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1975-02-12 第75回国会 衆議院 商工委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十九年十二月二十七日)( 金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次 のとおりである。    委員長 松岡 松平君   理事 稻村左四郎君 理事 塩川正十郎君    理事 田中 六助君 理事 武藤 嘉文君    理事 森下 元晴君 理事 板川 正吾君    理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君       天野 公義君    内田 常雄君       浦野 幸男君    小川 平二君       越智 通雄君    粕谷  茂君       木部 佳昭君    小山 省二君       近藤 鉄雄君    塩崎  潤君       田中 榮一君    丹羽喬四郎君       萩原 幸雄君    橋口  隆君       八田 貞義君    藤本 孝雄君       前田治一郎君    岡田 哲児君       加藤 清政君    加藤 清二君       上坂  昇君    佐野  進君       竹村 幸雄君    山崎 始男君       渡辺 三郎君    野間 友一君       米原  昶君    近江巳記夫君       松尾 信人君    玉置 一徳君       宮田 早苗君 ————————————————————— 昭和五十年二月十二日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長代理理事 田中 六助君   理事 稻村左四郎君 理事 塩川正十郎君    理事 武藤 嘉文君 理事 森下 元晴君    理事 板川 正吾君 理事 佐野  進君    理事 神崎 敏雄君       天野 公義君    浦野 幸男君       越智 通雄君    粕谷  茂君       小山 省二君    塩崎  潤君       田中 榮一君    丹羽喬四郎君       萩原 幸雄君    橋口  隆君       八田 貞義君    深谷 隆司君       前田治一郎君    山崎  拓君       岡田 哲児君    加藤 清政君       渡辺 三郎君    野間 友一君       米原  昶君    近江巳記夫君       松尾 信人君    玉置 一徳君       宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公害等調整委員         会委員長    小澤 文雄君         経済企画庁長官         官房長     長岡  實君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         通商産業政務次         官       渡部 恒三君         通商産業大臣官         房長      濃野  滋君         通商産業大臣官         房審議官    宮本 四郎君         通商産業大臣官         房審議官    大薗 英夫君         通商産業省通商         政策局長    橋本 利一君         通商産業省機械         情報産業局長  森口 八郎君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         特許庁長官   齋藤 英雄君  委員外出席者         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 昭和四十九年十二月二十七日  辞任         補欠選任   山崎 始男君     勝澤 芳雄君 昭和五十年一月二十四日  辞任         補欠選任   木部 佳昭君     深谷 隆司君 同月二十九日  辞任         補欠選任   藤本 孝雄君     山崎  拓君 二月一日  辞任         補欠選任   野間 友一君     平田 藤吉君 同日  辞任         補欠選任   平田 藤吉君     野間 友一君 同月七日  辞任         補欠選任   松尾 信人君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   正木 良明君     松尾 信人君 同月十二日  理事板川正吾君同日理事辞任につき、その補欠  として佐野進君が理事に当選した。     ————————————— 昭和四十九年十二月二十七日  中小企業者事業分野確保に関する法律案  (中村重光君外九名提出、第七十二回国会衆法  第三七号) 昭和五十年二月三日  中小企業に対する融資わく拡大等に関する請願  (林百郎君紹介)(第五九号)  公営電気料金算定基準の改定に関する請願(林  百郎君紹介)(第六七号)  丹後機業危機打開に関する請願梅田勝君紹  介)(第七五号)  同(寺前巖紹介)(第七六号)  同(寺前巖紹介)(第一〇〇号)  同(寺前巖紹介)(第一四五号)  中小業者経営安定に関する請願外二件(石田  幸四郎紹介)(第七七号)  同(加藤清政紹介)(第一四六号)  家庭用燈油値上げ反対に関する請願岡田春  夫君紹介)(第一〇一号)  同(島田琢郎紹介)(第一〇二号)  織布業者に対する減産資金融資に関する請願  外二件(田中武夫紹介)(第一四七号)  織布業における過剰在庫凍結及び活用に関す  る請願外二件(田中武夫紹介)(第一四八  号) 同月六日  丹後機業危機打開に関する請願寺前巖君紹  介)(第一八八号)  中小業者経営安定に関する請願外二件(阿部  昭吾君紹介)(第一八九号)  同(岡田哲児紹介)(第一九〇号)  同外二件(下平正一紹介)(第一九一号)  同外三件(野坂浩賢紹介)(第一九二号)  同(石田幸四郎紹介)(第二三六号)  同(小川新一郎紹介)(第二三七号)  同(大橋敏雄紹介)(第二三八号)  同(岡本富夫君紹介)(第二三九号)  同(沖本泰幸紹介)(第二四〇号)  同(鬼木勝利紹介)(第二四一号)  同(北側義一紹介)(第二四二号)  同(坂井弘一紹介)(第二四三号)  同外百九十九件(田口一男紹介)(第二四四  号)  同外一件(佐野進紹介)(第三〇五号)  織布業者に対する減産資金融資に関する請願  (田邊誠紹介)(第一九三号)  同(斉藤正男紹介)(第二四六号)  織布業における需給調整措置確立に関する請願  (田邊誠紹介)(第一九四号)  同(斉藤正男紹介)(第二四五号)  絹織物等輸入制限に関する請願田邊誠君紹  介)(第一九五号)  織布業における過剰在庫凍結及び活用に関す  る請願斉藤正男紹介)(第二四七号)  織布業者に対する融資償還猶予に関する請願  (斉藤正男紹介)(第二四八号)  織物等輸入制限に関する請願斉藤正男君紹  介)(第二四九号)  適正な織工費の確保に関する請願斉藤正男君  紹介)(第二五〇号)  織布業過剰設備廃棄に関する請願斉藤正男  君紹介)(第二五一号)  電気ガス料金特別措置適用範囲拡大に関す  る請願諫山博紹介)(第三〇六号) 同月十日  中小企業に対する金融対策強化に関する請願  (粟山ひで紹介)(第三七六号)  中小業者経営安定に関する請願広瀬秀吉君  紹介)(第四四四号)  同(松浦利尚君紹介)(第四四五号)  同(山中吾郎紹介)(第四四六号)  同外一件(安井吉典紹介)(第四四七号)  家庭用燈油値上げ反対に関する請願外一件  (安井吉典紹介)(第四四八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  国政調査承認要求に関する件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件  鉱業一般公益との調整等に関する件      ————◇—————
  2. 田中六助

    田中(六)委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長が都合により出席できませんので、委員長の指定により、私が委員長の職務を行います。  この際、理事辞任についてお諮りいたします。  理事板川正吾君から理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中六助

    田中(六)委員長代理 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  これは先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田中六助

    田中(六)委員長代理 御異議なしと認めます。  それでは、委員長は、佐野進君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 田中六助

    田中(六)委員長代理 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  通商産業基本施策に関する事項  中小企業に関する事項  資源エネルギーに関する事項  特許及び工業技術に関する事項  経済計画及び総合調整に関する事項  私的独占禁止及び公正取引に関する事項  鉱業一般公益との調整等に関する事項の各事項につきまして、本会期中、国政に関する調査を行うため、議長に対し、承認要求を行うこととし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 田中六助

    田中(六)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  7. 田中六助

    田中(六)委員長代理 次に、通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件、私的独占禁止及び公正取引に関する件、鉱業一般公益との調整等に関する件について調査を進めます。  この際、通商産業大臣から、通商産業基本施策について所信を承ることにいたします。河本通商産業大臣
  8. 河本敏夫

    河本国務大臣 第七十五回国会における商工委員会の御審議に先立ち、通商産業行政に対する私の所信の一端を申し述べます。  まず、基本的な方向でございますが、わが国経済は、これまで、世界に例を見ない順調な発展を遂げてまいりましたが、反面、この目覚ましい成長の過程において、環境の汚染、物価問題の深刻化社会資本の立ちおくれ等のいわゆる高度成長のひずみが顕在化する一方、国際的にも資源ナショナリズム高まり等経済成長制約要因に直面するに至りました。とりわけ、一昨年秋の中東戦争に端を発した石油危機は、価格と量の両面からわが国経済及び国民生活を大きく揺さぶり、狂乱物価物不足とを引き起こし、わが国経済は、戦後これまでに経験したことのない混迷に陥ったのであります。幸い、このような混乱も、近時、ようやく収束いたしましたが、後遺症が治癒するまでには、なお相当の期間を要するものと思われます。  以上のような内外経済情勢変化を考えるとき、わが国経済は、今後、新しい安定成長路線へとその進路を転換していくことが必要とされるのであります。それはわが国にとりまして、未知の道程であるばかりでなく、従来のように先例を求めて進むことも困難であります。したがいまして、われわれは、これまで幾多の困難を克服する際に発揮されたあのたくましい国民エネルギーと英知を結集し、新たなる国民的連帯のもとに、当面する諸問題を一日も早く解決しながら、調和のとれた安定成長への道を切り開いていくべきであると考えます。  私は、こうした認識のもとに、国民福祉の一層の充実国際社会への貢献を目指して、通商産業行政を積極的に展開してまいる所在であります。以下その概要を申し述べます。  まず、当面の経済運営のあり方と物価の安定の問題について申し上げますが、物価の安定こそは、すべての国民の切望するところであり、福祉社会を実現するための基本であります。  このため政府といたしましては、これまで物価の安定を最重要政策課題として、総需要抑制策中心とする各般施策を実施してまいりました。この結果、最近に至り、本年三月における消費者物価対前年同月比上昇率を一五%程度にとどめるとの目標もほぼ達成可能と見込まれるに至りました。しかしながら、コスト面からの物価上昇圧力は根強く、また物価と賃金の関係が強まることも予想されますので、物価動向には今後とも警戒が必要であります。  一方、最近の鉱工業生産動向を見ますると、低下幅は期を迫って拡大し、昨年十二月には過去最大の落ち込みを示しました。また、景気動向実態を把握するため、先月、私は産業界の方々と懇談いたしましたが、主要産業景気実態は、昨年十二月末ないし本年一月から急速にさま変わりし、不況の進行には著しいものがあると判断されます。  このように長期にわたる引き締めの結果、摩擦現象やひずみが深刻化しつつあることにかんがみ、政府といたしましては、先般経済対策閣僚会議を開催するなど真剣な検討を重ね、今後、総需要抑制基調の枠内におきまして、財政面金融面等からきめ細かい対策を機動的に講じていくことにいたしております。また、景気が過度に停滞し、わが国経済が失速するおそれがある場合には、物価動向に留意しつつ、機動的な経済運営を行ってまいります。  同時に経済運営に当たりましては、物価問題の重要性にかんがみ、当省といたしましても、中小企業流通部門合理化近代化に努めるとともに、生活関連物資基礎資材等につきまして、需給価格変動監視等施策を引き続き行ってまいります。その一環として、五十年度におきましては、小売段階における生活関連物資需給価格情報を収集し、状況の急変に即応した措置を講ずるなど物価対策強化拡充を図ってまいる所存であります。  また、秩序と活力のある産業社会を実現するため、競争条件の整備には特段の配慮を行ってまいります。独占禁止改正問題につきましても、現在、総理府を中心検討が進められておりますが、私といたしましては、わが国経済のバイタリティーを損なうことのないよう配慮しつつ、前向きに取り組んでまいる決意であります。  次に、資源エネルギー安定供給確保の問題について申し上げます。  一昨年の石油危機を通じ、われわれは資源エネルギーのほとんどすべてを海外に依存するわが国経済脆弱性を痛感するとともに、資源エネルギー安定供給確保わが国経済及び国民生活を営む上で、いかに重要であるかを改めて認識いたしました。  一方、世界資源エネルギー情勢を見ますると、資源制約化傾向資源ナショナリズムの台頭がますます強まりつつあり、わが国経済の前途の厳しさが憂慮されます。われわれは、かかる認識の上に立って、わが国経済セキュリティー基盤を培養すべく、資源エネルギー安定供給確保全力を傾注していく必要があります。  まず第一に、もはや個々の国家単位では対処し得ない資源エルギー問題の現状にかんがみ、わが国は、資源保有国消費国等すべての関係国との協調を図ってまいります。このため、国際エネルギー計画、IEPに基づく緊急時における石油相互融通エネルギー節約等推進していく一方、産油国とは対話を通じて相互理解を深めるとともに、経済協力中心とする経済交流を促進するなど国際協調を図っていくことにしております。  第二に、わが国エネルギー供給の大宗を占める石油につきましては、緊急時における石油安定供給確保するため、石油備蓄対策抜本的強化を図るとともに、資源確保のため、石油開発対策を強力に推進することが肝要であります。すなわち、備蓄対策につきましては、昭和五十四年度末までに九十日分の備蓄を達成することを目標として財政面金融面から各般施策拡充するとともに、石油開発につきましても、石油開発公団機能強化拡充を図ってまいる必要があります。  このため、今国会におきまして、石油開発公団法改正等石油開発石油備蓄促進のための所要の法案を提出する予定でありますので、よろしく御審議をお願いいたします。  第三に、今後におけるエネルギー安定供給を図るため、国産エネルギーである水力、地熱、国内炭確保に努めるとともに、準国産エネルギーといわれる原子力の開発を積極的に推進してまいる所存であります。  さらに、新エネルギー開発は、将来のわが国エネルギー供給長期安定化を図る上できわめて重要でありますので、太陽エネルギー地熱エネルギー等の豊富かつクリーンな新エネルギー技術研究開発を行うサンシャイン計画を、引き続き強力に推進してまいる考えであります。  一方、エネルギーと並ぶ貴重な金属資源につきましても、内外における探鉱開発を積極的に進めてまいります。  また、資源に乏しいわが国にとりましては、資源有効利用を図ることが特に必要でありますので、廃棄物の再資源化事業等を強力に推進してまいります。  以上の供給面における施策と並んで、需要面におきましても、内閣に設置されている資源エネルギーを大切にする運動本部中心として消費節約国民運動を引き続き強力に展開してまいりますとともに、産業及び民生両面におけるエネルギー使用合理化、省資源省エネルギーのための技術開発全力を傾注いたします。  また、長期的観点から省資源省エネルギー型産業構造を構築すべく、国際分業の理念に即応した海外立地合理的展開を図るとともに、技術集約型産業の育成に努めてまいります。  次に、保安確保公害防止対策充実について申し上げます。  無公害で快適な社会は全国民の希求するところであり、その実現に全力を注いでまいります。  まず、工場立地に当たって、公共の安全の確保環境保全のため万全の措置を講ずることが何よりも重要であります。昨年末の瀬戸内海における石油流出事故は、関係方面に多大の影響を与えており、私はこの事故を大きな教訓として、今後の防災安全行政強化全力を傾注してまいる所存であります。  環境保全を図る上で最も重要なことは、工場立地計画段階で十分な調査及び評価をすることであります。このような観点から、従来の産業公害総合事前調査を一層拡充するほか、大規模工場立地に当たっては、企業みずからも十分な環境アセスメントを実施するよう指導してまいる方針であります。  次に、一昨年における石油コンビナート爆発事故や最近の家庭におけるLPガス爆発事故など高圧ガスによる事故が跡を絶たず、その保安対策強化が緊急の課題となっておりますが、この問題につきましては、昨年七月に高圧ガス及び火薬類保安審議会答申を得ましたので、今国会高圧ガス取締法改正をお願いすることといたしております。  第三に、自動車排気ガス規制につきましては、昨年末中央公害対策審議会答申が出され、いわゆる五十一年度規制暫定値によることになりましたが、当省といたしましても、今後とも答申尊重の立場から、規制が円滑に実施されるよう関係業界を強力に指導してまいる所存であります。  また、金属鉱業等に係る蓄積鉱害の問題につきましても、施策充実を図ってまいります。  次に、中小企業行政の一層の推進について申し上げます。  中小企業経営の安定を図り、その健全な発展を促すことは、わが国経済発展にとって不可欠であります。このため、従来から中小企業施策拡充を図っているところでありますが、現在、長期にわたる総需要抑制策の結果、中小企業を取り巻く経済環境が極度に悪化しておりますので、健全な経営を行う中小企業等に不当なしわ寄せが生じることのないよう、摩擦現象の回避に万全を期してまいる所存であります。  さらに、わが国経済高度成長から安定成長へと転換するのに伴い、中小企業をめぐる経済社会環境は著しい変貌を遂げつつありますので、五十年度におきましては、新たな構想を加え、一層の施策拡充を図ってまいります。  すなわち、金融面におきましては、政府関係中小企業金融機関貸付規模大幅増加貸付条件改善信用補完制度充実等中小企業に対する資金供給円滑化を図ることといたしております。  また、中小企業の約八割を占める小規模企業者につきましては、その施策充実に特に留意する必要がありますので、無担保無保証の小企業経営改善資金融資制度を飛躍的に拡充するとともに、経営指導員大幅増員待遇改善研修体制拡充等に努めてまいります。  さらに、中小企業を取り巻く経済的社会的環境変化に適切に対応しつつ、中小企業構造改善及び新事業分野への進出を図っていくため、中小企業近代化促進法改正案を提出いたしますので、よろしく御審議をお願いいたします。  次に、対外経済政策の積極的な展開について申し上げます。  近時、国際経済は、原油価格大幅引き上げに伴う国際流動性の著しい偏在、国際的規模でのインフレの高進と不況深刻化等、戦後最大の困難に直面いたしております。  こうした多難な時代にありましては、通貨、通商両面における一層の国際協調のもとに新しい国際経済秩序を構築することが必要であり、わが国もこの新秩序建設に積極的に貢献していくべきであると考えます。  特に通商面におきまして、今般米国の新通商法成立により、新国際ラウンド本格的交渉を始める基盤が整いましたことは、貿易立国として自由無差別を基本理念とするわが国にとりまして、まことに喜ばしいことであり、本ラウンド成立全力を傾注してまいる方針であります。  次に、経済協力につきましては、先進国開発途上国双方調和ある発展なくして国際経済の安定と繁栄はあり得ないとの認識に立ちつつ、わが国としては、今後、量的拡充のみならず、質及び方法の面におきましても抜本的拡充を図ってまいる必要があります。  その具体的実施にあたっては、相手国の真のニーズを見きわめつつ、その実情に応じ、適切な協力を行ってまいります。  国際経済社会の一員として重要な地位を占めつつある中東諸国に対しましては、これら諸国の工業化推進等のための技術の供与、技術者訓練等技術面での協力を初め、各種の総合的な諸措置を積極的に講じてまいる必要があると考えております。  また、わが国企業海外活動適正化についても十分配意してまいる所存であります。  次に、工業所有権制度拡充等について申し上げます。  工業所有権制度につきましては、長年の懸案である物質特許制度の導入、累増する商標未処理案件解消等を図るため、特許法等改正をお願いすることといたしております。  また、本年は、「海−その望ましい未来」をテーマとする沖繩国際海洋博覧会の開催の年に当たりますので、その成功に万全を期する所存であります。  最後に、以上申し述べましたように、本年は国内的には調和のとれた安定成長を、また国際的には新しい国際経済秩序構築を目指して、新たな時代を切り開くために力強い一歩を踏み出す年であります。  私は、こうした重大な時期に通商産業行政を担当する者として、その責務の重大さを痛感いたしますとともに、歴史を誤らぬよう、激動する時代の流れを直視し、発生する諸問題に対しては、的確な判断と果断かつ迅速な決断を行い、国民各位の御理解と御協力のもとにこの難局の克服に全力を傾注してまいる決意であります。  委員各位におかれましても、一層の御理解と御支援を賜わりますようお願い申し上げます。輝しく、かつ希望に満ちた福祉社会が一日も早く訪れることを希求いたしまして、私の所信表明といたします。
  9. 田中六助

