運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1975-06-13 第75回国会 衆議院 外務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月十三日(金曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 石井  一君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 小林 正巳君 理事 水野  清君    理事 毛利 松平君 理事 河上 民雄君    理事 正森 成二君       加藤 紘一君    坂本三十次君       正示啓次郎君    田中  覚君       竹内 黎一君    谷垣 專一君       戸井田三郎君    登坂重次郎君       福永 一臣君    山田 久就君       石野 久男君    江田 三郎君       勝間田淸一君    土井たか子君       松本 善明君    大橋 敏雄君       渡部 一郎君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (原子力委員会         委員長)         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛施設庁長官 久保 卓也君         科学技術庁原子         力局次長    半澤 治雄君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  委員外出席者         資源エネルギー         庁公益事業部開         発課長     松尾 成美君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ――――――――――――― 委員の異動 六月十三日  辞任         補欠選任   土井たか子君     吉田 法晴君   三宅 正一君     石野 久男君   金子 満広君     松本 善明君   大久保直彦君     大橋 敏雄君 同日  辞任         補欠選任   石野 久男君     三宅 正一君   吉田 法晴君     土井たか子君   大橋 敏雄君     大久保直彦君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  参考人出頭要求に関する件  社会保障最低基準に関する条約(第百二号)  の締結について承認を求めるの件(条約第八  号)  核兵器の不拡散に関する条約締結について承  認を求めるの件(条約第一二号)  婦人関係ILO条約批准促進に関する件      ――――◇―――――
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  社会保障最低基準に関する条約(第百二号)の締結について承認を求めるの件を議題といたします。  本件に対する質疑は、去る十一日終了いたしております。  これより討論に入るのでありますが、別に討論申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  社会保障最低基準に関する条約(第百二号)の締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成諸君起立を求めます。
  3. 栗原祐幸

    栗原委員長 起立総員。よって、本件承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  4. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  5. 栗原祐幸

    栗原委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  ただいま委員長の手元に、小林正巳君、土井たか子君、正森成二君、大橋敏雄君及び永末英一君から、婦人関係ILO条約批准促進に関する件について本委員会において決議されたいとの動議提出されております。  この際、本動議議題とし、提出者から趣旨説明を求めます。土井たか子君。
  6. 土井たか子

    土井委員 私は、自由民主党、日本社会党日本共産党革新共同、公明党及び民社党を代表して、ただいま議題となりました動議についてその趣旨の御説明をいたします。  案文の朗読をもって趣旨説明にかえさせていただきます。  案文を朗読いたします。    婦人関係ILO条約批准促進に関する件一、国際婦人年の意義に照らして、政府は、未枇准の婦人関係ILO条約をすみやかに批准するよう努力すべきである。一、政府は、一〇二号条約に関し今回受諾しない部門、特に、母性給付及び遺族給付について、本条約趣旨をふまえてその改善をはかるとともに、すみやかに条約第四条1の規定に基づぐ義務受諾の通告を行うよう努力すべきである。右決議する。以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  7. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  8. 栗原祐幸

    栗原委員長 別に発言もありませんので、直もに本動議について採決いたします。  小林正巳君外四名提出動議賛成諸君の冊立を求めます。
  9. 栗原祐幸

    栗原委員長 起立総員。よって、小林正巳君外四名提出動議は、本委員会決議とすることに決しました。  この際、宮澤外務大臣から発言を求められて去りますので、これを許します。宮澤外務大臣
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま採決されました御決難に関し、一言発言さしていただきます。  政府といたしましても、婦人関係ILO条約の履行を確保し得るよう、国内法の整備を行いました上、これを批准いたしますことは、国内における勤労婦人地位向上につながるのみならず、労働問題の分野におけるわが国国際信用を高めることにもなり、きわめて有意義と考えておりますので、今後とも十分検討してまいりたいと考えます。  また、このような観点から、先ほど御採決をいただきましたILO第百二号条約につきましても、今回義務を受諾しない部門につき、ただいまの御決議趣旨を体し、今後とも引き続き関係各省間で緊密な連絡を保ちつつ、政府として最善の努力をいたす所存でございます。
  11. 栗原祐幸

    栗原委員長 お諮りいたします。  本決議の議長に対する報告及び関係方面に対する参考送付等の取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  12. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  13. 栗原祐幸

    栗原委員長 次に、核兵器の不拡散に関する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件について、参考人出頭を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  14. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、日時及び人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  15. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  16. 栗原祐幸

    栗原委員長 引き続き審査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。永末英一君。
  17. 永末英一

    永末委員 核防条約は、今後二十年にわたってわが国安全保障に対して重要な意味を持つ条約であります。この条約が計画されました約十年近く前と現在ではアジア情勢は一変いたしております。国際情勢がネコの目のように変わるときに二十年、果たしてわが手を縛ることがわが国安全保障上役に立つかどうかということについて、いろいろな考え方が現在存在をいたしております。政府は一九七〇年にこの条約に署名をし、そしてようやく五年たって、この条約批准を国会に求めてまいりました。  私は民社党を代表いたしまして、この機会に、政府が一体、日本の国の安全保障を念頭に置きつつ、この核防条約によって何を求めようとしておるか。また、この核防条約をどのように位置づけておるかということを明らかにしていきたいと存じます。したがって、政府におかれましても慎重な答弁をお願いいたす次第であります。もっとも本日は、防衛庁長官出席要求をいたしておりましたが、出席がございませんので、その分は省きまして質問をいたすことにいたします。  第一点、この核防条約は、第九条によりますと、六七年の一月一日に、すでに核保有国になっているものの核保有を認め、その他の国には核拡散を行わない、こういうことを内容にいたしておるのでございまして、これをこのまま受け取りますと、この核保有国が核を独占している状態を核を持たないものが是認をする。不平等を是認いたしていくわけでございまして、しかもその核を持っている国の中で、この条約にいままで加盟いたしておりますのはアメリカソ連イギリスでございまして、特にアメリカソ連は強大な核兵力保有をいたしておる。こうなりますと、この条約アメリカソ連との核保有を特権として与えるものだ、こういう評価が出てまいるのでございますが、過般の本会議で、そのような認識政府が持つかどうかについて伺いましたところ、三木総理大臣は、どうもそのようでない御認識をお持ちのようでございましたが、改めて外務大臣から、政府としてのこの核防条約の基本的な性格についてどうお考えかを伺いたい。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約のたてまえが、ただいま永末委員の御指摘になりましたような立場に立っておりますことは、否定できないことではないかと私は思います。したがいまして、そういう意味不平等性があるではないかと言われますことは、そういう意味であればこれは肯定せざるを得ないと存じますが、私どもはそのような現実に対処して、われわれが米ソと同じ道を歩むよりは、むしろこのような条約をつくることによって、米ソのいわゆる核軍縮を進めてまいりまして、最終的には核兵器の廃棄にまで至らしめたい。つまり平等という形を、こちらが米ソの道を追うのでなく、米ソに対して非核保有国のとっております方針の方に歩み寄ってもらう、そういう形で、時間のかかることであり、なかなかアンビシャスな試みではございますけれども、そういうことで平等というものを実現してまいるべきではないかと考えるわけでございます。  その際に、フランス中国等は確かに締約国でないという点でさらに問題があるわけでございますけれども、少し長い将来について考えますならば、フランス中国につきましてもおのずから、米ソがそういう姿になっていく過程の中で、そういう世界情勢の変化の中でそういう大きな流れに同調をしてもらいたい。もとよりこの条約加盟をしてほしいということは前回の最終宣言でも言っておるわけでございますし、わが国もそういう努力を今後ともいたしてまいりたいと考えておりますが、同時に大きな世界核軍縮流れというものが現実になってまいりますれば、やがてはフランス中国もそれに同調してくれる日が来るのではないか、そういう願いを込めておるわけでございます。
  19. 永末英一

    永末委員 ただいま外務大臣お話を伺っておりますと、わが国がこの核防条約加盟国になることは、時間はかかるけれども将来核兵器が廃止をされて、そしていまの核保有国非核保有国もいずれも非核保有国として平等になる、それを期待しておる、こういうお話でございましたが、政治の話は長時間と申しましても大体予測可能な時間でなくてはならない、時間というと外務大臣はどれくらいかけたら実現するとお考えなんですか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もとよりそれを正確に申し上げることは可能でございませんが、ともかくも米ソが、この条約ができまして以来初めていわゆる核軍縮あるいは軍縮一般につきまして話し合いをし、幾つかの取り決めを結び、そして現にSALTの第二段階の交渉をしつつある。そのテンポなり態様なりにつきましては、私どももいろいろ十分でないと考える点は多々ございますけれども、とにかくそういう話し合いというものが緒についたということから考えますと、傾向としてはそちらの方に動いていくと期待をしてもよろしいのではないか。どのくらいの年限で考えるかということはなかなか申し上げがたい事柄でございますけれども、そちらの傾向が強まっていくという、そういうことは期待してもいいのではないかと存じます。
  21. 永末英一

    永末委員 兵器保有が合理化される理屈というのはなかなかむずかしいわけでございまして、古来、主権国家が存在いたしまして以来、もう絶えず軍縮ということは口にされてまいりました。きて、いまもその線に沿った見通しを立てておられるようですが、しかし世の中にはこういう意見本あるわけですね。つまり、ソ連アメリカという強大な核兵器国は、その核の抑止力というものに依存をして、そして中級核保有国としてフランス中国等がおっても、その他の国々が核を保有しないならば、それは一つ世界平和を維持していく図式として一番安定した形である、こういう意見があるわけですね。これはいま申されました宮澤外務大臣意見と違うものです。つまり、核大国核保有固定化を是としている議論でございます。この議論に対してあなたはどういう評価をされますか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今日の世界現実が、ただいま永末委員が御紹介になりましたような姿の上に成り立っておりますことは、私は否定しがたいところであろうと存じます。しかし同時に、その米ソが、それでありましたらさらに核軍備を拡大していく方向にあるのか、あるいは一つのバランスをとった形で縮小していく意図を持っておるのか、どちらかといえば、十分ではありませんけれども後者への努力がなされつつあるというふうに私は考えるわけでございます。
  23. 永末英一

    永末委員 主観的な意向を取りまぜた御意見のようでございますが、それでは事実をどう認識しておられるかということについて二、三伺っておきたいと思います。いまフランス中国のことについて言及されました。フランス中国はなぜこの核防条約に加入をしないのでありますか、その理由をどう見ておられますか。
  24. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 中国フランスがなぜこの条約に入っておらないか、また入ろうとしないかという点については、具体的にどういう理由からということを直接に知る立場にはございませんけれども、従来の国際会議における発言その他から勘案いたしまして、やはり中国は、この核防条約そのもの米ソ核独占体制を維持するものであるという観点から恐らく反対しているのではないかと思います。それからフランスにつきましては、これはフランスの、ドゴール時代からの国是といいますか、一つフランス独自の主張に支えられているものだと思いますけれども、ただ、フランスの最近の動きを見ますと、核防条約そのものには入りませんけれども、最近の核拡散傾向に対してはやはり深刻な問題として受けとめておるようでございまして、特に平和利用の面における協力を及ぼす場合には、それが核兵器の生産につながらないような方法で慎重に配慮しているということは言えるかと思います。
  25. 永末英一

    永末委員 もう少し実態を明らかにしたいのですが、この核防条約が結ばれるに至りました六八年までに、いまの核保有国は何回核爆発実験をやったか。それから、その後昨年に至るまでの六年間に何回やったか。数字を御存じならお知らせ願いたい。
  26. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 ただいままで私たちが得ております情報を総合してみまして申し上げますと、まずアメリカでございますけれども、いままで一九七四年に五回それから七五年に五回、合計十回実験をしているという数字が出ております。これに対しましてソ連は、七四年に十二回それから七五年に三回実験をやっております。それからフランスは七四年に八回という数字を持っております。  以上でございます。
  27. 永末英一

    永末委員 私がお伺いいたしましたのは総計を聞いておる。すなわち、核保有国核保有国として持続するためには持続的に核爆発実験をやっておるわけでございますから、それを核保有国のそれぞれについて一つの標識としては六八年までということはございますが、総計七四年までに何回したかとお伺いいたしております。
  28. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 現在までの総計数字を申し上げますと、アメリカは五百五十回、ソ連が二百八十三回、フランスが五十九回、中国が十六回、イギリスが一回、こういう数字になっております。
  29. 永末英一

    永末委員 科学技術庁長官、なぜ核保有国はこんなに核爆発実験をやるんでしょう。核爆発実験の効用というのはどういうものでしょう。
  30. 半澤治雄

    半澤政府委員 科学技術庁では原子力利用平和目的に限っておりますものですから、核爆発というものは、これは私どもの想像ではございますけれども核兵器開発につながるものと一応常識的には言えるかと思うのでございまして、平和目的に徹しております科学技術庁といたしましては、核爆発実験評価といったようなことは実は全く考えておらないわけでございます。
  31. 永末英一

    永末委員 核爆発平和利用という言葉も、そういうことがあり得ることはこの核防条約の中にも入っておるのであって、いままでわれわれがやっておる平和利用というのは、それを制御された箱の中に入れてエネルギーを取り出すということだけはやっておるのですが、科学技術庁というのは核爆発のことは研究せぬのですか。
  32. 半澤治雄

    半澤政府委員 核爆発にかかる技術につきましては、研究開発等は行っておりません。
  33. 永末英一

    永末委員 科学技術庁長官、これは政治問題でございまして、私は核爆発日本がやるべしとも何とも言っておりません。しかし、発電用原子炉だって小型核爆発をやっておるわけで、核爆発というものは一体平和利用になり得るかどうかは核防条約加盟している国の一つの大きな問題でございましょう。そのことを日本科学技術庁研究しておらぬなんというのはいかがですかね。科学技術庁長官、お答え願います。
  34. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 ただいまの私ども考えでは、核爆発平和目的かあるいは軍事目的かいずれに使用するかというその分界点が非常に不明確でございまして、まだ平和目的にのみ使うというような核爆発体系というものはできておらぬように考えますので、平和目的にのみ限るという基本法精神にかんがみまして、その概念あるいは実態がはっきりする時点までその研究はしないということに委員会で決めまして、その方針どおりにしております。
  35. 永末英一

    永末委員 私どももまだ確証を得ておりませんが、核爆発によって運河開削するとか、あるいはまた地形を変えるとかということが行われたという報道がせられる国もございました。そういうものは、平和利用とはお認めにならぬのですか。
  36. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 水爆等によりまして運河開削とかいろいろ計画されておるのはございますけれども実用面としてこれを実際に使っておるところはまだないように承知してございます。したがいまして、いまの段階では核爆発そのもの平和利用だと言っても、すぐその実験平和利用かあるいは戦時利用のためかという点ははなはだ不分明でございます。そういう状況でございます。
  37. 永末英一

    永末委員 インドのやりました核爆発実験、あれは何だと政府はお考えですか。
  38. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 当時爆発が行われた後のインド政府の発表によりますと、平和目的のための核爆発であるというふうに了解いたしております。
  39. 永末英一

    永末委員 その内容科学技術庁調査をされましたか。
  40. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 詳しい調査はしておらぬようでございますが、しかし、あの爆発運河とかあるいは地下資源調査のためとかいったようなもののために、言いかえれば平和利用のためにこれを使ったというふうな実証もないようでございます。
  41. 永末英一

    永末委員 実証がないとしますと、名前は平和的利用だと言っておるけれども、事実は核爆弾を製造する一つの資料を得るためにやった、こうお考えですか、インドの場合。
  42. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 必ずしも平時のためとは言えないわけですけれども、しかし核爆発したことは事実のようでございまして、ただそれが平和のためと言っていますけれども、先ほどから申しますように、運河開削とかあるいは地下資源開発とかいったような平和利用のために用いたというふうには現実なっておらぬように考えられております。
  43. 永末英一

    永末委員 あれは実験でございまして、あれが運河掘削とか地下資源調査のためにやられたのではないことはインド政府も言っておるわけだ。ただ、日本政府は、今後原子力平和利用ということを進めていく場合に、事実ジュネーブにおける再検討会議におきましても問題となりましたが、核爆発利用した平和利用というものは、政府はもうこれから考えていかない方針なのか、それを考えていこうとされるのかということを伺っておる。
  44. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 先ほど申しましたように、核爆発平和利用のために使い得るという実用的な用途がはっきりしてまいりました場合には、当然核爆発の方も研究しなければいかぬのですけれども、いまの段階ではいずれにも考え得るわけでございまして、こういう際には、基本法精神から考えましてわが国としては核爆発研究をすべきでないということではっきり割り切ってございます。
  45. 永末英一

    永末委員 用途がはっきりしたらというのは、その用途をはっきりさせるための研究はやられるおつもりなんですか。それも一切やらない。よそでやってみせたらまねをしよう、こういうことなんですか。
  46. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 文面あるいは考えとしては、いろいろ平和の目的のための核爆発ということはありますけれども、実際にこれを経済的なサイド等から考えまして、実用に使っているというところまで通例としてなっておりません状況でございますから、今日ただいますぐ核爆発研究するというふうなことは、基本法精神から考えまして誤解を招くおそれもございますし、また基本法精神から言って、そういう紛らわしい核爆発研究をすべきでないということで割り切っている次第でございます。
  47. 永末英一

    永末委員 核の利用というものはいろいろな方面で変わってくるわけでございまして、基本法は、そういうこれから無限に発展していく原子力平和利用内容にまで立ち至って手を縛っているとは私は思いません。われわれが人を殺傷する、あるいは器物を破壊する兵器をつくらないということははっきりいたしております、「平和」という文字が書かれておりますから。しかし、いまあなたがおっしゃったようなことまで一切やらぬということがあの基本法精神でしょうか。余りくどくなりますが、もう一度お答え願いたい。将来に対する重要な問題です。
  48. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 先ほど来申し上げましたように、平和目的のための核爆発装置というのですけれども軍事目的のそれと技術的に大きい差異があるかと申しますと、技術的な面から見ますと、現在の段階ではほとんど差異がないようにも見受けられますので、平和目的にこういうことで具体的に使うのだという事例が各国でも通常化した場合、日本としても当然それはすべきだと思いますけれども、現段階ではその分岐点そのもの自体からはわからぬような状況でございますので、核爆発研究は、先ほど申しましたように、基本法精神に照らしまして、日本としてはただいま研究はしないということにしてございます。
  49. 永末英一

    永末委員 科技庁長官のお考えはわかりました。賛成はいたしません。研究は無限でございますから、研究はちゃんとすべき問題だとわれわれは考えます。  同時に、軍事目的であるかあるいはまた平和利用のためであるかは、それはそれを研究している者の立場によるのでございまして、自民党政府は、何か防衛関係の問題でございましても、兵器によって、当然その意図兵器にそのまま組み込まれているような解釈をすることがございますが、誤りでございます。核利用ということにつきましてはもっと素直にこの問題に対処しなければ、将来核の力による新しい文明がもっと栄えるといたしますと、非常に大きな不利を招くのではないか。原子力基本法もそういう未来に即して検討願っていくべきものだとわれわれは考えております。  さて、外務大臣に伺いますが、先ほど明らかになりましたように、アメリカソ連というのは、他のフランスイギリス中国に比べまして十数倍の核実験核爆発実験をやっている。これが現実なんですね。その上にいまの超大核保有国、二大核保有国というものができておる。この状態を固定しようとしておればこそ、フランス中国はこの核防条約に入ろうとしない。先ほどあなたは、これらの国にも入ってほしいと日本も願い、再検討会議の最終文書にもそういう意向が盛られておると申されました。これは、意向は意向でございますが、この二国はどういう段階になれば核防条約、いまあるようなこれに入ってくるとお見通しでございましょうか。
  50. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一つの推測を申し上げる以外にないかと存じますが、この両国の考え方から申しますと、米ソが圧倒的な核兵器の準備をしておる、それに対して、ともかく万一の場合、自国の安全を確保し得るということは、恐らくセカンド・ストライク・ケーパビリティーということになろうと思いますが、それを確保し得たと判断する段階まではなかなかこの条約の所期するような方向に同調してこないのではなかろうか、これは多分推測でございますが、さように存じます。
  51. 永末英一

    永末委員 われわれの隣国には中国がおるわけでございまして、中国は断固として核防条約には入らない。  さて、核防条約というものが全世界的に核に関するある程度の安定した状態をつくり上げるものだとするならば、やはり核保有国は全部入ってもらうべきだと私も思います。しかし、いまあなたのおっしゃったように、中国は、いやフランスもそうでございましょうが、もっと多くの核の力を持たなければこれに入らないということになりますと、中国がどんどん核の力をふやすこと、これは日本としては黙って見ておる、こういうことになりますか。
  52. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたように、わが国はなるべく早くこれらの国がこの条約加盟することを望んでおりますし、またそういうことを現にこの場でも申し上げておるわけでございます。しかし、そのようなわが国の願望あるいは多くの加盟国の願望に対して、主権国家である中国あるいはフランスがただいまのところ同調を示すような気配は、遺憾ながら見えておらないと存じます。
  53. 永末英一

    永末委員 この条約に加入してない国の中で、パキスタン、イスラエル、エジプト、サウジアラビア、アルジェリア等がございますが、これらの国々はなぜ条約に加入しないと政府は御判断でございますか。
  54. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 いまお挙げになりました国全部について、どういう理由から入らないであろうかということを、確たる自信を持って申し上げるあれはございませんけれどもインド、パキスタンあるいはイスラエル、エジプトのようないわば紛争の当事国という国柄につきましては、非公式の政府の言明によりますと、やはり一方の国が核武装する可能性がある段階においては、その国がはっきりと核防条約に入って、核を持つ、持たないという姿勢を明らかにせざる限り自分も入らないというような国柄である国につきましては、つまり先ほど申しましたような紛争当事国のような相対する国の関係においては、お互いに牽制しながら入らないという事情があるように了解いたしております。
  55. 永末英一

    永末委員 そうしますと、これらの国々は、核防条約というのは自国の安全保障にとって望ましくない、こう判断していると見てよろしいか。
  56. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 確かに核の脅威をあるいはもたらすであろうという国が入らないことによって、自国の安全が十分保障されてないという感じは持っているかと思います。ただそれだけが唯一の理由であるかどうかについては、われわれとしては十分情報を持ち合わせておりません。
  57. 永末英一

    永末委員 別の種類の国々があります。スペイン、南アフリカ、アルゼンチン、ブラジル、それぞれウラニウムの産出国でございますが、これらの国々もまた未加入である。これの理由をどう判断しておられますか。
  58. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 いまお挙げになりました国について、われわれ、必ずしも十分な確たる理由として申し上げられないかもわかりませんが、一応このようなことが考えられていいのじゃないかと思います。  まずスペインにつきましては、この条約にスペインが加入するための条件の一つといたしまして、米ソ核軍縮の進展ということを挙げておりますが、そのほかにスペインが現在置かれております軍事戦略上の重要な地位にかんがみまして、何らかの安全保障上の考慮があるのではないかというふうなことが推測されます。  ブラジルにつきましては、核兵器国と非核兵器国の扱いが条約上平等でないということと、それから保障措置に関する規定がブラジルの主権を制限しているということ及び、さらに平和目的核爆発が禁止されているというようなことを理由にしまして、この条約に加入しないのだという意向を表明しているように了解いたしております。  それからブラジルの隣国のアルゼンチンについてついでに申し上げますと、ブラジルと同様に、平和核爆発が禁止されているということあるいは主権が制限されているということを理由にこの条約への加入を拒否しているようでございます。
  59. 永末英一

    永末委員 南アフリカ。
  60. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 南アフリカにつきましては、先ほど申し上げました国についてのような反対の理由といいますか、それについての情報を持ち合わしておりません。
  61. 永末英一

    永末委員 外務大臣、いま国連局長から、世界の紛争が起こりそうな、あるいは現に起こっておる地点に位置する国々と、それから今度はそうではない、ウラニウムの産出に関係のある国々と、いわばこの核防条約にきわめて入ってほしい国国、これが入っていないその理由政府はどう判断しているかと御質問申し上げましたところ、どちらもよくわからないがというまくら言葉なんですね。そんな自信のない態度でいいのでしょうか。外務大臣、ちょっとお答え願います。
  62. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 やはりおのおのの国に国としての哲学のようなものが私はあるのであろうと存じます。ですから、わが国立場から言えば、むろん人づてほしいと考えるわけでありますけれども、その主権国の哲学のようなものをいい、悪いと言って批判をするわけにもまいらない。そういうことを前提にして申し上げますが、やはりある意味で、たとえば軍といいますか、政治がシビリアンでなく、やや軍的な色彩を持った政治が行われている国では、どちらかといえば国のプレスティージというような考え方もございましょうし、これはそういう軍事的観点からいえば不平等ではないかというような判断がどちらかといえば勝っていく場合があるのではないか、あるいはまた、ブラジル、アルゼンチンなどはさようであろうかと思いますが、非常に国が大きい、しかも現に核を保有している国からかなり距離的にも遠いというような場合には、比較的脅威というものを感じないで済む立場でございましょうから、勢いこういうものに加盟をするという動機あるいは差し迫った理由を感じない場合もあろうかと思います。いろいろ表面的に挙げておる理由と実際の動機とは必ずしも私は一緒でないかもしれないという感じもいたします。いずれにしましても、その国々の一つの哲学のようなものがございますわけでございましょうから、私どもはそれを推察をしてみるということ以上に、なかなか本当のことはわかりにくいのではなかろうかと存じます。
  63. 永末英一

    永末委員 われわれもいままでこの条約に加入してなかったのでありますが、加入するについては、やはり加入しない国の意図というものを十分知って方針を定めておく、またこの運用に当たっていく必要があると思いますけれども、これは努力をしていただきたい。  さて、いま事例を申し上げましたが、戦後三十年、なるほど局地紛争はあちこちにございましたけれども、大きな戦争は起こらなかった。その大きな戦争の起こらなかった一番大きな理由は、やはりアメリカソ連とが大きな核兵力を持っており、これが相互抑制の力を及ぼしたんだ、こう見る見方がある。先ほど外務大臣は、将来やはり核兵器のなくなることを希望しておる、期待しておる、こういうことでございましたが、核がなくなれば、三十年以前のような通常兵力による国家郡が現出するわけである。核はない方がいいのか、ある方がいいのか、この辺の将来に対する御見解を承っておきたい。
  64. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに、米ソが圧倒的な核能力を持っておるということから、いわゆるデタントというようなものが生まれておることはおっしゃるとおりだと思いますが、言ってみれば、それは一種の武力による均衡、バランスでございますから、われわれとしては、理想主義的には、もっとそうでない純粋な意味での平和というものをやはり希求したいというのが人間としての本来の欲望ではないかというふうに考えます。なかなかそういう時代は簡単にくるものでないと仰せられるかもしれません。それはそうであろうと思いますけれども、しかし一種の力による、武力によるバランス、そこからくる平和というものが、本来の理想から言えば、純粋な平和をさらに希求する立場から言えば、これは一つの力による安定でございますから、そうでない安定、そうでない平和というものをやはりわれわれは希求すべきではないのか。これは大変に理想主義的なお答えをするようでございますけれども、そう存じます。
  65. 永末英一

    永末委員 大分哲学的な御答弁になるのでございますが、大体二世紀ほど前から、いわゆるいまわれわれが通常兵器と言う兵器を所有しつつ主権国家というものができ上がってきた。そして、国家ができ上がるとともに、国際平和とか、国際間の戦争もまた起こってきた。それがいわば二年に一回くらいの頻度で戦争というものが国家間に行われてきた。なるほど第二次世界大戦後の三十年は地域紛争は同じようにございました。しかし、それが二つの陣営の対立に見えながら大戦争にはならなかった。ベトナムでもならなかったし、朝鮮半島でもならなかったし、あるいはまた中東でも現在なりません。ことに朝鮮戦争の後期以来、ならなかった大きな原因はやはり核だ。核の恐怖というものを二大核保有国が知っておるからだという見方があります。だといたしますと、これを早期になくせというのは、理想のように見えて、現実の平和維持ということの役割りを考えた場合にはそうではないではないかという見方もあります。私は、米ソの両国がデタントと言っておるのは、核兵器をなくするのではなくて、つり合いをとっておるだけ、均衡をとるだけのことをやっておる。核保有をやめようなんというような気持ちはないのではないか。核防条約に入っていくについて、当初あなたが言われたように、これは核兵器をなくします、なくすために入るのですということなのか。それともいまのようなデタント、核兵力の均衡が世界平和のためになる、拡散すればそれが崩れる、だからこれを認めるのだという、こういうことなのか。その辺はひとつ、明確にお答え願いたい。
  66. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は永末委員のおっしゃっていらっしゃることは間違いでないと思います。来ソには疑いもなくそういう現実的な動機があるであろうと存じます。私どもの思いますことは、確かに米ソがバランスがとれておるということ。子のこと自身は、そうでない状態よりは望ましいのである。でありますから、今後核軍縮に向かいます場合に、何でもかんでもとにかく一方的に減らしなさいという主張は、恐らく現実的ではなぐて、バランスのとれた形で、バランスを維持しながら縮小していくことは可能ではないか、こういう主張をやはりいたすわけでございます。それは一部、永末委員の言われておるような現実というものを、私どもも認めておるということになると存じます。
  67. 永末英一

    永末委員 いま外務大臣は、米ソ核大国がバランスをとった形で縮小していく形が望ましいし、そう起こるであろうという予測も加えられすした。さてその辺に対して、もう少し事実関係を明らかにしておきたいと思います。  一九六七年の一月、アメリカがこのSALT、戦略兵器の制限交渉について、ABMの制限を交渉いたしましたときに、アメリカソ連とはICBM、SLBM並びに核兵器搭載の爆撃機これを数量としてどのように保有しておったか。次には一九六八年、大体このSALTの話し合いが一年半たちまして開始されるというときの同じようにアメリカソ連との核兵器保有数量、さらにそれからまた軌道に乗りました一年半たちまして一九六九年に、わずか二年の間でございますけれどもアメリカソ連の持っている核兵器の数量、これをひとつ明らかにしていただきたい。これを明らかにしていただくと、いまの外務大臣のお見通しがそのコースに乗るかどうかがまた明らかになると思いますので、数字をお挙げ願いたい。
  68. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 「ミリタリーバランス」という公表されております資料によりますと、一九六七年現在におきましてアメリカ保有しておりますICBMは千五十四基、そのときにソ連の持っておりますICBMは八百基になっております。それから、SLBMは六八年当時アメリカは六百五十六基、ソ連は百三十基になっております。それから、長距離爆撃機でございますが、六七年アメリカは六百機、ソ連は二百十機になっております。  一九七四年、昨年度の同じ項目別にアメリカソ連との比較を申し上げますと、アメリカはICBMが千五十四、ソ連は千五百七十五、それからSLBMは、アメリカが六百五十六、ソ連が七百二十、それから長距離爆撃機は、アメリカが四百三十七、ソ連が百四十という数字になっております。
  69. 永末英一

    永末委員 申し上げました時点においては資料がないようでございますから、資料のことでございますから私の方から申し上げますが、当初、これはある時点のとり方によって数字が少し違います。違いますが、大体において一九六七年はアメリカが二千二群程度、ソ連が合計七百五十、つまり三倍の力をアメリカは持っておった。その三倍の力を持っておるアメリカソ連に対してABMの制限を申し入れるという形でSALTの交渉が始まり、ソ連もこれに対して、総量でひとつやろうではないかという意思を固めまして、これにこたえたのが一年半たった一九六八年でございます。その総量で応対しようとする意思を固めるためには、ソ連は急速に自己保有のICBM等を増加したのでございまして、したがって、一九六八年には、アメリカの方はほとんど異動はございませんが、ソ連は二倍以上、千六百五十程度のものをおさめ、そして一年たちますと二千を超えるに至ってまいりました。これらの経過を見ましても、その後の一九七〇年以降は、この前も本会議で言っておきましたから別に繰り返す必要ございませんが、どんどんふやしてアメリカの発射基数を上回っていることは天下周知の事実でございます。したがって、こういうソ連の態度は、SALTの交渉に応じながらアメリカとの間に何を考えているかということをわれわれに示しておると思いますが、私が申し上げました数字を一応是認をしていただくならば、このソ連のやり方に対して、SALTに対するソ連の態度を政府はどう評価されますか。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 永末委員のおっしゃっていらっしゃいますようなソ連の動きというのは、アメリカの、ことに軍部の筋ではやはりそういう見方をしておりますので、事実ではなかろうかと思います。つまり、アメリカとしてはソ連にある程度のバランスを達成さすことを許すという立場ではないだろうか。つまりバランスがとれた状態まで持っていかなければ、本当のソ連の動機から申しますればSALTというようなことには持っていきがたい。そのことはアメリカも事実上承認をしつつ、米ソのバランス――アメリカ自身の一方的な優越という考えは一応置いておきまして、ソ連がある程度バランスのとれたところで安全であると考えるまでは、アメリカにキャッチアップすることも認めてやらなければならないだろうというのがアメリカの基本的な立場一つではないかと私は思うのでございます。もとより、さりとてアメリカの安全が脅かされては困るということは当然にございますものの、一方的な優位というものはある程度妥協、譲歩しなければSALTという交渉は成り立ちにくいということをアメリカとしてやはり考えておるのではなかろうかというふうに私はとっております。
  71. 永末英一

    永末委員 いま外務大臣から対等性ということが出ました。私もそうだと思うのです。つまりSALTが所期しておりますのは、両方が形式的には対等をかち得たと思い、そして内容から言えば、アメリカアメリカ側に自己の優越性が保障されたと信じ、ソ連ソ連なりに自己の優越性がこれによって担保されたと信ずる、こういうのがSALTの性格ではないかと思います。一九六九年にソ連がこれに応じようということをはっきりしたときには、アメリカはMIRVの開発を決定して生産に着手しているわけです。そして、いまや昨年のウラジオストクの米ソ両首脳の会談において、ICBMとMIRV両方ともが上限の設定の数字を決める、こういうことになりました。しかし、ここでSALTというものの性格をわれわれが判断する場合に、減っていくんだという見通しがあるのだろうか。そうではなくて、要するに上限を決める、バランスをとるということだけに意味があるのであって、その内輪まできますと、ウラジオストクから帰ったフォード大統領が新聞記者会見で言いましたように、弾頭の荷重、重さとかあるいは兵器の精密さというものは何ぼやってもいいんだということを言い、ソ連側もまた同じことを考えているのである。果たしてあなたが言われるように、SALTというのは軍縮の一法なんだと見られるのだろうか。それともやはり均衡をとる話し合いさえするならば、それを持続していこうという両国の意図のあらわれだと見るか、SALTに対する評価を伺いたい。
  72. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 昨年の末にございましたいわゆる米ソ首脳会談の結果のウラジオストクの合意といいますか、ここでは御存じのように戦略兵器の運搬手段は二千四百、その内数としてMIRV化されるミサイルを千三百二十ということに押さえたわけですが、この二つの大きな合意を柱に、その枠内で今後SALT交渉、つまり軍縮に向かって交渉を進めるんだということが基本的な合意の中心であったと思います。  このウラジオストク会談の終了後キッシンジャー長官が記者会見いたしておりますが、その中で、いま御質問にありましたような点だけ拾って申し上げますと、先ほどの二つの上限の設定に合意ができたことによりまして、過去数年間、SALTで打開を求めてきた難関を突破したと判断している。いまや七五年に協定が実現する可能性が大きくなった。新協定によって、両国は核兵器の制限だけでなく、その削減も開始できるだろうという趣旨のことを記者会見で言っております。
  73. 永末英一

    永末委員 それは記者会見で発表したことは、世界の人だれでも知っておりますが、そうして一九七五年になって、現在四月からやっておりますジュネーブの会議はどうなっておりますか。デッドロックに乗り上げて動いていないじゃないですか。
  74. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 SALTの交渉はことしの一月から五月まで行われましたが、若干中断しました。しかし、この二十三日からジュネーブで再開される予定になっております。
  75. 永末英一

    永末委員 外務大臣軍縮ということを、先ほど触れたように口にしない指導者はございませんですね。しかしわれわれとしては、口にされていることを信ずるのではなくて、ほかの国が実際にやっていることをやはり見抜かなくてはならない。したがって、SALTというのは軍縮の第一歩であって、だんだん減っていくんだという望みを託しつつわれわれはそれを見ておりますと、そうではないときに困りますね。裏切られたという感じになる。したがって、SALTの本質というものを一体政府はどう見ておるかということをこの際、国民に明らかにしておいていただきたい。
  76. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは確かに永末委員の言われますように、い事のところバランスをとった形にしようという努力はございますわけですが、しかがって一定の天井を設定をしたということはあるわけですが、それが削減の方向に向かっていないではないかと言われますことは、私は、現状まででしたら認めざるを得ないと思いますけれども、しかし他方で、縮小する利己的な動機が全くないかと言えば、私は、そうではない。崇高な人類愛ということを申しませんでも、たとえばこれを無制限にやっていくときには財政の負担に耐えられないではないかということは両者とも当然に考えるわけでございます。それだけの金があったらば、もっと国としては施策をしたいことがたくさんあるはずでありますし、国民もそれを望んでおるという問題が――まあ幾つか私は動機があろうと思いますけれども一つ取り出してみましても、そういう動機は両方にあるわけでございますから、したがって安全を保障できるという確信さえ持てれば、何とかそういう財政負担を幾らかでも軽減しようという利己的な動機はやはり両国に私はあると思いますので、そんなに善意に信倚するといったばかりでなくて、利己的な動機から考えても、私は、将来はそんなに一方的に悲観的に見る必要はないのではないかというふうにやはり考えます。
  77. 永末英一

    永末委員 核防条約の第六条によりますと、締約国、この中には核保有国も含まれるのでございますが、核軍備の縮小に関する効果的な措置について条約を結ぶように誠実に交渉する、いままで政府はこれに基づいてSALTの交渉が行われてきたような御説明があったと思うのです。私が伺いたかったことは、いまはしなくもあなたが言われたように、両方ともに無制限に核弾頭を増加してみても、自国の安全保障に加わる限界効用とでも申しますか、もうほとんどなくなってきている。いわんやその経済の負担には耐えられない。ABMの設置削減について、両方一カ所ずつで同意をしたのはまさに経済的な問題だとわれわれは承知をしておるし、両方の政府はそれを言っているわけですね。  そこで、そういう形で私はやはり問題を見る必要がある。一九七七年にはアメリカが一方二千個、ソ連が一万個の弾頭を保有する、こう言われておるのでありますが、核を持たない国々の国民から見れば、オーバーキルどころか、キル・キル・キルみたいな、そんなものをなぜ持たねばならないかと思う。それをやはりさせないような一つの動きが出てこなければならぬはずだと思います。いま私が伺いたかったことは、いろいろな原因があるが、財政的なことも大きな原因であるとあなたがお認めになっておること、私はそういう面もやはりはっきりと国民に知らすべきだと思います。  さて、誠実に交渉するというのは、これは精神規定でございますが、もし非核国の方から核保有国核軍縮について有効なことをやるべしと、こういうことであるならば、私は、この核防条約に参加をしている各加盟国会議体を持って、その会議体で決まったことを、この締約国である核保有国は従わねばならない、こういうことをやはりこの核防条約に入れるべきではないかと思いますが、そういう御努力をされる意思があるかどうかを伺いたい。
  78. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 このたび行われました再検討会議の場で非同盟諸国から出された案の中の一つに、これはもちろんみんな非核兵器国でございますけれども条約加盟している核兵器国軍縮努力が十分でないという観点から、一種の算術的な方法による核軍縮の推進をいわば義務づけるような考え方の案が出たことがございます。これに対しまして、米ソを含めまして核兵器国は、軍縮というものはそう簡単なものではない、これにはいろいろ複雑な要素が絡み合っておるので、全体として判断しない限りそう単純には進められない、しかし核軍縮努力をすることはこの条約にも書いてあるし、われわれとして十分にこれは頭にあるわけだけれども、しかしその進展ぶりについては、必ずしも非同盟諸国が考えるような形なりスピードではできないということで、その案自身はこの再検討会議においては採択されなかった経緯がございます。したがいまして、この六条に基づく核兵器国核軍縮義務については、今度の会議においても十分ではないということはございましたが、同時に、核兵器国もこれに対する協力あるいは推進の努力を表明するという必要から、この最終宣言の中において、核軍縮のための努力、これを二つ、三つの、項目に書き分けまして、今後とも一層努力、特に核兵器国努力の中心となるというような項目を載せたわけでございます。したがいまして、先ほど日本はどうするかという観点からの御質問に対しましては、この会議で特に日本は、そもそもその資格から申しましてフルメンバーとして活動できなかったわけでございますけれども、ただ、会議の動きについてはある程度フォローしたということでございます。特にこれについての相談は受けたわけではございません。
  79. 永末英一

    永末委員 核防条約批准したいという政府理由の中には、核軍縮について、入れば堂々と主張できるのだと、こう言う。しかし主張すると言ったって、核を持っている国の善意にのみ頼っておっては、この国際社会ではなかなかその善意は通りませんね。この核防条約で明確なことは、非核国というのは義務を負わされておって権利がないわけである。せめてその非核国が合意ができたならば、その合意をやはり核保有国は尊重して核軍縮に向かう、こういうことがなければきわめて、それこそ先ほど申しました核を持っていることの不平等ではなくて、条約の構成自体も不平等ではないか。外務大臣、将来の問題でございますが、これに参加していくについて、いまのような点について政府は主張される御意思はございますか、伺いたい。
  80. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点はこの条約には、いわゆる核保有国に対してプレッシャーをかける場としては、再検討会議が設けられておるということになるわけでございますけれども、場といたしましては、やはり私は、本来的に軍縮委員会であるとか、あるいは国連の総会であるとか、そういったようなところで実はプレッシャーをかける場というものがあるわけでございます。そういうところはわれわれいままでも十分に活用してきたつもりでございますけれども、まさに永末委員の言われるように、核保有国に対して持たないものがプレッシャーをかける場、そういう努力というものは確かに必要であって、ただいま申し上げましたような場がそれに当たるのではないかというふうに考えております。
  81. 永末英一

    永末委員 この点についてはぜひひとつ努力をしていただきたいと思います。  さて、一九六八年六月十九日に安保理事会で採択せられました決議がございますが、これは非核兵器国安全保障に関する理事会の決議でございます。この核防条約には、非核国に関する安全保障の規定が欠如いたしております。これができ上がりますときにはいろいろ問題となりましたが、結局欠如している。政府はこれに調印をいたしましたときに、非核国の安全保障についてもっと見通しをつけたいということが理由でございましたが、この核防条約そのものには欠如しているということは、どのようにカバーされますか。
  82. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この条約の中には安全保障を正面から取り扱った規定はございません。ただ強いて申しますれば、この条約の前文に十二の項目がございますが、その最後の項目がいわば安全保障理事会宣言の趣旨をこれに載せております。これはやはりこの条約の前文という性格から見まして、この条約全体に関連する考え方の一つとして挙げられておるのではないかと思います。
  83. 永末英一

    永末委員 つまり、この核防条約に入っていくことによって、核を持たない日本の国の安全保障というものがどうなるかということは、日本国民のひとしく心配いたしておるところです。自民党内においても問題になってごたごたしたことは、天下周知の事実でございます。そこで、このことをやはりはっきり伺っておかなければならぬ。  一九六八年の安保理事会の決議というのは、この核防条約に書いてある趣旨を書きまして、そういう多くの国の願望を評価しつつ、これに注目をしているというわけですね。政府はこの安全保障理事会の二百五十五号決議核防条約とは、一体どういう関係にあると見ておられますか。
  84. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この核防条約の性格でございますが、これはやはり一つの、核を拡散しないということをどのような方法で行ったらいいかいう、そう意味では、何と申しますか、一種の方法論をこの条約という形でつくったというふうに私は概して考えております。  もちろん前文にいろいろなことが書いてございますので、そういう背景のもとに、こういう方法論をとるならば不拡散が可能であろう、こういう性格の条約ではないか、基本的にはそういうものではないか。つまり、こういう条約が出てくる背景というものは別途にあるわけであって、たとえば、ただいま永末委員がおっしゃいましたような一九六八年の安保理決議といったようなもの、あるいはそれに先立ちました米英ソの共同宣言といったようなもの、そういうものが背景になりまして、そういう背景のもとに不拡散を行うとすれば、こういう方法が最も有効である、その部分がこの条約ではないかというふうに考えておるわけでございます。  それで六八年の安保理決議というものも十全なものではございませんで、いろいろ抜け道のあるものではないかとおっしゃれば、確かにそういう点がございますが、第三項、いわゆる国連憲章五十一条による個別または集団安全保障というようなもの、あの三項の規定はわが国については有効であろうというふうに思います。  あの安保理決議がもう少ししっかりしたものにならぬだろうかということは、私どもも今回もいろいろに考えましたし、国連に出ております者の意見ども大分聞いてみたわけでございますが、あの決議そのものが実はぎりぎりの関係国の間のいわば譲歩、妥協の産物であって、われわれから見ると不十分ですが、それだけでもやはり評価をすべき点があるのではないかという見方、それからもう一つは、実はその後安保理事会の中国の代表権に変更を生じたわけでございますために、もう一遍あの話を持ち出すということは、あるいはやぶへびになってしまうかもしれないというような危惧もありまして、実はあれを再確認するといったようなことに今回もなったわけでございます。そういう意味では十全とは申しがたい。しかし、お尋ねのこの条約とそのような非核保有国安全保障とはどのような関係に立つかと申しますれば、片っ方でそういう背景があって、方法論としてこの条約が生まれてきた、そういう関係に立つのではないかと存じます。
  85. 永末英一

    永末委員 私が伺いたいのは、非核国の安全保障ということが言われるときに、この核防条約に入っている核防条約加盟国、そのことの中でそういうものが行われるということが一体読み取れるのかどうか、安保理事会の話は安保理事会の話ですね、別個であるのか関係があるのか、そこのところをはっきりしていただきたい。
  86. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大変大まかに申しましたら、この条約の中には、前文等々そういうことは別にいたしましたら、非保有国の安全をしっかり守らなければならぬというような部分は余りない。と申しますのは、この条約がその背景のもとにそういう方法論を示したものであるということから来るのではないかと私は存じます。
  87. 永末英一

