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1975-06-16 第75回国会 衆議院 外務委員会内閣委員会科学技術振興対策特別委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月十六日(月曜日)    午前十時六分開議  出席委員   外務委員会    委員長 栗原 祐幸君    理事 石井  一君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 小林 正巳君 理事 水野  清君    理事 毛利 松平君 理事 河上 民雄君    理事 堂森 芳夫君 理事 正森 成二君       坂本三十次君    田中  覚君       谷垣 專一君    戸井田三郎君       山田 久就君    勝間田清一君       川崎 寛治君    土井たか子君       三宅 正一君    松本 善明君       渡部 一郎君    永末 英一君   内閣委員会    委員長 藤尾 正行君    理事 越智 伊平君 理事 奥田 敬和君    理事 大出  俊君 理事 中路 雅弘君       近藤 鉄雄君    鈴切 康雄君       受田 新吉君   科学技術振興対策特別委員会    理事 伊藤宗一郎君 理事 田川 誠一君    理事 石野 久男君 理事 瀬崎 博義君       堂森 芳夫君    三宅 正一君       内海  清君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (原子力委員会         委員長)         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         科学技術庁原子         力局長     生田 豊朗君         科学技術庁原子         力局次長    半澤 治雄君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      中川  進君     ————————————— 本日の会議に付した案件  核兵器の不拡散に関する条約締結について承  認を求めるの件(条約第一二号)      ————◇—————     〔栗原外務委員長委員長席に着く〕
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより外務委員会内閣委員会科学技術振興対策特別委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行います。  核兵器の不拡散に関する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。
  3. 栗原祐幸

    栗原委員長 本件についての提案理由の説明はお手元に配付してあります資料によって御了承願うこととし、直ちに質疑に入ります。  この際、御質疑される各委員に申し上げます。質疑は申し合わせの時間内で御協力をお願いいたします。  なお、政府当局におきましては、その答弁を簡潔にお願いいたしたいと存じます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  4. 石井一

    石井委員 きょう、私は拡散防止条約関連をいたしまして、まず、わが国防衛体制についてお伺いをしたいと思うのでございます。  そこで、いわゆるアメリカ極東戦略というものは、最近急激な変化をいたしておるというふうに、私、見ておるわけでございます。従来はいわゆる同盟国前進墓地を設置して、前進戦略とでもいうような形の中から部隊を、駐留さし、明白な証拠というふうなものを置いて、そういう中からいわゆる同盟国に対する示しというものをアメリカは示してきたのでございますけれどもベトナム以降、いわゆる極東戦略というふうなものはだんだんと変わってきて、韓国における軍隊の削減にしましても、台湾における状態にしましてもベトナムにおける状態にいたしましても、減少の一途をたどっておると思います。従来、極東に八十万あった軍隊がいま十八万とか十五万といわれておるわけですから、これは否定できないところだろう。そのギャップを、要するにアメリカは核の抑止力責任を果たしたい、いわゆる後方基地に張りつけすることによって即応兵力を維持して極東戦略を展開したい、私はこういうふうに変わってきておると思うのでございますが、一体、わが国の四次防の整備五カ年計画、四十七年二月に閣議決定をされておりますものは、このいわゆる極東戦略に合ったものであるのかどうか、これに対応したような形を考えておるのかどうか、まずこの点を防衛庁長官からお伺いしたいと思います。
  5. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 四次防を立てます情勢判断の中に述べておりますように、わが国中心にして考えました場合に、四次防の期間内においてわが国に対する直接的な武力紛争武力侵攻、こういったものがないという前提で立てておるわけでございまして、そういう意味では、ただいま先生指摘のようにアメリカ戦略、戦術が仮に変わったということがありましても、わが国自体の問題として考えました場合に、四次防の当初の計画を立てました当時の状況判断というものは、その後大きな筋において変化がないという判断をいたしておるわけでございます。
  6. 石井一

    石井委員 いまの答弁は、それは全く変わってないと言いますけれどもわが国の強い国民の要望は、基地も縮小したいし、そういう直接のそこで証左を示してもらうというふうな極東戦略でない方がいいのですから、そういうことから考えましても、後方基地で守ってもらうというアメリカ核抑止力によって支えてもらうという考え方であって、明らかに変わっていると思うのですが、いまの答弁は一体どうなっているのですか。一つも変わってないというのは全く私の質問に合っていないと思うのですが、もう一遍それを確認していただきたいと思います。
  7. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 ただいまの御質問の御趣旨は、アメリカ極東戦略というものがベトナムを境として変わってきておるのではないかというお話でございますが、この辺につきましては、長期の見通しとしてのアメリカ議会筋あるいはその他のいろいろ考えというものが反映されましていろいろ報道もなされておるようでございますけれども、この点については長期的に見て変わるのかどうかということは、実は私どもはっきりいまの時点で申し上げられないと思いますが、いままでタイあるいは台湾、こういったところで駐留のアメリカ軍の撤退が行われておりますが、これは前からアメリカがスケジュールとして持っておりましたものの一部を、計画より早いあるいは遅いという違いはございますけれども、それを実施をいたしておるというふうに私ども理解をしておるわけでございまして、このアメリカ自体極東における戦略が今後変わるのかどうかという点につきましては、いまの時点におきましては私ども、はっきりこういうふうに変わるのだというようなことはよく把握をしておらないというのが実態でございます。
  8. 石井一

    石井委員 ちょっと方向を変えまして、外務大臣にお伺いをしたいと思いますが、わが国安全保障に関しまして、過日アメリカを訪問されまして、キッシンジャー長官との間に、米国としては、日本に対して万一核兵力通常兵力武力攻撃があった場合には日本防衛するという条約義務を当然のことながら遵守する、こういうことを確認されてまいったわけですね。そこでこの条項に照らして、わが国安保締結以来もう長い年月がたっておるわけですけれどもアメリカとの間に、もし万一武力攻撃が行われた場合に日米間でどういうふうに対処するかということをいままで協議されたことがございますか。これは確認事項です。また改めて今度キッシンジャー確認をされてきておるわけですけれども万一こういう攻撃があった場合にはどうしようということをアメリカ側協議されたことがございますか。
  9. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先般のキッシンジャー国務長官との話し合いでは、日本への武力攻撃があった場合、それが核兵力によるものであれ通常兵力によるものであれ、米国日本防衛するという日米安保条約に基づく誓約を引き続き守るということでございますが、このことの意味は、引き続き守るということでございますので、従来から暗黙のうちにはこういうことが了解されておったというふうに私も考えておりますし、先方も考えておるわけでございます。ただ、核兵力であれ通常兵力であれということを言葉に出しましてこのように申しましたことは、あるいは今回が初めてであったのではないかと存じます。具体的に、しかしその場合にどう対処するかということについて話し合いをいたしましたことは、恐らく私の記憶では従来ともなかったのではないかと存じます。
  10. 石井一

    石井委員 今回のキッシンジャー長官との、条約義務を当然遵守するので、そういう有事の場合には必ず日本防衛する、そういう大前提は非常に結構なことですし、防衛の負担も少ないし、日本国民の世論にも合っております。しかし、万一それが起こった場合に、それじゃ具体的にどうするかということがなかったら、何もこれは約束したって全然意味がなくなるのじゃないでしょうか。その裏づけというものがやはり両国になかったら全く口先だけの約束であって、全く機能を果たさぬということになりやしませんか。いかがですか。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま申し上げましたことの前段に、米国核能力日本への攻撃に対する重要な抑止力であることが認識されたという部分がございまして、私どもとしては依然として抑止力ということに大きなウエートを置いておるわけでございますから、先ほど申しました後段は実は万一の場合ということを言っておるわけでございます。  その万一の場合に何かのアレンジメントがなければ非常に不安ではないかということにつきましては、その万一の場合というのが実際なかなか簡単には予測できない場合でもございますし、この点は恐らく、両国憲法問題などにも関連をいたしますので、少なくとも外交関係の面ではこれ以上立ち入った議論、取り決めをいたしたことはないように私は存じております。
  12. 石井一

    石井委員 これは与党としてちょっと立ち入った質問になるかもわかりませんが、たとえばアメリカ核抑止力に頼っておるんだから、それじゃ起こらないという前提に立っておるから協議をしておらないのだ、こういうふうにも御答弁が聞こえるわけですよ。そうなりますと、まあ核の抑止力が大きいから起こらなければ非常に結構だし、当然そうあるべきなんですけれども、具体的に発動しないことを約束してきておるということにもなりまして、この点はやはり多少問題だと思うのですが、たとえば防衛庁サイドアメリカサイドと、この外務大臣キッシンジャー長官約束されたようなことがこれまでたびたび、安保体制ができ上がってから議論されておると思うのですけれども万一の場合にどうしようかというふうな協議防衛庁アメリカサイドとされたことが具体的にあるのかないのか、お伺いしたいと思います。
  13. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 具体的な協議は行われておることはございません。いままでやっておりません。
  14. 石井一

    石井委員 それじゃ、具体的な協議をされておらないということは、アメリカに守ってもらうという約束はしてあるのだけれども、そういう具体的なことは起こらないから必要がない、こういうふうにお考えなのですか。
  15. 坂田道太

    坂田国務大臣 私、就任いたしましてから、やはり日米安保条約というものがある以上は、その締約国であります日本、そしてアメリカ防衛責任者同士が、常時話し合うという機会を持つということは非常に大切であるというふうに私は考えておる次第でございます。したがいまして、シュレジンジャーさんをお招きいたしまして、そういうようなことについてお話し合いをしてみたいというふうに思っております。
  16. 石井一

    石井委員 そういたしますと、いままでの政府の御答弁確認できますことは、外務省においては基本的なことを話し合って、具体的なことについては触れたことがない。それから防衛庁の方は、これまでそういう事実がなかった。また大臣の御答弁では、今後将来そういう必要性を認めて話し合いたい、こういうふうに日本政府としては前進してきておると思うのでございますが、やはり、たとえば日本核攻撃を受けるなんということは全く非現実的なことであり、そういうことは起こってはならないことであり、考えてもいないことでございますけれどもアメリカ極東戦略後方基地に下がり、核の抑止力によって同盟国を守ろうというような体制になってまいりましたら、やはり具体的にどうなるかということをある程度考えないと、日本国民の安全なりというふうなものがどうして守れるのかということになるわけで、私はやはりもう少し積極的にそういうことをお考えいただいてもいいという一面もあるのではないかと思うのでございますが、このことに対して外務大臣はいかがお考えになりますか。
  17. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 石井委員の言われますことはごもっともなことであると私は存じます。問題の性質上、従来政府はこの問題に非常に慎重に対処をいたしてまいりましたし、今後もそうでなければなりませんが、先般来、坂田防衛庁長官米国防衛最高首脳といろいろ話し合いをしてみたいと言っておられますことの中には、ただいまお話がちょっとございましたように、そういう問題意識を持っておられることだというふうに私は存じております。
  18. 石井一

    石井委員 総理なり大統領、今度そういう会見があるわけですが、外務大臣国務長官防衛庁長官国防長官、これの口約束協力体制確認することはまず非常に必要でございますけれども、百に一のそういう有事ということを考えた場合に、口約束だけで終わったのではわが国国民の安全は守れないということも確実に言えると私は思うのです。わが国非核原則などがございますから、非核原則にのっとって、しかもアメリカ核抑止力に頼るということになりますと、御指摘のように非常にむずかしい問題が憲法上その他あります。ありますだけに、こういうことをしてもらっては困る、しかしこういう知り方があるんじゃなかろうかという有事のことに関しては、当然お話し合いを願わなければ困ると思うのでありますが、防衛庁長官アメリカシュレジンジャー長官との会見を希望されておるようでございますが、これに対してどういう御姿勢で臨まれようとされておるのか、お伺いをしておきたいと思います。
  19. 坂田道太

    坂田国務大臣 私は、日本の安全を確保することに対しまして、やはり日米共同して対処するというこの安保条約趣旨からいたしまして、先生の御指摘のとおりに、やはり責任者同士が話し合うという機会を持つことが非常に大切であるし、そして日本の置かれている立場、つまり憲法の制約あるいは非核政策あるいは他国に脅威を与えないような防衛力整備というようなことにつきまして、率直な意見交換をまずやるということが非常に必要ではないだろうか。そうすることによって、日本の安全を守るために自衛隊と米軍が整合のとれた作戦行動がとれるようになるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  20. 石井一

    石井委員 安保体制ができ上がりましてからこれだけの時間がたっておりまして、核防条約を批准するに当たりましてこういう議論が出ること自体、大変不思議なことだと私は思います。そういう意味で、その間そういうことは現実的でなかったわけでございますから結構なんでございますけれども、私は、やはり核防条約に入るからには、そういう問題についてもきっちり整理をしていただきたいということをこの席で御要望いたしておきたいと思います。また、大臣からは前向きの答弁をいただいたというふうに理解をしておきたいと思います。  最後に、せっかくでございますから、科学技術庁長官にこの点、一問お尋ねをしたいと思うのでございますが、核防条約の五条では、いわゆる核爆発の応用から生ずる利益をすべて非核兵器国が無差別に享受する、こういうことが規定されておりますが、現実にこれを享受するためには、これは一般的な規定であって、やはり二国間条約というものが必要である。その二国間条約のたとえば一つの例が、日米原子力協定その他でもっとしさいなものをやる。ところが、日米原子力協定などの、そのほかにもたくさんありますが、協定では情報交換というものはありましても、商業機密というふうなものについては、これは一切触れられないということになっておる。それからまた、両国の法律が違いますと、向こうの国では機密が守れても、わが国では公開原則があったりして、これまた守り切れぬということになりますと、結局、第五条というのは、表向き美辞麗句で並んでおりますが、いろんな具体的な問題に関しては空洞化されてしまうのではないか。私の質問、御理解いただけると思うのでありますけれども、これはそういう例というのが幾らでもあって、結局、核防条約で規定されておる精神にかかわらず、非核兵器国というのは平和的な利用の面でも経済的な利用の面でも決定的な格差を強いられざるを得ないのではないか、私はそういう憂えを当初から、この議論が始まったときから持っておったのですが、科学技術庁長官はこれに対して何かそういう御意見はございますでしょうか。
  21. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 問題は二つあると思いますが、一つは、国内で核爆発平和利用に関する権利を放棄するかと申しますと、わが国原子力委員会といたしましては、ただいまの段階では、平和利用軍事利用かがつまびらかでないので、それをおもんばかりまして、核爆発に対する平和利用というものに対しては禁止的にして、研究もしておらぬというふうにしておりますけれども、しかし、いつかの日に備えまして、平和利用の面に対する権利だけは留保してございまして、客観情勢平和利用核爆発が通常使われるようになった場合には、いつでもわが国でも使いますよという権利は保留してあります。  それから、国際法的な面からいたしましても、これは核防条約をつくるときにずいぶん問題になった事項でございまして、それに関しましては各国平等にその利益を享受できるというふうにしておいて、それにはギャランティーをしますよ、こういうことになっておりますから、二国間条約そのものもこれにもとって発動することはなかろうというふうに考えております。
  22. 石井一

    石井委員 長官、たとえば原子力発電軽水炉商業運転を開始してからもう五年たっておる。ところが、現在でも、事故が起こったときの修理とか燃料の交換というふうなことについては、商業機密ということから米国の技師が全部やっておる。わが国には軽水炉についての情報というものはほとんど与えられてない、こういうものがあるわけです。あるいはそれ以外に、日米ウラン濃縮共同事業計画、これも向こう軍事機密わが国原子力基本法公開原則というのがあって、半分ぐらいしかこちらには知らされない。だから、核防条約の第五条には非核兵器国はあらゆるものを享受するのだと書いてあっても、一々具体的なそういう問題になってきますと、だんだんとわが国立場は、非核兵器国というものは弱い立場に、経済的にもあるいは技術的にもなりはしないか。われわれが権利をこういうふうに留保して持っておるということでなく、その制度上そうならざるを得ないという一面があるのではなかろうか、このことを御指摘しておるのですが、いかがですか。
  23. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 具体的なノーハウとか特許の問題になりますと、これは国家間の問題というよりはむしろ業者間の問題となって、それぞれの契約交換するわけでございますから、これは条約で保障しておれば、業者間で合意に達すればよかろうと思います。ただ、国が軍事機密として指定するものは、これは業者間でもどうにもなりませんので、これは国家の解除なり許可なしには私はできないだろうと思います。ただ、この核爆発の——いまの軽水炉なんか爆発しませんからこれは問題は全然別でございますけれども、いわゆる核爆発と称する、いわば俗な言葉で言うと、平和利用といっても、アメリカのある学者の表現によりますと平和的な爆弾という、爆弾には違いないわけでありまして、ですから、それをいますぐ日本で使うわけにもまいりませんし、また使う気持ちもございません。ですけれども、それが、もし軍事機密が解除された場合には、当然、業界のもしノーハウその他があれば、これはこちらで使うとすれば業界間の契約で入手できるだろうと思いますし、軍機に属するものであれば向こう国家許可なしには使えないということになるだろうと思います。それは便宜を供与しようというその条約態度自体には変わりないと思いますけれども個別交渉になりますとやはりそういう問題が起きてくるだろうと思います。
  24. 石井一

    石井委員 最後外務大臣、いま私が科学技術庁長官とやりとりをしておりましたような問題について、この条約締結する責任者として、この点は問題だなというふうなことをこの批准に当たってお考えになったかどうか、この問題についてはいかがでございますか。
  25. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大体ただいま科学技術庁長官からおっしゃいましたように、いろいろな問題があるということを存じておりますが、ただいま御答弁のような趣旨で解決をしてまいればよろしいのではないかと思っております。
  26. 栗原祐幸

  27. 大出俊

    大出委員 宮澤さんに承りたいのですが、この核兵器の不拡散に関する条約、この真のねらいというのは一体何でございますか。改めて承りたい。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題について、わが国はもとより、多くの各国の関心になっておりますのは、いかにして核軍縮を進めるかということ、これは主として核兵器所有国についての問題でございます。他方で、核を持たない国の安全をいかにして保障するかということ、この二つの問題があるわけでございますが、この二つ問題そのものは、この条約が主たる目的としている問題ではございません。この条約はそのような、わが国初め各国、ことに平和を念願する国の願望の中において、核兵器を持つ国をこれ以上いかにしてふやさないかということについて、その具体的な方法を保有国並びに非保有国の間で合意しようという点、並びに平和利用については、しかし非保有国といえどもできるだけ便宜を与えられなければならない、こういう二つの点に関するものと了解しております。
  29. 大出俊

    大出委員 重ねて承りたいのですが、この条約の表題は、もう一遍言いますが、要するに核兵器拡散条約なんですね。つまり、その限りは、拡散をさせないという核兵器の不拡散に関する条約、書いてあるとおりであります。核兵器をこれ以上拡散をさせない、そういう条約、それにいろいろなことがついているということ。そもそもこの事の起こりというのはアメリカとソビエトでありまして、二つの核超大国の間で話し合われまして、これが国連に持ち出されてオーソライズされた、それで各国に働きかける、これはこういう経緯をたどっているわけであります。  そうすると、これは念のためにここで議事録に残るように言っておきますが、一九六八年六月に国連総会承認をされておりますね。そして一九七〇年三月五日に発効している条約でございますね。そうですね。すると、二つの超大国間、核をきわめて圧倒的に開発をしている国の間で中心的に話し合いが行われて、これ以上核を拡散しない、これを国連のオーソライズを得て各国に呼びかけるというシステムですね。これはずいぶん自分勝手な話でありまして、勝手にどんどん開発競争をやっていって、この二つの国が中心になって、非核保有国等を相手にしてこれ以上拡散をさせないのだという条約をつくろうとする。その反面、非保有国についてこうしてあげましょうというわけですな。これはずいぶん得手勝手な話だと思うのですが、いかがでございますか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 米ソ大国が御承知のように圧倒的に核兵器については優位に立っておりまして、核軍拡競争がずっと行われてきたわけであります。しかし、両国ともいろいろな観点から、これ以上無制限にこれを拡大していくことは実は不必要でもあるし、財政負担その他等々にも耐えがたいというような認識が出てまいりました。そこで両国の間で何とかこれは話し合いをしなければならぬということまでは、いろいろ実績がその後の経過に徴しますと不十分でありますけれども問題意識両国の間に出てきた。それは不十分であっても喜ぶべきことでありましょうが、同時にしかし、そのような世界的な核軍縮を行っていけるとすれば、その他の国に対して、これが無制限に各国核兵器を持ち出すようになれば世界的な核軍縮ということは不可能でありますし、ひいては米ソのバランスをとった核軍縮ということも不可能になる。そういう認識から、ひとつ自分たちも将来この問題について話し合いはするが、その他の国々に対しては、核を持ってもらっては核軍縮そのものの目的を達するゆえんでないということから、こういう核を持つ国の数をふやさない、そういうことに結論をするに至ったものというふうに見ておるわけでありまして、そのこと自身は、得手勝手でないかと言われますと、見方、視点によって私はそういうことが言えるであろうと思うのでございます。言えるであろうと思うのでございますが、その動機になるものが、圧倒的優位に立った両国がともかく核兵器というものを意図としては縮小の方向に向かいたい、そのような意図に出たものであるという点では買える点もある。これは立ちます視点によって評価が分かれると私は思いますが、政府といたしましては、ともかくその動きが遅々たるものであるが、動機はそのようなものとして理解をすべきものであろうと考えておるわけです。
  31. 大出俊

    大出委員 宮津さん、あなたは言い回しを考えて物を言っているけれども、得手勝手だということを認めたわけですよ、いまの御発言は。そうでしょう。日本は核はないのですから。おまけにアメリカの核でたくさんの日本人が死んだわけですから。広島のあの平和公園のまん中に記念碑、いしぶみがあるのですが、あのいしぶみに何と書いてあるか御存じですか。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、この過ちは二度と繰り返しませんという趣旨のことが書いてございます。
  33. 大出俊

    大出委員 さすがに外務大臣で、その前の方が落ちているのですがね。「安らかに眠ってください。」とまず書いてあるのです。それからいまの話になるわけでありまして、「過ちは繰返しませぬから。」と書いてある。「せぬから」となっているのです。つまり、それだけたくさんの被害を受けた日本の側からすれば、これは戦争には違いないが、さんざっぱら毒ガス以上のことをやって人殺しをしておいて、どんどん核を開発して、さてこれ以上ないと言われるくらいつくってしまっておいて、持ってない国に対して拡散防止をやるんだという。これは拡散防止に関する条約なんですから、軍縮に関する条約じゃないんだから、だから条文に沿って言えば軍縮の義務づけというものはないんだ、これは。表現的にうたわれているだけでしょう。軍縮の義務づけはきちっとない。不拡散義務づけはある。これはまさに第二番目の得手勝手じゃないですか。いかがですか。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 つまり、冒頭に私が申し上げました、大出委員も同じことを言ってらっしゃるわけですけれども、軍縮の問題についての規定はないではないか、あるいは非核保有国安全保障についてもほとんど触れるところがないではないかと言われるのはそのとおりでございますけれども、それはこの条約が持っておる役割りではなく、この条約の持っておる役割りは、そのような大きな軍縮問題の一部であるというふうに私は理解をしておるわけです。つまり、軍縮の問題というのは主として米ソの実は問題でございますから、米ソ間においてやるということがやはり基本でございます。そこから始めなければならない。そういう意味では、米ソ間にその条約締結されてから——これも評価の仕方であって、いかにも不十分だという評価は私は不当と思いませんけれども、ともかくそういう努力が米ソ国で行われ始めて、六つか幾つかの条約がとにかく、遅々としてはいるができ上がってきつつある、SALTの交渉も始まっているということ、そのことはまあ、不十分であるが評価すべきではないか。つまり、大出委員の言われますように、この条約はそういう意味で一種の不平等性を持っている、核保有国とそうでないものをある時点を限って分けてしまうということですから、不平等性を持っているということは私は否定はできないと思います。しかし、それならその不平等性にわれわれは反対して、われわれもひとつつくって平等になろうということを政府としては考えない。そうではなくて、やはり軍縮が徹底して、最後には核兵器というものが人類から見捨てられるというような状況における平等が望ましいのではないだろうか。すなわち、政府としてはこの条約の不平等性は知っております。知っておりますが、その平等を回復するために自分も米ソの道を歩こうとは考えないということ、及び、不平等であるがゆえにこの条約に加盟しないということはどういうことになるかといえば、保有国の数をふやさないというこの条約の意図に日本政府は賛成でないということに一応解釈をされるわけでありますが、そういう方向はわれわれとしてとるべきではないというふうに考えるわけでございます。
  35. 大出俊

    大出委員 党の立場がありますから、だから反対だということは申し上げぬのだけれども、私がいま聞いてないことまでお答えになりましたね。日本米ソの核開発という道をとらないというようなことを私は聞いているわけではないので、不平等であろうと言っているわけで、そうでしょう。あなた方の中ではそこから先があるからそれが出てくるので、つまり不平等はあなたもしんからお認めになっているということですよ、そうでしょう。  そこでもう一遍言いますが、これは拡散防止という、それだけの条約なんですね。そのことを義務づける条約なんですね。そして軍縮に対する義務づけは何にもない、非核保有国に対する安全保障の確約も何にもない、こういうことなんですね。そこで、軍縮については米ソ両国、核超大国の間の問題だと、外務大臣という立場のあなたがおっしゃる。これは重大なことなんですよ。それでは国際連合なんてものはあってもなくても一緒ですよ。この条約といえども国際連合のオーソライズされたものにしなければ呼びかけられない。だから、私は時間がないから簡単に申し上げましたが、前もって何年何月に国連承認を得て、何年何月から発効したと、こう申し上げておる。そうでしょう。そうすると、国連加盟国である日本国連外交というものを中心に据えている日本外交、そうだとすれば、核兵器の不拡散に関する条約というものの批准を求めるなら、国連という舞台で日本という国は米ソ両国を含む核軍縮に関する条約をなぜ提案をしない。もう一つ非核保有国に関する安全保障を、国連としてそのことを国際的な評価の上に責任をもって認めるという条約の提案をなぜしない。そうでなければこの不平等性というものは解消しない。私が質問もせぬものを先にお答えになったが、米ソが勝手に核をこしらえて、日本人をたくさん殺して、でき過ぎた、さて、拡散防止の条約におまえたちは入ってきて義務を負えと、これは不平等性過ぎるという、この矛盾をあなたがしんからお感じになっているなら、なぜ一体国連に加盟していて、国連外交を中心に——ただ一つの被爆国ですよ、広島に、さっき申し上げた、大臣も半分覚えておられるいしぶみがあるのですよ。ならば、それこそ亡くなった方々の霊に対しても、二度と「過ちは繰返しまぜぬから。」といしぶみに刻んである限りは、これは国連に対して唯一の被爆国日本が提案をする権利がある。米ソを含めた国際的な核軍縮に関する条約を提案をする、これが一つ。あわせて、非核保有国に対する安全の保障に関する条約を提案をする。この二つがなければ、大臣、不平等性の解消はできないのです。力関係で、日本のいま置かれている立場、力でできる、できないという問題はあります。ありますが、日本国民一億の上に立って、いしぶみをあそこに置いていて、たくさんの人がお参りをしている、まさに慰霊顕彰ですよ、そうやっているという立場からすれば一つもおかしくない。ビキニ環礁の被爆者だっている。いまだに病院に寝たつきりの人もいる。ならば、なぜそれを提案をしないのか、私はこれはしかと承っておきたいのであります。いかがでありますか。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 問題の、御指摘の基本に持っておられますお考えは私は誤っていないと思います。私が、核軍縮の問題は主として米ソの問題でございますと申し上げましたのは、これは両者が圧倒的な優勢を持っているわけですから、現案問題として米ソの間に合意ができなければならぬという意味でございまして、非核保有国がそのような合意を形成するために、いわばわれわれが道徳的な圧力をかけていくならば、それは申すまでもなく、言われましたように国際連合であり、軍縮委員会であり、そうしてこの条約の再検討会議であるわけでございます。従来わが国は、軍縮問題については非常に熱心にそれらの場で主張をいたしてまいりました。現にいま残っております地下の核爆発についても、わが国の持っているいろいろな技術を利用して、全面的に実験禁止に持っていくべきであるというような主張を従来からずっといたしてまいりました。それらの場を通じていたしてまいりましたし、また、米ソ自身が今回の再検討会議におきまして、この条約のようなものがなかったら、恐らく米ソが軍縮問題で具体的に話し合いをしていくという、そういう動機すら生まれなかったであろうということを、これは何も私はお世辞を言っているのではないと思います。現実の動きとしてこの条約が誕生してから米ソに軍縮に関しての条約が幾つか生まれてきておる、SALT交渉もやっているのでございますから、そういうことは私はただの上のそらの言葉ではないと思います。問題はその進行が非常に遅々としておりますから、十分にわれわれには満足できないのでありますけれども、傾向としてはそういう傾向が見える。  さて、大出委員の言われますように、日本国連の場において米ソの間で核軍縮をやれという条約をなぜ提案しないか、あるいは非核保有国の安全を保障するという条約をなぜ提案しないかということですが、結局そういう条約を提案いたしまして、当事者というのは主として米ソでございますから、条約というものが成立するためには、それを成立させるだけの具体的な裏づけがなければ実体的な意味を持ち得ないわけであって、各国がそのような道徳的な圧力をかけることによって、米ソの間にそういう幾つかの合意、取り決めができてきたということは、事実問題として大出委員の言われている方向にわずかではあるがやはり進んでいるのではないか。及び、今度は非核保有国安全保障をなぜ提案しないかということでございますけれども、これはたとえば南米において非核地帯というようなものが、これはもう本当に条約のところまで行ったわけでありますけれども、現に核保有国の一国であるソ連がそのプロトコルに署名をしないということによって現実の問題になり得ないまま、今日そのまま置かれておるわけでありますから、結局米ソ両国にそのような道徳的な圧力をかけていくという、そういう努力がいま最も必要な段階ではないのか。その結果として条約まで進めば、これはもう全く願ってもないことであるというふうに考えるわけです。
  37. 大出俊

    大出委員 時間がありませんから、この論争は残念ですが、もうちょっと詰めさせてください。  坂田さん、メモをとられておるところを大変恐縮だけれども一つお答えいただきたいのですが、この核の抑止力というものは相手に脅威を与えますな。脅威を与えなければ抑止力は成り立ちませんね。いかがでございますか。
  38. 坂田道太

    坂田国務大臣 核で攻撃をするならば反撃がある、そういうことなんで、双方がその核の威力というものを非常に正確に処置をしておるという前提に立っておるわけなんで、その意味においてはおっしゃるとおりだと思います。
  39. 大出俊

    大出委員 後から時間があれば言いますが、防衛庁の将補の方で計見さんという方が「軍事研究」に書いておりますが、この方は核に対しては核でなければならぬと言い切っているわけですけれどもね。つまり、そこに核の脅威というもの、抑止力の根源は脅威、相手に脅威を与えることである、この前提があるからです。いまお認めになったからいいですがね。  そうすると、いま、宮澤さんの方の問題に戻りますけれども米ソの核開発に基づいて非核保有国——体制二つになったりいろいろしておりますけれども、広島原爆、長崎原爆以来今日に至りますまで、大変な核の脅威を常に受けてきた、これがわれわれであり、非核保有国ですよ。そこに米ソ両国の核の抑止力、つまり非保有国に脅威を与えているという体制中心になっている二つの強大国立場があるわけですよ。だから、強いて言えば、この核不拡散条約という今回の提起は、アメリカとソビエトという核超大国二つがそれぞれの体制をきちっと固めていくという、最近問題になっている言葉で言えば一種の覇権ですよ。これは米ソの覇権主義の最たるあらわれだ。日本はいまの政府の姿勢からいけばきわめて——これはこの間私が安保の質問をしましたらあなた一生懸命逃げましたがね、後から時間があればまた聞きたいのですけれども日本の側はそういう姿勢だからいいですけれども、しかしこれは明らかな二つの超大国の覇権。両方の体制二つの国ががちっと固めていくという。日本に入ってもらわなければアメリカ体制は一層前に進まないんだから、これは大国の大変エゴイズムに満ちた条約の提案。だから私は、与党内部の議論の中で大変ある意味の期待を持って見ておったんだけれども、核開発を独自にやれという方もたくさんおられるんだから。仲のいい方々からも私は言われる。だからそれを、外務大臣がパンフレットをこしらえて一生懸命説得された。うまいこと書いてありますが、うそもありますけれども、あなたは笑っているけれどもね。だが、これで説得をしようとしたときに、いま大臣答弁をされた米ソの道を歩まないという方針にまとまるときには、恐らくこの不平等性の指摘が行われて、与党内部から、外務大臣、なぜ一体国連に向かって、米ソの超核大国を含む核保有国の核軍縮に関する条約の提起を国連でしないか、そして非核保有国に対する安全の保障に関する条約の提起をしないかという意見が皆さんの方の党の内部から出てくると私は思っておった。そうなればそのことを、あなたはいま、できる、できないといろいろなことをおっしゃいましたが、二国間の問題とおっしゃいましたが、加盟国であり被爆国である日本に提案の権利ありますよ。そこまで日本政府が踏み切るなら、野党各党それこそ全部そろって、まさに外交権は政府にありますが、それをできる限りサポートする意味での国際的な——それこそ非核保有国は山ほどあるのですから、しかも今回五年ぶりで行われている再検討会議だって、中身を調べてみると非核保有国からたくさんの不満が出ているわけでしょう。どんどん核は拡散をするじゃないか、核軍縮はさっぱり進まぬで、逆に核開発が進んでいるじゃないか。それらのたくさん不満のある国々のまさに国際的世論を形成をする。それならばつまり同じ広場で皆さんと話ができる。初めて外交的コンセンサスができる。われわれだってそれこそいにしえの労働組合の立場から、歩かぬ国は世界じゅうほとんどないんだから、片っ端から歩いて説得できる。そして非同盟諸国なり非核保有国の方々なり、結集しての大変強力な国際世論をつくって、この不拡散条約というものが取り上げられているこの機会に、超大国を含む核保有国に対する軍縮、その方向に向かっての条約をつくる、あるいは非核保有国の安全、これにかかわる条約をつくる、そういう国際世論を政府、与野党一緒になって、それこそ全力で努力する。これが日本立場だと私は思っているのですよ。なぜそれをおやりにならぬ。いまここで即答していただこうとは思ってはいない。だがその時期が来る、そう私は思いますから、その意味で、ひとつこれは時間をかけて御検討いただきたいのですが、いかがでございますか。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いま即答する必要はないと言われることにはいろいろ大出委員としてのお考えもおありになりますので、私も慎重にお答えをしなければならないと思います。  ある意味でこの条約を提案すること自身はむずかしいことではないが、しかし当事者たる両国がそれを受け入れるだけのやはり現実的な基盤がなければならぬという問題がございます。今回の再検討会議においても、いま大出委員の言われましたような線に沿いまして、この条約の加盟国がこれだけふえたら米ソは核軍縮をこの程度進めていけ、次の段階はこの程度というような提案が出されました。しかしこれは米ソ両国の拒否するところとなった。あるいはラテンアメリカにおける非核地帯にしましても、ソ連がこれに合意するところとならないというように、大出委員の言われますことに、その根本の思想に、私としては基本的に少しも反対ではないのでありますけれども、やはりそこへ持っていくための米ソの一種のバランスといいますか、そういったような問題が現実に核兵器を持っておるものの立場から言えばある。でございますから、やはり一つ一つ問題を道徳的説得によってつぶしていくというような、多少時間のかかるアプローチが要るのではないだろうか。しかし、大出委員の言われますことに、私は基本的にお考えとして十分な意義を認めます。
  41. 大出俊

    大出委員 この国会、少し私どもの党の国会に対する物の考え方が旧来とパターンを変えている、だから私はこういうことを言うわけであります。そのことが非常に必要だと私は思っているから申し上げる。そこでこれは恐らく皆さんの党の内部だって、そのこと自体に反対とはおっしゃらぬと思う。ただそれを効果あらしめるためにどうするかということについてはいろんな道筋がございます。だから私はいま直ちに回答をいただこうと申し上げているのではない。これは私は大変に大きな問題だと思っておるわけでありまして、これはまさに次の世代の諸君のために、いま国会に議席等を持っておるわれわれの責任において考えなければならぬ問題、痛切にそれを実は感じているわけであります。  そこでこれに関連をいたしまして幾つか承っていきたいのであります。  最近の幾つかの新聞に出ている問題をとらえてみましても、実はベトナムの次は韓国だというようなことを——正しくとらえなければいかぬわけでありますけれども不用意な面もあり、たくさん表に出てくるという中で、何か知らぬが少しずつ、あるときには冷戦構造の方向に心配な面が、宮津さんの発言なんかの中にもあった。大分いろんな意味でじぐざぐ、あなたは最近見ておると綱渡りをおやりになるから、とんでもないことを言ってみたりして、事前協議についてイエスもノーもある、それでなければ条約締結した意味がないというようなことを、それはあなたは一つの目的意識があっておっしゃる。ところがだんだん戻ってくる。三木さんに物を言わしておいて、その中に吸収されたというようなことを言う。それは外交ですから、それでいいですけれども。  そこでこの新聞記事を見ますと、韓国の朴大統領が、米が核のかさを引っ込めれば、韓国は独自に核武装するということをエバンス、ノバック両氏に、これはコラムニストでございましょうが、述べた。アメリカ側の「米政府困惑の論評」というので、「核防の規定遵守を」と、まあ核開発なんて言わないで、核防条約に入ってくれて批准をしているんだから、その規定を遵守してくれということを言っているわけですね。そこで、さっきあなたは米ソの道はたどらぬとおっしゃった。しかし、これは一つの仮定だが、私は台湾だって遠からず核開発をやるのじゃないかと思っておる。イスラエルにしてもしかり。アラブ諸国にしてもその徴候がたくさんに見える、後から申し上げますが。だから、もしも将来に向かって朴さんが言っておるようなことが出てきた場合に日本はどうなんだ。まして政府・与党の中にいろんなことがある。この条約を仮に批准したからといって、だからどうということはないのですよ。核開発をやろうと思えばできる。幾つの国もやっているし、この条約にちゃんと書いてあるでしょう。十条にございますよ。抜け出すことだってできる、そう答えた大臣だっておいでになった。中曽根さんがそうですよ。そうすると、韓国がもし、将来の仮定だが、しかし朴さんがおっしゃっているようなことができ上がったとする。能力があるのですから、大きな原子炉を持っているのですから、カナダが供与したものがあるのですから、インドと一緒ですよ。同じ理屈です。その場合に日本というのは一体どうなんだ、そこまでお考えでございますか。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 韓国の大統領がそのように言われたという報道がエバンス、ノバック両氏によってなされたということは私も読んだわけでございますけれども、韓国はついせんだってこの条約に加盟をされたばかりでございますから、私は朴大統領が真実そのとおり思って言われたのではなく、やはり言われたことについては何かの効果を考えて言われたのではないかというふうに考えます。そうでありませんと、つい先日この条約に韓国は加盟したばかりでございますから、そのところの一貫した説明は成り立ちにくいと思っております。  それからもう一つ申し上げなければならないことは、韓国にはもう一遍カナダの技術供与の問題が御指摘のようにございますが、これはもうインドの例でもございましたように、よほど各国とも最近は慎重になりつつございます。保障協定を結ぶのはもちろんでございますけれども、非常に慎重になってまいっておりまして、これはこの条約各国に課された義務でもございます。供与国に課された義務でもあるのでよほどきちんと守っておらなければならない。イスラエルにつきましても、アメリカはニクソン大統領の時代に一度そういう約束をいたしましたけれども、実はこの保障措置協定を適用するというところで話が停とんをして炉の供与に至らない、技術の供与に至らないというのが現状であって、そうなければならぬと思います。この条約は守られなければならない、両者から守られなければならないわけでございます。  が、さてその上で、仮定の問題として条約に加盟しても、しかしやる方法はあるぞ、十条もあるしということになりますと、それはみんながそういうことを始めてしまえば、この条約は事実上崩壊をしてしまうということにならざるを得ません。そうならないことをわれわれとしては希望をしますし、またこの条約が遵守される、それが確保されることについてやはりお互いに努力をしなければならないというふうに思います。
  43. 大出俊

    大出委員 ここで佐々木さんに承っておきたいのですが、インドの核開発は幾らくらいかかっているということになっておりますか。金はどのくらいかかっておりますか。
  44. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 手元に資料がございませんのでわかりません。
  45. 大出俊

    大出委員 私のここにございます資料によりますと、これは四月二十九日付の英国の新聞ガーディアンです。細かく書いてありますね。これを見ますと、標準的な原子力発電一つから生産されるプルトニウム一カ月分、これで長崎級の原爆一個の製造が可能だというところからここに書いてありまして、そして今回このインドがプルトニウムを核実験に転用した際の費用は、近代戦用の戦車一台分強の十七万ポンドであると言い切っていますね。日本の円に直しますと約一億一千万円、こういうわけです。プルトニウムはたくさん燃えかすでできておるわけですから、これは広島型原爆。したがって、この単価でいきますと、また原子炉を始動している国、この現状からいきますと、約二十カ国が遠からずつくろうとすればできる。こういうつまりガーディアン紙は所論を載せているわけですね。恐らく十七万ポンド、一億一千万円というのは当たらずといえども遠からざる数字なんだろうと思います。国際的に権威ある新聞ですから。ということになると、いまいみじくも宮澤さんがおっしゃった、そんなこと言ったら、そこらじゅうで、朴さんがつくると言った、蒋介石さんの跡継ぎの方もつくると言っているのですから、イスラエルもやるかもしれない、エジプトだってやりかねない。大変なことです。アメリカが片一方で核軍縮としきりに言っていながら、片っ方でどんどん原子炉のプラントを売っているわけですから、だから悪くとれば、今回の核拡散防止条約をしきりに日本に早く批准しろと言っている背景というのは、あるいは入ろうとしないフランスなどを意識しているのかもしらぬ、商売がたきですから。そこまで勘ぐらざるを得ない。  そこで、時間の関係ございますから承りますが、この再検討会議が終わったのは一体いつでございますか。  そこから来るならいい。時間がないから。——五月の三十日ですよ。再検討会議が終わってからいままで、きょうは十六日でございますね、十六日間に、再検討会議の最後は軍縮を進めようではないか、拡散をこれ以上ふやすべきでないということを上げて終わっているわけですけれども、次次にそのいずれにも相反する方針で具体的事実がたくさんあらわれている。幾つか挙げていただけますか、科学技術庁長官。  何だ、私は素人でこっちへ来て話しているのに、あなた方は少しちっとは調べておいてくださいよ。  こういうことですよ。核兵器拡散条約再検討会議、これが正式な名称、五月三十日に終わりました。核軍縮の推進と核拡散防止の努力を今後とも参加国は精力的に続けていこうということを決議して終わっている。コミュニケも出している。ところがそれからまだ二週間、フランスは南太平洋のファンガタウファ環礁で一連の地下核実験でしょう。小型だから何回やっているかわからぬくらい回数が多いというのだから。米国は一体何をやっている。ネハダの実験場でこれまた地下核実験、これもちゃんと探知されている。アメリカが発表している。ソビエト、北太平洋に新型の大陸間弾道弾、これはSS18ですよ。わざわざ船まで出してやっているじゃないですか。これは大変に広い水域です。だから間違いなくこれはSS18である。これは国際的な常識です。しかもその次にいま申し上げた韓国の朴大統領、米国の核のかさが外されたらおれのところは核をつくると、こう言う。カナダがインドとちょうど同じ重水炉、これを売却しています。韓国にあります。ちゃんと始動しています。ところで、この七五年という一年間、まだ一年たっていませんが、これはスウェーデンの国際平和研究所、軍備軍縮年鑑七五年版、最近出たものです。この公表した中身によりますと、この七五年一年間で米国の核実験が五回、ソビエトの核実験は何と二十回、フランスの核実験が七回、英国、中国、インドが各一回核実験をやっている。そうでしょう。そこへ持ってきてつい最近西ドイツは、核防条約に参加していないブラジル、ここと大規模な原子力協定締結することを発表しているでしょう。一連のいまの動き、一体核拡散防止条約を批准しろと再検討会議が開かれた、何を一体これはやっている。外務大臣がおっしゃっているような方向には全く行こうともしていない、正反対。この現実をあなた、科学技術庁長官が御存じないじゃ困っちまうじゃないですか。あなたは昔の専門でしょう。一体この動きはどうお考えになりますか。
  46. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 大出さんに申し上げたいのでございますけれども、私個人としての見解であればいろいろ述べたいのですが、御承知のように、原子力基本法がございまして、わが原子力委員会は基本法に基づくテリトリ——の中でしか研究あるいは開発利用はできないことになっておりまして、したがって私どもの分野は平和利用というだけに実は限ってございますので、そういう点はほとんど実はやっておりません。
  47. 大出俊

