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1975-05-07 第75回国会 衆議院 商工委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年五月七日(水曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 山村新治郎君    理事 塩川正十郎君 理事 田中 六助君    理事 萩原 幸雄君 理事 前田治一郎君    理事 武藤 嘉文君 理事 佐野  進君    理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君       天野 公義君   稻村左近四郎君       内田 常雄君    浦野 幸男君       小川 平二君    越智 通雄君       小山 省二君    近藤 鉄雄君       葉梨 信行君    八田 貞義君       深谷 隆司君    森下 元晴君       山崎  拓君    綿貫 民輔君       板川 正吾君    岡田 哲児君       加藤 清政君    加藤 清二君       勝澤 芳雄君    上坂  昇君       竹村 幸雄君    渡辺 三郎君       野間 友一君    近江巳記夫君       松尾 信人君    宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君  出席政府委員         通商産業政務次         官       渡部 恒三君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         中小企業庁計画         部長      吉川 佐吉君         中小企業庁指導         部長      河村 捷郎君         中小企業庁小規         模企業部長   藤原 一郎君  委員外出席者         林野庁林政部林         産課長     下川 英雄君         建設省計画局建         設業課長    大森 敬介君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 五月七日  辞任         補欠選任   塩崎  潤君     綿貫 民輔君   田中 榮一君     葉梨 信行君 同日  辞任         補欠選任   葉梨 信行君     田中 榮一君   綿貫 民輔君     塩崎  潤君     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四五号)      ————◇—————
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上坂昇君。
  3. 上坂昇

    上坂委員 近促法について早速質問をいたしますが、まず初めに、この近促法に言われている近代化概念といいますか、このことについてひとつ御説明をいただきたいというふうに思います。
  4. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 中小企業近代化促進法で考えております近代化という言葉の意味でございますけれども、一言で申しますならば、企業の体質をその時代のあり方に適合したものに持っていくという動態的な概念かと考えます。したがいまして、それぞれの時代要請に応じまして、適応力に富んだ合理的な中小企業層を確立するということかと存じます。  従来の近代化と申します場合には、大企業との生産性格差、いわゆる二重構造解消というものがねらいでございまして、そのために、老朽設備近代化等々が中心になって進められてまいったわけでございます。ところが、今日のような時代になってまいりますと、近代化の重点も若干変わってくるわけでございまして、たとえば新商品開発のための研究でございますとか、あるいは需要開拓のための情報収集とか、あるいは環境保全といったような、国民経済要請に沿ったきわめて広い対策も含めて、現在の近代化というものの内容を考えております。
  5. 上坂昇

    上坂委員 もう一つ、この近代化促進法の中に言われている構造改善の問題ですが、この構造改善ということについて中小企業庁で考えておられる概念といいますか、そういうものについてひとつ御説明をいただきたいのです。
  6. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 構造改善と申します場合には、個々の企業近代化ということではございませんで、共通の問題を持ちました企業集団、それの構造を変化させまして、その企業集団全体の近代化を図る、これを構造改善というふうに実は考えておるわけでございます。  具体的には、その企業集団に属しております企業合併とかあるいは共同化、協業化を進めまして規模適正化を図るとか、あるいは生産品種を交換したりしまして量産体制を確立するとか、あるいは一部企業の転廃業を図るとか、そういった企業の横の関係をいろいろ調整を図りまして、その産地なら産地といったような業種全体の構造近代化していく、こういうふうなものを構造改善というふうに考えております。
  7. 上坂昇

    上坂委員 もう一つ高度化ということがあります。産業高度化というふうによく言われているわけでありますが、特に中小企業の場合の高度化ということについては、どういうふうな概念でとらえればいいのですか。
  8. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 高度化と申しますと、一般的には資本なり労働あるいは土地といったような経済の資源を、産業間に最も効率よく配分をいたしますことを産業構造高度化というふうに考えておるわけでございますけれども、これを中小企業の場合に当てはめてみますと、低生産性であります中小企業部門近代化を進めることによりまして産業全体の効率を高めるということが、産業構造高度化に該当するかと考えます。
  9. 上坂昇

    上坂委員 ところで、近代化を図ってきて、二重構造が現在において解消されているのかどうか、この点についてどんなふうに把握をしておられるかお答えいただきたいと思います。
  10. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 二重構造と申します場合の一番典型的な指標は、一つ付加価値生産性格差でございますし、もう一つ労働賃金格差でございます。  過去の付加価値生産性の推移を見てみますと、大企業を一〇〇といたしました場合の十人から二百九十九人の層の付加価値生産性は、昭和三十五年が四六、昭和四十年が五七、昭和四十六年が五八でございます。昭和三十五年から四十年までの間に二重構造解消がある程度進んだわけでございますが、その後大企業の方も非常に生産性が上がっておりますので、縮小の傾向にはございますけれども、その縮小の度合いがややテンポが遅くなっておる、こういう状態でございます。  それから、一人当たりの給与水準格差で見てみますと、同じく十人から二百九十九人の層でございますけれども、昭和三十五年で、大企業を一〇〇といたしまして中小企業賃金水準は五八でございましたが、昭和四十年にそれが七〇になりまして、四十六年に七一になっております。四十六年以後の新しい統計の確定的なものがまだ出ておりませんが、少しずつ縮まっておると思いますけれども、最近の数年間は縮まり方がやや鈍くなっておるという状況でございます。
  11. 上坂昇

    上坂委員 いまのような中小企業伸びといいますか、格差是正といいますか、そういうものに入ってきたというのは、いわゆる高度経済成長政策といいますか、それに基づいたものであり、それに伴ってこうした近代化促進法であるとかその他いろいろな法的な裏づけといいますか、そういうものによった、こういうふうに把握をしておられるわけですか。
  12. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 近代化促進法中心といたします中小企業近代化政策によりまして設備近代化が進み、中小企業構造高度化が進みまして規模適正化、これは生産規模あるいは経営規模適正化が進んだ、こういうことによりまして生産性も上昇し、高賃金がだんだん払えるようになってきている、こういうふうに考えております。
  13. 上坂昇

    上坂委員 そうした意味では非常に大きな効果があったというふうなことは言えるわけでありますが、しかし依然として中小企業の中には近代化のできていない部分かなりあるのではないかというふうに思います。企業の場合には、本来のいわゆる企業というものと、それから企業の体裁をなしていないといいますか、自営的な企業というふうに言えると思うのですが、そういうものがある。ところが、大体においてほとんどのパーセントを占めているのは、いわゆる生業的自営業といいますか、こういうものが圧倒的に多い。それがいまだに近代化されない状況に置かれている、そうした残された部分というものがかなり多いのではないかというふうに私は思いますが、いまわれわれが必要とするのは、特にそうした近代化ができない部面といいますか、むしろ近代化しなくてもいい中小企業分野というものがあるのではないかというふうに私は思っておるわけですが、その点はどうですか。
  14. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 中小企業近代化促進法で従来指定業種が百幾つかございますが、大半が製造業でございます。そのほかに膨大な卸売業小売業サービス業といった部門があるわけでございまして、特にそういった小売業とかサービス業といったような部門規模零細性が多いかと存じます。企業数で申しますと、大体五百万の中小企業事業所の中で、従業員製造業で二十人以下あるいは商業サービス業で五人以下という小規模企業の数は四百十数万でございしまて、大体全体の八割を占めております。その中でまたその半分の二百万近くが従業員を一人も持たない、そこの家族だけで働いておる、こういう層でございます。こういった家族だけでやっておるような層につきましては、今回の中小企業白書でもある程度明らかにいたしておりますが、企業というよりも生業性が強いということで、その経理意識も薄くてどんぶり勘定である、企業として発展するというよりも生計が立てばいい、こういうふうな感じの層が非常に多いわけでございます。こういった層につきましては、まず企業意識を持ってもらって経理を明確にし、それから漸次企業発展を願っていく、こういうことが必要かと存じますので、そういう意味ではそういった方々指導がまず大事でございます。  それで、先生御承知のように、小規模企業指導のために全国商工会議所商工会経営指導員というものを配置しまして、そういった零細企業のいわゆる近代化についての指導を行いますと同時に、一昨年から経営改善資金制度というものを設けまして、こういう方々経営内容改善のための資金を非常に低利かつ簡便に融資をいたしておるわけでございます。また、帳簿の記帳等につきましてもコンピューター等を導入いたしまして端末機商工会等に備えて経理記帳をより促進する、こういうことをいたしましたり、府県の指導によりまして無利子の設備近代化資金を貸すとかいったようなことを通じまして、主として指導中心にしてそれに必要な資金を融資する形で生業から企業へ、こういう指導を行っておるわけでございます。  そうかと申しまして、近代化促進法対象になりました構造改善等をやっております業種は、中小企業の中でも大きい方が主かと申しますと、必ずしもそうでもございません。構造改善業種の中の小規模企業の割合は平均いたしまして八割を超えておるのでありまして、業種によりましては構造改善に参加した事業者の九割以上が小規模企業である。たとえばトラック運送事業でございますとか印刷業でありますとか、こういった業種は九割以上がそういった小規模層である。こういうものについても近代化近代化促進法によって行われておるわけでございますけれども、何しろ小規模企業の数が多うございますので、一般的にはただいま私が申し上げましたような形で、まず指導を通じて生業から企業への転換を図っておる、こういう状況でございます。
  15. 上坂昇

    上坂委員 企業近代化によって生産性を上げ、いわゆる競争力をつけ、社会落後者にならないような状態をつくり出していく。そのことが国の経済発展させるという形のものになることは当然でありまして、それはそれで結構なんですが、中小企業の場合には、特に大きな工場をつくるとかあるいは大きな店をつくる、集団化を図るという形で生産性を上げる、生産力を増強するというだけでは、ちょっと足りないものがあるのではないかというふうな気がするわけであります。全般的に見ますと、中小企業というのは地方的であり、地域的に分散をされており、その地域を主体にして成り立っているというのがほとんどではないかというふうに考えるものであります。そこで、そうした地域的に非常に多様に広がっている多くの業態というものについては、むしろこれが社会に対応するような状態あるいは特色が非常に出てくるような工場とか生産であるとかあるいは小売卸売業等であるならば、そうした店舗であるとか店の営業の状態というものを念頭に置いた育成の仕方というものが必要になるのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。いまの生産業を主とした近代化の構想というものは、大きく言えばいままでのやり方というのは全国的な背景といいますか市場といいますか、そういうものを念頭に置いて、それにはもちろん海外市場も含まれるわけでありますが、生産力をつけていく、こういうふうなところに向けられてきていたのではないかというような気がします。そこで、これからの近代化というものはそこからもう一つ脱皮をしていくということが必要なのではないか。そうした方向についてはどんなふうにお考えになっているかお聞きしたいと思うのです。
  16. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 先生指摘のように、中小企業の中には全国的な規模で営まれております事業と非常に地域的なものと確かにございます。たとえば産地と申しますか、産地形成しておる産業中小企業の場合に非常に多いのでございまして、全国で百八十ぐらいの産地がございます。たとえば有名なものでは新潟県の燕市の金属洋食器でございますとか、あるいは静岡地区木製食器類、ボウルみたいなものでございますとか、あるいは鯖江のめがねとか、関の刃物とか、こういうものにつきましては、特にその産地特色を生かしまして、そういった従来からの伝統的な商品の、しかもさらに品質を高める、こういうふうな形で実は構造改善を行っておるわけでございます。それでもなかなか発展途上国追い上げ等がございまして、それと対抗していくのがむずかしい面がございますので、今回の改正におきましては、原材料を供給する部門、それからその機器類製造のための金型業界とか機械業界とかいう関連部門、それから場合によりましては倉庫業とか流通の卸売業界とか、こういった関連部門もその産地構造改善計画産地ぐるみと申しますか、参画をしてもらいまして構造改善計画を立てるということによりまして、より構造改善効果を上げるようにしたいというふうに考えまして、そういった関連業種ぐるみ構造改善計画というものを盛り込んだ次第でございます。  それから、商業関係につきましては、むしろ中小小売商業振興法という法律によりまして商業立地近代化等を行っておりますが、これにつきましてはまさに非常に地域的な問題でございますので、主な全国都市ごと商業近代化計画というものを立ててもらいまして、そしてそこのいわゆる商店街の再編成計画と申しますか、新しい立地計画を描いていただいて、それに応じまして共同百貨店あるいは中小企業によります共同スーパー建設とか、あるいは駐車場をつくりましたり、商店街のアーケードをつくりましたり、いろいろなそういった施設を整備いたしまして商店街近代化を図る、これは中小小売商業振興法に基づいて商業関係は実施をいたしておるわけでございます。  そのほか特に都市部では、企業サービス部門等分野あるいは下請的な機械部門というものが非常に現在も多うございますし、今後もふえてまいろうかと思いますけれども、今後はそういうものもできるだけ、従来は製造業中心でございましたけれども、極力サービス部門修理部門というものもこの法律に適合する限りにおきましては指定業種の中に取り込んでまいりましてその近代化を図ってまいりたい。そのために国民生活安定向上に資する業種というものを今回の指定要件に加えまして、そういう業種近代化対象にこの法律によってできるように改正を加えた次第でございます。
  17. 上坂昇

    上坂委員 いまのたとえば地場産業といいますか、産地形成業種といいますか、そういうものについて、何がいままでの状態でいくと、おしなべて特色のないような形でのいわゆる構造改善なりあるいは近代化なりが図られたような感じがするわけであります。たとえばいままで非常に手工業的な形で人力によってきた、あるいは技術に頼ってきたというものが、機械化をされて大量生産になってきて、そこに特色が失われてくるというような状況というものがあって、そういうものがやはりかなり反省をされているのではないかというふうに思うわけであります。そういう中から、この前可決されました伝統的工芸品産業振興法というようなものが制定をされるような状況になってきているということは、こうした反省の上に立っているのではないかというふうな気がするわけであります。そういうふうな考え方の上に立ちますと、何か全国的に一応単に生産性を上げればいい、いままでのような高度経済成長政策の中ではそういうものが大量に生産されても、いわゆる市場といいますか、国内市場のみならず海外市場においてもこれがかなり部分消化をされてきた。しかし、こうした低経済成長政策といいますか安定成長期といいますか、そういうものになってくると、やはりなかなかそういうぐあいにはいかないのではないか、そういうところから問題の転換といいますか、発想の転換というものが必要になってくるのではないか、こういうふうな感じを私は持っているわけでありますが、その辺について、長官どうでしょうか。
  18. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 昨年国会で成立を見ました伝統産業振興法は、わが国古来からの伝統的な産業振興を図ろうということで制定を見たわけでございますが、この対象になっておりますのは、いわば手づくりのよさを生かして古来のそういった伝統的な商品を伝えていこう、さらに発展を図ろう、こういう趣旨であったかと存ずるわけでございます。したがいまして、後継者育成でございますとか、あるいは材料の確保とか、それの普及のための展示とか、そういったものにつきましていろいろ政府が助成をする、こういうふうな仕組みになっておるわけでございますが、これはこれで、手づくりのよさを生かしてさらに振興を図っていく必要があろうと存じますが、近代化促進法対象にいたしております産地と申します場合には、ある地域で非常にまとまって同じような商品をその企業集団がつくっておる。伝統産業の場合もありますれば、やや近代的な産業の場合もございます。わりあい輸出依存度の高い産業が多いわけでございます。こういうものは、たとえば金属洋食器を見ますと、最近発展途上国追い上げが非常に急でございまして、結局ステンレス製高級金属洋食器原料から転換をして、高級な高いものに切りかえないと、アメリカ市場発展途上国商品競争ができない、こういう状態になりましたので、商品高級化を図る、そのためのデザイン開発とか原料開発等を行っておるわけでございます。  似たようなことで、最近の地場産業商品につきましても、輸出を落とさない、あるいは輸入を食いとめるためにはその商品の特により高級化を図ることが必要かと考えられます。そのためにはデザイン開発なり、その商品そのもの研究開発あるいはその素材の開発とかいうことが必要になってまいるわけでございまして、そういう意味合いで、最近の構造改善計画の場合にそういった研究開発市場開拓、それからそのための技術者の養成、情報収集、こういうことが非常に重要性を帯びてまいっておりまして、そのために幾つかの業種については特に知識集約化構造改善事業と銘打ちまして、そういったことをやってもらっておるわけでございます。たとえば木製の家具でございますとか、あるいは兵庫県のはさみ業界でございますとか、あるいは岐阜県の金属ハウスウエアでございますとか、同じく兵庫県のケミカルシューズとか、こういうものもいろいろ新製品化を図りまして、国民のより多様化した需要にこたえ、同時に高級品としてのイメージでもってまた輸出振興を図る、こういうことにいたしておりますので、一概に伝統産業的な手づくりのよさだけでは済まない面もあるのじゃないかと存じますが、あくまで地場産業としての特性を生かすように、業種ごと問題点を十分把握いたしまして、なるべくその業種ごと地場の事情に対応した対策構造改善計画の中に盛り込むようにいたしたいと考えております。
  19. 上坂昇

    上坂委員 中小企業というのは生産力が低いし、いろいろな面で条件が悪い。したがって、大企業桎梏下に置かれて非常に企業の安定がない。そういう中で新陳代謝がかなり行われているわけでありますが、それにもかかわらず統計的に見れば、中小企業の数というものは常に増加をしているというふうに見ていいのではないかと思います。そこで、わが国社会経済状態といいますか、そういうものから見て、非常に資本集中化が行われて競争が激しいにもかかわらず中小企業がふえていくというこの実態をどういうふうに長官はとらえておられるのか、御説明をいただきたいのです。
  20. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 先生指摘のように、中小企業の数は年々増加をいたしております。昭和三十八年に農業等の一次産業を除きました分野での中小企業事業所の数は三百九十万でございましたが、昭和四十七年には五百八万に、大体三割ふえておるわけでございます。もっとも大企業事業所の方も、三十八年の一万六千から四十七年の三万に、約倍くらいになっておりまして、伸び率としては大企業の数の伸び率の方が多いわけでございます。  こういうふうに、いろいろ構造改善をやりまして合併等を促進しておるわけでございますが、これだけどんどんふえておるのはどこでふえておるのかということでございますけれども、伸びが非常に高いのは不動産業建設業でございまして、不動産業の場合は、三十八年の八万事業所から四十七年の十五万四千事業所に、約二倍になっております。それから、建設業は、昭和三十八年の二十四万から昭和四十七年の四十万に、約七割増加をいたしておりまして、この数年間の建設関係ブーム等に応じまして、非常に成長性の高かった分野が特に伸びておるように見受けられます。製造業卸小売業は、いずれも一・三倍、つまり三割増しぐらいのこの十年間の伸び率でございます。
  21. 上坂昇

