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1975-06-27 第75回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月二十七日(金曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 渡辺 惣蔵君    理事 田中  覚君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 藤本 孝雄君    理事 島本 虎三君 理事 土井たか子君    理事 木下 元二君       八田 貞義君    阿部喜男君       岩垂寿喜男君    角屋堅次郎君       岡本 富夫君    坂口  力君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       信澤  清君         環境庁企画調整         局環境保健部長 橋本 道夫君         環境庁自然保護         局長      柳瀬 孝吉君         環境庁水質保全         局長      大場 敏行君  委員外出席者         環境庁企画調整         局環境保健部保         健業務課長   竹中 浩治君         環境庁大気保全         局大気規制課長 鈴木  晃君         水産庁研究開発         部漁場保全課長 山内 静夫君         運輸省港湾局管         理課長     服部 経治君         運輸省港湾局機         材課公害対策室         長       御巫 清泰君         海上保安庁水路         部測量課長   杉浦 邦朗君         気象庁予報部長 柿崎 英一君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 六月二十五日  五十一年度自動車排出ガス規制緩和に関する請  願(原健三郎紹介)(第四二五二号)  公害健康被害補償法改正等に関する請願(木  下元二君外一名紹介)(第四二五三号) 同月二十六日  五十三年度自動車排出ガス規制緩和に関する  請願外一件(藤本孝雄紹介)(第四四一六  号)  五十一年度自動車排出ガス規制緩和に関する請  願外一件(渡辺武三紹介)(第四四五七号)  公害健康被害補償法改正等に関する請願(田  中美智子紹介)(第四五六六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害対策並びに環境保全に関する件(大気汚染  及び水質汚濁対策等)      ————◇—————
  2. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阿部喜男君。
  3. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 水産庁お見えになっていますか。赤潮についてまず、お伺いしたいのです。もうずいぶん赤潮は論議し尽くされているように思うのですけれども日本の近海で赤潮が多発しておるところは、どういう地域ですか。それから世界的には、どういう地域赤潮が多発していますか。
  4. 山内静夫

    山内説明員 日本におきまして赤潮が多発している地域は、主として内湾であるとか、あるいは港湾の奥であるとか、水通しが比較的悪くて、なおかつ人口密度が高い、工場が多い、こういうような地帯。具体的に申しますと瀬戸内海、伊勢湾、東京湾、こういうようなところが多発地域である、こう考えております。  世界の問題については私、存じておりませんから、御勘弁願います。
  5. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それじゃ環境庁の方にお伺いしますが、いままで聞いたところでは、赤潮というのはいろいろな種類がある、多種多様だと言われておるのだけれども、私ども素人は、ただ多種多様ではなかなかわかりにくいので、どのくらいの種類があって、特に毒性の強いものはどういうものがあるのか、これは環境保全上お調べになっておると思いますので。
  6. 大場敏行

    大場政府委員 私も専門的な知見は持っておりませんが、いずれにしても赤潮原因というのは、窒素、燐を主体にした富栄養化現象というものが土台にあって、それにいろいろ降雨とかいう関係塩分濃度が下がったところに日照等があって、そういった外部的な要因あるいはビタミン類栄養物の添加、そういった外部的要因が引き金となって赤潮が起こっている、こういうようなことが一般的な知見でありますけれども、しかし、それでは具体的な赤潮についてどうだかということになりますと、かなりこれはまだ知見が行き届いていないというのが、残念ながら実態でございます。  有害な赤潮それから比較的漁業被害を及ぼさない赤潮というぐあいにありますけれども、それはプランクトン種類などによって左右されるのだろうと思うのですが、たとえば、ことし発生したような鞭毛藻類、そういったものは比較的漁業に対して重大な影響を与える赤潮の範疇に入るというふうに聞いております。
  7. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 赤潮発生原因をいろいろ想定されて言われておるのですが、発生原因はいろいろ聞いたのですよ。ただ、私がいま御質問申し上げたのは非常に多種多様にわたっておるということなんですよ。一体どのくらいの種類があるものなのか。その中で特に有害というよりも、有毒といわれるようなものはどういう積類があるのか。そのくらい環境庁研究しておるでしょう。
  8. 大場敏行

    大場政府委員 結局プランクトン種類によって、現在の知見では分類せざるを得ないのでありますけれども、おおむねそういう意味では二十数種類というぐあいに理解しております。  特に有害なプランクトンは何か、赤潮は何かというお尋ねでございますが、それが実はまだわかっていないところに、残念ながら問題があるようでございます。具体的な事実で申し上げますと、四十七年に起きました赤潮の場合は、海産ミドリムシということでございましたし、ことしの五月に発生いたしましたのは、先ほど申し上げました鞭毛藻類ということでございます。
  9. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 その鞭毛藻類の悪質な、いわゆる有害性プランクトンが、瀬戸内海は全面的ではありますけれども、特に別府湾で最近、多発しているというふうに聞いておりますが、これは水産庁の方、おわかりになりましょうか。
  10. 山内静夫

    山内説明員 別府湾赤潮問題につきましては、ことしの初めから、昨年に比べて非常に多発している、こう伺っているわけでございます。漁業関係被害につきましても、別府湾の湾の奥にある六つ漁協が漁獲してきております生の生きている魚も蓄養している最中におきまして、赤潮等によりまして斃死する、こういう被害を承っておるわけでございます。
  11. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そのほかに、たとえば海草類ですね、ワカメとかヒジキとかテングサ、それから余り回遊をしないサザエとかアワビとかいう魚介類ですね、こういうものも地域によっては全滅的な被害を受けていると聞いておりますが、そういう報告は上がっておりませんか。
  12. 山内静夫

    山内説明員 昨日、県に確かめた段階におきましては、海草類についてはさほどの被害は見られない、こういうような報告を受けているわけでございます。もっとも詳細につきましては現在、調査中、こういうことでございまして、わが方といたしましては、県の報告では海草類についてはさしたる被害はないであろう、こういうことを言っておるわけでございます。
  13. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それで、まだずっと赤潮が続いておるわけですから、被害の集約というのは困難だと思いますけれども、大体、今日時点で別府湾赤潮による漁業被害等はどのくらいの額になると見込まれておりますか。
  14. 山内静夫

    山内説明員 一般的に赤潮被害は、養殖中の  ハマチ等斃死、こういう場合には額のつかまえ方が非常に容易でございまして、被害額幾ら、こういうかっこうで即座に出てくるわけでございますが、漁船漁業の場合におきまして、蓄養中のものを斃死寸前になって売るとか、こういう場合に被害額の認定が非常にむずかしい。こういうことから現在、県当局が中心となりまして被害額調査中、こういうことでございます。
  15. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 赤潮で非常に弱った魚も売るということなんですけれども、この鞭毛藻類プランクトン毒性がある、こう言われておるのですが、そこで、斃死するとか、あるいは斃死しないまでもその寸前の魚、そのようなものは人体影響はないものでしょうか。
  16. 山内静夫

    山内説明員 斃死原因につきましては、まだ確たる理論は確立されておりませんが、現在までわかっている点につきましては、赤潮等で非常にプランクトンがえら等に詰まって窒息死をする、こういう定説があるわけでございます。その魚を二、三の人が試験場等でいろいろ試食しましたこともございますが、赤潮による斃死の魚につきましては、人体影響はない、こういうことを承っておりますが、まだ確たる科学的な根拠に基づいて影響がある、ない、こういうことではございませんで、現在までの知見では影響がないであろう、こういうことだと思います。
  17. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 毒性といっても、食べて人間が死ぬるような、そういう猛毒ではないと思うのですけれども、その種の魚をずっと永続的に食べて、たとえばPCBみたいな影響考えられないのかどうか。全然心配はないのか。それは斃死した魚を一匹か二匹ちょっと食べてみて、それでおなかが大変痛くなりましたとか、ひっくり返ったとか、そういうことはまずないでしょう。ないでしょうが、永続的にこんなに今日のごとく赤潮が続きますと、よかれあしかれ、その海域でとれた魚というのはプランクトン影響を受けていることは間違いない、赤潮影響を受けていることは間違いないわけですから、その赤潮影響を受けた魚を永続的に食用にして、人体影響がないかどうか、そういう点についての研究というのはまだ全然できていませんか。これは厚生省でしょうけれどもね。
  18. 山内静夫

    山内説明員 斃死した魚は一般的には市場には出しておりません。斃死した魚につきましての人体研究等につきましては、現在まだやっておりません。
  19. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 斃死したらわかりますね。斃死せぬものは斃死寸前寸前というと語弊がありますが、まだ生きている、こういう状況で、しかも非常に弱っていることは間違いないのですね。これは、漁民の方々がそうおっしゃっているのですからね。それから、生けすに生かしてある魚が影響を受けて非常に弱ってくる。そこで、あわてて市場に出さなければならなくなってきますね。それで市場に出すわけです。だから、斃死しておる、していないということは、必ずしも決定的な要素にはならない。弱っている魚というのは、斃死しなくても、プランクトン影響斃死方向に向かっておる魚ですね。同じ内容を持つのではないかという気がしますが、どうですか。
  20. 山内静夫

    山内説明員 現在までのところ、赤潮による魚類の被害等につきましては、先ほど申し上げましたように、えら等にプランクトンが詰まって呼吸困難、こういう物理的な問題が主として喧伝されているわけでございます。したがいまして、その具体的な詳しい研究はございませんが、現在までの知見では、人体に対する影響あるいに毒性はないであろう、こう考えているわけでございます。
  21. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そこで分けて聞くのですが、こういう言葉が使われるわけですね。魚に非常に有害な赤潮という言葉と、それからさっきの鞭毛藻類のように有毒なという言葉が使われるわけですね。魚に有害なという意味が、いま水産庁の方からお話のありましたように、えらに詰まって死ぬ、これは有害ということになりますね。魚の生息上有害なのですけれども有毒というのは意味が違ってくると思うのですね。そして、香川の岡市先生ですか、の説によると、非常に有毒プランクトン赤潮になっている場合がある。たとえば夜光性プランクトンなんかが赤潮になった場合、そういうものがあるというふうに聞いておるのです。したがって、有害と有毒を分けて、さっきお伺いしたのは、有毒というものがあるかどうかということをお伺いしたのですけれども、その点は水産庁にお伺いするのは酷なんですが、どうなんでしょうか。
  22. 山内静夫

    山内説明員 先般、赤潮問題につきまして、水産庁といたしましても各般の学者等の参集をお願いいたしまして、赤潮問題の研究会を二、三回やっているわけでございます。その席上におきまして、有害プランクトンとは何ぞや、こういう議論もございましたが、現在のところ、有害であるかどうか、いろいろ新聞には出ておりますが、確たる証拠はなくて、今後の研究課題である、こういうような方向で一応、会議の幕を閉じた、こういうことでございます。
  23. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それでは大体、結論が出ていないということですが、環境庁長官、どうですか。いま私が心配しておるのは、魚に有害で斃死窒息死するというふうなものは、そんなにというか、心配はしなければいかぬけれども人体被害については余り心配がないような気がするのですけれども、もし有毒プランクトンがあるとすれば、これは私は非常に問題が残ると思うのですが、こういう点について、長官、どうお考えになっていますか。
  24. 小沢辰男

    小沢国務大臣 赤潮問題については、まだいろいろな未分明、解明されていない点がありますので、先生のいままでの御質問でも多々ありましたが、きょうの御質問で、赤潮有毒性、それが人体にどういう影響を及ぼすかということは初めての御質問であると思います。いま承って、これはなかなか等閑視できないなという感じを受けましたので、いろいろな角度から取り上げて、よく試験研究機関に検討してもらいたい。私も早速、厚生省でやるべきか、私どもの方でやるべきか、あるいは水産庁なのか、人体に対する影響、食品ということになれば厚生省かもしれませんので、それぞれ検討してみまして、ひとつ安心のいくような調査研究を徹底したいと思います。
  25. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それでは、ひとつ長官に特にお願いをして、人体に有害であるかどうかということについて、なるべく早い時期に結論が出るような調査をお願いいたします。  そこで、この別府湾の今度の赤潮で、こういうことが言われておるのです。従来の赤潮というのは、海面から余り深くないところまでで、海底まではいってなかった場合が多い、大体浮いてくるわけですから。今回は非常に層が深いわけで、透明度ゼロという赤潮になっているらしいのですけれども、大体いまさっきお話があった瀬戸内海あるいはその他の港湾等発生しておる赤潮の厚みといいますか、どんなふうになっておりますか。
  26. 山内静夫

    山内説明員 一般的には表層が多いわけでございますが、現在までの知見では、大体表面から十メートルないし十五メートルくらいまで赤潮が及ぶのではないか、こういう説、これは事実でございます。
  27. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そこで赤潮の問題については、いろいろ長官おっしゃるように、今日まで解明できない問題が非常に多いわけでございますから、いまここで議論をしても直ちに対策にはなりませんので、十分な御研究をお願いいたします。  さて現実に、この赤潮発生によって、漁民漁場を失って公害を受けておるわけでございますので、その対策について水産庁の方にお伺いしたいのです。  まず第一点目に、せっかく生きのいい魚をとって、いかしに置いておくと、赤潮発生で、この魚が被害を受けて弱ってくる、あるいは斃死する。これは一般の養殖とほぼ似ているわけですね。たまたま生きのいいのをとってきたか、初めから養殖してあるかの違いです。そういう状況が起こっておるわけですので、それで地元漁民を保護する意味から、陸上水槽といいますか、そういうものをつくって生かしておく、赤潮被害から一応、捕獲した魚を守るというふうな水産庁施設というのですか、そういうものを考えられておるわけですか。
  28. 山内静夫

    山内説明員 赤潮対策関係事業といたしまして、先生御指摘のとおり赤潮が来た場合におきまして、活魚をいけている生けす等にすんでいる魚が絶滅をする、こういうことを避けるために、活魚槽というような形で陸上に持っていきまして、赤潮を退避させる、こういう施設につきましての補助事業は行っております。
  29. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 少し具体的になって恐縮なのですが、大分県の漁協のうちで、その陸上水槽というふうなものを設備しておるところが幾つぐらいございますか。
  30. 山内静夫

    山内説明員 現在、大分県の実績といたしまして、陸上活魚槽につきまして国の補助対象になっている数といたしましては、四十九年度までに二カ所、それから県単といたしまして一カ所、こう承っておるわけでございます。
  31. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それで現実には別府湾赤潮発生海域をめぐる漁協は、さっき六つあるとおっしゃったようでございますが、その六つのうちには幾つできておりますか。
  32. 山内静夫

    山内説明員 現在二カ所でございます。
  33. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 応急の策として、これらの六つのうち二カ所あるようでございますから、あとの四つの漁協から、そういうものをつくるように県当局を通じて水産庁の方に申請があれば、しかるべき措置がとれるものでございましょうか。
  34. 山内静夫

    山内説明員 とりたいと思っております。
  35. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 あれは補助は三分の一、三分の一、地元三分の一じゃなかったかという気がするのです。こういう事態ですが、何か水産庁の方で赤潮対策として、たとえば四分の三補助とか二分の一補助とか、そういうようなものを検討するわけにはまいりませんか。
  36. 山内静夫

    山内説明員 現在、赤潮関連のこの事業関係でございますが、大体、瀬戸内海赤潮対策関係といたしまして三分の一補助、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、現在の予算の体系におきまして大分県につきまして、これを四分の三とか、あるいは三分の二にする、こういうことはちょっと不可能ではないか、こう考えております。
  37. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 三分の一、三分の一で、県と国はそれでいいのですが、地元漁民の場合には、こういう状況で、後ほど申し上げますが、この海域での漁獲というのが非常に落ちて、二〇%とか三〇%に落ち込んでいるわけです。そこに三分の一の負担をせよといっても、なかなかその負担が困難なわけでございますので、振興法による融資とか、いろいろあると思うのですけれども、何かそれでも、もしどうしてもいまの法体系上困難だというなら、ほかに融資方法等、この陸上水槽を設置するに当たってのことが考えられておるわけでございますか。
  38. 山内静夫

    山内説明員 地元負担の三分の一の問題につきましては、県当局とよく相談いたしまして、できるだけ漁民負担のかからぬような方向で、できるだけの対応策考えていきたい、こう考えております。
  39. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それでまず、陸上水槽の問題につきましては、水産庁の非常に温かい思いやりで、私も安心をいたしました。  二点目に、沖合いで捕獲した魚を持って帰ってくる途中で、赤潮海域を通ってくる。これは北九州の若松湾の場合にも、山口県の漁協でこの問題がよく起こるのですけれども、そのためにせっかくの生きのいい魚が途中で弱ってくるという問題があるのです。仄聞するところでは、船の中で酸素補給か何かやると、生きのいいまま持って帰れるとか聞いているのですが、そういう方法があるのでございますか。
  40. 山内静夫

    山内説明員 現在、赤潮対策といたしまして、先ほど来申し上げております陸上活魚槽と別の問題といたしまして、酸素補給施設というものを船につけまして、そして赤潮海域を通る場合に酸素補給をいたしまして活魚が死なないように、こういう施設につきましても同様の補助をしているわけでございます。
  41. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大変、立ち入って恐縮ですが、その大きさで違うかどうかわかりませんが、酸素補給装置というものをもうちょっと説明していただいて、どのくらいの経費が必要なのか、標準でも結構ですが、わかっておれば、概略で結構ですよ、細かい数字は要りませんから。
  42. 山内静夫

    山内説明員 機械の内容は比較的簡単でございまして、海水のくみ上げ装置あるいは酸素ボンベ、こういうものによりまして、水槽を仕切りまして、そこで酸素を補給して魚を生かす、こういうかっこうになっておるわけでございます。  施設の金といたしましては、漁船の大小によって違いますが、一台、小は五万円から大は二十数万円、こういう事業費で船に取りつけることができるであろう、こう考えております。
  43. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それも要請があれば、やっていただけるということで、二点目の漁民対策ができたようでございますが、三点目に、さっきも赤潮の厚さといいますか、お伺いしたわけですけれども、やはり赤潮は何といっても海底まではなかなかいかない。底は透いておる。底はわりあいにきれいな水になっておるわけですから、したがって底をくぐってくる回遊魚が遊びに来るというのはおかしいのですが、海の魚のデパートなどと呼ばれる魚礁というのですか、そういうようなものを湾内に設置すれば、少し赤潮があっても、底の方を来る魚はやってくるのではないか。こういう考え方もあるのですが、たとえば別府湾のどこかの地域魚礁をつくるとかいうような計画が出されるとすれば、水産庁はそれについてどうお考えでございますか。
  44. 山内静夫

    山内説明員 魚礁の問題はいろいろ構造改善計画でやっておるわけでございます。別府湾の中の問題につきましての構造改善計画について、私自身、担当課が違いますから、ちょっとお答えしにくいわけでございますが、もちろんそういう問題につきまして、県当局から構造改善計画の中に盛り込んでくれば、検討の対象になる、こう考えております。
  45. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 どうしてもお役所の仕事ですから、構造改善赤潮対策といえば、おのずから変わってくるような気がするのですが、その辺をひとつ一本にまとめて、赤潮対策であろうとも構造改善の中で十分生かしていくというふうなシステムにしていただいて、いま幸い課長さんからお話がありましたが、県当局の方から要請があれば、ひとつこの点についても十分な配慮を願いたいと思います。よろしゅうございますか。
  46. 山内静夫

    山内説明員 関係部局と相談いたしまして、そのように配慮いたしたい、こう思っております。
  47. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それで、私の考えられるさしむきの別府湾赤潮対策は、そういうようなものだと思うのですが、そのほかに何か水産庁の方で、こういうことも考えられるというものがございましたら、参考のために知らしていただきたいのですけれども
  48. 山内静夫

    山内説明員 水産庁の行っております赤潮関係に対する対策でございますが、先ほど申し上げました二点以外に、赤潮関係につきましては、瀬戸内海各県にテレックス等を設置いたしまして、赤潮情報関係を各県に流し、これが速やに漁民に伝わるような方向赤潮対策考える、これが第一点でございます。これ以外の問題といたしまして、いろいろ原因があるにいたしましても、ヘドロ関係赤潮発生の一つの原因となっているのではないか、こういうことからヘドロ回収につきまして、公害を起こさないような方向で、現在、回収試験を行っているわけでございます。これ以外に、被害発生した場合におきましては、漁業共済制度の一環として赤潮共済赤潮特約関係で、被害が起きた場合の救済を図っていく、これが現在、水産庁のとっている具体的な施策でございます。
  49. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そこで、先ほどお話がありましたように、漁業被害については、まだ調査中で、明確でないようでございますけれども、あれは一昨年でございましたか、やはり瀬戸内海沿岸でいろいろ問題が起こったときに、県なども条例をつくって、たとえばお魚屋さんまで幾らかお金を貸す、大分の場合、十万円だったと思うのですけれども貸し付けをして、結果的には返済しなくてもいいというふうな措置をとったように思っておりますが、被害が明確になってくれば、どういう措置がとられるわけでございますか。
  50. 山内静夫