    大出委員 それではウサギの耳の方に聞きましょう。坂田さん、あなたはウサギの耳なんだからわからぬはずはない。私いまずらっと挙げましたが、これに対する御見解、この事実をお認めになりますか。  もう一遍言いましょう。そんなあっけらかんとしていてはだめですよ。五月三十日に再検討会議が終わった。核軍縮の推進をやろう、核拡散防止の努力をしようといって終わった。途端にフランスは南太平洋のファンガタウファの環礁で地下核実験、米国はネハダの実験場で一連の地下核実験、ソビエトは北太平洋に新型大陸間弾道弾SS18と見られているものを撃ち込んでいる。韓国の朴大統領は米国のかさが取り払われたら核武装すると声明をしている。ここにはカナダからちょうどインドと同じ型の重水炉、これを売り込まれている。始動していますよ。プルトニウムがどんどんできている。さらにその上にスウェーデンの国際平和研究所、これは防衛庁とってないはずはないと思うんだが、軍備軍縮年鑑七五年版、つい最近出たのですよ。ここで明らかにされた中身、この七五年一年間で、まだ終わってないけれども米国で五回の核実験、ソビエトで二十回、フランスで七回、英国、中国、インドで各一回、その上に西ドイツが核防条約に参加していないブラジル、ここと大規模な原子力協定を今度結ぼうという、今月の二十七日です、結ぶんです。この一連の動き、あなたはウサギの耳で、この国の防衛ということの責任者ですから、この一連の動きに無関心ではないはずです。あなたは御存じですか。——時間がない。科学技術庁長官も、私の方は平和専門だからそっちの方は御免だという。ウサギの耳の方もさっぱり役に立っていない。外務大臣、いかがでございますか。
  48. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 大体私ども新聞報道その他で承知をしておることでございます。  それから核実験の状況でございますが、七四年の例が出ておりますが、アメリカが六回、ソ連が六回、イギリスが一回、フランスが八回、中国が一回という数字が出ております。
  49. 大出俊

    大出委員 七四年の例じゃだめじゃないですか、そんな一年前の話。七四年まりもはるかに多いじゃないですか、七五年の方が。拡散防止なんか一つもしていないじゃないですか。しかも軍縮も一つも進んでいないじゃないですか。やる一方じゃないですか。去年よりもまだはるかに多い。いまの丸山さんの説明された中身よりも七五年の方がはるかに多いじゃないですか。核拡散防止条約というのはこうなると一体何の役に立つのか。外務大臣、あなたはこの現実を一体どういうふうにお考えになりますか。
  50. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま仰せになりましたことは事実または報道に基づくもの等でありまして、これはいずれにしてもいまの核実験、核軍縮の進行に体制が不備であるということを示しておることは間違いありません。  米ソについて申しますと、たとえばネハダで核実験が地下で行われた。これは地下の核実験がすべて禁止されておれば、これは米ソ間の条約の違反になるわけでございますけれども、それについてはまだ全面禁止になっていない。わが国が全面禁止を叫んで技術提供を申し出ているまさしく問題でございます。ですからこれは体制が不備である。その不備を何とかして補いたいとわが国初め各国が努力しておるところのまさにその問題になるわけであります。  それからこの売り込みの問題ですが、インドの場合には、この条約の出る前にカナダが売り込んでしまったという問題がございますが、今度の韓国の問題あるいは西ドイツがブラジルに対する問題、これはカナダも韓国も西ドイツもこの条約のすでに加盟国でございますから、そのような技術提供については厳格な保障措置協定を結ばなければならないというのは加盟国としての義務であります。したがって、これは体制としては整備をされておる問題で、要はその義務がいかに忠実に履行されるかという問題であろうと思います。  一番困りますのはフランスの問題でございます。これはこの条約の加盟国でないということから、これについて有効な規制を外部から行う方法が乏しい。昨年あたりいわゆる大気の実験をいたしましたために、オーストラリアとニュージーランドから非常な批判を受けました。わが国も非難をいたしました。その結果今回地下に行ったのではないかという想像はできます。そういう意味で、国際世論というものが何がしかの圧力になっているということはわかりますけれども、このフランスについての問題は、いまのところ体制とし丸は、実際これを有効に阻止する方法は国際的な世論の圧力しかないという、フランス政府の宣明された意図はともかくといたしまして、そういう状態であります。  ですから、いま御指摘になりましたような問題は、あるものは体制がある程度でき上がっておるが不備である。あるものは体制としてはでき上がっておるがそれが忠実に履行されるかどうかの問題である。あるものは実は国際世論の圧力しか目下のところ有効な方法がないといったような種類に分けられまして、いずれにしても現在の体制が十全でないということにつきましては、私はそれはポイントをついておられると思います。
  51. 大出俊

    大出委員 そこで外務大臣にもう一つ承りたいのですが、フランスはなぜドゴールの時代に独自、核開発に踏み切ったのですか。あなたどうお思いになりますか。私は当時フランスに行きましていろいろ承ったことがあるのだが、あなたはどういうふうにごらんになりますか。
  52. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、ドゴール将軍の心事はなかなか推測するに容易でないのですけれども、要するに米ソの、それこそ米ソの一種の優位の支配体制というものに対して、フランスの栄光あるいはヨーロッパの栄光というものは立ち向かわなければならない、それに従属をすべきものでないという思想が基本にあったものと私は思っております。
  53. 大出俊

    大出委員 つまり、さっき私が申し上げたこの核拡散防止条約の発想が、米ソの超核大国がおのおのの支配体制を確立をしようと米ソ間に話し合いが行われている。その米ソ間でおのおのの支配体制というのは分け合っている。たとえば海上においてもそうです。ペルシャ湾一つとってみたって、アラブ湾岸六カ国のあそこののど首の向こうに抜ければ地中海なんですから、明確に分け合っている。その支配体制をがちっと固めてきている。なお固めようとしている。これは単なる武力問題、核問題だけじゃない。結果として経済的な支配も出てきている。安保条約二条には経済条項があるのですから、日本の場合だって。だから、この支配体制から抜けようという当時のドゴール時代の物の考え方、いまだに続いている。だから石油ショックのとき見てみればわかるじゃないですか。フランスの立場はあくまでも独自、アメリカが何を言ったって聞かない。ここに問題がある。だからいまだに入ろうともしなければ、入る意思もない。中国だって入ろうともなさらぬし、入る意思もない。そうすると五つの大国、六つ目がインド、この中でフランスと中国が入らない。入る意思がない。そういうことになぜなっているかという、ここにこの問題のポイントがある。  だから、繰り返すけれども、超大国の核の、つまり核軍縮という問題と非保有国の安全という問題二つが提起されなければ中国だって入れないじゃないですか。フランスだってそうじゃないですか。それならば日本の置かれている立場というのはより深刻に考えていい問題だと私は思っている。だから入るに当たってそのことが一つ前提になければならぬ。あなたは、私の真意というのは意義あるとお認めになったわけだから、何もいますぐとかあしたとかあさってとか言っているわけじゃない、その方向を日本外交の独自の立場として、そのことが超党派外交を呼ぶならば当然私は考えていかなければならない筋合いだ、この点はこう思っている。もう一遍御答弁いただきたいのです。
  54. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約米ソの核軍備における圧倒的な支配体制のもとに企まれたことは事実であります。これは大出委員のおっしゃっていることに私は少しも間違いがないと思う。ですからドゴール大統領は別個の見解を持ったのだと思います。だが実はそれだけではないと私は思いますのは、その米ソがこれだけ核軍備をして、実は核兵器というものはどうも国際世論等々の関係もあり、非常に破壊的なこともあって、事実上は現実に使うということは容易なことでない、抑止力としてはともかく、ということを認識し始めていること、しかも持っている者がすでにお互いを意識して競争したばかりに大変なオーバーキルになってきてしまっているということ、したがってあるものは、お互いさえ話し合えば要らぬものが出てきているということ、それからこれ以上競争をすることが財政的にとても耐えがたいということを両国も感じていること等々がございますから、そのような支配体制そのものがさらに野方図に発展していくということでない徴候が幾つかできてきておるということが、私はこの条約の背景にまたあるのではないかと思います。  しかし、いずれにしても、核軍縮と非核保有国安全保障というものがなければ、そういうものを欠けば、この条約は全くただの一つの方法論を示したことになってしまって、本当の軍縮、世界の平和という目的に十全に奉仕するということはできなくなるわけでございますから、そうしてそれらのことはこの条約そのものが担う役割りではなくて、国連であるとか軍縮委員会であるとかいういろいろの場がございますが、いずれにしても、この条約は全面的な核軍縮への動き、非核保有国安全保障というものが眼目にならなければ、この条約そのものの持っている目的というものはしょせん達成することはできない。ですから、わが国としてはそういうことに努力をすべきだという大出委員の御指摘には私は賛成であるわけであります。
  55. 大出俊

    大出委員 ここでひとつ承っておきたいのですが、坂田さんに承りたいのですが、核拡散防止条約を発効さした時点からこの五年間、核軍縮を義務づけてはいない。義務づけてはいないが、米ソ両国は道義的責任を持っている。だから、それが義務づけていないところに私のいま提起している、また大臣がおっしゃっているような問題があるわけであります。総合的に考えていかなければ全体を入れていくわけにいかない。国際的に原子力というもの、核というものについての、これは毒ガスだって国際条約があるわけですから、不必要の国際条約をつくっておかしくはない。だからそちらの方向に向いていかなければいかぬわけですけれども、一体米ソ両国の核軍縮、SALTなるものはどういう結果を生んでいますか。いかがですか。
  56. 坂田道太

    坂田国務大臣 やはり緊張緩和、つまりデタントを維持しようという意思がSALTの条約等にあらわれておるというふうに私は思うわけでございます。
  57. 大出俊

    大出委員 坂田さん、どうもそういうことじゃ答えにならぬのですよ、もう少し具体的に言っていただかぬと。あなたは防衛なんですからね。  このSALT1ができ上がったときに、米ソ戦略核兵器の均衡が双方の核抑止力を安定さした。相互に核優位を目指す核軍拡競争を放棄させるものという見方が国際的にあった。ニクソン大統領の当時の声明、ここにちょっと抜き書きしておいたのですが、ニクソン大統領は、SALT1ができたときに、双方の合意による自制への第一歩であるという声明を出している。ソビエトとアメリカ双方の自制への第一歩である。ソビエトもSALT1の核軍縮という意義を高く評価するという趣旨の声明を出している。  しかし、一体現実はどうなんだ。第一次SALT交渉の妥結の直後、当時のレアード国防長官アメリカのムーラー統合参謀本部議長、これが何と言ったか。時間がございませんし、恐らく御答弁いただけぬから私が言いますが、SALTの成功は米国が維持している力によるものであり、この力を維持するのに必要な計画を推進しなければならない。SALT1ができた。だがこれは力を維持してきたからできたんだ。核軍拡を高めてきたからできたんだ。だから今後とも一層それを維持していかなければならない。一つもこれは核軍縮じゃないじゃないですか。おまけにこれはアメリカの国防の責任者レアード国防長官とムーラー統合参謀本部議長、とんでもない話です。全く表街道と腹の中と違う。つまり、その結果、SALTに基づく戦略核兵器数量制限そのものについてはぞうっとしていた。だが、アメリカの核は質的にどんどんどんどん変えられてきている。大変なものだ。まさに何ミリも違わないところに着弾をする。どんどん質が変わってきおる。対ソ優位の体制をとろうということで懸命です。ベトナム戦争が終わったってそれ以上の予算を組んでおるでしょう。まずポラリス、ポセイドン型、これを大きく変えた。大変大型な原子力潜水艦、これに長い射程のミサイルを載せておる。つまりトライデント型ですよ。潜水艦弾道ミサイルのSLBMを載せて、その後大変な長足の進歩。それから戦略爆撃機B52、これに対する新型のB1、これもどんどん開発されてきておる。大変短期におけるきわめて長足の進展度合い。さらに首都、基地などに対する拠点防衛計画。ワシントンだってそうでしょう、どんどん地下待避所をつくっておるわけですね。それがアメリカ側ですよ。アメリカ側はおおむね公表されておりますが、この件に関するソビエト側をどういうふうに見ますか。一次SALT以後におけるソビエトの核軍拡はどう進んでおりますか。同じように、これは例を挙げて言ってください。
  58. 坂田道太

    坂田国務大臣 後で防衛局長からお答えをいたしますが、デタントというのも、先生すでに御承知のとおりに、むしろ力の追求の結果として双方間に均衡を保とうということなんで、その本質は。しかしながら、それが無制限にいくということは、やはり核拡散防止という点からいうならばよくないことだからというので、米ソ双方がそこに理性を働かしてきた。それは評価すべきことだと思いますし、やはりお話しのように、量の制限はあったが、質的にはかなりまた充実をしてきたということは私も認めるわけでございます。
  59. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 簡単に申し上げます。  まず、ICBMにつきましては、SS9から11、13というのがございましたが、その後それの後継基の開発がずっと行われておりまして、特に問題になりますのはMIRV化、多弾頭化というものが進んできておる。先ほど先生の御説明にありましたSS18というのはまさにそれでございます。それから長距離爆撃機につきましては、B1に匹敵するバックファイアというのが開発をされておる。それからSLBMにつきましては、SSN8というもの、これは長距離でございますが、ヤンキー型、デルタ型、こういったものの原子力潜水艦に搭載するというようなものが開発されて、一部は配備されております。
  60. 大出俊

    大出委員 つまり、ソビエト側も大変強大な、それこそ加速的な核開発を進めておるということですよ。数量的に実は要らない。あなた前進だと言うが、一つも前進じゃない。これはまたあなたに聞いたってしょうがないから言うけれども、これはラロック証言読んでごらんなさいよ。はっきりしている。数量なんか全く要らない。これはつくり過ぎちゃって、米国は八時間に一個できているというのです、核が。ソビエトは二十四時間に一個できている。一九七二年にソビエトで戦略核が二千五百、米国が八千。一九七七年に幾つになりますかとサイミントン氏が聞いた。ラロック氏が計算して出した。何とこれが、ソビエトの二千五百が一九七七年には四千になるという。倍近くになる。米国は幾らになるかというと、八千が一万を超えるという。専門家の発言でしょう。記録にとどめてあります、ちゃんと。要らないのです、数は。なれば、質的な転換になるじゃないですか、両方とも当然。一つもこれは核軍縮の方向じゃない。  念のために承っておきますが、それじゃSALTII。これはキッシンジャー氏の十四日のセントルイスの演説もございます。一体SALTIIというのはどういうことになりそうですか。これは時間がございませんから、外務大臣でも防衛庁長官でもお答え願いたい。SALTIIの行方というのはどうなりそうですか。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その前にちょっとこれは申し上げておく必要があると思いますので、お許しをいただきたいのですが、こういう軍縮交渉が行われました後、これは何といってもシビリアンコントロールのもとで両国が行うわけでありますから、必ず両国とも軍当局からは譲り過ぎではないかという批判が出てまいります。そうすると、そうではないんだということを言わなければならぬという事情があって、まあこれでやれるんだ、わが国は困らぬのだという説得が必ず後で行われる。これはアメリカの方ははっきりしておりますからそれに間違いはないのですが、ソ連の方でも、どらもせんだってのウラジオの後はややそういう問題が国内であったのではないかと思われる形跡が幾つかある。これはどうしてもシビリアンコントロールで行こうとすると、私はやはり起こってくる問題だと思いますのと、もう一つは、やはり量で抑えていくのがどうしても主になりますから、そうすると今度は質でもってどうしても向上しようという動きは出てくる。これは私はある意味で避けられないと思いますが、それにもしかし限度がないわけではない。それからもう一つは、アメリカがソ連と話し合いをしていくのに、どうしてもソ連がある程度の安心感を持たなければ話し合いということはしょせんできないだろうということを数年間、アメリカとしてはやむを得ず見ておりましたから、どっちかというと、アメリカが立ちどまってソ連が追っかけるという姿をとった。これはしかしソ連もソ連の立場があるでありましょうから、まあまあいいことではないが、やむを得なかったと思います。  そこで、SALTの第二段階ですが、非常に複雑な話になっておるらしくて、私ども詳しいことはわかりません。わかりませんが、どうやら両方のシビリアンが抑えて、何とかこれを達成したいということが、この間のキッシンジャー・グロムイコ会談であったように思われます。思われますが、あの会談からは、どうもキッシンジャーは余りグロムイコから十分な返事が得られなかったというふうに私どもは聞いておりますので、もうすっといけそうだというような感じではございません。ございませんが、これは日切れになる関係もあって、両方ともやはり何とか達成したいというのが、両方の最高部の意思であろうというふうに私は考えています。
  62. 大出俊

    大出委員 念のために申し上げておきますが、このセントルイスの演説、ここでそのキッシンジャー氏が、「デタント外交の陰で戦略的優位をかすめ取り、軍事支配を拡大しようとするソビエトの思想は許せない。」と、こう言ったという。これは正確に載せていますが、そう言っている。そうして、五月七日のSALTの第二の中断、ここに発展したわけですね。いまちょっとお話しになりましたが、複雑だとおっしゃった。中身を読んでみると複雑ですね。ここで米ソ首脳会談を延期した。アメリカ側の強硬姿勢で話が進まないとここに書いてある。  そこで、これはニューズウィークです。ニューズウィークの最近号によりますと、具体的にはアメリカはソ連のこの新型、さっき丸山さんがお答えになりましたが、バックファィアB、つまりこの新型ソビエトの爆撃機、これはそんなに航続距離は確かに長くありませんが、これをミサイル運搬手段の上限二千四百基の数に加えることをアメリカ側が要求した。アメリカはB1をやっているのですけれども、バックファイアの方を二千四百の運搬手段の上限に入れろ、こう言ったわけですね。これはソビエトは全く反対。そして査察については、現地査察が実現しない以上、MIRV、個別誘導複数弾頭の判定は不可能だから、MIRV能力を有するとみなされるソ連のSS18、これもさっきおっしゃった、SS18ミサイルはMIRVの上限千三百四十基に組み入れるべきだと主張している。これがアメリカ側の主張。これでソビエトの方は一歩も譲らないで、バックファイアのB、これはアメリカのF111戦略爆撃機に比べれば航続距離は短いんだ、だからミサイル運搬手段じゃない、アメリカまで行けやしないじゃないか。SS18は弾頭を一個しかつけてないじゃないか、だからそんなものを千三百四十基に入れるなんということはできない、これがソビエトの言い分。だから、秋に予定されているジュネーブでのブレジネフ書記長の訪米、これも、この政治会談、首脳会談延期を背景にして考えてみれば、恐らく不可能であろうというニューズウィークの分析ですね。  つまり、あなたは先ほど、シビリアンコントロールをやれば軍がとおっしゃるけれども、事ごとにこの核拡散防止条約をめぐる理想とは反対の方に進んでおる、これだけは間違いのない現実です。だから、この中で一体どうするかということについては、さっき私がくどいように申し上げている、新たな問題提起をしていかなければ進まない。そういう国際世論というものを激しく掘り起こしていく努力をこの国、日本がしなければ進まない、そのことを痛切に感ぜざるを得ぬというわけです。でなければこれを批准しても意味がないということになる、かえって悪いということになる、こう私はそこのところに大きな疑問を持つ。だからそれで私はこの点を取り上げているわけですが、一体大臣、このあたりを——それは両当事国の問題だからと腕を組んでいられる筋合いではないので、もう一遍くどいですけれども念を押したいのですが、いかがですか。批准せいと言うんならどうするんだということです。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 米ソの核軍縮交渉というのも、確かに大出委員の言われますように、これは崇高なる人類愛というようなものが大きな動機、そういう動機が全然ないとは申しませんけれども、そうではなくて、やはり両方のお互いの利害、打算というものから、どうもそうするしかないではないかというような要素が、それは実際相当私はあると思うのです。そうすると、お互いに国内に事情があって、なかなか国内を抑えるというのにも苦労をするしといようなことでありますし、絶えず相手をある意味では疑いつつ話を進めているというのが私は本当のところだと思います。ですからなかなか私どもが思うようには進まないのですが、それでも何か上限を設けてやろうという話は進んできておりますし、先ほどブレジネフのお話もあったのですが、そうかと言ってブレジネフの訪米をやめるという話は両方からないわけです。やはり両方とも何とかしてやるんだと言っておりますから、そういう最高首脳部の意思というものはやはりあるんだ、苦労はするけれどもあるんだ、お互いに疑いつつもあるんだということは認めていいと思う。  しかし、おっしゃいますように、それだけではいかぬので、やはり非核保有国が、それこそ人類愛、ことに原爆を経験したわが国はそうですか、人類愛とか平和とか人の命のとうとさとかいうこと、そういうところに立って圧力をかける、これが基本でなければいけない。そういう意味で、先ほどからおっしゃっていらっしゃいます軍縮と安全保障については、わが国がやはり率先して大きな動き、運動をしなければ事態は進まぬではないかと言われることは、私は同感でございます。
  64. 大出俊

    大出委員 これは佐々木さんに承りたいのですが、私が持っているのはエコノミストの四月一日号です。このエコノミスト誌が「核防条約の派生物」ということでこれはなかなか詳しく書いておられる。これによりますと、アメリカの軍縮局長、この方はアイクルというのですが、このアメリカのアイクル軍縮局長が何と言っているかというと、ここに書いてある。核拡散防止条約はないよりはましだという意味ではわからぬわけではないけれども、この条約では核の拡散防止に必ずしも信頼は置けない。御本家のアメリカの軍縮局長自身がエコノミスト誌の記者に語っているように、実際にないよりはましだという程度しかこの期待は持てないと言う。このやりとりの前後にどういうことがあったか。これは米国がイランとの間に五年間で百五十億ドル、これは百五十億ドルですから大変な額ですが、経済通商協力協定を結んだ。この中の目玉商品が七十億ドルに上る発電用原子炉六ないし八基というのですね。何と総出力が八百万キロワット、大変なものです。これが入っていた。それでイランの言い分は、一九八〇年代に石油が底をつく、そのときに備えて原子力発電に着手する。もっともな話だが、ねらいはそこでないというわけです。これがアメリカの上院で問題になって、去年の七月、「外国に核技術を供与する場合、大統領の決定に対して議会は拒否権を持つ」という法案を全会一致で通した。これは御存じのとおりです。足を引っ張った。ニクソン大統領が停戦間もない中東を訪問して、エジプト、イスラエルの両方に発電炉と核燃料を供与する約束をした。これに対する反発も加速されている。だから、核防条約推進の一方で、アメリカがかえって拡散をすることを助けるとは何事だという議会の大義名分があったという。だからアイクル氏はこういう発言をしているわけであります。  こういう現実があって、ここに批准を求めるならばそれなりの、じゃどうするかということがついてなければ、しからばこれは何のために批准するんだ、こういう問題が出てくる。五年たっているんですからね。これは五年前に皆さんの党の総務会で、橋本登美三郎さん、倉石忠雄さん、中曽根康弘さん、三人の総務が真っ向から反対した。」その直後に皆さん三人とも大臣におなりになった。だからそれをとらえて、私が直ちに中曽根防衛庁長官に当時質問をしたら何と言ったか。核のフリーハンドはとりたい。だが核拡散防止条約を調印したんじゃないか、何で総務会でそういう態度をとったんだと言ったら、中曽根さんは、目下総務ではなくて大臣でございます。だからこの方向については必ずしも反対ではないが、フリーハンドを考えておく必要があると特に十条を持ち出した。この条約十条では、国家至高の利益を危うくする場合には脱退できるんだ、仮に批准してもこれがある、そういう前提で賛意を表してもいいんだと言う。そうでしょう。だから、日本政府だって果たしてどこまで信を置いているのか。アメリカがみずからの体制を固める上で日本にどうしてもと——これは実はおいでになる前に、四月三日に私があなたに質問をしたんです。十日にアメリカにおいでになったわけですけれども、与党のいろいろな議論の結果、核防条約批准の案件は持っていかれたんでしょうが、そのときにあなたの方は、日米安保条約あるいは六九年の佐藤・ニクソン共同声明、この韓国問題についてしまいまで逃げている。細かく記事になって載っているのにあなたは逃げる。逃げるが、つまりそういう注文がついてあなたは行かれたわけでしょう。  だから、私がさっきから言っているのは、そういう注文を剣の刃渡りで、あなたもいまおっしゃったが、党内も国内もずいぶんあなたが苦労しながらやってきておられるのは認めるけれども、そうではなくてもう一歩前へ出る方向がなければ、やはりこれは批准せよと言ったってすっきりいかぬ、私はこう思っているのです。だから、つまりこの商売相手のフランスにアメリカは大変大きな皮肉を言っているわけですよ。アメリカがもたもた議会に引っ張られている間にフランスがどんどん売り込んでしまう。イランの場合だってそうでしょう。フランスは大きな商談をまとめたじゃないですか。ここらのところをとらえて、拡散防止というけれども一体どうなんだという、もう一つ何かがなければならぬじゃないですか。いかがですか。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その核のフリーハンド論というものは、私はどう考えてみても、わが国の場合実は実体の乏しいものであるという感じがいたしており、いまもそう考えておるわけでございます。  それから、この十条との関連で申しますと、私どもが国会にこの条約について御同意をお願いしているという立場は、いやしくも加盟しようというときに脱退の条項もございますからというようなことを申し上げる、実はそういう気持ちではないのでありまして、加盟をしたらばこれは誠実にこの条約の目的を達成しなければならないという気持ちであるわけでございます。しかし、この条約そのものは、冒頭に申しましたように、大きな目的、本当に核軍縮、世界の平和という目的を達するためのある一部を担う方法を定めた部分であって、大きな努力というものは、核軍縮をどうやって実現するか、核を持っていない国の安全をどうやって保障するかというようなところに向けられなければならないことはもちろんであって、そのことが日本政府の基本的な決心でなければ、この条約そのものを結ぶ、結ばないということは実は大した意味を持ち得なくなる、そういう決心のもとに政府は御同意をお願いしたいと考えているわけでございます。
  66. 大出俊

    大出委員 いまの点は私も同感でございます。つまり、この条約を批准をするその根底にある日本政府の物の考え方、そうしてアメリカなりソビエトなりの物の考え方、これをたたいてみる必要がある。つまり、九十二カ国かそこらふえてまいりましたが、この条約を結ぶことあるいは批准を求めることそれ自体意味はない、どんどん逆に動くんだから。そうではなくて、これを批准する根底にある、日本政府なら日本政府の物の考え方が、どうしても核軍縮を進めるんだ、拡散は防ぐんだ、そうならばそのために一体日本という国は何をするのかというところにぶつかる。何をするのかなしにこれを出したら、まさにあなたがおっしゃるように意味がないことになる。私どもの党の立場があるからそれ以上私は言わないんだけれども。  そこで、一つだけここではっきりしておきたい問題がございます。外務大臣防衛庁長官とお二人に承りたい。  非核原則というものは、これは最近の新聞によりますと、連合審査その他を控えて、朝鮮半島への米軍直接発進、日米安保の問題ですね、あるいは非核原則の問題あるいは非核国の安全保障の問題あるいは不使用宣言提唱を拒否云々とこうありますが、核軍縮の問題あるいは原子力の平和利用の問題、ここいらの詰めが足らぬなんということを新聞に書いてありますが、私はその個々の詰めというよりは、さっきから申し上げておる全体、総合的にとらえなければならぬ。韓国問題一つとらえてもだめです。やはりまず日本がこの条約批准を求めるなら一体何が根底にあるのかということ、国際的にそれをどういうふうに進めるのかということ、そうでなければ意味がない。  そういう意味で、個々に触れていないのでありますけれども、ただ一つだけはっきりしておきたいのは、非核原則前提になっているのは安保条約なんですね。これは私が佐藤元総理に質問をいたしましたときに、言うならば四原則だという言い方をされた。非核原則前提安保条約がある。そこでこの安保条約というものは核と切り離して考えられない。その意味では世上言われる核安保であろう、私はこう思っているわけであります。しかも、その核というのは、戦略核のみならず戦術核を包含しなければ存在価値は全くない。なぜならば、アメリカの核戦略というのは、戦略核と戦術核というのは連動するシステムができておるからであります。そうだとすると、今度はその連動する相手方はどこだと言えば日本の自衛隊だ。  じゃ、日本の自衛隊というのは一体どうなっておるか。例のナイキ訴訟のときにも法廷で細かく質疑がされておりまして、山田昭さんという方がその席上でお答えになっております。三矢図上研究の基礎研究の第四「日米関係の項」というのがあります。これは三矢小委員会で出されている資料であります。これはアメリカの戦術核を使って、当時は北朝鮮を目しまして、「険しき道の竜」という作戦であるとか「雪の中の竜」という作戦、これは初歩的な戦術核を使った作戦。当時はまだこんなにえらくやかましくないですからラフに表に出てきた時代、三十六、七年から七、八年、「険しき道の竜」「雪の中の竜」これは山岳戦を想定している。また北の雪の事態を想定している。それらは全部戦術核を使っての戦闘計画であります。つまり、それらのものを日本の自衛隊がイエスと言って受け入れるのか受け入れないのかという扱いがきわめて詳しく書いてある。振り返ってこれは実は防衛庁から改めてこの資料をお出しいただきたい。つまり三矢研究の基礎研究第四「日米関係の項」この項だけ、これは一体どうなっているかという点、これが一つ。  それから「科学防護操典」これは防衛庁にございます。この防護操典の中に核防護という点がきわめて細かく書かれている。ここに一つ、私はめんどうくさいから資料をいっぱい持ってきませんでしたが、「核防衛に直面する陸上自衛隊秋季大演習を見て」、東京新聞です。いま私は三十六、七年と言いましたが、三十六年十一月十二日、これは核防護の演習をやっている。細かく書いてあります。写真も載っております。ヘリコプターの写真まで全部載っております。これは実は当時余り質問されていない。したがって、核防護教範、「科学防護操典」ですね、この中の核の問題、それから「特殊武器防護」、これは六七年の八月に陸上自衛隊の教範にした。これもいまあればお出しをいただきたい。  それから「野外令」、これは私持っておりますが、念のためにお出しをいただきたいのですが、この野外令の中に「特殊武器防護に対する訓練」というのがあります。  それから一九六五年、統幕会議による「昭和四十年度統合防衛計画の作成のための統合年度戦略見積もり」これ、いまあると思うのですが、お出しをいただきたいのであります。この中に「作戦実施の場合に必要なときには核戦力の支援を得るものとする。」というのが入っております。  それから次に「化学情報資料」第一号、六七年五月十五日、陸上幕僚監部化学課長島田典夫一等陸佐、この方が書いております。自衛隊のCBR、つまり化学、生物、核、この使用を述べている。  それから防衛研修所の所員でございます永野茂門一等陸佐「核戦略に関する一考察」というのがございます。これが六八年三月号の「防衛論集」こういうわけであります。これはだんだん発展していきまして、最後にはアメリカの核防に関する資料を訳しまして取り入れたものまでございます。  この一連の動き、つまり安保条約と申しますものは核安保である、切り離すことはできない。そうだとすると、一番最後には米空軍の「ベーシックドクトリン」これを「四十八年四月二十日から使用を開始する」、航空幕僚長の空将の石川貫之さんですか。つまりここまで深く核とかかわり合っている日本の自衛隊、戦略、戦術両核を除いては自衛隊の戦術は成り立たない、こういう結果になっているわけであります。その日本立場で果たしてアメリカに対して核軍縮と言えるのか。その日本立場アメリカの核について核軍縮と言えるのか。つまり非核原則は独立して存在をしていない。あなた方矛盾しないと言っているが、果たして本当に矛盾をしないのか。非核原則アメリカの核と自衛隊の関係、どうお考えでございますか。
  67. 坂田道太

    坂田国務大臣 わが国は、非核政策をいまの政府はとっておるわけでございますから、そういう研究はかつて昔あったかもしれませんが、現在は核使用についてはございません。詳しくは防衛局長から申し上げます。
  68. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 いま大臣の申し上げましたとおりでございます。資料につきましては、たくさんございますので、よく調査いたしましてから提出できるものは提出いたしたいと思っております。
  69. 大出俊

    大出委員 時間が参りましたから、防衛という観点からの防衛庁とのいまの問題の論議は後に譲りたいと思うのであります。だから資料要求したのであります。  くどいようでございますけれども、いまの核拡散防止条約、先ほど来私申し上げましたように、つまりこの条約義務はあくまでも非保有国に対する拡散を防止するという意味義務づけしかございません。軍縮という意味は、道義的な責任はあるかもしれませんけれども義務づけではありません。そういうことになりますと、非核保有国の安全に対する国際的な責任の負い方ということも明確にはなっておりません。だから、さっきからお答えいただいておりますから、そのところが不平等であったりいろいろなことになっておりますことを十分御承知でお出しになっているわけでありますから、その根底にある批准を求める日本政府の物の考え方というのは一体どこにあって、こういう考えだ、だとすればその理想を実現するためにはじゃどうするんだという、そこらのところが明確でなければ、われわれなかなか決断ができない。たとえば三木さんが、事前協議における核の持ち込みにつきましては三木以後の総理であっても——これは政策ですから、非核原則というのは憲法原理じゃないのですから、政策として変わらない、こういう言い方をされておりますが、政策というものは変わるものであります。そうだとすると、いま一番大事なことは、その根底にある批准を求める政府の物の考え方、かつ日本がこれから国際的にどういう外交政策をとっていくかという具体的な方向、これがなければこれはなかなかうんと言えた筋合いのものではない。だから質問しているわけであります。くどいようでありますが、もう一遍締めくくりに、せっかくお出しになって批准を求めているわけでありますから、数々の疑問を申し上げましたが、一体真の考えはどこにあってこれを批准せよ、賛成せよとおっしゃるのか、日本政府の決意のほどは具体的な方策として何を考えているのかという、ここまで明らかにしていただきたいのであります。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約の位置づけについての大出委員の御所見並びにこの条約の同意を求めるに当たっての政府の持つべき決心についての御意見については、私同感でございます。政府としましては、世界的な核軍縮の推進及び非核保有国の安全を今後とも機会あるごとに力強く叫ぶことによって、この条約の持っている意味を意義あらしめたいと考えております。
  71. 大出俊

    大出委員 終わります。     〔栗原委員長退席、鯨岡委員長代理着席〕
  72. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員長代理 石野久男君。
  73. 石野久男

    ○石野委員 核兵器の不拡散に関する条約に対するわが国の態度、立場、姿勢、そういうものについていま大出委員からお尋ねがありまして、それに対して政府は、この不拡散条約は単に核兵器国の数をふやさないというだけであって、非保有国核兵器国になることをとめておるのだということだけだから、軍縮について、特に米ソの軍縮への努力を政府が積極的にやる、あるいは非保有国の安全を保障するための積極的な努力をするという態度の表明があったと私は理解して質問をしていきたいと思いますが、それは間違いありませんか。
  74. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりでございます。
  75. 石野久男

    ○石野委員 その努力は、いまどういうような形で政府はやっていきますか。
  76. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず、核軍縮につきましては、この条約が生まれまして後、米ソの間に、はなはだ内容は不十分でありますけれども、すでに核軍縮に向かっての数個の取り決めがなされておりますほか、これも不十分ではありますがSALT等の交渉が行われております。先ほども申し上げましたが、これらは米ソの利己的動機に基づくもの、私はそうであっても目的さえよろしければ差し支えないと思いますが、部分が多いとは言うものの、しかしそれだけに遅々としても今後その方向に向かうことが期待できるのではないかと考えますし、また、非保有国の安全につきましては安保理事会の決議を初め、今回の再検討会議においてもわが国を初め各国が非常に主張いたしたところでありまして、今日までのところ、非保有国であるがゆえに核兵器攻撃を受けたという事例は御承知のように起こっておりません。しかしこれについても今後わが国が率先して努力をいたすべきところと考えます。
  77. 石野久男

    ○石野委員 非保有国攻撃を受けた事実はない。そんなことがあったら困ってしまうので、とんでもないことです。ただ問題は、米ソの間の軍拡の競争というものは、この条約ができてから後、漸減の方向でなく漸増の方向に行っているということは先ほどの御答弁でもはっきりしておりますが、そういう問題について具体的に政府は努力をするという意図はありませんか。
  78. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それも先ほど申し上げたところでございますが、まさに軍縮交渉というものはいまあるところから切り下げていくのが本来の姿でございましょうが、米ソいずれとも自国の安全ということを中心考えるために、どちらかと言えば、米国としてはソ連のある程度の追いつきを許すような形、しかし米国自身も全部の面について言えばある程度の天井を上げるということになっておりまして、必ずしもわれわれが期待するほどの進展は今日までございません。しかし方向は、先ほども申しましたが、いろいろな米ソ両側の動機からして、とにかく天井を設けてそれを守っていこうという方向にあることは言えると思います。われわれとしては、これからバランスのとれた形でその天井を下げていってもらいたい。米ソのバランスを無視した努力は、どうも両方から問題がありまして実現がむずかしゅうございますから、一定のバランスのとれた後で、それを小さくしていってもらいたいというふうにわれわれとしては考えておるわけでございます。そういう努力を今後とも続けなければならないというふうに考えておるわけでございます。それは前回も申し上げましたが、主として国連であるとか軍縮委員会であるとか、あるいはこの条約に定める再検討の場であるとかいうところで、わが国が活発にいままで発言もし、行動もしてまいりました。今後もそのつもりでございます。
  79. 石野久男

    ○石野委員 この条約は、いずれにしても米ソが核を保有するという権限を保有する中で、しかも質的、量的な増大ということがどんどんと行われていくということを放任したままで、核非保有国立場を抑えることだけに限られていると思います。大体そういうふうに理解して間違いないと思いますが、大臣、どうですか。
  80. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これも前回申し上げたところでありますけれども、全体の核軍縮、非保有国安全保障というものは、国連総会、軍縮委員会あるいは再検討会議等々で議論せられ、推進せらるべきそういう場がございまして、この条約そのものは、その中において保有国をふやさないための方法論いかんということに重点を置いてこの条約ができておりますので、ただいまの御理解はそれとして私はそのとおりであると思います。
  81. 石野久男

    ○石野委員 それであったならば、この条約に参加するに当たっては、米ソの軍縮を一方で要求する、そして同時に非保有国の核保有をとめる、そういうことが両方相またなければならないというその考え方、いま大出委員もそう言っておりますし、われわれはそういうふうに考えておる。それがなければこの条約は何にも意義を持たない、しかもわが国にとっても何の利益にもならない、このように私は考えるが、大臣、どういうふうに考えますか。
  82. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約は、先ほど申しました全体の大きな目的の中における一つの部分を担っておるのでありますから、大きな目的が失われてしまうということになれば、この条約自身の意味は実際本来の意味を失ってしまうということになりますので、お考えの基本になっておりますことは私はそのとおりであると思います。
  83. 石野久男

    ○石野委員 だとするならば、わが国がこの条約を批准しようとする場合は、一方の、わが国がこれに参加することによって利益を受けるという側面を補強しないままで参加したのでは、国の利益には何にもならない、そういう結論になりますが、どうですか。
  84. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 全体の核軍縮、非保有国安全保障という目的が失われてしまいますと、この条約の持っている意味は大半なくなってしまうわけでございますが、この条約一つの役割りを担っておりますから、保有国の数がふえないということ自身は、全体の目的に奉仕をする一つの役割りであるというふうに考えておるわけでございます。
  85. 石野久男

    ○石野委員 保有国がふえないということ、それはもう現にないのだから。だがしかし、一方では保有国である核兵器国は質的にも量的にもふえていくということ、そのことを全然抑えるということは……。もちろんこれは軍縮じゃないんだからという大臣答弁ではありますけれども、それではこの意味は、条約に参加しても日本という国には何の利益にもならない。その点はどうですか。
  86. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約からそれが出てくるのではなくて、全体の大きな目的として核軍縮、非保有国安全保障というのがあるのでありますが、しかし他方で、この条約が生まれましたがゆえに核軍縮というものが定着化しようとする気配がございます。それは今回の再検討会議でも、米ソがいみじくもおのおの別々に、こういう雰囲気でなければ米ソが話をするということは不可能であったろうと言っておりますことからも明らかであって、それはこの条約が全体の目的に奉仕することの一つの反射作用と思われます。米ソの努力は十分ではないということは前回も申し上げました。しかし、いろいろな理由からそれが徐々ではあるがいい方向に向かっていく徴候はある。われわれもそれをいわゆる道徳的説得力によって推進をいたしたいと考えておるわけでございます。
  87. 石野久男

    ○石野委員 大臣は、この条約ができてから後いい方向に向いているという答弁ですが、率直に言って、米ソの間の核軍備の競争というものは、核競争というものはふえる方向ばかりたどって、漸減しておるという結果は出てないのじゃないですか。どこかいい方向が出ておるのですか。
  88. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前回も申し上げましたが、まずこの条約の誕生以来、米ソ間に核軍縮についての、不十分ではあるが幾つかの取り決めが結ばれ、条約が結ばれ、それはともかく結ばれた限りでは遵守されているということが一つでございます。もう一つは、核軍縮そのものの動きは、米ソ、ことにソ連の場合ですが、米国に対して安全なバランスに到達したと考えるまではなかなかおいそれとはこれは話に乗れないと考えることには、よしあしはともかくとして理解のできることでありますし、米国もそれはそれとして理解をした。したがって、いままでのところは、バランスをお互いにとるまでの間の、どちらかと言えば軍縮でない、いま御指摘のように幾らか高いところへ向かっていった動きがございました。それはそのとおりだと私は思いますけれども、その上でさらに今度はそのバランスを下げていこうというのがわれわれのねらいであります。もし米ソが安易に軍拡をしていくのであったら、先ほども大出委員からお話のありましたSALTに伴うこういう難航等々はこれはあり得ないことであるし、そもそも話し合いもあり得ないことでありますから、そういう難儀をしながらともかく話をしていこう、そういう努力の中にはやはり両方で、これこれはお互いの利己的動議に基づく部門が多いでしょうけれども、しかしそういう方向へ向かおうという兆しがみられる。私はそのこと自身は間違いがないと思います。
  89. 石野久男

