますと、一つは、原子力行政体制の問題につきましての提言ということでございます。これは原子力委員会のあり方、それから安全規制のあり方ということその他を提言いたしておるわけでございます。  それから第二点は、安全立地問題でございまして、安全研究をいかに推進するか、それから安全性に対する資料の公開に関する提言その他を行っております。  それから三番目は、核燃料サイクルの問題でございまして、ウラン資源、濃縮ウランの安定確保、それから再処理事業、廃棄物処理体制の確立、その他原子力機器の標準化等、これらの問題についての提言を行っております。  それで最後に四番目は、原子力の研究開発問題といたしまして、今後の動力炉開発をいかにすべきか、それから核融合等の新しい技術開発の推進というものを提言いたしております。  以上、原子力産業会議の提言の内容を一応要約だけいたしましてお答え申し上げた次第でございます。
  118. 上坂昇

    ○上坂委員 懇談会の方の結論はまだ最終的には出ていないということですが、これの議事録ないし要約したものがありましたら提出いただけますか。それから、いまの産業会議の方のまとまったものがありましたら提出していただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  119. 増田実

    ○増田政府委員 いまの原子力行政懇談会につきましては、これは各界の方々に自由に発言していただくということで、第一回の会議のときに、この内容につきましては一応内閣で取りまとめて発表をするということで、非公開の原則になっております。これは懇談会の委員方全員の一応一致した意見でそうなっておりますので、一応そういう取り扱いにさしていただきたいと思います。
  120. 上坂昇

    ○上坂委員 次に、日本原子力船開発事業団の改組に伴って大幅な権限強化の方向というのが打ち出されております。この点についてはどういう方向で強化をしていくのか、御説明をいただきたいと思います。
  121. 福永博

    ○福永政府委員 ただいまの先生の御質問は、去る五月の中旬だったと思いますが、総理府において設置されました「むつ」放射漏れ問題調査委員会、大山先生が座長をしておられる委員会でございます。この委員会で、今回の原子力船「むつ」の一連のトラブルの原因はどこにあったかというのを、単に技術的な問題だけではございませんで、よって来る原因を広く御調査いただいて報告書が出たわけでございます。その報告の中に数点、今後の施策のあり方といったようなことで御提言がございますが、その提言の一つとしまして、原子力船の今後の開発を進めるに当たっては、一貫した責任体制のもとで強力な技術的能力を持った組織をつくって進めるべきである、こういった趣旨のことが盛られているわけでございます。  先生御指摘の点はただいま申し上げましたところかと存じますが、それにつきましては、まず手始めといたしまして一貫した責任体制というものをつくり上げるべきであると考えまして、実は本日付でございますけれども、首脳陣、役員を一新いたしまして、新たな体制で臨むことにいたしました。なお、この後、これら役員の方々を補佐していただく強力な技術陣と申しましょうか、若手技術者の補充、増強といったようなことを考えておるところでございます。
  122. 上坂昇

    ○上坂委員 この開発事業団にはいろいろな会社の方からも出向している人がいるんじゃないかというふうに思われますが、役員が一新されたということですから、役員の一覧表ですね、これを後日提出をいただきたいと思います。
  123. 福永博

    ○福永政府委員 後ほど提出をいたします。
  124. 上坂昇

    ○上坂委員 次に、原子力発電所の事故の問題で、特に東京電力に関してお伺いをいたします。  初めに、この事故の報告というものがどういう経路を通じてどの主務官庁に出されているのか、それからその報告は事故発生後どのくらいの時日でそれが行われているのか、そしてまたこの報告があったときに、それに対して主務官庁はどういう対処をするのか、この点を御説明いただきます。
  125. 井上力

    ○井上(力)政府委員 事故報告の体制の点でございますが、通産省といたしましては、電気事業法に基づきます電気関係報告規則によりまして、通商産業大臣あてに報告が行われるようになっております。  事故の報告のタイミングでございますけれども、速報と詳報とに分かれておりまして、速報は四十八時間以内、詳報は三十日以内ということになっております。速報につきましては、事故がありますと四十八時間以内ということになっておりますが、実際はもっと早く報告がされておるのが実態でございます。詳報につきましては、なぜかなりの期間をとっておるかと申しますと、事故に対する対策を会社の方で検討いたしまして、それにつきましても報告をする。もちろんその前に原因の調査もいたしまして、それもあわせて報告をするということでございますので、ある程度の日数をとっているわけでございます。  こういったタイミングで事故の報告を受けるわけでございますが、これに対しまして国の措置といたしましては、これらの事故に対して直ちに原因の究明を急ぐということをやるわけでございますが、これは会社の方にもいろいろ検討させる、同時に、必要と認めた場合におきましては、通産省の方からも検査官を派遣いたしまして立入検査をやる、あるいは事故の性格によりましては総点検等を実施するということで事故に対する対策に万全を期しておるということでございます。
  126. 上坂昇

    ○上坂委員 速報では事故とみなされるもの、これにはミスのようなものもあるだろうと思うのですが、そういうものを一切報告するということになっているのですか。
  127. 井上力

    ○井上(力)政府委員 事故報告規則によって報告を受けますものは、感電死傷事故、電気火災事故、電気工作物の欠陥等による死傷事故、放射線事故、主要電気工作物の損壊事故、発電所事故ということになっております。
  128. 上坂昇

    ○上坂委員 いまのでは人身事故は入っていないように思いますが、これがどうして入らないのかということが一つ。  それから、東京電力では昭和四十六年三月に一号炉が営業運転をやってから四十九年七月に二号炉が運転をして、現在二基営業運転に入っているわけでありますが、その間何件ぐらいの事故を通産省としてはつかんでいるのか、お答えをいただきたいと思います。
  129. 井上力

    ○井上(力)政府委員 先ほど説明申し上げましたように、死傷事故——感電死傷事故それから電気工作物の欠陥等による死傷事故は報告の中に含んでおります。  それから、事故の件数でございますが、報告規則によって報告を受けたものは、福島一号設備については七件、福島二号設備については二件でございます。
  130. 上坂昇

    ○上坂委員 いま一号炉については七件、二号炉については二件というお話ですが、私が調査をした範囲では二十一件ぐらいになっております。昭和四十六年六月二十日にオフガスコンプレッサー室で二・五レムの被曝を受けた事故以来、四十六年だけで五件あります。四十七年度七件、四十八年度七件、これは二号炉を一件含んでおります。四十九年度一件、五十年度に入りましてから二号炉が一件、一号炉が一件、ざっと二十一件ばかりつかんでおるわけですが、こういうのはおたくの方には報告ないのですか。
  131. 井上力

    ○井上(力)政府委員 電気事故報告規則によりまして報告を受けたものは、先ほど申し上げましたような件数でございます。先生が御指摘の件数とわれわれが報告規則によって報告を受けているものの件数との差は、事故の定義の差によるものと考えられます。
  132. 上坂昇

    ○上坂委員 規則で決まっている報告以外に、これは大体三倍になっておるわけですが、それだけの事故が出ていることについてつかんでいないということは、少しいろいろな面でずさんではないか。いま原子力発電というのは非常に重要な時期にきていますし、国民の安全性に対する不安、そういうものを除去するためにもやはりこれは大きな問題だろうと思うのです。そういう意味では、大小にかかわらずつかんでおくぐらいのことがないと、ますます国民の不安を醸成するだけになるだろうと思うのです。特に地元の人はいろいろな形でとまった、知っているわけですから。そこに働いている人は皆地元の人ですから、何でとまったかというのは六体つかめるのです。その点はどうですか。
  133. 井上力

    ○井上(力)政府委員 御指摘のように現在運転に入っております原子炉がどのような状況にあるかという点につきましては、これは安全上も重大な関心を持って監視しなければならないというふうにわれわれ考えておりますので、炉の運転状況については常時会社の方と連絡をとりまして把握はいたしております。事故報告規則によらない形ではありますけれども、どういったことで炉がとまっておるかというような点については常時把握をしているということでございます。
  134. 上坂昇

    ○上坂委員 そうしますと、いま私が言った二十一件ぐらいのものは全部つかんでいる、こういうことですか。
  135. 井上力

    ○井上(力)政府委員 御指摘の二十一件でございますかにつきましては、ただいま私ちょっと資料を持っておりませんので、照合して——どういう把握をしておるかという点については直ちにちょっと説明ができかねるわけでございます。
  136. 上坂昇

    ○上坂委員 これは私、資料をあなたの方に要求したのですが、あなたの方から出した資料というのは、一号炉については、四十八年度以降については六月二十五日、それから四十九年の五月四日、この二つしか出てないのです。それから、二号炉については、ことしの一月十一日のものと三月九日のもの、この二つだけで、四つしか出てないのです。いま聞くと、一号炉については七件あるということですが、これは頼まれた人が四十六年からというのを間違えたのかどうかそれはわかりませんが、私は四十六年度の営業開始以来の資料を出してくれというふうに言ったわけであります。そこで、いまそちらに手持ちがないということになればこれは問題でありますが、あなた方の方でつかんでいる事故を全部出していただきたいと思うのです。     〔萩原委員長代理退席、委員長着席〕 そして、その中に、何としても事前に防護できなかった事故、それからミス程度のもので事前に防護できたというふうに思われる事故、それを区別して、何か印をつけてもらいたいというふうに思います。これは後で提出をしてください。  そこで具体的に、四十九年の十月二十二日、二十三日の一号炉の一次冷却水循環系バイパス管に冷却水のにじみが発見されたという問題についてお聞きいたしますが、これは液体浸透試験と、それから超音波探傷法で発見をされた、こういうことになっておりますが、この事故について、どういう事故であったか説明をいただきたいと思います。  それから、再循環系というのはどういう役目をするのか御説明をいただきたい。
  137. 井上力

    ○井上(力)政府委員 最初に再循環系バイパス管でございますが、これは原子炉に、蒸気を取り出す管のほかに水を循環させる再循環配管というのがございまして、その一部に再循環ポンプ出口弁というのがついております。この出口弁の入り口側と出口側の方をバイパスする配管がバイパス配管でございます。  事故の概要でございますが、これはバイパス配管の点検をいたしましたところ、御指摘のように昨年九月から十一月ごろにかけまして点検をしたわけでありますが、その際に、配管の溶接部近傍にわずかなにじみが発見されたということでございます。これにつきましては、そのにじみがありました個所を切断いたしまして、詳細に調査をしたわけでありますが、その結果、当該にじみは管内面からのひび割れによるものであるということがわかりました。これにつきましては溶接の施工不良による著しい残留応力あるいは金属組織の変化等がありまして、これにバイパス弁、これは常時閉じて運転をしておったわけでございますが、それによりまして、本管とバイパス管との温度差に基づく局所的応力及び水の停滞があったわけでありますが、それによる影響等が重畳して生じたものというふうに判断されております。
  138. 上坂昇

    ○上坂委員 そうしますと、この事故は応力腐食割れ、こういうことになるわけですね。
  139. 井上力

    ○井上(力)政府委員 応力腐食割れというものの中には非常にいろんな種類があるように聞いておりますが、その一種だというふうに考えられます。
  140. 上坂昇

    ○上坂委員 応力腐食割れというのはどんな状態で起こってくるのか、説明をいただきたい。  それから、この修理には一体何日を要したか。よく原子炉は、とまるとすぐ定検、定検と言うのですが、これは定検に入っているのかどうか、ここのところをひとつ御説明をいただきたいというふうに思うのです。
  141. 井上力

    ○井上(力)政府委員 こういう割れがございました理由でございますが、先ほども申し上げましたように、溶接の施工不良によりまして著しい残留応力があった、あるいは金属組織の変化があった、さらにバイパス弁を閉じて運転をいたしましたために本管とバイパス管との温度差に基づく局所的な応力がかかっておった、これに水の停滞による影響が加わりまして生じたものというふうに推定されております。  それから、これの点検及び修理でございますが、福島発電所一号炉でございますが、昨年の九月十五日に停止いたしまして、その後調査、検討を続け、さらに修理をやったわけでございますが、修復は五十年の二月十三日に終了しております。しかしながら、炉はその後またいろいろな点検のために、現在まだ停止中でございます。
  142. 上坂昇

    ○上坂委員 そこでもう一つ、第一原発の二号機についてですが、三月九日に給水ポンプの接続部付近、それから原子炉の冷却材の浄化系ポンプの軸付近の二ヵ所からまたしても一次冷却水が漏れていることが発見された、こういうふうになっております。東電の説明で、これは新聞ですから明細はわかりませんが、ポンプのつなぎ部分のパッキングが緩んで冷却水が漏れた、こういう説明を新聞社の方にしているようでありますが、この説明のとおりでいいのかどうか、それからこれは両方とも、二ヵ所の事故に対して同じようなことになっているのかどうか、ここを御説明をいただきます。
  143. 井上力

