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1975-03-04 第75回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月四日(火曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 渡辺 惣蔵君    理事 田中  覚君 理事 林  義郎君    理事 藤本 孝雄君 理事 島本 虎三君    理事 土井たか子君 理事 木下 元二君       坂本三十次君    住  栄作君       戸井田三郎君    葉梨 信行君       阿部未喜男君    江田 三郎君       角屋堅次郎君    米原  昶君       小川新一郎君    坂口  力君       折小野良一君  出席政府委員         環境庁水質保全         局長      大場 敏彦君  委員外出席者         消防庁予防課長 永瀬  章君         参  考  人         (東京大学教         授)      疋田  強君         参  考  人         (和光大学教         授)      生越  忠君         参  考  人         (近畿大学助教         授)      保野健治郎君         参  考  人         (東京工業大学         助手)     加藤 邦興君         参  考  人         (東京公害局         規制部長)   田尻 宗昭君         参  考  人         (倉敷消防本         部消防長)   岡野計太郎君         参  考  人         (大協石油株式         会社社長)   密田 博孝君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   岩垂寿喜男君     江田 三郎君   岡本 富夫君     小川新一郎君 同日  辞任         補欠選任   江田 三郎君     岩垂寿喜男君   小川新一郎君     岡本 富夫君     ————————————— 二月二十六日  自動車排出ガス規制完全実施に関する請願(  岡本富夫紹介)(第一〇〇九号) 三月一日  有害物質等による公害防止に関する請願外二件  (山田久就君紹介)(第一〇五〇号)  自動車排出ガス規制完全実施に関する請願(  坂口力紹介)(第一一八二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害対策並びに環境保全に関する件(コンビナ  ートの公害防止対策)      ————◇—————
  2. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件、特にコンビナート公害防止対策について調査を進めます。  本日は、参考人として、東京大学教授疋田強君、和光大学教授生越忠君、近畿大学助教授保野健治郎君、東京工業大学助手加藤邦興君、東京公害局規制部長田尻宗昭君、倉敷消防本部消防長岡野計太郎君及び大協石油株式会社社長密田博孝君、以上の方々が御出席になっております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、また遠路にもかかわらず、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  御承知のとおり、昨年の三菱石油水島製油所重油流出事故、先般の大協石油四日市製油所爆発火災事故等、相次いで石油タンクの大きな事故が起き、また、各地において巨大タンク不等沈下を起こしておるなど、住民の不安を高め、大きな社会問題になっております。  本日は、巨大化したコンビナート公害防止対策について、専門家の皆様から貴重な御意見を承り、もって本問題の抜本的対策を講じたいと存ずる次第であります。  何とぞ参考人各位には、それぞれのお立場から、忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  なお、議事の整理上、御意見の開陳は、おのおの十分ないし十五分程度に要約してお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただくようお願いいたします。  それでは、疋田参考人からお願いいたします。疋田参考人
  3. 疋田強

    疋田参考人 疋田でございます。  私は、コンビナート安全対策の三つの基本について、私の意見を申し述べたいと思います。それは何を、だれが、どうしてということでございます。  まず最初の何をというのは、安全のフィロソフィーに関することでございまして、まず人命第一ということを徹底すべきであろう。これを拡張いたしますと、周辺環境への波及防止ということも必然的に入ってくるわけでございます。いわゆる財産保全というのは第二の目標でございまして、これもあくまでも拡大の防止という観点から考えるべきことではないか。  その際、非常に重要なことは、安全率という考え方でございまして、絶対安全ということはあり得ないということの認識を、非常にはっきりと持つ必要がある。たとえばある装置、ある設備が、フォアナイン、九九・九九%の安全率を持つといたしますと、それはたとえばその装置が二千基日本にあるといたしますと、五年に一度は破壊ないし何らかの事故を起こす確率があるということでございます。これがコンビナートと申しましてもいろいろ種類がございますが、比較的悪い条件のコンビナートにあるというような場合には、これを一けた上げる必要がある。五年に一度というのを一けた上げるということは、五十年に一度ということになります。この一けた上げるという努力はかなりむずかしいことではありますけれども、コンビナートの場合には、周辺かなり危険な設備がたくさん存在しておる。したがってそちらからの波及効果ということが考えられるわけです。ですから、そういう場所場所に応じた安全率考え方というものをはっきりさせていく必要があるのではないか、そういうふうに考えるわけでございます。  それから、第二のだれが安全を守るのかという問題でございますが、これはやはり自分の安全は自分が守る、いわゆる自主規制を育てる方向にいくべきではないか、法律だけでは安全は守れないと私は思います。余り細かい点まで規制するということは、自主規制の芽を摘むという結果になりかねない。大体法律というものは平均的なものでございますので、たとえばある平均で法規制をするといたしますと、それ以下の危険性しかないところをも非常に厳しく規制するということになりまして、そういうところの経済活動が非常に阻害される。一方、もっと危険なところに対しては、それでは甘過ぎるということになるわけでございまして、どうしても自主保安というものが徹底して行われる必要があろう。これは欧米各国企業はほとんどそのようでございまして、法律を守っていたのではとても安全は守れないという観点から、自主的な基準をつくりまして、それをやっているというのが実情のようでございます。したがって法律は、そういう自主規制の育成という点を十分考えていくべきではなかろうか。  わが国コンビナートは、多業種が雑居と申しますか、非常に入り組んで構成されております。しかもその一社、一社の規模というのは必ずしも大きくない。これは統一的なコンビナートとしての安全対策を維持する上にかなりの障害になっているのではないか。したがって地域防災協議会というようなものが現在つくられておるようでございますが、これを名目的なものでなしに、もっと実質的な機能を持たせる、あるいは実質的にこれを強化していくということが重要ではなかろうかというふうに考えております。常に全体を安全という目からながめておる人、そういう人の存在が絶対に必要でございまして、余りにも小さな規模でありますと、それだけの人材を置く余裕がないわけでございます。したがって、どうしてもコンビナートというような場合には、その共同体のようなものをつくりまして、そしてそういう常に安全の目で監視しておるという立場の人が必要になってくる。これは監督する側についても言えることでございまして、インスペクターの制度、その資格、あるいは安全担当者資格、人数、そういうものについて考え直す必要があるのではなかろうか。  第三のいかにして安全を守るかという方法でございますが、これは「安全は教育に始まり教育に終わる」という標語がございますように、教育ということが一番重要でないか、その教育というのは、会社社長から全従業員にわたるものでなくてはならない。それで教育の対象といいますか、教育内容というのは、一に意識でありまして、二に知識、三が実行でございます。  意識というのが一番基本になるものでございまして、何のために、何を守るのかという意識が最も重要ではないか。その意識に裏づけされない限り、本当の意味の安全を実行しようという意欲がわびてこないというふうに思われます。  第二の知識という点は、これも十分な知識がなければ、実行が間違った方向に行きやすいわけでございます。したがって、これは情報ということが非常に重要になってまいりまして、たとえば事故に至らない事故潜在事故あるいはちょっとしたミスで事故にはならなかった、そういうことがしばしば隠されがちでございますけれども、これを全部反省の資料にしていく。過去の事故を徹底的に洗いざらして、それを自分の教訓として取り入れることができるならば、かなりの数の災害というものが防げるということが言えるのではないかというふうに考えます。そういう意味事故情報研究、それの適用、それから安全技術研究とその適用、それから全従業員の何回も繰り返して行われる再教育というような場が、どうしても必要になるわけでございます。  それから、第三の行動という点でございますが、これは知識だけあっても行動力が伴わなければ何にもならない。これはやはり平素の訓練が第一でございます。特に平常時の訓練というのはみんなかなり程度行われているはずでございますけれども、緊急事態訓練というのは必ずしも容易ではありません。まず第一に緊急事態想定ということが相当むずかしい仕事であります。どういう事故が起こるかということをあらかじめ予測するということはかなりむずかしい。しかし、あらゆる考えられる事故というものを全部想定してみる、その場合にどういうアクションをとるべきかということを訓練していくわけです。絶えずこれを繰り返して訓練していく。対応が早ければそれだけ災害規模は少なくなるわけです。したがって緊急事態想定に対して即刻対応できるような行動、それの訓練というのが非常に重要ではないか。これをやるためには、たとえばトレーニングセンターをつくりますとか、あるいは安全教育機構安全教育機関の確立でありますとか、あるいは情報センターの整備、そういうようなことによりて行われていくのではないかと思います。  先ほど申しましたいろいろな設備安全率の問題でございますが、一つ抜かしましたけれども、その安全率というものは時々刻々変化していくものであるということを、やはり十分注意する必要がある。これは疲労でありますとか、あるいは台風、地震、雷、そういうものによって何らかの影響を受けてくる、あるいはいま問題になっております地盤沈下のようなことの影響ということも当然あるわけです。したがって、最初につくられたときの安全率というものは変わっているということ、それを検査するということが非常に重要な仕事にならねばならないと思います。  以上、大変簡単でございますが、私の考えを申し上げました。
  4. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 ありがとうございました。  次に、生越参考人にお願いいたします。和光大学教授生越参考人
  5. 生越忠

    生越参考人 御紹介いただきました和光大学生越でございます。  私はコンビナート企業に勤めたこともございませんし、それから構内に入りまして立入調査をしたこともございません。それで、私の専門地質学でございますので、地質学立場から、きょうの問題をお話しいたしたいと思います。したがいまして、お話しいたしますテーマ、内容は、コンビナート地盤ということになろうかと思います。  私は南関東の地質調査あるいは研究を過去二十年間ほどしておりまして、ちょうど東京湾周辺埋立地埋め立てに使います山砂などの研究をずっと長いこと手がけております。そういうことから、本日の私のお話は埋立地地盤の問題、それから埋め立てに使いました材料、砂なんかでございますが、そういう問題についてのことを若干お話しいたしまして、なぜ不等沈下が、かくも広範囲にわたりて起きたのかという問題に触れてみたいと思います。  それで、日本コンビナートの大部分は、埋立地あるいは沖積層が非常に厚く発達しております海岸平野あるいは大きな川の下流沿岸立地しております。そういう場所はおしなべて地盤が非常に軟弱でございます。そういう地盤軟弱なところは地盤沈下が非常に進んでおります。地盤沈下原因としては、地下水のくみ過ぎあるいは水溶性天然ガスのくみ過ぎ、それから地層自然圧密、それからそういう場所に重い建造物などをつくったというようないろいろな問題がございますけれども、不等沈下を起こします主な理由は、やはりそこの地盤をつくっております堆積物性質が非常に不均質であるということでございます。粒の粗さが違うとか、あるいは、したがいまして含水比、水を含んでおります比率、そういうものが場所によって非常に違うということが不等沈下を起こす原因になろうかと思います。  もし、時間がございましたら後ほど詳しく述べたいと思いますが、そういうところでは地震が一たび起こりました場合などには、非常に大きな災害をもたらします。昭和二十七年五月の第一次十勝沖地震のときにも、釧路港でそういう例がございました。三十九年六月の新潟地震のときもやはりそういう例がございました。そういう埋立地あるいは海岸平野などの工業地帯コンビナート地盤が非常に弱く、地震にも弱いというわけでございます。  それから、埋立地の場合は自然の地盤に比べまして非常に劣悪で、したがって一般論としてはきわめて危険であると言うことができると思います。時間がたてば埋立地は乾くので、自然に締まっていくから、造成が済んだ後で、ある程度時間を置いた上で工業立地コンビナート立地をやれば比較的安全だという見方もございますけれども、しかし、これは自然の地盤に比べますとはるかに弱いところでございますから、幾ら時間をかけましても、自然の地盤のように十分に固まるということはないと思います。これは自然に堆積した地層についてもそういうことは言えるわけでございまして、堆積する速度が非常に遅くて、したがいまして地層の厚さが薄い、そういうところではかたさが非常に軟弱になっております。それに比べまして堆積速度が非常に速い、したがって厚く堆積した地層は非常にかたくなっております。たとえば、私は実地には見ておりませんけれども、オーストラリアの西部あたりでは数億年前の地層がまだ非常に軟弱なまま堆積している、そういうことが文献にも書いてございます。日本のせいぜい数十万年ぐらい前の洪積世の地層と、それから数億年前の古生代の地層とが、かたさが同じであるというようなこともございます。ということからもわかりますように、単に時間がたてば自然にかたくなるというものではございません。これは天然地層についてのことでございますが、コンビナートをつくるために造成いたしました人工埋立地についても、やはりそういうことは言えるだろうと思います。  それから次に、これは私は一番強調したいことなんでございますけれども、埋め立てに使う土砂の問題がございます。昭和四十七年十一月二十八日に科学技術庁資源調査会から出ました骨材資源研究についての報告がございます。この科学技術庁資源調査会の将来の骨材需要予測によりますと、河川砂利は、四十七年から数えましてほぼ十年で枯渇するだろうということが書いてございます。それから人工砂利、いわゆる砕石でございますが、これは資源としてはたくさんあるのでございますけれども、開発公害のことなんかもございますので、二十年でほぼ限界にくるだろうということが言われております。この科学技術庁予測にもありますように、現在は良質骨材を手に入れることが非常に困難な状況になっております。良質骨材埋め立てに使う良質材料というのは、いわば均質な砂、たとえばどろ分をほとんど含んでいないような、粒のそろった均質の砂ということになろうかと思います。そういうものは資源的にも非常に少なくて、もはや増産の余地がほとんどないと言ってもいいぐらいのものではないかと思います。  それでは実際にはどういう材料埋め立てに使っているかと申しますと、たとえば東京湾各地埋め立てをやっておりますけれども、横浜のごときは、もう自然の海岸線が全部なくなってしまったと言われるほど大規模埋め立ていたしました。たとえば最近、金沢八景あたり埋め立てをやっておりますけれども、三浦半島で宅造いたしております。その宅造いたしておりますときに関東ロームなどの残土が出ます。その宅造開発現場などで出ました残土を海に持っていって、埋め立て材料に使っているというようなことがしばしばございました。千葉の房総半島の方には非常に良質の砂がございますけれども、これは資源的に限りがございますので、そういう宅造地などにおける残土をたくさん使っております。それからまた、それでも足りない部分については、海底をしゅんせつした際に得られたヘドロ、こういうものを使っております。しかし、良質山砂をある部分では使い、それからあるところでは宅造地に出ました残土を使う、あるところでは海底からすくい上げたヘドロを使うということになりますと、埋め立てに使う材料性質場所場所によって非常にまちまちになってまいります。  これは地層学研究の方からはもう常識なんでございますけれども、十分圧力をかけた場合に、どういう物質が一番圧縮率が高いかと申しますと、粒の粗さの非常に細かいどろでございます。それからその次に圧縮率の高いのが砂でございます。一番圧縮率が低いのが礫ということになっております。砂利でございます。十分圧力を加えました場合には、どろあるいは粘土は数十%ぐらい体積を減らすと言われております。しかし砂の場合には、十分圧力を加えましても、せいぜい数%しか縮まない。こういうのが大体地質学あるいは地層学常識でございます。  そういうことがわかっていながら、実際の埋め立て現場では、いろんなものをごちゃごちゃに使う。とにかく埋め立てさえすればいいんだろうということで、あちらから、こちらから、ごちゃごちゃに持ってきては海の底にほうり込んでしまうということで、現実の埋め立てはやっておりますので、これでは場所ごと沈下率あるいは圧縮率が違いまして、不等沈下をするのは自然のことであろうかと思います。そういうことがございまして、水島事故をきっかけにいたしまして、消防庁などが調べました全国各地にわたる不等沈下ができたのであろうと思います。  それから、埋め立てをいたしました海底地盤の強弱、これももちろん不等沈下原因になっていると思います。先ほど申しましたように、多くの場合は海岸平野あるいは大きな川の下流、そういうところにコンビナート立地されておりますし、それからまた、埋立地をつくりましてそこに立地されておりますということで、地盤が非常に軟弱なところにコンビナート立地されておるということが、今日の結果をもたらしたと思います。  これまで報告されましたいろいろなデータから、もう時間もございませんので急がせていただきますが、不等沈下量全国最大でございました市原市の丸善石油、これは不等沈下量が五十五・三センチ、それから不等沈下率が〇・六八%と言われておりますが、この市原市には、丸善石油のほかに東京電力の五井火力それから極東石油などがかなりひどい沈下をいたしております。こういうひどい沈下をしておりました場所は、一体どういうところであったかということを調べてみますと、現在の養老川河口あるいは一昔前の養老川河口、こういう河口はもともと非常に地盤が弱いところでございますが、こういうところにつくられた石油タンクは非常に沈下率あるいは沈下の量が高いということが出ております。これは当然のことだろうと思います。それから都内危険タンクが、先ほどの調査の結果によりますと、足立区に三基、北区の豊島に一基、合わせて四基、これは不等沈下率が〇・一%以上で危険タンクということになりますが、調べてみましたら四基あったということでございます。こういう場所も、大体隅田川あるいは荒川放水路周辺に非常に危ない場所が、つまり危険タンクが集中しておったということがわかりました。区で申しますと北区、荒川区、足立区、江東区などでございます。ということでございますので、内陸部でも大きな川の沿岸は、やはり海岸平野と同じように、あるいは埋め立て地と同じように軟弱地盤でございまして、こういうところでは海岸から隔たっておってもだめであるというふうに思います。  それから、タンクごと沈下程度の違いが報告されました。基盤工事の手抜きではないか。あるいは地盤の不均質性含水比の違い、乾き方の違い、こういうものもあったかと思います。きょうの朝日新聞によりますと、水島では地盤固めに必要な工期を使わなかったという疑いがあるということが報告されておりました。そういうこともございますでしょう。こういうことで、不等沈下は起こるべくして起こったというふうに思います。この不等沈下の問題は、実は去る四十四年三月二十日に板橋区で起こりました都営地下鉄六号線の工事現場におけるガス爆発、これも埋め戻しの砂に良質山砂を使わなかったことによる不等沈下であるという見方もございます。これはまだ裁判でいま係争中でございまして、原因はまだ確定しておりませんけれども、都内であるいはそのそばで、しょっちゅう起こっております水道管破裂ガス管破裂、こういうものなどもやはり工事の後の埋め戻しに使いました砂の質が悪かったというところから生じました不等沈下かなり原因になっているのではないかと思います。私も若干調べ、いろいろやっておりますけれども、そういう気がいたします。  もう時間になりましたので、足りない分は後ほど御質問にお答えする形で補足させていただきたいと思います。
  6. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 ありがとうございました。  次に、保野参考人にお願いいたします。近畿大学助教授保野参考人
  7. 保野健治郎

    保野参考人 近畿大学保野でございます。  本日は、コンビナート防災対策ということでございますが、限られた時間ですべてを説明できませんので、その一部について、ここにございます図その他で御説明をさせていただきたいと思います。約八項目にわたってございますが、その中の重要点について御説明をいたします。  ここに書いてありますのは、コンビナート施設の二、三の問題点でございます。  まず第一番は、設計基準と法の不備でございます。  第二番目は、検査機構不備。特に検査機構につきましては、地盤構造の、建設段階あるいはそれよりさきにさかのぼりまして設計段階でのチェックがございませんし、施工上の監督による記録もほとんどないということでございますので、そういう点は特に必要であろうと思います。  第三番目は、経済性優先考え方であります。わが国におけるコンビナートは、主として石油化学を中心としたコンビナートでございますので、輸入の原油のタンクが抑えられ、売る値段もある程度限定をされてきますと、その範囲内で企業が生存をしなければなりませんので、できるだけ経済性を追求しませんと、コンビナート自身が経営的に成り立っていかないという一部の宿命的なものがあると思います。そういうときに、地上部分には主として金をかけますけれども、地盤構造には、特に経済状態が悪くなった段階で、徐々にその地盤にかける建設費用の割合が低下をしております。なお、すべてのコンビナート経済性を追求しておるわけではなくして、各コンビナートによりまして、あるいはコンビナートの中のいろいろな分野において、地盤構造かなりの重点を置いた施設がありますので、すべてのものを一緒にして全く経済性以外は無視しておるということを、私は申し上げておるわけではございません。特に企業間の技術格差ははっきりとしており、各企業における独自の基準を持っておりますので、ある企業ではかなりなレベルを持っておるということを申し上げておきたいと思います。特に、地盤沈下、自然における雨水の問題、圧密工法など、各コンビナートにおけるノーハウ、各企業、メーカーによるノーハウははっきりと持っておって、それらは一般に公開はされておりませんが、わが国におけるタンクの技術は、私は少なくとも世界の最高レベルの技術はすでに持っておると思います。もちろん、未知の分野はかなりありますが、われわれ技術者、学者から見ますと、世界のレベルから見て決して劣っておるものとは思っておりません。  第四番目の防油堤の不備につきましては、すでに何年も前から、京都大学の堀内教授を中心として、われわれグループがよく言っておりますように、防油堤の容量が不足をしておるとか、あるいは流出した油の勢いをできるだけとめるべく、その遮断をする構造物あるいは防油堤の間仕切りなど、何段の構えもしなければならぬということを提唱してきましたが、それらはすでに皆さん方御存じであると思いますので、詳細は省かせていただきます。  第五番目は、防災上の指令、統制の不備であります。これは一たん事故がありますと、一斉に各分野にわたって同一指令が同時にされることが必要であって、ネズミ算式に次から次へと連絡をしていくのではなくして、主要機関には事故現場から同時放送で一斉にやる必要がありますし、しかも、各分野の相互の連携は十分とる必要があると思います。  六番目は、総合判定でございます。ここにございますように、すでに私自身の試みの案として出しておりますが、一番目はタンク沈下、これは最近よく言われております不等沈下などを含めまして、沈下のパターンを約六項目に分類をし、それらが複合したものが実際のタンク沈下ではございますが、そういうようなものに対する許容沈下量の考え方であります。これは後ほどもし必要があればお答えいたしますが、すでに新聞その他で私自身の試案が出ておりますので、これは割愛させていただきます。  なお、これにつきましては、私の試案とされておりますけれども、実際には単に私自身の単独のものではなくして、何十人とわたる多くの一線級の技術者、学者、過去の事故例、国内外を問わずそういうものを勘案をして、防災工学上の立場から私の試案として提案したものであり、どちらかと言えば、メーカー側の判定基準より一〇%から二〇%許容沈下量が厳しくなっておると思います。  二番目は沈下の進行状態であります。これは沈下をしておりましても、それが落ちついているかどうか、変化の状態はどうであるかということであります。それはたとえば皆さん方が健康状態を見て、もし不健康になりつつあるときに、それが急激に不健康になり、あるいは病状が進行しておるという状態であるかどうかが大切であると同様に、沈下の進行状態というのは非常に大切であります。  三番目は地盤構造でありますが、軟弱地盤の上につくりましたタンクは、タンク軟弱地盤の間にバンキング部分がありまして、これが実は学問の分野ではかなり抜けておるものであります。要するに、ちょっと山高にいたしましてタンクをつくりますが、土質力学では軟弱地盤の構造と、構造力学上ではタンク部分かなり解明をされておりますが、そのサンドイッチになっておる部分が微妙にわからない問題点であります。しかし、この問題につきましても、すでに技術者の間ではかなり解明をされており、これが先ほど申し上げましたようにノーハウその他の問題があって、一般に公開をされてないという宿命があるわけでございます。特に非常に大切なのは、基礎のすべり破壊でありますが、これは一般に荷重をかけて圧密をした地盤を使うと横にはみ出さないという定説がございますが、現実には横にはみ出すと同時に、縦方向にも沈下をしているということを認識しなければならぬと思います。もう一つは基礎の沈下でございますが、これは特に改良しなくてもいいと思ったところが、予想外に沈下が進んでいくという問題であります。  四番目は気象条件ですが、雨、風、特に雨の問題は重要であります。  五番目は操作条件ですが、特にタンク内の温度、流入、流出の量がどうであるかは大切であります。  六番目は維持管理、特に日本では雨じまいがどういうふうになっておるか。  七番目は付属施設、これはパイプ、バルブなどの問題でありますが、特にパイプとパイプとのジョイント部分、たとえばベローズ型ジョイントそのものが本当に検査をされておるかどうかは、非常に重大な問題であろうと思います。  八番目はタンク群としての判断です。それは、個々の人間がたとえ健康であっても、社会全体の健康を問題とするように、一つのタンク沈下量がふえるということは、他のタンクへの前ぶれであるという予測をする必要があり、個々のタンクがどのような方向にいっておるか、十分注意をする必要があると思います。  それから九番目としては基礎構造の不良でありますが、特に今回のように一度にどっとえぐり取られるような構造にしてはならない。漏れを早く発見できる構造。もう一つは、砂の動きその他を防止をするような考え方、こういうことが必要であると思います。  七番目の被害の補償に対しましては、保険制度の問題があろうと思います。  最後に八番目、特にこれが重要でありますが、現在及び今後何をすべきかと申し上げますと、特にコンビナートの総合再点検が必要でありますが、第一番目は、戦前からつくられました古いタンク、特に軍需関係でつくられておる古いタンクがございますが、たとえ沈下をしていなくても重要な問題であろうと思います。  第二番目は、全国一斉点検が自治省、消防庁の指導によってやられましたが、少なくとも次のような重要な問題が提起されたと思います。まず二百分の一という暫定基準が、どこからどのようにして出されたか、私は存じませんが、少なくとも私自身の考えでは、タンク沈下というのはいろいろなタイプがございまして、暫定基準一つだけでは決めることはできないと私は思います。その結果、第一番目に次のことが起こります。それは実際にはあの暫定基準を超えましても別に問題のないタンクもひっかかってくるという問題があります。もう一点は、許容沈下量がもっと少なくても、暫定基準値以下であっても問題であるというような沈下パターンを示した場合、それが問題である。特に浮き屋根、フローティングルーフのタイプの場合には、わずかな沈下でありましても、フローティング部分のジョイントがどのように動くか、微妙な重要な問題であります。  もう一つは、油を抜くと申しましても、それは空のタンクがあって初めてできることであり、特に中をクリーニングをし、中にありますスラッジが膨大な量であり、特にそれらが下請関係を中心として使われるということになりますと、その処理能力、処理された廃水が一体どこにいくであろうかを考えますし、あるいはそれらがコンビナートではなくして、一企業が燃料タンクとして置いておる場合には、それらをあけますと完全に工場がとまるという問題がございます。そういう意味で、国におかれましては判定基準についてもっと綿密なものを近く出されると思いますが、それらが早急に出されることが私は望ましいと思いますし、国自身にもそれだけの力は十分あると思います。  もう一つは、専門家、特に学者ではなくして技術者の意見を聞くべきであります。とかくメーカーというものが最近やり玉に上げられておりますが、実際は、技術者はすでに技術を持っておりますが、それらが採用されない社会的な仕組みがございます。そういうものを取っ払うことによって、その技術が浮かび上がってくるというふうに私は思います。  四番目は、重要な特許部分あるいはノーハウは、国で買い上げることによってそれを一般に公開をして、中小企業あるいは技術を持っていないコンビナートに対して、そのノーハウを提供することによって、点検だけではなくして実際に改善をし、今後どのように修理改善すべきかというためにはぜひ必要なことではないかと思います。自由主義経済を守る以上、監督官庁においてノーハウを強制的に公開をさせるのは、形の上では合意に基づいたような形でありましても、私はすでに特許が保護されている以上、国で買い上げるというのが至当であろうと思います。  五番目は、特許は認められておりましても、その安全性が公的機関でチェックをされたことがない以上、一企業でチェックをして、それが一般に使われるということは、私は問題であろうと思います。  六番目、七番目につきましては、前もって申し上げました。  以上のように私は、わずか二、三の問題点だけではございますが、技術はすでにあり、コンビナートのある部分では非常な力があり、ある部分では弱点があって、すべてのコンビナートを一緒にして議論するんじゃなくして、きめ細かい対策が必要であろうと思います。  要は、漏れば当然起こるのでありまして、問題は一度にフラッシュアウトしない、一遍に油が漏れないという構造をすることが必要であると思います。これらの細かい問題については、あと五、六枚ほど図を書いておりますが、後ほど御質問がありましたら、それらについて図をもって御説明をいたします。  以上で終わります。
  8. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 ありがとうございました。  次に、加藤参考人にお願いいたします。東京工業大学助手加藤参考人
  9. 加藤邦興

