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1975-06-18 第75回国会 衆議院 建設委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月十八日(水曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 天野 光晴君    理事 内海 英男君 理事 梶山 静六君    理事 唐沢俊二郎君 理事 服部 安司君    理事 村田敬次郎君 理事 井上 普方君    理事 福岡 義登君 理事 浦井  洋君       小沢 一郎君    大村 襄治君       田村 良平君    中尾  宏君       浜田 幸一君    林  義郎君       松野 幸泰君    渡辺 栄一君       佐野 憲治君    阪上安太郎君       清水 徳松君    中村  茂君       山崎 始男君    柴田 睦夫君       新井 彬之君    北側 義一君       渡辺 武三君  出席国務大臣         建 設 大 臣 仮谷 忠男君  出席政府委員         建設政務次官  中村 弘海君         建設大臣官房長 高橋 弘篤君         建設省都市局長 吉田 泰夫君         建設省道路局長 井上  孝君         建設省住宅局長 山岡 一男君  委員外出席者         建設大臣官房官         庁営繕部長   大屋登美男君         建設委員会調査         室長      曾田  忠君     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  建築基準法の一部を改正する法律案内閣提出、  第七十二回国会閣法第七五号)      ————◇—————
  2. 天野光晴

    天野委員長 これより会議を開きます。  第七十二回国会内閣提出建築基準法の一部を改正する法律案議題といたします。  この際、お諮りいたします。  ただいま議題といたしました本案につきましては、第七十二回国会においてすでに提案理由説明は聴取しておりますので、これを省略したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 天野光晴

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————  建築基準の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  4. 天野光晴

    天野委員長 この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となりました建築基準法の一部を改正する法律案について、審査の参考に資するため委員派遣いたしたいと存じます。つきましては、議長に対し委員派遣承認申請いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 天野光晴

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、派遣地派遣の日時、派遣委員人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 天野光晴

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  7. 天野光晴

    天野委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。唐沢俊二郎君。
  8. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 大臣がもう間もなく席を立たれますので、一つ日照問題について伺っておきたいと思います。  現在一部の地方自治体によって行われている条例指導要綱の中には、住民同意を義務づけるような規定があるわけでございますが、本法によって日影基準が制定された場合、この規定はどうなるのか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  9. 山岡一男

    山岡政府委員 いわゆる日照等の問題に対処しますために、幾つかの地方公共団体におきまして、条例指導要綱等が制定されております。その中には強弱の差はございますけれども、住民同意に関する規定などが中心になっておるものでございます。今回の改正法案によりまして、日照確保のための制限としまして、社会的に同意が得られるとわれわれが考えております合理的、客観的な基準に基づく制限をいたすようになるということで考えております。そうなりますと、今回の改正法案において盛り込まれております日照確保のための制限に関する限りは、住民同意に関する規定等はやはり廃止されるべきだと考えております。  ただ現行の条例指導要綱におきましては、単に日照問題だけではなくて、風害その他の問題にも対処するための制限として住民同意に関する規定を設けておるものがございます。これらにつきましては、今回の法律改正によりましてもその根拠になるということでございませんので、建築確認とリンクをいたしましてそれがなければ確認をしないという体のものは初めからどうも問題があると思いますけれども、それ以外のものにつきましては、やはり建築基準法上特に違法とは言えないというのがわれわれの考えでございます。
  10. 仮谷忠男

    仮谷国務大臣 これはいろいろ議論があるところですけれども、局長がいまいろいろ答弁しましたが、大体その方向で進まなければならぬと思っております。
  11. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 最近、環境悪化とか公害等が叫ばれまして、いろいろ環境基準が定められております。航空機騒音につきましてはWECPNL、また道路、鉄道では何ホンとか、また河川の汚濁を防止するためにppmで表示された環境基準がある。これに対し建築物についてはそういうものがなかったわけでありますが、土地の高度利用による環境阻害があって、被害を受けていらっしゃる住民の方もおられる、また逆に住民パワーというのがありまして何でも反対する、芝生の日照権までとらえて反対するような動きがある、非常に混乱をいたしておるわけであります。  そういう意味で今度の改正によって建物敷地外一定限度を超えて日影を生じさせてはならないという日影時間の規定を設けたということは、これはもう当然のことであり、大変結構なことであろうと思うのですが、実際の運用についてはいろいろあると思うのです。その点について簡単にひとつお答えいただきたい。
  12. 山岡一男

    山岡政府委員 今回日影規制につきまして、従来なかった新しい方法でございますけれども、建物が排出いたします日影基準を決めまして、それが敷地外一定基準のところに一日じゅうに何時間という限度を決めまして、いわば日影排出基準を決めたというのが今回の考え方でございます。  ただ、そういう場合でも、日本全土一律というわけにはまいりませんので、緯度の高い、そして住居様式等も違う北海道は別にしております。さらに内地方面におきましても、条例等を設けまして地域別の上げ下げができるようにするというような配慮で全国的に日影規制を及ぼしたいと思っております。
  13. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 それでは次は、ホテル百貨店等に対する避難施設等設置の義務づけ、いわゆる遡及適用についてお伺いをいたします。  言うまでもなく建築物防災を促進し、利用者の安全を確保することは建築行政で最も重要なことである。特に大阪千日デパートビルとか熊本大洋デパート等の悲惨な災害が起きて貴重な人命が失われるということは、これは大変なことであって、一日も早く措置を講じていただきたいわけでございます。しかし、建設省からいただきました資料最後で、各業界に対して「改正法案の正確な理解をもとめ、また、詳細な意見交換を行った結果、現在では改正法案そのものへの反対はほとんど解消している。」というふうにうたってあるわけでございますが、実際聞いてみますと、いろいろな反論や何かあって完全なコンセンサスを得られていないように思うのですが、この点につきまして伺いたいと思います。
  14. 山岡一男

    山岡政府委員 この法案は御案内のとおり継続審議になっております。その間におきましてわれわれもできるだけスムーズな皆さん方の御意見を盛りたいというつもりで、各関係業界の方々とは、特に技術委員会等設置してもらいまして、いろんな代替施設にはどういうふうな方向がよかろうかとか、それから実際に遡及適用します場合にどういう点に問題があるか等については相当詰めてまいったつもりでございます。おおむねわれわれとしてはその資料に書いておきましたとおり了解を得られたものと思っておりますけれども、なお、いわゆる業界団体といいますか代表的意見てございますので、もう大体——たとえば地下街を例にとりますと、地下街連合会の全体の方ではわれわれは賛成だという御意見でございますけれども、地方の方で一部反対のところもございます。そういうところつきましては全体としては完全に賛成を得られていない、こういうのが実情だと思っております。
  15. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 ちょっと簡単にお答えいただきたいのですが、いわゆる遡及適用が行われる規定については、政令で除外されるものがあるようでございますが、具体的に遡及適用される避難施設等に関する規定としてはどのようなものを予定しているのか。また、遡及適用を行われる規定を選定する場合の基本的な考え方をお伺いしたい。
  16. 山岡一男

    山岡政府委員 法律の第八十六条の二で決めておりますが、そこでは避難施設、非常用照明装置、非常用進入口防火区画、その中で政令で定めるものを除き適用するということになっております。しかしながら今回の改正につきましては、不特定多数の皆さんが利用される建築物等特定の用途の中高層建築物等に対しまして遡及的に義務づけるということを主眼にしております。このような建築物におきまして火災が起きたときの多数の死傷者の発生を防ぎたいというのが念願でございまして、したがいまして、基本的な考え方といたしましては、遡及適用する規定人命の安全の確保を図るということに限定して選定したいと考えております。遡及適用規定つきましては、先ほど申し上げましたように避難施設、非常用照明装置等がございますけれども、これに対します基準法規定は多々ございます。多々ございますが、その中で、たとえば避難施設関係では特別避難階段防火区画関係では竪穴区画に限って遡及適用いたしたい、非常用照明装置とか非常用進入口についても遡及をいたしたい、こういうように考えております。
  17. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 先ほどからのお話で、大体話がついたようだというお話でございますが、業界反対するにつきましてはこれは経済的負担が非常に大きい。消防法によるいろいろな施設が大体四百億ですが、今回の建築基準法による改正が少なく見ても八百億円だというように聞いていますが、このような改修費が必要だということによって百貨店ホテル等の経営を著しく悪化させることにならないかと思うのですが、その点についてはいかがですか。
  18. 山岡一男

    山岡政府委員 現在遡及適用対象建築物として約二千二百棟ぐらいと推測をいたしております。それらのものにつきまして先ほど申し上げましたような限定的な人命救助のための避難のための施設遡及をいたしましても、全体では約二千億近い金が要るのじゃないかと思っております。ただ、そういたしますと、簡単に考えますと一棟当たり数千万円の金がかかるというようなことになるわけでございますが、事人命にかかわる問題でもございますし、一たび火災が発生しますと熊本大洋デパートのように膨大な損失を生ずるようになるということでございます。したがいまして、たとえばデパートでは一平方メートル当たり八千円ぐらいとデパート協会の方がおっしゃっておりますが、しかしわれわれが考えてみますと、やはりデパートでも営業成績が上がっておりまして、現在は不振でございますが、一平米当たり月八万円を超す平均ぐらいの収入があるとも聞いております。そのようなことも考えまして、やはりその企業存立自体を危うくしない範囲におきまして、できる限り代替施設活用猶予期間活用、それから新しく補助制度を創設いたしておりますが、そういうものの活用金融機関によります低利融資活用等によりまして、さらにでき上がりましたものにつきましては税制上の措置も講じ、できる限り便宜を図りまして、この規定の促進を図りたいと思っております。
  19. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 実はその金額が大きいということのほかに、一般にちょっと建築行政に対する不満があるのじゃないかと思うのですよ。それで、この防災に関する技術基準についての決め手もどうもないように思うし、いままでのいろいろ行政のあり方を見ていますと、大分いろいろ変わっているわけですね。今度優秀な住宅局長もおられるし、今度はもうこれで変わらないと思いますけれども、たとえば昔、百貨店を例にとりますと、エスカレーター回り区画については、初めは水平のシャッターを使っていたわけですね。そして今度はスプリンクラーのある建物にはシャッターは要らないということで、これを撤去しちゃったユーザーもある。また、シャッターのかわりにドレンチャー設備をつけたところもある。そしてまた今度区画しなければならないというので、重量シャッターをつける。そのくぐり戸も小さい方がいいと言うときもあれば、それを大きくする。そういうことになりますと、私としても何しろ建設委員としては、まず第一に人命の安全を図らなければいけない。これはヒューマニズムの立場から皆さん以上にわれわれは痛感をいたしておるし、また、実際にそういう大きな災害を起こせばその企業自体存立が危なくなるわけですから、これはどういう意味でも絶対に必要なものは取りつけなければいけないと思います。しかし同時に、お役所でやられる場合気をつけていただきたいのは、経済性考えていただきたい。つけたけれどもまた後で要らなくなったとか、つけたらそれはどうもまずいから今度はこうしろというようなことが、私きょう時間がないから申し上げないが、実を言うと幾つかあるようでございます。この分を全部、これは百貨店を例にとられて、百貨店がかぶってくれれば結構でございますがこれはどうせいろいろな償却とかその他の費用でこれが商品の中に織り込まれるということになりますと、消費者価格をその分引き上げるということで、これはまた買い物に行くわれわれ庶民の経済を圧迫するわけでございます。ぜひともそういう意味で、経済性をもっと考えて、最低必要なもの、そうして絶対にもう今度は特別の事情がなければ変えないんだというりっぱな基準をつくっていただきたいと思うのです。  私がその件で一つ聞きましたのですが、いろいろな消防防災関係施設の中で一番大きな意味を持つのはスプリンクラーであるというふうに聞いておるのですが、その点についてどういうふうにお考えでございますか。
  20. 山岡一男

    山岡政府委員 スプリンクラー初期防火のためにきわめて効果の高い防火施設であると考えております。
  21. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 そうしますと、一応どういう御答弁得られるか、私期待して聞いておるのですが、一つの仮定でございますが、スプリンクラーがあれば極端な場合はほかのものはなくてもいいんだという理論すらあるわけですね。実際にスプリンクラーがついておってこれが完全に作動している場合の、いままでの被害状況というものを御存じだったら教えていただきたい。
  22. 山岡一男

    山岡政府委員 いままでスプリンクラー初期に作動いたしまして防火の目的を挙げたというのは、九八%という数字があるそうでございます。
  23. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 いま九八%というお話で、私もそれを信用したいのですが、実は私は一〇〇%と聞いているわけです。片やこういう意見があれば、それなら、スプリンクラーをいま消防法改正によって義務づけられているので、消防法建築基準法の両方の改正によって要る金が千二百億だというなら、先に消防法関係のやつをやってもいいんじゃないか、そして、何しろ四百億かけてそういう関係設備をすれば実害がないのじゃないかという意見があるんでございますから、それに対してどういう説明をされるのか、これをちょっと伺いたいと思います。
  24. 山岡一男

    山岡政府委員 今回の改正によりまして、特定特殊建築物に必要な防火避難施設建築基準法遡及をするということでございますが、同時に、消防法によりますいろんな防火施設につきましては、前国会で成立いたしておりまして、現在実行されております。  先ほどスプリンクラーの例を申し上げましたけれども、実は、大きいデパート等につきましてスプリンクラーが作動してどうだったという例は余りないわけでございます。スプリンクラーを大いに設置をいたしましても、実はスプリンクラーの作動しない屋根裏とか便所、階段、そういうところで火事が起こる場合もございます。突発的に爆発するという場合もございます。それから、最近のように合成繊維がたくさんございますと、一秒間に二メートルという速度で横に炎がなびくというような実験結果も出ております。それやこれやを考えますと、当然スプリンクラー等による消防施設の整備も重要でございますが、同時に、そういう場合に人がすぐに逃げられるという意味避難のための遡及適用は当然必要じゃないか、必要最小限はやりたいというのがわれわれの考えでございます。
  25. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 結局そうしますと、確かにじゃあ必要なものもあるのかもしれない。しかし、これは政令ですか、何で定めるのか知らないが、技術基準についてまだはっきりしたものはお持ちじゃないんじないか、また業界とも十分詰めてはないんじゃないか。そういうことになりますと、非常にむだなものに金をかけさせる、あるいはそれが将来不要になるかもしれない、あるいはもっと改めなければいけないということになりますと、これはあるいは人命の安全にも支障が起きるかもしれないし、特に業界経済を圧迫するというようなことがありますから、これはぜひ、短兵急にやるものではなくて、慎重に最高の技術日本の粋を集めて研究をされて、だれでも納得するそういう基準を出していただきたい。だから、この法案をもし成立させるなら、その前提としてりっぱな技術基準を定めていただきたいと思うのですが、それが第一点でございます。  それから、それにつきまして今度猶予期間も、これは確か百貨店の場合三年になっておりますが、これも果たして三年でいいのかどうか、あるいはもっと時間をかけて研究し、相談しながらやる方があるいはいい場合もあると思うのです。そうすると、猶予期間についても考えなければいけない、これが第二点でございます。  それから第三点は、八十六条の二に、建設大臣が「同等以上の効力があると認める」場合はこれでもよろしいとしてありますが、「同等以上」という言葉が、同等それ以上ということになると、お金としてはそれ以上かかるかもしれないわけですから、この代替物としてしかるべきものであって、できれば最も経済性のあるものの方がいいのではないか。そういう意味で、大変細かなことでございますが、条文についてもわれわれとしては考えを持っているわけですが、その三点につきまして御意見を聞かしてもらいたい。
  26. 山岡一男

    山岡政府委員 最初技術基準でございますが、さかのぼりまして適用いたします特別避難階段防火区画等につきまして、建築基準法政令で詳細に規定を決めております。したがいまして、一応の技術基準はあるわけでございます。ただ、いま先生がおっしゃいましたように代替施設を大いに活用しようというのが基本方針でございます。そういう場合の代替施設は確かにケース・バイ・ケースということでございまして、こういう技術基準でやったらどうかというようなことについてあらかじめ全部をお示しするというようなていのものではございません。ただ、現在考えておりますのは、たとえば避難階段代替といたしまして、他の建築物避難橋設置をするとか、それから、屋外に折り畳み式の避難階段設置をするとか、それから、非常用照明装置を新しくつくるということではなくて、通常の停電対策用自家用発電装置がございまが、それの一部を改修するにとどめるとか、それから、非常用進入口代替といたしましては、たとえば窓が適当な間隔にあれば代替できるとか、既存の防火シャッター等につきましては、最近、防火防煙シャッターに古いシャッターを改造する技術が生まれておりまして、そういうものを活用するとか、そういうようなことで大いに代替を認めてまいりたい。  それから猶予期間でございますけれども、これは、同様のものを対象にいたしまして消防法をすでに昨年から、同じような三年、五年という刻みで実は先発しております。しかし、先生おっしゃいますように最近の情勢でもございますので、そういう猶予期間等につきまして、われわれは、たとえば一日に十万人も入るような大きなデパート等につきましてはなるべく早くというような気はいたしますけれども、猶予期間等につきましては、今後法施行までに一年でございまして、実質上は四年、六年ということになるわけでございますので、できればこういうふうな猶予期間の間で施工していただくのが一番いいんじゃないかと思っている次第ございます。
  27. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 「同等以上」というのはどうなんですか。
  28. 山岡一男

