○高橋(俊)
政府委員 確かに国会の場で正式に私
どもの案を御
説明いたしておりませんでしたので、お求めに応じましてその趣旨と概要について御
説明申し上げます。
第一には、独占並びに寡占の
対策でございますが、これはすでに御承知のとおり
生産集中、
産業の寡占化というふうなことが言われておりますが、これはまさにその裏づけもあるわけでございまして、決して事実に反するわけじゃありません。そういうことが一面では
企業間の協調的な機運を高めることになる。事実問題として、そういう状態を背景としまして価格決定が市場の需給と
関係なしに協調的に行なわれる、そういう事例が若干ふえているのではないか。つまり高度の寡占とか独占的状態というものが、本来の
意味の公正にして自由な競争の阻害要因として働いているためにそういう現象が認められるというわけでありまして、これに対しては二つの
規制措置を設けたいということであります。
その
一つが
企業分割と言われておるものでありまして、私は原則的にはこれは
一つの
企業である場合が多いと思いますが、間々例外として二つの
企業が完全に市場を独占するというふうなことも
考えられないではない。そういうことから、
一つあるいは二つの
企業に
生産力や供給力が集中いたしまして、しかもその同じ
業種に新たに新規
産業が加わることが困難である、そのほかいろいろな措置を講じてもなかなかそういう状態がうまく変わらない、競争が抑圧——抑圧と申しますのは、事実上行われないという
意味であります。強いて手を加えなくてももう競争が行われないような状態になっている。これを独占的状態と私
どもは呼んでおりますが、それでほかの方法で競争回復をしようと思いましてもそれができないという場合には、その会社に対して会社の分割あるいは営業の一部譲渡というふうなことを命ずることができる
制度を設けたいということであります。
さて、いま直ちにその分割の対象となる
企業があるとは申し上げられませんけれ
ども、現状のままにして放置すればいつかは独占的状態が生ずるおそれがないとは断言できません。このようなものに対して
私的独占禁止法が何らの
対策を持たないのはむしろ矛盾ではないかということからこういう
制度を設けたい。
しかしながら、営業譲渡と会社分割、これは会社分割は新しくつくらなければなりませんけれ
ども、そのようなものを合わせて私
どもは
企業分割と、こう呼んでおりますが、
企業分割を命ずるに当たりましては十分に事前の
調査も行いますし、またできるだけの方途を講じてそういう状態がそういう手段を用いないで排除されるならばけっこうです。そういうことをやります。また、会社の状態についていろいろな点を考慮し、また特に国際競争力などには十分注意を払わなければなりませんが、そういうことからして、そうたびたびこのような規定が発動されるというわけではありませんけれ
ども、独占
禁止法の合併
規制その他に対して首尾一貫する
意味におきましてはこの
企業分割の
制度そのものは必要である、かように
考えたわけでございます。
また、寡占の
対策でございますが、独占の状態までは至らない、しかし高度の寡占である。寡占という定義はいろいろな割合で言われております。しかし、私
どもの言っておりますのは、かなり高度の寡占の
業種の中には、あまりたくさんの
業種ではありませんけれ
ども、価格が有無相通ずると申しますか、引き上げが行われるときに同調的である、価格面での競争が実際にはないと客観的に見られる、そういうふうな場合は、これは一種の証拠の把握できないカルテルだ。カルテル類似行為であるけれ
ども証拠は把握できない、このようなこと、これは一面ではパラレルアクトとも言っておりますが、平行行為、こういうふうになりますが、これに対しては、同時的な値上げを行った場合に
一つの手段として原価の公表を求めるというふうなことでそういう行為を抑止する効果をねらいたい、こういうことであります。これが独占、寡占
対策の
要旨でございます。
それから、カルテルの
対策が次にございます。これにも二つの方法を
考えておりますが、要するにカルテル価格は不法行為によって人為的に形成された一種の独占価格ではないかというふうに思われます。それをそのままに放任するということは妥当とは思われません。
ところが、現在のやり方でまいりまして、
現行法の破棄命令では事実問題としては価格が少しも下がらないというのが実情でございます。それでまた、したがってカルテルはやり得である、こういうふうな風潮は一向に改まらないわけです。