    山内説明員 現在、大分県におきましては、赤潮を含めまして公害関係原因者不明の問題につきましては、救済関係条例があるわけでございます。したがいまして、当然、今回の赤潮につきましても、被害額が確定した場合におきましては救済対象になる、こう考えております。
  51. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それでは水産庁の方、大変お忙しいところ来ていただきましたが、赤潮関係は大体以上です。ただ、あともう少し、いまのヘドロの関係もありますので、もし時間が許せば、おいでいただきたいと思います。  次の質問に移らせていただきますけれども、運輸省の方お見えになっておりますか。大分県の佐伯湾というところがございますけれども、興国人絹パルプがかねて廃液をたくさん出しまして、この海域は海上赤きに及ぶという状況になっておったわけですけれども、その後、いろいろ環境庁等のお骨折りがありまして、いまはかなり海水はきれいになってきたわけですけれども、しかし、海底に堆積しておるヘドロは物すごいものがあるというので、県の方でも、市と話し合いをしながらヘドロの除去をやりたいという計画があるようでございます。そこで、いろいろ参考になると思うのですが、まず、あれは何年前ですか、私も富士市の田子の浦のヘドロの回収を見たことがあるのですが、たしか河川まで大きいパイプで引っ張って、どろを揚げておったようでありますが、あの田子の浦のヘドロの回収は、どういう工法で行われたわけでございますか。
  52. 御巫清泰

    ○御巫説明員 田子の補のヘドロ回収、これは四十六年から始まっておりますが、やはり同じようなパルプ廃液に基づくヘドロの回収でございまして、普通のポンプ船を使用いたします。それでポンプ船で吸い上げましたヘドロをパイプで、隣接いたします富士川の左岸、これまで運びまして、そこで脱水そして埋設する、その上に覆土するという処置をいたしております。なお途中、硫化ガスというような発生を防止いたしますために、パイプに薬品注入、これは石灰ですとかあるいは塩化第二鉄そのほかの凝集剤、こういうようなものを入れるということを行っております。
  53. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それから、自分の見たところばかりを申し上げて恐縮なんですけれども、四国の愛媛県の三島、川之江、あそこの製紙工場の廃液についても、ヘドロ除去を行っておるということも行ったと聞いたのですが、この工法について。
  54. 御巫清泰

    ○御巫説明員 先生がおっしゃるとおり三島、川之江におきましてもパルプのヘドロがございまして、これはやはり普通のポンプしゅんせつ船を使用いたしまして、付近にございます埋め立て用地の中に送り込んでおります。その際、二次汚染を防止するという意味で、シルトプロテクターと申しますか、海中に幕を張りまして、その汚染物質の拡散を防除しながら行っている。それから、やはりここでも一部、硫化水素などの悪臭があるということでござまして、これを薬品添加というようなことで防止をいたしております。
  55. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それで富士あるいは三島、川之江のヘドロがどのくらいあったのか、私は余りよくわからないのですが、佐伯湾の場合には百六十七万平方メートルにわたって四十六万五千立米くらいのヘドロがある、こう言われておるのですが、これはヘドロの規模としては大きいものですか、余り大きくないのですか。
  56. 御巫清泰

    ○御巫説明員 御参考までに田子の浦の場合を申し上げますと処理量が百三十万立米、こう言われております。それから三島、川之江ですと、これは全体で約三百万立米ございますが、そのうち現在まで約六〇%の百八十万立米というのが回収されております。
  57. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 三島、川之江の場合は回収中のようですが、田子の浦の場合は百三十万立米、これは堆積しておるものの何%くらいが回収できるものでございますか。
  58. 御巫清泰

    ○御巫説明員 田子の浦の場合、全体で大体百六十万立米堆積していた、こう言われるわけですが、そのうち約百三十万立米、回収されまして、いま現在、まだ少し残っているという状態でございます。
  59. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そうすると、佐伯湾のヘドロの場合、約四分の一くらいのものですね。  ところで、この堆積しているヘドロですけれども日本港湾コンサルタントというのがあるように聞いていますけれども、ここで何か調査をしてもらったと言っていますが、その会社が、どこの場合にもやっておるわけでございますか。
  60. 御巫清泰

    ○御巫説明員 日本港湾コンサルタントと申します会社は、これは港湾関係のコンサルタントで、港湾工事の設計、調査それからそういう環境アセスメント、こういうことを行っておりまして、必ず、ここの会社が行うというわけではございませんが、一部そういう調査がこの会社で行われております。現在、調査が実行中でございまして、まだ結論は出ておりません。
  61. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そこで地元が非常に困っておるのは、佐伯湾の場合のヘドロは、非常にどろどろした状態で余り固まってない。これは本当かうそかわかりませんけれども、新聞の報道によりますと、田子の浦の場合には層もかなり厚くて固まっていたというふうなことが言われておるようでございますけれども、一説によると、そうではないという意見もあるようでございますから、定かでないのですけれども、要するに、非常にどろどろした状態なので、ポンプで吸い上げてもなかなかこの処理はむずかしい。それからもう一つ、ぽっとつかんでいくバケット方式というのですか、これもやわらかくてだめだ、処理のしようがないのではないかということで苦慮しておるようでございますが、この工法等について御見解がありましたら、ひとつ知らしてもらいたいと思います。
  62. 御巫清泰

    ○御巫説明員 佐伯の場合、ヘドロの分布状態というのが、数年前の調査ですと確かに非常に薄く分布しておる。そのために、先ほど先生言われましたように四十六万立米、そう言われますが、しゅんせつ土量といたしましては、それの相当な割り増し量をしゅんせつしなければいけないだろう、こう言われておりますのは層厚が薄いと、しゅんせつ船は、その層厚だけを取るということができないわけです。もっと取らなければいけないという状態になりますので、四十六万立米だけをとるということは非常に困難だとは思いますが、もっと多い、たとえば百万立米、これは百万立米か七十万立米かわかりませんが、もっと多い土量を取って処理すれば、現在、開発されております汚泥しゅんせつの技術、これはまだ進行中でございますが、かなり成果が上がっておりますので、何とか処理はいけるものと思われます。
  63. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それでは、さっき水産庁の方からもお話があったのですが、ヘドロが非常に赤潮影響があるのではないか。これは私ども素人の勘ですけれども、どうもヘドロのあるところをかきまぜると、赤潮が出るような気がしてならないわけなんですよ。いまの佐伯湾の場合にも、付近が非常にりっぱな漁場でございますから、もしも、このヘドロのしゅんせつを行ったために周囲の漁場影響を与えると、非常に困るわけで、それが非常に心配になるわけなのですけれども、さっき三島、川之江の場合、海中に幕を張ったというあれでございますが、これをやるとどういうことになるわけですか。余り心配はなくなるわけですか。
  64. 御巫清泰

    ○御巫説明員 この幕を張ると申しますのは、普通のポンプしゅんせつ船でしゅんせついたしますと、その場所でそのヘドロが拡散するわけです。その拡散は、なるべく拡散しないようなしゅんせつ機械が現在、開発されておりますし、その実績は上がっておりますが、それでも少しは出る。三島、川之江の場合は、少し出るのを、さらに拡散しないように周りに、約百七十メートルですが、こういうように海中をほとんど仕切ってしまって出ないようにいたしました。
  65. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 運輸省の方のお話を聞いておりますと、どうも日本港湾コンサルタントよりも、おたくの方が工法はずいぶん詳しいようで、私は非常に意を強くしたのですが、大分県の方から佐伯湾のしゅんせつについて、そういう工法等について何か指示を願っておるというようないきさつはございませんか。
  66. 御巫清泰

    ○御巫説明員 現在、県におきましてはそのコンサルタントに依頼して、工法とかヘドロの堆積状況ないしは、それの及ぼす環境アセスメントというような面の調査をいたしておりますが、県の方では、私が聞き及びますところでは、普通のポンプしゅんせつ船を使いまして、それを付近の小さい湾のような場所に封じ込める、こういう方法考えておられるようです。それについて特にアドバイスいたしたということはございませんが、将来、調査の結果が出た段階で、いろいろと県の方とも協力をいたしていきたい、こう思っております。
  67. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そうすると、小さいため池みたいなものをつくって、あるいは港の一部を締め切って、そこにヘドロを入れる、そういう工法でございますか。
  68. 御巫清泰

    ○御巫説明員 いま県が頭に描いているのがそういうことでございまして、ヘドロの堆積しております近所に、埋め立て護岸を築造いたしまして、その中に吹き込む、あるいは小さな湾を利用いたしまして、その湾口を締め切って、その中にヘドロを封じ込める、こういうことを考えておるようでございます。しかし、これは調査の結果が出ませんと、果たしてどういう工法が最適かということは、まだ申せない段階だと思います。
  69. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 お伺いしたいのですが、これは環境庁の方でございますね、海洋汚染防止法施行令第五条というのがございまして、環境庁長官が指定をする水域ということになっておるようですけれども、いままでのところ田子の浦と、それからさっきの問題の三島、川之江ですか、ここら辺が指定になっておるようで、それ以外にないようでございますが、これはどういうことになるわけですか。たとえば佐伯湾のそういうヘドロのしゅんせつをするとすれば、申請があれば長官の指定になるということになるわけですか。一定の条件を満たしていなければ、申請をしても、それは指定にならないということなんですか。
  70. 大場敏行

    大場政府委員 海洋汚染防止法に基づきます指定水底土砂という形で指定いたしますと、その取ったヘドロを処分する場合に、海洋投棄あるいは埋め立て処分、両方あるわけでありますけれども、そこは、そういった有害なといいますか、有機物が多いヘドロでございますが、それを外洋に、外に流出しないように特に念入りな措置をしろ、こういった規定になるわけでありますけれども、先ほど先生、御指摘になりましたように、特に有機質が多いヘドロとして指定しておりますのは、三島、川之江とそれから田子の浦のヘドロでございます。  佐伯湾のヘドロについて、それをどうするかということにつきましては、いままでのところ、調査はございます。つまり有機物の含有濃度がどれだけであるかという調査はございますが、いままで指定しました二地域に比べまして、幸いと言っていいと思うのでありますけれども、有機物の量はそれほど多くはない。しかし念には念を入れて、いま、せっかくまだ調査を続行中でございますから、その調査に基づきまして、指定水底土砂として指定するかどうかということを考えたいと思います。しかし、指定するにせよ、しないにせよ、やはり二次汚染の発生の防止ということは重要でございますから、仮に指定しないことがあっても、外にその土砂が流出するということがあってはいけない、これはもう当然のことでございます。
  71. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私も素人でよくわからないのですが、有機物の含有量を調査するのに熱灼三十度とかどうとかいうのがありましたね、あれはどうなっているのですか。
  72. 大場敏行

    大場政府委員 「熱しゃく減量二〇。パーセント」というような言葉を使っているわけです。熱灼といいますと、たとえば八百度Cというような高熱で熱しますと、ヘドロの中に入っております有機物であれば、それは燃えてしまい、その分だけ減ってしまう。つまり二〇%といたしますれば、後に残る八〇%が砂だとかそういった無機物であって、つまり二〇%が三〇%、四〇%になればなるほど有機物が多い、つまり汚れが多いヘドロだ、こういうことになるわけであります。
  73. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それで大体わかりました。  そこでもう一遍、前に戻りますが、海洋汚染防止法施行令の第五条というのは、これは申請を待って長官が指定をするものなのですか、環境庁の方からここは指定すべきだというふうにお考えになるわけですか。
  74. 大場敏行

    大場政府委員 必ずしも申請を要件にしておりません。私ども調査の結果、やはりこれは指定水底土砂として指定すべきだという必要があれば、申請の有無にかかわらず、むしろ指定すべきものと考えております。
  75. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そうしますと、必ずしもいまの定められておるような熱灼二〇%とかいうようなものだけでなくて、私は工法によってかなり変わってくるのじゃないかという気がするわけです。先ほどお話がありましたように、非常に高い山の上か何か、田子の浦のときのように富士川の堤防か何かに持っていって捨てる場合と、すぐ近い海の一部をせき切って、そこにしゅんせつしたどろを捨てるというような場合、違ってくるのじゃないかという気がするわけです。非常に近い地域にある場合と遠い地域、それから直接というとおかしいが、海底でつながるおそれがある場合とない場合とか、いろいろ出てくる心配があるのじゃないかという気がしますが、いまの規定どおり熱灼二〇%云々というだけでいけるものかどうか、その辺はどういうふうに御判断ですか。
  76. 大場敏行

    大場政府委員 「熱しゃく減量二〇%パーセント」という基準を政令で用いております根拠は、これはいろいろ専門家の御意見を伺って決めたわけでありますけれども、下水場で発生するヘドロをさらに消化する、そういう場合に、消化した後のヘドロがそういうふうになるということから用いたわけであります。いろいろ今後の検討の余地はあろうかと思いますけれども先生の御指摘になりましたのは、場所、場所によって二次公害発生の可能性といいますか、おそれというものは非常に違うじゃないか、底質あるいは工法等の関係によって非常に違うからということだろうと思うのです。それは仰せのとおりでありまして、ただ、私どもの用いております「熱しゃく減量二〇パーセント」というのは、ヘドロをつかまえて、このヘドロは汚れているヘドロかどうかという判断の基準でありますから、それはそれとして、一応二〇パーセント以上は、以下であっても、もちろんいいということじゃありませんけれども、特に気をつけるという基準は、従来どおり踏襲したい。しかし、場所によって、地形によって、二次汚染の危険が濃いところは、特に工法あるいは処分の方法等について念入りな配慮が必要であろうと思います。  それから同時に、単に工法だけの問題ではなくて、工事過程あるいは工事前を通じて、周りの環境の水質に与える影響というものを絶えず監視していく必要がある。工事の過程におきまして水質に悪い影響が出てきたら、たちどころにそれは工事を中止して、もう一回、工法を点検する、そういったような念入りな配慮が必要であると考えておるわけであります。
  77. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 非常にりっぱなあれで、念入りな配慮をしていただけば、いま心配するようなことは起こらないのではないかと思います。  そこでしゅんせつに移って、ヘドロを吸い上げる段階で、いま局長おっしゃいました監視といいますか、そういう配慮をするための検査といいますか、常についておってやらなければ、なかなかうまくいかぬだろうと思うのです。大体、企業なんというのはなるべく金のかからぬようにやりたいところでございますから、監視の目を光らせなければ、せっかくそういうお考えはあっても、結果的には周囲の海水を汚染するとか、二次公害を招くおそれがあると思うのですけれども、その場合の十分な監視体制というのは、どこで、だれがおやりになるわけでございますか。
  78. 大場敏行

    大場政府委員 PCBだとかあるいは水銀、そういった有害物質を含んでいるヘドロを除去する場合には、特に監視の仕方というものを環境庁がぴちっと定めております。有害物質を含まない単なる有機ヘドロにつきましては、まだ策定しておりませんが、これもできるだけ早く策定したいと思っておりますが、いずれにいたしましても、具体的に工事の周りのところの環境水域の測定点というものを決めて、何カ所選ぶ、どういう頻度で水質を調査する、どういう項目について監視をする、そういったことをきちんと決める。それからあるいは底質を処分する場合におきましても、処分地の構造いかんによりましては、これもやはり環境汚染ということが出てくるわけでございます。たとえば周りの地下水の汚染というおそれだって、場所によってはある可能性があるわけでございますから、そういったところに対する具体的な監視の項目なり指針なりというものを県と相談いたしまして、工事をするに当たりましては、そういったことを決めまして、それはもちろん監視するのは工事担当者が直接責任を持つわけでありますけれども、それをまた地方公共団体が監督する、こういった体制はしいていく必要があろうかと思います。
  79. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 長官、お聞きのように環境庁のお考え、非常に私はりっぱだと思うのです。しかし、考えどおりになかなかいかないものだから、二次公害が起こったりいろいろ問題が起きるわけでして、いまもお聞きのように、ヘドロのしゅんせつをやる、その場合には二次公害が起こらないように、海水の動き等も十分監視をして、もし問題があれば、そこで工事をとめさせるのだ、そのお考えは私は非常にりっぱだと思うのです。そうなければならないと思うのですが、その手だてがないのです。県の方と話をして十分やってもらうつもりだというふうなのですが、ひとつ、せっかく法律があるわけですから、政令でも省令でもいいのですが、しゅんせつをするときには、こういう監視体制をとらなければならない、こういう場合にはこうしなければならないということを明確に規定すべきではないかという気がするのですが、どうでしょうか。
  80. 大場敏行

    大場政府委員 法律的根拠となると、直ちにいま、ちょっと発見しがたいのでありますけれども、いずれにいたしましてもそういう工事をやる場合には、環境庁の事前の了解というものが必要になることは当然でございますから、その時点におきまして、間違いなくそういったことの励行というものは、私ども、そういう工事をする場合の条件として、しっかりと担保していくつもりでございます。
  81. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 さっきおっしゃったように、海洋汚染防止法施行令第五条第二項の第二号の場合には明確に規定があるわけですよ。ところが、第五条第一項第一号の規定の場合には、その監視体制がないわけなのですよ。けれども公害を未然に防止する、特に第二次公害を未然に防止するという立場から考えれば、私はいずれの場合にもあっていいのじゃないか。有毒のものとそうでないものとで差があるのだとおっしゃれば、それも理屈がないわけではございませんけれども、たとえば漁業に与える影響とか、そういうようなものを考えてみますと、当然、規制をしていいのじゃないかという気がするのですが、なければなくて将来どうするか、ただ口約束だけでおっしゃっても、私は環境庁に、この場合にこうしなさいという権限は、この法律の中にはないと見ているのです。だから言うだけ言ったって、やらなければ仕方がないじゃないかという結果になる。それならば環境庁がはっきりと権限を持って、特に生活に係る問題、あるいは健康に係る問題の場合には、かちっとすべきじゃないか、こういう点でお考えを聞いているわけです。
  82. 大場敏行

    大場政府委員 先ほど申し上げましたように、水銀あるいはPCBを含んだヘドロについての除去基準、これも実は法律的根拠に基づくものではなくて、これはもちろん専門的な意見は中公審等の部会で決めていただいたわけでありますが、それを決めていただきまして、環境庁考え方として、これは各県に通達しているということで、そういう意味では、法律的根拠そのものではありませんけれども、一種のやはりオーソライズされたものだと理解しております。それから水銀、PCBといった有害物質を含まないものにつきましても、近くそういった措置をできるだけ早い機会にとりたい、かように考えています。
  83. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私が申し上げたのもそういう意味です。県等いわゆる地方自治体等について、環境庁から通達を出して、こういうふうにやりなさいと示す。現場の役人さんなんというのは、むしろ法律よりも通達というのを非常に大切にするのですよ。率直に言ってそういう傾向があるのです。だから、通達というのは非常に強い意味を持つわけですね、法的な拘束力は別として。その意味では、この五条一項一号の場合がどうも手ぬるいような気がしますので、ひとつ、そういう措置を講じていただくことをお願いをしまして、五分おくれて参りましたので、五分早くやめることにいたします。終わります。
  84. 渡辺惣蔵

  85. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は、これから本格的なシーズンがやってくる湿性大気汚染、いわゆる酸性雨の発生の問題について、環境庁並びに気象庁に対して質問を申し上げたいと思います。  実は一昨日、二十五日でありますが、神奈川県は酸性雨発生予報を発令をいたしました。結果的には届け出をした被害者は一名でありましたけれども、この予報はPH値の酸性度を含めて一定の精度を持っていたということができそうであります。言うまでもありませんけれども、昨年の七月、東京、神奈川、千葉、埼玉、栃木、群馬、、茨城の一都大県で、合計三万三千百四十四人の被害者が出たこと、そしてその被害者は目の刺激、特に目の充血あるいは涙が出るなどの目に関係する症状が最も多くて、そのほか人によっては、腕がひりひりするとか、あるいは皮膚が痛むなどの、いわゆる皮膚症状が見られたことは御承知のとおりであります。神奈川、東京を初め各県は、それぞれその原因の究明と対策を進めてまいりましたけれども、率直なところ、なかなか汚染のメカニズムというものがつかめない、これが実情であります。  昨年の広域的な被害発生以来、一年を経過しておりますけれども環境庁はこの問題についてどんな対策をおとりになってこられたか、特に最初は、取り組みの体制の問題について御説明をいただきたいと思います。
  86. 鈴木晃

