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1975-02-19 第75回国会 衆議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月十九日(水曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長代理理事 田中 六助君   理事 稻村左近四郎君 理事 武藤 嘉文君    理事 森下 元晴君 理事 佐野  進君    理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君       天野 公義君    内田 常雄君       浦野 幸男君    越智 通雄君       近藤 鉄雄君    塩崎  潤君       田中 榮一君    丹羽喬四郎君       八田 貞義君    深谷 隆司君       前田治一郎君    板川 正吾君       岡田 哲児君    勝澤 芳雄君       上坂  昇君    渡辺 三郎君       野間 友一君    米原  昶君       松尾 信人君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         通商産業政務次         官       渡部 恒三君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省基礎         産業局長    矢野俊比古君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         中小企業庁次長 小山  実君         労働大臣官房審         議官      細野  正君  委員外出席者         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  高圧ガス取締法の一部を改正する法律案内閣  提出第三二号)  通商産業基本施策に関する件  中小企業に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 田中六助

    田中(六)委員長代理 これより会議を開きます。  内閣提出高圧ガス取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。  提案理由を聴取いたします。河本通商産業大臣高圧ガス取締法の一部を改正する法律案
  3. 河本敏夫

    河本国務大臣 高圧ガス取締法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明いたします。  現行高圧ガス取締法は、昭和二十六年に高圧ガス保安に関する基本的な法律として制定され、その後昭和三十八年の高圧ガス保安協会の設立に伴う改正等を経て今日に至っております。  その間に、高圧ガス製造事業所の大規模化複雑化等が進行し、一昨年の一連の大規模爆発火災事故に見られますように、これらの事業所が一たん事故を起こすと、公共の安全の観点からもきわめて問題であり、高圧ガス製造事業所における保安体制の抜本的な強化を図ることが急務となっております。また、一般消費者等における液化石油ガスの急速な普及とともに、その災害の防止のための施策を一層充実することが要請されております。  このような事態に対処するため、政府といたしましては、高圧ガス取締法に基づく保安基準に関する規制強化等により保安確保に万全の努力を傾注してまいりましたが、保安問題について抜本的な見直しを行うため、高圧ガス及び火薬類保安審議会に今後の高圧ガス保安体制のあり方について審議をお願いし、昨年七月に答申をいただいた次第であります。  今回の改正は、この答申の趣旨に沿って、高圧ガス保安体制について緊急に必要とされる改正を行うものであり、高圧ガスの利用の量的、質的変化に即応した保安体制の整備を図ろうとするものでございます。  次にこの法律案要旨を御説明申し上げます。  第一は、高圧ガス製造事業所における保安管理組織強化することであります。高圧ガスによる事故を防止するためには、事業所における保安管理について責任体制を明確化するとともに、高圧ガスに関する十分な知識経験を有する者がこれに当たることが不可欠な要請であります。かかる観点から、事業所規模に広じ、保安統括者のもとに、工場の主要な分野、機能ごとにピラミッド型に保安管理組織を整備するとともに、これら保安責任者の資格についても法定することとしております。  第二に、保安確保のためには高圧ガス製造事業所における自主保安の一層の推進を図ることが必要であることにかんがみ、危害予防規程充実従業員保安教育強化を図ることとしました。すなわち、危害予防規程については、その認可申請に際して、保安に関し高度の専門的能力を有する高圧ガス保安協会意見書を添付させることとし、都道府県知事認可に当たっての判断材料に供することとしたこと、また、事業所保安教育計画に対して都道府県知事変更命令権を新たに設け、従業員教育の内容を不断に改善、向上するための措置を講じ得る道を開くこととしたことであります。  さらに、保安担当者の再教育についても法定し、事業者は、保安担当者に対して高圧ガス保安協会の行う講習を一定期間ごとに受けさせなければならないことといたしました。  政府といたしましては、これらの規定を厳格に運用し、もって保安確保に万全を期する所存であります。  第三に、高圧ガス製造のための設備のうち特に爆発等災害発生のおそれがあるものについて、製造段階から公的機関による検査を義務づけ、設備欠陥に基づく災害発生を未然に防止することといたしております。現行ユーザー段階での完成検査に加えて、メーカー段階からの製造検査を導入することにより保安確保に万全を期する所存であります。  第四に、高圧ガス容器及びバルブ類容器付属品に対する規制改善強化であります。バルブ等高圧ガス容器付属品につきましては、新たに容器本体と同様の検査制度をとることにより、これらの欠陥による事故を根絶することを目指しております。また、液化石油ガスの急速な普及に伴って、現在膨大な数の液化石油ガス容器が流通いたしておりますが、現行法容器証明書制度は、このような容器普及する前に作られたものであるため、実態にそぐわない面が出ていることにかんがみこれを改善することといたします。  第五に、高圧ガス保安協会に対し、新たに政府出資を行って、同協会の高圧ガス保安中心的役割り強化しようとするものであります。高圧ガス保安協会は、昭和三十八年に設立されて以来、高圧ガスに関する保安対策を推進する中核的機関としての役割りを果たしてまいりましたが、液化石油ガス消費者保安対策等に関する業務を抜本的に強化することとするほか、保安情報の収集及び提供等を行う等業務の一層の充実を図ることといたしております。  このほか、小規模高圧ガス製造事業所に対しては、事後届け出制事前届け出制に改めることとするほか、手数料、罰則についても所要の改正を行うことといたしております。  以上がこの法律案提案理由及び要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 田中六助

    田中(六)委員長代理 以上で提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  5. 田中六助

    田中(六)委員長代理 通商産業基本施策に関する件、中小企業に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村重光君。
  6. 中村重光

    中村(重)委員 河本大臣考え方を明らかにしていただきたいと思いますのは、中小企業省設置の問題であります。同僚委員から当委員会においてあるいは本会議におきましても各党からその設置必要性について強調されているところですが、どうも政府態度というのは反対なのか賛成なのか、消極的な答弁が最近は非常に強いようです。河本大臣も、田中総理考え方を本会議においてお聞きになっておられると思うのでありますけれども田中総理からは、中小企業省設置について期待が持てる答弁がなされているわけです。これは議事録を見ませんとはっきりいたしませんけれども設置するとはっきり言い切ったとも考えますが、設置をする方向でやるというような非常に期待を持てる答弁であったわけです。ところが、先ほども申し上げましたように、どうも最近は政府態度としては後退をしておるというように感じられるわけですが、河本大臣としては、三木総理が言う不公正の是正という面から、もうこのところ中小企業省設置に踏み切る必要があるのではないかというように私は思います。その点についての考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  7. 河本敏夫

    河本国務大臣 中小企業わが国産業において占める比重というものは非常に大きなものがございます。したがいまして、中小企業政策というものがうまくいきませんと、日本産業政策というものはうまく進まない、かように言っても過言ではないと思うのでございます。そこで、たびたび中小企業省設置したらどうかという意見が出てくるわけでございますが、中小企業は重要でありますけれども中小企業という独立産業を形成しておるわけではございませんで、全産業の一部を形成しておる。したがいまして、大企業とも中小企業ともそれぞれ密接な関係があるわけでございます。そういう意味から、これをいま独立の省とするということは行政上かえって混乱を来す、こういうふうに私は思います。でありますから、むしろ産業全体を監督いたしております通商産業省におきまして、中小企業行政というものを強化しながら、そして先ほどお話しになりましたような不公正の是正であるとか、あるいは中小企業産業育成強化であるとか、そういうことを現在の機構のもとにおいて積極的に進めていく、これで十分できるのではないか。至らぬ点があれば、なおこの中小企業庁強化していく、そういう方向でやれるもの、ただいまのところは、さように考えております。
  8. 中村重光

    中村(重)委員 きょうここで議論をしようとは思いませんけれども、あなたのように、中小企業は全産業にわたっているから、したがって中小企業だけを切り離して独立の省をつくるということは適当ではないのではないかという考え方をずっと推し進めてまいりますと、私は労働省の場合だって同じようなことが言えるのではないかと思うのですよ。関連はみんなあるんです。それでいま、関連があるからというようなことから言いますと、矛盾だってあるのじゃないか。同じ中小企業でありながら中小企業庁が手の及ばないところだってあるというのはおかしいとお考えになりませんか。たとえば建設関係中小企業者は、中小企業庁所管になっていないです。建設省がこれを担当するということになっている。そのことが中小企業庁として行政を進めていく上においていかに障害となっておるかということについては、あなたも御存じになっていらっしゃると私は思うのですよ。中小企業の問題というものは、いまお答えになりましたように、私は、日本の国の経済安定経済方向に持っていくという点から考えてみましても、また第三次産業というものが非常に増加をしておるというような点からいたしましても、そして働いている労働者関係等考えてみましても、中小企業のウエートというものは非常に高くなってきている。したがって、中小企業の問題というものは、政府としてはきわめて強力な行政運営をやっていくのでなければ、三木総理が言っている不公正の是正にもつながらないし、また日本の国の経済安定成長方向に持っていくこともできないのではないか。大企業との関係があるからこれと切り離して独立の省をつくることば問題があるということになってくると、やはりいままでのように、大企業の利益のために中小企業が左右されるという形になりかねないというように私は感じます。したがいまして、いまのお答えでは、私どもが言う中小企業省設置をする必要があるということに対しての説得ある答弁ではないというように考えますけれども、それらの点に対しては、どのようにお考えになりますか。
  9. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、中小企業生産は御案内のように全産業のほぼ半分に達しておるわけであります。そして、全業種に及んでおるわけでございます。でありますから、私は、日本産業中小企業とそれ以外の産業、この二つに分けて行政機構をつくるということは適当ではない、むしろ中小企業行政というものは強化しなければならぬと思いますし、中小企業対策というものはもっともっと充実しなければならぬということは痛感しております。ただしかし、別の省をつくったからうまくいくかというと、必ずしもそうではないと思うのです。でありますから、いまの制度強化し、充実しながら中小企業対策というものを十分にやっていきたい。これが現時点においてはいい方法ではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  10. 中村重光

    中村(重)委員 中小企業が全産業、全業種に及んでおる、そのとおりです。だからといって中小企業省設置するということが障害になるという点は、私はあるとは考えないですね。  それから、中小企業対策強化し、充実をしていくとおっしゃるのだけれども、それは金融の問題であるとかあるいは税制の問題であるとか、指導行政というものももちろんあるわけですから、そうしたことが考えられるのでしょうが、現実の問題として約四百万事業所に達するところ中小企業に対して、国の予算面から考えてみましても、中小企業庁所管分がようやく一千億台を突破いたしまして、一千六十億ですか、その程度になったにすぎないですね。全体の予算の中に占める比率というものは〇・五五%程度、コンマ以下に扱われてきているということが、いかにも言葉としては中小企業対策というものを強化し、充実をするという、いわゆる総論的に非常に耳ざわりのいいようなお答えにもなるのだけれども、実際政府が進めている施策というものは、いつも歴代大臣が同じような答弁をされるけれども中身はどうもそのとおりではない。やはりこれは独立の省というものが設置されていないところから、中小企業対策が消極的に扱われているということになるのではないかという感じが私はいたします。  ですから、歴代大臣が進めてきた中小企業行政と、あなたが大臣になられて今後進めていこうとする中小企業行政というものが、質的にどう変わってくるのかというようなことを中身として明らかにしていただくのでなければ、いまの答弁だけでは私どもは納得するわけにはまいらないということになるわけです。それらの点はどう今後対策として強化充実をしていくことになりますか。
  11. 河本敏夫

    河本国務大臣 お説のように、中小企業近代化施設等のためにいろいろ補助をするわけでございますが、そういう意味での一般会計における予算というものは千億を超えた程度でございますけれども、しかし別に中小企業関係政府の三金融機関では去年よりも相当大幅に資金量がふえておりまして、当初予算から二兆五千億というきわめて大きな金額を計上しておるわけでございます。  それからまた、現在政府のとっております中小企業対策というものは、私はなかなか充実しておると思うのです。それはもっともっとと言えば幾らでも切りがないと思いますけれども、まず現在の国家財政規模日本産業規模から見ますと、私は、考えられる中小企業対策というものは相当手を打っているのではないか、こういうふうに思います。しからば一体どういうふうな中身か、こういうふうに問われますと、これは説明いたしますと相当時間もかかりますからこの場で説明することば省略させていただきますけれども、私は相当充実しておる、こういうふうに考えております。
  12. 中村重光