    ○井上(力)政府委員 福島第一原子力発電所二号炉につきましては、御指摘のようにことしの三月、給水系フランジ部、浄化系ポンプ軸封部からの漏洩がございまして、その点は、御指摘のようにパッキングを取りかえるというようなことをやっているわけでありますが、引き続き逃がし安全弁の点検のために原子炉は停止をしております。
  144. 上坂昇

    ○上坂委員 一号炉の方は応力腐食割れが四年の間に起きたわけですね。そして、今度の場合には、これは応力腐食によるものかどうか。
  145. 井上力

    ○井上(力)政府委員 今回の二号炉の場合にはフランジ部の漏洩で、パッキングの不良ということでございますので、応力腐食とは関係がございません。
  146. 上坂昇

    ○上坂委員 そうすると、パッキングが緩んだということは、これはどういうことなんですか。操作ミスに入るのですか、これは予測できない事故になるのですか。     〔委員長退席、萩原委員長代理着席〕
  147. 井上力

    ○井上(力)政府委員 操作ミスと申しますよりは、パッキングを装着いたします際の締めつけが不十分であったというようなことであろうと思います。
  148. 上坂昇

    ○上坂委員 パッキングの締めつけが不十分ということは、技術的にはどういうふうに解釈すればいいのですか。非常に技術が未熟だということなんですか、締めつける機械が悪いということなんですか。
  149. 井上力

    ○井上(力)政府委員 技術が未熟といいますか、通常の場合、これは漏れないのが望ましいわけでありますけれども、しばらく使いました場合に、やはりパッキングから漏れる、これは材料の一部劣化ということもあるかと思いますが、ある時間たちますと、やはりそういうようなことが間々あるわけでありまして、技術が全く未熟だというふうには考えられませんが、やはり最初の締めつけのやり方にもう少し注意をした方がよかったのではないかというように考えております。
  150. 上坂昇

    ○上坂委員 一次冷却水というのは炉心の中に入っているものですね。ですから、放射能は含んでいるわけですね。それが、パッキングが緩んで締めつけが悪かったらこれは間々漏れることがあるなんというと、これは非常に危険だと思うのですよ。年じゅう——年じゅうとまではいかなくてもときどき一次冷却水は漏れてるんだ、こういうふうに考えて差し支えありませんか。
  151. 井上力

    ○井上(力)政府委員 これは御指摘のように漏れるのは好ましくないわけでありまして、できるだけ漏れを少なくする、あるいは漏れないようにするというのが理想でございまして、そういったことで締めつけ方法その他漏れるような個所、バルブ、パッキングその他につきましてはいろいろ苦心をいたしておるところでございます。  さらに、漏れた場合に、これはドレーン系で漏れた液体その他回収するというふうにしておりますので、漏れたものがそのまま一般の大気に放出されるということではございません。
  152. 上坂昇

    ○上坂委員 漏れた水は、発電所内ですから一般には影響を及ぼさなくできるかもしれませんね。しかし、中に働いている人には、これはいやおうなしに影響を及ぼすんじゃないかと解釈せざるを得ないわけです。好ましくないというような言葉を使うわけでありますが、これは漏れてはいけないのですね。好ましくないという言葉を使うということは、もうすでにある程度の放射能は中に入っている従業員は浴びてもいいんだ、こういう考え方が先行しているからそういう考え方が出てくる。いわゆる被曝線量、許容量とかなんとかということに名をかりて、少しくらい放射能を浴びたって大丈夫なんだ、こういう考え方があるからそういう言葉が出るんだろうと私は思う。本当はこれはやってはいけないことなんです、あってはいけないことなんです。そして、本当は根絶するようにしていかなくちゃならない。それを監督官庁がそんな言葉を使って、そして緩やかにしているから、いつまでたっても事故が絶えない、こういうふうに私は思います。その点は非常にやはり問題だと思います。  ところで、県の環境保全課では、これがまた輪をかけてひどいことを言っているんです。こういうふうに言ってますよ。建家内での冷却水の漏れで、事故とは考えられないと言うんです。放射能による環境汚染は心配ない、こう言っているんです。あなたの考え方とそんなに変わりはないですね。私は、事故とは考えられないということを県が言うということになりますと、これは一体何なのか。そちらではこれは事故としてつかんでいるのでしょう。県ではこれは事故でない。これはもう県に対する通産省自身あるいは科学技術自身の原子力発電所に対する指導というものは全くなってない、こういうふうに言わざるを得ません。  それから、建家内だから心配ないというのは、全くこれはおかしい。建家内であろうとなかろうと、これは心配なのがあたりまえなんだ。中にいっぱい働いている。下請の人なんか五百七十人も働いている。そのほかに本当の従業員の人がいっぱいいるわけですね。そうなりますと、こういう見解を発表すること自体が問題なんです。これを県が県会の答弁なり何なりで堂々と言っているわけですよ。こんなふうだから原子力行政がうまくいかないのはあたりまえだ、こういうふうに私は思うのです。そういう点、どうですか。
  153. 井上力

    ○井上(力)政府委員 御指摘のように放射線の漏れ、これを絶無にするということが理想であるということは先ほども申し上げたわけでございます。ただ、どうしても放射性物質を原子力発電所というものは内部に持っておりますので、直接出てくるたとえばガンマ線といったようなものにつきましては、これはいまの先生の御指摘の漏れの問題ではございませんで、直接原子炉から放射線が出てくるわけでございますが、極力こういうものは相当厚いコンクリートでシールドをするというようなことをやっているわけでありますけれども、やはり作業の環境によってはどうしてもある程度の放射線の被曝があるということは避けられないわけでございます。こういうような漏れの絶無を期する、それから放射線下で働きます方々の放射線の被曝を極力少なくするような作業環境をつくるというような点につきましては、御指摘のようになるべく少ないのがいいわけでありますので、決してわれわれも緩くするというようなことを考えているわけではございませんで、いろいろな規制、指導を通じまして、御指摘のような方向で十分やってまいりたいと考えております。
  154. 上坂昇

    ○上坂委員 いま申し上げた二つの事故は、いずれもアメリカのいわゆる事故、一月二十九日ですね、米国の原子力規制委員会がBWR型の原子炉の緊急炉心冷却装置、これの非常に重大なる欠陥がある、そういう恐れがあるということで、同型の二十三原子炉を二十日以内に一時閉鎖をして調査をするように命じた。これに基づいて日本でも、悪い言葉で言えばまねをしてやった。その結果、発見された。これは両方ともそうなっているわけですね。そして、三月かどうか、日にちをちょっと忘れましたが、この間五月になってからあなたの方で発表をしておりますが、福島第一原発の一号機を先ほど申し上げた理由で再点検をした結果、一号炉のECCSの炉心スプレー系配管の溶接部付近から異常なにじみが発見されたと、こういうふうに出ているわけですが、これは配管では三ヵ所にじみが出ている、こう言っているわけです。これは何ヵ所ですか。それから日にちはいつ発見されたのですか。
  155. 井上力

    ○井上(力)政府委員 これは、にじみまでは、いっていなかったわけでございまして、液体浸透探傷試験等の試験で異常な指示が出たということで、やはり異常な指示が認められた個所を切断いたしまして、詳細調査を行ったわけでありますが、その個所は三ヵ所でございます。いずれも溶接をやりました個所の近傍でございます。  それから、いつ発見したかというのは、いま日取りはちょっとわからないわけでございますが、発表いたしましたのは、ことしの五月二十八日に全国の運転中あるいは試運転中の同型炉の点検を終了いたしましたので発表をいたしております。
  156. 上坂昇

    ○上坂委員 そうすると、二号機の冷却材の浄化系ポンプですね。それから、給水ポンプのこの事故と、それから一号炉のいまのECCSの事故というのは、原因としては大体似たような原因であると、こういうふうに説明を受けたと受け取っていいですか。
  157. 井上力

    ○井上(力)政府委員 一号炉の場合には溶接部近傍のひび割れということでございまして、これは先ほど申し上げましたようないろいろな原因の重畳したことによります一種の応力腐食割れでございますが、二号炉の場合は、先ほど申し上げましたように接続部のパッキング不良ということでございますので、原因は違います。
  158. 上坂昇

    ○上坂委員 一号炉の最近の事故、これはECCS系統の配管の故障であるということになりますと、この故障がもし一次冷却水の配管の故障と重なったような場合、一体どういうことになるのか、御説明いただきたい。
  159. 井上力

    ○井上(力)政府委員 福島原子力発電所一号機におきまして発見されました異常な指示でございますが、これは一部に傷があったということで、まだその液体が内部から外に出てくるというような状況にはなっておらなかったわけでございます。したがいまして、この程度のことであれば冷却水配管の事故という場合にも支障はないというふうに考えております。
  160. 上坂昇

    ○上坂委員 私が聞いているのはそういうことじゃないのです。昭和四十九年に美浜の原発の二号機がやはり故障しましたね。そのときは燃料棒が曲がったり、隣の燃料棒と接触したり、それから間隔が極端に狭まったりした、そのために冷却効果が落ちて燃料の過熱、こういうものになって、そして穴があいた、こういう結果になったろうというふうに思うのです。その結果、その冷却材がパイプの穴の中で突然——そういう事故が起きているようなときに、いまの緊急冷却装置のものが、いま言ったのは冷却水が出なくなる、溶接部が悪くてそれが出なくなるというようなことになったら、どんなふうに炉はなるかということを簡潔に説明をしていただきたいのです。
  161. 井上力

    ○井上(力)政府委員 燃料の曲がりの問題は、関西電力の美浜発電所第二号機におきまして発生したわけでございまして、この点につきましてはまた別途いろいろな対策を講じているわけでございますが、御指摘の福島発電所につきましては、これは美浜発電所第二号機が加圧水型であるのに対しまして、沸騰水型でございますので、型式も違いますし、燃料の曲がりといったような問題はいまのところまだ起こっておりません。
  162. 上坂昇

    ○上坂委員 どうも質問と答えがかみ合わないわけですが、福島第一原発の一号炉でも、四十六年の九月、燃料棒の被覆管八本にピンホールが入っているわけですね。四十七年九月には十九本、四十八年四月には三十八本もピンホールがあって、そして炉水中に沃素131を含んでいる高放射能の核分裂生成物が放出された、こういうふうになっているわけであります。こうした破損の原因というものは、燃料の中に残っている微量の水分が運転中に水素と酸素に分解して、これがジルコニウム被覆管を腐食したものだ、こういうふうに言われている。そういうような事故があって、そして中が大変になるときに、先ほど言ったように冷却水の配管まで傷められて、そして水が漏れる、そうするとみんな下へ落ちてしまう、そのとき上から緊急に、別な伝導体で電源をつないでいる緊急冷却水から水が出る、こういう仕掛けになっておるわけでしょう。下の炉心の中で事故が起きているときに、冷却装置が作動しなかったらどういうふうになるか、こういうことを聞いているんです。
  163. 井上力

    ○井上(力)政府委員 御指摘の燃料の被覆のピンホールでございますが、これは御指摘のように過去何回かの定期検査におきまして発見をいたしまして、燃料の取りかえをやっておるということはございます。ただ、この場合も、非常に大事といいますか、安全を期しましてこういう措置をとったわけでありまして、炉水の管理を十分に行うということ、結局炉水の中に放射性物質が出てくるわけでありますが、これを運転しながら取ってしまうという措置も可能でございますし、ある程度の放射能を炉水が持っておるということは基準上も許容されておるわけでございまして、これは安全の上にも安全を期するということでやったわけでございます。  それから、ECCS系の漏れの問題でございますが、これにつきましては、若干の漏れがあった場合には、漏れを検出する感度を従来以上、一けた程度上げておりまして、ある程度の漏れがあった場分には事前にその状況を把握できるということで現在対処しているわけでございます。
  164. 上坂昇

    ○上坂委員 新聞にはこう書いてありますね、六月から配管を取りかえる新しい作業を行う、こう言っているんですね。この新しい作業はどの工場が担当するのか。それから、溶接部が悪くなっているということですが、その溶接はどこの工場が担当して工事をするのか。それから、この工事の点検後主務官庁としてはどうするか。これは私は、見るとしょっちゅうこういう問題があるので、再発のおそれというものはしょっちゅうあるような気がするんです。しょっちゅうと言ってはおかしいけれども、ときどきあるというふうに思われるのです。そこで心配になるわけでありますが、この点いかがですか。それからもう一つ、九月まで運転を休止するというふうに言っているわけです。これは、起きたのはいつかちょっとわかりませんが、五月からとしても、五、六、七、八、九と、まさにもう休みっぱなしだと、全然稼働していないと言ってもいいくらいじゃないかというふうに思うのです。そこで、一号機の稼働率ですか、これは資料としてもらえなかったので、これを四十六年度から年度別にひとつ出していただきたいと思うのです。
  165. 井上力