    ○鈴木説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、昨年の七月三、四、五と、栃木県、茨城県、埼玉県等、北関東を中心にいたしまして、いわゆる酸性雨による目の刺激を訴える例が多数発生したわけでございます。  環境庁といたしましては、この原因及び対策の検討を行うべく早速、同月二十日、気象庁、大学、国立試験所等の学識経験者並びに地方自治体関係者からなる酸性降雨の検討委員会を設置したわけでございます。  この委員会におきまして検討いたしましたことは、各自治体における被害の実態の整理、それから雨の水のPHと申しますか水素イオン濃度の測定値の収集、当時の気象状況の把握、解析、大気汚染の実態の整理、分析等を行い、かつ汚染物質がどういったメカニズムで雨の中に取り込まれるかという機構の文献調査並びに解析等を行いました。なおかつ実態調査を行う上に当たりまして、どういった調査測定方法があるか等についても検討を行った次第でございます。  これら委員会での検討結果をもとに、実は今年六月二十五日から関東一円におきまして、地方自治体の協力を得まして、大規模な実施調査を開始した次第でございます。  その内容を申し上げますと、一つは、気流の鉛直分布の観測、二番目は、上空での風向き、風速、大気汚染物質等の測定及び雲水といいますか、雲を構成しております水の成分の分析等が二番目でございます。それから三番目といたしましては、東京タワーを利用いたしまして、二百二十五メートルの高度での汚染物質それから雲の水、粉じん中の成分分析等の分析を行います。それから四番目といたしまして、地上における大気汚染調査を目的といたしまして、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県の  一都六県及び筑波山におきまして、二酸化硫黄、窒素酸化物、アンモニア、塩素イオン、ホルムアルデヒド並びに粉じん中の硫酸塩、硝酸塩、金属分析等を行います。それから、いま申し上げました地域と同じ地域におきまして、雨水の水素イオン濃度、それから硫酸塩、硝酸塩、塩素イオン、アンモニア、ホルムアルデヒド、金属分析等の分析を行います。この調査期間は項目によりまして違いますが、一番長いもので二週間ぐらいかけてやる予定にしております。なお、秋になりますと、もう一度、同一地域におきまして、雨の水の分析を中心にした実地調査を行うことにしております。  それからまた、地上での解析といたしまして、チャンバー、実験室といいますか、実験室を使いまして、酸性物質の吸着機構等についての実験を行うことにしております。こういった結果、酸性降雨の発生機構とか、目に対する刺激物質に対する知見が何らか得られることを、われわれとしては期待している次第でございます。
  87. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 神奈川の調査によれば、酸性雨の発生には、気温とか湿度とか風などの気象条件が大きく作用しているという見方をしているわけであります。特に日中、気温が低下して、逆に湿度が上昇するという特異な気象変化が見られたという点が一つ。二つ目は、湿度が八五%以上になると被害発生し始めて、さらに八五%になってから平均一、二時間後に被害が最も集中しているということ。それから三つ目は、被害発生地は地上風の風下に移動する傾向があって、風速は光化学スモッグ発生時よりやや強いことなどか特徴的だと言われております。発生のメカニズムと、その中で特に気象条件の因果関係、このことが配慮されているわけであります。  環境庁が酸性雨のことを湿性大気汚染と言っているわけですが、その検討委員会の検討を通して、どんな見解を今日までの段階でお持ちになっていらっしゃるか。これは恐らく中間だろうと思うのですけれども、社会的にも国会の場所でも、いままで環境庁は一度も御発表いただくチャンスがございませんでしたから、この機会にぜひその報告をいただきたいと思います。
  88. 鈴木晃

    ○鈴木説明員 湿性大気汚染のメカニズムといいますか、その気象的な条件等はどういうことであろうかという御質問かと思うのですが、実は専門家の方々を集めまして、いろいろ検討したわけでございますが、現在のところでは、はっきりこういった気象条件になれば必ず起きるということは、まだ言われておりません。たとえば昨年起きました気象条件を解析してみますと、梅雨前線が関東の南岸にございまして、地上風といたしましては北とか西とかそういった風が吹いておりまして、一方、上空におきましては逆に南風が吹いておる、そういった風配と申しますか風向きの条件下におきまして、霧雨が降っているような場合に、多く発生するのではなかろうかという一つの推論があるわけでございます。ただこの酸性降雨は、雨の酸性だけでは人間の目なり皮膚に対する刺激を説明できませんので、酸性以外の第二の原因物質と申しますか、そういったものもあるのではなかろうかというふうに推定されます。こういったこともございまして、当初、酸性降雨の検討会ということで始まったわけでございますが、名前を湿性大気汚染というふうに変えたわけでございます。
  89. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 環境庁のデータなどにも示されているわけですが、国際的には、たとえばスウェーデンではロイアル・スウェーディッシュ・アカデミー・オブ・サイエンスから発行された本の論文に、酸性降水のことが書かれているというふうに拝見をいたしたわけですが、スウェーデンでは酸性の強いポドゾル土壌なので、酸性が強くなると生産力が落ちる。現に森林の生産力が一九五〇年から六五年の間に〇・三%低下したということが明らかにされている。あるいは湖沼や川のPHが五以下になって、魚がすめなくなっているということが指摘されているようであります。またノルウェーの環境庁は、酸性降水によってノルウェー南西部において深刻な問題となっていて植物はもちろん、魚類にも被害が生じていることを発表しています。これは発電所用のパイプラインの腐食にまで及んでいるということが指摘をされているわけです。当然、土壌の変化というものも考慮されなければならぬと思うのですが、環境庁はこれまでの調査によって、こうした植物や動物や土壌や魚類の被害というものを、どうつかんでおられるか、また、その被害の可能性というものをどう理解されておられるか、教えていただきたいと思うのであります。  現に、たとえばスカンジナビア半島では、これは森と湖の国なのですけれども、その原因がドイツではないかということを含めて、国際環境法の制定などの動きがあるようでございますし、それからOECDなどでも、大気汚染物質の移流についてのプロジェクトをつくっておられて、もうずっと検討を続けていらっしゃるというわけでありますから、環境庁は、国際的なそういう経験を見ながら、この問題にどう取り組んでおられるか、この辺を承っておきたいと思います。
  90. 鈴木晃

    ○鈴木説明員 ただいま御指摘ございましたように、スウェーデンとかノルウェーでは、かなり以前から酸性降雨の問題が取り上げられ、かつ研究されているわけでございます。ただ問題の起き方が日本と違いますのは、日本の場合は人体の目とか皮膚、のどの刺激というものが中心になっております。ところがノルウェー、スウェーデン等におきましては、川、湖沼の水自体が酸性度を高めるといいますか、PHが低くなってしまう。その結果、水産業に大きな影響を及ぼすということも、事実データとして上がっているようでございます。それから土壌の悪化ということをもたらしまして、森林の生産力の低下ということも指摘されているとおりでございます。  実は日本の場合、そういった問題について、どこまで検討されているかという御質問かと思うのですけれども委員の中に農業技術研究所の方も入っておりますので、そういった先生方の御意見も賜りながら今後、検討を進めてまいりたいと思うわけでございますが、ただ、何しろ委員会は始まったばかりでございまして、とりあえず発生のメカニズムを何らかの形で推定しようというのを、第一段階としてやっておりますので、土壌なり生物等に対する影響にまでは、まだなかなか調査が進んでおらない状況でございます。  ただ日本の場合はノルウェー、スウェーデン等と違いまして、比較的年じゅう雨が降っておりますし、それから河川の足も短うございますので、ちょっと状況は違うという御意見もあるようでございます。といいますのは、ノルウェー、スウェーデン等におきましては一冬の間ドイツとかヨーロッパのいろいろなばい煙類がずっと北上してまいりまして、それが雪に蓄積される。それで春先になって雪の水が解け出しますと、そういった酸性分の高いいろいろな汚染物質を含んだ雪の水が一挙に流れ始めるということで、漁業並びに森林等に対する影響も顕著に出ておるのではないかというように考えております。いずれにいたしましても今後の課題として検討を進めてまいりたいと思っております。
  91. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 しかし学術的に見て、それは程度の違いはあろうと思いますが、スカンジナビア半島のそういう傾向と日本の酸性降雨との関係というものは、全然関係がないものではない、共通のものだというふうな認識に立って検討なさるおつもりかどうか、そのことを承っておきたいと思います。
  92. 鈴木晃

    ○鈴木説明員 われわれといたしましては、単に人体に対する影響だけではなくて、植物、生物並びに森林等に対する影響についても、非常に大きな関心を持っておりますので、委員の中にそういった専門家の方も入っておりますので、今後そういったものについても極力検討してまいりたいと思っております。
  93. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 実はこれは川崎の公害局で調べた結果なのですけれども、川崎では、酸性雨というのは梅雨期だけでなしに、年間を通して実は市内全域に降っているということ。特に北部の高津、多摩地区は、南部の工場地帯と比べて酸性度が高い。その傾向というのは実は光化学スモッグの発生状況とよく似た傾向を示しているというデータがあるわけであります。これは市内五カ所で雨の酸性度を定期的に測定をし始めたわけですが、それは去年の七月の五日ごろから、ことしの三月ごろまで、ずっと調べてみた結果、各測候所のPHの月別の平均値は、ほとんどが酸性を示しています。それだけでなしに、北部の多摩区では、九カ月間のうち八カ月がPH五以下の酸性で、ことし三月はPH四・二で、最も酸性度が高かった。多摩より、もうちょっと南なのですが、並んでいる高津でも、九ヵ月のうち六ヵ月がPH六以下を記録して、南部の工場地帯である川崎区であるとかあるいはそれに並んでいる幸区と比べて、非常に高い酸性度を示したというふうに言っているのであります。川崎ではこれは北部型と言っているのですが、この北部型の状況というのは光化学スモッグの発生状況と非常によく似ている、こういうふうに指摘ができると思うのであります。特に川崎市では昨年度、十八回光化学スモッグ注意報が発令されましたけれども、そのうち十四回は、市の北部でオキシダント濃度が市内の最高を記録している。こういうふうに見てみると、どうやら光化学スモッグと酸性雨の間に因果関係があるのではないかというふうに実は、にらみたくなるのであります。  この環境庁の資料によりましても、これは川崎、神奈川県の調査でありますが、この酸性雨の被害者の訴えというのは、さっき言った北部の高津、多摩の主要幹線道路のところが最も多いのであります。これは、天気がよければ光化学スモッグで、雨が降ったら酸性雨でというわけでございまして、その関係の中に何らかの結びつきがあるのではないかというふうに見る見方が、データの上で明らかにされているわけでありますが、これまでの検討の中で、これらについてどんな御見解をお持ちか、承っておきたいと思います。
  94. 鈴木晃

    ○鈴木説明員 光化学のスモッグと、それから湿性大気汚染との間で、共通性があるのじゃなかろうかという御指摘かと思いますけれども、いままで検討してまいりました結果、ある程度そのような関連性があるのじゃなかろうかという意見も出ております。といいますのは、雨とか霧雨のような高湿度中において、大気の各種汚染物質が水滴に吸着されて、こういった汚染が出てくるわけでございますから、このような微小水滴に吸着される物質及び同時に存在するガス状物質の中には、大気中における光化学反応または化学的な反応によりまして二次的に生成される各種のエアロゾールとかミスト類等があるのじゃなかろうか、こういったものが相当大きな要因になっているのじゃなかろうかという推定が、いろいろなデータから得られるわけでございますが、ただ、必ずしも完全に数量的に把握されているとは、まだ言いがたいので、今後ことし、やる調査等の結果を整理いたしますと、もう少し、はっきりした関連が出てくるのじゃないかというふうに考えております。
  95. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この際ですから、光化学スモッグについてもちょっと承っておきたいと思うのですが、きのうは、東京で、ことし十回目の予報が出されました。環境庁調査によると、去年は二十二の都道府県で光化学スモッグ注意報が発令されている、一昨年よりも一つの県ふえている。そしてその広域化傾向が持続されて、首都圏、近畿圏から中京圏、瀬戸内海にまで広がっているそうであります。  政府は、去る四月の八日に光化学スモッグ対策推進協議会というものを開いて、対策を協議されましたけれども、その内容を新聞などで漏れ承ると、ことしの対策というのも、一つは工場の固定発生源からの汚染物質の排出を抑えること、二つは移動発生源に対しては、特に自動車排ガス規制の強化、交通総量の削減、それに都市構造の適正化などを掲げておられますけれども、これは全く去年と同じであります。対策が昨年とことし、同様であることを揚げ足を取るつもりはございませんが、状況は少しもよくなっていないといわなければならないと思うのであります。はっきり申し上げて、光化学スモッグというのは生命に危険がないからというようなことで、たかをくくっている傾向はないだろうか、それはマイカー族にも同じことがいえるのではないだろうか、そういうふうに思います。そういう意味で光化学スモッグが慢性症状にならないという保証があるのかどうか、これは承りたいことなんですけれども、万が一そういう状態になったら深刻だと私は思うのであります。そうでなくても、いまの健康被害というものに対して、もっと積極的な手だてというものがないのかどうか。何となく漫然と注意報が積み重ねられていくという感じがしてならないのでありますが、四月に決めた方針が、その後どのように具体化されているか、その具体的な足跡をひとつお示しをいただきたい。
  96. 鈴木晃

    ○鈴木説明員 光化学スモッグの発生メカニズム等につきましては、環境庁といたしましてもすでに数年来、検討を続けておるわけでございます。これまでの検討の結果かなりの知見が得られておるわけでございますが、やはり一番大きな原因と見られるのは、窒素酸化物といいますかNOxとそれから炭化水素、これは、HCと申しておりますけれども、この二つが非常に大きな要因になっておるのではなかろうかというふうに考えられております。  こういったこともございまして、窒素酸化物につきましては、移動発生源の排出規制の強化並びに工場等から排出される窒素酸化物の排出基準の設定等を行って、発生そのものを削減していくというふうに努めております。  また、もう一方の有力なる原因物質の一つであると考えられております炭化水素におきましては、現在その炭化水素と光化学オキシダントの関係委員会で検討しておりまして、その結果に基づきまして、炭化水素の環境基準というのが近く出るかというように考えております。そういった環境基準が出ましたら、今後、本格的に炭化水素の発生そのものも削減していくということに取り組んでまいりたいと思っておるわけでございます。
  97. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この炭化水素の環境基準というのは、どんなめどで、どんな作業をなさっておられるのか、御報告がいただけたら承っておきたいと思います。
  98. 鈴木晃

    ○鈴木説明員 炭化水素に係る環境基準につきましては、実は現在中央公害対策審議会の大気部会の中に炭化水素に係る環境基準専門委員会というのがございます。これは四十八年の九月に第一回を開催いたしまして、現在までに二十一回にわたりまして検討を行っております。  検討内容といたしましては、炭化水素と光化学オキシダントの数量的な把握と申しますか、これを中心に検討しているわけでございますが、現在まで得られております知見によりますと、炭化水素と窒素酸化物の比が一定範囲にあるときには、光化学オキシダントが上昇するということが実験室的につかまえられております。また、ほかの条件が一定であれば、炭化水素の増加に伴いオキシダントが高くなるということも知られております。しかし、一般環境大気の中におきまして、果たしてそのような傾向があるかどうかということを確かめる必要がございますので、実は昨年夏から全国二十数カ所で測定を行ったわけでございます。気象条件とか移流等についても考察を加えまして、炭化水素とオキシダントの関係の解析を行っております。そのほか、測定法に関連いたしましても、測定対象とか測定時間帯とか測定場所等、非常に細かい点についてまで検討を行っております。  このように検討項目が多岐にわたっておりますので、やや作業がおくれぎみでございますけれども、われわれとしては、委員先生方になるべく早く答申案を出していただくようにお願いしている状況でございます。
  99. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 長官、恐縮ですが、酸性雨というのはいま御指摘をいただいたように、実はないがしろにできない状況にあります。もちろん光化学スモッグも大切ですが、酸性雨の場合は光化学スモッグよりも広域的になっているという条件を考えたときに、その対策の緊急性が求められていることは言うまでもありません。それで、いまお話しいただきましたように、光化学スモッグと酸性雨というものは関連性があるのではないだろうか、その疑いが一層深くなっている。そして川崎などのデータでは、それがかなり具体的に示されているというわけであります。  そういう点で、窒素酸化物の環境基準の達成について、この機会ですから、少し承っておきたいと思うのですが、窒素酸化物の二大発生源というのは、自動車等の移動発生源と工場などの固定発生源であることは言うまでもないわけですが、昭和四十八年五月に閣議決定された窒素酸化物の環境基準は、移動、固定の発生源をそれぞれ厳しく規制しなければ、目標とする基準を達成することができないというものであったはずであります。いろいろ議論がありましたけれども、かなりシビアなものだと言われていました。しかし、それは特に具体的に言うと、移動発生源について言えば自動車排ガスでは五十一年規制を完全実施するということ、固定発生源について言えば窒素酸化物の総量規制という、この二つが柱になって、四十八年五月の閣議決定の環境基準というものができているわけです。しかし、自動車排ガスの五十一年規制というものは、もう私が指摘するまでもありませんけれども、大幅に後退をしたわけでありまして、これで一体、環境基準が、四十八年五月の閣議決定の筋道のように達成できるかどうか、これはこの機会に、ぜひ確信のほどを承っておきたいと思います。
  100. 小沢辰男

    小沢国務大臣 実は残念ながら、四十八年に決定をいたしました達成期間、私はなかなか困難でないかと思っております。これは脱硝技術等に対するいろいろな問題、それからいま先生も御指摘の、移動発生源に対する規制の強化、年限の問題等から考えて、そう思うわけでございますが、しかし、何としてもこれは達成をしていかなければなりませんので、御承知のとおり、自動車の問題につきましては検討委員会も設け、あるいはこれからバス、トラック等、ディーゼル車等の規制もやり、総量規制等も交通の面から考え、徹底的に強化をしていかなければならぬわけでございますし、また、固定発生源につきましても一層ひとつ厳格に、たとえいろいろな経済情勢の変化によりまして意見が出てまいりましょうとも、どうしても基準達成のためには努力をしてもらわなければいかぬという姿勢を貫いていくつもりでございますし、そういうような意味で、何としても達成をいたしたいという念願に燃えて、いま進めているわけでございますが、なかなか容易でないことは事実だと思いますので、今後一層、努力を進めていきたいと思います。
  101. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 かなり重大な発言だと思うのですね。四十八年の段階でまあいろいろ議論があって、しかし、にもかかわらず、それで大丈夫か、もっと厳しくしなければいけないのじゃないかという意見を含めて、実はその環境基準が決まったのであります。環境庁長官が困難だと思うなどということをいま言ってしまうことは、ちょうど五十一年排ガス規制の後退といわば同じ轍を踏むことを、私たちは危惧せざるを得ません。非常に重大な発言であります。その点では、せっかく環境庁が決めた環境基準を守らせるための最大の努力をするということ、それを前提にして、私はこれから質問をしたいと思うのですが、そのことについての決意をもう一遍困難だというアクセントが強くなって、歯どめが崩れていくというふうに受けとめる見方があるわけでございますから、その点についてもう一遍、大変、恐縮ですが御見解を煩わしておきたいと思います。
  102. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先生の危惧と逆なのでございまして、非常に困難だと思うから、よけい厳しく、ひとつ、いろいろな対策を強力に進めていくということを申し上げたわけでございますから、その点ひとつ誤解のないようにしていただきたいと思います。
  103. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それでは伺いますが、私どもの反対というか意見にもかかわらず、五十一年規制が大幅に後退をしたわけであります。つまりそういうことで、固定発生源の側から規制緩和の要求が出されていることは、もう天下周知の事実でございます。たとえば自動車産業の公害規制を緩めれば、他の業界からわが方もという要求が出てくる、そういうのは遺憾ながら事実だろうと私は思うのでございます。いままでに環境庁にこのような業界の要望があったかどうか、あるいはその業界の要望が、たとえば通産省などを通して環境基準の見直しなどについて要望が出された経過があるかどうか、承っておきたいと思います。
  104. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私のところには、そういう申し出は全然ございません。ただ、国会等でいろいろの先生方から、どうも環境基準の問題につきまして、いろいろな御意見が出ていることは承知いたしております。それだけでございまして、私どもに正式にそういう産業界から申し出を受けていることはございません。
  105. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 通産省が窒素酸化物の規制について、一つは脱硝技術の開発がおくれているということ、二つ目は公害防止費用の製品コストヘのはね返りが大き過ぎるということなどの意見が述べられております。環境基準値に対する疑問までが出されているように承っておりますが、環境庁はこの見解についてどうお考えになっていらっしゃるか。既定方針を貫く決意のほどを、もう一遍お聞かせいただきたいと思います。
  106. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、やはり科学的な知見が基礎になってできたものでございますから、それが何か大きく変わってくるとかなんとかいうような科学的な知見がまた出てくれば別ですけれども、私、いまのところそんな状況じゃないと思いますから、必要はない。  それから物価にはね返るじゃないか、あるいは企業にとっては公害投資というものが大変な負担になっておる、しかも一方においては不況ではないかというような議論もございますが、これは企業としての果たすべき責任でございますので、これはもう好況、不況という概念でやるべきじゃなくて、むしろ人の健康を守るためにいかにすべきかということが中心になるべきで、好況であろうと不況であろうと、その点は緩めるべきではない。しかし一方、考えていかなければならぬのは、公害の防止のための投資というものはコストであるという観念は、これは国民も理解をしていただかなければいかぬわけでございます。そうでありませんと、コストを否定してかかりながら、なおかつ公害防止のための投資をやれというのは矛盾するわけでございまして、これはやはりコストとして理解をしていかなければならぬだろう。これは、公害防止のためには、みんながある程度の負担はやむを得ぬという、協力といいますか、そういう考え方がなければいかぬので、この点は十分ひとつ国民の理解を得なければならないと思います。  それからもう一つは、同時にそれを避けるために、PPPの原則を曲げるわけではありませんが、理由のつく限り、公害防止投資につきまして政府資金をできるだけ供与をいたしていく努力を、われわれとしてもしなければいかぬだろう。実はいま増額を折衝いたしております。開銀も公害防止事業団も。そういうようなことで私は、姿勢は緩めない、しかし、いろいろなそういういま申し上げたようなことの理解なり、あるいはまた同時に、われわれの方のそういう施策なりを進めてまいりまして、環境基準の達成に向かってお互いが努力する、こういう姿勢でございます。
  107. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 技術と資金という話は、いつか来た道でありまして、五十一年の排ガス規制のときにも同じ手口で通産から圧力がかかったり、そしてまた、いろいろな形でもって政府の動向がぎくしゃくしたりという経過がございますので、よもや同じわだちを歩かないように、国民の生命と文字どおり健康を大切にする環境行政の基本を、この窒素酸化物のいわば環境基準の後退などという形でゆがめることがないように、私からも強く要求をしておきたいと思うのですが、SO2の総量規制に踏み切って、窒素酸化物の総量規制というものは、一体いつごろをめどになさって御準備なさっていらっしゃるのか。それから、その総量規制ができないまでも、その間の住民の健康やあるいは生命というものを配慮したときには、実は地方自治体がそれなりの形で、固定発生源についていえば何%カットというような形や、あるいは地域、ローカルでの規制という形でやっておる教訓があるわけです。私はこういう教訓を生かしていくべきだろうと思うのであります。     〔委員長退席、登坂委員長代理着席〕  で、一つは、だから総量規制の一つの目標あるいは達成するめどみたいなものと準備の状況、それからもう一つは、これはいま窒素酸化物の規制が、ボイラーと石油加熱炉と、それから金属加熱炉それから硝酸製造施設に実は限定されているわけであります。これは広げなければなりません。狭過ぎるのです。  それからもう一つ特徴的なのは、これも川崎で言えることなのですが、大容量規制の基準が容量が大き過ぎるのです。だものですから、川崎でも二十ないし三十の施設しか適用されてないのです。だからもっと容量の小さなものにまでこれを広げるべきだと私は提案をしたいと思うのです。これらについて環境庁はどんなふうにお考えになっていらっしゃるか。これは課長、ぜひ承って、あと総量規制に対する決意を長官から承りたいと思います。
  108. 鈴木晃