    永末委員 いまあなたの方から触れられたのでありますけれども、この安全保障理事会には、常任理事国として核防条約加盟していないフランス、そして後中華人民共和国が常任理事国になりました。この決議二百五十五号というのはフランス中国を規制するものですか。
  88. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この決議が採択された時点で中国は現在の中国と、つまり代表権を行使する主体が変わっております。それからフランスはこの決議に棄権いたしております。したがいまして、この決議が現在有効であるかどうかという点は、実はこれは安全保障理事会それ自身が決める問題だと思います。これは先ほど大臣が申されましたように、代表権の交代した常任理事国があるという観点から、いまの時点でこの決議が有効であるかどうかということを問うことは非常に問題があろうかと思います。ただ、形式的にこの決議がそのときに成立したという事実は、一応われわれとしては認めざるを得ないと思います。
  89. 永末英一

    永末委員 だんだんおかしくなってきたのでありますけれども、いままでの本会議等の説明では、この核保有国が非核国の安全保障に対しては、安保理事決議二百五十五号もある、それは安全保障に対して努力をしている一つのあらわれであるというがごとき説明があったわけであります。いまの話ですと、結局アメリカソ連イギリスは縛られるけれども後の二つの核保有国は縛られない、だからよくわからぬ、こういうことになりますと、一体、この二百五十五号というものはどんな性格なのか、われわれ非核国はこれを頼りにして安心しておられるのかどうか、この辺が疑わしくなりますが、どうでしょうね。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま政府委員が申し上げましたことが、政府委員自身がちょっと言葉が足りなかったというふうに申しておりますので、私から改めて申し上げますが、この決議は私どもは有効であると考えております。実はそのことは、今回の再検討会議に臨みますときに、私どもの方から国連の事務総長に、インフォーマルな形ではございますけれども、確認を実はいたしておりまして、決議は有効であるという答えを受け取っております。したがいまして、筋道からまいりますと、中国フランスもこの決議を守るべき立場にあるということであろうと思います。ただ、この点は、先ほど申しましたように、中国の代表権はその間に変更しておりますから、もう一遍そういう議論を公の場で出すことが果たしてプロダクティブであるか、建設的であるかどうかということについては、御想像いただけますように、何がしかの危惧がございますので、あえてそれはいたしておりませんけれども決議そのものはりっぱに有効である、こういうふうに考えております。
  91. 永末英一

    永末委員 決議そのものが有効だと政府がお考えのようでありますが、実効性があるかどうかということについてのお考えをひとつ承っておきたい。この決議の第一項でございますが、これは要するに安全保障理事会と核兵器国である常任理事国が、もし非核国に対して核兵器による侵略あるいは侵略の威嚇があった場合に、国連憲章に定められた義務に従って直ちに行動しなければならない事態が生ずることとなるのを認める、こういう立て方になっている。非常に回りくどい言い方でございまして、すぐ行動するというのじゃなくて、認識するということだけですね。そうしますと、国連が長い間かかって侵略というものの定義にすったもんだやっている経緯から考えますと、安保理事会が一体この侵略を判定するのかどうか、しかも安保理事会の常任理事国だけが核を持っているのでございまして、インドはまだ核兵器国でないと思いますから、そういたしますと、核による侵略なりその侵略の威嚇をやるのは安保理事会の常任理事国である核保有国がやる、それで、またそれが自分で侵略国だと決めて、そして何か行動に移るというのは普通の頭では考えられぬことですね。自分で自分をなぐるようなこと、結局これは行われないことが決めてある、こう詰み取るのでございますが、いかがでございましょうか。
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先般侵略の定義なるものが出てきたわけでございますけれども、それ自身も最終的には侵略を判定するのは安保理事会であって、あの定義は安保理事会が判定する際のいわば物差しである、基準であるという性格を持っておりますから、したがって、侵略を判定するのは最終的に安保理事会だということにならざるを得ないと私は思います。そういたしますと、永末委員の言われるような問題がある。拒否権の問題もあるわけでございます。そういう問題はこの決議には確かにございますけれども、さりとて、これだけの決議が行われたということの意味を、だからといって無視するあるいは認めないということでもないであろう。ともかくこれだけの決議がなされたということの意味はやはりあるのではないだろうか。ことに、まだそこまでおっしゃっておられませんが、この第三項というものがついておりますので、わが国の場合にはこれで事態は処理できるのではないかというふうに考えております。
  93. 永末英一

    永末委員 まあないよりましだというのが一項であるというような御見解に承りました。  二項の方はまさにそんなようなものでございまして、これはアメリカソ連イギリスが一九六八年六月十七日にそれぞれ宣言をしたことを歓迎しているというだけでございますから、安全保障理事会やその理事会を構成するメンバーが非核国の安全保障についてある責任を負っておる、そういう立て方になっていないと読み取りますが、第二項についてはどう判断されますか。
  94. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この第二項は「条約の当事国である非核兵器国」ということになっておりますので、米英ソ、この三国がこういう意図を表明している点は非常に意味があるかと思います。特に今度の再検討会議におきましてこの点が着目されまして、最終宣言の中に米英ソ三国がこの宣言を尊重するとの変わりない決意を表明したわけでございます。それを再検討会議そのものがこれを歓迎するという趣旨の項目が載っております。つまり、核兵器国である米英ソ三国が現在の段階においてこの第二項の意向をさらに改めて表明したということは、それなりに意味があるというふうにわれわれは考えております。
  95. 永末英一

    永末委員 それなりに意味があるということのようでございますが、さて、それなりに意味があるということは、このものがストレートに非核国の安全保障に発動せしめるものではない。     〔鯨岡委員長代理退席、委員長着席〕 この三国の宣言も、そういう侵略等が起こった場合に効果的に対処されることを覚悟せいという意味合いの宣言をやっているのでございますから、対処するのだということを言うているわけでも何でもございません。  さて、第三項でございますけれども、第三項は先ほどから外務大臣は二回にわたって言及されました。この第三項は国連憲章に書いてあることを再確認したにすぎないのであって、この安保理事会の決議に触れられて特に意味が生じたとお考えですか。
  96. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 これは当然のことであるということも言えますけれども、そもそも国連憲章ができましたときに、理想の形としては、平和に対する脅威あるいは侵略というものを安保理事会が決定した場合に、安全保障理事会が第一義的な責任を持っておる国際の平和と安全のためにすぐに発動できる体制になっておるわけでございますけれども現実にはいろいろな理由でその理想体制が動かないということから、憲章五十一条という規定が設けられたのだと思います。したがいまして、一九六八年の段階核防条約がいよいよ成立する面前に、国連憲章との関係、特に安全保障理事会あるいは核兵器を持つ常任理事国がどういう考え方を持つかということが、実はこの条約に参加しようとしている非核兵器国にとって大変な関心事であったわけでございます。したがいまして、この五十一条の規定を改めてこの一項目としてこの中に入れることが、非核兵器国がこの条約に入るためのいわば一つの心理的なアシュアランスになったというふうにわれわれは了解いたしております。
  97. 永末英一

    永末委員 国連憲章の五十一条はそれはそれなりで完結したことであって、それに基づいて世界的にいろいろな安全保障システムがとられてきたわけであります。それは別に一九六八年に安保理事会で確認していただかなくても、核防条約に入ろうと入るまいと、この国連憲章五十一条によるいろいろなシステムができておるわけでございまして、心理的に安心したというのですが、これがなかったらどうなるのですか。この三項がなかったらこの核防条約に入る非核国は安心ならぬ、こういう御解釈ですか。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはこういうことになるのではないかと思います。仮にこの一九六八年の決議に三項がなかった場合を想定いたしてみますと、一項も二項も侵略の場合を想定しておるわけでございますから、これだけで済んでしまいますと、事態が侵略であるかどうかということについて議論があれば、この決議は、永末委員が先ほど言われましたように、動かなくなるおそれがございますが、三項では武力攻撃ということを言っておるわけで、侵略という言葉は使っておりません。そういう意味合いから申しますと、この決議が完結した一つのものになるためには、やはり三項というものは必要であっただろうと私は思います。ただ、それならばこの三項がなかったときに国連憲章の五十一条の方は死んでしまうのかといえば、もちろん論理的にそんなことはございません。あってもなくても五十一条というものは生きておるじゃないかとおっしゃれば、私はそれはそのとおりだと思いますけれども、この決議そのものが完結的な意味を持つために、やはり三項を引っ張っておくことは私は意味があるというふうに思うわけでございます。
  99. 永末英一

    永末委員 わが国は、この国連憲章五十一条の趣旨を体してアメリカとの間に日米安保条約を結んでいますね。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりでございます。
  101. 永末英一

    永末委員 日米安保条約というのは、この核防条約ができたり、あるいはまたこの安全保障理事会の決議があるずっとはるか以前につくられたものである、その限りにおいては日本アメリカとの間には権利義務関係が発生しておる。さて、そういう一つの歴史の流れの中で、この安全保障理事会の二百五十五号決議が行われて三項が出た。安保条約は、もしわが国に対してよその国から、アメリカ以外の国から攻撃が加えられるならば、これに対してアメリカが支援することが約束されておるとみんな了解をしているわけですね。そうしますと、この三項と安保条約とは一体どういう関係にあると見ておられるのですか。
  102. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 この安保理決議二百五十五号の第三項、これはこれ自体で一つの創設的な効力を持つものではございませんで、先ほど先生御指摘のとおり、憲章第五十一条というのは国連憲章が制定されましたときからできているものでございますし、これがあるから日本アメリカとの間の安全保障に関する条約、日米安保条約が合法化される、正当化されるというものではないわけでございます。日米安全保障条約はそのはるか前に締結されたものでございますし、この三項があるとかないとかということによって、日米安保条約の効力なりその存在の意義というものが影響を受ける性質のものではないというふうに考えております。
  103. 永末英一

    永末委員 いまの条約局長お話によりますと、この三項は何ら創設的効力を持つものではない、こういうことでございました。そこで、そうなりますと、わが国はよその国から武力攻撃を受けた場合、その武力攻撃が核攻撃も通常兵器による攻撃も含まれると思いますが、それは安保条約によって対処せられるのであって、この安保理事決議二百五十五号によって別に処置せられるべきものではない、このように解してよろしいか。
  104. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 この安保理事決議二百五十五号のあるなしにかかわらず、日本に対する武力攻撃が発生いたしましたときには、日米安保条約が発動することになるだろうと思います。ただ、先ほど外務大臣からもお話がございましたように、この二百五十五号の決議そのものの内容、一項、二項及び、なかんずく一項及び三項は、国連憲章の内容と申しますか、規定をそのまま実は再表現したような形で確認しているものでございますから、この決議に書いてありますことと、そのときに出てまいります事態との間で何ら矛盾という問題は生じてこないだろう。したがって、日米安保条約の第五条が発動されるような事態というものと、ここで言っております二百五十五号の決議に表明されております一及びなかんずく三項だと思いますけれども、それに書いてあることとは全く合致するものであるというふうに考えるべきだろうと思います。
  105. 永末英一

    永末委員 わが国におきましては、非核国の安全保障という言葉に対して、わが国安全保障ということと置きかえて、そうしてわが国安全保障には日米安保条約はきわめて大きなかかわり合いがございます。非核国の安全保障ということになりますと、いままでの御答弁で明らかになりましたように、核防条約とこの安保理事決議二百五十五号とは、なるほど片方が片方のバックグラウンドにはなったかもしれませんけれども、直接にかかわり合いがあるものではなさそうでございます。だといたしますと、この安保理事決議二百五十五号と安保条約もまた直接にオーソライズされたりという形ではない、まあきちっとした物の言い方をしますと無関係ということになる、いわんや、その安保条約核防条約とは関係はない、こう見ていいのか、それとも関係があるとお認めになるのか、この辺を伺いたい。
  106. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 先ほども申し上げましたごとく、法律的な側面から見ますると、この安保理決議二百五十五号と安保条約というものとは、法律的には直接の関係がないということだろうと思います。また核不拡散条約と日米安全保障条約との間にも法的には直接の関係はない。と申しますのは、そのいずれか一方が効力が変わるあるいは効力が影響を受けることによって、他方の条約の効力が影響を受けるという筋合いのものでは全くないということだろうと思います。
  107. 永末英一

    永末委員 四月十二日でございますか、宮澤外務大臣は訪米をされまして、アメリカのキッシンジャー国務長官と会談をされました。伝えられるところによりますと、この核防条約批准を国会に求めるに当たって、自民党内では、わが国安全保障核防条約との関係について非常に心配だから、宮澤外務大臣アメリカへ行ってキッシンジャー国務長官との間に、わが国安全保障に心配がないように取りつけてこい、こういうような特命を受けて行かれたと伝えられております。さて、その結果、宮澤外務大臣とキッシンジャー長官との間に四項目にわたる口頭の合意ができたと、これまた伝えられておる。正確にあなたからはっきりと承ったことはございません、この委員会でもさらさらと御報告を受けましたが。  ところでいま条約局長が明らかにいたしましたように、安保条約核防条約とは直接の法的な関係はない、こういうことになりますが、自民党のしかるべき方々はその辺をどう考えられたかわかりませんが、国民は、これは一体関連ありとして考えられているものかどうかということを非常に心配をいたして見ておるのでございまして、この際、あなたとキッシンジャー長官との口頭の合意だと伝えられておりますけれども、この点について、これはかぎでございますから一つ一つ伺いますので、明快にひとつ国民に、キッシンジャー長官との間にあなたが何を話されたかを明らかにしていただきたい。  第一点。「日米安保条約を引き続き維持することが長期的な相互の利益に合致する」、こういうことが最初に合意を見たと伝えられておりますが、その「相互の利益」というのはアメリカにとって何であり、日本にとって何であるかということを、いまさら四月十二日の段階でもう一遍御確認されたとするならば、核防条約あるいは核の問題に関して何であるかということをひとつお話し願いたい。
  108. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど政府委員から申し上げましたように、この核防条約と安保条約というものは法律上の関係は別段ないわけでございますけれども、事実上の問題として申しますと、わが国が安保条約の一方の当事者である、そういう現実と、この核防条約を御承認をいただきたい、批准をしたいという立場とは、事実上の問題としてはきわめて密接な関係があるというふうに私ども考えております。  すなわち、わが国核兵器を持たないという国際的な約束を、この条約加盟することによっていたすわけでございますが、世界現実は核攻撃というものが行われ得る、残念ながらそういう現実でありますので、そういう意味で、わが国がそれに対してどのような防衛体制を持っておるかということになれば、それは御承知のように安保条約ということになるわけでございますから、事実上の関係というものはきわめて密接なものがあるというのが政府の判断でございます。  そして、日米両国の長期的利益に資する云々ということの意味は何かとおっしゃいますれば、安保条約は御承知のように一年の通告期間をもって廃棄し得る条約でございますけれどもわが国も米国もそのような廃棄を、見通し得る将来において考えていないということを意味するものでございます。
  109. 永末英一

    永末委員 長期的な意味はよくわかりましたが、相互の利益というのは、特に何か核という問題で御相談になりましたか。
  110. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 相互の利益ということをその場合に実は申しておりませんで、日米両国の長期的利益とだけ申しております。もちろん、その後に米国の核能力がわが国の防衛ということは述べておりますけれども、相互ということは申しておりません。
  111. 永末英一

    永末委員 私が引用しておりますのは、伝えられたところでございますから、あなたの方から正確なことを承ったわけではございませんから、正確でなければ正していただきたいと思います。  さて第二番目の問題、いまちょっとあなたが発言されかけたのでございますが、米国の核能力は日本への武力攻撃に対する重要な抑止力になる、こういうことの認識を共通にされたと伝えられております。この日本への武力攻撃というのは、核攻撃または通常兵器による攻撃、両方とも含んでおるのかどうか、伺いたい。
  112. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ここも実は第一項では日本への攻撃、ただ攻撃というふうに正確にはなっておりますが、もとより、これは一般論といたしましては、この攻撃の種類を限定しておるわけではございません。
  113. 永末英一

    永末委員 米国の核能力が、日本に対するいかなるものにもせよ、攻撃に対する抑止力なんだということをあなたがお認めになった限りにおいては、米国の核抑止力が減ずるということは望まれなかったと思うのですね。だといたしますと、この文句をもって日本アメリカ核軍縮などは望んでおりませんということを約束したことになるように思われますが、いかがですか。
  114. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は、先刻永末委員が御発言になりましたことと関連があるわけでございまして、つまり米ソ核軍縮ということをわれわれは希望をしております。しかし、その希望をする立場は、ただ何でも、どっちでもなくしてくれればいいということではなく、両者がバランスのとれた形で軍縮をしてもらうということがわれわれの考え方でございますと申し上げましたが、そのことがまさにただいまのお尋ねに対するお答えになろうかと思います。
  115. 永末英一

    永末委員 第三の項目では、米国は核及び通常兵器による日本への武力攻撃に対しては、日本を防衛する条約上の義務を当然重視する、当然重視するという表現になっておることを、なぜ条約上の義務を果たすという端的な言葉にならなかったのだろうか。これはどういうことでございましょうか。
  116. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これも、会談の記録はただいま永末委員の御引用になりましたものと多少違っておりまして、キッシンジャー国務長官は、私に対し、核兵力であれ、通常兵力であれ、日本への武力攻撃があった場合、米国が日本を防衛するという日米安保条約に基づく誓約を引き続き守る旨確言したというのが正確な記録でございまして、れしろ永末委員のおっしゃいますような記録になっております。
  117. 永末英一

    永末委員 この辺が一番問題点になってきておるのだと思います。  過般予算委員会におきまして、あなたはニクソン大統領時代のいわゆるグアム・ドクトリン・ニクソン・ドクトリンと称するものについて説明をせられました。私は聞いておりまして、重要な一項目が抜けておると思いました。その重要な一項目というのは、アメリカの武力援助というものは、まずその国が自助、自分でやることをやるべきであって、そのことをやっていくならば応分の援助はするけれども、たとえ条約はあっても、当然アメリカの軍事力による援助があるのではないぞということを宣言したものだと私は承知しております。重ねてでございますが、あなたのニクソン・ドクトリンに対する御見解を承りたい。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 せんだって予算委員会で、佐々木委員からお尋ねがございましたときに、ニクソン・ドクトリンというものを私かように考えますと申し上げました。確かに、あのときに、あるいは佐々木委員はグアム・ドクトリンのことをおっしゃっておられたのかということを後で私は思いまして、そうであったならば、私の申し上げることが少し不足であった、いま永末委員の言われましたように、アメリカはその防衛の約束を果たすけれども、それは確かに相手方が自助努力をしなければならぬぞということはそのグアム・ドクトリンの中に出ておるわけでございますから、ただいま御指摘になることはまさにそのとおりであると私は思います。
  119. 永末英一

    永末委員 このグアム・ドクトリン以後ベトナムの情勢が変わりました。変わったというのは、アメリカのベトナムに対する軍事援助が漸減し、停止をされてきた。そのことがベトナムの情勢の変化につながるわけでございます。すなわち、アメリカのいままでの政策というものが変わってきておるということをわれわれ外国人には知らしておるわけでございまして、そういう意味合いで、いまの三項目につきましては、核攻撃に対してアメリカわが国を防衛する、条約上の義務を守るということは一体どういうことなんだとお話し合いになりましたか。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は、先ほどお述べになりました、その前の項の米国の核能力が重要な抑止力であるということと当然ながら密接に関係をいたしております。すなわち、まずわが国への武力攻撃が加えられるという危険性は、核が重要な抑止力であるということによって、かなり削減をされるであろうというものの考え方を当然ながらいたしております。しかし、それにもかかわらず武力攻撃があった場合には、それが核兵力であれ、通常兵力であれ、安保条約義務アメリカは守るのであるということでございますから、平らな言葉で申せば、あってはならぬことですが、わが国核兵力による攻撃が加えられたということになりますれば、米国は自己の持っておる核兵力を含めて日本を防衛する義務を持っておる、こういう意味でございます。
  121. 永末英一

    永末委員 抑止力という言葉でいろいろなことが説明せられてきたわけでございまして、抑止力というのはこれが破れた場合のことは考えていないのでありまして、米ソがこの核防条約をつくってきたいきさつ、あるいはまたSALTの交渉の過程にあらわれた両方側の折衝の仕方等々を見ますと、ひたすらにこの核の力というものは抑止力として考え、破れてはならないものだというふうに考えているように判断がされます。その一方の国でございますアメリカが、日本に対する核の攻撃に対して立ち向かうのだろうかということを私はなかなかもって得心がいかないわけですね。アメリカもまた核を使えばつぶれるわけである。アメリカが直接攻撃を受けた場合に反撃をすることはアメリカの核戦略でございましょう。たとえば、それは非常に立場内容は違いますがマヤゲス号事件にあらわれたように、アメリカ人が押さえられたら早速反応するのです。しかし、そのアメリカは、ベトナムの政府がつぶれていっても何にもしないのであります。われわれ日本の国民として一番知りたいことは、あなたがあの段階でこういうようなお約束をされた場合に、その核に対するアメリカの反撃と申しますか、こういうことはどの程度外務大臣としてはお取りつけになったかということについて、やはり国民の前に明確にひとつお示しを願いたいと思います。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、わが国への武力攻撃が行われた場合、あってはならないことですが、それが核兵力による場合、あるいは通常兵力による場合、両方の場合があり得るわけでございますが、その場合にアメリカ日本を防衛するという義務、誓約を守るということの意味は、アメリカが持っておるあらゆる力を用いてわが国を防衛するという意味、逆に申せば、特定の兵器の使用をあるものだけは排除するという意味ではない、日本を防衛するに足る力を動員してわが国を防衛する、こういう意味でございます。ここのところの表現を実はもう少し露骨に、いわば平らな言葉で、アメリカも核をその場合には使うことがあり得るとするかどうかという問題は、実は私の頭の中にこのときにあったわけでございますけれども、それは言わでものことであろう、いかにも世間を驚かすといったようなことをあえてする必要はない、こういうふうに表現しておけばこの点は意味は明らかであろうと思いましたので、故意にそういう表現は実は避けましたけれども意味合いはただいま申し上げたような意味でございます。
  123. 永末英一

    永末委員 アメリカはいろいろな同盟条約を結んでおりますが、NATOにおきましては、たとえば西ドイツの世論の中にあらわれるように人質論、自分の信頼性を確かめるためにはアメリカ軍の駐兵が望ましいのだというような考え方もございます。ことに核の使用につきましては非常にむずかしい問題がある。過般ラロック証言であらわれましたように、韓国における核の存在そのものが不測の核戦争を引き起こすから引き上げろ、こういう意見も出ておったのでございまして、そういうようないきさつがありますときに、あなたがキッシンジャー長官と会われまして、特にいまの点について、なるほどあなたが頭の中に去来されたものは文面にあらわれておりませんけれども日本に対する核攻撃に対する保障の確証を得られたということは、私はアメリカにとってえらいことだと思うのですね。それほどの約束をあなたにされたということについては、日本もまた何かしなくちゃならぬじゃないかと考えるのはこれは当然の筋道だと思います。  というわけでこれを読みますと、第四項目に、日本も安保条約上の義務を引き続き履行する、こうなっている。変哲もない言葉でございますね。あたりまえのことであって、あろうとなかろうと安保条約がある限りにおいては、条約上の義務は履行するのでありますから、なぜわざわざこれを書かれたか伺いたい。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は、キッシンジャー国務長官とのこの点につきましての会談は、当然のことながら両国間において事前に十分の準備がなされた上で行われたわけでございます。そういう場合に、安保条約が御承知のように双務的な性格を持っておりますので、アメリカ側にこのような義務を履行する、誓約を守るということを確認を求めるという立場から言えば、こちらも当然義務は守りますということを申さなければ、安保条約の性格から申しましてもどうも整合性を欠くと考えまして最後のことを申したわけでございます。特段にこれによって何か新しい義務を負担するという意味合いではございません。
  125. 永末英一

    永末委員 別に新しい意味はないと言われるのでございますが、その辺がわれわれとしてははなはだ気になることでございますので伺っておきたいのでございますが、アメリカは最近フィリピンの基地縮減、撤去を始めました。また台湾からも撤去を始め、八月に予定せられておりますフォード大統領の訪中以前には撤兵を完了するかのように伝えられております。アジア大陸の東側における島嶼線からアメリカがどんどん基地を撤去しておる。日本の場合についてはどのようにあなたは御感触を受けられましたか。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国における米軍の施設、区域の利用につきましては、わが国の安全に支障がない限りできるだけ整理統合をしてもらいたいということが政府立場でございまして、米側もそれには理解を示しておりまして、現実に何がしかの整理統合が行われつつございます。これは陸上の施設につきましてもまた港湾の施設につきましても同様でございますが、したがいまして、ある程度の整理統合は進行していくものというふうに考えておりますけれども、それは米軍がわが領域内から全部引いていくという意味を持つものではない。効率的にいわゆる基地の整理統合を行っていくということであるというふうに理解をしております。
  127. 永末英一

    永末委員 わが方のアメリカに対する安保条約上の義務というのは基地を提供し、これを使用せしめることでございます。したがってその提供という面につきましては、いま外務大臣お話がございましたように、縮小統合ということが行われていることになっております。さて、しかしながら、先ほど申し上げましたような、いままででもすでに約束があったことを、アメリカ側の義務として改めて約束をされてきたということになりますと、そのかわりとしまして、その提供に、縮減はしてきたけれども、一たん事があった場合には再びそれを使用すること、リエントリーとでも申しますか、そういうことをあなたがお話しになったのではないかと思われる節もあるのでございまして、一たんアメリカ側が日本側に返還した自衛隊基地になっているものについて、アメリカ側が再び使用することありというようなお話はされましたか。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう話をいたしておりません。
  129. 永末英一

    永末委員 もう一つはこの基地の使用の面でございまして、これは過般の予算委員会でも問題となりました事前協議に関するものでありますが、現時点において朝鮮半島のことがいろいろ国民の間に問題になっております。過般の予算委員会でわが方の佐々木委員があなたに質問をいたしましたときにあなたの御答弁がございましたが、これを確認しておきたい。  そのポイントは、日本側からアメリカ側が朝鮮半島に攻撃に出た場合には反撃を受ける、この場合にどうするかという趣旨の質問がございましたときに、あなたの御答弁は、安保条約上における兵力の行使は自衛権の発動であるから、報復ということはあり得ないという旨の答弁をされた。それは国際法の言葉の解釈ならそう成り立つかもしれませんが、われわれが心配をいたしておりますのは、日本の基地を、どういう名目にしろ、アメリカが朝鮮半島の紛争時に使用するならば、われわれもまた反撃を受けるということを覚悟しなければならぬのではないかと思うわけでございまして、この点についてあなたの御見解を改めて伺いたい。
  130. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 あのときにああいう御答弁を申し上げました意味は、国連憲章ができます前までの国際法、お互いが学校で学んだ時代の国際法の考え方は、いわゆる一国と他国との間に武力紛争、戦争が起こりましたときに、第三国、いわば中立の立場にあるべき第三国の基地等々がその戦争に使用された場合には、その第三国は敵性を帯びるというふうに考えられておったわけでございます。したがいまして、佐々木委員がそのような立場に立って御質問をされるのであれば、国連憲章以後の国際の通念は、戦争というものはすべて法律上許されないものであって、いわゆる自衛だけが可能であるという理念になっておるわけでございますので、ただいまのように中立国が敵性を帯びるというようなものの考え方ではないというふうに私は理解をいたしております。したがいまして、法律上は、もし朝鮮半島に騒乱が起こったというときに、わが国の基地が何かの形でそれに関与して使われるといたしますと、それはわが国の自衛という立場、法としてはそれしか考えられない。つまり、侵略があって、それに対してわが国が自衛をするという立場しか考えられないわけでございますから、昔のように敵性を帯びるということでなくて、すでに起こった侵略に対する自衛である。ですから、法の観念としては、それに対する報復ということは法としてはあり得ない、こういうことを実は申し上げたくてああいう御答弁をいたしたわけでございます。  事実問題として、しかしそういうことはあり得るではないかとおっしゃれば、それは私は否定をいたすことはできないと思いますけれども、そのような行為は、しかし法律上認められ得る行為であるかと言えば、いまの通念で申せば、そのようないわゆる報復というような行為は法律上認められるものではない、こういう意味合いでございます。
  131. 永末英一

    永末委員 事実問題とすればあり得るとあなたが御判断になればよろしいのでございまして、あの答弁をすっと聞いておりますと、あり得ないから事実もないんだというようなニュアンスに聞こえるから、われわれが事実問題として政府の判断を伺っております場合に、法律解釈だけの御答弁ではすれ違いということになるので、改めていま伺ったわけであります。  もう一つの問題は、事前協議に対して、条約上は法律解釈としてはイエスもノーもあり得る、直接戦闘行動にアメリカ軍が出たい場合ですね。ところで、朝鮮半島の事情が緊迫してくると、そのことについては、あなたの御答弁によりますと、四条の随時協議があるからそれでやっていくんだ、こういうことでございました。  伺いたいのは、随時協議の場合に、アメリカが直接戦闘行動をやりたいというような話があった場合には、随時協議でイエスということを言われますか。
  132. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前の問題にもう一言、くどいかもしれませんが、補足をさせていただくならば、事実問題としてあり得るかあり得ないかと言えば、それは絶対あり得ませんということは申し上げられない筋合いと思いますが、そのような行為は国際法上許されるものでない、違法の行為であるということを申し上げたかったわけでございます。  それから、ただいまのお尋ねでございますけれども、第四条の協議というものは――この第四条がございますことの意味は、御承知のように、協議を求めた場合に相手はこれに応じなければならないという、そういう意味合いであろうと存じますが、日米両国の場合には、そう申すまでもなく、常にお互いに協議をいたしておりますので、特にこの条項がどうしても必要だというような状況にはないが、しかし、法律上そういうことを要求し得るという意味でこの条項を持っておるのだと思います。しかし、これがいわゆる事前協議にかわった形で、この条項で物を処理するつもりかというお尋ねであれば、それはもとよりそうではございません。私の申したかったのは、ある日空然に事前協議という法律行為が起こってくるということは、いまの日米間の関係で申せば、そう争うめったには考えられないことであって、情勢についての判断等はしょっちゅういたしておるわけでございますから、そういうことの中から事前協議という事態があるいは生まれてくることはあり得るが、突然その事前協議というような事態は、何にもそれまでの状況なしに訪れるというようなことは概してないのではなかろうかということを申し上げたわけでございます。これをもって事前協議にかえる意思があるかというお尋ねであれば、それはそのようには考えておりません。
  133. 永末英一

    永末委員 第四条と事前協議との関係を明確にしていただきました。  さて、あのときに佐々木委員からマヤゲス号事件を事例として挙げましたのは、この事前協議に対して返答する場合に、わが方として一体余裕があるのかどうかということを実は伺いたかった。マヤゲス号事件につきましては、この委員会で明らかにしましたとおり、先月の、日本時間で言えば午前二時にワシントンにおける日本大使館にアメリカの国務省から通達があり、恐らくは日本政府の首脳の、あなたを初めそれを知られたのは十四日――十四日と申したと思いますが、十四日のオフィスタイム、午前九時以降であろうと思う。しかし、実際はすでに午前三時には嘉手納からアメリカの海兵隊員は海外に向けて発進をしておったのでございまして、これは安保条約における事前協議の事項には該当しないものだという政府の判定でございますが、起こり得ることを考えますと、そういう場合が事前協議にかかってくるのではないか。その場合に、条約上はイエスもノーもあり得るということでございますけれどもアメリカの方はすでに発動する用意をして、そうしてやりますという通告を協議事項としてやってくる。その場合に、日本政府がノーと言うても、それは何ともならぬ、すでにそれは動いておるんだ、ノーと言うならば日本の自衛隊とアメリカの基地とが戦争せんなりませんな、阻止せねばならぬ、こういうことにならざるを得ない。彼らは準備しておるわけであって、あらかじめ準備もしないで、日本政府がイエスと言ってから準備をして発進するということは緊急事態には考えられない。この辺の関係宮澤さんはどう判断されますか。
  134. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは論理的に申せば、戦争というのは全く予告なく起こることがあり得るものでございますけれども、しかし、いやしくもわが国と事前協議を要するような性格の戦争でありましたら、やはりそれに先立って、ある国とある国との関係が非常に悪化していくとか、何か一般に申せばそういうことがあるのが普通ではないかと私は考えております。ですから、それはそうでない場合もあり得るではないか、青天のへきれきのごときことが起こり得るではないかとおっしゃれば、それは可能性としてはもちろん否定できませんけれども、いやしくも事前協議を必要とするような重大な危機というものは、そう起こる理由がなくして起こるとは思えないのでございます。  それからもう一つ申し上げるならば、アメリカとしてはこの事前協議の制度をよく知っておりますし、わが国としてもそう簡単にイエスと言えるものでないということもよく知っておりますから、協議を申し込んで日本側がそれに対して対応をするのにある程度の時間がかかるということは、これは当然先方としても知っておりますし、それは織り込み済みでなければならないことだというふうに考えております。
  135. 永末英一

    永末委員 二つ問題があるのでございまして、緊急な場合に一体ノーと言うような力を日本政府が持っているかどうか。先ほどからのあなたとキッシンジャー長官との会談の文脈に照らしますと、緊急な場合には条約上はイエスとノーと二つの場合があるけれども、それは戦闘作戦行動に支障ないように取り計らいますというような話があったのではなかろうかと思いますが、まずこの点を伺いたい。
  136. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうことは一切実はございませんでした。あるいは永末委員のお尋ねの背景の中に、アメリカがこれだけの約束をするのにまことに一方的にこういう話になったということは、ちょっと話が、まあうま過ぎると言ってはおかしいのですけれども、何か調子がよ過ぎやしないかというような御疑念をお持ちかと思います。実は背景になりましたのは、アメリカとしてもインドシナの事態がこのときすでにかなり急迫をしておりましたので、そうして撤退をしなければならないということが事実上明らかになりつつありましたので、そのことから、アメリカのその他の同盟関係にある国に対して、アメリカのしておる約束が疑われるということについて実は非常な危惧を持っておりました。そういう背景でこういう話し合いがなされ、何もそれをこちらがそこへつけ込んだとかなんとかということではもとよりありませんで、こういう話が起こってまいりましたわが国における背景は、先ほど永末委員が言われましたとおりでございます。そうでございますから、突如としてその時期を私どもが選んだということではない、偶然にそういう時期になってしまったのでございますけれどもアメリカ側としては、やはり従来思っておったことをむしろはっきり約束することがアメリカ自身としても必要であったという状況であったように考えます。
  137. 永末英一

    永末委員 背景は伺いましたが、もう一つの問題を申し上げたいと思います。  それはなるほどある日突然にということは少ないだろう、こういう評価でございました。であるならば、朝鮮半島の事象がいろいろおかしげなことになってきておる、直接のアメリカ軍の戦闘行為はないが勃発しそうなんだということを日本政府がきわめて心配した場合、そうして日本の基地使用についていろいろ日本政府が判断をしても、これは使ってもらっては困る、こういう判断をした場合には、直接作戦行動に出る事前協議に対して、日本側からの提案権を確保するおつもりはございませんか。
  138. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのことは事前協議との関連で提案する必要よりは、つまりふだんから事実上しております密接な協議の関係、あるいはもっと申し上げればこの四条を使ってもよろしいわけでございますが、そういう関連において十分わが国の意思を明らかにすることはできるであろうと考えています。
  139. 永末英一

    永末委員 いままで事前協議につきましてはわが方にその発案権はない、事の性質上アメリカ側からだけだ、こういうことが政府の御見解でございました。しかしマヤゲス号事件がわれわれに教えたものはほとんど判断の余裕なきものである。ところが、あなたは、いやそうでなくて少し判断のし得る時間のある問題もある、こう言われましたから、そのときに直接作戦行動に行くぞとここをすぱっと言われたんでは応対のしようがなくなる。先ほど申し上げましたように、事あれば、たとえ相手が事前協議事項のあることを知っておりましても、アメリカアメリカの都合でやるわけでございまして、日本の都合でやるわけではございませんし、そう思いますと、この事前協議事項に対して、これは下部の問題にも関係ございますけれども、わが方からやはりあらかじめ提案をするということは、随時協議とは違った緊急性のある問題について確保していくことが至当ではないかと私は思いますが、もう一度お答えを願いたい。
  140. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 両国の関係からいたしまして、実はそのような対話はある意味では毎日なされておるわけでございますが、この四条の後段というものは、「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。」とございますので、そのような場合、まさしくこの条項を必要があれば使うことが相当ではないかというふうに考えます。
  141. 永末英一

    永末委員 韓国に関する問題で、過般この委員会で同僚議員から次のような質問がございました。わが国に対する核攻撃があっても非核三原則を守るかという質問がございましたが、それに対して外務大臣のお答えが少し脇に落ちませんので聞いておきたいと思いますが、わが国は陸続きではない、したがって戦術核兵器を使用されることはあるまい、もし戦略核兵器が使われるということであるならば、これは必ず報復があるのだから、ありそうにないことだから答弁するになじまない問題だ。こう言われたのでありますが、五月三十日にアメリカの下院でデルムス下院議員が証言をいたしましたところによりますと、米国は韓国に千発の戦術核兵器と五十四の核積載機を配備している。こういう発言がございました。そしてまた十二日のワシントンポスト紙には、韓国の朴大統領の言葉として、もし米国が韓国に対する核のかさを引っ込めるなら、韓国は独自に核武装せざるを得ないし、韓国にはその能力がある。こういうことで核のかさの存在というものを明確に朴大統領は言っておるわけでございまして、そうしますと、これらの証言をそのまま是といたしますと、韓国にはアメリカの戦術核兵器がある。だといたしますと、戦術核兵器が使われるという場合があり得ると想定せざるを得ない。しかも五十四の核積載機が韓国にあると言われておりますが、この核積載機は第五空軍に属するものであって、第五空軍司令部はわが日本国の府中にあるわけであります。言うならば、わが国からこの核使用か否かということをアメリカが判断をせざるを得ない。ここに先ほどの、同僚議員が聞きました非核三原則をそれでも貫けるのかどうか、この点についての外務大臣の御見解を承りたい。
  142. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっとお尋ねを私が聞き誤っておるかもしれませんけれども、いずれにしてもわが国の領域内において戦術核兵器が使われなければならない可能性というものはきわめて乏しいのではないかといつぞや御答弁申し上げましたそのことは、私はやはりそのように感じております。
  143. 永末英一

    永末委員 わが国の領土、領域、領海内に核を持ち込ますということは、これは総理大臣は、そんなことはもし言うてきても無前提で断る、予算委員会ではこういうことでございました。さて、第五空軍というところが自分の命令によって核を使わせることによってわれわれが反撃を受けるかもしれない。実態論としてですよ、法律上正当かどうかは別として。そうしますと、われわれとしては戦術核兵器を使ってもらっては、もしそういうものがわが方に対して使われる引き金になるとすれば、これは大変でございますから使ってもらいたくないという判断になるでありましょう。そういう場合に、しかしわが国の中における核持ち込みではございませんから、アメリカが勝手にやるかもしれませんね。司令部はわが方にある。そういう司令部の指令行為に対し、核兵器使用に対する行為に対して、わが方は何らかのチェックをする必要があるとお考えでしょうか、いかがですか。
  144. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 いずれにいたしましても、永末委員も御指摘になりましたように、そういう指揮、命令の関係があるということは核兵器の持ち込みの問題とは別でございまして、事前協議の対象になるものではないと存じます。ただ第五空軍の司令部が単独でそういう核兵器、そういうことはちょっと考えられないわけでございますが、韓国ないし朝鮮半島において核兵器の使用を指令するということはまたこれは考えられない次第でございまして、御趣旨のとおりアメリカにおきましては、核兵器の使用はすべて大統領の明確な指令によるというふうになると承知しております。
  145. 永末英一

    永末委員 日本の領土、領空、領海内に核の持ち込みを許さない、日本の中におけるアメリカの司令部が命令をして他国で核を使用させてもそれは非核三原則とは関係ない、こういうことですね。
  146. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 大変申しわけありませんが、ちょっと御質問の趣旨を十分理解いたしませんで、もう一度お願いいたしたいと思います。
  147. 永末英一

    永末委員 この核の持ち込みというのは、現実に核弾頭がわが国の領土、領海、領空に持ち込まれるということを想定しているらしいと思うのですが、私の提起している問題は、わが国の領土の中におけるアメリカの司令部が核の使用を命令するわけです。わが国の領土内にあるかどうかわかりません。第五空軍はわが国の中にもおるのであって、核積載機がおることも事実であります。しかし、いま申し上げているのは韓国における核積載機の発動を命ずるという行為は、非核三原則に抵触しませんかということです。
  148. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 核兵器の持ち込みに関しましては、いま永末委員の仰せられたとおりでありまして、現実に事前協議の対象となっております核弾頭及び中長距離ミサイルの持ち込みがなければ事前協議の対象とならないわけでございます。  後半の点につきましては、永末委員は非核三原則との関係でおっしゃいましたが、これは政府方針として、いかなる場合においても日本の国土の中に核兵器を持ち込ませないという問題でございまして、これはちょっと別の問題だと思います。いずれにいたしましても、そういう指揮命令の関係とは別の問題だと思います。
  149. 永末英一

    永末委員 私が端的に聞いているのは、日本におけるアメリカの軍司令部が日本の領土内で核の使用を命じてもそれは別段日本とは無関係、こういう御解釈ですか。
  150. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 そういう問題、ちょっと私たちとしては考えられないわけでございまして、日本におります司令部が単独に大統領の命令なしにそういう核使用を命令するということはあり得ないわけであります。これはアメリカ立場からしてもあり得ないわけです。したがって、そういうものについてちょっとわれわれとしてもお答え申し上げかねる次第でございます。
  151. 永末英一

    永末委員 核の使用は大統領の専決事項でございますから、五空の司令官が勝手にやることはございませんが、私が申し上げたかったのは、日本に存在する人が核の使用の直接の指揮権を持っているわけであって、アメリカ大統領がゴーと言えばゴーになるわけである、そういうことを伺っているわけです。研究しておいてください。  さて、先ほど読み上げました朴大統領が、韓国には核開発をする能力があると言っている。これまた大変でございまして、わが国は韓国にいろいろな援助をやっておりまして、もしこの能力を開発されますと、韓国は核兵器を持つ。そうしますと北朝鮮側も似たようなことをやるかもしれません。そうしますと、わが国の一番近いところで紛争の種になりそうなところが核を持つということは、先ほど私が申し上げました反撃の可能性から考えて、われわれも非常な問題になる。これらに対して対処すべき手はございますか。
  152. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 韓国は再検討会議が始まる直前に正式の加盟国になりました。批准書を寄託しましたので、加盟国としての義務から言いまして、核開発能力、どういう意味で使われたか、記事だけでは判断できませんけれども核兵器あるいは核爆発装置の製造につながるようなことは条約上禁止されておりますので、そういうことは考えられないと思います。
  153. 永末英一

    永末委員 韓国の大統領にもし政府の責任者として会われることがあれば、どんな趣旨なのか。これはやはりアメリカの責任ある新聞コラムニストに表明した言葉でありますからうそをつくわけはないと思います。  さて、そういうことを考えますと、われわれは日本として朝鮮半島の二つの国ないしはオーソリティー、これらが朝鮮半島と日本列島だけに限ってでも、非核地帯を設置するというような申し合わせをすべきではなかろうかと思いますが、外務大臣はいかがですか。
  154. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのお尋ねは、朝鮮半島及び日本列島を含めてですか。
  155. 永末英一

    永末委員 そうです。
  156. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 非核地帯の宣言と申しますものが、御存じのようにラテンアメリカにおきましては構想としてまとまったわけでございますけれども核保有国の中の一国がそのプロトコルに署名をすることを今日までのところ拒否をいたしておりますために、実効のあるものになっておりませんことは御承知のとおりでございます。したがいましてそういう構想そのもの、これは決して悪い構想でないことはもとよりだと思いますけれども核保有国側がそのような誓約を果たしてこの場合いたすものであろうか。また仮にいたした場合に、それを検証をする有効な方法があるであろうかといったような事実上の問題がたくさん出てまいりますので、お話お話といたしまして、なかなか現実の問題になりかねぬのではないかというふうに考えます。
  157. 永末英一

    永末委員 これはわが国核防条約に入るについて、わが国周辺における核戦争をなさしめないためには重要な問題だと思います。これは十分検討していただきたい問題です。  もう一つは、先ほど安保理事会二百五十五号決議研究したのでございますけれどもアメリカソ連ともに自分が侵略するというような意思はあの文脈に関する限りございません。だといたしますと、日本核防条約にもし参加をして加盟国になったといたしますと、堂々とこのアメリカソ連を引き入れた核不使用宣言をつくらせる、こういう努力をすべきだと思います。そういう構想はございますか。
  158. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これも一つのお考えだと私は思いますけれども、実際問題といたしまして米ソのバランスあるいはおのおのと同盟関係にあります、安全保障関係にあります国を含めましてのバランスというものが、核兵器と通常兵器との総知の上において成り立っておるということが現実であろうと思いますので、そういう現実から判断いたしますと、なかなか簡単に実現し得る構想ではないのではないかという判断をいたします。
  159. 永末英一

    永末委員 中国が核開発をいたしました直後天下に声明を発して、最初には使用しない、こういうことを申しました。不使用というのは、全然不使用ならこれをつくる意味がございませんから核保有国承認しないかもしれませんが、少なくとも最初には使用しない、こういう宣言なら私は同意を取りつけられると思いますし、そのことに対して日本努力をすることは非常に意味のあることだと思いますが、いかがでしょうか。
  160. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 たとえばNATO諸国の場合、これは米国と安全保障関係にあるわけでございますけれども、NATO諸国の多くは、NATOにおける戦争抑止力ソ連との関連におきまして、ワルシャワ体制との関連におきまして、やはり核プラス通常兵器、両方の和の上に成り立っておるというふうに考えておるように思いますので、恐らく最初に使用しないという宣言につきましては、それらの国は賛成をし得ないのではないか。したがって、そういう立場からまた保有国の両国もどういう立場を示すであろうかということを考えてまいりますと、これは今回の最終宣言でも議論になりましたように、やはり核兵器と通常兵器との総合において考えませんと、構想としては実現しがたいのではないかという判断をいたしております。
  161. 永末英一