    ○井上(力)政府委員 福島発電所一号機の稼働率でございますが、四十六年度におきましては、六六・四%、四十七年度が六五・七%、四十八年度が四八・四%、四十九年度は先生御質問のようないろいろな問題がございまして、慎重に点検、調査、修復等をやった関係上、二六・一%というふうに非常に低くなっております。
  166. 上坂昇

    ○上坂委員 これだけ休んでいるとつくっても何にもならない。大変な厄介荷物を東電は持っているというふうに思わざるを得ないのですが、これは東電の方のことですから余り言えないのです。しかし、これはエネルギー政策上からいっても、どうも余り稼働しないものにそんなに熱を入れる必要はないじゃないか、こういうふうに思っちゃうわけです。もっと稼働率のいいところに力を入れていった方がよほどエネルギー政策になるのじゃないか、こういうふうに思うわけです。そのことをひとつ、いま言ったことはどうですか。
  167. 井上力

    ○井上(力)政府委員 御指摘のように、原子力発電所は電力の供給力としてつくるわけでございますので、稼働率がやはりある程度以上高いことが期待されるわけでありますが、やはり現在、原子力につきましては、特に安全性を十分確保しつつ運転を図っていくということがきわめて大事な要件でありますので、そういった意味で、現在は稼働率向上というよりはむしろ安全対策を十分講じるというような観点から対処しているわけでございまして、今後におきましては、稼働率の向上を図るためには、毎年一遍定期点検をやるわけでありますが、そういったときに厳しく機器の点検等をやりまして、その間に修理すべきものは十分修理して運転に入るというようなことを徹底してやりたい、さらに軽水炉自体の改良あるいは従来の運転経験、故障その他の経験にかんがみまして、標準化を進めるというような対策を強力に講じていきまして、稼働率の向上を図っていきたいというふうに考えております。
  168. 上坂昇

    ○上坂委員 この問題については、また後日質問させてもらいます。  時間がありませんから次に進みますが、ことしの二月ですが、電労連の方から、原発増設に警告をするということで、被曝が非常に増加をしている、特に中で働いている労働者に対する被曝が増加をしている、したがって、これ以上被曝を増すようなことがあるともう協力しないぞ、こういう警告が出ているわけでありますが、それとの関連におきまして、福島第一原発の下請労働者の問題でありますが、実はこれは東芝の下請会社の大昭電設会社というところでありますが、ここに勤務していたT君というのが、四十五年から一号炉で働いていたわけです。それが四十九年の三月一日に退職をしました。ところが、退職後間もなく、体に異常を訴えて、東京の中央の大学病院だと思いますが、診察を受けたようであります。病院側では、聞くところによりますと、異常な病状ということかどうかわかりませんが、会社に連絡をしたところ、会社は一たん退社したT君をすぐに復帰をさせたわけですね。復職をさせたのです。T君夫妻は当時放射線障害であるとして会社側に対して補償金の要求、これに応じないときには裁判も辞さないという話をしていて、非常に怒っておりました。四月に、原町市の渡部病院というところに入院をして、三ヵ月ばかりそこにおりました。七月ごろに仙台の厚生病院に入院したのです。そして、ここでことしの二月二十七日に死亡いたしました。この厚生病院は、東芝の指定病院になっておるようであります。入院中、本人や家族に対して病状を全然知らせなかった。大昭電設の、これは幹部の人かどうかわかりませんが、名前は伏せますが、Y君は、こうしたことを、いろいろなことを余り人に言うと給料を払わないぞというおどかしまでしている。県に対しては、この厚生病院に原発の労働者が一名入院している旨これは報告があった、県ではこういうふうに言っております。しかし、許容量の範囲内だから問題はない、こういうように県は説明をしているわけですが、病気の報告を受けているということは、被曝の疑いがあるからこれは報告を受けたのじゃないか、こういうふうに私は思うわけです。  この点についてお調べになっている点がありましたら御報告をいただきたいと思います。
  169. 福永博

    ○福永政府委員 たしか昨年の秋も遅い時期だったと思いますが、東京電力の方から私どもの方に福島原発で働いていた人が何か血液関係の病気で入院しておられ、なくなられた、こういうようなうわさが出ております、こういうような連絡がございました。それで、私どもはうわさの真偽は別といたしまして、その方が原子力発電所で働いておられたということでございますので、さっそくその方が働いていらっしゃった当時の放射線管理の記録の提出を求めまして調査いたしたわけでございます。その後も係官を東京電力の方に派遣いたしまして、その内容等も確認いたしました。その結果、先生の御発言のようにこの方は四十五年から三年余り東京電力で働いておられましたが、その間の記録をすべて見ましても、三年間の被曝線量が、外部線量で五百ミリ程度でございまして、許容線量からははるかに低いわけでございます。また、内部線量につきましてもホール・ボデー・カウンターというものがございますが、それで測定した記録が残っておりますが、それにつきましても結果は標準的な人の平均的なバックグラウンド程度という報告をいただいておりますので、私どもとしましては、この方は直接放射線の障害というものと結びつくようなものではないのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  170. 上坂昇

    ○上坂委員 大体お答えはそんなところだろうと予想はしていたわけです。そんなことしかとにかく出ないというところがいまの行政の実態だろう、こういうように私は思うわけであります。  ここにこういう言葉があります。「最初に水を踏むなっていわれるんですよ。更衣室でアンダーシャツだけ、A管理区域ではパンツ一つになって、服から靴まで全部防護服に着替えるんです。着替えに四〇分、仕事が一時間半、終ってシャワーを浴びるのに三〇分、あとは検査して一日が終り、これで一万円です」これはここに働いている労働者ですね。  それからまた、こういうことも言っているのです。「一日は二十四時間だ、しかし、実際には一時間半しか働かない。だから、そこで働く人は一時間半で一〇ミリレムを越しているということだ。科学技術庁でも年間三〇〇〇ミリレムと書いている。あの建物のなかに、三〇〇〇ミリレムの放射能がどうしてあるのか、どこからでるのか、それがわかんない。」「調査団が来るというと、東電では三日がかりで掃除をするんだから、わしわね、あれはポンコツの実験炉だと思うよ。わしも働いてみて、毎日修理をやらされたし、A管理区域でもB管理区域でも、毎日のようにどこかを修理している。」こういう文章もあるんですよ。これは実際にその付近の労働者が言っていることなんですが、原発の集中地域は年じゅう定修をやっているのですよ、さっき言ったように、あっちこっちで、しょっちゅうとまっているんだから。そうすると、もうそこに働いている人はそんなに労働者はいませんからね、やはり年じゅう定修に行っているわけだ。ところが、定修のときは一番危険なときなんです。正常に運転しているときは放射能というのは余り漏れていないときなんです。定修のときは、放射能漏れがあったとか事故漏れがあったとかいう、あるいは休止をする、ストップをするという形になるわけです。ですから、そのときが一番危険なんです。そしてまた、定検の場合には炉の中にも入るわけでしょう。そういうのはほとんど下請労働者がやるわけですね。したがって、集中地域では労働者の労務管理あるいは健康管理、安全衛生管理というのは非常に重要な問題になってくるというふうに思うのです。そういう点で、このことについてもまたいつか質問をいたしたいと思いますが、そうした状況の中でこうした電労連の提案というものが行われてきているんだろうというふうに思いますので、このなくなられたT君の例というのは、私は各電力会社に共通してある問題ではないか、こういうふうに考えざるを得ないのです。そこで、そうした点を十分ひとつこれは行政上注意をして把握をしていただきたい。それでないと、ますますこの原子力行政あるいはエネルギー政策というものは停滞をしていく原因になるし、ここに働く人も恐らくいなくなるだろう、こういうふうに思われますので、その点注意をし、また後日質問をすることにいたしまして、時間が参りましたから質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  171. 萩原幸雄

    ○萩原委員長代理 以上をもちまして上坂昇君の質疑は終了いたしました。  米原昶君。
  172. 米原昶

    ○米原委員 私は、現在非常に経済的に苦しい状態にある中小零細企業の問題だけについて集中してちょっと質問いたします。  もちろん、現在の経済困難から中小企業を抜け出させるためには、いままでとられている総需要抑制の問題にしましても、いままでのやり方でいいかどうかというところにも根本的な問題が確かにあります。いままでの税制あるいは財政、金融を根本的に見直しをやる必要があるんじゃないかということを私は考えておりますが、そういう大議論をここでやろうというんじゃなくて、現在政府がとっておられる方針、これだけでも実は徹底的に実行されれば救済される面があるんじゃないか、そういう具体的な問題について二、三質問したいと思います。  いまとりわけ深刻な問題は、中小企業仕事がないという問題で、金融的な対策の面ではある程度いままでもやってきておられます。それは私も認めますが、仕事がないというのが一番深刻な問題であります。そういう点で、中小企業仕事をできるだけ保障していくという面で基本的にはどういう考えでおられるかを長官に最初にお聞きしておきたい。
  173. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 先生御指摘のように、これまで主として金融面から、中小企業がこの不況下に資金繰りに困りまして、倒産等の憂き目に遭うことのないように各種の手配をしてまいったわけでございます。しかし、最近中小企業の切実な声といたしましては、金よりも仕事が欲しい、こういう声が切実でございます。  これに対します措置としましては、基本的にはやはり現在の不況から早く脱出をするということが、最も中小企業仕事が回ることになる施策になるわけでございまして、そういう意味合いにおきまして、現在の不況からの脱出という面に力を入れまして、施策をいろいろ考えていただいておるわけでございますが、御承知のように輸出も先行きかげりが見られます。また、設備余力を非常に残しておりますので、設備投資意欲も余り活発でございませんで、こちらの面からの景気の振興も期待薄でございます。また、国民消費の増加につきましても徐々に増加を見つつありますけれども、最近の物価高に対応しまして、消費態度が非常に慎重でございまして、百貨店の売上高等もなかなか伸びが鈍いようでございます。そういうことになりますと、結局財政資金をてこといたしました公共事業の拡充でございますとか、あるいは住宅建築の促進とか、あるいは投資の中でも現在わりに活発であります公害防止関係の投資の促進、こういうことが当面期待される仕事でございまして、そういう意味合いで先般来第一次、第二次の不況対策を実施いたしまして、まず公共事業のことしの上期の契約率を極力高めるということでございますとか、住宅金融公庫の融資を早く受け付けて、その資金を流すとか、あるいは住宅ローンにつきまして銀行を大蔵省から極力督励をいたしまして、住宅ローンの融資の比率を高めていくとか、あるいは開発銀行なり公害防止事業団に対します財政投融資の追加等によりまして、公害防止の融資資金をふやしまして、企業の公害防止投資を活発にするとか、こういった事業を行いまして、結果的に中小企業仕事がふえるような施策をとってまいっておるところでございます。また、官公需につきましては、これは特に中小企業向けに極力官公需の仕事が出るようにいたしたいと存じまして、各省庁にお願いをいたしまして努力を願っておるところでございますが、昭和四十九年度は二八%強の年度初めの目標でございましたけれども、十二月で中間的に集計をいたしましたところ、二九・四%という実績が出ておりましたので、二月四日にもう一度、さらにその数字を上回るような結果が出ますように、各省庁に御努力願うように閣議了解をいただいたところでございます。この結果につきましては、現在取りまとめ中でございまして、まだ実績が私どもの手元にまとまっておりませんけれども、そういった仕事と申しますか対策を通じまして、中小企業仕事の確保に努力をいたしておる次第でございます。
  174. 米原昶

