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福田(赳)
国務大臣 昨年は、とにかく一四%の消費者物価の上昇です。しかし、それは時期的に見ていきますと、その一四%の多くは昨年の十一月ごろまでに実現をされておる、こういう
状態であり、十二月、一月、二月、三月、この
状況をとってみますと、年率にして七%くらいの上昇になるのです。それから四月にちょっと大幅に上がりました。それを考慮いたしますと、年率九%くらいの上昇になるわけです。
それを踏まえて五十
年度はどうなるか、こういう問題ですが、四十九
年度のそういう
状態と五十
年度のこの一けた台という見方、目標、この問題の背景ですね、それを考えてみますと、四十九
年度は、大体四十九年二月ごろを境といたしまして、需給インフレの
状態はまず終わったわけです。そして三月、四月ごろからコストインフレ、こういう
段階に入っておるわけです。これは御承知のとおりでございますが。
コストを上げる要因といたしまして、まず第一に、何としても原材料ですね。この原材料で大きな影響、流動的要素がありますのは外国からの原材料等の輸入であります。外国からの原材料、これは昨年はずっと、ほとんど軒並みというくらい上がり続けたわけなのです。ところが、本年になりますとこの
関係はどうなるかというと大体頭打ち。しかもその中で農作物なんかになりますと、この半年間で半値あるいは半値以下になる。そういう
海外の物資がいままだ入ってきておりませんけれ
ども、これは夏ごろからだんだんと入着するような
状態になる。これは非常に違う点です。第二の重要コストである人件費はどうだというと、昨年は三二・九%の上昇だった。ことしはおかげによりましてこれが一三、四%の水準に落ちつこうとしておる。これも非常に大きな変化であります。
それから第三の要素は御
指摘の公共料金でありますが、去年は六月の電気料金の大幅引き上げですね。これは営業用はたしか七〇%以上の引き上げをしたと思います。それから家庭用につきましても五〇%くらいな引き上げをしたように記憶しておりますが、そういう大幅な引き上げがある。それからガス料金もこれに準ずるというような
状態。それから私鉄も国鉄もかなりの値上げをいたす。また、全国のバスでありますとかあるいはトラックでありますとかあるいはタクシーでありますとか、これも大幅な上昇をいたしたわけです。そこへもっていって米価は三二%の上昇である。こういうようなこと、その他細々したもの、公共料金の引き上げというものが本当に言葉どおりにメジロ押しだったのです。それにもかかわらず、とにかく下半期の物価
情勢というのは非常に鎮静し得た。ことしはどうかといいますと、公共料金につきましては、いま予定しておるのはたばこ、それから公共料金ではありませんけれ
ども、税の
関係で酒の値段が上がらざるを得ない。郵政料金。そのほか目ぼしいものをとってみますと、米価をどうするか、麦価をどうするかという問題があると思うのです。昨年の場合におきましては、公共料金の引き上げの影響が、これは理論数字で実際どういう影響になったか定かにし得ない問題ですが、三%というのです。ことしはいま申し上げたようなものを入れましても一%そこそこだ、こういうような
状態、これも非常に変わっておるのです。
それから第四の要素といたしましては金利、これは昨年の物価
情勢では、一昨年の暮れに公定歩合の二%引き上げをしておる、その影響というものは昨年ずっと出ておるわけですが、これも今日の
段階では引き下げの時期に来ておる。
そういう非常に改善された背景のもとにおいて、昨年一四%、しかも十二月、一月、二月、三月、年率七%の上昇にとどまったというその後を受けてのいわば五十
年度の物価水準が、一けた台におさまらないというはずはない、こういうふうに考えているのです。
しかし、いい要素ばかりでなくて、悪い要素もあるのです。それの一番大きな問題は、企業が不況
状態である、そういう
状態の中で収支の改善を図る、そのために
商品の価格の引き上げをしたい、機会があればそれを実現したいという希望を多くのものが持っておる、こういう問題でございますが、これに対しましては、私はいまは非常に大事な
段階である、そういうことを踏まえて、企業の協力をいま
要請をいたしておるわけであります。
私は、物価全体としては三年かかると思ったのです。第一
年度は、とにかく物価は一四%、賃金も一三、四%。第一
段階、第一
年度のこの結果というものは大変なだらかにいったと思うのですが、問題は第二
年度の一けた台、この問題がもし実現されないということになれば、賃金、物価の
関係を主軸といたしまして非常な混乱にまたなってくる、
日本経済は再び安定しない、こういうことになる。そこで、企業も苦しい中でありましょうけれ
ども、ひとつ協力してもらいたい、こういう
要請をいたしておるのですが、これを実現をする。企業も協力をすると言っておりますが、そういうことになれば、私は本年の一けた台実現というものにつきましてそう悲観視する必要はない、自信を持ってこれを推進できる立場にある、こういうふうに考えておるわけであります。
四月の消費者物価が二・二%上がりました。これは調べてみると、
年度のかわり目に際しまして授業料のつけかえ、これなんか非常に大きく響いておるのです。昨年の四月は三%上がったのですが、ことしはそれが二・二%にとどまった。五月はどうか、こういうことになりますと、五月は一%の上がり、しかしこれは
東京の区部なんです。
東京は特殊
事情がありまして、これはふろの代金が七十五円から百円になったというようなことが強く響いております。それからレモンが消費者物価推計ではわりあいに重要なウエートを占めるのですが、これが五倍の値段になってしまったのです。
東京都民なんかレモンを非常に
使用する、そういうようなことで、
東京区部の物価水準にはこれが大きく響いております。しかし、私は五月末でも、全国平均は
東京区部のような
状態ではないというふうに見ておりますが、いずれにしても、そういう特殊要因で上がったので、物価安定の基調についてはいささかも変化はない、そういうふうに見ておりますので、勇気を持って、また自信を持ってひとつ一けた台の実現に取り組んでいきたい、こういう考えでございます。