    上坂委員 中小企業が常に伸びていっているということは、私は一つ都市化現象にあるんではないかというふうに思っておるわけであります。何といいますか、市町村合併による地方のいわゆる中核都市形成であるとか、あるいは地域開発によるところの拠点都市形成であるとかというようなものに伴って、巨大都市の方から移っていく企業もあるでありましょうし、また支店なり出張所なりいろいろなものを出す面もあるだろうと思いますが、その都市化に伴ってそこに発生するところの中小企業というものがかなりの数に上るのではないかというふうに思うわけであります。そのことは、結局は都市が新しく生まれる、発展をする、そういうものと結びついて、その地域市場とする中小企業というふうにとらえていいのではないかというふうに思いますが、こうした現象の中でいわゆる地方都市建設していく、あるいは中核都市をつくっていくということになりますと、そうした地方都市都市計画なり、あるいはその都市経済発展なり、それからあり方なり、そういうものと切り離しては考えられないのではないかというふうに思うわけであります。そこで、地方自治体なりあるいは市町村自治体というものの果たす役割りというものは非常に大きなものになってくるのではないかというふうに思うわけでありますが、その点についてはこういう把握の仕方はどんなふうに考えられるか、長官にお聞きしたいというふうに思います。
  22. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 地場産業の場合は、大体地方都市と申しますか、郡部に多いわけでございますが、東京、大阪といったような巨大都市圏にはいわゆる都市産業というものが最近特にまたふえつつございます。これはいわゆる企業活動に伴います一種の企業サービス部門とでも申しましょうか、たとえば印刷業でございますとか、あるいはビルのメンテナンスとか、あるいは調査、宣伝、企画、こういった事業でございますとか、そういったサービス部門におきまして、企業活動を支えとするようなサービス部門業種が非常に発展を見つつあるように考えられます。それから、製造業の場合には、大規模工場は大体都市部には少ないわけですけれども、案外非常に零細な、従業員のほとんどいないぐらいの中小の中でも零細な下請業者、修理業でございますとか、あるいは金属関係の加工業者とか、そういう方々が非常に多いわけでございます。これは都市需要に密着しておりますので、環境問題その他で、特に製造業の場合には移転を希望しながらも移転すると仕事がないというようなことで、都市にそのままくっついていかざるを得ないというような面もありまして、いろいろ苦労が多いようでございます。  ところで、今回の改正法におきましては、従来の国際競争力強化という指定基準のほかに「国民生活安定向上」というような指定基準を追加いたしておりまして、われわれの身の回りのものに非常に関係のあるような業種を追加いたしましてその近代化を図ろうというふうに考えておりますので、都市産業等もこれから指定になるものがふえてまいるのじゃないかと考えておるわけでございます。  そういった場合の自治体との関係でございますが、中小企業は非常に数が多うございますので、中央の私どもだけの施策ではなかなか手も足りませんし、手が届かない面が多いわけでございますので、従来から自治体の協力を仰ぎまして、むしろ自治体を窓口としてやるようないろんな事業が非常に多かったわけでございます。この近代化につきましても十分自治体と連絡をとりまして、効果が上がるようなやり方で進めてまいりたいと考えております。
  23. 上坂昇

    上坂委員 そこで、少し内容に触れていきたいというふうに思いますが、指定業種が計画を実施している期間中に、たとえば情勢が急変をするといった場合、新しい分野にこれが進出をするというときには、これをいわゆる業種指定ができるのかどうか、この辺についてお聞きをしたいというふうに思います。
  24. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 現在の近促法対象指定業種は、近代化を促進するという意味で、いわばビルド業種でございます。したがいまして、このビルド業種につきまして、さらに需要が停滞しておる業種ということでのいわゆる新分野進出業種にそれが指定になるということは、一応通常の場合には考えておりませんけれども、何しろ指定期間が大体五年を原則として、さらに場合によってはこれを延長する形でやっておりますので、その期間中に環境の激変がございまして、従来成長業種ということでいろいろ近代化施策を加えてまいったものが非常に需要停滞業種に変わったということもあり得ないことではないと存じます。そういう場合には、残った人にはさらに近代化施策を講じ、一部にはこれを転換してもらって他の業種にかわってもらった方が望ましい、こういうふうに認められるような事態になりました場合には、指定業種でありながらもう一度他の分野への進出促進業種というものに重なって指定するということもあり得るかと存じます。
  25. 上坂昇

    上坂委員 新しい構想では、いわゆる生活関連といいますか、と同時に環境の整備といいますか、たとえば社会保障なり何なり、そうした問題も織り込んでの計画を立てていくようなものでなくてはならぬというようにいま出ているようでありますが、中小企業が非常に困っている、たとえば新しい労働力、若い労働力が集められない、したがって企業伸びを考慮できない、そうしたものは社会保障の不備あるいは賃金の問題、そうしたいわゆる企業が活動するところに必要な条件といいますか、そうした環境整備、そういうものが伴っていないというところに起きてくるんだろうというふうに思います。そういうことも勘案されて今度のような法改正の問題が出てきているのではないかというふうに思いますが、こうした点を織り込んでいく場合、いわゆる官庁のなわ張り的なセクショナリズムといいますか、そういうものによってなかなか思うように仕事が運べないという状態がいままでかなりあったのではないかと思うのでありますが、そうした点でいま考えられている面での、たとえば労働省なり厚生省なりとの関係というものがこうした計画の中でどのようにこれが調整されていくのか、お答えをいただきたいと思います。
  26. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 改正法案におきましては、第三条の近代化計画におきまして、従来なかったもので近代化計画に掲げるべき事項として、従業員の福祉の向上、それから消費者の利益の増進、環境の保全とその他の配慮事項ということを計画の中に盛り込むことになっているわけでございます。その中の従業員の福祉の向上でございますけれども、これにつきましては、私ども考えておりますのは、近代化計画の中でその業界の従業員労働条件の改善あるいは作業環境の改善、福利厚生施設としてどういうものを設けようとするのか、従業員の健康管理をどうするのか、レクリエーション施設をどうするのか、こういったものにつきまして業界として何か計画があるなら十分書いてもらいたい、こういう考えでございます。  それの各省との関係につきましては、各省に連絡会議を設けることにいたしておりまして、そこで十分厚生省、労働省等と御相談いたしまして、この出てきました近代化計画が実現できるように十分意思の疎通を図ることにいたしております。
  27. 上坂昇

    上坂委員 もう一つ近代化計画を立てていく場合のいわゆる特定業種と関連事業との問題でありますが、業者に対するところの金融措置といいますか、それの制度的な仕組みについて御説明をいただきたいというふうに思うのです。これは具体的な例を挙げていただければ非常に結構であります。
  28. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 今度の改正法案におきましては、特定業種つまり構造改善業種につきまして、関連部門ぐるみの構造改善計画というものが立てられることになったわけでございます。その場合に、関連業種につきましても従来なかった金融面あるいは税制面の助成措置を講じたいと考えておるわけでございますが、本体であります特定業種につきましては、中小企業金融公庫から八・四%の金利によります構造改善貸付制度がございます。それに対しまして、これが関連業種でございます場合には八・九%の近代化促進貸付制度を適用する、こういうことになっておりまして、若干金利に差がついておりますけれども、通常の現在の九・四%の場合よりも大分安い金利で関連業種につきましても貸し出しをする、こういうことになっております。  それから、信用保険の面におきまして、こういった構造改善のための事業資金につきましては、通常の信用保証のほかに近代化保険というものを適用いたしまして、別枠で信用保証が受けられるようになっておりますが、これにつきましては、関連業種も特定業種の本体と同様に近代化保険を適用する、こういうことにいたしております。  また、振興事業団から出ます貸付金につきましては、本体の業種も関連業種も同じような対象として低利の資金を貸し付けるというふうに、差別なしに考えておるところでございます。
  29. 上坂昇

    上坂委員 新分野への進出の問題でありますが、実はいままでの高度成長期におけるところの新分野への進出あるいは新分野開拓ということは、これは国民所得の上昇あるいは国民のいろいろな嗜好の変化、それから企業自体の経営の安定上昇というようなものがあって進出しやすいし、進出しても成功の可能性が非常に強い、私はこういうふうに思うわけです。ところが、いまのような低成長といいますか、安定成長といいますか、そういう時代におけるところのいわゆる事業転換、新分野への進出ということは非常に困難ではないか、こういうふうに考えるわけであります。新しい分野への進出あるいは転業というようなものは、経営が悪くなってからではもうおそいのじゃないかというふうに思っているわけです。事業がある程度安定していて、そして先の見通しをつけて、そこで転換をしていくというのでなければ、またそういう指導をしなければ本当の転換ができない、そういうふうに私はいま思っているわけです。その点はどんなふうに把握されておるか、お伺いしたいと思います。
  30. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 先生のお話のとおりでございまして、非常に不況時におきましては転換が困難な面が多いかと存じます。中小企業設備投資も前年比で二、三割落ち込んでおるという状況でございまして、非常に不活発な現状にございます。この間発表いたしました中小企業白書によりましても、過去に幾つ転換した事例を調査した結果を発表しておりますが、非常に行き詰まってからの転換というのは成功しないケースが多い、やはりある程度体力を残しておるときに早目に転換をした場合が成功率は高いようでございます。そういう意味合いからしますと、現在は転換をすぐに行うというには余りに不向きな時期かと思いますが、やはり転換をするといたしますと、本改正法が施行されたといたしまして、まず試験研究を行い、それが成功して、それから新規の投資が行われて新商品生産が行われ、漸次古い商品から新商品の方に移っていくということで、やはり四、五年かかるのじゃないかと思いますので、まず試験研究とかあるいは市場調査というのが先行するわけでございますから、いまは設備投資は不振でございますけれども、転換のための準備をまずやるには非常にふさわしい時期ではないかというふうに実は考えておるわけでございます。
  31. 上坂昇

    上坂委員 転換をしていく場合の一つの予備的な、経過的な段階というふうなとらえ方のようでありますが、そういうとらえ方をしていいのかどうか、なかなかこれはむずかしい問題だろうというふうに思います。この法律に書かれている事業転換という形のものが、高度成長時期よりはいまのような時期の方が非常に困難なんだから、それに対するよほどの指導というものがないとこれはうまくいかない。そこに今度は、先ほどから申し上げている地域性というものが加わってくるので、いままでのような中央からの統制的な、あるいは中央の指導だけではやはり本当の目的を達成するというわけにはいかないのではないか。そこで、地方自治体なり何なりの持っている役割りというものが非常に大きくなってくる。むしろその辺が主導権を握っていくというふうな、そういうものでなければならぬのじゃないか、こういうふうに考えて、私はいまのような質問をしたわけであります。  最後に、今度の法改正はやらなくてもいいのではないかという考え方が実際はあるわけであります。というのは、近促法というのはもうすでにその役割りを果たしたのだというふうな見方でありまして、むしろいま必要なのは、税制面にしましても金融面にしましても、本当に中小企業が、金融面であるならば手続が簡単で、要求すれば借りられるような状態をつくり出していく、あるいは税制面であるならば、特別措置をつくって政府の施策に乗っかったものにだけは税制の恩典が与えられるけれども、それ以外のものには恩典が与えられないというような、そうした中小企業の政策のあり方ではいけないのではないかというような面で、全体的に、近促法にしましても中小企業に対する政策、対策というものを洗い直す時期に来ているのではないか、こうした発想の転換といいますか、そうしたものが必要になってくる、そういう時期にいま来たのである。これがいまわが国が当面をしている日本の経済に対応するところの実態ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。そうした考え方の上に立っていままでのような質問を展開したわけでありますが、このような形での中小企業対策の全体的な見直しの時期というものを考えて、その時期に即応した対策の立て方、新しい発想の転換、そういうものは考えられないのかどうか、この点について最後に大臣にお聞きをいたしたいというふうに思います。
  32. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 確かにいまお述べになりましたとおり、一昨年の秋以降世界の経済及び日本の経済の動きというものが根本的に変わってきたと思います。そういうふうな経済の非常な激変に対処いたしまして、今後の中小企業というものをどう進めるか、中小企業近代化、国際競争力を確保するための対策はいかん、こういう問題を私は御指摘のように全面的に洗い直す時期に来ていると思います。そしてまた、金融であるとか税制であるとかという対策もお述べになりましたように必要でありますけれども、あわせて今回お願いをいたしました法律改正、それによりましてさらに近代化を進めていくというこのやり方、これも必要である。いま申し上げました経済の激変に伴う総合的な対策の一環である、こういうふうに御理解をいただきたいと思うのでございます。
  33. 上坂昇

    上坂委員 質問を終わります。
  34. 山村新治郎

    山村委員長 宮田早苗君。
  35. 宮田早苗

    ○宮田委員 中小企業近代化促進法改正案の質問に入ります前に、現在の中小企業が直面しております問題につきまして二、三質問をいたします。     〔委員長退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕  昨年来、中小企業に対する緊急対策ということで、政府系三金融機関の融資の拡大あるいは民間の中小企業救済融資制度等で業界の資金繰りはある程度恵まれている状況と思います。もちろん不況の度合いは業種によってものすごい格差がある、こういう状況と思います。ところが、中小企業者の声を聞いてみますと、金より仕事をというのが圧倒的に多い今日でございますが、最近の政府、民間調査機関等の経済情勢分析を見ますと、不況業種の代表と言われてきました自動車、電機産業等で在庫調整が進み、売れ行きが伸びるような傾向が指摘されておるわけであります。民間大手企業の動向が、中小企業の受注生産面でどう変化をしつつあるのか。今後の、年内の見通しも含めてまず中小企業庁長官にお伺いをする次第です。
  36. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 中小企業生産状況でございますが、昨年の三月以来、毎月、前月比で生産が減少を見ておりましたけれども、この三月に初めて前月比が、三月の速報数値でございますが、〇・五%上昇をいたしまして、約一年ぶりに生産が少しではございますが、下げどまって上向いた、こういう状況でございます。ただ、その水準は、生産指数で九七・六でございまして、依然として昭和四十五年ぐらいの非常に低い水準にございます。業種別に見ますと、まだ生産水準の非常に低い業種とやや向上しつつある業種とございます。非常に悪いものといたしましては、繊維、木材、石油、非鉄、セメントといったようなものが依然として不調な業種でございます。  こういう状態を反映いたしまして、在庫も二月、三月と在庫率が少し低くなりましたけれども、その絶対水準はまだ相当高い水準にございます。  それから、価格の状況でございますが、中小企業の卸売物価は、これも去年の三月以来毎月下がっておったのでございますけれども、これはまだ下げどまりませんで、ことしの三月でも二月に対して〇・四%下がった、こういう状態でございまして、去年の、一年前の三月に比べましても五%低い価格水準にございます。大企業の方は去年の三月に比べて五%高い水準でございまして、中小企業の方が不況のしわ寄せをよけい受けておるという状態かと存じます。  下請関係の受注量等を別途調査をいたしておりますが、それによりますと、ことしの二月の下請の受注量は去年の二月に比べまして六六%の水準でございまして、約三十数%落ち込んでおる、こういう状況でございます。  それから、下請の単価は、去年の二月を一〇〇としまして九七でございまして、これだけ諸資材、人件費が上がっておる中で、下請単価は去年よりもむしろ安くなっておる、こういうふうな状況で、仕事が減り、単価が下がりという両方の面からの苦しみを受けておるわけでございます。しかしながら概観をいたしますと、ただいま申しましたように大体下げどまりまして、生産も上向き、在庫も減り始めたという状況でございますが、その水準は非常に悪いということと、まだなべ底的でやや横ばい的な感じが続くのではないかというふうに見ております。
  37. 宮田早苗

    ○宮田委員 先般、これは十五日と思いますが、本委員会の席で中小企業に対する官公需の発注に関する質疑がございました。その際長官は、この不況の中で中小企業の受注比率が高くなっていることや、五十年度予算での上期の契約繰り上げ効果説明しておいでになりましたが、私どもにはその効果がよくまだ理解ができないのでございます。中小企業庁は、毎年度各省ごとに官公需発注の実施状況、目標が達成できない場合はその理由を通知させることにしていると思うのでございますが、四十八、四十九年度分についてここで報告ができるならばしていただきたいと思います。
  38. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 官公需につきましては、官公需の法律に基づきまして毎年中小企業向けにどれぐらい発注するかという基本方針を閣議決定をいたしまして、各省庁を督励しまして中小企業者の受注機会の増大に努めておるところでございますが、昭和四十八年度は、目標が全官公需の中で二六・九%を中小企業に発注する、こういう目標でございましたが、実績値では二七・七%でございまして、目標を若干上回った成果を上げておるかと存じます。それから、四十九年度につきましては、目下集計中でございまして、まだ最終的な数値が出ておりませんが、十二月までのところで中途的に集計をいたしました段階では、発注状況中小企業向けは二九・四%となっておりまして、年度当初の中小企業向けの目標が二八・七%でございましたので、それを一%弱上回る水準にございます。
  39. 宮田早苗