    山岡政府委員 一応建築基準法では最低の基準を示しておりまして、その基準に合うということでございますが、代替施設が、遡及するということでもございますので、機能的に確かにそういうような効用があるということでございましたら、相当大幅に「同等以上」の運用をしていきたいと考えております。
  29. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 もう時間がございませんからなにしませんが、「同等以上」というのは、それじゃ一応のところ変えないという御意見ですか。
  30. 山岡一男

    山岡政府委員 規定以上、やはり同等と認めなければ、これはやっぱり最低限の基準を決めたつもりでおりますので、それは困ると思いますけれども、先ほど申し上げましたような機能的代替ということでございますので、できる限り大幅な運用をしてまいりたいという気持でおります。
  31. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 それじゃ最後に、いまいろいろ御説明を聞いたんですが、まだまだ細かい点につきますとこれでいいというものはないんですね。だから、遮煙シャッターでも、代替物としてゴムをつければいいだろうというようなお話だが、果たしてゴムがいいかどうか、こういうような問題もあると思うのですね。またスプリンクラーにしても、いまは七十度ですか七十五度になると水が出るようになっておるんだけれども、あるいは同時に手動でやるのもつける必要もあるんじゃないか、いろいろ考えられまして、技術基準としてはこれでいいというものはないと思いますが、まだまだいまの段階では煮詰まっておらない。これはいつまでもじんぜん日を延ばすということもどうかと思いますが、またここで建築基準法改正して一応基準をつくった。それがさきのお話のようにまた変わるというようなことは、これは絶対——これは官僚主義と言われると思うのです。ですから、そういう点につきましては新たな目で見ていただいて、そしてだれでも納得するようなりっぱな基準をつくっていただくことを要望いたしまして、質問を終わります。
  32. 天野光晴

  33. 井上普方

    井上(普)委員 最初にまとめて質問いたします。質問することに政令にゆだねる部分がございましたならば、政令案がもうすでにできておると思います。それを早急にお出し願いたしたいと思います。聞いていきますので、ひとつ簡潔に的確にお答え願いたい。  遡及適用する建築物はどんなものか、それはどのような観点から選ぶことにしておるか。これはもちろん人命関係からやられておると思うのですが、これを明確にしていただきたいと思います。  遡及適用する条項はどのようなものであるか、それはどのような観点から選んでいくことにしておるのか。これもひとつ明確にしていただきたい。  それから、特別な事情がある場合は建設大臣の認める構造方法によることができるとなっていますが、どのようなものであるか。その代替措置の認定について建設大臣はどのような基本方針で臨むつもりがあるのか。この点お伺いいたしたいと思います。
  34. 山岡一男

    山岡政府委員 最初遡及適用する建築物はどのようなものか、それはどの観点から選ぶこととしたかということでございました。これは法律で申しますと第八十六条の二、一項各号に掲げております。先生もちょっとおっしゃいましたように、火災等が発生した場合に建築物内の人命安全度は、防火避難及び消火に関する数多くの要素が複雑に絡み合って水準が決まることになっております。このために建築基準法におきましては、防火避難施設等設置要件につきまして、用途、規模によって差を設けております。今回のいわゆる遡及適用は、既存の建築物に対しまして人命の安全の確保の見地から必要最小限避難施設等設置を義務づけるというものでございますので、火災発生によりまして大きな人身事故となるおそれの大きいような建物の中で、一定の規模以上のものをその対象とするということにいたしております。  五つのグループを考えておりますが、第一グループは可燃物が非常に多くある、かつ大空間構成であるために火災の拡大がきわめて速い百貨店、スーパー等でございます。  それから第二グループは行動能力の劣る、たとえば病人とか患者等を収容しております就寝施設を有する病院などでございます。  第三グループは、避難施設等をある程度熟知していない不特定利用者を収容する就寝施設を有しておりますホテル、旅館等でございます。それから利用空間の照度、密度等、比較的条件が悪くて行動能力も劣りますキャバレー、ナイトクラブ等も、この第三のグループに考えております。  第四グループは、避難施設等の維持管理の水準が比較的低くてその配置が不明瞭なもの、いわゆるいろいろな業種がまとまっております雑居ビルでございます。  第五グループが、災害時には方向感覚がなくなったり、特に排煙等の措置が非常に困難で災害の多発するだろうと思われます地下街でございます。  以上五つのグループのものを大体対象にいたしております。  それから、遡及適用する条項につきましてはどういうものかということでございますが、これは今回遡及の目的が必要最小限人命保護ということにいたしたいという考えでございますので、人命の安全の確保を図るために必要不可欠な施設ということにいたしたいと考えております。したがいまして、法律では避難施設防火区画、非常用進入口等挙げておりますけれども、今回の政令遡及するものにつきましては、避難施設の中では特別避難階段防火区画関係では竪穴区画、それから非常用照明装置、非常用進入口、この四つにつきまして一般のデパート等については遡及いたしたいと考えております。  それから、特別な事情がある場合には建設大臣の認める構造方法によることができるということになっておりますが、遡及適用対象となります既存の建築物はきわめて多様でございます。法の一律的な適用では過大な経済的負担を課す、あるいは物理的に回収不可能というような場合もあろうかと思います。当該建築物の状況によく適合して、かつ所要の防火上の事項は確保できる構造方法につきましては、遡及の場合には、法の規定どおりでなくとも、代替構造として積極的に認めていきたいと考えております。  その場合の代替構造の例としては、先ほど唐沢先生に申し上げましたけれども、他の建築物避難橋だとか折り畳みの屋外避難階段だとか、自家発電を非常用照明に切りかえるとか、既存の窓を一応進入口とみなすとか、既設の防火シャッターの改装をするとかいうようなことでございます。それらのことを積極的に行いまして、できる限り経済的にかつ効率的に遡及ができるようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  35. 井上普方

    井上(普)委員 特に防災施設遡及適用につきましては、業界から非常な反対の声があります。私もその陳情を受けた一人でありますが、私はそのときに申したのであります。特に百貨店なんかは人をいままで余りにもたくさん殺し過ぎておる、こういうような災害を起こした業界がこのような反対意見を述べるのは私はおかしい、このように思うのであります。したがってまず第一番に考えるべきは、人命救助人命関係するものは極力やらなければならないと思います。一部の論者の中には、経済性との関連をもってこの防災設備を緩和しろという意見もあるようでありますけれども、しかし、何を言いましても人命ほどとうといというものはない。そういう観点からいたしますならば、私どもは人命を助けるという立場に立ってすべて物事を考えなければならないと思うのであります。  しかし、いまいろいろと御説明を受けましたけれども、特に第一点、第二点につきましたは、私は話はいいのでございますが、第三点の特別の事情があるときの代替措置というのには、私はちょっと疑問があるように思われます。すなわち、これによって法律はつくるけれども、行政当局がその内容をどうにでもできる規定になりはしないかと私どもには思われるのですが、どうでございますか。
  36. 山岡一男

    山岡政府委員 建築基準法は最低の基準を定めるという趣旨でございます。したがいまして、やはり定めております最低の基準よりは構造、耐力等につきましても機能上も十分なものでなければ代替は認められないという点は、先ほど申し上げたことでございますが、ただ現実の問題としましては、ケース・バイ・ケースの問題が非常に多うございます。したがいまして、専門の委員会をつくりまして、そういうような場合にはどういうふうなものがよかろうかというようなことを十分検討した上で応用してまいりたいと思っております。
  37. 井上普方

    井上(普)委員 最低の基準を決めるのが建築基準法でしょう。いまあなたはそうおっしゃった。その基準法を決めておる上にもってまいりましてケース・バイ・ケースとは一体これはどういうことですか、おかしいじゃないですか。
  38. 山岡一男

    山岡政府委員 ただいま避難施設その他につきましては、政令で詳細な規定をつくっております。それがいわゆる基準でございます。ただ、今回のように遡及適用いたしますという場合には、同じ階段の幅が決まっておりましても、階段の幅を広げるということになりますと、これは従来フリーであったものに対しまして相当な負担をさせることになりますので、そういう場合には、むしろ屋外の方に付設をしましても同じような階段幅以上を確保できるということであれば、それは代替施設に認めようではないかというような考え方基本でございます。
  39. 井上普方

    井上(普)委員 いままでもそういうようなケースはかなりやっておりますけれども、それが一番防災上の問題になっておるのじゃないですか。あなたのいまの説明によりますと、避難施設をつくるといって最低の基準建築基準法で決められておるものなんでしょう。それに代替設備考えてあるということにつきましては問題じゃないかと私は思うのです。いままでは階段が狭いから外側に階段をつくらすのだ、こう言われる。しかし、いままでの建築基準法でも、厳重にやられておったならばいままでのような災害は起こらなかったと私は思う。ここのところどうですか。
  40. 山岡一男

    山岡政府委員 建築基準法は従来、その法令が施行になります日以前に建っておりましたものにつきましては、既存不適格ということでその新しい条項を適用しないというのがたてまえでございました。ところが最近のいろいろな防災性の向上等の点から、さかのぼるということを今回初めて思い切ってやるわけでございます。そういう場合に、過去においては過去の規定に適法であったというものに対して遡及するわけでございますので、今回遡及するものに限りそういう代替的なものを認めていこうということでございます。
  41. 井上普方

    井上(普)委員 科学技術の進歩によりまして火災それ自体がいままで想像できなかったような大きいことになることがあり得ることは私もわかります。いままでの建築基準法がそういうような時代に合わなくなったので、遡及適用することについても私はある程度了解できるのであります。しかしながら、余りにも多くの代替措置というようなことになりますと、法自体が有名無実化するのじゃなかろうかと思うのです。したがいまして、ここらあたりの明確な政令案でもありますならばお示し願いたいのですが、どうです。あるいはまた先ほど申しましたもろもろのことについて政令案がありますか、どうです。
  42. 山岡一男

    山岡政府委員 代替施設運用につきましては政令考えておりません。
  43. 井上普方

    井上(普)委員 それは問題です。遡及適用するこれだけ厳格なる法律をつくろうというときに、政令案までも考えずにいきなりすべて行政当局が左右できるというのはこの法律の大きな欠陥であると私は思う。この点について私はもうこれ以上追及はいたしません。そのことを明確にいたしておきます。  続いて、特に地下街についてでありますが、これは私らも昨年現地視察をいたしました。古いところもあり、全く完備できておるなと思われるところもございます。一例を挙げて申しますと、大阪のミナミの千日前の地下街を見ました。これは最近できたようなものでありまして、かなり完備しておるように思われるのでありますが、しかし、これとても新しい建築基準法には適応できないということを聞きまして、一体どうなんだということを聞きますと、避難階段の問題があるんだ、足らないんだ、こういうことを承ったのであります。そこで私は、あの千日前の地下街は一体どのようにしてできたかということを聞いてみますと、市街地再開発のごとき仕事がある。上に高速自動車道路ができた。したがって、その再開発の必要土地下街を認可したんだ、こういうことなんですね。ところが、その再開発を許可するに当たって、ここには地下街の歩道をつくらして、上にあった歩道を全部下に入れた。入れる、入れぬの意思は別にいたしましても実際はそうなっておる。恐らく八重洲の地下街もそうなっておるでしょう。上の歩道を下に入れた、こういう考え方にすべて終始しておるようであります。したがってそこは、全部地下街ではあるけれども、公道としてほとんどの方がこれを歩いておられる。言いかえますならば、道路法上の道路にはなっておらないけれども、実際上は公道と同じ役目をしておるのであります。この点につきまして、道路局長、実態面から見ると、上の歩道を取り払って下に入れたのだという考え方をする以上は、道路法上の道路として地下街を認定する必要があるんじゃなかろうかと思う。いかがでございます。特にこの道路は何なんだと聞きますと、地図で、上は、この線は県道何号線だけれども、地下街は市道にも何にもなっていないという考え方で終始しておるようなんです。ここのところはどうなんです。
  44. 井上孝

    井上(孝)政府委員 地下街につきましてはいろいろ問題がございますので、昭和四十八年に建設省を初め関係省庁が寄りまして協議会をつくりまして、地下街に関するいろいろな方針を決めておりますが、その精神は地下街は抑制する方針で決めております。したがいまして、地下街設置は、道路下であります場合には道路占用ということで処理いたしております。その中に地下街に行きます地下道路がございましても、これはすべて占用という扱いにいたしておりまして、公道として認定はいたしておりません。しかしながら、一般大衆が使用する地下道でございますので、管理が十分にいくように占用条件として管理規程をつくっております。したがいまして、現在のところ地下街に関連いたします地下歩道を公道に認定するという方針は持っておりません。
  45. 井上普方

    井上(普)委員 これは私は問題があると思うのです。いまお話を承ると、道路占用させておる、こういうことですね。そうすると、地下街というのは、道路占用させておるんだから、地面の下は道路なんですね。ここらあたりどうなんです。将来地下街を抑制する方向にあるというのはわかりますけれども、現在ある地下街道路占用でいかしているのですな。問題はそこのところです。あなたはいまそうおっしゃった。したがって、それの管理規程でともかく押さえておるんだ。そうなってくると、地下街をつくるというのは一つの利権だ、こう考え行政当局からすれば、恩恵的処置だと考えておられるのでありますか、その点どうです。
  46. 井上孝

    井上(孝)政府委員 地下街道路の地下を占用させるということでございますので、その中でいろいろ営業するということは、国の営造物であります道路の一部を占用させるということで、おっしゃるとおり恩恵的といいますか、そういうものに考えております。
  47. 井上普方

    井上(普)委員 そうすると局長、聞きますが、道路というのは地上から地球のシンコまでを道路と言うのですか、どうなんです。どこまで下に行っても道路と言うのですか。どうなんです、これは。
  48. 井上孝

    井上(孝)政府委員 地球の中心までと言われるとあれですが、地下街設置するような程度の部分は、道路の一部というふうに考えております。
  49. 井上普方

    井上(普)委員 道路というのは、なんじゃないですか、問題は道路の定義になってくるのだ。それでは聞きましょう、道路の何メートル下まで道路というのですか。
  50. 井上孝

    井上(孝)政府委員 道路の管理権は地上、地下に及ぶということになっておりますので、そのように考えております。
  51. 井上普方

    井上(普)委員 そうすると、あなたのおっしゃるのは地下のシンコまで及ぶのですね。
  52. 井上孝

    井上(孝)政府委員 おのずから常識的な限度があると思います。
  53. 井上普方

    井上(普)委員 そこで問題だ。おのずから常識的な限度がある、これなんだ、問題は。すべて常識。法は常なりという言葉がある。世間一般で通用することをやりなさいと私は言いたい。人が通り車が通るところを道路法上の道路というのでしょう。ところが地下街の実際は、ほとんど人が通っている、歩道になっているではありませんか、公道じゃございませんか。これをなぜ認定できないんだと私は言うのです。そうするならばこの問題——後で申しましょうけれども、ここらあたりをなぜ認定できないんだ。これは行政的の恩恵的な措置として業者に与えておるんだという考え方があるがゆえに、人命尊重というのがおろそかになるんじゃなかろうか。片方は営業だ。ここに問題がある。したがって、考え方とすれば公道として認めていくという考え方が私は必要じゃなかろうかと思うのですが、これは政治判断になるので、優秀なる中村政務次官、どうでございますか。
  54. 中村弘海

    中村(弘)政府委員 いろいろ議論はあるかと思いますが、非常に大事な問題だと思いますので、もう少し考慮させていただきたいと思います。
  55. 井上普方

    井上(普)委員 あなたも八重洲の地下街を見られたならば、あの通勤者が通っておる状況を見るときに、これを公道として認めずして何ぞやと言いたくなると思うのです。そうするならば、地下街の問題なんかも、避難設備の問題なんかも金が要って困るというような問題も、おのずから解決はできるんではなかろうか、私はこのように思われるのであります。ここらあたりをひとつ、考え方をもう少し明確にしながら建築基準法に臨んでいただきたいことをお願いいたしておきたいと思います。  さらに住宅局長にお伺いしたいのですが、百貨店あるいはスーパーマーケット、これらの業種が遡及適用になって、この施設をやる場合に、売り場面積というものはどのくらい減るものなんですか。この点ひとつお伺いしたいのですが。
  56. 山岡一男

    山岡政府委員 売り場面積自体としてはほとんど影響がないと思っております。
  57. 井上普方

    井上(普)委員 売り場面積がほとんど影響がないにもかかわらず、何ゆえにあのような業者が反対するのですか。この点、ただ経済的に金が要るからというだけでございましょうか。どうでございます。
  58. 山岡一男

