○山崎(敏)
政府委員 昨年の七月十日に伊江島で発生いたしました米兵の発砲
事件につきましては、同年七月二十九日にアメリカ側が公務証明書を発給いたしまして、同日、
日本側がこれに反証がある旨をアメリカ側に通報して以来、第一次裁判管轄権の帰属をめぐりまして日米間で長い間協議が行われてまいりました。すなわち、昨年七月三十日、問題はまず日米合同
委員会にかけられまして、合同
委員会は、同日、本件の法律的問題の検討を同
委員会の補助機関である刑事裁判管轄権分科
委員会に付託しまして、以来、同
委員会において慎重な検討が行われました。
同
委員会におきましては、
日本側は
事件は
地位協定十七条三項の(a)の(ii)にいう公務執行中に発生したものではなく、したがって、第一次裁判管轄権は、
地位協定の同条の規定に基づいて
日本側が有するという旨を主張してまいりましたが、米側は
事件は公務執行中に発生したものであり、第一次裁判権は米側にある旨を主張しまして、双方の見解が対立し、たびたびの会合における審議の結果、この点をめぐる双方の
立場の対立を最終的に解決することができなかったのであります。したがいまして、同分科
委員会は昭和五十年、本年の四月十七日に合同
委員会に対しまして、第一次裁判管轄権の帰属について双方の対立した見解を併記した
報告書を提出いたしました。
合同
委員会は、刑事裁判管轄権分科
委員会よりのこの
報告書を検討いたしました結果、本件裁判管轄権の帰属に関する日米双方の法的
立場の相違を合同
委員会の場で解決することは不可能であるという結論に達しまして、四月二十四日、この点に関する日米の双方の法的
立場を害することなく、
地位協定第二十五条第三項に基づき、問題解決を両
政府間の交渉にゆだねる旨の決定を行いました。
政府は、合同
委員会から問題が移されました次第にかんがみまして、アメリカ
政府と協議を重ねました結果、五月六日、昨日、わが方としましては最終的に次の諸点を考慮して、この
事件の裁判管轄権の帰属に関する
日本側の法的
立場を維持しつつも、本件の早期解決を図るという実際的見地から、本
事件については
日本側は裁判権を行使しない旨をアメリカ側に通報した次第であります。
すなわち、第一に、本
事件をいつまでも未解決のままにしておくことは、加害者の処罰、被害者救済の観点から問題である。第二に、本
事件における加害者の行為はさほど悪質なものとは認められない。第三に、米国
政府は次に述べるとおり、本
事件についてその
立場をわが方に
説明をしており、本件につき適正な措置がとられるものと判断される。すなわち、
一、米側はかかる
事件の発生を遺憾とするものであり、将来の同様な
事件の再発防止のため万全の措置をとった。
二、本
事件発生直後米側は、非公式にではあるが、公務証明書を発給しない旨の意向を表明したにかかわらず、その後公務証明書を発給し、誤解を招いた点は遺憾である。
三、米側は加害者に対し速やかに刑事あるいは懲戒の手続、すなわち処罰のための手続をとり、その結果は
日本側に通報する。
四、被害者に対しては補償する。
以上が米側がわが方に
説明をしておる諸点であります。
最後に第四として、本
事件の解決をさらに遷延せしめることは、日米友好
関係を維持する見地からも好ましくないと判断される。
以上の次第でございまして、この問題について決着をつけた次第でございます。