    ○宮田委員 五十年度の予算の執行に際しまして、政府は公共事業の契約を上期に繰り上げる方針を持っておると思います。通産省もその効果中小企業に及んでくると見ておられるようですが、問題は今日の地方財政の実態でございます。建設的投資予算を組めない自治体が非常に多い中で、補助金をつけても着工できない、つまり計画を返上するようなケースも予想されておるのが実情と思います。どの程度の波及効果があるのか疑問に思うわけでございますが、その点どうお考えになっておりますか、その点もお伺いいたします。
  40. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 地方財政が人件費の上昇等によりまして非常に窮迫いたしておりますので、公共事業の施行等にも悪影響がきてはいけないということで、先般の第二次の不況対策の際にも地方債の増発を、これは四十九年度についてでございますけれども、約千三百億円認めまして、それによりまして公共事業についての地方分担分の資金の確保を図ったわけでございます。五十年度につきましては、地方公共団体に対しましても国に準じまして、中小企業者の受注の機会を確保するように要請をいたしておるところでございますけれども、その場合に、地方自治体の財源難で公共事業等の施行がおくれる、こういうことがあってはなりませんので、地方債の円滑な発行に十分配慮する、こういうふうなことを政府としては三月二十四日の経済対策閣僚会議において決定を見ておるわけでございまして、実情に応じまして適切な対策がとられるものというふうに考えておるわけでございます。
  41. 宮田早苗

    ○宮田委員 関連をいたしますが、不況対策、いまおっしゃいましたようなことである程度効果が期待されるとは思いますが、長期的な展望をやはり持っておく必要があるんじゃないか、こう思うわけでございますが、その点についてのお考えがございましたらひとつお知らせ願いたいと思います。
  42. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 一昨年の石油ショックを受けまして、昨年の日本経済は、物価が非常に高騰したわけでございます。当面、物価対策が非常に重要な課題となりまして、従来からその面の施策が行われますと同時に、物価の鎮静に応じまして一面不況対策にもまた力を入れてまいっておるわけでございますが、五十年度につきましては先生御承知のように、こういった石油ショックの後の後遺症をいやすという意味での一種の調整期間、日本経済が非常に安定した経済にいくまでの調整期間というふうに私ども考えておりまして、そういう意味でことしの成長率は四・三%というように経済計画で立てられておるわけでございます。従来の高度成長期から見ますと非常に低い成長率でございますけれども、昨年はゼロ成長でございましたので、ことしは去年に比べますと漸次景気は上向いていく、こういうふうに考えておりますが、現在は非常に不況の底をはっているような状況でございまするので、この情勢の推移を見ましてさらに必要な施策を講ずる必要があれば、第三次の景気対策をとる必要があるんじゃないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  43. 宮田早苗

    ○宮田委員 公共事業の契約が進み、計画どおり工事が進むということになったといたしまして、ここで政府に考えていただかなければならないことは、建設土木関係の中小に対する大手の支払い条件でございます。中小の受注確保が長年叫ばれてきた結果、ある程度実施している事実は認めますが、大手建設会社が受注してこれを中小に流すという仕組みは相変わらずだと思います。この不況の浸透で、大手から中小への支払い条件の悪化を私ども業者からよく聞くわけでございますが、表面的には百二十日手形になっていても、決済前にまた書きかえ等が行われておりまして、半年以上たつのがずいぶん多いようでございます。こういう問題をどうとらえておられるか、この点をお聞きいたします。
  44. 大森敬介

    ○大森説明員 ただいま先生指摘の大手建設業者の下請代金支払い状況につきましては、確かに建設業界の全般的な不況ということに伴いまして悪化していることは事実でございます。この問題は、特に昨年相当そういう状況が出てまいりました。そういうことで建設省といたしましても、こういう支払い条件については、特に大手建設業者が姿勢を正さなければならないという観点から、昨年じゅうに二回にわたりまして通達を行っております。  第一回は、昨年の五月でありますが、相当詳細に支払い条件の内容につきまして、中小建設業者に支障を来さないようにということを注意、勧告したわけでありますが、さらに年末の苦しい時期を控えまして、御指摘のようにいろいろそういう支払い手形のサイトの問題でありますとか、あるいは現金による支払い比率の問題でありますとか、こういった問題で私どもの方にもかなりいろいろと情報が入ってまいりました。そういうことで、昨年の十二月に大手の建設業者、これは資本金約十億円以上の大手建設業者でありますが、との業者に対しまして、各社社長あてに再度通達を発しております。内容的にはかなり詳細なものがございますが、たとえば下請契約を行う場合には必ず契約書をもって支払い条件を明定しなければならないというふうな点、あるいは下請代金の支払い条件につきましては、でき得る限り早期に支払いを行うように、手形サイトもでき得る限り短期間にするようにというふうな内容のことを詳細にわたって実施しております。  現在のところ、幸いに建設業界の受注関係もやや上向きの傾向が出てまいっております。もともとこの下請代金支払い遅延のよって来るところは、やはり大手建設業者の発注先からの支払い条件の悪化ということが一つの遠因になっておりまして、そういった状況も背景になっておるわけでありますが、最近はそういうような発注面のやや好転というふうな傾向を受けまして、下請に対する支払い条件も一時よりは好転の兆しが見えてきておるというふうに考えております。しかしながら、やはり依然として、先生おっしゃるようなサイトの非常な長期化でありますとか、現金の支払い比率がかなり低いという問題もありますので、建設省といたしましては大手に対する指導を今後とも引き続き実施してまいりたいというふうに考えております。
  45. 宮田早苗

    ○宮田委員 下請代金支払遅延等防止法に関連するわけですが、続いて質問いたします。  四十九年度の親事業者に対する調査、下請事業者からの申告による立人検査の報告をここでできるならしていただきたいと思います。法第七条に基づく勧告、行政指導内容や即時改善効果等をここで公表をすべきだ、こういうふうに思うのでございますが、この点できますならば報告をしていただきたいと思います。
  46. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 四十九年度に下請代金支払遅延等防止法に基づきまして調査をいたしました事業所の数は約二万二千件でございます。そのうち、下請が六千件ほどございますので、残りが親事業者事業所ということになります。これは十二月までの調査結果でございますが、そのうちで違反の容疑のあります事業所の数が二千三百ございまして、その違反のうちの約六割は契約に際して書面を交付していないというものでございますが、支払い期限が六十日過ぎても支払われていないというものが約三百件、それから手形サイトが非常に長いものというのが約三百件ほどございました。これに対しまして検査をいたしましたのが千二百五十七件でございまして、そのうち事業所に立入検査をしましたのは三百五十四件、それから責任者を役所に呼びまして調べましたのが三百六十件、その他が五百四十件となっております。その結果、行政指導等によりまして改善が行われましたものが七百十四件ございまして、行政指導による改善が見られませんので、公正取引委員会に独禁法に基づく処置を請求いたしましたものが四件ございます。それから、公正取引委員会が独禁法に基づきまして勧告いたしましたものが同じく四件ございます。
  47. 宮田早苗

    ○宮田委員 通産大臣、時間の関係がございますので、大臣に対して質問をさせていただきます。私、これまで主として現在の中小企業が直面しております問題点を質問いたしましたが、これからこの法律改正点を中心に質問をするわけでございますが、まず通産大臣に政策の基本にかかわる点をお伺いいたします。  最近の通産省の政策に関する文書には、必ずと言っていいほど国民のニーズの多様化に対応するためとか、福祉社会への移行に伴いという表現が使われておるのでございます。この法律改正案に関しても例外ではないわけでありますが、通産大臣は、国民のニーズの多様化とは一体どういうことを指しておいでになるのか、この法律改正の柱になっております国民生活安定向上及び新商品開発奨励ということを考慮に入れて御答弁をお願い申し上げます。
  48. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 御案内のように、終戦直後の耐乏生活をしておりました時代に比べますと、経済の復興によりまして生活水準も豊かになる、国民の生活水準も豊かになると同時にまた多様化され、高度化される、こういうふうになりまして、生活のあり方等に対するいろいろな要望等が次から次へ生まれてくるわけでございますが、そういうふうな動きに即応いたしまして政策も当然変えていかなければならぬわけでございますし、特に一昨年の石油問題以来、世界の経済、日本の経済の運営の仕方等も変わっております。  そういうふうな非常に大きな変化等が次から次へ生まれてまいりますので、そういう変化に即応いたしまして、中小企業近代化をさらに進めまして、国際競争力を高めていく、こういう考え方のもとに立ちまして、今回の法律改正をお願いしておるわけでございます。
  49. 宮田早苗

    ○宮田委員 本改正案の目的の最大のねらいは、高度経済成長から低成長時代への移行に中小企業がどう対処すべきか、その方向づけをしようという内容だと理解をしておるのございます。高度経済成長時代国民のニーズは、電化製品や自動車を手に入れたいという物に対する欲望だったのだと思うわけでありますが、この大衆の欲望に対して、企業が製品の安全なり耐久性にどれだけ配慮したかというと、消費は美徳ということに象徴されるように、コマーシャルあるいは電波に新製品を乗せて大衆社会に供給してきたと思うのでございます。と申しますと、大企業が悪いのだということになりましょうが、中小企業もその製品の部分供給の一翼を担っておりましたし、独自の商品にしても、たとえば子供の玩具がいい例でございますが、メーカーペース、つまり国民のニーズはむしろメーカーによってつくられたものではないかという気がしてならないわけであります。メーカーのつくったニーズでは困るという反省が今回の改正に生かされておりますなら大いに結構と思うわけでございますが、大衆が節約時代に戻ったからメーカーは売れる商品開発をという発想はいただけない、こう思うのでございます。大臣の提案理由の内容が、こういう面につきましてはいささか不明確というふうに思うのでございますので、この点についてももう一度ひとつ御答弁を願えれば幸いだと思います。
  50. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私は、中小企業対策の基本は、いつの場合でも日本の場合は国際競争力を強化していく、近代的に競争できる、こういう内容中小企業育成するということでなければならぬと思うわけであります。そういう基本のほかに、先ほど申し上げましたように非常に生活も多様化いたしましたし、また高度化いたしまして、次から次へいろいろな新しい産業が生まれてくるわけでございまして、そういう中にありまして、時代に適応した中小企業のあり方、福祉あるいはまた公害対策、生活充実のためのいろいろな産業、こういうことを考慮しながら新しい中小企業育成を図っていく、強化をしていく、こういう観点に立ちまして、今回の法改正をお願いしておるわけでございまして、確かにいまお述べになりましたような点、つまり生産者に消費者がリードされる、こういうことがあってはいかぬのじゃないか。むしろ企業そのものを強化して、そしていまのような、玩具のような例のないようにひとつやっていくべきである、こういう御意見等も取り入れまして、中小企業近代化強化を図っていこうというのが今回の法改正の考え方でございます。
  51. 宮田早苗

    ○宮田委員 大臣に対する質問を終わりますが、せっかくおいででございますので、要望を一つ申し上げておきたいと思います。  この法律の趣旨そのものは、国際競争力をつけるということと国民生活の安定ということなんでございますが、この近代化促進という法律の運用を誤りますと、物価の上昇ということにもなりかねない。それが国際競争力を低下させる、国民生活の安定を覆すということにならないような運用ということに最大の努力を傾けていただきたいということを大臣に要望しておきます。  以上で大臣に対する質問を終わりますので、どうぞ……。  先ほど来申し上げてまいりましたように、現下の中小企業経営者は非常に厳しい環境にあると思うのであります。  そこで、私はまず長官に、戦後の中小企業施策の変遷の過程で、今度の近促法改正をどう位置づけようとしておるのか、大局的な見地から御意見を承りたいのでございます。ひとつ簡明にお願いします。     〔武藤(嘉)委員長代理退席、田中(六)委員長代理着席〕
  52. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 戦後の中小企業施策を大きく分けますと、私は三つに分け得るのではなかろうかと考えます。  最初の時代はいわゆる戦後の復興期でございまして、昭和二十年代でございますが、この時期におきましては、ちまたに非常に失業者があふれておりまして、そのために中小企業はそういう方々に職を与える場所ということで、生産性は低いけれども、この生産性を上げることはかえって失業者を多くする、こういう状況もありまして、中小企業を保護して、大企業が入ってこれないようにカルテルその他をいろいろ結びまして、むしろ失業の吸収を図る、こういった時期が二十年代であったかと存じます。  それが三十年代になりまして、その後、高度成長が始まりましてからはいわゆる格差是正対策というものが中小企業施策の中心になってまいりまして、業種振興臨時措置法という法律昭和三十五年に制定を見まして、業種別に実態調査をいたしまして、それぞれの業種に見合った格差是正のための施策を講ずる、こういうことが行われたわけでございます。  さらにその後、高度成長が進みますと同時に、日本経済の国際化が三十年代の終わりに始まったわけでございますが、そのときに現行の近代化促進法制定を見まして、経済の国際化時代に対応いたしまして産業構造高度化それから国際競争力の強化、こういうものを旗印にいたしました中小企業近代化構造高度化が進められたわけでございます。この時代におきましては、施策の中心中小企業の自助努力をさらに助成をする、こういうことでございまして、従来の保護主義から脱しまして、資源の適正配分という意味もありまして、みずから大企業に追いつく努力をしよう、こういう中小企業にいろいろ援助を与える。しかし、自分で努力しようとしない中小企業を一々保護するという政策はとらない。こういう形で近代化政策が遂行されてまいったわけでございます。  しかしながら、一昨年の石油ショックを契機といたしまして、今後日本経済はまた新たな展開を見せようといたしております。つまり従来の高度成長から成長率がやや鈍化する安定成長の時代に入ろうとしております。その場合には、やはり中小企業施策としてはまた違った形が必要かと思われます。  もう一つは、いわゆる社会の福祉経済化と申しますか、福祉社会建設と申しますか、そういう時代に変わりつつありまして、多様化する国民需要にこたえていかなければならない。同時に、中小企業にも課せられました社会的な責任、たとえば公害の防止でございますとか資源の節約とか、こういうことに中小企業もこたえなければならぬ、そういう意味合いにおきまして、そういった国民生活安定向上中小企業が尽くすということを実現することと、もう一つは、低成長時代に入りまして、より高度化された商品に漸次中小企業転換をいたしまして、追い上げてくる発展途上国との競争に打ちかっていかなければならない。こういう意味でいわゆる知識集約化と申しますか、より加工度の高い産業への転換あるいは技術のより高度化への進歩、こういうものを促進する必要が出てまいりましたので、そういう情勢の変化に対応しまして今回の促進法改正をお願いを申し上げた次第でございます。
  53. 宮田早苗

    ○宮田委員 いまの答弁に関連して御質問申し上げますが、通産省自体のお考えにつきましてはある程度理解ができるわけでございますが、中小企業そのものに対してもおっしゃるとおりでございますけれども、いま中小企業が非常に大きく当面しておりますのは、親会社の指導育成といいますか、そういうことでありまして、それだけに通産省自体が親会社に対しまして、いま申されましたことの指導といいますか、また助言といいますか、指摘といいますか、そういうことについてはどういう対策をとってやられておるか、その点も関連しておりますのでお聞きをいたします。
  54. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 先般産業構造審議会で、今後の新しい日本経済構造ビジョンというものを発表したわけでございますが、昭和六十年度までの青写真を描いておるわけでございます。それによりますと、成長率は七%台まで鈍化をする。と同時に、産業の中身が軽工業から機械工業のような分野に漸次移り、同じ軽工業の中でもより付加価値の高いあるいは加工度の高い産業に転化をしなければならない、そういった形を描いておるわけでございます。そういう方向の場合に、一番大事なことはやはり技術開発でございまして、特に量産型の技術は日本ではある程度完成に達しておりまして、自動車でございますとかあるいは家庭電気製品というものは世界水準のトップを行くところまで参っておりますが、航空機産業あるいは電子計算機産業といったようないわゆる技術集積型の先端産業がまだまだ非常におくれております。こういった分野技術開発をさらに促進することと、それからもう一つは、資源の入手の困難を考えまして、特にエネルギーの場合に、新しいエネルギー資源の開発といったような問題でございますとか、あるいは環境の保全という意味での公害防止の一層の強化、こういうことを産業構造ビジョンでは描いておるわけでございます。  それに即しまして、五十年度予算におきましても電子計算機関係のいわゆる一番新しい、次の世代の電算機の開発でございますとか、エネルギーの問題につきましてはサンシャイン計画ということで、新しいエネルギーの開発のための試験研究関係に非常に力を入れまして、そういった関係の予算を計上するということで、大企業の場合ですと自分で近代化の力はございますので、むしろ大企業でもなおできないような非常に大型の新しい技術開発というものに通産省の施策では一番力を入れまして、予算もそういったものを中心に編成をいたしておる次第でございます。
  55. 宮田早苗

    ○宮田委員 近促法制定されてこの方、中小企業近代化の成果に対する政府の認識について、これまでの質疑で幾つか明らかにされてきたところでございますが、しかしその内容は、設備近代化されたとかあるいは質が向上した、あるいはまた作業環境が改善されたといった、いわば抽象的な面が多いように見受けます。特に関連で質問いたしました下請の関係につきましては、いままでの経済の成長が余りにも高度ということでございましたから、そういう問題について経営の近代化ということが案外おろそかにされて、結果として単価に頼るというような傾向というものが見られたわけでございますので、こういう点についてはより小まめに近代化の促進ということを図ってもらわなければならぬ、こう思っておるところでございます。  そこで、私は農林省に出席をお願いしておきましたのですが、三十八年に、普通合板、四十年に一般製材、特殊合板がそれぞれ近代化業種に指定をされておるわけでございます。これらの業種指定の効果をわかりやすくひとつ説明をしていただきたいと思います。
  56. 下川英雄