    田中(六)委員長代理 次に、経済企画庁長官から、経済計画及び総合調整について所信を承ることにいたします。福田経済企画庁長官
  10. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 一言ごあいさつを申し上げます。  経済運営方針につきましては、さきに本会議経済演説をお聞き取りくださったのであります。なおまた、重ねて本日は書面で皆様のお手元に小冊子を配付してございます。それで皆さん御承知と思いますが、私が特に頭にある重要な点につきまして申し上げさせていただきます。  いま日本の経済が当面する問題は非常にたくさんありますけれども、大きく分けますと二つだと思うのです。一つは、十五カ年にわたりまして高度成長政策、その流れに従いまして経済が運営されてきたわけでありますが、それを国際情勢の変化に即応いたしまして根本的に修正しなければならぬ、そういう長期的な経済運営の姿勢、あり方についての問題でございます。もう一つの問題は、当面この混乱したわが国経済をどういうふうに収拾していくかという差し迫った問題でございます。  まず、最初の長期的な立場に立ちましての姿勢転換の問題につきましては、何と言ってもこれは人類が始まって以来の大きな変化時代だと私は思うのです。いままで人類は資源というものについて頭を悩ますことなしに生活をしてきているわけでございますが、そういうことが許されない、資源有限時代、こういう意識が人類の間に台頭し、これが定着しつつある。そういう世界の意識変化の中では、世界の国々の経済のかじの取り方もまたおのずから変化してくるわけでございます。省資源、資エネルギーと言いますか、そういう空気が世界を風靡するという大勢になる。そういう中におきまして、資源小国であり、食糧小国であるわが日本がどういう行き方をするかというと、これはもう論を待たない。特にわが国はこの資源有限時代の到来ということに頭を置いて経済諸政策の運営に当たらなければならぬ、こういうふうに思います。しかし、この経済政策の転換という問題は、これはひとり資源問題ばかりではないのです。国際収支の問題を考えましても、物価の問題を考えましても、公害の問題を考えましても、あらゆる社会的諸問題、これを正視いたしますれば、いままでの高度成長政策ではやってはいけない。やはりここでもう思い切って、静かで控え目な成長ということを考えて、その線に従っての大転換をしなければならぬ、こういう時期に来ておる、こういうふうに思うのでありまして、そういう考え方に従いまして、わが国は、これからの経済の先々の行く道を根本的に変えます、そしてその指針といたしまして、昭和五十一年度を初年度とする経済社会基本計画と申しますか、そういうものを策定いたします、そしてその上に乗ってわが国経済社会の運営をやってまいりたい、かように考えておるのであります。  この考え方によりますれば、経済成長発展の速度、これは非常に低くなります。いままでとまるっきり違う速度にならざるを得ない。同時に、内容におきましても、いままでは何といっても成長の成果、それを次の成長発展につぎ込む、特に工業、諸産業の拡大発展、そういうものにエネルギーが使われたわけでありまするが、その基調を変更いたしまして、われわれの経済発展の終局の目標とするところは何であるか、これはやはりわれわれの生活環境を整え、安定した社会をつくり上げることである、こういうことに思いをいたし、いままでのように成長の成果を産業開発に多くをつぎ込むという考え方から、われわれの生活周辺に多くをつぎ込むという方向へ大きく転換をしなければならぬと考えております。  それから同時に、成長の速度が鈍るということになりますると、やはり社会的公正の確保という問題に多くの配慮をしなければならないだろう、こういうふうに考えておるわけであります。  さらに言えば、省資源省エネルギーという考え方を経済社会の全域に浸透させなければならぬ。大体そういう三つの内容を盛り込まなければならぬというふうに考えております。近く経済審議会に五十一年度からの長期計画はいかなるものであるべきかという点につきまして諮問をいたしたい、かように考えております。  それから、当面する経済の混乱をどういうふうに収拾するかということ、この点につきましては、私は大観いたしましてわりあいに順調に推移している、こういうふうに見ておるのであります。昨年度におきましては、とにかく国際収支が一年度の間に百三十億ドルの赤字を生じた、それから物価にいたしましても、消費者物価が一年度の間に二四%も上がる、そういうような状態、そこからの脱出でございますので、そう容易なことではございませんでしたが、国際収支も着実に改善の方向にあります。今年度は五十億ドル程度の赤字、こういうことはやむを得ない、こういうふうに思うのです。しかし、昨年度の百三十億ドルの赤字ということに比べますると、これはもう大変な改善であろう、こういうふうに思います。  それから、物価につきましても、御承知のように卸売物価は実に安定してきた。消費者物価につきましても、昨年の十二月は月間〇・四%の上昇です。それから、一月の東京区部で見ますると、月間〇・二%の上昇であるというところまで来ておるわけであります。まあ一息というところに来たなという感じを持ち、何とか最善を尽くしまして、かねがね国会にも申し上げておりますが、三月時点における一五%年間上昇、この目標を何とかして実現したいし、また五十年度における一けた台の消費者物価、これも万難を排して実現をしたいというふうに考えておるのであります。五十一年度のなるべく早い時点には消費者物価の上昇率を定期預金の金利水準、これ以下に何とかして持っていきたいということを念願といたしておるわけであります。  そういう経済安定、物価鎮静、その途上で問題になりますのは二つあるのです。  一つは賃金と物価関係でございます。申し上げるまでもございませんけれども、高度成長期におきましては経済のパターンが高賃金、高成長、しかも卸売物価はずっと横ばいである。十三年間横ばいを続けている。消費者物価も五、六%の上昇にとどまったというゆえんのものは、高成長でありまするから生産性が上がる。そして、賃金が上がりましても生産性の中に賃金の上がりが吸収されまして物価への圧力となり得なかった。そういう状態でございましたが、さて低成長時代に入るということになった場合に、低成長、高賃金というパターンがとり得るかというと、そういうことはできません。やはり低成長下になりますれば生産性の上昇が非常に少ない。そうなるときに、賃金だけがいままでの惰性で上がるということになれば、賃金の上昇が物価への大きな上昇圧力となる、これは必至であります。  そういうことを考えまして、初めての試練と申しますか、ことしの春闘におきまして、労使双方が時代が違ったのだという認識のもとに立ちまして、良識ある決定を見られるように切に要望いたしておるわけであります。  ただ、政府は、賃金決定には介入はいたしません。これは労使双方の決定するところに期待するほかはないのでありますが、ただ、政府といたしましては、労使の間の賃金決定がなだらかにいくための環境づくりにつきましては、これは最善の努力をしなければならぬ。その最大なものは物価の鎮静であります。とにかく物価の鎮静ということが当面の最大課題であり、これはまた賃金問題とも深くかかわりのある問題であるという意識のもとに物価問題に取り組んでまいりたい、かように考えております。  それからもう一つの問題があります。それは物価安定、国際収支均衡というこの施策景気との関係であります。  物価やあるいは国際収支の関係から言いますと、ただいま申し上げましたように比較的好ましい動きを示しておる状態でございますけれども、他面その摩擦がかなり出てきておる、こういう問題であります。これはわが国のみならず諸外国においても同様の現象があり、ことに諸外国においてはわが国よりももっと厳しい状態においてそういう現象が出ておるという国が多いようであります。そういう諸外国の情勢でありますので、ヨーロッパの主要な国々はあるいは公定歩合の引き下げを行う、あるいは財政の支出を行う、そういうような諸政策をとり出しております。もちろんこれらの国々におきまして物価鎮静という努力をあきらめたわけじゃありませんけれども、同時に景気対策というものを強く打ち出しておるという傾向が見られるわけであります。また、アメリカにおきましても、年頭教書に見られるように同じような傾向をとり出しておる。  そういう間におきまして、わが国におきましても、どうだろうか、いままでの総需要抑制政策の与える摩擦現象に対しまして政策転換を考えたらどうだろうという声があるのであります。しかし、わが国として非常に大事なことは、何といっても物価の問題、国際収支の問題である。そういう時点において、外国が外国の事情に従いまして政策の一部転換をするという動きがありまして、直ちにわが国がそれに追随するかということになりますと、これは慎重にやらなければならぬ、こういうふうに考えておるのであります。  さきに経済対策閣僚会議を開きまして、こういう問題にいかに対処するかという基本的な考え方を協議したのでありますが、結論は、総需要抑制政策はこれを堅持する、ただし総需要抑制政策の与える摩擦現象に対しましては、財政上、金融上所要の施策をきめ細かくとっていくというこの二点に尽きるわけでございます。まだ具体的な摩擦回避対策、これにつきましてはそう多くは打ち出されておりませんけれども、今週の末ごろ、経済対策閣僚会議を開きまして、とるべき施策の一部を決定いたしたい、かように考えておる次第でございます。  非常に大混乱の後、戦後最大の混乱ともいわれるこういう後でございますので、こんなむずかしい時局はいまだかつてなかった、こういうふうに思いますが、私も責任の重大なるゆえんをよく心得まして、皆様の御教示のもとに職責を誤たないというふうにいたしたいと存じます。  何とぞ御鞭撻のほどをお願い申し上げます。
  11. 田中六助

    田中(六)委員長代理 公正取引委員会委員長から、昭和四十九年における公正取引委員会の業務の概略について説明を求めます。高橋公取委員長
  12. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 昭和四十九年における公正取引委員会の業務について、概略を御説明申し上げます。  申し上げるまでもなく、昨年のわが国経済は、強力な総需要抑制策の影響により、物価は後半からようやく鎮静化の方向に向かいつつありますが、同時に景気停滞の色も濃くなり、現在インフレと不況という二つの谷にはさまれたむずかしい局面を迎えております。  際立った物価勝貴によって混乱を来たした一昨年とは様相を異にする年でありましたが、公正取引委員会といたしましては、基本的な姿勢を変えることなく、公正かつ自由な競争秩序確保して、わが国経済の健全な発展を図るため、独占禁止法の厳正な運営にできるだけ努力を払ってまいりました。  しかしながら、近年におけるカルテル違反事件の続発、多くの産業分野での寡占化の進展、さらには高度成長時代から低成長時代への移行という新しい事態を控え、昭和二十八年の改正後二十年を経過した現行独占禁止法がこれらに十分対応できないのではないかという問題に直面したと考えまして、国会でも御指摘がありましたことでもあり、一昨年来現行独占禁止法に関する改正点につき鋭意検討を重ねまして、その結果昨年九月に独占禁止改正試案の骨子を作成し、これを発表いたしました。  この試案は、目下政府———————の独占禁止改正に関する審議に際し、参考資料とされております。  次に、昨年における独占禁止法の運用でございますが、昭和四十九年中に審査いたしました独占禁止法違反被疑事件は百六十二件、同年中に審査を終了した事件は百三件であり、そのうち法に基づき排除措置を勧告したものは五十九件でありまして、これは昭和四十八年に次ぐ件数となっております。これら違反事件の内容について見ますと、昭和四十八年と同様、そのほとんどは値上げ協定事件であり、また大企業の全国的規模の事件が多くなっており、中でも同一の企業が再三にわたってカルテルに参加するというような事例が目立っております。  公正取引委員会は、このような事態に対処して、排除措置を従来以上に厳しく行うことに種々努力いたしましたが、特に石油業者及びその団体の価格、生産数量協定事件につきましては、カルテル事件としては初めて検事総長に対して告発を行いました。また、小規模事業者の相互扶助を目的とする協同組合に実質的には大規模事業者が加わり、カルテルを行っているケースにつきまして、今回初めて大規模事業者の身かわりともいうべき子会社に対し、組合から脱退するよう勧告いたしました。  次に、許認可、届け出受理等に関する業務としましては、昨年における合併届け出は九百三十九件、同じく営業譲り受け四百三件で、前年に比べ若干減少しており、内容的にもほとんど中小企業の合併等でありまして、特に問題となるものはありませんでした。  また、国際契約等につきましては、昭和四十九年中に届け出のあった五千九百八十三件のうち、並行輸入阻止条項、競争品取り扱い制限条項を含む四百四十八件について、これを是正するよう指導を行いました。  独占禁止法の適用除外関係では、まず再販指定商品を大幅に縮小するため一昨年十月に行いました告示が昨年九月から施行され、その結果、現在指定商品として残っているものは、一部の医薬品と化粧品のみとなっております。  次に、不況カルテルの問題でございますが、御承知のとおり、昨年末ごろにかけて、需要の減退により景気が悪化してまいりました短繊維紡績糸及び梳毛糸業界から生産数量制限を主たる内容とする不況カルテルの認可申請がありました。公正取引委員会はこれらにつきまして、認可要件に照らし厳正に審査した結果、不況カルテルが関連業者、一般消費者等に影響することが大きいことを考慮し、不況事態の克服に必要な限度を超えるごとがないよう実施期間を短縮する等、修正を行わせた上認可いたしました。  なお、総合商社の事業活動につきましては、独占禁止政策上の問題点を検討するため、その貿易、国内取引に占める地位、金融機能、株式所有による系列化、企業集団形成の実態、取引上の地位の利用等の調査を行ってまいりましたが、その結果を昨年一月の第一回調査報告に続いて、本年一月に第二回調査報告として発表した次第であります。  景品表示法の運用について申し上げますと、昭和四十九年中に同法違反の疑いで取り上げた事件は千五百七十一件でありまして、このうち排除命令を行いましたもの二十七件、警告等により是正させましたものは八百九十件であります。  公正競争規約につきましては、昨年新たに認定した規約は七件で、四十九年末現在における規約総数は四十九件となっておりますが、さらにその設定を推進するため、目下鋭意努力中であります。  また、都道府県の行います違反事件の処理状況を見ますと、景品表示法の施行権限の一部を都道府県に移譲いたしましてから三年目に当たります昨年におきましては、その処理もようやく軌道に乗ってまいり、処理件数も増加し、違反行為の是正を行わせた件数は約四千件となっておりますが、今後とも都道府県の一層の協力が得られますように努めてまいる所存であります。  次に、下請事業者の保護に関する施策といたしましては、昭和四十九年中には、下請代金の支払い状況を中心に約一万五百件の親事業者に対しまして調査を行い、七百八十四件について支払改善等の措置を講じさせました。  以上、簡単でございますが、業務の概略につきまして御説明申し上げました。  何とぞよろしく御指導、御鞭撻のほどをお願い申し上げます。
  13. 田中六助

    田中(六)委員長代理 公害等調整委員会委員長から、鉱業等に係る土地利用の調整に関する事務処理概要について説明を求めます。小澤公害等調整委員会委員長
  14. 小澤文雄

    ○小澤政府委員 ただいまから、公害等調整委員会が昭和四十九年中に行いました鉱業、採石業または砂利採取業と一般公益等との調整事務の処理の概要を御説明いたします。  公害等調整委員会は、従前の土地調整委員会と中央公害審査委員会とが統合され、総理府の外局として昭和四十七年七月一日から新たに発足した行政委員会でございます。鉱業、採石業または砂利採取業と一般公益等との調整を図るという従前の土地調整委員会の任務権限は、そのまま公害等調整委員会が引き継ぎました次第でございます。  以下、これらの事務の仕組みの大要を簡単に御説明申し上げます。  第一は、鉱区禁止地域の指定に関する事務でありまして、各省大臣または都道府県知事の請求に基づき、聴聞会を開いて一般の意見を求め、利害関係人を審問した上、鉱物を掘採することが一般公益または農業、林業その他の産業と対比して適当でないと認めた地域を鉱区禁止地域として指定し、また同様の手続によりその解除を行うものであります。その指定をした場合、当該地域内における鉱物の掘採が著しく公共の福祉に反すると認めるときは、既存の鉱業権についてもその取り消し等を通商産業局長に対して勧告いたします。  第二は、不服の裁定でありまして、鉱業法、採石法、森林法、農地法、海岸法、自然公園法、地すべり等防止法、河川法、砂利採取法、都市計画法、自然環境保全法及び都市緑地保全法に規定する特定の処分に対する不服につきましては、鉱業、採石業及び砂利採取業と一般公益または農業、林業その他の産業との調整を図るために、行政不服審査及び行政事件訴訟の特例といたしまして、直接裁判所へ出訴することを認めず、もっぱら当委員会が公開審理等準司法的な手続によりまして、不服の裁定を行います。当委員会の裁定または裁定申請却下の決定に対して不服のある場合には、当委員会を被告として東京高等裁判所に訴えを提起することができることになっております。  第三は、土地収用法及び森林法上の事業認定や収用裁決等に関し、主務大臣が不服審査を行う場合には、あらかじめ当委員会の意見を聞かなければならないこととなっており、これに対し回答を行うものであります。  次に、昭和四十九年中に行いました当委員会の具体的な事務処理の概要を申し上げたいと思います。  第一に、鉱区禁止地域の指定に関する事務でございますが、昭和四十九年中に当委員会で処理手続を進めましたものは三十三件ありました。そのうち二十四件は前年から係属中のものであり、九件は昭和四十九年に新たに請求のあったものであります。これを請求理由別に見ますと、ダム関係のものが三十件、景観の保護に関するもの、環境保全に関するもの、鉄道施設の保全に関するものがそれぞれ一件となっており、請求者別に見ますと、内閣総理大臣一件、農林大臣七件、建設大臣八件、運輸大臣一件、都道府県知事十六件となっております。これらにつきまして、通商産業大臣関係行政機関の意見聴取、聴聞会の開催、利害関係人の審問、現地調査など所定の手続をとりますとともに、具体的に地形、地質、鉱床、一般公益各般の事情を詳細に検討するなど審議を進めまして、うち七件について処理を完了いたしました。  第二に、不服の裁定でありますが、昭和四十九年中に当委員会に係属した事案は七件で、そのうち五件は前年から係属中のものであり、二件は昭和四十九年に新たに申請があったものであります。これらの事案は、砂利採取法の規定による知事等の処分に対するものが二件、採石法の規定による知事の処分に対するものが二件、農地法の規定による知事の処分に対するもの、森林法の規定による知事の処分に対するもの、自然公園法の規定による知事の処分に対するものがそれぞれ一件であります。これらのうち、一件については認容の裁定を、一件については申請の利益がなくなったとして却下の決定をし、三件は申請の取り下げがありました。その他二件が、現在審理中であります。  第三に、土地収用法関係の意見でありますが、昭和四十九年中に当委員会で処理手続を進めましたものは三十九件で、そのうち六件は前年から係属中のものであり、三十三件は昭和四十九年に新たに建設大臣から意見を求めてきた事案であります。これらの事案は道路河川関係が十九件、鉄道関係五件、電力関係三件、都市開発関係七件、学校病院関係四件、空港関係一件となっており、収用委員会の収用裁決を不服とするものが三十四件、建設大臣または都道府県知事の事業認定を不服とするものが五件となっております。三十九件のうち三十四件は回答済みでありますが、残り五件は審査中であります。  以上をもちまして、昭和四十九年中の事務処理の大要を申し述べた次第でございます。  なお、公害等調整委員会設置法第十七条に定められております昭和四十九年の所掌事務処理状況の報告書は、会計年度で取りまとめまして、追って所定の手続を経てお手元にお届けいたしますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
  15. 田中六助

    田中(六)委員長代理 以上をもちまして、両大臣の所信表明及び両委員長からの説明は終わりました。  なお、この際申し上げます。  昭和五十年度通商産業関係予算及び経済企画庁関係予算につきましては、お手元に配付の資料で御了承願います。     —————————————
  16. 田中六助