    ○石野委員 七四年度も核実験のなにはむしろ従来よりも一層記録を高めるような実績を持っておりますし、それからことしも、まだ年の半分を過ぎておりませんが、米ソともにそれぞれの実験の度合いにおいては昨年を上回るような実態である。こういう実情から見ますと、結局この条約というものはそれを抑えるためには何にも役に立たない。いい方向に他の条約はいろいろ決めたとしても、特に米ソの二核超大国というのはその実質上の競争というものを少しも抑えないということであるならば、わが国にとっては何にも利益、関係はない、こういうふうに見てしかるべきじゃないですか。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは前回もずいぶん私は申し上げたつもりでございますけれども米ソがそういう話し合いをしているということ自身、その結果がいかに不十分であっても、そういう方向が見えるということは申してもいいと私は思いますし、他方で、この条約が全然ないといたしますと、米ソがいかに話し合いをいたしましても、その他の国がどんどん持ってしまうということであったらこれは米ソ話し合いということは意味がなくなるわけでございますから、そういう意味で私は二つのことに連関があると見るわけです。
  91. 石野久男

    ○石野委員 他の国が持ってしまったらということよりも、米ソの間におけるところの核競争というものの方がもっと世界的な脅威である、そういうふうにわれわれは見なければならない。そこのところに対する制約が全然ここからは出てこないことはもう条約が示しているとおりです。もしそれをあえてこの中でわれわれが期待するというならば、米ソが核の移譲はしない。移譲はしないけれども、他国に対して核兵器の装置を配置することはこの条約ではとめてないのですね。ですから、少なくとも核の保有国である米ソが、その管理権は移譲しないけれども、核装置を各国に対してそれぞれ配置することをとめてないということについての制約はどこかでなければならないだろう。そこのところがはっきりとこの条約ではしてないのですよ。だから、米ソともいずれもどこの国へでも、移譲さえしなければ、同意を得れば自分の核を配置することができる。世界的にはむしろ核の恐怖というものが各地にだあっとばらまかれていくという結果が出てくるのではないか。
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これも前回も申し上げましたが、この条約米ソに向かって軍縮をしろということを直接申している条約ではないわけでございます。先ほども申し上げましたように、米ソの軍縮というのは、国連とか軍縮委員会とかあるいは米ソ自身の動機に基づいて進められなければならないし、進められてきております。成果は不十分ですが。そういう背景の中でこの条約が担っておる役割りは、それと同時に核を持つ国をふやさないようにしようではないかという、そういう特定の限られた目的を持っておりますから、この条約米ソに向かって軍縮を言っていないからといって、それはこの条約の本来の役割りではない。  それから配置の問題ですけれども米ソが相手国の意思に反して核兵器を配置できるわけではない、これは明らかだと思います。
  93. 石野久男

    ○石野委員 核兵器の不拡散という問題は、いわゆる核保有国がふえないということである、この条約はそういうふうに言ってある。しかし、世界の各国から、世界の全人民から見れば、核兵器の装置が非常に多くなってしまうことの恐怖が非常に大きい。だから、それは米ソの軍縮の問題とは違いますね。米ソに対する軍縮ということとは違うのでしょう。米ソは管理国としてキーを持っているわけです。だけれども、自分の核を各国へ置くということ、これは軍縮とかなんかとは違うのですよ。そのことに対してはこれは全然制約を加えてない。言うなれば、米ソの核超大国という力を世界の各国に配置することについては、軍縮とは違いますよ。やはり管理国としてのそういう権威を各国にばらまくということについては何ら触れてない。そのことは軍縮とは別個にこの核不拡散の内容に触れてくる問題だ、私はこういうふうに尋ねるのですが、大臣その点どうですか。
  94. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのお尋ねは、軍縮の問題ではなくて、核兵器米ソが管理権を持ったままで他国に配備することについては、この条約は禁止していないではないかと言われますことはそのとおりでございます。そのことの意味は、米ソがいかに何でも自分の受入国の意思に反して核兵器を配備するということは、絶対にないとは言えませんけれども、概して受入国の安全上の希望なり勢力関係から起こることでございますから、そのこと自身をこの条約の対象にはいたしておりませんのはそのとおりでございます。
  95. 石野久男

    ○石野委員 そうしますと、もう一遍尋ねますが、米ソ各国との話し合いができれば核兵器を世界のどこへでもやはり配置する、話し合い、合意によって配置するということはこの条約では認められることですね。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 管理権の移譲さえなければ、この条約はそのことを禁止しておりません。
  97. 石野久男

    ○石野委員 このことは日本人の感情とは非常に相反します。われわれは、核不拡散というこの言葉意味から受け取るものは、いわゆる核兵器とか核装置というようなものができるだけ配置も少なくなるということを意味していると思います。この条約の言う、いわゆる軍縮とは関係がないのだということを別にしましても、われわれはその核配置が世界の各国に広がらないことを望んでおる。そういう意味で、この核不拡散ということにはその側面からは同意ができるのです。ところが、米ソ各国との間に同意を得ればもちろんのこと、場合によれば力によって配置してもそれをとめることができないわけです。しないわけです。そういうことにおいて、この核不拡散意味するものが日本人の感情、特に原爆を受けた日本人の立場からすれば、その感情にはそぐわないものであるというふうに私は申し上げるのですが、大臣、どうですか。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは私はお間違いではないと思います。原爆を受けたわが国立場から言えば、あっちこっち配置してくれるのは困るのみならず、そもそも核保有国というようなものがあってもらっては困るわけでございますから。それをこの条約がともかく一九六七年の段階で仕分けをして認めているわけでございます。そういう意味で短絡して申せば、もともとこういう条約そのものはわが国の本来的な願いから言えばはなはだ距離のあるものである。それはおっしゃるとおりだと私は思います。思いますけれども各国わが国と同じ体験をしたわけではありませんから、核をきょうやめようという決心にはなかなかならない。それを時間をかけてでも持っていく方法はどうだというのが、お互いが苦労をしておることであろうと思うのでございます。管理権を持ったままなら何で配備することを禁じていないかと言えば、それはNATOにおきましてもワルシャワ体制におきましても、現実にそのような核を自分の国に配備をしてほしいと考えている国がございますから、米ソとも配備をしておる。実は力によって配備しておるところがあるかもしれませんが、そういう世界の現実というものがある。わが国はもうそういうことを受け付けませんから、わが国の問題はございませんけれども、そういう世界のこの現実というものは、まだまだお互いに核の危険というものを感じている国が多いので、自分の国に配備されることが安全であると考えている国が数多くある、そういう現実がございますから、条約だけでそれを禁止しようということは無理であって、やはり核軍縮というものが進む形で、そういう状態がなくなっていくことをわれわれは庶幾すべきではないかと思うわけでございます。
  99. 石野久男

    ○石野委員 政府がこの核兵器の不拡散に関する条約に批准を与えることを議会に要求するに当たって、私はいまの点についての政府の態度というものを明確にしておいてもらいたい。日本は世界でも、どこでも受けたことのない原爆の被害を受けている。だからわれわれは、どんなことがあっても核戦争は反対だし、核兵器を持つことにも反対だ、世界のどの国もそれを持ってはいけない、人類のためによくないのだということを言える唯一の国なんだ。いまこの不拡散条約に、批准をし加盟していくという形になる場合に、このわれわれの世界における唯一の権利というものを放棄して入ってはならない。同時にまた、われわれは、放棄してはならないだけでなくて、世界にそのことを要求するということ、それを要求し通せるという見通しがない限り、入っても意味がないではないかという私の考え方があると言うのです。これは大臣は、私が入っても意義がないのではないかということを言うと、日本は核を持とうとするのか、こういうような反論がすぐあります。そうじゃない。われわれは核を持たない、絶対に持たない、けれども、核を持っている国に対してはそれを認めてかかっていく、こういう状態を否定していこう。否定していこうという場合に、この中に入ってそれをやれる自信があるか。大臣はその自信ありますか。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 承っておりますと、この条約によって、一九六七年現在核兵器を所有している国を核兵器保有国とこの条約は認めておるわけでございます。石野委員の御指摘はおそらく、われわれはそういう状態をもともと認めることができない、この条約によって、少なくともそういう認識の問題として核兵器保有国がある、一九六七年の段階でそれらを核兵器保有国と定義した上でこの条約はいろいろなことを考えているのであるから、本来認められないものを認めるという立場に立つ条約は、これは承認することができないという御発想であろうと思うのです。私はそのことはわからないわけではございませんけれども、今日現実に核兵器を持っている幾つかの国があるという状態を、われわれの被爆国としての理念に基づいてどのように直していくかという方法論として、この条約を御同意をいただきたい、こういうふうに申し上げるわけでございます。
  101. 石野久男

    ○石野委員 その場合、私が先ほど申しましたように、核兵器国が他国との同感の上で、あるいはまた力の関係で、世界のいずれの国にも核兵器あるいは装備の装置をするというようなことを許すというようなことでは日本人の心情に合わない。そのことをこの条約に入るに当たって何らかの形で実現することを保障する、その担保がどこかにないと、日本人としてはこれに入っても利益を得るというものは何にもないじゃないか、この条約に加盟しても何にも利益が得られないじゃないかという、私の考え方に対してはどうですか。——日本人ですよ。
  102. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 たとえば、石野委員の言われておりますようなことは、具体的に、ラテンアメリカの国がわれわれの地域には核を一切置かせまいという条約を結んだわけであります。結んだにもかかわらず、核兵器保有国の一国がそれについて署名をがえんじなかったということによって、結局あの条約は今日働いていないわけでございます。そういう世界の現実があるわけでございます。残念ながらあるということは考えなければならない。それをわれわれは改めたいと思うわけです。日本がこの条約に入らないことによって失うものはない、入ることによって得るものはないと仰せられるわけですが、この条約は、一国でも核兵器を持つ国をふやすまいという条約でございますから、その理念にわれわれは賛成するのか、しないのか。日本が持たないことは当然でありますが、世界全体、なるべく多くの国が自分は核兵器を持ちませんという約束をすることが、核軍縮にあるいは世界の平和に役立つものなのか、そうでないのかという、その判断にかかるというふうに私は思います。
  103. 石野久男

    ○石野委員 この第九条の第三項に、いわゆる核兵器国というものがこの条約によって規定されておりますね。その現実は私もこのとおりだと思います。しかし、この条約はこの諸国の、特に米ソのいわゆる核超大国という立場を守るということには実に大きな役割りを果たします。だから、そういうような立場に対して被爆国としての日本が、この核兵器国の現状というもの、持っている力というものに対して、これを否定してかかるという態度がどこかに出てこなければ、こんなものに入っても意味がないじゃないかという私の一つ意見。  それから、もしこれに入って利益をするというのならば、どういうことがあるのだ。この前私は一度聞きましたら、核爆発平和利用の問題で、ということがございました。この平和利用の問題でも、たとえば核爆発を、鉱脈を爆破するとかあるいは運河をつくるためにこうするとか、そういう核爆発平和利用、そういうようなことは率直に申しまして、事実問題としてとてもいま日本考え得られないだろうと思うのです。何かほかに、われわれがこの条約に入ることによって利益する問題はあるのか。いま大臣の言われたことはよくわかりますよ。その点はわかるけれども、私はそれを理解しないのですよ。あなたの言われたようなことはわかるけれども、しかしそれはとても理解しませんよ。日本にはそんなことでは何にも利益は得られないのだ。そんなのだったら、ほかに何も利益がなかったらこの条約に入ったって意味がないじゃないかと言うのだ。何かほかに利益がありますか、これは。
  104. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 この条約に署名する際、したがっていまから五年前でございますが、いまの問題が大変ポイントでございまして、平和利用の点からいたしますと、それまでは二国間協定で——いま五カ国でございますか六カ国でございますか、それぞれ二国間条約を結びまして、核燃料あるいはその他の施設等の供与を受けておるわけですけれども、それに伴いまして必ず二国間条約には、それが軍事面に転用されないという保障を確実にするために査察をいたしますぞ、その査察は国連機関にこれを委託しましょう、こういう規定に実はなっておるのでございます。これは石野さんも御承知のとおりであります。  ところが、その二国間協定に基づいて委任いたしましたこの査察は、言葉が過ぎるかもしれませんが、実は大変過酷なものでございまして、依頼されたその任務を忠実に守るために、査察の主体はもちろん国連機関で持ちますし、あるいは機密の保持あるいは査察の頻度あるいは内容、立ち入りの個所等を当時のままで、したがってこの核拡散防止条約に基づく査察でなしに、二国間条約に基づく従来の査察でやってまいりますと、日本の原子力開発、平和的な開発というものはほとんどできない、非常なディスターブを受けるという大変な危惧を実は持ちまして、幸い、もしこの条約に調印をするならば、査察協定——保障協定と言っていますけれども、その協定を改定するその作業にわが国も参加できるということになっておりましたので、それではその作業に参加をし、発言権を持って、そしてわが国の今後の平和開発のしいいようにわが国立場をひとつはっきりしようじゃないかというので実は調印したのが、全部じゃございませんけれども、非常に大きい理由になっておることは事実でございます。  したがいまして、その後五回、五次にわたりましてこの保障協定締結と申しますか、あるいは作業のためにわが国からも参加し、またあるいは国連の機関にわが国の技術者がそれぞれ入り込んで、部長あるいはそれぞれの要路に入りまして、そうして全くもう各国の一員として、作業にわが国の主張を通したわけでございます。それは、今度できましたNPTに基づく査察条項に明瞭に出ておりまして、あるいはもう一つの条項の、少なくともユーラトムと同じ条件にしてもらいたいというその主張の結果が、大変わが国の主張どおりほとんど認められまして、この条件であれば査察を受けましてもわが国の平和開発上差し支えなかろう、こういうことが非常に大きい理由の一つでございます。  それから第二点は、核燃料の確保の問題でございまして、二国間協定に基づきましてそれぞれ核燃料の手当ては一生懸命やっております。したがって、ほぼ六十年くらいまでの核燃料は、天然ウランといわず濃縮ウランといわず確保してございますけれども、それ以降は一体どうなるかと申しますと、非常に不確定でございまして、それに対しましては、この条約のレビューのときの状況を石町さんも御存じかと思いますけれども、特に米国、あるいは天然ウランを供給しておりますカナダ、豪州等では、この条約に加盟しないと、逆に言いますと加盟している国は優先しようじゃないかという、はっきりした明言はしませんけれども、それに該当するような強力な発言をしていることは明瞭でございまして、順次こういう方向に向かっていくのじゃなかろうかと私は思いますので、将来核燃料を確保するという長期にわたる展望からいたしますと、この条約に加盟したことはわが国の原子力の平和利用開発する意味においては大変益するものだ。こういう二点から考えまして、少なくとも平和利用の面から見ますとこの条約加盟というものは非常に重要な意義を持ちますし、ぜひひとつ批准をお願いしたいというふうに実は考えておる次第でございます。
  105. 石野久男

    ○石野委員 この条約は、一方で二超大国の核の権限を保持しながら、一方ではいろいろと非保有国に対しては制約を加えていきますが、特に核兵器の不拡散ということから日本がアジアの諸情勢、特に日米安保のもとで核の問題について非常に神経質になるまでにわれわれはこれに反対しておる。政府はこのことについては、いかなる場合でも核は持ち込まないということを言っております。けれども、私は、この保障措置の中でこういう事態が出てきた場合はどうなんであるかということをひとつお聞きしておきたいのです。  保障措置の方の九十七条には、「国際的な移転の間に異常な出来事又は状態が生じたことにより、核物質の損失があり又はあり得ると認める場合」こういうようなことが日本政府としては第六十八条に規定する「特別報告」を行わなければならぬ、こう書いてある。  防衛庁長官にお尋ねしておきますが、いま安保条約のもとでアメリカが、日本に、たとえば核装備をしておるところの飛行機あるいは艦船、あるいは日本における駈とん部隊、駐留部隊、こういうものには核装備はないということを言い切っておるのです。言い切っておりますが、もしこの九十七条におけるところの特別報告をしなくちゃならないような事態が出る。これは「異常な出来事又は状態が生じたこと」、この異常な状態とかあるいは出来事というのはどういうことを意味しているのか。これは外務大臣かどちらでもよろしいのですが、この保障措置の中にある「異常な出来事」ということは、そして「核物質の損失」この九十七条の意味はどういうことなのか。
  106. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 「異常な出来事又は状態が生じた」場合と申しますのは、その後に書いてございますように、核物質の紛失等が予想されるような事態を言うものと考えております。一般的に「異常」と言っておりまして、具体的にどういうケースか書いてございませんけれども、紛失があり得るような状況というふうに考えております。
  107. 石野久男

    ○石野委員 予想される異常な状態というのは、一つにはやはり盗難の問題がありましょう。しかしそれ以外には、たとえば戦争とかなんかによって破壊され紛失するというような場合がある。それから天災地変の場合がありましょう。仮に、たとえば地震とかあるいは津波だとか風水害がある。そして日本に来ておるところのアメリカのポラリス潜水艦とかあるいはその他の飛行機あるいは陸上装置の中で、いまわれわれはアメリカは持ち込んでいないということを信じておりますが、しかし異常な事態のもとで、仮にそういう核があって、そしてどうにも処置のしにくいような状態が出てくる。たとえば軍艦がいろいろなことによって座礁するとか、あるいは津波のために上に上がってしまってどうにも動きがとれなくなってくるとか、こういうような事態が出てきたときに、そういう核が現実にある、そのときに日本政府がこの特別報告を書く責任というのはどういうふうになってくるのですか。これは大臣、もし核があったらどうなるのですか。
  108. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 まず、この保障措置の関係で申し上げますと、保障措置の対象になっております核物質はまず平和利用に限られております。平和的な原子力活動ということに限られておる点がまず第一でございます。しかしながら、平和的な原子力活動でございましても、御指摘のように核物質の盗難なりあるいは飛散なり紛失なりというような異常な事態が起きました場合には、この保障措置協定の関係では特別な事態が起きたものとして特別な報告をし、その紛失の状態についての検認活動が行われるということになります。なお、この保障措置協定以外の場合に、保障措置協定と直接のかかわり合いはございませんけれども、安全性の確保等に関しては別途の安全規制体制でこれは応じなければならないだろうというふうに考えます。     〔鯨岡委員長代理退席、水野委員長代理着席〕
  109. 石野久男

    ○石野委員 この九十七条による物質というのは保障措置において平和利用だということですが、核不拡散条約に加盟するに当たって、われわれはやはり日本における核の問題として、これを見る場合見ていく。そして、そういうようなアメリカの軍が持ち込んでおる核が仮に、われわれは持ち込んでいないということを信じ込まされておるけれども、九十七条が想定するような「異常な出来事」等によって核物質——これは兵器だって何だって物質ですからね、核物質でしょう。そういうものが、そこにどうしても特別報告の内容として書かなくちゃならないような事態が出たときには、どこが責任をとるのかということをぼくは聞いている。そのとき、アメリカですか、日本ですか、どちらなんですか。
  110. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  IAEAの保障措置を受けますのは、もちろん平和目的に使用している日本政府の管轄下にある核物質でございまして、したがいまして、非常に仮定の問題でございますが、御指摘のような場合にはこの第九十七条で日本政府が持っている核物質ということには該当いたしませんので、第六十八条に規定する特別報告も、これは日本政府がこの第六十八条に基づいて報告しなければならないという問題ではございません。
  111. 石野久男

    ○石野委員 科学技術庁長官にお尋ねしますけれども、燃料の長期にわたる確保がこの条約を結ぶことによって保障される、こういうお話ですが、日本では、核燃料を長期にわたって確保するという保障を受ける前に、原子炉がどのようにこれから有用に働くのかどうかという問題が一つあると思うのです。最近また玄海におけるところの故障があった、それから福島におけるところの炉の故障がある、こういうような実態から非常にわれわれとしては、燃料を幾ら確保したって炉が使えなければどうにもならぬじゃないかというふうに考えるのですが、現在のところ、炉の稼働の実情というものはどういう状態にあるか。そしてまた玄海とかあるいは福島の炉の故障という問題はどういうふうになっているのか、この際説明してもらいたい。
  112. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 まず前段の、この条約に加盟いたしますと燃料は長期にわたって保障されますというふうに私申し上げないのでありまして、この条約いかんにかかわらず、今後十カ年の燃料の所要量は、濃縮ウランといわず天然ウランといわず、手当てはしてあります。しかしそれ以降の問題に関してはまだペンディングの問題になっておりまして、少なくともこの条約のレビュー会議の際に、先ほど申しましたように、この燃料供給に最も関連の深い国々の発言の中には、この条約に加盟しない国には差をつけようじゃないか、あるいはこの条約に加盟しておる国を優先的に扱おうじゃないかという発言が非常に強うございまするので、わが国の燃料確保上、長期に見ますと、この条約に入っていると入ってないということによりまして、その安心度、不安度というものが大変違ってくるのではないかということを申し上げたのでありまして、この条約に加盟すれば必要な分は全部保障されますというふうには実は思っておりません。  それから二番目の、わが国原子力発電所がいま操業度がどうなっているかという問題でございますが、これは各炉によって違いますので、担当官の方から御説明申し上げたいと存じます。
  113. 生田豊朗

    ○生田政府委員 現在の原子力発電所の操業の状況でございますけれども、炉の型式別に申し上げますと、日本原子力発電所のコールダーホール炉、これが運転中でございます。沸騰水型の炉につきましては、日本原子力発電の敦賀発電所、それから東京電力の福島の第一発電所の一号、同じく二号、この三基がただいま定期点検中でございまして、停止しております。中国電力の島根の発電所は運転しております。そのほか東京電力の福島の第一発電所の三号、それから中部電力の浜岡の一号、この二つが試運転中でございます。加圧水型のものにつきましては、関西電力の美浜の一号が、先生御承知のSG細管の問題によりましてただいま停止点検中でございます。それから二号は定期点検中でございます。高浜の一号は現在運転いたしております。同じく試運転中のものといたしまして、高浜の二号、これはただいま停止して機器の点検をいたしております。玄海の一号、これはただいま御質問もございましたSGからの漏れが発見されましたので、ただいま停止いたしまして点検修理いたしております。玄海一号につきましてはただいま申し上げたとおりでございます。福島第一発電所の二号炉につきましては、燃料集合体のチャンネルボックスの損傷が定期点検中に発見されましたので、現在対応策を検討中でございます。
  114. 石野久男

    ○石野委員 不拡散条約に加盟することによって燃料の問題は、別に長期安定の確保ということではなくて、安心度が出るんだということでございますれば、この不拡散条約に加盟していなくとも、現状やはり燃料は炉に対して保障されているし、これから後、この条約に加盟することによってそれほど明確に安定的な確保というものを保障されないとすれば、別段この不拡散条約によって燃料面におけるところの利益というようなものはそう大きく期待せぬでもいいではないか。もう炉さえ買ってあれば、そしてまた現に加盟していなくても炉はどんどん売っておるし、またそれをとめる方向もないということになりますと、率直に言ってこの不拡散条約に加盟することによって得られる利益というのは、日本にはそれほど利益はない。世界的に言っても、軍縮に若干の拍車をかけるような方向があるように外務大臣は説明はなさるけれども、率直に言って米ソ大国は軍拡をどんどんやっておるんだということになりますと、期待感は持ったとしても実効果は全然出てこないので、やはりここでは、日本がこれに加盟するということになると、どうしたって軍縮というものに対する積極的な提案か何かをひっ提げて入り込んでいかなければいけないんじゃないかということにもなってくるし、それから非保有国におけるところの安全の問題についての提案をしっかりと政府がしていくというようなはっきりした約束がないといけない。先ほどは努力目標のような形での同意の御返事は大胆からありましたけれども、私は、やはりこれに入るのにはそういうようなものを片方にひっ提げながら、そういう意味においてこの条約の実効果をあらしめるようにしていかなければいけない、このように考えます。そういう点で、それらのことがもし十分でないままにこれへ入るというようなことであっては、何の意味もないのじゃないかという結論にしかなってこないのですね。大臣はそういう意味では、軍縮の方面と、それから非保有国に対する安全確保ということについての国際的なコンセンサスが得られるような努力を日本が積極的にするという、そういう条件を具体的にこれにつけるということでないと意味がないと考える私ども考え方については、どのようなお考えであるか。
  115. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 外務大臣のお答えの前に、さっきに関連した事項もございますので一言御説明申し上げますが、もし加盟しない、したがって日本は核に対する選択権を持っているというふうな疑いを各国で持っておった場合、当然査察はいまの二国間協定に基づいた過酷な査察になるわけでございまして、しかもその上に疑いを持って査察をするということになりますと、従来以上にシビアなものになるのではなかろうかと私は思います。これが大変どうも日本平和利用にディスターブするわけでございまして、まずこの点が改善されることが一番平和利用の面から申しますと大きいねらいになると私は思います。  それから燃料面も、いよいよ各国で原子力時代に入って、八〇年代等に入って、そして日本は不足したという場合に、日本があわててどうと申しましてもこれはなかなかいけませんので、いまから安心して確保できるような道を開いていく。もちろん、条約に加盟したからすぐ義務的に供給を受けるというものではないですけれども、しかし、わが国の今後の核燃料獲得の努力さえよろしければこれはギャランティーされるわけでございますから、そういう意味におきまして大変有利になるのではないか、私はこういうふうに考えます。
  116. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、この条約は、核軍縮への努力と非核保有国安全保障というものとセットになりまして初めて大きな意味を持つのでありまして、この条約自身にそのことが書いてないからといってそういう他の重要な要素、あるいはむしろそれが基本的な目的でございますが、それについてわが国政府が努力を怠るというようなことがあってはもとよりならないわけであります。先ほど大出委員にも申し上げましたように、政府各国と語らってそのような努力をすることの一環としてこの条約を結ぶ、加盟をする意味があるというふうに考えておるわけでございます。
  117. 石野久男

    ○石野委員 最後に一問だけ。  大臣、もう一遍お聞きしておきますが、やはりこの条約に入るについては、これは軍縮とは違ういわゆるこの条約の内容として、核保有国である米ソが他国に対して核装置をするということ、これをどこかで抑える、もういまよりも多くしない、仮に同意があっても何しても、そこのところを——核兵器国はふやさないということはこれは決めているのですが、その核兵器国各国に対して配置を幾らでもやれるのだというようなことを許してはいけない。これは日本人としての心情でもあるし、日本政府がこれに入るときには、少なくとも核保有国である兵器国が配置、配備を絶対にふやさない、こういうことをこれはぜひ条件としてこの中へ、どこかで歯どめをすべきじゃないか。これは軍縮とは違いますよ。そこのところをこの条約の中でどこかで歯どめをする必要があるのではないか。それをしなければ、結局米ソの核に対する専横がとめどなく広がっていく、私はこういうふうに見ますから。一方では非保有国が核保有国にならないということの制約はあるけれども、核保有国としての兵器国が幾らでも配置を広げるということを抑えることはできないということについては、これは許されない。軍縮とは別個に、この条約の内容の中でその問題が出てくるという疑義を私は持っておる。それはどうしても解明してもらわなければならぬと思うが、その点は大臣はどう思うか。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は先ほども申し上げたとおりでございますが、この条約そのもの、つまり自分の国は核兵器保有国にならないということは、各国に対して、本来ならば主権のもとに自由である行為について、それをお互いに制限しようという、こういう条約でございます。それで、各国はそれが国益と考えました場合にこの条約に加盟をいたしておるわけでありまして、わが国もそう考えますから加盟をいたしたいと考えておるわけです。  しかるところ、今度は、その核兵器の配備を自国内に認めるか認めないかということも、同じくおのおのの国の主権にかかわることであります。したがってそれらの国が、認めないことが自分の国の利益である、国益であると考えるに至れば、わが国のようにおのずからそういうことになるわけでございまして、それは条約を結んだからそうなるというわけのものではない。そのように各国考える条件が熟してきますと、おのずからそういう取り決めができ得るということでございますので、やはり核軍縮が進み、世界の平和が進んで、各国が自分の国には核兵器を置くことは国益でない、こう考え状態をつくり出すということが、石野委員のねらっておられるところに合致するのではないかと私は思うわけでございます。
  119. 石野久男

    ○石野委員 もう一問、いいですか。ちょっとだけ。
  120. 水野清

    ○水野委員長代理 なるべくひとつ時間内でお願いをしたいのですが……。
  121. 石野久男

    ○石野委員 それでは大臣、その点について私は率直にいまのような形で言うと、各国の主権の存するところであるということで、もうどうにも発言はできないのだという答弁なんですね、いまの外務大臣答弁は。だけれども、私はやはり、日本が被爆国であるという立場から、そういうことを核兵器国に対してもさせるべきでない。それからまた、非保有国が核を保有しようということについても、その国の自由だからといってそれを許してはいけない。それがこの核兵器国をふやさないという不拡散の理由であろう、こういうように思いますから、だから私は、やはり政府は少なくともそのことを積極的に発言をするという、そのことを明確にすることがこれの条約に入る最大のメリットであろう、私はそう思う。そういうことで、大臣に対してやはりその覚悟を持っておいてもらう必要があるし、また、そういう行為を政府がしてもらいたいということを先ほどから言っておるのですから、大臣はそのことについて、もう一遍、考え方だけを言ってください。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 各国が、自国に核兵器の配備を受けるということがおのおのの国益につながらないと考えるような状態をつくり出すことが大事であって、わが国はそういうことを率先していたしておるわけでございますから、そのような平和状態をつくり出すために努力をいたすべきものというふうに考えます。
  123. 水野清

    ○水野委員長代理 中路雅弘君。
  124. 中路雅弘

    ○中路委員 最初に外務大臣に端的にお聞きしたいのですが、この核拡散防止条約ですね、正確に言えば核兵器の不拡散に関する条約、この性格といいますか、条約そのものの中身は、端的に言えば、新たに核保有国をつくり出さないという名目でいままでの既存の核保有国の核独占体制を維持する、そして同時に、他国への核の持ち込み、これは事実上禁止をされない、野放しであって、核を持たない国の安全保障ということで核のかさに入れるという条約体制である。この条約そのものの中身は、核の軍縮やあるいは核兵器の禁止、そういった問題に直接役立たないという、条約の中身そのものは私が言いました性格を持った条約だということは間違いありませんか。
  125. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 問題は、そのような条約がどうしてあらわれたかということを大きな関連考えなければならないと思います。すなわち、核兵器を保有している国々がそのことに行き詰まりを感じ始めている、そうして何とかして、自分の利己的な動機からもある程度の話し合いをして軍縮に向かわなければならないのではないだろうかという機運の出ましたところで、保有国をふやすまいという、こういう努力がそういう大きな背景の中で生まれてきているというふうに考えるわけでございます。     〔水野委員長代理退席、栗原委員長着席〕
  126. 中路雅弘

    ○中路委員 私が聞いていますのは、もう一度この条約の中身ですね、いま背景のお話がありましたけれども条約の中身そのものはそういう中身じゃないかということをお尋ねしておるわけです。
  127. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約核兵器保有国の独占体制を強化するためのものであるという御指摘でありましたら、私はそうは思いませんで、そういうような独占体制、現実にそれはあること、少なくとも二大国が優越しているという情勢そのものが、米ソともに行き詰まりを感じておって、どうかしなければならぬと考えておることとの関連でこの条約がある。この条約はその中の一つの役割りを担って、保有国をふやさないということにこの条約の重点はしぼられておりますけれども、それは先ほど申しましたようなこととの関連において読まれ、理解されなければこの条約の本来の意義は理解し得ないだろうと思います。
  128. 中路雅弘

    ○中路委員 条約の一条、二条の中身は、私がお話ししましたように、新たな核保有国をつくり出さない、核保有国のいまの体制を維持していくということがこの条約の条文の主要な中身であるということを端的にお伺いしているので、その点については、一条、二条の条文はそういう中身の条約だということは間違いないかということでお聞きしているわけです。
  129. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一条、二条はこの条約の前文との関連において、これは各条ともそうでございますが、理解されるべきものであると思います。
  130. 中路雅弘

    ○中路委員 防衛庁長官にお聞きしたいのですが、いまのこの拡散防止条約の批准、加盟といいますか、これについて防衛当局は、日本の国防体制という観点からこの批准の場合にどういう影響があるのか、関係があるのかということについてお伺いしたいと思います。
  131. 坂田道太

    坂田国務大臣 わが国憲法の制約がございますので、自衛のために必要な最小限度の防衛力を持つということ、そしてまた、核の抑止につきましては、核を持ちませんので、日米安保条約によってその抑止の働きをお願いする、こういうことで日本の安全というものが確保されるというたてまえになっておるわけでございまして、この核兵器拡散条約締約国になるか否かがわが国安全保障に大きな影響を及ぼすというふうには考えておりません。しかしながら、核戦争勃発の危険を少なくするような条約でもございますし、また、軍縮の推進とかあるいは平和の確保に対しまして、少しでもこれを可能ならしめる状況をつくっていこうということでございますし、私は、やはり国際関係の安定化につながるし、安全保障の強化に資することができるというふうに考えております。また、原子力の平和利用につきましても、やはりそれだけの意味があるものであるというふうに思っております。
  132. 中路雅弘

    ○中路委員 先ほどお聞きしますように、この条約そのものは、いま長官が言われた平和やあるいは軍縮の問題、直接はそのものを条約で取り上げているわけじゃないわけですね。それに直接役立つという問題ではない。いま長官はその問題をおっしゃいましたけれども条約そのものは決してそれと直接関係はないわけです。日本は、核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませずという非核原則を持っているわけですが、いわゆるこの精神は、戦争の手段として核を一切使わない、こういう精神だろうと私は思うのですが、長官のお考えはどうですか。
  133. 坂田道太

    坂田国務大臣 とにかく、わが国といたしましては被爆を受けました最初の国でございますし、そのような国民感情がございますので、わが三木内閣といたしましても政策として非核政策をとっておるわけでございます。そういう意味合いにおきまして、わが国には核を持ち込まない、つくらないということ、したがいまして、わが自衛のために必要な自衛隊の存在というものは、核を使用して防勢作戦もとらないということでございます。
  134. 中路雅弘

    ○中路委員 いまのこの非核原則から見て、この核防条約が核保有国による非核保有国への核の持ち込み、配備、そういったものについては制約を何も課していない。もっぱら管理権の移譲だけを禁じているわけですが、核の海外の配備や持ち込みについて全く制約を課していないわけですね。  三十年前に広島に原爆が落とされた八月、その時期には世界でアメリカの持っている二発の原爆、核兵器しか存在しなかったわけですが、現在、推定で、全体の核保有国が蓄積している核兵器の総量というのは、ほぼこの広島に落とされた原爆に比べてどのぐらいの量になるのか、おわかりになりますか。
  135. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 はっきりした数字を持っておりませんので、大体数万倍になるのではなかろうかということでございます。
  136. 中路雅弘

    ○中路委員 数万倍というんじゃないですね。きょうの新聞にも出ていましたが、アメリカの議会での聴聞会の発言の中で、証言の中で出ておりますが、これはアメリカだけですが、アメリカ核兵器の全貯蔵量だけでも広島型原爆の六十一万五千三百八十五発分に相当するというふうに言われていますし、科学者の大体推計ですと、これはある雑誌に出ていましたが、全核保有国に蓄積されている核兵器の総量は、同じく広島型の落とされた原爆の二百万個分に相当すると言われているというふうに書かれているのもあります。この三十年の期間にこれだけの、いわゆる核の文字どおり軍備の競争が繰り返されて、繰り広げられてきたわけですし、またそれで戦術核兵器が海外に配備をされておる。いわゆるアメリカの核のかさのもとにある同盟国あるいは従属国に入れられている、この海外に配備されているアメリカの戦術核兵器がヨーロッパあるいはアジアでどのくらい配備されているか、これはおわかりになりますか。
  137. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 アメリカが公表しておりますのは、NATOの約七千個の戦術核でございまして、その他の地域についてははっきりした数字は出ておりません。
  138. 中路雅弘

    ○中路委員 ヨーロッパではいまおっしゃったように七千発と言われていますし、報道ですとアジアで三千五百発に達しているということも言われているわけです。このように、核保有国による非核保有国への核の持ち込みや配備ということは何ら制約されてないだけではなくて、いわゆる広島型の二百万個分という膨大な量がいま蓄積をされているというのが現実だと思いますし、また一方で非核保有国安全保障ということがいろいろ云云されながら、核保有国非核保有国に対して核攻撃を行うということさえ禁止はされていない。この条約の中ではこういうことについても禁止されていない。特に最近はこういう問題についての発言がしばしば出されているわけです。たとえばシュレジンジャー国防長官が最近もヨーロッパ戦略に関する米議会での報告書の中で、通常戦力の相手に対しても必要な場合は核兵器を先制使用することもあり得る、これはニューヨークタイムズの五月三十一日にも出ていますし、南朝鮮に駐留の米軍当局が、朝鮮で戦争が発生した場合にアメリカは戦術核兵器の使用を考えることになろうということも言明をしているわけです。あるいはこの五月のジュネーブでの核防条約の再検討会議の席上で、メキシコを初めとした非同盟諸国十八カ国ですか、グループが、核保有国は最初に核兵器を使用しない、領土内に核兵器を置いていない国には核兵器を使用したり核兵器による脅迫をしないということを核防条約の付属議定書にすることを求めたわけですが、これに対してもアメリカその他核保有国は反対しておるというのが現実でありますから、この核防条約体制の中では、いわゆる核兵器が、これは名前は不拡散条約ですけれども核兵器そのものはどんどん拡散されている。配備をされ、持ち込みをされ、拡散をされているわけですし、また、核保有国による非核保有国への核攻撃も禁じられていない。核の禁止とは全く逆行する現状がこの面では進行している。確かに核保有国はふやさない、そして管理権は与えないわけですが、核を持っている国本位で核拡散をどんどんやっていくという条約体制になっているのじゃないか。現実はそういうふうに進行しておると私は思うのですが、この点についてどういうふうにお考えですか。
  139. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約は、世界的な核軍縮への呼びかけ、非保有国安全保障というものといわばセットになって、そのうちの核を持つ国をふやすまいという部分に主たる部分が置かれて、この条約の主たるねらいが置かれておりますから、その前者二つについてはこの条約が多く言及することがありませんことは先ほども申し上げたとおりでございます。したがって、核軍縮についての運動あるいは非核保有国安全保障につきましては、おのおの別個な場で、むしろそれが最終的な目的でございますから、議論をされ、主張をされておるということでございます。
  140. 中路雅弘

    ○中路委員 私は、この条約体制の中では、いわゆる核保有国が核を持たない国の安全保障という名目で核のかさに依存する、それに引き込むという体制なわけですから、日本の場合に、いまでも安保条約のもとで核の抑止力に依存する、核のかさに入っているわけですが、この批准の中で、いまでも持ち込みや通過、そういった問題で疑惑のある段階で核防条約に入った場合、一層この核のかさに強く縛りつけられていくというふうになるのが現状ではないかというふうに考えるわけで、被爆国である日本国民が望んでいる核兵器の全面禁止の願い、こういう方向から見れば全くそういう願いを踏みにじるといいますか、逆に一層、名前とは正反対に核の拡散が現実には拡大されていくというふうに考えるわけです。  具体的な問題で私これからお聞きしていきたいのですが、これは防衛庁長官にお聞きしますが、先日委員会の答弁の中でもありましたが、これは防衛局長答弁で、有事の際の自衛隊の行動範囲、これは領海、領空ばかりでなく、わが国防衛に必要な限度内というのがついていますが、公海、公空に及ぶという答弁をされています。またこの延長線上の問題として、日米安保条約の五条に基づく武力攻撃に対する措置、いわゆる日米の共同措置、共同作戦、共同行動も、わが国防衛に必要な限度内で公海、公空に及ぶという発言をされているわけですが、いままで国会での答弁は、六十年の安保以来、政府答弁は、日本の場合に、日米安保条約第五条に基づく共同行動は領域外に出ることはない。これは六〇年の安保国会での岸総理の答弁にもありますが、領域外に出ることはないんだということがいままでの答弁であったわけですが、この自衛の限度内、わが国防衛の限度内で共同行動が公海、公空に及ぶというのは、解釈はいつから変わったのですか。
  141. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 わが国が自衛のために必要な場合において、その限度内におきまして、領海、領空にとどまるものではなくて、公海、公空にも及び得るということにつきましては、かねがねずっと国会の答弁で申し上げておるとおりでございます。  そこで、安保五条に基づく日米の共同行動の場合でございますが、この場合におきましても、わが国としてはあくまでも個別的自衛権に基づいて行動するということでございまして、その考え方は、わが国が独自で、単独で自衛の行動をやります場合と同じ考え方でやるということを申し上げたわけでございます。
  142. 中路雅弘

    ○中路委員 私がお聞きしているのは、それが公海、公空に及ぶ——局長、しばらく聞きますからそこに座っていてください。防衛の限度内ということで及ぶというお話は、いままでは領海内ですね。領海の外へ出ることはないというのが国会の答弁ですが、私が聞いているのは、あなたの答弁をもう一度聞いているのではなくて、いつからそういうふうに解釈が変わったのかということをお聞きしているわけです。
  143. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 四十四年の十二月二十九日に参議院の春日正一議員の質問主意書に対する答弁書、それから四十七年の十月十四日、参議院の決算委員会の提出資料、これは水口宏三委員の御要求によるものでございます。そこで申し上げておりますことは、「自衛隊法上、自衛隊は、侵略に対して、わが国防衛することを任務としており、わが国に対し外部からの武力攻撃がある場合には、わが国防衛に必要な限度において、わが国の領土・領海・領空においてばかりでなく、周辺の公海・公空においてこれに対処することがあっても、このことは、自衛権の限度をこえるものではなく、憲法の禁止するところとは考えられない。自衛隊が外部からの武力攻撃に対処するため行動することができる公海・公空の範囲は、外部からの武力攻撃の態様に応ずるものであり、一概にはいえないが、自衛権の行使に必要な限度内での公海・公空に及ぶことができるものと解している。」ということでございまして、この考え方をずっと、いまの安保五条に基づきます共同行動の場合にも同じ考え方を持っておるということでございます。
  144. 中路雅弘

    ○中路委員 いまおっしゃったように、これは安保五条に基づく共同行動、アメリカとの共同行動にも及ぶという御答弁なわけですね。間違いありませんね。
  145. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 それから今回の衆議院の予算委員会におきまして法制局長官から、それから参議院の予算委員会におきまして同じく法制局長官から、日本が安保五条に基づいて行動するのは個別的自衛権に基づいて行動しておるんだ、こういう御答弁があったわけでございます。
  146. 中路雅弘

    ○中路委員 簡潔でいいんですが、アメリカの第七艦隊、この艦隊を構成している空母、巡洋艦あるいは駆逐艦、護衛艦、この中で艦艇あるいは攻撃機で核の積載能力があるのはどれぐらいありますか。
  147. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 第七艦隊は、御案内のように、現在艦艇約六十隻、それから航空機が約五百四十機からなっております。  この中で核の搭載能力のありますもの、まず航空機の方でございますが、艦載機のF4ファントム、それから攻撃機のA6イントルーダー、これは核爆弾を装備する能力があると言われております。それから攻撃機のA7でございますが、これは一部の資料によりますと核装備が可能であるというふうに言われております。  それから巡洋艦には艦対空のミサイル、タロス、これは非核両用でございますが、これを装備しておる。それから駆逐艦級になりますと、ミサイル搭載フリゲート艦、これが艦対空ミサイル、テリア、これも同じく核、非核両用でございます。それから対潜ミサイルのアスロック、これも核、非核両用でございますが、こういうものを装備しておる。その他の駆逐艦の一部にも、同じく対潜ミサイルのアスロックを装備しておるというふうに言われております。
  148. 中路雅弘