    ○下川説明員 いまお話がございましたように、合板製造業につきましては昭和三十八年の九月に近代化のための指定業種となりまして、個別企業近代化中心といたしまして促進してまいった次第でございますが、さらに四十四年の九月にはこの近促法の特定業種に指定いたしまして、以来、日本合板工業組合連合会が実施主体となりまして、業界ぐるみでこの合板製造業構造改善事業をやってまいった次第ございます。  この構造改善事業につきましては、四十三年度を基準年次といたしまして、四十九年度を目標として実施してまいったわけでございますけれども、御承知のように昨年は業界が非常に不況でございましたので、一部設備投資等、目標達成ができなかった面がございます。したがいまして、さらにこれを一年間延長いたしまして、五十年度まで実施するということにしておるような次第でございます。  これまでの構造改善事業の成果といたしましては、生産設備近代化であるとか、生産規模適正化であるとか、生産性の向上あるいは品質、性能の向上、こういったようなことが挙げられるわけでございますけれども、この成果というものを一つ一ついろいろと具体的にあるいは数字的に申し上げるのは非常にむずかしいわけでございますが、二、三申し上げてみますと、生産設備近代化につきましては、この構造改善の実施期間中に約八百九十億ほどの設備投資をやっております。これはたとえば多段式のホットプレスであるとか、あるいは連続ドライヤーであるとか、こういったようなものを中心といたしました設備投資をやってまいっておりまして、生産設備はこの実施前に比べますと著しく近代化されたと言えるわけでございます。  それから、生産規模適正化につきましても、この目標を年間生産量一千万平方メートルというところに置いておるわけでございますけれども、構造改善事業の進展に伴いまして小規模工場が順次上位の規模階層にシフトいたしまして、能率のよい生産形態のものが増加いたしております。この結果、たとえば従業員一人当たりの生産量、いわゆる労働生産性について見ますと、基準年次の四十三年度で約二千八百平方メートルであったものが、四十九年度の実績におきましては四千平方メートルということになっておりまして、ほぼ五割近い生産性の向上が実現したということになっておるような次第でございます。  そのほか、企業合同であるとかあるいは業務提携といったような企業の集約化をほぼ計画どおりに進めておりまして、共同生産であるとか原料の共同購入であるとか、あるいは合板製品の共同販売といったようなことで共同事業を大幅に促進いたしております。さらに、共同倉庫を建設するといったようなこともやっておるような次第でございます。  そのほか、品質の点について申し上げますと、従来、いわゆるベニヤ板ということで、はがれやすい、品質の悪いものだといったようなイメージでございましたけれども、この近代化事業あるいは構造改善事業の実施を契機といたしまして、接着剤の使用を合理化するとか、あるいは乾燥の均一化を図るとか、そういったようなことによりましてごらんのような非常に品質のよいものが生産されるようになってきたということでございまして、こういったようなことも業種指定を受けましていままでやってきました効果ではなかろうかというふうに判断しているような次第でございます。
  57. 宮田早苗

    ○宮田委員 合板業界だけの問題ではないのでございますが、一部企業近代化が促進をされた結果、中小企業の内部におきまして格差がさらに開いたのじゃないかというふうに思うのでございますが、合板業界の場合はそういうことはないかどうか、まずお聞きします。
  58. 下川英雄

    ○下川説明員 この近促法に基づきます構造改善事業は、申すまでもなく中小企業者を中心としてと申しますか、主体としてその近代化を促進しようというものでございまして、適正規模企業への体質改善を図っていくということでやっておるような次第でございます。したがいまして、中小企業の積極的な近代化を進める、スケールメリットを指向した能率のよい適正生産規模への誘導を図っていくということでやっておるわけでございまして、中小企業とそうでないものとの比較におきまして、企業格差がこの構造改善事業あるいは近代化事業によって生じたというふうには私どもは見ておらないような次第でございます。  この企業格差というものをどういう尺度ではかっていくかということは非常にむずかしい問題でございますけれども、たとえばいわゆる合板業界におきます大企業というものの生産量を全体の生産量の中に占めるシェアで見てみますと、構造改善事業の実施期間におきましてこの大企業のシェアがふえてきたということにはなっておりませんで、むしろ合板業界の場合は大企業のシェアが落ち込んできておるというふうな状況でございます。といいますことは、この合板業界の大企業は合板の生産だけでなくて、たとえば住宅の建設あるいは緑化事業、こういったようなほかの業種への拡大が図られていったということではなかろうかというふうに思っておる次第でございます。  また、合板業界の一企業当たりの生産量の伸び率をこの実施期間について見ますと、大企業伸び方よりはむしろ中小企業伸び方の方がずっと大きくなっておるといったようなことでございます。  個別企業の問題は別といたしましても、全体的に見ました場合には、この構造改善事業を通じまして中小企業近代化が促進されたということによりまして、中小企業の地位が総体的に相当大幅に上昇してきたというふうな判断をいたしておる次第でございます。
  59. 宮田早苗

    ○宮田委員 大企業中小企業格差の問題はいまお聞きしましたが、私が質問しておりますのは中小企業同士で、内部で、たとえば一人当たりの生産が四千立米なら四千立米のところがあるが、片一方の中小は依然として二千三百立米なら二千三百立米だという格差を聞いておるわけですが、その辺はどうなっておりますか。
  60. 下川英雄

    ○下川説明員 この近代化促進法指定業種となりまして、それぞれ税制あるいは金融上の優遇措置を受ける、その上でそういう近代化を進めていくということで、その態度には、近代化への意欲と申しますか、そういうものにつきましては中小企業の中でも経営者の考え方によってそれぞれ差があるということで、おっしゃるような格差が出てくる場合もあるだろうと思います。     〔田中(六)委員長代理退席、委員長着席〕  さらにまた、近代化をしようと思っても、たとえば市街地の真ん中に工場があってなかなかそれも思うようにいかないという面もあるといったようなことで、実際問題としましては御指摘ございましたように、そういう格差も多分にあろうかと思います。しかし、全体としましては相当にレベルが上がっておるということを申し上げた次第でございます。
  61. 宮田早苗

    ○宮田委員 同じ内容について、中小企業庁長官、合板以外の業種で、近促法をつくり、それによって促進をした結果が非常に大きな格差をつくったというようなことについてお聞きします。
  62. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 近代化促進法によります近代化は、生産性の低い中小企業を大企業並みに生産性を高め、大企業従業員と同じように中小企業従業員にも高い賃金が払えるようにしたい、こういう格差の是正をねらって進めてまいったわけでございます。  その場合に、どうして中小企業の場合には生産性が低いかということを考えますと、一つ生産規模が非常に小さい、新鋭設備が入るには余りに規模が小さい、それから業者の数が非常に多い、こういった点がこの格差の発生する原因になっておったかと思われるわけでございます。したがいまして、構造改善計画におきましては、個々の企業近代化というよりも、その業界全体の体質を中小企業につきまして改善をいたしまして、大企業並みの生産性に持っていこうということがねらいでございますので、そうなりますと、極力合併をしていただくとか、あるいは組合を組織してもらいまして、そこで大企業が入れるような量産設備中小企業なりに導入をいたしまして生産性の向上を図る。そういたしますと、非常に能率が高くなりますので供給過剰になるおそれもございます。そういう意味では若干転廃業を促進する、こういうふうなことを進めたわけでございます。  この場合に、私どもはその業種企業の少なくとも過半数がその改善計画に参加してもらいたい。そうでございませんと、ごく一部の方々がそういう新鋭設備を入れて協業化をされる、そこだけが能率がよくなって、結果的にほかと非常に格差ができるということは好ましくない。業界全体の構造改善をしようというのがねらいでございますので、この構造改善計画を出してもらいます場合に、その業種の業者の方の過半数が参画をしておる計画でなければ認めないという方針をとってまいったわけでございます。  その結果、業種にもよりますけれども、多いところでは業界の七割も八割もの方が参画をされた、こういうことで構造改善が行われておりまして、参画をされなかった方との間にあるいは若干格差が出た面があったかもしれませんけれども、されなかった方々は、どちらかと言いますと非常に零細で、むしろ設備に頼るよりも別の力によって生き延びていく、こういう形の方で参画をされなかった場合が多いわけでございまして、一般的に申しますと、大半が参加されて、業界として非常に構造改善が進んだという結果が出ておると考えるわけでございまして、部分的に格差が出た場合もあるかもしれませんが、それはむしろ構造改善の意欲のなかった方々が参画されなかった形で結果的に格差が出た、こういうものではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
  63. 宮田早苗

    ○宮田委員 合板製品は御承知のように市況変動の激しい商品でございまして、不況カルテルの問題がよく出るところだと思います。普通合板で言えば、先ほど申しましたように、三十八年指定、住宅産業の一翼を担うようになった特殊合板でも指定から十年になるわけでありますが、設備近代化されたかもしれないが、業界の安定的発展という点で、農林省の方、どう思っておられますか。将来の展望も含めてお答え願いたいと思います。
  64. 下川英雄

    ○下川説明員 御指摘がございましたように、合板業界におきましてはいわゆる不況カルテル、団体法に基づきましたところの安定事業でございますが、この不況カルテルをただいま一月から実施しておりますが、これを含めまして過去五回ほどやっております。この五回の中で、この近代化促進法構造改善事業に着手しました以後の不況カルテルは、昭和四十六年にやったものと、それから現在実行中のものと、この二回でございます。  構造改善事業は合板業界の体質改善を図るために、近促法に基づきました構造改善計画に従ってある程度の時間をかけて計画的に実施するものでございますので、その構造改善事業というものを実施します環境といたしまして、周囲の経済環境が安定しておる、合板の需要が安定しておるということが基本的に非常に望ましいわけでございますけれども、実はこの四十六年の場合を見てみますと、合板の一番の需要先でございました住宅の建築というものが年々非常に伸びておったというのにもかかわらず、四十六年には住宅の新設戸数が前年を下回ったというときでございます。したがって、需要が減ったというときでございます。それから、ただいまの状態を見ますと、昨年の建築着工が前年に比べまして約三割といったような非常に大幅な落ち込みをいたした、したがって合板の需要も大幅に減退いたしたといったようなときでございます。したがいまして、緊急避難という観点から、需要に見合った生産に落としていくということで、やむを得ず不況カルテルの実施に踏み切った、認めたというものでございます。  この合板業界の構造改善を計画的に進めていく、あるいは合板の安定的な供給を図っていく、そういったことをやっていきますためには、基本的にはこの安定的な需要伸びが望ましいわけでございまして、それに見合うような各種の政策が私どもとしては望ましいし、切望するところでございます。しかし、これは望むべくして非常にむずかしいことであるということもございますので、多少の需要の変動には業界として十分対応できるようなより一層の構造改善といいますか、体質改善への努力をやってもらいたいということで、業界にも強くそういったような指導をやっておる、今度の不況カルテルの認可に当たりましてもそういったようなことを業界に対して強く要望いたしておりますし、業界としましても何らかの具体策を出そうということで、ただいま鋭意検討を進めておるという段階でございます。
  65. 宮田早苗

    ○宮田委員 近代化施策の対象となる業種指定要件国民生活との関連性の高い物品またはサービス業にまで拡大されましたことは評価をしなければならぬと思います。  そこで、この案をつくるに当たって行われたでありましょう生活関連業種の実態調査の内容について示すことができるのなら示していただきたい。と申しますのは、これまでの業種指定は業界の意思表示が前提条件だったと思うのでございますが、国民生活重視ということから、これからは国が積極的に実態調査を行い指定していく考えが出てきた、こういうふうに思っておりますので、簡単で結構でございますので、実態調査の内容について御説明願いたいと思います。
  66. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 今度の改正案によりまして、国民生活と関連性の高い物品とか役務を指定して近代化を図ることになるわけでございますが、国民生活と関連性の高い物品、役務と申しますと、まず衣食住の関係で私どもの国民生活の基本的な要素になっておりますようないわゆる生活必需品、それから文化、教養水準の向上でございますとか健康の維持、増進といったようなことのために必要な物品なり役務、さらには生活環境の保全でございますとか資源節約、そういった面のものも指定の対象に入ってまいろうかと思います。  具体的にどういう業種を指定するかということにつきましての実態調査につきましてはある程度調べておりますが、さらにこれから詳しく調べたいというように考えておりまして、そのための調査予算もついておりまして、これから委員会をこしらえまして調査を行うことにいたしております。  なお、各省の方で追加をして指定をしてほしいという要望業種といたしましては、たとえば農林省の関係ではソースでございますとか、それから農業機械の販売整備業といったようなものがございます。建設省の関係では建築工事業、それから厚生省では配置家庭医薬品、それから通産省では鉄くずの加工業とか故紙の加工再生業あるいはかばん製造業、こういったものが現在要望が出ておる業種でございます。
  67. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう最後になりますが、一度指定されて削除された業種、たとえば三十八年度指定のびん詰め、かん詰め、こういうようなものは、今回、改正目的からいって再指定をされるかどうか。  もう一つは、新分野進出計画の承認制度の新設に関してでございますが、本法制定以後中小企業が新製品を独自に開発して、これがその企業発展なりその業種の体質改善になったケースがございましたら御説明願いたい。  これで質問を終わらしていただきます。
  68. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 前に近促法指定業種になりましてすでに削除をいたしました業種は、一応近代化が達成された業種ということで削除をしたわけでございますけれども、最近非常に環境が変わっておりますので、従来の近代化の達成だけでは最近の情勢に適合できないということで新たに構造改善事業を実施したいというような業界の一層の御要望がございます場合には、その内容を伺いまして、必要によりましては再指定をするということも考慮してまいりたいと考えております。  それで、御指摘のびん詰め、かん詰め業でございますが、これは昭和三十八年に指定業種になりまして近代化を図ってまいりましたが、ほぼその目的を達成いたしましたので、昭和四十六年に一応削除いたしました。しかし、最近のかん詰め業界を取り巻きます環境は、原料の確保の困難とか需要構造的に停滞しておる、あるいは非常に需要の多様化がある、こういうことで環境変化が非常に激しい面がございまして、業界の方ではいわゆる知識集約化事業をこの際やりたい、こういう希望があるように伺っております。私どもとしましてももう少しこういった実情を調査いたしまして、再指定するかしないか検討してまいりたいというふうに考えております。  それから、新分野への転換でございますが、一応これはその業種で従来やっていなかったような商品なり役務に転換をするということを考えておるわけでございますが、過去の事例としてどういうものがあるかという御質問でございますけれども、たとえばクリスマス電球の業界が卓上電子計算機のパイロットランプの製造転換をしたとか、あるいは合成樹脂の製品をつくっておりました方がプラスチック製のボートの製造を始めたとか、あるいはかん詰め業界が保温用の水筒をつくられたとか、あるいは造船の下請の方が自動販売機の製造を始められたとか、いろいろと過去に例はあるようでございます。
  69. 宮田早苗

    ○宮田委員 終わります。
  70. 山村新治郎

    山村委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ————◇—————     午後一時三十五分開議
  71. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。神崎敏雄君。
  72. 神崎敏雄

    ○神崎委員 今回の改正案によって、政府は今後中小企業近代化をどのように進めようと考えておられるのか、またこの改正案によって、現在の中小企業近代化の方向はどのようになるのか、この点をまず初めにお聞かせください。
  73. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 今回の改正の主な点といたしましては、一つは、対象となります業種の指定の範囲を拡大いたしまして、国民生活安定向上に資するような業種対象に加えたということでございます。  それから、第二番目といたしましては、近代化計画におきまして、新商品開発とかあるいは新技術開発といったような、設備近代化に力点を置きました従来の近代化計画から、そういった新しい商品開発していくとか技術開発していくといったようなソフトな面に力を入れるということでございます。また、近代化計画におきまして、従業員の福祉の向上でございますとか消費者の利益の増進、環境の保全、こういった問題も近代化計画内容に加えていこうということも改正点の大きな点でございます。  それから、三番目の改正点としまして、従来横割り的に同業種だけでの構造改善計画ということになっておりましたけれども、これを縦に、原料の供給者でございますとか、あるいはそこで使います機器類製造業者でございますとか、あるいは輸送、倉庫等の部門、あるいは流通部門といった関連業界ぐるみの構造改善計画を立て、その関連業界にも助成措置を加えることによりまして、より効果的に近代化の目的を達成していく、こういうふうにいたした点等が従来の近代化施策につけ加えた点でございます。
  74. 神崎敏雄

    ○神崎委員 私はこの近代化施策を講ずる場合、近代化の意欲を持つすべての中小企業者が国の助成策を受けられるような十分な配慮がなされることが必要だと考えます。特に構造改善事業の場合は多額の資金が要されるので、資金調達力や技術で困難さを持っている小規模企業零細企業に対しては特段の優遇処置を講ずるべきだと思うのですが、この点は今回の改正案ではどのように具体的に保証されておるかということですね。
  75. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 近代化促進法によりますと、近代化を進める必要な業種ということで、いわゆる指定業種というものがございます。これは指定をいたしまして近代化計画を立てますと、その業種に属する個々の事業者近代化計画につきまして低利の資金を融資する等の優遇措置があって、それによって近代化が進められるわけでございます。特にその中で構造改善業種というものがございまして、この構造改善業種の方は業界ぐるみで、業界全体として、その業界の構造をより効率的な形に持っていこう、こういうことでございますので、構造改善業種、正確には特定業種でございますが、特定業種の場合の助成を受ける前提となる構造改善計画というものは、その業種の過半数が参加してもらうということを一つの前提にいたしまして計画の審査をいたしております。この点につきましては、新法と申しますか、今回の改正におきましても従来と同様でございます。  それから、助成措置でございますけれども、金融面の助成措置としては、大体従来と同様でございまして、特に従来から前進したと申しますか、つけ加わりました点は、今回関連業種ぐるみ構造改善計画ができるようになりましたわけですけれども、その関連業種につきましては、従来は何ら助成措置がなかったわけでございますが、今度構造改善業種として一緒に構造改善計画を策定する場合には、関連業種にも中小公庫等からのいわゆる近代化融資、金利八・九%の資金の融資が行われるということになった点が従来から一歩出た点でございます。それから、同じように近代化保険がこの関連業種にも適用になることになっております。  今回、特に従来以上に優遇措置が強化されました点としては、税制の面でございまして、技術開発税制が新たに適用になっております。つまり構造改善計画に基づきまして新しい研究開発等を行います場合には、その組合が負担金を課しました場合に、組合員はそれを損金算入ができる。それから、同じく試験研究費の税額控除制度を適用する。それから、組合員からの負担金で取得しました組合の試験研究資産につきましては圧縮記帳を認めるということ、それから構造改善事業に必要な設備等につきまして事業所税の非課税、特別土地保有税の非課税等々の税制上の恩典措置も新たに与えられることになっております。  そういうことでございまして、これを要約いたしますならば、関連事業者に助成が及んだということと、特に技術開発関係の税制措置が今回適用になったというあたりが、従来からさらに加わった助成措置の内容でございます。
  76. 神崎敏雄