    永末委員 われわれはNATOのことは余り心配する必要はないのでございまして、われわれの心配するのは東北アジアのことなんである。そこには中国という、核保有国でありながら最初に使用しないということを明確にしている核保有国もあるわけでございます。だといたしますと、せめてあるいは地域を限ってもいいかもしれませんが、できそうにないから見ておるというのでは、せっかく政府方針として核防条約に入り、そして核戦争がなくなるために努力をすると言うのなら、やはり何か努力をしてもらいませんと、朝鮮と日本列島との非核地帯設定にも消極的である、それから核最初不使用宣言にも消極的であるとなると、何をされるのかよくわからぬのでございますが、もう一度お答えを願いたい。
  162. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、米ソの均衡というものはやはりグローバルな観点に立っておるという気持ちが一ついたします。それでNATOのことを申し上げたわけでございますけれども、そういう観点と、事実上そういうことが可能になるような情勢というものがやはり出てまいりませんと、ただの宣言と申しますか、宣言そのものもなかなか実現し得ないということではなかろうか。お話でございますので――あるいはお話がありませんでも、非保有国としてのわが国はしょっちゅうそういうことは考えておかなければならない問題でありますことはよく承知をいたしておりますが、やはり客観情勢が熟してまいりませんと実現性はむずかしいのではないかという感じを持っております。
  163. 永末英一

    永末委員 もし核防条約批准してこれに入るといたしますと、われわれは相当なハンディキャップを持って国際情勢に立ち向かうのである。そのハンディキャップというのは、核保有国に対してその責任を負わさなければなくならぬ話でございましょう。だといたしますと、なるほど現実的に見込みが薄くとも努力をしていくという努力目標としては、やはり一つ一つ重ねていくことが必要ではなかろうか。これが非核国として核戦争の勃発を妨、げるために重要な方針ではなかろうかと思いますので、十分に御検討願いたい。  委員長からの指示もございまして、時間も遅うございますから、科学技術庁長官にまだ少し質問が残り、防衛庁長官には特に残っておりますけれども次回に譲りまして、きょうはこれで終わります。
  164. 栗原祐幸

    栗原委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時四分休憩      ――――◇―――――     午後二時五十三分開議
  165. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。正森成二君。
  166. 正森成二

    ○正森委員 私は、この前質疑をいたしましたが、科技庁長官が夜遅くまでおられましたのでお聞きしないのは失礼だと思って、宮澤外務大臣に対する質問の流れを変えさしていただきましたので、本来の流れに戻って質問を続行さしていただきたいというように思います。  その本論に入ります前に、自由民主党の中にいろいろの御意見が出ておるようでありますが、外務大臣はこれらの御意見についてどう思われるかを順を追ってお伺いしたい、こう思います。これは非常に大事なことであります。  たとえば、本年初頭を飾る五十年一月一日の「週刊ポスト」を見ますと、岸信介元総理が首相辞任を決意した真相というような題で御意見を表明されております。この意見を見ると、こういうことを言われておるんですね。ラロック証言に関連して、「いわゆる非核三原則があるというても、最近の世界の趨勢として、第一級の海上戦力というものはみんな核兵器をもっていることは、これはもう当然であってネ。それが日本の港に入るときには核を全部はずしてくるなんてことは、これは考えられないんだな。」秦さんが、「ラロック氏もそういってるし、アメリカ軍部も間接的にそれを認めているようです。」岸さん、「それはその通り。ただ、われわれの非核三原則なるものには、そういう通過するだけの核は含まれないんじゃないかね。われわれのいっておるのは、核兵器を製造しない、持たない、そしてアメリカ核兵器日本に据えつけるのは認めない――こういうことですよ。核を積んだ軍艦が単に立ち入るだけのことまで禁止するものではないと思うんだよネ。」こういうように言うておられるのですね。これは岸元首相の発言であります。これはただ普通の人の発言というんじゃなしに、安保条約のあの問題のある改定をされた当の責任者がこういうぐあいに――大体ラロック証言は時間の関係で、ここに持っておりますが言いませんけれども、これは御承知のように、「核積載能力、つまり核兵器を積める空母のほかにも、核兵器は多くの場合、いやほとんどの場合、フリゲート艦、駆逐艦、潜水艦、そのほか多様の種類の艦船に積載可能であり、積載されています。」云々とこうなって、「私の経験から言えるのは、核兵器積載の「能力」を持っているすべての船は、核兵器を「積載している」ということです。それらの船が日本など他の国の港に入るときも、核兵器をはずすことはありません。核兵器積載可能ならば、オーバーホールあるいは大修理をするとき以外は、通常いつも核兵器を積載しています。」こういう発言を受けて言われた言葉なんですね。これは、しかし、安保の改定をされたときの総理大臣の発言として非常に大事なことだと思うのですね。つまり、核通過についてはこれはいいんだ、こういうようなことで、それは事前協議の対象にならない、核兵器国内に据えつけるのはいかぬけれども、ということでありますが、それについていかがお考えですか。
  167. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘の岸信介氏の発言が、果たして岸氏の真意を正しく伝えておりますかどうかは承知しておりませんけれども、いずれにいたしましても、これは個人的な資格のもとになされたものでありまして、政府の見解を示すものではございません。政府は、この点は、もうしばしば申し上げておりますとおり、一時通過であると否とを問わずにすべて事前協議の対象となるのでありまして、これは岸総理自身が在官中に同様のことを答弁しておられますし、また岸内閣当時の赤城防衛庁長官自身も、仮に第七艦隊が核武装して入港する場合は、当然事前協議の主題となるという答弁をしております。
  168. 正森成二

    ○正森委員 それは、たてまえ上そうなっていろということであって、実際上はそうなっていないんではないかというところに問題があるのですね。しかし、岸総理の「週刊ポスト」での発言外務大臣がそういうようにおっしゃられるなら、それならば、私はこの核防条約を国会へ提出すろ前に――自民党内でなかなか提出がおくれましたね、おくれましたにはおくれましただけのわけがあると思うのですね。そこで、それについて伺わしていただきたいというように思います。  この間の議論の復習をいたしますと、非核保有国安全保障というものについて、一九六八年六月十九日の安保理事国の決議がある。しかし、その決議によれば、結局核兵器による侵略があった場合には云々ということになっておるから、これは拒否権のある安保理事会のことであるから実際上働かない、そうなると、第三項の国連憲章五十一条による集団的もしくは個別的自衛権ということに結局は頼らざるを得なくなるのではないか。そうすれば、これは五年前、六年前と何ら変わりはないのだから、それでは自由民主党が本年に至って批准をするということに至ったのについては、何らかの変化がなければならないはずだというところへまで私は議論を発展さして、時間の関係でやめたと思うのですね。  そこで、この点については、外務大臣に率直に伺いますけれども、新聞紙上でもここにたくさん報道されておりますけれども、自由民主党の要職にあられる方がそれぞれ心配して聞いておられるのですね。外務大臣がそれを受けて四月に訪米されたということは私どもも伺ったところであります。  そこで順番に伺っていきますけれども、自由民主党の中では非核兵器国安全保障、特にわが国について言っても安全保障が不安である、安保条約は一年の通告で双方が解消できるようになっておる、まず第一に最小限度安保条約を長期に堅持する、つまり核防条約によれば二十年間核兵器は少なくともわが国は持てないということになるのだから、二十年を展望して安保条約を堅持する、わが国だけでなしにアメリカがそうであるということを最小限言わなければならない、あるいは約束をとってこなければならないという御要望でした。そして私が自民党内から出ている六条件についてさきの質問でただしましたら、それはほぼほぼ満足している、ほぼを二遍おつけになりましたが、満足しているということであります。そうすると、二十年間安保条約を堅持するということについて米側はわが国に肯定的な返答をされたというように伺ってよろしいか。
  169. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 二十年間というようなことを私は米側に申したわけではございません。しかし、これが先ほど午前中も永末委員に申し上げましたが、長期的な利益云々ということの意味は、当面この条約を両国とも廃棄をするつもりがないということを意味しておるわけでございまして、特に私、二十年という念押しをいたしたことはございませんが、見通し得る将来において廃棄ということは考えていないということは、両国の合致した立場であると存じます。
  170. 正森成二

    ○正森委員 そういたしますと、二十年という言葉は言うておられないけれどもできるだけ長期、ですから二十年に近い場合もありますし二十年を超す場合もあるでしょうが、ともかく予見し得る限り長期に安保条約を維持するというのが、日本側だけでなしに米側の外務大臣に対するお約束であった。つまり自由民主党の立場からすれば、この核防条約批准するためには、安保条約を長期にわたって維持するということを米側に改めて約束を求め、その約束を得た、こういうように理解してよろしいですね。
  171. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もともとわが国にいたしましても米側にいたしましても、この条約をあるときに破棄をしようというようなことを考えたことは政府同士の間でないわけでございます。でございますから、新しく約束を求めたと申しますよりは、従来よりのそういう考え方を確認をしておいたと申し上げた方が正確であろうと存じます。
  172. 正森成二

    ○正森委員 いずれにせよ、安保条約を一年で双方が破棄できるという条約のたてまえにはなっておるけれども、米側も日本側も、安保条約を、予見し得るできるだけ長い期間にわたって双方が維持するということで了解ができたことは事実でございますね。
  173. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのような基本的な一致した立場のもとに、キッシンジャー国務長官といろいろな話をいたしたわけでございます。
  174. 正森成二

    ○正森委員 そこで、私は伺いたいわけでございますが、たとえばここに有田喜一自民党安全保障調査会長の「政界往来」七五年五月号で「ここが聞きたい!!」という求めに応じてお答えになった文章がございます。有田先生というのは自民党安全保障調査会長でありますから、きわめて要職にあられる方であります。五十年四月二十二日付で出された「核防条約批准に関する件」でも非常に重みを持っておられる方だというように思いますが、この有田喜一議員もやはり同じようなことで安保条約を長期に堅持するということを言っているだけでなしに、これは核兵器の問題についても「わが国の安全は米国の核の傘の下にあらざるを得ない」のだ。そうすると、「いま日本に対してアメリカが多少の不満があるとするなら、それは核の傘の下にありながら、米軍基地に対する反対とか核を持ち込ませないとか、米軍の活動にいろんな制約を加えてあまりにも身勝手なことをいい過ぎるからではないでしょうか。」こういうことを言いまして、「核は絶対に抜いてはいけません。」「従って、核は、抜くようで抜かない、抜かぬようで抜く」そういうことを言うておられるのですね。そういうように事前協議を考えていかなければならない。こういう議論の進め方になっておりまして、「非核原則を建前とする日本はこれを許さぬのが原則だが、わが国存亡に関わる非常時といえども持込みを許さないというのはどうだろうか。ちょうど消防団に出火したから火を消してくれと頼んでおきながら、その消防活動に手かせ足かせをするようなことは許されませんね。矢張り消火活動は消防団にフリーハンドを持たせるのが当然ではないですか。多少家の中が水びたしになったり、家財が濡れたり、汚ごれたりしても、我慢すべきではないか、というのです。いかに国会対策だとはいえ、核の問題といえば避けて通るという最近のこういった政府の言動には、アメリカでは「日本は勝手なことをいう、核のことは何も解っていない」と思っていることでしょう。そういうことに対する日本の反省も必要なんです。」こういうように言うておられるのですね。これは自由民主党の一定の立場からすれば非常にごもっともな意見である、こういうように思われるのです。  そこでアメリカが核のかさといわれるようなものをアメリカ立場からすれば、あるいは自民党の立場からすれば差しかけて、それを長期にわたって堅持するということになれば、アメリカ立場からしてもう少しこうしてもらわなければならぬという要請というものは、当然出てくるだろうし、それを有田さんのお立場から見て、日本側としても消防団に消火してくれと言いながら消防団の手を縛るということはいけない。これはお得意の比喩のようでありまして、新聞でも再々出てまいりますが、そういうことを言われたと思うのです。  そこで私は率直に伺いたいのですが、外相が四月に訪米されてお帰りになって間もなく、四月二十二日に「核防条約批准に関する件」というのが出ましてから、二十五日でしたか、国会に核防条約提出されるまでの数日間というのは、自由民主党と政府との間において、非常に緊迫した論議が行われたと思うのです。そのまさに真っ最中に、宮澤外務大臣は当委員会においても、あるいは参議院の外務委員会においても、事前協議制度について核兵器の持ち込みといいますか、装備の重要な変更についても条約上はイエスとノー、これがたてまえとして当然であるということをわざわざ言明されたように思うのです。これは非核三原則というものがわが国にあり、しかも衆議院の予算委員会でも三木総理が非核三原則があるから、わが国は危急存亡のときでも核兵器は持ち込まないということを表明されたという事実があるにもかかわらず、外務大臣がわざわざそういうことをおっしゃった。これは有田喜一氏――後で北澤直吉氏の御見解も申し上げますが、そういう自民党内の意見に対して、たてまえとしては核兵器を持も込むこともあり得るのだ、あるのだということ身明言しなければならない、そういう事情があったからではないのですか。そしてそれは政策としてはいまは持ち込まないということだけれども条約というものは長いのだから、核兵器を持ち込れことについてもノーだけでなしに、イエスもあるということを明言しておくことが、この核防条約を国会に提出し、かつ通過させるためには、自民党内において必要だったからではないのですか。
  175. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題につきましての政府方針というものは、総理大臣がしばしば言明をしておられ、またただいま正森委員が御指摘になりましたとおりでございます。私が条約云々と申し上げましたのは、これは条約の解釈論といたしましてはそういうふうに解釈をしなければ、何のための制度だということになりますから、条約の解釈論としては、そういうことを申しておくことは、私は、これも当然であろうと考えておりまして、その間に私は少しも矛盾を感じておりません。政府方針は、これは総理大臣がしばしば明らかにされましたとおり、これでもうはっきりいたしておると存じます。
  176. 正森成二

    ○正森委員 あなたはそういうようにおっしゃいますけれども、しかし非核三原則が国会で決議をされており、そして三木総理が言うておられるように、これは三木内閣だけでなしに、将来にわたって堅持すべきことであるというならば、この核防条約を出すに当たって、自由民主党内にいろいろな、私が読み上げたような、あるいはまたこれからもお示しいたしますが、御意見があるときに、わざわざたてまえの条約論のイエスと言う場合をお持ち出しになる必要はないのであって、むしろわが政府としては、核兵器の持ち込みというのは絶対に許さないのだということを米側によく説明して、そういう了解を取りつける決意でありますということを当然言ってもいいはずなのです。それを言わないで、政策は政策、条約条約というようにこうして切り離すというところに、自由民主党のこういう問題についての国会切り抜け対策というものがあるんではないんですか。そして条約上は、そういうことになっておれば米側は当然条約上の権限に基づいて核兵器を持ち込むということについて日本側に相談をかけ、そうして危急存亡のとき、あるいはどういうときが危急存亡のときかわかりませんけれども、持ち込むということに結局はなるんじゃないんですか。
  177. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このいわゆる事前協議の制度は、安保条約第六条の実施に関する交換公文で日米の間に合意をされておるものでございますから、このこと自身を日本側が勝手に、この話はなくなりましたと申すわけにはまいりません。交換公文そのものは存在をして有効でございますから、したがってその解釈としては、私が申し上げたように申し上げざるを得ないわけでございます。  しかし他方で総理大臣は一わが国政府方針をしばしば国会において言明をしておられます。これはもう余りに明らかで、しばしば言明をしておられますから、米側もこれは当然承知をしておるものでございまして、いわゆる事前協議制度というものを設けておりますその運用についての日本政府方針というものを総理大臣が言っておられるわけでございますから、その間にいささかも矛盾はないと私は思っております。
  178. 正森成二

    ○正森委員 それでは申し上げますが、ここに四月二十六日の読売新聞があります。それには「「核防」自民総務会」という見出しで、「不信とハラ芸と……」、こういう見出しになっているんですね。自民党の中には不信感と腹芸というのがあるということを新聞が言うていると思うのですが、その中で宮澤外務大臣は、「事前協議は、条約論からいえば、「イエス」の場合もある。「ノー」だけの事前協議というものは、あり得ない。首相の(国会での)答弁は、高度の政治判断として、理解できる。国家が存亡の危機に立った場合、その安全を確保するためには自然人と同様に、正当防衛をするのは当然だ。この場合は、非核三原則より以前の問題であって(核の問題は)言葉の表現を超えたいわずもがなのことである。」こういうぐあいに御説明になって、そして総務会での了承を取りつけるというような表現をしていいのか悪いのかわかりませんが、結局そういうことになった、こう思うんですね。そうしますと、これは危急存亡のとき、こういうように言うのは自然人と同様に正当防衛するのは当然のことなんで、核兵器のことなんかいわずもがなだ、つまり、言わなくたって、核兵器であろうと何であろうと、これは正当防衛のときには使うんだ、こういうことにとれる御発言外務大臣がなさって、自民党の御異論のある方も了承されたというように読めるのですね。これは各紙が多かれ少なかれそういうニュアンスで報道されております。絶対に危急存亡のときでも持ち込まないというのであれば、外務大臣は総理の言明もいままであるということを御承知の上で、なぜこういうことをおっしゃったのでしょうか。それはおっしゃらなければならないし、またおっしゃるだけの中身のあることだからそういうぐあいにおっしゃったんじゃないんですか。
  179. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 自民党の内部でいろいろ議論がございまして、私もそれに当然参加をいたしたわけでございます。その中で危急存亡論というのは何度かございまして、いろいろなやりとりがございましたけれども要するに私の申しましたのは、危急存亡と言っても一体どういう場合なんでしょうか、必ずしも、これはわかったようで、どういう場合を想定してのお尋ねなんでしょうかというようなことを申し上げたり、やりとりの中でいわゆる正当防衛論というようなことを言われた方もございますし、いろいろでございました。それは党内でいろいろなそういう議論がありましたことはそうでございますけれども、しかし、政府立場というのは非常にはっきりしておりまして、それは三木総理大臣が国会という場で正式に何度も言っておられますので、これで政府方針ははっきりいたしておるというふうに御了解を願いたいと思います。
  180. 正森成二

    ○正森委員 御了解を願いたいということでございますが、もし自民党の総務会で外務大臣がそういう発言をなさっていないというなら別でございますけれども、これは各紙に報道されておることでございますし、私の聞き方に誤りがなければ、外務大臣もその御発言自体は誤りであるとかお取り消しにならないようであります。そういたしますと、外務大臣の総務会での御言明、これは同時に、総務会を通じての国民に対する言明でもあるというように私は思いますが、その場合は、三木総理のお考えを、そのまま同一でございますとおっしゃればいいのに、こういうように「自然人と同様に、正当防衛をするのは当然だ。この場合は、非核三原則より以前の問題」であるというように含みのある御発言をなさったのは何ゆえなのか、これは私どもとしては十分に納得がいかないんですね。これは危急存亡のときという定義にもよるけれども、そういう場合には、これは核の持ち込みをイエスと言う場合は、条約上はもちろんあるし、政策上だってあるのだという含みを残されたもの。だからこそ自由民主党の非常に厳しい意見をお持ちの方も核防条約の国会提出賛成をされた。そうではないんですか。  もう一言言わしていただきますと、四月二十四日に本会議趣旨説明が元来入っておったのですね。二十三日には国会へ出せるつもりで、それがせっかく設定されておったものを延期して、とうとう連休後にしなければならなかったというのには、やはり何か一言取らなければ出すことはまかりならぬという御見解が自由民主党にあったからに相違ない。そして、それにまさにこたえるものが宮澤外務大臣の御発言であり、後で触れる中曽根幹事長その他の御発言だというように思われるんですね。やはりそう御発言になる必要があったんでしょう。そしてその実質的なものがあったんでしょう。
  181. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 党内でいろいろなやりとり、その議論に私も加わりまして、いろいろな議論をいたしております。これはしかしまあ内輪の話であり、必ずしも正確に議論内容が外に伝わったわけでもございません。がしかし、正森委員がそれでも何だかおかしいではないかというふうにおっしゃるのでありますれば、その後、総理大臣がしばしば、きわめて最近の機会におきましても、国会という正式な場で政府の基本的な方針を、これはもうまことにはっきりと何度も、その総務会におけるやりとり等の後に最近に至るまで言っておられますので、それによってすべて政府立場というものははっきりしておる。もし私ども議論の中で、報道されましたようなただいまのことが、そのとおりではございませんけれども、そのように解釈できるようなことがあったといたしましても、それはしばしば国会で行っておられる総理大臣の所信表明によって吸収され、総理大臣の言っておられることが政府方針であるというふうにお考えをいただきたいと存じます。
  182. 正森成二

    ○正森委員 外務大臣はそういうようにおっしゃいましたが、私は二つの点でその御見解には必ずしも同意できない。  なぜかといいますと、外務大臣の御言明は、二十六日の新聞に載っておりますから恐らく四月二十五日でしょう。その後の五月六日の国会に上程されて、本会議趣旨説明がございました。そのときに、松本善明議員が有事の際の核持ち込みという点について質問をいたしましたら、三木内閣総理大臣はこう答えておるのですね。「また、いろいろ有事の際というようなことでお話がありましたけれども、有事の際とか、一たん緩急の場合とか、余り文学的な表現で、そしてこの安保条約の運用などというきわめて厳格を要するような問題を、そういうことを仮定していろいろ考えることは、私は適当だとは思わないわけでございます。」こういうぐあいに明確に答えておられます。つまり国会の、しかも最も権威ある本会議で、有事の場合あるいは一たん緩急の場合どうするのかという質問に対して、そういう文学的な表現といいますか、そういう仮定の問題に答えるのはよろしくないということで、責任ある政党が、本会議趣旨説明という最も公式な場で聞いた場合に、核兵器をその場合にも絶対に持ち込まないということはわざわざ言わないで、仮定の問題には答えられない。つまり、条約上イエスという場合があり得るだけでなしに、政策論の上から言うても、それはノーばかりではないんだということを間接的に表現なさっているではありませんか。それが第一点です。  それからもう一つは、るる総理大臣がおっしゃっておりますからそれに吸収されるというように言われますけれども、それは国民としては納得できない。筋としては吸収されるというようにあなたはおっしゃりたいかもしれないけれども、しかし肝心の国会に提出する前に、与党である自民党の中のいろいろ意見のある方に対して、こういうことだから提出するのだと言うて了承を求めるときの発言の中に総理と違う言葉があり、しかも総理はそのときに、新聞報道によると出席されていないで、自民党の責任ある機関の人が、それがまさに党、政府の態度であるというように思っておるとするならば、それは政治というもの、政策というものは、政党及びその政党が組織する内閣によって行われるわけでありますから、きれいごとでは絶対に済まない。ですから、私は吸収されるということも納得することができないし、また三木総理がるる言明しておられますというのも、その後の五月六日の本会議の答弁がそういうものでありますから、私は決して首尾一貫した、一義の論議がないほど明白なものでないということは明白に言えると思います。だから疑惑は解消されておりません。
  183. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 自民党の中におきましていろいろな所見を持った人がおりますことは、これはもうそのとおりでございます。したがって、いろんな議論が行われました。しかし、これはもう国会という場で総理大臣が政府方針はこうであると言われましたら、それが一番権威のある、これ以外に政府の態度というものを、これ以上に権威を持って説明できる場はないわけでございます。そうして、確かに本会議におきまして松本議員のお尋ねに対して、総理大臣が五月の初めでございましたか、そのような答弁をされたことは私も記憶をいたしておりますけれども、その後、しかも今週両院で開かれました予算委員会の席上でもたしかそういうお尋ねがありまして、どなたでございましたか、もう全く漏れがないように、この場合もこの場合もと言ってぴちっと御質問になって、その場合にも政府方針は変わらないということを、総理大臣がたしか今週でございますが言っておられます。五月以降しばしばそう言っておられますので、これが政府の最高の方針であるということは、国会の最近の論戦を通じてほとんど疑いないまでにはっきりされておると私は思います。もちろん、私が総理大臣の方針に従いますことは申すまでもないことでございます。
  184. 正森成二

    ○正森委員 私は、宮澤外務大臣が御在任中に総理大臣の御方針に従われるであろうということについては、一点の疑いも抱いておりません。けれども、非常に失礼ながら、この核防条約というのは少なくも二十年続きますから、そして過半数の同意でまだまだ延長し得るわけでありますから、そのときも宮澤外務大臣のように一義の疑いもなく総理大臣の指示に従われる外務大臣であり、しかも総理大臣が三木総理大臣であるということは、国民としては確定的に言えないわけであります。したがって、いかなる内閣であろうともどうであろうかという立場から質問するのは当然のことであります。そういたしますと、三木総理大臣という一つの人格をとっても、五月六日におっしゃったことと、最近の予算委員会の集中審議では違う。私も予算委員会を終始傍聴したわけではありませんが、しかし一部は傍聴しておりました。私がおりますときにも、そのような御言明があったことも記憶いたしております。  しかし、あえて申しますと、非常に失礼でございますがお怒りなく聞いていただきたいのですが、同じく新聞の報道によりますと、灘尾総務会長といわれる方がおられます、私もお顔だけはよく承知しておりますが、そのお方がこういうことを言っておられるのですね。この核防条約批准に関する件という政府に対する要望事項を念頭に置いて、時間がございませんからこれは全部読みませんが、それを念頭に置いて、前の方でいろいろな方が総理に対して確約を取りつけろ、こういうような質問のあったのに対して、党三役側から「この場で、首相から要望事項の確約を取り付けたら、野党対策上うまくない」こう言って、わざわざ総理を呼んでこずに、また確約もとらなかった。それは、それをとってしまうと野党対策上うまくない。なぜなら、宮澤外務大臣の場合には、危急存亡のときということについて自然人と同じように正当防衛でございますから、それは非核三原則以前の問題でございます、と言いましても、これは総理に吸収されるとか、はなはだ言葉は悪いですけれども、総理の指示に従います、と言うておればいいですけれども日本国憲法のたてまえから言いますと、総理が一言言ってしまえば、これを吸収する人はもはやないわけでありますから、したがって野党対策上それはうまくない、こういうことを言っておられるのですね。  そういたしますと、野党の立場といたしましては、あるいは国民の立場といたしましては、なるほど自由民主党という政党は、総理を引っ張ってきてこの六項目の要望事項についてわかったわかったということになれば、これは国会の論戦でも、自民党の総務会でこう言ったじゃないかということを言われる。それは野党対策上うまくないから、総理には、政策ではこうだということを言う余地を残す。しかし条約上のたてまえは、国会でも外務大臣が明白に言明し総理もそれは否定しない。政策上持ち込むことがあり得るというのは、外務大臣が自民党総務会で言っておく。これがタカ派にとってぎりぎり妥協し得る余地である。これは新聞にちゃんと書いてあるのですね。これがタカ派が妥協し得るぎりぎりの線だと、新聞に明白に書いてある。そういう野党対策上の使い分けをなさったのではないのですか。現に新聞もそう言っておりますし、国会論戦の過程を見生すと、五月六日ごろには、四月二十五日にはめられたたがが相当きつかったから、松本善明議員に対しては、仮定の問題には答えられませんと言っておられたが、その後だんだん核防条約がいよいよ審議されるということになると、そんなこと々予算委員会で言っておったのでは、ますます火が広がる。ここは野党対策上一義の疑いがないように、政策としては持ち込ませないということは言う。しかし条約上はイエスの場合があり得ると言う。外務大臣は、正当防衛ということになれば、これは危急存亡、核がどうのこうと言うておれない、政策上も持ち込むようなことも、これも言う。そして追及されたら、総理大臣に吸収すると、こう逃げる。ちゃんと役者も、筋書きも、配役も全部決まって、そしておっしゃっているんじゃないですか、そうでしょうが。
  185. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 なかなかそこまで上手に筋書きをするような知恵者はおりませんで、そんなことではございません。総理大臣が国会で最近もああ言っておられるということは、当然政府を拘束いたします。何対策ということでなく、国会であれほどはっきり言明されましたことは、政府を拘束することは全く疑問の余地のないところでございますから、それではっきりしておるのではないだろうか。せんだっての予算委員会では、先ほど正森委員がちょっとお触れになりましたように、それは三木内閣のときであろう、その後の内閣も果たしてそうかというところまでお確かめになった方がいらっしゃいまして、これはずいぶんむずかしいお尋ねをなさるものと思いましたが、総理大臣自身は、自分はそう信ずるという趣旨の答えをたしかされまして、やはり一つの内閣における言明というものは、普通の場合ですと、後の内閣をも拘束いたすものでございますから、やはりそう考えてよろしいのではないかと私は存じます。
  186. 正森成二

    ○正森委員 私は、外務大臣がそういうぐあいに御苦労なさって答弁なさっているというお気持ちはわからないでもありませんけれども、今度は四月二十六日の朝日新聞を見ますと、朝日新聞では中曽根幹事長が「政府安全保障問題をやや安易に考えてきたのは否めない。米国のアジア戦略の変更に対応して、安保、防衛を組み立て直すことは必要だ。非核三原則というのも、あくまで心がまえのことで、事前協議の仕組みからはイエスもノーもあり、これは条約論だ。三木首相もこの点は十分了解している。」、そしてその後「いずれにしても、これだけの大問題だから今国会で成立にこだわらず、国会提出してじっくり考えることが大切だ。」、ここのところをよく聞いていただきたいのですね、そういうぐあいに言うておられるのですね。中曽根幹事長が「三木首相もこの点は十分了解している。」こう言うて、外務大臣がずっとお答えになったことを否定もなさら、ずに政策論と条約論、それで一方の非核三原則は心構えだ、これは三木首相も十分了解している、こういうぐあいになっておりますと、これはいかがなものでしょうか。
  187. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約はなかなかむずかしい条約でございますから、自民党の中にもこの条約についていろいろな見解を持った方々がおられる、それは事実でございます。それでございますから、粋事長とかあるいは総務会長とかいうお方方は、党内を取りまとめていくのにいろいろ苦労をされる、これはどこの党でも私は同じことと思いますが、そういうことはそういうこととして、やはり現実でございますから御理解を願いたいと思いますが、私がしかしそれらの方々にかわって所見を申し上げるわけにはまいりませんので、やはり政府としては政府の所見を申し上げるということで、それは総理大臣が国会において最近も申し上げておるということをもって、政府の正式の見解だというふうにおとりをいただくということではなかろうかと私は考えております。
  188. 正森成二

    ○正森委員 私は繰り返し申しますが、宮澤外務大臣、お怒りなく、大事なことですからお答え願いたいのですが、四月二十三日の朝日新聞によりますと、これは二十二日に例の文書が出された後のことでございますが、その「六項目の要望事項と合わせて、非核三原則のうち「持ち込ませず」については「米国の核抑止力を確保するため、弾力的に運用する」」、これは北澤外交調査会長の御意見のようでありますが、「ことを含みに、今国会に批准承認案件として提出することを了承した。」というように書かれておるのですね。そういたしますと、どう考えてみましても、核の持ち込みについてここにも書かれておりますけれども、「弾力的に運用する」とか、あるいは事前協議について「両国間で緊密な連絡を保つこと。」というのは、やはりその点について自由民主党の中で一定の意思統一があったのじゃないのですか。第一、安保条約を強化することというような御意見があったわけでしょう。その強化というのは、長い間にわたって堅持するということのほかに、いま申し上げた点があるのではありませんか。
  189. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いまのお尋ねは、「事前協議の解釈、運用について、両国間で緊密な連絡を保つこと。」というのでございますが、確かにいまお尋ねがあって思い出しましたが、この表現はいわゆる自民党内の政務調査会の要望事項に四月二十二日になりますまでの過程で、何かもう少し違ったことが書いてあったという記憶が私にございます。しかし、それはやはり一部にはそういう意見が党内にあったからでございましょうが、それはやはり問題ではないかということで、この「事前協議の解釈、運用について、両国間で緊密な連絡を保つこと。」ということに改められておりますので、ですから、正森委員の言われますような意見が党内の一部にあったということは確かにそのとおりでございますけれども、多数はやはりそうではなく、こういう表現において政府に要望するということになった経緯があると存じます。
  190. 正森成二

    ○正森委員 それでは私、個別的な問題からもう一度一般的な問題を考えてみたいと思いますが、時間がございませんので、先日でしたか、外務委員会国際情勢のときに少し申しました議論の発展として質問させていただきたいと思いますので、外務大臣が御記憶でしたら前提は省略させていただきたいと思うのです。  私は、たしか韓国の条項に関連して外務大臣に御質問をして、韓国とアメリカとの間には米韓条約はあるけれどもわが国のような非核三原則というものもないし、事前協議制度もない。また、韓国には核兵器が置かれているということもある程度公然の事実である。したがって、米韓条約に基づいてアメリカが核を使用し、あるいは韓国がこれに協力するということは何ら禁止されていないということを申しましたら、条約局長はイエスという答えをなさったと思います。そして、わが国アメリカとの間に安保条約を結んでおるということになり、しかも佐藤総理のナショナル・プレス・クラブでの演説、あるいは日米共同声明による韓国条項というものがあって、韓国の安全は日本の安全にとって緊要である、こういう何か事態が起こった場合には、アメリカわが国の基地からの戦闘作戦行動については前向きにかつ速やかに考えるというように言っておられるが、当時の外務大臣の愛知さんの言明では、特に戦闘作戦行動とは限定されていない。これは核の持ち込みについてもやはり限定されていないと解釈すべきではないか、こういうように言いまして、なるほど言葉の上ではそうであるけれども、しかし佐藤総理の言っておられるのはあくまで戦闘作戦行動についてだけであるというようにお答えになったと思うのです。私、非常に簡単に、時間を省略するために一問一答を集約して要約したのでございますが、ほぼその要約で間違いございませんね、これから議論しますので。
  191. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いま愛知外務大臣のところだけ、ちょっと私記憶が定かでございませんけれども、いま正森委員の言われましたこと、大筋においてそれで間違いございません。
  192. 正森成二

    ○正森委員 それでは、時間省略のためにその前提で議論を進めさせていただきたいと思います。  ところが、その後私が承知しておるところでは、参議院の外務委員会でわが党の立木議員が質問をされましたら、外務大臣はしばらくじっとお黙りになって、一日か二日しかたっておりませんのに、戦闘作戦行動については前向きにかつ速やかに返事をするという点について、現在、イエスともノーとも答えるのはちょっと遠慮した方が士さそうだという意味のことをお答えになったやに伺っておるのですね。一日、二日の間になぜそういう御心境の変化があったのかをお漏らせ願いたい。
  193. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは佐藤当時の総理大臣が、あの年に、一九六九年に、いわゆる佐藤・ニクソン声明が出ましたときに、時を同じくしてプレスクラブにおいていまのような話をされたわけでございますけれども、その後になりまして、沖縄返還協定特別委員会でいまのプレスクラブの言明について幾たびか質問がございまして、これは四十六年の十一月ごろでございますけれども、その質問に答えられまして、自分があのときに前向き云云ということを申したのはどうも表現が適当でなかったということを、たとえば民社党の曽祢益委員あるいは共産党の不破哲三委員に対して答えておられまして、これは要するにイエスもあり、ノーもありということであると、こういうふうにいわば修正をされたわけでございます。そういうこともございまして、このプレスクラブにおける演説というものの今日的な意味がやや不鮮明になっておるわけでございますので、そういう複雑な事情から、ちょっと私もはっきりしたお答えをいたさなかったのと、もう一つは、現に朝鮮半島の事態がある程度緊張いたしておりますから、これについて日本政府はこう考えるというようなことを申しますと、それによって勇気づけられる、あるいはその反対のようなという、外国にいろいろ影響を及ぼしそうである、そういうことは朝鮮半島の平和維持のためにどうも余りいいことでないという気持ちが私にはございまして、それで立木委員にあのようにお返事をいたしたのでございます。
  194. 正森成二

    ○正森委員 その後、新聞にはいまお答えになったようなことが別の機会に載っておりますので、恐らくそうであろうと思っておりましたが……。  そこで、そういうのを前提にして、前向きにかつ速やかにというのは、これは少しぼやけるといいますかぼんやりしておる。まあ情勢も違っておるということですが、しかし戦闘作戦行動についてイエスと言う場合は、条約の解釈の上からはもちろんのこと、政策的にもあり得るということは、これは御否定なさいませんね。
  195. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これもごく最近の予算委員会におきまして総理大臣自身がそういうふうに答弁をしておられますので、政府方針とお考えくださいまして間違いございません。
  196. 正森成二

    ○正森委員 そういうことを確認させていただいた上で申し上げますが、私はこの前の国際情勢のときに一言伺って時間の関係でやめてしまったのですが、これは率直に国民の危惧としてお尋ね申しますのでお答え願いたいと思うのです。  実際の戦争の常として、韓国で、あるいは朝鮮半島でと申してもよろしいかと存じますが、戦闘行動が行われて、それが単なる国境の小競り合い――国境といいますか、三十八度線近辺の休戦ラインと申しますか、その範囲の小競り合いを越えて、米側も戦闘行動に参加しなければならない、それだけでなしに、日本の基地からも戦闘作戦行動に出ていかなければならないという事態は、これは単なるぼや程度じゃなしに、相当大きな実力行動であります。これは局地戦争と言ってもいい事態であります。そしてその場合に、局地戦争の枠を越えてますます広がってくるという場合に、もし何らかの事情によって――御承知のように韓国側は米韓条約を結んでおります。朝鮮民主主義人民共和国は、いずれも核兵器保有している――一方はこの核防条約に加入はしておるソ連、一方は加入していない中国と、いずれも条約を結んでおります。そうなりますと、核兵器が使用される可能性は決して絶無ではありません。その場合にアメリカ核兵器を使用する。その場合にアメリカは空母から出かけていくのか、韓国内の基地から行くのかあるいは台湾から行くのか、グアム島から撃ったのかわからないけれども、ともかく核兵器を朝鮮民主主義人民共和国に対して、あるいはこれに対して支援を行うソ連ないし中国に対してどんどん撃ち始めた。日本はそれに対して、一生懸命、戦闘作戦行動、行ってよろしいと言って、アメリカが出ていくのを認めておる。しかし幾ら、核兵器は撃ったけれども、あるい飛行機は核兵器を落としたけれども、その飛行機は、アメリカの飛行機だけれども日本から行ったものではない、なぜなら日本は持ち込みを許しておらないんだからというようなことで、かっかときている両当事者に通るでありましょうか。あるいはまたこう考えてください。核兵器を積載している戦闘爆撃機が爆撃に行って核兵器を落とす、日本からの戦闘機は核兵器は積んでおらないがそれをしっかりと防衛して出ていく、核兵器を積んでいる航空母艦や一定の軍艦は出ていく、日本からのは核兵器を積んでおらないいろんな部隊がそれをしっかりと防衛して出ていく、しかし日本はこの核攻撃には関係がないんだというようなことが果たして通るでありましょうか。そしてそういうようになった場合に、アメリカがそういう乾坤一てきの紛争を行うときに、どんなにのどから手が出るほど欲しくても、核兵器を積載したいろいろな軍艦やあるいは航空機あるいはミサイル潜水艦は、日本の基地だけはよけて、沖縄も通らないで、そして行くというような、あたかも中世の騎士の貴婦人を争う場合の戦いのように、そんなルールというものが実際上起こり得るでありましょうか。私は、およそ常識的に考えるなら、そういう場合は起こらない。あるいはそういうような場合でなしに、事実上日本に持ち込まれる、あるいは持ち込みたいというように言うてくる場合は少なくとも起こり得ると思うのですね。したがって、現在の米韓条約がある状況のもとで、そしてそれに対抗して朝鮮民主主義人民共和国とソビエト及び中国との同盟条約がある、そういう現状での朝鮮半島で一たん緩急あった場合には、核兵器が使用され、それが日本を何らかの形で着き込むということは十分にあり得ると思うのですね。だから、そういう場合に、戦闘作戦行動だけはイエスと言うがその他はノーである、どんな場合でもノーであるということは決して現実的ではない。その場合には、自民党の多くの方が言うておられるように、自然人でも正当防衛というものがあって、非核三原則などの以前の問題だという外務大臣の四月二十五日の総務会での御言明が、そういう場合にはやはり生きてくるということになるのじゃないですか。
  197. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 問題は二つあるわけでございますが、まず直接の戦闘のための発進ということ、これは総理大臣がイエスもありノーもありということを予算委員会の席でも言っておられますが、これは私の推察でございますけれども、あれは、そう簡単にイエスということを言うのだという意味で言われたのではなくて、この場合、いずれの御返事をしましても、いまのような情勢から言いますと、外国に――外国にもいろいろあるわけですが、何かの影響を与える、決して平和維持のために好ましくない種類の影響を与える危検性がある、そういう配慮もあってああいう答弁をされたものと、私は実は思っております。だから答弁がうそだという意味ではございません。うそだという意味じゃございませんが、答弁をされるに当たっては、かなりそういう配慮をしておられたと私は推察をしておりまして、したがって、これは安易に日本からの戦闘行動を許すということを言われたととるべきではないというふうに私は思っております。  それから第二の問題は、しかしどういうことがあっても、わが国に核の持ち込みは許さないということは、これはしばしば総理大臣が一貫して、ことに最近言っておられるわけでございますから、これは米国側としてもそういうふうに考えておいてもらいませんとなりません。つまり、場合によっては日本にも置けるんだというような頭で作戦を構想してもらっては、組んでもらっては、これは困る。それは米側もはっきり知っておると思います。  なお、せんだってもガイラーという太平洋地域の司令官が私に、日本には核体制はありませんということを説明をしていかれたわけですけれども、そういう言明から考えましても、わが国に核体制を組む必要はない、組めないということを前提に米国はやはりいざという場合の作戦を考えている、こういうふうに理解をすべきではないかと思います。
  198. 正森成二

    ○正森委員 いま外務大臣がそういうぐあいにお答えになったわけでございますが、それはしかし韓国であるいは朝鮮半島で一たん有事の際に、日本国内からの米軍の戦闘作戦行動を慎重にイエスという場合には考える、安易に考えないということであって、それはしかし戦闘作戦行動をイエスという場合はあり得るということは依然としていまの御答弁の中でも否定されないと思うのですね。  そして、私はいろいろ文献を読んでまいりましたが、一たび核戦争になった場合には、戦術核戦争だけで済まそうと思っておってもそれはなかなかいけなくて、何人といえども制御し切れない問題だというように見ている軍事専門家というのは圧倒的に多いのですね。ですから、私は戦闘作戦行動についてイエスという場合が政策上もあるという以上は、これは米軍の重大な兵力の移動にしましても、装備の変更、つまり核兵器の持ち込みにしましても、それは事前協議を持ちかけられてくるときがあるし、それに対して危急存亡のときと言ってイエスとおっしゃる場合も起こってくるんじゃないか、こういう疑念はやはり払拭し切れない。  それから、もし仮に外務大臣がおっしゃいますように、米軍が騎士道精神を発揮いたしまして、自分自身が核戦争を行うという場合は、ワシントンやニューヨークに核兵器が降ってくるかもしれないときであります。そのときでも日本からいろいろ戦闘機が出ていったり、大砲を撃ったり、そういう補給はするけれども核兵器だけは持ち込まず、立ち寄らないというようなことを、あたかも将棋かあるいは碁のようにルールを守ってやり得るといたしましても、それを相手国はなるほどそうでございましょうかと認めるでしょうか。相手国は自分の頭の上に核兵器が降ってきておる、その核兵器アメリカ本土から来ておるのやら、韓国から来ておるのやら、日本から来ておるのやらわからない。ただ日本はそういうことを了承した覚えはないと言っておるだけだ、しかもその日本は厳正中立を守っておるのではなしに、米軍がどんどんと日本の基地から戦闘作戦行動に行ってそれに加担しておるというような場合に、相手方はそうでございますか、アメリカの言うことも信用しましょう、日本の言うことも信用しましょう、そういうことで済むでしょうか。  一九〇七年にたしかヘーグの「陸戦ノ場合二於ケル中立国及中立人ノ権利義務二關スル條約」という長ったらしい条約があります。その条約を見ていただいても、そのような場合に日本を戦闘行動のあらゆる可能性をもって攻撃してはならないという規定は相手側の交戦国にはないと思うのですね。済まないが、日本核兵器は持ち込んでいないということを査察してくれるか、おまえの国から核兵器以外で幾ら米軍が攻撃してもよろしい、場合によって核兵器以外でわが国を相手国が攻撃いたします、それは向こうはヘーグの条約で当然の権利であります。日本の自衛隊も出ていって戦闘はいたします、しかし核兵器に関する戦闘については一切行っていないから、わが国には核攻撃しないでくれと外交ルートを通じて言ったといたしまして、向こうはそれを信用するでしょうか。仮に信用するとして、それならば軍事基地の至るところに査察要員を置いて、核兵器は持込まれていないかどうか調べさしてくれ、そうしてそれで大丈夫であったら初めて了承いたしましょうと言ってきたらどうするのです。その場合には、国家の主権からそんなことは許可できないが、しかしわが国が核戦争にいかなる意味でも協力していないということだけは信用しろ、こういう非現実的なことが言えるでしょうか。私は三木内閣がきれいごとでたてまえに言っていることは、実際上は議論を進めていけば結局はそこになる、そういうように思うが、いかがでしょう。私がソ連中国の仮に総理であり、外務大臣であり、軍事の参謀総長であるとすれば、そういう議論をいたします。
  199. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国から仮に直接の戦闘行動を事前協議によって認めるという場合、仮にでございますね、そういう場合は、もちろんそれはわが国の安全に直接に関係した場合でなければなりません。わが国の安全に関係しないことでそういうことが行われるというはずはないのでありますから、わが国自身の安全がやはり脅かされているという状況でなければそういうことは起こらないということを、これはお尋ねの私は前提になっておると思います。  したがいまして、わが国自身がかなりそれは危ない目に遭う局面においてのみしかそういうことは考えられません。  その次に、先ほどヘーグの陸戦法規のお話があったわけでございますけれども、午前中に永末委員にも申し上げましたように、かつていまのような場合に、自分の国に関係がない、いわゆる中立、第三者である日本がその基地を戦争当事国に貸与した、利用せしめたという場合には、中立は主張し得ない、敵性を帯びるではないかという考え方は、いまの国連憲章のもとにおいては法的には成立せずに、すべての戦争というのは自衛の場合に限る、つまりジャスティファイできる戦争というものは自衛の場合のみであるということになっておりますから、したがって、わが国からそのような発進が許されたという場合には、これは当然わが国は自衛としてやるしか法律上許されないということでございます。  ですから、その前に侵略があって、それに対する自衛でございますから、その自衛しているものが敵性を帯びるということは、いまの国際法の観念ではないというふうに考えるべきではないか。それはおまえの言うのは法律上のことであろうとおっしゃいますれば、それはいかにもそうでございます。わが国がそのような直接発進を許さなければならないような状況に置かれたときに、場合によってわが国に火の粉が飛んでくるかもしれないということは、そういう局面では、これはむしろそれくらいの局面であるからこそ発進を許す許さないということが問題になるわけでございますから、そういう場合には、それは当然やはり予想される事態でございましょう。  ただ、その場合にもわが国核兵器の導入を許していないということは非常にはっきり現在でもいたしておりますし、したがって、いざという場合にそれを持ち込むというような態勢なり、なりが全然わが国に行われておりませんから、何も騎士道的な見地というのでなく、現実の問題として日本から、核兵器日本に入れて、そこからどちらかへ持っていくというようなことは、これは恐らくアメリカの作戦の中にそういう想定はない、またそうしておかなければアメリカとしてはいざというときにこれはそごを来しますから、これは私ははっきりしておるのではないかと思います。  それにもかかわらず、よその国が曲解したらどうなるかということになりますと、これは何とも申しようのないことですが、とにかくそのような直接発進を許すというような事態においては、それはわれわれも火の粉を場合によってはかぶるという事態でなければそういうことは起こり得ないのではなかろうかと思います。
  200. 正森成二

