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1975-04-15 第75回国会 衆議院 商工委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年四月十五日(火曜日)    午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 山村新治郎君    理事 塩川正十郎君 理事 田中 六助君    理事 萩原 幸雄君 理事 前田治一郎君    理事 武藤 嘉文君 理事 佐野  進君    理事 中村 重光君       天野 公義君    内田 常雄君       浦野 幸男君    小川 平二君       橋口  隆君    八田 貞義君       深谷 隆司君    森下 元晴君       山崎  拓君    板川 正吾君       勝澤 芳雄君    上坂  昇君       米原  昶君    近江巳記夫君       宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    熊田淳一郎君         通商産業政務次         官       渡部 恒三君         中小企業庁長官 斎藤 太一君         中小企業庁計画         部長      吉川 佐吉君         中小企業庁指導         部長      河村 捷郎君  委員外出席者         農林省畜産局牛         乳乳製品課長  鴻巣 健治君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 三月三十一日  官公需についての中小企業者の受注の確保に関  する法律の一部を改正する法律案神崎敏雄君  外一名提出衆法第二五号)  中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(  神崎敏雄君外一名提出衆法第二六号)  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第  三三号)(参議院送付)  大規模小売店舗における小売業事業活動の調  整に関する法律の一部を改正する法律案(須藤  五郎君外一名提出参法第一〇号)(予) 四月三日  合成洗剤製造販売使用禁止等に関する請  願(大橋敏雄紹介)(第二〇八一号) 同月九日  中小業者の経営安定に関する請願外二件(大柴  滋夫君紹介)(第二一〇八号)  合成洗剤製造販売使用禁止等に関する請  願(大橋敏雄紹介)(第二一〇九号)  中小企業事業分野確保する法律制定に関す  る請願藤井勝志紹介)(第二一九二号) 同月十四日  水力発電用施設周辺地域整備に関する請願(粟  山ひで紹介)(第二四九八号)  下請中小企業救済に関する請願粟山ひで君  紹介)(第二四九九号)  中小企業対策に関する請願福永一臣紹介)  (第二五〇〇号)  中小企業事業分野調整確保に関する請願(  福永一臣紹介)(第二五〇一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四五号)  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第  三三号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐野進君。
  3. 佐野進

    佐野(進)委員 中小企業近代化促進法改正について質疑をしてみたいと思うわけでありまするが、その前に、中小企業庁長官に現在の中小企業界の現況について概括的にひとつ報告を求めたいと思います。どういう状況になっているか、たびたび質問を続けてきておりますから、その後の情勢報告してください。
  4. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 一昨年の石油危機に端を発しまして物価の高騰がございまして、その物価抑制のために、御存じのように昨年来総需要抑制金融引き締めが行われておりまして、その結果、中小企業生産在庫出荷等状況は非常に不況色が濃厚でございまして、たとえば生産で申し上げますと、ことしの二月の生産は、指数で申しまして昭和四十五年を一〇〇といたしまして九八ぐらいまで下がっておりまして、ちょうど昭和四十五年ぐらいの水準まで後戻りしておる、こういう状況でございます。在庫も戦後最高水準に達しております。また、価格低落傾向も顕著でございまして、昨年の三月をピークといたしまして以後毎月下がってまいりまして、ことしの二月には前年同月の価格水準に比べましてマイナスの四%というように、この資材、人件費が高騰する中でその価格は前年同月の水準を下回る、こういった状況まで落ち込んでおるわけでございます。ただ、若干変化が見られますのは、在庫増加傾向か大体とまりまして、一部減少傾向が見られる点でございます。ただ、これも特定の業種に限られておりまして、全般的にはまだ在庫がふえる業種も相当あるわけでございます。総体として在庫指数か横ばいに転じてきた、こういった状況が見られます。  私どもとしましては、従来資金面でいろいろ手当てをいたしまして、金繰りがつかないためにまじめな中小企業が苦しみに遭う、こういうことのないように努力をしたわけでございますが、最近は金よりも仕事が欲しい、こういう中小企業の切実な声でございますし、一面物価が漸次鎮静化に向かっておる事態でもございますので、先般二月と三月に不況対策を決定いたしまして、政府財政支出等を中心に一面で需要の喚起を行っておる、こういう状況でございます。
  5. 佐野進

    佐野(進)委員 一般的に景気底入れをして在庫調整も進んでいる、したがって中小企業面においても明るさが見られつつある、いまこういうような御報告でありますか、しからばどういうような業種がどういうようなところからそういう変化が見られつつあるようになっているか、この点をひとつ具体的に御説明願いたいと思います。
  6. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 昨年の十一月、十二月ごろで在庫ピークに達しまして減り始めました業種といたしましては、繊維製品、それから自動車部品、それから製材木材製品、こういった業種でございます。ただ、こういった業種は、非常に早くから不況の色合いが濃くなりまして、早目操短と申しますか、生産を落としておりましたので、そういう関係在庫調整段階に入っておるかと思いますけれども操短率は相当高い水準にございますので、決して正常な姿に戻ったという状態ではなくて、無理をした操短の結果在庫が減り始めた、こういう状況でございまして、まだまだ正常な形に戻っておるという状態にはほど遠いというように考えます。
  7. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、いま挙げられたそれぞれの業種が、いわゆる在庫調整も進んでいる、こういうような形でありまするが、たとえば繊維のごとき場合におきましては、百億に及ぶ赤字を出している企業等も多く見受けられる、こういうような新聞報道等がなされておるわけであります。大企業がそういうような赤字を出しており、かつ繊維木材を取り扱う総合商社等においても、この部門における赤字は相当大幅になっているということをわれわれ聞いておるわけですが、そうすると、そういう大企業における赤字の部面が、中小企業においては底入れ感が出て、いわゆる上向きに在庫調整が進められつつある、こういうことになりますると、そういう一見矛盾する状態が大と中小との間に発生している、こういうぐあいにわれわれは見ざるを得ないわけでありまするけれども中小企業におけるそういう状況と大企業におけるそういう状況との、何といいますか問題のとらえ方の差というものは一体どういうところからそういう違いが出ているのか、この点ひとつ示していただきたいと思います。
  8. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 相対的に申しますと、今回の不況の影響は中小企業の方に大きいわけでございまして、たとえば生産で見ますと、中小企業と大企業を分けた生産統計をとっておりますが、中小企業の方が早くから生産が、減り始めまして、落ち込み中小企業の方が大きいのでございます。たとえば二月の中小企業の前年同月比はマイナス二〇%という生産水準でございますが、大企業の場合にはマイナス一七%でございまして、これは同じように在庫で見ましても価格低落状況で見ましても、たとえば価格の場合にも、中小企業の御売物価は、先ほどちょっと申しましたように、ことしの二月で前年同月を四%以上割り込んでおりますけれども、大企業の場合には、ことしの二月の卸売物価は前年同月比でまだ六%高い水準にございます。こういうふうに、大企業中小企業とを比較いたしますならば、中小企業の方が現在でもより苦しい状態にあるのではないかと考えます。  先ほど、一部の業種在庫調整といいますか、減少傾向が見られるというふうに申し上げましたけれども、これは業種の違いでございまして、特に中小企業の方が減少が激しい、こういう趣旨ではございません。
  9. 佐野進

    佐野(進)委員 私はきょうここで中小企業庁長官に対して景気論争をしようという考えはございません。近促法改正に必要な経済情勢についていま質問をしているわけでありまするが、問題は、景気底入れして上向いており、その上向きつつある状況の中で中小企業対策をいかになすべきかという認識と、いまだ底入れが終わっていない、いわゆる不況状態が進行しつつあるという情勢の中での中小企業対策ということでは、その認識のいかんによって対策の本質、内容が変わってこようと思うわけです。したがって、いま近促法改正しようとする全体的な情勢を私が分析する上に必要な質問をしておるわけであります。  そこで、これらの点については大臣質問をしてみたい、こう思っている問題でありますが、しかしいずれにせよ、今日の状況の中で中小企業界がなおかつ深刻な状況にあるということは、底入れが進みつつあるとか進みつつないとかいう問題を別にしても、相当程度そういうことについての認識はだれしも持っておると思うわけであります。したがって、その最高責任者である中小企業庁長官が、景気動向についてどうなのか、中小企業界動向についてどうなのかという質問に対して、いま大企業中小企業とを対比した形の中において、中小企業の方がより深刻だという答弁があったわけでありますけれども、前段のいわゆる底入れ感ないし繊維木材等々、当面最も落ち込みのひどいと言われている業種についての認識については、若干私ども認識と違うような気がするのでありますが、もう一度その点についてひとつ答弁を求めてみたいと思うわけです。
  10. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 繊維製材、それから自動車部品、そういった業種は、生産者製品在庫減少傾向に去年の暮れごろから転じておりますけれども、この業界は早くから生産水準を落としておりました関係で、出荷が非常に伸びておるわけじゃありませんけれども操短のおかげで在庫が若干減り始めた、こういう状態でございまして、生産水準そのものを見ますと、繊維製材も、生産指数で申しますと、昭和四十五年を一〇〇とした場合にまだ一〇〇を割っております。つまり繊維製材昭和四十五年の水準より低い、こういう状態でございまして、非常に無理をした在庫減少と申しますか、そういう状態でございまして、業界が好転しつつあるという状況では決してないと私も思います。
  11. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、そういうような情勢を踏まえながらいろいろな対策がとられておると思うのでありまするが、昨年来中小企業に対する緊急対策という問題については、いろいろな対策がとられておるわけでありますが、現在そのとられている措置についての成果欠陥と申しましょうか、欠陥というのは指摘しにくいと思うのでありますが、具体的に不況対策についてとられた重点対策、その重点対策の中におけるところの成果、こういうものはどの点にどの程度及んでおるかということについて御説明をいただきたいと思います。
  12. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 まず、とりました措置は、金融面対策でございます。四十九年度の政府系機関融資規模が約二兆円でございましたけれども、これは四十八年度に比べまして二〇%増の規模でございます。これに対しまして昨年の五月に千五百億の追加をいたし、九月に千億の追加をいたし、年末に七千億の追加をいたしました。また、先般三月に五百億の追加をいたしております。こういうことで、政府系金融機関をフルに動員をいたしまして、特に民間金融機関が貸し渋るような面につきましても極力弾力的に対処をいたしたわけでございます。それから、返済猶予等につきましても、個々の事業者の話を十分聞きまして、返済が困難と認められるものにつきましては、極力弾力的に対処するように指示をいたしておりまして、事実、相当返済猶予が行われております。  それからもう一つは、民間金融機関につきまして、政府系と同じような安い金利によります中小企業救済融資制度を設けまして、昨年の暮れまでに約千三百億の融資が実行されております。また、現在さらにそれに追加をいたしまして、七百億の融資を実行中でございます。  それからもう一つは、信用保険の面におきます不況業種指定制度でございます。この業種指定を行いますと、県の信用保証協会に行きまして、通常の場合の倍額まで信用保証が受けられることになっております。この業種を、昨年の六月以来ことしの春まで四次にわたりまして指定をいたしまして、現在大きな業種で申しまして約六十七業種、細目で申しますと二百数十業種指定になっております。大体製造業の半分の事業所に相当する業種指定済みでございます。サービス業等も入れますと、全業種の約二割について不況業種指定をいたしておりまして、この面からも民間金融機関から担保力の弱い中小企業資金を借りますについて非常に効果を上げておるのではないかと思います。  こういった金融措置の結果と申しますか、不況が非常に長い期間続いておりますけれども倒産件数がわりあい少ないと申しますか、特にことしに入りまして、一月、二月は八百件台に終始をいたしております。過去の好況期の正常時での月平均倒産件数が大体八百件でございますので、そういった時期に比較いたしまして、余り大ごとに至らないで倒産が少なくて済んでおりますのは、こういった金融措置成果ではないか、こういうふうに考える次第でございます。  ただ、それにいたしましても、不況が長引いてまいりますと、従来好況期に蓄えました中小企業の体力もだんだん限界に近づいてまいりますので、今度は金融面だけではなくて、いわゆる仕事を与えると申しますか、仕事をつくり出す、こういう面での対策が必要だと存じまして、一つ公共事業につきまして、四十九年度分はなるべく年度内に消化を図る、こういうことを二月に決めたわけでございますが、大体千五百億の四十九年度の第四・四半期公共事業の枠がございましたが、ほぼ九割は年度内契約を終わっております。つまり例年に比べますと、非常に新年度への繰り越しが少なかったわけでございます。  それから、五十年度につきましては、公共事業契約を極力早めようということで、大体六五ないし六六%ぐらいを上半期契約を終わろう、こういうことで、現在各省庁とも契約の準備を急いでおるところでございます。もし、この六五%ぐらいの契約が行われますと、前年の上期に比べますと、大体二二、三%増の契約高になろうかと存じます。  それから、この裏打ちになります地方公共団体資金につきましても、第四・四半期につきましては約千三百億の起債を追加で認めましたし、上半期につきましても所要の対策を講じたいというふうに考えておるわけであります。  それから、特にすそ野の広い産業として、景気対策として効果が大きいと考えられますのは、住宅関係工事でございます。これにつきましては、住宅金融公庫融資枠拡大につきまして、四十九年度は当初枠が十七万戸でございましたけれども、これに五万戸追加をして二十二万戸まで拡大をして融資が行われております。さらに、ことしに入りましてこの第四・四半期にさらに受け付けを再開いたしまして、これは一応五十年度枠の先食いという形でございますが、五万五千戸の受け付けを終わっておりまして、そのうち約三万戸分の融資が現在行われておるところであります。また、五十年度の住宅金融公庫融資につきましても、例年五月から受け付けるところを、ことしは一カ月早めまして今月から受け付けを行う、こういうことでございます。また、住宅ローンにつきまして、民間金融機関を督励いたしておりまして、昨年は大体融資増加額の中の一割以上を住宅ローンに振り向けるように、こういった指導大蔵省の方でやっていただいておりましたが、第四・四半期はこれが一二%くらいになっております。さらに、五十年度の第一・四半期につきましては一四%ぐらいを住宅ローンに回すように、こういった指導大蔵省でやっていただいておりまして、これによりまして住宅建設促進されるかと存じます。  また、社債発行につきましても、特に電力向け等社債発行を増額いたしまして、電力業者発電所建設工事なりあるいは送配電変電工事促進に努めております。  また、公害防止関係につきまして、約八百億ほどことしの第四・四半期に財投の追加をいたしまして、これによりまして開発銀行あるいは公害防止事業団等融資枠拡大を図って、そういった公害防止事業活発化という形で仕事をふやす、こういうことをやっておるわけでございます。  こういった各種のいわゆる仕事を起こすような施策を講じまして、中小企業への金融面でない、仕事がふえるということについての配慮をいたしておるところでございます。
  13. 佐野進