    山岡政府委員 改修の場合に少し営業を休むとか、それから改修費に相当金利のついた金を借りなければならないとか、そういうことでございます。
  59. 井上普方

    井上(普)委員 全くそのとおりと考えていいんだと思いますから、私はそのつもりでこの法案の処理に臨みたいと思います。  もう一つ、飛び飛びになって申しわけないのですけれども、特に地下街を私ども視察いたしまして感ずることは、地下道の方はかっちりしたものをつくる。ところが、隣にあるビルから地下街までの通路です。あるいはビルそのものの地下です。これについての規制は私には非常に緩やかなように思われてならないのです。ここは実際問題とすれば同じ意味合いを持っておる。ところが、それがこの適用には余りならないようなんですが、その点はどうでございます。
  60. 山岡一男

    山岡政府委員 現在デパートの地下が他の異種用途に接する場合ということにつきましては、基準法にいろいろ規定を設けております。先生おっしゃいますように、一般のビルの地下に出るような場合につきまして明定を欠いております。その点につきましては、地下街——地下街といいますか、遡及適用等につきましても、新しい法令の施行にかんがみまして、政令改正の際に十分検討してまいりたいと思っております。
  61. 井上普方

    井上(普)委員 それまで全部政令でやるのですか。とするならば、政令案をわれわれは早急に手に入れなければ、この法律の審議に私ら応じられない。準備しておる政令の内容を全部私どもに提出していただきたい。委員長、このことを強く要求いたしたいと思います。適当な処置をお願いいたします。
  62. 天野光晴

    天野委員長 了承いたします。
  63. 井上普方

    井上(普)委員 続きまして、日照権の問題に参りたいと思います。  このたびの建築基準法考え方は、日影権、建物日影をさす権利を保障するんだという考え方基本的立場は立っておるようであります。しかしながら、いままでの日照権の問題は、住民がお日様を受けるという考え方で終始してきたのであります。したがって、結果は同じにいたしましても、考え方それ自体がなぜこのように変わっておるのか、この点ひとつ基本的な問題としてお伺いいたしたいと思います。
  64. 山岡一男

    山岡政府委員 現在日照権という権利の存在につきましては学説が非常に分かれております。現在、定説的なものはないと思っております。本来、日照権と申しますのは、いわば相隣関係のようなものでございまして、いろいろと判例の積み重ねによって決めていかれるものだというふうに基本的な認識をわれわれは持っております。しかしながら、住居の安寧を守るということで決めました住居系の地域の中で、やはり将来のために日影のことも考えた良好な環境をつくっておくことが必要だ。そのためには、お互いが、先につくっても後につくっても、そういうような良好な環境を守れるように、そういうふうな自分の敷地から外へ出す日影排出基準というものを決めて規制するのがよかろうということで、日影規制に割り切ったものでございます。
  65. 井上普方

    井上(普)委員 日照権の問題については、まだ学問的には確定してないとおっしゃいますけれども、これはすでに裁判問題として、裁判所の見解はどうなっているのですか。もうすでに何件判例が出て、どのようなことになっておるのか、この点を伺いたいのです。
  66. 山岡一男

    山岡政府委員 件数はただいま調べておりますので、後で御報告いたします。  ただ、裁判の判例の際には、日照権そのものを認めたということではなくて、日照の阻害を原因として損害賠償とか、そういうようなものの請求原因になっているというのが通例でございます。
  67. 井上普方

    井上(普)委員 局長、あなたのおっしゃることは十分わからぬのですが、もう少しわかりやすくおっしゃっていただけませんか、いまの御答弁は。
  68. 山岡一男

    山岡政府委員 たとえば、従来住んでおりましたところに隣に違法な建物が建った、そのためにいままでの十分な日照が得られないというようなことにつきまして請求が出ます。それに対しては、裁判所の方でやはりそういうような違法なところについては削れというようなことが主になっているものが多いわけでございます。
  69. 井上普方

    井上(普)委員 そうすると、建築基準法に反した建物が建っておる場合に撤去しろというのが多い、こうおっしゃるのですか。そうですね。そうすると、住民のいままでの日照権問題についての判例というのは十分出ていない、こう考えてよろしゅうございますか。あるいは裁判所の考え方というものは出ていないと考えてよろしゅうございますか。
  70. 山岡一男

    山岡政府委員 いままでの裁判の判例によりますと、各用途地ごとに違いますが、トータルで百九件判例があるようでございます。
  71. 井上普方

    井上(普)委員 私は、その判例の数というのは、まあここにも、中間報告にもこれは出ているのですよ。「日照問題に関する対策についての中間報告」という、建築行政部会の専門委員会の報告を承りますと大体出ているのですが、あなたの言うような問題と違ってきているのです。建築基準法に違反しているからそれを撤去しなさいという、日照権を認めているのだという考え方とは違ってきている。というのは、いままでの建築基準法というのは、これは用途地域によって違いますけれども、大体北側斜線という考え方で終始してきているはずなんです。したがって、それに応じた、地方自治体においてはたくさんの条例あるいはまた指導要綱によって、いままで日照権問題を処置してきたと思うのであります。それは、あくまでも建築基準法上の違反建築に対する撤去命令という形で裁判所は出しているんじゃないと思うのですが、どうでございます。そう書いてあるのですよ、この中間報告にも。
  72. 山岡一男

    山岡政府委員 ただいままでの判例につきまして、細目の分類、実は検討はいたしておりますけれども、ここに詳しい資料を私案は持っておりません。ただ、先生おっしゃいますように、相隣権の関係といたしまして、裁判所がその都度現地に即した適当な判断をしているということでございまして、過去の判例の中では、いままでの、私先ほど申し上げましたような違反建築物に対するものが非常に多かったということは事実でございます。しかし、最近の判例の中に、日照紛争の判決例の中では、建設省の行いました四十六年以降の調査によりますと、日照を阻害された側に有利な判決、決定がなされたものが年々増加するというような傾向にあるようでございます。
  73. 井上普方

    井上(普)委員 だからそこに、裁判所側も、あなたと、先ほどと違ってきているのですが、日照権という、被害を受ける側と言いますよりは、日を受ける権利という考え方でいままでは出てきておった。ところが片一方、太陽を受ける権利としての考え方でいままで判例も出てきておるし、かつまた諸種条例あるいはまた指導要綱というものはそういう基本的な考え方で進んできたと思うのですが、今度は、その建物日影を権利とする、建物を主体とした考え方になってきておるように思われる。結果は同じにいたしましても、しかし考え方がここで百八十度変わってくると思うのですが、この点どうですか。
  74. 山岡一男

    山岡政府委員 先生おっしゃいますように、従来はそういうような判例の積み重ねによってそういうようなものがだんだん明定されていく。いわば日照権というようなものが確立されるのは、判例の集積をまって相隣権として確定されるべきものだ。しかし、それをまつにはなかなか大変だという気持ちがわれわれございます。したがいまして、そういう日照のことも考慮した市街地の良好な整備をしたいということでございまして、同時に日照だけを守るというつもりではございませんで、良好な環境のものをつくりたい。そのためには公法的に最低の基準を定めたいというのが今回の改正の趣旨でございます。従来どおり相隣的なものといたしまして裁判の判例をまつというのも一つの方向かと思いますけれども、やはりそういうようなことで最近のように激化しております、そういうような紛争の状況を見ますと、特に住居の安寧を守らなければならないような住居系の地域につきましてはそういうふうな公法的介入も必要だということで、建てる側、建てられる側、両方の合意が得られるような基準を定めたというようなつもりでおるわけでございます。
  75. 井上普方

    井上(普)委員 そこで、基本的な考え方が、ここにいままでの日照権に対する考え方日影権という考え方と、私は大きく変わってくるのではなかろうかと思うのです。この点につきましては、私はどうもいままでの自治体の日照権に対する考え方あるいは条例あるいは指導要綱というものは、すべてこの被害を受ける住民の側に立った考え方、すなわち太陽を受ける権利としての考え方で終始しておったように思う。このたびの考え方は、これは日影権という考え方建物の権利としての物事の考え方、ここに私は大きな衝突が起こってくるのではなかろうかと思われるのです。  この地方自治体がつくっております条例というのは全国でどのくらいございますか。あるいは指導要綱というのはどのくらいございますか。その考え方というのはすべて太陽を受ける権利としての日照権という考え方に終始しておるのではございませんか。この点ひとつ明確にしていただきたいと思うのです。
  76. 山岡一男

    山岡政府委員 要綱が二百件、条例が十四件ということでございます。  要綱の内容につきましては、やはり基準を定めたものも若干ございます。これは非常に少のうございます。大部分はやはり住民同意、それから事前公開制等が要綱としては中心になっております。条例も大体そういうものが主でございますけれども、一部基準を決めたものもございます。
  77. 井上普方

    井上(普)委員 これは考え方としまして、ここに、私は先ほども申しましたように、日影権というものと日照権というのは大きな相克が出てくるとは思います。その上へ持ってまいりまして、いままではとにかく条例でやってきた、あるいは指導要綱でやってきた地方自治体が非常に多い。それも大体事前公開制とそれから住民同意ということを中心にしたものが多かったと思うのであります。そうなりますと、今度の改正については、住民同意制を採用していない、あるいは事前公開制を採用しないというのは、私は、いままで地方自治体が国が放置しましたがゆえに問題解決のためにつくっておる条例指導要綱、ここに衝突が起こってきた場合は一体どうするかという問題が出てくると思うのですが、この点についての考え方をひとつ明確にしていただきたい。
  78. 山岡一男

    山岡政府委員 わが国の憲法におきましては、財産権を保障するということとともに、その内容は公共の福祉に適合するように法律で定めるということになっております。地方自治法でも、建築物制限等につきましては法律の定めるところによりというふうになっております。したがいまして、建築物の構造、設備、稠密度その他につきましての条例等につきましては、建築基準法規定を受けてやられるものではないかとわれわれ考えております。  ただし実際問題といたしまして、宅地開発、要綱もしくは指導要綱等につきましては、いままでの法の不備を埋められましていろいろと運用してまいっておられます。しかし、今後法律に根拠ができまして、建築基準法にそういう日影考えたいろんな規定ができて、その基準と抵触するもしくは基準と合致をするということになりますと、合致をするものの方は意味がなくなりますし、抵触するものはやはり廃止をされるということになろうかと思います。  ただ、現在行われております要綱、条例等の中には、単に住居系地域のことだけではなくて、商業地域のことも工業地域のことも含めて要綱、条例等を定めている例がございます。そういう場合には、やはり基本的にそれがなければ建築確認ができないとかいうふうな、そういう確認制度とリンクするようなかっこうの基準については、私どもどうも問題があると思っておりますけれども、それ以外の行政指導的な面につきましては、やはり直ちに建築基準法違反と言えないと思います。したがいまして、いろんな行政指導の姿勢を要綱等で示されております中で、やはりそれが確認その他にリンクをしないという限りにおきましては直ちに廃止になるべきではない、基本的にはそのように考えております。
  79. 井上普方

    井上(普)委員 そうすると住宅局長、あなたは、指導要綱が二百も出ておるし条例が十四も出ておる、そういうようなときに、それはいまあなたの言われた憲法二十九条第二項に抵触するんだ、こうおっしゃられる。そういうようなのをあなたは放置しておった建設省の責任という問題にもなりますよ。いままでそういうものを黙認してきたのでしょうが、ここらは。しかし現実に憲法二十九条の二項にあなたは抵触すると考えられるし、われわれは抵触しないという考え方に立っております。立ってはおりますけれども、しかしいずれにしても、あなたは抵触するということを認めながらここ五、六年、十年ぐらい放置しておいた行政当局の責任というのは一体どうなるのです。  この責任論をとやかく申しますより先に、やはりこの法律は、現実問題として指導要綱あるいはまた条例と衝突した場合に一体どうなるかということ、ここらに大きな将来の問題をはらんでおるんじゃなかろうか、このように私は思うのですが、どうでございます。
  80. 山岡一男

    山岡政府委員 今回住居系の範囲につきまして基準を決めております。したがいまして、住居系のものに関しまして基準を定めておる地方条例等がございますと、やはり法律の定めるところによりということで、法律ができたわけでございますから、その限りにおいては抵触する限り法律の方に従っていただくということになろうかと思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、建物制限だけではなくて、基準ではなくて、やはり同意とか事前公開制とかそういうようなものを定めた範囲におきましては、これは私はやはりいまのままでそう問題はないんだろうと申し上げておるわけでございます。  住居系のものの中につきましては問題がございます。
  81. 井上普方

    井上(普)委員 住居系の問題は……。
  82. 山岡一男

    山岡政府委員 住居系のものの中につきましては、両方が納得します社会的な合意を得たルールをつくるということで本法律を決めるわけでございますから、その範囲におきましては、われわれはそれに抵触するような問題は、もう地方公共団体条例であろうと指導要綱であろうと、その限りにおいて眠るというふうに考えております。
  83. 井上普方

    井上(普)委員 そこで、もうすでにそういうような問題が解決しておるところに火種をまたつくるんじゃございませんかという意味も私は含んでおるのです。条例あるいは指導要綱建築物が建っておる。ところがこの法律で緩やかになってきた場合一体どうなるんだというような問題は出てくるんじゃなかろうか。政令二途に出るといいますか、まことに行政当局としては困った問題が出てくるんじゃなかろうかと思うのです。ここらの責任問題も私は出てくるんじゃなかろうかと思うのです。どう思います、当然起こってくる問題だと思うのですが。
  84. 山岡一男

    山岡政府委員 条例の中で基準を決めておるものは非常に少のうございますけれども、そういうふうな基準条例で決めておられます場合、新しく建築基準法規定を決めましたので、その限りにおいて向こうは眠ります。  ただ実態問題といたしましては、方々にございますいろいろな規定の中身を見ますと、今回の改正法案の中では、地方の気候、風土等によりまして条例で緩和をし、強化するということができるようになっております。したがいまして、その新しく条例規定の緩和もしくは強化をされます中では全部吸収されるというふうにわれわれは考えております。
  85. 井上普方

    井上(普)委員 いまのこの基準があって、それは地方によって緩和できるといいますけれども、見てみますと前後一時間でしょう、できるのは。左右できるのは前後一時間でしょう。許容範囲は午前午後一時間ですよ。しかも北は北海道から南は沖繩まで、それで果たしていいのかどうかということは私ら問題があると思う。もう少し大幅に地方自治体に権限を移譲する考え方はございませんか。前後一時間では少な過ぎる。日影権という考え方に限局いたしましても、北は北海道から南は沖繩まで朝夕一時間の許容範囲というのは少な過ぎると考えませんか。ここらあたり私は大きな疑問を持っておるのであります。いかがです。事日影権という考え方に立っただけででもですよ。これは前提としてそういう考え方になる。どうでございます。
  86. 山岡一男

    山岡政府委員 法律の上におきましても、北海道は緯度が高いということ、それからやはり住宅の様式等も内地といろいろと異なっておるということ、その他の気候、風土等も考えまして基準の時間のとり方も変えております。  それから、実際に測定いたします日影の測定時期は、冬至の場合の真太陽時ということでございまして、やはり日本じゅうで若干緯度が違います。しかしながら実情に合わせまして、排出基準を決めます場合に、やはり単体といいますか二月のものが排出する基準につきましては、大体一時間の上下、それからいまの連檐いたしますものの複合日影につきましては三十分単位の上下、そういうことを今後の条例によります強化その他の内容にいたしたいと考えておるわけでございますが、これは二年有余にわたる建築審議会の専門委員会の皆さん方の御研究を経まして了承を得たものでございます。
  87. 井上普方