    田中(六)委員長代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐野進君。
  17. 佐野進

    佐野(進)委員 私は、ただいまの通産、経企の各大臣並びに公取委員長所信表明ないし報告に対する質問をいたしたいと思います。  まず、経済企画庁長官と通産大臣に関連した部門について質問してみたいと思います。  お二人のそれぞれの所信をお聞きいたしておりまして、若干のニュアンスの相違はありますが、原則的にそう違いのないようなお話であったわけであります。しかし、新聞紙上を通じてあるいはその他の報道を通じて私どもの目に入り、耳に入る、そういうような両大臣の見解というものは、相当開きがあるように感じておるわけであります。そこで、私はその点について、当面する経済政策について質問をしてみたいと思うわけであります。  企画庁長官の報告によりますれば、いわゆる経済成長高度成長から安定成長へと、こういうようにはっきり切りかえる、そしてその切りかえる形の中で発生してくる諸矛盾については、これを調整していくんだ、こういうニュアンスが非常に強く受けとめられるわけであります。通産大臣の見解表明は、これに反して、いわゆるいまの総需要抑制下におけるところの産業界の停滞は、目を覆わしめるような状況になっている。したがって、この政策は至急転換していかなければならないのだ、こういうような印象の中で、低成長という名を使っておりまするけれども、実質的には景気の刺激を通じて、景気の回復、事によれば、いわゆる高度成長にも通ずるような政策も採用せざるを得ないというようなニュアンスが感ぜられるわけでありますが、その点について原則的に両大臣の見解をお聞きしたいわけであります。  その象徴的な政策の中心といたしまして、総需要抑制策というものをどのように位置づけてどのように対処していくのか、いわゆる経済対策閣僚会議がこの問題について一定の見解を示すのだと両大臣とも言っておられるわけでありますが、その対策会議に提案する両大臣の見解のまとめというものがあるならば、この際お聞かせをいただきたいと思うのです。
  18. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お話でございますが、政府部内に意見の不統一というものは、結論としてはないのです。それは、結論が出るまでの過程においてはいろいろ意見を闘わしております。その意見の中で多少のニュアンスの違いぐらいなことはありますが、経済対策閣僚会議におきましては一部経済政策の手直し論というのがありまして、これにどういうふうに対処するかということを論議いたしまして、その結論を書いたものがありますから読み上げます。   (1) わが国経済は、いまだにインフレを克服し、経済を安定軌道に乗せるにいま一歩という極めて重大な段階にあること及び根強いコスト・プッシュ圧力の存在することを、あらためて認識し、物価及び国際収支安定のメドがつくまで、総需要抑制の政策基調は、これを堅持すべきことを再確認した。  (2) 同時に、引締め政策に伴う摩擦現象やひずみが深刻になりつつあることに留意し、財政金融面、雇用対策面等きめ細かい対策を機動的に講じて行くこと及びこのための具体的施策については、引き続き、随時協議するとを確認した。  こういうことになっておりまして、この随時協議する、そして具体的対策を出す、その一部につきまして、今週末、先ほど申し上げましたとおり、経済対策閣僚会議を開催する予定である、こういう状況でございます。
  19. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま副総理からお話しのとおりでございまして、現在の不況認識、それから総需要の抑制という枠内においての摩擦現象、ひずみ現象に対する対策、そういうことについては全く意見は一致しております。全然違いはございません。いまお話がございましたように、摩擦現象、ひずみ現象を解消するには一体どうしたらいいかということにつきましては、通産省では先月、各業界の模様を詳細調査をいたしましたので、その調査の結果に基づきまして、経済対策閣僚会議にこういう対策をやってもらいたいということを検討すべき事項として提案をいたしまして、副総理先ほどお話しのように、大体今週の末を目標検討をしていただく、こういうことになっております。
  20. 佐野進

    佐野(進)委員 私は、副総理ということで質問したらいいのか、経企庁長官ですからね、福田さんに、そういう形での質問になろうと思うのですが、いまお聞きしたのは、前にこうやったということは私も理解しておるわけです。これから今週末にやろうという問題につきまして、河本通産大臣は、大阪におけるところの経済界の懇談会の席上において、この具体策に類するような御発言をなさっておられるわけでありますし、さらに企画庁においても、その面におけるところの新しい政策を具体的に提案なさろうとしておられるわけですから、その具体的な対策中心は何なのか、いわゆる金融の緩和なのか、あるいはまた公定歩合の引き下げなのか、あるいはまた、それに類するいわゆる一連の対策というものは一体どういうことなのかということをおおむね方向としておわかりであるはずであるから、この際明らかにしてもらいたい、こういう質問を申し上げた。それが次への質問の前提になる、こういう意味で質問しているわけです。
  21. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 くどいようでございますが、総需要抑制政策という政策の基調転換は、これはいたしません。これは物価が本当に落ちついて、これ以上心配はない、あるいは国際収支の見通しもついたという段階までは総需要抑制政策をとらなければならぬ。と申しますのは、これは石油一つをとりましても、これは無制限に輸入するわけにはいきません。そうしますと、どうしても総需要というものをにらみながら石油の供給、これに対処しなければならぬ、こういうことになる。そればかりじゃない。先ほども申し上げましたが、公害の問題もある、あるいは物価それ自身の問題もあるとか、いろいろな問題があります。そういうようなことで、これは総需要をにらんでいくという政策は当分崩すことはできない。しかし、それをとっておりますと、やはりいろいろ摩擦現象が出てくるわけでございますから、その摩擦が片寄ってというようなことになりますと、これはまたよろしくありませんので、その摩擦現象に対しましてはきめ細かく配慮しよう、こういうことであります。そういうことになれば、手というのは、一番大きな手は財政と金融です。そういう面で摩擦現象を回避という手が打てるか打てないか。財政については大蔵省を中心にし、また金融につきましては大蔵省、日銀、そういうところが中心になって、いま具体的にどういうふうにするか、それをまた具体的にする手を一遍に出すという考えはないのです。これからの経済の動きをじっと見ておって、適時適切な時期に出していこうというのですが、その一部を今週末に決定をしよう、こういうことでありまして、主軸は何といっても財政、金融になります。その他通産省で個別対策をいろいろお考えですが、それらも取り入れられる、あるいは労働省で雇用対策という問題もあります。こういう問題も取り入れられる、こういうことになりますが、その一部を今週末に結論を出したい、かように考えております。
  22. 佐野進

    佐野(進)委員 通産大臣のこの会議に臨む、いま経企庁長官のおっしゃったことと同じような意味における答弁を求めます。
  23. 河本敏夫

    河本国務大臣 通産省といたしまして、先ほど申し上げましたように、業界の現状を調べましたところが、ほとんど各業界が二割から七割くらいの減産をしておる、非常な不況の状態である、摩擦現象というものは非常にひどい、こういうことから総需要の抑制という枠組みは、これはいまの状態では物価に若干問題が残っておりますからはずすわけにはまいりませんけれども、その枠内におきまして、たとえば中小企業向けの金融を円滑にするとか、あるいは減産をしておりますけれども滞貨が逆にふえておる、こういう状態になっておりますから、滞貨、減産資金等に対する配慮をするとか、あるいはまた、住宅向けの融資を円滑に進めてもらう、さらに公害防止向け事業を中心といたしまして財政投融資拡充をしてもらう、さらにまた、原則的には財政支出の弾力的運用、そのほかいろいろな具体的な対策、そういうことにつきまして至急に検討していただきたい、こういう提案をいたしまして、先ほど福田副総理御答弁のようなことでいま作業を進めていただいておるわけでございます。
  24. 佐野進

    佐野(進)委員 企画庁長官の答弁の意味はわかりましたが、通産大臣の答弁の意味は、少し私にはまだ不明確なので続けて質問しますが、企画庁長官は財政、金融がいわゆる摩擦現象回避の決め手になる、こういう意味におけるところの答弁であったわけです。あなたはその点についてはどう考えるのですか。財政、金融、いわゆる公定歩合の引き下げ等々、一連の対策を含む措置が今後の摩擦現象解消の決め手と思いますか。それとも、いま言われたような中小企業に対する対策であるとか、あるいは住宅対策であるとか、これらが決め手であるとお考えになりますか。
  25. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、総需要の抑制という枠ははずさないで、その枠内で考えられる財政、金融政策というものをやってもらいたいというのが、通産省の提出いたしました内容でございます。中小企業向けの融資円滑化などは金融対策でございますし、それから滞貨、減産対策なども金融対策でございます。それから、住宅向けの融資円滑化、これも金融対策でございます。しかし、最後の方で申し上げました財政支出の弾力的な運用であるとか、公害防止向け事業を中心とする財投の拡充であるとか、こういうことはむしろ需要をつくり出す、仕事をふやす、こういう意味で財政支出をひとつ弾力的に運用してもらいたい、こういう趣旨でございますので、中身は企画庁の方からお話のございます内容とは少しも変わっておらないわけでございます。私の方は、少し具体的に申し上げただけでございます。
  26. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま佐野さんのお話の中に公定歩合のお話がありましたが、金融政策という場合には、金融の量的の問題と質的の問題といいますか、金利の問題ですね、その二つの側面があるのです。いま私どもが考えておりますのは、これは量的の問題、いま通産大臣からお話がありましたが、住宅をどうするとか、あるいは滞貨に対してどうするとか、そういうような金の量の問題、そういうことでございますが、公定歩合につきましては、一部に、外国で公定歩合が下がってきたからこれを日本でもどうするんだというようなことについての論議がありますが、これは非常にデリケートな問題でございまして、私どもはこの問題は非常に慎重に扱うべきものである、こういうふうに考えております。外国でこうしたからわが日本がそうしなければならぬという理由が一体今日あるかというと、実はまだ外国の金利水準というものが、わが国経済の運営にそう悪く作用するというような状態じゃございません。  たとえば一番大きな関係のあるアメリカにいたしましても公定歩合を下げました。下げましたけれども、プライムレート、これはわが国の金利水準と大体同じような水準にあるわけでありまして、したがってその間に格差が生じたというような状態はございません。  さて、短期資金が、それじゃ日本の金利が高いから日本へ殺到するか、こういうと、そういう動きもありません。また、そういう動きが仮にありましても、わが国は短期資金の移動につきましては為替管理を厳重にしておりますので、いつ何どきたりとも所要の措置がとれる、こういうような状態でありますので、いま公定歩合問題につきましては全然日程には上っておらぬということをお答え申し上げます。
  27. 佐野進

    佐野(進)委員 次へ進みます。  いまお二人の答弁を聞きながら感じたわけでありまするが、いわゆる総需要抑制は堅持する、その中で摩擦現象を解消するための財政、金融を中心とする取り組みを積極的に行うのだ、こういうことになっていくわけですが、これはいわゆる綱渡りというか、山の尾根渡りというか、非常にむずかしい内容を持っておると思うのです。ただしかし、その中で物価の安定を図り、いわゆるわが国経済の安定的成長を図っていくのだということの意味は、私もよく理解できると思うのです。そこで、そういうようなことを言われながら、政策当局の打ち出す対策、そういうものによって、産業界なりあるいは一般中小企業なり、さらには国民が大変迷惑をする、そういうような面もまたその政策が具体的に実行され得ない段階の中において、そういう発言なり合意があるとすると、大変問題になると思うのであります。  そこで、私は前段としての問題を質問しながらこの点へいきたいと思っておったのですが、質疑の経過がこの点の質問をしたほうがいいというような感じになりましたので、そこへ持っていきたいと思うのでありまするが、通産大臣は、景気が失速するほど悪いというような状態になったら大変なので、それに対しては果断な処置をするということをこの方針の中で言われておるわけです。経企庁長官は、現在は非常に有効なる進行状況にある、いわゆる総需要抑制策中心とする経済政策はそういう状況にある、こう判断するということが言われておるわけであります。したがって、失速状況になる前段の段階として行う措置と、有効なる状態において進行しつつある経済政策の中で行う対策とは相当の開きがあるわけです。私がニュアンスの相違があるというのはそこだと思うのですが、この通産大臣の見解が一面においては正しいと思う面もあるけれども、しかし実際上の実態として産業界ないしその他に与える影響としては安易なる期待を持たせるような方向の中で発言が受け取られている。こういうような点が多く指摘することができると思うのであります。その一つは株価、株の値段であります。ことしになってからの通産大臣の発言を契機として、株価は急上昇という表現が適切であると言ってもいいほどの思惑的な投資が行われております。この中において、今後日本経済は公定歩合の引き下げを含む一連の緩和措置が急速に進む、また進ませなければならぬ、これは通産大臣は失速のおそれがあるということでそういうことをやっておられるのでしょうが、ここに集まってくる投機資金によって醸し出される、過剰流動性と思われるような一部資金によって起きる経済への刺激が、果たして現在歯を食いしばってがまんしている経済界の人たちにいい影響を与えるのかどうか。通産大臣は、巷間いろいろ言われておるように、株の取り扱いについては名人だ、こう言われておるので、そういうところと関連してまさかやっておるのじゃないだろうと私どもは思うわけでございまするけれども、しかしいずれにせよ、通産大臣の発言が真にそのとおり経済界の発展、失速に陥れないための発言であり、その中からくる経済の安定的成長を図っていくために必要だというならば、経済企画庁長官の発言との差にわれわれが感ずるような差がないと言ってもいいと思うのでありまするけれども、この点、この株価の上昇現象を通産大臣はどのように見るか。いわゆる株価が経済の先見性を見ておるとするならば、この上昇経過の中におけるところの一連の動きは、金融緩和が即経済成長景気回復につながるというように喜んで見ておられるのかどうか、その点についてもあわせて答弁を願いたいと思います。
  28. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほどの御質問の中で経済実態についてのお話がございましたが、私は去る一月中下旬の経済界との懇談、実態調査に即しましてほとんど全部の産業が二割ないし七割の減産をしておる、こんなに大幅な減産をしておるにかかわらず在庫はふえておる、これはもう異常事態である、こういう判断のもとにいろいろな摩擦現象の解消のための対策を提案しておるわけでございまして、これは非常に深刻な事態である、こういうふうに私は認識をいたしております。重ねて申し上げておきたいと思います。  したがいまして、たとえば倒産のごときも十一月、十二月は史上空前の状態でございますし、一月になりましてはまだ政府の最終の調査はできておりませんが、先般民間の一部の調査機関の発表では、十二月に比べましては若干減っております。しかし、これは毎年のことでございまして、一月になりますと、倒産の数が十二月に比べて減るというのは、これはずっと多年の慣例でございますが、これまでの一月の倒産の状態に比べますと、本年の一月は最高の水準である、決して楽観はできない、こういう状態が続いておるわけでございます。失業問題におきましても、非常に不安な状態が続いておることは、すでに御案内のとおりでございます。  しかも、一方におきまして、それじゃこの二、三カ月ほっておけば経済は過去のように自力で浮揚してくるのか、こういう議論もありますけれども、今度の景気の落ち込みは非常にひどいということが一つと、それから国際的な複雑な要因というものが重なっておるということ、さらに現在貿易の事情も去年と比べまして非常に悪くなっております。よほど努力をしませんと、政府の見通しを達成することがむずかしい、こういう状態であります。それから、民間の設備投資などは完全に冷え切っておりまして、仮に資金が入手できましても、設備投資をやろうというふうな業界はまずほとんどない、こういう状態でありますし、また個人投資も冷え切っておる、こういう状態でございまして、私どもはこれまでの不況の場合と違いまして、今回の不況はほっておいても自力で二、三カ月たてば浮揚してくる、そういうふうに安易には決して考えておりません。したがいまして、先ほど来申し上げておりますような経済実態に即しまして、やはりこのひずみ現象と摩擦現象を解消するために有効適切な手を果断に打っていくということが必要であるということで、先ほど来申し上げておるような提案をしておるわけでございます。  株価についての御質問がございましたけれども、これは一つはいま世界的に株価高になっておりまして、それはヨーロッパにおきましてもアメリカにおきましても積極的な、非常に景気の刺激策といいますか、転換を行いまして、御案内のように金融対策あるいはまたいろいろな財政面での対策等につきましても、いろいろな積極的な対策を講じておりまして、そういうことが契機になりまして、外国で非常に株価が高くなっておる、そういうことも私は一つの影響でなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。
  29. 佐野進

    佐野(進)委員 これだけに時間をとっておるわけにもまいりませんから、次へ進みますが、いずれにせよ総需要抑制策を堅持するという中で、これからの景気対策と申しましょうか、経済運営と申しましょうか、その結果、経済対策閣僚会議を通じて出されるであろう政府対策に対して、国民は非常に大きな関心を持っておる。同時にまた、そのことによってわが国の今年度における経済がどう変化していくかということについて、これは国民に与える影響はきわめて大きいわけでありますので、これらについてはいま両大臣はその見解に差はないと表現されておりますが、それぞれの立場において差のあることは当然であります。通産大臣の言われることが単なる刺激的な言動でなくして、真に経済の安定的成長をはかる上に必要であるというような方策であるとするならば、単に株価を刺激するがごとき言動、その形の中に出てくる一定の条件、そのことが大臣が言われるように安易な形の中に景気が自律的に回復するのではないという厳しい見通しの上に、今後それぞれの場所における発言ないし行動をとっていただきたい。このことを要望しながら次の質問へいきたいと思うのです。  そこで、企画庁長官は当面する二つの方針の中で将来の長期的な展望と当面の対策、こういうことをお話しになっておりました。いま私は当面の対策に重点を置いた質問をいたしました。  そこで、長期的な展望について若干御質問をしてみたいと思うのでありますが、あなたの説明書、これは読まないでお話しになりましたけれども、まあこれと同じような筋でなっておるわけですが、この中でこういうことを言っておるのですね。「昭和五十年度のわが国経済は、年度を通じ緩やかな回復基調をたどり、経済成長率は名目で十五・九%、実質で四・三%程度となるものと見込まれます。」こう言っておられるわけであります。そして、そのようになるに至る前提と、それに到達するための目標ということについていろいろお書きになっておられると思うのです。  そこで、あなたの言われる経済の安定的成長とは、名目で一五・九%、実質で四・三%とお考えになっておられるのかどうか。これも通産大臣とも関連いたしますので、通産大臣も一緒にお答えを願いたいと思います。  そこで、それであるならば、いわゆる省資源の問題を初めとするいろいろな説明がなされておるわけでありますが、問題の基本石油の問題になると思うのであります。ここに至る経過の中で、石油の消費をどの程度に見るのか、輸入をどの程度に見るのかという問題が出てこようと思うのでありますけれども、前段の質問、これに関連する石油消費の見通し、このことについてひとつお答えを願いたいと思うのです。
  30. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 昭和五十年度という年は成長率四・三%、こういうふうに見ておるわけでございますが、これは臨時的、経過的な時期に対する判断なんです。経済がほんとうに安定していく、そういうまでには二年近くかかるのじゃないか。国際収支からいいましても、今年度は五十億ドルの赤字だ。五十年度になりますと、それを幾らか改善を見て四十億ドル内外ぐらいにしたい、こういうふうに見ておるわけでありますが、まだ本当のいい状態とは言えないのです。やはり五十一年度にかかりはしないか。物価にいたしましても五十年度は私どもは一けた台だということを申し上げているわけですが、これが望ましい金利水準以下、こういう形になるのは五十一年度になるのじゃないか。当面の経済混乱に対する収拾ですね、これは五十年度で大体粗ごなしをしたいと思っているのです。しかし、それは粗ごなしであってまだ詰めがしてない。詰めば五十一年度になる。おそくとも五十一年度からは安全運転というか、安定成長というか、そういう軌道に乗っける。そこで、この一、二年、これは過渡期、調整期間、こういうふうなとらえ方をしておるのです。調整期間、その初年度である五十年度の経済成長を一体どう見るのかというと四・三%の実質成長、そういうことを考えておるわけでありまして、これが将来の安定成長路線そのものを示唆するという考え方じゃないのです。  それから、石油ですが、安定成長路線に乗った場合におきましてもあるいは調整期間におきましても、とかく石油エネルギーの根源でございますので、これの輸入をどういうふうに考えるか、あるいはその輸入した石油をどういうふうに消費するか、これなんかは非常に重要な問題でありますが、五十年度は四十八年度、つまり前の年の実績ぐらい、大体二億九千万キロリッター程度、こういうふうに考えております。
  31. 河本敏夫