    ○正森委員 外務大臣が非常に真剣にお答えいただいたということを私は議論を進める上で非常にうれしく思っております。  まさにここは佳境でありまして、ここから結局核防条約で前の一項、二項が一九六八年の国連決議からいえば、これは不十分だ。五十一条に頼るしかない。そこで、自由民主党の方は安保条約を強化しなければならないと言っている。その強化する内容一つとしてこういうことが起こってくるではないかという議論を進めているわけであります。外務大臣からいままさに非常に踏み込んだ御答弁をいただきましたから、それについて私が哲学的な応答をしたいということを事前に政府委員に申しておきましたが、果たして、日本の平知と安全を守るというのは、日本の国民が平和に暮らせる、日本の国民が核兵器によって半ば絶滅する、あるいは場合によったら絶滅するというようなことがないようにするにはお互いどういうぐあいに国の安全保障考えたらいいのであるかということはまさに議論しなければならないことなんですね。それを私は議論したいと思って文献など用意してまいりました。核戦争が起これはどういうぐあいになるか、日本はどうだろうということも含めてであります。しかし、ちょうどお約束の四町が参りました。非常に残念ですが、審議の過程から見ていただいて委員長、おわかりいただけると思うのですね。私は、本当は少なくとももう一時間いただけるところでございましたが、きょうの審議の過程の中でそれを協力したのでございますから、その後については委員長のお計らいを願いたいということで、きょうもまた残念ながらいいところで私の質問を留保さしていただきたいと思います。
  201. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をとめて。
  202. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をつけて。  石野久男君。
  203. 石野久男

    石野委員 アーノルド・J・トインビー氏は、「この地球ではあと二億年は人類の生存が許されるはずです。われわれはそれまでの遠い遠い子孫のことに思いをはせねばなりません。まして、わずかに曾孫やそのまた曾孫の代にこの地球を人類が住めないようにすることは絶対にしてはなりません。」このように私たちに核爆発による放射能の危険性を訴えております。  わが国は一九四五年、二度にわたる原子爆弾の災害を受けた世界で唯一の被爆国であります。原子爆弾による被害者の立場から実感を持って世界に訴えることのできる唯一の国です。本条約を審議するに当たって、この死の敗北の中から与えられたどの国にも持つことのできない、人類の将来の歴史に対する発言権を持った日本人の立場をいついかなるところでも失ってはならない、こう私は考えるのであります。これは日本人のためだけでなく、世界のために、全人類のために大切なことだと私は思っております。政治家として特にそう考えておるのですが、外務大臣は、いわゆる核爆発の人類に与える被害、こういうようなものを踏まえて、私がいま申しました、日本人として持っておるこの特権といいますか、どんな場合でもわれわれはこの原子爆弾によって受けた被害を排除するというこの考え方について、どういうようなお考えを持っておられるか、まず最初にお聞きしたい。
  204. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまお述べになりましたことに私も同感をいたします。  石野委員におかれましても、また私にいたしましても、とにかく昭和二十年にわが国がこうむりました原爆の悲惨な災害というものは、自分の体験としてよく知っております。しかし世代が変わるに従いまして、それは個人の体験としてでなく、いわば歴史からそれを学ぶというようなことに、時代とともに記憶が薄れていく心配もなしといたしません。したがいまして、私ども、この災害を自分で体験した者の時代に、将来に向かってわが国が再びそのような危害に合わないような目的を持って何かそれを制度化しておく必要がある。私ども自身は自分の体験がございますから、二度とそういう愚行を繰り返すとは思いませんけれども、これを知らない世代になってきましたときに、記憶が薄れていくということはあり得ることでございますから、そうなりません前に、そのようにならないように制度化しておくことが必要であると考えます。わが国の憲法はまさしくそれを根本的に制度化しようといたしておりますし、また、ただいま御審議をいただいております条約もそのような目的に役立つものと考えております。
  205. 石野久男

    石野委員 政府が非核三原則を再三にわたって宣言しております。他方では、核兵器の恐怖がますます明らかになっておりますし、また原子力の放射能が人類に与える危害の恐ろしさというものは一層明らかになってきております。しかしまた、それにもかかわらず、その救済策というものが全人類に一層混迷の度を深くして定かではありません。こうした科学の実績、実情から見て、この条約というものはどういうような位置づけを持っておるというふうにお考えになっておりますか。
  206. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約のまず背景になっております考え方は、現在、ことに米ソでございますが、核において圧倒的な力を持っているという事実は事実として認めますけれども、それはしかし、やがてはバランスのとれた形で縮減され、最終的には核兵器が廃棄されることをわれわれは望むという、そのようなわれわれの念願が一つの背景になっておると存じます。この条約自身は、そのような背景のもとに、とりあえず核兵器をこれ以上、一九六七年現在持っておる国以上に広げないことがやがて将来核軍縮に進む道であろうという認識のもとに、いわゆる核拡散を防止をするという方法につきまして各国が合意をしたものであると考えております。  同時にまた、しかしその最終的な核兵器廃棄というに至らない間は、持てるものと持たざるものとの間の差はどうしても存するわけでございますから、いわゆる持たないものの安全保障についてどうするか、持つものについて核軍縮をどういうふうに進めるかといったようなこと、あるいはまた他方で原子力平和利用というものは、これは人類の福祉に貢献をするはずのものでございますから、それをどのようにして推進するかといったようなことが、この条約及びその背景の現代史的な意義であろうと思います。
  207. 石野久男

    石野委員 原子爆弾を二度にわたって受けております日本人が原子爆弾、核兵器というものに心からの憎悪を持っておることは、これは私も大臣も同じだと思うのです。そういう立場を一方で持っていて、そして現在核兵器に対する論議が、核兵器国と非核兵器保有国との間でいろいろ論議されているときに、日本人の立場というのはそのいずれの国よりも別な立場がこの問題についてはある、こういうふうに私は先ほども申し上げたのです。大臣もそのように、同感であるというように御答弁がありました。したがって私は、この条約の審議に当たってもその立場というものはあらゆる審議の条目にわたって貫いていかれるべきである、こういうふうに私は思いますけれども、その点について大臣はどういうふうにお考えになっていますか。
  208. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのように考えてよろしいと思います。
  209. 石野久男

    石野委員 いまこの審議に当たりまして、日本人のそうした考え方というものが、いろいろな理由がありましょうとも、たとえば先ほど大臣が言われたように、原子力平和利用という問題、この平和利用というものを人類の発展のために、将来の文化のために見る目におきましても、このわれわれの第二次世界戦争において受けた教訓から引き出される物の見方というものは当然出てくる、そしてそれはやはり他の諸国とはおの、ずから違うものが出てくるということも私は必然だと思いますが、そういう点について大臣はどういうように思いますか。
  210. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのように考えております。
  211. 石野久男

    石野委員 お尋ねしますが、この条約批准してNPT体制に入った場合、世界から核兵器をなくすることができるという見通しがやはり大臣にはありますか。そしてまた、核大国核軍備拡大競争をとめさせるという、そういう見通しがありますか。そのことについて……。
  212. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのようなことが簡単にすぐ実現するとは考えておりませんけれども、少なくともそういう目標に向かってわれわれが進むためのこの条約は一里塚であるというふうに考えております。
  213. 石野久男

    石野委員 直接すぐにはそうはならないけれども、そういう一里塚である、その見通しは、この条約の中のどういうところから引き出されてきますか。
  214. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは先ほども申し上げたことでございますが、この条約は先ほど申し上げましたような背景のもとに一つの位置を占めるものとして見られなければならないと思います。  すなわち、いわゆる軍縮であるとか、あるいは非核保有国安全保障であるとかいうことは、おのおのそれを論ずべき場があり、またそういうことが幾らかでも盛り上がってまいりました背景の中で、一つの方法をこの条約が示している、すなわち、とりあえずこれ以上保有国を拡散させることをやめようではないかというためにはどういう方法をとったらいいかということをこの条約が定めておる、そういうふうにこの条約の位置づけを考えております。
  215. 石野久男

    石野委員 核兵器国立場から核戦争の恐怖というものを見る場合と、それから被爆国である日本で見る場合と、そうでない非核保有国立場で見る場合と、この問題についての見る視点がおのずから違う。したがって、日本がこの条約に対処する立場としては、漸次一里塚を追っかけていくという方法も一つの方法でありましょうけれども、私は、一九四五年の悲惨な経験からすれば、むしろやはり核兵器の全廃の方向へ、あるいはまた核大国核軍備拡大競争を即時中止しろという立場をとるということがむしろ日本人の切実な要望であってしかるべきだと思うし、またわが国政府がそういう態度でこれに対処するのが至当でなかろうかと思うけれども、それについて大臣はどう思いますか。
  216. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もとよりわが国はそういうことを望んでおりますけれども、いかに声を大にいたしましても、そのための方法論を発見して接近をしていくのでなければ、われわれがそれを叫んだことによってすぐそういう状態が実現するというわけには残念ながら現実にはまいらないと思います。実際の問題としまして、この条約が生まれましてから後、初めて米ソの間に具体的な核兵器についての幾つかの協定、取り決めが生まれ始めております。そのテンポなり程度なりははなはだ不満足なものであるには違いございませんけれども、いままでなかったそういう動きが、この条約が誕生したことによって幾らかずつでも動き始めたということは、方向としてはわれわれは正しい方向にある。目的達成までには長い時間がかかるでございましょう。しかし、そのためにわれわれは間違っていない方向に向かって歩み始めておるというふうに私は考えております。
  217. 石野久男

    石野委員 そういう大臣の見方からして、核兵器の全廃の方向、あるいは核保有国核兵器国の軍備拡大競争をなくするというその見通しは、それならばどの時点のところで見通しを持ち得るか。そういう点についての大臣の所見はいかがですか。
  218. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 米ソ核軍縮の交渉を見ておりますと、アメリカとしても、とにかくソ連がある程度の対米バランスに到達しなければそれ以後の削減へのステップがとれないということはアメリカ考えておるようでありまして、したがって、非常に大ざっぱに申しますと、アメリカはいまのところでほぼ立ちどまる、それでソ連がある程度のバランスを回復するのを、何と申しますか、認めるというのでございましょうか、そういうところまでいって、さてその上で削減に向かっていこう、これは私は現実的な立場としてソ連が実際脅威を感じておったのでは、なかなかそういう約束は生まれませんと思いますから、アメリカとしては少なくとも一方的な優位のもとで核軍縮を進めていくということは、どうもソ連との関連でむずかしい。したがってある程度ソ連も、自己の安全あるいはソ連の力に頼っている国々の安全というものがまず確保されるというところまで、アメリカにバランスを回復していく、それから後に軍縮に向かおうという道程にあるのではないか。したがって、現在までのところの米ソ間の交渉は表見的に見ますと、むしろ核軍縮ではないではないかという御批評がございます。間違ってはおらないと思いますが、それはさっき申し上げましたような意味での将来バランスのとれた縮小に向かうやはり一つの過程であるというふうに考えていいのではないかと私どもは思っております。
  219. 石野久男

    石野委員 先ほどの御答弁では、このNPTの条約ができてから幾つかのそれに伴う条約ができて、いわゆる核拡散防止ということの正しい方向に向かっておるという御答弁がありました。いまのお話からしますと、縮小よりもむしろ拡大の方向に行っているというお話で、矛盾しております。そしてお話の中では、米ソのバランスのために縮小ではなくてむしろ拡大の方向へ行っている、こういうお話です。その間の統一がとれていませんけれども、それはどういうことですか。
  220. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約ができましてから数個の核実験の問題でありますとか取り決めが米ソ間にできておりますことは、これは後ほど政府委員から御説明をいたしますけれども、そういう一方で、少なくともアメリカ側は、ソ連に対してある程度のバランスの回復をさせなければソ連核軍縮ということに納得をしないという理解といいますか、そういう解釈のもとにアメリカ側が足踏みをしてソ連がある程度バランスを回復する、それが私はSALTというものの交渉であると思います。その限りにおきまして、設けられた天井が高いではないかという批判はございます。ございますが、天井を設けない無制限の競争をしておった時代から考えれば、やはりそれは一つの進歩であると考えていいのではないかという意味でございます。
  221. 石野久男

    石野委員 大臣は、日本人の願望である核不拡散を願うという方向での政策展開をするのではなくて、米ソの間の均衡がとれる情勢にまず第一義的な意義を置いて、この条約批准をわれわれに要求しておる、こういうふうに見てよろしいですか。
  222. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 米ソのいたしますことが、私どもがこの条約をこのゆえにお願いを申し上げますという直接の理由ではございません。私の申しますのは、核軍縮ということが少なくともこの条約が生まれましたところの一つの背景であるはずであるが、その進展は見られるか見られないかという価値判断について申しますと、不満足ではあるけれども努力の跡は認められる、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  223. 石野久男

    石野委員 努力の跡というのは、この条約加盟しようとする限りにおいては、核拡散をなるべく拡大するのじゃなくて縮小していくという方向が、努力の跡としてわれわれは認める内容だろうと思うのです。けれども先ほどの話だと、むしろ核拡散の方向へ行っているんでしょう。これは努力の跡じゃないんじゃないですか。逆じゃないですか。
  224. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 問題は、米ソが全く青天井で拡大を続けるか、あるいはたとえ多少高くとも天井を設けてそれで協定をするかということになりましたら、多少高くはある、そのことに問題はありますけれども、しかしそうでなければソ連も自分の安全というものに安心できないということでありましたら、またそれは事実でございましょうから、ベストではないけれども一つの方法としてそれは考え得る方法ではないかというふうに私は思っておるわけです。
  225. 石野久男

    石野委員 米ソ関係はそういうものだろうということについての説明は理解できます。日本政府核拡散防止ということについて、そういうような考え方に追随していくということなんですか。日本政府自身の持っているこの問題に対する考え方、自主的な考え方というものはどういうところにあるのですか。
  226. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国はもともと憲法のたてすえから大きな軍備を持つということはできない国でありますし、いわんや核兵器についてはこれか持たない、持ち込ませない、つくらないという三原則も持っておりますが、さらにこの条約によってそのようなわが国の姿勢を国際的に約束をしよう、こういうことでございます。
  227. 石野久男

    石野委員 わが国は、先ほども申しましたように被爆国として特殊な立場にあり、実感を持ってこの問題に対処する唯一の資格のある国です。そういう立場から、核兵器国がどういうふうにバランスのための拡大競争をしようとも、われわれはそれに反対して、そういうものはやめてくれという立場を貫き通す態度でなければこの条約を見ることはできない、私はそう思っているのですよ。大臣の考え方はどうもそうではないらしい。むしろバランスがとれて情勢の均衡化ができていけばいいんだというふうに見ている。そういう立場の相違があるように思いますけれども、これは私の考え方の違いでしょうか。
  228. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一足飛びに核兵器の全面廃棄というところまで行ければこれはもうこれに越したことはないわけでございます。しかし、わが国がどれだけそれを叫びましたところで、わが国にそれを外国に対して実行せしめる力があるわけではございませんから、そういう目標に向かって進むための方法論はどうしたらいいのかということ、現実の問題として超核大国がそれに同意するような方法はどういうことが可能であろうかというようなことから考えますと、この条約加盟をすること、あるいは米ソのSALT交渉が進展することについてわれわれの主張をすること等々、現実的にはやはりそういう道をつくっていかなければならないのではないかと思います。
  229. 石野久男

    石野委員 どうも見解が違うようですけれども……。  一つお尋ねしますが、この条約に入ることによって、わが国のような力のない核を持っていない国は、大臣の言うような道が安易に開けていくのだろうか。それともこの条約の外にあって、世界で唯一の経験国としてのわれわれの発言を鋭くぶつけていくことの方が、より多く世界の人民の共鳴を得ることができるのであろうか。この点について大臣はどのようにお考えになっておりますか。
  230. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の考えでは、少なくともわが国は核実験をし、あるいは核兵器をつくる経済力、技術力を持っておる、外国からは疑いなくそのように見られておりますから、外から言えばそこから疑念というものも起こり得ることである。そういう疑念を持たせないように、わが国のそういう決心を国際的に約束するためにこの条約に加入をして、その立場から核軍縮を叫ぶということの方が、私ははるかに説得力があるのではないかというふうに思っております。
  231. 石野久男

    石野委員 そうしますと、この条約に入るのは、日本の国が核兵器をつくる事実上の力を持っており、これに入らないと世界各国が日本の国に対して疑念を持つから、そういう疑念を排除するためにこの条約に入ろう、こういうことなんですか。
  232. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのお尋ねは、この条約の中にいる場合と、条約の外で叫ぶ場合とどっちが説得力があるかというお尋ねでございましたから、私は、中に入って叫ぶ方が説得力があると思います、こう申し上げたのであります。
  233. 石野久男

    石野委員 中に入った方が説得力があると言われる内容が、やはりわが国の産業の力量というものが、核兵器をつくる実力を持っておると世界は見ている、だから入らないでおると疑念を受けるから、これに入った方が説得力がある、こういうお話でした。ですから、入って説得力のある最大の理由はいまその点にあるんだと、私は答弁から理解したわけです。そうでしょう。
  234. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 簡単に申しまして、私もやりません、あなたもおやりなさるなと言うのと、私ははっきりしないが、あなたはおやりなさるなと言うのとでは、やはり前者の方に説得力がある。そんなこと言ったって、おまえにそんなことをする力はないではないかという場合と、自分はできる力はあるけれどもやらないという場合とでは、いわんや後者の方に説得力がある、こう思うわけです。
  235. 石野久男

    石野委員 力がある、ないという問題と、被爆国であるということの経験を孫子の代までも忘れさせないようにしようという政治家としての大臣の意欲と、これとがここではかち合ってきますね。われわれはやはり世界に対して、憲法によって核に対する反対の態度を明確にしておるわけですよ。政治家としての大臣も三木内閣もそのことを宣言しているわけですよ。そういう立場条約に対処するという態度でなければ、やはりわが国の自主的な立場というものは明確にならないのじゃないですか。いま大臣の答弁によると、それはどこかへ飛んじゃっておって、日本における産業の力量の問題、そういうところに焦点が合わされてきている。核生産というそのところに焦点を合わした私に対する答弁であったように思いますが、そこらのところをもう少し整理して御答弁いただきたい。
  236. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どちらの場合が説得力があるかというお尋ねでございましたから、こちらの方が説得力がある、いま説得力についてのお尋ねでございましたから、私はその面を申し上げたのでございます。
  237. 石野久男

    石野委員 説得力という問題は私が提起しているんじゃないんですよ。大臣の方からそういう話があったから私は聞いたんでね。私はむしろ日本人の立場からすれば、やはり核に対しては絶対反対だという立場を貫いて、そしてこの条約に対処すべきであるという立場をとっているわけなんですよ。だから、中に入るとかなんとかというようなことじゃなくて、外から言ったらいいじゃないかということを私は言っているわけなんだ。外から言った方がいいじゃないか、条約の外から言っている方が説得力があるんじゃないか、こういうふうに私は主張しているんですよ。
  238. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、そうでない、中から叫んだ方が説得力があるというふうに思っておると申し上げておるわけであります。
  239. 石野久男

    石野委員 そこで、中へ入った方が説得力があるという見通しの上に立ってもう一度聞きますけれども核兵器の全廃の問題についての見通し、近い将来見通しがあるのかどうか、それが一つ。  それからもう一つは、先ほどは核不拡散のための正しい方向に向かっておると、こういう御説明でありましたけれども、事実上は核拡散の方向に米ソの間では出ておる。こういう状態の中で、将来核兵器を全廃するということの実現する担保というものは、この条約の中でどこにあるのだという、その点が私はわからないから、そこのところをひとつはっきり示していただきたい。
  240. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは先ほどから申し上げておりますとおり、この条約自身にはそういう部分はほとんどございません。この条約は、いわゆるこれ以上核をよその非保有国に広げないためにどういう方法をとればいいかということについての取り決めであると私は思っておりますので、全体的な核軍縮であるとか、あるいは持たないものの安全であるとかいうものは、たとえば軍縮委員会でございますとか、国連の決議でありますとか、そういう場に求めらるべきであって、そういうものの中でのこの条約が持っております位置あるいは役割りというのは、これ以上核保有国をふやさないという、ごく一つの局面であるというふうに考えるわけです。ですから、この条約ができたら、一体大国の核軍縮が進むかと言えば、この条約にはそんなことは別段書いてございません。また非保有国の安全ということについても、この条約は触れるところが少のうございます。しかしそれらは、ただいま申しましたように、軍縮委員会であるとかあるいは国連であるとかいうところでおのおの進められている仕事でございまして、この条約が担っておる役割りはそういう部分ではない。しかし、これ以上核保有国をふやさないという意味では、この条約は大切な役割りを持っておると思います。  それから、大国間の核廃棄というものは近い将来にあるかというお尋ねでございましたが、これは何といいましても主権国家がおのおのやっておることでございますから、その日が非常に近い、われわれは、努力次第ではもうすぐ来るというふうに安易に考えるわけにはまいらないと私は思います。ただ、この条約が誕生以来、さすがの米ソ間もそういう話し合いに入りましたし、またけさほども申し上げましたが、米ソといえどもやはり経済的な負担、必要以上のものを競争のゆえに持つ、相手が持つから持つというようなことは無意味ではないかという財政力の問題もございまして、彼ら自身の動機からも、いいかげんなところでやめていきたいという気持ちが、これは利己的な動機からございますと思います。でありますから、目標は、決してすぐ実現できるというふうには私は思いませんけれども、忍耐強く正しい道に向かって、その目標に接近していく努力を怠るべきではないというふうに考えておるわけでございます。
  241. 石野久男

    石野委員 この条約加盟することによって、核大国が他国へ核を持ち込み、配備し、移動することを禁じる、そういう道をどこかで見つけ出すことができますか。
  242. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この条約は一条、二条を通じまして、基本的に非核兵器国核兵器をつくらない、持たないということを核兵器国側及び非核兵器国側の相互の関係において規定しているわけでございます。  それからもう一つ対象になっておりますのは、管理権を持ったままの核兵器が非核兵器国の中に持ち込まれる場合には禁止されないけれども、管理権が移譲される場合には禁止するということになっております。したがいまして、いまの御質問でございますけれども、非核兵器国の中に核兵器が外から管理権を譲らない形で入ってくる場合には、この条約上は禁止されておりません。
  243. 石野久男

    石野委員 禁止されているのですか。
  244. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 逆の言い方を申し上げますと、管理権を移譲しない形で入ってくる場合には、非核兵器国の中に入ってくる場合には禁止されます。
  245. 石野久男

    石野委員 そうすると、管理権を移譲した場合は、これは入ってくるのですね。
  246. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 私の申し方がちょっと舌足らずで、あるいは誤解を与えたのかもわかりませんけれども、管理権を持ったまま非核兵器国の中に入る場合には、条約上は禁止されておりません。
  247. 石野久男

    石野委員 余りむずかしくなるとぼくわからなくなっちゃうから、もう一遍聞きますけれども核兵器国が他の国へ核を持ち込む、そして配備する、移動する、こういうことをとめることができるかということ、そしてそれをとめることができるとするならば、この条約の中でどの条項がそれをとめるようになっているのかということをちょっと質問している。
  248. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  核大国が、つまり仮にこの場合アメリカを例にとってみますと、アメリカがドイツに核兵器の装備その他を持ち込むことを禁止している条項はこの条約にはございません。ただし、それだからといってこの条約の中で持ち込んでよろしいということは何ももちろんもとより決めてないところでございまして、それはいまの例で申しますればアメリカとドイツとの間の取り決めで決まる問題であろうと思います。
  249. 石野久男

    石野委員 そうしますると、持ち込むことを禁止する条項はどこにもない、したがって核大国は一定のある国との間の契約により、条約を結ぶことによってそれを持ち込むということはできるわけですね。そしてそのことを禁止したりあるいは認めたりするということはこの条約の中には別に明示されていない。そういう問題についてこの条約はどういう見地で核不拡散という立場をとるのか。
  250. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 前段の先生の御質問は、先生の解釈のとおり、そのとおりだと思います。  そういう問題について、それじゃいかにして核拡散を防止しようとこの条約はしているのかということでございますが、それは第一条と第二条にそれぞれ核兵器国義務及び第二条に非核兵器国義務ということで規定してございまして、この表現を見ますると、第一条で核兵器国義務といたしまして、核兵器その他の核爆発装置を移譲したり、つまりその者の核兵器及び核爆発装置の管理というものを移譲しない、ないしは取得せしめないということを決めているわけでございまして、二条も逆の立場から、非核兵器国核兵器国から核兵器その他の核爆発装置の管理を受け取らないということになっております。したがいまして、ある核兵器国が仮に他の非核兵器国との間における協定、合意、契約によりまして、核兵器その他の核爆発装置を相手国の非核兵器国に持ち込む場合にも、その引き金と申しますか、管理の権利というものさえ核兵器国が留保しておって、非核兵器国が自由に使用したりすることができないような状態でありさえすれば、この条約では禁止されているところではない。ただ、この条約目的とするところは、そのような管理権を持った核兵器国の数をふやさないということでございます。
  251. 石野久男

    石野委員 頭が悪いからもう一遍おさらいしますけれども、要するに核兵器というものを核兵器国は他の非核保有国に対して持ち込んでいって配備してもいいのだ、管理権は与えないのだ、それはこの条約では認める、こういうことですね。
  252. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 大体そのとおりでございますが、認めるということではございませんで、この条約ではその点を認めているわけではございません。
  253. 石野久男

    石野委員 じゃもう一遍言いますが、認める認めないじゃなくて、核兵器国は核非保有国に、いろいろな話し合いができれば、核装備というもの、核兵器を持っていってそこに配置することもできるし、それからまたそれを移動することもできる、ただ管理権は与えませんよ、こういうことですね。
  254. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 そのとおりでございまして、そのようなことはこの条約が禁止していないということでございます。
  255. 石野久男

    石野委員 大臣にお聞きしますが、こういうような情勢は望ましいことでありましょうか、特に日本人という立場で。管理権さえ与えなければ、管理をする国さえふえなければ、核装備、核兵器というものはどの国へも幾つでも置いてもいいのだ、こういうことがこの条約内容になるのですが、日本人の立場でそういうことには反対せぬでもいいんでしょうか。
  256. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国はそういうことを受け入れないという立場をとっておりますことは御承知のとおりでございます。しかし現に米ソが膨大な核兵器を持ち、そしてそれとたくさんの国が安全保障関係を結んでおるというそれらの国の立場から申せば、国によっては自分の国内にそういう核兵器を置いてもらうことが自分の国の安全に資すると考えておる国が現実にあるわけでございますから、わが国はそういう立場をとりませんけれども、ほかにそういう国があることは、これは核兵器というものがある限りはやはりあり得ることであろう。この条約はそういうことについて実は規定をするのを本旨としておるわけではございませんで、ですからそういう安全保障上の見地、少なくとも現実世界ではまだそういう問題がありますから、それは事実としては認める、これを禁止するということは現実的でないであろうが、しかしその場合でも相手国に、受け入れ国にかぎを渡すということになれば、これは核兵器を与えたということになってしまいますからそれは困ります、それはいけません、やはり核兵器を持っている国の数だけはぴしっと押さえておきたい、こういうふうになっておるわけでございます。
  257. 石野久男

    石野委員 私もそうだし、日本人のほとんどの人は核不拡散核兵器の不拡散ということをストレートで理解する場合は、なるべく核兵器というものは数が少ない方がいいのだ、不拡散というのは、一つのものが十にも二十にもなるということをみんなきらっているのだと思うのです。一人の管理者が一つ核兵器装置に対する管理権を持っているということ、こういうことから一人の人が十も二十もの核装置、核兵器というものに対する管理権を束にして持っているということができないようにしたいという願望を日本人は持っていると思うのです。ところがこの条約は、管理権が一人でさえあれば、その先はヤマタノオロチのように、うわっとあっちにもこっちにも核装置というものができていっていいんだということになるわけですよ、いまのお話だと。これでは不拡散という趣旨には一般の人は理解しにくいんですね。日本政府もそういうふうに理解していていいんじゃないかと思うのですよ。日本政府は管理権さえ一ところで拡大しなければ、もっと端的に言うならば、後で九条のところでお聞きしたいと思いますけれども、この九条の核兵器国というのは、この条約のもとでいまどことどこなんですか、それを先にちょっと聞かしていただきます。
  258. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この第九条の第3項の終わりの方に「この条約の適用上、「核兵器国」とは、千九百六十七年一月一日前に核兵器その他の核爆発装置を製造しかつ爆発させた国をいう。」という定義がございます。したがいまして、これに該当する国は、米、ソ、英、仏、中五つの国がこれに該当すると思います。
  259. 石野久男

    石野委員 中、仏にもこれは及ぶんですか。
  260. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この定義は、「千九百六十七年一月一日前に」先ほど申しましたように、「核兵器その他の核爆発装置を製造しかつ爆発させた国」ということになっておりますので、中国も、フランスもこの定義に言う核兵器国に入ります。
  261. 石野久男

    石野委員 そうしますと、中国フランスもこの条約の規定する条項のそれぞれの趣旨に従って行動しなければならなくなってくるんですか。
  262. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 中国フランスは残念なことにこの条約に入っておりません。しかし、この条約が十全の意味を持つためには、これに入ってない中、仏が、この条約で規定するような核兵器国の約束なり義務を履行するということは非常に望まれるわけでございます。この辺が今度の再検討会議で行われました議論の中にも、中、仏の核兵器国としての条約への加入及びその条約の中で特に核兵器国が約束しております軍縮の促進について強いアピールがあったわけでございます。
  263. 石野久男

    石野委員 この問題はまたあとで論議したいのですが、先ほどのところへ戻ります。  いわゆる米、ソ、英三カ国ですね、いまこの条約の適用に合致している国は。そうすると、そういう国は、先ほどの話ですと、アメリカにしても、ソ連にしても、いま英国はそれほどの力量ということでは私は余り問題にならないのじゃないかと思っておりますけれども、とにかく米ソは自分たちの核兵器を、いずれの国へでも合意があれば、即どこへでも据えつけることができるということをこの条約は否定はしない、こういうことですね、管理権さえ渡さなければ。そういうことに対して大臣はよろしいことだと思いますか。希望するからいいんだという先ほどのお話がありましたけれども、私は、日本人という立場で特に被爆国の政府外務大臣という立場で、そういうことは望むんだから仕方がないんだという立場でこの条約に臨むべきなのか、それともわれわれの立場からそういうことはよくないんだという立場で臨むべきなのか、そこのところの大臣の立場といいますか、考え方をひとつ聞かしていただきたい。
  264. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もともとそういうことは理想の状態ではないと考えておりますことは、わが国がそういうことはしないということから明らかであろうと思います。そうではございますが、現在の世界の情勢から言えば、残念ながらまだそういう理想的な状態になっていないということも事実でありますから、自国の安全のためにそれを望む国があって、現実にそういうことが行われているということは、これは事実としては私ども知っております。それが理想的な状態でないことは明らかであって、その証拠には、わが国自身はそういう体制をとっておりません。
  265. 石野久男

    石野委員 大臣にもう一度その点で聞いておきますが、わが国はそういう立場をとっていないということだけでこの条約に入ろうとするのか、しかしいろいろわが国立場からしてそれはよくないと思うことに対しては積極的に意見を出そうという立場で入るのか、ここのところが明確でありませんと、先ほど大臣が言われたように、望む国があるんだから仕方がないんだということなら、われわれはこれは入る意味がなくなってきてしまうというふうに私は思うのですよ。     〔委員長退席、石井委員長代理着席〕 むしろその中に入って、積極的にわが国の体験というものをこの条約の中で生かして、拡散しないようにしようとするならば、他国はどうであろうと、われわれの体験の上から言うとそれはよくないことだということを言わなければいけないし、それを言う努力をしないようならこの条約に入ったって意味がないと思いますが、その点についてどうですか。
  266. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もとよりわが国は最終的には核兵器の廃棄まで主張をしておる国でございますから、いまのようなことが望ましくないということはいままでも言ってまいりましたし、加盟をいたしましてもそれは言い続けてまいりたいと思います。  ただこれは、石野委員、よく御承知の上でお尋ねではございますが、もしそのような規定をこの条約に盛るということでございましたら、恐らくこの条約加盟国は激減してしまうであろう。米ソを初めとしてそれでもいい、この条約加盟しようということになったかと申しますと、恐らくそれはならないわけでございますから、たくさんの国がとにかく一つ条約で申し合わせをしようということになれば、おのずから最大公約数的なものが条約内容になるということはやむを得ないことであって、わが国のように理想的な立場を現にとり、そういう主張をして、そうでなければこの条約意味がないぞと言ってしまえば、この条約そのものが恐らくでき上がらなかったわけでございますから、やはりそれも現実にはベストではなくても、ベターな方向を選んでいくという結果になっておると思うのでございます。
  267. 石野久男

    石野委員 いろいろ考え方の違いもありますけれども、この条約加盟した場合にわが国にとって有利な点はどういう点なのか、不利になる点はどういう点なのか。それから加盟しなかった場合に不利な点はどういう点なのか、有利な点はどういう点なのか、ひとつその点をはっきり……。
  268. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 初めに、これに日本加盟したときに有利となるであろうと思われる点あるいは不利と考えられる点、これを大ざっぱに申し上げますと、まずこの条約に入ることによりまして政治的な意味が非常に大きいかと思います。その一つは、日本が平和国家として対外的に姿勢を明らかにする、核兵器、核武装の道には進まないんだということを対外的に宣明することは、特にアジアの周辺諸国を含めて国際関係の安定の一助になるのじゃないかと思います。  それから第二に、どの国にとっても安全保障が一番の最大の関心事でございますが、日本安全保障それ自身は米国との間において基本的に保障されておると思いますけれども、同時に、日本がこの周辺の国際環境をできるだけ安定させるという努力の一環として核防条約に入るということが、間接的ながらそれに対する貢献をするのではなかろうか。つまり日本安全保障自体にとってさらにプラスの要因が働くのではないかというふうに考えます。  それから第三に、特に原子力平和利用の面でございますが、今後、日本原子力エネルギーに依存する度合いが大きくなればなるほど、原子力平和利用についての国際協力の促進ということが必要になろうかと思います。特に核燃料や天然ウランの供給をほとんど大部分外国に依存しなければならぬ日本としましては、この条約に入ることによりまして、特に四条という規定がございますが、この四条に基づく利益といいますか、それを受け得る状態になろうかと思います。  それから、この条約に入ることによってどういう点に不利が起こるであろうかという点は、これはいろいろあろうかと思いますけれども、私、個人的な感じとしては、まずまずマイナスの点はたいのじゃないかというふうに考えております。  それから、この条約に入らないことによってどういうマイナス、不利な点が起こるであろうかということは、先ほど私が申し上げました、入ることによってプラスの点のちょうど裏返しになろうかと思います。つまりこの条約に入らないことによって、日本は依然として核のフリーハンドなりあるいは核武装を考えているのじゃなかろうかという対外姿勢の問題。それから第二に、特に原子力平和利用それから長期的に計画を進めます、また核物質の海外からの安定供給を確保する上において、やはり将来不安定な要因が残るのではないかという点は、われわれとしてマイナス要因として考えざるを得ないというふうに考えております。
  269. 石野久男

    石野委員 核燃料物質及び特殊核分裂性物質の移動のことで、保障措置制度の枠内で適用するということを前文のところで書いておりますね。この問題について、核保有国の場合は、管理権さえ与えなければ核燃料物質や特殊核分裂物質の移動というものはどんなに自由にされてもいいんだというふうに、これは二ページのところですが、読んでいいわけですかね。そこのところをちょっと。
  270. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 ただいまの先生の御指摘の点は、私どもは別の問題であるというふうに考えております。つまり核兵器というものが直ちにこの二ページに書いてございます特殊核分裂性物質にイコールではございませんで、核兵器と申しますのは、その他の核爆発装置とともに、いわゆる核の爆発装置全体を指すものでございまして、この条約目的とする、このような核爆発装置拡散を防止するためにはどのような方法が有効であろうかということで考え出されたものが保障措置というものでございます。そして核兵器というものが製造されたり、ないしは平和目的と称しつつ実際上軍事目的、つまり核爆発装置の製造に流用されたりすることを防止するには、この保障措置によって、特殊核分裂性物質の移動を監視することによってその目的を達成しようということでございます。
  271. 石野久男

    石野委員 この三ページのところに「核兵器を廃棄し、」と、こうあります。「核兵器を廃棄し、」と簡単に書いてありますけれども、廃棄したらどうするというふうなことについては、この条約国なりこの条約の中では、一定の見通しを持ってこの「廃棄し、」ということが書いてあるのでしょうか。
  272. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 この前文に書いてございますのは、核兵器の不拡散条約というものが考え出されてきた哲学でございますとか方法の原則でございますとか、ないしは願望というようなものが前文にまとめられているわけでございまして、先生御指摘の「核兵器を廃棄し、」と申しますのは、同項の一番最後に書いてございますように、一つの究極的な目標としての希望の表明でございます。したがいまして、「廃棄し、」ということについて、この条約の中でいついつまでに廃棄しなければならないというような期限はもとより定めたものではございません。
  273. 石野久男

    石野委員 期限は定めていないでしょうけれども核兵器を廃棄するということになれば、どこかへ捨てることなんだろうと思うのです。あるいはぶちこわすということなんだろうと思いますが、そのぶちこわしたものはごみためへ捨てたらいいというような性格のものではありませんね、核は。そういうことに対してこれに入っている国国はどういうような後処置といいますか、アフターケアの問題ですが、それについての見通しをもって書いてあることなのか、ただ希望的に書いてあるということだけなのですか。
  274. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 核兵器を廃棄することが望ましいという立場から、その希望の表明を書いてあるものでございます。
  275. 石野久男

    石野委員 日本政府は、この核兵器を廃棄した場合に、それを処置するという方法について一定の見通しを持っておりますか。
  276. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 日本には核兵器はございませんので、そういう観点からのお答えはできませんけれども、いま専門家の話をちょっと聞きますと、仮に核兵器を廃棄する場合に、それをどういうふうに実際は処理するであろうかという場合に、核兵器の中にある核物質、分裂性物質は、ある程度これを希釈して平和利用に使うことができるということだそうでございます。
  277. 石野久男

    石野委員 これは論議をしません、そういう考え方だというふうに承っておきます。  その次にある「諸国の軍備」というこの「諸国」というのは、現在ではどこですか。
  278. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 原文と照合してみますと、特にどの国ということなく、世界のすべての国一般的に適用される形になっております。
  279. 石野久男

    石野委員 この後には核兵器を「除去する」とあるのですよ。すべての国ではないですね。これはおのずから核兵器を持っている諸国でしょう。
  280. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この原文、英文でございますが、見ますと、「エリミネーションフロームナショナルアーセナルズオブニュークリアウェポンズ」つまり「ナショナルアーセナルズ」というのは国の兵器庫といいますか、武器庫という意味でございます。これは複数になっております。「ナショナルアーセナルズ」というのは特にどの国ということでなしに、その武器庫に核兵器がある国、こういう意味だろうと思います。
  281. 石野久男

    石野委員 そういうことの意味はわかるのだが、具体的に加盟国は幾つか、ちゃんと数がわかっているわけですよ。その中でこれに該当する国はどこかということを聞いている。
  282. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 これに該当する核兵器国としては、米英ソ三国になっております。特にこの前文の書き出しは、「この条約締結する国は、」という書き出しでいろいろな願望を書いておりますので、この三つの国が該当するかと思い、ます。
  283. 石野久男

    石野委員 米英ソの国からの核兵器の除去、こういうふうに読んでいいわけですね。はい、わかりました。  第五条の、締約国である非核兵器国は、平和的応用から生ずる利益を享受することができるという、この利益の内容というのは大体どういうふうなことなんですか。
  284. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 五条で書いてあります平和目的のための核爆発、つまりそういう平和利用の利益というのはどういう点にあるであろうかという御質問だと思いますが、現在まで核爆発平和利用法としては大きく言って二つのことが考えられているようでございます。  一つは密閉爆発といいますか、きわめて深い地下での爆発でございます。これは天然ガスとか石油あるいは鉱石等の採取及び貯蔵、それから爆発熱による発電、超ウラン元素の生産、それから地震波による地殻構造研究等の科学的な利用というのが非常に深い地下での爆発の利益として考えられているようでございます。  もう一つは噴出爆発といいますか、要するに地表に噴出口ができる深さでの爆発というもので、これは主として運河、港湾あるいは道路等の建設、掘削などの場合に利用される利益というふうになっているようでございます。
  285. 石野久男

    石野委員 ここで言う非核兵器国は平和的応用から生ずる利益を享受することができるというのは、いま言われた二つだけのことの意味というふうに受け取っていいわけですか。
  286. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 いま石野委員の言われたとおりでございます。
  287. 石野久男

    石野委員 四条に書かれております「原子力研究、生産及び利用を発展させることについてのすべての締約国の奪い得ない権利に影響を及ぼすものと解してはならない。」、これは一条、二条の規定に伴う平和目的のための原子力研究ですね。この四条の一、二項の条項と五条の関係は、この条約に入ることによって不可分のものと見ていいのかどうなのか、それをちょっと……。
  288. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 四条一項の規定の趣旨は、一条、二条で核兵器及び核爆発装置の製造、使用、取得その他の禁止規定がございますが、ただ平和目的のための原子力利用というものを禁ずるのはこの条約趣旨でないという観点から、一条、二条のいわば例外的な意味で書いてあるのが四条でございます。  五条は、爆発そのものを正面に取り上げまして、その爆発から得られる平和的な利用の利益が一応予見されるので、今後その利益を享受するための一つの手続といいますかあるいは考え方、特に非核兵器国がどういう形でその利益を得られるかということを書くのが主眼になっている条文でございます。
  289. 石野久男

    石野委員 この条約に入らなかった場合には平和利用による利益の享受ということはどういう形で受けられるのか、受けられないのか、その限定はこの条約ではどういうふうに規定しておりますか。
  290. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 四条も五条もともにこの条約の当事国となった場合の平和利用あるいは核爆発の利益が享受できるわけでございます。したがいまして、この四条、五条とも受益国は条約当事国である非核兵器国になると思います。
  291. 石野久男

    石野委員 締約国にならなかった場合はどういうふうになるのですか。
  292. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 核爆発の方は、この条文にもはっきり書いてございますように、締約国である非核兵器国でなければこの利益を受けられないようになっております。それから四条につきましても、規定自身、当然に締約国を主として書いてあるわけでございますが、特に最近行われました核防条約の再検討会議におきまして、核物質あるいは平和利用施設に関連する設備、資材等の供与を受ける場合にはこの条約締約国を優先する、それを重視するという考え方が一般的な空気でございまして、そういう趣旨の勧告が最終宣言に盛り込まれております。したがいまして、この条約の当事国であるかないかによって違いが出てくるということになろうかと思います。
  293. 石野久男

    石野委員 条約締約国にならなかった場合には、その平和利用についての一切の利益といいますか、それに関連する利益を享受することを禁止するというようなことはできるのですか、できないのですか。
  294. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 条約には禁止するというような規定にはなっておりません。ただ先ほど申し上げましたように、四条につきましては、再検討会議の結果、条約当事国である非核兵器国を優先するという考え方が出ておるのと、それから五条については、締約国である非核兵器国がこの平和核爆発の利益を受けられるというふうに書いてありますので、やはり当然のことながら、この条約に入らないことによって恐らく不利益が出てくるであろうというふうに考えます。特に四条の核燃料その他の供給の点につきましては、御存じのように天然ウランもあるいは濃縮ウランもない日本としましては、長期的に見てやはり相当程度不安定な要因として残るのではないかという気がいたします。現在はさしあたりそれほど支障は起こってないようでございます。
  295. 石野久男

    石野委員 四条の場合、この条約加盟しない場合には不利な条件が出てくるというふうにお話がありますけれども、実際に核兵器国である大国が事実問題としてこれに加盟していないところへ、実際にはその平和利用の用役というものを貸与している、あるいは売り込みをしている、そういう状況がむしろこの二、三年来非常に急速に伸びていっているというのが実際ではないのでしょうか。端的に言えば、核兵器国が第三世界というようなところへどんどんと自分たちの核兵器を売り込みをしている、加盟していない国もどんどん売り込みをしているというような実情がむしろ急速に拡大しているのではないかということなんです。
  296. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 いまお話しの点は、恐らく非同盟諸国に対して核兵器国原子炉とかあるいは燃料の売り込みを行っているという点についての御質問かと思いますが、最近は原子力利用、特に開発途上国におきましてエネルギー源としての重要性が着目されまして、そういった原子力平和利用の国際協力の促進という意味から、いま申し上げましたような原子炉その他の売り込みがわりに各地で行われているという話は聞いております。しかし、これは同時に保障措置と申しますか、そういった供与した物質が核兵器その他の核爆発装置に転用されないための必要な取り決めをした後に供給されるわけでございますので、現実にそういう売り込みの話はございますけれども、いま申し上げましたような保障措置の取り決めが必ずしもできているという情報は私たちは持ち合わせておりません。したがいまして、話はありますけれども現実に必ずしも進んでいないということが一つと、それからもう一つは、やはり先ほどの繰り返しでございますけれども、この再検討会議の結論あるいはその条約のたてまえから申しまして、長期的に申し上げますれば、この条約の当事国になっていない国に対する長期の安定供給というものが果たして期待できるのかどうか。特に濃縮ウランについては、現在供給余力のある国はアメリカあるいはフランスという非常に少数の国でありますほかに、天然ウランを供給し得る能力を持つ国もわずかでございます。こういった国が今度の再検討会議の勧告、つまり締約国優先という立場をどのようにフォローアップしていくかということは、こういった燃料その他の鉱石について依存している国にとってはやはり相当注目していかなければならないというふうに考えております。
  297. 石野久男