    ○米原委員 私先ほど言いましたように、根本的な問題についてはきょう議論しませんが、いま最後に言われた官公需の問題、いまお話があったように、やはり中小企業に回っているのは二割九分幾らか、七割は大企業の方にいっているという実情ですね。これでは全国四百五十万に上る中小零細業者の困難の打開としてもはなはだ不十分だと言わざるを得ないわけです。いろいろ閣議でも申し合わされているし、各官庁でもそういう方針は出ているようであります。出ているけれども、実際はなかなかいかない。いままでも四十九年度がいまお話のあったような状態でありますが、努力はされているが中小企業向けにはまだわずかしか増加してない、こういうことだと思うのです。しかも、中小企業に関する国等の契約の方針という閣議の決定は毎年八月ですね。いままでの経過では各省庁で積み上げてきた数字をまとめたものにすぎなかった。そういう意味では何か各省庁でやったものをただ総合的にまとめて、そして大体それを確認するぐらいなところで、国の方が方針を出してそれを各省庁にやらせるというふうにどうもなっていないように思うのです。まず目標と方針をはっきり決めて、それに従って官公需の中身も中小企業向けにふやす、具体的なやり方をもっと細かくさせていく必要があると思うのです。実はこの委員会に私たちは、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律改正案を提出しているのです。中小企業に五割以上の官公需を出せ、そういうことをむしろ義務づける法律を提案しているわけであります。実際の状態を見ますと、地方自治体、これも府県のいろいろな事情によってそれぞれ違うので、それを一つ一つをただこの知事はよくやったとかここはだめだとかいうような批評はやれないと思います、それぞれの県で大企業中小企業の比率も違いますから。しかし、たとえば京都などでは地方自治体の官公需の受注の場合、七割から八割まで中小企業に回っていますね。これは事実です。私の聞きたいのは、国の段階でも中小企業の保護育成、救済という立場で、この際思い切って大幅に五割以上を中小企業に発注するようにしてはどうかということなんです。中央の官庁でも、たとえば三月終わりの新聞に出ておりますが、大蔵省ではとにかく大蔵省が出す官公需の場合は五割以上中小企業に回すという方針を出しておられるようです。そういうことで細かくいままでのやり方を検討していかれれば、実際上中小企業に五割以上の仕事を発注するということは不可能じゃないと思う。そのためには、もちろん五十年度の各省庁の官公需の契約を洗い直す必要があるんじゃないかと思いますが、そういうことを考えておられますかどうか、聞きたいのであります。
  175. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 まず、国の予算の執行につきましては、予算の適正な使用に留意をしながら公正かつ効率的な使用を図るという会計法規上の制約が一つあるわけでございまして、国民の税金を使うわけでございますので、なるべく良質で廉価な製品あるいはサービスを求めるようにしなければならないという前提がございます。そういう前提においてなお中小企業向けに仕事を確保するという、この二つの課題調整に私ども頭を痛めておるわけでございますが、特に国の場合には予算の内容が非常に大口のものが御承知のように多いわけでございます。もともと中小企業が受注することは困難でありますような、たとえば防衛庁の航空機でございますとか艦船、武器といったような防衛装備品、あるいは非常に大型なり性能の高い電信電話設備でございますとか新幹線の工事とかあるいは高速自動車道路、大型のダムの建設、こういった非常に高度の技術を要したり大型の工事が国の予算の執行の場合には多うございますので、どうしても自治体の予算の執行に比べますと中小企業向けの比率が下がるわけでございます。現に昭和四十八年度の実績で見ましても、自治体の中小企業向けの発注の平均は七一%になっております。ところが、わりに予算が大きい東京都とか大阪府になりますと四〇%ちょっとといった比率でございまして、同じ意味でもっと大型な予算になります国の場合には、この比率がどうしても一定の限度があるわけでございます。わりに中小企業向けの、たとえば印刷を出すとかいったような内容が多いような予算の構成になっております省庁の場合には、七割等々の高い比率までいっている省庁もございます。ところが、公社、公団等になりますと、そこが二割とかいったような比率になるわけでございまして、それを平均いたしまして今年度できれば三割に持っていきたい、昭和四十九年度三割に達成できればということで、各省庁に努力を願ったわけでございますが、この数年来三割になりました実績が実はないわけでございまして、三割達成というのはなかなか努力を要する比率でございます。  五十年度につきましてはどういうふうに目標を定めますか、現在各省庁と話を進めておるところでございますけれども、各省庁によりまして予算の内容が違いますので、何割という率を一律的に当てはめることはきわめて困難でございますが、各省庁とも現在の不況に対処しまして中小企業向けにできるだけの努力をして仕事を出すようにしなければならないということにつきましては、十分御理解をいただいておると私ども考えておりまして、いま各省庁と、各省庁ごとの中小企業向けの発注比率の算定と申しますか、どれくらい出せるかということにつきまして話し合いを進めておるところでございますが、極力高い比率に持っていきたいと考えまして、お話を進めておる次第でございます。
  176. 米原昶

    ○米原委員 おっしゃるような点は一般的にはわかるのです。もちろん地方自治体と国とは違いますから、官公需といいましても政府の出す場合、非常に大型のものが多いし、その中でも各省によってかなり違うと思うので、それを一概に中小企業に出せと言ったって出せないような部門がたくさんあることは知っております。ただ、いままでもこの問題、国会でも何回も問題になって、そして五〇%以上出したらどうだというような議論も速記録を見ますとずいぶん出ております。できるだけそのようにしたいんだという大臣答弁も、もう十ヵ所くらいもありました、ことしになってからの国会の答弁で。私はこの問題で、たとえば建設省関係なんか、かなり官公需の多いものですから、建設関係の業者の人とも懇談会をやっていろいろ聞いたんです。建設省で出しておられる通達の内容も調べてみました。そして、それを業者とも話し合った。そうすると、この通達のとおりにやってもらえば、建設省でも五〇%行きますよ。実際は各省庁で出されておる方針が文書としては非常にりっぱなことが書いてある。それが必ずしもそう実行されないようなところに、これはもちろん官庁だけが悪いのじゃなくて、実は業者の方にも問題があるのですと言っておりましたけれども、そこにいろいろ問題があるように思うのです。ですから、その点をもっと具体的に私聞きます。  中小企業者の受注の機会を今後とも可能な限り増大するということを二月四日の閣議でも決めておられるようでありますし、その点から言いますと、日本の全事業部門の九・九割以上、製造業出荷額の五割、小売業の八割を占めている中小企業に対して、官公需の機会を公平に可能な限り与えるということは、いま政府が政策を進める上でも非常に重要な問題じゃないか、こう思うわけであります。毎年閣議で官公需の契約の方針が決定され、各省では通達も出して、中小企業の受注の機会の増大が方針となっていることはもう事実であります。しかし、実際にはそれがなかなか実行されてない。私が業者の人と会って懇談した中で出た問題にこういう問題があります。  つまり本来中小企業でも十分受注可能な官公需でありながらそれを大企業が奪っていくという問題です。たとえばランクづけの問題なのでありますが、こういう点については一般的な通達では、各省のものを調べてみるとなかなかいいことが書いてあるのですけれども、必ずしも実行されてないように思いますが、この点、中小企業庁の方ではどう見ておられますか。
  177. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 四十九年度の中小企業者に関します国との契約の方針におきましても、指名競争入札の場合には極力同一資格等級区分内のものによる競争を確保することということで、中小工事につきましてはできる限り中小企業者を指名するように、こういうことを決めておるわけでございます。詳しくは所管の省の方からあるいは御説明いただいた方がよろしいかと存じますが、たとえば建設関係の官公需の発注の場合にいわゆるランクづけができておりますが、たとえばCランクならCランクの事業に関しましては、Cランクより上のランクの人はそれに参加させないというような指導の通牒も出していただいておりますし、現実にそういう指導をしていただきまして、中小企業がランクに入っておるようなものについてはその中小企業者で大体やらせる。しかも、下のランクのものが非常に優秀である場合には上位のランクに加わって仕事をしていい、こういうふうな指導もしていただいておりまして、そういうことによりまして、上位のランクの方が仕事がないからということで下位のランクの仕事を食い荒らすというふうなことがないように、所管省の方で指導していただいておるというふうに了解をいたしております。
  178. 米原昶

    ○米原委員 私が通達と言ったのはいまおっしゃったそういうことなんです。建設省でもそのことを聞きましたし、郵政省でもそういう通達が出ているようです。だから、上位のランクの、主として大企業仕事が多いと思います、そういう人が中小の仕事まで取らないように、そういう指導をしている、そういう通達が出ている。ところが、事実を調べると、やはりAランクの大企業がCランクが行うような仕事を取ってしまう、これが起こっているから私実は質問しているのです。  中小企業庁が発行されている「四十九年度の官公需契約の手引き」というこれですね。これを見ますと、ただその点が必ずしも明確じゃなくて、「直近上位、または下位の等級に対応した契約の入札に参加できる。」という書き方がしてあるために、これだとAランクの人がBランクの仕事をやったっていい、Bランクの人がAランクをやってもいいということになるのだと思うのです、こういう表現がしてあるから。そうすると、むしろ各省庁が出している通達の方が、もっと明確に下位ランクの仕事を取らないようにと書いてあるけれども、肝心の中小企業庁が出している官公需の手引きはそれがあいまいになっているのですよ。こういうことをもっとはっきりさせる、そうしてAランクなどの大企業のそういう会社が中小企業の等級区分に参加しないように、そういうことをむしろはっきり禁止すべきだ。ランクは上でも、この仕事はどうしたって等級の上の方でないとできないという例外はあるかもしれぬ、しかし原則的には下のランクの仕事はやらない、やらせない、禁止するというようなことを中小企業庁自身指導をすべきじゃないか。いまおっしゃいましたから聞きますけれども、そのあたりの指示が中小企業庁自身がまだあいまいじゃないか、こう思いますが、どうでしょう。
  179. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 このランクづけによります指名入札の範囲の選定の問題につきましては、会計法規上はその執行は各省庁に実は任されておるわけでございます。各省庁の従来の取り扱いは、あるランクの人はその上位あるいはすぐ下の下位、つまり一格上と一格下まで参画できるというような運用を従来やってまいっておったのが通常でございますけれども、特にこういった不況の時期でございますので、建設省では先般通達を出していただきまして、極力下の方には下がらないように、こういうふうな指導を願っておるところでございまして、できればそういうふうに全省庁お願いいたしたいと私どもとしては思っておるところでございますが、一応の通常時のたてまえをその手引きに書いておりまして、最近そういったふうに特に下へ下がらないようにという通達が出ておりますことは、その私どもがつくりました四十九年度の手引きに漏れております点は、大変遺憾に存ずるところでございます。
  180. 米原昶

    ○米原委員 ですから、実際は、中小企業庁が出されているものよりももっと実際に適合したものを建設省が出しているということです。ですから、その基準を少なくとも中小企業庁方針として出された方が正しいんじゃないか。ただ、問題は、そういうことを決めましても、建設省がそういうふうになっているんだということは業者の人も知っていました。知っているけれども実はそれが実行できない。建設省はそういう指導をする意図でやっているらしいけれども、実際にはそうならない。それは単に建設省だけの問題じゃなくて、業界に非常な封建的なしきたりがあるというような問題、いろんなことがあると思うのです。そこまで解決しないと実はこの問題は解決しないんだけれども、しかし官庁の方針としては少なくとも建設省が出しておられるようなものを一般方針とすべきじゃないか。この不況下で一とにかく中小零細企業の方は何とか仕事を取りたいという、閣議でも大体そういう方向を決められている問題ですから、ぜひその点を決めていただきたいと思います。  その次に、このランクづけの問題ですが、いまおっしゃったように各省ごとにそれぞれやっているわけです。ところが、このランクづけの算定基準まで、実はそのためでしょうが、各省ごとに違ってしまっているわけです。たとえば同じ業者で、ある省の方ではAランク、別の省ではBランクにされてしまう。また別の省ではCランクになる。こういうようなランクづけの実際上相違が起こっているのです。これがいろいろ逆に困難な問題を起こしているわけですが、このランクづけが違う問題、これをどうしますか。ランクづけの算定基準というものを公開すべきじゃないかと思うのですが、この点どうでしょうか。
  181. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 これは先ほど申しましたように、このランクづけは会計法規上実は各省庁にまかされているわけでございまして、各省庁の発注の方針によりまして、あるいはその仕事内容も違いますので、それに応じていろいろランクづけが各省庁ごとに行われております。したがいまして、省庁によりましてその間に差があろうかと存じますが、さらに内容を検討してみたいと存じます。
  182. 米原昶