    河本国務大臣 経済見通しの問題でございますが、御案内のように四十九年度の当初見通しにおきましてはプラス二%の実質成長、こういうことでありましたが、去る十二月の見通しではこれが相当大幅に落ち込みまして、四十九年度はマイナス一・七%程度に落ち込むであろう、こういうふうに見通しが修正されております。しかし、私は最近の経済界の実情から考えまして、よほど有効で適切な手を打たないとこのマイナス一・七%を維持するということはむずかしい、よほど努力を必要とする、こういう感じでございます。したがいまして、五十年度のプラス四・三%という見通しもよほど経済運営よろしきを得なければいかぬ、よほど努力を必要とする、こういう感じを最近の経済動向から受けております。  石油の節約問題につきましては、先ほど副総理がお述べになったとおりでございます。
  32. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、これはこれからのいろいろな問題を議論する一つの前提になるわけですから、もう一点だけこれに関連してお聞きしていきたいと思うのです。  この企画庁の見通しと通産省の見通しでは若干の差があるわけですが、四十九年度に比べて五十年度は貿易収支で五十二億程度の黒字になる。石油の輸入は、大体四十八年度も四十九年度もそう大きな差がないと言われておると思うのでありますが、その程度の輸入量に対比して貿易収支が五十年度は五十二億ドル程度の黒字になるということには相当の輸出ドライブをかけなければならないというように判断されるわけであります。この五十二億ドルが四・三%の成長の基調であるということになってくるであろうと思うのでありますけれども、この見通しはどういうところでこの見通しが出てきたのかわかりませんが、通産大臣のいまの説明と関連いたしますと、長官のこの御説明は若干楽観視し過ぎるのではないか。さらに、いわゆる国際的な石油価格ないし石油に対するキッシンジャー構想等々いろいろな面を判断いたしましたとき、この貿易収支五十二億ドルが四・三%の基調であるとすると、五十二億ドルの貿易収支の黒字があらわれなかった場合、一体どの程度の実質成長率になるのか、これらについては相当見通しが狂ってくるのじゃないか、こう思うわけであります。確信を持ってと言ってもあれでしょうけれども、確信があるから出したのでしょうから、この点について長官の御見解をひとつはっきりとしておいていただきたいと思います。
  33. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 貿易収支、これはまさにお話のとおり、わが国経済計画をいたす場合における中心になるわけです。ミクロ、マクロ両面から、すなわち経済動向判断から、また積み上げ的な判断から、両面からいろいろ検討いたしまして、そうして決定いたしたわけですが、率直に言いますと、業界なんかではもっと伸びやしないかというようなことを言う人が実は多かったのです。しかし、これは非常に大事な数字でありますので、慎重の上にも慎重をということでそうしたのですが、仮に、いま通産大臣が言われるように、四・三%というのがむずかしくなるというようなことになるとどういう変化が起きてくるかというと、これは国内経済不況であるというようなことになると、逆に今度は輸出ドライブの方に作用するわけです。大体そういう傾向になります。それから、国内経済が不振になりまするから国内における資材、資源の輸入は停滞する、少なくなる、こういうようなことで、貿易収支にはいい影響を持つということになるわけでありますが、先ほど通産大臣から、非常に四・三%というのはむずかしいというようなお話もありましたが、何とかだらだらと上がりに日本経済を誘導しまして、年度間といたしましては四・三%、この程度にいたしたいものだ、いまそれをぐらつかせるような要素は大局的に見ましてございません。
  34. 河本敏夫

    河本国務大臣 貿易の見通しでございますが、これは四十九年度の場合も、御案内のように、年度当初、輸出貿易は四百六十億ドル程度であろう、こういう見通しを立てておりましたけれども、これはその後いろいろな好条件が重なりまして、六百億ドル近い輸出貿易になった、非常にこれは見込み違いであったわけでございます。昭和五十年度の場合は、一応この増加を非常に控え目には抑えておりますけれども、ただ国際環境が急速に悪くなっておりまして、先進国における外貨事情、それから国内の購買力の減少、それから開発途上国における外貨不足、それから経済混乱、こういうことが重なっておりまして、非常にむずかしい条件が出ております。でありますから、昭和五十年度におきまして目標を達成することは私は必ず可能であるし、また努力いかんではこれを伸ばすこともできると思いますが、それぞれの国ごとの、また具体的な品目ごとの対策というものをよほどきめ細かく、しかも敏速に立てていきませんと、努力目標達成ということはむずかしくなるのではないか、こういう点を心配をいたしております。  それから、なお重ねて申し上げますが、私は、この五十年度の経済成長率プラス四・三%ということが不可能になるとか、そういうことを言っておるのじゃございませんで、最近の経済動向は非常に不況が深刻であるから、やはりこの目標を達成するためには有効適切な手段を打っていく必要がある、そういう手段さえ間違いなくとっていけば四・三%の達成も可能である、しかしそれにはいろいろな対策が必要である、こういう趣旨を申し上げておるわけでございます。
  35. 佐野進

    佐野(進)委員 具体的な諸問題について質問をしてみたいと思って幾つか用意いたしたわけでありまするが、時間もあとわずかになってまいりましたので、三点だけそれぞれお聞きいたしまして、質問を終わりたいと思うわけであります。  その第一は、企画庁長官福田さんに、いわゆる先ほどの答弁の中における賃金の問題、明らかに賃金抑制が経済政策の当面の重大な柱である、したがって政府は、直接干渉しないが、自主的な交渉に任せざるを得ないが云々、こういうような御発言をなさっておられたわけでありまするが、この発言の真意と、それでは今日の経済情勢の中でどの程度の賃金アップがその経済見通しを達成する上に最小限必要なものであるとお考えになっておられるか、その点ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  36. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、賃金と物価基本的な関係が非常に根本的な変化をしてきた、こういうことを申し上げておるのです。それを踏まえて労使の間で合理的な賃金決定をしてもらいたい。私がここでそういうことをにらんで、私として、さあ何%ぐらいが妥当であるというようなことを言いますれば、これは私が賃金決定に介入した、こういうようなことに実質上なりますので、それは申し上げません。しかし、労使で、こういう情勢になってきた、これから先を展望すると経済の歩みもいままでのような状態にはいかないんだ、それから賃金と物価関係、これは悪循環的な関係になり得る可能性というものを非常に大きくはらんでおるのだというようなことをよくお考えくださると、それは日本の国民経済の立場からしても、あるいは企業を、職場を維持するというような立場からいっても、そこにおのずから妥当な結論というものが得られそうなもんじゃないか、こういうふうに考えているのです。それで、その妥当な結論が得られるような環境政府がつくらなければいかぬじゃないか。そこで、物価対策というものに特に重点を置いた諸施策を進めておる、こういうことで、私が何%が妥当であるなんということは、これはもう最後まで言わない方がよかろう、こういうふうに考えております。お許しを願いたいと思います。
  37. 佐野進

    佐野(進)委員 私は、言わないのがいいと思って言わないということについては、理解ができます。したがって、これ以上は聞きません。ただしかし、ことさら、あなたのあいさつという文章の中の社会的公正の確保等という項目の前で、物価と賃金の問題をいろいろな面からお話しになっておられるようでありまするけれども、ここに言われる意味は、いわゆる政治的圧力であるとかないとかいうようなことになっては差し支えがあるからというような御判断で説明をなさっておられるけれども、実際上はそういうぐあいに考えられるような説明の趣旨だと思うのです。したがって、環境づくりのためにいま行いつつある方針、行いつつあることが賃金等いわゆる労使交渉の際におけるところの重要な役割りを果たしておる、したがってこの政策を推進する中で、春闘対策に関して経済企画庁として、副総理として対処をしていくんだ、こういうぐあいに理解をしてよろしいわけですか。
  38. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 賃金問題につきましては、情勢の変化を踏まえまして労使が本当に良識をこの際発揮して妥当な決定をしてくださいということを念願をしておるわけです。しかし、ただ念願をしているということだけでは政府の責任は済まされません。その決定が本当に合理的、良識的な解決になり得るようなおぜん立てというか環境づくり、これに政府最大の努力をしなければならぬ。そのおぜん立てというのは、一番大きな問題は私は物価だと思うのです。物価がどんどん上がるという状態で何を政府がお願いしても、これはもう実現をするはずがないと思うのです。そこで、あるいは年度間の主要公共料金の決定をもう全部差しとめいたしますとか、あるいは一つ一つの、特に生鮮食料品なんかの需給につきましてきめの細かい配慮をいたしますとか、あるいは総需要抑制政策、国民からこれを転換せいというような要望がありますけれども、あえてそういうことはいたしません。その総需要抑制政策の基調は堅持するという方針をとるとか、いろいろいたしまして、とにかくこの消費者物価を安定させる、安定させますから、労使の方でもひとつ御協力を願いたい、こういうことを申し上げているのであります。
  39. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは、最後の質問として、通産大臣と公取委員長に、公取委員長には、ほんの一つだけですが、あと板川先生がうんちくのある質問をすることになっておりますから、やってみたいと思うわけですが、通産大臣に対してはいろいろ質問があるわけです。しかし、これはこれから委員会がありあるいは予算の一般質問の場等もありますから、そちらにおいて質問をしてみたいと思うわけでありますが、ただ一つだけ、いわゆる経済協力に関連いたしまして、対外経済援助という形の中で、去年の暮れ、繊維製品を援助物資としてバングラデシュに送った、こういう実績があるわけですね。これは当時の中曽根大臣が言明する中において、繊維の不況対策とも関連して、この種政策については積極的にこれを今後とも推し進める、こういうような答弁がなされておったわけであります。それが本年度予算の中においても対外経済協力費という形の中において、予算の増額等も見られておるわけでありますが、この種取り扱いについて、その後どのような対策を立てておられるか、今後これに対してどう考えておられるか、いわゆる経済不況対策と関連した余剰物資の低開発国に対する直接援助としての考え方をひとつ明らかにしていただきたいと思うわけであります。  公取委員長には、後またじっくり質問しなければならないが、ただ一言、板川さんの質問に関係しないところだけで聞いておきたいと思うんですが、ともかくあなたの毅然たる態度は大変われわれとしては敬意を表すると言っては言い過ぎになりまするが、いずれにせよ、よくやってるわいということについては積極的な評価をしておるわけです。しかし、ここのところ、新聞紙上に伝えられるところを見ると大分もみくちゃになって、まだ政府案ができざる段階の中において、あなた方の考え方がだんだん後退しておるというようなことが見られるわけです。そこで、私はその後退していることがどういう事情なのかということについて簡単に答えていただきたいということと、あなたの説明の中に、「目下政府」これはいいですが、「———————の独占禁止改正に関する審議に際し、参考資料とされております。」ということを言っておるわけです。—————だけじゃないでしょう。審議しているのはみんなでしょう。なぜあえて—————というのを入れたのか、これは言葉じりをとらえるわけじゃございません、姿勢の問題としてお聞きしておきたいと思うわけです。  以上、二点についてそれぞれから御答弁願って、質問を終わります。
  40. 河本敏夫

    河本国務大臣 繊維が非常な不況の状態になっておりまして、それの対策としていろいろのことを考えておるわけでございますが、その一環といたしまして、先ほど御指摘のバングラデシュ等対外経済商品援助、こういう形で一定数量が実現しておるわけでございますが、今後とも、国内では災害対策用に準備をするとか、あるいは対外的にはいまお話のようにいろんな商品援助、こういう形で、機会あるたびにこの量をふやしていきたい、こういうふうに考えております。  なお、もし具体的にさらにその上お答えをする必要があるならば、政府委員の方から答弁をさせます。
  41. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 昨年の暮れバングラデシュに対しまして、繊維不況対策との関連から商品援助をやったわけでございますが、ただ国内の不況対策としてというよりも、むしろ相手国の要請に応じて当方で供給量に十分余裕のある物をこれに差し向けるという形で本件も処理した方がよろしかろうかと思います。今後ともそういう事情にある場合にはできるだけ相手国の事情も承知をしながら、こちらの不況対策にも結びつくような対策としての商品援助も好ましいかと思います。たとえばシベリア開発に当たりまして、一般のクレジットのほかにローカルコスト調達のために消費財について借款を供与することをいたしております。こういった場合に、相手国が繊維製品等について要求がある場合にできるだけそういった要請に応じて商品援助を推進していくべきであろう、かように考えております。
  42. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 簡単にお答えいたしますが、それで御了承いただけるかどうか……。  私どもが自分たちの考え方について、かねて発表しておりましたその考え方を勝手に私ども自身が後退させているという事実はないのであります。しかしながら、報道というものは、これは報道の自由でございますから、いろんな情報源がございまして、あたかも私どもがある一部を削除するあるいは断念するとか言ったというふうに書かれていることは事実でございます、全部ではございませんが。しかし、そのことは私は公然と否定したわけでございます。しかし、否定したけれどもそうは受け取られないという事実があることは私は認めます。しかし、私、いまだに断念したとか削除したとかいうことは申しておりません。その点が一点でございます。しかし、これは、いろいろな情報というものはそう私ども思うとおりにはならぬわけです。その点御了承いただきたいと思います。  もう一点の—————と書いてあるという点ですね。確かにそういうふうな御指摘を受ければ、不適当であったと私は認めます。しかしながら、いまの順序を申し上げますと、御承知のとおり、これは政府案として取り上げるということを総理がたびたび約束しておられます。そういうことで、私どもの方も政府案として取り上げていただくことが一番よろしいと判断いたしました。ところが、政府の方はいまのところ、御承知のように、総理府総務長官が司会者となっていろいろ意見を聞き、そしてこれから取りまとめに入る。一方で—————の方では特別の調査会を設けておられる、こういう実態がございまして、そして政府の方だけじゃないということなもんですから、そこでそういうふうに「政府」と書いて「—————」を書かないと、何だというふうにとられやせぬかと思ったのです。ですから、野党の皆さんでも十分参考にしていただいているわけでございますから、その点は私ここでそういうことを入れなかったことについて十分反省もいたしておりますし、その点至らない点をおわびいたします。
  43. 佐野進

    佐野(進)委員 終わります。
  44. 田中六助

  45. 板川正吾

    板川委員 通産大臣、経済企画庁長官、公取委員長所信表明やら報告に対して若干質疑をいたしたいと思います。たくさんありますが、きょうは時間の関係でポイントだけ二、三伺っていきたいと思います。  経企庁長官にまず伺います。  いま佐野委員といろいろ不況対策政府経済政策の転換等について質疑応答か重ねられた。どうも政府の方も自信かないために、のらりくらりしてこれといった明確な考え方が出ない。いま国民が知りたいのは、総需要抑制はそれは仕方がない。しかし、総需要抑制のために、御承知のように、倒産や失業がたくさん出ている。一体、いっこの政府経済政策を転換するんだろうか、ここが国民は知りたいと私は思うのであります。政府はこの三月現在で、前年同月比の消費者物価の指数が一五%程度になることを期待しているということを盛んに言っておりますが、たとえば一五%になったら、あるいはそれが何%になったらば政府はこの総需要抑制政策というものを見直していくのか、こういうものを明らかにする必要があるんじゃないだろうか。たとえば、これは適切な例じゃないのですが、兵隊のときに、あと何キロ歩けば食事ができるんだというならがまんして行軍を続けられる、しかし、どこへ行くのかわからないという行軍じゃへばってしまうという気持ちが国民の側にあると思うのですね。ですから、将来の見通しというものを明白にすべきだと思います。  いまこの報告をちょっと、さらっと見ますと、経企庁長官の報告の中では、三月現在の前年同月比の消費者物価の一五%は十分にできる、ところが通産大臣の方ではほぼ達成の見込みだ、こういうふうに若干ニュアンスが違いますね。実際この三月現在の消費者物価の見通しというのはどうなんですか。一四%をことによると割るんじゃないですか。一月が御承知のように、東京でさっき言ったように〇・二%しか上がらない。去年の一月の前年同月比が二三・一%上がっている。二月が二六・三%、一番上がっているわけですね。去年が二六・三%上がっているのですから、その上がったものに対することしの前年同月比ということになると、恐らく一月の一六・八%が一五%に二月ごろなるんじゃないですか。そして、三月には一四%をことによると割るか、一四%そこそこになる見通しもあるんじゃないですか。一体消費者物価がどの程度になったら政府は総需要抑制というものを手直しをしよう、こういうふうなお考えを持っておられるのか、この辺明確にしていただきたい。
  46. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 総需要抑制政策は国際収支、それから資源、それから物価、そういうものを総にらみいたしまして、その期間というものを考える、そういうことでございますが、まあ一番大きな指標といいますか、考え方のかなめになるのは、国際収支が大体これで大丈夫だろうかという点と物価なんです。それから物価だけでというわけにはまいりません。しかし、物価が安心できるという状態はどういう状態かというと、定期預金の金利、そういう状態である、私はこういうふうに考えておりまして、それを来年のなるべく早い時期には実現をさせたいというスケジュールで諸政策を進めていきたいと思います。それとまた国際収支、これは大体経常収支が多少の黒になる、こういう状態だろうと思いますが、そういうような見通しができる時期、こういうのですから、まあ大体大ざっぱに言いまして、ことしじゅうに総需要抑制政策、これを転換するということはむずかしいと思います。やはり来年にかかると思いますが、その総需要抑制政策をやっておるその枠の中で手綱さばきというものは、これは緩急よろしきを得なきやならぬ、こういうことで、いま摩擦現象に対する諸対策をどうするか、こういう問題が出てくるわけでございます。まあしばらく総需要抑制という体制は、日本の経済が本当に低成長時代に即応して安定する、軌道に乗るまでは持続していかなけりゃならぬだろう。その時期は、ことしは来ない、来年になる、かような御理解を賜りたいと思います。
  47. 板川正吾

    板川委員 そうしますと、定期預金の金利程度まで消費者物価が下がるまでは総需要抑制という方針は堅持していきたい、まあこれは常識かと思うのです。しかし、当面、たとえば中小企業の倒産や失業者、そういう社会的な不安が出てきておるのに、これに対して、そういう消費者物価政策ばかりにポイントを置いてやっていけないんじゃないかと思いますがね。たとえば消費者物価が一〇%を割るという段階が来ればあるいは若干手直しを始め、最終的に手直しをするのは金利以下ということは、理屈はわかりますけれども、いままで総需要抑制というのは非常な厳しさで実行されておる。若干の手直しというものをある段階で行うべきじゃないか。そういう点を国民は知りたいのですね。来年三月一〇%を割るという事態、そういうときまでは恐らく来ないだろうというのじゃ、どうもあまりにも政治というものが社会の一隅を見てない感じがするので、そういう点で私は総需要抑制を何も全面的に解除しろと言うのじゃなくて、ある段階にはこれを緩め、ある段階に来たら第二段の緩めをする、こういう順序を追ってやるということを明白にする必要があるんじゃないでしょうか。来年三月になったらいままでの締めておったのを全部外すというのじゃないので、その間に段階的な一つの措置をとる必要がある。そういう点で政府の考え方はどうかと聞きたいのですが、その点はどうですか。
  48. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府の方では板川さんのいまおっしゃるように考えているのですよ。総需要抑制政策つまり経済をかなり政府の力で誘導するというその基調につきましては、これは変えることはいたさない。しかし、そういう政策をとっておる過程でいろいろ問題が出てくる。いまの一部業界の不況問題というような問題もその一つでございますが、そういうことに対しましては、そのときの経済情勢、社会情勢を見て、その時点において適当な対策をとる。先ほど佐野さんにも申し上げましたが、今週末に一部の摩擦回避対策を打ち出す、こういうふうに申し上げておりますのは、それなんです。しかし、その手をあらかじめいつどういう時点になったらどういうふうにするなんということは、とてもこれは申し上げられません。いまとにかく四月になると春闘という問題がある。これは私は、労使の間で非常に良識のある解決がなされるだろうということを期待しております。しかし、その期待が万一外れまして、大変なことになったという場合と、あるいは私どもが期待するような形になったという場合とでは、それは経済政策のかじの取り方が相当大きく変わっていきますから、そういうことで、いまあらかじめどういう時点でどういう対策ということは申し上げかねますけれども、そのときの経済情勢、社会情勢を見まして、財政、金融を中心といたしまして総需要抑制の枠の中でのさばき、これは何も硬直した姿勢じゃございません、ゆとりのある姿勢で臨んでまいりたい、こういうふうに考えております。
  49. 板川正吾