    加藤参考人 加藤でございます。  きょう私は、具体的な問題については、後の質問のところで、私にかかわることがあったら述べたいと思っているわけです。初めに、時間が制限されておりますので、むしろそうではなくて、もう少し大局的に見た問題をお話ししたいと思います。  私はこの前に第三水俣病のときに参考人で出ましたのですけれども、そのときの感じも、何か一つありますと、そのことについてこう言います、その次もまた何かあると一つやる、しかし、それでいつまでたってもどうも改善はされないのではないか。私の専門は技術論ということなんですけれども、そういう立場から公害問題とか災害問題を考えていきますと、公害問題と今度のような事故の問題は決定的に違うということですね。そのことをまず考える必要があるわけです。公害問題というのは、企業が生産活動をやりまして、いわば公害を発生させながら片方で企業が利潤を上げている活動ですね。それに対して事故の場合には、事故が起きますと、それによって企業は全然もうかることは何もないわけです。非常に損害を与えられる。私たちは、公害問題は企業の利潤追求があるからいつまでたっても解決しないのだというふうに申しておりますけれども、それでは利潤追求という面から考えてみて全く不利な事故というものはなくなってもいいじゃないか、こういうことになるわけですが、それがなくならないわけです。ですからこの問題は、そういう次元の問題だけでないことを非常に多く含んでいるのではないかというふうに思うわけです。  今回の事故の問題にしましても、タンク不等沈下がもとで事故が起きた、ほぼそういうふうに言われておりますけれども、私たちから見ますと、あれだけの大きなものを埋め立てたところに載っければ、不等沈下をするというのが当然なわけです。これは何も地質専門家が調べなくてもだれでもわかるわけですね。ですから私たちのような人間が見た場合には、当然それに対して何らかの対策がとられておるから、あそこにタンクがあるのであろう、私のように工学部におってもある程度そういうことを考えた人間というのはそう思って見ているわけですね。また、たとえば火力発電所のあるところへ行きますと、やはり同じように埋め立てたところに火力発電所の大きなのが立っておりますが、それはそういうところでもって前に話を聞いたときにも、やはり沈下の問題については考慮して、下に相当大きな箱形の構造物を地中につくって、その上に発電所を載っけているわけですね。ですから私たちからすれば、あれだけ大きなタンクをつくってあれば、当然その不等沈下等々については考慮がされていると思っている。ところがされていないですね。  それであれだけのことが起こる。しかも不等沈下が、その事故が起こってからわかったというんじゃなくて、前にチェックしたときにわかっていたというわけです。そうしますと、不等沈下と非常に気軽に言われているわけですが、たとえば右と左で十センチひずみが起こっていたら、それにかかっている力というのは何十トンということになるわけですね。鉄のかたまりをそれだけひん曲げてやるのにどれくらいの力が要るかということを考えてみれば、物すごく大きな力が、不等沈下したことによってタンクにかかっている、これもすぐわかるわけです。ですから早晩、たとえば腐食の問題を考えても、そういうことによって非常にマイナスの影響が多く出てくるだろうし、直接的に破壊するということも起こり得るだろう、そういう論理ですぐ考えられるわけですし、また、実際に事故が起きれば企業は非常に大きな損害を受ける、しかし、やはり事故が起こってしまったというところに、どうもこの問題を考える一番大きな問題点があるんじゃないかと思うのです。  私たちの立場から見ますと、一つのそういう生産の体系を見るときに、原料の要素とそれから技術の要素と人間の要素と三つあるわけですけれども、そのバランスが、いまコンビナートにおいては基本的に崩れているのではないか、そのことが今回の問題に限らず、一つ手直しをしても、次々と事故が起こってくる一番大きな原因ではないかと私は思います。  現在のコンビナートタンクだけのことでしたら、先ほどタンクについては日本では十分研究がされているし、世界第一級であると言われましたけれども、おととしのような一連の事故というものを考えましたときには、それをつくった日本の技術というのはほとんど日本の技術と言えない。これはほとんど大低の方が認めてくださると思うのですけれども、要するに技術導入をして買ってきたものをつくって、それで生産活動をやってきているわけです。そうしますと、本来それがつくられたところであれば、一番最初にそのプラントがつくられたところであれば、研究室的なレベルで実験もやり、それから中間プラントもきちんとつくり、そこでいろいろな問題をチェックしながら大きなものになってきたわけですね。ところが、そういう過程が踏まれないでいきなり大きなものが入ってくる。それに対応して技術者は、私の知っている人たちの話を聞きましても、相当有名な化学企業の技術部長クラスの人が、ともかく何を買ってくるかということが自分の一番の使命であるということで、買ったときには自分はそれがどういうものかよく知らなかったというようなものを買ってきて、後から勉強してつくって運転しているわけです。ですから、そこでさまざまな問題が起こってくるのは当然なわけですね。しかも、その人たちでありますれば、自分たちが勉強しながら、そういうものについて事故が起こらないように運転するにはどうしたらいいかということをある程度できますけれども、どんどん現場に近いレベルにおりていきますと、そういう経験も何もほとんど蓄積されていないわけです。しかも、一たび事故が起これば、今回のタンク事故の場合でもそうですけれども、しばらく前では考えられなかったような大規模事故に一挙に発展してしまうわけですね。ですから、こういうコンビナートというもの、その人間と技術と原料その他のバランス、資源問題も全部同じレベルだと思うのですけれども、そういうバランスを、現在のコンビナートというものをすぐつぶしてしまうなんということはとうてい不可能なわけですし、そういうことはできないわけですが、ゆっくりといわばソフトランディングしながら、そこにおけるバランスをどうやって回復していくのか、そういうことを考えませんと、この問題は解決しないのじゃないか、この不等沈下の問題だけでも。たとえばタンクということが問題になりましたけれども、もっと危険なものとして、たとえば製鉄所の高炉があります。発電所の場合には前に聞きましたので、これは多分きちんとそういうふうにやっておると思うのですけれども、ごく最近聞いた話では、やはり製鉄所の高炉なんかでも、あれは非常な重量がありますが、不等沈下を起こしていて、かなりその筋では問題になっているようです。そういうことについてタンクというのは、コンビナート全体から見たら、外から見ると非常に大きく見えますけれども、その一部ですから、タンクタンクと言っていますと、今度またその次にいろいろな問題が当然起こってきます。ですからそういう形で考えていただきたい。  それからもう一つ、私はやはりこれは後の質問のところでは述べにくいので、初めに申し上げておきたいのですけれども、大学での、大学に限りませんけれども、安全というものに対する教育というものについて、やはりこれは抜本的に考え直す必要があるだろうと思います。この二、三年になりまして環境工学、安全工学その他の講座が非常に増設されました。私はそれは大変結構だというふうに思います。しかし、それが実際にどういう形で機能しているかということが問題だと思うのです。私のおります東京工業大学というところで見ますと、そういうものが専門のコースができまして、大学院生がそこへ入るということになりましたけれども、そういう人たちはどういうふうになっていくかといいますと、いわば安全問題の専門家になっていくわけですね。その人たちがコンビナートのプラントをつくるわけではないのです。コンビナートのプラントにかかわるような人たちというのは、そういう安全問題とは全く切り離されたカリキュラムで教育を受けて、卒業してプラントをつくっているわけです。ですからそういう人たちが、事故が起こったときにいろいろな社会的責任を追及をされます。それからタンクの問題でも、そういうものに漏れがあるかどうか調べただけで、不等沈下なんか調べなかったから、そのままにしておいたのだというような発想が出てくるというのは、基本的に安全問題についてそういう工学部等々で教育がされていないということなんですね。  私の個人的な考えを申し上げれば、たとえば労働衛生問題それから職業病の問題それから労働災害の問題それから安全の問題、こういうものを大学の工学部で必修にして、極端に言えば、それができない人は、どんなに専門家としての能力がすぐれていても、企業に出すのはそれは非常に危険なんだ、そのくらいの考え方をとっていく必要があるのではないか。そういう形でいかない人たちが、これは話がちょっと飛びますけれども、新潟の水俣病のときに、昭和電工から証人として出た人は、みんなうちの大学の卒業生で、その人たちが被害者から非常に怒られているわけですけれども、実情を見ると、その人たちは気の毒だと思うのですね。そういう公害問題等々についてのセンスを全く持ち得ない形で教育を受けて、卒業されて、企業に入って、自分としては何か悪いことをしようというのではない、たとえば事故の問題にしても、事故が起こるようなものをつくろうと思っている人間はいないのだけれども、そういう問題提起をすることすらできない能力のまま企業に入っていく。そのあたりのことが、大きなところの議論としては必要ではないか。  あと、申し上げたい点はいろいろありますけれども、時間もありませんので、個々の質問に応じて具体的な事例については述べていきたいと思います。
  10. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 ありがとうございました。  次に、田尻参考人にお願いいたします。東京公害局規制部長田尻参考人
  11. 田尻宗昭

    田尻参考人 私は海上保安庁に勤めておりましたので、その従来の経験から申し上げてみたいと思います。  今回の三菱石油の事件は、陸上防災の貧困ということを非常にあらわにいたしました。しかしながら、さらに大きな問題としまして、港湾防災の根本的な欠陥、それから水島港が重大な欠陥港であること、さらに二十万トンマンモスタンカー時代を迎えまして、この巨大化に突っ走ったマンモスタンカーを無理やり入港させていることから生ずる全国の石油港湾の欠陥性というのは、多かれ少なかれ共通している。それから二十万トンのマンモスタンカーの出入りによりまして、それが事故寸前の状態にあるということが明らかになったのであります。  もし二十万トンのタンカーが油を流出しますと、一時間に三万トンの油が出ます。それが原油であれば大火災になりまして、港はもちろん、プラントから住民災害まで及ぶことは明らかであります。テキサスシティーにおきまして、一九六五年、船舶火災から三千メーター以内の二千五百戸の住宅が延焼いたしました。二十万トンの油が東京湾で流れますと、七メーターの風にあおられて、十五時間後には東京湾を油で覆い尽くし、もし、それが火災になりますと、銀座まで延焼範囲に入るということが言われております。  具体的に一つ一つ問題点を申し上げてみたいと思います。  まず水島港であります。水島港の欠陥性でありますが、まず第一に、この港には停泊水面が全然ありません。駐車場のない道路と一緒であります。船にとっては、いかりを打って停泊する場所は絶対に欠かすべからざる水面である。  二番目に水深であります。十六メーターの水深しかございません。二十万トンのマンモスタンカーの喫水は二十メーターあるのであります。船の喫水が深過ぎるので、一部川崎などへ油を荷揚げして、喫水を調整して入るということが行われておるのであります。そして十四・八メーターという喫水で入っておりますけれども、重要なことは、この航路の一部分に十四・七メーターという部分があるということであります。座礁寸前であります。  次に、四百メーターの幅の水面の中で、三百五十メーターの二十万トンタンカーがすれすれで旋回をしているということであります。ブリッジから見ますと、五十メーターの余裕なんかでは水面が見えないのです。向こうの山しか見えない。ちなみに申し上げますが、二十万トンタンカーといいますと、長さが三百五十メーター、東京駅が三つも入るような大きさである。十八階建てのビルと一緒である。デッキの広さは後楽園球場の三倍であります。三菱六号桟橋は三万トン係留用につくられた桟橋でありまして、一部手直ししたものの、二十万トンを着ける能力はないのでありますが、二十六万トンが着けております。会社のパンフレットや岡山県の発行したパンフレットでさえ、十万トンないし十三万トンが最大であるとはっきり書いております。  ところが、このような状態にもかかわらず、きわめて不可解なことは、昨年の四月までこの港が港則法の特定港に指定されていなかった。長い間、漁港並みの規制で放置されたということであります。こういうような状態で、あらゆる規制がかからなかったわけであります。  それから、この港に水先人の乗船が義務づけられていない。  もう一つ申し上げるのを落としましたけれども、この港の入り口では、浅瀬や島の間を縫って、マラッカ海峡の半分しかない四百メーターの航路で、三十度というマンモスタンカーの旋回能力を超えた大屈曲をしております。そのために横から二ノットの潮が流れる難所となっておりまして、四十六年から四十八年の二年間に四隻のマンモスタンカーが座礁しております。  このような欠陥港がどうしてできたのか。岡山県が昭和四十六年に発行しました「水島のあゆみ」というのをここに持ってきております。この文書の中に詳細が明記してありますが、端的に申しますと、会社の要望に従って、当初水深三メーターしかない、一千トンくらいの船しか入れなかったこの港に、三菱石油誘致のために、行政がこの港を何とかして二十万トン入れようということで奔走したのであります。その結果、昭和三十三年の十月に親会社のタイドウォーターの副社長が参りまして、十五万トンのタンカーを入れるには十五メーター半の水深が要るのだということを言ったときに、岡山県知事が即座に十六メーターに掘りましょうと答えたのであります。当時は十三メーター掘る技術しかなかったのであります。結局会社側から、しかしながら瀬戸内海を大型船が通航するのに難点がある、不安があるということを申し述べました。これに対して、県の課長が運輸省の港湾局長に陳情に行きまして、運輸省の港湾局長は名刺の裏に、瀬戸内海の大型船通航を何とか配慮しましょうということを書いて、このお墨つきをもらって、即日三菱石油の企業立地が決定したのが昭和三十三年十二月二十八日、御用納めの日であります。このような実情から、無理に無理を重ねて、入れ物の小さい水島港に二十万トンを入港させているということは、次は恐らく二十万トンマンモスタンカーの事故が発生するであろうということを予測させるにかたくないのであります。  ちなみに、昭和四十八年十月十六日の運輸省の港湾審議会の計画部会で、十二万トン以上の船をこの港に入れないことが申し合わせされました。しかしながら、この申し合わせももうほごにされておるのであります。  このような欠陥性は、ただ水島にとどまりません。鹿島港でもそうであります。世界に例のない人工港と言われた鹿島港で、同じように停泊水面がございません。また、太平洋の荒波に突き出した防波堤に二十万トンの桟橋が設けられて、二十万トンタンカーが荒波の中で着桟をしておるのであります。まさに事故寸前であります。  昭和四十七年に全日本海員組合が調査しました港の総点検によりますと、港の浅い原因として、不相応な大型船を入れておる港が三六%ございます。防波堤のない港が四四%あります。風や波に遮蔽されていない港が六六%もあるのであります。港の方はこんな状態であります。  次に、港湾防災を申し上げます。  二十万トンのタンカーが桟橋に着桟をいたします。最も遅い毎秒十センチというスピードで着桟をしましても、単位面積当たり三百七十五トンの力が加わります。東大の元良教授の研究によりますと、もしも桟橋と船舶の衝突によりまして外板が破れて油が流れる。それが原油であったら火災になる。その場合に、油の外縁から千メーターまでの距離のものは延焼する、このような研究があります。そうしますと、この動くタンクとも言うべきマンモスタンカーが着ける桟橋が最も危険な場所である。この桟橋から千メーターは少なくともタンクは離れていなくちゃならない。これは自明の理である。ところが全国のマンモスタンカーの桟橋とタンクの距離はどうでございましょう。わずか百メーターから二百メーターである。それ以上の距離は私は余り知りません。テキサスシティーでは事故の経験から、州法で三千メーターに桟橋とタンクの距離を定めております。日本では全く無制限である。四十八年のタンカー事故百六十隻の中で、港内で起こったのが六十六隻であります。全国の石油港湾十五の港で、四十八年の一月から九月までに起こった油流出が九十一件に達しておるのであります。  では、港湾防災体制はどうでございましょう。まさに無法地帯であります。その最も根本的な原因は、消防法が海上に及ばないということであります。だから企業には消防船もございません。海上消防隊もない。陸上には消防車や消防隊がちゃんと設けられておる。だから、一たん油が流れて火がつきましても、海上保安庁が企業に対して出動を命令することもできない。消防船がございませんから、もう能力がない、あるいは資材を調達する権限もない。第一、海上保安庁自体が公的な消防機関でないのであります。正式に法律で消防活動を認知されていないのであります。だから、無理やり協力をしてもらいましても、作業員が死んだりけがをした場合に、労災補償の適用が十分にないのであります。だからへっぴり腰になるのであります。全国の港湾では災害対策協議会なんていうことでお茶を濁しているのであります。お話し合いであります。海上保安庁が企業に対して応援出動を依頼、協議するのであります。受けた企業が自主的に判断をするのであります。このような実態では、港湾防災体制というのはまさに私は無法状態であると言わざるを得ないのであります。  海上消防法が早急に必要だということを申し上げたいと思います。消防法が桟橋にもシーバースにも及びませんので、海に突き出た桟橋には、消火器一つ備える法的義務がないのであります。シーバースもそうであります。消火装置をつける義務がない、防火管理者を置く義務もない。だから全国の桟橋の消火設備というのは、まさにりょうりょうたる実態であります。このような状態の中で、一たん事故が起こったならば、私は、あの貧困な陸上の防災体制に比べて、さらに一段と海上の防災体制はきわめて貧困な状態であることを指摘したいと思います。  しかしながら石油港湾の防災は、このようなスケールの体制ではもう対応できません。石油港湾の防災規制法が必要であります。港湾構造の規制から始めなければなりません。そうして、港湾構造に見合う大型タンカーの入港トン数をはっきりと制限すべきであります。港湾の中の桟橋の設置規制をやるべきです。シーバースの規制をやるべきです。そうして桟橋に最新鋭の、たとえば自動放水銃であるとか赤外線の油夜間監視装置であるとか、あるいは監視用のテレビ、自動浮沈式オイルフェンスというようなものを義務づけて、このようなものを持たなければ、もうマンモスタンカーを入れることは相ならぬということを決めなければ、現状ではどうにもならないということを申し上げておきます。  三番目にマンモスタンカーの問題であります。  このマンモスタンカーが、日本の安全行政あるいは日本企業の近代化のまさに象徴であると思います。マンモスタンカーは現代の怪物であります。二十万トンのタンカーが積んでいる航海計器は、一万トン級のものと全然変わりません。エンジンをストップしてブレーキをかけても、四千メーターとまらない。かじを一ぱいに切ったって、二分ぐらいびくとも動かないのであります。このようなマンモスタンカーの外板がわずか二十二ミリ、五万トンタンカーと全く一緒である。二重底にもなっていない。このような二十万トンタンカーというものの安全性は、ただ船長の勘と経験と極度の緊張状態における注意力とで補われているという実態をはっきりと申し上げたいと思います。この巨大タンカーの早急な安全規制が必要であります。  たとえば伊良湖水道は千メーターしかございません。マンモスタンカーがかじを一ぱい切って他船をよけるためには旋回圏が必要です。この旋回圏がちょうど千メーター必要なんです。伊良湖水道はその千メーターしかないのです。そういうところへ入ってくるタンカーの七割が外国船であります。ある外国タンカーの地図を見ると、千葉県をアワノクニと書いてあったそうであります。そんな古いチャートを持って入ってきている。このようなタンカーが入ってきまして、目の前に銀座の明かりのように漁船団があらわれます。その漁船団の中に突っ込んでいきます。マンモスタンカーの船長は、かじがきかないから逆にスピードを上げるのです。後は目をつぶって走っている。ブリッジから、六百メーターは死角になって見えないのです。漁船の方だって、向こうから来る船が、航海灯は小型船も全く同じ航海灯ですから、ホタルの光のようなのがマンモスタンカーとはわからないで釣りをしているうちに、あっと気がついたら目の前に来ている。マンモスタンカーは小回りがききません。もうその明かりの中をまっしぐらに突っ走る以外にない。衝突したってショックも全然ないんです。そうして次の日の新聞を見て、ああおれは無事だったということを知るそうであります。私の商船学校の同級生が皆船長をやっております。  このようなマンモスタンカーが日本沿海を走り回っておるのに、不思議なことに、水先案内人が義務づけられていないということであります。つまり、水先案内人は港の中でしか仕事をするようになっていない。最も危険な伊勢湾、東京湾あるいは瀬戸内海の入り口で義務づけられていないということはどういうことでございましょうか。その港でも、全国で義務づけられているのはわずか五つの港であります。それは占領軍が決めた港であります。以来改正されていないのであります。しかも、私たちが非常に不満でありますのは、水先案内人に定年制がない。平均六十五歳であります。八十歳に及ぶ水先案内人がちゃんといるのです。階段もよう上がらないで、船員から押してもらっている、そのような定年制のないパイロットが、老齢者が、実は二十万トンというマンモスタンカーを動かしているという実態を、私は、慄然たる思いで注視すべきだと思います。  もう一つ申し上げます。タンカーの乗組員があらゆる危険物を運送している。陸上のタンクは危険だとおっしゃいます。もちろん危険です。しかし、タンカーは動くタンクであります。その動くタンクのタンカーの乗組員に危険物の免状が制定されていないのであります。これはまたどういうことでありますか。特に、小型タンカーの実態は哀れの一語に尽きます。私は、四日市で東幸丸という小型タンカーが爆発したのを取り調べました。ところが、タンカーの中で、ガスマスクもガス検知機も使わずに、乗組員が裸になってタンクの中をホースで水洗い作業をやっていた。つり下げたお粗末なランプからスパークして、タンクが粉々になって吹っ飛んだ。三人の乗組員は七十個のこぶし大の肉片になって、デッキの上に散乱していたのであります。ところが調べてみますと、タンカー安全法もない、乗組員に資格もない。九人の乗組員中、未成年者が四人であります。船長はカツオ、マグロに二十年も乗っていた船長なんです。危険物取り扱いの免状が要りませんから、漁船の乗組員が次の日からタンカーの船長になれるのであります。小型船は人手不足でありますから、漁船の乗組員が非常に多い。三年以上のタンカーの経験者が一人だ、十八歳であります。手まね足まねで作業をしている。私はその事件を取り調べまして、まさにこの事件の元凶は、日本の安全行政と法律にあることをはっきりと知ったのであります。  早急にタンカー安全法が必要であります。乗組員に危険物免状の制定が必要であります。水先法の改正が必要であります。労働安全基準の制定が必要であります。  百九十九トンの船、二百トン以下の船に至っては目を覆う状態であります。だんなさんが機関長、奥さんが船長。何百種類とある石油化学企業のつくったケミカル物質を運んでいるケミカルタンカーが、鹿児島から東京まで、交代者もなく、たった二人で運航している実態というものは、まさにこのような安全無視が、現代の石油企業を支える根っこになっているということを、私は深い思いで直視せざるを得ないと思います。  東京湾の内湾も非常に危険な実態であります。あるいは伊勢湾もそうであります。たとえば浦賀水道は一日に一千隻の船が通っております。四十年に二十七万隻の船が通ったのが、四十三年は三十八万隻、四十五年に四十五万隻と、ウナギ登りであります。タンカーの海難の八九%が三大内湾に集中しております。月に平均、巨大船が二千八百隻通航しております。しかしながら、この東京湾の浦賀水道あるいは伊勢湾の伊良湖水道、瀬戸内海の備讃瀬戸、いずれもすでに二十万トンタンカーが通る能力はございません。旋回圏から見ますと十万トンが精いっぱいであります。このような内湾や港の能力あるいは入れ物の条件というものを無視して、タンカーだけがあっという間に五万トンから二十万トン、三十万トン、いま五十万トンまで突っ走ったこの巨大化というものに、もうここら辺ではっきりとくさびを打ってブレーキをかけなければ、とんでもないことになることを申し上げておきたいと思います。  東京湾の浦賀水道で一たび二十万トンが事故を起こしたら、東京湾は機能が麻痺してしまうのであります。私は、内湾防災法を制定すべきであり、十万トン以上の内湾の通航を禁止すべきであり、内湾の巨大船はタグボートの航行を義務化すべきだと思います。あるいは電波、光波、音波、あらゆる近代的な航路標識を内湾の入口に装置すべきであり、そうして現在港の中でしか働いていない。パイロットを、沿岸パイロットという形で、おのおの内湾の入口でも義務づけるべきであります。もし海がしけているというなら、外国のようにヘリコプターで行ったらいいじゃありませんか。  結論といたしまして、石油港湾防災法、海上消防法、タンカー安全法、内湾防災法、そういうものの制定が必要だと私は思います。そうして水先法の改正が必要でありますし、災害対策基本法の強化、改正が必要であります。  しかしながら何よりも、今回のような大量の油が一たん海に出ますと、いかなる技術対策も及ばないことをはっきり知るべきであります。油処理剤あるいはオイルフェンス、油吸着材、ことごとく無力に近いのであります。油回収船もほとんど実用化するものは開発されておりません。このような実態の中で、われわれは大量の油にはもう対策がないということを、まずはっきりと覚悟すべきであります。その認識の上に立って、より根本的な対策が望まれるのであります。それは巨大タンカーの製造中止であり、内湾通航の禁止であり、そうして全国の石油港湾の総点検であります。そうして欠陥港湾に対する入港トン数の制限であり、そうして、桟橋とタンクの距離を中心とするコンビナートの大改造であります。企業の内湾立地の再検討であります。そのような根本的な対策に及ぶのでなければ、もはや、全国の海は大変な大災害と大惨事に見舞われるであろうことを私は推測せざるを得ないのであります。  安全と公害は一体であります。PPMという環境基準で論ぜられておる公害問題も、まさに大きな転機を迎えました。安全問題は企業そのものの、あるいは現在のわが国の近代化そのものの根底を問い直す問題ではないかと思います。
  12. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 ありがとうございました。  次に、岡野参考人にお願いいたします。倉敷消防本部消防長岡野参考人
  13. 岡野計太郎

    ○岡野参考人 昨年の十二月の三石事故につきましては、当委員会からも多数の御調査をいただきまして、その際いろいろ御示唆いただきました点、まことにありがたく、また発災地消防長といたしまして心からおわびを申し上げる次第でございます。  今後の防災対策という問題につきまして、二つに分けまして、一つは当面の対策といたしまして消防的な見地から申し上げておきたいと思います。  当面とりあえず、基本的には現行の災対法を基本にいたしまして、現在の地域防災計画を総見直しをする必要がございます。  第一点といたしましては、すでに去る一月二十七日に、各企業に対しまして私どもの方から次の点を要望し、現に着手をしておる点を御報告を申し上げておきます。  第一は、防油堤の補強、補修という問題でございます。詳しい点につきましては、後ほど時間がございましたら御報告申し上げます。  第二は、二次、三次に及びます構外並びに海上流出油あるいは液の防止対策であります。  第三点は、異常時の初動体制あるいは組織の整備強化という問題でございます。これは後ほど御質問もあるかと思いますが、特に通報問題、初動体制が重要であると存じております。  次にタンクタンクと申しましても、油あるいは毒劇物等を含みます物質、そういうもののタンクの検査の計画並びにそれらの定期報告義務であります。  さらに、現在の防災資機材の整備強化でございますが、これは先ほど来いろいろお話の出ておりましたような、資機材がきわめて不足をしておる、能力が足らない、そういった点でございます。  さらに、今回の事故に端的にあらわれました、油が漏れたのがわからない、あるいは異常が起こったのがわからない、そういった漏洩警報の装置であるとか異常警報の装置であるとか、そういったものが、これはタンクに限らずすべてのものになければならないという点でございます。  さらに、これは私どもにも該当することでございますけれども、こういう予防に当たる要員の質と量の問題、それから専門家が必要であろうということ、また装備等にいたしましても、省力化できた能率的なものでなければならないということが、今回の事故ではっきり相わかったわけでございます。  大きい第二点といたしましては、現存これも実施をしておることでございますけれども、学識専門家によります、こういったコンビナートを形成したところにはどのような危険が潜在しておるか、最大限の危険予測をすべきでございましょう。また、それに伴った対応策をとるべきであるということから、当面専門家にその調査を御依頼申し上げて、実施をしておるところでございます。  また第三点は、市と企業とが直接に個々に災害防止協定を結びまして、現行法に上乗せをした内容災害対策を推進したい、そういう意味合いで、現在原案を策定いたしまして、明日その説明会を開く予定にいたしております。  最後に、このような大事故を発生するおそれのあるコンビナート、こういうものにつきましては、私ども単独の都市といたしましても、コンビナート防災審査委員会のような、これは仮称でございますけれども、制度を設けまして、これは学識経験者の方を委嘱いたしまして、そして保安のチェック機関を設けたい、こういうふうに考えまして、すでに本年度、五十年度の事業計画の中へ挙げ、予算計上もしておるといったところでございます。  なお、今後の行政の方針といたしまして、次の点を特に御願いを申し上げておきたいと思うわけでございますが、今回の事故につきましての諸点は、先ほど来諸先生方から御説明がございましたが、何よりもこの事故原因の究明が先決であるということでございますが、鋭意政府の原因調査委員会において御調査に相なっておるとおりでございまして、私どもの方でも、私ども独自の問題といたしまして、また、その政府の原因調査委員会にも最大限の御協力を申し上げておるといったところでございます。  当面の対策の中での第一点は、現行の消防法令、これの早期整備がもういかにしても必要であるということでございます。これは御承知のように、消防庁所管の消防危険物であるとか、通産あるいは厚生、労働、科学技術庁その他もろもろの官庁、諸行政に係っているこのコンビナート区域の行政内容について、たとえば今回の事故に直接つながりましたタンクの建設に関する基礎あるいは地盤の問題、あるいはタンクの用途、内容物、容量に応じた材質、構造、工法の問題、あるいはタンクないしは装置に対する点検、検査に関する基準の問題、さらに防油堤容量と構造強度の見直しの問題、中身は非常にたくさんございます。防油堤内のタンク基数の問題もございましょうし、中仕切りの問題もございますし、それから防油堤、タンク間の距離の問題等、いろいろな点がこの中には含まれるわけでございます。さらに保安距離の問題でございますが、現行法で住宅より十メートル、学校、病院より三十メートル、保有空地として五メートルといった内容のものにつきましては、いかにも町中の一工場のタンクを対象にしたといった形のものでございまして、数十メートルあるいは百メートル近いタワーがあり、あるいは十何万トンという巨大タンクのあるところについて、こういうものはきわめて不自然である、こういったものの見直しが必要である。なお、防消火設備にいたしましても、公設、企業とも設備基準をきわめて強化し、大型、省力化する必要がございます。同時に、すべての装置につきましては、人が知らせて駆けつけて消火するという時間的なロスをなくする方法、すなわち装置内への固定の消火設備を完備するということが何よりも必要であろうと思います。また、保安体制の面で、これも基準の強化がどうしても必要でございます。これにつきましては、時間がございましたら、詳細にまた御説明申し上げたいと思います。なお、一つここで御願いしたいことは、国の機関といたされまして総合的な検査、指導、そういった機関を別途に設置をしていただきまして、タンク類の設置時から、その後の保安に関する、先ほどもどなたかおっしゃっておられましたようなインスペクターシステムを御採用になりまして、それを制度化する、そしてコンビナートにおける保安行政を一貫して指導できる体制、こういうものが望ましいということが今回痛感されたのでありますが、また、それにかわるべきものといたしましては、企業にも行政にも偏らない中立的な学術専門家集団とでも申しましょうか、そういった検査機関を認可されまして、それらがインスペクションを行うということも必要ではないか。そういったことで、要は発災防止をするということ、発災をしない、あるいはしかけても、それがすぐ制御できるという体制、そういったものが必要であろうと思うのであります。  最後に、こういう問題を一挙に解決すると言ったら語弊がございますけれども、これらの諸問題解決策といたしまして、いわゆる先般来言われておりますコンビナート防災法的な特別法の制定が推進されまして、各省庁間の行政上の諸問題を関連して制度化して実施するということ。また、先ほど海の問題と陸の問題についてお話がございましたように、今回のような海陸が同時発災という問題がございます。そういう場合の総合指揮という問題につきましても効果的である、こういうふうに考えます。  以上、はなはだ簡単でございましたけれども、今後の対策的なものといたしまして必要なことを申し上げたわけでございますから、後ほど御質問に応じたいと思います。よろしくお願いいたします。
  14. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 ありがとうございました。  次に、密田参考人にお願いいたします。大協石油株式会社社長密田参考人
  15. 密田博孝