    ○米原委員 ところが、全く同一業者で、そして同じような仕事を別の省から頼まれてやるということになっていて、こちらとこちらがランクづけが違うのです。こういうことが実際に起こっている。ですから、やはりランクづけの算定基準といいますか、そういうものを統一さしておかないと、いろんな意味で混乱が起こるのではないでしょうか。私はそういう意見なんです。  そしてもう一つ、このランクづけの審査項目を見ますと、年間平均の完成工事、こういうものを記入するようになっております。ところが、この不況下で新規に官公需に期待して申し込む業者も少なくないわけであります。このようなところが年間の平均完成工事、つまりいままでの実績を書き込むことになる、そしてどういいますか、書き込もうが書き込むまいが、大体そこに一つの問題があるわけですが、つまり実績主義になっているということです。本来のその業者の力量にふさわしいランクづけじゃなくて、いままでの実績がどうであったか、これが基準になるということは、やはり予算の執行上からいってもおかしいと思うのです。本来の業者の力量というものを正確につかめるようにして、そうしてこのランクづけをやるべきだ、こう思うわけです。予算の執行ですから、もちろん厳正にやらなくちゃなりません。それがいままでのしきたりだけで、ただ実績で業者を評価するということになりますと、いろいろ不公平が起こってくるんじゃないか。一般競争契約や指名競争契約の参加資格審査の中でも、過去五年間の主な工事というところを書かせるようになっておりますが、そういう点でも余りにも実績主義ということが第一になっている、この点どう考えられますか。
  183. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 国の財貨なりサービスの購入につきましては、税金を使って賄うわけでございますので、契約の相手方の信用につきまして、慎重に審査を行う必要があるわけでございます。この相手方の信用力の審査の判断の一つの基準と申しますか、参考資料といたしまして、実績をいろいろ勘案するということはある程度やむを得ないことではないかと私は考えるわけでございますが、ただ実績がゼロの場合には、一切官公需には参加させないということは、新規の事業者等にとっては非常に酷なことにもなるわけでございまして、その辺は一つの目安でございまして、あとは各省庁が、相手の信用力が確認できれば参画できるような例外的な措置は講じられるように承っております。
  184. 米原昶

    ○米原委員 問題は、官公需をできるだけ中小企業に回すべきだという閣議の決定は、それなりに大きな意味を持っていると私思うのです。何しろこの不況の中で、中小企業の倒産は大変な状態ですから、何とかして仕事を回さなくちゃならぬという場合に、余りにも実績が問題になりますと、実際にできる力を持っている中小企業、そういう仕事を救済するという意味がほとんどなくなってしまう。これは現在の状態考えますと、いままでどれだけの信用があるかということは全然考慮に入れないなんということは不可能に決まっていますけれども、余りにも実績主義にこだわると、中小企業を何とか救済したいということが不可能になってくるんじゃないか。官公需を受けられる登録をしましても、なかなか仕事は回ってこないというのが実情だと聞いておりますが、その点から言うとこの実績主義という問題をもっと考え直す必要があるんじゃないかと思いますが、長官どうでしょうか。
  185. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 大事な仕事を発注するわけでございますので、発注側といたしましては、その受注される方々の信用を判断する一つの大きな参考資料として、実績を重視されることはわからないわけではないわけでございますけれども、御指摘のように実績が少ないために、中小企業が能力がありながら仕事が取れないということはこれは問題でございますので、余りそこをしゃくし定規的にならずに、信用力を確認するほかの手段があれば、そこら辺を極力弾力的に運用していただきますように、各省庁にもお願いをいたしたいと思います。
  186. 米原昶

    ○米原委員 実は電気工事の関係の業者座談会をこの前やりました。そのときにも聞いたことですが、とにかく官公需を取ろうと思うと、理由のいかんを問わず、その業種が赤字ならば登録業者になれない、こういうことになっている。しかし、赤字になるといったっていろんな場合がありますから、これを一概に当てはめてはまずいのじゃないかと思う。ところが、赤字ならば登録業者になれないというので、結局無用のくだらぬ粉飾作業をやる必要が生まれてくるのだ、こう言っておりました。業績が赤字になっているような業者はいまかなりあると思う。そういう業者こそ官公需で救済しなくちゃならぬ、こういうふうに思うので逆じゃないか。こういう業績至上主義は思い切って改めるという方向を出さないと、官公需を中小企業にできるだけ回すと言っても、それこそ実績が上がってこないのじゃないか。入札や指名の際も、業績悪化ということが一番問題になるそうですけれども、どうでしょうか、そういうことになりますか。
  187. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 赤字会社等は入札の対象から除かれているけれども、なるべくそういうのも参画さしたらどうかという御質問かと存じましたが、やはり先ほど申し上げましたように会計検査もございますし、国民の税金を使って仕事を発注するわけでございますから、確実にこちらが要求するとおりの規格、仕様で仕事ができ上がることがやはり一面では非常に大事なことでございますので、中小企業仕事を出すという要請と同時に、その仕事が的確に遂行されるという会計法規上の要請を満たす必要もあるわけでございます。その辺のかね合いをどこまでうまく兼ね合わせるかというところが非常にむずかしい点でございますけれども、余りしゃくし定規にならないで、その中小企業の信用力なり仕事の能力が確認できればなるべく出していただくように各省庁にお願いをいたしたいと思いますが、企業に欠損等があるといったような場合には、信用力という意味におきましてはやや適格性を欠くようなふうに判断されてもいたし方ないんじゃないかというふうに考えます。
  188. 米原昶

    ○米原委員 この点は出されておる「官公需契約の手びき」の中にも「指名に際し、資産及び信用度の低下の事実がなく」、こういうふうに書いてあるものですから、業績が悪化しつつある、こう判定されるともうそこには逆に仕事がいかない、こういうことにこの言葉のとおりでいくとなるし、実際に行われているのも大体そういう方向じゃないかと思うのですね。ここのところは、本当にしゃくし定規にやると中小企業の救済というのは不可能じゃないかと思うのです。実際にやっと指名されても呼びかけがこなかったり、入札に参加しても落札しない。特に一番問題なのは、官僚上がりのいるところに仕事を持っていかれるということを非常に問題にしておりまして、この一月にも問題になって国会でも問題になりましたが、たとえば建設省の労働組合がこの問題を暴露しまして新聞にも大きく報道されました、国会でも論議になりました役人の天下りの問題です。政府の役員が天下りした企業には官公需が優先発注される。このことは、もちろん政府はそんなことはやってはいないといつでも言われます。しかし、私がこの前建設業界の懇談会をやったときにも、それが一番問題なんだと逆に言っているんですよ。信用度ということが、たとえばここには天下りの人物が社長になっているとか副社長になっている、だからそこに仕事がいくなんということがあったら大変なことになるのです。この点はよほど注意していただかなければならないのですが、官公需がそういう政府の役人が天下りした企業に優先発注されるということは絶対に許されない。実際はそういう状態にもうとっくの昔からなっているし、政府だけではなくて、建設関係で言えば全国の都道府県すべてがそうだと言っておりました。都道府県の建設部長というのは、実際上は建設省が人事を決めるような形になっている、そうしてそれぞれの県も、やはり建設省のOBが天下りで入っているような会社があって、そういうところと必ず結んで仕事をやるというのが昔からのたてまえになっている、そのために中小企業でも対抗上役人のOBを雇うそうであります。そういうことも話しておりました。しかし、そんなことをやったところで中小企業はそれではとうてい太刀打ちできないでしょう。OBの役人を持ってきても仕事が取れるのは二年間、後はやはりだめです、こう言っておりました。このような問題をすっきりと断ち切らないと、方針としては政府で出されているのを私は悪くないと思うのです。少なくともいまの政府がいまの時点でやれる最大限は、ある意味で努力されているかもしれない。そういう趣旨だということはわかりますけれども、業者の人に見せると、このとおり本当に実行されれば五〇%以上仕事は取れるはずですと一様に言っておりました。この点については大臣に、天下りの企業仕事がいくというようなことを絶対にやらせないようにしていただきたいのです。この点をひとつ見解を聞いておきます。
  189. 河本敏夫

    河本国務大臣 これはあくまでも公平に取り扱うつもりでございます。
  190. 米原昶

    ○米原委員 国等の契約に当たっては公平にやるということでありますが、全国中小企業団体中央会が各都道府県の中小企業団体中央会にあてた文書があります。内容は、四十九年六月二十六日に開かれた中小企業官公需問題研究会の経過報告であります。中小企業庁下請企業課長の真木祐造氏が講師として出席しておりますが、この文書によると真木さんは次のようなことを言っておられます。「受注をしようとする業者は、官公需担当官の信頼をかち取ることが第一に必要であると思う。」私、こういう言い方が正しいかどうか。これでは、元役人だった天下りを迎え入れた企業ほど官公需担当官の信頼をかち取る上で有利だということをまるで示唆しているようにすらとれます。この点どういう意味なんでしょうか、聞きたいと思います。
  191. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 これは私の推察でございますけれども、恐らくは官公需を受注するに当たりましても、いろいろ官庁側から要求される資料その他をきちんきちんと正確に出したりすることによりまして、間違いがない会社であるというような信頼を得ることが必要である、こういうふうな趣旨のつもりで話したのではないかと存じます。
  192. 米原昶

    ○米原委員 好意的に解釈すれば確かにそうは言えるのです。しかし、この言い方は、何か一担当官の個人的な思惑で官公需が左右されるというような印象も与えるのです。官公需担当官の信頼をかち取ることが第一だなんということを言う。実際に仕事をしっかりやって、業績をしっかり上げるということは確かにいいことですけれども、この仕事を取るのは担当官の信頼をかち取ることが第一である、私は少なくともそれを第一だという言い方は、ことに建設業界では天下りが非常に横行しているということを非常に憤慨しているのですよ、そういうところの業界に向かってこんなことを言うのは、私は正しくないと思う。  私のところに来ておりましたある零細な設計業者の人が話しておりました。仕事を取るために——いままでも自治体関係、たとえば東京都とか横浜市、神奈川県なんかの仕事は取っている、そういう設計業者の人ですが、この人が、こういう不況の中で仕事がなくなって、何とか官公需を取りたい、そして各省庁、方々を回ったらしいのです。三年間回ったけれども結局仕事を取れなかった、一体官公需というのはどういう仕組みになっているのだろうかということを言っておりました。担当官の信頼を得ることが第一だ、これは何か個人的な信頼感のような感じがするのです。りっぱな仕事をやっている、ちゃんとまじめに良心的に仕事をやっている、官公需を出すのにそういう客観的なもので判断されるのは当然だと思うが、担当官の信頼を得ることが第一だというような言い方自体、私は基本的に間違っているのじゃないか。これは中小企業庁としてもよほど注意していただきたい問題です。この点について長官、もう一度意見を聞かしてください。
  193. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 その会社が持っております技術とか能力その他について、発注される側の役所の信頼を得るように努力しなさい、こういう趣旨で話したように聞いておりまして、あくまでいいかげんの会社でなくて、しっかりした会社であるということをちゃんと認識してもらうように努力すべきである、こういう趣旨で話したように聞いておりますけれども、もし先生のおっしゃいますような誤解を招くようなことであったといたしますれば、今後十分注意をいたしたいと思います。
  194. 米原昶

    ○米原委員 もう一つ、官庁の方から出されている通達そのものはいいことが書いてある。それを本当に官庁でやってくれればいいのだけれども、それが実際にはできていない実情の中にこういう問題がありました。  たとえば中小企業ですね。これは基本法で中小企業が定義されております。そのとおりでいいと思うのですけれども、ただ、いま問題になっております不況のもとに置かれている中小企業にできるだけ仕事を出すというこの問題から見ますと、中小企業といっても実態はいろいろあるわけですね。中には大企業資本が五〇%以上も入っておるような、いわば大企業のダミーがある。こういうところがたとえば商工中金の資金でも、大企業がダミーを使ってこれを取らして利用しておるというような問題がいっぱいあるのだと言っております。だから、中小企業にできるだけ仕事を出すと言っても、政府の統計でもいまおっしゃったように三〇%中小企業に出ていると言われるわけですけれども、実際はその中小企業の中でも、本当の意味で困っておる中小企業というよりも、大企業中小企業の名前で仕事を取る、このようなことがかなりあることを見抜いてもらわなければ困るし、また業者の方でもそのことを自覚して、政府にこのことを協力してもらうようにやらなければならぬのだという意見が出ておりました。これはやはり官公需を中小企業に出す場合にも、そのようなダミーに仕事を出すことが中小企業に回したことになるのだというのでは確かに問題だと思うのですが、ランクづけをやったりそれに従った契約の際にも、これがそういうダミーじゃないかというような点検はやっておられるのでしょうか、どうでしょうか。この点を聞いておきたいと思います。
  195. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 たとえば中小企業振興事業団の高度化資金の融資でございますとか、あるいは中小企業金融公庫の融資とか、そういった各種の助成措置の場合には、ダミーと申しますか、大体大企業資本が五割以上入っておって大企業の身がわりとみなされるようなものについては対象にしない、こういう運用をいたしておりますが、官公需の場合におきましては、入札等でやっておるわけでございますけれども、特にダミーを外さなければならないような特殊な事情がない限りは、各省庁でもちろん審査はしていただいておるわけでございますけれども、ダミーだからということで外されるというような運用には現実にはなっていないように、私承知いたしております。
  196. 米原昶

