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田中(美)
委員 研究会で慎重に検討していらっしゃるということは結構なことですけれ
ども、いつまでたっても慎重に検討しているのではどうしようもないし、いままさに速やかに
——これは、ことしが国際婦人年であるからやらなければという問題ではないわけですね。しかし、余りにも速やかでない、余りにも慎重にごゆっくりであるがために、やはり国連レベルで国際婦人年というものが定められて、これをより早く進めようではないかという意味では、ことしは、慎重に慎重に、検討検討ということではなくて、より速やかに産前休暇というものを禁止条項にし、そして、これを長くしていくということのために全力を挙げていただきたいというふうに思うわけです。
特に最近、産前の婦人の妊娠五ヵ月のところの疲労度を一〇〇としますと、九ヵ月の疲労度というのは二二〇というふうに言われているわけです。八ヵ月までの赤ちゃんの大きさというものが、最後の二ヵ月で約倍になるというふうに言うわけですから、そのときの婦人の体力というのは、まさにぎりぎりのところで生きているわけですね。そういう婦人を働かなければならないという状態に追い込めているということは、やはり
労働基準法できっちりと禁止条項になっていないということが、
労使関係の労の方が弱いところではどうしても産前働かなければならないということに追い込められているわけですね。ですから、そこをやはり禁止していくということは、いま緊急の問題だというふうに思いますので、その点をぜひことしは、何とかしてことしじゅうにこれをやっていただきたいというふうに思います。
特に、妊産婦死亡率というのが世界一だというふうに、この間私は厚生
大臣に申しましたら、世界一ではない、これは発達した、WHOに数字が出ている国の中で第一なんだ、こういうふうに言われましたけれ
ども、私自身は日本は発達した
資本主義国と思っておりますので、未開発国までを一緒にして
考えておりません。この四十五ヵ国近くWHOで統計の出ている中で妊産婦の死亡率が日本が最高であるということを
考えてみましても、これはどう
考えても女の問題だけでなくて、男性の皆さん
たちに、十分に
政府として
考えていただきたいわけです。
きょうは
大臣がいなくて非常に残念ですけれ
ども、
中山さんのようなハンサムの……(笑声)これは一言多いのですけれ
ども……(笑声)おりますので、その点は
大臣を揺すぶりましてでもこうした、それこそ本当に揺すってでも、何とかしてこの日本の婦人の妊産婦の死亡率というものを、こんなに世界に恥ずかしいものにしたくない。ことしは、メキシコである国際婦人
会議には日本からたくさんの婦人が参加します。そこで日本は非常に未開発国からは期待もされておりますし、東南アジアの各国からは、いまも私にもあちこちから手紙が来ております。そして非常に日本の婦人に期待されておるときに、この日本が妊産婦の死亡率が最高なんだと言わなければならないということは、これは本当に日本にとって恥だというふうに私は思うわけです。そのために、全力を挙げて
——これをどうしたらいいかということは、やはりたくさんのことはありますけれ
ども、
労働基準法の母体保護のところの改革というものを、もう三十年になるわけですから、何としてもことし大幅に見直す
——まあ、三木内閣は見直し内閣などというふうにジャーナリストの中でも言われておりますけれ
ども、見直すだけではなくて、具体的なめどを立てていただきたいというふうに思います。
それから、産後の休暇ですけれ
ども、いま厚生省では母乳を非常に勧めているわけです。産後、少なくとも三ヵ月は母乳をやってほしいということを言っているわけです。これは乳業の
企業の誇大宣伝というものが、むしろ母乳よりも粉乳の方が栄養がいいのだというふうな感じを婦人に与えまして、年々母乳で子供を育てるということがなくなってきているわけですね。この弊害がいま非常に大きくなって、最近の乳業
会社の広告な
ども、三ヵ月、母乳が足らない場合には粉乳をというふうな広告な
ども多少
——多少改善されている面はあるわけですけれ
ども、人工栄養で育った赤ちゃんというのは、母乳で育った赤ちゃんの約四倍の死亡率というふうな数が出ているわけですね。母乳バンクをつくろうというふうな厚生省の
意見な
ども出ています。そういう中で見ますと、やはり三ヵ月間母乳を飲ませようというふうに思いますと、十二週間というものは要るわけです。この十二週間というのは
——イタリアなどではもう産後十二週間という休暇をとっているわけですね。ILOの勧告の九十五号では、最低どんなに少なくてもやはり八週間なり七週間ということで、どこの国でも産後八週間というのはもう世界の常識になっているわけですね。そういうことを見た場合に、日本が六週間になっているということは大変な問題ではないかと思います。
そういう中で、これは朝日新聞に昨年の十月に出た大村清さんという産婦人科医の方が書いているわけですけれ
ども、「職種を問わず六週間休んだだけで出勤すると、まず例外なく十日から半月ぐらいで強い疲労があり、母乳が人工栄養に変わっている」、ということは、六週間で職場に復帰すればほとんど母乳がとまるということなわけですね。これは非常に微妙ですので、精神的なショックを受けただけでも母乳がとまるということは森山さんも十分御存じだと思いますけれ
ども、そういうときに母乳バンクだとかなんとかいうことがいかに
労働基準法と矛盾しているか。そうして
田中厚生
大臣は、
労働大臣が決めることなので、自分としてははっきりとは言えないけれ
ども、全力を挙げて
労働大臣と
基準局長、森山
局長とも手を組んでこの産前産後の延長に努力をしたいということを言っているわけですので、それを受けてというのは逆なことでして、
労働省の方がこれを積極的に進めていただきたいというふうに思うわけです。
これは千葉大の前原澄子
先生がやはり言っているわけですけれ
ども、「勤労婦人の産後の疲労度は、産後六週から十週にかけてもっともひどく、疲労を訴える割合もこれまで婦人
労働で一番重いといわれた農繁期の主婦より多い」ということを言っているわけですね。こういうことを
考えますと、慎重に検討するのではもう間に合わないというふうに思うわけです。
それで、これはつい最近の
調査ですけれ
ども、慶応病院の看護婦さん
たちの母性保護の
調査を私は聞いてきたわけですけれ
ども、これは昭和三十八年から四十九年の十月まで四回
調査をしたわけです。この中で妊娠した看護婦さんが七十九名、妊娠回数は延べ九十八回、一人が二回とか産んでますから、九十八回の出産というものがあったわけですね。この中で、出産のときの異常、それから妊娠中の異常、それから生まれた赤ちゃんの異常、こういうものが全くなく、母子ともに健康だというのは、九十八回のお産の中で母子ともに正常なのはわずか三人という数字が出ているわけです。これは
中山さん、ただごとではないですよ。九十八回のお産の中に母子ともに正常なのが三人しかいなかった。これはただ
一つの慶応病院の労組の
調査です。しかし、これは大体見まして、特に看護婦さんはひどいわけですけれ
ども、大体大同小異だというふうに思うのです。そういうのを
考えたときに、看護婦さん自身の
労働がきついとか、それから保母さんの職業病が多いとかということも非常に問題ですけれ
ども、九十八回のお産の中で母子ともに健全なのが三人などというデータがあるということは、これは婦人と子供の恐るべき健康破壊が出ているという大きな実証だというふうに思うわけです。
これについての御
意見をもう一度森山さんと次官から、次官は
大臣の代理として、両方から御
意見を伺いたいと思います。