    板川委員 では、次に移りますが、西ドイツが非常に物価が安定しておる。日本は、イタリアと肩を並べて世界最大物価の値上がり国である。西ドイツがなぜ物価が安定しており、日本がなぜ世界に冠たる物価値上げ国になっておるのか。同じような敗戦国で、同じように戦後に経済復興してきて、その西ドイツの経済政策は、石油ショックにかかわらず比較的物価が上がらないで、日本が上がるというのは一体どこに原因があるんだろうか。西ドイツのやり方がどういう点がうまくて、日本のやり方がどういう点がまずかったのか、こういう点をひとつわれわれは他山の石として検討する必要があると思うのですが、経済の責任者として経済企画庁長官、どう考えておられますか。
  50. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いわゆる石油ショックの後のわが国物価経済の狂乱状態、これは私はいま板川さんのお話のように世界で一番悪い方の状態であった、こういうふうに思います。そういう状態がどうして出てきたんだろうかという背景は、わが国経済はインフレ基調が非常に強く出た。その基調のさなかにあの石油ショックというものが訪れたということだろうと思うのです。そこで、非常な混乱、狂乱状態に陥ったということだろうと思うのです。そうすると、なぜわが国経済があの石油ショックの以前の状態において、そういう非常に顕著なインフレの状態になったかということを考えてみますと、私はそこに西ドイツとの間に非常に大きな差があると思うのです。政策上の差があったと思うのです。昭和四十六年度ごろ西ドイツとわが日本が、これは経済情勢が非常によろしい、そこで輸出はどんどんと進む、そこで両国とも外貨がどんどんとたまってくる、そういう状態が出てきた。そこで、外貨について世界各国の間で、そんなにドイツや日本が外貨をさらったんじゃ、ほかの国の外貨が窮迫するじゃないか、世界経済に悪い影響を及ぼすじゃないかという批判が出てきたんです。そのときドイツがどういうふうな対応をしたかというと、西ドイツは、わが国においては物価が大事なんだ、国際収支ももとよりだというようなことで、当時すでに総需要抑制体制をとったわけです。そこで、外貨がどんどん流入する、流入すればインフレの大きな要因になるわけです。そういう要因に対しまして総需要抑制体制をもってこれに対処する。したがって、物価は安定し続けるという状態だった。わが国は、ドイツと同じようなそういう世界経済の情勢の中で、外貨がたまる、外国から外貨をため過ぎだと批判をされる、そういう事態に当面いたしまして、いわゆる調整インフレ的な体制がとられた。外貨減らし政策であります。その辺に、私は西ドイツと日本の大きな違いがあったと思うのです。外貨がたまる、それ自身がわが国においてはインフレを大きく刺激する。過剰流動性がその典型的なものです。そういう状態にあったんだから、過剰流動性を抑制するという政策がとられてしかるべきだった。それがトリレンマとか、そういうようないわゆる調整インフレ的な政策で対処し、日本の国の経済を繁栄させる、そうしまして輸出は減る、輸入はふえる、そういう形で事態に対処しようとした。そこが西ドイツとわが日本の行き方が非常に根本的に違ったその分かれ道であった、こういうふうに思うのです。  それはそれとして、わが日本はそういう政策をとった結果、インフレがずっと高進した。そこへ石油ショックが来たものですから、大混乱になった。ドイツの方はそういう安定した基調の中での石油ショックでありましたから、その石油ショックからこうむるところの影響というものは少なくて済んだ。しかも、わが国石油に七五%依存をするわけです。ドイツは五〇%しか依存しないという楽な立場もあったわけです。そういうようなことで、ドイツと日本の間に非常な乖離が生じたのですが、最近それがたいへん是正されまして、この二、三カ月の中では西ドイツとわが日本が、物価や国際収支の状態では、今日世界じゅうが混乱している中ではありますけれども、最も安定しているという状態にまで回復してきたわけであります。
  51. 板川正吾

    板川委員 福田さんのおっしゃられた前の方と後ろの方が若干違っています。前の方では日本は非常にインフレが盛んで、そこへ石油ショックが起こった、こう言うのですが、資料で見る限り、七三年の七月ごろまで、前半は西ドイツもわが日本もほとんど同じくらいの値上がり率しか持ってないのですよ。ところが、八月、九月、十月、こういうときになると日本は急速に上がっておる。そして、卸売物価にしても、やはり日本が——消費者物価で申し上げましたが、一九七三年、昭和四十八年の前半は日本も西ドイツもそう違わないのです。それから、卸売物価は逆に西ドイツの方がやや上がりぎみで、日本はそれほどじゃなかった。しかし、石油ショック以来、急激に日本は上がっておる。西ドイツは、石油ショック後もそれほど急激な上がり方はしない。そういう状況です。それで、西ドイツのエネルギーの依存率は大体五〇%、日本は九〇%ですが、石油は西ドイツでも九四%を輸入しております。日本は九九%輸入しておる。そういう差は若干ありますけれども、消費者物価や卸売物価にこれほど大きな差が開くはずがない。そういう意味で私はどこに違いがあるかと思いましたら、いま福田さんは、西ドイツは大事なときに景気抑制政策をとって貨幣価値の維持に全力をあげた、外貨がどんどん入ってきても、それをためて抑えておった。日本は田中総理が、御承知のようにハワイですか、四十七年にあそこでニクソン大統領と会って、そして日本は外貨をため過ぎだからインフレ政策をとってくれということを言われたと思うのです。そこで、四十八年に調整インフレ政策をとって、日本列島改造論というのでじゃんじゃんインフレ政策をあおったというところに、私は根本的な間違いがあったと思います。いま福田さん、インフレ政策をとったのが失敗だったとおっしゃいましたが、福田さん、大蔵大臣のときにインフレじゃないということを盛んに強調したのです。いまになってみるとインフレを認めたということになりますが、まあそれはいいです、言葉じりですから。いずれにしても、そういう田中内閣時代経済政策は失敗であった、これを私は認めてもらえば、それはそれていい。これを他山の石——他山の石じゃない、自分のところの石として、大いに今後ひとつこの体験を生かしてもらいたいと思います。  時間がありませんから先へ進みますが、これは副総理として実は伺いたい問題なんです。  御承知のように日中共同声明が出て、日中の友好関係が一段と促進をされました。最近は御承知のように日中平和条約を結ぼう、こういう機運が両国の間に高まってきたことはまことに喜ばしいことでありますが、戦後三十年間、いまだに法律的には完全に戦争状態が終結をしていないのでありますから、平和条約を早急に結ぶべきであると私どもも思います。従来、日中の平和条約がおくれた原因は何かというと、平和条約を結ぶと中国から膨大な賠償の要求がある、賠償の要求があったのでは、とても日本はそれに応ずるわけにいかない、こういうようなことを言われて、ある意味じゃ長引いてきたと思います。これは前からわが党の委員長などが訪中した際に中国の首脳が言っておったのですが、賠償として日本国民を苦しめて取る意思はない、こういうことをしばしば言明しておったのでありますが、日中共同声明でも、請求権はあるが賠償は取らない、こういう気持ちを表明しておると思います。この平和条約が結ばれる段階で、私は賠償を払うべきだということは言いません。これは向こうでもそう言っているのですから言いませんが、しかし長年にわたって中国大陸の国民に、家を焼き、人を殺戮し、大変な迷惑をかけてきたわけでありますから、この平和条約を結ぶと同時に、日本として中国国民に対して過ち料と申しますか、そういう気持ちを私はあらわすべきじゃないだろうか、そのためには、平和条約を機会に、中国との経済協力なりを進んでわが方から申し出るべきじゃないだろうか、そして日中の友好というものを末永く続くようにすべきじゃないだろうか、こう思います。そういう点について副総理としてどういう所感を持っておられますか、伺います。
  52. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 戦後三十年近く国交断絶のかっこうであった日中間に、とにかく国交が開かれる、こういうことになりましたのですから、それを踏まえて経済上の接触も大いに前向きでやっていくべきだ、こういうふうに思います。  また同時に、賠償問題、こういうむずかしい問題につきまして中国政府がきわめて寛大な態度をとったということにつきましては、深く敬意を表する次第でございます。ただ、そういう姿勢でありましても、中国側の基本政策でございましょうか、資源開発というような問題になりますと、自分の国の資本でやりますというようなお考えのようです。ですから、これは実際問題として、重要な資源開発なんかでわが国経済協力というものが実現するかどうかという見通しは、私はなかなか立てにくいのです。立てにくいのですが、資源開発ばかりじゃありません、いろいろな経済の交流がありますから、そういう諸問題につきましては、すでに輸銀の総裁が自身北京に参りましていろいろな話をしてきておりますが、そういう諸問題につきましては積極的な構えで対処してしかるべし、こういうふうに考えております。
  53. 板川正吾

    板川委員 日支事変が一九三一年に始まった。一九四一年に、独ソ戦争と同時に、米英首脳によって大西洋憲章が発表された。そして、この戦争では領土は取らぬ、賠償も取らぬ、こういう原則を発表し、それの精神がカイロ宣言なりポツダム宣言なりに受け継がれて、この戦争では賠償も取らぬ、領土も取らぬという原則が実施をされたわけです。しかし、米英共同宣言の一九四一年までの十年間は、そういう趣旨はどこにもなかったわけでありますから、中国側に賠償を請求する権利ありというのも、私は、権利はあるが請求はしないという気持ち、権利ありという主張も、全く無視することはできないことだと思います。したがって、日中平和条約が結ばれる段階で、中国との友好を一層深め、わが国が犯した過ちを謝る意味におきましても、経済協力なり援助なりというのを日本が積極的に申し出てやるべきではないだろうか、こう思います。  もし、向こうで受ける体制がある場合に、中国と日本の開発、お互いの経済の提携を深める意味において、中国の大陸だな地域における石油開発、あるいは開発技術や投備、そういうものを協力しながらお互いに経済的な連携を深める、こういう必要があるのだろう、こう思いまして一言申し上げた次第であります。ぜひこの発言も念頭に置いていただいて善処されるように要望いたします。  時間の関係で、次は公取に伺います。  先ほど佐野委員の質問があり答弁もあったのですが、新聞によると、公取の改正試案の中で最も重要なポイントといわれる企業分割を断念したということがあり、いや断念したわけじゃないという答弁がありました。この企業分割については、学者間でもほとんど異論がないのですね、経済界は反対しておりますが。原状回復命令とか原価の公表とかいうものについてはいろいろ異論があります。しかし、独禁法の体制として、最悪の場合には企業分割ができるという伝家の宝刀を持つことが好ましいということは、学者間のほとんど一致した見解です。これに反対は少ない。ところが、それを公取が断念したというものですから、実はびっくり仰天してここで質問したいのでありますが、商法の中に規定がないから独禁法でどう改正してもそれは分割ができない、こういう論理は実はおかしいのじゃないですか。独禁法と商法というのを対等に考えておる論が非常に多いのです。新聞等を見ても、公取委員長がこんなことをわからないで改正案を出したのはけしからぬ、責任を問え、こういう新聞の論調さえある。いまちょっと勉強しておったかと思ったら、意外と勉強していない。独禁法と商法とを対等に見ている、こういうところに私は問題があると思います。  商法に規定がないから分割ができないという論理ならば、では商法に会社合併の規定があります。商法の会社合併の規定どおり、株主総会を開いて、お互いに合意を尽くして八幡と富士と合併をする。何で独禁法でこれを許可するかしないかという議論が立つのですか。商法なり民法なりが基調としておる市民法、これは契約自由の原則、契約自由の原則というのであれば、お互いに企業者が自由にカルテルを結んで値段を決めてどこが悪い、こういう論理が成り立つわけです。そういう市民法の契約の自由というものを社会、公共の福祉の上から制限できるというのが独禁法という法律じゃないですか。商法の規定がないから分割ができないという論理は逆さまじゃないかと思うのですが、公取委員長どう考えます。
  54. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 この問題は大変ややこしい問題なんです。ですから、板川さんのように非常に割り切っておられれば、独禁法で商法のそういう会社分割を、いわば商法の規定でいくべきところをも独禁法で改める、あるいは創設する——これは新しくつくることになります。企業分割は、これは会社分割と譲渡というふうに二つあるとお考えになっていただきたいのですが、その会社分割という方については商法の現行規定にはありませんから、それを新しく独禁法の中でつくるということは、私は法理論上、立法政策上は絶対に不可能だとは言えない、こう思いますが、実際、実情としては民法、刑法、商法等の一般法律は法務省が法制審議会にかけてこの改正をする、こういう慣例が強く主張されております。そういう関係で簡単にはいかないんだというお話があることは事実でございます。それに対して、たとえば一部の譲渡でも軽いものは何ら特別手続も要らないのです。株主総会、特別総会は要らないのです。ただ、それが重要な一部ということになりますと特別決議を要するわけです。ですが、その特別決議の規定はありますけれども、またそれに伴う一連の反対株主の買い取り請求権というのが現行商法にはありますが、私の方でもしやる場合には、これをやることは十分可能でありますが、それらの規定を相当程度排除することになるわけです。ですから、特別の規定を、要するに独禁法に盛らなければならないということはもう決まっておることなんでございます。そういう点については法務省の側も理解を示しておられると私は思います。示しておられると思いますが、新たに会社分割という制度創設を独禁法の方でやられることについては、それは大変困難であるということを言われておることは事実でございます。それについて私どもは、会社分割を含めた企業分割という制度を重要事項として独禁法に盛ることが必要であるということであれば、何らかの法的な措置がとり得ないわけではない、絶対に不可能だとは言えないのではないかという考えを持っておるものでありますが、ただそういうことで法務省と意見がどうしても対立するといいますか、合致するにはなかなかむずかしい点があるということ、これは事実でございます。しかし、だからその点を断念したと言っているわけではございません。まだそのほかにも法律上の措置としては、まあ少し異例かもしれませんけれども、会社分割を定義して入れて、それが動くのを商法の改正と歩調を合わせるというふうにする方法もあるのではないかと思いましたので、そういう点では絶対に不可能だと決めてかかっておるわけではございません。
  55. 板川正吾

    板川委員 世論の中に、独禁法と商法なり民法なりというのを全く対等に見ている、なぜ独禁法ができたのか、こういうことを理解しない議論が、財界などでは特に多い。確かに個人の自由というものはありますけれども、憲法は個人の自由を無制限に認めておるわけじゃない。公共の福祉を害しない範囲において個人の自由が許される、こういう憲法の趣旨、十二条、十三条、二十九条等から見てもそうでありますが、大企業が自分勝手に自由を主張して、そうして独占を確保するような行動をとる、それを公共の福祉の立場から規制するという独禁法は、これは当然であると思います。だから、企業分割ができないというはずはない。独禁法の中に具体的にどういう場合にこの企業分割ができるかという規定を置き、そして手続については公取が決める規則なりで決める、こういう方式だって決して憲法違反ではないし、民法、商法に反するものじゃない、こういうふうに私は見るべきだと思うのです。そうでなければ、じゃ、契約自由の原則の中においてみんな自由に契約しておるのを、何で公取がカルテルはいかぬと言うのか、こういう理屈が出るわけでありますから、独禁法がなぜ生まれてきたかという独禁法の性格というものを理解しなくちゃなるまい、こういうふうに思います。  独禁法は、御承知のように戦後の民主化立法の一つであって、市民法の法理を超えた社会法の理念として制定されたもので、たとえば労働組合法、農地法、独禁法、こういった一連の民主化立法が戦後生まれた。これも市民法では律し切れない、たとえば労組法では労使対等だ、そして対等の話し合いで労働条件は決めなくちゃならぬ、あるいは経営者に団交に応ずる義務を課すとか、さらに農地法では地主に所有の制限、地主制度を追放して、あるいは一定の、三町歩以上は持ってはいけないとか、こういうような制限を課したので、従来の民法なりの契約自由という原則では社会の公共の福祉が守れないということで労組法や農地法や独禁法ができたわけでありますが、この労組法には労働組合がこれを断固として守るという体制がある。農地法には農民が断固として守る体制があった。しかし、残念ながら独禁法にはこれを守るという体制がなかった。だから、いままで後退に後退を重ねてきた。こういうところに独禁法がいままで骨抜きにされた大きな背景があったわけです。いまようやく国民の中から独禁法本来の姿に戻そう、こういう空気が出てきたときでありますから、われわれはこの公取試案では物足らない。九項目ではない、さらに十九項目ぐらいの改正案をいま出し、各党と相談をして野党共闘の案にいたしたい、こう思っておるわけでありますが、いずれにしても公取委が意見を発表して政府に具申しているのですから、いまさらそのある部分を取り消すとか断念するとかという態度はとらないでほしい、こう思います。この改正案の中で落ちこぼれが何点かある感じがするのですが、この点、公取委員長はどう思いますか。  独禁法二十五条は無過失賠償を決めておる、二十六条ではその手続が書いてあるのですが、これは消費者が、独禁法に違反した行為によって被害を受けた場合には、損害賠償できるような消費者救済の手続になっておるわけです。しかし、実際にこれが発動されておらない、発動されたことが余りない。実効はない、形式だけだ。実効ある方式をとったらどうかなと思うのです。たとえば公取の案に、利益を受けたものに対してその差額を取り立てようというような課徴金制度がある。この課徴金制度で公取がたとえば預かっておいて、そしてその間に一般の消費者から、これこれによって最終的に損害を受けたという申し出があった場合に、その差額の分を消費者に返すという制度、これは決してクラスアクションじゃない。アメリカに例があるんですね。証券取引委員会というのがあって、株価を操作してもうけちゃいけない、こういう規定がある。ところが、株価を操作してもうけた場合には、それを証券取引委員会が取り上げて、その差額を預託さしておく、そして株主で損をした人に対して払い戻しをする、こういう制度がある。消費者側から言えば、課徴金を取られたって、国が取り上げたんじゃ実はちっとも利益にならない、損害賠償しようと思ったらそれは実効がない、こういうことになるわけですから、この課徴金を消費者に払い戻しをする制度をお考えになったらどうです。たとえば、これは思いつきでありますが、その差額を公取が課徴金として取って預かっておく、そうして末端の消費者は、それだけよけいに払ったのですから、販売店に行って差額を要求する、販売店はそれを支払う、その差額をその会社が最終的にまとめて、公取に課徴金として納めたものを受け取るということになれば、消費者に損害を返すことができるのですね。この制度を考える必要があるんじゃないですか、どう思いますか。
  56. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 課徴金という制度については、その制度の創設には(板川委員「名前は課徴金じゃなくてもいいのです」と呼ぶ)いいのですが、比較的賛成の方が多い。いまの御趣旨、たてまえ、私はまことにもっともだと思うのです。しかし、実際問題として、たとえば公取がそういうものを預かっておいて、そしてこれを損害を受けたと申し立てるものに分配するというわけですが、いまの公取の事務処理能力では大変なことになりますから実行上できない。なぜかと申しますと、アメリカでは三倍賠償になっておりますね。民間で三倍賠償になっておる。三倍の損害賠償を請求できるというあの趣旨は、本当はおかしいのです。しかし、現実にそれを取っている例があるわけです。それはむしろ独禁政策当局の手の及ばないところを補完するという趣旨で設けられたと聞いております。ということは、そういううまみがあるから訴えておる。それから、実際調べてみますと、消費者がやった例はないではありませんけれども、大体は業者なんです。業者が被害者になります。たとえばGEの場合に莫大な、数百億円という金を払った例がございます。これは十数年前のことでございますが、その場合に損害賠償を起こしたものは、GEから直接そういう被害を受けた業者、三千余りと聞いておりますが、それらが起こしたのです。実は、業者であるから証拠をつかむことができるということで、全部突き合わしてみればその独禁法違反行為が立証できるということから来るのだと思いますが、独禁法違反行為の排除行為をそういう手段で補完するということだったらしいのです。大体業者の場合が多いと聞いておりますが、いま損害を受けたものということになりますと、業者も受けておるし、それから小売業者とか一般消費者とか、各段階ごとに損害を受けたということは申し立てできるわけです。こうなると、その数たるや膨大なものになるということでございまして、その点だけですね。私はいまの公取の陣容ではとてもそういう能力はないのではないかというふうに思いますので、とりあえずは、御趣旨はまことにごもっともだが、実行はほとんど不可能に近い、遺憾ながらそうお答えせざるを得ないわけでございます。
  57. 板川正吾