    佐野(進)委員 中小企業界が非常に困難な状況に置かれているとき、政府が積極的にこれに取り組みつつある、こういうことについては、私どもが多年にわたって中小企業政策重要性について訴え続けた、これは与野党を問わず訴え続けてきた成果であるということで、私どもも一応の評価をするにやぶさかでないわけでありますけれども、しかしそういうような問題を、いま長官説明されたように処理されておりながら、なおかつ十分でない面を数多く見ることができるわけであります。  そこで、そういう幾つかの問題点について質問をしてみたいと思うわけでありまするが、その一つは、倒産関連業種に対してどのような対策をとるのかという点であります。さらに、倒産関連業種ないし業者、そういうような業者に対する指導、単に倒産したから仕方がないのだということでなくして、具体的に指導をしていく必要があろうと思うのでありますが、そういう指導という面についてはどのような配慮をしておるのか、この際ひとつ説明をしていただきたいと思います。
  14. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 大口倒産等がございますと、そこに債権を持っております中小企業にいわゆる関連倒産ということが起こりまして、非常にまじめな中小企業者が大変な迷惑を受けるわけでございます。こういう場合にはやはり関連倒産を起こさないように、回収が困難になりましたような債権見合いと申しますか、つまり資金回収に穴があいて資金繰りが困難になった、こういう中小企業に優先的に必要な資金融資するということによりまして連鎖倒産を防止することが第一かと考えまして、従来から関連倒産保険制度がございます。これは大口倒産がございますと、その倒産した事業者指定いたしますと、その事業者債権を持っております中小企業者ということとで市町村長証明書を出しましたものにつきましては、信用保証倍額まで受けられる、こういう制度でござえます。この制度を活用いたしまして、この一年間ほどで約六十企業ぐらいの倒産業者をすでに指定いたしておりまして、それに債権を持っておる企業には、そういった倍額までの信用保証を通じまして必要な資金が流れるように努力をいたしております。また、そういったことで仕事がなくなったりした方の救済ということにつきましては、これは全般的に現在不況仕事が減っておりますのでなかなかむずかしい問題ではございますけれども、たとえば下請企業振興協会、こういうところが新しい仕事あっせん、お世話をする、こういうことによりまして、倒産事業者に物を納めておったようなところがほかの親事業者仕事をかわる、こういうことのあっせんを行っておるという実情でございます。
  15. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、全体的な中小企業対策についての質問をさらに続けていきたいと思うわけでありまするが、今日の中小企業界全体の置かれている立場は、そういうようなきめ細かな対策を求めているわけであります。したがって、そのきめ細かな対策に対応する行政上におけるところの処理というか、それが必要になってくるのではないかと思うわけでります。その行政上の指導とか処置とかいう問題は多岐にわたるわけでありまするから、これがまた、われわれが中小企業省をつくれと言うことに対して、各省庁間にわたる問題もあるから、中小企業省というものをつくってもその効果が上がるかどうかわからないという一つの反論の基礎になっているわけであります。しかし、それはいまきょうこの段階で議論すべき問題ではないと思いますので、省略をいたしたいと思うわけでありまするが、この際、農林省の方に来てもらっておりますので、ひとつ質問をしてみたいと思うわけであります。  これは中小企業問題全体というと果たしてなるのかどうかということについては疑問のある問題でありまするが、中小企業問題であることには間違いないわけであります。一つの具体的な例でありまするから、そういう点について農林省考え方、ひいてはそれに関連する中小企業庁考え方をこの際明らかにしておいていただきたいと思うわけであります。  この前、私も出席いたしたのでありまするが、いわゆる全国の牛乳販売業者危機突破大会というのが開催されまして、その大会において幾つかの問題点が議論されておるわけであります。中小企業、特に流通段階におけるところの企業者の数はいまきわめて多いわけでありまするが、流通段階における企業経営者としては、いわゆるマージンというか、そこで受け取られる適正な利潤によって生活を維持しているわけであります。したがって、その人々は、物の値段が一定段階に上がるということは、マージン受け取り額も多くなるという期待感とともに希望するわけでありまするけれども、この団体、いわゆる大衆に直接栄養源を供給する牛乳販売業者が、値上げ反対という措置に出ざるを得なかった。本来ならば、われわれ常識的に考えるならば、ある程度の値上げは賛成すべきにもかかわらず、値上げ反対という消費者のサイドに立った運動を強力に展開しているということは、もはや値上げという形の中において消費者にその物を供給することによってマージン一定利潤を得ることが不可能である、こういうようなせっぱ詰まった段階に追い込まれている血の叫びであると言っても言い過ぎでないような状況の発言を私ども聞いてきたわけでありまするが、農林省当局としては、こういう問題について、流通段階にある販売業者牛乳値上げ反対という声を上げている現状をどう認識し、どう対応せんとするのか、その見解をひとつこの際明らかにしていただきたいと思います。
  16. 鴻巣健治

    鴻巣説明員 お答え申し上げます。  先般、牛乳小売商の主催いたします会合が三月二十六日に東京でございまして、八項目についていろいろと要望があったわけでございます。その中で、先生の御指摘のは、牛乳値上げ反対に関する決議の部分だと思いますが、御承知のとおり昨年の七月に牛乳小売価額が、生産者から処理販売の過程を含めまして値上げが行われまして、二百cc当たり、つまり牛乳びん一本当たりでございますが、それまで四十円であったものが四十六円になったわけでございます。四十六円に昨年の七月になりましたが、その後、個人消費減退あるいは物価の増高等の中で、牛乳につきましては若干の需要減退というものが見られまして、その結果スーパー等ではかなり低い価格で売られるという事態が出てきたわけです。小売としても、お客さんを自分の方からスーパーに取られる、生活を脅かされるという点でいろいろ問題にしているわけです。  この問題については、そういう消費の減退、それから小売の経営のむずかしさというのが一方にある。他方でまた、生産者の方は生産者の方で、えさの価格が値上がりをしてきた、あるいは自分の家族労働の労働報酬を高めてもらいたいということから、値上げをしてもらいたいという感じのことを強く打ち上げておりまして、そして二月の末に、うんと引上げてくれ、大幅に上げてくれというような要求を乳業メーカーの方に提出をいたした次第でございます。  この問題は、乳業メーカーと生産者、それから乳業メーカーと小売との問題でございまして、実は政府としてはいままでのところは直接介入できない形になっております。と言いますのは、昭和四十二年に、御承知のとおり国民生活審議会消費者保護部会から、従来、それまでは農林省牛乳価格決定については行政指導をしてきたわけですけれども、それがかえって価格の引上げにつながるとか、あるいは独占禁止法違反の疑いがあるというようなことから、価格行政介入をすべきではないというような勧告を受けましたので、以来農林省としては飲用牛乳価格の決定には介入をいたしておりません。したがいまして、いまそういう意味では、当事者の自主的な交渉を見守るということになってくるわけでございますが、やはりこの問題のむずかしさは、一方ではそういう生産者の、酪農家でございますが、家族労働報酬を一般の国民と同じように、消費水準が上がるにつれて高めてもらいたいという要望、それから他方で、そういうものが製品価格に転嫁されるとこれはまたこれで消費の減退を来す、小売商の経営としてもますますむずかしくなるという、そういうなかなか矛盾したむずかしい問題の中でこれからどうするかということなのでございますが、そういう点のむずかしさを踏まえながら、両当事者の自主的な交渉を私たち農林省としては、当分といいますか、見守っていかざるを得ないというように考えておる次第でございます。
  17. 佐野進

    佐野(進)委員 農林省は、自主的な交渉、こういう形で処理をするわけですが、この販売関係段階におけるところの責任官庁は、食品関係ですから農林省になるわけですね。そうすると、この販売業者は大部分が中小企業者であるということは間違いないわけですね。したがって、大部分の販売業者である中小企業者が、その価格上昇によって営業が成り立たないという、消費者がその供給を受けてもその供給に応ずることができないという形で供給を拒否するという状態が出たという形になった場合、結果的に生産価格の引下げあるいはそれらについての流通費の問題等々のいろいろの形が出てくることは、これは必然的な結果だと思う。しかし、生産費は今日非常に多額になっているから、生産農家としてもそれを安くするわけにいかない。結局メーカーがそれらについての一定の責任ある対策を行わなければならないということになってくるわけでありますが、これらのメーカーに対する指導というものが、当事者間の話し合いという形で放置されるならば、結果的に力のあるメーカー、力のある業者と力のない業者間におけるところの争いということになりまするから、力のない業者としては泣き寝入りをしなければならぬということから、この前のような状態が出てくると思うわけであります。したがって、そういう状況の中においてなおかつ当事者間の話し合いということは、少し、話し合いという美名のもとに責任のある立場を放棄しているのではないか、こういうような印象を私どもは受けるわけですが、この点についてもう一度ひとつ農林当局と、さらに中小企業庁長官の見解をこの際聞いておきたいと思います。
  18. 鴻巣健治

    鴻巣説明員 実はそういう意味では、おっしゃるように小売とメーカー、メーカーと生産者との間の話し合いというのは、それぞれの要望が全く違いますので、非常にむずかしゅうございます。昨年もたしか枢価格値上げの要求が打ち出されたのが春で、決まったのは七月というように、数カ月の時間がかかっているわけでございます。私どもとしても、その問題については、抽象的にこうしたらいいとか時期はどうかというようなことについては指導はできますけれども、具体的にこうしたらいい、このくらいの額にしたらいいというようなことは、先ほど申し上げましたように、昭和四十二年の国民生活審議会の消費者保護部会で、そういう行政介入というのは問題がある、やってはいけないのだというような形で御指摘を受けているものですから、そういう直接な形での行政介入というのはなかなかできがたいという、ちょっとむずかしい立場にございます。しかし、そう言いながら、やはら実際には小売の立場もございましょうし、生産者等の立場もありますから、そういうものを十分踏まえて、理解のある態度で私たちとしては何らかできるような温かい指導をなるべくしたいというように考えておる次第でございます。
  19. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 町の小売商、非常に多数ございますけれども、私どもの毎日の生活を支えておる方々でございまして、こういう方々が健全に事業を営むことがまた国民の全体の生活の向上、安定につながっていくというふうに考える次第でございます。ただ、同時にこの小売業者等の中小企業者もさらに合理化できる部分は合理化に努力を願いまして、消費者に極力安い価格で良質の品物を供給する、こういった方向に努力を願いたいと思うわけでございます。そういう意味合いで、小売業者のいろいろな合理化につきましては、中小企業庁としましては各種の融資制度等を用意いたしておりまして、所要の低利融資を行うことにやぶさかでございません。  本件の問題につきましては、原局でございます農林省の方でいろいろ御指導願っておりますので、さらに農林省の方によろしく御指導方をお願いいたしたいと考えておるところでございます。
  20. 佐野進

    佐野(進)委員 公取はまだ来ていませんので、この問題について、次の点を農林省にさらに聞いてみたいと思うのです。  そうすると結局、審議会の指導といいますか、四十二年の処置によって行政介入はでき得ないんだ、こういうようなことですが、これはそちらから勧告が出されているということであって、情勢変化とそれに対応する条件さえ整えれば、その指導というか、そういうことに対する一定の条件変化を求めることも不可能でないと私は思うわけです。しかし、それはいろいろ立場もあることでございましょうから、ここで議論することではないと思うのですが、それではこの乳価を決定するための新しいルールを確立するということですね、こういうことは私は不可能ではない、いわゆる行政介入して指導価格によって乳価を決定するということは直接的に不可能であるとしても、そういうことについての話し合いをする場所なり機関なりをつくるということは、そういう意味において不可能ではないのではないか。いわゆる話し合いによる決定、これは公正なる取引に違反するのかどうかということは後の問題として、あなた方の方においてこの種要望に対して具体的にこたえるということについてはそれほど無理でないような気がするわけですが、これはどうですか。
  21. 鴻巣健治

    鴻巣説明員 乳価の決定の仕組みについて、私どもいまいろいろ検討いたしておるのでございますが、たとえば生産者、それから乳業メーカー、これには大手も中小もございますが、それに小売等が入ってやるやり方でも、事実上やるようなやり方を考えてみますと、そこで話し合いをするということで価格まで決めなければ、あるいはそれは一つの懇談の意味というか、話し合いの場という程度のことでございます。話し合いの場をつくるという程度の意味では有効ではございますが、いまここでひとつ価格を決めてもらいたい、価格を決めたいというような当事者の気持ちが強いときは、そこでただ話し合いをして、上げ幅についても抽象的、漠然としたものでは困る。じゃ、生産者段階では幾らにする、メーカーが卸すときは幾らにする、小売のときは幾らにするというきっちりした値上げの幅までそこで決めてしまうということになれば、いま牛乳小売商の人たちが言っているようなことにぴたり合うのですけれども、私は、これはちょっと独占禁止法から見ると違反の疑いがあるのではないかという感じがいたします。つまりそこで消費者を抜いて——消費者を加えてもいいのですけれども消費者を加えたその事実上の話し合いの場を仮に持っても、やはり全国民のコンセンサスがないままに、特定の少数の当事者が集まって価格を決めたということになりますから、これは独禁法違反のおそれが出てくるのではないかと思っております。  それから、それを事実上の話し合いの場でなくて、法律をつくってそういう話し合いを、審議会みたいなものをつくってそこにかけるとしましても、審議会でございますから、非常に漠然とした抽象的な議論で終わってしまう形になる。そうすると、いま牛乳商あるいは関係者が言っているような、ぴちっと明確な価格水準を決めるというのにはこたえることができない。それで、それじゃ、先ほど言いましたように明確な価格生産者段階では幾ら、卸は幾ら、小売は幾らというような形で価格を決めるということをその審議会で決めることができるかというと、これはなかなかむずかしい問題があるのじゃないかという形で研究いたしております。  といいますのは、やはり普通自由に流通する商品でございます。ミカンであるとか豚肉であるとか、それから野菜であるとか、そういうものと全く同じでございます。そういう民間で自主的に自由に流通しているものに対して、特定の審議会が、この価格で決めるよというように、価格を明確に設定するというのも、これまた法律の仕組みからいってもなかなか許されないのではないかと思っております。そういう点で、価格決定の仕組みについてはいろいろな要望がありまして、私どもも、そういう要望をどう踏まえて、できるだけみんなの意向に沿えるかについては、いろいろ苦慮しながら検討しているところでございます。
  22. 佐野進

