○渡部(一)
委員 この
議論はすさまじい深いいろいろな疑義がありますから、それ以上私も余り深追いをするつもりもありませんが、長官に
一つだけ厳重に意識していただきたいことがある。
それは、国務大臣として
宮澤外相にもお聞きをいただいておきたいのですが、
原子力発電所はもう当分
日本ではできません。これは、私は住民運動にある場合は非常に接触をよくしており、
原子力問題について多少いろいろな相談も受ける
立場の一人として申し上げるのですが、今後十年間、
原子力発電所は一基も立たないでしょう。そして、立つとしても流血の惨を巻き起こすことでありましょう。それは、そういう現状にあることを希望的観測でなく、むしろシビアに受け取っていただきたい。そうしないと、もう
原子力発電そのものについてはいま大きな疑いが抱かれている。われわれもその疑問を晴らすことができないでいる。それは機構的に晴らせないのと、
原子力行政それ自体のやり方としてだめな場合と、両方ありますけれ
ども、私はまず機構からだめである。要するに安全だという部局がない。安全ですと民衆に説得できる組織がない。これはもう致命的な欠陥であるということだけは指摘しておきたいし、両大臣にぜひともこれは深刻な反省をして、知恵を出していただかなければならないと私はこの場から正式に申し上げておきたいと思うのです。
ですから、こんなことなら「むつ」で
鈴木代議士と一もう名前をおっしゃいましたから私も申し上げますが、一緒にお手伝いくだすっていろいろおやりになるというのは、非常に麗しい友情のあらわれであろうと私も理解をしております。しかし、ここに見ますと、これは新聞記事が必ずしもそのとおりかどうか、私は確認したわけではありませんけれ
ども、ここで私が手に持っている記事、六月十三日の某紙の記事によりますと、「
鈴木善幸代議士は十二日、「むつ」の新母港について、青森県漁連の植村正治会長らに「八月末までには結論を出すので、年内にも「むつ」は新母港に引き取れると思う」」と明確に述べておられる。「これに対し
鈴木代議士は、佐々木
科学技術庁長官、井出官房長官、大平蔵相とも話し合ったうえでの見通しとして「八月決定-年内引き取り」の線を示した。」ここまで言っておられる。ぱんとおっしゃっておる。それで漁連の代表はその後、今度はあなたのところに来られておる。そうしたら長官は、新母港決定がおくれた経緯をいろいろ御
説明になった上、
鈴木代議士ほど確言はできないけれ
ども、まあ同じ
考えを持っていると確言したというようになっておる。これはぼくはそう違った記事ではないと思うのですね。ということは、あなたは
鈴木さんの後ろに隠れておって、
鈴木さんが大臣風にやっていて、あなたはときどきお答えにあずかるというようなスタイルでやっておる。それでは長官ではないですよ。私は、
鈴木さんにあなたがなめられておるのか、あなたが謙虚なお人柄であるのか、そこはよく知りませんけれ
ども、こんなことをしておったらこれは責任がなくなってしまう。長官はあなたでしょう。
鈴木さんは八月にするとぽんとおっしゃっておる。漁連の代表があなたのところに来て、あなたは、それほどはっきりは言えぬけれ
ども、まあそのとおりにいきますでしょうなんて言う、そんな調子ではちょっとまずかろうと思うのですね。これは
科学技術庁長官として責任ある
立場になければいけない。
私はこの二つの問題、なぜばらばら問題を一遍に
議論したかというと、そういうふうにあなたは加害者代表に見られておるということを言いたいのです。
鈴木さんは漁民の味方なんです。あなたは加害者の代表なんです。向こうは仏、あなたは悪魔なんです。そういう役割りになっておる。だから
原子力行政を握っておって、安全と
開発を両手で握っておれば、
開発の方をやれば安全ということができなくなってしまう。だから安全の部分を
鈴木さんがやらざるを得なくなってしまう。
科学技術庁長官が二人いることになるのは当然だと私は思う。ですから、
鈴木善幸さんは「むつ」の問題はやってくれるでしょう。だけれ
ども、ほかの発電所にあなたは
鈴木善幸さんを何人もつくらなければならない。発電所
一つごとに
鈴木善幸代議士の小型みたいなのをそこらじゅうに置いて、あなたはいつでも陰の加害者として最後に出ていく。そしてその代議士たちが、おのおの地元住民と一緒になってやるというようなスタイルになるでしょう。あなたは善意の持ち主であろうと私は思いますよ。しかし、あなたの善意は通じない善意なんです。あなたが
原子力委員長になり
科学技術庁長官になったら、もうあなたは加害者なんです。おわかりですか。あなたはどんなにやさしい目つきをしても加害者なんです。だからあなたの言う一言一言は、あのやろう、
原子力発電所をでかくつくってたれ流しする気だなと見られておる。あなたがやさしく話せば話すほど、またごまかしに来たなとしか見えない。あなたはあらゆる科学技術を動員して安全だと言うだけにとどまるから、民衆の苦しみの声にこたえようとしないから、つまり行政組織は民衆の
立場に立っていないで、権力の側に立って、民衆を踏みつけにしていくという疑いを抑えることができなくなっている典型的な例じゃありませんか。そうでしょう。ですから
現実に適応しない。
私はここでがみがみ言いますのは、
関係委員会でもないこの
核防条約の審議に当たってこんなことを言うのはなんですけれ
ども、
科学技術庁長官としてはそこのところをよほどお
考えになる必要があるのじゃないか。あなたは、
科学技術庁長官と
原子力委員長をくっつけたときの責任者ですと御自分でおっしゃっている。そうなんです。だからよけいあなたは疑われているのです。自分のやった組織を自分で直すというのは確かにむずかしいかもしれない。しかし、あなたは自分でつくった組織であるからこそ、そのよさ、悪さをよけいわかっているはずです。いま「むつ」問題を初めとして、問題は連続して起こっていて収拾がつかない。いまに
科学技術庁長官のなり手がなくなるでしょう。もう問題が起これば
科学技術庁長官だ。野党の議員が立ち上がってふるえるのは
科学技術庁長官という言葉があるくらい、
科学技術庁長官はいまやウイークポイントになりつつある。だから、あなたはその安全の
立場と
開発の
立場を分けろと私は提案しておるのです。少なくともこの点をお
考えいただきたい。そうしなければ「むつ」の
鈴木さんとあなたとの
関係のような
関係が、行政をさらに破壊するでしょう。
原子力発電所の問題はもう討議することもできないほどの問題になってきました。発電設備容量それ自体が大幅に狂ってしまった。通産省は依然として古い計画を振り回してあなたを叱咤激励するでしょうけれ
ども、あなたはそれを大幅に下げなければならなくなってきておる。それで調整もついていない。悲劇の人としてあなたは理解されるでしょう。しかし、あなたが悲劇の人として理解されるよりももっと悲劇なのは国民であり、発電所の建設地の住民であり、そしていいかげんな情報に踊らされてどっちのことを信じていいか、だれの言うことを信じていいかわからなくなっている民衆であるということを理解していただきたい。信じないやつが間違っておるのだ、
科学技術庁長官が一番科学で偉いのだ、
原子力委員長の言うことを信じろとあなたが言っても、あなたはもうだめなんです。それをわかっていただきたい。それが私のあなたに対する最大の忠告なんです。この忠告を聞いてもらいたい。この根本問題にメスを入れないと、恐らくこの問題はもっと悪性化するのではないかと私は申し上げたい。どうでしょうか、この辺について。