    ○米原委員 きょうは細かい問題ばかりですが、もうちょっと実際問題でお願いいたしておきたいことがあります。  一般競争契約や指名競争契約の参加資格の登録申請受け付け及び審査は年一回ということになっております。しかし、現在のような不況下では、何とか官公需を取りたいという中小企業は非常に多い。年一回でなくて各四半期ごとぐらい、年四回ぐらいこういうことができるようにしてもらいたいのだと多くの中小業者は言っておるのです。年一回ですと、それに漏れてしまうと一年間は官公需を取れないのです。年四回ぐらいの機会を与えるようにすべきじゃないか、こう思いますが、この点どうでしょうか。
  197. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 ただいまの点は、前にも本委員会で御質問がございまして、ただいま各省庁と協議中でございます。
  198. 米原昶

    ○米原委員 それからもう一つ、実際問題ですが、入札の際に保証金が必要であることになっておりますが、特に大きな入札ほど要求されます。現在、見積もり契約金額の百分の五以上、こういう保証金になっておりますが、実際はこれも実績によっては免除になることもかなり多いのですね。結局これがある意味じゃ大企業にきわめて有利で、いま仕事を何とか取りたいと考えている中小企業には非常に不利になっている。中小企業庁で出されている手引きを見ますと、落札者が契約を結ばない場合があるからそういうふうに保証金を取るのだとしておりますが、その場合は別な業者に当たれば済むことで、こういう大きな保証金を取るなどということを決めなくてもいいのではないか、こう思いますが、この点改善する意図はありませんか。
  199. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 入札保証金を取ることにつきましては、大蔵省の所管しておられます会計法令で決められておる点でございまして、これを取っております理由は、落札者が契約を締結する義務の履行を確保して、万一その者が契約を締結しない等の場合にはその損害をてん補することを容易にするために取っておるものでございます。ただ、落札者が契約を結ばないこととなるおそれがないと認められる場合には保証金を取らないでもいいという例外措置はございますけれども一般的に、大事な仕事を出しまして一応いろいろ日程等も組んでやっておりますときに、落札者が落札をしながら契約を結ばない、こういうことが頻発するようでは仕事の段取り上非常に困りますので、そういう意味におきまして入札保証金を取ることになっておる次第でございまして、制度としてはやむを得ないものではないかと考えます。
  200. 米原昶

    ○米原委員 では、ちょっと別の質問をしましょう。  郵政省の方が見えているそうですから、そちらの方に聞きます。  官公庁の物品購入の場合、物品購入をデパートなどによっている点が相当あるようですけれども、これこそ分割発注して中小企業に回すべきではないか。中小企業官公需特定品目の中には外衣、印刷などがありますが、たとえば郵便局の局員の制服などは大企業に発注されております。規格は統一されているのですから、一定の援助をすれば分割して中小企業に回せないことはないはずだ、こう考える。また、はがきなどの場合も大手に頼んでおりますが、これも中小企業でできない仕事じゃないと思う。そのほか、郵政省でなく、たとえば警視庁の制服なんかでも皆どうも大手に回っているようですが、こういう点は特定品目として出せることになっているのに中小企業に出していないという点がかなりあるようです。郵政省のを調べてみるとかなりある。郵政省の場合、全国の小さい郵便局の建設について官公需があるはずですが、現在は大半が大手の建設業者に発注しております。郵便局などは共同受注や共同請負制度などによって中小企業にも十分発注できるのではないか、こういう点を改革できないものかどうかということを郵政省から聞きたいと思う。
  201. 黒澤俊夫

    ○黒澤説明員 郵政省の資材部の購買課長でございます。  まず、最初の制服の件でございますが、郵便局の局員の制服、これは職員のユニホームでございまして、その貸与目的からいたしましても特別な仕様規格を定めまして品質を統一する、それから大量にまた短期間に調達する必要がございます。     〔萩原委員長代理退席、委員長着席〕 したがいまして、契約の履行を確保して品質の向上を図るために発注先は信用の置けるところを選んでいるわけでございます。しかしながら、制服と申しましてもいろいろございますが、比較的簡単なものとか、それほど厳重な品質を要求されないもの、こういうものは発注先を拡大いたしまして中小企業にも受注の機会を与え、中小企業にも発注しております。  それから、はがきでございますが、はがきは郵政省発行のものでございますし、品質の統一それから生産工程の管理等厳重に行っておりまして、最も信頼の置ける業者に発注しております。その業者の中には大企業中小企業もございます。それでもなお年賀はがきの番号漏れというような事故がございまして、利用者にも迷惑をかけた例もございます。したがいまして、発注先は十分調査いたしまして、信用のある業者に発注しておりますが、大企業にも中小企業にも発注しております。  被服、はがきにつきましては、ただいま申し上げましたとおり、中小企業にも発注しておりますが、郵政省といたしましては、被服、はがきは調達する物品の中でも一部でございまして、これ以外にも大量の各種の物品がございますので、中小企業の受注機会の増大、こういう点につきましては十分に検討いたしまして、努力していく所存でございます。  建築の方は、建築部の管理課長からお答えいたします。
  202. 米原昶

    ○米原委員 時間もありませんから……。  ただ、最後に私特に郵政省に聞いたのは、郵政省で出しておられる「昭和五十年度建設業務の執行について」こういう通達の中でも、分割発注にしてできるだけ中小企業に回したらいいというような方針が書かれている。方針にはなかなかいいことを書いてある。ところが、実際にはそれを実行する工夫がどうも足りないんじゃないかという気がするのです。  たとえば自治体の場合、京都の場合で見ますと、京都で中小企業会館というかなり大きな会館を建てた。これを建てる場合に中小企業共同で、分割発注という形で、りっぱな会館ですが、普通の県だったら大企業でなければあれはやれないと常識的に思われているようなところまで中小企業に共同させて、大きな会館を一つ建てた。つまりああいうような工夫をかなりやれば、この不況の中で、中小企業にできるだけそういう官公需を回す、これは閣議決定ですから、私たちは五〇%以上回してほしいわけですけれども、できると思うのです。そういうことを今後とももっと真剣に考えていただきたい、こういうことを申し上げまして、私の質問を終わります。
  203. 山村新治郎

    ○山村委員長 近江巳記夫君。
  204. 近江巳記夫

    ○近江委員 福田長官にまずお伺いしたいと思いますが、公定歩合が〇・五%いよいよあすから引き下げになるということも聞いておるわけでありますが、この〇・五%引き下げという意味、これがまず第一点です。  それから、物価の問題から見てまいりますと、四月には二・二%、五月には一%、こうした依然として根強い上昇傾向があるわけであります。政府の公約としましては、一けたに抑えるということは何回も明言されておられるわけであります。春闘におきましても一五%以下に抑えられておりますし、こういう中で果たして政府の公約どおり一けたに本当に抑え込んでいくことのできるそういう自信を持っておられるのか。また、自信を持っておられるとしましたならば、その根拠は何であるか、こうした点につきましてお伺いしたいと思います。
  205. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまの物価上昇の現象、これはいわゆる需給インフレという段階はすでに昨年の二月ごろ終わりまして、もっぱらコストで物価が上昇を続けておる、こういう段階と見ておるのです。コストの要因から見ますと、私はいまの物価の推移というのは大局的に見ますと非常にスムーズに行っておる。その理由の最大なものは、何と言っても春闘のなだらかな解決です。昨年は三二・九%の上昇、それがことしは一三・四%のところにおさまりそうである。これは大変な変化です。物の価格のコスト要因としてまず非常に大きな変化が出ておる。  それからもう一つは、これは全部が全部というわけではございませんけれども、海外から輸入する物資、これが大方輸入価格の頭打ちという状態に来ておるわけです。エネルギー関係、そういうようなものにつきましては、まだ強含みのものもありますけれども、逆に農作物のごときはこの半年で半値に落ちる、こういうようなものも多々あるわけであります。大方頭打ち、こう申し上げて差し支えないか、こういうふうに思うわけです。  それからもう一つは、公共料金です。去年はコスト要因の中でこの公共料金というのは非常に大きなウエートを占めた、六月の電気料金の引き上げが、営業用につきましては七〇%を超える、生活用につきましても三〇%というようなところへ決められておるのです。ガスもそんなような調子で上げられる。私鉄、国鉄あるいはバス、トラック、タクシー、そういうものが軒並み引き上げになる。消費者米価は三二%引き上げになる、こういうような状態でございまして、公共料金の消費者物価に及ぼす影響度というのが三%に及ぶというような状態だったのですが、ことしは公共料金抑制方針をとりまして、国鉄は上げません。あるいは電信電話あるいは塩、そういうものはこれの引き上げを凍結する。その他の公共料金につきましても抑制方針をとっておる。そういうことで、あと米の問題、麦の問題があるのですが、これはまだ方針を決めておりませんけれども、それらを考慮に入れましても、昨年の三%の影響度、それに比べますればはるかに低い、一%をちょっと上回るというような程度のものが考えられるわけでありまして、これも非常な変化であります。  それから、きょうは日本銀行の公定歩合が引き下げになる、貸し出し金利水準もこれに追随して下がる、こういうことになりますが、これもコスト要因、ささやかでありますけれども、去年はこれが上昇過程にあったわけですが、今度は逆に下降過程に移るというのですから、これもいい要素です。そういう物価に対しましていい要素がある半面におきまして、企業におきましては非常にいま不況度が強いものですから、その収益状態を改善しようというので商品、製品の値上げに脱出口を求めようという動きがあるのです。これが気がかりな一番大きな問題ですが、そういう点を除きますと、とにかくいい要素の方が多いのです。ですから、私は、企業のそういう値上げの動き、これに対しまして非常に重大な関心を持っておるわけでありまして、経済団体に対しまして強く要請をいたしておるわけですが、企業側におきましても、ことし春闘がなだらかに済んだ、しかし物価問題がこれで解決したわけではない、来年が問題なんだ、来年の物価一けた台ということが実現しなければ、ことしせっかくおさまりかかった賃金と物価との均衡、こういう動き、動向、これがひっくり返ってしまうんだ、そういう理解は非常に届いておるのでありまして、これにつきましても大方の協力が得られると思うのです。品物によりましては海外の要因なんかでやむを得ないというものももちろんありましょうが、大方の御協力は得られそうだ。  四月、五月、消費者物価が上がりましたけれども、四月は授業料でありますとかあるいは教育、娯楽のための支出でありますとか、そういう年度変わりの要因というものがこれは非常に強いわけです。五月につきましては、レモンが上がったとか東京のふろ代が上がったとかいうので、東京の区部の物価上昇率は一%というところになりましたけれども、私は、ことしは物価安定の基調は揺るぎないものである、こういうふうに見ておりまして、これを定着させるために、この上とも総需要管理政策、これは堅持してまいる。同時に、一つ一つの物資につきましては、その価格の動向、需給の動向、これを注意深く見守りまして、行政指導誤りなきを得ますれば、これは私は一けた台の消費者物価目標というものは必ず実現できる、かように確信をしております。
  206. 近江巳記夫

    ○近江委員 今回の公定歩合の引き下げによりまして、一次、二次あわせまして一%下がったわけであります。しかし、産業界を中心として、その率が低いじゃないかという声も非常にあるように私聞いておるのです。政府におきましても、通産事務次官あるいは経企庁事務次官あたりが、もっと大幅に引き下げをすべきであるということも言っておるように私聞くわけでありますが、少なくとも経企庁というのは、国民生活を本当に見守っていかなければならない一番の役所であろうかと思うのです。その事務官僚のトップの人がそうした発言をしておるということは、政府また財界呼応して、物価のそうした動向よりも、いわゆる景気対策といった点に非常に重点が置かれておるように私は思うわけであります。さらにまた、この第三次の引き下げをやろう、こういうことになってまいりますと、また預金金利の引き下げという問題にも入ってくるのじゃないかと思うのです。国民としてはささやかなそうした所得の中から積み上げてきておるわけです。こういう預金金利にまでさらにまた手を伸ばしてくる、また物価の関係が一体どうなるのだ、そういう政府の最高幹部、財界のそうした強い声、こういうことで非常に国民はまたその辺の関係を不安に思っているわけですが、その辺の第三次引き下げであるとか預金金利等については、あくまでもこれを引き下げない、こういう方針でいかれるのか、そのあたりの考え方をお伺いしたいと思います。
  207. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いまとにかく鎮静化の傾向の物価、そういう状態ではございますけれども、しかし物価がことしとにかく九・九%上がる、こういうことを私ども言っておるのですから、上昇過程にあることはそのとおりなんです。九・九%という物価上昇ということが予定されるその際に、預金金利を引き下げる、これは非常に影響の多い問題だろう、こういうふうに考えまして、私といたしましては預金金利の引き下げはそう簡単に結論づけるわけにはいくまい、こういうふうに考えております。ただ、絶対に預金金利に触れちゃまずいのかというと、私はそうも思わない。これは時により金融政策は機動的に、弾力的にやらなければなりませんから、かたくなにもう絶対預金金利に手をつけちゃならぬ、そういうところまでは考えておりませんけれども、預金金利の引き下げということにつきましては、物価の動向なんかを十分見まして、国民に失望感を与えないように慎重な配慮が必要である、こういうふうに考えております。
  208. 近江巳記夫

