○板川
委員 法制局に相談すると、クラスアクション制度というのは、独禁法から入るよりも
公害救済法の方から入ったのが筋道だ、こう言われておることはわかるのです。私はいま言ったように独禁法一般、たとえば七百九条で請求した、そういうものじゃなくて、二十五条、二十六条で審決が確定したのだから、そして相手方は自分の非をとにかく認めて自分の不利益を認めたのだから、審決に従うのだから、そこで損害の請求権というのは、いろいろの方があるでしょうから、あるところで集団を代表して請求をし、その
方式がきまったら、全部にそれが行き渡るというクラスアクション的な制度が
考えられないものかどうか、こういうことを聞いておるのであります。法務省を特に呼んだのは、独禁法
改正だというときには、反対の方の議論は大変熱心に研究されて、消費者を救済しようという法理論は余り熱心に研究していないような感じがしますから伺ったわけでありますが、ひとつ消費者の救済ということも公取とも
ども検討してもらいたい、こう思います。
公取
委員長にせっかくですから一言注文をしておきたい。これは公取
委員長に注文するというのが妥当かどうかわかりませんが、「独禁法運用と今後の問題点」という論文を、呉文二という
公正取引委員会の
委員が、昨年の八月十五日の
日本経済研究センター会報二百三十号の特集「
企業行動のルールを探る」という中に載せておる。昨年の八月十五日と言えば、すでに独禁法
改正研究会が開かれており、しかもこの呉
委員はそのメンバーであるということです。ところが、この論文を見ますと、寡占状態は全く心配ないと言っており、物価が上がるのはインフレと
石油ショックが原因であって寡占やカルテルによっての物価値上がりじゃない、こういうことで、いわば寡占やカルテル者に免罪符みたいな論文を出しておられます。これはすでに独禁法
改正研究会の
委員としてのメンバーであり、そういう議論をしておる中でこの公取の
委員があえてこういう論文を発表する理由はないと私は思うのです。何か日銀の政策
委員とかをやっておった人だそうでありますが、それは日銀の政策
委員か何かをそういう
立場で書くならば別だけれ
ども、公取の
委員として書くのはどうも適切じゃない。しかし、これはここで適切じゃないと言っても、自己の意に反してどうこう言われる筋はない、独立権を持っておりますから言いません。また、これは公取
委員長に文句を言ったところで、五人の公取
委員というのは同じ資格で、公取
委員長がこれを指揮権をもっておまえけしからぬぞと言う資格がない。多数決で平等だという公取
委員会の運用でありますから、この公取
委員の言動を公取
委員長の監督不行き届きだとは申しませんが、こういう議論は
公正取引委員として適切な議論ではないということでこの
委員会で議論があったということをひとつ伝えてもらいたいということを私は要望いたします。
それから、あと五分ほど時間がありますから、この時間内で
通産大臣にさっき残った問題を申し上げたいと思うのです。
通産大臣、この営業の重要な一部譲渡を命ずることは、産業政策に介入するのでこれはもう絶対に容認できないという論理は、これは私は一般的じゃないと思いますね。それでは、
環境庁は
公害問題で、
通産省が幾ら
工場をつくろうと思ってもそれは
環境上好ましくない、こう言う権限があるのでしょう。
環境庁にはある。それはなぜあるかと言えば、公共の福祉を守るという
立場から、
通産省の一般的な権限を
規制できる法体系になっておる。そういう権限を持っておる。だから、公取が
私的独占を排除するという
立場から、
通産省の産業政策の一部に介入したとしても、それを
通産省が全面的に産業政策に介入したのはけしからぬと言うのは行き過ぎじゃないでしょうか。どうも私はこの辺は、通産官僚の感情的な反対理論を
大臣が余り素直に取り過ぎている感じがいたしますから、意見として申し上げておきましょう。
それから、原価の公表に対して反対だと言っておる。これは現在、独禁法の四十条で公取に
調査権があるじゃないか、こう言われております。だから、それを使えばいいじゃないか、あえてこれの必要はないと言う。そうしますと、四十条で同じような趣旨をやられることを
通産省は認めておるのでしょう。そうだとすれば、四十条、これは自主的に競争制限があるということをある程度証拠をつかまないと働かない規定だと思いますが、カルテルは一般の中
企業も含めて小さい
企業がお互いにカルテルを結ばなくちゃ価格の値上げができない、こういう制度、今度はこれが非常に厳しく取り締まられておる。ところが、数社あるいは片手か十社か、それ以内の寡占体系の中で、寡占的な
企業の中で、暗黙の了承の中でカルテルと同じような行為が行われるというおそれがある。だから、そういう場合には一々四十条ということでなくて、制度的に価格の内容について
調査をして、あるいは届け出をさせる、こういうことでありますから、四十条でやれるということを認めておるならば、今度の原価公表の
総理府原案に反対だという論旨が成り立たないと私は思いますね。
それから、第三点の株式の保有制限、これは当初の案は純資産の二分の一だ。今度は百億以上、純資産の額だ、こういうふうに二分の一をはずして大変緩やかになった。どれだけこれにひっかかっておるのかと調べてみたら公取案では二分の一ですが、五十七社、今度は純資産の額か資本金かどっちか大きい額、本当は小さい額というならわかるのだけれ
ども、大きい額ということになるとひっかかるのは十七社、どこが抜けておるのかと思って見たら三光汽船がひっかからなくなってしまった。これは余談ですが、実は三光汽船が適用されないということになる。まさかそれで
通産大臣、反対してきたわけではないでしょうけれ
ども、しかし株式持ち合いが、実は近代独占と言われる中で非常に力を持ってきたのです。お互いに株を持ち合う。これは私
ども資料をつくったのがありますから後で見せてもいいのですが、三菱グループではお互いに二六%持っておる。株式の持ち合い数が総額三十一億株、住友グループでは約九億株、三井グループでは十三億五千万株、こういうように相互に持ち合いをして、そして大
企業がグループをつくってお互いにグループで市場支配を行う、こういう危険性があるから、この株式持ち合いについての
規制を加えよう、こういうことであります。せっかく
私的独占という一
企業体を分割しても、こういうようにグループの
規制がなければ、実は近代独占というものの取り締まりができない。独禁法等に制約を加えようというなら、この問題を当然取り上げなくちゃならぬと思うのであります。これは
アメリカでも御承知のように、銀行は五%以上持ってはいけない、こういう規定がすでにありますし、あるいは競争会社の株は持っては悪いという規則ももうすでにあるわけです。ですから、株式の
総量規制に疑問があるとか、あるいは総資産の百分の五か純資産のいずれか大きい方で律していけといってこれに反対するということは、
経済の実態というものを
通産大臣は知っていない、私はこう思います。
時間でありますからこれで終わりますが、とにかく独占
禁止法というものの趣旨をよく勉強されて善処されるように要望して、終わります。