    ○神崎委員 いま長官、関連業種についてお話しになった中で、金利が八・九%とおっしゃったんですね。特定業種の場合は八・四%ですが、関連業種の場合は特定業種と金利の面は違うのかどうかということと、もう一つ設備等の特別償却の場合、特定業種の場合はありますね、二分の一の割り増し償却、これは租税特別措置法の第十三条の二、第四十五条の三でありますが、関連業種の場合はこれはございませんね。八・九%と八・四%の違いと、いまの特別償却の二分の一の割り増し償却の件、この相違はどういうところから出ているのですか。
  77. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 今回新たに関連業種ぐるみ構造改善計画というものが認められることになるわけでございますけれども、あくまで主体は特定業種構造改善でございまして、それを促進するために関連部門もあわせて協力をしていただく、こういうふうなたてまえにいたしておるわけでございます。したがいまして、関連部門につきましては、融資の面で申しますと、いわゆる指定業種並み、この近代化促進法指定業種は八・九%でございまして、特定業種になりますと八・四%になります。構造改善業種である特定業種は、特定業種自体は八・四%でございますが、関連部門はいわばそれに協力する部門という意味におきまして、指定業種並みの八・九%の金利ということにいたした次第でございます。  それから、設備の割り増し償却につきましては、何と申しましても特定業種設備近代化中心でございますので、特定業種だけに適用をいたしておりまして、関連部門が持っております設備につきましては、この割り増し償却制度は適用になっておりません。
  78. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そうすると、今回の改正案、これに伴う助成措置としては、対象者と貸付枠を若干広げただけで、融資条件そのものは全く変わっていないのではないか。意欲を持っている者ならだれでも構造改善事業に参加できるように、助成の内容そのものを変えることが私は必要だと思う。そこで、私は次の二点を主張いたしたいと思うわけです。  次官せっかくお越しでございますので、次官にお答えを願いたいのですが、まず第一に、資金調達力の弱い小規模企業零細企業については、構造改善事業に参加することによって組合から課せられる賦課金の全額を無利子融資すること、これが第一点。  第二点は、知識集約化貸し付けの限度額は現在所要資金の八〇%となっておりますが、さらにこれを引き上げるようにし、そうして金融上の助成措置を強化すべきだ。  こういうふうに思うのですが、大臣がおられたら大臣に聞きたかったのですが、大臣いまおられませんので、せっかく次官おられますので、ひとつよい答弁を求めたいと思います。
  79. 渡部恒三

    ○渡部政府委員 ただいまの神崎先生のおっしゃるお考えは、私どももその趣旨にはまことに同感でありますし、御承知のようにこの五十年度予算でも小規模事業対策のための金融措置を積極的に前向きの姿勢でやってきたわけでありますが、ただいまの二つの提案について、いますぐここで断定的な答弁は私の立場でできかねると思うのでありますが、その趣旨には全く同感でありますので、前向きの姿勢で進めるように努力してまいりたいと思います。
  80. 神崎敏雄

    ○神崎委員 次官から非常に積極的な御答弁をいただいたのですが、長官、いまの次官の答弁との関連で、いまの二つの提案を当局側として補足していただけますか。
  81. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 小規模零細企業者は、中小企業の中でも特に資金調達力が弱うございますので、私どもも一般的に特別の融資制度もいろいろ設けておるわけでございます。たとえば経営改善資金制度は七・二%の金利でございます。それから、国民金融公庫の融資におきまして三百万までは無担保で貸し付けております。また、信用保証の面におきまして特別小口制度で百五十万まで無担保、無保証で保証協会が保証する、こういうふうな制度もあるわけでございまして、そういうものを極力御活用いただきたいと思うわけでございますが、今回の構造改善に関連いたしまして、特に小規模事業者にだけ非常に低利の資金を貸し付けるということは、私は方向として実現ができれば非常に望ましいことだと思いますが、実際の実施にはなかなかむずかしい面がいろいろございまして、なお検討をいたしたいと存じます。  それから、知識集約化のいわゆる高度化事業につきまして、現在その所要資金の八割までを無利子で貸し付けております。さらにこれを比率を拡大するようにという御要望でございますが、これは御承知のように八割のうちの四割は府県が負担をいたしておりまして、国が四割持っておるわけでございますが、なかなか地方財政も苦しい状況でございまして、この比率の引き上げにつきましては、方向としては望ましいわけですけれども、これも実際の実現の点になりますと、やはりいろいろと障害があろうかと存じます。  ただ、たとえば転換に伴いまして古い設備の廃棄をするために、その廃棄資金を組合に貸し付けるという場合には、所要額の九割まで振興事業団が無利子で貸し付けております。九割という制度は全くないわけではございません。その制度の趣旨によりまして、この比率が高いものと低いものとあるわけでございますが、この引き上げにつきましては、将来の問題としてはさらに検討してまいりたいと考えております。
  82. 神崎敏雄

    ○神崎委員 現在の九割をさらに十割、いわゆる一〇〇%の方向に向かって次官も前向きに検討するとおっしゃるし、長官もそういう方向で進みたい、こういうふうにおっしゃっているので、そのように理解をしておきます。  次に伺いますのは、私は構造改善事業が実際にどれだけの資金を要するかを調べてみましたが、たとえば銑鉄鋳物、ネジ、歯車、外装・床タイル、バネ、小型造船、繊維ロープ、この七業種構造改善事業には合計で三千六十六社が参加しております。また、構造改善事業の所要資金の合計は約三千二百二十四億円であります。したがって、一社当たりの平均所要資金は、実に一億五百万円になるのであります。  これを業種別に見ますとどうなるかといえば、一社当たりの平均所要資金は歯車で二億七千三百万円、外装・床タイルでは一億八千二百万円、小型造船では二億五百万円、こういうふうになるのであります。もちろん組合の賦課金はそれぞれの企業の力に応じて案分されておりますから、また国等の融資を受けておりますので、いま言った金額がすぐにそのまま課せられるものではないことも承知しておりますが、しかしこのような多額の費用を要する事業小規模企業がちゅうちょするのは当然のことだ、こういうふうに思うのですが、長官、いまの私の調べた結果の数字やら現状については、どういうふうに考えておられますか。
  83. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 ただいま先生から御指摘のございました業種につきましては、そういうふうな実情に相なっておろうかと存じます。ただ、業種業態によりまして非常に零細な業種の多い業界もございますれば、わりに中から上ぐらいのところが多いような業種もございまして、零細な業種が非常に多い業界の構造改善計画の場合には、一社当たりの平均の所要額はそう大きくない場合もあろうかと存じます。やはりそれぞれの業界の事情によってその辺は差異があるのではないかと考えます。     〔委員長退席、田中(六)委員長代理着席〕
  84. 神崎敏雄

    ○神崎委員 これに関連した質問は後でまたいたしますが、いま指摘したのはそのとおりだ、しかしそうでもないものがあるというような長官の答えだったと思うのですが、構造改善事業を実施している業種の中で印刷業などの細分類業種を含めますと三十六業種ありますね。そのうち製材業は、北海道、島根を対象としているのでこれは外しますが、残り三十五業種のうちで参加率を見ますと、十七業種が六割以下、さらにそのうちの七業種が五割以下の参加率になっています。この参加率の問題については後で見ますが、そういうようなものから見ても、いま言うたように一業種当たりの所要資金が非常に高額になる。したがって、こういう法律をつくっても、なかなかそれが具体的な形でこういう業者にあるいは業界に、いまよりも大きな前進といいますか、保護処置といいますか、そういうものに該当しないというように思うわけです。  そこで、それとも関連がございますので続けて聞きますが、いま挙げました七業種構造改善事業に参加している企業数全国企業数に対比して何%ぐらいに相当するのでしょうか、おわかりでしたら言ってほしいのです。
  85. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 現在、特定業種として構造改善を実施中の業種が全部で三十六ございますが、その三十六業種事業所数は十二万四千でございます。それに対して参加しております企業の数が七万九千七百でございまして、六四%が参画をしておるという結果になっております。
  86. 神崎敏雄

    ○神崎委員 これは当局の資料ですが、この中で六四%というのは、これは平均ですか。
  87. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 三十六業種の総合計の平均数字と申しますか、業種別に見ますと、一番高いものはたとえばマッチの九六%、あるいはみその九二%といったものから、低いものでは四〇%ちょっとぐらいの業種のもの、一番低いところで大体四割ぐらいといったようなものでございまして、その総合計で見まして六四%でございます。
  88. 神崎敏雄

    ○神崎委員 いま言われたのは大体それに合致すると思うのですが、さきに挙げた七業種ですね、銑鉄鋳物が四九・七%、ネジが五一・三%、歯車が四四・八%、外装・床タイルが五二・一%、バネが五〇・五%、小型造船が四五・一%、それから繊維ロープが四七・四%、こういうことになるわけですね。そうすると約五割か六割——いま長官おっしゃったのは六四%、これは平均されてですが、五割か六割の企業しか参加していないことになるわけですね。このように参加率が低いのは、それぞれ業種によっていろいろな事情があるだろうと私は思います。しかし、いまのような助成措置では資金調達力のない企業は参加できない、こういう仕組みになっている、これが非常に大きな要因だ、こういうふうにも考えます。すなわち、資金調達力のない企業は、いま挙げたように高額の賦課金がありますから、なかなか参加しにくい。そこで、現在の不況の中で中小企業がいま深刻な状態に置かれているということは申し上げるまでもなく当局もお認めなんですが、したがって自己の設備資金はおろか運転資金にも困っている。したがって、現在の実態に見合った助成措置をするためには、さきに述べて相当前向きな答弁をいただいたのですが、組合から課せられている賦課金の全額無利子融資と、それから知識集約化貸付限度額の引き上げ、これは最前九〇%から一〇〇%に近づけるように善処する、こういうふうにおっしゃっているんですが、さきの答弁で言われているのは、こういうことの実態をこの参加率などの実態から勘案されて、いまそういう方向の処置をとらなきやならぬというところに当局は到達しているのかどうか。いまこういう形で指摘すると、現状はそのとおりだから前向きに積極的にやらなければならない、こういうような現在ただいまのやりとりの中で、現状認識の上から前進をしなければならぬというような積極的な答弁が得られたということが一つあります。しかし、そういう答弁をする以前の、現状がこうであったからこうしなければならないという、そういう質問や指摘があろうがなかろうが、当局はそういうようにしなければならないということは少し違うと思うのです。そのどちら側ですか、長官
  89. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 まず、参加比率が物によって四割台のものもあって低いんじゃないかという御指摘でございますけれども、自主独歩と申しますか、組合ができております場合にも組合に入らない方も一部ございまして、組合の組織率が非常に高い場合と若干低い場合とございます。  それから、構造改善計画の場合にはその業界ぐるみの構造改善でございますので、私どもの運用方針といたしましては、その組合員の過半数がその構造改善計画に参加している場合でないと承認をしない、こういう運用方針をとっておりますけれども、やはり組合員であってもいろいろな考え方がありまして、構造改善計画に入らないで自分は自分でやっていくという方もあるわけでございます。  その理由としてあるいは先生のおっしゃるように資金調達に自信がないという方もおありかもしれませんけれども、非常に零細な企業の場合には、今度いわゆる協同組合を別につくってもらいましたりあるいは協業組合をつくったり、そういう形でその組合として低利の資金を借りるということも可能でございますので、零細は即資金調達が非常にむずかしいということにも必ずしもならないのじゃないかと思うのでございますが、まあいろんな事情で参加しない方も確かにございます。私どもとしては極力この参加率を高めるように努力をいたしたいと思っております。そのために助成措置が不十分だという御指摘は、いまの助成措置で私ども満足しておるわけでは決してございませんので、今後とも大蔵当局等と交渉しまして、さらに助成措置の強化には努力をいたしたいと考えておりますが、それは資金調達が困難な方については効果があるとしましても、もっと構造改善の趣旨をよく御理解いただくような説得等も必要であろうというふうに実は考えるわけでございます。  それから、現在のような不況のときには、長期のビジョンに基づきます構造改善というのはなかなか行き悩むわけでございまして、むしろいまは当面の不況をどうやって切り抜けるかということが業界の非常に当面の課題になりまして、そういう意味での不況対策としての資金の融資等が当面の課題として必要となってまいりましたので、そういう面に努力をいたしておるという実情でございます。
  90. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そこで、いまの御答弁に対してもいろいろ意見もありますけれども、それは後の答弁との関連で言わなければならぬことになれば言うことにして、さて、この改正案の第四条で構造改善計画の作成主体として「商工組合その他の政令で定める法人」となっていますが、具体的にはどの範囲を作成主体として認めているのか、また特定組合として承認する要件は何か、こういう問題なんですが、わかりますか。
  91. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 構造改善計画の作成主体は「商工組合等」ということになっております。この「商工組合等」と申しますのは、法律の施行令の第二条の三によりますと、一つは商工組合、それからその全国組織であります商工組合連合会、それから二番目が事業協同組合と協同組合の連合会、三番目が酒造組合、酒造組合連合会、それから酒造組合中央会、それから四番目が民法の三十四条によります公益法人としての社団法人、この四つのものを計画の作成主体として法律上認めておるわけでございます。  実際の運用におきましては、全国ベースの業種の場合には、全国ベースにおきます組織ということで、原則として商工組合の連合会を作成主体と考えておりますが、場合によりましては全国組織の協同組合の連合会というものも認めておるケースもございます。それから、地域的な産業の場合の作成主体は、その地域におきます府県単位の商工組合あるいはそれに準ずるような事業協同組合、こういうことで運用をいたしておりますけれども、先ほど来申しますように、構造改善計画の場合にはその業種の組合員の過半が参画をするというたてまえで、業界挙げて構造改善計画をつくっていただく、こういうたてまえをとっておりますので、原則として商工組合、商工組合がないとか使いにくい場合には協同組合ということでございまして、いずれにしても、その業界全部をカバーするような一つの組織というものを作成主体というふうに考えておるわけでございます。
  92. 神崎敏雄

    ○神崎委員 いま長官おっしゃったのは、中小企業近代化促進法関係法令集の九十八ページに書いておることなんですね。
  93. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 中小企業近代化促進法の施行令の第二条の三でございます。
  94. 神崎敏雄

    ○神崎委員 わかりました。  そこで、さっきも私言いましたが、意欲を持った中小企業者のすべてに助成措置を講ずるためには、特定組合の指定要件を弾力的なものにして、いま盛んにおっしゃっていましたが、全国単位やあるいは都道府県単位の組合でなくて、一定の地域での組合もいわゆる作成主体として認められるようにすべきであると私は考えるのです。その点で、第四条で「商工組合その他の政令で定める法人」となっているものを「中小企業者を構成員とする組合は、」と、こう私はすべきである。そうすると、長官がいま言われているように、できるだけ構成員がその半分以上だとかいろいろな形で、助成をしたくてもできないとか、あるいは受けたくても受けられないとか、こういうようなことにならないように思うのです。そこで、その第四条の「商工組合その他の政令で定める法人」、それを「中小企業者を構成員とする組合は、」というふうに言ったら、そういうことが解決され、そして当局の思っている意図も通じるし、また中小企業全般もこの法律によってまあ保護されていくというか、擁護されるというか、そういうように思うのです。これは法律でもうこうして第何条第何条と決めてしまったんだから、それをいま修正するということはなかなかむずかしいという答弁もあると思うのですが、行政指導あるいは政令等でそういうふうなことの処置はおとりになったらどうなのかと思うのです。そうして、当局の思っていることも悩んでおられることも解決するし、一般中小企業者もこの法律ができることを歓迎する、こういうことにならぬと、何をつくっておるのか、まさに仏つくって魂入れずで、この中小企業近代化法はこの十一年間に七回も改正改正を繰り返してきているが、中小企業というものは、ここで各党のどなたでも指摘するように、また私もよく指摘しますが、常に問題になってくるのですね。十一年間に七回もこの中小企業近代化法というものは改正された、あるいは中小企業関係法というものは改正改正を繰り返しているわけですね。だから、私はやはり出たとこ勝負というか、一つの問題が起こったときに手直ししていく、そうでないものには五カ年計画とかあるいは八カ年計画とか十カ年計画というような計画がありまして、そして公共事業でも何でも進んでいきますが、事中小企業対策に関してはそういう長期の展望に立った計画というようなものは余り出さないで、十一年間に七回も法律改正しなければならぬというようなことを繰り返しているということは余り上策ではない。もっと率直に言わしてもらえば、本気で中小企業のことを考えておらないのではないかと言わざるを得ぬところまでいくわけですが、そういう観点から見ても、いま言いましたこの第四条はこういう精神を生かしていただけるようなことにはならないかどうか、これをひとつ聞かしていただきたい。
  95. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 この近代化促進法の特定業種としての構造改善計画は、その業種全体の構造をより生産性の高い、効率性の高い業種近代化していこう、こういう考えでございまして、個々の個別の企業近代化というよりもむしろ業界の組織の近代化という面があるわけでございます。したがいまして、特に経営規模適正化という面におきまして合併をしてもらいましたり、協同組合あるいは協業組合といった組合をつくってもらうことによる組織化の面もございますし、それから生産品種の交換をいたしましたり、共同で近代化設備を導入したりいろいろな手段を用いまして業界全体として構造改善を図る、こういう趣旨のものでございます。したがいまして、その構造改善計画も、その業種全国的な業種でございます場合には、全国一本の計画を出してもらいまして、たとえば業者が千あるといたしますと、五、六百以上は加盟したような形の計画を出してもらうわけでございます。そして、その業種が全体としてどういう形になるかというビジョンを一応描くわけでございますが、その参加された五、六百の中にまた二十も三十も組合が実際はできるわけでございます。そして、助成はその二十も三十もある個々の組合に行われることになるわけでございますが、先生のおっしゃいますように、構造改善計画の作成主体をその細かい方の協同組合に任せるとなりますと、業界全体のビジョンが出てまいらないで、個別に五、六人ずつ寄った協同組合で、一つ業種について二十も三十も構造改善計画が出てくる。そうすると、最初に出た構造改善計画と二十番目ぐらいに出てきたその業界の構造改善計画との関係がよくわからない、こういうことになりますので、一応全国業種であれば全国一本、府県単位の業種であればその府県一本で総体のビジョンをまとめたような構造改善計画を出してもらいまして、その中の一環としてその中で幾つもの組合ができまして、その個々の、全体の計画に内包されます個別の細かい組合に個別の融資が行われる、こういう形をとるわけでございます。ですから、最初にできます構造改善計画というのはどうしてもやはり業界を一丸としたようなものであることが望まれるわけでございまして、これが最初から細分化されますと、結局総体のビジョンがわからないという面に問題があろうかと存ずるわけでございます。
  96. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そのことについては、さきにも申しましたように、最後にまとめて実態を申し上げて御意見を聞きたいと思うのです。  そこで、またそれでは聞きますが、現在構造改善計画の作成主体となっている商工組合、事業協同組合等への中小企業者の加入率は一体どのくらいになっておりますか。
  97. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 昭和四十六年の調べでございまして、これが現在の一番新しい調べでございますけれども、製造業で見ました場合に、中小企業者の事業協同組合に対します加入率は三七%でございます。それから、商工組合に対します加入率が一〇%でございまして、合計いたしますと四七%という比率になりますが、若干重複がございますので、それが一%強と見ておりまして、その重複を引きまして、大体製造業者の四六%は協同組合か商工組合に加入をしておる、こういうのが昭和四十六年の姿でございます。
  98. 神崎敏雄