    石野委員 締約国以外の国に対して平和利用の側面では非常に不利になっていくんだ、こういうお話ですけれども、事実上から言うと、先ほど来お話しのように管理権を与えなければ核兵器の輸出、これは他国に対する配備、装置とかあるいは移動というような問題は、これは売り込みでしょうからね、売り込みをしないでよその国へ核兵器をぽっと持っていって置くというようなことはないのだろうと私は思うのですよ。だから、そういうような形がどんどんふえていくということになりますと、核保有国、核超大国というものの、経済的な世界に対する核による押さえる力というものは、この条約では無限大に放置されているというふうに見ていいのではないかと私は思いますが、その点はどうでございますか。
  298. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  私が先ほど管理権の問題だけに焦点をしぼりまして御答弁申し上げたのがあるいは先生の誤解を招いたのではないかと思って恐縮でございますが、この管理権と申しますほかに、当然のことながらその所有権の移譲というものもこの条約の禁止の対象になっているわけでございます。したがいまして、売り込んだりいたしまして所有権を移してしまうということはこの条約の禁止の対象になっているところでございまして、この条約締約国である核兵器国はそれはできないというこでございますので、補足して御説明申し上げます。
  299. 石野久男

    石野委員 そうしますと、核兵器国核兵器を他国には移譲はしない、管理権も渡さない、けれども配置することはできる、こういうことになりますね。
  300. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 そういうことでございます。
  301. 石野久男

    石野委員 第九条で「「核兵器国」とは、千九百六十七年一月一日前に核兵器その他の核爆発装置を製造しかつ爆発させた国をいう。」こういうことになっておりますから、これ以前にはないわけですから、核兵器国というのはふえないわけです。しかし、この条約のもとでは、この核兵器国というものを条約の中からなくするということについての規定はどこにもないわけですね。その規定は条約の中のどこかに挿入されておりますか。
  302. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上、げます。  第九条のただいま先生がお読みになりました定義によりまして、この条約加盟する締約国である核兵器国というのは当然のことながら数が限定されているわけでございます。ただ、その核兵器国の数を減少していくということはこの条約の規定には明文で規定がございません。と申しますのは、先ほど来実は外務大臣の方から御説明申し上げましたように、この条約趣旨と申しますのはその裏にあるいろいろな哲学から生じてきたものでございますけれども、この条約の直接の目的といたしますのは方法論的なことが主として書いてあるわけでございまして、核兵器及び核爆発装置拡散を防止するという方法論を主として書いてあるものでございますので、核兵器の、核兵器国の数を減少するというのは、当然のことながら万国の希望するところであり、日本の希望するところであり、かつ、この条約が生まれ出てきた背景をなす哲学の究極のねらいとしているところであろうと私ども考えます。
  303. 石野久男

    石野委員 大臣にお尋ねしますが、第十条には、この条約の発効後二十五年の後に、条約か無期限に効力を有するかどうかについて会議を開く、こういうようになっております。この二十五年の間というものはいまの核兵器国非核保有国、これはこの条約の中でそのままやはり残ることを前提としてこの条約を進めていくわけですね。
  304. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 第十条にはそういうことが書いてございますが、この条約は改正が不可能ではございません。したがいまして、第九条の規定を改正するとかいうようなぐあいにいたしまして、そのときどきの実勢に応じまして改正することができるわけでございます。より端的に申しますれば、核兵器国の数も核兵器国の定義を改正することによりまして減らすということができるものであると思います。したがいまして、この条約は二十五年にわたって全然動かないというようなものではございません。
  305. 石野久男

    石野委員 二十五年間動かないものではないのだということはわかりますが、この条約を貫いているものは、核兵器国非核保有国という二つのはっきりと分かれた差のついたことを前提とした条約ですね。それを前提とした条約というものを日本が認めてかかるということについて、私は一つの疑義を持つのです。その点について大臣の所見を聞いておきたいことが一つ。  それからもう一つは、第九条の三項によりまして三つの国が、といいましてもこれは主として米ソですが、この米ソ核兵器国という形でこの条約のすべての権限をリードする、こういう状態にこの条約は書かれている、こういうふうに思います。     〔石井委員長代理退席、委員長着席〕 私は、米ソが、いま核超大国として核爆発平和利用なりあるいは原子力平和利用の問題で、この条約に保障されたような権限を持っていくということについて、日本立場からすればそれをそのまま認めるのじゃなくて、むしろチェックしていくという立場、もっと大胆に言えば、それを否定する立場でこの条約に臨むべきじゃないだろうかというふうに私はておりますが、大臣はそれについての所見はどういうふうにお持ちでしょうか。
  306. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 疑義をお持ちになると言われましたことは、どのような疑義かを具体的には仰せになりませんでしたが、恐らくは、核兵器を持っている国と持っていない国というふうに最初からいわば分けて扱う、それは一種の差別であるという意味で仰せられたのかと存じます。私は、それは率直に、そういう差別が行われておると思います、この条約では。そのことはつまり、現実に一九六七年の事態で、幾つかの国が核兵器を相当しかも多量に持っておったという事実がございます。そこで、非常に理想主義的な立場から言えば、核兵器は皆やめてしまえ、冒頭にも石野委員が言われましたが、そういう立場が理想に近い立場でございましょうけれども、そう言いましたところでそれらの国がそれをおいそれと承諾するわけのものでもない。むしろ、それらの国を含む形で将来核拡散が起こらないようにするにはどうすればいいかということで、こういう構成をとりました。私どもは確かに、現在持っている国と持たない国との間にそういう格差があることは認めますけれども、その格差の解消というのは、持たない者が持つという形において解消すべきではなくて、持つ者が持たないようになるという方向で解消すべきものであろうというふうに考えております。  そういう意味で、核軍縮というふうなことを叫んでおるわけでございますから、現実にこの認識そのものが世の中の、一九六七年時点におけるそういう不平等というものを前提にいたしました上で、その不平等を解消する方向は、持つ者が放棄するという形で解消すべきだという立場に立っておるわけでございます。今回の再検討会議における最終宣言におきましても、最も強調されたことは、持っている者と持たない者とが責任と義務とを平等に分担することであるというふうに言っております。この意味は、持たない者は今後持たないという義務、責任を負うわけでございますが、持っておる者は持っておる者で、またこの条約上の責務はもとより、いわゆる軍縮に向かって進んでいく。あるいは持たない者を脅かさないという義務を履行する。そういったような意味で、両者の責任と義務の均衡ある分担ということを言っておりますのも、そういう形で不公平の解消に向かって、時間はかかるでありましょうが、進んでいこうというのがこの条約の思想であると思います。
  307. 石野久男

    石野委員 そういう思想であっても、この条約は改定すれば別ですけれども、二十五年間は改正が加えられない場合はこのままで進むわけですよ。そうなりますと、やはり核兵器国として、特に米ソという二つの国が非核保有国に対して非常に強大な権限というか、そういうものを持ちながら、この条約は実行されていくわけです。そういうことに対して、私どもとしては、均衡あると言いますけれども、これだけの差がついておったらそういう均衡は確保することはできないのじゃないか、そういう疑問を私は持つのですよ。その疑問をどういうふうにして――それじゃこの条約は解消するのかということについて、そのメリットがなければわが国はこの条約に入っても意味がないじゃないかという素朴な疑問をぼくは持つ。だから、それに対して大臣はどういうふうにお考えになっておるか。
  308. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこで、そのような均衡を回復するために、持っていない者が持ち始めて米ソの水準まで達すれば均衡か回復されるわけでありますけれども、それはわれわれのとるところではない。やはり持っておる者が持たない方向に進むことによって均衡、公平を回復すべきであるというのが思想でございます。先ほども申し上げましたが、この条約自身は、しかし持っておる者に対して核軍縮をやれとか、あるいは非核保有国をいじめてはいかぬとかいうようなことについてそういろいろ書いてはございません。それはなぜかと申しますと、冒頭に申し上げましたように、そういう軍縮であるとかあるいは安全保障であるとかいうのは、おのおのそういう場がございます。世論形成の場がございまして、この条約はそういう中で、少なくとも核兵器を持つ国の数をふやさないための方法はどうであるか、あるいは平和利用を盛んにする方法はどうであるかという、そういう限られた役割り、全体の中において分担された役割りのうちの一つをこの条約が持っておるというふうに考えるわけでございます。
  309. 石野久男

    石野委員 そこで、もう一つお尋ねしますが、数をふやせないの、だけれども、核を保有しておる、いわゆる核兵器国の量的、質的な部門での拡大というものが非常に危険ですね。その問題に対してどういうところで制約を加えていくのか。まだそれに対する制約の意図が全然考えられていないように私は思うのですけれども、どこかでそういうことは考えているのか。それに対する日本政府考え方はどうなのか。
  310. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは繰り返し申し上げますようにいわゆる軍縮、いまの仰せになりましたような軍縮の問題でございます。軍縮の問題であるとかあるいは持っていない者の安全保障の問題であるとかいうのは、そもそもこの条約の背景になり、またこの条約が施行されていく間のその環境において、それぞれの場があるわけでございます。軍縮委員会であるとか、国連総会であるとか、そういうところが受け持つべき役割りであって、この条約そのものはそういう役割りを主として持っておるものではございません。これは何も、すべてがこの条約が役割りを持たなければならぬということはございませんので、そういう問題についてはおのおのの場があるわけでございます。
  311. 石野久男

    石野委員 もう二度聞きますが、核兵器の不拡散ということの意味は、保有国がふえないということだけの意味なのか、核兵器そのものがふえる、ふえないというものに及んでいないのかどうか。そこのところをはっきりしてください。
  312. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約に関します限り、核兵器の不拡散というのは核兵器の所有あるいは管理権を持つ国を一九六七年時点より多くしたくない、そういう意味での不拡散でございます。核を量、質ともにすでに持っております国が、その国の立場において増大をしてはならないというのは、それは軍縮の方の問題であるというふうに考えます。
  313. 石野久男

    石野委員 それだけの意味でありますれば、日本の国がこの条約に入ってもさほどの利益にはなるまいというふうに私は実は思います。  と申しますのは、率直に言って世界の情勢から見ますると核軍拡といいますか核拡大という問題は、主として核保有国である核兵器国の場にほとんど課せられている。  これはきょうの毎日新聞ですけれども、ストックホルム国際平和研究所の年鑑の一部の報道がありました。その報道によると、「米ソ両超大国およびNATO、ワルシャワ条約諸国の支配的な地位」からするところの軍拡の方向というものはますます拡大して、「近代兵器開発、生産価格のエスカレートは、先進諸国の海外への武器売込み競争を激化させ、開発途上諸国にも最も精巧な武器が売り込まれている。第三世界への武器売込みの昨年の実績では、」と書いて、長くなりますから、ソ連は十四億七百万ドル、アメリカは九億四千万ドル、イギリスフランスはずっと下がっております。そしてそれらのことで「第二次大戦後の軍事衝突の人命の損失はケタ違いに大きくなっている。それについては、輸出国の政府も、究極的な責任を免れまい。」こういうふうに書いてある。そしてなお、「米ソ両国が地下実験の規模を百五十キロドン以下に制限した七四年七月の協定は、両国とも核弾頭の大きさよりも、誘導技術の進歩による命中精度の向上により、核兵器の有効度を高めようとしている現在、核軍備競争を抑制する効果はほとんどない。核実験の即時全面中止か、あるいは一定期限内での段階的全廃が急務である。」こういうふうに年鑑は報じておるのです。  私は、この年鑑のこうした一つの結論めいた報道というものは、世界の各国、特にストックホルム国際平和研究所がこう言う以前に、日本政府がこう言って、この結論を言っていいのじゃないか。そして、そういう態度でこの条約が見直されるならば、これは加盟しても価値があると私は思うのですよ。そうでなく、各国の実情はこうだからああだからというようなことで、大臣の言われるようにまあまあ仕方がないんだというような態度、わが国はこういう態度で臨んでいるからいいんですよという消極的な態度だったら、入らなくたって入ったって同じことだとぼくは思いますがね。何か一定の、われわれがその協定に入っての効果というのが全世界的にありますか。日本の国がただ原子燃料だとかあるいは核物質を確保できるという経済的な側面だけの利用度ということだけなのか。それであるならば、この条約に入って、米ソ二超大国の核における覇権というものを一方的に認めるような、こういう条約の弊害というものを排除することはできないのじゃないか、このように私は思いますけれども、大臣はそれをどういうふうに考えますか。
  314. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先刻から申し上げておりますとおり、この条約そのものは、核を持つ国をどうしてふやさないかという方法について規定をしておるわけでございます。軍縮あるいは非核保有国安全保障はおのずからそれぞれそれを論ずる場がある。この条約はそういう中での一つの役割りを持っているということを申し上げておるわけですが、石野委員お話は、しかしそういういろいろ理想的な問題もこの条約に盛ればいいではないかという御説かと思います。ただ、そうなりますと、米ソの間ですらいま軍縮交渉があれだけ手間をとって時間をかけておるわけでございますから、そういうものを盛りました条約ができましても、これは加盟をする国がほとんどないであろう。問題になる米ソが第一あれだけ難渋しているわけですから、加盟をしないであろう。そういうことは、私は現実的な問題の解決にならないのではないかというふうに思います。  先ほど言われました武器の売り込み、まさにそういう傾向はございまして、はなはだ寒心にたえないわけですけれども、同じようなことが核兵器について行われたらばなおこれは危険でございます。それをこの条約は少なくとも防ぐ効果をも持っております。  それから、これは米ソのいわゆる核覇権を一方的に認めるものではないかというふうに仰せられました。それは現実の上に立っておりますから、一応そういう事実を認めて、その上にそれをどのようにして削減するかということを考えておるのであって、確かに米ソの核の覇権というものは気持ちのいいことではございませんけれども、しかしわれわれも精を出してその中に加わろうというようなことで問題を解決すべきではないというのがこの条約の思想であると思います。
  315. 石野久男

    石野委員 私が言うようなことを言う場合にはこの条約に入る国はなくなるだろう、あるいは米ソだってそれには協力しないだろうというような御答弁ですけれども、私はその米ソがどうであるかというよりも、日本の国がこの条約に入ったからといって、いまこの条約の、特にこのストックホルム国際平和研究所の「世界の軍備と軍縮」ということで発表しているような中で、核実験の即時全面中止あるいは一定期限内での段階的全廃を要求すべきだというようなことを言っているときでございますから、日本がこの条約の中に入ってそういうことも言えないような、かせをかけられるような、そういう愚をすべきじゃないのではないか。むしろ条約に入らないでこのことを大々的に訴えることの方が核不拡散趣旨に沿うんじゃないだろうか。先ほどからお聞きしておりますれば、この核不拡散条約というものはいわゆる保有国をふやさないということだけなんですから、保有国が、核兵器国が実質的に核の装備、内容、質的なものをどんどん図っていってもそれを抑えることはどこにもない、意味はないのですよ、率直に言って。それで現在の実情から言いましても、この二つの国が管理権をほかに与えないということをはっきりしておれば、それは簡単にそうふえるということでもない。そうだとするならば、日本は核を持たないということも言っているのだし、むしろ原爆を受けたという実情からしても入らない方がいいのじゃないかというのが私の意見なんです。よその国はどうでもいい。日本の国は入ってかえって発言が封じられてしまうようなことになるよりは、外からじゃんじゃんこういう全廃の意見を出した方がいいじゃないかということを私は言っているのですが、もう一遍その点について。
  316. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 失礼いたしました。  先ほど実験禁止のことをお答えするのを落としましたのですが、あらゆる核実験の廃止、核実験の包括禁止ということはわが国がしばしば実は申しておることでございます。ことに一定のトン教以下の地下実験というものがまだ認められておるということ、これなどもこれは検証の方法に関係することでありますけれどもわが国はたまたま地震の研究ということで非常にそういう点ですぐれた技術がございますから、それを提供することによってあらゆる地下実験の禁止をまずいこうではないか。やがては包括的に実験の禁止をやり、それによって新しい核兵器の発達を防ぎ、その後に既存のものを縮減して、最後には廃棄していくということは、これはわが国の長年の主張でございます。決して主張していないわけではございません。  それからもう一つ、管理権を与えないということになっているのであるから云々とおっしゃいましたが、この管理権を与えないということは、まさにこの条約が決めておることであります。米ソがこの条約に入りましたから与えないということになっておるのであって、この条約がなくて別に管理権を与えていけないということが先験的にあるわけではございません。  それから、最後におっしゃいました、この条約に入らないで主張すべきは主張した方がいい、入れば何か立場が制約されるというようなことのように承りましたが、もちろん入ったから立場が制約されるということは、これは何にもございません。なぜ入らないでいった方がいいという御主張になるのか、それは場合によって、入らないで、ことによったら日本もやりますよという、そういう一つのプレッシャーのもとに主張した方が効果があると言われる意味でありましたら、私どもはそうは考えませんので、現実日本核兵器を持つ、核実験をやるというようなことは、この条約のあるなしにかかわらず、私ども日本としてやっていけないことであると考えておりますし、この点は御賛同を得ておるわけでございますから、入らないことによるメリットというのは、その点ではどうも必ずしも私自身にははっきりいたさないように存ぜられます。
  317. 石野久男

    石野委員 私が入らないでいいと言うことは、われわれが核を持つことをもっておどしをかけることはできるじゃないかというような発言、そんなことは全然私は考えていない。むしろ、それよりも第九条の第三項で規定しておるような核兵器国というものが、これはこの条約の規定によれば、改正されなければ、このままいけば二十五年間このままの状態が続くわけですよ。そして、この核兵器国というものは、率直に言って、核については一切の権限を持つわけですよ。そういう米ソ、まあ英国もありますけれども米ソの核のいわゆる覇権的行為ですね、そういうようなものを、やはり私たちはどうしてもこの条約では認めてかかっているわけですからね。そういうことからわれわれは抜け出て発言することの方がいいと私は言うのですよ。私はむしろ一九四五年の二度にわたる原爆の悲惨な経験を持っておるだけに、こういう米ソ核保有国の現状がそうだから、それを認めるのだということで、核兵器国というものを認めてかかる条約をわれわれのかせとしていくということは耐えられないということなのです。だから、私は、もしこういうような条約ができるならば、この条約に入るときには、必ず、この核兵器国というものは全世界に対して、少なくともいかなるとき、いかなる状況にあっても先に核兵器は使わないのだということの宣言とか、あるいはまた、非核保有国あるいはその地域に対して絶対に核兵器は使わないということの公的宣言というものを、米ソがそういうことを明確にしてかかることが絶対に必要だと思いますよ。それでない限りは、この第九条第三項の権威というものは、依然としてこの締約国に対してかぶさってくるわけですよ。世界に対する力となって出てくるわけですからね。そういう意味で、私はこういう条約に入って、みずから進んでそういう枠の中に入る必要はないじゃないかということを言っているのですよ。九条の第三項というものは明確に、米、英、ソですけれども、英はもう事実上そういう力はありませんから――まあないとは言い切れませんけれども、現状では米ソですよ。米ソのこの核の覇権的行為というものをこれで是認するということは耐えられないということを私は言うのです。
  318. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる核兵器国を第九条で定義することによって、この条約はそういう世界現実を認めておる、現実の上に立っておるわけですけれども、この条約加盟することがそういう現状に賛成であるということには少しも通じない、わが国はまた、実際賛成ではございませんから。そういう現実があって、その現実をどう処理するかという立場には立っておりますけれども、その現実賛成であるという意味ではございません。また、核軍縮を叫ぶ、それはもう確かに必要なことでございますが、そして、それはわが国はいままでやってまいりました。やってまいりましたが、この条約加盟国である立場から叫ぶのと、条約の外にあって叫ぶのと、その間に少なくとも優劣があるとは私は思わない。みずからも条約に入ることによって叫ぶことの方が説得力があるのではないかと私は思いますけれども、少なくとも、外にいた方が説得力があるというふうに、実は私にはなかなかその点、考えられないのでございます。
  319. 石野久男

    石野委員 これは時間がありませんから、私は防衛庁長官に一問だけひとつお聞きしておきたい。  日米安保条約のもとでアメリカの核のかさのもとにあるということが長いこと言われてきた。そして日本に核が置かれているかどうかということもわかりません。けれども世界の情勢の中で、特に朝鮮における緊張感と申しますか、あるいはまた、南の朝鮮が核を持っているとか持たないとか、いろいろあります。不測の場合が起きて、もし核が朝鮮の中で使われるという場合、あるいはまた、その他の理由によって、アメリカの軍隊が日本におることによって核の問題が日本に及ぶようなことがあることを私たちは非常に憂えておるわけです。日本が幾ら、核は持ち込んできておりませんよと言っても、事実上そういう事態になって、核装備をした戦闘機や爆撃機が日本から発進したと相手国が認めて、そして日本にその報復が行われてきたときには、これは容易ならぬことになると思います。そういう状態にならないための日本の配慮、それが防衛庁の装備の中で、特にアメリカとの関係の中で常に行われていなくてはならないと思うのです。そういう意味で大臣は、核に対して、いかなる場合にも核を持ち込ませないということについて、軍、これは防衛庁、自衛隊にそういうことの心配がないことを私たちは願っておるのだけれども、そういうことについて長官はどれだけの自信を持っておりますか。
  320. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 これは、わが国は憲法のもとにおきましても非常な制約がございまして、専守防衛に徹するということが一つあります。それからもう一つは、非核政策をとっておるということもございます。こういう制約下において自衛隊が存在をし、そして日本の国防に任じておるわけでございます。したがいまして、いやしくも、そのシビリアンコントロールというものについて、いささかも揺るぎがあってはならないというふうに思っておりますし、ただいま自衛隊の陸海空におきましてそういうような装備は持っておりません。
  321. 栗原祐幸

  322. 松本善明

    松本(善)委員 核防条約について若干の質疑をしたいと思いますが、外務大臣にまず伺いますが、この条約は今後二十年にわたって日本の国民を拘束をすることになるわけでありますが、現在のことだけではなくて、そういう将来にわたっての日本の国民の利益を慎重に考え締結をされたのかどうか、その点についてどういうような考え方でおやりになったか、まず伺いたいと思います。
  323. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 二十年というのは、ことにこのごろの二十年というのは非常に変化の多い、見通しのつけにくい年月でありますことは申すまでもないことでございますから、二十年先が全部見えるというようなことは、これは私申し上げません。申し上げませんが、われわれの能力のある限りでできるだけ考えてみたつもりでございます。  その場合、この条約を結ぶことによってわが国核兵器を持たないということになるわけでございますが、そのことがわが国の国益に役立つというふうに政府は判断をいたしております。すなわち、国内でいまそういう政策を持っておりますことは御承知のとおりですが、これを国際的に約束をするということによって今後二十年間その政策は動かせないことになりますが、そのことはわが国の国益につながるものである、すなわち、今後二十年間われわれが核実験をし、核兵器を持つということはわれわれの国益にはならないという基本的な判断が一つ。  次に、原子力平和利用ということはやはりわが国にとってきわめて大切でございますから、そのためにわが国ができるだけ有利な条件で平和利用をしていきたい、そういうためにもこの条約に入った方がわが国の国益につながる、そういう判断をいたしました。
  324. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣がキッシンジャー国務長官との会談で合意された中にもありますし、自民党の六項目の要求の中にもありますが、安保の長期堅持ということがあります。この安保条約の長期堅持ということと、この核防条約との関係についてキッシンジャー国務長官と約束をされたことは、一体どういうことなのか。また、自民党の要望であります六項目との関係でこれを入れられたのはどういう関係であるのか。この関係を御説明いただきたいと思います。
  325. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 キッシンジャー国務長官との間では、日米安保条約を引き続き維持することは日米両国の長期的利益に資するという意味意見の一致があったわけでございますけれども、これは私とキッシンジャー氏が何か創設的に新しいことを約束したという意味合いよりは、もともと両国ともこの条約を解消しようという意図は持っておりませんので、それをいわば確認をしたということでございます。  安保条約核拡散防止条約との関連でございますけれども、残念ながら現在の世界の情勢においては核の脅威というものがあるのでございますから、わが国はそれに対して何かやはり自分を守らなければならない。そういう意味で、アメリカの核の抑止力にわれわれはやはり頼らざるを得ない、自分で持つという立場でない限り。そういうふうに判断をいたしておりまして、それは安保条約の結果としてそういう抑止力が生まれる、こういう考え方でございます。
  326. 松本善明

    松本(善)委員 自民党の六項目要綱との関係ではどうですか。特にお話しになることはありませんか。
  327. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 自民党の六項目との関連では、たとえばただいまの問題につきましては、ただいま私が申し上げましたような見地からの日米間の安保条約維持の確認ということがあったわけでございまして、これはただいまお答え申し上げましたとおりでございます。  そのほかに、核軍縮の進展でございますとか、あるいは非保有国の安全でございますとか、平和利用の推進でございますとか、幾つかございますが、これらは十分に満足とは現状申し上げませんけれども、それぞれに進展があり、また先般の再検討会議におきましてもわが国が主張いたしまして最終宣言に取り入れられておりますので、自民党のいわゆる要望事項についてはますます充足をできたという判断をいたしております。
  328. 松本善明

    松本(善)委員 御存じのように、安保条約は十条で終了通告をすることができます。いま国際情勢は非常に大きく変わっておりまして、インドシナでのアメリカの完全な敗北でありますとか、あるいは朝鮮での国連軍解体決議が国連で通るということもほぼ確実になってきているというような状態で、国際情勢の変化も非常に大きいわけであります。また、いま外務大臣も言われましたように、これから二十年の間は非常に変化が大きいということを言われましたけれども、この二十年の間に安保条約を維持していこうという勢力が政権につく場合もありましょうし、そうでない場合もあります。いまの野党の中ではわが党とそれから社会党と公明党が安保条約の廃棄を言っておりますけれども、そういう二十年の長期を見通しますと、わが国政府が安保条約をなくすということになることは十分にあり縛る。そういう場合もあるし、ない場合もあると思いますけれども、そういうときに、この核防条約についてはどういうふうにお考えになりますか。
  329. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、安保条約を廃棄しようと考えられる当時の政権がこの条約をどう考えるかということに私はかかると思いますので、私ども立場で申せば、安保条約を廃棄するということは、やはり世界の現状が大きく変化しない限り、わが国の安全上危険なことであると考えておりますけれども、もしそのような政権が誕生をして安保条約を廃棄しようという決断をされます場合には、ぜひともこの条約をそれではどうするかということもあわせて御考慮をいただきたいということだけは申し上げても間違いはなかろうと存じます。
  330. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると結局は、そのときにそういう安保条約を廃棄するという政府がそのままこれを維持していくか、それとも、あるいは十条によって脱退をするかというようなことは、その時の政府考えればよろしい、こういうことでありますか。
  331. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 恐らく場合が二つあろうと思いますのは、世界の情勢が非常に変化をいたしまして、いわゆる核の脅威というようなものがないということになってまいりましたとき、あるいは戦争の脅威がないということになってまいりました場合に、安保条約は要らないではないかという議論が起こることが考えられます。一つの場合でございます。その場合には、この条約加盟をしておっても別段差し支えがないではないかということになってくるケースがあり得ようと思います。  また全然別に、世界の情勢はそういうふうに変わったわけではないけれども、何かの事情によって安保条約はもうやめようということになりましたときに、それでしたらわが国を核の脅威からどうして守るかという答えをやはり求められるであろうと思うのであります。その答えを探究していきます過程において、それはやはり自力でやるしかないではないかということになるのでありましたら、この条約について改正を求めるか、あるいは脱退の規定がございますからそれを使うことになるのか、いろいろ道は分かれると思いますけれども、そのような両方の可能性が御設問の場合にはあり縛るであろうと考えます。
  332. 松本善明

    松本(善)委員 私は、そういうような勢力ができるという可能性が十分にある。いま世論調査をいたしましても、日本の中立を望む人たちの世論というのは七割ぐらいになっております。そういう状況で、今後二十年にわたってわが国の国民を拘束するような条約締結するというのは政府としては大変無責任ではないか、そのときはそのときで、その政府考えてもらいたいというようなことであるならば、これはこの条約に入るべきではないのではないか、私は、そういうような、将来これからの二十年にわたって国民を拘束するような条約締結する場合の態度というものはそうでなければならないと思いますけれども外務大臣はその点についてはいかがお考えでありますか。
  333. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 少なくとも私ども政府に関する限り、政府のやっておりますことは一貫いたしておると思います。すなわち安保条約が片方で航り、片方で核の脅威がある。したがって安保条約を持っているわけですが、わが国自身は非核三原則を今後とも貫いていくつもりであるから、この条約に入っても何らわが国が新たに拘束を受けろことはない、そういう立場で私は政府立場は一貫しておるというふうに考えるわけでございます。  それで、御設問のような場合を考えますと、安保条約が廃棄されるということはあり得るではないか、したがって、この条約に二十年も約束をしておくことは危険ではないかということの意味は、それでしたら、わが国が核武装する必要があるかもしれないという意味としか考えられないわけでございますけれども政府の見るところでは、わが国が核武装を自分の力ですることは日本の国益にはつながらないというふうに判断をしておるわけでございます。
  334. 松本善明

    松本(善)委員 それは大変独断でありますが、いずれにしても私が申しましたのは、将来にわたって日本の国民を拘束をするような条約締結の仕方は不適当であるということであります。私どもはむしろいまのこの核拡散防止条約というもの自身がアメリカとソビエトの核軍拡を擁護してきたと思う。先ほども外務大臣は、SALTの結果は、いままでのところは少なくも核軍縮の方向に向かっているとは言えないということを答弁をされました。実際の結果はそのようになっております。むしろこの核拡散防止条約というのは米ソの核抑止力のバランスによって平和を維持しよう、それが多くなってもとにかくそれが平和なんだということで、全面的に核兵器の全面禁止をするという方向に向かっているものではないことは明らかだと思います。私どもの目指す方向はそういうことでありますから、いま外務大臣の言われたことは全く間違っているわけでありますが、外務大臣が言われましたので一言聞いておきますけれども核兵器の全面禁止協定を結ぶ、これはわが国の国会でも決議をしておりますし、それから列国議会同盟でも決議をしたことです。そういう方向とは違った方向にいま核保有国の動向は進んでいるし、この条約核兵器の全面禁止という方向には全く役に立たない、むしろ核抑止力の均衡によって平和を維持しよう、核軍拡競争を前提としている、そういう条約としか考えられませんけれども、その点についての見解を伺っておきましょう。
  335. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約加盟することによって二十年間わが国の手を縛ることになるというお尋ねでしたが、手を縛るとはどういう意味でございましょうか。恐らくはわが国が核武装をしないという意味で手を縛るということになるのだと思いますが、その手を縛るということが不適当であるというなら、わが国は核武装をすることあるべし、そういう御議論になるのでありましょうか。もしそうであるとすれば、それは政府が国益につながるゆえんだとは考えないところであります。  次に、米ソ軍縮は確かにバランスの上に成り立っておることはそのとおりだと思いますが、問題はそのバランスを今後拡大していくのか縮小していくのかということであって、米ソとも必要以上の財政負担というものは自分の利益から考えましてなるべく避けたいところでございますから、一定のバランスに達した後に、バランスをこわさずにそれを縮小していくということは、米ソの利己的な動機からもあり得ることである、少なくともそういうバランスを両者でとっていこうではないか、一方的な優位に立つという意図を放棄しただけでも、軍縮の萌芽がそこにあると私は見ておるわけであります。
  336. 松本善明

    松本(善)委員 日本の場合には核を持たないということ、非核三原則も日本政府は言っておりますし、私たちはそれを立法化をすべきだというふうに考えております。将来にわたっても日本政府を拘束するように、そういうふうに考えております。何もこの条約加盟することによって核武装をしないということを決める考えもないし、そういうことをする必要もない。むしろこの条約加盟をすることが、実際は米ソの核軍拡になっている、それを擁護することになっているこの条約を美化することになるのだということを言っておるわけであります。  私は外務大臣にお聞きしたいのは、その議論はいずれまたすることがあるかもしれませんけれども、いまの非核三原則について、三木総理大臣やあるいは宮澤外務大臣はたびたびこの問題について答弁をされました。いかなる場合であっても核の持ち込みは認めないということを言われました。この点についてもう少し確かめておきたいと思うわけでありますが、佐藤内閣の当時に核四政策ということを言いました。非核三原則とそれから核軍縮アメリカの核抑止力への依存、核の平和利用、この核四政策というのはいまの内閣は継承しているのかどうか、これを伺いたいと思います。
  337. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昭和四十三年の一月に佐藤総理が言われたこと、第一は非核三原則でございます。これは問題なく承継をしております。第二は、核軍縮に力を注ぐ、これもさようでございます。第三は、アメリカの核抑止力に依存する、これは安保条約を引き続き維持すると申し上げておりますから、第三も肯定的にお返事ができると思います。第四、核エネルギー平和利用でございますが、この条約加盟することによって平和利用をさらに有利に進めようというのでございますから、これも肯定的にお返事を申し上げることができます。昨今この四政策ということを余り口に出して申しておりませんけれども内容そのものは今日もすべて肯定的にお返事ができる内容と思います。
  338. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、相当問題があるわけですが、この核四政策、アメリカの核抑止力に依存するということと非核三原則との関係であります。これがどういうものであるか、これについての御見解を伺いたいと思います。
  339. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはもうよく御承知のことを申し上げるにすぎないと思いますが、われわれが核兵器を持たない、つくらない、持ち込ませないということ、これが原則の一つでございますが、それは現在の世界情勢にあって全く核攻撃の脅威がないという判断から来ておるのではありません。そうではなくて、わが国自身の独自の政策としてそれを考えているのでありますから、核の脅威に対してわが国をしからばどうやって守るかという問題はどうしても残っておるわけで、それが核の抑止力云々ということになってまいるわけでございます。
  340. 松本善明

    松本(善)委員 もう少し具体的にお聞きしますと、非核三原則がいま言われているような形で、どのような場合でも核を持ち込ませないということを意味するのであるならば、日本には今後とも――しかも三木総理大臣は、これは将来の自民党についても同じだろう、こういう趣旨のことを答えられました。もしそうであるならば、今後ともにわたって日本の領土、領海内には一切核兵器はない、入らない、そういう前提でアメリカは核抑止力を行使をする、こういうことでありますか。
  341. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうことでございます。
  342. 松本善明

    松本(善)委員 そういたしますと、日本が頼るという核抑止力というのはどういうものでありましょうか。これは具体的にお答えをいただきたいと思うのです。
  343. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国の置かれております地勢等々からして、まずわが国に戦術核兵器というものは持ち込まれる必要性というものはきわめて乏しいであろうというふうに考えられます。  次に、わが国に核攻撃を加える意図を持ったものは、アメリカ核兵器による報復を、しかもセカンドストライクの能力を持った報復を受けるということを覚悟しなければならない、そのことが抑止力意味ということになるわけでありますから、そのようなアメリカの核能力というものは、それがわが国に置かれている必要はない性格のものである、こういうふうに考えておるわけでございます。
  344. 松本善明

    松本(善)委員 防衛庁長官に伺いますが、具体的にいま外務大臣外務大臣なりの答弁をされましたけれども、防衛庁の観点から見て、核抑止力に頼るというのはどういうことなのか、もっと具体的に申しますならば、一体どういう場合にアメリカ核兵器による援助がなされるのか、どういうことになっておるか、その点を伺いたいと思います。
  345. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 ただいま外務大臣から御説明ありましたように、核抑止力は第二撃力による報復があるということを明示することによって抑止されるということでございますので、御案内のように核の抑止力の三本柱でございますICBMとかSLBMとか、あるいはB52の長距離爆撃機、こういったもののうち報復力になるものがどういうふうになっておるかということが相手方、日本に対して核攻撃を加えようと考える国によく明示されることによって、それを思いとどまる、日本に対する核攻撃を思いとどまるということが、日本に対する核抑止力実態であるというふうに考えております。
  346. 松本善明

    松本(善)委員 戦術核兵器についてはどうですか。
  347. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 戦術核兵器につきましては、これも外務大臣がおっしゃっておりますように、日本の地理的条件その他を勘案をいたしまして、戦術核兵器を使用する条件というものがきわめて乏しいのではないかと私ども考えておりますし、大体アメリカもそう考えているように受け取っております。
  348. 松本善明

    松本(善)委員 その条件の有無については後からちょっと聞きますが、そうすると、まず第七艦隊について聞きましょう。第七艦隊は核抑止力ですか。
  349. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 核抑止力を先ほど御説明いたしました戦略核抑止力という意味でございましたら、第七艦隊はそうでないと申し上げてよろしいかと思います。
  350. 松本善明

    松本(善)委員 戦略核抑止力という意味であるならばという限定をつけて言われたわけですけれども、いわゆるいま政府が言っております核抑止力に頼るという意味です。そういう意味ではやはり核抑止力ではありませんか。それは頼らないのですか。
  351. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 いま日米安保条約によってわれわれが依存しております核抑止力は、戦略核抑止力を指しておるわけでございまして、そういう意味においての第七艦隊の機能というものは期待できないというふうに考えます。
  352. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、外務大臣に伺いますが、日本が頼っておる核抑止力というのは戦略核抑止力ということで、戦術核兵器には頼らない、こういうことでありますか。
  353. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は先ほどそういう意味のことを申し上げたつもりでございますが、つまりわが国におきましては、いろんな事情から戦術核兵器が機能し得る可能性はきわめて少ないであろうと思いますので、先ほど、戦略核兵器という意味合いで、したがってわが国に持ち込まれる必要はないという答弁を申し上げましたのは、そういう理解に立って申し上げたわけでございます。
  354. 松本善明

    松本(善)委員 戦術核兵器が持ち込まれる条件はきわめて乏しいということを言われましたけれども、これは一切持ち込まれないということでありますか。
  355. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国は持ち込みを許さないわけでございますから、一切ということですが、きわめて乏しいと申し上げましたのは、それがあるないにかかわらず、本来そういうものの必要が軍事的に見て乏しい、こういう意味できわめて乏しいと申し上げましたので、わが国自身は持ち込むことを許しませんから、持ち込まれることはないということになります。
  356. 松本善明

    松本(善)委員 私がかつてお聞きしたときに外務大臣は、いまのアメリカの軍隊というのは核と共存しておるのだということを答えられました。これは寄港でありますとかそれから通過の場合においても、一切領海内には入らない、そういう拘束をアメリカ軍は受けるのだ、アメリカの軍隊が領海内に入る場合には、仮に戦術核兵器を持っていても外してくるとか、いろいろそういう拘束を受けるのだ、こういうふうに考えているということでありますか。
  357. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 総理大臣が核兵器の持ち込みというものは自分は許さない、事前協議があってもイエスと言うことはないと言われております意味は、わが国の領域においてでございますから、当然にただいま松本委員の言われたようなことになります。
  358. 松本善明

    松本(善)委員 そういたしますと、安保条約によってアメリカ軍がわが国の基地を使用する場合にはそのような拘束を受けておる、そういう意味では自由に行動することはできない、こういう意味になりますね、その限りにおいては、核との関係においては。
  359. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その限りにおいてはそのような意味になります。
  360. 松本善明

    松本(善)委員 それでは伺いますが、昭和四十三年三月二日に、私は当時の佐藤総理大臣に伺いました。なぜ非核三原則を決議しないのかという趣旨のことを聞いたときのことであります。そのときに佐藤総理大臣は、そのとおり読みますと「アメリカが、安全保障条約に基づいて、日本が核攻撃を受ける、そういう場合に日本を守ってやろう、こういう場合に、アメリカ軍とすれば、軍の使うその自由な行動があるだろうと思いますので、それを拘束することは、これは安全保障条約にならないし、私どもが言うアメリカの核の抑止力にたよるという、そういうことにならない」からであります。こういう答弁をしたわけであります。そうすると、いまの外務大臣の御答弁は、当時の佐藤総理大臣の言った、アメリカ軍の自由な行動を拘束するということになれば、これは核抑止力に頼るとか安全保障条約にならないからそうばできないのだと言ったその答弁を変更した、こういうことになりますか。現在はアメリカ軍は、安保条約上いま私が外務大臣質疑をいたしましたような拘束を受けている、こういうことでありますか。
  361. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 と申しますまでもなく、その後昭和四十六年十一月に国会において、非核三原則の決議が衆議院におきましてなされております。そこでせんだって三木総理大臣が、衆議院において決議がなされておるほどこの問題は明らかでございますから云々という答弁をしておられます。つい今週でございましたが……。そういう意味におきましては、アメリカ軍の施設、区域の使用については一つの制約が課されておるということになります。
  362. 松本善明

    松本(善)委員 そういたしますと、これは明確にアメリカ政府に対して日本政府も通告をし、あるいはアメリカ政府もそのことを明確にする、いまだこれはなされておりません。日本政府アメリカ政府に対して、核兵器の持ち込みは一切認めないんだ、あるいはアメリカ政府側が、核兵器の持ち込みは一切しないんだということを明確な文章で約束をしたことは一度もないわけであります。そのために、この問題についての論議がわが国の国会におきましてはもう延々と続いておりまして、国民はそれについての不安をなくすことができないでいるわけです。  そうだといたしますならば、いま外務大臣が言われましたように、安保条約上米軍が拘束をされているんだ、こういう事態であるというならば、これは、外交交渉によって明白にする、あるいはわが国がはっきり宣言をしアメリカ政府に通告をする、こういう措置をとっても何ら差し支えないし、国民の疑惑を解消する上では非常に重要な役割りを果たすことになると思いますが、この点について外務大臣はいかがお考えでありましょうか。
  363. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 衆議院において決議が行われ、あるいは国会において総理大臣が最近も言明をしておられるということは天下周知の事実でありまして、アメリカ政府当局ももとよりこれを知らないはずはございません。それをあえて通知をする、通告をするということは入り用のないことであります。国会におきましてこそ延々と御議論がございますけれどもアメリカ側からそれについて議論なり疑念を呈されたことは私どもございません。
  364. 松本善明

    松本(善)委員 それでは、戦術核を使う部隊、これをわが国に置く必要はないではないか。いまのような話であるならば、私は戦術核を使うアメリカ軍を日本に置くことは全くないように思いますが、その点はどういうために置いておりますか。
  365. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 御案内のように、戦術核を使用する専門の部隊という概念は、いまでは普遍的でなくなってきております。要するに、近代戦の軍事能力の点で、核兵器を使えるということが、近代の、特に核を保有している国の一般部隊の編成と考えてよろしいかと思います。その核能力を持っておるということと、それから現実に核を装備しておるかどうかということは、切り離して考えてよろしいのではないかと思います。  日本におきます場合には、もちろん核兵器を外した通常兵器の部隊としておるわけでございまして、これが他の日本国以外のところに配備される場合には核能力をまた復活、復元するということで、日本におきます場合には、いわゆる通常兵器によるわが国に対する抑止力、それからわが自衛隊、日本国を守る自衛隊に対する補完的な作用、機能、こういったものが通常兵器としての部隊に対する期待であるというふうに考えます。
  366. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、いわゆるわが国の防衛ということに関して言うならば、日本にいる核能力を持った部隊は核兵器、戦術核は使わない、こういう意味ですか。
  367. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 少なくとも、日本に駐在する、日本に駐とんするという限りにおいては、核兵器を持たないということであろうかと思います。
  368. 松本善明

    松本(善)委員 私が伺いましたのは、先ほど外務大臣が、戦術核に頼るというのではないんだ、防衛局長もその趣旨を言いました。ということは、日本の防衛というためには戦術核は必要ないんだ、こういうふうに受け取っていいかということを聞いているのです。
  369. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 直接日本に駐とんいたします米軍に戦術核を装備する必要はないとアメリカは判断していると思います。
  370. 松本善明

    松本(善)委員 そのことはもう何度も聞きましたからわかっております。  私の言っているのは、日本の防衛のためには戦術核には頼る必要がないというふうに先ほど来答弁をされたことの意味について伺っているわけです。それは、現在日本にいる核能力を持った部隊が実際に核兵器を持っているか否かとはまた別の問題なんです。その問いに答えてほしいのです。
  371. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 通常の核抑止力と言います場合には、もちろん戦略核、それから戦術核がいわゆる核のかさということでかぶってくるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、わが国については戦略核が核のかさとしてきいておるということでございまして、戦術核については、非核三原則を採用する以上、戦術核の抑止力は欠けておるというふうに申し上、げてよろしいんだと思います。
  372. 松本善明

    松本(善)委員 もうちょっとはっきり聞きたいのですが、戦術核を使ってわが国を守るということはないのですね。
  373. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 戦術核をわが国に持ち込んで守るということをやらないというふうに申し上げておるわけでございます。
  374. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると変わってきたわけですよ。先ほど、わが国の頼るのは戦略核だ、核抑止力というのは戦略核だ、こういうふうに答弁が続いておりました。いまのお話であるならば、戦術核にも頼る、こういうことではありませんか。
  375. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 先ほど申し上げましたように、核の存在を明示し、それによって確実に核の報復があるという意味の報復力、こういうことは戦略核によって保障されておるわけでございまして、これには戦術核は入っていないわけでございます。そういう意味で、わが国に、有事の際においても核を持ち込むという必要はないということでございます。  御案内のように、戦術核は、通常兵器による事態がある破局に達した場合に、全面核戦争に至らないための一つの選択肢として戦術核を使うということがあるわけでございまして、戦略核については常にコンバットレディネスで、一方の攻撃があれば直ちにこれに対する報復ができるような仕組みになっておる。しかしながら戦術核については、そういう通常戦争の事態が達しませんと戦術核というものを使わない、こういうことでございます。  ただヨーロッパにおいて御案内のように七千個の戦術核を置いておるということを明示しております。これは、明示しておりますのは、戦術核を戦略的な抑止力としてこれを使っておるというふうに考えてよろしいのではないかと思いますが、日本についてはヨーロッパのようにあらかじめ戦術核の配置を明示するというような方針はもちろんとれないわけでございます。そういう意味においての抑止力というものはないというふうに判断してよろしいのじゃないかと思います。
  376. 松本善明