    中村(重)委員 充実をしておるとおっしゃるのだけれども充実してないのですよ。たとえば中小企業政府系金融機関からの借り入れが、中小企業者借り入れ総額の何%になっているのか、あなたは御存じになっていらっしゃいますか。依然として一〇%を超えないというこの現実をどうお考えなのか。十数年前から政府関係金融機関中小企業の総貸し出し額に占める比重は一〇%内外というものを低迷しているのにすぎないではないか。これでもって中小企業施策強化し、充実されたということをどうして政府はおくめんもなく言えるのだろうかと私は不思議に考える。民間金融機関から貸し出しをしているところ比重の問題からお考えになってもおわかりであろうと思う。たとえば公正取引委員会が明らかにいたしました総合商社六社が都市銀行から借り入れているところ金額というものは——六大商社借り入れ額はここ三、四年前の資料で見ましても六兆数千億でしょう。それに対しまして、そのほとんどは都市銀行から借り入れているのですよ、わずか六つの商社が。その商社資本金はわずかに四千億にすぎないというこの実態。いかに金融面から大企業というものが、なかんずく総合商社というものが守られているか、そしてその借り入れによって土地の買い占めをやったり、あるいは買い占め、売り惜しみをやったりして、思うようなことを彼らはやっている。しかし、中小企業というものはなかなか金融難というものは緩和されないという、これが実情であるわけです。申し上げたように、政府関係金融機関貸し出し比率、あるいは民間金融機関からの中小企業に対するところ貸し出しと大企業に対するところ貸し出し等々から考えてみましても、中小企業というものは守られていないと私は言わざるを得ないのです。  このように、政府が進めているところ行政中小企業行政というようなものでは、これはもういまのような機構ではやはりだめなんだ。中小企業省というものを設置して、独立の省をつくって強力に中小企業対策を進めない限り、日本の国の経済の安定にもつながらない、不公正を是正することにもならないという考え方の上に私は立っているわけです。その点に対して、同じような質問であり答弁を繰り返すことになるのかもしれませんけれども、少しは抽象的ではなくて具体的に、なるほど政府中小企業対策について熱意を持って前進したやり方をやっているというようなことを説明をしていただく、また今後の方針としても具体的に説明をしていただかなければ、私どもは納得するわけにはまいらないのです。どうですか。
  13. 河本敏夫

    河本国務大臣 これはいま中村さんがお話しのように、理想という面から考えますとまだまだ中小企業対策というものは不十分だと思いますが、ただしかし現在の国の財政全般から見ますと、私は相当力を入れておると思うのです。繰り返して恐縮でございますけれども政府系の三機関からも二兆五千億という当初予算を計上しておる。それから、昨年の末も七千億という特別の資金枠を設定した。こういうふうな事態からお考えいただきましても、非常に力を入れておる、こういう点は私は御理解していただけるのではないかと思うのです。  なお、中小企業対策というものを重視しなければならぬという考えは、私は全く同意見なんです。これは繰り返して恐縮でございますけれども、あくまで中小企業というものは日本の全産業生産の半分を占めておる。この中小企業対策というものがうまくいかないで日本産業がうまくいくはずはないのです。しかも数は五百万もありますし、従業員は三千万もおる。でありますから、中小企業がうまくいきませんと、これは社会問題にもなり、国全体が動揺してくる。こういうことでございますから、中小企業対策というものはもう徹底して強化していかなければならぬ、これは全く同意見なんです。  ただ、中小企業省をつくってやるか、いまの中小企業庁強化しながらやるかという意見になりますと、私は、まだ中小企業省をつくらなくても、いまの中小企業庁を至らざるところ強化しながら、直しながらやっていっても十分やっていけるのではないか、こういう意見でございます。  なお、細かい数字統計等につきましては、必要とあらば、政府委員が来ておりますから、政府委員から答弁をさせます。
  14. 中村重光

    中村(重)委員 きょうは細かい数字は要らないのです。  大臣、あなたは政府委員から数字だけの説明をお聞きになっていらっしゃると思うのです。私どもはそれを数字のごまかしと言うのです。予算にいたしましても財投にいたしましても、これは財投総額に対する比率から考えても、それから二十一兆二千八百億になった一般会計予算の中に占める中小企業予算中小企業庁所掌の分がわずかに一千億を少し突破したにすぎない、これらのことを考えてみましても、比率から言って中小企業予算あるいは財投が伸びたということにはならない。  もう一つは、大臣、大切なことは、中小企業というものの定義の問題です。中小企業というのはこの間までは資本金五千万円、従業員三百名以下ということであったわけですね。ところが、いま一億円になっている。大企業として扱われておった者がいま中小企業者の中に入ってきている。したがって、金融対策あるいは税制対策というようなものも、そういう中小企業の中に大きい企業が入ってきているその中に政府関係金融機関から融資の道が開かれてきているわけだから、そういうところに相当大きな金が流れておるというこの実態考えてみますと、いまあなたが財投に対して二兆数千億出したのだ、あるいはその予算もこう伸びてきたのだとおっしゃっても、それは説得力を持たないということになるのです。  それともう一つ考えにならなければならないことは、日本のように大企業中小企業者との間に格差がある国がヨーロッパ先進国家においてどこにあるのだろうか。今日、週休二日制というようなことを言われておる段階においても、中小企業経営者というものは朝暗いうちから夜遅くまで働かなければならないという実態先進国家にあるように、昼の一時間か二時間ぐらいは店を閉めて休むとか、あるいは年間一カ月もあるいはそれ以上も観光旅行でもするといったような余裕というものは、日本中小企業者にはないではないか。働いておるところ労働者賃金にいたしましても、ヨーロッパの国々においては一〇%そこそこの開きしかありません。しかし、日本中小企業の場合におきましては、大企業に働いている労働者と比較をいたしますと四〇%以上の差があるというこの実態をどうお考えになるのだろうか。これは、明らかに中小企業経営というものが非常に厳しい状態に放置されているというこの実態、働いても働いても中小企業経営は安定しないし、また働いている労働者は大企業に働いておる労働者以上に頭を使い、体を使って働いているけれども中小企業労働賃金というものは依然として低いというこの実態の原因はどこにあるのだろうかとあなたは真剣にお考えにならなければ、中小企業対策充実強化なんというようなことを言いましても、言葉だけに終わり、中身はそれに沿っていないということになると私は申し上げざるを得ないのです。そう考えてみると、やはりいままで進めてきた中小企業行政というものを改めていくのでなければいけないのではないか。中小企業省という独立の省ができることにおいて、もっときめ細かい、あなたのお答えになりましたような中小企業対策強化充実というものが初めてそこで実現をするということになっていくのではないかというふうに私は考えます。大変残念でありますけれども、いまあなたがお答えになりましたようなことでは、私どもを納得させるという答弁にはなりません。  昨日、同僚佐野委員質問に対して福田副総理は、中小企業省設置について前向きで検討するという答弁が出ているわけですが、あなたはそうした前向きでこの問題について取り組んでいこうとする考え方すらお持ちにならないのかどうか、その点いかがですか。
  15. 河本敏夫

    河本国務大臣 まず最初に、中小企業に対する認識と、中小企業対策強化しなければならぬという点についての認識は、私は中村さんと全く同意見なんですよ。全然違わないのです。それはもうおっしゃるとおりなんです。ただ、進め方としましては、中村さんはすぐに中小企業省をつくるべきである、こういう御意見ですし、私は、いますぐじゃなくても、中小企業庁強化していく、それでいまのところやれるのではないか、こういう意見なんです。でありますから、そんなに私は意見は違わないと思うのです。中小企業省をつくったからといって直ちによくなるものではございませんし、やはりむしろいまの組織を、中小企業庁というものができてからいろいろ努力をしてまいりましたけれども、なおなおこれを強化してやっていけば、これでさしあたりはやれるのではないか、こういう意見なんです。ですから、そんなに意見は違わないのですよ。  それからもう一つ予算委員会で副総理佐野さんの質問に対して答弁されました。私も端におったのです。全く同意見だったものですから同じようなことを申し上げたのですけれども中小企業省をつくるように前向きで検討するというふうな御意見ではなかったように思いますが(佐野(進)委員「きのう、ここであなたがおらぬときに」と呼ぶ)ああ、そうでしたか。それでは速記録をよく読んでみます。
  16. 中村重光

    中村(重)委員 大臣、ひとつ実績で考えていこうじゃないですか。大臣考え方と私の考え方と全く変わらないのであります。大臣は、中小企業が全産業、全業種に及んでいる、したがって独立の省をつくるということは、これはむしろ弊害の面が出てくるから、いまのままで強化充実をしていくのがいいじゃないかという考え方。いま私ども中小企業省をつくりなさいということを要求しながら、政府はこれほど力強く中小企業対策強化充実していこうと言っているのだから信頼をしてみようというので、まあいままで待ってきたということですよ。しかし、三木内閣になって不公正の是正ということを大きな看板として掲げている。その三木内閣のもとにおいては、中小企業対策というものがどう変わってくるのかということを五十年度予算の中に私どもは見守っておりましたが、残念ながら五十年度予算の中において不公正是正というようなものが、中小企業の面に見る限り、私は、その具体的な内容としてあらわれてきてない、もうこれではだめなんだ、中小企業省をつくっていかない限り、中小企業対策を真に強化し、充実することにならないのだというような結論に達しているのです。だからして、中小企業省をつくる必要があるということを強調しているわけです。あなたも残念ながら歴代通産大臣とちっとも変わらないような答弁に終始していらっしゃる。もうだめなんです、それでは。中小企業関係法律というものが六十数本、直接中小企業関係法律として二十五本程度あるように思うのですけれども、その中には全く働いていない法律だってある。それは諸外国と比較をいたしますと、日本ぐらい中小企業に対して、形式から見る限り、形から見る限り充実をしているというような国は私もないように思う。法制だけはですよ。しかし、実態は、日本ぐらい中小企業というものが大企業の景気変動のバウンド役を務めさせられて、今日日の当たらないところに放置されているところはない。だめなんです、それでは。あなたが、中小企業というものが日本の国の経済を安定する方向に持っていくためには非常に大切な役割りを果たすのだということをお考えになるならば、ここでメスを本当に入れて、やはり構造面からいってもいわゆる機構面からいっても考え直さなければいけないんではないかということにお考えを進めていかれるということならばわかるのですけれども、ともかく福田副総理よりも後ろ向きの答弁をされるというのではどうも私どもはいただけない。何と言われようとも、金融面においてあるいは一般会計予算面においてあるいは税制面において、中小企業というものは大企業と比較をすると、非常に差別した形において扱われておるというこの実態に目をつぶるわけには私はまいらないと思う。しかし、あなたの答弁はそれ以上前向きにならないようですが、もう一度結論としてお尋ねいたしますが、中小企業省設置について前向きに検討する用意はありませんか。副総理がこの委員会で昨日答弁されたようなところまでもあなたは進まないのですか。
  17. 河本敏夫

    河本国務大臣 福田副総理の御意見は、実は初めて聞くわけです。つい四、五日前の予算委員会では、そういう意味のことはおっしゃらなかったものですから、私も意見が変わったというふうには承知しなかったものですから、速記録等を早速読みまして、その真意をよく確かめてみたいと思います。  それから、繰り返して恐縮でございますが、中小企業に対する認識は全く同意見なんです。ただ、進め方が省と庁という点において違うわけでございますが、せっかくの御意見でございますから、なおこの点につきましてよく検討してみたいと思います。
  18. 中村重光

    中村(重)委員 どうもあなたは大企業だもんだから、中小企業のことについてやはり消極的だというふうに感じざるを得ないのです。私は人間河本さんとしては尊敬をしているのですよ。あなたと当委員会理事を一緒にやりまして、人柄というものをよく承知しているつもりです。ところが、河本通産大臣としてはどうしても何かしら大企業意識というようなものにとらわれ過ぎているのではないかというように感じるのです。いま最後にお答えになりましたように、本当に中小企業の問題に頭をもっと突っ込んでみてください。そうして、省設置のことについても真剣に検討される必要があると私は思う。  それから、私ども中小企業庁長官を次官会議ぐらいに出席をさせるというぐらいの態度をお示しになる必要があると言ってきましたが、それもなかなか実行されていないのですね。それらの点に対しても、とりあえず、あなたは中小企業というものがそれほど重要であり、中小企業庁の中においてこの施策を強力に推進をさしていこうとする考え方があるならば、中小企業庁長官の身分の問題についても、もっとその地位が強化されるというような方向に進めていく必要があるのではないかと思うのですが、その点はどうお考えになりますか。
  19. 河本敏夫

    河本国務大臣 中小企業は、繰り返して恐縮でございますが、非常に重要な分野である。中小企業対策がうまくいかないと日本経済はうまくいかないんだ、こういう認識のもとに立ちまして、中小企業政策というものをさらに総合的に強化するためには一体どうすればいいかという前向きの姿勢に立ちまして、総合的に検討させていただきます。
  20. 中村重光