日本においては価格カルテルが非常に多い。アメリカは刑事罰による厳罰主義等が行われておりますので、この価格カルテルの数は相当減っております。
日本ではカルテルの中で一番多いのが価格カルテルであるというふうな風潮でございます。
このような状況に対処するために
対策を講ずべきでないかということから、まず第一の手段としては価格の原状回復命令というものを掲げております。カルテルによって価格が引き上げられた場合、カルテルと申します場合に価格カルテルだけをさすのかという点については、一般的に引き上げられたという現象が起これば、他の種類のカルテルでもやはり同じに
考えたい。価格カルテルが中心でございますが、この場合のカルテルとは
生産制限を非常に厳しくやってやみカルテル、それによって価格が非常につり上げられたというふうな場合もありますが、それは元のカルテル実施前の、これはむしろある価格というよりは、ある特定の日の価格に戻すという原則をつくりたい。しかしながら、それは機械的にやったならば、審判で争い、さらに裁判で争っている間に何年も経過するという事実がございますから、はたしてそれが機械的に適用できるものかどうか、全面的にはそうはならないんじゃないかということでありますので、それはそういうことができるということであって、やり得ない場合もあるという含みでございます。機械的な適用だけでは全く実情に反した価格になることもあるので、そのようなことは避けたいという
考えがございますが、原則はあくまで原状回復であるという趣旨であります。
次には、同じカルテルに対して、カルテルによって不当な利得を得た者には
行政処分として課徴金を課する、つまりやり得を改めるためにカルテルによる不当な利得、これを吸い上げてしまおう、こういう
考えでございまして、その額はカルテルによる引き上げ額、もうこの場合はどうしても価格カルテルのように思えますが、しかし
先ほど申しましたように価格カルテルと限ったわけではない。とにかく引き上げられた額、それにカルテルの実行期間中の販売数量を乗じた額を限度として、その範囲内、これは骨子でございますから非常に荒削りに書いてありますが、その範囲内で徴収する。何かどうしても控除しなければならぬというものがあれば、それは初めから決めておいて控除しなければならぬであろう、こう思います。
その次には、
経済支配力の過度集中というふうな問題がございます。特に最近
商社を中心としまして一部の大
企業、それから
金融機関の株式取得が非常に増加しております。この株式保有を通じまして
企業の系列化とか、お互いにお互いを助け合うというふうな
意味での
企業集団の形成化の傾向が明らかになりつつあるように思われます。
これに対して
現行法の株式取得に対するあるいは保有に対する規定は、過去の二十四年と二十八年でございますが、二回にわたる
改正で、事実上は株式取得が、取得することによって実質的に一定の取得分野での競争を制限するというふうな非常に解釈の困難である、適用困難なものになっておりますので、そういうことでなしに、
経済支配力の過度集中に歯どめをかけなければいかぬ、そういう見地から保有制限をしたい。それには
金融機関とそうでない会社の分とに分けておりまして、これらの株式の処分は、私
ども一応五年というふうな経過期間を書いておりますけれ
ども、実際には五年そのものにこだわる
考えはありません。十二分に経過措置を講ずることによって株式市場が混乱することのないようにしたい、そうすればまたこれは十分可能であるという
考え方をとっております。
まず第一には、
金融機関以外の一般の大
規模な会社の株式保有制限でありますが、これは
資本金百億円または総資産が二千億円以上の会社の株式保有は自己資本の二分の一または
資本金を限度とする。当然普通の場合には、
資本金に対して自己資本の方が上回っているというのが普通の姿でありまして、内部蓄積がほとんどゼロであるというふうな会社に限って
資本金と自己資本とはほぼ等しくなりますが、いずれにしてもこの
日本の風潮で、特に戦後の風潮ですが、
資本金というふうなものに対してかなり無関心な感じが私いたしますが、やはり
資本金は
資本金で、会社の存立の基本をなすものである。
ところが、その
資本金をはるかに超えて株式を保有しておるというふうなこと、中には自己資本をはるかに超えて持っておるという実例がございます。こういうことは非常に好ましくないし、それらの保有の目的等を
考えてみましても、決して歓迎すべきものではありません。そういう感じからいたしまして、こういうものは自己資本の二分の一または