    井上(普)委員 あなたは、すぐに行政当局は審議会審議会と言ってこれを隠れみのにする傾向がある。あなた方がやはりやる以上は、責任を持ってやってもらわなかったら困ると思うのです、これは。あらゆる問題はともかくとして、審議会の愚見は尊重いたしましたけれども、行政当局はかくかくの責任を考えてやりましたということは明確にしてもらわなければ困ると思う。あれはまさに隠れみのになっておる。このことは単に住宅局長だけじゃなくて行政当局全体に私は言えることなんで、この点ひとつ厳しく私は注意申し上げておきたいと思います。  しかし、この余りにも幅が少な過ぎる、あるいは考え方基準が違うということを地方自治体から盛んに私どもにも聞かされておるのであります。いままでの指導要綱あるいは条例によってやっていたものが、これが全部だめになって、この基準法一本では余りにも幅が狭過ぎる。たとえば、言いますならば、住居系の地域のみにやっておりますが、いままではそうじゃない。商業地域であろうがあるいは工業地域の一部もそれに入れておるようであります。  こういうようなことを考えてみますと、一体これは非常にむずかしい問題ではあります。住居地域においては高層化しなければ職住近接という目的は達成できないという面もあります。ここで私法上の問題が非常に大きく出てきておるのでありますけれども、私はどうも現在のこの建築基準法改正案では、つくっておる地方自治体との相克が出てくるのではなかろうかと思われます。したがいまして、もう少しこの問題につきまして行政当局は責任を持って考え方を明確にしていただきたいと思うのであります。今国会も恐らく、時間もございませんので、この法律の行方につきましても、おおよそのことはおわかりでもあろうと思います。したがいまして、私どもの考え方を入れて新しい建築基準法をつくられるよう心から私は念願いたします。  まだ時間がありますのでひとつお伺いしておきたいのですが、先ほど来地下街の問題が盛んに問題になってきたのでありますが、実は第一議員会館と第二議員会館との間の地下道です。あれはつくられてからもう十年になりましょう。ところが、あそこにはいつも漏水が起こってくるのですね。これは、私が見ただけでも五回や六回起こっている。そのたびに修繕をする。まことに一面から言えば不経済ではありますけれども、これほど日本の建築技術というのは未熟なんですか、どうなんです。あるいはこれは、ああいうようなのが起こってくるのは設計のミスか、あるいは施工上のミスなのか、何なんです。ここらあたり明確にしていただかぬと、日本の建築技術というのはいかにもこれほどお粗末なのかということになるのです。したがって、地下道の避難階段を新しくつくってきた場合に、ここからじゃんじゃん水が漏れるようなことになって、これこそまた大変なことになると思うので、ここらあたり明確にしていただきたい。私らの目の前で行われておるあの漏水事故ですが、これはどうなんです。
  88. 大屋登美男

    ○大屋説明員 いまお話しの地下道は、地表から大体六メートルくらいのところにございまして、当時、設計施行段階で調査の結果は、常水面はそれよりもかなり下だということで、要するに地下道より常水面がもっと低いということがわかっておったわけです。したがいまして、漏水の心配は万一にもないと判断したわけでございます。したがいまして、いろいろ経費の点もございまして、いわゆるアスファルト防水、そういったような本格的な防水をいたしませんで、モルタル防水と申しまして、モルタルの中に防水剤を入れましたいわゆる簡易防水で施行したわけでございます。ところが、実際に施工を終わりまして使用してみますと、お話のように漏水が出てまいりました。その後の調査でわかったところによりますと、調査の不備でございまして、近くを通る給排水管の漏水によるものであるということがわかったのでございますが、そこで、方法といたしましては、やはり漏水の個所を受け皿で受けてしかるべき排水溝に流すといったような、多少こそくな方法でございますけれども、それ以外に手がなかったわけでございます。はなはだ遺憾でございますけれども、要するに調査の不備でございます。
  89. 井上普方

    井上(普)委員 そうすると、調査の不備ということなんですね。大臣どうです、日本の建築設計というのは私は相当すぐれておると思っている。結局、調査の不備ということは設計の不備ということなんです。こういうことが一番口やかましい国会議員が通るところで行われておるのです。そこで、建築基準法で地下道に避難階段をつくらなければならぬけれども、そこらあたりの配慮もする必要があるのじゃなかろうか。これだけともかく口やかましい連中がおるのだから、一生懸命やったに違いないと私は思う。ところがそれは設計上のミスなんですね。よほど慎重にやっていただかなければいかぬし、また慎重にやるということは金のかかることでもありますので、ここらあたりは慎重に、地下道をさわる場合はやっていただかなければならぬと思うのですが、いかがでございます。特にまた、人命救助という面も重視しなければならぬと思うのですが、どうでございます。大臣の総括的な御答弁でよろしゅうございます。
  90. 仮谷忠男

    仮谷国務大臣 お説のとおりでありまして、慎重を期してやらなければならぬことは当然であります。
  91. 天野光晴

    天野委員長 柴田睦夫君。
  92. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 最初に日照問題についてお尋ねします。  この日照問題についてまず考えなければならない大切なことは、いわゆる日照紛争、日照問題が現在のような社会問題となった要因ということであり、それから、これがどういう経過をとって今回の公法上の規制に至ったかということ、それから、今回の基準が、これらの要因やいままでの経過を踏まえて、本当に解決する立場からつくられたのかという点であります。  まず要因について。これは建築審議会でも述べているところでありますが、第一には、過密都市における都市の高層化による中高層建築物が環境に急激な変化を引き起こさしたということ、それから第二番目には、マンションブームに乗ってデベロッパーが中高層住宅を一層全国的に広げて、これらが無計画に建てられることによって都市全体の環境の悪化を引き起こしたということであり、第三番目には、これらの環境悪化に対して住民が都市環境を守る立場から改善を求めて立ち上がった、これが主な要因であります。  それでは、これらの日照紛争は果たしてどのような経過をとったのかというのが第二番目の問題でありますが、当初日照問題は、建築主が基準法によってこれは適法であるということをがんこに主張して、ほとんどが住民の泣き寝入りという実情でありました。しかし、デベロッパーによるマンション開発が全国に広がるにつれて、都市の住環境を守る立場からこの日照問題が大きな社会問題としてクローズアップされて、見直されてきたのであります。そういう中で裁判所の日照問題に関する判決の立場も変動して、最初は不適法な建築についての問題でありましたけれども、その後は、適法な建築においてもこの日照阻害に対するはっきりした態度を示す判決となってあらわれておりました。一方、地方自治体では、住民の都市環境を守る立場に対応して、独自に日照条例や要綱をつくって日照紛争の解決に一定の貢献をしてきたわけです。そして、今日の日照基準の設定に至ったわけでありますが、日照基準は、当然これらの要因や経過を本当に解決する立場から設定しなければならないということは言うまでもありません。  それでは、これらの要因と本当に解決する立場とは何かという点でありますが、第一には、日照基準は都市の環境基準でなければならないということであります。もちろんわが党は日照基準の設定についてこれを否定するものではありません。しかし、一般的に環境基準は、現在ある良好な環境は保全し、悪い環境に対する改善の目標として考えられなければならないということは言うまでもないところであります。  二番目には、過密都市におけるこれらの解決は、住民本位の町づくりの立場からの基準でなければならないということであります。審議会報告も述べていることですが、都市の再開発が解決につながるということを否定するものではありませんが、それは当然住民本位に進められる必要があり、資金力のあるデベロッパーの無秩序な開発を許すものであっては決してならないわけであります。  私は、こうした立場から今回の日照基準が検討されなければならないと考えるわけですが、以下、幾つか具体的な質問をいたします。  最初に、この法律案提案理由を見ますと、日照問題に関しては、都市における土地の高度利用の進展に伴って日照紛争その他の都市環境を阻害する事態が随所に発生していることに対処するために、建築物による日影に関する基準を設定する措置を講ずるということになっております。ということになりますと、今度の改正案は、日照紛争に関してこのような紛争を解決していくためには公法上から高層建築について建築規制を加えていくという考え方をとっているものであるかどうか、このことをまずお伺いします。
  93. 山岡一男

    山岡政府委員 長期的視野に立ちまして市街地の再開発を積極的に推進をし、日照問題の解決はもちろんのこと、市街地環境の全般の向上を図ることが必要であるという点は、先生のおっしゃるとおりだと思います。ただ、当面の対策としまして、激増する日照紛争を解決するために、日照確保のための基準を明らかにしまして、住宅地におきます中高層建築物規制を早急に実施する必要があると考えまして、住宅地におきますそういうふうなルールを公法上も確立したいというのが今回の法律提案の理由でございます。
  94. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 日照紛争を解決するということが一つの目的になっているわけですけれども、日照紛争の中での住民の要求はこれはいろいろの場合があるわけですけれども、それらは日照問題に限られるというものではなくて、地域の環境を保全しなければならない、そういう立場で、いわば町のあり方をめぐって要求が出されているものがありまして、日照のほかにも重大な注目を引いております風害の問題やあるいはプライバシーの問題など、これも当然の要求となって全体的には都市における環境対策ということになってまいっております。都市におけるこうした環境対策と日照の基準を定めるということの関係をどのように理解しておられるか、お伺いします。
  95. 山岡一男

    山岡政府委員 今回の規制によりまして、日照を市街地環境の総合的な指標の一つとして確保をするということを意図しております。この規制を新たに付加することによりまして、住居系の地域におきます単に日影規制のみならず、通風、採光、プライバシーの保護といった面でも良好な環境の住宅地になるだろうと考えております。  なお、風害等の防止のための制限を定めていないじゃないかという点がございまけれども、今回制度的、技術的な問題がやっとわれわれとしては解明されたと思っております日影基準を入れたわけでございまして、今後とも風害その他電波障害等いろいろございますが、そういうものには積極的に検討を重ねてまいりたいと思っております。
  96. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 今回の基準は、すでに日照が奪われているような住宅地、ひどいところでは日照がゼロだというところがいまでもたくさんあるわけですけれども、今回の基準から比べてみても劣悪な日照環境にあるところがたくさんあるわけですけれども、こうした地域において環境を改善していくということについての考え方はとられているのかどうかお伺いします。
  97. 山岡一男

    山岡政府委員 既存の建築物につきましては、この日影規定は適用されません。したがいまして、他の一般の公害対策と違いまして直ちに改善が行われないという点はございます。ただ徐々に、今後建築物につきまして新しく増築、改築されるという場合にはこの規定が適用されるわけでございまして、相当時間をかけて既存のものについても改善が行われるというふうに考えております。
  98. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 この基準は、商業地域を全く除外することになっているわけですけれども、国会でも問題になりました台東区などを見てみましても、商業地域や準商業地域でありながら実際は商店と住宅が併用されているというところが日本には非常に多いわけです。商業地域を純化するという考えをいままで建設省では述べておられるわけですけれども、純化するということは現実の問題としてはこれは簡単にできることではないと思うわけです。日照が住居系の地域において保障される改正案であるならば、当然商業地域であっても、現実に住居として使用しているところでは同じように扱わなければならないと思いますし、このことは審議会の中間報告でも指摘しているところであります。そういう中にあってこの商業地域をあえて除外した理由、これをお伺いします。
  99. 山岡一男

    山岡政府委員 最近の日照紛争の起こっております状況を見ますと、やはり住居系の地域の方が相当多いということでございます。それと今回の法改正におきましては、日照保護の対象地域といたしまして住居の安寧を守るという本来の住居系のところに限ったわけでございまして、商業地域は本来主として商業その他の業務の利便を増進するための地域として指定されるということでございます。先生おっしゃいますように、確かに地域地区の指定の現状の中では、非常に商業地域といえども住居系の多いところがございます。現に、実は私どもの住宅公団におきましても、札幌の方で商業地域内にアパートを建てまして裁判で第一審負けております。そういう例がございます。しかしながら建築基準法におきましては、商業系のところにつきましては高い建蔽率、高い容積率というのを認めている地域でございます。したがいまして、日照保護のための公法上の規制をいま直ちに行うということではなくて、まずやはり住居の安寧を守るべき住居系に限るべきだという判断をしたわけでございます。ただ、商業地域等につきましても、紛争があることは事実でございます。したがいまして。いろいろと判例の動向等も勘案しながら、今後検討してまいりたいと考えております。
  100. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 建設省のこれから先の検討課題という、そしてまたそれを検討するということは理解できるわけなんですけれども、今回の改正案によっても全体の環境問題の改善に対しては現実的には効果を発揮するものではないし、それから日照を奪われているような環境地域の改善ということも現実の問題にはならないわけです。  それから日照紛争が商業地域は少ないというような説明ですけれども、最近は商業地域においてもこの紛争が多くなってきているというように私は理解しているわけです。この商業地域が除外される、こういうことから見ますと、改正案によって住居系の地域においては、日照の問題についてはこの程度まで日照を奪ってよろしい、その他の地域においては日照を与えなくてもよいということを公認することになって、現在住民運動を通じて、また地方自治体による条例指導要綱などによる規制を通じて守られている環境の事実上の基準を悪くしてしまうのではないかというような疑問が、陳情書など見ても投げかけられているわけですけれども、こういうことについての見解をお伺いします。
  101. 山岡一男

    山岡政府委員 本法案の予想いたしました日照基準は、良好な住居の環境を保護するために必要な最低基準を一般的に定めたというつもりでございます。それよりもやはり高い水準の日照を期待する場合、あるいは土地の状況等が特殊な場合等々、この基準による規則を不満とする紛争も今後生じないとは言い切れないと思います。しかしながら、本基準は最低基準とは言っておりますけれども、現実にこういう基準を定めます過程におきましては、既存の低層住宅地等におきまして実際に確保されている日照時間等を参考といたしまして定めたものでございます。現行規定と比較しますとかなり厳しい制限的内容となっております。家を建てる方の立場で言いますと、たとえば既存のマンションの中で日照紛争を起こしたものがございます。その中の約六十例につきまして具体的に当たってみますと、数例を除き今回の規定に全部抵触いたします。したがいまして、不適合ということになります。まあその程度のものでございまして、建てる側にも非常に厳しいルールになっております。しかしながら、やはり守られる住民の方々の権利、それから建てる方の建て方のためのいろいろな権利、そういうものにつきまして公法的に社会的な同調を得られるような基準を定めたというふうにわれわれ実は思っておる次第でございます。したがいまして、これによりまして相当日照紛争等については防止できるというふうにかたく思っておる次第でございます。
  102. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 地域地区を純化していくという問題ですが、これは純化ということでの町づくりができるという考えを述べておられましたけれども、これには私は疑問があるわけです。住民が自分たちの町をこのようにつくろうという考えになり、住民の自発性と納得に基づいて良好な環境の町づくりをするということが大切であり、そのことが制度上も現実の上にも考えられなければならない、こう思うのですが、地方自治体の条例や日照指導要綱などは、こうした住民の意向が部分的に反映された結果のものであると見ているわけです。  ところで、これらの条例や要綱は、日照問題に対していままでの紛争解決の上で効果があったと思うのですけれども、建設省としては条例指導要綱などに対してどのように評価されているのか、このことをお伺いします。
  103. 山岡一男

    山岡政府委員 先刻申し上げましたように、条例とか指導要綱の中にはいろいろなものがございます。日照確保のための指導要綱、全国で約二百例の中でございますが、この中でも具体的な基準をお定めになっているものが四十八例でございす。用途地域の種別に応じて具体的な基準が定ままっているものが三十七例ございます。それから、指導要綱の中で住民同意に関する規定を設けられているものが二百例中百三十四例あるというようなことでございます。  私ども、先ほど申し上げましたように、条例につきましては意見が分かれております。われわれはやはりどうも財産権の侵害であるということから、やはり法律が定めるまでの間、それがなければ確認しないとか、それがなければつくっていけないという規制である限りは、どうも条例としては不適当じゃないかというふうに思っておりますが、指導要綱はいわゆる行政指導の方針を示した内規でございます。したがいまして、日照紛争の解決のためにも行政指導上相当な効果があったというふうに評価をいたしております。
  104. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 この条例が問題があるという見方のようですけれども、結局いままでの説明によりましても、今度法律ができれば、これと抵触する条例は効力がなくなる、無効になるという見解のようですが、この今度の基準で、住居系の地域についての基準が定められる。ということは、見方によっては、たとえば商業地域などについては基準が定められないわけですから、その点については基準はない。だから日影規制がないというように見られるわけですけれども、商業地域についての条例、今回の法律が通った場合に商業地域に関しては効力が残るのか、その点についても無効になるのか、見解をお伺いします。
  105. 山岡一男

    山岡政府委員 商業地域内におきますいろいろな指導要綱条例等では大半がそういうふうな具体的基準を決めてはおりません。しかし、少しは基準を決めておられるものがあるようでございます。そういう場合には、私どもの基本的な立場といたしましては、説が分かれておりますけれども、やはり法律の定めるところによるべきであるということでございまして、もしその条例の中で、その基準に合致していなければ確認をしない、もしくは許可をしないというふうなものとリンクをするようなものであれば問題かと思います。しかし、そういうふうに努めなければならないというていのものであれば、これは問題ないと思います。
  106. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 私のところの千葉市の稲毛に計画されている第一開発マンション、ここは住居地域であるわけですけれども、きわめて良好な住宅環境であるわけです。千葉市では建て主と住民との話し合いを根本にして調整委員の制度によって解決していくという方法をとっているわけですけれども、このマンションの日照図によりますと、改正案の日影基準には合致しているわけです。しかし、このマンションが建てられようとするところに隣接して病院がありますし、児童公園があるわけですけれども、児童公園と病院に対する日影を初め、多くの予想される環境被害の解決ということが住民運動となって、いまこの交渉が行われているという状況なんですけれども、こういう場合にこの法律は、住民のそうした、基準には合致しているけれども、病院という特殊な建物それから児童公園というみんなが利用するようなところ、そこの環境が悪化することになるわけですけれども、それを防ごうとする住民の意向が抑えられるのではないか、こう考えられるわけです。  それから、これは西宮市長から日照の問題についての要望書が出ておりますが、これを見ますと、西宮市という地域の特殊性から、日影規制の強化措置規定、別表第三中の建築物や高さについても、地方自治体の実情、特殊性に応じた定めができるようにというような要望の内容になっておりますが、基準よりも進んだ環境保全を地方自治体が進んでやれるような対策あるいはそういう規定考えなければならないのではないかと思うのですが、いかがですか。
  107. 山岡一男