    ○中路委員 空母だとか潜水艦、一番大きいのが……。
  149. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 空母は、いま艦載機で御説明申し上げました。
  150. 中路雅弘

    ○中路委員 時間が枠内ですから、私も調べたのですが詳しくお話ししませんが、第七艦隊は大部分が核搭載能力を持つ艦隊だということは、いまお話しのことでも事実だと思うのです。そしてアメリカは、有事の際には核を使うという決意をしばしば述べている。第七艦隊というのは文字どおり核武装をしておる部隊、核部隊だというのは事実なわけですが、共同対処する相手が核を持っている艦艇、これと皆さんは公海、公空で共同作戦をやるのかどうかということをまずお聞きしておきたいと思います。
  151. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、わが国が共同行動いたします場合には、わが国はあくまでも自衛の範囲内において、自衛の限度内において行動するということでございまして、アメリカの部隊が有事の際には核を持つということがあると思いますけれども、わが方は終始一貫をいたしましてわが国の安全を、わが国防衛するための必要限度内において公海、公空にも及ぶことがあり得るという立場考えておるわけでございます。
  152. 中路雅弘

    ○中路委員 私が聞いているのは、先ほどお話ししたように五条の発動ですね、有事の際の話で、有事の際に公海、公空にも共同対処が及ぶというのが皆さんの答弁なわけですね。その有事の際には第七艦隊が核を持つということはいま局長答弁をされた、当然公海ですから。だから、五条発動の有事の際に核を持っている部隊、核部隊である第七艦隊と共同対処をされるのか、行動をとられるのかということを聞いているわけです。
  153. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 有事の際に共同の危険に対処して行動するということは、安保五条に書かれておるとおりでございます。
  154. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一度念を押しますが、その際に相手は核部隊ですね。核部隊である第七艦隊と有事の際は自衛隊は共同行動をされるのかということを聞いているわけです。
  155. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 わが国防衛するという立場から、わが国の安全のために共同行動をするということはございます。
  156. 中路雅弘

    ○中路委員 じゃ逆に聞いてみますけれども、公海、公空で、いま、有事の際共同行動をとることはあるということをおっしゃいました。たとえば潜水艦を追っかけてそれが領海に入ってきたという場合、領海内では核部隊と共同行動はどうなるのですか。有事の際は公海においては核部隊と共同行動をするといま言われましたね。それが何かのときに領海内に入ってきた、その場合にはどうなりますか。その場合にはその核部隊は領海内にも入ってくるということですか。
  157. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 実態は千差万様でございまして、その場合にどうするかということでございますけれども、少なくともわが国非核原則前提とするということでございましたら、核を搭載した艦船、航空機というものはわが領海、領空に入ってこないと考えるべきではないかと思います。
  158. 中路雅弘

    ○中路委員 これはずっと国会答弁でも言っておられるわけですね。赤城防衛庁長官も、第五条の発動の場合でも、米軍日本にいわゆる事前協議によって、核の持ち込みというものは日本で拒否するわけだから、在日米軍が核によって攻撃を加えたり、または核の防御をやる、そういう行使をすることはないということを答弁されています。そうすると、いまのお話でも領海内の場合は核部隊は共同行動をやらないのだ。核を持っているか持っていないかというのはどこで区別をするわけですか。有事の際に核を持っているのだということは、いま局長お話しになりましたね。その部隊と共同行動を公海ではやっていて、領海に入ってくるときにはそのアメリカの部隊はそこで引き返すのですか。共同行動は領海内では、ないのですか。
  159. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 共同行動という言葉で、両方の航空機が入りまじって空中戦をやるようなことを考えておられるかと思いますけれども、これも実は今後アメリカ側とすり合わせる場合に詰めていかなければならない問題でございまして、御案内のように、日本の航空自衛隊の持っております航空機の機能と、アメリカの艦載機あるいは第五空軍で持っております機能とは格段の差があるわけでございます。こういう種類の違ったものが一緒に、同じような空域で行動をするということはまずないのではなかろうかというふうに考えます。共同対処あるいは共同行動と言います場合には、かなり幅を持たせた考え方で、それであるからこそ日米の間で細かいすり合わせをする必要があるということでございまして、現実に核爆弾を持ちましたアメリカの航空機が途中で引き返すとかいうような問題、これは結果的には、わが国としては非核原則をとっておりますからそういう形になると思いますけれども、それを細かく一々想定するということはきわめて困難な作業だと思いますので原則論しか申し上げられませんが、原則論としては、先ほどから申し上げておりますように、わが国の領空、領海に核兵器を持ち込むということはない、また、ないようにアメリカ話し合いをする、こういうことでございます。
  160. 中路雅弘

    ○中路委員 いま局長は非常に重要なことをお話しされているので、私はもっと突っ込んで聞きたいのですが、防衛庁長官は今度シュレジンジャー国防長官とも会って、共同防衛分担といいますか、いわゆる共同対処について話をする。この話の前提になる問題ですね。いわゆる核装備した核部隊と、いまおっしゃっているのはその米軍と、有事の際いわばどういう形にしてもチームを組んで公海では対処をするのだということを局長はおっしゃっている。しかし領海の場合はそれをやらない。しかし、いまお話しのように核を持っているのですから、第七艦隊というのは核部隊なんですから、そうしますと有事の際には、もう一度聞きますけれども、領海内では一切共同行動はあり得ないわけですか。
  161. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、共同行動というのは、一つのチームを組むといま先生おっしゃいましたけれども、私はチームを組むと申し上げておりません。指揮権はそれぞれ別々の指揮権で動くわけでございまして、一種の連携プレーと申しますか、要するに日米の保有しております装備が全然機能、任務が違う、こういう場合にどういう分野でアメリカが行動し、どういう分野でわが国が行動するか、こういう問題を詰めていくのが日米の分担協力というものの中身だと思うわけでございまして、そういう意味で、国内、つまり領土、領空内におきます場合においてもそれぞれ別個の指揮系統のもとに活動するわけでございまして、アメリカにはその場合においても非核原則は遵守をしてもらうということでございまして、アメリカの航空機なりが核装備をして領空、領海には入らない、あるいは領空、領海に入るものはそういう核装備を付さない、こういう条件で作戦を考えてもらうということになるかと思うわけでございます。
  162. 中路雅弘

    ○中路委員 私、長官にお聞きしたいのですが、先ほど言いましたように、非核原則、核を持たない、つくらない、持ち込まないというのは、いわゆる精神から言えば、日本は核を使う戦争、核を手段にする戦争、こういうことは一切否定するのだという精神ですね。その非核原則に対する根本的な私たちの立場から言って、公海なら自衛隊が核部隊とどういう形にしても共同の対処をするのだということは、非常に重要な問題だと思うのです。これは非核原則を根本からじゅうりんするものじゃないですか。非核原則の根本的な考えから言って、公海ならば核部隊と共同してもいいのだ、そういうことは許せないのじゃないですか。
  163. 坂田道太

    坂田国務大臣 先ほどから防衛局長がしばしばお答えを申し上げておりまするとおりに、公海におきましてもわが国の安全のために独自の指揮権を持って行動をする、対処をする、こういうことでございます。しかもそれは自衛のために、こういうことでございます。
  164. 中路雅弘

    ○中路委員 いや、長官、あなたは今度シュレジンジャー長官と話をされる。その中には作戦の調整機関もつくる、そのあり方も考えるのだということは表に出されているわけですね。どういう形にしても共同で対処するあり方を検討するのだ、そしてその作戦の調整機関もつくるのだということもおっしゃっているわけですから、別個に行動するわけじゃないわけですね。今度はその共同の作戦についてどうするかという協議をしたいということを言っていられるわけですから、その場合に核部隊とどういう——この第七艦隊は、皆さんが考えている相手は有事の際は核部隊なんだから、それとやるわけですから、その場合に核を持った部隊と共同してやるかどうかということについて明確な態度がなければ、その共同の対処あるいは作戦の調整機関をつくるにしても、前提になるそこのところが明確でなかったら話ができないわけでしょう。私は、非核原則の基本的な考え方というのは、それは公海であろうと日本は核を持った戦争というものは一切否定するということですね。使わないのだ、これが根本的な精神ですから、公海であればどういう形にしても核部隊と作戦共同してもいいのだということは許されないのじゃないかということを言っているわけです。
  165. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは先ほどから申し上げますように、わが国防衛というのは、わが自衛隊だけではなくて、核というものを持ってならないわけですから、その意味において核抑止力アメリカ軍にお願いをするわけでございますから安保条約というものを結んでおる、そういうたてまえになっておるわけなので、しかしながらアメリカと共同するにいたしましても、それはあくまでもわれわれの共同の、あるいは防衛協力の限界というものはあるわけでございます。いま防衛局長が申し上げましたように、これはもう論理的には実に明快になっておるということでございます。したがいまして、これもまた何回も申し上げたわけでございますが、日本の安全を確保するために日米共同して対処をする、そうしてまた日本の安全を確保するために自衛隊と米軍が整合のとれた作戦行動をとるようにする、その内容というものは、あるいは形式というものは、いま事務的に検討をしておるわけでございます。しかしながら、その中におきましていま私ども考えておりまするのは、作戦協力の大綱であるとかあるいは情報交換であるとか、あるいはまた補給、支援であるとかいうことを考えておりますし、いま御指摘になりましたような連絡調整機関の設置というようなものも、もしでき得べくんば合意に達したいという願望を持っております。あるいはまた平素におきますユニホーム同士の研究会同というようなものもひとつオーソライズされたものにしたい、こういうふうに思います。  しからば形式はどうかということでございますが、この間三木総理もお答えになりましたように、権利義務を伴うような協定というものではないのだ。いま考えておりまするのは、防衛庁長官国防長官との合意というふうなものを考えておりますが、しかしこの点につきましてはただいま事務当局で検討いたしておりますし、相手のあることでもございますし、そしてまた各省庁間にいろいろこれから作業を詰めていかなければならないわけでございますけれども、そういうような考え方で日米共同して対処するというものにつきましてのわれわれの考え方をまとめてみたいということでございます。いきなりそういうようなものを合意に達するというようなこともなかなかむずかしいことでございまして、やはり私はまずまず、シュレジンジャー長官と、つまり防衛責任者同士がお会いをして、そしていろいろのバックグラウンドといいますか、そういうものを話し合うということが第一じゃないかというふうに思います。いろいろな問題が出てくると思いますが、そのときには私は忌憚のない意見交換をやりたいというふうに考えておるような次第でございます。
  166. 中路雅弘

    ○中路委員 総理は、協定はしないのだということを答弁されています。あなたはいま、できれば何らかの合意というお話ですけれども、表に出した協定は結ばない、しかし日米話し合って共同対処について何らかの合意や確認をしたいということになれば、そしてその中身が、アメリカの核部隊ともどう対処するか、対潜作戦や防空やあるいは補給を挙げておられますね、こういう問題について共同で対処する、そういう合意や取り決めをやる、核部隊とどうするかということの取り決めをやるということになれば、事実上それは秘密協定と変わらないわけです。そしてその中身は、非核原則を厳守すると言いながら事実上その共同の相手は核部隊であるという重要な問題が私はここにあるというふうに思うのです。先ほどから繰り返し言っていますように、五条の発動、有事の際公海においてならば核部隊と共同行動をする、これは私は重大な憲法やあるいは非核原則の精神を、日本立場としては根本でじゅうりんするものだというふうに思いますし、それから現実に公海で共同対処をしていて、今度領海へ来るときはその核部隊は領海から戻ってもらうのだ、こんな作戦は実際軍事的に見て常識で考えられないでしょう。そういうお話をされるつもりなんですか。
  167. 坂田道太

    坂田国務大臣 日本憲法、それから非核政策というものは、わが三木内閣といたしまして堅持するということなんです。そういたしますると、それを出るということはできないことじゃないかと思うのです。ですから、われわれの国としてできることとできないことを明確にする。向こうにもその意思を伝える。その上でなおかつ日米安保条約が結ばれておるのでございますから、その中においてどのようなことがやってもらえるか、やってもらえないか、その大綱についてお話をしないということこそおかしなことであって、そういうことについてやはり率直に意見交換をする、そういう機会を持つということが私は非常に必要だと思いますし、国民の側においてもそういう心配があろうかと思うわけでございます。そういうことの心配のないような形に私はいたしたい、こういうふうに思うわけでございまして、その内容につきましては、憲法の範囲内において、あるいは自衛のために必要な限度において、もしそういうような合意に達し得ることができるならばいたしたいということでございまして、これは相手のあることでございますから、できない場合だってあるかとも思うわけでございます。
  168. 中路雅弘

    ○中路委員 私が言っているのは、領海内ではできないとおっしゃいますね。憲法の範囲内でも、非核原則という立場からも、領海内にはそういう共同対処はできない。そのできないことを今度は公海ならばいいのだということは根本的にこの精神を踏みにじるものだ。それは憲法の制約からいっても重要な問題であるということを言っているわけです。領海内にはできない、しかし公海に出ればそれは核部隊とも共同対処は自由なんだ、できるのだ、これは根本的に非核原則立場を放棄したことになるのじゃないですか。
  169. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 政策問題について私から申し上げるのはちょっとどうかと思いますけれども、御案内のように、わが国安全保障につきましては、アメリカ核抑止力に依存するということで、要するに日本への核攻撃に対してはアメリカが保障してくれるという体制をとっておるわけでございます。  この間、外務委員会でおたくの松本議長からの御質問で、私は、日本核抑止力の実態というものはアメリカ戦略核兵器によるものが主であるというふうに申し上げておきまして、その際、第七艦隊が核抑止力のかさに入ってないような表現を申し上げておったわけでございますが、これは誤解をされるとあれでございますので、この際はっきり申し上げておきたいと思いますが、有事の際におきましては、アメリカ戦略核はいわゆるレディネスコマンドで、いつでも報復できるあれになっておりますけれども、戦術核兵器につきましては、そういう情勢、つまり有事の際においては具体的な能力を帯びてくるということで、アメリカ日本に対する核のかさの一部をやはり第七艦隊の核抑止力というものは構成しておるのだということでございますので、その辺は明確にさせていただきたいと思います。  そういう意味で、つまり日本の国防方針の基本に出ておりますように、核の攻勢に対しては、侵略に対してはアメリカ核抑止力に依存するというポリシーを持っておるわけでございます。その中身として、戦略核のほかに第七艦隊の戦術核も入ってまいるわけでございまして、この辺は非核原則という問題とは矛盾しない問題ではないかというふうに考えるわけでございます。
  170. 中路雅弘

    ○中路委員 時間の限られた審議なので改めてやりたいと思うのですが、繰り返して指摘しておきたいのですが、いまおっしゃったように、第七艦隊は核抑止力の一部であり、そして有事の際には当然これは核を持っている、核部隊だということはきょうもお認めになっておるわけですね。防衛庁長官がこれからシュレジンジャー長官と話をされるのは、この核部隊との有事の際の共同対処をどうするかという問題、作戦の調整機構まで考えたいというわけですから、これは憲法の制約やあるいは非核原則立場からいっても非常に重要な問題だ、こういうことで日米で話をされるということは。しかも総理は、協定は結ばないんだということを言っておられるわけですが、長官はいま、何らかの合意、確認をしたい、協定は結ばないで合意をするということになれば、それはどういう形にしても事実上秘密協定になるのじゃないかということです。この問題は非常に重要な問題だと私は思うわけですが、限られた時間ですので改めてまたこの審議をしますが、いま私が言ったようなことで長官シュレジンジャーと話をされるということですか、もう一度念を押します。
  171. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは安保条約に共同して対処するということを申しておるわけでございますから、共通の危険に対して共同して対処するということでございますから、それについていろいろお話し合いをするということは当然なことかと思っております。
  172. 中路雅弘

    ○中路委員 これから少しお聞きしたいと思ったところに時間が来ておるのですが、この問題は改めてまた審議したいのですが、外務大臣に一問だけお聞きしたい。  外務大臣は、有事の際あるいは緊急時、新聞の報道を見ますと、国家存亡の際は非核原則以前の問題だということで、かつてイエスもあり得るというようなことが新聞にも出ておりました。しかし最近、予算委員会が始まってから、総理が、非核原則有事の際も核を持ち込まない、どんな場合でもノーだということで、宮澤さんは、この国会で総理の言明したことでいままでの論議は吸収されたのだと、たしか吸収されたという言葉を使っておられます。私は、これは吸収されるような性質のものではないと思う。異質の問題です。有事の際にイエスもあり得るということと、どんな場合でもノーだということは異質の問題だ。だから、いままで自民党の中でもいろいろ論議をされていたそういう問題は、総理の発言で否定をされたと言われるならば私は一応わかるわけです。日本語で、吸収するということはそういうことを含めて吸収するということですから。この吸収という言葉はいろいろに理解できるわけですね。総理のこの発言は、アメリカへ行って帰ってきて、いろいろ論議の中でいままで外相が述べられたことを否定されたというふうに理解していいですか。
  173. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題は、もともとこの核防条約との関連で自民党の内部でございました議論に関してのお尋ねであったわけでございますが、自民党の内部ではいろいろな議論がございまして、私もそういう内部の議論としていろいろなお話をし合ったわけでございます。そのことが必ずしも正確に世の中に報道されたわけではないのでありますけれども、それとの関連でそういう御質問があったわけです。  いまの吸収云々でございますが、いわゆる事前協議の制度としては、イエスもありノーもありということでなければ条約論としては成立をいたさないことは明らかだと思いますが、私が吸収と申しましたのは、総理大臣は国の方針としてイエスということは言わないということを言っておられるのでありますから、これは当然そのことに閣僚の一人として従うものであり、それが内閣の方針である、こういう意味でございます。
  174. 中路雅弘

    ○中路委員 あなたは、アメリカへ行ったときの報道でも、あるいは自民党の中の論議の中でも、安保の弾力的運用ということが問題になり、この安保の弾力的運用ということの中身は、いわゆる核の問題、有事の際における核についてイエスと言うこともあり得るというものと関連して新聞でも報道されていた。そうしますと、安保の弾力的運用というものが何かということが問題になるわけですが、これは、いわゆる核の問題というのは抜き、核の問題というものは安保の弾力的運用の範疇に入らない、そういうふうに理解していいですか。
  175. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そもそも、安保の弾力的運用というようなことを私が申したことはございません。
  176. 中路雅弘

    ○中路委員 総理が、どんな場合でもノーだ、国の方針としてノーだということを言われたとすれば、国の方針としてノーだというわけですから、相手のアメリカにはっきりと、核持ち込みは有事の際にもノーなんだ、これは国の方針なんだということを直接通告することが必要だと私は思うんですね。これは政府政府の間において当然のことであるわけですが、これはどうしてできないのですか。
  177. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国会の場でこれだけ何度もお尋ねがあり、総理大臣がごく最近もそれを言っておられるのでありまして、これは天下公知の事実であると私は思っております。
  178. 中路雅弘

    ○中路委員 天下公知の事実だ、国の方針としてノーなんだというならば、相手のアメリカにはっきりノーだということを言うのは当然じゃないですか。言えないわけがどこにあるのですか。
  179. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 別段言えないわけがあるのではありませんで、協議もないのにノーだと言う必要はないというわけで、わが国の態度は天下公知であります。
  180. 中路雅弘

    ○中路委員 あくまでアメリカにノーと言えない、通告はできない。そして外務大臣は吸収されたという言葉で言っておられる。私はここに非常に欺瞞があると思うのですね。吸収されたという言葉で、与党や自民党の皆さんの中へは有事の核持ち込みについてあるいは肯定的な言質を与えながら、総理は国会答弁で、核持ち込みは事前協議でいかなる場合もノーで、国民向けにはそういう答弁をされるということですね。これは吸収されたという言葉を使い分けて、結局このようにずる賢いやり方で、アメリカの核に依存していくというのを一層強めようというのが私はここに出ていると思うのですが、アメリカに対して、国の方針としてノーだというのなら明確にノーだと言う、そして、いままでそういう論議があったけれども、国の方針としてノーならば、いままでのそういう論議は否定されたのだ、吸収されたというのでなくして否定されたんだということをどうして言えないのですか。もう一度お尋ねします。
  181. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 次元の違う二つのことを言っていらっしゃると思います。条約の解釈論としての問題と国の方針としての問題は、これは別の次元のことであります。総理大臣があれだけはっきり言っていらっしゃることについて、私は何人も疑う余地がないと思います。
  182. 中路雅弘

    ○中路委員 ではもう一言お聞きしますけれども、総理がかつて外務大臣のときに——これは参議院の内閣委員会で私どもの内藤議員が質問した問題でありますが、昭和四十三年のころ、通過核について核持ち込みに当たらないと、ここに議事録もありますが、何回か三木さんが外務大臣のときに述べておられて、これが参議院の内閣委員会で問題になって皆さんが統一見解を出された。一切ノーだ、領海の通過も核持ち込みに当たるということで事前協議の対象になるということで、政府の見解ではノーだ、そういう統一見解を出された。これは、前はいいということを言ったわけですけれども、今度はいけないということですから、重要な解釈の変更ですね。外務大臣がいままで、通過核は核持ち込みに当たらないと言ったわけですから、当然相手のアメリカもそういうふうに私は理解したと思うのですね。それが今度は、通過核は核持ち込みに当たるのだということになれば、これは百八十度変わったわけですから、当然正式にアメリカの方にこの問題で日本政府立場を通告する必要があると思うのですね。これについてもやっておられない。なぜですか。態度が変わったわけですから、通告するのは当然じゃないですか。態度が変わったことをアメリカはどうして確認できるのですか。
  183. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは実は当時の状況から言いますと、いまのお話に多少問題がありますのは、当時三木外務大臣が言われたことは、ポラリスのようなものはどうだというお話がしきりにございまして、それは許されませんというところにお話の重点がありまして、そうでない場合にどうだということについて、国会の速記録をよく読んでまいりますとはっきりしたなにがないわけでございます。政府としては、その時点においてはすでに、いわゆるトランジットの場合でも、これは領海でございますから事前協議の対象になると考えておったわけでございまして、この点は当初から米側に誤解がなかったと私は思います。
  184. 中路雅弘

    ○中路委員 あなたたちが統一見解を出さざるを得なかった問題をまたもとへ戻しておられるから、これもまだ引き続いて論議をしなければいけない問題になってきたわけですが、明確にこのときは言っておられるわけです。三木国務大臣ということでこれは議事録にありますが、「通航の場合は持ち込みとは考えていない。」領海を「ただ通り抜けるような場合は持ち込みとは考えていない」ということを何度も言っておられるわけです。だからこれが問題になって皆さんが統一見解を出されたわけです。統一見解を出さなければならないほど皆さんの中でも解釈がいろいろだった。相手のアメリカにとってみればもっと混乱していると私は思うのです。だからそういう統一見解を出された。ノーだと言われるならそれをアメリカに通告するのは、これは政府間のことで当然のことだ。これさえできないのですか、なぜ言われないんだと私は言っているのです。
  185. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 少なくともアメリカが、いわゆるトランジットの場合も、これは領海でありますから持ち込みになるということは、現在はっきり理解をしております。
  186. 中路雅弘

    ○中路委員 時間が来ているので、中途ですけれども、改めて……。
  187. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 誤解があるといけませんので、もう一回申し述べさしていただきたいと思います。  日米の共同作戦というような言葉によって日米の両軍が混成部隊をつくったり、あるいは場所的に同じ指揮下に入って作戦をするというようなことは考えておらないわけでございます。安保五条にございますように、共通の危険に対処するということでございまして、日本アメリカのそれぞれの機能が違いますので、その違った機能で共通の敵に対して対処できるような方策を考える、こういうことでございます。
  188. 中路雅弘

    ○中路委員 一問だけ……。済みません。  局長、あなたの答弁がこうなんですよ。あなた自身が、日米安保の五条に基づく、武力攻撃に対する処置、日米両国の共同の対処、共同行動も、わが国防衛に必要な限度内で公海、公空に及ぶと答弁しているのです。これは改めて共同行動、共同対処ということを言っておられるわけですから。
  189. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 共同行動と申しておりますのは、いま申し上げましたような中身でございます。
  190. 栗原祐幸

    栗原委員長 午後四時より再開することとし、この際休憩いたします。     午後一時五十七分休憩      ————◇—————     午前四時九分開議
  191. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鈴切康雄君。
  192. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 宮澤外務大臣の前任者でありました木村外務大臣が、非核原則は、これはまさしくわが国にとっての国是である、そのように端的な言葉で表明されましたけれども宮澤外務大臣非核原則は国是であるという認識には変わりはございませんか、その点についてお伺いいたしましょう。
  193. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは三木総理大臣御自身がそのように述べておられまして、内閣としてさように考えておることは変わりないと思います。
  194. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 公的な場所において、しかも国会の場所におきまして表明された国是という言葉でございますが、いかなる重みを持つものであるというふうにお考えになっていましょうか。
  195. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その言葉は定義をされて使われておるとは思いませんけれども、国の基本の大事な方針の一つであるという趣旨考えております。
  196. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 われわれの理解によりますと、というのは国家政策の基本原則であって、内閣の変更とかあるいは政策の手段によって軽々しく変更できるものでないというふうに私どもは思っておりますが、外務大臣はどのようなお考えでしょうか。
  197. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点につきましては、先般も予算委員会におきまして、内閣が変わってもこの方針は変わらないかという趣旨のお尋ねに対して、三木総理大臣は自分はそう考えるという答弁をしておられますので、そのように考えるべきものであろうと存じます。
  198. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 非核原則を国是として尊重するということは、有事の際も、それから無事の際においても、いかなる場合でもこれを貫く。しかも、非核原則は三木内閣だけでなく、後継内閣をも拘束をするということを国会において三木総理大臣が発言をされましたけれども外務大臣もその御認識には間違いございませんか。
  199. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 総理大臣の御所見でございますから、これは政府の正式な見解とお受け取りいただきたいと思います。
  200. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 十二日の外電によりますと、きょうもちょっと触れられておりましたけれども、朴韓国大統領が、もしアメリカの核のかさがなくなれば独自に核兵器開発する意図があることを言明したと伝えておりますけれども外務大臣はこのことを知っておられますか。また、政府はどのようにそのことについてお考えになっていましょうか。
  201. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう報道のありましたことを承知いたしております。  インタビューでそういうことを韓国の大統領が言われたという報道でありまして、もし韓国の大統領がそのとおり言われたと仮にいたしますと、韓国自身がこの条約にごく最近加盟をしたばかりでありますので、基本的に韓国のこの条約についての態度は明確であると考えられます。したがいまして、大統領がその上に立ってそう言われたといたしますと、これは現在の、ことにインドシナからの米国撤退以後の複雑な状況にかんがみまして、一つの政治的な立場を強調する意味合いをもって言われたのではなかろうかと私は想像いたしますけれども、これはいずれにしても事実そのものを確かめることができませんので、ただ私が推測をいたすにすぎません。
  202. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 韓国は、外務大臣が言われたとおり、核拡散防止条約についてはすでに批准をして入っておるわけでありますけれども、それを承知で言ったということは、これは政治的な意図を強調するものでなかろうかという推測であるという趣旨の御答弁がありましたけれども、私はそれは非常に簡単な物のとらえ方であって、実は日本政府がやっておる対韓援助協力というものについては、莫大な金の協力をしているわけであります。日本が対韓援助をする趣旨というものは、どのような意図のもとに行われていましょうか。
  203. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは韓国に限りませず、いわゆるわが国が援助をしておる向き、インドでもさようでございますが、その国民の民生の安定と向上ということが援助の基本の目的でございます。
  204. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 対韓援助は民生安定に寄与するといっても、しょせんは韓国は、米のかさがなくなれば独自に核を開発するということを大統領が言明をしているところに重大な関心を日本では持たざるを得ないと思います。そのことは間接的に核の開発に手をかすことになりますし、そのような問題を私は放置をするわけにはいかないと思うわけでありますけれども、日韓閣僚会議について私どもは大変に重大な疑義を持っておりますけれども、近々政府は日韓閣僚会議をお開きになるという予定がおありだというふうに聞いておりますけれども、そのときに、この大統領が言われた真意についてお聞きになる意図はございませんか。
  205. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず、先ほども申し上げましたように、事実関係が報道されたとおりであると仮にいたしましても、私の推察は先ほど申し上げたようなことでございますので、別段そのことにつきまして韓国政府の意図を確かめる必要はないと存じます。それは韓国がきわめて最近この条約に加盟したことによりまして明らかであろうというふうに私としては考えております。
  206. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 要するに、韓国の安全は日本にとって重大であるという韓国条項等もありますし、そういう意味から言って、たとえそれが政治的な意図であろうとも、もしアメリカのかさがなくなるということがあるならば、韓国は核の開発の意図並びにその能力を持っているということを発言されたということは、これは私は決して単なる政治的な意図だけの問題でなくして、日本にしてはかなり重大な意味が残るわけであります。それは、いま日本がやっておる民生安定に対する対韓援助並びに協力というものが、しょせんはそれが、核開発をするということによって大変に膨大な金がかかり、そしてそれが間接的には核をつくるという方の方向に手をかすということになるという意味においては、そんなに簡単にあなたの御推測だけではどうにもならない問題であろうかと思いますが、閣僚会議でそういうことについて朴大統領が言われたことの真意をお聞きすることは、これは当然の話じゃないでしょうか。その点についていかがでしょうか。
  207. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申しましたように、韓国大統領がこの段階でそういうことを仮に言われたといたしますと、私はそれはいわゆる米国のかさと言われましたか、そのこと自身がきわめて大事なものであって、安易にこれを取り除ける状態ではない、あるいは韓国としてはそれがあることに重大な関心を持っておるということを強調されるための発言であろうというのが私の、これは単なる推測でございますが、推測でございます。  その次に、米韓条約というものが、これは現存しております。そしてアメリカも、ことにインドシナ問題以後、これを遵守するということをたびたび申しておりますし、韓国側はもとよりでございます。したがいまして、これがなくなってしまうという状態をいま想像することはできませんし、また想像する必要もないように思われます。そういたしますと、大統領の言っておられます前提というものは、これは現実の問題にいまなり得る種類のものではなかろうと考えますので、そういうことを判断いたしますと、特にこの際、真意は何であるかということを別段問いただす必要はないというふうに考えておりまして、もしもし、しかしそういうことが現実になってまいりますと、これは別の問題でございますが、ただいまのところそういうことではなかろうと私は考えております。
  208. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる軍事同盟というのは大変に不安定であるわけです。なぜ不安定だといいますと、米韓軍事同盟が結ばれているにもかかわらずあえて大統領はそう言わざるを得ない。また、あなたにしても、アメリカにお行きになりますと、日米安保条約がありながら、要するにキッシンジャーさんと常に日米安保条約を堅持するということを何回も確認をされる。また、各外務大臣も大体そういうふうなことをずっとたどってきているわけであります。ゆえに、そういう点から考えると、軍事同盟というものはアメリカのいわゆる戦略体制の中にあってどのように変化していくかということは、言うならば、非常にむずかしいというか、そういう点においても流動的なものがあるだけに、まあ朴大統領もそういうことを言われたのだろうと私は思うわけでありますが、もしもし、そういうようなことになってくるというようなことがありますれば、間接的にいわゆる核を開発するということについて手をかすというような非難のないような方向でお考えになられますか。
  209. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのお尋ねは、私の了解するところでは、米韓条約がなくなって、それによって韓国が核武装の道に一歩歩み始めたというときには、わが国としてその事態について特段のことを考えるか、こういうお尋ねであれば、それはさようでございます。
  210. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 要するに、米韓条約というものを前提にして実はこれを言っていないわけでありまして、アメリカが核のかさを引っ込めようというときには韓国は独自で核武装をするのだ、またその能力がある、こういうふうに言っているわけなんですが、その点について、いわゆる米韓条約前提というのでなくして、素直にとった場合には、アメリカが核のかさを引っ込めれば直ちに韓国としてもそのような手段をとらざるを得ない、こういうことであろうかと思うのですが、そういうことで、もしもしのことがあるならば、やはり日本としても経済援助という問題が核開発の可能性を間接的に援助するような話になりますから、それに対しては考えざるを得ない、こういうふうにとってよろしゅうございましょうか。
  211. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そう申し上げておるのではなくて、全く仮定の問題についてお尋ねでありますから、アメリカが核のかさを引っ込めるということの意味が、仮にそのとおりの発言があったとしてどういう意味であるかと考えれば、それは恐らくは米韓条約というものがなくなった事態であろう。そういうことは、しかしいま現実にありそうな事態ではないし、大統領が強調をしようとされましたのは、恐らく米韓条約というものは韓国にとってあるいはアメリカにとって大切なものであるということを強調されるための発言と思われますし、この条約は双方とも廃棄をするあるいは撤回をするというような意思がないことがこの段階でむしろはっきりしていますから、そのようなことは実際起こり得ないと考えるべきではないかというのが、これは私の推測でございます。いずれにしても事柄は全く事実を確かめない推測のままに立っておりますから、この程度まで申し上げれば十分ではないかと思います。
  212. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それではちょっと方向を変えまして、日米安保条約は核の抑止力であり、アメリカの核のかさに入っている、政府はそのように言っております。そのこと自体日本の安全に重大な意義があるという判断でありますけれども、先ほどもお話をしましたように、軍事同盟というのは常に不安とそして相手国の戦略的な考え方によって左右されるということになろうかと思うわけでありますが、日本が韓国の立場にかえた場合も、日本として非核原則を遵守する考え方でおられますか。
  213. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと恐れ入りますが、ただいまのお尋ね、伺っておりましたけれども、ちょっとポイントが取り得ませんでした。
  214. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 要するに日米安保条約が核の抑止力であります。それと同時に、核のかさに日本は入っているわけですね。そのことはいわゆる日本の安全に非常に重要であるということを政府は常に答弁で言われております。  事がいま韓国の問題でありますが、韓国がもしアメリカに核を期待できないようなときがあったならば、そのときは云々という話がありましたけれども、軍事同盟とかあるいは御存じのとおりその相手国の戦略構想によって往々にしてそういう問題というものは流動的になる場合があります。そういう場合に、日本の国においては非核原則を遵守をされますか。アメリカの核のかさがあるいは抑止力がなくなっても、非核原則は遵守をされますか、こういうことをお聞きしておるのです。
  215. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 日本政府におきましても、アメリカ政府におきましても、日本アメリカ合衆国との相互協力及び安全保障条約を廃棄する意図を持っておりません。私ども、これを単純な軍事同盟というようなふうには考えておりませんので、これが廃棄される事態というものを私ども両国政府とも考えていないということでございます。
  216. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 すでに日米安保条約については廃棄という、そういう国民的な考え方のあることも御承知のとおりであります。また、自民党政府のようにいわゆる日米安保条約を堅持するという考え方を持っておる立場の方もおられます。そうなりますと、政治というものは非常に常日ごろ流れているわけでありますから、当然これから推移をしていく過程の中にあって日米安保条約自体もどういうふうになっていくか、これはわからない。わからない場合に、アメリカの核のかさがなくても非核原則を守るという考えでよいのか、それともアメリカの核のかさと非核原則とは重要なかかわり合いがあると判断をされているのか、その点についてお伺いをしているわけです。
  217. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府立場で申しますと、政府はこの安保条約というものを廃棄することは考えておりませんし、米国政府も同様に考えておりません。他方で政府は核拡散防止条約に加盟をいたしたいと考えておるわけでございます。核拡散防止条約に加盟になりますと、これは国際的にわが国非核原則のうち少なくとも初めの二つは、今後二十年間はっきり国際的な約束になってまいる筋合いのものでございます。そういう状況のもとにおいて将来日米安保条約がもし廃棄されたとき、これは何かわが国にそういう政治的な政権の交代でありますとか、何か変化があったときであろうと存じますが、その際、ただいまのような問題をどのように処理されるかはこの安保条約の廃棄を決定した政権において考えられるべきことであって、私ども現在の政権を担当しております者といたしましては、その前提であるところの安保条約の廃棄ということを考えておらないわけでございます。
  218. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政権といっても御存じのように常に交代するわけであります。これは自民党政権の間は、少なくとも今後三木内閣以降の場合においても要するに三木さんが言われたように非核原則に拘束される。しかし今度自民党政権でない別の政権ができた場合にはこれはわかりませんぞ、こうおっしゃるお考えなんでしょうか。
  219. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そうではございませんで、私ども安保条約体制というものを変えるつもりがないということを申し上げておりますが、鈴切委員の御設問は、安保条約が仮に廃棄になったときということでございましたから、そのときにはどのような環境においてそのことが行われるのか、新しい政権の考え方あるいは世界情勢の非常な変化ということもあり得ることかもしれませんが、そのようなときに、当該政権が安保条約の廃棄が適当であると判断されるその立場において関連のそのようなこともお考えになるべきであろうと思いますが、それはいま私どもの政権で考えておることではございません。
  220. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは非核原則というものは、先ほど国是であり、しかも三木内閣以降を拘束するものである、そういうようにはっきり御答弁されたわけですけれども、しかし政権がかわりますと、その政権の考え方によって非核原則は常に堅持されるとは限らない。日米安保条約が廃棄された場合においては、非核原則というものは日米安保条約と同時に連動するものであるというふうにいま聞こえたのですが、そういうお考えなんでしょうか。
  221. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は先ほども三木総理大臣に対して、非核原則というのはこの政権限りのものかあるいは政権がかわっても変わらないものかというお尋ねがございました。それに対して、三木総理大臣は、当然政権がかわったところでこういうことは変化すべきものでないと思うというお答えをしておられるわけです。そのときに恐らく御質問をなさいました方も、これは私の推測でございますけれども、三木という人にかわってたとえば何とかという自民党あるいはそういう性格の政権が後になっても変わるまいなと、恐らくそういうお尋ねであろうと私は推測して伺っておった。全く違うイデオロギーの政権が後に来ましたときに、そのときも変わらぬだろうということを三木総理大臣にお尋ねになれば、これはお尋ねになる方も多少異質のお尋ねでありますから——私はある意味で同じ思想に立った政権を前提にしてのお尋ねであろうと思って伺っておったので、恐らく総理大臣もそのような意味でお答えになったと思いますから、そういう意味では私どもの政権はさようでございますということでございます。
  222. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 要するに、それは政権の中にあってもいわゆる社会主義国を目指しているというような考え方を持っている者もおりますけれども、現在の自民党の中において日米安保条約は堅持をするんだと言いますけれども日米安保条約だって今後いろいろ流動していく中にあって、一年前に要するに廃棄を通告すればできるわけでありますから、そういうふうな場合に、もしアメリカの核のかさが期待できないという場合だって想定できないとは限りませんよ。そうした場合に、非核原則日本の国是として少なくとも自民党政権の中にあってはそれを遵守していかれますかということでありまして、もう次から次へとそのときの状況を考えなければ、次の政権はまた別の考え方を持っておりますというのでは、こんなにあやふやな非核原則はないわけでありますから、少なくとも自民党政権であり、そういうふうな事態がもし来たときにもやはり非核原則は遵守をするんだ、そういうお考えであるか、どうかということです。
  223. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わかりました。こうお答え申し上げればいいのではないかと思います。  自民党政権である限り、少なくとも政権がかわっても非核原則は動かす意思はないと三木総理大臣は言っておられます。むしろそのこともございますがゆえに、安保条約というものは簡単に廃棄するということは考えられない、論理の連関としてそういうふうにおとり願った方があるいは事態がはっきりおわかりいただけるのじゃないかと思います。
  224. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アメリカの核のかさがなくなる場合というものも今後考えられなくはないわけです。一つは核軍縮が進んで全く核の脅威がなくなった場合、日米安保条約も必要ないという場合はこれは問題はないわけです。またアメリカの核戦略構想というものが今度変わった、日米安保条約を必要としないというふうに変わった場合に、アメリカの方でそういうふうな手段を講じないとも限らない。ベトナム戦争において、かつてベトナムを命がけで守ろうと約束したわけであるけれども、実際にはベトナムは放棄せざるを得なかった、こういう中にあって、たとえどうあろうとも、アメリカの核のかさがなくても、いわゆる自民党政府においてはこの非核原則というものを遵守をしていくんだ、こういうふうにはっきりとお考えになっているかどうかということです。もう一度。
  225. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私ども非核原則というのはこれは国是であって、一内閣の問題ではないと総理大臣初め申し上げておりますのは、このことは国民感情に深く根差しておりますし、わが国の与えられた地形あるいは地勢学的な立場からこの原則わが国の国益につながる、こう考えておるからでございます。したがって、これはちょっとやそっとのことで変わっていいものでないし、変えられるものでない、そういうことを基本にその他の政策を考えていく、こういうふうにお考え願っていいのではないかと思います。
  226. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうすると、日米安保条約非核原則は連動するものである、そういうふうなお考えでしょうか。
  227. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 われわれが非核原則を堅持したいと考えるにつきましても、現在の世界情勢においてはやはり日米安保条約というようなものはわが国の国益にとって必要なものであるというのが私どもの政権の判断でございます。
  228. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、非核原則日米安保条約の廃棄と同時にそれを維持していくかしていかないかというのは、そのときの状況によって判断が変わる、こういうことでしょうか。
  229. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そうではありませんで、非核原則というものは簡単に変えられるものでないという判断が基本にございまして、国民感情に深く根差したところのこの基本的な政策を、どういう形にして実現、遂行、続行していけばいいかということを政府としては当然考える、その一つの条件はやはり日米安保条約が持っていなければならぬ、こういう判断になってくるのではないかということを申し上げているわけです。
  230. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 非核原則の国是を守るために日米安保条約はぜひとも必要であるということであれば、日米安保条約がなくなると、非核原則は言うならば必ずしもその条件を満たさないというふうに判断されてもしようがないじゃないですか。
  231. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは本末転倒だと思います。非核原則というものがもとにありまして、これは国民に深く根差すものでありますから、これを守っていくためにはどういう政策をとっていったらいいか、本末はそういうふうに私は考えておるわけです。
  232. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 何か大変に日米安保条約非核原則は連動している、連動しているがゆえに、日米安保条約があるからこそ、日本の国としては非核原則をとり得るのだ、もしも日本の国に日米安保条約がなくなった場合には、これは非核原則もおのずと崩れるというふうにどうしても受け取らざるを得ないのです。私は、国是でありますからそんなに簡単に変えられるものではないと思うのですけれども、それはそれ以上聞いてもあれでしょうが、日米安保体制核抑止力と核のかさを期待をすることは、日本非核原則とは矛盾するのではないかという一部自民党内部の方々の御議論もあったように聞いておりますけれども政府はどのようにお考えになっていましょうか。
  233. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は、ただいま御紹介になりましたような一部の議論というものは、恐らくいま意味をなさいましたところは、日米安保条約によって核のかさが広げられておるのに、たとえば持ち込ませずということはおかしいことではないかという種類のお尋ねだと思いますが、私どもは、わが国の置かれました地勢学的なあるいは地理学的な位置からしまして、いわゆる戦術核兵器というものはわが国に持ち込まれる必要はないし、現に持ち込まれていない、そういうことでございますから、わが国の核のかさというのは恐らくは戦略的な核兵器意味する、その抑止力ということになるであろうと思います。そういたしますと、それはもともとわが国に持ち込まれる必要のない性格のものでございますから、その間に矛盾はないものというふうに私ども考えておるわけでございます。
  234. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 わが国の領海、領空は一切核兵器の真空状態非核原則を国是としている日本の国においては、わが国の領海、領空、よく船のことだけ、言いますが、やはり領空の問題もあろうかと思いますけれども、そこは全く核兵器の真空状態ができるというふうに思いますけれども、もちろんそれに対する御見解と、それから核の一時通過はないと判断をしてよろしゅうございましょうか。
  235. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる事前協議の対象になるべきものとして、わが国内にと申し上げますときに、これは領土、領海、領空を含むものでございます。  それから持ち込むということは、たとえ一時の通過であれこれは持ち込みに当たる、したがって事前協議の対象になる、それは領海、領空を通じてのことであるというふうに考えておるわけでございます。
  236. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 核の搭載機あるいは搭載艦が緊急に避難をしなくてはならない場合に、事前協議にもしかけてきた場合、日本政府はこれに対してイエスと言いますか、ノーと言いますか。
  237. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう場合というのはどういう場合がございますか、たとえば領空であるといたしますと、これは緊急であってもわが国に着陸する必要があるとは考えられませんし、領海でありますとなおさらそういうことは考えにくいと思いますが、緊急でありましてもこのことは同じでございます。何となれば、緊急である、人命に関するというようなことをもし認めるといたしますと、それは場合によりまして乱用される恐れがございます。したがいまして、これはその場合でも当然に原則に立ち返るというふうに考えるべきものと思います。
  238. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私もそう思います。とかく緊急避難ということで拡大解釈をされていきますと、まさしく核の持ち込みの口実を与えないとも限りませんし、そういう意味において、日本の国は一切核兵器を持ち込まない。また先ほどお話がありましたように、確かに核のかさの中にあって核の持ち込みを許さないということはおかしいじゃないかという一部自民党さんの御議論もあったと思いますけれども、しかし、もはや私は核戦略においてはそんなように持ち込む必要はない。御存じのとおり、すでに長距離ミサイルもありますし、あるいは潜水艦による攻撃等もありますし、あるいはまた飛行機等の攻撃もあるとなれば、これはまさしく絶対に日本の国においては、非核原則であるがゆえに領海、領空は核については真空状態である、こうお考えになるのが私は正しいのではないかと思うのですけれども、これから、いま審議をしながら、核防条約がもし国会で批准をされるというふうな状態になった場合、これは審議の過程でございますからどうなるかはわかりませんが、そのときに、いままではオブザーバーの立場であった、何も言えない立場であったけれども、今度は要するにオブザーバーでない立場に変わるわけでありますけれども、そうなった場合、日本の国としてぜひとも核の軍縮あるいは核の不拡散、そういう意味から、日本の国は唯一の被爆国として重要な役割りを持とうかと私は思うのですけれども政府はどういう問題を具体的にその場所において提唱され、あるいはまたイニシアチブをおとりになるお考えでしょうか。
  239. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御承知のように、この条約はもともと世界的な核軍縮、そして非保有国安全保障ということを達成するための一つの方法論として考えられているものでございますので、本来の目的は核軍縮ということに帰着をいたすわけでございます。したがいまして、政府としては、幸いにしてこの条約に御同意を得まして加盟国となりました場合には、核軍縮の推進ということを何としても努力をいたさなければなりません。  具体的には、まず現在一部許されておりますところの核実験というものの全面的な禁止、地下において一部許されておりますもの、これも全面的に禁止をするということから入らなければならないと思っておりまして、これには御承知のように、いかにして約束を検証するかという問題がございます。それについては、われわれ地震学等々においていささかの進んだ技術も持っておりますので、それをもって検証の手段を与えることによって、あらゆる核実験の禁止ということから入りたいと考えます。  その次には、核実験の禁止ということは、新しい核兵器開発をやめるということにまず近づいていくわけでございますから、次の段階としては、現にある核兵器の削減、最終的には廃棄ということになるわけでございますが、これも恐らく米ソの関係から申しますと、私どもが思うほどいままで事柄はおいそれと進んでおりません。バランスのとれた形での縮小ということになろうと思いますけれども、そういう主張を推し進めてまいりたいと考えております。
  240. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それと同時に、先ほどもお話がありましたように、核兵器については日本の領空、領海には一切持ち込まないのだという発想、これは日本の国が被爆国であったということも含めて、非核原則を国是としている以上は、私は当然そうなくてはならないと思いますけれども、それと同時にやはり輪は広げていかなくちゃならない。アジア・太平洋非核地帯の設置ということについても、どうしてもアジアの中心ということになりますと、日本の国がすべてその中心にあろうかと思いますから、そういうふうなお考え方で提唱される考え方はないのか。あるいはフランスとか中国あるいはインド等は、まだこの核不拡散には批准もしておりませんし参加もしておりませんから、そういう核保有国についても、やはり同じ姿勢のもとに何らかの話し合いの場を持つということについて、日本の国もあえて前向きにこの問題についての場をつくるというようなお考え方はございませんか。
  241. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 両方の問題とも基本的にはわれわれが到達すべき理想に関係のあることだというふうに考えております。  その中で、まず非核地帯の設定でございますが、これはラテンアメリカで御承知のように試みがございまして、域内の国々は賛成をしたわけでございますが、現に核保有国であるところのソ連がその議定書に調印することを今日まで拒否しておるということから、実は実現を見るに至っておりません。そのことから考えまして、ことにアジアということになりますと、中国はアジアであるかないか、恐らくただいまの御設問によれば、中国を含むということではこの話は進みませんでございましょうから、非核地帯であるところのアジアは、その中国以外のアジアということであろうと思いますが、そのときに核保有国がどのような態度をとるかということなどがございます。ですからこの道は、私はなかなか安易な道であるとは考えません。考えませんが、やがてわれわれは核兵器の廃棄を最終的には目指しておるわけでございますから、段階的にそれらの地域がつくられていくということは、もしそれが保有国の賛同も得て行われる、しかも実行が担保されるということであれば、これは有意義なことであろうと思います。その日がすぐに来るというふうに楽観することは、これはむずかしゅうございますけれども、お考えとしてはわかります。  それから中国、フランスに対して、この条約に加盟をする、あるいは少なくともこの条約の目指しておるところに同調してもらうというようなことは、これはわれわれとして当然なさなければならない努力であると存じます。
  242. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁長官、この委員会に御出席になる前にウェイアンド太平洋司令官にお会いになりましたね。これについて、具体的な会談の内容は、どのような問題をお話しになりましたか。
  243. 坂田道太