    松本(善)委員 防衛庁長官に伺いますが、私はいまの防衛局長の答弁では納得できないのです。戦術核をわが国に持ち込んで使うということはないということを言いましたけれども、しかし、わが国の防衛のために使わないということではないという趣旨の答弁であります。それは核抑止力、戦術核に頼るということではないのですか。その点をちょっとはっきりさしておいていただきたい。
  377. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 戦略核、戦術核は、これはもう繰り返して申し上げる必要はないと思いますが、それ自体の区別というものは余り意味をなさないと思います。用途上に、戦略的に使うか戦術的に使うかということになってくるかと思います。そこで、わが国においていわゆる核のかさというものは何を指しておるかということは、先ほどから繰り返して申し上げますように、戦略核がその中身であるということでございます。そこで、一般的には戦術核というものも核のかさの一つであるというふうに、つまり核装備のできるものについてはそういう抑止力があると言われておりますけれどもわが国については、わが国に核の持ち込みをやらないということになっておりますので、その持ち込まないということによって、わが国の戦術核の抑止力というものはないというふうに判断をいたします。
  378. 松本善明

    松本(善)委員 第七艦隊だとか第十八戦術戦闘航空団などが日本におります。そして、それが日本領海外に出れば核武装をするということがあり得るわけでしょう。それは日本の核抑止力ではないのですか。
  379. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 これが常時核を装備しているということになれば、そういうことになると思います。ところが、有事に核をやるということになりますと、つまり通常兵器だけでの対応能力以上に核兵器による対応能力も持っているという意味においては抑止力はあるわけでございますけれども、それが日本に関しては先ほど申し上げましたような状況で核を持ってまいりませんので、これはない、こういうふうに申し上げております。
  380. 松本善明

    松本(善)委員 どうも言葉の問題だけのようでありますが、私どもはこの核能力を持っておる部隊が日本にいるということが、非常に危険な、実際に日本を核戦争に巻き込む危険を持っておることであるということを指摘をして、この点についてはこの程度にしておきます。  防衛庁長官が見えておりますので伺っておきますが、今度の予算委員会で、日本に対する武力攻撃の場合に、日米共同作戦は領域外でも合憲であるということの答弁がされました。これは、かつて昭和三十五年四月十一日に当時の岸総理大臣が、日本の場合には、この五条は、日本の領土が武力攻撃を受けるのであって、領土外に出るという場合は絶対にないのであるということを答弁をしております。この問題について伺いたいのでありますが、まず伺いたいのは、わが国の自衛隊は集団的自衛権を行使することはできないということになっていると思いますが、その点についての見解をまず聞いておきましょう。
  381. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 その点はそのとおりだと思います。
  382. 松本善明

    松本(善)委員 その根拠、理由を御説明いただきたい。
  383. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 わが国が独立国としております以上、国連憲章に定められております個別的、集団的自衛権というものは、本来わが国も他国と同様に持っておるというふうに考えられておりますが、ただし、憲法によりまして集団的自衛権というものは行使できないということになっておる、こういう解釈でございます。
  384. 松本善明

    松本(善)委員 それでは、領域外に出ていって共同作戦をするということがあり得ると今度の予算委員会で答弁されたのは、これは法制局長官がやりましたけれども政府の統一した見解であるのかどうか、これはいままでの政府方針との関係ではどういうふうに考えているのか、御説明をいただきたい。
  385. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 いままでの国会答弁では、わが自衛隊の活動は領海、領空のみでなくて、わが国を守るという自衛に必要な限度において公海、公空にも及び得るということを申し上げております。  そこで、安保の五条に基づきます日米の共同対処、共同行動ということでございますけれども、いまと同じ理屈によりまして、わが国の防衛に必要な限度において領海、領空に及び得ますが、それは共同対処の場合においてもあり得るということになるわけでございます。
  386. 松本善明

    松本(善)委員 その限界はどういうところにありますか。
  387. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 あくまでも、わが国を防衛するために必要な限度においてということになると思います。限界はそれでございます。
  388. 松本善明

    松本(善)委員 共同作戦ということになりますと、これはしかし相当広い範囲だ。いままでであれば、防衛に必要な範囲で公海や公空へ一部出ていくということは実際問題として起こり得るというような答弁はありますけれども、共同作戦をするということになると、これは相当な問題だと思います。共同作戦の範囲がどこまで広がるかということは、これは大変な、わが国の海外派兵の問題にもなります。これははっきりしておかなければ、最初話がありましたような憲法違反の問題にもなり得る問題であります。むしろ、私はこれは非常に危険な方向に行っているのではないかと思いますけれども、その点についての考え方をもう少し明快に話してほしいと思います。
  389. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 いま申し上げましたように、基本的に考え方が変わっているわけではございません。わが自衛隊がわが国を防衛するために必要な限度内において、領海、領空に限らず、公海、公空に及ぶこともあり得るという在来の国会答弁の延長線の問題でございます。同じ共同活動、共同対処ということでございましても、わが方はあくまで在来の御説明のとおり、わが国を防衛するために必要な限度内において公海、公空にも及ぶというこの解釈については、在来の独自の考え、独自に行動いたします場合と全く同じでございます。
  390. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣に伺いたいのでありますが、この核防条約につきましては、私がいま聞いただけではない。これはごく一部の安保や非核三原則の関係について聞いただけであります。全体の問題についてまだまだたくさんの問題があり、いままでもいろいろな質疑がなされたわけでありますけれども国内でも非常にいろいろ議論がある。保守的な立場の人からもいろいろ議論がある。われわれはもうこれが締結をされたときから反対をしてまいりました。これは締結をされてから、調印をされてから五年間放置をされた。いまどうして急に急ぐのか。ここのこの委員会での審議でも、そんなに緊急のものは何もありません。いま日本がどうなるというものでもありません。しかも二十年も日本の国民を拘束をする。こういうものを急いで通すというような必要はもう全くない。これは国民世論の中にもこれに関する問題がいまやっとマスコミでもいろいろ取り上げられ始めている、こういう状態であります。賛否両論出ている、そういう状況であります。なぜそんなに急がなければならないのか。十分に国民が問題点を理解をしてからそれについての態度を決めていくということでいいのではないかというふうに思いますけれども、そういう緊急の必要をどこに感じておられるのか、それを御説明いただきたいと思います。
  391. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来時間がたちましたのは、これも御承知のとおり、平和利用の場合の保障措置協定についてわれわれが望ましいと思われる十分な条件の交渉をいたしますのに手間がかかっておったわけでございます。で、ことしの年初から始めましたいわゆる予備交渉が、ECとの関係、ユーラトムとの関係におきましてもようやくわれわれが満足をすべきものというふうに認められるに至りましたので、これで条件が具備をしたと考えまして国会の御審議を仰ぐに至ったわけでございます。  私どもとしては、これは日本の国益につながるいいことであるというふうに考えておりますので、ならば条件が整いました以上は、善は急げという気持ちでお願いをいたしておるわけでございまして、ここで急に急いだというようなことではございません。保障措置協定が満足のいくものができなかったということでいままでむしろおくれておったということでございます。
  392. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、特にいま急いでやるということの必要性は政府としては感じていない、いま条件が整ったので国会での審議を求めているということでありますね。
  393. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただ、保障措置協定が満足な形でできたということは、これは各国もむしろよ過ぎるというような理事会での批評があったほどでございますから、まず日本としては文句を言う筋はないなと思って見ております。そこで、何か政府理由がなくぐずぐずしておりますと、これはどういうことであろうかということに当然になってまいります。またぐずぐずする必要もないわけでございまして、何も来年になったらいいことがあるとか、様子が変わるとかいう性格のものでございませんから、やはり整いました以上は速やかに御審議をいただきたいと考えております。
  394. 松本善明

    松本(善)委員 別に特別に急ぐということではありませんけれども、十分に審議をする、必要な審議時間を十分とって各党が審議をして、そしていいということであれば承認をしてほしい、こういう程度のことでありますね。
  395. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御審議の時間等々はこれはもう国会の御決定なさることでございますので、私どもはいつ何どきたりとも参上いたしましてお尋ねにお答えをする用意をいたしております。
  396. 松本善明

    松本(善)委員 私は、もちろん国会で決めることでありますけれども政府としては、何かいつまでにどうこうしなければならぬというような特別の緊急の必要があって言っているのではなくて、普通に、案件はできるだけ速やかにやってほしいということだというふうに伺ってよろしいですね。
  397. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはいやしくも国会の御審議に何か注文がましいことを申し上げてはならぬということをよく存じておりますので、そういう意味で申し上げるのではございませんが、先般もああいう再検討会議がございまして、日本としては保障措置協定が満足すべきものとしてまとまった。いよいよ日本加盟をするであろうというふうに各国が期待をし、また最終宣言案をつくります場合にも、ずいぶんわが国の主張を取り入れておるわけでございます。いわゆる加盟国でないにもかかわらず取り入れておるわけでございますから、わが国が順調に加盟をすれば、各国としてもこれで核防体制が固まっていくと考えるでございましょうし、何かのことでわが国加盟をしないということになれば、その場合の反作用は実は相当大きなものがあろう。ひいては、西ドイツがすでに入っておりますので、まあ普通考えまして西ドイツと日本というのが、いろいろな意味で望むならば核武装をする能力はある国でございますから、何といっても、日本というものはそういう意味でいまひとり局外に立っておる、これが入らないということになりますと、これは核防体制が崩壊とまでは申しませんけれども、きわめて不十分な成果しか挙げ得ない結果になるということは各国が共通に実は憂えておるところでございますので、お差し支えない範囲におきまして速やかに御審議を仰ぎたいと考えるものでございます。
  398. 松本善明

    松本(善)委員 いまの国際情勢は、外務大臣も言われましたように非常に大きく変わってきた事態でありますし、それから長期にわたって日本の国民に影響を与えるものでありますし、自主査察でありますとか、いろいろの点で問題を詰めなければならない点がたくさんあります。日本の国民の各層が、これは将来あるいは日本エネルギー政策の従属とか、いろいろな点からの論議をしなければならぬ点がたくさんあると思います。私自身もたくさんの課題を持っております。きょうはもう時間がありませんのでできませんけれども、私自身もさらに質問を留保するということにし、それから外務大臣にもそういう広範な影響のある大変重要な、日本の国の将来にとって非常に重要な条約である、私はそういう点についての検討はまだまだ不十分ではないかということを申し上げておいて、きょうはこの程度で質問を終わります。
  399. 栗原祐幸

  400. 永末英一

    永末委員 防衛庁長官がお見えでございますので、防衛庁長官にお伺いをいたします。  いま政府が提案をいたしております核防条約への加入、これが批准をされまして加入することになりますと、一体わが国安全保障にどのような影響があると防衛庁長官はお見通しでございますか。
  401. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 アメリカとの安全保障体制を基調といたしまして、わが国みずからも必要最小限度の自衛力を保持するという現在のわが国の防衛体制が堅持される限り、核兵器拡散条約締約国になるか否かがわが国安全保障に大きな影響を及ぼすというふうには考えておりません。しかしながら、同条約核兵器国の増加を防止することによりまして、核戦争勃発の危険を少なくし、国際関係の安定度を高め、軍縮の推進ないし平和の確保をより容易にするような国際関係をつくり出すということを主眼とする条約でございますので、わが国がこの条約締約国となりますならば、国際関係の安定化による安全保障の強化に資することができるというふうに考えるのでございます。  さらにこの条約は、原子力平和利用の面における国際協調を推進することをも主眼といたしておりますので、わが国原子力平和利用の分野における他の締約国との実質的平等性を確保した上でこの条約締約国となりますならば、国際協調下の原子力平和利用の推進による産業エネルギーの確保というわが国の主要な国益にも資することができるというふうに考えるわけでございます。
  402. 永末英一

    永末委員 核防条約に加入いたしましてもわが国安全保障に格別役に立たぬという御認識は承りました。  さて、わが国核防条約加盟をいたしますと、核戦争の勃発の危険を少なくし、これはどういうことですか。
  403. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 これと直接関係はないわけでございますけれども、われわれが信頼をいたしておりまするこの日米間の安保条約というものを機能さしていく上において、きわめて有効であるというふうには考えるわけでございます。
  404. 永末英一

    永末委員 あなた、核防条約と安保条約との関係をどうごらんになっておられるのですか。
  405. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 わが国といたしましては、平和外交の基調を堅持して、しかもなおかつ専守防衛の自衛力を一層整備するとともに、日米安保条約を維持していくということが日本安全保障を確保する最善の道であるというふうに考えます。したがいまして、これによりまして安全保障は確保されると信じておりますし、またわが国のNPT参加は、わが国の平和外交推進についての決意を国際的に宣明するということになりましょうし、日米安保条約の実際の発動を必要としないような、安定的国際環境づくりに資するものであろうかと思います。同時にわが国といたしましては、今後とも日米間の信頼関係を強化し、日米安保条約を維持する努力を続けていくべきであるというふうに考えるわけでございます。  私といたしましては、とにかく防衛力というものは、やはり外交、民生安定、経済力、そういったもの一切を含めた形において、日本の安全というものを考えていかなければならぬ立場から考えまして、やはり日本立場といたしまして、平和外交の一翼を担うということに日本がなるならば、世界の人たちからも信頼をしてもらえるというふうに私は思うんでございます。
  406. 永末英一

    永末委員 核防条約加盟していくことがわが国の平和外交の一つのあらわれだというあなたの判断でございますが、わが国核防条約に入って、そして核兵器はつくらない、保有しないということを、入ることによって約束するとごらんになっておられるのですか。それとも、政府はあらかじめ非核三原則というものを国内政策として立て、それを諸外国に明示しておる、そういう方針が別にあるわけでございますが、核防条約に入らなければわが国の平和外交の方針は明らかにならぬとお考えですか。
  407. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 やはり非核三原則をとっておりますわが国といたしまして、核防条約に加わることの方がよりベターであるというふうには考えております。
  408. 永末英一

    永末委員 一九七〇年の核防条約政府が調印をいたしましたときに、非核国に対する安全保障について成り行きをもっと見届けたいというのが、すぐには批准を国会に要請しなかった理由であります。この非核国に対する安全保障という問題について、防衛庁長官としては、この核防条約に入ることによって一体満足せられるのかどうか、わが国が非核国としていく場合、わが国安全保障について何かプラス要因があるとお考えかどうか伺いたい。
  409. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 非核国の間におきまして、やはり私たちがこの核防条約加盟をするということが、わが国の平和外交を進めていくというこの方針がむしろ明らかになっていくという意味においてわが国益になるというふうに思うわけでございます。
  410. 永末英一

    永末委員 私は外務大臣に聞いておるのではございませんので、防衛庁長官に聞いておるのでございますから。わが国のあなたの方の政府が、五年前に非核国の安全保障についてストレートに心配がなければ批准をすぐに求めたと思いますが、そのことを一つの条件にして五年間待ってきたことは事実でございまして、さてその意味で、防衛庁長官としてはいまこれを批准をしていくことは、日本のその意味での非核国としての安全保障にプラスになる段階が来た、このようにお考えかどうかということを聞いておるのです。
  411. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 日本というものを非核国が信頼をするということは、やはり日本安全保障にとって大事なことではないだろうかというふうに私は考えるわけでございます。
  412. 永末英一

    永末委員 あなたは、日本核防条約に入ると非核国から信頼されると言うのですけれども、非核国は自国の安全保障に対して非核国である日本に信頼しておるよりは、核保有国に信頼しておるということを前提のもとに、この核防条約が組み立てられておるのと違いますか。
  413. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 わが国がこの条約締約国となりますと、同条約の体制の強化に一層効果的に貢献をいたしますし、またこのことが国際関係の安定化に寄与することになると思います。ひきましては、それがわが国安全保障の強化につながるというふうに考えるわけでございます。
  414. 永末英一

    永末委員 ならそういう御答弁でいいのでございますがね、防衛庁長官ならば、少なくともストレートにこの核防条約に入っていくことがわが国安全保障にプラスになるのかならぬのか、そこを私は聞いておるのでございまして、これに入ろうと入るまいと、一つわが国安全保障力というもの――それは広くは外交的シチュエーションというものはわが国安全保障にプラスマイナスの影響を与えますから、しかしそれは外務大臣がそれを考えてやることであって、あなたはもっと、われわれの持っておる力、軍事的な力あるいはまた軍事的な力をサポートする力、そういう諸力の絡み合いにおいて、安全保障力がふえるかふえぬかということの判断を聞きたいのです。いままで言われたことは、外務大臣なら、それはそれでいいですけれども、そういう国際環境に対する日本評価がよくなるだろうから、それによって安全保障力が強まるというのは前提でございまして、私はもう一歩突き込んだところで防衛庁長官の御意見を承りたい。
  415. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私はやはり世界全体の安全保障の仕組みといいますか、あるいは緊張緩和の仕組みというものが、いわば核の均衡という形によって現出してきておる、こういうことかと思うわけでございます。そういたしまして、先ほどからお話がございますように、米ソにおいて、そういうような核の非常な力の均衡の上にデタントというものが生じてきておって、そしてこれを余りたくさん天井なしにどんどんどんどん米ソがいきますことは、同時に米ソにとりましても金のかかることでございますし、この限度においてはお互い制限をしようじゃないか、こういうようなことが行われるということ、あるいはまた、これ以上核の保有をさせない努力をするということ、それはやはり日本の安全にとって好ましいことではないか、こういうふうに私は理解をするわけであります。
  416. 永末英一

    永末委員 核の均衡という一番象徴的な問題は、アメリカソ連との核の均衡であろうと思います。それはSALTの交渉の中にいみじくもあらわれております。しかし、それはグローバルな意味合いにおいて世界の平和を担保しようとする一つのあらわれでございまして、私があなたに伺っているのは、わが国安全保障力というものはふえるかふえぬかということを聞いておるのでございますから、何も核防条約に入らなかったらすぐにわれわれは核武装をするというわけでもございますまい。核武装はしないということは、すでに自民党政権のかねてからの主張でございますから、そこのところをお答え願わないと、周辺ばかり答えてもらっておったのではよくわからぬのでございます。もう一遍お答え願いたい。
  417. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 冒頭に申し上げましたように、一応これによってそう日本安全保障に影響はないということを前段に申し上げておるわけでございます。しかし、その上に立ってなお好ましい点があるかという御質問だったと私承ったものでございますから、強いて申し上げまするならば、単に防衛力だけじゃない、軍事力だけじゃございません、やはりこういうような平和的な試みというものに積極的にわれわれが参加をするということは、やはり日本安全保障にとってもプラスになるのじゃなかろうか、こういう意味で申し上げた次第でございます。
  418. 永末英一

    永末委員 わが国は、あなたの政府は、アメリカとの間に安全保障条約を結んで、わが国の力の足らざるところを補おう、こういう姿勢でございまして、そういう姿勢からくれば、今回の核防条約加盟してみたところで何らつけ加わるものはない。非核国の安全保障ということは議題にはなったけれども加盟したからといって非核国であるわが国安全保障にプラスになるものはない。もし問題があるとするならば、それはすでにアメリカとの間の安保条約によって与えられておる、こういう御見解ですか。
  419. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 その点については、私そのとおりだと思っております。
  420. 永末英一

    永末委員 さて、いま防衛庁長官から明快なお答えが出ましたので進みますが、安保条約というのは、よく抑止力だという言葉が使われております。かつて発表されました国防白書、あるいはまたそれを土台にいたしました四次防の前文みたいなところにもそういう表現が使われておるし、先ほど宮澤外務大臣にも四月における宮澤・キッシンジャー会談で抑止力という言葉が使われていることを伺いました。さて、防衛庁長官は、抑止力抑止力と言いますけれども、米軍の軍事力というものはわが国安全保障に対してどういう役割りをしておるとお考えですか。
  421. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 御承知のように、わが国は核を持てないわけでございます、持たないわけでございます。したがいまして、核の攻撃に対しては無力でございます。したがいまして、そのことにつきましては、やはり安保条約がなければ核の攻撃に対して耐えられない、日本の独立と安全というものは守れない、こういう意味において、日本の安全にとりましては安保条約というものは不可欠なものであるというふうな認識でございます。
  422. 永末英一

    永末委員 いま核のお話がございましたが、なるほどアメリカに頼っておって、核を持っておるアメリカ抑止力を頼んでおるというのですが、抑止力が一〇〇%つながるかどうかはだれもわからぬところでございまして、防衛庁長官抑止力の破れたときの対処の仕方をしておられますか。
  423. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 わが国といたしまして、それ以外にやる道はないわけでございまして、核攻撃に対しましては、やはりアメリカとの日米安保条約によって日本を守る以外にはないというふうに思っております。
  424. 永末英一

    永末委員 スイスという国がございますが、スイスには、首都ベルンにおきましても二万人を収容する大きなスタジアムをつくり、そのスタジアムには核放射能からの汚染を逃れて数十日間生活し得る設備がつくってある。また、イギリスにおきましても、核放射能から逃れるための、医師、看護婦等の衛生の人間の訓練を行っておる。スウェーデンにおいても似たようなことがございます。アメリカソ連等におきましても、核攻撃が起こった場合に、これを避けるための防空壕等の設備がある。中国にもございます。日本は、アメリカの核抑止力を頼っておるならば、核攻撃というものは一〇〇%ないという前提のもとに、防衛庁長官は、わが国の国民に対する放射能の汚染あるいは核攻撃は免れる、こういう御判断ですか。
  425. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私は、一〇〇%というような数字は申し上げないわけでございますが、われわれの生きる道というものはほかにはないというふうには考えておるわけでございます。ことにスイスとかその他の国に比べまして、核攻撃に対しましては、非常に日本列島というものあるいは日本のこの都市集中の状況というものは弱い、こういう判断をしておるわけでございます。
  426. 永末英一

    永末委員 米軍の核抑止力というものに対する信頼性というものが問題になっておる。これはベトナムからのアメリカの撤退後、アメリカの同盟国、与国に対する支援の力あるいは支援に対する信頼性というものは揺らいでおるわけでございまして、そうであるならば、アメリカ抑止力というものに対してわれわれはもっと正確な判断をしなければならぬ。あなたは、いまのお話ですと、アメリカ抑止力がきかない場合には手を上げる、日本人は死ね、こういうことですか。
  427. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 そういう言葉を私は申したわけではございません。しかし先生が一〇〇%守れるかとおっしゃいますと、日本の列島というものは、かなり核攻撃に対しては弱い面を持っておるということを申しておるわけでございます。しかし、非核三原則を堅持し、かつまた今日の憲法におきまして非常な制約を受けておるわが国といたしまして、日米安保条約を結ぶということこそ日本のわれわれの国を守る道であるというふうに考えておるわけでございます。
  428. 永末英一

    永末委員 政府の立てておる非核三原則という政策とかあるいはわれわれの憲法とかというものとは別に、実態的に、あなたがアメリカの核抑止力をいかに頼られようとも、抑止力は一〇〇%信頼性がないということであるならば破られることがある。防衛庁長官の仕事は、考えたくないことを考えることではありませんか。破られた場合に、われわれの一億の国民の中で、幾らかでも生き残るためにはこうしなければならぬ――頼っておれば大丈夫なんだから何もしなくていい、もともと大都市集中が激しい日本だから核攻撃があればもうだめなんだ、これでは防衛になりませんでしょう、あなたの立てておられる防衛方針に対する国民の信頼感というものをつなぐわけにはまいらぬ。一体われわれは核攻撃というものを考えたくていいのかどうか。アメリカの核抑止力ということを三十年一日のように繰り返しておれば核攻撃はないのだ、こういうことで、これから核防条約に入っていきますと二十年縛られるわけでありますけれども、未来永劫と、ずっとやっていくつもりなんですか。いかがですか。
  429. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私は、日本の防衛というものにつきまして、こういう考え方を持っております。  第一には、やはり、国民一人一人が侵略に対してはあくまでも抵抗をするという非常な意思、強力なる意思、これを持たなければならないということが第一であります。  第二番目は、憲法に定められた必要最小限度の自衛力というものを整備していかなければならないということでございます。具体的に申しますと、ただいま四次防段階でございますけれども、今日の段階でこの未達成部分が出てきておることは御案内のとおりでございます。しかしこの防衛力の整備というものは、十分これから積み重ねていかなきゃならないということ。  三番目には、先ほどから申し上げておりますような核攻撃に対してはわれわれは無力でございますから、やはり日米安保条約というものを堅持いたしまして、そしてこの三つの柱によって日本の安全と独立を守っていく、この一つを欠いでも日本の防衛というものは成り立たないというふうに私は思います。  そういうわけでございますから、日米の安保条約という意味日本安全保障にとって非常に大きいと思います。しかもアメリカに対する信頼関係というものが今日云々されておる時期でございますから、やはり私といたしましては、そのクレデビリティーを高めるためには、日本人自身がみずからの努力によって防衛力を高めていくという、そういうことを真剣に考える。そして、そのあかしを立てるということが日米間のクレデビリティーを高めるゆえんであるというふうに私は考えております。
  430. 永末英一

    永末委員 あなたの言われたことは、それはいいのですよ。私もそのとおり思います。しかしそうやってみたところで、高めたいと思っても、最終的に核攻撃のあったときの準備はしなくていいのかということ、このことを聞いているのです。何もしなくていいのか。それならなぜよその国はやっているのですか。よその国だって核攻撃みたいなものはいやでしょう。いやだけれども準備をしている国がある。それぐらいクレデビリティーというものはあり得ないということを知っている国ほど、そういうことを歴史の経験に照らしてやっているんじゃないか。わが国は何もしないでいいか、国民は皆聞いているのですからお答え願いたい。
  431. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私は、やはりそういうことは今後考えていかなければならぬ課題であるというふうには思っております。
  432. 永末英一

    永末委員 防衛を考える会というのがあるそうでございますが、その辺でひとつ真剣に考えをまとめていただいて、まとめていただいたら国民にやはり真相を知らして、国民にこの辺に対する協力を求めていく、これが国民の抵抗の意思を固めることだ。あり得ないことは考えないというのなら防衛を考える必要はないのである。予算を使う必要もございません。やはりいまあなたがおっしゃったことを実行していっていただきたい。  時間が大分迫ってきましたが、いまは核の話だけでございますけれども抑止力という問題については、防衛庁長官は、アメリカの通常兵力というものは一体わが国安全保障にどういう関係があるとお考えでございますか。
  433. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 私からお答え申し上げます。  安保の期待しております中身は、一つは、先ほどからお話のございます核の抑止力でございますが、次に攻勢作戦、これは憲法のたてまえ上、われわれがとれない戦術上の問題でございますが、攻勢作戦はアメリカに依存せざるを得ない。それから、われわれはもっぱら防勢作戦を主体にするわけでございますけれども、現有勢力においてその目的を十分達し得ないということも考えられますので、防衛作戦の補完、これは補給等を含めましてアメリカに期待するということになります。もちろん全般を通じまして通常兵力が日本におるということによる抑止力、通常兵力としての抑止力、これもわれわれとしては十分期待するものでございます。
  434. 永末英一

    永末委員 四次防というのがございます。これによりますと間接侵略、小規模の直接侵略はわが国が独力でこれを排除し、それ以上の規模の武力侵略に対しては米国の協力を得てこれを排除する、こういうことになっておる。いまもそう考えておられますか。
  435. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 そのとおりに考えております。
  436. 永末英一

    永末委員 四次防というのはインフレのために、最初の調達計画に比べると船もだめになったり飛行機もだめになったり、火砲もだめになったり戦車も減らしてみたり、こういうことですね。どれぐらい減らしましたか。
  437. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 大ざっぱに申し上げて恐縮でございますが、五十一年度の予算がまだ決まっておりませんので、それを踏まえて申し上げるのもいかがかと思いますが、陸とそれから空につきましては、主要項目の大体九〇%近くを達成できると思います。ただ、個々の品目を検討いたしました場合に、陸の自走火砲であるとかいろいろ問題点はあると思います。それから問題は海でございまして、現在までのところ、四次防で目標といたしておりました六万九千トンのうち五十年度までに三万六千トンでございまして、あと三万三千トンが残っております。これを五十一年度に仮に一万トンをやったといたしましても二万トン近くのものが未整備として残る、こういう状況でございます。
  438. 永末英一

    永末委員 四次防はいまのような目的を掲げておるけれども、実際やってみたら内容、その兵器の量が減った。九〇%というのはできたんじゃなくて、九〇%でも一〇%減っておるのである。減っておっても目的は達成せられる、こういうお見込みですか。
  439. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 厳密に申しまして目的は達せられないと思います。一番問題になりますのは老朽装備が耐用命数が参りますので、これに対する更新、近代化が順調にまいりませんと全般の勢力ダウンは避けられないという状態でございます。
  440. 永末英一

    永末委員 そうすると四次防というものはもうすでに、立てた三年前から比べるとその目的どおりには動かなくなった、こういう御判断をしておられるわけですね。
  441. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 程度の問題があるわけでございまして、目的完遂の度合いということになりますと、必ずしも全部がそう悲観した状態ではないと思いますが、各部門別に見た場合には、先ほど申し上げましたような問題点がいろいろあるということでございます。
  442. 永末英一

    永末委員 防衛庁長官は現在どういう防衛方針をお立てなんですか。
  443. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私といたしましては、いよいよこの四次防が終わりまして、ポスト四次防というものを考えなければならない時期に到達をいたしております。いませっかくその案を練っておるところでございますが、長官指示をいたしましたその重点と考えますのは、正面装備というものも大事であるけれども、そしてそれはポスト四次防にも四次防計画の積み残し等も考えていかなきゃならないけれども、同時にやはり抗たん性と申しますかあるいは縦深性と申しますか、一つの優秀な飛行機、性能のある飛行機を動かすにいたしましても、ランチャーであるとかあるいはレーダーサイトであるとか、そういうような部面というものもあわせて整備していきませんと、結局それが威力ある力にはなり得ないというふうに思いますので、むしろそういう抗たん性、縦深性あるいは後方支援体制というものにも目を向けて、今後ポスト四次防を整備してほしいというような気持ちは持っておるわけでございます。
  444. 永末英一

    永末委員 防衛庁長官はポスト四次防と言われましたけれども、私が伺ったのは、四次防そのものが崩れておる、そうするとあなたは一体何を目標にして防衛方針を遂行しておられるか、どういう防衛方針なんだ、それを伺っておる。
  445. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 現在の四次防そのものにつきましては、最大限の努力をいたしましてこれを充実し、まだ来年の予算もございますから、これを達成するための最大限の努力をいたしたいと考えております。考えておりますけれども、現在、船につきましては、四次防の計画はとうてい不可能であるということだけは申し上げておるわけでございます。
  446. 永末英一

    永末委員 いままで一次防以来やられてきたいわゆる何次防、何次防というのは、これだけ兵器をつくるんだということがあたかも防衛計画であるかのように言われてきた。そういうことを今後もおやりになりますか。
  447. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私は言葉はあるいは適切でないかと思いますけれども、小ぢんまりとしておっても、それがかなり力のある防衛力と申しますか、そういうものにしたいという念願は持っております。
  448. 永末英一

    永末委員 これはお約束の時間が参ってまだちっとも進まないのでありますけれども、先ほど四次防遂行の過程で海上自衛隊に関する艦船の分量が望ましくないという話がございました。ワシントン十日発共同によりますと、シュレジンジャーアメリカ国防長官は、ソマリアのベルベラにミサイルの貯蔵と修理基地を建設したということをアメリカの上院の軍事委員会で証言をいたしました。これに呼応するように、ブラウン米統合参謀本部議長は、インド洋というのは中東、アフリカに資源を依存する日本にとって不可欠の生命線であることを指摘をいたしました。アメリカはこれをちゃんと守るんだ、ディエゴスアレスの基地を拡大してやるんだというようなことを同盟国に表明するんだ、こういうことを言うたと伝えられております。しかし、これは一方的にアメリカがやるんではなくて、そうやると言うならば、このアメリカの行動に対して日本の協力を求めてくることは当然のことだと思いますが、防衛庁長官は、シュレジンジャー国防長官にお会いになるそうでございますけれども、この協力を求められた場合には、日本の生命線という昔使われた言葉が書いてございますけれども、協力をされますか。
  449. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 やはり私といたしましては、憲法に定められた範囲内においてあらゆる努力をしなければならないというふうに思っております。アメリカのシュレジンジャーのことしの国防白書並びにブラウン氏の報告等を見ますと、日本の防空あるいは海、特に海上の護衛というものあるいは対潜水艦能力というものを高めるということ、そういうことに期待をかけておるようでございますが、そういうことにつきましてわれわれできるだけのことはいたしたいと思っております。
  450. 永末英一

    永末委員 もう一問。最後にもう一つ聞いておきたいんですが、朝鮮半島に紛争が起こり、これに対してアメリカわが国に対して直接作戦行動への事前協議を求めてきた場合にイエスを言う場合もあり得るということでございますね、外務大臣
  451. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、総理大臣が、つい先般も、イエスの場合もノーもあるとお答えになっておられます。
  452. 永末英一

    永末委員 防衛庁長官、イエスということを政府が決定をした場合には、防衛庁長官としては、わが国に起こり得ることを予測してこれに対処せねばなりません。対処の準備はできておりますか。
  453. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 結局わが国としては、日本に対する直接、間接の侵略があるということによって出動するという、先生御案内のとおり、自衛隊法の七十六条によって行動をするわけでございまして、この情勢に対応した防衛計画の変更ということはこれは長期の作業を要しますことでありまして、いまのところは考えておりません。問題は、そういう事態に対応して現有勢力をもっていかに対処するかというような問題でございますが、これはこの問題に限らず、あらゆる場合を想定して私どもがいろいろな防衛計画を立てるということは本来の任務でございますので、いろいろなことは考え研究はいたしております。
  454. 永末英一