    中村(重)委員 いまの中小企業庁長官を次官会議等に出席をさせるといったようなことについて、具体的な問題ですが、どうお考えになります。
  21. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまの機構でそういうことができるかどうか、できるということであれば大変結構なことでございますが、この問題も前向きの形で検討さしていただきます。総合的な前向き対策の一環として十分研究をさしていただきたいと思います。
  22. 中村重光

    中村(重)委員 省設置必要性については私も意見をおろすものではありません。今後とも強力に政府に迫っていく、こういう態度を明らかにしておきたいと思います。  次に、中小企業者の事業分野の確保に関する法律案を私どもは提案をいたしております。きょうの理事会でもこれは五党共同提案ということで、中小企業の事業分野の確保に関する法律案を制定させるために検討に入ろうではないかということで意見が一致したところですが、政府としての見解はいかがでございましょう。
  23. 河本敏夫

    河本国務大臣 中小企業の分野にいたずらに大企業が入ってきてはいけないと思います。でありますから、分野調整ということに対しては私も全く賛成であります。  ただしかし、その分野調整を実現けるために法律をつくってやる方がいいのか、いままでもいろいろ対策をたくさん考えてやってきておるわけです。それで大低の問題は解決してきておるわけでございます。いままでのようなやり方を強化しながらやる方がいいのか、あるいは新規に法律をつくる方がいいのか、そこが問題だと思うのですが、分野調整というそのこと自身については全く同意見でございますが、方法についてはさらに検討してみたい、かように思います。
  24. 中村重光

    中村(重)委員 大臣、私も大分商工委員会は長いわけでして、これならば分野の調整ができるといったようなことは現行法の中においては見つからないのですよ。ミサイルからラーメンづくりまでとかいうように言われるように、いろいろなことを総合商社なんかでもやっているのですね。クリーニング業までやっているのです。目に余る。ともかくもうかると思ったら、中小企業が非常に鋭意努力をいたしまして一つの事業を開発している、そこへ目をつける、進出してくる。もう中小企業というものは、本当に苦労してそういう新しい事業を開拓いたしましても、結局は開拓しただけで後は奪い去られるといったようなことです。だから、現行法の中でこれを抑える方法はないかということを私どもも検討してみるのですけれども、ないですね。中曽根さんも二、三回いま大臣お答えになりましたようなことを答弁しているのです。見つからないです。中小企業庁に聞いてみてください、ないですから。やはり法律をつくる以外にありませんよ。だから、いままでの答弁の繰り返しではなくて、中小企業の事業分野を確保するという法体系をつくり上げていくということ以外にないと私は思いますから、その点はひとつもう一度、こうする、こうやってみる、そしてやはりこれでいけないということであれば、独立法律をつくるといったようなこともやらざるを得ないならやらざるを得ないというもう少し前向きの答弁をしていただくのでなければ、同じような答弁ばかり聞かされておったのではがまんができない。いかがですか。
  25. 河本敏夫

    河本国務大臣 この基本的な認識は全く一致しておるわけです。ただ、法律をつくった場合に、やはり若干の問題が残るのじゃないかという懸念等もありますので、先ほど来申し上げますように、現状を改正しながらやった方がいいのか、法律をつくるべきか、ここらあたりをもう一回よく研究さしていただきたい。ただ、分野調整という面については全く同意見である、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  26. 中村重光

    中村(重)委員 大変くどくなって申しわけないんだけれども改善する方法があればいいのだけれども、もうないですよ。ある程度中小企業関係法律というものを知っておるつもりなんだけれども現行法のもとで大企業の進出を抑えるという方法はないのです。じゃ、クリーニングをやめなさいと言っても、大企業のクリーニングを抑える手はないじゃありませんか。そこで、いま厚生省でやっておりますのは、せめて取次店にクリーニング師の免許を持った者を置くというようなこともいま検討しておるのですが、それすらも大きい業者が反対をしまして、免許を持った者を置く必要はない、講習だけをする、講習を受けた者を取次店には置くのだ。それが精いっぱいです。手がないです。やはりある業種中小企業が何%占めているかというところ比率とか、それから中小企業というものがいままでどの程度の期間やっているんだというような、何か具体的なことを明らかにして規制をしていくということでなければならないと私は思う。そういったことが現行法の中でできるのかどうか。大臣はその点は詳しくないわけですから、次長が来ておりますので、次長からでも結構ですよ。
  27. 小山実

    ○小山(実)政府委員 中村先生の御指摘の大企業の進出を抑える制度ということに厳密な意味で適合するかどうかわかりませんけれども、それに似通った制度といたしまして現在ございますのは、中小企業団体の組織に関する法律に特殊契約制度というのがございます。これは中小企業性の業種に大企業が進出をしてくるあるいは現在の事業規模を急速に拡大をする、こういうことが起こります場合に、それによって非常に中小企業者経営に不安定を生ずるというおそれがある場合に、中小企業がつくっております商工組合がその進出あるいは拡大をしようとする大企業に対しまして、少し待ってほしいとかあるいは規模を縮小してほしいというような交渉をするわけでございます。その結果、話がまとまった場合に、その契約を結んで、それに従って大企業がある程度規模の縮小をするなり操業時期をおくらせる、こういうことができる。もし話がまとまりません場合には、事業所大臣にあっせん、調停の申請をする。それであっせん、調停の申請がありました場合には、中小企業調停審議会に諮って、その上で大臣があっせん、調停を行う、こういう制度があるわけでございます。ただ、この制度を基本的に貫いておりますのは、永久に中小企業性の事業分野に大企業が出てきてはいけないということまで考えておるわけではございませんでして、大企業の進出に備えて中小企業がいろいろと合理化、近代化を進める、それによって対抗できるような力がつくまで経過的にある程度進出を待ってもらうということができる、こういうような考えに基づいてできている制度でございます。
  28. 中村重光

    中村(重)委員 大臣、お聞きのとおりです。きわめてぬるま湯です。大企業と話し合いをやってみて、大企業が聞けばよろしい。それは法律があってもなくても同じことですよ。法律がなくても進出に反対をすることができるわけです。ところが、進出をしようとする大企業はきわめてがめついから、なかなかそういうことに耳をかそうとしないのです。現にこの法律というものは働いていないでしょう。有名無実ですよ。だからして、そういうどんぴしゃりの法律をつくるのではなくて、現行法改善をしてやっていこうということをお答えになりましても説得力はないのです。もっと端的に私言わしていただけば、大企業にそうまで気がねをする必要はないじゃないか。中小企業というものの果たす役割り政府としても大きな期待をかけておるとするならば、中小企業経営を安定していくような方向をひとつ考えていくということでなければならないんではないか。また、中小企業問題について、中小企業庁はもう過保護だというように考えられるようなことすらあるのです。たとえばカルテルなんですね。十年来のカルテルというものがあるんですよ。これは中小企業近代化をむしろ弱めるのではないか、促進することにならないんではないかとすら考えるようなことだってあるんですね。どこかは非常に過保護なところがある。ところが、事大企業関係をする、大企業を制約をするというようなことになってくると、政府態度というものはきわめて頑迷なんです。中小企業経営を安定させようということよりも、大企業の利益というものに奉仕していこうとする考え方が非常に強いということを私どもは指摘せざるを得ないんです。ですから、大臣中小企業の分野を調整をしていくということが必要であるというようにお考えになるならば、私どもも五党の中においてこれから具体的に話を進めていくわけでございますから、その場合に、ただいま次長からお答えになりましたようなこと、その他いろいろなことについてもさらに説明を聞いていかなければなりません。したがいまして、大臣中小企業庁の方にひとつ指示をしていただいて、十分検討して、私どもが今後五党共同でもってこの問題で話し合いをしていくための資料の提供をしてもらってやっていく。そして、それでは中小企業の分野を確保することにならないんだというような見解が統一をされます場合は、いま大臣お答えになりましたようなこと、現行法の中でこれをひとつ改善をしてやっていこうというようなことにこだわらないで、進んで自分の方からでも、政府みずから法律案を提案をしていくというくらいの積極的な姿勢というものがなければならないと思いますから、それらの点についてもう一度ひとつ大臣のお考え方をお聞かせいただきたいと思う。
  29. 河本敏夫

    河本国務大臣 やはりこの問題で一番の問題点は、御指摘がございましたように、こういうふうな法律が仮にできました場合に中小企業近代化が妨げられるというふうな点が一番の問題点ではなかろうか。大企業の利益に奉仕するとか、決してそういう意味ではないのです。そういう問題が起こりましたときには、通産省は独自の立場から積極的に介入、調整しておるということからも御判断していただけると思います。一番の問題点は、近代化を妨げるというようなことにならないだろうかということが最大の焦点でございますが、問題はきわめて御指摘のように重大でございますから、至急に中小企業庁、通産省におきましても問題点を整理いたしまして研究をいたします。
  30. 中村重光

    中村(重)委員 それから、総需要抑制、金融引き締めの中で、下請企業というものの受注量が非常に減っている。さらにまた、決済、代金の支払いの条件が非常に悪化している。いままで現金払いであったのが手形払いになった。また、手形払いにいたしましても六カ月程度であったのが、据え置き期間が延びて、そしてそれまで含めますと十カ月あるいは一年といったようなことになってきているのですね。これではもうどうにもならないと思うのです。ですから、それらの対策についていろいろ施策を進めておるというようにいつもお答えは返ってくるわけですけれども事態は非常に深刻であるわけですが、それらの点に対して今後どう強化していこうとしていらっしゃるのか、お聞かせをいただきたいと思う。
  31. 河本敏夫

    河本国務大臣 最近の不況から、中小企業に非常にしわが寄っております。そのために大変苦労しておるわけでございますが、そういう影響の一つとして、手形の支払い期間が非常に延びている、こういうことも事実でございます。でありますから、そういうことのないようにいろいろ方法を考えまして改善指導をしておるわけでございますが、お説のように、ややもすると相当延びる傾向がございますので、いろいろ配慮しながらそういうことのないようにやっていきたい、かように思います。
  32. 中村重光

    中村(重)委員 そういうことがないように配慮しようということでありましても、大企業は、みずからの地位を利用して総需要抑制、金融引き締めの犠牲者に結局中小下請企業というものをしてしまっている。これではどうにもならないのですね。受注量にいたしましても、この程度の発注を大企業は中小下請企業にするんだということで一応期待を持たしているのです。ところが、どんどんカットしていくでしょう。それは大企業はみずからの計画に基づいていろいろな操作ができるでしょう。また好、不況のバウンド役に中小下請企業というものを使っているんだから、仕事をやらなければそれで大企業は安定しますけれども、中小下請企業はそうまいらないですね。カットされたからといって、働いている労働者をすぐ首切ってしまうというわけにまいらぬ。さあ仕事が出たからといって、すぐまた首切った労働者が集まってくるものでもないです。だから、そうした具体的な問題についてどう対処するのかということを明らかにしてもらわなければならないし、また支払い条件にいたしましても、手形払いが、申し上げたように十カ月であるとかあるいは一年という手形になってきている。銀行に持っていってもなかなか割らない。たとえば三菱だけの例を申し上げると、三菱重工の場合におきまして、ただいま申し上げましたように、非常に長期の手形が発行される。その手形を三菱銀行に持っていって割ろうとすると、三菱銀行はそれを割ってくれない。結局地域の——東京、大阪のような大都市ではございませんですから、地域のわずか一つか二つあるところの地場の銀行で異形を割ってもらわなければならない。そうなってくると、一般の中小企業というものに対して、金融引き締めの際にさらにまた金融面の大きなしわ寄せをしておるというのが実態であるわけですから、そうした具体的な問題について十分調査をし、きめ細かな施策を講じていくということでなければ、いま大臣お答えになりましたような抽象的なことでは問題の解決にならないと私は思う。したがって、それら具体的な問題について今後どう対処しようとするのか。  それからまた、公正取引委員会委員長もお見えになりましたから、高橋委員長、いまあなたにお尋ねしますから。  大変手形の期間が延びている。大企業は一方的にその期間というものをみずから設定をして、いままで現金払いであったのを手形払いにする、それでその手形払いも今度は、三カ月か五カ月ならまだしもということでありますけれども、十カ月、一年というような長期の手形になってきている。これは私は問題で、独禁政策の面からいっても不公正取引という面において問題があるように考えますから、それらの点に対してもどう調査をし、またこれにどう対処をしていこうとお考えになっていらっしゃるのか、通産大臣に続いて委員長からもひとつお答えをいただきたいと思います。
  33. 河本敏夫

