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1975-03-26 第75回国会 衆議院 外務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月二十六日(水曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 石井  一君 理事 小林 正巳君    理事 水野  清君 理事 毛利 松平君    理事 河上 民雄君 理事 正森 成二君       加藤 紘一君    坂本三十次君       正示啓次郎君    竹内 黎一君       福永 一臣君    土井たか子君       新井 彬之君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         外務政務次官  羽田野忠文君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省中近東ア         フリカ局長   中村 輝彦君         外務省経済協力         局長      鹿取 泰衛君         外務省条約局長 松永 信雄君  委員外出席者         法務省刑事局参         事官      根來 泰周君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     石田 博英君 同日  辞任         補欠選任   石田 博英君     加藤 紘一君 同月二十六日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     新井 彬之君 同日  辞任         補欠選任   新井 彬之君     大久保直彦君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので順次これを許します。小林正巳君。
  3. 小林正巳

    小林(正)委員 質問に先立って、サウジアラビアファイサル国王の突然の死去に対して、心から哀悼の意を表したいと思います。  ところで、このファイサル国王の死というものが国際情勢に与えている影響というものは、新聞報道を見てもはかり知れないものがあるわけでございますけれども、たまたま中東和平交渉が中断をしたやさきでもあり、これからの国際情勢にどのような影響をもたらすか、また、日本にとってそれがどういう形ではね返ってくるか、その辺について大臣は、どのようにファイサル国王の死を受けとめておられるかについて伺いたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府といたしましても、ファイサル国王の突然の御逝去に対して、謹んで弔意を表したいと存じます。  何分にも急なことでございますので、ただいま小林委員お尋ねでございますが、十分にいろいろな事情がわかっておりませんので、明確に申し上げることができないのが事実でございますが、ファイサル国王わが国にもおいでになりましたことがありまして、日本に対して非常に親しい気持ちを持っておられました。それだけに、御逝去されましたことは両国関係にとりましてことさら残念なことでございます。また、アラブ世界におきまして非常に尊敬されたリーダーの一人でもあられたわけでございます。そういう意味でも損失が大きいというふうに考えるわけでございますが、王位承継が直ちに行われておりますので、サウジアラビアの対外的な外交姿勢というものが、これによって特に変化するということはないのではなかろうかというふうに考えておりますが、何分にもファイサル国王の存在が偉大でありましただけに、その点での損失はやはり免れないというふうに考えております。
  5. 小林正巳

    小林(正)委員 サウジアラビアは主として石油を通じて日本とは特別深いかかわり合いを持っておるわけです。  そこで、このファイサル国王死去に対して、一部報道によると、アメリカはロックフェラー副大統領大統領個人身がわりといいますか、ということで葬儀参列をする、こういう報道がございますが、日本の場合、アメリカとの対比でなくしても、相当程度のレベルで弔意を表さなければならぬのじゃないかと思うのです。で、具体的にどういうふうにだれを赴かせるのか、その辺お答えをいただきたい。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 米国が副大統領を特派するという報道は昨晩私ども存じておりましたが、回教徒葬儀でございますので、回教徒以外が参列できるかどうかということがその時点で実はわかっておりません。ただいまもわかっておらないわけでございますが、その場合には、恐らく特派された副大統領は、弔意を表するという役割りを果たされるのではないかというふうに想像されるわけでございます。  わが国といたしまして、昨晩の時点でやはりきちんとした弔意を表さなければならないというふうに考えまして、総理大臣とも御相談をいたしました。しかしその後、間もなく葬儀が非常に早く行われる、わが国から人を派遣する時間がないということがわかってまいりました。ただいままで知り得たところでは、今日の現地時間の午後の礼拝の後、時間ははっきりしていないようでございますけれども、葬儀が行われるということのようでございます。それで、たまたま現地におりますわが国大使が帰朝しておりましたので、特派大使として一番近いところからわが国大使を送ろうと考えまして、昨晩そのように訓令をいたしましたが、その後に飛行機便等々の関係でそれでも間に合わないということがわかってまいりましたので、ジッダにおります臨時代理大使参列をさせたいというふうに考えておりまして、恐らくジッダからリヤドへはサウジアラビア政府外交団のために何かの便をつくってくれるであろうと想像されますので、ただいまのところ臨時代理大使リヤドに赴かせたいと考えております。なお万一それが不可能な場合も考えまして、リヤドに現在確実におりますのはアラビア石油の代表者一人、これはたしか回教徒でもあるというふうに思っておりますので、日本人でございますけれども、最後の場合にはそういう方法を取ろうというようなことを昨晩中に実は手はずはいたしております。概略そのようなことでございます。
  7. 小林正巳

    小林(正)委員 物理的にこちらから特使を派遣することはやむを得ない、こういうことのようでございますから、それはそれでやむを得ないと思うんですが、アメリカの副大統領ということになりますと、元首に次ぐ人物、日本相当すれば日本総理あるいはそれ以上という格になるわけでございます。さしあたり物理的に間に合わないということで、だれかをともかく出さなくちゃならぬという点では当面の対応としてはやむを得ぬと思いますが、しかしその後、たとえばおくれても、物理的に間に合わなかったんだからということでおくれても、それ相応の持使弔意を表させるために派遣をするということが必要ではないか。それは新しい王の即位式の時期とも絡むんではないかと思いますが、その点総理相談をなされておりますか。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御指摘のようなことも確かに考えておるわけでございますが、先方の儀式、先方の習慣というものをよほど確かめておきませんと、間違ったことをしてはなりませんので、その辺も確かめておきたいと考えております。  それから新王の即位というのは、確かにそういう一つの時期ではないかと私も昨晩から考えておるわけでございますけれども、それが非常に離れた後になりますのか、比較的早く行われますのか、その辺のことも定かでございませんので、それらのことも総合的に考えまして判断をいたさなければならないと思っております。
  9. 小林正巳

    小林(正)委員 サウジアラビア国民というのは非常に感情的な――感情的というと大変失礼なんですが、非常に感情的な考え方をするというふうにも言われておりますので、そうした点で日本ファイサル国王の死に対して失礼だというふうな印象を相手方に与えないように、今後の日本とサウジの関係もこれあることですから、その点十分な御配慮をお願いをしたいと思います。  そこで次に、インドシナ情勢について、大臣は昨日の参議院外務委員会お答えになっておるわけでございますけれども、現在北ベトナム使節団が来て、日本からの経済援助について話はすでについておるわけでございます。一方、ベトナム情勢というのは最近非常に目まぐるしく動き始めておる。そして解放勢力がまさに全土を席巻しかねまじき勢いになってきておるわけでございます。そうした時期にこの北ベトナムに対する援助、一部報道によると、アメリカからこうした際でもあり日本に再考を促してきた、こういう報道がなされておりますが、その事実関係をちょっと伺いたいと思います。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先般、この問題につきましてはハノイ政府と、さしずめ五十億円の協力をするということを決定いたしまして、ただいまハノイ政府から何人かの使節団わが国に参っておるわけでございます。したがいまして、この約束は誠実にわれわれとしては履行をいたさなければならないと考えておりますが、小林委員も御指摘のように、これがインドシナ半島における紛争を激化されるようなことになりましては適当でないのでございますから、北ベトナム国民民生の安定にあるいは振興に寄与するような形で協力を進めていきたいというふうに考えております。
  11. 小林正巳

    小林(正)委員 民生の安定に寄与する形ということで大体わかるのですけれども、もうちょっと具体的に、軍需物資、これは問題になりません。それから難民救済的な物あるいは復興的な物、それから復興的な物の中にも間接的に軍事力を強める可能性を持つような物もあるのではないか。その辺もうちょっと具体的に、この援助はすでに約束をしたことでもあり、アメリカからそういうクレームがついておるわけですが、まずそのアメリカクレームに対して、ついておるかついてないかということとは別に、クレームであるとしても、それを受け入れるかどうか、拒否するのか。それからいま申し上げた実施に当たって、具体的にどういう面に限定をされるのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  12. 高島益郎

    高島政府委員 北ベトナムとの五十億円の無償経済協力につきましての話し合いは、いま東京で行っておりますが、基本方針といたしまして、先ほど大臣のお話にありましたとおり、北ベトナム経済復興あるいは民生の安定のために資するような物であって、これがいかなる意味においても軍的目的には使われないという点を基本方針といたしております。これは通常、無償経済協力を行う際、いかなる国との関係におきましても同じでございまして、南越につきましても同様な方針でやっておるわけであります。したがいまして、北越の側から希望する品目が出れば、すべてそれを無条件に日本から供与するということではなくて、いま申しましたような見地から、十分に技術的に検討を加えた上で、両方の納得のいく形で合意した場合に初めて供与されるということでございます。具体的にどういう品目かということにつきましては、現在双方で交渉中でございますので、この際申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思います。
  13. 小林正巳

    小林(正)委員 それから駐北ベトナム日本大使館が四月一日に開設をされる、こういうことになっております。今日のごく最近の北ベトナム情勢から、この開設をおくらせるというふうなことがあるのかないのか、その辺を。
  14. 高島益郎

    高島政府委員 ハノイ日本大使館を設置する問題につきましても、先般の話し合いの一端といたしまして、四月一日を目途として設置するということに合意を見ております。このことは、なるほど先生の御指摘のように、現在のベトナム全般をめぐる情勢とも関連はございます。しかしまた他方、私どもやはりああいう、ハノイにも日本の出先があるということの意味は非常に重要でございますし、これからああいう、人を通じてのコンタクトも可能になるわけでございますので、そういう点から四月の上旬をめどに、とりあえず二名の館員を派遣できるようにいま準備を進めております。ただ、いろいろ物理的な事情によりまして四月一日開設ということは不可能でございますが、若干のおくれはございますけれども、方針といたしましては四月中には何とか開設するという方針で進めております。
  15. 小林正巳

    小林(正)委員 飛び飛びになりますけれども、カンボジア情勢ですけれども、カンボジア、プノンペンはまさに孤島化しているような軍事情勢にあるようでございます。  そこで、せんだって来いろいろ新聞報道されております、現地大使が現政府あるいはその後に予想される情勢関連をしていろいろ動いているようでございます。考えようによっては、ロン・ノル政権以降の政権になった場合に、余り現地日本大使がこういった情勢の中で介入を深めたというふうな印象を与えた場合に、事実そういう行動をとった場合に、その後の政権との間で支障があるのではないかという懸念もあるわけですが、現地大使行動というものは、外務省訓令によって動いておるのか、それとも現地大使個人判断で動いておるのか。昨日夜、あそこの参事官が帰国したようでございますが、以前の新聞報道だと現地大使行動に対して外務省筋はやや否定的かのごとき発言も載っておりましたが、その辺どういうことなんでしょうか。
  16. 高島益郎