    永末委員 時間が参りましたので、いろいろとまた防衛庁長官には核防条約の審議に関しお会いできると思いますので、きょうはこの程度に……。
  455. 栗原祐幸

    栗原委員長 午後八時再開することとし、暫時休憩いたします。     午後七時三十五分休憩      ――――◇―――――     午後八時四分開議
  456. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部一郎君。
  457. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、核兵器の不拡散に関する条約承認を求めるの件に関しまして、ただいまから質問をいたします。  核兵器を全廃し、国際平和の安定した確立こそ、世界共通の目標であります。目下、人類は強烈な大滅亡を目指して前進をしているかのごとき様相を呈しており、アメリカだけを見ても、広島型原爆六十一万発分というような気違いじみた核兵器競争の中に突入をいたしているわけでありまして、核兵器問題は人類の最大、最緊急問題と言って差し支えはないと思うものであります。その意味におきまして、核兵器の不拡散に関するこの条約の果たす割合は、十分に各方面から検討され考慮されなければならない多くの命題を含んでおります。私がここに申し述べますことは、もちろん核兵器保有国のこれ以上の増加を禁止し、核兵器保有国がみずから核絶滅のために前進をする足がかりとなるものでなければならないと考えているからであります。また、核兵器を持っていない国々が、安全保障をされながら、しかも自分たちが核武装をしなければならない羽目に落ち込まないように、二つのブレーキをかけなければならないのであります。したがいまして、この核兵器拡散条約に対する期待は非常に大きいのでありますが、遺憾ながら、その核防条約は幾つかの矛盾点を持っているわけであります。  第一の問題は、核兵器保有国が、保有国増加を禁止するという立場から、核保有国の無制限な保有と拡大というものを追認してしまうというような危険性があることであります。  第二の問題は、核非保有国がみずからの製造、使用、保持の権利を放棄することによって、核保有国の大きな政治的なプレスティージというものをますます追認する傾向になるという、二つの大きな弱点があるものであると思うわけであります。  その点、何度かにわたって部分的にはお答えをいただいているようでありますが、ここに大臣の御見解をまず総括してお伺いをしたいと思います。
  458. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 第一点は、私の承りましたところでは、大国のいわゆる軍縮についてこの条約では歯どめを設けていないという点であったと思います。この点は、今朝から申し上げておりますように、確かにこの条約そのものには、いわゆる核軍縮の問題あるいは非保有国の安全保障の問題について述べるところはないわけでございますけれども、それらの問題につきましては軍縮委員会でありますとか国連でありますとか、おのおの場がございまして、そういうところにおいて話し合いが行われていくべきものではなかろうか。そういう背景の中で、この条約が持っております役割りは、ともかくこれ以上核保有国の数をふやさない、そのためにはいかなる方法をとるべきか、平和利用の問題もございますけれども、そのような問題をこの条約が役割りとして果たそう、こういうふうに考えられているのだと私どもは思っております。  それから第二点の問題は、いわゆる保有国と非保有国に分けることによって、保有国にプレスティージを与えるという問題でございますが、この点はこの条約のゆえにというふうに考えるべきなのか、あるいは現実米ソというのが圧倒的な核能力を持っておるということから実は来るのであるか、そこは私は考え方の問題ではないかと存じます。すなわち、この条約がありませんでも、米ソのそのようなプレスティージはこれは否定すべくもございません。他方で、この条約がない場合には、幾つかの国が恐らく自分らも米ソの後を追うことによってプレスティージを確立しようとするであろうかと思われますが、それは人類全体から言って決して幸せな結果にはならない、こういう認識をこの条約は持っておると思うのであります。要するに、核兵器をたくさん持っていることがプレスティージであるのか、あるいはわが国のような平和憲法のもとに進むのがプレスティージであるかということは、これは考えようの問題であろうと存じます。わが国は少なくとも、わが国のような立場というものがこれがプレスティージであると考えますし、しかし、こういう国は世界ではわが国一国でございますけれども、しかし、いわばそういう大量殺戮の、おもちゃと言ってはいけませんけれども考えようによっては、これはある意味で幼稚な考えだとも言えるわけでございますから、そのような考え方に世界の人々がだんだん向いていくということが、やはりこの条約が期待をしているところではないかというふうに考えるわけでございます。
  459. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この第一条、第二条の規定は、「この条約の適用上、「核兵器国」とは、千九百六十七年一月一日前に核兵器その他の核爆発装置を製造しかつ爆発させた国をいう。」というふうに規定されております。また「この条約の効力発生の二十五年後に、条約が無期限に効力を有するか追加の一定期間延長されるかを決定する」と第十条には記されております。こういうような規定は、すなわち、核兵器国と非核兵器国との区別を長期間、少なくとも二十五年間という長きにわたって固定化する結論を生み出すという大きな代償を払っているわけでございます。したがって、その代償を払うからには、国際的な保障措置というものを明確にするだけでなく、今後においてますますそれを強化するものでなければならないと思うわけであります。  ちょうど幕末のときに、日本じゅうが明治維新の前後、刀を差して暴力をふるっていた武士がいた時代に、それを明治新政府で統一をされた後、兵器を武士から取り上げると同時に、その逆に大きな安全保障というものが新政府によって考慮されなければならなかった事情と軌を一にするものであると考えるわけであります。ですから、刀を取ればいいけれども、山賊の横行を許すような新政府であったら、その新政府の威令は行き届かなかったと同じことが、いまや国際的な大きな次元で考えられなければならぬわけであります。政府の御説明を伺っておりますと、その国際的な保障措置が余りにも弱いのではないか。あるいは今後行われるつもりかもしれないけれども、いままでの努力が余りにもか弱かったのではないか、微弱であったのではないか、そういう疑いを強く抱くわけであります。その辺をひとつ力強く御返事を賜りたい。
  460. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いま明治新政府の例をお挙げになりまして、その比喩が私にわからないわけではございません。わからないわけではございませんが、しかし現実に核を持たない国々というのは、米ソがもしお互いに相手を意識することなく自分の核兵器を振り回すならば、実際死滅をしてしまわなければならない状況にあるわけでございますから、そういう意味ではいわゆる帯刀廃止ということと少しく意味合いが違うであろう。その米ソに対して、ああいうばかなことはもうだんだんいいかげんにおよしなさいということを言わなければならないことはもう明らかでありまして、それはこの条約ができましてから、ようやく米ソの間で幾つかの核軍縮につながるところの取り決めが行われるようになった、またSALTの交渉が現に第二段階まで行われておるということ、それらの動きは、確かに遅々たるものでありますし、われわれの希望するほど内容的にも、またそれに要します時間から見ましても、いかにも時間がかかり、かつ、内容が貧弱であるということは、これは申せるわけでございますが、しかし、最終宣言で、せんだっても述べられておりますように、まあ努力の跡は認める、この程度の進展はあったかと私は思うのでございます。米ソ自身にも人類愛とかいうような別にりっぱな理由からでなく、お互いにバランスさえしておればこれ以上無限に競争することは、財政的にも経済的にも実は耐えがたいという問題がございますから、一定のバランスに達しました後に、むだな競争はやめていこうということを期待する理由はあるのではないかというふうに考えるわけでございます。
  461. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣は非常にじみにいまお答えになりましたので、そういう御認識ならば私の認識とほぼ一致するわけであります。すなわち、過大な期待をこの条約には持てないということは明らかでありますし、再検討会議において軍備競争、特に核軍備競争が依然として減じていないことに重大な懸念を表明するにとどまっている。具体的に言って、米ソ核軍縮に対しては、それほどの成果は上げていないという現状に対して私は深い憂慮を持たざるを得ないわけであります。  私がそこで不満を持ちますのは、この署名のときの政府声明に「具体的な核軍縮措置をとることが、この条約目的実現のため必要である」と指摘されておられるわけです。まさにそのとおりなのですが、大体外務省というのは、そういう核軍縮のために一生懸命これまでやってきたかという私は非常な疑いというか不満というかを持っているわけであります。私の認識がどの程度当たっているか存じませんけれども、その核軍縮措置をとらせるために、わが国政府はこれまでどれくらい努力をなさったのか、その辺をひとつ明確にしていただけませんでしょうか。
  462. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 お答え申し上げます。  わが国は、御承知のように全面、完全軍縮を究極の目標といたしまして、可能なところから段階的にこれを実現していくことが実際的なアプローチであるということで、これを基本方針といたしておりまして、国連及び軍縮委員会の場において非核兵器国としての立場から、特に核軍縮、なかんずく、その第一歩としての包括的な核実験禁止の実現を強く主張してまいりました。その主張に当たりまして、わが国がわりに豊富であります地震学的な経験なり技術を活用しまして、その解決のための実際的な提案を行ってきておった次第でございます。  このような努力の結果、一九六三年のいわゆる部分核禁条約が成立しまして、地下以外の核実験が禁止されました。その翌年の一九七四年にはわが国が主張してまいりました段階的なアプローチが取り入れられまして、これが米ソ間の地下実験制限条約一つの契機になったとわれわれは評価しているわけでございます。  このほかわが国は、核軍縮ではございませんけれども、通常兵器の分野におきましても大量破壊兵器の一種であります化学兵器の禁止にも努力いたしておりまして、昨年の四月に軍縮委員会にそのための条約案を提出した次第でございます。わが国のこのようなイニシアチブは、この問題の解決のための審議の基礎を提供したものとして各国から評価されているわけでございます。  それから昨年の国連総会におきましては、たまたまインド核爆発以後の事態、つまり核拡散傾向がこれからさらに強まるのではないかという背景のもとに、核拡散防止問題についての強い問題意識がありまして、わが国が共同提案国の一つになりまして一つ決議案を成立させたわけでございます。  その決議案の骨子は二つございまして、一つはこれ以上の核拡散を防止するために国際的な努力をあらゆる適当な場、フォーラムにおいて、国連あるいは軍縮委員会の場においてそういう努力を結集すべきである。第二に、原子力平和利用についてはこれを促進するけれども、特にインド平和目的という名のもとに行いました核爆発については、むしろその利益を享受するための研究を促進する必要があるのではないか。つまり、その利益の享受を得られることによりまして、非核兵器国がそれぞれ単独に核爆発を行わないという意味決議案ができたわけでございます。次いで、先般のジュネーブで行われましたこの条約の再検討会議におきまして、核兵器国と非核兵器国のいわば責任と義務の均衡という観点から、特に非核兵器国である日本としましては、核兵器国がさらに一段と強く軍縮を進める必要があるということを要請しまして、この会議の最終文書であります宣言の中にその趣旨が反映されておるわけでございます。
  463. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 あなた、いまいろいろごちゃごちゃおっしゃったけれども、私の質問を察知されて、そういうようにあらかじめたくさんやったように言われたんでしょうけれども、これはあなたの方の局からもらったものなんです。これは何を書いてあるかと言いますと、田中代表の国連総会第一委員会における軍縮一般に関する演説では、核軍縮らしいところは一行だけしかない。その次、大平外務大臣の外交演説、これは何が出てくるかというと、「核兵器拡散条約については、その批准に備えて、まず原子力平和利用の分野における他の本条約加盟国との実質的平等性を確保するため、国際原子力機関との間に保障措置協定の締結交渉を開始すべく所要の準備を進める所存であります。」これは七十二回国会における大平演説。長い中にたった二、三行です。また七十一国会における大平外務大臣の外交演説、これは四行、昭和四十八年一月二十七日。それから四十七年一月二十九日の六十八国会における福田外務大臣演説、これもまた延々たる演説の中にはんの数行書いてあるだけです。そうして今度は五十年二月十二日の国連局の、これはいま御答弁になった国連局長の局で私の方へ下すったものでありますが、「わが国努力」というところがある。何をやったかと書いてあるわけです。「核軍縮の重要な第一歩としてわが国は、差し当って先ず核実験の包括的禁止をはかることが、核軍備の現状凍結の最も有効な当面の具体的方法であると考え、その実現に目下最大限の努力を行っている。周知のとおり、地下実験の禁止実現の最大の障害となっているのは検証問題の解決が極めて困難なことであるが、わが国はその高度の地震学的知識を駆使してこの問題解決のためこれまで種々の提案を行って来ており、かかるわが国努力は、軍縮委員会及び国連において高く評価されている。」これだけです。  いま国連局長が自分でもお認めになったように、演説したり、国連総会で多少演説をするということはあった。米ソがいろいろ提案していることにけちをつけたり、多少の小言を言うたりしたことはある。だけれども実際的にやったことは、核実験停止のために日本の地震学の知識を多少お役立てたいぐらいのことしか言うてない。私は、核防条約批准することと同時に、この核防条約には大きないろいろな問題点がある。すなわち核保有国核軍縮であるとか、先ほどからお認めいただいたようにいろいろ問題点がある。それに対してこんな努力の程度でいいかと私は伺いたい。この程度の努力しかできないのか。日本の地震学の知識を応用して多少の提案をした、それが国連で高く評価されている、ここに麗々しく書いてある。これだけしかないんだ、あとはお話ししただけじゃないですか。国連局長努力というのは、もう何ということかと私は言いたい。何もしてないんじゃないかと私はむしろ言いたい。私が言っているのは皮肉でも何でもないんです。何もしてないじゃないですか、お話以外に何をやったというんですか、ソ連アメリカをどう説得したというんですか、何もやってないじゃないですか。後ろ振り向いたって、その人から聞いたんだから何も教えてくれやしませんよ。  こんな議論をしてもしようがないから具体問題で言えば、あなたは一体核軍縮について全然熱意がなかった。その証拠は、外務省の国連局の中に核軍縮室というのがある。核軍縮室はついこの間まで五人だった、お茶くみ入れて五人。軍縮というのは、欧米諸国では、少なくともソ連アメリカのようなところになれば、局以上の大編成をもってこれに臨んでおる。日本でいえば防衛庁並みの組織を持っておる。それほどの大問題。どんなに優秀か知らぬけれども、四人で足りると思っていたのかどうか。最近になってちょっとふやした。しかもそれは正式室員ではない、そしてたかだか九人にふやしただけじゃないですか。私はきのう行って見てきました。狭い四畳半みたいなところに九人が机を並べてぎゅうぎゅう詰めになって、押し合いへし合いしながら深刻な顔をして何かやっておった。この条約が通ったらまた解散するんだと言っている。何だ、この努力は。私は国連局の脳みその中には、核軍縮なんというのは全くないということをこれは示しておると思う。そうでなかったら、少なくとも軍縮課ぐらいになっている。大体軍縮室じゃないですか。そういう編成であったその当面の責任者は一体どうお答えになるのか、うまく答えてくださいよ。核軍縮は、大臣がここで答弁されるのは全体的方針かもしれない。しかし中身何もやってないじゃないですか。地震学的検証とさっき言われたですよ。地震学的検証だって、あなた何もやってないじゃないですか。日本にはいい地震の知恵がありますから提供しましょうかとリップサービス言っただけじゃないですか。それ以上何をやったというんですか。核防条約という物々しい条約を審議しようとしているけれども、あなたのやっていることは、その核防条約という巨大な建物でいえば大建築の中に、あなたはまるでバラック建ての核軍縮政策をもってそれに臨もうとしている。そうしてこの委員会だけ通り抜ければ、たちまちそのバラックまでたたき壊してもとの軍縮室にしようとしている。こういうことでいいかどうか伺いたい。これは担当局長の神経の問題なんだ、考え方の問題だ。そんなことでこの世界的な、世界がつぶれるかどうかという軍縮問題が片づくかどうか考えてもらいたい。あなたはこれでいいんですか、こんなやり方で。国連局というのはお話局なんですか、一体軍縮室はなぜ軍縮室なんですか、なぜ四、五人しか置かないのですか、なぜいま日雇いみたいなのを集めて九人の編成でやっているんですか、核防条約が終わったらなぜもう一回解散するんですか。さあ言ってください、聞こうじゃないですか、あなた。
  464. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 軍縮室は元来国連局に政治課というのがございまして、その政治課の中から特に高度に、つまり軍縮面を中心とした作業班という意味一つのタスクフォースをつくったのがそもそも初めでございます。現在七人おりますけれども、先ほどお話がありましたようにそれ以外に三人の応援を得まして現在十人でやっておるところでございます。もちろん、いまお話がありましたように人間の数あるいは機構、両面において十分な体制にあるとは私自身も思いませんけれども、しかし現在核防条約その他の仕事の関連で、いま三名の応援を得ました十名のほかに、他の省内の局課の協力を得まして現在仕事を進めているわけでございます。この機構の問題、特に機構と定員の問題は省全体の機構、定員との問題も関連いたしますので、私、国連局だけでどうこうという決定はできないわけでございますけれども、ただ従来とも、また今後の仕事の見通しから言いまして、できるだけこれを強化していく必要があるし、またそういうための努力は現在行っているところでございます。
  465. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 じゃどういうふうに強化するつもりなのか言いなさいよ。言葉ばかりじゃないですか。ここは国連と違うんだよ。言いなさいよ、具体的な数字を挙げて。
  466. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 その点は全体の機構改革との関連もございますので、特に軍縮室をどうこうということを切り離していま申し上げることはできません。
  467. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 あの答弁はふまじめですよ。具体論がないならないと言ったらいいじゃないか。全体のが言えなければ言えないと言うんだったら、それじゃあなたじゃ答弁不能なんだから官房長すぐ呼びなさいよ。
  468. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 これは先ほど申し上げましたように全体の問題に関連いたしますので、その点は来年度の予算要求にも関連して目下省内の関係のところと協議をしているところでございます。
  469. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 うまいこと言うけれども、あなたは何もしてないじゃないか。私が外務省の中から聞いてきたのでは、あなたから何も要求なんか出てないですよ。一人だってふやす要求なんか出てないじゃないですか。室を課に直す提案だって私がいま言っただけじゃないですか。どんな要求出したのですか、それなら言ってごらんなさいよ。具体的に何もしてないじゃないですか。こんなことでは核防条約が幾らできたって外務省は何にもできないから私は注意して言っているんじゃないですか。それならこの軍縮室をどうするのか言いなさいよ。人数をどうするのか言いなさいよ。全体的なバランスをどうするのか言いなさいよ。
  470. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 室を課に、つまり軍縮課にするということと、それから人数を定員として五名程度増員してほしいということで一応局としての意見が固まりつつございます。
  471. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 じゃ全体のバランスがとれないから、全体計画の問題がはっきりしなければいま言えないというのはどういうわけなの。あなたはさっきは言えないと言って、いまべらべら言っているのはどういうわけなの。どなられたら言うのですか、あなたは。
  472. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 これは実はまだ局だけの中のあれでございまして、全体としてどうするかということは、官房を中心にして相談しなければなりませんので、まだ外部に発表する段階になっていないということで実は先ほど差し控えさせていただいたわけでございます。
  473. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は言うけれども、国連局長はもう核軍縮に徹底的に不熱心なんだ。だから私は言っているのですよ。あなたにいま一つずつ聞きますよ。じゃあなたは、この地震学の問題で核防条約に対して、核軍縮に対して日本がどういう貢献をしたか、具体的に言ってごらんなさい。地震の機械を何丁持っていって、博士を何人連れていって、どういうふうに貢献したのか言ってごらんなさい。何も言えないでしょう。後ろから聞いていいから、聞いてごらんよ。何もしていないのだ、全く、本当に。ふまじめ通り越しているのだ。職務怠慢だよ、そんなの。こんなのに仕事をやらすのだから、全く。
  474. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 専門家でございませんので、その地震の(渡部(一)委員「あなたが専門家でなくて、何だ」と呼ぶ)機械その他という御質問に対してはお答えできませんけれども、ただ、事実関係としてどういうことをしたかということだけ申し上げさせていただきます。  まず一九六六年にスウェーデンで主催しました核探知クラブに参加しましてから、二年後の六八年にこの会議にもう一度参加いたしております。それから六九年に……
  475. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 参加したからどうしたというのだよ。具体的なことを何をしたかと聞いているのだ。答弁不能ですよ、あの人は。こんなのが局長かと思うと嘆かわしいけれども、調べるように言ってくれませんか。私がなぜ言うかというと、核防条約というのは大変な条約です。だけれども、実施機関があんなにだらしなかったら、核防条約結んだって何したってノックアウトなんだ。話もできない。国際的に物笑いになっていることを私知っているから言うのじゃないですか。地震学において大きな貢献をしてもてはやされましたと、下原の書いた論文そのまま読んで平気な顔をしておる。地震学の何で貢献したのだ。それも知らないじゃないか。そんないいかげんな核軍縮政策でこの委員会が通ると思っているのかね、君は。調べ直したまえよ。
  476. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 地震学の貢献と申しますのは、大筋に申し上げまして、通常の地震による探知、それから核実験による地震波による探知、これが科学的にやはり分析できる、しかもそのマグニチュードもある程度わかるという観点から、実は検証問題で国内査察について非常に反対をする国がございますので、地震学的な方法によってその核実験が行われたかどうかということを探知することが主眼でございます。それに対していろいろな科学的な、特に日本で従来ありました地震学に関する研究をこれに適用するということによって核実験を探知する方法、どうやって国際的に――少なくともスウェーデン、日本あるいはカナダ等の、わりにそういう地震学的な技術において先進国の間で共同して、大体これであれば大丈夫であろうという方法を探求するクラブでございます。
  477. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 外務大臣、こういう答弁を聞いておられてもあきれ返られるでしょうけれども、ふだん体裁をつくっておる局長がいかに核軍縮の問題に熱心でないかということはこれでおわかりだろうと思うのです。外務省に課もあれば局もたくさんありますし、用事もたくさんあるのはわかっております。しかし核の戦争を起こさないというのは重大問題なはずだ。こんな不熱心な局長でいいのでしょうかね。何も知らないのだ。知らないどころじゃない、やる気もないのだよ。勉強する気もないのだ。具体問題全部知らないのだ。地震の探知法なんかアメリカソ連もドイツもフランスも全部知っておりますよ。日本が出しゃばらなくたってみんな知っていますよ。たまに演説をして、日本が初めて演説したからみんなほめてくれただけじゃないですか、お世辞のために。核政策に無関心で、白痴のような顔をしていた日本代表が、たまたま地震の問題についてちょっと一言言ったから、みんながほめてくれたんじゃないか。幼稚園の生徒をみんながほめてくれたのと一緒じゃないですか。それを麗々しくこんなものに書いて、みっともないと思わぬのかね、君は。そのほか何をしたというのですか。日本核軍縮政策がない。私は本会議の席上で質問しました。核軍縮の政策がないということは、現実の外交政策の主要な一本の柱が抜けていることを意味している。いままでのやり方でよかったのかどうか言ってごらんなさい。あなたがいままでの核軍縮政策の組み立てばめちゃくちゃでした、これから反省してしっかり組み立てますというなら、私この問題については質問をやめてもいい。これがりっぱだというならまだまだ私は聞きますよ。さあ、言ってごらんなさい。
  478. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 いままでやっておりました軍縮関係の仕事がりっぱであるとは毛頭思っておりません。いつも、単に人員、機構が不備であるということだけでなく、やはりこの軍縮問題に対する取り組み方が日本のいま置かれた地位から言いまして必ずしも十分であるとは思っておりません。しかし与えられた条件のもとにおきまして、限られたメンバーでございますが、みんながベストを尽くしてきたということだけは申し上げられると思います。
  479. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そんなよけいなことを言うから、それじゃもう一回聞くよ。限られたメンバーにしたのはだれなんですか。責任は大蔵大臣か外務大臣かを局長、答えなさい。それとも自分なのか、総理なのか、言いなさい、ここで。
  480. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 私が約二年ほど前国連局に参りましたときに、すでに軍縮室はございましたけれども、人数は現在よりは少なかったということを覚えております。それで、わずかではございますが、その間若干ながらふえました。しかしそのふえ方あるいは機構の面で必ずしも十分でないことは、やはりこれは主として私の責任であろうと思っております。
  481. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 これだけ私が言わなければわからないほど日本の核政策というのはめちゃくちゃだ。だから私はやかましく責任者を追及したのです。これは職務怠慢で済まないのです。前にあなたが来たときは四人だった、お茶くみ入れて。いま七人になったんです。パーセンテージにしたらすごくふえたのです。あなたはパーセンテージで言いたいんでしょうけれども。ある程度より機構に力を入れてないということは、もうむだを通り越しておる。だから私はいままで何回か外務省から日本核軍縮政策についてとろうとした。そうしたら、わからないという。もっとひどい話を申し上げると、SALT協定、米ソ間で必死の交渉をしている真っ最中のSALT協定について私は資料要求をし、SALT協定の内容について、また世界的な批准について資料要求をした。そうしたら、SALT協定についてはほとんどわかりませんという答弁が来ただけだ。私は質問不能になったことがある。そうでしょう。SALT協定の中身も知らないのでしょう。新聞記事の方が詳しいですとそのときにこの軍縮室長は述べた。これは人数が少ないだけではない。予算を使う権限も与えられてないという証拠じゃないですか。そしてアメリカ政府との間では情報交換がしょっちゅうできるのに、そのアメリカの情報さえもらってかいということを示している。SALT協定の中身もわからぬでいま核防条約を論議しようとしている。そしてそこに、あなたは答弁席に平然として座っている。その席は一体何ですか。どういうつもりでそんなところにあなた座っているのですか。政府はこの核防条約の審議に当たって、核軍縮措置をとることが重要だ、本条約目的実現のために必要であるなんて述べている。何するのですか、一体。材料も集められないものが政策が立てられるか。機構も十分でないものが立てられるか。予算のないものが立てられるか。SALT協定もわかってないやつが立てられるか。答弁しなさい。
  482. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 SALT協定について申し上げますと、これは当然のことながら米ソの高度に機密に属する軍事交渉でございますので、その内容をわれわれとして知る立場にございません。
  483. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 何を言っているか。それではほかの局長に伺いたい。条約局長お答え願いたい。新聞の情報以上に外務省は知り得ないところかどうか、聞かしてください。
  484. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 もちろんSALT協定の内容の秘密にわたる部分については私ども知る立場にございませんけれども、いろいろSALT協定の持つ意味でありますとか軍縮の中における位置づけ等については、私どもは私どもの知り得た範囲内においての検討はいたしております。
  485. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それじゃ新聞紙以上知り得ないなんてどうして言ったのか、説明しなさい。国連局長説明してください。説明できないならあやまりなさい、あなた。職務怠慢通り越しているじゃないか。
  486. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 先ほど私の御説明申し上げましたことは、米ソ間の交渉であるだけに、その内容をそのままの形で知る立場にないと申し上げましたので、先ほど条約局長申されたように、新聞記事云々ということは私は申し上げたつもりはございません。
  487. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 委員長、先ほどからの質疑を聞いていただけばわかるとおり、国連局長は私の質問に答弁する余力を失っております。この扱いは理事会においてお計らいを願いたい。時間ばかりかかって何も答弁が出てこない。そして大臣に伺ったら、これは総括的な一般論にしかならない。答弁が全然出てこない局長、そして核政策の全くできてない国連局、そして対応能力のない軍縮室、予算もなければ人員もない軍縮室、これで審議ができるでしょうか。委員長、これどうお考えでしょうか。
  488. 栗原祐幸

    栗原委員長 ちょっと速記をとめて。
  489. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をつけて。外務大臣
  490. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどからいろいろ御注意もいただき、御叱正もいただいて恐縮の次第でございます。確かにこの軍縮という大きな問題の重要性から考えますと、人員、予算等々十分でないということは、これは結局私にも責任のあることでございます。今後十分、ただいま御指摘の点も心に入れまして、できる限りこの大きな問題に十分な陣容をもって対処できますように、私といたしましても努力をいたすつもりでございます。
  491. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 はなはだ不本意でありますが、その外務大臣の御答弁を信用することにいたしまして、先へ進んでいきたいと思います。ただ、核軍縮政策が全くなってなかったということだけは、十分御認識をいただきたい。もう本当に質問するのが物憂いような結論がこれから出てきます。  それで私は、せっかく科学技術庁長官がここにお見えになっているのに、一つも聞かないで、話が進みもしないから、科学技術庁上長官に関する部分を少し先にやらしていただきたいと思うのです。  まず、通産省の方に伺いたいのですが、電力の需給の長期見通し及びそれにおける原子力エネルギーの問題についてお尋ねをしておきたいと思うのです。  科学技術庁長官は、本核防条約が、原子力産業の育成の立場からもあるいはエネルギー需給の観点から言っても、重大である旨御発言をなさいました。核防条約批准すれば、本当にエネルギーの上で確保されていくのかどうか、私は深い疑いを持っている一人であります。したがって、その観点から伺います。  まず、通産省から、エネルギーの長期需要計画並びにそれに占める原子力エネルギーの必要とされているパーセンテージ、電力換算キロワット等を、恐縮ですがわかりやすく御答弁をいただきたい。
  492. 松尾成美

    ○松尾説明員 ただいまの御質問でございますが、私どもが現在利用できます一番新しい、と申しましても昨年でございますが、電力の長期見通しに関する数字といたしましては、電気事業審議会というのがございますが、これの需給部会の中間報告というのが、昨年八月二十二日に出されておりまして、これで昭和六十年までの見通しをやっております。これによりますと、いろいろな数字がございますが、一番わかりやすい数字ということで設備の童で申しますと、昭和四十八年というのは基準年次でございますが、この当時で必要とされる設備量で申しまして、八千四百十七万キロワットというのが全体でございます。これが五十五年には一億五千八百九十二万キロワット必要になる。六十年には二億二千万キロワット必要になるというのが全体の見通しでございます。それで、この当時の見通しでは、原子力が四十八年には二百二十八万キロワット、全体に対して二・七%というのが、五十五年には二千百八十三万キロワット、パーセンテージにしまして一五・六%になり、六十年には六千万キロワット、二七・二%になるという見通しになっております。  なお、この六千万キロワットという数字は、原子力委員会で決定されております、原子力開発利用長期計画で挙げられております六千万キロワットという数字と同様でございます。
  493. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そこで、原子力に対する依存度は、四十八年度全体の数量の中の二・七%、五十五年で一五・六%、六十年で二七・二%と急上昇するようにここで指定をされております。しかし、現実から言うとどういうことになるか、私はそれを明確にしたいと思うわけであります。  科学技術庁長官はもうつとに御承知でありますから私言う必要もないと思うのですが、逆転中の原子力発電所の出力、科学技術庁から提出された資料を私いま手にしております。五十年六月五日現在。それによりますと、日本原子力発電の東海発電所は十六・六万キロワットアワーの認可出力を持ちながら、六月五日の出力は十四万キロワットアワーであります。敦賀は三十五・七万キロワットアワーでありますが、ゼロです。東京電力の福島第一原子力発電所は四十六万キロワットアワーの認可出力を持ち現在ゼロ、第二は七十八・四万キロワットアワーの認可出力を持ちながらゼロ、関西電力の美浜第一は三十四万キロワットアワーの出力を持ちながらゼロ、第二は五十万キロワットアワーでゼロ、高浜の第一は八十二・六万キロワットアワーを持ちながら四十五万キロワットアワー、中国電力の島根原子力発電所は四十六万キロワットアワーで四十六万キロワットアワー、合計しますと、認可出力は八基で三百八十九万三千キロワットアワーで、百五万キロワットアワーである。つまり四分の一ぐらいなんですね、四分の一しか出力は出ていない。これはもうどうしてこんなになっておるのか。しかも試運転中のものも、一向に試運転がうまくいっている気配がない。その上、今後の原子力発電所の設置見通しは全く暗い。したがって、いま通産省がお述べになったようなこういう膨大な原子力エネルギー依存政策というものは、ほとんど絵にかいたもちになろうとしつつある。つまり、核防条約関係がなく、原子力発電所という欠陥商品のために原子力発電は不能になりつつある。そしてその上、ウラニウムの安定供給については、これから後に議論をいたしますが、日米原子力協定、日仏原子力協定等を参照いたしましても、そういった条約のもたらす安定的供給というのは問題がある。そうすると核防条約云々の前に、これほどまでに原子力発電に対する状況が悪いのに、科学技術庁長官は、核防条約さえサインをすると日本原子力エネルギーがたっぷり供給されるかのごとく発言された。それはいささかオーバーな御発言ではないか、少なくとも非常に誤る印象になったんではないかと思うのですね。私の議論をわかりやすくするためにいま一括して申し上げ、また専門的お立場にある科学技術庁長官に対して失礼な言い方をいたしておるわけでありますが御容赦いただくといたしまして、こういう状況にある。そうするとどうも話が大分違うのじゃないかと私は感じた。この辺はいかがお考えでありますか、その原因は何だとお考えになるか、そしてその原因を除去するために今後どうされるおつもりなのか、お伺いしたいと思います。
  494. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 まず、先ほどお話のございました昭和六十年度六千万キロワットという目標がただいま御指摘ございましたような現状からして可能かどうかという問題でございますけれども、現状の建設状況あるいは立地状況等からいたしまして、六十年度六千万キロワットという目標達成は大変困難だと考えております。もちろん詳しい話はする必要もないほど渡部先生はよく御承知でございますが、ただ、いま検討中ではございますけれども日本エネルギー全体の中で原子力発電はどういう地位を占めるべきかというゾルレンと申しますか、こういう点は油の状況以来、あるいはクリーンなエナージーと申しますか、将来の核融合とか水素あるいは太陽エネルギー等に頼る二十一世紀初頭までの間のエネルギーの補てんとして、日本としては現状からして何を考えていくかということになりますと、ただいまの段階では核分裂による原子力発電に頼らざるを得ない、期待を持たざるを得ない、この必要性のあることは申すまでもないことと存じます。ヨーロッパを初めアメリカでも大きく原子力発電に、しかも同じ軽水炉に依存しながら開発を進めていくように承知しておりますし、日本におきましては、さらにその必要性が強いわけでございますけれども、しかしいままで立てました六千万キロワットすら達成が困難だというその根本原因は何ぞやと申しますと、これは一にかかって、今後の建設におきましてはサイト、立地の問題でございまして、その立地の困難性の根本は原子炉の安全性の問題に対する不安、不信にあるのは明瞭な事実でございます。したがいまして、去年の「むつ」の問題以来原子力行政全般に対する再検討をただいま内閣で行いつつございますし、また安全性に対していままでの態度を一層強化し、あるいは改善を加えてどういうふうに進んでいくかという問題に対しては、原子力行政の最大の重要事項としてただいま取り組んでおることは御承知のとおりでございます。したがいまして、安全性の問題が、研究あるいは監査、検査あるいは国民の理解、協力、こういったような問題である程度達成してまいりませんと、早急に立地が決まり、建設もどんどん進んでいくというわけにはなかなかまいりかねるような状況でございますので、先ほど来申し上げましたような六千万キロワットの目標達成が大変困難だというふうに考えてございます。  現在の完成した原子炉がどうして稼働率が悪いのかというもう一つの御質問でございますけれども、これは実際に立地いたしましていま稼働しておるわけでございますが、その稼働率の悪い一番大きい原因と申しますか、これはいわゆる重大事故ではございませんけれども故障が予想以上に起きまして、その故障の主なものはパイプの亀裂とか溶接部分の割れ目とか、そういう材料あるいは品質等からくる、またそれに対応する技術的な未経験、未熟と申しますか、そういう点からいたしまして炉をとめて検査をして補修するという現状がたくさんございますので、お話しのように現在の運転率が悪いのでございます。  しからばなぜそうなっているのかという問題になろうかと存じますけれども、御承知のように、発電炉は英国型のコールダーホール的なガスクーリングの炉もありますれば、あるいはカナダのような垂水中心の発電炉もございます。しかしアメリカ日本ソ連あるいはヨーロッパの英国を除くほとんどの国は、挙げて軽水炉に頼っているのは御承知のとおりでございますし、その軽水炉が、たとえばドイツ等では同じ軽水炉でありながら、稼働率はそんなに低くないじゃないかという各国との比較等もございますけれども、なるほど軽水炉に対する日本独自の安全研究と申しますか、この点は確かにわが国はまだ不十分でございまして、いま鋭意整備をし、先ほど申しましたように研究も緒につきまして、だんだん実を結びつつございますけれども、これはあくまでもこれからの炉に対する一つの配慮でありまして、現在つくりました炉は、稼働率の悪いのは挙げて先ほど申しましたような材質とか肉質等の放射線等に基づく損傷等が主な原因でなかろうかと私思っております。  本質的な安全という問題に対しましては、これは御承知のように発電炉そのものが爆発するわけでもなし、また第三者に被害を加えあるいは環境を汚染する事故は起こり得ないことは明瞭でありまして、世界でも何百という炉が動いておりますけれども、しかしまだそういう事故は起きたことはございません。その前の故障が起こりまして、コールダーホール炉、初めはいろいろ故障がありましたけれども、いまはほとんど故障なしに無事故で東海でフル操業しております。ですから、だんだん経験を積んでまいりますれば、こういう稼働率の低いのも順次改善されていくのじゃなかろうかと考えております。  少し長くなりまして恐縮でございました。
  495. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 科学技術庁長官は非常に苦衷に満ちた御答弁をなさったんですが、この際、外務大臣もよく聞いておいていただきたいのです。  それはこれなんです。「核兵器拡散条約批准問題」、これは外務省情報文化局というところが出しておる。ふだん何にも仕事しないのにこういうときだけ張り切ってこんなものを出すので問題になるのですが、この中に「原子力平和利用の高度化にともなって、こんごわが国が求める国際協力の内容は、原子力エネルギーの軍事利用にもつながる高度の技術がからむことになります。したがって、核兵器拡散条約に参加してもしなくても変わらない、というようなことはいっておれません。条約批准によって核問題に対する基本姿勢を明らかにし、その利点である原子力エネルギー平和利用の恩恵を最大限に活用するよう努力することが大切です。」こう書いてある。一見何ということもない文章ですし、そのとおりだろうとも私は思います。しかしこの中には、日本原子力発電所問題が、稼働率は一方では低い、一方では濃縮ウランの供給について問題がある、一方は技術的に非常に低い、大問題を抱えていることを故意にネグってこういうふうに書いてある。私は、こういうことで核防条約を推進する理由づけをするということは不稔当ではないかと思っておるわけです。  そして、いま率直にお話しくださいましたから、私も途中のお話をずいぶん省略できるわけでありますが、ともかくいま原子力行政の基本的問題、つまり安全性に対する国民の納得というのが全く得られていない。そうして「むつ」はもう右往左往して、原子力船の「むつ」は日本じゅういま居場所がどこにいくかわからなくて、漂泊状態である。そうしておいて、「むつ」開発は今後も継続するということが突如として表面化してくる。そしてその「むつ」の行き場所というものをいままで科学技術庁長官がおっしゃるのじゃなくて、元総務会長なる某代議士が、新母港が八月に決定されるなどといきなり言う。もう何事かと言いたいような原子力行政の乱れがある。科学技術庁長官の面目まるつぶれのような発言が続いておる。しかもその原子力関係の問題は、科学技術庁長官原子力委員長を兼ねておるという奇怪な組織のおかげで、分析研究所のインチキ問題であるとか、科学技術庁当局の汚職事件であるとか、放射能物質管理がずさんで、やたらと放射能物質がそこらじゅうにおっこっているとか、原子力委員会の内紛があるとか、原子力発電所の故障が一向に突きとめられないでごたごたしているとか、「むつ」の問題が起こるとか、ちょっともう想像を絶するほどの官僚機構の欠落、欠陥というものが露呈している。  ですから、私、もうこんな細かいことを言うのはなにかと思ったのですが、長官、ここには科学技術庁の方からいただいた五十五年までの年度末設備容量というのが書いてある。それを見ますと、ここには千六百六十万キロワットアワーとこういうように書いてあるのです。ところが、先ほど通産省の方でお答えになったのは二千四百八十三万キロワットアワー。二千四百八十三万キロワットアワーというのを堂々とおっしゃったのです。科学技術庁と通産省、二つのお役所で多少の意見が違うのはわかるけれども、こんな、七百万キロワットアワーも見通しが違う、五割から違うのですね。こういうのはでたらめの部類に属する。ちょっとやそっとの差じゃないんですから。それで調整もしないでこの委員会に出てきてバーンとお話が行われる。私はそれはもう非常にどうかと思うのですね。  だから、いま原子力行政それ同体について立て直しの時期が必要なんじゃないか。まさに科学技術庁長官はそのいいタイミングでその能力をふるわれるときが来たと私は期待しておるのです。だけれども、ちょっとひど過ぎませんか。資料が、通産省と科学技術庁と出してくるのが全然違う。原子力エネルギーの見通しが全然違う。これはどういうわけですか。ちょっとこれはまずくないですか。こういうのは打ち合わせなすったらどうですか。
  496. 半澤治雄

    半澤政府委員 科学技術庁からお出しした資料で千六百六十万キロワットという数字は、すでに許可を行いまして、現実に運開時期が五十五年度までに見通される数字を千六百六十万キロワットと申し上げておりまして、二千四百万キロワット余の数字は計画を織り込んだ数字でございますので、つまりこれから許可申請等が出る可能性のものも含めた数字でございます。
  497. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それも違っていますよ。言い直されたらどうですか。
  498. 半澤治雄

    半澤政府委員 計画の数字は御案内のように昨年の八月に見通した数字でございまして、千六再六十万キロワットというのは現在の時点でとらえて許可がすでに行われた原子炉であって、かつ逆転開始の時期が現在時点で明らかになっているものが千六百六十万キロ、そういう数字でございます。
  499. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうして、しかもあなたは設備容量がこう見込まれているとおっしゃいましたけれども、この中ではいま着工で大もめになっているところがたくさん入っているじゃないですか。こんな千六百六十万キロワットアワーなんという科学技術庁の低い見通しでさえ、うまくいかないでしょう。そうでしょう。なぜこんな大きな数字を出すのですか。だから通産省の資料が大でたらめとすれば、科学技術庁の出した数字は相当のでたらめということができる。これは委員会審議に対してはまことに不見識ですよ。だから両省庁、いま説明してもそれはむだでしょうから。ここで説明しても、とてもし切れないような問題がたくさんある。少なくとも、原子力行政について、今後の見通しを一番シビアなところと一番希望ができるところと上下限などを設けて、通産省と科学技術庁原子力局との間の調整ぐらいはできないものですか。
  500. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 六千万キロワットの長期展望をつくりましたときと現時点では、経済の情勢やら電力に対する需要あるいは省エネルギーと申しますか、いろいろな面で非常に変わってきているのは御承知のとおりでございまして、そういう点も踏んまえまして、ただいま総合エネルギー対策閣僚懇談会というものをつくりまして、関係閣僚が集まりましてそういう問題を検討中でございます。今後の経済の見通しの一番基礎になるのが、制約条件になるのがエネルギー問題じゃなかろうか。したがって、そのエネルギー問題を策定して、その上で今後の経済の見通しやら大きい経済政策等を立つべきだということでいま検討を始めている最中でございまして、ただいま出ました数字は、前の六千万キロの当時から通産省で出しまして、現状を踏まえつつ考えますと先ほど申しましたような数字になります。  ただ、私どもが現在設置許可等をいたす関係上、現実に見通される状況は、私の方から出しました数字が五十五年に関しましては、現状をもってすれば大体そういうふうに見込まざるを得ないという状況になっておりますので、その問におのずからスタンドポイントとでも申しますか、違いがございますので、そういう差が出てきたことだと存じます。くどいようですけれども、内閣の懇談会が順次進んでまいりますと、おのずからその調整もとれまして、はっきりした目標が決まってくるというふうに実は考えてございます。
  501. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしたらこの問題につきましては、早急に両方の情報を調整されまして、資料として当委員会提出されるように望みます。そうでないと私は何を相手にして議論していいかわからない。どうもきょうはそういうちょっと荒れぎみのあれで、私はもう意欲をはなはだ喪失しておるのですがね。  委員長、両省庁に対して、原子力エネルギーの需給問題に関して参考資料を統一されて、統一的な資料を当委員会に審議資料として提出されるように要請をお願いします。
  502. 水野清

    ○水野委員長代理 ちょっと速記をとめて。
  503. 水野清

    ○水野委員長代理 速記を始めてください。  御要求の資料は、次の委員会までに提出いたします。
  504. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 科学技術庁長官に率直な見解を伺いたいのですが、科学技術庁長官が大変御苦労されたのは私もよくわかっているつもりです。しかし、科学技術庁長官原子力委員会委員長を兼ねておられるというこのシステムの中では、責任というか、自分が自分を取り締まらなければならぬという奇怪な状況になっておられますでしょう。正直言ってそれはどう思われますか。これはやりいいですか、やりにくいですか。大げさな例で言うと悪いですけれども、あなたは交通整理をしているお巡りさんとそれから交通違反をしかかっているタクシーの運転手との両方を兼ねているような立場にいらっしゃるのです。原子力委員会委員長というのと科学技術庁長官というのは、職責はおのずから異なるのですね。だから、ある場所になると猛烈に弁解しなければならない、そして、当委員会では弁解する、そして、本庁へ帰ると科学技術庁長官として、取り締まりにかかる、こういう妙な一人二役をやらなければならない。これは、あなたの良心の上からも、ジキルとハイド風のギャップを感じておられるだろうと私は思うのですね。やりにくいのではないかと私は心配しておるのです。これはどうお考えですか。
  505. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 おっしゃる意味は、プランニングと実施と申しますか行政というふうな区別じゃなくて、いま問題になっております原子力開発と安全とを中心にした規制との関係をどう考えているかという御質問かと存じますが、そういうことでよろしゅうございましょうか、そういう意味の答弁で。  それではそういうふうに私、理解いたしまして答弁申し上げたいのでありますが、去年の「むつ」以来、先ほど申しましたように、原子力行政全般に対して、特に原子力委員会まで含めて、これをどう処置すべきかということで、ただいま有澤広巳氏が首班になりまして検討中でありますことは御承知のとおりでございます。その一番の中心問題は安全面でございまして、その安全に対して、いままでの原子力委員会あるいはそれの事務局的な存在である原子力局等の行き方は、開発にややもすると重点が置かれて、安全行政の方が少し手落ちではなかったかというふうな観点も指摘され、あるいは開発するその自体がみずからの開発のものを規制するというのは、非常に信頼が遅きがたいのじゃないかというふうな議論もございまして、これは分離したらどうだろうという議論がございました。さしあたってわが庁内の原子力局を二つに分けまして、おのおの充実していくわけでございますが、原子力安全局というものを今年度の予算で特別にたった一つだけ――局課は一切新設は認めぬという中でたった一つだけお認めいただきまして、ただいま国会で御審議をちょうだいしているのは御承知のとおりでございます。  ただ、それだけで事足りるかと申しますと、一つアメリカの例を申しますと、この一月に、アメリカではいままでの長い間の原子力委員会を解体いたしまして、そして安全問題に対する規制委員会が非常に膨大な機構で新しくできました。そして、開発の方はむしろほかの電力その他とエネルギー省と申しますか、一緒になりまして、その方でつかさどるように分解いたしました。わが国でもそういうふうな行き方がいいのじゃないかという議論が一方にあることは事実でございます。しかし、同時にまた、原子力開発というもの、その本質は、安全をいかに確保するかということにあるのだという議論もございまして、まさしく原子力自体の本体は原子力エネルギーをいかに制御するかというところにあるわけでございますから、おのずから安全の仕組み等を研究を深めていくのが原子力開発の本体であることは間違いございません。したがって、安全問題と開発問題を切り離すということは、これはどうも理論的にも現実的にもおかしいのではないかという議論もございます。したがって、各国では、特にヨーロッパの方ではそういうふうに規制と開発を分けないところも相当数ございます。そういう点を踏まえまして、これは原子力委員会みずからの問題ではございますけれども原子力委員会自体が自分で判断するよりは、もっとハイクラスと申しますか、大所高所から問題を判断できる別の機関をつくって、そして行政改革をしようじゃないかということで、先ほど申しましたように、有澤機関をつくりまして、ただいま検討中でございます。おそらくこの秋には結論が出てまいります。その結論に従いまして、先ほど御指摘ございましたように、安全の規制と申しますかその問題と原子力開発の問題を、原子力委員長あるいは科学技術庁長官として一つの身で持っているのは矛盾しはせぬかという御指摘は、まさしくそのことずばりでございまして、それをどういうふうに今後アウフヘーベンしていくか、これからの問題だと思っております。
  506. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 長官はきょうはもうずばずばおっしゃっていただきましたから、私も議論がしやすいのですけれども、確かに原子力委員会委員長としておられるという立場と、それから原子力の安全性を確保するというお立場とは大分違いがある。それで、はなはだしい問題に至っては「むつ」の後始末の問題について、科学技術庁長官お話しにならない間にどなたかほかの方からしゃべる、ほかの人が飛んで行くというようなことで、あなたはまるで加害者同盟会長みたいに後ろに座っておられる。まるで安全の問題はだれか別の人が交渉してやっておるみたいなおかしな、システムとしても妙なかっこうになっている。これはもう明快に、原子力委員長というのは科学技術庁長官の職とはなじまない、分けるべきである。科学技術庁長官原子力委員長を兼ねておられると、大所高所から問題というものを判断できる能力を失ってしまう。そして、また科学技術庁長官は、失礼ですけれども、非常に短期間にかわられる。一貫した原子力行政については多分に問題がある。また民衆の意見を聞くという点において、現在の原子力委員会の機構、科学技術庁の機構は、それ自体が非常に住民側の猜疑心の的になっている。こういった点を考えますと、原子力委員会を分離し、原子力委員会の機構を開発と安全に真っ二つに分けて、別の委員会を組織するなり、そうした抜本的な考え方を持たれるのがいいのではないかと私は思っているわけであります。いまお話しになった点、私はもう少し徹底的に考えているわけでありますが、率直に言って、難問を多数抱えておられる長官に深く私は同情いたしている立場から申し上げておるのです。その点どうお考えでございますか。
  507. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 渡部先生は科学技術特別委員会委員長を長くお務めなさいましたので、よく事情はおわかりのとおりでございますが、ただ、ちょっと誤解を招くといけませんので、ただいま名前が出ました鈴木前自民党総務会長との関係を申し上げたいのでございますけれども、去年の十一月「むつ」の問題が生じまして、「むつ」が海上に漂流し、どうして陸奥湾に入れるかという、大変大げさに言えば世界で注目を浴びた問題が生じました。これを恐れましたのが御承知のように鈴木総務会長でございまして、政府の代表として特別に任命されて現地に乗り込んだわけでございます。その結果、青森の知事あるいはむつ市長、県漁連会長、四者の間に話がまとまりまして、それを持ち帰って閣議でこれを了解し、ただいま実施に移しているのは御承知のとおりでございまして、そういう関係もございますので、私が長官を拝命した際、鈴木先生のところへ参りまして、実はこの問題を片づけたのは鈴木さんであることは間違いないし、といって、また今後この問題を処理するに際して、その当時の状況をよく心得て、重要性も考え、あるいはまた書面にも出し得ないようないろいろ機微にわたる問題もあったでしょうから、そういう点も踏まえ、かつまた漁業問題に対しては日本の最大の権威者であることは御承知のとおりでございますので、今後の母港を決める等になりますとどうせ漁業問題が一番中心になってまいりますので、どうぞ私どものいわばこの問題に関する相談役あるいは指導役となって、ひとつ一緒に指導していただきたいというお話を申し上げまして、それは自分も責任ある問題でもございますから、また私どもは同じ会派の人間でございますので、それでは一緒にひとつ手伝ってあげようじゃないかということで、実は手伝って一緒にやっているような問題でございます。  御承知のように、この母港の問題は単に中央政府が決め、あるいはこれを地方の県会あるいは市町村長、あるいは町会等に話をつければそれでよろしいかという行政サイドだけの問題で片づかぬ問題がございまして、国会でもしばしば問題になるように、これはそういう権力づくで決めないでもらいたい、あくまでも地元の漁民その他の理解を得て、そうして納得づくでこの問題を片づけてもらいたいというのが各党からの御希望でございますので、そういう点を考えますと、ますます鈴木さんのようなベテランの方、あるいはお決めになった方のお力添えが必要なものですから、実は御協力をいただいておるわけでございます。したがいまして、先ほど申しましたように、私ども知らぬ間に鈴木先生のお話が出たということじゃございませんでして、その八月中旬とか下句とかいったような問題は私も承知はしておりませんが、しかし、先生自体には自体としていろいろ私どもとまだ話し合わない問題もあろうかとも存じますし、ときどきお会いしては一緒に御検討いただいておるわけでございますけれども、決して官庁としての本来の行政の分を忘れて進めているわけではございませんので、どうぞ誤解がありましたらお解きいただければ幸甚と存じます。  それから原子力行政の、特に原子力基本法で自主、民主、公開という原則があって、その民主的な運営とは何ぞやといいますと、何といっても原子力委員会的な存在で問題を処理しろというのが根本思想かと存じます。したがいまして、原子力委員会の性格をいまのような諮問機関のような性格でよろしいか、あるいはそれでなくて、渡部先生のおっしゃるような一つのはっきりした行政機関として持った方がよろしいか、これも実は非常に問題のあるところでございまして、また科学技術庁長官原子力委員長を兼ねた方がよろしいか、あるいは全然別個の方がよろしいか、これも大変議論のあるところでございます。  どうして委員長科学技術庁長官が兼ねたかと申しますと、私が当時この問題を扱った張本人でございますから、記憶をたどってみますと、どうも原子力委員会だけで物を決めた場合にそれが閣議に映らない、あるいは予算の獲得等に映らないということでは、せっかく決めたことも実を結ばぬのじゃなかろうか。といって、原子力委員会そのものが諮問機関というような性格であるにもかかわらず、行政全般を自分で決めて、そして拘束するということになりますと、責任内閣制の立場からして、現在の憲法上それは少し疑義があるじゃないかといったようないろいろの問題がございまして、ただいまのような性格のものになっていると私、承知してございます。したがいまして、いままで長い経験も経たことですから、今度の原子力行政を変える際には、そういう権限問題等もどうしたら一番よろしいか等も兼ねて、恐らく結論が出ることというふうに期待しておる次第でございます。
  508. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この議論はすさまじい深いいろいろな疑義がありますから、それ以上私も余り深追いをするつもりもありませんが、長官に一つだけ厳重に意識していただきたいことがある。  それは、国務大臣として宮澤外相にもお聞きをいただいておきたいのですが、原子力発電所はもう当分日本ではできません。これは、私は住民運動にある場合は非常に接触をよくしており、原子力問題について多少いろいろな相談も受ける立場の一人として申し上げるのですが、今後十年間、原子力発電所は一基も立たないでしょう。そして、立つとしても流血の惨を巻き起こすことでありましょう。それは、そういう現状にあることを希望的観測でなく、むしろシビアに受け取っていただきたい。そうしないと、もう原子力発電そのものについてはいま大きな疑いが抱かれている。われわれもその疑問を晴らすことができないでいる。それは機構的に晴らせないのと、原子力行政それ自体のやり方としてだめな場合と、両方ありますけれども、私はまず機構からだめである。要するに安全だという部局がない。安全ですと民衆に説得できる組織がない。これはもう致命的な欠陥であるということだけは指摘しておきたいし、両大臣にぜひともこれは深刻な反省をして、知恵を出していただかなければならないと私はこの場から正式に申し上げておきたいと思うのです。  ですから、こんなことなら「むつ」で鈴木代議士と一もう名前をおっしゃいましたから私も申し上げますが、一緒にお手伝いくだすっていろいろおやりになるというのは、非常に麗しい友情のあらわれであろうと私も理解をしております。しかし、ここに見ますと、これは新聞記事が必ずしもそのとおりかどうか、私は確認したわけではありませんけれども、ここで私が手に持っている記事、六月十三日の某紙の記事によりますと、「鈴木善幸代議士は十二日、「むつ」の新母港について、青森県漁連の植村正治会長らに「八月末までには結論を出すので、年内にも「むつ」は新母港に引き取れると思う」」と明確に述べておられる。「これに対し鈴木代議士は、佐々木科学技術庁長官、井出官房長官、大平蔵相とも話し合ったうえでの見通しとして「八月決定-年内引き取り」の線を示した。」ここまで言っておられる。ぱんとおっしゃっておる。それで漁連の代表はその後、今度はあなたのところに来られておる。そうしたら長官は、新母港決定がおくれた経緯をいろいろ御説明になった上、鈴木代議士ほど確言はできないけれども、まあ同じ考えを持っていると確言したというようになっておる。これはぼくはそう違った記事ではないと思うのですね。ということは、あなたは鈴木さんの後ろに隠れておって、鈴木さんが大臣風にやっていて、あなたはときどきお答えにあずかるというようなスタイルでやっておる。それでは長官ではないですよ。私は、鈴木さんにあなたがなめられておるのか、あなたが謙虚なお人柄であるのか、そこはよく知りませんけれども、こんなことをしておったらこれは責任がなくなってしまう。長官はあなたでしょう。鈴木さんは八月にするとぽんとおっしゃっておる。漁連の代表があなたのところに来て、あなたは、それほどはっきりは言えぬけれども、まあそのとおりにいきますでしょうなんて言う、そんな調子ではちょっとまずかろうと思うのですね。これは科学技術庁長官として責任ある立場になければいけない。  私はこの二つの問題、なぜばらばら問題を一遍に議論したかというと、そういうふうにあなたは加害者代表に見られておるということを言いたいのです。鈴木さんは漁民の味方なんです。あなたは加害者の代表なんです。向こうは仏、あなたは悪魔なんです。そういう役割りになっておる。だから原子力行政を握っておって、安全と開発を両手で握っておれば、開発の方をやれば安全ということができなくなってしまう。だから安全の部分を鈴木さんがやらざるを得なくなってしまう。科学技術庁長官が二人いることになるのは当然だと私は思う。ですから、鈴木善幸さんは「むつ」の問題はやってくれるでしょう。だけれども、ほかの発電所にあなたは鈴木善幸さんを何人もつくらなければならない。発電所一つごとに鈴木善幸代議士の小型みたいなのをそこらじゅうに置いて、あなたはいつでも陰の加害者として最後に出ていく。そしてその代議士たちが、おのおの地元住民と一緒になってやるというようなスタイルになるでしょう。あなたは善意の持ち主であろうと私は思いますよ。しかし、あなたの善意は通じない善意なんです。あなたが原子力委員長になり科学技術庁長官になったら、もうあなたは加害者なんです。おわかりですか。あなたはどんなにやさしい目つきをしても加害者なんです。だからあなたの言う一言一言は、あのやろう、原子力発電所をでかくつくってたれ流しする気だなと見られておる。あなたがやさしく話せば話すほど、またごまかしに来たなとしか見えない。あなたはあらゆる科学技術を動員して安全だと言うだけにとどまるから、民衆の苦しみの声にこたえようとしないから、つまり行政組織は民衆の立場に立っていないで、権力の側に立って、民衆を踏みつけにしていくという疑いを抑えることができなくなっている典型的な例じゃありませんか。そうでしょう。ですから現実に適応しない。  私はここでがみがみ言いますのは、関係委員会でもないこの核防条約の審議に当たってこんなことを言うのはなんですけれども科学技術庁長官としてはそこのところをよほどお考えになる必要があるのじゃないか。あなたは、科学技術庁長官原子力委員長をくっつけたときの責任者ですと御自分でおっしゃっている。そうなんです。だからよけいあなたは疑われているのです。自分のやった組織を自分で直すというのは確かにむずかしいかもしれない。しかし、あなたは自分でつくった組織であるからこそ、そのよさ、悪さをよけいわかっているはずです。いま「むつ」問題を初めとして、問題は連続して起こっていて収拾がつかない。いまに科学技術庁長官のなり手がなくなるでしょう。もう問題が起これば科学技術庁長官だ。野党の議員が立ち上がってふるえるのは科学技術庁長官という言葉があるくらい、科学技術庁長官はいまやウイークポイントになりつつある。だから、あなたはその安全の立場開発立場を分けろと私は提案しておるのです。少なくともこの点をお考えいただきたい。そうしなければ「むつ」の鈴木さんとあなたとの関係のような関係が、行政をさらに破壊するでしょう。原子力発電所の問題はもう討議することもできないほどの問題になってきました。発電設備容量それ自体が大幅に狂ってしまった。通産省は依然として古い計画を振り回してあなたを叱咤激励するでしょうけれども、あなたはそれを大幅に下げなければならなくなってきておる。それで調整もついていない。悲劇の人としてあなたは理解されるでしょう。しかし、あなたが悲劇の人として理解されるよりももっと悲劇なのは国民であり、発電所の建設地の住民であり、そしていいかげんな情報に踊らされてどっちのことを信じていいか、だれの言うことを信じていいかわからなくなっている民衆であるということを理解していただきたい。信じないやつが間違っておるのだ、科学技術庁長官が一番科学で偉いのだ、原子力委員長の言うことを信じろとあなたが言っても、あなたはもうだめなんです。それをわかっていただきたい。それが私のあなたに対する最大の忠告なんです。この忠告を聞いてもらいたい。この根本問題にメスを入れないと、恐らくこの問題はもっと悪性化するのではないかと私は申し上げたい。どうでしょうか、この辺について。
  509. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 大変おしかりをちょうだいいたしましたが、前科学技術特別委員長でございましたので、よく事情もおわかりの上の御発言と解しまして、ありがたくちょうだいいたしたいと存じます。ただ、お言葉を返すようでございますけれども、大変誤解をいただいているのは、鈴木前総務会長は別に要職にあるわけでもなし、その発言が役所を拘束するわけでもなし、これを決めるのは私どもでございますから、どうぞその点は誤解のないように、行政の序列あるいは秩序を乱してやっているなんて毛頭思っておりません。その点は誤解のないようにしていただければ幸甚と存じます。  それから、要は安全の問題かと存じますが、発問題と安全の問題の分離の問題は、今度の安全局の問題でもわかりますように、現実に行政府としてはそれを分けようとしていま法案を提出しておりますので、その点はお説のとおりになっておると存じますけれども、ただ、原子力委員会という最高の機関が開発と安全問題を切り離すのがよろしいかどうかという点に関しましては、先ほど申しましたように、原子力開発というのはそれ自体が安全の開発であるというふうに考える面が非常に強うございますから、ここら辺はよく吟味した上で踏み切らなければいかぬということを申し上げただけで、そういう議論をいま盛んに有澤機関では検討しているはずでございます。  それからもう一つ原子力発電が一歩も進まぬであろうというお話でございますけれども、これにはいろいろ問題がございます。先ほど来申しましたように、原子力特に軽水炉が中心でございますから、軽水炉の安全性そのものに関しましては、確かに日本は独自の研究をそれほど従来進めていなかった。いま原子力研究所が中心になりまして、鋭意これを進めつつあるし、また各原子力会社、メーカー等も力を合わせまして、この問題の解決に大わらわで取っ組んでいる最中でございますから、だんだんこれが進んでいくものと存じます。  ただ、この安全の研究が進めばそれで問題が解決するかというと、そうはなかなか言えませんので、そのもの自体が安全かどうかという権威を持った国の検査、監査がどうなるか、あるいは安全性を国民に理解させるのにはどうしたらよろしいか、こういう問題がまだ未解決のまま残されておりますので、そういう点も加味して安全の問題を進めていかなければなりませんが、先ほどおっしゃったように、軽水炉――違った炉であればいざ知らず、同じ軽水炉で、これはアメリカでもソ連でもヨーロッパでもこれで膨大な原子力発電をただいま進めつつありまして、その間には各国といえども故障が起きておることは事実でございまして、その故障をアウフヘーベンしながら、だんだん安全の率を高め、したがってまた操業度も高めるというのが現状でございます。あに日本のみでございません。     〔水野委員長代理退席、委員長着席〕 ただ日本は、海外に比してどうして立地問題に際してこれほど大きい問題になっていくのだろうかという一つの大きい意見を――必ずしも私はそれが根本だとは言えませんけれども、いわゆる故障というものと重大事故というものが非常にこんがらがりまして、これは被爆国の一つの結果からくる現象かとも思いますけれども、しかし外国では単なる事故として、事故であるから修理すればそれでいいじゃないかということで総点検をし、修理をして、それでどんどん進んでいっているのに、わが方ではそれが大変重大事故であるがごとくに反響を呼ぶということ自体が大変ユニークなものだと思います。したがって、こういう点もよく解明して、たとえばアメリカのAECが三年くらいかかって膨大な費用で学者を動員してつくりました結論が、ラスムッセン報告ということで去年できております。これは軽水炉に関しましては、安全の確率は全く何よりもこれほど安全なものはないという結論でございまして、重大事故というものは起こり得ない、これを実は明確に結論づけておるわけでございます。したがってそういう重大事故と、その重大事故に至る初歩的な一つの故障、それはまたすぐ早期発見して原子炉をとめ、修理のできるそういう事故と混同して非常に恐怖に襲われる、あるいは安全性に対してよくないという、こういう現象も私はあるのではなかろうか。海外で安全だと称してやっているのに、日本だけが――事故が起こることは事実ですけれども、しかし海外に見られないような深刻なこういう様相を呈するということは、そこには何かしらそういう問題あるいは政治的な問題等が介在して、複合してこういうふうになっているのではなかろうかと思いますので、御説のように大変困難な問題ではございますが、しかし必要な問題でございますから、私どもはあくまでも炉の安全性を立証しつつ開発を進めたいというふうに実は考えているわけでございます。
  510. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いろいろ御説明いただいてありがたいのですが、原子力安全局というものができましても、それは科学技術庁の中であって、役人の意見を代表するものと思われる。私が原子力委員会を分解しろというのは、現在の原子力委員会をそのまま分けろと言っているのではなくて、少なくとも安全性に関しては民衆の意見も入れた独立機関の原子力安全委員会とでもいうべきものをつくって、それに監査させることがなければならないだろう、こう言っているのです。だから株式会社に監査あるいは監査法人があるように、原子力局に対して身内の監査でなくて外側の監査が行われる必要があると私は言っているのです。その辺の理屈がのみ込めないと私は困るような気がしてしようがない。裁判所では裁判長が判断すればいいようなものだけれども、弁護士もいれば検事もいる、こうであって初めて法の厳正が守られていくようなシステムこそがいま必要である。しかも民衆を疑っている。あなたは民衆の疑いを晴らすという一つの大きな職責を持っている。したがって、そのための機構を考えるべきであろうと私は申し上げているのです。重ねて申し上げます。ですから、その辺、深くお考えいただけないですか。
  511. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 渡部先生の御意見のようなのが非常に強い意見としてただいま有津機関で討議されていることは事実でございます。ただ、そのとおりになるかどうかという点に関しましてはいろいろ異論もあるようでございますので、いまからはっきりは申されぬのでございますが、お説はありがたくちょうだいしておきます。
  512. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では、科学技術庁長官及び関係の方がおられる間にちょっと科学的なことをもう少し伺いますが、今度は話が全然変わりますが、この核防条約承認されたとして、当然それに対する関係国内法の整備が必要であろうかと思います。どういう法律がどういうように変えられなければならないか、改正を必要とされる法律案はどれくらいあるのか、そういったものに対しての整備の大要についてお伺いしたい。
  513. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 現在まで二国間協定に基づきまして保障措置がとられたわけですが、そのために必要な措置として、原子炉等規制法は実は改正してございますけれども、しかし今度のこの条約に基づく保障措置になりますと、さらにいろいろまた変革を加えねばならぬ点がございますので、主として原子炉等規制法を中心にいたしまして改正をいたしたいというふうにただいま準備中でございます。
  514. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私がちょっとめくってみましただけでも、たとえば核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関しまして、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律、昭和三十二年六月十日、法律第百六十六号、それの第二条、「国際規制物資」というのがここに書かれております。この「国際規制物資」の項目なんというのは、明らかに核防条約によって国内のあらゆる施設に規制がかかってくるわけでありますから、当然直さなければならぬだろうと思います。また、それに関するもので、四十七年十月十六日の総理府告示、国際規制物資なんというのは、それに連動して直さなければいけない。これはたった一つの例です。ところが、これは原子炉の規制に関する法律でありますが、そのほか製錬の事業に関する規則であるとか、あるいは加工事業に関する規則であるとか、運転の規則であるとか、そういうものに全部ひっかかってくるのじゃないかと私は思うのです。そうしますと、これらの法律案というのは、私もそれほどこの問題に詳しいわけではございませんが、原子力関係の法律、約五十本近い法律のほとんどに対して見直しをする必要があり、そのうちの十数本については改正しなければならぬじゃないかと私は思っているのです。これはもう当然準備されているのだろうと思うのですが、従来から条約案を審議するにおいては、国内法の審議というのは相当並行して行われておる。今回油濁に関する三条約が当外務委員会にかかっているはずであります。その油濁に関連する法律案は、運輸委員会において二本、法務委員会において一本、この条約案の審議に先立ち、昨今に可決あるいは成立ということで審議が行われているはずであります。ところが原子力のこっちの方だけは全然手抜きで何もやっている気配がない。ということはつまりどういうことか。核防条約というのは通さなくていいというふうに外務省は思っていたのではないかと私は疑っているわけであります。それともこの法律案についてはよほど手抜きなのか。それとも初めから改正の必要を忘れておられたのか。さてその辺をお伺いしたい。慎重に御答弁いただきたい。これは問題ですぞ。
  515. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 この保障措置協定を五次にわたりましていままで進めてきたわけでございますが、それをずっと担当しておりましたし、またそれに基づきまして国内法の改正をただいま検討中の私の方の原子力局次長からその内容を御説明申し上げたいと存じます。
  516. 半澤治雄