    山岡政府委員 具体のケースにつきましては承知いたしておりませんが、建築基準行政を推進いたします際に、やはり地元の皆さんとの間の調停、あっせん等につきまして特定行政庁、建築主事等が力をいたすようにわれわれは平素連絡をしております。そういう意味で、いまの基準に合致をしておれば確認は出せるということでございますけれども、それと並行いたしまして、そのような調停を行うというようなことについては今後もあってしかるべきものだと思います。それから、そういうふうなもの以上にその地域地区の整備を図りたいということでございますれば、建築基準法に高度地区という制度がございます。そういう制度の活用を検討してみたらいかがかといまちょっと考えております。
  108. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 これは地方自治体がいろいろ日照問題の解決のために条例をつくったりしてやってきたわけですけれども、町づくりの第一次的な責任が地方自治体にあるということを考えてみた場合に、この日影や日照の問題について国は一定基準を示す、そして具体的にはその基準を下回らないような範囲で地方自治体が条例なりで決めていく、こういうふうにしてくれというような要望も出ているわけですけれども、その点はいかがでしょうか。
  109. 山岡一男

    山岡政府委員 いわゆるメニュー方式にいたしまして、現在いろいろな容積率、建蔽率等について都市計画決定で地方公共団体が定めるというようなことを現在やってまいっております。日照の場合につきましてもそれと同じような仕方をしたらどうかという案も確かにあると思います。われわれも検討いたしたのでございます。ただいまのところ、最低の基準を示しまして、全国でやはり地方公共団体ごとにいろいろなものが違うという点もいかがかという点がございまして、一応は基準値を示しますけれども、そのあたりに上下、緩和もしくは強化の道を開くということで地方の実情に合わせるようにというのが原案でございまして、これで十分地方の実情には沿えるものとわれわれは考えております。
  110. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 先ほどの説明に出てきておりましたが、この基準を適用した場合に、現存のマンション、民間の中高層住宅がこの基準に合致するかどうか、お調べになったようですけれども、その調査結果の特徴点について御説明いただきたいと思います。
  111. 山岡一男

    山岡政府委員 日照紛争を起こしましたマンションにつきまして、私どもの職員が実例について調べたわけでございます。約六十例につきまして、今回の基準がどういうようになるかということを調べたわけでございますが、数例を除きまして大部分が今回の日影基準に不適合ということでございます。不適合の程度につきましては、個々の事例によりまして差がございますが、大体敷地面積をおおむね三割から五割程度ふやさなければ基準に合致しないのじゃないかということでございます。逆に申しますと、今回の基準ができますと容積なり高さなりを減らさなければならないということになります。ただし、これらの基準に適合しないマンションは、特に容積率を目いっぱい使うとか、特に容積率の高いものにつきまして問題があったわけでございますが、新用途地域の指定によりまして、住居系用途地域の容積率は従来よりも相当低く抑えられるというのが最近の実情でございます。したがいまして、最近建っておりますマンションは今回の基準に近いものが相当ある。約八割ぐらいは基準に合致するのではあるまいかというように思っております。
  112. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 紛争を起こしたものについては幾らかの修正をしなければならないような内容になっている。それから、紛争がなかったものについては大体がよろしい、合致しているということのようですけれども、この説明によりますと、今度の基準によって従来のようなマンションは、今後は幾らかもちろん規制強化になるようですけれども、しかし一方、この基準に合いさえすれば自分たちのこの建築は合法であるのだ、日照問題についても合法的に解決しているのだとして、先ほど言いましたような千葉市のマンションの例、今度はこの基準ができると、解決しているとして住民意思を無視した建設が進められるのではないかと思うのですけれども、これは日照紛争を解決せずに、また環境を保全するということも解決しないで、新たな問題を生じさせるということが指摘されておりますし、そういうことで建築業者の箔がつく、法律によって箔がついて建築を進めるということから、さらに新たな問題を生じさせるというような疑問を持つわけですけれども、この点についてはいかがですか。
  113. 山岡一男

    山岡政府委員 いまお伺いいたしました千葉市の例は、日照の問題だけではないということのようでございますけれども、われわれの企図いたしましたのは、良好な市街地環境の整備のために土地をある程度高度利用するという点と、付近住民の方々の健康な生活を守るという観点と、両方合わせまして社会的な合意を得られるルールづくりをしたいというのが今回提案の趣旨でございまして、したがいまして、そういうルールができましたならば、一応はそのルールに従って両方ともスムーズにいくだろうと期待をしておるわけでございます。
  114. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それでは、日照問題は以上にいたしまして、防災対策について若干お伺いします。  今回の防災についての改正案は、特殊建築物、複合用途の建築物地下街一定規模以上のもの、これは階段防火区画などの避難防火または消火に関する規定を既存のものに対しても適用するといういわゆる遡及適用を定めているわけですけれども、ビルや地下街防災対策はこれによって十分なものであるという考え方であるか、なおまだ疑問が残っているか、基本的な見解をお伺いします。
  115. 山岡一男

    山岡政府委員 先ほど来申し上げましたとおり、今回は遡及適用といういわば相当大変なことをやるわけでございます。したがいまして、そういう場合に何を重点に置くかということでございまして、われわれの重点といたしましては、人が逃げるということを第一にしたい。とにかく火事が起こりましたときに人が死なないということにしたいということでございます。そういうことが主眼でございますので、そのための必要な最小限の規定は必ず遡及適用させていただく、そのかわり何とか代替等ができるものについては代替でひとつ現実に合わしていこうという考えでおるわけでございます。
  116. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 いまの、火事のときに人が逃げる、死亡事故を出さない、こういうことをめぐっても、たとえば大洋デパートや千日デパートなどの火災を経験いたしまして、関係の学者からいろいろな提案が当時からなされております。これらの学者の提案につきましては建設省は十分検討を加えておられると思うのですが、たとえば千葉大の講師の高野公男氏や阪大教授の岡田光正氏などは、昭和四十五年の基準法改正以降の新設デパートであっても、煙に巻かれる可能性が結構大きいということ、大惨事を防ぐためには商品を置かない安全空間を設置する必要があるということ、階段をふやして幅を広げるということなどの提案をしているわけですけれども、こういう学者の提案に対する建設省の見解と、これらの提言は今回の改正案を施行するという段階になってどのように実現されるか、そのことについてお伺いします。
  117. 山岡一男

    山岡政府委員 確かに各界からいろいろな御提言がございます。われわれ一番どきりといたしましたのは、岡田光正阪大教授の警告等でございます。教授の警告によりますと、地上八階地下一階、売り場面積六万三千平米程度の百貨店で、一階あるいは二階で出火した場合には約七分後には煙が全館に充満する、年末等のピーク時では約十万人程度の客を収容しているので、七分後に脱出できるのは二階以上にいる人の三割から六割であると言われております。こういう人たちを今回の改正で全部救えるのかと言われますと、確かにまだ少しじくじたるところがあるかもわかりません。そういう点につきましては、十分それぞれのケースごとに検討いたしまして、具体の実施をいたすわけでございます。  ただ、そのほかにも、千日デパート火災研究調査報告書等もいただいております。いろいろな諸先生方に全部現地の調査もしていただきまして、御提言をいただいております。  ただ、御提言の中の全部が直ちに採用できるというものではございませんで、学問上未解決の問題もございますし、建築設計上実情に沿わない点もあるというようなことかございます。したがいまして、そのような皆さん方の調査結果も十分参照しながら、階段設備の風道化の排煙対策を強化するための技術基準改正を先般行っております。したがいまして、今回の分で新しく基準を厳しくするということはございませんけれども、それらのものを加味いたしました技術基準遡及して適用するということでございますので、遡及という観点からはこの程度で十分私は可能なものであり、かつ十分だと考えております。
  118. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 先ほどのお答えの中で、施行した場合においてもデパートの売り場面積が少なくなることはないというようなことを言っておられましたが、提案の中に商品を置かない安全空間の設置ということがありますし、いろんな過去の実例から考えてみてもこの安全空間の設置ということは合理性があると思うのですけれども、この空間の設置の問題についてはどのように考えておられますか。
  119. 山岡一男

    山岡政府委員 現在、デパートその他の売り場のいろんなものを集約をいたしまして間をあけるべきだという提案をいただいております。ただその問題を検討いたします場合に、建築基準法の法域の中ではどうもぐあいが悪いというふうに考えておりまして、消防法、それから関係の通産省いろんなところと現在相談をいたしております。ビルの使い方といいますか、使用の方法についての何らかの規制が必要じゃないかということでございまして、建築基準法のように構造、耐力その他につきましての最低基準を決めるという法域の中では若干問題はございますが、おっしゃいますとおり、そういうようなものについても前向きに検討する必要があると考えております。
  120. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 千日デパート大洋デパートの過去の例、それからキャバレーやバーがある雑居ビル、こういうところでは、避難階段がありながらそれを営業の関係か封鎖したりするという著しい違反事例が報告されておりました。消防庁の昭和四十八年の査察の調査結果によりますと、もうたくさんの違反事例が出ております。法律遡及適用するということになりますと、その遡及適用をしたものについてその状況を完全に把握して防災規制を厳格に行うということが必要でありますし、そのためには百貨店法あるいは旅館業法、風俗営業法などの関係法律を主管している関係省庁、たとえば消防庁、通産省、厚生省、こうした関係省庁との協議が必要であるし、また、協議をされているということでありますけれども、全体的に防災の問題を推進していくというためには連絡組織を設置するということが必要であろうと思うのですけれども、この関係省庁との防災問題に関する連絡の組織について検討されているかどうか、お伺いします。
  121. 山岡一男

    山岡政府委員 消防施設設置とともに、建築物の適切な利用、管理の体制の確保ということが防災上必要であるということは、先生のおっしゃるとおりであるとわれわれは思っております。その辺も、御指摘の避難階段の封鎖等防災上支障のある行為につきましては、建築基準法消防法等に基づきましてそれぞれ是正に努めてまいったところでございますけれども、特に、たとえば建築防災週間というようなものを年に数回設けまして、消防庁と連絡をしながら同時に査察をするというようなこともやってまいっております。  それからさらに建築監視員、まだ全国で数は少のうございますけれども、主なところには全部置いてございます。そういう人たちによります常時の監視等につきまして励行させておる次第でございます。  ただ、正式に何々連絡協議会というスタイルは現在とっておりませんけれども、中央におきましても出先におきましても、関係の省庁がいずれも連絡協議をいたしまして、同一の歩調で進めておることは御了解いただきたいと思います。
  122. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 連絡協議が事実上行われているわけですけれども、必要性から考えてみても、根本的に防災問題に取り組んでいくということから特に提案しているわけです。  それから、学者の見解とは趣を異にするわけですけれども、日本百貨店協会、ショッピングセンター協会、全国地下商店連合会、こうしたところからいろんな防災施設の問題について要望が出ておりました。中には、この適用を除外してもらいたい、あるいは代替措置などいろんな要求が出されて、このやり方がいたずらに技術的細目を義務づけて現実を無視したものだというような指摘までなされておりましたが、これらの要望や陳情についての建設省の見解を伺います。
  123. 山岡一男

    山岡政府委員 本法案を提案以来相当日数がたっております。したがいましてその間におきまして、各業界といいますか、各協会でございますがの皆さん方に、立法の趣旨、改正の要点、それから実際の起こり得べき問題点、皆さん意見等については十分拝聴してまいっているつもりでございます。百貨店皆さんも、そういう確かに先生のおっしゃることをおっしゃっておりました。  建築防災につきまして、管理体制という人的側面、それから消火、防火避難に関する物的要件とが均衡して初めて百貨店等防災管理が十分になるのだという御提案がございましたけれども、われわれとは基本的に見解が異なっておるものではございません。ただ、防災対策の総合性につきまして、そういうものを十分に踏まえました上で建築基準法規定を選択しまして遡及適用しようということでございまして、法律を画一的に適用したのでは既存建築物の配置、構造等の多様性に柔軟に対応することは困難になるということから代替措置を法定しておるものでございます。そういうふうな代替措置活用につきましては、先ほど来申し上げておりますように、実情に即して本当に避難のために役立つということであれば、相当大鵬に採用してまいりたいと思っておるのが現在でございます。
  124. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 特に地下街なんですけれども、この防災施設などについてとてもやることが不可能であるというようなことも聞いたことがあるのですけれども、それらが代替措置で本当に人命火災のときに守られるような、いま全国にある地下街についても人命が守られるような設備またその代替設備、それで間に合うかどうか、この点はいかがですか。
  125. 山岡一男

    山岡政府委員 地下街では特にやはり防災上の問題がございますので、一般の地上にございますいろんな建築物よりもさらにプラスの規定がいろいろございます。  そういうものの中でも、特に三十メートルごとに必ず外へ出る階段が要るというような規定がございますが、そういうようなものにつきましては、その若干のメートル数等については既存のものとの差を認める必要はあると思いますけれども、できる限り守らせたい。それが一番大事なことだと思います。  それ以外に排煙のことにつきましても遡及したいと考えておりますが、現在必ず地下街には空調施設がございます。空調施設活用した排煙ということが最近できるようになってまいっております。そういうものは代替的に考えてまいりたい。  その他やはり防火区画等につきましても、現地の実情に応じましていろいろな御提案があるようでございますけれども、逐一技術委員会等で検討いたしまして、前向きに検討してまいりたいと思っております。
  126. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 いままでのビル火災、それからデパート火災の実際から見てみましても、この防災の体制はやはり早急に確立しなくちゃならない問題だと思っているわけです。ただ、これだけの防災設備をするということになりますと、もう各所から言われているところですけれども、膨大な資金が必要であるということになります。中小百貨店それから地下街の零細テナントにとっては、これは一層大変な問題であるわけです。地方都市の百貨店で資本金が一億円以下のものもたくさんありますし、地下街でも五千万以下の商店が六〇%と言われております。こうした中小企業には、いま不況の最中でもありますし、特別の配慮が必要であると思うわけです。その資金対策ですけれども、基本的な考え方についてはこの委員会においてもたびたび説明がされておりますが、従来、是正命令を出してそれの実行をする場合に貸し出される資金の活用ということが言われておりますけれども、これらの資金の使用について、据え置き期間あるいは償還期間、金利などについて緩和していく、そういう具体的な見通しを持っておられるかどうかお伺いします。
  127. 山岡一男

    山岡政府委員 先生おっしゃいますとおり、防火避難施設の改修工事に対しまして、やはり金がかかるという点が一番の皆さんに対する問題点だろうと思います。現在中小企業金融公庫、国民金融公庫の融資につきましては、償還年限は十年以内、据え置き期間は二年以内ということに相なっております。これはいずれもそれぞれの公庫におきます最優遇の扱いということになっておるわけでございますけれども、改正法の施行の実情から見まして、中小企業に大きな負担がかかるということでございますと、さらに関係当局とも協議いたしまして改善を図ってまいりたいと思っております。なお、別途補助金等も準備いたしておりますので、できる限り負担のかからないようなといいますか、負担を軽減するような方向遡及をしていただきたいと考えておる次第でございます。
  128. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 いろんな業者の人からお話も聞いたのですけれども、結局、補助金というのはそう当てにできるものではない、融資の面がどうしても必要だ、これが期待されると。ただ、それが現実に合うような償還の問題あるいは利率の問題などについて現実的なものにしてもらう、このことが非常に強い要望であると思います。ですから、この防災体制を確立していく上において必要な資金、しかもその融資を受けた資金について、また営業が成り立っていくような方法考えなければなりませんので、この点についての検討、現実方を要望して終わります。
  129. 天野光晴

    天野委員長 北側義一君。
  130. 北側義一

    ○北側委員 建築基準法改正につきましては、いままでたとえば都市計画法の改正その他、他の法律改正等もありまして、ほとんど四十四年、四十五年とずっとその後もずいぶん改正があるわけですが、特にその中で、昭和四十五年度の建築基準法の一部改正、これは北側斜線とかいろんな問題が入ったわけです。その四十五年の一部改正の主要項目ですね、それと今回の一部改正の関連についてまずお伺いしたいと思うのです。
  131. 山岡一男

    山岡政府委員 今回の改正関係がございます四十五年の建築基準法改正につきましては、防災関係といたしまして、百貨店その他の特殊建築物等に対しまして、一定技術基準に従って排煙設備を設けること、それから非常用照明装置を設けること、非常用進入口を設けること、階数が三以上の建築物等にする内装制限を強化すること等の防火避難施設に関する規定の整備を行っております。しかしながら、このような建築基準法令の改正が行われても、既存の建築物に対しましては原則としてこれは適用になっておりませんでした。このため、今回の改正は、大規模な建築物におきます災害防止のために、その中で特に防火避難上必要なものを遡及適用しようということでございまして、新しく規定を追加するものではなくて、四十五年のときまでに整備いたしました法令をさかのぼって適用しようというものでございます。
  132. 北側義一