    高島政府委員 カンボジアに関する政府基本方針は、昨年の秋の国連総会におけるわが国行動と全く同じでございまして、要するに、カンボジア人の当事者が外部からの影響なしに平和的に話し合いをすることによって、流血の惨を避けて、早く解決をするということでございます。このような方針を一貫してとっておりまして、特に東南アジアのASEAN諸国とは緊密な連絡をとりながら、そのような関心を随時世界の各国に表明してまいりました。もちろん現在のカンボジア政府に対しましても随時そういう態度を表明してまいっております。  このような立場に立つ日本並びASEAN諸国に対しまして、カンボジア政府の方も非常に期待をいたしておりまして、特に現在の困難な状況のもとでいろいろ意見を求めてまいっております。その意見を求めてまいっておりますのに対して、わが方の栗野大使並びにインドネシアあるいはタイあるいはマレーシアの大使等が随時集まりまして、いろいろ相談をしたり、先方の求めに応じて意見を述べておるわけでございまして、いずれにしましてもこの戦争を早く終結して、カンボジア人同士の平和的な話し合いに持っていくというために、どうすることが一番いいかという点についての意見の開陳でございます。これはそういう基本方針に基づいて、随時そういう行動をすることを一般的に訓令いたしておりまして、わが方政府栗野大使との間に何ら意見の相違その他はございません。なお、現在の危険な状態にございまする中で非常に勇敢な行動をしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、邦人の保護並びにいま申しましたような外交的な任務、そういったものが大体めどがつき次第撤退するようにということを、一般的な訓令の形で栗野大使には指示してございます。
  17. 小林正巳

    小林(正)委員 きのう外務大臣参議院でおっしゃったように、インドシナ情勢に対して、日本として根本的に考え直さなくちゃいかぬというふうな認識を持たれておるかのようでございますが、それは時間もないので次に譲るとして、基本的に現在のインドシナ情勢あるいは中東あるいは朝鮮半島、そういった今日の国際情勢に対して、外務大臣が大局として緊張緩和国際情勢、そういう認識を持っておられるのか、それとも緊張が高まりつつある、あるいは激化しつつある国際情勢だと考えておられるのか、その辺の基本的な認識を端的にひとつお答えをいただきたいと思います。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 恐らく世界各地方におきまして、各民族が大国の支配というものからできるだけ自由になりたいというような動きが、一言で申しますと全体的な緊張緩和の中で顕在化してきたということになるのではなかろうか。しかし、その中で同一民族ではあっても、いろいろな不幸ないきさつからそれが二つに、あるいはそれ以上に分かれるというようなことも起こっておるわけですが、しかし、それらの人々はいずれは一つの国に統合したいというような、理想としてはそういう理想を掲げておるわけで、現実はそう参らないケースがたくさんございますけれども、やはりこれは私は緊張緩和の所産としての民族自決と申しますか、そういう動きとしてとらえてよろしいのではないかというふうに考えております。
  19. 小林正巳

    小林(正)委員 次に外務大臣訪米、この時期はなかなか流動的であるかのようでございます。こういう今日のような、ファイサル国王の問題などもあって、アメリカ外交当局自体外交日程も流動的になりそうでございます。いまの時点で見通しはなかなかつけにくいかと思いますが、今日ただいまの時点で、外務大臣訪米の時期、そして議題ですね、安保条約事前協議条項の問題なども話し合うということをきのう参議院でおっしゃっておるようでございますが、それをひとつ簡単にお聞かせいただきたいと思います。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 アメリカ国務長官中東問題、インドシナ問題、それに中南米の問題等いろいろ抱えておられるようでございますし、私自身もまた、国会からお許しを得て出かけられる時期がただいまのところきわめて狭い幅でございますので、日程が合いますかどうか、まだはっきりいたしておりません。こちらからの申し入ればいたしてございます。  もし会談が行われるということでございましたら、一つ両国間の関係ということになろうと存じます。それは、御指摘のように、安全保障の問題も含めまして、その他経済問題もございますが、両国間の関係。もう一つは一般的な世界情勢、その中にはインドシナ半島の問題あるいは中近東問題等が含まれることになろうと思います。第三は、両国協力して対処すべき多国間の問題、たとえばエネルギーなどがそうでございますけれども、そういった範囲のことを考えております。
  21. 小林正巳

    小林(正)委員 外務大臣訪米、次は総理訪米、こういう問題があるわけでございます。外務大臣訪米日程がまだわからぬようなことですから、総理日程ももちろん決まってないでしょうが、十月に天皇陛下訪米という問題があり、天皇陛下総理大臣が相次いで訪米するということになると、アメリカ側も大変困るのじゃないかと思うのです。  そこで、時期はわからぬわけですが、そうした絡みあるいはその他の関連で、外務省として、外務大臣として総理訪米の時期はいつごろが望ましいのか、いつになるかという問題は別ですが、いつごろが望ましいのかという点をお聞かせいただきたい。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 陛下の御訪米は、もとより、申すまでもなく何らかの政治的な意味を持つものではございませんけれども、仰せられますように、確かに一つの大きな行事でございますから、先方といたしましても相当の時間なり労力を使わなければならない問題でございます。そのようなこともございますので、先般、アメリカの駐日大使が一時帰国いたしますに際しまして、日本総理大臣としては、国内的に日程が許せば訪米されるにやぶさかではない、そういう意思は持っておられるが、アメリカ側としては、時期あるいは会談の内容等々から考えて、どういうふうに判断されるか、ひとつアメリカ側情勢も知らせてほしいということを依頼しておいたようなわけでございます。駐日大使が帰りますと、その辺のことがもう少しはっきりしてこようかと思っております。したがいまして、ただいま、時期につきまして申し上げるような段階になっておりませんのが実情でございます。
  23. 小林正巳

    小林(正)委員 もう時間がありませんからやめますが、時期はわからぬ、アメリカ側ともよく相談する、こういうことなんですが、時期がいつになるかということではなしに、日本側から考えて、いつごろの時期が望ましいかというその望ましい時期を私は伺っておるわけでございます。お答えになれないなら、それはやむを得ぬわけですけれども、その大ざっぱな時期、いつごろが望ましいということがもしお答えをいただけるんなら、一言だけお答えをいただきたいと思います。それで私の質問は終わります。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国内の政治日程等がわからないという点もございますので、恐らくは、この国会が終了いたしまして、陛下の御訪米が十月ということになっておりますから、その間という時期が比較的自然な時期ではないかと考えておりますけれども、これは総理大臣と具体的に打ち合わせをいたしたわけでもございませんし、先方もまた、たとえばソ連のブレジネフ書記長訪米ということも一応今年の日程にあるようでございますから、向こうにもいろいろ都合があろうと考えております。
  25. 栗原祐幸

  26. 土井たか子

    土井委員 まず、私は、質問に先立ちまして、サウジアラビアファイサル国王の御逝去を悼み、哀悼の意を表したいと存じます。  外務大臣、この国王の死は日本に対してどのような影響があるというふうにお考えでいらっしゃるかを、まずお聞かせいただきたいと思います。
  27. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ファイサル国王は、特にわが国に対しては、かつて訪日をされたこともありまして非常に親近感を持っておられた方でありますし、またアラブ世界におきましてもきわめて尊敬された一人の指導者でございました。王位承継が平穏に行われたと考えられますので、それによってサウジアラビア対外政策が急激に変化をすることはないと思っておりますけれども、何分にも、ファイサル国王自身個人的に持っておられた対日親近感であるとか、あるいはアラブ世界における声望であるとかいったようなものは、やはり御逝去によって大きな損失になったと申さざるを得ないと存じます。わが国として特段にサウジアラビア外交政策が大きく変わるというふうには考えておりませんが、それだけの声望があった方が亡くなられたということは、やはりわが国にとりましても両国間の関係で大きな損失であったと存じます。
  28. 土井たか子

    土井委員 宮澤外務大臣アメリカを訪問されるという御予定がおありになるわけでありますが、先ほどの御答弁の中にも、日本安全保障について、訪米の上で何らかの話し合いがあるという御趣旨の御答弁がございました。話し合いをするだけでなしに、何らかの約束をその席でなさるという御予定がおありになるかどうか、つまり、わが国安全保障について日米間である取り決めをする、ある約束をするという御予定をお持ちになっていらっしゃるかどうか、そこのところはいかがでございますか。
  29. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 広く両国間の関係について話をいたしたいと考えておりますから、その中には当然安全保障の問題も入ってまいります。しかし、私、いまの段階で、何かこちらから約束をするという考えは持っておりません。
  30. 土井たか子

    土井委員 それでは、日本安全保障に関する問題について一切約束をしない、取り決めをしないということをこの外務委員会の席ではっきりと確約をしていただけますね。
  31. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 安全保障の問題について一切取り決めをしないということを約束できるか、大変に包括的なお尋ねになるわけですが、そう厳格におっしゃいませんでも、わが国を将来にわたって現在以上に拘束するような、そんな取り決めでも今回するかというお尋ねでございましたら、そういうつもりはございません。
  32. 土井たか子

    土井委員 実は、このような質問をいたしますのはひっかかりがあるわけであります。問題のあの核拡散防止条約は、今国会に提出をするということがもうはっきり決まっているのでありますか、いかがでありますか。
  33. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府としてはいたしたいと考えて、ただいま努力をいたしておるわけでございます。
  34. 土井たか子

    土井委員 そうすると、その節、わが国の安全という問題をアメリカ側が何らかの形で保障しない以上、この核拡散防止条約というものを批准すべきではないという自民党内の一部の声もあるやに聞いているわけであります。これはもう言うまでもないことで、一たんこの核拡散防止条約を批准いたしますと、今後二十年間わが国はこれに拘束されるということになるわけでありますから、アメリカ側に通告しさえすれば後一年をもって失効する安保条約の兼ね合いからして、日本は核攻撃にさらされるおそれがあるのではないかというところから、いま安保条約について、核防条約とオーバーラップして考えた場合、どういうふうに考えるべきかどうかというふうな論議を非常に呼んでおるわけであります。したがいまして、先ほど来、アメリカに行かれて何らかの約束をなさる御用意があるかとお尋ねした中にも、実はその辺に主眼があるわけでありまして、ひとつそういう意味において当外務委員会の席上、外務大臣は一切そういう趣旨の約束はしないということをお約束できますかということを私は再度お尋ねいたしましょう。
  35. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 核拡散防止条約考え方が、日本にとりまして安保条約という大きな前提の上に核拡散防止条約の批准が可能である、そういう考え方を私どもとっておりますから、基本的に両方のものを別々のものだというふうには――別々と申しますか、そういう前提を欠いた場合には、核拡散防止条約のようなものの成立は安全保障の見地からなかなかむずかしい問題があろうという考え方は、理解できる、首肯できる考え方だと思います。しかし、その前提になっております、土台になっております安全保障条約でございますが、私どもただいまの政府は、この条約はいわば期限のない条約であるというふうに考えておりまして、一年という問題はございますけれども、廃棄通告をする意図は持っておりません。恐らくお尋ね意味は、そこを何かの形で約束をすることがあり得るかと言っておられるのではなかろうかと思いますが、私どもの政府と申しますか、自由民主党を中心にした政府は、もともと廃棄通告をするつもりを持っておりませんので、もしもそれが将来政治情勢の変化によって、廃棄通告をすることが適当だというような政権が生まれるといたしました場合には、いまから私どもが 何か約束をいたしましても、これは将来の政府を恐らく行政的に拘束することはあり得ないと考えられますので、そこから考えましても、ただいま別段の約束をするという気持ちはございません。
  36. 土井たか子