    板川委員 課徴金を取るということは公取の案に出ておりますね。これはどうやって取るのですか。カルテルを結ぶ前の価格とカルテルを結んで上げた価格の差額に数量を掛けて出すというのでしょう。そうしますと、カルテルで値上げをした分を課徴金として取る。取り方はわかりますね。払い戻しというのは、公取に一々持ってこいと言っているのじゃないのですよ。たとえば石油会社が値上げをして最終価格をリッター当たり何円上げた。そのために、たとえば私のうちで千円よけい払った。私が買った石油スタンドへ行って千円払い戻しをしてもらう。その領収書を出す。それをその会社が、各販売店からのを全部まとめて公取に請求をする。公取は、そこから取った金があるのですから、会社別に幾ら取ったというのがあるのですから、その範囲で返す、こういうことであれば、一々来るわけじゃないからできるんじゃないでしょうか。これは全部、一対一の細かい点までいくと大変と思いますが、消費者のためにそういうことがあってもいいんじゃないか。とにかく、違法な行為によってよけいに取られたものに損害の実質的な賠償が保障されないということのほうが問題じゃないですか。手数がかかるからやりたくないというのは、主権在民の今日においては逆さまじゃないでしょうか、どうなんです。
  58. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私ども実務を担当しておる者の目から見ますと、取ったものを返すんだからそれは当然だというふうにおっしゃる点はわかるのですけれども、取る方は一たん、普通の状態ならばこれは歳入になっちゃうわけです。だから、それを歳入にしないでおいてという御趣旨のようですが、この点に一つ問題があります。それから、一番困難なのは、ここから払い戻す場合、やはり歳出同様の、つまり証拠があって、それだけの損害を受けた——各人別に違うわけでございますから、これを全部点検してその証拠をはっきりした上でなければ支払いはできないわけです。いいかげんな計算では絶対できない。つまり、それだけの損害を受けたという立証があって初めてできるのですから、そうなりますと、これをずばり点検する、つまり支払いの方に大変問題があるということを申し上げたわけです。  また、課徴金ですが、いまおっしゃられたのは限度額でありまして、いまその点についても大変ややこしい、控除額をどうするかというふうなことを詰めておる段階でございますが、これを計算して取るということにもかなりの手間がかかりますけれども、ましてや支払いする相手方が何千何万ということになった場合は、とうていわれわれではさばき切れないのではないか。確認行為ができない。確認しないで払うということは、いまの財政のあり方としてとてもこれは許されないことである、こう思うのでございますが、その点についてひとつ御理解を賜りたいと思うのです。
  59. 板川正吾

    板川委員 確認はその取った業者にさせればいいかと思いますが、これは一応そういう意見があり、ぜひやるべきではないかと思います。  それから、この改正案の中にカルテルの推定規定が入っていないというのはどういうわけなんですか。たとえば時期を同じくして同じ業界で値上げをした。大体これはカルテルをやった行為を一々調べなくても、そういう場合には、これをカルテルありとして認定する規定を設けなかったのはどういうわけなんですか。それは原価の公表という問題もあるでしょう。原価の公表で寡占対策というのをチェックしようということはわかりますが、このカルテルの推定規定を公取が入れなかったのはどういうわけかなと思いますが、どうなんですか。
  60. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 カルテルというものに対して推定規定を入れるということは、私は現段階ではちょっとした飛躍だろうと思います。しかし、いずれそうしなければならない時期があるいは到来するかもしれません。そういうことがまた容認される時期が来るかもしれませんが、いまの段階では、たとえば各国の例を見ましても、カルテルを推定しちゃうというところまではいっていないと思うのです。(板川委員「同時平行行為」と呼ぶ)ですから、その平行行為に対してどうするかということが今度の私どもの対策の中に原価公表という形で出ておりますが、それさえ賛否両論がある。私はこれは形は変わっても、その趣旨は原価公表よりもむしろもっと巧みな方法で——もっと巧みといいますか、有効な方法を講じてでも何とか入れてもらいたいと思っておりますが、それさえいまの段階ではかなり難航しているという状態。カルテルを推定してしまうということになりますと、事実行為を並べ立てることによって立証責任がない、つまりこちらが立証しなくてもいいということになります。こういう点はいままで余りにも証拠主義に立っておりますから、これは裁判所にいったなら恐らく、そういう制度が認められれば別ですけれども、とてもそれは受け入れられないというふうになるんじゃなかろうかと私は思います。とにかく、そうなることは非常にやりやすいのですけれども、あえてやらなかったという意味は、私どもの立場からいって、とうていいまの段階でそれをお認め願うことは無理ではなかろうか、こう考えたからでございます。
  61. 板川正吾

    板川委員 私は原価公表の方がいやがるんじゃないか、カルテルの推定規定の方がやむを得ないと思うんじゃないか、これは寡占対策としてのカルテル推定規定であって、一般の末端のものまでやろうという気持ちはないのですけれども、一定の市場支配力を持つと思われる業界が同時平行行為を行って値上げをしたような場合には、カルテルありと認めて調査なり審決を行うということの方が実は対策としてしやすいかなと思ったんですが、なぜ公取が入れないのか、こう実は思うのであります。  いずれにしても、企業分割にしてもこういう審決にしても、向こうは一筋なわではいきませんから裁判になるでしょう。これはアメリカか西ドイツかの競争制限関係委員長の言葉にあったのですが、確かに最高裁で負けた、負けたけれども非常に意気軒高としている。なぜかというと、負けてもいいんだ、しかしこういうことが社会に出されることによって、恐らくこの業界なり他の業界も今後カルテル的行為、独占支配的な行為を慎むだろうということを言っておるのですね。最終的に裁判での勝ち負けよりも、そういう問題を提起することによって反省を促するということの方にプラスもあるということを考えれば、私はカルテル推定規定も大いに必要じゃないかな、かえって原価公表の方がいやがるんじゃないだろうか、こういう感じを持ったものだから、なぜそれよりも低いといいますか、カルテル認定行為の推定規定を入れないのか、こう思ったわけであります。  時間となりましたから二、三思いつく点を申し上げますが、公取試案の中にない点で一、二問題点を指摘して参考に資したいと思いますが、公取の審決で、四十七年八月十八日に船会社の三重運賃カルテルに対して外国の代理店に審判開始の通知を出した。そうしたら、代理店はそれを受領する権限なし、こういうことで審判開始の通知を受領しないためにその外国会社に対する審判ができなかった、こういう審決がありますが、この代理店、独禁法では、事業者とはこれこれと書いてあって、独禁法の二条の事業者という中に「代理人」という言葉があるわけですね。「代理人」というのも独禁法の事業者の中に入っておるのに、どうして代理店が入らないのか。代理店というのは法律上の用語にない。商法では四十六条で「代理商」ということになっておりますが、今後外国会社がどんどん日本に上陸して独禁法違反の行為をやったような場合に、代理店は受領資格がないからといって門前払いを食って、それは審決をしないんだというのはおかしいのじゃないか。やはり外国会社の代理店であっても、そのある部分について向こうの会社を代表して取引なりをするわけでありますから、商法に言う代理商と同じでしょう。「代理人」まで独禁法では事業者として認めておりながら、代理店だということで門前払いを食って仕方がないんだというのはおかしい、こう思うのです。これは独禁法六条三項に、代理契約については届け出しなくてもいい、こういうようなただし書きがありますが、この辺を検討する必要があるのじゃないか。やはり代理店であろうと代理契約についての届け出をさして、そういう場合にやはり本人にかわって公取の審判を受ける、こういう形になるべきだろう、こう思います。それはひとつ改正する場合に検討してほしいということです。  それから、カルテル違反の行為ですね、これは三分の二は事業者団体であり、独禁法二十五条の無過失賠償責任を事業者団体にも与えるべきだという法学者の議論もあります。この点もひとつ検討してもらいたいと思います。  さらに、九十五条で会社の代表者にも罰則を科すことができるという両罰規定がありますが、公正取引委員会のほうで両罰規定を適用する場合には証拠を出さなくちゃならない。これを挙証責任を逆に会社の代表者側に与えるべきじゃないか。たとえば労働基準法百二十一条とかあるいは消防法とか幾つも同じような規定があるそうでありますが、そういうように挙証責任を逆に会社側に与えるということで両罰規定の適用が十分できるようにすべきじゃないかという問題もあるようであります。こういう点もありますから、ひとつ改正案を最終的にまとめる場合に、若干の手続的な手直しもして、りっぱなものを出すようにしてもらいたいということを要望いたして、私の質問を終わります。  通産大臣については、時間がありませんから、次の機会にやらせてもらいます。
  62. 田中六助

    田中(六)委員長代理 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時二十三分休憩      ————◇—————     午後二時十一分開議
  63. 田中六助

    田中(六)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。米原昶君。
  64. 米原昶

    米原委員 私は、けさ通産大臣の所信表明の中で触れられた問題について、若干最初に聞きたいと思うのです。  所信表明の中で、大臣は高度成長の過程において環境汚染、物価問題の深刻化社会資本の立ちおくれ等のいわゆる高度成長のひずみが顕在化したということを最初に申されました。ひずみという言葉が適当であるかどうか、私はひずみどころではないと思っているのですけれども、そういう中で確かに環境破壊という問題が起こっております。この環境破壊の問題は、客観的に高度成長がもうすでにできなくなった、そうして安定成長になるかあるいは低成長になるか、とにかく高度成長がストップしたところで実は環境破壊はやむわけではないのであります。そこに重大な問題があると思う。あの高度成長の中で、経済成長第一主義といいますか、施設の安全なんということを考えないで、とにかくめちゃくちゃにああいう石油コンビナートをつくった。その結果としての先日起こった重油の流出事故、瀬戸内海がもう回復できないと言ってもいいくらいな環境破壊を行っておるわけであります。高度成長が実際できなくなったからといって、あの高度成長政策の中で起こったひずみ、この問題はずっと続くわけなんです。現在の仕事として、単に高度成長安定成長にしたからといって、高度成長の中でさまざまな問題を引き起こしたわけでありますが、その害悪の面、これが一気にストップするわけではないのです。後遺症としてずっと続くわけなんです。むしろいまこそそういう安全対策を無視したような経済成長、こういう点を反省して抜本的な手を環境保全のために打つ必要があるのではないか、そういうところに来ているのではないかと思うのですね。まず、この点について、通産大臣はどのように考えておられるかを聞きたいと思います。
  65. 河本敏夫

    河本国務大臣 確かに御指摘のような大きな問題が存在しておると思います。高度成長の過程におきましては、その都度その都度十分気をつけて、その当時としては一番いいと思われるような対策を考えてきたわけでございますが、いまから振り返って考えてみますると、やはり反省すべき点が多かったと思います。したがいまして、おっしゃるような点は十分留意をいたしまして、総合的な対策を立てる必要があろうかと存じます。
  66. 米原昶

    米原委員 その点で申し上げたいのですが、大臣も御存じのように、昭和四十五年の公害国会、ここで公害対策基本法が改正されたわけであります。そのときに一番問題になったのは、御存じだと思いますが、それ以前の例の公害基本法では、国の公害対策に取り組む基本的な理念基本的姿勢が明確でなかったということが問題になって、一番問題になったのが基本法の第一条第二項です。つまり、それまでの基本法では「前項に規定する生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。」という言葉が入っていた。これが削除されたというのが一つの重要な改正点だったわけであります。その当時の責任の大臣だった山中さんも、この公害対策基本法の改正のときの趣旨説明の中でもこの点を第一に強調をされたわけであります。つまり、それまでの公害対策というものが、経済との調和環境保全経済成長との調和ということがあったために、逆に実際は経済成長第一主義になった。経済成長をやっていくときに必ず公害を起こさないような措置を同時にとっていくという点が抜かっていた。抜かっていたからこそいまのひずみが起こっているのだろうと思います。いま言われているようなあの高度成長政策のもとで環境破壊のひずみが起こった。大臣も言っておられるとおりですが、そういうことが実際に起こった。そういう点があるわけです。その点で、この基本法の改定点は実に重大な点であります。黙っているとこれは見過ごされやすい点なんです。しかし、いま高度成長はとまったけれども、依然として環境破壊が続いているわけです。思いがけない破壊が起こらぬと言えないのです。こういう中でこの問題です。つまり、この改正のときには、経済成長を第一に考える型をやめなければいけない、何よりも人間の健康、命が大切なんだ、こういうことが改正の主目的として強調されたわけです。そういう点から見ますと、この考え方というのは、ことに経済の問題に直接専念しておられる通産当局にとっては絶えず気をつけておられないといけない点じゃないか。この点についての見解を改めてもう一度聞きたいと思うのです。
  67. 河本敏夫

    河本国務大臣 確かに御指摘のような精神で公害対策というものが昭和四十五年以後原則的には続けられておると私は思うのでございます。ただしかし、それじゃ果たして十分かといいますと、必ずしも十分ではない、かように思いますが、ただここで一点申し上げたいことは、私は日本のような場合には高度成長もやはり必要であったと思います。と申しますのは、過去十年間の統計をとってみますと、その間に高度成長のために約一千万人の新しい若者の雇用が実現しておる、こういうこと等もありますし、さらに生活水準の向上、こういうこと等もありまして、高度成長が全部悪いかというと、決してそうではない、高度成長もりっぱな実績を残しておる、内容を持っておる、私はこう思うのです。ただ、御指摘のようにこれが公害をまき散らして環境破壊をする、そういう点につきましては、先ほども申し上げましたように、後で考えてみるとなお打つべき手がたくさんあった、こういう反省のもとに、今後は前向きに取り組んでいかなければならない、かように考えております。
  68. 米原昶

    米原委員 高度成長の問題についての議論は省きまして、もっと具体的な問題を申し上げます。  大臣のきょうの所信表明の中で、いま問題になっている自動車の排ガスの五十一年規制の問題について触れられております。この問題は御存じのように予算委員会でも大問題になりました。業界によって中央公害対策審議会、ことに自動車専門委員会審議の模様がノートにとられた。これは一般の国民には全然秘密にされていたわけです。私たちも委員会で何回も審議の模様について、少なくとも技術的なデータについて発表してもらいたい、実行できないなら実行できないだけの科学技術的な点だけは最低限われわれに知らしてほしいと言ったのでありますが、これが企業の秘密ということで、この審議会の模様は一切発表しない、こういうたてまえになっていたはずなんです。ところが、それが業界に筒抜けになっておった。これがいま非常な不信を買っているわけであります。そのために、二月六日開かれた中央公害審議会の総合部会でも、結局この問題は委員からずいぶん意見が出て、単に審議会の責任ある役員がやめるという問題だけじゃなくて、審議会のあり方そのものが問題だ、こういう審議過程でつくられた答申というものをもう一度再検討する必要があるのじゃないか、こういう意見も出たくらいの問題であります。もっとも三木総理大臣自身は、たとえそういうことがあっても答申として出たものを尊重してやるんだという態度を変えておられないのは、よく知っております。大臣のきょうのお話でも、やはりこの答申を尊重して規制が円滑に実施されるよう関係業界を強力に指導していきたいということを言っておられます。これは三木内閣のいまの方針でしょうか。そう言うことはわかるのですが、ただこの問題についても、そういう異論が出たために、明後日、衆議院の公害対策環境保全特別委員会でもう一度これを審議されることになっている。それが終わらなければ告示はしないということまで言っておられるわけなんです。そういう中でこの問題をどう考えられるか聞きたいのです。  いまおっしゃいましたけれども、環境保全ということですね、これをただ経済成長の犠牲にしてはならぬと思う。経済成長が全然必要でないなどとわれわれ思ってないです。しかし、経済成長のために人間の健康が破壊されるというような事態になることはどうしても避けなければならぬ、これが公害対策基本法に示された精神だと思うので、聞くわけなんです。つまり、なぜ五十一年排ガス規制というような問題が起こったか。御存じのように自動車がたくさん走っている大都会の大気の状況というのは非常に悪いです。東京の都内の調査でも、問題の窒素酸化物の状態ですが、国できめている環境基準は全然守られてないどころか、それの何倍という高率なものがあるということは、いままでの実態でもわかっているのです。環境基準というのは確かにいまの法律では、これを守らなければ罰するとか、そんなものじゃありません。しかし、人間の健康を保全するに必要な最低限をわれわれは言っているわけなんです。法律にもそう書いてあります。ところが、それが守られてないで、それの何倍かなんです。しかも、学者の調査したところでは、いまの状態で五十一年排ガス規制が完全に即時実施されたところで、環境基準は守れないぐらい悪化しているわけです。だから、排ガス規制だけでなくて、その他の自動車の交通制限とかいろいろな措置でもとらなければ、環境基準は守れないというのが実態だと思うのです。そういうときに、その肝心の排ガス規制すら延期ということになったわけですね。この点で私は非常に心配しているのです。これはどうしたって一日も早くそういう厳しい排ガス規制、もちろん技術的、科学的な検討は必要に決まっておりますが、いいかげんな検討じゃなくて、だれも納得できるような真の意味での科学的な検討、業者の利害に左右されない、そういう立場の検討が必要だ、私、心からそう思うのです。この点についての通産大臣の基本的な見解をお聞きしておきたいのです。
  69. 河本敏夫

    河本国務大臣 確かに審議会の運営の過程におきましては、遺憾の点も私はあったと思います。ただしかし、そのことについての予算委員会における質問等に対しまして総理もお答えになっておりますように、先般出ました中公審の答申を尊重してやっていきたい、もう一回やり直すという考えはない、こういう趣旨のことも言っておられますししますので、今後御指摘のような点は十分尊重いたしますが、私も先ほど所信表明の節に申し上げましたように、この答申を尊重いたしまして、そして今後ともこの規制が円滑に実施されますように関係業界を強力に指導していきたい、かように存じておる次第でございます。
  70. 米原昶

    米原委員 それでは、具体的にもっと聞きますが、二月七日の各新聞紙の夕刊にほとんどどれにも出ているわけです。自動車排ガス五十一年規制について通産大臣が、継続生産車の猶予期間をしばらく延ばしてほしい、こういうことを環境庁長官に要請したということがどの新聞にも出ております。これは事実なのかどうかということをまず第一に聞きたいのです。
  71. 河本敏夫

    河本国務大臣 そういう事実はございませんが、若干その間誤解があったようでありますが、私は小沢長官とは立ち話で、いよいよ問題も最終段階に来たが、自動車業界の実情はよく認識しておいてもらいたい、こういう趣旨のことは言いましたけれども、それ以上の具体的なことは一切言っておりません。     〔田中(六)委員長代理退席、稻村(佐)委員長代理着席〕
  72. 米原昶

