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1975-05-23 第75回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年五月二十三日(金曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 渡辺 惣蔵君    理事 田中  覚君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 藤本 孝雄君    理事 島本 虎三君 理事 土井たか子君    理事 木下 元二君       坂本三十次君    葉梨 信行君       八田 貞義君    渡辺 栄一君       岩垂寿喜男君    角屋堅次郎君       斉藤 正男君    多田 光雄君       米原  昶君    岡本 富夫君       折小野良一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君  出席政府委員         北海道開発政務         次官      志村 愛子君         北海道開発庁総         務監理官    秋吉 良雄君         環境政務次官  橋本 繁蔵君         環境庁長官官房         長       信澤  清君         環境庁企画調整         局長      城戸 謙次君         環境庁自然保護         局長      柳瀬 孝吉君         環境庁大気保全         局長      春日  斉君         環境庁水質保全         局長      大場 敏彦君         厚生省環境衛生         局長      石丸 隆治君         林野庁長官   松形 祐堯君         運輸省鉄道監督         局長      後藤 茂也君  委員外出席者         水産庁研究開発         部長      佐々木輝夫君         建設省都市局下         水道部長    久保  赳君         日本国有鉄道総         裁       藤井松太郎君         日本国有鉄道常         務理事     内田 隆滋君         日本国有鉄道常         務理事     加賀谷徳治君         日本国有鉄道常         務理事     伊江 朝雄君         日本国有鉄道技         術開発室副技師         長       坂  芳雄君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十三日  辞任         補欠選任   阿部喜男君     斉藤 正男君   米原  昶君     多田 光雄君 同日  辞任         補欠選任   斉藤 正男君     阿部喜男君   多田 光雄君     米原  昶君     ――――――――――――― 五月十九日  富士見丘小学校に隣接する中央高速道路公害  対策に関する請願松本善明紹介)(第三〇  九一号) 同月二十日  中央高速道路三鷹料金所周辺公害対策に関す  る請願長谷川正三紹介)(第三一五三号)  同(福田篤泰紹介)(第三一五四号)  同(大野潔紹介)(第三三五七号)  同(土橋一吉紹介)(第三三五八号)  五十一年度自動車排出ガス規制緩和に関する  請願渡辺武三紹介)(第三一五五号)  トラックの排出ガス規制緩和に関する請願外一  件(渡辺武三紹介)(第三一五六号)  梯川流域カドミウム汚染防止対策に関する請  願(森喜朗紹介)(第三二六五号)  五十一年度自動車排出ガス規制緩和に関する請  願(菅野和太郎紹介)(第三四一二号)  同(藤本孝雄紹介)(第三四一三号)  五十一年度自動車排出ガス規制緩和に関する  請願石井一紹介)(第三四一四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月二十日  自動車排出ガス五十一年度規制告示の再検討に  関する陳情書(第  三六五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公害対策並びに環境保全に関する件(新幹線騒  音問題等)      ――――◇―――――
  2. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件、特に新幹線騒音問題について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  3. 林義郎

    ○林(義)委員 新幹線騒音問題につきましては、当公害対策並びに環境保全特別委員会で、去る五月十六日、参考人八人をお招きいたしまして、質疑をいたしたわけであります。その質疑に先立ちまして、各参考人から意見を聞いたわけでございますが、私がその印象を率直に申し上げますと、もう少しきつい基準を考えるべきであるという御意見の方もありました。それから、いまの基準で十分であるし、また現在、暫定基準としてつくられているところの基準でやっていいのではないかという御意見もありましたし、各種各様の御意見があったわけであります。私は、この問題は、参考人方々意見が非常に分かれておりますのと同じように、非常に国民的な合意が得られにくい問題だろう、こう思うのであります。  そこで、環境庁にまずお尋ねしたいのですが、環境庁は、この新幹線騒音の問題につきまして、環境基準というものを諮問されたのか、中央公害対策審議会に対してどういう諮問をされたのか。ちょっとそこを正確にお答えいただきたいと思うのであります。
  4. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私の方の諮問内容を申し上げますと、特殊騒音に係る環境基準設定に当たっての基本原則基準値測定方法、その他環境基準の一環として定める事項及び環境保全上緊急を要する航空機騒音対策についての当面の措置を講ずる場合における、よるべき指針はいかにあるべきか。こういうことにつきまして実は中公審意見を問う、こういう形になっておるわけでございます。それを受けまして中公審では、騒音振動部会特殊騒音専門委員会を設けて、御検討をいただいておる、こういうことでございます。
  5. 林義郎

    ○林(義)委員 そういたしますと、従来たとえばNOxの基準であるとか、その他の基準でいろいろと問題になりましたようなときとは、若干諮問の形が変わっているというように理解をしてよろしいのかどうかであります。というのは、私の記憶では、カドミであるとか砒素であるとかというときには、環境基準そのものを幾らにするかというふうなことについての御諮問であったように思っておるのです。ところが、今度いろいろと、環境基準及びそれを達成するためのいろいろな諸問題、よるべき総合的な指針云々という、非常に広い諮問をしておられるというのは、今回新しいのではないかと思いますが、その他の基準をつくるときの諮問と、今回の基準をつくるときの諮問が、形として違っているのかどうか。その辺につきまして、これは大臣でなくて結構でございますから、事務当局の方からでもお答えいただきたいと思います。
  6. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私、着任前の従来のことはよくわかりませんが、どうもいろいろな形の諮問があるようでございます。ただ今度の場合は、たとえば新幹線だけの諮問をいたしますというようなことになりますと、また新たに、航空機の問題だとか、あるいは他の自動車騒音振動、いろいろ個々に全部諮問しなければいけないので、したがって、特殊騒音関係のものを全体的に諮問の形をとりまして、その中で新幹線の問題をさしあたり急いで審議を願っておる、こういうふうに御理解いただきたいのであります。
  7. 林義郎

    ○林(義)委員 参考人の御意見の中にもあったのですが、新幹線の問題で言いますと、特殊騒音の問題だけではない、振動の問題もまた非常に大きな影響がある、こういうことであります。現在、いろいろと議論をされておりますのは、特殊騒音専門委員会で報告が出て、それにつきましていろいろ部会でやっておられる、こういうことでありますが、やはり対策を考える場合におきましては、新幹線の及ぼすところの公害問題という形でとらえていかなければいかぬのだろうと私は思うのです。騒音の問題はしかじかかくかくである、それに基づいて、しかじかかくかくの、たとえば防音壁をつくれ、何をしろ、こういうふうな話になる。今度は振動の問題が出てまいりまして、振動の問題ではこうやれ、振動を防ぐためにどういうふうなことをやれ、こういうようなことになりますと、その二つの対策その他の問題につきまして、相矛盾したり、二重投資というような問題も出てくるだろう、私はこう思うのでありますが、その辺の取り扱いはどういうふうに考えておられるのでございましょうか。
  8. 小沢辰男

    小沢国務大臣 確かに一つの御意見だろうと思います。振動関係もございますから、振動騒音をひっくるめて、新幹線なら新幹線ということで諮問をするのも一つ考え方だと思います。ただ私ども考え方は、騒音振動に分けまして、振動振動として、ただいま申し上げましたような趣旨の諮問をいたしておりまして、したがって、公害の態様の種類別諮問をしておったわけでございまして、この是非につきましていろいろ御意見があるかもしれませんが、現状では、騒音騒音諮問を申し上げ、振動振動諮問を申し上げておった、こういうことでございます。
  9. 林義郎

    ○林(義)委員 単に騒音についての望ましい基準を定める、あるいは振動についての望ましい基準を定めるということでございましたならば、私はそれも一つ方法かと思いますが、参考人の御意見等々を聞きますと、むしろ対策をどうするかというところに問題がある。そういった対策の問題ということになりますと、音の発生振動というのは非常に密接不可分関係にございますから、そこまで諮問をするのでありましたならば、両方やはり聞かなければならないのではないか、こう私は思うのであります。また、それをまとめてやらなければ新しい対策にならないと思いますが、政府の方は、いまのようなことでやっておりますからということでございますから、そこは別途また、政府の方でどういうふうにやるかということは工夫していただきたい、こういうふうに要望しておきます。  もう一つは、新幹線沿線住民の睡眠を妨害することだとか、あるいは病人に対していろいろな悪影響が出てきている、こういうふうなことから、病人安静に生活できるようなものをひとつ考えてもらいたい、こういうふうな話でありました。ところが、どうもこの疫学的な調査というものが、私も読ましてもらいましたけれども専門委員会の出されました「新幹線鉄道騒音に係る環境基準設定の基礎となる指針根拠等」につきましては、通常の人に対するものではないだろうか。特に病人ということになりますと、病人もいろいろとあるわけでございますから、そういったような配慮というのは、どうも余りしてないように見受けられるのであります。一体その辺につきましてはどういうふうに考えられるのか。これは望ましい基準をつくる、こういうことでありますけれども、望ましい基準というのは、通常の人が生活する場合において望ましい基準というふうに考えるのか、もう重病人でどうにもならないような人が生活するのに望ましい基準と考えるのか、若干病気をした程度の人くらいまでは含めて望ましい基準と考えるのか。その辺につきましては、環境庁の方はどういうふうにお考えになっておられますか。
  10. 春日斉

    春日政府委員 確かに、新幹線騒音によります健康被害の有無と申しますか、関連につきまして、現在のところ、必ずしも学問的に申しましても明らかでないことは御指摘のとおりだと思います。それで、私どもは、昭和五十年度におきまして新幹線鉄道騒音健康影響実態調査を予定いたしておるわけでございます。これはいわゆる疫学調査でございまして、聴覚に及ぼす影響、それから先生の御指摘のような一つ健康人の範疇から少しはみ出た方、感受性の高いと申しますか、そういう方の代表として母子健康に及ぼす影響、それから一般疾病に及ぼす影響、こういったことを調査することといたしております。  それから、振動健康被害について、いわゆる公害振動のレベルよりはるかに高い振動によるものは、研究相当進んでおりますが、いわゆる公害振動によるものは、決して十分に解明されていないわけでございますので、こういった騒音健康影響調査等の機会を十分利用いたしまして、その解明に努めてまいりたいと思います。  なお環境基準設定でございますが、これは何と申しましても単なる平均的な健康者のみならず、先ほども申しましたように、健康その他で感受性の非常に高い病人等を含めて、あるいは老人幼児等も含めて設定しなければならないものと考えております。
  11. 林義郎

    ○林(義)委員 もう少し具体的に御答弁いただけませんでしょうか。老人とか、あるいは病気にかかっていて影響がある、たとえば病人で絶対安静ということになりましたら、ちょっと振動があっても、あるいは音がいたしましても、影響があると思うのです。絶対安静にしていなければならない、動かしてもならないなどという人でしたら、これは非常に厳しい基準を考えなければならないと思うのです。それをどこで一体この基準というものを考えたらいいのだろうか。それは国民全体が住むときの一つのメルクマールは、健康の問題と関連してどこに基準を引いたらいいかというのは、非常にむずかしい問題だと私は思うのです。必ずしもこれはまだはっきりしてないのです。ほかのいろいろな公害の問題でも、環境基準をつくりますときの一つの問題だと思うのです。心臓が非常に悪くてどうにもならない、あるいはばったり倒れる寸前の人に対する影響というようなことも考えられる。ちょっとかぜ引いたぐらいの人に対する影響というものも考えられる。この辺は、私はそう簡単にできるものではないと思うのです。むしろ公害基準をつくるのでありましたならば、その辺の考え方をこれから明確にしていかなければならないのではないか、私はこう思っておるのです。むしろ疫学的研究という名前のもとに、余りその辺の分析体制が進んできてないのではないかという感じを私は受けたのですが、この辺につきましては、学問的に何かこうやっていくとかということが考えられておるのかどうか。環境庁の方から御答弁ください。
  12. 春日斉

    春日政府委員 先ほども申し上げましたように、健康被害との関連と申しますものは、疫学的な見地から見ましても、あるいは臨床的な見地から見ましても、どんぴしゃりという関連は非常に解明されていない分野でございます。われわれはそれに一歩でも近づこうということで、今年度疫学調査を進めてまいりたいと思っております。
  13. 林義郎

    ○林(義)委員 何かわかったようなわからぬような御答弁でありますけれども、御答弁がそういうことになっているというのは、逆に、問題がむずかしいのだということの表現と私は受け取りたいのです。  ところが極端なことを申しまして、絶対安静にしていなければならないような人に対する基準をつくる、そういうことになりますと、一般の健康な人にとりましては、そんなに低くしなくてもいいのではないかという逆の議論が出てくると思うのです。われわれはそんな静かなことにしてもらわなくてもいいのだということが出てくると思うのです。というのは、もう一つは、なぜそういうことを申しますかというと、騒音対策をやれば、この前も話がございましたように、相当に金がかかるわけでございます。国鉄の方としては一体どの程度のことを考えておられるのか。この前、二村忠先生という方がおられまして、騒音発生原因その他については、学問的には非常にはっきりしてきている、また、それをやるところの対策もはっきりしているというようなお話がありました。それでもって現在ありますところの新幹線騒音をやれば、私、聞きましたところによると、一兆三千億とかなんとかという金がかかる、こういうふうなお話であります。総裁、その辺につきましては、どういうふうな大体の計算をしておられるのか、御答弁いただきたいと思う。
  14. 藤井松太郎

    藤井説明員 新幹線公害につきましては、毎度御心配をかけているのでありますが、新幹線中公審の現在の答申を離れまして、いままでは環境庁長官から一昨年か、御勧告と申しますか御命令というか、ちょうだいしまして、音源対策として八十ホン以上は出さぬようにする。あらゆる手を講じても八十ホンに抑え得なかったものに対しては、いわゆる騒音防止対策つまり住宅の移転をやるとか窓を二重にするとか、そういう対策をやりなさいということで、私ども、これは全部終わっているとは申しませんけれども、極力その線に沿って努力をいたしておる次第でございますが、さらに、現在の中公審の七十ないし七十五ホンというようなものがございまして、これは基準といいますか努力目標というような、そういう表現がいいか悪いか知りませんけれども、そういうことで解釈する限り、こういうものはシビアな方がよろしい、こう思いますけれども、反面、これは基準であるとかいうことになりますと、実現のできないシビアなものだと意味をなさないので、一体、七十ないし七十五ホンというのは実現できるのかという議論になってくる。  そうしますと、参考人の方はどういう御議論があったのか知りませんけれども、私どものやっている限りにおいては、音源対策としては八十ホン、それは技術だから進歩しますけれども、現況においては八十ホンが限界ではないかというふうに考えられる。  そうしますと、七十ないし七十五ホンにするためにはどうするのだということになりますが、これは障害防止対策で、そういうホンのあるところの方にお引っ越しを願うというようなことにならざるを得ないのだが、お引っ越しを願うと言ってしまえば、言葉としては簡単明瞭だけれども東京から博多までで、七十、七十五のスケールを割って、お引っ越しを願う家が何戸あるかというと、十三万戸ある。ということになりますと、お引っ越し願う先の土地の獲得でも、これは特殊な立法措置でもない限り土地が獲得できるわけがない。同時に、その十三万戸を、あなたのところはホンが多いからお引っ越し願いますと言っても、これは御納得を得るまでに容易ではない。ということは、これはできる、できぬの問題ではなくて、非常に至難であるということと、まず、そういうような対策を、十分とは決して申しませんけれども、ある程度やってお引っ越しを願うとか、そういうようなことを考えまして、東京——博多までで大体一兆三千億の金になりそうである。しかし、これをもう少しシビアにすれば、二兆になり三兆になるということも考えられる。国鉄としましては、一兆三千億かかるからどうこうという議論にあらずして、国鉄の金は、御利用者に御負担願うか、政府の御援助を願うかしか手がないので、一体、その一兆何千億の物すごい金が、国民的な御同意が、いかなる形か知らぬけれども得られるのかどうか、われわれの観念では非常にむずかしいのではないかということで、苦慮している次第であります。
  15. 林義郎

    ○林(義)委員 お話を聞きますと、音源対策ではなかなか技術的にできない。二村先生の方は、音源対策でやったら相当にできるというようなお話がありました。新幹線を走らせるとレールのところから音が出ます。パンタグラフのところから音が出ます。そこを遮蔽をして七十ホンにするというのは一つ方法だと思うのですね。もう一つ方法は、いま総裁がおっしゃいましたように、それはなかなか技術的にはできないから、周りの人にどこかに行ってもらう、そのためには新しい土地を買ってやらなければしょうがない、こういうことだと思うのです。ところが一兆三千億か二兆円かというようなお話でありますが、最初に見積もりましたのが一兆三千億、こういうふうな話だ。国鉄のいまの累積赤字一体どのくらいでございますか。
  16. 藤井松太郎

    藤井説明員 四十九年で申しますと、累積赤字は大体二兆五千億くらいになって、借金が五千億を超している、こういうような状態でございます。
  17. 林義郎

    ○林(義)委員 そんな赤字経営国鉄でございますから、それにさらにまた、一兆三千億とか二兆円ということになりますと、大変なことである。現在、国鉄再建計画というものがありまして、やっているのですが、それにまた、新しい赤字要因というものがかさんでくるのだろうと思うのですね。こればだれが考えてもそう言わざるを得ない。  そこで、それをどうするかという問題を考えていかなければならない、こう思うのです。そういたしますと、先ほどお話がありましたように、国が全部負担をするか、あるいは料金という形で負担をするかということしか、私は方法がないと思う。だれかがこれをやらなければいけないので、まさか国鉄で紙幣を印刷して発行するというわけにはとてもいきません。そんなことをしたら国鉄総裁、手をくくらなければならないということになりますから、これはとてもできない。そういうことでしたら、何かそれは解決策を考えなければならないと思うのです。被害がありますから、この被害を抑えるということを考えていく必要がある。そういたしますと、問題になっておりますのは特に名古屋周辺、後で斉藤さんが恐らくお話しされるのでしょうが、浜松周辺にもいろいろな問題が出ておる、こういうことであります。それから山陽新幹線の方でもだんだんといろいろ問題が出てくる、こういうふうなことでございますから、やはり一つルールづくりをしていかないと、一つ一つ何かやって解決していったのでは、私はどうにもならないだろうと思うのです。  ひとつ御提案をしたいのですけれども国鉄運賃、これは国鉄運賃法で決められておりますが、これは運賃として収入の中で計算すべきものではないと思うのです。やはり新幹線を走らせて、それによって利便を受けている方がおられる、その利便を受けておられる方が負担をすべきだというのが、私は基本考え方でなければならないと思う。そうしますと、一兆三千億、大体年間一億人ぐらいが新幹線を利用しておられるということですから、一兆三千億円を一億人で割ると、一人にしますと一万三千円の負担になる。これを十年ぐらいでやるということになったならば、十分の一にいたしまして千三百円、こんなふうなことになりまして、迷惑料というような考え方一つとらなければできない。その迷惑料を果たして取るかどうかということについて、国民的な合意が得られるかどうかというのが、私は一つの問題だろうと思うのです。国民的な合意が得られないということになるとそれはできない。これは私は一つ社会システムの問題だと思うのです。  それからもう一つは、もう少し時間をゆっくりかけて、ほかの運賃とかなんとかの中でやっていきましょう、こういうふうな考え方でやる。あるいは技術革新相当にできる。国鉄新幹線なんというものは、今世紀の中における大変な一つの新しい技術開発でありましたから、その技術開発について相当に金を投じて、それができるまで待ってみる。音の問題だって、技術開発をやれば新しい技術ができるかもしれない、こう思いますから、そういうことをやるまで待つとか、それから周辺方々にむしろ強制的にのいてもらうというようなことも、論理的には私は考えなくてはならない問題だろうと思うのです。そういう三つぐらいがあります。  最後にもう一つ方法がありますのは、新幹線をスピードダウンすることです。新幹線をスピードダウンするのは、せっかく新幹線をつくったからどうだということではなくて、これだけ発達した日本社会の中において、それをスピードダウンいたしますと、東京−大阪間あるいは新幹線で必要とするところの輸送力というものが非常に減りまして、大変な混雑に私はなるだろうと思うのです。それを忍んでもらうか、こういうようなこと。  大きく申しますと、この四つぐらいシステムが考えられますから、四つぐらい考えられるシステムのいずれをとるかというのを、むしろ議論をしてもらわなければならないと思うのです。やはり政府が選択を国民に求めるということをしないと、この問題は私はなかなか解決をしないと思いますが、私の考え方につきまして、国鉄総裁何か御意見があれば言っていただきたいし、あと長官の方、それから運輸省の方から、どの辺をどういうふうに考えておられるのか。論理的にいろいろ問題を整理していきますと、そういうふうにオールターナティブで三つか四つぐらい選択の道がある。その選択の道をどれをとるかということこそ出して、それにはいろいろ利害得失がありますから、その利害得失をはっきり出して、国民の前に選択を求めるようなことをやらないと、七十ホンがいいからとか、八十ホンでいいではないかとかいうような議論をしておったのでは、これはわからないと思うのですね。そういったことをやってみたらどうか、私はこう思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  18. 藤井松太郎

    藤井説明員 具体的に三つか四つの御指摘を願ったのですが、まさにそのとおりでございますけれども、第一番に御指摘願いました迷惑料と申しますか、これは運賃といってちょうだいするか、迷惑料といってちょうだいするかの相違であって、要するに相当の金を国民合意を得て御負担が願えるかどうかということが問題であって、これも非常にむずかしい問題であろうというように私は考えております。  それから、最後におっしゃいましたスピードダウンをしたらどうだという議論ですが、これはスピードダウンをしまして、現在二百十キロで走っているのを百十キロぐらいで走らせても、六ホンぐらいしか下がらぬのです。スピードをダウンすることの影響はきわめて小さいことと、それから現在の急行とかなんとかはせいぜい七十キロとか百キロぐらいで走っておるので、それと同じにすればいいではないかという御議論は当然あると思いますけれども、皆さん御承知のように、新幹線は建設費その他のコストが現在線の三倍ぐらいかかっているのでございますから、三倍かかったものを、三分の一でできるものと同じ機能しか出ささぬということが、これまた国民各位の合意が得られるかどうか、これも非常にむずかしい問題であろうと思います。  いずれにしましても、これは非常に困っておるのでございますけれども、鉄道といったって、私ども四十三万人のものでは決してないので、私ども国民の委託によってこれを運営しているにすぎないので、国民各位の、騒音の問題をひっくるめていずれの方法をとるべきであるという御指示があるということが、全部の御満足を得るゆえんであろうと思いますが、いかなる方向で御満足が得られるかということはなかなかむずかしい問題で、また、申し上げる資格もなし、その段階にも至っておりません。
  19. 林義郎

    ○林(義)委員 環境庁長官、私がいま申し上げましたように三つか四つぐらいのいろいろの方法がありますけれども、その方法について、やはり利害得失がそれぞれあるわけであります。そういったものをこそいろいろと議論をして、問題をいろいろ整理をして、こうやるというようなことでやっていく必要があるのではないか。新幹線につきましては、騒音問題というものについての特別法ができていない。飛行機については騒音の特別法があります。そのほかの町の工場等には法律がありますから、やはりそういったことで国民的な合意を得るというのには、国会で法律とかなんとかでやる方が筋ではないか、こう私は思うのでありまして、利害得失をはっきりしたいろいろな資料をつくられてやられるということにつきましては、長官、いかがにお考えになりますか。
  20. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃるように人の健康の保護及び生活環境の保全の上で、これを維持するに必要な望ましい基準というものが、法律上の至上命令でございます。したがって、そういう見地から、私どもはある一定の、普通の平均の人の騒音による健康の保護及び生活環境の保全という見地から望ましい基準というものを決めていく義務が、法律上実はあるわけでございます。ところが、いま国鉄の問題になりますと、おっしゃったようにいろいろな対応の仕方がある。その対応の仕方について、国民一体いかなる点で合意をしていただけるかという点が非常に大事なことだと思うのです。  そこで私、環境庁長官の立場で考えますと、実はいま中公審で、基本法に基づく基準設定についての技術的ないろいろ御議論のほかに、この対応ずる仕方についての議論までやっていただいておるわけでございますが、ただ、中公審部会でそういう議論をする、あるいは国会のこの委員会なり、あるいは他の国会の場だけで議論をされているいまの段階を、もっと国民的な広い場でいろいろ議論をしていただくことは確かに必要だと思うのでございます。しかし、私ども基本的には、いま言いましたように——先ほど来聞いておりますと、林先生は、病人あるいは老人あるいは幼児、赤ちゃん、そういう方々の場合の望ましい基準というか、そういう方々基準にする場合と、それから、やかましくても大したことはないやというような普通の健康な人と、どっちを基準にしてつくるのだと言われますけれども、これはやはり人の健康を保護し、生活環境の保全ですから、平均的な、一般的な人ということで、病人基準にした望ましい基準というものは、基本法の想定するところではないと私は思うのです。そういうような健康上支障があるようなことのないようにすることが、やはり人の健康の保護と法律上書いてある意味だと思いますから、そういう観点で基準は考えていって、その基準をどうやって達成をするか。その達成をする方法等について、いろいろな方法がある。  そこで、結局、国民一体どの対応の仕方を選択するかということ、これが必要だという御議論については、私も同感なのでございます。同感なのでございますが、基準設定をおくらすことは、基本法において望ましい基準と書いてあるわけですから、したがって、いろいろ御意見はありますけれども、御承知のNOxについても望ましい基準として〇・〇二という基準をつくって、そうしていろいろな移動発生源なりあるいは固定発生源のNOxに対する規制をやり、逐次そこへ持っていく努力をしているような点も考えていただきますと、基準そのものの設定を、対応の仕方が決まらぬうちはおくらしていくのだというような考え方は、どうも環境庁としてはとりにくいのではないだろうか。  したがって、人の健康の保護と生活環境の保全の面から見て望ましい環境基準というものを、技術的にもいろいろ検討していただいて決めていただければ、今度はこれを受けた側で、これにどういうふうに対応していくかということで、本当に国民的な合意が得られるような方法というものを考えていく。いろいろな対応の組み合わせの仕方もあると思いますが、そういうようなことで、なるべく基本法の精神にのっとったような基準達成のための努力をみんなでやっていかなければいけない、こういうふうに考えておるわけでございまして、おっしゃる後段についての意見だけを言われれば、それはまさに同意見で、基準達成のためのいろいろな方途というものがあるわけですから、それが国民的な合意になるように、国民のいろいろなニードあるいは希望というものが集約されて、どちらかの対応の仕方に決まっていくということは、私どもも非常に望ましいと考えておるわけでございまして、その意味で、この問題が国会でも取り上げられ、そうして国民的な非常に大きな関心を呼んできつつあることは、私はむしろ大変歓迎をしておるところでございます。
  21. 林義郎

    ○林(義)委員 時間がありませんから、私、もう要望だけにとどめておきますが、いま環境庁長官からお話がありましたように、やはり進めるのに当たって、これは最初に私が質問申し上げたところでありますけれども環境基準をいろいろつくるということと、それを達成するところのいろいろな手段方法についての国民的な合意というものとは、おのずから違ってくるのだと思うのです。ですからむしろ、法律の中で第三項か何かに書いてあります政府努力の問題と、それから環境基準の問題というものは分けて、いろいろ議論をしてみなければならないというのも一つ方法だと思う。また、それはもうはっきりしているのだから、一緒になって議論すべきだ、こういうふうな話もあるでしょう。そこで私は、三つか四つぐらい選択の問題を、ひとつ勇敢に出してみたらどうかということを申し上げたわけでございますから、この辺につきましても、政府当局の方でもひとつ十分に御検討していただくことを要望いたしまして、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  22. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 島本虎三君。
  23. 島本虎三

    ○島本委員 まず、基本的な姿勢について、環境庁長官に伺いたいと思います。  五月の十六日、これは金曜日でしたが、当委員会渡辺委員長主宰のもとに、新幹線騒音問題で参考人を招致して、中公審特殊騒音専門委員会委員長であります楠本正康参考人以下八名の人から、貴重な意見を賜ったのです。その意見をもとにして、やはりわれわれとしては、どうしても国民的な立場から、環境庁国鉄当局に対して、要望を含めて、ぜひこれは伺っておかなければならない、こういう問題がたくさんある。したがって、その姿勢についてまず、長官にひとつ伺って、それから総裁以下国鉄当局の御意見を賜りたいと思うのです。  これは当然、いまの日本経済の状態では、以前の高度成長から安定成長へ、低成長へ移行してきつつある。それでもやはり中公審の中間報告、それと総理が本会議で何回も言明したPPPの原則、これを合わして、昨年の六月五日に、現在の総理、当時の環境庁長官の三木さんが自然保護憲章条項を定めまして、これを行政の中に入れて今後守るのだということを言明されたのです。まさに、日本的というよりも、この問題に対しては世界的にこれを宣言されたわけです。したがって、これを原則として今後の環境行政は進展していかなければならないし、それは長官としても、当然その先頭に立って行わなければならないわけでありますが、これに対しての決意を伺っておきたい。その当時と当然変わるものではないという認識ですか。変わるのかどうか、これについての決意を伺っておきたいと思います。これはもう簡単に要領よく言ってください、長過ぎますから。
  24. 小沢辰男

    小沢国務大臣 自然保護憲章制定の際の三木当時環境庁長官のお考え方は、現在でも私ども変わりばございません。その趣旨を体しまして、行政を進めているということでございます。
  25. 島本虎三

    ○島本委員 次に、国鉄総裁にお伺いいたしますが、総裁もお聞きになったと思うのですが、一昨日のNHKテレビの放送でこういうようなことがありました。昭和三十年ごろの環境に戻すためには、二十兆円を超えるような巨費が必要だ。それに自動車の排出ガスやヘドロの処理を入れるとプラスアルファになる。豊かな人間環境にするための基準を厳しくすればするほど費用がかさむ。もちろんPPPの原則は曲げてはならない。これに対して三つの原則があるということを言っていました。一つは、民間部門の汚染除去は企業負担が当然。それから下水道や廃棄物処理、こういうようなものに対しては、都市公害の原点からして、量と質に応じて公費と利用者負担に分けられるべきものである、こういうような解説もあった。それから新幹線航空機、高速道路、こういうようなものに対しては、それぞれはっきりした態度を決められつつある。すなわち航空機に対しては騒音料が考えられておられるようである。高速道路に対しては、これはもう料金の点で考えているようである。新幹線の問題に対しては、これはまだ企業努力の面から結論は出ていない、こういうようなことであって、これが将来問題になる。こういうような考え方、私はこれを興味深く承ったわけです。  したがって、少なくとも新幹線、これはもう国が行っている事業で、年間一千億の収入を上げているなら、国民に対して迷惑料負担、こういうようなことを考えないで、企業努力をして、この一千億の収益、それらを全部またはある程度回して、そしてこれに対処すべきではなかろうか。これに対して、あなたの方の技術者も参加しておられるいろいろな委員会研究もしているようですが、東北大学の教授の二村忠元さんの意見によると、この音源対策については研究の段階を越えて実行段階である。これはもう保守と管理とが競合する問題で、あと調整だけが問題点として残されているにすぎない。こういうような参考意見の開陳があったのであります。そうすると、もうこれは実行の段階だということになるのです。これに対してまだまだこれはできないというお考えがちょっと出されたようでありますが、参考意見の開陳と当局の考えとの間に大分狂いがあるようでありますが、この点いかがでありましょうか。
  26. 藤井松太郎