    土井委員 そういたしますと、外務大臣とされては、核拡散防止条約を批准する前提条件として、日米間に新たに安保条約の中身を再検討し、あるいは安保条約を上回る何らかの安全保障をこの節取りつける必要は何らないというふうにお考えになっていらっしゃるわけですね。
  37. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本的な体系として、現在の安保条約で十分であると考えております。
  38. 土井たか子

    土井委員 いまインドシナの問題について考えてまいりますと、一国にとって内政、外交両面ともに非常にけんのんな状態になりました場合、国内にあってはもちろんのことでございますが、国外における自国民の発言であるとか行動であるとかいうふうな問題について取り締まり、監視というものを強化していくというのが一般の傾向であります。そういうことから、現在南ベトナムの広報文化センターがわが国に設けられているということを存じておりますが、それはどこにあって、正式にはどういうふうな名称で広報文化センターがつくられていて、どういうふうな組織で、またどのような外交特権を持っているかをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  39. 高島益郎

    高島政府委員 昨年も土井先生から同じような質問があったように記憶いたしておりますけれども、センターの名称はベトナム共和国大使館広報事務所という名前でございます。昨年四月十八日に正式に開設されまして、この名前のとおり、ベトナム共和国大使館の一部として機能しておるというのが現状でございます。構成員はベトナム共和国大使館のチャン・バン・ラム参事官以下三名でございまして、あと二名の書記官がおります。合計三名でございます。
  40. 土井たか子

    土井委員 それはどこにあるわけでありますか。
  41. 高島益郎

    高島政府委員 具体的にいまちょっと住所を覚えていませんが、大使館の場所とは別な場所でございます。
  42. 土井たか子

    土井委員 外交特権というものは認められているわけでありますか。いずれでありますか。
  43. 高島益郎

    高島政府委員 通常の日本の在外にあります広報センターと同じように、こういう種類の広報センターは場所のいかんを問わず大使館の一部でございまして、また、大使館の一部である以上、外交特権は当然亨有するわけでございます。
  44. 土井たか子

    土井委員 通常こういう施設については、広報センターというふうに呼ぶ名称が一般でありますが、先ほど御答弁の中にもございましたとおり、ベトナム共和国大使館広報事務所という名称になっております。「文化」というのがついておりません。特にそれに対しては理由がございますか。また、この事務所というのはどういうふうな任務を負っている事務所でありますか。
  45. 高島益郎

    高島政府委員 名前につきまして、別に国際的にこういう名前でなければならないということは私はないと思います。日本の場合も必ずしも広報文化センターということで皆統一しているわけでもございません。現地政府といろいろの話し合いの結果決まるものでございます。  内容につきましては、一般的に広報活動ということでございまして、広報活動といいますのはベトナムに関するいろいろな広報、宣伝、そういうことでございます。
  46. 土井たか子

    土井委員 聞くところによりますと、留学生も含めまして、ただいまわが国に在留をいたしております南ベトナムの人たちは、この事務所の活動というものに一種の不安、不信を抱いているというであります。つきましては、この広報事務所の本当の任務というのは、日本における南ベトナム人の思想であるとかあるいは行動なんかの調査ではないのか。そういうふうな活動というものが内部の一部にあるのではないか。たとえばインドシナ情勢というのが南ベトナム政府にとって急速に悪化するという状態になってまいりますと、いま日本におります南ベトナム人が北ベトナムと何らかの関係を生じつつありはしないかというふうな事柄について、調査をするというふうな問題も起こってくるという余地がありはしないかという不安を持っているわけであります。これは端的に言うと、いわばスパイ活動ということになると存じますが、こういうふうなことに対してどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  47. 高島益郎

    高島政府委員 一般論でございますけれども、外交使節の任務といたしまして、そのようなスパイ活動と言われるような活動をすることは国際的に認められておりません。したがいまして、いま仰せのような自国民の捜査に類するような活動は、これは外交活動を当然越えるものでございまして、原則としてそういうものを日本政府は認めるということはできません。
  48. 土井たか子

    土井委員 大変力を込めての御答弁でございますけれども、巷間、公然たる韓国KCIAの例もございます。これは外交ルートを通じて正式の政府機関である、政府代表機関であるというふうな意味において、まさかスパイ活動を認めるなんということはあり得ない、こんなことは御答弁を聞くまでもないわけであります。しかし、もうそういう例が前例としてないわけではない。韓国KCIAの例なとをお考えいただきたい。政府としては、この南ベトナムの広報事務所について十分、いま私が申し上げたような不信感、不安感というふうなものをぬぐい去る意味においても留意されることを望みたいと思うのです。いかがでございますか。
  49. 高島益郎

    高島政府委員 通常の外交活動以外の活動をしているという懸念があるといたしますれば、これは重大なことでございますので、私ども十分に留意いたします。
  50. 土井たか子

    土井委員 ところで、北ベトナム側に対して経済援助があるわけでありますが、すでに取り決められております枠の中での総額は幾らでございますか。
  51. 高島益郎

    高島政府委員 北越政府との一年数カ月にわたる交渉の結果、実はまだその総枠については合意に達しておりません。今後も継続して総枠についての交渉を行うということが実は合意の内容でございまして、しかしそのうち五十億円については昭和五十年、五十会計年度中に使用されるということについて、いま話し合いをしているわけでございまして、総枠についてはいま申しましたとおりまだ決まっておりません。
  52. 土井たか子

    土井委員 いまこの御答弁の中にございました五十億円については、プラスアルファという問題は今後実現可能性としてあるのかないのか、そのあたりをお聞かせくださいませんか。
  53. 高島益郎

    高島政府委員 これは当然あるわけでございます。実は総枠について長い間交渉を重ねてきたわけですけれども、いつまでたっても双方の合意が得られませんので、とりあえずそのうちの五十億円といへうことについて合意をしたわけでございますから、当然プラスアルファと申しますか、五十億円を上回る額についてこれから交渉を継続するわけでございます。
  54. 土井たか子

    土井委員 アメリカ側は、この援助に対しまして、ジュネーブ協定に違反するというふうな理由で好ましくないという趣旨の申し入れを日本側にしつつあるということを伝え聞いているわけでありますが、その内容についてお聞かせいただきたいと思います。
  55. 高島益郎

    高島政府委員 ジュネーブ協定というのは私初めて聞きましたけれども、アメリカから何か申し入れがあったというような話が新聞に出ているということを聞きましたけれども、私ども政府としては何にもそういう申し入れば受けておりません。
  56. 土井たか子

    土井委員 もしアメリカ側から日本政府に対して、北ベトナムに対する経済援助は好ましくないというふうな趣旨の申し入れがありとすれば、それにはどのように対応なさいますか。
  57. 高島益郎

    高島政府委員 いま現実にそういう申し入れを受けておりませんし、また、そういう申し入れが仮にあったとした場合にどうするかということを申し上げるのは、非常に機微な問題であろうかと思います。したがいまして、大変失礼でございますけれども、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
  58. 土井たか子

    土井委員 これはあくまで仮定の問題ですね。ひとつそれを確認させていただきます。現にそういうことはない、これは確認させていただいた上で、アメリカ側からそういうことがあるなしにかかわらず、また他国のいかなる政府からいろいろな意見があるなしにかかわらず、現に日本政府としては北ベトナムに対する経済援助、それは今後やはり相互のいろいろな話し合いの中で具体的に決められていく問題でありましょうが、この経済援助についてはすでに決定されている額、それからさらに今後考えられていくプラスアルファ、この経済援助というものはゆがめないで、どこまでもやっていくという基本的姿勢を持ち続けるというふうに考えてようございますか。
  59. 高島益郎

    高島政府委員 このベトナム民主共和国との間のいわゆる無償経済協力と申しますのは、一般に通常の意味での無償経済協力とは若干性質が違いまして、この国交樹立問題とも関連する非常に重要な一種の政治問題でもあったわけでございます。したがいまして、これは日本と北越との関係をとにかく今後維持発展させる上におきまして重要な問題でございますし、そういう点におきまして、われわれこの無償経済協力の問題は大事にこれから交渉を続けていきたいと思っております。
  60. 土井たか子

    土井委員 さて、質問の論点を変えますが、現在ジュネーブで行われております海洋法会議をめぐる問題であります。この海洋法会議では、先日の当委員会においても私は質問を少しの時間でございましたがいたしました。続けてこの中身についてこれから質問したいと思います。  領海十二海里が大勢であるというふうに、もはやこれは公然たる問題になっておりますが、その場合、いわゆる国際海峡の自由航行というものが前提条件として考えられていいのであるかどうか。つまり国際海峡について自由航行を認めるということが、領海十二海里ということを認める場合、両者がワンセットとして考えられるということになっているのかどうか、その間を少しお聞かせいただきたいと思うのです。
  61. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 御承知のごとく、領海幅員を十二海里に広げるということについては、大勢といたしましては、コンセンサスが恐らくこの海洋法会議において成立するであろうと私ども観測しているわけでございます。その領海が、幅員が広がることによって生じてきます、いわゆる国際海峡の問題が同時に海洋法会議においていろいろ論議されているわけでございますが、それの海峡についていかなる制度を樹立するかについて、いろいろな意見、提案がなされているわけでございます。したがいまして、その結果につきましては会議の推移をもう少し見る必要があると思いますけれども、結果といたしましては、新しい海峡を包摂と申しますか、含めた領海幅員の拡張ということが恐らく合意されるであろうというふうに考えております。
  62. 土井たか子