    坂田国務大臣 非常に短い時間でございまして、ここでいろいろ申し上げるような内容ではございませんが、とにかく韓国にあした行く、その前に寄ったと。それからいま一つは、私のところの三好幕僚長がアメリカをこの八月訪問いたします。それについてもいろいろ打ち合わせをしておいた方がいいというような話でございました。それに関連いたしまして、とにかくベトナム以後において、日米の間の友情を温め合うということ、両国民協力するということは非常に大事なことだということでございまして、私も全くそういうふうに思っておりますというような程度で、いまこちらに帰ってまいったような次第でございます。
  244. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 余りないということは、お茶飲みのような状態であったのか、あるいはインドシナ以降の朝鮮半島の問題についての意見交換をしたのか、あるいは日米軍事協力体制としてシュレジンジャー国防長官と会う、それについての話をテーマとして出されたか、その点はどうでしょうか。
  245. 坂田道太

    坂田国務大臣 これはもう国会でも申し上げておりますように、やはり日米両国防衛責任者同士が会うことは非常に大事なことだと思うので、シュレジンジャー長官をぜひお招きしたいという意思は伝えてありますということも申し上げました。  それからもう一つは、ベトナム以後におきまして、日本国民の間にも、やはり日本の安全ということについてかなり心理的に考えるようになってきたように思います、それから国会におきましてもいろいろと防衛の問題について論議されるようになったように思いますということも申し上げました。そして日米間の関係は、やはりしばしばお会いすることによってお互いの立場を認識し合って、そしてその一つ一つを積み上げていくといいますか、そういうことが非常に大事だと思いますと。それから防衛考える会というものを私がつくった意味もちょっと申し上げたようなわけでございます。  大体そのような程度でございました。
  246. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その是非について私はいま論評を避けますけれども、実はこれは日米安保条約関連がある問題ですから、ここでちょうど外務大臣科学技術庁長官防衛庁長官がおられますから……。  去る五日に内閣委員会において私が質問で明らかにしたように、昭和四十四年十月二十八日入港した米原潜サーゴ号が横須賀寄港の際に、原子炉からの放射線漏れの事実がある。これまで再三にわたって問題とされてきた異常放射能問題とこれは異なりまして、米原潜の原子炉自体からの放射線漏れであるということが明らかになったのは初めてでありますけれども、それについては間違いがないか、科学技術庁長官
  247. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私の就任する前の事実でございますので、原子力局長から答えさせたいと思います。
  248. 生田豊朗

    ○生田政府委員 前回お答えいたしましたとおり、先生のおっしゃるとおりでございます。
  249. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆるサーゴ号が入出港のときに異常ないわゆる放射線漏れがあった。そのときにはかった数値においては、二十メートルのところで七十五マイクロレントゲンアワー、それがいわゆる原潜の原子炉から遮蔽壁を通して放射線が漏れたという事実があるのですね。これに対して科学技術庁は、軽視をしているのかどうか知りませんけれども、大して問題にしていない。こういうようなことで私は大変な問題だと思うのですが、科学技術庁は私の指摘した放射線漏れの事実を知っていたのか、それとも知らなかったのか、またそのことについて外務省に御通告なさったのかどうか、その点についてお伺いしましょう。
  250. 生田豊朗

    ○生田政府委員 アメリカの原子力潜水艦サーゴからのガンマ線の漏れでございますが、正式にはモニタリングポストで測定いたしておりますし、非公式にはモニタリングボートで測定いたしておりますので、その事実を承知いたしております。で、当時外務省にも連絡してございます。
  251. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務省はいままで、米国原子力潜水艦寄港に関する米国大使の口上書の中に「合衆国政府は、合衆国原子力軍艦の原子力推進装置について、原子炉の設計上の安全性に関する諸点、乗組員の訓練及び操作手続が、合衆国原子力委員会および原子炉安全審査諮問委員会によって審査されるものであり、かつ正式に承認された執務要覧に定義されているとおりのものであることを保証する。」という、いわゆる絶対にそんなことはない、こういうふうに言っておったのが、実際に放射線が漏れたということについて、外務省ではアメリカにどのような抗議をされましたか、あるいはアメリカにどのような問い合わせをいたしましたか、またその返事について。
  252. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 このサーゴの事件に関しましては、当時関係各省とも協議いたしまして、外務省から、通常よりも高い放射線値が測定されたという事実関係をアメリカ側に伝えまして、アメリカ側の注意を喚起いたした次第でございます。
  253. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その注意を喚起したのはどういうふうな方法でやられたのか、その点をお聞きしたいと思います。それから、要するに、このガンマ線の場合において、点線源から二十メートルのところで七十五マイクロントゲンアワーを測定したということは、六メートルの場所においては大体九倍くらいの数値を出すわけであります。そういうことから考えますと、距離の二乗に反比例をするということになれば、当然そのこと自体が許容量云々というよりも、原潜から放射線が漏れているということについて、これは防衛庁長官はこのような状態で原潜の入港を認めてもよいとお考えになっているか。
  254. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 本件は在京米大使館に対して注意を喚起した次第でございますが、このサーゴの事件がございました以降、原潜の横須賀入港は四カ月間中断された次第でございます。その後、直接ガンマ線はわが方のモニタリングによっても検知されていないと承知しております。それから見ましても、米側としては何らかのアクション、事故再発防止のための措置をとったものと推定しておる次第でございます。
  255. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 リコーバー中将が米の原子力委員会において発言をした中において、実は日本の国も大変に安全体制が整ったために測定されてしまった、ゆえにこの問題については横須賀においては第六ドライドックしか逃げ道がない、このように言っているわけでありますけれども、第六ドライドックというその中にあっては非常に死角があるわけですね。死角があってなかなかはかれない点があるのですよ。ですから、いまだに原潜から放射線が漏れているかどうかわからないのです、死角があるから。そういう点について、科学技術庁はその体制が十分であるかどうか、私は決して十分でないので検討する必要があると思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  256. 生田豊朗

    ○生田政府委員 六号ドックに潜水艦が入ります場合に、一号ポストの約百メートル沖合いを通るわけでございます。私どもといたしましては、原子炉を動かしましてガンマ線が漏れます場合は、その一号ポストで一応検測できるというようには考えておりますけれども、六号ドックに入りました場合には、他のモニタリングポストから相当距離もございますので、ただいま御指摘の点につきまして前向きに検討させていただきたい、かように考えております。
  257. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務大臣は、こうした重要な放射線漏れの米原潜の入港を、少なくとも原因が解明されるまでは、放射線が漏れているんだ、四十四年のときにそういう事実があったわけですから、やはり漏れているという以上は、原潜について何らかアメリカに対してもう少し抗議をするなり、あるいは原潜は入っちゃ困るというように米国の方に申し入れをするか、そのことについてはどうなんでしょうか。
  258. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 米軍わが国の施設、区域を利用いたしますことは、安保条約、地位協定で認められておりますけれども、それがわが国民にただいまのような被害を与えるということは利用の本旨にかなわないものでございます。したがいまして、当然に先ほどの四十四年十月の場合にも、その後米軍がそのようなことが再発しないということを確保いたします間、四カ月であったと思いますが、入港はとまったということでございまして、今後ともそういうことについてはわが国は厳重にやはりモニタリングをし、万一の場合にはそういうことが起こらないようにしてもらわなければならない、これは施設、区域の利用を許しておる立場から当然そういう態度をとらなければならないものと私は思います。
  259. 栗原祐幸

    栗原委員長 渡部一郎君。
  260. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 関連してちょっと申し上げますが、科学技術庁長官に。ただいまのお話にありましたように、核放射能の漏洩の探知能力について科学技術庁の施設というのは非常にとろいのではないかと思われるわけであります。ところが、私のほうで、この間の委員会のときに問題になって三つ残っておるお答えがございますから、それと関連してお尋ねしたい。  一つは、核実験の探知に対して日本政府国連において非常に高い評価を得られたということでありますから、科学技術庁としてはどういうような提案あるいは実際的な役務の提供その他をなさったか、実際どういうことを提案なさり、どういうことをなさったかということであります。  もう一つ、原子力による発電能力について通産省の見通しと科学技術庁の見通しが五割も違う。それを平然と両方出されて、質疑が不能になりました。それについて統一見解をと申し上げた。その件はどうなっておるのか、これが第二であります。  第三は、核防を批准するに当たって、それに関連する国内法の修正が必要のはずであると申し上げたのですけれども、どれが必要なのかはまだ明確でなかったものですから、私がどの法規が必要であるかということを申し上げて御研究いただいていると思うのでありますが、その部分は直接御関係あると思いますので、御回答をいただきたい。  まず、核実験の探知能力に対する問題、第二は、原子力発電の発電量について通産省と科学技術庁が大幅に見込みが狂っていた問題、第三は、核防批准に関係して関連する国内法の改正はどうなっているか、その三つの問題について残っておりますので、お尋ねいたします。
  261. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 一番目の探知能力の問題は、後で技術者から詳しく御説明いたしたいと存じますが、二番目の発電計画の答えが通産省と違うじゃないかという御指摘に対しましては、通産省とも打ち合わせの上、お手元に回答を差し上げてあるそうでございますけれども、要するに、こちらの方は実際に設置の許可をいたしまして、ただいま運行しておるものを中心に出したものでございますが、通産省の方もその方が正当であろうということで、この間申し上げました資料の中で、私どもの説明した資料を採用しておるようでございまして、これはお手元に差し上げたとおりでございます。(渡部(一)委員「差し上げられてないのですけれども」と呼ぶ)ですから、通産省と両方から資料が出ておって違うじゃないかというおしかりをこうむりましたので、通産省と打ち合わせた結果、この方が正解であるということで、通産省の方から渡部委員に御説明に行って了承を得ましたという報告を私、得ておるのですけれども……。
  262. 生田豊朗

    ○生田政府委員 補足いたしまして御説明させていただきます。  原子力発電所の建設の見通しでございますけれども、前回先生からおしかりをいただいた点でございますが、原因が二つございます。  一つは、通産省が昭和五十五年度の原子力発電容量の見通しをつくりました時期と、先般科学技術庁から申し上げました最近の数字と、時点が約一年近くずれております。その間に先生御承知のいろいろ立地問題その他の困難がございまして、新規の建設の計画が多少延びております。それからもう一つは、やはりこれは経済情勢でございますが、特に資金調達が非常にむずかしい時期になってまいりましたので、電力各社の建設計画がかなり先へ延びております。この二つの原因によりまして、通産省が申し上げました数字から科学技術庁が申し上げました数字まで、かなり大幅に見通しが下がったわけでございまして、現在の時点といたしましては、昭和五十五年度千六百六十万キロワットという非常に少ない数字でございますが、これを昭和五十五年度の見通しとせざるを得ない、こういう状況でございます。  それから第一点の御質問でございますが、核爆発実験に関連いたします御質問でございますけれども核爆発実験が行われましたかどうか、あるいはその影響がどうか、この二点につきまして、わが国といたしましては地震波の測定によりまして、大体どの辺の地域で核爆発実験が行われたのではなかろうかというような推測を一ついたしております。それらからもう一つは、飛行機を使いまして、いわゆる死の灰でございますが、大体日本あるいはその近海の上空にいわゆる死の灰と称せられるものが流れてまいりましたときに、それを採集いたしまして、これを原子力研究所で分析いたしまして、いわゆる核種分析でございますが、どういう種類の放射能がその中に含まれているか、その量がどのくらいのものであるか、そういう分析をいたしております。この二点が核爆発実験に関連いたしますわが国の作業でございます。  第三点の法解釈でございますが、現在の原子炉規制法につきまして、少なくとも二カ所の法律改正が必要であろうと考えております。第一点は六十八条の第一項でございまして、いわゆる査察員が必要な試料、サンプルでございますけれども、それを持ち出すことができるという規定を加えることが必要でございます。それから第二点は、同じく第六十八条の第四項でございますが、査察すなわち立入検査でございますが、これが現在は二国間協定に基づく査察員しか立ち入りできないということになっておりますので、今回この条約あるいはそれに関連いたします保障措置協定を御承認いただきました場合は、国際原子力機関の職員が査察にある程度立ち会うということになりますので、国際原子力機関の職員が中に入れますようにそのような規定を加える、この二カ所が最低限度必要であろう、かように考えております。
  263. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 申し合わせの時間が過ぎておりますから、後ほどの私の質問時間から多少削っていただくとしまして、いまのお答えにもうちょっと伺いますが、このまず必要となる国内法の整備について私が質問いたしましたが、この原子炉の規制に関する法律の改正点についてはそれはわかりますが、それ以外の国内法の整備は必要でないと言われておるわけでありますか。ほかに必要はないのですか。
  264. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 資料にも書いてございますように、必要最小限度ここまで、つまり原子炉等規制法の改正を行えばNPT下における保障措置協定義務の履行は可能である……(渡部(一)委員「これだけだね」と呼ぶ)はい、さようでございます。ただ、先生指摘のように、もっといいものをつくればどうかというような話はまた出てくるかもしれませんが、法律上この要件を満たせば義務の履行には支障はない、かように考えております。
  265. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それから原子力発電所の設備容量の見通しについては、通産省は科学技術庁側の意見に全面的に同調されたわけでありますが、こういう二省間で設備容量、その見通しが大幅に狂っているということについてははなはだ問題がある。今後こういうのは十分注意していただきたい、私はこう思っておるわけであります。  それからもう一つついでに申し上げると、この科学技術庁側の設備容量の見通しもなおかつ大きに過ぎるのではないか。つまり設備容量がこれだけになりましても、見通しはこうであっても、実際の設備ができない可能性が非常に高い。それからもう一つは、実際運転されるキロワット数ははるかにこれより減る、この二つの弱点は避けがたいと私は思う。特に原子力行政の基礎的な安全確保に関する考え方が機構的に整備されないとこの辺は全くだめだ。したがって原子力発電の安全性に対して特段の御処置をお願いしたい。きょうはもう全部お答え願うのは無理だろうと思いますが、この次は御回答ができるようにまたの審議にゆだねたい、こう思うわけであります。
  266. 栗原祐幸

    栗原委員長 受田新吉君。
  267. 受田新吉

    ○受田委員 先ほどからの質疑応答を伺っておりましても、明確にされているのは、三木総理はいかなる場合も無条件に全面的に非核原則の遵守をやる、こういうこと、この理解は、三木内閣が続く限りだけでなく、大体自民党政権が続く限りはという意味理解してよろしゅうございましょうか。
  268. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 せんだって以来予算委員会においてもそのようなお尋ねがございまして、三木総理大臣はそれに対して肯定的に答弁をしておられるのを私横で承っておりました。さように考えております。
  269. 受田新吉

    ○受田委員 かつて鳩山総理は憲法を改正する宣言を国会でやられました。ちょうどこの予算委員会で私大いに御議論を申し上げた思い出があるわけであります。憲法調査会をつくる根底にも、現在のこの憲法に改むべきところが数々ある。占領軍の政策の欠点を是正する必要があるという趣旨憲法改正の御意見を持っておられました。これは本会議でもその意図を明確に示された。総理の中には憲法改正を堂々と本会議でうたい、委員会でうたった総理がおられたわけです。これは明白に自民党の歴史の中に出ているわけですが、と同時に、この核兵器の持ち込みについても鳩山内閣の当時には非常に寛大であった。それがだんだん岸内閣のころになってきて、米軍基地核兵器を持ち込むことは、これは自分の国の政治の及ばないところであるからやむを得ないというような御意思であったように思います。佐藤さんになってこれが非核原則、国会の決議なども生まれるところになったということで、いまから七年前にこれが国会の決議にもなってきた。日本の戦後の歴史を見ましても、時の同じ自民党の政府のもとにおきましても、そうした憲法に対する見方、核兵器に対する見方の流れもある。また憲法の法理的解釈論として、小規模の核兵器を保持することは憲法違反にならないという説も立てられておるわけです。そういうことを考えますと、自民党の政治の流れの中に、すでに核兵器に対する認識の相違があることを、これから後は不変であるという鉄則に切りかえられたのかどうか。これは総理にお聞きする方が筋として通るのですが、国務大臣としての宮澤外務大臣いかがお感じになられたか。  それでお考えが伺えれば、あわせまして、いま宮澤さんが御理解をしておられるような無条件、全面的な非核原則の遵守、核兵器持ち込みの拒否というたてまえであるとするならば、一方においてマイナスの面もできてくる。それは何であるかということを御答弁いただきたいのです。
  270. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前段の問題でございますが、実はこの内閣のみならず、次の内閣あるいは自民党の政権である限り云々ということは、私から実はお答え申し上げるのにはこれは荷が重うございますので、せんだって総理大臣が御答弁されておりましたところを私は伺っておりました。その限りを申し上げたわけでございまして、総理大臣も恐らく御自分の見通し得る限りのことをベストを尽くしてお答えになったものと私は了解しております。  それから、いわゆる非核原則からくるところのマイナス面でございますけれども、私自身は、やはり国益全体からいってプラスが多いと考えておりまして、マイナス面といいますと、ちょっとどう申しますか、全体としてはやはり国益に沿うものと私は思っております。
  271. 受田新吉

    ○受田委員 この核拡散防止条約はどこを見ましても核兵器の持ち込みを禁止する規定がありませんね。禁止規定がない。そこでこの非核原則というものは持ち込みも禁止するわけなんでございますので、そうした日本核兵器に対する実に厳正な方針を日本だけが勝手に言うだけでなくして、この核拡散防止条約締約国でありまた署名国であるすべての国、またこれから加盟してもらいたい国に全面的に外交文書で知らしめあるいは何かの方法で通告する、それが必要ではないか。日本だけがそう言っておっても、ほかの国はまだ疑いを持ってくること。もう一つ非核原則についてアメリカ政府は、日米安保体制を進めていく上においてこの非核原則有事の際にもアメリカ自身の戦術核の持ち込みもできないようなことを日本が一方的に宣言したというので、向こう国防長官のような勇敢な、核兵器の使用を朝鮮半島にでもやる時期があるかもしれぬというようなことを言われるような国防長官がおる段階においては、何とかこれはすかっとしておかなければいけないのじゃないですか。つまり日本政府だけが国会で宣言をした。アメリカの国、そのほかの国は、日本が示威的な発言として野党の協力を得るためにやったが、実際有事の際に、アメリカ政府は、日本に急迫不正の侵略武力攻撃に対して、核兵器の一切を日本に持ち込まないという約束をすることはできないという考え方が全然ないのかどうかということを含めて御答弁をいただきます。
  272. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず前段のお尋ねでございますが、この条約にはいわゆる持ち込ませずに該当する部分はない、そのとおりでございます。少なくとも管理権を相手方に渡しません限り、核兵器をよその国に持ち込んではならないという規定はございません。そこでわが国の持ち込ませずという方針をやはり世界に宣布と申しますか、周知せしめてはどうかということでございました。これはわが国立場から申しますと、その点はわが国に関する限りそう考えているわけですが、自分の国によその国の核兵器を持ち込ませるかどうかということは、その国自身が主権に基づいて、自分の安全のためにそれがいいか悪いかというやはり判断をすべき事項として残っておるのではないだろうか。そのことのよし悪しは別といたしまして、現にNATO体制におきましてもワルシャワ体制におきましても、恐らくは少なくとも戦術核の持ち込みを積極的に認めておる国があるというふうに考えられます。それは押しつけられたというよりは、おのずからその国の位置しております地勢学的な位置等々から、その方が国益であると主権に基づいて判断したものというふうに考えられます。そう考えざるを得ないのでありますから、そういたしますと、この条約でそこまで縛ろうといたしますと、そういう国益からしてこの条約に加盟ができない、その部分については賛成できないという国が生じてくるということが恐らく現実ではないであろうか。そういたしますと、この条約の門を狭くすることになります。わが国に関します限りこの点は問題がございませんで、わが国は持ち込ませないことを国益と考えておりますけれども、それが世界各国同じように考えているというわけではない、その点があろうかと思いいます。  それから第二の問題でございますが、有事の際にもわが国には核兵器を持ち込ませないという場合に——恐らく戦術核というものが持ち込むということの性質上考えられておると思いますけれどもわが国自身が地勢学的に戦術核の持ち込み、使用には実は適さないと申しますか、それを必要としないというふうに私ども判断しておりますしいたしますので、有事の際にも米側の立場から見まして、わが国核兵器を持ち込むということの必要性はない、そういうことが起こらない前提で米側がいろいろなことを考えるべきであるし、考えておるものというふうに私ども判断をいたしております。
  273. 受田新吉

    ○受田委員 考えるべきであるというような判断をしておるということは一つの想定であって、明確に日本国は日米安保条約の規定を遵守すると同時に、わが国の基本方針として非核原則が樹立されておる。その趣旨に沿うて貴国はわが国との安保体制考えてほしいということをきちっと外交文書で、あるいは宣言でやるべきじゃないですか。これを抜きにして、べきであるなどと、想定問答のようなことでこうした大事な問題を論議することはあいまいになり、国民に安心感を与えないと私は思います。
  274. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このことは実は国会でもしばしば御議論になり、総理大臣が公の場で答弁を何度かしておられますので、いわば天下公知の事実であると私ども考えております。アメリカとしても当然それは承知をしておることであって、せんだってもアメリカの太平洋司令官が、わが国には核の体制をつくっておりませんと申しましたのも、そういう事実を熟知しておった上での判断というふうに私ども考えておる次第でございます。
  275. 受田新吉

    ○受田委員 それは自然のうちに理解をさせようというような御趣旨ですが、こういうものはやはり国家の体面としてきちっとレッテルを張りつけて、非核原則国家である、日米安保体制についてはその趣旨に沿うて配慮すべきであるということを私は正規の通告——何かいまのような個人的な理解というような意味でなくて、正式にわが国のこの非核原則方式を米国に通告するということを、外交努力としては正確に国民理解させる、日本政府は、文書をもって米国非核原則の方針を伝えてあるということになれば、国民の合意を得るのにも大変都合がいいと思うのです。総理大臣が言うた——総理大臣は従来鳩山内閣と岸内閣と、各歴代の内閣ではこれは相違しておる、ちょっと核兵器の持ち込みについても一貫してないのです。時の流れで変わってきておる。これは大臣ひとつ事務当局にでも調べさしてみられたら、核兵器の持ち込みに対する自民党政府の流れが、私がいま指摘したように変わってきておるのです。いまの時点で非常にはっきりしてきたのであって、いままでは危ない情勢にあったわけです。そういう日本の外交の流れもあるので、すかっと文書をもってこれを諸外国、ただアメリカだけでなく他の国々にも通告する。特に中国とかフランスとかも、御一緒にこの条約の加盟国になりましょう、締約国になりましょうとお誘いになろうとしておられるわけですから、お誘いになるお国としては、わが国のようなこんな原爆の悲劇を受けた最初の犠牲国は、この非核原則を強烈に各国に、いまこういうふうに訴えておるんですよということを示す方が、中国にしても、フランスにしても、お誘いに乗るのには条件がいいのじゃないですかね。そのことを含めてもう一度御答弁なさってください。それから大臣、中国だけはお誘いしておられるようだが、フランスその他インドなどもひとつぜひ、アジアの大国でありますので、お誘いになられてはどうかと思います。
  276. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる三原則につきましては、国会でも、衆議院でもかつて御決議のあったことでございますので、政府及び衆議院、国会の立場アメリカにも明らかになっておると実は私ども存じておりますけれども、重ねての仰せでございますので、一度少しその点は考えさせていただきたいと思います。私どもは明らかになっておるとは思っておりますけれども……。  それから、中国、フランスに対しまして、この条約に少なくとも加盟をすべきであるとかあるいはこの条約趣旨に同調せられるべきであるということは、機会あるごとにわが国としても申さなければならないと思いますし、インドの場合にもせんだっての核実験等々から、受田委員が御心配の方向に進む心配が相当にあると見ておりますから、わが国立場を折あるごとに申してまいりたいと考えております。
  277. 受田新吉

    ○受田委員 ちょっと佐々木さん、あなたにお聞きするんですがね。あなたは原子力を担当しておられる役所です。原子力発電所という、発電所から言えばこれは通産省の所管になるのですね、発電所そのものは。それで、日本の原子力行政機構というのは一貫していますか、いませんか。
  278. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 原子力発電に関しましては、いま御指摘ございましたように研究段階と申しますか、あるいは安全性の検査といったような基礎的な部面は原子力委員会中心になっていただきますけれども、具体的に発電所となった場合は、通産省が電気事業法で監督することになっておりますので、そういうふうな分岐点になります。
  279. 受田新吉

    ○受田委員 私は、原子力行政というものをできるだけ統一、一貫して、その役所ごとに分割して意見が分かれるというようなことがないような原子力行政の一元化ということをいまあなたにちょいと伺っている。事実、通産省の仕事と、あなた自身が持つ研究機関とは分かれておるわけです。そういうようなものに対する御認識。
  280. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 この問題は、特に安全性の問題に関しまして「むつ」の事件以来大変国全般として問題になっておりまして、それぞれどうしたらよろしいかという、特に安全の審査、検査等のやり方に対しましては、大変重要な問題でございますので、逃げるわけではございませんけれども原子力委員会まで含めて抜本的な改正をすべきだという意見が強うございまして、したがって原子力委員会自体でやられる仕事でありますけれども、その上にさらにもう一つ暫定的な機関をつくりまして、原子力行政懇談会というものをつくりまして、総理みずからその改革に当たろうということで有澤広巳氏が座長になりまして、ただいませっかく進めつつある最中であります。
  281. 受田新吉

    ○受田委員 佐々木さん、あなたは日本が部分核実験禁止条約の加盟国であることを御存じだろうと思うのです。     〔栗原委員長退席、石井委員長代理着席〕 それは部分の核実験は禁止するという条約、その中の禁止場所が水中、大気圏、宇宙、これはいけないことになっている。しかし地下はいけないとは書いてない。原子力の平和利用のために地下爆発実験というのをやる意思があるかないか、ちょっとお聞きしたいのです。
  282. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 これは戦時利用と申しますか、いわゆる核爆発装置の質的な向上というためには、何か実験をしませんとその進歩の状況がはっきりいたしませんので、核爆発装置を質的に改善を加えた場合には必ずこの実施をするための爆発というものは必要なようでございますけれども、いまお話しのような状況で、地下しか実際それを許されているところはございません。ただその地下実験も、できますれば禁止した方が一番この核拡散防止条約や何かの趣旨に沿うわけでございますので、わが方としてはそれを望むわけでございますが、現在の状況ではそこまで実はいっておりません。希望としては持っておりますけれども、現実問題としてはなかなか困難な問題かと存じます。
  283. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、佐々木大臣日本の場合は平和利用のために原子力の地下爆発をやることは可能である。現実にやるかやらぬかは別として、可能であるということになるわけですか。
  284. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 少しとんちんかんの答弁をしておったようでございますが、核爆発平和利用というものがこの条約にもありますけれども日本はどういう態度をとっているか。これに関しましては原子力委員会としましてはっきりした態度を決めておりまして、現状の技術をもってすれば、名は核爆発でございますが、実際は爆弾と同じような性格のものでございますので、一体、実験というのが戦時利用平和利用と区別ができるかと申しますと、できないようないま状況でございます。     〔石井委員長代理退席、栗原委員長着席〕 核爆発平和利用が実用化し、その技術的な体系もできて、そして画然とこれは平和利用に使う核爆発であるという立証ができてまいりますと、わが方でも当然権利としては保留しているわけですから、その線に乗り得るわけでございますけれども、いまの段階では、いわば平和的な核爆弾ということは実際はあり得ないというふうに私ども考えますので、まだ実際にこれを応用面で応用しているところはございませんから、ですからわが国といたしましては平和的な利用という名であっても核爆発の実験、研究は許しません、とこういう一貫した態度で実はただいまのところは進んでおります。
  285. 受田新吉

    ○受田委員 部分核実験禁止条約が一九六三年に成立して、日本は六四年に締約国に加盟したわけだ。しかしその中では地下実験は許されておるのです。許されていない部分が明確にうたってあるから、許されている部分は地下、その地下さえもやらぬということになれば、一体どこでやるのですか、核の実験は。はっきりしてください。あなたのお仕事はどこでやるわけですか。
  286. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私の方は、ですから核爆発の研究、利用開発はやりません、日本は。
  287. 受田新吉

    ○受田委員 わかった。全然やらぬということでございまして、これは平和利用のためにも地下爆発の実験はやらぬと……(佐々木国務大臣「現在のところでは」と呼ぶ)現在のところというのは、いつやるかわからぬ。ちょっとはっきりしてください。やがてやる日が来るということですか。
  288. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 現在は核爆発というのは平和利用とも戦時利用、いずれとも解釈できる性格のものでございますから、現在はやりません。しかし権利はこの核防条約の中にございまして、わが国としては権利はもちろん保留しております。
  289. 受田新吉

    ○受田委員 日本では核実験をやる権利がある。しかし、それをいまは使わない、こういう御意思のようでございますが、インドは平和利用のためと称してやったですね。だからそこが非常にあいまいになる。平和利用かどうかというあいまいさというのがある。  これはちょっと理論的に聞くんだが、外務大臣日本非核原則があるので、そこでこの条約の加盟国になった場合にという意味でなくて、理論的に聞くんですが、アメリカ核兵器を製造してもらうことを委託し、それを貯蔵してもらって、その兵器を借りてアメリカで実験をするというようなことが理論的に考えられませんか。つまり、日本非核原則だが、アメリカでつくった核をお借りして実験をする。日本の自衛官が行ってそれをアメリカでやる。国内には持ち込まぬがアメリカでやるんだ。そうして借りるんですから所有権じゃない、専有権だ。こうなれば、非核原則よりもそれぞれ離れて、アメリカ日本の自衛官が行って、アメリカ核兵器を借り、その操縦の方法を習い——ちょうどいま西ドイツでアメリカ核兵器を数千発用意しておる。それは管理はアメリカがやっておるが、実際の操縦はドイツ人がやっているのです、ドイツ軍人が。西ドイツは非核原則はないのですから、現に事実そうなっておる。アメリカ日本の自衛官がアメリカ核兵器を借りて、それを実験するということは法律的には、理論的には成立しますね。非核原則には違反しない。
  290. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはむずかしいお尋ねでございますので、私の解釈がもしも違っておりましたら政府委員から申し上げなければなりませんが、私の理解するところではこの条約の第一条、ことにこの場合は第二条で申し上げた方がよろしいかもしれませんが、「締約国である各非核兵器国は、」とございますから、日本はということでございます。核爆発装置を製造せず、その他の方法によって取得しないこと、及びこれについていかなる援助も求めず、または受けないことを約束するとございますので、それがわが国で行われませんで、よその国で行われましても援助を求めずまたは受けないことを約束するという第二条に違反をするのではないかというふうに私は解釈しておりますが、ちょっとお待ちください。政府委員から申し上げます。
  291. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 御質問の点は大臣も申されましたように、援助とは核兵器その他の核爆発装置の製造に不可欠な技術情報を提供することとか、あるいは技術者を派遣して核兵器その他の核爆発装置の製造に参加させることなど、核兵器等の製造に直接的な助力を提供することによって、この条約の目的を挫折せしめるような行為を指すというふうに解しておられますので、これは禁止されておると理解しております。
  292. 受田新吉

    ○受田委員 西ドイツでアメリカ核兵器を、管理権はアメリカが持っておっても実際にこれを動かしていく西ドイツの軍人、その場合はどういう解釈になりますか、いまの解釈は。
  293. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 いまの御設問の中で、西ドイツが管理権を持つということ自身が実はこの条約で禁止されておるわけでございますので、そういう事例は起こらないかと思います。
  294. 受田新吉

    ○受田委員 私は、法律論としていま、一つこの場合を例示するのですが、日本が自衛官を派遣して、アメリカの製造した核兵器の使用方法を習う、その技術も一切その条約に禁止する事項に入っておるか、援助のということになるのかどうか。つまり自衛官がアメリカ核兵器を使う訓練を受けることがどうかということです。
  295. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 この条約の目的及びその趣旨から申しまして、そのような事態はまず考えておりませんほかに、この条約の、核兵器非核兵器国に管理を移譲させないという観点から申しますと、いま言われたような場合、この条約にはもちろん明記してはございませんけれども、恐らくそういうようなことは予想されてない、そういうことは考えられてない、つまりそういうものを認める意味考えてないというふうに申すほかないと思います。
  296. 受田新吉

    ○受田委員 私、この問題はいろいろな場合を想定しておかなくちゃいけない、ただこの条約をお約束するだけの問題ではなくして、次に来るいろいろな問題をあわせて研究しなければならないという点で、いまこれを指摘したのでございますが、日本政府が長い間、五年もかかって、調印から批准までにこれだけの時間をかける、そこには何がこれだけ手間をかけたかということも考えながら、いまここで踏み切ってやるという段階には幾つかの予想される問題——予想されないということでなくて、予想される問題も一緒に取り上げてここで解決しておかないといけない。  それから、いまの佐々木さんの「むつ」の問題でも、あなたの党の鈴木さんが行って、漁民の方方に対して何か打つ手があるかと思ったら、打つ手がさっぱりない。みんなに毛ぎらいされ、そして原子力発電も各所で反対をされる。そんな安全性を欠くがゆえにそういう問題が起こるのだから、これらも含めて原子力行政の統一的な配慮をする必要があることだし、この条約の中に入ると同時に、この三条の具体的な百八十日の期限つきの、国際原子力機関との協定締結規定があるわけだね。これらでも、日本の内部にある原子力行政機能というものをきちっとしておかないと、この百八十日の間に片づくかどうかという問題もあるのですね。そういうものを含めて、時間が来ておりますので、残念な問題ですが、後からまたうちの同志委員に補足説明をしていただくことにしましょう。
  297. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 保障協定に関する調印、正式調印とかあるいは皆様の御判断をいただくあるいは国内法との関連等の問題は、おっしゃられました期間中に必ずやり遂げるようにいたしたいと思っております。それから、先ほどの平和核爆発利益に均てんするというその解釈は、わが方自体開発するというのではなくて、よそで開発したものを平和利用する場合に、その利益には均てんできるという意味のようでございまして、もう一遍、事務当局の方から、はっきり答弁させたいと思います。
  298. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 NPTの第二条で、締約国である非核兵器国——日本のようなケースでございますが、核爆発装置は製造しない、取得しない、それから製造についていかなる援助をも求めない、あるいは受けないということを約束することになります。この場合の爆発装置というのは、軍事目田、平和目的を問わないわけでございます。しかしながら、第五条にございますように、核爆発の平和的応用から生ずることのある利益が、この条約に従って適当な国際的監視のもとで、かつ適当な国際的手続によって非核兵器国に提供されること、このような利益を享受することができると書いてあるわけでございます。提供される利益を享受することができる、これがいわゆる均てんの利益と言っておるわけでございまして、みずから製道あるいは開発をするのではなくて、いま申し上げました適当な国際的監視のもとで、かつ国際的手続によって提供される場合に、その利益に均てんするというのが五条で言う非核保有国権利になっておるわけでございます。
  299. 受田新吉