    米原委員 大臣自身が、明くる日にはこれはそういうことはなかったと否定されたというのも八日の新聞に出ているのを拝見しました。ところが、それとまた矛盾して、小沢環境庁長官の方は、後に行われた記者会見で、通産相から要請を受けたが断った。通産大臣の方は、そういうことを言わなかったといまおっしゃるのですけれども、環境庁長官の方は、そういう要請があったと言って記者会見で発表しておられるのです。これはどういうことでしょう。通産大臣から要請を受けたが断った、告示は中公審答申を尊重して予定どおりやる、こういうふうに環境庁長官が正式の記者会見でおっしゃっている。そうしますと、何かいまおっしゃったのでは、自動車業界の状況を考えてやってくれというふうにはおっしゃったというわけですが、それにしてもこれはずいぶんおかしいんじゃないですか。答申どおりに、少なくとも環境庁長官はやるという。ところが、通産大臣の方は、答申の線とはもうちょっとずれて、業界寄りの要求をなさったということになるのですよ。こういう点、どういう考え方で大臣はそういったことをおっしゃったのですか。
  73. 河本敏夫

    河本国務大臣 重ねて申し上げますが、私から具体的に要請をしたという事実はございません。ただ、先ほども申し上げましたように、自動車業界の実情だけは正確に掌握しておいていただきたい、認識しておいていただきたい、そういうことを申し上げたわけでございます。
  74. 米原昶

    米原委員 では通産省として、今回の大幅に後退した五十一年度規制に関する中公審の答申について、どのような基本的見解を持っておられるのか聞きたいのです。
  75. 河本敏夫

    河本国務大臣 自動車の生産につきましては、私どもはこういう見解を持っておるのです。  まず第一番に、公害の少ない車をできるだけ早くつくるようにしなければならぬ、これが第一点でございます。同時に、安全性の高い車でなければいかぬ。公害が少ないと同時に、安全性が高くなければいかぬ。さらに第三には、やはり経済性も兼ね備えておらなければならぬ。たとえば、公害は少ない、安全性は非常に高い、しかしコストは三倍も四倍もかかる、そういうことでは困るわけでありまして、公害が少ないということ、安全度が高いということ、同時に経済性を備えておるということ、こういう車の生産が望ましいわけでございますが、そういう基本的態度のもとにおきまして、先ほど来申し上げましたように中公審の答申が出たわけでございますが、それを受けまして、その規制が円滑に実施できるように業界を指導していきたい、かように考えておるわけでございます。
  76. 米原昶

    米原委員 いまおっしゃった点なんですが、公害のないものにしなければいかぬ、安全を大切にしなくちゃいかぬ、これはよくわかるのです。そしてその次に、経済性とおっしゃっている。もちろん経済性を全然無視しろと言っているわけではないけれども、しかしこれがある意味では矛盾している。これがどうしたって出てくるからこそ、公害問題に対する基本的な考え方というものを振返る必要があると言ったのはその点なんです。経済との調和という、前の公害基本法にあったあれが削除されておるのです。そのどちらかというときに、何よりも公害をなくする、環境を保全する、こういう点に第一の重点があるんだ、人間の健康と命とが大切なんだ、この観点で見ないと——それは経済性の問題も考えざるを得ないでしょう。しかし、どちらをとるかという問題に来るんですよ。一定のところでそれを振り切らぬとだめじゃないかと思うのです。私はいま答弁を伺っておりまして、通産省としては今回の答申、つまり一トン以下は〇・六グラム、一トン以上は〇・八五グラムというこうした大幅に後退したものであっても、企業にとっては経済性の点から見ればこれでも非常にきびしい、したがって実施段階で十分に企業に配慮がされるべきだと考えておられるというのが本当の真相じゃないか、環境庁長官にお話しになったのもそういうふうに考えておられるからではないかと思うが、どうでしょうか。
  77. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、もちろん環境保全のために公害の少ない車を生産しなければならぬということは当然であります。ただしかし、同時に、安全度が高いということ、それから経済性ということも大事でございます。これはやはり、現に自動車産業は日本の基幹産業でございまして、この産業に従事する者は、直接間接を入れますと数百万おる。そういうことを考慮いたしますと、こういう人たちの生活問題にも関連するわけでございます。そういうことから、経済性は全然無視して公害だけを考えればいいんだ、そういうわけにもまいりませんので、やはり公害優先という基本原則はございますけれども、安全度の高い、同時に経済性ということもあわせて考えていかなければならぬ、私はこういうふうに考えておるわけでございます。
  78. 米原昶

    米原委員 その点を本当にやろうと思ったら、やはり現在の排出ガス規制の進んでいる程度、業者が言っているのがどの程度のものであるかということを科学技術的に判定しないと、簡単に業者の言うことだけをうのみにしていたら大変だと私は思う。そこが問題だと思うのです。  そこで、私さらにもう一つお聞きしたいのですが、これは森口機械情報産業局長にお聞きしたいのです。それは、新聞に出ておりますが、昨年の十一月二十九日です。中央公害審議会の結論が出る直前のときでありますが、環境庁に対して森口さんの方が申し入れをされた、そういうふうに聞いておりますが、その申し入れの内容はどういうものだったのでしょうか、お聞きしたい。
  79. 森口八郎

    ○森口政府委員 排気ガスの規制基準は、環境庁が専管的にお決めになるべき分野であります。ただ、当省としては、自動車の生産、流通等あるいは自動車の技術等について所管をいたしておりますので、そういうような立場から、最終的には環境庁の判断で決められるべき排出基準でありますけれども、当省としては、先ほど大臣が申されましたようないろいろな点を総合勘案して、この程度の規制基準が妥当であろうということを環境庁当局に申し上げたわけであります。
  80. 米原昶

    米原委員 そうしますと、大体新聞に出ている申し入れの内容というのと同じなんじゃないかと思う。当時の新聞を見ますと、八百七十五キログラム以下は〇・六、それ以上と軽自動車は一・〇、三年間の暫定値規制という申し入れをされた、こういうふうに当時の新聞にはどれにも出ております。そうだとしますと、いま最終的に一応答申されている案と比べても、そして案のつくられる経過というのは、私たちが手に入れたメモ、私はここにメモを全部持っております。これを見てもわかりますが、全くの企業寄りの主張じゃないかということを感ずるのです。全くこれは中公審の最終答申よりももっと後退した案です。こういうものを申し入れておられるわけであります。業界まで最終的にはのんだ案よりももっとずっと後退しているのです。そういうものを通産省という役所は申し入れなくちゃならぬところか、もちろん通産省は自動車の問題については、ことに専門的に研究しておられるでしょうし、それはわかります。しかし、そのときに経済性とかいうことよりも、やはり排ガス規制を扱う以上は、国民の健康と命が第一だという観点に立って何とかできないかという姿勢で臨まるべきだと思う。それがどうもないんじゃないかというふうに感ずるんですが、この点どうでしょう。
  81. 森口八郎

    ○森口政府委員 先ほど来御意見がありましたように、公害対策は何にも増して優先すべきものであります。ただ、排ガス規制につきましては、排気ガスを減らすというような大目的と同時に、自動車が走る凶器と言われておりますように、安全性の問題について非常に考慮を払わなければいけない問題があるわけであります。そういうような観点から両方を勘案いたしまして、先ほど申し上げましたような申し入れを環境庁にいたしたわけでありますが、これはあくまでも参考意見でありまして、最終的には環境庁当局が、通産省もこういう意見を持っておるということを頭に入れられながら、環境庁でありますから当然国民の健康を第一義として排出基準をきめられるということで今回おきめになるというような手続になるのであろうというように考えております。
  82. 米原昶

    米原委員 私は、いま言いましたこの中公審の会議のメモも全部ここに持っております。それに書いてあるだけじゃなくて、実は一部の内容は私たちがこんなものを出すより、すでに去年の九月段階で自動車工業会の新聞に出ております。たとえば昨年の九月二日の自動車公害専門委員会で通産省代表が発言された趣旨なんかは当時の新聞に全部出ております。ですからわかっているのですが、その内容を見ましても、いかにして国民の命と健康を守るかというような観点はもう皆無です。むしろ、こんな規制をやったら大変だということだけがいとも細かく説明されている。     〔稻村(佐)委員長代理退席、森下委員長代理着席〕 私は、この姿勢は基本的に狂っているのじゃないか、こういうふうに感じるのです。  さらに、自動車公害専門委員会の最後の段階で、去年の十二月五日の専門委員会で富永自動車課長がしゃべられたこともメモに載っております。それを見ますと、五十一年十二月までに一トンのクラスを〇・六グラムに入れるのはかなり困難だ、ここでもむしろああいう答申がきまるのに反対の意見を繰り返して述べておられますが、どういうつもりでこういう発言をされたのか、私は自動車課長に聞きたい。
  83. 森口八郎

    ○森口政府委員 中央公害対策審議会の専門委員会審議の過程におきまして、委員会の求めに応じまして自動車課長が参考発言をしていることは御指摘のとおりであります。  自動車課長がどういうことを申し上げたかということを簡単に申し上げますと、まず自動車一般の事情について説明をしろということでございましたので、自動車の生産輸出入、雇用、技術開発、投資等をデータについて御説明いたしましたほか、五十年対策実施に伴う問題点といたしまして、燃費が上昇するという問題、それから安全性に配慮しなければいけないという問題、それからコストが高くなるという問題について申し上げますとともに、排ガス対策のほかに、交通政策、都市政策等を含めた総合的な交通対策が必要であるという旨を述べております。  それから、先ほど先生の御指摘のありました件は、恐らく先ほど申し上げました安全性の問題を考慮して、私が先ほど述べましたと同じような趣旨で発言をいたしたのではないかというように考えます。
  84. 米原昶

    米原委員 五十一年十二月までに一トンのクラスを〇・六に入れるのはかなり困難だとおっしゃっておるわけです。五十一年十二月というのは、通常の継続生産車に対しての猶予期間であります。したがって、通産省はメーカー擁護の立場からこの猶予期間を延ばすべきだ、こう考えておられるのですか。
  85. 森口八郎

    ○森口政府委員 最終的には環境庁当局が御判断されることであろうかと思いますが、五十年規制対策実施に引き継ぎ五十一年対策を実施いたすわけでありますので、現在きめられました規制値はメーカーとしては達成すべき義務があるわけでございますけれども、簡単に達成できる値ではないというように考えております。
  86. 米原昶

    米原委員 私は話を伺っておりまして、大臣から局長、課長に至るまで、一同がそろって何かもうメーカーの擁護のために懸命な工作をしてこられたんじゃないか、こういう印象をぬぐえないのです。これはメーカーの要請なんですか。メーカーのことも考えてやってくれという話をされたそうですけれども、それ自身は通産省の自主的な判断ですか。この点聞きたい。
  87. 森口八郎

    ○森口政府委員 メーカー側からはいろいろ聴取をいたしておりますが、私の方の意見は通産省独自の判断であります。
  88. 米原昶

    米原委員 それならば、これは非常に重大な点なので、通産省が自主的に判断してそういう見解をとっておられるというなら、昨年十一月二十九日に森口局長が申し入れになった根拠となる資料と、昨年十二月五日の富永課長の五十一年十二月までに一トンを〇・六グラムに入れるのは困難だという発言の根拠になる資料を私は提出してもらいたい。これは科学技術的な問題も含んでおりますけれども、非常に重要な点であります。今度の答申の決まる過程で、何か審議会の自主的な判断じゃなくて、業界に動かされてうのみにした形跡が非常に濃厚です。通産省が自主的に判断されているというなら、そういう主張をされる根拠となる資料を私は出していただきたいと思います。よろしゅうございますか。
  89. 森口八郎

    ○森口政府委員 中公審に提出した資料につきましては、環境庁と相談をして提出するよう取り計らいたいと思います。  それから、私が大気保全局長と話し合いました件については、データをもって説明をいたしておりませんので、データと言われましても、その点は現存するデータがございませんので、提出するわけにはまいらないというように考えております。
  90. 米原昶

    米原委員 通産省が今度の問題に対してとってこられた点については、さらに明らかにしなくちゃならぬ点がありますけれども、これは別の機会に譲ります。  とにかく、通産省のとっておられる態度というのが、このメモを見ましても、一番積極的に業者擁護の立場をとっておられるというのが客観的にわかるのです。それだから私は心配しておる。そういうのでは本当の通産省というわけにはいかぬじゃないか。実際に通産省と業界との関係というのは、この前の予算委員会で問題になった例の政治献金、こういう問題もあるかもしれないが、同時に通産官僚と業界とが天下りといいますか天上がりといいますか、いろいろ密接な関係を持っていることを私は知っております。四十四年には通産省の事務次官だった山本重信氏がトヨタの重役になっております。四十二年には通商局長山崎隆造氏が日産の重役になっております。また自工会専務理事中村俊夫氏も通産省出身、それから自動車業界の方から通産省に入ってきている方も相当あるということを私は調査しまして、どういう関係になっているか、十数人の人の名前を実は持っている。通産省から自動事業界に天下りした今度は自動車業界から通産省のほうに天上がりした人の名前は、十数人ここにありますけれども、申し上げる時間はありませんが、こういうことを改めていただかないと、五十一年規制の問題は、実行されるといっても国民の不信をぬぐうわけにはいかない非常に重要な問題だと私は思います。  高度成長のもとで大変なひずみが起こった、その一つが環境破壊であります。これに対してこれを回復するという任務を忘れてもらっちゃ困るのです。高度成長安定成長になったからといって破壊現象がとまっているわけじゃありません。むしろ逆に、その当時のひずみとしていまになってああいう重油流出事故のようなことが起こってくる、こういう点を食いとめるための努力がいまこそ必要なときじゃないかということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  91. 森下元晴

  92. 近江巳記夫

    ○近江委員 この独占禁止法の改正問題は、本国会におきましても、非常に大きな焦点になっておるわけでございます。私も昨年の予算委員会におきまして、やみカルテルの横行の実態を挙げ、独占禁止法の強化改正を強く要望したわけでございます。そのときにも、総理あるいはまた公正取引委員長から強化改正をするというお約束をしていただきました。いまそういう日程に上ってきておるわけでございます。その後政府としましては、独占禁止改正問題懇談会をつくりまして最終的な意見の聴取を終えて、政府は今月の二十五日を目標改正案骨子をまとめる方針であるということをお聞きしておるわけであります。  ところが、産業界及び自民党は、最近に至りまして、この公正取引委員会改正試案に全面的に反対ないし大幅後退の動きを示すに至っておるわけであります。予算委員会におきましても、わが党の正木政審会長が三木総理にそうした点を迫ったわけでございますが、骨は抜かないということをおっしゃっておられるわけであります。しからば、どういう骨を考えておるかという問いに対して、明確な答弁はなかったわけでございますが、いずれにしても骨は抜かない。やはりこの骨というのは、少なくとも公正取引委員会がお出しになった試案が骨じゃないかと私は思うわけです。私どもも公明党案を提出いたしておりますが、中でも企業分割、原価公表あるいは価格引き下げ命令等は、骨の中でも最も根本的なものである、このように考えておりますが、そういうまことに残念な動きがあるわけであります。少なくとも一国の総理のそうした姿勢というものは、これは政府を代表しておられるわけでありますから、全閣僚、政府委員が同じ姿勢で向かっていくのが当然であろうかと思いますが、こういう残念な動きがあるということでございます。  こういう残念な動きに対しまして、私はまず初めにお聞きしたいのは、公正取引委員長の率直なお考えをひとつ承りたいということでございます。  それから、公取委員長の後に通産大臣からひとつお考えを伺いたいと思います。
  93. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 基本的な考え方、基本的な姿勢は、私どもとしては、ただいま指摘されました、どちらかというと、いま骨抜きになるのではないかというふうな疑いを持たれていることにつきまして、既定の基本的な態度を何ら変えておりません。ただし、決定はすでに私どもの方の手をやや離れたというかっこうになっておりますから、政府の、主として総理府総務長官のもとでまとめられる方向、またこれは自民党の方でも審議を続けられておりますが、いずれにしても政府の案ができるだけ私どもの方の考えに近いものでまとめられることを切に望んでやまない次第でございます。
  94. 河本敏夫

    河本国務大臣 今度の独占禁止法の改正の問題は、これは三木内閣の一つの大きな公約でございまして、総理もたびたび言明をしておられますように、自由主義経済には一つのルールが必要である、ルールを守ってこそ初めて順調な経済発展が期待できるのである、そういう意味で独占禁止法の改正をしたい、こういう趣旨のことを言っておられるわけでございます。その点では私も全く同意見でございまして、賛成でございます。ただしかし、わが国は持殊の経済事情がございます。といいますのは、資源が全然ない、さらにまた人口が非常に多い、こういう特殊な経済事情がございますから、経済活動も、資源の非常に多い、人口の少ない国とは違って、これはやはり積極的にしなければならぬ、こういう面もあろうかと思います。そういう場合に、経済界の活力が失われる、もしそういうふうな内容の規定になれば、これは大変である。でありますから、自由主義経済のルールをつくるという意味においては賛成でありますけれども、角をためて牛を殺す、産業界経済界のバイタリティーが失われる、そういう内容であっては困る、そういうことのないように期待をいたしておるわけでございます。
  95. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま通産大臣は、バイタリティー、活力がなくなるようでは困るということをおっしゃっておるわけですが、いわゆる公正な経済秩序をしくため、すなわちレールをしくために今回の改正強化がされるわけです。何もこの改正強化が成ったから活力がなくなるということじゃないわけですよ。あの昨年の狂乱物価のときにおきましても、いわゆるやみカルテルはしほうだい、そういうことで人為的に価格をつり上げる、買い占め、売り惜しみはする、まさに国民は、もう本当にその狂乱の中で翻弄され尽くしたわけであります。言うならば市街地をダンプカーが走っているのと一緒ですよ。国民は歩行者であります。中小企業や零細企業は自転車か軽四輪車じゃないでしょうか。そういう信号も何もない、ガードレールも何もない、そういうところをダンプカーで走る、力のあるものがむちゃくちゃなそういう暴走をする。それは当然秩序をつくっていかなければならぬわけですよ。ですから、今回のそういう改正をしていくということは、やはりそこに秩序の中に、ルールの中に本当の活力というものがみなぎってくるわけです。そういう一番のチャンスなんです。それをむちゃくちゃをやらすことが活力であるとあなたはお考えなんですか。もう一度お聞きします。
  96. 河本敏夫

    河本国務大臣 決してそういう意味のことを申し上げたわけじゃございませんで、たとえばやみカルテルの問題とか、あるいはまた独占価格による市場の占有とか、こういうことは断固として排撃しなければならぬと思います。しかしながら、内容いかんによりましては、自由主義経済のルールをつくるのだと言いましても、先ほども申し上げましたように、日本には特殊の事情があるわけです。狭い国土に一億一千万の人間が住んでおるというふうなことであるとか、たとえば雇用問題一つをとってみましても、過去十年間にあれだけの高度成長がありまして初めて一千万人の青年が職を得ることができたわけですからね。今後は、十五カ年の間にやはり一千万の青年のために新しい職場というものをつくり出していかなければならぬ。資源がないのに人口が非常に多い、こういう特殊の事情がありますから、繰り返して恐縮でございますけれども、資源の非常に多い、人口の少ない国と比べますと、そこにはおのずから別途の経済活動というものがなければならぬ、こう思うわけでございます。そういう意味におきまして、その際、ルールをつくるということは必要でございますけれども、そのルールが経済界の活力を阻害するようなものであっては困る、そういう趣旨のことを申し上げておるのでございまして、おっしゃるようにやみカルテルなんかは断固として排撃していかなければならぬ、この認識においては全く同意見でございます。
  97. 近江巳記夫