    佐野(進)委員 中小企業庁長官、いま答弁がありましたように、農林当局でも苦慮しながらこの種の行政について取り組みをしつつあるという段階ですね。結果的に言うならば、これは単に一つ業種を取り上げて質問をしているわけですが、この種業種というものは非常に多く存在していると思うのですね。特に流通段階における業種については、こういう矛盾点に逢着して、どうそれを打開するかということがその業種全体の大きな課題としてその処理を迫られている、こういう状況はいろいろなところで見受けることができる。その一つとして私がいまここで質問しているわけですが、こういう場合、いわゆる価格によって当面を切り抜ける措置、これはもう価格一定の限界へ行ったから値上げをしないでくれ、あるいはある業種においては値上げをしてくれ、こういういろいろな差はあるにしても、そういうような状況の中で取り組みをしてもらいたいという政府に対する要望が出ているわけです。ここでは、それらについて具体的にいま審議会あるいは機関あるいは何か懇談会というか、そういうものをつくってでも、そういう乳価を決定してもらいたいというような要望、それはいま農林省の方から答えがあったような状況でいま困っているという結論になっているわけですが、こういうような状況を踏まえながら、こういう状況の中で経営として成り立っていくために、さっき長官一つ金融面その他云々というようなことを言いましたけれども、これは一つ業種だけでなく、あらゆる中小業界の中における流通段階業種に共通した問題として取り上げた場合、この牛乳販売業界の置かれている問題に対してどう処理をしなければならないかという考えがあるならば、これは当然あなたの方にも要請なり陳情なりが行っていると思うので、そういう点についての考え方をこの際ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  23. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 牛乳小売業者の方の合理化施策につきましては、具体的にこういう形でやりたいという話はまだ伺っておりませんが、もし牛乳小売業の方々が組合でもおつくりになるとか、個々にでも結構でございますけれども、その合理化案がございまして、そのためにこういった資金が必要であるという話がございますれば、十分検討いたしまして前向きで処理いたすように努力をいたしたいと考えます。
  24. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは、公取はまだ来ていないようですから、農林省の方、ちょっと待ってください。質問を保留して、次の質問へ進みたいと思います。  それでは、中小企業界全体の問題点というものをいままで質問をしてきたわけでありますが、きょうの法律改正案について質問をしてみたいと思います。  そこで長官、この現行法の中でいろいろな問題点があるわけでありますけれども、それらを新しい情勢に対応する形の中においてこの改正をするのだということを提案理由の説明の中で述べておられるわけでありますけれども、それでは現行法の成果欠陥と言うと語弊がありますけれども、現行法のいままで果たしてきた成果、これはいろんな評価があろうと思うのですね。近促法中小企業対策についてむしろマイナス的要因にしかすぎなかったと極論する学者あるいはまた団体の責任者の万々もおりますけれども、私どもはこれは今日の日本経済の中における中小企業対策としては一定の役割りを果たしてきた、こういうように考えておるわけでありますが、その成果欠陥について概括的にひとつお答えをいただきたいと思います。
  25. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 現在の中小企業近代化促進法昭和三十八年に制定を見た法律でございます。これは御承知のように当時日本経済がいわゆる開放経済に入ろうといたしておりまして、資本の自由化あるいは輸入の自由化を迫られておった時期でございまして、そういう時代に合わせましてわが国の中小企業の国際競争力の強化とそれから産業構造の高度化ということを主たる目的としてこの法律が制定を見たわけでございます。そういう観点からいわゆる業種指定いたしまして、そこの近代化計画を立てまして、それに低利の政府資金あるいは税制上の特別償却等の措置を講ずることによりまして近代化を進めてまいった、こういうことでございます。また、そのうちでも四十四年の改正によりまして、特に急いでこの近代化を図る必要がある業種につきましては特定業種制度というものができまして、これにつきましてはむしろ業界の方で業界ぐるみの構造改善計画を立てていただきまして、それにやはり金融、税制面の助成措置を加えることによりましてその構造改善を進めてまいったわけでございます。  これまでに指定業種といたしましては、累計百四十二の業種指定いたしております。また、いわゆる構造改善業種といたしましては、三十五の業種指定いたしておりまして、数千億円の融資が行われたわけでございます。  その結果、効果といたしましては生産性の向上それから品質の向上といったような面で大変効果があったというふうに考えております。たとえば生産性の向上でございますけれども、大体この五年間でおおむね五割から倍ぐらいまで生産性が高まっておりまして、設備の近代化も大変に進捗を見ております。品質の向上の面は、定量的に把握が困難でございますけれども、全般的に品質管理が徹底いたしまして、不良率も下がっておりますし、またJIS指定工場等もこの指定業種では大変にふえておりまして、製品の高級化が見られるところでございます。     〔委員長退席、塩川委員長代理着席〕 また、構造改善業種につきましては、いわゆる規模の利益を追求しまして業界の合併等が進み、あるいはいろいろな組合ができまして組織化が進む、そういうことによりましていま申しました生産性の向上あるいは設備の近代化が進んだわけでございます。  ただ、欠陥と申しますか、それが今回の改正の目的になるわけでございますけれども一つは従来の業種指定の基準が国際競争力の強化とか産業構造の高度化という点にございまして、最近の中小企業に要望される業種が若干指定しにくい面がございます。と申しますのは、最近中小企業にもいろいろと社会的な責任を求められ、また同時に国民のニーズの多様化によりまして、いろいろ新しい産業等が生まれつつあります。特に国民生活の安定向上を図る上での必要な業種、たとえば省資源、省エネルギー的な業種でございますとか、あるいは公害防止産業のようなものでございますとか、あるいは私どもの身の回りの住宅関連部門でございますとか、こういった業種の近代化が最近要望されておるわけでございますが、従来の法律は主として輸出産業振興型でございまして、国内のわれわれの国民生活の安定向上の業種指定するにはちょっと条文が不十分なように考えるわけでございまして、そういう意味でその辺を明確にいたしまして、私どもの国民生活の安定と向上に必要な業種を新たに追加できるようにいたしたいというふうに考えた次第でございます。  それから、もう一つは、日本経済が、従来の高度成長から各種の資源の制約あるいは環境、立地の制約等から安定成長にこれから向かうと考えられます。その場合に、従来の中小企業近代化促進法がねらっておりましたのはどちらかと申しますといわゆる規模の利益、量産によるメリットの追求というところに主眼が置かれておったわけでございますけれども、今後安定成長に変わってまいりますと、量よりも質という時代に入ってまいります。そういった場合におきます中小企業の近代化の力点は、いわゆる新鋭設備の導入ということも今後ももちろん必要と思いますけれども、さらにそれに加えていわゆる技術の開発ということによりまして新商品を生み出して、そして停滞的な産業あるいは後進国から追い上げられております産業はそういった新しい成長性のある業種に転換を図っていく、こういうことが必要ではないかと考えられるわけでございます。  そういう意味で、従来のいわゆる規模の利益の追求に主眼を置きました近代化促進法にさらに力点を追加いたしまして、技術の開発とそれによる新しい産業分野への転換の促進、こういう面を加えていく必要があろうというふうに考えておるわけでございます。
  26. 佐野進

    佐野(進)委員 現行近促法が、生産規模拡大と国際競争力の強化ということでその役割りを果たしてきたということは、先ほど来私も一定状態の中において認めるということを申し上げておるわけでありますが、ただ、いま長官説明をしておられるように、この新しく迎えようとしておる現情勢においてこの法律改正するということが、いまの説明を聞く限りにおいては、必要であるということを否定するものではありませんけれども、果たして十分なものであるかどうかということについて若干の疑問点を持たざるを得ないのであります。  と申し上げますことは、この急激に変化しつつある中小企業を取り巻く環境の変化というものには、この近代化施策という問題と関連しまして、いま少しく、何というか、変化に対応できる機動性といいますか、そういうものがなければ、この説明にあるような形だけでは対応し切れないのではないか、そういうような考え方があるわけであります。  そこで、次の数点にわたって質問をしてみたいと思うわけでありますが、まず第一番目は、中小企業をめぐる環境の変化についてどう認識をしておられるかということが一つであります。  二つ目は、現在の中小企業界が置かれている立場、この立場を長期的視点に立ってながめたとき、この対策をもって、もう当分改正はしなくともいい、たとえば昭和四十八年に改正して五十年という形でありますから、時間的にいうときわめて短い期間に法律改正をいたしているわけです。もっと端的に言うならば、この程度のことは四十八年改正の際すでに行われてもよかったのではないか、こういうような気もいたしますので、こういう点についての認識はどうなっておるのかということであります。  それから、近代化していくということは、低成長下に移行しつつある現在の経済情勢の中で必要な政策でありますけれども、これを中小企業政策全体の中でどの程度に位置づけていくのか、いわゆる金融であるとかあるいは組織指導であるとかあるいはいろいろな面がこれに関連して出てくると思うのでありますが、この近代化していかなければならぬ中小企業政策の中で、この法律改正がどういうような位置づけを中小企業としてはしていこうというぐあいに考えているのかということであります。  そして、それらの問題について、これに対応する業界があるわけですね。多くの業界が存在するわけですが、業界の反応はどういうような形であなた方の方へしているか、これらの点について答えていただきたいと思います。
  27. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 中小企業をめぐります環境の変化でございますけれども、一番大きな変化はやはり従来の高度成長から低成長に経済成長が大きく変化をしつつあるという点だと存じます。これは特に一昨年の秋の石油危機を契機といたしまして、非常に高度成長を進めていく場合に、資源の入手の面におきまして今後はその入手がだんだん困難になっていくということが明白になってまいったわけでございます。もちろんそのほかにも環境問題、労働問題、立地問題等々各種の高度成長に基づくひずみがございまして、安定し、調和のとれた経済発展という意味からは、成長率の鈍化が漸次必要になってまいることはある程度予測はされておったわけでございますけれども、特に石油危機が象徴的にこの資源の入手の困難をあらわしたと思います。  そういう意味合いで、今後低成長になるという意味におきましての中小企業施策の力点の変化というのは、先ほど申しましたように量的拡大から質的な充実、そのための技術開発に力を入れる、こういった面に力点が移ってくる必要があろうと思うわけでございます。それは四十八年の改正のときに入れておいたらよかったのではないかという御指摘でございますけれども、四十四年の改正でございますね、当時まだ高度成長の最中でございまして、今日のようないわゆる資源等の入手困難による成長率の鈍化ということは、当時におきましてはまだ予測か困難な状況であったかと存じます。  それから、もう一つの環境の大きな変化は、特に発展途上国が非常に工業化が進んでおるということでございます。その結果、繊維、雑貨等のいわゆる軽工業分野におきましては、そういった発展途上国に漸次輸出市場のシェアを食われますばかりでなく、国内へも輸入が急増を見つつあります。これに対処して、そういった産地産業的なものあるいは繊維産業等が発展途上国のいわゆる賃金の安い国の工業品にどう対処していくかということにつきましては、これは従来そういう意味で新鋭設備の導入による量産化による効果をねらったわけでありますけれども、さらに加えて、いわゆる高級品化、高加工度化ということによりまして発展途上国でつくれないような高級な商品にわが国の場合にも転換をしていく、こういうことが必要になってまいっておるかと存じます。  それから、もう一つの大きな変化は、国民のニーズの多様化の問題でございます。各種の国民のニーズが、所得の増大に伴って多様化しつつございます。そういったものに対処して、中小企業も必要な商品を供給していく社会的な責任を負っておると考えるわけでございます。そういう意味で、輸出産業の育成に劣らず、国民のこういった各種のニーズに応じた産業の近代化を図っていくということも、中小企業に課せられた非常に大事な使命ではないかというふうに考える次第でございます。  そういった幾つかの環境変化に対応いたしまして、今回の改正によりましてそういった環境変化に応じ、今後の難局を乗り切って中小企業の発展を求めていこう、こういうことを考えておるわけでございます。  中小企業業界の反響はどうかということでございますけれども、私ども各般の中小企業の方々にこの法案を御説明いたしました限りにおきましては大変に歓迎をされておりまして、この法案の一日も早い成立、施行を期待されておるように感じております。
  28. 佐野進

    佐野(進)委員 いままでの点について、まだ聞きたい点もたくさんあるわけでありますが、時間の経過もありますので次に進んでみたいと思います。  次は、改正点の内容でありまするが、御承知のとおりこの改正については、提案説明においては四つの点を挙げて説明をされておられるわけでございまして、最初にまず目的が改正されるわけでありまするが、この目的の改正によって、これまでとられてきた近代化政策の方向に新しい要素を加えて改正すると説明をされておるわけであります。そうすると、いままでの政策はどうなのか、いままでの政策の内容に変更を来すのか、あるいは方向としてその問題等を含めてどういうような形に変わっていくという見通しのもとに目的を変えてきているのか、この点をまず答えていただきたいと思います。
  29. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 目的の改正点は、大きく申しますと二点ございます。  第一点は、従来の法律では中小企業近代化計画の円滑な実施を図るためというふうに述べておりましたところを、近代化計画を策定し、「中小企業の構造改善を推進するため」という言葉を加えておりますが、これは現在やっておりますいわゆる特定業種によります構造改善というものが、従来現にやっておりながら目的に入っておりませんでしたので、この際その関係の規定を加えたという趣旨でございまして、これによりまして実態が変わるわけではございません。  それからもう一つは、「国民生活の安定向上」ということをこの法律の目的に加えたわけでございます。こういうことによりまして、先ほど申し上げましたように、従来この法律が主として国際競争力の強化と産業構造の高度化ということをねらいとして運営されておりましたことに対しまして、さらに「国民生活の安定向上」ということを図ることもこの法律の目的であるないうことを加えまして、いわゆる業種指定の範囲を拡大する改正を後の方で行っておりますけれども、それと見合った形で目的を直した次第でございます。  したがいまして、目的の改正による一番大きな改正点は、従来のいわゆる国際競争力の強化と産業構造の高度化ということに加えまして、国民生活の安定向上を図ることを本法の目的に追加をし、それに応じた施策を後の方で追加をする、こういうことでございます。
  30. 佐野進