    ○北側委員 昭和四十五年のあの建築基準法の一部改正以来の新しい、ただいま御答弁ありましたとおり、既存の建物に全部適用していこう、このようなことなんですが、今日まで四十五年の改正から約五年、六年近くなりますが、その間における百貨店、病院、ホテル、複合用途建築物地下街の五種類についての火災発生件数、死傷者数、損害額、これは大体どうなっておりますか。
  133. 山岡一男

    山岡政府委員 先生へのお答えに直ちに全部なるかどうかわかりませんが、昭和四十九年度におきまして、各都道府県の協力を得まして調査をしました結果では、用途別の対象件数といたしましては約二千二百五十件ぐらいあるのではないかと思っております。たとえば百貨店等につきましては、全体が五百二十四ございますけれども、そのうちの三百六十三は何かの点で問題がある。スーパーは二千百六のうち五百二十八は何かの形で問題がある。大規模物品販売につきましては四百六十八のうち二百七十五ぐらいが問題がある。地下街は六十四のうち五十三ぐらいについて何らかの問題がある。旅館は八万六千八百二十七のうち二百十八、ホテルは七百十五のうち三百五十五、病院は八千百四十三のうち二百五十一、複合用途建築物につきましては四万六千七百七十八のうち二百十一ということでございます。これはいまの対象建築物でございますが、各都道府県からの報告を集約したものでございまして、大体十四万五千六百二十三という対象物件のうちで、その一・五%に当たります二千二百五十四ぐらいがどうもいまの規定当たりそうだという報告を受けております。  それから火災発生件数でございますけれども、これも昭和四十九年度の消防白書によるしかわれわれどうも資料がないわけでございますが、昭和四十八年の一年間の用途別の出火件数というのを手元に持っております。それによりますと、百貨店、マーケットが百三十九件、その他の店舗が二千三百九件、旅館、ホテル、宿泊所が四百十一件、病院、診療所が二百五十五件、それから劇場、映画館、興行所が百五十七件、その他が三万九千二百八十件となっております。それから、昭和四十八、四十九年度のやはり消防白書でございますが、昭和四十七年、四十八年の三年間に発生をいたしました死亡を多く伴った火災の用途別発生状況は、百貨店、店舗の類が五件、旅館が一件、病院が一件、社交場が一件、その他が三十件ということでございます。  それから死傷者の数で申し上げますと、百貨店等の店舗が二百三十一人、旅館が六人、病院が十三人、社交場が五人ということでございます。  以上でよろしゅうございますか。
  134. 北側義一

    ○北側委員 私お聞きしたいことは、この四十五年の改正で、御存じのとおり既存の建築物については適用除外になっておる。それ以降に、適用除外になったことによって、特にそういう火災その他の問題で大きな人身災害等起こったと見られるからこそ今回の改正というものがあるんじゃないか、私はこう考えておるわけなんです。それについての考え方なんですね。それでいまもそれをお聞きしたのですが、そういう点ではどうなんですか。
  135. 山岡一男

    山岡政府委員 正確に何割ということは申し上げられませんが、いままでの申し上げました火災の大部分は既存不適格でございます。特に大きいようなもので申し上げますと、四十七年の千日デパート、四十八年の大洋デパート、西武高槻、四十八年の済生会八幡病院その他いろいろございますけれども、相当大きいものはほとんどが既存不適格でございます。
  136. 北側義一

    ○北側委員 そうしますと、本法改正によりまして、既存の百貨店、病院、ホテル、複合用途建築物地下街等で一定規模以上のものに対して避難施設、非常用照明装置、非常用進入口防火区画等規定が適用になるわけでありますが、このような既存の建築物防火避難施設の整備が義務づけられまして、遡及適用となる対象のいわゆる建築物の用途別、すなわち百貨店ホテル、病院、劇場、地下街等の件数と総延べ床面積、改修費総額、大体これをどれくらい見ておられますか。
  137. 山岡一男

    山岡政府委員 件数は、先ほど申し上げました二千二百五十四件ということでございまして、内訳も大体先ほど申し上げましたとおりでございます。それにつきまして現在のところ非常にラフな計算をいたしますと、平米当たり幾らというようなことを見込みまして、実際の実情とは違うかもわかりませんが、積み上げてみますと、二千六百四十億という数字になっております。これは一平米当たり八千円から五千円ぐらいかかるというような計算で一応計算したものでございます。
  138. 北側義一

    ○北側委員 いずれにいたしましても、ただいま言われたように大体二千六百四十億、非常に莫大な金がかかるわけです。そこで考えなければいけないことは、やはり人命尊重の上から当然そういういままでの既存の建物についてもそのような遡及措置がとられるのは当然だろうと思うのですが、しかし、その額が余り莫大過ぎて事実上できないようなやり方では何にもならないと思うのです。そこが今回の防災関係改正について一番大事なところではないか、私はそう考えておるわけです。  そこで、たとえば私は陳情書等ずいぶん来ておりますので、その陳情書によって申し上げるわけですが、これが正しいと私自身もわからないわけです。それによりますと、たとえば一例を挙げますと、全国の地下商店街連合会の概算ですと、直接、間接の改造費は約四百六十億かかる、このように言っております。なお、この額には長い休業補償の加算はされておらない、このようなことで、とてもこれでは、このような莫大な金がかかるようでは事実上できないというようなことが言われておるわけです。私、できる、できないということにつきましては、それは当然助成措置とか改修資金の手当てとかいろんな問題があろうかと思うのですが、これについてはどのようにお考えになっておられるか。
  139. 山岡一男

    山岡政府委員 現実に改修工事を行われる場合に、地下街等につきましては地下街の管理者がおやりになる。そういう場合にテナントとの間に内部関係が生じます。そういう場合に、テナントの方々に対しましてやはりいろいろな相当な経済的負担、損失が出るという場合も想像されます。このような損失、負担を軽減するために、若干でございますけれども、一定の国庫補助を行う制度をことしから発足させるということで、資金を約三億六千万ばかり準備いたしておるわけでございます。
  140. 北側義一

    ○北側委員 資金が三億六千万ですかね、予算書にもそのことは載っておったと思うのですが、予算書を見ますと、「防火避難施設緊急整備三億六千百万円」こうなっておりますね。しかし、実際問題として、先ほどの御答弁によりますと、二千六百四十億でしょう。これぐらいの補助でそんなものができるのかという、そういう疑問を私持っておるのですよ。だから、幾ら形よくこういう法律ができても、実際できないようでは何もならない。できるような体制というものをとらなければならない、私はこういう考え方に立っておるわけなんです。  また、そういう莫大ないわゆる改修費用が要る場合にはどうしても——たとえば地下街などは御存じのとおりたくさんのテナントが入っているわけですね。そうすると、小さな管理会社ですとそれは負担し切れない。当然その負担は全部テナントへいく、こういう形になるんじゃないかと思うのです。そうしますと、一軒当たりのテナントの負担分は莫大な金額になる。あわせて階段とか、いわゆる非常用進入口階段とかその他改修工事にかかる、長期のいわゆる休業をしなければならない、こういう形のものになってくると思うのですね。そうしますと、そういう額を計算しますと、まあ計算した一例を持ってきておりますが、とても不可能じゃないかという形のものが出てくるわけです。  そういう点で、この問題はなるほど人命尊重の上から当然やらなければならない問題ですが、やれるような方向でやらなければいけないんじゃないか、私はこういう考え方を持っておるのです。できないことを幾らやれと言ったって、これはできないんですから。そういう点でどうでしょうかね、考え方は。
  141. 山岡一男

    山岡政府委員 先ほど申し上げましたのは、先ほどの三億六千万を実は予算要求いたします際に、全部遡及した場合にはこれぐらいかかるだろうと若干多目に見積もった数字でございますが、現実には、代替施設を大いに活用するとかいうようなことによりまして、先ほど申し上げた金額は相当減るだろうと思います。  それから、さらに猶予期間を相当置いております。三年ないし五年——事実上は法律を制定いたしましてから一年以内で施行するというようなたてまえにしておりますので、相当の長い期間の猶予期間がございます。その間におきまして大体全体の計画でそれぞれの政府系金融機関で十分融資ができるようにという年度計画を立てて予算を要求いたしております。大体初年度分は二百億ぐらいおやりになるんじゃあるまいかということで積算をしてまいっておるわけでございます。
  142. 北側義一

    ○北側委員 年数が三年とか五年、それは私もわかっておりますが、いずれにいたしましてもこれは莫大なる資金になっておるわけですよ。それとあわせて、特に改正の中でも、今回の改正で義務化されております重量シャッターですね、重量シャッターにつきましては、いわゆる自動で作動するわけです。その場合、煙を感知して、そうして自動シャッターが自然に、約一分くらいで閉まるらしいですね、聞いてみますと。かなり広い店舗ですと、一分間で出られないというような意見もあるんですよ。かえってその自動シャッター重量シャッターになることによって閉まってしまって逃げられない。たとえば地震なんかあったときは停電でもう手をつけられないというんですよ。かえって軽便なのがいいんじゃないかなんという意見も私ずいぶん方々で聞くわけです。そういう点についても私非常に疑問を持っておるわけなんですが、この問題についてはどうなんです。  最近のテレビを見ますと、建築基準法が一部改正になるんで、どっかの会社が自動に閉まるシャッターをやっていますな、まるでこの建築基準法改正することを——この法律案が出てからですよ、あれが大体出だしたのは。そんなことは余談にしまして、いずれにしましてもそういう問題についてもう少し検討する余地があるのじゃないかと私は思うのですよ。たとえばいままでの実例で、そういう軽量シャッターじゃ危なかったという、そういうのがあるのかないのか、そういう点どうなんですか。
  143. 山岡一男

    山岡政府委員 いままでの過去の災害におきまして、乙種防火戸ではやはり災害を防ぎ切れなかったというのが相当ございます。したがいまして、特に災害の危険の多い地下街等におきましては、本来はやはり重量シャッターに改めるべきだと考えておりますけれども、既存の地下街等の改修でございますので、その後現地の実情等も見ながらいろいろと御相談をいたしてまいっております。  実際の地下街の一軒一軒の構えではなくて、一つ一つの街区部と言いますか区画ごとに、全体として余りテナントの方の工事の途中における休業等も考えなくてできるような、それでいながら煙を防ぎ、ある程度防煙の目的を達せられるようなものについて代替案を検討しているというのが現状でございます。これはもうわれわれの検討委員会にかけまして十分練ってまいりたいと思っております。
  144. 北側義一

    ○北側委員 いま言われた代替案ですね。これはさっき井上委員もおっしゃっておられましたが、それも参考のために私一度見せていただきたいと思うのです。  それと、道路局長お見えのようですから、先ほど井上委員からも地下街の通路についていろいろ質問があって、私もこの問題についてまことに不思議だなと思うのですよ。たとえば大阪の場合なんかでも、私大阪市内に住んでおりますからしょっちゅう地下街へ行くわけです、百貨店等。その場合、大体皆普通の地上を渡る場合に、どうしても向こうへ行く場合に歩道橋を渡らぬと行けないのです。だから大概の人は全部、大体百人のうち九十人ぐらいは下へ行ってしまうのです。これが本当の実情ですよ。これは局長等も御存じだと思いますが、そういう地下街における通路というのは構造物の一部、こうなっているのですか。
  145. 吉田泰夫

    ○吉田(泰)政府委員 地下街については、近年非常に厳しく取り締まろうということで関係省庁集まりましてその基準を流しておりますが、その基本に、まず、その地下街をつくらなければならないと言えるほどの公共性がなければならないということにいたしまして、その公共性の一つの基準として、たとえば地下歩道等の通路を含む、それが横断等の公衆にも利用されるというような公共性のある地下道を含むものであること、あるいは必要な地下駐車場を備えるものであること、こういったものを公共性の一つの重要な基準として考えまして、そういうものを含む地下街であれば全体の地下街としても公共性が高い。ですから、道路というような公共物の下をあえて占用させることもやむを得ないだろう。そういうものを含まないような地下街であればこれは公共性がないか乏しいわけですから、貴重な道路の下を占用させるということは今後はしない、こういう方針にしました。そういう意味で申せば、地下歩道の全部または大部分というものは、それをやって初めて公共性のある地下街と言える、こういう意味地下街の一部をなしていると考えておる次第でございます。
  146. 北側義一

    ○北側委員 昭和四十八年八月に、建設省を中心としたいわゆる地下街中央連絡協議会ですか、これをつくられたわけですね。いまの都市局長の御答弁にもありますとおりに、これからの地下街については公共性が強いものでなければこれは原則としてつくらない、抑制する、このように道路局長も先ほどおっしゃったわけです。そうなりますと、結局いわゆるたくさんの人が、たとえば一例を挙げましょう。難波で、南海電車でたくさん人がおります。そうしてあの上を渡る人は比較的少ないのです。大体皆虹の街のあの地下へ全部入っていくのです。大阪の地下鉄があります。これも見ておりますと、大体こっちに行く人が非常に多いですよ。ぼくは完全にこれは公共性があると思うのですがね、こういう分については。上を通っているのを見てごらんなさい。余り通っていませんよ。上の商店は、そういう関係で非常にさびれている。そうすると、いま答弁なさったように、地下街をつくるには公共性の強いものでなければつくらないとおっしゃるのですね。そうでしょう。それだったらこれは公共道路になるんじゃないですか。筋から言うとそういう筋になると私は思うのですがね。
  147. 井上孝

    井上(孝)政府委員 ただいま都市局長が御答弁申し上げまして、地下街に関しましては抑制の立場から、いまおっしゃいますように公共地下道が必要であるというようなところに限って地下街設置を占用として認めておるものですから、先生のおっしゃるように地下街の地下道の利用者が非常に多いというところだけに限っておりますが、実態は確かにおっしゃるとおり利用者が多いわけであります。しかしながら、地下道の管理というものにつきましては、いまは占用条件に厳格な管理規程を設けまして、地下街の管理者に地下道も管理させておるというのが全部の実態でございます。先生おっしゃいましたように、利用者が多いから道路管理者が公共的な管理をすべきではないかという御意見も確かにごもっともだと思います。しかしながら、一方で地下街とそれにもう密接な地下道と別々の管理者にするということは、たとえば地下水の排水施設などがどうしても地下街と地下道とは同じ共同の施設になるというようなことがございまして、かえって管理者を別々にするということは支障が多いのじゃないかという意見も議論の過程でございます。しかしながら、利用の実態から見て公道として管理するにふさわしいというものにつきましては、管理のあり方についてこれから検討を加えたいというふうに思っております。
  148. 北側義一

    ○北側委員 特にやはりそういう非常に不特定多数の人が通る、こういう場所が一番——これは管理規程を設けて地下街の人がこれを管理しているのでしょう。やはり管理する以上は、どうしたってそこにたくさん入れるようにしますよ。私が自分で地下街のテナントだったらそうしますよ。商売上だれだってそうしますよ。そういういろんな点から考えても、これは検討しなければならない非常に重要な問題じゃないかと思うのですよ。  これは別に大阪だけじゃないと思うのです。ずいぶんほかにもあると思う。たとえば地下街とビルとくっついたところ、地下街の出口がビルに上がっていく、ここが一番危険ですよ、正直言って。地下道が比較的広くとられておっても上がるところは階段がうんと狭い、こんなところはいっぱいありますよ。そういう面も関連してくるんじゃないかと思うのですよ。まあこの問題は検討してください、検討なさるとおっしゃるのですから。  それと、いまちょっと私申し上げたのですが、この前も大阪のことで言いましたとおり、他のビルと地下街と接続している、たとえば百貨店と接続している、こういうところが非常に悪いように思うのです、いままで見ておりますと。これには何らかの対策を考えておられるのですか。
  149. 山岡一男

    山岡政府委員 先ほども井上先生に御答弁申し上げましたけれども、百貨店の方からいたしますと、百貨店が他の用途と接続する場合には間を遮断するためのいろんな規定が決まっております。ところが実際の地下街の中に、百貨店以外の地下と接続するものがございます。そういう場合につきましては、現在のところ政令が欠けております。したがいまして、三十六条に技術基準政令で定められる根拠がございますが、その範囲内でやはりそういうものについては今後明らかにしていかなければならないというふうに考えておりまして、現在検討いたしております。
  150. 北側義一

    ○北側委員 では、今回の改正によって既存の建築物の改修をしなければならない。それに対する資金対策、助成措置、これについてどうなっておるのかを聞きたいのです。その助成措置については、融資の場合ですとどういう状況になっておるのか。
  151. 山岡一男