    土井委員 そうしますと、いまの話し合いの中では、一定の条件というものを話し合いながら、領海十二海里を決めていくという段取りになっているわけでありますね。その一定の条件の中には、いま私が質問の中にも出しましたいわゆる国際海峡という問題も含まれているわけでありますね。この国際海峡の自由航行というものがいわゆるその場合話される条件ということであるならば、これはいわば十二海里を決めていくための前提として考えられているというふうに確認をさせていただいていいわけでありましょうか。
  63. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 海洋法会議の結果として、新しい国際海峡を盛り込んだ領海幅員の拡張という形になるだろうということを先ほど申し上げたわけでございます。海洋法会議の中におきまして、この領海幅員を十二海里に広げるということと、国際海峡の問題というものは一応別個に論議はされているわけでございます。ですから、十二海里十二海里ということを論議しながら、その国際海峡をどうするかという問題を論議しているのじゃございませんで、しかしその論議の前提といたしましては、領海幅員が十二海里に広がることによって生じてくる国際海峡の問題をどうするかというところで論議されているわけでございます。
  64. 土井たか子

    土井委員 大変回りくどい御答弁でありますが、要するに国際海峡という問題をどういうふうに考えるか、自由航行というものを認めるのか認めないのかというふうな問題も含めて、それは現に討議をされつつある領海十二海里ということを決めていく前提条件になっているわけでしょう。そういう問題じゃありませんか。いまの御答弁というのは非常に回りくどいものの言い方でありますけれども、要するに端的に申し上げれば、いま申し上げたことが御答弁の中身になるのじゃないですか。いかがですか。
  65. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 考え方の問題かと思いますが、国際海峡、いわゆる国際航行に使用されております海峡であって、領海が幅員が広がることによって出てきます問題、これを論議しているわけでございますから、当然その十二海里の問題が前提になっているということは言えると思います。
  66. 土井たか子

    土井委員 この前提条件についての話し合いが現にいろいろ展開されつつあるわけでございますが、その中の一つに、いま私が質問の中でも出しましたいわゆる国際海峡に対しての自由航行を認めるというふうな問題は、特に発展途上国に反対が多いわけですね。こういう話し合いがまとまらなければ領海十二海里は成立しないものというふうに読んでいらっしゃるか、いずれでございますか。
  67. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 海洋法会議における趨勢といたしましては、領海幅員拡張の問題、国際海峡の制度の問題、それから経済水域の制度の問題、この大きな三つの問題が、いわばパッケージディールと申しますか、一括して決着をつけるという前提で論議が進められております。したがいまして、どれかが単独で成立する、あるいは合意ができるということにはならないというふうに予想しております。
  68. 土井たか子

    土井委員 そうすると、話し合いの結果、いろいろな条件について反対が強く、まとまらなければ、領海十二海里も成立しないというふうに理解をいたしまして間違っていないわけでありますか。
  69. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 おそらく海洋法会議の結果といたしましては、そういう形だけで合意が成立するということはないだろうと思っております。
  70. 土井たか子

    土井委員 わが国の場合は、もうすでに国際海峡に対して自由航行というものを主張するということを会議において出されているやに私たちも承知しているわけであります。この国際海峡自由航行という問題に対して、日本がそういう立場をとるという根拠はどの辺にあるわけでありますか。
  71. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 根拠あるいはその理由といたしましては、御承知のごとく、わが国はその資源の大半を海外の資源に供給を依存しておりますし、また、経済的にも貿易立国の見地から海運というものの利益というものを従来非常に大きく受けてきたわけでございます。そういう海運国という立場から見まして、国際海峡において従来確保されていた航行の自由が今後もできる限り確保されることが望ましいという考え方でございます。
  72. 土井たか子

    土井委員 海運国としてのお考えで、この国際海峡自由航行というふうなものを主張するという立場に立つわけでありますが、そういたしますと、いま自由航行について、商船、大型タンカーの類と軍艦のたぐいを区別して考えていくという考え方もあるようであります。そういうことを現に主張する国もあるようであります。わが国の国益という立場からして、先ほど来おっしゃった、わが国は海運国でございますからという御答弁もあったと理解するわけでありますが、わが国の場合は軍艦がないんですね。わが国の場合には軍艦がございません。したがって、自由航行というふうな問題についても、商船であるとか大型タンカー等々のたぐいと軍艦とを区別するという行き方があると思うのですが、こういう問題に対しては日本としてはどのように考えていらっしゃるわけでありますか。
  73. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 ただいまお話がありましたように、海洋法会議においても、この国際航行の問題を論議しますときに、船舶の種類、すなわち、一般商船と軍艦とを区別して取り扱うべきであるという意見も一部の国からは表明されております。考え方といたしましては、そういう船舶の種類なり形状あるいは性格というものによって区別をするという考え方があるわけでございます。あるわけでございますけれども、私どもといたしましては、日本の商船なりタンカーなりの通航についてできる限り自由を確保したいという見地から、船舶の種類ないし形状によって区別を設けることを主張すべきではないだろう、それは適当でないだろうと考えているわけでございます。
  74. 土井たか子

    土井委員 それはおかしな話でありまして、商船なり大型タンカーなりの航行の安全を期するためとか、航行に対しまして、より国益の立場からその自由を確保するためというふうな立場に立つなら、むしろこれは区別して考えることの方が有利であるという考え方も成り立つわけであります。したがいまして、いまの御答弁からすると、わが国が海運国であり、商船なり大型タンカーなりの航行を自由にしていくことのためというふうなことを理由にされるというのはどうもうなずけない。どういうところに日本としては、いま大型タンカー、商船、軍艦等々の区別をしないという理由をお持ちになっていらっしゃるわけでありますか。
  75. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 それは、船舶の種類とか形状によって区別をせよという主張をいたしますことは、まさしくタンカーを区別せよという主張につながるわけでございます。一部、そういう趣旨の主張をしております国の中に、軍艦よりもむしろタンカーの方が非常に害があるのだという強い意見を表明している国もあるわけでございます。私どもといたしましては、そういうような状況も考えまして、船舶の種類ないし形状によって区別をするという主張をすることは適当でないというふうに考えているわけでございます。
  76. 土井たか子

    土井委員 いま御答弁になりましたような物の考え方をしている国もあるかもしれません。しかし、現にあるこの領海及び公海条約について考えてまいりますと、領海における無害航行というのを問題にする場合に、無害航行はなぜ必要であるか、無害航行であるという確認はなぜ必要であるか、どういう辺に無害航行でなければならないという理由があるのでしょう。どの辺ですか。
  77. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 いまの御質問の趣旨、実は私、あるいは的確に把握していないかもしれませんが、無害航行でなければぐあいが悪いということの理由をお尋ねになられましたのでしょうか。私どもといたしましては……。
  78. 土井たか子

    土井委員 それじゃ、もう一度質問しましょう。  無害航行ということが特に取り決められた理由ですよ。領海内における航行について、なぜ無害航行ということを取り決めたかということです。
  79. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 一般領海における外国船舶の無害航行がなぜ認められ、そういう国際上の制度ができ上がっているかというお尋ねだと思いますが、それはいわゆる公海から公海に通航する、あるいは公海から領海の中に通航するというような国際航行の自由を確保するために必要な制度として、沿岸国の管轄権を部分的に制限するという趣旨の制度として無害航行制度というものができているわけでございます。
  80. 土井たか子

    土井委員 管轄権の自由を保障する、安全を保障するという問題もございましょう。そういう点からすると、やはり無害航行という問題は全く自由航行と違いますが、しかし、無害航行という問題を考えていった場合にも、これは軍艦に対する取り扱いというものは大変に重要視されているわけでありますね。軍艦並びに潜水艦等々に対しての取り扱いというのは、やはり安全とか秩序とかいうふうな問題から出てきた問題であるということはだれしもよく知っているところであります。だから、そういう点からいきますと、特に今回自由航行について、商船であるとか軍艦であるとかを区別しない、どういう船種についても自由航行ということを認めていこうではないかということをお考えになる理由というものがどの辺にあるかということは、大変にひっかかる問題になるわけです。日本としては、船種を区別しないで、あらゆる船について自由航行を認めるべきであるというお立場をおとりになる理由というのをもう一度ここで確認しておきたいのですが、どの辺にありますか。
  81. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 無害航行の場合に、一般船舶と軍艦とは別々であるという趣旨の御発言がただいまあったかと思いますけれども、私どもはそうは考えておりませんで、一般国際法上の無害航行の権利というものは、一般商船についても軍艦についても、ひとしく認められている国際慣習法上の制度であるというふうに考えているわけでございます。このことは、ジュネーブの領海に関する条約が採択されましたときにもいろいろ論議がされたわけでございますけれども、採択されました条約においては、一般国際慣習法を実定法化する制度といたしまして、無害航行の権利というものを軍艦にも商船にもひとしく認めるということが制度として採択されたということでございます。今回の海洋法会議において、国際海峡における船舶の自由航行をできる限り確保したいという私どもの考え方は、先ほど来申し上げましたように、資源ないし貿易という観点からするわが国の国益を最大限に確保していきたいという考え方から出ているわけでございます。
  82. 土井たか子

    土井委員 どういう艦船についても、無害航行で認めている条件を満たせば、これは領海内を航行できるというふうに考えてきた、またそれが一般国際法上の通念であったというふうに言われておりますね。わが国として、いままでに核を積載している艦船については、無害航行であるという条件を満たしていれば領海を通過してよろしいとおっしゃってこられたわけでありますか。
  83. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 その点につきましては、領海条約を国会において審議をしていただきました際に、御承知のとおり、政府統一見解というものが昭和四十三年に出されているわけでございますが、政府としては、核を常備搭載して通航する軍艦については、無害航行とは認めないという政策をとったわけでございます。
  84. 土井たか子

    土井委員 つまりこれは核積載艦の航行を認めないという立場に立って、この問題についてはいままで認識を進めてこられたわけでありますね。今度は自由航行について、わが国は商船であれ軍艦であれ、船種に対して区別しないということであるならば、核積載艦についての自由航行ということもこの範囲で認めていくということに相なります。領海十二海里決定の前提に、これはまた条件として考えられてくるということになるわけでありますが、いかがでありますか。
  85. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 前提と申しますのがいいかどうか、先ほどの御論議がございましたけれども、海洋法会議において採択される結果となります、国際海峡において、自由航行というものがもし制度として認められるということになりますれば、そういう結果になるだろうと思います。
  86. 土井たか子

    土井委員 そういう結果になるということになれば、自由航行というものが決定した瞬間に、わが国の現在まで国是であるところの非核三原則の、これは適用除外地域あるいは例外ということにならざるを得ないわけでありますが、それはそういうふうに確認していいわけでありますか。
  87. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 これは一般国際法と国内法との関係ということにも相なるかとも思いますけれども、非核三原則という政策は、国際法の枠外において適用されるものではないだろうというふうに考えるわけでございます。したがいまして、新しくできます国際海峡制度というものができ上がりました場合には、その制度に従って適用されていくということが当然の結果になるのじゃないかというふうに考えているわけでございます。
  88. 土井たか子