    佐野(進)委員 長官質問はいわゆる要望というか、どうなのかという点を含めて質問をしておりますので、私の質問に対して答える際においては、どう変わるのかということの持つ意味を的確にひとつ指摘しながら答えていただきたい。これからもいろいろの点で質問しますから、そういう意味でひとつ答えてもらいたいと思います。  そこで、その次の問題としては、中小企業近代化基本計画と実施計画が一本化されて今度は近代化計画、こういうようになるわけでありまするが、いわゆる実施計画と基本計画とを一本化した理由、この理由の持つ意味はどういうことなのかということであります。ただ単に簡素化されたということなのか、あるいは簡略にすることによってどういうメリットがその中から生じようということで出されたのか。先ほど来の説明のように、より広範な業種がこの対象業種になっていくということからするならば、その対象業種が多くなることによって簡素化するということにしたのかどうか、あるいはもっと別の意味があるのかということをこの際明らかにしていただきたいと思います。  次に、今回の改正で「国民生活の安定向上」ということを入れて、これを図る上で重要な業種をも法律の対象にするということを先ほど来説明されておるわけでありますが、このような業種はいままでもなってしかるべきではなかったのか。いわゆる国民生活の安定向上という業種が、法律的にもし若干の疑義があるとしても、そのことの持つ意味は、国際競争力とそれから生産規模拡大というその目的に合致するならば、当然加えられてしかるべきであったのではないか、こういうようなことが考えられるわけでありますが、この業種というものを特に想定して、ここで法律改正をするわけですが、いま私の質問していることがそうでないとするならば、この業種というのはどういうような業種を想定しているのか、この際明らかにしていただきたいと思うわけであります。時間の関係がありますから、引き続き質問をしてみたいと思うのですが、以上この二つの点について答えてください。
  31. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 最初に近代化計画の点でございます。  従来は、近代化計画につきましては、基本計画と実施計画というものの二段構えになっておりまして、大体五年先ぐらいを最終目標年次といたしまして基本計画を定めまして、あと、実施計画は毎年定めるということになっておったわけでございます。  正直申しまして、毎年実施計画を定めていくということは非常に事務的に煩瑣な面がございまして、もう少し簡素化したらどうかというような意見が内部でもあったわけでございます。と同時に、基本計画が五年先でございますから、その五年目にならないとなかなか基本計画の改定がきかないという面もございました。そういう臨機応変に基本計画を改正しにくいという面もございましたので、今回はこれを一本化いたしまして、近代化計画ということにいたしまして、その中におきまして大体目標も定めますし、それからそのための実施計画的なものも内容に定めまして、環境変化に臨機に対応して、機動的にその内容について必要に応じて改定を加えていく、こういうことをやりやすいようにした次第でございます。  そういう意味におきましては、一つは事務の簡素化という面もございますし、もう一つ情勢変化に応じて機動的、弾力的に計画の変更を行えるようにする、こういう両面の趣旨もございまして、基本計画と毎年の実施計画というものの一本化を図った次第でございます。  それから、もう一つの国民生活の安定向上の点でございますけれども、従来は指定要件といたしまして産業構造の高度化とか、あるいは国際競争力の強化ということが指定要件になっておったわけでございます。実際の運用といたしましては、国際競争力の強化と申しましても、輸出ばかりやる産業ではなくて相当内需の面での、国内での生産の基盤がありまして初めて輸出競争力もつくわけでございますので、輸出に力を入れる産業と申しましても、もちろん内需に相当のウエートがふる産業もどんどん指定はいたしておったわけでございます。そういうことで、実際に国民生活にいろいろ密接な関係のあります業種も、現在の条文の解釈の範囲で、許せる範囲で拡大的に解釈いたしまして、指定は行っておりましたけれども、全く輸出がない産業でございますとか、あるいは産業構造の高度化と全く無関係業種、こういうものはやはり解釈的にも読みにくい面があったのでございます。しかし、そういった業種も積極的にこの国民生活に関係があるものは指定ができるようにしたいということで今回の改正を行ったわけでございまして、たとえば廃棄物の再生処理業、自動車の廃棄物も年間四百万台ぐらいになろうとしております。それから、プラスチックの廃棄物も貴重な資源でございまして、これを回収して新たなプラスチックに再生するというようなことは、一面資源の節約になりますと同時に、公害対策にもなるわけでございます。こういった業種指定するという意味では、従来の条文ではやや読みにくい面がございましたので、こういった廃棄物の処理再生業種でございますとか、あるいは公害防止産業といったような業種をさらにどんどん指定をしていくという意味合いで、今回の改正をいたした次第でございます。
  32. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣も来ましたので、この質問はまだ相当残っておりまするから、ある時間が参りましたら一応質問を留保して、先ほどの残されておる問題と大臣に対する質問に移っていきたいと思うわけでございます。  長官に対する質問は、もう一点質問してみたいと思うわけでありまするが、これはいまお話のありましたように、産業廃棄物処理業種であるとかその他新しい情勢に対応できるような業種指定していきたい、こういうようなことを言われたわけですが、そうすると特定の業種指定要件というものはこういうぐあいに考えていいのか、そしてその場合どれに特にウエートを置いていくのか、この点をひとつお答えをいただきたいと思うわけであります。それは、一つには産業構造の高度化、これはいままでのものですね。それから、国際競争力の強化、これもいままであったわけです。新しくつけ加えられるのが国民生活の安定向上、こういうことになり、これが改正の要点ということになるわけですが、この三つの要件のうちどれを重点にしていくのか、重点という言葉は適当であるかどうかはわかりませんが、いずれにせよ、新しく改正した国民生活の安定向上というのは、産業構造の高度化や国際競争力の強化以上に重要と認識して改正点を出されているのか、あるいは並列的なのか、あるいはいまの情勢の中で将来この種の問題も発生する要件として必要だという認識なのか、この点についての考えをひとつお示しいただきたいと思います。
  33. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 従来は産業構造の高度化と国際競争力の強化という指定要件でございましたが、今回国民生活の安定向上に資する業種ということが追加になったわけでございます。法律の形といたしましては並列でございまして、特に新しく追加になった分が重点という意味合いではございませんけれども、ただこの法律昭和三十八年から実施をいたしておりまして、すでに百数十業種指定業種になっておりますので、従来の法律に基づきますいわゆる国際競争力の強化あるいは産業構造の高度化という面から必要な業種はすでに相当指定が行われて、助成が行われておるわけでございます。そういう意味から考えますと、今後追加される業種は国民生活の安定向上に関連したものが多いかと思いますけれども、国際競争力の強化は常に必要な課題でございますし、またいわゆる産業の高加工度化と申しますか、構造の高度化と申しますと重化学工業化的な感じがございますけれども、軽工業は軽工業なりに加工度の高い産業に変わっていく、こういうこともなお必要でございますので、そういう意味で過去に百幾つ指定いたしました中でまだ漏れがございまして、国際競争力の強化等のために新たに指定する必要のある業種が出てくれば、やはりこれも拾い上げてまいりたいというふうに考えております。
  34. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは、先ほど質問を中断いたしました問題について、公取の事務局長も見えられたようでございますから、質問をしてみたいと思います。  先ほど牛乳値上げ反対に関する問題について、販売店はマージンによってその生活を維持している。したがって、小売価格が上がるならばマージンも上がることになって、本来ならば喜ぶべきことであると思うにもかかわらず、今日の段階においてはこれではいけない、値上げ反対だという運動が強力に進められている。したがって、これは一見矛盾するようであるけれども、結果的に言うならば小売価格の上昇は消費者がそれを拒絶する、受け入れられないという形で販売量が減少する。結果的にその条件の中で小売販売業者としては値上げをしてもらっては困る。したがって、値上げをしてもらっては困るという条件の中で生産者、メーカーあるいは大流通業者等に対して幾つかの問題点を提起してそれの自粛反省を求めている、こういうことで先ほど農林省の課長さんといろいろ議論をしたわけですが、あなたの方に関係する部面が多々あるので急遽御出席をお願いした、こういうことになるわけです。  そこで、第一点は、行政指導価格を確立してもらいたい、こういう要望があるのですが、これは課長さんのお話では審議会ですか、そういう会の決定に基づくところのものがあってできないんだというお答えがあったわけですが、行政指導価格、乳価の決定というものについては販売価格それから生産価格、こういうものについては公取としてはどういう立場に立っておられるのか、この点をまずお答えいただきたい。
  35. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 牛乳販売価格につきまして農林省指導するということは、これは一般論といたしましてもすでにたびたび問題にされているところでございますが、行政指導とカルテルとの関係がございまして、指導の仕方によりますと往々にして業界のカルテルがそこに介在をせざるを得なくなってくる、そういうことでございますので、私ども販売価格行政指導によって誘導するということは好ましくないというふうに考えております。
  36. 佐野進

    佐野(進)委員 行政指導によって価格を誘導することは好ましくないという考え方でいるという答弁でありますが、そういたしますると、今日の情勢の中で小売業者の販売行為について重大な支障の要件となっている問題は、いわゆる大スーパーですね、スーパー等によるところのいわゆるおとり廉価販売というものが行われておるわけですね。それが、牛乳であるとか酒であるとかいうものは、それを掲げることによって目玉商品として客を呼びやすいという形の中で行われている。特に牛乳という生鮮、いわゆるその日のうちに取り扱わなければならない業種が、大スーパーとかそういうところにおいておとり廉売として行われることについてはどう考えておられるか。
  37. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 この牛乳のおとり廉売につきましては、従来もその違反の申告がございますと直ちに調査をいたしまして、そして仕入れ価格を割って販売しておるような場合には、それを直ちにやめるように指導をしております。これは、もしも違反行為が続いておりますならば、正式の独禁法によります排除措置、勧告等の措置がとれるわけでございますけれども、こちらが調査にかかります段階においてはもうすでに終わっておるというようなケースが多うございますので、やむを得ず指導によりまして今後そういうことを繰り返さないようにということを申しておるわけでございます。
  38. 佐野進

    佐野(進)委員 農林省乳製品課長、どうです。いまお答えがあったような、たとえばメーカーなりあるいは商社なり、こういうものが——商社は取り扱わないと思うのですが、スーパーと特定の契約をして、そしてそれをおとり廉売として行うというような措置はあるわけですね。いま、あって行ったら終わってたなんて、そういうことじゃなくて、現実の問題としてやらない、やっていないというぐあいに私ども認識をするわけでありますが、そういうような状態が存在したとき、これに対する適切な指導、あなたの方で指導されることの方が必要だと思うのでありまするけれども、どう対処してこられたか、これからどうしていくつもりか、この点をひとつ答えてください。
  39. 鴻巣健治

    鴻巣説明員 お答え申し上げます。  牛乳は品質が非常に一定いたしておりまして、どこのブランドでも構わない、それから消費者としては毎日消費をするという点で生鮮食料品としては比較的廉売になじみやすい、そういう性格がございまして、その点で私どもは非常にこの問題については困った問題であるというふうに考えております。そして、スーパー等では先ほど申しましたように、たとえば特売日、月に一回とかあるいは週に一回とかいう場合に、チラシ等で安売りをするわけでございます。その場合に、この問題についてはやはり公取の御所管でございますが、先ほど公取の方からお話がありましたように、仕入れ価格を割って不当に安く売るということになりますと、これは独占禁止法の不当廉売という行為に当たるわけでございます。そういう意味で、私どもこの問題が出ますと、よく公取に御連絡をいたしましてお願いをするという形になっております。昨日も、畜産局長と牛乳販売組合の全国連合会の会長と会見の場を持ってもらいまして、この問題についても特に小売の方から困った問題だということで強くいろいろと要望がございました。こういう話し合いを何回か持っておりますけれども、私どもとしてはこの問題はやはり独占禁止法の、要するに不当廉売の行為かどうかという問題でございますので、よく公正取引委員会と御連絡し、そちらの方から強く御注意いただくというようなことで、これからも小売商からの連絡があれば直ちに公取の方にも御連絡して、しかるべき適切な処置をとっていただくようにどいうお約束をしておる次第でございます。
  40. 佐野進

    佐野(進)委員 時間がなくなってきましたので、公取に対する次の質問で終わりたいと思うわけですが、あと残された時間は大臣質問します。  乳価というか、いま公取の熊田さんは、スーパー等のおとり廉売があった場合に、行ってみて調べたらもう終わっていた、注意をして帰る、こういうようなことでその話は終わらざるを得ない、こういうお話ですが、現実の問題としてそれによって付近というか、全体的に販売小売業者が困っているという事態は先ほどの農林省説明でも明らかなとおりです。そこで、そういう点は見逃しておいて、指導価格は好ましくない、そういうことはいかぬ、違反になる可能性があるということで抑えているわけですが、この点はどうかということです。  乳価について販売価格を決定する際、あるいは生産者価格というものを決定する際、一定の条件に当てはまる人たちがその情勢の中で最も適切であると考えられる基準価格を協議する、これを決定する、実施するんではなくて協議するという行為は、一体公取としてはどういうぐあいに認識される条件に当てはまるのか、この点はどうですか。
  41. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 これは一般的に申しまして、特別に法律で許容されていない場合に、事業者が集まって価格の設定について協議をするということはカルテル行為でございまして、これは独禁法上許されない行為であると考えます。
  42. 佐野進

    佐野(進)委員 これは要望ですから答えは要りませんが、あなたがいま言われたことは私の質問していることの真意をちょっと履き違えておる。いわゆる業者が集まってということなら違反だけれども、学識経験者なりあるいは役所なり、そういう直接販売業者でない人たちが集まって一定の条件を協議したときはどうなのか、こういうことを私は質問しているわけです。これも違反ですか。
  43. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 これは先ほどの行政指導とも絡んでくる問題であると思います。もちろん、何か審議会のようなものでそういうような論議をされること、そのことが独禁法に触れるということはございませんけれども、しかしながらそれによって出てきた結論をもってお役所が指導をされるということになりますと、そこにまた、これは法律で許容されておれば別でございますけれども、そうでなければどうしても事業者間のカルテルが介在することになるおそれがございますので、やはりそういう意味合いから好ましくないというふうに私どもは考えるわけでございます。
  44. 佐野進