    密田参考人 密田でございます。  御津知のように去る二月十六日の午後に発生いたしました当社の四日市製油所タンク火災事故では、地元住民の皆様を初めといたしまして、全国の国民に多大の不安と御迷惑をおかけいたしまして、まことに申しわけなく、心からおわびを申し上げる次第でございます。  おかげをもちまして災害規模も余り拡大いたしませず、一人の負傷者も出ませず、比較的短時間に消すことができました。これは地元住民の皆様を初めといたしまして、関係当局の御支援、御協力のたまものと、厚くさらに重ねて御礼を申し上げる次第でございます。  御承知と存じますけれども、当社は二十一年前の昭和二十九年の十月に、同じくタンクの火災事故を経験いたしておりまして、その節も大変な御迷惑をおかけした次第でございます。以後当社では、当時の貴重な体験を生かしまして、万全の対策をとってきたつもりでございますし、またその努力を重ねてまいりました。これは言いわけがましくなりますが、その結果といたしまして、昭和三十六年には災害防止優良事業所としまして労働大臣から、昭和四十三年には電気保安の努力に対しまして通産大臣から、またさらに昨年十一月には高圧ガスの災害防止で通産大臣から、それぞれ表彰を受けておる次第でございます。  ところが一方御高承のように、最近各地の石油関連工場で事故が相次いでおりますので、この状況にかんがみまして、関係当局からも万全の防災対策措置をとるよう強く指示を受けておった次第でございます。これに対しまして、当社は全力を挙げて取り組んでおりました。にもかかわらず大事を引き起こしまして、世間をお騒がせしましたことは、まことに遺憾のきわみでございます。重ねておわびを申し上げる次第でございます。  この上は、従前にも増して安全意識の徹底を図り、企業災害防止対策の確立に努めて、安全第一主義の経営に徹する姿勢を再確認しております。  原因の解明につきましては、現在、警察当局を初めとしまして消防を中心に進められておりまして、当社といたしましても技術陣を総動員いたしまして、他のすべての業務に優先いたしまして、現在取り組んでおる最中でございます。  今回の火災の事故は、タンクの所在地という、また工事現場でもありませんでしたので、火の気のないところから発生いたしておりますが、必ず原因は明らかにしなくてはならないと考えております。原因を明らかにしまして、それに対する完璧な安全防災対策を実施すること、これが企業としての信頼回復の第一歩であると考えます。安全操業を進めてエネルギーの安定供給という石油企業の使命に徹することこそ、当社の社会的責任のとり方であると考えておる次第でございます。  当社では、かねてから法令を遵守しておることはもちろんでございますが、また当局の御指導に基づきまして、災害防止のための対策を立ててまいりました。事故当時の消防設備、消防車それから消火資材あるいは保安要員など、能力的に十分レベル以上にあったものと考えております。また、従業員の安全教育にも十分力を入れてきたつもりでございます。平素は初、中、上級技能訓練、それから安全管理者トレーナーの養成、班長訓練、こういったものを初めといたしまして、作業標準に従った運転の実地の訓練想定事故の対応訓練等を実行いたしております一方、昨年にはプラント運転のマニュアルの全面見直しを実施いたしておりまして、より正確な運転に努めてまいった実情でございます。  さらに、この製油所ではZD運動、無欠点運動を昭和四十一年から実施して、いろいろな提案もさせておりますし、またノーミス、無欠点、安全意識の高揚に努めてまいったわけでございます。もちろん、出入り業者に対しましても、安全教育を実施しております。一昨年、四十八年の十一月には、総合防災対策本部を本社に設置いたしまして、また本社、製油所を挙げてこの問題に取り組んだわけでございます。  しかし、今般の事態を引き起こしました以上は、いままでのやり方あるいは進め方を十分反省しなくちゃならない点が多々ございます。不十分であったと思われる点はやり直しますし、新しい観点から新たな対策を打ち出して実行に移しております。そして第三者の意見にも謙虚に耳を傾けまして、一層積極的に取り組んでいきたいと考えておる次第でございます。  今回の火災はかなり延焼の危険性があったと考えておりましたが、幸いにもタンク一基だけの焼失に食いとどめました。これは、後からいろいろ考えてみますと、検討いたしてみますと、市の消防を初めとしまして、コンビナートの地域消防団の懸命な消火活動のおかげでございます。比較的短時間に消火ができた大きな理由はそこにあると考えております。地域コンビナート災害救援協力体制の充実があったからだと考える次第でございます。  四日市地区では、かねてから関係当局の指導を得まして、この体制の充実強化が図られてまいりました。第一に、四日市消防本部を主体とするものとしまして四日市コンビナート防災協議会があります。これは四日市消防本部と三十二事業所で構成いたしておりまして、災害時の相互応援、防災資材の共同備蓄、予防対策の推進、それから防災計画の策定等を仕事の主な内容といたしておりますが、さらに、コンビナート各社間には、災害時の応援協定というものがございます。四十年九月にこの協定を締結いたしました。三十一社で三十二事業所が加盟いたしております。協定内容は、協定の加盟会社で火災などが発生をしました場合には、応援を要請いたしました工場の指揮下にそれぞれが入りまして、そして共同消火をする、これが主目的でございます。それで年に一回以上の共同訓練あるいは共同反省、検討、こういうものを行ってまいりました。  それで、今回の火災事故では、これらの応援体制の発動を得ました結果、この中にはもちろん市の消防も入っておりましたが、化学消防車が十台、はしご、タンク車等が六台、それから消火の薬剤が六十八・二キロ、それらを使用いたしました。それで大変大きな、先ほども申しましたような消火活動の成果を上げることができたんだろうと考えております。  御承知のように、四日市には、塩浜地区を中心とする第一コンビナート、それから今度の火災を起こしました午起地区の第二コンビナート、それから霞地区の第三コンビナートがございます。これら三つのコンビナートを一つにまとめまして、大がかりな応援体制ができ上がっておるわけでございます。その成果が大変大きかったと考えております。  今後は、今回の貴重な体験を踏まえまして、もちろん関係当局の御指導を得て、一層内容を充実して体制を強化するように努力いたしたく考えます。  現在では、大協石油といたしましては、事故直後の二月十八日に、従来社長の直属の組織でありました総合防災対策本部を、私自身がみずから本部長となるように組織がえをいたしました。二番目には、タンク災害の予防対策を今後どうすれば強化できるか。それから三番目には、事故の早期発見のための監視設備の設置とパトロールの強化を検討いたしております。これは、今度の事故を顧みますと、まだ不十分な点があったことが原因でございます。それから四番目には、屈折消防車やあわ放射砲の増強など、消火設備を一層充実しなくてはならないと考えます。さらに五番目には、地元への広報体制の充実、これも速急に着手いたしたく考えております。  このようなことを目標といたしまして、企業災害防止のために社を挙げて全力で取り組みまして、われわれに課せられましたエネルギーの安定供給という社会的使命に徹する覚悟でありますので、何分の御理解を賜りたく、この場でもお願い申し上げる次第であります。  どうもありがとうございました。
  16. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 ありがとうございました。  以上で、参考人からの意見の聴取は終わりました。  なお、参考人に対する質疑は、午後から行うこととし、この際、午後零時四十分まで休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後零時四十八分開議
  17. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  参考人に対する質疑を行います。  なお、本日の質疑時間につきましては、理事会の申し合わせに御協力をお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中覚君。
  18. 田中覚

    ○田中(覚)委員 先刻来各参考人のお話を伺いましたが、これにつきまして若干の点についてお伺いをいたしたいと思います。  まず最初に、疋田先生から、安全性についての絶対ということはあり得ないし、また、安全率そのものも時々刻々に変化をするというお話がございました。     〔委長長退席、島本委員長代理着席〕 これは伺ってみれば、まことに当然のことのように拝承するわけでございます。しかし、現実の一般国民あるいは企業の、この問題についての受けとめ方というものにつきましては、どうもギャップがあるというような感じを、率直に持たざるを得ないのであります。すなわち、国民の立場、ことにコンビナート周辺の住民の立場から申しますと、やはり安全性については絶対性を要求するという気持ちが非常に強い。これはもう避けられないと思います。先ほどお話しのように、財産ももちろんですけれども、事人命に関係するということもございますので、絶対性を求めるという感じが非常に強いと思いますし、一方企業の方は、これは先刻どなたかのお話にもございましたけれども、安全性というよりはむしろ経済の合理性、端的に言うならば利潤の追求というようなことがどうも優先しがちである。そういうところから、この安全性をネグりがちになりやしないかというような心配もあるわけですね。  そういう点から申しますと、このギャップを埋めるのにどうしたらいいか。疋田先生のお話だと、この安全性というものは法律だけでは守れるものではないとのお話がありましたが、現実の姿を見ると、やはりこれは法律で義務づけていかないと、当面の対策にならぬのじゃないかというふうな感じがするわけです。その点では田尻参考人から非常に有益な御意見を伺いまして、非常に参考になったわけでございますけれども、その点についての疋田先生のお考えを、ひとつ端的にまずお伺いをいたしたいと思います。
  19. 疋田強

    疋田参考人 おっしゃるとおりでございますが、法律だけでは守れないというふうに私、申し上げたつもりでございまして、法律で、ある基本線を示して、それの確保を望むということは必要だと思います。しかし、それだけでは守れないので、結局企業の自覚といいますか、それがいわゆる人命尊重を第一にした、安全第一を実際に実行するという心構えから出発しなければ、安全は守れないであろう、そういう意味で申し上げたわけでございます。  絶対ということはあり得ないということは、科学的には当然なんですが、これが十のマイナス六乗から七乗というふうに向上していけば、これは一般で言う絶対というところに近づいてくるのではなかろうかというふうに思いますが、人間活動のあらゆる面で絶対安全ということはないわけですから、企業活動につきましても同じようなことが言えるわけです。しかし、事人命に関しては、その波及によって周辺の人の人命に対して危険性を与えるというようなことは、ほぼ絶対に近い水準で守らなければいけない、そういう心構えが大切ではないかというふうに申し上げたつもりでございます。
  20. 田中覚

    ○田中(覚)委員 次に、先刻来地盤沈下あるいは不等沈下の問題で、いろいろお話を伺ったのでありますが、私が一番心配をしておりますことは、コンビナート、特にタンク地帯などになっておる地域の地盤、わけても埋め立てによって造成をした土地の地盤と、その上に載っかっておる、つまり建設されるタンクの材質だとか構造だとかタンクのキャパシティー、そういったものとの間に、土木工学的技術と建築学的技術との有機的関連が十分計算されて建設されておるものかどうかという点でございまして、この点については一体どういうふうに理解をしたらいいのか。土地造成、埋め立てなどはそれなりにやってしまって、そしてその上でタンクの建設が行われる。もちろん、私も先般千葉へ参りまして、例の丸善石油の十一万トンタンクと言われる巨大タンク地盤の対策をいろいろ伺いまして、一つのタンクの下に二千八百十一本というサンドパイルを打ち込んでいるんだというようなお話も実は伺っておりますけれども、昔つくった古いタンクなどは、一体その辺についてどういうふうな地盤との間に有機的な関連が持たれているものかどうか。もし、それが考えられておらないとすると、将来不測の災害を誘発するおそれが多分にあるのではないかという心配を強くするわけでございますが、この点についての諸先生方の御所見はいかがでございましょうか。まず生越先生、お願いします。
  21. 生越忠

    生越参考人 私は土木工学あるいは建築工学の方面でどのような対策をとっているかということについては存じませんが、ただ私は、現実に行われている埋立地の造成の仕方については、川崎の扇島というところで日本鋼管のやっておりますものについては若干存じておりますけれども、扇島の埋立地をつくります材料は、東京湾の対岸にあります千葉県富津市の浅間山から非常に良質の土砂を運んでおります。これは天然自然の山砂でございまして、どろ分が五%ぐらいしかございませんで、日本で恐らく最高の質の山砂ではないかと思います。ということで、扇島の場合には恐らく埋め立てに使います材料の不均質性からくる不等沈下というのは、ほかのところに比べたら余り起こらぬのじゃないかというふうに思いますけれども、そういうところは別といたしまして、たとえば横浜の金沢八景あたりでは、いままでは三浦半島の宅地造成のときに出てまいりました残土をあちらの方へ運んでおりました。ところが、総需要抑制の関係でもって宅地造成が少しスローテンポになりまして、開発地で残土が出なくなってしまって、それで横浜市当局ではこれはもう困ったということで、千葉県知事に少しあなたの県の砂をくれませんかというような交渉も何かしているという話も聞いております。  そういうことで、現実に行われます埋立地の造成というのは、あちらから何ぼ、こちらから幾らというふうに、とにかく一応埋め立てに必要な土砂の量だけを何とか確保して、それを使っているというのが現実だろうと思います。そうなりますと、先ほど御説明いたしましたように、ある場合には非常に良質山砂を使うけれども、ある場合には関東ロームの捨て土みたいなものを使うし、ある場合には海底をしゅんせつしたときに得られた軟弱な、水をたくさん含んだヘドロを使うというようなことになりますと、これはいかように建築工学あるいは土木工学的な対応をいたしましても、現場ではなかなか困難じゃないかと思います。その辺のことにつきましては私は専門ではないので存じませんので、別の参考人の方からひとつ御意見を出していただきたいと思います。私はその問題についてはちょっとお答えできません。ただ、先ほど申しましたように、資源的に非常に良質埋め立て用の砂などが不足しておるということは確実に言えますので、現実に行われている埋め立て造成が、将来必ずと言っていいほど不等沈下をもたらすような、そういう埋め立てを実際に行っているのではないかと思います。ただ、これは私現場については一々存じませんし、それからすでに埋め立ててしまった場所でございますと、たとえば千葉なら千葉、どこからどの程度山砂を持ってきたかなんということについては、私の手ではちょっとわかりませんので、何ともいま田中先生の御質問に対しては十分に私の方からお答えできない次第でございます。その点ひとつくれぐれも御了承いただきたいと思います。
  22. 田中覚

    ○田中(覚)委員 保野先生から、一言ちょっとお答えいただきたいと思います。
  23. 保野健治郎

    保野参考人 それでは図面をもちまして御説明を申し上げます。  地盤圧密の方法と沈下の状態でございますが、軟弱地盤人工的に改良するというときに非常に大切なことは、自然の絶対的な力に対して人間の技術で真っ正面から対決をするのじゃなくして、自然の力のある範囲までは、人間の力で、われわれの持っております技術、エネルギー、そういうもので対処できますけれども、それ以上のもの、たとえば関東大震災並みの地震であるとかというようなものに対して、われわれの技術で絶対的なそれを上回るような力で抗しようという場合には、膨大なお金がかかって、実際的には不可能であると思いますので、ある範囲の力までは、その力に打ちかつ工法をとり、ある力以上のものに対しましては、むしろ剛構造ではなくして柔構造、自然の力に順応しようという工法をとるのが一般的であります。  この図は軟弱地盤の一般的な改良方法でありますが、実際には地盤を改良いたしましてバンキング部分をつくります。これは原地盤と違いますので、完全に人間がつくりました人工的な地盤でございます。それをわれわれはバンキング部分と呼んでおりますが、その上がタンクであるわけです。  一般にタンクは、石油関係でありますとスチールをもってやりますけれども、その考え方は、わが国あるいは世界的に使われておる技術というのは、API規格を各企業あるいは各国においてそれぞれ変形をいたしまして、わが国では特に地震を考慮をして適用されておるわけであります。したがって、日本ではJIS規格の中ではっきりと地震荷重がとってあり、アメリカの石油学会のAPI規格より数ランク上のタンクをつくっております。  ところが、タンクは一般には機械屋さんその他材料力学関係の構造関係の人がやるわけですが、一般に不均等沈下という表現をするわけです。ところが、この原地盤以下の軟弱地盤を改良する部分につきましては不同沈下と言うわけです。実はこの間に微妙な部分があるわけです。このバンキングの高さは五十センチのことがございますし、八十センチのことがございますが、実はこれが技術的にも学問的にも非常に未知の分野で、特に技術関係におきましてはすでにノーハウとなっておるわけですが、学会においてはほとんどそういう研究報告はされておりません。ところで、この上と下が表裏一体でございますから、下の部分は一般に土木工学的で、上は建築じゃなくして、むしろ機械工学的あるいは建築土木から転用された人たちが構造力学をやっておるわけですが、したがって、上下をとりまして不等沈下とわれわれは名づけておるわけです。  ところが、たとえば五万キロリッター以上のタンクということになりますと、むしろ地盤になじむような構造にする必要があるのでありまして、計算方法としては、タンクの側板より上はすでに規格として決まっております。これは主として応力としてはフープテンションで、もうJISで決められておりますから、それでやります。底板部分は実は地盤が微妙に変化をいたしますので、構造力学的に非常に難解ではございますが、過去いろいろな計算をし、実際に使ってみて、この底板の厚さにつきましては、構造力学上のみならず腐食のことも耐用年数も考えて、計算をしなくてもいいような規格にすでになっておるわけです。     〔島本委員長代理退席、委員長着席〕 特に非常に大切なことは、わが国のように地震がありますと、底板の溶接がすみ肉溶接でありますと、繰り返しの応力がかかりますので、いつかは底から漏れるわけであります。漏れない構造をつくっておるわけではないのです。そこが非常に重要なポイントです。したがって、漏れを早く発見をするというバンキング構造、もう一つは漏れても一挙に土砂が、基礎が崩壊をしないというバンキング構造にするということが重要なポイントであるわけです。現在の日本の技術の状態はそういうことであるわけです。  以上でございます。
  24. 田中覚

    ○田中(覚)委員 次に密田参考人にちょっとお伺いしたいと思いますが、実はこの二月十六日の大協のタンクの火災のときには、私もたまたま日曜日で四日市に帰っておったものですから、煙が出始めました最初から鎮火し終わるまで、その全過程をこの目で現場で見せていただきました。そのときの所感も含めて二、三の点をお伺いをいたしたいと思いますが、第一は、あの火災を見て瞬間的に感じたことは、二十九年に大協が同じような火災をして三日間燃え続けたことがございます。当時はまだ戦後なお日浅い時期で、市民、県民は、近くの海軍燃料廠のあの戦争による爆撃の状況を思い浮かべて非常な不安に陥ったのでありますが、その原因の究明が十分になされないまま今日に至っておりますために、これは私の推測でございますが、この安全対策ということについての配慮よりは、むしろ生産の拡張というようなことにひた走りに走ってしまって、そのことが、自来二十年を経過した今日、また同じような火災を誘発したのではないのか。言うなれば、あの二十九年当時の貴重な苦い経験というものが、一体その後生かされておるのかどうかということを率直に感じたのであります。この点について会社側としてどういうふうに受けとめておられるのか伺いたいと思います。  なお、時間がございませんので、もうちょっと密田参考人に伺うことを続いて申させていただきますが、その次は、あの火災を見て、当初は、燃えるところまで燃えるほかはないのじゃないか、その間に周辺タンクに引火をしたら、これは大変なことになるなと思って実は見ておりましたところ、四時間半ぐらいの間に鎮火をいたしまして、出火をしたその一つのタンクだけの火災で終わりました。しかも、中を調べてみると、燃えた灯油はごく一部であって、相当部分がまだタンクに残っておったということでございます。そういう点から申しますと、非常にパラドクシカルな言い方でございますが、一面においては初期防火というものの体制がもっとできておれば、あんなことにならなかったのじゃないのかというふうな感じもいたしますし、また、そのタンクだけの火災で終わったという点から見ると、むしろ初期防火は成功したのかというようなことも言えるわけでありますが、率直に申して、当事者として一体どういうふうに受けとめておられるのか。  なお、その間にコンビナート全体としての防災体制、防災協定ができておったと思いますが、こういうものが本当に有効に作動したのかどうか、それらの点についても、この際お伺いをいたしたいと思います。  それからもう一つ、あの事故を起こしてから、たしか四日目でございますか、一部操業を再開をされております。原因の究明がまだなされない状態の中で、したがってまた、市民が不安を感じておるのに、どういう事情があるにせよ、いきなり操業を開始をするということは、どうも若干問題があるのじゃないかという気がいたしますが、これは一体だれの命令というか、だれの認可で、どういう手続を踏んでおやりになったものか、そういったことを、ぜひこの際お漏らしをいただきたいと思っております。  時間がございませんので、以上三点だけ、まずお伺いします。
  25. 密田博孝

    密田参考人 お答えいたします。  第一の、二十九年の十月に第一回目の火災事故を起こしましたことは、いま田中先生の御指摘あるいは私が最初申しましたとおりでございまして、二十九年と申しますと、まだわが国の石油産業の規模が大変小そうございまして、私の記憶では、昭和三十年の日本の原油の処理量は全体で一千万キロぐらいでなかったかと思います。そう大して違った数字ではないように記憶いたしております。そのときの日本の石油の生産能力は全国で二十万バレル見当だったかと思いますが、その中の大協石油は大体規模といたしまして一万七、八千バレルだったと思います。このときは私はまだ取締役に就任しておりませんので、余り正確なことも存じておりませんけれども、これは県当局なり消防がかなり科学調査をやられたように聞いております。ただ、そのときの一つの教訓は、もともと原油に使っておりましたタンクに残油がある中へ、かなり高温の重油を入れた、それで大変可燃性のガスが発生したことは確かなようでありましたが、しかし、それに対して何が引火したのであろうか、火源がどうも不明であって、それで結局原因不明ということで今日に至っております。そういう事実を踏まえまして、われわれはいままで鋭意安全意識を中心にいたしまして、防災に専念してきたつもりであります。  ただ今回は、先ほど申し上げましたように、大協石油の工場規模が現在十九万五千バレル、約十倍に拡大いたしております。したがって、その間のいろいろな技術的な問題、設備の問題、まるで当時とはさま変わりになっておるようであります。そういった設備を増大さしましたことについては、これは当然法規にも十分従っておりますし、また、第一回のそういう事故がありましたために、より以上の細心の注意を払ってまいりました。したがって、われわれの気持ちといたしましては、こういったような事故を重々防いでおったつもりでありますが、その間の中心となりましたものはやはり安全意識、これをどのように平素訓練し、教育し、そして予防対策のかなめにしておったか、こういうことが私はかなり全社に浸透しておったはずだと考えます。そういう意味からして、今度の事故は本当にわれわれ遺憾でございますし、大変設備の面にも、あるいは精神訓練の面にも万全の努力をしておった、そういったことで、いま申しましたような私の心境であるわけでございます。こういった事故は他の会社にはございませんので、そういう意味で、われわれとしましては十分前回の体験を生かしつつあったということだけは、ひとつ御理解いただきたい、こう考える次第でございます。  石油業界はいろいろ御承知のようなことで大変経済的には苦しい業界でございます。その中でこういったような防災対策をやっていかなくちゃならぬ、あるいは外部からごらんになりますと先ほどの御質問の疑念もございましょうし、また、不十分な点もあるかと考えますが、今度の原因究明によりまして、それは完全にカバーしたい、こういうふうに考えておる次第であります。  それから第二番目の、事故の発生当時どういう状況であったかという御質問でありますが、これは経過をきわめて簡単に申し上げますと、十六日の十五時五分に火災を発見いたしました。これは現場から約二百メーターぐらい離れた船積みの作業員、これは社員でありません、その間に三滝川という約七、八十メーターの川がありますが、そこから発見いたしまして早速通報して、それで十五時八分には、もう会社の消防車が出動いたして現場に入っておりまして、十二分には、その現場会社消防本部を設置いたしまして、それと同時に全プラントの火どめ作業を開始したわけであります。同四十五分には市の消防車も現場へ参りまして、総指揮はその時点から市の消防本部の手に移りまして、それからコンビナートの応援車その他が参りましたのは大体十六時二十分くらいで、その時点において体制はもうほとんどでき上がった、こういう状況であります。四十分ないし五十分のうちにそういう作業をしたわけでありまして、それで会社自体の消防車がそこへ集まりましたのは十分前後の後であります。したがいまして、体制としてはかなり敏速に、常時やっておるものが社内のものとしてはやり得たし、それから周囲の応援もかなり効果的であったのではないかと私は思います。  ところで、そういう体制のもとに消火活動を始めたわけでありますけれども、消火の手段といたしましては、事故タンクは半固定式のタンクであります。したがって、会社の消防車四台が出動いたしまして、初期作業はかなり円滑にいっておったのだと私は思いますけれども、しかしながら、固定式の屋根の上部に取りつけてありますエアホームを吹き込む設備があります。チャンバーと申します。これが八つありますが、そのうちの一つが破損をしていることを発見いたしました。東南部にある一つであります。これはどういう原因で破損をしたのか、まだ十分解明されておりません。
  26. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 発言中でありますが、なるべく簡潔に。持ち時間が来ておりますから。
  27. 密田博孝

    密田参考人 しかし、それによってエアホームの吹き込みのバランスがある程度崩れた、こういったことは確かなようでありますので、それがもっとうまく作動しておりますれば、初期消火はもっと効果的にいったのではないかと考えます。その点は今後の解明あるいは設備の改良にまたなければいかぬ、こういうふうに考える次第であります。  第三の、速急に操業を一部再開したではないか、こういう御質問でありますが、これは先ほど申しましたように、会社としましては操業の全面停止を一時いたしました。ところが、たまたま四日市の合同ガスに対し、当社から四日市で使用する家庭燃料の約六〇%に相当するものを供給いたしております。したがって、これの供給も、ストック以外のものは供給停止せざるを得ないということになったわけであります。四日市市としては、そのガスの供給不安、これを大変心配されました。したがって、その供給不安のないような措置はとれないものか、こういうことで、市長からは二月十九日付で、事故のあった系列のタンク並びに装置については一部操業停止を命ずる、全面的に停止を命ずるはずであるが、これはタウンガスの関係から一部停止を命ずるにとどめるんだ、こういう通達をちょうだいいたしております。したがいまして、工場内でいろいろ調整をいたしまして、それで事故系列外の装置の運転を、二十日から試運転を開始し、二十一日からガスの供給を始めたような次第でございます。それで、原因の解明ができておりませんので、したがって万全の予防措置として、たとえば窒素シールを行うなど、平素以上の予防対策を立てて今日に至っている次第でございます。  以上でございます。
  28. 田中覚