    ○受田委員 終わります。
  300. 栗原祐幸

    栗原委員長 瀬崎博義君。
  301. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は核防条約の批准に関して、原子力の平和利用に関する部分についての質問をいたします。  まず第一に、核防条約を批准しようとしていることと、それから核燃料との関係についてお尋ねをしたいのであります。  日米原子力協定では、発電規模六千万キロワットまでの濃縮ウランの供給を約束しておりますし、現にわが国アメリカから核の供給を受けているという実情がありますね。しかし、一方で、核防条約第三条第二項では、締約国は、ウラン鉱石や濃縮ウランがこの条約上の保障措置を適用されない限り、非核保有国に供給しない、こういうことを定めております。核防条約に対して日本が未締約国アメリカ締約国という状態で、日米二国間の協定の取り決めと、それからこの核防条約の規定との間には矛盾があるように私は思うのですけれども、これは矛盾ではないのかどうかということ。もし矛盾でないというならば、それはどういう理由なのか、どういう理解によるものなのか、これをまずお答えをいただきたいと思うのです。どちらの大臣がお答えになりますか。
  302. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 NPT三条二項による保障措置と申しますのは、つまり「この条の規定によつて必要とされる保障措置」ということでございますが、これは原子力が平和的な利用から核兵器その他の核爆発装置に転用されていないことを確認することのみを目的とするIAEAの検認措置を言うわけでございます。したがって、この目的が確保されるものであれば、二国間原子力協定等に基づくIAEAの保障措置であっても満たされる。したがって、矛盾はしないというふうに解しておるわけでございます。
  303. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 もう少しわかりやすく答えてほしいのですが、現在日本核防条約に対しては未締約国であるという現状においてでも、日米原子力協定という二国間協定は、矛盾することなくアメリカ日本に濃縮ウランを提供するということを決め、かつこれを実行し得る状態に置いているのだ、こういう理解でいいのですか。
  304. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 確かに現在の日米間には原子力協定がございまして、それに基づきまして、商業契約ベースではございますけれども、ある程度日本の必要とする濃縮ウランの供給は確保されているわけでございますけれども、今後長期的にこの保障があるかどうかということは、必ずしも現在の日米原子力協定それ自身が供給保障がない協定に性格が変わっておりますことのほかに、今後濃縮ウランのもとになります天然ウランをどういうふうに手当てするかという問題を含めまして、実は今度の再検討会議でもその辺が問題になりまして、御承知のように、最終的にはやはり締約国であることを供給する場合に輸出国としては重点を置いて考慮するということがございますので、今後長期的な展望をいたします場合に、この条約に入っていないということは、単に二国間協定があるからということで十分な保障になるかどうかということについては、やはり若干われわれとしては慎重に配慮しなければならないというふうに考えております。
  305. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは、同じ問題を別の角度でお尋ねしたいのですが、外務省の発行しているパンフレットによりますと、「アメリカは一九七一年以来、核兵器拡散条約で負っている義務にもとづき、保障措置が適用されない場合には、外国に対する濃縮ウランの供給を停止することがありうるとの立場をとってきています。」こう述べているのですが、「ありうる」というのですから、これは停止のある場合とない場合を想定しているのだと思うのです。外務省では一体どういう場合に停止があり、どういう場合に停止がないと考えているのですか。これは大臣にひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  306. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 恐らくアメリカが先ほどのようないわば条件をつけましたときの考え方は、核燃料あるいは原子力資材を供給します場合に、十分な保障措置を適用しない限り、これが核兵器その他の軍事目的に転用されるおそれがあるということを心配し、かっこの条約の当事国であるアメリカ義務としてその辺をうたったのであろうと思います。この三条一項にありますように、原子力を平和利用する場合に、そのような物質が軍事転用されないことを唯一の目的として保障措置を結ぶということがございますので、現在日本アメリカと結んでおります原子力協定に基づく保障措置協定、この内容が十分にいまの目的を達成するに足るものであるという判断アメリカにある限り、現在のこの二国間の協定においても、アメリカは十分にその保障が満たされているという限りにおいては、やはりこの条約上のいわばアメリカ義務を満たすものとアメリカは恐らく判断するのじゃないかと思います。
  307. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そういたしますと、原子力産業会議が、NPTを批准しないと核燃料の供給を停止されるとほぼ断定的に述べているのは、これはやはり解釈が間違っている、こういうことになるわけですね。
  308. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 先ほど来から申し上げておりますように、現在の日米協定による濃縮、役務、サービスの供給等は、直ちにこれが切られるということではないと思うのでございます。ただ、今回の再検討会議などでも締約国優先の考え方が出ておりますので、将来の長期にわたる見方としては、そのおそれがかなり強いということは言えると思います。
  309. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうしますと、結局いまの政府答弁は、一応核防条約を批准しなければ核燃料の供給が不安定になる、逆に言えば、これを批准すれば安定するのだ、こういうふうには言っているけれども、これはアメリカが現在二国間協定で結ばれている保障措置協定を十分なものと考えるか考えないか、この判断が変わったときにそういうおそれが出てくるのであって、そうでない限りは、別段NPTを批准しようがしまいが、将来については余り関係はないというふうに私は理解したし、また同時にずっと遠い将来のことを考えてという話であるけれども、それは逆に言えば、濃縮ウランしか使えない軽水炉中心の現状、及びその軽水炉の導入及び核燃料について全面的にアメリカに依存している現状そのものは何ら変化しない、こういう政府立場を改めて証明したものだ、こういうふうに理解していいわけですか。
  310. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 むしろ心配なのは、アメリカの濃縮ウランというよりも、濃縮ウランの供給を受けるためにもその原料である天然ウランは手当てしなければいかぬわけです、アメリカに送って濃縮サービスを受けるわけでございますから。天然ウランの主な供給国でございますオーストラリアあるいはカナダ等は、相当はっきりとNPTの関係を重視する旨を言うておりますので、特に天然ウランに関しては、長期的にはかなりの不安要因が残るということを言わざるを得ないわけでございます。
  311. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは先ほどの国連局長答弁と全く違うじゃないですか。その点、はっきりしてください。
  312. 生田豊朗

    ○生田政府委員 整理いたしまして御説明申し上げます。  先生の最初の御質問の、日本がNPT未加盟であるにもかかわらず、アメリカが核燃料その他の供給を停止しないのはNPTの規定から見ておかしいではないかという御質問だと思います。これにつきましては、先ほど外務省国連局長答弁にもありましたように、いわゆる保障措置あるいは査察というものに関連いたしまして、二国間協定でございましても、たとえば日米原子力協定あるいはIAEAとの間の移管協定によりまして、その基礎は二国間協定日米原子力協定ではございますけれども、国際原子力機関の査察を受けるということで、実効上国際原子力機関の査察を受けておりますので、その点でNPT加盟後と同じような、少なくとも査察あるいは保障措置につきましては実効が上がっているという判断のもとにその権利を行使しない。権利と申しますのは、核燃料あるいはその他の供給を停止するという権利を行使しないというように解釈すべきだろうと思います。  原子力産業会議が、NPTに加盟しない場合は核燃料その他の供給について非常に不安があるということを申しましたのは、ただいま申し上げましたようなことではございますけれども、NPT条約のたてまえから申しまして、少なくともアメリカは、日本が非加盟の場合には核燃料その他の供給を停止するという権利は留保しているという解釈でございますので、それがたとえばアメリカの政策の変更その他の事情がございまして、その留保しております権利を行使するという段階になりました場合には、あるいは核燃料の供給停止という事態が発生するかもしれない、これは重大な事態である、かように解釈したものだと考えますので、全体を通じまして、その形式と実態とのかみ合わせで若干おわかりにくかったとも思いまして、申しわけございませんが、整理いたしますと、ただいま申し上げましたようなことであろうかと考えております。
  313. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 第二の問題として、原子力の平和利用の面において、他の締約国との実質的平等性が確保されたか、確保されようとしているかという、外務省自身が問うている問題で、ユーラトム並み査察は一体どういう意味を持っているかという問題でお尋ねをいたします。  このユーラトム方式と呼ばれる査察の最大の特徴について、詳しいことはよいですから、その柱だけひとつ答えてほしいのです。
  314. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 お答えします。  まず一番大きな柱というのは、ユーラトムに域内の保障措置制度が存在することをIAEAが認めまして、IAEAの行います保障措置制度との調整を保障措置協定議定書、プロトコルという形でとることを認めた。つまりユーラトムにあります保障措置制度というものを前提にしまして、両制度間の調整を認めたというのが一番大きな性格かと思います。
  315. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それをユーラトム並みについて、日本の査察もそうなる見通しがついた、こういうことなのですが、では一体どの点が日本の場合ユーラトム並みなのか、また歴史的背景や技術的背景の違う日本の場合、どの点がユーラトム並みではなくなるのか、この点を答えてほしいのです。
  316. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 ただいま申し上げましたように、両制度間の調整をとるということで、調整内容の主なものを申し上げてみますと、一つは、査察の便に供すると申しますか、査察のために設計情報の審査というのがございます。これはユーラトムと日本の場合にはIAEAと共同で審査するという方式をとっております。  それから非常に大きな点でございますが、通常の査察におきましては、IAEAの査察とユーラトムないしは日本でございますが、日本の査察が同時に行われるということ、それから査察の主体がユーラトムの場合はユーラトム、日本の場合には日本に移りまして、日本が行う査察、ユーラトムも同様でございまして、ユーラトムが行う査察の一部にIAEAが立ち会う。ユーラトムないし日本以外の場合にはすべてIAEAが査察を行うわけでございますが、日本、ユーラトムいずれもその一部に立ち会う。  それから第三番目に、通常査察におきましては、原則としてIAEAは日本の行う——ユーラトムも同じでございまして、ユーラトムの行う査察活動を監察する形で行うという調整をとっております。  それから、施設ごとに付属書をつくってまいりますけれども……(瀬崎委員「細かいことはいい」と呼ぶ)よろしゅうございますか。そういう調整方式をとっておりまして、ユーラトムとどこが違うかと言われますと、これは私ども違うところはないと思うのです。調整の内容につきましてユーラトムと同じ調整方式をとっている、さように私ども考えておるわけでございます。
  317. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 たとえば、先ほどのお話のように、ユーラトムでは前からやっていた査察方式をある意味ではそのままIAEAが是認した、こう言われたでしょう。日本の場合に、日本を主体とした前からやっていた査察方式というものがあるのですか。
  318. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 歴史的には、ユーラトムは前からユーラトム自身が査察をしています。日本では日本自身の査察は従来やっておりません。これはIAEAがいつでも、いかなる場所にも立ち入れるというたてまえのもとに、IAEAの査察が行われておるわけでございます。従来は、日本は、IAEAの行います査察に科学技術庁の職員の査察官がすでに定員としておりまして、IAEAの査察に随行立ち会いと申しますか、立ち会いを行って、事実上一緒に査察活動をやっておるということでございます。したがいまして、確かに御指摘のように、違うとすれば、ユーラトムの場合には既存の査察というシステムを持っておるけれども日本の場合にはこれからつくるという点は違うかもしれませんが、いま申し上げましたように、事実上はIAEAが行っております査察と一緒に査察官が現在おりまして、一緒に行っておるという実態がございます。
  319. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それはまさに言葉が逆で、形式的にはユーラトム並みで、実質的には日本にはユーラトム並みの実質はない、こういうのがあなたの答弁から出てくる正確な内容じゃないかと思うのです。  問題は、ではそういうことが平和利用の面で実質的な平等性の確保とどういう関係を持っているか、これがやはり一番大事なところだと思うのです。当然査察体制なるものも原子力行政の一部分であるわけでありますが、日本の原子力行政の欠陥が特別クローズアップされた問題に「むつ」問題がありますね。現在日本の場合は、原電の一号機を除いてすべてアメリカから導入された軽水炉であります。このことについて総理大臣が任命をいたしました「むつ」放射線漏れ問題調査委員会、俗称大山委員会と言われておりますが、この中で「わが国の発電炉は、まず英国コールダーホール改良型炉を導入し、その国産化を進めるという路線が最初にあり、間もなく米国軽水炉の導入が可能になったので、産業界はコールダーホール改良型の国産化路線から軽水炉導入に大きく傾斜した。しかし、国には軽水炉国産化に乗り出す姿勢は乏しく、軽水炉業界の導入に任せており、」云々と書かれている。  こういう指摘は、きわめて控え目な表現ではありますけれども、これはある意味では欠陥原子力船「むつ」を生み出した根本的な原因であるということの指摘でもあろうかと思うのです。こういうところに今度のNPTに参加することが何らかの大きな変化をもたらすならば、確かに実質的平等に一歩近づいたと言えるだろうけれども、実体のない査察がユーラトム並みになったからといってこういう一番根本問題に変化がないとするならば、これは実質的な平等性への前進にはならないと思うのです。一体、政府は今度のこの条約批准からこの根本問題にどういう変化をもたらそうとしているのですか。これは大臣答弁を求めます。
  320. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 この条約によります保障措置というのは、軍事転用するのを防止するというのが主でございまして、いわゆる炉の安全性云々の問題とは質の違う一つのねらいであるわけでございます。したがって、その査察の主体は、軍事転用というおそれのあるところはどこどこ、どの個所をどういうふうに検査をすれば一番よろしいかというところにこの問題の焦点があるわけでございまして、いま御指摘のございました軽水炉のいわゆる安全という、第三者あるいは環境を汚染するかどうかといったような問題、あるいは炉の故障等をいかになくするかといったような問題等に関しては、この条約に基づく査察はそれに直接関連を持ってないのでございまして、私どもは前者の平和利用に徹するという、そのためにはどういう査察をすべきかというところにむしろ問題があるというふうに解釈してございます。
  321. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いまの、この査察の問題と大山委員会の指摘は質の違う問題だ、ここが問題なんですよね。本来、自主的な査察体制が本当に中身のあるものであるためには、計量管理等やはり相当高度な技術蓄積がなければならない。これが、先ほどの半澤次長の話ではないけれども最もユーラトム諸国と日本の違い、つまり日本には過去における査察の実体はなかったというのです。ですから、そういうふうな日本の原子力行政全体の欠陥がNPTに加盟することによって何一つ変わらない内容で、査察体制だけが特別信頼を得るようなものになるということはあり得ないと思うのです。  それから同時に、この問題が、たとえばウラン濃縮等についてもアメリカに依存している現状に何らかの影響を与える、これも重要な問題なんですが、先ほどの問題に関連するのですが、外務省側のパンフレット等を見ますと、「濃縮ウランのほとんどを米国に依存しているわが国としては、」こういうふうな表現を用いてNPTの加盟の必要性を説いている。先ほどの生田局長の話からいけば、むしろそれよりも天然ウラン云々だ、こういう話を持ち出した。こういう点では依然として外務省と科技庁との見解は相違したまま来ているわけなんです。ですからこの点でも、日本の将来の原子力開発が一体自主的な道をとるのか、あるいはあくまでアメリカに依存するのか、それともそれ以外の道をとるのか、こういう点でどうしてもここははっきりさせなければならない問題なんです。ひとつこの点は大臣から統一した見解をはっきりおっしゃっていただきたいと思うのです。
  322. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 先ほど、査察技術は日本にはないんじゃないかというふうな御疑念でございまして、この点は方々で指摘されるのでありますが、先ほど次長の説明にもございましたとおり、過去長い間、国際機関の査察官が参りまして査察をする際には、私どもの方の査察官も必ず立ち会いまして、ほとんど一緒に査察しております。それから、国際原子力機関にはわが方から技術者が参りまして、一緒にいろいろな規定の作成あるいは検査の態様等技術的に検討しておりますので、決して質的に劣るとは実は考えておりません。その点は誤解ないようにお願いしたいと思います。
  323. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 ただいま、私の方と外務省との間で食い違いがあるように御指摘ございましたけれども、私、言葉が足らない点がございましたのですが、濃縮ウランも濃縮サービスも非常に大事でございますけれども、天然ウランもきわめて大事である。で、いまの濃縮というのは、その原料である天然ウランを全部アメリカが手当てするわけでございませんで、日本が大部分手当てして濃縮サービスにしてございます。しかし、濃縮サービスが入らなければこれはまた非常に困るわけでございますので、比較してどちらかにウエートをかけるというふうにお受け取りいただいたといたしますと、私、言葉足らずで、両方ともでございます。
  324. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 外務省の表現はそうなっているということを言っているわけです。では、その点についての外務省側の見解も求めます。
  325. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 いま科技庁から説明があったのと全く同じでございます。つまり、天然ウランの手当てにつきましてはカナダあるいは豪州等に主として依存しておりますけれども、いわゆる濃縮サービスといいますか、天然ウランを濃縮ウランにする役務としましてはアメリカに依存するしかございませんので、その観点からちょっと強調したということでございまして、考え方は科技庁と変わっておりません。
  326. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 なお問題は残りますけれども、時間がないので急ぎます。  第三の問題は、原子力発電の過程で必然的に蓄積されるプルトニウムの核兵器製造への転化の危険性に対して、この核防条約が何らかの抑えの役割りをするのかどうかという点であります。私どもがこの危険性を追及しますと、大概予想される答えとしては、原子力発電所が経済的な限界までウランを燃やせば、軍事転用の可能な質量数二三九のプルトニウムの純度が非常に低くなって、実際には軍事兵器に使えなくなるのだ、こういう答えが出てくるのです。しかしこれは証明にならないと思うのです。現にアメリカやイギリス、フランスなどでは核兵器をつくっているわけですが、ではこういうところで現在原子力発電の過程で生まれてきておるプルトニウムを全く兵器に使っていないと、政府はどういう方法で確認しているのか。あるいはまた、発電所の場合でも、たとえば運転期間をうんと短縮して途中で燃料を引き出したりするならば、きわめて高いプルトニウム二三九を含んだプルトニウムは取り出せるわけです。ですから、こういうことが絶対ないと、一体どういう点を押して政府は言っているのか、こういう点をまずお尋ねしたいと思うのです。
  327. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 発電炉からただいま出ますプルトニウムの質はそのまま、九十数%を要する爆弾をつくるプルトニウムにならぬことはもう御承知のとおりでございます。ただ、いかなるプルトニウムであれ、これを転用できないように、そこが査察の一番のポイントでございまして、保管がどういうふうになっているか、それから炉の中で運転中にどれほどのプルトニウムが生成しつつあるか、あるいは再処理工場でどれほどのプルトニウムを産出したか、その保管はどうなっているんだ、その使用計画はどうなっているんだ、これが全部査察の一番のキーポイントとして対象になるわけでございますので……。
  328. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 質問に答えてください。私が言っているのは、現に核兵器をつくっているアメリカやイギリス、フランス等で、原子力発電所から生まれてくるプルトニウムをいかなる状態においても核兵器に転用していない、こういうことが政府は証明できますか、こういうことを言っているわけです。
  329. 生田豊朗

    ○生田政府委員 これは先生指摘のとおり、証明できないのでございまして、たとえば原子炉で濃縮ウランを核分裂反応を起こさせました場合も、その核分裂反応の程度を比較的短くとどめることによってかなり高純度のプルトニウム二三九をとることは可能でございます。あるいは核分裂反応を完全にやりました後でも、これをさらに処理することによってプルトニウム二三九をその中から抽出することも可能であると思いますので、原子炉を使いまして爆弾の原料になりますプルトニウムを一切つくっていないということは言えないと考えております。
  330. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そこで、現在のわが国における生成プルトニウム及び抽出プルトニウムの総量は幾らぐらいあるのか。私たちが決して認めているものでもありませんし、またそれはできるものだと思わないけれども、もし六十年六千万キロワットという政府計画が強行された場合、その六十年度のプルトニウムの蓄積量は一体どれくらいになるのか。
  331. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 六十年度の数字はすぐいま調べますから……。その前に現在どうなっているかということでございますが、昨年十二月末現在でプルトニウムの形であるもの、抽出されたプルトニウムが七百十七キログラム、それから発電炉の中で燃料の形で、その中に生成されておりますプルトニウム、その中に混在しておりますプルトニウムでございますが、それが二千四百八十一キログラム、昨年末現在の数字でございます。
  332. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 約三トン強ですね、合わせますと。先ほどから生田局長答弁があったように、原子力発電所で蓄積されてくるプルトニウムは、これは操作いかんによって原爆等には転用できる、これも明らかになりました。ですから、現在の三トン強のこの蓄積プルトニウムが直ちに軍事転用ができるかどうかと言えば問題ではあるけれども、目安として言えば、たとえば長崎型原爆などになれば十キログラムあったら一発できるわけでありますから、これは大変な数になりますね。——六十年度わかりましたか。
  333. 生田豊朗

    ○生田政府委員 昭和六十年度六千万キロワットの原子力発電設備が稼働するといたしまして、年間の生成量が約八・四トンでございます。
  334. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これはやはりきわめて恐るべき蓄積になるということが証明されるわけであります。この点はやはり外務省のパンフレットでも認めております。「核武装能力の高い日本が」なんというようなことが書いてある。そういう点では非常に潜在能力は高いというふうに見なければなりません。この点について、このNPTに加入すれば一定これが抑えられるという善意の学者の意見もないではないのでありますが、本当にそういう日本の核武装がこの条約加盟によって抑えられるのでしょうか。
  335. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 まず一つは、この条約以前に、御承知のように超党派でつくりました原子力基本法がございまして、一切研究、利用開発は平和目的に限るという大原則になっておりまして、わが国自体でこれをつくったり所有したりということは許されておりません。したがいまして、その原則を生かす意味で、この基本法にのっとりまして、原子炉規制法でそういう核分裂の物質を厳重に管理いたしまして、転用できないように監視しているのが実は原子力委員会の最大の任務でございます。その上にただいまの国際機関が参りまして査察をするわけでございまして、その査察の目的も、つとにわが国原子力基本法等で転用を禁止しているその査察と同じ意味を持つわけでございますから、両方で、さっき御指摘のございましたようにわが方が主体になり、向こうが一緒になって今後は査察するわけでございますから、そういうおそれは毛頭なかろうというふうに感じております。
  336. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ところが、これも外務省等の解説によれば、「条約の第一〇条によって、三カ月の予告期間でもって条約から脱退できるようになっています。」むしろこの脱退できることを強調して、脱退してしまえばもはや拘束は受けないという点では、一体どういう意図からこの脱退の側面を外務省は強調してむしろ核武装への道が開かれているかのような印象を与えているのか。どうなんですか。
  337. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 大変むずかしい質問でございますけれども、いまの日本の核燃料あるいは設備等は、挙げて二国間協定に基づいて供給されていることは御承知のとおりでございまして、したがって、もしその二国間協定を活用してまいりますと、日本軍事利用ということになりますれば今後核燃料は一切供給しないのみならず、過去に供給いたしました核燃料も設備も全部撤収します、こういうふうに二国間協定はなっております。したがいまして、本来平和利用そのものに活用しているわけでございますが、もしもそういう軍事利用というものをやりますればこれは日本自体が原子力の開発ができないわけでございまして、そういうことは万々いたさぬというたてまえはそのまま生きていくものと私は考えております。
  338. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 解説におきましてこの脱退のところを特に強調したというつもりではないわけでございまして、二十年という長い期間でございますから何があるかわからぬではないかと考えられる向きに対しては、自国の至高の利益を危うくするような事態が出てきたときにはという、脱退の条項もございますということを申しているのであって、いま国会に御同意をお願いしようとしておりますときに、私ども、脱退の方法もございますからとにかくというような、そういう軽々しい気持ちで申しておるようなことは一切ございません。
  339. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先ほどの科技庁長官ほどの決意があるとするならば、私は、このNPTに参加することによって歯どめがかかるというよりは、政府みずから、たとえば核物質が現在民有になっておる、これを廃止して国家管理にして、核保有量や使途については詳細これを公表する、こういうことは当然やられなければいけないと思うのです。その点が一体やれるのかどうかということ、あるいは原子力の研究開発国民環視のガラス張りの中に置く、つまり、事原子力に関しては、いかなる秘密の軍事開発も許されないような研究開発の全面公開、これを行う、このことをきちっと政府が産業界に対してやらせる、あるいは政府自身も守っていく、こういうことになるならばそれは言われたことを私は信用できると思うのです。やれますか。
  340. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 いまやっております。
  341. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ところが、時間がありませんので多くは言えませんけれども、たとえばあの分析化研のデータ捏造事件が起こったときに、最後まで政府は電力会社の波高分析器によるチャートは出さなかった。なぜか。これは企業機密である、こういうことであったわけでしょう。また、「むつ」問題に関しても、これはあさって集中審議が行われますから、そこでいろいろとアメリカとの関係等は明らかになってくると思うが、こういう点でも一番学者などが知りたいと思っている点について資料が出されない。こういうふうな現実で、いわゆる自主、民主、公開の三原則が踏みにじられている。こういうふうなことが第一、いま国会で答弁していることとやっていることと違うではないか、こういうことになるのですね。わかりますか、私の言うこと。現にそういう事実があったでしょう。
  342. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 自主、民主、公開の三原則に違反するとおっしゃいますけれども、少なくとも自主、民主には違反しないはずでありまして、公開の点はどうかと申しますと、公開は、何からかにまで全部公開するというのじゃございません。そういう意味じゃなしに、やはり研究の成果を発表して今後の開発等に備えるような場合、あるいは商業機密に属するような場合にはこれは当然公開せずに済むはずのものでございまして、そういう意味を兼ねまして、私どもはできるだけ公開しますけれども、しかし物によっては公開できないものがある、こういうふうに解釈いたしたいと思います。
  343. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 できるだけという注釈が必ずつくのですね。  そこで第四点目は、現在わが国において原子力の平和利用について何が優先条項かという点なんです。これは結論であります。かいつまんで簡単に答えてほしいのですが、現在日本原子力発電所の稼働に入っているのが一体何基、何キロワットあるのか、この中でお休みになっているのが何基、何キロワットあるのか、まずこれを答えてもらいます。
  344. 生田豊朗

    ○生田政府委員 現在、原子力発電所でございますけれども、運転中のものが四基でございます。それから定期点検中のものが四基でございます。それから、故障等によりまして現在停止しておりますものが三基、以上でございます。
  345. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私の方から正確に言いましょう。現在日本で営業運転に入っているのが八基、三百八十九万キロワット、このうち何らかの理由でお休みになっているのが五基、二百四十四万キロワット、結局動いているのは三基、百二十万キロワット、全体の三分の一です。しかも、この三基動いているうちで定格出力で運転できているのは島根第一号基だけで、これは四十六万キロワット、原電東海一号基は十六万六千キロワットの定格に対して十四万キロワットで運転中、高浜の一号基も排水口にクラゲが詰まったか何かで、八十二万キロワットの定格に対して六十万キロワットの運転、こういうおさびしい状況なんです。ですから、これで順調だなどと言ったら、これは本当に言っている方がおかしい。こういうことになるそもそもの原因が、先ほどから申し上げていたように、日本の原子力開発が全くアメリカに依存し、それも軽水炉一辺倒で来ている。当然濃縮ウランもアメリカに依存する。こういう状態を今度のNPTの批准が何ら変えるものでない、こういうことが非常にはっきりしたと思うのです。  ですから、こういう点で急ぐべきは、文字どおり自主的な民主的な開発体制を整えること、とりわけ原子力安全委員会の設置など、安全審査体制を飛躍的に拡充強化すること、あるいはエネルギー公社の設立で、原子力部門については国が責任を持ってこれを開発する体制をとる、こういうことがまず必要なんではないかと思うのです。そういうことを抜きにして、あたかもNPTへの加盟が何らか日本平和利用に実質的な平等性を与えるかのような、これはある意味で三木内閣の欺瞞と言わなければならないと思うのです。  いろいろと答弁を求めたい点がありますけれども、私どもの見解を述べて質問を終わりたいと思います。
  346. 栗原祐幸

    栗原委員長 内海清君。
  347. 内海清

    ○内海(清)委員 いろいろお伺いしたいことがございますが、時間が非常に制限されておりますので、端的にひとつお伺いいたしたいと思います。  実はこの条約の批准の前提条件は、私は大体三つあると考えておるわけです。一つは結局核軍縮の問題です。これは実際問題として、第二次の戦略兵器制限交渉などを見ましても、米ソの核保有国はむしろ軍拡になっておる、こういう問題があるわけです。でありますから、この点はやはりひとしく国民もいろいろな疑念を持つ問題だと思うのです。  それから第二の問題としては、いわゆる安全保障の問題があると思います。これらにつきましては、恐らく時間がございませんから、外務委員会でもあるいはいままででもずいぶん御論議になったことと思いますので、これは時間があればまたお伺いすることとして、第三の条件としまして、私はいわゆる査察に関します保障措置の問題につきまして若干お伺いしたいと思うのであります。  今回の批准しようというに当たりましては、いわゆるわが国の査察が自主査察ということで合意したということ、こういうことだと思うのであります。その査察体制という問題、自主査察するのだが、その査察体制というものはどういうふうにつくられるのだろうかという問題であります。ここ数年来のわが国のこれに対する動きを見ますと、まず特殊法人の保障措置センター、こういう構想がございました。ところがこれは御承知のようにつぶれたということでございましょう。次に出てきたのが原子力局に安全部を設けてこれをさせようという、こういうふうな構想があったと思うのであります。ところがこれも現在でははっきりしていないのであります。現在ありますいわゆる財団法人の核物質の管理センター、こういうものがございます。これは、私の承知しておるのでは、自主査察機関として政府が相当力を入れられた問題だと承知いたしておりますが、これらを含めまして、この問題に対してどういうふうな御見解があるか。これはあるいは科学技術庁になるかもしれませんが、これをまずお伺いいたしたいと思うのであります。
  348. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 細部にわたりましては担当官から御説明させますが、現在国連機関でわが国の査察をしておるのは、おおむね月二名、二十日間平均くらいで査察をしてございます。国連機関の対日査察員は大体十一名でございます。それが現状でございまして、とりあえずはそれに相当する体制整備するのが一番妥当かと存じますが、ただいまわが国で査察官に該当する専門職は大体八名ございます。この協定が批准になりますればさらに六名追加することになっております。十四名になりますので、量としてはまずまずそう不十分じゃなかろう。  それから、問題は質の問題でございますけれども、質の問題に関しましては、先ほども御説明ございましたように、わが国で技術的に査察能力ありやという点でございますけれども、これは先ほど来申しましたように、国連機関の査察官が来ました際には必ず同道いたしまして、一緒に査察をしている関係上、査察の実態には通暁してございます。また、わが国から国連機関には何名となく人員を送りまして、そして向こう国連機関と一緒になって勉強もし、研究もしてございますので、この人らがまたたくさん国内に帰ってきてもおりますから、そういう人らを動員するとか、あるいは先ほどもお話しございましたかと思いますけれども、核物質管理センターというものをただいまつくっておりまして、川島君という、かつて原子力局におって、国連機関に長く行っておりました方が主務になって、実は核物質に対する情報等の整理をしてございます。まあ、この人らの援助を得るとかということにいたしますれば、質的にも決してユーラトムに劣るということはなかろうというふうに実は考えてございます。
  349. 内海清

    ○内海(清)委員 そうすると、これは核物質管理センターというものによって、いま申されましたようないろいろ体制を整えて自主査察をする、そのことは決してユーラトムのものと劣らない、こういうふうに理解していいわけですか。
  350. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 ちょっと説明が悪かったかもしれませんが、本体はあくまでも原子力局の査察専門官がこれに当たりまして、ただそれに対して、いろいろ情報の収集とかあるいは査察技術の点検とかいったような点はこのセンターとともども深めていきたい、こういうことでございます。
  351. 内海清

    ○内海(清)委員 そうすると、主体はあくまでも原子力局、こういうことですね。
  352. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 ただいま御審議をいただいております安全局ができますれば、その安全局の中でそういうしっかりした核防に基づく査察の体制整備したいと思います。
  353. 内海清

    ○内海(清)委員 それでは、安全局でこれは大体担当すると、かように理解していいですね。  そうしますと、この保障措置につきまして次の問題は、IAEAとの予備交渉で合意されたと言われておりますが、これは四十六年の六月でしたか、モデル協定というものができたはずでございます。その協定の内容でありますが、すなわち、査察の回数であるとかあるいは当事国の管理責任の問題であるとかあるいは査察の方法、こういうものについてこのモデル協定で大体協定できておるようであります。その点につきましてひとつ御説明いただきたいと思います。
  354. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 御指摘のように、NPTの発効に伴いまして、それまで行われておりました査察のあり方について徹底的な見直しをするということで検討した結果、モデル協定が四十六年にできておるわけでございます。ただいま御指摘のございました、まず当事国の責任がどうなるかということでございますけれども、それまでの間は保障措置の適用というのはもうIAEAが一方的に行うということであったわけでございますが、モデル協定におきましては、NPTの締約国は計量管理制度をまずつくり、かつ維持する、その維持した上でIAEAはその国内制度の認定を行うという形で保障措置を適用するということに変わってまいりました。これは当事国の責任の態様でございます。  それから査察でございますけれども、このモデル協定ができるまでは、IAEAの査察員というのはいつでも、どこでも、あるいはどのような試料にでも近づくことができるということになっておったわけでございますが、このモデル協定では、立ち入り個所を査察業務を遂行する上で必要最小限な個所に限る、それから、査察の量と申しますか、査察の回数につきまして、原子力施設の種類ごとに上限を決めていくというような改定が行われておるわけでございます。  それから、実際の査察の実施の方法でございますけれども、記録の点検なり機器の校正、監視、封じ込めといった手段をモデル協定の中で列挙いたしまして、合理的に査察を実施していく。特に施設の操業に影響を与えないような態様で実施するといったことが定められまして、モデル協定ができます前までのいわば基準のない形から、モデル協定でただいま申し上げましたような合理的な改定が行われたということがございます。
  355. 内海清

    ○内海(清)委員 どうも時間が気になって余り議論ができませんから、一応御説明を承って、次に行きたいと思います。  ついでに、この保障措置の問題に関連しますが、先ほどもあっておりました査察に伴いますこの商業機密の漏洩、こういう問題ですな。これはかねてからいろいろ心配されておるところでございますが、こういう場合の保障措置というものはあるのかないのか、どういうふうになっておるのかという問題です。
  356. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 御案内のように、新しいモデル協定に準拠いたしました今回の保障措置協定では、まず商業機密が漏れないようにあらゆる手段を講ずることになっておりまして、それまでの抽象的な守秘義務だけではなくて、具体的な規定を協定の中に織り込んでおりますので、まず商業機密が漏れるという懸念はほとんどないと考えておりますが、もしあった場合にどうなるか、保障措置があるかというお尋ねでございますが、これは三段階の手続でその問題の解決に当たる。まず第一は、わが国とIAEAとの間の交渉になります。それから次に、IAEAの理事会にこの問題の解決を審議してもらうという機会がございます。で、それでも解決がしない場合には国際仲裁裁判所に移行いたしまして、そこでの裁定で問題を処理する。日本が、商業機密が漏れたことによって損害が発生いたしました場合には、損害賠償の請求になろうかと思いますけれども、ただいま申しましたような手順で解決をしていくことになると思います。なお、IAEAの職員に対する服務規律は非常に厳しゅうございまして、IAEAの方ではその職員に対して、仮に職員がやめた後といえども、IAEAとしてはそういう紛争解決の責任は負いますということを言うております。
  357. 内海清

    ○内海(清)委員 そうすると、大体そういう場合の保障措置は十分考慮されておる、かように解釈していいわけですね。  次にお尋ねいたしたいのは、この平和利用に関して、先般もいろいろ原子力の提言について科学技術委員会で参考人を呼んで聞きました。原産の責任者を呼んで私も聞いたわけです。ところが、原産はいまこの批准に賛成の立場をここ三年ぐらい前からとっておるわけでありますけれども、これを批准しないと平和利用の核燃料などの供給に不利益がある、こういうふうなことが強調されておるわけであります。さらには、今度の条約によりますと、これを批准することによって核軍縮にわが国が大きな役目を持つことができるであろう、こういうことであります。ところが、御承知のように、アメリカが、非批准国であるところのエジプト、それから非署名国であるところのイスラエルに原子力施設の提供を約束した。これはわれわれは新聞報道などで承知いたしたわけであります。そこにいろいろ疑問が出てきておるわけであります。この点については政府はどういうふうなお考えを持っておられるか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  358. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題につきまして、かつてニクソン大統領がイスラエル及びエジプトに対して炉の供給等々を約束したという事実があるわけでございますが、その後、米国内におきましても議会を中心にそのことについてのいろいろ議論が行われまして、これは実はこの協定から申しますと当然そうなければならないわけでございますが、アメリカは少なくともこの条約の加盟国でございますので、この条約に定められた義務を守らなければならない。すなわち、そのような技術あるいは資材の供与は当然に保障措置協定に相当するだけの厳しい査察を受けなければならないということになっております。これは相手国が非加盟国でありあるいは未署名国であるということを別にいたしまして、供給者側のアメリカが加盟国であるということから生ずる義務でありまして、したがってそういう問題が当然にございます。  そういうこともありまして、今日までエジプト及びイスラエルにいたしました約束は実現を見ないままに今日に及んでおる。伝えられるところによりますと、米国側がかなり厳しい保障措置協定締結を要求をして、それをめぐりまして相手国との間に合意が成立しないまま供与が実現をしていないというふうに承知をしております。
  359. 内海清

    ○内海(清)委員 そういう点が非常に国民をも迷わすと私は思うのです、そういう真相がわかりませんから。しかも今度のこの条約につきましては、米ソというこの核保有国が最も優位な立場に立っておる。非核保有国との間に不平等があるという、これが一つの大きな問題にもなっておる。そのアメリカがそういうふうなことをやるということは、締約国としての義務を十分果たさないという疑問を持たすようなことがあるということは、この条約に対する国民の信頼というものがまた揺らぐのじゃなかろうか、こういうふうに思います。この点についてなお御意見ございましたらひとつお聞かせいただきたい。
  360. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は、それでありますがゆえに、援助を受ける国ばかりでなく、与える国に対して査察についての義務を課しておるわけでございまして、ことに最近散見せられますように、そういう危険が、インドの場合にはこれはもともとこの協定発効以前にカナダからなされました援助に対してということでございましたけれども、そういうことは間々ありがちでございますから、各国が大変にこのごろはこの点に神経を使うに至っておるわけでございます。したがいまして、問題は、この加盟国についてははっきり法律上の枠がかぶせてございますが、非加盟国についてどうであるかという問題は実は残っておりまして、この点についてはフランスなどは、加盟はしないけれどもこの条約のそういう趣旨には賛成であるということを申しておるようでございますが、その点は十分われわれも監視をしなければならない問題であると考えております。
  361. 内海清

    ○内海(清)委員 そういう点につきましては、やはり国民の正しい理解を得るような処置をおとりいただかぬと、問題が、疑念が残るであろう。ことに核保有国でありまするフランス、それから中国、インドがこれに加盟しないということがまた大きな問題であると思います。これは今後の問題だと思いますので、こういう点につきましても十分なる対処をお願い申し上げたい。  時間が参りましたので最後でありますが、これは科学技術庁になると思いますけれども、過日のジュネーブの再検討会議、ここで打ち出されました核燃料再処理工場のプール化構想というのがあると思います。こういうものがあると思いますが、これは具体的にはどういうふうなあれであるか、ひとつ御説明いただきたいと思います。
  362. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 今度の再検討会議でいま言われましたような考え方が、アメリカ中心といたしまして一つの構想として提案されたわけでございます。この核燃料サイクルセンター、具体的には再処理工場、プルトニウムの燃料製造工場、それから使用済み燃料貯蔵施設、こういったものを含んだセンターをアメリカ考えておるようでございます。この考え方を出しました背景は、経済性あるいは安全面、さらには盗難防護、フィジカルプロテクションと申しておりますけれども、さらに保障措置適用の観点からこういったものをつくるということは有用ではなかろうか、したがってその再検討会議でひとつ検討してみたらどうかということでアメリカ中心に提案したわけでございます。ただ、いま申し上げましたように、まだこれは構想というような一般的な性格の域を出るものではございません。したがって、それが果たして実現できるかどうか、その可能性については今後、一番適当な国際原子力機関を中心に検討が開始されるというような状況でございます。
  363. 内海清

    ○内海(清)委員 これでやめますが、いまのはまだ構想段階だそうでございますのでこれからの問題だと思いますが、最後一つ要望しておきたいのは、ジュネーブの再検討会議の宣言というものを政府は非常に高く評価しておられるようでございます。しかし、国際問題はこうした宣言だけでは不十分だと私は思うのであります。宣言してそれが実際に実現しない問題も多々あるわけでございますので、これはできるならばひとつ決議まで持っていく、こういうふうに今後外交問題として取り組んでいただきたいと要望して、終わります。     〔栗原委員長退席、水野委員長代理着席〕
  364. 水野清

    ○水野委員長代理 土井たか子君。
  365. 土井たか子

    ○土井委員 私はポストベトナムという現実の問題に立脚をいたしまして、少し防衛庁長官にお尋ねをしたいと存じます。  ことしに入りまして、御承知のように連鎖反応のような状態で引き起こされてまいりましたインドシナ情勢の急変で、アメリカが撤退をいたしました。カンボジア、南ベトナムの両反共政権の相次ぐ敗北、そうして崩壊という結末を迎えました後、アジアでの次の舞台は恐らく朝鮮半島であろうというふうな声がただいま急速に高まってきておるわけですね。事実、金日成主席を団長とする朝鮮民主主義人民共和国の代表団の訪中がございまして、これに対して韓国の朴大統領は北の脅威というものを強調いたしております。五月の十日には百四十万人の市民による総決起大会というのを開催をしているわけなんです。  日本側といたしましては、韓国条項というのを再確認いたしまして、このたびの予算委員会で三木総理は、韓国に在日米軍が出撃する場合は事前協議でイエスを与える答弁というのをされております。また防衛庁長官も御承知のように、アメリカの方では他方シュレジンジャー国防長官が、北朝鮮の南進があれば敵の心臓部をたたく必要があるというふうな発言もされております。朝鮮半島の危機に関してはしきりにこのところマスコミも数多くの論評を報じております。このような状態を見てまいりますと、朝鮮半島は近い将来紛争が起こり得るかもしれないというふうな声が国民の間でもささやかれるのは当然だと思われるわけですが、そこで長官にお尋ねしたいのは、現在の朝鮮半島の危機について、どのような長官御自身見通しをお持ちになっていらっしゃるか、これをまずお聞きしたいと存じます。
  366. 坂田道太

    坂田国務大臣 御承知のように朝鮮半島、北朝鮮と韓国との間に軍事的な対峙をしておるということは事実でございます。  そうしてまた、その間に最近小規模ではございますけれども、武力衝突があったことも事実でございます。しかし、いま先生が御指摘になられましたように、最近金日成氏が中国に参りまして、最初中国に入りましたときの声明といいますか、それをまた受けました中国側の歓迎の言葉といいますか、それはかなり調子が高かったように思いますけれども、その後会談を終えまして帰りました後における共同声明、それを見ますると、かなりトーンは落ちておる、そういうようなことからいたしまして、中国側も朝鮮半島で何らかのことが起こり、そしていまの現状が変更されるというようなことに対しましては抑制的である。同様に、ソ連側におきましても同じようなことが言えるのではなかろうか、またアメリカそれ自身にいたしましても、この朝鮮半島に事が起こるということは望んでいない。いわんや日本はここが平和であってほしいと願っておるわけでございますから、私はポストベトナムにおきまして、確かにアジア地域における情勢の変化はございましたけれども、しかし、いまここで朝鮮半島に大規模な戦争状態が起こるというふうには見ておらないのでございまして、私といたしましては冷静にこれを見守ってまいりたいというふうに考えております。
  367. 土井たか子

    ○土井委員 ただいま防衛庁長官から、朝鮮半島にはそうそう紛争は起こり得ないであろうという趣旨の御発言を承ったわけでありますが、何らかその紛争は起こり得ないというふうなことについての防衛の専門家とされての長官の科学的な根拠がおありになれば、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  368. 坂田道太

    坂田国務大臣 多少いろいろの情報は聞いております。また軍事専門家の意見も聞いておりますが、ここで申し上げるほどのこともないわけでございまして、全般的に先ほど申し上げましたことが大体の私どもの総合した判断でございます。
  369. 土井たか子

    ○土井委員 ここで申し上げるほどのこともないとおっしゃるのは、機密に触れる問題であるから言うことは差し控えたいという御趣旨でそういうふうな表現をおとりになったのか、それとも国会論議でそういうことを問題にしてみても始まらないじゃないかというふうな意味でおっしゃっているのか、いずれでございますか。
  370. 坂田道太

    坂田国務大臣 別にそう秘密にしているということでもございません。常に私ども情報はとっておるわけでございますが、しかしそう皆様方に御報告、こうだというようなことはございません。大体新聞にあらわれておる程度、それから北と南の兵力の状況等は承知をいたしております。そういうことをもしお聞き取り願えれば、あるいは防衛局長から申し上げてもいいと思います。
  371. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 大筋はただいま長官から申し上げましたとおりでございまして、結局御案内のように、軍事的な能力というものについては、これはそれぞれの評価があると思いますけれども、問題はその軍事能力をどう使用するかという政治的な決断といいますか、意思の決定ということが大きな問題になるというふうに思うわけでございまして、その辺は先ほど大臣から申し上げましたように、政治的な判断といいますか、こういった点では大きな紛争が起こる可能性は少ないのではないかというふうに申し上げたわけでございますが、全くそのとおりだと思います。
  372. 土井たか子