    佐野(進)委員 この問題は、またいずれ後で機会を見て質問してみたいと思いますので、これで打ち切りたいと思います。  大臣、きょうは近促法の一部改正法律案について審議をしておるわけです。私、一時間半の持ち時間が大分たちましたから、結論的な問題について質問を留保していまこの問題についての質問を終わろうとしているわけなんですが、冒頭あなたがいないので質問を保留しておった問題として当面の景気対策、あなたは第三次景気対策についてはあちらこちらでぶっておられるし、あるいはそのことも必要だろうと思うのでありますが、特に中小企業に対する対策としてどう認識しておられるか、この際御見解を示していただきたい。
  45. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 御案内のように先月の二十四日に第二次の不況対策を決めたわけでありますが、何分にも総需要の枠内においての部分的な不況対策という趣旨でございますから、果たしてどの程度の効果が出てくるか大変疑問に思われます。そこで、来月、三月の下旬から約二カ月置きまして五月の下旬にもう一回、中小企業はもちろんでありますが、全部の産業界の実情をつぶさに調査をいたしましてその動向を掌握する、それによって第三次の対策を立てる必要があるんじゃないか、こういうことでいま準備をしておる最中でございます。  現在の景気動向でありますが、一部下げどまったものもありますけれども、なお依然として状態の悪いというものも相当ございます。そして、産業界におきましては大幅な減産状態が続いておりますので、そういう面から中小企業に対してもやはりしわ寄せが相当行われておる、こういうことでございますから、中小企業対策というものは資金の面それから需要確保するという面、その両面からよほど注意をして進めていく必要があろうか、かように考えております。
  46. 佐野進

    佐野(進)委員 時間が参りましたから質問を終わりたいと思いますが、近促法の内容についてはまだ改正点の二、三質問しただけでありまして、質問条項がたくさん残っておりますので留保して、一応終わりたいと思います。      ————◇—————
  47. 塩川正十郎

    ○塩川委員長代理 質疑の途中でありますが、この際、参議院から送付されました内閣提出特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  提案理由の説明を聴取いたします。河本通商産業大臣
  48. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 特許法等の一部を改正する法律案につき、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  わが国の工業所有権制度は、九十年に及ぶ歴史を有しておりますが、現在、物質特許制度及び多項制の採用、商標登録出願の処理の迅速化等幾つかの重要な問題を抱えております。また、近年における工業所有権制度の国際化の動きは顕著なものがあり、わが国もこのような動向に的確に対応する体制を整備する必要がありますが、そのためにも前記の諸問題を解決することが緊要となっております。  すなわち、わが国が今後さらに国民の福祉水準の向上を図るとともに、国際社会における貢献を高めるためには、国民の知的活動の成果が十分に発揮される環境を整備することが必要不可欠であり、特許制度重要性は従来にも増して高まりつつありますが、現在の特許法においては、化学物質、医薬、飲食物等の発明について特許を与えないこととなっておりますので、研究開発活動のあり方がともすればゆがめられ、また無用の係争が生じております。さらに、わが国は、長年にわたり特許請求の範囲及び実用新案登録の請求の範囲について、いわゆる単項制を採用してきておりますが、工業所有権制度における国際的協調を図り、出願人及び第三者の便宜に資するという新しい時代の要請にこたえるため、多項制を採用する必要性が高まってまいりました。これらの事態に対処するため、昭和四十六年から工業所有権審議会において慎重な検討を重ねた結果、昨年九月に物質特許制度及び多項制の採用に関する答申が提出されたのであります。次に、商標制度につきましては、近年における出願の激増のため、増員、機構の拡充、予算の増加等種々の対策を実施しているにもかかわらず、審査に要する期間は著しく長期化するとともに、特許庁には未処理案件が累増しており、このままでは商標制度の意義が失われるおそれがあります。また、出願の迅速な処理は、商標制度の国際的協調の観点からも不可欠の条件となっております。このため、商標登録出願の迅速な処理を図ることが緊要となっており、その対策について工業所有権審議会において慎重な検討を重ねた結果、昨年十二月に商標制度改正に関する答申が提出されたのであります。  本法律案は、これらの答申に基づき、さらに関係各方面の意見をも取り入れて作成したものであり、いずれも可及的速やかに改正をすべき事項を内容とするものであります。  次に、本法律案の概要につき、御説明申し上げます。  第一は、物質特許制度を採用したことであります。化学物質、医薬、飲食物等につきましては、近年、これらの産業部門の技術水準に急速な向上が見られ、研究開発をさらに促進するためにはその発明の適切な保護を図る必要があること、わが国経済の発展に伴ってこれらの物質についても多種多様の商品が豊富に供給されていること等から、多くの先進工業国の例にならってわが国においてもこれらの物質の発明について特許を認めることとしたものであります。  第二は、多項制を採用したことであります。従来、特許または実用新案登録の出願に当たって、出願人は、一つの発明または考案については単一の項目によってその請求の範囲を記載することとなっておりましたが、複数の項目によって請求の範囲を記載できる、いわゆる多項制によれば、特許権等の権利範囲を従来より明確にすることができ、また国際的にもほとんどの国が多項制を採用していること、現段階から多項制を採用しておけば近い将来発効すると見込まれる特許協力条約にも円滑に即応することができること等から、わが国においてもこれを採用することとしたものであります。  第三は、登録商標の使用義務を強化したことであります。登録商標の中に使用されていないものが相当数存在している状況にかんがみ、出願の迅速な処理及び使用されないこととなるような商標の出願の抑制を図る見地から、商標権の存続期間の更新登録の際過去三年以内に使用されたことがない登録商標については更新登録を認めないこととするとともに、過去三年以内に使用されたことがない登録商標の登録を取り消すことができる、いわゆる不使用取り消し審判における使用の事実に関する挙証責任を審判の請求人から被請求人に転換することにより、不使用取り消し審判を容易に活用し得ることとしたものであります。  このほか、第七十四回臨時国会において承認されましたパリ条約のストックホルム改正条約の批准に伴って必要となる特許法、商標法等の関連規定を整備するとともに、特許料、登録料及び手数料を最近の物価水準等を勘案いたしまして妥当な水準改正することといたしております。  本法律案は、これらの事項について所要の措置を講じるため、特許法、実用新案法、意匠法、商標法及び不正競争防止法についてそれぞれ所要の改正を行うものでございます。  以上が本法律案の趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  49. 塩川正十郎

    ○塩川委員長代理 以上で提案理由の説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  50. 塩川正十郎

    ○塩川委員長代理 引き続き中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。近江巳記夫君。
  51. 近江巳記夫

    ○近江委員 この中小企業の近代化施策のあり方の問題でございますが、中小企業を取り巻く経済環境というものは、三十年代の当時と比べますと、非常に複雑化しておる、困難なものになってきておるわけであります。  そこで、この近代化につきましても、これら時代の要請にこたえるものでなければならないと思うわけでございますが、今回のこの改正というものは、的確にそういう時代の要請というものを取り上げておられるのかどうか、要請にこたえるものと言えるものかどうか、その点につきまして長官からお伺いしたいと思います。
  52. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 この法律は、いまから十二年前の昭和三十八年にできました法律でございまして、当時ちょうど日本が開放経済体制に入ろうとする時期でございましたので、主としてわが国の中小企業の国際競争力の強化、それから産業構造の高度化を促進することを目的として制定を見たわけでございます。したがいまして、このとっております近代化の手法といたしましても、規模の利益を追求するということが主たる対策になっておりまして、合併を進めあるいは組織化を進めることによりまして経営規模拡大し、さらに新鋭設備を導入いたしまして、いわゆる量産体制を中小企業なりに確立をいたしまして生産性の向上を図る、その結果、大企業との格差を縮めていく、こういうことが主たる近代化の方策になっておったわけでございます。  ところが、最近いろいろと中小企業をめぐる環境に変化がございます。一番大きな変化は、一つは、従来の高度成長から安定成長に日本経済が変換を見せようとしておる点でございます。この点は、石油危機に端的にあらわされておりますように、資源の入手が非常に困難になってきた、あるいは環境問題、立地の問題、そういったことから、好むと好まざるとにかかわらず安定成長に変わろうといたしております。     〔塩川委員長代理退席、田中(六)委員     長代理着席〕 そういうふうになってまいりますと、いわゆる量よりも質ということで、中小企業の近代化施策も力点をさらにつけ加える必要があろうと考えられます。つまり技術の開発に力を入れまして、従来なかったような技術あるいは商品を生み出しまして、特に発展途上国に追い上げを食っておる業種でございますとか、あるいは非常に業者の数が多くて、過当競争を重ねておる業種、こういったいわゆる停滞型の業種から新しいそういった成長性のある業種に転換を促進していく、こういうことが必要であろうと考えられます。  もう一つの最近の大きな変化は、いわるる国民のニーズの多様化並びに日本の社会がいわゆる福祉社会に移行をしようとしておる点でございます。こういった国民のニーズなりあるいは福祉社会化に伴いまして、中小企業に対します社会の要請もさらに多様化し、変化を見せております。たとえば中小企業も公害防止が必要でございますし、また公害防止産業というものの育成も必要でございます。また、省資源、省エネルギーということが非常に叫ばれるようになりまして、中小企業も特にそういった面で力を入れる必要がございます。また、国民の健康を守る産業とかあるいは教育産業とか、福祉社会化に伴いましてのいろいろ新しい要請もございます。また、たとえば住宅のさらに一層の充実といったような国民生活の安定の面からの要請もございます。こういった従来の輸出とは余りかかわり合いがなくても、国民の新しいニーズあるいは社会福祉といった面からの新しい社会の要請、こういうものに中小企業もこたえる必要があるわけでございまして、そういった新しい中小企業の分野で中小企業が社会的な責任を果たしていくために、そういった物資なりサービスを供給する中小企業を育成するということも非常に重要な課題になりつつございます。そういったことで、従来の国際競争力の強化あるいは産業構造の高度化に加えまして、国民生活の安定と向上に資するような中小企業の育成を今回法律に加えたということが一つでございます。  もう一つは、低成長下にありまして、しかも発展途上国の追い上げを受けておる現状におきまして、近代化の力点として、従来の設備の近代化に加えまして、いわゆる技術の開発とそれによる新商品の開発、そういった新しい分野への転換、こういうことを促進しようと考えました点が今回の改正の主要な点でございます。
  53. 近江巳記夫

    ○近江委員 この現行のいわゆる近促法につきまして、政府としてはどのように評価なさっておるかという問題でございますが、近促法に対しましては、従来から、力のある企業のみを助長して小規模零細企業を切り捨てる政策じゃないかとか、あるいは近代化の倒産につながっておったのではないか、あるいは本制度の優遇措置のみを享受して真の近代化が図られなかった等々の批判が非常に多いと思うのですが、こういう批判に対しましてはどのように謙虚にお考えになっておられるか、これについてお伺いしたいと思います。
  54. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 昭和三十八年に本法が制定をされましてから、対象業種として指定いたしました業種は、累計で百四十二業種に上っております。現在まだ指定が残っております業種が九十九業種でございます。また、特にこの中で、いわゆる構造改善業種ということで業界ぐるみで構造改善を進める業種というのが三十五業種指定になっております。これに対しまして、金融面では特に政府系金融機関から安い金利の金を二千数百億融資しておりますし、税制面でも近代化設備につきましての特別償却等の優遇措置を講じておりまして、それによりましてこの中小企業の近代化が大変に進んだというふうに私どもは考えておる次第でございます。  たとえば生産性の向上を見ましても、指定業種について見ますと、ほぼ五割から倍ぐらいまで生産性が上昇を見ております。また、製品の品質も非常に向上を見ておるわけでございまして、近代化の効果はきわめて著しいものがあると思います。  それを立証する証左としましては、過去十年間にこれだけ毎年実質で一〇%以上の高度成長が続いてまいったわけでございますけれども製造業の中におきます中小企業出荷の割合というものは全然落ちておりません。大体過去十年間を通して見まして、中小企業出荷がほぼ五割を占めておるわけでございます。こういったいわゆる高度成長時代に企業が非常に大型化をして、量産、大型の設備が導入されるということで、海外ではだんだん中小企業のシェアが下がっておりますときに、わが国で中小企業生産のウエートが落ちていないということは、この近代化促進法等によります中小企業の近代化施策によりまして、中小企業が時代の変化に対応して新鋭設備を導入し、その責任を果たしてきたということの結果であろうと考えるわけでございまして、この中小企業近代化施策は大変な成果を上げたというふうに私どもは見ておる次第でございます。  なお、御指摘のようにこの近代化促進法によります近代化業種は、中小企業の中でもどちらかと申しますとやや上位の業種企業が主でございます。より零細な業種につきましては、またそれなりの別途の施策が現に講ぜられておるわけでございまして、こういった小企業向けの施策の充実につきましても、さらに一層その充実を図ってまいりたい、かように考えております。
  55. 近江巳記夫

    ○近江委員 非常にいい面の評価ばかりなさっておられたように私は思うのですが、そういうきわめて代表的な批判があるということを先ほど私申し上げたわけでありまして、全然それでは謙虚にそういう点を受けとめておられない。そういうことでは、いわゆる本当の意味での近代化はできないと思うのですね。何も私はすべて悪いということは言っていないわけです。果たしてきた役割りも、それはそれなりに認めておりますが、しかしこういう批判も強い。それでは、こういう批判は全然お受けにならないわけですか。
  56. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 この近代化施策によりまして新鋭設備を中小企業は導入してまいりましたので、生産能力が急激に増加を見ております。高度成長の時代は、それが逆に生産面での責任を果たしてまいったわけでございますけれども石油危機に端を発しまして、総需要抑制その他でこの成長率がマイナス成長に変わり、鈍化を見せるということになりますと、そういった過去の近代化施策によります量産設備が能力的にやや負担になる、こういう面も経過的にはあろうかと存じますが、これは今後、漸次景気の回復の過程において吸収してまいるべき問題かと考えておる次第でございます。
  57. 近江巳記夫