    河本国務大臣 手形の期限が非常に延びたということに対して具体的な対策をどうしておるかということについては、後で政府委員の方から具体的な対策答弁させますが、私は、この下請対策それから手形対策は、根本的にはやはりいまのような景気の状態ではどうにもならぬ。先般も日本の全産業の代表と懇談をいたしましたが、大体二割から七割ぐらい減産をしておるわけですね。そういう減産のさなかでは、やはり親企業がそういう状態でございますから、下請企業の方へ回る仕事も当然減っていく。その減る場合に、その減り方が公平であるかどうかというふうな問題はあるわけでございますが、しかし何としても根本的には仕事の量そのものをふやすという対策を積極的にとらなければどうにもならぬ問題である。必ずどこかでトラブルが起こる、こういうふうに考えまして、この摩擦現象の解消ということに全力を挙げておるところでございます。  なお、具体的な方法につきましては、長官が来ておりますから、長官の方から答弁をさせます。
  34. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 手形は、私どもの方で、九十日のものもありますが、原則として百二十日を超えるものは一般的に全面的に禁止しておるわけです。百二十日を超えるような手形は渡してはいけない、こうなっております。しかし、それがいまやはり期限の上でしか割引可能ということは言えませんから、発行者の信用力というものと、それからそれを受け取った下請企業の信用力と両方を備えて初めて融資の対象になる、こういうのが金融の実情でございます。ですから、これは割引適格な手形であっても、すべてが現実に割引の対象になるかというと、そうはまいりませんが、その点は金融の問題でございまして、やはり発行する側がそういうわれわれが禁止しているものを出すことはいかなる方法をもってしてもいけないということで、いろいろ協議会等においても協力願っておるわけですが、さらに私の方は、親事業者について、どうしてもこれは能力的にいきまして一万件余りというのが年々の限界でございます。実際には、これは中小企業庁も同じぐらいの数はやっておられますが、親事業者について調査しなければこの実態はつかめません。下請の方から調査ということもあります。しかし、進んで、こういういわば不適格な手形をもらったということを申し出てくる下請事業者というのは比較的少ないのです。どうしても親事業者の方から調べなければならぬ。そういうことで、できるだけのことはやっておりますし、これからももしそういう非常に不適格なものを出しておるものがあれば、厳しくそれを是正させるように最大の努力をいたす、現在でもそういう方策を講じておりますが、今後とも十分注意したい、こういうように思います。
  35. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 不況の深刻化に伴いまして、下請に対します支払い条件等がだんだん悪化の傾向にございまして、私どもとしても大変憂慮をいたしておる次第でございます。  これの対策といたしましては、下請代金支払遅廷等防止法の厳格な励行を図るということで取り締まり体制の強化を図っておりまして、現在、一・四半期に五千事業所ぐらいを、親事業所につきまして調査をいたしておりまして、違反の事実がございますれば直ちに改善方を指示いたしております。と同時に、これは経済問題でございまして、親事業所自体がなかなか資金繰りが困難であるといったような事情もございまして、そういう場合には、金融面で極力つなぎをつける、そういう意味合いにおきまして、特に苦しくなっておる下請事業者の方に重点を置きまして、政府系金融機関の融資を優先的に回すようにいたしております。  また、急激に仕事が減りましたような下請や中小企業に対しましては、各府県にございます下請振興協会をフルに活用いたしまして、新しい仕事の開拓あっせん等によりまして仕事をお世話する、こういったことも極力力を入れまして、現在新しい仕事のあっせんをやらしておるところでございます。
  36. 中村重光

    中村(重)委員 どうもあなた方の答弁を聞いていると、型どおりの答弁ばかりなので、現実と余りにもかけ離れている。公取委員長考え方は結構なんですよ。しかし、現実と余りにもかけ離れているわけです。しかも、据え置き期間なんというようなことが新手として考えられてくる。手形は、あなたの方で百日手形ということである程度規制というのか、取り締まりを厳しくやるといったようなことがもうわかってますからね。あなたの方の手のうちがわかっているものだからして、申し上げたように据え置き期間を置いて手形期間を短くしていく。下請にとっては同じなんですね。かえって困るんですよ、据え置き期間の間には手形は出ないのだから。手形が初めから出ていると、その手形を持って行って、中には割ることのできる業者もいるかもしれぬけれども、それではあなたの方の目が光ふっているものだから、据え置き期間後手形はできるだけあなたの方の目にとまらないように短い期間でやっていこうという脱法的なやり方というものが行われている。いかに下請企業がそれに文句を言いましても、親企業は強いですから、親企業は自分が困らないように、不利にならないように、そのことばかりを考えて勝手気ままなことをやっているということが実態です。今日総需要抑制、金融引き締めの中において私が申し上げたようなことは、これはもう常識みたいな形になってどんどん行われているわけですから、あなたの方もこれにメスを入れてやはり摘発をしていくという態度をお示しにならなければならないし、また中小企業庁としても、私が申し上げておるようなことが行われておるということは、いま長官のお答えでも大変深刻になっておるというようなことでおわかりになっていらっしゃると思うのだから、おわかりになっていらっしゃるのだったら、厳しくこれを規制をしていくということを具体化していくのでなければならないというように私は思います。  それから、下請振興協会というものに大分期待を持っていらっしゃるようでございます。また、私どももこの振興協会というのが有効に下請の保護をする法律としてその役割りを果たしてもらわなければならないとも考えるのです。しかし、現実は、この下請振興協会というものは下請企業のためには余り大した役割りを果たしてない。むしろ大企業がリーダーシップを持ってこの法律を動かしておるという実態に目をつむることはいけないと私は思う。  だから、これは大臣に聞いていただきたいのですけれども、下請振興法の審議の際に、私どもは、これはざる法になるおそれがある、だから親企業と下請企業の調整を図るための強力な法律として働いていくためには、労働委員会等のように三者構成というようなことが行われて、親企業と下請企業というのが対等の立場に立つ、十分に下請の不服がこの中で調整されて下請の地位を向上させていくような方向に持っていってもらわなければならないというようなことを主張し、附帯決議の中においてもそういう趣旨を生かしているわけですから、これをもう一度見直してもらわなければならないというように考えます。それでなければ、齋藤長官からいまお答えになりました振興協会というものは、下請の非常ないまの窮状を打開することにつながらないということを申し上げておきたいと思います。時間の関係がございますから、それらの点に対してお答えをいただいてほかの質問に入りたいと思います。
  37. 河本敏夫

    河本国務大臣 十分そういう方向で検討させていただきます。
  38. 中村重光

    中村(重)委員 それから、税制の問題について河本大臣からお答えをいただきたいのですが、私どもは、中小零細企業を保護する立場から、事業税の撤廃というものは最低のものとして実現をしなければならないということをいつも要求してきているわけですが、これは控除額が引き上げられたというにとどまって、この事業税の撤廃というのは実現をしていないわけです。これはいつの日にこの事業税の撤廃というものが実現をするのか、見通しについて明らかにしておいていただきたいと思います。
  39. 河本敏夫

    河本国務大臣 中小企業に対する税の減免について一連の措置を今回講じておりますが、詳細につきましては政府委員から答弁をさせます。
  40. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 中小企業庁といたしましては、個人事業税の撤廃につきましては従来から自治省に対しましてそういう御要望を申し上げておるところでありますけれども、やはり府県におきます大きな財源でございまして、撤廃というところまでまだ至っておりません。ただ、年々いわゆる免税点と申しますか、非課税部分を大幅に引き上げておりまして、五十年度につきましては、四十九年度の一人当たり百五十万から百八十万まで引き上げまして、年間百八十万までの所得については事業税はかけない、こういうふうに大幅な引き上げを図ったところでございます。これによりまして、相当部分の中小企業者、実際には低所得層につきましては非課税になっておるのじゃないかと考えております。なお、いつごろ完全にこの個人事業税が撤廃されるかということにつきましては、さらに今後の自治体の税収の見込み等との関係もございまして、いまここで申し上げることはきわめて困難かと存じます。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 それは事業主控除が百五十万から百八十万に引き上げられたということは承知しているのです。しかし、中小企業庁がこの事業主控除の撤廃ということを強く掲げて迫っていかないという消極的な態度というものには、私どもは非常に不満なんです。これは二重課税の傾向があるのですよ。ですから、事業税の撤廃というものは、これはもう速やかに実現をするように、地方自治体の財源問題というものは、これは行財政の抜本的な再編成をやるという形で片づけていくのでなければならないのです。ですから、中小企業庁はこうあるべきだということに対しては当然そうした点について強力な態度をおとりになる必要がある。よくないことだと考えながら態度は非常に消極的だということでは、これは話にならぬじゃありませんか。ですから、五十一年度はもう事業税の撤廃というところまで進むように対処してもらいたいということを要望しておきたいと思います。  次に基礎産業局長、労働省からもお見えでございましょうからお尋ねをいたしますが、私がさきの委員会においてお尋ねをいたしました三菱長崎製鋼はその後どういうことになっているのか、また現状はどうなのか、その点についてお聞かせをいただきたいと思う。
  42. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 お答えいたします。  三菱製鋼所の第三次合理化計画は、先般先生からも御質疑がございまして、その後現状におきましては、明日三菱長崎機工という新会社が営業を開始するという状況になっております。そこに対しまして、現在員の九百名の職員のうちほぼ三百五十名程度をそちらの方に移行したいというのが会社側の考えでございまして、まあ会社営業ということもございますので明日にはその発令をいたしたい、こういった希望を持っております。それから、残りの五百余名の人員につきましては、日本鋳鍛鋼の戸畑工場への移転問題、それから地元の各地場産業と申しますか、関連工場への転配あるいは当分残務がありまして三菱製鋼の長崎製鋼所は残るわけでございますが、そこへ残る者ということで、それはまだそういった発令行為といったような具体的動きにはならない、こういうように事情を聞いております。
  43. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、労働省が調査をしている点についてお聞かせをいただきたい。
  44. 細野正

    ○細野政府委員 ただいま通産省の方から御報告があったのと私どもの調べているのもほぼ同様でございます。
  45. 中村重光

    中村(重)委員 さきの委員会でも私が申し上げましたように、この労使の間に円満に話し合いがなされなければならない。そのための行政指導をされる必要があるということを両省に私は強く要望をいたしておりたところです。また、この合理化の問題に関連をいたしまして、当初労使の間には話し合いでやる、それから解雇等はやらない、希望退職というようなことで、新会社に移行しない者、それから戸畑の鋳鍛鋼の方へ出向する者、その場合あくまで話し合いによってやっていくのだということになっていたわけですが、その点は労使の間には話し合いが煮詰まっているのかどうか、煮詰まっていないとすれば、今後それをどういうことで処理しようとしているのか、お聞かせをいただきたい。
  46. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 労使関係のことでございますが、現状におきましてなお完全な解決という体制までいっていないように聞いております。これに対しましては私どもとしてはかねてからいわゆる実質的な首切りあるいは強制転配というようなことが行われないようにという指導もしておりますし、企業側もそのたてまえは貫いております。いろいろと経過におきまして紆余曲折があったことは先生も御承知のとおりでございますが、−そういうことでいままでまいっておりますので、私の方も明日のそういう発表に際しましても、そういったトラブルのない、話し合いが十分行われるということの上で処理されるように期待もし、指導もいたします。
  47. 中村重光

    中村(重)委員 私が得ておる情報によりますと、新会社に移行する者はいまお答えになりましたように約三百五十名、日本鋳鍛鋼の方に出向する者が二百七十名、希望退職が百二十名から百三十名、これを合わせますと約三十名程度の者が明らかではない。また、希望退職も本当に百二十名あるいは百三十名いるのかどうかということも明らかではないわけです。その宙ぶらりんというようなことになる者をどうするのかということについては、会社は常闘——常任中央闘争委員会、これの構成員は新会社には移行させないというようなことが伝えられておるのですが、これはけしからぬことだと思うのです。それが事実だといたしますれば、これは明らかに不当労働行為ということにもなりかねないと思うのです。これは労使の関係が非常に感情的に激発をいたしまして、円満な収拾なんということはとうてい考えられないということになると思います。この点についてどう情報をキャッチしておられるのか、また私がいま指摘をいたしましたようなことがあるとするならば、これらの点に対して、今後どう行政指導をお進めになるのか。これはいつも申し上げるように、この日本鋳鍛鋼というのは通産省の指導によってつくられたわけです。これが根本、もとになっているわけですから、これからすべてが派生してきている問題でありますだけに、通産省としては、これは重大な関心を持って対処していただかなければならないということになると私は考えます。したがいまして、その点に対しての考え方を通産、労働両省からお聞かせをいただきたい。
  48. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 ただいまお話のございました二、三十人がどういうふうになるか、この辺はいま私申し上げましたように、会社側の報告によりますと、五百名について残留あるいは地元に残られる、こういう方について、あるいは鋳鍛鋼へ移る者あるいは希望退職の者、これについての内容を具体的に明らかにされておりませんので、その辺は至急私ども調査をいたします。しかし、いわゆる組合専従の方とかいろいろ執行部が残っておられるということもあるようでございまして、こういうような方にはそういった専従という問題が解決をすると申しますか、そういうものに並行いたしまして、なお本日を含めて鋭意話し合いをいたしまして、本人の十分な納得を得られる解決策をとりたいということを会社側は私に申し出てございます。したがいまして、いま先生の御指摘のような具体的な点につきましては、なおこれからよく調査をいたしまして、先ほど申しましたように、せっかく三菱製鋼のこの計画も大詰めに向かいまして、従来いわゆる労使協調路線で非常にいわば相提携して解決をしてきた、こういう情勢でありますから、この大詰めにおきましていわば最後にトラブルを起こさないような、あくまでも話し合いができるように、この計画の達成が錦上花を添えるような有終の美を飾ってもらいたいということが私の期待でございますので、そういう立場から強力な指導をいたすつもりでございます。
  49. 細野正

