○梶谷
説明員 労働省といたしましては、先ほど
大臣から申し上げましたように、
昭和三十一年ごろから、いろいろとそれなりの
対策をとってまいっておるわけでございます。
まず
昭和三十一年におきましては、
クロムの障害に着目いたしまして、まず健康診断を一般の健康診断に加えてしっかりやるという
意味で、いわゆる特殊健診という形におきまして、
行政指導によりまして、監督
指導によってこれを勧奨するという形で始めたわけでございますが、三十三年に至りまして、それだけでは足りないという認識によりまして、設備規制、
法律によるものではございませんが、同じく
行政指導によりまして設備の改善の
指導を始めたわけでございます。それから同じその三十三年の年に、環境改善の
基本はやはり職場の環境測定である、こういうことでございますので、環境測定のための
指導を始めたわけでございますが、何分、環境測定と申しますのは、一般の大気
汚染等の
公害測定と違いまして、職場の中で
労働者の労働衛生工学的な面、
労働者の健康というものに着目をいたしながら測定をしなければならない、こういうような
意味合いにおきまして、大変むずかしい
技術がございます。そういう
意味における、いかなる測定点で、どういう機械を使って測定をしたらよろしいか、こういうような
意味における
一つの
基準をつくりまして、
労働大臣の名前でこれを公表するというような措置をしたわけでございます。
その後、特に監督
指導につきまして重点対象にしぼりましてやってきたわけでございますが、この間におきまして、たとえば
昭和三十九年ごろから約二、三年の間になると思いますが、問題になっております
東京の日化
小松川工場に対しまして、労働省のいわゆる外郭団体でございますが、中央労働災害防止協会の衛生検査センターというところの久保田博士に
お願いをいたしまして、
小松川工場の衛生改善のための
指導をやっていただいております。まあ
昭和三十三年ころの
対策技術というのは、いまから
考えますと大変、幼稚でございまして、たとえば排気装置にいたしましても
技術的にまだまだの感がございましたが、このころになりますと、かなり
技術も進みまして、久保田博士によりまして、かなり環境は
小松川工場につきましては改善をされた、こういうような経緯がございます。ちなみにこの
小松川工場におきましては二億ないし三億円の設備投資を改善のために投じております。
それから、
昭和四十年から大体四十五、六年ころまでの間におきまして、監督
指導を一層強めるために、北海道の日電の栗山
工場でありますとか、先ほど触れました
小松川工場でありますとかというようなところを対象にいたしまして、衛生
指導特別事業場という指定をいたしまして、監督
指導に精を出したわけでございます。
それから、いろいろこういう経緯を踏まえ、経験を生かしまして、
昭和四十六年に至りまして、私
ども特化則と申しておりますが、労働省令で特定化学物質等障害予防規則というものを初めてここで制定いたしまして、従前から
行政指導でやっておりました健康診断でありますとか、あるいは設備規制の
関係を法定化いたしまして、そうこういたしますうちに例の肺がんの問題が北海道の栗山で起こりまして、多数、出ておるというようなことから、労働省から北海道労働
基準局を通じまして北大に委託をいたしまして、疫学
調査をやってもらったわけでございます。これが
昭和四十八年でございますが、その結論が出、
報告をいただいたのが四十九年の三月でございます。その後、これをもとにいたしまして、各種専門家の御
意見を承る、あるいは審議会の御
意見を承る、こういうようなことをいたしまして、先ほど申しました特化則の改正等に踏み切ったわけでございます。特化則の改正といたしましてはこの十月を予定しておりますが、そういうようなことで、いろいろ
対策には意を用いたつもりでございます。
ただ、先ほど先生が御
指摘ございましたように、何せ
対策技術の点におきまして、まあ三十年代においては特に不足するものがございましたし、私
どもの至らないというような点もございました。そういう点でおしかりをこうむることになったと思いますが、大体経緯を申し上げますと、以上のとおりでございます。