    ○鈴木説明員 最初に窒素酸化物規制の問題でございますが、環境庁といたしましては、四十九年度から総量算定に必要なシミュレーション方式の開発に着手しております。それから実は五十年度におきましても、このシミュレーション開発に努力している最中でございますが、窒素酸化物におきましては、硫黄酸化物とちょっと異なりまして、大気中でいろいろの化学変化を行うということ、それから発生源といたしましても、固定発生源だけではなくて移原発生源とか、さらにもっと小さな群小の煙源の影響がございますが、こういったものの発生の実態につきましても、まだ把握が十分なされていないということがございます。こういった点もございまして、硫黄酸化物に比べますとまだ未解明の分野が多うございまして、昨年度、今年度含めまして、シミュレーション手法の開発というのに目下全力を注いでいる状況でございます。  それから、あともう一つ窒素酸化物に対する排出基準の問題でございますが、御指摘のようにただいまでは対象種類もまだ少のりございます。それから規模に対しましても、一定規模以下につきましては規制値がかかっておりません。これは四十八年の八月に第一回の排出規制値を作成いたしまして、実は現在、環境庁におきましては種類の拡大とかそれからすそ切りの拡大、そういう問題を含めまして検討中でございます。なるべく早い時期に種類の拡大それから規模の拡大等含めまして、固定発生源に対する規制基準、排出基準を強化してまいりたいと思っております。
  109. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま、なるべく早い機会にというのですけれども、大体どんなことをめどしにしていらっしゃるか、そういう努力の目標、プログラムをきちんとしませんと、どうもならぬと思うのです。光化学スモッグのシーズンも山場がきていますし、その点もし、お話ができたらお教えをいただきたいと思います。
  110. 鈴木晃

    ○鈴木説明員 最終的な正式の案といいますのは、まだが時間かかると思いますけれども、事務的な原案という形であれば、ここ一、二カ月のうちぐらいにはできるかと思います。
  111. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 窒素酸化物の総量規制に対する環境庁長官の決意をお伺いしたいと思います。
  112. 小沢辰男

    小沢国務大臣 この問題は、移動と固定発生源の割合というものを、やはりある程度、正確に見通しをつけなければいけませんし、先ほど課長から説明申し上げたいろいろな要件というものを確定的なものにしていかなければいけませんし、それから、特に中小企業の問題点が非常に大きいと私は思うのでございまして、中小企業のこと等も考えに入れなければなりませんから、この辺のところは、それをみんなで納得をしてもらわなければ、なかなか困難な要素がたくさんございます。私としては、もちろん総量規制をやりませんと、これは本当の大気汚染防止の実効が上がってまいりませんから、やりたいのでありますが、いま申し上げたような点で、本当にそれぞれのところが決断をしてもらわなければいけないわけでございますから、その点、こちらの先ほど申し上げましたようないろいろな未確定な点もまだございますので、まず先に、それらの排出基準等を十分整備をいたし、それから、防止技術等の開発の状況をもう少し的確につかみ、さらに、いまの中小企業対策等の問題、固定発生源と移動発生源との割合の正確な把握、こういうものを前提にしてやりたい、かように考えます。
  113. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 去年の酸性雨の被害がとてもひどかったのは栃木県なのです、二万八千七百六十人という被害者が出ているわけですから。この原因というのは、何か自転車通学の生徒が雨だとか霧にぬれたことが大きな原因だというふうに言われているわけであります。それがすべてではないと思うのですが、それも一つの要素だということを私も伺っているわけですけれども、そういう点、やはり光化学スモッグと同じように酸性雨の予報体制というものをどうしても立てる必要があるのじゃないだろうか。それを都道府県だけに任意な形で任せておくというやり方では、被害を最小限にとどめることはできないのじゃないだろうか、こんなふうに思います。  そういう点で、大気汚染防止法による注意報や警報というという予報体制までは非常にむずかしいと思いますけれども、そういう形まではともかくとしても、何らかの予報体制というものをとる必要がある。神奈川県では全国で初めてそのことを、この間、二十五日にやったわけですが、これについて環境庁はどのようにお考えになっていらっしゃるか、承っておきたいと思います。
  114. 鈴木晃

    ○鈴木説明員 先生御指摘のように、神奈川県におきましては、すでに予報制度というものを始めております。しかし、現在行っております予報といいますのは、一応雨の中の水素イオン濃度から気象条件を勘案して発令しているようでございますが、まだ必ずしも正確に湿性大気汚染のメカニズムが解明されていない現状でございますので、その比較的簡単な指標だけで予報を出すことがむずかしいという点もあるわけでございます。  われわれといたしましては、今年度の調査を含めまして、ともかく湿性大気汚染発生メカニズムをつかまえ、その知見をもとにいたしまして、適正な予報体制ができるように努力したいと思っております。
  115. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 では、気象庁に承りたいと思います。  地方自治体は気象庁が流す大気汚染情報に大きく期待をしていまして、午前、午後とデータを気象庁に報告をしていますね。しかし、率直に申し上げますと、この情報がどうもマクロ過ぎてしまって、地方自治体が期待をしているローカルな情報というようなものがさっぱり流れてこない、こういうふうに自治体の担当者は異口同音に言っております。これらを解決する手だてというものはないものかどうか。いまの予報体制などを含めて、そういう問題点がやはりあるわけでございますので、この点についての気象庁の見解をお述べいただきたいと思います。
  116. 柿崎英一

    ○柿崎説明員 確かに現在の予報技術というのは、いま先生がおっしゃられましたように、たとえば海陸風とか、それから細かい地形の変化、そういうものまで取り入れて予報をできるという技術体系はないわけなのです。ですから、普通、天気図と称しますものをもとにしまして、一県単位ぐらいの広さの、わりに概略といいますか、平均的な天気図を予報する、そういう形で業務を遂行しておるわけなのでありますけれども、やはりできるならば、なるべく細分化して予報を出すべきであろうというような考え方で、技術の進展の段階に応じまして、いま、たとえば福島県であれば福島地方とか中通りとか浜通りとか、あるいは旭川の上川地区であれば北部、中部、南部というような形で、細分化して予報をするように努力しているわけであります。  しかし、そういうような状態でありますけれども、最近気象庁におきましても、たとえばレーダーの観測体制もかなり整いましたし、それから地域気象観測網なども展開していますから、こういうようなものの活用というものが、これから研究されまして、かなりなものができますと、かなり細かい予報ができるのではないかというぐあいに、われわれは考えておるわけなのです。  それがいま先生がおっしゃられました大気汚染と一体どの程度結びつくのかと言われると、ちょっと答えかねるわけでありますけれども、先ほど環境庁の方も申しましたように、いま関東南部の環境調査、これは気象庁も参加して実施しておりますので、これに非常に期待しているわけなのです。結局それによって細かい気象状況、それが汚染とどう結びつくのか、そういうことを一日も早くわれわれ自身が知りたい、そしてそれに基づいて対策を立てていきたい、そういうぐあいに考えています。
  117. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 予報部長、気象庁の観測体制が、たとえば温度、湿度、風などを含めて、どうも地表についての観測が重点である。さっき環境庁の課長がおっしゃたように、鉛直分布についての観測を強化してほしいという要望が、これは地方自治体にもあるわけですが、どこにそれができない隘路があるのか。率直に予算なのか、技術なのか。これが開発されていきますと、かなり大気汚染に対する予報の精度はもちろんのことでありますが、そういう役割りを果たせると思うのですが、その点について見解を承っておきたいと思います。
  118. 柿崎英一

    ○柿崎説明員 現在、高層観測は、御存じだと思いますけれども、一日に二回の高層観測を実施しているわけなのです。これも実質的には大気汚染のために使っていますけれども、確かに上昇速度が速いものですから、大気汚染に一番関係があると思われる千メートル、二千メートル以下の細かい変化をとらえることはできないのです。ですから、そういうものがわかれば、何かもっといいことがわかるだろうということは、だれしも考えることなので、これは当然なのですけれども、では一体、どういうぐあいにして観測すればいいのか、あるいは観測点をどういうぐあいに展開すればいいのか、その辺のところを、まだわれわれは必ずしも明確につかんでいない。たとえば観測法にしましても、非常にゆっくりと上がるいまのゾンデと同じものを上げる方式もあります。     〔登坂委員長代理退席、委員長着席〕 それから、これはちょっと極端かもしれませんけれども、係留気球というやり方もある。それから最近は、レーザーを利用しまして逆転層を把握する、そういう機械も開発されまして、先ほど申し上げました関東南部の環境調査でも、それを使ってやっておるわけなのです。ですから、そういうものを見きわめまして、一体、何をどういうぐあいに展開するのが最も効果的なのか、そういうことがわかってからと言えば、ちょっと語弊がありますけれども、検討したい、そういうぐあいに考えておるところなのであります。
  119. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 先ほど、やりとりの中で予報体制の問題についてお話しをしたわけですが、柿崎さん御存じのとおりに、酸性雨についても、気象条件から割り出した因果関係というものが非常に可能性が強いということは明らかなのです。その可能性について、たとえば酸性雨が降るというようなことではなくても、降るおそれがある、あるいはそういう危険性がある、そういうことを含めて、テレビやラジオなどマスコミを通してお流しするということはできないかどうか。これは気象協会との関係もありましょうけれども、光化学スモッグの教訓を含めて、そういう予報を気象庁として、あるいは気象協会との連携のもとでやり得るかどうか、その点についての見解を承って、最後としたいと思います。
  120. 柿崎英一

    ○柿崎説明員 気象庁としましても、これも御存じと思いますけれども大気汚染センターというものを、現在までに五カ所ほど展開しまして、大気汚染に関する気象情報というものをできるだけ提供したい、そういうぐあいに考えて、いまやっておるわけなのでありますけれども、そして、いわゆるこの酸性雨という問題は、最近クローズアップされてきましたけれども、これに大きい関心を持っておるわけなのです。ただ、これはちょっと技術的な話になるかもしれませんけれども、われわれの認識では、元来、雨というものは酸性のものなのです。ですから、結局、この問題がクローズアップされてきたのは酸性そのものでなくて、その中に含まれている人体あるいは植物に対する被害物質が問題なのであろうというような認識に立っておるわけなのであります。ですから、被害物質は一体、何であるか、あるいは最終的な被害物質に転換していくプロセスが一体どういうふうになっているのか、それが一体、気象条件とどう結びついているのか、それがまだはっきりしないもので、一応、検討しているというところなのです。  それで確かに、いわゆる酸性雨が降って被害が起きたというときの気象条件を調べてみますと、先ほど先生がおっしゃいました前線のそばとか湿度が八五%以上とかいうものは特徴的に把握できるのです。ただしかし、それを一つの根拠として、つまり、その場合には必ずなるというふうであればいいのですけれども、必ずしも詰めが甘くない。したがって、こういうようなものをテレビなり何なりで流すということが果たしていいものかどうかというのは、私どもとしましては、これからの課題であるというぐあいに考えています。しかし、やはりこのような問題が起きてきますと、そうして被害が大きければ、本格的に取り組んで何とか効果があるような結果が得られましたら、何らかの形で実施するのが当然だ、そういうぐあいに考えております。
  121. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 お忙しいところをどうもありがとうございました。お約束の時間が来ましたので終わります。
  122. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ————◇—————     午後一時三十九分開議
  123. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。木下元二君。
  124. 木下元二

    ○木下委員 私は、瀬戸内海汚染問題について質問いたします。  先般の赤潮問題に関する参考人の意見、さらに、その後の瀬戸内海状況等を見ましても、瀬戸内海汚染問題の新しい段階に入ったと言えると思います。昨年末ごろまで、瀬戸内海はきれいになったとか、きれいになりつつあるなどと一部に宣伝されましたけれども瀬戸内海における赤潮発生件数、これを見ましても、瀬戸内海の汚染が年々、深刻になってきていることは明らかであります。水産庁赤潮発生件数のデータを見ますと、昭和四十五年七十九件、四十六年百三十六件、四十七年百六十四件、四十八年二百十件、四十九年二百九十八件という数字があらわれております。また、海上保安庁が発表しました昨年の海洋汚染状況によりますと、瀬戸内海における海洋汚染発生確認件数は、大阪湾を含めまして九百九十四件に達しております。このような汚染の恒常化、深刻化に加えまして、水島重油流出事故により壊滅的な打撃を受けました。こういった汚染の進行、悪化に伴いまして、被害の増大と質の変化が進んでおります。参考人の意見や瀬戸内海状況を見ましても明らかなように、例年なら梅雨時期以後に発生をしておりました赤潮が、ことしは冬季から発生をし、五月二十日には、あの播磨灘で大量の被害を伴う赤潮発生しております。赤潮発生時期の早期化、これが第一の特徴です。そしてさらに五月中旬に播磨灘で発生をしました赤潮は、阪神沖から大阪湾にまで広がり、今日なお発生し続けております。赤潮の広域化、長期化、これが第二の特徴であります。そしてさらにハマチ養殖業者によりますと、いままでの赤潮は、赤潮が去った後のハマチは全部元気になっておった。しかし、ことしは赤潮が襲ってくる直前から元気がなくなって、食欲もなかった。しかも赤潮が去った後も死んでいる。また、これまでのように帯状に海が汚れるのではなくて、全海域が黒ずんでいるなど、長い漁業生活での海の常識では説明がつかないと、こういう訴えをいたしております。このような質の変化、これが第三の特徴であります。こういうふうな特徴があらわれておるわけでありますが、環境庁はこういった点についてどのように認識をしておられますか、伺いたいと思います。
  125. 大場敏行

    大場政府委員 御指摘になりましたように、瀬戸内海の水質そのものの推移は、決して楽観を許すような状態ではございません。汚濁の進行がとまったというふうに申し上げたいのは率直な気持ちでございますが、しかしながら、やはりそういうぐあいに私は断言できないと思います。むしろ従来よかった水域が、やはり汚濁が進んでいるという面もあります。もちろん大きなコンビナートが控えておりまする地先の海岸におきましては、水質の浄化というものの効果は、確かにこれは工場排水の規制の強化という形で、出ておりますけれども、全般的に見まして、やはり水質の汚濁がとまったというぐあいには、残念ながら申し上げられない状況でございます。  それから赤潮の問題につきまして、これが近年、多発化ないしは長期化する、こういった傾向にあることは事実でございまして、漁業被害が増加していることも御指摘のとおりでございます。ことしの問題につきましては、従来のパターンと違いまして、どうも早期発生の傾向があるし、その早期発生のプロセスをいろいろ見ますと、ことしの夏におきましては、どうも赤潮被害というものが憂えられるのじゃないか、こういう懸念があることも、私ども率直に心配しているところであります。
  126. 木下元二

    ○木下委員 心配だけでは困るわけでありますが、先般の環境庁を中心としてなされました水島重油流出事故の環境影響総合調査の結果を見ましても、この深刻な赤潮問題については触れられていないのです。だから私はあえて再び聞くわけでありますが、この異常な赤潮問題は、瀬戸内海漁場を守る上から言いましても、これ以上放置できないのです。徹底的に原因を解明するとともに、一日も早く抜本的施策が講じられなければならないと思うのです。一体、環境庁は本腰を入れてこれに取り組む姿勢があるのかどうか、これまでの姿勢、取り組みを見ておりまして、私は疑いなしとしないのであります。長官、この点はいかがでしょうか。
  127. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は着任以来、瀬戸内海環境保全につきましては非常に憂慮しておりますし、本腰を入れて、この法律のもとに瀬戸内海を何とかひとつ、本当にきれいな瀬戸内海に戻したいという熱意に燃えております。しかし遺憾ながら、この赤潮問題につきましては、まだ研究も不十分でございますし、どうも対策がなかなかないのでございます。私は素人ながら係の者に、例の油を吸い上げる船みたいなもので、赤潮発生したら直ちにプランクトンを全部吸い上げるというような、それで外へ持っていって外洋で捨てるというようなことはできないものかというようなこと、これは全く素人考えですが、やれないものかというような話までしてみたのですけれども、これはなかなかそう簡単にはいかないようでございますし、赤潮発生を防止する具体的な方法といいますと、結局、迂遠のようだけれども水質の規制以外にはないわけでございますから、いろいろな意味瀬戸内海という、六十年に一回しか水がかわらないような宿命的な停滞水域を、どういうふうによくするかということを、本当に真剣に、あらゆる知識、経験を集めてやってみたい。それには調査も惜しみませんし、また、はっきりその対策の具体案ができれば、これはもうあらゆる障害を乗り越えてもやりたい、こういう熱意に燃えておるわけであります。
  128. 木下元二

    ○木下委員 ひとつ言仕業だけじゃなく言動一致で、ぜひともやっていただきたいと思います。  そこで一つ伺っておきますが、これはこの前にもお尋ねしたのですが、この瀬戸内海汚染のもとの一つである石油の流出について、その実態はどうなのか、これは取りまとめて報告をしていただくということになっておりましたが、出されておりません。環境庁としては、この石油流出の実態は掌握できていないのですが、いかがですか。
  129. 大場敏行

    大場政府委員 御報告がおくれて大変申しわけございません。前回の委員会に御報告いたしましたが、タンカーから流出いたしました油のうち十キロリットル以上の油の汚染発生状況は、四十五年から四十八年にかけまして、いろいろ年変動はございますけれども、約二千六百キロリットル、件数にいたしますと三十件ということを申し上げたわけでありますが、そのほか、これは十キロリットル以上の油の流出事故でございますから、当然そのほかの事故があるわけであります。これにつきまして件数を申し上げますと、まずタンカーから流出したものでございますが、ただいま申し上げましたように、これは四十八年の数字で申し上げますが、十キロリットル以上の流出は九件でございます。そのほかに十キロリットル未満の流出、これはタンカーから流出したものでありますが、それが百七件、それからタンカー以外の船舶から流出いたしましたものが三百二十九件、陸上からの流出、これが三十九件でございます。この陸上からの流出は、たとえばバルブ等の操作ミス等によるものと思われるものでありますけれども、三十九件、その次に不明のものが三百六十四件ございまして、これをトータルいたしましたものが八百四十八件であります。これは四十八年の数字でございます。(木下委員「不明というのは何ですか。陸上から……」)と呼ぶ)陸上からであるか、あるいは船であるか、そこのところは捕捉してないということでございます。  なお、これの数量はつかみたいわけでございますが、残念ながら、いま私どもの手元には件数しか把握はしてございません。
  130. 木下元二

    ○木下委員 いま件数を四十八年について大ざっぱに言われましたけれども、件数だけでは一体どの程度流出をしたのかということは全くわからぬわけですね。しかもタンカー以外三百二十九件、それから陸上三十九件、不明三百数十件と言われましたが、それは一体どういうものなのか。内容もわかりませんし、数量もわからぬ。これは、もう少し正確にはつかんでいないわけですか。
  131. 大場敏行

    大場政府委員 海上保安庁に御依頼申し上げて得た数字でございますが、先ほど申し上げましたように、四十八年では十キロリットル以上の流出、これはタンカーでありますが、九件あって、それが流出数量にいたしますと千四百三十三キロリットルです。四十五年から四十八年の累計が二千六百と申し上げましたが、そのうち四十八年だけで千四百三十三キロリットル出ておる。それが九件というものに見合う流出数量です。そのほかに十キロリットル未満が百七件ありますが、この数量を幾らにして見るか。つまり、十キロリットル未満ですから、仮に平均五キロということになりますれば、百七件ですから五百キロリットル以上ということになるわけです。五百から千ぐらいの間ではないかと思うわけであります。  それからタンカー以外の船舶三百二十九件、これは件数としては非常に多うございますが、これは漁船等その他の小船舶ですから、件数としては多いわけですが、流出の数量そのものとしては、これは推測が入って恐縮でありますけれども、それほどタンカー等に比べて多いのではないのじゃないか、こういうふうに想像しております。  それから、陸上からの流出は、数量的にちょっとつかめませんので恐縮ですが、また聞いてみたいと思いますが、なかなか数量的な把握は困難ではないかと思っております。  それから不明の件数でありますが、これは要するに、たれ流しとか油の流出の事実はあったけれども、それはどこから出てきたのか、要するに、残念ながら海上保安庁でも捕捉しがたいというような形で、不明という形で処理、計上せざるを得なかった件数だというふうに理解しております。
  132. 木下元二