    藤井説明員 御質問の音源対策に関しましては、先ほども申し上げましたように、現在の技術の段階においては、われわれはまあいろいろ努力をしておるつもりでありますけれども、やはり八十ホンあたりから恐ろしく下回ることは、現在の技術では困難である、したがって、八十ホンぐらいがまあ限界とは、あえて申し上げませんし、今後も努力を続けますけれども、それ以上に減らすことは、時間とかなんとかを切っては、なかなか至難であるということを申し上げたので、努力をいたさぬというようなことではございませんし、この音源対策に関しましては、五十年度も大体三百五十億円ぐらいの投資をいたしますし、国鉄はこういう問題に、当然のことながら努力をしなかったということではないので、従来とも、できるだけの努力は重ねておるということを申し上げております。
  27. 島本虎三

    ○島本委員 従来どおりの努力をしておったと、まあこの点に対しては私どもと若干所見を異にします。どの方面に努力しておったか、これがもう残ります。したがって、これはいますぐ次の問題に入りますから、その後に必ず出ます。  まず、環境庁に順繰りに伺っていきたいと思うのですが、やはりこの十六日の騒音に対する問題についての参考人意見の中で、中央公害対策審議会騒音振動部会特殊騒音専門委員長である楠本正康参考人の方から、これは審議会の内容についてでありますけれども、どんなやりとりがあったのかについて、環境庁として審議経過を発表することはよろしくないと言うけれども委員長である私としてはできるだけ発表したい、またすべきだと思う、こういうような発言があったわけです。前回の窒素酸化物のあの委員会でのいろいろな公表の問題で問題になっておりましたけれども委員長自身がこう思っているのですけれども、これは発表させないのかどうか。委員長がこう思っているならば、当然、委員長の意思を尊重すべきではないかと思いますが、この点に対して長官の御意見を伺います。
  28. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、従来とも、中公審の自主性を尊重するとたびたび申し上げておるわけでございます。したがって、中公審が自主的にその見解を発表するのを、私どもはとめる意思もありませんし、また、発表しないというものを、こちらがやりなさいと命令することもない、かように御承知願いたい。
  29. 島本虎三

    ○島本委員 では、委員長がこれは発表した方がよろしいと言うならば、委員長の意思を尊重すべきである、こういうように了解しておいていいですね。
  30. 小沢辰男

    小沢国務大臣 専門委員会というのは部会のもとでございますから、それは専門委員会がやはり部会とよく相談をされて、自主的に決定をしていただきたい。私ども中公審に関与する意思は毛頭ございません。
  31. 島本虎三

    ○島本委員 これは委員長がはっきり、この十六日の公害委の席上で言明し、これが議事録にとどまっておる問題ですから、この点は長官としても、それから局長としても、よく肝に銘じておくべきだ、この点を私から進言しておきます。  次に、環境庁では、騒音振動部会国鉄の代表として技師長が入っておられるようであります。ここでも何か、技術的な問題とあわせて否定的な意見を述べたということです。特殊騒音専門委員会にも国鉄を代表して、次長と言いましたけれども、これも出席している。これにもまた、否定的な意見を述べた。そうすると、公害発生源である新幹線、そのいわば国鉄側の代表、これはいわゆる加害者側に立つ人です。その人たちが入ってきての委員会に、なぜ住民の代表、被害者の代表、そういうような人に来てもらって、公正な委員会の構成にしないのですか。住民代表も当然入れて、公正に議論を闘わせるべきではないかと思うのですが、この点に対して環境庁はどう考えているのですか。
  32. 小沢辰男

    小沢国務大臣 この楠本さんの専門委員会は、御承知のとおり各地を回りまして、被害者の方々と直接ひざを交えて意見を十分聞いておられますし、また、おいでになった方々に対しても、たしか何回かお会いになって、その意見を十分聞いておられます。したがって私は、片手落ちのような専門委員会審議のあり方ではなかったと確信をいたしております。
  33. 島本虎三

    ○島本委員 直接と間接の違いがあるではありませんか。直接に意見を発表する、間接にその意見を自分らが承って、それを発表する、直接と間接の違いがあるではありませんか。被害者の方は間接にする、いわゆる発生源の方は直接それに関与する、これは公平の原理から外れるじゃありませんか。これでいいのですか。
  34. 小沢辰男

    小沢国務大臣 被害者の方々にも直接いろいろ声を聞いておられるわけです。相当丁寧に現地視察までやっておられますので、むしろ、それが先行しておったわけでございますから、その点は、私は先生の御意見にはどうも同調できない。
  35. 島本虎三

    ○島本委員 直接と言っても、直接委員会委員として参与してないではありませんか。いかに聞いて歩いたって、それは自分の好きな人に聞いて歩いているのではないかと言われても論駁できないでしょう。なぜ住民の代表、被害者の代表をその中に入れて、対策な発言をさせながら、これを運用しないか。こういうことからして環境行政が後退した。トヨタ、日産のあの業者代表を入れて、その内容が筒抜けになって、それから環境行政がぐんと下がった。現在では、京葉工業地帯にある新日鉄までも、固定発生源から出るところのあの窒素酸化物、これももう知事との同意が、この辺ではちょっと困るのだと、いままで決まったことに対しても後退した発言をし、これを押しつけようとしておる。環境庁の姿勢が一つ下がれば、そこに全部影響してくるのだ。直接と間接の違い、これくらいわからぬあなたではないでしょう。いままで築き上げたこの環境庁の姿勢が、あなたのときになって急に瓦解してしまった、こういうことになったら、子々孫々まで、あなたはもう罪を犯すことになる。私の言葉は天の声ですよ。国鉄の技師長なり次長なりを出して、それに対する専門的な意見を述べるならばまだしも、否定的な参考人意見のみ出した。これではおかしいじゃないか。おかしいと思いませんか。したがって、住民の代表、被害者の代表にやはり入ってもらった上で、公正な運用をしなさい。あなたは前にそれを考えると言ったではないですか。なぜまた後退して、考えなくてもいいと言うのですか。私を欺瞞するのですか。決意を述べてください。
  36. 小沢辰男

    小沢国務大臣 国鉄の副技師長を専門委員にいたしておりますのは、たびたび申し上げたと思いますが、まさに新幹線騒音という問題については、それに対応するのは国鉄でございますから、当然入っていただいて十分議論をしていただかなければならぬわけでございます。住民の声あるいは被害者の声を反映しなければならないということにつきましては、これはもう私は再三申し上げているように、特に環境行政では、従来そういうことについて確かに少し欠けるところがあったのではないか、今後はこれをいかに反映するかということについて、目下中公審でもいろいろと検討願っております。私自身も、ぜひ住民の声を環境行政に、特に被害者の側の声が反映できるようなあり方を、どうやったらいいかということを真剣に検討いたしております。  ただ、新幹線騒音につきましては、専門委員会委員長以下皆さん非常に努力をされて、現場まで出かけられて、いろいろその実情を視察し、また、被害者の方々の率直な意見を十分聞いておられますので、新幹線騒音専門委員会審議というものは、その声を反映しつつ、委員長以下真剣に検討をされたものだ、この点は、他の専門委員会よりもずっと進んだやり方をとっておったのではないか、これは島本先生も御理解願いたい。
  37. 島本虎三

    ○島本委員 そうではない。これがやはり技術的にも可能だと参考人がきちっと言っている。東北大学教授の二村忠元さん、その人たちの名前を挙げてもいいのですけれども、仙台新幹線工事局から二名の人も参与している。それから電波高専からの教授も参加しておる。もちろん学者も参加しております。こういうような人は、すでにこれはもう可能だという見解を出している。それを、まだ可能でない、音源対策はまだできないのだ、まことに国鉄技術一体どうなっておるのかわからぬような答弁があったから、また、それらの人が二回にわたって、二つの専門委員会で否定的な見解を述べているということを、わからなければいいが、ちゃんともう議事録に載っている。そうして五月十六日のこの新幹線騒音問題の参考人としての意見がきちんと載っているのです。したがって、やはり住民代表、これはこの前あなたも、十分考えなければならない、必要だったら、業者の方も参考人として参考意見を聞くべきだと発表したばかりではありませんか、ですからこれを公平に今度考えていると。この点はあなた自身も、前回の反省の上に立って肝に銘じておくべきだと思うのです。  そうでない証拠をいま言ってみます。  国鉄の中には、いま環境保全推進本部というようなのがあるのですが、いつできて、どんな仕事をしていなさるのですか。
  38. 藤井松太郎

    藤井説明員 この環境保全本部は、昨年の春、主として新幹線騒音というものを対象にしてつくりまして、ただいま御指摘の専門委員に加わっておる坂、こういうのがその本部の局長を務めております。
  39. 島本虎三

    ○島本委員 それでは、これはどういうことになりましょうか。  昭和四十三年五月十日、いまから七年前になります。騒音規制法ができたときの附帯決議、これは「新幹線並びに交通機関の騒音対策については特に意を用い、国においても十分考慮すること」という附帯決議、これに対して、あなたの前任者が、いま新幹線研究中であって、この問題に対して大きい圧力がかけられたら困る、その点は十分考えるから、「交通機関の騒音対策」というようにしてもらいたいという、こういうようなすでに意思表示があった。私どもは、いろいろやった結果、皆さんの立場を了承して、昭和四十三年五月十日に、この騒音規制法附帯決議として「交通機関等の騒音対策について特に意を用い、国においても十分考慮すること。」こういうのをつけたのです。そのときには三拝九拝して、この中には新幹線があるということを肝に銘じてやりますと言ったのに、そのまま推移してきた。  それだけで終わっていないのです。昭和四十五年十二月十日、このときは騒音規制法の一部を改正する法律に対する附帯決議がまたついたのです。その中には、今度は「鉄道軌道特に、新幹線による騒音については、今後鉄道営業法等関係法令中に騒音防止を図るべき旨を明らかにするようその改正を図る外、騒音発生及び防止方法に関する技術研究開発を更に積極的に推進強化し、その成果をもとにして、関係法令等において、軌道、構造物、車両等各般にわたって騒音防止のための規制を講ずる等適切な措置をとること。」昭和四十五年十二月十日にこれは言っているのです。それに対しても慎重に配慮するという答弁があったのです。しかし、いま聞いてみたら去年これができた。四十三年からいままで何をやっていたのですか。これは国会を愚弄しているのですか。これがないならいい。これに対してきちっと運輸大臣も対処する旨ここに言っているのです。四十三年、四十五年、こういうようなことがはっきりしているのに対して、できたのは昨年新幹線騒音対策もできた。これでは余りにも国会を軽視した言動ではありませんか。どうなんですか。
  40. 藤井松太郎

    藤井説明員 御指摘のように公害なかんずく騒音の問題に関しましては、決して軽視いたしておるわけではございませんで、御承知の鉄道技術研究所といったようなものを総動員いたしまして、と同時に、本省の専門の局を動員して、その対策を進めておる。その中で実を結んだものが、いわゆる音源対策でございまして、先ほど御不満であったようでございますけれども、これをとにかく八十ホンに抑えることに成功したということで、このために岡山−博多間におきましては、いろいろな対策を講じまして、若干八十ホンを超えてしかられたところもありますけれども、これとても早晩これが征伐できるだろうという段階になっておりまして、八十五ホンを八十ホンに下げる、そういうことでございまして、努力してなかったということでは決してないので、極力努力してきたのだが、昨年つくったというゆえんは、これは騒音の問題がますますおしかりを受けるようになりましたので、技術だの主管局だのということではなくて、その窓口というか苦情の伺いどころというか、そういったようなものの意味も兼ねて、そういうものを専管する局をつくったということで、従来その努力を怠っておったということでは決してございませんので、さよう御了承願います。
  41. 島本虎三

    ○島本委員 了承できませんと言ったらどうなります。四十三年からなのに昨年とは、何年たったのです。昨年なら四十九年だ。七年間これは放置しておいたということになるではありませんか。それで努力しておった、こういうふうなことでは、私は納得できない。幾らあなたがそんなことを言ったってだめですよ、やっていないのだから。
  42. 内田隆滋

    ○内田説明員 新幹線騒音問題につきましては、前総裁も申し上げましたように、国鉄技術の総力を挙げて音源対策研究をやってまいったわけでございます。これはただいま総裁が申しましたように、大阪−岡山間の新幹線あるいは岡山−博多間の新幹線音源対策騒音防止に非常に役に立っておるわけでございます。また、これらの主管の局といたしましては、保守を担当いたします施設局が、全部それまでは窓口になってやっておったわけでございます。しかし、環境庁からいただきました騒音防止に対する緊急措置の方針に基づきまして、私の方でいわゆる障害防止対策というものを約一年間かかって勉強し、その成果が出てまいりまして、それを地元で推進するに当たりまして、相当の組織がなければそれに対応できないということで、一応の技術的な騒音対策障害防止対策技術のめどがつきましたので、その機会に、騒音振動だけではなく、あらゆる工事等の公害防止対策等も含めまして、昨年の春、この事務局を設置したわけでございます。
  43. 島本虎三

    ○島本委員 口ではそんなことを言っても、実際は国鉄は住民に対してまことに無礼きわまるような行動をしていませんか。これは私の発想ではございません。若干の私の調査参考人意見によって明らかになったのです。したがって、被害者も中に入れろという根拠はここにあるのです。これは昭和四十八年三月に新幹線の沿線の病人を救済すると国鉄は言明していますね。私はなにですけれども参考人の方から、それをはっきりしたのは松原という人だと言うのです。私はよく知りませんが、御存じでしょう。四十八年の六月に、今度は病気の医療費、本人負担分は国鉄負担する、それもさかのぼって早急に実施する、これも言明された。四十九年の四月になって国鉄新幹線医療委員会というものができた。しかし、それは因果関係を調べるのみだ。鬼沢という人ですが、こういう人が発言しているそうです。今度は申請の受け付けば四十九年五月から六月にかけて行った。これは詳しい検査を要求した。しかし、四十九年の十二月には、因果関係は決まっても、どう救うか、この救済方法は決まっておらないというので、ほとんどの人が検査を受けておらない。申請の受け付けば四十九年五月から六月までには二十人程度の人がこれを行った。そして四十九年十二月八日に、医療委員会は因果関係あるなしを調べるだけである。あったら、あると決まったならば、あとはどうするか、どうも決まっておらない。谷田部という人が言っているそうですね。一体これはどうなんですか。医療委員会が何か名古屋の訴訟が提起された後でできた、しかしながら、やはり訴訟対策で何もやっておらぬではないか。答弁書の中にやはりそういうようなことを言ってあるけれども、それを発表した後、作業はさっぱり進んでおらない。そして当局では、現場を見ないで書面だけでこれを行うようにしておる。したがって、病人の救済措置はとっておらない。一体、医療委員会というものができて因果関係だけを調べて、救済すると言っていながら何もやらないで、因果関係がわかっても、それから先は全然手を触れておらない。一体これはどういうことなのですか。総裁国鉄病人の救済対策をやる、こう言って発足させた医療委員会です。医療委員会はつくった、因果関係だけをやる、そのことはさっぱりやっていない。形式的な裁判対策であると言われても、どうもしょうがないではないか、こうさえ言われているのです。どうもこういうような態度は、新幹線に真剣に取り組んでいるという国鉄の態度としては、私は本当に了解することはできない。不分明である。これでは本当に住民は早く死んでしまえ、こういうことと同じではありませんか。一体どういうことですか。
  44. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 昨年来いろいろな経過、現地における経過あるいは国会などにおきます経過、そういったいま先生指摘のことがいろいろございまして、国会の運輸委員会の席におきましても、私ども、この医療問題についての直接の因果関係があるということが判明いたしますれば、医療費は負担しますという答弁になっておりまして、いま現在、国鉄にはその医療上の救済を求めて三十一名の方の申請がございます。これにつきまして、直接の病気発生の因果関係並びに病気に対する影響の因果関係、そういったようなことにつきましては、医学上も非常にむずかしい問題であるということでございます。まあ国鉄は責任をもって、国会その他で言明したことでございますので、これに取り組むという姿勢を持っておるわけでございますが、そういった非常にむずかしい問題がありますので、斯界の権威十人ほどの委員会を早速組織いたしまして、そういった関係を明らかにしてもらう。それによって答えが出ますれば、私ども当然、それに対する医療費の負担といったようなものを含めた処置をしていくという姿勢で臨んでおるわけでございます。  現在の状況は、やはりこの委員会審議するにしましても、簡単なものではいけませんので、いろいろ精密なデータが要る、これは当然でございます。そういったデータを出してください、それにつきましては、もちろんかかった費用は国鉄負担いたすということでやっておりまして、現在六名出ております。四名の方は比較的早い時期に出ておりまして、そういった方々についての具体的な審査と申しますか、これはかなり進んでおります。近く中間報告があるということでございますので、これを待って、われわれ処置すべきものは処置するということになっております。(島本委員「救済したの」と呼ぶ)まだ委員会の結論、報告を待って、救済すべきものは救済する、医療費の負担をするものはするということで考えております。
  45. 島本虎三

    ○島本委員 これは委員長もお聞きのとおり、五月十六日の楠本参考人以下七名の人たちの貴重な意見を賜りながら、これを現実の問題として提示した場合には、このように胴抜けな、人間無視のような対策しかとっていない。昭和四十八年三月からの話ではありませんか。それからやってもまだ因果関係もわかない。この内容は住民の方が先に知っていますよ。あなたの方の下部の人も、上部の人の意向がわからないのか、因果関係を調べて、因果関係があっても、それより先のことは決まっておらない、谷田部という人はそういうように言っているそうではありませんか、住民を説得して。これは四十九年十二月八日の話です。四十八年三月から始まっていま五十年、まだそれもわからないで、そしておまえらもう死んでもいいと、こんな暴言さえ吐いている。とんでもないじゃありませんか。精神的な要素が一番多くて、医療認定が一番むずかしいと言われる頸肩腕症候群、腰痛症というようなものは、つい最近の問題であってもすぐ認定し、認定された人が方々にいるではありませんか。三年もたっても、本当に病気された者がさっぱり認定もされない。これは実際形式的な裁判対策以外の何物でもない、こう言われても、本当に答弁もできないではありませんか。やったならば、何人だけこの診療の対象にしたのですか。とんでもないことです。こんなことだったら全然誠意が一片だに認められない。  それだけではないです。今度は特殊騒音専門委員会で、住居地域を都市計画法による居住専用地域として、その他の地域とに分けてくれ、これも強引に国鉄代表が言い張った。居住専用地域とすればわずか全距離の三%しか該当しない。住居地域とすれば三〇%から四〇%該当する。それなら救済になる。それを今度、本当にどこで考え出してきたのか、悪代官的な考え方で、居住専用地域とすれば、ただの三%しか対象にならない。こっちの方を強引に該当させるように運動している。そしてそれが、特殊騒音専門委員会では一応まとめて結論を出した。それを国鉄当局だけが納得しないで、騒音振動部会にまた持っていって、国鉄側がまたこれを蒸し返して、結論に至らないのが現在までの状態。環境庁もこれはだらしない。新幹線建設を何物にもかえがたいものとして、この不可避を前提として、建設に支障のない範囲でしか公害対策を行おうとしない。悪代官的な発想ではありませんか。人間優先、環境保全の立場から、住民の環境を破壊しない範囲で建設を実施すべきであるという中間答申、それから自然保護憲章、この精神をはっきり逸脱している考え方だ。環境行政の後退以外の何物でもないです。環境庁長官、これでいいのですか。  また、総裁、あなたはもうここまで察して、本当に住民なんかは救済しない、住民を無視しても新幹線を走らせればいいというようにお考えなのですか。二人の貴重なる御意見を賜ります。
  46. 小沢辰男

    小沢国務大臣 部会長の五十嵐さんは、非常にこの問題の重要性を考えられて、慎重審議をされているわけでございますから、その部会の中で国鉄当局がいろいろ発言をすること、これは真剣に対策をとりたいと思えば思うほど、やはり議論をまじめにされるわけでございますので、先生が、その議論をすることだけを取り上げて、どうも国鉄は熱意がないとかそういうふうに御批判をされるのは、私は少し酷ではないかと思うのです。私どもは、先ほども林先生から御意見がありましたように、問題は基準設定するだけで終わってはいかぬので、やはり対策をとってもらわなければいかぬわけでございますから、そういう意味で、ただいまの先生の御意見は、非常に時間がかかっておるということについては、大変恐縮に存じておりますけれども、それだけに国民のいろいろな問題に非常に関連するところでございますから、中公審では部会の方で慎重に議論をやっていただいておるわけでございますので、そういうふうに御理解を願って、いましばらく時間をかしていただきたいわけでございます。
  47. 藤井松太郎

    藤井説明員 ただいま大臣がおっしゃったとおりでございまして、国鉄は、国鉄の運営を委託されているからといって、是が非でも幹線を走らせ、国鉄を動かそうというのではございませんで、国民各位の大多数の合意のもとに、いかなる処置をとってもやりたいということにほかならぬのでございまして、いたずらに新幹線を走らせればいいというつもりは毛頭ございません。
  48. 島本虎三

    ○島本委員 毛頭ないという言葉にしては、これもまた参考人の証言と食い違う。  では具体的に言いましょう。昭和五十年三月に、これは環境公害問題から住民無視だと言われた博多までを開通して、その後、同じ四月二日に徳山、下松、ここでは新幹線被害が起きている、国鉄当局は被害がないというので、裁判になった。訴訟を起こしている者は苦情常習者だと言ったというわけだ。これは国鉄の思い上がりもはなはだしいではありませんか。苦情常習者だ、これは一体どういうことですか。国鉄こそ、莫大な費用がかかるならば、沿線住民の被害を放置してまでも七千キロの新幹線計画をつくる必要があるのかどうか。むしろこれは被害者の救済を先に考えるべきではないのですか。それに対しても、何か至上命令のように考えながら、訴訟を起こした者に対して苦情常習者だ、こんなことを言うなんて少しおかしいと思う。思い上がりではないですか。こんなことまで言わしているのですか。総裁の考えと違うでしょう。  同時に、環境庁では、新幹線がこういうようにできる前に、なぜ公害、環境破壊、こういうようなものをとめるという措置をとれないのですか。アセスメントをきちっとやらして、被害のないような状態に、いままでできたものはともかくとして、環境庁ができた以後のものは、きちっとそれをやらせるべきではありませんか。これは環境庁は顔を逆なでされているではありませんか。のへのへっとたばこを吸っている状態ではないのだ。全くこれはどうかしている。これは新幹線ができる前に公害をとめられなかったのか。そういうものができなければ工事をとめさせるべきなのです。なぜこれをやらぬですか。これは長官ではなしに事務当局に。
  49. 小沢辰男

    小沢国務大臣 環境基準ができないうちに、先生も専門家ですから御承知でしょうが、われわれの方で意見の出しようがないじゃないですか。環境基準をつくりまして、したがって、暫定値で勧告を出して、八十ホンまでにするようにということを出した実際の仕事の内容を見ていただければ、のほほんとたばこを吸っているような環境庁ではないということは御理解いただけるだろうと思うのです。
  50. 島本虎三

    ○島本委員 そんなことないと言ったって、もう同じだ。被害がもう出ている。国鉄総裁も、まだまだ新幹線延長、また設置についての妄念は断ち切れないようでありますけれども、三木さんが、現在は総理ですが、環境庁長官のころの四十九年六月五日の自然保護憲章、この中の第三項、これを行政の中に入れますと言っている。立ち会ったのは自民党の登坂理事。自民党もこれを推進するということをNHKのホールではっきりおっしゃった。公明党からも岡本さんが行っていますから、はっきり聞いているはずだ。その第三項には、「開発は総合的な配慮のもとで慎重に進められなければならない。それはいかなる理由による場合でも、自然環境の保全に優先するものではない。」これを行政の中に今度入れるということを明言されているのですよ。われわれも賛成してきているのです。環境破壊、公害発生、こういうような状態のもとに、新幹線たりといえどもこれは進めてはならないということなのです。ところが、この本義を忘れているのではありませんか。私はそういうようなことが問題だと思っている。したがって、国鉄による開発も、住民の健康を冒されない範囲の開発であるべきだということを考えないといけない。両側に五十メートルくらいの緩衝地帯をとれ、参考意見としても出ているのですよ。そして移転補償も問題。当然それは問題であるけれども、移転補償対策は重大であるとしても、権利義務の関係からしても、自分の敷地外に騒音振動、その他有害物質を放散させるなどの被害を出す権利は国鉄たりといえどもないばずである。国鉄が通って、死んでしまうような被害を与えて、こういう特権のもとに進めようとするこの考え方は、もうすでに悪代官以上の発想ですよ。したがって、こういうようなものに対してははっきり発想を改める必要がある。去年の六月五日以降は変えられなければならないはずなのです。さっぱり変わっておらないし、いままでの考え方によると、総裁はここで一大方向転換をしなければならない。まだしておらない。突っ走るだけだ、新幹線のように。これは本当に危険きわまりない考え方です。  これをやる前に環境影響事前評価、アセスメントと言っていますが、これを実施してからやっているのですか。自然環境や生態系や文化並びに社会機能に及ぼす影響、こういうようなものを十分調査して、住民の同意を得てこれをやっているのですか、やっていないのですか、新幹線を走らせる場合に。
  51. 内田隆滋

    ○内田説明員 ただいまのところ新幹線を建設する前の事前調査といたしましては、人口の状態とか沿線の開発状況あるいは地形、地質、土木工学的な調査が主体になっております。ただし、新幹線、あるいは鉄道新線の場合もそうでございますが、これを建設する場合には、当然建設する前に住民の皆さんとは十分なる事前協議をやるというのが前提でございます。それに基づきまして実際の実施設計を固めてまいるということでございますので、その中で住民の皆さん方の御意見は十分入れているということでございます。ただ、先生がおっしゃられましたように、いわゆる自然環境に対する影響というような広範囲な意味における事前調査は、残念ながらいまのところはやっておらないのが実情でございます。
  52. 島本虎三

    ○島本委員 必要なことをやらないで、走らせるための便宜的な結論を得られることだけやって、これが環境アセスメントだと言う。これも国鉄当局の思い上がりだ。こういうようなことではもう国民は許さないですよ。総裁も今後はよくここを考えないといけません。全くもうあきれ返って物が言えない。  それで新幹線の建設費用、これはいろいろな方面から借りてやったでしょう。しかしながら騒音対策、これは一切、車内の騒音のみが問題になったので、車外の騒音に対しては何も考えようとしなかった。この国鉄の閉鎖性に問題があった。いまは公開性に変わってきた。航空機、ジェット機の騒音対策でさえも、アメリカでは騒音証明書を発行することになっておって、米国で十デシベル下げることまで研究し尽くされた。飛行機騒音に比べたら新幹線はずっとやさしいはずだ。もう少し早く国鉄が専門家に広く知識を求めておれば、ここまで悪化した状態にはならなかったろう、こういうふうに参考人の一人として意見を吐いている人もあったのです。技術者です。やはりこれは一つの参考として今後臨むべきではなかろうか、こういうふうに思います。  それと同時に、居住する土地の買収ということに対しては、裁判になっている原告だけではなく、その周辺の人も全部、名古屋のように、ああいうやわらかい土地の場合は考えるのが妥当。それをどうもその場逃れにして、原告者に該当する人だけをやっている。こういうようなことは国鉄当局としてとるべきではありません。国鉄もこの反省の上に立って、今後進めなければならないと思うのです。私はこれを指導する立場にある長官並びに実施する立場にある総裁の毅然たる決意を承りたいと思います。
  53. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先生のおっしゃることは、基本的には私どもも同意見でございます。
  54. 藤井松太郎

    藤井説明員 いろいろ貴重な御意向を拝聴したのでございますが、その中で、あえて揚げ足を取るわけではございませんけれども国鉄国鉄という言葉が盛んに出るのでございますが、国鉄国民の総意を受けて、国民にかわって仕事をしているのだということでございまして、その総意のまとめ方とか伺い方に遺憾の点があっただろうということは、私は反省いたしますけれども、何も私は即時新幹線八千キロつくれというようなことを言っているわけではございません。その問題も、先生御承知のように、第三次の国土総合開発で修正されれば、経済の動きに追随して新幹線化、鉄道の整備も行われるだろう、かように考えておりますので、御忠言だけは謹んで承っておきます。
  55. 島本虎三

    ○島本委員 忠言だけは謹んで承ったけれども、反論の点に対しては異議がある。被害者の救済に対してああいうような状態にしておいて、私の忠言に対して慎重に頭を下げるとは何事ですか。死んだ人さえあるのですよ。
  56. 藤井松太郎

    藤井説明員 医療の問題につきましては、先ほど申しましたように、医学的に見てこれは因果関係があったか、ないかというようなことは、きわめてドライな意見だというようなことになるかもしれませんけれども、やはり公的の機関でございますので、そういう御意見が出たら、それに右へならえという意味ではございませんけれども、それも参考にせざるを得ないということで、せっかく結論を急いで、国鉄の因果関係あるということは、国鉄は補償しますということを言う言わぬにかかわらず当然のことなので、そこらもひとつやるつもりでございます。  それから国鉄新幹線の問題、その他の問題もございますけれども、これもあるいは先生のお気にさわるかもしれませんけれども、(島本委員「初めからさわっている。」と呼ぶ)そうすればもう申し上げる必要ございませんが、そういうようなことで、ひとつ一生懸命でやります。
  57. 渡辺惣蔵

  58. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 島本委員から、きわめて基本的な、しかも重要な指摘がございましたので、私はそれを補足する意味で、若干のお尋ねをいたしたいと思います。  まず、環境庁長官に伺いますけれども、たびたびの国会で、私を含めた委員の質問に答えて、環境庁は、騒音基準については昭和四十九年十二月三十一日までに本基準を策定し、決定をいたしますという答弁を繰り返しました。また、振動基準につきましては、昭和五十年三月三十一日までに、暫定ではありますけれども決定し、これを提示をいたしますという答弁をたびたびやったのであります。たびたびやった。しかし今日、騒音の本基準についてもまだ決定をされていない。先ほど論議のありましたとおりであります。振動暫定基準については、全く何の音さたもない。  私ども議員に対する答弁は、国民に対する答弁と解釈をし、国民に対する約束だと私は考えております。いかなる理由がありましょうとも、国会で答弁をし、約束をしたことを、今日実施しないという怠慢は、私はどんなに追及されても、その責任を逃れることはできないというように考えておりますけれども、いかがでございましょうか。
  59. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私、十二月に着任しましてから、十二月中にやるという答弁をした記憶はないのでございますが、それまでのいろいろ審議において、そういうことでなかったか、先生のお言葉で私、そう思います。  それが実行できていない、おくれているということについては、十分責任を感じております。できるだけ早くいたしたいと思います。
  60. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 私は、環境行政に限らず国政そのものは、大臣が何人かわろうと、大臣がだれになろうと、その基本方針なり国会における答弁が変わるものであってはならないと考える。それこそ閣内の意見の不一致であり、省内の意見の不一致ということにもなる。春日局長がずっと続けてやっておるわけですよ。局長から私はたびたび答弁をいただき、歴代大臣もこれを補完をして約束を取りつけてきているわけなのです。むずかしい点は私もわかりますよ。わかりますけれども、いやしくも国会で約束をいたした以上、これこれの理由で、約束をいたしましたけれども不可能ですという、公式、非公式を問わず、弁明があったならいざ知らず、答弁のしっ放しであり、やりっ放しだ。局長からひとつ。
  61. 春日斉