    ○細野政府委員 ただいま通産省の方からもお話がございましたように、この問題は長い間かかりまして、計画の基本とかあるいは移行の条件等についての基本線について話し合いは成立をしておりまして、実際の適用の問題としていま御指摘のようないろいろな問題があるようでございますが、ただ組合の中闘関係の会社移行の問題については、私ども県の労政機関からの報告の中にもそのことが触られておりませんので、初耳のような状況でございます。そういう点も含めまして、実情を聞きつつ円満にこの問題が解決されるように指導してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  50. 中村重光

    中村(重)委員 これで終わりますが、政府態度は、誠意をもってこの問題に対処しようとしている点は私は了承したいと思います。いまのお答えが単なるお答えにならないように、円満に収拾いたしますように、県当局も知事か——私は知事ともこの問題について会いましたが、知事も非常に誠意をもって円満に解決をさせたいということで取り組んでいるようでございますから、通産、労働両省ともにいまのお答えのとおりに、事態が円満に処理されるということで対処していただきたいと思います。  同時に、局長は先ほど、明日、新会社三菱長崎機工に三百五十名を移行させるということで、発表するということでございますが、氏名が発表されるということは、円満に解決をするということを阻害するというように考えます。新会社ができましても、労働者の氏名まで何もあす明らかにしなければならないという理由はないと思う。それは重役であるとかあるいは主たる会社のポストならば、これは発足と同時に明らかにしなければならないでしょうが、労働者の氏名発表は、何も会社が明日発足するということの条件にはなり得ないというように私は思う。必要により労働者を雇っていくわけですから、労働者の氏名発表だけを延ばして、円満に労使の間に話し合いをつける、こういうことにする必要がある。それでなければ、せっかくいま御答弁になりましたそういう態度で取り組もうとすることがまた崩れてくるのではないかと思いますから、もう一度その点に対してお答えをいただきまして、質問を終わります。
  51. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 確かに公表というふうなことは適当ではないと思います。したがいまして、いまの御意見を十分私の方は拝聴いたしましたので、そういう線に沿って会社指導をいたしたいと思います。
  52. 田中六助

    田中(六)委員長代理 板川正吾君。
  53. 板川正吾

    ○板川委員 独禁法関係で、公取委員長と通産大臣にお伺いいたしたいと思います。  まず、公取委員長にお伺いをいたしますが、公取委員長は、昭和四十九年における公正取引委員会業務の概略について、という二月十二日の報告の中で、「昨年九月に改正試案の骨子を作成し、これを発表いたしました。この試案は、目下政府の独占禁止改正に関する審議に際し、参考資料とされております。」こういうことで議論したわけですが、政府にこの改正試案を出しておることはこれでわかりますが、考えてみますと、われわれ国会としては改正試案というものを正式に承ったことはない。すでに公表されている事実でありますが、将来審議の記録に残すという意味もありますから、国会としてこの改正試案の骨子について公取委員長の報告、説明を求めたいと思います。
  54. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 確かに国会の場で正式に私どもの案を御説明いたしておりませんでしたので、お求めに応じましてその趣旨と概要について御説明申し上げます。  第一には、独占並びに寡占の対策でございますが、これはすでに御承知のとおり生産集中、産業の寡占化というふうなことが言われておりますが、これはまさにその裏づけもあるわけでございまして、決して事実に反するわけじゃありません。そういうことが一面では企業間の協調的な機運を高めることになる。事実問題として、そういう状態を背景としまして価格決定が市場の需給と関係なしに協調的に行なわれる、そういう事例が若干ふえているのではないか。つまり高度の寡占とか独占的状態というものが、本来の意味の公正にして自由な競争の阻害要因として働いているためにそういう現象が認められるというわけでありまして、これに対しては二つの規制措置を設けたいということであります。  その一つ企業分割と言われておるものでありまして、私は原則的にはこれは一つ企業である場合が多いと思いますが、間々例外として二つの企業が完全に市場を独占するというふうなことも考えられないではない。そういうことから、一つあるいは二つの企業生産力や供給力が集中いたしまして、しかもその同じ業種に新たに新規産業が加わることが困難である、そのほかいろいろな措置を講じてもなかなかそういう状態がうまく変わらない、競争が抑圧——抑圧と申しますのは、事実上行われないという意味であります。強いて手を加えなくてももう競争が行われないような状態になっている。これを独占的状態と私どもは呼んでおりますが、それでほかの方法で競争回復をしようと思いましてもそれができないという場合には、その会社に対して会社の分割あるいは営業の一部譲渡というふうなことを命ずることができる制度を設けたいということであります。  さて、いま直ちにその分割の対象となる企業があるとは申し上げられませんけれども、現状のままにして放置すればいつかは独占的状態が生ずるおそれがないとは断言できません。このようなものに対して私的独占禁止法が何らの対策を持たないのはむしろ矛盾ではないかということからこういう制度を設けたい。  しかしながら、営業譲渡と会社分割、これは会社分割は新しくつくらなければなりませんけれども、そのようなものを合わせて私ども企業分割と、こう呼んでおりますが、企業分割を命ずるに当たりましては十分に事前の調査も行いますし、またできるだけの方途を講じてそういう状態がそういう手段を用いないで排除されるならばけっこうです。そういうことをやります。また、会社の状態についていろいろな点を考慮し、また特に国際競争力などには十分注意を払わなければなりませんが、そういうことからして、そうたびたびこのような規定が発動されるというわけではありませんけれども、独占禁止法の合併規制その他に対して首尾一貫する意味におきましてはこの企業分割の制度そのものは必要である、かように考えたわけでございます。  また、寡占の対策でございますが、独占の状態までは至らない、しかし高度の寡占である。寡占という定義はいろいろな割合で言われております。しかし、私どもの言っておりますのは、かなり高度の寡占の業種の中には、あまりたくさんの業種ではありませんけれども、価格が有無相通ずると申しますか、引き上げが行われるときに同調的である、価格面での競争が実際にはないと客観的に見られる、そういうふうな場合は、これは一種の証拠の把握できないカルテルだ。カルテル類似行為であるけれども証拠は把握できない、このようなこと、これは一面ではパラレルアクトとも言っておりますが、平行行為、こういうふうになりますが、これに対しては、同時的な値上げを行った場合に一つの手段として原価の公表を求めるというふうなことでそういう行為を抑止する効果をねらいたい、こういうことであります。これが独占、寡占対策要旨でございます。  それから、カルテルの対策が次にございます。これにも二つの方法を考えておりますが、要するにカルテル価格は不法行為によって人為的に形成された一種の独占価格ではないかというふうに思われます。それをそのままに放任するということは妥当とは思われません。ところが、現在のやり方でまいりまして、現行法の破棄命令では事実問題としては価格が少しも下がらないというのが実情でございます。それでまた、したがってカルテルはやり得である、こういうふうな風潮は一向に改まらないわけです。日本においては価格カルテルが非常に多い。アメリカは刑事罰による厳罰主義等が行われておりますので、この価格カルテルの数は相当減っております。日本ではカルテルの中で一番多いのが価格カルテルであるというふうな風潮でございます。  このような状況に対処するために対策を講ずべきでないかということから、まず第一の手段としては価格の原状回復命令というものを掲げております。カルテルによって価格が引き上げられた場合、カルテルと申します場合に価格カルテルだけをさすのかという点については、一般的に引き上げられたという現象が起これば、他の種類のカルテルでもやはり同じに考えたい。価格カルテルが中心でございますが、この場合のカルテルとは生産制限を非常に厳しくやってやみカルテル、それによって価格が非常につり上げられたというふうな場合もありますが、それは元のカルテル実施前の、これはむしろある価格というよりは、ある特定の日の価格に戻すという原則をつくりたい。しかしながら、それは機械的にやったならば、審判で争い、さらに裁判で争っている間に何年も経過するという事実がございますから、はたしてそれが機械的に適用できるものかどうか、全面的にはそうはならないんじゃないかということでありますので、それはそういうことができるということであって、やり得ない場合もあるという含みでございます。機械的な適用だけでは全く実情に反した価格になることもあるので、そのようなことは避けたいという考えがございますが、原則はあくまで原状回復であるという趣旨であります。  次には、同じカルテルに対して、カルテルによって不当な利得を得た者には行政処分として課徴金を課する、つまりやり得を改めるためにカルテルによる不当な利得、これを吸い上げてしまおう、こういう考えでございまして、その額はカルテルによる引き上げ額、もうこの場合はどうしても価格カルテルのように思えますが、しかし先ほど申しましたように価格カルテルと限ったわけではない。とにかく引き上げられた額、それにカルテルの実行期間中の販売数量を乗じた額を限度として、その範囲内、これは骨子でございますから非常に荒削りに書いてありますが、その範囲内で徴収する。何かどうしても控除しなければならぬというものがあれば、それは初めから決めておいて控除しなければならぬであろう、こう思います。  その次には、経済支配力の過度集中というふうな問題がございます。特に最近商社を中心としまして一部の大企業、それから金融機関の株式取得が非常に増加しております。この株式保有を通じまして企業の系列化とか、お互いにお互いを助け合うというふうな意味での企業集団の形成化の傾向が明らかになりつつあるように思われます。  これに対して現行法の株式取得に対するあるいは保有に対する規定は、過去の二十四年と二十八年でございますが、二回にわたる改正で、事実上は株式取得が、取得することによって実質的に一定の取得分野での競争を制限するというふうな非常に解釈の困難である、適用困難なものになっておりますので、そういうことでなしに、経済支配力の過度集中に歯どめをかけなければいかぬ、そういう見地から保有制限をしたい。それには金融機関とそうでない会社の分とに分けておりまして、これらの株式の処分は、私ども一応五年というふうな経過期間を書いておりますけれども、実際には五年そのものにこだわる考えはありません。十二分に経過措置を講ずることによって株式市場が混乱することのないようにしたい、そうすればまたこれは十分可能であるという考え方をとっております。  まず第一には、金融機関以外の一般の大規模な会社の株式保有制限でありますが、これは資本金百億円または総資産が二千億円以上の会社の株式保有は自己資本の二分の一または資本金を限度とする。当然普通の場合には、資本金に対して自己資本の方が上回っているというのが普通の姿でありまして、内部蓄積がほとんどゼロであるというふうな会社に限って資本金と自己資本とはほぼ等しくなりますが、いずれにしてもこの日本の風潮で、特に戦後の風潮ですが、資本金というふうなものに対してかなり無関心な感じが私いたしますが、やはり資本金資本金で、会社の存立の基本をなすものである。ところが、その資本金をはるかに超えて株式を保有しておるというふうなこと、中には自己資本をはるかに超えて持っておるという実例がございます。こういうことは非常に好ましくないし、それらの保有の目的等を考えてみましても、決して歓迎すべきものではありません。そういう感じからいたしまして、こういうものは自己資本の二分の一または資本金のいずれか高い方を限度とするということにいたしまして、それを超えている部分は先ほど申しましたように相当長期間かけて放出してもらうということであります。この場合、実際上は多いのはいわゆる総合商社、私どものこの基準にかかってくるものは上位十一社でございます。そのほかの一般事業会社は、それに比べると会社の数は多いけれども一社当たりにすればずっと少ない額になっております。次に、競争関係にある会社の株式保有というものは原則禁止にして、そのかわり例外は認める、どうしてもそれを持たせる理由があるという場合には、これは認可するという考えでございます。  それから、金融機関につきましては、現行の一社当たりの保有限度額はその会社の発行株式の一〇%ということになっておりますが、ただいまのところ中堅以上の会社におきましては、一〇%以内でありましても筆頭株主になっているというふうな事例がたくさんございます。かなり法人間に分散しているという現象が見られます。金融機関がとかく上位株主を占めているという例が非常に多いんじゃないか。調査してみましても、これは多過ぎる。そうでなくても金融機関は融資の面を通じてわが国の場合、特別に優越した地位を持っている場合が多うございます。その点は外国の事情と比べてわが国の方がはるかに金融機関依存度が高いという実情からも当然だと思いますが、その金融機関が株主としても上位株主を占めているというのは余り感心したことでないということから、これを昭和二十二年にありました規制の五%に戻すというふうな趣旨でございます。  このほかに、私ども刑事罰の強化を出しておりますが、刑事罰の強化は、実際問題として告発をしなければ適用があり得ないわけですから、告発をしないならば余り意味がないということになりますけれども、しかし万一の場合にはやはり告発もあり得るんだということから、罰金額を適正に時代に沿ったものに改めたいということであります。  また、通常私ども調査しておりまして非常にわからないのは、会社の社長等の責任者がその事態を、カルテルのような独禁法違反行為をあらかじめ知っておったかどうか、それから後になって知った場合には、これは当然実行されているわけですから知らないということはないと思いますが、適切な措置をとらない、それをやめさせるような措置をとらないという点については、私は責任罰を設けるのが妥当ではないか。この点は事業者団体の場合には、その事業者団体の理事者等に対して同様の責任罰の規定がございます。それ以外に不公正な取引方法についていま罰則がありません。これはどういう事情によるものか、ややそのいきさつ等においても不明確なんでございますが、非常に悪質な場合には直接罰則にかかるというふうにしておいた方がよろしいのではないか。事実私ども、きわめてまれではありますが、不公正な取引方法とみなされるもので非常に悪質である、たとえば社名を変更するだけで全く同じ手口を使ってやっているというふうな場合がございますが、その都度社名を変えられますから、実際上は同一体でないというので何かやっても告発もできないのだ、こういうことになっております。  それともう一つが、カルテルその他の違法行為を行いまして臨検検査を行いましたところ、その時点においては確かに違法行為があったのだけれども、その後にみずからやめてしまったというふうなケースがありまして、これはただやめたというだけではいまのところでも済ませないようにしておりますけれども、しかしながらどうしても違反行為として排除できないというふうな事情に至ることが少なくありません。そういうことで、過去の行為であってもこれは排除措置の対象になり得る。独占禁止法にいう不公正な取引方法の種類と見らるべき不当景品類及び不当表示防止法ですね、この法律には過去のすでになくなってしまっている行為についても排除命令を出すことができるという規定が現在ございます。それで独禁法の方にはそれがございません。そういう点から考えまして、私どもの事実上の経験から申しまして、このような規定があれがカルテルその他の違法行為を全体として少なくしていく、そういうことをなくしていくという目的のために役立つことではないか、こう思いまして、こういうことを提案申し上げた次第でございます。  何分にも配りましたものは「改正試案の骨子」とありますように、細かな点は記述されておりません。そういう点をお含みの上お受け取りいただきたいのですが、趣旨並びにその概要につきましては、いま御説明申し上げたとおりでございます。
  55. 板川正吾

