○福田(赳)国務大臣 何しろ、とにかくあれだけの大やけどをしたのでありまして、これから回復するためにはそう簡単にはまいりません。私は、三年ぐらいはどうしてもかかる、こういうふうに見ておるのです。まあ、一年目が経過した、この一年目が経過をいたしますと、狂乱状態は克服したわけです。そして、コストインフレ的段階にいま入っておる。その段階におきまして一番問題になりますのは賃金と物価の関係でございますが、賃金の方はどうやらなだらかな解決ということに終わりそうな段階に来ておるわけであります。その賃金がとにかくこういう形で決定されようとしておる。そういう
背景というものは何であるかというと、一つは四十九
年度の物価上昇、これが一四%にとどまった。一五%と言っておったのが、それを割り込んで一四%だということ。それから、
政府がとにかく五十
年度におきましては一けた台の
消費者物価
水準というものを実現する、こう言っておる。それが大きく
背景にあると思うのです。
そういうことを考えますと、私は今回の春闘の結末を見まして感想といいますか感懐を述べますれば、これは
政府としては
責任が非常に重くなった、こういう一語に尽きるのです。物価は一四%でいってよかったなあ、賃金もなだらかでよかったなあという、そんな感じではない。いよいよこれから、三年にわたる手術の第一
年度が過ぎたのだから、まだこの治療というものは重大な第二
年度に入るわけでありまして、これから特に一けた台
消費者物価
水準目標という、これを達成できるかどうかということは、これはもう非常に重大な問題である。そういう段階におきまして、私が非常に注意していかなければならぬという問題が二つあるわけです。
一つは、ただいま近江さん御指摘の
企業における値上げの動きであります。
企業におきましてそういう動きを示す、それは無理からぬところもあるのです。
企業の収益状態が非常に悪い。それから脱出しなければならぬ。それには値上げだということになるのは、これは自然の動きだ、こういうふうに思いますが、そういう動きが活発になってきたら物価対策も何も、これはめちゃくちゃになる。そこで、
企業に対しましていま物価が非常に重大な段階に入るということの注意を強く喚起しておるのです。
経済団体におきましても来年三月時点における物価の推移がどういうふうになるかということにつきまして、その意義の重大さを認識しておるのでありまして、したがって
経済団体の動きといたしましても物価鎮静化への協力ということにつきましては相当強い動きを示しておるわけであります。この
企業の動き、これは私はぜひともそういう方向で固まっていくということを念願し、なおこれからもその努力を続けたいというふうに考えております。同時に、
政府におきましても総需要管理の姿勢、これを崩してはならない、こういうふうに考えます。同時に、個別の物資の
価格並びに
需給、これにもよほど細心の注意を払いながら行政を行ってまいらなければならぬだろう、こういうふうに考えております。
それから、第二の関心事は景気対策なんです。
企業の収益状態が非常に悪化する。これに対して景気対策を場合によったらとらなければならぬということは先ほど申し上げたとおりでございますが、このとり方がまた問題なんです。物価対策と矛盾しないような配意を十分しながらやっていかなければならぬ、こういうふうに考えておりまして、そのようにいたしたいと存じます。
それからさらに、私鉄なんかのお話がございましたが、それは、そういう動きは現在ありません。それから、国鉄に対しましては、これは大変な
財政状態でありますが、五十
年度においてその料金を改定するというようなことは考えない。米価、麦価。いずれ六月になりますれば
生産者麦価の決定が行われるわけです。また、七月になりますれば
生産者米価の決定が行われる。そういう際に
消費者麦価、
消費者米価をどうするか、こういう問題がありますが、これも物価政策との整合が得られるように十分
配慮しながら決定をいたしたい、そういう考えでございます。