    春日政府委員 御指摘のとおり、新幹線騒音環境基準につきましては、四十九年末までに出したいというお答えを、当委員会におきまして行ったことはございます。その後それが四十九年度末というふうに表現が変わりました。鋭意努力してまいったわけでございます。特に、その基本になりますところの新幹線鉄道騒音特殊騒音専門委員会の報告は、去る三月二十九日に、これは部会の方へいただいたわけでございます。御承知のとおり部会の方が非常に慎重な御審議を、現在も続けておられるわけでございまして、この点やや延びておることは、はなはだ申しわけないと存じております。しかし、この慎重審議という点は、これはやはりいたさねばならないものと考えております。  なお、振動の問題でございますが、この振動の問題につきましては、騒音と異なりまして、基本となります測定単位、測定機器というようなものにつきまして、なお検討すべき問題が残されておるわけで、これは専門委員会の方でいろいろ真剣な審議がまだ続けられておるところでございますが、できるだけ早く答申が得られますよう、お願いしてまいりたいと考えております。
  62. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 公害環境対策特別委員会昭和四十九年十二月三十一日を昭和五十年三月三十一日というように答弁をし直したと言っておりますけれども、私は運輸委員会でお尋ねをした際の答弁で、しかもそれもたびたび確約をしたわけです。そのときは、そういうようにしたいという願望ではなかった。初めは願望の答弁だったので、願望ではだめだ、必ずやるかと言ったら、やります、こう言った。それをやっていない。  それでは局長、伺いますがね、専門委員会から原案が出てきて、いま部会でやっている。慎重審議しなければならぬと言うけれども、その慎重審議をしなければならない最大の理由というのは、運輸省をバックにした国鉄当局の抵抗に遭って進まないのではないですか。ほかはほぼもう合意に達している。運輸省をバックにした国鉄当局の抵抗でにっちもさっちもいかない。過日の楠本委員長の参考意見からも、十分これが察知できるわけでありますけれども国鉄と運輸省がオーケーを与えれば、言うならば運輸省がオーケーを与えれば、国鉄も渋々でもオーケーになってしまう。背後にあるのは運輸省だというように思いますけれども局長、忌憚のない意見をここで言ってください。
  63. 春日斉

    春日政府委員 ただいま部会におきまして慎重な審議が行われている最中でございまして、私、事務局という立場からは、その審議内容につきまして、明確にいま申し上げる立場にないわけでございますので、御了承いただきたいと思います。
  64. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 運輸省鉄監局長、当問題について国鉄当局からいかなる相談があり、それに対して運輸省としてはどのような指示を与えているのか、お答えください。
  65. 後藤茂也

    ○後藤(茂)政府委員 先ほど来、新幹線騒音問題についての国鉄の態度について、諸先生から厳しい御叱責のお言葉がございました。恐らく鉄道は百年前からむしろ沿線の方々に歓迎されながらつくられたという歴史を持っておる。いまの騒音問題、公害問題というものは、最近の新しい社会事象として、世間が次第次第にそういった認識に目覚めてこられ、国鉄政府もまた、そういった新しい時代に対応して、自分たちの考え方を変えていかなければならないところに、その変え方のテンポが、世の中の変わりと少しずれておるということでもあろうかと思います。先ほど来の御叱責を厳しく承っております。  先生のお言葉の運輸省をバックにした国鉄の抵抗云々ということにつきましては、私は事柄が審議会あるいは専門部会における議事にかかわることでございますので、それに関してどうだこうだということをお答え申し上げますのは、差し控えさせていただきます。  ただ、この点につきまして、運輸省もまた、先ほど来、国鉄総裁以下の方々騒音問題について説明をされておられるのを伺いまして、大体技術的な点あるいは財政的な面、そういったようなことについては、同じような認識をいたしております。言いかえますと、新幹線騒音問題は、これは先ほども申し上げましたように深刻なる社会問題であり、新しい社会問題であり、役人も国鉄も頭を練り直してこれに対応しなければならぬと確信をいたしております。ただしかし、総裁が言っておられますように、新幹線騒音問題はすべての元凶が、元凶と申しますか原因者が、国鉄である。航空機騒音の問題を仮に例をとれば、飛行場の管理者、飛行機を運航している多数の飛行機会社、その飛行機を製造しておるメーカー、いろいろなところに原因者が事実上分散するわけであります。国鉄騒音問題は、それらすべての原因が国鉄に単一に集まっておる。言いかえれば、国鉄自身がその気になれば、いろいろなことができるというふうなからくりである。ただし、その国鉄が、これまた最近の新しい事態でございますけれども先ほど来いろいろとお話に出ております赤字が二兆九千億、借り入れ残高が六兆七千億、しかも単年度に、鉄建公団から間接にいくものも含めれば、一般会計から年間三千億以上の、つまり納税者の負担をしていただいており、財政投融資では一兆にのぼるような借金をしておる、それでも破産をしかけておる。これが騒音問題以前の国鉄の状態でございまして、それをいかにして再建するか。先ほどもございましたその再建自身が、国民の御選択の問題ではなかろうかと思います。私ども国鉄の再建問題につきまして、ただいま鋭意その具体策を練っております。いずれは国民各階各層の御意向を承って、国民各階各層の御納得のいくような形で、国鉄の再建案を練り上げなければならないと思っております。  そういうさなかに、いま新幹線騒音問題は起こっておるわけでございまして、それは軽々しく私どもは、いま持っております行政担当の責任から見まして、はい、結構です、どうぞお進めください、後は引き受けました、何とでもできましょうというような軽々しい気持ちで、この騒音問題に対処するわけにいかぬのであります。バックあるいは圧力云々ということについて、直接のお答えはできませんし、申し上げませんけれども、現実の認識は、私がいま申し上げたとおりであるということを御説明させていただきます。
  66. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 再建問題まで言及をされて、えらい開き直りましたけれども、そんなこと私は百も承知で聞いているわけなのです。バックにあるとか、あるいは一諸になってとかということがもし言い過ぎであるならば、いまの国鉄の苦衷、苦しみを、言い方を変えれば、運輸省が理解の態度が足りない。もっと早くから本格的に、本腰に国鉄の再建問題を含めて騒音対策を考えれば、このようなことにはなっていない。私は国鉄だけの責任を追及する気持ちは毛頭ない。国鉄は曲がりなりにもやろうとしたのですよ。やっている、不十分だけれども。しかし運輸省の理解が十分でなかったと私は逆に言いたい。そして具体的な本基準の策定等について、あれこれ文句を言わせているというように、道順としては考えていたわけであります。これはまた運賃問題等が出てくるようでございますから、そのときに譲ります。  国鉄のとろうとしている施策に対し、運輸省がさらに前進をした形でこれを支持し、これに協力する態度をぜひほしいと思う。そういう意味で、きょうは大臣の出席を求めたのでありますけれども、運輸委員会と並行しておりますので、残念でありますけれども、少なくとも鉄監局長の責任において、さらに前進をし、さらに強力な支援をするという答弁はぜひもらいたいと思うが、いかがですか。
  67. 後藤茂也

    ○後藤(茂)政府委員 国鉄がいろいろと今後の計画を立ててまいります、今日までも立ててまいりましたこの種の問題につきまして、私どもは最大限の努力をし、その間の財政措置も含めた、それが可能になるような措置をとるように努力をいたすつもりでございます。
  68. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 先ほど専門部会の構成について、島本委員からきわめて適切な発言がございました。大臣、新幹線公害対策全国同盟なるものがあることを御存じですか。そしてこれらの皆さん方が前後何回かにわたって全国集会を持たれたことも御存じですか。
  69. 小沢辰男

    小沢国務大臣 聞いております。
  70. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 聞いているとするならば、専門員の皆さん方なり委員の皆さん方が、現地に行って適切な意見を聞いて、答申に反映している、あるいは基準の策定にはこれを尊重するというような言い方でなくて、私も繰り返して言いますけれども、組織立った適当な代表が明らかにあるという現実を踏まえるならば、加害者である国鉄の方を委員にするならば、被害者を入れてあたりまえではないですか。しかも選択には困らない。新幹線公害対策全国同盟なるものが組織をされて、その代表も決まっているわけです。一々現地へ出向いて調べたり聞いたりすることも必要でありましょうけれども、それらの方々委員に加えるに何の矛盾がある。私はやはり委員の構成、委員会の構成なり運営について疑問を持たざるを得ないのでありますけれども、そういう方々を入れたら、一体どういう不利だとかあるいは矛盾だとか、あるいは委員会の運営がうまくいかぬとかいうことがあるのですか。先ほど来、出向いて意見を聞いている、調査をしているからいい、こう言った。しからば、さらに前進をして、それらの被害者の代表を入れたらどういう欠陥が出るのですか。
  71. 小沢辰男

    小沢国務大臣 この問題の審議をこれから始めるのでしたら、私は、おっしゃるようにどなたか適切な方をお選びして入っていただく方がいいのではないかと思います。ただ、ずっとやって最終段階にまいりまして、いろいろ聞いてみましたら、いまお話しのような問題については、この専門委員会は非常によく現場に出向き、いろいろな意見を聞いておられるというので、それではまあそれでいいだろうということを、責任者として指示したわけでございます。  今後の問題としては、先ほどお答えしたように、それは当然住民参加の方法をいかにすべきかということを真剣に検討して、何らか実現をいたしていきたい、かように考えておるわけであります。私は名古屋の会長さんにもお目にかかりました。たしか衆議院の先生方も一緒だったと思います。この専門委員会意見がまとまった後は会っておりませんが、私の役所へおいでになったとき、私たまたま国会でお会いできなかった。局長以下から聞きましたら、基準については大変満足をしておられるというふうに聞いております。ただ、対応策についてできるだけひとつ早くしてもらいたいというふうに聞いておるわけでございます。
  72. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 私に与えられた時間はあと一分でございますから、いろいろ聞きたいことがあったわけですけれども、いままではしようがなかった。しからば振動問題はこれからですよ、いままでもやっているでしょうけれども。ぜひそういう本格的な審議が残っている問題については、被害者代表も入れるべきだというように思うのです。そうすると局長は、いや振動というのは素人ではわからないですよ、学者先生方でも意見が分かれてどうにもならぬですというようなことで、素人という扱いをして、また除外の方向を出すと思う。素人でいいのだ、素人こそ現場の苦しみをよく承知をし、すべてを知っている。私は答弁は大体わかっているから答弁は聞かぬ。とにかく被害者代表を入れろということを強く要求をいたしておきます。  最後に一つだけ。国鉄がない知恵ではない、ある知恵をしぼって、ない金を工面をして、取り組んだことは承知をしていますよ。ただ一つだけ、私どもに約束をしたレール削整車、ドイツで優秀なものがあって、これを買うと言った。これだと顕微鏡で見なければわからないようなレールの摩粍が簡単に取れるというような答弁だった。これを買ったのか、買って使ったのか。使った結果はどうなったか、それだけ伺います。
  73. 内田隆滋

    ○内田説明員 購入いたしまして、ただいま試験中でございます。まだ実際には動いておりません。
  74. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 それは購入する前にドイツへ代表者を派遣をして、その性能なりその他を十分調べて、これは間違いないということで、かなりの金を出して買ったと思うのですよ。それがいつ着いて、いまどこでどういう試験をやって、どういう結果が出そうだ、それはどうなのですか。
  75. 内田隆滋

    ○内田説明員 細かい点はあれしておりませんけれども、ドイツで実際に試験の状況を見まして、十分これは国鉄で使えるという自信をもって購入しております。ただ、国鉄の運転する作業員、オペレーターの熟練とか、あるいは国鉄の基地の問題とか、そういうようなものも全部整備しませんと動き出しませんので、そういう意味で、ただいま試験中でございます。
  76. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 まあ新幹線はスピードが生命だ、スピードダウンはむずかしい。それが検討しますということになってきて、場合によってはやりますというところまできた。先ほど総裁は、五十キロスピードダウンしても、騒音の低下はわずかなものだというようなことを言いましたけれども、これまた非常に重要な問題。国鉄新幹線はスピード、スピードと言うけれども対策はスピードダウン、スピードダウンだ。いま言った線路を削るものだって、莫大な金を出して買ったら、一日も早く生かしてもらいたい。そういうことについてもう少しスピードアップをすべきだというように考えておるわけであります。  いずれにいたしましても、最後に総裁、東北新幹線が大宮から向こうは間もなくでき上がる。東京−大宮間はかいもく見当がつかぬ。莫大な投資をして大宮から以北ができても、東京−大宮間ができない場合、あれは新空港みたいに、つくってそのままほうっておくのですか、いかがですか。
  77. 藤井松太郎

    藤井説明員 御指摘の線につきましは、われわれとしては極力説得をいたしておりますけれども、まだ結論まで至っていない。いつ納得が得られるかという見通しもついていない。まことに残念な次第でございますが、最悪の場合は、これは東北新幹線の機能の半分も出ないだろうと思いますが、大宮の臨時ターミナルというような点もあるいは考えなければいかぬのではないかということも考えておりますが、それにも増して、大宮と東京間の皆さんにお願いをして、御同意を得るということが先決だろうと思って、一生懸命努力しております。
  78. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 これだけではなくて、信越にしても、これからやろうとする新幹線にしても、既設の東海道新幹線並びに山陽新幹線公害対策が万全でなければ、ますますその着工がおくれ、運転開始はおくれるということは間違いない。国民大衆の理解と協力のもとにと言いますけれども被害者がわずかな国民大衆だ、それはごく一部分の声だ、あるいは文句を言う常習者だというような言葉が国鉄内部から出る以上、この問題は一歩も前進しない。すべて加害者意識に立って懇切丁寧な対策をすることを要望し、われわれもまた、その国鉄なり運輸省の態度に対しましては協力することにやぶさかでないことを言って、私の質問を終わります。
  79. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 木下元二君。
  80. 木下元二

    ○木下委員 私は昨日、質問を控えまして、国鉄に対して資料要求をしたわけであります。それは、新幹線建設に伴う騒音振動の防止について、国鉄側が地元自治体なり住民と覚書を手交したり、あるいは何らかの取り決めをしておる地域、あるいは国鉄側より自治体なり住民に対して、規制についての意思表示をしている地域はどこどこであるのか、これを明らかにされたいという点。それからまた、各地域によって覚書などの取り決めあるいは意思表示をしておるとすれば、それぞれその内容、少なくともその骨子を明らかにされたい。さらに、それらの地域で覚書違反、約束違反という問題が起こっていないかどうか、起こっておるとすれば、どういうことが起こっておるのか。こういう三点につきまして資料要求をしたところが、これはほとんど明らかにされておりません。兵庫県の阪神三市の覚書三通だけをいただきましたが、それ以外は明らかにされておりません。催促をいたしましても、少し待ってもらいたいということで、そのままであります。一体国鉄はこの資料要求に対しまして、誠実に答える意思がおありなのかどうか、伺いたいと思います。
  81. 内田隆滋

    ○内田説明員 先生の御指摘のとおり御要求があったことは承知しております。ただ、そういうような取り決めは、現地の工事局長が現地の県なり市とやっておりますので、本社に書類が参っておりません。したがって、しばらく余裕をいただきたいと思います。ただ阪神三市につきましては、四十三年の着工時期が非常に早いわけでございまして、まだいわゆる環境に伴う暫定の緊急指針がなかった当時でございます。山陽新幹線につきましては緊急指針が出た後でございますので、それらの基準に基づきまして、各市町村と環境基準に対するいろいろの締結をしておると思います。したがって、そうまちまちなものは出ておらないと思いますけれども、詳しい資料は、後日取り寄せまして提出をさせていただきます。
  82. 木下元二

    ○木下委員 この新幹線建設に当たりまして、国鉄当局が自治体や住民に対してどんな公害対策の約束をしてきたのか、そして現にどんな問題が起こっておるのかというようなことは、細々した問題はともかくといたしまして、少なくとも大筋は国鉄として当然把握しておるべきではないのですか。これは現地の工事局長がやったから知らぬということでは通りませんよ。現地の工事局長がやりましても、それはやはり国鉄当局の方針に従って、国鉄としてやっておることなのですから、少なくともその全貌は当然把握しておるべきだと思うのですよ。ここに「月刊政策」という雑誌の新春号がありますけれども、これを見ましても、国鉄幹部の方々が、東海道新幹線に引き続く山陽新幹線の建設、これによってわが国の高度成長にきわめて適合した高速鉄道の大動脈がつくり上げられたことを、得々と誇らしげに書いておられる。騒音振動防止対策につきましても種々実施をしてきたし、さらに万全を期したいとも書かれております。ところが、事公害問題についての現状は把握もしていない。どんな約束をし、それが守られておるのかどうか、こういうことについてはわからぬというのでは困ると思うのです。いかがですか。
  83. 内田隆滋

    ○内田説明員 ただいま申し上げましたのは、具体的条文が手元にないということでございまして、取り決めました内容は、いわゆる暫定基準に基づきまして全部やっておりまして、その結果、岡山−博多間におきましては、数カ所におきまして基準をオーバーしているところはございますけれども、大体において八十ホン以下の暫定基準は守られているということでございます。なお、基準をオーバーしているところ、あるいはアパート等で対策を要するようなところにつきましては、その障害防止対策を逐次現在やりつつございます。
  84. 木下元二

    ○木下委員 その暫定基準がつくられる前に覚書あるいは約束、意思表示等がなかったわけですか。
  85. 内田隆滋

    ○内田説明員 岡山−博多についてはないというふうに考えております。
  86. 木下元二

    ○木下委員 それ以外は。
  87. 内田隆滋

    ○内田説明員 大阪−岡山間につきましては、これは四十三年に阪神三市と覚書を結んでおるわけでございまして、これにつきましては、一部八十ホンを超えるところはございますけれども、誠意をもって現在対処しております。八十ホンを超えるところは数カ所、現在でもございます。
  88. 木下元二

    ○木下委員 いや、そういうことを聞いているのではなくて、その暫定基準がつくられる前から、国鉄当局は現地で、自治体や住民に対していろいろな約束をしてきておるわけですよ。その内容なり骨子を伺いたい、こう言っているのですが、これはお答えできない。私は、国鉄新幹線公害問題を一体、真剣に本腰を入れて取り組んできたのかどうか。現に取り組んでおるのかどうか、きわめて疑わしいと思うのです。その点からも私はこの問題について、きょうはこの資料がないということでありますので、改めて資料を提出していただいて質問をしたいと思います。私の方で要求しました資料は、いつ提出をしてもらえますか。
  89. 内田隆滋

    ○内田説明員 できるだけ早く提出させていただきます。これは、秘密でも何でもない、自治体との締結事項でございますので、早速取り寄せたいと思います。
  90. 木下元二

    ○木下委員 この新幹線騒音等の問題の基本問題は、この資料の提出がありました後に、また改めて伺うことにいたしまして、ただ一つ具体的なことを伺っておきますが、ここに「山陽新幹線建設による騒音振動等の防止対策について」と題する書面があります。これは山陽新幹線工事局長佐藤康という名前で、山陽新幹線対策三市議会連絡協議会あての文書です。三市議会というのは、西宮、伊丹、尼崎であります。この中でいろいろ書いておりますけれども、「騒音については在来鉄道と同等程度の75〜80ホン(A特性)にとどめ、振動については高架橋両側に残る住宅内で人体に殆んど感ぜずまた建物等にも損傷を与えない程度にとどめます。」というふうにはっきりと書かれております。こういうふうに約束をした事実、これは明らかでありますが、この点はお認めになりますね。
  91. 内田隆滋

    ○内田説明員 そのとおりであります。
  92. 木下元二

    ○木下委員 ところが、こういう覚書文書で、このような規制について書かれておりますが、実態は、先ほども少し言われておりましたが、この約束が守られていないという問題が各地で起こっております。尼崎について言いますと、尼崎市としまして毎年二回定点測定をしておりますが、四十九年七月の測定結果によりますと、最高は八十五ホン、これは尼崎市小中島字孤原というところでありますが、側道端の上り線側であります。国鉄は、この騒音対策としまして、防音壁のかさ上げあるいは吸音板の設置を実施をいたしましたけれども、その後もこれが出ております。国鉄の約束をした数値を満たすものになっていないわけであります。さらに最近、この防音壁のかさ上げの継ぎ足しを実施する予定を、国鉄側は表明をしておりますが、尼崎市としましては、その効果は余り期待できないと言っております。国鉄は市に対しまして、騒音解決の技術解明を急ぎ、研究しておると言っておりますが、いまだに結論は出ておりません。少なくとも自治体や住民に対して約束をしたことは守り切るということは当然だと思うのでありますが、この点はいかがでしょう。
  93. 内田隆滋

    ○内田説明員 先生の御指摘のとおりだと思います。ただ、われわれとしては、国鉄技術能力のあるだけを挙げまして、騒音防止、音源対策研究をやっておるわけでございます。ただ、それがなかなか所期の目的を達してないというのが現状でございまして、今後もこの問題については研究をいたすとともに、できるだけの措置をして、八十ホン以下にするように努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  94. 木下元二

    ○木下委員 その問題は、また機会を改めて詳しく聞きたいと思いますが、もう一つ振動の現状と問題点について、私は指摘をし、質問をいたしますが、尼崎市は年二回の騒音測定と同時に沿線の振動調査も行っております。その結果、特にひどいのは同市の下食満字北台でありまして、最高一・三ミリ・パーセカンド、昭和四十九年六月の測定であります。平均でも一・一八ミリというのが出ております。尼崎市を通過する全区間で、人体に感ずる振動発生をしております。振動による被害も沿線では多く発生をしております。特に多いのは屋根がわらのずれでありまして、これが各地で起こっておる。これが連絡をいたしますと、国鉄はやってきて修理をしておるようであります。また、健康被害、夜眠れないとか、いらいらするとか、子供が勉強をしなくなったとか、落ちつきがない、こういった問題なども含めて、身体に重大な影響を与えておるというのが状況であります。この振動対策としましては、下食満地区で防振マット工法というのを実施しておるようでありますが、これも実情を聞きますと、効果は上がっておりません。一体これに対して対策をどうお考えでしょうか。
  95. 内田隆滋

    ○内田説明員 振動の問題につきましては、一たん高架橋を建設した後で振動の防止をするというのは、技術的に非常にむずかしい問題でございます。ただ軌道の下にゴムマットを敷くことによりまして、音とともに振動が非常に減衰するという事実がございます。今後とも軌道の保守をやるとともに、そういうような軌道下にゴムマットを敷いていくということを進めて、少しでも振動をやわらげてまいりたいというふうに考えております。ただ、基本的に振動の問題につきまして解決するとすれば、やはりある範囲内は移転をしていただくということにならざるを得ないというふうに考えております。これは国の基準が出た後に、そういうものについては処置をせざるを得ないというのが現状でございます。
  96. 木下元二

    ○木下委員 この防振マット工法では解決をしないということは明らかです。移転の問題等もありますが、これは尼崎市当局も国鉄に要求をしておるということでありますが、やはりスピードダウン、これによって解決ができるわけでありますから、こうしたことについても、私は国鉄はもっと抜本的に改めていくことを考える時期に来ておると思うのです。  ここにもつとひどい例があるわけでありますが、西宮市の甲陽園東山町、これは六甲トンネルが通っておりまして、そのトンネル上であります。そこの被害状況はまことに深刻です。ここに写真がありますが、もう家屋の土台にひび割れがきております。そしてこれがだんだんと広がって、ブロックべいや家屋そのものにもひび割れが生じておるわけであります。これがブロックべいで、これが家屋であります。よく見ていただければ、ここへひびがずうっと入っているのです。これは石田精一という人の家の被害状況でありますが、そのお隣のれんがべいも、この写真のようにひびが真ん中にずっと入っておる、こういう状況が出ておるのです。  これは国鉄の方としましても、住民の方から要求が出まして、交渉を進めておるというふうに聞いておるのでありますが、この点についても、私は昨日伺ったのでありますが、国鉄の方からは何ら明らかにされなかった。私が調べたところによりますと、これはもう長期間交渉をしておるけれども国鉄の方はまともな回答をしない、それでどんどん長期間にわたって延びておるということなのです。この被害額の算定の差が余りにも大きいというのです。国鉄の方は、家の土台にひび割れをした場合でも、ひびの部分にセメントなどを注入するだけで計算をしておる。これでは解決をしないわけですよ。あるいは地盤改良剤を注入する計画もあるというふうに聞いておりますが、これは一体、植物への影響がどうなるのか、人体への影響がどうなるのか、心配の点が非常に多いわけであります。こうしたことについても、国鉄当局がもっと誠意をもってこの住民の人たちと話し合うべきだと思います。この点いかがですか。
  97. 内田隆滋

    ○内田説明員 先生の御指摘のような事実が現にございまして、被害の状況は、第三者の判定によりまして、トンネルを掘削した事実によって起こっておるということでございまして、国鉄といたしましても、地盤の改良それから家屋の修復等を、誠意をもって今後進めてまいりたいというふうに考えております。なお、地盤改良につきましては、六月ごろに契約をいたしまして、今年度いっぱいじゅうには完成をさすというふうにいたしております。
  98. 木下元二

    ○木下委員 口先だけではこれはだめだと思うのですね。この問題は、たとえば国鉄の方が「山陽新幹線建設工事についてのお願い」という文書をお出しになっているのです。これを住民に配っているのですね。この中身を見ますと、たとえば「開業後の騒音振動」という項がありますが、ここには「開業後の騒音振動等の心配は全くありません。」こう書いてあるのですよ。こう言って、これは結局、結果から見ますと、住民をペテンにかけたことになるのですね。これだけ深刻な問題が起こっておる。そして、その話し合いも、住民の方に対して、こうむった損害の賠償を本当に真剣にやろうとしていない、これでは私は困ると思うのですよ。住民が国鉄不信に陥るのは、こういうことでは無理からぬと思うのです。私は、誠意をもってこうした問題を一つ一つ解決をしていただきたいと思う。総裁いかがですか。
  99. 藤井松太郎

    藤井説明員 過去の取り扱いその他で遺憾の点があったことはおわび申しますが、起こった現象が、国鉄の鉄道とかなんとか、その所為の結果であるというものに対しましては、これは私が申し上げるまでもなく、全責任をもって国鉄は賠償の責めに任ずるということでございます。  それから、先ほどの家屋の問題なども、これは原因が本当にどういうところからきているかというようなことも、第三者の学者とかなんとかの認定なども仰ぎ、その結果によって対処していきたい、かように考えております。  いずれにしましても、国鉄の所為をもって被害を及ぼしたということに対しては、全責任を持つ、こういうことでございます。
  100. 木下元二

    ○木下委員 もう時間がありませんので、最後に環境庁長官にも伺っておきますが、国鉄が自治体や住局に対して約束をした、その約束すら守られないで、ひどい騒音振動を野放しにする結果になっておる、こういう状況が現にあるわけです。これによって住民に大変な被害を与えておる、これは私は全く許しがたいことだと思うのです。私は、環境庁長官国鉄当局に対して、勧告なり、あるいはしかるべき措置を講じていただきたい、こう思うわけでありますが、お考えを承りたいと思います。
  101. 小沢辰男

    小沢国務大臣 個人であろうと、いかなる団体であろうと機関であろうと、まして公的な機関であるべきものが、約束をしたことを守るのはあたりまえだと思います。  ただ、先ほど私も拝聴しておりまして、木下先生も言われましたように、いろいろな対策技術的にとってみたが、なかなか思うようにいかなかったのだと先生みずからおっしゃっておられるわけでありまして、事ほどさように、防止技術ということについては、いろいろなことを、現状において考えられることをやってみても、なかなか思うようにいってないのが現実だと思います。したがって、音源対策でできない部分は、他の方法によりまして約束を実行するように、できるだけ国鉄に善処をしていただきたいと思います。  ただ、両者の約束事項そのものは、両者間の問題でございますので、それは国鉄総裁がおっしゃったような方向で解決をしていただくのが一番妥当ではないか、かように考えます。
  102. 木下元二

    ○木下委員 もう時間がありませんので、いろいろ伺いたい基本問題等については次の機会にいたしまして、質問を終わります。
  103. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 米原和君。
  104. 米原昶

    米原委員 実を言うと、二十分ぐらいしかあと私の質問時間がないのですが、いま木下委員が挙げましたような具体的な問題は、住民の中からずいぶん私のところにも参っております。新幹線の通っているところに私も住んでおるので、非常にたくさん出ております。先日の参考人意見を聞きますと、東京都内を走る区間は、初めからスピードダウンされているそうですけれども、それでもやはりかなりの問題があります。そういう問題についてお尋ねしたいと思っていたのですが、時間がありませんから、本日は、この問題に対する原則的な考え方の点で二、三、責任者の考え方を聞いておきたいと思います。  第一に、環境庁長官新幹線公害ということについてお聞きします。  新幹線開通後すでに十年以上経過しました。この新幹線は、新全国総合開発計画にあるように、新しいネットワークの建設により、開発可能性を日本列島全域に拡大する、こういうために計画され、建設されてきたわけでありますが、まさに高度経済成長下の経済第一主義の産物である、こういうことが言えると思います。これは確かに国民の間に一定の便宜というものをもたらしました。しかし、その反面、過密過疎を促進し、在来線の切り捨てによって、地域住民の足を奪った面もある。あるいは先ほど国鉄の方からもお話がありましたが、非常にいま大きな赤字を出していることにも、全然これ関係ないと言えない、いろいろな複雑な問題を持ち出したのが事実だと思うのであります。とりわけ沿線住民に対して深刻な環境破壊をもたらした。これがいま問題になっておるわけですが、この深刻な環境破壊に対して、既設線、これからつくろうとする未設線を問わず、全国各地で新幹線公害反対の住民運動が巻き起こって、名古屋では訴訟にまで発展してきておるわけであります。こうした深刻な新幹線公害は、高度経済成長下の経済第一主義からきたという点では、水俣病の問題や四日市の公害、こういうものと本質的には何ら変わるところがない。こういう点で、いままでの新幹線公害について十分反省を加える必要があるではないか、こういうふうに基本的にまず考えるわけであります。環境庁長官の、この点についての見解を第一に聞いておきたい。
  105. 小沢辰男