    ○神崎委員 それとの関連で見ますと、いま長官の言われた四十六年現在が一番新しいのですね。これで見た場合に、従業者規模企業数事業協同組合への加入率、これは製造業の場合です。これは九人以下が三三・四%、十人から十九人が四八・五%、二十人から四十九人までが五四・二%、五十人から九十九人までが五六・三%、それから百人から二百九十九人までが五三・七%、こういうことなんですね。この商工組合に加入している中小企業数、中小企業庁の組織課の方ではこの数字は掌握されておりますか。——組織課というのはあるんですね、ないんですか。
  99. 河村捷郎

    ○河村政府委員 指導部の中に組織課というのがございまして、把握いたしております。
  100. 神崎敏雄

    ○神崎委員 把握しているんですね。そうしたら、いま私が申したことは合っていますか。
  101. 河村捷郎

    ○河村政府委員 合っております。
  102. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そこで、四十九年の十二月の中小企業庁地域問題実態調査によりますと、事業協同組合に加入している中小企業は、製造業卸売業を合わせて三七%となっている。先ほど長官も三七%と言った。  かかる現状からすれば、作成主体を「商工組合等」として制限するのは、組合以外の六割のアウトサイダー企業を無視し、放置するということになる。これをどのように掌握して、そうして先ほどから繰り返し言っているように、この法律ができることによって保護をされたりあるいは受益をするというようなことになるのか。六〇%以上のものはもうそれはしようがないんだ、 ほっておく、こういうことになるのですか。
  103. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 全国平均で申しますと、いま先生の御指摘のようなことでございますけれども、構造改善をしようというような熱心な業種になりますと、非常に組合の組織率が高いのでございまして、大体八割から九割ぐらいになっております。  それからなお、もちろん一〇〇%まで持っていくのが理想でございますので、その点は組合を督励しまして、極力組合の組織率を高めるようにいたしておるわけでございますが、御承知のように、組合は加入は自由でございますので、いろいろなお考えがあって組合にお入りにならない方もおありかとは思いますが、極力この組織化を進めるように組合を指導いたしておるところでございます。
  104. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そこで、長官、最後にまとめて意見を言うということを先ほどから二、三回言っているように、当初の低率、いわゆる参加の低い率ですね、それを先ほどからずっと立証してまいりました。そして、現状も申し上げました。当局はその数字もお認めになっている。いままた長官は、さらにそれ以上のものを吸収して、この法律によってよりよくしていきたい、こういう意図でこの改正案なるものをつくられたということは、それは意図はわかりますよ。しかしながら、実際はそうではないんだ。いわゆる賦課金が非常に高かったり、いろいろなことでこれに参加できないというような形から、特にアウトサイダーの問題を出していま申し上げて、やはりそういうところに日の当たる行政といいますか、手の届く行政が必要だ、こういう立場で私は一貫して言っておるわけなんです。そうでなかったら、先ほども言ったように、十一年間に七回も法律改正されても、いまだにまだ改正を繰り返していかなければならない、まさに朝令暮改的なことだけにしか明け暮れておらないというようなことになってくるのです。先ほど長官が言われたように、やはり全国的に六〇%以上が統一した構造改善のビジョンとか計画を持たなければならない、そういうふうに指導もされている、また希望もされているんでしょうが、こういうことになっているのですよ。  業界全体の構造改善だけというのでは、中小企業の実情から見てもこれは問題がある。というのは、先ほどから問題点を挙げているわけですが、昨年十二月の中小企業庁共同化事業に関する実態調査を私は見ました。そうすると、組合の運営上に問題があるとする組合は五四%になっておるんですね。それの中身を申しますと、組合の生産計画と組合員の生産計画の調整が困難とするものが四二%になっておる。それから、共同生産設備を特定の組合員が多く利用し、不平等が生じているとするものが二五%、組合員の利用が少なく事業の運営が軌道に乗らないとするものが二一%となっている。  このような中小企業の共同事業のむずかしさから見ても、構造改善事業をより有効にするためには、先ほどから言っておりますように、作成主体を全国単位や都道府県単位の組合でなくて、一定の地域での組合も作成主体に認めるように範囲を広げたらどうか、そして中小企業者が取り組みやすいようにすべきだと私は思うのです。それは先ほどから一貫して言うておることなんですが、言えば、六〇%以上のものが構造改善計画、いわゆるビジョン等が統一されておる、そうでなければなかなかやらさないんだというようなことも言及されておったのですが、しかし実態はいま挙げたような形で、このような大きなパーセンテージになっているんですね。長官は、いま私が言っている。パーセンテージはお認めになりますか。
  105. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 協同組合は三万数千ございますので、白書でも述べておりますように、その組合の内容によりましては、いろいろ問題のあるような組合も一部にはあろうかと存じます。
  106. 神崎敏雄

    ○神崎委員 だから、この白書に、「中小企業の動向に関する年次報告」の昭和四十九年度版ですね、この中にちゃんといま挙げた数字が具体的に書かれているんですね。それはお認めになったとおりなんです、ここにおたくで出したものが書いてあるんだから。  だから、こういう実態と先ほどから私が挙げておる実数とを見た場合、この法案によって現在の中小企業のあり方が相当改善されるのかどうか、本当にこれは改正案になるのかどうか。ただ、こういうような現状だから、いまのままではだめだ、だから何かやらなければならぬという形でお出しになっている意図もわかりますよ。しかしながら、これでは実際問題としては、いつも言うことですが、単に何か金融上の操作、それから組織いじり、こういうことだけが繰り返されてきて、本当に日本産業の基盤、基礎だと言われる中小企業の現状認識が、常に場当たりで——あるいはそのことが根本的な政策、方針か知りません。また、そういうふうにしか理解できないような、そのようなびほう策が繰り返されている。  だから、この法律ができましても、いま中小企業が当面しておる問題が大きく改善されたり、いま中小企業者全般が求めている要求にこたえられるというような改正案にはほど遠いのと違うか。幾らかよくなりますよ、やられているのだから。だから、これは全くだめなものだ、だからこんなものはつくるべきでない、だから積極的に反対だ、こういう意思で私は言っているのじゃないのです。しかし、これもやはり基本的にはびほう策だというようにしかとれないのですね。だから、具体的にこれはメリットがあったというような形にやるためには、先ほど私が提起した二つの問題、次官もお答えになったのですが、そのことを、八〇%から九〇%の方向へ向かっていくと長官も答えておられたのですが、そのことでも実施を具体的にしていただかぬと、せっかくこの法律ができても、何だまたこの程度か、また来年のいまごろになったら中小企業近代化法の一部改正案なるものをこの国会で論議をしなければならない。     〔田中(六)委員長代理退席、塩川委員長代理着席〕 いま言うように、十一年の間に七回もやってきたのですから、そういうことにしかならないことになると思うのですが、最後に次官、私の出したさきの問題と、それからいまの総括的な意見を含めた質問についての答えをしていただいたら、私は終わりたいと思います。
  107. 渡部恒三

    ○渡部政府委員 お話しの点は二つあると思うのですが、一つ対象の問題ですけれども、政策の恩恵、これはできるだけ幅広く、できるだけ公平に与えられるように、また受けられるように進めていくのが当然のことでありますが、しかしこれはやはり国民の皆さん方の貴重な税金でやる施策でありますから、無法というようなわけにはまいりません。当然一つの基準あるいは尺度、そういうものを必要としますので、そこでなかなかパーセンテージが広がらないというような点で、いま御指摘のような問題点がいろいろ出ておると思いますが、法律の問題もありますが、これは当然行政面の運用でかなり弾力的に活用できるものでありますから、先生おっしゃるような趣旨で、できるだけ多くの人たちがこの近代化促進法の恩典を受けられるようにするように、これは行政面で進めるように指導してまいりたいと思います。  それから、もう一つの政策密度を濃くしていくという問題であります。これも先ほども私申し上げましたように、特に小規模事業者の場合、われわれも力を入れてまいりまして、先ほども長官からお答えしましたように、昨年から今年は小規模事業対策のための融資面の措置を倍額に増額させるとか、あるいは五年前、十年前ですと常識的に考えられなかった無担保あるいは無保証、無利子といったような金融面の措置が当然のこととして考えられるようにこれは前進してまいったわけでありますから、いまの先生御提案の二つの問題についても、残念ながらいま断定的な答弁はできませんけれども、これは世の中が前進していくのでありますし、われわれの施策の密度も濃くなっていかなければならないのでありますから、当然にそのような趣旨が行政面に生かされるように、前進するように指導してまいりたいと思います。
  108. 神崎敏雄

    ○神崎委員 以上で終わります。
  109. 塩川正十郎

    ○塩川委員長代理 中村重光君。
  110. 中村重光

    ○中村(重)委員 長官にお尋ねしますが、最近の倒産の状況、それから見通し、その他倒産に関連して、倒産の推移と申しますか、原因、そういったことについて、簡潔でけっこうですからお聞かせをいただきたい。
  111. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 倒産の状況でございますけれども、石油危機後、ずっと長く総需要抑制と金融引き締めが行われておりましたが、昨年三月に負債一千万円以上の倒産が一千件を超えましたが、その後九百件なり八百件台に落ちついておりましたところ、十月から、十、十一、十二と、いずれも千百件台になりまして、相当高水準になったわけであります。その結果、昨年一年間で見ますと、一万一千六百八十一件という倒産件数でございまして、過去におきまして年間に一万件を超えました年は昭和四十三年だけでございまして、あとは大体七千件から九千件の間でございましたので、最近にない大きな不況の年であったということが言えようかと存じます。  それと、もう一つの特徴は、昨年の前半は、倒産の原因がいわゆる放漫経営と申しますか、本業以外の不動産業とか、あるいはボウリング場とか、そういった仕事に手を出しまして、そちらが金融引き締めとともに不振になって倒産に至った、こういうようなケースが多かったのでございますけれども、後半に至りまして受注の減少、売上高の減少といったような、まじめにその仕事をやっておりながらだんだん需要が落ちてうまくいかない、こういうふうないわゆる不況型の倒産がふえてまいったわけでございます。  ことしに入りまして、その後一服状態になりまして、一月、二月と八百件台に推移をいたしました。もっとも一月、二月は季節的に倒産が少なくなる月でございまして、例年の一、二月に比べますと、やはり相当の高水準と言えるかと存じます。三月が千二十三件でございまして、昨年の三月が千五十件でございましたから、昨年の三月よりもやや少ない。しかし、やはり千件というのは大台でございまして、また高水準に戻った、こういう感じがいたしておったわけでございます。四月につきましてはまだ発表になっておりませんが、大体千件を割る見通しでございまして、そういう意味では、相当この総需要抑制が長引きました割りには、ことしに入りましてからは倒産はやや落ちつきぎみに推移しておるというのが現状かと思います。
  112. 中村重光

    ○中村(重)委員 この不況対策として、中小企業庁の方でも、民間金融機関に対する融資の要請あるいは政府関係金融機関に対する不況対策融資ということをやっていらっしゃるのだけれども、窓口で、特に倒産防止のために特別の融資のやり方と申しますか、そういった配慮というものがなされておるということを具体的に把握しておられますか。
  113. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 政府系の融資の特に追加等をいたします場合には、不況色の強い業種中心に追加した融資分の配分をいたしておりますが、その場合でも特にある業種のある地区が非常に悪い、いまのままだと倒産が出そうだというような場合には、そういった業種のそういった地域をねらい撃ちにして融資の増枠を図る、こういうことは実際にはいろいろ配慮いたしておるところでございます。また、親事業者が倒産をして相当下請に影響が出そうだというようなことで、その倒産を防止しなければならないというようなケースが内々に話が出ました場合には、直ちに日本銀行それから取引銀行等と相談をしまして、極力倒産しないで済むように各種の金融面の手配を実際上はいたしております。ただ、これは信用の問題でございますので、倒産しそうだ、政府がいろいろ手を打っておるというのが表に出ますとまた非常に混乱を来しますので、表に出ない形で実際上は各種の倒産の危険のあるような企業につきまして、倒産しないうちに救済的な資金を流すということは適時適切に実行いたしておる次第でございます。
  114. 中村重光

    ○中村(重)委員 私はあえておざなり対策だということは言わないのだけれども、いまあなたがお触れになった親企業が不況に入ると下請企業に対するしわ寄せをやるわけですね。検収期間をぐっと引き延ばして、あるいは下請代金の支払いを現金から手形へ、またその手形の長期化へという形で、そうしたことはいつも繰り返されてきている。ところが、不況になって不況対策ということをやらなければならぬというので、中小企業庁が必死になって民間金融機関に対して何とかひとつ融資に協力してほしい、あるいは政府関係機関に対する融資をやるという、そうしたことは親企業の方でもよくわかっているのだ。ところが、親企業の方では、特に不況になって下請企業を倒産させてはならないということで特別な配慮をしておるというようには考えられない。むしろ下請企業に対して政府が不況対策をやる、それを巧みに利用して、その上に乗っかって大企業だけは安全を図っていくというようなことが事実上行われているのではないか。したがって、中小企業に対する不況対策は即親企業に対する不況対策という形になっているというような感じがしてならない。むしろその金利を払わないだけ親企業は得だというような、絶えず好不況の安全弁という形に下請企業というものを利用している。私はこれじゃいけないと思うのです。親企業の方から、何といっても力があるわけだから、そこから中小企業、下請企業の倒産が行われないようにきめ細かい配慮というものがなされるように、中小企業庁としてもまた政府全体、大蔵省を通じてやらせることもあるだろうし、それが本来のたてまえじゃないかというような気がするのだけれども、あなたの方はどうお考えになりますか。また、考え方だけではだめなので、当然そういうことが実行されなければならないのだから、具体的にどうやっているのか、そしてその成果、実効というものはどうなっておるというように把握をされておられるのか伺ってみたい。
  115. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 親事業者が自分で資金繰りの余裕があるにかかわらず、下請をクッションに使いまして支払いを悪くするというようなことは少ないと思いますが、親事業者自体も相当長引く不況の中でやはり金融面の円滑化を欠くような事態がいろいろ出てまいっているわけでございます。そういうことで、下請の払いもたとえば現金であったものがだんだん手形の比率がふえてくるとか、あるいは手形のサイトが長くなる、心ならずもと申しますか、そういうケースがふえておるのだろうと私ども理解をいたしておりますが、親事業者側にも十分下請のことを考えてもらいたいというふうには常々考えておりまして、昨年の暮れにも、それからこの三月にも上場会社千二百社につきまして直接社長あてに大臣名あるいは長官名をもちまして、下請への条件を悪化させないように注意を喚起いたしておるわけでございます。特にそういったところで私ども要請いたしておりますのは、まず支払い条件についてそれを悪くするというようなことについては一方的にやらないで、十分下請側と協議をして納得ずくでやってほしいということが一つでございます。それから、発注を減らす場合には相当早めに予告をしてほしい、それから仕事を減らす減らし方としまして、親事業者自体の減産率以上に下請向けの仕事の発注を減らさないように、親が減る分を下請に同じ率減らすのはある程度やむを得ない面もあるであろうかと思いますが、それ以上に下請への発注を減らすというようなことをしないように、それから仕事を減らした場合にはその下請側の資金繰りについていろいろ援助をするように、こういうふうなことを文書をもちまして親事業者側に要請をいたしておるわけでございます。しかしながら、こういった不況が長引きますと、なかなか親事業者資金繰りも困難になってまいりますし、特に九州地方等は昨年の前半はまだ余り不況の浸透が見られませんでしたけれども、後半に鉄鋼業の輸出が悪くなりましてからだんだん鉄鋼業自体が不況になってきた、それから造船業が、最近の世界的な貿易の不振を反映いたしまして荷動きが少なくなりまして、あるいは原油の輸入等もみな節約をいたしておりますので、タンカーの動きも少ない、こういうことで新規の受注がほとんどない、とぎれておるというような状態になってまいっております。そのために現在の受注分を食いつないで仕事のスピードをダウンしておる状況でございますが、一方すでに注文した分についてもいろいろキャンセルなり船の種類の変更等の注文が相次いでおる、こういう状況で九州地区では特に去年の後半からことしにかけまして景気情勢が非常に不振になってまいっておるように見受けるわけでございます。そういう場合に、もちろん親事業者にも極力支払い条件を悪化させないように要望はしておりますけれども、そういった客観情勢でございますと、なかなか親事業者自体も苦しいという状況になりますと、そういう要請ばかりでも片づかない面もございますので、そういう場合にはその下請向けに早めに資金を流すように、親事業者の手形がふえた分に見合う分だけは、中小企業者の方に融資枠を拡大する、こういうふうなことで対処をいたしておるわけでございます。しかし、決して下請を景気のバッファーと申しますか、クッションに使う、自分の、親事業者だけの都合でするというようなことのないように、十分親事業者にも警告をしてまいりたいと考えております。
  116. 中村重光