    ○土井委員 しかとした科学的な根拠というのはここの中ではお示しになっていらっしゃらないわけですが、ただいままでの答弁からいたしますと、いろいろな状況を総合して判断をした場合に、現在のところムードとしてはそうそう紛争がすぐに起こるという状況ではないというふうな御判断を持っていらっしゃると解釈をしておきたいと思うのです。  ところで、先ごろ外務省は、在韓国連軍司令部解体はもはや国連で阻止することができないというふうな趣旨の見解を示されたわけですが、このような事態を防衛庁としてはどういうふうにごらんになっていらっしゃるか、御所見のほどをお伺いしたいと存じます。
  373. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 在韓国連軍の問題につきましては、結局休戦協定という現在の朝鮮半島の態勢をつくっております基礎が、国連軍解体ということによってなくなるということで、そのためのいろいろな措置というものが必要ではないかというお話がいままで出ておるわけでございまして、私どもが軍事的に見ました場合には、そういう政治的な基盤というものを別にいたしまして、的に評価をいたしました場合には、在韓米軍というものの駐留をする根拠である米韓条約というものが存続をするということでございますれば、現在の朝鮮半島をめぐって、南北のそれぞれの軍事力とそれからいまの在韓米軍の軍事力というようなものによって現在均衡が保たれておるわけでございますから、著しい変化はないというふうに考えるわけでございます。
  374. 土井たか子

    ○土井委員 事実上軍事的な状況からすると、そういう在韓国連軍司令部解体というふうな状況を迎えたとしても、変化としてはそうそう著しいものはないというふうに防衛庁御自身はお考えになっていらっしゃるということですね。  ところで、そうなってまいりますと、もし国連軍司令部が解体をいたしますとなりますと、現にわが国締結をいたしております国連軍との地位協定というのがございますね。国際連合の軍隊の地位に関する協定国連軍との地位協定というのがございますね。それからそれに伴う関連国内法というのがございますね。関連法律がございます。これは全部失効することになると思いますが、いかがでございますか。
  375. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 国連軍地位協定は、その協定第二十四条に国連軍が朝鮮から撤退すべき日の後九十日以内に日本国から撤退しなければならないと定め、さらに二十五条におきましてその撤退しなければならない日に協定が終了するということが書いてございます。したがいまして、国連軍がいなくなれば、当然この協定も終了することになるわけでございますし^またこの協定が終了いたしますれば、それに伴ってつくられております関連国内法、これも終了するということになると考えます。
  376. 土井たか子

    ○土井委員 したがってその失効については、いまの御説明からいたしますと、特別そのことのための新たな手続は必要でない。当然自然的に効力を失う、失効するということになりますね。
  377. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 特別の手当てと申しますか措置を講じなければ終了しないというものではございませんから、自動的に終了するということになります。
  378. 土井たか子

    ○土井委員 わかりました。  それで現在ございます日本の自衛隊と米軍との関係は、安保条約の中で相互に協力をして、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を維持し、発展させるという関係にあると思うのですが、自衛隊と韓国の国連軍との関係ということになってまいりますと、どのように認識をしなければなりませんか。
  379. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 韓国におります国連軍とわが自衛隊との関係はございません。
  380. 土井たか子

    ○土井委員 これについては何ら関係はないわけですね。何らそれについての取り決めもなければ何ら関係はないわけですね。
  381. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 そのとおりでございます。
  382. 土井たか子

    ○土井委員 さて、その在韓国連軍の司令部が解体をいたします。その解体に伴って、先ほどの御答弁のとおり、国連軍との地位協定及びそれに伴う関係法律は効力を失って終了をいたします。国連軍と関係がないとしながらも、この在韓国連軍司令部が解体をした後、それにかわる枠組みをつくり出すということで、この韓国軍と日本の自衛隊との間に何らか協力するような構想というのがおありになるかならないか、そのあたりはいかがでございますか。
  383. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 御案内のようにわが自衛隊は領土、領空の中でその行動をするということをたてまえとしております。したがいまして、作戦面等におきまして韓国軍と協力をするということが事実上不可能でございますので、そういう構想もしたがって持っておらないわけでございます。
  384. 土井たか子

    ○土井委員 不可能だからそういう考えは全くない、そのようにいま御答弁になったわけです。  そこで、在韓国連軍司令部が解体するということは、朝鮮の休戦協定の一方の当事者が解体をするということになって、休戦協定が法的になくなることにも相通じますね。休戦協定がなくなったからといって戦争が起こらないという保証はどこにもございません。戦争が起こるということに対しては、やはりこれに対して用意をしなければならない。これにかわる枠組みをつくり出すということの理由で、わが国が肩入れをして韓国の軍事力を強化するようなことであってはならない。これは当然でございますね。朝鮮半島の平和のために、日本としてしたがってあらゆる外交努力をすべきだと私は思うのです。そのためにも在韓国連軍司令部が解体されるような国際情勢を踏んまえた上で、日本の対朝鮮半島の政策を変えていくという考えは現におありになるかならないか、ひとつこの点をお聞かせいただきたいと思うのです。
  385. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国連軍の解体の問題でございますけれども、これは土井委員よく御承知のとおり、安保理事会まで話は行かなければならないことでございましょうから、実は簡単に先が見通せないわけでございますが、いずれにしても平和の枠組みあるいは今後起こることがないことを祈りますけれども、ちょくちょくあります休戦協定違反というようなものを休戦委員会で処理をして平和裏におさめてきたわけでございますから、そういう仕組みというようなものは何か残しておく必要があるであろう。これはもう決して戦争が起こりそうだから身構えるというような結果になっては何もならぬことでありますので、わが国としては、仮に解体になりましても、後決して平和を支える枠組みなり、実際の仕組みがなくなるというような形で事がそういう結果になってはならない。そこがわが国の外交努力の非常に要るところであろうと思いますし、主点はやはりそこに置いていろいろ努力をいたさなければならないと思っております。
  386. 土井たか子

    ○土井委員 そうなりますと、先ほどの防衛庁当局からの御答弁と少しニュアンスが違ってくるのですよ。先ごろの防衛庁当局からの御答弁では、断じて在韓国連軍司令部が解体をするというふうな状況があった後についても、何らかかわる枠組みというものを考えていく必要はないというような御答弁だったのです、はっきり言って、それは。ですから、いま外務大臣が御答弁なすったことについては、もう少し中身について御答弁の中で具体的にお聞かせをいただくことができれば、なおかつそのことに対して少し私自身も理解をすることができるかもしれません。もう少し具体的にお聞かせくださいませんか。
  387. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 政治的な基盤といいますか、枠組みというものは、国連軍が解体ということになりますと、その基盤である休戦協定ということが崩れるということで、それは変わるでありましょうということを申し上げたわけでありまして、私どもの方の軍事的な評価としては、国連軍というのはほんのわずかの、いま実力としては、参加国が代表をごく少なく出しておるということでございまして、実力は約四万近くの在韓米軍が主力になっておりますので、その点は変わらないというふうに申し上げたわけでございます。軍事的な面では変わらないでしょうということを申し上げたわけでございます。
  388. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そうでしょうと思っておりましたのです、実は。と申しますのは、私の申しておりますのは、まさに政治的な枠組みをどうするかということでございますが、たとえば国連軍司令官が休戦協定の一方の当事者であるということは、国によってその辺はいまのところ見解の詰め合わせもしておりませんけれども、そうかといって、国連軍司令官というものがしかるべき権限を与えられて休戦協定に署名をしたはずであって、その権限を与えたものはほかならぬ国連であるはずではないか、国連そのものはなくなっているわけではないというような法理論はやってできないこともあるまいというような気もいたすわけでございますし、そういう可能性も一つ考えられるのではないか。  それからまた別に、そういう機会であるからちょうどいいので、関係者が何かみんなで枠組みを考えようということになれば、これはまた一つ新しい、いい方向へ事態が発展するかもしれないと思われますし、その辺はいろいろあるのではないかと私は考えますので、その辺でわれわれがどういう外交努力ができるかというようなことになろうかと思うのでございます。
  389. 土井たか子

    ○土井委員 いま宮澤外務大臣がおっしゃったようなことを具体的にひとつ考えてみれば、こういうふうなこともあるいは考えられるのではないかという幾つかの例を挙げてみることができるようなんです。たとえば、南北朝鮮の国連加盟に日本が積極的に何らかの手をかす努力をするということができはしないかというふうなことが考えられます。また他方、北朝鮮側は単一国号でなければ国連加盟はいたしませんということを言っておりますから、中国であるとかソ連であるとか、その他の国にも働きかけまして、北鮮の国連加盟に対して努力をしていくというふうなこともまた一方考えられる方法でもありましょう。それからまた、朝鮮半島に再び戦火が来ないように何か模索をしてみるという必要もある。これはやはり考えられてよいことだと思うのですね。  もう一つ積極的に進みますと、この北朝鮮を日本自身がまず承認をする、そういうことも当然のことながら歴史の流れとしてやっていかなければならない。状態はそこまで来ているかどうかは、外務大臣の御認識ということが一つは問題になってくるわけでございますけれども、早晩やはりこれはやらなければならない問題として近づいてきているのではないかというふうにも考えるわけです。  いま私は四つばかりの当面考えられてよいような例をひとつ問題にしてみましたが、外務大臣とされては一体どういう方策が最も現実的であり、外務大臣としてとってみて最も効果が具体的に上がる方法だというふうな、もしお考えがあったらお聞かせいただきたいと思うのです。
  390. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いろいろ考えてはおりますのですが、まだ多少時間の余裕がございますし、そういうことについてやはりみんなが相談をし合うということも入用でございましょうと思いますので、いま具体的にちょっと申すことを差し控えさしていただきますが、いま幾つか言われましたことの中からどういうものが選択できるか。いろいろその辺のことはあやもございますので、わが国としては、ただいま申し上げることは差し控えますけれども、いろいろ考えてみっつございます。
  391. 土井たか子

    ○土井委員 結局よくわかったようなわからないような御答弁になるわけなんですが、国連加盟に対して、それでは日本が何らか努力をするというふうな問題で、何らかの対応の仕方というのをお考えになっていらっしゃるということではございませんか。
  392. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は一つずつお尋ねがありますと、いろいろ申し上げてしまうことになりますから、いろいろ考えておりますということを申し上げるにとどめたいと思いますが、ただいま御指摘の問題については、せんだって三木総理大臣が外国記者とのインタビューで、最善の策ではないけれどもと、非常に用心深くいろいろおっしゃりながら、ちょっと触れておられるような問題でもございます。
  393. 土井たか子

    ○土井委員 これは、総理がその点について少し含みを持たせての御答弁だったというふうなことで、外務委員会ですから外務大臣の御答弁ということで、その辺は総理の発言ということを踏んまえながら、もう一歩外交面においてやっぱり何らかの積極的な姿勢というのをお見せいただく必要があるのじゃないかと私は思うのですよ。そういう点からいたしまして、この国連加盟というふうな問題も、もとより北朝鮮を日本自身が承認するということに対して、いままでどおりであってはいけないというふうなお考え外務大臣御自身お持ちになっていらっしゃるかどうか、そのあたりはいかがですか。
  394. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 とにかくこの問題は、関係者がまあそれならばという解決でなければいけないわけで、これはこっちがいいやあれはこっちがいいやという話は、なかなかどうもうまく通ってまいりませんから、まあまあその辺ならばという関係者のともかく一応合意ができるというふうな方法を探しませんと、いまの問題についての解決策、ベストでなくてもベターなという解決策をなかなか求めがたい、その辺のところがこれから努力の要るところであろうと思います。
  395. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、私も思いつくままに幾つかの例をここに挙げておるわけなんですが、関係者の間でおのおのの話し合いの折り合いがついて、ある程度の合意を得ることが可能な行き方というのはどういう行き方であると外務大臣はお考えでいらっしゃるわけですか。
  396. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、これはやはりちょっとサイレントディプロマシーに類することをいたしませんと、いきなりこうだと言って飛び出して申しては役に立ちませんので、いろいろ考えつつともかくしばらく静かに努力をさしていただきたいと思うわけでございます。
  397. 土井たか子

    ○土井委員 これは何遍繰り返して言っても巧妙な御答弁で、水かけ論のようなことになってしまうわけですが、つまり国連加盟について南北朝鮮が同時に加盟ができるような方向で、何らか日本が積極的に努力の積み重ねをすることが必要ではないか、こういう考え方については外務大臣は同意をなさいますか。いや、それはとてもじゃないというふうにお考えになっていらっしゃいますか。いかがでございます。
  398. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたことを繰り返してもはなはだお愛想のないことでございますけれども、まあそれについては、少なくともやや拒否反応のようなものが一方からは見えておるわけでございます。でございますから、いまどうも、それが結構だということを申すわけにもまいらないので、やはりその辺はいろいろ説得、接触等々が要りようなのではないだろうか、これは日本だけでできる筋合いではございませんですけれども、その辺がいろいろ関係者の相談というものが要るのではないかという一つの事例であると考えます。
  399. 土井たか子

    ○土井委員 これについては折を改めまして、さらに具体的に質問を展開する機会を私は持ちたいと思いますが、私、かつてこの外務委員会で領海十二海里の問題を再三伺ってまいりました。これについて外務大臣は、領海十二海里ということは外務省のみで決めることはできませず、各省庁が関係をいたしておりますから、内閣として検討しなくてはならないというふうな御答弁をその節いただいているわけです。安倍農林大臣は十二海里について決断をせざるを得ないというふうな御答弁も他方、出していらっしゃるわけですね。これは、考えてみますと、農林省として領海十二海里を望むということは当然のことだと私は思うわけです。  そこで、坂田防衛庁長官にお伺いをいたしたいわけでありますが、防衛庁立場として、わが国の領海十二海里について、どのような御所見を持っていらっしゃるか、それについてまずお伺いをしたいと思います。
  400. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 まず私から御説明いたします。  領海が三海里から十二海里になりますということで、それ自体については余り大きな問題はございません。ただ、御案内のように、十二海里になることに伴いまして、津軽海峡が内水となるわけでございます。領海になるわけでございます。そこで、この問題については、御案内のように国際会議の場におきまして、国際海峡という新しいレジームをつくるというような動きがあるわけでございまして、この国際海峡がどういう内容を持ったレジームになるかということに伴いまして、安全保障上はいろいろ問題があるというように承知をしておるわけでございます。
  401. 土井たか子

    ○土井委員 防衛庁長官にお尋ねをしても同じ御返答であろうと思うわけでありますから、続いて、いまの御答弁に従って一つだけ確認をしておきたいのですが、そういう御答弁の御趣旨からいたしますと、わが国としては安保条約締結しており、アメリカの核のかさのもとにあって領海十二海里をただいま決断するということは、それ自身無理であるというふうな意味理解をいたしましてようございますか。
  402. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 国際海峡という新しいレジームがどういう中身のものになるかということによって、非核原則の問題との絡みがはっきりしてくると思うわけでございますけれども、ただいまのところ、いろいろ参加各国の意向があるようでございまして、無条件の自由航行という主張もあるようでございますし、無害航行でなければならないというような考え方もあるようでございます。また、各種の条件を付する考え方もあるようでございまして、いまのところ明確ではございませんが、その新しいレジームの決まり方によって非核原則との関係ということもはっきりしてくるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  403. 土井たか子

    ○土井委員 日本防衛庁とされては、領海十二海里となった場合に、自由航行あるいは無害航行、その点をどういうふうに理解をされ、どういうふうに主張をされるというお立場をおとりになるおつもりなんですか。
  404. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 ただいままでのところ、カラカス会議の際に、自由航行をたてまえとするという政府の一般的な態度が出ておるわけでございまして、私どもといたしましては、大体この方針で臨まれて安全保障上問題がないというふうに考えておるわけでございます。
  405. 土井たか子

    ○土井委員 それはまことにおかしなただいま御答弁なんです。カラカス会議のとき、すでにそういうふうな立場日本政府は臨んだというふうに御理解なすっておるわけですね。しかも防衛庁は、そういう立場で現在やはり考え続けていらっしゃるということなんでございますね。
  406. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 これは私の記憶違いでございまして、カラカスではございませんで、現在のジュネーブでそういう一般方針で臨んでおるということでございます。防衛庁としての立場は先ほど申し上げたとおりでございます。
  407. 土井たか子

    ○土井委員 このジュネーブの国際海洋法会議について、十二海里の問題を種々私は外務委員会質問をいたしました節、外務大臣とされては、事がまだよく決まってない、したがって、海洋法会議での結論を得てから、そのことについては改めて問題にしたいというふうな御答弁で今日までこられておるわけなんです。いま防衛庁の方に伺いますと、自由航行という線で日本政府はジュネーブについては臨んでおる。そういう立場で臨んでおる。十二海里というようなことを問題にする節も、自由航行ということを日本政府としては確認して、ジュネーブの場所にはお臨みになったのでございますか。
  408. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 ちょっと私から補足して御説明申し上げさせていただきたいと思います。  この間のジュネーブの海洋法会議に臨みます際の政府の一般方針といたしましては、いわゆる国際海峡については、一般領海よりはできる限り自由な通航が確保されることが望ましいという立場で臨んだわけでございます。ただ、先ほど御説明がありましたように、ジュネーブ会議において、国際海峡制度をどういうふうにするかということについてのまとまった結論というのは得られなかったわけでございます。これは、来年開かれます海洋法会議でさらに検討されるということになっておりますので、私どもといたしまして、この段階においてどういう国際的な制度ができ、したがって国際海峡の国際法上の地位がどういうことに定まるかということについて、まだ確定的な見通しは持っていない。したがって、それに対してどういうふうに対処するかということは、今後その制度というものがやはり固まるに応じて検討していかなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  409. 土井たか子

    ○土井委員 時間ですから、それじゃ最後防衛庁に一言お伺いをしたいのですが、先ほど自由航行という立場で領海十二海里という説で臨むという態度を明らかにされました。特に津軽海峡という名前を具体的にお出しになりました。津軽海峡という場所は、自由航行ということがはっきりさせられない限り、十二海里という領海を認めることができないという軍事的な意味を持つ場所なんでございますか、いかがでございます。
  410. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 海洋法会議におきましては、その津軽海峡において自由な通航が確保されなければならないということで私どもは会議に臨んだわけではございませんで、日本の海運国としての立場から考えて、一般的に十二海里の領海幅員の拡張によって生じてきます国際海峡、これは世界じゅう方々にあるわけでございますから、そういうところにおいてはできる限り自由な通航が確保されることが望ましいということで会議には臨んだわけでございます。したがって、その津軽海峡について自由通航を主張するとか、あるいはそこの自由通航が確保されなければならないというふうな考え方で臨んだわけではございません。
  411. 土井たか子

    ○土井委員 私は先ほど防衛庁の方にお尋ねをした。防衛庁としてどういう立場でこの海洋法会議の領海十二海里という問題に臨まれるかということを防衛庁にお尋ねした。そうしたら、その節、自由航行の立場でということは日本としてその場所に臨む統一見解であったというふうな御趣旨の御答弁であった。その御答弁の中に特に津軽海峡という名前が具体的に出てきているわけですよ。したがって、私が防衛庁にお尋ねするのは、津軽海峡という、たとえばそういう場所を明示してただいま御答弁になったところからいたしますと、自由航行でなければ軍事上支障があるという意味ですかということをお尋ねをしているわけです。自由航行にしておかなければ軍事上支障を来たすというふうなことになるのでしょうかということをお尋ねしているわけです。
  412. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 自由航行という考え方は日本政府としての考え方でございます。私が先ほど津軽海峡を例示して申し上げましたのは、日本安全保障という立場から考えた場合の考え方を申し上げたわけでございまして、率直に日本だけの安全保障ということだけに限りますれば内水説をとるのが正しい考え方かと思いますが、これは全般的ないろいろな諸条件を勘案いたしまして、ただいまのところ自由航行というような考え方に傾きつつあるわけでございます。  いずれにいたしましても、その新しいレジームの決まり方によっていろいろ検討させていただくということでございまして、特にそういった考え方に私ども防衛庁として固まった考え方を現在固執しているということではございません。
  413. 土井たか子

    ○土井委員 これで時間が参りましたから終わりますが、それじゃもう簡単にひとつイエスかノーかだけでお答えください。  自由航行を認められない限りは領海十二海里というものはとり得ないと防衛庁はお考えですか。いかがですか。それだけについてお答えいただいて、私は終わります。
  414. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 御質問のような趣旨ではないというふうに私ども理解しております。
  415. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。
  416. 水野清

    ○水野委員長代理 河上民雄君。
  417. 河上民雄

    ○河上委員 もう余り時間がございませんので、簡単に二つ三つお尋ねをしたいと思います。  いま同僚の土井委員からポストベトナムにおけるアジア情勢、特にその焦点に立つ朝鮮半島の問題について御質問がございました。  そこで、防衛庁長官伺いますけれども、こういうような新しい情勢の中で、日米安保条約の中における、いわゆる第六条にある「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」というこのいわゆる極東の範囲というものについて変更をする必要を感じておられるかおられないか、そのことを伺いたい。
  418. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 私からお答え申し上げます。  極東の範囲につきましては、在来の政府見解どおりで何ら変える必要はないというふうに私ども考えております。
  419. 河上民雄

    ○河上委員 ベトナム戦争が起こりましたときに、ベトナム極東の範囲に入るかどうかということが国会で大変論争になりました。その際、ベトナム極東の範囲には含まれないけれども極東の周辺部分である、周辺地域に入るという解釈が行われたことはもう大臣も御承知だと思うのであります、昭和四十一年ごろでありますが。それはあくまで極東の範囲というのは単に常に地理学的な極東というのではなくて、安保条約の運営の上から見ての極東ということが問題になったわけですが、それと同じような意味において極東の周辺部分という、ベトナム極東の周辺地域に入るという見解は、ベトナム戦争が今日あのような形で終結した段階においても変わっていないと考えているのか、もうあれはいわば失効したものというふうに考えられますか。
  420. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 先ほど防衛局長の方からお答えいたしましたように、極東の範囲についての政府統一見解、これは在来政府が御説明申し上げておりますところを何ら変更を加える関係は現在も生じていないというふうに私ども考えております。  そこで、現在御質問になられましたベトナムの事態が終了したことに伴って、いわゆる極東周辺地域というものが変わったかどうかという御質問かと思いますけれども、在来国会において問題になりましたのは、安保条約との関連において米軍の行動範囲というものが限定されるのかどうかという観点から問題が取り上げられたというふうに了解いたしております。  そこで、安保条約上、いわゆる日米両国が共通の関心を待っております極東という区域に対する武力攻撃が行われる、あるいはその極東の安全が何らかの事態によって脅威を受けるという場合に、アメリカ軍がこれに対処するためにとることのある行動の範囲というものは極東という区域に限定されるものではないという趣旨で御説明してきておりますけれども、この関係もまたインドシナの新しい事態ということによって何ら変更を受けるものではないというふうに考えております。
  421. 河上民雄

    ○河上委員 昭和四十一年当時のそういう解釈、ベトナム極東の周辺地域に入るというふうに見ておりますそういう解釈というのは、やはり南ベトナム政府アメリカとの間の相互援助条約というものがあったからそういうことになってきたと思うのでありますけれども、それがもはや完全に失効した今日、当然こういう解釈は変わらなければならない、こう思うのでありますけれども大臣いかがでございますか。
  422. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 安保条約上、あるいは安保条約運用上の問題としては先ほど私がお答え申し上げましたとおりでありまして、基本的な問題の所在ないしは関係というものは変わっていないと思います。ただし、いま先生が御指摘になられましたごとく、在来の——在来と申しますのはこの春以前の状態におけるインドシナにおいては、アメリカ軍がそこにいたわけでございますし、またベトナムというものについてアメリカ安全保障上の責任を負うという関係を持っていたということであると思います。そういう関係というものはいまはなくなっておりますし、将来の問題としてもそういう関係が出てくるということはあり得ないと思います。したがいまして、この春以前の状態前提として同じような問題が再び起こってくるということは恐らくないだろうと思います。
  423. 河上民雄

    ○河上委員 両大臣おられますが、ベトナムはいわゆる周辺地域であるという解釈は当時の大臣のレベルで何度かなされているわけですけれども、これはもうことしの春以降はそういう規定というものはなくなったというふうにいまの条約局長答弁から見てもそう解釈するのが自然だと思いますけれども、その点はいかがでございますか。
  424. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 極東の範囲というのが、いわゆる地理学的、地勢学的に規定し得る概念でないということを前から申し上げていることの一つ意味は、やはりこの安保条約との関連では、わが国の平和、安全ということとの関連で、ある意味で合目的的にといいますか、ツベックメイジッヒに考えるという要素が私は含まれていると思うのであります、当然に。これはアカデミックな論争でございませんので国の政策の物の考え方としては当然そういうことがあるであろうと思います。したがいまして、ただいまも条約局長が申し上げましたように、いまの事態において合目的的にそれを説明するほどの理由はなくなった、こういうふうに申し上げるのが私は正しいのではないかと思います。
  425. 河上民雄

    ○河上委員 要するにそういう言及をする必要はなくなったということですね。
  426. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 非常に抽象的な意味で、あの地域が極東の範囲あるいはその周辺であるかないかとおっしゃれば、それは私は、別に前と変わってはおりませんと申し上げるのがいいのでありましょうけれども政府が政策を考えていくということの意味は、この場合、ことにわが国の安全、平和ということとの関連で申すのでありますから、ただいまかつてのような状況ではないということはこれは申し上げられると思うのでございます。     〔水野委員長代理退席、栗原委員長着席〕
  427. 河上民雄

    ○河上委員 それでは時間も余りありませんのでもう一つ。  核防条約の中で第十条に脱退の条項がございます。核防条約の脱退の条項に該当する状況について、外務省防衛庁条約解釈上打ち合わせられたことがございますか。
  428. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 特に十条に予想されている事態について、防衛庁協議したことはございません。
  429. 河上民雄

    ○河上委員 両大臣おられますけれども、いま政府核防条約の批准を求めておるわけです。各条文について、これは外務省防衛庁としては非常に重大な問題だと思うのですが、つまりここには「自国の至高の利益を危うくしていると認める異常な事態についても」云々ということが、脱退の場合の条件になっておりますけれども、こういうような問題について何ら打ち合わせてないというのは非常に不当なことだと思うのでありますけれども、一体、防衛庁長官は、こういう「異常な事態」というのはどういうふうに解釈しておられますか。
  430. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  この第十条一項で「異常な事態」と申しますのは、「この条約の対象である事項関連する」という言葉と、さらに「自国の至高の利益を危うくしている」というものでなければならないというふうに読み取れるわけでございます。ただ、この「異常な事態」という言葉はきわめて柔軟性に富んだ、広くもなるし狭くもなる表現でございまして、これとかつ冒頭に申し上げました二つの基準と申しますか要件と申しますか、そういうものに合致しているかどうかという認定は、それは締約国各自の認定にあるものでございますから、これを一般的に妥当するものとして、一つの基準として「異常な事態」がどういうものであるか、具体的に範囲を限定いたしましてお示しすることは非常に困難ではないかと思います。しかし一般的にある国にとって、自国の安全保障の確保以上に重要な利益というものはないわけでございますので、つまりここではやはり安全保障の確保と関連したことが「異常な事態」に密接に関連がある、そのようには解せますけれども、先ほど申し上げましたように具体例を挙げまして範囲をお示しすることは、現在においてもできないということでございます。
  431. 河上民雄

    ○河上委員 防衛庁長官は、しばしば問題になりますが、「有事の際」という言葉がありますけれども、この「有事の際」というのと、この条約に言うところの「異常の事態」というのは同じものだと考えておられますか。
  432. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 これは法律的には一致しない概念であるというふうに思います。
  433. 河上民雄

    ○河上委員 じゃ法律的というか、実際の事態としてはどういうようにお考えですか。
  434. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 御案内のように、私どもの行動の基準は自衛隊法に定められておるのでございまして、自衛隊法の七十六条に外部からの武力攻撃ということを受けた場合に、これに対して、国会の承認を得て防衛出動を命ずるということになっておりまして、これを一般的に「有事」という言い方をしておるわけでございます。  それから一方、条約の方の「異常な事態」というのは、これは国際会議の場できめられたものでございますので、先ほど外務省から説明がありましたような解釈でございます。
  435. 河上民雄

    ○河上委員 防衛庁長官伺いますが、いわゆる自民党の六項目の要望事項がありますが、その中に「日米安保条約に基づき、両国間の常設の専門家委員会を設置し、密接な協議を通じ、わが国の安全に遺憾なきを期すること。」というのがございますけれども、これについて防衛庁としては具体的に何か考えたりあるいは想定したりしておられることがございますか。
  436. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 大変失礼いたしました。  この「安保条約に基づき、両国間の常設の専門家委員会を設置し、密接な協議を通じ、わが国の安全に遺憾なきを期すること。」ということでございますが、この御意見にぴったりしておるのかどうかについてはいろいろ問題があるかと思いますけれども、かねがね私ども大臣から申し上げてございますように、アメリカ国防長官と直接の話し合いによって、安保条約の具体的な運用について、でき得ればこの運用を円滑ならしめるための調整機関的なものの設置も考慮をいたしたいというふうに申し上げておるわけでございまして、これでお答えになるかどうかと思いますけれども、大体そういうところでございます。
  437. 河上民雄

    ○河上委員 きょうは約束の時間を守りますのでこれで終わりにいたしますが、いまのあれですと、やはり六項目の要望事項に対して、防衛庁としてはそれにこたえるという姿勢をうかがうことができるように思いますが、そのように解釈してよろしゅうございますか。
  438. 坂田道太

    坂田国務大臣 実は私の方の党から申し入れがございました以前におきまして、実は私はこういうことを考えておったわけでございまして、それが大体同じような線になったというのが実相でございます。
  439. 河上民雄

    ○河上委員 また、もう少し詰めねばならないことでございますけれども、きょうは質問を後に留保して、これで終わります。
  440. 栗原祐幸

    栗原委員長 渡部一郎君。
  441. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 防衛庁長官にまず端的にお伺いしたいのでありますが、長官、少し外交的なこともちょっと伺わなければいかぬと思いますが、局長答弁でなくて、長官の御判断伺いたい。  一つは、少なくとも防衛庁長官は、日本憲法に合致した、日本憲法に認められている範囲内において領域保全をするというような精神でいまお仕事をされておるのだろうと思いますが、この核防条約を、そういう考えのもとの中でどういう位置づけをなさっておるのか、それをまずお伺いしたい。  それから、核防条約に本当に賛成なすっているかどうか、それを伺いたい。少なくともあなたは自衛隊を率いておられるわけですから、それを代表してお答え願いたい。
  442. 坂田道太

    坂田国務大臣 米国との安全保障体制を基調といたしまして、わが国みずからも必要最小限度の自衛力を保持するという現在のわが国防衛体制が堅持される限り、核兵器拡散条約締約国になるか否かがわが国安全保障に大きな影響を及ぼすというふうには考えておりません。しかしながら、この条約核兵器国の増加を防止するということが目的でございますし、核戦争勃発の危険を少なくする、そういうような国際関係の安定度を高めまして、一方また、軍縮の推進ないし平和の確保をより容易にする、そういう国際関係をつくり出すということを主眼としておる、そういう条約でございますので、わが国がこの条約締約国となりますならば、ひいては国際関係の安定化による安全保障の強化につながっていくのじゃないか、そういう意味合いにおいて賛成をいたしておるということでございます。  また、原子力の平和利用につきましても、締約国との実質的な平等性を確保した上でこの条約締約国となるならば、これまた国際協調下の原子力平和利用の推進による産業エネルギーの確保というわが国の主要な国益にも合致するのではなかろうか、こういうことでございますし、憲法について申し上げますと、今日のこの憲法というのが平和憲法である、それから、われわれの実力部隊たる自衛隊というのは、他国を攻撃しないという防勢に専念するというそういうたてまえで、平和の象徴と申しますか、しかも憲法は、それだからといって自衛のための防衛力というものは許しておる、こういうふうにわれわれは考えておるわけでございまして、憲法の精神から言いましてもこの条約というものは好ましいのではないか。しかも、被爆国の最初の国といたしまして、われわれがこの条約に加盟をし、そうして主要、一番大きい米ソに対しましても、あるいは核を持たない人たちの国に対しましても積極的に拡散防止というものを働きかけるということは、きわめて憲法の精神に合致するのじゃなかろうか。また、それは世界の方々に対して、日本というものが本当に平和に徹した国である、あるいは他国に脅威を与えるようなことではないのだということになるといたしまするならば、非常に好ましいことではないだろうかというのが私の考え方でございます。
  443. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いろいろお答えになったのですね。防衛庁長官非核原則に賛成なさるわけですね。それで、もちろんいままでの防衛論争の中で、有事有事でないか、そのいずれを問わずこの非核原則が堅持されるかどうかについて、この核防条約審議中非常に問題になっているわけであります。長官は、有事有事でないのを問わず、無条件で非核原則、特に核持ち込みに対しては、事前協議の段階でノーと言うべきだ、そういう外務大臣の方針を支持なさるかどうか、その辺伺います。
  444. 坂田道太

    坂田国務大臣 私は、三木内閣の防衛庁長官でございますし、宮澤さんとともに三木さんの言われたことに従ってまいりたいというふうに思います。
  445. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 宮澤さんのどの部分に一致されるのですか。もう一回ちゃんと言ってください。怪しげな答弁でわからない。
  446. 坂田道太

    坂田国務大臣 有事であろうと平時であろうと、非核原則ということを堅持していくということでございます。
  447. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 もう一つくどくど伺いますが、そうすると核持ち込みに関して、安保事前協議の段階において有事の際に持ち込みを要請された場合、それは非核原則に基づいてノーということを明確にする、こういう意味に解してよろしいですか。
  448. 坂田道太

    坂田国務大臣 私はそのとおりに考えております。
  449. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それはもちろん言うまでもないことですけれども防衛庁長官として、全自衛隊の考え方と理解してよろしいですか。
  450. 坂田道太