    小沢国務大臣 非常に抽象的なお話なものですから、私の答えが後で誤解を生んではいけませんので、どうも慎重な答弁にならざるを得ないのでありますが、私は、交通政策として、どうも鉄道より道路あるいは車両の方に移り過ぎたきらいがあるという考えを持っておる一員であります。やはり鉄道をもっと活用をしていくべきではないかというふうに考えております。そういう面から言って、また、新幹線というのは、国鉄がどうしてもやりたいからやるというよりは、特に私どもも上越新幹線の方でございますけれども、むしろ国鉄にできるだけ早くやってもらいたいという地方の要望が集まって、国鉄技術開発をやってそれにこたえていくというような経過が、本当ではなかったかと思うのです。  ただ、環境庁長官としては、人の健康を保護し、生活環境を保全をするということが私の任務でございますので、その必要性は十分わかり、また、住民のために、新幹線を全国に大いに早くつくってもらわなければいけませんけれども、同時に、やはり第一義的な人の健康の保護と生活環境の保全については、あとう限りの技術と、あるいは財政的な裏づけをやりまして守っていただきたいし、また、守っていくようにしつつ、この新幹線交通網における重要な鉄道の普及というものをやっていっていただきたい。これは二つが相矛盾して絶対に相入れないものではない。やはりみんなで努力をし、研究をしていけば両立するものだと私は思うのでございまして、そういうような見解を申し述べてお答えにさしていただきたいと思います。
  106. 米原昶

    米原委員 もちろん一般の住民の見解を聞いてみましても、まず、いままで新幹線のついてないところの住民は、便宜な点から言いましても、希望しているところが多いというのは事実です。同時に問題になってきたのは、いまも木下委員からもありましたが、つくときには、東海道新幹線の経験がすでにあったために、いろいろ住民からの要望も出る。そして自治体が当局と話して協定を結ぶ。ところが、この協定も実際は実行されていない。いろいろな被害が起こっている。これでだんだんだんだん新幹線のあり方というものに疑問が生まれてきたというのが実情です。まだつくられていないところの人たちも、全体としては、やはりこういう便宜なものはついた方がいいという希望が、一般的にあるのは事実だと思うのです。ただ、それだから国民合意だというふうに簡単に決めると問題が起こる。  先日の参考人意見を徴した中でも、二村さんがおっしゃっておりましたけれども技術的な面から見ましても、この結果どういう被害を住民に及ぼすことになるかというような点を考えても、やはり技術者の観点から見ても、ちょっと急ぎ過ぎたきらいがあるという見解を率直に話されておりました。つまり、ある一定の短い区間、モデルケースをつくってみて、それのいろいろな公害や環境破壊の面を十分検討して、余り急がないでやった方がよかったのではないか、こういう見解も技術者の中から出ているようであります。  私たちの心配するのは、いままでのやり方が結局、経済第一主義の状態でした。そうして何よりもスピード優先です。率直に言って沿線住民に対する配慮というものは全くなかったのが実情ではないかということです。そこにこうした深刻な環境破壊が起こってきたのではないか。この点を環境庁長官としてどう考えられたかという点です。
  107. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先生、おっしゃるように、ある一定の区間テストをやってみて、そうしてそれがどういうように環境に影響を与えるか、それについて防止技術をどうしたらいいか、いろいろ検討した上でつくればよかったのではないかという御説に対しては、確かにその面は否定できないと思います。ただ国民は、私、名古屋の訴訟団の団長さんにもお目にかかりましたが、つくるときは、おれはむしろぜひつくってくれという方であった、しかし、長い間その沿線に住んでみて、これではとうていたまらぬから、これはひとつ何とか直してくれということから始まって、自分は率先、被害の救済について皆さんの先頭に立ってきておるのだというお話をされておられました。確かにそういうような手順を踏んでいけば一番いいことではありましょうけれども、やはり要望する側の大部分が、ついそういうような点も、起こってみないと感じないで、そうして早く建設してくれというように言うものですから、つい、それを受けていくというようなかっこうになるのではないかというように思うのでございまして、この状況は、東海道新幹線一つの非常に大きなテストが行われた。被害についても出てきているわけでございますから、これからの上越なり東北新幹線あるいは今後のものについては、十分国鉄がこれに対応するような建設のあり方をやっていただくものと私どもは考えておるわけでございまして、いまある公害については、先ほど言いましたように、技術といろいろな対策をみんなで協力し合って、何とか防止をして、この約束をしたことが守られていくように、ぜひ実現をしていきたい。私ども環境庁としてできるだけの協力をしたい、かように考えます。
  108. 米原昶

    米原委員 いま長官のおっしゃったことの中で、一言ちょっと言っておきますけれども、先日の参考人の中に名古屋の被害者の方が見えて、なるほど一般的に言えば、特別、新幹線をつくるのに反対だというような意見はないし、むしろ歓迎する空気はあった。しかし、だからといって、国鉄が地域の住民に、ここを通すとかで相談したことは一遍もない、あるいは説明会もなかったということを言っておりましたから、その点は事実だと思います。地域の住民の承諾を得てつくったような形式は全然とっていない、こういうことが経過だということを先日聞いております。  それから私は国鉄総裁にお聞きしたいのです。名古屋の裁判について国鉄側の述べられたものを見ますと、国鉄の公共性というものを盾にとって、東海道の新幹線建設については何らの手落ちがなかったということを強調されております。すなわち、被害を回避し得る可能性は、現実論としてはあり得なかった、こういうふうに明確に述べておられるわけでありますが、この点、いまでもこの態度に変わりはありませんか。
  109. 加賀谷徳治

    ○加賀谷説明員 いまの裁判の議論の中に出てくる言葉の引用がありましたので、ちょっと私、御説明申し上げなければいかぬと思うわけでございます。  いま先生がおっしゃった御趣旨で申し上げてあるわけではございません。これは裁判の中での長いいろいろな議論の中でございますから、説明が非常にむずかしい点はございますけれども、私どもとしては、できるだけそういった環境を壊さない最良の設備を提供するということで努力しておるということも言っておりますし、それからまた、路線を選定するに当たって、もっと慎重に、あるいはまたほかの路線を選定できたのではないかというような議論が、もしあるとすれば、それに対しては、国鉄の公共的な使命からしまして、やはり名古屋の現在の駅に接続することが、鉄道機能としては非常に大事なことである、また非常に強く望まれておったということでございますから、名古屋の現在駅に接続するというルートをとれば、たとえその地域は避けられたとしても、いずれそういった問題は別の地域において起こるという意味で申し上げた言葉でございますので、その点はあしからず御了承願いたいと思います。
  110. 米原昶

    米原委員 いま伺ってよくわからないのですが、結局、実際問題としてはやむを得なかったのだという趣旨になっていると思います。そういうことだとしますと、大変なことを言っていらっしゃることになると思うのです。こういう考え方で進められたのでは、現在建設中や計画中の新幹線で、第二、第三の名古屋の状態が必然的に生まれるのではないか、そう思うわけですが、こうした考え方国鉄が持っておられることについて、つまり公共性という名のもとに、そういうものがあってもやむを得ないのだ、この考え方環境庁長官としてはどう考えられますか。今後の新幹線のあり方にもかかわってくるので、基本的な点でひとつ環境庁の見解を聞いておきたいと思います。
  111. 小沢辰男

    小沢国務大臣 やはり国鉄の公共性を強調することは、国鉄の立場としてはそうだろうと思いますが、私どもがいかに生活に便利であっても、人間の健康の保護と生活環境の保全について重大な支障を与えるようなものは、私どもとしては国民のためにとるべきものではない、かように考えます。ですから、先ほども言いましたように、この両面が両立するように技術的な検討もし、財政的な措置もするということに全力を注ぐべきである、かように考えております。
  112. 米原昶

    米原委員 それでは次に、いま問題になっております新幹線騒音環境基準についてお聞きします。  先ほど長官の方から、名古屋の住民も、今度の特殊騒音専門委員会のあの線ですね、これについて大体それでもいいのだというふうに聞かれたようにお話がありました。先日の参考人意見陳述のときに、楠本委員長自身もそういう発言を最初にされたのです。ところが、地元の住民の代表の方から、それはちょっと間違いだ、あの基準でよろしいとは言ってない、反対同盟の委員長もそんなことは言ってない、ただ、いままで国鉄はほとんど何もやってないから、あの線でも実行できれば確かにましだ、だからこの線で実行されようとするなら、それを妨害する意思はない、やれるならやってください、こういうことを言ったのだとおっしゃっておりました。そして、その点を楠本委員長自身も後で訂正されました。住民の立場からすれば、あの基準では不十分だ、こういうことは私も聞いて知っております。しかし、いままでの経過からすれば、少なくともあれだけはやってくれという意味はあるという意味だったと聞いております。そういう点から考えると、あの環境基準、長官の方はどう考えられますか。
  113. 小沢辰男

    小沢国務大臣 名古屋の方々の訴訟の中に六十五ホンという内容がございます。したがって、訴訟を起こされて六十五ホンを要求されている側が、七十ないし七十五という専門委員会基準を、これは全くいいとおっしゃるわけがないわけでございまして、この点は、私は何もそういう意味で申し上げたわけではない。ただ、環境基準を七十、七十五と専門委員会でお決めになりましたものについて、非常に高い評価を与えておられるという意味で、まあまあではないかというふうに受け取っておられるというふうに聞いておるわけでございまして、先ほどちょっと言葉が足らなかったと思います。  私どもは、理想はできるだけ高く、そしてこの理想に向かって一歩一歩進んでいくのが、環境を守るわれわれとしての責任だ、かように考えております。
  114. 米原昶

    米原委員 それでは、さらに長官に聞きますが、今回の専門委員会の報告の実施には、先ほどもちょっと国鉄の方から意見がありましたが、簡単に言いますと費用がかかり過ぎる、だから考え直すべきだ、そういう意見がかなりあるようであります。費用がかかり過ぎるからという点について、環境行政の原則から考えて長官自身はどう思われますか。
  115. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃることがよくわからぬのでございますが、費用がかかるということを認識するかどうかということであれば、膨大な費用がかかることは事実でありますから、それは当然だと思います。ただ、費用がかかるからできないと言うだけではいかぬと思います。環境基準というのは、人の健康を保護し、生活環境を保全、維持するに必要な望ましい環境基準、こういうように公害基本法上決まっておるわけです。しかし、あの望ましい基準というものは、その時期における技術的な予見というものを基礎にして決めるべきものであることは、各種環境基準について常に明確に環境庁がお答えをいたしておるところでございます。ですけれども、この騒音問題については、現在の技術のみならず、近い将来開発されるであろう、あるいは可能であろうという点もある程度やはり含めまして、今度の基準値専門委員会でお決めになったのではないかと思うのです。したがって、やはりそれについては、現在の技術の評価についての意見が分かれるのではなくて、やがて恐らくできるであろうと予測される防音技術についての所見も含めて、専門委員会で御決定になっているから、したがって、それをめぐっていろいろ部会でなお慎重の議論が行われているのではないかと思うわけでございますので、ただ単に、費用がかかるからだめなのだということで議論をされているものではないという認識でございます。もちろん費用の点も、現実に可能性があるかないかということも、これは当然受け取る側からしますと非常に大きな問題でございますから、そういう意味で十分議論を闘わしていただいて、最初林さんの質問等もございましたように、それについて対応の仕方がいろいろあると思います。それを、国民が本当にいかなる対応を選択するのかという点も十分踏まえて、私どもは人の健康の保護と生活環境の保全のために最善の道を選びたい、かように考えているわけでございます。
  116. 米原昶

    米原委員 私、時間がないので、最後ですけれども技術の問題ですが、ただ、先日の参考人意見陳述では、二村参考人から、先ほど島本委員も申しましたけれども技術が可能かどうか論議するより、もう実行できる段階だ、実行できるのだ、こういう参考人の御意見でした。この点、いまおっしゃったことと若干違う。実行できるのだ、この技術がどうかという議論をする段階ではない、日本のいまの能力から言って、これはもう実行できる問題だ、こういう問題の提起であったということだけ、私たちここで全員聞いておりますから、それだけ言っておきます。  それで、最後に国鉄総裁の方に三点だけ。私、もう時間がありませんから、ただ答えていただきたいのは、一つは、この専門委員会の報告で、新幹線騒音は「生活環境保全上深刻な社会問題となっている」こういう言葉があるわけです。これは、さっき私が質問した名古屋の裁判について国鉄当局が述べておられる点とはちょっと矛盾すると思う。この点についてどう考えられるか、これが第一点。  それから第二に、これはまとめてお答え願いたいのですが、あの専門委員会の報告で出ている基準値について、国鉄当局としてはどう考えておられるか。  第三点は達成期間、何年間でやるという達成期間、この点で国鉄当局いろいろ議論があると聞いておりますが、基本的にこの三点だけを、今後この問題を、議論を進めていくためにも、国鉄当局の正式のお答えを得ておきたいと思うのです。
  117. 藤井松太郎

    藤井説明員 三つの御質問がございましたが、順次お答え申します。  新幹線の振騒音問題が重大な社会問題になっていることは御指摘のとおりでございまして、私どもが意図する、意図しないはともかくとして、できるだけ最善の努力をして、これを軽減していきたい。今後さらにつくるようなものが生まれた場合には、こういうおしかりを受けぬような最善の努力をいたしたい。これは当然の議論でありまして、第一点はお答えいたします。  それから、第二点の基準値の問題でございますが、基準値努力目標であるとかなんとかいうことならば、私も六十、七十五よりもさらに低い方がいいだろうと思いますけれども、これに期限をつけて、いつまでに実現するのだということになると、基準値がいい悪いの議論ではなくて、そういうものが直ちに実現できるのかどうかということが問題になりまして、遺憾ながら、先ほども申し上げましたけれども、金の問題は別としましても、東京博多で十三万戸の家を動かすということになると、土地の取得に関しましても何か特別の立法が要りますし、かたがた十三万戸の方々に御移転を願うという納得を得るのも、時間的に申しましても容易なことではない。そういうようなことで、金がかかるということ、それから時間的にかかるということ。  それから第三段の御質問に関するのでございますが、私どもも、先ほど来おしかりを受けておりますが、努力の上に精いっぱいの努力をして、音源対策では大体八十ホンぐらいが、現在の技術程度ではほとんど行き詰まっているのではないかと思いますが、今後とも努力を重ねて、それを前進させることはもちろんでございますが、それ以上低くするということは、早急には望みがないというのが本当の議論でございます。したがいまして、達成期間は三年とか十年とかで心得ましたと言うことは容易であるけれども、事実上はできない、こういうことでございまして、特別の委員方々が、日本技術をもってすれば可能なのだということで、相当偉い方の御意見だろうから、可能な対策を教えていただけば、私どもは知らぬのですけれども、教えていただけば直ちにやる。現に、先生御承知だろうと思いますが、西ドイツであるとかアメリカあたりがこういうものを出す場合には、技術的な忠告書というものがついて、おまえらいやがるかもしれぬが、金をこれだけかけて、こういう方法をとれば、このとおりできる、このとおりやれというのがついておる。したがいまして、そういう性格のものを委員の方に教えていただけるなら、私どもはしかられることはこりごりなので、いつでもやります。
  118. 米原昶

    米原委員 それでは時間がありませんから、これで終わりますけれども、私が第一問として聞いたのは、深刻な社会問題となっているという点ですが、いままで言われたことから見まして、さっきも阪神の三都市との協定の問題が出ましたけれども、深刻な社会問題になっているなどという認識は全然ないのであります、国鉄当局には。実際は何もない。うそばかり言っている。全くの加害者集団というか、極端な言葉を言えば殺人者集団と言ってもいいかもしれない。そういうようなやり方を続けておられるということです。あるいはいまおっしゃった最後の点につきましても、もう三年前に環境庁が八十ホンの勧告を出しているわけでしょう。国鉄は三年間努力されたと言うけれども、どれだけ努力をされたのか。てんで何にもやっておられない、こういうふうに感じますので、実は質問したのです。原則的にはいまおっしゃったことを、私はもうほとんど国鉄当局の本当の誠意ある態度とは思えないのです。こういうふうに申し上げまして、私の質問を終わります。
  119. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 岡本富夫君。
  120. 岡本富夫

    ○岡本委員 時間が非常に切迫しましたから、重複するのは全部避けまして、最初に環境庁長官にお聞きします。  この新幹線基準、これは三月いっぱいに必ずやりますというのが私に対する答えだった。聞きますところ、専門委員会ではもうできておるけれども振動部会相当いろいろなことが起こっている、こういうことですが、この専門委員会の報告を見ましても、基準だけでなくして、たとえば立法しなければいかぬとか、いろいろなこういう行政がやるべきことに対してまで立ち入ってきておる。基準基準中公審で決めて、それに対して今度は政府の方でこれを達成するにはこうしなければいかぬという行政の立場と、二つに分かれるのではないかと私は思うのです。その点について、この専門委員会が行政の立場にまで立ち入っているから、ここに問題が起こっているのではないかと私は思うのですが、この点について環境庁長官の御意見を承りたいと思います。
  121. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃるような評価もあろうかと思います。本来、中公審専門委員会ですから、特殊騒音については基準を決めればいいので、あと、それを受け取った政府側が相集まって、それをどういうふうに実施するかということを決めるべきであるという御意見も、それはもう十分ございます。私も初めはそう思ったのでございますが、ただ、やはり基準を決める場合は、でき得る限り具体的に、そこに至る目標の年次ぐらいは決めないと、先ほど言ったように人の健康を保護し生活環境を守るという使命が達成できないから、恐らく部会なり専門委員会で、そういうことまで踏み込んである程度意見をお出しになっておる、かように考えておるわけでございまして、先生がおっしゃるように、一つのそういう考え方もあろうかと思います。その辺は今後の推移を見て、私も腹を決めたいところでございます。
  122. 岡本富夫

    ○岡本委員 環境庁長官、いままで排出基準にしましても、いろいろな基準を決めるについて、大気汚染の方は何か十年とか、そういうような答申を出していましたけれども、大体専門部会と申しましても、この間来た人たちのいろいろな顔ぶれを見ましても、政府ほどスタッフがいるのではないのですね、あるいは行政のいろいろな細かいことを知っている人ではないのです。ですから、政府としてこれに対して、今度はどういうふうに対処しようか。たとえばこれだけのお金がかかる、それなら運輸省からこう出すとか、あるいは一般会計からこう出すとか、これは政府の方の行政の責任なのです。その行政の責任を中公審の答申に織り込まして、隠れみのにしておるのではないですか。だから、いまこういう混乱が起こっておると私は思うのですよ。したがって、いま長官がはからずも言いましたけれども、それを見て今度は行政で一遍考えるとおっしゃったけれども、これはもう一度根本的に考え直さなければならないと私は思うのです。再度、長官からこの点だけ承っておきたいと思います。
  123. 小沢辰男

    小沢国務大臣 ただ、岡本先生御承知のとおり公害対策基本法では、「公害対策会議及び公害対策審議会」という第四章で、公害対策審議会の任務の中に、審議会は意見を述べることができるわけですね。環境基準についての諮問を受けて、それをいろいろ審議をして決定をする際に、当然対応策としてこういうものをとれ、あるいはこういう点は、政府は必らずいろいろ裏づけとしてやらなければいかぬという、みずから意見を具申する権限があるわけでございますから、それは先生がそんなところまで踏み込んでいるからおそくなっているのだと言われますけれども、やはりこれだけ大きな問題でございますから、そういう点も踏まえて中公審部会審議をされることは、これはいかぬというわけにはいかないのですね。その点は審議会の任務、権限というものもございますので、ひとつ御理解をいただいておかないといかぬと思います。
  124. 岡本富夫

    ○岡本委員 それから、この間参考人として見えました二村先生ですか、この方のおっしゃる中に、騒音振動によって大きな影響があるのだ、こういうような話がありました。したがって、振動対策振動基準というものを早く決めなければ——振動か大きければ大きいほど騒音も大きくなるというので、万年筆のキャップと本体とで何かこうたたいて見せておりましたが、そういうことになりますと、振動はいつごろ基準を決める、こういう予定にしておるのですか。
  125. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先ほど大気局長がどなたかに御答弁いたしましたように、いま鋭意、部会検討を願っておるわけでございます。私も、三月いっぱいには何とか騒音関係の仕事を終えたいと岡本先生に御答弁を申し上げて、それが今日まで、もう五月の末になっておるのにもかかわらず、実行できてないわけでございますので、あのときは十分三月中には答申をいただけるものと思っておりました。それがこういうことになったので、斉藤先生のおしかりを先ほどいろいろ受けたわけでございますが、したがって、いつまでにということは、いま軽々に申し上げますと、振動部会がまた長引きますと私の食言ということになりますので、振動部会でできるだけ早く御検討願うということで、ひとつ御勘弁を願っておきたいと思います。
  126. 岡本富夫

    ○岡本委員 いつまでのめども立てずでは、これは先ほど私が申しましたように、振動騒音というのは非常に大きな関係がある、こういうことですから、大体めどを立てなければ、ちょっとぐあいが悪いのではないですか、本当の騒音対策にならないのではないですか。長官、ひとつもう一度お答え願いたい。
  127. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先ほど局長答弁しましたように、振動については、振動をはかる測定の問題について、いろいろまだ学問的な統一見解ができてない、そういう状況等もございますし、振動については、自動車なりその他いろいろなことがございますので、かえって私は新幹線騒音よりはいろいろな面で、検討しますとめんどうではないかと思います。相当時間をやはりかけなければいかぬと思いますので、拙速をとうとぶよりは十分時間をかけて、本当に実態に合う、しかも環境行政から見た答申をいただきたいと思いますので、この辺でひとつお許しをいただきたいと思います。
  128. 岡本富夫

    ○岡本委員 だめだね。局長は大体いつごろにめどをつけておりますか。
  129. 春日斉

    春日政府委員 めどの問題につきましては、ただいま長官がお答えになったとおりでございます。  新幹線振動につきましては、騒音を片づければ、かなりの部分は、確かにそれに伴いまして片づくところが多いと思います。しかし、この前の参考人の御意見にもございますように、低周波の九〇ヘルツ以内の領域で問題になっているいわゆる公害振動という問題は、沿線の地盤状況等によっては、必ずしも騒音の問題と並行しない場合もございます。こういった点は、したがいまして国鉄におかれても、振動基準というものの作成をする、しないにかかわらず、軌道についてゴムマットを敷くとか、あるいは防振レールとかいうようなことで、いろいろな検討をされておるわけでございます。しかし、いずれにいたしましても振動基準というものは、可及的速やかにという言葉がございますが、そのとおりにできる限り速やかに行ってまいりたいと思います。
  130. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、結局環境庁の中で振動基準がいつできるかわからぬ。早うしたいけれども、まだできぬ。こういう何といいますか、はっきり言いますと頼りないということですよ。しかし、これは大事なことですから、この振動騒音というものは非常に密接な関係があるということを、この間も参考人の皆さんがおっしゃっていました。一日も早く、これはひとつやってもらわなければならぬ。  そこで、こればっかりやっていると次に進みませんので、もとへ戻りまして、中公審専門委員会の報告というものに対して、これは意見だ、こういう長官の話があった。その意見に対して、今度部会国鉄の方からいろいろ横やりが入っておるということですが、総裁、どんな横やりを入れておるのですか。
  131. 藤井松太郎

    藤井説明員 たびたび申し上げたつもりでございますが、これが基準である、目安であるという限りにおいては、七十、七十五はまことに結構であるけれども、これを日月を切って、いつまでにやりなさいということになると、それが妥当であっても、実現不可能なものはお引き受けできない、そういう意味合いで、何も国鉄を弁護するとかなんとかいう意味合いにあらずして、七十、七十五ということをしゃにむにやれば、先ほど申しましたように十三万戸ぐらいの家を動かすというようなことになり、それには用地の取得でも特殊の立法が要ったり、あるいはそれを納得していただくといったって、十三万戸もこれは容易な議論ではなし、かたがたそれには一兆三千億からの金がかかるということでございますので、そこらの国民的の合意というか、これがございませんと、国鉄として、これは国鉄国民の委託を受けて動かしておるだけで、よろしゅうございます。引き受けましたと言いかねますということを言っているので、横やりとかなんとかいう意味ではないはずでございますし、私は、そういうことを横やりを入れさしておるつもりはございません。
  132. 岡本富夫

    ○岡本委員 長官、あなたは参議院の方に行かなければならぬから、特に人命尊重のわれわれですから、食事に行ってください。  総裁、あなたは先ほどから当委員会でえらい居直っておりますけれども、長官のいまの話を聞いたでしょう。専門委員会はただ意見を具申するのだ、意見具申をする権限を有するのだ、こうおっしゃった。だから意見を出したのだ。あとの行政は、これに対して先ほどの一兆三千億どうするかとか、あるいはそれについては今度は行政のベースでどうしようかということを考えるべきでしょう。意見を出したからといって、それがもう絶対だというのではないと言っておる、こういうことだったのです。行政が、政府が後でこれに対してどういうふうにやるかは考えるので、あなたの方でそうやって、出してきた意見に対して突っ張っておったら、これは基準は決まりませんよ、いつまでたったって。そうでしょう。だから、ここでひとつ横やりなんか入れずに基準は決める。それに対して今度は国鉄として、それだけのお金がどうしても負担できない、あるいはこうしなければならぬ。それならそれで、あなたは運輸大臣の方に、これだけの補助といいますか、あるいは国鉄の資産を、いまたくさん遊んでいる資産を全部売却するとか、そして国鉄努力をし、ここまでやったけれども、これだけはどうしてもできない。これはあなたはどんどん運輸大臣あるいは政府に要求していく立場ではないですか。それが私は総裁だと思うのですよ。いま聞いたら何か居直ったままで、住民の方は——少なくとも当委員会に来て、そんな考え方あるいはそんな立場、そういうような態度では、私は話にならないと思うのですよ。運輸委員会ではそういうふうに言ってもいいかもわからないけれども、ここはそういうところと違う。当委員会は、少なくとも委員長以下みなとにかく住民の皆様の健康を守ろう、これが環境公害特別委員会の使命なのです。そこへ来てそんな達成できるかできないかわかりません、教えてください、そんなばかな、先ほどから聞いていて、そういう答弁の仕方はなっていないと私は思うのです。だからひとつこの中公審の答申に対して横やりは入れません、これくらいの確約をしたらどうです、いかがですか。
  133. 藤井松太郎

    藤井説明員 どうも説明が悪いので、何か非常に居直ったような印象を与えたとすれば、おわび申しますが、私の方は一委員として加わっているので、大ぜいいらっしゃるので、一人反対だから部会の決議は成り立たぬわけでもなんでもないのです。ただ、あえて申し上げているのは、横やりにあらずして、それを実施するということになれば、国鉄が当面の仕事をもちろん引き受けざるを得ない。それにはこういうことになるので、ひとつ行政的の、政治的の御判断をなさるためには、こういうことを御覚悟願いたいということを申し上げているので、委員会の報告が悪いからけしからぬとかなんとかいうことは、いささかも言っていないのです。横やりを入れているつもりは全然ございません。
  134. 岡本富夫

    ○岡本委員 しかも専門委員会には副技師長が出る。きょうはおいでになっているかどうか知らぬが、副技師長いますか。技師長は逃げてしまったらしいが、あなたは専門委員会でこの決定に当たってどういうことになったのか、あなたの立場をひとつ明らかにしてもらいたい。
  135. 坂芳雄

    ○坂説明員 専門委員会で私が申し上げておりますのは、総裁以下いま申し上げておりますように、いかに実現をするか。努力目標とはいいながら、相当高い実現性を見込まねばならない。したがって、いかに実現をするかということが、結局具体的な施策を進めるゆえんであるということを主張してまいっておるわけでございます。  それからもう一つ申し上げておりますのは、国鉄単独では処置ができない面が非常に多うございますので、政府関係機関で、その具体的な方法につきまして十分御審議をいただいて、方向づけをしていただきたいということを、繰り返し申し上げている次第でございます。
  136. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、七十ホン、七十五ホンには決して不満ではない。ただ、政府の方向づけということは、私は政府は財政だと思いますね。その方を何とかせい、こういうことだったのですか。もう一度あなた、明らかにしてください。
  137. 坂芳雄

    ○坂説明員 中での個々の議論は差し控えさせていただきますが、基準値と申しましても、やはり達成期間と一緒になって検討すべきもの、こういうふうに考えて主張しておる次第でございます。
  138. 岡本富夫

    ○岡本委員 専門委員会ではもう決定しているのではないですか。そこへあなたも入っていたのではないですか。専門委員会には副技師長が入って、部会の方には技師長も入って、ずいぶんかき回しておるらしいが、一つ基準値を決め、そしてそれに対する対処の仕方については、先ほど林さんからもちょっと話があったけれども政府の方にもっと要求していく。これとこれをこうしなければできないのです、こういうような努力総裁がおやりになりますか、いかがですか。
  139. 藤井松太郎

    藤井説明員 御指摘のようなことは、これから十分やるつもりでございまして、根本的には一兆何千億の金とかあるいは用地の取得立法措置、こういったようなものが並行して行われないと困る、こういうことでございます。
  140. 岡本富夫

    ○岡本委員 困ると私に言うてもだめなんですよ。それは政府に要求しなければならぬ。その努力をあなた、なさいますかと聞いているのです。いかがですか、もう一度。
  141. 藤井松太郎

    藤井説明員 努力はいたします。現にいたしております。
  142. 岡本富夫

    ○岡本委員 現にいたしておるのであれば、別に基準に対して私はとやかく文句言う必要はないのです。あなたの方が横やりを入れたり、あるいはこの基準に対していろいろなことを言わなければ、今度はあとの対策だけですからね。  長官、それでいま明らかになりましたことは、要するに七十、七十五ホンのこの基準値に対しては問題ない。それよりもその達成についていろいろな政府の援助、あるいは行政の援助、これがどうしても必要だ、こういうことなのです。総裁も、これからそれに向かって努力する、政府の方に対してどんどん申し入れもする、こういうことなのです。きょうはここに運輸大臣もいないし、三木総理大臣もいませんので、あなたが三木内閣の閣僚として、行政の立場から国鉄の言い分を聞いて、この基準達成に向かって努力なさることを、ひとつ確約していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  143. 小沢辰男

    小沢国務大臣 中公審でいま審議中なものですから、それを何かもう決まったような前提で私がお話を申し上げることは、ちょっと中公審の自主的な立場あるいは権威というものを考えますと、部会審議中に私がそれを制約するような話はできないわけでございまして、その点は御理解をしておいていただかぬといかぬと思うのです。私どもは、できるだけ答申が早く出まして、それに応ずる対応策を十分にできるようにしなければならない、もし仮に、その達成期間あるいは達成のためのいろいろな対策というものが必要であって、国鉄側に——いま総裁政府に要求するとおっしゃいました。私も閣僚としては、当然これは結果的には国民全体の負担になる問題でございますから、いずれにしなしても政府ができるだけのことをしなければいけないわけでございますので、最大限の努力をもちろんさせていただきます。
  144. 岡本富夫