    土井委員 ということは、具体的にさらにお答えをいただきたくなってまいります。  適用される場合に、自由航行のあり方を認めたその条件に即応して、つまり国際会議の場所で決定をされた国際的な条件に従って、日本の国内で物を言っている非核三原則という中身がそこには適用されないということになるのか、あるいは非核三原則それ自身が変質するということになるのか、これはいずれかを問題にせざるを得なくなると思うのです。いま私がお伺いしているのは、非核三原則を、自由航行が決定しだ場合そこには適用しないのだ、非核三原則の例外としてこういう状況を認めましょうということに結果としてはなるのだということを確認してようございますかと聞いているのです。
  89. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 前々から実は申し上げておりますことですけれども、新しい国際的な海峡制度というものがどういうものになりますか、その内容なり制度というものを見ませんと、実は的確な御返事は申し上げかねるわけでございます。その意味におきまして、私どもはでき上がってきますところの国際的な合意を見た上で、非核三原則との関係も慎重に検討すべきだろうと考えているわけでございます。  ただ一般論、きわめて抽象的にしか申し上げられないわけでございますけれども、新しい国際的な制度ができ上がりまして、それに日本も参加をするということになりますと、当然、それは日本においては国際法ないし条約として日本においても実施適用されるということになるわけでございます。したがって非核三原則の政策の問題というのは、日本において法律的な効力を持つ、そういう国際条約というものに従って当然適用されることになるという考えでございます。
  90. 土井たか子

    土井委員 どうもわかりにくい御答弁なんですが、要するに、先ほどから御答弁を承っておりますと、領海十二海里というものがもう大黒柱であって、それに従って決めていかれる条件というものは日本はのまなければならない。のむ場合に、この非核三原則というのは、現にある日本国憲法の中心課題から発する国是ですよ。この国是を初めとして、国内ですでにいままで、ある場合には国是とし、ある場合には政策として実行してきた中身を変更せざるを得ないかどうかというような問題があるわけでございます。  そこで、私はちょっと確認をしておいて先に進みたいと思うのですが、先日、当外務委員会において宮澤外務大臣は、海洋法会議で領海の幅が決定しなくても、十二海里というものを宣言するのだという趣旨を述べていらっしゃるわけですが、いまもそのことは変わらないわけでありますか。
  91. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点につきましては、先般閣議で政府方針が決定をいたしたわけであります。すなわち、海洋法会議が条約を生むようになりますればそれに従う、万一海洋法会議が今回結論を得ないという場合には、この問題はその時点において政府として検討をしよう、そういうのが政府のただいまの方針でございます。
  92. 土井たか子

    土井委員 そういたしますと、これは海洋法会議での推移を待ってということに尽きるわけでありますね。海洋法会議で具体的にどういうことが検討され、しかもどういう討議があって結論が出るかという、その推移を待って考えるというふうな御趣旨の答弁というふうに承ってようございますか。
  93. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そう言われたのだといま伺いましたが、つまり、ただいまジュネーブにおいて行われております海洋法会議が合意に達すればそれに従う、もし今回合意に達しませんときはその時点においてこの問題を検討しよう、こういうのか政府方針でございます。
  94. 土井たか子

    土井委員 いま合意に達したらどうのこうの、合意に達しなければどうのこうのというふうなことでありますけれども、これは前回の当外務委員会での質問でもそういう御趣旨の御答弁がございました。海洋法会議というのはまだ結論を得ていない、どういうことになるのかわからない段階であって、したがってその推移にゆだねていって、問題についていろいろとその都度その段階政府としてはお考えを具体的に講じていきたいという御趣旨の御答弁があったわけですね。海洋法会議の推移に待ってというふうな御答弁のときに、私は、外務委員会で大事な問題は決定されてしまってからあと報告を聞くような御答弁ではいけないのじゃないか、やはり進行している段階、その都度その問題に対して対応していくためにも、当委員会での審議というのは非常に重要な意味を持つということを申し上げたわけですが、この海洋法会議というのは、考えてみますと、現在海洋法といういまある海の国際法を革命的に改正することであるというふうな御認識で臨んでいられるがゆえに、海洋法会議のいろいろな審議の結果待ちというふうに御答弁になるのであるかどうか。だから答弁を簡単にできないというふうな御趣旨をここで繰り返してお述べになっているのであるか、ひとつそこのところをお聞かせいただきたいと思います。いまある海洋法会議でのいろいろな討議というものは、現在の海の国際法というものを革命的に改正することが非常に大きな問題になっている。したがって、この推移を待つ以外にないというふうな御趣旨に受け取ってようございますか。
  95. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと御質問の真意があるいは私がとらえかねているのかもしれませんが、つまり、今回の海洋法会議が結実をいたしますと、これはまさに歴史上新しい国際的な合意ができるわけでございますから、それは非常に従来とは異なりました海洋に関する新しい国際法が生まれる、こういうふうに認識をしております。
  96. 土井たか子

    土井委員 昨年私が海洋法会議の問題で国際海峡についてお尋ねをしたときに、いままでにない新しい概念がここに生まれてきた。したがって中身についてはこれから検討していかなければならない。海の国際法全般についてこれは革命的な問題を提起しているのだ。いまある領海の問題であるとか、公海についての条約が基本から変わるというふうに考えていただきたいというふうな御答弁があったわけであります。したがって、私はいまこのような質問をしたわけでありますけれども、そうなりますと、現在の海の国際法というものを基本的に変えていく、あるいは革命的に変えていくという側面をこれは持っているわけですね。したがって、できてみないとわからない。このできてみないとわからないような問題をはらんでの海洋法会議が現に進行中なんでしょう。そうしますと、これは本国会に提案されるかどうかわかりませんが、日韓大陸だなの問題でも、この海の国際法がどうなるかわからない、基本的にいままでにない新しい概念もここに持ち込まれて、革命的に変えられるというふうなことが現に討議され、進行中のときにこれを問題にしていいわけでありましょうか。私はむしろこの国際会議の場で、この現にある海の国際法というものがどういうことになっていくか、基本的にいままでにないような問題も提起されて変えられていくということが具体的にはっきりしてから、日韓大陸だなについては日本としては、これはみずからの主権の名において、この問題というのは非常に大きな問題をはらむわけですから、考えることが順当だと思うわけであります。大臣はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  97. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は以前にも申し上げたことがあるかと存じますけれども、海洋法会議が新しい国際法を生みました際にも、たとえば経済水域というようなものが二国間でオーバーラップした場合にどうするかという問題は、恐らく非常に明快な、こうせいという結論を得ることはできないだろう。両国間の話し合いであるとか、中間線であるとかというふうなことに多分ならざるを得ないであろうというふうに考えられますし、他方で、そのような海洋法会議が結論を得ましても、従来からございます大陸だなという観念がなくなってしまうわけではございません。これはこれとして存在をするということになろうと思います。  そういたしますと、大陸だな同士のオーバーラップの場合あるいは大陸だなと経済水域とのオーバーラップの場合、これをどうするかということになって、問題はいよいよ複雑になってまいろうと思います。その場合に、大陸だなという観念はそのまま残ると考えられますから、わが国のようないわゆる島国は、大陸の国と比べますと、大陸だなの観点から言えば、どうしてもこういう場合に不利を免れないということになります。その場合に一体どうするのか、結局その場合も両国で何かを、関係国が話し合っていくしかないではないかということになろうかと思いますので、そういう見通しでございますがゆえに、日韓の大陸だなのあの協定にございます考え方、これはその時点を見通しましてもわが国の国益に沿うものである、こういうふうに考えているわけでございます。
  98. 土井たか子

    土井委員 先ほどの領海の幅も現に決定していないということは、話し合いが進みつつあるわけでありますけれども、国際海峡の自由航行も現在の時点では決定をしていないということになるわけですね。また結論からいたしまして、領海の幅が決定しないということは、ひいてはいわゆる国際海峡の自由航行も決定しないということになるわけなんですね。その場合に、核積載艦というものを通航させるために、日本としては領海十二海里を宣言しないか、あるいは非核三原則を修正するか、いずれかの立場をとらざるを得ないと思うわけであります。このことに対してはいままでどういうふうな心づもりをお持ちになっていらっしゃるか、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  99. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、先ほどからるる条約局長が申し上げました中で明らかになっておると存じますけれども、結局国際海峡という新しい概念が、新しい海洋法という国際法の中で生まれたというときにどのように対処すべきかという問題であろうと思います。つまり、それはいままでの非核三原則を修正することになるのではないかとおっしゃいます点は、私どもそうは思いませんので、領海に持ち込むことは事前協議の対象になると言っておるわけでございますから、今度国際海峡というものができた、それにどう対処すべきかという新しい問題に対処をするということでありまして、いままでの政策に抵触するあるいは政策を変更するといったようなふうには私どもは考えないわけでございます。
  100. 土井たか子

    土井委員 四十三年当時、当時の三木外務大臣答弁の都度、核積載艦の通航は核持ち込みに当たらないという趣旨の答弁を繰り返し述べられたことは、外務大臣御承知のとおりであります。いま核積載艦の通航というのは核持ち込みに当たるというふうに御認識をなすっているわけですね。四十三年当時のあの物の考え方、三木外務大臣の御答弁に出ました、核積艦の通航は核持ち込みに当たらないという趣旨、この核持ち込みの問題についての御理解を改められるというふうなことがこの節ありますかどうですか、お聞かせいただきたいと思います。
  101. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 四十三年当時でございますか、当時の三木外務大臣からそういう趣旨の御答弁がありましたことは私どもも承知しております。ただ、当時の三木外務大臣の御説明も、実は無害通航というものが頭の中と申しますか、前提にありまして御説明をしたものだというふうに私は了解しているわけでございます。無害通航について、四十三年の国会における領海条約の審議の際、いろいろな論議が行われました結果、先ほど私が申し上げましたように、ポラリス等のいわゆる常備核装備艦の通航は無害の通航とは認めないという政策をとったわけでございます。
  102. 土井たか子

    土井委員 そしてその考えというのは今後も貫いていらっしゃるわけでありますね。
  103. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 一般領海におきます無害通航制度という国際的な現在の制度が維持されます限りにおいては、政府としてはその立場を維持していくであろうというふうに考えております。
  104. 土井たか子