    ○近江委員 時代への対応といいますか、一たび制度を発足させると、それをどこまでも守っていくのだということじゃだめだと思うのです。そういうことで今回このように改正案をお出しになっておられるわけでありますが、時期的にももう少し早くすべきじゃなかったのか、私はこのように思うわけです。  それで、今回の改正案の効果につきまして、本当に期待できるのかどうか、また業界の反応というものはどのように受けとめておられますか。
  58. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 今回の改正点は、大きく申しますと三点でございます。  第一点は、従来の輸出産業重視型の指定基準に対しまして、国民生活の安定向上に資するような、私どもの身近な物資なりサービス業種指定できるようにいたしまして、そういうものの近代化を図りたいということでございます。  第二点は、たとえば産地産業等につきまして、従来は横の、同業者だけの構造改善でございましたけれども、これに原材料等を供給する部門、所要の設備を供給する部門、検査部門、輸送部門あるいは流通部門、こういう関連業種も加えまして縦型に産地ぐるみで近代化を図る、こういった場合には関連業種についての助成措置を与えまして、一丸となって構造改善を進める。こういう点が二番目の主要な改正点でございます。  三番目の改正点は、発展途上国の追い上げとか業者の数が非常に多いために過当競争を繰り返しておりまして、成長が伸び悩んでおる、あるいは需要が停滞しておる、こういう業種指定いたしまして、そういう業種の方々が新商品の開発をされまして、そういった新しい成長性のある分野に転換を図っていかれる場合の助成措置を講ずる。これが改正の第三点でございます。  いずれの点につきましても、業界と申しますか中小企業の方々とお話をいたしますと、今回の改正につきましては大変に歓迎の意を表しておられまして、一日も早い施行を期待されておるように私どもは伺う次第でございます。
  59. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、目的が改正されるわけでございますが、これによりまして近代化政策というものは実質、方向転換をしたのか、あるいは目的は改正してもこれまでの延長と見てよいのかどうか、この点についてはどうですか。
  60. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 今回の改正はいわば追加でございます。たとえば指定業種指定要件といたしまして、従来の国際競争力の強化あるいは産業構造の高度化という指定要件に加えまして、国民生活の安定向上を図るために必要な業種指定できるようにいたしましたので、従来の政策の転換ではございませんで、さらにその上に業種指定追加いたしまして、こういった業種も従来の業種に加えて助成をしてまいりたい、こういう趣旨でございます。  新技術の開発等につきましても、従来の新鋭設備の導入によります近代化に加えて、新技術、新商品の開発というものを追加したわけでございまして、従来の設備近代化政策は、必要な業種についてはなお続ける必要があろうというふうに考えております。そういう意味では並列的と申しますか、従来の業種にこういった新しい業種がつけ加わり、あるいは新しい技術の開発という面での助成措置が加わった、こういう趣旨でございます。
  61. 近江巳記夫

    ○近江委員 近代化計画策定業種指定要件が拡大されまして、「国民生活との関連性が高い物品又は役務を供給する」業種も政令指定されることになったわけですが、これによりまして、たとえばどういった業種指定されることになるのかという問題があります。  これまでみそ、しょうゆ、製パン業、あるいは米菓、あるいは清涼飲料、豆腐、つけもの等国民生活と関連性が高いものが指定されておりますが、これはどういうような理由によって指定されたわけですか。
  62. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 従来も国民生活の安定と申しますか、私どもの日常生活と非常に関係の深い業種指定はございます。     〔田中(六)委員長代理退席、委員長着     席〕 たとえばみそ、しょうゆといったようなものが指定になっておりますけれども、これはソースあるいはスープといったような、生活の洋式化に伴います西欧的な食品が日本に入ってくる。特に資本なり輸入の自由化に伴いまして、そういう業種が日本に来るんではないかということで、それに対抗して日本の従来からのそういった産業の育成を図ろう、こういう趣旨でございましたので、いわば国際競争力の強化と、輸出の振興ではございませんが、国内におきます外国の商品との競争に打ち勝つという意味もございまして指定がされておった次第でございます。
  63. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、いま二問お聞きしたわけですね。初めの方は、このようにいわゆる「国民生活との関連性が高い物品又は役務を供給する」業種も政令指定されることになった。これによって、たとえばどういった業種指定されることになるのか、これをお聞きしておるわけですよ。
  64. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 具体的な業種は、現在業界の方といろいろヒヤリングを実施中でございまして、まだ確定的なものは全部でどういうものというふうに申し上げかねますけれども、たとえば配置家庭薬、富山等でつくられております家庭に配置します医薬品、こういう物が最近生産管理につきまして規則が厳格になりまして、非常に近代的な生産管理が必要になってまいっておりますので、これに合わせましてこの配置家庭医薬品の近代化を図る必要があろうと考えます。  それから、かばん等につきましても、業界の方ではぜひ指定をして近代化をしてもらいたい、こういう要望でございます。  そのほかに、今後業界とのヒヤリングが必要でございますが、たとえば廃プラスチックの再生処理業でございますとか、あるいは住宅関係の量産化を図るべき壁材とかその他の住宅部材でございますとか、あるいは食品関係の新しい食品でございますとか、あるいは文化関係でたとえば製本業といったようなものが今度の改正によりまして期待できるかと存じます。
  65. 近江巳記夫

    ○近江委員 今回の改正によりまして、近代化計画に知識集約化事項について定め、知識集約化の構造改善事業を進めることとしておるわけでございますが、四十八年度から行っているいわゆる第三近促との関係ですね、この第三近促を実施している業種との関係は今後どのようになるわけですか。
  66. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 第三近促は俗称でございますが、要するに知識集約化を進めていこうということでございまして、そのために知識集約化業種として構造改善業種指定をいたしました場合には、特に高度化資金におきまして所要資金の八割まで無利子の資金を提供いたしまして、いわゆる試験研究、あるいは人材の養成、市場の開拓、こういったことを進めるわけでございます。  今回のいわゆる新分野への進出業種でございますけれども、これは特に本法に基づきまして業種指定いたします。これは需要が停滞しておる、あるいは非常に事業者の数が多いといったようなことで過当競争がきびしいというような業種につきまして業種指定をいたしますと、その業種に属する方が新しい商品を開発いたします場合に、その新商品の開発のための試験研究費、それからそれを企業化するための投資、さらに古い設備の廃棄、こういうものにつきまして助成措置を講じようということでございます。  これと知識集約化との違いと申しますと、いわば需要停滞的な産業指定いたしまして、その中から他の分野への新商品の開発に助成するというのが今回の改正点でございます。従来の第三近促はそういった停滞産業ということでありませんで、広く知識集約化を図ろうという場合に対象にいたしておりますが、この場合の最大の特徴は、業界ぐるみで知識集約化を行うという点でございます。今度の改正によります新分野への進出は、その業界の中の個々の何人かのグループがそういった新分野進出計画を立てて出されました場合に、それを個々に承認をいたしまして助成していこう、こういう点が相違点かと存じます。
  67. 近江巳記夫

    ○近江委員 まとめてお聞きしますが、近代化計画にはまた新たに「従業員の福祉の向上、消費者の利益の増進、環境の保全その他の近代化に際し配慮すべき重要事項」についても定めることになっておりますが、その内容の詳細についてお聞きしたいと思います。
  68. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 今度の近代化計画におきまして、従来なかった点として、いまお話ございましたように、第三条の第二項の第三号といたしまして、従業員の福祉の向上に関する事項、それから消費者の利益の増進に関する事項、環境の保全に関する事項、その他近代化に際し配慮すべき事項というのを近代化計画の中に盛り込むようにいたしております。従来の近代化計画は、主として生産性向上の目標でございますとか、そのための設備の近代化の計画とかいったようなものが中心になっておったわけでございますが、今回この近代化を進めながら社会的な責任も果たしていくべきである、こういう観点からこの追加をした次第でございます。  従業員の福祉の向上という点では、その業種につきましての労働条件なり作業環境の改善の問題、あるいは福利厚生施設の整備の問題、あるいは健康管理上その業種として考えるべき問題、こういうものがこの計画の中に必要に応じまして盛り込まれるべきかと考えます。  それから、消費者利益の増進の問題といたしましては、まず商品の安全性の確保の問題でございます。そのためのたとえば品質表示をするとかしないとか、あるいはそれの適正な使用方法の表示、あるいはアフターサービスをその商品について業界としてどうするのか、あるいは流通面の改善の問題、こういうものが消費者利益の増進という形で近代化計画に盛り込む内容になろうかと思います。  それから、環境の保全の問題といたしましては、公害防止施設としてどういうものを設置するか、あるいは廃棄物の処理をその業界としてどういうふうに考えるか、あるいは工場の周辺にグリーンベルトといったようなものを設けるようなことを業界として考えるのかどうかとか、こういった環境の保全計画をこの近代化計画に盛り込んでまいりたいと思います。  これらは具体的にはそれぞれの業種に応じまして、その重要性も力点の置き方も変わろうかと存じますので、個々の業種ごとに内容は変わるかと思いますが、大まかに申しますならば、大体そういったことを近代化計画に盛り込んでまいりたいというように考えております。
  69. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほども申し上げましたが、こういうことはもっと早くやるべきことであったわけですね。その辺政府としては、内容が非常に遅い。特にこの事項については、それを申し上げておきたいと思います。  それからその次に、関連業種との構造改善につきまして、関連業種協調型の構造改善を設けた理由と効果並びに業界の反応についてお伺いしたいと思います。
  70. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 従来は近代化と申しますと、その業種の横断的な、つまり横割りの、製造業でございますれば、それを製造する業者が横に組織化を図り、同時に設備の近代化を図る、こう  いった構造改善計画あるいは近代化計画になっておったわけでございますけれども、なかなかそれだけでは効果が上がらない場合がございます。  たとえばプラスチックの廃棄物処理というものを考えてみました場合に、まずプラスチック廃棄物を集荷してくる業界の協力が必要でございます。それから、その廃棄物を集めまして、これを再生して他のプラスチック製品に切りかえるという場合の設備の開発につきましては、プラスチックの加工業者にはなかなかそういった設備の開発能力がございませんので、機械業界の協力が必要でございます。さらに、そのための金型をつくるというふうになりますと、金型業界に開発していただく必要がございます。そして今度は、そのプラスチック廃棄物による再生品が業界としてできました場合に、それをまた販売する流通部門の協力も必要でございます。  そういうふうに業種によりましては、単にそのメーカーだけが横で協力をいたしましてもなかなか近代化の実が上がらない、こういう業種も多いわけでございまして、そういう場合に、その原材料を供給する部門あるいは製造設備を供給する部門あるいは運送、保管、検査といったような関連部門あるいはその商品の流通部門、こういった関連業界が共同いたしましてこの構造改善計画に参画をするということが非常に効果を上げる場合もあると思われるわけでございまして、そういう場合につきましては、そういった関連業界も含めた構造改善計画をつくり得るようにしたのが今回の改正点でございます。  これに対します業界の反響でございますが、従来はそういった業界を加えることができませんでしたので、やや御不自由がございましたから、関連業界も加えることについては歓迎をしております。  ただ問題は、その関連業界が非常に大きな業界でございます場合には、たとえば流通部門を加えることによって、その流通部門が大きな商社等であって、逆に流通部門から支配的な形に振り回されるということがあってはまずいわけでございます。同様のことは、原料部門を関連業界として加えました場合に、原料供給部門が非常に大きな業界であるという場合に、そちらの方からのいろいろな制約を受けるということは逆効果でございます。  そういう意味におきまして、関連ぐるみの構造改善計画というのは、中心になる業界が主体性を持って行うことが必要でございまして、関連と協調体制が保てて、総体としての効果が上がる範囲において必要があろうと考えるわけでございまして、そういった面については、この関連ぐるみの構造改善計画を主務大臣が承認をいたします場合に、十分配慮する必要があろうというふうに考えております。
  71. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま長官がおっしゃった、まさにその点なんですね。そういうことで振り回されないように十分御注意をしていただきたい、このように思います。  それから、関連業種は特定業種ごとに指定することになっておるわけですが、その範囲、基準というものを明確にしていただきたいと思います。
  72. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 関連業種につきましては、特定業種指定がございました場合に、その特定業種との関連性が高いことその他政令で定める基準に該当するものとして、特定業種ごとにそのまた関連業種指定することにいたしております。  ただいま考えておりますのは、その関連業種指定基準といたしましては、まず第一が、その物品の半製品あるいは部品、原材料の製造あるいは加工を営んでおる業種でございます。それから次には、その物品なり半製品の製造のための設備なり機具を製造あるいは修理をしておる業種でございます。それからその次には、それの購買、販売、保管、運送、修理、検査といったような部門でございます。これは販売といったような流通部門も含むわけでございます。  なお、ただいまのは主として物を製造する場合について申し上げましたけれども、特定業種がサービス業でございます場合には、これに準じたものを指定するというふうに考えております。
  73. 近江巳記夫

    ○近江委員 この特定業種と関連業種とが、円滑にこの構造改善計画を策定し、事業を推進するための環境の整備など、国及び地方公共団体の役割りはきわめて重要になろうかと思われるわけですが、国及び地方公共団体はこれからどのような役割りを果たすことになるわけですか。
  74. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 この関連業種ぐるみの構造改善というのは、特に産地型の産業に多いかと存じますけれども、そういった場合のこの円滑な実施という面から考えますと、地方におきましての指導、推進という意味で、地方公共団体は非常に重要な役割りを果たされることになろうかと存じます。  そういう意味におきまして、国が政令指定等によりまして業種指定をして構造改善計画を承認いたしてまいるわけでございますけれども、それを実際に実行に移していきます場合の国と地方公共団体との有機的な指導推進体制につきましては、十分密接な連携を保つようにしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。特にいわゆる高度化資金等を融資いたしましてこういったことを推進してまいります場合には、高度化資金の窓口が府県でございますので、府県と私どもの方と十分連絡をとりまして、そういう面を推進してまいりたいと考えております。
  75. 近江巳記夫

