○深川説明員 お答え申し上げます。
私ども所管いたしております自賠責保険に
事故歴を反映させて、保険料の割り増し、割引といったようなものに活用できないかという御質問に関しましてお答え申したいと思いますが、
先生御
承知のように、この自賠制度は、そもそも被害者の保護というものを主眼に発足できました制度でございまして、そのためには加害者の被害者に対する賠償
責任をだれに負わせるのが一番適切かということがいろいろ論議されたわけでございます。そうした場合には、当然、車を
運転する
運転者が相手に損害を与えたのだから、それを賠償するという形にするのが民法の通常の原則であるわけでございますが、しかしながら、やはり車というものが非常に普及いたしておりまして、しかもそれなりのメリットを受けておるという段階におきまして、そういう車を運行させることによります利益を享受する者、あるいはまたその車の運行について支配権を持つ者に本来それ相応の
責任を持たせるのが妥当ではないかという議論が非常に強く出てまいりまして、これがいわゆる車の保有者
責任の強化ということでもちまして、自動車損害賠償保障法第三条に、保有者の
責任を通常の民法原則よりもさらに挙証
責任を転換する等強化しておるのが、現在の制度になっておるわけでございます。
これはもちろん、たとえばオーナードライバーの場合のようにみずから車を持ち、みずから
運転する場合には両者が一致するわけでございます。しかしながら、
現実には職業
運転手としてその会社あるいはその団体等に雇われまして、いわゆるお抱え
運転手として
運転しておる方もたくさんおられるわけでございます。そういう場合に、やはり
事故の賠償
責任というものを、当然その利益を享受する会社等に負わせるという形でできたのがこの制度でございます。
したがいまして、そういうことと相まちまして、被害者保護のためには、やはりその賠償
責任というものを十分カバーできるようにということでできておりますこの強制保険制度は、車単位ということになっておるわけでございます。そういう観点から、車単位の保険でございますので、その車が
事故を起こせば、車の持ち主が
運転しておって起こした
事故であっても、あるいはそのお抱え
運転手に
運転さしておった場合でも、場合によれば人に貸してその軍が
事故を起こした場合にも、これはやはり車の保険から支払われるということでもちまして、被害者保護に万全を期するという体制をとっておるわけでございます。
そういうことでございますので、確かに気持ちの上からは、
事故を起こす人と起こさない人との間にその保険料に差をつける方が公平ではないか、またあるいは
事故抑止に効果的なものも期待されるのではないかという議論がしばしば出てまいるわけでございますが、そういう点いろいろ
検討はいたしたわけでございますが、やはり被害者保護を主眼とするこの制度におきまして、
事故を起こす
運転者というものを中心に
考えてメリット、デメリット制度を導入するということは、自賠制度としては非常にむずかしい問題があるというので、いろいろ
検討したわけでございます。
時間が長くなりまして大変恐縮でございますが、そうした場合に、じゃドライバー保険にすべきかという点は、先ほども申し上げましたような観点から、むしろ現在の制度が、現在の損害賠償保障体系上、企業者
責任を重視してそういう賠償能力のある、その車を保有し、それを運行支配し、その利益を享受する者にかけておるという点から出てきております点、なかなか調和をするということが非常に困難なのが
実情でございます。
それでもう一点申し上げさせていただきたいと思いますが、その場合、確かに
事故を起こした人について高い保険料、起こさない人に安くということは、これは公平の観点からしごく当然に思われるわけでございますが、
現実には
事故を起こします人はごく一握りの者でございます。そういう観点から、こういうメリット、デメリット制度を導入するということになりますと、大部分の人が割引ということになるわけでございまして、そうすると、もともと割引を受けるためには非常に高い保険料を最初から設定して、そして
事故を何年間か起こさないでいて、そして本来に近い安い保険料になる、こういう形になるという面も出てまいりますので、そういう観点から、直ちにいまの自賠制度にこういったメリット、デメリット制度を導入するということについては、
関係各省いろいろ
検討はいたしたわけでございますが、
現状ではなかなかむずかしいという
状況になっておるところでございます。
なお、任意につきましては、所管しております大蔵省の方からお答え申し上げることと思います。