    ○木下委員 陸上の方が三十九件、これは発生源はどこなのか、どの程度、流れ出したのかということはつかんでいないということですか。
  133. 大場敏行

    大場政府委員 残念ながら、現在までの段階ではつかんでおりません。さらに調査をしてみたいと思います。
  134. 木下元二

    ○木下委員 どうも掌握が非常に不十分であります。どの程度の石油が瀬戸内海に流出をしておるのかということについては、たとえば東大助教授の西村肇氏が論文を書いておりますが、それによりますと、これは一年間でありますが、タンカー海難事故による分、これは五百ないし一万トン、これは確率等の問題がありまして非常に幅が大きいわけであります。石油荷役によるものが六百トン、石油精製業の関係が二千トン、石油化学工業の関係が千二百トンないし二千トン、鉄鋼業関係が三千トンないし五千トン、船舶ビルジ水が三千トン、潤滑油廃油が三千ないし九千トン、これはそれぞれ数字だけ申しましたけれども、細かく根拠も説明してこれを出しておるのであります。一年間にこれだけのものが流出をしておる。これを一体、環境庁はどのように見られますか。
  135. 大場敏行

    大場政府委員 海上保安庁とも相談して、この数字につきましては当たってみますけれども、ちょっと私見を申し上げては恐縮でございますが、われわれの想像よりも、数量としてはかなり多いなという感じはいたしますけれども、しかし、感じで申し上げたのでは恐縮でありますから、これは海上保安庁とよく相談して調査をしてみたいと思います。
  136. 木下元二

    ○木下委員 ひとつ、よく調査をしてください。環境庁として、一体、どれだけの石油が、どこから流れ出しておるのか、このことを十分把握しておらぬようでは、汚染対策がとれないと思うのですよ。ひとつ直ちにこの実態を把握して、報告をしていただきたいと思います。よろしいですか。
  137. 大場敏行

    大場政府委員 役所の所管だとか、そういうことを申し上げたくはないわけでありますが、これは海上保安庁ともかかわる話でありますから、海上保安庁とよく相談して、いずれにしても環境庁としては把握しておく必要がありますから、これは調査をいたしたいと思います。
  138. 木下元二

    ○木下委員 これは保安庁の所管でもあると思いますが、だからといって、環境庁がほっておいてよいという問題ではないのです。これだけ瀬戸内海の汚染が深刻な問題になってきておるわけでありますから、ひとつ、この点は十分調査をしていただきたいと思います。  それから、埋め立て問題をお尋ねしますが、具体的な問題から入って、お尋ねします。  これは瀬戸内海汚染と絡み合った問題なのでありますが、まず、お尋ねしたいのは、前にも取り上げました広島県の海田湾の埋め立て問題です。広島県はこの埋め立てを、住民の反対を無視して強引に推し進めようとしてきましたが、今度、一部取りやめるというふうに聞いております。森山工業団地の関係ですか、ここを取りやめるというふうに聞いておりますが、これはどういう事情によって取りやめることになったのか、御承知ですか。
  139. 大場敏行

    大場政府委員 情報としては、森山工業団地を取りやめまして、そしてかわりに下水道のセンターをつくる、こういう話は伺っておりますが、詳細については伺っておりません。
  140. 木下元二

    ○木下委員 海田湾の埋め立てについては、昨年末にアセスメントが知事のもとに提出をされました。内容はきわめて不備なものでありまして、その作成の経過についても不審な点が多々あるわけです。その点についてはいまは伺いませんけれども、とにかく何が何でも埋め立てを既定方針として強行しようという前提でつくられたアセスメントなのです。これに対しまして、住民が大学の先生に依頼をして別にアセスメントをつくる、反対の意見を提出をする、こういうことで対立が見られました。そこで県の方では、さらに町民の意見書に対する新しいアセスメントをまとめまして、いわばアセスメントのやり直しを行ったわけであります。そして、この関係自治体に対しまして計画案を諮問しようといたしております。広島県は、このアセスメントをつくるに当たって、環境庁の指導を受けたのでしょうか。いかがでしょうか。
  141. 大場敏行

    大場政府委員 海田湾につきましては、ただいま先生御指摘になりましたように、昨年の暮れにアセスメントを一応了しまして、そして埋立法に基づく関係の書類を公告、縦覧の手続をとって、これに対しましていろいろの団体から批判なりあるいは反対の声なり、いろいろな御意見があって、いま県がちょうどアセスメント調査をしながら、免許権者としての態度を決めようとしている、こういった過程かと存じております。  環境庁への意見の形は、以前の委員会で申し上げましたが、いずれ運輸大臣に上がってき、それが運輸大臣から環境庁長官の意見を聞くという段階になって、手続としては、正式にそういった段階で意見を申し上げることになっておりますけれども、事前によく県を指導しろ、こういった先生の御指摘もあって、よく記憶しております。私ども県を早速、招致いたしまして、その指導はいたしております。具体的には、御承知のとおり瀬戸内海環境保全審議会から答申をいただいているわけでありますが、その答申の具体的中身に即して、アセスメントの項目について県を指導しているということでございます。
  142. 木下元二

    ○木下委員 やり直しのアセスメント、その二度目のアセスメントですね、これはまだ出ていない、現にこれはやっている最中だということですか。
  143. 大場敏行

    大場政府委員 県が独自に、いろいろなアセスメントについての資料なりを集め、また、評価をしている最中というふうに聞いております。
  144. 木下元二

    ○木下委員 そのやり直しアセスメントについて、環境庁は県を招致していろいろ指導をしておる。そうすると環境庁の指導に基づいてその二度目のアセスメントが進行中である、こういうふうに伺ってよろしいか。
  145. 大場敏行

    大場政府委員 私どもは個々の具体的作業には必ずしも入っておりません。しかし、先ほど申し上げましたように、アセスメントをする場合において、最も留意すべき事項というものを具体的に示して、そうして指導をしたということでございます。
  146. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、いつごろそのアセスメントの結果は出るでしょうか。
  147. 大場敏行

    大場政府委員 県が現在やっておりますアセスメントの作業は、いつごろ完了するか、まだ聞いておりません。
  148. 木下元二

    ○木下委員 およその見通し、わかりませんか。
  149. 大場敏行

    大場政府委員 私ども承知しておりません。
  150. 木下元二

    ○木下委員 長官、大体いまの海田湾の状況はおわかりのことと思います。昨年の十二月二十四日に、私は当委員会でこの問題について長官にお伺いしたのでありますが、長官は、現在の段階で県当局に対して、厳しく環境保全の立場から、チェックをし、指導をしていくという趣旨をお認めになりました。これはまあ当然のことであると思います。で、環境庁は実際にどういう指導をやっておるのかということを伺ったのでありますが、どうも具体的な点ははっきりいたしません。けれども、県に勝手にやらせるということではなくて、相当慎重に、答申の趣旨に乗っかって指導をしておるというふうに答弁をされております。前の長官の答弁どおり環境保全の立場から厳しくチェックをして指導を進めていく、こういう立場でおやりになっておる、こういうふうに伺ってよろしいですか。
  151. 小沢辰男

    小沢国務大臣 瀬戸内海については、極力避けるようにということが出ているわけでございますので、したがって、やむを得ない場合は環境保全の観点から十分検討するよう県を指導する、この方針にはいささかも変わりはございません。
  152. 木下元二

    ○木下委員 特にここは、埋め立ては極力避けるべき海域として指定されておるところでもあります。広島県は、県の方針である経済発展のためということを、にしきの御旗のように掲げまして、埋め立てを強行しようとしておる意向のようなのです。瀬戸内海を守り抜く、漁業資源を確保するという立場から、ひとつ今後も十分に厳しくチェックをしていただきたい、特にこのことを要請したいと思うのでありますが、長官よろしゅうございますか。
  153. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先ほど局長も、私もただいま申し上げましたように、先ほどの方針に基づいて十分指導をいたします。
  154. 木下元二

    ○木下委員 では、その問題は、またアセスメントも出てきましてからお尋ねすることにしまして、兵庫県の埋め立てについて伺いますが、まず阪神間、すなわち芦屋市、西宮市、尼崎市の海岸埋め立ての状況について尋ねます。  この地区は港湾地区でありまして運輸省の所管でありますが、まず、この埋め立て状況の概要を述べていただきたいと思います。
  155. 服部経治

    ○服部説明員 ただいまお尋ねのございました尼崎、西宮、芦屋港地先の埋め立ての概要について御説明を申し上げます。  この港域の西宮市の地先におきまして、現在、兵庫県が甲子園地先及び西宮地先二カ所、計約三百二十数ヘクタールという区域の埋め立てを行っているところであります。この埋め立てば、そのいずれも昭和四十六年六月に埋立法上の免許がなされたものでございまして、埋め立ての目的は埠頭用地、流通業務団地用地、電気、ガス等の供給施設用地並びに公園、緑地の造成というふうになっております。  次に、この埋め立て工業の進捗状況でございますが、埋立免許から四年を経過した今日、なお所要の外周護岸工事のほぼ半分程度を完了したにすぎないというような段階にある状況でございますが、このように工事工程が大幅に遅延いたしております原因は、将来この埋立地を横断しまして大阪湾湾岸道路が走るということになる、あるいは臨港道路の整備に伴いまして自動車交通量が激増する、あるいは海域環境に対する影響があるといったような環境条件の変化に対しまして、地元の西宮市の住民の方々から強い苦情が出ておる。そして、この埋め立てをめぐっての、このような環境問題に関する地元の強い要請に対処すべく、現在、埋立者であります兵庫県、それから地元の西宮市、この両者の間で、この埋め立て計画の再検討に関する調整が進められているためであるというふうに承知しております。
  156. 木下元二

    ○木下委員 私の手元にも、その芦屋、西宮、尼崎沖合いの埋め立て状況を示した図面があるわけでありますが、これを見ましても、この地域、阪神間の沖合い一帯がほとんど全面的に、しかも広範囲に埋め立てが進められつつあるという状況であります。この工事の進行程度でありますが、これはちょっといま何か半分程度というようなことも言われたのですけれども、どうでしょうか、これはいずれも一部はもう完成をしておるし、あるいはほとんど完成に近いという状態ではないのでしょうか。どういう状況でしょうか。
  157. 服部経治

    ○服部説明員 私どもが兵庫県の方から確認いたしましたところでは、埋立地の外周部の護岸のほぼ半分、それからその護岸工事に伴いまして護岸の被災防止工事、具体的に申しますと、護岸の背後約五十メートルくらいの幅に土砂を埋め立てまして、護岸が崩れないような措置をとっておるというふうに聞いております。
  158. 木下元二

    ○木下委員 いま言われたのはどこの地域でしょうか、西宮地区と甲子園地区でしょうか。
  159. 服部経治

    ○服部説明員 そうでございます。
  160. 木下元二

    ○木下委員 芦屋地区それから鳴尾地区の進行はどうですか。
  161. 服部経治

    ○服部説明員 私がただいま御説明を申し上げましたのは、御指摘のとおり西宮地先の埋め立てと甲子園地先の埋め立てでございまして、芦屋地先の埋め立て、それから鳴尾地区地先の埋め立てにつきましては、すでに竣工を見ております。
  162. 木下元二

    ○木下委員 これらの埋め立てば、瀬戸内海環境保全臨時措置法の施行の時点、つまり四十八年十一月の時点で免許されていたということでしょうか、それとも施行後、免許になって着工した分はあるのでしょうか。
  163. 服部経治

    ○服部説明員 いま申し上げました四件の埋め立てとも、瀬戸内海環境保全臨時措置法の施行時には、すでに免許済みでございました。
  164. 木下元二

    ○木下委員 西宮地区の埋め立てでありますが、先ほど少し言われましたけれども、これまで市議会で再三にわたって、即時工事を中止せよ、そして埋め立て及び埋立地利用に伴う公害発生に関する徹底した科学的調査を行うべきだ、また、関係住民等の意見を十分聴取すべきだという趣旨の決議が行われて、運輸大臣や知事あてに意見書も提出をされております。これに対して一体、運輸省はどういう態度をとられたのでしょうか。
  165. 服部経治

    ○服部説明員 本件の埋め立てば、ただいまも御説明いたしましたとおり、改正前の旧埋立法のもとで免許手続がとられまして、かつ、工事が施行されたわけでございます。そのためもございまして、本件埋め立てに関しまして、事前の環境問題に対する配慮というものが不十分であったということは、今日のこの埋め立てをめぐる実情がもう証明しておるとおりでございまして、その点、率直に認めざるを得ないわけでございますが、私どもの立場といたしましては、すでに旧埋立法の手続を踏みまして、一たん免許をいたしましたこの埋め立てにつきましては、仮定の話でございますが、仮に出願者であり埋立者でございます兵庫県の方から変更申請といったような手続がとられません限り、私どもの方でこれを中止する、あるいは取り消すといったような処分ができないたてまえになっております。
  166. 木下元二

    ○木下委員 この西宮地区の海岸は、わが国でも有数と言われるほど白砂青松の美しい海岸でありました。現在では海水汚濁などによって、ほとんど見る影もないほど環境破壊が進んでおります。ことに沖合いを全面的に埋め立てをして、港湾建設、倉庫、物流センターを初め、湾岸道路の建設をやるというふうなことになりますと、既存の教育環境、住宅環境の悪化は目に余るものがあるわけであります。住民の生活と健康を阻害することは明らかであります。そこで住民が立ち上がって、埋め立てを中止して科学的調査をやれ、住民の意向を聞け、こういう強い要求が打ち出されてきたのです。そして、市議会では、市民の健康と環境を守るという超党派の立場で、先ほどの決議に至ったわけであります。こうした経過は御承知でしょうか。
  167. 服部経治

    ○服部説明員 ただいま先生がお述べになりましたような事情は、私どもとしても承知いたしております。
  168. 木下元二

    ○木下委員 運輸省としては、特に一たん認可をした以上、さらにいろいろと介入をしにくいということを言われましたけれども、いま私が言いましたような経過、背景のもとに、県は工事の中止を、現在しておるということですか。
  169. 服部経治

    ○服部説明員 工事を中止いたしておるというふうには申し上げられないのでございまして、護岸の被災防止のために必要な程度での工事は行っておるというふうに承知いたしております。
  170. 木下元二

    ○木下委員 この埋め立て工事は、これは県に言わせますと、本体の工事は中止をしておるというふうに言っているのですよ。ところが、実際は工事はどんどん進行しているのです。もう現在は完了に近い状態にも一部ではきているのですね。いま言われました海岸寄りの埋立地の護岸といいますか、岸壁ですね、その岸壁が崩れないようにするために、その岸壁から五十メートルほどのところに土砂を流し込んでおる、これだけやっているのだ、本体の工事はストップをしておるというふうなことを言われますが、これは市会で決議を行ったときから、そういう状態でしょうか。そうではなくて、工事は実際はどんどん進んでおったのじゃありませんか。
  171. 服部経治

    ○服部説明員 その工事の工程に関します正確な内容は、私、申しわけございませんが、つまびらかにいたしておりません。したがいまして、その市議会の決議があった時点で、そういう状態にあったか、あるいはその後であったかという点は、現時点ではつまびらかにいたしておりません。
  172. 木下元二

    ○木下委員 運輸省としては、そういういろいろな事情があり、住民が調査をせよと言っておる、それに基づいて県が現在のところは一応、本体の工事は中止しておるというのは、これは妥当な措置とお考えになっているわけでしょう。
  173. 服部経治

    ○服部説明員 そういうふうに本体部分の工事につきましては事実上中止いたしておりまして、そういう状態の中で、地元の意見を代表いたします西宮市当局との間で話し合いを進めておるということは、非常に好ましい事態であるというふのに思っております。
  174. 木下元二

    ○木下委員 ところが、そういうふうに県の方では運輸省にも報告をし、また、そう言っておるのだと思うのですよ、本体の工事はそういうふうに問題があるからストップしていると。ところが、実際はいま私が言っておりますように、工事はどんどん進んでおるのですよ。その護岸のところ五十メートルほどの工事だけではないのですよ、やっているのは。どんどん淡路の方から船で土砂を持ってきて、ここに落とし込んで進めておるのですね。この埋め立て工事というのは、どれだけ進行しておるか外から見てもわからぬわけですよ。ところが、これは現状を見ますと、もう水面下一・八メートルぐらいまで工事がどんどん進んでおる、こういう状況なんです。だから、これは県が運輸省に報告しておること、また県が外部に言っておることは、事実に反する点があると思うのですよ、こういう状態が、私の言っておるのが真相だとすれば。ひとつこの点、運輸省としても、もう一度これはよく調査をし直してもらいたいと思うのですよ。一体どういう状況になっておるのか。よろしいですか。
  175. 服部経治

    ○服部説明員 私どもが兵庫県当局から聞いております事実と、いま先生が御指摘になりました事実と、事実関係に若干の食い違いがあるようでございますので、私どもといたしましても、さらに一層、実情を確認させていただきたいというふうに考えます。
  176. 木下元二

    ○木下委員 この西宮市議会の、工事を中止して科学的調査をやれ、また、関係住民の意見を聴取せよ、こういう再三にわたる決議が行われて、申し入れをしておる。ところが、これに対応するしかるべき措置はとられていないと思うのです。工事中止の問題も、いま私が言いましたように、本体の工事は中止されていない。中止していないのに中止をしたという、でたらめの報告さえやられておる。さらに、この科学的調査などということも、これは現実にはやられていないのじゃないか。これはもう住民無視、自治体無視もはなはだしいと私は思うのです。これは運輸省がやっておるというのじゃありませんよ。しかし運輸省としても、こういう埋め立てのごり押しを好ましいとは思われないと思うのです。どうでしょうか。
  177. 服部経治

    ○服部説明員 この尼崎、西宮、芦屋港に関連いたします埋め立ての中で、先生御承知と思いますが、鳴尾地先の埋め立てにつきましては、これは工事の竣工後ではございますが、地元の住民の方々の意見を吸い上げまして、県当局の方は現在、その利用計画に大幅な手直しを加えつつあるということでもございますし、また西宮地先、引き続きましては甲子園地先の埋め立てにつきましても、現在、西宮市当局との間で、具体的な調整の作業に入っておるということでございますので、私どもといたしましては、その調整が何とか円満な解決を見るように現在、期待しておるところでございます。
  178. 木下元二

    ○木下委員 これは住民の意向を聞いておりますか。住民の意見を聞く、たとえば公聴会を開くとか、そういうふうな機会を持っておりますか。持っていないですね、そうでしょう。
  179. 服部経治

    ○服部説明員 具体的に住民の意向をどのように吸い上げているかということは、私つまびらかにはいたしておりませんけれども、兵庫県は西宮市及び西宮市議会当局との間で話し合いを進めておるということでございます。
  180. 木下元二

    ○木下委員 工事をどんどん一方的にやってもらっては困るじゃありませんか。それからまた、どういうふうにこれからやるかとか、あるいは調査の問題にいたしましても、工事は既定方針どおりどんどんやっておったのでは、これは何にもならぬと思うのですよ。  環境庁ひとつ、これは運輸省が一たん認可をされておるわけなのですけれども、少なくともこういうふうに市議会で問題になり、工事を中止せよという決議が再三行われる、少なくとも住民の意見を十分に聞く機会をつくるべきだと思うのです。それからまた、科学的調査、アセスメントと言えるかどうかわかりませんけれども、アセスメントを遅まきながらやはりやるべきだと思うのです。そして環境庁としては、それに対して審査をするべきだと思うのです。それからまた、本当にこの工事を中止してきたのかどうかという点もきちんと調査をしていただきたいと思うのです。ひとつこれらの点を、県に対してよく指導して進めていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  181. 大場敏行

    大場政府委員 私どもよく実情を把握しておりませんが、ただいま御指摘になりましたような事柄につきまして、県とよく意見を交換して実情を調査したいと思います。
  182. 木下元二

    ○木下委員 私かいま指摘しましたようなことを、県が必ず誠実にやり切るように、ひとつ監督指導をしていただきたいと思います。よろしいですか。
  183. 大場敏行

    大場政府委員 県の意見をよく聞いて、いずれにしても環境破壊につながることは、これは困るわけでありますから、そういった見地から県を指導したいと思います。
  184. 木下元二

    ○木下委員 それから将来の埋め立て予定区域ですね、これはもういままで伺いましたのは、現に進行しておる埋め立てでありましたが、将来の埋め立て予定区域、これは芦屋、尼崎、西宮においてあるわけでありますが運輸省なりあるいは環境庁は、どのようにつかんでいられるでしょうか。
  185. 服部経治

    ○服部説明員 私どもが担当しております埋め立て工事は、そのもとに、御承知のように港湾計画というものがございまして、それにのっとって行われるわけでございますが、現在この尼崎、西宮、芦屋港の港湾計画の中には、現在行われておりますほかの埋め立ての予定は組み込まれておりません。
  186. 木下元二

    ○木下委員 環境庁は。
  187. 大場敏行

    大場政府委員 私どもも聞いておりません。
  188. 木下元二

    ○木下委員 これは芦屋はもうすでに埋め立てがされておりますけれども、さらにその沖合いにもう一つ、これは百三十七万平方メートルの埋め立てをするという計画があります。それから尼崎にも東海岸町沖地区というのですか、ここに百万平方メートルの埋め立てをするという計画があります。それからさらに、この西宮の沖合い、埋め立てをやろうとしておりますが、さらにもっと沖に広範な、西宮沖地区といいまして、埋め立て構想があるわけであります。こういうことは御承知ないのですか。これは図面にも出ていますよ。
  189. 大場敏行