資本金のいずれか高い方を限度とするということにいたしまして、それを超えている部分は
先ほど申しましたように相当長期間かけて放出してもらうということであります。この場合、実際上は多いのはいわゆる
総合商社、私
どものこの基準にかかってくるものは上位十一社でございます。そのほかの一般事業会社は、それに比べると会社の数は多いけれ
ども一社当たりにすればずっと少ない額になっております。次に、競争
関係にある会社の株式保有というものは原則
禁止にして、そのかわり例外は認める、どうしてもそれを持たせる理由があるという場合には、これは
認可するという
考えでございます。
それから、
金融機関につきましては、
現行の一社当たりの保有限度額はその会社の発行株式の一〇%ということになっておりますが、ただいまの
ところ中堅以上の会社におきましては、一〇%以内でありましても筆頭株主になっているというふうな事例がたくさんございます。かなり法人間に分散しているという現象が見られます。
金融機関がとかく上位株主を占めているという例が非常に多いんじゃないか。
調査してみましても、これは多過ぎる。そうでなくても
金融機関は融資の面を通じてわが国の場合、特別に優越した地位を持っている場合が多うございます。その点は外国の事情と比べてわが国の方がはるかに
金融機関依存度が高いという実情からも当然だと思いますが、その
金融機関が株主としても上位株主を占めているというのは余り感心したことでないということから、これを
昭和二十二年にありました
規制の五%に戻すというふうな趣旨でございます。
このほかに、私
ども刑事罰の
強化を出しておりますが、刑事罰の
強化は、実際問題として告発をしなければ適用があり得ないわけですから、告発をしないならば余り
意味がないということになりますけれ
ども、しかし万一の場合にはやはり告発もあり得るんだということから、罰
金額を適正に時代に沿ったものに改めたいということであります。
また、通常私
ども調査しておりまして非常にわからないのは、会社の社長等の
責任者がその
事態を、カルテルのような独禁法違反行為をあらかじめ知っておったかどうか、それから後になって知った場合には、これは当然実行されているわけですから知らないということはないと思いますが、適切な措置をとらない、それをやめさせるような措置をとらないという点については、私は責任罰を設けるのが妥当ではないか。この点は
事業者団体の場合には、その
事業者団体の
理事者等に対して同様の責任罰の規定がございます。それ以外に不公正な取引方法についていま罰則がありません。これはどういう事情によるものか、ややそのいきさつ等においても不明確なんでございますが、非常に悪質な場合には直接罰則にかかるというふうにしておいた方がよろしいのではないか。事実私
ども、きわめてまれではありますが、不公正な取引方法とみなされるもので非常に悪質である、たとえば社名を変更するだけで全く同じ手口を使ってやっているというふうな場合がございますが、その都度社名を変えられますから、実際上は同一体でないというので何かやっても告発もできないのだ、こういうことになっております。
それともう
一つが、カルテルその他の違法行為を行いまして臨検
検査を行いました
ところ、その時点においては確かに違法行為があったのだけれ
ども、その後にみずからやめてしまったというふうなケースがありまして、これはただやめたというだけではいまの
ところでも済ませないようにしておりますけれ
ども、しかしながらどうしても違反行為として排除できないというふうな事情に至ることが少なくありません。そういうことで、過去の行為であってもこれは排除措置の対象になり得る。独占
禁止法にいう不公正な取引方法の種類と見らるべき不当景品類及び不当表示防止法ですね、この
法律には過去のすでになくなってしまっている行為についても排除命令を出すことができるという規定が現在ございます。それで独禁法の方にはそれがございません。そういう点から
考えまして、私
どもの事実上の経験から申しまして、このような規定があれがカルテルその他の違法行為を全体として少なくしていく、そういうことをなくしていくという目的のために役立つことではないか、こう思いまして、こういうことを提案申し上げた次第でございます。
何分にも配りましたものは「
改正試案の骨子」とありますように、細かな点は記述されておりません。そういう点をお含みの上お受け取りいただきたいのですが、趣旨並びにその概要につきましては、いま御
説明申し上げたとおりでございます。