    ○近江委員 通産省は公定歩合を早く七%以下にというような意向があるように私聞いておるのですが、こういう影響というものが国民生活にどういう形で出てくるか。そういう国民生活また消費者の物価、こうした観点に立ってこういう七%というような意見が出てきておるのですか、あくまでも産業界の要請に応じてそういうような声が通産省に上がっているのですか。これはどういう考えでこういうような数値というものが通産部内において出てきておるのですか、これは通産大臣にお伺いしたいと思うのです。
  209. 河本敏夫

    河本国務大臣 金利の問題につきましては日本銀行が責任をもって運営しておられるわけでありますが、しかし私は、金利政策を左右するその背景は何かというと、やはり経済動向というものはそれを左右する大きな参考になるのではないか、こう思います。そういう点から考えますと、一つは国際的にどういうふうな経済、金融政策がとられつつあるのか、特に日本の場合はアメリカ、ドイツあたりの経済の動きもよく見なければならぬわけでありますが、そういうふうな国際的な動向との比較、それからさらに産業活動そのものは現在はどういう状態にあるのか、金利が非常に高いためにどういう影響を受けておるか、こういうこともあわせて今後考えていかなければならぬ、こう思うわけであります。  そういうふうな国内の産業動向それから国際的な事情等を考えますと、日本の金利水準は高い、私はこういうふうに判断をいたしております。そして、金利水準が高いということが物価を押し上げる一つの大きな要因になっておる。同時に、産業活動が停滞をいたしますと稼働率が減るわけでありますが、稼働率が低いということ、そのこと自身が物価を押し上げる一つの大きな原因にもなっておる。先ほど副総理は産業界の製品値上げの動向については十分配慮しなければならぬ、それを見守らなければならぬということをお話しになりましたが、私もそのとおりだと思います。ただ、その場合に、景気対策をやりますとややもすると物価が上がるんじゃないかということを言う人がありますが、私はいまの時点では反対だと思います。景気対策をやることによりまして産業活動が上昇する、そして稼働率がよくなるということであればそれだけコストが安くなるわけでありますから、むしろ価格を引き下げるためにはプラスであろう、金利の場合も同じだ、私はこういうふうに思うわけでございます。  そういう判断のもとに、七%という数字がいいのかどうかわかりませんが、少なくともいまの日本の金利水準は国際的に見て相当高い水準にあって、日本産業活動を困難ならしめておる一つの大きな原因になっておる、こういうふうに私どもは判断をいたしております。
  210. 近江巳記夫

    ○近江委員 福田長官は預金金利は引き下げない、こうおっしゃったわけですね。通産大臣は、いまの公定歩合は国際的に見ても高過ぎる、もっと引き下げるべきである。そうなってきますと、預金金利の引き下げというようなことにも食い込んでくることは当然のことになってくるわけですが、その点長官大臣の御答弁に見通し、考え方というものについて非常に食い違いがあるように思うのですが、長官、どのようにお思いですか。
  211. 河本敏夫

    河本国務大臣 ちょっと……。私が日本の金利水準が高いと言いましたのは、貸出金利の水準、したがってそれの基礎になる公定歩合のことを言ったのでありますが、さてしからばいまの預金金利の水準を下げてもいいかどうかということになりますと、これはまた別問題だと私は思うのです。先ほど来お話がございますように、日本消費者物価も若干落ちついてはおりますけれども依然としてなお動いておるわけでございます。でありますから政府の方も九・九%に抑えることを至上の命題として取り組んでおるわけでございまして、そういうときに預金金利に手をつけることがいいかどうかということは非常に大きな問題だと思います。私は、物価がもう少し安定するまでよほど慎重に扱った方がいいのではないかと思いますが、いまの私は預金金利に手をつけなくてももう少し下げられるのではないか、余裕があるのではないか、こういう判断をしておるわけであります。  こういう分野につきましては通産省が具体的に言うべき筋合いでありませんが、御質問でありますから、私どもの平素考えておることを申し上げたわけでございます。
  212. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま大臣は、預金金利に手をつけなくてもまだ下げられるといった感触の御答弁であったと思うのですが、福田長官はどういうお考えなんですか。
  213. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 精細に調べたわけじゃございませんけれども、預金金利に手をつけないでもなお金利水準を引き下げる余地はあると私は思います。わが国の金利水準、特にその中心をなす公定歩合、これは国際的な立場から考えた場合におきましてはまだ引き下げの余力はあると思うのです。ただ、国内的な立場、経済運営、この立場から考え日本銀行が非常に慎重な態度をとっている こういうふうに見ておるわけです。確かに預金金利を据え置いたままで公定歩合の引き下げを行う余裕は多少あるにいたしましても、さて経済状態は一体どうだと言うと、一方においては景気の回復を図らなければならぬという命題もありますが、同時に物価の安定という見地から見るときに、企業の間で製品価格のつけかえを行いたい、こういう動きが相当強いわけであります。そういう動きなんかに対しましてどんな影響を与えるか、公定歩合の引き下げはそういうようなことで非常に慎重に考えておる段階ではあるまいかと思うのでありまして、当面今日の金利問題として日本銀行が〇・五%の引き下げという措置をとった、これはそういうことを慎重に配慮してとった措置であるという評価をいたしておるわけであります。
  214. 近江巳記夫

    ○近江委員 預金金利を据え置いてしかもなおかつまだ引き下げる余地はある、推移を見ながら今後考えていきたい、こういう長官の御答弁であったわけですが、そうすると、今後また第三次の引き下げということもお考えになっているということなんですね。そのことについてお聞きしたいと思いますし、それから長官は、今年度一けたに物価を抑える、それには企業の値上げを何とかして抑えなければならぬということをいまおっしゃったわけです。確かに私そのとおりだと思うのです。石油狂乱のときに新価格体系への移行ということが盛んに産業界でも言われておったのですが、これに乗りおくれたとか乗りおくれないとか、企業によってはそんなことを言って値上げをしたいというような動きが非常に顕著に出てきておるわけです。現在の企業のそういう動きは、私たちが聞くところによりますと、言うならば産業界は総値上げの動きをしておる。まず、鋼材、石油価格、これは景気の底入れ感でいよいよいまからスタートするんだというような空気が見受けられるわけです。たとえば鉄鋼においては大体一五%前後、石油においては重油は大体一〇%強、石油化学が一〇%から二〇%、セメントが約一五%、紙・パルプが一〇%前後、乗用車が一〇%強、カメラが五%から七%、ガラスが一八%、食品においては食用油が約一五%、ビールが一〇%強、砂糖が九・八%。砂糖なんかは実施しているわけです。ビールもそうです。その他いろいろと交渉しておるようでありますが、こういうような産業界の動きを見ていきますと、これは長官が、私は一けたに抑える自信があるとおっしゃっても、すでに四月、五月これだけ上がっておりますし、しかも今度酒、たばこあるいは郵便料金、これだけで約一%近くなるわけですね。これがまた非常に波及もしてくる。公共料金だってあの狂乱の時代から比べれば相当抑えているということもおっしゃっているわけですが、しかしこういうものが累積してきますと、長官が自信を持って一けたに抑えるとおっしゃっていることに非常に大きな疑問を私は持つわけです。こういう産業界の総値上げの動きに対して長官はどう考え、どのように抑制されるのですか。現実にもう動き出してきているのですよ。このことについてはまた通産大臣にもお伺いしたいと思いますが、まず長官からお伺いしたいと思います。
  215. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まず、公定歩合の第三次引き下げ、これについて私がそれを予定しておるというような御印象のようですが、公定歩合はとにかくきょう第二次引き下げをやったばかりでありまして、第三次などというのをいま考える余裕は私にはありません。と同時に、これは日本銀行で決める問題でありまして、私がとやかく介入するということになりますといろいろ誤解を生じますから、私は、第三次の公定歩合の引き下げ問題につきましては、この際何らの意思表示はいたしません。  それから、いまいろいろ鋼材その他例を挙げられまして値上げの動きがある、こういうお話ですが、とにかくこれだけの日本経済でありますから、大変いろいろな物資があるわけです。その中で若干のものの値上げ、これは私は実現すると思います。しかし、業界が希望するそういう値上げというものがそのとおり実行されるかというと、私はそう簡単にはいかぬだろうと思うのです。原材料が外国の関係で高くなったとか、あるいはその製品の輸出価格が激変したというようないろいろな特殊な事情があって、どうにも企業としてやっていけないというようなものもあるのです。そういうようなものにつきましては、私は、値上げの実現というケースがなしとしない、こういうふうに思いますけれども、希望はしますけれども、大方の物資についてそうそう簡単に値上げの希望の実現ということはむずかしい、と申しますのは、そういう値上げが実現された場合に、ではそれが一体売れるのかという問題があるわけです、そういう問題を考えながら、総需要抑制というか総需要管理といいますか、需給の調整、そういう政策を堅持してまいる、そういうことが背景にあるということもひとつ御理解願いたいし、同時に、通産省におきましてはあるいは農林省におきましては、一つ一つの物資、商品につきまして需給がどうなっているか、また価格の動きはどうかと常に目をみはりておりますので、お話のような危惧——私は非常に注意しながらこの問題とは取り組んでおりますけれども、これが御指摘のような方向で実現するという可能性につきましてはそうは考えない、物価は五十年度におきましては一けたの目標が実現できる、こういうふうに考えております。
  216. 河本敏夫

    河本国務大臣 物の値段は原則的には需給関係によって決まるのだと私は思います。いま副総理もそのことに触れられたわけでございますが、幾らメーカーの方が上げたいということを勝手に主張いたしましても、需給関係が悪い、消費者の方でそんなものは買うことはできない、それだけの能力がない、こういう問題が横たわっております以上は、そう簡単には値上げはできないのではないか、こういうふうに私はまず考えておるわけでございます。  そこで、現在の物価の動向考えますと、私は卸売物価は最近非常にいい傾向に動いておると思います。本年度は七・七%ということを目標にしておりますが、それを相当下回る水準で落ちつくのではないか。ただ、特に気をつけなければならぬのは消費者物価の動向でございますが、工業製品の中におきましても消費者物価に影響のありますものにつきましては特に留意をいたしまして、その物価動向を見守っておるところでございます。全部が全部介入するという、そういう考え方はありませんが、物価が急激に動くということのために非常に大きな影響を与える、こういう動きが出ますならば、通産省行政指導をするつもりでございまして、その点は十分見守っていくつもりでおります。
  217. 近江巳記夫

    ○近江委員 長官大臣も需給関係というものはきわめて大きな要素である、そうしたお話があったわけでございますが、この需給関係をはずれて、とにかく原材料も上がっておるのだから上げてもらわなければならぬ、そういう非常に強い動きがあるように私は思うのです。そういう現実に、もうそのように先ほども申し上げたような品目がやいやいと言ってきておるというようなことも聞いておりますし、ただ需給関係だけでという問題ではないと私は思うのです。ですから、こういう動きをやはりとめていく、公定歩合も〇・五引き下がっておるわけでありますし、政府としても第三次の不況対策も打ち出されるように聞いておるわけですが、この第三次の不況対策においてどういうことをやろうとなさっておるのか、これは長官からお伺いしたいし、先ほど申し上げたように、そういう産業界の動きに対してただ見守っておるということではなくして、現実にそういう動きがあるわけですから、どういうような要請なり指導をして国民生活を守っていくか、以上の二点についてお伺いしたいと思います。
  218. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 第三次の景気対策は、これは考え方といたしましてはこういうことなんです。景気が大体底に来た、底には来たものの、これが経済見通しといいますか、ことしの経済のあるべき姿として政府考えておった状態、つまりなだらかな上昇過程、こういうことなんですが、その上昇過程に転ずるきっかけがなかなかつかめそうもないという状態、そういうふうに判断しているのです。そのきっかけを与えるためにどういう対策をとるか、これがこの第三次の景気対策、これのねらいどころになるわけであります。それで、そういうきっかけを与える必要があるかどうかということもあるのですが、もしそういうきっかけを与える必要があるのだということになりますと、これは金融の量的緩和をいたしまして設備投資、これが過去の景気循環においては常にとられたコースなんですが、いま設備は一般的に申しますと稼働率が非常に悪い状態であります。したがって、遊休設備、そういう状態が強く出ているわけです。そういう状態ですから、金融を多少緩めるというようなことをいたしましても、特殊な公害投資でありますとかあるいはボトルネック産業でありますとか、そういう特殊なものを除きますと、一般的には設備投資現象というものが起こってこない、また消費につきましても、これはいま高値に対する拒絶反応というものが国民の中には相当強く打ち出されておる、消費が活発な状態になるかというと、これもそう急な期待はできない、そうすると、結局これは財政になってくるだろうと私は思うのです。最終需要としての財政の役割り、これにまつほかはないだろう。ところが、財政といいましても、四十九年度には財源欠陥だ、五十年度もまた引き続いて財源欠陥のおそれもある、こういう状態でありますので、財政プロパーの面に多くを期待するということは、これもなかなかむずかしい。そうなると、やはり主軸はいわゆる財政投融資、そこに来るのではないか、そしてこれを補完するのに金融政策で配慮をするというようなところじゃないか。その辺をどういうふうな仕組みで、どの規模でやるかということはもちろんまだ決めておるわけじゃございません。十六日に、その対策のための閣僚会議をやりますが、それまでに準備をいたしまして、十六日の閣僚会議で結論を得たい、そういうふうに考えております。
  219. 近江巳記夫