    ○中村(重)委員 不況になったから親企業が下請に仕事をやることを手控える、仕事はあるけれども手控えるということは、私はそうないだろうと思います。しかし、親企業は受注が減った、その場合にまず自分のところの直接の労働者というものはそう簡単に解雇するわけにはまいらぬ。また採用するということになれば大変なんです。そこで、残業打ち切りとかあるいは一時帰休といったようなことは、これは全般的なことになるでしょうが、最低限度自分のところの直接雇用している労働者というものは解雇しないで耐えていくというやり方をやっている。しかし、下請にはそうはいかない。それだけの義務感というものがない。いまあなたは親企業自身の仕事がなくなって、下請に対して仕事を出さないというのはいたし方ないけれどもと、こう言う。しかし、そう簡単に扱ってはいけない。  きのうも松尾委員が長崎の三菱造船の例を引いて大臣の見解を尋ねておりましたが、私も具体的にまた大臣に聞いてみたいと思っているのですけれども、長崎の場合は親企業といったら三菱造船だけなんです。     〔塩川委員長代理退席、委員長着席〕 ほかにそれらしい親企業はありませんよ。それに恐らく八〇%から九〇%あるいは一〇〇%依存しているという下請企業が多いわけです。そうすると、親企業から不況になって仕事がなくなったからと言われたら、下請企業はどうするのか。これは自分のところの労働者を即首を切ってしまわなければならぬということ以外に、下請企業は手がないわけですね。生きていけないわけなんだ。それだから、親企業に仕事がなくなったから、したがって下請企業の仕事をカットすることはやむを得ないというような、そう簡単にやはり片づけられないものがあると私は思う。親企業は受注というものが大体減ってくるというようなことで、一つの計画みたいなものを立てていく。しかし、下請には親企業は簡単にカットしてしまうのですよ。計画も前もって知らせてもくれない。おまえの方に対するところの発注は今度はないからということですぱっと打ち切ってしまう。バンザイです。だから、そういったような場合にどうするのかというのです。直接労働者に対する残業カットといったようなこと等によって親企業が生き伸びていくように、下請企業にも何らかの形で生き伸びていくようなことを、そういうこともひとつ親企業も考えていかなければならぬ義務があるのじゃないかという感じが私はいたします。そういったような指導はどうしておるのかということが一つ。  ともかく下請企業がこういう状態に追い込まれたら、下請企業が倒れないような対策を講じていかなければならぬ。融資という道もそれは考えなければならない。ところが、融資は、あなたの方としてはそういう倒産をしないための不況対策としての融資をしていかなければならないということで考えているのだろうけれども、第一線の窓口になってくると、これは独立採算なんだから返還可能でないとなかなか融資してくれないのですよ。そうすると、これは歯どめにならないですね。だから、歯どめをするための対策というものを融資の問題についても考えていかなければならない。同時に、生き伸びていかせるためには仕事を探してやらなければいけないのです。そういう具体的なことをあなたの方でおやりになったことがあるのかどうか、そこらあたりもひとつ聞かしてもらわなければならぬ。いかがですか。
  117. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 親事業者の仕事が減りました場合に、下請との間に紛争等が起こりました場合は、下請企業振興協会というのが各県にございますが、そこが苦情処理的なことはいろいろいたしておるわけでございます。そのほか私どもの通産局に指導官というものを設けておりまして、そういったもろもろの御相談に乗るようにいたしておりまして、親企業から急激に仕事を減らされたといったような苦情等につきましても、内容によりましては親事業者にかけ合うとか、さらに振興協会を通じましてほかの仕事をあっせんするとかいうことをやっておるわけでございます。  それから、融資につきましては、特に仕事の減った下請の集団の多いような地区に優先的に資金を回しまして融資を行いますと同時に、過去の返済の猶予等も弾力的に窓口で扱うように指示をいたしております。  そのほか、御承知のように不況業種の指定制度というものがございますので、不況業種は積極的に指定を図りまして、信用保証の面で従来の倍額まで保証を受けられるというこの不況業種制度を活用いたしておるわけであります。現在、製造業の約半分に当たる事業所に相当する業種がこの不況業種の指定を終わっております。造船業は従来は好況でございましたので、たしかまだ不況業種の指定に至っていないかと思いますが、この点先日も大臣から御答弁申し上げましたように、至急に運輸省と相談をいたしまして、造船業についてそういった対策を講ずるかどうか検討いたしたいと考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、親事業者がどんどん勝手に仕事を減らすということは非常に困るわけでございまして、理由のないカットは、いろいろ苦情を訴えられればその内容を伺いまして、適当なあっせんを通産局等がするにやぶさかでないつもりでございますが、問題はやはり景気がこういうふうに沈滞して長引いておりますと総体として仕事が減っておりまして、大企業の場合も二、三割の減産率になっておるわけでございます。したがいまして、早くこの景気を回復させて通常の生産状態に戻らせるということが何より基本的な対策であろうと考えまして、先般来第一次、第二次といった不況対策の決定を見たわけでございますけれども、さらに今後の情勢を見まして必要に応じて第三次の不況対策を検討いたしたい、かように考えましていまいろいろ実情を調査いたしておるところでございます。
  118. 中村重光

    ○中村(重)委員 下請振興協会が、受注に対していろんな情報収集をやったりあるいは行動をやったりしていることは承知しているのですが、これは別に不況対策という形でやっているのではない。当然のこととして、一つの業務ということで絶えずやらなければならないことだからやっているのです。しかし、大して成果は上がっていないですね。だから、この成果が上がるようにもっと督励される必要がある。  それからもう一点、融資の問題について、こうした不況の際に不況対策としてあなたの方で融資をしているというのは主として個別企業中心になっているのだけれども、親企業と下請企業関係は、やはり協同組合に対する別枠の赤字融資といったようなことを考える必要があるのじゃないか。親企業もこれに参加をして——ちょうど大臣がいいときに入ってきたのだけれども、きのう松尾委員が具体的な事例として長崎の三菱造船の例を引いて、仕事がなくて下請はバンザイしているのだ、全くそのとおりでして、あなたが御承知のとおり親企業ということになってくると長崎の場合は三菱以外ないのですよ。同じ三菱系統の製鋼所というものは、自分が生きることにどうにもならぬでほとんど倒産状態のようなことになって、新しい会社に移行するというような状態にある。ただ三菱電機と三菱造船、主として三菱造船だけだ。そうすると、それ以外に発注してくれる何ものもないのですね。これに対してどうするのかということで、運輸省ともよく相談をしてやりたいということを言っておられたのだけれども、何を相談するんだろうかと私は思っておったのだが、いま長官から言われた不況業種に指定されていないようだから指定といったことを運輸省と話をしていかなければならないという意味で実はお答えになったんだろうと思うのですけれども、それはそれとしてやってもらわなければならないし、またきのうあなたがお答えになったことについて、具体的に考え方をお示しいただければ結構だと思うのです。  いま質問しかけておったのは不況に対する融資の問題なんですけれども、それは協同組合を通じて個別企業に融資をするという場合、あるいは協同組合と関係なく個別企業に対して融資をするという場合もあると思うのですが、こういった不況のときは、個別企業に対する融資は融資としてやってもらわなければならない。しかしさらに、協同組合なら協同組合に対する赤字融資という形で融資をする。これは親企業が参加する、債務者に一緒になる、それでできるだけ金利負担なんというものは親企業がやるというぐらいの義務感というものを親企業が持っていなければいけないのじゃないかと私は思うのですね。直接自分のところの労働者に対しては、残業カットというようなこと等やれるだけのことはやるが、下請に対してはもう仮借なくぴたっと発注を打ち切ってしまう。すると、前ぶれなくカットされるものだから、下請企業はもう生きる道がないですね。バンザイしてしまう。金を貸してくれと言っても、なかなか償還の見通しがないということになってくると貸してもくれないといったような深刻な状態に追い込まれているんだから、こうした場合、ただ何百億かあるいは何千億か不況対策として政府関係金融機関に対してそれぞれ割り当てをするというようなおざなり的な対策ということではどうにもならないのではないかという感じがするのですね。やはりもっときめ細かい具体的な対策というものを講じていくということでなければ、私は下請企業中小企業というものは生きていくことはできないんだという感じがいたします。その点はどういうふうにお考えになりますか。
  119. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 長崎の事例についてお話しになりましたが、不況対策ももちろんやらなければなりませんが、やはり何といたしましても景気対策だと私は思うのです。不況対策といいましても、そう膨大な資金を長期にわたって投入するということも不可能でありますから、やはり一刻も早く経済活動を盛んにしていく、景気を回復させる、これが何よりの不況対策であるというふうに私は考えまして、先日来申し上げておりますように景気は底をついたと言いますけれども、やはり一年前に比べて平均二割程度の減産になっておりますし、長崎の造船の場合はいま御指摘のような事情でございます。そういうことでございますから、何と申しましても不況対策の第一というものは経済活動を盛んにするということが前提になると思うのでございますが、しかしこれには若干の時間もかかりますから、いま御指摘のように金融の面はもちろんでありますけれども、不況業種の指定とかその他いろいろな面でできるだけのことをしていく。幸い長崎の方は造船から陸上部門に大きくシェアを転換しようとしておりますし、またその力も持っておりますから、他ほど大きな打撃は受けないで済むのじゃないだろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても大変な事態であることは間違いありません。先ほど申し上げましたような金融を含むきめの細かい対策を個々に十分立てていきたいと思います。
  120. 中村重光

    ○中村(重)委員 融資のあり方として私が申し上げた——乱暴だとお考えになるかもしれないけれども、やはり協同組合等に対する赤字融資みたいなことをやって不況切り抜けをやらせるということも考えてみなければいけないのじゃないでしょうか。そして、親企業に対しても何らかそれに対する債務責任を負わせる。親企業は仕事が自分の方になくなったから、減ったから、下請企業に出せる仕事がないからやむを得ないんだといってぱっと簡単にカットしてしまうというようなことは、余りにもわがままだ、いわゆる義務感がないような感じがしてならないのですがね。自分が直接採用している労働者に対するところの最低限度の保障はしていかなければならない。やはり同じように、その親企業だけに依存している下請企業にはある種の義務的なものを親企業が持つ必要があるのじゃないか。親企業は下請企業に対していろいろなことを干渉しているのですからね。人事面まで干渉するとか、もう親企業が気に入らないようなことはやらせないというような、これは直接下請担当の課長とかなんとかいうのがある。それが会社自体の経営方針に反する専横なやり方をやっているのかもしれないけれども、私どもが承知する限り、実に理不尽だと感じられるようなことだってやっているのですよ。下請企業の重役構成にまで、あるいはそこに組織されている協同組合の役員構成にまで親企業が立ち入っていろいろと干渉しているという事実だってある。そういうことまでやる親企業であるならば、もう少し下請企業を生き延びさせるところの義務感というものを持っていく必要があると私は思う。だから、融資の問題等について私が申し上げたようなことも一つの方法だろうと私は思っているのですが、そこらはどうお考えになりますか。
  121. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 親企業と下請企業関係は、実情は非常にさまざまでございまして、非常に長期の契約を結んでいる場合と短期のスポット的な契約のものがございます。それから、その親企業に一辺倒で一〇〇%納品しているものもあれば、幾つかの親企業に分散して納品している場合もある。そういうようにいろいろまちまちでございます。したがいまして、親企業側は、自分のところに非常に納入率の高い、自分の方から見て非常に大切な下請につきましては、そういう場合にはいろいろめんどうを見ておるというケースが多いのじゃないかと思うわけでございます。  せんだっても、大手の建設業者が払いを大分手形払いに切りかえなければならぬ、ただその場合に、その手形が割れないと下請の人に悪いということで、下請をする中小建設業者のためにまず一定額の預金をいたしまして、それを引き当てにして下請をしておる中小建設業者の手形割引枠の拡大に使ってもらったというケースがございました。これはある意味では企業のモラルと申しますか、望ましい姿ではございますけれども、政府としてそれを強制するというのもなかなかむずかしい面もございます。しかし、結局共存共栄と申しますか、下請が繁栄して初めて親企業も必要な、精度のいい部品、資材が入ってくるわけでございますので、余り不況のときに下請を踏みつけにすることは、親企業自体将来長い目で見た場合自分のためにならぬことだと私は思うわけでございます。そういう意味では親事業者の責務であると同時に、私どもとしても極力下請の資金繰りを助けるように、親事業者が下請にかわって一遍銀行に預金をしてやるといったような式の援助をされるように指導をしてまいりたいとは考えております。
  122. 中村重光

    ○中村(重)委員 長官がいまお答えになったのは一般論としてはわかるのですよ。しかし、下請は親企業を選別できない。具体的に言えば長崎なんかの例の場合そうですよ、親企業は一あるいは二だから。その二の場合でも、同じような業種の二ならばその二のうちから選別するということにもなるけれども、親企業が全く業種が違っていると、下請に出す企業は二つあるけれどもその業種の面においては一つしかないということになるのですね。そうすると、下請企業は親企業を選別することができない。親企業は自由自在に下請を選別して、能力があっても、何か下請企業が親企業に気に入られなければ直ちに発注カットなんというようなことをやりますね。だから、いまあなたが言われたように、長い目で見ると下請をかわいがっておかなければ、親企業は後で自分が困ることになるのだというようにはなかなかいかないですね。だから、やはり多種多様であればあるように、あなたの方としてもきめ細かいそういう対策を講じていかれる必要があるだろうということを申し上げるのです。  それから、そういう受注が減ると、下請企業政府に向かって仕事をよこせ、何とかしてくれということを血の叫びとして訴えるのだけれども、それに対しては何か手がありますか。
  123. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 当面は融資の面で下請が困られないように資金の手当てということで、先ほど申し上げましたような政府系金融機関による資金のあっせん、それから不況業種の指定をいたしますと信用保証の倍額保証、それから民間金融機関からの中小企業救済特別融資制度が適用可能になってまいります。そういう面で、まず資金面で手当てをいたしておきまして、同時にいろいろ仕事の確保という意味で、一つは下請振興協会に新しい仕事を探していただいて、それをあっせんするということになりますけれども、現在のような状況で、特に一定の区域ではみな似たような状態であるという状況でございますと、新しい仕事のあっせんもなかなか実際は困難かと思います。そういう意味では、先ほど大臣もお答えを申し上げましたように、まず景気対策を急いで行いまして、公共事業をふやすとか住宅建築を促進するとかあるいは民間の設備投資を促進する、こういうことを図りまして受注量の拡大を図るということが何よりかと考えるわけでございます。
  124. 中村重光

    ○中村(重)委員 仕事をよこせといったような場合、私企業であるから、政府が手を打つと言っても官公需の受注以外にはなかなかそういかないだろう。しかし、いかないということで簡単に片づけるわけにもいくまい。だから、先ほど来あなたがお答えになりますように、下請振興協会というようなものの組織をもっと強化していかれる必要がある。そして、その組織は、大臣、これは大事な問題ですからお聞きをいただきたいのですが、その下請振興協会はブロック組織、たとえば九州なら九州ブロックあるいは全国ブロックといったようなことについて十分に情報を交換し、それぞれの下請の特性も生かしていくというような受注体制等々をやはりおやりにならなければならない。いまそういう強力な体制に下請振興協会がなっていないということです。一人かそこらの職員がおって九州なら九州で、長崎から熊本であるとか福岡に一年に一回か二回出張して、そして連絡をするといったような程度にすぎないですね。その他、文書でやっているということです。その程度の下請振興協会のあり方では、いまあなたが、下請振興協会というものがあって、そこで受注をさせるように努力をしているんだというようなことをお答えになっても、私どものように実態を知っている者にとってはそれは納得できるような答弁ではないですね。しかし、あなたが下請振興協会に対してそれほど期待を持っておられるならば、それが実効の上がるような機関になるようにお育てになっていく必要があるということを私は提言をいたしておきたいと思います。  それから、この倒産の推移というのを、私もいまあなたがお答えになったと同じような数字を帝国興信所が出しているので承知をするわけですが、政府はこの興信所によって倒産の状況を知る以外には、政府独自で調査をやっていないのですか。このことについては、もう少し政府で権威ある調査をやって、そして対策を講ずる必要もあるのじゃないかということをもう何十年という間言っているんだけれども、依然として民間の調査機関から情報を受ける以外に手がないように思われるのです。  それから、これは負債額一千万円以上であって、負債額一千万円以下ということについての調査はこの民間の調査機関も何らやっていないし、政府自身もやっていない。これは私は少し不見識のような感じがしてならないのだけれども、もう少し責任のあるような調査体制によって調査をやる、そして具体的な対策を講ずる必要があるんじゃないかという感じがいたしますが、いかがですか。
  125. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 倒産状況につきましては、いま先生お話しの帝国興信所、それからもう一つ東京商工リサーチというところがございまして、この二つがいま日本では一番権威のある統計調査ということになっておりまして、一応政府としては、各省とも実はこの倒産調査を利用しておる次第でございます。ただそのほかに、たとえば国民金融公庫が、あれは相当小口の貸し付けでございますので件数も多うございますが、それの貸付先の倒産調査というようなものはやっております。大体似たような傾向が出ておるように思います。  それから、公に発表されておりますのは負債額一千万以上の倒産でございますけれども、それ以下の小口の倒産につきましては、別途中小企業庁から東京商工リサーチに資金を出しまして調査を委託いたしまして、小口の倒産調査を昨年から実施をいたしております。で、当面東京、大阪、広島の地域の調査統計が出ておりますが、さらにこれを全国に広げてやるべく、そっちの全国調査も最近依頼をしたところでございます。  それで、東京と大阪と広島の状況で見てみますと、たとえば東京の場合には、一千万以下の小口の倒産は昭和四十八年が五千件でございましたが、四十九年は五千九百件というように約二割増でございまして、負債額一千万以上のケースの場合よりも増加率としては少ないような統計結果が出てまいっております。大阪、広島の場合には、横ばいないしむしろ減っておるというような数字でございまして、小口倒産で見ますと、大口の場合よりも増加率は少ないという結果で、これは最近の現状から見ますとどうも実感と違うような感じがしないでもないのですが、そういうふうな状況でございまして、一応東京、大阪、広島につきまして一千万以下の小口の調査も、依頼してではございますけれども、東京商工リサーチに調査してもらっておるところでございます。
  126. 中村重光