    ○田中(覚)委員 実は私、田尻参考人に、海上消防法だとかあるいは内湾防災法あるいはタンカー安全法の制定等を非常に強調され、さらには巨大タンカーの製造禁止からコンビナートの内湾立地の再検討に至るまで、幾多の重要な問題を提起されたので、それらについて実は若干掘り下げたことをお伺いしたいと思っておったのでありますが、時間がなくなってしまいましたので、これはまた別途ひとつお教えをいただきたいと思っておりますので、ひとつよろしくお願いいたします。  これで私の質問を終わります。
  29. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 島本虎三君。
  30. 島本虎三

    ○島本委員 まず、生越参考人にちょっと伺っておきたいと思いますが、先般のコンビナートの点検の結果、不等沈下が百九基、四%あった、それからタンクの本体自身の不良個所があるものが三十一基もあった、中に重油漏れしていたのがあった、それと同時に防油堤の亀裂しているものが三百十八カ所もあった、自動消火設備で役立たないものが百三十七基もあった、こういうようなことであります。そうなりますと、田尻参考人が申しましたように、コンビナートそのものやタンカー、巨大タンク、こういうようなものは危険と不安を内蔵しているようなものであって、安全性というものは営利追求を妨げない程度のものでしかないというような気がするわけであります。したがって、量の変化は質の変化にもなるわけでありますから、このタンクそのもの、こういうようなものは危険物とみなされるのじゃないかと思うのでありますが、この点に対しましての御見解を承りたいと思います。
  31. 生越忠

    生越参考人 それでは私の見解を申し述べさせていただきます。  島本先生が言われましたとおり、日本コンビナートのように軟弱地盤地帯、そういう場所タンクをつくれば、タンクそのものが危険物になるだろうと思っております。時間があれば、もう少し詳しく申し述べたいのでございますが、よろしゅうございますか。
  32. 島本虎三

    ○島本委員 じゃ、余りじゃなく、もう少し詳しく。
  33. 生越忠

    生越参考人 では、簡単に私の考えを申し述べさせていただきたいと思います。  まず先ほども申しましたように、いままでコンビナートを造成したり、その上にいろいろ重構物をつくったりする場合に、環境の制約ということ、わけても地盤の制約の問題について、余り考えられていなかったのではないかと思います。これは単にタンクの問題だけでなくて、原子力発電所の地盤、それから石油パイプラインの地盤などについても、比較的最近まで十分考えられておりませんでした。原発でございますと、原子炉本体の安全性についてはいろいろ議論されておりましたけれども、地盤の問題についてとやかく言われるようになったのは柏崎が初めてかと思います。ということで、地質の問題がどうもいままで十分議論されていなかったように思います。  それからもう一つの問題は資源の制約ということでございます。資源も広く申しますと環境の一部になるかと思いますけれども、コンビナートをつくる場合に、日本の場合にはやはり臨海地帯に十分スペースがございませんので、埋立地をつくってそこに造成しております。その埋立地をつくる材料、つまり砂だとかどろだとか、そういうものをどこからどれだけ持ってくるかということになりますと、先ほど申しましたように、どうしても良質材料が十分ございませんために、質のことを余り考えないで、ただ量だけを何とか確保するということがいままであったように思います。もちろん、つくる段階では、可能な限り良質な砂を確保するということは、それぞれ御努力なさってはおられると思いますけれども、現実に手に入らなければ、そこで間に合わせ的にいいかげんにやってしまうということがあるようでございます。これは東京の地下鉄の工事現場、それからガス管水道管を埋め戻す場合のそういう工事現場なんかで、私いろいろ調べてみますと、そういうことがちょいちょいございます。ということでコンビナートの場合にも、そのあたりの手抜きがかなりあったのではないか。そのことが、先生が先ほど申されましたような全国各地における不等沈下、それから防油堤の破壊、その他さまざまな災害が起こったのではないかというふうに思います。  ということで、私が考えますには、日本の場合にはやはりこういう狭い国土で、しかも地盤が非常に軟弱であり、人間が十分に使い得る場所は非常に狭い。大部分がやはり山林ということになっております。それで人間が産業活動をしております東京、それから大阪、名古屋、そういったところは、日本の中でももうこれ以上地盤が悪いところはないと言われるほど悪いところでございます。そういうところに人間が一番たくさん集まり、そこで巨大な産業を興しておるということになりますと、これはもうまさに環境の制約を超えた無謀な産業活動であるということになりまして、そこにつくられるものはタンクであれ、あるいはパイプラインであれ、すべて危険物になるというふうに私は考えております。
  34. 島本虎三

    ○島本委員 よくわかりました。もう一つ生越参考人に。  先ほど地層学から見て、粒土が一番いいし、それから砂であり、それから砂利という順位が発表されたようであります。日本コンビナートで、この粒土による模範的なコンビナートがございますか。
  35. 生越忠

    生越参考人 私、よくは存じませんけれども、現実にいまコンビナート埋立地をつくっておりますのをこの目で見ましたのは、先ほど申しましたように、日本鋼管が今度川崎市の扇島に新しい埋立地をつくりまして、そこに移転することになっておりますが、その埋立地をつくる材料は、先ほど申しましたように対岸の富津市の浅間山から非常に良質の砂を運んでおります。なぜ東京湾の向こう側から運ぶかと申しますと、南多摩あたりにもかなり良質の砂があることはあるのでございますけれども、多摩地域の山砂の七割から八割までは東京都区内の工事現場に持って行かれてしまいまして、膨大な、たしか扇島の日本鋼管の埋立地をつくる砂は、三十七階建ての霞が関ビルを升にいたしまして百四十杯分というふうに言われておりますけれども、それほど膨大な砂というのはやはり近所にないということで、わざわざ東京湾の向こう側から持ってきているというようなことでございます。  しかし、先ほど申し上げましたように、これは非常に良質な砂でございますので、まあまあ材質の不均質ということが原因になってのひどい不等沈下ということは、この場合にはないかと思いますが、しかし、こういう日本鋼管のようなケースは、私はごくわずかな知識でございますけれども、非常にまれではないかと思います。というのは、日本鋼管の場合には五洋建設という系列会社をつくりまして、その五洋建設が千葉県の浅間山で砂の採掘権を得まして、要するに会社一家でもって砂とりから砂運びから埋め立ての造成までやっておるわけでございますね。こういうことで、日本鋼管という大企業であってこそ初めてこういうことはできるわけです。しかも東京湾埋立地をつくるということで、たまたま千葉県というところは、良質の砂を産する産地としては日本一番でございますので、そういう好条件に恵まれておりますので、扇島の場合にはできた。しかし、ほかのところで、さて、どうやっているかということについては、私はよくは存じませんけれども、いろいろ聞いてみますと、埋立地をつくる段階で、すでに大きな問題があるやに聞いております。
  36. 島本虎三

    ○島本委員 次に、保野参考人にお伺いいたします。  今回のコンビナートの一斉点検、この中でタンクの直径と沈下の割合が二百分の一、これ以上は危険だというふうに一つの物差しをつくったようでありますが、これも絶対安全なのか、またはこれ以下のものでも量と質によっては危ないものもあるのか。しかし、業者によってはその程度は大丈夫だ、こう考えておる人もあるようでありまして、現にわれわれも行ってよくその話を伺ってきたのであります。こういうような点からいたしまして、十一万トンタンクが、この場合五十五・三センチですから〇・六八%の不等沈下、こういうようなことも出ております。極東石油ですか、こっちの方では三基、〇・五以上にもなっている。しかし、これぐらいでは何でもないのだという業者側の考え方もちょっとあるように承っておる。果たしてこれを一つの物差しにしていいのかという疑問があったようであります。私どもは、やはり量を増すと質に転化するから、これは危ないのだ、危険物じゃないかとさえ思うのでありますが、この辺に対していかがでございましょうか。  時間の関係上、もう一つあわせて伺いたいのであります。と申しますのは、先ほどの参考人の御答弁の中で、日本タンクの場合には、ことに地震を考えてアメリカより数ランク上の対策をとっている、JISで決められているようにやっている、こういうようなことであります。しかし、やはり丸善石油なんかの場合には、十一万トンタンクの場合に二千八百十一本のサンドパイルを打っているわけです。この打ち方なんかでも、JISだとすると、そういうようなものは地震を考えてやったならば、そんな不等沈下なんかはちょっと考えられないのじゃないか。対策もそれほど十分に考えているなら、ちょっとないのじゃないか。あるとすれば手抜きじゃないか、不正工事じゃないかとさえ思うわけであります。このサンドパイルをそれほど打ち込んでやるならば、一つの基準として、それほどの重さのものを載せても影響がないのだという安全性の確立というものがそこにあっての工法じゃないかと思うのでありますが、行ってみますと、丸善さんも極東さんの方も、これは三万トンのものでも十一万トンのものでも、それぞれ大きいものですが、傾斜しておるのであります。これに対して、安全率というものに対してどうお考えでございましょうか。この際、ひとつ御意見を伺わしてもらいたいと思います。
  37. 保野健治郎

    保野参考人 お答えいたします。  まず第一点の〇・五%ということでございますが、実は私の試案として出しました沈下のパターンは六種類ございます。第一の沈下は、一様にタンク沈下をいたしますので、これを均等沈下と申しておりますが、それ以外は全部あとの五つを不均等な沈下もしくは不等沈下と名づけておるわけです。さて、〇・五%の問題でございますが、これは新聞その他で発表されておりますように、自治省、消防庁が一斉点検の段階でも、沈下のパターンを六種類でございましたか出されましたと思いますが、私が申し上げました沈下パターンとほぼ同じであると私は思っております。これは何も私の独特な考えではございませんで、タンクやいろいろなものの沈下についての技術者の常識でございます。  問題は、その許容沈下量でございますが、五番目と六番目、要するにタンクの底がおわんのように上の方向になったものですね。下に下がらずに上の方向。それからもう一つは、タンクの底がサインカーブのように波打っておるもの。そういうものは直径の約二百分の一を許容基準と私は一応考えております。この場合の許容基準というのは、人間で言いますと不健康な状態を示す一つの指標でございまして、病気であるわけではございません。  したがって、その他の問題につきましては、特に第四の沈下のパターンでありますが、底板の、アニュラプレートと申しておりますが側板直下の部分、それが側板の縦方向に波を打った場合、これは一般に沈下をしてなるわけですが、これは直径十メートルから百十メートルくらいで、円周方向、四分の一円周に対して五十ミリもしくは七十ミリを許容沈下量と考えております。これが最も危険なタイプであるわけです。  その次に問題なのは、第三のパターンですが、これは底板はそのままで一様に沈下をしておるわけです。この沈下パターンが非常に重要なのは、浮き屋根でございますと、油面に沿って上下をいたしますので、タンク側板とある傾斜の角度をもって天井が作動します。それはタンクの側板と屋根のシール部分、ここの余裕が約十センチ程度でございますから、タンクの直径と高さによって、おのずから許容沈下量は決まってくるわけです。これは二百分の一よりははるかに小さなものです。  それから第二のパターンがその次なんですが、これは底板が下の方向にふくらんでまいる、こういうことですから、それは二百分の一よりは大きくても大丈夫であるわけです。要するに、それらの複合形が一つのタンクに起こるのが一般でございますから、一律に直径の二百分の一というように考えることはできないと思います。  それからもう一つ非常に大切なことは、私が申し上げておるのは許容基準でありますが、それは、それまでは安全だというのじゃなくして、もし、皆さん方が本当に健康でありたいと思うなら、私の基準はあくまでも不健康になりつつあるという基準ですから、それを一ミリ超えてもすぐ危ないとか、あるいはそれより一ミリでも少なければ安全だという問題ではないわけです。それにできるだけ近づかないという一つの指標、健康診断ですから、当然一つの沈下パターン、沈下基準だけで論ずるのは早計ですから、私が総合判定基準の中で八項目申し上げたのはそこであるわけです。  第二のサンドパイルと安全性、安全率の問題ですが、先ほど申し上げましたように、巨大な自然の力、たとえば地震力を考えたときに、もし本当に不等沈下というもの、あるいは沈下というものをほとんどゼロにしようと思えば、コンクリートパイルもしくは鋼管ぐい、そういうものを打って基礎の岩盤までがちっとやって、そしてなおかつコンクリートスラブを上に置いて、サンドクッション、砂を五十センチ置いてタンクをやればいいのですが、もし、地震で縦方向の震動がきますと、その支持されたくい、沈下を防ぐくいが、実は支点になりましてタンクの底版を突き抜けて、逆に災害を大きくする。  要するに、論理的には底板はできるだけ薄い方がいいわけです。ただし、非常に考えなければならぬのは、従来のAPI規格、JIS規格には、直径の制限、高さの制限ということはどこにも書いてございません。小さなタンクと大きなタンクでは、おのずから製作した段階ですでに力のかかりぐあいが違うので、直径百十メートルぐらいのをいまつくっておられますが、一応それを限度で踏みとどまって、ここらでもう一回安全基準を考えるべきではないか。  要するに、漏れないタンク、強度の強いタンクをつくるという発想から、多少の亀裂があっても、内張りその他をやってできるだけ漏れないようにする、少々の亀裂は防げます。しかしなおかつ、それで漏れてきた場合でも、地盤に頼っておるタンクでございますから、地盤が油その他によって崩壊をしない、それに抗することができる、そういう構造にする必要がある。それはもう何十年も前から十分使われた技術であります。  そういうように考えますから、私は、サンドパイルを使うことは結構だと思います。しかし、それは決して沈下を防ぐ工法ではございません。ある沈下量まではタンクは十分もちますので、その範囲内以上にどれだけ安全性をとってサンドパイルを打つか、ここが技術の勝負であろうと私は思います。
  38. 島本虎三

    ○島本委員 もう一つ、これは簡単に保野参考人にお伺いします。  先般われわれも調査してまいりまして、このタンクの場合、大小にかかわらず、タンクそのものの耐用年数というものについて、業者も知らない、行政も別に規制もない、こういう実態がわかったのでありますが、この耐用年数を決める必要についてどうお考えでしょうか。これも余り時間をとらないように、よろしくお願いします。
  39. 保野健治郎

    保野参考人 お答えいたします。  タンクは何もスチールでつくられておるわけじゃありません。タンクタンク自身で存在しておるわけじゃないのです。コンクリート部分もあれば、土もあれば、それらが一緒になってタンクが構成をされておるわけです。バルブもついておれば、パイプとパイプとをつなぎます、たとえば伸縮ジョイントの代表例でありますベローズ式、要するにカメラのじゃ腹のようなもの、そういう方式のジョイント、これはほとんど検査をされずに使われております。これは水道界だって同じことです。何も油だけの問題ではないのです。パイプのジョイントが一番のポイントなんです。溶接部分ではございません。パイプとパイプとの問題です。それらは付属施設ですが、それらが一体となって耐用年数を考えるべきであるわけです。  したがって、その耐用年数を考えるときには、中の内容物は何であるか、操作条件は何であるか、要するに、タンクの持っておる履歴のようなものを十分資料として持っておられて、ある場合には、十五年ですでにぐあいが悪いという場合には破棄される必要がありましょうし、コンクリート部分でありましたら、少なくとも、幾らライニングをいたしましても、特に戦前につくられたものにつきましては、コンクリートの品質、鉄筋、施工、その他に大きな疑問がございますので、それらについてはできるだけ安全性を考えてやらなければならぬと思います。重要なものは十五年、私は私見として持っております。コンクリート部分は、コンクリートで油を貯留しておるのがございますが、少なくとも三十年ぐらいで私は考えたい。タンクも、何も地上だけにあるわけではありません。地下に全くもぐり込んだもの、半地下式、地上に載っているもの、屋上にあるもの、いろいろございます。したがって、それらについておよそ技術者の中では合意ができておると思いますので、それらは早急に関係者で発表される必要があると思います。私はもうかなりわかっている問題だ、そういうように思っております。
  40. 島本虎三

    ○島本委員 田尻参考人にお伺いしたいと思います。  先ほどからいろいろと私ども行政上重要な指摘をいただきまして、感謝にたえない次第であります。  それで二点について、時間の関係上一回に質問させてもらいたいと思います。  いろいろシーバースなんか、これは大流行しておるようでありますが、このシーバース、コンビナートのあるところには、ほとんどこれがまた考えられておるようですが、この規制が安全なものかどうか、この点についてもう少し伺いたいのであります。ことに、先ほどからのお話によりますと、コンビナートでは優秀なコンビナートだと言われておる水島を初めとして、タンカーについてはほとんど野放しで一番危険な状態だと承りまして慄然としておるわけであります。これらについての規制を今後どうしたらいいのか。  同時にいま瀬戸内海には環境保全臨時措置法がかかって二年目を迎えようとしておるのでありますが、その際こういうような事故を起こされたりなんかしたらとんでもないことになってしまうわけであります。それで三菱石油なんかの事件については、刑事責任はどんなものかということについて、ひとつ御見解を賜りたいと思うのであります。
  41. 田尻宗昭

    田尻参考人 お答えいたします。  まずシーバースの問題でございますが、全国で巨大タンカーが着きますシーバースが二十四ございます。これから先シーバースはいろいろな意味で大はやりだろうと思います。しかしこのシーバースには基本的な問題がございまして、まず港内のシーバースにつきましては、港長の工事、作業の許可の対象になっております。しかしながらシーバース、つまり巨大タンカーが海上の桟橋としてそれを利用し、そこから油を企業に送る。水深が浅いのでやむを得ず海上に設けている巨大な桟橋であります。二十万トン、三十万トンが着けるような桟橋でありますが、そのシーバースとして利用する以上、単なる港長業務の中の普通の工事、作業と一緒くたに扱われていいものか。これは私は非常にスケールの違う、次元の違う規制を必要とすると思います。  それから、それでは港の外にあるものはどうか。港の外にあるものはもう許可対象になっておりません。特に三大内湾につきましては海上交通安全法の適用がございますので、届け出制になっております。しかしながら届け出ではどうにもこれは不十分でならないと思います。したがいましてシーバースについてははっきりとした規制、許可という制度をとるべきだ。全国をにらみまして、そして海上交通の見地から、あるいは安全の見地から、シーバースそのものを規制する総合立法を図るべきであります。  特にシーバースにつきましては消防法が適用になっておりませんので、防火施設とか防火管理者、企業の消防船の張りつけ等が一切ございません。したがいましてシーバースには、当然消防法の対象物として、これらのものを早急に完備させなければ、安全上ゆゆしき問題ではないか。  特に湾の真ん中にこういう桟橋を設けまして、これは巨大タンカーの通路になっておるわけでございますから、言いかえれば航路障害物になっておるわけでございます。このようなものに関しては、従来のような届け出とか、あるいは行政指導というようなものじゃなくて、シーバース規制法というものをつくりまして、総合的な見地からこれを規制できるような体制を整えなければ、これがまた一つの災害原因になると思います。  それから二番目のお尋ねの、三菱石油の刑事責任の問題でございます。これは私、午前中に申し上げようと思いましたが、時間が足りませんで申し上げるのは午後になってしまいましたけれども、ちょうどお尋ねがありましたので、お答えしたいと思いますが、私は今回の事件が、どうも刑事責任という面で論議が少な過ぎると思います。つまり、こういうような大変な事故に対して、その責任ということが論じられないで、対策ばかりが論じられているところに、日本の安全問題の貧困さがあるのではないか。つまり私ども海で仕事をしてまいりました者から見ますと、船舶の場合は、石油かん一杯の油をこぼしても直ちに摘発される。航空写真でばっちり撮られても、一枚の航空写真で摘発をされるのであります。全国で何百件、およそ一千件に近いであろうという船舶の油が、海洋汚染防止法によって文句なしに取り締まりを受けております。そういう法の厳しい規制というのが現在の公害の現状でございます。ところが一たん、約一万トンに及ぶであろうという油を排出をした三菱石油の刑事責任となると、どうもはっきりしない、私は、こういうことでは憲法が保障する法の平等ということが余りにも阻害をされておるのではないかという感じがしてなりません。やはり公害問題の原点は責任を明らかにすることであります。責任を明らかにしないで、あらゆる対策は始まりません。そういう意味からこのような大量の油が流出した以上、当然刑事責任を論ずべきであります。  まず水産資源保護法がその対象になるべきであります。私は四日市で恥かしいことながら漁民から教えられました。水産資源保護法で企業の摘発をいたしました。水産資源保護法を見ましたときに驚きました。明治二十五年にできた法律にちゃんと「水産動植物に有害な物の遺棄又は漏せつ」はしてはならないと書いてあります。「漏せつ」とはつまり過失であります。行政法の中で過失までとらえた法律というのはまことに少ない、その少ない法律の中のこの水産資源保護法は非常に貴重な法律であったのであります。それが私どもが摘発する以前には、明治二十五年の立法以来、水産資源に最も悪質な水を流していた工場排水が、ただの一回も摘発されたことがなかったという、余りにも法の逆立ちというものを私は四日市で知りまして、愕然たる思いがしたのであります。水産資源保護法はまさに死んでいたのであります。しかしながら、いまだにこの水産資源保護法を適用して大企業の排水をとらえた事件は、私どもがとらえた石原産業事件が、裁判として行われておるただ一つであります。  また、水質汚濁防止法もしかりであります。一方でPPM単位の工場排水を取り締まりながら、何万トンという油が流れて、それがとらえられるかどうかわからない、このような立法には基本的に問題があります。PPMの問題じゃない。  また刑法の公害罪でもそうであります。  船舶は入出港をとめられた以上、業務上過失往来危険罪というものが検討さるべきであります。  いろいろ問題はありましょう。過失の認定についても問題があることは私は存じております。しかしながら、何としても現行法を生かしてこの刑事責任を問うということが、まさに公害問題の哲学であります。このような法律適用できないならば、日本に犯罪はないんです。大量の環境破壊を取り締まる法体系というものを取り締まれるように、もし、欠陥があるならば直ちに改正をして整えるべきであります。それがこのような対策の本当のスタートであります。
  42. 島本虎三

    ○島本委員 時間がないのを残念に思いますが、これで私の与えられた時間が参りました。どうもありがとうございました。
  43. 渡辺惣蔵

  44. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 本日は、参考人の皆さまには御苦労さまでした。  生越先生にお伺いをいたします。  先ほど来、地質学的な見地から埋立地の諸問題について、いろいろ御意見の開陳がございましたが、いわゆる埋め立ての場合の良質骨材を入手することが非常に困難になっております。あるいは均質な砂を入手するにも、資源的にも少なくなってきておる。昭和四十七年十一月二十八日の科学技術庁の資料等を前提にしながら、いろいろお話がございました。  そこで、そうだとするならば、最近タンク等の不等沈下問題等が大きな問題になってきておるわけでありますが、いわゆる埋め立ての場合のこういった良質骨材あるいは均質な砂等の資源が非常に少なくなっている現状から見て、今後埋立地におけるタンク等を設置する場合の工法というものについては、やはり科学的な根拠に基づいて、どういう材料を使う場合にはどういうことが満足されなければならぬといったような学問的なことが整備されないといけないんじゃないかということを感じたわけでありますが、こういった問題に対する先生の御見解を承りたいと思います。
  45. 生越忠

    生越参考人 お答えいたします。  軟弱地盤地帯におけるコンビナートの増設などについて、今日のような不等沈下その他のいろいろな問題が出たわけでございますが、いわゆる地盤改良の具体的な工法については、これまた工学の分野になりますので私十分は存じておりません。しかし、たとえば石油パイプラインを通したりする場合に、たとえば成田なんかでやっておりますけれども、土壌凝固剤を大量に使ったというようなことがございました。しかしあの土壌凝固剤を大量に使ったことによって、あそこの場合は地下水の汚染という非常に深刻な事態を招きました。ということがございまして、これは私よくはわかりませんけれども、現在の技術で軟弱地盤を十分強固にいたしまして、安全なコンビナートをつくるということはできないのではないかと思っております。  それで、いろいろその対策として、たとえばコンビナート内陸部に移すとか、あるいはタンクを山間に置いたらどうかというふうな議論が昨今あるようでございます。そういう議論が新聞その他にも載っております。これも一つの方法かとも思いますけれども、しかし内陸に移しましても、やはりだめなものはだめなんじゃないかというふうに私は思います。  と申しますのは、昭和四十年ごろまででございましたら、地盤沈下がひどく進むところは大体において沖積平野だというふうに言われておりました。洪積台地はまずまず地盤沈下はしないところだというふうに、地質学でも地理学でも言われておりましたけれども、それがこのころからそういう定説が怪しくなってまいりました。たとえば東京の下町で、これはもう明治、大正のころからひどい地盤沈下が進んでおりますけれども、最近になってどういう状況になってきたかといいますと、最近と申しましても四十年ごろから、表層の軟弱沖積層よりも、やや深いところのかたい洪積層の方がよけい沈んでいる、そういう現象が出てくるようになりました。ということで、浅層から深層へと地盤沈下場所が移ってまいりました。それから平地から台地へと地盤沈下場所が移ってまいりました。最近、首都圏において一番地盤がひどく沈下しておりますところは、従来のような沖積平野あるいは海岸平野ではございませんで、実は東京で申しますと清瀬市、それから埼玉県で申しますと所沢市といったような台地部が、年間二十センチ以上といったような非常に大きな沈下をしておる。ということから申しますと、従来の地質学あるいは地理学で言います地盤沈下常識というものは、少なくとも最近数年の間で壊れてきた。これは深井戸の深さがますます深くなっているとか、いろいろな理由がございましょうけれども、そういうことで、なかなかどうもうまい方法というのはいまもうないのじゃないかというふうに思います。  いろいろ調べてみますと、東京でも都下、いわゆる三多摩でございますが、それから神奈川県でも相模原あたりにございますタンクは、いまのところ不等沈下の例はないようでございますけれども、しかし、ついこの間まで全然沈下の気配もなかったような三多摩あたりが、いまや東京の中で一番ひどい地盤沈下地帯になっている、下町を上回る地盤沈下地帯になっているということを考えますと、比較的地盤がかたいところにあるタンクも、これからは沈下する可能性もないではなかろうということになりますと、どこへ持っていってもなかなかうまくいかぬのじゃないかという気がいたします。  その辺の問題について、一体現在の工学的な対処が十分できるのかどうかということについては、残念ながら私はそちらの方の専門でないのでわかりませんけれども、少なくとも地質学の点から言いますと、いまや絶対安全と言い得るような地盤は、沖積平地にもあるいは台地部のかたいところにもなくなってしまったというふうに思わざるを得ません。  以上でございます。
  46. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 保野先生に次にお伺いをいたします。  いろいろ専門的な立場からお話がございましたが、そのうちの一つとして、防油堤の問題について、先生の方から京大堀内教授の意見等も交えながら、防油堤については何段の構えもしていかなければならないという趣旨のお話があったように承りました。水島の今回の事故の場合、防油堤の破堤問題、一体高さとして、あるいはまたその中に入るべきタンクの数なり距離なり、いろいろな問題も含めて御意見を持っておられると思いますので、これらの問題について簡潔にお答えを願いたいと思います。
  47. 保野健治郎