    ○近江委員 私、いま二問質問したのですが、いわゆる産業界の総値上げの動きに対してどういう適切な手を打たれるか。
  220. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 産業界に対しましては、これはいま原則として自由価格形成、そういう体系をとっておりますので、産業界の協力を得るほかはないのであります。産業界に対しまして強く協力を求めておる、先ほど申し上げたとおりであります。  同時に、政府といたしましては総需要管理政策、これを堅持してまいる。また、これと並行いたしまして、各個別物資につきまして、需給が緊迫化しないように、需給また価格の動向、これに注目いたしまして、その物資物資に応じまして適当な誘導をする、こういう体制をとっておるわけでありまして、それで企業側の協力が得られますれば、私はそう大きな問題にはなりますまい、かように考えております。
  221. 近江巳記夫

    ○近江委員 最初、長官もおっしゃったように、企業のそうした値上げということが今後の非常に大きな要因になってくるわけであります。いま努力をするということをおっしゃったわけでありますが、この点につきましては通産大臣も同じ考えであるのかどうか、これだけひとつお聞きしておきたいと思います。
  222. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまのお話と全く同じ考え方でございます。
  223. 近江巳記夫

    ○近江委員 次に、政府関係者に来ていただいておりますので、お伺いしたいと思います。  例の爆破事件が続きまして、いま警察庁で取り調べをいろいろやっておられるわけでありますが、通産省は火薬類取締法あるいは武器等製造法等でそうした対策もやっておられるわけですが、この火薬類取締法からいきますと、確かに私は盲点であったと思うのです。しかし、これはこういう問題が起きてから各省が集まって対策をするということは全く後手であったと私は思うのです。こういうことは当然早く気がついて、そしてそういう抜けた点につきまして、法的なそういう対策であるとかいろいろな手を打つことはできたんじゃないかと思うのです。この点につきまして、関係各省の縦割り行政といいますか、そういう穴がすぽすぽ、私は今日のわが国の行政を見ておりますと、あるように思うわけです。この点について通産省はどういう反省をしておりますか。
  224. 佐藤淳一郎

    ○佐藤(淳)政府委員 火薬類の盗難防止に関しましては、火薬類が盗難等に遭いまして悪用されるケースが最近非常に多くなっております社会情勢にかんがみまして、特に通産省といたしましても、警察庁等関係省庁と緊密な連絡をとりまして、火薬類の不正流出防止に全力を尽くしておりますが、昨年八月三十日に発生いたしました三菱重工の爆破事件を契機といたしまして、関係する省庁が非常に多い問題もございまして、内閣を中心にいたしまして政府一体とした盗難防止対策の強化を審議いたしまして、昨年の十月二十六日に内閣官房副長官から関係各省庁事務次官あてに、それぞれの役割りに応じた対策を練るようにというような通知が出されております。  通産省としましては、それを受けまして、所管いたしておりますところの火薬類取締法に基づく政省令の改正を昨年の暮れにいたしております。  その内容といたしましては、公共の安全維持のため特に必要のあるときは、公安委員会は、大臣または知事に対しまして保安責任者の解任あるいは免状の返納命令等の措置要請ができるようにいたしました。  それから、盗難防止を強化するために、設備の強化という意味で、火薬庫外の貯蔵の際の建築物の構造、施設の強化、整備を図らせました。  それから、警鳴装置の設置あるいは点検を義務づけております。  その他、もろもろの政省令の改正を行ったわけでございますが、さらに現実に監督に当たられます都道府県に対しましては、火薬類対策推進地方会議の設置を指示いたしました。  それでさらに、盗難防止の見地から、許可に関します審査の基準、保安責任者の解任基準、違反者の処分基準を明らかに定めまして、厳しく対処するように通達いたしてまいっております。  なお、一連の爆発事故につきましては、当初ダイナマイトの盗難によるものというような考え方でわれわれ対処してまいってきておりますが、本件につきましては、いわゆるダイナマイトだけじゃなくて、いわゆる除草剤と称するような塩素酸系の薬剤を使った犯罪でございましたので、この面につきましては、御指摘のように従来の火薬あるいはダイナマイトと違った面の対策ということが必要になってまいっておることを痛感しておりまして、これにつきましては関係省庁と別途の対策を、厚生省等を中心にいたしまして実施をいたしたわけでございます。
  225. 近江巳記夫

    ○近江委員 毒物劇物取締法上におきまして、塩素酸塩類はいわゆる所持の制限という中に入っておるわけですが、これは純性一〇〇%のものに対していっているわけですね。今度の爆発に使われたのは九八・何%ですか、ほぼ一〇〇%に近いものであるけれども、六〇%ぐらいまで落としたものでも爆発ができる、こういう何十%というように落ちた場合においては何の規制もない、そういうものを利用して爆発物をつくってくる。通産省の火薬類取締法にもこれはひっかからない、全く盲点であったのです。こういうことはやはり政府がいち早く気がついて、そういうことを事前に手を打っておかなければいかぬわけですよ。ですから、これが何十%で爆発するかどうか等の検討はいち早く、いまもいろいろ検討なさっているとは思いますけれども、この辺についてはどう考えているのですか。これをひとつ警察庁また厚生省ですか、両方からお伺いしたいと思います。
  226. 星野鉄次郎

    ○星野説明員 ただいま先生御指摘になりました塩素酸塩類、塩素酸ナトリウムを主体とする除草剤でございますが、これは昭和四十七年の法改正によりまして、例の毒物劇物取締法の第三条の四の「爆発性のある劇物」というものに塩素酸ナトリウムの原体が指定されました。この原体の扱いといたしましては、九七%以上のものは原体として扱われますので、今回の一連の爆破事件で使われたと思われまする除草剤はこれに該当するわけでございまして、法律上、販売業者が相手方の住所及び氏名等を身分証明書等を提示させて確認しなければならない義務の対象になっておるものでございます。それからまた、先生おっしゃいました業務その他正当な理由がなく所持することが禁止されている爆発性のある劇物に該当するものでございます。したがいまして、私どもこの事件に使われましたものの入手の経路につきましては、まだ十分捜査が行き届いてない面がございますけれども、現行法の中で、いまの販売業者の身元確認義務等が十分に励行されておったかどうかという点に若干問題があったのではないか、これは推測で大変恐縮でございますが、そういう見方ができるかと思います。  それから、先生おっしゃいました六〇%台のものはどうだということになります。これは確かに現在の毒物及び劇物取締法のもとにおきましては劇物には該当いたしますけれども、いま申しました三条の四に規定する政令に掲げる爆発性のある劇物には指定されておらないわけでございます。そこで、この点につきましては、先般来、関係省庁相集まりまして、これは主管は厚生省でございますが、私どもの方からもいろいろ御相談申し上げまして、これにつきましては近く施行令を改正していただくように取り計らっておるところでございます。
  227. 代田久米雄

    ○代田説明員 厚生省の安全課長でございます。  ただいま先生から御質問のございました点につきましては、警察庁から御説明がございましたとおり、現在その爆発性につきまして検討が行われておりまして、塩素酸塩類の濃度の低いものにつきましても、爆発性があるものにつきましては近く毒物及び劇物取締法の爆発性のあるものとして指定をいたしたいということで、これにつきましては近く政令の改正をやりたいということで検討を続けておるところでございます。
  228. 近江巳記夫

    ○近江委員 今後そういうようにやられるということについては、私は非常にいいことだと思います。しかし、気がつくのは、これだけの重大事件が発生してから気がつく。それではだめだと思うのですね。政府の皆さん方は非常にすばらしい頭を持っているわけですから、社会情勢の推移また法の盲点ということを事前に見きわめて、そしてそれをカバーしていく、こういう姿勢がないといかぬと思うのです。ですから、その点はひとつ重大な反省をしていただき、二度とこういうことのないようにしていただきたいと思います。  それから、農林省等も、農作物をつくっておればいいんだという考えだけではいまの時代はだめなんですよ。そういう点でも農林省は非常に緩みがあった、私はそう思うのです。こういう販売とか、不法にそういうものが盗難に遭わないようないろんな対策であるとか、いままでのことを反省して、きちっと手を打たなければいけないと思います。ひとつ農林省、時間もありませんから、簡潔に御答弁いただきたいと思います。
  229. 福田赳夫

    福田説明員 この塩素酸塩類は除草的な力があるものでございますので、非常に古くから歴史的に除草剤としても使われておりました。しかしながら、いまいろいろお話ございましたような事件も起こっておりましたので、農林省といたしましては販売業者を取り締まるという立場から、すでにこの冬以来、こういった毒物及び劇物取締法の政令等を十分守るようにという会議を持っておったわけでございますが、なおまたこういうことになってしまったのはまことに残念でございまして、さらに農林省といたしましては、いままで厚生省、警察庁からのお話ございました線に沿いまして都道府県に通達を出しまして、なお一層販売業者の取り締まりを厳重にするように、また毒物劇物取締法を守るようにという指導をするように通達を出しましたけれども、さらに今後販売業者を一堂に集めましてそういった趣旨の徹底を図りたい。ただ、集めましてと申しましても、販売業者はたくさんございますので、都道府県にやらせることにいたしますが、これを集めてそういった講習をやる経費につきましては農林省からも費用を出しまして、そういうことはやっていきたいというふうに考えております。非常に反省いたしております。
  230. 近江巳記夫

    ○近江委員 各省非常に反省して、今後はこういうことのないようにするということをおっしゃっておりますから、もう時間もありませんから私はこれ以上いたしません。  最後に通産省に申し上げておきますが、通産省はこの火薬類取締法、武器製造法、両法律をもっていわゆる監督をなさっているわけですね。ところが、火薬類盗難事件につきましては、四十五年五十一件、四十六年五十三件、四十七年六十六件、四十八年四十二件、四十九年四十五件、こういうように発生しておるわけであります。これは警察庁からもらったデータであります。また、火薬類事故発生件数を見ましても、四十五年百九十七件、四十六年百九十五件、四十七年百六十六件、四十八年百七十八件、四十九年九十四件と、四十九年においては二けたに落ちてはおります。それから、猟銃等の盗難事件は、四十八年におきましては発生件数が七十五件で九十一丁、四十九年においては七十六件発生して八十五丁被害に遭っているわけですね。これはもちろん販売店ではないとおっしゃるかもしれないけれども、いわゆる所持者に対してもあらゆる機会にこういう不測のことがないように厳重な注意をするように、保管をするようにという皆さん方の徹底が足らないからこういう事件が起きておるわけです。こういう法律に基づいて通産省が大もととして責任を持っておりながらこういうことが続々として起きておる。これは重大な反省をしてもらわなければいかぬと思います。今後のいわゆる決意、また対策をお聞きしまして、私の質問を終わりたいと思います。これは最後に一言、大臣からも決意を言ってください。
  231. 佐藤淳一郎

    ○佐藤(淳)政府委員 ただいま先生の御指摘になった数字は全くそのとおりでございまして、われわれといたしましても十分に反省いたしまして、絶対このような事故が起きないように、誠心誠意対策に懸命な努力を尽くしてまいりたい、こう考えております。
  232. 河本敏夫

    河本国務大臣 今後ともさらに一層注意をいたしましてやっていきたいと思います。
  233. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  234. 山村新治郎

    ○山村委員長 次回は、来る十日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十七分散会