    ○近江委員 あと私は、特にこの骨の中の骨の、先ほど申し上げた三項目について順次お伺いしていきたいと思います。  その前に公取委員長、御答弁いただいたわけでございますが、でき得る限りこの公取試案に近づくことを期待するということをおっしゃっておられるわけですけれども、少なくともこの公取試案をまとめられた段階におきましては、公取委員長は本当に国民の期待にこたえられて、日夜骨身を削って、わが子のようにこの改正試案というものをおつくりになったと思うのですね。ところが、どうも御答弁を聞いておりますと、ちょっと命が弱まってきているような感じ方を私、するわけです。それは現状は厳しいかもしれませんけれども、近づくことを期待するのではなくて、産業界政府・自民党のそういうような動きに対しましてもう少し、断固私はこう考えるというような力強いものがやはり欲しいと私は思うのですよ。やはり何と言いましても公取委員長が頂点に立っておられるわけですから、その頂点の公取委員長が現状に押されてどうもということでは、私、国民の一人として非常に心配な気持ちがするわけです。われわれも全力を挙げて公取委員長を応援いたしますし、公正取引委員会をバックアップいたしまして、この公取試案、私たちは、欠落しておる部分がございますから、公明党案では盛っておりますけれども、最低限公取試案の実現ということを強く願っておるわけです。そういう点におきまして、ひとつ公取委員長、さらに力強く前進していただきたいと思うのですが、いかがでございましょう。
  98. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 近江さんの御心配、ごもっともでございますが、私は腹の中で何も変わっておるわけじゃありません。ただ政府が、総務長官司会のああいう改正懇談会を一通り終えられた、いよいよこれから案をまとめる段階に入っておられる。また自民党も、これは実際上発言力強いですから、そういうことでもってこれからもまだ少し続くようであります、私どもの方の説明は本日で終わりのようでございますけれども。そういう微妙な段階におきまして私が、初心は変わってないのですけれども、余りこう、何て言いますか、大声張り出して叫ぶことが果たしていいのかどうかですね。その辺、私はじっくりと考えていただく段階に至っていると思いますので、あえて私がここで、どうしてもこうしてもわれわれの原案をそのまま採用してもらいたいというふうなことを言うことが、結果においてマイナスになったら何にもならぬという感じです。  要するに私の考えは、結果がよければいいんだということで、切にそれを望んでいるわけでございまして、態度をやや軟化させておるんじゃないかという御懸念につきましては、実は腹の中では決してそうではないということを申し上げておきたいと思います。
  99. 近江巳記夫

    ○近江委員 腹の中は煮えくり返っておるけれども見守っておるという公取委員長のお話であるわけでございますが、まあ、それぞれタイミングという問題があろうかと思いますけれども、じっくりと考える期間はこの意見聴取の段階で私はもう終わったと思いますし、産業界もすでにそういう具体的な反対ののろしを上げてきておりますし、自民党におきましても産業界と全く一体のそういう動きがございますし、そうなってきますと、やはりここでじっくりと考えておられるということよりも何らかのそういう姿勢を示していただいて、少なくとも最低限その試案を盛れるようにひとつ御努力をしていただきたいと思うわけです。  それで、以下企業分割の問題とか原価公表の問題等についてさらにお聞きしたいと思っておりますが、この企業分割の問題につきましては、政府・与党あるいは産業界内部におきまして、商法の関連という法技術上の理由を前面に出してこれを見送ろうという空気があるわけでございます。  しかし、この問題につきましては、御承知のように企業分割というものは種々の方法があるわけですが、一つは営業の一部譲渡であり、ということは、既存の会社に営業の一部を譲り渡すということ、あるいは新会社を設立してそこに営業の一部を譲り渡すということが含まれておるわけです。第二は、会社を分割して新たに二つの法人格をつくるということ。このいずれも企業分割ということで言えるんじゃないかと思うわけでございます。  そこで、この独占禁止法と商法の関連という点からいきますと、営業の一部譲渡であろうと会社分割たるとを問わず、公益目的実現のために行われるものでありますから、株主総会の特別決議を要しないことは当然の事柄であります。現実に、現行独占禁止法第七条の排除措置は、株主総会の決議いかんにかかわらず実行されるべきものであることは異論がないはずであろうかと思いますが、この企業分割命令を受けた企業が不服の場合には訴訟で争うこともできますし、かつ債権者、株主の利益が不当に害されることのないよう審判手続を整備するということも、立法論としては不可能なことではないわけであります。  そこで、私が思いますのは、商法との関連といういわゆる克服し得る法技術上の努力をせずに、それを理由にして企業分割全体を見送ってしまうという動きに対しては、私たちとしては断固反対いたしておるわけでございます。この点につきまして、委員長並びに大臣はどのようにお考えでございますか。
  100. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 会社分割——一部譲渡は、これは問題ありません。一部譲渡についてはやはり特則はつけなきゃなりませんから、商法に書いてあるとおりの手続でないことは言うまでもありません。で、会社分割につきましても、仮に商法の規定がつくられたといたしましても、そのとおりの手続でやらないことは明らかであります。つまり自発的に会社分割を行う場合と、それから行政命令、審決によって行われる場合とでは違うわけでございますから、そういう観点から申しますと、もし法務当局の御理解が得られるならば、商法そのものに規定する、しないは別として、独禁法の中でそういう行政命令による会社分割の規定を設けることが絶対に不可能と言えるかどうか、こういう点については私たちはいろいろ確かめさせております。きょうの法務委員会でのやりとりを私どもの事務当局の者も聞いておりましたが、明確にだめだという答えは出してないようであります。商法改正も含めて、それはだめだというふうに言い切っておられるわけじゃない。だから、それはもっといろいろ突き詰めて考えた上でなければ結論は出せない、そう簡単にお答えはできないということは言っておられます。そういう観点から言うと、こちらの側としては、どうせ普通の方法によるのじゃないのだから、それならば独禁法の中に入れることは不可能とは言えないのではないかと思いますが、ただしこの辺、大変むずかしい議論でありまして、法務省には法務省の立場があって、なかなか簡単にうんと言えない事情があることはわかります。しかし、その点はだめだと決めてはっきりおっしゃっているわけでもないし、私どもとしては、やりようによって何か可能な方法があるのではないか、こう考えておるわけでありまして、決して私の方でみずから断念したということを正式に申し上げているつもりはありません。
  101. 河本敏夫

    河本国務大臣 独占禁止法の具体的な問題点につきましては、これは御案内のように、内閣では総理府が中心になりまして、いま懸命に作業を進めておるところでございます。問題点もいろいろあるようでございますが、現段階において私から申し上げるのは適当でないと思いますので、控えさせていただきます。
  102. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣のお考えというものについてお聞きしたい、このように思っておりますが、こう言ってもあなたはまたお答えにならぬかと思いますので、後でまだまとめて御答弁していただこうと思います。  それから、原価公表につきましては、私たちは、少なくとも今日の市場支配的な巨大企業というものが適切かつ公正な企業行動及び市場成果を達成しているかどうかを社会的な批判にさらして、消費者主権の回復を目指す、そういう経済の民主化を達成する意味においては、欠くことのできない政策手段であろうと考えております。政府・自民党、産業界の反対の主張は、独占禁止法の論理に反するとか、技術上の難点とか、原価は資本主義の聖域とかを理由としておられるわけです。しかしながら、原価公表というものは、巨大企業支配体制によって崩れ去った市場機構に経済的公正を実現する新しい独占禁止法の理念に合致するものであると私ども考えておりますし、技術上のそういう難点は、海外諸国動向について調査しましても克服できるものでありますし、原価というものが資本主義の聖域たり得ないことは、これはもう国民すべてが認めておるところであります。そういう点、この原価の公表というものについて、いま非常にこういう反対が強いわけでありますが、公取委員長といたしましてはどのようにお考えでございますか。
  103. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 原価公表は、その目的ははっきりさせておりますが、日本の業界における高度の寡占、通常の寡占を通り越したもっと非常に高度の寡占業界において——全業種ではありません、いまの段階ではまだ一部でありますが、一部で平行行為が行われる。平行行為が行われて、つまりわかりやすく言えば、いわば証拠のつかめないカルテルだ、こうみんなに見られるようなものであります。     〔森下委員長代理退席、田中(六)委員長代理着席〕 それに対する対策が欠けているので、ほかにいろいろ方法があるかもしらぬけれども、原価公表というのも一つの有力な手段ではないかと思って出したわけでございます。  おっしゃるとおり、いまの時代において原価が完全な企業秘密であるとは私は思いません。それは少しためにする議論ではないかと思う。つまり、原価を公表して、そして外国企業との競争力が落ちるとかいうような考え方は、少し私はいただけないと思うのです。しかし、そういう反対論が中心であります。つまり、原価は企業の秘密である、またこれを公表することは何の利益もない、害あって益なしということでありますが、私どもはそうは考えておりません。ただし、その後私ども研究いたしまして、原価公表そのものずばりでなくとも、より有効な手段があれば、それはいま私申しませんが、より有効な手段があってそういう平行行為を規制する、平行行為を抑制するという目的に適合するものがあれば、それは振りかえてもいいとは思っております。つまり、原価というものを単品原価というふうにとらえるならば、これはかえって非常に煩わしいわりに効果が少ない場合もある。したがって、もう少し一括して、いかにして何ゆえにその価格がそれだけ上昇し、しかもその結果がそろっているのかということが——それはもちろん各社は説明しませんけれども、それらの説明によって外部の者からも理解できるような方法があれば、それでも結構である。原価公表そのものにこだわりませんけれども、効果においてそれよりすぐれたものがあれば、そちらの方でもいいというふうに考えておる次第でございます。
  104. 近江巳記夫

    ○近江委員 効果が上がれば、振りかえの手段があればそれでもいい、そうした御答弁があったわけでございますが、たとえば具体的にそれはどういうような方法があるのでございましょうか。一例をお聞かせいただきたいと思います。
  105. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いまここで申し上げるのは適当ではないかと思うのですけれども、私も前にそういうことをほかで申したこともありますから、一つの例としては、一つ一つの種類ごとの原価ではなくて、総合的な原価を中心にして、総合的にその品物の種類の全部について、その支出の内容それから収入面、収支にわたってその変化を明らかにする、いまの段階ではその程度に申し上げておいた方がいいかと思いますが、実は収入面に値段とつながる面がある場合があるのです。ですから大ざっぱに申せば、一種の収支のディスクロージャーですけれども、いわゆるいまの有価証券報告書におけるディスクロージャーとは違ったタイプである、似てはいるけれども相当違ったものを求める。株主保護の立場と違いますから、そういう点ではいささか違ったものが考えられるのではないか。これは一つの例証として申し上げるのですが、それは単品原価をそのまま公表するというだけではもともと足らなかったわけでございます。そういう意思ではありません。ただ単品原価を出すだけでは何のことかわかりませんから、ちゃんとそれにいろいろな注釈がつくということが実は裏にあったわけでございます。それをさらに進めていきますと、いまいろいろ私が申したようなことをもっと詰めて考えていけば、その方がむしろわかりやすいし、また書く方にとっても、説明する方にとっても一貫性が貫かれ、同じスタイルか貫かれれば——うそはうそでばれてしまいますから、私の方でもちろん全然見ないわけじゃありません。見た上でまあまあ差し支えないことであれば、それを何らかの方法で公開させる、あるいは公開するというふうな考え方がございますが、これはいまの段階で私が申していいかどうかわかりませんけれども、原価公表そのものにとらわれなくても、同じ目的が有効に達成されればいいというふうに考えておる次第でございます。
  106. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間がございますと、さらにこうした問題についてお聞きしたいと思っておるのですが、次にいきたいと思います。  それから、価格の引き下げ命令につきまして、これは私、昨年の予算委員会においても申しましたが、やみカルテルの横行によって価格がつり上げられそのままになっておる、国民が大変な被害を受けておる、こういうことで、委員長も、そうした悪徳企業については告発もしていく、そうした姿勢をお示しになったわけでございますが、国民としましても非常にこの点はみんな不満があるわけでございます。ところが、政府・自民党や産業界は、価格の引き下げ命令は価格の統制である、この価格引き下げ命令につきましてそうした見解をお持ちのように私は聞いておるわけでございます。  ところが、この価格の引き下げ命令の基本的な性格というものは、競争価格を形成するための誘導政策であるわけでございます。また、この価格引き下げ命令は、直接消費者の利益を確保するものでありまして、これは絶対に見送ることのできない課題であろうかと思います。この点につきまして、公取委員長の御見解また御決意をひとつお聞きしたいと思います。
  107. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 価格の引き下げ命令、簡単にそう言ってしまっていいと思いますが、それは全くいまおっしゃられたとおりであります。ただ、御承知のように公正取引委員会は競争を維持、促進する立場にある、それが価格に介入するというのは筋違いじゃないか、こういう反対論がございますが、私はいまの段階で申し上げることができるのは、少なくとも違法行為によってつくられた価格を多少どうこうするといっても、それは統制経済というものとは全く違う性格である。違法行為の是正の手段であるというふうに考えれば、統制ということとは違うじゃないかということが一つ。  それから、もう一点は、つくられたそのカルテル価格ですね、これは違法行為によってつくられた価格でございます。これにタッチしてはいかぬ、つまりそれに公取は手を触れてはならないということになると、おかしな言い方ですが、まるでカルテル価格はアンタッチャブルである、こうなりますね。カルテル価格が一つの正義みたいな、そんなばかなことがあってはならぬ。カルテル価格をそのまま存置しなければならぬという要請はどこにもないわけですし、またむしろ協定を破棄する結果としてその価格も破棄されなければ何にもならぬわけでございますから、その点だけは認めてもらえていいのじゃないかというふうに私は思います。ですから、カルテル価格はさわっちゃいけないんだというのはちょっと話としておかしいのじゃないかという感じは持っております。ただ、こういうことを私が申し上げるとまたいろいろ反発を買うかもしれませんが、それだけは皆さんどなたも異論がない、異論を述べる性質のものじゃないのじゃないか。あとどうするかという方法論については、いろいろな御意見があるということは十分わかります。その点だけは私、申し上げておきます。
  108. 近江巳記夫

    ○近江委員 公取委員長のおっしゃることは全くそのとおりだと思います。ぜひともこれを改正案として実現ができるように、委員長もがんばっていただきたいと思いますし、また私どもも御協力できる点におきましてはできる限り力を合わせてがんばっていきたいと思っております。  こうした独禁法の改正問題につきましては、時間があれば本当に聞きたいわけでございますが、もう時間がないのは非常に残念でございます。いずれにしましても、この問題につきましては、大幅後退、骨抜きのそういう圧力というものは一日一日と強くなってきておりますし、ひとつ公取委員長、がんばっていただきたいと思います。  それから、時間の関係で本当にはしょってお聞きしますが、通産大臣にお聞きいたします。  問題は変わりますが、ガソリンの無鉛化対策問題でございます。この無鉛化を円滑に推進していくにはステッカーの張りつけがかぎである。通産大臣の無鉛化推進についての談話があるわけでございますが、ステッカーを張っておる車は三二%足らずであります。これで円滑にいけるかどうかという問題でございますが、五十二年の四月の完全無鉛化の時期については変更はございませんか。確認をしておきます。
  109. 大薗英夫

    ○大薗政府委員 お答えを申し上げます。  ステッカーの貼付状況でございますが、二月一日現在で調査をいたしまして現在七五%くらいになっております。まだ張ってない車が二五%あるわけでございますけれども、これらの未貼付車につきましては、今後とも自動車メーカー等を指導いたしまして貼付の促進を図っていきたい、このように考えております。  なお、完全無鉛化の時期でございますけれども、現在環境庁におきまして大気中の鉛の環境基準の検討をされているところでございます。これらの環境基準の決定の状況、あるいは現在の五百万台のいわゆる無鉛化に対する対策ができてない未対策の農業機械がございますが、これらの問題がございますので、環境基準の推移あるいは農業機械についての処理、こういうふうなことを見きわめながら今後の完全無鉛化の時期は決定をしてまいりたい、このように考えております。
  110. 近江巳記夫

    ○近江委員 だけれども、五十二年四月に完全無鉛化をするということをおっしゃっているわけでしょう。それについてはどうなんですか。
  111. 大薗英夫

    ○大薗政府委員 完全無鉛化の時期につきましては、産業構造審議会の中に自動車公害対策委員会というものがございまして、しばらく前に五十二年四月をめどにして完全無鉛化の方向で考えるという御答申をいただいております。したがいまして、そのような方針を私ども踏まえまして、先ほど申し上げましたような諸要素も勘案しながら、今後の完全無鉛化の時期を最終的に決定をいたしたい、このように考えているわけでございます。
  112. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣は、その答申にある五十二年四月に向かって、このときに完全無鉛化を実現するように努力されますか。
  113. 河本敏夫

    河本国務大臣 実情はいま政府委員が申し上げたとおりでございますが、しかしその目標に向かって努力をいたします。
  114. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間の関係で非常に簡単な質問になって私自身も非常に困っておりますが、ポイントをひとつお答えいただきたいと思います。  一つは、大学卒業者に対する採用取り消し問題でございます。前途ある学生たちにこれほどショックを与えた事件は私はないと思うのです。特に通産大臣は、大臣就任の直前まで会社の経営者でおられたわけでございますが、この種の問題は経済社会情勢の見通しの誤りあるいは人事管理の無計画さ、経営者として失格に値するのではないか、私はこのように思うわけでございます。この問題につきまして、労働省におきましては悪質企業に警告を発するとともに、企業名を公表することも考えておるというようなことも聞いたことがあるわけですが、この所管省としての通産省としては、こういうような企業に対してどういう処置をおとりになられるつもりですか。これはいわゆる人権擁護上あるいは民事上あるいは労働基準法上種々の問題があろうかと私は思うのです。期待権の侵害であり、損害賠償請求の対象にもなり得ると私は思うわけです。こういう悪質な企業について、今後どういう処置をお考えになっておられますか。率直にひとつお答えいただきたいと思います。
  115. 河本敏夫

    河本国務大臣 御指摘のような企業が最近相当あるということは私も承知しております。経済事情が昨年の年末以降激変したとはいえ、しかしながら一たん採用を内定したものを取り消すというようなことは、はなはだ私も遺憾であると思います。労働省におかれましても実情を調査しておられると思いますが、通産省でも実情を至急調査をしたい、かように考えております。
  116. 近江巳記夫

    ○近江委員 ここで、大臣も時間がございませんし、私も終わらなければならぬ時間でございますので終わりますけれども、調査をするということをおっしゃっておられることはわかるわけですが、そういう企業はたくさんあることはもうわかっておるわけでございます。そこで、処置をなさる上についてのはっきりとした調査であろうかと思いますが、いずれにしても、労働省もこうした処置についての考え方を明らかにしておるわけです。通産省としては、どういう処置をとられるわけですか。たとえば、そういう悪徳企業を呼んでしかるとか、いろいろな方法があろうかと思うのですが、こういう企業のモラルという問題につきまして、少なくとも通産大臣としてはどうされるお考えでございますか。こういう問題を放置されますか、許しますか。
  117. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、これは大変遺憾なことでございまして、これまでそういう企業が若干出ておりますが、あるいはもう少し出てくるのではないか、こういう点も心配されますので、全企業における実情等を至急に調査をして、その上で、どうすべきか、どういう注意を喚起すべきかというようなことについて検討したいと思います。
  118. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう私、終わりたいと思うのですが、いまから調査すると言ったって、学生はもう卒業を目前にして、いまからぼつぼつまた出てくるだろうということではもう遅いわけですよ。ですから、調査をするという段階ではなくして、出ておるのは確かなんですから、全企業に対して通達を通産大臣名で出すとか、何らかのそういう歯どめといいますか、そういうものについて、第一弾、第二弾というような次々の対策をお考えになるべきだと思うのです。その点、どういう具体的なことをお考えですか。
  119. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま具体的にどうするということについて、まだ申し上げる準備もできておりませんが、至急に調査をいたしまして、何らかの措置をとるようにいたします。
  120. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間がありませんから終わりますが、その何らかの措置というのをひとつ早くやっていただきたいと思うのです。少なくとも企業に対して通達を即刻出すとか、何らかの歯どめをかけていかないと、ますますこういう問題が波及してくると私は思います。この点を強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  121. 田中六助

    田中(六)委員長代理 次回は、来る十四日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十三分散会