○正森
委員 一国の元首に関することでございますので、これ以上詰めた質疑はいたしません。大体、
高島アジア
局長のお話で私としては了解ができたというように思っております。
そこで、次の問題に移りたいと思いますが、
アメリカの国務省の
報道官から出た事前協議云々の問題については、他の議員がいろいろ
質問になりましたので、私はいろいろ蒸し返して伺うということは時間の
関係からいたさないことにいたします。しかし
一つ伺いたいのは、あの
報道の中で、スポークスマンが、一般論として記録のない了解はないと述べるとともに、記録がなければ知るすべはないということを言ったというのですね。しかしこれは非常に問題のある発言でありまして、こういう言い方は、記録のない口頭了解というかあるいは口頭の
約束というものについて、非常に責任を負わない態度を一般的に表明していると思うのですね。しかし、私どもが過去の記録を調べたところによりますと、たとえば昭和四十三年五月十日の
外務委員会では、わが党の松本善明
委員が当時の三木
外務大臣に
質問をいたしまして そのときには、
外務省が四月二十五日付で「
日米安保条約上の事前協議について」というものを文書で提出しております。その中には例の三つの問題について「配置における重要な変更」の場合とはこれこれこれこれというように、非常に詳しく文書で当
委員会に提出しておるわけですね。そしてそれを受けて「口頭
約束といいますか、口頭了解といいますか、そういうことばを使ってけっこうだと思います。」ということを当時の三木
外務大臣が言っております。口頭であろうと二国間
政府の
約束であるということになりますと、これはその国を拘束するということは国際法上の原則であります。たとえばここに「国際法Ⅱ」という横田喜三郎教授の本がありますけれども、「国家間の文書によらない合意については、国際法上の効力があるかどうかについて、つまり、国際法上で国家を拘束するかどうかについて、争いを生じたことがある。」これは一九三三年の東部グリーンランドの法的地位に関する事件でありますが、「口頭の合意は、国際法上の法的効力を有する」ということになっておるのですね。これは非常に一般的な国際法上の原則だと思うのですね。それを、一国のスポークスマンという責任ある者が、口頭の了解で記録がなきやそんなものは知らないというようなことを言うのは非常に不謹慎でもあり、そしてまた国際法上の原則にも合致しない、こう思うのですね。それは
外務省が急遽二十四日の夜問い合わせをされまして、それを打ち消す旨の返事があったということでありますが、そういうことをスポークスマンが軽々しく言うというところにこの問題の非常に微妙なところがある、こう思うのですね。
そこで、
外務大臣が今度
訪米されるときに、この問題について確かめられて、十五年たっておるから技術的にいろいろ変化しておる点もあり、見直すというようなことで米側にも伝えてあるというようなお話でありましたが、この問題について双方でそういう誤解の起こらないように、あるいは誤解でないのかもしれませんけれども、
外務大臣はあくまで口頭の了解ということで出発しておるから、今後もそういうことでいきたいというようないまの御
答弁でありましたが、そうだとすればそうだとして、口頭了解であってもそれは国家間の口頭の
約束であり、国家を拘束するものであるという言わずもがなのことでありますが、それを明白にされておかれる必要があるのではないか。内容についてのきめ細かな
取り決めとともに、その口頭了解の性質について、米側にはっきりと
日本政府の
考え方を申し入れておく必要があるのではないか。それはこの間のようなことが起こったからであります。それを今回の
外務大臣の
訪米、これは四月になるか五月になるかわかりませんが、そのときに申し入れをされる、そういう御意思があるかどうか、伺っておきたいと思います。