    保野参考人 お答えいたします。  防油堤の目的、一体何のための防油堤かを考えてみたいと思います。  一つには、タンクの維持管理のミス、オペレーションのミスによるオーバーフローがございます。これはタンク最上部からあふれてくるわけでございますが、そういう場合には、できるだけその中身にあります危険物を小区画の表面積にとどめることが絶対必要であります。もし、引火性のもので火災が起こったとしたならば、今回の大協石油の場合でもあれがタンクの中でありましたから、輻射熱がかなり少なくて済んだわけでございます。要するに、できるだけ小区画にとどめる必要がございます。  それからもう一つは、これはいまの溶接工法でありますと、ほとんどあり得ないというふうに一般に言われておりますが、それは側板からの漏れであります。これも油の深さが非常に浅ければそうたくさん出てきませんから、小区画にとどめる必要がある。  問題は、底板部分から漏れた場合の流出の力というものは、これは私の個人的な見解でございますが、今回の二七〇の石油の事故を見ておりますと、当初漏れた段階で、はしごの基礎部分に当たりまして、逆に七、八メートル霧状に上がったわけです。そして落ちたわけです。もしこのはしごがなかったらどうなるか。それは過去の事故の例もありますように、防油堤の底を洗って、防油堤そのものが私は底から崩壊をしたと思います。今回、はしごが非常に大問題になっておるようでありますが、はしごの基礎が吹っ飛んで、はしごが倒れて防油堤を一部こわしました。それと同時に、防油堤内にありますパイプライン、これが油の力によりまして折れ曲がっておるのを御存じだと思います。それがわずかのぎりぎりのところで、防油堤からわずか数センチのところでとまっておったわけです。要するに、油の勢いというものに対抗できるような間仕切りが必要である。  もう一つは、防油堤の高さをやたらと高くいたしますと消火上非常な問題がございます。現実問題として、現在でき上がっておる防油堤を、それ以上面積を大きくとるということになりますと、もう道路にはみ出る以外にないわけですが、今回の事故を見てもわかりますように、何も防油堤が破壊をしたからオーバーフローしたのではないのです。防油堤を越えたのではないわけです。健全な部分方向から一挙にあふれ出ておるわけです。そして道路を通りまして、その真向かいの防油堤に飛び込んでおるわけです。要するにうねりのようになって来て、なおかつ防油堤と防油堤にはさまれました道路をまっしぐらに、あたかも油の水路であるかのごとく油が海に飛び込んだわけです。そういう意味で、防油堤の容量をいま以上大きくする必要は十分あるわけですが、それはあくまでも油がじわじわ出てきて防油堤を洗掘をしない、そういう状態のときに一〇〇%の容量が防油堤内にありましたら十分であります。  もう一つ、改造問題として一つ考えなければならぬのは、防油堤と防油堤の底をつなぎまして、ある場合には防油堤の中の油を一部他の防油堤の中に移動させるということが再検討されるべき段階であると思いますし、もう一つは、防油堤の天端部分を、防潮堤と同じように、ある場合には波返しにする必要がありはしないか。要するに油の力がほとんどわかっておりますから、構造計算上もし鉄筋コンクリートでやるとするならば、おのずから計算はそんなにむずかしい問題ではない、そう私は考えます。
  48. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間の関係もありますので、次の加藤先生の方にお伺いをいたします。  加藤参考人は大学教育の問題に言及されまして、いわゆる大学教育における安全教育のあり方、したがって、たとえば工学の教育の中にもやはりそういった安全教育、防災のための安全教育というものを織り込むべきである、こういう御意見でございましたが、たとえば工学部門における安全教育として、どういう内容のものを織り込むかという点について若干お話しを願いたいと思います。
  49. 加藤邦興

    加藤参考人 私が一番考えておりますのは、個個のテクニックの問題ということよりも、基本的な物の考え方、これが非常に重要だと思うのです。私の大学で接しておる学生あるいは教官、その中で安全のことを本当に考えている人というのは非常に少ないわけです。また、その問題を改めて言われますと、なるほどということにはなるわけですけれども、いまの大学の標準的な教科書を見ても、そういう問題についてはほとんど触れられていないわけです。  たとえば私がある程度知っております分野といいますと化学工学、ケミカルエンジニアリング的な問題になりますけれども、そういう分野で、たとえばプラントをつくるときに、どういう点に注意してつくるべきであるかということについて、教科書的なハンドブックがいろいろあります。それを見たときに、本当にそういう問題に言及してあるものがどのくらいあるかといいますと、まずほとんどありません。非常に網羅的なハンドブックの場合、特にアメリカで出ているものについては、一定の基準が述べられておりますけれども、日本の場合には、もう少し言いますと、大体そういうことを考えないで生産活動ができる状態に、いまなってきているわけですね。  実際問題としてそういうことを考えなければいけない人というのは、自分で物をつくる人なんですけれども、自分で物をつくるということは余りないわけです。技術導入をして入れてくる。ですから、ちょっと時間がありませんから物すごい極端な言い方をしますと、たとえばテレビの構造を知らなくても、スイッチをひねればテレビが映るというのと余り変わりのない感覚で大型のプラントを動かしている人たちがいっぱいいるわけです。どういうスイッチをどういう順序で押していったらいいかということについてはよく知っているけれども、それがなぜそうなっていくかということについては知らない。そういうことを言うと、そんなばかなことがあるかと皆さん言われるのですけれども、実際に私たちが知っている人たちで、そういうことが現実にそうなっておるわけですね。たとえば、特に新しい薬品を使わなければいけないというときに、それを技術導入したようなところに、なぜそれを使うかとか、それの商品名でなくて、物の中身が何であるかということを問い合わせたときに、まずそれは教えてくれないという例が非常にたくさんあるわけです。この前のPCBの問題がありましてから、たとえば熱媒体みたいなものにしても非常に新しいものが出てきましたけれども、大きな工場が熱媒体を売っているところに問い合わせても、それの中身は教えてくれないわけです。ですから自分で分析しますけれども、それは相当優秀な技術屋のいる会社なんですけれども、そこでもってその連中が一生懸命分析しても、PCBのかわりにこれを使いなさいと言われた油が何であるか、とうとうわからないと言うのですね。そういう形でやられている以上、先ほど言いましたのはちょっと極端ですけれども、基本的にはテレビのスイッチを動かすのと大して変わりのないやり方で、あの大きなプラントが動かされているわけです。  それに対して、いままでの大学教育を受けてきた人間というのは、もちろん若いうちは、いい仕事ができないという意味の疑問は持ちますけれども、そこから起こってくる安全性その他の問題については、ほとんど感覚として疑問を持てない状態に置かれています。  ですからいまの大学教育の中で、最低、たとえば機械工学であれば機械の事故例の解析をする。教育の中に事故例の解析がきちんと位置づけられているのは、私は建築関係の一部くらいだと思います。建築の場合には事故例が非常によく調査されていまして、カリキュラムの中にかなり取り込まれていますけれども、化学工場の事故例について化学工学科でもってきちんと教えるということはありません。機械工場での労働災害について機械工学科で教えるということもありません。ですから、そういう事故例等々について、やはり教師の方も意識的に教える義務があるでしょうし、カリキュラムの中に、できればきちんと落ちつける、それができない場合には個々の授業の中で各教官がやっていく、そういう意識的な変化というものがない限り、私は非常にむずかしいのではないかというふうに思っているわけです。
  50. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 次は、田尻参考人にお伺いしたいと思うのですが、従来の海上保安庁におられた当時からのいろいろな経験、あるいは現在東京公害局規制部長としての立場から、積極的な、内容のある御提言があったわけでありますが、時間の関係もございまして、田尻参考人がかつて四日市におられたという点もございまして、四日市における今回の大協石油事故が発生したわけでございますが、港湾関係の問題あるいは第一、第二、第三コンビナートを含めて四日市コンビナートの持つ、安全性から見ての弱点というふうなものがあれば、ひとつ御意見として承りたいと思います。
  51. 田尻宗昭

    田尻参考人 四日市のお尋ねでありますが、四日市のまず基本的な弱点は、小さい四日市港にコンビナートが密集いたしまして、その密集したコンビナートと四日市港を根城にして、これが巨大な二十万トンクラスのタンカーに至るまで迎え入れている。そのことから発生しますことは、狭隘な港湾の防波堤の外に設けられましたシーバースが、この巨大タンカーのよりどころになっているわけでございますが、非常に狭い港の中に五万トンクラスまではタンカーが入っております。そういうところから、一たん事故で油が流出いたしますと、これは水島と同じような、あるいはそれ以上の事故が起こるのではないかと憂慮されます。特に伊勢湾の場合は従来天然の豊庫でありまして、漁民が漁業をしておりますので、その漁場と船舶交通の領域である航路とが競合いたしまして、それが画然と区分けをされていない、その点が、四日市あるいは名古屋の、伊勢湾に立地するコンビナートに入ってくるタンカーの事故による災害の大きな決定的な打撃を生むのではないかと思います。  私は、こういうような四日市港並びに伊勢湾におきましては、もう漁業保全区域というようなものをつくって、そうして安心して漁業ができるような区域をつくり、船舶はこれを避航して、避けて通らなければならないくらいの思い切った区分けをしないと、湾内あるいは港の中はどこでも、とにかく船が走りほうだいということでは、いまや各湾、特に伊勢湾や四日市港を例にとりますと、海の高速道路化が行われているのじゃないか、そういう感じがしてなりません。  お尋ねの四日市でありますが、やはりここでも消防法が海上に適用にならないという基本的な弱点がございまして、桟橋がにょきにょきと岸壁から突き出されている、その桟橋をつくる根拠、いわゆる規制する根拠がない。特に桟橋と桟橋の保安距離を何メートルにするかというようなことが、海上保安庁の港長業務実施要領という行政指導の文書の中に、ただ指導の目安として三十メートルと書いてあるだけである。こういうことでは、桟橋をつくるときにすでに大きな危険が発生するわけでありますから、桟橋をつくらせるときに法的な根拠、規制の根拠がなくて、でき上がった、密集した桟橋についてだけ後から安全対策を論ずるのでは、これはもうどうにもなりません。特に現在四日市の三菱桟橋というのは三十メートルに満たない距離でございます。こういうような桟橋が、つくるときは自由で、でき上ってから安全だと言っても始まらないわけであります。やはりここにも現在の港湾防災の法的規制の欠陥があると思います。  この際、申し上げておきますが、港則法という法律がございまして、船舶の荷役を規制しております。しかしながら、これが片手落ちで、桟橋の保安体制、警戒体制あるいは企業側のそういうような防災器材の設置というようなことについては何ら規制しておりません。船舶だけを規制しておる。しかしながら、桟橋に着いた船については、やはり企業側の、桟橋側の体制というのが、船以上の分野を占めるわけでございますから、陸上側の、桟橋のいろいろな体制や設備を規制しなければどうにもならない、これは港則法の致命的な欠陥でございます。こういうぐあいに、陸上側の桟橋の保安というものが、実は一番危ない桟橋について片手落ちになっている、こういうような弱点が四日市にもございまして、桟橋では非常に危険な荷役が行われておる。  私も四日市におりますときに、昭和石油の桟橋で、ナフサタンカーから粗製ガソリンがもくもくと漏れまして、一晩じゅう徹夜の警戒をいたしました。風がそのガソリンのガスを吹き飛ばしてくれるまで、本当に冷や汗の出る思いをしたことが何回もございます。
  52. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間の関係もありますので、密田参考人にまとめてお伺いをしますから、それらの点を含めてお答えを願いたいと思います。  先ほど来の質問の中に、答弁として、昭和二十九年十月十五日の大協石油の大火災は、いろいろ原因を究明したけれども、確たる原因が何であったかということが結局不明のまま今日に至っているというお話がございました。会社自身としては、会社自身の調査に基づいてどういう見解を持っておられるのかというのが第一点であります。  それから今回の大協石油の二月十六日の発生事故社長からもお話しのように、関係地域の協力も得ながら、約四時間半で、タンク百二号だけに限定して鎮火をしたということは、不幸中の幸いだったというふうに思うわけでございますが、今回のこの二月十六日の事故についても、人為説あるいは構造説、いろいろ言われておりまして、現地の警察においても調査本部をつくって、この五日から科学陣容の動員も得ながら、警察自身としても原因究明に入る、あるいは関係各省においてもこの原因究明をやられることになると思いますが、ここでこれらの問題に関連をして数点お伺いをいたしておきたいと思うのです。  このタンク百二号は昭和三十八年三月に建設されたものと承知しておりますが、消火施設、消火装置というものを見てみますと、このタンクの場合には、手動の半固定式空気あわ消火装置であったというふうに私承っておるわけでございます。会社自身としても自動式消火装置というものに取りかえることをやっておりますけれども、まだ相当数が手動式の消火装置であるというふうに承っておりますが、この現状あるいは改善の方向についてどう考えておるのかという問題がございます。  それから、現実に今回の事故の場合に、会社内の製油一課の方は灯油を送り込む側でありまして、正確に流量を記録していたかどうか。具体的数字というふうな問題が製油一課関係でございますし、また、操油課の方では液温を計測することになっておるわけでございますが、私ども間接的に聞いておるのでは、午後三時常温というふうに、事故発生直前のことが言われておるようでありますが、それが一体どうしてああいう大事故に発展をしたのか。  さらにタンクの関係においては、石油タンクに、地面にアースが取りつけられておるわけでありますけれども、このアースが今回の場合、これは静電気原因説との関係もございますけれども、正常に働いておったのかどうか。  さらにこれは脆性破壊説とも関連する問題でありますが、タンク上部にアトモス弁というものがガス抜きのパイプとしてつけられておると思うのでありますが、これは今回の事故については十分機能しておったかどうかといったような問題について、まずお答えを願いたいと思います。
  53. 密田博孝

    密田参考人 お答えいたします。  先ほども、二十九年の原因につきましてはわれわれ会社サイドでも不明である、こういうふうに申し上げました。ただ、このときの油の流れの操作は、ガスが発生する可能性のあるような仕事の仕方をしておった。警察の見解もそうでございました。したがいまして、その点についてはその後の工場の生産あるいは運転、そういうものについては十分留意して、今回の事故につきましても、そういうミスのないようにという仕事の仕方をしております。ただ、二十九年のときにはそういう火災が発生する原因というものがあったけれども、それが果たして何の火源によって引火したかわからない。こういうことが火災の全体の原因として不明であるという言い方の理由をなしておるわけであります。会社側としましても、そのときにはいろいろコーンルーフの温度の差による機械的な摩擦による発火説あるいは静電気引火説、こういうものがございましたが、それはあくまでも予測でございまして、確定的な原因にはなり得なかった。そういう状態が現在でも会社の技術者が考えております状態でございます。したがいまして、非常に残念ながら、そのときの火源というものは確定しなかった、こういうふうになっておる。いきさつはそのとおりでございます。  それから今回の原因につきましては、そういったようなことがこれはとうてい許されませんので、何らかの原因は確定をせざるを得ない。またわれわれ確定するように、現在極力会社側でも技術陣を中心にした委員会をつくって検討をいたしておりますけれども、一方御承知のようなことで、先ほどのお話にもありましたように、県の警察あるいは消防で、いろいろ大学の先生その他の科学捜査陣をつくられまして、現在探求中でございますから、したがいまして、われわれにも連絡がございまして、それに協力体制を全社的にしいております。したがいまして、私の希望といたしましては、できるだけ今回の原因を明らかにしていただきませんと、会社にとりましても、万全だと考えております操業について重大な欠陥があるということでは、今後大変な問題でもございますので、協力いたしまして原因の追求を極力やりたい、これにはまだ多少の日数を要するだろう、こういうふうに考えます。  それから、事故を起こしました百二号タンク、先ほどのお話のように、三十八年の三月の建設でございます。十二年ぐらいたっておるわけでございます。しかし、これは消防法で認めております灯油、軽油、重油その他を収容するもので、それ以外のたとえばナフサ、ガソリン、ジェット、こういうものは、すべてもういまフローティングルーフタンクになっております。いまの固定式タンクもできるだけ早い機会にフローティングにかえたいということでいま検討中でございます。  それから、百二号タンクの液温でございますが、流出の温度は二十六度でございました。タンク内の温度が二十度でございました。これはデータその他によって工場側で確認いたしております。したがいまして、液温からいたしますと、灯油の引火点であります四十六度何がしでございますか、どうしても発火原因の、ガスがある、ないというような問題は起こらないわけでございます。なぜそれではそれが爆発引火したか、この究明は、全くいま申しましたような科学捜査によって明らかにしていただきたいと念願しておる次第でございます。  それから、静電気説の、アースが正常に動いておったかどうか。これは正常に動いておったというふうに工場側から報告を受けております。  それから、アトモス弁の問題でございますけれども、これは御承知のようなことで、コーンルーフタンクには四個ついておりまして、その作用はタンク内の圧力の調節作用をするわけでございます。それで、それには金網がAとBと二カ所ございまして、中へ入っております灯油の関係から、Bの金網はこれは規制上取りつける必要がない。したがって、外してございました。それからAの金網は取りつけてございました。取りつけてございましたけれども、これは防火の機能を果たすためには、四十メッシュの金網をつけなくてはならないわけでございます。ところが、現実に取りつけてありました金網は一メッシュのもので、かなり目が粗くなっておりました。それは結局は、四十メッシュと申しますと、ごみとかそういうものが詰まる可能性が非常に強いわけでございます。それが詰まりますと、タンク内の圧力の調節が非常にしにくくなります。そういう意味から一メッシュのものと取りかえたわけでございます。したがいまして、それは防火の規制を重く見るか、あるいはタンクの圧力の調節がうまくいかないために破壊が起こる、それを防ぐ方を重く見るか、そういったようなことの工場の判断があったんだろうと思います。まとめて申しますと、この問題は、防火のためには不十分でございました。したがって、工場としましては、タンクの圧力を調節する、それに比重をかけてそういう措置をとっておったんだ、こういうふうに私は考えております。  以上でございます。
  54. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間が参りましたので……。大変恐縮でございました。参考人、ありがとうございました。
  55. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 阿部未喜男君。
  56. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 生越参考人にお伺いしたいのでございます。大変とっぴな質問でございますが、先生は大分新産都のコンビナート等を御視察をなさったことございましょうか。
  57. 生越忠

    生越参考人 残念ながら、まだ現地は視察しておりません。
  58. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 実は、大分も完全な埋め立てによって新産都ができておるわけでございまして、先生のお話をいろいろお伺いして、気になることが多いのでございます。けさの新聞ですか、水島タンクの場合に、何か水張りの関係でもっと長い期間テストをしておけば、ああいう地盤沈下は起こらなかったのではないかという意味のことが出ておったようでございますけれども、先ほど来の先生のお話でございますと、土質が定着をするまでには非常に長い時間がかかる。果たして人為的に圧力を加えて地盤の固定化を図るというふうなことが可能なものでしょうか、どうでしょうか。
  59. 生越忠

    生越参考人 可能であるかどうかについては、私はまだ科学的には究明いたしておりませんし、私の専門立場からは、それはちょっとでき得ないのでございますが、少なくともいままでコンビナートをつくられる側では最善の努力を恐らくされたと思うにもかかわらず、なおかつ昨今来発表されましたような全国的な不等沈下の事実が起こっておりますので、現代の科学と技術ではどうしようもできない、そういう限界の問題があろうかと思います。
  60. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 保野先生にお伺いしたいのでございます。  先生、八つの点にわたっていろいろ御指摘をいただいたわけでございますけれども、特に設計基準と法との関係がきわめて不備だという御指摘をいただきましたが、設計基準と法との関係は一体具体的にどういうふうにあるべきだとお考えになっておられるのでしょうか、御教示を願いたいのです。
  61. 保野健治郎

    保野参考人 お答えいたします。  設計基準は、タンク部分についてあるのであって、JISの規格もそうなっております。API規格もそうなっております。地盤構造につきましては、別にこれでなければならぬというものはございません。したがって、いま問題になっておりますようにタンク地盤が頼みの綱でございますから、そういう点で非常に問題があろうかと思います。  参考までに申し上げますが、サンドパイル工法と申し上げましてもいろいろあるわけです。砂のくいを打ちまして、地下水を抜いたりするわけですが、その抜く工法にもいろいろあるわけです。砂だけ打って水も抜かないという工法もあるわけです。要するに地盤改良の工法は、後ほどまた図面で御説明をいたしますが、地盤を改良して、その地盤の上に将来載るであろうタンクの自重あるいはパイプの重さ、それから中の内容物、油あるいは水ですが、その重量の一〇〇%以上、そういったようなものを最初にかけまして、そして長い間放置をして、地盤がほぼ安定したという状態で、その上に載せました土を撤去して、そしてタンクをつくるという工法と、今回のようにプレローディングと称して、前もってかける土の荷重を、タンク重量、油の内容物について約三〇%前後やってプレローディングをいたしまして、前荷重をして、そしてタンク本体をつくって中に水を入れまして、油より比重が重いですから、それを荷重として使うという工法をとりますと、水を荷重としてとるその工法であれば、事前の十分な沈下がございませんので、どんどん沈下をしていくわけです。今回その工法であったと思います。要するに、地盤が十分改良してありましたら、少々上のタンク構造、溶接その他が程度が悪くても結構ですが、そうじゃなくして地盤が十分改良されてない状態で、タンク自身を水の容器として、荷重として使う場合には、かなり問題があるんじゃないかと思います。  この技術については多くの異論があると思いますが、参考までに申し上げますが、沈下が〇・五%ということを盛んに言われますけれども、一万キロリットル以下のタンクで二%、三%の沈下があることは、私たちは前から知っておるわけです。要するに沈下のパターンとの地盤とのかね合い、そういうようにお考え願いたいと思います。
  62. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 先ほどちょっと先生お話しになっておられたのですが、私も現地を見まして、なるほど防油堤の中に徐々に油がにじみ出てくるならば、それは防油堤で事足りるかもわからないけれども、油、水の性格で、あるいはぽっと一カ所が破裂したというような場合には、ああいう防油堤が一体どれだけの役割りを果たすであろうかということをしみじみ感じたわけなんですが、何重くらいの防油堤にすべきか、さっき波返しの話もあったようですが、タンクによって違いましょうが、構造としてはどうあるべきでしょうか。
  63. 保野健治郎

    保野参考人 何回も出ますので、それじゃ図をもって御説明いたします。  まず、圧密の方法なんですが、先ほども申し上げましたように、防油堤というのは何のためにあるかを考えますと、油面が非常に高いところにあった場合、いまのような高さとか少々の強度ではもたないわけです。したがって、ただ油の漏れるのを防油堤だけで考えるという発想をわれわれはしておりません。出てくる油のエネルギーをどこかで減殺する必要が絶対あるんだということなんです。要は、油がにじみ出ることは避けられないというように私は申し上げました。いまのように底板をすみ肉溶接しておいて、地震の国であるわが国で、繰り返し応力がかかって、そこから漏れないというようには全然考えておりません。そういうように考えておる技術者はほとんどいないと私は思いますが、もしおられたらその人の方が私はおかしいと思います。本来漏れる構造になっておるわけです。それはただし耐用年数ぎりぎり、もしくは耐用年数をはるかにオーバーした段階ですから、今回のように一年ぐらいで漏れるというような問題では全然ございません。したがって一番大切なのは、まず先ほど言いましたようにタンクの自重、内容物、それに相当するそれ以上のものを荷重としてかけます。これをやりますと沈下してくるのですが、そうして地盤を切ってタンクをつくる、こういうことであるわけです。  もう一つ大切なことは、この図は地層の変化と沈下の状態を示しているのですが、ボーリングをいたしまして、土質を改良しなければならぬというのを黄色で示しておりますが、一番下の地盤はほぼ改良しなくてもいいであろうというようにわれわれ考えて、サンドパイルを打ちましてやりましても、未改良部分が思わぬ状態で沈下をし始めますと、これが主たる原因で、過去国内でも国外でも、全然タンクを使用していない以前から、今回と全く同様な状態で、防油堤の底も全部そっくりさらって壊れておるわけです。その一番の最大の原因はどこにあったかというと、未改良の部分が思わぬ状態で進行し始めていって、そのため上の改良した軟弱地盤も傾いたという状態と同時に、もう一つ非常に大切なのは、このバンキング部分の構造にあったわけです。  要するによく言われておりますエッソレポート、エッソの石油会社が報告しておりますレポートは、漏れた段階でフラッシュアウトするんだ、要するに先ほどから資源問題で砂ということが言われておりますが、砂ではこれは耐え得ないわけです。要するにこの流速に対して、このエネルギーに対してもつ材料は何かを考えなきゃならぬわけです。要するに良質の砂を置くということが根本的な疑問だと私は思っております。  それでは、望ましい地盤構造は一体何か、要するに防油堤を助けるものは何かということを申し上げたいと思うのです。この図が私の言っております望ましい地盤構造の一つなんですが、今回の地盤構造は、川砂が敷いてあって、真砂土があって、ここにぐり石が置いてあります。このぐり石の形が逆の台形になっておるのですが、私はこのぐり石の目的を知りません。そしてアスファルトなどでモルタルがしております。その下にサンドマットといってとにかく砂を敷いてあるわけです。その下にサンドパイルを打っておるわけです。水が上がりまして抜けていったわけです。今回のは側板の下にブロックがありますが、一番のポイントはこういうような良質の砂、真砂だけでいきますと、油の流れには一たまりもないわけです。  それでは従来どういうことがやられておったか、こういうことを申し上げたいと思うのですが、これはよく言われるエッソレポートに載っておりますのは、今回のとはちょっと違いますが、主として砂、真砂そういうものでやりまして、ヨーロッパで三回も事故を起こしましたエッソが反省をいたしまして、独自のエッソの規格をつくったんですが、そこの中で推奨されておるのは、アニュラプレートの下部に砕石を置いて、そしてなおかつ底板部分に砕石を置き、土砂を置いて、なおかつアスファルトモルタルをやって非常に注意しなければならぬのは、要するにこの砕石は空隙がかなりございますから、入って流れてきました油は、土砂ににじむものも少しはあるでしょうけれども、大部分はアニュラプレート部分のぐり石を通ってきて、ここで発見をできるという点検穴がある。これは少々流れましても比重が非常に重いですから、砂と違いますから、区切りがございますから、その漏れを発見するということと、許容沈下量をエッソはかなりシビアに持っていっておるわけです。エッソでも一種類ではございません。三種類の規格がございます。それについては詳細省きます。  それでは日本におけようなところであれを使うべきかということになりますと、今後の課題として検討する必要があると思いますが、むしろああいうものよりは、わが国における問題は地震と雨水の問題が非常に重要であると思うのです。防油堤以前にこの基礎地盤で油をどのように処理をするかが、防油堤に対する前の策として非常に大切なんです。それは砂、土砂、そういうもので結構ですが、できるだけ均一のものがむしろいいかと思いますが、問題は、宅地造成と同じように従来圧密された地盤は側方の流動、横側へはみ出さないと言われておりますが、実際はこういう工法をやりますとふくれ上がってくるわけです。タンク沈下しますと、側板直下のブロックと地盤との間に雨がどんどん入ってきて、どんどんタンク沈下させる、局部洗掘をしてくるわけです、この工法ですと。それに対して、よく造成でやりますように擁壁をやりまして、タンク周辺に全部リングをやりまして、ぐり石を置いて、そして水抜き、油抜きをやるということが第一点。これは当然のことながら前もって油を早く検出しようというこのエッソの思想と同じなんですが、もう一つは、側板部分と底板部分にシールをする、雨じまいをするということが非常に重要であります。いろいろな新聞で見ますと、ほかのタンクでも掘れておるのがあったと思いますが、それは雨のこわさを非常に知らないからであります。参考までに申し上げますが、いろいろなタンクで、家と同じように雨どいを持っておる、そういうものはございます。私は非常に重要な部分であると思うのです。  もう一点は、沈下は防げませんが、私が言いました非常に危険な第四のパターンの沈下、要するにアニュラプレー卜部分が側板方向に波を打つというような沈下を防ぐ方法は、一つとしては鉄筋コンクリートのスラブを底板に打つ。それをやりますと、沈下ですから、コーンルーフタイプの場合に二百分の一を超えましても、Aランクのタンク溶接をやりますと、一応タンク自体は問題ではございません。しかし、私の個人的な考え方から申し上げますと、軟弱地盤は、改良した後タンクを使用して、そうして後からジャッキアップしたり砂を補給したりというようなことは、できるだけ避けるべきであるという考え方を持っております。要するに、病状が悪いなら悪いなりで、じっとしておくということが非常に大切です。土は二度と掘り返さないということ、水や油で洗掘されないということが非常にポイントであるわけです。そういうことを前提にして防油堤をやりませんと、かりに一〇〇%やりましても、油のエネルギーをこの擁壁で取るということが非常に大切です。  参考までに言いますが、アスファルトも何もなくて、ただ砂利だけで雨を処理をしておるところもあります。私は生活の知恵であろうと思います。それぞれはすでにこういう砕石を使うのは何年も前から持ってやっておるわけです。ただこういうコンクリートスラブをやっておるのはございません。しかし、私の個人的な見解から申し上げますと、ここに鋼管ぐいだとかあるいはコンクリートパイルを打つということには非常な懸念を持ちます、地震がある以上。特にコンクリートパイルの場合には電気防食を考えませんと、パイル自身に一年半くらいで迷走電流によって穴をあけることがございます。要するに、一たんつくりますと地盤は二度と見ることができないのです。要するに私は、軟弱地盤の場合には、つくったら二、三十年かかっても最終沈下量は少なくとも二、三百ミリ以内、そうあるべきだと思います。タンク建設中に水を張った段階で四百ミリも五百ミリも沈下するという工法は、私の立場としてはとりかねると私は思います。  そういうようなことで、それがないと幾ら防油堤を一〇〇%とっても二〇〇%とりましても、距離をうんととりましても、恐らく、もし今回はしごがなかったら五メートル、六メートルの洗掘はしておると私は思います。過去そういう例が実際に国内、国外ですでにございましたから、防油堤だけで油を処理するという考え方はやめるべきだ、私はそういう考えです。ですから私たちは三段です。地盤構造、防油堤の中の間仕切り、それと防油堤の外側、それからその亀裂に対しては、コンクリートを材質として使う以上私は防げないと思いますから、土のうで処理をすべきだと私は考えます。
  64. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 続いてもう少し教えていただきたいのですが、検査機構不備について先生御指摘がありましたが、確かに水島の場合にも、何ら検査をすることがない、そのまま企業が勝手にやってしまうのだという指摘が出ておりましたが、検査機構をつくるとすれば、どういうようなものが必要になってくるでしょうか。
  65. 保野健治郎