    ○岡本委員 うまいぐあいに責任逃れの答弁みたいなんですね。あなたは、もう一日も早く基準を決めなければいかぬ責任を持っているわけですよ。こればかり言うておるとあれですから、ひとつ対策については国鉄の方からどんどん意見をとって、その基準値が決まったら、それが実行できるような、そういうことになれば、部会の方も恐らく——専門委員会の楠本先生の話では、私は自信を持っておる、これぐらいの強い意見でしたよ。あなたが依頼したところの専門委員会ですよ。これはなかなか後退させぬぐらいのすごい勢いでしたから、この点も頭に入れて、部会に余り干渉しないもよう願いたい。付近の住民の皆さんは、ともかく不満だけれども、そこまででも決めていただいて対策していただいたらと、非常に待っておるわけです。  そこで、四十九年の十月五日の新聞の報道を見ますと、国鉄の石沢総局長は、「現在進めている公害対策工事が効果がないとすれば、一つ方法として新幹線の減速運転もあり得る」こういう回答を、これは大阪府摂津市の井上市長に対して答弁をいたしておるわけです。  そこで、先ほどだれかから三市の話がありました。西宮、尼崎、伊丹の三市が、山陽新幹線の建設当初に覚書を交わしておりますが、その覚書の中で、国鉄ははっきりと、屋外でピーク値七十五あるいは八十ホンA特性、振動については〇・三ミリ程度を目途としておる。そして、それができないときには、いろいろな苦情は全部解決いたします、こういうような覚書をはっきりと出しているのですね。  山陽新幹線をつくるときに歓迎したというのは、これは四十三年の三月十日でしたか、開業前の試運転ですね、これは百から百五十くらいで走ったと思うのですよ。非常に音も少ないし振動も少ないというわけで、この分ならといって歓迎したわけですよ。それまではこの三市は反対しておったのです。先ほどから聞きますと、国鉄さん、新幹線を引くのを皆大分歓迎をしておったというようなことを言ったですけれども、そうではないのです。反対した。そこで覚書でこうした。この覚書をよく読んでみますと、国鉄は、法的な価値がないようにうまく逃げているのです。この三市がちょっとあれだったですけれどもね。もう少し法律的に詰めたらよかったのですけれども。現在、八十ホン以上をピーク時においてはずっと超しているわけです。したがって、いま対策をやっておるけれども、なかなか三年たっても、三年どころか、もう七年ぐらいたって、まだ何とも解決しないということですから、このあたりをひとつスピードダウンを若干したらどうか、私はこう思うのですが、総裁いかがですか。
  145. 藤井松太郎

    藤井説明員 大阪以西につきましては、まだ八十を超すところが若干残っていることは御指摘のとおりでございますけれども、私ども努力によって、八十ホンには食いとめる決意です。しかし、それが成功しない場合は、いわゆる障害防止対策とかなんとかいうような手を用いて、住民の方々の損害を賠償するというつもりでございまして、大体八十ホンぐらいには私はおさめ得ると思うので、その作文が何も住民をだましたとかなんとかということではなくて、何か壁体が背が低くて、八十二、三ホン出たとかなんとかいうことはあり得るので、これは継ぎ足すとかなんとか、いろいろな議論をやりまして、ひとつそれをお約束どおり守って、守れぬときには損害賠償をいたしますということでございます。  それから、最後の新幹線のスピードダウン、これはいかなる手を打っても騒音が何とかということになれば、これは最後の手であろうと思いますけれども、これを一カ所やると、おれのところも同じだというようなことで、わさわさっと皆遅くなってきますと、先ほども申し上げましたように、新幹線が現在線と同じスピードになってくると、これは新幹線の建設費というのは現在線の三倍もかかっておるので、これは非常につらいことなので、それは最後の手で、直ちにということではございません。
  146. 岡本富夫

    ○岡本委員 最後というのは、いつごろが最後になるのでしょうね。
  147. 藤井松太郎

    藤井説明員 お約束した八十ホンというようなものは、これは一、二年のうちにやります。
  148. 岡本富夫

    ○岡本委員 一、二年ということは五十二年までですか。
  149. 藤井松太郎

    藤井説明員 五十一、二年にやります。
  150. 岡本富夫

    ○岡本委員 総裁、あの辺をあなたは視察されたことがありますか。
  151. 藤井松太郎

    藤井説明員 私はあの選定当時から五、六回ぐらい歩いておるつもりでございます。
  152. 岡本富夫

    ○岡本委員 三市が約束したのは、ここにもございますけれども、四十四年の三月七日、先ほどの四十三年というのは間違っておる。四十四年の三月七日あるいは四十四年の四月十四日、これ付の覚書なのです。これを見ますと、もしも苦情が出たら一ヵ月以内に何とか処置するということが出ておるのです。それから四十五年三月十日から山陽新幹線が動き出した。こういうことですから、四十五年からだと、八十ホンになるというのは七年かかるわけですね。しかもこれには七十五ないし八十と書いてある。私これを見ますと、今後のこともありますから言うのですが、結局、国鉄というものは、そこの住民の皆さんを納得させるためには、こういうようないろいろなものをつくる。しかし、これは実際には納得させるための一つの手段であったと思うのですね。実際にできないものを——大体普通でしたら、四十五年から五十二年というと七年間、それが最後だなどというのは余りないですよ、昔もいまも。台風手形というのがありますけれども、七年もかかるような手形は余りないと私は思う。ひとつ総裁、あなたせっかく出てきたのですから、これから二年も先などと言わずに、ひとつもっと早くするように、せっかくこうして約束しておるのですから、この約束のほごということになりますと、ほかのも全部だめだということになってくると思うのですよ。ひとつそれだけを要求いたしておきます。  それから最後に、総裁からひっくるめて、結局どうすれば東海道新幹線、山陽新幹線、現在の新幹線の住民の被害、苦しんでいる被害を全部抜本的に救うことができるのか、これについてあなたの方の確たる決心あるいはまた所見をひとつ聞いておきまして、終わりたいと思います。
  153. 藤井松太郎

    藤井説明員 お答えします。  ただいまのところは八十ホンというものを目標にしておりますので、これを極力進めて、まずもって八十ホンにする。遺憾ながらそいつに足を出して八十五ホンというようなものが残れば、御移転を願って被害を賠償する、そういうことでございます。
  154. 岡本富夫

    ○岡本委員 被害を賠償すると言ったって、大分大ざっぱな話ですな。  それからもう一つ、要するに七十とか八十とか、このホンのはかり方なんですね。これは要するにこのはかり方においてスローとファースト、両方あるのですよね。ファーストとスローというのは約一割ぐらい違うということを、この間、参考人においでくださった専門の先生に聞きますと言うておりました。一割違うということは相当な違いになるわけですね。ですから、この暫定基準を決められたときにはスローで決めているわけですよね。しかし、三市と約束したときはまだスローでなかった。だからこの点について、これは当時は、総裁と違ったからあれですが、当時の責任者は、内田さん、あなたもいられたかな。答弁をしてもらいたい。
  155. 内田隆滋

    ○内田説明員 その当時は確かにファーストであったかもしれませんけれども、その後スローということで決まりましたので、それでお話し合いを進めさしていただいておるということでございます。
  156. 岡本富夫

    ○岡本委員 いまお聞きのように、当時はファーストだったのです。今度スローで計算することになりますと、約一割くらい違うのですね。ここに、いま三市と国鉄当局とのいろいろな問題が起こっているわけですよ。国鉄が調べたら八十以下でございます。七十何ぼです。役所で調べると八十以上超えている。  最後に。最後が何遍も悪いですけれども、ファーストでこの三市と約束した分だけは、いま総裁がおっしゃったように対処するかどうか、この点だけをお聞きして終わりたいと思うのです。
  157. 藤井松太郎

    藤井説明員 ただいま申し上げたことは責任をもって実行いたします。
  158. 岡本富夫

    ○岡本委員 いやいや、ファーストでもはかるか。
  159. 藤井松太郎

    藤井説明員 これは先生、専門屋でよく御承知だろうと思いますけれども、ノイズレベルのはかり方は、これよりもまだ騒音の連続したやつを入れたワールド・コンティニュアス・パーシーブド・ノイズ・レベルとかなんとか、むずかしいのがたくさんありまして、先生がおっしゃっていることはいいだろうと思うのですが、そこらは私もよく知らぬので、ひとつ検討させていただきます。
  160. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしたら、だれが知っているのですか。では内田さん、お答えください。
  161. 内田隆滋

    ○内田説明員 ファーストとスローというのは一ホンぐらいの違いなので、そう違いはないわけなのです。基準でスローの八十ホンということに、緊急指針では測定方法を決められておりますので、その測定方法に基づいて、今後いろいろなものを進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  162. 岡本富夫

    ○岡本委員 それだったら、内田さん、また、この約束はほごになるわけですか。この間の委員会二村先生ですか、聞きますと、やはり一割ぐらい上下があるというのですね。そういうようなお答えをされておったのです。ですから、最初約束したのはファーストで約束されておるのです。その後に暫定基準が決まったときにスローになったわけです。だから、今度は私はスローでいきます。こういうことになりますと、最初の三市とのお約束がちょっと違うのではないか。それでもどうしても最初のお約束はほごにしまして、スローしかできない、こういうことなのですか。
  163. 内田隆滋

    ○内田説明員 人体の耳に感ずる感じが、ファーストよりスローの方が適切であるという御判断なので、われわれとしてはスローで今後いろいろなお話を進めさせていただきたいと思います。
  164. 岡本富夫

    ○岡本委員 総裁、ここにも一つの出てきたが、これは個人間でしたら、約束したことは当時のその状況に応じてきちんと守るのが普通なのですよ。これはやはり、国鉄の横暴というのはそこにあるのです。総裁ひとつ政治的配慮で、当時の約束したとおり実行いたしますということでどうですか。そのくらいの御答弁はいただけませんか。
  165. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 質問者の時間も経過いたしましたので、総裁もきちんとした答弁をして締めくくってください。
  166. 藤井松太郎

    藤井説明員 お約束は必ず守ります。
  167. 岡本富夫

    ○岡本委員 よろしい。では、これで終わります。
  168. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後二時二分休憩      ————◇—————     午後二時四十九分開議
  169. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島本虎三君。
  170. 島本虎三

    ○島本委員 きょう私は、午前中と違いまして午後は、国立公園の管理、指導に対する問題とあわせて、現在、国立公園の支笏湖のヒメマスにいろいろ奇病が発生しておりますのと、その斃死問題、これを二つあわせて、その根本的な原因の追求を含めて、ひとつ質問してみたいと思います。  環境庁の長官は、午前中おって、いまいないわけですが、次官も来ておりますので、基本的な問題を一つ先にお伺いしますが、国立公園の管理の問題なのです。当初でき上がるときに、これはずいぶん議論になった問題であります。年間多数の観光客でにぎわう長野県のあの上高地。北アルプス連峰の槍ケ岳や焼岳そして穂高などを通って上高地に貫流する梓川、あれは清流で通っているのです。しかし、その梓川自身も大腸菌で汚されて、対策はさっぱり進んでおらない。今度は岡山県の鷲羽国立公園でも、特別区域の松が冒され、対策も不十分。コンビナートが原因だという結論さえまだ出ておらないという状態。  北海道の支笏湖国立公園でも同様に、生活環境に係る環境基準は湖沼類型のAAなのです。そして達成期間が、直ちに達成というイなのです。それが当てはめられているはずなのに、この支笏湖内のヒメマスに、尾びれが腐るというような奇病が発生しているわけです。そして親魚、成魚の八〇%近くがもう死滅している、こう推察されているわけです。まさに絶滅寸前なのであります。ついに全面禁漁の断が下されて、明治二十九年以来七十年を超える誇り高きチップも、ついに伝統に終止符を打たざるを得ないような状態になってきた。これも国立公園支笏湖のイメージダウンに重なり、これが環境庁ができてからの出来事になっているわけです。できる前の厚生省ならいざ知らず、環境庁ができてから、こういうような事態になっておる。地元民はものすごくショックを受けているようであります。国立公園の管理が十分でないのではないか、また問題があるのではないか、こういうような点を懸念するものでありますが、これはどういうようなことでございましょうか。まず、管理の面について十分なのかどうか、環境庁長官にお伺いいたします。
  171. 橋本繁蔵

    ○橋本(繁)政府委員 ただいま島本先生の御質問でございますが、支笏湖のヒメマスの病害発生等に関しまして、環境庁の立場からどのように考えておるかという御質問でございますので、お答えをいたしたいと存じます。  支笏湖は、ヒメマスの生育するような清澄な湖水、原始的な景観美によって、北海道の自然を代表する国立公園として広く知られており、従来から環境庁は、この区域に国立公園の管理員を常駐させるとともに、その自然環境の保護に努めておるところでございます。したがって、今般この湖のヒメマスの異常な病害の発生については、環境行政の立場からも重大な関心を有しており、その原因の究明については、現在水産庁において行われておる原因調査の結果いかんによることとなっておりますが、環境庁としても、関係省庁と緊密な連携あるいは協力を図って、この地域の自然の保護に努めてまいる所存でございます。
  172. 島本虎三

    ○島本委員 これはやはり一つの問題点があるわけです。また、いままであったわけです。水産庁も見えておりますが、例年は六月一日から八月三十一日まで三カ月間の解禁、九月の末にヒメマスの親魚を試験採捕して、元気な親魚から卵をとったり、また、試験に供しておるわけであります。ところが、去年の十月十五日に水カビに冒された親魚が出たわけです。いまなお継続中であります。この水カビそのものは、どぶに発生する水生菌なのです。そうすると、この調査によりますと、支笏湖内のヒメマスは六十万尾おるわけで、そのうち四十五万尾が斃死している、死亡している、そんなことが推定されるという報告なのです。六十万のうち四十五万。それも一年間でそれだけ斃死するといったら、何かの理由、何かの原因がなければならないのは当然なわけであります。北海道知事の諮問機関であります北海道内水面漁場管理委員会では、全面禁漁に決定したようであります。この原因の究明はどうなっているのですか。環境庁それから水産庁、この点ははっきりしていると思うのですが、この点に対してお聞かせ願いたい。
  173. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 ただいま御指摘がありましたように、昨年の十月中旬に人工ふ化のためにとりました親魚の一部に水カビ病が発見されまして、これは従来余りこの地域では発生がございませんでしたので、大変だということで調べましたところ、かなり広範に水カビ病に冒されているものがあるということがわかりまして、直ちに北海道の国立のさけ一まずふ化場が中心になりまして、北海道大学の専門の教授の参加、それから道立の孵化場の方の協力を得まして、以来病害の広がりの範囲なり、その原因の究明に当たってまいっております。  ただいままでの調査で、カビの種類がサプロレグニアという水カビ病の一種であるということははっきりいたしておりますけれども、この種類のカビは、淡水湖にはかなり広くございます菌でございまして、従来も遊漁池の中などではたびたび発生したことがございましたが、通常このカビの発生の機構としまして、健康な魚にいきなりそのカビがついて病気になるということはございませんで、何らか別の細菌で感染して魚が弱るとか、あるいは栄養的に何か疾患があるというか、栄養欠陥等で生理条件が著しく衰えているときとか、あるいは外部に何らかの傷を受けたときに、そこに水生菌がついて、一種のわたカビのような病気が出て、それが進行いたしますと尾びれが切れたりするわけですけれども、そういった症状を呈するということが従来の経験からもわかっておりますので、第一次的な原因が一体何であったかということを、現在も実は調査中でございます。思い当たるような原因、環境との関係等いろいろ調べましてチェックをしておるのですけれども、第一次的な、基本的な原因になりました魚の障害、生理失調等を起こした原因は何であるかということについては、まだいろいろな仮説、憶測の域を出ませんで、現在も毎月大体一回、先ほど申し上げました三機関が協力いたしまして、現場の調査、これは当然水の方の問題も含めまして、環境との関連等を調査しておる最中でございます。  いまのところわかっておるのは、その範囲でございます。
  174. 島本虎三

    ○島本委員 ここに第九期第十一回北海道内水面漁場管理委員会の議事録があるわけです。これによると会長は、「この菌は、ドブに発生するものだ、公的見解はないにしても、常識的に判断することが必要と思う。」こういうふうにはっきり言っているわけです。会長はどなたかわかりませんが、この会長の言として、AAのイというこういうりっぱな環境基準のあるこの場所に、どぶに発生するような水生菌、水カビ、こういうようなものが出るということは、これは管理の面が問題なのではないか。同時に、これはえどめをした後からよく発生している。「頭部やしっぽの方に水生菌が発生して、初めは水面近くを不活発に泳いでいるが、やがては池の底に横臥して斃死する。」これはほかでもない、水産百科事典からとったものなのです。そうするとこれと合っているわけです。環境の悪いところに発生する水カビだとすると、これは問題ではありませんか。そういうような意味で、私どもとしては、これに対して、環境庁や北海道開発庁や水産庁、林野庁、それと同時に建設省の皆さん方に、十分この点を解明してもらわなければならない、こう思って、きょうはわざわざ皆さんをお呼びしたわけであります。  ただ、この中で、ヒメマスの疾病の原因究明の問題があるわけですが、これは現在は水産庁の北海道さけ・ますふ化場及び北海道立水産孵化場で鋭意、調査、究明が行われている。しかし、原因の解明とその対策の確立が必要であるわけですが、まだわからない。ただ、これで私どもの方でも少しおかしいなと思いますことは、水産庁北海道さけ・ますふ化場及び北海道立水産孵化場で調査したデータによって、「支笏湖のヒメマスの疾病発生の経過」、こう題する中間報告が出ているわけです。水産庁では御存じのとおりなのです。これによると、環境は良好とあるわけです。また、発生する状態でないと言っているわけです。原因は存在しないというのです。原因も存在しないようなところにこれが発生したということは、まことにこれは奇々怪々なものであります。それと同時に、この最後には、「最近の環境条件」の中に「昭和48年、49年度行われた国立公園湖沼水質調査並びに公共用水域水質測定の結果をもとに現在の湖内の水質を考察すれば、支笏湖全域に生活環境に係る環境基準の湖沼類型AA、達成期間は直ちに達成の「イ」があてはめられ、水質的には極めて正常と判断され、典型的な貧栄養湖である。」貧栄養湖です。瀬戸内海のように赤潮が発生したり、また、すぐその汚れにつながるような富栄養湖じゃない。はっきりこれに断言しているわけだ。そうすると、こういうような調査資料があるのに、なぜこれが発生しているのか、これはやはり問題があると思うのであります。この点について、まだはっきり水産庁では究明できないのですか。まだ、このほかにも問題があるから、きょうは長官に来てもらいたかったのでありますけれども、何か日韓漁業関係の問題できょう来れないということなのです。これは発生する状態でないところに発生した。その原因について、また誘因について、何か考えられますか。
  175. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 ニジマス等で従来いろいろな飼育試験なり、病気の方の研究を、水産庁もやっておりますし、それからまた、東京水産大学等でも御協力いただいて、かなり詰めておりますけれども、この水カビ病について、特に富栄養化と申しますか、たとえば生活排水等との関連があるようには、どうも従来の知見では思われない。しかし、この環境の中で、それが全く無関係かと言われると、これがどうもはっきりしないということで、最初、私どもの方も、周辺の生活排水の影響あるいは内水面漁場管理委員会等でも問題になりました、遊漁者の一部が使用しているまきえ釣りのまきえの影響というようなことも関連ないとは言えないのではないかという観点で、いろいろ検討してまいったのでございますけれども、水質の方は、ただいま先生指摘がございましたように、ことしの三月時点で調査いたしましても、CODでたしか大体〇・二六から〇・五六ぐらいの範囲で、現在の環境基準である一ppmをかなり下回った状態のままで、どうも過去と比べましても高くなっている節がない。また、従来の研究の蓄積から言いましても、これは先ほど申し上げたようにニジマス等からの類推でございますけれども、必ずしも富栄養化との関連だけを詰めるわけにもいかないだろうということで、実はまだどこへ焦点をしぼっていいかわかりませんけれども、広く環境全体の例年との変化なり、それから今後水質が変わっていく中で、魚病そのものがさらに引き続き広がっていくのかどうかということを含めまして、調査を継続しておる段階でございます。
  176. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、これは調査するといっても、水産庁だけでやってもわからぬ。林野庁もある、建設省もある、北海道開発庁もある、もちろん環境庁もある。全部それらに対して調査を進めるのでなければ、出てこないと思うのです。  まず試みに、林野庁長官、この数年間、林野庁では、省力化と高能力化を標榜して、ヘリコプターなどによる防虫剤を初めとして、いろいろ薬剤散布を大規模に行っているようです。これは人畜に有害なものも使用しておったわけです。これらのものが湖面に流れてこないということをはっきり言えるかどうか。この辺にも原因の一つがあるのではないかと思うわけです。これを管轄しているのは苫小牧営林署です。過去、昭和四十年から四十九年、去年までの間に、どのような殺鼡剤、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、こうようなものを使いましたか。量と、あわせて品名を明らかにしてもらいたい。
  177. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘ございましたように、野鼡の駆除あるいは除草あるいは苗畑等におきます病害虫防除というようなことを含めまして、林業薬剤を使っておるわけでございます。使いますにつきましても、安全性を十分確認した上で、使用にはきわめて厳しい基準等を設けておりますので、その通達に基づきまして慎重に配慮しているところでございます。  ただいま御質問ございました除草剤でございますが、四十二年と四十三年、七、八年前でございますが、二ヵ年使っておりまして、塩素酸ソーダ剤でございまして、原体量といたしまして、二ヵ年で十七トン使っております。さらに野鼡駆除剤につきましては、これは毎年使っておるわけでございますが、燐化亜鉛剤、硫酸タリウム剤、合計いたしまして二十六キログラム使っております。さらに支笏湖周辺に苗畑が二ヵ所あるわけでございますが、ダイアジノンとかシマジン等を中心といたしまして、除草剤、殺虫剤、殺菌剤等を含めまして年間約二百六十キログラム程度を使っておるのが実態でございます。
  178. 島本虎三

    ○島本委員 これは現地の調査並びにいままでの資料によって、私の方でも調べたのですが、その数字、全然違いませんか。殺鼡剤としては、四十年、四十二年、四十四年、四十五年、これは手まきで硫酸タリウム剤をまいております。これは毒性の劇物ですね、これだけでも四百三十六キログラム。それから燐化亜鉛剤、これも千九百四十四・五キログラムですから、約二トンまいている。四十年から四十九年までです。四十二年、四十三年、これはおっしゃるとおりに除草剤として塩素酸ソーダ、これをまいておるようです。これは劇物です。三万四千五百十キログラム。それからマンネブ粉剤を四十年から四十九年まで苗畑で使った。有機硫黄剤で殺菌剤に使っております。これも二千九百五十五キログラム。KBW、硫酸銅、殺菌剤に使っております。四十年から四十九年まで、これも相当量使っております。ダイアジノン、これは有機燐剤、殺虫剤です。ネキリムシや土の中のものを殺すためです。四十七年、四十八年、苗畑で使っております。四十七年、四十九年に美笛川でネキリトンを使っております。七十八キログラム、劇物です。四十八年、四十九年、丸山でエカチン乳剤を五・五リットル使っておる。これも劇物です。四十七年には劇物のフエンカップトン乳剤を二・一リットル使っております。ことに四十四年と四十五年には、美笛川七キロにわたってヤマベ、アメマスなどの魚が浮いていますね。オコタンペ川、これも除草剤の散布によって魚が浮いた。四十四年、四十五年です。四十六年には塩素酸ソーダ、これは四十六年七月三十一日午前十時三十分から十二時四十分まで、三十一ヘクタールにわたって四千百二十八キログラム、約四トンを、支笏湖周辺の恵庭岳のふもとのポロピナイ基地からヘリコプターで散布しておって、かたまって落ちてきたものもある。これで大騒ぎをしたことが四十六年にありました。国有林野の民間レクリエーション地域に、ことに山菜を取りに行っているこの時期に、こういうようなことがいままであったわけです。いま報告の量と種類、全然違うではありませんか。私の方が林野庁長官よりきちっとしたものを持っているではありませんか。これは余りにひど過ぎます。これではもう国有林は保全されても、ヒメマスの方はいかれてしまいますよ。これは林地に対しては苫小牧営林署ですね。一体これはどういうようなことなのですか。これだけやったら死ぬのはあたりまえではありませんか。余り過少評価したような資料を出してはいけません。
  179. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  ただいま私が申し上げましたのは原体量単位で申し上げたのでございまして、これを水その他で薄めまして使用いたしているのが常態でございまして、ただいま先生のおっしゃいましたのが、そういうまく状態におけるキログラムでございまして、私が申し上げましたのは原体量ということで十七トンであり、二十六キログラムであり、また、苗圃等で使っておりますのが合計いたしまして二百六十キログラム、そういうことになっておるのでございまして、ただいま先生おっしゃいましたように殺虫剤、殺菌剤として、たとえばネキリムシとかアブラムシあるいはヨトウムシ、こういうようなものに対してもおっしゃるような薬をそれぞれ使っておりますし、また、殺菌剤にいたしましても、立ち枯れ病、根腐れ病、赤枯れ病、これは農業等にもあるわけでございますが、KBWあるいはボルドー液、こういうものも使っておりますし、また、除草剤といたしましては先ほども申し上げたようなものを主として使っておりまして、この原体量といたしましては約二百六十キログラム、こういうことで申し上げたわけでございます。
  180. 島本虎三

    ○島本委員 今回は支笏湖ですが、その以前、四十四年、四十五年には美笛川とオコタンペ川、これはやはり魚が浮いている。その魚の種類はヤマベにアメマスです。今度はヒメマスが浮いている。塩素酸ソーダ並びに除草剤の散布によるものでないかということに対して、環境庁も十分にこれは監視しないとだめではないか。こういうような点に対してはずいぶん手抜かりがある。こういうような場合には、環境庁として相談を受けるのですか受けないのですか。
  181. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 林業経営等のための、あるいはその経営の維持のための除草とか、いろいろなそういう作業については、私どもは相談は受けておりません。
  182. 島本虎三

    ○島本委員 受けているのですか、受けていないのですか。最後の語尾がはっきりしない。イエスかノーか。
  183. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 相談受けておりません。
  184. 島本虎三

    ○島本委員 受けておらないということがわかった。これはやはり重大だと思うのです。しかし林野庁長官、国立公園内で——支笏湖も国立公園内です。あれは名称さえ支笏洞爺国立公園になっておる。それをもう林野庁が、土地と樹木、このために、他に悪例を及ぼすようなこういう薬を、その管理をしている環境庁に無断でやるというのは、一つ行政的な手続が抜けているのではありませんか。この点はよく相談されてやるべきだと思うのですが、なぜ相談しないで林野庁だけでおやりになるのですか。こんなことをしてはいけませんが、環境庁政務次官、あなたもまたこういうようなことをのへのへとただやられっ放しではいけませんよ。
  185. 橋本繁蔵

    ○橋本(繁)政府委員 お説のとおりでございまして、今後につきましては、そういった問題はできるだけ十分に連携をとってやりたいと思います。
  186. 島本虎三

    ○島本委員 国立公園ですから、できるだけではだめなのです。環境庁設置法の第六条の一から五まで読んでごらんなさい。こういうようなことに対して、あなたは権限を持っておるのです。その権限をできるだけなどというのは怠慢です。しかっておきます。  次に、開発庁にちょっとお伺いしたいのですが、これはやはり道の開発のあり方にも今後問題を残すのではないかと思うのです。このヒメマスの疾病について、開発庁自体からの資料並びに水産庁からの資料、これによると、病魚の発生は湖畔寄りに多く見られる。開発庁ではそういうようにはっきり、うそを言わないでこれを出してきているところ、正直でいいと思うのです。それと水産庁の方でも、これはヒメマスの生息する他の湖、阿寒、摩周、倶多楽湖で発生しておらない。これらの湖では一般の遊漁、釣りなどは行われておらない。こういうように報告されてあります。すなわち発生しているのは湖畔寄りの場所。それから他の阿寒、摩周、倶多楽湖では発生しておらない。そこでは釣りなどの遊漁というのですか、こういうようなのは行われておらない。水産庁からこういうようなのが来ているわけですよ。そうすると、斃死しているような魚、いわゆる病気になっている魚の発生は湖畔寄りに多く見られる、こういうようなことになります。やはり問題はその辺からではないかと思うのです。それでこの周辺の道路は乱雑な開発が行われているようであります。開発庁、これはもう開発が乱雑に行われておるようであります。行ってみると、ただかいてそのまま湖畔の方に流してある。かって林野庁が林道をつくるときにもそれをやった。あの北海道の大雪山でもそれをやって大問題になった。これをやったのは、開発庁があそこはやったのだ。開発庁のやり方は乱開発ではないか。周辺の道路の乱雑な開発、それによってまた、観光客も増大しておる。それから汚物への配慮、こういうようなものに対して不徹底である。そのそばの恵庭岳では、冬季オリンピックの滑降コースの設定が行われているわけです。これらに対しての影響、指導、こういうようなものは完全でしょうか。
  187. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、湖畔寄りに病死の魚が多い、こういうような御指摘もございまして、私ども、まず疑問を持ちますのは、何と申しましても、温泉街排水というのが一つの要因ではないか。それから、御指摘ございましたように、道路の開発に伴う汚水が原因ではないかというようなことを、まず私どもなりに気がついたわけでございまして、私ども、どういう開発工事をやったかということを調べました。  御指摘のように、道路といたしましては、湖畔に一般国道二百七十六号がございますが、これは倶知安−苫小牧間を結ぶ国道でございまして、いわば四十五年に道道から国道に昇格をしております。現在、改良工事を行っておりますが、特にこの改良工事を行う場合に、環境庁と協議をいたしまして、できるだけ公害の起こらないような配慮をいたしておることはもちろんでございますし、現地の公園管理員とも逐次協議をいたして工事を施行しております。たとえて申しますと、砥石山工区につきましては、大幅なトンネル工事もいたしますし、また、土砂の捨て場につきましても、環境庁の指定の場所に捨てておる、こういうように、私どもなりに十分配慮してきておるつもりでございます。  なお、温泉街排水あるいは生活排水、この開発に伴う排水と、それから今回の事案についての因果関係につきましては、水産庁から御答弁ございましたように、まだ確認するようなデータはないようでございますが、今後、水産庁、道庁を中心といたしまして、この原因究明がなされまして、開発の結果、因果関係があるということになりましたならば、私ども早速その工事自体につきまして改善を加えてまいりたいと考えております。
  188. 島本虎三

    ○島本委員 では、この冬季オリンピックの恵庭岳の滑降コースの設定などによる影響はないものである、こういうような推定ですか。
  189. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 恵庭岳の滑降コースとの因果関係につきましては、まだその結論は出ていないようでございます。御承知のように、ただいま体育協会の委託を受けまして、道において本年度、五十年度で復元工事が終わるというふうに私ども承知いたしておりまして、その因果関係につきましては、まだ私ども十分結果を聞いておりません。
  190. 島本虎三