    土井委員 そういう問題も含めまして、昨今、昨年十月のラロック証言以来、核の一時持ち込みの問題について、いろいろな角度から政府に対しての質問があったわけでありますが、その質問の根幹になったのは、言うまでもございません、この事前協議の規定に関する藤山・マッカーサー口頭了解事項でございます。ところが最近、アメリカの方から、国務省スポークスマンの発言の中に、口頭了解のいかなる記録も知らないというふうな問題が出てまいりまして、これに対してきょうも、外務省としてはどうお考えになっていらっしゃるかということが出てはおりますけれども、アメリカ政府が、口頭了解があったということ自身までの否定は現在のところされていないわけであります。ただ、それが記録になったか、ならなかったか、文書化されたか、されなかったか、紙に書いたものとして残っているか、残っていないかという点については、これはいろいろ疑義が存するわけであります。現にないという発言かあるわけでありますが、口頭了解事項というものがなかったとまでは言ってないのです。口頭了解事項というものまでは否定をしていないということ、これははっきりしていると思うのです。そうならば、その口頭了解の中身というものをはっきり、具体的に確かめる必要があるのじゃないか。口頭了解の中身はこういうことでございますということをひとつ外務省アメリカ側とお互いに具体的に話し合いをして、そうして確定をされたものを外務委員会に対して報告をしていただきたいと思うわけでありますが、いかがでありますか。
  105. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 口頭了解の内容がどういうものであるかということは、かつて本院におきまして議員の御質問がございまして、日本政府としてはこのように口頭了解をしておるという資料をお出しいたしたことがございます。その後、今年になりまして、それは十五年前の口頭了解でございますから技術上の変化もいろいろあったであろうし、改めて確かめたらどうかという御質問がございまして、私どもとして、確かに時間もたったことであるから、アメリカ側ともう一遍この問題を研究をしてみますということを申し上げてございます。したがってこの問題は、ただいまアメリカ政府において検討しているところでございます。その検討の結果がどのようになりましたかは、いずれ国会に御報告をいたしたいと思います。
  106. 土井たか子

    土井委員 その御報告とおっしゃるのも、また口頭による報告であるところに実は問題があるわけであります。日本側のいままでの口頭了解事項といわれることについても、一方的な了解であったのじゃないか、日本側の一方的な解釈であったのじゃないかということが、それ自身が常に疑惑の核になっているわけでありまして、こういう問題について、常に疑惑をはらみながらやりとりをする、いろいろああでもない、こうでもないというふうな問題に対しての検討を重ねるということ自身が、私はどだい間違っていると思うわけであります。  というのは、事前協議というのは、安保条約の中身を具体的に実行する場合にどうなるかという非常に基本的な問題をはらんでいることでありますから、こういう事柄は、単に口頭で了解をする、口約束をやるということでなしに、本来文書化するということが私は通常だと思うわけであります。口頭了解にのみされて文書化しなかったというのは、いままでのところ外務省の重大なミスだと私は考えているわけでありますが、これは外務省としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  107. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御承知のように、もとの部分は文書化されているわけでありまして、安保条約第六条に基づくところの交換公文がそれでございます。  で、あの場合、配置であるとか装備であるとかいうことは、一応それでわかったようなものでございますけれども、具体的にはどういうことかということになりますと、これは大変に複雑でもございます。したがって、まずまずこういうところであろうということを口頭了解をしたわけでございます。それで十五年やってまいりまして格段の問題も起こらなかったと私どもは考えておるわけですが、まあそれをもう一遍確認をしておこうということでございますから、私は文書によってそれを確認する必要――そうなりますと事は非常に複雑になってくるのではないかというふうにも思われますから、包括的な意味での口頭了解があったということでよかったのではないか、過去のことについては私はそう考えております。
  108. 土井たか子

    土井委員 外務大臣の御理解というのは大変に国民の理解とはかけ離れていると私は言わざるを得ません。いままでに大した問題がなかった、いまそういう御答弁をなさいましたが、本当にそういうふうにお考えですか。これに対してはしょっちゅう国民は不信の念で疑惑のまなざしで見ていますよ。一体口頭了解の中身がどういうものであったのか、これは日米間でかなりのずれがあるということが現に出てきているわけではありませんか。口頭了解をやってきていままでにさほどの問題はない、これは大変な発言だと私は思う。日米間においてこれに対する理解にずれがあるということ自身が問題じゃありませんか。そういうことも含めて、これは口頭了解でなく文書化することがやはり基本的に大事な問題だと私は思う。それに対しての努力というものをいままで現に払っていらっしゃらないということ自身が、私は外務省の重大なミスだと思うわけであります。これに対して複雑な問題もこれありとおっしゃいますが、複雑な問題であればあるほど、口頭了解である限りはこれが混乱を招くのですよ。やはり文書化をして、これに対しては疑義を生じないように、日米間で具体的に協議をするということが必要じゃありませんか。私は、文書化をされていないということは外務省の重大なミスだと思いますが、そういうふうにお考えになっていらっしゃいませんか。
  109. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の申し上げたいのは、そういう了解が口頭でありましてもあるいは文書でありましても、いま世の中で起こっているような問題は恐らく起こったであろう。つまり土井委員のおっしゃろうとしておられますことは、たとえば核兵器が持ち込まれていないと政府は言うけれども本当であろうか、これはその了解が口頭であったから、文書であったからというのではなくて、検証ができないではないかというところにむしろ問題があるのであろうと私は思うのでございます。ですからそれは、了解が文書でなくて口頭であったということによるものではなくて、事の性質上、いわゆる約束というものが守られているのかどうかを検証する方法がないではないかということであって、その約束が口頭でなされたか文書でなされたかというところにあるのではないかというふうに私は見ておるわけでございます。
  110. 土井たか子

    土井委員 これは外務大臣の御認識と私が申し上げているところは段階の相違でありまして、核が持ち込まれているか持ち込まれてないかという事実認定にかかわる問題は、文書化されているから、されていないからということとは関係がない、それはそのとおりかもしれません。しかし、事前協議の対象となるかならないかという問題は、これは文書化されている場合と文書化されていない場合とで、大変に相違が出てくるのじゃありませんか。いかがです。
  111. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは同じことでございまして、結局事前協議をしようということを口頭で申そうと文書で申そうと、その約束ができておればいその約束が守られたか破られたかということになってしまうわけですから、それを検証する方法があるかないかというところに問題があるということで、私は同じことに帰着してしまうと思います。
  112. 土井たか子

    土井委員 これは宮澤外務大臣に申し上げるのはまことに失礼なんでありますが、不文法問題から成文法に、いわゆる法に対しての形式というものが変革してきた由来は一体どの辺にあるとお考えですか。同じような意味で、こういう国家間においても、単に口頭了解で済ますとか口約束で済ますというふうな問題を文書化していく、あるいは国際法の慣例、通例というものが慣習になり、事実上の慣習というものが積み重ねられて、これが具体的な国際法、成文化していくというふうな状況から考えていきますと、お互いが確定をし合ったことを単に口約束で済まさないで、口頭了解で済まさないで、文書化をしていその文書化された中身について、さらにお互いの確立した問題を尊重していこう、それを遵守していこうという義務をお互いが負おうというところに問題があるわけでしょう。今回のこの事前協議の規定に関する藤山・マッカーサー口頭了解の問題についても、いままで私が申し上げたそういうふうな意味において、中身についてどうだった、ああだったからいつも出発をするわけであります。この事柄についてはアメリカ側の理解はどうか、日本側の理解はどうか、一体この理解というものは、口頭了解の段階でどういうふうにお互い話し合われたのであるか、いつもそこの出発点にまた立ち戻って常に問題にしてきたわけであります。そのたびごとに両者の食い違いというものが今日まで及んで出てきたのです。したがってこの節、いまからでも私はおそくないと思うのですよ、ひとつ文書化ということに対して努力をしていただく必要があると私は思います。少なくとも当委員会において、アメリカ側が口頭了解についてやった以後、どういうふうに考えて今日に及んでいるかということについても、月日がたっているので、日本側でも中身をもう一度確定して確認をする必要があるというふうな意味で、アメリカ側に問い合わせた結果を国会に近日中に報告したいという御趣旨の御答弁でありましたが、それは少なくとも、口頭での御報告でなしに、文書によって提出をなさるという報告の方法をぜひおとりいただきたいと私は思うわけであります。いかがでありますか。
  113. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昭和三十五年の口頭了解の内容を、先刻も申しましたように、日本政府の了解するところとして国会の御審議の際に提出をいたしたいことがございます。したがいまして、今回も同様のことが可能ではなかろうかというお尋ねでございますから、もしそういうことが可能でございましたら、できるだけそこははっきりさせる意味で、そのように努力をいたしてみたいと考えておりますが、いずれにいたしましても、その点につきましての米側の答え、結論が出ました段階考えさしていただきたいと思います。御発言の御趣旨はよくわかりましたので、考えさしていただきます。
  114. 土井たか子

    土井委員 時間が参りましたからこれで質問を終わりますが、いまの御答弁からすると、国会に対する報告はできる限り文書化する努力を払うという趣旨の御答弁であったようであります。アメリカに対していかがなんですか。これは口頭了解の内容に対して確認をするということと同時に、今回この節に文書化していくという努力を、外務省としては対米においておとりになるという御用意がおありになるかどうか。
  115. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本が口頭了解に発したものでございますから、私はそのベースの上でやっていきたいと考えております。
  116. 土井たか子

    土井委員 そうすると、文書化をするという努力は必要なしというふうにお考えになっていると確認をしていいわけでありますね。
  117. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのように考えております。
  118. 土井たか子

    土井委員 終わります。
  119. 栗原祐幸

    栗原委員長 正森君。
  120. 正森成二

    ○正森委員 まず最初に外務大臣に伺いたいと思いますが、キッシンジャー長官の、三月に二週間も中東へ行かれたという努力にもかかわらず、中東における一定の解決というのはできませんでした。また昨日はファイサル国王か不幸な結果になられるというようなことで、まさに激動というように言ってもいいと思いますが、キッシンジャー長官の工作がどうしてできなかったのか、どこに原因があるか、報道によりますと、段階解決という考え方を放棄して、新しい形式が必要ではないかというようなことも言われているようであります。  そこで、今後どうするかということを知るためには、なぜあれほどの大きな努力が実を結ばなかったか、それをどう認識しているかということを離れては今後の政策というのは出てこないと思いますね。外務省はどういうぐあいに考えておられますか。
  121. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題は、何分にも当事者が二国ではなくて多数でございますために、いわゆる段階的解決とキッシンジャー氏が考えておりました、まずイスラエルとエジプトの間で一つの妥結点に達しようという考え方に対して、アラブ側、シリアでございますとか、さらにPLOの問題もあるわけでございますが、まあそのような、俗語で言えば単独講和と申しますか、そういったようなものは自分たちとして受けられないという、最終的には私はそこのところに一つ問題があったと考えます。  それからもう一つは、PLOというものについて、PLOがイスラエルというものの存在を認めないという立場を崩しておりませんから、したがってイスラエルとしてもそういうようなものを交渉の対象にすることはむずかしい、ここにも一つ問題があったのじゃないかと思っております。
  122. 正森成二