    山岡政府委員 現在政府系金融機関によります防災融資につきましては、日本開発銀行、それから中小企業金融公庫、国民金融公庫、環境衛生金融公庫、医療金融公庫と、それから沖繩振興開発金融公庫がそれぞれそういうふうな防災融資を行ってまいっております。この三、三年の間には地方公共団体行政指導も進んでおりまして、現在自治省の消防法による遡及が進んでおりますので、大分活用も進んでおるようでございます。昭和五十年度におきましては、それらを見込みまして、額も相当額ふやしておるのが実情でございます。
  152. 北側義一

    ○北側委員 利率その他はどうなっておるのですか。
  153. 山岡一男

    山岡政府委員 利率等につきまして申し上げてみますと、日本開発銀行では十五年以内の償還ということで八分七厘でございます。それから中小企業金融公庫は十年以内でございまして、当初三年間は七分三厘、四年目からが七分五厘ということでございます。環境衛生公庫につきましてはやはり中小企業金融公庫と同じく三年までが七分三厘、四年からが七分五厘でございます。十年以内の償還でございます。国民金融公庫も十年以内の償還で、利率は全く同じでございます。医療金融公庫は二十年ないし二十五年以内の償還でございまして、利率は八分でございます。沖繩の公庫につきましては、いま申し上げましたものと対応するような、内地の対応するような貸し付けにつきましていずれも同じような利率によっておるというのが実情でございます。
  154. 北側義一

    ○北側委員 利率も普通の一般銀行から見れば少しは安いのですが、国が命令を出してやらす以上、もう少し安い金利のものをつくらなければいけないんじゃないかと思うのですね。そこらはどうお考えですか。
  155. 山岡一男

    山岡政府委員 現在までのところ各公庫等につきましては、いずれも貸付限度額、利率、償還年限等の面でそれぞれの貸し付けの中では最優遇扱いが実はなされております。しかしながら、改正法の施行の実情を見まして、これではやはりだめだというようなことでございますとわれわれとしても困りますので、さらに融資条件の改善につきましては一生懸命努力をしたいと思っております。
  156. 仮谷忠男

    仮谷国務大臣 これは大変な仕事でございますから、受けて立つ方の側も非常に御苦労が多いと私は思います。そうしますと、これを強力に進めて実行していくためには、やはり税制の面にしましても補助の面にしてみましても、特に融資条件の緩和、ただいま局長が申しましたそういった面でも、これは将来十分に配慮していかなければならぬことは当然でありまして、その方向で今後は努力してまいりたいと思っております。
  157. 北側義一

    ○北側委員 ほかにまだいろいろ問題があるのですが、時間もあるので一応これで終わりまして、あとまたいずれ建築基準法改正、どうせこれは出てくると思うのですね。継続になるか廃案になるか知りませんが、そのときにもう一遍詳しくやらしてもらいます。  次に、日照関係の問題でお聞きしてまいりたいと思います。  日照問題というのは都市問題の中でも非常に重要課題に現在なってきておるわけです。そこで建築基準法で、昭和四十五年に改正されました北側斜線、これはもちろん弱いものでしょうが、日照権の保護を定めたと私は思うのですね。この北側斜線を受けた後も、今日まで見ておりますと、ずいぶんと日照紛争事件が随所で起こっておるわけです。これらの経過について一体どのようにお考えになっておられるのか、まずそれをお聞きしたいと思うのです。
  158. 山岡一男

    山岡政府委員 最近におきます日照紛争の件数につきまして、四十五年以降どのくらいあったかということでございますが、地方公共団体等を通じまして調べましたところ、建築行政担当主務部課とか、市もしくは県民相談室、または公害担当部課で受け付けておる苦情相談、それが二万五千五百十六件でございます。これは四十五年から五十年三月までの数字でございます。それから市長または知事に対して行われました陳情または相談件数というのが、やはりこの六年間で六千四百四十三件ということでございます。市議会または県議会に対して行われました請願の件数がこの六年間に千百六十六件ということでございます。
  159. 北側義一

    ○北側委員 ずいぶん起こっておるわけですね。  そこで、今回の法改正におきまして、日影規制基準の策定について、その日影規制基準をどのような考え方で定めたのか、これが一点です。     〔委員長退席、内海(英)委員長代理着席〕  二番目に、日影規制による建築物規制は、第一種住居専用地域、第三種住居専用地域、住居地域または近隣商業地域もしくは準工業地域のうち特定行政庁が都市計画地方審議会の議を経て指定する区域、このようになっておるわけですね。工業地域、商業地域が抜けておるわけです。これがなぜ抜けたのか。これが第二点。  第三点として、ただいま第二点で申し上げました第一種、第二種住居専用地域とあって、住居地域、近隣商業地域、準工業地域は特定行政庁が都市計画地方審議会の議を経て指定する、としたのはなぜか。  この三点について……。
  160. 山岡一男

    山岡政府委員 まず最初は、日影規制基準はどのような考え方に基づいたかということであったと思います。日照は、単に医学的に建築学的に計測される効果のほかに、精神的効果も大きいものでございます。さらに、一定の日照が確保できるように建築物規制することによりまして、採光、通風、プライバシー等の環境の確保も可能であると考えております。このような多面的な効果を持つ日照を、明るさ、暖かさ、健康上の効果等の各効果ごとに算定して必要量を決定するということは、技術的に非常に困難でございます。それぞれの市街地につきまして、現在の享受している日照の量並びに土地機能の状況及び立体化の程度等についてその現状と将来のあるべき姿を勘案いたしまして、日照の総合的な効果をどの程度確保すべきであるかということにつきまして、専門委員——これはもちろん建築研究所その他の研究所等も煩わしておりますが——等を煩わしまして、約二年半にわたりまして検討をいたしたわけでございます。その結果、社会的合意の得られる水準を決め得たということで、今回の提案をいたしておるのが実情でございます。  日影規制の時間等につきましては、冬至におきまして、第一種住専では一階の居室で三時間以上、第二種住専では二階の居室で三時間以上、住居地域その他の区域では、二階の居室で一時間以上というようなことを目標にいたしております。さらに、今回の日影規制の面につきましては、二棟以上の中高層建築物が建ち並んだ場合も想定をいたしまして、時間の短い影についても規制時間を設けるということを内容といたしております。  それから第二点でございますが、商業地域とか工業地域を日影規制対象としなかったのはなぜかということでございますが、やはり当面、紛争も非常に多いし、それから住居の安寧を守るというために定められました住居系の地域におきましてそういうふうなルールを確定するのがまず第一であると考えたわけでございます。  商業地域等につきましては、商業、工業の利便を増進する地域ということでございますので、特に建蔽率それから容積率等も高くなっております。それらのことも勘案いたしまして、現在公法が介入するということにつきましては差し控えたわけでございまして、やはり今後判例の積み重ねによりまして、相隣権的なものとしまして、そういうような日影のことにつきましてはできるのではないかと考えております。なお、そういう判例の状況等も見ながら、商業地域等につきましてもそういうものが必要なことがあれば検討すべきであろうと考えております。  それから、近隣商業地域等につき床して審議会の議を経て定めるというふうにいたしましたのは、先ほど申し上げましたように、やはり住居の安寧を守るということが第一義でございますが、この住居の安寧を守るところと大体接しておりますような地域ということでございまして、やはり最近の地域地区指定の実情等から見まして、特に必要な場合には及ぼすことができるようにしたというものでございます。ただその場合に、アービトラリーにできないという意味で他の意見を聞くようにしたものでございます。
  161. 北側義一

    ○北側委員 日影規制基準をつくるのに、二年半ほど専門委員の方が検討なさって、そうしてつくられた、こういうことでございますが、随所でいままで、先ほどおっしゃっておられたとおり紛争が起こっておるわけですね、日照問題で。そういう実例を考慮されての上での日影基準になっているのかということが第一点。  それとあわせて、工業地域、商業地域ではそういう日照紛争は起こっておらないのか、この点はどうなんでしょうか。
  162. 山岡一男

    山岡政府委員 まず最初に、用途別、地域別の日照紛争件数についてでございますが、実は全国分につきましてはちょっと不明で資料を持っておりません。最近調べております東京都の例で申し上げてみたいと思います。  昭和四十九年の一月から昭和五十年の三月末までに東京都の行政担当部課、都民室等で受けております日照紛争件数が、全国で東京が一番多いわけでございますが、五千百三十一件でございます。そのうち第一種住居専用地域、これが七百五十一件、第二種住居専用地域、これが八百四件、住居地域が九百三十二件、住居系の合計が二千四百八十七件ということでございます。近隣商業地域が五百七十三件でございます。商業地域も大変多うございまして千四百四十三件でございます。準工業が五百三十六件、工業地域が九十件、工業専用地域が二件ということでございます。全体を比率的に見てみますと、住居地域と近隣商業合わせたものが約六〇%、商業地域が二八%、その他が一二%というふうな感覚でございます。  大阪では、これは電話照会いたしておりますので、余り詳しい資料ではございませんが、やはり同じ年の間に六十九件でございます。そのうちで第一種住専はございませんで、第二種が九件、住居地域が三十件、それから商業地域が三十一件、準工業八件、工業地域一件ということでございます。これはやはり住居系のところに五六%が集中しているということに相なるわけでございます
  163. 北側義一

    ○北側委員 いまの状況を聞いておりますと、やはり東京にしても商業地域が非常に多いわけですね。千四百四十三件。それが、ただいまの御答弁ですと、そういう地域についてはこれからの裁判の判例等も考慮してやっていきたい、このような御答弁なんですが、そこらに非常に私自身も疑問を感じておるわけなんです。その点どうですか、やはりこのとおりですか。
  164. 山岡一男

    山岡政府委員 再々申し上げておりますとおり、商業地域につきましては、商業の利便を増進するということでございまして、たとえば東京の銀座で日照をどの程度確保するかというような問題に相なろうかと思います。したがいまして、ただいま直ちに公法的な介入をするということよりは、判例の集積をまつということに判断をしたわけでございます。
  165. 北側義一

    ○北側委員 住宅統計調査、こういうものを見ますと、こういう大都会の中でいままで建てられる住宅というものを見ますと建坪が非常に狭くなってきているのですね。これは土地の値段が高いこと、建設資材が非常に高い、こういうことで、それが主な要因でそのようなことになってきておるのではないか、このように私、考えておるわけですが、たとえば今回の改正と昭和四十五年の改正——昭和四十五年の改正で北側斜線が取り入れられておるわけです。今回の改正では日影規制基準が取り入れられているわけですね。この場合、建物自体は四十五年の改正と今回の改正と比べてみた場合にどのようになるのか。これは例があったらひとつ示してもらいたいと思うのです。
  166. 山岡一男

    山岡政府委員 北側斜線制限は、建築物の形態に関係がなく、敷地の真北方向から一定の匂配できているものでございます。したがいまして、その範囲内に建築物をおさめる場合に斜線に抵触してはだめだという規制でございます。日影の方は、逆に自分が排出する日影が向こうに対して一定限度出してはいけないという規制でございます。  それで、両者の規制方法基本的に異なりますのでなかなか一概に申せませんが、例を挙げて検討してみますと、たとえば七階程度のマンションをつくったということを想像いたしてみますと、両者の規制の程度によりますと、北側斜線制限によりますと、建築物の形態に関係なく北側隣地境界線から約九メートルほどセットバックを要します。七階建てで九メートル、セットバックということであります。ところが日影規制では、建物の形によって変わるわけでございます。たとえば建つ建物が通常の正方形に近い場合には、北側隣地境界線から約十五メートルぐらいセットバックする必要があります。長方形の平面の建物で南北軸という場合には、今度はやはり日影の点で言いますと、こちらの方からも、こちらの方からも光が入りますので、規制が緩和されまして七メートルで済みます。それから、同じく東西方向に今度長い物が建ちますと、これはやはり複合日影等の関係で二十三メートルほど南側にセットバックしなければならないということになります。  別な例で申し上げてみますと、建築物から今度は北側の敷地境界線まで十五メートル、セットパックした場合に何階建つかという計算もしてみました。それによりますと、北側斜線では十階が建ちます。それから、今回の日影規制によりますと、正方形な建物ならば七階が建ちます。長方形で南北軸ならば十二階建てが建ちます。長方形で東西軸ならば五階しか建ちません。こういうふうなことになろうかと思います。
  167. 北側義一

    ○北側委員 では、次に参りましょう。  先ほど来いろいろ御質問になっておられるわけですが、国に先行して各地方自治体で日照権条例をつくっておるのですね。そこで、非常に厳しいところもありますし、いろいろあるわけですが、その中で、住民と十分談合して同意を得なければならないという規定がある場所があるわけです。建築に先立って住民同意ということがあるのですね。この住民同意を定めた条例を持っておる地方自治体は、たとえばこの法律案が通った場合にはどうなるのか。住民同意条例をはずさなければならないのか。その点はどうなんですか。
  168. 山岡一男

    山岡政府委員 建築基準法基準を定めました場合には、この建築基準法で定めようとしております基準は、やはり建築する側もその影響を受けられる住民の方々の側も両方考えまして、社会的合意を得られる健全なルールを定めたというたてまえでおります。そして法律に根拠ができますので、そういう法律に抵触するような要綱等は当然眠るだろうと思っております。そういう場合に、やはり要綱の中でもいまの同意を得なければ確認してはならないというような規定になりますと、これは当然に抵触いたします。ただ、そういうものに努めろというていのものが相当ございますが、そういうものであればこれは直ちに違法とは言えないという関係であろうと思います。
  169. 北側義一

    ○北側委員 この問題は、この法律案が成立しますと非常に問題になってくると思うのですね。その上で、またこの問題はトラブルの一つの種になってくると思うのですよ。そういう点でこれは非常に重要な問題になってくるわけですが、いずれにいたしましても、やはり地方によって非常に環境が違うと思うのですね。たとえば非常に密集した場所もあるでしょうし、比較的町並みの緩やかなそういう町もあるでしょうし、そこらの地方の状況に合わせてやはりこういう問題も考えなければならないのではないか、このように私自身は考えておるわけなんですが、それについてどうでしょうか。もうこれで最後ですから。
  170. 山岡一男

    山岡政府委員 日照条件とか日照に対する要求には先生おっしゃいますとおり地方によって大きな差があると思います。全国一律に規制することは適当ではないとれわれも思っております。したがいまして、気候、風土の特殊性等によりまして条例制限の程度を変えるということができるようにするのが適当であると考えまして、原案を提案いたしておるわけでございます。  原則的に適用されます基準は、研究委員会の答申にございます一種から五種まであったわけでございますが、その中の二種、四種及び五種というのをそれぞれの地域に対応させております。必要に応じまして地方公共団体条例でワンランクずつ上げ下げできるということで、審議会答申のものよりも三倍の範囲で自主的にお決めいただくというようなことを想定いたしておるわけでございます。
  171. 北側義一

    ○北側委員 まだあと聞きたいこともありますが、一応これでやめておきましょう。まだほかに、たとえばそのワンランクというのを本当はもう少し突っ込んで聞いていきたいのですが、まああれですから、これで終わります。
  172. 内海英男

    ○内海(英)委員長代理 渡辺武三君。
  173. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 建築基準法の一部改正そのものは、つまり建築物防災を促進して人の安全を図るということでございますから、基本的には私はいろいろな面で規定が整備をされていくということ自身には賛成という立場で、若干の疑問点についてのみ御質問を申し上げておきたいと思います。  今回の改正そのものは、過去の教訓に基づいて特に遡及適用ということが問題になってまいるわけでございます。その場合に、大規模な経営と申しますか、これらは、遡及適用を受けましても十分にそれらをそしゃくをしていく能力というものをそれ自体が持っておると思いますが、特に中小零細企業になりますと、遡及適用をされた場合にそれに対応する能力というものがやはり少ないんではないだろうか。そうしますと、当然のことながら助成なりあるいは金融なりという面で特別な配慮がやはりなされなければいけないんではないだろうか。それぞれ助成、金融等につきましての配慮はなさっておりますけれども、特に中小企業なり零細企業に対する特別な配慮というのは別になされていないんではないだろうか、こう考えるわけでございます。  したがって、そういう遡及適用を受けるような建築物の所有者で、しかも中小企業、なかなかそれに対応するような能力を持ち合わせない者に対する特別な配慮については考えておられるかどうかお聞かせを願いたい。
  174. 山岡一男