    ○島本委員 やはり北海道開発の場合には、特に自然環境保全との関係を完全にやるのでなければならないのです。大雪ダムのあの道路をつくる場合にも、林野庁の旭川営林局が計画して、開発庁が実行して、そしてあれはもうすでに自然環境破壊これ以上のものはないというような道路をつけてしまった。もうそれはストップになってしまった。今度はまた別な法を考えなければならないし、考えついたようであります。こういうようにして、自然環境の保全と両立するような開発でないと、もうだめなことになっております。どうも開発庁は、何でもかでも開発すればいいというような古典的な考え方から脱しておらない。  それで開発政務次官、せっかくいらしておりますから。  四十九年六月の五日にNHKの大ホールで、当時の三木環境庁長官、いまはもう総理大臣三木武夫氏がわざわざ出席して、その席には皇太子夫妻も出てきておりましたが、自然保護憲章というようなものを制定いたしました。その中で、一から九までの項目がございますが、全部は言いませんが、これを今度行政の中に取り入れて実施を進めるということをはっきり約束をし、われわれもこれに賛成した。そのうちの第二番目には、「すぐれた自然景観や学術的価値の高い自然は、全人類のため、適切な管理のもとに保護されるべきである。」これが一つあるのです。第三番目には、「開発は総合的な配慮のもとで慎重に進められなければならない。それはいかなる理由による場合でも、自然環境の保全に優先するものではない。」と、きちっと決めている。これはもう行政の指針になっておるわけです。また、これをやるという約束をし、天下に言明したのは三木総理大臣なのです。われわれ、もちろん賛成しました。こういうようなもので、今後は自然保護憲章、これに基づいて、自然環境保全と両立して公害のないような開発でないとだめだということになっておるのです。今後やはりこういうようなことについて、開発行政の中ではっきり位置づけなければならないと思うのですが、これを志村政務次官御存じでしょうか。
  191. 志村愛子

    ○志村政府委員 日ごろ大変御熱心で、かつベテランの島本先生にお答えさせていただきます。  おっしゃいますように、本当に北海道の持っております雄大な北方的自然というのは、全国的に見ましても、質的、量的に非常にその価値は最近とみに高まっておると思います。  私ごとで恐縮でございますが、私は昭和二十五年に実は全道を回った経験がございまして、それ以来、北海道をだれよりも愛すると自負しておるものでございますが、年間通じて十回は北海道に行っておるものでございます。今日、非常に北海道の質的、量的価値が高まりつつある中で、やはり自然を恒久的に保護、保存するということは、これは当然国民の資産として、しかも積極的に涵養せねばならない、こういうことはますます重要になっておるかと思うわけでございます。  北海道の開発の問題でございますが、開発が破壊になってはいけない、これは申し上げるまでもございません。開発の究極の目標は、おっしゃいますように、豊かな人間環境を創造することであります。言いかえるならば、この自然が人間に対しまして、物質的あるいは精神的両面にわたりまして、豊かな充実感をもたらすというようなことではないかと考えておるわけでございます。開発計画の推進に当たりましては、この基本理念を常に念頭に置きまして、今後とも貴重な自然の涵養に十分配慮いたしまして、これを破壊することのないよう、慎重に対処してまいる所存でございます。
  192. 島本虎三

    ○島本委員 なかなか美辞麗句でございます。それで政務次官、それほど北海道歩いておありなさるなら御存じだと思うのですが、北海道にクマ何頭おりますか。
  193. 志村愛子

    ○志村政府委員 クマの数はちょっと数えておりません。ちょっとクマった問題でございますが、これは虎三先生に教えていただきたいと思います。
  194. 島本虎三

    ○島本委員 御存じないのですか。
  195. 志村愛子

    ○志村政府委員 はい。
  196. 島本虎三

    ○島本委員 生息数は推定で三千頭だそうであります。これは北海道庁の生活環境部自然保護課で調べたものです。問題はこれではないのです。環境に対する考え方、いまるる承りました。しかし、私はそれに対して疑問があるのです。と申しますのは、多分去年の五月の二十六日だったと思います。当時の総理は田中角榮氏だったのです。当時参議院議員の選挙の応援・札幌に来たわけです。そのときに、北海道にはクマが五千頭おる、これを五百頭に減らして、北海道を開発して人口をふやした方がよろしいではないか。大雪ダムの設置に伴う道路、これに反対する議員もいるが、開発に反対する議員は、開発が終わってから当選させた方がいいのだと、まさにナンセンスとも暴言ともつかないようなことを平気で言ったのが田中角榮氏。その人に任命されて開発庁政務次官になったのが志村さん。それからいまなお続いているわけでしょう。  そうすると、冗談のようにも聞こえるけれども、この考え方の根底にあるものが問題だ。したがって、あなたもその派閥に属する人であって、政務次官として、いま大をなしている人ですが、この当時の総理の考え方に対してどう思いますか。
  197. 志村愛子

    ○志村政府委員 私は田中角榮氏ではございませんので、その五千頭、五百頭という言葉の意味は、私には個人の見解としてわかりかねるものでございますが、しかし、先ほど来申し上げておりますように、やはり最近いろいろ開発あるいは建設が高まっておればおるだけに、もっと自然保護ということを考えねばならない、これはもう変わらぬ気持ちでございます。
  198. 島本虎三

    ○島本委員 答弁にはなっておりませんが……。  こういうものは一人や二人のところでやったのではない。正規に札幌の大通りに何千人という人を集めてやっていることですから、私的だなどと考えるのはナンセンスなのです。しかし、その派閥に属する人で、それによってやられたあなただから、この考え方と一致するものがあっては困るので、聞いてみたのです。大体こんなことは困るのです。ですから、あなたも十分気をつけておられないとだめだということです。  それで、今度は厚生省、来ておりますか。これは環境庁と厚生省にちょっとお聞きしたいのです。  支笏湖畔には、各種の寮であるとか保養所、こういうようなものが、ホテルなどを合わせて七、八軒かあるのです。観光客は年間二百四十万人だ、こう言われておるわけです。そうすると、その周辺の浅い方、道路のある周辺に、こういう奇病が発生したというのだから、洗剤の使用ということなんかも考えられないかどうか。特定の時期に多量に排出する、そうすると、当然支笏湖を汚染し、湖底にも汚物の沈下などがあるのではないか、こう思われるわけであります。したがって、これは人体にも影響があるということははっきりしているわけです。ライポンFのABS、これはいまでも朝日で連載中でありますが、人間の体にも影響がある。そうするならば、そういうようなものを湖へ流すことによって、動植物に対する影響はどうなのか。それと同時に、経皮吸収によるところの毒性の研究、こういうものは行ったのかどうかが二つ目ですね。それとヒメマスの疾病と、今度は食品衛生法上から見て、それを人間が食べた場合の安全性というものはどうなのか、こういうようなことについて、はっきり調べてありましょうかどうか。
  199. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 御質問が三つあろうかと思います。  それで、洗剤が動植物に与える影響につきましては、われわれの方は直接の関係をしていないわけでございまして、こういった洗剤と人間の健康との関係につきまして、われわれの方でいろいろ研究を行っておる段階でございます。なお、その人間に対する影響といたしましては、それが動植物の体内に蓄積いたしましての、われわれ人類に与える影響、こういったことについては研究をいたしておるわけでございますが、直接動植物に対する影響につきましては、厚生省といたしましては、現在のところ研究等を行っておらないところでございます。  なお、洗剤の経皮毒性につきましては、従来からいろいろな研究発表等もあるわけでございまして、学者間の意見の相違、そういったことを踏まえまして、現在そういった各方面の学者の先生にお集まり願いまして、この経皮毒性の実験を続行中でございます。  それから最後の御質問でございますが、そういったヒメマスを食べて、人間に影響があるかどうかということでございます。  先ほど来の質疑を聞いておりまして、まだその原因等も必ずしもはっきりしていないようでございますが、直接の原因でございます水生真菌類の一種のサプロレグニアというものが、今回のこういったヒメマスの疾病に関係あるようでございますが、このサブロレグニアについて、人間との関係を調べてみましたところ、本菌によります人体への経口的な感染例というものは、従来から認められておらないところでございまして、なおかつまた、これがカビ類でございますけれども、本菌がマイコトキシン等の産生をしないというような点から考えまして、このサプロレグニアに感染いたしましたヒメマスそのものが、食品衛生法第四条に該当する食品とは考えられないわけでございますが、先ほど来のいろいろな御討議の中でもございましたように、誘因といたしましての環境汚染との関連、そういったことにつきましては、まだ調査中のようでございますので、そこにございますヒメマスそのものがどうかという点につきましては、なお今後の検討を待たなければならない段階だと思います。
  200. 島本虎三

    ○島本委員 石丸環境衛生局長のただいまの答弁でありますけれども、あえてこれを聞いたのは、これは昭和四十九年度から厚生省で持別研究班を発足させておりますね。そして対象品目としてLASであるとかAOSであるとかAESであるとかABS、ライポンF、こういうようなものをやっている。食器洗浄用のものに対して、有害なものは販売を停止させる、こういう措置もとっているでしょう。ましてライポンFの場合は、これは進んでいまはもうやっていないけれども、いままで買ってあるもの、販売中のものはそのままでしょう。そういうようなものでやはり人体に影響があり、動植物の皮膚障害などが現実にあるということは、もう研究のデータにもはっきり載っている。また反対の議論もあるようですね。しかし、それに対しては、これは「合成洗剤に関する問題点は催奇性や皮膚障害、肝細胞への障害、発ガン促進作用など健康上の問題と、水質汚濁。水質汚濁は洗剤に加えられているリン酸塩が川や湖に入って藻(も)類の肥料となり、藻を異常発生させる原因となっている。」こういう注釈もついているでしょう。  こういうようなものを二百四十万人の人がもし使うとすると、そのままにしておいて影響が全然ないということは考えられないわけです。やはりこういうような点も、これは環境庁もそのうちの責任者の一人になると思うのですが、十分考えて指導していかないとだめなのではないか。食品の場合にはやはり厚生省がやるにしても、これがもう動植物に対する影響というのは環境庁が見ないといけないことになっていましょう。まして、これは慢性毒性の試験であるとか催奇形性試験であるとか代謝試験であるとか皮膚障害の実態調査などが十分行われておらない。こういうようなものをそのまま使わせるということの結果、こういうようになったのではないか、こう思われるわけであります。この点等も十分今後調査する必要があるのではありませんか。私どもこれはもう厚生省だけではなく環境庁でも、この問題に対しては対処する必要があると思っているのです。まあこれは答弁要らぬ。  次に、建設省来ていますか。建設省では特定環境保全公共下水道、これについての対処はどうなっておるか、これも伺いたいのです。  これはもう千歳市では支笏湖畔で地区集団土地利用計画地域を設定して、先取り、事前対策の必要を感じて、特定環境保全下水道計画を樹立し、その実施を要請した。環境庁から北海道にこれを依頼して、そしてこれは四十八年に調査した「支笏湖畔地区保全対策基本計画調査報告書」というのがまとまっているようであります。そして特定環境保全公共下水道の設置、これがまだ支笏湖湖畔にはない。観光客が年間二百四十万人も来るのにこれがない。常住人口は五百人。したがって、国立公園としては二千五百人の処理計画をしなければならないことになるのだそうですね。もしそうすると、一般の下水道と違って国立公園内の施設、これは原則として国が十分見てやる必要があるのではないか、こう考えられるわけです。五十年度の調査費、これはどうなっておりますか。これは阿寒湖や大沼はランクされておって、支笏湖はランク外だというのですが、これはほんの少しの調査費で、処置してもいいはずではありませんか。どうして支笏湖だけ抜いてしまったのですか。
  201. 久保赳

    ○久保説明員 特定環境保全公共下水道の整備計画の問題が第一かと思いますが、現在実施をされております下水道整備五カ年計画は、その根拠法が下水道整備緊急措置法でございまして、その緊急措置法の中で、五カ年計画で実施すべき下水道事業は、都市計画の法手続をとられたもの、つまり都市計画の区域内の市街地の下水道を対象にしておったものでございます。したがって、現在の下水道整備五カ年計画の中には、特定環境保全公共下水道という項目が実はないわけでございます。しかし、都市計画の区域外でも下水道整備が必要であり、特にただいま御議論になっております自然公園、公園の中の湖の汚濁対策事業として必要であるということから、本年度から五カ年計画外の下水道事業として、特定環境公共下水道を実施をすることに予算の承認を得たわけでございまして、本年度のところは自然環境保全公共下水道のうち五ヵ所だけが認められまして、そのうち二ヵ所が北海道分でございますが、先生、御指摘のように支笏湖からの要請等もございましたが、北海道の地元の御要請では、阿寒湖並びに大沼の方が緊急度が高い、こういうことから五十年度の事業は見送られたという実情でございます。それから、これは調査費ではなくて直接の事業費でございます。以上であります。
  202. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、支笏湖だけは、こういうふうな緊急事態にあるということを申請もしないで、そのまま放置したというのは、道の責任ですか、開発庁の責任でしょうか。阿寒湖や大沼の方がランクされて、支笏湖はランク外である、こういうことですね。しかし、これだって、その要件の中の第三番目、都市計画法適用外の農山漁村で水質汚濁が著しい湖沼等の付近の観光地などの区域、ちょうどこれに該当するではありませんか。これは早くやらないとだめじゃありませんか。もし、これは都市計画法による市街化調整区域だけであるとするならば、これこそ本当に行政の欠陥ですよ。
  203. 久保赳

    ○久保説明員 御指摘のように、この特定環境保全公共下水道の要件には、支笏湖は合致しておるわけでございますが、この予算が、ことし初めて全国で承認をされて、その個所も十ヵ所でございます。十カ所のうち五カ所が湖の水質汚濁対策の事業でございまして、全国で五つのうちに北海道が二カ所の採択になっておるわけでございまして、確かに支笏湖の対策も非常に重要であるということは、私どももよくわかっておりますが、そういう採択個所の制限から、順位が来年度に回る、こういうことになったものと判断をするわけでございます。
  204. 島本虎三

    ○島本委員 では、ことしでも緊急にこれをやることはできませんか。
  205. 久保赳

    ○久保説明員 今年度はもうすでに予算の決定を見、すでに地元にも内示をいたしておりますので、今年度に採択ということは、現段階ではできないと思います。
  206. 島本虎三

    ○島本委員 申請しなかったのは、これは北海道庁ですか。
  207. 秋吉良雄

    ○秋吉政府委員 五十年度の概算要求の段階におきましては、支笏湖も含めまして、北海道開発庁といたしましては五ヵ所の要求をいたしたわけでございます。湖沼といたしまして三つ、阿寒、大沼、支笏湖。それからそのほか農山漁村で二カ所、計五カ所につきまして、開発庁といたしましては概算要求いたしましたが、全国的に三十カ所の概算要求に対しまして、予算の決定は十カ所ということになりまして、そういったことからいたしまして、湖沼の全国五つのうち北海道は支笏湖は見送られた。支笏湖が後順位になりましたのは、環境の水質汚濁の程度が、阿寒それから大沼、その次に支笏ということで、一応環境基準が現在の状況からいきますと、支笏湖については、一ppmに対して平均O・五ppmであるというような実態もございまして、後順位になったような次第でございます。
  208. 島本虎三

    ○島本委員 そういうようなことになった結果が、また、こういうような奇病が発生するということは、因果関係が合わないではありませんか。いいから後にする、後にするような状態の中から、この奇病が発生してくる。これは急いでやるべきだと思うのです。この点、開発庁と建設省の方よろしゅうございますか。
  209. 久保赳

    ○久保説明員 湖の汚濁を防止する事業は私どもも非常に重要な事業だと考えておりますので、ただいまの特定環境公共下水道事業は、第四次五カ年計画の中にははっきりとした形で入れて積極的に進めてまいりたい、かように考えているところでございまして、その中で支笏湖等をも対象として検討してまいりたいというふうに考えております。
  210. 島本虎三

    ○島本委員 今度、湖の湖上の面でもまた問題があるようです。漁業権の問題と管理の多元化の問題、これがあるようでありますが、支笏湖は国立公園ですが、管理と指導、これは一体どうなっているのか。この一元化についてどうなっているのか。国立公園は、当然これは環境庁の管理下にありますね。それと同時に土地は林野庁の管理でしょう、樹木もそうですね。湖面は北海道知事でしょう。水の進入地域は王子製紙の借地になっているでしょう。ヒメマスの親魚の採捕とふ化、放流は、これは水産庁でしょう。それからその保護、管理は北海道知事になっているでしょう。支笏湖は水産庁の種苗湖ではないですか。日本でただ一つのヒメマスの種苗湖でしょう。そういうようなところが、こういう管理をそのままにしておいていいものでしょうか。そのため漁業権は設定されていますか。当然、種苗湖ですからされておらないでしょう。当然、解禁三カ月間にプロの釣り師なんかも殺到するわけです。一人でも三ヵ月間に百万円もかせぐ人がいるという話ですね。自然ふ化水域にも進出して大量漁獲する。そのためには鯨の肉にゴマ油だとか米ぬかをぬりつけて、まきえをして魚を集めてとるような不法行為が年々つのるのみだ。まきえの残物が湖底に当然沈んで、湖底を汚染している。このまま認めていいのかどうか。管理の多元化のために、年々この汚染が激しくなってきている。こういうようなことをそのままにしておいていいのですか、環境庁。北海道自体も密漁の対策に何もしていないというではありませんか。この指導は水産庁どうしているのですか。環境庁も当然設置法によって、第六条の二、三、四、五と、これは権限、調整権があるわけですから、これによってきちっとすべきだと思うのでありますけれども、これはしていない。これだったら汚れるのはあたりまえではありませんか。どうなんですか、まず環境庁、開発庁、どうなっているのか知らしてください。
  211. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 支笏湖の自然保護につきまして、いろいろな行政の角度から保護、保全等が図られて、それが各省庁の行政の分野で行われておるわけでございますが、環境庁といたしましても、枢要な北海道におけるすぐれた湖沼の景観地である支笏湖の自然の保護ということにつきましては、十分にこの保全のために尽くしていきたいと思いますので、ほかの行政の分野とも密接に連絡をとってやっていきたいというふうに考えておるわけでございます。  密漁等につきましても、まあ魚の資源の保護等につきまして、権限的に私どもの方の所管の職員が権限を持っておるわけではございませんが、しかし、そういうような状況を見つけましたら、権限的にではございませんが、できるだけそういうものについて、そういうことを行われないようにするように指導していきたい、現場の管理員等についてやらしていきたいというふうに考えております。
  212. 島本虎三

    ○島本委員 その大事な現場管理人というのはたった一人でしょう。水産庁の方だって、これはたくさんいるはずだし、林野庁だっているのでしょう。たった一人の環境庁、それがやらしてやると言ったって、どうしてやらせるのですか。ことに支笏湖に生息しているアメマスとフナ、これは釣りは自由なのです。これをいいことにして、アメマス、フナをつるという名目で、期間や区域に拘束されないで出漁して、ヒメマスの密漁をする、乱獲をする。当然いま禁止されている、今度はアメマスとフナをつっているのだということでつったならば、どのようにでも密漁はできるわけです。ただ、網でもってとった場合ははっきりわかるけれども、つっている場合はわからない。そうすると、アメマスとフナはもう自由にしておいて、そうしてヒメマスをつって、どういうふうにしてもわからないような行政をそのままにしておいて、一体どうなるのですか。保護対策としてこれはもうどういうようなことでしょうか。まして、開発庁の方でも道職員の常駐をして監視をさせるくらいば、当然義務があるのですから、させるべきです。千歳市に委任して、これをやらせているような状態だというではありませんか。このあたり密漁防止の体制、取り締まりの体制、これが全然なっておらないということ。  それと同時に、これは水産庁、やはり水産資源保護法という法律があるのです。水産動植物の採捕であるとか制限、これに関しては農林大臣と都道府県知事にこの権限があるのです。ところが、北海道内水面漁業調整規則、これが行われて、アメマスやフナ、これが禁止区域内でもできることになっている、いま言ったとおりなのです。雑魚釣りを口実にして密漁が公然と行われる、この可能性は十分あるわけです。水産庁と道、これは当初は委員会決定に基づく行政指導一本で密漁対策に当たってきた。ところが、これまた、へんちくりんなのです。この中身としては、警察から報告や調書が上がっていくと、連絡を受けて支笏湖内水面管理委員会が、漁業法六十七条に基づいて、十五日以内に被疑者に異議の申し立てがあるかどうかを確かめて、正当な理由がない場合には、再度密漁をしないようにという指示だけ与えて、あとはそのまま野放しですよ。そうして命令に従わないで再犯した場合には、一年以下の懲役と五万円以下の罰金だという。漁が網でやる場合には、はっきりした密漁がわかる。雑魚をつるということでは、正当な理由というようなことになってしまう。そして、これをやるのに二カ月もかかる。これでは取り締まりあってないようなものではありませんか。やはりこういうようなことからして、漁業権を一つの公共団体である千歳市、こういうようなものに与えるような保護対策を当然考えてしかるべきではないかと思うのですが、この点、水産庁。
  213. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 支笏湖における漁業権の免許につきましては、通常こういうような資源の利用の実態から言いますと、第五種共同漁業権の対象漁場として免許するのが順当なわけでございますけれども、第五種共同漁業権の保有の適格性というのは、漁業協同組合といいますか漁業団体、一定の条件を備えた団体に限定されておりますので、それに基づきまして実態を検討してみますと、周年この地区で、地元で漁業を主としてやっておられるという方が非常に少なくて、地区外、かなり広範なところから、遊漁者あるいはセミプロ的な形で入ってこられる季節的な遊漁者が非常に多いものでございますから、その間の全体の調整なり、漁業権免許の保有の主体等をどこに置くかというようなことで、いろいろ北海道庁でも検討中であるというふうに報告を受けております。  現在、取り締まりの体制といたしましては、北海道で特にことしの緊急事態で、夏場も含めて全面的な禁漁を緊急とらざるを得ないという事態に備えまして、大体現場に四人程度の監督吏員を常駐させる。それから同時に、地元の千歳市の方にも協力をお願いいたしまして、やはり同数程度の監督者を配置し、それから直接、監督、取り締まりの司法権限を持っておるわけではございませんけれども、現場におる者として水産庁の方の国立ふ化場からも、漁場の監視に一名を専任させるというようなことで、関係者が協力して取り締まりの実を上げるようにいたしたい、かような措置を、ことし緊急事態に備えましてとっておる現状でございます。
  214. 島本虎三

    ○島本委員 水産庁はどうもこの点に立っては少し腰が弱い。法律が、きちっと水産資源保護法があるのですが、水産側からの歯どめなんか一つもないようです。そして行政上もっと強くしなければならないというようなことがあっても、いつでも後手後手に回っておる。私は、今回これを機会にして、強力にこれは出すべきではないかと思うのです。私は水産庁のために、ひとつ弱腰をなくするように、これは激励しておきたい。あなたの方は本当に弱い。どこへいっても弱い。環境庁も弱いけれども、水産庁も弱い。開発庁も弱いから、これはみな同じことですけれども、しかしそれにしても、余りこれでは困るのです。したがって、もう少しこの点はきちっとしたようなやり方をしないとだめだし、環境庁も親身になってこれをやってください。環境庁はことに設置法の六条があるのですよ。内閣総理大臣に対しての具申権もあるのですよ。各官庁に対してあなたの方から言って、その報告を求める権利があるのですよ。いわゆる調整権があるのだから、どこの官庁でもいいのです。そういう強くなければならないところが弱腰では困る。  そういうようなことからして、私としては今後十分これに対処してもらいたい。そのために水産庁長官を呼んだのですが、来てないので残念なのです。本当にこそく陰険なのです。昭和三十八年の末に国及び道の要請によって、密漁防止のために千歳市が暫定措置として職員を配置して、その経費は、財源としてヒメマスの試験採捕をして、調査後、魚体を売却して、それをもって職員の給与に充てていた。そうでしょう。ことしは千四百万円出したけれども、採捕禁止ですから、一切財源の補てんもできないような始末で、一方的に自治体職員を痛めつけているということです。こういうようなことからして、はっきりした体制を立て直して、それによって本当に種苗湖としての支笏湖であるならば、それに沿うような行政を打ち立てるべきだ。そしてヒメマスを本当に保護するためだったら、アメマスもフナも、いわゆる雑魚も一緒に禁止して、一切そういうようなことのないようにすべきだ。病原そのものに対しても、もっと的確なる調査をすべきだ。もうすでに巷間伝えられるところによると、それに対してこういうふうにやったらいいのだがという、こういうような町の人もおるのです。そういうような声も十分聞いて、対策を急いでもらいたいと思うのです。もちろんこれに対しては、残念ながらもう時間も済んだようですから、これ以上やることは他に害を与えますから、私もやめます。ただ、開発は乱開発に一切わたらないように、これだけは重々注意して行政を実施してもらいたい。水産庁は弱腰をもっとためて、強くなるように、そしていつも歯どめのかからないようなこういうやり方をしない、ように、林野庁なんかだったら、余り毒ばかり外からまかないように、これもあわせて注意しておかなければならないと思うのです。環境庁、にやにやしないで、これは本当に権限あるのですから、皆さんの方で強力な権限を発揮するように、皆さんに心から私は要請申し上げて、私の質問を終わります。御健闘をお願いします。
  215. 渡辺惣蔵

  216. 多田光雄

    多田委員 私も、きょうは短時間ですけれども、国立公園の支笏湖の自然環境の保全の問題、それから貴重な資源でありますヒメマスの問題、これらについて環境庁、建設省、それから水産庁に伺いたいと思います。  そこで、ちょっとおさらいしたいのですが、いま同僚議員も述べておりましたけれども、昨年十月から国立公園支笏湖のヒメマス、俗称チップというのですけれども、これの水カビ病、このために、推定約五十九万尾と言われる親魚、このうち約四十五万尾が死滅したろうと言われている。ですから、文字どおりこれは枯渇寸前と言っていいと思うのです。  そして、先ほども水産庁の方で言っておりましたけれども、いま国、道のさけ・ますふ化場、それから北海道大学の水産学部、それから千歳市が協力して、その原因究明に当たっているけれども、目下、病理学的な意味での原因がつかみ切れないという状況ですね。  それから他方、北海道の内水面漁場管理委員会が、四月三十日、支笏湖のヒメマス釣りを六月一日から八月三十一日まで禁漁にした。いつもであればこの期間が禁漁の解けるときなのですね。支笏湖には年間二百三十万人くらいの観光客が行っているのです。そして一般の釣り人が約六万人と言われているのです。旅館、ホテル、それから料理店、食堂、弁当屋その他、このヒメマスによって生計を立てている者も少なくない、こういう状況なのです。  最近出ました環境庁の環境白書によりましても、自然公園その他の環境の問題が指摘されておりますし、とりわけ、きれいだと言われている北海道の支笏湖、これも年々水質が汚濁しつつあるということは、すでに北海道が出している環境庁の要請か協力かでつくり上げた四十八年度の調査報告書によっても、そのことが序文に指摘されているし、それから七四年ですから昨年ですね、昨年の北海道の環境白書の中にも、北海道の支笏湖が水質汚濁が進行しているということをここで述べているわけですよ。  そこで私、問題点として幾つかあると思うのです。一つは、この国立支笏洞爺公園の自然環境をどのように守っていくかという問題が一つあります。第二番目には、この希少価値の高いヒメマス資源、これをどのように守っていくのか、ここでは研究を含めての問題です。それから第三番目には、ヒメマスの管理の問題です。これは支笏公園全体の管理と関係がありますね。それから第四番目には、緊急の問題として、いわば原因が何かわからないという範囲で言うのですが、自然災害ともいうべきこのヒメマスの死滅によって、いま申し上げましたように、ここに生活をかけている人も少なくない、これの経済的な損害の問題です。この四点について、限られた時間でちょっと伺っておきたい、こう思うのです。  そこで、これは環境庁に伺いますけれども、昨年十月このヒメマスの病気発生以来、環境庁として公園の管理、水質の問題、こういう問題でどういう対策を立てられたのか、これをひとつ。先ほど次官は善処しますというお話でございましたけれども、具体的にどういう対策を立てられたのか。この湖面管理の責任は一応道が持っているわけです。それからヒメマスの管理も道が持っているわけです。これに対して監督官庁として具体的などういう指示や指導をされたのか。それをひとつ善処という言葉ではなく、具体的に述べていただきたい。これは次官にお願いします。
  217. 橋本繁蔵

    ○橋本(繁)政府委員 お尋ねの第一でございます自然環境を守るということは、環境庁としての絶対の使命でございまして、この問題につきましては従来とも、まず第一に、自然環境の破壊をしないように保護をしていくという線で行ってまいったわけでございます。  なお、いまお尋ねのございます支笏湖のヒメマスの問題につきましては、先ほどお答えをいたしましたように、このヒメマスのすむ絶対の条件としては、清澄な湖水でなければならぬということ、その清澄な水を確保してまいりますためにも、従来とも環境庁といたしましては、ヒメマスの異常な病害の発生につきましては重大な関心を有しております。この原因の究明については、水産庁により現在行われております原因調査の結果いかんによることともなると存じますが、環境庁といたしましても関係省庁と十分な連絡協力を図って、必要な対応策を立ててまいりたいと存じておる次第でございます。
  218. 多田光雄

    多田委員 私の伺っているのはそうではない。私はこれからやることを聞いているのではないのです。重大な関心を持っていると言われるわけですから、いままでどういう具体的な措置を、環境庁御自身としても、あるいは湖面管理の責任を持っている道に対して御指導や指示をされたかということを伺っているのです。先ほど聞きますと、どこでしたか、林野庁の問題については何か相談も受けてない、環境庁はいわばつんぼさじきに置かれているというようなことも、そういう言葉は使いませんけれども、言われているので、だから心配で私は聞いているのです。それほど重大な関心を持っているなら、どういう具体的な指示をされたか、その具体的な事実を私は聞いているのです。過去形の問題を聞いているのです。昨年の十月からですよ。
  219. 橋本繁蔵

    ○橋本(繁)政府委員 ただいまの御質問に対しましては、柳瀬自然保護局長からかわって答弁をさしたいと思います。
  220. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 支笏湖の国立公園としての価値は非常に高いわけでございまして、その自然環境の保全ということにつきましては、特に湖水の周辺については厳しい規制をやっておるわけでございまして、今年の四月からは、特にその国立公園地域の許認可等につきましても厳しい審査方針をつくりまして、それも当然支笏湖の周辺の地域についても適用してやってきておるわけでございます。  それから水の汚染等につきましても、先生がいまお持ちになっておりますような調査ども実施いたしまして、どういう状況で、今後どういうふうにしていけばいいかというようなことについて、検討を進めておるわけでございます。  また、ヒメマスの問題につきましては、原因がどういうことにあるのか、まあ病理的な原因、さらにまたその原因がどういうところにあるのかということにつきまして、やはり水産庁等に御調査をいただいておりますので、その結果を待って、私ども関連のあるような問題については積極的に対処していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  221. 多田光雄

    多田委員 これは昭和四十八年の問題なのです。私が聞いたのは、ヒメマスが病気になった昨年の十月から今日まで、具体的にどういうことをやったのかということを聞いているのです。公園の管理その他は結構でしょう。しかし、もっと大事な問題があるわけでしょう。結局、次官の言っていることとあなたの言っていることは、ちょっとニュアンスが違う程度のことで、本質的には同じことなのですよ。だから地元では、環境庁からはほとんどこういうことで指示が来てないと言うのです。国立公園の管理の最大の責任は環境庁が持っておるわけでしょう。非常に情熱のない、責任を余り感じてない発言なんですよ。  これはさておくとして、水産庁に伺いますが、支笏湖のヒメマス資源は、いろいろ十和田や阿寒その他でもやっておりますけれども、十和田阿寒はもう富栄養湖になって、ヒメマスもいますけれども、支笏湖がやはり全国的に言ってこの資源の、まあ唯一ではないが、最も主要な種卵場、ふ化場になっているというふうに、私は地元の北大の研究者からも聞いておりますが、これは間違いありませんか。
  222. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 いま御指摘のように、日本の国内で現在ヒメマスが生息している範囲内で言いますと、同じ道内でも阿寒その他にございますけれども、支笏湖の資源量が年間で約六十万尾程度ということで、これがきわめて重要なヒメマスの生産地になっているというのは事実でございます。
  223. 多田光雄