    坂田国務大臣 防衛庁長官としてはシビリアンコントロールを最大の任務といたしておりますから、そのようにいたしたいと思っております。
  451. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この間、十三日の審議において、本条約に規定されている核爆弾及び核爆発装置の定義についてお伺いしたところが、それがまとまりませんでした。政府の統一見解が近々出ることになっております。  その話はちょっとおいておきまして、関連しますが、長官、自衛隊として現代の核戦略というものそれ自体をある意味で研究をし、ある意味で評価をしなければ、その必要な議論も達成することができなかろうと私は思うわけでございます。そういう研究は当然やっておられるだろうと思うのですが、やっておられる部局はどこで、どういう研究をやっておられ、核戦略あるいは核軍縮戦略、あるいは日本防衛関連してこうした問題を扱っておられるのはどこの部局であり、どういう報告書が出ているか、そういったことをお答えいただきたい。
  452. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 当然こういった問題についての研究をいたさなければならないわけでございますけれども、私ども防衛局が一応防衛構想を立てるという上にその必要な情報、資料を収集するということになっておりまして、また調査研究をするということになっておりますが、何分にもこの面につきましては十分な資料が得られませんので、一応外国の公刊の資料、その他を基礎にして研究しているのが現状でございます。
  453. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 これは外務省の方にやかましく申し上げたのですけれども、核軍縮に関する適切なアイデアが余りない。ところが防衛庁の方でもそういうものが研究されていないとすれば、これはわが国にとっては非常に、情報不足を通り越しておって、危険な状態を招くのではないかと私は思います。したがって、この問題、私、別の例でちょっと申し上げたいと思います。  この核防条約の第五条に「核爆発のあらゆる平和的応用」という項があるわけですが、この核爆発の平和的な応用、爆発サービスというものをどう評価されているか、両大臣、お伺いいたします。それでこれに関しては、念のために申し上げますが、昭和四十二年の予算委員会において三木外務大臣が、平和利用の名のもとに核爆発権利があるという考え方は危険であり、政府としてはこれをとらないという言い方をなさっております。また森山科学技術庁長官は、昨年の二月でありますが、原子力基本法の法文上は可能なことであるが、軍事利用との区別がつきにくく好ましくないというような意見を述べられました。この第五条で公然認められておりますところのこうしたものを、そのまま日本国として利用しようとするか、そういう方向でいこうとなさるか、それとも従来の方向であるところの核爆発サービスなるものを受け入れる方向に切りかえるかは、原子力の利用という件に関してはかなり危険なテーマであろうと思うわけであります。したがって、この辺に対する御見解を、どちらでも結構ですが、ひとつお伺いします。
  454. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、これはなかなか問題のあるところでございます。少なくともこの条約では、とりあえず現状において、平和目的による核爆発というものと軍事目的による核爆発というものは、いまの状況においてこれを客観的に分けて弁別する方法は事案問題としてきわめて困難であるということから、御承知のとおり両方の爆発を一つに扱っておるわけでございます。しかし他方で、この核爆発が平和目的に利用され得るということはこれは多くの人が認識をしておるわけでありますから、いわばこの文字どおり正直に、誠実にそういう目的に利用されるか、されないかというところになってしまう。客観的にこれを何かの方法で区別する方法がない限りは、ただいま御指摘のようにかなり危ない話になってまいるわけでございます。  そこで、もう少しそういう辺の技術なり何なりの進歩を見まして、何かの協定をつくった上でこれをいたさなければ相当の危険があるという問題と、しかしこれだけ平和的に、平和に貢献し得る種類の爆発でありますから非保有国もその利益には均てんすべきであるという、どちらかといえばやや将来の問題と二つこの条約で扱いまして、この五条で特別の協定に従い云々と言っておるというふうに解釈をしております。  でありますから、この問題はなかなか、まあ場合によっては危険な問題になるという渡部委員の御指摘も正しいし、またしかし、将来これは利用することによっては本当に平和目的に純粋に利用され得るという、そういうおっしゃっていらっしゃる点も正しいので、その二つの間を、将来の技術の発展等々を期待して何かの特別な国際協定をしてやり得る可能性を残しておこうではないかというのが、私はこの五条の精神だろうと考えております。
  455. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますと、将来の発展を考慮してその権利は留保するが、現在の段階においてはこうしたものに余り突っ込むつもりはない、こういう意味でございますか。
  456. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 少なくともある国の例に見られますように、最近核実験をした、これは平和目的であると言われましても、それはまことにそうであるのか、そうでないのか、はなはだ外側からは疑わしい。また事実問題としてどうであろうかという疑問はやはり残るわけでございますから、そういう間は、やはりこっちの道を広く開きますことはこの核防条約そのものを危うくするというふうに思うわけであります。他方で、しかし将来の問題としては、ここでこの門を閉じてしまえば、これはもう本当に平和目的すらも追えないということになりますから、それはまたしかるべきことでない、こういうふうに判断をしておりますので、できるだけ早くこの問題が新しい方法によって弁別されることを私ども心から期待をいたしますけれども、ただいまの状況においてこの道はやはりまだまだ問題の多い道であるというふうに考えるべきだろうと思います。
  457. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この条約の妙な欠陥でありますが、原子力平和利用という部門の、知識を交流しこの技術を開発するということが、ある限界を越すとそれは戦争に対する核爆発装置の研究と一致するということであり、そしてそれは、すなわち前段で規定している核兵器を押さえようという努力を、まるで後の平和利用というものまでひっくり返すという全く相反した側面がある。したがって、この部分、この核防条約の問題を議論するに当たって、平和利用というものをどう位置づけるかという問題提起として私は申し上げたつもりなんです。つまり平和利用平和利用といって平和利用の知識を世界じゅうに広げる。広げているにもかかわらず、平和利用でなくて実際は戦争利用のためにすっかり準備が整ってしまう。地球を一遍に燃し尽くす、核戦略体系に燃し尽くす準備を鋭意着々とやるという可能性がこの後段にあるわけですね。そうすると、この核防条約にとって必要なことは、サインすると同時に、前段の規制が後段の規制と調合しないうちに調印されておりますから、しかるべき努力が必要であろう。そのしかるべきという言葉で表現するしがなかったわけなんですけれども、その点をどうお考えでありますか。また、具体的にどうなさるおつもりか、お伺いしたいと思います。
  458. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 渡部委員の御理解は、私はそれで正しいと思います。現にいまどのような方法で両者を弁別すべきかについて、恐らく何人にもしかるべき知恵が浮かばないために、将来のしかるべき国際協定等々に問題をゆだねたのであると思いますが、これはおっしゃいますとおり、現在のところはどうもだれにもいい知恵が浮かばない。しかしこの道を閉ざすということは、今度は非保有国にとっては、全く平和の目的のためでも大きなハンディキャップを与えられるということになりますから、やはりそこは道をあけておいて、何か客観的に弁別する方法を考えたい、こういうふうに条約考えているものと思っております。
  459. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この条約の一条、二条において厳しく規定しておりますのは、核兵器国の不拡散でありますけれども、核保有国の側の核兵器の配置については、これは禁止されていないという妙なことになっております。そして今度は、実際的には核保有国が核を諸外国に持ち込む際に保有国同士については全く制御はない。それから署名してない国に持ち込むことも制御されていない。それからある種の持ち込み方、たとえば内容を明示しないで持ち込むとか、あるいは領海外に持ち込むとか、そういうような持ち込み方は一切規制されていない。つまり核兵器の不拡散について、ブレーキが非常に甘いのではないか。したがって、世界じゅうに散らばっておる米ソ核兵器を、その持ち出されている核兵器を持ち返してくる、こういう作業が非常に要るのではないか。  たとえて言いますと、五月三十日、七六米会計年度国防予算審議の過程において、米下院の審査でありますが、デルムスという下院議員が、米国は韓国に千発の戦術核兵器と五十四の核積載機を配備していると述べております。恐らく、公式の言明でありますから、信じてよかろうと思います。しかし、この政府からいただきました核防条約に関するさまざまな資料を拝見してみますと、外務省条約局、五月二十六日現在の同条約に対する署名国及び締約国の中に韓国というのは両方入っているわけです。そうすると、千発も戦術核兵器を持ち込むということが、核防条約という名においてももう認められてしまう。つまり核防条約を結んでも、持ち込むということにブレーキをかけない限りは事実上の大しり抜けになってしまうということをこれは示しております。  わが国の核持ち込みに関しては、総理及び外務大臣の御答弁がここのところ明快になってきましたので、私たちはその意味の安堵があるわけでありますが、周辺の諸国、特に韓国のような近接国においてこういうしり抜けが行われる。その一方のしり抜けば別の対立国にまた同じようなしり抜けをもたらすとしたら、核防条約意味がなくなってしまうのではないか。ですから核兵器の不拡散に関する条約を結ぶとともに、並行して、これら核保有国非核保有国に対する核持ち込みを抑制するための努力、外交的努力あるいはその他の政府の努力を十分に行うべきではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
  460. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま前段に言われましたことの中で、非署名国、非加盟国に対しては自由であるとおっしゃったようにちょっと私には聞こえましたが、それはやはり第一条で、締約国である核兵器国一つ義務を負っておるということになっておるのではないかと思います。それはしかし大した大きな問題ではありませんで、御指摘の点は、管理権を渡しさえしなければ核兵器を第三国に配置できるという問題についてであります。これは私、おっしゃることは非常にごもっともだと思いますが、実はいまの世界情勢において、主権国が自分の安全を高めるために核保有国から核兵器の配置を望むということは、現実にはいまの世の中には見られるわけでございます。したがって、このような条約を結びます場合、各国はやはり自分の国益ということを中心考えるわけでございますから、あまり門戸を狭くしてしまっては条約に加盟する国が少なくなる。同時にあまりルースであればこれは意味がないということになるわけでございますので、現状においてやはり自発的に核兵器の配置を望んでおる国がある、そのような世界情勢がまだ現にあるという限りにおいて、この点をどうもこの程度に扱わざるを得なかったのではないかというふうに私としては考えます。  わが国には実は、おっしゃいますように、この問題はないので、わが国はそういう配置を受けない方が国益に通じると考えておりますから問題はないわけでございますが、すべての国がそう考えておるわけではない。結局その問題は、やはり軍縮を中心とした世界平和の推進の問題にかかってくるので、おっしゃいますように、管理権がなくても戦術核兵器などがあちこちに置かれておるという状態はきわめて危険な状態であるに違いございませんから、そういう軍縮なり平和的努力の中でその問題は私は何とか解決しなければならない問題である、渡部委員の言われるとおりと思いますが、一応この条約が管理権のところでとどめましたのは、そのような理由であろうと思っております。
  461. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 要するに戦術核が千発も持ち込まれて、引き金をアメリカが持っているという形ならばどこでも持ち込めるということになってしまう。これが危険だという点については外務大臣と私も意見一致しているみたいに私、思います。  それで私、ここで微妙なことを伺いますが、韓国で大統領が、アメリカの核のかさがなくなれば独自に核を開発するというふうに韓国訪問中の米コラムニスト、ローランド・エバンズ、ロバート・ノバック両氏に対して述べたそうであります。すでに報道されておりますが、これはちょっとした、わが国に対して大きな判断、考慮を必要とする問題になろうと思います。これは非常に微妙な問題なので、非常にお答えにくい問題を私は質問しているわけでありますが、日本政府として、こうした韓国がアメリカの核のかさをなくして核を開発しようという時代において、それを応援するのか、それを応援しないのか。それを逆に阻止するのか。それとも核防の精神の観点から、もう一回再考慮を求めるのか、その辺の考え方があろうかと私は思います。また、ややこしいことですけれども日本とこれほどの隣国でありますと、日本人研究者がこういうときによく勤めたりすることが必ず想像されるのです。日本人研究者がこうしたものに支援することを黙認するのか黙認しないのか、積極的に応援するのか、そんなことはなかろうと思いますけれども、私はその辺もまたあわせて考慮なさる必要があろうか、こう思っております。こういうのは実際的な核防条約の運用問題と絡んで、日本政府の方針決定に一つの例示的な実際例となるだろうと思います。さて、こういう問題に対してどういう態度をおとりになりますか。
  462. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 韓国の大統領がそういうことを言われたということの的確な事実は、実は真意も確かめ得ないわけでございますけれども、私の想像ではこれは恐らく、いま韓国はアメリカのインドシナ撤退後ある危機感を持っておる。これについてアメリカは自分の約束は守るということを言っておるわけでございますけれども、韓国の国民の中にはいろいろ不安感があるという実情であろうと思います。そういう実情に照らして大統領が、もしもしそういうことがあればわれわれとしても異常な決心があるということを、その決心を強調することでなく、そういうことがあってはなりますまいという意味で、つまりアメリカの韓国に対する約束というものは守られなければならない、守られるであろうということを強調するためにあのような表現をされたのではないであろうか、これが私の推測でございます。と申しますのは、韓国がこの条約に加盟をいたしましたのはごく最近のことでございますので、そのことは大統領以下よく知っておられるはずでありまして、それにもかかわらず、この条約に違反をするということを承知の上で突然ああいうことを、そのこと、そのものを目的にして言われるということは私には考えにくい。やはりそういう韓国の持っておるアメリカに対する約束あるいは期待というものの大事さを内外に表明されるために、あえてあのような言い方、表現を使われたのではないかというのが私の判断でございます。
  463. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 これと同時に、また最近再検討会議における西ドイツの発言あるいはソビエトの発言、アメリカの代表の発言等を見ておりますと、いわゆる核兵器の盗難、テロ行為による核ハイジャックの危険を指摘しております。アメリカが太平洋地域に六千発といわれるような大きな戦術核をばらまいており、ヨーロッパにもそういう数字が挙げられていることを考えますと、危険が起こり得ることは当然だと私も思います。そうしますと、これらの問題は少なくともわが国においてその危険が少ないとかないとかというような判断よりも、被害者になって被害を受ける点では私たちも同一でありますから、当然それに対する態度があってしかるべきだろうと思います。ところが、日本代表の演説その他を見てみますと、どうやらこれに対して的確な意思表示が見当たらないように私は思います。私は、これらの危険を起こさないために、たとえばスウェーデンのハミルトン代表が再検討会議で、核物質の物理的保護に関する条約締結に賛成されたのも一つの提案だろうと思いますし、そういうものに対してわが国は反応することが必要であろう。むしろ積極的に対応された方がいいのではないかというふうに思っているわけであります。聞かれたら大体賛成するというようなニュアンスであったことは事実のようであります。しかしながら例によって全然積極的でなかったというのが外国紙の報ずるところであります。そこで私は、その問題に対してももうちょっと前向きに取り組まれたらいかがかと思いますが、いかがでございますか。
  464. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 フィジカルプロテクションの問題につきましては、日本側もこの会議に臨む前から、原子力の平和利用活動が一般的に盛んになるに従って取り扱う核物質の量、その貯蔵あるいは輸送等の関連で、この保護ということの重要性ということを認識いたしております。今度の会議におきましても、特に日本は具体的な提案まではまいりませんでしたけれども、従来の経験それから将来の危険という観点から、この考え方に対して積極的に賛成いたしまして、今後とも重要な検針事項として——この会議でも最後に要望事項として最終宣言に取り入れられたことは御承知のとおりでございます。これを受けまして、わが方もわが日本の実情に即したフィジカルプロテクションはどういうふうな形のものが適当であるかということを含めて、これから関係者の中で検討するという段取りになっているというふうに了解いたしております。
  465. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 これは例によって余り具体的にぎゅうぎゅう聞くと、またこの間みたいなことになりますから私は言いませんけれども、この次はちゃんと御返事できるようにひとつお願いしたい。よろしいですか。この次は具体的な反応ができるようにしていただきたい。いまのは大体考え方を述べられたのですから、これは局長に念を押しておくよりも大臣にひとつよろしくお願いしたい、いかがでございますか。
  466. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆるフィジカルプロテクションの問題というのは、起こってあわてましても実はこれは追っつかない問題でございます。わが国としても積極的にこの防止について貢献をいたしてまいらなければならない問題と思います。
  467. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 先日私は外務大臣に、核軍備競争抑止から核軍縮へという方法についていろいろしんみりとお伺いいたしました。その結果余りいい方法がなくて、大変なんだという率直な御意見の表明もいただきました。確かに実効的に、直ちに核兵器を全世界でぱっと全廃するというようなロマンにあふれた方法がないことはもう事実だろうと思います。しかしながら、何か反応して考えなければならぬという立場でいままで言われてきた幾つかの手、少なくともこの問題を心配している幾人かの人たちが述べたいろいろな提案があります。こういうものを御検討いただけないかと、まとめて私はちょっとメモしてきました。一つ二ついまから申し上げます。  まず、核保有国の首脳による世界軍縮会議ですね。要するに、これはいままで役人があるいは各国の別の意味の代表が集まってやってこられたものでありますけれども、それを首脳を集めて、ヤルタ協定のときのように、ポツダム協定のときのように、ある意味では首脳が直接この問題を話し合うというような会議を提唱し、推進されたらどうか、またその会合に非核保有国、核を持っていない方の代表も一緒にこの問題で結束したらどうか、これが一つです。  似ておりますが、第二に、核軍縮のための国連特別総会を行うべきではないか。国連始まって以来の最大の課題としてこれは取り上げてしかるべきではないか。  第三には、これはわが国の周辺、東南アジアの方面において非核保有国が多い事実にかんがみまして、非核武装地帯というものを設定するための打ち合わせをやったら、あるいは提案をしたらどうか。  また、四つ目には、核兵器を使用しない、ある場合には使用しないということを保有国約束させる協定、あるいは条約または宣言等があっていいのではないか。すでに御承知のとおり、中国においては最初に核を使用しないと宣言しておりますし、また核兵器の不使用条約についてはときどき表明が行われておりますし、また核保有国がこの国とこの国に核を持ち込まないと宣言することも、ある意味では意味があることであろうと思いますし、そういったものを推進してはどうだろうか。  それからその次に、核を保有している国といいますよりも、核燃料を実質的に生産する国々が、OPECのように、核の供給に関して平和のためという大きな立場から、その核燃料の輸出について協定をすることをむしろ勧めたらどうであろうか、これはわが国から言うと非常に妙なことでありますが、こんなようなことが言われているわけであります。私の意見でもあり、世間の意見をそのまま持ってきたのもあります。私は一つずつの議論におのおの難点があることを理解しておりますし、全面的な軍縮問題と一緒にしないで、単発で一つを推すというような単純なもので済まないことも理解しておるつもりでございますけれども、少なくとも日本が平和外交を推し進めるための一つの強力な提案として、日本の持ち得る戦略としてこうしたことを進めたらどうかと思うのでございますけれども、いかがでございましょうか。
  468. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いずれも傾聴すべき御意見だと私は思います。そして渡部委員の言われますように、やはりこれは全般的な軍縮という大きな背景の中で行われるのでなければ、おのおのそれぞれ難点を申し上げることは、すでに渡部委員も御承知のことで、必要もない、実は難点があるからやらないということでは問題は進歩しないわけでございますから、問題は、結局私は核保有国、現在五つでございますか、その中で共通な利害関係が生まれるならば、何かこういう構想に——いま五つおっしゃいましたが、そのいずれも発展し得る可能性がある。  現在のところ、やや共通な利害関係を感じておりますのは米ソということになるわけですが、それも、御承知のように、まだごくごく微々たる共通の利害関係であるというふうに思われます。ですから、特定の核保有国と特定のいわば核のかさのもとにある非保有国とが組んで、両陣営あるいは幾つかの陣営に分かれるという方式ではどうしてもこの話はうまくいかなくて、結局言葉をいろいろにいじりまして、適当なと言っては悪うございますが、実効の高くない宣言を出すというようなことで終わってしまうということがいままでの経験でございますから、核保有国がみんなの間で共通の利害関係を感じるというような、あるいはそのようなプレッシャーを盛り上げていくというような方法が私は一番効果的なのではないかというふうに考えます。このおっしゃいますどれもがそういうことに関連があるわけでございますけれども、いずれも十分に意味合いのある御提案であると思っておりますが、わが国としては何かそういう雰囲気づくりに努力をしていきたいと思っております。
  469. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この間、外務大臣は道徳的な圧力を加えなければならないという意味合いのことを言われた。モラルプレッシャーというようなことを言われた。そういう雰囲気づくりとも言われた。私はそれも非常に大事なことだと思うのです。それと同時に、そういうようにお考えになっていただいたのは大変結構なことだと私は思うのですが、要するに、核軍縮のための政策努力というものを日本政府の恒常化する努力の柱にしなければいけない。いままでは平和と唱えることは非常に容易であったけれども、平和という言葉はいまやいろんな意味に使われておる。それを人類の生存を守るという観点から外交の主軸にする、こういう姿勢が必要であろうと思って何回も何回も申し上げたわけであります。その意味で、これからおつくりになる核軍縮に関する外交の一つの柱、その中でひとつ十分御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  470. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういたさなければ、わが国がこの条約に加盟したことの本当の意味が出てこないわけでございますから、ぜひそういたしたいと思います。
  471. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 防衛庁長官、ちょっとそちらに関連もいたしますので……。  わが国においては二つの国の双務的な、二国間の原子力協定をつくっておりまして、一九六〇年七月二十七日の日本カナダ原子力協定、それから六八年の七月十日の日米原子力協定、六八年の十月十五日の日英原子力協定、それから七二年の二月二十一日の日豪原子力協定、七二年二月二十六日の日仏原子力協定等あるわけであります。  これはむしろ反対論の方から私は持ってきたのですけれども、その中で、核物質の利用を平和目的に限って受け入れておることになっておるわけであります。ということは、この核防条約の中には、核兵器その他の核爆発装置に関しては禁止されておるわけですけれども、核を使った軍事兵器、率直な例を挙げれば軍事用の原子力潜水艦、動力として原子力を使っておる原子力潜水艦のようなものは、これらの協定の幾つかによってブレーキがかかっておる。したがって、わが国においては、この不拡散条約の方ではその辺は抜ける道があるけれどもわが国はみずからの手を縛って、原子力潜水艦は持たないという方針になっているわけであります。  そこで防衛庁長官に私がお伺いするのは、こういう協定を結びますとこっちの方がよかった、前に変なものを結んでしまった、原子力潜水艦くらい持たなければ世の中は時代おくれではないかという議論が出てきて、同様の発想方法から、いろいろな意味の軍事力強化の考え方から、いろいろなアイデアが出てくる可能性もあろうかと思います。そこで伺うのですが、あなたはこのいままでの五協定を直す方向に向かうのか、それとも五協定も堅持し、この核防も堅持する方向で向かわれるのか。つまり、具体的な例で言うならば、原潜を持たない方向で行くのか行かぬのか、その辺をお伺いしたい。
  472. 坂田道太

    坂田国務大臣 これは四十年の四月十四日の科学技術振興対策特別委員会で、愛知科学技術庁長官がこの問題に関して答弁をなされておりまして、「船舶の推進力としての原子力利用が一般化していない現状においては、同じく認められないと考えられます。」こういうことを言っておられます。それから中曽根防衛庁長官が、四十五年の四月十四日でございますが、「推進力として普遍性を持ってくる場合には、自衛隊がこれを推進力として使っても、この基本法には違反しない、」ということ、それから、この統一見解に対しまして、四十六年の三月十日西田科学技術庁長官が、「船舶の推進力として」「これが普遍化いたしまして、一般に船の推進力として原子力が用いられるというときになりました場合に、軍の使う船舶に限ってこれを用いてはならないというところまではこの原子力基本法は認めておらない、こういうふうに思うわけでございますから、つまり一般化いたしました場合には差しつかえない、こういうふうに考えます。」こういうことが政府見解になっておりますので、やはり私といたしましては、この方向で進みたいというふうに思っております。
  473. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 これは非常に微妙なことを言われたわけですけれども、ちょっと危ない答弁になりますよ、いいですか。いまから危険な話を聞きますよ。  さて、原子力潜水艦を防衛庁は持つ意思がおありですか、おありでないですか。
  474. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいまのところは持つ意思はございません。
  475. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、原子力推進エネルギーの潜水艦が一般化されるようになるという意味は、日本国内で一般化されるという意味ですか、諸外国で一般化されるという意味でしょうか。
  476. 坂田道太

    坂田国務大臣 私が申し上げましたのは、やはり世界的にもまた国内的にもということでございまして、そういう客観的な事態が出てきた場合はということです。
  477. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 その場合においては、あなたは外務省当局に要求して、先ほど挙げた五つの原子力協定から平和利用という部分を削るおつもりですか。
  478. 坂田道太

    坂田国務大臣 いまは何も考えておりません。白紙の立場でございます。
  479. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 あなたは、三木内閣の防衛庁長官としていま非常に重大な危機に直面しておるのです。それは何かというと、憲法の中に、われわれはこの憲法の条項を守らなければいかぬと同時に、わが国においては戦前条約を踏みにじってきた前例にかんがみ、条約を誠実に厳守することを約束しております。ですから、これほどの、平和目的で結んでいる協定がある以上は、原子力潜水艦はできません。まずできないわけです。あなたが防衛庁の意思をもってこの協定をじゅうりんするという重大な決意をしない限りはできないという点を、私気をつけていただきたいなと思っているわけです。
  480. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 ただいまの挙げられました数カ国との間の協定を直してまで持つということを考えておらないという趣旨長官の御答弁でございます。
  481. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いまの局長答弁のとおりと理解していいわけですか。
  482. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま防衛局長がお答えいたしましたとおりでございます。
  483. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 こういう問題もありますので、日本の原子力という問題はいろいろな問題が絡んでいるわけです。それで、恐らくただいまの答弁をある程度補強しなければならぬという雰囲気が外務省側に見えますから、しかるべく御答弁のあるところは答弁していただくようにお願いします。——どうも御意見まとまっていないようですから、この次までにしっかり考えていただくようにお願いしたい。  それから宮澤大臣、原子力協定を結んでいるのは結構ですけれども、日加、日米、日英、日豪、日仏、どれをとってみましても、やはり世界の中のある方向のグループであろうと私は思います。最近ソビエトにおいては、積極的に西ドイツやスウェーデンに対してもイエローケーキといいますか、濃縮ウランのことを言うのですけれども、そのイエローケーキの輸出をしようとしておる。ある意味では、ウラニウムというものは非常に使いにくい燃料だとわかっておりますので、そういう輸出を開始しておる。西ドイツに対して輸出するというのはかなりおもしろい現象だと私も思うのです。私はこうした意味で、原子力協定を多角的なものにする必要があるのではないか。わが国の平和外交を推し進める意味ではもうちょっと考えた方がいい。たとえば、中国との間でも将来考えてもいいのではないかと思うわけです。  そこで、現在日ソ間には技術協力あるいは情報交換等については合意ができておりますが、一歩を進めて、この可能性を探るということをお考えになってはいかがかと思いますが、どうでしょうか。
  484. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっとその前に、先ほど政府側の答弁に実はそごがあったのではございませんで、私が確かめておりましたのは、原子力潜水艦というものがNPT条約上どういう関係に立つだろうかということをちょっと私自身として知りたかったわけでございます。潜水艦そのものは、これは兵器であることは明らかでありますが、その兵器が原子力を推進力として、エンジンとして使う場合には、この条約との関連はどうなるかということを実は私なりに知りたかったために、ちょっと政府委員を呼びましたので、答弁そのものは防衛庁から御答弁したことで政府の見解は統一されております。  それから、ただいまのお話は、日ソでは科学技術協定がございまして、それで一応ただいま言われましたようなことを形の上ではカバーしていることになっているわけですが、日ソの関係が進みまして、非常にそのことの必要が出てまいりましたら、つまり具体化した事実が出てまいりましたら、そのような協定を結ぶということもあるいは必要なことかもしれないと思います。ただいまのところ、そういう事情にはまだなっておらないと思います。
  485. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは、私は所定の時間を直前にしておりますが、大分遅くなっておりますことでございますから、きょうの連合審査中における公明党の質問はここまでにさせていただきたいと存じます。
  486. 栗原祐幸

    栗原委員長 永末英一君。
  487. 永末英一

    ○永末委員 核防条約につきましては、われわれは、この核爆発というものが大量殺戮ないしは破壊兵器である、したがって、そんなものの拡散ということについて、人類の未来のためにいかがかというのでこれを審議をしているわけですが、六月十三日にモスクワにおきましてブレジネフ共産党書記長が選挙演説をいたしました。この選挙演説の中で、国際軍備制限条約でカバーされていない新しい大量破壊兵器システムについて言及をいたしまして、自分としては諸国、特に大国がこういう種類の兵器の開発を禁止する協定を結ぶべきだと演説したと伝えられております。防衛庁長官は、どんな兵器のことをブレジネフ書記長が言ったとお考えですか。
  488. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 全く見当がつきません。わかりません。
  489. 永末英一

    ○永末委員 核兵器はすでに三十年以上の経験があるわけでございますが、しかし、現に昨年七月、米ソ首脳会談で環境破壊に関する兵器の禁止等の協定の呼びかけがブレジネフ書記長からニクソン大統領にあり、さらに昨年九月の国連総会におきましては、同じように環境と気候に影響を与える行為の禁止に関する条約案の提出がソ連からあったということでございました。であるならば、大体の見当がついておるはずだと思いますが、外務省はいかがですか。
  490. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 外務省も、これは何であろうかということは、どうも格段の情報を持っていないようでありまして、少なくともBC兵器は、これは明らかに禁止されておるのでありますから、これに言及をするということは幾らか乱暴ではないだろうか。そういたしますと、何かレーザーに関係あるものであろうかという推論がありますけれども、そのようなレーザーをどのようにして生むか、これは恐らく膨大な発電能力が要るわけでありますから、それも見当がつきませんし、地球の周りを軌道でつないで、そこから兵器を落とすというような方法ならば、現在あるものとそんなに違っておるとは私は思わないので、いろいろ申しましたけれども、どうも何を言っておられるのか、ただいまのところはよくわからない。そのうち何か少しずつわかってまいるかもしれませんが、はっきりいたしておりません。
  491. 永末英一

    ○永末委員 全然根拠なしに、いやしくも大国の首脳者が言うわけはないと思いますので、私は、わが政府としましては積極的に検討し、そしてだれかがこれを持ってから、持った者がそれを持てばよろしい、持たぬ者は持ってはならぬというような種類の条約を押しつけられないように御検討されたい。御答弁願います。
  492. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはわが国なりに何を意味しておったのかということは、できるだけ知っておかなければならないと思っております。検討しなければならないと思っております。
  493. 永末英一

    ○永末委員 この前の機会に、わが政府が、もし朝鮮半島で紛争が起こりましたときに、アメリカ側から直接作戦行動に出たいという申し入れがあった場合には、イエスがあり得る場合があるという答弁がございました。そうだといたしますと、わが国に対して、攻撃を受けた側から反撃があると考えねばならぬという見通しにつきましては、外務省防衛庁もそういう見込みを持っておるとの答弁がございました。  さて、その場合に防衛庁長官とされましては、どういう反撃が海、空、陸にあると判断しておられますか、お答えを願いたい。
  494. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 なかなか事態が複雑でございますので、一概にどういう形の反撃があるかということを想定いたしますことは、また、それをあからさまにいたしますことが現在の情勢下で好ましいことであるかどうかということも含めまして、はっきりお答えをすることがむずかしいというふうに存じております。
  495. 永末英一

    ○永末委員 事態が複雑でわからないから答えられないと言われるのか、想定はいたしておるけれども、明らかにすることが望ましくないから言われないというのか、いずれですか。
  496. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 両方含む状態であります。
  497. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁長官、ともかく一兆円もの予算を国民防衛費に払っているわけです。その防衛費によって国民は何らかの安全感を得たいと願っておる。ところが、その場合に防衛庁としましては、わが方の持つ自衛力というのは一たん事があれば、有事の際にそれを使うんだ、有事というのは何であるかということについて、いま国民が一番心配いたしておる朝鮮半島に起こるかもしれない紛争について、日本政府は一体どういう用意をしておるだろうということを、私が国民考えておることを推測しながら質問申し上げたら答えられない。こういうことになりますと、一体政府というのは何をしているのだろう、何か宙に浮いたことを考えているんじゃないかということを言われてもしようがないじゃないか。答えられる限りのことはやはりお答え願いたい。
  498. 坂田道太

    坂田国務大臣 御承知のように核を持ちませんので、核の攻撃に対しましては、日米安保条約核抑止力にお願いをする。それから大規模の攻撃は、単独ではこれを防ぎ得ない。しかし小規模の攻撃に対しては十分な備えがある。こういうふうに一応申し上げられるかと思います。
  499. 永末英一

    ○永末委員 いまお答えになりましたことは、従来何遍も繰り返して委員会では答えられているわけです。だから、米国の方にも問題があるのでございますけれども、少なくとも小規模の直接侵略に対してわが国が独力でこれを排除するというのは、四次防ですでに数年前に政府国民に明らかにしたところである。であるならば、その内容について国民質問した場合に、それに答えられないというのだったらどうなりますかね。お答え願いたい。
  500. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 先生御案内のように、年次防衛計画によりまして当面の情勢を判断をしてやりますので、この場合に差し迫った脅威がないという前提でいろいろ考えておるわけでございます。しかしながら一朝有事の場合、いろいろな形でのわが国に対する脅威とか侵略ということが考えられますので、いろいろなパターンについて検討しておくということは、これまた私どもの方の防衛の責務を負ったものとして当然の職務であるというふうに考えておるわけでございますが、ただ、いま御設問のございました朝鮮半島で具体的に何かが起きて、それがわが国に波及する場合に、一体どういう形で波及してくるのかというような問題になりますと、大変いろいろ複雑な要素があるわけでございまして、また、ただいまのこういう平時におきます日韓関係その他の点も考慮いたしまして、私どもは国の機関がそういうことを想定しておるということを明らかにすることは、必ずしも好ましいことでないというふうに存ずるわけでございます。
  501. 永末英一

    ○永末委員 一つ具体的に伺いますが、朝鮮半島の北の方の国は潜水艦を現在何隻持っておりますか。
  502. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 たしか四隻、公には四隻ということでありますが、四隻ないし六隻というふうに私ども承知いたしております。
  503. 永末英一

    ○永末委員 そのうちで中国からもらったものは何隻ですか。
  504. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 二隻ないし四隻でございます。
  505. 永末英一

    ○永末委員 そのうちで東海岸におるものは何隻ですか。
  506. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 東海岸が二隻でございまして、西海岸が二隻ないし四隻というふうに承知しております。
  507. 永末英一

    ○永末委員 中国からもらったものの中で東海岸に行っているものがありますか。
  508. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 ソ連から供与されたものを東海岸、それから中国から供与されたものを西海岸に配備しているように承知しております。
  509. 永末英一

    ○永末委員 少なくとも潜水艦につきましては、それがどういうぐあいに動いておるかということを、防衛庁としてはよその国の潜水艦の動向については十分必要のあることだと思いますが、防衛庁長官、いかがですか。
  510. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 おっしゃるとおり必要なことだと存じます。
  511. 永末英一

    ○永末委員 昭和四十五年に防衛庁は「装備の生産及び開発に関する基本方針」というものをつくりました。これは現在もそれをそのとおりやっていこうとしておられますか。
  512. 山口衛一

    ○山口政府委員 お答えいたします。  ただいま先生の申されました四十五年度の基本方針は基本として実行しております。
  513. 永末英一

    ○永末委員 この基本方針は、要するに「国を守るべき装備はわが国の国情に適したものを自ら整えるべきものであるので、装備の自主的な開発及び国産を推進する。」ということでやってきておられると思います。  防衛庁長官に特に伺いたいのでありますけれどもわが国の国を守るという意識は自衛隊にきた人だけが持つのではなくて、いまの防衛生産の話にいたしますと、防衛生産に従事をいたしておる者も、やはりそのことの価値を積極的に国民に認めてもらっておるということで、国を守る意識が出てきますね。わが国では何か単価が高ければよそから買ったらいいと言いますけれども、そういうお金の値打ちで対価されるものではなくて、やはり国民の多くが国を守ることの意義を認めるというところに重点があるとするならば、もっと違った意味防衛生産を考えなくてはならぬ、私はこう思いますが、この考え方についてあなたはどうお考えですか。
  514. 坂田道太

    坂田国務大臣 永末さんのお考えは基本的には私も賛成でございます。
  515. 永末英一

    ○永末委員 そこで、具体的にPXLのことをこの際ちょっと聞いておきたいのですが、すでに早くからPXLの問題が問題となっておりながら、四次防が策定されました四十七年、これは国産か否かの問題は白紙還元になりました。ところが、国防会議は二年間もほっておきまして、四十九年十二月に一応の結論を出して、国産化が望ましいけれども外国機導入を図ることもやむを得ない、こういうわけのわからぬ答申案をつくって、防衛庁に返しました。国防会議の責任者が来ておりませんから質問はいたしませんが、防衛庁とされましては、この二年間の空白というのは非常に重要であったと私は思います。四十七年にはわが日本の国はドルがだぶついておった、いまやドルがなくなっておるにもかかわらず、なおかつ何を研究しておったのかわかりませんが、いまのような外国機導入もやむを得ないということをもって時間を空費いたしました。しかし、いまわれわれの持っておるP2JにかわるべきPXLをどうするかという場合に、国産の方針を立てるか外国のものを買うのかということは、わが国の産業なり国防意識のために重要な影響のある問題だと思います。防衛庁長官はいずれを選ばれますか。
  516. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 おっしゃるとおり、ただいま対潜哨戒機の主力になっておりますP2Jが大体五十四、五年のころから用途廃止が出まして、トータルフォースがスローダウンするという傾向にございます。そういう状況下でできるだけ早く国産かあるいは外国機を導入するかという方針を決定をさせていただきたいというふうに考えておるわけでございます。もちろん、この国産という場合には、四次防の当初におきまして、国産を前提とする研究開発ということで始まりまして、それが先ほど先生指摘のように途中で御破算になりまして、またもし国産であれば研究開発という形に戻るわけでございますが、外国機導入ということになりますと、これは次期防の主要項目ということになるわけでございまして、そういう面で来年のポスト四次防の大綱を御決定いただくときに、一緒に御検討をいただくということに相なるかと思うわけでございます。
  517. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁長官伺いたいのですけれども、いま防衛局長の申しましたのは事務的な進め方のことを申された。この前もポスト四次防なんて言いましたけれども、ポスト四次防を語る前に、四次防がどうなっているかということの評価を国民にしてもらわなければ、むだ金を使っているのじゃないかという疑いがなくならないわけですね。  私が申し上げておるのは、PXLの問題は、すでにP2Jが生産にかかる前から問題があったわけであって、P2JかP3Cかということで問題があって、P2Jがいま生産にかかっているわけですね。したがって、P3CというのはすでにP2Jと同じほどの暦年を経ておるわけであって、であるならば、わが国防衛のために防衛生産というものは一体どうあるべきか、そのことが防衛意識にどう働くかといえば、顧慮することなく、困難を排して国産の方向に、技術がそれに沿うならば進むべき問題だ。政治的判断であって、防衛局長の事務的な並べ方の問題ではない。私はあなたの御決心を伺いたい。
  518. 坂田道太

    坂田国務大臣 先ほどお答えを申し上げましたように、基本的には国産というものはやはり防衛意識を高めていくという一つの効果もあるかと思います。  ただ、いま御指摘になりましたPXLの装備化につきましては、国内開発でいくのかあるいは外国機の導入でいくのか、まだ現在は結論が出ておらないわけでございまして、国産化につきましてはいまここではっきり申し上げる段階ではございません。しかし、一般論といたしましては、品の国産と輸入との関係については、こういうふうに私は考えておるわけでございます。すなわち、装備の国産には技術開発の波及効果とかあるいは維持、補給上の便宜等の長所がある反面、また生産数量が少ない場合には価格が割り高となるという短所もございますし、一方輸入は、一般に量産効果によって価格が割り安であり、また比較的早期に入手することが可能であるという長所もございますが、維持用部品の入手、修理等、生産国の事情に左右されるために、常に補給上の不安がつきまとうことも、現実にあることでございます。したがいまして、装備品の取得に当たりまして、一律に国産にするとか輸入にするとかいうのは適当ではなく、やはり国産、輸入それぞれの長所、短所を十分に勘案いたしまして、最も効率的かつ経済的な方法で調達するということが望ましいのではないかというふうに思います。  しかし、長期的に私ども防衛というものを考えていく場合には、何と申しましても、先生指摘のとおりに、国民のコンセンサスと申しますか、あるいは国を守る気概と申しますか、そういった国民理解あるいは支持と協力ということをまたなければならないわけでございまして、その意味におきまして、国産化の方向ということはやはり決して忘れてはならないことだというふうには考えますけれども、先ほど申しましたような事情で、PXLについての私の考えはこのような次第でございます。
  519. 永末英一

    ○永末委員 わが国が兵器を整える場合に考えなくてはならぬのは、重要な兵器はアメリカの兵器で装備されるのでありますけれども、たとえばナイキJを設置しましたときには、もうすでにアメリカでは生産が終わっておる。わが方がナイキハーキュリーズを全部完装してやろうという場合には、ちょっとたちますとすでにナイキハーキュリーズはアメリカでは生産停止だ。このP3Cも、アメリカではもう古くなってしまってしようがないので、新しいVPXをつくろうとやっておるわけですね。ところが日本では、あちらで古くなったものを買おうかどうかなんて、そして国産をおくらしている。これじゃわれわれがいかに自主的な防衛を——国民に国を守る気概を持てと亡くなられた佐藤さんは言われましたけれども、持ちようがないわけだな。アメリカの古手の兵器ばかり持ってがんばれと言ったって、がんばれませんよ。私は新しい防衛考える会ではどういう意見が出ておるか知りませんけれども、そういう面で防衛庁長官としては、やはりかなわぬまでも自分たちのつくったもので国を守っていくということ、これが本音であって、何か使いやすい武器をそろえたからなんて言っても国を守れるものじゃありませんよ。そんなものだったら、ベトナムが一遍にひっくり返るわけがない。気概が違うのですね。その点について、書いたものでなくて、あなたの御決心をひとつ言ってください。
  520. 坂田道太

    坂田国務大臣 非常にいい御意見だと思いますし、私もかねがね、日本列島という地理的あるいは地勢的な環境といいますか状況、やはり日本には日本の独特の兵器というものがあってしかるべきじゃないかというふうに思うわけでございます。それでございますから、日本の経済あるいは技術というものは、かなり高い技術を持っておりますし、科学的にも進んだ国でございます。特に電子工学等においては進んでおると思うのでございます。したがいまして、やはりこれのポテンシャルというものを維持していくということが非常に大切なことであって、私は技本を見せてもらったのでございますが、かなりいい研究も行っておるように思います。ただ、一応三千億の中で百六十億ぐらいだったと思いますが、これは少し少な過ぎるのではなかろうかというような気持ちもいたしまして、やはり国産の前提となるべき技術の開発あるいは研究というものにもう少し力をいたさなければならない、こういうふうに思いますし、また、御指摘のように四次防までの主要装備等々につきましても一応点検をいたしまして、そして、ただ量的に数量だけを確保して、本当に日本の国防のための兵器として適当であるかどうか、あるいは惰性的に陥っているきらいはないかどうかというようなそういう分析を行いまして、そういうクールな分析結果、事実認識の上に立ってポスト四次防というものの構想をいま練っておるわけでございます。直ちにそういうふうに国産というふうな結論には至らないかもしれませんけれども、同時にそういうことを十分把握をしながら日本防衛生産ということについても考えてまいりたい、こういうふうにいま思っておる次第でございます。
  521. 永末英一

    ○永末委員 五十一年度予算までには考えますか。
  522. 坂田道太

    坂田国務大臣 非常に基本的な大きい問題でございますので、そのときまでにすべて完全な非常に整ったものとして御提案できるかどうかはわかりませんが、その気持ちの一端は少なくとも出したいというのが私の気持ちでございます。
  523. 永末英一

    ○永末委員 飛行機の話を出しましたので空のことを聞いておきたいのですが、対処力、抗堪力等が必要であるということは防衛庁長官も申されました。わが方は新しいFXを買おうというので調査団を派遣するということでございますけれども、どんな飛行機がございましても、いまのところレーダーがつぶされますと盲でございまして、空戦の用に立たない。わが方のレーダーはちゃんとそれを防護する準備ができて抗堪性が保たれるようになっておりますか。  もう一つ、現在持っておるわが方の要撃戦闘機は、飛行場でちゃんと覆いがされて、そしてちょっとくらい攻撃を受けても燃えないようになっておりますか。
  524. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 バッジシステムの端末にございます各レーダーは、現在のところ第一次攻撃に対してはきわめて脆弱であるということでございます。これに対処いたします方策として、これのシェルターその他の防護を固めるということもございますけれども、同時に各方面航空隊に移動警戒隊というのを設置をするという計画をいたしておりまして、現在までに北部が設置をされておるわけでございます。これはレーダー関係の器具を持ちまして移動をする、応急の体制もとるということを考えておるわけでございます。  それから要撃戦闘機のシェルターでございますが、これは全くいままでのところ手がついておらないという状況でございまして、これも次に考えていかなければならない大きな課題でございます。
  525. 永末英一

    ○永末委員 一九六七年のイスラエルとアラブとの七日間戦闘でいまみたいなことをやっておったら、二時間ももたぬということは先刻明らかではございませんか。一九六七年からいままで七年たっておるでしょう。七年前からわかっていることですね。これは防衛庁長官考えなければいけませんね。
  526. 坂田道太

    坂田国務大臣 この四月一日にポスト四次防についての長官指示を出しましたが、主といたしまして、主要装備の計画整備ということも大切だけれども、一方におきまして後方支援体制あるいは抗たん性あるいは縦深性、特に一つの優秀な飛行機を飛ばすにいたしましても、バッジシステムであるとかあるいはレーダーサイトの機能的な分担とか、そういったものを欠いたならば十分な威力を発揮できないのだ。どんな高い飛行機を用意いたしましても威力を発揮することができない。それから先ほどお話しのようなシェルター等を十分にやらなければ第一撃でやられてしまう、あるいはレーダーサイトをやられてしまったらもう次は飛行機は飛べない、こういうことでございますから、そういうような、本当に有事の際に侵略にたえる防御、小じんまりとしてはおるけれども、実力のあるそういうものを私は目指しまして長官指示を行ったような次第でございます。来年の八月ごろまでに一応そういう基本姿勢を打ち出したいというふうに思っております。
  527. 永末英一

    ○永末委員 実戦というものを考えないで準備をしておって、高い金を出して習いましても、そういうことをやっておるから、何か日本の自衛隊というのはパレード用の自衛隊ではないかという評価を外国人から与えられる、こんなことを国民が聞きますと税金を出す気にならぬわけでございますから、やはり真剣に対処願いたい。  もう一つ空で伺っておきたいのは、今回のイスラエル・アラブ戦争で、エジプト側が展開をいたしました地対空ミサイルの密度がございますね。それと日本と比べたらどうなりますか。
  528. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 ただいま御指摘がございましたのはソ連で装備をいたしておりますSA6という地対空誘導弾でございますが、第四次中東戦争でこのSA6が相当イスラエルの空軍機を落とすに効果があったというふうに言われております。これは大体性能がわが陸上自衛隊で装備をしておりますホークに射程その他を考えますと近いようでございますが、ただ大変にこれがすぐれておりますのは、機動性があるという点と、それから扱いが大変簡単にできておるというようなことが言われておるようでございますが、わが国のこういう狭い国土で基地を獲得するということが非常にむずかしい情勢にあるところにおいては、こういう種類の地対空誘導弾というのは、わが国固有の装備として研究開発をしていくということに意味があるのではないかということで、実は先ほど御指摘のございましたナイキがそのうちに用途廃止になりますので、そのナイキのあとの後継の地対空誘導弾の開発を本年度からいわゆるコンセプトスタディーということで、いまのところ全般的な大ざっぱな概念から検討をするということで始めさせていただいておる、こういう状況でございます。
  529. 永末英一

    ○永末委員 あなたはぼくの質問に答えてない。私はそんなこと聞いたのじゃなくて、密度を聞いておる。わが方がいままで地対空ミサイルを配置しております。いろいろ問題もございます。しかし要はその密度が問題であって、いかにその一つ一つの兵器や性能が優秀でも、ばらばらとあるんだったら言うことを聞きませんね。その密度のことをこの際御説明を願っておきたい。
  530. 丸山昂

    丸山(昂)政府委員 いまちょっと手元に具体的な数字を持っておりませんので、そういう御説明ができなくてたいへん申しわけございませんが、この点について非常に大ざっぱな点から申しまして、当初スエズの西岸に配置をいたしまして、それから川を渡りましてからシナイ半島に面しましたところへ配置をしておりますが、その密度は大変に濃いものがございます。それで、これはいまのSA6とそれから各個人携帯用のSA7、それから十七ミリの高射機関銃であったかと思いますが、これを非常に連携をさせて巧妙に使っておるということでございまして、具体的に、私どものこのホークの配置とそれからいまのSA6の配置がどういうふうに違うかというのは、同じような地勢のところに対する配置というような関係で比較をしなければならないのでございますけれども、まことに恐縮でございますがそういう比較をやっておりません。ただ、大変密度の点においては違いがあるということだけは確かでございます。
  531. 永末英一

    ○永末委員 この密度の違いということをやはり国民に十分御説明をいただきませんと、国の空の守りは万全だと言って昔胸をたたいた防衛庁長官がございましたけれども、そんなことではないわけでして、そういうことをはっきり国民に知らせて国民協力を得なければならぬ問題だと思います。  時間がもうございませんけれども、もう一つ聞いておきたいのは、反撃があれば被害がある。その被害を、これは物にもございますし人の命にもございますし、火災につきましてはわが国は消防団がございますが、その他については全然組織がない。防衛庁長官はどうお考えですか。
  532. 坂田道太

    坂田国務大臣 従来そういう点に欠くるところがあったと、私は率直に認めざるを得ません。したがいまして、先ほど申しますような、実際侵略を受けた場合に対するもろもろの民生協力等につきまして、どういう問題点があるのかということをいま検討させておるという段階でございます。
  533. 永末英一

    ○永末委員 まだたくさん聞きたいのでございますが、お約束の時間でございますので、最後にもう一問防衛庁長官に伺っておきたいのは、そういうことを国民防衛庁が知らさなければ国民日本防衛の実態はわからない。数人の人間を集めて防衛考えてもらったってだめであって、やはり国民防衛考えてもらわなければならぬ。わが方の防衛庁は五年ほど前に防衛白書という官庁の説明書みたいなものを発行いたしました。日本防衛に関係のあるのは約百数十ページの中で二、三ページくらいであったと記憶をいたしておりますが、あなたはいまのような防衛必要性を感じられるならば、いまの防空に対しても欠陥があり、海に対しても答えられないという話でございますが、やはり国民に実態を明らかにするために、少なくとも莫大な予算を要求されるなら、その予算の意味合いを国民に説明する義務が私は防衛庁にあろうと思う。防衛白書をお出しになる用意があるかどうか伺いたい。
  534. 坂田道太

    坂田国務大臣 全く永末さんのおっしゃるとおりに私考えておりまして、材料を与えなければ国民はどうやって防衛考えていいやらわからないと私は思うのでございまして、私は今度の防衛白書を秋をめどにいたしまして出したいと思います。ことしは予算措置を内部で出してやります。しかし私はこれは毎年出すべきものであるというふうに思っております。その年における軍事情勢、日本列島周囲をめぐる軍事情勢あるいは防衛のあり方あるいは理念、それからいろいろなデータ等もそろえまして、国会議員の方々もあるいは一般の人たちもそれをじっくり読んで、日本人の一人一人の生存と自由にかかわる問題を考えていただく、その中から私は国民のコンセンサスというものが得られるというふうに思います。しかもそれは単に国内的なコンセンサスを得るものではなくて、日本それ自体がどういう防衛力を持ち、どういう理念を持っておるか。特に特殊な憲法下にある日本というものをわかっていただくために、そのことが同時にこの日本を取り巻くところのアジア諸国に対して脅威を与えない、本当に平和に徹した国であるということがわかるようなそういう防衛白書、したがいましてそういうものを英文等に翻訳をいたしましてそれを読んでいただくというようなことも私はいま考えておるわけでございます。せっかくひとつ努力をいたしたいと思います。
  535. 永末英一

    ○永末委員 せっかく努力中のようでございますから、ぜひ実施をお願いしまして、時間も遅うございますので、本日はこれまで。
  536. 栗原祐幸

    栗原委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。  これにて散会いたします。     午後九時三十七分散会