    ○近江委員 従来のそういう国と地方との関係を見ておりますと、中小企業庁がおっしゃっておられることがなかなか地方へ行きますとそのとおりいかないという場合も多々あるわけです。そういう点で、密接に今後やっていくということをおっしゃっておられますが、言葉だけではだめだと思うのですね。ですから、特に中小企業庁とそうした都道府県との関係というものは、これは非常に重要な役割りを演じておるわけでありますから、言葉だけではなく、もっと連携を密にしてもらって、きめ細かにそうした運用ができるように今後やっていただきたいと思うのですね。どういう組織であってもそういう問題はあるわけですが、特にやはり中小企業全般をつかさどっておられるわけでありますし、その点はさらに密に今後の運用をしていただきたいと思うのです。  運用についての反省を込めて、今後の態度といいますか、長官の姿勢についてひとつお聞きしたいと思うのです。
  76. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 中小企業行政につきましては、特に地方的な問題も多いわけでございまして、府県を出先と申しますか、窓口としてやっております中小企業行政は非常に多いわけでございます。そういう意味では、従来から地方自治体とは密接な連絡のもとにその仕事を進めてまいっておるわけでございますが、近代化促進法の施行につきましては、全国ベースの業種が従来多かったせいもございまして、全部全国的な視野から物を見る必要があるということで、政令等で業種指定をし、主務大臣がその構造改善計画を認可する、こういう形をとっておりますが、実際の運用におきましては、十分地方庁と連絡をとりまして、その地方地方での地方庁の指導を大いにお願いをして、その効果を一層上げるように今後とも努力をしてまいりたいと考えます。
  77. 近江巳記夫

    ○近江委員 ひとつ今後、そういうふうに長官もおっしゃったわけですから、なるほどと思われるような、そういう連携をやっていただきたいと思うのです。  それから、計画策定から事業の実施の過程の中では、特定業種と関連業種とのどちらが主体になるかという問題なんですね。この点はどうですか。
  78. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 この関連業種ぐるみの構造改善計画におきましては、両者が相互に協力をいたしまして構造改善を進めてまいるわけでございますけれども、本来のねらいは、この特定業種自体の構造改善をより円滑に進めますために、関連業界にも御協力をいただいて関連ぐるみの構造改善計画にする、こういう趣旨でございますので、特定業種が主導的な役割りを果たすということを期待いたしておりますし、そういうふうな運用にしてまいりたいと考えております。
  79. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、主体となる特定業種が強過ぎまして、余り勝手なことをいたしますと関連業種がついていけない。たとえば計画策定には参加いたしますが、途中でやめる、あるいは計画策定にも参加しないという場合も考えられるわけです。今後の協調体制、共同責任体制についてどのように指導されていかれるわけですか。
  80. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 関連業界ぐるみの構造改善計画の場合には、主体となります特定業種と関連業種がお互いに相協力してもらうことが大切でございまして、どちらかがそっぽを向きましたり、どちらかが非常に専横的になりましても、この構造改善がうまく進まないおそれがあるわけでございます。そういう意味におきまして、この計画自体を認可いたします際にも、その計画が円滑に遂行されるような範囲で関連業界が含まれておるかどうか、その計画の運用の見通し等につきましても十分審査をいたしたいと考えておりますし、また実際に構造改善の実施も数年を要するような大事業になるわけでございますので、常時私ども監督をし、実行の面で指導をしてまいりたいというふうに考えております。もし、関連ぐるみでいろいろもめごとが起こったりいたしましてうまくいかないようなことがあれば、場合によっては指定の取り消しということも考えられるわけでございまして、そういうことになりませんように、十分私ども気をつけて指導してまいりたいと考えております。
  81. 近江巳記夫

    ○近江委員 大体、長官指定したところを取り消すということは非常に権力的な言い方なんですよ。政府はすぐそういう取り消すぞとか、それはまずいですよ。一たん認定をして、取り消すというようなことになった場合は、政府の責任ということを真剣に考えなければいかぬですよ。中間におきまして、これはちょっと問題があるなというところについては、飛んでいって指導する、立て直していく、こういう努力もせずに、うまくいかなかったら取り消すぞ、これは権力的な、いかにも官僚の発想ですよ。それについては重大な反省を求めたいと私は思うのです。どうなんですか。
  82. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 先生御指摘のとおりでございまして、計画の円滑な遂行のために最大限に私どもも協力をし、指導をしてまいりたいと考えておりまして、指定の取り消しは法律上は可能でございますけれども、万一にもそういう事態に立ち至らないように、十分指導の面で気をつけてまいりたいと存じます。
  83. 近江巳記夫

    ○近江委員 ひとつそのように親切丁寧な指導をしてもらいたい、常に見守っていく、失敗をさせないように見ていただきたい、このように思います。私がいま申し上げたことは、恐らく今後出てきますよ、関連業種という言葉が入ってきますと。その点は十分よく見守ってもらいたい、このように思います。  それから、新分野進出計画につきまして、進出促進業種としての指定要件、それから基準というものについて明らかにしてもらいたいと思うわけです。また、指定業種との関係はどうなるわけですか。
  84. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 新分野への進出を促進する業種の要件でございますけれども、私ども考えておりますのは、たとえば需要がどうも今後減少していくというような見通しがございまして、このままでいけば、その業種中小企業の相当数の方の事業活動に支障を生じるおそれがある。どういう場合にそういう需要減少があるかということでございますけれども、たとえば生活様式が変わって従来のものが余り使われなくなったとか、あるいは代替品が出現をしてきたとか、あるいは発展途上国からの輸入が非常に急増いたしまして、需要は落ちてないけれども、国内生産出荷減少する見込みである、こういった業種がまず一つあろうかと思います。  それから、二番目といたしましては、原材料とかあるいは素材といったようなものの供給事情が悪化をいたしまして、そのために中小企業の相当数の方が今後事業活動に支障を生じるおそれがある、こういう場合が二番目でございます。  三番目が、先ほどもちょっと申しましたが、国内的な要因でなく発展途上国等からの輸入の急増によりまして、供給過剰状態になってきた、こういうことで、その業種中小企業の相当数の事業活動に将来支障を来すおそれがある、こういった業種を大体新分野進出促進業種として指定をしてまいりたいと考えております。
  85. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、現状から見ますと、どういうような業種が対象となるのか、それについてひとつお聞きしたいと思います。
  86. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 具体的にはまだどの業種ということを内部で決めておりませんけれども、一応考えられます業種は、たとえばいわゆるドルショック法と申しますか、国際経済上の調整措置法に基づきまして、円の切り上げ等の場合に、非常にショックを受ける業種として指定された業種がございますけれども、こういうものは従来輸出が非常に伸びておりましたけれども、円の切り上げあるいは発展途上国の追い上げで輸出がだんだん困難になっておる業種でございますが、こういう業種は今回の新分野進出計画の進出促進業種の対象候補になろうかと存じます。
  87. 近江巳記夫

    ○近江委員 新分野進出計画の具体的な内容につきまして、できる限り簡潔に説明をしてもらいたいと思います。
  88. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 新分野進出計画は、まず試験研究をいたしまして、新商品の開発をいたします。その次に、その新商品の企業化を図るわけでございまして、それと同時に需要の開拓の問題がございます。それから、さらに必要な場合には、古い設備の処理の問題がございます。  したがいまして、この新分野進出計画で記載すべき内容として私ども考えておりますのは、その開発の計画の期間あるいは資金計画といったようなものももちろん必要でございますが、第一が試験研究の実施に関します計画、二番目がその成果が上がったとしての企業化に関します計画、三番目が需要の開拓に関します事項、四番目が古い設備の処理に関する事項、この四つを主な新分野進出計画の内容というふうに考えております。
  89. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、新商品の範囲ですね。既存商品との関係はどうなりますか。
  90. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 新しい商品を開発し、そっちに転換していくことを促進するのが今回の新分野進出計画のねらいでございますけれども、ここで言う新商品といいますのは、非常に厳格に、およそこの世に従来なかった商品といったような厳密な意味で考えているわけではございません。従来の商品と同じカテゴリーの商品でございましても、取引通念上新商品として扱われて国民の新しい需要に対応するという場合には、これは新商品と考えていいのではないかというふうに考えております。特に産業分類上のある分類をもって、その分類からほかの分類に移ることを新商品というように考えているわけではありませんで、それぞれの商品に即しまして原則として従来なかったような機能なりなんなりを持った商品というふうに考えておりますが、それも取引通念上新商品というふうに扱われるものであれば構わないというふうに考えております。
  91. 近江巳記夫

    ○近江委員 この新分野進出計画の具体的な内容というものはいまお聞きしたわけですが、今度はこの新分野進出計画の承認基準というものはどうなるのですか。
  92. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 大体五つほどの承認基準を現在検討中でございます。  第一は、その新分野進出事業によりまして、いまやっております仕事をやめて新しい事業に大半が移る、まるまるやめないまでもいま行っております事業の大部分は新しい商品の方に移っていくということを目的としているものが一つの基準でございます。  それから、その新分野に進出することによりまして、その中小企業者の能力が有効適切に発揮されるということが認められること。  それから、これは先ほど申しました取引通念上新商品あるいは新たな役務というふうに認められる事業を実施するものであって、その新商品なり、新たな役務が国民経済の健全な発展あるいは国民生活の安定向上に資するものであること。  それから、その新商品の分野におきまして需要拡大が期待をされておりまして、そこに移っていった場合に、その移っていった中小企業者の経営の安定が確保されるというふうに認められるものであること。  それから、その新分野進出事業を行うに必要な資金の額でございますとか、その他計画に載っております事項がその進出事業を円滑に遂行していく上に適切なものであるという、以上の五つが大体これを承認する場合の承認の基準になろうかと存じます。
  93. 近江巳記夫

    ○近江委員 新商品を開発しましたが、その後大企業がその分野に進出してくる場合、あるいは新商品を開発したが、その新商品が売れず、またもとに戻るといった場合も考えられるわけですが、こういう場合についてはどういう処置を講じられるわけですか。
  94. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 国が助成をいたしまして新商品の開発、企業化を進めるわけでございますので、それがある程度うまくいきまして進行しつつあるときに大企業が出てくるということになりますと、せっかくの新分野での仕事が挫折をしたりして、非常に資源のロスと申しますか、社会的な資本のロスが考えられます、そういう意味合いから、仕事の途中でございますならば、中小企業がその大企業の進出に対応できるような力を養うまでの間、大企業に余り急激な進出等はしてもらわないように、必要に応じて私どもとしては行政指導をいたしたい、かように考えております。  それから、新商品のことでございますので、成功すると思って私どもも助成しましても、あるいは失敗する場合も中にはあり得るかと思いますけれども、失敗してもとの分野に戻ろうというようなことが出てまいりました場合には、それはいかぬと言うのもぐあいが悪いかと存じますので、そういうときは、あくまでその中小企業の自主性を尊重せざるを得ないかと考えるわけでございます。
  95. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう運用という点から考えていきますと、無数にいろいろな問題が出てくるわけですよ。そういうことに対して、政府はいつも問題が出てくるとあわてふためいてどうするか、それじゃだめだと思うのですね。まずいろいろと想定をして、これについてはどうするか、先手先手を打って指導もしていく、やはりこういうようにやっていただきたいと思うのです。  それで、この中身につきましては一応これで留保して、関連の問題にいきたいと思いますが、いわゆる大企業中小企業の分野調整の問題でございますが、御承知のように昭和三十二年の十一月二十五日、法律第百八十五号で中小企業団体の組織に関する法律というのがあるわけですけれども、実際発動されたケースはまだ一件もないわけですね。今日、こういう安定成長という時代に入ってきますと、さらに大企業中小企業分野に進出をしてくる、これによって中小企業はもう壊滅的な打撃を受ける、そういうことも十分考えられるわけであります。そういうことで、わが党としましては、ずいぶん以前から中小企業者事業分野に参入する大企業者事業活動調整に関する法律案というものを出しまして、早くこれを成立させるようにと促進を訴えておるわけであります。大体こういうことをわれわれがする前に、政府は先駆けてこういう問題について本当に手をつけるべきだと思うのですね。こういう事業分野調整ということについては、一体政府はどう考えているのですか、こういう大問題を。
  96. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 中小企業が主としてやっております分野に大企業が入ってきた場合でございますけれども、一面では、余り急激な進出がございますと中小企業倒産をするというようなことで、資源のロスあるいは中小企業の事業の機会の確保を損なう、こういう問題がございます。ただ、もう一面、余りに中小企業の保護に堕しますと、いわゆる世の中が日進月歩でございまして、それに対してマイナスの影響を与える場合もあるわけでございます。たとえば御指摘のように中小企業性の業種指定して大企業の進出を抑制したといたしますと、一つは、中小企業がその制度にあぐらをかきまして競争がなくなるというマイナスがございます。それから、新技術の開発意欲がどうも刺激されにくい、あるいは競争による価格の引き下げ、消費者へのサービスという面にも問題が出てまいります。そういう意味におきまして、やはり競争の確保ということは、技術の進歩なり消費者利益の確保という面を考えますと非常に大切なことでございまして、そういった競争の確保中小企業者の事業の機会を確保するということをどういうふうに調和を図るかということが非常にむずかしい問題になるわけでございますけれども中小企業業種というものを考えました場合にも非常に流動的でございまして、中小企業性から大企業性の業種に変わる場合もありますれば、大企業がつくっておったのが成長性がとまって中小企業の分野に変わってきたという商品もたくさんございまして、業種を固定的に中小企業の行うべき分野と大企業の行うべき分野というふうに線引きをする、特にそれを法律に基づいて行うということは、非常に実際の面でむずかしい面がございます。かたがた先ほど申しましたような技術の問題、消費者の問題、物価の問題というようなこともございますので、私どもとしましては、基本的には自由な競争を大前提といたしまして、ただ大企業が急激な進出をする、それによって中小企業に一時的に非常に悪影響がある、こういう場合には、まず当事者で十分話し合いをしていただきまして、円満な妥結に持っていってもらう、それが話し合いがつかない場合には、地方の商工会議所なりあるいは地方公共団体、全国的な問題でございますれば中央の生産担当原局なり私どもなり必要な政府機関が中に割って入りまして、両者の言い分をよく聞いて適当な解決案を見出していく、こういった措置によりまして現実的な解決を図るということがより実際的ではなかろうかと考えておるわけでございます。  その場合も、一切大企業の進出をあくまで抑え込むという考え方ではなくて、競争を前提としながら、中小企業がそれに対応する期間を与える、その間に中小企業の助成を図りまして、大企業に対抗できるだけのいろいろな近代化設備なり何なりを入れる、そういう期間は大企業の進出は待ってもらう、こういうふうな考え方で対処すべきであろうというふうに基本的には考えております。  また、現行法には、進出について特殊契約とか組合協約とかを組合と進出しようとする大企業との間で結ぶ制度がございます。現実にはまだ発動された例がございませんけれども、これが伝家の宝刀と申しますか、裏打ちになりまして、話がつかなければ最後にこういう手段があるということは、現実の話し合いをまとめさせる上に非常に効果が上がっておるのじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。
  97. 近江巳記夫