    ○正森委員 いまそういう認識がございましたが、PLOの問題が非常に大きなウエートを占めているということでしたが、しかし、今回のイスラエルの態度というのは、そういう根本にまでさかのぼるまでもなく、きわめて限定された撤退の上に立って、エジプトに不戦の宣言を強く求めるということで、キッシンジャー長官すら、イスラエルが非常に態度がかた過ぎるというようなことが新聞に公然と報道されております。そしてイスラエルの非常にかたくなな態度というものについて反省を促すために、イスラエルに対する援助の額なども考えなければならないということも言われておるような状況です。しかし、これは私どもからとやかく言うべきことではありませんが、宮澤外務大臣が言われたように、中東問題の本当の解決というのは、これは国連二四二号の決議を基本にして行わねばなりませんけれども、その後の情勢の進展を見ますと、イスラエルの一九六七年戦争の全占領地からの撤退とそれからパレスチナ人民の民族的権利、具体的にはヨルダン川西岸とかガザ地区とかにミニパレスチナ国家をつくるということで、PLOのアラファト議長などは、それがもし実現されるならば、公式ではありませんが、イスラエル国家の存続というものを考慮していくということも報道されておるようであります。  私は、パレスチナ国家の存続あるいは建設を認めるのでなければこの問題はなかなか解決しない、ここを少し軽視したところに、キッシンジャー長官のいろいろな工作が成功しなかった大きな原因があるように思います。  そこで、今度の国会の予算委員会の諸質問でも、三木総理みずからか、民族的権利を認める方向で考えるというように解釈してもいいという発言がありましたが、わが国としては率先して、PLOのわが国における事務所の設置あるいはPLOが中東問題について果たす役割りについて、国連でも一定限度で認められておりますように、その存在あるいはパレスチナ人の間における一定の権威というものを認めることを率先して打ち出すことか、中東問題について解決の方向に進める大きなステップであるというように考えますが、わが国外務省としてそういう方向で一定のステップをとられるお気持ちはありませんか。
  123. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど安保理事会決議二四二号に御言及になりましたが、そこでもう一つつけ加えておかなければならぬと思いますのは、イスラエル自身の生存権、これを認めなければならないということがやはり二四二号の中にございます。これは御言及になりませんでしたが、これも一つの大切な要件であるというふうに思います。で、そのことをも認めなければならないということでございましょうから、それは、したがって、キッシンジャー氏がPLOというものを多少大事に考えなかったのではないかというお話はお話として、わが国は、総理大臣がしばしば言われておりますように、この問題が大事だということを考えておるわけでございますが、同時に、そのようなPLOは、イスラエルというものの生存権というものを認めなければならないということが同時に出てくるわけでございます。そういう背景のもとにPLOというものについて、仮にその代表者わが国を訪れる、あるいはわが国に何か自分たちの事務所をつくりたいというようなことでございますれば、これは総理大臣も前に申されたように、そういう人々と会うことにやぶさかではない。また、事務所というものが一般的な事務所であれば、それもしかるべき段階考えてもいい、こういうことは、総理大臣が言っておられますように、わが国政府の態度でございます。
  124. 正森成二

    ○正森委員 一般的な態度としては、そういうことのようでありますが、私のいまの質問を速記録でよく見ていただけばわかりますように、PLOも、イスラエル国家の抹殺というようなことを、いろいろな関係で、このごろは少なくともアラファト議長関係は言っておらない。むしろヨルダン川西岸やガザ地域で一定の有効な支配が認められるならば、いろいろイスラエル国家との両立というものを考えていきたいという方向を、新聞記者等に言っているようであります。そういうような方向を考えるということが非常に必要であって、イスラエル国家が、現在のように一九六七年の占領地域をほとんど全部支配しておって、その上でその存続を無条件に認めようというようなことを言ったって、それはなかなか始まらない仕組みであります。  そこで私は、わが国政府が、アメリカの方も一括解決ということでなければうまくいかないのではないかというように動きつつあるやにうかがわれますので、この機会にわが国としては、PLOの役割り、権威というものを認めた上での中東問題の本当の解決というものを考えていただきたい。そして、外相が近く訪米されるようでありますけれども、中東でもし事が起こりますと、石油問題でも、わが国で非常な問題が発生するのは事実であります。したがって、そういうような方向も含めて訪米されて話し合いをされる用意があるかどうか、一言伺いたいと思います。
  125. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 アラファト議長は、恐らくいま正森委員の言われましたような気持ちを持っておられるのであろうと私も推察はしております。が、実は、それを取りまとめてPLOの名において打ち出し、そうして、それをまとめていけるかどうかというところに、PLOの持っておるいろいろな複雑な面があるのではないかというふうにも考えておるわけでございます。  いずれにしましても、もしこの問題が米国政府との間で話題になるといたしますと、私どもとしては、イスラエルのこともさることながら、PLOも、総理大臣が所信で述べられておりますように、やはり自決権、平等権は与えられなければならない、これが一つの大事な問題であるということは、申すべきであろうと思っております。
  126. 正森成二

    ○正森委員 次に、インドシナ問題について伺いたいと思いますが、カンボジア情勢が非常に流動的でございまして、報道によりますと、プノンペンの日本大使館の裏側の五メートルのところに弾丸が落ちたということも報道されております。プノンペンの日本大使館はいつまで現状のままでおられるつもりですか。
  127. 高島益郎

    高島政府委員 プノンペンの日本大使館は、現在、大使のほかに二名おりまして、合計三名で残っておりますが、私ども、現地の詳しい情勢を東京で完全に把握するわけにいきませんので、いわゆる大使としての任務、それから特に在留邦人の保護、こういう任務を十分に果たした上は、いつでも自分の判断で帰るようにという指示を与えております。
  128. 正森成二

    ○正森委員 非常に含みのある答弁でありますが、結局、自分の判断で、プノンペンを引き揚げても一定の条件が備わるならばよろしいというような指示を与えておられるようであります。  そこで、諸新聞報道によりますと、これは今月の中旬から出てきた報道でありますが、カンボジア民族の自決権に基づいて平和的に諸情勢が推移するように、わが国大使はASEANの四カ国と同調して、カンボジア政府と接触をしておるということがしばしば報道をされております。このために、日本外務省が、内政干渉にならないようにという非常に注意深い留保はつけておられるようですけれども、一定の役割りを果たしておられるということは事実だと思うのですね。  そこで、それは現在どういう段階になっておるのか。あるいはそれが一定の成果を上げなければ、現在の非常に緊迫した軍事情勢に基づいて、早急に大使館を閉鎖なさるのか、そこを伺いたいと思います。
  129. 高島益郎

    高島政府委員 わが方の栗野大使の果たしております役割りは、もちろん内政干渉ということではございませんで、他のASEANの諸国、特にタイ及びインドネシアの大使でございますが、この三人、並びにマレーシアの臨時代理大使、合わせて四人が、ときどき先方政府から招請されまして、いろいろ意見を聞かれるということはございますので、慎重に、内政干渉にわたらない範囲で、現地情勢を踏まえて、いかにすれば流血の惨を避けて、できるだけ早い機会に融和的な話し合いに持っていくことができるかという点についてのいろいろな考え方を述べておるというのが現状でございます。  私ども現在の判断では、ほぼこのようなことにつきましての任務はもう終わったというふうに考えております。
  130. 正森成二

    ○正森委員 非常に配慮しながらのお言葉がございましたが、さらにもう一つ伺いますと、新聞報道によりますと、ロン・ノル大統領は国外に出られる途中、日本に立ち寄りたいという打診があったやに言われております。そういう打診があったかどうか。それに対して、新聞報道によりますと、外務省では、必ずしもそれは歓迎できない意味の回答をなさったというようにも言われておりますが、それについてはいかがでございましょうか。
  131. 高島益郎

    高島政府委員 ただいま申しました流血の惨を避けて、平和的な話し合いに持っていくためにどうすればいいかという観点から、いろいろ意見交換が行われておりまして、ただいま御指摘のようなロン・ノル大統領の国外旅行というようなことも打診されております。しかし、具体的に日本にロン・ノル大統領がおいでになるというふうな話については、具体的な提案としては何もございません。
  132. 正森成二

    ○正森委員 先ほどの答弁の中で、わが国カンボジアにおける大使館の果たすべき役割りは終わったと考えておるという御主張がありました。それは、ロン・ノル大統領の国内における地位、あるいは海外旅行について一定の結論が出たからと考えてよろしいか、それとも、わが国大使館が果たす影響力という言葉を使うとなんですが、役割りというものが、もういても効果を発揮しないから、そこで軍事情勢に伴って退去するというように伺ってよろしいか、そのいずれですか。
  133. 高島益郎

    高島政府委員 大変微妙な問題なので、なかなか御答弁がむずかしいのですが、私ども、栗野大使を通じまして、日本政府として言うべきことは十分に言ってありますし、これに対しまして、先方も十分に考えて、ほぼ結論に達しているというふうに私は了解いたしております。それが、先ほど申しましたような意味での大使としての任務はほぼ終わったものと考えるということでございます。
  134. 正森成二