    半澤政府委員 ただいま御審議いただいております核不拡散条約のほかに、この保障措置に関しましては、保障措置協定が予備交渉で一応イニシアルは了しておりますけれども、これをまた御審議願うことになると思うのです。その保障措置協定に関連した国内関係法令の整備でございますものですから、保障措置協定の御審議を願う際に、御指摘のように並行的に国内関係法令の改正に関し御審議を願うことになる、かように考えております。  なお、いま御指摘がございましたけれども、その改正内容の検討にはもう入っております。
  517. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いまの方は核防条約を読んでないのじゃないですか。この核防条約というのを本文を見ますと、これだけでも関係国内法をすでに直さなければならぬ部分があるでしょう。それをあなたは気がついてないのですか。
  518. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 いま御指摘の点は、恐らくこの条約三条の四項のおしまいの方にある点ではないかと思います。すなわち、この条約条約本体を批准した後に、それに必要な保障措置協定を締結するという、ある程度前後の関係考えております。そして保障措置協定につきましては、この条約に対する批准書を寄託する日までに正式交渉を開始しまして、交渉を開始した以上は交渉開始の後の十八カ月以内にその協定は効力を生じなければならないということになっておりますので、批准書寄託の日までに、つまり批准書を寄託しましてからいわば十八カ月以内に保障措置協定の効力を生ずる。ということは、同時に保障措置協定を発効させるために必要な国内法の改正も同時にこの十八カ月のうちに済まさなければならないという点の御指摘かと思います。
  519. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは逆なんですよね。この問題は、あなた、前の日米原子力協定その他の質疑をここでやったときにもそういう問題が起こったし、ココア協定のときにもそういう質疑があったのを、それを調べておいてくださらなければ困る。ということは、この規定によって日本の憲法が左右されるのではないのです。日本の法規によってこういうことは規定されるのです。なぜかと言えば、日本国憲法九十八条に「日本國が締結した條約及び確立された國際法規は、これを誠實に遵守することを必要とする。」となっております。この考え方はどういうことかというと、条約が施行されたときは、日本の国はこれは誠実に守っていこうという意思表示を明瞭にあらわした。だから外国との条約を結ぶときには国内法を全部直して、そうして一緒に法律案として出してくるのがいままでの国会におけるさまざまな審議の慣例です。そうでしょう。それなのにあなたは、査察協定は後から結ばれるからといって、国内法の問題はこれから審議するんじゃ話にならぬじゃないですか。だからそれは、いままでの国会のやり方とは全く逆なやり方をしようとしている。査察協定の文書によってそれへ当たろうとしている。それは逆さじゃないですか。そんな議論が成り立つと思っているんですか、あなた。何か口きくと危ないんじゃないか、本当に。
  520. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 ただいまの国連局長説明を若干補足させていただきますと、この条約――それよりもただいま日米原子力協定、ココア協定というふうに例を挙げられたわけでありますが、一般に条約を実施いたします際には、確かにその条約の国会での御承認を得ます際に、国内法の手当てをいたしまして、その実施を円滑といいますか、実施するための国内法上の有効な措置を講じておくということが通例でございますから、油濁の問題でございますとか船主責任の問題でございますとかいうものは直ちに実行して、国内法も一緒に御提出しなければ条約の実施に支障を来たすということはございます。ところがこの条約は、まあ言ってみれば原則を決めたものでございまして、特にこの中で、国内法でこの原則の実施と申しますか遵守と申しますか、そういうものに直接的に響いてくる条項というものはございません。したがいまして、実際に国内法の手当てをいたしまして、そしてこの条約に基づきます保障措置協定というものを実施するのは、その保障措置協定というものがこれから合意されまして、これはもちろん案文はもうお手元に差し上げている案文で固まっているものでございますけれども、それが実際に署名をされ、国会の御承認を得る際に、同時に国内法の改正をあわせて関係委員会で御審議を願った上、同時にこの保障措置協定が日本について発効いたしますと同時に、その国内法も発効せしめるというふうに考えて準備いたしておるわけでございます。
  521. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いまの参事官のお答えのとおりなら、それは結構なんですよ。そうすると、参事官のいまおっしゃったように、イニシアルをしか査察協定は本委員会提出をされております。そうすると、イニシアルをされたこの査察協定は、承認はしてないけれども、事実上はここに参考文献として提出されているのですから、その関連する国内法はわかっているはずです。そしてそれを検討する日数もわかっているはずです。どういうふうにそれを検討して、何カ月以内に出さなければならぬという見通しがあってしかるべきです。少なくとも最大限譲ってもそういう段取りができていなければならないと私は言っておるわけなんです。ところが私が伺ってみたところでは、科学技術庁にはその用意はない。全然検討も、本当の検討のまた検討ぐらいのところで、十分な用意ができていない。だからどの協定とどの協定が、査察協定のどの項目がどの条項にひっかかるかのリストを出せと私は要求したのにリストは出てこない。関係国内法のどの法令とどの法令がひっかかるかと言ったって出てこないじゃないですか。だから科学技術庁はこの問題に関して怠慢なんです。国内法を十八カ月以内に直さなければならぬという意思表示がない。どこも調べているかわからない。それでこの委員会にぽんと出てきちゃった、そのうちやりますよというような調子で。私は、それはイニシアルまでした文書をここへ出してきて審議をするに当たって非常に不穏当ではないかと言っているのです。よろしいですか。さあ、あなたはどの法律とどの国内法とどれとを検討しているのですか。あなたはいま法律一つしか挙げていないじゃないか、そんなのは私だってわかりますよ。
  522. 半澤治雄

    半澤政府委員 法律として、略称してございますが、原子炉等規制法の特に六十八条は最低限度必要な改正を要しますが、先生御指摘の関係法令でございますけれども、法律にかかわるところの最低要件はいま申し上げたところでございまして、政令並びに先生御指摘のいろいろな運転規則等の府令がございますけれども、府令における記録、報告等の態様についての修正が必要でございます。法律に関しましては最低条件としては、いま申し上げました原子炉等規制法関係条項、特に六十八条の改正が必要になる。それに関連いたします政令並びに府令の対応条文の改正を必要とするということで検討はいたしてございます。
  523. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それだけでは不十分です。それでは全く不十分です、あなたの言っていることは。あなたは全部検討していないじゃないか。私はだから言うんですよ。関係国内法のどれとどれとどれを改正しなければならぬか、資料として関係国内法のリストを提出してもらいたい。そうして十分の検討をこの所定の日数以内にできるかどうかを報告してもらいたい。
  524. 半澤治雄

    半澤政府委員 先ほども申し上げましたように、保障措置協定は参考資料としてお出ししてございますが、保障措置協定そのものの御審議を願う機会があるわけでございます。したがいまして、もちろんこの核不拡散条約の御承認が得られた場合には、十八カ月という期間がございますので、これはきわめて当然のことでございますけれども、それには間に合わすということで進めてございます。
  525. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それはうそだよ。なぜ私がうそかと言うと、それには証拠があるのです。外務省においては承認した条約を二十年も引っ張っている例がたくさんあるじゃないですか。関係国内法なんか十年でも二十年でも引っ張っている例が山ほどあるじゃないですか。そんなあなたの言葉なんか信用できますか。大体あなたじゃだめなんだ。答弁の値打ちがないんだよ。いままでの外務省のやり方というのは、条約を結ぶでしょう、そしてここへ持ってくるまで長く引き延ばして、ゆっくり延ばしているわけだ。LSDの使用を禁止する条約だってそうじゃないですか。関係国内法はそろいませんとかいって、びゅうっと延ばすじゃないですか。そうしておいて、私がなぜ心配しているかというと、核防条約なんか結んでおきながら、関係国内法を整備しないでおいて、そうして実際には、悪く想像すればですよ、もちろん一番最悪の場合を言っているんだが、核爆弾の材料をちょろまかして爆発させることだって不可能じゃないじゃないですか。だから関係国内法の見通しが立っていなければ、私はこんなもの審議不能だと言っているんだ。だから私は、特に関係国内法のどれとどれを修正しなければならないか、当委員会質疑資料として提出せよと言っているのです。提出しなさいと言っているのですよ。あなたは提出すると言わない。十八カ月のうち何とかします。何とかしますと言って何ともなってないのがたくさんあるじゃないですか。いままでだってうそつきのかたまりなんだよ。証拠はたくさんあるじゃないか。あなたがそこで息張ったってそんなことになりはせぬよ。外務省が出さないかもしれませんよ。関係国内法がサボられているのがたくさんあるじゃないか。少なくとも明確な証言がなければだめですよ。核防条約と密接についている査察協定、その査察協定とくっついている国内法がおさまらなかったら、実質的にはこの核防条約の審議は空文に処せられるじゃないですか。むしろ日本国憲法の精神に基づいてこれは扱わなければならない。関係国内法を整備して出すという精神に基づいて行われなければならない。私はだからやかましく言っているのです。そうしなければ、いままでは査察協定があればそのときだけ議論すればいいでしょうという議論になりかねない。それじゃだめじゃないですか。関係国内法の整備を要するものはいままだ調べてないのはもうちゃんとわかっている。私はわかっているのですよ。だからあなたにぼくは、全部調査して、これからどの法律とどの法律とをちゃんと持ってきますとここで言いなさいと言っているのです。参考資料として出しなさいと言っている。そうしてそれは何年何月ごろまでにやりますと言いなさいと言っているのです。いいですか、資料を出しなさいと言っている。出せないと言うんだったら私はこの委員会をやめさしてもらってもう一回理事会をやってもらいたい。
  526. 半澤治雄

    半澤政府委員 先ほど大臣から申し上げましたように、現在日本はIAEAの査察を受けております。御案内のとおりでございます。査察を受けているということは規制法で査察を受けておるわけでございます。したがいまして……。
  527. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そんなこと聞いてないですよ。出せるか出せないか聞いているんじゃないか。問題をそらすんじゃないですよ。委員長、人の質問を聞いてないであんないんちきなことを言うのは取り締まってください。私は資料を出せと言っているんじゃないか。出せるのか出せないのか。ふてぶてし過ぎるじゃないか、きょうの各員の答え方は。
  528. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をとめて。
  529. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をつけて。
  530. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 結論を申し上げますとできるだけ出します。ただ、さっき説明であるいは十分な御理解をいただけなかったと存じますけれどもわが国自体は二国協定に基づいて保障措置をもう受けておるわけでございますから、そのいままで受けてきた保障措置に基づく改定は国内法はしているのでございます。今度の保障措置はこの条約に基づく保障措置とそれと本文は違うかというとほとんど同じなんです。ほとんど変わりません。ただそれに付帯したプロトコル、議定書そのものがユーラトムと同じにするというその調整をとってありますから、その部分はいろいろ変わらないといかぬと存じます。したがいまして広範に変えなくてはいかぬというふうに私も考えておらぬのですけれども、しかし御指示のようでございますから、いまこういうところはぜひ変えなければいかぬというのは持っておりますけれども、それだけではいかぬようでございますので、できるだけ検討いたしまして至急出したいと存じます。
  531. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いまの大臣の御答弁でけっこうだと思いますが、この条約案の審議に関して、私はいろいろな資料を集めようとして、資料のほとんどが十分でない、はなはだ不本意であります。それはやはり核防条約というものに対する判断の仕方というものに原因があったのではないかという感じがしてしかたがない。  私は今度はちょっと承っておきたいのですが、現在、世界の十八カ国に百四十七基以上の発電用原子炉が運転されて、副産物として年間二千発以上の核爆弾をつくることができると言われております。こうした場合に、査察が十分行われるかどうかは大問題であります。わが国が現在使用あるいは開発をしようとしている原子力発電所に必要なウラニウムその他を用いて、一年間にどれくらいの核爆弾をつくることが可能なのであるか、まずその辺から伺いたい。それはあくまでも仮定の質問かもしれないけれども科学技術庁としては当然その辺は計算されているでしょうから、お伺いしたい。
  532. 半澤治雄

    半澤政府委員 実はあまり計算いたしてございませんが、核爆弾の原料と言われておりますのは、兵器品位のプルトニウム高濃縮ウランと言われております。先生御案内のように、プルトニウムは再処理施設から抽出しないと、プルトニウムという形で出てまいりません。日本の再処理施設は、現在東海村で建設がほぼ終わりまして試運転中でございますけれども、おおむね一トンの再処理に対しまして十キロ程度のプルトニウムが出ると言われております。日本の東海村の再処理施設はフル稼働いたしますと、年間二百十トンでございますので、約二トンのプルトニウムが得られます。ただしこれはいわゆる兵器品位よりはだいぶグレードは落ちますけれども、約二トンのプルトニウムが得られまして、そのうちで分裂性のプルトニウムが七十数%、一・五トン程度かと思います。プルトニウム爆弾に要るプルトニウムの量は、広島級で八キログラムと言われておりますので、一・五トンと申しますと千五百でございますので二百発弱、量だけで申し上げますとそのくらいの量にはなります。  ただ、繰り返し申し上げますが、品位が兵器品位ではございませんですから、これは単純な計算でございまして、そのような形で爆弾ができるというものではございません。
  533. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 もう一つ伺いますが、日本国が現在の科学技術の水準で核兵器をつくるとしたら最低何カ月で、どのくらいのものができるのか、その辺を聞かしていただきたい。
  534. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 かつて楢崎弥之助議員だと思いましたが、その回答を内閣に求められまして、私ども回答したのでございますけれども、御承知のように、原子力基本法に基づきまして、われわれの研究開発利用平和目的に限るということになっておりますので、そういう計算等は一切しておりません。
  535. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 平和目的に限るから計算しないというのはまた妙なことであって、わが国は巨大な科学的潜在能力を持っているからこそ核防条約意味を持つのであって、そういう能力について確かめもしないで、核防条約の条項についての関係国内措置を決めようとしてもそれは意味がないと私は思うのです。どれぐらいの能力とどれぐらいの危険性がどこにあるかを知らなければ、日本で核技術により核爆発装置をつくろうとする運動が起こったとき、それに対応する方法もまた私はなかろうと思うのです。だからその危険性についてどう評価され、どうされているのか、それは科学的な立場から十分お答えがあってしかるべきだろうと私は思いますが、どうですか。
  536. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 ウ・タント報告等を基礎にいたしまして単に数字で割る程度のことは、これはただいま次長からお話ししたとおりでございます。しかしそれすら品位が違うわけですから、必ずしもそうなるとは限りません。これを実際に爆弾にする場合にどうかといいますと、これはいろいろ研究を要する問題でございまして、そういう研究自体はするべきじゃないという、これは基本法で決まっておりますから、そういうことを私自体が命令してやらしたら大変なことになります、これは。
  537. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 科学技術的なところだけ抜いて質問するので非常におかしな質問に次々となるのですが、この条約の中において「核兵器その他の核爆発装置」というところが出てくるわけであります。この核兵器及び核爆発装置というものはどういうものを指し、核兵器核爆発装置でない平和利用というものはどういうところであるか、これは非常に微妙な一線であります。この核防条約それ自体が、平和利用関係については大いにその知識を普及して伸ばしていこうという面がありますために、ある意味では平和利用という関係で技術開発が行われるということが、核爆発装置に対する手がかりというものを非常に大きくするというこれは困った、矛盾した局面も一つ持っておるわけであります。したがって、核兵器及び核爆発装置とその他の平和的な装置、平和的な研究との間の差をどう考えておられるか。そっちの方を見るのもいやだと言うし、研究を命じてもいけないというのはおかしいんであって、この境目を論ずることができなければどれが平和かはわからないと私は思うのですね。だからその辺どういうふうに線を引っ張られるのか。
  538. 半澤治雄

    半澤政府委員 やや抽象的になるのでございますが、核エネルギーを制御されない形で放出する装置を核爆発装置というふうに私どもは理解いたしております。つまり逆に申し上げますと、核エネルギーを制御された形で利用する形態のものを平和利用というように私どもは理解しておるわけでございます。
  539. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それはちょっとあなたの定義まずくないですか。というのは、いまバイ・ハンド・キャリアブルと言われている小型原爆ですね、それは非常に制御されたものでしょう。あなたは戦術核の小さいのは全部平和研究だとおっしゃるのですか。これはすごい答弁なすったですよ、いまのは。すごい答弁だ、これは国際的問題だ。どうする。
  540. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 いま原子力次長の説明、ちょっとあるいは舌足らずであったのかもわかりませんけれども、この条約で禁止されております「核兵器その他の核爆発装置」と申しますのは、瞬時に衝撃波を伴う核エネルギーを大量に放出することを目的として作製された装置というふうに一般的に解し得るかと思います。先ほど言われました小型核爆弾は、恐らくいまの核爆発装置の一種、つまり瞬間的に大量のエネルギーを放出することを目的とした装置というふうに解することができると思います。つまり条約で禁止されている「核兵器その他の核爆発装置」に該当すると思います。
  541. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 あなたもまたすごいことを言ったですよ。衝撃波は余り伴わないで、いいですか、そうして核エネルギーだけで相手を打倒するものはたくさんあるのですよ。たとえば放射能物質を詰めた、放射能物質だけが散らばるように仕組まれた、つまり放射能灰、放射能の灰爆弾と言われているものがそうです。また中性子爆弾と言われているものは衝撃波をほとんど生じない。そして光線だけで人をたくさん打倒するでしょう。あなた、それはこの核爆発装置核兵器でないと言うのですか、それじゃ。これまたすごい答弁ですよ。ちょっと両方ともわかってなさ過ぎるのじゃないか。それ、ちょっと何とかしたらどうですか、両方の答弁とも。――見るにたえないので私は言いますけれども、それは統一見解を出してください。もう、とってもだめだ、それじゃ。そんな初歩的なことを言ってるんじゃ、私の愚かなる科学知識でも見破られるほどのお粗末なことを言うのじゃ、これは第一条、審議できないじゃないですか。私は、外務大臣、これからずっと一遍に聞こうと思っているのですけれども科学技術庁がそこへ座っていてそんな答弁でがたがたやっているのではどうしようもない。政府はしかるべき統一見解を提出されるように望みますが、委員長、どうですか。それでなかったら私はあの答弁がつぶれるまでやりますけれどもどうですか。
  542. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をとめて。
  543. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をつけて。
  544. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 いささかどうも核爆弾アレルギーと申しますか、私どもはもう平和利用一筋にやっていますから、おしかりこうむりまして大変恐縮に存じますが、事実とか技術の解釈の問題のようですから、統一見解をつくって出したいと存じます。
  545. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 きょうはどうも審議しにくくて、私はとってもじゃないけれども閉口しているわけなんですけれども、あと問題になりそうなところをちょっと。  核軍備という言葉がここに出てくるわけですね。核軍備、どういうのを指して核軍備と言うか。これも核装置がわからなくて核軍備なんて議論できないでしょうから、これもひとつ統一見解を一緒に出しておいていただけませんか。
  546. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これにつきましても、仰せのように関係省庁打ち合せまして見解を申し上げることにいたします。
  547. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 もう、本当にきょうは質問がしにくくて閉口いたしているんですが、いま答えられそうなのを……。  じゃあ、がたがたしていますから、外務大臣の方にちょっとお尋ねいたします。  外務大臣、この間同僚議員の質問中に、核軍縮よりも現状の核抑止の方に比重をかけたいという御発言がございましたですね。核軍縮よりも、縮めるよりも、ともかくふえるのをとめるんだと、その方に重点をかけていきたいというようなニュアンスを言われた。その辺余り詳しいお話でなかったので、私は改めて御質問いたすわけでありますが、メキシコなどの十八カ国提案というのは、核軍縮核保有国核軍縮こそ先なんだと、それを先にやるのがあたりまえじゃないかという強い意思表示があって、それによって再検討会議最終宣言がまとめられたと承っているわけであります。したがって、これはちょっと御発言趣旨が、再検討会議の第一委員会における西堀発言等の関係もありまして、ちょっと妙ではなかったか、恐らく核抑止という言葉を別のニュアンスで使われたんではないかという感じもいたしているわけであります。私はそのときに、西堀代表の一般発言として軍縮室からいただいているのを拝見しますと――その話に行きますとごちゃごちゃしますから、まず、いままでの分のところをお答えいただきたい。
  548. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでは、そういうことを申し上げました背景を少し詳しく説明をさしていただきますが、ともかく米ソ、これが圧倒的な核の力を持っているわけですが、両国とも、何といっても自分の利益、自分の国の安全あるいは自分の同盟関係にある国の安全、そういうものを中心に物を考えることは、これはそれとして認めなければならないということから申しますと、米ソ関係では何といってもソ連の方が従来やや立ちおくれておったわけでございますから、ソ連がある程度、米国に対してまず自国が安全であるというバランスを回復するというところまでいかなければ、なかなか次のステップに移れないであろうというふうに米国も判断をいたしておるようでありますし、私どももそれは、いい悪いは別といたしまして、もっともなことであろうと、こういうことでSALTというような交渉も進んでおるわけであります。でございますから、進む過程においてはアメリカの方はやや立ちどまりになるわけですが、ソ連は、実はSALTの交渉の結果、その持っているものがふえていくというようなことに、いま経過的になっております。そのことは、もちろん理想とはほど遠いわけですけれども現実的な米ソ話し合いの進み方としてはやむを得ないであろう。そこで私どもがねらいますのは、そういうふうなバランスがある程度、ことにソ連の場合、まずまず安心だというところまでいきました後、これから後は、さあそのバランスを崩さないままでこれを減らしていくという段階に入るべきなのである、またそこまでいきませんと、説得して軍縮をやりなさいということも、これは恐らく米ソ立場からいうとむずかしいことであろう。でございますから、米ソとも、先ほど申しましたように、自分の国の財政負担等々無限に拡大することはやり切れないことでありますから、ある程度安心のいったところで、そのバランスを崩さないままでだんだん核軍備を減らしていく、どうしてもそういう過程をとらざるを得ないだろう。  わが国が核実験の全面禁止ということを申しておりますのは、これはもう実験を禁止いたしますと新しい核兵器開発はむずかしくなるわけでございますから、まずそのバランスがとれた後に新しい開発をやめてもらう。そして、在来持っておりましたものを減らしていきまして、最終的に廃棄に持っていく、やはりそういうプロセスをとらざるを得ないだろう。前回の再検討会議におきましても非同盟の国々は多少そこが性急でございまして、ともかくもう何でもかんでもここまで減らしてしまえというような、その気持ちはわからぬではないのですが、実際に現実的に米ソをそういう核軍縮への道へ乗っけますためには、ある程度いまのようなことを考えていきませんと現実的でないだろうという、そういう意味で、いつぞやああいうことを申し上げたわけです。
  549. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 わかりました。おっしゃる意味よくわかりました。  それで、それは結構なんですけれども、そうすると現実とちょっと矛盾するところが出てまいりますですね。というのは、SALT第一協定の交渉が行われましたとき、核軍縮というよりも拡大の方に非常に力のかかったバランス論になっておる。フォードさんは、まるっきりの無条約状態よりも、これでもなお縮まっていると確信するとは述べられましたけれども、ICBM、SLBM、及び重爆撃機の上限は双方二千四百基ずつ、MIRV装備のICBM、及びSLBMの上限は双方千三百二十基ずつというふうに、倍あるいはそれ以上の非常に大きなレベルに引き上げてしまった。したがって、そのラインを線で引っ張ってみますと、なだらかな上昇よりははるかに急角度な上昇に向かって、このSALT第二協定というのは進んでおる。したがって私は、宮澤大臣の御意見に前半は賛成しておるわけです。それは何かというと、もう軍縮どころじゃなくて、抑え込むのがやっとだという判断はまあそのとおりである。むしろ米ソのこの戦略兵器制限交渉というものは戦略兵器拡大交渉と名を変えた方がはるかにいいような実質を持っておる、数字から言いまして。数字の上では拡大交渉になっておる。したがって、その拡大交渉をとめるために、わが国はどうしたらいいのかという問題に踏み込まなければならぬだろうと思うのですね。ですから、抑止という御意見は私は結構だと思う。もう軍縮にいかなくても、ともかく抑止してブレーキをかける、それ以上ふえぬようにする。これは一つの大きな目標だろうと思うのです。そして軍縮にいく、それも結構だろうと思うのです。ところが、わが国のなし得るところはきわめてわずかだろうと思うんですね。そのわずかな上にかかって、またいままでみたいな努力の仕方では、先ほど申し上げたようにひど過ぎたわけですが、方向性を少しある程度大臣からお聞きしなければならぬだろうと思うのです。抑止するためにどういうようになさるか、まあ本条約もその一つの抑止のための条件であると前おっしゃいました。それはそれとして、それは横に置いておいて、今後どういう組み立てをするか。いま国連局で組んでいるのは、その組み立てができてない。少なくとも大臣がある程度の組み立てというか、骨組みを明らかにしていただかないと、もう議論が不可能な段階にいまなっておりますから、その大骨のところを宮澤大臣どう考えておられるかを明らかにしていただきたいと思っておるわけです。
  550. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 六七年ごろの米ソのICBMあるいはSLBM、長距離爆撃機等のバランスを見ておりますと、これは明らかにアメリカの方がかなりバランス上は保有量が多かったわけでございますが、その後アメリカがその保有量で足踏みをいたしまして、ソ連の方がそれに追いつくという形を御承知のようにとったわけでございます。これは現実の考慮として、そういう形でバランスをとにかく持っていかなければ、ソ連もその後の軍縮の方へ向かっていけないという、安心感を与えなければならぬという配慮であったと思いますので、アメリカの方はほとんど上限を動かしておりませんので、これは理解はできることであろうと思います。  それで、そのMIRVなんかについても先ほどおっしゃいましたようなことはございました。これは、つまり総合的にバランスをするというのでございますから、どうしてもそれは、本当を言えば現にあるものを削減する形でバランスをとってとれないことは、理屈で言えばないことはないわけでございますけれども、そこはやはり総合的にバランスをするとすれば、あるものは、どっちかの国はふやさなければならぬというようなことは、私はあり得ることなのであろう。ともかくSALTの交渉でその上限というものに合意をしたということは、上限が高過ぎるといううらみは私どもから見るといかにもあると存じますけれども、従来のように青天井で無制限に競争しておったことに比べれば、これは何がしかの進歩であると申してもいいのではないか。  そういう場合に、わが国の説得力という問題でございますけれども、これはやはりわれわれは核兵器を持たないという立場から、いわゆるモラルパースウエイジョンと言うのでございましょうか、そういうわれわれの経験、われわれの願いというものから説得をするということになる。これは各国ともそうであろうと思います。が、実はそれだけでしたらなかなかこれは事柄の性質上、十分に力を発揮するとは言い得ない面がありまして、それと並んで実は、米ソ両方とももう明らかにオーバーキルになるということはわかっておって、相手との対抗上、それがやめられないということであったわけですから、バランスというものが生まれれば、もう大変な財政負担をしなければならぬ、こういうことについて、おのずからやめられるものならもう拡張はやめたいという、そういう利己的な動機も働くわけなのでありまして、私はそういうところから将来を期待できるのではないかというふうに見ておるわけでございます。
  551. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ところが科学的に言いますと、いま両国とも猛烈な勢いでやっておりますのは、質の競争になっておるわけでございますね。だからMIRVがMARVにいまや変換され、つまり一つのミサイルを打ち上げられると、その先が何弾頭にも分かれてくる。それがアメリカの場合は三ないし五であったのが、ソビエトの場合は五ないし六というふうに広がってくる。そうするとアメリカの方もそれではならじとばかりに十一というのを目指す、そういう形でいま競争が始まっておる。そうして質的交渉についてはいま両者交渉したけれども、当初物別れ、話にならぬ。そうしていまどういうことが行われているかということ、一つは大型動力のミサイルに急激な変換が両方とも始まっておる。そうしてMARV、つまり散ったミサイルの頭がさらに自動的に運転されるようにMARVに向かって急速に進歩をしつつある。量的な制限はもうこれで十分、質的な物すごい向上が行われておる。両者の戦略を見ておれば、少なくともおまえが一発やったらこっちはすごいぞという形の、非常に単純な第二撃報復戦略に基づく抑止力という段階は超えてしまった。そうして両者ともその次の段階に、確証破壊能力と損害限定能力という考え方の、つまりマクナマラ戦略というものに切りかわってきた。それでいまそのマクナマラ戦略もぶち壊れてしまって、いまどうなっているかと言うと、両方とも盾で防ぐわけにいかぬ、やりだけべらぼうに大きなのを持つ、そうしてお互いの胸元に突きつけ合うという形で、ちょっとでも動かしたらお互いにぶつっといくぞという形のものになっている。これはバランスというのは、ピストルをお互いに五丁ずつ持っているというならそれはバランスという言葉は当たるだろうと私は思うのです。大臣は非常に象徴的に言われたので、私、それ決してわからぬわけではありませんけれども、ピストルを五丁ずつ持って百メートル先に対峙していて、バランスとれているという段階ならバランスとは言い得るが、お互いの胸の、のどのところまで届くような長いやり、ロケットのついてる長いやりか何かをお互いに突きつけ合って、そしてしかも何千発というのを突きつけ合って、バランスしているとは言いかねる状況があろうと私は思うのですね。バランスという言葉の感覚がそれでは違ってしまう。つまり共同自殺行為という状況にもうなりつつある。したがって、わが国は、それを両方とも甘んじて見てなければならなくて、巻き添え食って死ぬ権利を保留しているというふうな言い方をする人さえある段階を迎えておる。したがって、戦略というか、日本の対応策が非常に成り立ちにくい状況であるということは、私も理解できるのですが、大臣のおっしゃった、いま青天井でないという、これ以上胸にやりを突きつけないというのは、もうすでにすごいのが突きつけられておって、青天井でないというのは非常にかすかなあれである。そうすると、非常に説得力を欠いた議論にならざるを得ないだろうと私は思うのです。  したがって私はお伺いしているわけでありますが、いま提案申し上げる段階でなくてお伺いしている段階でありますが、ちょっとこの核問題については、よほどの対応というものが考慮されなければいけないんじゃないか。少なくともいまその骨組みを話してくださろうとしているのはわかるんですが、余りにも難点が多いんではないか、こう思っておるわけでありますが、どうお考えですか。
  552. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かにSALTの交渉も単純に員数だけ、数量だけでやっておるわけではないようでございますけれども、しかし何といっても数量というものが一つの基準になるわけでございます。それは私、おっしゃるとおりだと思います。そうしますと、数量で抑えられますと、今度はその中でできるだけ性能のいいものをつくっていこうという、そっちの方へ行くということは、これも私は避けられないことだと思いますので、ですから、そういうことを単純に楽観をするわけにはまいらない。ですが、両方とも明らかにオーバーキルになるということはこれはわかっておるわけでございますから、そうであったら、そこで一種の飽和点というものが来るということも考えられるのではないだろうか、ことに財政負担も大きいのでありますから。  今度の再検討会議米ソが両方とも、ともかくこういう条約、こういう場でもなければ、米ソ核軍縮の名のもとに話し合いをしようということなどはとても考えられなかったことであろうと言っておりますのは、これは私はなれ合いで言っておるのではなかろうと思うのであります。やはりそういう自覚も当事者たちにある、ことに負担の問題もございますから。ですから、その動きというのは、渡部委員の言われるように、なかなか私どもの期待するほどのものではないし、また数を制限した結果は、かえって精度を向上させるだろうというようなこともこれも十分に考えられることではありますけれども、ともかくしかし、お互いが何とか話し合いをしようということになりましたところは、やはり買ってやらなければならないのではないかと思います。
  553. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私はもう物すごく答えにくいところをいま伺っているわけですから、そういう御答弁になるのもそれは予想されますし、わかるんです。ただ、このままこういう状況でいけば、遅かれ早かれ人類は滅亡するという方向に向かって直進することだけはほぼ間違いないということで問題は推移しつつある。そこの段階わが国は何かできないのかということに答えなければならない。回答がうまく書けなくとも書かなければならない。これが議会人として、あるいは立法府として、あるいは行政府として何か答えを出さなければならないという段階だろうと思う。したがってこの次の委員会で私はそれに対する私の私見も申し上げた上、その論議をもう少し進めたい。少なくともきょう、日本の核政策はなってないと最初に声を張り上げた後で、いきなり大臣にお伺いするということも非常に残酷だろうと思う。ないと言っておいてから聞いたりして、ますますないではないかなどと、なってないというのもどうかと思われるし、少し御研究、御検討をいただけないかなと私はまじめな意味でそう思っておる。そうでないと、当委員会議論は余りにも無意味になってしまうからです。そうして、少なくとも日本国民のこういう問題を考えるための議論として非常に粗末なものになってしまうと私は心配をいたしておるわけであります。  それじゃ時間も遅いことですから、最後に簡単に非核三原則の問題に少し触れておきたいと思うのです。これは核の抑止力と非核三原則の問題でありますが、聞くところによれば、自民党のいわゆる六項目の要望というものが政府には寄せられたと承っておったわけでありますが、先ほどから同僚委員に対する御答弁を伺っておりますと、それは自民党の中の意見をまとめたものにすぎないというようなニュアンスでありまして、政府はそれとは話は別に、非核三原則というのはあくまでも遵守する、核持ち込みについてもそれは遵守する、いかなる場合も無条件に遵守し、かつ三木内閣が拘束されるだけではなく、代々の内閣が拘束されるとまで総理は述べられたように伺っているわけであります。その辺は私の理解のとおりでよろしいかどうか、外務大臣にお伺いしたい。
  554. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御理解のとおりだと考えておりますが、実は自民党の中にも、いわゆる要望事項がまとまります前の段階で、ただいまの問題についてもう少し政府は、いわば弾力的と申しますのでしょうか、ルースな解釈をすべきではないかという意見があったようでございます。しかし、さすがに各部会がまとめ上げましたときにはそこはそういう表現になっておりませんで、その点は党内でもいろいろな議論があって、やはりそこはそうまで申すべきではあるまいということになったようでございます。したがって、自民党内には、個人個人としてはいまでもいろいろな議論がございましょうとは思いますが、全体のまとまった形は、さすがにそこはそういう形はとってまいりませんでした。  政府立場は、三木総理大臣がしばしば申し上げましたとおり、先ほど渡部委員が御紹介になりましたとおりのものでございます。
  555. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、非核三原則はあくまでも守る。安保の事前協議の運用に当たって、それはいろいろな立場はあるけれども、非核三原則に基づいて核持ち込みにはノーと言うんだ。重ねてくどいようですが、改めて確認してお伺いするわけですが、いかなる場合も核持ち込みはノーと言うのである、こういうことでございますか。
  556. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 さようでございますし、その点はつい今週も、総理大臣が何回か他の委員会の席上で明言をしておられます。
  557. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは、本日は大変時間も遅くなったことでございますし、審議をするべき時間をそろそろ超えているようにも感じておるわけでございまして、列席される同僚議員にも申しわけないことだとも存じますので、残余の質問はこの次にさしていただきまして、本日の私の質問はこれにとどめたいと存じます。      ――――◇―――――
  558. 栗原祐幸

    栗原委員長 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。  ただいま本委員会において審査中の核兵器の不拡散に関する条約締結について承認を求めるの件について、内閣委員会及び科学技術振興対策特別委員会からそれぞれ連合審査会開会申し出がありましたので、これを受諾するに御異議ありませんか。
  559. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会の開会日時につきましては、委員長間において協議の上、追って公報をもってお知らせいたします。  本日はこの程度にとどめ、次回は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。     午後十時五十四分散会