    多田委員 ヒメマスの貴重な資源ということについては、これはもうここで時間をかけて述べる必要もないだろうし、また、その余裕もございません。文字どおりこれは学術的にも、それから食料としても珍味なもので、名物になっているわけですね。そして、このヒメマスのいわば主要な種卵場が千歳になっているということで、おたくの出先もここにふ化場の方で仕事をしているわけですよ。  そこで、病気で死んだ原因について、いま地元で、先ほど言った関係研究機関、千歳市が協力して究明しているといいます。そして原因は、研究者もいろいろ言っているけれども先ほどあなたが言ったように、水生菌が発生する前段に、壊死という、つまり体の一部に死んだ状況ができる、そこに植物的な水生菌が発生していくというようなことが、大体研究者の大まかな意見なのです。しかし、それだけに限定してはいないのです。けれども、ともかくそういう話が多いのですよ。  そこで、私、きょう伺いたいのは、あなたが研究畑出身なのか、あるいは行政畑出身なのかよくわからないけれども、この病気が水と全く関係ないと言い切れるのかどうか。つまり、私の言いたいことは、公害上の意味における水質汚濁という点では、先ほどAAのイ、非常に透明度も高い、それからいろいろなミネラルその他についても大体合格だ、こう言われているけれども、しかしそのきれいな水に、たとえば外部からバクテリアとかウイルスが入っていくということが考えられるわけですね。あるいはいろいろな複合的な汚染も、われわれまだ科学的に知らないけれども、あり得るわけです。そういう意味で、水と全く関係ないと言い切れるかどうか、私はそれをひとつ伺いたい。
  224. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 結論から言いますと、水との関連を含めて、いま検討中ということでございますけれども、いままでやりましたのは、主として富栄養化との関係があるのではないかという想定でやってみたのですが、これはどうも直接調べた範囲、調べた期間の中では、必ずしも立証できないようでございました。また、一時的な原因として、水カビ菌の前に、何らかウイルスなり別の細菌で、何か壊死が起こっておるのではないかという想定で、いろいろな細菌なりウイルスの検出をやったのですが、これもどうも検出されなかった。これという思い当たるような原因が、病理学的にもちょっとはっきりしないということで、結局残ります問題としては、水の関係をもちろん含めまして、いろいろ魚の生理条件といいますか、そちらの方に何らかの影響があって、こういった広範な水カビ病の発生が出たのではないか、こういうことを一応考えながら、環境要因についても、それから魚の方の生理条件についても、かなり手広く検討を続けまして、ことしの産卵期ごろまでには何らかのめどを得たいということで、関係者がいま努力しておる段階でございます。
  225. 多田光雄

    多田委員 私、実は新聞にも出ていますし、直接にも北大の水産学部のこの担当しておる教授に伺ったのですが、まあこれはちょっと理屈っぽくなりますけれども、魚の病気の原因として、一つはバクテリアとかウイルスの感染がある。第二番目は魚の体に動物が寄生をする。もう一つは、この水カビのように植物性の寄生がある。四番目には栄養失調、栄養性の病気がある。そして最後に挙げたのは環境的な要因で、たとえば水温が下がったとか、あるいはまた酸素が過剰になったとか少なくなったとか、そういう五つの主な原因、大体これが当てはまっているだろうと言っていましたけれども、私、一々聞いたのですよ。確かにそういう問題があるけれども、他からばい菌が来なければ、水の中にすんでいる魚の体に入らないわけだから、そうすれば水そのものもやはりクエスチョンをつける必要があるのではないか。学者はそれは否定しないのです。  そこで私の言いたいことは、われわれ予測できない問題で生理的に発生したかもしれないとしても、問題はこういうときに、われわれが自然公園を守っていく、自然の環境を保全していくという場合には、すべての疑問の条件を挙げて追求していく、これが科学的な立場であり、特に環境行政で大事だと思っているのです。こんなことはもう前から環境の問題で言われていることなのです。  そこで、私は環境庁に伺いますけれども、もし水が汚れるとするならば、これは生活条件だとかあるいは健康条件だけではないですよ、いろいろなウイルスが入ってくるということも含めて、いま支笏湖でどういう否定的な要素があるか、環境庁として調べていますか。
  226. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 私どもの方では、四十八年度に実施したような湖の汚染度、主として富栄養化というようなことがどの程度進んでおるか、これは湖の岸辺にあるいろいろな人家あるいはホテル、旅館その他、住民の方々なり旅行者の方々が、そこに住まったり、あるいは泊まったりしておるということの関係で、それがどんなような汚染に影響しておるかというようなことを調べておるわけでございますが、四十八年度の調査では、まあ支笏湖はほかの阿寒とか大沼等に比べれば、比較論でございますが、まだある程度貧栄養化の状態であるというふうな結果が出ておるわけでございまして、ただ、今後いろいろその汚染が進んでいくという問題が当然あるわけでございますので、そういう点につきましては十分調査もし、また、検討も進めていきたいというふうに考えております。
  227. 多田光雄

    多田委員 あなたのお話を聞いていると、環境庁、物がわからないね。汚れたら直すということだね。汚れる以前に手を打つ、そういう積極性感じないもの。阿寒やそれから大沼、これはいまあなたがおっしゃったように富栄養湖になりつつあるし、なっているのですよ。そこにもヒメマスがいることも私、否定しませんよ。しかし、阿寒は実際はもう富栄養湖になりつつある。阿寒本湖にはほとんどいないのですよ、ワカサギにプランクトンを食われて。いまその上の別なワカサギのいないペンケトウとかパンケトウにしかいないのです。ああいう問題が起きたときには、環境庁はいち早く現地に行って——どうせ国会でこういう問題が取り上げられるということはわかるでしょう、それぐらいの情熱と積極性を持たなかったらだめですよ。  そこで私、これも現地でいろいろ研究者その他から聞いてみた。もし支笏湖の汚染が進んでいるとすれば、ばい菌が入るとするならばどういう条件があるか、挙げられるだけ挙げてみよう。一つ挙げられるのは、先ほどお話のあったプロの釣り人の流しているまきえです。まきえといっても舟釣りのまきえと違うのです。ともかく約百人から二百人といわれるプロが、この三カ月間、二十四時間つりっ放しですからね。モーターをつけて、魚探までつけて、国立公園の真ん中に、舟をレールで揚げる、そういう装置まで夏つくるというのだ、びっくりするでしょう。その膨大な、鯨の肉にゴマ油その他をつけて冷凍させて、タマネギの袋に入れてそれをおろすのですよ。これが一つある。もう一つは、集団施設地区、つまりホテルや旅館や民家、ここに約五百人住んでいますね、常住。シーズンには先ほど言ったように二百三十万ぐらい来る。ここの汚水処理の問題、これについて言うと、後で建設省に伺いますけれども、屎尿は市がくんでいってくれるけれども、あと民間は自家用の浄化装置、そして先ほど話になった洗剤その他は流れっ放しなんだ。観光客が来て、そしてテントを張る。これは何百万来るのですか、そのテントの水は流れっ放しなのですよ。三番目には、支笏湖に注ぐ河川の問題です。これはこの報告にも出ています。美笛川の上流には金と銀を出す支笏湖の鉱山がある。この環境調査によればまださほどではないようだ。しかし、問題にはなってきている。この調査時点、調査回数、これはどうか。道のやっていることですから、これはここでとやかく言いませんが、問題もあろうと思う。これが第三だ。第四は、さっきも話が出た除草剤、殺鼠剤です。先ほど数字で食い違っているけれども、これは林野庁からもらった、湖に流入する河川周辺にまいた量を私は聞いたのです。量は確かにそれほど膨大なものではないのです。しかし、これを見ても除草剤は二トン以上ですね。その流域ですよ、全体まいたものではないですよ。それから公衆便所、先ほど言った観光客の廃棄物、これは行ってごらんなさい、公衆便所は使えるものではないです。その他あるでしょう。こういうマイナスの条件を一体調べたのかどうなのか。調べる熱意もなさそうだ、さっきのあなたの話を聞くと。  殺鼠剤、除草剤の問題、もう聞く時間が余りないのだけれども、これはみんな毒物でしょう、科学者のいろいろの分析、あるものはさほどでないものもあるし、あるものは非常に少ない毒物であるけれども、一たん入れば皮膚病を起こしていく、それは私いろいろ聞きました。私、科学者じゃないから余りここでとやかく言う筋合いではないのだけれども、そういう問題があるのですよ。これは科学者はだれも否定しないのです。  そこで環境庁、支笏湖の自然公園の目玉は何だと思いますか。これは湖水であり、きれいな水であり、そのきれいな水にすむヒメマスなのです。それが現実に死んでいるのです。水が汚染されないかという疑惑がわかないでしょうか。いや、道からこういう報告をして、これは及第だから大丈夫だ、もしそう考えているとするならば、これはよほど感覚が鈍っていると言わざるを得ない。なぜなら、地方自治体の調査能力はさほどではないのです、支笏湖の水の採集、それは三人でしかやっていないのだから。  そこで私申し上げたいのは、総体として、ただ環境基準対象のミネラルがどうだ、BODがどうだ、CODがどうだというだけではなくして、現実に魚が死んでおる、そして水との関係は全く否定はできないというのであれば、道は五十年度の公共用水域の水質測定計画を出していますね。これは環境庁にいっていると思う。いっていませんか。五十年度の計画書です。これは法律に基づいて出している。これを聞いてみたら、そういうことの以前から策定している問題なので、ことしそれでやろうというのです。そうすれば、ことし道が水質調査をやる場合に環境庁がてこ入れをして、単に有害物質があるかどうかだけではなくして、魚の生態も変化してきている、実際変化してきているのだから。そういう生態学的な意味も含めて、湖の変化というものを総合的に調査するお気持ちになっているかどうか。仮に道にやらすにしても、環境庁がそういうふうに指導しないと、地方自治体はなかなかできないものです。そういう総合的な調査を五十年度、しかも早目におやりになるかどうか、それをお伺いしたい。
  228. 橋本繁蔵

    ○橋本(繁)政府委員 ただいまのお尋ねの趣旨でございますが、環境庁といたしましては、道とも緊密な連携をとりまして、適切な対応策を考えてまいりたいと存じております。
  229. 多田光雄

    多田委員 その適切な対応策というのは、いま言ったようにたとえば公害調査対象をもっとふやすとか、湖底も調べるとか、いままで大丈夫だというものについても疑惑の光を当てて見るとか、あるいは水産庁その他と総合的に、ひとつ環境庁が音頭をとって、国立公園を守っていくという一つのモデルとして、そういったことをやっていただけるかどうか。それから、道はやはり金の問題があるのですよ。そういう意味では環境庁が出すか、自治省が出すかどうかは別にして、そう大きな額ではないと思う。そういうことも含めて総合的な調査をされるのかどうか。次官、もう一つ御返事願いたいと思う。
  230. 橋本繁蔵

    ○橋本(繁)政府委員 重ねてのお尋ねでございますが、お説がございますように、関係省庁、道とも緊密な連携をとって、御質問の趣旨も含めました適応策を考えてまいりたい、このように存じております。
  231. 多田光雄

    多田委員 ぜひそればやっていただきたいと思うのです。恐らく国立公園は大なり小なり皆同じような悩みを持っておると思う。  それからもう一つお願いしたいことは、悪くしてから、その悪い段階に基準を設けてやるのではなくて、支笏湖の水を守っていくように、自然にほっておいても湖というものは富栄養湖に変わっていくのですよ。そういう意味で、ぜひひとつ、いま次官が御答弁なさったように、この費用の問題まで含めて、関係省庁と連絡をとって総合的にやっていただきたい、こう思うのです。  それから次に、建設省に伺いますが、北海道における自家浄化槽、一体これの機能はどうでしょうか。これは建築基準法によれば、BODで六〇%以上というようなことになっているのだけれども、北海道の場合に、民間の自家浄化装置は一体どれくらいの効能を持っておると思いますか。
  232. 久保赳

    ○久保説明員 各家庭の屎尿浄化槽の機能の問題でございますが、実は私、下水道部長で、私の所管外のことではございますが、御承知のように建築基準法で築造し、保健所が監督して管理をされているという状態でございますが、北海道でということではなくて、一般的に浄化槽の管理が必ずしも十分でなくて、基準が必ずしも守られていないのが多いという声があることを聞いております。具体的な数字その他につきましては、私の担当外でございますので、数字は持っておりません。
  233. 多田光雄

    多田委員 これは直接、建設省にお願いしてませんでしたから、無理もないと思いますが、私は北大の工学部の衛生学の人から聞いたのですが、一般に自家浄化装置というのは非常に低いのだそうです。とりわけ北海道はひどいのですね。なぜならば、非常に低温ですから玉砂利その他についている菌の活動が鈍るわけですね。当然有機物を接収するという力も弱くなると思う。それで北大の人はこう言っていますね。大体北海道では二〇%からよくて三〇%だろう。これは名前を挙げませんけれども、必要であれば後で名前を言います。つまり、一応固形物は取られるけれども、二〇%あるいは三〇%で屎尿が出されてくるということなのです。それしか排除されないということなのです。これは何度も実験をやった方が言っているのです。これは特に寒冷地だからやむを得ない面もあるのですよ。それから管理がよくないのです。民間の場合、どうしても管理がよくない。そうすると、この支笏湖のあそこにホテルやその他があって、みんな自家浄化装置を持っている。ここから二百数十万の人、これは全部ホテルに泊まるわけではないけれども、これから出されるものはいろいろな物質があるだろう。ただ、あの湖は物すごく大きいです。深いから、まだそれが露骨に出ないだけの話なのです。そういう意味では、先ほども話のあった下水道をつけるということは緊急の問題なのです。道から大沼と阿寒というふうに言われたけれども、大沼、阿寒は汚れてしまって、もういま辛うじて保つぐらいのものでしょう。そうすれば、いま残っている支笏湖をどうやってきれいに守っていくのかということは、これにも劣らない問題ですよ。道のお考えもそうだとすれば、あなたのお考えも、やはり汚れてから手をつけるという考え方。そういう意味では、下水道は今年度予算はもうお墨つきが終わってしまった、だから無理だというお話ですけれども、この点ひとつ善は急げということがあるし、私は無理なことは言わないけれども、ひとつ何かうまい方法があったら考えてくださいよ、来年と言わないで。すでにもう地元の千歳からはそういう計画が出ているし、北海道からは四十八年にこのことを主題にした調査、下水道の計画が全部出ているのです。この点で、どうでしょうか。私はちょっといまうまい方法を思いつかないのだけれども、予算の横取りというのも余りここでは言えないから、ともかく何らかの調査からまず始めてみる。そうして地元の人々に、ともかく早晩つくのだという確信を与えていただきたい。そういうことを何か考えていただけませんか、どうでしょうか、下水道部長
  234. 久保赳

    ○久保説明員 今年度内に予算措置をして云々ということを、ただいまこの席ではっきりしたことを申し上げるわけにはまいりませんが、基本的には、北海道の支笏湖を含めてわが国の湖沼の水質保全には、積極的に本当に取り組むつもりでおりますので、あらゆる機会をつかまえて、一歩でも二歩でも前進するような措置を考えてまいりたいというふうに思うところでございます。
  235. 多田光雄

    多田委員 そうすると、一歩でも二歩でも前進で、少なくとも本格的には来年からはやらなくてはいかぬと考えていますか。
  236. 久保赳

    ○久保説明員 建設省としては、さように考えております。
  237. 多田光雄

    多田委員 環境庁の次官にお願いしますが、次官もそういうことで建設省にひとつ積極的に働きかけていただけるでしょうか。
  238. 橋本繁蔵

    ○橋本(繁)政府委員 ただいまの御趣旨に沿うように努力をしたいと考えております。
  239. 多田光雄

    多田委員 次に、水産庁に伺いますが、私は、国がいろいろな事業をやっているうちで、この支笏湖のヒメマスのふ化ぐらい善政はないと思っているのです。国が金をかけて、そしてヒメマスをふ化する、それを放流する。そして年間何十万という人が観光に来る。そして十万近い人がともかく魚をつって楽しんでいく。本当にこれは善政だと思っている。  ところで私は、この計算高い世の中で、よくこのふ化事業を性こりもなくやっているというふうに思うのだけれども、このふ化事業というのは、今後も水産庁として、これは道は当然やっているわけだけれども、続ける御予定ですか。  それからもう一つ、続けるとすれば、その目的は一体何でしょうか。
  240. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 先ほど申し上げましたように、ベニザケの陸封型でありますヒメマスの生産地としては、支笏湖がわが国では最大の生産場所でございます。今後のいろいろな技術開発に備えて、ここでのヒメマスを海に放流をして、ベニザケ資源を造成をしたいというような夢も技術者としてはございますし、現実に、御案内と思いますけれども、そういう試験放流をやって、西別川等に遡上を見たというような経験もございます。しかし、いまのところは、余り安定した事業実績を持っておりません。  そういったいろいろな技術開発の可能性もございますし、それからほかの河川への移殖の可能性もある。現実にこの支笏湖で生産しましたヒメマスの種苗、卵を、かなりほかの地域、道外へも出しております。そういう全国的な見地から、ここでのヒメマスの生産というのは、水産庁としては、やはりぜひ従来どおり力を入れてやってまいりたい、かように考えております。
  241. 多田光雄

    多田委員 何も大ぶろしきで言うわけではないけれども、ともかく海洋法会議でも、経済水域二百海里で沿岸漁業の問題も見直されてくる、それから内水面の漁業の問題も見直されてくるというようなことで、私は、単に美味で珍らしいというだけではなくて、今後もこういう問題は考えていかなければならない問題だと思いますし、水産庁のそういう立場からの資源を守っていくということ、私は大賛成なのです。  そこで、これを継続していくとする場合に、いま問題になってきているのは、国がせっかく養殖する、それを放流する。ところが、それが、どういう原因かはわからないけれども、ともかくその大半、八割近くは死滅してしまう。それから、先ほど話もあった密漁がいま出てきている、こういう状況なのです。そして千歳市は、これはふ化も含めて、一元的な管理をしたい、そういう要望も持ってきているわけです。これは何か十年来要望しているようですけれどもね。この千歳市に漁業権を与えるということについて、先ほども御答弁がございましたけれども、これをどういうふうに水産庁は考えているのか、もう一度答弁願いたいと思います。
  242. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 漁業の管理あるいは資源の保護、管理をやりますときに、必ずしも漁業権という手段がいつでも何か適切であるとも限りませんで、いろいろな漁場の利用関係なり、それからその地域での資源の再生産の実態等に応じて、調整規則によるいろいろな採捕制限であるとか、その中も禁漁区、禁止期間、いろいろなものを組み合わせて、個々の地域の実情に応じてやっているのが現状でございます。  ここで漁業権を仮に設定するという考え方に立ちますと、一つ、管理権として第五種共同漁業権として免許する方法がございますけれども、これは大部分の河川、湖沼でやっている方法でございます。この場合には、一定の増殖を、漁業権を持った団体に義務づけるということが条件になっておりますので、考え方によっては、一番実態に合っているようにも思えるわけでございますが、ただ、漁場利用の実態の方を見ますと、先ほど先生からも御指摘がありましたように、季節的にこの地区に約六万人を超える遊漁者が入ってまいります。地元にしっかりした主体になる管理団体、漁業団体がございます場合には、それを中心にして管理漁業権を免許し、遊漁者との調整を図るという方法も制度上はあるわけでございますけれども、どうも遊漁者の方がなかなか組織化しにくいのと、地元にそういうしっかりした核になる団体がないということで、その間の調整をどう考えたらいいかということで、道庁の方にも相談を受けておりますけれども、いろいろまだ検討をしている段階でございます。  それからもう一つは、漁業権の性格で、区画漁業権と申しますが、養殖をやる漁業者としての権利がございます。しかし、これもどうも特定の漁業者という立場で、たとえば地元の市等に免許する場合にも、みずから漁業者として免許を受けるわけで、管理漁業権者としての免許ではございませんですから、そこのところへ、一体先ほどのような膨大な遊漁者との調整をどういう方法でやらせるかということは、いまの制度上では、そういうことを区画漁業権の場合には予定をしておりませんので、いろいろむずかしい問題があるというようなことで、実は地元の方からは、積極的にそういう市の要望があるということもわれわれも聞いておりますし、道庁からもそういう報告を受け、道も検討中であるということは重々承知しておるのですけれども、現状では、まだ漁業権としてやるのは、むしろ弊害が出るおそれもあるということで踏み切れないでおる段階でございます。  しかし、一方で漁業の調整なり、あるいは資源の保護、管理をやらなければいかぬことは当然でございますので、現在は北海道の漁業調整規則で、原則として周年禁止に近い形のものをとって、一部、夏場だけ六月一日から八月まで解禁をしている。その間、一応区域につきましても、一定の区域を湖心を中心に禁止区域を設定して、一応漁業調整上なり資源保護上支障がないと思われる範囲でやらしておるわけでございますが、これは経過的に申しますと、一時夜釣りもフリーにやらせておった時期がございます。ところが、夜間つりますと、いまの禁止区域等を違反していないかどうかというようなことで、非常に取り締まり上問題がございますので、四十七年にはさらに夜釣りも  一応禁止をして、できるだけ紛争が起きないように、かつ、資源の保護に支障がないようにということでやっているわけでございます。近年、まきえ釣りの問題等も、さっきお話がございましたように出てまいっておりまして、これについて、仮にいまの資源保護上どうしても禁止する必要があるというような因果関係がはっきりした場合には、そういうことも当然検討したいということで、いまそういう実態なりあるいは環境及び資源への影響調査をしているという段階でございます。  しかし、こういう調整規則によります一般的な取り締まりでございますから、どうしても取り締まり体制の方がそれに伴ってないと実が上がりませんので、従来、若干この点がウイークで、先ほどお話がありましたように、地元の市に主としてお願いをしてというか、協力をしてもらって監視をやっておったという実態でございますけれども、たまたま、ことしこういうような異常事態で、天然資源の大体四分の三ぐらいが死滅した。いま生存しておると推定されているのが約十四、五万尾ぐらいでございますが、この支笏湖の資源を維持していくために、最小限度六万尾ぐらいの資源が必要ではないか。そのうち半分ぐらいは従来から大体人工ふ化で、卵をとってふ化放流をやっておりますが、残りを天然の産卵に依存するとして、少なくともその程度のものはせひとも確保しなければいけませんので、現状でまだ病気がどの程度進行するかもわからないという事情もございまして、緊急、ことしは内水面漁場管理委員会の指示という形で、全面的に夏場は禁止する措置をとりました。それに伴って監視体制の方も、北海道庁とそれから地元の千歳市、水産庁の国立ふ化場と、この三者が協力をして、全体として核になる人間は十人程度でございますけれども、それを確保して取り締まりの実を上げたい、こういうことで臨んでいる状況でございます。
  243. 多田光雄

    多田委員 詳しく説明していただいて、わかりました。私、いまちょうどこの問題を解決する一つのチャンスだと思っているのです。ただ、その解決の仕方は、私は市に漁業権を与えることの是非を言っているのではないので、なるべく利権と結びついたり、そういうことのないようにしたいと思う。何といっても大前提は、国立公園の自然環境を守っていくということと資源を保存していくそれから健康なレクリエーションを守っていくということに立脚してもらうことが第一点ですよ。  それから第二点は、地元の関係者の声をよく聞いてください。道や市だけではなくて、さまざまな観光団体だとか、あるいはアマチュアの釣り人もいいでしょう、それから商店街、こういう意見を聞いて、適切な管理の方法を私は考えていただきたい。私はそういうときに来ていると思います。そういう意味でひとつぜひこれはお願いしておきたい。私自身もこうであるべきだというようなことを、いま申し上げているわけではないのです。  ただ、一つ心配になるのは、これは水産庁にお願いするのですが、たとえば魚の病気研究、これは国際的に見ても日本は大変おくれているのだそうですね。北海道でもこの専門家は、北大の木村先生と道立孵化場の粟倉さん、このお二人だと言われているのですよ。このお二人がいまチームの中心なんですよ。しかもみんな各団体が金を持ち寄ってチームをつくって、いまやっているのですよ。それから北大の先生なんかは、千歳市から研究費をあれしてもらってやっている。これではやはり国の責任は果たせないと思うのです。そういう意味では、この研究もそう大きな金がかかるものではないから、水産庁も十分この研究費のめんどうを見て、やはり国が中心になって研究していくという体制をとってもらいたい。これは返事は要らぬです。ぜひこれはやっていただきたいという要望をしておきます。  それから最後に、これもさっき出たことだけれども、密漁監視体制でいみじくも国立公園の管理のもろさというものが出ているのですよ。あそこにはいま密漁対策の何か協議会があるのですが、警察が入っているし、環境庁の出先も入っているし、林野も入っているし市も入っている。どれもみんな責任を負わないというのだ。密漁は、時には暴力を使うからおっかないですね。警察は、観光客が来ればそっちの交通整理に忙しくて、とても密漁監視に回らない。しかし私は、一番この責任は環境庁だと思いますよ、湖面管理が道にあるとしても。しかも出先にはたった一人の人、人件費がわずか百万円だというのだ。あの広い支笏洞爺国立公園に管理人が二人だという。何かアメリカの話を聞くと、百人ぐらいいるだろうというのですね。アメリカのまねをして腰にピストルを持つ必要はないけれども。だからやはり環境庁が中心になって、各省庁、出先と話し合いをして、こういう密漁を含めた一元的な管理——何も一元的だから市にやるとか何かではなくて、一元的というのは、その中心がしっかりしていて管理をしないと、こういう問題が二度と起きないという保障はさらさらない。そういう意味で、環境庁どうでしょうね、やはり地元の苦労している出先の人を激励して、ある意味では予算をつけることも必要でしょう。さしあたり、国立公園の自然環境や資源あるいは開発の問題、そういうことに環境庁が中心になってもらわぬといかぬ。いまはぜいたくなことは言いませんが、そういうことで地元の人は、自分の仕事はやっているけれども、もう余り情熱はないのです。それで、夜、密漁監視などというのはずいぶんおっかないらしいですよ。向こうも命がけだ。これが一つなんです。  それからもう一つは、国がやらないから密漁取り締まりを道がやる。道もだんだんやらなくなって、市が四名の人を配置しているのですよ。道はいないですよ。いるのはいるけれども、土曜と日曜しか来ないというのだ、北海道は。そして千歳市がまるで密漁監視をしている。その見返りとしてヒメマス六万尾ぐらいとらしてもらって、それを地元の業者に売って、それで幾らか人件費を持っているのだけれども、そういう意味では環境庁が自治省その他と相談して、こういう国立公園の管理には地元の地方自治体に余り負担をかけないように、もちろん国立公園によって地元の自治体が潤う面も私は否定はいたしません。しかし、管理や密漁防止まで地元の自治体にさせているということは、私はやはり国の責任が問われる問題だと思うのです。  こういう意味で、二つです。管理をもっと環境庁しっかりしてくれということです。それからいま一つは、自治省その他と相談されて、地方自治体に負担をかけない。場合によっては、やってもらっても、地方自治体にそれにふさわしい補助その他のめんどうを見てやる、交付税でめんどうを見てやる、こういうことをしてやらないと、結局やっているのは地方自治体だから、環境庁の責任がぼけてしまうのです。この二点について、ひとつ環境庁次官の御意見を伺いたいと思う。
  244. 橋本繁蔵

    ○橋本(繁)政府委員 いまの御発言の趣旨はよく了解することでございますので、関係省庁とも、また地元とも連絡をとりまして、適切な処置を考えてまいりたいと存じます。また、管理の面につきましても、同様でございます。
  245. 多田光雄

    多田委員 いろいろ要望も含めて、いたしましたけれども、私、ともかく最後に申し上げたいことは、環境庁しっかりしてくれということなのです。後手後手に回らないで、この環境問題は、皆さん勇気を出せば出すほど国民が支持するのだから、そういう意味では先ほど来お約束いただいたこと、また、いまの次官のお約束、ひとつ具体的に果たしていただいて、国立公園を守っていく。その一つのモデルケースとして支笏湖の問題を取り組んでいただきたい、このことを申し添えまして、ちょうど時間が来ましたので、終わります。
  246. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 岡本富夫君。
  247. 岡本富夫

    ○岡本委員 瀬戸内海の環境汚染について若干質問をいたします。  すでに御承知のように、水島の石油コンビナートから出たあの石油の事故以来、特に瀬戸内海が瀕死の重傷を負っている、こういう状態のときでありますけれども環境庁として、その後瀬戸内海の環境調査についてどういうようにやっておるか、ひとつ御報告を願いたいと思います。
  248. 大場敏彦

    ○大場政府委員 前にも委員会で御報告いたしましたが、環境庁が中心となりまして、瀬戸内海の環境汚染調査を各省庁と手分けして実施しつつございます。水質あるいは底質等の汚染状況がどうなっているか、あるいは流出した油の拡散過程がどのようになっているか、あるいは生物への影響、生態系への影響がどのように変化しつつあるか、そういった事柄につきまして、各方面と協力をして広範に調査を実施している段階でございます。  現在までのところ、生のデータはほぼ出そろってきております。まだ分析が十分し終わっていないものもございますが、ほぼ出そろってきておりますので、それをもとにして、近々専門家の先生、これは水産学者それからいろいろ環境方面に造詣の深い学者の御参集を得まして、それにつきまして検討、評価をしていただきまして、報告を出したい。来月その会合を聞きたいというつもりでおります。
  249. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは五月十六日ですか、瀬戸内海を破壊から守る漁民調査団あるいは瀬戸内海の総合調査団、こういうような人たちが瀬戸内海の汚染調査の中間報告をしておりますね。これについての評価はどうですか。まず環境庁から。
  250. 大場敏彦

    ○大場政府委員 漁民の方々から、水島から流出いたしました重油の関係で、魚に対して相当影響が出てきている。たとえば産卵場とかそういったところが破壊されて、タイとかあるいはその他の魚の漁獲が減ってきた、こういった報告があるようであります。そういうことで、私ども新聞紙上でしかまだ拝見しておりませんが、いずれ近いうちに、それらの方々から生の御報告をお伺いしたいと思っております。  現在までのところ、水産庁に調査をお願いいたしております段階では、今回の油の事故によって、いろいろ魚だとか、あるいはベントスだとか付着生物だとか、あるいはモとか、そういった生物につきまして、もちろん影響はございますけれども、顕著な影響は現時点においてはまだ認められていない、こういった状況でございます。もちろん、こういうものはかなり長いレンジで考えなければなりませんので、早急な軽々な判断ばできないと思いますが、生のデータの集まりぐあいを見まして、さらに詳細な検討を加えたいと思います。
  251. 岡本富夫