    大場政府委員 先ほどお答えいたしましたように、聞いておりません。  そういった地区は、もし埋め立てをいたしますれば、当然、港湾計画の変更という形になろうと思います。その段階には当然、港湾審議会という形で、そのメンバーには環境庁は入っておりますから、環境庁の意見を申し上げる機会は十分担保されている。いずれにいたしましても、現段階では私ども聞いておりません。
  190. 木下元二

    ○木下委員 姫路の方の問題がありますので、その問題は後から一緒にまとめて伺いたいと思います。  時間の関係で次の問題に移りますが、阪神間の埋め立ての問題をお尋ねしましたので、関連して浜甲子園千がたの問題であります。この浜甲子園干がたといいますのは、西宮の埋め立て地域である鳴尾地区と甲子園地区にはさまれたごく狭い干がたであります。ここは鳥類の生息地として知られ、現在でも実に八十四種類もの鳥類が観察をされておると聞きます。また、いろいろな渡り鳥の中継地でもあります。その実情をつかんでいられれば、少し述べていただきたいと思います。
  191. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 浜甲子園浜は大阪湾で残っている数少ない干がたの一つでございまして、現在閉鎖水路となっております鳴尾川の河口の前に小規模に発達した一ヘクタール程度の千がたがあるわけでございますが、一度埋め立てをした地域が崩壊してできたものであるために、コンクリート塊が散在してイソガニとかドロフジツボというようなものが生存しておりますので、鳥のかっこうなえさ場になっておるわけでございます。昭和四十七年度に環境庁が実施した調査によりますと、鳥の種類が八十四種類ほど観察されまして、そのうち三分の一はシギ、千鳥のたぐいでございます。春秋はシギ、千鳥、それから夏はコアジサシ等が繁殖しておりまして、年間を通じて鳥類の見られるところでございます。この地域は、市街地から近距離で通常は見られないシギ、千鳥が観察できる場所でございますので、学術研究とか一般観察のためにもかっこうの場所になっているということでございます。
  192. 木下元二

    ○木下委員 この干がたは埋め立て地区には入らないのでしょうか、どうでしょうか。
  193. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 すでに埋め立てをした地域で、その海岸が風波で壊れまして、コンクリートが散在しているものですから、そこにカニや何かがおる。すでに埋め立てをした地域の中で、そこの海岸がこわれている、そういう地域でございます。
  194. 木下元二

    ○木下委員 ここは一ヘクタールに満たない面積の狭いところだということですが、この一ヘクタールの地域だけでなくて、その周辺もずっと鳥がやってくる。その周辺約六十ヘクタールぐらいの地域でありますが、この付近はどうでしょうか、甲子園地区として埋め立て地域がつくられておりますが、その中に相当な範囲入るのじゃありませんか。
  195. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 新しく埋め立ての免許がおりております。これからしょうという地域は、それに隣接するわけでありますので、当然入るわけでございます。
  196. 木下元二

    ○木下委員 今後の見通しでありますが、大阪湾の水質汚染は悪化をする一方だ、海岸は次々と埋め立てられる、ことに干がたのすぐ周辺が埋め立てをされる。当然に人の出入りも激しくなる、こういうことでは鳥類にとっては、もうすでに現在でも安住の地ではないと思うのです。さぞや生息しにくいと思われます。それがさらに埋め立てが進み、環境が破壊されますと、もういたたまれなくなって、いなくなるのではないか、渡り鳥も中継地として利用してきましたけれども、もう利用できなくなるのではないか、そういう見通しはどうでしょうか。
  197. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 計画どおり土地を接して埋め立てれば、そういうことになると思います。
  198. 木下元二

    ○木下委員 ここを生息地とするかわいい鳥たちを何とか保護してやりたいというのは、だれしも思う人情だと思うのですが、これに対して一体、どういう対策がとられてきたでしょうか。
  199. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 先ほど申し上げましたように、数少ない大阪湾の中の鳥類の生息できる干がたでございますから、ぜひそういう地域は保存し、残しておきたいということで、県の方を指導してまいっております。
  200. 木下元二

    ○木下委員 その保護対策でありますが、この干がたの地域を鳥獣保護及狩猟二関スル法律による鳥獣保護区に指定をされたいと思うのでありますが、その考えはありませんか。
  201. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 そういう考えで、この地域の保存を図っていきたいと考えております。
  202. 木下元二

    ○木下委員 県の方にも指導しておるというお話がありましたけれども、どうも県の方ははかばかしくないようであります。ひとつ、これは特別保護地区として指定していたただきたいと思うのです。鳥獣保護地区、そしてまた特別保護地区の設定は、施行規則十六条によりますと、「鳥獣の保護繁殖を図るため特に必要があるときは、」という要件のもとに、環境庁長官の所管にもなっておるわけであります。ぜひひとつ環境庁として指定をしていただきたい、こう思いますが、いかがでしょうか。
  203. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 埋め立ての計画が、そこの地域を保存できるような計画になれば、それでも目的は達せられるわけでございますが、しかし、いま先生のおっしゃるような方向で県を指導していただきたいということで、実は鳥獣保護地区の、全国で今後、指定をしていきたいという重要な地点の一つとして考えておるわけでございます。
  204. 木下元二

    ○木下委員 鳥たちが、大阪湾に残されたただ一つのこの生息地を失えば、もはや生息できなくなると思うのです。ことに大阪湾を経路にしておりました渡り鳥にとっては、当地が失われますと決定的な打撃を受けます。個体数や種類が激減することは目に見えております。この干がたは確かに狭いところでありますが大阪湾全体で見た場合、ただ一カ所残された鳥類の貴重な生息地として、その価値ははかり知れないものがあると私は思うのです。これは鳥類の保護ということにとどまらず、先ほども言われましたように、学術研究の上でも貴重だし、あるいはまた市民の一般観察や憩いの場としても大事であります。あるいはまた、日米の渡り鳥条約というのがありますが、この条約によりまして鳥類やあるいは「その環境に係る被害を防止するための方法を探求し、」「必要な措置をとるように努める。」ということが特にうたわれておるわけであります。この条約の取り決めを履践する上からも特別な措置が必要だと思うのです。ぜひとも特別保護区にされるように進めていただきたいと思います。長官、いかがでしょうか。
  205. 小沢辰男

    小沢国務大臣 よく検討いたします。
  206. 木下元二

    ○木下委員 どうも木で鼻をくくったような言われ方をしますが、もう少し実のある答弁をいただきたいのですよ。これは、検討と言いましてほうっておくと、もうだめになるのです。余り悠長な時間的余裕がないわけであります。埋め立てが進んで環境が破壊されてからでは、もう手おくれであります。そのときはもうすでに鳥類はおりません。一日も早く指定がされますように進めていただきたいと思います。
  207. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私はきょう、長官としては初めて、問題点をいまいろいろ質疑応答で聞いておりましたので、私はやはり三木さんの方針に基づいて、ここで言うたことは実行しなければいかぬのですから、慎重に答弁をしているわけでございまして、局長があなたに御答弁をしました趣旨に沿って検討すると申し上げているわけでございますから、御了承いただきたいと思うのです。
  208. 木下元二

    ○木下委員 これは重ねて申しますが、これまでは県に対して指導をしてきた。法的には県に任せるということではなくて、環境庁としてなし得ることなんですね。環境庁として権限がある。ですから、県に任せるということでなくて、私は環境庁としてこの問題を早急に検討をし、そして指定をしていただきたい、こう思うのですよ。
  209. 小沢辰男

    小沢国務大臣 それは法的にはおっしゃるとおりだと思いますが、行政というものは、やはり県と一体になってやるべきものでございますから、県の方によく指導をして目的を達成できるのか、あるいはそういう環境庁長官としての権限を発動しなければ目的が達成できないのか、その点はよく県ともやはり一体になってやっていかなければいけませんから、私は慎重な答弁をいたしておるわけでございまして、また聞いたばかりの問題ですから、私がやる以上は、私はやはり慎重に検討した上で決めたいと思います。
  210. 木下元二

    ○木下委員 もう時間がありませんので、ぜひやっていただきたいと思うのです。ひとつ宿題にしておきます。  次は姫路地区の埋め立てでありますが、ここも港湾地区としましては運輸省の所管でありますが、埋め立ての概要を、もう簡単で結構です。
  211. 服部経治

    ○服部説明員 ただいまお尋ねのございました姫路港に関連いたします埋め立ての話といたしましては、現在、関西電力が、この地域にございます関西電力の発電所で用いております重油を天然ガスに切りかえる必要があるという判断に基づきまして、そのLNGの貯蔵施設等を整備するための埋め立てを行いたいという意向を持っておるというように承知いたしております。
  212. 木下元二

    ○木下委員 それはこれからの問題ですね。それについては、何か県の方で来月の二日に関係官庁等を招致して、説明会と申しますか、そういったことをやるというふうに聞いているのですが、そういうことですか。
  213. 服部経治

    ○服部説明員 ただいま先生の申されたとおりでございます。
  214. 木下元二

    ○木下委員 それはこれからの埋め立ての問題なのですけれども、この港湾計画図によりますと、海岸線の相当区域がすでにこれまで埋め立てが進んでまいりました。埋め立てが完了いたしております。さらに広範囲に進みつつあるという状態ではないかと思うのです。これらの埋め立ても、臨時措置法の施行の時点で、すでに免許されていたということでしょうか。現在進行中の埋め立てですね。これは臨時措置法の施行の時点で免許がなされているという分ですか。
  215. 服部経治

    ○服部説明員 姫路港におきまして現在、進行中の埋め立ては、いずれも改正前の旧法によりまして手続がとられたものでございます。
  216. 木下元二

    ○木下委員 阪神間でも姫路地区でも、新しい埋め立てとして問題になっておるところは、瀬戸内海臨時措置法施行前に免許を得て工事が進んでいた分が、現に進行しておる、もしくは最近完成したというのがすべてであろうと思うのです。これから免許を得てという分は別といたしまして、この瀬戸内海法施行前に免許を得ている埋め立ての分、既免許分といってもいいと思います。これの関係の進行状況は、瀬戸内海沿岸全体といたしましてつかんでいられるでしょうか。つまり、どれだけ現在、完成しておるのか、進行中のものはどれだけあるのか、いかがですか。
  217. 服部経治

    ○服部説明員 先生がいまお尋ねになりました数字は、調べればすぐわかることだと思いますが、ちょっとただいま手元に数字がございませんので、後ほど、また御報告をさせていただきたいと思います。
  218. 木下元二

    ○木下委員 これは調べればということですが、私も前に伺ったことがあるのですが、関係府県別に完了したのはどこどこか、進行中はどこどこがあるかということはきちんとおつかみになっていないのじゃありませんか、環境庁あるいは運輸省も。環境庁はいかがですか。
  219. 大場敏行

    大場政府委員 つかんでおりません。
  220. 木下元二

    ○木下委員 環境庁がそれをつかんでいないというのでは困ると私は思うのです。これはどうしてつかんでいないのですか。
  221. 服部経治

    ○服部説明員 ただいまの先生のお尋ねの趣旨と全く合致するかどうか、ちょっと自信がございませんが、私どもいま手元に持っております数字は、昭和四十年から四十七年九月までの時点で造成されたもの及び四十七年九月の時点で造成中のものという数字は、いま手元に持っております。
  222. 木下元二

    ○木下委員 それはわかっていますよ。そうでなくて、瀬戸内海法の施行前にすでに免許を得ていた分です。それがどういうふうに進行しているか。あるいは工事が進行していない分もあるかもわかりません、あるいは工事がどんどん進行して完了した分、それは一体どのくらいにあるのか、あるいは進行中のものはどのくらいあるのか、そういう実情を把握していないということでしょう。この既免許分については環境庁は知らぬということでは、環境行政は行えないと思うのですよ。環境行政は今後の分だけやるのだということでは、私は困ると思うのです。これは既免許分でも、これから工事に着工するというものに対しては、アセスメントをやらせる必要があるのではないか。それからまた工事進行中のものでも、その工法に対して十分目を光らせて、公害問題の生じないようにしていくことは大切なことであります。たとえば西宮のように市議会が中止を要請して調査を求めるというふうな問題も起こっておるわけでありますから、そういうすでに免許を得てやっておる分は、環境庁は知らぬのだということでは、私は困ると思うのですよ。そうでしょう、いかがですか。
  223. 大場敏行

    大場政府委員 臨時措置法が施行された後の埋め立ての状況は、もちろん環境庁は把握しております。それ以前のすでに免許済みのものにつきまして、いまどういうような状態で進行しているのかあるいは進行していないのか、そういったことにつきましては、残念ながらいま手元に資料がございませんので、この段階では御答弁できません。しかし、いずれにいたしましてもそういった埋め立てが瀬戸内海の環境に与える影響は、かなり場所によって違いますが、あるわけでありますから、それについての慎重な配慮というものはもちろん必要でございましょう。しかし、それはすべて環境庁がもちろん目を光らせる必要はございますけれども、やはり一義的にはそれぞれの担当官庁、実施主体というものがやはり監視をし、気をつけ、配慮をすべきものと考えております。
  224. 木下元二

    ○木下委員 真に住民の立場に立った環境行政を遂行する上で、環境庁が既免許分の埋め立てについても、どしどし積極的に介入をしていくという姿勢が、私は大事だと思うのです。そのためにも、この埋め立ての実情というものは掌握をしておくべきだと思います。ひとつ臨時措置法の施行の時点で免許されていた埋め立て関係はどのくらいに上るか、これはわかっていられると思うのですが、そのうち現時点で完成したものの件数と面積、進行中のもの、これをひとつ府県別に明らかにして提出をいただきたいと思います。よろしいですか。
  225. 大場敏行

    大場政府委員 調べて御報告いたします。
  226. 木下元二

    ○木下委員 姫路の沖合いも、この港湾計画の図面によりますと、先ほどLNG基地の建設の計画を言われましたが、それ以外にずっと赤斜線で囲んだ海域がたくさんあるわけです。もう海岸線一帯がそうなんですよ。これは結局、将来の埋め立て計画のところなんですね。全域にわたって埋め立てをさらに拡張しようとしているのですよ。そういうことは運輸省あるいは環境庁は御承知ですか。
  227. 服部経治

    ○服部説明員 姫路港域の地先水面におきまして、兵庫県当局あるいは姫路市当局が、かなりの面積に上る埋め立ての構想を持っておるということは承知いたしております。
  228. 木下元二

    ○木下委員 海上保安庁に、ちょっと別の点を関連してお尋ねいたしますが、この瀬戸内海の深度の調査は、どういうふうにやっておるのでしょうか。
  229. 杉浦邦朗

    ○杉浦説明員 お答えいたします。  海上保安庁の水路部では、古い明治時代からでございますが、明治、大正、昭和へかけて、日本沿岸海域の水深調査をずっと継続しておりまして、瀬戸内海も当然その中に含まれておりまして、その調査の結果に基づきまして、海上交通安全上に必要な海図の整備がなされております。昭和の半ば、昭和二十六年ごろから測深技術が変わりまして、具体的に申しますと、おもりをひもにつけてはかる、いわゆるわれわれの方では錘測と言いますけれども、そういう方法から、音波を使って測深するという技術的な革新をやりました。したがいまして、瀬戸内海につきましても非常に重要な個所については新しい技術で再測いたしまして、海図の書きかえを行っております。
  230. 木下元二

    ○木下委員 海図に示された深度に変化が生じるようなことはあるのでしょうか、どうでしょうか。
  231. 杉浦邦朗

    ○杉浦説明員 いま申しましたように、音を使ってやります測量については、かなり精密な測量ができます。したがいまして、昔の資料、それからそういった音を使いまして測量した結果、その両者を比較しますと、やはりそこに何がしかの差が出てくるということを、われわれは承知しております。そういう水深の変化が生ずる個所の大部分は、海底にサンドウエーブが存在する海域でございまして、サンドウエーブが流れによって生成され、あるいは流れの状況によって多少消長する、あるいは移動するというような状況まで、われわれは把握しております。またそういったことで、サンドウエーブが存在する海域につきましては、特に航行船舶の安全を期する意味で、海図上にはそのような情報を表示いたしまして、安全を図っております。
  232. 木下元二

    ○木下委員 もう時間がありませんので、簡単に答弁願いたいのですが、たとえば鹿ノ瀬では、海図の上では十数メートルの深度であるのに、相当変化があるようなのです。そう大きくない船がここを通りますと、船のスクリューで海底の砂が舞い上がってくるというふうな証言が多々出ておるのです。これは、埋め立てによって海流に相当な変化が生じておる、それによって深度にも変化が生じておるということを示すものだと思うのです。こういうふうな鹿ノ瀬のあたりの現象、これはあなた方に報告が来ていますか、来ているかどうか一言でいいです。
  233. 杉浦邦朗

    ○杉浦説明員 お答えいたします。  鹿ノ瀬につきましては、昭和四十八年、一昨年ですか調査をやっておりまして、鹿ノ瀬ではなくて、鹿ノ瀬の南のいわゆる播磨灘の航路筋でございますけれども、航路筋の中でも部分的にはサンドウエーブが存在することを承知しております。それから鹿ノ瀬の北のところ、いわゆる明石海峡を出まして、東播磨港あるいは姫路港に入る船が通航する通称、播磨灘北航路と呼んでおりますけれども、この航路の中にも一部サンドウェーブが存在することを承知しております。
  234. 木下元二

    ○木下委員 スクリューで砂が舞い上がってくるというのを聞いておるのですか。
  235. 杉浦邦朗

    ○杉浦説明員 そういう話は現地から聞いております。
  236. 木下元二

    ○木下委員 タンカー座礁事件などが増加をしておるわけでありますが、六月十一日にも播磨灘の家島沖で小型タンカーが座礁しまして、廃油が流出いたしております。大型タンカーでも座礁事故を起こせば大変なことになります。ところが、鹿ノ瀬のように瀬戸内海の深度が、この海図の上のものから変化をしておるというということになりますと大問題です。いつ座礁事故が起こるかわかりません。一日も早く調査をしてもらいたいと思います。もう事故が起こってからでは遅い。直ちに、少なくとも問題海域だけでも重点的に調査をしていただきたいと思います。
  237. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 杉浦課長、簡潔に答弁してください。時間がありません。
  238. 杉浦邦朗

    ○杉浦説明員 これまでも、昭和三十八年以降、そういう内海の重要な航路筋につきましては調査を続けてまいっております。またサンドウエーブの存在が予想される海域についても、いろいろな聞き込みあるいは机上の調査によって推定をいたしまして、これも一昨年でございますが、かなり広範囲に調査をいたしました。なおまた、先生の方の御要請もございます。大事なことと思いますので、そのようなことで今後も検討し、必要な海域については調査を進めたいと考えております。
  239. 木下元二

    ○木下委員 もう時間がありませんので、最後に伺いますが、この瀬戸内海にこれ以上新規の大企模埋め立てば許してはならないと思うのです。ことに兵庫県の場合、これはもうほかの府県と比べて、数字を見てもらったらはっきりするのですが、これまでの埋め立ても非常に多いのです。瀬戸内海では一番多いのです。埋め立てが水質汚濁をもたらすばかりではないのです。いまも海上保安庁の方に質問をしまして明らかになりましたけれども、潮流にも変化をもたらすという現象が生まれております。これによって水深も変化を来しておる。事故が起これば大変なことになる。環境庁が新規の埋め立てに対しましては厳しくチェックをするといっても、阪神間でも新しい埋め立て計画がありますし、姫路地区でもLNG基地計画を初めといたしまして、いろいろとあるわけであります。臨時措置法ができましても、こういうふうな埋め立てをどんどん認めておったのでは、一向に浄化が進みません。汚染が進む一方であります。これらに対しまして、瀬戸内海を守り抜くという立場を堅持して、環境庁としてのチェック機能を十分に果たしていただきたい、いかがですか。
  240. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃるまでもなく、臨時措置法の命ずるところによって、私どもは原則的には考え方は全く同じでございまして、そういう姿勢で今後ともいきたいと考えております。
  241. 木下元二

    ○木下委員 そういうチェック機能を今後、必ず十分に果たしていかれるというふうに明言されたもの、こう受け取ってよろしゅうございますか。大事なことですから、これはほうっておけば本当に大変なことになるのです。
  242. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私が申し上げているのは、先生のお考え瀬戸内海環境保全臨時措置法の精神だと思っておりますから、そういう精神にのっとって、私どもは十分心して執行に当たりたいと考えておるわけでございます。
  243. 木下元二

    ○木下委員 終わります。
  244. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 坂口力君。
  245. 坂口力

    ○坂口委員 きょうは青森県の八戸市の問題を取り上げたいと思います。  長官も先日、青森県の方にお行きになりまして、いろいろお聞きになったようでございます。青森県の地方紙の報ずるところによりますと、大臣は八戸の公害の問題はまだ調査が不十分であるので、今後にまちたいというような意味のことを御発言になったということを、現地で昨日、聞いてまいりました。  まずお聞きしたいと思いますのは、現在の段階で環境庁の方が、八戸市の公害問題についてどの程度報告を受けられ、どのくらいの認識をお持ちになっているのか、その辺のところを、アウトラインだけで結構でございますから、ひとつお願いしたいと思います。
  246. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御質問は、八戸地域につきましての一般的な公害全部のことをカバーしておられるわけでございますが、八戸地域は、第六次の公害防止計画地域として、基本方針を昨年六月、策定したところでございます。御承知のように新産都市となっておりまして、現在そこでは大気汚染の問題、これは電力とか鉄鋼、非鉄金属、化学工業、化成工場等のものがございます。そういうことに起因する局地的な、かなり癖のある大気の汚染問題があるということと、また非常に道路が狭くて、そこのところに自動車の交通が最近非常にふえてきており、排気ガスの問題もあるということと、水質汚濁の方につきましては、御承知のようにここはそのような重化学工業以外に水産が非常に多うございますので、その方面からの水質汚濁の問題がある等のことを、県が調査いたします資料について承知しております。
  247. 坂口力