    ○正森委員 一国の元首に関することでございますので、これ以上詰めた質疑はいたしません。大体、高島アジア局長のお話で私としては了解ができたというように思っております。  そこで、次の問題に移りたいと思いますが、アメリカの国務省の報道官から出た事前協議云々の問題については、他の議員がいろいろ質問になりましたので、私はいろいろ蒸し返して伺うということは時間の関係からいたさないことにいたします。しかし一つ伺いたいのは、あの報道の中で、スポークスマンが、一般論として記録のない了解はないと述べるとともに、記録がなければ知るすべはないということを言ったというのですね。しかしこれは非常に問題のある発言でありまして、こういう言い方は、記録のない口頭了解というかあるいは口頭の約束というものについて、非常に責任を負わない態度を一般的に表明していると思うのですね。しかし、私どもが過去の記録を調べたところによりますと、たとえば昭和四十三年五月十日の外務委員会では、わが党の松本善明委員が当時の三木外務大臣質問をいたしまして そのときには、外務省が四月二十五日付で「日米安保条約上の事前協議について」というものを文書で提出しております。その中には例の三つの問題について「配置における重要な変更」の場合とはこれこれこれこれというように、非常に詳しく文書で当委員会に提出しておるわけですね。そしてそれを受けて「口頭約束といいますか、口頭了解といいますか、そういうことばを使ってけっこうだと思います。」ということを当時の三木外務大臣が言っております。口頭であろうと二国間政府約束であるということになりますと、これはその国を拘束するということは国際法上の原則であります。たとえばここに「国際法Ⅱ」という横田喜三郎教授の本がありますけれども、「国家間の文書によらない合意については、国際法上の効力があるかどうかについて、つまり、国際法上で国家を拘束するかどうかについて、争いを生じたことがある。」これは一九三三年の東部グリーンランドの法的地位に関する事件でありますが、「口頭の合意は、国際法上の法的効力を有する」ということになっておるのですね。これは非常に一般的な国際法上の原則だと思うのですね。それを、一国のスポークスマンという責任ある者が、口頭の了解で記録がなきやそんなものは知らないというようなことを言うのは非常に不謹慎でもあり、そしてまた国際法上の原則にも合致しない、こう思うのですね。それは外務省が急遽二十四日の夜問い合わせをされまして、それを打ち消す旨の返事があったということでありますが、そういうことをスポークスマンが軽々しく言うというところにこの問題の非常に微妙なところがある、こう思うのですね。  そこで、外務大臣が今度訪米されるときに、この問題について確かめられて、十五年たっておるから技術的にいろいろ変化しておる点もあり、見直すというようなことで米側にも伝えてあるというようなお話でありましたが、この問題について双方でそういう誤解の起こらないように、あるいは誤解でないのかもしれませんけれども、外務大臣はあくまで口頭の了解ということで出発しておるから、今後もそういうことでいきたいというようないまの御答弁でありましたが、そうだとすればそうだとして、口頭了解であってもそれは国家間の口頭の約束であり、国家を拘束するものであるという言わずもがなのことでありますが、それを明白にされておかれる必要があるのではないか。内容についてのきめ細かな取り決めとともに、その口頭了解の性質について、米側にはっきりと日本政府考え方を申し入れておく必要があるのではないか。それはこの間のようなことが起こったからであります。それを今回の外務大臣訪米、これは四月になるか五月になるかわかりませんが、そのときに申し入れをされる、そういう御意思があるかどうか、伺っておきたいと思います。
  135. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは仰せられますように、まさしく口頭の了解でありましても両者を拘束することは言わずもがなのことでございます。ございますが、それを確かめておけと言わんますならば、私もそれは確かめまして一向に差し支えないことでございますから、そういたしたいと思いますが、先ほどの記録のない云々という発言は、これは国務省によって正式に全部否定をされてしまっております。したがいまして、そのこと自身は私ども今後問題にいたすつもりはございません。
  136. 正森成二

    ○正森委員 時間が残り少なくなってまいりましたので、最後に、この間、韓国が国家冒涜等という罪を、刑法第二編各則第二章外患の罪のうちに、第百四条の二として新設したという問題があります。これについては、一週間前に同僚議員からいろいろ御質問がございました。そこで、私は余り重複しないように伺いたいと思いますが、この刑法第二編各則第二章外患の罪というのは、これは韓国におきましては、どの国家部門がそれに対する捜査等に当たることになっておりますか。
  137. 高島益郎

    高島政府委員 先生に大変申しわけございませんが、どういう韓国の国内体制になっておりますか、この刑法の違反の罪について捜査関係は存じませんので、恐縮でございますが……。
  138. 正森成二

    ○正森委員 法務省は知っておりますか。
  139. 根來泰周

    根來説明員 私どもの方もそこまで調査しておりません。
  140. 正森成二

    ○正森委員 それでは申し上げますが、私の手元に中央情報部法という、一九六三年十二月十四日法律第一五一〇号というので制定された韓国の法律があります。その法律を見ますと、第二条のところの一項の三のところに「刑法における内乱の罪・外患の罪・軍刑法における叛乱の罪・利敵の罪・軍事機密漏泄罪・暗号不正使用罪及び国家保安法並びに反共法に規定された犯罪の捜査。」というのは中央情報部、すなわちKCIAの職務になっております。これは韓国の明白な法律であります。  それから第十五条を見ますと「司法警察官吏の職務」という項目になっておりまして、その中で  「情報部職員として部長が指名する者は、刑法第二編第一章及び第二章の罪、」云々について「刑事訴訟法による司法警察官吏の職務と軍法会議法による軍司法警察官吏の職務を行なう。」こう書いてあります。つまり、今度改正されました国家冒涜等の罪というのは、明白に刑法第二編各則の第二章外患の罪ということになっておるわけですね。そしてそれを管理するのは韓国のKCIAである。このKCIAが司法警察官吏としての職務も行うというように、韓国の法律で明白になっておるわけであります。  そこで私は伺いたいと思うのですが、この法律によりますと、内国人が大韓民国または憲法によって設置された国家機構を侮辱とか誹謗とかなんとか、いろいろな方法で大韓民国の安全、利益または威信を害するか害するおそれのある者というように、非常に漠とした構成要件で処罰されることになっております。私は、構成要件が非常に広いとか、そういう者を国外において罰するのが  一国の法律としてどうかということについては、ここで申さないことにいたします。しかし、少なくともわが国においてはこういう法律はありません。私が問題にしたいのは、こういうような構成要件が定められますと、わが国においてこの法律を適用される韓国側から見て内国人というものの言動、これについての情報を集めるという行為、これは、わが国における外交官の政治情勢あるいは経済情勢の情報の収集であっても、こういう法律ができた以上は、それは刑法上の犯罪に対する捜査権の行使になる。そうすれば、一国において他国が警察権を行使するということになるのではないか。もしそういうことが行われるとするならば、主権を有するわが国としてはそういうことは許されないという態度をとるべきではないか、こう思いますが、いかがですか。
  141. 高島益郎

    高島政府委員 一般論といたしまして、日本の国内において外国の官憲が警察権を行使するということは許されないことでございます。
  142. 正森成二

    ○正森委員 非常に簡単な御答弁がありましたが、一、二点聞いておきたいと思うのですね。  この法律では、内国人が云々となっておりますが、内国人とは一体何を指すのですか。
  143. 高島益郎

    高島政府委員 これはもちろん韓国の方で考えていることでございますので、私どもも確かめたわけでございますが、内国人といいますのは、大韓民国国民というのと同義語でございまして、その範囲は韓国民全部を指し、在外韓国民は北朝鮮系の人たちも全部含まれるという解釈をしておるように聞いております。
  144. 正森成二

    ○正森委員 ですから、それはとんでもないことになると思うのですね。国外におる者は、朝鮮民主主義人民共和国の公民である、こういうようにみずからも思い、外国人登録法にもそういうように書いておる者に対してまで適用される。そうすると、朝鮮民主主義人民共和国の公民であると考えておる人にとって、朝鮮民主主義人民共和国をほめたたえ、あるいはこれに対して一定の共感の気持ちを示すということは当然のことであります。ところが、それはわが国の中で行われておっても犯罪である。ですから、そういうことについての情報収集というのは、明白にKCIAの捜査活動になる。ふだんそういう情報を収集しておいて、何かの過程で韓国へ行く、朝鮮民主主義人民共和国の公民が行くということは少ないかもしれませんけれども、そういうことになれば、そこでいよいよ捜査権を現実に発動する、それまでは内々の捜査活動であるということになれば、どこまでが外交官の活動なのか、どこまでがKCIAの活動なのかということは見分けがつかなくなると思うのですね。わが国外務省としては、こういう広範な刑法ができたことと、わが国にいる韓国の公館員、その関係についてどういうようにお考えになり、あるいは態度をおとりになるつもりですか。  私がこういうことを言いますのは、たとえば昭和四十六年に装束湖氏についての事件がありましたが、それを見ますと、在日韓国民居留民団の中央本部の役員選挙に絡んで意見の対立が起こったということでありますが、そのときに金在権公使が「裵氏が韓国人留学生との会話で反国家的発言をしている録音を入手した」ということを言いまして「渡日した青年が思想的に不透明な言行をしているという情報があり、国家防衛目的上、公館が自らの任務を遂行しているうちに、意外にも反国家的な発言をしているのが録音された」こう言って「盗聴に当たったことを認めながら「しからば反国家行為自体は許されるのか」と反論した」こういうように当時の新聞報道されておるのですね。この場合は、盗聴というようなことが人権侵害にならないかどうかということだけで済みましたが、今度こういうような法律ができると、明白にそれは犯罪の捜査活動の一環としてそういうことをやっておるということになり、わが国において警察権が行使されておるということになります。これは断じて許されることではないと思うのですね。  特に韓国については前歴がありまして、私が法務委員会でも質問いたしましたが、たとえば尹順烈さんというのは、これは大韓民国の大使館が発信者になりまして、刑事被告人の召喚状というのを送ったという事実があります。これは明白にわが国の主権の侵害であるということを当時の法務大臣も言明をして、外務省関係者を呼んで厳重な注意をされたはずであります。こういうような明白な司法権の行使が行われればこれは明らかでありますが、今度のこういうような法律ができますと、これほど明白でなくても、ふだんの情報活動あるいは国家冒涜罪に触れるのではないかといっていろいろ聞き込みに回るということが、結局は韓国の司法権の一環としての捜査活動になるということになりますと、法律のたてまえから言えば、司法共助の規定に基づいて行うか、あるいは何か行う場合には逃亡犯罪人引き渡し条約というようなことについてやらなければならないはずであります。そこで、わが国と韓国との間には、このいずれの条約についても規定がないと私は承知しているわけですね。そうだとすれば、一層、韓国公館の情報活動というものについては、わが国の主権を侵害することがないように、厳重な注意をわが方としては行っておく必要があると思いますが、いかがですか。
  145. 高島益郎

    高島政府委員 韓国におきます今回の刑法の改正に関連いたしまして、在日韓国大使館あるいは領事館の館員の活動についていろいろ御心配の趣旨が述べられました。  私どもも、大使館の館員あるいは領事館の館員、こういう人たちは、当然通常の外交官ないし領事官としての活動、その範囲での情報収集活動は国際慣習上できるという立場でございますが、しかし、いま正森先生おっしゃったような意味での捜査活動、これはしてはならない。今回このような刑法の改正に当たりまして、私どもそのような捜査活動が行われないように注意していきたいと思っております。  なお、韓国との間におきましては、司法共助協定を締結したいという申し入れがございます。現在法務省とも相談しながら、どう対応するかということを検討中でございます。犯罪人引き渡し条約はございません。
  146. 正森成二

    ○正森委員 これで私の質問を終わらせていただきますが、外務大臣に……。いま法律的な問題点を指摘したわけですけれども、国家冒涜の罪というのができますと、通常ならば政治情勢の把握ということで外交官にとって許されていることが、即犯罪の捜査権の行使ということにオーバーラップしてくる可能性があるのですね。そこで、いままでに韓国との間ではいろいろ問題もございましたから、そういうことが厳にわが国においてはないようにということを、念のために何かの機会に申される必要があると思いますが、そういうことをなさるお気持ちがありますかどうか伺って、私の質問を終わらせていただきます。
  147. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 正常な外交活動を妨げるつもりはございませんけれども、警察権の行使にわたるようなことは、これはわが国として認めるわけにまいりません。何かの機会にそのようなことを念のため先方に申しておくことは、あるいは必要かと思います。
  148. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  149. 栗原祐幸

    栗原委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は、来たる二十八日金曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午後一時二十八分散会