    ○岡本委員 水産庁の評価はどうですか。
  252. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 ことしの春の瀬戸内海の東部の漁業生産の特徴といたしまして、特に昨年に比べてイカナゴの漁が非常に悪い。コナと言っております小さな稚魚の漁獲がかなり、あそこの播磨灘の南部の方を中心に、去年のどうも二分の一とか三分の一とかというようなことが、はっきりした統計的裏づけはございませんけれども、県の方からも報告がございます。それからマダイ等のいろいろな春になっての、乗っ込みと言っておりますが、瀬戸内海への入り込みがどうもおくれているようだ、漁が非常に少ないようだということ、これは漁業者の方がそういうことを非常に心配しておるというようなことを、県からわれわれも聞いて把握をしております。  そういったことがございますけれども先ほど先生の方からお話がございました、いろいろな関係大学等の調査団あるいは漁民の方のいろいろな自主的調査にも関連があるわけでございますけれども、油汚染との因果関係がどうかという点になりますと、まだ十分なデータが集まっていなくて、それからまた、報告書の内容につきましても、十分な因果関係がどの程度立証されているかという全体の報告の詳細を、私どもは承知いたしておりませんので、その点については判断はつきかねておりますけれども、今後いろいろなデータが集まるのに伴って、その解析の中で、いまのような関係方面のいろいろな調査結果なり、それから漁業の方の実際の生産上の変化なり、こういったものを念頭に置きながら解析をしていきたい、かように考えておる段階でございます。
  253. 岡本富夫

    ○岡本委員 この報告書によると、重油とそれから油処理剤の毒性のためにモが枯れ、魚のえさであるところのモエビが姿を消しておる。また、定置網で、いままでタイが七十匹も八十匹もとれたところが、一網で二匹くらいしかとれない。こういうような報告が出ておるわけですけれども、水産庁で、こういった重油あるいは油処理剤、こういうものの生態系に及ぼすところの影響調査ということは、いままでかったですか。これは試験場でやっていませんか。
  254. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 従来は、油処理剤を実験室内で、一定の濃度で生物をその中で飼育したときに、どういう影響があらわれるかという、生態系全体といいますよりも、特定の指標生物を使っての影響限界の試験を主としてやっております。  現場で、ある程度大量に使用した後で、実際にそういう油処理剤等でどういう変化が出るかということについては、その地域ごとのいろいろな生態系の実態によって相当大きな差がございますし、海洋環境も全部一律ではございませんので、今回の総合調査の中では、それを一つの主要な課題として取り上げて調査等をやっておるわけでございます。ただ、現在まで中間的に聞いている報告では、三月時点の調査では、油処理剤については少なくとも水質あるいは底質等への影響は、三月時点になりますともうほとんど見られなかったということを中間的に聞いておりますけれども、それが生態系全体に果たして影響がなかったのかどうか、その点は今後検討していきたいと考えておるわけでございます。
  255. 岡本富夫

    ○岡本委員 しかし、まだ重油が全部なくなったわけではないし、それから油の処理剤も相当使っている。こういうことによって、これは瀬戸内海の魚の生態系に対するところの影響というのは相当ある、こういうふうに想定していいのではないかと私は思うのですが、この点について水産庁いかがですか。
  256. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 この点につきましては、単にある時点の一地域の分析結果だけでなくて、総体での魚の移動の問題とか水の移動の問題とか、非常に複雑な問題がございますので、そういう影響があるであろうという前提で、諸般の環境の調査なりそれから生態の方のいろいろな変化を総合的に把握をして、その関係を十分検討をするというつもりで、いまやっておる段階でございます。
  257. 岡本富夫

    ○岡本委員 ということは、全然影響ないとは言えない。そういうことを考えますと、この調査報告というものは私はやはり信憑性があると思うのですよ。その立場から環境庁にお聞きしたいのですけれども、この調査報告によると、流出した油の漂着状態ですが、砂浜を掘ってみると、二十センチぐらいの深いところに油と砂とのサンドイッチ状態ができておる。また、海底のどろにはコーヒーのような油のカスが数ミリもたまっておる、こういう調査が出ておりますね。こういうような現状を清掃といいますか、あるいはまた死寸前の瀬戸内海の環境を保全する、これについてどういうような対策あるいはまたどういうような今後の浄化対策というものをとろうとしておるのか、これについてひとつお聞きしたい。
  258. 大場敏彦

    ○大場政府委員 漁業者のいろいろな御報告につきましては、私どもまじめにお伺いして、調べたいと思っております。  それから、いま先生がお尋ねの外に出た油が海岸等に漂着して、それがまた再流出する、それに伴う影響につきましては、これは新聞紙上等でも報道されておりましたが、たとえば香川大学の先生が、それが赤潮の要因になるおそれがあるということを警告をなさっていらっしゃいましたが、私ども、それにつきましては十分な注意をしていきたいと思います。  出ました油の防除作業の進捗状況でございますが、漂着した海岸線の延長は約四百六十九キロメートルに達しております。事故直後から、これは御承知のとおり自衛隊とかあるいは漁民の方々のお力をかりまして、もちろん会社が直接責任者となりまして、いろいろ清掃に当たったわけでございますが、従来の経過を申しますと、四月の半ばに一応清掃を完了して、その後はパトロール体制に切りかえた。パトロール体制というのは、つまり気温上昇に伴って、いろいろ先生がいま御指摘になりました砂の奥にもぐっているようなところとか、あるいは岩場の奥底に入り込んで、なかなか簡単には取れない、そういったものが水温の上昇に伴って再流出するというおそれがあるわけで、そういったものを絶えずパトロールで見張っておく、こういう意味でございますけれども、そういった体制に切りかえて、再流出があった場合には直ちに清掃する体制をとっておるわけでございます。  しかしながら現実に、いろいろ漁業者の方々、それから学者の方々が御指摘になりますように、気温の上昇とともに、清掃が完了いたしました地域からも、残念ながら油膜が出てきておるということは実態でございまして、そういったことを再び再点検いたしましてこれは県のお力をかりまして再点検したわけでございますが、その結果、香川県の三十五カ所につきましてもう一回清掃し直す必要が出てきたということが判明いたしました。その三十五カ所のうち二十二カ所は清掃を完了しておりますが、残りもこの五月中には完了するよう、県を通じて、これは会社が、三菱が責任をもって処理するわけでございますが、それを督励している最中でございます。  なお今後、夏場に近づきまして、単に漁業だけの問題ではございません。海水浴場、そういった問題もございますので、そういった点につきましてもよく点検をいたしたいと思っております。
  259. 岡本富夫

    ○岡本委員 水産庁、いま話がありましたように、また、この報告書でもありますように、海岸に付着した油あるいはまた海底に付着しているこういう油が、海水の温度の変化に応じて、また海の中に撹拝されていく、溶けていくといいますか、こういうことが予測されると思うのです。それに対して産卵する魚の影響といいますか、産卵期にあるところの魚の影響、またそういった卵に対する影響、こういうものがやはり相当影響が出てくるのではないか、私はこういうふうに心配するのですけれども、水産庁の方は、これはどういうように考えておりますか。
  260. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 これは当然その油の濃度なり、それからそれに関連しますたとえば水温とか、ほかの環境条件との組み合わせいかんで、影響があり得るだろうというふうにわれわれも思っております。現場での調査のほかに、そういう点を少しでも解明したいということで、実験室的に、大体沖合いでの油分濃度等を基準にしながら、その中でいろいろな種類の魚の幼魚あるいはその卵等を飼育をいたしまして、それにどういう影響があるかということも、現在やっております調査研究の一環として組み込んでやっております。いままで私が聞いておる調査結果、研究結果では、まだ体系的に、こういう濃度になると、こういう影響があるということを明確に御説明できるところまで、取りまとめができてないようでございます。まだ研究を継続しておるという段階でございます。
  261. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうも水産庁は一いままで、ここだけではなくして各所で、こういった油の流出によるところの被害はある。新潟でもそうだった、もう各所でこういうのがあったはずなのですね。それを、まだ調査研究中だ、こういうようなことでは、私は漁民の皆さんは不安で仕方がないだろうと思うのですね。もう少しはっきりしたらどうなのです。
  262. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 従来、日本海側での「ジュリアナ号」での油濁事件であるとか、あるいは瀬戸内海でも小規模な油濁事故がございましたけれども、こういうものについて県が主体になってその後調査をし、それから漁業者からの聞き取り等で確かめた範囲では、それほど大きな影響はないのでございます。ただ、それは一つは海況条件が、日本海の場合にはかなり外洋であったとか、それから時期が、やはり過去の瀬戸内海の小規模なタンカー事故等については、もうちょっと早かったとか、いろいろな条件の違いがございますので、われわれとしては、従来の経験から言うと、それほど大きな事故はないかもしれないけれども影響が一応あるものと想定して、念のためさらに調査をやっている、こういう段階でございます。
  263. 岡本富夫

    ○岡本委員 環境庁に。  環境白書、この中に、水島コンビナートの流出油は、「海岸に漂着、水中に分散あるいは海底に沈降し、」しかもこれが「長期にわたり、生態系に悪影響を及ぼす等のいわゆる後遺症が残る」こういうふうに評価しております。これに対するところの対策というものは、あなたの方ではどういうようにいま考えておるのか、これをひとつお聞きしたいと思うのです。
  264. 大場敏彦

    ○大場政府委員 そのための調査を現在実施中で、近くそのサマリーなり中身を分析していただきまして、世に御報告申し上げるということは申し上げましたが、これはいわばやった後の始末ということになるわけでありまして、結局、今後の問題といたしましては、こういった油の流出事故をいかにして防ぐか、こういったことになるわけでありまして、いま、これから御審議願おうとしておりますコンビナートの事故の防止のための法案等もその一つのあらわれである、かように思っております。  そのほか、タンカー等の事故、そういったものによる油の流出をどうやって防ぐかということは、確かに議論としてはいろいろ御議論されているわけですが、実際上その解決を具体的にどうするかということにつきましては、率直に申し上げて、現在においてはこれだといったような名案がないということでございますので、その点につきましては苦慮しているというのが、率直な私の感じでございます。
  265. 岡本富夫

    ○岡本委員 長官に会ったら提案をしようと思ったのですが、政務次官、瀬戸内海の現在の油の事故によるところの影響、中を調べますと大変な状態なのです。外へ見えたものだけ処理していこうというようなところでしょう。一応は処理は終わったが、流れたものが全部すくい上げられてはいないのですよ。まず、そのうちの七割くらいでしょうか。あと三割くらいは残っています。あるいは三割以上かもわからない。それが海の中に、瀬戸内海にいっぱい漂流しているわけです。砂の中にもある、あるいは海岸にも、いろいろなところに付着しているわけです。これについて対策を根本的にはどうしようかという点は、いまのところ環境庁では処置なしというところなのです。政府も処置なしというところなのです。ですから、こういった対策をどういうふうにやるか。学者あるいはそういった漁民なんかよく知っていますよ、実際に自分の漁業なんかを守るために。そういった経験者を集めて、そして一遍、抜本的な対策をここで考えたらどうですか。これはそういう調査団でもない、審議会でもないといいますか、何にしたら一番いいか、私ちょっといま考えられませんけれども、そういう一つ研究班といいますか、あるいは対策班というものをつくって、そしてずっとやっていかなければ、これはいつまでたっても解決しませんよ。  瀬戸内海は六十年に一遍しか水がかわらぬというのでしょう。われわれ超党派でやっと瀬戸内海環境保全法をおととしつくりました。それで少しでもきれいになると喜んでいたら、結局何にもならなかった。三木さんもあのときは環境庁長官だったし、非常な勢いで取り組もうとしたわけでしょう。そうして総量規制やいろいろなことをやろうとした。ところが、それ以前にこんなえらい事故を起こされて、こんな大変なことが起こったのでしょう。したがって、抜本的な対策というものをここで練らなければいかぬ。それについては、いま瀬戸内海で一番詳しいのは大場さんですね。その大場さんがあんな調子でしょう。これから懸念されるというところでしょう。懸念されると書いたり、座っておる、役所におる人はいいですよ。その中で漁業をしたり、あるいはその付近の住民というものはたまったものではないのです。そうでしょう。費用は加害者から出さしたらいい、それでもとのきれいな瀬戸内海にしていこうという、そういう強力な姿勢がなくてただ自分がそこの衝にいるときの言い逃れでずっと済まされたのでは、これは後に大変なことが起こってくると私は思うのです。なお、その上にタンカーがちょこちょこ事故を起こしておるのでしょう。この間も油が流れ出た。あるいは瀬戸内海の沖は三菱の油と違う、分析したら違うのだとかなんとか言って逃げてしまう。これでは解決しませんよ。要するにどんどん総合汚染になってくるわけです。相乗の汚染が出てくるわけです。そういうような抜本的な対策を政務次官、考えたらどうですか。後でまた答弁で、いやそのとおり、先ほどみたいなあんなものでは話になりませんよ。一遍相談しなさい。
  266. 大場敏彦

    ○大場政府委員 私から事務的に先に御答弁申し上げます。  いま先生から御指摘になりましたこと、まさに今後の瀬戸内海の根本的な事柄であると思うわけであります。一昨年、先生方のお力によりまして現在の臨時措置法ができて、私どもそれを施行さしていただいておるわけでありますが、今後の課題といたしましては、同法にも命じておりますように、瀬戸内海の環境保全となる基本計画、マスタープランを早く政府がつくって、それに基づく施策を実施しろ、こういったことになっているわけでありまして、先生が御指摘になりましたような事柄は、当然その中で考えていくべき事柄だと私ども思っております。  具体的に申し上げますれば、先生が御指摘になりましたように、瀬戸内海は過去の汚染の蓄積がかなりあるわけであります。具体的に申し上げますれば、底質などもかなり油その他で汚れているというのが実態でございますから、それをどうするかという問題、それから水質の浄化の問題にいたしましても、二分の一カットという、他地区に先駆けてのかなりドラスチックな規制を、瀬戸内海では実施をしておるわけでありますが、それはいわば工場の排水に対する規制でございます。関係地域住民の生活排水に伴う汚濁をどうするかという問題は、規制だけでは解決できない問題でありまして、具体的に申し上げますれば、下水道の整備をどうするか、それに対する投資をどうするか、こういった事柄にあるわけであります。それから、あるいは水産資源の培養政策をどのようにしていくか、もろもろの根本的な事柄があろうと思います。  これにつきましては、この二月に瀬戸内海の審議会に御諮問申し上げております。その計画部会を設置していただきまして、そこで審議をしていただくという段取りになっております。現在、私ども事務的に、いわばそのたたき台となるような素材というものを集めて、せっかく工夫中で、勉強を毎週のようにしているわけでありますが、できるだけ早い機会にその素材をつくって、計画部会にそれをお出しして、いろいろ議論を伸ばしていただきまして、具体的なものにしていきたい、かように思っておるわけであります。
  267. 岡本富夫

    ○岡本委員 いま聞きましたが、大体いままでの調査を私も見せてもらいましたけれども、それと漁民の皆さんや、あるいはまた各大学の皆さんの調査と、そう変わりはないですよ。こっちもわりに信感性があるのです。ですから、あなたの方がおくれておるくらいだ。それに対して、ただ、調査が終わった、まあこれからゆっくりいこうか、こういうことでは話にならないわけです。ですから、やはり私が最初に提案したように、瀬戸内海環境保全実施本部をつくらなければだめなのですよ。そうして、そこで各省あるいはまた、そういった経験者を集めて、そして一つ一つ何とか解決していけるような考え方をしなければだめなのです、本当のところを言えば。どうも環境庁というところは、あちらこちらに調整をとって、お願いをしていくというところなのです。一番ぼんやりしているのは水産庁と違いますか。あなたの方は汚された方なのだ、そうでしょう、水産庁。あなたに言っても仕方がありませんけれども、農林大臣も来てないから、水産庁長官も来てないから仕方がない。もっと強力に意見を言って、そして汚れた瀬戸内海をどうしてくれますかというところにもつと力を入れなくては、これは話にならないと私は思うのですよ。これはどなっても仕方がないから、政務次官、あなたはどういうふうに考えておるか、ひとつ。名古屋のことだったらしっかりやるけれども、こっちの方は知らぬというのはだめですよ。
  268. 橋本繁蔵

    ○橋本(繁)政府委員 先ほど来の御発言の趣旨はよく理解ができるわけでございます。したがって、関係省庁もあることでございますので、関係省庁とも緊密な連携をとって、速やかにひとつ対策を考えていきたい、さように存じております。
  269. 岡本富夫

    ○岡本委員 本当にこれは笑い事ではないのですよ。だから政務次官、きょうのことは長官や、あるいはまた本当は閣議でも出して、強力に推進するということをひとつ考えてください、いいですか。
  270. 橋本繁蔵

    ○橋本(繁)政府委員 長官にもよく御趣旨を伝えまして、御趣旨に沿うように善処してまいるつもりであります。
  271. 岡本富夫

    ○岡本委員 それから、この白書に、瀬戸内海の赤潮の発生がどんどん進んでおる、こういうように出ております。ところが被害を伴った発生件数が少なくなっている。どうもこれは私は腑に落ちないのですよ。赤潮が発生すれば、これは漁業に影響があるというのは一番よくわかるはずです。現実に私は、一ヵ所ですけれども、兵庫県の淡路島あたりを調べましたら、赤潮が発生すると漁業被害がたくさん出ているのです。ところが白書を見ると、赤潮発生件数がふえておるけれども、漁業被害発生の比率が低下している。この点どうも私、納得いかないのですが、これはいかがですか。これは環境庁の白書ですが、水産庁が答えますか。
  272. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 水産庁の方で赤潮関係のいろいろな発生状況等の調査をいたしまして、それを環境庁に連絡して、全体として取りまとめをしていただいているという経緯がございますので、私の方から内容についてちょっと御説明をしたいと思います。  赤潮と申しましても、御案内のように構成種といいますか、プランクトンの種類については非常に種類がございまして、いままで内海で知られておるだけでも大体数十種類ございます。その中で、いまごろの時期に比較的発生しやすいのは珪藻類の赤潮でございますが、あるいは夜光虫等の赤潮もかなりいまごろの時期に多く出ます。こういったものによる漁業被害というのは、従来は皆無ではございませんけれども、余り大きな漁業被害は出ておりません。従来、特に養殖ハマチ等に大きな被害を及ぼしておりますのは、鞭毛藻類、中でも四十七年の大きな被害というのは海産ミドリムシという種類の生物による赤潮でございまして、魚の生理への影響等もございまして、比較的水産生物に余り害のない赤潮と、それから非常に有害な赤潮と、これが種類によってございます。  それともう一つは、発生しましたときに件数はつかめるのですけれども、その広がりがどうかということを直ちに現場でつかむということは非常にむずかしゅうございますので、いま取りまとめています発生状況の調査では、件数だけで、その発生の範囲、広がりを的確に量的に表示しておりません。四十七年に瀬戸内海の東部でハマチについて約七十億円以上の被害が出ましたときの赤潮も一件でございますし、非常に局部的な、湾の中での小さな珪藻赤潮みたいなものも一件として勘定しておりますので、その意味では、ちょっと資料として不十分なところがあるかもしれませんが、現在の調査能力、調査体制あるいは調査方法では、ちょっとこれ以上の客観的な数量化ができませんので、一応これで判断をしております。  それともう一つ、これは付随的に御説明をしたいのですが、実は四十七年に非常に大きな赤潮被害が出ましてから、水産サイドでも瀬戸内海を中心に赤潮の発生状況の把握ということを、国、県一体になって、漁業団体の協力も得てかなり力を入れてやってまいりまして、現在ほぼその体制ができ上がっております。その運営費についても、もちろんいろいろ国も補助等を出しておるわけでございますが、各漁業組合に監視担当委員みたいなものを決めまして、必ず、ある漁場のところを漁場からの行き帰りに見て帰ってくる、ちょっとおかしいなと思ったときには、必ず採水してきて、どんな種類の赤潮かということがわかるように、漁業者も県も国も一体になって監視体制をつくろう、できるだけ早く通報して被害を少なくしようということで、そういう情報体制は整備した結果、従来ちょっと見逃されておったような規模の赤潮も、一応把握ができるようになってきたというようなことで、余り漁業被害を伴わない赤潮も、一応件数の中には勘定がされているという状況になっております。四十七年以前と四十八年以降とで、そういう調査の体制の上での違いがちょっとございますので、いきなり全面的に比較もむずかしいかというふうに考えております。
  273. 岡本富夫

    ○岡本委員 この白書を見る限りは、そういうような細かいあれが出てないし、説明もない。だから、非常に件数はふえているけれども、漁業被害を伴ったということはなかなかすぐにはわからないですね。まあそれはそれとして、ことしはいままでに比べて、三月の初めの調査では、特に赤潮の発生が早いというわけです。これが重油との影響があるのではないか、こういうことなのですが、これについては調査をしておりませんか。
  274. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 毎年、いま申し上げましたような体制で、一応赤潮が発生した場合には速報を地元から上げてもらいまして、このデータを瀬戸内海で取りまとめて、必要があれば隣接県にも連絡するという体制をとっております。  確かに、去年もそうでございましたけれども、その前あたりからだんだんと何か赤潮の発生時期が早くなっているような傾向がございます。ただ、赤潮を構成しておりますプランクトンの種類は、先ほど申し上げました夜光虫なりあるいは珪藻類といったような、比較的漁業に影響の少ないものが、冬場の間あるいは春先にかけては、従来は大半でございましたので、漁業との関連ではそれほど問題ではないのですけれども、やはり富栄養化が部分的にはそうとまってないといいますか、問題になっている地域があるのだという意味で、われわれの方もそういう赤潮の発生情報をもらったところについては、特に重点的に警戒調査をやるように指導等もやっておるわけでございます。  ことしの状況といたしましては、実は昨日兵庫県の方から、いまのようなルートを通じて連絡がございましたが、播磨灘の北部の方の家島群島の周辺で、鞭毛藻類の、これは漁業にちょっと有害なわけですけれども、そういう赤潮が出たということで、関係の県なり漁業団体の方へ緊急にいろいろな連絡と指導をしたという連絡がございました。その種類は、大体ヘテロシグマとかペリディニウムというような、鞭毛藻類の中では比較的いままでは大被害を起こしたことのない種類でございますけれども、こういったものが養殖ハマチ等に影響があり得るだろうという前提で、いまそういう警戒体制をとっております。  ただ、油汚染との関連で申し上げますと、区域から言いますと、重油の影響を受けましたのは播磨灘の大体南部の方でございまして、兵庫県の沿岸に近い家島群島周辺では、実は余り水島の油の影響は直接的には受けていなかったということで、果たしてその間に因果関係があるかどうかということは、現在の時点では判断いたしかねております。
  275. 岡本富夫

    ○岡本委員 家島とか、要するに兵庫県の南海岸の方が、どうも影響が少なかったというような話でありますけれども、あれから後に西風が吹いているのですよね。そして、海の中の状態はどうなっているかというのが非常にわかりにくいのではないかと私は思うのですよ。ですから、いまの答弁というのはずいぶんおざなりのように思うのですよね。わからなくて答弁しているのかもしれぬけれども、私そう感ずるのです。まあ赤潮の原因というのは一体何なのですか。これはわかったのですか。
  276. 佐々木輝夫

    ○佐々木説明員 非常に複雑な生物機構と環境との関係なので、完全にわかったかと言われますと、実はまだ未解明の部分が非常に多うございます。  ただ、昭和四十三年ごろでございましたか、山口県の徳山湾でかなり大規模な、オリソデスカスという種類のプランクトンによる赤潮の漁業被害が出まして、これをきっかけに水産庁と県の試験場と、それから海上保安庁にも協力いただきまして、三年間ぐらい特別研究をやってまいりました。その後も引き続き調査研究をやっておるわけですけれども、いままでの知見をまとめますと、特に内湾性の漁業被害をもたらすような赤潮は、窒素とそれから燐、この二つの栄養塩の非常に過剰なといいますか、過度の存在に加えて、これは生物の種類ごとに少しずつ違いますけれども、鉄とかマンガンとか、あるいはたん白の有機物の分解されたものとか、こういったものが特定のプランクトンの増殖を非常に刺激する効果がある、増殖刺激物質というものがあるというようなことがわかってまいりまして、こういったものにさらに加えて、塩分濃度それから水温それから水の流れ、こういった自然条件が組み合わさって、たまたまある特定の種類の、たとえば海産ミドリムシの発生に非常に都合のいい状況ができたときに、爆発的にそういうプランクトンの大繁殖があって赤潮になるというようなメカニズムが、ほぼ基本的にはわかってまいっておりますけれども、それでは何十種類とあるプランクトンごとに、一体塩分濃度が幾らであって、あるいは水温が幾らだったら発生しやすいのかというようなことが全部わかっておるわけではございません。一部の鞭毛藻類等について、飼育実験等を加味しながら、ある程度そういう機構がわかってきたという段階でございます。
  277. 岡本富夫

    ○岡本委員 環境庁政務次官、よく聞いてくださいよ。  それで、実はこういうことがあるのです。現在愛媛県の西条市あるいは新居浜市では、三百二十四万平方メートルの埋め立てが計画されておる。要するに、瀬戸内海でこうしていろいろと埋め立ての計画をされているところがあるのですね。こういう埋め立て計画について、環境庁から事前評価、環境アセスメントをやれ、しかる後という指示が出ているわけです。ところがどういうアセスメントをやればいいのか、生態系に及ぼす要するに赤潮の発生の状態、あるいはまた、いろいろな生態系に及ぼすいろいろなことのアセスメントをやるその基礎がないのですよ。だから各地方自治体の県知事にしましても、どうやってアセスメントをやっていいのかわからない、これが現在の実情なのです。私は、この環境アセスメントの処方、この具体的な方法を、これはやはり国でアセスメントをやりなさいと言った限りは、これとこれとこれをやらなければならないということを指示しなければ、これはできないと思うのです。ここに元三重県知事もいらっしゃいますけれども、そうでしょう、元知事さん。また、企業や団体に環境アセスメントをやれと言われるのだけれども、何と何とどういう資料をどうすればいいかということがわからない。これは何ぼ義務づけても、基礎的なことを明示しなければできない。いま水産庁に聞いても、赤潮一つとったって、発生原因がわからないということなんですね。しかも重油あるいはまたその処理剤の、いま瀬戸内海にあるところの後遺症といいますか、影響がわからない。魚に対するところの生態系の影響もわからない。これで環境アセスメントをやれといったって、どうしてやったらいいのですか。だから、あなたに聞いても仕方がないみたいだけれども、ただ私は、こういった面から考えますと、もっと科学的な基礎調査あるいはどうするということのがっちりしたものを、国で総合的なものをきちっと基礎をつくらなければいかぬと思うのですよ。  これは陸の方ですけれども、たとえばドイツにおいても、あるいは西欧の諸外国におきましては、全部そういった環境アセスメントができる生態系植生図というのをちゃんとつくりまして、これに合わせてやるのだという基礎があるのですよ。これは二百年ぐらいかかるということです。わが国はそれがなくて環境アセスメントをやるのだ、それでは私はなかなかきちっとしたものができないと思うのです。だからここで、基礎をつくるのにひとつ強力な、科学的なあるいはまた実際の経験者、こういう人が集まってそういうものをつくっていかなければ、本当の環境アセスメントはできないと思うのです。それまでは、これはやはりちょっと埋め立てをやめてもらわなければ仕方がないと思うのです。いつどうなるかわからない、また大変なことが起こるということですから、ひとつその点も環境庁もっとしっかりして、そして適切な指示を地方自治体に出していけるような状態を考えてもらいたいのですが、政務次官どうですか。
  278. 橋本繁蔵

    ○橋本(繁)政府委員 先ほど御質問がございましたように、まあ大体、適当な処置をするとかいうことだろうという御想像をしていただいておるようでございます。しかし、いまの御質問の趣旨はきわめてむずかしい問題でございます。したがって、それらの処置につきましてはよく検討をして、御期待に沿うようにいたしたい、かように存じております。
  279. 岡本富夫

    ○岡本委員 もう時間になりましたから、最後に公害の財産被害ですね。要するに今度も淡路島あたりでも油によって被害があった。その油は、原因は外国に帰ってしまった外国船であったというようなことで、結局漁民は泣き寝入り。したがって生業被害といいますか、財産被害、これに対するところの保険制度といいますか基金制度、こういうものを環境庁が考えておるというような話でありますけれども、その構想だけを承って、きょうは時間ですから終わりたいと思うのです。
  280. 橋本繁蔵

    ○橋本(繁)政府委員 ただいまの問題につきましては、保全局長がかわって答弁をいたします。
  281. 大場敏彦

    ○大場政府委員 財産被害の問題につきましては、これは原因者がはっきりしている場合には、先生も御承知のとおり物事は比較的簡単だと思うわけであります。ただ、原因者が不明で、しかも資力がない、不特定多数だという場合には、そこに非常に困難な事情が介在してくるということでございまして、先生の御指摘になったところも、そういう事柄だろうと思うわけであります。水産などの場合に、いわゆる重油のたれ流しという形で、どの船から排出されたかよくわからない。しかし、漁民は現実に被害を受けておるという場合に、それをどう救済するかということは、根本論として非常にむずかしい問題でありますけれども、同時にまた解決しなければならない問題であります。たしか今年度の予算におきまして、水産の方面におきましては基金制度をつくって、これは恒久的な制度であるかどうかは議論があるところでありますけれども、当面漁民の救済のための制度を講じておるところでございます。  それから話がやや飛躍いたしますが、同じような事柄で、たとえばカドミ米とかそういったことが、片一方農民の場合に被害が起きることがございます。これはもう現に起きているわけでございますが、そのときに、たとえば神通川に見られるように鉱山者がはっきりしている場合はいいわけですが、秋田県その他に見られるように、非常に多く無数に鉱山があって、しかもそれは休廃止鉱山であって、すでに鉱業権者がどこにいったかわからない、こういったケースが間々あるわけであります。そういう場合に、現実に農民が生産した米は食糧庁は買ってくれない、だれが救済するのだ、こういった問題が現実にいま課題となっておるわけでありまして、それにつきましても昨年いろいろ制度を編み出すべく各省間で研究し、努力はしたわけでありますが、残念ながら、今年度の予算には間に合わなかった。環境庁調査費をそのために計上いたしまして、財産被害の救済制度の制度づくりをするということになったわけでありますが、その研究を進めまして、関係省庁と協力して財産被害の救済制度を確立していきたいと思っておるわけであります。
  282. 岡本富夫

    ○岡本委員 政務次官、カドミ米の方、そっちも必要だけれども、海の漁業被害の生業被害の補償基金といいますか、これは当委員会公害によるところの健康被害の補償法をつくったときにも、財産被害の補償制度をつくろうと、特に附帯決議でも超党派で要望しておるわけです。ですから、これも非常におくれております。一生懸命環境庁でやったけれども、どこの省が反対したか、これはひとつ当委員会へ報告してもらって、そのときは呼びつけてその大臣をがっちりしぼる、しぼるというのはおかしいけれども、要求するというくらいにして、環境庁をひとつ応援していかなければならぬと思うのですが、早急にひとつこの点は検討していただきたいと要望しまして、きょうは終わります。
  283. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 これにて質疑を終わります。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十五分散会