    ○坂口委員 実は昨日八戸市を訪れまして、いろいろ皆さん方からお聞きをしたわけでありますが、御承知のように昭和三十九年に新産都市になりまして、それから多くの工場ができましてから、いままで見られなかった、いわゆる大気汚染によるものと思われるような気管支ぜんそくを初めとする住民の人たちの疾病が、だんだんと多くなってきている、こういうことでございます。住民の皆さん方にお聞きをいたしますと、特に気管支ぜんそく等の病気を持たれた方は、大体数年前からこういうふうになったとおっしゃる方が一番多いようでございます。中には十年近く前からという方もちょいちょいございますし、また、昨年ぐらいから家の子供がなったとか、あるいは主人がなったというような方もございましたけれども、まず多くの方は大体五、六年ぐらい、昭和四十五年前後ぐらいのところから、ぜんそく様の症状あるいはまた鼻の調子が悪くなる、あるいは鼻血が出るとか、いろいろそういうふうな症状が出てきたということを訴えてお見えになるわけであります。  それから市の方にお邪魔しまして、いろいろ様子を聞きましたが、市の方はこの数年来、何とかしてほしいということを県の方に何度か陳情をしている、しかしながら、一向に事態が進んでいかないというようなことを言ってお見えになるわけです。市の方は、独自で昭和四十年ぐらいから大気汚染の観測等もやられてお見えになりまして、そのデータは県の方に示してある、こういうことでございます。県の方に参りまして、どうなっているかを聞きますと、県の方は最近になりましてようやく手をつけ始めたところである、県の方としては科学的な資料が不足しているので、今後これをまとめていきたいというようなお話であります。  市の方が調べられましたデータによりますと、最も大気汚染のひどい地域に第二魚市場というのがあるのですが、これが県の方としては初めごろのデータがない、四十六年ぐらいからしか県の方のデータは持っていないというので、その近くに測候所がございますが、そこのデータは早くからのものがあるので、第二魚市場の状態を測候所のデータから推測をして割り出したいという県の方の意見でございました。  しかしながら、八戸市には昭和四十年から医療対策協議会なるものが生まれまして、そうしてデータの整備が着々進められておるわけであります。いま私、手に持っております四冊のレポート、これは環境庁の方にもあるいはあったかもわかりませんし、今回いただいてまいりましたので差し上げましたが、かなり広範なデータが、医療対策協議会で、開業医の先生方によってまとめられているわけです。この中を見せていただきますと、測定の方法等は若干違いますけれども、昭和四十年ぐらいからSCにつきましての測定値等も出ているわけであります。県の方が非常にデータ等に乏しい、いままでの非常にひどかったときのデータはないのだとおっしゃるのは、いささか現実とは反しているように私は感じて帰ってまいりました。  そこで、きょうまだ差し上げたばかりのデータで、十分内容等を把握はしてお見えにならないかもしれませんけれども、現在ありますデータで、この八戸の中の非常に汚染された地域が、公害健康被害補償法地域指定にするためのデータとしては、あらあら十分あるのではないかというふうに思いますが、その点いかがでございますか。
  248. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生お話のございましたように、公害防止計画策定に当たりまして、県から私どもが提出を受けましたデータは、四十五年以降のデータでございます。そのデータの中におきましても、御指摘のあった第二魚市場、これはデータがまだ完全に年間平均を出すのに充足したデータではございませんので、これは即断しかねますが、年平均〇・〇五九PPmという数字がございました。そういうことで、ここの場所は非常に癖のある汚染で、冬の部分をとりますと、わりに高くなっていますが、少なくとも年平均で四十五年以降を見るからには、一部ひっかかるところはあるが、まだ条件にははまってこないということでございました。  先ほど先生がお示しになりました公害検診及び成人病検診関係の八戸市医師会と八戸地域医療対策協議会の資料、きょう午前中、岡本先生から一そろいいただきまして、まだ十分目は通しておりませんが、私どもが持っておりませんでした昭和四十年から四十五年までの資料がこの中に入っております。おのおのどういう関連になっているのか、先ほどから見ておるのですが、なかなか測定場所その他の点につきまして、十分、整合性のある判断はついておりませんが、これの中にはかなり高い汚染が、四十二年、三年、四年ごろにあったのではないかというように推察される資料もございますので、ひとつまた、その点はよく調べてみて、調査地域として適合するかどうかを最終的に決めたいと思っております。  なお、県の方からは環境庁の方に、本年に至りまして、二度ほどそのような要請がございましたことをつけ加えておきます。
  249. 坂口力

    ○坂口委員 患者さんの方は数年来、長い方はこの十年来、その苦しみを市あるいは県に訴え続けてお見えになったのです。何度言っても、らちが明かないので、もう言うのが疲れたというのが患者さん方の実情のようであります。ところが、市、県においては、どのような方法でこれを取り上げていったらいいのか、これを国の方に持っていったらいいのかということがよくわからないままで、今日までお見えになったという感じを、われわれは受けるわけであります。初めに市の方が亜硫酸ガスの測定をやってお見えになりました。これはいまおっしゃったように四十年から行われていたわけでありますが、その中で非常に濃度の厳しいところもあるわけであります。たとえば、私も地理的な関係を十分にのみ込めてはおりませんが、八戸に東市冷蔵というところがあるのですが、この場所はずば抜けて結果が悪いわけであります。ところが、市の方はそういうふうなデータを四十年から四十五年まで出しているわけでありますけれども、県の方は四十六年ぐらいから受け継いでおりますが、その最もひどい場所は全部、県の方は除いているわけであります。先ほどの魚市場等は、調子の悪いところを一つはめておりますけれども、非常にきついところをとっていないわけです。なぜ、これをとっていないのかということを現地で聞きましたら、ここは高いのがわかっているから除けといって、県はとらなかった、実はこういう話でありまして、どうも測定をしております場所等にも一考を要するのではないかというふうに、実はわれわれ感じてまいったわけであります。  そこで最近、八戸市における呼吸器障害有症率の調べがなされました。これは五十年の二月に報告をされております。これはいわゆるBMRC方式によりますアンケート調査でありますが、この結果を見せていただきますと、有症率は、男性の方が一〇・五、女性の方が三・三、平均いたしまして六・四という数字が出ております。対象調査地域内に三年以上お住みになっている四十歳から六十歳未満の方でありまして、男性千六百六十名、女性千七百二十二名、これは合計いたしまして三千三百八十二名になりますが、その中から無作為に男性三百七名、女性三百五十二名、合計六百五十九名を抽出して検査をされているわけであります。この検査は、いわゆるBMRC方式にのっとってきちっと行われているわけであります。この六・四という数字ですね、これだけからいきましても、これは指定地域に入る数字だと思いますが、いかがですか。
  250. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 先生の御指摘のデータは、千葉大学の吉田先生が関与されて、八戸地域医療対策協議会が昨年の秋以来おやりになって、この二月に発表された資料かというぐあいに存じております。私ども、まだ詳細に、何といいますか標準化をして比べるとか、そういう問題がございますので、最終的な結論としては申しかねますが、四十歳から六十歳までの年齢階層で持続性のせき、たんが六・四%といいますのは、補整をしてみなければわかりませんが、おそらく自然有症率の二倍ないし三倍のところに入ってくるのではないかというように、私どもは一応、表面的にはそのような感触を持っております。詳細はデータを見なければわかりますん。     〔委員長退席、島本委員長代理着席〕
  251. 坂口力

    ○坂口委員 後で、この調査報告書をお渡しをいたしますけれども、いまおっしゃいましたように喫煙によるもの、年齢によるもの等の補整はいたしてございます。そういう中で六・四という数字が出ているわけであります。この数字は、いま橋本部長がおっしゃいましたように、指定地域に十分入り得る一つの数字ではないかというふうに思うわけであります。  それからもう一つ、大気汚染のSCの濃度でありますが、これは検査方法等が一定のものがございませんので、ちょっとはっきりしたことを言いにくいわけでありますけれども、最初、市がやっておりましたのは、二酸化鉛法によりましてやっているわけでありますが、その数字を見ますと、先ほど申しました八戸東市冷蔵、この辺は非常に厳しい数字が出ているわけであります。これはいわゆる導電率法に換算をしますれば、かなりな数字すなわち〇・〇五をはるかに超えるであろう数字になっているわけであります。これらのレポートからかいま見ます数字によりますと、患者さんがこれだけたくさん出ているわけでありますから、これは言うまでもないわけでありますけれども、われわれは指定地域に入って当然の地域のように思うわけであります。そこで、これはいずれにいたしましても環境庁の方で再度煮詰めていただかなければならないと思うわけでありますが、先ほど申しましたいわゆる県がやっていない、しかも非常にきつい汚染の地域等もあるわけでありますので、どの地点を検査すべきかというようなこと、それから県や市が何をなすべきか、どういうふうな手順でどういうデータを集めるべきかというようなことを、早急に県、市に対して環境庁は指示される必要があると思う。初めてのことであり、どういうふうな手順を踏んで、どうしたらいいかということが、よくわかっていないように思うわけでありますが、その点、指示をされますか。
  252. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のございました、どの地点で何をどのようにはかって、どういう手続をとるかという点につきましては、私ども、きょうもいただいたデータがございますので、今年度の調査対象として取り上げるかどうかということを、県の要望もあって現在、検討の最中でございますが、さらに新しい資料が入りましたので、ひとつ十年ぐらい前にさかのぼったデータを一回、細かく全部洗って整理をし直してみて、対象地域として取り上げるかどうかということをやってみたいと考えております。  なお、御指摘のございました非常に高い濃度の地点という点でございますが、先ほど私はちょっと言い落としたかとも思いますが、四十年からのデータが一部にございまして、いずれの場所も年平均でとってまいりますと、これはひっかかる場所ではございません。ただこの地域は、海の方から吹いてくる風が癖のある汚染を局地へ起こすのと、もう一つは、西南の風が吹いた冬の時期に汚染を起こす。特に汚染のきついのは、冬の西南の風のときの場所が非常にきついということが出ておりまして、県の研究所の人々がやった予測等のデータも出ておりますので、そういうものを参考にしながら、県を十分指導してまいって、対象としてはまるならば、ことし調査地域に加えるということで条件を洗ってみたいというふうに考えております。
  253. 坂口力

    ○坂口委員 先ほど私も少し数字を言い落としましたが、先ほど申しました八戸東市冷蔵、ここで、これは単位はS03ミリグラム・パ一デーでございますが、最高値が一一・一一、最低値が四・三六という数字が出ております。この数字等を見ますと、かなり高い数字ではないかというふうに思うわけであります。  それで、ことしの調査の中に入れたいというお話でございますが、環境庁とされては今年のスケジュールの中で大体どういうスケジュールになりますか。これを大体、何月ごろ、おまとめになる予定でございますか。この八戸だけではなしに、ことしの調査のまとめは何月ごろ始めて何月ごろ終わられる予定でございますか。それに入れられるとすれば、八戸の問題は何月ごろ着手されますか。
  254. 竹中浩治

    ○竹中説明員 補償法の指定地域調査の問題でございますが、私ども四十九年度に調査をいたしました地域につきまして、現在、各県から報告を求め、これから分析に入ろうという段階でございます。それと並行して、あるいはそれの後になりますか、あるいはそれと若干、並行いたしまして、本年度の調査地域を決めるという作業を進める予定をいたしておりますが、県の事情もよく聞きまして、また先ほど来、先生お話しのデータ等もよく検討いたしまして、調査発動の要件に合致するということでございましたら、できるだけ早く調査地域に決めてスタートをするというふうにしたいと思っております。
  255. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、大体ことしの秋ぐらいに調査地域として現地を訪れられるなり、あるいは県の状態を聞かれるなりされるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  256. 竹中浩治

    ○竹中説明員 データを至急、点検をいたしまして、県ともよく協議いたし調査発動の要件に合致するということでございましたら、秋には調査地域として決定をしたい、このように考えております。
  257. 坂口力

    ○坂口委員 大臣に一言お聞きをしたいわけですが、大臣も先日、青森をお訪ねになりましたときに、恐らく八戸市の問題が出されたのであろうと思います。そのときにどれだけのデータが示されたかよくわかりませんが、私どもも県の関係の機関を訪れました感触では、非常にデータが不足しているということを盛んに言ってお見えになりましたので、恐らく大臣に対しましても、そういうことが言われたのではないかと思うわけです。そういう中で大臣の発言があったのではないかと私たちも考えますが、先ほどから議論をいたしておりますように、医対協という中で広範なデータがまとめられておりますし、それが十分に活用されていないと申しますか、それが取り上げられていないという気がするわけです。そういうことも含めまして、これは今後、早急に検討をしてもらわなければならないと思うわけでありますが、大臣、先日行かれたばかりで、また改めてというわけにもなかなかいきますまいと思いますが、適当な責任者をひとつ早急に現地に派遣をしていただいて、そして実情をよく調査をしていただいて、早急にひとつ手を打っていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  258. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私この前、参りましたのは、八戸は余り寄りませんで、青森だけ参りました。その前に私、行きましたときも、青森県の環境衛生問題全体で問題の個所をいろいろ調べていたのでありますが、大気汚染関係の問題では、八戸が確かに一つの大きな問題の地域であろうという認識を得てまいりました。たまたま地方選挙のときでございましたから、私は率直に言いますと、いろいろ支障もありますので、その点は十分検討して、データもまだ十分でないようだからというような発言をしたと思います。おっしゃるように八戸は新しい工業都市として非常に問題の多いところでございますから、いまのうちにこの大気汚染の問題等もしっかり取り組んでいただいた方がいいと思います。したがって国会等が終わりまして、若干、私どもの事務体制も落ちつけば、御要望によってだれか派遣しまして、よく指導するなり調査をするなりいたさせたい、かように考えます。
  259. 坂口力

    ○坂口委員 八戸の新産業都市はまだまだ今後のいろいろのスケジュールもあるようであります。その詳細について私は存じませんけれども、見聞するところによりますと、まだ埋め立て等も今後、行われる計画等もなきにしもあらずというようなことでございまして、このままでほっておきますと、公害はさらに広がる可能性が十分あるわけです。そういう意味で、この辺で十分な公害に対する反省をなすべきときがきているのではないかと思うわけであります。ただ、いま申しましたのは大気汚染だけの問題でございますけれども、このほかに、初めに橋本部長が言われましたように、水質汚濁の問題もございますし、それから騒音等の問題もあろうかと思います。しかしながら、ややもいたしますと、この公害の問題を積極的に取り上げることが、何か新しい新産都市の、これからさらに工場をふやしていこうというような政策にマイナスになるのではないかというような考え方が、地方自治体の中になきにしもあらずという感じを私自身は受けております。そういう意味大気汚染だけではなしに、水質汚濁、その他含めて、この新産都市の環境問題というものを積極的にひとつ進めていただきたいと思うわけであります。これは大臣がどうしても行っていただけないということであれば、かなりの人数の患者さんが出ていることもございますので、これはぜひ橋本部長に一度、現地を御視察いただいて、そして検討をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  260. 小沢辰男

    小沢国務大臣 必ず御要望に沿うようにいたしますが、ただ橋本部長が行くか、その前にいろいろな資料の準備等もさせなければ行けませんことでもございますし、その点はひとつ、しかるべき者を派遣するということに、現在のところはしておいていただきたいと思います。
  261. 坂口力

    ○坂口委員 それから各工場の公害防止の設備がどれだけ進んでいるかということを私たち危惧するわけであります。時間の関係上で私ども、多くの工場を視察することはできませんでしたけれども、一、二の工場にも寄ってまいりましたが、本年になりましてから、もうかなりの公害防止の予算を組んでお見えになるところもございます。いま、今年になってから、いままでの三倍ほどの公害の予算をお組みになるというところを見ますと、いままでの公害防止に対する予算が十分でなかったとも、逆にまた言えるのではないかと思うわけであります。そこで、八戸におきます各工場の公害防止の状況というものをどの程度、環境庁の方で把握してお見えになるか。もしもその辺の把握がございましたら、ひとつお教えいただきたいと思います。
  262. 鈴木晃

    ○鈴木説明員 八戸地区におきます大気汚染防止のために、どういった企業努力をやっているかという御趣旨の質問かと思いますけれども、最初にちょっと硫黄酸化物に対する国の規制の関係を申し上げますと、昭和四十五年二月にK値を二六・三と設定したわけでございますが、それを四十七年一月には一四・〇、それから四十九年四月には一一・七、それから五十年四月には八・七六、五年足らずの期間に、厳しさとしてはほぼ三分の一くらいの厳しさになったわけでございます。  こういった規制の強化に対応いたしまして、八戸地区におきます企業といたしましては、主として燃料の低硫黄化を中心に対処してきております。また一部、排煙脱硫設備の設置をしたところもございます。たとえば昨年の五月から、東北電力の八戸火力におきましては、四号機の排ガス約二分の一につきまして、排煙脱硫の装置を動かしております。それからまた一、二号気につきましては石炭の混焼だきでございますが、混焼率を三〇%から今後、一五%ぐらいに下げていくという予定を立てております。それから八戸製練の小さなボイラーでございますが、これも排煙脱硫が一基ついております。それから今後、計画中のものといたしましては、三菱製紙が自家発電のボイラーに対しまして約二十二万ノルマル立米パーアワーの排煙脱硫装置を設置すべく現在、工事中でございます。それからなお、まだ工事にはかかっておりませんけれども、太平洋金属八戸工場におきましては、排煙脱硫装置を設置する計画を持っているようでございます。
  263. 坂口力

    ○坂口委員 個々には、いまおっしゃったような問題も進んでいるのであろうと思いますが、これからまた新しく工場等ができるということになりますと、総量規制の問題をからめて考えていかなければならないわけでありますし、ひとつ積極的に状況を把握をしていただいて、そしてさらに一層、この公害防止のための指導をしていただきたいと思うわけです。その点をお願いしておきたいと思うわけであります。  それから先ほどもう一つだけデータで言い落としましたが、小学校の生徒に対するいろいろなアンケート調査等も出ておりますが、対照の地域に比べますと、かなりせきやたんの状態というものが多くなっている。そしてこの一、二年の間に、小学校の児童、生徒の中から、かなりのぜんそく患者も出てきている。大気汚染の面からいきますとSCは、この二、三年だんだんと減ってきているような数字になっておりますけれども、患者発生の方は、新しいのがかなり出てきているというような結果も出ておりますので、単にSCだけに限定をせずに広い角度から、ひとつ検討をお願いをしまして、終わりにしたいと思います。最後にひとつ、もう一度、大臣の決意をお聞きをしまして、終わりにしたいと思います。
  264. 小沢辰男

    小沢国務大臣 地方都市の、特に新しい産業都市の環境問題については、十分関心を持たなければいけませんし、また一方、現実にはいろいろな面で、県も当該市町村もおくれている面もございますから、あらかじめ健康被害を防止する意味におきましても、十分関心を持っていかなければなりません。     〔島本委員長代理退席、委員長着席〕 そういう意味で、私も機会があればもちろん参りたいと思いますが、まずとりあえず、先ほど言いましたように十分な指導と調査ができるような意味において、係官を派遣いたしまして県も指導し、かつ八戸市の各事業所あるいは市当局も十分指導いたしまして、調査もしまして、その結果で、できるだけ事前に、ひとつ他の大都市のような状況にならぬように配慮をいたしまして、指導をいたしたい。この点は確かにどうも六大都市のいろいろな問題等に追われておりまして、地方都市が少しおくれているような感じもいたしますので、十分、頂門の一針として私ども心がけてまいります。
  265. 坂口力

    ○坂口委員 もう一つだけ、恐れ入ります。  いま大臣のお言葉の中に、でき得れば私もというような発言がございましたが、これは大臣に一度行っていただければ、それにこしたことがないわけであります。ひとつ今度は選挙ではなしに、八戸市を本当に公害の面から見るという立場から、でき得れば大臣に一度訪ねていただきたいと思います。またうっかりしておりますと選挙がありまして、選挙のときに行かれるのではいけませんので、ひとつ選挙でないうちに、できれば国会が明きましたような時点で行っていただける機会があれば、お願いをしたいと思いますが、機会がございましたらお願いします。もう一言だけ。
  266. 小沢辰男

    小沢国務大臣 何とか機会を得まして、選挙でないときに、この問題で参りたいと思います。
  267. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。
  268. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 岡本富夫君。
  269. 岡本富夫