    保野参考人 簡単に申し上げます。  私は、日本の技術のレベルというのは圧倒的に企業が持っておると思います。大学及び監督官庁は、ここ数十年来、人を得なかったと思います。そういう意味で、私を含めまして、いま大学が一番学ばなければならぬのは、メーカーの技術であるわけです。問題は、そこが特許であったり、あるいは企業秘密、ノーハウであるわけです。幸い、と言っていいかどうかわかりませんが、私が万国博覧会のときに国内外の書類を大方チェックした段階で、トップ技術者といろいろな議論をした上で私がまとめたもの、あるいは私のノーハウがあるわけですが、そういうようなものは、国がまず重要なものは、特許は買い上げるべきだ。その上で、そうなりますと、各企業におります技術者がそれを使って検査することもできますし、別の組織でそれを一斉点検をすることもできる、そういう機構にするべきだと私は思います。私は、一番大切なことは、技術者と現場の消防職員、それにまず学んで、それと同時に、国の機関とが関連を持って、その上に学術関係の人が参加することだと思います。しかし、残念なことなんですが、技術を持っておるグループは、どちらかというと、いろいろと批判があると思いますが、我田引水になって自社に有利になるようなことがあるだろう。そうしがちだ。そういう関係から、審議会その他でもよく学識経験者として大学の先生あたりを使われますが、それは公平さは保たれても実力は伴わない。要するに公平な立場と実力とをどう兼ねそろえるかということですから、特許を買い上げて、それをその組織に与えて、それで監督その他をやるべきだ。特に基礎部分については十分やらなければならぬと思いますし、いろいろな分野の人たちをそこへ結集する必要が私はあると思います。特に個々のコンビナートを検査する段階では、その企業の基礎的な資料をある範囲まで提出しなければならぬ。企業秘密はその委員会は守るなら守るといたしましても、その限度はどうあるべきかということを国において早急に私はまとめられるべきだと思います。
  66. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大変ありがとうございました。  それから、もう時間が少なくなりまして、本当は私、田尻先生にもいろいろお伺いしたかったのでありますが、先ほど来の御指摘で、いわゆる内湾の防災法であるとか、あるいはタンカーの規制法とか海上消防法とか水先案内法とか、いろいろな御指摘がありましたし、いまタンク以外の問題で、コンビナート、港湾等について、私もお話を聞いていて本当に慄然としたわけです。またいずれ機会を改めてお伺いしたいのですが、一点だけ、先ほどの部長さんのお話では、消防法が海上に及ばないんだ、それから海上保安庁も第一義的にこの責任はないんだというふうなお話がありまして、現にせんだって東京湾内のタンカーの炎上等あったわけでありますが、これは一体現行はどういう対策になっておるわけでございましょうか。
  67. 田尻宗昭

    田尻参考人 お答えいたします。  消防法には防火対象物と消火対象物とございますが、その対象物の中には埠頭に係留された船舶以外はございません。したがいまして、それを根拠といたしまして、海面の消火作業、海面防災ということにつきましては、消防法上の権限は一切海上に及ばないわけでございます。ただ、消防庁にも消防艇がございますが、これはあくまでもそういうはっきりした区別の上に立って、埠頭に係留された船舶については消防活動をやるということでございます。先般第十雄洋丸の事件が東京湾でございましたけれども、こういうような場合に海上保安庁が海難救助という名目で消火活動をやっておるという実態でございますので、これも非常に苦肉の策でございまして、こういう場合に民間の作業員が協力をしてくれた場合、海上保安官に協力してくれた者に対する補償がございますが、これが最高三百万でございます。ところが消防法に基づく協力でございますと、最高一千万まで、休業補償まで見れるということになっておりまして、そこには格段の相違がございます。しかも海上保安官に協力した者に対する補償については、ほとんど発動された実績はございません。そういうことで港湾の防災は、港湾の消火活動はもちろん、内湾の消火につきましては、ほとんど災害対策協議会でやわらかな協力を企業にさせる以外に、法的に動員を命じたりあるいは資材の調達を命じたりする権限はございません。その点、特に石油港湾内ではほとんど港湾の中に企業が桟橋を突き出して、タンカーを受け入れて、そのタンカーの船待ち、停泊、結局は港湾を石油企業が独占をして使用しておるわけでございますから、いわば企業の裏庭といいますか、むしろ表玄関と言うべき水面に、実は企業の防災責任が及ばない、消防法が及ばないということは、これは何としても重大な基本的な矛盾である。早急にこれは是正されなければならぬ、そのように考えております。
  68. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 終わります。
  69. 渡辺惣蔵

  70. 土井たか子

    ○土井委員 まず、本日大変お忙しい中を御出席いただきました参考人の皆様に御礼申し上げて、質問に移りたいと思います。  まず最初に、倉敷市の消防本部の岡野消防長さんにお尋ねしたいと思うのですが、例の昨年十二月十九日の水島に起こりました三菱石油の油流出事故について、公害対策でなしに、災害対策基本法というのが発動されたかどうか、それをひとつお聞かせくださいませんか。
  71. 岡野計太郎

    ○岡野参考人 お答えします。  災害救助法は発動いたしておりません。
  72. 土井たか子

    ○土井委員 その発動がなかったということについては、消防長さんはどの辺に理由があるというふうにお考えですか。また、そういう発動は必要性なしというふうに御認識なすっているのですか。いかがでございますか。
  73. 岡野計太郎

    ○岡野参考人 救助法の発動につきましては、市の幹部が初め県へその内容を、さらに国へも県かなお問い合わせをしたと思いますが、その対象となるのは、海上流出という油そのものによって起こった被害に対して云々ということが明確になっておりませんもので、そういう点から結論が出ないままで、ついに災害救助法の発動には至っておりませんので、そういうふうに御承知願いたいと思います。
  74. 土井たか子

    ○土井委員 災害対策基本法であるとか、いまおっしゃっている救助法等々については、自治体でそれぞれ取り扱いが一律じゃないと思うのです。ただ、中には、海上における船舶の座礁であるとか衝突等々のいろいろな事故をめぐります災害についても、計画を具体的に講じていらっしゃる地方自治体もあるようであります。  この席に、たまたま東京都の公害局規制部長でいらっしゃる田尻参考人お見えでございますから、少し、この災害対策基本法との兼ね合いで、自治体が、いま海上におけるこういう油流出事故あるいは災害等々に対してどれだけのことができるかということを、御存じである限りにおいて、ひとつお聞かせくださいませんか。
  75. 田尻宗昭

    田尻参考人 ただいまお尋ねの災害対策基本法は、これは私も、全国的に見まして非常に不思議な問題点でございます。と言いますのは、どうも、この法律が余り活用されていない、生きていないわけでございます。しかしながら、それは非常にいけないことであると思います。  と言いますのは、災害対策基本法の中に、大規模な火災、爆発ということが盛り込まれております。それに基づきまして、災害対策基本法に基づく地域防災計画というのが各自治体には定められております。その地域防災計画の中に、海上の応急対策計画ということがつくられております。東京都におきましても、海上における応急対策計画をつくっております。その中に、河川や海上における船舶の衝突、座礁による油流出、火災とはっきり定義をしております。したがいまして、海上における、あるいは港湾における船舶の火災、爆発等によりまして、あるいは油流出によって、沿岸住民が被害を受けるという場合には、当然災害対策基本法が発動されてしかるべきではないか。その発動の中で、企業に対する人員の出動要請、命令、あるいは資材の調達命令等が発動されて、企業責任を柱とするいろいろな応急対策が十分発動されなければ、地域の安全は守れないと思います。そういう意味で、災害対策基本法が、海上部分におのおの計画をつくりながら、実はほとんどそれが発動されていないというところが、これは大きな問題であろうと思います。  今度の三菱石油事件におきましても、私は、少なくとも海岸に打ち寄せた油の被害の除去につきましては、災害対策基本法は何の疑いもなく発動されるべきであったと思います。ただ、災害対策基本法の海上部分の計画が、なぜこのように死文化しているかという点につきましては、若干の問題はあるようでございます。たとえば、自治体の行政管轄が海上のどの範囲まで及ぶかということがまだ明確でないということ、それから海上における事故においても、どの程度事故までその住民に影響があるという認定をして、災害対策基本法を発動するかという問題、あるいは自治体が実際になかなか海上における勢力を持ち得ない、非常に貧弱な体制であるということでございます。しかしながら、これらの点は、おのおの明確にできる点でございます。特に、自治体におきましては、港湾管理者を自治体の長が兼ねておりまして、港湾の中では、港湾管理という面から、いろいろな船舶を所有しております。また、海洋汚染防止法におきましては、港湾管理者は、みずから公共岸壁や公共桟橋における油流出は第一義的な責任を負って、この油の除去を行う義務を課せられております。  そういう意味から、この災害対策基本法は早急に見直しを行われた上で、海上の災害対策を充実して、そうして明確でないところは明確にして、自治体が住民とともに企業の責任を明らかにしながら、この大規模な油流出等に対処できるように体制を整えなければ、今日のような事態を救うことはできないと思います。
  76. 土井たか子

    ○土井委員 いまの田尻参考人の御発言を承っていて、つくづく思うわけなんですが、確かに危険物を積載した船が出入りをする、特に港則法で特定港として指定されている場所を持っている自治体でも、そのような認識がなかなか具体的になされていないという例があると思うのです。  大変酷なようですが、私、再度、倉敷の消防長の岡野参考人にお伺いしたいと思います。  水島港については、いま田尻参考人の方から出ましたような意味における災害時の計画というものを具体的にお決めになっていらっしゃるかどうか。いかがですか。
  77. 岡野計太郎

    ○岡野参考人 いまの海上におきます災害対策についての計画でございますが、これは災対法に基づきます地域防災計画、その中で、先ほどもちょっと触れたと思いますが、臨海工業地帯災害防災計画として別途の項目を設けて、実は災害対策計画を持っております。しかしながら、その内容がいささか抽象的でございます。しかも、その海上災害についての問題と陸上災害についての問題が、今回のような同時災害に対しては実は明示がございません。  したがいまして、今回の事故を反省いたしまして、先般、一月の十日に、市といたしまして防災会議を開催いたしまして、そして従来の地域防災計画の全面的な見直しをやらなければいかぬ、しかもその中に、今回のような陸上から海上へ及ぶ災害、これはかつて例のないことでございましたが、こういうことが今後あり得ることを予想しなければいかぬ。それからさらに、そういう場合に、この種のものが災害であるのかないのかという定義づけの問題もございます。そういう問題もございまして、とにかくそれが災害であろうとなかろうと、いわゆる被害を受け、発災をしたということには間違いない。したがって、それを防災する責任は地域の市町村長にある、こういうふうに考えまして、それらのものの対応策としては、これを契機に、地域防災計画の中に、コンビナート防災について改めて具体的に、そして海陸の問題についてはどうすべきかということについて、県と協議を持ちながら、県の趣旨に従って市の対応策を考えよう、そういうことで、先般県の方もその会議を持たれまして、専門部会を設けまして、私どももその部会の一員に指名を受けまして、コンビナート災害対策部会というもので陸上、海上、特に海上問題については今後対応しようということで、現在作業中でございますので、よろしくお願いしたいと思います。
  78. 土井たか子

    ○土井委員 水島港というのは特にもう卑近な例ということになったわけでありますけれども、コンビナートにある港というのがどういうふうな意味を持つ港であるかという認識が、なかなかこれは十分になされてないということが、いまの御発言を承っていても私はわかる気がするのです。それに対する防災計画が、やはりそれを考えた上での防災計画として具体的に講じられていない。事故が起こって初めて腰を上げて、ひとつ検討してみようということになるという、そういうふうなことなんかを承っていると、やはり、水島の例をいまこれから取り上げて、どういう方向全国それぞれコンビナートの中身を再検討するかということについての、一つの大事なポイントをここで知らされた思いがするわけです。  さて、けさほどの新聞を見ておりますと、消防庁の方でおつくりになった三菱石油水島製油所タンク事故原因調査委員会というのがございますが、その委員会委員長がこのことについてはっきりとお出しになっている。水島事故のいわば原因の一端がここにあるのではなかろうかと思われる節の発言があるわけです。これは消防庁の方はよく御存じでいらっしゃるわけでありますが、例の水張りをいたしまして検査をする。その水張り工法に従って、四十日水を張って見なければならないところを、わずか四日で切り上げてしまう、水を抜いてしまった。そのために工期を十分の一に短縮をして、とにかく早く大きなコンビナート建設というものを急がなければならないという姿勢がそもそも問題だったということになっておりますが、これは四十日どうしてもしなければならない水張りをわずか四日でとどめて、そうして水を抜いたという実態は、きょう御出席参考人でいらっしゃる岡野さんはよく御存じでいらっしゃったわけですか、いかがですか。
  79. 岡野計太郎

    ○岡野参考人 私、新聞の方は存じ上げておりませんけれども、いまお尋ねの水張りの件につきましては、明瞭に日時を追って御説明を申し上げますと、水張りを四十八年の八月七日から開始をいたしております。これは最初四メートル、ベース張りをいたしまして沈下状況を一応見た、異常がないので、あと二メートルごとにかさを上げ、沈下状況を見ていくというやり方をして増水をしてまいっております。そうして、十一月の三日にその水張りを完了いたしました。そして、消防署側の水張り検査を十一月の六日に実施をいたしております。それから十一月六日の検査以後から水抜きを開始いたしまして、水抜きの完了いたしましたのが十一月二十九日、この間水張りから水抜きまでに要しました日数は百十三日でございます。特に重量のかかっておった期間と申しますのは大体八十日前後でございます。それから、水抜きだけに要した日数は二十三日を要しておるのでございまして、したがいまして、ただいまの委員長発言と申されたと思うのですが、政府の委員会の方で水張りをして四十日必要であるというのは、満杯して四十日云々ということかどうかということであろうと思いますが、そういう問題について、実は消防法上、これは政令の方の規制がございますけれども、何日間水張りをするという規制が実はございませんので、お答えをいたしておきます。  以上でございます。
  80. 土井たか子

    ○土井委員 これは消防法上の問題ということでは具体的にはないようであります。この地盤関係工事の設計に当たられたのは千代田化工建設会社でありますね。この千代田化工建設会社の方の独自工法でもって、この設計の中身を見ると、水をいっぱい張ったままに放置しておく水張り工法については、その期間を設計上四十日というふうに決めておやりになったようであります。  そこでお尋ねしたいのは、消防法上の基準よりも何より、そこで立ち会いをして具体的に検査をなさるわけでありますから、その設計の上できちんと定められている設計基準に従って具体的に工事が進められたかどうかということをお確かめになるのも、一つは消防庁としてなすべき検査ではなかろうかと思うのですが、ここに言うところの千代田化工建設会社が持っていた設計に従って、具体的にこの場合には検査をなすったかどうかを、ひとつお尋ねをいたします。
  81. 岡野計太郎

    ○岡野参考人 お尋ねのように、設計書を担当署の方で事前に十分説明を聞いて確認をいたしておりまして、したがいまして、その満杯をしたままの日数イコール四十日ということを実際にはやっておりません。先ほど申しましたような徐々に水張りをしながら、中間レベル、ほとんど満杯、八〇%量以上の期間を四十日以上見ておくというふうな見方で、この場合は見ておるというふうに承知いたしておりますので、御了承願いたいと思います。
  82. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、再度確認をしておいて次に進みますが、そのような検査に当たられて、現に千代田化工建設会社からの説明があり、その説明に基づいてお確かめになったということでありますか。また、その説明時には満杯で四十日というふうなことを言われ、しかし八〇%以上ならばそれでもよかろうという、協議の上でそうなすったということでございますか、いかがでございますか。
  83. 岡野計太郎

    ○岡野参考人 この水張りに関しまして、私どもが直接千代田化工から説明を受けたことは一度もございません。三菱石油の方から申請書として持ってまいったものについて説明を受けたわけでございますので、その点御了解願いたいと思います。
  84. 土井たか子

    ○土井委員 事情ははっきりしました。  さて、それではひとつ、ほかの問題に移る前に、この問題で続けてお尋ねをしたいと思います。  保野先生にお尋ねしたいのですが、先生は直接この事故原因調査委員のお一人ではないわけでありますが、ひとつ先生のお立場から、この水島事故についての事故原因というのは何であるとお考えであるかということをお聞かせいただきたいことと、それから、こういうふうな問題をやはり総合的に判定しなければならない、その総合判定基準というものは一体何であるかということ、この二点についてお尋ねしたいと思います。
  85. 保野健治郎

    保野参考人 それでは図によってお答えをいたしたいと思います。  まず、総合判定基準から申し上げます。  私自身の個人的な見解になりますが、水島の二七〇が事故が起こった後、竣工検査の段階で百二十五ミリの不等沈下があったということを言われております。それが事故が起きたので、その不等沈下に対する十分なマスコミへの説明がなかったために、一応危険と思われる百ミリ、百ミリを超えては危険なんではないかということで、一斉に全国のいろいろな沈下量を調べられて、それがたとえば五百ミリであるとか三百ミリであるとかいうように、沈下量の量そのものがいろいろと言われたと思います。  それは人間の健康診断で言えば、たまたま健康であった人間がぽっくりいった、ところが健康であった死ぬ前の日で、そのときに体温が三十七度五分であったと仮にいたします。そうすると、一般的に言うと、体温がどんどん上昇すれば人間の体にとって有害であるから、体温が高ければ高いほど危険なんではないかというように考えるかもしれないと思うのです。例として非常に適切でないかもしれませんが、もし体温ということについてわれわれが十分な知識を持っていないとしたならば、たとえば死の直前にあって体がもう冷えてきている、そういう段階で仮に三十五度あったとすれば、あるいは三十四度あったとすれば、それはむしろ逆に危険な状態であるというように私は思います。要するに、人間の体を判定する場合に、体温だけでなくして、脈拍であるとかあるいは肺活量であるとかあるいは血圧であるとかあるいは胸部のレントゲン検査であるとか、いろいろな総合的な健康診断が必要だと思います。  それと同じように、私の総合診断というもの、判定というものは、不健康であるかどうかという状態をまず見る。結局、危険な状態に置かない。信号で言えば黄信号です。そういう意味で午前中申し上げましたように、まず、よくタンク沈下ということが言われておるわけであります。これがいま不等沈下という言葉で最重要視されているのですが、実はそうじゃなくして、沈下は全然してなくても、タンクの底板から漏洩をすることがございます。そうしますと、フラッシュアウトして一挙に構造が壊れますから、当然三番目の地盤構造ということは非常に大切であるわけです。沈下ゼロでありましても、地盤構造が基礎のすべり破壊もしくは基礎の沈下というような状態がございましたら、それは黄信号と考えるべきだ。もう一つは、沈下が安定をしておるかどうか、進行状態はどうか。これは病状を考えられればわかると思います。そういうように、少なくとも九項目以上のものがあって初めて総合判定というものをやるべきであって、それはあくまでも黄信号ですから、ものによりましてはこれを超えても別に問題はございませんけれども、とにかく人間をタンクに置きかえていただきましたら、タンクは不健康であっても使うというのじゃなくして、自分が健康になりたいと同じように、タンクを不健康な状態からより健康な状態にということを私は提言しておるわけです。  そういう意味で、主として砂でやられております地盤構造につきましては、先ほど申し上げましたような望ましい構造に、十分いまから改良ができますので、それをやるべきだ。極端な底板を切ったり、そういうことは私は避けるべきだと思います。現実に、パーセントで申し上げますと一%を超えたようなものを十八年間使った底板を、私のところへある役所から持ってこられましたが、沈下のデータから総合判断をいたしまして、私の許容沈下以内でございます。それを底板を切るということは大問題だと思います。  一番大切な事故原因について、私はその立場にないのですが、いままで発表されております事柄あるいは過去の事故がいろいろ国内外であります。それともう一つは、現在われわれが倉敷コンビナートをいろいろと調査をさしていただいております。これは京都大学の堀内教授と私と二人でやっておるわけでありますが、その範囲から、私自身の個人的な見解として、次の点の資料がそろえば次のことが予測をされるという方法で、事故原因の一端を申し上げたいと思います。  先ほどからどの新聞かは私存じませんが、水張り沈下曲線を言われておると思います。一つ誤解になっておるんじゃないかという点があるのですが、今回の工法は、水を張って検査をしておるのじゃないのです。先ほど申し上げましたように、地盤改良はタンクの自重あるいは中の油の量、それらの約三〇%程度をプレローディングとして、前荷重としてやって、サンドパイルを七メーターと十七メーターと二本打ちまして、そして水を抜く、その砂ぐいの工法は千代田の特許です。そういうような荷重をやって、あとタンクをつくって水を張りまして、その水を張る前にタンクの底板その他のバキュームテストをやります。これは溶接個所が十分であるかどうかをテストするわけです。それが不十分でありましたら、溶接をし直すわけです。  そうやって水を張っていくのは、それは水張り検査ではございません。水を荷重として使っておるわけです。従来の工法のどこが違うかといいますと、従来の工法でありますと、少なくともタンクの自重及び油の重量の九〇%とかあるいは一〇〇%、あるいはものによりましては一三〇%以上、要するに三〇%の余盛りですが、少なくともそれ以上のものをやって十分圧密をして、そしてその圧密をやって放置期間を一カ月とか二カ月とかやっております。現実に私がその後いろいろと勉強さしてもらっておるのですが、二〇〇%の荷重をかけたものがあります。そうやってなおかつ数カ月間も放置をしておきます。それをやりますと、土盛りをしました土が亀裂その他を生じております。そこですでに不等沈下の将来の部分の大部分を取ろうということであります。将来予測されるのが、たとえば三十年、四十年で仮に六百ミリであったとしますと、少なくとも八〇%とか九〇%のラインまで持っていくわけです。そのときにかける荷重を一〇〇%以上にするということが従来の工法です。今回の工法は、先ほど言いましたように三〇%をやって、その後フル荷重として水を使っておるので、水張り検査ではなくして、水荷重であるわけです。  その一つのモデルをかいたわけですが、これは何も二七〇のタンクではございません。たとえばタンクの側板の下側、アニュラプレートのところを仮に四点ぐらい測定しますと、実際は十二点、それ以上やっておりますが、横軸に日数をとりまして、水をずっと張っていきます。そうしますと、六〇%くらいのところがぶくっと、縦が沈下量ですが、下がってきます。いま新聞の記事で土井議員さんが言われているのは、このフル荷重にして四十日間放置すべきかどうかは、ボーリングをして設計段階で決めることであるわけです。そうしますと、いつやめるべきかという判断はどこでやるかというと、ここが技術の一番むずかしい点なんですが、少なくとも測定をしました水張り沈下曲線が、測定器具が何か知りませんが、もし水準測量の器械であれば、一ミリの誤差以内、それが何十日間も続くべきだと私は思います。要するにそれ以上はもう誤差の範囲で、測定できないレベルになっているかどうかという、そこがポイントだと思うのです。それをきょうの新聞では、まだたとえば一日に二・五ミリとか五ミリとか沈下が進行しているにもかかわらずやめたのは何か、こういうことを言われているのだろうと思うのです。もし私であればそういうことはしない。私の個人的な見解では、千代田の技術者はそんなレベルではないと思います。もっと別の理由があって、これは中止をせざるを得ない何かがあったと思います。技術者の常識としては、ちょっとうなずけない点があると思います。  その記事の中で、私は漏れている点が一つあると思うのです。それは、水を全部張った段階で初めて水漏れの検査をしておるわけです。しかし非常に大切なことは、設計をするときにある仮定があるわけです。その仮定に応じて地盤をつくり、バンキング構造をつくり、タンクを建設するわけです。しかし、その仮定が十分満足をされているかという一〇〇%の検査は不可能なんです。もし水を抜いたらどうなったかというと、定板の部分にリバウンドを起こしているわけです。タンクの底板と砂とが間があいているわけです。その量が大きければ大きいほど、私の個人的な見解では、圧密沈下が十分ではない。もし、先ほど言いましたような水を荷重でやるとしまして、予想外に沈下がぐんぐんときたとします。よくやることなんですが、設計の倍ぐらい、予想の倍ぐらい沈下することがあります。そうなった段階では、タンクは途中で補修しなければなりません。たとえば危険な作業ですが、ジャッキアップしなければなりません。  先ほど私が申し上げましたように、土には二つの原則があるわけです。乱してはならない、掘り返してはならない。それからもう一つは、水、油で傷めてはならない。この二つの点があるわけです。そういう意味で、水を荷重として使うということは、沈下量が極端に大きくなって、一般に常識としては、こういうように急激に沈下したときに不等沈下が始まっておるわけです。  問題は、よくはしごの問題が言われていると思います。第一点、はしごがいつ建設されたのか。第二点は、そのときに水のレベルはどうであったか。第三点は、タンクをつくるときのグランドレベル、バンキングのレベルは一体幾らであったか。少なくともこの公表がされれば、現在のタンクはあるのですから、それから、どのように沈下をしていったかを追うことができるし、その周囲のデータその他がありましたら、どういう沈下のパターンであったか、そういうことができると思います。  もう一点は、タンクの底板を切りまして、中をボーリングをして測定をしますと、最初にボーリングをしましたデータとかなり違っておると思います。強度がふえてきておると思います。その強度がふえておるところが急激な沈下を起こしたのであって、今回のようにわずか六カ月そこらで数百ミリと沈下をするのは、私は異常な現象であろうと思うのです。  もう一つ、非常に私の個人的な見解として注目したいのは、地盤構造でぐり石そのものは横にずれております。いままでの学者の言っておった圧密理論ですと、荷重がかかった土についてはそのまま沈むのであって、横に流動しない、こう考えておりました。側方流動というのはほとんど起こらないと考えておりました。今回、はしごの真裏、破壊部分の真裏ですが、その段階で、当初、逆の台形につくられておった。これは正確ではございませんが、ぐり石そのものはあったのですが、そのぐり石そのものがぐっと横へずれております。試験掘りをしたところでは。この動きは何であったかというと、単にその新聞に載っております水張り沈下曲線のように下に沈んだだけではなくして、この地盤構造が横にも移動しておる。移動したものは何かというと、ふくらんでおるわけです。特に、新聞にありましたように、隣の二六〇のタンクで、側板と底板部分の大きな空洞を写しておった写真があると思いますが、結局、もともとあります地盤がふくらんでくるわけです。沈下に追っつかないわけです。そして、雨が側板の下のところに入ってくる。要は私は、非常に大切なことは、事故原因としては、次のようなものを実は考えてみたいと思うのです。  材料及び溶接部分については、今後の事故原因調査委員会の判定にまちます。しかし、私の直感的な考えでは、事故の起こった明くる日の十九日の段階で、情報の入った直後の段階では、これは典型的な事故であって、別に特殊な形態ではない、私はそう考えております。  したがって、まず第一番に考えられるのは、不等沈下が多い。それは、先ほどのような工法をとりますと、必ず不等沈下が起きるわけです、水を荷重として使いますから。  第二番目はメンテナンス、維持管理の問題があります。雨じまいがどうであったか、雨の問題です。雨を軽視するいまの設計方法は、私は不満であると思います。水と油との違いがありましても、上水道のタンクは、そんなむちゃなことは決していたしておりません。  第三番目は、先ほど言いましたように砂の横流動、ぐり石の横流動を設計段階で一切考えていない、そういうことです。これは常識を外れたものかもしれませんが、現実に起こっておる。要するに、タンク周辺を全部掘ってみれば、どのように横に砂が移動し、ぐり石が移動し、要するにバンキング部分がどのように動いているかがはっきりする、これが大切であるわけです。  第四番目は、先ほどから言っていますように、私が考えております望ましい構造ではない、フラッシュタイプの構造であります。しかもほとんどこれに近い構造で過去に事故が起きておるということです。私はむしろ、昭和四十五年に起こりました西部石油の事故原因のように、地盤構造は何であったか、ボーリングデータはどうであったか、そこらがエッソレポートのように公的機関から正式に公表されましたら、私は論評を加えたいと思うのです。  第五番目は、維持管理のオペレーションの段階で、当初、どういうような温度で設計をされたか。もし私が重油として使うとするならば、少なくともベントノズルは、私は外して使いたい、ツーツーにしたいと思います。特に重油の中に水がもしあったとすれば、それはボイリングを起こす。ヒーターをかけておりますから、油温八十度と申し上げましても実際には九十度、九十五度の部分が私はあると思います。蒸気がベーパー、水蒸気として空気ノズルのところに行きますから、その部分は一体どうであったか、設計と実際の運転がどういうことであったか、こういうことが詳細にデータとして公表されれば、私はわかると思います。  第六番目は、もし空気ノズルが正常に作動しておったとしたならば、事故後どのように操作をされたか、ミスのオペレーションはなかったか、間違いの操作は事故後になかったであろうか、そこらの詳細データが、私はエッソレポートのようにはっきりと提出をされれば、そんなにむずかしい原因調査じゃないと思います。  私の個人的な見解から申し上げますと、よく新聞に隣のタンクの二七一の底板を切られて、たとえば三十ミリだとか四十ミリだとか空隙があったと言われますが、竣工検査の段階ですでにそのリバウンドがあったと思います。それがタンクであるわけです。この工法はそういうリバウンドなんです。そこを十分お考えにならなければならぬと思います。もしはしごが原因であるとするならば、すべてのはしごを撤去するときに、そのそばにありますぐり石、土がどのように移動しておるか、タンク周辺はどのような砂の横移動をしておるか、沈下はどうであるか、そこらを十分検討されれば私はいいと思います。よく言われておるような状態ですから、この辺で事故原因調査委員会から出されたら、私はそれについてまた御報告をしたい、こう考えます。
  86. 土井たか子