    ○板川委員 委員長にこの点をお願い申し上げますが、将来の記録としても、公取委員長がいま説明されました「独禁法改正試案の骨子」、これを議事録の冒頭に掲載をされ、それをただいま公取委員長説明したという形を一応とっておいていただきたい、こう思います。要望いたします。
  56. 田中六助

    田中(六)委員長代理 この際、お諮りいたします。  ただいま板川正吾君より御要望がありました、お手元に配付しております公正取引委員会の「独占禁止改正試案の骨子」を本日の会議録の末尾に参照掲載したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 田中六助

    田中(六)委員長代理 御異議なしと認めます。  よって、さよう決しました。
  58. 板川正吾

    ○板川委員 それでは次に、たくさん質問がありますが、時間の関係上一、二にしぼってお伺いいたします。  この公取試案の中で、いま委員長説明されたのでありますが株式保有制限、ここで、大きな会社が株式を持って系列化をして独占していくことがいけないから、資本金百億円以上または総資産二千億円以上の会社が、純資産の二分の一程度以上持ってはいけないという規制をしよう、そういう提案がございますが、どうもいろいろ学者の説等を聞きますと、この独禁法改正案の中で抜けているのは近代独占と言われる企業集団、この企業集団のとらえ方に欠けておる、こういう説がございます。  御承知のように独禁法は個々の企業、個々の会社、これを対象に規制しようというのでありますから、集団的なものを規制するという法体系ではない。しかし、やり方によればそれは集団的ないわゆる現代独占と言われるものですね。まあ学者の説によると、企業を取り締まるといういまの独占禁止法の規定は、いわゆる古典的独占についてで、近代独占について手を加えてない、こう言われます。こういうものに対して一体公取はどう考えておるのかということを伺いたいのです。  東洋経済の独禁法改正についての増刊号によりますと、「三菱銀行は三菱重工の大株主であり、同時に三菱重工は三菱銀行の大株主である。これではどちらか一方が他方を支配しているということにはならない。三菱銀行と三菱重工だけならその相互持合率もそれほど高くないが、しかし三菱グループの企業が集まればそれは三菱銀行の株式の二七%も所有しているし、三菱重工の株式の二六%も持っている。こうして三菱グループの「金曜会」メンバー全体の発行株式の二六・五%が三菱グループ内で所有され、住友グループでは「白水会」メンバーの発行株式の二七%が住友グループのメンバーによって所有されている。お互いに持ちつ持たれつで、株式はグループ内をぐるぐる回って、どこまでいっても支配の究極の主体はない。この誰が誰だかわからない構造こそが相互持ち合いの本質だが、しかし、ただはっきりしているのは、それぞれのグループメンバーの企業に対してグループ全体で大株主になっているということである。」こういうことを言っておる。さらに続けて、「そこで三菱グループの社長会である「金曜会」は事実上すべてのグループ内企業の大株主会の役割を果たしている。なぜなら三菱銀行の頭取は自分では三菱銀行の株はほんの少ししか持っていないが、彼は三菱重工、三菱商事、三菱化成等々の会社に対しては大株主である三菱銀行を代表している。会社の所有する株式に基づいて彼は大株主として他社に対している。」支配権を持っている。こういう意味のことを言っておるのです。  確かに一社では、たとえば今度の持ち株制限をいま言った公取試案のようにされても、あるいは銀行のように一〇%を五%に下げても、こういう株式持ち合いの方式で相互に持ち合えば、やはりこれは近代独占と言われる独占体制を取り締まる方法がないじゃないか、これをどういうふうにお考えになっておられるか、この点を伺っておきたいと思います。
  59. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 御指摘の点は、実はまことにもっともなのでございます。ただ、私ども結論から申しますと、いまの段階では株式の保有総量を制限するということをまず実現したい。そして、企業集団とは何か、つまりグループとは何か、これについてはっきりした正体、これを定義づけることが大変困難でございます。いま社長会メンバーというふうなことで、社長会というようなものを持っておりまして、いまおっしゃったように、三菱にしろ住友にしろ、それぞれ合わせれば、お互いにその社長会メンバーだけで二十数%になる。そうしますと、何のことはない、事実上それらの間で相談して、それでこれは、ある特定の会社の株主総会で決めることについても、実はそこで決めてしまえば、つまり大体の了解を得てしまえば、全部決まったも同然である。こうなりますから、持ち株会社がかつてはっきりした態度で司令塔になって全部支配しておったという形とは違いますが、相互のそういう協力関係によって、事実上株主権の行使という形で相互援助体制ができ上っている、あるいはでき上がりつつある、こういうことは否定できないだろうと思います。つまり、反対している側は、いやあれは同窓会的な雰囲気のものだとか、あれはサロン的なものだとか、こうおっしゃるが、それではなぜそういうことを株を持っておやりになるのかという疑問がありますので、私は、当然これは次の課題として、だんだんにその対策考えていかなければ、やはり独禁政策上問題となり得るのではないかと思いますが、ただいまのところ、そこまで持っていく手順ですね、大変むずかしい障害がございますし、もちろんこれは大変な反対が予想されます、これを実証することがなかなかむずかしいわけですから。しかし、実証と言いましても、その客観条件が整っておれば、そういうことはいずれ問題にすることも必要になってくるのではないか。いまの段階で私はこの程度にしかお答えできないわけでございます。
  60. 板川正吾

    ○板川委員 結局他社の株を持って、これは資産株とかあるいはいろいろ理屈はつけておりますが、結局は支配株ですね。ですから、公取のねらいがいわゆる古典独占だけをねらっておって現代独占というものに手をつけないというのは一つ欠陥だろう、私はこう思います。  この株式の相互持ち合いというのは、実は証券と資金市場とのあり方という立場からも問題があるということを田中前首相が言っておる事実があるのです。  これは四十九年九月十二日の日本経済新聞に報道されているのですが、「田中首相は十一日、東京・大手町の経団連会館で開かれた昭和四十九年全国証券大会で演説し「資本市場育成のため、政府は強い決意を持って取り組む」との意向を表明した。中でも「十五%台に落ち込んだ企業の自己資本比率を早急に高めないと、他の先進工業国の企業に対抗していけない。三二%という個人持ち株比率の低さは企業の資金調達に支障をきたすので、この是正のための政策として、税制面で配慮する」と強調した。」こう報ぜされております。問題点は、田中首相が、「法人の株式持ち合いが行き過ぎると、自由な競争が制限される恐れがあるばかりでなく、法人相互間の増資は、実質を伴わない増資つまり資本の空洞化に至る恐れがある」と重大な関心を持っていることを示した、ということであります。これはどういうことを言っておるのか、通産大臣おわかりでしょうか。田中総理は、自己資本率が非常に低いということあるいは株の持ち合いでやたらに増資していくということは資本の空洞化を来すおそれがある、好ましくない、こう言っているのです。これはどういうふうにお考えなんですか。
  61. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま幾つかの問題点を御指摘になりましたが、私は、企業の自己資本が日本企業は非常に低い、ここが一つの大きな問題点だと思います。でありますから、今後日本産業というものが発展をしていく過程におきまして企業の自己資本の比率というものを高めなければなりませんが、同時にあわせて、経済規模そのものが大きくなるわけでありますから、自己資本の額そのものも私は飛躍的に大きくしなければならぬ、こういうふうに考えております。これが産業強化一つの大きな前提条件だろうと思うのです。でありますから、株式の保有制限というふうな問題についても、この点を私は十分考慮しなければならぬ、こう思うのです。  それからもう一つは、持ち合いが度を過ぎますと、確かに御指摘の第二点のようなことが起こってまいります。でありますから、その点は行き過ぎないように十分気をつけなければならぬと思いますが、しかし持ち合いになったままの株が増資等をされた場合に空洞化するかといいますと、私は必ずしもそうは思いません。持ち合いの株がお互いにふえるということは、その分だけ資産がふえるということになりますから、担保力も増すわけでありますし、とにかく資金調達には十分役立つ、そういう意味におきまして必ずしも一概に断じ去ることはいかがかと思います。ただ、度が過ぎるということはいろんな面で弊害がありますから、そういう点は十分気をつけなければならぬ、こういうふうに思います。
  62. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 自己資本が低いということ、これはわりに無関心で今日まで来ているように思います。そういう点は金融依存の考え方があまり強過ぎるということにもあるし、また金の循環をいろいろとらえて、やはり金融機関一辺倒でいかなくてはならぬような仕組みになっているそういう資金の流れというものを、全体に広げて、全体から矯正していかなければならない大きな問題であります。  それから、自己資本が相対的にますます低下する中で法人の持ち株が三分の二を占めるというふうなこと、それが空洞化という表現は、私はその意味は、要するに、お互いのところから増資をしても、払い込みはお互いに払い込むのですから、そういうことは本当の資本調達にはなっていないのではないか。最近では、景気のよしあしにもよりますけれども、一年間に六千億ぐらいしか払込資本金がないと聞いております。つまり、そのうち三分の二を除いた三分の一が仮に一般人の払い込みだとすると、証券市場が膨大なる経費と人員を使って調達に寄与した金はたった二千億だ。これはまあこのほかに社債その他がございますが、ただし株式の面から見ると問題にならないという感じを受けるのです。だから、企業が真に強化され、そして増資に十分耐え得るということになれば、いろいろ時価発行その他の問題もありますが、いまよりはもっと資本調達の実が上がるようにしていかなければならない、こういう趣旨であろうと思います。金を銀行から借りてそれで払い込む、また相手がその相手方に払い込むと、金はただ行ったり来たりしているだけであって、本当の意味の資本調達には寄与していないのではないか、こういう趣旨であろうかと思いまして、これはまことに憂慮すべき問題であると私は思います。
  63. 板川正吾