    ○岡本委員 ただいま坂口委員から御質問がありましたが、実は私も一緒に夜行で行って、夜行で帰ってきたのですが、この八戸地域は昭和四十四年に私が公害の総点検の一環として一遍、行ったことがあるのです。それ以後、当委員会でも前の古寺委員が取り上げて、相当何遍も要望したことがある。しかしその後いままでほってあった。これは実は一つの問題は、市の方は非常に積極的なんですけれども、県の方が非常に腰が重い。それはどういうわけかと申しますと、やはり県で公害認定を受けるいろいろな手続、あるいはそういうような問題について、環境庁との間にはっきりしたことができてなかったのではないか。お聞きすると、最近になって二回ほど見えた。というのは、広瀬という、もと環境庁の水質保全局にいた人が向こうにいった、それから厚生省からやはり部長がいったということで、国のパイプができたということですから、非常にテンポがのろかったわけです。その点について環境庁としても非常に把握ができなかったのじゃないかと思いますけれども、患者の皆さんにお会いしますと、もう、そう悠長なことは言っておれない。中には、大坪イクさんという方にお会いしましたが、これは主人も、それから子供も皆ぜんそくで、注射を打っていたけれども、注射が効かなくなると点滴で鼻を押さえる、医者からは余り使ってはいけません、これは間違うと命取りになるのだからと言われている。また生命保険に入ったけれども、三月ぐらいでもう返されておる。主人は医者代だけ働いてくるというのですね。とにかくお医者代だけ働いてこなければしょうがない、だから非常に生活が困窮しておる、こういうようなことでありましたし、また、小児ぜんそくが昨年から次々と出ておるのです。四歳と一歳の子供。  こういうように一つ一つ聞いておりますと、これはとても悠長に、これから秋過ぎてからというようなことを言っておれるようには考えられないですね。それで人数も、これは小中野ぜんそくというのですか、その付近は五百世帯あったというのです。それがしんぼうできなくなって、少しずつ減って、いまは二百五十世帯になったということです。ですから人数も非常に少ないわけですから、特別に早くこの地域の認定をして救済をすることが、これまでほっといたというのは大きなミスでありますから、ひとつ大事であると私は思うのです。  そこで、環境庁の係の方といろいろ相談しますと、有症率を検討するというお話でありますし、いま橋本部長も検討するということだったが、これは千葉大学医学部の吉明亮教授ですね、この先生はいままで富士の地域の指定や、あるいは川崎の指定を、環境庁の指示を受けてやられた方です。その前に医師会が四十五年からずっとデータを出しておるわけです。それと、きちっと一致するわけですよね。ですから、これから検討いたしましてということですが、有症率の上ではもう検討の必要はないのじゃないか、こういうように私は考えられるのですが、いかがですか。
  270. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 先ほどいろいろおしかりがございましたが、最初に、先ほど御答弁いたしましたように、この公害防止計画の指定地域として、四十八年に県も非常にかっちり調査をしまして、その中で健康被害の問題があるということで、昨年の六月に公害防止計画の基本方針として指示し、その中に健康被害対策も取り上げておったという点だけは、ひとつ御理解をお願いいたしたいと思います。  それから、先ほど申されました吉田先生は、ずっと私どももお願いいたしております先生でございまして、これは全体のフルレポートを、私自身はまだ拝見しておりませんのであのように申し上げたわけでございますが、やはり指定地域にする場合に、国の条件にぴったり合った調査であるかどうかということは、これは吉田先生御自身も関与されますが、いろいろ地元の方に全部協力をしていただいてやっていきます場合に、完全に比較できるかどうかということは、地域指定の場合の調査の一つの大きな条件になっておりますので、私は先ほどのように申し上げたわけでございます。やはりすべての指定地域の場合に、国の調査をきっちり入れて、完全に手を合わせてやるということになっておりますので、私ども調査地域に当てはまるということであれば、できるだけ早く進めていきたいとは思っておりますが、その点は法律としての制度の問題もありますので、ひとつ御理解をお願いしたいと思います。
  271. 岡本富夫

    ○岡本委員 それから昨年ですが、山本公害保健課長が行っているのですよ。そして医師会のこのレポートをみんな見まして、りっぱなものだ、りっぱなものだとほめて、そのまま厚生省にいっちゃったわけです。これは、医師会の皆さんたちに会いましても、ほとんど自費で、少し市から補助金が出ておりますけれども、これだけ大ぜいの苦しんでいる姿を見たら、何とかして救わなければならぬという熱意でもってやっているわけですよね。ですから、これはこういう専門家がやっておるわけでありますし、しかも吉田先生という権威者がいる。この吉田先生も、どちらかというとその意気に感じて、プライベートでもってこれだけのことをやっておるわけです。ですから、これは一番いい参考のデータになると私は思います。  次に有症率と、もう一つは大気汚染の濃度の問題ですけれども、県の方では四十六年からしか出ておりませんから、その前の過去四十年からの分を七月じゅうに県できちんとまとめて、まあ推定にはなりますけれども、この推定の根拠はありますから、環境庁の方に出します、こう言うておりました。ですから、それが出てきた時点で早速、検討を開始してもらいたいと私は思うのです。先ほど課長だったですね、ことしの中に入るかどうか、後回しになるというようなけしからぬことを言う。ですから、ことしの中に入れて、それですぐにやってもらわなければならないと私は思うのです。私、患者の皆さんに、来たからちょっといらっしゃいと言ったら、わあっと集まってきて、もうあれですよ、あしたからやれというようなことでこっちまでしかられてしまった。何遍言うても何遍言うてもやってくれないが、どうするのですか、医者代だけでもかせがなければいかぬのに、きょうも休んでしまってというようなことを言って、相当なあれでしたがね。ですから、私はいまの答弁を聞いておって、もうしんぼうできなくなったので、もう一度強く申し上げておるわけですけれども、本当のことを申しますと長官、そういうような現状なのです。現地の方からは大分前から一遍、調査に来い、調査に来いと言われておったのですが、なかなか行けなくて、きのう二人で行ったわけですがね。ですから、もう少し前向きの答弁をもらわないと、これは話になりませんね。いかがですか。
  272. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先生は専門家でいらっしゃいますから、よく知っておられるように、公害健康被害補償法に基づく地域指定をやらなければならぬわけでございますから、その地域指定をやる前に、県と国で調査方法についてもきっちり一致した調査をやって、そのデータをもとにして有症率と汚染の状況等を両方見て、それで、このものは指定にできるとか、できないとかという一つの定型化された制度でございますから、まず調査をやらなければいかぬわけでございますので、先ほど来、申し上げていますように県を指導し、市を指導しまして十分調査をやって、そのデータをもとにして決定をさしていただきたい。それ以外には、私どもはこの法律の施行をやる行政官でございますから、先生方のような政治的な判断で、もうすぐやらなければいかぬ、じゃやろうじゃないかというわけにはなかなかいかないわけでございます。その点だけはひとつ御理解をいただきたいわけでございます。
  273. 岡本富夫

    ○岡本委員 長官、検討しなければいかぬということはよくわかります。そして法律に合わしたようにしないと、ぐあいが悪いということもわかるのです。ところが、県から国の方に持ってくるのを待っているけれども、私らが行っただけで、新しいいろいろな資料が出てくるわけでしょう。この風向のいろいろな資料ももらったのです。これも環境庁にはないわけです。そういうことを考えますと、環境庁主導型というか、県を育成して、それで県の方から資料をとる、こういうものがないから持ってこいというように。県の方では何かこう、環境庁に持っていくのをびくびくしておるような感じですよ。私どもが行って出せ出せ言うと、そろそろ出してくるというような状態です。こんなことでは患者はどうなりますか。それを言っているわけです。ですからいま坂口さんも言うように長官に一遍出向いていただきたい。それは、長官が行ったらぱっと、あした指定というようなことはできませんよ。これはわかりますよ。しかし、長官が行くと、これもあります、これもありますと、きっと出てきます。向こうでは大体、完備してきておるのです、次々と。これが環境庁に、東京まで出てきてないということは、非常に環境庁の敷居が高いのか、それともなるべく出してくるなという指示ではないだろうと思うのですけれども、そこらが私は非常に問題だろうと思うのです。また、あなた行って変なことを言ってきているわけですから、よけい向こうも出しにくいわけですよ。中身を見るとそうではないわけですけれども地元の新聞の見出しを見ますと、帰ったら環境庁長官、一遍とっちめなければならぬと思っていたのです。しかし、それはそれとして、いま坂口さんから話がありましたように、できるだけ早い機会に行っていただいて、向こうから全部出させて、すぐ検討していく。できればことしの次の指定の中に入れて検討をしていただく、こういうようにしていただきたい。これを特に要求したいと思うのですが、長官、そういう決意はいかがですか。
  274. 小沢辰男

    小沢国務大臣 県の部長も、この問題については十分知識と経験のある人で、たしか厚生省から直接いっておりますから、早急に指導いたしまして、私どもの方としてはできるだけの措置を急いでとりたいと思います。私もなかなか、ある市の問題だけで出かけるということも、忙しくてまだ水俣にも行けないような状況でございますから、はっきりお約束できませんが、何か機会がありましたら、ぜひ参りたい。その辺で、きょうのところはお許しをいただきたいと思います。
  275. 岡本富夫

    ○岡本委員 あれはいつでしたか、岩手県の自然保護のあの大会にはお行きになるでしょうから、大体あのところが一番近くていいのじゃないですか。だから、ただ市の問題だけではというようなことを言わずに行ってほしいのです。本当に患者の姿を見ますと、薬代だけかせぎに行っておる。市の方で調査しますと、そんなに長く入院はしておりませんと言うが、そんなに医者にかかるお金がないのですよ。そういうところが私は非常に問題だと思ったのですね。ですから、このままにしておきますと、四日市のように自殺者が出ますよ。おどかすのじゃないけれども、そういうふうに感じて帰りました。だから大体八月ごろということで予定してよろしいでしょうか。青森県でお待ちしておりますから、八月ごろならよろしゅうございましょうか。
  276. 小沢辰男

    小沢国務大臣 いま私の頭の中にありましたのも、先生のおっしゃる例の自然公園大会がございます。宮古市ですか、盛岡から海岸の方へずっと二時間ばかり行ったところのようでございます。ところが、金曜日のちょうど閣議の日なものですから、了解を得なければいけません。もし総理や何かの了解を得れば、前もって言いまして一日寄ってから、そこへ行くというようなことも可能かと思いますが、ちょうど閣議の日にぶつかりますから、果たして行けるかどうかわかりませんけれども、その辺のところ、いろいろな行政なり政治の日程の都合でございますが、いずれにしても、三沢まで飛行機ですぐですから、いまはっきりいっと言いませんが、ひとつ参ってみたいと思っております。
  277. 岡本富夫

    ○岡本委員 では、良識ある環境庁長官の行動をお待ちしております。  そこで次に、公害健康被害補償法、この成立を見たときに、私どもはなお不十分だからということで一応、反対をいたしましたが、その中で不十分なのは、この認定基準の中に窒素酸化物がまだ入ってないのです。これはいつごろ入れるつもりか。環境庁の方の係の方に聞きますと、近いうちにというような話がありましたが、すでに自動車の重量税の中から基金も取っているわけですから、早くこの窒素酸化物の公害被害補償をする基準を決めていただきたいと思うのです。いかがですか。
  278. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生御指摘の窒素酸化物の問題につきましては、昨年の中央公害対策審議会の環境保健部会の答申の中でも、できるだけ急いでその条件を設定すべきであるというぐあいに指摘をされております。この点につきまして、昨年度の末から本年度にかけまして、約五千万近くの調査費をもちまして、一つは、川崎の東名高速道路の現在、汚染の問題のある場所、もう一つは、兵庫県になりますが、国道四十三号線の沿線で、従来の工場汚染の問題は余りないが自動車公害の問題のある場所、その二つの場所におきまして、大気汚染影響という観点をよく調べようということで、現在、鋭意この地元の自治体と関係の学者の先生と寄っていただいて、調査の最終チェックをいまやっているところでございまして、この秋の初めには恐らく着手できるのではないかということを思っております。まだ具体的なところまで決定しておりませんが、相当、何日も準備を重ねております。  それからもう一点の方は、これは窒素酸化物の問題が起こるということで、昭和四十五年から五年計画で複合大気汚染影響調査ということをやっておりまして、それが四十九年度で完了しております。まだ私どもの方には四十九年度の最終のものは出てまいっておりませんが、この五年間にわたりまして浮遊粉じん、SO2、窒素酸化物、この三つの汚染因子が一体どのようにお互いのウェートを持ちながら関連をして、有症率等を構成しておるかという解析をいたすのが、この五年間の調査のねらいでございまして、この解析は非常に大々的な解析になりますので、五十年度、一年間かけまして、この調査解析をしようということにいたしております。  その両者の成績がはっきり私どもの手に入りますのは、恐らく来年の初夏もしくは夏ごろではないかと思われますので、それを終えますと、もしも可能であれば窒素酸化物と汚染の影響をかなり数量化することができますので、それによって窒素酸化物の指定基準ができるのではないかというぐあいに、私どもは期待しておるところでございます。
  279. 岡本富夫

    ○岡本委員 では、それはもうしばらく待ちましょう。四十五年からやっていて、なかなかゆっくりやっているわけですから、もう少しスピードを上げてやっていただきたいと思います。  それから次は、私どもが要求いたしたことでありますけれども、鼻炎です。これは四十五年の公害国会の前ですから四十四年ですね。これは尼崎も、あるいは四日市も川崎もそうですけれども、全国的に大気汚染のところに非常に鼻炎が多いわけです。特にまた学童に多いわけでございますので、この鼻炎も指定疾病の中に入れていただきたいということで要求をいたしてありましたが、その後どうなったか。きのうも実は八戸に参りまして、専門の医者に聞きますと、鼻炎は大気汚染による鼻炎とそうでない鼻炎、これは明らかにわかるのだということを言っておりました。したがって、大気汚染による鼻炎ということが明らかにわかれば、これはこの指定疾病の中に入れてよいのではないか、私はこういうように考えるのですが、この拡大はいかが考えていらっしゃるか。また、光化学スモッグによるところの目の痛み、これは疾病とはいきませんけれども、こういう面の救済、これをどうするのか、この二点についてお聞きしたい。
  280. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 まず、鼻炎の問題でございますが、先生、最初に仰せられました、四十四年に指摘をしたという点について、後どうなったかと申しますと、一つはあのころも問題がございまして、大阪の西淀と四日市でやはり耳鼻咽喉科の問題があるということで、実は両方の研究者をクロスしながら、分けられるかどうかということを研究でやってもらったことがございます。それをやってみますと、どうにも診断やいろいろなものがまだどうも一定していない。それからなかなか結論が得られないということでございまして、昨年九月に出されました中央公害対策審議会の指定疾病に関する部分の答申の中で、目、耳、鼻、咽喉等の炎症性の疾患または症状、これは将来、指定疾病にもしもできれば指定すべきものであるということで取り上げられておりまして、特にその中で急性のものは何とも無理でございますが、慢性で非常に治りにくい形のものがある。それを分けなければならないという議論が出ております。昨年からことしにかけての学会で報告がございますので、その学会報告をちゃんと集めたいということと、もう一つは、きょう朝、先生からいただきました八戸の医療対策協議会の資料の中で、私、一番これは貴重だと思いますのは、耳鼻咽喉科の方からの検診を、先生が非常に手を合わせてやっておられるということでありまして、あれもきわめて貴重な資料になるのではないかと思っております。国会が終わりましたならば、専門家の先生に一度お集まりを願って、学会の報告あるいは八戸の資料等を合わせまして、指定疾病としての問題を検討していただきたい。もしも、それでまとまるならば指定疾病になりますし、検討を要するものは、もうしばらく研究を要するかもしれませんけれども、非常に重要な候補として挙げておるわけでございます。  それから光化学スモッグの方の目や何かの刺激を補償法で取り上げるということ、これはやはりどう見ても無理でございまして、たとえば川崎市等、学校保健の中で目を洗ったり何かする、あるいは学校保健室の一つの問題として取り上げておりまして、また承るところによりますと、文部省の学校保健の中でも、光化学スモッグ時の学校保健の対策ということを、予算を組んでやっておられるということを私、実は昨日初めて知ったわけですが、そこらとよく関連をとってやりたいというふうに思っております。もちろんこれは疾病として、もしも、ちゃんと確立すれば、指定疾病に加えるべきであるということでございますが、現在の段階では、まだやはり症状がきわめて一過性、重症症状につきましてはまだ解明が非常にはっきりしないというところもございまして、補償法としてすぐ取り上げることは無理でございますが、大事な候補として考えております。
  281. 岡本富夫

    ○岡本委員 長官、実はきのうも八戸の医師会の先生とお会いしたのですが、この耳鼻咽喉科の先生は、厚生省の環衛局長ですか、横田さんの親戚の方でございまして、非常に詳しくいろいろと教えてもらったわけです。したがって、これは明らかに分けることができるのだ。田舎の方に行きますと鼻詰まりの子供が多いのですけれども、それとは全然違うという非常に詳しい説明をしていただいたわけです。われわれも、坂口先生は医者ですからね。古寺さんもおりまして、医者ですから非常によくわかって、私はよくわからぬけれども。しかし、そうして明らかに分けることができるということを、専門の医者が、もう一人の方と二人で声をそろえて言っておりました。ですから、ひとつこれはぜひ指定疾病の中に入れて、そういった人たちを救っていくということが大切であろうと思います。  それから光化学スモッグは、やはり自動車の排気ガスというのが非常に大きな寄与度をしているわけです。ですから、自動車の排気ガスによって起こった光化学スモッグによって起こった被害というものは、やはり原因がそこでありますから、学校の保健体育ですか、何というのですか、そっちの方からとは全然原因が違うわけですから、これはきょうはあれですが、ひとつもう一度検討していただいて、やはり大体、被害を与えた方から補償するのが普通ですからね。ほかから補償する、あるいは文部省の金も国民の税金ですから、全然別の方から持ってくるのは、どうも私はもう一つ、常識的に考えても余り感心しない、こう思うのです。ですから、これはひとつ検討をお願いしておきます。  それから最後に、公害健康被害補償の金額ですね。これが十八歳未満の者で男子が四万六千円、女子が四万七千三百円。ここは女子の方が多い。ところが、二十五歳から三十歳未満、これが男子が十万五百円、女子が六万二千百円。こういうように、同じように公害によって病気になりながら、被害を受けながら、この金額が違うというのは、いま国際婦人年で非常にウーマンパワーといいますか、私もこの間、わが党には婦人がいないので婦人にかわって、ミニスカートははきませんでしたけれども、やったわけですがね。きょうの裁判の判例を見ましても、定年も男女が別であるというのはおかしいというような判例で、同一定年にしなさいというような判例も出ているわけです。したがって、私は、この公害によるところの健康被害の補償も、やはり男女差別といいますか、これがあるのはどうもおかしい。これは各国から来ても、これを見て、えらく日本は婦人を優遇しないのだ、差別しているのだというようにとられるところなのです。これは政治的な配慮ですから、長官、ひとつあなたの方で今後これを検討なさいますか。
  282. 小沢辰男

    小沢国務大臣 これは私は検討できないのですよ。というのは、平均賃金を基礎にしておりますから、平均賃金の方でやっていただかぬといかぬので、私の方でそれを直すわけにはいかないのです。ですから、その点は、一般的にひとつ労働条件の改善というものの方でやっていただかなければいかぬわけでございます。
  283. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは「環境六法」と申しまして環境庁から出ておりまして、この告示は、公害健康被害補償法第二十六条第二項及び公害健康被害補償法施行令第十二条の規定に基づく基礎月額と書いてあるのです。これは環境庁の告示になっておるわけでして、四十九年八月三十一日環境庁告示第四十五号ということになっておりまして、これは労働大臣から出てないように思うのでありますので、やはりあなたの方で検討しませんとできないでしょう。これは労働大臣から出ているということだったら、また向こうの方にここへ来てもらいますが、どうもこれを見ますと、日本語を見ますと、環境庁の方からというふうに見えるわけでありますが、そうではないのでございましょうか。
  284. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私の方でやるとすれば男女平均賃金でやらなければいけない。そうすると、男子の方がうんと下がってきます。これはやはり実態の平均賃金が差があるから、そういうことになるのですから、この根元を何とかしていただかぬと、これは私の方ではどうにもなりません。その点はひとつ、この種の補償法の補償のとり方、これは裁判でもやはり平均賃金をとってやっておるわけでございますから、四日市の例を見ましても、他のいろいろな裁判の例を見ましてもそうなんですから、やはり賃金の方で解決が徐々にできませんと、なかなかうまくいかないわけでございます。
  285. 岡本富夫

    ○岡本委員 いままでこの根拠が平均賃金あるいは賃金を根拠にしていらっしゃるわけです。それで、これを賃金を根拠にせずに、補償ということを根拠にいたした場合ですと、私はこれは検討の余地があろうと思うのです。あなたの方のいまの告示を出しておる根拠が、すなわち賃金になっているわけです。この根拠を変えれば、これは男女同権のところへいくわけですから、その点は一遍、検討の余地があるであろう、私はこういうふうに考えるのですが、いかがでありましょう。
  286. 小沢辰男

    小沢国務大臣 やはり法律上、補償の性格の問題だろうと思うのです。この法律の補償の性格から見ますと、賃金を基準にして考えなければならない、そういうことでございますから、賃金と別個のものをここへ持ってくるということは、いまのところ、これはなかなか困難ではなかろうかと思います。御意見でございますから、なおわれわれも勉強しますけれども
  287. 岡本富夫

    ○岡本委員 私は、根拠としましては、被害の補償ですから賠償みたいなものだと思うのです。自動車事故の保険、あれを見ておりますと、御婦人の方であろうと男の方であろうと、死亡すれば今度は千五百万ですか、前は五百万だった。その前は三百万だった。やかましいこと言ってとうとう上がったのですが、そういう考え方を加味してくれば、このあたりも検討の余地があるであろう。こういうように賠償というところから考えますと、根拠を少し変えてくるということを、これはいまそこで相談しても、なかなか見当がつかぬだろうと思いますので、要求だけいたしまして、きょうは終わります。
  288. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 次回は、来る七月一日火曜日、午前十時理事会、午前十一時委員会を開会することととし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十三分散会