    ○土井委員 もう時間が来てしまいまし、たが、委員長に一言お願いを申し上げたいと思います。  いま参考人の方から、種々原因究明のために必要な資料公開を要求なさる御発言がございました。そこできょうは、倉敷消防本部の方から岡野消防長さんが参考人としてお見えでございますから、岡野消防長さんに、このそれぞれいま言われた資料について、これはやはり検査をなさる立場にいらっしゃる消防でいらっしゃるわけですから、公開をしていただきたい。当委員会にその資料をひとつ御提出願えませんか、それを委員長にお願い申し上げたいと思うわけであります。
  87. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 岡野参考人、いかがですか。
  88. 岡野計太郎

    ○岡野参考人 ただいま保野先生の御説明になりました原因調査の資料につきまして、私どもの方で公表しております資料がございますが、いまの資料は保野先生御自身の御見解でございますので、私どもの方でやっていただいておるのは、自治省、消防庁の方で、いわゆる政府の原因調査委員会の方で御担当になっていらっしゃる、その委員長さんの御発言以外はお断りするというふうに、この点はっきり抑えられておりますので、この点につきましては御了解が得られましたら、私どもの知っておる範囲の資料を御提供申し上げたいと思いますので、消防庁の方とよく協議をさしていただきたい、かように思いますので、よろしくお願いします。
  89. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 いいですか。
  90. 土井たか子

    ○土井委員 不本意でありますけれども、いまの御発言の中には種々問題になる点もあるのですが、これは時間のかげんからしまして、それをやっていたら、もう切りがないです。時間の方がそれを許してくれませんから、委員長、あと一問だけ、もう時間が来てしまいましたが、簡単なことですから、簡単にお答えいただいて私終わりたいと思います。  いま種々原因究明についても、どの辺に原因があるのかということでの質問であり、またそれに対する御意見も聞かせていただいたわけなんですが、先ほど田尻参考人の方から、理由はとあれ、出たこの結果に対して責任を負わなければならない企業に、刑事責任が追及されていないということ自身は、まことに重大問題だという御発言があったわけであります。私自身そう思うわけでありますが、田尻参考人にお伺いしたいのは、現に日本の法制上は企業責任を刑事責任として、構成要件がそれには具体的に決められていないということもありますけれども、追及できないことになっている。しかし、これは法制上はとあれ、やはり刑事責任を追及するということが、国民の立場からすると、どうしても大きな問題になってまいります。それをしなければならないと私も思う。しかし、現になされてないというのはどの辺に原因があるというふうに田尻参考人はお考えになっていらっしゃるか、ひとつ個人的な見解で結構でございますから、お聞かせいただきたいと思います。
  91. 田尻宗昭

    田尻参考人 刑事責任はいろいろ検討はされていると思います。その問題点も承知しております。たとえば水質汚濁防止法の特定施設に当たるかどうか、あるいは水産資源保護法に言う過失に当たるか、予見可能性はどうか、あるいは刑法の業務上過失往来危険罪における過失、同じように予見可能性はどうか、そういうような議論があることは承知しております。  しかしながら、私が申し上げたいのは、昭和四十八年の海上保安庁のデータでも、陸上のタンクの破損等による油の流出が年間二十五件もあったという事実であります。つまり陸上からいろいろな過失によって油が流れることは従来からもあったわけでございます。量のいかんを問わず。そういうような現状にあるにもかかわらず、いまごろ、水質汚濁防止法で工場排水口からのppmという程度の規制は十分しておりながら、ppmでははかれないほどの大量の油に対して解釈が確立していなかったということはどういうことなのかということであります。  つまり、私は行政官でございますが、やはり四日市の経験を忘れることはできません。と言いますのは、私たちが企業を水産資源保護法、港則法等で摘発をいたしましたときに、日本で初めてのことだと言われました。しかしながら、法律をどう読んでも、水産資源保護法の有害なものに、工場排水が最大なものとして当たらないはずはないのでございます。なぜ明治二十五年以来この水産資源保護法の条文が適用されなかったのかというのは、私はどうしてもわからなかったのであります。それはたとえば工場排水規制法には直罰はございませんでした。古い公害の法律は実に不備でございました。しかしながら、そういう公害の専門法規に頼らなくても、水の公害を取り締まれる法規は十四もあったのでございます。最も明らかなのは水産資源保護法であります。港則法もしかりであります。  問題は、法律をつくることが問題じゃない。運用する人間の姿勢であります。そのような姿勢がなければ、どんな法律をつくったってだめであります。たとえば水質汚濁防止法に直罰を決めました。しかしながら、残念ながら全国の自治体で、この画期的な直罰条項を適用して告発した例がまことに少ないのであります。手前勝手なことを申し上げますが、去年の十二月私どもが四件を告発したのが、ほとんど唯一の例だと聞いております。そうするならば、まずわれわれは適用できない問題や解釈を繰り返すことではなくて、積極的に適用しなければならないという使命感に立つことが行政の姿勢であります。死んだ法律を生き返らせることであります。私はそういう意味において、まずこれだけの水産資源を殺して、これだけの水産破壊を行った三菱石油の事件が、水産資源保護法の第三十五条にも当たらないということになれば、私は、個人のささやかな犯罪など、従来から海上保安庁が取り締まってまいりました海上の水産資源保護法違反や船舶からの微々たる、微微たるというのは非常に悪い表現でございますが、こういう油に比べれば微々たる事件を千件も千五百件も摘発しているのは、一体法の公平を本当に欠くゆえんじゃないかということを申し上げている。その意味で、事は、何としてもこの責任を明らかにすることが今度の事件の最も重要な対策である。まずここから始めて、責任を明らかにした上でその対策が伴うべきである。足尾銅山以来百年の公害の歴史の中で、一つも責任が論じられないことに私は不満であります。  もう時間がないので終わりますけれども、四大公害裁判で、何十人という人の命を奪い、何百人の人の健康を奪った企業がお金で片がつき、刑事責任が一つも論議されないというところに、私は自分自身の苦しい裁判を闘っている経験といたしまして、まことに不満であります。公害対策を口にするならば、まずこの刑事責任を追及すべきであります。それが公害に対する国民の本当の倫理だ、反公害の倫理であると私は思います。
  92. 土井たか子

    ○土井委員 これをもって終わります。ありがとうございました。
  93. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 議事進行について特に了解を得たいのですが、本会議がこれから、開かれる時間が迫っておりますので、質問者の方も、特に答弁してくださいます参考人の方々も、ひとつ簡潔に、議事の進行に御協力を得たいと思います。  米原昶君。
  94. 米原昶

    ○米原委員 時間ももう余りないようでありますから、私はいろいろ聞きたいことはありましたが、簡単にいたします。  一つ、最初密田参考人にお伺いしたい。  今度の大協石油タンクの火災の問題ですが、この出火原因について大協石油の郡司義博所長がおっしゃったのが新聞に出ておる。「静電気あるいはタンク内部の酸化鉄と灯油から揮発するガスとの触媒作用の両方が考えられる。」こう言いながら「二十九年にも同じようなタンク火災が起きたが、これもはっきりした原因がわからなかった。こうした危険性タンクを設置しておれば不可抗力的に発生することもあり、予防のすべがない。」どの新聞にもこれは出ております。不可抗力であって予防のすべがない、こういう見解を述べておられる。一体不可抗力であって予防のすべがないと言われる根拠はどこにあったのか、これをまず聞きたいと思います。
  95. 密田博孝

    密田参考人 事故の翌日十七日に、私現場へ参りました。そのときにもいまの御質問と同じ質問が記者会見の席で出ました。私はそのときにこう答えました。所長の真意は、われわれが持っております技術なり知識なり経験なり、そういうものからいたしますと、なかなかいま予測ができない、いろいろな原因が出てきますけれども、それではどうも解決ができない、こういう意味の不可抗力という表現をしたので、これは必ずしも正確ではないと思う、雷が落ちて発火した、こういう意味の不可抗力ではないと私は理解しております。こういうふうに申しましたが、いまでもそのとおりに考えております。
  96. 米原昶

    ○米原委員 つまり、いまおっしゃったことを聞いていますと、もちろん原因がなくて起こったわけはないので、原因はあるだろう。しかし、いまのいろいろな設備や、いま予測できる点では予測できないような問題が起こった、そういうふうに言っておられるようであります。つまり、いまの設備自身には不備な点はなかったような印象なんです。最善を尽くしていたけれども起こったという意味では不可抗力である、そういうふうな見解だとすると、私は、あそこに製油所をつくられておること自身がもう否定されなければならぬ。直ちに撤去する、こういう立場からおっしゃるのだったらわかります。しかし、いままでやったのが、一生懸命尽くすべき点は尽くしていたけれども起こったのだ。果たしてそうであろうか。私は、これは大協石油のとっておられる態度として非常に重大な点じゃないかと思います。こういう説明に対して、東京消防庁の予防部危険物課の方の記事も新聞に出ておりましたが、こういう見解を正面から否定しておられるわけです。そうして、たとえば出火の後の消火体制の問題ですが、消火装置が動かなかったのは一体どういうことなのか、やるべき点全部尽くしていたのじゃなくて、動くはずの消火装置が動かなかった、たとえばこういう事態があったじゃないかということを言っておりますが、消火装置が動かなかったというのはどういうことだったのですか。
  97. 密田博孝

    密田参考人 いまの原因のお答えの中で多少不十分な点がありましたが、いまのような作業を、何か特殊な方法で事故の近くに行った、そういうことはなくて、やはり二年も三年も同じような操業を続けておって、突然そういうことが起こったわけでございます。そういう意味も含めましてなかなか予測がつかない、こういうふうな意味でお答えしたわけでございます。  それから、消火装置が動かなかったという御質問に対しましては、先ほどもこれをお答えしたわけでございますが、初期消火の体制は十分にとれたと思っております。また、初期消火もいろいろやったわけでございますが、ただ、残念なことにはコーンルーフのエアホームの吹き込み口が一カ所破損いたしました。これはなぜ破損しましたのか、これもいま県警その他の手でいろいろお調べになっております。それが稼働しておりますれば、もっともっと初期の消防効果が上がっただろうと想像いたします。したがいまして、これには半固定式の消火設備がついておったのが、それが全然動かなかったという意味ではございません。大部分は稼働しておったわけでございます。
  98. 米原昶

    ○米原委員 それともう一点、さっきの説明では、何か聞き忘れましたが、引火点に達するほどの温度ではなくて低かったということをおっしゃいました。その点についてははっきりした証拠が何かあるのですか。
  99. 密田博孝

    密田参考人 データは皆そろっておりまして、それは県警でお調べになっております。タンク内の液温は二十度Cでございます。
  100. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、いまの説明でも、まだ原因究明中でしょうが、何か、いまおっしゃった点を聞いていましても、一応そういうものはそろっているけれども、何か防災体制が不備だったのじゃないか、よく点検してなかったのじゃないかという印象を受けるわけです。その防災体制の方はどうなっていましたか。
  101. 密田博孝

    密田参考人 どういう防災体制をとっておりましたか、具体的に申し上げますと大変時間がかかりますが、防災体制あるいはコンビナートの共同の消火協議会というものも持っておりますが、そういうものにも一応遺漏がなかったというふうに考えております。
  102. 米原昶

    ○米原委員 いやいや、さっき説明されたときに、消火装置はあったけれども何かが抜けていたわけでしょう。そういう点は点検しておられなかったのですか。
  103. 密田博孝

    密田参考人 それは毎月定期的にそういうものの点検もやっておりますが、事故が発生する前までは不備な点がなかったはずでございます。先ほど申しましたように、事故が発生いたしまして、消火中に、東南部にあります一本のエアホームの吹き込み口が故障していることが発見されたわけでございます。
  104. 米原昶

    ○米原委員 それじゃ、そういう問題はさらにもっと材料を得てから質問しましょう。  次々と石油コンビナート事故が発生している中で、石油連盟の方はよく御存じですが、石油の備蓄計画を、いままでの六十日分を九十日分備蓄する、そういうことで実は今国会に法案が出るわけです。非常に重要な問題ですが、こういうような事故が次々と起こっている中で、石油連盟の方ではこの問題についてはどのような計画を持っておられるのか。やはり政府の言うとおり、こんな状態でもこのまま備蓄計画を進めていかれる考えであるかどうか、承っておきたいのです。
  105. 密田博孝

    密田参考人 本日は、石油連盟としての立場では私、参っておりませんので、石油連盟の会員の一人としてお答えしたいと思います。  備蓄に対しましては、これは世界的な、国際の取り決めもございますし、やはり六十日から、できるだけ早い機会に九十日までに持っていかなくちゃならない、これがやはり一つのわが国の責務だと思いますので、方向としましては、やはりこれは全力を挙げてそれに努力せなくちゃいかぬと思うのでございますが、ただ、こういった事故がございます。また、いろいろ外部に災害が及んでおります。したがいまして、いろいろ経済性の問題もございましょうけれども、私は一番肝要な点は、備蓄基地がどういうふうに確保できるか、これが一番かなめになるだろうと思います。現に大協石油といたしましても、それに対応すべくいろいろ基地の調査なり、あるいは現実的な動きを、たとえば長崎県の五島列島あたりでやっておりますが、いずれもいまのところ実現の見通しがついておりません。考え方としては、どうしてもその方向に向かって努力せなくちゃいかぬ、こう考えます。
  106. 米原昶

    ○米原委員 恐らく九十日備蓄の方向でいこうというのが業界の大部分の意向だとは思いますが、しかし、それをやるとすると、一つは新しい基地をつくらなくちゃならない。大協石油でも、たとえば五島列島の計画というものがあります。あるが、ことに今度の水島事故が起こって以来、これは全国どこでも猛烈な反対運動が起こっております。新しい基地をつくることが容易でない、こういう事情が一つある。同時に一方では、現在ある基地に対しても非常な不安があるわけです。不安というより現実的な問題です。きょうの参考人の御意見の中でも、たとえば田尻参考人から海面の方から見た危険の状況についてかなり詳しい話がありました。非常に率直、明快に話していただきまして感謝しておりますが、たとえばいまの石油コンビナートに面するそういう港湾の問題、それから桟橋の問題、もしもそういうところで巨大なタンカーでも事故を起こした場合に、非常に危険なのは、その桟橋からすぐそこのところに石油タンクが林立している状況だという話がありました。そうだとすると、今度の経験に照らしましても、これはもう何も私個人の意見じゃなくて、国民の大部分がこの点に非常に不安を感じているわけです。どうしたって、石油基地の立地計画は、今度の数々と起こってきたこういう災害に関連しまして、そういうものができるだけ起こらないようにし、また災害を広げないようにする、そういう立地計画が必要だと思う。それをしないでおいて、ただ備蓄だけを進めようとしたら、もうとんでもないことになると思います、このままでいくと。そういう点で、密田さんはどういう対策をとるべきと思っておられますか。業界の代表的な意見を聞いておきたいのです。今後の立地計画、こういう問題をどういうように考えておられますか。
  107. 密田博孝

    密田参考人 冒頭にもおわびいたしましたように、地域住民あるいは国民の皆さんの不安と、信頼感をなくしましたことは大変に残念でございます。また、これは火災事故ではなくて、やはりタンクの漏洩事故にも同様でございます。一方、いまお話ししましたように、備蓄の増強を図らなくちゃならない、こういうことになりますれば、第一には皆さん方の防災に対する不安をどういうふうにしてなくするか、それと同時に、今度備蓄法も提案されるようでございますから、われわれはもちろんその法律の精神に従った備蓄努力を重ねるとともに、将来の国民に対するエネルギーの安定供給を、皆さんの御理解とともにその協力を得まして、何としてでも努力せなくちゃならぬ、こういうふうに考えるわけでございます。
  108. 米原昶

    ○米原委員 やはり何か根本的なところをちっとも感じておられないようであります。このままでいったら、いつどんな災害が起こるかわからないような事態だとわれわれは思いますよ。ところが、そのときに依然として備蓄だけに重点がいっている。備蓄の問題今度の国会で法案が出る問題ですから、本当言いますと、まだ決まっているわけではありません。いまの政府がそういうことを言っているだけであります。こういう事態の中で、九十日備蓄なんというところに重点を置くのが根本から間違っている。とにかく国民の生命を守ることが第一だという観点から対処してもらわなければならぬ。そうでなかったら、ただ不可抗力だとか、こういうことが起こる。手がないと言うんだったら、もうやめてもらうよりしようがないです。率直にそう感ずるわけです。  この問題を繰り返して議論してもしようがありませんから、もう一つ注文を出しておきます。  きょう保野参考人からいろいろ話がありました。その中でエッソのレポートの話があった。これは一九七一年の五月十三日にサンフランシスコで開かれたアメリカの石油学会のときにエッソの技術研究所から提出された報告のことだと思います。この場合は少なくともアメリカの業界では、この事件、エッソ関係のタンク事故でありますが、この事故を真剣に受けとめて、とにかく積極的な討議が行われて、そうして全く純技術的と言ってもいいのですが、そういう角度から徹底的に検討されて報告が出ている。報告も非常に詳しく、公開で発表されているわけです。私はこの態度にはやはり日本の業界は学ぶべきじゃないかと思うのです。日本でもいままでタンク事故は、いまもお話がありましたように何回も起こっている。しかも今度の水島と同じように、同じ部分タンクが破れた事故、これもいままでなかったわけじゃなくて、報告されております。しかし、その原因が本当に科学的に技術的に明らかにされて、公開で出されているということがないわけです。その会社の内部ではかなり詳しくやったかもしれません。しかし全体の経験にはなっていない。こういう態度でただ密室で研究される。そうして会社の内部で物事を処理する。こういう国民の生活に密接に関係のある問題が、公開で明確に処理されていくということがない、このスタイル、これは非常に問題があると思うのです。これは私たち、政府にも要望しなくちゃならぬし、いま言われております調査委員会調査の結果の公表、これは水島事件が起こってから何回も私たち要求している点ですが、依然として明快にされていない。こういう問題は公然と発表すべき問題だと思うのです。この点について業界の態度が、いままでいつでも内部でこれを隠してしまう、こういうことだったと思うのです。この点について今後どう考えられるか、密田さんに最後にお聞きしたい。
  109. 密田博孝

    密田参考人 防災に対しますわれわれの持っております技術、あるいはその前のタンクの建設技術、たとえばいまエッソのお話も出ましたけれども、これは非常に残念ながら、われわれの仲間が独力でそれをやり遂げる技術は、他社はどういう実情かわかりませんけれども、少なくとも大協石油にはないわけでございまして、むしろ他からそういう技術を取り入れる努力、あるいはまたそういうものを建設いたしますときには、全面的に日本専門メーカーを信頼してそれをつくってもらう、こういったようなことをいままでやってきたのが実情でございます。したがいまして、製油のリファイナリーの技術あるいは石油化学の技術、それに関連する技術、こういうものは独特のものを持っております。持っておりますけれども、これはやはりいまお話しのように非常に公益に関連の深いもの、将来それがために石油業界が供給面にもいろいろ貢献する、こういうことになりますれば双方の技術交換はやってしかるべきだと考えます。
  110. 米原昶

    ○米原委員 それから田尻参考人に全然別の問題ですが、一点だけ、ちょっと船のことですが聞きたいのです。  今度の水島事故調査に行かれて、そしてその中でも油の回収船の問題とかオイルフェンスとかはほとんど役に立たなかった、そしてああいう事故が起こったら、今後も役に立たないだろうということをさっき話されました。その中で、実はこれは新聞にも出ておりますが、マラッカ海峡で一月六日に起きた祥和丸の座礁事故のときであります。そのときに大量の流出油が出たわけでありますが、このときに活躍したのが太平洋の向こうからやってきたアメリカの沿岸警備隊。十人の隊員が一分間にドラムかん二十本分の石油をくみ出して、水中でも働く特殊ポンプ四台を使って油を抜き取った。大変な成果を挙げたことが報告されております。つまり二十四時間以内に二万キロリットルの原油をゴム袋に移せるようなことをやった。ところが、御存じのようにたとえばあの新潟沖のジュリアナ号事件のときには、一万五千キロリットルの油を抜き取るのに五十二日間かかったわけです。アメリカの沿岸警備隊がこういう設備を持っておるということが報道されております。もちろんこういう流出事故を起こさないように、おっしゃるように二十万トンタンカーなんか私はやめるべきだという主張なんですけれども、しかしそうかといって、いまの状態で油の事故が全然起きないわけじゃない。こういう場合に油回収船は当然いままでのようなこんなものじゃだめだろうと思うのです。思い切ってアメリカの沿岸警備隊が持っているようなそういう設備を持つべきだと思うわけですが、この点についてちょっとお聞きしておきたい。
  111. 田尻宗昭

    田尻参考人 お答えいたします。  私は海上で油処理で本当に苦労いたしました。その経験から申し上げますと、もう本当にこれくらい石油企業の科学技術が発達しておりながら、何とこの油処理技術のお粗末なことか、もうこれはその一言に尽きます。というのは、私たち現場で油処理をいつもやらせられまして、もう腹が立ちました。まるでひしゃくで油をくみ、むしろで油を取る、それと変わらないわけです。  たとえばオイルフェンスに例をとりますと、高さが二十センチであります。今度の油は五十センチから一メートルの厚さでございます。はっきり言いますと、オイルフェンスというのはきらきら光る程度の油を一時食いとめるだけでございます。三十センチ波があったらもう油は下をくぐってしまう。オイルフェンスにはスカートというのがついておりまして、そのスカートというのは潮に対してある程度緩衝作用を持つために、めくれるようになっております。〇・五ノットの潮がありますと、もうめくれちゃって油は素通りであります。そういう点、オイルフェンスというものは大量の流出油についてはまさに無力である。  また油処理剤、これがまた大きな問題を抱えております。従来、油の何百倍という毒性のものを、公害防止の名のもとに日本列島の周辺に何万トンと振りまいてきた。ジュリアナ号でようやくそれが騒がれ出すと、初めて運輸省が認定をいたしました。三千ppm以上のものは使っちゃいかぬ。もうそのときには公害防止の名のもとに油以上の毒性のものが振りまかれて、その責任は一つも論じられない。現在だって油処理剤は低毒性とはいえ毒性がございます。また、油を分散させるだけで何にも油の毒性を弱めるものではございません。その意味で油処理剤というのは決して有効な対策ではございません。  油吸着材に至ってはもう座布団と一緒です。吸い取り紙をばっと投げるようなもので、私は下津で七万枚使いましたけれども、もう回収できなかった。風にあおられて同じところにしか落ちないのです。  そう考えますと、大量の油に対してはもう対策はないのに等しいのであります。先生がいまおっしゃいました回収船だって、ロッキード社から海上保安庁はいま発注しているという状況です。それだって何かタンク船がついていないので、直ちには使えない。そのロッキード社から持ってくるものだって、図面を見るとびっくりするほど幼稚でございます。この油回収が本命だと言われながら、油回収船を備えつけた港はりょうりょうたるものでございます。開発をされていないのです。そうすればなまはんかな油処理技術というのが、どれだけいままで根本的な問題とすりかえられて、あたかも油処理剤を持っていれば事が片づくように、オイルフェンスを少しよけい持てば、それでコンビナートの安全が図られるような幻想を与えたという点で、私は非常に罪が深いと思います。その意味では油処理技術というものは役に立たないのだということをはっきりと知ることであります。それは私は経験者でございますから、自信をもって申し上げます。そうするならばやはりあとの問題は根本的な対策、大型船の通航禁止の問題とか、コンビナート立地の問題を考えなければいけません。勝手に内湾にどんどんつくって、それから油処理を第二次的に考えるのは間違いだと思います。  それから第二番目におっしゃいました油の抜き取りの問題でございますが、私残念ながらどのような作業をコーストガードがやったかよく知りませんので、比較はできませんが、どうもさっき申し上げましたテキサス州法がタンクと桟橋の距離を三千メートルと定めたとか、いろいろ外国では経験を生かして、そしてまたそういう方面の技術も進んでおるようでございます。日本においてはこれだけ過密な港湾を抱え、過密な内湾における企業立地が行われながら、そういう技術はどうも外国から輸入せざるを得ないというところに、基本的なわが国の技術の開発のアンバランスが目立ちます。そういう意味で油処理対策というものは非常におくれております。しかしながら、それに頼るのもまた間違いである。問題は根本的な対策であるということを申し上げます。
  112. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 木下元二君。
  113. 木下元二

    ○木下委員 本会議の時間が迫っておりますので簡単にお尋ねします。  加藤参考人に伺いますが、水島事件に続きまして大協石油の火災事件が起こりました。さらに不等沈下が次々と明るみに出ております。結局これによって、大規模石油化学コンビナートを経済優先的な高度成長の起爆力にするという産業政策、開発政策の危険性が厳しく問い直されていると思います。  しかるに政府は、地域開発、コンビナート建設は、スローダウンとしながらもこれを推進していくという姿勢をとっております。私はこの際、大規模コンビナートの建設、拡張は中止をし、しばらく立ちどまって、これまでのようなコンビナートのあり方を、地域開発の進め方を、根本的に見直す段階が来たのではないかと思うのであります。この点はいかがでしょうか。そしてもう一つ関連して、いま問題になっております九十日の石油備蓄計画、こうしたものももう一度考え直すべきではないかと思うのでありますが、こうしたことも含めてお答えいただきたいと思います。
  114. 加藤邦興

