○川俣議員 私は、ただいま議題となりました
日本社会党提案の
金属鉱業等年金基金法案について、提案者を代表して、提案の理由及びその内容の概要を御説明申し上げます。
これまでの
わが国の鉱業政策は、
わが国の非鉄金属資源産業の国際競争力強化のために体質改善を進め、低廉かつ安定的に鉱物資源の供給体制を四確立することに目的が置かれてきました。このため、国内鉱山
部門の徹底したスクラップ・ビルド政策が進められるとともに、製錬所の臨海大型化立地、海外資源の開発等が積極的に推進されてきたのであります。
この結果、たとえば鉱物資源の中心をなす銅で見ますと、国内需要は
昭和四十五年度の八十二万八千トンに対し、
昭和四十八年度の百十九万四千トンに増大し、これに対応して電気銅の製錬
能力は増強され、海外からの鉱石、地金の輸入も急増したのでありますが、国内鉱山の生産
能力は横ばいに推移し、自給率は四十五年度の一四%に対し、四十八年度は九%と大きく低下することになったのであります。この間、数多くの鉱山がスクラップされ、鉱山労働者はちまたに放り出されたことは言うまでもありません。
こうした鉱業政策が推進されたにもかかわらず、鉱業政策の基本的課題である需給と価格の安定は一向に解決されず、むしろ近年における需給の不均衡拡大、価格の大幅低落の中で、その不安定性が一層強まっているのであります。そのしわ寄せが、国内鉱山のスクラップ化と労働者の悪化となってあらわれているのであります。
国内鉱山と労働者の
現状を見ますと、鉱物資源需要の目覚ましい増大にもかかわらず、鉱山及び労働者は急激に減少しているのであります。鉱山の休閉山は、鉱量の枯渇が原因になっているものもありますが、その多くは、鉱産物価格がLME(ロンドン金属取引所)による海外相場によって左右されているため、国内鉱山の生産コストでは採算ベースに乗らなくなって休閉山に至っているのであります。そうした中で、若年労働力の確保が困難となり、鉱山労働者の平均年令は四十歳と高齢化しているのであります。
しかし、石油危機以降の国際資源情勢を見ますならば、資源は有限であるという性格から、開発途上国を初めとして、資源保有国における資源ナショナリズムが高まってきており、国内資源の見通しが重要な政策課題となってきているのであります。
わが国にはベースメタルといわれる銅、鉛、亜鉛など鉱床が多く存在していることが確認されており、経済ベースから休閉山が進み開発が見捨てられているのが現実であります。
国内鉱山は、最も安定した供給源であり、さらに備蓄的性格があり、したがって国内において一定量を確保することは、資源政策としてきわめて重要な課題であります。これまでの経済性のみの観点に立った政策から大きく転換し、長期的視野に立った国内鉱山の維持発展と、その裏づけとなる労働力の安定確保はきわめて重要な問題であります。
これまでも、鉱山労働
対策は、鉱業政策の重要な柱として認識され、国会においても
昭和四十八年三月二十九日の衆議院商工
委員会において「鉱山における労働力の確保を図るため、鉱山労働者年金制度の創設を図ること」との決議がなされているのであります。
また、同じ地下資源である石炭鉱業では、
昭和四十二年十月、石炭年金基金法が制定され、同法に基づき四十七年十月より年金給付が開始されております。
以上、
わが国鉱山の
現状から国内鉱山の維持のため労働力確保の重要性について申し述べましたが、同時にこの
金属鉱業等年金基金法案は国会決議の趣旨に基づくものであり、そうした
立場から本法案を作成した次第であります。次に、本法案の概要について御説明申し上げます。
第一に、この法案の目的は、金属鉱業等の労働者の老齢または
死亡について必要な給付を行うことにより金属鉱業等労働者及びその遺族の
生活安定と
福祉の向上に寄与することとしております。
第二は、金属鉱業等の事業を行う厚生年金保険の適用事業場の事業主は、この法律に基づいて全国を通じて
一つの基金を設立しなければならないこととしております。
第三に、基金に関する必要な事項については、定款をもって定めることとし、定款の変更は
厚生大臣の認可を受けなければ効力を生じないものとしております。
第四は、この基金は、厚生年金の上積み給付とし、定款において、年金額、受給資格期間、支給開始
年齢、その他年金の支給に関する必要な事項を定めることとしております。
第五に、基金に要する費用は、会員の掛金及び国の補助によってまかなうこととしております。その他、必要な事項を規定しております。次に、本法案に基づく金属鉱業等年金基金の行う給付に関しましては、定款で定めることとなっておりますが、その
構想につきまして申し述べたいと存じます。
まず、年金給付の種類ですが、老齢年金と遺族年金の二種類とし、老齢年金は坑内員老齢年金と坑外員老齢年金の二本立てとすることとし、給付の支給期日及び支払い期日、給付制限等につきましては厚生年金保険法の例によることといたします。
第二に、老齢年金の坑内員老齢年金につきましては、坑内員であった期間が二十年以上である者が五十歳に達した以降に退職したとき、坑内員期間二十年以上の坑内員もしくは坑外員が五十五歳に達したとき、または坑内員が五十五歳に達した後に坑内員期間が二十年に至ったときのいずれかに該当するときに支給を開始し、その者が
死亡するまで支給することとしております。
前述の坑内員老齢年金の受給資格期間の計算上、基金発足前の坑内員勤務期間は最高十五年を限度とし、基金発足の日において五十五歳を超える者にあっては最高十八年を限度として通算するものとします。
この結果、坑内員老齢年金を受けるには、基金発足後の坑内員期間が最低五年、基金発足の日において五十五歳を超える者にあっては最低二年は必要ということになります。
坑内員老齢年金の額は十二万円とし、坑内員期間が二十年を超えるときは一年につき六千円を加えた金額とします。ただし、過去勤務期間を有する者については、その通算される過去勤務期間一年につき三千円を減じた額とします。
次に、坑外員老齢年金につきましては、坑外員期間が二十年以上である者、または坑内員期間と坑外員期間とを合算した期間が二十年以上である坑内員または坑外員が六十歳(女子たる坑外員にあっては五十五歳)に達したとき、または坑内員もしくは、坑外員が六十歳(女子たる坑外員にあっては五十五歳)に達した後に坑外員期間が二十年または坑外員期間と坑内員期間とを合算した期間が二十年に至ったときのいずれかに該当するときに支給を開始し、その者が
死亡するまで支給することとしております。
この坑外員老齢年金の受給資格期間の計算上、基金発足前の過去勤務期間の取り扱いについては坑内員老齢年金の場合と同様とすることにしております。
坑外員老齢年金の額は八万四千円とし、坑外員期間または坑内員期間とを合算した期間が二十年を超えるときは、一年につき四千二百円を加えた金額とします。ただし、過去勤務期間を有する者については、通算される過去勤務期間一年につき二千百円を減じた額とします。
第三に、遺族年金につきましては、坑内員期間もしくは坑外員期間または、これらの期間を合算した期間が二十年以上である者が
死亡した場合には、その遺族に対し遺族年金を支給することとし、遺族年金の額は、
死亡した者の受ける坑内員老齢年金または坑外員老齢年金の額の二分の一に相当する金額とすることといたしております。
以上が金属鉱業等年金基金の行う給付に関する
構想であります。
本
金属鉱業等年金基金法案につき何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同賜らんことをお願い申し上げます。
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