    ○中村(重)委員 この民間の調査機関には国から助成か何かやっているんですか。この経営はどういうことで成り立っているんですか。
  127. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 いまの一千万以下の調査につきましては、予算から調査委託費を出して調査してもらっておりますが、一千万以上の調査につきましては、この商工リサーチが独自の自分の仕事として、国の補助なしにやっている仕事でございます。
  128. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は国の補助を出しなさいと、そう軽率に、内容を少しも検討しないまま言うような無責任なことは言えないのですけれども、国の助成もない調査機関、その調査機関が発行するいわゆる調査資料をもとにして、国会なんかで年間一万何千件倒産いたしております。負債額はこれだけでございますという答弁をするというようなことはいかがなものであろうか。やはり倒産というものによって不況対策なんかを講じられるということが重要な国策である以上は、調査というものにもう少し国が本当に責任が持てる、堂々と国会において責任を持って答弁できる、そしてまたそうした施策も講じ得るという体制をおつくりになる必要があるのじゃないかという感じが私はいたしますがね。そうしなければ、何か書いている雑誌か何か読んで、これはこうでございますということで答弁することと変わらないのじゃないか。決してこの民間の調査機関がおやりになっていることの信憑性を疑う意味で言っているのではないのです。しかし、少なくとも国が不況対策ということで施策を講じられる基本とは言いませんけれども、重要な資料であることには間違いない。ならば、もう少しこの点については国としてもお考えになる必要があるのじゃないかというふうに感じますが、大臣いかがでございましょう、お聞きになって。
  129. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 その点は私も同感であります。何らか国が直接調査をいたしまして、責件ある数字が出るようにしたいと思います。
  130. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは、近促法の御提案の内容について少しお尋ねをしたいのですが、近代化をするということに私はあえて反対するものではございません。ですけれども、近促法というのは、日本の経済を高度経済成長の方向へ持っていくということの必要性から、中小企業近代化を促進していこうというようなことでこの施策が生まれてきたということを私は承知をいたしているわけですが、今日の低成長時代における近代化政策というものはどうあるべきか、高度経済成長政策を志向する場合における近代化政策と、低成長時代、それにおけるところの近代化政策というものは当然異なってこなければならないという感じが私はいたします。その点がこの施策の面においてどう反映しているのか、その点に対してのお答えを聞かせていただきたい。
  131. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 高度成長時代におきます近代化政策の柱をなしておりましたのは、いわゆる規模の利益の追求ということでございました。中小企業中小企業なりに経営規模の拡大、生産規模の拡大ということを追求しまして、新鋭設備を導入する、それによりまして生産性の向上を図り、大企業との格差を是正していく、こういうことが高度成長時代近代化政策の柱をなしておったように考えるわけでございます。しかし、これから安定成長時代に入ります場合に、世上言われておりますように量よりも質の時代にこれから入ってこようかと存じます。そういたしますと、従来のように量産量産で生産性を向上し、コストを下げるということよりも、さらにもっと大事なことは、より高級な商品、より高度化された商品、サービス、そういった加工度の高い商品を生み出すような工夫がこれからは大切ではなかろうか、こういうふうに考えられるわけでございまして、そのために今後の近代化施策におきましては、技術研究の実施によります新しい技術なり新商品開発というところに特にウエートを置いてまいりたいと考えるわけでございます。  それからもう一つは、最近の発展途上国追い上げですとか、その他もろもろの事情によりまして停滞してまいった産業につきましては、この際そういう業種を指定いたしまして、その業種に属します企業のグループで新しい商品開発してそっちの方に仕事を移していきたい、こういうものにつきまして国の助成を与えて、そういう停滞産業から他の成長性のある産業に移り変わっていく、こういうことを促進する必要があろうと考えまして、新分野進出促進業種制度、こういうものを設けることにいたしたわけでございます。  それともう一つは、今後日本経済は非常に福祉型経済に変わっていくかと存じます。その場合に、中小企業に課せられました課題は、一つは多様化する国民の新しい需要にこたえることが一つ、それからもう一つは、中小企業社会的責任としても、公害の防止でございますとか、あるいは資源エネルギーの節約、こういった問題に対処していかなければならない。そういう意味合いにおきまして、国民生活安定向上のために必要な業種対象業種として追加指定できるように指定要件の拡大を図りまして、そういった業種近代化を図りたい、こういった点が安定成長時代中小企業近代化の行き方だと考えまして、そういうものを改正法案の中に盛り込んだ次第でございます。
  132. 中村重光

    ○中村(重)委員 お答えになった考え方は私も同感です。規模の利益の追求ということは私は必ずしも成功したとは考えてない。また、低成長と申しますか、安定成長時代に入る今日においては、従来の考え方というものは改める必要がある。そのことに対してあなたがそういうことをお答えになったわけですから、これは率直に受けとめたいと私は思います。ところが、今回の改正案というものが、いまあなたがお答えになったような安定成長時代に沿った改正案ということになるのかどうか。それは異業種間の構造改善というものが必ずしもいまお答えになったようなことに直接結びつくということにならないのではないか、逆に規模の拡大というような方向に結びついていくような感じがしてはならないのですが、その点いかがですか。
  133. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 従来の構造改善計画は同業者の横の横断的な構造改善計画でございまして、たとえば廃プラスチックの再生処理業といったようなものを資源の活用と環境の浄化という両面から仮に今後育成をすると考えました場合に、その廃棄物のプラスチックの処理業者は、プラスチックを溶かして再生処理する機械の製造能力までは自分では持っていないわけでございます。これはどうしても機械業界でそういった機器類を製作してもらわなければならない。それから、できました新しいプラスチック類を流通部門で販売する組織も必要でございます。それから、廃プラスチックを各家庭から集荷してくるような業者も必要でございます。そういう意味合いにおきまして、従来横の同業者だけでは片づかなかった問題もより効果的に片づけられるように、原材料の供給部門あるいはその使っておる機器類製造部門あるいは輸送保管部門、流通部門、こういう方々と一緒になりまして構造改善を図って、特にいまの新商品開発でございますとかいったような面についてはこういった部門が参画をして、いまの需要者は何を望んでおるかというようなことを考える場合には流通部門が一緒に入りました方が新商品開発も進みやすい、こういう面もありまして、関連部門ぐるみの構造改善という制度を新たに開いたわけでございまして、これは構造改善をより効果的にするために、従来の経験に照らしまして特に知識集約化的な構造改善を進める場合には非常に有効なものではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  134. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまお答えの方向にこれから進められていかなければならない。しかし、現実はなかなか厳しい。そうお考えになるようになかなかいかないわけだから、単にこういうことが望ましいから、そういうことで法律案を提案するのだということではなくて、せっかくそういう施策を講じられるならば、それが現実のものになるように十分配慮していかれる必要があるということを申し上げておきたいと思うのです。政府反省としてお考えおきをいただかなければならないことは、日本ほど中小企業に対する無数の法律を持っている国はどこにもない。しかし、日本ほどまたそうした中小企業法律というものが働いていない国もないのじゃないか。だから、その点は十分反省されて、せっかくおつくりになった法律が有効に働くということについて対処してもらいたいということを申し上げておきたいと思います。  それから、近代化地域性というものをやはり生かしていくということでなければならないと思います。政府中小企業対策というものは余りにも画一的である。それから、同一業種中心とした近代化政策というものに偏っておるという感じがしてなりません。そのことは、中小企業ぐらい地方自治体と全く無関係で行われているというようなものはないのじゃないかというような感じがいたします。地域性を生かすということは、即地方公共団体というものが一体となって中小企業政策を進めていくということになるわけであります。その点は同僚委員からもいろいろと提言もあったわけでありますが、政府も反対ではないようでありますから、この後具体的にそれらの点を生かしてもらいたいというように思います。  次に、近代化対策というものと密接な関係を持つものといたしまして、特別高度化資金という制度が生まれましたね。この実績がどうなっているのか、うまく活用されているのかどうか、問題点はどこにあるのか、これは都道府県別の実績とあわせてひとつお答えをいただきたいと思う。
  135. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 一般高度化が、金利を取りまして共同事業をするものに国と府県から共同で府県を窓口といたしまして融資をいたしておるのに対しまして、特別高度化の場合には、所要資金の大体八割を無利子で貸し付けておる制度でございます。これは公害防止の機器を中小企業者が共同でつくる場合でございますとか、業者が転換をする場合、古い設備を廃棄するために、残った組合の方々が買い上げて廃棄をする、その資金を無利子で貸し付けておるといったような制度でございますが、昭和四十九年度の実績で申し上げますと、貸付額の総額が七十三億五千二百万円でございます。これは四十九年度の年度当初の予定が百五億でございましたので、実績が予定を大分下回っております。下回っております理由は、無利子で貸し付ける制度でもございますのでいろいろと条件がついておるわけでございまして、その条件を満たすことにつきましていろいろ適合できないといったようなケースもございまして実績が下回っておりますけれども、こういった点は運用の結果を見まして逐次改善を図りまして、予算がフルに消化されるように今後努力してまいりたいというふうに考えております。
  136. 中村重光

    ○中村(重)委員 あなたがお答えになったような点も全くないとは私は言わない。ところが、実態はそこにあるのではないのです。八割を無利子ということになってまいりますと、これは条件がそれぞれつくということは当然なことだろうと思うのですね。その八割の調達をどうするのだということになってくると、国が四〇%、都道府県が四〇%ということになりますね。その四〇%を都道府県ではなかなか負担できないということですよ。それで、この予算よりも実績が下回ったという結果が生まれてきているということです。実績はそうなっているのだけれども、希望がないのかというと、一般高度化資金というのは二・六%ですね。ところが、こっちは八割で無利子。一般高度化資金の方は六五%、自己資金がその三五%ということになる。はるかにこちらがいいですね。ところが、特別高度化資金の場合は、アーケードであるとか街路灯であるとか駐車場であるとか、あるいは公害施設であるとかというものに大体限っている。それにしても用途は非常に多いのですよ。最近はデパートとか大型スーパーが進出をしていく。これに対抗していくためにはやはり商店街というものが近代化していかなければならない。だから、アーケードにしなければならないとか、あるいは設備改善をやらなければならないとかということで、非常にそういう面からの希望が多いです。そして、県の方に申し入れをするわけですね。ところが、県は四〇%負担しなければならないものだから、なかなか受け入れない。特別高度化資金ではだめだから一般高度化資金を使ってくれというので、せっかく特別高度化資金を条件がいいから借りたいと思ってもそれを受け入れてくれないというのが実態であるわけです。これがその実績を下回っているポイントなんだから、これをどう改善するかということが重要な点になってくるであろう。だから、四〇%の都道府県に対するところの負担を三〇%に直すとか、あるいはまた別の方法で特別の起債を発行して都道府県に力を与えていくとか、いろいろなことをお考えにならなければ、せっかくのいい制度が生きて働かないということになっているわけだから、この点はどう改めていくかということについて、もう三年もたっているわけだから、いろいろお考えおきもあろうから、その点についてひとつお答えをいただきたい。
  137. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 従来、特別高度化資金の大原則といたしまして、無利子の金、つまり出資金は国と県が同額を出すというのが非常に大きな原則になっておるわけでございます。八割を無利子といたしますと、結局国が利子のつかない金を四割出しまして、県が利子のつかない金を四割出す。こういうことになりまして、国は六割無利子の金を出して、県が二割出す、こういうことはなかなかむずかしいわけでございます。やり方といたしましては、国が六割、県が二割とかいうふうに国の負担を引き上げまして、その場合に、無利子の金は県が出したと同じ割合にして、残りの国の分を財政投融資の資金を投入する、こういうことをいたしますれば国の負担割合を相当ふやすことは可能かと私は考えるわけでございますが、その場合には、財政投融資分につきまして金利がつきますので、結局総体として無利子の線が崩れまして、たとえば二・何%という現在やっております一般高度化の方は、無利子の金を県と国がそれぞれ二三%ずつ出まして、残りは財政投融資の資金が出ておるわけでございますが、そういうふうな案を考えれば、つまり若干金利を取るという考えをとれば、県の負担をずっと軽くするということは可能かと思います。ただ、これはまた現在無利子でやっておるものを利子を取るというふうに変えますことは、政策として後退したという面もございまして、なかなか解決のむずかしい問題であるわけでございます。  実は県に起債を認めることによりまして県のそういった出資をする資金の調達源を考えようというふうに思いまして、昨年から起債を自治省にお願いしまして認めていただいたのでございますが、これは結局起債にも利子はつきますので、利子が取れる一般高度化分にこの起債分は充当する、無利子融資の分には起債は充当しない、こういうたてまえになっておりますが、昨年一年間で約百億、九十四億起債が認められておりまして、こういうことで一般高度化分の県の負担分につきまして起債ができるということは、結局ほかの資金が浮きまして無利子分に回す分が幾らか楽になった、こういうことが結果としては生まれておるのではないかと考えるわけでございまして、今後は極力この起債枠の拡大を図るということを中心に進めてまいりたいというふうに考えております。
  138. 中村重光

    ○中村(重)委員 その八割を国が六割、地方が二割というわけにはまいらない、そう簡単に片づけてしまったのではしようがないのですが、地方に対しては負担をもっと軽くしなければならぬ。これは起債といったって地方自治体が利子は払うわけですからね。しかも、その起債たるや縁故債だったでしょう。だから、利子はなお大きいわけですね。だから、あの際地方自治体が要求したのは縁故債じゃなかったわけだ。それはあなたが御承知のとおりです。だから、国がもう少し起債の面においても責任を持って、八〇%を、地方自治体に四〇%負担させているのだが、その四〇%が地方自治体の財政上の関係から負担できないのだ、そのことをお考えになるならば、もう少しあなたの方ではこういう制度をつくったということに対する責任をお感じになって、もっと国としての助成策ということを考えていかなければ、ただ起債枠を拡大していくのだ、その起債も、これは申し上げたように縁故債なのだから、それだけほかの事業にしわ寄せされてくるということにもなるわけだから、そう簡単に起債枠を拡大していくように努めてまいりますというようなことで片づけられる問題じゃないということです。だから、この制度をつくって初めからその問題にぶつかって、二年目には縁故債によって切り抜ける以外にはないというような、こういう不見識なことじゃ話にならぬじゃありませんか。せっかくつくった制度なんだから、大蔵省が抵抗を示していることは私も承知しているわけだから、もっと大蔵省に、あなたの力だけで及ばないならば大臣に先頭に立っていただいて——せっかくつくったいい制度なんだ。政府中小企業に対してこういうような制度をつくったのだということであなたの方は非常に強調された。そして、結果においてはせっかく喜んだ中小企業は、何だ、これはぬか喜びだったじゃないか、受け入れてくれぬじゃないかというようなことで、この点に対しては地方自治体、中小企業方々も大変失望しているのだから、中小企業に対する近代化法ということを盛んに強調する、近代化にとって重要な要素であるこのいい制度というものが生かされない、だからして起債を拡大していくのだというふうに、当初の計画の中で全く考えられていなかったようなものを声を大にしてそれを中心にやっていこうなんという考え方は、私は政府としては無責任だというように思います。もっと責任を持って、せっかくつくられた制度、近代化というものをもっと実情に即した対策を持って推進をしていかれる必要があるということを私は申し上げておきたいと思う。この点については大臣からお答えをいただきます。
  139. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 お話しの点はごもっともでございますから、十分その御趣旨を体しまして、それが実現するような方向で努力をしてまいります。
  140. 山村新治郎

    山村委員長 以上で本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  141. 山村新治郎

    山村委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  142. 山村新治郎

    山村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  143. 山村新治郎

    山村委員長 本案に対して、武藤嘉文君外三名より自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党四党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨の説明を求めます。佐野進君。
  144. 佐野進

    ○佐野(進)委員 附帯決議案につきまして、提出者を代表して私からその趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。   中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、現下の不況を克服し、小規模企業の保護育成を図りつつ、中小企業近代化を推進するため、特に次の諸点について適切な措置を講ずべきである。  一 中小企業の受注量確保を中心とする不況対策を一層拡充するとともに、長期的視野に立つて中小企業近代化の基盤を整備するため、中小企業の組織強化、経営指導情報提供、労働福祉の向上、小規模事業者対策の充実、金融・税制の改善等の諸対策の総合的な強化を図ること。  二 生活関連業種につき実態を把握の上、必要に応じ速みやかに指定業種とするよう努めること。  三 中小企業近代化対策の実施に当たつては、地方公共団体の意向をより一層反映させる等によつて地域の実態や業種の特性に応じた近代化を促進するよう配慮し、関連業種協調型構造改善についてもこの趣旨に沿つた運用を図り、特に関連業種の範囲等について弾力的な運用に努めること。  四 新分野進出計画制度を効果あらしめるため、進出促進業種に対する技術指導技術情報の提供等をきめ細かく行うとともに、進出した新分野における中小企業の成長発展が確保されるよう適切な施策を講ずること。 以上であります。  附帯決議案の各項目の内容につきましては、審査の過程及び案文によりまして御理解をいただけるものと存じますので、詳細の説明は省略させていただきます。  委員各位の御賛同をお願いいたします。  以上であります。
  145. 山村新治郎

    山村委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  146. 山村新治郎

    山村委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、附帯決議について政府から発言を求められておりますので、これを許します。河本通商産業大臣
  147. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ただいまの附帯決議の御趣旨を体しまして、行政に万遺漏ないように期していきたいと存じます。     —————————————
  148. 山村新治郎

    山村委員長 お諮りいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 山村新治郎

    山村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  150. 山村新治郎

    山村委員長 次回は、明後九日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十九分散会