○原(茂)
委員 きのう、
総理の周りの人が、遺骨問題で何をお聞きになりますかというので来ましたが、
総理にこの本のことを話しておいてくださいよ、この中に万人坑という項がありますから、これは読むのはきっと大変だろうと思うけれ
ども、あなたが読んでよく話してください。聞いていますか。
——これから、聞きに来てもまともに答えませんよ。わざわざ聞きに来られたからそういうことをお教えしておいた。それでもなおかつ見てもいない、読んでもいない、
総理に伝えていない。これから、われわれが質問するときに何か聞きに来ても、一切答えないことにしたらどうなりますか。こういうことは、よく
総理が今度戒めておいてください。聞きに来たから言ってあるのです。にもかかわらず言ってない。やむを得ません。これは後から
総理が戒めておいてもらえばいい。こういうばかなことでは困る。
この本多勝一さんの書いた「中国の旅」という本の中に、「万人坑」という項に非常に多くのページを割いているのです。これを見ましたあるお年寄りが私のところへ手紙をよこしまして、こういうことを言っているのです。これは
総理、じっくり聞いておいてもらって
——私は、この中に何らかの提案があると思いますし、ある意味では非常に稚拙な文章ですよ、しかし、そのままお読みした方がいいのじゃないかと思うのです。これは今井竜雄さんという方が手紙をよこして、そうしてつい一週間ばかり前に電話がありまして、あの件は、いまの三木
総理大臣にならぜひ話していただきたい、三木
総理ならきっと考えてくれるのじゃないかというので、わざわざ長距離の電話があったのです。今井竜雄という八十歳になるおじいさんから。そのよこしておりました手紙をそのときには読んでくれと言いましたから、そのとおり読みます。
我が国は日清、日露、支那事変と三回に渡り支那大陸で戦禍を交えて兵隊は殺傷し合ったことはやむを得ないこととしても、住民を殺害した事は見逃す事の出来ない最悪事であります。
日露の戦いの戦果により南満洲の権益は我が国が獲得することとなり、各々企業が進出し、石炭・鉄砂の採掘、製鉄の作業等に地元住民を最低賃銀で雇傭酷使し、過労原因に依り死に至らしめ、遺体は埋葬もせず廃棄物品同様に投棄せる地区が三ケ所もあり、これを万人坑と称し、ガイ骨は今尚厚い層をなし重り合ってる由。中には生存中体刑を加えた疑い、両足をハリガネでしばられたままのガイ骨もある由。
又支那事変の時は南京の住民大虐殺、紫金山の二千人生き埋め事件、十万人に及ぶ住民を川辺に追い出し、機銃掃射で殺したため、川岸は水面が死体でおおわれ、長江の濁流さえ血で赤く染ったと、又婦女子の強姦、集団輪姦の上腹をさいて皆殺しにしたり、強姦後相手と記念撮影、その他惨虐行為、絵画、写真展示館もある由。
鬼畜に等しい野蛮の行為に憤りを感じます。
これは朝日
新聞記者、本多勝一氏著書「中国の旅」ホンの一部の記事で捏造の事ではなく九死に一生を得た人達の証言による。
日中国交正常化したものの万人坑の三ヶ所に渡るガイ骨群、
日本軍隊による惨虐行為、絵画、写真等存在することは今後対日感情の上、誠にこのましくない事と考えます故、超党派
国会御
審議なされて、国費を以て野ざらしのガイ骨を火葬し、合せて日清、支那事変に戦死せし将兵との合同慰霊祭を挙行し、明治
天皇時代からの事件であり、
天皇は国の表徴である故に、
天皇皇后両陛下を戦争被害のおわび方々慰霊式典に御渡航をお願い致したら如何と考へます。三木
総理に伝えてください、こういう手紙でございます。
これを見ますと
——ごらんになっていない。一度はごらんになった方がいいと思いますが、やはり戦争の責任、だれがあんな戦争を起こしたのだ、何だということをもう一度厳しくわれわれは追及しなければいけないのが一億総ざんげでごまかされていますが、これはドイツのあの、いまに至ってまだまだ戦争責任の追及をしている態度と
日本の違うところで、確かにこの問題は非常にあいまいに終っていることが、非常な危険をいま
わが国は戦争に対してはらんでいる、というようなことを考え合わせたときに、この「万人坑」という中に非常に多くのページを割いて
——死屍累々といいますか、この骸骨がみんな見せ物になっているわけですね。そうして、この階級の苦しみを忘れるなという看板をかけて、見られるようになっています。万人坑が三ヵ所ある。一ヵ所の万人坑、一万八千人くらい、ずっとガイ骨で見られるようになっていますが、こういう見られる場所一ヵ所で、あとの二ヵ所はそのままに放置された、万人以上の万人坑がそのまま野ざらしになっている
状況を考えたときに、いま、この今井竜雄さんの言われるようなことが、そのままやるべきであるとかないとかいうことを申し上げるのではないのです。やがて
天皇陛下の訪米でございますとかなんとかいうことは
論議されています。確かに私は、非常にたくさんの、
わが国が虐殺した、相手の軍隊ではなくて無事の大衆を虐殺した、この恐るべき残骸がずっといまそのまま展示されている
状況は、
日本が中国との国交を正常化したいまになって、いいことではないと考えます。確かに、絵で出すことはいいのですが、現物がそのままになっているような
状況、しかも手のついていない二ヵ所の万人坑、こういうものに対してはやはり
日本からも積極的に働きかけて、何らか慰霊を行いながら、これの整骨を行い、あるいはきちっと一ヵ所に集めるというようなことをさしてあげるというようなことが中国に対して提案をされる。いまあります虎石溝の万人坑にいたしましても、大衆が見られるように展示室のようになっていることも好ましいことではない。いかにも
日本人の残虐行為がそのままいつもずっとある。これも相手の国のやることですから。しかし、われわれの意思としては、そういうことも何とかもう少しやりようがないだろうかということを含めて、やはり中国に対して三木さん熱意おありなんですから、こういった問題の解決のために、慰霊を含めてこの整骨作業に対して何らかひとつ、いつまでもこういう悪い感情が残らないという方途の跡始末のつけ方をできないものだろうかというのが
一つで、もう
一つは、
わが国の象徴と言われる、今井さんの言うような、
天皇皇后両陛下が行く行かないは別ですが、
総理はこの問題を真剣に考え、
日本国民を代表する立場で
総理なり何なりが、そうしたものに対するおわびを兼ねて慰霊を行いにその場所だけでも行って、いわゆる中国と
日本の国交の正常化に対して
国民感情をできるだけ正常に戻すというような手段を講ずるために、
総理の訪中なり、あるいはこの問題を
中心にした陛下が行かれるような取り計らいなりというようなことが確かにあっていいのではないかという感じがしますが、いかがでしょう。