    山岡政府委員 今回遡及適用対象になりますものは、おおむねが大規模な特殊建築物ということでございます。ただその中で、たとえば地下街の中のテナントもしくは雑居ビルの中の小さい中小業者等の方々がそういう問題に当たろうかと思います。そういう方々に対しましては、先ほども申し上げておりますけれども、いろいろな意味の据え置き期間を設け、金利も安くした金融をまず差し上げる。それから大手の、大手といいますか、大企業に対しましては余り考えていないわけでございますけれども、ただいまの三億六千万ほどことしは用意しておりますが、そういうふうな補助金等によりまして、できるだけ負担の軽減を図るように努力したいと考えておるわけでございます。
  175. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 いわば大規模な建築物災害を未然に防止するために建築基準法改正しようとする、こういうことでございますが、私は建築の大小にかかわらず、つまり人命を尊重するという立場でいけば、一たん事故が起こった場合に人命を救助するという立場であれば、やはり大規模と言わずそういうおそれのあるところはそういう改正をさせていかなければならぬ。そういう立場から考えますと、それには、やはり前段に申し上げましたように、助成措置がはっきり強化されておれば、そういう規制も、より細かな規制もでき得るのではないだろうか、こう考えたからそう申し上げたわけでございます。  そこで、その大規模がいわば面積によっていろいろ制約がされております。制限がつけられておりますが、特に特殊建築物は百平米以下は確認そのものが要らないことになっておりますね。したがって、その百平米以下ならば特殊建築物の建築について確認が必要ではないということですけれども、その面積そのものをそこで設けられました根拠は何か明確なものがあるのでございましょうか。
  176. 山岡一男

    山岡政府委員 今回の法改正案の中で、特殊建築物の範囲を少し変えております。従来のものに加えましてキャバレー、カフェー、ナイトクラブ、遊技場等も特殊建築物に加えております。百平方メートル以下のものでございましても、都市計画区域内では確認が必要でございます。ただ都市計画区域外のものにつきましては、問題が少ないということで、おっしゃいますとおり事前チェックをやらないという趣旨で確認をしておりません。ただし、このような小規模建築物でございましても、実体規定に適合しなければ当然違反建築物として是正措置命令等の対象になることは当然でございます。
  177. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 今回新たに加えられました特殊建築物の中にキャバレーだとかナイトクラブだとか遊技場だとかいうようなものがいろいろ加えられたわけですね。これらの一体実用されておる実際の平均面積の実態というのを建設省は把握をしておられるのかどうか、把握をしておられましたらひとつお教え願いたいと思います。ありませんか。
  178. 山岡一男

    山岡政府委員 申しわけありませんが把握しておりません。
  179. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 まあ三、四階なんかに細々とやっておりますあるいは雑居ビル等で、いろいろたくさんのこれらに該当するものがあろうかと思いますが、その辺は私どもが見にいきましても、たとえば百平米以下というところが非常に私は多いと思うのです、現実の面として。したがって、そういう実態であろうというふうに推定ができますので、したがって、百平米というものとの関係は一体どうであろうか、こういう疑問がありましたので実はお尋ねをしているわけですが、いかがでしょうか。
  180. 山岡一男

    山岡政府委員 今回遡及適用をいたしますものの中で、たとえば雑居ビル等につきましては「五階以上の階又は地階におけるその用途に供する部分の床面積の合計が二千平方メートルを超えるもの」としておりまして、小さいものでもたくさん集まっておりますと、ビル全体として対象になるという考え方でございます。
  181. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 いわゆる既存建築物避難施設の適用条項の中の特定階とはどういうことか。     〔内海(英)委員長代理退席、委員長着     席〕  それでその特定階は、床面積の合計が百平米以下のものは除くということになっておるのだけれども、これはどういう意味でしょうか。
  182. 山岡一男

    山岡政府委員 特定用途といたしまして、八十六条の二の第一号から三号までに、百貨店、マーケット、病院、ホテル、旅館、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ等々を挙げております。こういうふうな特定用途に供する床面積の合計が百平米以下の階を除くというのは、各階の中で、たとえばオフィスビルの中に百平方メートル以下のちょっとしたそば屋があるとか喫茶店があるというその階は除く、こういう趣旨でございます。
  183. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 そば屋なんかここは入っておりませんけれども、たとえばバーだとかクラブだとかいうようなもの、ここにいわば遡及適用を受けるような対象範囲が広がったわけでしょう。そういうものがそういうところにあるという可能性があるわけでしょう。それがいわば床面積百平方メートル以下のものは除く、こうなるわけですから、その辺の意味はどうなのですか。
  184. 山岡一男

    山岡政府委員 第八十六条の二で指定いたします各施設につきましては、いずれもその合計でございます。たとえば、「前三号に掲げる用途に供する特殊建築物で五階以上の階又は地階におけるその用途に供する部分の床面積の合計が二千平方メートルを超えるもの」というのをたとえば雑居ビルでは指定をいたします。その場合に、五階以上の階でありましても、そのワンフロアの中に百平方メートル以下しかそういう用途のものがないという場合には、その階は除くという意味でございます。
  185. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 だから、たとえば五階のところにバーがあった、それがたまたま百平米以下だったという場合には、それは除かれるわけですね。
  186. 山岡一男

    山岡政府委員 その階にたった一軒で百平方メートル以下という場合には、その特定階は外そうということでございます。
  187. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 そういう意味で、いわば人が集まる小規模だというものは除いていこうという気持ちがうかがえるわけですよ。だから私は、人の多寡によってそれが決められるべきものかどうか。そうなると、百平米と決めた根拠は一体何であろうか。百平米のバーならば何名くらい入れるからその程度のものはまあまあ防災上そう大きな問題にならぬ、こういうことなのでしょうか。
  188. 山岡一男

    山岡政府委員 そういうことでございます。
  189. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 私は、少なくとも人の安全を確保するという立場からいけば、大小にかかわらず人がそういうところに入り得る——営業しているわけですから、その可能性を秘めておる。だとすれば、それによって基準を設けるということ自身に実は疑問があるわけです。総体的にはその特殊建築物の指定を拡大をされ、その中に入っているものでも、たとえば規模が百平米以下であれば、いま申し上げたように適用除外になってしまう、こういうことになるわけですからね。そうでしょう。
  190. 山岡一男

    山岡政府委員 当該特定階に小さいものでもたくさんおりまして、加えたものが百平米を超せば、その階は数えるわけでございます。
  191. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 それはわかっているのですよ。わかっているのだが、たまたま百平米以下のところが一カ所営業しておったという場合は除外をされるのでしょうということを言ったら、そうですということだから、じゃ人数が少なければいいのかということに通じてくる。だからそういう考え方は若干疑問があるのではないか。同じような営業をして不特定多数の人が集ってくるというような営業をしておるところであれば、人数の多寡によってある程度の限度を設けるということ自身が、若干疑問があるのではないか。そういうところも同じようにやはり規制をすべきではないか。人が集まるところですから同じように規制をすべきではないか。  たとえばそういう該当の個所が五、六カ所あれば、当然総体的にかかるわけですからなりますがね。ところが一軒一軒営業しているスペースというのは、これはたくさんになろうが一軒でやっておろうが同じことですから、考えていくと、二、三軒あればひっかかるけれども一軒だけでやっている場合はひっかからないのだ。じゃ一軒だけでやっていればそれほど、いわば適用しなくてもいいような安全が確保されるのかどうか、こういう問題が逆に出てくると思いますがね。  私は、大してそんな影響はないだろう、こう考えるがゆえに、百平米以下というものを除外をした明快な根拠というものはほかにあるのかな、こう考えたからお尋ねしているのです。
  192. 山岡一男

    山岡政府委員 確かに人数の多い少ないで差をつけるのは不当かと思います。ただし、今回の場合はいままでにない遡及適用ということでございまして、相当思い切ってやらせるわけでございます。そういう場合に、たとえ一軒でも百平方以下のものがあっても、その階全部を対象にするといって遡及をさせることと、それからやはり、そういう意味からもっと大きいものを対象にして当面遡及考えることと、その間の功罪を考えたのが原因でございます。
  193. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 先ほど井上君でしたかだれでしたかの質問の中にもありましたように、やはり経年的にやり方がいろいろ変わっていく。だからせっかくつくったところが、さらにまた後から避難設備その他を増設しなければならぬといううようなことになってしまう。だから余りたびたび変更するのはどうかという意味の御質問があったと思いますけれども、私も、こういう防災とか安全とかいうような問題はやはりできるだけ完璧に近いものを出すべきだ。そしてそれは経過措置によって考慮していくなりあるいは補助なりあるいは助成なりというもので考えていくなりしていかないと、一遍にやるのはどうかと思うから徐々にやっていくんですということになりますと、結局はやはり、一たんつくってしまったものをまた削ったりはずったりして改造をしなければならぬということにならないかどうか。それが結果的に見てむしろ経済的に見てもマイナスであるし、いろいろな人に迷惑がかかることであるし、そのときは適用がなくてもそういう準備をしておけば、これはやはり経過をしていったうちに完成がされていくということになれば、これは大変スムーズにいくと思うわけですが、つくるときには適用除外だから必要ないのだという立場でできた。ところが年を経ることによってやはり改造をしなければならぬということが出てくる。そこでいろいろな問題が出てくるということになるわけですから、そういう意味では最初からきちっと適用をさせて、そしてあらゆる設備を完備をする、あるいは完備できなければその準備をさせる。それはたとえば経過年数によって、そういうところは五年以内とか十年以内とかなりますか知らぬが、工事をするときにはあらかじめそれを準備させておくということがより必要ではないだろうか、こう思うわけですが、いかがですか。
  194. 山岡一男

    山岡政府委員 基準法のいろいろな防災規定がございますけれども、昭和四十年ごろまでは、どちらかといいますと木造とか簡易耐火とかそういうようなものが非常に中心でございました。最近に至りまして、相当大きなものに対する人身被害が出ておるということでございまして、確かにその都度後追い的にいろいろ規定の整備をしてまいっております。きわめて対症療法的であったということが言えると思います。しかしながら、対症療法的でございましても、それを一たん適用いたしますとその日以後つくられるものはそれは守るという利点がございます。今回のようにさかのぼるということになりますと、そういうのは朝令暮改ではないかというようなそしりも免れない点もあるかと思いますけれども、やはりいままでの災害の状況が毎年毎年日進月歩と言ってはおかしいのですけれども、日に日に変わる災害であったということから、学界その他等からの提案等もいろいろございまして、その都度対症療法的に直してきたということは確かに御批判を免れないと思います。しかし、先ほど申し上げましたように、新規のものに適用するということで従来やってまいったわけでございますが、今回思い切ってさかのぼるということになってその辺の矛盾が出てきたということかと考えております。できる限りそういう点につきましては、過去において適法であった建築物でございますから、新しい規定をいたします場合にも、代替施設その他について十分検討しょうというのはそういう意味もあるからでございます。
  195. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 私の質問と回答が方向がやや違うのですね。遡及適用するのだけれども、そのときに思い切ってやっておいたらどうだということを言っているわけですよ。そしてそれが当面問題がある、いろいろな無理があるということであれば、それは年数によっていろいろ配慮していけばいいではないか、最初から除外するのだということにしてしまうと、また必要があってやるときに大変いろいろな問題が出てくるのではないか、こういうことを言っているわけです。
  196. 山岡一男

    山岡政府委員 問題を間違えて失礼いたしました。新しいものは全部新規の規定でやらせるわけでございますから、こういうことはございません。遡及の場合に、一時にそういうようなむずかしい問題を遡及するという点から、過酷にならないように全体を考えたものでございます。
  197. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 過酷にならないように配慮されただろうと思うのです。思うのだが、それは一挙にやっておいて、経過年数によって考慮したりいろいろな点で考慮した方がいいんではないか。つまり基本的にそれはそういう面積なり人の集まる度合いによって免除するということになったときに、また後からそれが適用されるという状況になったときに困るのではないかという、逆にそういうことが推定できるものですから、その方がいいんではないかということをお尋ねしているわけです。
  198. 山岡一男

    山岡政府委員 今回の法を策定するに当たりましてはそこまでの考慮をしたわけでございますけれども、やはりそういうところについても災害がないのかと言われますと、あるおそれがございます。そういう場合には十条の規定がございますが、そういうものを大いに活用して対処してまいりたい、一斉にさかのぼって規制遡及させますものにはいまみたいな区分でやりたいという考えをしたわけでございます。
  199. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 私は、避難設備も非常に大切ですけれども、避難設備だけではまだまだ不十分な場合が非常に多いのではないか。たとえばわれわれが東京のデパートへ参ります。中で買い物をいたしておりましても、一体どこに階段があるのか、どこにエスカレーターがあるのかは、ある特定な場所に行かないとなかなかわからないのです。しょっちゅう通って見える方はそれは頭に入りますけれども、ぱっと入りました百貨店ではとうていなかなかわからないという状況にあると思います。したがって、つまり避難をするときに誘導標識と申しますか、こういうものは実はまだまだ完備をしていないのではないだろうか。なお、学者の説によれば、一朝有事の際、事故が起こってしまった場合に、目で見る誘導標識というのは余り効果がないのだとさえ実は言われておるのです。まあ音による誘導とかいろいろなことがあろうかと思いますが、そういう面は今回余り触れられていないわけですけれども、どうなんでしょうか。
  200. 山岡一男

    山岡政府委員 これは標示灯、誘導灯というものの設置が義務づけられております。ただ、これは消防法の範疇でやっております。おっしゃるようになかなかうまくやってないところもあるかと思いますけれども、これは消防行政ともタイアップいたしましてしっかり励行させたいと思っております。
  201. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 消防法の方でどういう細かい規定になっているかよく知りませんが、現実にわれわれがデパート等へ入ってみた場合に、ぱっと目でみただけでは実際はわからないのですよ、広い売り場の中なんかは。だからその必要性というものを身をもって感ずるわけです。  それからさらにもう一つの問題点として、いろいろな施設が調えられるわけですね。防火あるいは防煙シャッター、とびら等がいろいろあるわけですけれども、それらが本当にいざというときに完全に機能するかどうかということ、これはなかなかむずかしい問題です。実際に本当に点検整備が義務づけられておるのかどうか知りませんが、義務づけられておったとして、それがいつ点検をされたのかということがよくわからない。  私はある場所に一カ月に一回通いますが、そこにたまたま防煙、防火とびらがございます。もうそこへ通い出してから五年くらいになりますけれども、ほこりがついておりますし、本当に点検しているのかどうかという危惧を持っておりますが、その場所は非常に多くの人が出入りするところですから、本当に動くだろうかという心配、ところがその付近には何ら検査済みの証も張ってなければ何もされてないわけですから。  私自身が考えるのに、たとえば自動車は点検整備が義務づけられておって、ウインドーガラス前面に、ほかの人にもわかるように、次の点検は何月だという月数が切ってありますね。あれはだれが見てもすぐわかるようになっておりますが、この防煙、防火とびら、これはまた消防法の範疇かもしれませんけれども、そういうものの点検整備、あるいは点検をした確認済みの証が、大ぜいの人に一目瞭然わかるような方法というものは一体どこが考えるのでしょうか。
  202. 山岡一男

    山岡政府委員 建築基準法令におきましては、法第十二条によりまして、百貨店、病院、ホテル等の所有者等に対しまして、建築士または専門の技術者に定期調査をさせ、それから特定行政庁に報告しろということを義務づけております。この調査の重点は、言うまでもなく防火避難関係に重点を置いて行われております。当然防火戸、シャッター等も対象になります。ただ、いままで検査済み証につきましては、昇降機の定期検査制度におきまして、エレベーターにつきましては現在自主的に実施されております。ただ防火戸等につきましてまで現在やっておりませんが、大変いい考えだと思いますので前向きに検討させていただきたいと思います。
  203. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 いまそういう報告、点検の制度があるということですけれども、現実にはその実態が本当に把握されているかどうかが私は非常に疑問だと思いますから、いわば万人が監視するといいますか、実際にその場所を利用する方々がすぐにわかるような方法をひとつ早急にとっていただきたい。要望いたしておきます。  では時間が来ましたから、あと一問だけ質問します。  建築協定について御質問を申し上げますが、いま建築協定というものを住民が余りよく知らないのでトラブルが起こるということが間々あるかと思いますが、一体これのPRといいますか、周知徹底といいますか、そういうことについて建設省、何かおやりになっておるのでございましょうか。
  204. 山岡一男

    山岡政府委員 最近のいろいろな建築状況を見ますと、建築協定の締結等が望まれる場所が非常にふえております。したがいましてわれわれといたしましては、直接住民皆さんへのPRはやっておりませんけれども、都道府県を慫慂いたしまして、できる限りりっぱな建築協定ができるようなことを大いに宣伝をしなさいということを慫慂しておるわけでございます。
  205. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 今回の改正によって個人でもできるということですね。一人の土地所有者がやればできる。これは、たとえば民間デベロッパー等がそれをやって住宅団地をつくって、そしてそれを分譲する、こういうことにもなろうかと思いますが、そういう場合にも、そこに入居する方々がそういう協定があるかどうかということを十分に熟知しないままに入居されて、後でいろいろなトラブルが起きるということも間々あるようでございます。したがって、そういう場合は必ず民間デベロッパーに入居者に対して周知徹底させるとか、そういういろいろなやり方があろうかと思いますが、もう少し建設省みずからが強力な行政指導をやられる必要が私はあろうかと思います。そういう面について、答弁は要りませんから、要望をして質問を終わりたいと思います。
  206. 天野光晴

    天野委員長 次回は、来る二十日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時一分散会