    ○板川委員 前銀行局長としての見解ですが、通産大臣、それが本当なんですよ。Aという会社が増資をして、その増資の分をBという会社に持たせる、Bという会社が増資をして、Aという会社にその分を持たせる。たとえばその増資の分が十億円としますと、Aという会社は十億円を銀行から借りてBという会社に払い込みをし、BはまたAの増資に対してその十億円を返す。なるほど十億円というのが行ったり来たりいたしましたが、実質的にそこに資金は残らない。だから、こういうことで株の相互持ち合いというのがますます拡大されていくと、空洞化するという田中前首相の杞憂というのは当然なんですね。空洞化するおそれがあるというのは、実はいいポイントをつかんで言っておるのですね。だから、そういう相互持ち合いで一体何が利益を受けるかというと、それは取締役の支配権というのが強まるだけなんです。別に株主が利益を受けるわけじゃない。取締役の支配権というのが強まる。お互いに相互持ち合いによってグループ力というのが強化されてくるという危険性があるわけなんです。だから、そういうグループ化についてはもちろん独禁法でもできるだけこれをとらえるべきだし、さらには証券業を管理する立場から大蔵省なりあるいは産業政策を指導する通産省、こういうものがこの実態というものをもっと把握して考えていかなくちゃならないと私は思います。こういう架空な資金を動かして経営者同士がグループ化して、そして企業集団でもって支配力を強めていく、これを公取は独禁法の立場からとらえていく必要がある、こういうことを私は申し上げたいのであります。  それでは、次に移ります。  きょうの新聞を見ますと、「通産省は十八日、独占禁止改正問題を検討している自民党の独禁法改正特別調査会に対し、わが国産業界の実態を調べてまとめた「寡占型業種の価格動向、主要業種実態」「産業の競争実態と市場成果について」の三種類の資料を提出した。その中で、通産省はアルミ地金、板ガラスなど寡占といわれる業種でも競争は激化している、寡占型業種の製品の価格の方が競争型業種より低位安定している、などと指摘し、寡占化によって競争の低下——価格上昇がもたらされているような実態がないことを強調している。」こういうふうに書かれております。これは「寡占の弊害なし 通産省が自民に資料」こういう見出しでけさの朝日新聞にあるわけですが、これは通産省、国会にもひとつぜひこの資料を提出してもらいたいと思います。委員長から要望をお願いします。
  64. 河本敏夫

    河本国務大臣 資料は委員長の方から御指示がございましたならば、提出をいたします。  なお、一言だけ先ほどの問題について私はつけ加えさしていただきたいと思うのでございますが、日本におきまして、企業間に持ち合いがふえたという理由はいろいろあるのですが、その一つは三年前にテークオーバービッドという制度が公認されて、法定化されたということですね。したがって、外国の企業が今後は日本企業に対してTOBをかけてもよろしい、こういう制度が公認されたということからの企業防衛という意味も私は大きな一つの理由であった、こう思います。  それから、持ち合いも余り度が過ぎてはいかぬということを申し上げましたけれども、しかし持ち合いになりますと、それじゃ空洞化するかといいますと、私は必ずしもその議論には賛成しないのです。とにかく企業の資産というものは現金であってもいいですし株式であってもいいわけですし物であってもいいわけなんで、現金のかわりに所有の株式がふえるということであれば、それは資産がふえることでありますから、一概に企業の資産というものは現金でなければならぬ、しかもそれは個人から集めた現金でなければならぬ、そういう議論は少し私は検討する必要があるのではないか、こういうふうに感じます。  それから、企業集団を一概に悪いというのは——悪いという意味で言っておられるのではないと思いますけれども、ややもすると、世上そういう誤解が多いのでありますけれども、私は日本のような資源のない国で、しかも人口が非常に多いという場合には、産業政策というものはよその国と別に考えなければいかぬのじゃないだろうか。雇用問題もありますし、それから資源の入手という問題もありますから、やはり産業活動というものは別の角度から積極的に考えていく必要があるのではないか、こういうことを考えておるということをただいまの御意見に対してつけ加えさしていただきたいと思います。
  65. 板川正吾

    ○板川委員 通産大臣産業活動を通産省の立場からお考えになることをわれわれとやかく言うのじゃないのですよ。しかし、その産業活動にもルールが必要である。そのルールはやはり競争をやる部分については独占禁止法というルールを尊重してもらわなくちゃ困る。そして、独禁法でどうしてもだめだというなら、それは立法化して公的な規制のもとに置かれる、こういうたてまえですからね。何か産業活動が優先して独禁法なんかどうでもいいというような、勝手にそういう考え方を持たれちゃ困る。もし、そういうことをやるというのなら立法化して独占禁止法の除外法律としてやるほかはないので、いまの考え方は、ちょっと何か支障があるから独禁法を度外視して何でもやるようなふうに受け取られるニュアンスもあったものですから、念のため申し上げておきます。  私は、寡占なり独占なりというものが何もかも悪いと必ずしも言っておるわけじゃないのですよ。それは規模の利益、規模経済性というものもあるでしょう。いい面もありましょう。だから、産業活動が発展してきたのでしょう。しかし、こういうように高度成長がもうおしまいになり、安定的な経済足踏み状態になりますと、結局はそういう独占なり寡占なりというのが自分の支配力を、優位な位置を利用して、そうして競争をなくして私的独占を図っていくというおそれがある。だから、そういうおそれのある面に対して今度は独禁法を改正強化して対処していこう、こういうことであって、寡占なりがすべて何でもかでも悪いという意味ではございません、規模の利益の面のあることも承知しております。しかし、一面公正なルールを犯すおそれもあるから、その面において取り締まっていったらどうかというのが私の考え方ですから、誤解しないようにしてもらいたい。  それでは、先ほどの通産省の資料、後でいただきます。
  66. 田中六助

    田中(六)委員長代理 板川正吾君に申し上げます。  通産省の資料は、後日この委員会提出するようにいたします。
  67. 板川正吾

    ○板川委員 これは経済企画庁がおりませんから、私の方で発表いたしますが、公取は御承知かどうか知りません。  通産大臣経済企画庁が昭和四十九年六月に、証券取引所の一部及び二部上場会社千六百四十四社のうち製造業千百二十四社で、しかも二部上場の赤字会社などを除いて七百四十七社について「工業製品の価格形成に関する調査報告」というのを出した。そうして回答は七百四十七社に対して三百六十社が回答して、ほぼ半分の回答があった。これは四十九年一月の段階ですが、小さな冊子になっております。この中で「価格競争に対する今後の態度」という表十一を見ますと、価格をきめる場合、競争は続けるが業界の協調にも留意していこうというのが七〇・三%、なるべく競争しないように努めるというのが一九・三%、価格競争は全くしないというのが全体の二・三%、激しい競争を続けるというのが、わずか全体の中の五・六%なんですね。  そしてなお、これはシェア別に書いてありますが、たとえば全国のシェアを四〇%から五〇%持っておる企業が、競争は続けるが業界の協調にも留意というのが七三・九%、なるべく競争しないように努めるというのが二六・一%、競争するという会社は一つもなし。それから、シェアの五〇%から六〇%、これは寡占支配的な、独占的な支配力を持っているところでしょう。これが、競争は続けるが業界の協調にも留意が四四・四%、なるべく競争しないように努めるが三八・九%、競争は全くしないが五・六%、激しい競争を続けるというのが一一・一%あります。六〇%以上、これは完全に独占的な企業ですが、業界の協調にも留意が四八・三%、なるべく競争しないように努めるが三一%、競争は全くしないというのが三・五%、競争を続けるというのが一三・八%、こういう資料がありますね。  それで、この資料から——そのほか幾つも資料が出ていますが、この中から見ると、業界全体は、少なくとも一部、二部の上場会社の製造会社では、工業製品の価格形成に関しては、圧倒的に協調体制なんですね。圧倒的に協調的な気分を持っておるのですよ。それば経済が高度成長を続けるときはあるいはある部面で競争を続けたかもしれません。しかし、経済がこういう足踏み状態になりますと、やはり協調体制で価格を決めていくという傾向が強いのです。だからわれわれは、たとえば独禁法の改正が必要だと思うのですが、しかしこの通産省の資料が「寡占の弊害は全くなし」、いつの時点でどういうとらえ方をしているかわかりませんが、「寡占の弊害は全くなし」というのは、余りにもその実態から離れているんじゃないだろうか、こう思いますが、いかがですか。
  68. 河本敏夫

    河本国務大臣 この新聞の見出しはそういうことになっておったかもわかりませんが、この資料の見出しそのものは「産業の競争実態と市場成果について」、こういう題になっておりまして、必ずしもいまおっしゃったようなことを一言で言ってしまうという内容では私はないと思うのです。これはよく資料を、私ももう一回読み直してみまして、その上で意見を申し述べたいと思いますから、そういうふうにさしていただきます。
  69. 板川正吾

    ○板川委員 公取委員長は別に所見はないですか。  それから、日銀の物価指数年報というのがあるのですよ。この日銀の物価指数年報で、大企業性製品と中小企業性製品の卸売物価指数、あるいは大企業性製品と中小企業性製品の工業製品生産者物価指数というのが発表されておりますが、これは日銀の統計です。それで、この日銀の統計によりまして、大企業性製品と中小企業性製品の工業製品生産者物価指数というのを見てみますと、大企業製品は、四十八年平均を一〇〇として四十九年がどのくらい上がっているかというと、一三三・六にあがっておる。中小企業製品は一一七・七、中小企業製品の方が値上がり率が低い。大企業の方が高い。じゃ、その前の四十七年平均ではどうかというと、大企業製品の値上がり率が、四十七年平均を一〇〇として四十九年は一四八、中小企業製品は一五〇・五ということになっておるのですね。  それで、いままで物価論議をする場合に、いつも、中小企業生産性が低いために中小企業の製品の値上がり率が高い、こういうことを主張されておって、過去の統計を見ますと、確かに中小企業の方がやや、四十六年平均を一〇〇としても四十七年平均を一〇〇としてもそういう傾向はあったのです。しかし、四十八年平均を一〇〇とする四十九年は、こういうように中小企業のほうが値上がり率が少なくて大企業の方が高いということは、これは一つの寡占の弊害、寡占のいわゆる暗黙の値上げといいますか、こういうものが影響しているように思う。要するに、中小企業の方はなかなか値上げはむずかしいが、大企業の方は簡単にその暗黙の協定で値上げをできる、こういうことを物語っているんじゃないかと思いますが、通産省はこれはどう考えますか。
  70. 河本敏夫

    河本国務大臣 実は、そういう議論は政府部内の一部にもございまして、通産省の方で、ごく一時期をとらえますと、そういう時期もあるのですけれども、しかし一定の期間を考えてみますと決してそうではない。やはり大企業製品の値上がりの方が少ない、中小企業の製品の値上がりの方が多い、こういうふうな数字が出ておりまして、そういうことを組織的に正確に報道するという意味において先ほどのこういう資料をつくったのではないかと思うのですが、なお詳細につきましては、政府委員が来ておりますから、政府委員から答弁をさせます。
  71. 和田敏信

    ○和田政府委員 ただいま手元に資料がございませんので、若干、記憶に基づいての御説明になります点をお許しをいただきたいと思いますが、先生御指摘のように、四十九年度対比でございますと、御指摘のような数字があろうかと思います。私ども早速、当委員会に御提出申し上げますところの資料は、まさに先生が御指摘になったような点を分析いたしたものでございまして、四十五年をベースといたしてやや長期にわたって見ました場合に、大企業製品と中小企業製品との価格の推移がいかがになっているかということを明らかにして、これに分析を加えたものでございます。  なお、四十八年、四十九年関係におきましては、中小企業製品一般に関しまして、木村関係と繊維製品関係が、やや価格に関しまして異常な状態を示しておりますので、木材関係と繊維製品を入れることによりまして御指摘のようなカーブが描かれたのではないか。つまり、大企業製品に比べまして中小企業の製品の方が上昇率が低かったというようなことになったのではないかというふうに記憶をいたしております。  いずれにいたしましても、資料を提出いたしまして、御検討を相煩わしたいと思っております。
  72. 板川正吾