    加藤参考人 一番最初に、私きょうの初めに公害とこういう事故災害とは違うのだということを申し上げたのですけれども、そのことをやはりはっきり見る必要があるわけです。どういうことを言いたいかといいますと、つまり公害の場合には、これはちょっと企業の方には気の毒な言い方ですけれども、害があることを知っていながらやっているわけですね。事故の場合には、先ほどの大協石油の方のお話を聞きましても、わからぬで起こってしまった。わからぬで起こったというのは私は一番罪が深いと思うのです。要するに悪意があってやったというのは、悪意がなくなれば直りますけれども、いわば不可抗力的に、自分としては最善を尽くしたのに起こってしまったというのは非常に困る。これははっきり申し上げて、いまの日本企業にこれだけ大きな規模の産業活動を維持する技術的な能力がないということをあらわしていると私は思うのです。  たとえば製鉄の高炉の場合でも非常に大きなものができていますけれども、私の友人なんかから聞く話でも、はっきり申し上げて、大きなものをつくってしまって、それを動かす能力が現場にはないわけです。穴があく寸前までやりまして、これはどうにもお手上げだというのでとめたとか、そういう事例は明るみに出ませんけれどもいっぱいある。それからまた、先ほど大協石油の場合に、コンビナートの実際の物をつくる作業についてはこれは自信があるけれども、そのタンクの安全なんということについては、うちでは能力がないとはっきりおっしゃられているわけです。やはり能力がないのにやっておるというこの現実をはっきり見る必要があると思うのです。ですから、その能力がないのに次々と大きなものをつくっていって、事故が起こらないのはこれはむしろ不思議で、現実に事故は次々と起こっている。  先ほどからタンクの構造の問題については、かくかくやれば確かであるという話がありまして、私もそういう点あると思いますけれども、現実にそういう構造でつくられていないということが、やはり全体としての能力を考えたときは無理だ。ですから私は、これから同じ規模の同じようなタンクを次々とつくれば、これは統計的に事故の発生率はますます増加する。  石油備蓄の問題について言いますと、私はどうもよくわからないのですけれども、石油の備蓄というと、自分が歴史をやっているものですから、戦前の備蓄計画なんかは前に調べたことがありますけれども、ああいうものを見ても非常にばかげたことをやっている。一朝事あればということでやるわけですけれども、備蓄というのは経済的な問題での一朝事あればに違いないとは思います、それでやられるのでしょうけれども、その場合にたとえば六十日が九十日に延びる、四十五日が六十五日に延びたということで、どのくらいのメリットがあるのか、それが正確にはかられていないと思うのです。  それから大規模なものをそういうふうに次々とつくっていく場合に、事前に安全性のチェックをきちんとやるということが必要なわけですけれども、それはどうなっているのか。私が一番不満に思いますのは、いわゆるアセスメントという言葉が大はやりになりまして、アセスメントと称していろいろなことがやられるようになりましたけれども、いままでにもアセスメントに当たるものはずっとやってきたわけですね。事前調査をずっとやってきたわけです。それでは四日市の場合にはその事前調査が当たったのか外れたのか、鹿島の場合には当たったのか外れたのか。私たちは、それは完全に外れた、あるいは事前調査というのがインチキだったと思っているわけですけれども、それについてわれわれが調査しましても、それは一応運動の面では力になっておると思いますけれども、やはり国がやった事前調査ですから、それが実際に当たったのか外れたのか、国が責任をもってチェックする必要があると思うのです。ところがそういうことが全然やられていないのですね。そういうことをやらないまま、次々といま実際に現地へ行けば、どこでも事前調査をやったから大丈夫なんだという形でつくっておるわけですけれども、苫小牧にしても、私はいまの時点でああいうものをやっていくべきではない。いままでやってきたことがどのくらい実際にうまくいったのか、外れたのか、それをきちんとチェックする必要があるだろう。それを抜きにしては困るというふうに思います。
  115. 木下元二

    ○木下委員 もう一つ加藤参考人保野参考人にも伺いますが、海岸埋立地における石油タンクの建設はどうしても不等沈下が起こりやすいという問題があるようであります。先ほども話がありましたけれども、底が全部砂の場合はかえってよろしいが、ヘドロや廃棄物などで埋め立てがされておるというので、重量がかかると、そのヘドロ、廃棄物のいかんで不等沈下が起こりやすいという問題もあろうと思います。その辺のことについても若干伺いたいと思います。  そして、現にこの不等沈下がどんどん起こっておるわけでありますが、この不等沈下の限度について、消防庁の直径の〇・五%という暫定基準、これがつくられました。一応の目安ということでありますが、これは地盤の条件をどう考えておるのかという問題です。地盤ヘドロの場合と砂地の場合と同一に当てはめてよいのかどうか。ヘドロのような軟弱な場合はよりスピーディーに沈下が進行する危険があるのではないか、こういうことも考えられます。だとすれば、地盤の条件を考慮せずに暫定基準を設定することは不合理ではなかろうか、こういうふうに思えるわけです。  以上の点について伺いたいと思います。
  116. 加藤邦興

    加藤参考人 私は地盤の問題それ自体については専門ではありませんけれども、一般的な問題として、先ほどから詳しく何回か出ていると思うのですけれども、漏れないようなタンクをつくるという発想はかなり無理があるということははっきりしていると思うのです。そういう場合、一般的にその漏れる量をどのくらい少なくするか、あるいはどのくらい早い時期にそれをつかまえるかということに問題がある。二百分の一というのは、一般の構造物の場合、二百分の一ぐらいの不均等沈下は幾らでもやっておるわけですね。まあ、その物の大きさによりますけれども、ただタンクのあのような単一の、構造として非常にシンプルな構造の物で二百分の一の不等沈下が起こってくるということについては、一般論としては非常に危険だ。ただしかし、その場合に、二百分の一ぐらいの不等沈下が起こったとしても、そのタンクの容量がある程度まで大きくならなければ耐えられますし、またがっちりとやるということは、先ほどから出ていますように、地震の面から見た場合には非常にぐあいが悪い面があります。ですから、タンクの大きさということを抜きにしまして、一概に二百分の一でいいかどうかと言われると非常に問題があるだろうと思います。
  117. 保野健治郎

    保野参考人 お答えいたします。  御質問の内容は、国の暫定基準値〇・五%が地盤の構造を考慮してやられたものかどうかということですが、私が国の暫定基準をつくったのではございませんので、地盤の構造を考えたかどうかを私は知りません。ただ不等沈下という問題は、総合判定基準の中の私の案では第一の項目でございまして、参考までに申し上げますが、地盤の構造も考えて、タンクの直径も高さも、タンクの構造、たとえば屋根が固定をしておるか、動くか、要するにフローティングルーフ、浮き屋根ですね、そういうものを考慮して、私は許容沈下量の試案をつくっております。  参考までに二百分の一について申し上げますと、私の言っております沈下パターン五、六、国の言っております沈下パターン五、六、全く一緒ですが、これは二百分の一で黄信号であって、決して危険な数値ではない、それだけははっきり言えると思います。これは単に構造計算をしているだけじゃないのです。  参考までにちょっと技術的な細かい数値を申し上げますが、底板部分は一般にSS41が使われます。この許容設計値は構造計算では二千四百キロです。私は一番許容沈下量を多くとっております第二のタイプ、底板部分が一様に底へ中だるみをしますが、少なくとも八百キロ以下で抑えております。実際は四千百キロで破断をいたします。それを設計の段階で二千四百、その約三分の一以下にすべての底板部分が少なくともいく、それをなおかつパイプ、バルブ、その他付属物、あるいは地盤構造を考えて、すべてのタンクに対して二百五十ミリもしくは三百ミリを超えてはならない、タンク自身は大丈夫だけれども、ほかのものがぐあいが悪い、地盤構造そのものも悪くなってくる、そういう意味でやっておりますので、私は地盤構造を十分考えたつもりでおります。ただし、あくまでも黄信号ですから、危険ではございません。
  118. 木下元二

    ○木下委員 最後に一つだけ伺います。  これも加藤参考人保野参考人に伺いたいと思いますが、このタンクの安全性は、第一にはしっかりした強固な地盤をつくっていくということのようです。その上にタンクを建設するということですが、そのタンクそのものも破損のないように、事故の起こらないように万全なものに建設をすることが大事だと思います。しかし、同時に、万一の事故に備えまして対策を講じることが必要であります。特に先ほど来話がありましたように、安全率一〇〇%が困難だとすれば、少なくとも一〇〇%に近づける最大の努力は必要でありますが、それとともに、事故が起こったときに最小限度に食いとめる対策が必要であります。防油堤の問題なども言われましたが、たとえばタンク一個の容量を抑えるように、現在のような巨大なものをなくして、もっと小さくすることが必要でないのかどうか。そしてタンクの中はすっぽり空洞になっておりますが、たとえばタンカーでも内部は幾らか仕切って部屋に分かれている、事故が起こっても一部だけで食いとめられるように構造上なっているということでありますが、タンクの構造も同様にする必要があるのではなかろうかと思うのでありますが、こうしたことも含めてお答えいただきたいと思います。
  119. 加藤邦興

    加藤参考人 タンクの容量をどの程度で抑えるべきかという具体的な数値については、私はその専門でありませんから申し上げられません。ただ、一般的な問題として、いまの容量というのは、私は目いっぱいだろうと思うのですね。私はこの前徳山に参りましたけれども、徳山の石油の備蓄の方式というのは、山を切りまして、山をいわば段々畑につくりながらタンクを置いています。ああいうところで同じように大きなものをつくっていくということは、私はもう非常に危険だと思います。  さっきから出ていないのですけれども、もう一つの問題として腐食による漏洩というものも考える必要があると思うのです。そういったことを考えますと、もちろん漏れないようにすることが一番望ましいけれども、漏れたときの量を最小限に抑える、そのためには、タンクの容量に対してはっきりとした一定の規制、その規制は、具体的な例について先ほどから田尻さんの方から出ておりますように、ほとんどゼロに近いくらいの量で抑えない限り、それを回収したり何かする技術はいまのところないわけですから、その面からできるだけ小さいものに抑える必要があるだろうと思います。
  120. 保野健治郎

    保野参考人 御質問の趣旨は、タンク容量の限界とその構造であろうと思います。  私は技術の観点から申し上げますと、過去長年手がけてきた技術でシンプルな構造にするべきであろうと思います。これは非常に重要な問題です。形にとらわれることなく、ぶかっこうなもので結構ですから、安全を第一に考えるなら、人間が持っておる技術に合わせて形をつくる。われわれがある仮定をして設計をいたします。その仮定がほぼ一〇〇%満足できるだろうという構造と大きさにする。その容量の限界をどう考えるかということですが、現在私が知っておる範囲、チェックした段階では、直径百十メーターまでですが、一応これが限度で、再度各技術者のノーハウを集めまして、その段階でもう一回容量を決めるべきだ、とりあえずいまの最大値を抑えなさいということです。  それからもう一つは、タンクの中を小さな構造で、こういうことを言われましたが、それをやるぐらいだったら、小さなタンクをたくさんつくった方が私はいいんじゃないかと思います。  参考までに申し上げますが、底板部分が三のパターンであって、固定の屋根でありましたら、十八年間、二十年間実際にたったものがございますけれども、沈下の量と直径の割合が一%を超えましても、二%を超えましても、別に問題のないものがございます。要するに、総合判定をする必要がある。問題は、中の構造を非常に複雑にいたしますと、底板の状態を二度と見ることができない、そういう構造ではいけない。建設をして構造を丈夫にするということと、点検をしやすいということはある矛盾点がございます。点検孔をつくるということは、それだけウイークポイントになりますから。しかし、そこらのところを考えて、かなり沈下にも耐え得るように容量は決定すべきだ、そう思います。  以上でございます。
  121. 木下元二

    ○木下委員 時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。
  122. 渡辺惣蔵

  123. 坂口力

    坂口委員 本会議の時間が迫っておりますので、簡潔に申し上げますので、ひとつお答えの方も簡潔にお願いをしたいと思います。  まず最初に、加藤参考人にお願いをしたいと思いますが、先ほど先生は教育の問題を取り上げられまして、技術者にとりましてもあるいは経営者にとりましても、その姿勢の中に安全性ということが優先して存在をしなければならない、私もそう考えますが、いまここで大学教育の問題をお聞きするいとまはございませんので、企業における自主教育と申しますか、あるいはまた行政における安全教育、こういった点について先生のお考えがございましたら、この際でございますので、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  124. 加藤邦興

    加藤参考人 企業の中の安全教育の問題について、私は余りよく知りません。それで、それについてお話しするデータは非常に少ないのですけれども、ただ私が二、三工場の実際に働いている人たちから聞いている話ですと、たとえば工場の中の防災のグループ、そういうものをどうやって選んでいるかというあたりに非常に問題があるように思います。これはちょっと工場の名前を言うとぐあいが悪いのですけれども、ある工場では、その中の青年労働者のうちで、いわば企業に対する忠誠度の高い人という形で、あらかじめPRをしてそれを選ぶのだ、こう言っているわけです。そうしておいて、その若い労働者を集めて班に編成しているわけです。そうしますと、要するにそういう形で選ばれた人は一種のエリート意識を持ちますから、何か事があったときに非常によく働くということは間違いないだろうと思うのですけれども、その人たちはそういう形で選ばれて、一度も実際の訓練をきちんと受けていないというようなことが非常に多くある。そうなりますと、むしろ安全教育というよりは労務管理としてやられている。私はこれでは非常に困る。  それから、もう一つの点は、そういう問題について外部の意見をよく聞いてほしいというふうに思うわけです。私などは会社にきらわれていますから、これは去年ちょうど島本先生にお会いしたときにお話ししたのですけれども、その直前に大牟田のコンビナートに行きましたときに、工場の中は見せていただけたのですけれども、私が何か質問をしますと、二言目に返ってくる返事は、そういうことは先生の方が専門でよく知っていらっしゃるでしょうということで、結局ついに電解槽の容量から何から何一つ話してくれないというようなことが起こっています。そういう点について、やはり企業の方ではかなり率直に外に門を開いて、いろいろ意見を聞く必要があるのではないか、こういうふうに思っております。
  125. 坂口力

    坂口委員 同じく田尻参考人にお聞きをしたいわけでございますが、先生のお話をいろいろと伺っておりまして、企業の横暴と申しますか、そういうことにいままで非常に御苦労をなすった経験等を聞かせていただいておりますと、いま加藤先生にもお聞きしました安全教育とかあるいは行政上の指導というようなものが、何かむなしいものに聞こえてこざるを得ないわけでございますが、この点について田尻参考人が日ごろからお考えになっていることがもしございましたら、この際、お教えをいただきたいと思います。
  126. 田尻宗昭

    田尻参考人 お答えいたします。  私は安全教育とか社内教育とかいうことはもちろん大事だと思いますが、しかし、それではもうしのげない実態があると思います。たとえば、一つのお話をいたしますと、いま大型タンカーがペルシャ湾まで航海するのに約二十日かかります。向こうで二十四時間で油を積んで帰ってきます。こちらに停泊するのが、やはり油を揚げるたった二十四時間でございます。その二十四時間の間に、家族との面会もできないわけでございます。そうして、また折り返し四十日の航海に出る、この繰り返しをやっております。そうしますと、家族はランチで来て、近い人だけがわずか何時間か船の上で面会をする。大型船はみんな個室になっておりまして、その中でラジオもなければテレビもない。隣の部屋に行くのも、昔六十人いた乗組員がわずか二十数人に減らされているのです。ですから、三交代制の厳格な当直交代制の中で、隣の部屋にも行けない。もう暇があれば寝ているのです。そうしますと、ただリュックサックいっぱい買ってきた古本を一冊ずつ読んで、窓からほうり投げて、それが四十冊終わったときが入港、家にも帰れないでまた出航する、こういう繰り返しをやっている乗組員にとって、実は安全教育などというものは実にむなしいです。こういうようなストレスがもろに緊張感になってかかっている。最近大型タンカーで自殺者が非常にふえております。その自殺者のトップは機関長である、なぜか。MO船といって、夜の当直が一人もいないオートメーションのエンジンができましたから、もう機械が故障したときには機関長はどうしたらいいか、不安で不安で寝れないわけです。だから自殺者のトップが機関長だ。こういうようなマンモスタンカーの乗組員の実態を見ますと、その船橋に立って見張りをしている船長は、かつて自分が操船もしたことのない二十万トン、三十万トンというタンカーを、しかも祥和丸のように、あとわずかで夜明けだというのに、マラッカ海峡を通らなければいかぬような圧力が、一日一千万円というデマレージで、会社の圧力としてもろにかかっている。それを待つ余裕がないわけなのです。  そういう安全体制の中で、私は、むしろこういうようなあらゆる総合的な安全という問題を見直さなければ、そうして実はこういうような企業の利潤追求のために人間破壊が行われているということを、その底辺を見詰めなければ、そういうような実態の上に実は安全が組み立てられているということを見詰めなければ、本当の安全対策にはならないと思います。  最後にちょっと簡単に申し上げますが、特に小型のケミカルタンカーなどに至っては、何の知識もない者が毒性の物、危険物あるいは引火性、爆発性の物、いろいろな物を運んでおりますけれども、全然石油ガスの知識を持っていない。実はそういうような小型タンカーが入港する港の時間が一時間もおくれれば、もう商売にならない。そういう圧力をもろに大手から受けている零細海運、そのために、かつて私が赴任しました田辺で、三年前の七月一日に七隻の小型船が霧の中で衝突をいたしました。霧の中で安全スピードにダウンすることも許されない。そういうダンプ輸送を実は小型ケミカルタンカーがやっているということです。しかし、一たん衝突したならば、処理剤もなければ処理技術もないのです。成分さえわからない。そうして私たちが電話で水島の三菱石油に問い合わして初めてその成分がわかったというような実態でございます。そういう実態の中で、私たちは社内の教育あるいは社内の安全教育というようなものが、もう一つその前で乗り越える大きなものが横たわっているということを痛感するのでございます。
  127. 坂口力

    坂口委員 もう少しお伺いしたい点もあるのでございますが、時間の都合上で、きょうは田尻参考人にはこれだけにさせていただきたいと思います。  密田参考人にお聞きをしたいと思いますが、先ほどもお話がございましたとおり、四日市におきまして二十九年に火災がございました。今回同じようなことが繰り返されたわけでございますが、先ほどもこの点については触れられましたけれども、同じことがやはり二度繰り返されたということにつきましては、安全性ですとかあるいはまた消火設備というものに十分力を入れてきた、こうおっしゃるわけでございますけれども、やはり何かそこに欠けていたものがありはしないかとはた目には感じられるわけでございます。私もこの火災のときには駆けつけさせていただいた一人でございますけれども、やはり四時間半で、一基だけのタンクで鎮火いたしましたから幸いでございましたが、あれがさらに拡大をしたらと、大変背筋の寒くなる思いがするわけでございます。いわゆる二度あったことは三度あるということにならないようにするために、また、何が欠けていたかということをどうお考えになっているか、この点ひとつお聞きをしたいと思います。
  128. 密田博孝

    密田参考人 繰り返して申し上げるようでございますけれども、今度の事故について種々反省をいたしております。それで、何を言いましても生産、それに伴う作業、あるいは会社全体の経営の基盤としても、やはりこれは安全意識をどう各自に、全社員に持たせるか、その点についてはできるだけの努力をしたつもりでございますけれども、いまお話しのようなことで、まだ欠けている点があるのではないか、もう一層いろいろな訓練教育、そういうものに力を入れて反省を重ねてみたいと思います。  それからもう一つは、今度の事故原因は、これも繰り返しますけれども、まだ結論が出ておりません。私自身の気持ちといたしましては、二十九年のような結末にはどうしてもしたくはない、やはり何らかの結論を出さざるを得ない。また、二十年たっておりますので、したがって、いろいろな究明の科学的な手段、そういうものは十分発達しておりますから、必ずやある結論は出ることだと思います。  その結論が出ましたら、それに対応するいろいろな具体的な対策は当然立てなくちゃならぬのでございますけれども、これは、したがって、現在の段階ではまだ申し上げるところには至っておりませんが、ただ、いろいろ事故の経過を振り返ってみますと、やはり皆さんに、地域住民の方に、実情を敏速に的確にお伝えする方法、これが不十分であったという気がいたします。したがいまして、これは必ずしも会社でなくて、あるいは四日市市のお仕事かもしれませんけれども、そういう住民との通報、あるいはニュースをいかに早く伝達するか、こういうことと同時に、社内におきましてもやはりいろいろな監視体制、これは早期発見というものも含めまして、十分ひとつ再検討いたしたい、こう考えております。
  129. 坂口力

    坂口委員 保野参考人にお聞きをしたいと思いますが、今回の四日市のタンク火災におきましても、先ほどお話が出ましたように、午後三時には常温であるというふうに一応記録をされまして、その後、一応三時五分ころ、出火はもうすでに気づいてお見えになるわけでございます。そういたしますと、その間五分ということになりますし、火災に気づかれる前に若干時間があるといたしましたら、ほんの二、三分のことのように思うわけであります。三時のときに記録のところでは常温、先ほど何か二十度Cということをおっしゃいましたけれども、そういうふうな記録が三時になされたとしますと、その時点で何か検査、チェックする方法があれば気づけなかったかという気が、われわれ素人にはするわけでございますけれども、その点の技術的なことでそういうふうな改革がなされ得るものかどうかということを、一点お聞きをしたいと思います。  それからもう一つは、これは全く別の角度からでございますけれども、先ほど来の先生のいろいろのお話をお伺いしておりますと、技術的には日本というのはかなり発達もしているし、技術的にはでき上がっていると申しますか、かなり進んでいる。しかしながら、それをやはり阻んでいる、障害となっている何かがある、先生のお話の底にそういうふうな意味があったように承るわけでございますが、その辺につきまして先生のお考えをお伺いさせていただければと思います。この二点につきましてお願いいたします。一点目は、もしも先生がそれに対して何らかいまお考えつきになることがありましたらで結構でございます。
  130. 保野健治郎

    保野参考人 まず第一点の技術の問題ですが、このデータについては私は持っておりません。したがってまた、このタンクもいずれ原因調査が済んだ段階で見せていただきたいと思います。そういう段階で私は技術的な判定をいたしたいと思いますが、一部で報道されました中で、不等沈下による脆性破壊ということをちょっと言われました。その表現は、固定的な屋根でございますので、不等沈下が引き金という意味だろうと思いますが、それはほぼ考え得ることができません。なぜかといいますと、不等沈下が引き金でありますと、不等沈下部分といいますと、主として底板部分がやられますが、出火は屋根の部分ですから、私は恐らくそうではないだろうと思います。細かいことにつきましては、私が見た上でお答えしたいと思います。  第二の、技術がなぜ使われないかということを申し上げたいと思います。  ちょっと誤解があってはいかぬと思うのですが、私は、相対的に世界各国の技術レベルから見ればトップクラスだと言うのであって、十分一〇〇%安全なそういうタンクをつくる技術がすべてのメーカーに備わっておると言うのではございません。技術そのものはすでにもう何年も前から開発をされておる、その技術が偏在をしておる。それがなぜ使われないかと申し上げますと、技術者というのはより安全なものをつくりたいわけです。より新しいものをつくりたいわけです。チャレンジの意思がございます。そうしますと、私自身はもともと技術屋でございますが、設計をいたしますと、必ずと言っていいほど設計予算をオーバーいたします。そうすると、だんだん削られてくるのですが、その削られてくる目標というのが、もしJISの規格がございましたら、その規格、何か技術関係で一般的に適用されておる基準というものがありましたら、その基準、たとえばAPI規格、こういうようなものにだんだんしわ寄せをされましてとられてくるわけです。基準とは、私の考えでは目安でありまして、基準と目安とは違いません。私たちはそう考えております。その目安をそこまでどうしても下げろということになるわけです。公害問題でも何でもそうだと思いますが、技術者はどちらかというと経営能力に欠けております。したがって、より安全なもの、より技術的なものをつくりがちではございますが、経済性とかそういうものについてはとかく疎いわけです。これは技術者かたぎだと思いますが、その長所を伸ばす社会的な仕組みがないと思います。せっかく事故原因を解明いたしましても、それが伝わっていかないという社会的な仕組み。  もう一つは、経済状態が非常に悪くなりますと、きめ細かい施設がつくられない。たとえば建築その他に見られますように、昔の建築といまの建築とは私は違うと思います。手づくりの味といいますか、職人かたぎが持っております長い経験での技術、これは特に学者が反省をしなければならぬ問題でありますが、技術の最高レベルが学者であるという錯覚は、私たちはいたしておりません。そういう意味で、学問的に、学術的に、理論的に解明をされないものは技術でないという風潮が、専門家の中にややあると思います。そういうものも排除して、なおかつ特許を認めるならば、その特許の安全性をまず確認をする機関がどうしても必要だ。特に優秀な特許については買い上げる、そして伝播をする、こういうことであるわけです。  特に日本的な風土として、アメリカとかあるいは西ドイツと違いまして、技術者が移動することを特に極端にきらう傾向があります。欧米ではむしろ自社の技術者が引き抜かれることを、その技術がある場合に伝播することを、誇りに思っておると思いますが、そういう社会的な風土が違いますので、私個人の考えでは、経済の変動とともに技術も変動してくる。表現は適当でないかもしれませんが、経済の中で悪貨は良貨を駆逐するということがございますけれども、より危険な技術がより安全な技術、優秀な技術を駆逐していく。一般的に優秀であり、より安全な技術が高価につくからであると思います。そういうようなことを、技術者だけではなくして、経済人も、政治家も、学者も十分反省をしなければならぬ社会的な欠陥だと私は思います。今回のこの事故日本技術の亀裂とは私思っておりません。そうではなくして、社会的な亀裂が出てきたと思います。  そういう意味で、技術の問題についてちょっと申し上げたいのは、技術者では、この事故原因はもうほぼ想像がついておると思いますし、その勘は、私は重要に、大切にしたいと思います。単に論理的に説明ができないというのは、自分の持っておる理論が十分でないからであって、原因がわからなくても対策はすでに打てますし、技術者の勘は、勘といいましても経験に裏づけされておる優秀な技術者でございますから、それらの勘は特に大切にする社会的な仕組みを法的にもつくるべきだ。そうでなければ、技術者は一向に日の目を見ないと私は思います。よい技術、世界に誇るべき技術は世に出ないと私は思います。長くなりましたけれども、私は技術的な社会仕組みというのはそう考えております。特に審議会その他で、われわれもよく参加をいたしますが、今回の事故の問題については、基準をつくる学者、われわれを含めまして、それがかなり能力が落ちておるということについて特に反省をいたしておる次第でございます。
  131. 坂口力

    坂口委員 もう一問だけお聞きをしたいと思います。  岡野参考人にお願いをいたしますが、この不等沈下の問題にいたしましても、企業はみずからこういうことはなかなか公表しないわけでありまして、検査をして初めてわかるというわけでございます。これは実際にお仕事に当たってお見えになりまして、この辺の矛盾と申しますか、やはり企業みずから公表せしめる、それを皆さん方がときどきチェックするという形が望ましいのではないかと思いますが、この辺について何か御意見がありましたらお伺いしたいと思います。
  132. 岡野計太郎

    ○岡野参考人 お答えいたします。  ただいま企業みずからが自主検査、自主点検によって得た結果をみずからが公表して、それを行政が検査すべきであるというふうにおっしゃいますが、まさにそのとおりでございます。このことにつきましては、先般来数回にわたりまして、担当しておりますコンビナートの代表企業二十八社を集めまして、従来の姿勢から脱却をして——従来えてして企業秘密であるという問題で、おおむねがほおかぶりをされておることが多いのでございます。そういう点から、各工場長クラスの代表者、それから担当者クラスの代表者、そういうグループに分けまして、その趣旨の説明と今後の行政方針につきまして、そういう面の意見の交換と、それから公表について私どもの方から厳しく指導をいたしたわけでございます。そういうことで、具体的にはまだしんが固まっておりませんけれども、一応水島地区のコンビナートにおきましては、今回の三石の事故を非常に深く皆が考えておりまして、それぞれが自分のことであるとしておりますが、そのしんのことは、表面のことと実際とは、私どもに伝わるのはかなり変わったものではないかというふうな予想をしております。したがいまして、田尻さんのおっしゃいました中に私も申し上げたいことが実は一、二件ございました。今後もそういう意味合いでかなり厳しい内容で指導に当たりたい、かように思っております。  なお、自主的な公表という問題につきましては、これは次回の担当者会議で求めるということになっておりますので、さよう御承知願いたいと思います。
  133. 坂口力

    坂口委員 済みません、もう一言だけ密田参考人にお願いいたしますが、いま岡野参考人からもお話がございましたように、地盤沈下の問題にいたしましても、その他の面にいたしましても、これを自主的におやりいただいて、企業からそれを公表していくという習慣をつくっていただくということが、非常に大事だと思うわけでありますが、今回の火災の問題は地盤沈下と面接関係があるかどうかわかりませんけれども、しかし、地盤沈下の問題も含めて、そういった姿勢を今後貫かれるかどうか、ひとつ簡単にお答えいただいて終わりにしたいと思います。
  134. 密田博孝

    密田参考人 御趣旨はよくわかりますので、われわれ、今度の事故に関連いたしましていろいろ検討をいたしております間に、大変問題が出てくるだろうと思います。単に消火ではなくて、常時訓練とそれから非常時の場合とどういう食い違いがあるか、それにまた技術の問題も当然関連いたします。表現が少し変でございますけれども、もしもそういうことを石油業界あるいは関連コンビナート他社へ発表することによりまして、事故防止でき、あるいはまた事故が発生したときに、それが最小限度に食いとめられる、こういうようなお役に立てば大変幸福だと思います。そういう意味の発表は積極的にやりたい、こう思います。
  135. 坂口力

    坂口委員 ありがとうございました。
  136. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 以上をもちまして、参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には御多用中のところ、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二分散会