    ○近江委員 一件も発動されておらないということ自体、手続が複雑であるということだし、いままでそういうケースが何回も出ておったのですが、結局これが利用されていないということは、法律としても問題があるわけですよ。そういう点で、やはり事業分野調整法というものは絶対必要なものだと私ども考えております。特に、たとえば、豆腐業界なんかに大手が進出をしてくる。朝早く起きて、家族で豆腐をつくって売っておるわけですよ。こういうところに大企業が進出してくる。これはもう全くそういう豆腐屋さんを絞め殺すことになるわけですね。  こういう点から考えていきますと、事業分野調整なんというものは、国民生活また零細業者というものを真剣に見ていきますと、十分に私は可能だと思うのですよ。ですから、その点中小企業庁長官中小企業問題では政府最高の立場におられる人ですから、真剣に今後その問題を考えてもらいたいと思うのです。全然考えないというのですか、考えるというのですか、どっちですか。
  98. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 豆腐につきまして大手の食品メーカーが二社、いま量産の体制をとろうとしておることは私どもも承知をいたしております。御承知のように豆腐には、毎日その日に売り切ってしまいます豆腐と防腐剤を入れまして一週間ぐらいもたせる豆腐とございます。この防腐剤にAF2というのを使っておりましたところ、これが健康に害があるということで先般禁止になりまして、そのために日もちのする豆腐が製造できなくなったわけでございます。そこで、今度大企業が高温殺菌法によりまして、一週間ぐらい長もちする、つまり無菌の豆腐、工場で殺菌された形でパッキングされて、人の手に触れないで最終的に商品が出てくる、こういった技術を開発しまして、長もちする豆腐が出てきた。それを量産化しようと、こう大企業側は考えておるわけでございますが、これは私はやはり技術革新の一つだと思います。やはりAF2が禁止になれば、これにかわる新技術が生まれまして、日もちのする豆腐が出てくるということも必要でございます。  ただ、こういった豆腐は大企業だけに任せるということは確かに問題でございまして、中小企業も必要であればこういった技術を採用いたしまして、やはりその量産型の豆腐を製造する、そして大企業と競争をする、こういうことが世の中の発展のためには必要ではないかと考えるわけでございます。そういう意味におきまして、中小企業である豆腐屋さんが、そういった量産設備を組合か何かをつくりまして導入するということであれば、私どもは所要の資金確保等につきましてできるだけの応援をいたしたい、かように考えております。  同時に、大企業が余り一挙に量産をされますと、非常に中小企業仕事を奪うことになりますので、この点につきましては現在農林省を通じまして、その大手の二社に対しまして指導をしていただいておりまして、中小豆腐業界と大手二社との話し合いも現在進捗中でございまして、いずれ適当な解決案が見出せるのじゃないかというふうに実は期待をいたしておる次第でございます。  それで、立法をいたしまして、大企業の進出を押えるというような措置をとるかどうかにつきましては、影響するところが非常に大きい問題でもございますし、この問題はいろいろ多角的に検討する必要があろうかと存じますので、なお時間をいただきましてもう少し実情の調査をいたしてまいりたいと考えております。
  99. 近江巳記夫

    ○近江委員 豆腐の話をしたのは、私は一例として申し上げたのでありまして、いろいろなそういう業種があるわけですよ。そこで、いまの中小企業団体の組織に関する法律というのでありますと、非常に背景としても制度としては弱いわけです。ですから、そういう話をしていく上におきましても、やはりその背景としてそういう分野調整法というものをきちっと持っておれば、政府だって指導をするにしたってやりやすいわけですよ。ですから、今後この法律をつくることについて十分検討されていきますか、それを聞いているのです。
  100. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 昨年から相当の予算を使いまして、従来大企業が進出してどういった影響があったかといったような調査をいたしておりまして、いまその調査結果の取りまとめ中でございます。これは進出をした大企業側、それからその進出を受けた中小企業側、さらに消費者と、三者の意見もいろいろ聞きまして調べを行っておりますが、こういった調査結果も踏まえまして、必要があればさらにもう少し細かい調査もやりたいと実は考えておりますが、そういった結果を見まして、立法の要否についても検討をいたしたい、こういうふうに考えております。
  101. 近江巳記夫

    ○近江委員 十分その点については考えていただきたいと思うのです。われわれとしては、もうすでに法律案を出しておりますので、十分ひとつまた参考にしていただいて、よく検討をし、一日も早く成立ができるように努力していただきたい、このように思うわけです。  それから、高度成長あるいは石油危機あるいはまた海外のそうした要因等も重なりまして、わが国としては不況インフレということが足かけ三年になっておるわけであります。そういうことや、非常に倒産も激増いたしておるわけですが、最近のこの中小企業倒産につきまして、長官としてはどういう反省をされ、今後どういう対策をおとりになるわけですか。
  102. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 中小企業倒産状況でございますけれども、一応千件を超えますと危機ラインと申しますか、非常に高水準というふうに見られておったわけでございますが、昨年十、十一、十二と三カ月、千百件台を記録いたしまして、相当不況が深刻化した結果が出ておったわけでございますが、幸いにことしに入りましてから一月、二月は八百件台と、やや小康状態と申しますか、倒産件数が減ったわけでございます。もっともこれは季節性もございまして、一、二月は例年減少する月でございますので、一、二月の水準としては決して低い水準ではございません。それから、三月はまた千件台になりましたが、千二十三件でございまして、昨年の三月の水準よりも少ない件数になっております。  こういうふうに、この一、二、三と見ましたところでは、昨年来いろいろ私どもが手を打ってまいりましたいわゆる金融面からの応急措置というものがある程度効果を上げまして、倒産はやや少な目になっておるということが言えようかと存じます。  ただ、その倒産の原因を見ますと、昨年の前半は、過去の高度成長時に急激に拡張したようなところで、いろいろ放漫的な経営をやられたところが倒産をしたということが多かったわけでございますけれども、昨年の後半以後は、今度の総需要抑制等によります不況の影響を受けまして、売り上げの減少、受注高の減少というようなものが主たる原因となって倒産をしたというものの比率がだんだん上がってまいりまして、この二、三月ぐらいでは大体全体の四割から五割がそういった原因になっております。これは一生懸命やっているけれども仕事がなくて倒産をした、こういうことでございまして、そういう意味では、中小企業にとっては非常に苦しい状態がより深刻化しつつあるとも言えるかと思うわけでございます。  こういう状態に対しまして、私どももちろん金融面措置はさらに継続して、必要に応じ所要の手当てをしてまいりたいと考えておりますけれども、同時に、いまの中小企業の要望は、金融以上に仕事を欲しい、こういう声かと存じます。そういう意味合いにおきまして、去る二月並びに三月と二回にわたりまして不況対策政府は決定いたしまして、特にこの仕事確保という意味で、たとえば公共事業契約を上期に傾斜をかけるとか、あるいは住宅建設促進するとか、あるいは官公需確保を図るとか、こういった措置を現在講じておるところでございまして、こういった措置効果を上げまして、一日も早く景気が上向くことを期待いたしておる次第でございます。
  103. 近江巳記夫

    ○近江委員 景気が上向くことを期待するということをおっしゃっておるわけですが、いわゆる安定成長の時代に入ってきて、そんな急にはいかぬわけでしょう。そういうことになってきますと、政府としてはやはり努力をしてもらわなければいかぬと思うのですね。下請代金支払遅延等防止法というものがあるわけですよ。親企業が、たとえば生産を二割カットする。そうなってきた場合、下請に対しても二割カット、それなら下請の方も親企業もそうだからというようになるかもしれませんが、下請には仕事は一割しか渡さない、あるいはゼロにしてくる。そうなってきますと、設備等にかけました金の返済とかができなくなってくる、従業員もみなやめさせなければならぬ、もう全然借金の返済のめどがつかない、こういうようなことで自殺者も出ておるわけですね。そういう点について、下請代金支払遅延等防止法というものがありながら、どれだけ立入調査をやっているのですか。いまのこういう大企業のやり方というのはひどいですよ。支払い条件にしましても、大体四カ月以上の手形というものは、これはもう支払い不能の手形と政府は見ておられるにかかわらず、長期間の手形も出しておる、現金の払いが悪い、こういう力を背景にしたやり方というものはけしからぬと思うのです。これは公取事務局長もおられますし、長官からもひとつその点について、これはどうなさるんですか。  それからさらに、仕事の発注という面につきましては、官公需の発注問題、これを私は苦労しまして、中小企業庁がデータを出さぬものだから、各省から全部データをとりましてまとめたわけですね。これだって三〇%にも達していない。こういうことじゃだめですね。これは少なくとも四〇%ぐらいにはやるべきですよ。  いま矢継ぎ早に私は問題点を指摘したのですが、こういう問題についてはどう思いますか、交代でお答えください。
  104. 斎藤太一

    斎藤(太)政府委員 こういうふうに経済界が全般的に活動が停滞をいたしますと、一次下請、二次下請と、下の方の下請になりますほどそのしわ寄せを食っておることは御指摘のとおりでございます。  私ども、下請対策としましては、一つは、下請代金支払遅延等防止法による監督の励行を図りたいというふうに考えまして、四十八年には一・四半期に大体四千事業所を調査いたしておりましたけれども、四十九年に入りましてからには一・四半期に大体五千事業所を調査いたしております。  それで、五千事業所の調査をいたしますと、大体五百件ぐらいの違反が見られるわけでございます。一番多いのは契約の書面の交付をしていないという点でございますけれども、そのほかにも、御承知の、品物を受領した後六十日以内に代金を支払わなければならないという規定に違反して支払いが遅延しておるとか、あるいは非常に長期の手形を交付しておるとか、こういった違反が見られます。  こういうものにつきましては、改善方を指示いたしまして、指示してもなお改善が見られないものにつきましては、公取に案件を移しまして、独禁法に基づく処分をしていただく、こういうふうなことになっておるわけでございますけれども、私どもこの取り締まりを通じまして痛感しますのは、結局、親事業者中小企業である場合が非常に多いのでございまして、親事業者自体も非常に資金繰りが苦しいということで、ないそでは振れぬと申しますか、自分が苦しいために意に沿わないけれども払いがおくれる、こういう状況が多いわけでございます。  こういう状況に対しましては、金融の面で、特に不況色の強い業種、あるいは下請が多くて払いが悪そうな企業群、そういうものに重点的に政府系金融機関から救済融資を行いまして、その辺の資金繰りをつけるように別途手配をするということと、それから下請企業振興協会を活用いたしまして、仕事の減った下請には別の仕事あっせんするように努めておるわけでございます。  また、先般も千数百社の親事業者長官名で文書を出しまして、単価を一方的に切り下げないで十分協議してもらいたいとか、いま先生の御指摘のございました親企業の減産率以上に下請への発注を減らさないようにとか、あるいは発注が減る場合にはなるべく早目に下請にそれを知らせるようにとか、そのほか、下請の資金繰りの悪化を防止するために親企業側も十分協力するようにとか、こういったことについて要請を行って、親企業側に対してもいろいろ指導はいたしておるところでございます。  しかし、やはり基本的な解決策としては、景気が早く上向くことが何よりでございまして、不況下にありましてはこういった対策はなかなか効果が及ばない面があることを非常に痛感する次第でございます。  それから、官公需につきましては、前年度は年度当初に決めました目標は、政府及び公社、公団の発注の大体二八%を中小企業向けに確保する、こういう計画でございましたが、各省庁に、こういう時期でもありますので、極力中小企業向けの発注をお願いいたしましたところ、昨年十二月末で中間的に集計をいたしましたところでは二九%をちょっと上回っております。特に成績がよくなかった公社、公団につきまして、各省庁等を通じまして中小企業向けの発注の増大方をお願いいたしましたところ、最近非常に成績が上がってまいりまして、いま集計中でございますけれども、大体全体として三〇%を超えるような実績が達成できたのではないかというふうに考えております。三〇%という数字は、実績としてはこの十年ぐらいにまだ一回もなかった数字でございまして、そういう意味では各省庁の協力をいただいたと考えておりますが、私ども決してこれで満足しているわけではございませんで、さらにこの率の高まるべく今後も五十年度について努力をいたしたいと考えております。
  105. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 下請法の執行につきましては、公正取引委員会といたしましても、通産省と協力をいたしまして、従来から厳格に実施をしておるところでございますが、今年度は親事業者に対します書面調査の件数、これは予算上ふえることになりましたので、従来は大体年間一万件の調査をいたしておりますが、これを一万二千件にふやしまして、調査対象を広くして、実情の把握をさらによくするように心がけてまいりたい、こういうふうに考えております。  なお、検査対象件数、これは四十八年度と四十九年度とを比べてみますと、やはり四十九年度の方が若干ふえておる、四十八年度七百九件に対しまして七百四十九件と四十件ばかりふえておるというような現状でもございますので、私ども十分にこの審査基準を厳格にいたしまして、立入検査をいたしますと同時に、勧告あるいは公表の制度を厳格に活用してまいりたいというふうに考えております。
  106. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間がないから終わりますけれども、最後に大臣に要望しておきますが、いま長官事務局長からそれぞれ下請の問題あるいは官公需の発注の問題等について御答弁があったわけです。  私は、この官公需の問題を、非常にじみな問題でありますが、一貫して予算委員会あるいは本委員会で叫び続けてまいりまして、政府もそれにこたえて若干の成果は出しておられるようであります。その点は若干は評価するわけでありまして、さらに評価できるように一層努力していただきたい。特に三〇%、いままでない記録をつくりそうである、それは認めるわけでありますが、さらに努力していただいて、第一段階として四〇%ぐらいには持っていってもらいたい、このように思うわけです。ですから、さらにその点について努力をしていただきたいと思います。  その点につきまして、まとめとして大臣から御決意をお聞きしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  107. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほど来中小企業問題についていろいろ御意見が出ましたが、特に重要な問題であります分野調整、それから親企業からの支払い遅延に対するいろいろな対策官公需中小企業に対する発注量の増大、その他各般の意見が出ましたが、いずれも私は傾聴すべき御意見だと思います。今後とも政府中小企業政策を進めていきます上において、参考にさしていただきたいと思います。
  108. 山村新治郎

    山村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時散会      ————◇—————