    ○板川委員 私がここで申し上げたのは、四十八年の物価の平均を出し、四十九年の物価の平均を出すと、そういうふうに中小企業の方が値上がりが低い。同じ方式で四十七年平均を一〇〇として四十九年はどうか。それはいま言ったように、大企業が一四八、中小企業が一五〇・五、四十六年平均を一〇〇として計算すると、大企業が一四七・五、中小企業が一五七・八、四十五年の平均を一〇〇として四十九年を見た場合に、大企業が一四五で中小企業が一五八・六というふうになっておるのですよ。だから、四十五年平均を一〇〇として四十九年を見れば、それは大企業の方が値上がり率が低く、中小企業の方が高いというのはわかる。しかし、私がここで取り上げたのは、四十八年というのは、石油ショックが末期に起こって、物価が相当上がってきたけれども、まだ全般的な値上がりじゃない。しかし、四十九年は、石油が一月一日から十ドルにもなったし、カルテルが相次いで起こったというようなこともあって、こういうように大企業の方が値上がりして中小企業の方が低い。これは大企業が値上げを簡単にしやすいいわゆる寡占支配的な体質というものがあるからだろう、こういうことを言いたかったわけであります。  まあ、いずれにしましても、こういう資料もありますし、通産省が都合のいい資料だけ集めて「寡占の弊害なし」——弊害なしということも、どういう弊害を考えておるかは知りませんが、四十八年までは、そういう意味では物価に与える率は寡占の方が低いという理屈は立ちますが、しかし余り企業擁護に偏ると国民的な批判を受けるだろう、私はこう思います。  では、通産大臣、いいです。一時に何か用があるようですから結構です。私も大体終わりますから。  公取委員長改正案骨子についていろいろ詳しく実は聞きたいと思っておったのですが、時間が過ぎましたので、もう一問だけにいたしましょう。  銀行の持ち株、金融機関の持ち株を一〇%から五%にする。この経団連の十二日の声明を見ますと、課徴金ぐらいは条件つきで賛成だけれども、後はみんな反対だ、こう言っておるのですね。この経団連の主張に対しての反論を伺いたいと思っておったのですが、時間がないからまたの機会にいたしましょう。  ただ一つだけ、アメリカの連邦準備制度理事会というのが三菱銀行本店に対して、このほど、米国の現地法人である山一インターナショナル・ニューヨークの親会社である山一証券の株式を約八%所有しているのは銀行持株会社法に違反しておる、七六年一月から五%以下に減らすように指示した書簡を送ってきたことを明らかにした、こういう報道がございます。簡単に言うならば、アメリカの現地法人である山一インターナショナル・ニューヨークという会社があり、その親会社が日本の山一証券である。ところが、その山一証券の株を三菱銀行が八%持っておるのはアメリカの法律にひっかかる、だから、それを五%以下に減らせ、こういう通達がアメリカから来ておる。これはまあ管轄権の問題になりますが、政府もおそらくこれを受け入れざるを得ない、アメリカの言うことですから。受け入れざるを得ないということになると、銀行の持ち株五%なんていうのは当然のことになってしまうのじゃないかと思うのですが、これはどういう考えを持っておりますか。
  73. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 この点は、あるいは御承知かと思いますが、先般、社会党の多賀谷さんから予算委員会でその質問がありまして、私は独占禁止法の立場からだけ見解を述べたのですが、後から大蔵省の事務当局が参りましてちゃんと説明したところによりますと、事柄としては、最初に三菱銀行がアメリカに現地法人をつくる際に、その法律はすでにあったわけですから、そういう条件をつけられた。早く言えばそういうことらしいです。ですから、そのときから一年経過しているので、現在ではもう六・何%になっておる。減らしておるわけですね。その六・何%を、今後の一年の間には五%以内にします、こういうふうな方針で、すでに三菱銀行は処理しておる。ですから、向こうに銀行をつくるときにはいろいろありますから、現地法人でありましても支店でありましてもですね。そういうことでもってアメリカの方からそういうことを言われて、それに応じたというのが実態なんですが、本来アメリカの法律がこちらの本店に及ぶかという点については問題があるのです。それは問題なしとしないのです、域外適用ですから。しかし、アメリカはそういうふうな方針で一貫して、特に証券業について銀行が支配力を持つとかなんとか、かかわりを持つということに非常に厳しいのです。これはもう御承知かと思いますが、一九二九年のパニックでも結局は証券の暴騰暴落から起こったような形になっておりまして、惨たんたることになったわけです。そういうことから金融とこれとは完全に分離すべきだというのがルーズベルトのニューディール政策、その一環として、たしか一九三二年でありましたか、三年でありましたか、そのころにこれが定められたのです。アメリカの銀行法もそのときに制度を完備したはずでございます。そういうことでアメリカでは一切兼業禁止、だから持ち株においても非常に厳しい制限を持っておる、こういうことでありまして、私どもその点まことにもっともであると思う、ただしヨーロッパでは必ずしもそういう制度になっていない、国によって違うと思います。  私ども、銀行は、特に日本の銀行においては五%程度が限界であろう、そうでなければこれは証券業に限らず、あらゆる産業に対して株主としての立場から余り強くなり過ぎるのじゃないかということも考えまして、金融機関は五%、それに対して保険会社は例外を認めてくれとか、いろいろ細かい話がありますが、原則論としては五%というのが適当じゃないかという感じを深めております。
  74. 板川正吾

    ○板川委員 アメリカとイタリアでは金融会社の持ち株を禁止しているそうですが、それともう一つ、この改正骨子の中に、規制対象会社が国内において競争関係にある他の会社の株式を所有することは原則として禁止する、これはなかなか重要な規定だと思いますが、持つ場合には認可を受けろと言っておるのですが、これは原則禁止ということになると一株でも持ってはいけないという理屈になるのですか、ある一定の比率以上というのですか、この辺はどういうふうに考えておるのですか。
  75. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私たちの考えとしては、原則禁止でございますから、根っこから禁止したいという考えでございます。そのかわり認可はあり得るということでございまして、それについてちょっと厳し過ぎるじゃないかというふうな批判もありますが、それならばそれで、またほかの方法を考えなければなりませんので……。私どもとしては、競争会社の株をなぜ取得するかという点を考えまして、これは昭和二十八年まではあったわけですね。そういう競争会社の株式を持ってはならぬという二十八年以前の状態に戻したらどうかというふうに考えております。
  76. 板川正吾

    ○板川委員 時間ですから、以上をもちまして終わります。
  77. 中村重光

    中村(重)委員 関連。  公取委員長企業分割の問題で、完全な会社の分割は商法に規定がない、それから一部譲渡の問題も、株主総会の決議という点が商法二百四十五条にあるわけですね。その関係で疑義があるといったようなことを法務省も言っているわけですが、その点に対しての公取としての見解はどうなんですか。
  78. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 ただいまでも、実は七条の排除措置の一つに一部譲渡——一部譲渡は、われわれの普通の解釈では、これは重要なるものを含まないので、あえて株主総会の特別決議はいらないというふうに言うのが通説でありますけれども、発足当時にさかのぼってみますと、必ずしもそうでない。としますと、そこに商法との関連が書いてないのはどういうわけかということがございます。それは独占禁止法の方が優先するという考え方なんだそうです。つまり、公法で、独占禁止法は特別法でございますが、それに基づいて審決によって営業譲渡を命じた、会社の分割も新しく創設すればできるわけでございまして、そういうものを命じた場合に、商法との、特別決議との関連いかんということであれば、黙っておれば独占禁止法の命令が優先するから、その特別決議は必要としないというのが私どもの見解でございます。しかし、とても紛らわしい、解釈が二つあり得るので、たとえば法務省の方から言えば、その場合でも、独禁法上の命令が出てもなおそれは特別決議を必要とする、こういう見解を述べられているやに私は聞いております。それで、それならば紛らわしいものははっきり法律にうたっておいた方が全く疑念はありませんから、法律上その特則を設けておく、この方が適切であろう、現在そう考えております。
  79. 中村重光

    中村(重)委員 だから、独禁法の第七条に、集中排除ということについていまのお答えのとおりの点があるわけです。紛らわしいからそれをより明確にしておくということはわかるのですけれども、独禁法が優先するという考え方から言うならば、会社そのものの分割が商法に規定がないから、したがって公取か——これは委員長自身が言ったのじゃなくて、たしか局長が自民党との話し合いの際に、商法の規定がないから、したがってこの会社そのものの分割というのは見合わせるといったようなことを言ったわけです。そのことが新聞報道に伝えられているわけですが、その点に対する公取委員長態度はどうなんですか。
  80. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私はその後において、直ちにそういう考えはない、つまり事務局長はどのような発言をしたか、私責任を持ってお答えできませんが、自分で、公取の試案として先ほどお配りしたものの一部を撤回するとかいう権限がないことは百も承知でございますから、そういうことをそう断定的に言うはずはないと私は思います。  いずれにしても、公正取引委員会として、いまお述べになりました商法の改正がなければ、商法の方が先に立たなければ絶対できないのだという考えはとっておりません。そうでなくたって可能ではないかという考えを持っておるわけでございます。
  81. 中村重光

    中村(重)委員 私の見解も同じなのですよ。第七条の関係だって、集中排除の規定は、この商法二百四十五条の規定があったのだけれども、独禁法の七条の規定の方が遅い、しかしそれでも公取としては一部譲渡はやれるのだという見解。それならば、商法の規定はないけれども独禁法が優先するという考え方の上に立つと、会社そのものの分割も公取試案のとおりできるのだというように考える。したがって、公取の中でも、事務局長がそうした自民党の懇談会の中で言ったことが既成事実となって、会社分割そのものはむずかしいのだ、公取の事務当局で、局長だけではなくて課長なんかもそういったようなことを言っていますから、少なくとも委員長と見解を異にするということであっては私はならないと思う。もっと毅然たる態度をもって対処してもらいたいということを強く要望しておきたいと思います。もう一度お答えいただけますか。
  82. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 結果がどうなるにいたしましても、最終の決定権は私どもが一手に握っているわけじゃございませんから、この点は御了承いただかなければなりませんが、私どもの方の態度は変わりません。事務局長が言おうが課長がどう言おうが、独禁法で会社分割の制度をつくればできる。私ども考え方を言いますと、商法の方に、恐らく相当な条文になると思いますが、そういう会社分割の規定を設けても、そのうち特則によってそれを適用しないとするものが多くなっちゃうのですね。だから、そのくらいならいま初めから独禁法によって会社分割を命ずることができて、その会社分割とはこうやってやるのだということを書くことは、立法政策の問題であって、いろいろないきさつはあるでしょうけれども、立法としてそういうことをやる必要があると決めてかかればできることである、こういうように考えております。
  83. 板川正吾

    ○板川委員 その点誤解のないように。公取が今度試案を出している分割、それから株式の一部譲渡、現在の七条にある私的独占を排除する手段として株式の一部譲渡、これは内容が違いますからね。そうでしょう。公取が今度の改正試案で考えられているのは、構造上に対して、構造規制の手段として分割をするあるいは一部営業の譲渡をする、しかし現在七条にある規定は行為規制である、こういう点が違うと思いますね。私はそう解釈しているものですから、誤解ないようにと思ってちょっと申し上げます。
  84. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 ただいま板川さんがおっしゃったのは、それは確かにそのとおりで、一方は行為規制であり、片方は状態そのものである、いわばそれの排除である、その点はそのとおりですけれども、いまの行為規制である私的独占というものに対する排除措置としても、その独占的状態を排除するにしても、その動機は違うのですが、しかしやり方は同じであるというふうに解釈されているわけです。ですから、いまの私的独占の、あのときの営業譲渡——営業譲渡と書いてあるのですが、これは重要な一部を含むかどうかという点が争点なんです。通説は含まないとするのが多かったのですが、事務当局がさかのぼって調べてみますと重要な一部をも含むのだ、こういうことになりますと、今度私ども考えている重要な一部の譲渡を含む一部譲渡と同じことになっちゃうのです。ですから、その動機は確かに一方は行為規制だけであった、つまり行為規制だけであって、構造規制はこれからつくる問題なんですね。行為規制はあったけれども、構造規制がないからこれを継ぎ足そうということでありまして、その排除措置の内容は、営業譲渡の内容は同じであるというふうに言わざるを得ないことになっているわけです。いままでのは、だから手当てが落ちているのじゃないか、つまりなくてもいいという解釈がある。しかし、一方で、置いておいた方が紛らわしくなくていい、その方の意見を私どもは強く持っているわけでございます。その点、やり方は同じであるということだけ御了解願いたいと思います。
  85. 田中六助

    田中(六)委員長代理 次回は、来る二十五日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十九分散会